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0さん以外の人が萌えを投下するスレ

16521-860 二人暮らし 1/2:2011/07/25(月) 07:11:22 ID:IV1E9ms2
ただいま、という言葉は酷く馴染みが薄かった。おかえり、という言葉は酷く座りが悪かった。
どこか照れくさくて、続くただいま、の言葉を口にしきれない。そんな時、いつだって目の前で彼はまだ慣れないんだ?と笑ってくれた。

「おかえり、智」
とはいえ、時間が不規則な仕事をしている夏樹が常に智の帰宅する時間に部屋にいる訳ではない。
逆も然りで、だからたまたまタイミングが合う度に智は玄関で彼の靴を見ては少しだけ口端を上げる。無意識の内に。
そしてむずがゆくなる。自分を迎えてくれる人がいる事に、そしてそれが夏樹だという事に。
「あ。……智、また困ってる?」
「いや、驚いただけだって……ただいま」
子供みたいな顔をして楽しそうに近付いてくる夏樹に、智は微笑む。一体この時間を何と呼べばいいのだろう。未だに智にはわからなかった。
幸せ、という一言ではとても足りる気がしない。
「だって、朝俺と変わらないくらいに出たじゃん。珍しくない?」
「うん、運良く早く終わってさ」
そっかあ、と智は笑う。単純に嬉しかった。
「だからさ、飯作って待ってたんだ。食おうよ。俺腹減ってんだ」
ほら早く、と近付いた夏樹からふわりと甘い匂いが掠めた。ゆっくりと気付かれないように息を吐き出した後、智はうんと言葉少なく頷いた。

夕食をとって、シャワーを浴びた。髪を拭きながらリビングへ戻ると、夏樹は膝の上にノートパソコンを乗せてその画面に見入っていた。
おそらく持ち帰りの仕事なのだろう、モニターを見つめる彼の視線は真剣だ。智はその表情に一瞬見惚れる。
「夏樹、風呂入る?」
あいたよ、と一言。すると真剣な目が緩やかに温かくなって智を見た。
「んー、ここまで終わったら」
智は夏樹の横、少し距離を開けて座った。真剣な顔で仕事をする夏樹を邪魔したくない気分が半分、少しでも傍にいたいなんて気持ちが半分。
まだ少し慣れない同居に、戸惑いと嬉しさは半々だ。まだ少し濡れている髪からこめかみへ、雫が垂れ落ちてゆっくりと顔の輪郭を辿っていく。
キーボードを叩く硬い音が聞こえる。またふわりと、鼻腔を擽る匂いに、智は振り切るように緩く頭を振った。
「うわ、どーしたの」
雫が飛び散ったのか、夏樹が驚いて智を見た。
「あ、いやっ、なん、でもない」
俺、変だね、と笑って誤魔化す智に、夏樹がまるで見透かしているように笑う。
それは智の勝手な思い込みでしかないかもしれなかったけれど、思わず赤くなった頬を隠す為に智はタオルで髪を拭くふりをして顔を隠した。


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