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0さん以外の人が萌えを投下するスレ

1名無しさん:2010/05/07(金) 11:07:21
リロッたら既に0さんが!
0さんがいるのはわかってるけど書きたい!
過去にこんなお題が?!うおぉ書きてぇ!!

そんな方はここに投下を。

14221-479 おっとり義父×どスケベ息子 2/2:2011/06/12(日) 02:09:36 ID:pgVRec52
「これで一段落ですね」
七回忌の法要に集まった人々が帰って、また静かになった義父の家で、俺は義父にビールをつぐ。
お疲れ様でした、と互いにグラスを合わせて、残った折りの料理で腹をふさいでいると、
「次は、智聡君はもういいんじゃないか」
と言われた。
「それ、三回忌の時にも言いましたね」
「もう美月のことはいいから、君はさっさと再婚しなさい」
義父はほほえみを浮かべている。
「前も言いましたよ、再婚する気はありません」
「いい若い男が、もったいないじゃないかね」
「もう若くもないですよ、四捨五入したら40才です……ってうわ」
自分で言って軽いダメージを受けると、
「ほらな、自分では若いつもりなんだよ、君は。男盛りだよ、男の四十なんて。若い子がキャアキャア言ってくるだろう」
「今はオジサンのほうが受けますからね、うちの若い子はお義父さんくらいの部長に『かっこいい、お父さんになってほしいー!』なんて言ってますよ」
「君がもったいないんだよ、私なんか枯れたもんだ」
そういえば、とえくぼを作って、
「きみは枯れていそうにないな、何しろどスケベなんだったな」
俺の肩をポンポン叩くものだから、むせた。
「何言い出すんですか、そんな昔の──」
「よく義理立てしてくれたと思うよ、美月も喜んでるだろう。僕もうれしい。何しろどスケベな君が再婚もせずこうして七回忌までも弔ってくれたんだから」
「その、どスケベ、ってのやめ」
「うん、うん、男はスケベくらいでないとな、そうでないと仕事も力が出ないもんだ」
「ちょっ、お義父さ」
「スケベをな、パワーに変えてこそグーッと何につけてもエネルギーになるって昔からな」
「お義父さん! もう!」
「もう、な」
義父は、晴れ晴れと笑った。
「君が美月のためと……私のために、この家に来てくれるのは嬉しい。しかし、本当に、若い君を縛る権限は、もう美月にも、私にもないんだよ」
ずっと避けてきたその時が来てしまったことを俺は知った。
来るなと言われれば、この人にはもう会えない。
俺の親が再婚をせっつくのも、この人の耳には入ってるんだろう。
位牌を引き取ったのも、最後に俺を突き放すためだ。すべて、最初から。
「さあ、もう、新しい人生を生きなさい。美月は僕が見ていくから、安心してくれ」
再婚するなら、元妻の父親とじゃ友人にもなれない。
……妻を失ったときのように、いままたこの人を失うことに耐えられそうもないのに?
「もし、君にいい人が現れたら……できることなら、見たいな、君の子供が」
「……その時は見せに来ます。僕はお義父さんの息子ですから」
そんな時がくるはずもない。
何もかもが遅い。取り返しがつかない。
俺は今更ながらに歯がみした。
──この人の血を引く子を生みたかった。

14321-569 穏やか若隠居受け:2011/06/19(日) 10:52:21 ID:bWD0H00I
「あきれたね、本当に隠居しちまうのかい、喜さん」
「いいじゃないか、清さん、これで心おきなく遊べるってもんだ」
 喜之助……喜さんは文机の前で泰然としたものだ。
「せっかくだからね、寮のひとつも作ってもらおうと思うんだよ。そこで戯作でもしようか。人情物かな。芝居の台本もいい。
 そうだな、寮の名前は喜詩庵、喜文庵、それとも喜雨庵、さて……」
 何をのんきな。ぼんやりした人だとは思っていたが。
 手前のお店には何の未練もないのか。心配したのがだんだんばからしくなってきた。

 喜さんは隠居して、弟にお店を継がせる。
 弟と言っても死んだ先代の後添いの子だ。後妻が、後見の伯父に通じてうまいことやりやがった。
 もっとも、喜さんも逆らわなかったようだ。
 争いは好まない人だし、おもしろく噂にでもなればお店の評判に傷がつくと考えたんだろう。

「だからね、清さん、庵に遊びに来なさいよ、隠居すればみな友達がいもないだろうからね。
 清さんだけは幼なじみのよしみで、後生だよ」
 私に煙草盆を勧めながら、口ほどに切なそうでもないこの男がはがゆい。
「ちっとは伯父さんに逆らっちゃどうだ、何が病弱で素行悪し、だ。
 遊びといえば芝居見物っくらいで、そうそう吉原がよいもしないような人をつかまえて、見え透いてやがる」
「いいんだよ」
 自分でも煙草を詰めながら、喜さんは言った。
「隠居は私から申し出たんだ」
「本当かい?」
 それは初耳だった。てっきりあの性悪女が仕組んだものと思ったが。
「おっかさんもね、そりゃあなんにも言わなかった訳じゃない。でももともと私はお店を継ぐ気がなくなっていた。
 伯父もこんな気概のない私じゃ旦那は無理だと思ったんだろうね」
 熱心に店に立ってるものと見えていたが、胸の中はわからない。
「気がない、って、そりゃあ、どうしたわけだい」
 喜さんはうーんと煙管を吸って、
「……隠居して、気楽な寮住まいで、たまにお前さんが訪ねてくれる。私にとっちゃ極楽だよ。おまけに、そうしてさえいりゃあ……」
 おっかさんも文句はない、か。
 結局のところ、跡目争いなんてのにはなっから加わる気がなかったってことだ。
 長男でなければまだほかの道があったのかね、行き所がなけりゃあやっぱり隠居するしかない。

 どうにもやるせない思いで煙管をふかしていると、喜さんが独り言のように言った。
「それにね、私は嫁をもらう気はもとよりなかったのさ、女はこわい、意気地がねえが、そう思えてね。所帯も持たないんじゃ旦那は無理さ」
「そいつはあのおっかさんのせいかね。……しかしそれじゃ妾も囲えめえよ、せっかくの若隠居が寂しかろう」
 喜さんはため息のように笑うと、障子の方に顔を曲げて
「寂しいのはお前さんが来てくれりゃ平気だ、私がお前さんの囲われものさ」
 急に芝居がかって袂で顔を隠しながら
「旦那さま、必ず来ておくんなましね、お待ち申しておりますよ」
 くれた流し目のすごいこと。

14421-599 充電器×携帯:2011/06/21(火) 02:11:57 ID:U/.nhfUM
「……待ってくれ……頼むから」
 プライドを捨てて懇願した声は、大抵は聞き入れられない。
 それでも、彼の前に連れてこられ秘められた部分を露出させられると、拙い抵抗を試みずにはいられなかった。
「今更純情ぶらないで下さいよ。一日一回は喰ってるって言うのに」
 冷やかにつきつけられるのは見たくもない真実だ。
 体を辱められ、言葉で詰られる瞬間は、何回経験しても慣れることはなかった。
「わかってるだろう? 今日は――」
「ええ。見ればわかりますよ。電池マークがまだ2本残ってますね」
「電源が切れるまでとは言わない! せめて……マークが1本の時にしてくれないか」
「ダメです。明日早いんでしょう? それに――」 
 ――ぎりぎりまで我慢すれば、その分受け入れる時間は長引くことになりますよ?
 ことさらゆっくりと続けられた言葉に、これ以上反抗することは許されなかった。

×    ×    ×

 体をぴたりと密着させられて、いやでも相手の存在を感じさせられる。
「ほら、電気が流れ込んでるの、わかります?」
「あ、あ、あ……」
 繋がっているところから体が満たされていく感覚に、もうまともに思考することができなかった。
 いつもこうなのだ。ひとたび彼自身を埋め込まれると、数時間は抜くことを許されない。
 その間は、一方的に流れ込んでくる快感にひたすら耐え忍ぶことになる。
「ねえ、気づいてますか? だんだんと充電の切れる時間が早くなってること」
「それ、は……っ」 
「そりゃそうですよね。あなたと俺がこういう関係になってから、もう随分と時間がたった。
 充電を繰り返せばあなたの電池は消耗し、より一層、俺を求めるようになる」
 ――わかっていた。
 だから今日も、ぎりぎりまで充電を拒んだのだ。 
「あなたは俺なしではいられない体になるんですよ。あなたの意思とは関係なくね」
 心が壊れることが、体が浅ましくなることが、もう充分過ぎるほどわかっていた。
「ああ、大丈夫ですよ? あなたの電池パック、使いすぎてダメになっちゃっても新しいを入れればいいだけの話ですから。
 そのときは初物に戻ったあなたの体をまた最初から調教してあげますよ。嬉しいでしょ?」
「な、ぜ、」
 ひとり言のように零れ落ちた言葉を、笑う声が聞こえる。
「なぜ、とは?」
「俺は、どのみちあんたなしではいられない体だ。なのに、あんたは、なぜ必要以上に俺を貶めようとする?」
「楽しいからですよ」
 彼から告げられる言葉は、その酷薄さと裏腹に、どこか秘めごとを打ち明けるような親密さを孕んでいて、時折俺を混乱させる。
「誰もに必要とされ、最先端の技術とデザインを与えられ、生活と娯楽の頂点に君臨するあなたは、俺なしでは生きていけない。
 プライドの高いあなたが屈辱に耐えて俺の元へやってくるのを見るのが、たまらなく好きなんです」

14521-599 充電器×携帯:2011/06/21(火) 06:52:44 ID:/gp2ohQQ
「よろしく」
そう言って笑いかけてきたのが初めてだった。
よろしく、なんて人間みたいな挨拶だなと思ったのをよく覚えてる。
なんだか口にした事の無いそのよろしく、という言葉を真似て返すと彼が笑った事まで俺の中には残っている。
彼と俺とはいわゆる多分仲間、というやつなんだろうか。仕事仲間、とか?
まあきっとそういう感じに呼ぶんだろう。人間だったら。
俺は携帯で、彼はその俺を充電してくれる充電器で、俺にとって彼は必要不可欠だった。
ぐったりとしている俺に力をくれるのはいつも彼で、
「お疲れ」
「大変そうだねぇ」
「俺がいるからもう大丈夫」
だなんてそんな事を言う。
俺は充電器って言ったら彼しか知らなかったし、もしかしたら他の充電器もそうなのかもしれないけど。
でも彼のあのゆったりとしたトーンでそうやって声をかけられると熱を持った俺の体からすうっと力が抜けてすごく心地いいんだ。
これは多分、彼でなければ駄目なんだと思う。彼が、あの姿であの声で、あの笑顔で俺をそうやって満たしてくれるからだ。
だから俺もまた頑張ろうって思えるっていうか。

だから俺はもう電池もギリギリの状態で今日も彼の前に来た。
ぺたりと座ると、今にも目を閉じてしまいそうだった。やばい。もうほんとギリギリ。
「おーお帰り」
「ただいま…」
彼とのやり取りはいつもこうで、本当に人間がしてるそれと一緒だ。でもそれがすごく落ち着く。
俺が座り込んだそこに、彼が近寄ってきて俺の方へ手を伸ばしてくるから俺は少しだけ顔を彼の方へ向けて突き出した。
「あー疲れてるねえ」
ゆっくりと彼の手が俺の頬を包み込む。じわりと俺の中が満たされようとしていくのがわかる。
クタクタの体に、温かいものが流れ込んでくる、その熱が俺の体の隅々に染み渡るように俺はゆっくりと力を抜いた。
彼にもたれかかるように。
「でも大丈夫。俺がちゃんとフルに充電してあげるから」
そう言って、彼は俺の額に額をくっつける。さらに温かいものが流れ込んできて、気持ちいい。
多分人間が眠ったり、そうするような安心感ていうのはこれに似てるんだろうな。
「よろしく……」
「寝てていいよ、明日の朝にはちゃーんとフルになってるから」
彼の優しい指先が、俺の頬をゆっくり撫でた。それに一度だけ、俺のどこかがびくりと震えた。え?何だ、これ。
思わず目を見開くと、すぐそこにある彼の目と目があった。
「ん?」
「あ、うん。よろしく」
何だろう、これ。俺もしかして不具合でも出た?
ゆっくりと彼から伝わってくる温かいものに満たされていく、
心地よさに包まれて一瞬感じた不安が何だったかわからなくなっていく。
ああ、もういいや。明日覚えてたら自分でチェックしてみよう。今はもう、彼に任せて眠ろう。
「おやすみ」
彼がそう声をかけてきたけど、俺にはもうそれに返事ができたのかどうか。
ゆっくりと全てのシステムをオフにして、俺は彼にもたれて目を閉じた。

14621-619 愛さないでください:2011/06/22(水) 19:13:13 ID:PkxPXjRA
規制されていて本スレに書けないのでこちらに投稿。


 ひとつだけお願いがあるんです、と青年は静かに言った。
――私を愛さないでください。
 烏色の髪が風に撫ぜられて蒼ざめた頬にかかり、ただでさえ感情を内に秘めがちな青年の表情を一層読み辛くしていた。
 けれども、日頃から禁欲的な彼が、そうして一陣の風の中に無防備に身を置くさまを見るのが、私は存外に気にいっていた。
 だからたびたび夜になると、青年を連れて、この静かな湖畔を訪れた。
 ここに吹く風は無粋な障害物に遮られることはなく、ただ穏やかにさざ波の上をやってきた。
 そして、私と青年に沈黙が訪れると、その間を優しく風が通り過ぎていくのがわかるのだった。
 青年もまた、この時間を好んでいた。
 明るい日差しの中では人目を集める彼の容姿は夜の帳にしっくりと溶け、湖畔に吹く水気を含んだ風は彼の故郷の風にどことなく似ているのだと言う。
――私を愛さないでください、私を愛さないでください。
 彼の言葉をそっと胸の中に反芻する。最初は小さなさざ波だったそれは、終いには思いがけない大波になって私の感情を揺らした。
 私と青年の間に、大きな断絶を感じるのはこんなときだ。青年の生まれた国では、言葉とは大事な時にだけ使うのだと言う。
 けれども、その言葉が聞こえた通りの意味を持つとは限らないのだと。
 今このときも、青年の言葉は重く、危うい。
 こんな使い方を、私は知らない。
「何故、」
 纏まらない感情で発した言葉はひどく稚拙で、そのことに私は苛立つ。
 私と青年が同じ国の人間だったら、私と青年の国がけして争うことがなければ、私がこの国の軍人でなかったら、私達は分かりあうことができたのだろうか。
「どうしてあなたは何も言わないのだ!」
 子供のようになりふり構わず叫ばずにはいられなかった。もともと感情を抑えるのは得意な方ではない。
 青年の顔に一瞬だけ困惑の表情が浮かび、そして消えていった。
 さぞかし呆れているに違いない。そう思ったが、もはや自分の衝動を抑えることができなかった。
「……愛しているんだ」
 呻くように言った言葉は、沈黙の中に落とされた。青年は私に背を向けると、湖を眺めている。
 拒絶されるとわかった愛の味は苦い。それでも、白痴のように次の青年の言葉を待っている。
――月が綺麗ですね、と水面に俯いた青年が消え入りそうに言う。
 繊細に揺れる水の上に、大きな月がその姿を映しているのだ。
 月光が象牙色に青年の肌を輝かせる様を、食い入るように見つめていた。
 失意が胸の内に広がり、表情の見えない青年にじょじょに苛立ちが募る。はぐらかされるにしても、その顔が見たかった。
 たまらずに、立ち尽くす青年の腕を強く引くと、はっと息を呑む音がした。
 無理やり振り向かせた彼の顔は、今にも泣き出しそうな顔をしていて、思いがけないその事実に私は呆然と立ち竦む。
――ああ私達は分かりあえない。

14721-619 愛さないでください:2011/06/22(水) 20:11:14 ID:hMoRTwDE
規制で書き込めなかったのでこっちへ


「……そんなに嫌われることもないのに」
「え?俺?」
「あ、いえ、えっと」
ぼそっと口をついて出た言葉だったが、黒川さんにはしっかりと聞こえてしまったようだった。

黒川さんのスーツにピンマイクを付ける俺をじっと見つめる黒川さん。
テレビ画面の中からでも鋭いとわかる視線が直接俺に向けられているものだから沈黙など十秒ともたず、仕方なく俺は続きを話し始めた。
「いえ、あの、黒川さんてその、番組の中じゃ悪役、っていうかどうしても嫌われる……あ、すみません失礼ですよねすみません!」
「いいよ別に。そういう風に見られてるのは知ってるし、愛されキャラとか似合わないだろ」

「……そんなこともないと思いますけど」
お世辞でなく、そう思う。きつい感じの顔立ちだけれどその辺の俳優に負けないくらい整ってはいるし、こうして俺と普通に喋る分には優しい声をしている。

「うーん、ていうか、俺っていう嫌われ役がいることで番組が盛り上がってんだからさ、俺は全然気にしてないんだよね。むしろ愛されちゃったら失敗だと思ってる。元はプロデューサーに言われて始めたキャラだけどさ」
「でも変な嫌がらせがきてるとか聞いてますけど……」
「いいよいいよ。嫌がらせくらいタレントだったら多かれ少なかれあることだし。愛されたら駄目なの、俺は。そういう仕事なんだからさ。
……あー、喋りすぎたわ。とにかく俺は気にしてないんだから、こんなおじさんの心配する必要ないよ、瀬川君。キャラ崩れちゃうし。むしろ愛さないで?」

一スタッフでしかない俺の名前をしっかりと覚えてくれていた彼は、「あ、キャラって言ったのはオフレコで」と、ひどく魅力的な笑みと共に言った。
……絶対プロデューサーは彼の売り出し方を間違えていると思った。

14821-639 言ってることとやってることが違う:2011/06/25(土) 23:54:52 ID:FozlRjUw
触られるのはあんまり好きじゃなかった。
触りますよいいですかいいですよ、くらいのやり取りを経て触られるのらまだしも、
急に触られるのは本当に好きじゃない。
俺の体は俺の物だから俺の物に触る時は俺の了解を取るべきだし、
実際そんな事言われたらキモいので断るに決まってるけど、
まぁ一応聞いてみてくださいよ触っていいですかって。
……と言うような事を男の胸に頬をべったりくっつけたままブツブツ言っていた。
男は俺の頭の上で、そっかー、と愛想のない相槌を打ちながら俺の伸ばしっぱなしの髪の毛を弄っている。
俺は男の背中に回した手でTシャツの背中を弄りながら、そうなんだよ、と愛想のない返事をした。
それ以上会話も続かないので、俺は男の硬い胸に頬をべったり押し付けたままそっと目を閉じる。
静かな鼓動に耳を澄ませていると、男の指が髪の中にもぐりこんでくるので、俺も男の服の中に指先を滑り込ませた。
なめらかな背中の感触を何の他意もなくただ擦りながら、きっとあんたの優しさが俺を駄目にしているのだろうな、と思った。

14921-649 両片思い:2011/06/27(月) 02:44:00 ID:pFHd31A.
大城と出会ったのは大学の入学式の時。俺は一目惚れだった。
天然というか頼りないというか、大城は都会に慣れていない田舎もの丸出しで、
気になって何かと世話をやいていたら、俺を慕ってくっついてくるようになった。
俺に気がつくと嬉しそうに俺の所にかけよってくる。誇らしかった。
でも、男同士なんて保守的な田舎育ちのコイツにはありえない。一緒にいられればそれでいいと思ってた。
だが、こいつと同郷の女が同じ大学にいて、俺と親しくなるよりも明らかに早く大城と親密になってから、何かが狂った。
俺のわからない方言で早口で話す二人。俺といない時はほとんどその女といる。俺は面白くなかった。
「俺といる時と別人みたいだな」と嫌みを言ってしまったり。
女に取られるなら、酒に酔わせてやっちまおうという気にさせた。
もう親友なんてどうでもいいという自暴自棄になっていた。

翌日、俺の腕の中で抱き枕になっている大城がいた。
状況がわからずパニックになりながらも、酒に酔ってグダグダになった所までは思い出した。
予想外に大城が酒に強くて俺が先につぶれたのも思い出した。でも、それ以上の記憶がない。
「おはよう…」と大城が目を開けた。俺は慌てて手を離した。
傷ついた顔を見せたから、確実に何かやばいことをしたのだろう。
大城を帰した後で、背中に赤い線を見つけた。
キスをしたような感覚も戻ってきた。俺は血の気が引いた。

翌日、即座に謝った。
「酒に酔ったらキス魔でゴメンな」とごまかすしかなかった。
こうなるとどうでもいいと思っていた親友の座がどうにも惜しかった。
「大丈夫」という大城の顔が全然大丈夫じゃないと言っている。だが、まだ俺は側にいたい。
友情の一線は越えるわけにはいかないのだ。

15021-649 両片思い〈大城視点>:2011/06/27(月) 03:48:33 ID:pFHd31A.
清水君と初めて会ったのは大学の入学式だった。
芸能人みたいな人がいるので、さすが東京だと思った。

東京の人はみんな冷たいと聞いていたけれど、清水君はそうじゃなかった。優しい人だなあと思った。
清水君は方言で話す俺が好きじゃないらしくて、香苗ちゃんと話していると機嫌が悪かった。
香苗ちゃんは自分達を田舎ものだとバカにしているのだと言った。
それは違うと思ったけれど、彼に嫌われるのが怖くて方言を使うのはやめた。
香苗ちゃんは怒っていたけれど、やっぱり清水君が嫌なことはしたくなかった。

清水君が久しぶりに飲みに誘ってくれたので、俺は嬉しくて、ペースを考えずに飲んでしまった。
清水君は意外と酒に弱かった。ほとんど意識がなくなっていて、ベッドまで連れて行こうとしたけれど、俺より一回り大きくて大変だった。
清水君は俺ごとベッドに倒れこんだ。
「大丈夫?」と最後まで言い切るまえにキスをされた。驚いた。
口をこじ開けられて、舌を求められた。何度も何度もキスされた。
こんなことがあっていいんだろうか。酔っていてわからなくなっているんだろうかと不安になって、
「俺のこと好き…?」と聞いてみた。
「好きだよ」と返ってきた。
嬉しくて「俺もずっと前から好き」と答えた。
彼の舌が首筋から下に移っていくのを体に感じた。こんなに幸せでいいのかなと思った。
自分からも体をからませた。彼の背に爪の跡をつけた。口を吸い、体を舐めた。

翌日、彼の腕の中で目が覚めた。
服は着ているような着ていないような状態で、明るい所ではやっぱり少し恥ずかしかった。
「おはよう…」と言ったら、手を即座に離された。しまったという顔をされた。
俺は泣きそうになったけれど、これで離れていかれるのはもっと嫌だったので我慢した。
彼は何も覚えていないと言う。ベッドに運ぼうとして途中で力尽きて倒れたまま寝てしまったのだと嘘をついた。
昨日の事は俺だけが覚えていればいいと思った。
次の日、「酒に酔ったらキス魔でゴメンな」と頭を下げられた。
なんでそんなことをわざわざ言ってくるんだろう。わかってるのに。
俺とお前は友達なんだとそんなに言い聞かせなくてもいいのに。

「大丈夫」と答えたけれど、今度も泣かずにいられただろうか。自信がない。

15121-649 両片思い:2011/06/27(月) 22:13:45 ID:oK0mvRWY
「気持ち悪いって思われるかも……」とか
「離れられるくらいならいっそこのまま」って思っているのもよし。

「どうしてこんな風に思っちゃうんだろう。攻め(受け)は友達なのに」とか言う無自覚なのもよし。
こういった場合相手に惚れている、もしくはそう見える女や男(だいたいは当て馬)と仲良さそうにしていて初めて気がつくとかもよし。

まあね、見てるこっちはヤキモキしまくりですね。
お前らとっとと告白しろよ、両思いだからさ。なんて思わず呟いてしまいそうになりますね。

勇気を出して告白して実るもよし。
何年かして同窓会を開いたとき2次会で酔った拍子に「実は〜」なんて言っちゃうもよし。
結局最後まで実らなかったり、襲われて「俺ってセフレ程度にしか思われないんじゃ……」なんて思うもよし。

まあ受けも攻めも相手の行動1つ1つにドギマギすればいいと思うよ。
誤解とかすれ違いを乗り越えるたびに信頼しあえる良い関係になればいいと思うよ

15221-679 次どうぞ:2011/06/30(木) 16:50:32 ID:M3fAhskA
「風呂あがりました。次どうぞ」
「あのさ、お前とルームシェアしはじめてから、いつか言おう言おうと思ってたんだけどさ。
何かがおかしいだろ? わかるか?」
「なにがですか?」
「お前が今言っているのは「lt's your turn」だ。だが、お前は年下だ。
本来、お前が言うべきなのは「after you」なんじゃないのか?」
「英語にされたので、余計わかりません」
「つまり「次どうぞ」じゃなくて、「お先にどうぞ」って言うべきってことだよ」
「ああー、なるほど」
「年上に対する敬意が足りない」
「敬意ですか。じゃあ「Next please」」
「お前は医者かよ。それは「お次の方どうぞ」だ」
「俺、文系なんで、英語って苦手なんですよね」
「ああ、そう。俺は英語が得意なんだよね」
「怒ってます?」
「いや、別に」
「The moon is beautiful.」
「なんだ、いきなり」
「日本語に訳してください」
「月が綺麗?」
「意味わかります?」
「今日の月みたいな感じ?」
「もういいですよ」
「素直に「I love you」って言えばいいのに」
「直接的すぎて味気ないんで」

15321-669 達観してる人×往生際の悪い人:2011/07/02(土) 00:45:31 ID:bBnyAFdY
「受け君、どうやら僕は君を愛してしまっているようだ」

いや、俺ももうずっとそんな感じではあるんだがな。

「もしかするとこの想いは秘めたるべきものであるかもしれない。
 しかしそれゆえに秘めるべきではないのだ、受け君。
 なぜなら君が僕の心を知る術など一欠けらほども存在しないのだから」

うん、まあ、告ってくれたことには素直にありがたいと思うんだよ。

「そして愛するものに触れ抱き締め悦ばせたいと思うことは真理であるのだよ、受け君」

そりゃそうだ、俺だってそうだよ。

「受け君、僕らが男同士であることに君が戸惑っているのならば、そこに根拠は何もない。
 なぜなら僕らは男同士である前に人間同士であるのだから。雌雄の区別などない肉の器なのだ。
 愛すると共に愛さないということは不可能なのだよ、受け君」

俺だってお前のことは好きだしセックスもしてえけど、俺は俺のケツを守りたいんだ。

154慣れていく自分が怖い:2011/07/05(火) 16:02:07 ID:6SHaV2bs
「面白いものを撮りに行く」
とかバカなことを言って、お前が日本を発ってから5年。

「友達できた!」
って現地の子供達とお前の、すごい笑顔の写真が届いてから3年。
何の連絡もないってのは、どういう了見だ?

「待ってて欲しい」
出発の日にお前はそう言って俺に土下座したよな?
勝手なこと言うなって怒り狂う俺に、
「絶対に帰ってくるから」
って約束したよな。

遠いどっかの国で紛争が始まってから3年。
お前の携帯が、ずっと圏外になってから3年。

連絡がない腹いせに、お前の置いていった歯ブラシ、トイレ掃除に使って捨ててやった。
帰ってきたら一緒に買いに行こうと思ってたのに、俺の歯ブラシの隣は今も空いたまま。

ベッドももう右半分空けずに、ど真ん中に寝てるからな。
帰ってきたら、俺に蹴落とされるのは覚悟しとけよ。


お前が最後に寄越した写真、前は毎日取り出して眺めてたのに、
…今日見たら、うっすら埃が積もってた。

なあ、早く帰ってこいよ。
お前がいないことに、慣れていく自分が怖い。

155慣れていく自分が怖い:2011/07/05(火) 16:09:07 ID:BqWr0QDY
シラフでも酔ってても欲情しててもとにかく祥吾さんは俺の体に触りたがる。
伸ばされた細い指先が俺の顎を。

「伸びたねえ、髭。」

手のひらで、肩を。

「お前、分厚いよこれ、どうすんの?格闘家にでもなんの?」

腕が体ごと俺を引き寄せて。

「お前可愛いねえ、ちっさいねえ。でもなんかすごいでかくなった?」

……どっちだよ、と。

いくら俺が髭を伸ばそうが筋肉つけようが、祥吾さんにとって俺は可愛い存在らしい。
どんなに仏頂面して払いのけてみても、というか逆にそうすると祥吾さんは何だよお前つれないなあとか何とか言って余計に手を伸ばしてくるのだった。
俺は自分のテリトリーに人が入るのも、俺自身に触れてくるのもあまり好きではないから正直な所初めはかなり閉口したんだこの人には。
祥吾さんは、するりと人の懐に入ろうとする。
だから俺ももはや人生最大の過ちといってもいいこの勘違いの恋をはじめてしまったし、いつの間にか、慣れてしまっている俺がいる。
慣れって怖い。おかしな筈のこの世界にも、嫌いなはずのこの世界にも、祥吾さんのこの過剰なまでのスキンシップにも。
いつの間にか慣れて当たり前のものになっている。当たり前になって、しょうがないななんて思っている。附抜けた俺。
そしてそれは、少しだけ世界の終わりの階段の端っこに足をかけたままぐらぐらしている事に似ていると、俺は思う。
ここはもう終着点で、そしてここから落ちたらもう終わりなんだよ、とどっかの誰か知らない奴がにやにやと俺を見ている。
うるせー誰だよお前、お前に俺の何がわかんだよ、と俺はいつもそいつに悪態をつくけれども俺自身もわかっているのだ。
ここに到達してしまったのは俺で、ここから落ちてしまったら。
落ちて、しまったら。

「…大介ー?どした?お前何か固まってる?」

再起動ー。とか言って、祥吾さんは俺のほっぺたに、髭面のそこに構わず唇を押し付けた。
うわー毛だらけ。と笑ってもう一度。顔の向きを変えさせて、反対に。俺はされるがままに大人しくしていた。
祥吾さんの唇は案外柔らかくて、ついでに言えば最近少し太り気味なので頬擦りしてくる頬も前より柔らかかった。
気持ちいいななんて俺は、ちょっとだけ胸をときめかせて祥吾さんのそのやりたい放題の一連の仕草を黙って受け入れている。
……ああ、もう終わってるな俺。

散々俺の顔中にキスして頬擦りして、その手で俺の頬を挟んで真正面で視線がぶつかった。
祥吾さんの目は蕩けるみたいに細められて愛しそうに俺を見ている。

「……あんたさ」
「んー?」
「最近、太った」
「んー……酒飲みすぎだからかなあー?」

どうもちょっと自覚があるらしい。
ヤバイよなあ、なんてそれでも男前の顔がふにゃりと笑ったので俺はもうどうしようもなくなってしまった。

ああこれはもう、この人は。俺を困らせるだけの存在だ。
ぐらぐらと揺れる足元は、俺が祥吾さんをもう失えない証拠に思えた。
この笑顔も、この手も、この声も全部、いつの間にかそこにある事に慣れきってしまっている。
触られて閉口するのだってその一つだ。慣れて、当たり前のものだと思っている。
嫌がる俺も、笑う祥吾さんも、全部がいつの間にか日常に溶け込んでしまった。
慣れって恐ろしい。俺は一瞬、そこからまっさかさまに落ちて全てを失う瞬間にまで意識を飛ばしてぞっとした。背筋がざわっと粟立つ。
慌ててそれを振り払うように手を伸ばして、祥吾さんがするのと同じように祥吾さんの頬に触れた。ちょっとだけ柔らかい。

「……やばいよこれ」

顎のあたりに鼻先を摺り寄せながら俺が呟くと、じゃあ食べていいよーと大して気にもしてない声で祥吾さんが笑った。
あのね、もうちょっと危機感持ちなさいよ。この三十路。

「……胃もたれしそうだからやだ」
「えー…そっかあ……」

じゃあとりあえず、運動する?と祥吾さんは、実におっさんくさい発想でもってやっぱり俺の頭を悩ませてくれるのだった。

15621-729 ずっと好きだった幼馴染みが結婚:2011/07/07(木) 19:13:36 ID:iaveeW4M
※幼馴染みは男の子で

家が隣同士で、親同士も中がよかったため、小中高校、一緒に通う仲だった。
幼馴染みは優しくて、おっとりした質なので、自然と彼の兄貴分のようにふるまうようになり、幼馴染みにも、「頼りにしてる」と言われる程だった。

そんなある時、幼馴染みから、女の子に告白されたと相談される。
何故か必要以上に動揺しながらも、笑って幼馴染みの背中を押すが、何となく心に穴が空いてしまう。

その理由がさっぱり分からないまま、何人かと付き合っては別れてを繰り返した。
大抵は、「何で幼馴染みの話しかしないの?」と問い詰められ、曖昧に答えているうちに振られるのだ。
次第に、なぜか幼馴染みの顔を見れなくなっていき、衝動的に違う土地に引っ越した。

時が流れ、幼馴染みから母親経由で結婚式の招待状が届く。
懐かしい名前に顔を綻ばせながらも、隣に並ぶ見知らぬ女の名前に激しい嫉妬を感じた瞬間、今まで幼馴染みに向けた思いが恋心だったと気付く。

呆然としながらも、抱いた思いを確認したくて、式への参列を決意する。
花婿として微笑む彼は、全く知らない人のように見えた。
最後に顔を合わせた日から遡っていくと、自然と涙が溢れてきた。

ところが、隣の席から聞こえてきたすすり泣きが気になり、思わず顔を向けた。
すると、身も知らない青年が、顔をぐしゃぐしゃにして泣いていた。
その余りの泣きっぷりに、己の涙は一粒になってしまった。

席位置から、花嫁の友人であろうと推測し、彼も自分と同じであろうと知ったとき、思わずハンカチを差し出していた。

「よかったら、どうぞ」
「す、みませ、あ、りがと、ございます」




本スレ730です。
本当は、幼馴染みが男の子の話と女の子の話で両方思いついたのですが、父親より号泣する主人公に萌えたので、本スレでは、女の子の方をあげました。
この後の展開は、みた方に委ねます。
では。

157名無しさん:2011/07/08(金) 10:07:06 ID:d//BjaXI
本スレ740
こういう仕掛けがある話が大好きだ!
なにより亮治さんにもアキラさんにもめちゃ萌えました
上手いし、もう、やられたって感じです GJ!

158名無しさん:2011/07/08(金) 10:08:17 ID:d//BjaXI
うわーグッジョブスレと間違ったorz 書き込み直してもいいでしょうか……

15921-749 デリケートな攻め×デリカシーのない受け:2011/07/09(土) 00:39:50 ID:eNdLGCDo
 野上はデリカシーのない男だった。そんなところも魅力に思えていたが。
「いいよ、つきあっても」
 クシャッと目を細めて笑い、俺を驚喜させたあと、
「彼女できるまで、な。男同士とか『遊び』よ? あくまで」
 こともなげに言い放ったような奴だった。

 人より小柄なくせに態度がでかくて、言いたいことを我慢したことなんかない、その竹を割ったような性格が可愛いとか思っていた。
 念願叶って、暗くした部屋でようやく抱きしめれば、
「え? 何? 抜きたいの? 溜まってるの?」
 ──抱きたいんだ、愛し合いたい、と告げれば
「マジで!? 俺を?」
 ぎゃはは、とばかりに爆笑して
「ま、いいけどさ」
 とゴロリと寝っ転がる。
「やっぱ俺が掘られるほう? 林田より俺のほうが小さいもんな」
 と大きく伸びをして、でも、と首をかしげ、
「俺の方が大きくね? 比べてみる? ほらほら」
 パンツから取り出したものをブラブラさせた。
 とうとう俺は立ち直れなくなり、念願の初夜はお流れとなった。
 『結果』も俺をうちのめしたが、そもそも俺はデリケートなのだ。
「ドンマイドンマイ、よくあることだって! 気にするな、初めてだしな!」
 さっさと尻を向けていびきをかいたような男の、どこが可愛かったというのだろう。

 今となってはわからない。それでも3年はつきあった。
 俺は本当に野上を愛していたし、何のかんのと言いつつ奴もまんざらではなかったはずだ。
「愛してるって!? 男同士で気持ち悪い、何言ってんの、ウケルし!」
 口ではそっけなかったが、笑いかけてくる目が冗談だよ、と、俺も同じ気持ちだよ、と、語っていたはずだった。
 なのに、卒業式の夜、すべて壊れた。
「だって、一生ホモなんてできないでしょ。お互いすっぱり忘れて、いい女見つけて結婚して子供作って幸せになろ」
 俺は、就職してもつきあっていきたいと言ったのだ。
 幸いふたりとも地元に残れることになっていた。支障は大きくなかったと思う。
 無駄な3年を過ごしたと思った。俺の学生時代をこんな男に捧げてしまった。
 再び人を愛するまで1年もかかった。
 奴の言うとおり、俺は普通の結婚をした。
 幸せになった。

「おお、林田じゃない! 久しぶりだなぁ。お前、ちょっと太ったよ、すっかりオッサンになっちゃって!」
 片手を上げる小柄な姿は、目尻の笑いジワが深くなった以外変わっていないように見えた。
「……野上」
 会う気なんかなかったのだ。ずっと避けてきた。たまたま居酒屋で隣り合わせた席に野上がいるなんて。
「職場の? 飲み会?」
「うん、送別会」
「こんな時期に?」
「うち、7月と10月なんだよね」
 衝立越しに十数年ぶりの会話を探していると、野上のテーブルから勢いよく声がかかった。
「野上先輩のお友達ですか!」
 あいまいにうなずくと、そのノリの良さそうな野上の後輩は衝立から首を伸ばし、俺の左手に目をとめて
「あ、先輩のお友達はちゃんと指輪してるじゃないですか。ほらね、野上先輩もそろそろ本気で相手探さないと」
 野上の左手をつかんでひらひらさせた。
「独身?」
「まだ、ね」
 クシャッと笑った。ああ、あの笑顔だ。

 野上は、学生時代かなりもてたのだ。
 背こそ低かったが、愛嬌ある二枚目半に憎めないさばけたところが女の子に人気だった。
 むろん、俺もそんな野上だから惚れたのだった。実は結構な競争率を勝ち抜いて得た恋人だった。
 その野上がいまだに独身? 信じられない気がする。

「なんだ、じゃ、卒業してもつきあってられたんじゃないか」
 こっそり耳打ちすると、野上は鼻で笑った。
「何言ってんの、さっさと結婚したくせに」
 クックック、と野上は堪えられないように、笑いに背を丸めた。肩をふるわせながら、
「お前みたいなデリケートな奴はな……ま、いいや。幸せそうで安心したよ」
 笑いジワに溜まった涙をぬぐった。
 ぬぐいきれない涙が、ツッと笑顔に流れた。

16021-749 デリケートな攻め×デリカシーのない受け:2011/07/09(土) 17:04:38 ID:0CCBWGfk
デリカシーがない、と突き付けられたのは俺が部屋にこっそり隠していた薬だった。
今の俺には必要不可欠なもの。チューっと注入することもサッと塗ることもできる万能なアレ。

「痔なの?」

デリカシーがないと言った口が躊躇いもなく問う。
デリカシーって何だっけ。
俺が部屋にこっそり隠していたにも関わらず、痔に〜は♪のCMでお馴染みのあの薬を発見したのはまあいい。
仕方のない事故だと考えよう。たとえ意図的に探さないと見つからない場所に隠していたはずだとしても、だ。
問題なのはその後の言動。
何故、それを見なかったことにしてくれなかった。

「デリカシーがないのはどっちだ!俺の恥部に簡単に触れやがって!」
「ハァ!?いっつも恥部触ってんのはお前だろ!触るどころか指もナニも突っ込んでんのはお前だっつうのに、
何で痔になってんだよ!デリカシーがない!」
「お…!おまえ…!」
「大体、俺のどこがデリカシーがないっつうんだ。失礼な奴だな」
「そういうところだよ!」

16121-799 正義の味方×マッドサイエンティスト:2011/07/14(木) 22:09:25 ID:wJhNQS5M
「おい」
「ん? おはよー」
「おはよう。で、おい。今度は俺の腕に何つけた」
「エロゲ見て作った触手君プロトタイプ。俺特製801媚薬も出てきます」
「朝目覚めたら突然正義の味方に改造されてたのは許そう。でもこれは外せ」
「えー」
「正義の味方に触手つけたところで誰が得するんだよ。敵も野郎だらけだし、大きなお友達も喜ばないだろ」
「え? なんで敵にいい目見させてやることになってんの?」
「は?」
「俺に使わせるつもりでつけたんだけど」


「ふっざけんな!!! なんで夜の生活のためにこんな魔改造されなきゃならないんだ!
 しかもこれ触っても感覚ないから俺がいい目見れないだろうが!」
「ちょっとだけなら801媚薬舐めてもいいから! お前勃ち悪かったり急に萎えるときがあるし!」
 悪の軍団もこれ欲しさにやってきたぐらいの逸品だぞ!」
「うるせえ!!てめえががセックス中に萎えるようなことするからだろ!
 ……ってちょっと待て。あいつらこれが目的なの? なんで?」
「だってこれ特許とったらそれなりの金にはなるし」
「じゃあ幼稚園に穴を掘って罪なき園児を転ばせたり、川の水を干上がらせてりしてたのは?」
「ああ。あれは801媚薬の調合書を探してただけ」
「まじで? 俺今まで町のためとかじゃなくて媚薬のために戦ってたの?」
「町のためとか。……正直ないわ」
「もういい! 本当に外せ! ガチで外せ! じゃなきゃこの腕切り落とす!」
「本当にやめて! ガチでやめて! それ作るの苦労したんだから!
 それつけたお前かっこよくて惚れ直しちゃうからああ!!!」
「……本当か」
「へ」
「その、本当に惚れ直しちゃうか?」
「まあ……一応」
「ふーん……。まあどうでもいいけど、終わった後にちゃんと外すなら、1回ぐらいは叶えてやる」
「まじで!」
「というか一刻も早く外したいから今から始めんぞ!」
「まじでか! この顔面レッド脳内ピンク!」
「よしそういうこと言うから萎えるんだ! いくぜ合体ぃぃぃぃ!!!」


(どっちかっていうとそういうお人よしなところに惚れ直すんだけど、それは黙っとこう)

16221-470 思ってたのと違う:2011/07/16(土) 00:29:24 ID:jS0Kc7yk
とんでもなく今更ですが、本スレ470の続編です。
続編というか、元々「更に思ってたのと違う」的な二段オチにしようと思っていたけど長すぎたのでカットした分です。
折角なので置いておきます。

++++++

「そぉーいえばさあ」

服を脱がせていると、昭仁がいきなり声を上げた。
俺は昭仁のシャツを脱がせて放り投げながら、何?と目線だけで先を促す。
昭仁はふざけて俺のシャツに手をかけて脱がせようとする。
あのさあ、今俺が昭仁脱がしてるんだから邪魔しないでよ。

「今さぁ、お前と会った時のこと思い出してたんだけどさー」
「はあ」

昭仁、足浮かせて。
ん。
と俺達は間抜けにも服を脱がせ合いながら会話を続ける。
昭仁が腰を浮かせるので俺はズボンをそのまま下ろして足首から抜くと、今度は昭仁が俺の服に手をかける番。

「懐かしいよなぁー。昔さあ、和志、俺の事さー、」

……なんか嫌な予感がする。そして、昭仁がにやにやとだらしなく緩ませた顔を見れば
多分俺のこの予感は8割方当たっているんだろう。ああ、もう。

「……昭兄、なんて呼んでたよなー?」

あんた基本スポンジ頭の割にそういう事だけちゃんと覚えてるよね。……ちくしょう。
そしてあの頃の話は恥ずかしいからやめてほしい。俺は本気で昭仁が好きすぎて眠れなかった事まであるし、
……この能天気さが途方もなく懐の広い優しさに見えてた時だったからもう今考えたら死にたいくらいの勢いで甘えてたし、
……。……やめよう。しにたくなる。今既に叫んで転がり回りたいくらいだ。

「……そうだっけ?」

知らないふりした俺のズボンを半端に脱がせたまま、昭仁は俺の股間をまさぐり始める。ちょっとやめてくんないかな。
昭仁のそういうところ、隠されてた訳でもないのに何で俺は勘違いしてたんだろう。
恋は盲目ってやつか。何が恋だ俺は乙女か。

「もっかい位呼んでもいーよー?てか、呼んでみねぇ?和志」

体を起こして、俺と膝立ちで向かい合う。俺のボクサーパンツの中に手を無遠慮に突っ込んで撫で回す手。
形を確かめるみたく掌でやわやわと輪郭を辿る。

「……やだよ」
「なんでだよー。ほらーあきにぃ?って。あきにー。さんはい」
「何がさんはい、なの馬鹿昭仁」

くすくすと俺の反応を楽しそうに笑い、尖らせた唇が俺の唇を柔く噛んだ。
それは昔と変わらず甘くて、何度か繰り返される内にやっぱり俺この人の事好きなんだろうなあなんて思わせる。
……なんか呪いとかじゃないよなこれって。

「もう黙ってよ雰囲気出ないから」

尖らせた唇に噛み付くと、すぐそこで細められていた昭仁の目が待ってましたとばかりに色を帯びた。
ああ、俺は罠にかかっている獣の気分だ。実際は昭仁の方が獣みたいなのにな。

16321-809 近所のお兄さん×近所の悪ガキ:2011/07/18(月) 02:44:50 ID:rEa85UEc
字数制限もきちんとしたつもりだったのですが、書きこもうと思ったときに、なんだかすごくかきこめなかったので、こちらに。

-------------------

「なあ、あんたさあ。男の人が好きってマジ?」
背中合わせでの真剣ポケモンバトル中にかけられた一言は、ボタンを間違って押すぐらいの衝撃を僕にもたらした。
「…どういうこと、それ」
「言葉通りの意味。隆クンは昔っから男が好きなヘンタイだから近づくなって、裕二んちのおばさんが言ってたからさ」
ほんとかと思って、というあんまり直裁な彼にちょっと頭を抱えそうになる。
「なあなあ、どうなの。どうなの?」
「ちょっと静かにしてなさい。今僕のターンでしょう」
「ちえー」
しばらく、かちかち、かちかち、とボタンを押す音だけが響く。
そらをとぶを無効化するために違うタイプのポケモンに入れ替えるか、というタイミングになって、僕はすこしだけ目を瞑る。
そうして再び開いた視界は、何も変わることがない。
だから、彼の疑問に応えてやることにした。
「…すきだよ。男の人。女の子なんかより、ずっとね」
 …ヘンタイだって、言う人もいるよ。そう続けてやれば、ぴくり、と背中から彼の振動が伝わってくる。
「…へえ。そうなんだ」
「うん」
「…へえ」
ほー、ふーん、と、明らかに動揺を押し隠そうとして全然隠せていないので、手早くバトルを終わらせるべく、ボタンを押すスピードを早める。かちかち、かちかち、かちかちかち。
「…じゃあさあ、あのさあ」
あと一匹で彼をノックアウトできる、というところで、また彼が口を開く。いったいなんだっていうんだろう。
「好きな奴とか、いるのか? それか、好きなタイプ。教えろよ」
…そうきたか。
「好きな人は、いるよ」
答えれば、背中からまた強い揺れが伝わってきた。実にわかりやすい対戦相手である。だからすぐ負けるんだと、どうして気づかないのだろうか。
「…どんな奴」
僅かに緊張を孕んだ問いが投げかけられる。それにまた、ため息をつきたくなった。
敵の最後の一匹の体力は半分。あと少し。きゅうしょにあたりでもすればイチコロだ。
「…そうだなあ、顔はちょっといかつめでさ。髪の毛も短く刈り込んでる。
 性格はちょっといたずらっぽいかんじかなあ」
「…へえ」
背後の彼が動く。じり、と背中に感じる感触が少しだけ、回転する。

――そして、僕の上に、その影が落ちる。
「うん。たまにすごく、憎らしくなるぐらいで、そんでね。
 ――今時、ポケモン金銀しか持ってないんだ」
そう告げた瞬間、ぎゅるり、と視界がひっくり返った。ぼすん、と今まで座っていたベッドに押し倒されて、声を上げる暇もなく、彼が馬乗りになってきた。そしてそのまま、僕の両手を抑えつけてきたので、僕は更に言ってやる。
「中古屋さんで金銀探すの、結構大変だったんだからね」
「ああ」
「お小遣いはそこまできつくならなかったけど。安かったから」
「…そうか。それにしてもあれだな。毎度毎度ポケモン強すぎんだろ」
「まあね」
手の中からゲーム機が滑り落ちる。こつん、と音を立てて床に落下したそれの画面に映る金色の鳥の体力ゲージは、もうほとんどひんしに近い。
「ねえ、康宏さん。貴方、ヘンタイだね。僕みたいな子供を押し倒して。男なのに、男が好きなんだね――」
「黙れ」
この、悪ガキが。
そう言いながら彼に似合わない、悲壮な顔が近づいてきたので、僕は静かに目を閉じて、手を伸ばす。
イヤホンが外れてしまったらしい。床に落ちて拾いあげることも出来ない筐体から、電子音が鳴っている。
ポケモンバトル、もう少しで勝てたのになあ、なんていう、どこか遠くで呟くような思考は、やがて唇への柔らかい感触と、どちらのものともわからない熱に溶けて消えてしまった。

16421-839 「ずっと一緒にいようね」なんて:2011/07/20(水) 21:34:01 ID:4lsphYOk
もう何年が経ったんだろうなあ、なんて思う。
隣で眠ってるこいつに、初めて会った時はこっち見るのか俯くのか迷っているような目で
割と面倒くさそうによろしくお願いします、なんて。
それが面倒だったんじゃなくて人見知りだったってわかるのに大した時間はかかんなかったけど。
愛しい恋人の寝顔を見ながら一服なんて悪くない気分だ。
充博の寝顔はあどけなくて、それが余計に昔の事を思い出させる。

「お前さあ、すっごい緊張してたよなあ」

本当は緊張してたんです、なんて言ったのは三度目くらいに会ったときだっけ?
俺のがお兄ちゃんだからしっかりしなくちゃ、なんて普段は割と年上に可愛がられる事が多い俺をそう思わせた充博が
俺は可愛くてしょうがなくて、何でもしてやりたくて。

「今でも結構そう思ってんだよー?俺はー」

寝顔を覗き込む。きっと起きてたらお前は、まあ俺のが世話焼いてるけどね。とか言うんだろうけど。
まだ半分も吸わない煙草を消して、覗き込む。生意気な俺の可愛い恋人。

「なーみつひろー」

短い髪を撫でてやると、うるさそうに払われてその手を掴まれた。
え、起きてんの?と口を開く寸前、充博からは変わらず寝息が聞こえてくるので思わず肩を竦めてしまう。

「これからもずーっといようなあー」

きっとお前は起きてたら、まあ善処しますよ、位しか言わないんだろうから。何となく悔しいから今しか言わないでおくからな。
充博に握り締められた手をそっと解きながら、俺はその手でもう一度ゆっくり頭を撫でてやった。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「ずっと一緒にいようね」なんて、口にするのは何となく嫌だ。
そんな事口に出さなくても、いたけりゃいるだろうし、駄目になるときはなるだろ。
俺はそう思ってたし、別にそれが特別な事じゃないのもわかってる、ただ皆信じたいだけだろ。
本当に永遠とか、あるかわかんないもんの存在をさ。

だからたまに拓馬さんが、お前大きくなったねぇなんて親ですかあんたはって事を言う時が一番好きだ。
拓馬さんは一緒にいようとか、そういう事言いたいかどうかなんてのは知らないけど、俺の前で口には出さない。
ぽんぽんと子供にするみたいに俺の頭を撫でて、あー俺ガキじゃないんですけどって言うと目じりに皺を浮かせて笑う。
あんたのその顔、一番好きだな。
多分その皺が増え続けるのを見るのも、悪くないんじゃないかなと俺は思う訳だけど。
……まあ、絶対口には出すつもりは無いけどね。

だから真夜中、俺が寝てると思って拓馬さんが、
「これからもずーっといようなあー」
そんな風に囁いたのも聞かないふりをして。
まあつまり、口に出さなくてもまだ離れるつもりは無いって事くらい、きっと拓馬さんに伝わってるはずだってのは、
一応自惚れだって自覚はあるけどね。
でもきっと、わかっててくれてんだろ?あんたの事だからさ。

16521-860 二人暮らし 1/2:2011/07/25(月) 07:11:22 ID:IV1E9ms2
ただいま、という言葉は酷く馴染みが薄かった。おかえり、という言葉は酷く座りが悪かった。
どこか照れくさくて、続くただいま、の言葉を口にしきれない。そんな時、いつだって目の前で彼はまだ慣れないんだ?と笑ってくれた。

「おかえり、智」
とはいえ、時間が不規則な仕事をしている夏樹が常に智の帰宅する時間に部屋にいる訳ではない。
逆も然りで、だからたまたまタイミングが合う度に智は玄関で彼の靴を見ては少しだけ口端を上げる。無意識の内に。
そしてむずがゆくなる。自分を迎えてくれる人がいる事に、そしてそれが夏樹だという事に。
「あ。……智、また困ってる?」
「いや、驚いただけだって……ただいま」
子供みたいな顔をして楽しそうに近付いてくる夏樹に、智は微笑む。一体この時間を何と呼べばいいのだろう。未だに智にはわからなかった。
幸せ、という一言ではとても足りる気がしない。
「だって、朝俺と変わらないくらいに出たじゃん。珍しくない?」
「うん、運良く早く終わってさ」
そっかあ、と智は笑う。単純に嬉しかった。
「だからさ、飯作って待ってたんだ。食おうよ。俺腹減ってんだ」
ほら早く、と近付いた夏樹からふわりと甘い匂いが掠めた。ゆっくりと気付かれないように息を吐き出した後、智はうんと言葉少なく頷いた。

夕食をとって、シャワーを浴びた。髪を拭きながらリビングへ戻ると、夏樹は膝の上にノートパソコンを乗せてその画面に見入っていた。
おそらく持ち帰りの仕事なのだろう、モニターを見つめる彼の視線は真剣だ。智はその表情に一瞬見惚れる。
「夏樹、風呂入る?」
あいたよ、と一言。すると真剣な目が緩やかに温かくなって智を見た。
「んー、ここまで終わったら」
智は夏樹の横、少し距離を開けて座った。真剣な顔で仕事をする夏樹を邪魔したくない気分が半分、少しでも傍にいたいなんて気持ちが半分。
まだ少し慣れない同居に、戸惑いと嬉しさは半々だ。まだ少し濡れている髪からこめかみへ、雫が垂れ落ちてゆっくりと顔の輪郭を辿っていく。
キーボードを叩く硬い音が聞こえる。またふわりと、鼻腔を擽る匂いに、智は振り切るように緩く頭を振った。
「うわ、どーしたの」
雫が飛び散ったのか、夏樹が驚いて智を見た。
「あ、いやっ、なん、でもない」
俺、変だね、と笑って誤魔化す智に、夏樹がまるで見透かしているように笑う。
それは智の勝手な思い込みでしかないかもしれなかったけれど、思わず赤くなった頬を隠す為に智はタオルで髪を拭くふりをして顔を隠した。

16621-860 二人暮らし 2/2:2011/07/25(月) 07:12:11 ID:IV1E9ms2
「智、俺風呂は入ってくるけど?」
声をかけられるまで智はぼんやりとタオルを頭に引っ掛けたままでいた。声をかけられて初めて自分がぼんやりとしていた事に気付く。
「え、あ、うん」
冷静を装って夏樹の方を見ると、夏樹は智をじっと見つめていた。心臓が跳ね上がる。
優しいけれど芯の強そうな目が、窺うようにこちらを見るのは智にしてみれば心臓に悪い。
「どーしたの、智」
智の開けた距離を夏樹が軽く座りなおして縮める。覗き込むようにして下から夏樹の目線がゆっくりと智を見上げた。
「な、なんでもないって!」
「ふーん?」
なーんかさっきから変なんだよなあーと夏樹が言うのも当たり前だ、と智は自分の落ち着かなさを思い起こして思わず溜息を吐きたくなる。
その間にも、まとわり付くようにふわふわと柔らかな匂いが漂う。普段ならあまり気にならない筈だと智は自分に言い聞かせた。
偶然のタイミングで、偶然にこうして一緒にいる時間が長くなればなるだけ、最近は自分がどうしても夏樹を意識しすぎる事に気付いていた。
以前からそうだったけれど、暮らし始めて例えば朝起きた時に、眠る時にいなかった筈の夏樹が隣にいた、ちょうど互いの出かける時間と帰って来る時間が交差したり、
そんな風にして顔を合わせたりその短い時間に互いに触れる事で感じるのはただ優しい充足感だけで、今こうしている状態の気分とは少し違う。
「いや、その……夏樹、さ、香水変えた?」
「え?香水?」
唐突な問いに夏樹は目を幾度か瞬きする。智はそれだけでもう既に口にした事を後悔しはじめたのだけれど、それでもなんとか言葉を続けた。
「なんていうか、なんか甘い匂いするからさ…」
最後の方は口の中で漸く呟くようにして言うと、智はやはり夏樹の顔が見れなくなって顔をそらした。
けれどそれを夏樹の手が阻んで、ゆっくりと自分の視線とあわせるように顔を向きなおさせる。
「なつき、」
「智からも甘い匂いするけど?」
首を傾げるようにして、夏樹が囁く。耳元に鼻先が擦れて智はその感触を瞬時に肌を震わせた。心臓に悪い。
「ていうか、これシャンプーの匂いだと思うし」
「シャンプー?」
「だから、智も俺と同じ匂いしてるよ」
ほら、と夏樹は耳元に触れていた顔を智の髪に押し付けた。そう言われれば、そうなのかもしれない。この間、シャンプーが切れたから夏樹が買ってきたばかりだ。
同じ甘い香りを纏わせた夏樹と自分。その香りに右往左往しているなんて酷く間抜けだ。
「俺、うわ…なんか勘違い……ていうか思い込みしてたかも…」
さすがに隠せない程真っ赤になった顔を両手で覆いながら智が呟くと、夏樹の手がぽんぽんとその頭を優しく叩いた。
「智、結構思い込むたちだもんなー」
立ち上がり、もう一度夏樹は智の頭に手を置く。柔らかな体温がじわりと染み込む。
「じゃー俺、風呂入ってくる」
夏樹がそう言って鼻歌を歌いながらリビングから消えた。智は頭を抱える。慣れてない。本当に、慣れてない。心臓がまだ飛び出しそうだ。
「あー、もー俺、心臓持たない……」
慣れていない、おかえりもただいまも、同じ香りを纏う人がいる事も。それが想っている人だという事も。
幸せの一歩先。
それを表現する言葉を智は未だ持っていない。だからただ頭を抱えてソファーに体を預けた。

16721-889主人公×ラスボス 1/2:2011/07/25(月) 22:05:52 ID:hFuBx3HI
ラスボス「よくぞここまでたどり着いた勇者よ」
ラスボス「我が右腕となれば世界の半分をくれてや…」
勇者「お前が欲しい!!!!!!!」
ラスボス「え?」
勇者「ラスボスたんラスボスたん本物のラスボスたんktkrハァハァハァァアあああああ!!!」
勇者「結婚してくれラスボスうぅうううううう!!!」ガバッ
ラスボス「ひぃっ!!」
女戦士「バインド!!」ビシィッ
勇者「ハァン!」
女戦士「すまないラスボス。勇者はこちらで抑えておくから続けてくれ。」
ラスボス「いや、ちょっと状況がよくわからないんだが」
女魔法使い「とりあえず〜、"断られた"ってことでぇ〜、すすめて?」
ラスボス「あ、ああ…」ゴホン「では」
ラスボス「我が誘いを断るとは愚かな!では力づくでかかってくるがよ…」
勇者「 力 づ く 頂きましたあぁあああああ!!!!やだもう奪われるのがお好きなのねラスボスたん!!僕ら気が合うね結婚しようそうしよう今すぐぅうううう!!」ガバッ
女戦士「ダブルバインドォッ!!」ビシビシィッ
勇者「アゥン!!」
ラスボス「…あの、やはり説明を求めてもよいか?」
女戦士「ああ。では簡潔に説明しよう。女賢者!」
女賢者「勇者は、あなたに首ったけ。」
ラスボス「え?」
女賢者「?」
女戦士「…あー、つまりな、勇者はラスボスたる貴殿に懸想しているのだよ。…いささか病的なまでに、な」
勇者「恋の病だからあぁぁぁあ!!ラスボスたんにしか癒せない恋の病だからああああ!!ラスボスたんにお注射したらなおるからぁああああ!」
女戦士「脱ぐな」バシッ
勇者「ウホォウ!!」
女魔法使い「ちょっと〜、特殊な性癖の持ち主ってとこかな〜?」
ラスボス「…ちょっとか?」
男格闘家「理解できない性癖はない、そう思っていた時期が俺にもありました!」

勇者「ラスボスたん!ラスボスたん!ラスボスたん!ラスボスたぁんんぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!!あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくんんはぁっ!ラスボスたんの緑色ヌメった頭をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!!
間違えた!ハムハムしたいお!ハムハム!ハムハム!爬虫類の角角ツンツン!ハムハムツンツン…きゅんきゅんきゅい!!
序盤に出てきたラスボスたんかわいかったよぅ!!あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!!
途中まで正体ばれなくて良かったねラスボスたん!あぁあああああ!かわいい!ラスボスたん!キモかわいい!あっああぁああ!
第二形態もグロかわいくて嬉し…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!!よく考えたら…
ラ ス ボ ス た ん は 仲間 じ ゃ な い?にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!!
そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!ぁああああ!!
この!ちきしょー!やめてやる!!勇者なんかやめ…て…え!?見…てる?第一形態のラスボスたんが僕を見てる?第二形態のラスボスたんが僕を見てるぞ!ラスボスたんが僕を見てるぞ!第三形態のラスボスたんが僕を見てるぞ!!最終形態のラスボスたんが僕に話しかけてるぞ!!!よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ!
いやっほぉおおおおおおお!!!僕にはラスボスたんがいる!!やったよ神様!!ひとりでできるもん!!!ううっうぅうう!!俺の想いよラスボスたんへ届け!!ラスボスたんの深部へ届け性的な意味でぇぇええ! 」ハァハァハァ

16821-889主人公×ラスボス 1/2:2011/07/25(月) 22:07:13 ID:hFuBx3HI
ラスボス「…貴様ら、よくこの勇者と組んでいられるな…」
女戦士「今みたいに理性が飛んでいなければ、普通の好青年だ。残念ながらな」
女魔法使い「国民にもぉ〜、割と好かれてるみたいよぉ?」
女戦士「だが、この勇者には一つ欠点があってな。」
女賢者「"ラスボスたんが居ない!"と、定期的に錯乱する。」
女魔法使い「ちょっと〜、困りもの?みたいな?」
男格闘家「この人、錯乱するとメテオとか打つんすよ!?」
女戦士「近頃、錯乱するサイクルが短くなってきてな…」
男格闘家「俺らだけじゃ、もう抑えられなくて!マジ世界ヤバかったっす!」
女賢者「…だから来た。この変態に匹敵する力を持つのは、真の魔王たるあなただけ」
女戦士「世界を守るには、もうこの方法しかないのだ」
女魔法使い「貴方も一緒にぃ、犠牲になってぇ?」

ラスボス「え?」
勇者「えへっ?^^」

女戦士「トリプルバインドォッ!」ビシビシビシィッ
ラスボス「えっ!?儂!!?」ギュッ
勇者「はにゃあぁぁぁぁああん!?ラスボスたんが縛りプレイされてるぅうううう!!!」ビクンビクン
ラスボス「!!は、離せ!!この縄を外してくれぇええ!!」ジタバタ
女戦士「勇者を拘束するために極限までに鍛えた技だ。そう簡単には解けぬ。許せ。」
男格闘家「あ、これ、俺らからの心づくしです!国の粋を尽くした最高級羽毛布団!」ファサッ
ラスボス「え?え?」
男格闘家「ちゃんとラスボスさんサイズで作らせたっすから!結構重かったっす!」
女賢者「国中の鳥、しめた。」
男格闘家「血反吐吐いて修行して決死の覚悟で鍛えた筋肉の使い道の終着点が"勇者&ラスボスたん愛の新婚初夜布団"の運搬になるとは思わなかったっすわ!」
ラスボス「なにそれこわい」
男格闘家「でもまあ、いまからラスボスさんの身に起こることを思えば、俺のズタボロのプライドなんて安いもんっす!」
女賢者「大丈夫。万が一この変態のおイタが過ぎて、あなたの身になにかあっても」
ポウ
女賢者「わたしがこの"癒しの手"で治してあげる」
ラスボス「儂のどこが負傷するの!?」
女賢者「…具体的には、あなたの(ピー)が変態の(ピー)で(ピー)されて(ピー)」
勇者「いやぁああぁぁん!そんな嬉しいことラスボスたんにできちゃうのぉぉおおおう!!?」ビクンビクンビクン
ラスボス「あああああ!!聞きたくないぃぃいいいい!」
女魔法使い「ほらぁ〜、怯えてるじゃない勇者ぁ?ごめんねぇ〜、不安だよねぇラスボスちゃぁん?」
ラスボス「!!そうじゃよ!儂こわい!!お願い助けて魔法使い!」
女魔法使い「せめてムードだけでもぉ、盛り上げてあげるからねぇ」パアァァァアアアア
ラスボス「だれか儂の意思を聞いてぇえええええ!」
男格闘家「グッドラック!」グッ
勇者「間接証明のようなロマンティックな明かり!!ふっかふかのお布団!!仲間の祝福!!いい!!!僕らの初めての夜にふさわしいねラスボスたぁあああああん!!」ガバァッ
ラスボス「いやあぁぁぁぁああああああ!!」

16919-629 中学生の告白 1/2:2011/07/27(水) 14:38:54 ID:A3kXSK/w
随分昔のお題&曲解ですが妄想が止まらなかったので。
大人と子どもの性行為を匂わせる表現があるので苦手な方はご注意を。



母さんを殺した。そう告白した彼を私が引き取ることは随分前から考えていたことだった。

彼はひょろりと背が高く、一見すると中学生に見えないほど大人びていた。
ろくでなしに捨てられた男好きの腹から生まれ、物心つく前から親に頼ることを許されなかった環境は、彼の稚気を奪ったらしかった。
一歩引いたところから他者を見つめるその目は静かに荒んでいた。
そのくせ、箸の握り方や言葉の使い方は小学生並というアンバランスさ。成績も惨憺たるものだった。
およそ世間の常識に疎い彼の、悪癖のひとつひとつを時間をかけて正していった。
彼は優秀な生徒だった。
渇いた土に瞬く間に水が吸われるように、より多くの知識を求め、私が教えた以上の働きを見せた。
笑顔が増えた。不満もこぼせるようになった。胸を張ってテストを見せた。友人ができたと嬉しそうに報告した。
ただ、成り行きとはいえ、男を抱くことも教える形になったのは不本意だった。
言い訳がましく聞こえるかもしれない。
けれど、男と睦み合う場に彼が偶然居合わせなければ、あれほど強く彼に懇願されなければ、決して彼にそんなことを教えるつもりはなかった。

夜、薄っぺらい胸に顔を寄せて眠ると、時折そこが引き攣れた。
ごめんなさい、ごめんなさい、おかあさんゆるして。
すすり泣きながらのたどたどしい謝罪を彼は知らない。
だから私は眠る彼の目尻をそっと舐める。頭を抱き寄せる。
彼が目覚めて恥ずかしがっても離してやらない。
何も気にしないで眠れ。私の言葉にはにかみながら、素直に目を閉じる彼の姿を見るのが好きだった。

17019-629 中学生の告白 2/2:2011/07/27(水) 14:39:24 ID:A3kXSK/w
数年後のある日、彼は私を好きだと言った。
私は錯覚だと一蹴した。その態度が彼の怒りを爆発させた。

子供扱いするな。錯覚なんて言うな。
俺がどれだけのものをあなたに与えられたと思ってる。
好きなんだ。あなたが好きなんだ。

初めて出会ったあの日、男と行方をくらませた母親を慕って泣く彼に、そんな親は殺してしまえと言ったのは私だった。

あれはお前に何も与えなかった。お前は害ばかり被った。
あれに捨てられたんじゃない。
お前があれを捨てるんだ。
殺してお前の中から消してしまえ。

引き金を引いたのは彼でも、弾を込めたのは私だ。
母さんを殺した。まだ中学生だった彼の、暗い目をした告白を私は忘れることができなかった。
光を知ってほしかった。
早朝の光の、一番真っ白な部分だけを浴びるように育ってほしかった。
これからの彼の人生に一点の曇りも許したくはなかった。
私への、男への恋情など、いまだ幼さを拭えない彼の障害以外になり得ない。
私を憎めばいい。親を捨てた彼の罪悪感より私への憎悪が大きくなればいい。
そして歪んだこの家から巣立ち、全てを忘れるのだ。

しなやかで臆病で、いくらでも強くなれる彼を私は愛していた。愛している。
だというのに、私を抱きしめる腕を振りほどくことができず、どうしようもなく視界が歪んだ。

17121-909 舞台はスラム:2011/07/28(木) 01:14:36 ID:C5xz4g9k
本スレの方まだ*9継続中だけど
*0以外で12時間後に投下されるかたいるみたいなんでこっちに



荒廃した街の片隅。
泥と埃、血と汗にまみれて今にも呼吸をやめそうな少年が横たわっていた。
本来なら白く柔らかい肌には殴打された痕が無数に散らばり、身につける衣類はもはやぼろきれでしかなかった。

少年の目は天に広がる空をまっすぐ見つめていた。
澄み渡る青を憎むかのように、もしかしたら憧憬するように、徐々に光を失っていく瞳で睨みつけていた。
「死ぬのか?」
青空を遮るようにして少年の視界に男が顔を出した。仕立てのいいスーツに身を包んだ男だった。
後ろには屈強そうな男を2人従えている。
右腕にはめられた時計は、貧乏人には死んでも手が届かない代物だ。
物心ついたころよりこの街で育った少年にもそれは理解できた。
「君、死ぬのか」
男がもう一度訊ねる。少年は答えない。
「わかった。質問を変えよう」
泥と血が固まってこびりついた頬に、男は躊躇いなく触れた。
「君は、生きたいか?」
少年は痛みに震える腕を持ちあげて、頬に優しく当てられた手を、残す力の限り握った。
「……家にくるといい。その前に医者だな。おい、この子を車に、?」
握る力は弱々しいものだったが、少年は男の手を離そうとはしなかった。
男はゆるやかに微笑むと、スーツが血に汚れるのを気にも留めず少年を抱えあげた。

失われつつあった光が再び灯りだす。
握る手に、わずかに力がこめられた。
「その調子だ。君は生きるんだ」
男の細められた目に、少年は空の青を見た気がした。

17220-769 空振りだけどそこがいい 1/2:2011/07/29(金) 13:19:41 ID:7aWkQAfE
彼の姿勢はあまりよくない。
後ろから見るとその背には緩やかな山ができている。肩を起点にして肩甲骨が峰。
肩をつかみ、その峰を両手の親指で押してやる。分厚い肩だがあっさり動き、山は谷になる。
でも手を離せばぐにゃりと元通り。くらげのようだ。
「何だ、どうした」
彼が微笑む。雑誌からは目を離さず、顔を俯けて。
眉の上、短い前髪がぱさりぱさりと揺れる。低い笑い声が耳に心地好い。
俺は答えず、もう一度彼の肩を開いた。
どうせなら肩を揉んでくれよ、と彼は身をよじったが、やがて気にしないことに決めたらしい。また黙々とページを繰りはじめた。
彼の部屋に来たときは大体いつもこんな感じだ。ふらっと立ち寄る俺に、気にせず自分の時間を過ごす彼。
大学の講義さえなければこうして二人で過ごすのは最早習慣になっていた。
だが、毎回俺が行こうか行くまいか散々悩み、彼恋しさのあまり足を運んでいることを彼は知らない。
ふとした拍子に不安になる。
この時間を心底望んでいるのはきっと俺だけだ。
無骨な横顔をぼんやり眺めながら、気がつけば口を開いていた。

17320-769 空振りだけどそこがいい 2/2:2011/07/29(金) 13:21:50 ID:7aWkQAfE
「なあ」
「ん?」
「俺、この部屋に来てて大丈夫か?」
質問の意図がわからない。俺を見る彼の目はそう言っていた。
俺は何気ないふうを装いながら、渇く唇を湿らせた。
「俺がいつもいたら困ることもあるだろ。ほら、彼女とかさ」
言ってから心臓が常にない速さで脈打ちはじめた。
じゃあ遠慮してくれ。そうなんだ彼女ができたんだ。好きな奴がいる。いい加減鬱陶しい。悪い予想はいくらでも涌いて出た。
彼はじっと俺を見つめていた。
その視線の圧力に俺が目を逸らしかけたとき、小さく笑った。
「お前ならいい」
えっ、と声が漏れた。短い言葉には、何となく含みがあるように感じられた。
先ほどまでとは違う意味で鼓動が速くなっていく。
「どういう意味?」
「言葉どおりの意味」
さらりと口にされたその答えを聞いて顔が熱くなった。一瞬で脳が混乱しかける。
が、ふと冷静に考えて、肩の力が抜けた。
「ああ、そうか、なるほど、『親友』だもんな」
目の前の健全な男なら大方そんなところだろう。ふつう、男同士であんなことを『そういう』意味で言うまい。
赤くなった頬をごまかしたくて、親友、親友と言い聞かせるみたいに何度も呟いた。
こっちの気も知らないで、どこまでも掴み所がない奴。
だがそんなところもいいと思えるんだから、俺も相当こいつにやられているらしい。

そんなふうに俺はひとり物思いにふけっていた。
なので、彼が俺を見ながらため息を吐き、苦笑していたことになどこれっぽっちも気づいていなかった。

17421-919 犬猿の仲:2011/07/29(金) 16:09:02 ID:IpFcjZfs
「細かい事にうるさいな。このくらい認めろよ」
「全然、細かい事じゃない。こんな高額経費は認められない」
「俺達はこれが仕事なの!」

 営業の人間は本当に金にルーズだ。
 なんてコストパフォーマンスの悪い人間達なんだろう、と話をする度に思う。
 特にこいつはうるさい。我が物顔で道路を歩く大型犬のようだ。

****************

 後日。その大型犬が二人だけで話がしたいと俺の所に来た。

「お前……。C社の常務と知り合い?」
「なんで?」
 嫌な予感がしたが、二丁目で顔を見たことがあるだけで、知り合いな訳ではない。
「常務がさ。何故か、お前と俺の仲がいいって誤解していて」
「それは凄い誤解だな」
「俺も……なのかって聞かれたんだけどさ……」
 ばらしたのか。よりにもよってこいつにか。頭が痛い。
「お前って、そうなの?」
「そうだよ」
「あっさりしてるな、お前」
「だって、ばれたものは仕方ないし、向こうだって立場上ばれたくないだろうし、
ばらさないだろ」
「まあ、確かに……。それでな。断ってくれていいんだけどさ」
「何を?」
「食事でもどうかって」
「俺と?」
「いや、大丈夫だぞ! 安心しろ! 俺がうまく断っておくから!」
「断るって……。もったいないじゃん。5億の仕事だろ」
「俺を馬鹿にするな。そんなやり方で納得出来るか!」
 いつもの接待三昧の方法とどう違うんだと思ったが、言うとまたうるさくなりそうなのでやめた。
「別にいいよ」
「え?!」
「一度でいいんだろ?」
「ええええ?!」
 飲み食いくらいは常務が払いそうだし、あっちの経費になるなら高い酒を頼んじまえ。
「なんだ、そのルーズさは! 金にはうるさいのに!」
 一番言われたくない奴に言われてカチンときたが、とりあえず耐えた。
「金にはうるさくないとダメだろ。金は使えば減る。体は減らない」
「ダメだ! よく考えろ。お前が会社の犠牲になる必要はない!」
「いや、別に犠牲になってるつもりは……」
 何かに似てるなあと思ったら、家の近所にいる郵便局員にもワンワン吠えている馬鹿犬だった。
 別にいいから。番犬いらないから。近所迷惑だから。
「俺はお前の事が正直嫌いだ! 嫌いだが、それとコレとは話が別だ! 俺はお前を守る! 俺にまかせろ!」
 俺の話も聞かず、奴は部屋を出て行った。

*****************

 更に後日。

 商談は他社に持って行かれたらしいと他の部署から聞いた。
ああ、あの時に俺のいう通りにしていれば、何の問題もなかったのに。
本当にコストパフォーマンスの悪い奴だ。

「また、ずいぶんと高額の領収証たちで……」
「これが仕事なんで」
「5億の取引、棒にふったくせに」
 ボソッと嫌みを言ってみた。だが、奴はニヤリと笑って俺に言った。
「猿知恵って知ってる?」
「はあ?」
「お前はうまく立ち回ってるつもりかもしれないけどな。生意気で本当に思慮が足らない。
経費の事だって、重箱の隅をつつくような事……、あ、今はそんな話じゃないか」
「ああ、そう。猿知恵で悪かったね」
「人間はそんなに捨てたもんじゃない。人間は、情もあるし、理性もあるし、
悪い事は悪いってちゃんと判断出来るんだ。そして会社は人間が動かしているんだ」
「だから?」
「5億はとられた。でも50億をとってきたんだから文句ないだろ」
「え?」
「酒っていうのは人間関係を作るんだよ。ちゃんとその領収証、落とせよ。経費だから」
「……え?」

 得意げに立ち去っていくアイツの後ろ姿に、大型受注の成功をたたえる言葉があちらこちらから聞こえた。
 ああ、本当にアイツには腹がたつ。

175本スレ978です:2011/08/02(火) 14:42:43 ID:zjozy7po
窓越しの暗い空を、鮮やかに花火が染め上げる。
月の灯りと、時折差し込む花火の光だけが暗い部屋の中を照らしていた。

「たーまやー っと」
低く、呟いて部屋の隅で酒を飲んでいた影が笑う。
手の中の杯には、上弦の月が細く光っている。
「…祭り、行かなくて良かったのか?」
部屋の反対側。
窓の外の花火を見上げ、もう一つの影が顔を上げた。
「もう、祭りではしゃぐ年じゃねえしな」
杯に映った月ごと酒を呑み。ことりと床に置くと窓を見上げる影ににじり寄り、後ろから抱き締めた。
「なあ…雄次」
「サカってんじゃねえ馬鹿」
抱き締めて、胸元に滑り込んでくる手を叩いて、肩越しに睨みつける。
「そう固い事を言うな」
「ふざけんな」

抱いてくる腕が。首にかかる息が 熱い。
「いい加減にしろ・・弘樹」
「俺はいつだって本気だけど」
「余計タチが悪いわ」
抱き締めてくる腕を抓り、拘束から逃げだし少しだけ離れ、また空に浮かぶ花火を見上げる。

「お前、そんなに花火が好きだったか?」
「お前のむさ苦しい顔よりはな」
「愛が見えねえ」
ほうと溜息が落ち、次の瞬間、膝の上に重量を感じた。

「…………弘樹。何をしている」
「これなら、お前は花火が見えるし。俺はお前にくっつける。何か問題でも?」
「…問題以外の何が」
いい年したオッサンの膝枕の何がそんなに楽しいのか・・

「今から寝るから。花火が終ったら起こしてくれ」
「はぁ?!お前何のために俺を呼んだんだ!!独り身同志暇だろう祭り行こうぜって呼んだんだろうが!!」
「気が変わった」
「ってめえ…」
「お前が側にいれば何でもいいや」
「…馬鹿が…」
「じゃあ、起こしてくれよ」
目を閉じて、本当に眠りに入ろうとしている・・

「…弘樹」
「…んー…?」
「一人で花火を見てもつまらん」
「…じゃあ、別のことをするか?」
「………勝手にしろ」
「おう」

花火の音にふと見上げ、夏の空に浮かんだ月に笑われたような気がした。


++++++
二つに分けて投下しようと思ったんですが、よく考えたら979もお題になることを忘れていました
本当に申し訳ありませんでした
すいません

17621−969 花火大会:2011/08/02(火) 15:20:04 ID:bzyOrvKk
今夜の花火大会にアイツを誘った。
他の奴と行くって言われたら諦めようと思ったけど二つ返事でOKもらえて、俺は花火の下での告白も決心する。
夜空に輝く花火に映し出されながら、好きだって言ってやる。
のはずか、何でオレラ人混みの屋台に並んでんの?
アイツいわく、「先に買っとかないと売り切れる。この屋台の粉は他と違ってメチャうまで。揚げ物はやっぱり揚げた手が一番」とのこと。
お前は何処の食いしん坊だ!
両手に食い物の袋ぶら下げて、やっと土手に上がった。
ちょっと計画はズレたが、クライマックスの連発に間に合ったぜ。
色とりどりの花火が開く中アイツの前に回って、真っ正面から見つめて告白するぞ!
意気込んでたらポツポツと雨が・・・・。
あれ?と思う間もなく、土砂降りで2人ともずぶ濡れだ。
「天気予報で所により雨って言ってたけど、すごかったな」
のんきに言うアイツは、しっかり袋の口握り締めて食べ物濡れないようにしてたよ。
いや、もう・・・、なんか、もういいや・・・。
「だな。オレ、もう帰るわ」
予定ガタガタで、気力も無くなって帰ろうとしたオレの腕をアイツが掴んだ。
「オレンチで着替えてけよ」
あー、そういえば家ここから近かったよな。
深く考えず付いて行って、シャワーとマッサラな着替え借りて人心地。
アイツがシャワー浴びてる間ボンヤリ室内見回してると、窓際に蚊取り線香とライターと線香花火が置いてあった。
おっ、これいいジャン。
アイツが出て来てから、ベランダで線香花火に火をつけた。
最後の一本はオレが持って、アイツが寄り添って覗き込んでる。
儚げだけどいいよななんて言ってたら、アイツもそうだなって頷きながら
「けど、記念日にしてはちょっと地味かな」
と言ってオレの肩を抱いた。
えっ?と聞き返す間も何をって問う間もなく、好きだと言われてキスされた。 
なんでこんなことにと思ってると、少し顔を離したアイツはニコッと笑い、
「派手な計画より、情報収集と準備が大切だぜ」って。
同じ気持だって、思いが通じてるって判った嬉しいけど、何かオレの予定と違うんだけど。
でも、まぁいいか。

本スレの流れにハラハラして・・・
走り書き+出しゃばってゴメン

17721-979 無口×カタコト:2011/08/03(水) 00:57:09 ID:EKDxGZ/Y
「ユウキ、つめたい」
膨れ面をしたハルに名前を呼ばれて、初めて彼が俺に話しかけているのだと気づいた。
昼下がりのカフェテラス。午後の気だるげな眠気は目の前の留学生に邪魔されている。
習いたての日本語で一生懸命話そうとしている様子は、どこか子犬を連想させる。珈琲色の瞳でころころとこちらを追いかけてくるゴールデンレトリバーの子犬だ。
と、考えている内にじっと彼を見つめていた。お国柄だろうか、目が合っても動じずに笑い返し、ハルはまたぎこちない一方的な会話を再開させる。しかし。
(どう考えてもミスチョイスだろう・・・)
ハルと知り合ってからというものの、何故か彼は俺を見る度に話しかけてくるようになった。
本人曰く、未だ不自由している日本語の勉強のため、らしいが、黙りこくっている俺を相手にしてもしょうがないだろうに。
人と話すことは嫌ではない。が、人には得手不得手というものがあり、俺にとって会話はなかなかに難しいことなのだ。
めまぐるしく分かれ、派生し、変化する言葉を追うのは大変で、まるで異国語のようだ。だから適当に流してただ頷いているだけにしないと、だんだん頭痛がしてくる。話す気が無いわけではない。・・・多分。

17821-979 無口×カタコト:2011/08/03(水) 00:57:41 ID:EKDxGZ/Y
「ねぇ、ユウキ、ユウキ、きいてる?」
今日のお題は日替わりランチについて。lunchの発音が良いなぁ、流石だとか考えていると、またも名を呼ばれた。
小さく頷く。だがハルは不満らしい。赤い頬を膨らませて抗議しようとしている姿は幼子のようだ。
「だからね、ユウキ・・・あぁもう、えーごではなしていい?」
もう一度頷く。
『ユウキは冷たい。反応が薄い。俺の話、聞いてるの?』
なんとか聞き取った内容は、まるで我が侭な彼女のようで、噴出してしまった。きょとんとした目でハルが見ている。だが、すぐにしゅんとしてしまう。
『俺の話、楽しくない?・・・日本語、もっと上手になれば、ユウキと喋っても良い?』
はたして、なんと答えたものか、と考える。我が侭な彼女には包容的な彼氏が必要だろうか。
口を開こうとしたが、自分はほとんど英語が話せないことに気付き、ペンとペーパータオルを手に取る。
『ごめん。話すのが苦手なだけ。ハルの話を聞くのは楽しいよ』

17921-979 無口×カタコト:2011/08/03(水) 00:58:16 ID:EKDxGZ/Y
今度は目に見えて表情が明るくなる。本当によく表情が変わる奴だ。
「じゃあ、ねぇ、ユウキ!」
次に出た言葉は日本語だった。拙い発音だが、先程よりも幾分か楽しげだ。
「おれ、もっとにほんごを、べんきょうする!だから、またつきあってね!」
頷く代わりに笑みを浮かべて、このくらいの会話なら、俺でも話せるかなぁと思った。
あぁでも、いつまで経っても日本語が不自由なままじゃ、愛の言葉も囁けない。「I love you」は恥ずかしすぎる。
今度からは、ハルに付き合って俺も意見してみよう。その方が上達も早い筈だ。
これからの会話授業の予定を立てつつ、こみ上げて来る感情をアイスカフェラテと一緒に飲み込んだ。

18022-49 長針と短針と秒針:2011/08/12(金) 10:35:09 ID:VClVp4DA
ごめんね、また来ちゃった。1分って短いよね。
僕と同じ職場のチームである短針と長針が、最近特別に仲良くなったので、僕はとても気まずい。
同じライン上を3人でぐるぐる回るこの仕事が恨めしい。
嫌でも気づくよね、いかにも怪しい雰囲気出してもんね、あのふたり。

短針は、もともとおっとりのんびり屋。
どっしり構えて物に動じないタイプだから、ともすれば焦りがちな長針をなだめて支えてあげてるみたい。
長針はスラリとスマートで、仕事もできる奴だけど、短針にべた惚れなのは見てておかしいくらいだ。
ふたりが仕事ですれ違う瞬間、それこそが彼らの待ってる時。
それはほぼ1時間と5分くらいの間合いで訪れる。
12時ちょうど。その次は1時5分27秒。2時10分54秒。3時16分21秒。4時21分49秒……そして11回目にまた12時ちょうど。
短針が数字と数字の間のほんの少しの距離を進む間に、長針は出来る限りのスピードで一周してきて追いつく。
待っていた短針に後ろから駆け寄ると、そっと寄り添うんだ。
僕たちの職場が、昔風のカッチカッチとひと目盛りずつ進む時計でなくて良かったね、と思う。
長針の動きはなめらかで、だからとても短い時間、ふたりは重なることができる。
それは本当に短い逢瀬だ。長針はすぐに進まなきゃいけないし、短針は長針について行けないから。
それでもふたりはその瞬間をとても大切にしていて、うっとりしちゃって、見ているこっちはいたたまれない。

……そう、見てるんだよね、僕。だってここ僕の仕事場でもあるわけで。
1分にひと回りするのが僕の仕事だ。決して僕は悪くない。
ふたりのわずかな大切な時間を、僕だって邪魔したくない。
だけど僕は、どうしてもふたりの上を通りすぎてしまうことになる。

そりゃ、なるべく見ないようにしてるよ。そんなときはふたりも「あくまでこれは仕事上のやむを得ないスタイルなんです」って風を装ってるし。
でも恋人同士のあれやそれは止まんないよね。
特にこんな暑い夜ふけなんかはやっぱその気になるんだろうね。
さっきなんか。
(あれ、絶対やってるよね……)
……ごめん、見るつもりなかった。暗くてわかりませんでした、うん、はっきりとは。何となく。
ため息が出るよ。ほんと悪いっつうか、もう僕、仕事やめよっかなって感じ。
最近なんか、ふたりが一緒でない時ですら、僕なんかが1分ごとに来てごめんなさいとか思ったりして。
秒針やめてストップウォッチとかに転職しようかなぁ。あれ確かひとりの職場だよね。
それともどうせ3人切っても切れない仕事仲間なんだから、僕も仲良くさせて? なんて。
言えないよなぁ。
僕、どうせ早いしなぁ。

18122-69 女装が似合う攻め×女装が似合わない受け 1/2:2011/08/16(火) 05:39:07 ID:B5kauskA
「お帰りなさいませ、お嬢様」
薄く整った唇から、甘く蕩けるような声が流れる。
フリフリのスカートを摘んで、軽くお辞儀をすれば、女子の黄色い声が教室に広がった。
「玲様可愛すぎるー」
「可愛いっていうより美人系!」
きゃあきゃあと騒ぐその女子達に微笑みかけて席へと案内する。
「凄えなあ…」
そんな玲也を見ながら、ぼんやりと呟いた。
「おい健太、ぼーっとしてないでこっち手伝えよ!お前どうせ暇だろ」
「うるせえ」
頼まれた力仕事をするには動き辛いが、そうも言ってられないと段ボールを持ち上げた。

文化祭の出し物でメイド喫茶しようなんて提案があったときは、こんな事になるなんて思ってなかった。
クラスの可愛い女子のメイド服やらコスプレやらが見たいからと、クラスの男は皆賛成してた。
俺も大賛成だった。
でも、お菓子やら料理やらの担当が出来る男が少なくて、
ただでさえ男女比のおかしなうちのクラスのホールには男子ばかりが残ってしまった。
それなら執事喫茶でもいいだろうに、面白がって女装喫茶になってしまった。
何人かの女子はホールでメイド服着てくれているけど、うちのメインは、もう、あいつで決まりだし。

「れ、玲様、お写真いいですか?」
「写メはお一人一回まで。当店のポラロイドでの撮影は、こちらの萌え萌えセットご注文の方へのサービスとなっております」
メニューを開いて淡々と説明しているだけなのに、女の子はうっとりとした顔で見つめている。
須籐玲也、生徒会副会長で長身美形。
今日の為に少し伸ばした髪は色素が薄くてサラサラで。
下級生にはファンクラブもいるような典型的な王子様。
去年の文化祭で付き合いたい男No.1に選ばれるし、男子に聞いた抱かれたい男No.1抱きたい男No.1のダブル受賞。
まずそんな投票しようなんて言い出した生徒会の頭がおかしいとは思うけど。
「ど、どっちもで!」
「ありがとうございます。健ちゃん、写真お願い」
「へ、お俺?」
棚の後ろでコソコソ働いていた俺を目敏く見つけた玲也に呼ばれた。
けど、行きたく、ない……なあ。
「ほい、ポラロイド」
近くのクラスメイトがにやにやしながらカメラを渡してきた。
くそ、こいつら…くそ。
「く、お…お呼び、ですか……」
短いスカートの裾を抑えながら席に向かう。
教室中の視線を感じる。
「ちょ…クク、先輩、それはないっすわ」
「な、なんで来てんだよお前ら!」
席についてパフェを食べてた部活の後輩の声をきっかけに教室中から笑い声が聞こえて、顔が熱くなった。
あいつら、今度の部活覚えてろよ。
「ほら、健ちゃん。早く撮って!」
キラキラした笑顔の玲也が俺の太い腕を掴む。
やめてよ、お前と比べられたら本当目も当てられないんだって。
小さいときは体格に差なんてほとんどなかったのに。
高校に入った途端ぐんぐんとゴツくなった俺。顔だけはどんどん綺麗になった玲也。
今日もお笑い要員でこんな格好させられてるけどさ、もう服ピッチピチだし。
絡めた腕は太さも違えば、色も。俺、日焼け凄いし。
ヘッドドレス付けた頭も、短髪で真っ黒でゴワゴワだし。同じシャンプー使ってるのに。
部活のおかげですね毛が薄かったくらいだ、いいところなんて。
「はい、こちらになります」
玲也しか目に入ってないような女の子に撮れた写真を渡し、逃げるように裏へ引っ込んだ。

18222-69 女装が似合う攻め×女装が似合わない受け 2/2:2011/08/16(火) 05:39:56 ID:B5kauskA
「……ったくもう、いつまでこれ着てなきゃいけねえんだよ…」
積み上がった段ボールの裏に隠れて一息つく。
「あ、健ちゃん!こんなとこ居たんだ」
俺を見つけた玲也が嬉しそうに隣に座る。
「ホール居なくていいの?玲也人気者なんだから」
「えー、もういいよ疲れた。ああいう爽やかな笑顔とか向いてねぇもん俺」
自分の引き攣った頬を揉みながら、俺の肩へ頭を置く。
「そんなに似合うのに?」
「え?ホントに?健ちゃん、俺似合う?」
「うん」
頷くと嬉しそうにヘラヘラと笑い、腕に抱き着いてきた。
顔はどんどん綺麗になったけど、中身はずっとこんなんで。
「えー、でもぉ健ちゃんも可愛いよぉ!凄ぇいい!」
ファンクラブの子たちのイメージ通りのキリっとした喋り方なんてしないし、あと何故か幼なじみの俺にデレデレだし。
「……どこが…」
「えー!絶対俺より可愛いって!つかさっきさあ、この格好のまま生徒会行って下さいとか言い出した奴いてさあ、マジ意味解んねぇし」
生徒会長は玲也よりは劣るけどまあまあ男前で、
「お似合いだとか思われてるんだろ」
俺もそう思うんだけどな。
「うえぇ、もう健ちゃんまでそういうこと言うなよ。気っ色悪ぃ!アイツに抱かれるとかマジ女子って意味わかんね。
 ……あ、そういえば健ちゃんさ、なんでずっとスカート抑えながら歩いてたの?」
「え、や、だって…恥ずかしいだろ、その……見えたら…」
「……え?あ、え、健ちゃん…もしかして」
玲也の手が勢いよく伸びてきて、
「…あ、止めろ!」
抑えようとしたが間に合わず、俺のスカートは見事に捲られた。
「ちょ、ば、止めっ見んな!」
スカートを下ろそうとするが、玲也にしっかりと押さえられて全然動かない。
「……わぁ、健ちゃん、エっロぉ……」
玲也がうっとりとした表情で俺の股間を見つめている。
女物の下着を身につけた俺の股間を。
「ホントに、履いたんだ…」
小さな布地で、しかもその殆どがレースで出来たそれに収まりきるはずもなく、
それでもどうにか押し込めた俺のモノは生地の上からでもはっきり解る程浮かび上がって、
「って、え!ホントにって!え!お前?え、お前履いてないの?」
この服に着替えるときに一緒に渡してきたこのパンティを。え、履かなきゃいけないんじゃないの?
「え、てか、え?皆は?え、俺、え?俺だけ?」
パニクる俺のスカートから手を離し、スカートを捲った玲也は、グレーのボクサーパンツを履いていた。
「えええ!?お前!お前、皆履いてるからって!履かなきゃダメって!」
「ゴメンね健ちゃん。あれ、嘘」
背景に咲いた花が見えそうな程の笑顔で言われる。
「マジ…かよ……」
騙されたショックと羞恥心に顔を伏せる。
「健ちゃん、ゴメンて。いやあ、でもいいもん見れたぁ」
楽しげな声がムカついて顔を上げると、幸せいっぱいな顔をした玲也が、ギラギラした目で俺を見つめていた。
「健ちゃん、俺…我慢出来ない……」
「ちょ…おい、ここは、さすがに……」
「…じゃあ、トイレ行こ」
「っ、で…でも」
「おーい、玲也ぁ!あれ?玲也知らね?」
「え?アタシ見てないよ?」
「んだよ混んできたのにどこ行ったんだよ」
段ボール越しにクラスメイトの声が聞こえて竦み上がる。
「……ほら、もう行かないと」
「えー、嫌!」
「駄ぁ目!」
「そんな可愛く言われたら、言うこと聞くしかないじゃん」
「…だから、俺のどこが可愛いの?これだって、似合って…ないだろ」
「うん!」
「即答?!」
「似合ってないから可愛いんじゃん!そのピチピチの服に収まり切らない筋肉、恥ずかしそうな顔、もうホント堪んない!
 健ちゃん昔っから可愛かったけど、最近もうホントに可愛くなってきて…」
「ん?玲也くん?居るの?」
段ボールを向こう側からどんどんと叩かれる。
「あ。あー、今行きますよーっと」
残念そうな声を上げて立ち上がる。
「あ、健ちゃん、今日も家来るよね?」
「えー……俺、明後日練習試合あるんだけど…」
「もう今日人前でなくていいから!俺ごまかすから!」
「あ、それは助かる」
「まあ、これ以上こんな可愛い健ちゃんを他の人に見せたくないしね」
俺も見せなくないな、こんなお前。
「じゃあ、最後にこれだけ」
ちゅ、と軽く唇が触れ合う。
「よーし、いってきまーす!」
見せたくないよ、他の人には。ファンクラブの女の子とか、クラスメイトとかには。
キリっとした喋り方なんてしなくて、まあまあ変態で、つかガっチガチのホモで、バリバリのタチで、
あと何故か幼なじみの俺にデレデレのことなんて。
俺だけの秘密だ。

18322-99 スマホ×ガラケー:2011/08/19(金) 22:30:55 ID:NlGXqeGo
私の主人、すなわち私の所有者は、近頃新入りにお熱だ。
「で、今は何の用事だったんだ?」
「道順の確認。いやーあの人ほんと方向音痴だねえ。僕が来る前はどうしてたんだか、心配になるよ」
「私にもナビアプリは搭載されている」
「へえ? まあ、そんなチンケなディスプレイとチャチなアプリじゃあ、さぞ苦労してたんだろうねぇ」
まただ。この生意気な新入りは、自分のスペックを鼻にかけているのか、やたらと嫌味な物言いをする。
「ああ、私は小柄だからな。虚弱体質な割に図体だけはデカい誰かさんと違って」
それにつられて、こちらもつい刺々しくなってしまう。カチンと来たらしい新入りがなにか言いかけたとき、
「っ!!」
私の身体が震えた。すぐに主人の手が私を取り上げ、身体を開き、耳元へと押し付ける。
『もしもし? うん、今向かってるとこ。ちょっと迷っちゃってさー……』
すぐ側で聞こえる主人の声が心地よい。あいつが来るまで、私はいつも主人の側にいた。
あいつとは比べものにならないかもしれないが、自分なりに主人に尽くしてきたつもりだった。
そう、私は自分から主人を奪ったあの新入りに嫉妬している。認めたくも、ましてや知られたくもないことだが。
やがて主人は通話を終え、私は鞄の中へ放り込まれた。しばらくして、新入りの様子がおかしいことに気づく。
いつもならすぐに絡んでくるのに、今はやけに憂鬱そうに押し黙っている。
「どうした。もうバッテリー切れか?」
沈黙に耐えかね、からかうように尋ねると、
「……僕らってさぁ、本来誰かとつながる道具じゃん」
奴は独り言のようにつぶやいた。
「僕は君よりずっと多くの仕事をこなせるのに、あの人と誰かをつなげる役目は君のものなんだなー、って」
そういえば、主人がこいつで誰かと話しているところを見たことがない。
メールのやり取りも、大抵私を通して行っている。だが、
「お前だってそういう機能がないわけじゃないんだろう?」
「勿論あるさ。けど、なんか電波とかアドレスとか色々事情があるっぽくて、使ってもらえない」
悔しさと寂しさが入り交じった声に、胸を衝かれた。優越感とも親近感ともつかない奇妙な何かがこみ上げてきて、
「無念だな」
何とはなしに、そんな言葉が出た。言ってみてから、それは私自身の心持ちだったのかもしれないと思った。
新入りはしばらく私の真意を測りかねていたようだが、哀れまれたと判断したのだろう、
「君みたいな旧式に、分かったようなこと言われたくないね」
ことさら突っぱねるように吐き捨てた。
いいや分かるさ、誰かの一番になれない痛みなら。
そう告げようとしたとき、再び鞄に主人の手が伸びてきた。今回はどちらが選ばれるのか、私も奴も身構える。
しかし、予想外のことに、主人は私達をいっぺんに掴み上げた。
右手で新入りの大きな液晶を撫ぜて、左手で私のボタンを押す。体内でコール音が鳴り響く。
『もしもしー? ゴメンやっぱり道分かんなくなって――うん、だから地図見ながら直に教えてもらおうと
 ――そう、スマホ見ながらガラケーでかけてる。やっぱり二台持ちにして正解だったわー……』
暫くの間、主人は新入りの画面と周囲を見比べつつ、私越しに道案内を受けて歩き続け、
ようやく通話相手らしき人と合流した。
仕事を終えた私たちは、再び鞄の中で隣り合わせになる。顔を見合わせると、どちらからともなく笑いがこぼれた。
「全く、手のかかる主人を持ったものだ」
「ほんとにねぇ。こんな調子じゃ、僕のスペックを持ってしても手に余るよ」
今までずっと、私の力だけで主人を助けたいと思っていた。
でも、この新入りが一緒なら、もっと主人の役に立てるというならば。
「共にあの人を支えていくしかないか」
「……まあ、ご主人サマのためなら仕方ないよね」
そう、全ては我らが主人のため。それだけのことだ。
だから、奴が台詞の割にどこか嬉しげだったのも、それを見て何故かほっとしたのも、きっと気のせいだ。

18422-109:2011/08/21(日) 11:40:35 ID:PDGJB1tI
アイツは人に甘えるのが苦手のようだ。
家庭の事情が複雑で、児童相談所に世話になったこともある。
何故そんなことを知っているかと言えば、俺が隣の家の住人だからだ。
隣の夫婦げんかは内容まで知っているし、物が倒れる音がしたと思うと
翌日あざの出来たアイツに会うという事は日常茶飯事だった。
通報があって一時保護が決まった時には、さすがのアイツも嫌そうだったので、
俺の家に来てもいいぞといったが無視された。
まあ、保護決定してるんだから来られる訳もなかったけど。
借金の督促もたくさんあった。郵便物がポストから溢れていた。
「親に死んで欲しい」と物騒な事をアイツが言っていたら、本当に事故で亡くなった。
自殺じゃないかと近所で噂になったが、自殺するような夫婦ではないという両親の火消しで
なんとか沈静化した。自殺するなら夜逃げだと俺も思う。そんなにしおらしい夫婦じゃないし。
アイツは冷静だった。学生なのに事務的にすべての物事をこなした。
葬儀も密葬で、知らないうちに全部終わっていた。
何か手伝える事はないかと聞いたが、すげなく断られた。
でも、一人で生活をしているアイツを心配して両親が強引に自宅に連れて来たのでホッとした。
うちの親はおせっかいで暑苦しいが、こういう時には便利だ。
長年のつきあいなのにはじめて家に来たお客さんのように他人行儀だったけど。
「お前さあ、家の手伝いなんかすんなよ」
「そういう訳にいかないだろ。世話になってるんだから」
「お袋にお前と比べられるから困る」
「そんなこと知らねえよ……。ま、いいや。俺、すぐに出てくし」
「え? え? そうなの? 家の買い手決まったの? いつ?
どこ行くの? もう引っ越し先決まったの? これからどーすんの?
金大丈夫なの? 一人で? 働くの? 連絡どーすればいいわけ?」
「いっぺんに聞かれても……」
「もう少しうちにいてもいいじゃんか」
「お前んちって、昔から苦手なんだよね」
「なんで?」
「なんか俺がいちゃいけないような気がする」
言葉につまった。そんなことはないと言いたかったけれど、
届かない気がした。
テレビからは芸人のハイテンションな声がしている。
「あのさあ」
「うん?」
「もう少し、こっちに寄りかかってもいいんじゃない?」
「なんでだよ。暑苦しいし、俺がヤダよ」
とアイツは俺から一歩遠のいた。
「そうじゃなくてさ」
「……気持ち悪。俺、もう寝る」
俺が言わんとすることは伝わっていたような気がするが、
無理矢理終わらされてしまった。
俺の部屋でアイツは胎児のように丸まって先に寝ていた。
凍えているようにも見えた。
俺は自分のベッドに横たわりながら、
「たまには甘えたって罰は当たらないぜ」
と隣の布団に寝ている奴に聞こえるように言ったけれど、
わざとらしい寝息をさせてアイツは目を覚まさなかった。

18522-109 甘えるのが苦手:2011/08/21(日) 11:49:28 ID:PDGJB1tI
タイトル入れ忘れました。失礼しました。

18622-249 権力者の初恋:2011/09/09(金) 23:32:24 ID:HSjYhJyQ
仕事も一段落した昼時。
快晴を喜ぶかのように小鳥達が歌いながら窓に映る空を横切るのを見送ってから、穏やかな気分でコーヒーをすする。

「大統領、私の話、聞いてましたか?」
「…ああ、すまないね。もう一度言ってくれるかい?」
私の言葉に秘書はため息をついた。
先程から口うるさくスケジュールを述べ続けていた彼女の顔が、仕事モードから急に“子供を見守る親”のようになった。
「…ええ何回でも言いますとも、しかし今日のあなたは私の話を聞いてくれるとは思えない」
ごもっともな答えだ。
私はしばらく考えて、彼女を見上げる。
「…信じられるかい?今夜の事を思うと心が浮き立っていて食事もままならないんだ。この私がだよ」
お昼に出された大好物のラム肉でさえもなかなか喉を通らなかったのだ。
俗にいう、胸がいっぱいというところだろうか。真意はわからない。
何せ初めて体験する気持ちだから。
「…しかし大統領、今夜は緊急の会議が…」
私は彼女の言葉を遮るように人差し指をたて、横に振りながら「ノー」と言った。
「多忙である彼のスケジュールをやっと押さえたんだ。そうだろう?」
「ええ」
「キャンセルだなんてとんでもない。会議は別の日だ」
「わかりました」
そう、彼は今やおしもおされぬ大スター。
毎日何かしらテレビに出ていると言っても過言ではない世界的スターの夕食時を、我がハウスに招く事ができる日が来たのだ。
大統領の特権とも言えよう。
少しの間だけでも彼の時間を手にした悦びは計り知れない。

18722-249 権力者の初恋2:2011/09/09(金) 23:33:03 ID:HSjYhJyQ
そして夜。
スーツに身を固め、手土産に花束なんて持ちながら彼はやって来た。
世界の名だたる役人が集まる会議なんかよりも緊張している私に、彼は笑顔でこう言った。
「大統領、お目にかかれて光栄です。心から尊敬しております」
彼は笑うと可愛いらしいえくぼが出来る。
小さな事だがテレビを通して何度も目にしてきたそのえくぼが、肉眼で確認できる。
夢ではない。
「ヘイミスター、なにを言うんだね君、こちらこそだよ全く」
私の言葉に彼は照れたように笑い、私の瞳をじっと見た。
「この花は、大統領の誕生月の花です。花が好きと伺ったもので…。今夜はお招きありがとうございます」
ああ、実物はなんてクールでナイスなタフガイなんだ。何もかもがまるで予想通りだ。
私は天にも昇る気持ちで、花束を受け取った。

18822-269 甘党な男前受け 1/2:2011/09/12(月) 08:43:43 ID:y6uzqi62
ヤツがどでかいパフェをうまそうに食うのを、
コーヒーを飲みながら眺めるのは嫌いじゃない。
「うげえ、いっつもなんでそんな食えんだよ」と俺が言うと
「欲しいんだったら言えばいいのに」ヤツがスプーンを差し出すので
「別に欲しくないけど」と言いながら一口もらうのがお約束。

そんなヤツは少しでも休みがあると、バイクに乗ってすぐどこかへ出かける。
俺も誘われはするが、俺は青空のもと太陽の光を長時間浴びると
干からびて死んでしまう(気がする)ので、大抵応じない。
この前なんとなくヤツに電話をしたら和歌山県まで行っていた。
「東京から?信じらんねえ」と言うとヤツは
「3徹でゲームする方が信じられない」と言ってきた。

俺たちの趣味趣向は全くもって合わないが、まあ気が合うので
そんなかんじで仲良くやっている。

しかし、ひとつ気の合わなそうなことがある。
いや、趣味趣向がひとつだけ合ってしまったというべきか。
何の事かというと、情事の際の立場のことだ。
まだそれに至ってはいないが、最近の悩みの種になっている。
俺はヤツを抱くつもりだか、何となくヤツも俺を抱く気でいる気がするのだ。


俺とヤツの背丈はそう変わらないのだが、ヤツは外で遊ぶのが大好きなだけあって、
力で俺が勝てる見込みが欠片もない。
ジムに行ったりもする男に、家でゲームしかしてない男がどうやったら勝てるのか。
格ゲーなら勝てる。でも実践では無理だ。
だがなんとかして情事のときは優位に立ちたい。
だって抱かれるのってよくわかんないしなんかちょっと怖いし。
これは、先手を打つしかない。
考えた結果、俺はそのままを告げることにした。
よし、決めたなら今言ってしまえ! 言ったもの勝ちだ!

18922-269 甘党な男前受け 2/2:2011/09/12(月) 08:44:24 ID:y6uzqi62
「抱かせて下さい」

ヤツはチョコレートケーキを頬張っているところだった。
不意打ちに驚いたのだろう、ケーキを喉に詰まらせそうになって
慌ててキャラメルマキアートを口に流し込んだ。
まさかそんなに驚かれるとは思っていなかったので
ゲホゲホと咳をしているヤツの背中をさすりながら俺は「ごめん」と謝った。


「いいよ」

一呼吸置いて、ヤツは緩く笑う。

それがどっちの言葉への返答なのか俺は判断がつかない。
だからといってもう一度聞けないでいると、
「なんで敬語?」と笑いながらほっとした顔でヤツは話を続けた。

「なんか最近思いつめてると思えば…
 欲しいんだったら言えばいいって言ってるだろう。
 ほんとうはおれが抱くつもりだったんだけどさ。
 おまえが欲しがってくれるんならくれてやるよ、なんでも」


ちゅっ、と口づけられたそれは、ひどく甘い味がした。

19022-289 博奕打ちの恋:2011/09/16(金) 00:10:03 ID:E16dp1lo
「負けたらどうなるか、判ってんだろうな」
「ああ」
 目の前で凄む男に、オレは軽く頷く。
 適当に遊んで来たつもりだが、負け無しのオレが気にいらないらしくついにルーレットでサシの勝負。
 イカサマ防止で玉を入れてからオレが賭けて、その逆を奴が賭けるいたってシンプルな方法だ。
 ルーレットが回り玉が入ると、いつものようにフッと脳裏に数字が浮かぶ。
 今回は19。
 オレは迷わず黒にチップを置き、奴は赤に置いて後は勝負を待つだけ。
 スピードの落ちてきた玉はコツンコツンと音をたて、赤の19に収まった。
 瞬間、奴の顔が笑顔になる。
 そりゃ嬉しいだろう、初めてオレに勝てたんだからな。
 奴は笑顔のままオレを見て、
「約束どおり、今までの分体で返してもらうぜ」
「好きにしろ」
 奴の言う取り立てがタコ部屋送りか、臓器を抜くのか、それとも言葉通りか……。
 正直どれを指しているのか判らない。
 が、オレは今まで賭けに負けたことは無いんだ。
 そしてこれからも、負ける気はねぇ。
 だからオレは、欲しかったモノを手に入れられるはずだ。

19122-309 噛み合いっこ:2011/09/16(金) 11:57:28 ID:jNbQemMk
「痛いって!やめろ!」
いつものことだから後ろに回られた途端すぐに避けたつもりだったのに、俺の肩にはくっきりと赤い歯型が残ってしまった。
「あーあ…」
長袖の季節ならまだしも、夏だから肩をだすこともあるのになぁと毎度のことながらうんざりした。
そんな俺の表情に、森下はニヤニヤと底意地悪そうな笑顔を浮かべて「ごめんごめん」と言った。反省の色なんかこれっぽっちも見えない態度である。
「反省してるならやめろっていつも言ってんだろ馬鹿野郎」
「愛情表現だって。つーか、お前だってノースリ着なきゃいいじゃん」
「何で俺がお前に合わせて服選ばなきゃならねぇんだよ。ふざけんな」
もう別の部屋に行こう、と思い、読んでいた雑誌と飲みかけのコーラを手に立ち上がった。
そうして森下に背を向けると、背後から「どこ行くんだよ」と聞こえた。
「別に」
「答えになってねぇし」
「どうして噛み付いたんですか、って訊かれて、愛情表現です、って答えるよりはマシだと思う」
「…」
森下が黙った。
俺達にとっては、くだらないことに、ここまでが毎日の恒例行事なのである。
森下は俺よりも10も偏差値の高い高校に通っているのに、いつも馬鹿げた行動を起こして、それに輪をかけて馬鹿げた言いがかりをつけて、結局いつも俺に言いくるめられる。
そして…
「あ、そうそう森下」
振り向くと、何故か森下の顔つきがぱっと明るくなった。
「これに小川が載っててさぁ。ガイヤが俺にもっと輝けと囁いてるとか書かれてるんだけど」
そう言って俺が本を差し出した途端、森下も手を伸べた。
「マジ!?あいつ中坊ん時根暗メガネだったじゃん!」
森下が興味を見せた途端、その指先に噛み付いてやった。
「いてっ!いてーよ!」
いつも仕返しされてんのに何で気がつかないのか毎度のことながら不思議なのだが、森下は慌てて手を引っ込め、俺に文句を言った。
「何だよ!ったくよー」
「何って、愛情表現だし…」
俺が言うと、森下は嫌そうな顔をして、「夜は覚えとけよ」とか何とか捨て台詞を吐いた。
「(別にいいだろ。そのときは俺が何も言えなくなるんだし)」
そう思い、後ろでわめく森下を置いて、本当は小川なんてどこにも載っていない雑誌を別室でゆっくり読むことにした。

19222-319 無気力系年下×おっとり系年上:2011/09/16(金) 15:44:33 ID:2c/cDd/w
電話が留守電になっていたけれど、どうせいるだろうなと思ったらやっぱりいた。
洗濯物が畳まれずにまだ山になっている。その横に灰色の塊が落ちていて、そよ風に前髪を揺らしながらべっとりと床に癒着している。
うつ伏せているのでよく分からないが多分まだ寝ているのだろう開きっぱなしの窓を閉める。風を含んでいたカーテンが音もなく戻ってくる。
昨日ぶりに洗濯物をたたみ始める。寝ている頭が洗濯を枕にしているのでちょっとやりづらい。そう思ってふと見ると、真っ黒な目が開いていた。
「プリン」
と口だけが動く。
「プリンくれ」
コンビニの袋がガサガサしていたので分かったのだろう。また袋をガサガサさせてプリンの蓋をむいてやる。
「あーん」
一口分救ったプリンを口元まで持って行って、食べようとした瞬間に手を引っ込める。
自分で口に含んでしまうと露骨に恨めしそうな表情する。面白くてつい笑ってしまう。ますます露骨にむっとされる。
「プリン食わせろ」
「だってアザラシみたいで面白いから」
「アザラシじゃねえ」
「タワシ」
「タワシじゃねえ」
「そうだね」
なだめすかすように言ったのが気にくわなかったのか、左手を掴まれて人差し指をガリガリと噛まれた。
「痛い痛い」
本気で痛いので手を引っ込めると、なぜかうっすら得意そうだ。

「そうだった」
ソファに寝そべって本を読んでいる途中、急に思い出して聞く。
「明日来れないんだけど生きていける?」
「別に死なねえし」
少し間が開いて、フンと鼻息を荒くした返事が聞こえた。
それを聞いて安心したのもつかの間、床から爬虫類のようにズルズル這い上がってきた。あっという間にのしかかられる。変に素早い。
「おもっ」
重いと抗議しているうちにゴツンと口がぶつかってきて、チュウチュウと間の抜けた音がする。キスをされた唇を思い切り吸い上げてくるせいだ。これにも痛いと言いたいが、気を悪くしそうなのでやめておく。
「する?」
「する」
代わりに聞くと今日一番力強く頷かれたので、少し照れくさくてタワシ触感の髪の毛を一房ひっぱる。今度は向こうが「痛い」とじたばたしていた。

19322-299 さあ、踏め!:2011/09/18(日) 02:44:19 ID:yOdrtY8Y
「みんなでメシ食った時、どっちかつーとSだって言ってたじゃん」
「あー、思い出した。言ったな。確かに言った。つーかお前も、俺ドMでいいやーとか
 適当ぶっこいてただろ」
「……」
「……」
「ともかく、これまで色々しておきながら、お前がサドだってことに気付かなかったのを悔やみまして」
「ちょっと外したすきに、人の部屋で全裸になったと」
「うん」
「ベッドの脚に手錠つないで待ってたと。……わざわざ買ったのかこれ」
「そう。慌てたら鍵すっ飛ばしちゃって、自力じゃ外せなくなった」
「……」
「で、そこの箱を開けて下さい。……ハイヒールです」
「見りゃわかるよ! これも買ったのか!?」
「うちの下駄箱で一番かかと高くて細かったやつ。多分上の姉ちゃんの」
「……」
「それを履いて、俺を思い切り踏んでいいんだよ」
「色々可哀そうだろ姉ちゃんが! サイズ的に足入らねえよ」
「さあ、踏め! サドっ気全開で踏みにじれ! 素足でも可! それで、満足したら十五分、いや十分でいいから
 触らせ……どこ行くんだ」
「放置プレイならしてやるよ。優しいご主人様は、これからお前の大好物の牛丼を買いに行く。徒歩で」
「往復三十分以上かかるよ!?」
「晩メシは牛丼食って、朝は……パンでいいな?」
「え?」
「お前ジャムいらないよな。買い足さなくていいか」
「それ、と、泊まりでいいってこと……」
「それじゃ大人しく待ってろよ。ついでにDVDも借りてくるわ。徒歩で」
「待って俺も行きたい! 一緒に行くってば! ……あー……」

「しかし、今日は本当に放置されるかと思った。すげえ顔してたぞお前」
「すげえ顔させたのはお前だ。万が一なんかあったら俺犯罪者扱いだもん」
「同級生を全裸で監禁。おお。全国ニュースになるな」
「だまれ真犯人」
「あのうところで」
「なんだよ、お前選んだ奴だろ、いい加減ちゃんと見ろよ」
「俺の太腿をぎゅっぎゅしてるこの足は……」
「素足でもいいから踏むんだろ」
「あ゛ぅんっ!」
「あ、悪い、蹴っちまったか。テーブル低いから動きにくくて」
「う―……」
「それで、満足したら十分だけ、だったな」
「……!!!」

19422-330 可愛いもの好きなのをひた隠しにする彼氏:2011/09/18(日) 02:48:01 ID:yOdrtY8Y
もいっちょ。両方萌えたので連打で失礼します



例えば、何気なく回したチャンネルで、仔猫が大写しになってた時。
ハンバーガーを買いに行ったら、子供向けセットのおまけがゆるくて可愛いキャラだった時。
この人はなんだかムッとした顔をするのだ。
もう、視界に入った瞬間に顔がひきしまり、その後少し挙動不審になる。

「スクラッチカード、貰っていーいー?」
「おお。俺いらねえからやるよ」
オレの集めてる分と、今削った巌さんの分と……おし、キャラクタープリントのカップがもらえる!
レジから戻ったオレの手元を見て、巌さんの精悍な顔がいつもの「ムッ」になった。
「お前、わざわざロゴじゃないほうのカップにしたのか?」
「オレこのキャラ好き。ねえこれそっち置かせてよ。これで巌さんのカフェオレ飲みたい」
飲みたい飲みたーいとテーブルを叩くしぐさをすると、ムッとした顔が諦めの表情に変わった。
「……お前の持ちもん並べると、俺の部屋が微妙な趣味になるんだけどよう。お前実は男子大学生じゃないだろ
 女子高生かなんかだろ」
「巌さん女子高生好きじゃん! 見かけるとすーぐそっち行きっぱなしじゃんか。顔キリッとさせてても視線固定されてるもーん」
巌さんは、しかめっ面で「んなこたねえよ」と言い捨てたけど、目が泳いでいる。

これはちょっとした意趣返し。だって、初めは本当に女の子がいいんだと思って、ずいぶん悩んだんだ。
でも、オレの事好きだって言ってくれる気持ちを信じて、よくよく巌さんを見てるうちに気付いた。
興味の対象は、女の子じゃなくて、女の子の持ってるカワイイ小物だって事に。
同時に「ムッ」の謎も解けた。可愛いもの見ると顔がゆるむけど、それが恥ずかしいんだなこの人は。
いつか、その恥ずかしい所も見せて貰えたら、と可愛いもの攻勢をかける日々だけど
「ムッ」の顔もかっこいいから別にいいかな、とも思う。
「悔しいから、段々可愛いもので浸食してって、最終的に巌さんの家にファンシーの間を作ろうと思う」
半ば本気で畳みかけると、巌さんが噴き出して笑った。

19522-329 理性×本能 or 本能×理性:2011/09/18(日) 04:05:04 ID:a2Mx9lvY
※ID:a2Mx9lvYです。あまりにもひどい行動をとってしまったので死ぬ前にせめて投下します。この度は本当に申し訳ありませんでした。



 調べたところによると、と彼は云った。

「本能とは動物にも人間にも生まれつき備わっている性質で、理性は人間にだけ備わっている知的特性です。理性で本能を制御して、今日まで人類は進化してきたといわれています」

「……うん。それがどうした……?」

 いきなりつらつらと難しそうな話をしだした後輩に、俺はきょとんとした。彼とは同じ生徒会の役員同士で、密かに交際を始めてもうすぐ2ヶ月になろうとしているところだ。見た目からしておとなしく冷静で小柄な彼は、運動部長で筋肉馬鹿で本能に踊らされているとよく評される俺とは全く正反対の気質で、接点など何もないと思われていたが、ある時「サッカー好き」という共通の趣味が見つかり、それ以降急激に仲良くなった。その後、俺のほうが惚れ込んでしまい、玉砕覚悟で告白し、奇跡的に彼が受け入れてくれて晴れて恋人同士に昇格したわけだが、理性のかたまりと云わんばかりの彼を前に俺の本能はなかなか力を発揮できず、結局あまり進展のないまま今に至っていた。

 本日も「なでしこJAPANの試合の録画DVD」を餌に、彼を自部屋に招き入れ、今日こそは! と意気込むも、本能と理性の狭間でなかなかゴールを決められず、悶々としながら、「昨日の試合は〜」などとたわいもない話をしていた。冒頭の本能と理性の話は、そんなたわいもない話の最中に不意にもたらされたものだった。

「あなたは僕のことを理性的で落ち着いていると褒めるけれど、僕からしたらあなたのほうがよほど理性的で優しい。ぼくはあなたのそんな優しさが好きです。でも……」

 でも、と云いながら彼はベッドに腰掛け、自ら制服の下の白いワイシャツの第二ボタンまでをそっと外し、俺を真っ直ぐに見た。

「でも、今くらいは本能の赴くままに従ってもよいのでは、ない、でしょうか……」

 サァっと紅く染められた頬と、シャツの下に覘く白い肌に浮き出た鎖骨。俺の理性ははじけ飛んだ。

19622-329理性×本能 or 本能×理性:2011/09/18(日) 09:10:10 ID:3eCNlUC.
⑴理性×本能の場合
理性は常に落ち着いて物事を考える。クールでドライな感じ。
攻めだったら鬼畜かヘタレ。敬語でもいい。
本能は自分のやりたいことに向かって突っ走る。意外と人の表情の変化に敏感。
受けなら無邪気受け。それか元気受け。
「ねえねえ、理性、みて。ひつじ型の雲があるよ!」
「本能、落ち着きなさい。上ばかりみていたら転びますよ。」
「わかってるよー。」
(理性…今ちょっと笑った。理性はやっぱりかっこいいなぁ。)
みたいな感じで、ほのぼのしてたらいい。
⑵本能×理性
本能は受けの時と同じように無邪気か元気だけど、天然たらし要素or腹黒要素が加わる。
理性は敬語受け。押しに弱いタイプでちょっとだけツンデレが入っててもおいしいと思う。
この2人だったらラブラブで、
「理性ー、チューしよう。」
「なんでですか!こんなに人がいるところでできるわけないでしょう。」
「もういい!勝手にするから。」
「まさか本当にするなんて…本能のそういうところ、嫌いじゃないですけど…ね。」
みたいな会話を繰り広げてくれたら禿げます。

あまりにも萌えたので。初カキコなので表示がおかしかったらゴメンなさい。

19722-329 理性×本能 or 本能×理性:2011/09/18(日) 11:13:12 ID:7ttR8.B2
本スレ331です。329だけに的を絞って本能×理性でリベンジ。




「だっかっら!! どうしてそうすぐに暴走させるんだお前は!!」
「あっれー、これはイケると思ったんだがなー」
「“恋人”逃げたじゃないか! 貸せ、俺が操縦する!」
「据え膳食わぬは男の恥とか言うじゃん?」
「黙れ。おら“本体”、呆けてないで追いかけろ」
「…あ、“恋人”発見」
「よしよし、近づいて肩を…」
「うりゃ」
「あ! おっ前、また邪魔しやがって…!」
「ここは抱きつかせた方がいいんだって。ほら、セリフはお前が指示しろよ」
「ったく…謝らせて、素直に告白させて、と…」
「お、いい感じいい感じ」
「お前が暴走させなけりゃ最初から上手くいったんだけどな」
「それだとつまんないだろー」
「うるさい」
「…んー、なんかこれいいムードじゃね?」
「……まぁ」
「俺操縦しようか?」
「お前は大人しくしてろ、俺がやる」
「へいへーい」
「とりあえずキスしながら服の上から…」
「……」
「脇腹に手を…って、こら、何して…!」
「暴走しないように理性的な行動とやらを勉強しようかと」
「だからって俺に…っ」
「ほら、操縦疎かになってんぞ」
「っ、くそ…!」
「ふんふん、なるほど、こうすればいいんだなー」
「見れば…わかるだろ…っ! だからやめ…!」
「物足りなくなったか?」
「誰が…!」
「だってほら、“恋人”見てみ」
「…!」
「…『もっと強くして』だとよ。操縦交代、な」
「あ…っ!」
「あとはこの本能様に任せなさい。…お前も、な」
「う、うるさい…!」

198もてない男×もてる男で両片思い:2011/09/24(土) 00:56:54 ID:pJlX2v7A
yahho知恵袋
回答受付中の質問

僕は若い頃にモデルだった母に似て、いわゆるイケメンだそうです。
女顔なので自分ではコンプレックスがありますが、今は中性的な男がいいらしく、社内では多くの女性社員にアプローチをかけられます。
正直言って、僕は女性が好きではありません。特に恋愛に対しギラギラした人が嫌いです。
仕事に集中したいのに、暇な女子社員にやたら声をかけられて困ります。
こんな自分ですが、最近とても気になる人が出来ました。
総務部で地味に仕事をしている人です。
営業部にいた方ですが、大きな失敗の責任をとって飛ばされたようです。
でも僕は斬新な発想力が認められなかっただけだと思っています。
それなのに女性社員からはひどい扱いを受けていて、見ていてとても辛くなります。
この間は年下の女子社員から大声で怒鳴られていました。
それでもその人は黙って聞いています。そんな所もかっこいいと思います。
普段は接点がまったくありません。
話す機会が欲しくて、自分は非喫煙者ですが、喫煙者のふりをして喫煙所で話をしてみました。(その人はヘビースモーカーです)
僕が話しかけても「そうなんだ」くらいしか返事が返ってきません。
僕が行くとすぐにタバコの火を消して離れてしまいます。
「○○さんは人気あるからいいね」とも言われました。
これは嫉妬なんでしょうか?それともイヤミなんでしょうか?
客観的に見て、脈はあるように思いますか?
また、食事にでも誘いたいのですが、どのようにすればいいと思いますか?


ベストアンサー

最初は自分がもてることの自慢かと思いました(笑)。
タバコを吸っていたり営業をされていたり、ずいぶんカッコイイ女性なんですね。男性的というか。
そういう方はあまりあなたのような男性を好きにはならないかもしれません。
ただ、参考にはならないと思いますが、自分の知り合いで、その女性のような男性がいます。
彼の会社にも、あなたのようなモテる人がいるらしいです。
彼の目にはとても魅力的に写るようですが、気後れしてしまって、ぶっきらぼうに受け答えをしてしまうと言っていました。
男性的な女性なので、彼のようなパターンもあるかもしれないですね。
男なら当たって砕けろです!頑張って下さい!

19922−379 悪落ち→救済(1/3):2011/09/25(日) 18:22:24 ID:y5QL9qos
「実に、残念です」
ゆっくりと扉を閉めながら、彼は頭を振った。
「世間を騒がせていた殺人鬼が、本当に貴方だったとは……」
「幻滅したか?神父様」
言いながら、俺はコートのポケットに手を突っ込む。
それを見た彼が警戒するように一歩後ずさるのが見えたので、笑いかけてやる。
「別に拳銃なんか出やしねえよ。煙草だ」
だが、取り出した箱には煙草は一本も残っておらず、俺は舌打ちして箱を握り潰した。
後ろにいる男がため息をついている。
「神聖な場所で煙草など吸おうとしないで頂きたいのですが」
こんなときですら大真面目にそんなことを言うので苦笑した。
「あんた、俺が怖くないのか」
「は?」
意味が分かっていないような表情で首を傾げている。
この男はいつもそうだ。いかなるときも自分のペースを崩さない。
それが職の所為なのか、元々の性格なのかはよく分からない。
「あの殺人鬼が目の前にいるんだ。こっちのポケットにはゴミしか入っていなかったが、
 別のポケットには銃が入ってるかもしれない。それで口封じにあんたはここで殺されるんだ」

彼には、五人目の殺害現場を目撃されていた。
不幸にもその場に居合わせたこの若い男は、最初の数瞬こそ凍り付いていたが
すぐに全てを悟ったかのように悲壮な表情になり、そしてなぜか逃げもせずこうして俺を教会まで導いたのだ。

「あんたの取るべき行動は、すぐに警察へ駆け込むことで、俺を教会に連れて来ることじゃないだろう。
 それともお優しい神父様は、殺人者ですら哀れんで、一晩中、懺悔でも聞いて下さるのか?」
「貴方にその気持ちがあるのであれば、いくらでもお聞きしましょう」
そのセリフに、呆れた。
「俺とあんたが顔馴染みだからって、殺されないとタカを括っているのか?だとしたらとんだ甘ちゃんだ」
すると、彼は「いいえ」と静かに首を振った。
「知り合いだから殺されないとは、思っていません。今まで殺された方々も、貴方とはお知り合いだったのでしょう?」
その言葉に、俺は軽く衝撃を受ける。
彼の言う通りだった。
世間では無差別殺人だと言われているが、実際のところ、被害者達と俺は面識があった。
つまりは、怨恨だ。猟奇的な、ただの怨恨殺人。
だがその繋がりは表面上は限りなく薄く、警察も辿り着けていない。
だからこそ、世間は無差別殺人鬼だと噂しているのに。
「これは驚いたな。それも、例の『ご神託』……教会独自の情報網が出所か?」
「……いえ」
「その様子だと、俺の動機まで調べがついていたりしてな。神様は何でもお見通しか?」
「…………」
彼は困ったように目を伏せて曖昧に言葉を濁している。
これまでもこんなことは何度かあった。
耳の早い新聞社ですら嗅ぎ付けていない情報を知っていたり、行方不明の人物の居場所について見当をつけていたり。
否、知っていたのは『教会』か。
そのことについて今まで何度か訊ねてみたことはあったが、その度に彼は曖昧に笑って誤魔化すだけだった。

そういえば、彼は教会に入ってくるときにこう言った。
――世間を騒がせていた殺人鬼が、『本当に』貴方だったとは……

今の今まで、現場に彼が居合わせたのは不幸な偶然だと思っていた。
だが考えてみれば、神父である彼がこんな夜中に、町外れの裏通りを偶然通りかかる確率は限りなく低い。
しかし、もし知っていたとしたら。彼は故意にあの場所へやってきたことになる。

「はは、こりゃ傑作だ。警察よりもあんたら教会の方が、捜査機関として有能だなんてな」
心底可笑しくて笑っていると、男は顔を上げ「そんなことはありません」と言った。
「この国の秩序を守っているのは、あくまで貴方がた警察ですよ。……警部」
「俺はもう警察の人間じゃねえよ」

20022−379 悪落ち→救済(2/3):2011/09/25(日) 18:23:32 ID:y5QL9qos
「いいえ。貴方はまだ警部のままです。机の中の辞表は、明日にならないと発見されない」
「……あんた、本当にどこまで知ってやがる」
こちらの質問を無視して、神父は悲しそうな表情で俺に問う。
「まだ、続けるおつもりなのですか」
「さあて、どうだろうな。神様は全部お見通しなんだろ?」
俺は肩を竦めてみせる。
辞表を書いたのは、刑事でいることへの罪悪感からでもなければ、罪の露見を恐れて逃亡するためでもない。
単に、刑事という肩書きがもう不要になっただけのことだ。
正確に言えば『捜査の行き詰まりに疲れ果て辞職した刑事』という次の肩書きを手に入れるため。
そうしなければ、次のターゲットには上手く近づけないのだ。
そう。まだ俺は止まる訳にはいかない。
「とりあえず、懺悔するのが今じゃないことは確かだ。悪いな」
警察の手では届かない、刑事だった自分には裁けない、そんな連中を全て潰してやるまでは。
だから、ここでこの男といつまでも悠長に話している時間は、あまり無い。
(とりあえず、こいつには殺しの現場を見られちまったし、な)
彼をここで殺したとしても、彼のバックには教会の情報網があるようだから、根本的解決にはならない。
『教会』がどこまで知っているのかは分からない。不確定要素は危険だ。
だが少なくとも、ここで彼の口を封じてしまえば、いくらか時間は稼げる。
それに、知られていることを知ってしまえば、以後は警戒すればいいだけだ。
今まで物的証拠など残していない。だから逮捕はされない。それどころか、逆にそれを利用してやることも――
「……私の知っている貴方は」
不意に、噛み締めるような声が教会に響いた。
「悪を憎み、けれど犯罪者を一方的になじることはなく、更正が必要なら手を差し伸べる、そんな方です。
 あなたに救われて、心に平穏を取り戻した人は数知れないでしょう。
 私は、貴方こそ警察の鑑だと思っていました。いえ……警察として以前に、人間として、立派な方だと」
「おう、ありがとうよ」
礼を言ってやるが、神父の表情は苦しげに歪んだままだ。
「けれど貴方は、五人もの人間の命を奪いました。しかもこれ以上ないという程に惨たらしく。
 刑事という立場を利用して、貴方は警察の目を巧妙に逸らし、捜査網を掻い潜り、殺人を続けてきた」
重々しく響くセリフは、罪状を読み上げるようだった。
「罪に償いはあれど、相殺はありません。どれだけ貴方が他人を救っても、貴方の罪が濯がれることはない」
「おいおい、この状況で有難い説教か?まったく大したヤツだな」
職務に忠実なのか、度胸があるのか、自分の置かれた状況が理解できていないのか。
「ついでだからお返しに教えてやるよ。俺から見て、あんたはちょっと真面目――」
「警部」
しかし、言いかけたセリフは遮られる。
神父は軽く目を伏せてから、再びゆっくりと目を上げ、真っ直ぐに俺を見た。
「それでも神は、貴方を赦します」
「……あ?」
何を言われたのか、わからなかった。
「罪を裁くのは秩序。秩序を守るのは人間、秩序に守られるのは人間、秩序を乱すのは人間。
 秩序を守るためには犠牲が伴う。犠牲の為に戦うのもまた秩序。犠牲とは弱者。あるいは、罪」
言いながら、目の前で神父が白い手袋を填めている。
「貴方はたくさんの人々を救った。しかし五人の命を奪った。貴方には理由があった。五人には理由があった。
 理由はまだ転がっている。貴方はそれらを食い尽くすまで、止まる意思は無い。寧ろ、その意思しか持っていない」
彼の瞳は未だ悲しみを湛えていたが、こちらから視線を逸らすことはない。
「この国の法律も、警察も、世間も、そんな貴方を許さないでしょう。けれども、神は貴方を赦します」
まるで、式典で説教でもしているような口調で。
「貴方の魂は、安らかに神の下へ導かれるでしょう」
「あんた、何を言ってる」
薄気味悪さを感じて、今度は俺の方が一歩退いていた。
俺の知っているこの男は、いつも真面目でときに融通が利かず、日曜は子供達に囲まれ一緒に歌を口ずさみ、
良い行いには笑みを浮かべ、悪い行いには怒りでなく悲しみの表情を返す、そんな至って普通の神父。
それなのに、その声は今や恐ろしく落ち着いている。
「罪は秩序の下で裁かれべきであり」
その表情には憂いを帯びたまま。
「秩序を守るのは警察の役目です」
神父は、だらりと両の手を下ろす。
「……けれど、貴方は、少々やり過ぎました」
その言葉を言い終えたと同時に、彼の身体がゆらりと前へ傾いで――次の瞬間には、十歩の距離を鼻先まで詰められていた。

カタギの野郎の動きじゃない。
そう気付いたときには既に、銀色のナイフが、俺の胸に深々と突き刺さっていた。

20122−379 悪落ち→救済(3/3):2011/09/25(日) 18:24:47 ID:y5QL9qos


「これで四人もの人間を惨殺した恐怖の殺人鬼も終幕か。あっけないものだ」
「犠牲者は五人です」
私は訂正する。
「それに、四人目が殺されるまで我々は彼に辿り着けず、結局五人目にも間に合わなかった。
 『あっけない』で終わらせるには、いささか犠牲が過ぎたのではありませんか」
「ほう。それではお前は、この世には過ぎぬ犠牲もあると言うのだな」
面白がるようにそう返されて、私は黙った。
そんな私を見下ろして、自分の上司である男はなぜか愉快そうに笑う。
「本来は向こうの仕事だ。あまりに酷い状況だったからこそ、我々が手を下したのだろう。
 まったく、身内で化物を飼っていたことにも気付かないとは、警察も情けないことだな」
「……この方は、化物などではありません」
彼は立派な人物だった。
そんな彼を何が凶行へ走らせたのか。なぜ狂気へ走らざるを得なかったのか。
それをいくら此処で語ったところで、彼の罪は変わらない。
と、上司が思い出したように「そういえば」と呟いた。
「お前とこの男とは顔見知りだったのだな。やはり、やりたくなかったか?」
「いいえ」
その問いに、私はためらいなく否定を返す。
「こうしなければ、彼は救われないままでしたから」
言いながら、自分でも判で押したような答え方だと思ったが、上司は特に何も言わずただ「そうか」と頷いた。

教会には静寂が満ちている。
ステンドグラスから差し込んだ月の光が、彼の遺体に降り注いでいる。
ほんの数十分前までは生きていて、ほんの数日前までは捜査のついでだと言いつつ教会に顔を出していた男。
元々白かった手袋は、今は彼の血で赤く染まっている。
「……先生」
椅子に腰掛け、自分の両手を見つめたながら、私は上司に呼びかける。
「私の手は、救うに値する手なのでしょうか」
救済は万人に等しく与えられる。たとえそれが罪人でも。
だが、万人が全て、等しく救いを欲するのだろうか。果たして彼は救いを求めていただろうか。
おそらく彼は否と答えるだろう。そう、それを常に求め欲し憧れているのは、他でもない――
「私は値すると思っているからこそ、お前に仕事を任せているのだが」
顔を上げると、すぐ傍まで上司が来ていた。
「それだけでは不足かね?」
そう言って、まるで子供にするように、私の髪をくしゃくしゃとかき回す。
おそらくこの上司は、私の心情を知った上で、尚も面白がってこんなことをしている。
私はため息をついた。
「それは、ありがとうございます」
「さあ、雑談はここまでだ。そろそろ引き上げるぞ。この死体も、このままここに放置してはおけまい」
上司は私の頭から手を離すと、楽しげな表情を引っ込めて、淡々と言った。
「彼の魂の行く先に、安らぎと幸いがあらんことを……」
その言葉に、私も自分の中の下らない感傷を振り払う。
私は、自分のやっている事を忘れてはならない。やるべき事を見失ってはならない。
そして彼の死に顔も、断末魔も、罪も、理由も。
「先生。一つだけ、お願いをしてもよろしいでしょうか」

+++++

世間を騒がせている未曾有の連続殺人鬼は、現時点で実に六人もの犠牲者を出している。
被害者同士には何の繋がりもなく、共通項はただ一つ、遺体が酷く破損していることだけだ。
しかも六人目の被害者は現職の刑事であり、その事実に人々は更に震え上がっている。
今のところ、七人目の犠牲者は出ていないが、警察の捜査は難航を極めているという。

20222-389 ごっこ遊びはもう終わり:2011/09/26(月) 12:30:13 ID:k8Ftd3c2
もう後がなかった。嫌だよどうしてこんな事になってしまったんだ。
俺は匡兄が笑いながら、酷く優しいくせに鳥肌をたたせるような猫撫で声で俺を呼ぶ、それに必死で耐えている。
季之、なぁ、としゆきぃー。
気付かれたく無かったんだ、気付かれない方がよかったんだ。俺は匡兄に、知られたくなかったんだ。
だって俺は、バカだからあんたに夢を見てしまったんだから、あんたとずっと一緒にいたいなんて思ってしまったんだから、
その為にこんな柔らかな愛撫はいらないんだ。そうだろ?俺達は兄弟だって、また言ってくれよ。頼むから、ねえ。匡兄。
ベッドに潜り込んで丸くなって、俺は匡兄が優しい声で俺を撫でるのをやり過ごそうとする、聞こえないふりをする、
ずっとそうしてきっと朝になればまたうまくいく。
怪談なんかと一緒だ、朝までの、粘つく様な長い時間を耐え切れれば。
「何寝たフリしてんだよー」
毛布のすぐそこ、舌先で擽られるような距離だ。匡兄は笑ってて、なー、俺嬉しかったのに、なんて言うから俺の我慢が揺らぐ。
ぐらぐらと、寸前で踏み止まり目を瞑る、声は追いかけてくる、俺もお前が好きだよ季之。
それは、俺が一番欲しくて、一番いらなかった言葉だ。

我慢できない。俺は毛布を跳ね上げて、それに驚いていて目を見開いた匡兄を思い切り突き飛ばした。
匡兄は驚いた顔のままよろけてベッドから落ちる。
「なぁにすんの、お前、スキンシップには乱暴だろぉ」
声はまだ甘く溶けている、嬉しいよって全身で言っている。それが俺にはたまらない。
駄目だよ匡兄駄目なんだよ、俺達はここを超えたら絶対駄目になるってわかってんだよ、
これは被害妄想とか不安とかじゃなくて絶対だよ。
俺とあんたはきっと駄目になる。兄弟ごっこしているのが一番いいんだ、なああんただって知ってただろ。
だからずっと、それに付き合ってくれてたんだろ?
口を滑らせたのは俺のミスだ、ミスなんだけど、お願いだから忘れたフリをしてまた戻って欲しい。どうにか。
ねえ、どうにか。
「なー、としゆきぃ、もっかい言って」
俺の事好きだって。
俺が願ってる間も、匡兄は優しくも残酷なおねだりをする。
「やだよ間違いだしあれ」
「嘘だぁ」
愛が溢れてたから俺にはわかんの。
そんなイラッとする言葉でもって、俺を責める。

俺は頭を抱える。いやだ、こんなのは嫌だ。あんたは俺の兄貴でいてよ。
ちょっとバカで頼りないけど、意外と真面目なところもある、そんな兄貴でいてよ。
俺を弟だって言って、なあもう一回。
匡兄の目は熱を帯びていっそ狂気に染まっているように見える。
つまりはそれだけ我慢してたんだって、きっとあんたは言うんだろう。そうだろう、俺がそうだから多分そうだ。
でも俺は戻りたい、ついさっき、数十分も経ってないそこに。俺達が触れる事に意味が生まれなかった頃に。
「季之ぃ」
「やだ」
「何が」
「やだよ」
俺はその言葉と一緒に手を払った。明確な意図で、匡兄をまるで殴りつけるみたいに。
思ったよりも鋭く俺の手は匡兄の肌を擦り、まるでひっぱたくような形で匡兄の顔が横向く。
妙にスローモーションで、小麦粉とかの袋殴ってるみたいな変な感触、匡兄がぐるりと俺の方に向き直る。
「痛いよ、としゆきー」
それなのに匡兄は、俺を責めない。頬を擦りながら、それでもまだ嬉しいんだと言っている。
「な、季之。キスしよっかぁー」
俺が口なんか滑らせなかったら。
「やだ」
「どーして」
「絶対しない」
「なんで?」
俺も、お前が好きだよ?
そんな言葉でやっぱり俺を傷つける。あんたって酷い人だよ。きっかけはそもそも俺だけれど、ねぇ、だから嫌だったんだよ。
こんなに簡単に、やっぱり壊れるじゃないか。いつか全ては壊れるもんだなんて俺は思っていたけどさ。
それでも匡兄、あんたとは壊れないでいたかったのに。
「近寄んなよ」
今度はさっきより強く。近づいてきた顔を引っ叩く。
指先が笑う。伸びてくる。俺に触れる。嫌だ。こんなに幸せそうなのに、辛い。
俺はちっとも幸せな気分になんかなれない。
だってこれは、終わる合図でしかないじゃないか。
どうして同じ気持ちなのに、こんなに辛いんだ。
教えてくれよ、教えてくれよ、もう一度兄貴になって教えてくれよ。
あんたのどっかズレた答えにも今度はちゃんと頷くから。


ねえ、お願いだよ。

203<削除>:<削除>
<削除>

2041/2:2011/09/27(火) 19:27:59 ID:07G56RQY
間に合わなくて流れたのでこっちで







「好きだ!」

突き抜けるような青空の下、永井は叫んだ。
目の前にはぽかんとした顔の幼なじみの浅島。

「…は?」

とりあえず何かを返そうとしての言葉に、思わずうなだれそうになる。
だがどうにか自分を奮い立たせることに成功した永井は、いつもと同じ笑顔で浅島を見た。
銀縁眼鏡の向こうで、珍しく視線が泳ぐ。

わかっていた。
何しろ、長い付き合いだ。
彼が自分をどう思っているのかなど、痛いほどにわかりきっていた。

「お前は、いったい何を言ってるんだ」
「俺がお前を好きだっていう自己主張だけど?」
「…アホか」

呆れた表情に、いつもの浅島の雰囲気が戻ってくる。
けして肯定的ではない返事なのにもかかわらず、それは永井を嬉しくさせた。

「うん、いいんだ。お前が俺を友達としてしか思ってないのなんかわかってるから」
「永井」
「だから、お前が俺を好きになるようにするから!」
「…どうやって?」

2052/2:2011/09/27(火) 19:28:43 ID:07G56RQY
やや冷たい浅島の声に、永井が固まる。

「と、とにかくどうにかして!」
「計画性ゼロか」
「えっと、とりあえず、浅島の好みのタイプって?」
「背が低くてふわふわしたロングヘアの色白の女の子」

間髪入れずに言われた、性別含めまさに正反対の答え。
だがそれにもめげず、永井は浅島を正面から見据えて笑った。

「見てろよ、全部塗り替えてやるからな!」
「無理だろ」
「無理じゃない!俺、頑張るからな!」

言うだけ言って、その場から走り去ってしまった永井の背中を見送りながら、浅島は小さくため息をついた。

「ひとつ言い忘れたな…笑顔が似合う、って」

だから全部塗り替えるのは無理だろうが、とつぶやきながら、彼は薄く笑った。

20622-409 スーパー攻め様:2011/09/28(水) 23:05:36 ID:z/zOmFHk
ヤバイ。スーパー攻め様ヤバイ。まじでヤバイよ、マジヤバイ。
スーパー攻め様ヤバイ。
まず金持ち。もう金持ちなんてもんじゃない。超セレブ。
金持ちとかっても
「一般家庭20個ぶんくらい?」
とか、もう、そういうレベルじゃない。
何しろ御曹司。スゲェ!なんか財閥とか継いじゃうの。重役級とかヒルズ族とかを超越してる。御曹司だし超金持ち。
しかも強引らしい。ヤバイよ、俺様何様スーパー攻め様だよ。
だって普通はヘタレ攻めとか強引じゃないじゃん。
だって大して知らない人からいきなり「お前は俺のものだ」って言われても困るじゃん。取り巻きとか超妬んでくるとか困るっしょ。
いきなり押し倒されて、「最初は遊びのつもりだったのに、お前が俺を本気にさせたんだからな?」とか泣くっしょ。
だからヘタレ攻めとかゴリ押ししない。話のわかるヤツだ。
けどスーパー攻め様はヤバイ。そんなの気にしない。ゴリ押ししまくり。
当て馬とか邪魔しにきても逆に破滅させちゃうくらい権力持ってる。ヤバすぎ。
俺様っていったけど、もしかしたら優しいのかもしんない。でも優しいって事にすると
「じゃあ、いきなり別荘に拉致るってナニよ?」
って事になるし、それは誰もわからない。ヤバイ。誰にも分からないなんて凄すぎる。
あと超絶倫。約1カトウタカ。年齢制限で言うとR-18。ヤバイ。エロすぎ。抵抗する暇もなく蕩かされる。怖い。
それに超イケメン。超肉体美。それに超頭いい。IQ200とか平気で出てくる。IQ200て。小学生でも言わねぇよ、最近。
なんつってもスーパー攻め様は口説きが凄い。愛の囁きとか平気だし。
うちらなんて愛とかたかだか告白で出てきただけで上手く言えないから真っ赤になったり、わざと茶化してみたり、
最後まで言えなかったりするのに、
スーパー攻め様は全然平気。愛を愛のまま囁いてくる。凄い。ヤバイ。
とにかく貴様ら、スーパー攻め様のヤバさをもっと知るべきだと思います。
そんなヤバイスーパー攻め様に惚れてしまった俺とか超大変。でも愛してる。超愛してる。

20722-419 知りたがり×隠したがり:2011/09/30(金) 19:41:11 ID:fC2J/oaM
「なぁなぁ、受けは俺のどこが好き? ちなみに俺は全部好きだよ」
「ああそうかい」
 また始まった。
「受けはいつ俺を好きになった?」
「忘れた」
 冷たくしてもこたえず、また問い掛けてくる。
「えー。俺はね、忘れ物して慌ててたら何も言わずブッキラボウに貸してくれた時に、いいなーと思った」
「……」
 無視しても同じだ。
「じゃあさ、俺のことどれだけ愛してる? 俺は空よりも広く愛してる〜!」
「教えない」
「それじゃあ」
「ああもう、いつもいつも五月蝿!」
 怒鳴っても、攻めはなぜ怒ってるのか判らず不思議そうに首を傾げる。
「好きな相手の事は、何でも知りたいじゃないか」
「だからって、何度も同じことを聞くな」
「だって聞きたいんだモン」
 口を尖らせ拗ねたように言う攻めに、呆れたように背を向けた。
 そうしなきゃ平静を保てない。
「……」
 攻めのどこが好きかって? おれも全部好きだよ。
 いつから? 初めて会った時からに決まってんだろ!
 どれほど愛してるかって? 距離にしたら宇宙の彼方までぶっちぎる程だ。
 攻めは知らないだろうが、おれの方がベタ惚れなんだよ!
 毎回この気持ちを正直に答えてたら、おれ達とんだバカップルになっちまうんだぜ?
 だから答えてやらないよ。

20822-429 紳士攻め×流され受け:2011/10/01(土) 21:26:32 ID:s.BeOs1g
初めは彼女に連れられてやってきた。
あまりにも俺の服装がダサイといって、オーダーメイドの紳士服屋。
そうしてあれよあれよという間に仕立てることになったスーツは、
俺の手持ちで一番高い勝負服となり、彼女と別れた今も捨てられない。


「ネクタイですか」
そう言って声をかけてくれたのは、スーツの採寸もしてくれた檜山さんだった。
今の給料じゃとても二着目は仕立てられないが、檜山さんに会いたくて、
俺はちょくちょくこの店に小物を買いに来るようになっていた。
「今日のお召し物はとても良くお似合いですね。今日のものに合わせるタイなら、こちらの臙脂も宜しいかと」
「じゃぁ、それを」
褒めてもらったスーツも、実は檜山さんの見立て。
この店に通うようになっても一向にセンスが磨かれない俺を見かねたのか、
檜山さんが「買い物につき合って頂けませんか」と言って見繕ってくれたのだ。
以来、俺が身につけるものは殆ど檜山さんのアドバイスに従っている。
俺の服選びに毎回つき合ってもらうのに申し訳なくなって、
手料理を振る舞うようになったのはいつごろからだろうか。
いつの間にか、俺たちの間では一回の見立てでご飯一回、という暗黙の了解ができていた。
会計のあとで檜山さんに目で合図をしたら『今晩伺っても宜しいですか』というメールが入っていて、
テンションは一気に上がる。


「今日の料理もおいしかったです」
一緒に出したワインでほろ酔い加減になった俺は、ふらつく足でシンクに食器を置きに立つ。
「あぶないっ」
運よく食器は手にしていなかったが、頭を打ちそうになったところを間一髪檜山さんが支えてくれた。
「全く、あなたからは一秒も目を離していられない」
「ほんと、すいません…っつ」
頭は打たなかったが、腰をしたたか打ったようで、手でさするように押さえる。
「おや、腰を打ったのですか。痣にならないか確認してみましょうか」
「え、…は、はぁ」
戸惑う俺をしり目に、檜山さんの低い体温が脇腹に触れる。
「あ…のっ」
「人に触られるの、苦手でしたか」
頬に熱が集まる俺を見て、檜山さんが優しくほほ笑む。
「い…え…」
人に触られるのが、とかじゃなくて、触り方がエロイ気がするのが、
あまりに自然になんでもないことのように聞かれるので、俺の意識のしすぎかと思ってしまう。
その様子に、檜山さんは今度は小さく吹き出す。
「プレゼント、はしてませんが、服を見立てるのは脱がせたいからですよ。こういうの、お嫌いですか?」
「い…え…」
あまりにさらりと言われるので、思わず反射的に否定の言葉を言ってしまう。
事の重大さに気付いたのは翌朝だ。


「私のことを嫌いになりますか?」
「…いえ」
それでも檜山さんが嫌いじゃないのは、ちょっと不思議だ。

20922-429 紳士攻め×流され受け:2011/10/03(月) 17:16:48 ID:/yeL5qtg
「で、どう?」
 急に話が核心に飛んで、きた、と内心胃が縮んだ。
 今日は久々の同乗だったから、危ないとは思っていた。
 一日店で疲れ、ようやく帰宅となったらまた難題をつきつけられる。
 ハンドルに集中しながらでは、とても対応できそうにない。

 うちみたいな地方の大型スーパーは、不規則な業務のせいで社員の離婚率が高い。
 店長も俺もそのくちで、今はふたりとも社借り上げの同じアパートに入ってる。
 自家用車に同乗して通勤するのは、店の駐車場が少ないという事情のため。
 社員がまず率先してパートやアルバイトに示しをつけてるわけだから、簡単にやめられない。
 ……たとえ、同乗相手が俺のことが好きだなんて言い出したとしてもだ。
「しばらく考えてみてよ、柔軟な思考の訓練だと思って、ね」
 店長はいつぞやの社員研修を引き合いに出して笑った。
「えーっと……なんか、私、試されてるんでしょうか?」
 俺も半笑いでごまかそうとしたら、とてもまじめな顔で首を振られてしまった。

 それからひと月がたつ。
 ほっておいた企画話なら、怒鳴りつけられるか、とっくにおじゃんになってるかという期間だ。
「現在、検討しているところ……です」
「それはよかった。ぜひ、前向きにお願いします」
 穏やかな声には、一片のトゲも感じられない。

 その声にほっとした俺は、いったい何に安堵しているんだろう?
 叱られなかったから? それとも、まだ嫌われなかったから、だろうか。
 店長は、仕事のできる尊敬する上司で、人柄もいい。
 男もいける性癖の持ち主である、ということは欠点ではないと思うくらいに、店長自身を気に入っている自覚がある。
 こんな話じゃなければ、同じ社の一員として、末永くおつきあいしたい人間だと思う。
 できれば、この人をがっかりさせたくはない。
 だからって、これまで平凡に生きてきたのに、いきなりホモと言われてもハードルが高すぎるのだ。
 ──どうしても返事は延び延びになる。

「そこのコンビニ、入りたいな」
 店長が言って、俺は車を曲げた。
 郊外の広い駐車場をもつコンビニは、この時間も客足があって数台の車が止まっている。
「止めやすいところでいいよ、店の前じゃなくても、あっちで」
 店長が指したとおり、敷地のはじに駐車する。
「じゃあ、私もなにか買います」
 と、シートベルトを外した時だった。
 シフトレバーを越えて店長が覆い被さってきて、首を曲げられキスされた。
 頬に触れるだけ。だけど、確かに唇が、俺の顔にあたって音を立てた。

「……笹岡くんはいいにおいがする」
 女ならイチコロな声で、ささやかれた。
「か、加齢臭しますよ、俺」
 必死の抵抗は、噛んでうわずって効果無しだ。
「なんだか美味しいにおいだよ」
「それは総菜の、うちの売り場のにおいです、むしろ店長の方が香水とかの……」
 言いかけたところを腕をつかんで引き寄せられて、今度は店長の胸に頭を預ける形になった。
 シャツ越しの体温が、額に伝わる。肩にまわされる手。
 敗北感。終わった、というあきらめに似たこの気持ち。
 暗い車内でこの人とふたり、こうして。

 とうとう、なってしまった。いつか、こうなると思った。

 頭の上で店長の低い声がする。
「いつまでも保留なままなのは、良い返事なんだと私は思ったよ。たぶん、もう、こうした方がいいんじゃないかな、君にとっても」
 強引。いや違う、俺の責任をかぶってくれたのだ。
 これで俺には言い訳ができ、落としどころを得た思考は停止して、身だけを任せられる。
 俺は、自分が流されたがってたことにようやく気づいた。

21022-459  俺は忘れた、だからお前も忘れろ:2011/10/05(水) 08:32:55 ID:HTGhtEzc
あいつはあの時正体不明なくらい酔っ払っていて、俺はドラッグでぶっ飛んでた。
ちょっと多い量をキメて、つうかキめちまって結構血管が膨れ上がる感じに吐き気までもよおしてたとこだ。
ゲロと一緒に全部出ちまったさ。だから忘れちまったよ。と俺は言った。
言ったんだが。
「なぁ、マジで?マジで覚えてねぇの?」
なんでコイツはこんなに食い下がってくるんだ。
欠食児童みてぇなガリガリの体にありえない力を込めて俺の腕を掴む。
あんまり邪魔だったんで持っていたジャックダニエルでこめかみを押しのけた。
「覚えてねぇっつってんだろ」

その夜俺が、クラブのトイレに女を連れ込んでヤった後、
カウンターにいた馴染みの売人からいつものを買ってそれを吸って、それで部屋に帰ってきた。
そうすると俺と入れ違いに2人の女が部屋から出て行って、て事はだ。
汚ねぇ部屋の真ん中に酒臭い汚ぇガキが一人って事だ。
「おっかえり〜」
あいつは意味もなくゲラゲラと笑って、素っ裸のまんまで俺に飛びついてきた。
これが胸のでかい女なら申し分ないんだが。
「な、キスしねぇ?キス」
いつだってどこだって構わず噛み付くこいつが、甘えるように言う。
俺は笑っていいぜと答えたんだ。だからって何の意味がある?俺とこいつの間に。何かが生まれるってのか?
まぁ、精々その内一緒に一人か二人の女を交えて楽しむ事があるかもしれないってくらいだ。
こめかみや、眼球の裏側が心臓みてぇにどくどく言っていた。
いい感じにきいているドラッグに俺は酩酊状態でくすくす笑うとあいつは軽く俺の鼻を噛んだ。
「マジで?じゃぁさ、口開けて」
俺はその通りにしてやった。抱きついてきたアイツは物凄く酒臭かったが、俺も似たようなもんだろう。
べったりと口とその周辺に引きずったように真っ赤な口紅の道。
「あんた、女とヤってきたろ」 
「正解だ、なんでわかった?」
「香水くせぇ」
「お前もな」
ひとしきり笑って、俺は立っているのが面倒になったんで壁によろけた。壁も床と同じくらいに汚いんだ。
よくわからねぇ染みとか、はがれかけた壁紙とか。
全く冗談じゃねぇけど直してもすぐにこんなもんだろうし大体そんな金も無い。
そうすると被さるように思いっきり唇が噛み付いてきた。
俺はあいつの脇あたりを支えながら、それを受ける。入り込んできた舌が、俺の痺れたそれに絡みついた。
味なんかしねぇし、感覚だけがビリビリくる。
一度離れてもう一度、それがもう一度、と際限なく続く。いい加減面倒になってきて何回かの後あいつを押しのけた。
涎で口の周りがぐちゃぐちゃだ。
「もう寝ろ、坊や」
「……ムカつく奴だな、あんた!」
わかるだろ?これが俺達の親愛なるおやすみなさいの言葉だ。よい夢を、ベイビー。

そんな訳であいつが自分の部屋に消えた後俺はまた少し薬をやって吐いて、そんな事を繰り返したら朝だった。
カーテンも無い窓から差し込む太陽の光は、否応なく更に部屋の汚さを感じさせるがしょうがない。
ミネラルウォーター代わりに冷蔵庫にはこれしかないという酒を呷っていると、あいつが起き出してきた。
「俺にもくれよ」
「残念だな、飲んじまった」
逆さに振ってやる。一滴だって出てこない。俺の喉から胃に直通だ。
「なぁ、昨日のキスもっかいしようぜ」
「昨日の?」
実際、俺はそう言われるまで忘れてたんだ。
つまり、わかるだろう、俺にそれは重要じゃなかったし、他にする事がいっぱいあった。
ドラッグとか、吐くとか。その合間に考え事だとか。毎日変わる女とヤるくらいなもんで、
顔も覚えてない女達の間にこいつとのキスなんてすっかり埋もれちまうのがどうして間違った事なんだと俺は思う。
でもこいつは聞き返す俺に拗ねるように口を尖らせた。
「何だよ、忘れちまったの?」
「ああ、忘れちまったな」
そして、やたらと食い下がりはじめた訳だ。

「じゃぁ、いい。今すっから覚えて」
「はぁ?そんな気分じゃねぇよ、どけ」
「嫌だね。あんたが覚えてくれるまでする」
子供の強情さってのは、女のヒステリーくらい性質が悪い。殴りつけた方が早いかもしれない。
「いいから、口開けろよ。昨日みたいに誘えよ」
「覚えてねぇし、誘ってもねぇな」
「うっせぇよ!」
冷蔵庫に押し付けられ、噛み付くように唇が被さってくる。俺は思わずジャックダニエルを振り上げた。
忘れるとか忘れないとか、一体何がそんなに大事なんだ?俺にはわからないしわかりたくもない。
只、本当は忘れてねぇんだって事を読み取れない程ガキなこいつがムカつくだけだ。

21122-439 お兄ちゃんの彼氏?:2011/10/06(木) 21:55:50 ID:UmwJli/2
 僕達兄弟は年が離れてるけど、とても仲がいいです。
 弟の僕から見ても、お兄ちゃんは綺麗でよく女の人に間違えられています。
 体もそんなに大きくないからかもしれません。
 そのせいか彼女も居ません。
 どうしてと聞くと、女の子はお兄ちゃんをペットのように可愛がるか一緒に歩くのを嫌がるかで、モテないと言ってました。
 でもそれはどうでもいいです。
 とにかく僕は、優しくて家事も得意なお兄ちゃんが大好きです。

 そんなお兄ちゃんのキスシーンを見てしまいました。
 しかも相手は男の人で、僕は二重に驚きました。
 日焼けした体は縦も横もお兄ちゃんより大きくて、良く見えなかったけど顔もまあまあ格好良さそうです。
 すぐにその相手が、最近よく家に来るお兄ちゃんより年上のお友達だと気が付きました。
 その人の太い首にガッチリ両手を回して、嬉しそうにキスしてるお兄ちゃんを見てると、自然に恋人同士って言葉が浮かんできました。
 けど、2人とも男なのに?
 考えても判らないから、思い切ってお兄ちゃんに聞くことにしました。
「何時も遊びに来てるあの大きな人って、お兄ちゃんの彼氏?」
「急に、どうした?」
「キスしてたから」
「あーっ…」
 しまったって顔をしたお兄ちゃんは片手で額を押さえたけど、すぐに真面目な顔でまっすぐ僕を見ながら話し始めました。
「まだ理解出来ないだろうけど、世の中にはいろんな愛があるんだ」
「愛? 大好きってことでしょ」
「そう。ぼく等の絶対変わらないのが兄弟愛。そして、他人だけどずっと一緒にいたいと思う相手が出来るんだ。それが恋愛。普通は男女だけど、ぼくは同性で」
「お兄ちゃん、女の人より男の人が好きなの?」
「違うよ。彼だったから好きになったんだ。性別なんて関係ないんだ」
「?」
 何が違うのか判らなかったけど、お兄ちゃんがその人のことを凄く好きなのは、誇らしげで嬉しそうな顔で話しているから僕にも伝わってきました。
 そんなお兄ちゃんを見てると、幸せならそれでいいやと思いました。
「あの人が、お兄ちゃんの彼氏なんだ」
「うーん、正確にはお兄ちゃんが彼氏、だよ」
「どう違うの?」
 お兄ちゃんはクスッと笑って、問い返す僕の頭を優しく撫ぜながら
「大きくなったら判るよ」
 それ以上は答えてくれなかったけど、笑っているお兄ちゃんは自信に満ちていて、なんだか何時もより頼もしく見えました。
 きっと愛の力なんだろうな。
 お兄ちゃん、ずっと仲良く幸せでいてね。
 
 愛には性別や見た目や体格なんか関係無い、と僕が知るのはもう少し先になってからだった。
 その時、さらに兄が偉大に見えた。

21222-470続き 1:2011/10/07(金) 11:20:10 ID:eIjuahuo
本スレ470です。
確かに最後あれではスッキリしないなと思いましたので、蛇足ながらちょこっと続きを書きました。

「書類は揃えましたし、当座はあれで大丈夫でしょう。
 …さて、御主人様は…軽い脳震盪、ですかね。
 気絶というより、もう眠っておられるようだ。
 だいぶお酒を召し上がられているようだし、最近お忙しくてお疲れだった影響もありそうですね。
 ベッドに運んでおきましょうか」
ファサ
「一応、朝起きたら医者を呼ぶようには指示しておきましたが、
 変ないびきもかいていないようですし、とりあえず無事そうですね。
 …良かった。」フウ
「さて、待ち合わせまであと1分少々ありますね…ふむ。」

「ご主人様、起きて下さい。」
「…うーん、もうちょっとー…」
「朝ですよ。起きて下さい。」
「…あと少し…だけ…」
「起きなさい!ぼっちゃま!」
「ひあ!爺!?ごめんなさい!…え?」
「おはようございます、御主人様。
 …まったく、だからあれほど御就寝前のお酒はお控えくださいと、爺が口を酸っぱくして申し上げたではないですか。
 酒は百薬の長ですが、過ぎると毒なのですよ。」ガミガミガミ
「…ちょっとまって、爺?あれ?なんで?」
「理由はこちらです。」ペラリ
「…辞表…」
「はい、2枚。」
「…あー…」
「さて、御自分の一時の出来心のせいで、優秀な部下を2人も失った御気分はいかがですか?」
「夢じゃなかった…」ショボン
「ええ、おかげさまでこのロートルまで駆り出される事態です。」
「…ごめんなさい。」
「とはいえ、屋敷内の者たちの気持ちが動揺しているだけで、引き継ぎ書類は完ぺきでした。
 ざっと目を通しましたが、すぐには困りませんし、たちまち代わりの者でも処理できるようになっておりましたよ。」
「そうか」
「まったくあの子たちは優秀な人材でしたねぇ。ああ惜しい惜しい。」
「…泣きながら床擦り土下座で謝ったら、許してくれないかな…」
「それはかつての坊ちゃまの得意技でしょう。
 まだお可愛らしかった御幼少のころならともかく、今のご容姿でされても不気味なだけです。」
「だよねー…。爺!」
「はい」
「今回の件は、私に全ての責がある。急ぎあの二人を探してくれ。」
「そうおっしゃると思いまして、現在ツテを総動員して捜索中でございますよ。」

21322-470続き 2:2011/10/07(金) 11:22:06 ID:eIjuahuo
「そうか…私のことは許せないだろうが、今まであれほど心をこめて勤めてくれた者たちだ。
 …退職するなら、きちんと退職金ぐらいは持たせたい。」
「まあ、そうできなくさせたのは坊ちゃまですけどね」
「ぐ…っ!」
「ご主人様の言葉というのは、下々のものにとって、御自分で思っておられるよりはるかに重いのですと
 この爺が口を酸っぱくしてお教え申したではないですか。
 だからこそ上に立つものは何時でも理性と知性を失ってはならないのです。
 だいたい坊ちゃまは…」グチグチグチグチ
「…ごめんなさい…。」
「爺は情けのうございますよ」フウ
「泣き土下座でなんとか」
「なりません。」
「だよね。」ショボン
「あの二人、戻ってくるといいですね。」
「うん。」
「…さて、目が覚めたのでしたら屋敷の者たちに声をかけてやって下さい。多少落ち着いたとはいえ、まだ動揺しておりますから。」
「わかった。」
「あくまで普段通りにお振る舞いになるように。当主たるもの、な」
「何事にも動じてはならない。」
「よろしい。」
「…なあ、爺。」
「なんですか?」
「…本気だったんだよ。」
「存じておりますよ。」
「うん。」
「ですが次に恋をされた際には、まず恋文からお始めになるよう、老婆心ながらご忠告申し上げます。」
「…はい。」
「さあ、起きて下さい。…ああ、そうそう。皆の前に顔を出す前に、洗顔だけは済まされて下さいね。」
「?? うん、わかった。」


〜洗面所〜
主(゜Д゜)人←額に流暢なラテン語で「ちんこ の のりもの」

21422-329 理性×本能 or 本能×理性:2011/10/11(火) 16:41:15 ID:6z.li0Jw
今さらですが萌えたので、ひとつ供養に投下します。

「つまり何が言いたいかっていうとだな。
 うちは職場恋愛禁止だ、というのもまず生徒の手前があるし、父兄の目もある。
 常に公正をおもんばかって身を慎むべき、聖職者とまでされた職業であるから、
 これは当然のことだあな。

 また、俺もお前も親や兄弟、親戚から早く結婚しろとせっつかれるいい年齢で、
 孫の顔が見たい、とか、お前にいたってはひ孫の顔が見たいばあちゃんがいて、
 その期待と義務に応えるべき身であると。

 そもそも大前提として、俺もお前も男同士だ。
 これは世間ではホモと後ろ指指される関係なわけで、ま、今時はゲイというらしいんだけども、
 その世間の冷たい目にさらされて今後を生きる覚悟があるのか、
 常に人目を気にして後ろ暗く生きていくのか、どうなんだという根本的な問題がある。
 これは難しいところだ、今、人生の大きな岐路に立たされていると言っても過言ではない。
 お前もよく考えろよ、物事を単純に見るのはお前の長所でもあり、短所でもある。

 そしてこの行為だな、ゲイセッ、セッ、セック……スには様々な危険がともなうらしい、
 だいたい生物の体のつくりとして、男女の行為は自然なものだが、
 男同士というとその摂理に反していろいろと無理があるもの……だから……だから」

「だから、いろんなやり方があるんですよ、なにもいきなり尻とか言わず、できるところまででいいんです」
 俺は愛しい先輩の頭を抱きしめた。賢くてあほなこの人が可愛い。
 裸になって、上と下になって抱き合ったこの体勢から何をグズグズしているんだろう。
「まだ悩んでたんですか? 先輩。そんで、もういい? 俺はもう待てないんだけど」
 まだ合わせたばかりの肌は乾いているものの、お互いに触れた部分はギチギチで、これから先の展開に何の疑いもない。
「お前がそんなだから俺は必死で考えざるを得ないんだよ」
「とか言って、結構その気なくせに。ほら、もういいでしょう? やっちゃいましょ」
 早く、と合わせた腰を揺すると、先輩が一瞬息を詰める気配。
 それがすごく色っぽくて、本当に理性が飛びそうになる。
「お前……したいしたいって、本能のままじゃないか」
 先輩は俺の大好きな苦笑いを浮かべ、
「……本当に、いいのか」
 と、俺の顔をのぞき込む。いとおしむような、憐れむような優しい目が、ちょっとつらい。
「いいですってば。さんざん言ったでしょうが。二年も待ったんだから。もう先輩も何にも考えないでさ、早く、しましょう? いやなんですか?」
「だから……だから、考えたんだ。いろいろ考えて、やっぱり我慢できないってわかった」

 すまん、とつぶやいた声に聞こえなかったふりをして、目をつぶった。
 先輩の固い理性のたがは、とうとうはずれてくれたらしい。
 本能のままに荒々しくまさぐられる、その手つきに嬉しくなると同時に、俺の頭は一方で冴えていく。

 俺だっていろいろ考えたのだ。
 自分にこんな性癖があるなんて知らなかったからずいぶん葛藤した。
 先輩に知られ、また奇跡のように先輩の気持ちをもらってからも、職場や身内の事情や先輩を引きずり込むことが怖くて、身もだえしない夜はなかった。

 考えて考えた末……俺は本能に流されることにした。
 考えても仕方がないほどの、この感情。
 ──人生でたったひとりに出会ってしまった。
 そうなったら、どんなに理性的に考えても、押しとどめる手段はないのだ。
 わかってしまった。
 だから突っ走ることにした。

 理性的な先輩の本能と、本能に従う俺の理性。
 ふたりで望んだ結果が今なのだ。
 俺は、目の前の愛する体に噛みついてやった。
 ふたりともが、これ以上何も考えられなくなるように。

21522-489 くすぐりに弱い受け 1:2011/10/11(火) 23:42:06 ID:IM.Z6pqw
初投下。萌ネタ形にするのって楽しいですね。


―付き合ってください
―…俺のどこがいいの
―そんな、男に告白されても動じないようなクールなところが…
―…ふーん……別にいいよ

あの日から今日で3ヶ月。
いつものようにオレの部屋のちゃぶ台で、聡はレポートを書いている。
正直もう限界だった。

いい加減漫画にも飽きたオレは、ベッドに転がったまま聡の背中に手を伸ばした。
「なあ…」
肩に触れるか触れないか、ギリギリのところで聡の手が飛んでくる。
「なに。今忙しいんだけど」
振り向きもしない冷たい態度。
忙しくなくたって振り払うくせに。
弾かれた手がやけに痛い。
「なあ、お前にとってオレってなんなの?」

しまった。
つい口にしてしまった。
この手のアホな台詞は嫌いだと聞いてたのに。
案の定、振り向いた聡はものすごく不機嫌そうな顔をしている。
「だってさ、オレ達付き合ってもう3ヶ月だろ?
 キスどころか手も繋いでないっていうかオレ聡に触ったこと一回もないよ。
 図書館や漫喫の代わりにオレの部屋に来るようになっただけじゃん。
 それって付き合ってるって言えなくね?
 てか何、オレは漫喫のオーナーか何かなの?」

ダメ元で告白して、まさかのOKもらって、すごく嬉しかったんだ。
いつだって抱きしめたかったけど、聡は人に触れられるのを嫌がるから、我慢してたんだ。
嫌われないように、追い詰めないように、手を伸ばすのだって3日に1回くらいに抑えてたんだ。
なのにお前はいつもそうやってオレの手を弾く。
オレの部屋オレの前にいるくせに、まるでオレに興味なさそうに。
なんでOKしたしたんだよ。
男に惚れたアホな男への興味本位?それとも同情?

謝ろうと思った口からは、不満と疑心ばかりが溢れた。
抑えようと思ったけど止まらなかった。
そのうち涙まで出てきて、聡の顔は、能面のように表情をなくしていった。

ああもうダメだ。聡に嫌われた。

そう思ったらますます涙があふれてきて、多分オレは今世界で一番醜い男だ。

21622-489 くすぐりに弱い受け 2:2011/10/11(火) 23:45:20 ID:IM.Z6pqw
いたたまれなくなってトイレに逃げ込んで30分。
ようやく落ち着いて、オレはトイレを出た。
もう帰ってしまっただろうと思っていた背中を、さっきと同じ場所に見つけて動きが止まる。
聡は背を向けたまま、小さく息を吐いた。
「あのさ、」
「ごめん。やっぱこんな男嫌だよね。もういいよ。無理しないで」
努めて明るく言ったつもりの言葉はやっぱり震えていて、枯れたはずの涙がまた出てくる。
オレこんなに泣き虫だったんだ。いい歳こいてキメえな。
涙を拭いながら頭の片隅がぼんやりと冷静になっていた。
しばしの沈黙。
「あのさ、そうじゃないんだ。」
「何がそうじゃないんだよ。触られるのも嫌なんだろう?
 そんなのと無理して一緒にいる必要なん―」
「だからそうじゃないんだって!」
突然の大声とちゃぶ台を叩く音に、息も涙も止まる。
ちゃぶ台を叩いた勢いで立ち上がった聡は、怒った顔で突進してきた。
30センチ手前で止まって、え、あれ、止まってなくね?

「え、あ  え、今、 え?」
頭真っ白になったオレの前で、聡の顔は、みるみる真っ赤になっていった。
「だから、そうじゃないんだ。
 俺、あの、別にお前のことが嫌いなんじゃ…つーか、す…好き……だけど……」
うわあどうしよう、聡の口から好きとか初めて聞いた。
てかさっきのやっぱりき、キス?鱚?キスだよな?
衝突事故じゃないんだ。うわーひゃっほーありがとうありがとう、世界中にありがとう!
「ちょ、おい、離…っ……ひ…っ!……や、やめ……ひぅ…っ!」

21722-489 くすぐりに弱い受け 3(ラスト):2011/10/11(火) 23:49:50 ID:IM.Z6pqw
「ひゃ!……ゃ………止めろよ!」
思わず抱きついて背中をなでながら頬ずりまでしていたオレを突き飛ばした聡は涙目で、かなり息が上がっている。
ちょっと煽情的すぎて暴走しそうだ。
いやいや待てオレ落ち着けオレ。
この流れでこの程度の接触でこの反応はさすがにおかしいだろ。
「……聡、もしかして、触られるの弱いの?」
肩がビクっと震えて、真っ赤な顔がゆっくりと下を向く。
「……ごめん」
消え入りそうなほど小さい声。
なんだそうか。そうだったのか。それで触られたくなかったのか。
オレが嫌だったわけじゃないんだ。
「なんだよ。最初から言ってくれればよかったのに」
ホッとしたら急におかしくなってきて、オレは声を上げて笑った。
「だって、お前、いつもクールなところが好きだって言ってたから、こんなヘタレじゃ嫌われるんじゃないかって…」
真っ赤な顔をますます赤くして言い訳をする聡。
オレに嫌われるのが怖かったとか何そのかわいい台詞。
確かにこんなかわいいなんて思いもしなかったよ。
でも嫌いになるとかありえない。
むしろますます大好きになった。
「っ…!だから触んなよ!」
散々我慢させられたんだ。
これからは遠慮なく触らせてもらおう。
「大丈夫、ヘタレでかわいい聡も大好きだよ」

21822-539 ピロートーク:2011/10/16(日) 04:56:55 ID:7JOoH6nA
「さて、桃太郎が歩いていると、向こうから一匹の犬がやって来ました。
 『桃太郎さん桃太郎さん、お腰につけたきびだんご、ひとつ私にくださいな』――」
「おい善紀、なんでこの犬桃太郎の名前を知ってるんだ。初対面なんだろう?」
「なんでって……まあ、有名人だから?」
「なるほど。桃から人が生まれるのはその世界でも異常事態なんだな」
「多分――で、犬の頼みを聞いた桃太郎は、『鬼退治についてきてくれるならあげましょう』と――」
「団子一個で戦場へ行けというのか。随分乱暴な話だ」
「うん、正直それは俺も思った。……ああ、きっと半年予約待ちレベルの激レアきびだんごなんだよ」

晃にせがまれ、この前から寝る前に昔話を聴かせている。
が、この「おはなしの時間」は心地よい眠気と倦怠感に満ちていて、
二人とも、ともすればいつの間にか寝入ってしまう。
おまけに、晃は話が少し動くたびにいちいち疑問やツッコミを挟んできて、
俺もその度にいちいち理由を考えて答えている。
そんな状態なので、物語の終わりは一向に見えてこない。

「楽しいな」
雉はきびだんごを食べられるか否か、について考え込んでいると、不意に晃が呟いた。
え、と首だけでそちらを見やる。暗くて表情はよく分からないが、確かに上機嫌だ。
「何十回も読んだ話でも、こうやって誰かと一緒の布団に入って」
言いながらふわっと抱きついてくる。一心に甘えてくる小さな子供のようだ。
「俺ひとりに聴かせるために話してくれて、俺がなにか言ったらちゃんと答えてくれて……
 こういうの、昔はなかった。だから今、長年の夢がかなってすごく嬉しい」
幼少期に家族関係で寂しい思いをしていたらしいことは、親しくなるうちになんとなくわかっていた。
でも、こういう話を直接聞くのは初めてだった。
「そっか。夢が叶ったか」
淡々と語られた言葉に胸がいっぱいになって、晃を抱きしめ返す。すると、
「今、ここにいるのが善紀でよかった」
囁きと共に、耳朶に柔らかいものが触れた。その一点が熱を帯び、全身に波紋のように広がっていく。
それを気取られたくなくて、
「まあ、楽しいのはいいけど、こう立ち止まってばかりじゃいつ話し終わるか分かんないよ?」
突っぱね気味に大仰なため息を付いてみせる。それを聞いた晃は、再び俺の耳もとで、
「いつまででも話し続ければいい。夜はあと何千回でもやってくるんだから」
当たり前のように言ってのけた。
俺はまず呆れ、次にその言葉の意味するところに思い当たり、さっきとは違う感情で胸がいっぱいになって、
何か言おうとして言えなくて、ただ晃の身体にまわした腕に一層力を込めた。

こうして二人は今夜も幸福な眠りについたのでした。
めでたし、めでたし。

21922-559 仲良し三人組:2011/10/18(火) 15:24:04 ID:yzso3blE
元はオレたちは三人組だった。オレとアイツは冒険者になった。もう一人は家業の道具屋を継いで一般市民として生きることになった
ところがだ。もう一人の店が潰れてしまった。近所にできた大型の道具量販店との競争に負けて、経営が成り立たなくなったそうだ
仕事を探したらしいが、このご時勢にロクな仕事も見つからない。ということで、もう一人は冒険者になった
そしてオレたちのクエストに同行することになった。今そのもう一人の最初の職業を決めるためにダーマの転職樹にまた来ている
アイツは順調に勇者としてレベルアップをしている。この間は北の辺境で異常発生した白熊の化け物の退治に成功した
オレも農民として頑張っている。色んな野菜をどんどん作っている。次は今までやっていなかった青菜類の栽培を覚える
来月から遥か東方から来たという先生から「チンゲンキャベツ・ターキャベツ・クーシンキャベツ」の作り方を習う予定だ
アイツは青菜類が嫌いなようだ。勇者がガキのように青菜を残すなんてダメだ。オレの手で矯正してみせる!
それはそうと、もう一人も空気を読めってんだ。オレとアイツの仲についてはよーくご存知であるはずだっちゅーの!
それにアイツもアイツだ。「また一緒になれたな」とか言いながら普通に大喜びしてやがる。どういうことだ!
オレが同行者専用の喫茶室で飲み始めたコーヒーも三杯目が空になった。初めてだから時間がかかるのかな・・・
オレも初めてのときには時間がかかったなあ。なかなか転職樹によじ登れなくてなあ。独特のコツが要るんだよな
アイツはオレをおいてスイスイ登って行っちゃったけどな。アイツの運動神経の良さはやっぱ惚れ惚れする
しかし本当に遅いな。さすがに少し心配になってきたな。オレのときもこんなにはかからなかったぞ・・・
カランカラーン! 喫茶室のドアがチャイムと一緒になった。お、戻って来た。どうだった? 何の職業になったんだ?
・・・なにいぃぃぃ! 「命の護り人」だとおぉぉぉ! それはあらゆる回復系と防御系スキルをまとめて覚えられるお得職業じゃねーか!
オレがアイツをサポートするために一番なりたかった職業じゃねえかあぁぁぁ! ちっくしょおぉぉぉーーー!
ヤバイ。オレの地位がヤバイ。マジでヤバイ。本当にヤバイ。ごっつヤバイ。えげつなくヤバイ。ウルトラスーパーミラクルやばい!
あああああ、めっちゃ喜んでやがる。それにアイツも大喜びするだろうな。いい戦闘時の補佐役ができたって・・・
何とかしなきゃ! 何とかしなきゃ! 何とかしなきゃ! 何とかしなきゃ! 何とかしなきゃ!
何としても早急にいびり倒して追い出さないとヤバイ。畑に生き埋めにして肥料にしないとヤバイ。ぶつぶつぶつ・・・



・・・そうだ。そんな荒っぽい真似をしなくても解決する方法がある。四人目をスカウトしてソイツとくっつければいいんだ
よし、決めたぞ。何とでも理由を付けて四人編成にするようにアイツに言おう。それで万事解決するはずだ!
オレは今夜に作るご馳走のメニューを考えながら喫茶室を出て、もう一人と一緒にアイツの待つ宿屋への帰路に就いた

22022-529 和と洋:2011/10/18(火) 20:36:22 ID:smGcIDv.
自分の親父は名門料亭の凄腕の板前だった。創業者の一人娘のお袋と結婚して自分が生まれた。名前は和(なごむ)だ
親父は料理人としては最高だったが、父親としては最悪な人間だった。とにかくどうしようもない女好きだった。
まず行きつけのラーメン屋の中国人店員に手を出した。腹違いの弟の中(あたる)ができた
次に懲りずにどうやって出会ったのかタイ人留学生とデキた。腹違いの弟の泰(やすし)ができた
親父はますます調子に乗った。今度は近所のカレー屋の夫と子供のいるインド人女性と不倫した。腹違いの弟の印(しるす)ができた
お袋は・・・親父に対抗するように不倫に走った。
まず行きつけの焼肉屋の韓国人店員と関係を持った。中絶という選択肢はお袋にはなかったようだ。種違いの弟の韓(かん)ができた
次にベトナムを旅行して現地の行きずりの男性と関係を持った。一度だけだったらしいが大当たり。種違いの弟の越(えつ)ができた
最後に出会い系サイトで出会ったトルコ人男性と関係を持った。これも見事に当たった。種違いの弟の土(つち)ができた
書いてて嫌になる。なんか横溝正史の小説の出来の悪いパクりみたいだ。この異様な七人兄弟が同じ屋根の下で暮らしている。
一番年上の自分が高校三年で、一番下の土が小学校一年生。非現実的な現実がここにある
父親は仕事と女に忙しく、母親は遊びと男に忙しく、ほとんど家には不在だ。自分としては居てくれなくて実に過ごしやすい
実は七人兄弟は凄く仲がいい。七人とも父親と母親の無責任で自己中心的な行動に振り回されたという意味で同志だ
このバカ両親に対抗するために兄弟で揉めている場合じゃない。ただし一つだけ団結が乱れることがある。それが食事だ。
自分は和食が大好きだ。中は中華好き。泰はタイ料理を食べたがり、印はカレー狂い。韓はキムチとゴマ油がないと怒り出す
越はいつもインスタントのフォーをすすっている。土は毎日のように屋台の羊肉のドルネケバブを買って来る
みんな味覚だけはナショナリストだ。家で出される食事に全員の希望を聞いてたら「会議は踊る。されど進まず」状態になる
七人で話し合ってある結論を出し、七人全員で両親に要求を出した。ネグレクト両親はあっさり承諾した
兄弟で要求したことはオレたちの飯を作ってくれる通いの洋食のシェフを雇うことだった。やってきたのは洋さん
パリ・ローマ・マドリード・モスクワを渡り歩いたという凄腕のシェフだ。昼間は料理教室の先生だ
夕食と夜食と翌朝分の朝食を作りに午後に来てくれる。いつも腰を抜かすくらいに美味しい
洋さんの父親は凄腕のフランス料理のシェフだったが、子供だった洋さんとお母さんを捨てて愛人と蒸発してしまったそうだ
その話を聞いたときは本当に吃驚仰天した。自分たちのために神が遣わしてくれた人としか思えなかった
洋さんには自分たちと自分の子供時代とがダブって見えるらしい。確かに洋さんから見ればそうかもしれない
いい臭いがするなあ。今日はビーフストロガノフかな。洋(よう)さんの作る煮込み系の料理は最高なんだよな・・・
洋さんは来年には自分の店を出す計画だそうだ。そうだよな。自分たちとしてはずーっと洋さんの料理を独占したいけどそうもいかない
自分は受験生だ。ずっと大学なんかどこでもいいと思っていたが、経営学を勉強できるところを目指すことに決めた
理由は・・・実現するなんて思ってないけど・・・ひょっとしたらサポートする機会もあるかもしれないじゃないか・・・
とにかく今は洋さんの料理に舌鼓を打とう。そして洋さんが用意してくれた夜食を食べながらしっかり勉強することにしよう

22122-169 硬貨で六角関係:2011/10/19(水) 12:02:14 ID:/Dw7NPBU
僕の名前は若木一(わかぎ・いち)といいます。このたび日本硬貨に新入社員としてやって参りました
いきなりこんなことを言うのもどうかと思いますが言います。好きな先輩が居ます。一年先輩の稲穂計五(いなほ・けいご)先輩です
実家は林業だそうです。なんか金色にピカピカしているようなオーラの見える素敵さです
僕にはライバルが居ます。常盤十郎(ときわ・じゅうろう)先輩です。京都出身。実家は平等院鳳凰堂の近くだそうです
もの凄いチャラ男です。日焼けサロン通いで冬でも銅線のような肌の色です。もちろん髪も真っ茶っ茶です
どうやらこの常盤のクソが稲穂先輩に手を出しているのです。稲穂先輩がアンアン言わされているみたいなんです
ひどいことに常盤のボケは二股をかけています。その二股のもう一人は五十嵐菊(いがらし・きく)先輩です
五十嵐先輩はとても気が弱い人のようです。本命さんが居るのに諸悪の根源の常盤に言い寄られてきっぱり拒絶できないようです
その本命さんは桜木百人(さくらぎ・ももひと)先輩です。仕事はできる人ですが、ちょっと鈍いところがあります
五十嵐先輩のピンチに気が付いていないようです。僕は桜木先輩との共闘を計画しています
そしてみんなを束ねるの上司が五百旗頭桐花(いおきべ・とうか)部長です。大柄で茫洋としていて懐の深い人です
そして僕になんかベタベタとします。ちょいとしたセクハラです。それに五百旗頭先輩には腐れ縁の本命さんがいるはずです
えーっと確か・・・ライバル会社の韓国硬貨の部長さんだったかな。双子のように似ていて間違えられることもあるみたいです
こんな日本硬貨ですが、そこそこ楽しくやってます。硬貨ユーザーの皆さん、今後とも日本硬貨をご愛顧ください

参考資料・日本の硬貨(wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E7%A1%AC%E8%B2%A8

22222-579 日韓友好1:2011/10/21(金) 06:17:38 ID:.smG8zT6
夕食を早食いして、洗面所でセミロングの髪を輪ゴムでポニーテールにまとめて、俺は家を出た
行き先は歩いて五分の距離にある築五十年の剣道場。十一月下旬。かなり寒い
短いが急な坂を上った先に旧式の電球型街灯に照らされた日本家屋が晩秋の夜に浮かび上がっている
黒船が浦賀に来航した嘉永六年生まれの俺から六代前のご先祖は、幕末の剣豪の生き残りたちから剣術を直伝された剣士だった
明治の終わり頃に土地を買って、後世に技を伝えるために剣道道場を開いた。数度の建て替えを経て道場は今に至る
実はこの道場の所有者は高校二年生の俺だ。自由に使えるという意味ではない。民法上、正式に俺の名義なのだ
前の所有者は道場開設のご先祖のひ孫、つまり俺の父方の祖父だ。その爺ちゃんが去年の春に急病で倒れた
爺ちゃんは死期が近いと思ったらしい。爺ちゃんの子供は一人娘の俺の母親だけ。娘婿の俺の父親は剣道には全く係わり合いがない
兄と妹が居るが、こちらも剣道に興味なし。ということで、爺ちゃん的には父親をスキップして俺が跡継ぎらしい
爺ちゃんは父親にもし権利が渡ったら道場を潰されて土地を駐車場にでもされかねないと思い込んだようだった
誰にも相談せずに司法書士に生前贈与の手続きを取らせて、土地と建物の名義を俺に変更してしまった
もちろんその後の我が家ははちょっとした修羅場になった。ちなみに爺ちゃんはすっかり治って前よりも元気だ
そんな爺ちゃん主催の剣道教室の練習のない日は、俺この道場を好きに使っていいことになっている
建物は平屋の日本家屋で板張りの床の広い剣道場が中央に位置し、付属する更衣室と給湯室、物置と十二畳の和室からなっていた
普段は全く使われていない和室を、俺は完全に自室にしていた。そこで静かに過ごすのが何よりも好きだった
道場に着いたらまず取り敢えず竹刀の素振りを一通りやろう。それをしないと気持ちが落ち着かない
終わったら給湯室でお茶を沸かして、冷蔵庫にしまってある水ようかんを食べよう。汗を流した後に食べる和菓子は最高だ
その後は昨日買った「月刊 碁ワールド」掲載の注目の棋譜を並べよう。俺は剣道と同じくらい囲碁が好きなんだ
俺はそういう想定で剣道上の入り口の引き戸を開けた。鍵がかかっているはずなのに・・・開きやがった・・・
玄関には黒いナイキのサッカーシューズが脱ぎっぱなしになっている。高校生にもなってきちんと靴を揃えて脱げんのか!
道場は暗かったが、和室はドアの下の隙間から光が漏れている。給湯室の電気もつけっ放しだ・・・嗚呼・・・
と、オレの到着に気付いたらしい。ドアが開いてドタドタと足音を立てながら走ってこちらに向かって来た
「せんぱーい! 遅かったねーっ! オレのこと愛しているなら放っておいたらダメじゃないかー!」
言いながらこちらに飛びついて来る。抱きつかれるとウザいので取り敢えず一発蹴りを入れた

22322-579 日韓友好2:2011/10/21(金) 06:18:26 ID:.smG8zT6
「何だよー。ひどいじゃないかー。こんなに愛しているのにー!」
大好きなご主人様に邪険気味に扱われつつも、尻尾を振ってさらに愛想を振りまく大型犬以外の何者でもない
この大型犬の名前はヨンという。韓国名も日本名もあるが、もう色々とウザくて面倒臭いので呼び方はヨンで統一している
父親は済州島出身の韓国人で母親は日本人。日韓ハーフで俺より一つ年下の高校一年生。生まれも育ちも日本だ
身長は167cm。俺より6cm低い。元々は俺の家の向かいのアパートに住んでいて、なぜだか俺に物凄くよく懐いた
幼稚園のときには俺のことをお嫁さんにすると喚き散らしたこともあった。あの頃はまだ無害でかわいかった
ヨンの小学校入学と同時に一家は転居した。距離は遠くなかったが学校が別々になったため、それからは会うこともなくなった
再会したのは今年の春。俺が通う高校はサッカーの強豪校で近隣からガチでサッカーをやる男子たちが集まって来る
その中の一人にこの大型犬は混じってやがった。それ以来、幼稚園以来の焼け木杭に火がついたのかなんかもう凄い
ちなみにポジションは予想通りフォワード。協調性がなくてやたら前に出たがるので監督からよく怒られるらしい
「いつものことだが何でウリがここに居るニダ」
「七時頃にここを通ったら、先輩の爺ちゃんが居た。挨拶したら入れてくれた。待つなら部屋で待ってなと言われた」
そう言えば家を出る前に爺ちゃんが何か言ってような気がする。それにしても爺ちゃん・・・何てことしてくれんだよ・・・
爺ちゃんは何だか分からないがこのヨンのことを妙に気に入っている。あーあ。静かな時間を過ごすのは絶対に無理だ
ヨンは今日もサッカー部丸出しの格好をしてやがる・・・上は韓国代表の2010年W杯のモデルの赤いレプリカユニだ
下のこの紫のサカパンは・・・こないだサカユニの薀蓄を垂れてきたときに聞いたな。確かサンフレッチェ広島の今年のモデルだ
あと赤と緑のソックスは・・・PORT・・・ああポルトガル代表のモデルか
しかしこの大型犬は着れれば何でもいいのか? もうちょっと組み合わせとか考えようよ。老婆心ながら思うぞ
それにもうそこそこ冷える時期なのに寒くないのか。せめてジャージを着るくらいすればいいのに・・・
なんて思いながらヨンの顔を見た。スポーツ刈りにつぶらな瞳で・・・よく見ると頬に茶色いものが付いている
その瞬間にこれから食べるはずの水ようかんがヨンの腹の仲に収まっていることを悟った俺は、ヨンにもう一発蹴りを入れた

22422-579 日韓友好3:2011/10/21(金) 06:19:27 ID:.smG8zT6
夜にこの部屋で二人きりになったら囲碁を打つことが多い。意外なことだがヨンは初段程度の碁打ちなのだ
小学生の頃に父親に無理に習わされたらしい。基本はバカだから大して強くない。注意力散漫だから簡単な読み抜けだらけだ
「謝依旻(台湾出身の女性囲碁棋士。凄く強い)よりちょっと弱いくらい」と棋力を自己申告されたときには爆笑した
ぶっちゃけ五段の俺と通常の手合いで打ったら勝負にならない。五子局(かなりのハンデ)くらいでやっといい勝負になる
普段はうるさいヨンが珍しく黙って考えている。さすがに寒くなってきたのか上に青い部活ジャージをはおっている
「もう投げろって。どう考えたってウリの黒の大石は助かりません。盤面で五十目以上の差ニダ」
「うるせー! これから神の一手を打って華麗に凌いで逆転すんだから! ぜってーぜってーぜってーひっくり返す」
ヨンのいつもの投了寸前時の逆転宣言を聞き流しつつ、お茶をすすって俺は何気なく上を見た
天井は限りなく黒に近い焦げ茶色。日本の近代史がのしかかっているような重厚な色合いだ
目を戻すとまだ考えている。だからもう無理だって。いつも形勢を悪くしてから考えるから駄目なんだよ
もう終わった碁なので盤面を見ても仕方ない。ふと何となく視線を右にやるとヨンの足が俺の目に入った
やっぱガチでサッカーやっている感じのする肉のつき方だ。サカパンからはみ出たアンダースパッツから伸びる腿はぶっとい
・・・俺は何をやっているんだ・・・男の下腹部から腿をマジマジと眺めて一体どうするんだ・・・いかんいかんいかん!
「チクショー! もう終わりだー!」
ヨンはいきなり叫ぶとアゲハマ(取って別にしておいた石)を乱暴な手つきで盤の中央に置いた。終わった。投了だ
「なんで、いっつも負けんだよー! ていうかさ、先輩が強すぎんだよ。オレは弱くない。うんうん。オレは弱くない」
言い終わると床に大の字になった。
「せんぱーい。眠いからこのまま寝ていい?」
「寝るな、大型犬。寝たらひどいことするぞ」
「えーっ、ひどいことってなんだよー」
「とにかくひどいことだ」
俺は碁石を碁笥にしまいながら考えた。俺とヨンの関係は何なんだろう? 単なる幼馴染でもないよな。友人とも違う気がする
週に何回か夜に会って碁を打ったりお菓子を食べたりしてまったりと男二人で過ごす関係・・・当てはまる言葉が思いつかない
ふと見るとヨンは寝息を立ててやがる。ああ、やっぱり寝やがった。囲碁の後はいつもヨンは眠り込んでしまう
きっと普段は脳の使わない部分を起動するから疲労困憊になるんだろう。本当に小学生みたいなヤツだ
しかし、こんなに無防備に眠りやがって。それになかなかかわいい寝顔してるじゃないか。俺が衆道家なら襲っちゃうぞ! なんてな・・・

22522-579 日韓友好4:2011/10/21(金) 06:20:28 ID:.smG8zT6
俺の頭のネジが飛んだ。理性というブレーキは飛んで行った。高二が欲情したときの瞬発力は凄いもんだ
ヨンの上に馬乗りになり無理やりにキスをした。ヨンは驚いて目を覚ました
「お前だって、こうなることを薄々分かっていたんだろう!」
「せっ! せんぱい・・・せんぱい・・・」
ヨンは俺の豹変の様子に呆然としているようで、そのせいで体から力が抜けて動けないようだった。
俺は口だけじゃなく顔中にキスし、その最中に思いついて、一旦行為を止めた。ヨンはこちらを何とも形容し難い表情で見ている
俺は脇に置いてあったヨンの部活用バッグの中を調べた。今日の部活で使ったと思われる少し泥の付いた練習着が入っている
やっぱりあった。白虎のエンブレムのついた韓国代表モデルのレプリカの白いサカパンと赤いソックス
俺はサンフレッチェモデルのサカパンとポルトガル代表モデルのソックスを脱がして、韓国代表モデルのレプリカを履かせた
俺の方も着ていたジーンズとトレーナーを脱いで、試合用の白の剣道着に黒い袴に着替えた
ヨンは逃げもせずにじーっとしていた。ヨンがどういうつもりかは分からないが、俺は今になって後には引けない
「ヨン! 俺はお前のことをこれから犯す。本気でやる。覚悟はいいな」
ヨンは微かに笑って承諾するかのように頷いた。これは試合ではなく死合だ。使っているのは竹刀ではなく真剣だ
その後のことは余り覚えていない。俺はヨンの上半身を舌で愛しまくり、太腿や脛を猫のように繰り返し甘噛みをした
一発目は右太腿から屹立したものを突っ込んで、履いたままのサカパンの中に放出した
自分でもよく分からないが、俺の液体で代表ユニを汚したいという感情が猛烈に湧き上がって来たからだ
そしてサカパンとアンダースパッツを脱がして露になったあそこを無理無理しごいて二人同時に逝った
最後は俺が後ろから征服し、今度も二人同時に逝った

取り返しの付かないことになった。俺はどう責任を取ればいいんだ! 混乱して訳が分からない・・・
あの後、ヨンは半泣きで道場から出て行った。朝になってヨンの携帯に電話を入れてみたが留守電だった
ヨンはガキだけども本当にいいヤツなんだ。それを俺は・・・自分がこんなに嗜虐的に振舞えるなんて思いもしなかった
それにしても自分の行動の意味がよく分からない。どうして俺はヨンにわざわざ韓国代表のユニを着せたんだ? 
それにこっちは剣士の正装に着替えて・・・やったことは一方的な強姦
俺はとにかく罪悪感と自己嫌悪の洪水に飲まれている。どうしてこうなってしまったんだ!
俺のしたことは犯罪だ。ヨンに告訴されれば少年院行きだな。それも仕方ない。俺が全て悪い・・・
俺はそのまま部屋から出れなかった。家にはここから学校に直接行くと嘘の電話をし、学校には風邪で休むと連絡した
そしてそのまま夕方になった。今日は運がいいことに丸一日道場使用予定が入ってなかった。
そろそろ家に戻ろう。ずっとこうしていることもできない。明日は午前中から剣道場は使われるはずだし・・・
「せんぱーい。こんばんわー! 昨日は水ようかん食べちゃってごめんねー。コンビニで買って来たよー」
え?
「オレはねー、ぶっちゃけ、いつかこうなりたいと思ったし、こうなると思ってたよー」
ええ?
「ただオレの思ってたより早かったし、とにかく急なことでびっくりしちゃってさー」
えええ?
「ムチャクチャされたけど、基本的に嬉しかったよ」
えええええええええ? 俺は部屋から猛ダッシュで玄関に出て今日はインテルのユニ姿のヨンに抱きついた
「だからさ、先輩が持っているこの道場の合鍵が欲しいんだー! オレが好きなときにこの部屋に来れるようにしたいの」
えええええ? それは調子に乗り過ぎだろう! でもまあいいか!

22622-589 140文字の恋:2011/10/22(土) 04:18:29 ID:vBwmg1h.
奴からメールが来た。


元気か?


たった4文字の素っ気ないメール。
……それだけなのに。
何で俺は、こんなに泣いているんだろう。
言いたい事は沢山ある。
聞きたい事も。
今は遥か異国の空にいるお前に……俺の想いは、どうすれば伝わるのだろうか。
まずは短くメールを返した。


お前を待ってても良いか?


と。

22722-609 インド人DK:2011/10/23(日) 22:57:53 ID:FYN8Wm.6
ドムの野郎だ・・・ドムが今朝も迎えに来やがった・・・毎朝のことながら実に欝だ
ドムというのは同級生のインド人だ。母ちゃんが日本人だから正確に言うと日印ハーフだ
ただ見た目は母ちゃんの遺伝子はどこに消えた状態の褐色の肌で高い鼻で真っ白い歯の完璧なインド人だ
オレが自宅の外に出ると象に乗って六人ほど御付きを従えたドムが居やがった
「ナマステー! おはようございまーす。今日も公信さんはきれいですねー」
ドムってのはあだ名だ。インド名がプラヤースと言って、向こうの言葉で努力という意味らしい
で、そこから日本名が努務(つとむ)。で、あだ名はドム。もうちっと親も考えて名前をつけてやればいいのにw
「もう迷惑だから来るなと言ってるだろ! せめて象は止めろ!」
「公信さん! 本当は嬉しいんでしょ。また照れちゃって」
「てめー! ぶちのめすぞ!」
オレたちが言い争いをしている間も象は脱糞して、従者さんが片付けている。お疲れさまです
でも今日は一学期の終業式の日だ。明日から夏休み。ドムともしばらく顔を合わせないで済む
「とにかくもう二度と来んなよ。迷惑だから」
オレはドムを置いて歩き出す。学校は徒歩三分の近場にある。ドムも後ろからついてくる
何でか知らんが高校に入学して三日目にいきなり大勢の同級生の見ている前でピンク色の蓮の花束を渡されて告白された
オレは唖然とするばかり。「公信さんほどかわいい人間を見たことがありません。一目惚れです」とか抜かしやがった
ドムは頭がおかしい。こんな身長163cmのちんちくりん高1のどこがかわいいんだか? ちなみにドムは180cmありやがる
確か父親の実家は偉い金持ちだとか言ってたな。御付きを連れているから相当な身分なのは分かるんだけどさ
そうこうしているうちに学校に着いて、始業式から通知表を貰って学校は終わった。やったー! 夏休みだ! 
オレはとっとと帰宅しようと校門を出た瞬間、脳天に衝撃が走った。目の前が真っ暗になり、意識を失った
・・・公信さん、公信さん、目を覚まして下さい!
目を覚ますと凄く豪華な部屋に居た。ここはどこだ。そして、なんで目の前にドムが居る?
「公信さん。これから二週間ゆっくり僕のハパの故郷のハイデラバードで楽しく過ごしましょうね」
「はあ?」
「ご両親には既に許可済みです。パスポートについてはパパの力で何とかしました」
ドムの言うことがよく分からない。・・・あれ、ここはどうも普通の部屋じゃねーな
オレが左右を見ると小さな窓がたくさん並んでいる。まさかと思いつつ窓の外を見たら・・・雲の上だった・・・
うわー! 飛行機だ! ドムに拉致られたあああ! 姉貴がよく読んでるアラブの王子が出てくる変な小説まんまの展開じゃねーかー!
ドムは満面の笑みを浮かべてこっちを見ている・・・あああああ・・・オレの人生と貞操オワタ!

22822-619 うたた寝:2011/10/27(木) 18:39:37 ID:uyTLBpkk
あぁ、腰が怠ぃ…。
よっこらしょ、と声を出した自分に苦笑しながら、縁側に腰を下ろす。
三十路の身体に一晩に3回はさすがにキツいか。
小春日和の日差しの中で中で、昨夜のことを振り返る。
「慎二さん、ね、もう一回だけ、いいでしょ?」
年下の恋人はとてもねだり上手だ。
可愛さにほだされてつい3回目もつき合ってしまった。
だって、しょうがねーよなあ。可愛いものは可愛いんだから。
「慎二さん、大好き!」
嬉しそうに抱きついてきた翔太の笑顔を思い出すと自然と頬が緩む。
今の俺、デレデレと締まりのない顔してんだろうな…。
そんなことを思いながら、日だまりの温もりに眠気を誘われて、
いつのまにかうとうとしはじめた。


バイトを終えて、弾む足取りで家へと急ぐ。
慎二さんは今日は仕事が休みで家にいるはずだ。
ただいまー!と元気よく玄関の扉を開ける。
「慎二さん、ただいま。……あれ、いないのかな?」
家の中はしんと静まりかえってる。
買い物に行っちゃったのかな?一緒に行きたかったのに……あ、いた!
縁側に座る恋人の姿に、少ししぼみかけた気持ちがまた膨らむ。
「慎二さん!」と呼びかけようとして、その声を飲み込んだ。
こくりこくりとと揺れてる頭に気づいたから。
起こさないように足音を忍ばせて傍に寄り、隣に腰を下ろして、
寝顔をそっと覗き込む。
いかついけれど優しい顔。
昨夜無理させちゃったよね。疲れさせちゃって、ごめんね。
そんな申し訳ない気持ちを覚えながらも、
慎二さんは寝顔も格好いいな…。
格好いいだけじゃなくて、エロくて可愛いんだよね。
自分に抱かれた年上の恋人が甘く喘いだ姿を思い出して、
どうしようもなく顔がにやける。
口許を緩めたまま、穏やかな寝顔を見つめていた。


かくん、と首が揺れた拍子に目が覚めた。
身体の右側がやけに暖かいと思ったら、
いつ帰ってきたのか翔太が肩に寄りかかって眠っている。
あぁ、やっぱり可愛いな、なんて思いながら見ていると、
長い睫毛が震えて、やがてぱちりと目が開いた。
「あれ、俺いつのまにか眠ってた?」
瞬きしながら首を傾げる年下の恋人に微笑みかける。
「今日はぽかぽかしててうたた寝日和だな。
 ……おかえり、翔太」
「ただいま、慎二さん」
にっこりと、輝くような笑みが返ってきた。

229眼鏡の僕系男子:2011/10/30(日) 00:50:45 ID:0LkIMSHA
語ってみる。

眼鏡をかけているので、目が悪い。普段は本を読むか、パソコン、スマホいじり。
一人称が僕なので、少し精神年齢が低め。プライドも高め。親からは溺愛されている一人っ子。
同級生からは嫌われ気味だが、プライドが高いが故に、馬鹿な奴らはどうでもいいなんて思っている。
社会にでたら、奴らと仕事をしなければならないのに、解っていないのが幼さの証拠。独断で受け認定。


合う攻めを考えてみる。

●いじめっ子タイプ…
弱みを握って体を要求するか、脅して無理やり関係を持つ。
体は手に入ったけど、心が手に入らないのでヤキモキする。
受けには嫌われる。体を開発しても嫌がられる。仕方ないので無理やりしてしまい、また嫌われるのループ。

●受けよりも能力のあるタイプ…
受けよりも成績が良く社交性もあり運動能力もある。
受けの劣等感を刺激するので、受けを挑発して関係に持ち込む。
「その年でセックスもしたことないの?」など。
遊び半分で関係を持ち、その事に気がついた受けが離れてみて、初めて自分の気持ちに気がつく。意外と鈍い。

●包容力のある年上タイプ…
彼の幼さが愛しくて、同情が愛に発展していくタイプ。
攻めに影響されて、受けも大人になっていく。
受けのわがままに振り回されがち。

●受けを一人前の男に育てるタイプ…
眼鏡を外させる。本は読ませない。スマホ没収。受けがシンデレラのように変身してしまうので、ライバルが増えて慌てる。


共通点
どんなタイプも基本的にS攻め。やっそん時に受けを泣かせるのが好き。

230国際会議:2011/11/03(木) 12:43:10 ID:JYAkR4D2
金髪碧眼アメリカ人×黒髪黒目日本人は良く見かける。
留学して右も左もわからない身長160cm未満の日本人を、ルームメートになったアメリカ人が美味しく頂く…有り得る。

日本人×アメリカ人の場合はどうだろう?
アメリカ人=ガタイが良いという日本人の発想から、なかなか王道となり難い。
ならば走るべきはショタか。
近所に住んでいる天使のような少年をパクリ。…いける。

生まれも育ちも日本、英語はからっきし。外国人相手に戸惑うアメリカ人と、知っててからかう日本留学中のイギリス人。
イギリス人×アメリカ人も素敵だろ?

アラブ人が攻めなのは何故か。金髪褐色肌はなかなかいないが、黒髪褐色肌の受けがいてもいいじゃないか。
海外出張でアラブに来た東洋人に一目惚れされる石油王受け萌え!

チャイニーズマフィア×ロシアンマフィア禿萌エス。
ジャパニーズ“GOKUDO”×ロシアンマフィア寺萌エス。
色白ロシア人総受けだろJK

いっそ太平洋×大西洋←インド洋とかどうよ?
ユーラシア大陸×オーストラリアとかめちゃくちゃ良くね?
地球まじ萌える。



『以上、本日午後に行われた801国際会議の模様をお送りしました』

「やはり最初は開催国である日本に重きを置く内容となりましたね」
「しかし、後半はおいてけぼりを感じますね。やはり日本は自己主張をしっかり行い、日本総攻めを強く押し出していくべきです」
「いや、日本は総攻めではなくバチカン市国×ツバルをイチオシカプとして…」

『続いてはお天気です。今夜の月は何組のやっそんを覗き見るんでしょうか。八百原さーん?』

231国際会議:2011/11/03(木) 19:53:02 ID:lH9Zg6fQ
801国際会議の会場の外では会議の開催に抗議するNGOらの集会が開かれていた
「801G6の日中米英露亜だけで801世界の全てを決めるな!」がスローガンだ

「我々ラテン系にも決定プロセス関与の機会を!」(仏伊西の801NGO)
「金髪碧眼のアングロサクソンは米英だけじゃない!」(豪加の801NGO)
「一大ジャンルにナチスものがあるのになぜ我々が参加できないんだ?」(独の801NGO)
「アメリカにはオレたちだっているんだ!」(ネイティブアメリカンの801NGO)
「南米を無視するな!」(メキシコ・ブラジル・アルゼンチンの反801貧困NGO)
「ムエタイ戦士だって凄くかわいいぞ!」(タイの801ムエタイの競技団体)
「オレたちだって石油王に負けず劣らずの金持ちだ!」(インドの801マハラジャの親睦団体)
「中東に住んでいるのはアラブ人だけじゃない!」(イラン・トルコの801イスラム組織)
「黒人が1人も居ないのは変じゃないか!」(ケニアの801人種差別撤廃運動団体)
「北海道を舞台にするならオレたちも出せ!」(801ウタリ協会)
「中国マフィアを一まとめにするな! 香港・上海・福建・東北の四派閥あるぞ!」(801マフィア研究家)
「大草原を駆け巡る雄大な801を作れ!」(モンゴルの801NGO)
「太平洋の海の男たちだって参加資格はあるぞ!」(ハワイの801NGO)

このように各々の立場でシュプレヒコールを上げていた
今回参加できなかった801団体もたくさんある
801国際社会はとても広い
今は会場の外に居ても次の会議で中に入っている団体もあるかもしれない
ほんの何年か前までアラブ人たちも会場の外でシュプレヒコールを上げていたのだから・・・

23222-709 ハーレム:2011/11/08(火) 20:44:47 ID:.q96r0rs
近所にテイクアウト専門の丼屋ができたらしい。話の種にオレは相方と一緒に行くことにした
店の前に着く。見ると客の若い女性比率が高い。丼専門店で女性が多いって珍しいなと思った
列の最後尾に並んで注文を決めようとオレたちは立て看板を見て唖然とした

「持ち帰り専門丼屋 ご飯総受けハーレム」
全品600円
攻増し(おかず増し)+100円
受増し(ご飯増し)+50円

アイヌ×日本=鮭フレーク丼
沖縄×日本=ゴーヤーチャンプルー丼
韓国×日本=豚キムチ丼
北京×日本=かに玉丼
上海×日本=豚角煮丼
広東×日本=チャーシュー丼
四川×日本=麻婆丼
台湾×日本=豚そぼろ高菜丼
モンゴル×日本=塩マトン丼
ベトナム×日本=豚ピーナッツ丼
タイ×日本=激辛豚そぼろ丼
マレーシア×日本=蒸し鶏丼
インドネシア×日本=サテ丼
ハワイ×日本=ロコモコ丼
バングラデシュ×日本=いわしカレー丼
北インド×日本=野菜カレー丼
南インド×日本=えびカレー丼
パキスタン×日本=チキンカレー丼
モルジブ×日本=鰹だしカレー丼
アフガニスタン×日本=マトントマト煮丼
アラブ×日本=マトンケバブ丼
トルコ×日本=牛ケバブ丼
エジプト×日本=コロッケ丼
ロシア×日本=ストロガノフ丼
デンマーク×日本=チーズ丼
ドイツ×日本=ソーセージ丼
イタリア×日本=いわしトマト煮丼
フランス×日本=クリーム煮丼
スペイン×日本=マヨネーズ丼
イギリス×日本=魚フライ丼

「・・・」
「ヘタリアの同人誌の読みすぎなんじゃないかな・・・ここの店主」
結局オレはタイ×日本を選び、相方はアフガニスタン×日本を選んだ
丼を買うだけでなんかオレたちはヘトヘトになってしまった
味はまあそこそこだったわw

23322-729 嘘つき×嘘つき:2011/11/12(土) 10:22:49 ID:4.TVwXIA
「きけ、マコト。いいか?俺がこれから言うことはウソだからな」

強張った表情の幼なじみの口から、そんな言葉が告げられた。
「…なにそれ、駆け引きのつもり?やめなよユイ、似合わない。君、不器用なんだからさ」
僕は読んでいた本で口元を隠した。ひどくいやな顔をしているに違いない、今の僕。
言われたユイは追い詰められたような表情で、ぐっと言葉を飲み込んだ。
昔からだ、すぐに黙り込む。そうして沈黙に耐えられない僕が、言葉で捲くし立てて君を傷つけて。
目の前に17年鎮座まします思いの丈には、二人とも気付かないふりで。

「ねぇ、ユイ。なんて言いたかったの?僕にさ。本音をぐちゃぐちゃにして、何を隠して、何を伝えたかったの?ユイ」
普段の底抜けに明るい姿とは似ても似つかない目の前のユイ。
「何を言いたかったの?僕に」
「………」
忌々しい。
性別、世間体、下らない恥ずかしさと、これまで大切にしてきたお互い以外のもの。君以外の全てが僕の足を引っ張る。
僕たちに嘘を吐かせるもの全てが、忌々しい。
「ユイ」
我ながら、ひどく優しい声をしている。
大切な幼なじみを追い詰めるには充分なほど。
「ユイ、何が怖いの。嘘をつかないでよ、ホントのことを言って、そしたら僕は…」

「…お前が、嫌いだ」
「………うそつき」
瞳が揺らいだ。

嘘吐きが泣いた。

234さよならのうた:2011/11/13(日) 08:38:37 ID:m/wViJgg
リロミスすみませんでした><こちらに投下します。

5/1 晴れ
最近君が「また会おう」と言わずに「さようなら」と言うようになったのを不安に感じる。
それに対して何を言うわけでもなく部屋を出る俺は、無力なのだと痛感する。
だが、きっとお医者様が治してくださるはずだと信じている。
くだらない事を考えるよりかは散歩でもして、彼に聞かせる話でも探そう。

5/2 曇り
朝にお見舞いに行き、昼には仕事をする。
仕事と偉そうに書いてはいるが、所詮文豪に憧れたしがない物書き。君のことが頭を離れず一文も書けない。
甲斐甲斐しくお世話をしてくれた書生に八つ当たりしてしまった。
出来もしない仕事などしても意味がないと、晩には俺が君に何を出来るかを考えた。何も思い浮かばなかった。

5/3 晴れ
朝一番に書生に頭を下げた。すると、頭を下げる必要などはないと焦った様に頭を上げることを促される。
しかし謝ったのは、八つ当たりしたまま彼に顔を見せられなかったからだ。そのことに自己嫌悪する。
彼には顔を見せて、しょうもない世間話をした。本当にこれでいいのだろうか?
漠然とした、薄気味の悪さに思わず閉口する。
5/4 雨
今日は彼に顔を見せていない。昨日の夜から、仕事をしていた時、お医者様に彼がもう長くないことを知らされた。
瞬時土下座をして、一日でも長く延命してくださいと叫んだ。
お医者様が去るまで何を言われても床につけていたので顔は見ていない。
年甲斐もなく泣きそうになった、たぶんきっと情けないようなものを見る目で見ていただろう。

5/5 晴れ
彼が私の家の庭を見たいと言った。安静にしていなくてはと思ったものの、昨日のお医者様の言葉が脳裏をよぎる。
気がつけば私は首を縦に振っており、彼を家にまで運ぶこと決意した。
お医者様にそのことを伝えると、半ば期待していた止める言葉をかけてくださらなかった。
彼の部屋に戻り、書簡をしたためている彼に「明日行こう」と伝えた。彼は筆を止めなかった。

5/6 晴れ
彼は庭の花をじっくり見ていた。
「9月に植えた石楠花と灯台躑躅がまだ開花していた。君が世話をしてくれたんだろう。安心した」
そう言った彼に私は微笑んだ。なんという贅沢な言葉だろう。
仕事に身が入らないということが、たまにはいい仕事をするもんだ。

5/7 快晴
彼が死んだ。手には手紙が握られていた。
見る勇気がない。お医者様も無理に見る必要はないと、手紙を読むこともなく私に手渡した。
死ぬ前に彼が何を思ったのか知るのが怖い。
震える手で、庭で茶を啜る。
5/8 朝:小雨
このままじゃいけないと決心して手紙を開いた。
「私は明日、庭を見る。篤志家な君がどのような庭を見ているかが想像できない。
もしも庭に花が咲いていたら、私が亡くなったあとも続けてほしい。
もしも何も生えないない庭ならば、居なくなった私だと思って何かを植えてほしい」

5/8 昼:霧雨
手紙を途中で読むのを止めた。
小説を受け取りに来た者が私の気も知れずに渡せ渡せと五月蝿いからだ。
完成していない旨を伝えると書け書けと五月蝿い。
書生が心配そうな目を向けるのを無視して小説を書き始める。

5/8 深夜:星空
小説を書き終えた。手紙の続きを読んだ。死ぬ前に書き足したであろう一文があった。
「清の庭を見た。もう怖くない」
庭に出て空を見た。
月と星空が共存する中に彼の姿を見た気がした。

23522-749生意気意地っ張りだけど世話焼きな年下攻め(受けにもタメ語):2011/11/15(火) 09:31:57 ID:RngBqtCo

「こんちわ、ナカさん?入るよ」
青年がそう声をかけ居間を覗き込むと、繋がった寝室から穏やかな声がする。
「やあカズくん。なに、またお見舞い?もう今週3度目じゃないか。しかも3日連続で」
ベッドに上体を起こしたまま、眼鏡の男が答える。
青年は下げてきた買い物袋をベッドの横に降ろすと、上着を脱いでベッドの周囲を片付けはじめた。
「…いいだろ別に。どうせ俺しか来ないんだから」
「そうだね、君しか来ないね。たかが足の小指の骨折だ」
青年が片付けた端から、男は青年の荷物を物色する。
「…もう来てやんねーぞ。てかそのカズくんはやめろって」
男のお目当てはスーパーの袋ではなく、小さめのトートバッグに入ったタッパーにあった。
「カズくんがダメなら、なんて呼ぶんだよ。お、かぼちゃか、いいね」
美味であろうことはわかりきっているが、だからこそひとつ味見をしたい。
迷わず一番大きい一切れを手にしようとしたところで、青年にタッパーを取り上げられる。
「つまむな、今用意するから」
「はーい」
やれやれ自分は幸せ者だな、と読みかけの新聞を手にすると、居間の奥にある台所から青年が戻って来た。
手には昼に男が食べたカップラーメンの空き容器があった。
「おい!またカップ麺なんか食って!煮付けどうしたんだよ冷凍の、渡しただろ!」
「あー、ジャンクなものが食べたかったんだよ、煮付けもちゃんと食べるよ。カズくんのおいしいごはんだもの」
「カズくんはやめろ」
「じゃあカズマ」
目を見据えてそう呼ぶと、青年は苛立ちと照れをあらわにして言葉に詰まってしまった。
「……」
「返事しないんじゃないか、相変わらず照れ屋だなぁ君は」
「うっさい」
「一真、そう冷たくしないで」
「あーもうわかったよ!いいよカズくんで!」
「なんだよ一人で、せわしいね君は」
青年は不服そうに台所へと向かった。黒のエプロンをかけた背中を、老眼鏡を外し見送る。
純情で正直な恋人をからかうのは、もう自分のライフワークかもしれないな、そう思うと笑みがこぼれた。

30分もしないうちに、食卓が整ったと青年が寝室へ来た。
肩をかりてベッドから降りる。数歩進むと夕餉の香りが鼻をくすぐった。
「幸せだなあ」
ぽつりと漏らすと、青年がびくりと反応した。表情が強張っている。
「…死ぬなよ?」
探るようにそう言われても、こればかりは約束が出来ない。
「うーん、死にたくはないなぁ。まだ君の成人式も見てないのに」
そう答えると、青年は「メシ、食おうか」と言って顔を背けた。

食卓へつくと先ほどのかぼちゃの煮物と、男の好物であるなめこの味噌汁が湯気を立てていた。
その他にも常備菜の切干大根など、青年の作ったオーソドックスな和食が並ぶ。
「美味しそうだねぇ、ありがとうカズくん。いただきます」
味噌汁をひと口飲み、「美味しい」と言うと、青年の顔がほころんだ。
「かぼちゃも食ってよ、ナカさん」
そう促され深い橙のかぼちゃに箸をつけた。
「あー美味しい、カズくん好き好き、すっごく好き」
男の軽い口調が気に食わないらしく、きらきらとほころんでいた青年の表情が見る間に少し不機嫌そうになる。
「いまのはカウントしねえ」
「これまで言ったの数えてるの?馬鹿だね」
「うっさいくたばれ」
「僕が死んだら泣くくせに。あー美味しい」
「泣くよばか」
思わぬ正直な言葉に顔を上げる。
頭の片隅でかぼちゃを味わいながら青年を見ると、出会った頃の幼い彼のままで、淋しそうな顔をしていた。
まだまだ子供か、頼りないな、そうしてたまらない愛しさがこみ上げてきた。
「…遺灰はエーゲ海に撒いてね」
「やだよ」
「そう言うなよ。あ、明日は天ぷらが食べたいな、舞茸の」
「明日は来ないからな、絶対来ないからな!」



236名無しさん:2011/11/18(金) 02:39:22 ID:p2O9tW9A
妄想を吐き出させて下さい。

親が遺した借金抱えて天涯孤独の受け。
長年の苦労ですっかり無気力状態、債権者の攻めに
「金がないなら身体で払って貰おうか」と言われても
「鉱山でも男娼宿でも放り込めば」と投げやりな態度。
「そんな所で働かせてもロクに返済出来ないうちに死なれそうだ」ということで、
受けは攻めの会社(とか店とか)で攻めの商売を手伝うことになる。
最初は半分死んだように働いてた受けだったが、攻めの容赦ない指導もあって徐々にやる気と才覚を見せ始める。
そうこうする間に互いに惹かれていくわけだけど、
攻めは「借金を楯にして受け容れさせても虚しいだけだ」と踏み出せないし、
受けは「借金返済で切れる縁なら深入りしたくない」と距離を置こうとする、って感じで、
債権者/債務者という立場のせいでなかなか進展しない。

そんな中、受けが己のアイデアなり機転なりですごい利益を叩き出し、
攻めは「これでお前も自由の身だ、これからは好きにすればいい」と借用書を焼いてしまう。
ここからは受けが「俺はあなたの傍にいるのが好きなんだ」と告白するもよし、
攻めが「自由になったんだから嫌なら断ってくれ」と仕掛けるもよし、
晴れて対等な立場で公私ともにベストパートナーになったらいい。

ベッタベタでも、まだるっこしい両片思いがジリジリ続くのが好きなんです

237236:2011/11/18(金) 02:41:56 ID:p2O9tW9A
すみません236は
22-779 債権者×債務者
です

23822-789東南アジアから来た天才少年:2011/11/19(土) 13:51:41 ID:z3XeLOE.
「『本格レッスンわずか2ヶ月で単独コンサート大成功の天才ピアニスト!ヌワン・パビ・ユエチャイくんの素顔にせまる!』
『脅威の音感、天才少年ユエチャイくん』『澄み切った音色から広がる美しい世界』『音楽の申し子・アジアから世界へ』だって。すごい記事ばっかりだな。見た?」
「みてない、ちゃんと読めない」
「お前婚約者が3人いることになってるけど」
「えー!?ホントに?…参ったなぁ、おっぱい大きいかなぁ」
「全然参ってないじゃん」
「でもホントに参った、昨日母さんに電話したら、妹が6人増えたって。いまうちオオジョタイ」
「受け入れちゃったのかよ、お前の母ちゃんもすごいな」
「まだしばらく帰れないみたいだからなぁ…チョト心配。じいちゃんも老い先短いし」
「ざっくりした日本語になっちゃってんぞ。…やめたい?」
「んーん、ピアノ好き、少しの、えーと流行り廃り?でも喜んで聴いてくれる人がいるのは嬉しいし、幸せなことだと思う、から。それに日本には、アキラがいるしね」
「……よせやい」
「エドッコ?ふふ。
でもホントに感謝してるんだよ、アキラにも、アキラのパパやママにも。昔僕にピアノを教えてくれたこと、友達になってくれたこと、たくさん優しくしてくれたこと、それから」
「ヌー、大変になったらすぐ言うんだぞ。強制送還してやるから」
「僕ミツニュウコクじゃないよー」
「はは、まーでもホント、もっと頼ってよ」
「うん、ありがとう。嬉しい。アキラは僕のキョウダイみたいなものだから」
「兄貴だろ、チョーカッコイイ。男前の」
「ちがう、男前はタカクラとワタナベ」
「ケンかよ!」
「あのね」
「うん?」
「時々思うんだ、嬉しいことや悲しいことがあったとき、アキラと僕が繋がってたら、どんなに幸せだろうって。
アキラの辛いことや悲しいことをわかってあげたいし、僕の嬉しいことでアキラにも喜んで欲しい。ホントに心が繋がって、僕たちが二人で一人だったら、そうしたら、アキラのこともヒトリジメできて…」
「ヌーって馬鹿?」
「なんで!」
「あのなあ、もう繋がってるっつーの、お前のことぐらい手に取るようにわかるぞ俺は」
「…そっか」
「信じてないだろ。ひとつ当ててやろうか」
「なに?」
「俺のこと好きだろ、超」
「…プレイボーイ」
「いなせと言え。それか色男」
「ちがう、それヒノショーヘイ」
「マジかー」
「でもホント、あたり。ピンポンだよ、アキラ好き、すごく好き。照れるけど。…愛してるんだ。ヘンかな?」
「月が綺麗ですねってか」
「まだごきげんようだよ?」
「テレビ好きだねお前」
「うん、でもアキラも好き」
「あれ、"も"なの?」
「ゴジュッポヒャッポ」
「えー?」
「倍ぐらい違う、アキラがヒャッポ」
「新解釈だな」
「…あのさ、……もしホントのホントのホントに辛いことがあってさ、シメンソカ?なって、僕が逃げ出したくなったらさ」
「攫っていいよ、お前の国に」
「……キスしていい?」
「こういうのはなー、きかないでするんだよ」
「愛してる。愛してる?」
「イェス,オフコース!」

「あ」
「?」
「今度あれ弾いてよ、エリーゼのために」
「いいけど…それしか知らないんでしょ」
「ばれたかー」

23922-849 貿易港そばのグラウンド 1/2:2011/11/27(日) 04:24:35 ID:PDDxumjc
忍法帳リセットされていたのでこっちに書きます。なんてこったorz



あの頃、港町は猥雑で、グラウンドの金網の向こうからは常に湿った風が吹き荒れていた。
グラウンドは四角に仕切られただけのただ広い空間で、古びたバスケットゴールがわびしげに佇んでいる。
幾つものネオンが港に瞬く頃、グラウンドで遊ぶ子どもらは段々とその姿を消していき、最後にはひとりの少年だけが残る。
少年は俺だ。唇を噛みしめている。
燃えるような夕日を、落ちてくる夕闇を、親の仇のように鋭く睨みつけている。

俺が宇宙人と出会ったのは、そんな繰り返しの日常の中だった。
無人のグラウンドに色濃く落ちた影に視線をうつして、俺はいつものように数を唱えている。
ゆっくり百まで数えたら家へ帰ることにしていた。
六十過ぎまで数えたころだったろうか、ふと背後から物音が聞こえた。はっとして振り返ると、ひとりの少年が怯えたように立ち竦んでいる。
年の頃は俺と同じくらいだが、見たこともないほど鮮やかな金色の髪が風に揺れていた。肌の色も発光したようにぼんやりと浮かび上がっている。
俺はすっかり目を奪われてしまって、お前はどこから来たんだと勢い込んで少年に問いただした。
少年はラムネのビー玉の色をした瞳を戸惑って瞬かせながら、金網の向こうの薄ぼけた闇を指差した。
そこにはただ、黒々とした海が横たわり、冷たくなっていく空が広がっているだけだった。
後から考えると、それは日本語の喋れない少年が、自分は異国からやってきたのだという意味のジェスチャーをしたに過ぎなかったのだが、
そのときの俺には彼が空を指しているように見えたのだった。
あいつは空からやってきた宇宙人。そのことを俺だけが知っていた。

実際そんな勘違いは彼が日本語を覚えるころにはすっかり解消されていたのだが、それでも俺にとってあいつは特別な友人だった。
誰もいなくなった後のグラウンドで二人で遊んだ。互いの母国語で冗談を教え合った。俺がもう数を数えることはなくなった。
貿易会社の社長子息である彼にどのような事情があって、遅くまで家に帰らなかったのかは知らない。
その関係は俺たちが中学に進学するまで続いた。

中学に入るとすぐに先輩が絡んできた。しつこく金をせびられて、余分な金はないと断ると生意気だと罵られた。
吐くまで腹を殴られたある日、お前のお袋は淫売だと言われたのでそいつの前歯を折った。
それからは散々袋叩きにされたが、一度も謝らなかった。誰も助けてくれないのはわかっていたので自分で頑張ることにした。
一本の腕を折られたら二本の腕を折った。鉄パイプで殴られたらその拳を叩き潰した。
お前の親父は屑のろくでなしだと言われたが、それは本当のことなので殴らなかった。
気が付いたら俺は一端の不良だった。だから街であいつとすれ違っても、もう声をかけることもしなかった。
あいつの視線が気遣わしげに俺を追っていることには、知らない振りをした。
晴れてあいつは違う世界の住人、宇宙人になったのだ。

今はもう、あいつはこの町にいない。地元の私立中学を卒業した後は生まれた国に帰ってしまった。
俺はといえば、高校へは行かず港にたくさんあるバーの給仕や用心棒をして糊口をしのいだ。
その頃母親は男と三度目の失踪をし、父親は酒をしこたま飲んである朝動かなくなった。
停滞した日常の中、気性の荒い船乗りや外国人に揉まれて腕っぷしだけが強くなっていった。
ときには強い酒で喉を潤し気安い女たちと戯れたけれど、それはそれでつまらないことだった。

24022-849 貿易港そばのグラウンド 2/2:2011/11/27(日) 04:25:26 ID:PDDxumjc
俺が今になってあいつのことを思い出すのは、彼が去り際に投げつけた言葉のせいなのだ。
あのとき、いつものように無視をして通り過ぎようとする俺の腕をあいつは痛いほど掴んで引き留めた。
「俺は国に帰らなくてはならない」
何かを確かめるように、あいつは慎重に言葉を紡いだ。
あいつの瞳は変わらずに綺麗なビー玉のままで、俺はおそらくそのせいで身じろぎもせず続きを待った。
けれどじっとあいつの瞳を見ていると、昔にはなかった意志の光が静かに宿っているのがわかった。その目で強く俺を見据えてあいつは言った。
「今の俺にはお前の側にいる力がないけれど、いつか俺が戻るまで待っていてくれないか」
「嫌だ」
考えるより先に言葉が口をついて出た。何らかの予感が心臓を突いて全身の血を熱くさせていた。
何かを言わなくてはならなかったが、それがなんなのかは自分でもわからなかった。だから拒絶した。
俺は嫌だ。もう一度はっきりと低い声で言うと、あいつを突き飛ばして俺は逃げた。

そしてこんな風に感傷的な気分になるのも、明日になったらあのグラウンドが立ち入り禁止になると聞いたからだ。
なんでも、どこぞの若い実業家が買い上げていったらしい。何に使うのかは知らないが、おそらくグラウンドは潰されてしまうのだろう。
正直心残りではあるけれど、それでなくてもここ数年この辺りでは開発が進んでいる。
海にほど近い寂れた土地が対象となるのは、どちらにせよ時間の問題だっただろう。
俺はふと思い立って、仕事前にグラウンドに足を向けることにした。

茜色に燃える空に、何の因果か大人になっても俺はひとりきりだった。
無人のグラウンドに立って目を閉じると、まぶたの裏に血のような赤が張り付いている。
宇宙人はいない。
外国人は行ってしまった。
約束は存在しない。
成長した俺だけがここに取り残されていた。
不意に、哀しみが暴れだす。どうしようもない寂しさが胸に突き刺さって痛む。俺は歯を食いしばり、ゆっくりと数を数え始める。
昔のように百まで数えたら俺は帰れるだろうか。
幾つまで数えた頃だろうか、俺の後ろから微かな物音が聞こえる。どうやら足音のようだが、俺は数えるのをやめない。
こんな時間にこんなところにやってくる酔狂な人間は、俺以外にいるはずがないからだ。
思わぬ幻聴のせいで数がわからなくなったので、とりあえず七十くらいから再開することにする。
だんだん足音が大きくなっているのはやはり気のせいなのだろうか。その歩幅は広く、成人男性のように思える。
だけどほら、もう足跡は止んだ。
しんと静まり返ったグラウンドで俺は百まで数え終わる。そしてもう逃げられなくなっておもむろに目を開ける。
眩しい光が目の中に流れ込んできた。
「……ただいま」
夕日をバックに、金髪の男が屈託なく笑っている。
俺は立ち竦んでいる。
お前なんでいるんだよとか、いくらなんでも成長しすぎだろうとか、言いたいことはたくさんあるのに、
どれもこの場にはふさわしくない気がして俺は口をつぐんでいる。
戸惑う俺に、あいつの手がまっすぐに差し出される。恐る恐る掴むと力強く握り返された。
俺は泣く。
嗚咽を噛み殺す。
失ったと思っていた大切なものが今日帰ってきたので、俺はまるで少年のように泣いてしまったのだった。

24122-869 1/2:2011/11/29(火) 20:24:39 ID:fM0mxOr2
すでに投下されてたのでこっちに




どんよりと曇った空の下、彼は黙って花を置いた。
栄華を誇った都市の、その面影が静かに風に吹かれて消えていく。
本当に何も残っていない。それを再確認して、彼の頬を涙が伝った。
故郷を捨てた。友を捨てた。愛した恋人すら捨てた。
そんな自分に涙する資格などないのだ思いながらも、落ちる雫を止めることもできなかった。

どれほど時間が経っただろうか。
彼は花に背を向け、歩いてきた道を戻り出した。
『もう帰るのかい?』
耳に響く優しい声。
たまらず振り返ると、そこには捨てたはずの恋人の姿があった。
最後に見た時と同じ、皮肉げな笑みを浮かべていた。
「…俺を、恨んでるだろう?」
やっとのことで絞り出した声は震えている。

『君はいつもそうだ。僕の言葉なんて聞かないんだから』
「そうだ、俺はいつもそうだった。だから、逃げ出したんだ」
すると恋人は、なんだかひどく優しい顔をした。
「やめろよ…そんな顔で見るな!罵れよ!臆病者って、二度とここにくるなって、罵れよ!」
『君は本当に馬鹿だなあ』
そう言って、くすりと笑う。


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