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鈴扇霊

5ピーチ:2012/11/03(土) 18:02:04 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
日陰さん>>

初めましてー! いや、あたしの場合題名だけだよ!

日陰さんの小説読んでみるね!

あと敬語じゃなくてもいいよー←

6日陰:2012/11/03(土) 19:10:13 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 ピーチ>>

 では早速タメ口で…。

 でも、デモ、私は霊的なお話大ッ好き!

 何より、天音ちゃんを想像するとめっちゃ可愛く思い浮かぶ!!

 これからも『鈴扇霊』頑張ってねー!!(^0^)/

7ピーチ:2012/11/04(日) 07:43:00 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
『第二話・変化』

 天神 柊一(あまかみ しゅういち)。
 飛鳥井 昇(あすかい しょう)。
 この二人が、つい先ほど説明した二人であって、柊一の場合、天音の言った「柊」と言うのはあくまでも名称である。
「……て言うか、これは?」
「妖精、だって」
「はぁ…?」
 天音の言葉に、二人の声が見事に揃った。
「…妖精?」
「…分かってる、分かってけどよ天音? いくら俺らの仕事上、こう言った普通の人間じゃ認めもしない存在も認めなきゃいけないけどよ、何でまたこんな所に妖精が?」
「それ以上言うと分かってるわよね?」
「はいすみません申し訳ございませ…」
 天音の瞳に宿った怒りを察し、昇が速攻で思いつく限りの謝罪を述べようとする。
「まぁ、それはいいわよ、昇の言うことも納得できるし」
 そう言った天音の目の前に、その妖精がふわりと降り立った。
“―――新しき、我が主様”
「……へ?」
 一瞬、何が起こり目の前のこの妖精に何を言われたのか、理解することができなかった。
“新しき主様。わたしは、夢月(むつき)と申します”
 夢月と名乗ったその妖精は、天音の肩に降り、言った。
“わたしは、貴方の見る夢を調整することができます”
「…調整?」
“はい。ですから、仮に主様が悪夢などを見ることがあっても……”
「やめて!!」
 唐突に、天音がそう叫んだ。
「え?」
“…?”
 柊一達も夢月も、天音の豹変ぶりに思わず言葉を失う。
 しばらくしてはっと我に返った天音が、小さく言った。
「ごめんなさい……でも、私は悪夢なんて見ないし、仮に見たとしても、何ともないから」
 そう言って、自分の左腕を眺める。
 その左腕に、微かな傷跡が伺えた。
「……ごめん。今日ちょっと…」
「分かった。気をつけてね」
「明日は来いよ?」
 二人の言葉に頷いて、部屋に一人閉じこもる。
 いつの間にか、彼女の周りを飛び回っていた妖精は、姿を消していた。


「―――…そう、やっぱり…?」
“はい。……どうすれば……?”
 穏やかな老婆と思われる声が響き、次いで夢月の声が聞こえる。
「そうねぇ…柊一君と昇君は、元気だった?」
“………………は?”
 唐突に聞き慣れない名前を出され、夢月が困惑した様子で問い返した。それを見て、老婆が穏やかに笑う。
「さっき、天音と一緒に居た男の子二人のこと」
“あ、はい…あれが普通なんだったら、元気…ですね…”
 夢月の曖昧な答え方を聞き、彼女は更に笑みを深くする。
「じゃあ…あの二人に働いてもらおうかな…」
 そう言った老婆―――神代 夜空(かみしろ よぞら)の言葉に、夢月がはいと返した。

8日陰:2012/11/04(日) 09:32:00 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 ピーチ>>

 夜空さんと、夢月ちゃんは一体何者なのだ!?

 どんどん気なってくる―――!!

 これからも頑張ってネ!!!(≧∇≦)‖

9ピーチ:2012/11/04(日) 10:26:49 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
日陰さん>>

コメ返し遅れた! ごめん!

いや、天音一応二十歳の設定なんだけど…?

夢月はそのまま。天音に仕える(?)ことになった妖精w

夜空はこれからのお楽しみじゃな←おい

10ピーチ:2012/11/04(日) 11:10:09 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
『第三話・記憶』

 真っ暗で、でも警戒なんて全く必要ない場所。
 そんな空間を、彼女は幼い頃から理解していた。
「……久しぶりに、招かれたなぁ…」
 この空間に時折両親が現れ、成長してからも子供のように泣いていたこともある。
 此処は夢殿(ゆめどの)。気紛れに、死者が降り立つこともあるといわれる空間。
 その空間で、微かな声が聞こえた。悲鳴のように引き攣れたその叫び声は、瞬く間に大きくなっていく。
 その悲鳴を上げている、人物は。
「―――……雅、さん………!?」

「―――っ…」
 唐突に目の覚めた柊一は、目の前に長い琥珀の髪を揺らしている小さな物体を認めた。
「……うわっ!?」
“今すぐ来てください”
「…え?」
 一体どこにと、それを問う前に夢月が空を駆けて行く。それを見て、慌てて柊一が夢月を追っていった。

「………えー、と?」
 自分の記憶違えさえなければ、間違いなく此処は昇の家のはずだ。自分の記憶が間違ってさえいなければ。
“その通りです”
「何でこんな真夜中に!?」
 声を顰めながら、しかし半ば怒鳴り散らす柊一である。
“電話でも何でも構いません。あの方をお呼び立てして下さい”
「だから何でこんな真夜中に…」
 言いかけた言葉を、夢月の言葉が遮った。
“…主様が、危険な状態です”
「…え?」
 主、とは、誰のことだ。
 確か昼、彼女は天音のことを「新しき主」と呼んでいたはずだ。
 ならば。
「天音…が…?」
“はい。だから貴方がたの協力が必要なのです”
 夢月の話によると、自分は天音の意識が眠っている場所まで行けるし、誰かを運ぶことも可能。だが、己の能力を駆使することまで敵わない、と。
“ですから、貴方がたに協力をお願いしたいのです”
 既に、柊一は普段仕事をする時の正装をしている。これから行くことは充分可能だ。後は昇さえ起こせば。
 苦笑しながら、柊一が携帯を取り出した。そして、しばらくすると昇の元気な怒号が耳をつんざく。
『こんな真夜中に何の用だお前は!?』
「そ、それは置いといて」
『勝手に置くんじゃねぇ―――!?』
 昇の叫びをきれいに流した柊一は、短く言った。
「…天音が、危険な状態らしい」
『―――は?』
 理由を話し、しばらくすると昇が家の中から出てきた。彼もやはり、柊一と同様に正装になっている。細かいことを聞かずとも、大体のことは把握できる。
「移動しながらでいいから、どう言うことか説明してくれるかな?」
 言うと同時に走り出す二人の間を浮遊しながら、夢月が言った。
“主様の奥深くに眠っていた記憶が、最近目覚めつつあるのです”
「……記憶?」
“はい。今までは大体だったから良かったのですが、今宵、それの大本が現れた”
 だから、このままだと天音の命の保障がない。
 淡々と、しかし焦りを帯びた声を聞き、二人が顔を見合わせた。

11日陰:2012/11/04(日) 11:43:33 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 ピーチ>>

 もうこの際、ピーチもタメで話しましょうか?

 と言うか、マジで?!天音ちゃんって、10代のモテ子ちゃんかと思ってた…

 これが小説と漫画の違いだね!(*^^)v 面白いは!!

 そして第3話も面白かったお〜!なんかすごい完結ら辺が気になる。

12ピーチ:2012/11/04(日) 12:21:09 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
日陰>>

じゃあ日陰って呼ぶー!

あ、一応ね! 自分が中学生だからわかんないけどね!

始まったばっかで完結気になんの!? それはどうしよう……((汗

あ、あと宣伝ー、あたし他にも小説載せてるからよかったら読んでみてねー

ただし駄文の極み行ってる!←じゃあ言うな!

13ピーチ:2012/11/04(日) 12:45:59 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
『第四話・夢殿』

 ―――六神 雅(ろっこう みやび)。
「……そう言う、ことか…」
 夢月からある程度の話を聞いた柊一が、納得する。
「…どう言う、意味だよ」
 意味が理解できない昇は、柊一とほぼ同じ速度で走りながら、小さく尋ねた。
「うん。前さ、天音と俺で向かった神社があったろ? 俺達が中三の夏休み前」
「あぁ……あん時は一番サボりが多かった時期だっけ?」
「…それはいいとして」
 柊一の話では、その時その神社の宮司をしていたのが、雅だったと言う。
「でもさ、何でそんな何年も前に亡くなった人が、わざわざ天音の夢殿に現れるわけ?」
 それは、柊一にも分からないことだ。それをどう説明しろと言うのだろう。
「それはまだ分からない。…けど、あの頃のことに関する事件か何かが、起きる予兆かな…」
 そんな嫌な予想だけはどうか外れてくれることを祈り、二人は走る速度を少し速めた。

「雅…さん…?」
 呆然と呟いた天音の声は、しかし雅には届かない。
「雅さ………!」
 そう言いながら前に進もうとして、不意に彼女は足を止めた。
「なん…で……?」
 これ以上、進めない。前に進みたくとも、進むことが出来ない。
 まるで、雅と自分との間に見えない障壁が刻まれているかのように。
「や………っ」
 また、あの惨劇を見るのか。
 目の前にいるのに、それなのに自分は手も足も出せないのか。
「い……や……」
 ―――やめて………!!

14ピーチ:2012/11/05(月) 20:29:12 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
『第五話・恐れ』

“…………?”
 二人の走る速度に合わせて飛んでいた夢月が、不意に止まった。
“どうしました? 主様の部屋です。さっさと入るです”
「あ…いや…」
「あのさぁ、仮に幼馴染と言えども、男と女だぜ? そう易々と入れるわけ……」
“そんなのいいから早くしてください!! 説明はわたしがちゃんとやるです!”
 いやそうじゃなくてと言いながらも、結局夢月の金切り声に促されて中に入る。
 直後。
 まるで稲妻が駆け抜けたかのように、横になっていた天音の身体がびくんと反り返った。
「………え?」
 一瞬の間が空き、柊一がようやくそれだけを発する。思考が、目の前にある現実についていかない。
 そんな状況下、夢月がくっと歯噛みした。
“まずい……二人とも、はやく寝てください!”
「え? は?」
“早くするです!寝転がるだけで構いませんから!”
 意味が理解できず、しかし彼女の焦りようを見て大人しく従う。
 それを境に、二人の意識が遠退いていった。

「―――ってぇ……」
 なぜだろう、言われた通り寝ただけなのに、それ以外何もしていないはずなのに異常なほど頭が痛む。
 ふと横を見ると、彼の親友は未だに意識が宙に浮かんでいるようだった。
「……おい柊一。さっさと起きろぉ!!」
 怒鳴ってから後悔する。頭痛が増すことを、綺麗さっぱり忘れていた。
 がんがんと割れるような頭痛を堪え、大人しく待つ。そして、しばらくすると柊一が目を覚ました。
「…っ…、あれ? 此処って……」
“夢殿です”
 不意に聞こえた声に、二人がはっと後ろを顧みる。そこに、金の髪を揺らめかせた夢月の姿があった。
「むつ、き?」
 どうしてか、つい先ほどまでの夢月と今の夢月とでは、印象が変わって見える。それを察したのか、夢月が言った。
“夢殿はわたしの領域です。根本が変わっても不思議はないのです”
 そういう問題だろうか。
 そうは思うものの、やはり夢月が急がせるせいでやむなく思考を中断する。
“…わたしが出来るのは、ここまでです。後は、任せます”
 そう言って、彼女はふっと宙に浮かんだ。
「…柊一」
 ふと、呼ばれた柊一が昇の方を向く。そこに、彼らが探していた人影があった。
「―――天音……!」
 刹那、天音の悲痛な叫びが木霊した。

「やめ、て……」
 これ以上、は。
「お願い…もう…」
 赦してくれたのでは、なかったのか。
 それとも、自分が勝手に思い違いをしていたのか。
 目の前に、真っ赤な炎が映った。
「雅…さん…っ!」
 熱いと言っているその声は、紛れもなくあの頃聞いたもの。
 そして、目の前に広がる紅い海も。
「あ…………」
 彼女の叫び声と共に、誰か、他の声が聞こえた。

15ピーチ:2012/11/08(木) 21:10:41 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
『第六話・偽者 〜前編〜』

「………眠る蕾(つぼみ)よ、咲き乱れし花よ……」
 小さく紡ぎ出した詠唱に、柊一と昇が顔を見合わせた。
「まずい…やめろ天音!」
“無駄です!!”
 叫んだ柊一を、夢月が止める。
「な……っ、」
“此処をちゃんと理解できてるんですか!? 夢殿では、本人以外が手を出すことはできないことくらい、分かってるはずです!!”
 彼女の金切り声を受け、二人がはっと天音を見た。
 未だに、彼女は詠唱を紡ぎ続けている。
 そうだ。此処は夢殿。仮にこの場所で大掛かりな術を使った所で、さほどの問題は生じないはずだ。
「…ごめん」
「悪い」
 謝る二人に、夢月は首を振る。
“わたしも悪かったです。すみません”
「いや、それより…」
 言いかけた柊一より早く、昇が言った。
「あいつを止めること、できねぇか?」
 それを聞いた夢月の反応は、実に早かった。
“そんなもの、造作もないですよ”
「はぁ!?」
 二人の声が見事に重なったことは、言うまでもないだろう。
“当たり前です。わたしを誰だと思ってるんですか。夢殿と黄泉の狭間を管理してるんですよ。できて当たり前です”
「じゃあ早くやれよな!?」
 度待った昇に対し、夢月が真剣な表情を浮かべて言った。
“でも………”
「へ?」
“わたし達には、わたし達の掟(おきて)があるのです”
 そう言った後に紡がれた、夢月の言葉は。
 ―――最悪の状態になるまでは、一切の手出しは禁止。
「…マジかよ」
“はい。この状況で嘘言ってどうするんですか”
 二人が無言で額を抑えた。確かに、彼女の言うことも尤もなのだが。
「安らかなる魂よ………眠れよ。再び、安らかに。ゆっくりと、永遠(なが)の夢を見られよ…」
 刹那。人の形(なり)をしていた“ソレ”の原形が、瞬時に消え去った。

16ピーチ:2012/11/10(土) 18:00:42 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
『第七話・偽者 〜後編〜』

「え……?」
 なぜ、
「雅…さん…?」
 雅と呼ばれたソレは、しかし 無表情に天音を見下ろす。
 そして。
「い…………っ」
 か細い悲鳴が上がった直後、彼女の姿がふっと消え失せた。
「……天音?」
“…まずいです”
「へ?」
 わけが分からない二人が、同時に問い返す。
“多分、主様がそろそろ起きます。それより先に起きないと…”
「さっさと起こせぇ!?」
 思わず怒鳴った昇の言葉に同意するように、柊一が言った。
「うん、いや何ていうか、俺達も痛い思いはしたくないからさ」
“あぁ…”
 苦笑交じりに言った柊一の言葉に納得して。
「いっけぇ―――
 金の髪を揺らした夢月が昇を蹴り飛ばし、柊一を投げ飛ばした。
「―――へ?」
 突然の暴挙に、二人が抵抗する間もなく果てのない夢殿から追い出され。

「―――なぁ柊一」
 気付いたら横になっている天音の姿が見て取れた。
「…何?」
「夢殿の中で痛い目見たのって俺らが最初だと思うんだが、どうだ?」
「うん。俺も同感」
 まさか、誰が夢殿でまで痛い目に遭いたいなど思うだろう。半ば本気で考えながら、柊一が小さく呼びかけた。
「………天音?」
 それを見て、昇が柊一に倣う。
「おい天音、大丈夫か?」
 しばらくの間繰り返し、天音が小さく呻き、そして目を覚ました。
「あ、大丈夫?」
「………今、大声を上げてもいいのかしら?」
「そりゃねぇよな!? 仮にもお前心配してた俺らに言うことじゃねぇよなぁ!?」
 半ば怒鳴る昇の言葉に目を見開き、柊一を顧みる。彼は、苦笑しながら頷いた。

17ピーチ:2012/11/10(土) 22:56:32 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
『第八話・夢』

「うん、夢月に聞いてね。天音が夢殿に入り込んだこと聞いた」
 その言葉を受け、天音が小さく唸った。
「…………もしかして、貴方たちだったの?」
「え?」
 天音の言葉の真意が読めず、二人が同時に問い返す。
「二人とも、夢殿で見えた気がする」
 天音の言葉を聞いて、夢月が目を見開いた。
“……主様…”
「…?」
“この二人が見えたって事は、わたしも見えたってことですよね?”
 夢月の問いに、天音が頷きながら言う。
「えぇ……確か、柊達を怒鳴りつけてたわね」
“はい”
 じゃあ、と呟き、天音が薄くえみを湛えながら言った。
「―――ありがとう」
「―――は?」
 自分達は今、天音に何を言われた。自分達の耳がちゃんと機能していれば、“ありがとう”と言っていた気がするが。
「え、えーと…天音?」
「ありがとうって言ったのよ? 馬鹿みたいに呆けてないで、返すくらいしたら?」
 そう言ったきりあらぬ方を見やった彼女を見て、柊一が話題を探す。
 そして。
「……じゃあ、天音が触れたくないかもしれないけど…」
 その前置きだけで、天音の全身が見るからに強張った。

18ピーチ:2012/11/11(日) 19:02:59 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
『第九話・』

 小さくかたかたと震え出した天音を見て、柊一が遠慮がちに切り出す。
「……天音、ひょっとしてまだあの時のこと…」
「何でもないわ」
「え?」
「多分、疲れが溜まってたのね。変な夢見ただけよ、気にしないで」
 そう言って、彼女は淡く笑った。
 あの時の夢を思い出す。
 ―――熱い、熱い熱い熱い熱い………!
 その言葉を脳裏に甦り、天音は思わず耳を塞ごうとした。しかし、柊一や昇が目の前に居る状況でそれをしようものなら、何があったと詰め寄られる。
 三人の中では絶対的な権限があるように思われる天音だが、その実そんなことはない。
 基本的に天音が二人を黙らせることが多いくらいで、時には立場が逆転してもなんらおかしくはないのだ。
「…そっか。じゃあ俺達は帰るね、今日は用事もあるし」
「えぇ」
 いつものようにしっかりと答える天音は、しかし今の状態ではかなり危うい。
 それを分かっている二人が、夢月に小さく言った。
「………今の天音は、いつ壊れるか分からない。だから、」
 ―――もし様子がおかしかったら、迷わず知らせに来てくれるかな。
 柊一の言葉に、夢月は是を唱える。言われずとももとより、そのつもりであった。
「じゃあ明日、天音」
「ゆっくり寝ろよ?」
「…えぇ」
 二人の気配が完全に消えてから、天音が深いため息を吐いた。

19ピーチ:2012/11/12(月) 21:08:30 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
『第十話・悪夢』

“主様…”
「ごめん…、今日は寝させてくれる?」
 天音の言葉に、夢月が力なく頷いた。今の彼女に何を言っても、聞き流されるのが落ちだ。
“ゆっくり、お休みになってください”
「…えぇ…」
 そう言って、ふっと夢月の気配が消える。
 ふいと、左の腕を見た。
「……………っ…」
 熱いと、あの声が叫んでいた。
 護る、そう言った自分は何をしていた。
 ―――何の力もない私でも、神社を継ぐなんて出来ると思いますか…?
 まだ若くも、十近くも年の離れたあの頃の彼女に、その女性はそう問うた。
 幾つも年の離れた少女にまで、ちゃんとした敬語を使って。
 それに、自分は何と返した。
 ―――はい。
「私……が…」
 ―――私が此処に居る間、何があっても貴方を護ります。
 そう、言ったのに。
「護れな…か…た……」
 見開かれた闇の瞳から、一粒の涙が零れ落ちる。
「みやび……さん………」
 ―――嘘つき。
「………え?」
 不意にあの声が聞こえた気がして、天音が辺りを見回した。
 しかし、部屋の中には誰も居ない。
「なん……っ」
 刹那。
「――――――っ……!?」
 後頭部に鋭い痛みが走り、その後に、“彼女”の声が聞こえた。

20ピーチ:2012/11/15(木) 22:50:07 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
『第十一話・思惑』

 ざわざわと、色々な声が聞こえた。
 なぜだろう、その中に。
 ―――あの人の声が、聞こえた気がした。

 天音の家―――神代神社を後にしていた柊一と昇がはっと立ち止まった。
「………おい、柊一」
 昇が呼んだ時には、既に柊一は走り出していた。後ろで無造作にくくられた彼の肩よりも長い髪が、彼の動きに合わせて軽やかに飛ぶ。
「…ったく……」
 今度は、どんな厄介ごとを持ち込んだんだ。あの厄介娘は。
 内心で軽く嘆息しながら、柊一の後を追った。

 ざわざわざわ。
 何だろう、このうるさい、たくさんの声は。
 なぜだろう、あの人の声が聞こえるのは。
 そこに思い当たった直後、天音がはっと覚醒した。
「………っ…」
 後頭部に、鈍い痛みが駆け抜ける。どうやら、自分が気を失った原因は間違っていない。
 こんな時ばかりは、外れて欲しいものだが。
 刹那。
「―――っ!?」
 突如として、目の前に一人の女性が現れた。
 血の気のないその面差しを、彼女は確かに知っている。
 だが。
「雅さんじゃ……ないわね…?」
 一時混乱もしたが、今ではしっかり冷静さを取り戻している。
 今は、いくら似ていようとも騙されない。
 だって、天音の知っている彼女は。
 ―――いつも穏やかに笑んでいて。でも、こんなに醜い笑みなど、知らなくて。
 自分をしっかり持っていて、何にも流されない。
 それが。
「あつ……かっ…た…」
 こんなに、醜い声ではない。
 どくんと、何かが飛び上がった気がしたが、彼女はそれを無視して小さく唱え出した。

21ピーチ:2012/11/17(土) 21:57:39 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
『第十二話・力』

「天津神、国津神、比古(ひこ)神よ……」
 冷たく、鋭く研ぎ澄まされた、刃のような詠唱が周囲に木霊する。
 天音の髪が揺らめき出したことを確認し、“ソレ”―――異形は動いた。
「死ね………」
 自分を助けなかった。これは、その罰だ。
 己が身を以(も)って、それを知るがいい。
 醜く嘲った異形は、ゆらゆらと揺れる天音の髪を掴む。
 だが。
「な………っ!?」
 これは、どういうことだ。
「なぜ、それに触れることが出来ない…!?」
 今までの余裕を持った笑みが崩され、異形の表情がどんどん強張っていく。
「まさか…」
「我が身を其のより所とし。我、今汝を招く」
 刹那。
 凄まじいまでの衝撃が、天音の全身に降りかかった。体勢を保てず、彼女の身体が吹き飛ばされる。
「え……!?」
 この、力は。
「なん、で…」
 確かに、神の力が宿りはした。だが。
「失敗……?」
 これを受け、今まで焦りに焦っていた異形が再び余裕を取り戻した。
「―――降霊は、」
 失敗かぁ………!
 にやりと笑って飛び掛ってくる異形を、天音は半ば無意識に避ける。
「っ……!」
 伸ばされた爪が、彼女の腕に突き刺さった。
 もはや原形を留めていない異形の爪が深く刺さり、それを引き抜いたことにより紅いものが勢いよく流れ出る。
「さぁて……過去に囚われた人間とそれを喰う妖。………より力となるのは」
 ―――どっちかなぁ…?
 瞬間。
「天音っ!」
 二人分の足音が、耳に入ってきた。

22ピーチ:2012/11/17(土) 23:40:59 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
『第十三話・過去』

「な………っ」
 なぜ、此処に居る。
 そもそも、なぜ此処が分かった。
 言いたいことは山ほどあるのに、喉に力が入らない。
 昇が天音に駆け寄り、柊一は異形の眼前で両手を組み合わせた。
 ―――りん
 一振りだけ振られた漆黒の鈴の音色が、幾重にも響いて反響する。
 それを認め、天音がほっと息を吐いた。同時に、腕の痛みを思い出す。
「つっ……」
「お、おい大丈夫か!?」
 右腕を押さえる天音を見て、昇が慌てて問う。
「…これくらい、何でもない…」
 言葉とは裏腹に腕を掴む力が強まったが、昇はそれに気付けない。
 深藍の着物が赤黒く変色していく様を、天音の手が気付かせない。
 その間にも鈴の音色が広がり、その度に汚(けが)れた空気が浄化される。
 そして。
「………今後、同じようなことがあったら、次は容赦なく潰すよ?」
 大事な仲間をあれほどに傷付けられて、平気でいられる人間がどこに居ようか。
 柊一の怒りを買ったその異形は、ある意味哀れとでも言えるだろう。
 人一人殺そうとしただけで、自分が死ぬのだから。
「―――汝、其の花の咲かし人なり」
 たった一言の詠唱で、全てが終わった。
 そして、天音と昇の傍へと駆けてくる。
「……天音」
 厳かな言霊が響き、彼女を無意識に縛り付ける。
 柊一も昇も、もちろん天音も。彼らは、元々霊力が高い。故に、言霊が強く反応することも、稀ではない。
 小さく息を吐いた天音が押さえている場所を黙視し、柊一が言った。
「どうしたの? それ」
 問われた天音は、無言で己の腕を見た。もういっそのこと感覚が麻痺してくれれば楽なのにと、痛切に感じる天音である。
「…別に。これくらい、いつもの……―――っ!?」
 唐突に当てていた手を摑まれ、天音が表情を歪めた。
 血止めの役目を担っていたものが消え失せ、またそこから大量の血が流れ出る。
「……これは、いつものこととは言えない、よね?」
 鋭い眼光で睨まれ、天音が思わず視線を逸らした。どうも、彼のこの表情を見ると強く出られない。
「なぁ、天音」
 今まで黙っていた昇が、彼女の名を紡いだ。当人は視線だけを向けてくる。
「教えてくんねーか? お前がそこまで怯えてる、雅って人のこと」
 天音の肩が、びくりと飛び上がった。

23ピーチ:2012/11/18(日) 19:51:18 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
息抜きがてら登場人物紹介

神代天音(かみしろあまね)

二十歳。
178cmくらい

髪が恐ろしく長く(子供の頃から切ったことがない)昇に鬱陶しがられる。
なぜか髪が伸びるスピードが異様に速い。
他人のためなら危険を顧みずに突っ走り、後から色々お説教を喰らう人。


紅い鈴と扇を利用して、彷徨える魂を助けたり悪鬼怨霊魑魅魍魎(大袈裟)の始末をする。
立派に成人してるはずなのに身長高い高校生と間違われることもしばしば←おい
他人のことに関しては聡いくせに、自分の気持ちに恐ろしく鈍い。

「―――死にたくなければ余計なこと言うんじゃないわよ?」


天神柊一(あまかみしゅういち)

二十一歳。
183cmくらい。

肩よりも長い髪を後ろで無造作に括っている。
天音の幼馴染。
漆黒の鈴を利用して彷徨える魂を助ける。先祖のどっかで陰陽師が居たらしく、その血も色濃く継いでいる。


穏やかで、怒りっぽい天音(たまに)や昇を宥める。ある意味大変。
異形の血も継いでしまったらしく、本人が本気で護りたいと思ったときのみ、その力が発揮される。
柊一の先祖の誰かが強い霊力を持った人間霊を取り込んで以来、天神家の誰かが必ずその主を務めることになっており、現代主。

「誰が何と言おうが、これが俺だからなぁ…」


飛鳥井昇(あすかいしょう)

二十一歳。
182くらい。

肩につかない漆黒の癖がない髪。
幼い頃から異形を視ることができ、それを疎んで一時人間嫌いになった。(柊一が天然を発揮し無意識に改善させた)

神仏をその身に降ろすことができるが、甚大な力と時間を有するためにあまり好んで行うことはしない。(悪い時は終わったと同時に倒れるほど)
怒りっぽく、天音の言動などに怒って柊一に宥められる。

「俺が無能なわけじゃねぇからな! あくまでも二人が……!」

24ピーチ:2012/12/02(日) 00:49:23 HOST:EM114-51-218-65.pool.e-mobile.ne.jp
『第十四話・恐怖』

 ―――教えてくんねーか? お前がそこまで怯えてる、雅って人のこと
 無事家に帰ることが出来た天音の肩が、びくりと跳ね上がった。
「な…………っ」
 そんなことを知って、何になる。
 人の傷を抉って、何になる。
 言いかけた天音が、それをぐっと堪えた。と言うより、痛みに気を取られて声が出なかった。
「…お前がそれ話してつらくなるかもってことは、大体のことは見当つくよ。でもさ…」
「なん、で……」
「……え…?」
「分かってるなら何で聞こうとするの? 別に私じゃなくてもいいでしょう?」
 小さく震えている天音の声が、二人の耳に飛び込んでくる。それを聞いて、二人が同時に苦笑を漏らした。まさか、あの天音のこんな声を聴く羽目になろうとは。
「…柊から聞いて。今は、話したくない」
 そう言ってふいと顔を背ける彼女を見て、昇が薄く笑った。
「分かった。柊一に聞いとくから」
 答えない天音に背を向け、二人が天音の部屋を出ていく。
“…主様…”
「…ごめんなさい。弱いのよね、私」
 薄く笑ってそういった彼女に、夢月は慌てて言った。
“そっそうじゃないんです! ただ、わたしが力になれなくて……”
 力になれなくて、すみません。
 そう言った少女に、天音は薄く微笑みかける。
「ばか。そんなの、気にする必要ないわ」
 自分の周りの人間さえ平和でいてくれれば、それでいい。
 そんな呟きは、誰に聞こえることもなかった。

25ピーチ:2012/12/14(金) 23:34:40 HOST:EM1-114-162-231.pool.e-mobile.ne.jp
『第十五話・潜むモノ』

「おはよう」
「………何の用?」
 早朝から押しかけてくる幼馴染を半眼で睨め付け、天音が軽く嘆息した。
「いや、最近連絡なかったから、だからって断じてまさかまた厄介なことに巻き込まれてねぇよなあの厄介娘とか思って来たわけじゃねぇからな?」
「今思いっ切り本音出たわよね?」
 笑顔で言った天音に、柊一の後ろから顔を出した昇が肩を竦める。
「ま、まぁね。やっぱり心配だったんだよ、昇も俺も。母さんに話したら、やっぱり心配してたし」
「な…………っ!?」
 思いがけない言葉に、天音が絶句する。
 まさか、そんな無関係なことを親に話すわけがないと思っていた天音の思考は、綺麗に無視されたわけだ。
 話していない天音にも、もちろん非はあるのだが。
「なん、でそんなこと…っ」
 思わず噛み付いた天音に、柊一が笑みを浮かべながら言った。
「今度さ、また家に来てくれだって」
「……………」
 今度こそ諦めた天音をよそに、二人が話を進める。
「……で、例の件だけど」
 昇の言葉に、天音の表情が硬くなった。
「………聞いたでしょ? その通りだと思うわよ」
「まぁな。だからもうお前から無理に聞こうとは思わねぇけど」
 彼の言葉を受け、天音がほっと息を吐いた。
「だから、今日は忠告」
「え?」
「お前みたいに昔のことに引っ張られる奴ってさ、結構引き込まれやすいんだ。あの時の空間みたいに」
「………っ」
 正鵠を射ている昇の言葉に、さすがの天音も言葉に詰まる。確かに、自分はあの時引き込まれたのだと、一瞬でも自覚してしまったから。
 あの時の、あの異形の声。六年前の雅と、寸分違(たが)わなかった。
「ってわけで………おい天音? 聞いてるか?」
 すぐ傍で聞こえた声ではっと我に返り、勤めて冷静な対応を心がける。
「えぇ……とにかく、気を付ければいいんでしょう? だったら、寝なきゃいいだけよ」
「おい待てそれは、」
「でないと」
 どれほどに意識をしているつもりでも、どこまで全霊を注いでも。夢は偽りを話すことはないのだ。
 自分自身でさえ気付かないところで、いつそれが起こるやもしれない。
「そう思うと…嫌なの」
 あの時の女性が、段々と壊れていくようで、失ってしまいそうで、それがとてつもなく怖い。
「…分かった。じゃあさ、こうしない?」
 ―――天音が寝る前に、俺が夢違えの術を唱える。もしくは、悪夢祓いの祭文。
 柊一の言葉を聞いた天音が、さすがに色を失った。
「ちょ、何もそこまでしなくてもっ」
「でもさ、人って睡眠取らないといけないよね?」
「だよなぁ」
 柊一と昇の言葉に、天音がうっと言葉に詰まった。確かに、今この状況では柊一の発想も得心のいくものだ。だが。
「分かったわよ……寝るから。それでいいでしょ?」
 夢月も居るしね、と呟いた天音が、彼女の居る場所を見た。同時に、琥珀の髪を揺らめかせ、少女の風体をした夢月が現れる。
“わたしが居る限り、心配には及びません”
「そうだな。じゃあ安心だ」
 意地悪く笑った昇に、天音がぼそりと言った。
「―――……憶えてなさいよ」
「何でっ!?」
 一段低くなった彼女の声音に、昇が己の身を震わせた。

26ピーチ:2012/12/19(水) 23:44:27 HOST:EM49-252-8-230.pool.e-mobile.ne.jp
『第十六話・助言』

「と、とにかく俺は先に帰っとくからっ!」
 慌てながら彼女の家を飛び出した昇を半ば唖然と見つめ、柊一が苦笑気味に言った。
「とにかくさ、天音」
 穏やかな眼差しを受け、天音が小さく息を吐いた。
「何よ…」
「天音はさ、いつも無理とか我慢とか、しすぎなんだと思う」
 青年の言葉に、天音が目を瞠った。
「え…………?」
「いつもいつも、自分一人で抱え込もうとして。結果、俺らが何も知らないところで一人犠牲になろうとする」
 そう言った経験が実際に何度も何度もあったから、柊一があえて言うのだ。でなければ、彼がここまで口うるさく言うことはあまりない。
「もっと自分を出してもいいと思う、天音は。いつも一人で解決しようとするんじゃなくて、怖いときとか、呼んでよ、俺達のこと」
 優しげに紡がれた言葉に、天音が呆然と幼馴染を見上げる。
「―――っ……分かった。なるべくそうする」
 うんと頷いた柊一が、俺も帰るからと言い残して彼女の家を後にした。


“主様”
 唐突に聞こえた声に驚くこともなく、天音が背後を顧みた。
 そのときに、彼女の闇を秘めた長い髪がさらりと揺れた。
「どうかした?」
 主の問いに、しかし夢月は小さく頭(かぶり)を振った。
“………何でも、ないです”


 ―――毎晩のように、見る夢がある。
 熱いと叫んでいる、一人の女性。
 炎の中心に一人置き去られ。
「―――っ…………!」
 声もなく飛び上がった天音は、衝撃のせいで冷たくなった指先にふっと息を吹きかけた。
「……みやび、さん…」
 夢に出た女性の名を、ぽつりと呟き。
 ふと、全身がびくりと震え上がった。
「…え―――……?」
 何かの気配が、ある。普通の異形などとは比べ物にならないほど、彼女が怯える“妖気”にも似た何か。
「―――あ………、」
 声が、出ない。
 まるで恐ろしいものでも見たかのように、そんなかすれた声しか出なかった。
 ―――何で、生きてるの…?
 ―――怖いときととか、呼んでよ、俺達のこと。
 そう言った穏やかな青年を思い浮かべ、天音がひくりと喉を引き攣らせた。
「し……っ!」
 ―――私は死んだ。なのに、なぜ貴方だけ―――……
「柊――――――っ!!」
 掠れた悲鳴が、彼女の頭の中で幾重にも反響した。

27匿名希望:2012/12/20(木) 16:25:02 HOST:zaq31fa5428.zaq.ne.jp
面白いなあんた

28匿名希望:2012/12/20(木) 16:25:41 HOST:zaq31fa5428.zaq.ne.jp
祖父とカードダス
スレッドも宜しくお願いします。
こちらは実話です

29ピーチ:2012/12/29(土) 23:52:15 HOST:EM114-51-188-209.pool.e-mobile.ne.jp
『第十七話・響き』

 不意に、柊一が立ち止まった。
 今、何かが聞こえた。
「あま………ね…?」
 今聞こえた声や呼称は、確かに彼女のものだ。
「まさか……」
 また、何かあったのか。
「くそ……っ」
 来た道を、柊一は慌てて引き返した。




 ―――私は、貴方のせいで死んだ。
 ―――貴方に突き飛ばされて、私は死んだの。
「……え…?」
 突き飛ばした? 自分が?
 そんな天音の思考を見透かすかのように、彼女が嗤(わら)った。
 ―――そう。貴方が私を突き飛ばした。あの、炎の中に。
「そん、な…こと……っ」
 喉に力が入らないせいで、声がうまく出てこない。
 本当に、自分が彼女を?
「私……は…」
 紅い炎が、一瞬視界の隅に映った。
 その記憶が掘り起こされ、無意識に身体が竦む。
「……姿を、現しなさいよ」
 ―――……その報い、その身を以て贖うがいい。
 彼女の言葉とほぼ同時。今までの口調が一変し、二人の周りを紅い炎が取り囲む。
「――――――っ……!」
 血の気を失う天音を嘲るかのように、彼女が笑った。
 ―――一緒に行きましょう?
「………あ…」
 この笑みは。穏やかな、この声は。
「雅さ…」
「騙されるな!」
 突如として聞こえた声に、天音がはっと背後を顧みた。

30ピーチ:2012/12/31(月) 15:43:04 HOST:EM114-51-4-198.pool.e-mobile.ne.jp
『第十八話・荒魂(あらみたま)』

 突如聞こえた声に、天音が振り返る。
「柊………?」
「お久しぶりですね。……雅さん」
 彼の言葉に、天音がびくっと肩を震わせた。
 ―――天神、さん……?
「でも、天音はそんなことしない。……相手のために、ならなかったら」
 そう言って、柊一が穏やかに言う。
「それに、雅さんだってもう分かっているでしょう? …自分が後悔していることを」
 柊一の言葉に、彼女が目を見開く。
「でなければこんなことできない。そうじゃありませんか?」
 それに、と彼が言いかけた直後。
「恐らく、天音の代わりに自分が飛び込んだんだ。…そんなとこだろ」
「―――え…?」
 突然聞こえたぶっきらぼうな声に、二人の声が重なった。
「まぁ俺は実際に居たわけじゃねぇから、完全な想像だけど」
 少なくとも、彼女が自らの意志で人を殺そうなどと、するはずがない。
「え、えーと………何で、ここに?」
「偶然お前の声が聞こえた気がしたから」
 そう言って天音を見やる昇が、億劫そうに呟いた。
「…あんたさ、そういった勝手な理由だけで俺らの仲間連れて行こうとかしないでくれません?」
 年上の人間に対しての礼儀を弁(わきま)えているのかそうでないのか、思わず苦笑した柊一である。
 ―――……っ、私は、彼女に突き飛ばされて―――
「違う」
 穏やかだが、反論を許さない声音。
 柊一が、すっと彼女を見据えた。
「天音はそんなこと、絶対にしない」
 ―――………っ!
「…雅さん、何でこんなこと………」
 柊一の言葉に、雅が震える声で言った。

31ムツ:2013/01/03(木) 18:37:23 HOST:softbank220024115211.bbtec.net

 ピーチ》

 読みましたぁ――……

 イヤァァ〜……もう何か………唖然…

 面白すぎた…。 

 ヤバイな、この話… 

 そして、フト思ったけど天音ちゃんと緋織ちゃん性格似てるな……(勝手な憶測…

32ピーチ:2013/01/03(木) 19:20:23 HOST:EM49-252-66-115.pool.e-mobile.ne.jp
ムツ>>

さんきゅー!

面白くなさすぎるよねうん!

天音と緋織? 似てるかなー…

どっちかってと、天音は冷酷無慈悲、緋織はそこそこに優しさある方だと思ったんだけど←

33ムツ:2013/01/03(木) 19:59:22 HOST:softbank220024115211.bbtec.net

 ピーチ》

 イヤイヤ! ピーチって良く、自分の小説に駄文とかケチつけてるけど、

 全然そんなことないよっ!!!

 もうちょっと、自分の小説に自信を持とう\(*⌒0⌒)♪!

 そして、天音ちゃんは冷酷っていっても優しさを込めてる感じがあるんだよねェ〜

 他にも柊一君はお兄さんみたいだし、昇君は近所の優しい大学生って感じがある(´∀`*)

34ピーチ:2013/01/03(木) 20:44:59 HOST:EM49-252-66-115.pool.e-mobile.ne.jp
ムツ>>

そ、そう言ってもらえるととってもありがたい!←

天音はどっちかってと見えない優しさだねw

35ムツ:2013/01/03(木) 20:53:00 HOST:softbank220024115211.bbtec.net

 ピーチ》

 そうそう( ゚ー゚)コクン

 主人公が女の子って場合は、大体優しさを隠してたりするよね

 男の子だったら、大体は取り柄はないけど強く優しいってのがお決まりだよねぇ

 だが、逆にそれが良い!!←(独り言ってレベルじゃない…

36ピーチ:2013/01/03(木) 21:20:16 HOST:EM49-252-66-115.pool.e-mobile.ne.jp
ムツ>>

だーよねー! やっぱりねー!

…………あたしが今頑張ってる恋愛小説のキャラ、主人公女だけどめっちゃ優しいよ……?

37匿名希望:2013/01/04(金) 01:54:05 HOST:zaq31fa4b53.zaq.ne.jp
小説が多いですね〜ここは

さて・・ウンコでもしましょうかね〜
ババがたまって仕方ないです。

38ううい:2013/01/10(木) 17:31:27 HOST:softbank126068237124.bbtec.net
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あなたが回してくれるのを信じてい ます

39ううい:2013/01/10(木) 17:31:40 HOST:softbank126068237124.bbtec.net
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40ううい:2013/01/10(木) 17:31:53 HOST:softbank126068237124.bbtec.net
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41ナコード:2013/02/16(土) 13:43:30 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 >>37
 何が言いたいんですか?

 >>38>>40
 同感ですが、作者様にプレッシァーを掛けるような事は控えて下さい

42ピーチ:2013/03/26(火) 10:29:45 HOST:EM49-252-215-139.pool.e-mobile.ne.jp
『第十九話・』




 ―――分からないんです……
「……え?」
 突然の彼女の言葉に、柊一と昇が問い返す。
 天音は青ざめた表情で震え、柊一に庇われる形になっていた。
 ―――気付いたら、此処に居て…それより前のことは、何も思い出せなくて………っ
 ただ、声が聞こえた。
 神代天音に全てを押し付ければいい、と。そうすれば、自分が元居た世界に戻れると。
 青年の瞳が大きく見開かれる。
 ―――最初は、嫌だって言ったんです。でも……
「“それ”は、貴方の答えを許さなかった」
 突如聞こえた声に、三対の目が集中した。焦点が定まっていない少女の唇から、更に言葉が紡がれる。
「恐らくそれは、人を意のままに操り、結果して周りを滅ぼすもの……」
 そんな彼女の肩を、誰かの腕が掴んだ。
 鋭利な声が耳朶を打つ。
「天音!」
 柊一の声に反応を示す様子もなく、少女は更に続ける。
「人の心を弄び、その身を喰らうものが居る……雅さんは、その身が残っていないから」
 だから、彼女を利用しようとした。
 利用して天音を狙い、次に柊一たちを。
 彼女の言葉を聞いていた柊一たちの表情が、段々と強張っていく。
「まさか、それ……」
 言い澱んだ柊一を遮り、天音がぼそりと言った。
「―――傲郎(ごうろう)」
 刹那。
 突然、辺りが真っ赤に染まった。
「――――――っ…………!」
 見る見るうちに恐怖に彩られた少女の瞳が、ふっと隠された。
「…っ!? 天音!?」
 思わず叫んだ昇の傍で、不気味な声が聞こえた。
 ―――そこに居るか……
「……え…?」
 今の声は。此処に居る誰のものでもない。
 つまり。
 ―――霊力の高い者が居る…飛び抜けて高い者がな……
 嬉しそうに嗤った気配を感じ、無意識に昇の背筋に戦慄が走った。
 ―――その娘、我へ渡せ…
「冗談じゃ……っ」
 昇が言い返そうとした直後、二人の周りに薄い黒みがかった膜が張られた。
「…あ……」
「昇!」
 親友の声に、昇がそちらを向く。
「多分長くは持たないだろうから、その時は天音を頼んだよ!」
「……はぁっ!?」
 ちょっと待てこれだけの結界が長く持たないだと。
 思わず頭を抱えた昇だが、そうばかりもしていられない。相手はこちらの都合など、慮(おもんぱか)ってはくれないのだから。
「っそ……」
 小さく舌打ちした青年が、右腕を空に突き上げた。同時に、彼の身体が淡い光に包まれる。
 まるで彼を守るかのような光が消え去ると、昇の手に先ほどまではなかったものがあった。





 ―――人間如きが、小癪な真似を……っ!
 ふと怒号したそれ―――傲郎の爪が、柊一の腕を僅かに掠めた。
 青年の腕に紅いものが滲む。
「小癪な真似で悪かったな」
 微かな怒りを孕んだ青年の声音が耳朶を打った。温厚な彼らしくない不穏な声を漏らす柊一に、傲郎は嘲るように嗤う。
 ―――我は、あの娘さえ手に入ればそれでいい。
 それ以外など、何の足しにもならないだろうから。
 それを聞いた柊一の口端が、微かに吊り上った。
「そっか。……でもさ」
 りん―――
 高々と響いた鈴の音(ね)に、傲郎が動きを止める。
 ―――な…っ
「縛り給(たま)え補い給え与え給え護り給え」
 青年の鋭利な声が、妖の耳に届く。
「揺れぬ水面(みなも)が如く、流れる水が如く、激しき焔(ほのお)が如く」
 方法は違うが、みな浄化を表すものたち。
「水で流し、炎で焼き払うが如くして」
 柊一の黒曜の瞳が少しだけ細められた。
「―――罪という名の煉獄を、払い給え」
 彼の言葉が最後まで紡がれた瞬間。
 ―――紅い炎が、傲郎を取り巻いた。

43ピーチ:2013/03/29(金) 23:05:11 HOST:EM114-51-148-105.pool.e-mobile.ne.jp
『第十話・傲郎』




 醜い妖の、引き攣った悲鳴が響き渡った。
 ―――おのれ、おのれぇぇぇぇぇぇ!!
「うっわぁ……うるせぇ…」
 天音を背後に庇った昇が、迷惑そうに耳を塞ぐ。
 幸い、まだ柊一の織り成した結界は効果を発揮している。今なら間に合う。
「……わりぃけどさ」
 黒みがかった結界の外に飛び出し、青年は月光を映し出した剣を振りかぶった。
 瞬間。
 猿と蟹を掛け合わせたような大きな図体が二つ三つに切り裂かれる。
 ―――おのれ……許さぬぞ…っ!!
 傲郎の最後の言葉を遮るかのように、青年の持つ剣が飛沫を上げた。
 一瞬だけ狂気に歪んだ端整な面持ちが、親友の姿を捕える。
「……柊一」
「大丈夫?」
「あぁ」
 彼の答えを聞いて、柊一がほっと息を吐く。
 だが、すぐに結界の中に居る少女を見た。
「天音は?」
 やはり、と昇が苦く笑う。
 自分がどれほどの怪我を追っても、彼は周りを気にするのだ。
 天音と、昇を。
「天音も大丈夫だよ。ただ…」
 青年の言わんとするところを理解したのだろう、柊一がそれを遮った。
「精神的には、俺たちにはどうしようもない」
 それは、彼女の記憶が、心が、悲鳴を上げなくなるまで、待つしかない。
 無理に平静を保たせようとすると、その均衡が崩れる。
「それだけは避けないと、ね……」
 柊一の言葉を受け、昇が天音を見た。
 先ほど、かろうじて受け止めた少女。
 彼女の年齢にしては異常なまでに軽かった体重。
「…なぁ、柊一」
 昇の呼びかけに、柊一が彼に視線を投げる。
「こいつ、……ちゃんと食ってるか?」
「あっはは、さぁねぇ」
 そ知らぬ様子であさっての方を見ている彼に、昇がじとっと睨み付ける。
「お前なんか知ってんのかよ?」
「えーっと…ま、知らない方がいいよ?」
 妖気を感じられないという安堵からか、二人の気が僅かに緩んだ。
「……うん、まぁ、ろくに食べてない…けど」
 先日無理に食べさせようとしたところ、最早見事としか言いようのないほど罵声を浴びせられ、結局家から追い出されたらしい。
「…そりゃかわいそーに」
 思わず本気で呟いた昇である。
 あの天音の罵声ともなれば相当だろう。しかもそれを受けたのが柊一だ。
「お前がねぇ…」
「俺だからって理由もあり得るけどね」
 彼が苦笑気味に言った後、少女の瞼が微かに揺れた。
 はっとした柊一が囲いを解く。
「……あま、ね?」
 小さく呟いた彼の言葉に呼応するかのように、天音がゆるゆると目を開けた。
「柊……」
 焦点の定まっていない彼女の瞳を見て、柊一の手に不自然な力がこもる。
「大丈夫?」
「大丈夫か?」
 二人の問いに、天音が小さく頷いた。
「…私」
 自嘲気味に、少女が呟いた。
「結局まだ、吹っ切れてなかったのね」
 それだけならまだいいが、柊一たちに迷惑をかけることになろうとは。
「仕方ねーだろ?」
 ぶっきらぼうな声が、少女の耳に入った。
「お前だけじゃねぇよ。もしかしたら俺だってお前の立場になるかも知れないし、柊一なんていつでもなれる」
 彼の言葉に、天音がはっと柊一を顧みた。
 穏やかさを思わせる瞳の奥に、一瞬だけ別の色が映る。
「そうだよ。多分、俺が一番天音に近い」
 そう言って薄く笑った青年が、踵を返した。

44ピーチ:2013/04/01(月) 23:23:55 HOST:EM114-51-206-242.pool.e-mobile.ne.jp
『第十一話・』







「天音、居る?」
「えぇ」
「入るぞー」
 返事がないときは大抵は居るなという意思表示なのだが、返事があるということは、さして問題はないということだ。
 そう結論付けて、二人が襖を開ける。
「あれ?」
 部屋に入って、柊一が思わずと言ったように声を上げた。
「どっか行くの?」
 女性の部屋とは思えないほど質素な部屋は、彼女がよく愛用している着物に溶け込んでいる和室だ。その隅で、天音が何やら作業をしていた。
 その手元に小さなバックが見える。
「天音、バックなんて持ってたっけ?」
「この前買わされたのよ。おばあちゃんにね」
 今では感謝してるけど、と呟く彼女に、昇が問う。
「どっか行くのか?」
「えぇ、ちょっとね。しばらく家を空けるわ」
「へぇ?」
 興味深そうに返した昇に、天音がぼそりと呟く。
「昇だったら忘れて堂々と入って来そうだけど……」
 そうなったら不法侵入として訴えてやってもいいだろう。
「お前俺のこと何だと思ってるわけっ!?」
「幼馴染の友人」
「……うわひでぇ」
 わざとらしく肩を落とす青年を、彼女はあっさりと切り捨てて。
「どこに?」
 問われた質問に答えた。
「宮崎まで」
「は?」
 二人の声が重なる。
「な、何で宮崎?」
「ちょっとね」
「…あぁ……」
 驚いたように目を見開く昇とは対照的に、柊一はどこか納得したように。
「雅さんに会いに行くんだ?」
「……えぇ」
 淡く微笑んだ彼女の言葉に、昇があぁと頷いた。
「なるほどなー…」
「だったらさ」
 柊一が天音に言った。
「俺も、ご一緒させてもらっていいかな?」
 天音が驚いたように目を見開く。
 やがて、小さく息を吐いて。
「別に、構わないわよ」
 そう、答えた。
「昇はどうする?」
「いや、俺はパス」
 青年の言葉にそうと返し、天音は再び視線を下に落とす。
 しばらく無言が続いた後、天音が言った。
「―――…する、から」
「……え?」
「もう、終わりにするから」
 引きずらない。そう心に誓った。
 自分のためにも、彼女のためにも。
「忘れはしないけど、それでも引きずりはしない」
 そう言った天音に、柊一は穏やかにうんと返した。

45たっくん:2013/04/02(火) 01:04:00 HOST:zaq31fa52d6.zaq.ne.jp
単刀直入に申し上げますが
貴方達に白人女性写真集およびドラゴンボールフィギュアを
買わせます。

名無しさん
それではまた
サイフに小銭用意して待っておいて下さい。

ここの連中はいつも人に迷惑ばかりかけてるから
たまには役に立って欲しいものだ

ついでに当スレの主さんの金で
立ち食いうどんでも食いに行きましょう。

46たっくん:2013/04/02(火) 01:05:07 HOST:zaq31fa52d6.zaq.ne.jp
本当はステーキが食いたいのですが
うどんで我慢します。

47ピーチ:2013/04/21(日) 00:11:09 HOST:EM49-252-202-34.pool.e-mobile.ne.jp







 ―――ありがとう。
 彼女が居るあの場所で、最後に聞こえたあの声。
 どういう意味のありがとうなのかはよく分からないが、あの声は彼女のものだった。
「……毎年来てたんだって? 何で教えてくれなかったの?」
 柊一の言葉に、天音が小さく苦笑する。
「別に。あのときは、私のせいだとしか思ってなかったから」
 でも、これで吹っ切れた。
 彼女の本当の心が分かったから、もう大丈夫だ。
「……さよなら。雅さん」
 これで、本当に。
 風に溶けた天音の言葉に、彼女が薄く微笑んだ気がした。






「ただいま」
 唐突に聞こえた声に、居間の方からぱたぱたと音がした。
「あら? 柊一、いつ帰ってきたの?」
「今だってば」
 苦笑を零す青年に、彼女―――天川悠莉(あまかわゆうり)が笑う。
「それは分かってるわよ。帰りは明日って聞いてたけど?」
「うん。でも結局は天音に合わせてただけだし、俺は別に早くなっても遅くなっても構わなかったよ?」
 柊一の言葉に、悠莉が驚いたように黒曜の瞳を丸めた。
「ちょっと柊、まさか全部天音ちゃん任せだったなんて言わないでよ」
「え? そうだけど?」
 雅さんには悪いことしたから謝っておきたかったけどそれ以外は完全に遊びだったし。
 彼の言葉に、悠莉が呆れたように息を吐いた。
「あのねぇ……」
「…とりあえず母さん? 俺寝たいんだけど」
 駄目かなーと苦笑する息子の身体を見て、彼女がまたかと肩を落とす。
 何度言っても聞かないのだから、いまさらと言うものだろう。だが。
「少しは、自分の身体くらい大切にしなさいよ…」
 毎回毎回、どこか遠出するたびに傷だらけになって帰ってくる彼に、悠莉は半ば感嘆する。
「いや、一応気を付けてはいたけどね?」
 結局は、感付かれて襲われるのだろう。今頃天音も傷だらけなのかと思うと、彼女は柊一以上に天音の傷の方が気になる。
「まぁ、寝たいなら寝てなさい。後で何か軽食作っておくから」
「あー…うん、そうする」
 言いながら部屋の襖を閉めた彼を見て、彼女は深い深いため息を吐いた。

48ピーチ:2013/05/12(日) 01:23:50 HOST:EM1-114-203-209.pool.e-mobile.ne.jp







「…………あ、れ…?」
 どこだ、此処は。
 確か、家に帰ってからすぐに横になったはずなのだが。姉の話によると、半分倒れていたようだが。
「…夢じゃ、ないよな」
 分かっているのだが一応、確認のためだ。自分の腕を軽くつまんでみる。痛い。
 やはり夢じゃない。なら此処はどこだ。
「ようこそ。……親しき者を亡くす、人間」
 唐突に響いた声に、昇が目を見開いた。
 背筋を冷たいものが駆け降りる。
「なん……っ」
「お前は、親しきを亡くすもの。……親しき人間のせいで、な…」
 くつくつと嗤う声は、どこから聞こえているのか分からないほどに四方八方から響き、青年の頭に直接届く。
「…親しきを、亡くす……?」
「そう。お前は亡くしている」
 声はやがて、嘲りを含んだものに変わり。
「お前の父、優羽(ゆう)を殺した人間、教えてやろうか」
 姿を現さないそれの言葉に乗るほど、昇は単純ではない。
「父さんを? それくらい知ってるさ」
 殺したのは妖。自分が生まれる前だったらしいからよく知らないが、それでも悲惨だったと聞いた。
「違うよ」
 声が笑い、辺りに木霊する。
「教えてあげよう。………真実を、ね…」

49日陰:2013/05/12(日) 08:22:58 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 ピーチ>>

 すげぇ、続きが気になるし
 
 すげぇ、ドキドキするんだけど……?

 この胸の高なりは私だけだろうか……?

50りさ:2013/05/12(日) 17:11:44 HOST:p23028-ipngn501hiraide.tochigi.ocn.ne.jp
あああああああ

51ピーチ:2013/05/12(日) 17:51:35 HOST:EM114-51-2-127.pool.e-mobile.ne.jp
日陰>>

こんな駄文が!?

でもまぁ気になってくれるならよかったです←

りささん>>

ど、どうかしたんですか……?

52ピーチ:2013/05/12(日) 19:19:11 HOST:em1-115-44-68.pool.e-mobile.ne.jp







「教えてあげよう。………真実を、ね…」
「……真実?」
 訝しげに問い返す青年の背には、まるで警戒が見えるようで。
「そう。君の父の本当の死の原因、それは」
 笑みを含んだ声は、こう告げた。
「―――天神、柊一」
「―――……え…?」
「そう」
 その言葉を完全に聞き終わる前に、彼の背後に気配が生じた。
「………っ!?」
 反射的に振り返る。そこに、居たのは。
「…おん、な……?」
 言葉遣いや口調からして、男だとばかり思っていた。
 でも、実際目の前に居るのは、短い赤茶の髪が印象的な少女で。
 いや、違う。
「……っ…」
 もう一人、居る。
「分かったでしょう? 彼は、貴方の親友が殺した」
「…なに、言ってんの?」
 馬鹿馬鹿しいとばかりに肩を竦め、呆れたような笑みを浮かべた。
「柊一は俺と同い年なんだぞ? 俺が生まれる前なのに、あいつが父さんを殺せるわけ……」
「貴方と彼、誕生日が早いのは?」
「え?」
 唐突に問われた質問に、青年が僅かに目を見開く。
 確か、早かったのは柊一のはずだ。
 彼の心中を見透かしたかのように、少女が笑った。
「彼でしょう? ……これで、私たちの言いたいこと、分かってもらえた?」
 彼らの、言いたいこと。
 分かっている。ただ、どうしても理解できない。
 嘘だと思えば思うほど、その思考に囚われる。
 それを見た少女が、止めを刺すように言った。
「―――…彼の存在が認められた瞬間から、彼は貴方の家族に害を為す生き物となっていたのよ」
 頭を何かで殴られたような、そんな鈍い痛みが、彼の全身に広がったように錯覚した。
「うそ……だ…」
「嘘じゃないわ、彼が飛鳥井優羽を殺した」
「や、め…ろ……」
「そして、今平然と貴方に近付いてる」
「やめろっつってんだよ!!」
 両耳を押さえて膝を付いた昇に、再び声が聞こえた。
「君のその恨み、僕たちで晴らしてあげよう」
「……え…」
 呟いた直後に襲ってきた闇に、青年が呑まれた。

53ピーチ:2013/05/13(月) 07:02:37 HOST:em1-114-70-244.pool.e-mobile.ne.jp







「もしもし?」
 先ほどからうるさいくらいに鳴っていた携帯を取り出して、柊一が通話に出る。
『柊一か?』
「うん、ってどこ居るんだよ!?」
 突然消えたということを昇の姉から聞いて、天音たちも探していたというのに。
『ちょっとさ、話があるんだ』
 柊一の言葉に何も返さず、彼は淡々とした口調で。
「話?」
 昇の言葉を反復し、問い返す。
『あぁ。できれば、天音は居ない方がいいかも』
 天音のことで話があるから、という彼の言葉に、柊一が頷いた。
「分かった。どこに行けばいい?」
『飯村(いいむら)小』
「は?」
 ちょっと待て。それは確か詩文たちが通っていた小学校じゃ。
 言いかけて、それを留める。確か、飯村小は。
「何年か前に廃校になったんだっけ」
『あぁ。天音が気付くとは思いにくいからな』
「分かった」






「天音が気付くとは思いにくいからな」
『分かった』
 そこで通話を切った青年が、僅かに口端を吊り上げた。
「天音が気付くわけ、ねぇからな…………?」
 残忍な笑みを浮かべた彼が、もたれていた壁から背を離した。

54たっくん:2013/05/13(月) 18:16:38 HOST:zaq31fa543a.zaq.ne.jp
::

55たっくん:2013/05/13(月) 18:22:21 HOST:zaq31fa543a.zaq.ne.jp
くだらん事書くなアホ
とっとと消えろカス

56ピーチ:2013/05/20(月) 04:39:48 HOST:EM114-51-161-194.pool.e-mobile.ne.jp







 うるさいほどに鳴り響いていた携帯の着信にやっとのことで気付き、天音が携帯を取り出す。
「もしもし?」
 瞬間、少女の背筋を、冷たいものが駆け降りた。
『よぉ、天音』
 嘲りを含んだような青年―――昇の言葉に、天音が声を発する前に。
『柊一ってさ、意外と弱いよな』
「…え?」
 唐突な言葉に天音が問い返す。
 それに対しての返答はなく、昇が笑った。
『今俺たちさ、飯村小に居るんだ』
「……飯村小?」
『そ。んで今は、柊一が終わったとこなんだよ』
「何…が……」
 呆然と返す少女に、彼は笑って。
『それは教えねぇよ。お前が此処に来るなら、話は別だけど?』
 何が、と問う前に、僅かに離れた場所からだろう幼馴染の声が聞こえた。
『駄目だ天音、来るな!! ……っ………!?』
「柊!?」
 途中で途切れた柊一の言葉を遮り、昇が言った。
『とにかく。柊一が死んでもいいなら、今こいつが言ったみたいに逃げてもいいけど』
 じゃ、行動でのいい返事待ってるから。
 そうとだけ言い残し、通話が切れた。
 無情な機械音だけが取り残される。
「……柊、何が…」
 二人の身に、何があったのか。
 今は、飯村小に居ると言っていた。
 なら。
 真実を確かめるために、彼女の起こす行動は一つだけ。
 闇を秘めた黒曜の瞳に明らかな焦燥の色を宿し、少女が地を蹴った。






「余計なことを……って思ったけど」
 壁に張り付けられたように身動き一つ取らない青年の目線に合わせようと膝を折り、昇が残忍に嗤った。
「案外、お前を助けるためだけに飛んできそうだな?」
 仲間意識の強い彼女なら、あり得ないことではない。
 だがそうなってくると、昇のことを助けるために来ることとてあり得るのだ。
「昇……何で…」
 青年の持つ力の波長が、明らかに合わない。
 彼の力は馴染みやすく、誰とでも簡単に合わせることのできるはずなのに。
 それに、昇は柊一や天音とは違い、二人以上に秀でた異能は持っていないはずだ。
 だから、彼が腕一本で柊一をここまで追い詰めたのなら分かる。
 でも、実際は。
「その能力……どうやって…」
 荒い呼吸を繰り返しながら、柊一が問うた。
 その問いに、昇は軽やかに笑う。
「これ? もらったんだよ」
 その次の言葉に、さすがに柊一が息を呑んだ。
「―――お前を、葬るためにな」
 柊一の表情を見た青年が、声もなく嗤った。

57ピーチ:2013/05/22(水) 06:02:21 HOST:EM114-51-142-187.pool.e-mobile.ne.jp







 術が解かれ動けるようになった柊一が僅かによろめいた直後、昇が呟く。
「俺さぁ、『あいつ』に聞いたんだよね」
 まるで歌い慣れた歌を口ずさむような、そんな何でもない口調で、彼は言った。
「―――柊一の存在そのものが、父さんを殺したって」
 青年の瞳が大きく見開かれる。
「………え…?」
「だから、今言ったろ? 父さん殺したの、お前なんだってさ」
 さも当然と言う風に言ってのけた昇が、その後あぁと呟いた。
「お前が死ぬ代わりに、一葉(かずは)が死んだのかもな」
「………っ………!」
 どくんと、心臓が跳ね上がる。
 あらわしようのない感情が渦巻き、呼吸さえもままならなくなる。
 そんな柊一を、昇は静かに見据えた。
 何の感情も籠(こも)らない、硝子玉のような瞳で。
「……なぁ、もう分かったろ? 自分がどれだけ他人に迷惑かけたか」
 そう言って、彼は再び笑った。
「何(いず)れは、天音たちにまで害が廻るかもな」
 刹那。
 突然、昇の拳が柊一の腹部に食い込んだ。
 あまりに突拍子なことに、彼が抵抗する前に意識が遠退く方が早かった。
 そのままゆっくりと頽(くずお)れる。
 そんな柊一を、昇が支えた。
「……さて」
 昇が呟いた、直後。
「―――汝、夢を見ん華が如く」
 平静を保とうとするような妙に落ち着いた声が、青年の耳に届いた。
「柊!?」
 叫んだ天音が、次に昇を見て。
「……何で、こんなこと」
「いや? 俺だって、こんなこと知らなきゃ良かったって思うよ」
 おどけたように肩を竦め、少女に残忍な笑みを向ける。
「柊一の存在が、俺の父さんや一葉を殺したんだろうってこと」
「―――……え?」
「だから、簡単に言えば柊一は災厄なんだって」
 青年の言葉を聞いた天音の見開かれた瞳が、驚愕の色に染まった。

58【下平】:2013/05/22(水) 13:33:04 HOST:ntfkok190202.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
【キュアピーチ】

59たっくん:2013/05/26(日) 00:54:44 HOST:zaq31fa58c8.zaq.ne.jp
ピーチさん
単刀直入に申し上げます。

貴方・・坂田利夫に似ていますね。
というわけで歌います。

     【替え歌メドレー】

ピーチさんの、ゆ目に耳、口、鼻、胸、腹、ケツ、足、マユゲ
恋人はピーチ♪オースマンピーチ
アホからやって来た〜

エビフリャミソチン藤山会社
チンポを蹴られて ヤーヤーヤー♪
ヤーレンソーレン中国ネヴァールインドにビルマ タイタイ♪

ピーチさんのアソコに吸い込まれ
いったいどうすりゃいいのさ〜♪
本当にもう離しておくれよ〜♪

チンチン♪シコってやれよ〜♪
チンチン♪どこまでも♪

人気もあった〜
テレビにも出た〜
だけど世間は冷たいものさ〜

60たっくん:2013/05/26(日) 00:56:07 HOST:zaq31fa58c8.zaq.ne.jp
アホ♪アホ♪アホのピーチ

坂田利おと嘉門達夫のダブルバージョンでお送りしました。
それでは

そういえばバカボンのパパと嘉門達夫って関連あるんでしょうかね〜
教えて下さい。

61ピーチ:2013/06/02(日) 18:56:36 HOST:em114-51-132-215.pool.e-mobile.ne.jp







「お前だって、この話聞いたら俺の行動にも納得がいくさ」
 そう言って笑った青年は、その次に柊一の首筋に刀を添えて。
「一応、お前のためでもある。…一番はやっぱり、自分のためだけどな」
 そう言ってゆっくりと刀を引き、彼は笑った。
「とんでもなく、弱いよな」
 まるで、昇に隙を見せたことを責めるかのような口調で、彼は呟く。
「弱いくせに他人の命を奪う。………最低な奴だよ、柊一は」
「昇……」
「なぁ、柊一」
 天音の言葉を遮り、彼は柊一に語りかけるように言った。
「―――お前の存在が、父さんを殺したんだってさ」
 冷徹な瞳に宿った、冷たく昏い光。
 それを認めた天音が、知らずに足を引いていた。
 それを見て、昇が笑う。
「どうしたんだよ、天音? 俺たちは、仲間だろ?」
 笑って彼女に歩み寄ろうとして、
「………来ない、で」
 少女の言葉に、立ち止まった。
「来ないで。私は貴方を知らない」
 こんな昇は、知らない。
 胸中でそう呟き、彼女は静かに言った。
「―――貴方は、昇じゃない」
 天音の言葉に、昇が驚いたように目を瞠る。
 しかし、しばらくしてから、やがて笑い出して。
「傑作だよ、天音」
 そう言って、彼女の肩に手を置いた。
 無言でそれを払いのけ、彼女は青年との距離を取る。
「お前は何も分かってない」
「分かってないのは、どっちよ」
 天音が言った直後。
“主様!”
 突然、少女を思わせる声が響いた。
 それを聞き止めた昇が、小さく舌打ちして。
「じゃあな、天音。それから柊一によーく聞かせとけ」
 昇がそう言って、柊一に視線をくれる。
「罪の意識があるなら、その手で自らを制せ。ってな」
 そう言って、彼は今度こそ姿をくらませた。
「あ……っ」
“主様、どうされました!?”
 声の主、夢月の言葉に嘆息して、彼女は何でもないと返す。
 だが、彼女になら話してもいいかと考えを改めた。
「…あのね………」






 金の髪を揺らした少女の言葉を受け、彼女は小さく笑った。
「そう……それは大変なことになったわねぇ…」
 そう呟いて、彼女は。
「…なら、そろそろかしらねぇ……」
“……どうする、つもりなんですか”
 少女―――夢月の言葉に、夜空は笑って。
「そろそろ、みんなだってあの子の活躍を認めたころでしょうよ。送るから、あくまでも知らないふりを通してね」
 悪戯っぽく微笑んだ老女は、黄泉と夢との狭間を管理する精霊に向かって人差し指を立てた。
 彼女の言葉に、少女が呆れたように息を吐いた。
“……分かり、ました”

62ピーチ:2013/06/03(月) 02:42:08 HOST:em49-252-192-224.pool.e-mobile.ne.jp







 声が、聞こえた。
 まるで、もう二度と、この手が届かないような。
「……………っ……」
「大丈夫?」
 小さく呻いて頭を押さえた柊一を見て、天音が問う。
「……あま、ね…?」
 なぜ、彼女が此処に居る。
 それ以前に、そもそもここはどこだ。
 困惑が表情に表れていたのか、天音が小さく息を吐いた。
 そして、彼が此処に運ばれるまでの経緯を話し出す。
 それを聞いていた柊一が、唐突に天音の両肩を掴んだ。
「え?」
 さすがに驚いたように目を見開く天音に構わず、柊一が彼女に問う。
「昇、何か言ってなかった?」
「何か、って……?」
「………裏切り者、とか」
 びくっと少女の両肩が跳ね上がった。
 その反応を見た柊一が、やっぱりかと小さく笑う。
「何を言ってたのか、教えてくれないかな」
 幼子を諭すような口調で、彼は天音に言った。
「……私、は…」
 あんな言葉、繰り返したくない。
 ―――お前の存在が………
「天音」
「私は」
「何でもいい。昇が言ってたこと、教えてくれないかな」
 彼は。
 既に、自分の想像以上の傷を負わされたはずなのに。
「………お前の存在が、父さんを殺したんだってさ」
 否を唱えたところで、この幼馴染が懲りることはないだろう。昔からそうだったように。
 そして、その心にその言葉の影響は為されない。
 なぜなら。
「そっか。……ありがとう。それからごめん、こんなこと言わせて」
 ―――もう二度と傷付かないために、その心を凍らせてしまったから。
 やがて、感情の伺えない静かな瞳が、ゆっくりと閉じられた。

63ピーチ:2013/06/03(月) 03:43:13 HOST:em49-252-192-224.pool.e-mobile.ne.jp







「本当に大丈夫なの?」
「平気だよ、重い物体を運ばせておいていつまでも居座るわけにはいかないって」
 それは単に天音に腕力というものが皆無なだけであって断じて柊一が重いわけではないのだが。
「俺さ、明日から探そうと思うんだ」
 唐突な青年の言葉に、少女が目を瞠る。
「昇を乗っ取った奴だから、許せないんだよね」
 彼の意思も何もかも、その得体の知れない妖に奪われた。
 だが、だからといってあの言葉が偽りかどうかまでは分からない。
 潜在意識の奥深くに眠っていた彼の感情を引きずり出し、あの妖がさも当然の顔でそれを豪語したのかもしれない。
 どちらにせよ、あの昇が今居ないのは紛れもない事実だ。
「………とにかく、昇を助けることが最優先だよね。今は」
 そう言ってじゃあねと片手を上げ、そのまま真っ直ぐ進んでいって。
「…貴方だけじゃ、ないわよ」
 当然と言わんばかりの少女の勢いに、たまたま居合わせた夢月が目を瞬かせる。
“あ、主様?”
 唖然とした彼女に曖昧な笑みを返し、天音はそのまま部屋へと戻って行った。

64日陰:2013/06/07(金) 20:55:21 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 ピーチ>>

 昇くん……

 なんか、もう過去のことが気になりすぎて怖い……

 面白いんだけど、怖い……

 怖いんだけれども、面白い……

 イコール、続きが気になる……←

65ピーチ:2013/06/09(日) 08:22:52 HOST:em49-252-253-153.pool.e-mobile.ne.jp
日陰>>

昇はこれからちょこっと暴れてもらって正気に戻す(こら

面白くないよ駄文だよ!

お世辞はありがたいけどほどほどに!←

66日陰:2013/06/09(日) 08:39:29 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 ピーチ>>

 昇くん……早く戻ってきてね……

 あと、お世辞じゃないよ!?

 本心だよ!?

67ピーチ:2013/06/09(日) 08:55:58 HOST:em49-252-253-153.pool.e-mobile.ne.jp







 夜の闇が守っていた静寂が、唐突に破られた。
「昇……」
「やっと気付いた? 俺についた方が正しいってこと」
 天音の言葉を遮り、青年が笑みを浮かべる。
 しかし。
「えぇ、気付いたわ。貴方が十分馬鹿だってこと」
「………はぁ?」
 胡乱な表情になる昇に、彼女は不敵な笑みを浮かべて。
「貴方がいつまでもそのままで居るなら、私は柊につく。貴方が正気に戻るまでね」
「つまり、あの極悪人を信じるって?」
「私は、今の貴方のことは信じられない。……ずっと一緒に居たから、かもしれないけど」
 彼が、好んで人の命を奪うなどは、決してない。
「それだけは断言する。私は、柊を信じる」
 永い沈黙。
 やがて、青年の喉から低い笑い声が聞こえて。
「そうか。なら覚悟するんだな。お前が選んだ柊一が、どこまで信じられるか。俺は一応、その限界を知ってるつもりだよ」
 そう言って身を翻しかけた昇の背に、少女が一つ問いを投げる。
「貴方が今まで信じてきていた天神柊一って、……どんな人なの?」
 青年の歩みが止まる。
 しばらく昇を凝視していた天音が、口を開きかけたとき。
「信じられる奴、だったよ。心の底から」
 天音が黙って両の瞳を見開く。
 そんな彼女に一瞥を投げて、彼はその場を離れた。

68ピーチ:2013/06/09(日) 08:57:14 HOST:em49-252-253-153.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

昇が戻ってくる前にまた色んなもの出すよー!←

いやお世辞じゃなくても日陰の方がうまいって! 絶対そうだって!

69ピーチ:2013/06/09(日) 08:59:25 HOST:em49-252-253-153.pool.e-mobile.ne.jp
>>66

ごめん日陰間違えた!

悪気ないからほんとごめん!

70ピーチ:2013/06/09(日) 09:18:42 HOST:em49-252-253-153.pool.e-mobile.ne.jp







“主様?”
 夢月の言葉に、少女があ、と呟いた。
「ごめん、なに?」
“……本当は、夜空さまから内密にと言い渡されてましたけど…”
「おばあちゃんから?」
 胡乱な表情になる天音に、夢月は遠慮がちに。
“昇さんを戻すための、使役を送る、と……”
 夢月の言葉に、少女がさらに胡乱な表情になる。
「夢月じゃないの?」
“わたしには、そんな力はないです。ただ黄泉と夢の狭間に迷い込む馬鹿な人間を追い返すだけです”
 今とっても失礼な物言いに聞こえたが、そんなことを気にしている場合ではない。
「使役………?」
 小さく呟かれた言葉に返す言葉は、もうなかった。






「よぉ」
「……やっぱり、気付くか」
 造作もなく彼の場所を当てて見せた昇は、楽しそうに笑って。
「当たり前だろ? お前の場所くらい、すぐ分かるっての」
 それが仲間だからという理由なら感動ものだが、物事はそう簡単には進んでくれない。
「で? わざわざ危険冒して俺を尾(つ)けて、なにしに来たわけ?」
「うん。普通に考えたら昇の言う通りだよ」
 苦笑気味に笑って見せた柊一に、昇が月明かりを反射させたような銀の剣(つるぎ)の切っ先を彼に向けて。
「お前を正気に戻す。たとえ、どんな犠牲を払っても」
 後はどうなってもいい。その後の自分への対処は、いつもの親友がしてくれるだろう。
「………お前が、俺を倒そうってわけ?」
「そういうことになるかな」
 現時点での力量の差など目に見えている。明らかに昇が上だ。
 でも。
「俺さ、力に溺れる奴になりたくないんだよね」
 謳うように口遊(くちずさ)み、青年は穏やかな双眸を彼に向けて。
「自分の限界は知ってるつもりだよ。だから、それ以上はできればやりたくないかな」
 黒曜の鈴を取り出し、哀しげな笑みを浮かべた。
「だからさ」
 たん。と軽い調子で地を離れた音が聞こえ。
「―――もう、終わらせよう」
 木陰に隠れる形になった柊一の声が、夜明け前の空に吸い込まれた。

71日陰:2013/06/09(日) 09:39:52 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 ピーチ>>

 夢月ちゃんって、意外と過激なこと言うな……((苦笑

 そして、戦い始まっちゃったよぉ゚(゚´Д`゚)゚

 な、なんかどっちを応援していいのか解んない……←オイ

72たっくん:2013/06/09(日) 11:50:46 HOST:zaq31fa529e.zaq.ne.jp
>>69
ピーマンの肉詰め早く作れよピーチ

73たっくん:2013/06/09(日) 11:53:12 HOST:zaq31fa529e.zaq.ne.jp
>>71
この糞スレ(アホスレ)削除するか
ピーマンの肉詰め作るかどっちかにして下さいよピーチさん

二つに一つですよ
世の中そんなに甘くないっスよピーチさん

74ピーチ:2013/06/09(日) 14:32:37 HOST:em114-51-171-15.pool.e-mobile.ne.jp
日陰>>

意外とどころか! 夢殿から柊一と昇を返すときなんか酷いじゃん!←

だよね普通はどっちを応援していいのか分かんないもんね!(こら

75ピーチ:2013/06/09(日) 15:16:59 HOST:em114-51-171-15.pool.e-mobile.ne.jp







 ざん―――と木々が薙ぎ倒される音が響く。
 柊一は、昇の繰り出す切っ先を寸前で回避して。
「俺はさ」
 不意に、何でもないような口調で、目の前に居る青年に笑みを向けた。
「正直、今の俺なんてどうなってもいいと思ってる。俺が、そんなに恐ろしい生き物なんだったら」
 切っ先を避けながら、大して呼吸を乱した様子もなく言ってのける柊一に、昇が言う。
「じゃあさ。………今、」
「でも」
 青年の言葉を遮り、柊一が黒曜の鈴を天に突き上げた。
「俺は、昇を助けるまでは死ねないかな。俺が原因なんだし」
 柊一が言った直後、二人の会話を遮ったものがあった。
 ―――君を想えば、雪が舞う
 はっと、二人が振り返る。
 ―――いま一度、その願いも叶わずに
 まるで、夜の道を歩き渡る遊女のように、美しい音色に舞いを乗せて。
 ―――毎夜の如く、是を舞う
 上質な黒絹と見紛うほどに長く艶のある髪が、小さく波立った。
 ―――君への想いを、今打ち明けし
 ―――櫻の舞いを、この恋歌(れんか)に乗せ
「……天音…?」
 ―――逢えないと、分かる君を待ち続く。
「や……めろ………っ」
 途端に、昇が頭を抱えて蹲(うずくま)る。
 ―――我がこの恋、死者になりとも変わらずや
 ―――届かぬ恋を、雪に乗せ
 やがて、青年が膝をついた。
 そのまま頭を抱えて、苦しそうに呻く。
 ―――さよならと、その一言は、言い淀み
「やめろ…………っつってんだろ……」
 刹那。
 ごうっ、と昇の痩身から昏い妖気が放たれた。
「―――……え…?」
 突然のことに、天音の反応が遅れる。
 昏い妖気の中心に佇んだ青年の両の眼(まなこ)が、異様な光を宿した。

76日陰:2013/06/09(日) 15:44:21 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 ピーチ>>

 天音ちゃん?!

 ヤバイよ、超気になるよ!

77ピーチ:2013/06/09(日) 16:16:49 HOST:em114-51-128-182.pool.e-mobile.ne.jp
日陰>>

天音だから大丈夫だと思いたい!←

更新頑張りますはい。

78日陰:2013/06/09(日) 16:35:26 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 ピーチ>>

 うん、まぁね……うん……←

 更新がんばれ((私はまた土曜か日曜になっちゃうけど……

79ピーチ:2013/06/09(日) 16:50:43 HOST:em114-51-128-182.pool.e-mobile.ne.jp
日陰>>

たぶん大丈夫だよたぶん!←

更新はたぶん今日で一回切れるごめん!

80日陰:2013/06/09(日) 17:06:44 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 ピーチ>>

 私もそろそろ出来なくなる……

81ピーチ:2013/06/09(日) 17:17:34 HOST:em114-51-128-182.pool.e-mobile.ne.jp







「お前さ、変なところで馬鹿だよな」
 ぴくりと、少女の柳眉が僅かに吊り上がった。
「どういう、意味?」
「言葉のままだよ。いつまでも柊一を信じてさ」
「私は」
 昇の言葉に被せるように、少女は言う。
「柊が幼馴染だからとかじゃなくて、直感的に思う。柊は、そんなことしないって」
 陰陽師でも何でもない自分の直感など、なんの意味もなさない。でも。
「私は柊を信じる。たとえ貴方が、どれだけ柊を恨もうとね」
 少女の言葉を黙って聞いていた青年が、やがて小さな笑みを零した。
「そうか。じゃあしょうがねぇな」
 そう言って、剣(つるぎ)の切っ先を少女に向け、昇がそれを振り下ろす。
 天音が咄嗟に避けようとして、それが敵わないことに気付いた。
 体が動かない。
「え……!?」
 一瞬の混乱が過ぎ去り、少女の頭に一つの名前が浮かぶ。
「昇……!」
「残念。いくら強くても、抵抗できなきゃ意味ないだろ?」
 もちろん柊一だってな、と言った青年の剣が、天音に振り下ろされる直前。
 ―――唐突に、視界が黄金(きん)に染まった。
「……え?」
「ご無事ですか?」
 唐突に振ってきた問いに返す前に、天音は不躾(ぶしつけ)に、己を救ってくれた“彼女”を指して。
「誰……!?」
 そう言ったきり言葉が続かないらしい彼女に穏やかな笑みを向け、彼女は言った。
「その質問にお答えするのは後からにさせて頂きます。今は、貴方様をお救いすることを先決とさせて頂きます」
 そう言って、彼女がふっと空(そら)に片腕を突き上げた。

82ピーチ:2013/06/09(日) 17:19:11 HOST:em114-51-128-182.pool.e-mobile.ne.jp
日陰>>

だよねー……

できる間にやっとかないとね!←

83ピーチ:2013/06/10(月) 03:15:21 HOST:em1-114-98-115.pool.e-mobile.ne.jp







 突然、ふわりと柔らかい光―――結界が辺りを包み込んだ。
 それを成したのは他でもない、突然目の前に現れた少女だろう。
 昇の身から放たれる妖気を凌ぐほどの、強大な神気が少女から放たれる。
「天音様」
 唐突に名を呼ばれた天音が、彼女に視線を投げる。
「今のうちに。今なら、彼は動くことはできません」
 神気とは、その名の如く神の力を意味する。
 ならば、神気と妖気が相対したとき、さらに上を行くのはどちらか。答えは。
「よほどの力がない限り、私を凌ぐことはできませんので」
 だから、今のうちに。
 無言の少女に、柊一が不安げな表情を浮かべ、彼女を呼ぼうとした。
 刹那。
 ―――我がこの恋、死者になりとも変わらずや
 唐突に響き渡った、美しい音色。
 はっと目を見開いた柊一が、彼女に視線を向ける。
 ―――届かぬ恋を、雪の乗せ
 穏やかな安堵の色が、彼女の双眸に映し出され。
 ―――さよならと、その一言は、言い淀み
 全てを呑み込まんとする黒絹の束が、少女の動作に合わせて大きく跳ね上がった。
 そして。
 ―――君より先に、此処で待つ。
 呼吸をする間でさえ惜しく感じる時間が、夜の闇に降り注ぐ。
 やがて、少女が小さく息を吐いた。
「昇はもう無事なんでしょう? なら、後残ってる課題は一つだけよ」
 少女の言葉に苦笑気味に頷いた青年が、鈴を繋げている紐を引きちぎった。
 ばらばらと昇の周りに転がったそれは、やがて彼の周りに薄い膜を張り。
「さて……っと?」
 もう逃げられないよ? と不敵な冷笑を零した柊一が、何かをぶつぶつと呟き出した。
「栄華一声(えいかいっせい)、不穏僧旻(ふおんそうびん)、悪しきを祓うもの」
 青年の表情が引き攣る。
「ま、て……っ」
「輪状後輪、明帝見納(あくていけんのう)、和をとりなすもの」
 僅かに低くなった青年の声音が、夜の闇に響き渡って。
「―――悪を退疎(たいそ)させ、善を呼び込め」
 刹那。
 ごぅっと激しい風が吹き荒れる。
 そして、その直後。
「―――人間というのは、実に面白い」
 唐突に聞こえた声に、青年が目を瞠った。
「え……?」
「これだけの裏切りを受けようとも、信じる輩(やから)が居るとはな」
 振り返った二人の視界に、長身な青年の姿が映った。
 ざんばらな黒みがかった黄金(こがね)色の髪。それが、彼の神気によって僅かに揺らめいている。
「雷鬼(らいき)……」
「夜空がああまで言った理由が、分かった」
 祖母の名を聞いた瞬間、夢月の言葉が脳裏に蘇った。
 ―――昇さんを戻すための、使役を送る、と……
「まさ、か……」
「そう。俺たちは夜空の命(めい)によって此処へ来た」
 雷鬼と呼ばれた青年が答える。
「我らは十六将。正確に言うなら、十六天将」
 そう言って、青年は鋭い笑みを浮かべた。

84ピーチ:2013/06/10(月) 05:14:17 HOST:em114-51-18-113.pool.e-mobile.ne.jp







「十六将……?」
 呟く天音に、黄金の髪を僅かに揺らした少女は小さく笑って。
「貴方様がご存じないのも仕方ありません。幼い頃から、天音様が夜空様のもとへ行くことなどあまりなかったでしょう?」
 そう言った少女が、優雅に一礼する。
「申し遅れました。私は十六将光陰と申します。そこに居る雷鬼の言った通り、貴方様をお守りするためにこちらへ」
 光陰の後を引き継ぐかのように、青年―――雷鬼が言った。
「要するに、夜空の命ってわけだ。俺は十六将雷鬼」
 彼らの言葉から察するに。
「………つまり、貴方たちはおばあちゃんに言われたから昇を止めて、ついでに私に仕えようって言ってるわけ?」
「そうだが?」
 雷鬼が答えた直後、辺りの温度が急激に下がった。
「え?」
「冗談じゃないわ。なに今の為体、本当に夜空の孫なの?」
 唐突に振ってきた声と神気に、天音が頭上を振り仰ぐ。
 同時に、突如降ってきた氷の塊を、寸前で回避した。
「ふぅん……勘はいいんだ」
「水月(すいげつ)!」
 慌てたような光陰の声に、水月と呼ばれた女性はくすりと笑みを浮かべ。
「貴方たちも随分と落ちぶれたものね。こんな大した力もない子供を守ろうっていうの?」
「それが、夜空の意思だろ?」
「そうね。でも私は認めない。守りたければ勝手に守ってなさいよ、そんな子供。私は今まで通り、夜空につかせてもらうわ」
 そう言ってふっと姿を消した彼女を呆然と見送った天音が、やがて小さく震え出す。
「誰が……っ」
「……天音?」
「冗談じゃないわ! こっちから願い下げよあんな輩!」
 突然怒号した少女に、柊一があーあというような表情を浮かべた。
「確かに私はおばあちゃんの足元にも及ばないわよ大体おばあちゃんだっていい加減衰えたっていい頃でしょう!?」
 今明らかに遠い地に居る祖母に罵声を浴びせていたのだが、それさえ気付かないほど天音は激昂していた。
 あの気は水気。水将のくせに冷たさがないのもどうかと思う。
 そんなことを考えていた天音の耳に、困ったような柊一の声が聞こえた。
「……ねぇ、天音」
 苦笑気味に笑いながら、青年に視線を投げて。
「とりあえずさ、昇を運ぼうと思ってるんだけど」
「…そうね。手伝うことある?」
 昇の名前を聞いて急速に思考が冷める少女の言葉に、柊一はううんと返す。
「大丈夫だよ。とりあえず、家まで……」
 言いかけた青年が昇の腕に手をかける前に、他の手が彼の身体を救い上げた。
「は?」
 思わず後ろを振り返り、青年が困ったような笑みを漏らす。天音がじろりと雷鬼を睨め付けた。
「いいわよ。とりあえず私を守ることはしたんだから、さっさとおばあちゃんのところに帰ったら?」
「何言ってんだよ、仮にもこれからの俺たちの主が」
 彼の言葉を受け、天音が驚いたように目を見開く。
「な……っ」
「お前の強さには、見限れない何かがありそうだからな」
 そう言って端整な面に笑みを乗せた青年が、そのまま柊一たちを先導する。
 表情を僅かに引き攣らせて光陰を見ると、彼女も雷鬼と同じような笑みを浮かべただけだった。






 こえ、こえ、こえ。
 四方八方から声が聞こえる。
 まるで、自分を陥れようとしているような。
 でも。
 その一か所からは、必死で自分を呼んでいる声も、聞こえるのだ。
 ―――君のその恨み、僕たちで晴らしてあげよう
 違う。誰のことを恨んでいるわけでもない。
 あのときはただ、混乱していただけで。
 ―――天神柊一が、飛鳥井優羽を、殺した。
「―――…昇?」
 唐突に、声が聞こえた。
「……え…?」
「どうしたんだ? なんで、こんなところに居る?」
 写真で見たことしかない、声も知らなかった、その主は。
「父さん………?」
 写真の中でそうしていたように、彼は穏やかに笑っていて。
「昇は、まだ此処に来ていいわけがない」
 強く断言され、青年が言葉に詰まる。
 そんな彼を、優雨はさらに押し出すように。
「向こうには、お前の帰りを待っている人たちも居るだろう?」
 だから、還れ。
 今はまだ、来ていい時期じゃない。
「……父さん、」
「帰るんだ。いいな?」
「一つだけ、確認させてくれ」
 優雨の表情が胡乱になる。
 それを認めて、青年は小さく切り出した。

85ピーチ:2013/06/10(月) 05:47:19 HOST:em114-51-18-113.pool.e-mobile.ne.jp







「父さんを殺したのって…………柊一、じゃ、ないよな…?」
 初めて見(まみ)えた、自分の父親。
 優雨が、驚いたように目を見開いた。
「何で? 柊一くんとお前は同い年だろう?」
 殺せるはずがない、と笑う彼に、昇はなおも言い募ろうとして。
「―――……彼の存在は、人を喰うものなんかじゃない」
 はっと、青年が顔を上げた。
「柊一くんは、いい人だよ」
 彼の双眸は、驚くほどに静かに、細波ひとつ立っていない水面(みなも)のようで。
「だから、お前が心配する必要ないんだ。俺は、妖に殺されたんだ。それが、真実だ」
 もういいだろう、と昇の背中に手を当てて。
「ほら昇、呼ばれてるじゃないか」
 早く行かないと怒られるんじゃないか、と笑って、彼の背を優しく押した。
「あ…………」
 青年の姿が小さくなり、やがて見えなくなる。
 その最後まで、彼は見ていた。
「行った……な」
 はぁっと安堵の息を漏らして。
 小さく、満足げに微笑んだ。






「―――………っ…!」
 起き抜けに激しい頭痛に見舞われた昇が、声もなく呻いた。
 それにいち早く気が付いた柊一が、親友の名を呼ぶ。
「大丈夫? 昇」
「………柊、一?」
 呟いて、はっと辺りを見回す。
「ここって……」
「昇の部屋だよ。よかった、無事だったから」
 心から安堵したように、柊一が笑った。
 そして、沈黙が降る。
 先に口火を切ったのは柊一だった。
「ねぇ、昇」
「あ?」
 視線を外しながら答える昇に、柊一は苦笑気味に笑って。
「―――罪の意識があるなら、その手で自らを制せ」
 どくん。
 鼓動が跳ね上がる。
「昇が、言ってたらしいけど」
 小さく笑みを浮かべ、柊一が言った。
「俺さ、自分のことは殺せない」
「……え?」
「自分が死ぬなんて、いまさら何とも思わないけど」
 嘘ではない。本心だ。彼女を失ったとき既に、一度死んだようなものだったから。
 それでも、自らを制すことよりも。
「今、天音が居ないから言うけどさ」
 前置きのようにそう言ってから、青年が己の手を見つめる。
「俺が俺を殺すよりも、昇が俺を殺した方がいいんじゃないかな、て思って」
 恨まれても仕方のないことを、恐らく自分はやったのだろう。
 だから、自分が制するよりも、きっと。
「……柊一」
「ん?」
「悪かった」
「え?」
 突然の彼の言葉に、柊一が意味を理解をできないように問い返す。
「……目が覚める前にさ、父さんに会ったんだ」
 いきなり話し出した昇に、柊一が怪訝そうな表情を返すが、本人は気にも留めない。
「その時、柊一はいい奴だって、言ってたよ」
 柊一が自分を殺すなんてとんでもない。
 彼は、そう断言した。
「……悪かった」
 だから、せめて今だけでも。
 しばらく言葉の意味を呑み込むことに専念していたらしい柊一が、やがてぱちぱちと目を瞬かせ。
「それってつまり」
 今まで通り、並んでいていいのか。
 昇や天音と、今まで通りに。
 やがて、小さく笑った青年が、ありがとうと呟いた。

86【下平】:2013/06/10(月) 07:51:15 HOST:ntfkok293007.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
【感動したわ。ピーチピット。キュアピーチ。】

87ピーチ:2013/06/11(火) 02:31:29 HOST:em114-51-136-61.pool.e-mobile.ne.jp
―――第二章―――






「柊ー?」
 母悠莉の声が聞こえ、青年が首を巡らせた。
「電話よ。えーっと、星野さんって人」
「星野?」
 記憶を手繰って、そんな人間が知り合いに居たかどうかを確かめる。と。
「あぁ……」
 思い出したらしい青年が、分かったと言って部屋から出た。
「もしもし?」
『あ、もしもし柊一か? 琉斗(りゅうと)だけど分かる? 久しぶりだなー、元気か?』
「うん、一応」
 苦笑気味に答える彼に、電話主―――星野琉斗は早々とした口調で柊一に問う。
『明日の晩さ、高三のときのメンバー集まって同窓会やるんだけど、お前来れる?』
「明日?」
 明日といえば、確か。
「どこであるの?」
『宮杉屋って店だけど』
「宮杉屋……は!?」
 なぜ。
 確か、その宮杉屋に。
「……俺、その店に仕事で行くんだけど…」
『はぁ? なにお前そこで働いてんの?』
「いやそうじゃなくて」
 しばらく二人で話し合いを進めて。
『じゃあ、来れたら来いよ。柊一にもそう言っててくれ』
「分かった」
 その言葉を最後に通話が切れ、途端に青年が深い息を吐き出した。

88たっくん:2013/06/11(火) 12:28:29 HOST:zaq31fa529e.zaq.ne.jp
【チチちょびれソング】

貴方のチンポは腐ってる♪
チンポがあるからチチちょびれ〜♪

チビ太の頭に毛が一本♪
チチパンのパンツから毛が4本♪


貴方はピーチ、マ●コくさってる♪
パンパパンパン♪

89日陰:2013/06/15(土) 14:49:15 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 ピーチ>>

 昇君お帰りー! っで、良いのかな??

 にしても、第二章始まったねー! お疲れ様! &おめでと!

 今回も面白い作品になると期待してるよー!((2828←オイ

90ピーチ:2013/06/15(土) 19:40:58 HOST:em49-252-234-80.pool.e-mobile.ne.jp
日陰>>

昇帰ってきたよー!(おい

どーも! これからも駄文披露していくよー!←

ただ今回はちょっと書きたい話があるんだー!(

91日陰:2013/06/15(土) 19:58:15 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 ピーチ>>

 書きたい話??

 気になるー! 更新頑張ってねぇ!

92ピーチ:2013/06/15(土) 20:01:18 HOST:em49-252-234-80.pool.e-mobile.ne.jp
日陰>>

書きたい話あるのだw

頑張るよ! 駄文なりに!

93ピーチ:2013/06/15(土) 22:29:16 HOST:em49-252-234-80.pool.e-mobile.ne.jp







「おー! 居た居たー!」
 彼らの顔を見るなり、それまで周りとだべっていた電話主―――琉斗が片手を上げた。
 僅かに顔が赤く染まっているのと傍にある透明な飲み物を見て、昇が顔を引き攣らせる。
「お、お前酔って………?」
「いやー? 俺結構強いみたいでさー」
 確かに意識はしっかりしているようだが。
「来なきゃ、いや連れて来なければよかった……」
 頭痛でも覚えたのか頭を抱える青年に、天音と柊一の不思議そうな視線が注がれる。
「昇?」
「……なぁ柊一、お前絶対飲むなよ?」
 天音の呼びかけに大丈夫だと答えた後で、鬼気迫る表情で友人に言った。
「わ、分かってるけど……?」
 そもそも今回仕事で来てるんだよ? と問う青年に、昇はいいやと首を振って。
「仕事なくても飲むな絶対!」
「……? 分か、った…」
 未だに頭上で疑問符を躍らせている二人に気付くことなく、とりあえず三人が部屋を出る。
「―――…天音?」
 唐突に聞こえた声に、天音が振り返った。
 そして。
「……めぐみ、ゆうき!?」
「どしたの? こんなところで」
 ここ居酒屋だよと言う彼女―――神矢めぐみと神園ゆうきに、天音がしばらく目を見開いて。
「……私たちは、仕事で。貴方たちこそ、どうしたのよ?」
「へ?」
 めぐみが驚いたように問い返す。そして、
「あたしたちも………仕事、だけど…」
 依頼があったから来た、と答える彼女。
「…どんな、依頼?」
「変な物音が続いてるから、なんとかしてくれって」
 天音が頭を抱える。
 全く同じ内容だ。なぜわざわざ。
「あ、柊一、昇」
 突如聞こえた声に、次は青年二人が振り返る。
「ま、さと…」
「明人……?」
「俺らは居たらいけねぇのかよ」
 一応同窓会も理由の一つだぞ、と青年―――天野明人が低く唸り、誠人が苦笑気味に笑った。
「………同窓会、も?」
 その、も、と言うのが非常に気になる天音である。
 その彼女に、久しぶりと返し、誠人が簡単な説明を始めた。
 曰く。
 この店の店員に変な物音するから何とかしてくれと頼まれたとか。
「なんで………………っ!?」
 頭を抱える天音に、めぐみたちの訝しげな視線が刺さる。
「……俺らも、同じ内容で、ここに居るんだけど」
「――――――は?」
 全員の声が重なった。
「私たちだって言いたいわよ…苦情でも漏らしてこようかしら」
「いやあのね天音さん?」
 さすがに焦った昇の耳に、困ったような声が聞こえた。
「あ、すみません」
「へ?」
 天音たちが合ったときとはまた別の、中年の女性が姿を見せる。
「たぶん私たち、それぞれに違う所に依頼してしまったと……」
「……どういう、意味ですか?」
 昇の問いに、女性が恥ずかしそうに笑って。
「それが……ちょうど電話をしようとした直後に、家族親戚で大喧嘩をしてしまって。それで好き好きにかけてしまったんです」
 なんて身勝手な。
 口に出しかけたのは昇と明人だが、全員の胸中を同じ思いが駆け巡ったことは言うまでもない。
「本当に申し訳ありません……あの、どうすれば…」
「…仕方ありませんね」
 苦笑気味に笑い、天音がめぐみを見た。
「彼女に頼んでください。私たちには、荷が重いので」
「はっ?」
 彼女の言葉に、めぐみとゆうきがぐるんっと首を巡らせた。
「なんであたしら!?」
「だって今回の話聞いてたら、私たちよりもめぐみが死にかけの脅しかける方がいいかなって思って」
「お前のその視点もずれてるぞ!?」
 昇の叫びに、天音がうるさそうに耳を塞ぎ。
「じゃあ何? 私たちが請け負ってこの店の評判下げようって?」
 彼女の言葉に、昇がぐっと言葉に詰まる。
「そ、そりゃ確かに……」
 納得しかけた彼に、めぐみの叫びが響いた。
「あの飛鳥井さん!? あたしたちに任せた方が怖い結果ですよ!?」
 類は友を呼ぶ。まさに天音にぴったりな言葉だと思う昇である。
「…じゃあさ、もう面倒だから全員でやる?」
 そう言ったのは誠人で、明人が小さく笑った。
「俺たちも、何もしないで帰るのは癪だからな。やるならそれでもいいぜ?」
 彼の言葉に誠人が苦笑する。
 明人の言葉に、三人が顔を見合わせた。

94ピーチ:2013/06/15(土) 23:06:22 HOST:em49-252-234-80.pool.e-mobile.ne.jp







「…でも、あんまり人数が多いと」
 店に迷惑がかかる、と呟く天音に、柊一がうんと頷く。
「だよねぇ…いつもみたいに好き勝手できるなら、人数は関係ないんだけど」
「おーい双子ー!」
 誠人と明人が振り返る。
 琉斗と一緒に話していた男―――犬飼享(いぬかいりょう)が片手をぶんぶんと振っていた。
 既にアルコールが回っているらしく、彼の顔が赤い。
「お前らも飲めよー! ってか来てたなら顔くらい見せろよ双子ー!」
「双子双子連呼するな!」
 明人が半ば叫び、誠人が苦笑する。
「つか俺たちは一応仕事があるんだよ! 暢気に酒飲んでる暇なんか……」
「いーじゃんちょっとぐらいさー」
「駄目だっつったら駄目なん……」
 それまであーだこーだと言いあっていたが、やがて諦めたらしくそのまま同級生たちの輪へと戻って行った。
「ったくよ…あれだから享は……」
「まぁまぁ」
 たしなめる誠人と昇を横目に、明人があれ、と呟く。
「柊一は?」
「へっ?」
 昇の表情がさっと青ざめた。
「ま、まさかあいつ……」
 言いかけたとき、琉斗を始めとしてぞろぞろと一つの部屋から大勢の人間が出て行く。
「あー、お前らー。俺ら二次回行ってるからなー?」
「もう好きにしろ!」
 琉斗たちの言葉に明人が返し、やがてその場が静まり返る。
 刹那。
「―――っ……」
 来た。
 静かな物音を立てて、それが現れた。

95ピーチ:2013/06/15(土) 23:42:17 HOST:em49-252-234-80.pool.e-mobile.ne.jp







「猟陣隔依(りょうじんかくい)、本失総来(ほんしつそうらい)」
 早かったのは誠人だ。明人が彼の背後を守るかのようにゆっくりと彼の背に回る。
 誠人の痩身からゆらりと青白い霊気が立ち昇り、それが次第に姿(かたち)を持っていって。
 ―――やがて、彼を包み込むように尾を丸めた、龍の姿が。
「……やっぱ凄いな、天野さん」
 小さく呟いた天音の傍で、めぐみが笑った。
「確かに。………あんたが行かないなら、そろそろあたしがやらせてもらおうかな」
 そう言って口の端(は)に笑みを乗せ、彼女が片腕を突き上げる。
「天野さんとか天音たちには敵わないけど。あたしだって、一応それなりの能力(ちから)持ってるよ?」
 生まれついて持った異能の強さは尋常でない。
 それを自負していながら、彼女はそれを利用して。
「―――吉凶を見定める我が僕(しもべ)、我らに降りかかるそれを見定めよ」
 厳かな響きが木霊する。
 確かな威厳と威圧を持った彼女の声に反応するように、地が僅かに揺れる。
 めぐみの双眸が昏く輝いた。
 突き上げた片手に握られた細身の槍を振りかぶる。
 迷うことなく振られたそれは、正確に妖の位置を捕えていて。
「うわ……っ」
 昇が条件反射で避け、気付いた誠人が障壁を築いた。
「……お見事」
「そりゃどーも」
 軽く笑って受け流す彼女に、天音が半ば驚嘆する。
 そして、めぐみの祓った妖を見て、
「あ………っ」
 小さく呟いた。
「これ…」
「大方、何の害もないだろうな」
 たったこれだけのものに大勢で挑んだのか俺たち馬鹿じゃんと呟く昇に、天音が小さく苦笑して。
「同感ね」
 同じことを考える天音である。
 ということは、まだほかにも居るのだろう。
 こういった類の妖は、集団で行動する割に人間に害を為すことがない。
 だからあまり気にされないのだが、今回はたまたま遊び回っている音が聞こえたということか。
「………………………ぅー……」
 切り刻まれたはずの妖が小さく呻く。それを認めた天音が、さすがに目を瞠った。
「……手加減、した?」
「まさか」
 即刻切り返すめぐみに、確かにと返して。
「…ねぇ、天音ちゃん」
「はい?」
 誠人の呼びかけに応じ、少女が振り返る。
 彼が苦笑気味に笑った。
「……害はないみたいだから、助けてあげたら?」
「………そうした方が、いいですか?」
 あくまで嫌そうな態度を取る天音だが、誠人にうんと返されて大人しく雑鬼を救い上げる。
 そして。
「汝、この快癒の呪(まじな)いの力を知れ」
 薄暗い光が転じ、次いで雑鬼を包み込む。
 やがて、その雑鬼の身体が再生されて。
「……………あれ? 俺生きてる?」
 全身を見回して呟いた妖に、天音が一言。
「次この店に迷惑かけたら、ただじゃおかないわよ」
 貴方たちのせいで私たちが駆り出された、と言う天音に、妖が怯えたように頷いた。
「わ、分かったからそのおっかないものひっこめてくれ!」
 めぐみと昇の持っている剣と槍を見て言ったのだろう。二人が顔を見合わせて、大人しくするならと約束してからそれを戻す。
 それを認めて、妖がわーっと叫びながら屋根裏へと走って行った。
「………で」
 全てがひと段落ついたから言う。言わせてもらうが。
「柊、は?」
 ぴしっと青年三人が凍り付く。
「…昇?」
「うん、たぶんあそこだあの部屋だ。何なら行ってみて来ればいいさ!」
 変に爽やかな彼に合わせるように、明人が笑った。
「じ、じゃあ俺そろそろ帰るわ! たぶん薄情者じゃない誠人が助けてくれるから安心しろ天音ちゃん!」
「は?」
 わけが分からない。
 混乱している天音に、めぐみが苦笑気味に言った。
「あたしたちはもう帰るけど、行ってみれば? 飛鳥井さんが言ってる場所に」
「……えぇ、そうさせてもらうわ」
 頭の中での整理ができていないながらに、彼女は小さく笑って答えた。

96日陰:2013/06/16(日) 08:15:45 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 ピーチ>>

 皆さんお疲れ様ー! っで、良いのかな?

 やっぱりみんな優しいねぇー! 流石ピーチのキャラクター!←

 続きも楽しみにしてるよォー!

97ピーチ:2013/06/16(日) 17:31:59 HOST:nptka407.pcsitebrowser.ne.jp
日陰〉〉

うん、一応お疲れなんだけどまだなんだよね←

あと一歩で書きたいのが終わりだー!

98ピーチ:2013/06/17(月) 03:08:47 HOST:em49-252-123-0.pool.e-mobile.ne.jp







「天音ちゃん、ひとりで大丈夫? ついて行こうか?」
 たかだか幼馴染ひとり呼びに行くだけに、何をそんなに心配しているのだろう。
 疑問符を胸の内に留め、少女が小さく笑う。
「……大丈夫ですよ?」
 そう言って、つい先ほどまでうるさすぎるほどに賑わっていた奥の部屋の襖を開けた。
 そのまま中に入って―――
 唐突に携帯が鳴る。
 相手を確認して、誠人が呆れたように息を吐いた。
「もしもし?」
『あ、誠人か? 天音と一緒?』
「一緒も何も。ひとりで大丈夫だっていってそのまま行ったよ?」
 電話主―――昇がげっと呻いたのが分かった。
「……ていうか、俺ならともかく天音ちゃんまで残すってどういうつもりだよ? あぁなった柊一が簡単に止まるとは…」
 瞬間。
「―――……きゃあぁぁぁっ!?」
「…………は?」
  突如聞こえた、あの声は。
『…どうした?』
「……天音ちゃんの悲鳴が、聞こえたんだけど」
『頼む助けてやってくれ!』
 俺は行きたくない! と叫ぶ昇に分かったからと返し、そのまま通話を切る。
 そして。
「…何で俺って、こう貧乏くじ引くのが上手いかなぁ……」
 小さく苦笑しながら、青年が奥の部屋まで足を運んだ。






「天音ちゃん、ひとりで大丈夫? ついて行こうか?」
 その言葉に対して抱いた疑問を表に出さず、ひとりで大丈夫だと言ったのが失敗だったのだ。
「柊、居る?」
 言いながら襖を開け、直後に見えた青年の姿に天音が小さく息を吐いた。
 今は妖気の残滓も感じられない。つまりは僅かな力しか持たない雑鬼たちでさえ、今この場には居ないということだ。
 だから、彼はただ寝ているだけ。
 問題は。
「……何で、こんなところで寝てるのよ…?」
 呟いて、彼女が首を横に振った瞬間。
 ぴく、と唐突に柊一の身体が動いた。
 俊敏に動いたそれは、瞬く間も与えず天音の手首を捕えて。
 そのまま勢いよく彼女を押し倒した。
「……え…?」
 一瞬、何が起こったのかの理解ができない。
 だが、その混乱が完全に消え去ると。
「―――……きゃあぁぁぁっ!?」
 思わずと言ったように叫び、
「ちょ、柊!?」
「ねぇ、天音」
 彼女を遮るようにして、柊一の声が響いた。
 低く通りやすい、穏やかな声。
 肩よりも少し長い髪がはらりと落ち、彼の頬にかかる。
 それを気に留める風もなく、柊一が天音を捕えたままに問うた。
「―――“強い”って、どういう意味だと思う?」
「…え?」
 再び僅かな混乱の波が押し寄せる天音をそのままに、彼は続ける。
「俺さ、正直もう疲れたんだよね。……天音には、言ってなかったかもしれないけど」
 ぐっと柊一の両手に力が籠もった。微かに生じた痛みに顔を歪める。
「………ここで、―――…やったら、終わるかな……?」
 優しげな声とは裏腹に、彼の手に籠もる力は強まっていく。
 しかも、幼馴染とはいえ男の柊一に、人並み以下の腕力しか持たない天音のできる抵抗など、たかが知れていて。
「や……誰か…っ」
「―――柊一! やめろって!」
 唐突に聞こえた声に、天音が目を瞠った。






「あ……っ」
 部屋に入った瞬間、天音を押し倒した柊一の姿が視界に映った。
「ねぇ、天音」
 ―――“強い”って、どういう意味だと思う?
「…え?」
 問い返した天音に答えず、彼は自嘲気味な笑みを浮かべて。
「俺さ、正直もう疲れたんだよね」
 そう言って。
「………ここで、―――…やったら、終わるかな……?」
 天音には聞こえなかったのかもしれない。当然誠人に聞こえるはずがない。
 だが、彼は直感でそれを理解した。
 ここで。次に彼は何と言った。
 あのとき、あの場所で、同じことを口にしなかったか。
 ―――もう、これで終わりにできるかなぁ…
 本当にどうでもよくなったとき、彼はよくそうぼやいていた。
 だから、違う可能性ももちろんある。
 ぐるぐると考えていた誠人だが、柊一の行動を見て血相を変えた。
 天音本人は気付いていないが、あれは。
「………っ…」
 ぎり、と歯噛みして、誠人が叫んだ。
「柊一! やめろって!」

99ピーチ:2013/06/17(月) 05:12:38 HOST:em1-114-93-10.pool.e-mobile.ne.jp







 誠人が天音から柊一を引きはがし、小さく息を吐く。
「はぁ……大丈夫?」
「え? あ、……はい…」
 天音がしばらく呆然と柊一を見つめ、しばらくしてからやっと我に返った。
「あ、の……天野さん?」
「ん?」
 いつもの様子に戻った誠人が彼女を見る。
 天音が、恐る恐るといった体(てい)で幼馴染を視界に入れて。
「柊…、どうしたんですか?」
 幼馴染は自分だ。だがそれでも年齢が違う。だからそれなりに知らないこともある。
 自分が知らなくても物知りな誠人なら何でも知ってるんだと考えた天音なりの問いだった。
「うーん……知らない、かなぁ…」
「え?」
 しばらく答えあぐねるように視線を宙に彷徨わせ、やがて青年が小さく息を吐き出した。
 そして。
「…柊一ってさ、異常に酒に弱いんだ」
「―――は?」
 曰く。
 成人式を兼ねた去年の同窓会で酒を飲んだ際、最早見事なまでに人格が変わったらしい。
「それも、俺たちの前でだけね」
「………?」
「だからそれ以来、柊一にだけは何があっても酒は飲ませないようにしようって約束してたんだけどね…」
 今回は俺たちの対応が遅かった、と言う誠人に、天音が未だに唖然と柊一を見て。
「……お酒、に?」
「そう。まぁ俺たちも強いとは言えないけど、柊一は伝説になってもいいと思う」
 昇は意外と強いみたいだけど、と呟いた誠人に、天音がえ、と問い返す。
「昇が?」
「うん。まぁ、柊一がいるから飲まないんだろうけど」
 本人もあんまり好きそうじゃないしね、といって。
「……とりあえず、柊一をどうしようか」
「…あ……」
 かくして、次は柊一を言う人間をどうするかを言う問題が浮上した。






「柊一」
 胡坐をかいた昇が柊一を呼ぶ。
「え?」
「お前、昨日飲んだろ。あんだけ飲むなっつったよな?」
「………あー…」
 心当たりがあるのか、しきりに視線を彷徨わせ。
「いや、だって琉斗たちが」
「人のせいにするな」
「まぁまぁ」
 ゆうべ結局柊一を運ぶ羽目になった誠人が昇をたしなめる。
「……天音ちゃんが無事だったから、よしとしよう?」
「うんそうだな」
 誠人の言葉に昇が同意し、意味が理解できない柊一が首を傾げて。
「どういう意味? 天音だったら別に……」
「……………………」
 無言をもって返す昇である。
 しばらく言いあっていた二人が、やがてどちらからともなく息を吐いた。

100たっくん:2013/06/17(月) 12:11:08 HOST:zaq31fa529e.zaq.ne.jp
;;

101ピーチ:2013/06/24(月) 03:13:51 HOST:em1-115-17-26.pool.e-mobile.ne.jp







「あ、もしもし天音ー?」
『……どうしたのよ、こんな時間に』
「いやいや、あんたなら寝る暇さえ惜しんで色々やってるだろーなーと思って」
 飄々と笑う電話主―――めぐみが、天音に問うた。
「ところで、この前の天神さんどうしてたの?」
 ぴくり。
 電話の向こうで少女が僅かに身じろいだ。
 ような、気がする。実際に見てないから分からないが。
「? 天音?」
『ごめんめぐみ、その件に関しては二度と触れないでもらえる?』
「は?」
 あの天音をここまで言わしめるとは。一体何をしたんだ。
 非常に気にはなるのだが、それ以上追及しようものなら着信拒否までされてしまいそうなので聞かないことにする。
『で、用はそれだけ? 今寝てたんだけど』
「えっ? 天音が!?」
『何よそれ随分と失礼じゃない。まるで私が年中寝てないようないい方ね』
「実際そんなもんじゃない?」
 電話の向こうで僅かに機嫌を害した様子が容易に思い浮かび、めぐみが苦笑した。
「………ねぇ。明日、何か用事ある?」
『明日?』
「うん」
 天音がちょっと待ってと言ってしばらく沈黙が降り、やがてあぁと呟いた。
『午前中にちょっとした用がね。それがどうかした?』
「あ、いや、大したことないんだけど。それって、昼からは予定なし?」
『今のところは』
 彼女の返事を受け、めぐみがそっかと呟く。
『何? 何か用があるなら、付き合うわよ?』
 午前中もあの二人に任せれば問題なし。
 恐らく笑顔で言い放ったであろう友人に、めぐみが慌てたように答えた。
「い、いや! 別に朝から絶対ってわけじゃないし、別にあたし一人でも……」
『なら、何で電話したの?』
 ぐっと、めぐみが言葉に詰まる。
 確かにそうだ。本当に一人で大丈夫なら、めぐみがわざわざ電話など入れるわけがない。
 それに、いくら天音が起きている可能性が高いからといっても、彼女は時間帯を気にする性格だ。
 あんな適当な理由だけで、こんな時間に電話を入れるなどあり得ない。
『……ごめん、嫌なら無理に話さなくてもいいけど』
「ううん、やっぱりお願いしようかな。……昼からでも、いいから」
『そう、分かった。明日は空けておく』
「うん、ありがと。ごめんね、おこしちゃって…おやすみ」
 そう言って通話を切り、めぐみが思わず自分の手のひらを見つめた。
 今までの会話だけでも、僅かに息が上がっている。
「……………っ……」
「何隠してんの?」
 唐突に聞こえた声。
 はっと、めぐみが振り返った。
「あたしが居るのに、何でわざわざ天音に電話したの? そんなにあたしが嫌だった?」
 責めるような口調。それを聞いためぐみが、苦笑気味に笑った。
「そうじゃないよ。ゆうきには、まだ色々とやってほしいことがあるから」
 そう言って、彼女がすっと身を翻す。
 そのまま、彼女の黒曜の髪が闇に溶けた。

102ピーチ:2013/06/30(日) 10:08:28 HOST:em114-51-164-120.pool.e-mobile.ne.jp
短編〜出逢い〜






「だから………っ」
 肩を震わせながら、俺が怒鳴った。
「いい加減にしろ!!」
 そう叫びながら、俺は後ろに付き纏っていた雑魚霊どもを殴り飛ばす。
「ったくよ…」
 周りでは、クラスメイトやその親たちが気味悪そうな視線を俺に送る。
 でも、もうそんなの気にならない。
 こんな奴ら、視える人間が居るわけ―――
「―――あぶなっ」
 どっかで誰かの声が聞こえて、俺が振り返った。
 そして。
「………へ?」
 目の前に、小さな女の子の姿。
 でも普通の子供じゃなくて、それは。
「あ……」
 少女の細い手が、ゆっくりと伸びる。
 ―――薄青のワンピースを靡かせた少女は、笑いながら俺に近付いて。
 ―――ねぇ、わたしのこと、視えるでしょう?
 楽しげに、そう呟いた。
 正直、害がある妖怪の類とは思えない。大方、前に死んでしまってからそこに留まっているだけの霊だろう。
「…視えるけど?」
 俺の言葉に、少女が満足そうに笑い、そして。
 ―――…一緒に、来て?
 酷く楽しそうに、少女が言った。
 その笑顔が、どこか悲しそうに見えて。
「……分か…」
「駄目だ!」
「え?」
 さっきも聞こえた声がまた聞こえ、俺が後ろを見る。
「ふざけるなよ、幽鬼……」
 そう言った、肩より少し長い髪を一つに括った奴が、俺を通り越して真っ直ぐに少女を睨んでいた。
「…ゆう、き……?」
 幽鬼って、あの?
 ってそれ以上に!
「お前あれ視えんの!?」
「え?」
 ―――それが、出逢いだった。

103たっくん:2013/06/30(日) 14:30:01 HOST:zaq31fa4c60.zaq.ne.jp
ピーチさんのクソスレいつも拝見させてもらってます。
実にくだらない つまらない
しかし考え方によってはいい見方もあります。

104ピーチ:2013/07/01(月) 03:53:34 HOST:em114-51-30-88.pool.e-mobile.ne.jp







「うん、まぁ一応」
 苦笑気味に笑ったそいつが、次にその笑顔を引っ込めて。
「気を付けてね。あいつ……」
 何かいいかけた、瞬間。
 ―――邪魔を、しないで……?
 そんな声が聞こえ、少女の笑い声が木霊する。
 少女の細い腕があいつの首に届く寸前、彼女がひっと腕を引っ込めた。
 その反応を見て、そいつは満足そうに笑う。
「やっぱり、お前くらいにはこれがちょうどいい」
 そう言って不敵に笑い―――。
「次誰かを手にかけようとするなら、俺が止める」
 何があっても、と言い残し、そいつが俺に声をかけた。
「……行こう? そろそろ始まるし」
「……あぁ…」






「三組か……」
 どこのクラスでもいいけど、と呟きながら、その教室に向かう。
 がらりとドアを開けたら、いくらかの視線が一斉に向いた。
「…………」
 机の上に名前が載っている。自分の名前の場所に座れってことか。
 右側の一番前の席に自分の名前を見つけ、そこに腰を下ろす。
 すると。
「あれ?」
 …………………何だろう今ついさっきも聞こえた声を聞いた気が。
「やっぱり、さっきの」
 振り返ると案の定、さっき会った奴が居た。
「同じクラスだったんだ。何か心強いな」
「はぁ?」
 胡乱げに聞き返した俺に、そいつは笑いながら。
「さっき、そこら辺にいた霊たち殴ってただろ? あんな芸当できる人、そう居ないから」
「………るせ」
 あらぬ方を見て知らないふりをしている俺の席を覗き込んで、そいつが笑った。
「あすかいっていうんだ。俺天神。よろしくね」


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