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美
1
:
◆f9klpsMBjM
:2021/03/23(火) 13:24:05 ID:JC05D13o0
美!!!
2
:
名無しさん
:2021/03/23(火) 13:25:06 ID:JC05D13o0
はじめたのは13の時から。
昼過ぎに一回、寝る前に一回
きっちり守ってたはずだったんだけど。
(-_-) 起きなよ
ノパ⊿゚) ん......
(-_-) もう7時だよ
ノパ⊿゚) 早くない?もうちょっと寝かせてよ....
(-_-) 夜だよ。また打ったの
ノパ⊿゚) へ、ぜんぜん覚えてないや
(-_-) ...なんか床が大変なことになってるけど。よく静かだったね、全然気付かなかった
ノパ⊿゚) ほんとや....
ノパ⊿゚) 片付けとく。ごめんて
(-_-) 脾都までこんなんなったらボクの負担半端ないでしょ。皆ぶっとんでるし
ノパ⊿゚) 皆
(-_-) 今から起こしにいくとこ
ノパ⊿゚) 私も行っていい?
3
:
名無しさん
:2021/03/23(火) 13:25:43 ID:JC05D13o0
コンコン....
(-_-) 入るよ?
ガチャッ
ノパ⊿゚) みっちゃん!!
ミセ*゚ー゚)リ
ノパ⊿゚) 起きてってば!まだ死なないで
ミセ*゚ー゚)リ
ノパ⊿゚) あー、水ある
(;-_-) ちょっと待っててね
ノパ⊿゚) ねぇ!みっちゃん!起きてってば!
ノパ⊿゚) 確かにあそこは綺麗すぎるくらいだけど、私はここだよ、目覚ましてよ
ユサユサ
ミセ*゚ー゚)リ
(-_-) ボトルあった、これでいい?
ノパ⊿゚) ありがと、ちょっと貸して
ゴクゴク....
ノパ⊿゚) ちょっと硬いかもだけど、しょうがないね
4
:
名無しさん
:2021/03/23(火) 13:26:21 ID:JC05D13o0
私は、虚ろで、でも大きく見開かれたままのみっちゃんの瞳にしっかり私を映しながら、彼女の顔に水をぶちまけた後、残りを少し飲ませた。
しばらくすると、びちゃびちゃに濡れた彼女の瞳に艶やかな光が戻ってきた。
ミセ*゚ー゚)リ ....えっ!?
ミセ*゚ー゚;)リ 待って、ひっかき、ちょ、今私の中?外?
ノパ⊿゚) しっかりして!みっちゃん!私だよ
ミセ*゚ー゚;)リ ひーと...なんでここに
ミセ*゚ー゚)リ ていうか....ごめん...私いつからここにいるか…
(-_-) 昨日の8時くらいから。それで、ほとんど1日経過してる
ミセ*゚ー゚)リ あー....
ミセ*゚ー゚)リ ごめんよぉ〜非記...
ノパ⊿゚) 気をつけて本当に...あたしが言えたことじゃないけど
ミセ*゚ー゚)リ 今回はほんとやばかったよ...長く行きすぎるのはまずいってわかってるんだけど...
まだふわふわしてる彼女が行っていたところは、青空に浮かぶ青い雲に建つ青い宮殿のようなところだ。私は一回彼女と一緒に行ったことがある。飛んでった。本当に素晴らしくて....ほんとうに感覚的な宮殿で、距離感とか、現実感とか、そういうのはなかったけど、
何か一種のシンボル?崇高な理想みたいな感じ。小さい時に行った遊園地の景色がキラキラしていつまでも綺麗なように....。うまく言葉では説明できないけど、強いて言うなら、その美の化身のような存在を一緒に夢見るような体験だったのだ。
ノパ⊿゚) みっちゃん居なくなったら本当に悲しいよ?
ミセ*゚ー゚)リ うん....今度から容量には気を付けるよ...
(-_-) 他の連中も起こしに行ってくるね。診競のこと見てあげてて
5
:
名無しさん
:2021/03/23(火) 13:27:08 ID:JC05D13o0
ノパ⊿゚) うわ。腕すごいことなってるね。肘の方とか真っ黒じゃん
ミセ*゚ー゚)リ えへへ....でもひーともおんなじだね
ノパ⊿゚) まーね。....床、片付けとこっか
ミセ*゚ー゚)リ ありがとう、ごめんまだ立てなくて
ノパ⊿゚) いーのよ
見てみると、割れてて正確な数は分からないけれど、インジェクターが2、3本粉々になって謎の液体に混ざって床に散らかっていた。みっちゃん....
彼女がここに来たのは大分久しぶりだし、今日偶然居たってことは私に黙って来てたってことだよね。
ミセ*゚ー゚)リ ...今日ね、少し近かったんだ
ノパ⊿゚) 近い?
ミセ*゚ー゚)リ うん。以前はもっと遠かったのに
ミセ*゚ー゚)リ 私...怖くて
ノパ⊿゚) ...そんなの
ノパ⊿゚) 大丈夫。何とかなるよ
ミセ*゚ー゚)リ うん....
ギュッ
ノパ⊿゚) 私がいるからね....
ミセ*ー)リ
6
:
名無しさん
:2021/03/23(火) 13:27:38 ID:JC05D13o0
ノパ⊿゚) またよろしくね
(-_-) うん。あんま事件なると、この「家」も警察に嗅ぎつかれるからやめてね..ほんとに
ミセ*゚ー゚)リ 今日はごめんなさい...焦っちゃった
ノパ⊿゚) あたしもちょっとやり過ぎた
(-_-) うん。独生も今日はやばかったし....どうしたの皆?
ノパ⊿゚) (独生...あいつ来てたのか)
(-_-) ....まぁ、いいさ。また泊まりにきてよ、ボクもこれしか生きがい無いんで
ノパ⊿゚) ありがとう。非記、これからもよろしくね
(-_-) うん
ミセ*゚ー゚)リ ペコッ
7
:
名無しさん
:2021/03/23(火) 13:29:00 ID:JC05D13o0
いってる間に、誰かここに来たの。
クールじゃないよ。
あーでもクールって何さ。クールじゃないって何?
そんなの全部視点の問題でしょ...あたしが見れば身も知らぬあなたはキモいストーカーみたいなものだけど、逆にあなたから見れば私はお姫さまか何かで、あなたは王子さまでしょ。救い出しにきた。
綺麗なものも同じ問題だとしたら?そう考えると気が遠くなるし、もう何もわからなくなる。1分前に自分が何してたかも。そういう時はきっと誰の話も聞いてないんだろう。
...全部、妄想なのは分かってるんだ。
ゴーーーーーーー
(交通音 某日 奏柵駅前交差点にて)
ノパ⊿゚) ミセ*゚ー゚)リ
ミセ*゚ー゚)リ お腹減ったなぁ...
ノパ⊿゚) 同じく。もう二日も何も食べてないよ....
ミセ*゚ー゚)リ ...でも、あったかくなったね。最近
ミセ*゚ー゚)リ 空気が湿ってきて、アスファルトの匂いがするようになって。泳いでるみたいで好きだなぁ
ノパ⊿゚) そうね
ノパ⊿゚) ....あー
ノパ⊿゚) 独生のとこ行こうか...腹がもう限界だ
ノパ⊿゚) あと、あいつらのとこで風呂でも借りてさ、そしたら一緒にいこう
ミセ*゚ー゚)リ ...うん
ノパ⊿゚) あたしが安心させてあげるよ。きっと大丈夫だから
みっちゃんと手を繋ぐ。万年冷え症のあたしにとっては、いつも彼女の手は温かい。
まるで白魚の刺身のよう。
知らない街に出て、知らない人に会って、知らないことを知ってることに変えてく。
まだ20歳、まだまだなのに、なんか底が見えてるっていうか...天井が見えてるっていうか....
落ちてくような焦りと、落ち着くような何か不思議な感覚が同居している。
8
:
名無しさん
:2021/03/23(火) 13:31:09 ID:JC05D13o0
('A`) あ
ノパ⊿゚) 久しぶり。てか非記の家に居たんだって?
独生の住処は区画の端っこにある解体待ちの廃墟ビルだった。彼は数人の仲間と一緒にそこで音楽スタジオみたいなのを作って活動してた。売れてるみたいで、お金には困ってない。困ってないって言っても、こんなレベルだけど。...それに音楽だけで食ってるわけじゃないだろう。あたしは特に詮索しない。
('A`) お前ら何しに来たん
ノパ⊿゚) 恥ずかしい話だけど、金がなくてさ...
('A`) そんなことか。上がってけよ
ノパ⊿゚) ミセ*゚ー゚)リ ありがとう
('A`) パンあるよ。腹減ってんだろ
ノパ⊿゚) 独生は食べないの
('A`) あぁ。俺は食わない。ギリギリのとこで踏ん張るんだ
ノパ⊿゚) ギリギリ?
('A`) 大きな青空があって、そこに飛行機の片翼みたいな真っ白な、鋭角があって
('A`) そのへりのへりのとこで俺は立つ。一番遠くまで離れるんだ
ミセ*゚ー゚)リノパ⊿゚)
ノパ⊿゚) ...あなたとはまだ行ったことなかったね。てか、あんたがやってたのも最近知ったし
ミセ*゚ー゚)リ モグモグ
('A`) いやwごめんて
('A`) 俺はもう誰とも行かないよ。人を傷付けるのが怖い
9
:
名無しさん
:2021/03/23(火) 13:31:49 ID:JC05D13o0
ノパ⊿゚) 誰かと行ったの、彼女とか?
('A`) もっと特別な存在だ
ノパ⊿゚) ...
ミセ*゚ー゚)リ 播院、だよね
ミセ*゚ー゚)リ ずっと昔に、会ったことがある。妹の友達で
ミセ*゚ー゚)リ 妹は、彼女とあなたと...大変だったよね
('A`) やばい目に遭ったよ。今まで生きてきた中で、一番
('A`) それに...あいつはもう播院じゃない。今は違う
ミセ*゚ー゚)リ どういうこと?
('A`) 別人になったのさ。というか、前よりずっと人らしくなった。変わったのは俺もそうだが...
ノパ⊿゚;) ちょっと待って
ノパ⊿゚;) え、あたしだけ知らないの?この話
ミセ*゚ー゚)リ いや、私もよく知らないんだ...妹からちょっと聞いただけで
('A`) 今度話すよ
('A`) ...今まで居た自分が、あいつの中に全部持ってかれちまったんだ。あの時以来、俺は別人になった
ノパ⊿゚) ....ふーん
('A`) 四威は元気か
ミセ*゚ー゚)リ うん。播院にもたまに会ってるって
('A`) そうか....
10
:
名無しさん
:2021/03/23(火) 13:32:35 ID:JC05D13o0
('A`) 正直、姉妹共々迷惑かけた。これからも何かあったら言ってくれよ
ミセ*゚ー゚)リ いいよ。私はそんな...四威の方は心配だけど
ノパ⊿゚) そんな思いして、独生は怖くないの
('A`) え、怖いって?
ノパ⊿゚) いや...なんかさ。自分が失われてく感覚とか、怖くて。あたしだったらもう二度とする気になれないよ
('A`) ...あー
('A`) 残酷かもしれないけど、もう変わってしまったものは元に戻らないっていうか...変わってしまったら、そのことに恐怖なんて感じない
('A`) それは彼女も同じだ。彼女はあれ以降もうやめちまったが...
('A`) そういえば、お前はちょっと似てるな
ノパ⊿゚) あたしが?その播院って子に?
ミセ*゚ー゚)リ ....
('A`) ごめん、言い過ぎかな..ちょっと違うな
ミセ*゚ー゚)リ 似てた、と思う
('A`) そうそう、似てたな
ノパ⊿゚) な、なんだよ。私に分からないところで意思疎通し合って
('A`) ごめん。今日あんま時間なくて。今度ゆっくり話したい
ノパ⊿゚) ...急いでるとこ悪いんだけど、今日は他に用事があって来てて
ノパ⊿゚) お風呂借りてもいい?
('A`) いいけど。やるのか?
ノパ⊿゚) うん。二本ちょうだい
('A`) 俺がいなくても誰かに頼むから気にすんなよ。あ、これは貸しだぞ
ノパ⊿゚) ありがとう
11
:
名無しさん
:2021/03/23(火) 13:34:35 ID:JC05D13o0
独生たちの入浴スタイルは、こうだ。
二つのドラム缶をくっつけた手製の浴槽に、汲んできた水を浅めに注ぐ。
んで、下から火でしばらく熱してる間に、廃品のラックを周りに設置して、布で覆いを作る。
...いや、浅いのは、端から入浴と思われてなかったからか。
あたしたちが水を使うのは、一緒に行くためだ。
お互いに水を通して繋がりあう。
あたしから生まれた波紋はみっちゃんから生まれた波紋と交差して、ひとつの波紋を生み出す。
正午の柔らかな光が、割れた窓ガラスから入ってきて、布と布の間からも入ってきて、水をきらきら光らせる。
あぁ....久しぶりの水だ。そして懐かしいこの感じ....
あたしからみっちゃんの方へ腕が伸びる。
みっちゃんのほうからあたしの方へも腕が伸びる。魚のように白くて透明な腕。
あたしは市場の水槽にごちゃ混ぜになって浮いてる魚たちの死骸を思い出した。透明な肌に、毒々しい赤色、血の色、暗黒の海の中に浮いてる。官能的で、神秘的で、だけど、そこにはなんにもない。
数日前に真っ黒だった二人の腕はすっかり元に戻っていて、でも毒々しい跡は一箇所に集中して残っている。みっちゃんはいつからやってたの?
チャプ チャプ チャプ
ミセ*゚ー゚)リ ...ひーと
ノパ⊿゚) ...怖い?
12
:
名無しさん
:2021/03/23(火) 13:35:09 ID:JC05D13o0
ミセ*゚ー゚)リ
ノパ⊿゚) ...大丈夫だよ。あたしにもできること、あるよ
ノパ⊿゚) 安心して。目閉じて
インジェクターを取り出し、みっちゃんの腕をきつく縛る。細い腕だ。わかりやすく浮き出た静脈にあたしは薬を注入した。彼女はすぐにぼーーっとし始めて、あたしの肩に頭を預けた。
みっちゃんの心臓の音が聞こえる。早い。でも、段々遅くなってく。二人にまとわりつく水がゆっくりと揺れる。肌が、内臓が一緒に揺さぶられてる。二人でゆらゆら揺れて、これから一つになっていく。
あたしもみっちゃんにやったことと同じことを自分にして、どんどん意識は薄れていった。
キーーーーンという澄んだ音が辺りに響く。遠くから清浄な響きが微かに聴こえてくる。どうしようもなく「肉」だった感覚がどんどん無機化して、青緑がかって、コントラストが薄くなって、霞んで行って....
空気が断片化していく。まるで透明な空気が、全部ガラスだった、というような。全部バラバラに割れてく。ガラス漬けになったあたしたちも、世界も全部、砕けて散って、隙間が開く。
真っ黒な裂け目。先が真っ暗だった、あの廊下と同じ闇。
開いた隙間から、紺碧の世界がやってくる。あぁ、青い、雲....
.
13
:
名無しさん
:2021/03/23(火) 13:36:44 ID:JC05D13o0
あたしの記憶では、紺碧の世界に、青い雲が浮いていて、その上に青い宮殿があった。
あたしたちはそれを空中の、同じ高さから眺めていた。それ以上近付くことも、遠ざかることもできない。静止画のような宮殿。
ディズニー映画のはじまりを、永遠に観ているようだ。それはとても安心したし、ワクワクしたし、ずっと懐かしかった。
隣にはみっちゃんがいる。それはわかっているのに、隣を向くこともできない。
ただスクリーンに映し出された宮殿を眺めているような感覚。
驚いた。いまや、あたしたちは雲の上に居た。宮殿はすぐ目の前に聳え立っていた。
しかも、何の感覚もなかったあの時とは全然違う。風が吹いてる。強い風がぶつかってくる。
青い嵐。
みっちゃんを見ようと、隣を向こうと思ったけど、できなかった。
...本当はできたのに。ただのくだらない、迷い。
彼女の世界が壊れる様を、あたしは見たいんだろうか。
多分、次ここに来た時には、宮殿の中だろう。中はどうなっているの?人は底が知れない。
それが嬉しいけど、何かを失うのは怖い。
怖いだけなんだ。何も変えられないことが.....
思考がぐるぐる回って、
いつしか離れていった。
あ
チャプチャプ
チャプチャプ
チャプチャプ
チャプチャプ
チャプチャプ
チャプチャプ
.....
14
:
名無しさん
:2021/03/23(火) 13:38:07 ID:JC05D13o0
チャプチャプ
ノパ⊿゚)
ノパ⊿゚) ...みっちゃん!
ミセ*ー)リ ひーと
ノパ⊿゚)
ノパ⊿゚) 泣いてんの...?
ミセ*ー)リ 結局...私が変えるしかないんだよね
ミセ*ー)リ 一緒に居れば、なんとかなると思ってた
ミセ*ー)リ 世界で一番美しくて、私が私であるための絶対条件だったのに...それを手放す覚悟が
ミセ*ー)リ 私には、無い
ノパ⊿゚) ....ここにいるよ
ノパ⊿゚) 正直言うと...あたしには何もできない。あなたの苦しみも、それをあなたがどうしようもできないことも、知ってるのに
ミセ*ー)リ ...ごめん。ワガママだよね
15
:
名無しさん
:2021/03/23(火) 13:38:33 ID:JC05D13o0
ノパ⊿゚) ....多分さ
ノパ⊿゚) 全部終わってから、そこからがあたしの使命なんだよ
ノパ⊿゚) それが、みっちゃんと出逢えた意味
ミセ*ー)リ 終わりたくないよ...
ミセ*ー)リ 美を失うくらいなら、死んだ方がまし...
ノパ⊿゚) 美はひとつじゃないんだよ
ミセ*ー)リ ...本当に?
ノパ⊿゚)
ミセ*ー)リ 美はひとつだよ...
ミセ*ー)リ きっと、世界もひとつだ
.
16
:
名無しさん
:2021/03/23(火) 13:39:31 ID:JC05D13o0
これは、美の物語だ。
あたしとみっちゃんと、その他大勢...全世界の人間の物語だ。
幾千のあなたに向けて。
美は、感覚だ。言葉じゃない。私は感覚をここに残していく。
美はここに残る。老いもしないし、病みもしないんだ。
決して終わらない物語。始まってもいない、物語を、ここに記す。
.
17
:
名無しさん
:2021/03/23(火) 13:40:45 ID:JC05D13o0
美
.
18
:
名無しさん
:2021/03/23(火) 13:41:09 ID:JC05D13o0
一, 了
19
:
名無しさん
:2021/03/23(火) 13:51:04 ID:GKbn7Zr60
ワクワク
支援!
20
:
名無しさん
:2021/03/23(火) 14:01:34 ID:E9hZ6Lsg0
乙期待
21
:
名無しさん
:2021/03/23(火) 15:42:05 ID:GUHYCZYQ0
ジャスミンの人じゃないか!支援支援
22
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 02:15:55 ID:FM3q1P0U0
乙!荒廃と幻覚?の落差で鳥肌立った、これは続きが気になる
23
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 20:40:41 ID:TpDVya8A0
誰....?
昼過ぎに一回やった。いつも通りね。多分数時間眠り込んで、
もう日が落ちるころだろう。
私の世界は真っ黒だ。
扉が音もなく開いた。ドアノブについた水滴が下に落ちて
音を立てた。鉄板を貼り合わせただけの粗末な部屋だった。
闇の中で気配がする。こちらを見つめている!
あたしは布団の中で、息を潜めた。
まただ。また私のいない間に、あいつが来たんだ。
そいつは、初めて私に口をきいた。
初めて知った、そいつは、女だった。
.
24
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 20:41:25 ID:TpDVya8A0
ノパ⊿゚)
ミセ*゚ー゚)リ
彼女の持っている懐中電灯が、布団から出た私の顔を照らしていた。
ノパ⊿゚) あなた...だったの?
ミセ*゚ー゚)リ え?
ノパ⊿゚) ...なんでもない
ミセ*゚ー゚)リ はじめまして。私は診競。非記の紹介で、ここに
ミセ*゚ー゚)リ ごめん、邪魔しちゃったよね
ノパ⊿゚) ああ、いや....丁度戻ってきたところだし
ノパ⊿゚) あたしは脾都。よろしくね、診競
.
25
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 20:41:58 ID:TpDVya8A0
ノパ⊿゚) 真っ暗だね…火、つける
ボッ
ノパ⊿゚) あなたはどこから来たの
ミセ*゚ー゚)リ ...ティンプラから
ノパ⊿゚) あたしは、どこでもない...親の顔も知らないし、どこで産まれたのかも知らない
ミセ*゚ー゚)リ そうなんだ....
ミセ*゚ー゚)リ おんなじだよ。私も
ミセ*゚ー゚)リ 私の証明はどこにもない
ノパ⊿゚)
あたしが歩いた道。それは何だったんだろう。振り向いてもわからないよ。
道なんてどこにもなかった。
パタタタタタタタタタ、と、雨が降り始めた。
次第にどんどん強くなっていって、死んだような、この金属質な世界を埋めていった。雨漏りが、キャンドルの火を掻き消した。
再び、世界が闇に沈んでいった。
26
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 20:42:51 ID:TpDVya8A0
「...証明はただ、私の中にだけあるの」
「中?」
「そう。私の中にある、誰も触れられない世界」
「私でさえ、そこに手が届かないの」
「....へえ」
「今日ここに来たのも、それを確かめるためなの。一緒に、見る?」
「一緒?」
「今日は2本持ってきたんだ。見せてあげる。外に出よう」
「外って、どしゃ降りだよ」
「水が無いと駄目なの」
「はは、何それ」
「いいから」
.
27
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 20:44:25 ID:TpDVya8A0
その日、人生で初めて、薬の間隔のルールを破った。
そして初めて、「一緒に」行くということを知った。
それからあたしは....美を知った。
彼女の「宮殿」を見て、全てがひっくり返ったようだった。あたしが何も持ってないこと、未来でも何も持つことはないだろうこと、死を免れ得ないこと。そんなのは物心つく頃から分かってた。あたしは「ふつう」の幸せなんか絶対に手に入れられないし、そんなものに憧れを抱く気持ちすら、小さい頃から消えてしまった。
でも、美の前ではそんなことどうでもいい、関係ないんだって、気付いた。
その時の感想は、とてもじゃないけど言葉にできなかった。
言葉にできないことが、この世にあったんだ。
ミセ*゚ー゚)リ ...これが私の証明。
ノパ⊿゚) ...すごい
ノパ⊿゚) すごいよ、診競
ノパ⊿゚) あなたは、本当に素晴らしい人間だよ
ミセ*゚ー゚)リ そんなことない。誰にでもできることなんだよ。脾都にだって
ノパ⊿゚) そんな....あなたが居なかったら、一生気付けなかったよ
診競から学んだことは沢山ある。
一番は「美は誰でも持っている」ってこと。
これは本当だった。それから、人間を見る目が...いや、あらゆる自然を見る目が変わった。
あたしたちのほとんどは中にある美に気付いていない。
だから彼女は、伝道師だ。このろくでもない世界に生まれた奇跡の子だと、
本気でそう思った。
あの日の出会いから、あたしは彼女とずっと一緒にいる。彼女の呼び名は「みっちゃん」になった。本当に美しいものは心の中に秘めておきたくて、それから一緒に宮殿に行くことはしなかった。彼女も同じように考えてた。
非記がビジネスを新しく始めるようになると、あたしたちはVIP市のボロ屋を離れて、この国の首都である「奏柵」に移り住んだ。
28
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 20:45:14 ID:TpDVya8A0
....
夢を見てたようだ。夜中に起きちゃった。
今日も、あの日と同じように雨が降っている。
あたしたちの住処は独生のとこから数ブロックの、地域の会館だった。
周りにはあたしたちと同じように帰る場所のない人々、がバラバラになって眠っている。皆顔見知りだ。
隣で寝ころぶみっちゃんを眺める。
全然変わってない。色素の薄い肌に、薄く散ったそばかす。長い睫毛。
静かに眠る姿は人魚のように穏やかだった。
でも...あたしの世界は、大きく変わった。
彼女は奇跡の子なんかじゃない。あたしの勝手な期待。
彼女の世界が揺るぎ始める前から気付いてた。
ノパ⊿゚) ....
ミセ*-ー-)リ スースー
あたしはボロボロの傘を持って外へ出た。
外はずぶ濡れで、雑居ビルの明かりが床に反射して揺れていた。
ある時、雨は心をかき乱す。ある時は、鎮める。
水が、いつどうなるか、あたしの手に負えるものではない。
29
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 20:47:23 ID:TpDVya8A0
ぶらぶらと歩いてると、道の片隅に座り込んでる男を見つけた。ずぶ濡れだ。
片方の袖は高くめくり挙げられていて、
全身が脱力しきって、瞳は虚ろだった。
あたしは男の様子を見て、すぐに察した。彼は今、「行っている」。
( ´_ゝ`)...てんだよ....ボソボソ...したら....sなj...
30
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 20:47:45 ID:TpDVya8A0
ぶらぶらと歩いてると、道の片隅に座り込んでる男を見つけた。ずぶ濡れだ。
片方の袖は高くめくり挙げられていて、
全身が脱力しきって、瞳は虚ろだった。
あたしは男の様子を見て、すぐに察した。彼は今、「行っている」。
( ´_ゝ`)...てんだよ....ボソボソ...したら....sなj...
31
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 20:49:51 ID:TpDVya8A0
ノパ⊿゚) ねえ。
ノパ⊿゚) 死んじゃうよ...こんなとこで
( ´_ゝ`)ん...dhdh...ボソボソ....
ノパ⊿゚) ....しょうがないなぁ
ズルッ ズルッ
ノパ⊿゚) ここなら、雨も凌げるでしょ
ノパ⊿゚) じゃあね
ノパ⊿゚)
32
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 20:50:25 ID:TpDVya8A0
( ´_ゝ`)ん.....
( ´_ゝ`)あれ、俺...どこだ
ノパ⊿゚) おはよう
( ´_ゝ`)
( ´_ゝ`)あんたは?
ノパ⊿゚) あなたと同類
ノパ⊿゚) まぁ、あんなとこでおっ始める程バカじゃないけど
( ´_ゝ`)あぁ...そういうこと
( ´_ゝ`)俺になんか用?
ノパ⊿゚) ありがとうは?
( ´_ゝ`)死なねーよ。あの程度で
ノパ⊿゚) あたしがあなたをここに引っ張ってきたのは
ノパ⊿゚) ...どんな世界に行ってたんだろって。思ったから
ノパ⊿゚) あなたの、美に興味があるの
( ´_ゝ`)び....?
ノパ⊿゚) わからないか...
( ´_ゝ`)いや、わかるよ。多分近い意味で、俺らは「ビジョン」って呼んでる
( ´_ゝ`)いいぜ。話してやるよ
33
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 20:51:05 ID:TpDVya8A0
( ´_ゝ`)あ、名乗ってなかったな。俺は亜丹。あんたは?
ノパ⊿゚) 脾都
( ´_ゝ`)ビジョンを言葉で説明すんのは難しいだろ
ノパ⊿゚) うん
( ´_ゝ`)だから、全部伝えられるかは、分からないけど
34
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 20:52:51 ID:TpDVya8A0
俺は、高速道路を逆走して、ずっと生身で走ってたんだ。
真っ青で、もうすぐ黒くなりそうなくらい色の濃い空の下、辺り一面、
西日のオレンジ色に染まっている。
俺の足は軽くて、疲れを知らない。前から無数に近付いてくるギラギラした車と車の間に俺の体が勝手に滑り込んでいく。
右上....そう、漠然と右上の方に俺が走ってきた距離がリアルタイムで更新されていって、永遠に桁が上がっていくんだ。
俺は永遠とも呼べるような時間、終わらないハイウェイを走り続けていた。
こちら側に戻ってくるとか、あちら側に行くとか、そんなことは全く頭になかった。
俺の中にはその世界しかなくなるんだ。
西日も永遠に沈まない。ずっと同じ居場所で、世界を照らし続けている。
俺が目を覚ますのは、思考が麻痺するような無限の疾走の中で、唐突に、小型車に跳ね飛ばされたときだ。
物凄い衝撃が全身に襲いかかって、天と地が何十回もぐるぐる回って、俺と一緒に走ってきた、世界の法則も、悪も善も、
あらゆる対立構造がその立場を何度も何度も入れ替わって、次第に境界がなくなって、ひとつになるんだ。
回って、混ざって、一つの円になる。
円は、地球でもあり、俺の目玉でもある。俺の視界でもある。
そして、俺の視界だと、思った瞬間に、その視界はこっち側に戻ってきた俺が見ている現実だと気付くんだ。
35
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 20:54:14 ID:TpDVya8A0
( ´_ゝ`)そして、その視界の中に、あんたがいた
ノパ⊿゚) ....
ノパ⊿゚) すごいよ
( ´_ゝ`)...え
ノパ⊿゚) 最高だ
( ´_ゝ`)...他人に、そんなこと言われたの、初めてだよ
( ´_ゝ`)俺は、俺の中にある最高なことを、俺が知ってさえいればそれで十分だと思ってたけど
( ´_ゝ`)...嬉しいな。なんて日だ、今日は
( ´_ゝ`)俺たち兄弟は...社会の底辺で、誰にも見向きもされないで育った
ノパ⊿゚) あたしもだよ。ていうか、今もそうだけど
( ´_ゝ`)...こんな風に生きてる連中は、人の愛し方も何も知らないだろ?
( ´_ゝ`)支え合って生きてたって、結局、お互いのことなんて何一つ見えてないままなんだ
( ´_ゝ`)なのに、何であんたは
ノパ⊿゚) あたしは、価値のない人間なんていないと思う
ノパ⊿゚) あたしにそれを教えてくれた人がいる
( ´_ゝ`)....
ノパ⊿゚) あたしたちは、どの人にもあるものを、美って呼んでる
( ´_ゝ`)俺は普通の人間が考えてることなんて知らない...だけど、最高なものは誰にもあるわけじゃないだろ
ノパ⊿゚) あるよ。でも、世の中にはそれに気付いてない奴ばっか
36
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 20:55:54 ID:TpDVya8A0
( ´_ゝ`)俺には、弟が居た
( ´_ゝ`)でも、あいつは1ヶ月前、先に自殺した
( ´_ゝ`)こんなクソみたいな人生、生きてても死んでも変わらないって、言って
( ´_ゝ`)あんたにもわかるだろ?俺たちには、今この瞬間以外、何も見えないんだ
ノパ⊿゚) ...わかるよ
ノパ⊿゚) ...あたしも、いつ死んでもいいと思ってた。その時を待ってた
( ´_ゝ`)俺も今日は、死ぬつもりだった
( ´_ゝ`)でも、あんたのおかげで、何かに気付いた
( ´_ゝ`)うまく言えないけど
( ´_ゝ`)変なこというようだけど、俺は今、人生とか、この世界とか、そんなものは紛い物だってわかった気がするんだ
ノパ⊿゚)
37
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 20:59:38 ID:TpDVya8A0
ノハ ⊿ ) もし、美なんてなかったら
ノハ ⊿ )
ノハ ⊿ ) もうあたしは、生きていけない....
( ´_ゝ`).....
( ´_ゝ`)俺は、自分の感覚を信じたい
( ´_ゝ`)だから、あんたも信じろよ
ノハ ⊿ )
( ´_ゝ`)...また会おう。この恩は忘れない
( ´_ゝ`)それと、君の彼女にも会わせてくれよ
ノハ ⊿ ) 約束する
( ´_ゝ`)...じゃあ、な。俺は行かなくちゃ
ノハ ⊿ ) うん
38
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 21:01:04 ID:TpDVya8A0
ギュッ
ミセ* ー )リ ひーと...?
ミセ* ー )リ なんで、ずぶ濡れなの
ノハ ⊿ ) ...みっちゃんは、暖かいね。いつだって
ミセ* ー )リ ひーとが、冷たいんだよ
ミセ* ー )リ 私から離れないで。私が、あなたを守るから
39
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 21:03:07 ID:TpDVya8A0
雨は、より一層強さを増していた。
あたしは、傘もささずにその場を後にして、帰路についた。
この行為は、あたしが濡れるための手段で、目的は、水を持ち帰ることだった。
雨があたしから奪った体温を、あたしは彼女から奪おうと思った。
今晩の出会いで、あたしは、自分の意思に気付いた。何も見えていなかった。だから、水に踊らされるのだ。あたしは水を従えようとした。
診競を、あたしは変えられる。変えなければいけない。
あたしは彼女に覆い被さり、冷え切ったその身体を、彼女の身体に密着させた。
全身から、冷たい雨が槍のように彼女に突き刺さった。あたしの身体は彼女の熱で焼けただれていった。
40
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 21:03:44 ID:TpDVya8A0
霧のような吐息があたしたちを包み込んだころ、
彼女の両眼からも、雨が降りはじめた。
雨はとめどなく、朝になるまで降り続けた。
.
41
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 21:04:12 ID:TpDVya8A0
二,了
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