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【艦これ】艦隊これくしょんでエロパロ13 (避難所2)
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DMMのブラウザゲーム、艦隊これくしょん〜艦これ〜のエロパロスレです。
エロ妄想なりSSなりご自由にどうぞ。
シュチュやネタ妄想雑談しつつ、ゆるーく行きましょう。
SSは形式不問、長いのも短いのもエロいのもエロくないのもご自由に。
リョナ・強姦・死姦・スカトロ・ふたなり・性転換などの特殊嗜好を含む内容は注意書き必須
百合・女性提督ネタは百合スレで、こちらに投下の場合は注意書き推奨
【艦これ】 艦隊これくしょんで百合 ←検索したら出ます
■■禁止事項
批難中傷・荒らし
SS作者以外による改変/改竄および他スレへの投下
投下のあからさまな妨害・その他スレの空気を悪くする言動
上記を行った場合は警告なしで削除とホスト規制します。
※次スレは>>980を踏んだ人が立ててください。
公式
http://www.dmm.com/netgame/feature/kancolle.html
公式漫画
http://www.famitsu.com/comic_clear/se_kancolle/
保管庫
http://www55.atwiki.jp/kancolle_ero/
避難所
http://jbbs.shitaraba.net/otaku/16725/
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私一人しかいないから。
後ろの扉が閉まっているから。
躊躇せずこんな事をしたのだろう。
いや、扉は本当に閉まっている?
自問によって即座に頭を回転させ、背後の扉の状態を確認。
「大丈夫ね……」
そういえば、さっき自分で閉めていた。
自分のした事を忘れて再度確認するとは、なんて間抜けな。
一先ず誰かに見られていないようで、安心した。
気を取り直して向き直ると、前方にこじんまりと置かれたベッドが目に入る。
虫が花の蜜の香りに誘われて……とはよく使われる比喩だけど、その比喩は、今は全く合わないだろう。
服と寝具に染み付いた男臭い匂いに誘われる女。
どこに可憐な、あるいは妖艶な花らしさがあると言うのか。
分かりやすい、万人が感じる"いい匂い"ではない。
それでも、あの人と体を寄せ合ったり、この寝具で体を重ねたりしてきた私は、
この匂いにはすっかり毒されている。
私にとっては"いい匂い"。
だから、腕に軍服を抱えたままそのベッドに、どさっ、と倒れこんだ。
あの人の匂いが宙を舞ったように思えた。
そんな中で大胆に軍服を顔に近づけ、息を吸い込む。
すーっ。
「はぁぁぁぁ……」
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思い切り深呼吸。
あの人の匂い。
いつまでもこの匂いを嗅いで安らぎに身を投げたい。
でも、逆に言えばここにあるのは匂いだけ。
残り物の匂いと温もりだけで、源のあの人は今いない。
中身のないこの軍服に不満をぶつける。
「早く、帰ってきなさい……」
こんな残り物の匂いと温もりに包まれているだけなのに、眠くなってきた。
提督が普段から執務をこっちに半分押し付けるから。
提督が声もかけないで何処かへ行ってしまって暇だから。
提督のせいだ。
……決めた。
このまま、少し仮眠を取ろう。
提督が戻るまでに起きればいい。数十分くらいなら大丈夫だろう。
不貞腐れの気持ち半分の顕れで横向きに寝転がる。
少しの匂いと温もりが残るこの服をしっかりと胸に抱き、
頭の中で悪魔と共に色々な言い訳を並べてから、私は瞼を閉じた。
悪魔は、いつまでも自分の味方だと思い込んだままに。
……………………
…………
……
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着替えが面倒だから、上着だけ脱いで外套を羽織るという何とも中途半端な格好になった訳だが、
暖かいラーメンを食べてスープもしっかり飲んできたから、鎮守府に戻るまでにはこの熱は持つだろう。
間宮の料理は美味いのは間違いないが、
ああいう頑固親父が作るような手間のかかるラーメンは外に出ないと味わえん。
ただでさえ売れるラーメンは、
この季節では更に拍車がかかるのか、最近だと店外で待たされる事も多くなった。
待っている間は寒いし、あの味を家でも再現できないかと考え――るまでもなく断念する。
ラーメンにはにんにくを入れるだの麺は硬い方がいいだの頭の中で考えているうちに、
ひっそりと潜り込むように門番に通してもらった。
外出するなら護衛をつける等五月蝿いのを適当にあしらうのも面倒になってきたから、
今度から無視でも決め込もうか。
一般人の格好でいれば、そんなものは必要ない。
さて、遥々階段を登って高い階にある執務室にたどり着き、書き残したメモを回収したのだが、妙だ。
座椅子にかけておいたはずの上着が、見当たらないのだ。
また、部屋の明かりを消してきた事を忘れるような記憶障害にも罹っていない。
明らかに誰かが侵入した形跡があるが、なくなったのは自分の服のみ。
泥棒なら提督の服だけを盗む意味が分からないし、まず門番や艦娘に取っ捕まえられる。
一先ず代えの服を出そうと寝室を覗いて、事件は解決した。
確かに泥棒が寝ていた。
泥棒改め大井は、どういう訳か自分の軍服を胸に抱き、決して離すまいとしていた。
短いスカートから伸びる足を存分に晒し、
この冬の中を掛け布団無しで寝入っているのは、耐寒仕様も備えた艦娘ならではだろう。
だから、そんな事は別に問題ではない。
自分が先程まで着用していた衣服で、
まるで嗅いでいるかのように鼻と口元を覆って寝息を立てているのが問題なのだ。
何の意識もしない訳がない。
この光景を頭の中で噛み砕いた時、自分の顔は、眠れる大井に放火された。
顔が焼けるように熱い。
ラーメンを食べた事による幸福な熱はどこかへ吹き飛び、冬にも関わらず汗が噴き出す感覚に襲われる。
気づけば息切れを起こしたのか、胸も苦しい。
少し立ちくらみがして、ふら、と後退りしたが、壁に手をついたお陰で派手な音も立てずに済んだ。
それでも、大井が目を覚ましていないか、息を殺して顔を覗き込む。
大井の前髪は眉を上手い具合に隠しているので、女らしい睫毛のついた瞼しか見えず、
これだけではどんな気持ちで寝入っているのか読み取れない。
寝ていようが目を覚まそうがこの鼓動は収まらないが、ともかくは起きていないようではあった。
ここでこそ提督の決断は試されると意識した時、ある考えが浮かんだ。
散々言われた"時間と場所を弁えて下さい"の雷撃脅迫に基き、寝込みを襲うのは今度にしてやる。
だからと言ってこの好機を逃す等、キスカ作戦で濃霧を逃す事と同じ程度にはあってはならない事だ。
踵を返すと同時、気持ち悪く歪んだ顔を引き締める。
誰かが勝手に起こす事のないよう扉はしっかり閉め、自分は一旦忍び足でこの場を立ち去った。
……………………
…………
……
-
腕時計を見れば、あれから三十分は経つか。
その間にやりたい事は終わらせた。
後は目標が姿を現すのみ。
結局代えの上着は出さずに、ワイシャツの格好で執務室に篭らずに彷徨う事にしている。
あそこに篭っていたら目標が目を覚ましても姿を現さないかもしれないからだ。
只、出くわす艦娘に一々この格好を聞かれて洗濯中だの冬のクールビズだの答えるのもまた面倒になってきた。
何より、"鍛えられていない線の細さが見え見えですわ"と、容赦なく急所を突く奴がいたからしょげる。
執務室に繋がる廊下に足を踏み入れてみると、思惑通りに目標が姿を現していた。
こちらの存在でも待ち構えているのか、執務室の扉に寄りかかっている。
「……あ」
近づこうと歩むと、数多の板がぎしぎしした音で大井に接近を知らせた。
こちらに首を回して姿を確認するなり駆け足で寄って来て毒を浴びせる。
の割には、普段の微笑が二割増のように見えるが。
「おかえりなさい。提督ともあろう御方が、執務を放り出しての外出は楽しかったですか」
そこからか。
勘違いしないで欲しいのだが、自分はしっかりと書類を束ねて整理するところまで終わらせたんだ。
それから、通す書類が減るよう出撃回数を下げたり等もしているが、これは言う必要はないだろう。
「あ、そうだったんですか」
少し驚きを秘めたように目が見開かれる。
こうした話とは全く別のところで、自分は少し考えている事があった。
――さっきまで服なんか抱き締めていた癖に、それの主に対しては何も無いのか――
「提督にしては、仕事が……あっ!」
少し妬いた自分は結果、行動を起こした。
喋り途中でも構わずに一歩踏み出して目前の大井を腕に抱き締めた。
大井はもぞもぞと身動ぎした後、拒絶するように掌を胸に押し当ててくる。
「ちょっと、提督っ、何す……」
「誰も見てないんだから、良いだろう?」
「……調子に乗らないで下さい」
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その小声は震えているが、それが歓喜によるもののように聞こえるのは、自分が自意識過剰なのだろうか。
首を動かして廊下を見渡してから、大井は拒絶する手をゆっくりと下ろし、私の背中に回した。
大井も抱き付く姿勢になった事で、自分の胸に山が二つ押し当てられる。
こいつは、これについて意識しているのかね。
そして、私の胸の音でも聞くかのように、頭は九十度回転させ、…………。
こいつは背中といい胸といい、私の体に耳を当てるのが好きなのか。
こんな可笑しな趣味をしているから、
速まる鼓動と態度をなるべく連動させないようにする訓練を否応無しにさせられているような錯覚さえ覚える。
さて、何の話だったか。
「で、どこに行ってたんです」
「近所のラーメン屋だよ」
大井は、獲物を捕まえた食虫植物のようにその体勢から数ミリも動かず、
呟くように再度疑問を投げかける。
「……なんで一人で行くんですか」
機嫌が悪いのか。
声は小さいが、あまりその声色に優しさ等は添付されていない。
むしろ、機嫌が悪い事を暗に示すような……。
「男しか行かないようなラーメン屋には、ついてこないだろう?」
「提督に誘われれば行きます」
なんと。
女にとってはラーメン屋は入り辛い店の中でも上位に食い込むような店だと思っていたが。
入り易い入り辛いの前に、まず行こうとさえ思わないだろう。
まず一緒に行ったとして、大井は注文でもするのか。
金は落とさないのに混んでいる店の席を一人独占するだけの連れは、
こちらとしても店に申し訳なくなるので、只ついてくるのであれば正直遠慮したい。
「私だってラーメンは食べます」
「何より、どこへ行くかじゃなくて、誰と行くかで楽しさが決まるって、どこかで聞きました」
出た。
何かの切欠で出てくる、普段は内に秘められている大井の一面が。
これだ。
これを引っ張り出すのがとても楽しいのだ。
話が逸れた。
"どこか"と言う抽象的な言葉は釈然としないが、その意見には自分も大いに賛同できる。
女とラーメンなんてあり得ない、と言う固定概念が長年自分にはあったが、
こう言うのなら、今度から大井を随伴艦にラーメン屋へ出撃する一考の余地もあるのかもしれない。
誰と行くかで楽しさが決まる、と言うのは、確か旅行での一つの考え方だったとうろ覚えに留めていた気がする。
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「なら、今度な」
「はい。秘書艦に何も言わずに、どこかに行っちゃ駄目ですからね」
聞いているこちらが微笑ましくなるが、実際の自分は意地汚い顔に変貌を遂げる。
何せ、そろそろ本題に入ろうと思っていたのだ。
大井がこちらを見上げていなくてよかった。
そして、用意していた一つの質問を待ち遠しく投下する。
「ところで、さっき執務室に戻ったら置いていた上着が無くなっていたんだが、大井は知らないか?」
「……!」
確かに大井は先程から私に抱き付いて動かないままだったが、
たった今、違う硬直に変わった気がした。
「……し」
「ん?」
「知りませんよ提督の上着なんて私は提督の家政婦か何かじゃないんですから
風でどこかにでも飛ばされたんじゃないですか?
それよりも提督はどこまで行っても駄目で困った人ですね自分の着用する軍服をなくすなんて
あるいはこういう時の為に私みたいに代わりの服でも用意しておけばいいのに
備えあれば憂いなしって霧島さんがいつも言っているでしょう
これだから周りから駄目だのクソだの言われるんですよそんな人の秘書やってる私の気持ちにもなって下さい
そんな穴だらけの考えで戦場を指揮していたらどうなるか分かって……」
「おかしいな。窓は閉まっていた筈だが」
「……開いてました」
嘘言え。
この冬の中、窓を開ける訳がない。
実際帰った時も確かに閉まっていた。
何より、窓から入ってきた風が衣服を窓の外に飛ばすと言う現象等、到底あり得る事ではないと思う。
大井は悟られまいとひどく焦っているのか、
普段の高速艦から転じたかのようなとても速い口調で毒を並べる。
よくもまあそこまで人を罵る言葉がすらすらと出てくるものだ。
しかし全てを知っている自分はしょげるどころか、
笑いを顔に放出する代わりに横隔膜が動かないよう堪えていた。
上半身を密着されているこの状態で腹から笑うのは拙い。
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「ところで、最近の写真技術の進歩は著しいものがあると思わないかな」
「……?」
ここで、自分は一枚の写真を取り出し、話を続ける。
話を転換する接続詞をつけているが、実は話は変わっていないのだ。
それを、未だ胸に耳をつけたままの大井の顔の前に持って行き、意地悪く見せ付ける。
「ほら、綺麗に撮れているだろ?」
「……っ!」
大井は、初めてこちらに顔を向けた。その顔は赤い。
先程の自分もこんな顔をしていたのだろうか。いや、ないな。
だって大井は、ただ赤いだけでなく、知られたくない事を全て知られて羞恥心に塗れた顔をしている。
大井は瞬時に両手を私の胸に突いて体を引っぺがした。
「私の上着は、どんな匂いだったんだ?」
「……ぁ、あ、あ……」
そう。
あの後、青葉にカメラを借りて大井の寝姿を撮影、すぐに写真の現像を青葉に頼んでいたのだ。
無論、青葉からは間宮のあいすくりん券を出すよう交渉されたので、それに応じて極秘に進呈してやった。
そのお陰でこの写真には、自分がこの目で見た光景と同じものが写っている。
嗚呼全く。
いつまでも残しておきたいこの微笑ましい、愛らしい光景を、
これだけ鮮明に紙に残す事ができるとは、いい時代になったものだな。
そう思わないか?
「なあ。大井?」
「提督の馬鹿ーっ!!」
……………………
…………
……
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土俵際まで追い詰めたと確信したあの時、何割か引き出されたらしい艦娘の底力か何かを持って、
自分は平手打ち一つでノックアウトさせられた。
そして気が付けば、明石の頬の軽い手当ての下、こうして療養室の寝具にて目を覚ます事になった。
ちなみに、傍に写真が落ちていたりはしなかったらしい。
……没収されたな。
それでも、大井をあれだけ弄り倒す事ができたので、自分は満足だ。
笑いが漏れる。
「くすっ、ふふ……ふふ……」
「……提督は、まだ少し修理した方がいいみたいですね」
大井から散々馬鹿と言われたように、馬鹿は修理しても直らないよ。
自業自得の結果、頬の修理を任せてしまうのは申し訳ないと思うが。
「分かっているなら、女の子をあんまりいじめちゃ、めっ、ですよ?」
「分かっていても、やめられないなあ」
全く。可愛い奴だ。
-
次
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時刻は、フタフタマルマル。
今日も今日とて、自室を抜け出す時に北上さんに気付かれる事はなかったよう。
私はまたいつしかの夜這いの時同様、忍び足で執務室を目指した。
暗闇が多くの廊下を包む庁舎内を時間をかけて移動し、こっそり執務室の扉を開ける。
しかし、明かりが全く点されていないと思っていた私の目には、僅かな光が入ってきた。
見れば、炬燵に乗った機能美な電気スタンドが、あの人を照らしている。
――なんで起きてるの――
――せっかく寝ているところに潜り込もうと思ったのに――
私は無意識に舌打ちする癖を抑え込んだ。
私と気付いてか、あるいは背後からの刺客に気付いていないか、
この人は大仏のように胡座を掻いたまま微動だにしない。
だから、その無防備な背中に覆い被さるように抱き付いた。
肩越しに目を向けると、炬燵には徳利と何やら透明の液体が入った猪口が乗っている。
この人の耳に向かって、添い寝出来なかった事による勝手な不満を、私は息をするように軽口に乗せる。
「時間管理もちゃんとできないんですか? 今度から寝坊したら、魚雷で叩き起こしますよ?」
「…………」
この人は、何も返してはこなかった。
座ったまま寝ているのか? その耳に再度囁きかける。
「聞いてます?」
「……私の」
「え? 何ですか?」
既に酔っているらしい事が、この反応の遅さと、いつもよりゆったりとした口調から察せられた。
突然ぽつりと零れた一言は聞き取るのが難しい程度に空気を震わせる力が込められていなくて、
もう少し声量を上げてほしいという意味を持たせて聞き返す。
そして、次に来る筈の言葉をちゃんと拾おうと私は耳に意識を集中させた。
「大好きな大井の声を聞き漏らす筈がないさ」
"大好き"
"大好き"
"大好き"
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次に拾った言葉の特定の一句が、私の頭の中で何度も壁に反射、反響する。
そうして反芻した結果、私は顔から炎上した。
とても熱い。
動揺を悟られまいと、この人の体に引っ付けた体や手が震えないよう気を張り、
応急的に無理矢理口をつく。
「な、何を……、馬鹿ですか……っ」
――しっかりなさい! 似たような事を普段言っている私が何て体たらく――
"愛してます"と言う科白も、
実のところ顔が熱くなるのを、我慢したり知らない振りをして言っているんですけどね。
どうやらこの人にそれはばれていないらしい。
「おやあ、いつもの毒はどうした〜?」
動揺し切っている事は完全にばれていた。
そんな私とは対に、この人は肩の力を抜いて呑気な調子でからかう。
「その減らず口を縫って差し上げましょうか……!」
「おお、こわいこわい」
震える口で何とかお望み通りの毒を吐いてあげたが、この人は、ちっとも怖くなさげにからからと笑う。
座るかい、と体を少し横にずらしてくれたので、
空いた右側のスペースに、熱くなった顔があまり見られないよう逸らし気味のままで座り込む。
炬燵の一辺は二人で入るには少々狭く感じたが、何の不満もなかった。
胡坐を掻くこの人の膝が、当たるか当たらないかの位置に正座の位置を調整する。
この人は月に夢中なのか、顔を逸らしても何も言ってこなかったので、
そのうち私もぼんやりと月を見上げるくらいの平静を取り戻すことができた。
その月を見ていると、かの夏目漱石に纏わる有名な話が思い浮かんだので、
なんでもないような振りをしてそれを口にしてみる。
「……綺麗ですね、月」
「…………」
この人は、何も、応えない。
何を思っているんだろう。
「……そうだね」
沈黙のテンポの中、不意に相槌を打たれ、肩がビクつく。
さっきまでのこの人のあっけらかんとした態度からの静かな相槌は、
手に持つそれが酒ではなく水ではないかと疑心を持たせるほどの変わりようだった。
「私も、そう思う。とても……」
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一句ずつ噛み締めるような提督の相槌に、私は焦燥感を焚かれ少し苛々していた。
それはどういう意味?
文字通り月がそう見えるだけ? それとも、私が放った言葉と同じように?
目前の陶器に入っている液体が間違いなく酒であることが、
それの匂いから、この人のいつもよりゆっくりとした口調から断定できる。
――やっぱり深い意味はないのかな――
少しの沈黙の後、唐突に私の膝に置いていた左手をやんわりと掴まれ、掌を開けられる。
そしてどこに仕込んでいたのか、黒色の小さな箱が置かれた。
開けてごらん、と、言われる通りにしてみる。
「……え? これ……」
「……それは、指輪と言う物だ」
見れば分かる。
指以外に通せる部位はないと断言できるサイズのその輪は、箱の台座で銀色の輝きと、この人の思いを放っている。
私がこれの意味を考えている間に、提督はそれを嵌めてくれた。
私の、左手の薬指に。
聞いた話では、この指に指輪を贈られる意味は。
顔を見上げると、この人はまたさっさと月を肴に猪口を呷り始めていた。
沈黙が続く。
「何か言う事はないんですか」
沈黙が続く。
私の訴えは拾われることなく、宙に霧散する。
この人は今、何を思っているんだろう。
この人はなぜ、これを私にくれたのだろう。
目を伏せる。
「……綺麗だけど、綺麗な丸ではないね」
突然そう呟くこの人の横顔を見やる。
この人は酔っている筈なのに、顔が赤い様子はない。
スキンシップする時のように不自然なまでに引き締めた顔でもなく、たまに見せる子供のような顔でもない。
あくまでもこの人は、顔に力の入っていない真剣な様子でいた。
この人の視線の先を追うとあるのは、よく目を凝らさないと見えない程度の小さな星屑に囲まれて輝く夜空の重鎮。
あの月は正円かと思いきや、よく見ると確かに完全ではない気がした。
半分に割って左側が右側より面積が小さく見えた。
提督は猪口に酒を注ぎ、それを呑まずに見つめたまま無表情で口を開く。
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「これは持論なんだが」
「月の、あの綺麗なところは見習いたいが、すぐに欠けるところは見習いたくない」
「いつまでたっても、綺麗で何も欠けないように生きていたい」
「ここにいる皆もそうだが、特に大井がいなくなると、例えるなら半月位になってしまう」
「……ずっと一緒にいてくれるか?」
そしてこの人はこちらに顔を合わせ、問いてくる。
言葉は疑問形だけど、酒が入っている筈なのに据わっている提督の目に、
不安気な様子などは全く見受けられなかった。
寧ろ絶対の自信しか見えないその理由は、人の気を大きくする酒のお陰ではないと信じたい。
否、信じる。信じられる。
「……悪い気持ちじゃないわね」
私は、素っ気ないようにそれだけ応え、この後に備えて顔を窓の外に向けた。
……今まで私を大切にしてくれたこの人に、ここに至るまで求められて、良い気持ちでない筈がない。
切なさのあまりか、私の内側の何かがとくんとくんと、ゆっくりとだが大きく脈打つ。
それがポンプであるかのように、目から温かい水の粒が静かに押し出された。
月が、夜空が、歪む。
顔を逸らしておいてよかった。
そして、この人の体に寄り掛かり、みっともない泣き顔が見えないように目を伏せる。
涙を流しているのがばれているのかいないのか、この人はただ私の頭を、温かく撫でてくれた。
冬の月見の切り上げは、
月が窓から見えなくなるほど高く昇るのが先か、この人が酔い潰れるのが先か。
何れにせよ、まだまだ続くことだろう。
一頻り涙を流したら、私を選んだ理由をこの人から問い質してみようと思う。
時間は、存分にあるのだから。
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ストック終わり
それにしても周りの語彙の凄さを見てると憧れやら嫉妬やら色々出てくる
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ダンチョネワロタwwそしてことごとく大井さんのリアクションの破壊力たるや
心理の機微といい気の利いた小ネタといい、何よりこれだけの分量を読ませる筆力
GJでした、次はエロスも期待してまs
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大井さんかわいい… 乙です
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大井さんマジ一途乙
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大井さん!
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マジGJ
これほどの人が嫉妬する語彙力って一体……うごご
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8月5日1:00 - 13:00にしたらばでシステムメンテナンスが行われます。
この時間の間は閲覧・投稿はできないそうです。
詳細:http://blog.livedoor.jp/bbsnews/archives/54890094.html
以上お知らせでした。
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SSにおいて重要なのは語彙ではない。シチュである。
まあそのシチュを表現するのにある程度の語彙は必要だけど、語彙を増やせば萌えるor抜けるようになるわけではないのだ
>>243
乙
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乙
-
大井は提督と愛を識る、後魚雷
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>>243
了解であります
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今日は何の日?
メンテダヨー
子の日、ちゃんとお知らせ出来たよー
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おせーよ!!
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榛名に改二が来るようだし、榛名の話でも投稿されないかなぁ……
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大井っちの人ほんとすこ
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下げ忘れすまん
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私の名は松本幸四郎、ベスパの士官で階級は大尉
榛名改ニは縞々、縞々パンツです!!
そう言っているのは秘書艦の吹雪君、私は風林火山君に進めれるままに棒各くんの改造ボタンにシューーーート
ダズル迷彩とは日本語訳で幻惑迷彩だそうだ
幻惑、幻惑?だれを惑わす気なのかね、ハルナス君!!!11!
着底している場合ではないぞ!夕日に向かって大破進撃だ1111!!!
そして私は今日も春巻き君を送り出すのだった
やっぱKOUSIROUコピペは難しいね、榛名改ニはエロい系じゃなくて儚い系にになった感じ
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同じキャラで別ネタ書くにしても設定とかをどうするか迷う
話としての繋がりがなくても設定が一緒な面とかもあるし
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別ルートとか別軸とか書いておけばいいんじゃないかな
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同じキャラで和姦、陵辱、非エロと書いたけど設定は特に統一しなかった
コテハンじゃなければ気にする必要はないと思うよ。
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ハコテンでもない限りは、作品艦の設定の共通点が薄いくらいなら、別作者として認識するしなぁ
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並行世界でうんたらかんたら
って確か過去にもそんな作品あったよな
エンドレスエイト…
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8日連続同じプレイか
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エンドレスエイトがもう五年も前なんだよな…うっ頭の中でナニカガ
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その5年の間に長門と聞いてもビッグ7しか連想できなくなってしまった
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永遠に8月8日を繰り返す……8月8日内に夏イベをクリアしなければ逃れられない
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マジレスするとエンドレスエイトってのは終わらない8月な
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>>263
アニメは見たことないけど内容は知ってる
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>>259
原作版で二万回近いけど少しずつ違うんじゃね?
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>>264
嫌な事件だったね…
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実はとうの昔に人類は絶滅しており、艦娘や提督は現在かつての人類の位置にいる妖精さんによって対深海棲艦に対抗するために復活させた人類を改造した巨人兵器
地図の名前が違うのはそれだけ時間が経過したためという説
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どっちの誤爆だw
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くっ誤爆…曙の髪で吊ってくる
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曙の髪でシコる?(難聴
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か、髪の毛で扱けだなんて何考えてんのよクソ提督!
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綾波改二「えっ曙さんもそのために伸ばしてるんじゃないですか?」
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由良「………」
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初等部にあがるころ両親を亡くした俺は軍人でもあった叔父に引き取られ養子ということで鎮守府で一緒に暮らした
そこの主力艦娘である扶桑姉様、山城姉さん(様をつけると嫌がるのだ)にはまるで実の弟のように育て可愛がられた
この地域では成人を目前に迎えた男子に近親者が筆卸しをするという大昔の風習が残っていたが
もうじきその年齡を迎える俺は身寄りも無いし、関係のない話だと思っていた
そして迎えた誕生日の夜、蒸せかえるような暑さから何となく寝付けずにいたら
部屋の襖が静かに開き、そこには風呂上がりなのか、ほのかに肌を上気させた浴衣姿の扶桑姉様と山城姉さんの姿が
「山城、大丈夫?砲戦よ」
「姉さまより先でいいのでしょうか…」
とかそんな話で
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またおねショタか、と思わなくもない……が、まああれはあれでよい。
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最終兵器艦娘という電波が
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>>274
成人になる儀式ときいてなぜかライオン狩りしたり村で一番高い櫓からバンジーしたりする
アフリカンな提督という電波を受信したんですが扶桑姉様prpr
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>>277
加古あたりがある日もじもじしながら「あのさぁ…私大人になっちゃったんだよね」
とか報告に来るのいいよね…
いや加古だともうきてるか
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「ちょっ! 何触ってんのよ! ぶつわよ叩くわよ!? 妙高お姉さんに言いつけるわよ!?」
「構わん。触らせろ」
陸の上では駆逐艦娘は見た目どうりの力しかない。艤装でも持ち出せば別だが管理はきちんとしている。
そして、重巡は確かに力もあるのだが……
ウチには妙高はいない。
だから触りまくった。ぽかぽかと殴るのが可愛くて、何度も何度も。
思えば油断していたのだ、姉の名を呼ぶ戦艦、姉妹を探す雷巡。彼女たちとは違うと思っていたのだ。
ある日、秘書艦にも関わらす0800を過ぎても現れない初風を訝しみ彼女を探した。
海に向かって呟いていた。
どうして、助けてくれないのか。あの強い妙高お姉さんはどこにいったのかと。
ため息混じりに「この想いサイゴン沖の妙高お姉さんに届いてよ」と言った時にはゾッとした。
だけど、初風を見ていたのは俺だけじゃなかったんだ。
見るに見かねたババ、もとい熟れた、間違えた。とにかく狼が俺の部屋に来た。
セクハラというのがこんなにもおぞましいものだとは思わなかった。とだけ伝えよう。
そして、初風に強がりを言えるなら。
セクハラなんてしないなんて、言わないよ絶対。
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唐突なキャラdis好きくない
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>>278
報告するまでもなく、提督は艦娘の健康状態(意味深)を全部把握してるんじゃないか
装備の状態の把握は重要だよね
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そーいや未開地域の女子は、初潮が来ると、処女膜を棒で破るという破瓜儀式を成人の儀式とするとか何とか
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キャラdisっていうほどキャラdisか?
提督が駆逐艦以外に興味がない性癖なら見た目が大人っぽい艦娘を多少辛辣に扱うこともあるだろう
そういう話を他の場所で読んだこともあるし
艦娘の話が投下されたらその直後に「むかついたからその艦娘をわざと轟沈させたかとがある」ってあからさまに悪意を感じる書き込みするのは明らかにdisってるけどな
以前のエロパロスレにたまにあったわ
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深海棲艦の和姦、純愛モノがみたいなぁ! チラッ
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>>284
レ級の提督逆レイプものとかどうすかね
鎮守府に忍び込んだレ級が提督を縛って人質にして金剛とかの目の前でレイプ
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深海で指揮をとる深海提督とレ級の日常とか
記憶喪失のリ級を拾って鎮守府のマスコットにしちゃうとか
自我が埋まれて提督に恋しちゃったイ級の離反とか?
敵味方より言葉の壁がデカイなw
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ヲ級のほのぼの話なら保管庫にあったけど深海棲艦との純愛ものはあまりないよねー
ヲ級って「ヲ!」しか喋っているのをしかほとんど見たことないけどこれって公式で何かあった?それとも二次創作設定が浸透してるだけ?
少なくとも戦艦やボス級は人間の言語は喋れそうな気はする
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>>287
半公式レベルならこんな感じ
http://livedoor.blogimg.jp/zakuzaku911/imgs/f/6/f6a21015.jpg
水雷戦隊クロニクル
http://livedoor.blogimg.jp/abacabu-abacabu/imgs/7/6/7632de37.jpg
古代語なら通じるとかだと嫌だなぁ
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>>288
一枚目わろたwwwwww
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深海棲艦といえど資本主義には勝てないのだ
札束でペチペチやればやれる
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札束でペチペチやるまでに札束が残っていればいいんだがな
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札束ペチペチの夢ならアマゾン先生が叶えてくれるで
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89%E5%93%81-%E3%80%90%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89%E5%93%81%E3%80%91%E3%80%90100%E4%B8%87%E5%86%86%E3%82%B0%E3%83%83%E3%82%BA%E3%80%91-%E6%96%B0%E5%9E%8B-%E7%99%BE%E4%B8%87%E5%86%86%E6%9C%AD-%E3%83%A1%E3%83%A2%E5%B8%B3-%E3%83%90%E3%83%A9%E3%82%A8%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%B0%E3%83%83%E3%82%BA/dp/B001T8QE2A
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>>292
アドレス長ったらしくなったから短いやつ
http://www.amazon.co.jp/dp/B001T8QE2A/ref=cm_sw_r_tw_dp_O8H2tb18GWSQESG1
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「ゴムありホ別で五万。これ以上は負けられないヲ」
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前スレ>>807から大鳳と祥鳳の修羅場ものを投下したものです。
続編を書いたので投下します。
例によってドロドロが苦手な方はスルーをお願いします。
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三章
1
自然な目覚め。ぼやけた意識が輪郭を取り戻すと、ある焦燥がさあっと胸を撫ぜ下ろした。上体をばねの様に跳ね起こし、未だ視界
の霞むまま、提督は枕元に時計の時刻を見る。盤面上の短針は、ちょうど五を指した所であった。
それは習慣だった。大鳳が朝の走りこみに彼を誘うようになってから、彼は自身の寝顔の見られることを嫌い、五時の十分前に目覚
ましを鳴らしているのである。傷心の昨晩、ただただ逃避を求めた提督は、何にも意の向かうことなくベッドへと沈んだ。裏側のつま
みを押し上げるだけのごく小さな手間さえ億劫でならなかった。時刻をセットしなければという観念はあったのだが、結局意識の落ち
るまでにそれを果たすことはできなかったのである。
体躯が独りでに覚醒したのは、羞恥と恐怖による作用があったためだ。寝顔を見られる、意識の無い間に部屋に入られる。自身の秘匿、
意識的なものであれ無意識的なものであれ、そういったものが露呈してしまうという事に厭悪の念がある提督であった。こと大鳳が相
手となると、なにやらぞっとしないのである。
その朝、彼女は部屋へとやってこなかった。どちらにせよ、万斛の愁いに浸った今の精神状態ではランニングなぞできるわけもない。
朝食まで無聊な時間を過ごす事ができたのは幸いであって、彼は彼女と会ったときへの備えとしてあらかじめ言葉を選び取ることがで
きた。
非は自身にあるから相手の出方に合わせねばならない。だがそれでも、深刻なことにはならなそうだと楽観できた。あのあてつけは、
向けられていた好意を知っていた上で行われた。舌を差し込んだとき、一瞬の恍惚と悦楽の吐息が唇に感じられたし、落涙は嫌悪によ
るものでない事も分かっていた。祥鳳について無遠慮に踏み込んだあの発言がトリッガーだった事を、彼女とて自覚しているはずであ
る。ならば反省やら悔悟やらが凝結して、寧ろ相手の方から様子を伺ってくるやもしれない。気遣わしく思う必要はないと結論付ける
のに、大して時間は掛からなかった。
大鳳が執務室の戸を開けたのは九時丁度、通常の業務開始時刻である。奇妙な緊張感を纏いながら、彼女は提督の隣に黙って並んだ。
仔細な様子はなかった。積まれた書類を手前に引き寄せ電卓を弾きペンを持ち、彼がそうして仕事をおずおず始めてみると、大鳳も
黙して自身の職務に手をつけた。デスクワークの時間においては、普段の日も割りに静かではある。だが今日は何時ものように挨拶を
端緒としなかったために、異様な重苦しさが両者の息をきりきり詰まらせるのだった。
この展開は、提督が想定した中では最も面倒なものであった。いっそ赤ら顔に怒ってくれていたほうが、まだ宥めようもあったのだ。
恬然とした表情が作り物であることに疑いは無い。だとしてもこちらから不意に謝ってしまっては、寧ろ彼女の機嫌は修復不可能なレ
ベルにまで損なわれてしまうだろう。生娘の心理の機微ほど明瞭でないものもなく、提督とてその夜陰の原野には迂闊に踏み込めない
のだった。
昼を食べるときに必要最低限のコミュニケーションはあったものの、結局日の落ちるまで気散じな会話はなかった。もし業務外の雑談
をしようとすれば、その話題はどう繕ってみた所で昨晩の事となってしまう。口を開いたが最後、今日やらねばならない最低限の事さ
え手に付かなくなるだろうことを、両者は察知していたのだった。
即ち、口火の切られたのは執務の終了後、部屋をでる直前になってからであった。
倦怠の体を労わるように、開いた窓から風が通る。部屋に篭る執務の熱が、攪拌されて冷まされた。互いが互いを散々忖度し尽くし
た為に、寧ろ停滞してしまったこの状況において、解決の端緒となるは、やはり立ち去る権利の有された彼女の方であったのだった。
「提督」
見送る視線をうなじに感じ、ドアノブに掛かる指が強張っていた。大鳳は緊張によって震える声音にそう一言呼びかけると、小さな
双肩を縮こまらせた。
「なんだ?」
背中へ聞き返し、彼は椅子から立ち上がる。机の前に立ち、少しだけ体重を預けてみると、ぎしりと耳障りな音が鳴った。
-
厭に間が開いた。彼女の中では、既に言葉は定まっているはずであった。呼びかけてしまった時点で後に引く事もできないのに、躊
躇が喉を狭めているらしい。人差し指で机の淵を叩いてみると、彼女の体躯は、発せられた硬質の音にびくついた。
それが契機となったらしい。一つの長い深呼吸の後、彼女は大仰に振り返る。顰められた眉、睨みつけていると言ってもいいほどに
細められた眼。口は固く結ばれ、背負う覇気は重々しかった。
真剣な表情にしかし、提督は自身も真面目らしい顔を維持するのにかなりの労をとっていた。まさしく沈黙の半日を象徴する表情だ
なと心の中で一人言つと、それもまた何やら面白く思われ、ひくつく頬を押さえ込み、目を逸らして何も考えないようにする。死地に
赴かんばかりの純真さは、立場が違えばコメディだった。
入念に熟成されすぎた言葉が、薄い唇を割った。
「昨晩のことは、忘れたほうがいい?」
癌を告知するような、厳かな風を漂わせた発言だった。しかしこれは朝の暇の間、まず真っ先に予想できたものでもあったのだ。こ
の肩透かしな言葉を聞くや、腹底から猛然と駆け上がってきた嘆息を、彼はすんでの所で飲み込んだ。
どう返答するかも決めていた。間髪いれずに
「お前は忘れたいのか」
そう聞き返すと、彼女は吃驚したように目を見開き、遅れて頬を淡く染める。
「質問を質問で返さないで!」
「なんで」
「あの、困るわ。そんな事聞かれたって、私、答えられない」
両者の間が詰まる。一歩一歩、提督はゆったりと彼女に近づいてゆく。絨毯の踏まれる足音が耳に入るたび、脅えたように眼が涙を
湛えたようだった。とうとう耐え切れなくなると、大鳳は体ごと視線を背ける。ドアノブにもたれる様にして、背が小さく丸められた。
横顔に垂れる一房の髪が、掬い取られ、撫ぜられた。震える肩の強張り、筋立つ手の甲。眼は瞑られ、その拍子に一滴の雫が流れ落ち
る。目尻から頬、そして頤へと煌く筋が顕れ、色白で滑らかな肌を彩った。
頬に手を這わせる。従順に正面へと向いた顔には、しかし脅えの色があった。
「駄目。提督、駄目です……あっ」
僅か押される腕。引き離そうとするその動きに、ほとんど力は込められていない。唇の重なり合うと同時、大鳳は自ずから目を閉ざ
してしまったのだった。
啄びの最中、口の少し離れるたびに、小さな嬌声交じりの吐息が漏れ出す。嬲られる唇の甘い刺激が、胸を締め付けてならなかった。
彼女は縋るようにして、彼の胸元、縒れた白の上着を掴む。浮いた背の隙間に、すかさず腕が入り込み、両者の体躯はぴったりと密着
させられた。
彼の舌が口腔内へと進入する。口の離れた時にしか発せられなかった吐息が、開かれた隙間、唾液の跳ねる音と共に、常時聞こえる
ようになる。羞恥と悦に腰の抜けそうになった彼女は、股の下に差し込まれた大腿に支えられて、何とか立ち続けることができていた。
快楽の蹂躙に蕩けた思考は、更にその先を求めだしたらしい。恐々と言った風ではあったが、大鳳は遂に自ずからも舌を差し出し始
める。ぬめる両者が口と口との間に触れ合うと、羞恥の熱が遅れて彼女の胸を焼く。
供物の捧げられたのを感じ、彼はすかさずにそれを絡めとった。吸い、嬲り、大きな水音の響くたび、記憶の辛さが溶けるように和
らいだ。今、目前の娘を感じ、補填による充足が気を軽くしている。満たされるという感覚ではなく、代替によって補われ、癒えると
いった風だった。自身の腹底の暗い事に驚懼し、だが湧き出す自嘲の痛みさえ、この補填が紛らしてしまうのである。
「ベッドに行くか?」
口を離し、伝う橋もそのままに聞くと、彼女はこくりと頷いた。提督の眼に滲むのは、ただただ深い憐憫の情のみである。
-
2
彼女は褥に横たわった。
既に腹部と首元の装甲は外されていた。肩に掛かる上着を脱がしてみると、滑らかな色白の肌が凄艶である。軽く握られた掌が顔の
横に置かれる。今や露わになった腕の華奢さに、危うげな、無垢の妖艶を感じて、提督は生唾を飲み込んだ。
手折られた茎を思わせる手首に、彼は唇を近づけた。僅かに膨らむ筋を食み、舌を這わせると、閉じられていた指が開いていった。
覆いかぶさる体温と、感ぜられる吐息の熱さ。そして舌の淫靡な感触に、大鳳は胸奥を痒がらせる。意想外の部位であった。故に、
与えられる刺激への覚悟が無く、たちどころに力の抜けるような感じがした。
数分間続いたこの手首への愛撫は彼女の思考悉くを蕩けさせ、眼は溶け落ちそうに潤んでいる。
インナーと肌との間には一縷の隙間も無く、体躯の細さがより際立つ。一度上体を持ち上げた提督は、彼女を俯瞰した後、今度は首筋
へと口を下ろした。
「あっ……」
鎖骨に触れた湿りが、彼女の喉を鳴らした。差し出された舌はそのまま首を登攀し、丁度頤に目尻の触れる場所まで辿り着くと、深く
咥えこむように唇が開かれた。
吸われ、跡の付けられていることを知覚し、大鳳は慌てて抵抗しだした。力の緩びきっていた体が、息を吹き返したかのように暴れる。
顔を背け、肩をよじり、腕は彼の胸を押した。
真意の掴めない内に、恋人のような睦みを受ける不安。それが漠然とした恐怖となって、彼女の胸を痛ませた。ましてや、キスの跡と
は所有の証とも捉えられかねないのである。身の堕ちる感覚が、背徳の悦でもあり、屈辱でもあった。
「駄目、やめ……んっ」
幾ら頭を振っても、彼の口は離れない。一秒、二秒と時間の経過してゆく度、彼女の快楽はその暗がりを増していった。自身の純真
が犯され、蹂躙されている事を、泣き出したい気持ちに受け止めている。それは決して厭悪の感触ではなく、寧ろ被虐の悦びを享受し
ている風だった。首筋のこそばゆさは、やがてぴりぴりとした刺激に変化する。
舌で慰撫した後、口を離して眺めてみれば、濫りがましい鮮やかな朱色が咲いていた。指先で拭うように触れてみると、彼女の口から
は熱い息が吐き出された。
「服で隠しきれないね」
煽られた嗜虐心に従い、そう言って見せると、彼女の瞳には絶望の色が滲んだ。見咎められる場面でも想像したか、眼は潤み、頬は
これ以上ないほどに赤くなった。
腕が、再びぱたりとベッドに落ちる。提督は手首を押さえると、今度は優しく口にキスをする。舌も差し込まず、ただ唇同士を触れ
合わせるだけの接吻であった。
その効果が如何なるものか、きちんとした予測はあった。果たして大鳳の心情は、それとまったく同じ動きを見せたのである。即ち
仮初の恋慕。望む望まざるに関わらず、彼女は想いの通じ合う喜びを垣間見た。甘い歓喜に身を震わせ、刹那の慰みが心中を癒した。
だが奥深く、根源の感情は寧ろ、引き千切れそうなほどの切なさ。どうせ裏切られるのだろうという諦観の観測が、胸底を炙り疼かせ
るのだった。
悦楽への端緒として、最終的、そして究極的な感情は悲壮である。身の結合とは反対に、感情においては繋がらない。そういった背反
の空虚こそが、性の快楽を最大のものとさせる。提督は大鳳を好いてはいなかった。そして、ただ彼女のよがる姿を見、それを慰めと
したかったのだ。
このキスに、いや愛撫全てにおいて慈しみなど込もってはいない。慕情の無きを伝播させるに、恋愛的好意を用いるのだった。彼女
を貪婪にさせ、ひいては淫猥と呼べるほどにまで乱れさせる。その目的への手段として、清白な純真を踏み躙り、汚すのだ。
-
後ろ首の留め具を外す。腹の辺りの弛みを掴み、引っ張った。インナーは滑らかな肌をするすると滑り、遂に薄い膨らみを通り越え
た。
露わになった頂を隠そうとしたのか、ほんの少し、腕の動く気配があった。だが逡巡の硬直の後、僅かに浮いた手の甲は、力の入っ
たまま降ろされる。含羞の顔を横へと逸らし、彼女は唇を噛み締めて、体に注がれる視線を受け止めた。
やはりコンプレックスなのだろうと思われた。提督は平坦のそこ見、加虐の悦を押さえ込む事も無く、頬を吊り上げ口を開いた。
「ちっちゃい」
嘲る語調が癪に障ったか、珍しく本気で怒っているらしい眼を持って、彼女は提督を睨みつける。申し訳なさの欠片もない、余裕の
笑みを視界に入れて、口惜しさは一向募るばかり。
彼唯一の弱点を知った身上、報復としてその話題を出すのに躊躇はなかった。彼女は、彼以上の嘲りの声音に、
「祥鳳さんと比べて?」
と言う。果たして、彼の目にも怒りの色が滲み、胸のすっとする様な心地になったのもつかの間、胸底の痒くなるような快楽が思考
を中断させた。
「あっ……ん、はぁ」
右胸の蕾が無遠慮に摘まれ、空いているほうには遅れて唇の感触があった。繊細な指遣いと動物的なぬめりに、背筋がぴんと強張っ
た。
ただ痛くはないというだけの、容赦の無い愛撫である。温もりと形容されるような、精神的充足を感じさせる行為ではなかった。皮
膚感覚の敏感な所を執拗に刺激され、彼女の口からは熱い吐息が漏れ出した。
やがて彼のキスの及ぶ範囲は、上腹や脇にまで広がるが、その間も手は僅かな膨らみをしつこく撫ぜ続けた。指は沈み込み、掌の蠕
動が柔らかく肌を波打たせた。色付く頂が擦られると、吐き出される息には声が乗る。羞恥を感じる暇もなく、大鳳は快楽に翻弄され
るだけであった。
「んぁ……はっ、ぁあ!」
勃ったそこが弾かれると、彼女は一段高い声に啼いた。刺激の残滓として痺れが残り続け、それは次第に思考までをも侵蝕する。再
び摘まれたそこの引っ張られ離される瞬間、痛みへの恐怖はしかし、快感への期待と変わっている。
飽きるまで弄び、臍の辺りに口付けた後、提督は一度上体を起こした。
「腰、浮かせて」
スカートとスパッツに手をかけて、彼女を伺い見てみると、虚空を眺める瞳に遅れて意思の光が燈る。
「……はい」
年甲斐もない甘える声の返事と共に、ゆるゆると持ち上がった腰に合わせて、彼は手に掛かる全ての布を一気にずり下げた。
今や生まれたままの姿となっている事を、彼女は他人事のように感じていた。太ももを滑る指が一度下腹部にまで登った後、とうと
うその直下へと下ろされていった。蛇の進行が如くもったいぶった動きで、徐々に徐々にと近づいてゆく。
「……ぅぁ」
陰唇の上端に触れかける寸前、指の動きは完全に止まった。ちょうど、三流の悪役が獲物を目の前に舌なめずりをするのと同じよう
なものであった。恋愛の無い情事において、その慰めは嗜虐によって達成されるのだ。
男を知らないそこは、恥丘の膨らみから谷の垂線まで、清白の極限であった。だが不釣合いにその全体は淫靡な粘液に濡れ、桃色の
襞が婀娜やかにひくついている。再び動き出した指先が陰唇の上端を掠めると、歓喜の嬌声が彼女の意思に反して漏れ出した。
-
「あぅ……ん、ぁ!」
這わされた指は、その全体が包まれるようにうずまり、細かく上下に震わすと、卑猥な水音が部屋に響くようだった。時折軽く叩く
ようにすれば、その音はより鮮明になり、飛沫はシーツと脚とを汚してゆく。
今すぐに舌を噛み切りたいと思うほどの羞恥に苛まれ、大鳳はかぶりを振った。胸への愛撫を受けた際には、ただぼうっと思考の蕩
ける感じがするだけであった。だが直接的な、下準備としての行為は、自身の雌としての本能を無理やりに剥き出しにさせられてるよう
で、侵される矜持に我慢がならないのだ。
提督はずいと体を寄せたかと思うと、空いていた方の手で髪を梳きながら、耳の淵へと舌を伸ばした。輪郭をなぞり上げ、耳たぶを
軽く甘噛みし、思わず足の緊張の解けたのが感じられるや、すかさず陰部への刺激を大きくする。解きほぐすようにして、表面から奥
深くへ、蒸れた卑猥の孔を穿った。
「ま、待って! ひぐっ……んぅ」
懇願は無視をされる。最早与えられる過大な快楽に僅かな抵抗さえできない彼女は、ただただ一方的に嬲られるという被虐の悦を享
楽するしかなかった。
自身が自身でなくなるような恐怖を抱き、彼女は提督の体躯にしがみつく。喘ぎ声を聞かせるような格好をしている事に、気が付く
余裕も無い。頬を擦りあわせ喉の震えるまま、獣性の蹂躙をその身に受け続けた。
時間間隔の希薄になるほど蕩けきった思考が、快楽による拷問の終わった事をようやく遅れて認知した。横隔膜の絞られた痛みや、
臀部にまで感じられるシーツの湿り気。そういった残滓が一つ一つ知覚され、今現実に再び帰還したような心地となった。
布擦れの音と視界の肌色に、どうやら彼も服を脱いだらしい事が分かった。大鳳は逡巡の後、その行為の意図を察すと、慌てて迫る
胸を押した。
「あの、提督」
「なに?」
「愛してるって、言ってください」
ハスキーな声音が、より掠れている。提督の胸には憐憫や寂寥がわだかまり、咄嗟の返答をできなくさせた。
「愛してるって言ってくれなきゃ、入れちゃ駄目なんだから。……私、祥鳳さんの代わりなんて、厭」
-
答えを待つ視線が焦りに揺らいだのは、それを言い終えた直後だった。
罪悪の意識が無かったわけではない。それでも、その一語を言うに未だ提督は臆病すぎたのだ。無理やりに開かせた足の間、肉槍の
迫っている事を感じ取り、大鳳は半ば悲鳴に近い声を出す。
「駄目、いやぁ! 提督、待って!」
本気らしい抵抗があった。拳が胸を叩き、足と腰はそれを遠ざけようと懸命に暴れる。しかし既に覆いかぶされている状態では、全
て無駄な足掻きだった。
その痛み、自身が犯されたと気が付いた時のその表情を見て、提督は暗い愉悦を感じた。
「……ひどい」
吐き出される呪詛が耳に心地よい。向けられる恨めしい視線が慰めだった。腰を振れば、強気な彼女の表情も、恍惚と悲壮に歪むのだ。
自身に内在する暴力性が、相手の完全な屈服を求めた。提督は腹黒い笑顔に、躊躇わずそれを口にする。
「でも、身体は悦んでる」
指が肉芽に伸びると、彼女の膣は咥え込んだ彼を扱く様にして蠢く。必死に首を振る彼女を見下ろし、尚追撃は緩めず、落涙を舐め
て耳を食む。
反復され続けた悦楽の指教が、体躯を極限まで淫らにした。精神は未だ清く彼の恋情を欲したとしても、最早体の方は剥き出しの本
能に従う獣となった。下腹部を圧する彼の存在に、満足を覚えている自身。厭で厭で仕様が無いはずなのに、言葉で責められれば言い
返せないのだった。
それからどれだけ責め苦は続いたか。穢しぬかれ、淫らに湿潤蓄えたそこは、彼を咥え扱く女の肉壷となった。
動きの速まりを感じて、彼女は緩くかぶりをふった。
「中に出すぞ」
征服の証が刻まれる。その事への厭悪と被虐の悦が複雑に混ざり合い、慟哭とも嬌声とも取れない声となって溢れ出す。絶望的な心
境の中、腹内に広がった温かみが、彼女を否応無しに絶頂させた。
-
3
祥鳳は全てを聞いていた。
かつて提督と恋仲にあった時、褥を共にし迎えた朝。心地よいまどろみに、つい起床時刻の直前まで体を横たえらせていた事が幾度
もあった。
存外朝に弱い提督は、それに気付く事もなかったから、毎晩シーツに温もりの残滓を認めるだけだったのだろう。毎夜毎夜、その行
為が夢であったかのように、忽然と消えている彼女の姿。それは、彼にとって一種の耽美に思われたはずだ。
実際には、より泥臭い方法をもってして、この演出は行われていたのだった。早起きの艦娘に見つからないよう、宿舎棟、自身の部
屋まで移動する方法として、やはり理想は廊下を歩む事をせず、窓から進入することだった。問題は彼女の部屋は二階にあり、裏庭と
も言うべき窓側の空き地からの帰還はとてもできそうにもなかったことである。
鎮守府本棟の提督の寝室は二階、つまりその建物においての最上階にあって、構造上屋根の端が窓視界の上端に掛かっていた。艦娘
としての非凡な能力を用いれば、そこに手を掛けよじ登る事など造作もなく、彼女は起床の時刻の遅かった時、何時も屋根伝いにて、
部屋へと帰還していたのだった。
途中渡り廊下の天井へ飛び降り、対岸の艦娘宿舎の壁を、小窓の突起を用いて登攀する。自身の部屋の直上まで辿り着けば、後は開け
ておいた窓の位置を確認して、身を滑り込ませるだけであった。意外にも試みは容易く成功し、以来彼女は、就寝に不安も感じなくな
ったのだった。
虚偽の恨み言をぶつけた事へ罪悪と悔悟の念に苛まれていた祥鳳は、その日、増幅するそれらの感情にとうとう耐えられなくなると、
謝罪と真意を告白する決心を固めた。ただ、夜の早いうちに執務室を訪ればあの装甲空母が邪魔であるし、かといってわざわざ二人で
話をしたいと面向かいに言うのもいらぬ誤解を与えかねなかった。悩む彼女の頭には、いつしか意識の敷居の下にその思い出が巡りだ
し、それが突破口となって一つの策謀が胎を結んだ。
夜半、彼の就寝時刻直前。祥鳳は部屋の窓から身を乗り出し、屋根の路を進んだのだった。
幾ら大鳳と言えど、未だ同衾関係にまでなってはいまい。ならば、彼の寝室にて待っていれば二人っきりで話ができると、彼女はそ
う思い至った。
個人の部屋に無断で忍び込む事について良心が痛まないわけでもないが、それ以上の罪を重ねた身上、致し方ないと結論付ける。自
責の痛みをこれ以上我慢することは、とてもできそうになかったのだ。月光の照らす中、足音を忍ばせ、本棟寝室の真上にまで到達す
る。
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窓から部屋への進入に成功した彼女は、まだベッドに彼のいないことを確認した後、隣の執務室へ聞き耳を立てていた。明瞭でない
彼と彼女との会話の声は、しばらくの時間の後、ぱったりとまったく聞こえなくなる。
廊下への扉の開く気配も無い。疑問に思っていると、今度はカーペットを踏みしめる音、それも四足二人分が徐々に大きく聞こえきて、
彼女はぎょっとして壁から離れた。部屋の中央に立ち尽くすし、焦りと混乱の中、とにかく隠れる事のできる場所を探した。まず真っ
先に視線の向かったのは洗面所であったが、両者の一方でもトイレに赴けばその時点でばれてしまう。ドアノブが回されたのを視界の
隅に捉え、半ば思考の外の反射に、彼女はよりにもよってベッドの下へと潜り込んだのだった。
木板とマットレス、合わせておよそ一尺の厚みを挟んで、情事の生々しい音を聞き続けるしかなかった。嬌声も水音も、スプリング
の軋みにさえ吐き気が催され、思わず声を上げたくなるのを口を押さえて飲み込んだ。大鳳の濫りがましい嬌声に殺意を抱き、彼の荒
い口付けの吐息が、胸を辛く痛ませる。目尻から涙を流すまま、透視でもしているかの如く、ひたすらその底板を睨んでいた。
だが耳をそばだて続けていると、一つの救いが垣間見えた。大鳳のその懇願が無視をされたらしい事。提督から愛しているという言
の出なかった事に、至上の喜びを覚えた彼女でもある。別れを告げて半年が過ぎても、未だ心はすぐ側にあったと気付き、感動が胸を
馳騁する。
この行為にあてつけと慰め以上の意味は無い。寝具に阻まれていようとも、たとえ実際に抱かれているのは大鳳なんだとしても、精
神の交錯は今この場においても成っているのだ。
思わず彼女は
「私、浮気には寛容です」
極々小さく、一寸先の人にも聞こえないような声でそう呟いた。
寝具の上の遊戯は、もうすぐ終端を迎えるらしい。中に出すぞという彼の言葉が、甘く耳の側に響いた気がした。
彼女の心内は、甚だ複雑な様相を呈していた。胸をのたうつ嫉妬の情は、一向に烈しさを増すばかりだが、直上の彼の姿を想像すれ
ば途端に甘い悦楽が湧き出してくる。
彼の思考にあるのは自身であるはずだった。ならばその吐き出される精も、向かう先は自身なのだ。ただ物理的に受け止める艦娘が違
うだけであって、故に彼はまだ私のものだ。
祥鳳は心の中に、そう独り言ちた。目の前の板に触れてみる。まるでそのまま貫通し、彼の体躯を抱きしめにいくかのように。
大きくなった吐息の音を聞き、祥鳳の女陰もまた独りでに蠢いた。今、空想と吐き捨てるには余りにリアルな触感がある。容赦なく
押し広げてくる堅い彼と、その先端から注がれる白濁の温かさ。出し終えた後も、彼は二、三回ほど奥を突くのだ。限界まで吐き出され
た精が、更に深くへと押し込められる。その歓喜が完璧に再現された。
彼女もまた、彼らと同じく、絶頂を覚えていたのだった。肩が強張り足は伸びて、嬌声を我慢するのにはかなりの労をとっていた。
恍惚の表情は、しかしおぞましい凄みを発してもいる。涙は留らず口角は吊りあがり、瞳が異様なほど燦爛としていた。
提督を取り戻す、提督を取り戻す。口の動きだけで、彼女はその言葉を繰り返し続けた。
<続く>
-
以上になります。恐らく次回で最終章かなといった感じです。
長々と失礼しました。
-
>>304
乙
なにこれこわえろい
-
>>304
乙GJ
これは夏にぴったりな話ですね(震え声)
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>>304
ナイスヤンデレ。
相変わらずの素晴らしい文体と、豊富な語彙ですね。
>>彼女は提督の体躯にしがみつく。喘ぎ声を聞かせるような格好をしている事に〜
この部分、ぐっときました。続き楽しみに待っています。
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鎮守府にて深夜に起きた資材の窃盗事件
容疑者としてあげられたなかには犯行日の夜のアリバイ証言のあいまいだった提督、大鳳、祥鳳がおり、憲兵は改めてこの三人から調書を取ることにした。
提督「その夜は自室に居ました」
大鳳「その夜は提督と一緒に居ました」
祥鳳「その夜は提督の下にいました」
「「ふぁっ?!」」
その後犯人は捕まり、提督は3Pしていたことになった。
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ああ、そんなギャグ展開で終わるといいですね(白目)
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ダイナミックアサガエリジツ…
多分ばれてないと思っているのは祥鳳と提督だけ
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この祥鳳は催眠オナニーの素質ある
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http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=45030110
あきつ丸、耽美的だよね…
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改にすると、とたん雰囲気が妖しくなるね、あきつ丸w
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通常のあきつはなんか不気味な感じだけどな…
やっぱり顔真っ白でモノトーンってのが他の艦娘と一線を画してるからだろうか
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>>315
不気味さは神秘と表裏一体
https://twitter.com/watanabe052/status/494437509724508160/photo/1
大正浪漫いいよね…
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>>286
深海提督・・・いいねそれ!
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「お前、今週はどこ配置よ」
「俺? 今週はサーモン沖だぜ」
「げ、良いな。滅多に艦娘来ないからゆるゆるじゃん。お前は?」
「……東部オリョール海」
「あっ」「あっ」
深海鎮守府はきっとこんな感じ
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>>304
おっかねぇぇ乙
ぱんつの中で手が止まった
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どこらへんから自意識は奴らにあるのだろう
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姫・鬼は鉄板として、重巡・戦艦・空母あたりじゃないかな
雷巡は意見が分かれるところだと思う
駆逐艦とかが愚痴ってたりすると面白いけどw
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普通に駆逐艦も意識があるけど、会話する必要を感じないから喋らない辺りじゃね?
基本怨霊というか、荒魂的な存在なので肺呼吸する必要がないから
海水が変に詰まっててカタカナ喋りになってるとか
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声帯が不明なのでテレパシーで意思疎通してるかもしれぬ
(……きこえますか… きこえますか… 提督よ… 提督よ… あなた方が深海棲艦と呼ぶ存在です… 今… あなたの…心に…直接… 呼びかけています… 提督…イベントに… 向けて資源はためる…必要ありません… 各資源…二万で…充分…なのです…自然増…ギリギリまで……回すのです…大型建造…するのです…大型建造をするのです……)
姫、鬼は人間由来
女性だけの敵集団はマゾーンの時からのお約束だけどねぇ
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(・ワ・)削除なのです!
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