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coin―裏と表の世界―

1辰魅:2012/12/23(日) 12:55:48 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
この世界は裏と表に別れている…

表は皆のことを考えていると言っている政治家も…裏では何を考えているか解らない…

人気が善く皆に信頼されている教師も…裏では演技だと高笑いしているかもしれない…

そんな人がもし自分の周りに居るとしたら…

自分はどう思うだろうか―――……

2辰魅:2012/12/23(日) 13:04:09 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
初めまして。 こんにちはッ! 辰魅(TATUMI)ですっ!!

行き成り質問系から入ってスイマセン…(汗

題名あんなのですけど推理系のお話です。

今後ともお世話になると思うので、宜しくお願いします。

3辰魅:2012/12/23(日) 17:28:43 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
〝coin―裏と表の世界― 第一話 壱〟


 一人の少年。武神 楓眞(タケガミ フウマ)は人気男性アーティスト『SОUL!』の歌をいつもイヤホン越しに聞いている。その時には決まって右手に銀のメダルが握られている。
 そして今。百円均等店の事務室でも死んだ魚のような虚ろな目をウォークマンに向けながらパイプ椅子に座っていた。目の前にものすごい剣幕の店長を置いて。
 「――あのね…君なんで万引きなんてしたの……?」
 少々太ったその男は、自分と楓眞を挟んで立っている机の上に置かれた真新しい消しゴムとシャーペンの近くをトントンと指でつつく。
 しかしその問に一行として返事はなかった。先ほどからそうだ。強化された店の万引き防犯装置が新装開店されて初めて鳴ったのでそそくさと急いで行ってみてば、そこには死んだ魚のような虚ろな目をした青年茶色がかかった髪をかきながらトレーナーのポケットに手を突っ込み、防犯装置を見つめていた。
 そして今に至る。
 「……はぁ〜…。…君名前は……?」
 質問を変える。帰ってくる返答。無し。
 「………」
 いつの間にか自分も黙っていた。そして、最終的に行き着いた答えが――
 「警察行こっか…」
 ――で、あった…。

4名無しさん:2012/12/23(日) 22:30:42 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
〝coin―裏と表の世界― 第一話 弐〟


 面倒になった結果、警察行こっかはないだろう…。
 言われた本人はまるで聞き耳も立てていない様子でその言い分に従い、店のそばにあるその町の警察署へと連れて行った。
 楓眞はその間ずっとウォークマンとメダルを握りしめていた。
 警察署に着くと、少々ばかり楓眞は待たされた。白い壁に凭れながらウォークマンを弄る姿は今時の若者にはピッタリのものだ。
 「――君ぃ。…ちょっとこの部屋入って……」
 楓眞の前にある部屋のドアが開き若い刑事のような男が首だけを出してきた。それに合わせて小太り店長もその部屋から出ていく。少しばかりウォークマンを眺めていた楓眞だったが、部屋から出てきた刑事に肩をぽんぽんと叩かれて我に返ったような顔で部屋に入っていった。
 部屋の真ん中には銀色の机にパイプ椅子、部屋の隅には少し小さめの机とその机に前にある椅子に座る若い女性がいた。
 楓眞は若い刑事に進められるように奥の椅子に座る。
 「…っで。何で万引きなんてしたのかな…?」
 先ほどの男と同じ問が放たれた。しかし刑事にそう言われようとも全く微動だにしない楓眞。
 「聞こえていないのかな……?」刑事は顔に浮かべられていた笑を「?」のものに変えて楓眞のウォークマンに向けられた視線を遮るように手を振った。すると気付いたように楓眞は虚ろな目を少し見開いて、耳からイヤホンを抜き「はい…?」と低い声で聞き返した。
 (…ぁあ〜。コリャ聞こえてなかったっていう口か……)
 若い刑事、深澤 正樹(フカザワ マサキ)は頬杖をして思った。
 「…っで、何で万引きしたの?」
 本命に戻ると楓眞の口から「万引き…?」とまさかの聞き返しの言葉が返ってきた。

5辰魅:2012/12/24(月) 15:35:13 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
〝coin―裏と表の世界― 第一話 参〟


 「――………っえ?」
 「いえ、ですから万引きって何のことですか…?」
 自覚無しなのか。それとも言い逃れか。
 深澤は一体どっちなのか迷った。一先ず、ここは自覚無しだったと考えて問を放つ。
 「それはつまりぃ……知らない間に鞄に消しゴムとシャーペンが入っていたと………?そういうことかな?」
 そうだとしたら何故それを先ほどの店で言わなかったのだろうか。…あぁ、あれだ。イヤホンを耳に隙間ないほどはめてたもんだから聞こえなかってヤツだ。
 「はい…。少なくとも僕は万引きという野蛮行為をこの歳でするつもりはありません。…というより。………ヤったらお姉ちゃんに瞬殺されるんでやりません……」
 ポーカヘェースを保った顔つきで楓眞は言い放った。
 「…………本当にやってないの?」
 「はい……」
 「神様に誓う?」
 「天神様に誓います…」
 「神様には…?」
 「天神様は神様じゃないんですか。天取ったら神様じゃないですか。」
 虚しい、というより眠たそうな目がどんどん眠たそうになる。そして、虚ろな目と優しい目のにらめっこが数分ばかりその場で繰り広げられた。
 「……そっか!…じゃぁもう帰ればイイよッ!」
 ――っえ?
 深澤の突発的な言い分に楓眞は聞き返してしまった。別に、真面目に万引きしたわけじゃないから帰れるものなら嬉しいことだ。
 「っじゃ、ご家族に電話するけどぉ……電話番号は?」
 「…………っあ……。否…多分もう来て…」
 我に返ったような顔で楓眞は椅子から立ち上がった深澤を見上げる。だが台詞をすべて言い切る前にその部屋のドアが「バッチゴォーンッ」という音を立てて倒れた。

6辰魅:2012/12/25(火) 12:02:14 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
〝coin―裏と表の世界― 第一話 四〟


 『………………』
 深澤は作り笑顔で、楓眞は無表情で倒れたドアの方に目を向ける。
 そこには二人の人物が立っていた。その一人は茶色の長い髪を一つに結び上げた綺麗な顔立ちの少女。もう一人は茶色い短髪を持った眼鏡をかけた少年。
 二人とも大学生かそこらへんだろう。背が高く、整った顔立ちをしていて、さぞかしモテた青春時代を贈っていた事が考えられる。何より今でもモテているだろう。
 少女は怖いほど云い笑顔を顔面に浮かべて、深澤、楓眞両二名に右足の裏を見せつけている。少年の方は呆れた顔つきで白い天井を見つめる。
 「……アノ、ドチラ様デッ?」深澤が部屋に入ってくる少女に訊く。少女は一言「その馬鹿のお姉ちゃんです」と頬笑みながら言っただけで、それ以外の無縁な言葉は挟まなかった。
 「…………あの……。本気でどちら様ぁぁ………!!!?」
 少女――楓眞の姉と言い張る少女から顔を背け、楓眞と向き合う。
 「……イヤ…。だから…。僕の姉の――」楓眞は姉という少女に虚ろな目を見せた。
 「風香(フウカ)ですっ!そして、双子の弟の――」楓眞の姉――風香は少年の方に手のひらを向ける。「――武神 風間(タケガミ カザマ)でぇ〜す」【ドンドンッ! パフパフゥ〜ッ!】少年――風香の双子の弟は右手で華麗に弄り回していたスマホから変な効果音を出す。
 「………あのって言う事で、帰って良いですか…?僕本当に何にもしてないんで…」
 ガタっと小さな音を立てて、楓眞は立ち上がる。ドアを一蹴りで倒すほどの狂人的な脚力を持つ少女に驚いていた深澤は、帰ろうとする楓眞を咎めようともせず、驚きつつ部屋の隅っこの椅子に座った女性を見る。そして困った顔を見せたあとで、「これからお店行ってみようか?」と呟いた。

7辰魅:2012/12/25(火) 14:11:41 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
〝coin―裏と表の世界― 第一話 五〟


 楓眞は警察署の待合室でコーヒーをすすっていた。深澤からは「ヤってないなら帰って良いよ?」と警察にしては前代未聞のことを言われ、帰るところなのだが、風香が蹴りで壊したドアを直しているためなかなか帰れない。と言うか、なぜこんなところに来たんだ。という考えが募っていた。
 「――おい。楓眞……」
 楓眞が座っていたソファーの前に風間が腰掛ける。両手には温かいお茶と黒いカバーのスマホが握られていた。
 「…………なに、お兄ちゃん……」
 低い声で聞くと風間はスマホを弄る。「………本当に万引きしてねぇんだな。」
 「………したらお姉ちゃんに殺されちゃうじゃん。僕は17で死にたくないよ……」
 小さな声で行われる会話は聞こえないか聞こえるか微妙なものだ。
 楓眞の返事に苦笑する風間。すると、楓眞の着ていたトレーナーのポケットから、着メロらしき音楽が流れてきた。
 楓眞はぎこちない動きでポケットから携帯を取り出す。どうやらメールらしく、片手に握っていたコーヒーの缶を不安定なソファーにゆっくり載せ、両手を使って携帯を操作する。
 「…………」黙り込む二人がいるその場に、携帯の操作音だけがうるさく響く。
 少しばかり楓眞が携帯と向き合っていると、何の前触れもなく楓眞はその場に立ち上がった。そしてスタスタと風間を置いて警察署の一般玄関に足をすすめる。その間に自分の姉が一室のドアを直しているところが目に見えたが、特に話しかけるでもなくすぐに通り越していった。
 「…っ!……ちょっと、君…」
 楓眞の背中を見た深澤が、どこに行くのか聞こうとしたら、それを背後から風間が制した。
 「止めんなって……。つぅか、そろそろアンタ等(警察)にも連絡来ると思うんだけど………」
 風間が深澤に言った時、通路のむこうから一人の女性が走ってくるのが見えた。

8辰魅:2012/12/25(火) 15:12:13 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
〝coin―裏と表の世界― 第一話 六〟


 深澤は、走ってきた女性に連れられてどちらかというと大きめの部屋に連れ込まれた。白で統一されたその部屋にはたくさんの机と椅子がずらりと並んでいる。
 部屋の外の壁には『男性絞殺事件捜査本部』と黒い筆でキレイに書かれた紙が貼ってあった。
 「――……!…来たかぁ、深澤ぁ〜。早くこっち来い…」
 深澤が部屋に入ると、部屋の壁にもたれかかっている二〇代前半の男が手招きで深澤を呼びつけた。
 深澤はその男の元まで早足で駆け寄り、「事件か…?」と険しい顔つきで聞いた。
 男――木下 慎一(キノシタ シンイチ)は「あぁ…」と軽く返す。
 警察学校から馴染みの二人は、同じ捜査一課の同僚である。まだ警察になって何年と経っているわけでもないが、二人とも推理力にかけたものはなく、小さなものとはいえ数多くの事件を解決した仲である。
 「害者は………?」
 「今教えられるだろうよ」
 木下が言うと、深澤は「………渋谷(シブヤ)は…?」と顔をキョロキョロとさせながら二度目の問を呟く。
 渋谷という者も深澤たちと同じ警察学校を卒業した中で、単独行動をするお呼ばれものだが推理力的には只者ではない。
 「尚哉(ナオヤ)ならもう単独行動だ。先に現場行きやがった…」
 木下が呆れた物言いで言うと、深澤は深くため息を零した。
 「!……そういや……。お前万引き犯の事情聴取してんじゃなかったっけ?さっき太ったおっさんに連れられて来た野郎…」
 人差し指を立てて言う。あの野郎とは楓眞のことだろう。「あぁ……。彼なから帰ったよ?お兄さんとお姉さん置いて…」
 「なに、また、お前刑事の勘ってヤツで返したの?キッチリ調べろよなぁ〜…。……っま、その勘のお蔭で今まで乗り切ってきたんだけど……」
 二人は苦笑したが、苦笑する場所が悪く周りのものから白い目で数分間睨まれた。

9辰魅:2012/12/25(火) 15:48:31 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
〝coin―裏と表の世界― 第一話 七〟


 渋谷は黒い短髪を日光に反射させながら、野次馬の来ているビルに脚を運んだ。
 そこは今回の事件「男性絞殺事件」の現場となったビルだ。
 
 朝。ビルの前をランニングしていた女性が、その駐車場で倒れている男を発見。声をかけても返事をしないことから警察と救急車に連絡。しかしその時はもう息をしていなかったらしい――

 「――…チワァ〜」
 渋谷は駐車場の柱に掛けられた黄色のテープをくぐり抜けて中に入る。
 「お疲れ様です…」
 「ドツカれさん。…害者は?」
 「ハイ。…害者は北見 幸樹(キタミ コウキ)24歳。朝、ここをランニングしていた女性に倒れているところを――」
 「あぁぁぁあ〜…。そう言うのイイから、そう言うの……。凶器は?」
 渋谷は整った顔立ちを一切変えず、征服を着た警察に淡々と話しかける。そうこう喋っている間に、被害者、北見 幸樹が倒れていたと思われる場所に到着した。足元には白いテープで形取られた人の形がある。
 「…あの、凶器は縄のような紐じょうの物と推定されています…」
 「推定ってことは見つかってない訳ね…。っで、害者誰?」
 「………イヤ、あのですから。北見…」
 「そうじゃなくて、そうじゃなくて…。何やってる人ってこと……。解かる?つか解かってるの?」
 制服を着た警察は少し恐縮しながら頭を下げる。
 「……えぇ〜。確か…」
 「北見 幸樹24歳。コンビニ店でバイト中。高卒後すぐに製品工場に就職したが、問題を起こして解雇……」
 何処からともなく低い男の声が聞こえてきて、渋谷は「フゥ〜ン…」と顎に手を当てた。そして、地面に向けられていた顔を正面に向け「今の誰?」と言った。

10辰魅:2012/12/25(火) 17:34:48 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
〝coin―裏と表の世界― 第一話 八〟


 「――あぁ!?…だから君ぃ!!」
 警察官は唐突に叫んだ。その矛先は地面にしゃがみこんで音楽を聴いている青年。
 「何度言ったら解かるんだっ!?現場は高校生の遊び場じゃないんだっ!!早く出ていきなさい!!!」
 青年が立ち上がると、警察官は怒鳴り散らした。なんだこの餓鬼。渋谷が呆れ目で青年を見ると、青年は言葉を放っていない渋谷に向かって
 「……どうも。…盟誓高等学園二年の…。武神 楓眞です……」
 と言った。青年――楓眞は虚ろな目を下に向けたまま礼儀正しく渋谷に挨拶を交わす。
 「あぁ。…コレはどうも、ご丁寧に……じゃ、ねぇよ!!!?お前誰ぇ!!何者!何で一般市民がこんな現場にいるのぉぉ!!?」
 渋谷は楓眞から距離を取り、ビシィィィと人差し指を楓眞の顔に向ける。
 「つか、なにぃ〜…。一般市民のクセしてその情報力。何ナノ?陰陽術でも使って世界見てるの?地球の全て見てるの?個人情報ダダ漏れなの?」
 「情報はツイッターです。陰陽師は占い師です。地球の全て見えるなら、次号の漫画当ててます。個人情報漏洩は犯罪です」
 楓眞がポーカヘェースを保たせる顔つきで話すと、渋谷は「あのなぁ〜!?」と怒号を発した。
 「この餓鬼ほっぽり出せェッ!!ついでに北見のツイッターを洗えぇぇ!!!」
 怒りに任せて渋谷が叫ぶと、数名の警察官が「ハイッ!!」と言って楓眞に近づいた。
 「……でも、ここ最近送信ありませんよ?……一番最近で、三週間前です。洗っても得られる朗報少ないと思いますよ………?」
 楓眞が虚ろな目を鈍く輝かせてそういうと、渋谷の堪忍袋の尾が切れた。
 「いい加減にしろよ、糞餓鬼ィィ!!?ここは高校生のたまり場じゃねぇんだよ!つかっ!高校生がこんな真昼間からフラついてんじゃねぇ!!拘束だ拘束ッ!!」
 「………最近は横暴な警察が多いですね……。……だから冤罪が増えるんですよ……」
 「なっ!!?テメッ!…警察侮辱剤で逮捕すん」
 「!………っあ、琢磨(タクマ)くん……」
 「聞けよっ!!!?」
 楓眞にその気はなかったのであろう、口論は楓眞の携帯にかかってきた一本の電話によって終了した。
 楓眞は携帯で話しながら人混みの方に歩いていく。最終的に楓眞の後ろ姿が見えなくなると、渋谷の「あの糞餓鬼絶対逮捕するっ!絶対してやるっ!!死んでもしてやるっ!!!殺されてもしてやるっ!!!!」という怒号だけがその場に響いた。

11辰魅:2012/12/25(火) 19:52:51 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
〝coin―裏と表の世界― 第一話 九〟


 深澤、木下、渋谷両3名は署で会議を終え(渋谷はサボったが…)、今回の「男性絞殺事件」の被害者、北見 幸樹の身辺調査をしていた。
 「――っで、その餓鬼がスゲェウザい奴で…何か、こう…死んだ魚の目をしてたっていうか、虚ろっていうか、眠たそうっていうか……兎にも角にもウザい輩が現場にいてよぉ〜」
 北見に怨みや殺す理由である動機を持っている者を調べていたさなか、渋谷はその話ばかりしていた。聞いていた木下と深澤はそれなりに聞き流していたのだが、こう何度も言われると、ハッキリ言って……ウザい…
 この話は殺害現場から北見の同居中の彼女、安井 美咲(ヤスイ ミサ)の元に行くところから始まった。「死んだ魚のような目…?……虚ろぉ…?…眠たそう……?」その間ずっと、深澤はその言葉に引っかかっていた。どこかで見たことがあるのだろうが思い出せない。
 そして、今。北見から金を借りて一度モメた事のある、津川 圭史(ツガワ ヨシフミ)が一人暮らししているマンションに着くまでその長話は続いた。
 
 『ピンポーンッ』5階建てのマンションの2階。そこのインターフォンを木下が押すと、中から「ハイ、ハーイ……。ちょっと待って下さぁ〜い…」男の低い声が聞こえてきた。そして「ガチャ」っという有り来りな音を立ててドアが外側に開かれた。
 「はい?」
 ドアと壁の隙間からひょこっと色黒の男が首を出す。
 男――津川 圭史は、外にいる大の男3人を疑視する。
 「津川 圭史さんですね?少々お聞きしたいお話がありまして…。お時間大丈夫ですか?―――…」
 そこからは、北見と口論をしたのは本当なのか、死亡推定時刻と考えられている午後8時から9時までの間どこで何をしていたのか。その他諸々グダグダと……
 津川の話では、8時から9時の間は喫茶店で彼女と話していたらしい。確かめたいなら彼女に聞くとイイと最後につ加えられた。最初からそういうつもりだ。だからこそ一つの疑問が湧いた。そんな早くから仕事もしないで、どうして喫茶店に行っていたのか…。
 20分近く話したあと、深澤と木下が愛想笑いを浮かべて「ありがとうございました」と言って津川との話し合いは終了。
 マンションから外に出て、近くの歩道を歩く大の男3人。行き先は只一つ、津川が今日の朝、彼女と共にいたという喫茶店「MITUBA」である。

12辰魅:2012/12/26(水) 14:03:10 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
〝coin―裏と表の世界― 第一話 十〟


 津川の住んでいるマンションから喫茶店までは徒歩十分程のところになった。
 「カラン、カランッ」喫茶店について、ドアを開けると、ドアに付けられていたベルが鳴る。
 店内にそれほどの客はおらず、目に付く客は店の奥に座る高校生くらいの青年二名だけだった。三人はそれに目もくれず、「いらっしゃいませ」と愛想笑いを浮かべて言った定員に近付き津川のことを聞く。
 「――…今日の8時頃…ですか?」
 女性定員は頭をひねらせる。今日のこととは言え、時間は大分経っている。大きな行動でもお越していない限り覚えていないだろう。
 女性定員は深澤から差し出された、津川の写真を渋い顔で見つめる。だが、一向に返事がない。
 「この人来てたかなぁ〜…?……すいません、よく覚えてません…」
 小さく頭を下げる女性定員を、深澤は「そうですか」と言いながら見つめる。
 「…っあ!……あのちょっと待ってて下さいっ!」
 何かを思い出した様子で女性定員は店の奥に走っていく。そしてすぐに定員は背の高い黒髪の男性を連れてきた。
 「桜田(サクラダ)さん……。この人今日見ました…?」
 女性定員の連れてきた男は驚きながらも、女性から差し出された津川の写真を見る。
 「……!あっ…あぁ!!覚えてる、覚えてる!!」
 「本当ですかっ?!」
 男性定員の言い分に木下は噛み付くように聞き返した。「……えぇ…」
 定員の言い分には一緒に来た女性に一回怒鳴ったらしく、それが迷惑でよく覚えていたらしい。
 「一体俺の何が悪いんだ!……って、物凄い剣幕で怒鳴ってたのでよく覚えてます…。それに、電話か何かでちょくちょく店から出てたので、食い逃げじゃないのかとも思ったほどですから……」
 ふむふむと頷く3人。アリバイは確かだ。
 「…ご協力ありがとうがざいました……。また何かあったらお伺いすることがあるかもしれませんが、その時はよろしくお願いします…」
 深澤がそう言った時、店の1時を知らせるチャイムが鳴った。壁に飾られている鳩時計から鳩が出てくるところも、定員を含める5人はきちんと見た。
 「………ま…まぁ、何だぁ……。飯でも食っていくか…?」
 苦笑いを浮かべながら木下が言うと、定員たちも苦笑して「お好きなお席へどうぞ」と聞き込み刑事たちを歓迎した。

13辰魅:2012/12/26(水) 16:01:58 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
〝coin―裏と表の世界― 第一話 十一〟


 三人はレジに一番近い席に腰掛ける。思い思いにメニューを頼み、それを待つ。
 「――…しかし……。あの北見っていう男…。随分とイイ女と付き合ってんだなぁ〜…」
 木下はオットリとした顔をしている女性が写った写真を見る。茶色の髪は染めた様な色具合だ。
 女性――北見の彼女、安井 美咲。写真を見てもわかるよう、彼女はオットリとした性格だ。つい先ほど、北見が殺されたと報告すると足に力が入らなくなり、崩れるように倒れるほどだった。
 「……イイ女ほど腹が黒いって言うだろうが…。意外と犯人だったりするかもだぜ?」
 一人一人に配られた水をすすって渋谷は呟いた。「そうかもなぁ〜…」木下は笑って言い返す。
 「…そういえば渋谷。……さっきまで話してた、死んだ魚のような目だの虚ろな目だの――……その子一体どうしたんだ?」
 水を一気に半分ほど飲み干した深澤は一人だけ自分たちの前の席に座る渋谷を見る。
 「あぁ……。なんかよぉ〜…。タクヤ君だか、タクミ君だかから電話もらってどっか言った。っま、邪魔だったし丁度良かったけどぉ〜……」
 愛想なく言う渋谷の顔はまた怒りに溺れている。タクヤにタクミ…。どれも似た名前だな…。
 「………タクヤでもタクミでもなく、琢磨(タクマ)君ですよ……」
 「おう、ソレだソレッ!!タクマ、タクマ!!そうだ、そうだ。サンキュー!思い出せたわッ!!………ん?」
 顔に浮かべられていた笑が一瞬にして消える。……ていうか今誰が言ったの…?
 渋谷は声のした後ろの方に顔を方向転換をする。すると、そこには店の奥の席に座っていたと思われる高校生あたりの青年――楓眞が腰を曲げてじっと渋谷を見ていた。
 ……………………――
 『――…ギャァァァァァァァァッ!!!!!?』

14辰魅:2012/12/26(水) 23:32:47 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
〝coin―裏と表の世界― 第一話 十二〟


 「――…えぇ〜……。改めまして、盟誓高等学園二年、武神 楓眞です……。そして、こちらが…」
 「ろうきゅうしぇいの、ろろむら たくまれす……。よろしくれす…。(同級生の野々村 琢磨です。宜しくです…)」
 「自己紹介の時は口に物を入れるなっ!!礼儀悪すぎるだろ!それでも高校生か!!?礼儀を知れ!!」
 怒鳴ったり叫んだり怒鳴ったり、忙しい奴だ…。木下は内心そう思いながらため息をこぼした。
 「悪いっすね。礼儀教えられるの遅すぎたんで、高校でこのザマでさぁ〜…」
 琢磨は礼儀も考えず言い放つ。相手が刑事だと分かっているのだろうか。深澤がそう思うと楓眞がそんな琢磨を制すように
 「琢磨くん………。……相手は国家のご役人、警察ですよ…。喧嘩は学校で先輩型に吹っ掛けて下さい……」
 と、高校生とも思えない口調で琢磨に言った。それを聞くなり琢磨は黙り込んで、不貞腐れたような顔になる。
 「お前本当に高校生か?まさかどこぞのボンボンとでも言うんじゃ…」
 「心配無用です。僕はそれほど裕福な家庭に生まれてはいません。………まぁ…学校ではボンボン扱いされてますけどね……」
 椅子に座って腕組をする楓眞を見ると、どうしても自分が負け組に見える渋谷。頭をくしゃりとかくと怒りと焦りのせいか、貧乏ゆすりをしたくなる。
 「ハハハッ。…高校生にも頭が上がらないんじゃこれから思いやられるぞぉ〜…」
 深澤は話を変える為ワザと、渋谷の怒りを買うようなことを言い放つ。それに乗るかのように渋谷は「はぁぁ?!なんでこいつより少なからず、五歳以上は年上の俺が!!こいつに尻しかれなきゃいかねぇんだよ!?巫山戯んなよなッ!」と机を叩きながら席から立ち上がった。
 「食事中はその場を立つなっ!!!!」
 渋谷の怒号と重なって、楓眞の怒号もその場に響く。刑事三人はそれに驚き、目を見張る。
 「……って、僕のお姉ちゃんが言ってました…」
 ポーカヘェースの面向きで楓眞はそれだけ言うと目の前に置かれた水を軽く飲み干した。渋谷は眼を見張りながらその場に軽くすとんと座り直す。
 (…なんだこの意味不明の糞餓鬼…)
 それが、渋谷の楓眞に対する第一印象だった。

15雪乃:2013/01/17(木) 19:58:05 HOST:p23228-ipngn401aobadori.miyagi.ocn.ne.jp
とてもおもしろいですね☆^^
あの、聞きたい事が2つあるのですが…
私、ここの掲示板には、小説書くのに興味があって、なんとなく、
「小説掲示板」と、検索して、来たんです☆^^
質問コーーーナーーー☆☆☆
①この掲示板は、こんなふうに普通に話して良いんですか?
 必ず小説を書かないと…だめんなんですか?
②どうやったら、自分も小説かけますか?
私、バカなんで、わかんないんです><。。。
できたら…おしえてくださいっ!!!

辰魅さん、このお話、本当におもしろいですね^^




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