A ニコンでは、すでにタイの工場が主力になっていました。BCNの調査では、2020年のデジタルカメラ国内販売台数のシェアはキヤノンが1位(36・8%)、2位はソニー(19・5%)。ニコンは3位(12・6%)です。国内市場でもシェアを落としており、コストを軽くするためにも完全な生産移管が必要だったのだと思います。
Q 「メイド・イン・ジャパン」のデジタル一眼レフカメラは国際的にも評価が高かったはずですが。
A 最大の要因は、間違いなくスマートフォンの性能向上です。スマホに組み込まれたカメラの性能が劇的に良くなり、あえてカメラを持ち歩く理由が無くなってしまいました。最初に影響を受けたのはコンパクトデジカメで、スマホに市場を奪われ売れなくなりました。
Q 残ったのが高性能機ですね。
A ニコンとキヤノンが世界の二大巨頭として長年君臨していた分野で、プロの写真家のほとんどがこの2社の機器を使っていました。しかし、ここではソニーが台頭します。従来の一眼レフと比べコンパクトなミラーレス機で「フルサイズ」と呼ばれる大型の画像センサーを搭載した「α7」シリーズを13年に売り出し、一気に存在感を高めました。
Q ニコンやキヤノンはどう対抗したのでしょう。
A 両社ともミラーレスの商品を売り出しましたが、当初はデジタル一眼レフと比べて機能面で劣る入門機が中心でした。結局のところ、2社はミラーレス市場を甘く見ていたのではないでしょうか。既存の一眼レフ商品といかに需要を食い合わずにすませるか、相当悩んだのだろうと思います。キヤノンはかろうじて追いつけましたが、ニコンは完全に出遅れたという印象です。