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鈴扇霊

98ピーチ:2013/06/17(月) 03:08:47 HOST:em49-252-123-0.pool.e-mobile.ne.jp







「天音ちゃん、ひとりで大丈夫? ついて行こうか?」
 たかだか幼馴染ひとり呼びに行くだけに、何をそんなに心配しているのだろう。
 疑問符を胸の内に留め、少女が小さく笑う。
「……大丈夫ですよ?」
 そう言って、つい先ほどまでうるさすぎるほどに賑わっていた奥の部屋の襖を開けた。
 そのまま中に入って―――
 唐突に携帯が鳴る。
 相手を確認して、誠人が呆れたように息を吐いた。
「もしもし?」
『あ、誠人か? 天音と一緒?』
「一緒も何も。ひとりで大丈夫だっていってそのまま行ったよ?」
 電話主―――昇がげっと呻いたのが分かった。
「……ていうか、俺ならともかく天音ちゃんまで残すってどういうつもりだよ? あぁなった柊一が簡単に止まるとは…」
 瞬間。
「―――……きゃあぁぁぁっ!?」
「…………は?」
  突如聞こえた、あの声は。
『…どうした?』
「……天音ちゃんの悲鳴が、聞こえたんだけど」
『頼む助けてやってくれ!』
 俺は行きたくない! と叫ぶ昇に分かったからと返し、そのまま通話を切る。
 そして。
「…何で俺って、こう貧乏くじ引くのが上手いかなぁ……」
 小さく苦笑しながら、青年が奥の部屋まで足を運んだ。






「天音ちゃん、ひとりで大丈夫? ついて行こうか?」
 その言葉に対して抱いた疑問を表に出さず、ひとりで大丈夫だと言ったのが失敗だったのだ。
「柊、居る?」
 言いながら襖を開け、直後に見えた青年の姿に天音が小さく息を吐いた。
 今は妖気の残滓も感じられない。つまりは僅かな力しか持たない雑鬼たちでさえ、今この場には居ないということだ。
 だから、彼はただ寝ているだけ。
 問題は。
「……何で、こんなところで寝てるのよ…?」
 呟いて、彼女が首を横に振った瞬間。
 ぴく、と唐突に柊一の身体が動いた。
 俊敏に動いたそれは、瞬く間も与えず天音の手首を捕えて。
 そのまま勢いよく彼女を押し倒した。
「……え…?」
 一瞬、何が起こったのかの理解ができない。
 だが、その混乱が完全に消え去ると。
「―――……きゃあぁぁぁっ!?」
 思わずと言ったように叫び、
「ちょ、柊!?」
「ねぇ、天音」
 彼女を遮るようにして、柊一の声が響いた。
 低く通りやすい、穏やかな声。
 肩よりも少し長い髪がはらりと落ち、彼の頬にかかる。
 それを気に留める風もなく、柊一が天音を捕えたままに問うた。
「―――“強い”って、どういう意味だと思う?」
「…え?」
 再び僅かな混乱の波が押し寄せる天音をそのままに、彼は続ける。
「俺さ、正直もう疲れたんだよね。……天音には、言ってなかったかもしれないけど」
 ぐっと柊一の両手に力が籠もった。微かに生じた痛みに顔を歪める。
「………ここで、―――…やったら、終わるかな……?」
 優しげな声とは裏腹に、彼の手に籠もる力は強まっていく。
 しかも、幼馴染とはいえ男の柊一に、人並み以下の腕力しか持たない天音のできる抵抗など、たかが知れていて。
「や……誰か…っ」
「―――柊一! やめろって!」
 唐突に聞こえた声に、天音が目を瞠った。






「あ……っ」
 部屋に入った瞬間、天音を押し倒した柊一の姿が視界に映った。
「ねぇ、天音」
 ―――“強い”って、どういう意味だと思う?
「…え?」
 問い返した天音に答えず、彼は自嘲気味な笑みを浮かべて。
「俺さ、正直もう疲れたんだよね」
 そう言って。
「………ここで、―――…やったら、終わるかな……?」
 天音には聞こえなかったのかもしれない。当然誠人に聞こえるはずがない。
 だが、彼は直感でそれを理解した。
 ここで。次に彼は何と言った。
 あのとき、あの場所で、同じことを口にしなかったか。
 ―――もう、これで終わりにできるかなぁ…
 本当にどうでもよくなったとき、彼はよくそうぼやいていた。
 だから、違う可能性ももちろんある。
 ぐるぐると考えていた誠人だが、柊一の行動を見て血相を変えた。
 天音本人は気付いていないが、あれは。
「………っ…」
 ぎり、と歯噛みして、誠人が叫んだ。
「柊一! やめろって!」


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