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美
1
:
◆f9klpsMBjM
:2021/03/23(火) 13:24:05 ID:JC05D13o0
美!!!
154
:
名無しさん
:2021/04/11(日) 23:58:36 ID:SSUxwDII0
( 、 ;川 あなたたちに...何ができるっていうの
ノパ⊿゚) あたしは
ノパ⊿゚) あなたがして欲しいことなら、なんでもする
( 、 ;川 っ....
ノパ⊿゚) あの日、インジェクターを持ち帰ったよね
ノパ⊿゚) 鞄じゃなくて、懐に入れたの見た
ノパ⊿゚) それで、どうするつもりだったの?
( 、 ;川
ノパ⊿゚) ...無理にとは言わないよ。「犯罪」だもんね
ノパ⊿゚) でも...美は。薬とは別物だよ
155
:
名無しさん
:2021/04/11(日) 23:59:08 ID:SSUxwDII0
...暫し、沈黙が流れた。
辺尼の肌を、冷たい汗が流れていく。
信じようか?
とうに一線など越えていた。
辺尼は考えないようにしていた。脾都と話してどうなる?
およそ、行き着く先など分かるはずだった。つまり、彼女と共に薬を打ち、「行く」ということ。
常識的に考えれば、このような馬鹿げた話はあり得なかった。
美など...ただの幻想だ。心身を蝕む毒だ。破滅への案内人だ。
しかし、彼女は脾都の話に強く引き寄せられていた。
脾都なら、この理由の分からない苦しみの手がかりを教えてくれる。そうとしか思えなくなっていた。
今、彼女は選択を強いられていた。
彼女らを警察に引き渡し、良識ある生活に戻るのか。
自身の全てを投げ打ってでも、彼女についていくのか。
156
:
名無しさん
:2021/04/12(月) 00:00:20 ID:hxc6LL6o0
( 、 *川
('、`*川
('、`*川 私が、持ち帰った?冗談でしょ
('、`*川 ...あなたの助けなんて必要ない
ノパ⊿゚)
('、`*川 あの時は、私がどうかしてたのよ
('、`*川 今、はっきり分かったわ。私は美なんていらない、助けなんて求めてない
ノパ⊿゚) ...そう
ノパ⊿゚) ...これ。あたしの携帯番号。いつでも電話かけて
ミセ*゚ー゚)リ いいの、脾都
ノパ⊿゚) うん。大丈夫
157
:
名無しさん
:2021/04/12(月) 00:01:05 ID:hxc6LL6o0
('、`;川 どうして
ノパ⊿゚) 分かるよ。あなたが嘘ついてることくらい
('、`;川 ....!
('、`;川 後悔するわよ
ノパ⊿゚) ...しないよ
ノパ⊿゚) きっとまた会う
不意に、辺尼の後方で噴水が高く水を打ち上げた。
2時間おきに10分ほど続く水のオブジェクトであった。
太陽の光を浴び、銀色の礫が一面に降り注ぐ。
広場の拡声器から幽玄なる弦楽が流れ出し、それが空気をゆっくりと旋回させ、
情緒は青く沈澱した。
158
:
名無しさん
:2021/04/12(月) 00:01:50 ID:hxc6LL6o0
…
(´・_ゝ・`) それで、どうだった
('、`*川 はい
('、`*川 非記は死んだようです
('、`*川 組織の犯行説が濃厚かと
(´・_ゝ・`) やはりか。特に驚きもないな
('、`*川 そうですね
(´・_ゝ・`) 脾都の繋がりは分かったか?
('、`*川 ええ。大体のところは
('、`*川 彼女は診競という女といつも行動を共にしています。非記の家がなくなった後は、独生という男の所に行き来しているようです
(´・_ゝ・`) 独生か。取調で聞いたな、その名は
(´・_ゝ・`) ということは、売人の捻余、臥名も居るのかい
('、`*川 はい
159
:
名無しさん
:2021/04/12(月) 00:04:37 ID:hxc6LL6o0
('、`*川 独生達の住処も突き止めました
(´・_ゝ・`) そうか...
(´・_ゝ・`) 辺尼
(´・_ゝ・`) 顔色が悪いが
('、`*川 ...何でもありません。私は大丈夫です
(´・_ゝ・`)
(´^_ゝ^`) そう
('、`;川
(´・_ゝ・`) 入れ込むなと言ったよな
('、`;川 は...?
(´・_ゝ・`) ...なんでお前の名前が向こうに知れてるんだ?
('、`;川 ッ!
(´・_ゝ・`) さっき、取調でお前の名前が出たんで驚いたよ
(´・_ゝ・`) うっかり実名を喋ってしまった、なんて言い訳をするつもりか?
160
:
名無しさん
:2021/04/12(月) 00:05:26 ID:hxc6LL6o0
( 、 ;川 そ、それは...
(´・_ゝ・`) 何を話した?
( 、 ;川 潜入捜査の時、同室になった脾都に私の名前と、捜査が入ることを、伝えました
( 、 ;川 全ては、私の個人的な理由によるものです
( 、 ;川 ...申し訳、ございませんッ!
(´・_ゝ・`) それだけか?
( 、 ;川
( 、 ;川 はい。それ以外は、何も
(´・_ゝ・`)
( 、 ;川
161
:
名無しさん
:2021/04/12(月) 00:05:55 ID:hxc6LL6o0
(´・_ゝ・`) 辺尼
(´・_ゝ・`) お前がしたことは、重大な職務規律違反だ
(´・_ゝ・`) ...潜入に行かせたのは、女のお前なら、勘付かれる可能性が低くなると、思ってだ
(´・_ゝ・`) 結果、非記を逃し、手がかりを潰した。当然僕にも責任はある。
( 、 ;川 ...如何なる処罰もお受けします
(´・_ゝ・`)
(´-_ゝ-`)
162
:
名無しさん
:2021/04/12(月) 00:06:27 ID:hxc6LL6o0
(´・_ゝ・`) 次はない。次、何かしたらお前はクビだ
( 、 ;川 ...はい
(´・_ゝ・`) 分かってるな、辺尼。僕らには守るべき家族と社会がある。あんな退廃的な反社連中とつるむなど
(´・_ゝ・`) 言語道断だよ
( 、 ;川 はい
(´・_ゝ・`) 今日はもう帰っていい。頭を冷やせ
( 、 ;川 ...失礼いたします
163
:
名無しさん
:2021/04/12(月) 00:07:31 ID:hxc6LL6o0
ガチャ
( 、 ;川 スーー
( 、 *川 ハーーー
( 、 *川 (また、嘘をついた)
( 、 *川 (...手視への恐怖が遠のくと、不思議と何の罪悪感も湧いてこない)
( 、 *川 (最低。私は最低な人間だ..)
( `ー´)よう
('、`*川 !
( `ー´)話聞いたぜ。辺尼
164
:
名無しさん
:2021/04/12(月) 00:08:22 ID:hxc6LL6o0
('、`*川 ...申し訳ありません
( `ー´)もうどうにもならんだろ。出視が責任を取ってくれるそうだ
('、`*川 ...はい
( `ー´)何か、悩みがあるんじゃねーの
('、`*川 ...。
( `ー´)
('、`*川 彼女らのことが、知りたかったんです...ただ、それだけです
( `ー´)...あそう
( `ー´)手視も言ってたと思うけど、深入りするなよ
('、`*川 はい
( `ー´)あいつらは犯罪者。俺らは取締官。割り切らねえと、やってけないって
('、`*川 はい
165
:
名無しさん
:2021/04/12(月) 00:09:35 ID:hxc6LL6o0
( `ー´)まぁ、いいや。辺尼、これから食事でも行かないか?
('、`*川
('、`*川 食事...ですか
( `ー´)最近お前、色々溜め込んでるんだろ。出してけって
そう言って捻野は携帯を取り出し、レストランを検索し始める。
その時、画面上から通知が表示された。それを一瞥した捻野は電源を切り、辺尼に向き直った。
( `ー´)...スマン、別件が入っちまった。また今度な
('、`*川 はい
送信主の名前に「性奴2号」とあったことを、辺尼は見逃さなかった。
.
166
:
名無しさん
:2021/04/12(月) 00:10:28 ID:hxc6LL6o0
彼女は極めて平静を装い、廊下で彼と別れた。
( 、 ;川 フルフル
庁舎を出て、夜の道を歩き始めた瞬間、彼女は全身の震えを抑えられなかった。
叫び出しそうになるのを、必死で堪えた。
.
167
:
名無しさん
:2021/04/12(月) 00:11:09 ID:hxc6LL6o0
カチ......
ポシャ....
チチ......
パラ.....
カチ..... パラ......
ポシャ..... チチ....
カチ......
ポシャ....
チチ......
パラ.....
カチ..... パラ......
ポシャ..... チチ....
カチ......
ポシャ....
チチ......
パラ.....
カチ..... パラ......
ポシャ..... チチ....
カチ......
ポシャ....
チチ......
パラ.....
カチ.....
168
:
名無しさん
:2021/04/12(月) 00:11:55 ID:hxc6LL6o0
それから、時間の感覚が飛んだ。
気付けば、辺尼はいつもの高架下に立っていた。
( 、 ;川
振り向く。電柱の影に、男の姿はない。
半ば走るようにして、家へと急いだ。
.
169
:
名無しさん
:2021/04/12(月) 00:13:00 ID:hxc6LL6o0
街灯は少なく、道は真っ暗だ。
彼女は全身を何かに見つめられているような気がして、夢中で走った。
角。ひとつ、ふたつ、曲がって行く。
遠くに彼女のアパートが見えてくる。
がらんとしたコインパーキングの横を過ぎる。
アパートに辿り着く。
2階への階段を登る。
-
170
:
名無しさん
:2021/04/12(月) 00:14:05 ID:hxc6LL6o0
玄関を開く。
息を殺す。電気を点ける。
何者かの気配がしないか、確認する。
彼女は恐る恐る、自室の扉を開いた。
部屋は、いつも通り夥しい数の、禍々しい多肉に囲まれていた。
彼女は、非常に何か、嫌なものが己の肉の中を駆け巡るのを感じた。
内側から何か壊れていく感覚がした。
彼女に帰る場所など、どこにもなかった。
.
171
:
名無しさん
:2021/04/12(月) 00:15:09 ID:hxc6LL6o0
-
彼女はベッドに身を投げ、目を瞑る。
高鳴る鼓動は、未だ落ち着く様子がない。
恐ろしい予感が、どうしても晴れない。
ベ ラ ン ダ。
.
172
:
名無しさん
:2021/04/12(月) 00:16:06 ID:hxc6LL6o0
( 、 ;川
彼女は、跳ね起きて、恐る恐る、目を開けた。
何もないことを祈りながら。
.
173
:
名無しさん
:2021/04/12(月) 00:16:57 ID:hxc6LL6o0
(・∀ ・)
見知らぬ男が、ベランダの扉を開けて、こちらを見ていた。
その手に包丁を握りながら。
-
174
:
名無しさん
:2021/04/12(月) 00:19:27 ID:hxc6LL6o0
ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ...........................
.
175
:
名無しさん
:2021/04/12(月) 00:19:52 ID:hxc6LL6o0
六,了
176
:
名無しさん
:2021/04/12(月) 00:21:39 ID:lv13lLzY0
(((( ;゚Д゚)))
177
:
名無しさん
:2021/04/12(月) 20:11:30 ID:UvsrQjKs0
おぉ……唯一無二感がすごい
おもしろいです
178
:
名無しさん
:2021/04/13(火) 15:39:21 ID:V9pbAlDE0
ク̶̧̡̡̧̢̛̛̺͎̙̭̯̳͍̦͍͉͇̺͚͈̥̼̭͚͕̥̤̖̰͙͚͔̭̘̯̲͉̦̬̺̪͈̦̺̠͖̼͇̬̲̖̪̦̰̣̤̮̮͍̗̣́͂̏͛̈́̇̈́͂̽͂̏̓̉͌̀̇͊́͗͂̇̈̈͋̈́́̇͊̀̍̈́̔̈́̒̅͛́͂̋̈̈́͋͆̐́̿̃͆̃̂̎͋̚̚̚͝͠͝͝͠͠ソ̸̧̧̡̹̜̟̪͎̖̮̱̺̪̤̲͉̩͙̟͔̯͚̻͒̒̍̐̎̌̈́͌͒̇͒́͐͆͒̓̐̌͊͒̾̿̌̎̈́̀̿̍̅͘͜͜͝͝͠女̶̨̨̛̟͙͙̤̠̦͉͔̞͕̼̲̬̝̹͚͇̖͙̠͚͈̣̆̆͌̍̅̇͐̿͑̽̒̑̃̄͆͋͋̏̋̋̈́̇͆̊͐̍͌̽̽̊́͗̈͊̓͗͑͒́̀̽́͑́̆̚͘͝͠
179
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 20:56:32 ID:KZ3vL1s60
今夜投下します
180
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:09:02 ID:KZ3vL1s60
( Д ;川 ァ....ぁ...
(・∀ ・)
辺尼は、ベッドの上、上半身を起こしたまま
恐怖に固ま
り
、動けなくなった。
助けを求める声すら、上げられなかった。
男は、ゆっくりと、彼女との距離を詰めていく。
181
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:09:33 ID:KZ3vL1s60
( Д ;川 ァ....ヒュッ...カハッ!
男はベッドの上に膝立ちになり、辺尼に顔を近付ける。
そして、その手に持つ包丁を、彼女の首筋に、
ゆっくりとあてた。
( Д ;川 ヒュッ....ェ...ハッ...!
(・∀ ・)
( Д ;川 たす
(・∀ ・) 黙れ
182
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:10:28 ID:KZ3vL1s60
男はゆっくりと、柔らかく、辺尼の肩を掴み押し倒した。
男の大きな身体の影に、彼女は全身を包み込まれる。
彼女の視界から、光が消えた。
代わりに、真っ黒な男の巨体とその不気味な、人形のような顔が一面に広がった。
( Д ;川 まっ.....ね、たすけ...
彼女がそう言うと、じぐっ。と顎の右下辺りで水の濡れた音がした。
続く、鋭い痛み。触れていた冷たい刃が、なまぬるくなっていく感覚。
血が、首筋を垂れてシーツに流れていく感覚。
( Д ;川 .....ッ!!!!!!!!!!
(・∀ ・)
( Д ;川 は、はいっ....!
( Д ;川 ...はい、だじま...せん、こえ、
(・∀ ・) ...は?黙れって言ったんだが?
( Д ;川 ッッッ‼‼‼!?!
包丁を握る手の、親指が傷口に差し込まれた。
そのまま掻き回される。
鋭い痛みに声をあげそうになるが、必死で堪えた。
男は彼女の目を一度たりとも逸らさず、空いた片方の手で彼女の衣服を破り、
脱がしてい
く
。
.
183
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:11:44 ID:KZ3vL1s60
(・∀ ・)
(・∀ ・) ...ンだよ
ガブッ
( Д ;川 ッーーーーーーー!?
( 皿 ) ガブガブ....
( Д ;川 ガタガタガタガタガタガタガタガタガタ
( O ) プホーーー
(・∀ ・)
(・∀ ・) お前さ
184
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:13:15 ID:KZ3vL1s60
( Д ;川
(・∀ ・) 性格悪いだろ
( Д ;川 ...はい?
(・∀ ・)
ジグッ
( Д ;川 ッ⁉⁉
( Д ;川 フルフル...
(・∀ ・) ...いつも
(・∀ ・) いつもいつも、
185
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:14:13 ID:KZ3vL1s60
(・∀ ・) 能力がどうとか、デキるがなんとか
(・∀ ・) オレ無視しやがってよ。
( Д ;川
(・∀ ・) でもお前ら、結局ただの色仕掛けじゃん?
( Д ;川
(・∀ ・) お前らのさぁ、さぁ、大事な人なんて、大事な人じゃないのに
(・∀ ・) 大事なものなんてないだろ
(・∀ ・) 俺大事にされてないッ!
(・∀ ・) お前ら見てると足冷えるんだよ!頭痛くなるし
(・∀ ・) なんかうっさい音、ザラザラザラザラずっと聞こえんの!!!頭ん中で!!
( Д ;川 (な、何、言ってるの.....!?)
186
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:14:55 ID:KZ3vL1s60
(・∀ ・) 俺どこにもいないの!俺どこにもいないの!わかる!?
(・∀ ・) ...でも、本当は全員どこにもいないだろ
(#・∀ ・) なのに、「いる」みたいなツラしやがって、ムカつくんだよ!
(#・∀ ・) ....おいなんか答えろよォ!
.
187
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:15:50 ID:KZ3vL1s60
( Д ;川 ま、待ってッ...!
(#・∀ ・)
( Д ;川 ...悪かったから、私が悪かったから...!
(#・∀ ・)
( Д ;川
(#・∀ ・) なんだよ!続きねえのかよ!!!
(#・∀ ・) 黙って聞けよ!俺の話!!!!!
ジグッ
( Д ;川 ヒッ....!
188
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:16:32 ID:KZ3vL1s60
男は「力いっぱい」、天井を見上げた。
鼻息は荒く、胸は激しく上下している。
(# ∀ ) ハァっ....ハァっ....
(・∀ ・) スッ
( Д ;川 (包丁が、離れた....)
(・∀ ・)
( Д ;川 フルフル
(・∀ ・)
( 、 ;川
189
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:17:15 ID:KZ3vL1s60
しばし、嘘のような空白が挿入されていた。
男に馬乗りにされた状態の辺尼は、パニックを起こした頭で状況を整理していた。
当然、取るべき行動は一つ。
隙を見て男から凶器を奪い取り、無力化すること。
訓練で培った護身術を用いれば、可能な筈だった。
しかし、彼女の精神状態は、それを許してはくれなかった。
ならば、対話を試みるしかない。
この部屋は壁が薄い。先程の並々ならぬやり取りは、当然周囲に気付かれているだろう。誰かが警察を呼んだに違いない。
時間を、稼ぐのだ。
下手に出ようか。理由はわからないが、謝罪を続けようか。
思えば、その場を慮ること、取り繕うのは得意になっていた。
しかし、この狂人を相手にどうやって...?
.
190
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:17:44 ID:KZ3vL1s60
その時。
奇妙なことに、彼女の本能が、理性に押し戻された。
猛スピードで稼働し過熱していた反射的な思考、この場を切り抜き命を守る、という思考は
急激に何かによって冷却されていった。
彼女が近頃考えてきたことの蓄積によるものか。
(・∀ ・) はぁ....
(・∀ ・) 目、見せて
( 、 ;川
男は、人差し指と親指で辺尼の左瞼をこじ開けた。
辺尼は、何もせず、沈黙を貫いた。
男の顔が、彼女の目の数センチ上まで近付く。
.
191
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:18:11 ID:KZ3vL1s60
↑
← →
↓
192
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:18:52 ID:KZ3vL1s60
目。
白魚のような膜に、か細い血管が走り回っている。
恐怖で潤い、青白く湿った光沢を放つ膜。
その中心にある、色素の薄い、薄茶色をした瞳。
辺尼の精神状態を反映し、小刻みに動き回っている。
銀河のような虹彩が、中心の深く深く、終わりの見えない瞳孔に絶えず吸い込まれている。
彼女の外装は言葉になるけれど、その底知れない内面を言語は形容し得ない。
しかし、だ。
目は饒舌に「目の言葉」を用いて彼女を語る。もっと深く潜り、「彼女」を貫いた向こう側をも語る。
必然的に、辺尼も男の目を見た。言葉を聞いた。
193
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:19:41 ID:KZ3vL1s60
そして、気づいた。
男を狂人と片付け、警察が来るまで時間を稼ぐ。
これは、ありふれた手続だ。
辺尼が直接手を下さなくとも、全てが自動的に行われていく。
自動で、彼は居なくなる。
彼女は助けられる。
そう思えば、彼女が経験してきた事柄の殆どは、自動だった。
ただそれに気付いていなかっただけ。
辺尼には、何故自身が男に馬乗りにされているか、皆目検討もついていなかった。
理由を考えることすらしなかった。
なんという残酷。
これが自動操縦の結果だ。
己の為すこと全て、当然己が把握しているつもりだった。
それは間違いだ。
多くのことを見落としてしまった。だからこうして男に襲われ、男の目を覗いている。
襲われるのは彼女でなくてもよかったのだろう。しかしこれが偶然だとしても、畢竟、偶然ではないのだ。
つまり水路は、やはりとうに絶たれていた。
男の目の奥には、何もなかった。
残っていたのは、色もなく、光もない、ただ無限に広がる砂漠だった。
同じく、彼女の中にも何も残されていなかった。
.
194
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:21:22 ID:KZ3vL1s60
そのことを直感すると、意図するより先に、言葉が漏れた。
( 、 ;川 ...ねえ
( 、 ;川 私、ここにいないの
(・∀ ・)
( 、 ;川 いないのッ!
( 、 ;川 私、どこにもいないって
( Д ;川 いない、いない、いない、いない、いない、いない、いない......ッ!!
( ;∀ ; )
( ;∀ ; ) そうだよ
( 、 川
( ;∀ ; ) あーあ。
(つ∀ ) ゴシゴシ
( ∀ ) ハハ
( ∀ ) なんか、寒くね?
( ∀ ) ちょーー寒いんだけど....
( 川
.
195
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:22:06 ID:KZ3vL1s60
.
196
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:22:40 ID:KZ3vL1s60
<゚Д゚=> 警察だッ!その女性を離しなさい!
(・∀ ・) ...?
(・∀ ・)
( 川 ブツブツ.....
(#・∀ ・)
(#゜∀ ゜) ...オラァァァァァァァァァァァァ!?
(#゜∀ ゜) 近づくなよ!?ぶち殺すぞ!
197
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:23:40 ID:KZ3vL1s60
男の飛ばした怒号で、辺尼は我に帰った。
先程の奇妙な静寂は去り、再び恐怖が彼女を支配した。
男は彼女を盾にすると、既に血で赤く染まった首元に包丁を突きつけ、警察を威嚇する。
( Д ;川
( Д ;川 ...た、助けてッ!
.
198
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:24:32 ID:KZ3vL1s60
(#゜∀ ゜)
(#゜皿゜) .....なんなんだよォォォォォォォォォォォォ!どいつもこいつもよォォォォォォォ!
辺尼の声に反応した男は、怒り、悲しみ、失望...この世の全ての「負」をごった煮にした表情を浮かべた。
<゚Д゚=> 凶器を捨て、女性を解放しなさい!
(#゜皿゜) うるせえうるせえうるせえうるせえ!うっせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!
アマ
(#゜皿゜) もういい死ねよ!このクソ女!ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
男は彼女を押し倒し、その腹に目掛けて包丁を振りかざす。
乾いた銃声が響いた。
男の肩に穴が空いた。
彼はそのままベッドの上へと倒れた。
<゚Д゚=> 確保しろ!
瞬く間もなく、彼女は警察に保護され、男は手錠をかけさせられていた。
<゚Д゚=> 大丈夫ですか
199
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:25:40 ID:KZ3vL1s60
( Д ;川 ....はい、私は....
<゚Д゚=> 被害者首に裂傷あり、応急処置!
( Д ;川 痛っ.....!
(#゜皿゜) クソ!クソ!クソぉぉぉぉぉ!
(#゜皿゜) 次会ったらただじゃおかねえからな、オイ!!八つ裂きにしてやるからよ!
( Д ;川 ッ!
<゚Д゚=> 早く連れてけ
/
裏切りやがって!チクショオオオオオオ!
\
.
200
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:26:54 ID:KZ3vL1s60
数時間後。
辺尼の傷は幸い軽傷であったため、病院で手当を受けた後署で事情聴取を受けた。
小一時間ほど、家族構成、生活状況、勤務状況などをつぶさに尋問されたあと、彼女は待合室に解放された。
待合室には、彼女を待つ人は居なかった。
一人、手視を除いて。
('、` 川
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`) 大丈夫か
('、` 川 はい
('、` 川 ご心配おかけして、すみません
(´・_ゝ・`) 警察は何やってんだ...届け出は出したのかい?
('、` 川 はい。...その時は取り合ってもらえませんでしたが
(´・_ゝ・`) そうか
201
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:27:26 ID:KZ3vL1s60
(´・_ゝ・`) 男の名は窓単木というらしい。検査で興奮剤の陽性反応が出た
(´・_ゝ・`) そのうち診断が下りるだろうが、統合失調症の疑いもありだそうだ
('、` 川 そうですか
(´・_ゝ・`) ...あの辺りに一人で住むのは危険じゃないか。家族とか、いないのかい
('、` 川 疎遠でして
('、` 川 近々引っ越します
(´・_ゝ・`) それがいい
202
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:28:47 ID:KZ3vL1s60
(´-_ゝ-`) ...災難だったね。全く
('、` 川
('、` 川 ええ。ほんとうに。災難でした
(´-_ゝ-`) 世の中、狂ってきてるよなぁ。やっぱり
(´・_ゝ・`) 訳わからない薬に続いてストーカー....まさか僕の部下が襲われるとは
(´・_ゝ・`) 君は少し、休んだほうがいいな
('、` 川 そうですか?
(´・_ゝ・`) ああ。この仕事は切り替えが大事なんだ。現実を正しく見据えるためにも...ね
('、` 川 現実ですか
203
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:29:46 ID:KZ3vL1s60
(´・_ゝ・`) ああ。君は思い詰め過ぎてる。今日の事件もあることだし...ゆっくり休め
('、` 川 現実
('、` 川 ...現実って何です?
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`) ...社会に生きる者として、確かな判断力を持つ。何が悪かどうか、
はっきり分かること
(´・_ゝ・`) それで現実が始めて認識できる
(´・_ゝ・`) 近頃、君は混乱してるようだ。連中の影響を受けてね
('、` 川
('、` 川 いいえ
(´・_ゝ・`)
204
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:31:58 ID:KZ3vL1s60
('、` 川 何をしたらどうなるか、全部わかってます
(´・_ゝ・`) どういう意味だ?
('、` 川 ...私のしたことで、結果どうなるのか、何を意味するのか
('、` 川 私はわかります。混乱なんてしてません
(´・_ゝ・`) ...あっそ
(´-_ゝ-`) ....じゃあ率直に言うけど
(´・_ゝ・`) 捜査の足手まといなんだよ
('、`川
(´・_ゝ・`) わかるよな?
(´・_ゝ・`) 御託とかはどうでもいい...明日から休んでくれ
('、` 川 ...はい
('、`川 本当に、申し訳ございませんでした
205
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:32:50 ID:KZ3vL1s60
その日から、彼女は休職扱いとなった。
産業医からは、抗不安剤を処方された。
効きはしなかった。
.
206
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:35:09 ID:KZ3vL1s60
辺尼はベッドの上、膝を抱えて座り込んでいる。
窓単木に襲われた日から、彼の目を見た時から、ー彼女の見えている世界は大きく変わった。
本当のことが見えてしまうようになった。
部屋を覆い尽くしていた多肉は、全て捨てた。
今は薄暗く殺風景な景色が広がるばかりだ。
窓は、ただの貼り付いた四角になった。
カーテンが不気味に揺れた。
207
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:36:01 ID:KZ3vL1s60
彼女の頭の中で常に不協和音が鳴っていた。
それが一過性のものではないことを知っていた。
もう、元には戻れまい。これが真実なのだから。
彼女を囲む全てが不穏になった。
部屋の角、暗くなって奥の見えない廊下。空っぽのグラス。床にのたうちまわるコード。
全てが彼女を破壊していく。
手視は休んで現実を見極めろと言った。
しかし彼女の現実は、これまで少しも歪むことはなかった。
( 、 川
人間とは彼女の恐怖そのものだった。
昔からそうだった。ただ考えないように、無害であるように振る舞ってきた。
手視、捻野...誰にも彼女は心を開かなかった。
208
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:37:14 ID:KZ3vL1s60
「最初から何もなかった」心の中に、黒いタールのような狂気が満ちていく。
朝食も抜き、昼食も抜き、気付けば日が落ち夜になった。
夜は不協和音が大きくなる。
( 、 川 ....。
ガタッ
( Д ;川 ッ!!!!!
( Д ;川 (まただ、また来た!!)
ゴソゴソ
( Д ∩ ;川 (嫌だ!聞きたくない!来ないで!)
ギシッ
(・∀ ・) ユラァ......
( Д ;川 ーーーーーーーッ!
209
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:38:02 ID:KZ3vL1s60
(・∀ ・) 俺ら、どこにもいない
( Д ;川 ァ....ァ...
(・∀ ・) ねえ
(・∀ ・) 俺ら、どこにもいないよな??
( Д ;川 知らない...!あなたなんか...知らない!
(・∀ ・) 俺のこと無視しやがってよ。お前もどこにもいないって、俺知ってるんだぜ
( Д ;川 うるさい!うるさいッ!
( Д ;川 この世界は...私は空っぽなんかじゃない!
(・∀ ・)
(・∀ ・) おいおい...現実を見ろよ
( Д ;川 ッ....!
(:\)\;∀〜;-) ブブブッ
210
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:39:45 ID:KZ3vL1s60
(´・_ゝ\:0) ブブッ
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`) 現実を見ろ、辺尼。足手まといなんだよ
( Д ;川 ガタガタガタガタ
( Д ;川 違う...こんなの、現実じゃない!
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ#):#= ブブブッ
( `ー@)3 ブッ
( `ー´)
( `ー´)大丈夫か?お前最近溜め込みすぎなんだよ
( `ー´)俺と一緒に来い。忘れさせてやっから
( Д ;川
( `ー´)だいじょーぶだいじょーぶだって
( Д ;川 やめて、さわらないで
211
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:42:29 ID:KZ3vL1s60
( `ー´)は?
( `ー´)
(@:\;0ー´)どうしようもねえな...マジで... ブブブッ
2「2@;:@) ブブッ
\;3、`*川 ブブブッ
:;'、`*川 ブッ
('、`*川
( Д ;川
('、`*川 はぁ....。失望したわ
('、`*川 じゃあね。バイバイ
212
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:43:52 ID:KZ3vL1s60
( Д ;川 ま...待ってよ!
( Д ;川 ....まって、よ...
( 、 ;川
( 、 川 (...そうか)
( ∀ 川
( ∀ 川 はは
( ∀ 川 あなたはこんな、地獄の中に居たのね
( ∀ 川 脾都...
( ∀ 川 (今、分かった。何もないってことが)
( ∀ 川 (何もなくても、人は何かに縋らなきゃ、生きていけない...)
( ∀ 川 (現実逃避、なんかじゃないのね。これは...自分の形をなんとか保つために、必要な、こと)
213
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:45:04 ID:KZ3vL1s60
( 、 川
( 、 川 (私には、もうこれしかない)
プルルルルルルルル.....
( 、 川
214
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:46:21 ID:KZ3vL1s60
ノパ⊿゚) 「もしもし」
( 、 川 脾都
ノパ⊿゚)
ノパ⊿゚) 「噴水の前で待ってる」
( 、 川 ...
( 、 川 ...たすけて
ノパ⊿゚) 「うん。助けるよ、絶対」
215
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:46:52 ID:KZ3vL1s60
美
.
216
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 22:47:15 ID:KZ3vL1s60
七,了
217
:
名無しさん
:2021/04/14(水) 23:24:18 ID:VBrvvisw0
乙
218
:
名無しさん
:2021/04/17(土) 22:22:31 ID:PtnXe.cg0
唐突ですが今作はストーリーに直接関わりませんが
从*゚- ゚∀从 ジャスミンと死ぬようですの続編になっています。
宜しければご覧ください。BBHさんまとめありがとうございます :D
https://reiwaboonnovels.fc2.net/blog-entry-34.html
219
:
名無しさん
:2021/04/17(土) 22:30:24 ID:PtnXe.cg0
ジャスミンと死ぬは今作のスピンオフ的なお話です
220
:
名無しさん
:2021/04/19(月) 00:19:01 ID:UbGGOkaA0
乙乙
ペニ、完全に向こう側へ行っちゃったな
221
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 22:53:15 ID:8lVb0cJU0
投下します
222
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 22:54:30 ID:8lVb0cJU0
窓単木に対する生理的な恐怖は勿論あった。あの夜のことを思い出すたび、過呼吸に陥るほどに。
しかし、今辺尼がどっぷりと浸かっている絶望に比べれば、それは小さな問題だ。
絶望とは、あらゆる事柄を彼女らが蔑ろにしてきたという確信。それに気付いた人間が彼女の他に居ないという孤独。
絶望は窓単木の目からやって来た。しかし彼女の中にいつでもあったのだ。
そしてそれは手視、捻野、母親、関わってきた全ての人間の顔に変形して彼女の脳内に蘇ってくる。
辺尼にとっては脾都だけが、絶望の世界の外側に居た。彼女ただ一人が、自動化の摂理から逸脱していた。
他の道があったか?そんなことは考えても無意味だった。
彼女がいなければ、とうに死んでいただろうから。
.
223
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 22:55:01 ID:8lVb0cJU0
夜
廃墟
光の届かぬ深海のよう
独生に用意させた浴槽に浸かる、二人。
辺尼は脾都に頭を預ける。
脾都の腕の中
辺尼はそこだけが、安らぎの場所なのだと思う。世界のどこに行っても恐怖からは逃れられまい、と。
224
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 22:55:38 ID:8lVb0cJU0
チャプチャプ
ノパ⊿゚) ...ねえ、辺尼
( 、 川 ...?
ノハ-⊿-) こんなこと言うのはおかしいんだけど...
ノパ⊿゚) 辺尼は、あたしよりずっと...不幸だよ
チャプチャプ
( 、 川
( 、 川 でも、あなたたちには何もない。未来も、過去も
ノハ ⊿ ) それは、
ノハ ⊿ ) ...そうだけど
ノハ ⊿ ) でも、辺尼はここにすら居ない....
225
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 22:56:26 ID:8lVb0cJU0
( 、 川 ...ッ
ノパ⊿゚) ...だから、ここに来たんでしょ
ノパ⊿゚) あたしもそうだった。わかるよ
( 、 川 ...そう、ね
ノハ ⊿ ) あたしなんかでごめんよ
( 、 川
( ー 川 ...ふふ
( ∀ 川 皆、不幸だよ
ノパ⊿゚)
( ー 川 全部...全部
( 、 川 目を覆いたくなるくらい....醜くて、哀れ...
226
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 22:56:54 ID:8lVb0cJU0
( 、 川 ねえ、脾都
ノパ⊿゚)
( 、 川 美は、存在するの?
ノパ⊿゚) あるよ
( 、 川 ...美を持つのは、悪いこと?
ノパ⊿゚) ...そんなことない
ノパ⊿゚) 美は幻想なんかじゃなくて
ノパ⊿゚) あたしたちが一度、無くしたモノなの
( 、 川
ノパ⊿゚) ...じゃあ
( 、 川 コクッ
ノパ⊿゚) ....一緒に行こっか
227
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 22:58:19 ID:8lVb0cJU0
チャプチャプ
ノパ⊿゚) 大丈夫?緊張、してる
( 、 川
( 、 川 ...もう大丈夫
( 、 川 はい
辺尼は脾都から頭を離し、左腕を見せる。
脾都はその腕に布を巻きつける。布が彼女の白い肌に触れた所から、じわりと濡れていく。
彼女は手際良く辺尼の腕を縛ると、インジェクターを取り出し彼女の静脈に刺し込んだ。
ノパ⊿゚) ...いくよ
( 、 川 ...うん
薬が辺尼の中へ押し出されていく。鈍い痛みが、皮膚の下に散る。
瞬間、意識がみるみる遠くなっていくのが分かった。落ちていく感覚を覚えているのに、
対して視点は上昇していき、己の身体が、浴槽が、脾都が、小さくなっていく。
部屋に置かれたドラム缶、廃墟、奏柵の街並...と全てが猛スピードで縮小し、世界が一面のくすんだ色に変わっていく。
その時、漠然と脾都が「入ってきた」のを感じた。
そこで辺尼の意識は途切れ、視界が暗転した。
.
228
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 22:59:12 ID:8lVb0cJU0
.
229
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 22:59:50 ID:8lVb0cJU0
ぽた
ぽた
ぽた ぽた
ぽた
ぽた ぽた
ぱら ぱらぱら ぱらぱらぱら
ぱらぱらぱらぱらぱらぱらぱらぱら ぱらぱらぱらぱら
ざーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
-
230
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:00:46 ID:8lVb0cJU0
辺尼は闇の中、暖かな雨を浴びていた。
しばし、雨を感じる。
そうしているうちに、この闇が、瞼の裏であることに気付いた。
( 、 *川
静かに瞼を開く。周囲が俄に明るくなっていく。裸足に、砂の感覚がする。
開闢。
一筋の地平が生まれていく。
それは嫋やかに膨らんでいき、世界として彼女の前に顕現する。
辺りは、一面の砂漠だった。
天からは黒い雨が降りしきっていた。
雨は絶えず彼女を濡らす。
一方
それは擦り抜ける様にして、砂に染み渡ることを知らない。
231
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:01:54 ID:8lVb0cJU0
('、`*川 ここは...
辺尼は周囲を見渡す。
何もない。延々と続く、砂の丘。
風すらない。
彼女は、彼方、丘の向こうに人影を見た。駱駝を駆り砂漠を往く。
隊商だと分かった。
瞬間、彼女の身体を電撃が走った。
.
232
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:02:37 ID:8lVb0cJU0
( Д *川 あ
( Д *川 あーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!
電撃は、彼女の身体をどこまでも軽くした。
軽くした、と感じると同時に彼女は、人ならざる速さで駆け出した。
.
233
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:03:19 ID:8lVb0cJU0
( ー ;)なんだ、あれは!
( 0 ;) 女...?女なのか!?
ザワザワ...
彼女の存在に気付いた商人たちは歩みを止めた。
護衛の剣士達は、駱駝から降りると剣を抜いて構えた。
( Д *川 あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!
( ー ;)襲ってくるぞ!殺せぇぇぇぇぇ!
彼女が隊商の目の前に辿り着くなり、顔を布で覆った男が斬りかかる。
俊敏である。頭2つ程低い彼女へ向かって、剣が振り下ろされた。
( Д *川 っ!
彼女はそれを片方の掌で受け止める。
刃は彼女の掌で止まる。無傷だ。
234
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:04:23 ID:8lVb0cJU0
( ー ;)....なんだと!?
そのまま彼女は刃を握りへし折ると、男の腹へ蹴りを入れた。
蹴りは男の腑を貫通し、背中から踵が飛び出した。
崩れ落ちる男の肩を踏み台に、もう一人の男へ飛びかかる。
( 0 ;) う、うああああああああっ!
遮るように構えていた刃は、彼女が「通過」するなり砕け散った。
彼女は男をそのまま押し倒し、首を掴んでへし折った。
刹那、叫びとともに、四方から振り下ろされる剣。一つは、彼女の右腕に、一つは、彼女の首に、
ひとつは、彼女の背に。
235
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:05:20 ID:8lVb0cJU0
そのいずれも彼女に傷一つ付けることなく、静止した。
辺尼は一つの剣を奪い取ると、瞬く間もなく、彼らの首を跳ね飛ばした。
駱駝を捨て、散り散りに逃げ出していく商人たち。
逃しはしまい。一人一人、殺していく。
彼女を動かしていたのは、底のない殺意。
そしてそれと同じ程の、悦びだった。
.
236
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:06:26 ID:8lVb0cJU0
(; _ ) あぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁっ!!
( Д *川 (逃がすか)
辺りは血で一面赤に染まっていた。
彼女に背を向けて逃げていく。最後の一人。
彼女は男の肩を掴み、引き倒す。
馬乗りになり、顔に巻かれた布を剥がした。
237
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:07:16 ID:8lVb0cJU0
バサッ
(;´・_ゝ・`) ...お、お願いだ、助けてくれ!!
( Д *川
( ∀ *川
グシャッ
.
238
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:08:13 ID:8lVb0cJU0
.
239
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:08:50 ID:8lVb0cJU0
(_∀……)
( 。Д ) (_____:::)
( 0 。_)
( ___)
(´。_ゝ__)
( 。ー。)
(__∀ 。)
.
240
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:09:27 ID:8lVb0cJU0
瞬間、辺りに静寂が訪れた。
己に打ち続ける雨の音だけが、世界の音になった。
対象を失った辺尼の殺意と悦びは、急速に消え去っていった。
代わりに湧き上がってきたのは、途方もない、食欲。
241
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:10:40 ID:8lVb0cJU0
( Д *川 ジュル
抗える筈が無かった。
辺尼は、彼女の下で死骸となった手視の首に齧り付く。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
無我夢中で、手視の肉体を貪る。
極度の高揚感で、四肢が痙攣した。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
美味。美味。美味。美味。美味。
242
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:11:39 ID:8lVb0cJU0
数時間後。辺尼が我に帰ると、辺りには骸骨のみが転がっていた。
それから。
気が遠くなるほどの間、彼女は砂漠を放浪し、人を襲い、食らった。
砂漠に夜は来なかった。
.
243
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:12:37 ID:8lVb0cJU0
.
244
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:13:45 ID:8lVb0cJU0
数え切れないほどの人間を襲った。
手視、捻野、窓単木、非記、診競、脾都、これまで知り合った全ての人、見覚えのない人、
これから会うであろう人....
朧げにだが父や、母をも手にかけたことを、憶えていた。
それでも殺したいという衝動と、飢えは収まらなかった。
どれ程の時が経っただろうか。
ある時、遂に絶え間なく降り続いていた雨が止んだ。
重く垂れ込めた雲が真っ二つに切れ、離れていく。
光が砂漠に差し込んでいく。
辺尼を、溢れんばかりの陽光が包んでいく。
( 、 *川 !
('、`*川
('、`*川 雨が...
.
245
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:14:40 ID:8lVb0cJU0
重厚な弦楽の響きが、砂漠に木霊した。
空気が震えている。
まだ丘の向こうには雲がかかっているが、
一人の子供が、こちらへ向かってくるのを、見た。
丘陵を下る途中で、子供は日陰と日向の境界線を踏み越えた。
そのまま平地に差し掛かり、辺尼の方へゆっくりと歩いてくる。
その輪郭は朧げに揺れている。
(#゚;;-゚)
246
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:16:12 ID:8lVb0cJU0
スタスタスタスタ
(#゚;;-゚)
('、`*川 あなたは...
(#゚;;-゚) 辺尼、
顔に火傷の跡が残る、少年。
彼は辺尼に飛びつくと、彼女の懐に頭を埋めた。
(# ;;- )
('、`*川 ...泥
意図せず、辺尼の口から彼の名前が漏れた。
彼のことは、何一つ知らなかった。
何をするべきかは、知っていた。
247
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:16:57 ID:8lVb0cJU0
辺尼は左腕を陽光に晒す。彼女の手首がひとりでに裂けていく。
そうして生まれた十字の傷口から、絶えず真っ赤な血が流れ始めた。
泥と呼ばれた少年は、その傷に口をつけ、辺尼の血を飲み干していく。
彼が口を離すと、傷は癒えていた。
.
248
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:17:28 ID:8lVb0cJU0
(#゚;;-゚) ('、`*川
見つめ合う、二人。
辺尼が先にまばたきをした。
次の瞬間には、泥は一艘の小舟になっていた。
('、`*川
249
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:18:13 ID:8lVb0cJU0
...それから、辺尼は小舟を引いて砂漠を歩いた。
世界を照らし続ける正午の太陽は、どれほど時が経とうとも動くことはなかった。
海を探すのだ。
彼女は一度も立ち止まることなく、幾千の丘を越えた。
途中で人に会っても、殺意が湧くことはなかった。
時の感覚が彼女から消え去っていった。
幾千が、幾万に変わった。
幾万が、幾億に変わった。
250
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:19:09 ID:8lVb0cJU0
.
251
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:19:55 ID:8lVb0cJU0
('、`*川 あっ
('ー`*川 ...海だ
.
252
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:20:53 ID:8lVb0cJU0
一面に広がる、水。
陽光を受け銀色に光り輝く、大海。
彼女の足は水に浸かっていた。
からからに乾き切った小舟が、初めて水に濡れた。
辺尼は小舟に乗り、洋へ漕ぎ出していく。
('、`*川 ...さよなら
砂漠が離れていく。
もう二度とその地を踏むことはあるまい。彼女はそれから、振り向くことはしなかった。
253
:
名無しさん
:2021/04/20(火) 23:21:41 ID:8lVb0cJU0
それから数時間、辺尼はあることに気付いた。
太陽が、傾き始めている。
それまでずっと彼女の真上にあった太陽が、水平線の向こうに移動していた。
彼女は、太陽を追うことに決めた。
はじめての夜は、満点の星空に心を打たれた。
漕ぐことを止め、長い間、星を眺めていた。
眠ることはなかった。
朝になると、彼女は再び漕ぎ始めた。
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