[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
1-
101-
201-
301-
401-
501-
601-
701-
801-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
ξ゚⊿゚)ξツンちゃん夜を往くようです
1
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:03:05 ID:cQB6.m2k0
,、,,..._
ノ ・ ヽ
/ ::::: i
/ ::::: ゙、
,i :::::: `ー-、
| :::: i
! :::::.. ノ
`ー――――― '"
773
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 09:52:31 ID:vYPVAwrg0
ξ゚⊿゚)ξ「……ねぇ、こんな話がしたくて姿を見せたの?」
彼女の動きが、ピタリと止まった。
「へえ。こんな話、ですか」
彼女は口に手を当てて笑みを隠す。
今のところ笑顔以外の表情を見ていないので、別に今更隠すまでもないだろうに。
「これは見事に一蹴されましたね。私は貴方の事を意識して喋っていたのに」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ;゚⊿゚)ξ「……私が、オワコン……!?」
「……微妙に逸れてますが、まあオッケーとしましょう」
彼女の笑みが苦笑いに変わる。
彼女は眉をすぼめ、この答えで妥協してくれた。
「先日お願いした現状維持、あれはつまり“ツンちゃんオワコンになってくれ”という話でした。
そして貴方は今まさにありふれた高校生活を謳歌している訳で、この状況は実に望ましい」
「わざわざ小難しい話をすることにより、見事ツンちゃん先輩を図書館にも誘導出来ました。
正直あんな、小学生がwikipedia見ながら考えたような言葉をここまで真に受けてくれて安心してますよ」
ξ;゚⊿゚)ξ(か、下級生に煽られている……)
.
774
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 09:53:47 ID:vYPVAwrg0
「あれの答えは要りますか? 答えというか、私の意図した所というか」
ξ;゚⊿゚)ξ「え、そんなのあるの……?」
「一応は。あーでも面倒なので次行きますね」
彼女がさら〜っと流そうとしたので、私は反射的に「いやいや」と言って会話を停滞させた。
ξ゚ー゚)ξ「ないんでしょ、考えなしで言ったんでしょ……」
やれやれようやく彼女のポーカーフェイスを暴けそうだ。
私はもうテンションが上がってきた。ぐだぐだと小難しい話をしおって、さっさと恥辱に頬を染めるがいい。
「……ツンちゃん先輩、私これでもかなり分かりやすく話をしているんです。
いいんですよ? 地の文たっぷり手加減ナシで説明し尽くしたって」
ξ゚⊿゚)ξ「次の話題にいきましょうか」
彼女は「それもそうですね」と淡白に切り返し、本題に入った。
.
775
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 09:54:57 ID:vYPVAwrg0
「まぁいきなりやられましたね。新勢力の登場です。それをお伝えしに参りました」
「ツンちゃん先輩の隣のクラスに転校生が来ました。彼らはずばり、やべー奴です」
ξ゚⊿゚)ξ「……転校生ならうちのクラスにも来たわよ。しかも四人」
「素直姉妹はこちら寄りの存在なのでノーカンです。
彼女達については監督役のモナーさんに聞くといいでしょう」
ξ゚⊿゚)ξ「……てことは、モナー先生は貴方を知っているの?」
「ええ。かつて彼とハインリッヒが勇者軍を抜ける際、少しばかり手を貸しました。
とはいっても当時は別名義でしたし、私が出向いた訳でもありませんが」
「言っておくと素直姉妹はヴァンパイアハンターの末裔です。分類はまぁ超能力者って事で」
ξ;゚⊿゚)ξ「……それが本当なら魔族の天敵なんだけど」
そう言うと、彼女はきょとんとした顔で私を見た。
「そういえば吸血鬼も元は魔界暮らしでしたっけ。
その昔、魔界から人間界に移住したはいいが、血を好む習性ゆえに程なくして種族間戦争が開始。
結果多くが人間界で死滅してしまい、今じゃ吸血鬼は絶滅寸前だとか」
「聞けば吸血鬼にとって人間の血は麻薬みたいな依存性があったらしいですね。
まぁあの頃はアヘンがどうこうとか色々ありましたし、タイミングが悪かったかと」
ξ゚⊿゚)ξ「……話が逸れてない?」
「逸れましたね。戻しましょう」
彼女はくすっと笑い、肩を竦めた。
776
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 09:55:50 ID:vYPVAwrg0
「やってきたのは我道アグリ、網目間宮ユミの二人」
「まったくやれやれ完全に不意をつかれました。
我々が巨大生物の襲来を阻止している間に、小さい虫を通してしまいました」
巨大生物に関してとても興味があったが、それを聞く間もなく彼女は続けた。
「とにかく関わらないように。まずそれだけ徹底してください」
ξ゚⊿゚)ξ「ふーん」
「彼らは捕食者です。食べちゃうんです。色々と。物でも人間でも」
彼女は手をパクパクさせ、ものを食べるジェスチャーをして見せた。
ξ゚⊿゚)ξ「敵なの?」
「そうですね、敵にはなりやすいです。
なんせ彼らは攻撃的だ。魔族の存在を知ったら好奇心で襲ってくるかも」
「ただまぁ彼らとて別に快楽殺人者ではないですからね。
食欲とか好奇心とか、そういうのを満たす何かをあげれば友好関係は築けると思います」
ξ;゚⊿゚)ξ「……なんにせよ、関わらない方が無難なのね」
「ですからこちらで一手打っておきました。
彼らには近日中にあっさり退場して頂きます、そこらのモブキャラのように」
嫌味な笑顔。彼らの登場も、彼女にとっては計略の一部のようだった。
.
777
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 09:57:30 ID:vYPVAwrg0
彼女が私に一歩詰め寄る。
私は顎を引いて彼女を見下ろし、思わず一歩引き下がった。
「――さておきツンちゃん先輩。私と仲良しになってくれませんか?」
ξ;゚⊿゚)ξ「……な、なかよし?」
「ほのぼの平和な学園生活。それを私と過ごしましょうと言ってるんです。
他の方々が一緒だと否応なしに事件が起こってしまいますからね」
「これでも色々遊びは知ってるんですよ。良い遊びも、悪い遊びも」
ξ;゚⊿゚)ξ(どちらにせよ意味深だ!)
「どうです? もうすぐクリスマス、関係を進展させるには良い頃合いかと」
黙って後退。しかし、たったの数歩で私の退路は本棚によって断絶された。
彼女は私の首筋にぐっと顔を寄せ、ふう、と吐息を漏らした。
ξ;゚⊿゚)ξ(ホ、ホゲーーーー!!)
「……くす、メガネが曇ってしまいました」
彼女が私を見上げ、イタズラに微笑む。
曇ったメガネの向こうには、私の動揺を楽しむ悪魔の瞳があった。
.
778
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 09:59:23 ID:vYPVAwrg0
ξ;゚⊿゚)ξ
「……ま、この情事は後に取っとくとして」
途端、彼女はパッと離れて私に背を向けた。
後ろから僅かに窺えた彼女の表情は、ここにきてようやく真剣なものに変わっていた。
ξ゚⊿゚)ξ
それは同時に、私が完全に弄ばれていた事の証明でもあった。
女なのに童貞扱いされたような、そんな気分になった。
「聞かせて下さいツンちゃん先輩。貴方の過去を、成り立ちを」
ξ゚⊿゚)ξ「……過去? って、貴方なら知ってそうだけど……」
彼女達は、魔王と勇者がどうこうしていた頃からこちらの存在を知っていた。
だったら私の過去くらい、筒抜けだろうとおかしくないのだ。
「ええ勿論存じていますよ。これはただの取っ掛かりです」
ξ;゚⊿゚)ξ「……回りくどいなあ……」
「性分です。大した文量でもないんですから脳ミソ使って下さいよ」
Σξ;゚⊿゚)ξ(また煽られた!) ガビーン!
.
779
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:00:32 ID:vYPVAwrg0
「ツンちゃん先輩の過去は大体こんな感じですよね?
魔界にスーパーベイビー爆誕、すごく成長、制御できなくて大変、そして今に至る」
他人の人生をここまで乱暴に要約できる人間はそうそう居ないと思う。
「いやあ大変でしたよね。なんでしたっけ、なんとか封印? されたんですよね」
ξ;-⊿-)ξ「……そうよ、大界封印」
('A`)☆大界封印ってなあに?☆('A`)
('A`)伝説級の魔物を空間ごと隔離して放逐するよ('A`)
('A`)みんなでがんばってつくるすごいふういんだよ('A`)
という感じで私は分かりやすく大界封印について喋ったが、彼女はさらっと聞き流してまた話し始めた。
「で、それを超短期間で破ってツンちゃん大脱出と。いやーまったくもって凄い本当に。
大界封印って確かオイスターみたいな名前の名状し難いものでも閉じ込めるって噂ですよね?」
ξ;゚⊿゚)ξ「らしいけど……なんで魔界の噂まで知ってるのよ」
「風の噂です」
ξ;゚⊿゚)ξ「魔界の風が人間界まで届く訳ないでしょ」
「……ツンちゃん先輩が自身の能力を形容できたのは大界封印脱出の折でしたね。
ゼノグラシア、真性異言。意味分かんねーけど心で理解出来たぜ系の言葉、ピッタリだと思います」
ξ;-⊿-)ξ「知らないわよ、名付けは私じゃないし……」
「……へえ。それは、初耳……」
彼女は会話を区切るように、ゆっくり、はっきりとそう言った。
.
780
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:01:57 ID:vYPVAwrg0
「というか、聞いてもいいですか?」
ξ゚⊿゚)ξ「もうかなりグイグイ聞き込みしてるけど」
「ツンちゃん先輩、その大界結界を破る時にはちゃんと意識があったんですか?」
ξ゚⊿゚)ξ「……覚えてない。小さかったし、結界に入る前に眠らされたから」
「なら、出てきた時はどなたがツンちゃん先輩を出迎えたんですか?」
ξ;゚⊿゚)ξ「……聞いてないわよ。目が覚めたら魔王城の寝室だったわ」
「……少し整理します。大界封印を例えるなら、一個人めがけて核ミサイルを発射するようなものでしょう。
つまり魔界の理は貴方を超危険物として処理した訳です。それを安々と元の状態に戻せますかね」
ξ゚⊿゚)ξ「……知らないわよ」
その疑問は、いつも心の隅にあった。
ゼノグラシアという制御装置が出来たとはいえ、私は一度完全に捨てられた身なのだ。
なのになんで、こんな、当然のように――――
.
781
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:03:25 ID:vYPVAwrg0
「普通……というかまず、二度と出て来れないよう閉じ込めたものが即日出てきたら大概みんな焦ると思います。
しかも大界封印を自力で脱出するほどの“何か”が無意識状態で出現したとなれば――」
「意識が無い内に再度封印するか、それに近しい処置があって当然でしょう」
〜〜〜〜〜〜〜
ξ゚⊿゚)ξ「うひーなんか出れた」
( ФωФ)「じゃあ帰ろっか」
イェーイ
ξ゚⊿゚)ξ人(ФωФ )
〜〜〜〜〜〜〜
「という展開は、さすがに平和ボケし過ぎてると思いますし……」
彼女は冗談半分に言って苦笑う。
私は今まで抱えていた矛盾を浮き彫りにされ、言い返す言葉を失っていた。
「そんでまた質問なんですけど、暴走状態のツンちゃん先輩ってどのぐらい強いんですか?」
ξ゚⊿゚)ξ「……その時は意識が無いから分からない。けど、周りの人はいつも無事だったわよ」
「……へえ。なるほどなるほど……」
彼女は独りごちて頷く。
「ありがとうございます、お聞きしたい事はもうありません。
私自身、かねてより疑問に思っていた事を軒並み解決できました」
.
782
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:06:29 ID:vYPVAwrg0
十秒の沈黙。
彼女はその後、口火を切った。
「……ええと、これは仮定に仮定を積み上げたに過ぎない仮定なんですけど」
ξ-⊿-)ξ「……なぁに。聞くわよ、もう」
「――ツンちゃん先輩はもしかして、今まさに大界封印を脱出中なのではありませんか?」
ξ゚⊿゚)ξ
は?
ξ;゚⊿゚)ξ「……えっと、どういう意味?」
会話の点と点が繋がらず、私は言葉の意味を上手く理解できなかった。
「いやほら、例え話ですよ」
「実はこの世界はまだ大界封印の中で、私達“始末屋”はそのメンテ係みたいなもの。
そしてツンちゃん先輩は莫大な魔力をもってこの封印を侵食。
私達メンテ係が総動員される状況になるまで、順調にこの世界を攻略中とか……」
ξ;´⊿`)ξ「……いや、それは流石に……」
「……ま、これはただの妄想ですよ! しかし私は私の理念に確信を持ちました。
やはりツンちゃん先輩には普通の学生生活を送ってもらいます、否が応にでも」
.
783
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:08:32 ID:vYPVAwrg0
「――それでは今日のおさらいを」
「ツンちゃん先輩は転校生に関わらないこと。そして今話した他愛無い仮定の話も忘れること」
ξ;゚⊿゚)ξ「……分かった。分かったって」
「……本当ですか? 見張りも一応つけてるんですからね。
ま、こちらに実力行使が出来ない以上、ツンちゃん先輩にはひたすらお願いするしかありませんが」
ξ゚⊿゚)ξ「……そういえば、聞いてなかったけど」
ξ゚⊿゚)ξ「貴方、名前は?」
問いかけると、彼女の表情から一瞬生気が消え失せた。
彼女は平静を取り繕い、答える。
「……くす。さあなんでしょう。私、どうにも名状しにくいようで」
彼女はそう答え、今日一番の不穏な笑顔を見せた。
途端、予鈴が鳴り響く。
私達は天井のスピーカーを一瞥し、ここが区切りであると察した。
.
784
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:10:59 ID:vYPVAwrg0
「――最後に未来予測。ツンちゃん先輩、昨日話したとおり王座の九人が来ます。
内藤ホライゾンに話を聞いて下さい。危ない橋ではありますが、頑張って敵を籠絡してください」
ξ;-⊿-)ξ「……了解。もう、なんか凄い疲れたんだけど……」
「……では癒やしてさしあげます。合法的に――」
彼女がすとんと私に寄り掛かり、背伸びして私の耳元に口を添える。
そして次の瞬間、
ξ;'゚⊿゚')ξ「――ッッ!??!?!??」
「〜〜〜表現規制の波〜〜〜」
彼女は今まで聞いた事がないようなエッチな声で、私の耳にしこたま淫語を浴びせてきた。
しこたま淫語という言葉の並びすら最早卑猥。行為は実に30秒も継続された。
ξ゚⊿゚)ξ
「……それじゃあツンちゃん先輩、また次回という事で」
彼女の指先が私の頬を伝って胸へと落ちていく。落ちていく程度の胸はある。
彼女は私の胸に手を当てて、ぐっと力を込めて言った。
「忘れて欲しいですけど忘れちゃダメですよ、私とのありふれた会話劇。
貴方が現状を維持しなければ全て崩壊します。知らなくていい事が、この世界は多すぎる」
ξ゚⊿゚)ξ「ウィッス」
インターネットスケベコンテンツめいた事案に対し、私はすっかり思考停止。
結局私はこの昼休み中、彼女の思うがままにされてしまったのだ……。
.
785
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:11:40 ID:vYPVAwrg0
☆三輪車☆
( ^ω^)
( O┬O ('A`) しぬ
≡◎-ヽJ┴◎ ノ( ヘヘ
.
786
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:12:23 ID:vYPVAwrg0
昼休みも終わっていざ午後の授業だ――と意気込んで教室に向かう。
ところがどっこい、それを足止める不届き者が居た。
( ^ω^)「魔王城、少しいいかお」
私を苗字で呼んだ彼は内藤ホライゾン。
私達魔物が人間界で生活するにあたり、色々と手を貸してくれている協力者の一人だ。
ξ゚⊿゚)ξ「……あ、」
そういえば昨日の事をすっかり忘れていた。
昨日私に殺意を放った不届き者の顛末を、私はまだ聞いていなかったのだ。
ξ゚⊿゚)ξ「聞きそびれてたわね。どうなった?」
( ^ω^)「……ああ、昨日のなら取り逃がしたお。今はハインリッヒが追いかけてるお」
ξ゚⊿゚)ξ「……逃がしたって、その割に堂々としてるのね」
( ^ω^)「王座の九人だったお」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ-⊿-)ξ「……そう。まあ、引き続きこの件は預けるわ」
( ^ω^)「……お前も不思議と驚かないお。
王座の九人が来たって事は、いよいよ向こうも最後の賭けに出るって事だお」
それは分かっている、分かっていたのだ。
そんな事より気掛かりのは、盛岡が言った予知がこれで一つ的中してしまった事だ。
ちくしょう嫌な感じだ。他に色々思う事はあるものの、私はまず第一にそう思った。
.
787
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:13:04 ID:vYPVAwrg0
( ^ω^)「……声をかけたのは別件だお。
お前、転校生に屋上に呼び出されるお」
ξ゚⊿゚)ξ「……そんな愉快な役回りが出来る人柄だったっけ、貴方」
( ^ω^)「転校生に頼まれたから伝えただけだお」
ξ゚⊿゚)ξ「機械的ね。ま、素直姉妹とは話したかったから好都合か……」
( ^ω^)
( ^ω^)「……素直姉妹は知らんけど、こっちのクラスの転校生だお」
ξ;゚⊿゚)ξ「……え゙っ?」
ξ;゚⊿゚)ξ(マジかよ……)
始末屋から忠告を受けた矢先、このイベントは相当ヤバい予感がする。
絶対に行くべきではないのだが、この先何をしでかすか分からない連中に釘を刺すのも有意義だろう。
何より私は最強だ。私自身の安全は、私自身の力が保証してくれる。
心の準備はしていなかったが、ここで決断を下すとしよう――。
.
788
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:13:44 ID:vYPVAwrg0
ξ;゚⊿゚)ξ(……どうしようかな)
1.屋上に行く。
2.行かない。
.
789
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:14:24 ID:vYPVAwrg0
2
.
790
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:15:04 ID:vYPVAwrg0
ξ゚⊿゚)ξ(……流石に備えも無しに行くのは愚行か。
いかに私が最強とはいえ、無敵じゃあないんだし……)
私はそう結論付け、頭を振ってブーンに言った。
ξ゚⊿゚)ξ「ごめんそれパス。学生なんだし授業優先でしょ」
( ^ω^)「……分かった」
これにて一件落着! 私の平和なスクールライフに波乱など不要なのである。
向こうが人間に手を出さない内は見逃しててもいいだろう。
そして何より 『関わるな』 と言われた相手だ。まず様子見でも悪い事は起こらないだろう。
( ^ω^)「なら伝えてくるお」 スタスタ
ξ゚⊿゚)ξ「あーよろしく。それじゃ」 クルッ
私は残り一分と経たず始まる授業に向けて歩き出す。
正直もう遅刻確定なので走る気にもならなかった。
こういう時こそ優雅に入室し、格の違いをもって教師を黙らせるのが吉なのだ。
ξ゚⊿゚)ξ(ていうか教科書持ってきてないな) ピタッ
ξ゚⊿゚)ξ(ブーンに借りるか)
.
791
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:15:59 ID:vYPVAwrg0
ξ゚⊿゚)ξ「ちょっとブーン、教科書貸してほしいんだけど……」
私は立ち止まって振り返る。
しかし、そこにブーンの姿は見えなかった。
ξ゚⊿゚)ξ(は? 教室あっちなのにどこ行ったのよ……)
そういえばさっき、伝えてくるとか言っていた気がする。
ならば、ブーンは屋上に向かったのだろうか。
敵か味方かも分からない二人が待つ、屋上に。
ξ゚⊿゚)ξ
ξ;゚⊿゚)ξ「……いや、まさかね」
ブーンの身に何かが起こる、なんて想像は無意味だ。
彼はあれでも一人の戦士だ。たかが二人の不意打ちを食らった所で、死んだりはしないだろう……。
ξ;゚⊿゚)ξ
だが、私は内心の不安に負けて階段を登り始めていた。
ξ;゚⊿゚)ξ(一応、一応ね?)
チラ見して帰るだけ。
私はそう自分に言い聞かせ、そろ〜りと階段を登った。
.
792
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:17:10 ID:vYPVAwrg0
【interlude:qAwsetxdrvfygbunli】
Error
.
793
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:17:50 ID:vYPVAwrg0
屋上で魔王城ツンを待つ二人組。男の名は我道アグリ、女の名は網目間宮ユミ。
彼らは世界のどこかで 『捕食者』 と称される存在であった。
「ねえアグリちゃん、魔王様は本当に来るのかな?」
ユミは制服のスカートを翻し、じっと佇むアグリを振り返った。
「……こんな怪しい呼び出し、立場のある奴なら絶対に来ないぞ」
呆れ顔で言い返してアグリはそっぽを向いた。そもそも彼は魔王城ツンとの接触には反対だった。
捕食者と呼ばれ危険物扱いされてはいるが、その実彼らは平和を好む穏やかな種族。
人間を食らっていたのは遠い先祖であって、彼ら自身が人肉を食した事は一度もない。
「んーそうだね。でも来てくれると嬉しいなあ……」
「交渉など不可能だ。俺は森に帰りたい……」
「分かってるってば! でもさ、昨日のアイツらを使えば何とかなるよ!
えっと……勇者軍? のギコとその妹! 半生半死で目の前に転がってきた時はビックリしたけどさー」
「……あれは匿わず見殺しておくべきだったよ。無駄知恵を働かせずに」
「そお? 私が思うに、魔王城さんとは仲良く出来るはずなんけどなー」
「……根拠を示せ、根拠を」
溜め息混じりにアグリは呟いた。
794
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:19:01 ID:vYPVAwrg0
――ふと、屋上の扉が開く。
肩の力を抜いて会話していた二人も、その瞬間に目を光らせた。
「……あれ」
ユミは険しい表情でその人を見る。
屋上にやってきたその人は、魔王城ツンとは別人であった。
「誰かな、あなた。授業始まっちゃうよ?」
「――いや、構えろユミ。こいつは敵だ!」
アグリが戦闘態勢でユミの前に勇み出る。
それを見た彼の人は、茶髪のサイドテールを揺らして静かに笑んだ。
午後のチャイムが鳴り響く。その最中、真昼の青空に鮮血が散った。
【interlude:out】
.
795
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:19:53 ID:vYPVAwrg0
☆ネコ☆
_
/´ `フ
, '' ` ` / ,! もぐ
., ' レ _, rミ
; `ミ __,xノ゙、
i ミ ; ,、、、、 ヽ、
,.-‐! ミ i `ヽ.._,,))
//´``、 ミ ヽ ('A`) しぬ
.| l ` ーー -‐''ゝ、,,)) ノ( ヘヘ
ヽ.ー─'´)
`"""´ (^ω^) どうせしぬ
ノ( ヘヘ
796
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:21:01 ID:vYPVAwrg0
(; ^ω^)「――――な、」
絶命した体を掴み上げ、血みどろの中心に立つ少女。
屋上に出たブーンを迎えたのは、その少女と鮮明な血の臭いであった。
「……ああ来ましたか。まったくやれやれ、こんにちは」
律儀に二人分の死体を並べて寝かせ、少女は一息。
眼鏡についた血飛沫をセーターの裾で乱雑に拭ってから、彼女はブーンを見た。
( ^ω^)「……お前、何者だお」
「……いや本当に急でした。私自身、超ビックリって感じで……」
ブーンの問いに答えず、少女はわざとらしく肩を撫で下ろした。
死体の傍でなければ可愛らしく見えたであろうに、その仕草はブーンの目に奇怪な演技として映っていた。
「ヤバい事ですよこれ、何しちゃってくれてるんですか……」
.
797
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:22:18 ID:vYPVAwrg0
ξ;゚⊿゚)ξ「――……まさか……ッ!」
言葉の最中、遅れて姿を現した魔王城ツン。
この惨事と少女を見て合点したのか、彼女は敵意を剥き出しにして少女を睨んだ。
ξ#゚⊿゚)ξ「……貴方……!」
( ^ω^)「……魔王城、あれは敵か?」
肩を並べたブーンとツン。
しかし当の少女は彼らの敵意を意に介さず、一人この状況の意味を考察していた。
「……おかしい。彼ら捕食者がこんなに早く行動に出る動機は無かった。
寸前とはいえ自演は成功、さっきの介入でこの筋道は閉ざせたはず……」
「おかしい、私達よりメタい存在がこの世に居る訳が――――」
.
798
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:23:24 ID:vYPVAwrg0
「…………ああ、そうか」
思考の末に少女は答えを得た。
彼女の双眸はただ冷たく、内藤ホライゾンをじっと見据える。
( ^ω^)
「二番煎じの欠陥品、改悪劣化の権化がゆえに――遂にお前は道を外れたか」
勝手に一人で何かを得心し、彼女は歪んだ顔で空を仰いだ。
「……内藤ホライゾン、魔王城ツン。私はしばし姿を消します。役目は終えました」
「それに際して一つだけ助言を……いえ、私個人の確信をお伝えします」
( ^ω^)「魔王城」
ξ#゚⊿゚)ξ「……捕まえるわよ。殺す価値より情報源としての価値のが高い」
( ^ω^)「分かったお」
ブーンの片手に青い蜃気楼が揺らぐ。
蜃気楼は僅かに雷鳴を走らせた後、実体を得て彼の手中に握られた。
無から現れたるは、鍔の無い深紅のサーベルであった。
.
799
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:24:50 ID:vYPVAwrg0
「――――何者かが、この世界の筋道を壊そうとしている」
(# ^ω^)「おおッ!!」 ダッ!
駆け出したブーンのサーベルは無意味に空を裂き、少女には間一髪届かない。
少女は、一切の痕跡を残さず屋上から姿を消した。
ξ#゚⊿゚)ξ「……逃げられたわね」
( ^ω^)「……気配を感じない。追う手段が無いお」
ξ#-⊿-)ξ「私も駄目、感知もできない」
ξ#゚⊿゚)ξ「……クソッ、なにも殺す事なかったでしょうが……!」
( ^ω^)「……先当たって、貞子さんにこの事を伝えるお」
ブーンは足元の死体を一瞥してからサーベルを手放した。
彼の手を離れたサーベルは、再び青の蜃気楼となって空に散った。
.
800
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:25:30 ID:vYPVAwrg0
( ^ω^)「事情は後で聞くお。今聞いても手遅れだから」
ξ゚⊿゚)ξ「……そうね。……私の怠慢だ」
( ^ω^)「自覚があって何より。間が悪ければ僕が殺されてたお」
ξ゚⊿゚)ξ
( ^ω^)
( ^ω^)「なんだお」
ξ゚⊿゚)ξ
ツンは口籠り、ややあってから答えた。
ξ゚⊿゚)ξ「……いえ。人間って、人間が死んだら動揺するものだと思ってたわ」
( ^ω^)「……さっきの奴も言ってたお。こんな欠陥品、参考にならないお」
気まずい空気が流れ込む。
ツンは踵を返し、ブーンに背を向けた。
ξ゚⊿゚)ξ「見張ってて。私が貞子さんを呼んでくる」
( ^ω^)「分かったお」
事務的な言葉が間を繋ぐ。
ツンが貞子を連れて戻ったのは、それから数分後のことだった。
.
801
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:26:12 ID:vYPVAwrg0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
从;゚∀从「……やあっと見つけた……」 ハァー
敵の追跡を開始して半日。
消えかけていた痕跡を懸命に辿り、ハインリッヒ高岡はやっと確信を得られるだけの気配を察知した。
彼は目前のアパートを見上げた。二階右端の部屋に一人分、激化薬の臭いがする。
勇者軍が使用する激化薬の正体は、勇者と英雄が保有する異能回路の模造品。
ゆえに一度でも激化薬を使った者は人体の仕組みそのものが変質し、気配も人ならざるものに近付いてしまう。
从 ゚∀从(……しかし妙だな)
从 ゚∀从(この距離なら向こうも気付いてるだろうに、動きがない)
从 ゚∀从(探りに行くか)
ハインは腰の鞘から細身の刀を抜き取った。
白昼堂々、人に見られれば一発アウトの光景である。
しかしハインはそのまま歩き出し、階段を上って右端の部屋で立ち止まった。
.
802
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:27:00 ID:vYPVAwrg0
从 ゚∀从(……我道、アグリ)
表札を一瞥。さっぱり知らない名前なので即時忘却。
ハインは刀を肩に担ぎ、空いた手でドアを開け放った。
从 ゚∀从「……生きてるかい」
(,, Д )
リビングの片隅に、両手足を縄で縛られた男が転がっていた。
男は既に瀕死だった。ブーンとの戦闘で負った傷もそのままに、何者かに捕縛されたようだ。
フローリングにも乾いた血の跡が広がっている。顔は青ざめ、意気も薄弱だった。
(,, Д )「……よお、悪いな。わざわざ……」
从 ゚∀从「王座の九人、ギコだったな。
生け捕りがご希望だから死ぬんじゃねえぞ」
(,, Д )「……奥に……」
.
803
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:28:03 ID:vYPVAwrg0
(,, Д )「……奥の部屋に、俺の妹が居る」
从 ゚∀从「……あ?」
(#,, Д゚)「……次に俺が目を覚ました時、妹が死んでたら――……」
从 ゚∀从
(#,, Д )「………………」
从;゚∀从「……ンだよ」
一瞬の激昂。
しかしそれも束の間で、ふつ、と細い糸が切れるようにギコは意識を失っていた。
从;゚∀从「死ぬなって言ったばっかりなんだがな……!」
ハインは土足でリビングに上がり、ギコの容態を確かめた。
死んではいないが応急処置すらされなかったせいで出血が酷い。
戦闘で激化薬を使用した分、今は副作用で生命力自体も低下しているだろう。
最早、ギコは適当な病院に突っ込んで解決するような状態ではなかった。
从;゚∀从「チッ」
こいつを匿った野郎は手当ての一つもしなかったのか、とハインは内心に吐き捨てた。
事は一刻を争う。ハインはギコと、そして彼の妹を両肩に担ぎ、大急ぎでその場を後にした――。
.
804
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:29:05 ID:vYPVAwrg0
おわり('A`)
805
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 10:37:29 ID:fuVf0y2E0
>>772
おいおいおいおいブーン系ぃぃぃ
相変わらず面白い乙
806
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 11:33:37 ID:VJXcf4Vc0
>私達よりメタい存在
鳩型の菓子かな?
807
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 19:45:56 ID:HDZCnXAU0
来てたのか!
今から読むぜ乙
808
:
名も無きAAのようです
:2016/09/29(木) 21:04:35 ID:ZP7inhII0
乙ー
俺の勘違いだったらいいんだけども、1箇所「彼女」の名前ボカし忘れた?
それとも意図的?
809
:
◆gFPbblEHlQ
:2016/09/30(金) 02:48:42 ID:y/LL3CPk0
>>808
名前を決めていないので勘違いだと思います!(^ω^)
AA無しで女性多いだけに二人称が紛らわしかったねNE(^ω^)ごめんNE(^ω^)
810
:
名も無きAAのようです
:2016/10/01(土) 11:17:06 ID:cFe4flbo0
乙乙! 続きが気になります。
811
:
名も無きAAのようです
:2017/02/12(日) 10:32:47 ID:UN2CpWPw0
バローだからもう来ないよ
812
:
名も無きAAのようです
:2017/02/16(木) 22:59:17 ID:il.O2mBo0
撃鉄終わるまで待てよ
813
:
名も無きAAのようです
:2017/07/20(木) 16:52:32 ID:AT2G.iuc0
撃鉄終わってから音沙汰ないな
814
:
名も無きAAのようです
:2017/12/10(日) 02:13:25 ID:x6tLqRJo0
これどうなったん?
815
:
名も無きAAのようです
:2018/07/10(火) 01:18:35 ID:ALgkWxhI0
待ってる
816
:
名も無きAAのようです
:2018/07/14(土) 00:02:27 ID:WN1Yo6LI0
もう二年近く休止してたのか
そろそろ続き読みたいな
817
:
名も無きAAのようです
:2018/08/05(日) 05:50:48 ID:6IZ1vrHY0
待ったよ
818
:
◆gFPbblEHlQ
:2020/09/29(火) 22:48:06 ID:45y81Xzo0
投下します
819
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 22:49:11 ID:45y81Xzo0
――VIP高校 屋上
保健室から貞子さんを連れ出し、屋上に戻って転校生二人の死を説明する。
始末屋に関する情報もすべて話した。
この一件の原因は、彼らを甘く見ていた私の落ち度でもあるのだ。
( ^ω^)「……蘇生は無理なのかお?
死体も五体満足だし、アンタなら何とかできそうだお」
川д川 「……死体、やっぱりそう見えるのよね」
転校生達の傍らに膝をつき、血も気にせずに彼らの体を調べる貞子さん。
彼女はブーンに訝しげな視線を送り、少し逡巡してから立ち上がった。
川д川 「お嬢様にも同じように見えていますか?」
ξ;゚⊿゚)ξ「……ごめんなさい。質問の意図が分からないわ」
川д川 「……だったらますます奇妙だ。こんなものは初めて見た……」
後から来たにも関わらず、貞子さんは早くもなにかを察知したらしい。
こういう時に頼れる大人が居てくれるのは本当に助かる。
ほんの少し、肩の力が抜けてくれた。
ξ゚⊿゚)ξ「何か気付いた事があるの?」
川д川 「ええ。気付いたというか、いや、どう言ったものか……」
.
820
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 22:50:53 ID:45y81Xzo0
彼女はしばし口ごもってから、慎重に選び抜いた言葉で質問に答えた。
川д川 「……催眠、の一種とでも言いましょうか」
( ^ω^)
ξ゚⊿゚)ξ「……?」
川д川 「“我々の状態”を一言で表すなら、やはり催眠だと思います。
内藤も、お嬢様も、そして私自身も。
今まさに、私達は催眠にかけられている状態なのです」
川д川 「しかも更に異常がありまして……ひとまず、お嬢様も彼らに触れてみて下さい」
ξ;゚⊿゚)ξ「……死体に触るのね。まぁ、貞子さんが言うなら……」スッ
私は死体の傍で膝を折り、男の死体にそっと手を触れた。
ヌルい血が手に張り付く。恐怖を帯びた冷たさが、私の体に染み込んでくる。
ξ;゚⊿゚)ξ
ξ;゚⊿゚)ξ「……え」
ところが、私の手先は小さな動きを感じ取っていた。
死んでいる人間には無いはずのもの――脈動。
そうとしか呼べない鳴動が、この『死体』にはまだ残っていたのだ。
.
821
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 22:52:37 ID:45y81Xzo0
川д川「……お分かりでしょう。彼らはまだ死んでいないんです。
口に手を当てれば呼吸があるのもハッキリ分かります」
ξ;゚⊿゚)ξ「……ならすぐにでも治療を!」
川д川「それが出来ないんです。
彼らは我々の見地外の方法で、『死んでいるという事にされている』 のです」
ξ;゚⊿゚)ξ
よく分からない。
川д川「事実として生きている。鼓動も呼吸もある。
しかし、私は今でも彼らの死を確信したままです。
お嬢様達もそうではありませんか?」
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
貞子さんの言った通り、私はまだ彼らの死を確信していた。
種族の別あれど、全ての生き物は生死を見分ける本能的な力がある。
生存を確認した今でもそれが機能していないのは、明らかな異常だった。
川д川「死体からの蘇生ならともかく、私には『生者を蘇生する方法』が分からない」
川д川「損傷を直すだけなら最初に済ませています。
それこそ、死体が動き出してもおかしくないくらいの措置を」
.
822
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 22:54:03 ID:45y81Xzo0
ξ;゚⊿゚)ξ「……それは、つまり?」
いまいち言葉を呑み込めなかった私は貞子さんに弱々しく問い返す。
二人は生きている、致命傷への処置もした、なのに『死んでいる』。
結果だけを突きつけるような理解させる気のない押し付けに、私は冷静な思考力を失いつつあった。
川д川 「方法は分かりませんが、現実と認識が明らかに噛み合っていません。
『現実が認識を作る』という絶対的な順序が覆されている、ような……」
貞子さんは言葉を選びながら、濁しながら私達に説明する。
それはきっと正解ではないだろうけど、今この瞬間の寄る辺としては十分すぎる推測だった。
( ^ω^)「それじゃあまるで、夢の中にでも居るみたいだお」
ξ;゚⊿゚)ξ(……夢、)
夢の中。
その言葉で、私はなにかを思い出せそうだった。
ξ;-⊿-)ξ(誰かが、そんなことを言ってた気が……)
記憶の再生にノイズが奔る。
顔も名前も曖昧になってしまった何かの記録が、私の脳裏に言葉を捏造する。
【 ツンちゃん先輩はもしかして、今まさにXXXXを脱出中なのではありませんか? 】
……必要のない想起だった。
私は胸をなでおろし、やけに重たく感じる頭を両手で揉みほぐした。
ξ;゚⊿゚)ξ「……でも、それでも生きてるなら見殺しには出来ない。
二人がこうなった原因には私も絡んでる。助けるべきよ」
川д川 「……では二人を預かります。
生死不明のままでも意思をもって動けるよう、やってみます」
我ながらワンパクなお願いをしたものだが、貞子さんは無茶を承知で引き受けてくれた。
ひとまず安心――なんて、マヌケなことを言っている余裕はない。
問題は山積みなのだ。たとえば――
ξ゚⊿゚)ξ
――あれ、そういえば、私は何をしていたんだっけ。
記憶が無い。思い出せなかった。
.
823
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 22:55:03 ID:45y81Xzo0
('A`)「……どういうこったよ、おい」
ξ;゚⊿゚)ξ「あ、ドクオ」
途端、その声に気付いて振り返る。
私の背後に現れたドクオは、すごく敵意のある感じでブーンを睨んでいた。
貞子さんの気配に気付いて授業を抜けてきたのだろう、彼は早くも怒りを露わにしていた。
('A`)「ほんの一瞬でこの有様か。役に立たねぇな、お前……」
ドクオが私を無視してブーンに詰め寄っていく。
彼は乱暴にブーンの胸ぐらを掴み上げ、この失態を咎めるように重苦しく沈黙した。
しかしこの程度の暴力はまったくの無意味。しばしの間、二人はまったく顔色を変えなかった。
( ^ω^)「……僕は魔王城より先に、一人でここに来てたお。
あいつは勝手に来ただけだし、最悪ここで」
('A`)「自分が殺されてた、だから俺に責任はねえって話か。
保身が上手いなァおい。デブが」
( ^ω^)
(^ω^)
ξ゚⊿゚)ξ
デブと言われて黙るブーン。
およそ事実なので何も言い返せない。
.
824
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 22:56:10 ID:45y81Xzo0
( ^ω^)「……そんなの言いがかりだお。
僕は雇われだし、知ったこっちゃない」
話を戻し、ブーンはドクオの手を払い除けた。
( ^ω^)「そもそも、こっち側の人間には傷一つ無いのが分からないお?
主人を置いて授業受けてたマヌケが後出しでほざくなお」
('A`)「じゃあお前の仕事は何なんだよ。護衛役の俺や、貞子さん達のサポートだろうが。
なのにだ、たった数分ツンを守る事も出来ないお前の存在意義は一体なんなんだ?
無責任な仕事で一丁前を気取るなよ。ツンが許してるからって――」
ξ゚⊿゚)ξ「……そこまでにして」
私は息を呑み、感情を消して言った。
ξ゚⊿゚)ξ「二人共、今の発言を全て撤回しておいて。今じゃなくていい」
ξ゚⊿゚)ξ「この一件の原因は『始末屋』に関する情報共有を怠った私にもある。
反省するべきなのよ、私達は全員ね」
ξ゚⊿゚)ξ「それでも批判があるなら私に言いなさい。
私だけ棚上げされるのは不愉快よ」
('A`)
( ^ω^)
二人が私に言い返せないのを分かった上で、私は力技で二人を仲裁した。
こういう喧嘩はよくある事で、あまりに度が過ぎた時は『魔王の娘』という立場を利用するしかないのだ。
立場を利用して友人達の言葉を握り潰す。やり方は不誠実だが、今はこれでいい。
ξ゚⊿゚)ξ「……何もないなら始末屋の話をさせて。
たぶん、私達はもう巻き込まれてる気がするから……」
('A`)「……分かりました」
( ^ω^)
.
825
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 22:56:57 ID:45y81Xzo0
「おお〜い、ドクオ〜〜」
ξ゚⊿゚)ξ ?
――かくして話を進めようとした直後、扉の方からマヌケな呼び声が聞こえてきた。
そうだ、そういえばもうとっくに授業が始まっているのだ。
勇者だ魔王だとはいえ、今の私達は学生という身分に収まっている。
( ^ω^)「これ、見られたらヤバいんじゃないかお」
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
ブーンはそう言いながら屋上を一望し、現状を再確認するよう私達に促した。
血肉がブチ撒けられた校舎屋上、そのド真ん中に横たわる転校生二人。
しかも私と貞子さんは手に血がべっとりとついていて、つまり犯罪臭がヤバい。
これはまさしく学生の身分にあるまじき状況――
('A`)
ξ゚⊿゚)ξ
つまり事案である。
川; д川 「――急いで散開ッ! 転校生は私が運びますので!」 バッ!
貞子さんは転校生達を担ぎ上げ、颯爽と屋上のフェンスを飛び越えていった。
(;'A`)「いやでも血の跡どうすんだよ!?」
ξ;゚⊿゚)ξ「ブーン! どうにかしなさい!」
(; ^ω^)「人使い荒いお……」 パクッ
ブーンは小言を漏らしつつ、激化薬を飲み下した。
.
826
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 22:57:38 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「おお〜い……、って」
ξ;゚⊿゚)ξ
('A`;)
( ^ω^)
――ブーンの激化能力は『復元』。
激化能力って覚えてる? 私は今さっき思い出した。
本物に及ばない偽物を作る能力だが、今この瞬間において真偽は二の次である。
(´・_ゝ・`)「……何やってんの? お前ら」
(;'A`)「……何って、見ての通りランチだよ、ランチタイムだ」
ξ;゚⊿゚)ξ「そうそう。私が呼び出したのよ」
私達はブーンが復元したレジャーシートに腰を下ろし、さも昼食中で〜すb(^_^)dという体でこの場を乗り切ろうとしていた。
弁当箱は一つも無いが、これなら辛うじて誤魔化しきれるはず。
ぶっちゃけ大きさが足りなくて血肉がちょっと漏れているが気にしないだろう。
.
827
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 22:59:26 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`)「まぁいいけどさ。いきなり教室出てかれるとビックリするんだよね」
(´・_ゝ・`)「分かる? 物事には理路が必要なんだ」
(´・_ゝ・`)「急にさあ、投げ出しちゃあ駄目だよね。4年もさぁ……」
嫌味ったらしく注意するのは私達のクラスの、……委員長の、盛ナントカ君だったと思う。
上手く思い出せないけど私と彼は喋った事もないし仕方ない。
向こうは根暗、こっちは魔王だ。そりゃあ会話もない。
(;'A`)「あーはいはい悪かったよ。ツン、戻ろうぜ」
ξ;゚⊿゚)ξ「そ、そうよね! そうしましょ」
私とドクオは腰を上げて屋上を去ろうとする。
かなり際どい隠蔽工作だったが十分に事なきを得たようである。
ξ;゚⊿゚)ξ チラッ
( ^ω^)” コクン
そしてアイコンタクトでブーンに後始末をお願いする。
後でちゃんとお礼を言っておかねば……。
.
828
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:00:06 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「……あれ。魔王城さん、手に血が……」
ξ;゚⊿゚)ξ「ギクゥ!!」
('A`)「これはケチャップだよ。ツンは昼飯にケチャップを一本飲み干すんだ」
(´・_ゝ・`)「ははは、クソ英文みたいな趣味だな」
とんでもない誤解と納得と哀れみを受けた気がするが、誤魔化せたっぽいのでよかった。
ξ゚⊿゚)ξ「よし」
(´・_ゝ・`)「なにが?」
ξ゚⊿゚)ξ
(´・_ゝ・`)「おっと、同じ描写をしてしまった」
ξ゚⊿゚)ξ「……なにが?」
(´・_ゝ・`)「なんで〜もないや、やっぱりなんでもないや。
このやり取りを忘れてても仕方ない。時間が経ちすぎてる」
ξ゚⊿゚)ξ ?
(´・_ゝ・`)「ほら、早く教室に戻ろう。この話が続くよう頑張ってきたんだから」
ξ゚⊿゚)ξ「……?」
……なんだろう。どこかに違和感があるぞ。
思い出すのが難しいので諦める。私は足早に教室に戻った。
.
829
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:00:58 ID:45y81Xzo0
〜賞味期限から四年経ったパンによる場面転換〜
_
(⌒⌒⌒).) カビダラケダオ
|^ω^ |:|
──| :::|:|‐─―─('A`)―──
 ̄ ̄ ̄~ ノ(ヘヘ タベキルゾ
.
830
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:01:58 ID:45y81Xzo0
〜放課後〜
ξ゚⊿゚)ξ「いやー色々あった」
夕焼けとか部活とかそれっぽい下校風景を眺めながらテクテクと帰る、そんな私は魔王城ツン。
こっちはドクオとブーン。昼間のこともあってギスギスした空気で辛い。
こいつら一体私をなんだと心得ているのか。魔王城ツンだぞ。もっと接待をしろドリクラのように。
('A`)「……途中でコンビニ寄りませんか。
今日の事を話し合うなら菓子のひとつでもあった方が……」
( ^ω^)「呑気にお茶を飲むような場にはならないお」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね、じゃがりこの一つでも買っていきましょうか」
じゃがりこを一本あげれば二人の機嫌も治るだろう。
.
831
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:03:08 ID:45y81Xzo0
〜ツンちゃんの家〜
ξ゚⊿゚)ξ「ただいま〜」
ミセ*゚ー゚)リ「おかえりなさい!」トテトテトテ
ξ゚⊿゚)ξ
家に帰ると、お父さんではなくミセリさんが出迎えてくれた。
それ自体にはさして疑問を抱かない。だが、どういう訳か彼女は全裸であった。
一行上を読み飛ばしてしまった人に向けてもう一度書いておくと、ミセリさんは全裸だった。
ミセ*゚ー゚)リ「疲れたでしょう。さぁまずは服を脱ぎます」
ξ゚⊿゚)ξ「服を着て」
.
832
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:04:08 ID:45y81Xzo0
ξ゚⊿゚)ξ「お父さんは?」 トコトコ
ミセ*゚ー゚)リ「ハインリッヒが王座の九人を掴まえたらしいから、それを引き取りに。
あ、後ろの二人もおかえりなさい。貞子に聞いたけど大変だったわね」
('A`)「そうなんすよ……また悩みの種が増えて……」 トコトコ
(^ω^)
('A`)
('A`)「……おい、なにミセリさん見てんだよ」
ミセリさんとドクオは同じ魔族。
今更、同族の全裸くらいで大した反応はしない。
(^ω^)「…………」
しかしブーンは違った。彼はムッツリどスケベ少年ボーイだった。
ミセリさんの全裸が人体のものであるならば、それをガン見しない道理はなかった。
やはり人間は度し難い。これからはもっと気を遣おう。
.
833
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:05:34 ID:45y81Xzo0
ξ゚⊿゚)ξ「ミセリさん、私はしばらく部屋に居るから。
お父さんが帰ってきたら教えて」
ミセ*゚ー゚)リ「はーい。夕飯のリクエストとかあります?」
ξ゚⊿゚)ξ「多種多様な揚げ物」
ミセ*゚ー゚)リ「オッケー! この姿で揚げ物ってことは、油跳ねで死ねということね!」
ミセリさんはパワフルな変態だった。
('A`)「おい、いつまで見てんだ。俺らも行くぞ」
(^ω^)「あ? あ、おお……おっほ……」
ξ;゚⊿゚)ξ「……え、いや男が私の部屋に入れる訳ないでしょ。二人はリビングで待機よ。
許可なく入ったら誰だろうが半殺しだからね」
私はそう言い、ついて来ようとする二人を制止した。
ミセ;゚ー゚)リ「べ、別にちょっとくらいよくないですか……」
ξ゚⊿゚)ξ
制止したのだが、とっくに私の部屋に侵入してた者が居るらしく、手遅れだった。
.
834
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:06:55 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「なんだ、今日は帰りが早いな」
ξ゚⊿゚)ξ「――あ、兄さん」
こっちの会話に聞き耳を立てていたのか、デミタス兄さんが玄関の方にやってきた。
全裸の現役教師が自宅で兄さんと二人きりだった事実から目を逸らし、私は小さな溜息を吐く。
ξ;゚⊿゚)ξ「そうなのよ、今日は色々あったのよ。あとで兄さんも聞かされると思うけど」
(´・_ゝ・`)「そりゃあ大変だったな。俺も今まで目のやり場に困り続けてたけど」
ほがらかに言い、デミタス兄さんはドクオ達に視線を向けた。
そういえばデミタス兄さんが二人と顔を合わすのは初めて、初めてだった気が
(´・_ゝ・`)「やあどうも。今日も三人とも仲良し小好しマツモトキヨシだね。
えっ違う? てめーらさてはドンキ派か」
(´・_ゝ・`)「内藤君は初めまして。兄の魔王城デミタスだよ、よろしく」
兄さんがブーンに片手を差し出す。
しかし、ブーンはこの友好の合図をすぐには受け取らなかった。
( ^ω^)「……」
ブーンは兄さんを凝視している。
まさか初見で嫌悪したのか、ブーンは兄さんに対してあまり良い印象を持たなかったようだ。
まぁ、それも仕方ないなと私は思った(私もあまり兄が好きではないので)。
.
835
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:07:53 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「やっぱりお前がバグか」
( ^ω^)「……は? なんの話だお?」
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`)「さて、どう転がしたもんか」
兄さんは困り顔で握手を諦め、行き場を失った手を腰に当てた。
その意味ありげな仕草は、……しかしまったく意味が分からない。
兄さんは時々こうして意味不明な態度を取る。メタ視点系の中二病なのかもしれない。
ξ゚⊿゚)ξ「……じゃあ、まぁ二人はミセリさんに服を着せといて」
(^ω^)「フヒヒ分かったお!」
('A`)「ほらもうミセリさん、全裸だとモラルを疑われますよ」
ミセ*゚ー゚)リ「あ、私の服はお嬢様のお部屋にあるので……」
ξ゚⊿゚)ξ「なんで?」
ミセ*゚ー゚)リ「お嬢様の古着でコスプレしてたんですよ。胸がキッツイのなんの!」
ξ゚⊿゚)ξ「あなたの服は窓から捨てておきます」トコトコ
私は一人階段を上がっていき、心落ち着くマイルームに入った。
これでやっとこさ一息つける。今日はちょっと疲れてしまった。
今日一日で4年分くらい疲れてしまった。4年なんて経ってないのに不思議だ……。
ξ;´⊿`)ξ「ふー…………」
大きな溜息、大きな背伸び。
束の間の自由と開放感に、私はデカすぎる欠伸を我慢できなかった。
.
836
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:08:34 ID:45y81Xzo0
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「よし、脱ぐか」グッ
〜ここで脱衣シーンのCGが入る〜
ξ゚⊿゚)ξ「よし」
制服から部屋着に着替えた私は魔王城ツン。
強いて言うならば部屋着の魔王城ツンである。強いる必要は特にない。
(´・_ゝ・`)「おお〜い」 ガチャッ
ξ#゚⊿゚)ξ「あ! ちょっとノックくらいしてよ」
と、いきなり部屋に入ってきたのは三十路のおじさんだった。
この人は盛岡デミタスおね、……いや、お兄ちゃん、兄さん?
まぁ血縁者の誰かだろう。ともかくこの人はデミタス、私にとって何らかの関係者だ。
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`)「ここまで壊れてると会話も成り立たないな」
ξ゚⊿゚)ξ「?」
彼は一人で何か呟いている。声は聞こえたが意味は分からない。
そうだ、デミタスは隣の家に住んでる幼馴染だった。
しばらく会っていなかったので、すっかり存在を忘れていた。
.
837
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:09:36 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「――まどろっこしいから端的にいくぞ」
(´・_ゝ・`)「俺は盛岡デミタス。お前とは完全に他人で、昨日会ってるぞ」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ;゚⊿゚)ξ「……えっ?」
私は首を傾げてデミ君を見返す。
だって私達は将来を誓い合った幼馴染みで、昨日だって一緒にピクニックに……
(´・_ゝ・`)「よく見ろよ俺を。ただのおじさんだぞ。
なんだよクラスメイトって、なんだよ兄さんって」
ξ゚⊿゚)ξ
(´・_ゝ・`)「思い出せ」
ξ;゚⊿゚)ξ「……ああ?」
(´・_ゝ・`)「ほら出かかった! いいぞ!」
ξ;゚⊿゚)ξ「昨日、って、……いつ?」
(´・_ゝ・`)「2016/09/06(火) 10:45:25」
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
(´・_ゝ・`)「おも、思いだ、思い出し〜〜〜〜」
ξ゚⊿゚)ξ
(´・_ゝ・`)「〜〜〜いや早く思い出せよ」
.
838
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:10:48 ID:45y81Xzo0
ξ;゚⊿゚)ξ「……あ、ああ〜?」
何言ってんだコイツと断言したい手前、私の脳裏には変な違和感が引っ掛かっていた。
それを解こうと、私は想起できる全ての記憶を反芻していく。
――盛岡デミタス。
なんとなく、私はこの名前をどこかで聞いたことが……。
(´・_ゝ・`)「……思い出した?」
ξ;゚⊿゚)ξ「あの……もッ、盛、モリモリ、モリモリクソ野郎……」
(´・_ゝ・`)「名前は今言っただろ。藤森だよ」
ξ゚⊿゚)ξ「盛岡じゃないの?」
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`)「盛岡で大正解だよ。やっと思い出せたか」
ξ;゚⊿゚)ξ「……色々思い出せそうなのに思い出せないのよ。
あなたが変質者や不審者の類語なのは確かなのに……」
(´・_ゝ・`)「その類語辞典は焚書対象だな」
.
839
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:11:56 ID:45y81Xzo0
Σξ;゚⊿゚)ξ ハッ
ξ;゚⊿゚)ξ「盛タス!! そうだ、いつかの不審者!!」
(´・_ゝ・`)「山盛りのレタスみたいな略称をありがとう。
俺は盛岡デミタス41歳バツイチ」
(´・_ゝ・`)「今日は俺の能力、……というか性質を説明しに来た。その他質問も受け付けます。
ちょっと話がもつれてな。4年間の空白踏まえ、お前らを『4周目』に送れってさ」
ξ;゚⊿゚)ξ「……? ??」
(´・_ゝ・`)「……おいおいもう思い出していいだろ。
あのな、やろうと思えば設定変えて相思相愛カップルにもなれちゃうんだぞ?」
(´・_ゝ・`)「ま、その場合は『ウニ抜き』の相思相愛だけど」
ξ;゚⊿゚)ξ「いやもう思い出したわよ。ただ理解が追いついてないだけ。
これ以上キモいこと言ったら警察呼ぶからね」
(´・_ゝ・`)「ウを二つ抜いて粗思粗愛。これどう?
上手いこと言えてる? お前の年代こういうの好きだろ」
ξ;-⊿-)ξ「……用があるなら下に行きましょう。みんなに紹介するから」
(´・_ゝ・`)「ああよろしく頼む。俺もやっと本題に入れて嬉しいよ」
(´・_ゝ・`)「世界平和が揺らいでるんだ。こうしちゃいられねえ」
こいつら始末屋は本当に、前置きというものを一切用意してこない。
第三者が私の世界を掻き回している現状にも、これで少しは説明がつけばいいのだが……。
.
840
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:13:06 ID:45y81Xzo0
_人人人人人人人人人人人人人人_
> それからどしたの <
 ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^^Y^ ̄
ヘ(^o^)ヘ
|∧
/
(???)
ノ(ヘヘ
.
841
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:14:15 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「――初めまして。盛岡デミタスです」
という前置きを理解させるのに三十分くらい掛かった。
まったく意味不明だが、彼には『自身を異様に曲解させる』といった性質があるようだった。
(;'A`)「――嘘だろ、俺のオヤジじゃねえのか!?」
(´・_ゝ・`)「違います」
ミセ*゚ー゚)リ「じゃあ私は未だに独り身なんだ」
(´・_ゝ・`)「元カレ設定も勝手に湧いただけで……」
( ´ω`)「ハムエッグ(※1)が帰ってきたかと思ったお……」
(´・_ゝ・`)「ハムエッグは実家に帰ったよ」
ξ;゚⊿゚)ξ(……これは一体、どういう物語なの……?)
各々が何かしらの形で盛岡デミタスを誤認している状況に、なんとか区切りをつけて一息。
それからようやく、私達は盛岡デミタスの話を聞き始めた。
※1 ブーンが昔飼っていたハムスター
.
842
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:15:37 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「――という事で、改めましてこんばんは」
(´・_ゝ・`)「俺の名前は盛岡デミタス。
知っての通り、インフィニティ・モンキーズの一員だ」
('A`)
( ^ω^)
(;'A`)「……知ってるか?」
(; ^ω^)「知らないお……」
(´・_ゝ・`)
ξ゚⊿゚)ξ
(´・_ゝ・`)「……そういやここではなんて名乗ってたっけ。
101号室の猿? 延命財団? 悪魔の代行者? ポンキッキーズか?」
ξ;゚⊿゚)ξ「ほらあれよ、始末屋。……だったと思うけど」
朧気な記憶からそう答えてやると、デミタスはポンと手を叩いた。
(´・_ゝ・`)「ああ〜それだ! いや名前が多くて困ったもんだよ。
そうそう始末屋、完璧思い出した。いや時の流れは残酷だ」
(´・_ゝ・`)「よし、俺は始末屋のデミタスだ。俺もいよいよ危ないな」
.
843
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:16:19 ID:45y81Xzo0
ξ;゚⊿゚)ξ「――はい! 前途多難はここまで!!」 バンバン!
私はテーブルを叩き、これ以上の困惑が起こる前に彼に問い掛けた。
ξ;゚⊿゚)ξ「いい加減さっさと状況を理解したいの!
さっさと5H1Wで答えなさいよ!」
(´・_ゝ・`)「――いや待て」
ξ;゚⊿゚)ξ「なによ!?」
(´・_ゝ・`)「5H1Wって、それ逆じゃねえか?」
ξ゚⊿゚)ξ「えっ」
('A`)「5W、1Hだな」
ξ゚⊿゚)ξ
.
844
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:17:17 ID:45y81Xzo0
ξ;゚⊿゚)ξ「――うおおおお!! 前途多難はここまで!!」 バンバン!
( ^ω^)(無かった事にされたお)
ミセ;*゚ー゚)リ(お嬢様……素で言ったのですか……)
ξ;゚⊿゚)ξ「盛岡デミタス! まずは貴方の能力を晒しなさい!
私達の誤認も大体貴方のせいなんでしょう!? いい加減にしてよ!」
(´・_ゝ・`)「……ま、察しの通りでそのとおり」
私の怒りを受け流すように、盛岡はさらっと答えてくれた。
(´・_ゝ・`)「お前達の誤認は確かに俺が原因だ。ごめん。
でも昼間の惨劇をやったのは『彼女』の方だ。より正確には※パーフェクト・検閲※だが」
(´・_ゝ・`)「まぁその展開はいつか来るとして、俺の能力――便宜上“能力”と呼称するが、」
(´・_ゝ・`)「俺に今適応されてる能力は、“無駄な因果を結ぶ能力”だ」
ξ゚⊿゚)ξ …?
(´・_ゝ・`)「特に意味のない何かを、特に意味もなく発生させたり引き寄せる能力、性質。
そういうものが今の俺にはある。形容しがたい話だけどな」
(´・_ゝ・`)「例えばそうだな、……俺達が最初に会った時、なんか俺の近くに居ただろ」
ξ゚⊿゚)ξ「いつの話よ」
(´・_ゝ・`)「
>>733
」
ξ゚⊿゚)ξ「なるほど」
.
845
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:17:58 ID:45y81Xzo0
何か居ただろ、ってそんな藪から棒に――
.r=====b
[]υ_σ[]
ξ゚⊿゚)ξ「――あっ」
いや、そういえばなんか居た。
(´・_ゝ・`)「そうそう、それそれそれ」
(´・_ゝ・`)「……でもな、あのヘッドホン付けてたアレな?
俺にもあいつが何だったのか、サッパリ意味が分からないんだよ」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ;゚⊿゚)ξ「ちょっと待って、あんたも意味が分かんないって……。
あんた、どれだけ私達に疑問符を使わせる気なのよ」
(´・_ゝ・`)「どう説明してもこうなるし、4年も経てば当然だ。頑張ってくれ」
.
846
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:18:45 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「あいつは俺とは一切無関係で、アレはただあの場所に居ただけの何か」
(´・_ゝ・`)「俺への誤認も似たような感じでさ、とにかくそういう性質ってことで理解してくれ。
俺自身に変な力は無いが、なんか意味ありげなものが俺の近くに湧いて出るんだ」
(´・_ゝ・`)「擦れ違っただけで俺に一目惚れするヤツが居たり、
適当なリゾートバイトに行っただけでヤバい目に遭った事もある」
(´・_ゝ・`)「エッチな洗脳アプリがスマホに入ってた事もある」
Σ(; ^ω^)「エッチな洗脳アプリ!?」 ガタッ
(´・_ゝ・`)
(^ω^) ヘヘッ
.
847
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:19:34 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「あとなんだろ……分かりやすい仕事となると呪物の処理とかだな。
勝手に色々縁ができるもんだから、まぁとにかく色々やってるんだよ」
ξ;゚⊿゚)ξ「……それってめんどくさそう」
私の感想は、ただひたすらシンプルに『面倒そう』で終わってしまった。
つまりは自分を中心に何かが起こる能力。
確かにそれなら能力と呼ぶより、体質とか、性質と呼んだ方が適切だろう。
――世界の中心を揺るがす能力、なんて形容を思いつく。
魔王城ツンの記憶からその形容は即時抹消されました。
(´・_ゝ・`)「ああ面倒だ。いちいち構ってたら身が持たねえくらい面倒だ。
だから俺はこういう面倒事を、すべて『仕事』って事にして処理してる」
(´・_ゝ・`)「仕事と報酬、需要と供給。いわゆる等価交換だな。
それらを円滑に循環させて、辛うじて正気を保ってるんだ」
盛岡は気だるげにジェスチャーしながら持論を語る。
これが彼なりの人生哲学なのだろう。すごいなぁと私は思った。
ξ゚⊿゚)ξ(すごいなぁ)
.
848
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:20:23 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「……って感じ。要するに『人生はクソ』って話だよ。
運命への接客はもう命懸けだよ大変だよ」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「なんかめちゃくちゃ面倒な人生を送ってきたのね」
(´・_ゝ・`)「分かってくれるか、犬も歩けば棒に当たるマンと呼ばれた俺の気持ちを」
――結論。
盛岡デミタスは『運命の被害者』であり、それを自覚している人物だった。
必然的に超安定志向。
プラスを大きくするのではなく、マイナスを排除するという考え方、生き残り方。
勝つためではなく、負けないための戦い方をデミタスは徹底している。
戦士ではないが策士。勝ちはないが負けもしない。
彼は一時的な勝利より大局の勝利を優先し、そして結果的に生き残るような男だ。
なるほど、あの面倒臭さの塊みたいな『彼女』が傍に置くわけだ。
盛岡デミタス。きっと彼でなければ始末屋の仕事は務まらないのだ。
始末屋については未だによく分からないが、ひとまず彼のことは信用してもよさそうだ。
ξ゚ー゚)ξ(ふふ、なーんだ。いいトコあんじゃん……)
やっぱりデミタスは凄い、そう思っ――――
.
849
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:21:04 ID:45y81Xzo0
ξ゚⊿゚)ξ「…………ん?」
と、なんか思考があらぬ方向に走っている気がして、私はピタリと思考を止めた。
なんかおかしい。絶対なんかおかしい……。
ξ゚⊿゚)ξ
Σξ;゚⊿゚)ξ「――ちょっと待った! またなんか認識がおかしかった!」
('A`)「やっぱすげえなデミタスさんは」
( ^ω^)「すごいお!」
(´・_ゝ・`)「へへっよせやい」
ヘ('∀`)ノ 「おいおい謙遜してんぜ伊達男がよ!」
( ^ω^)「なに言ってんだお! デミタスさんは本当に凄い人なんだお!」
ξ;゚⊿゚)ξ「この過大評価は絶対おかしい! 二人とも目を覚ましなさい!」
(´・_ゝ・`)「これもう勝手にこうなるんだよ。耐性つくまで頑張ってくれ」
('A`)「そうだぞ! デミタス王に無礼を働くバカツンめ!」
ξ;゚⊿゚)ξ「王!?」
(´・_ゝ・`)「こりゃ魔王扱いも近いな」
( ^ω^)「すごいお!」
(´・_ゝ・`)「いやぁ」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「ミセリさん、二人の股間を蹴り潰して」
ミセ*゚ー゚)リ「了解しました」
.
850
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:22:22 ID:45y81Xzo0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
(´・_ゝ・`)「――ってな感じで、俺のアレは説明終わり」
(´・_ゝ・`)「彼女いわく 『超因果体質』 とかなんとか。世界との無関係を許されねーのね。
とにかく俺自身まったく求めてないそういうアレが俺にはあるのでした。了」
ミセ*゚-゚)リ「……それで、ようやく話が進むのだけれど」
(; A )(; ゚ω゚) オァァ....
股間を押さえて悶絶する二人をさておき、ミセリさんは声色を落として話し始めた。
ミセ*゚-゚)リ「昼間、『彼女』と呼ばれる何者かは堂々と殺人、……に近い何かをした。
にも関わらず、貴方が何の見返りもなく我々の味方になるというのはありえない」
ξ゚⊿゚)ξ「……ミセリさん、真面目になるなら服を着て。というかなんでまだ着てないの」
ミセ*゚-゚)リ「今はそれどころではないのです。お嬢様、口を挟まないでいただけますか」
ξ゚⊿゚)ξ
服を着てほしいだけなのに。
せめて地の文の中だけでも服を着てもらおう。ミセリさんは服を着ました。
.
851
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:23:02 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「……彼女か、とりあえず彼女は盤面を下りたよ。
もう彼女は現れない。その辺の心配は無用だ」
(´・_ゝ・`)「昼間の二人については……まあ保留だな。
その内、適当な時に何とかしとくから安心してくれ」
(´・_ゝ・`)「あれは緊急措置として別ルートに放り投げた。
敵にあいつらを利用されると本当に厄介になる。まぁ大丈夫だから、ほっとけ」
ξ;゚⊿゚)ξ「……はぁ」
それっぽい事を言いつつ、しかし死ぬほど曖昧な物言い。
最早この物語に呆れつつある私は溜め息をつき、デミタスの言い分を仕方なく呑んだ。
この適当な納得ですら、彼の性質による根拠の無い判断なのだろうけど……。
ξ;-⊿-)ξ「……とりあえず、とりあえずとしか言いようがないけど……」
ξ;゚⊿゚)ξ「私達は昼間の事は忘れないし、貴方達への信用も半疑のままよ。
だから引き続き王座の九人はもちろん、私達は勇者軍との敵対を続ける」
(´・_ゝ・`)「……それで?」
ξ;゚⊿゚)ξ「……貴方のことは情報源として見逃してあげる。
だけど、少しでも余計なことしたらその時点で敵だから」
(´・_ゝ・`)「いいね。それぐらいが楽でいい」
.
852
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:24:05 ID:45y81Xzo0
ミセ*゚ー゚)リ「――で、ここまでの情報の対価として、あなたは我々に何を要求するのかしら。
ここまでの言い振りを顧みるに、……お金?」
ミセリさんが全裸で言う。
全裸でなければ心強いのにな、つらいな。
(´・_ゝ・`)「俺個人が相手ならそれで正解。まぁ大したことも言ってないし、金も取らんが」
盛岡は気だるそうに天井を見上げる。
行間を埋める為だけに喋るのは飽きてるんだ、と俺は世界に介入する。
(´・_ゝ・`)「俺はただの仲介役だよ。点と点を結ぶだけの仲介役。
『彼女』とあんたらの縁を結んだように、今度もまた別人を紹介するだけだ」
ミセ*゚-゚)リ「……その、『今度』というのはどういう意味ですか?」
ミセリさんは『彼女』の存在を強く警戒しているようで、より一層語気を冷たくして言った。
それでもデミタスは意に介さず、自分のペースで話を続ける。
(´・_ゝ・`)「安心しろよ今度のは話が通じる善人だ。『彼女』みたいなゲテモノじゃない」
ミセ*゚ー゚)リ「……」
ξ;゚⊿゚)ξ(信用できねえ……)
.
853
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:24:45 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「まぁ今のあんたらには何も要求しないさ。
どうせもう詰んでるルートだし、聞き流してくれればいい」
ξ゚⊿゚)ξ「一言一句すべて聞き流してるから安心して」
(´・_ゝ・`)「そこまでされると困る。せめて『伊藤』って名前は覚えといてくれ」
ξ゚⊿゚)ξ「わかった」
(´・_ゝ・`)「よし」
.
854
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:25:41 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「……ま、重ねて言うけど言葉は通じる。だから安心してくれ
あと手土産は美味いものにしておけよ。酒があるともっといい」
美味いもの、と聞いて今日の夕飯を思い出す。
そういえばミセリさんには揚げ物を注文していたのだ。手土産にも丁度いいだろう。
ξ゚⊿゚)ξ「なら夕飯の揚げ物とかよくない?
ミセリさん、今日どんぐらい作るつもりだった?」
ミセ*゚ー゚)リ「今日はドクオ達も居るので大量に準備してますよ。
よければ盛岡さん持って帰ります? 伊藤さんとこ」
(´・_ゝ・`)「嬉しいけど対応が家庭的すぎる」
ミセ*゚ー゚)リ「とりあえず時間も時間ですし作り始めますね。
30分もあれば山盛りできますから待っててください」
ξ゚⊿゚)ξ「あーい」 ピッ
つ[]
ミセリさんは席を立ってキッチンの方へ歩いていった。
私も手隙になったので、テレビを点けて暇を潰すことにした。
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`)「……魔王城ツンは、面倒臭くなるとマジで露骨に態度変えてくるよな」
ξ゚⊿゚)ξ「だってもう話は終わったでしょ?
今日は疲れたしさっさと思考停止したいのよ」
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`)「話が終わった、っていうのは面白い冗談だな」
(´・_ゝ・`)「これから※パーフェクト・検閲※が始まるってのに」
.
855
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:26:22 ID:45y81Xzo0
ミセ*゚ー゚)リ「盛岡さんビール出しますかー?」
(´^_ゝ^`)「あ、飲みますぅー!」
ξ゚⊿゚)ξ「私にも一本ちょうだーい!」
ミセリさんが持ってきてくれたビールを開け、私達はささやかに乾杯した。
なお魔界に未成年飲酒を禁じる法はない。合法飲酒である。
.
856
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:27:46 ID:45y81Xzo0
* * * * *
そんなこんなで数十分後、誰かがうちに帰ってきた。
「ただいま〜」と言いながらリビングに入ってきた人は、間違いなく私の父・ロマネスクだった。
( ФωФ)「おお〜やっているな。今夜は大所帯であるか」
ξ゚⊿゚)ξ「おかえり。こちら盛岡デミタスさん、要約すると誤解製造機よ」
(´・_ゝ・`)「座ったままで失礼、お構いなく」
( ФωФ)「……うむ。久し振りであるな」
(´・_ゝ・`)「……おやおや何を仰る。我々、初対面ですが」
ξ;゚⊿゚)ξ「……ああそっか。お父さん、あのね……」
『久し振り』という誤認を解こうと、私はまた最初から盛岡の性質を説明しようとした。
しかしお父さんは聞く耳を持たず、当然のように盛岡と握手をしてみせる。
( ФωФ)「安心しろ。こいつの力は知っている。
ツンちゃんは知らんだろうが、こいつは元魔王軍で顔馴染みだ」
(´・_ゝ・`)「そんな覚えはございませんがね」
盛岡はビールを煽って目を逸らす。
嘘八百を背負ったこの男にも、どうやら弱点と呼べる過去は存在するようだった。
ξ;゚⊿゚)ξ「貴方、どれだけの組織を股にかけてるのよ……」
(´・_ゝ・`)「必要最低限」
( ФωФ)「何十代にも渡って魔王の側近をやっている男だ。
上手く付き合うコツは直視しないこと、真に受けないこと」
ξ゚⊿゚)ξ(盛岡デミタスの年齢計算が大変なことになった)
(´・_ゝ・`)「やめろやめろ、この展開はもう無いんだよ」
それ以上追求するなと言わんばかりに、彼は小さく呟いた。
.
857
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:29:52 ID:45y81Xzo0
突然続きを投下してごめんね。でも本当です
次回は終末くらいに投下します。それで3周目は終わりです
以降はファイナル板でやります
1周目
>>2-26
>>39-61
>>74-87
>>101-135
>>176-213
>>223-229
>>280-295
>>368-374
2周目
>>389-414
>>519-553
>>559-592
>>622-648
>>651-654
>>669-681
>>718
3周目
>>728-733
>>742-761
>>768-803
>>819-856
(今回)
858
:
◆gFPbblEHlQ
:2020/10/04(日) 22:15:23 ID:BRHqwzuo0
【IntervEnd:終末解除(オープンワールド)】
.
859
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:16:30 ID:BRHqwzuo0
ξ゚⊿゚)ξ「お父さん、ミセリさん、おやすみ」
( ФωФ)「うむ。今日はよく眠るのだぞ」
ミセ*゚ー゚)リ「お嬢様、おやすみなさい」
ブーンとドクオ、それから幼馴染みのデミタス君も帰っていった夜遅く。
私はお父さん達におやすみを言ってから自室に戻り、この長い長い一日の最後を過ごし始めた。
.
860
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:18:00 ID:BRHqwzuo0
――魔王軍と勇者軍の戦いは、これからもっと熾烈になるのだろう。
そこに介入してきた始末屋だって、未だに目的が分からない。
今は本当に分からない事だらけだ。胸がざわついて、私はどうしようもなく無力を感じる。
ξ;-⊿-)ξ(……自問自答でもしようかな)
不安に駆られた私はちょっとだけ魔力を使い、私自身の力であるゼノ――
ξ゚⊿゚)ξ「……あれ」
――おかしい。魔力が上手く巡らない。
というか、そもそも私は何をしようとしてたっけな。
ξ゚⊿゚)ξ
ξ;゚⊿゚)ξ「……ゼノ、ゼノグラシアだ。そうだ」
私はハッキリと、確かにその名前を口にした。
ゼノグラシア。ウサギさんのような見た目をしていて、とても頼りになる私の相棒。
能力は、確か、……可能性がどうこう、みたいな……。
.
861
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:19:16 ID:BRHqwzuo0
『――――何者かが、この世界の筋道を壊そうとしている』
不意に、言葉を思い出す。
学校の屋上で『彼女』が最後に放ったセリフ。
それを今、この瞬間に思い出したのはなんでだろう。思考が上手く噛み合わない。
ξ;-⊿-)ξ(ダメだ、始末屋のせいで支離滅裂になってるのね……)
自分を説き伏せながら布団に身体を埋める。
おかしい、まるで世界に一人ぼっちになったような気分だ。
メンヘラか? 思春期とはいえ魔王の娘だぞ。
こんなに不安が募るのは、とても気味が悪い……。
.
862
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:21:57 ID:BRHqwzuo0
――ダメだ、やっぱり起きよう。
ξ;゚⊿゚)ξ(たまには夜更ししていいわよね。
今日はちょっとグロいのも見ちゃったし、いいわよね……)
私は布団を脱いでベッドを降り、足早に部屋を出ていった。
階段の電気も点けずに一階へと駆け降り、リビングの明かりに急いで飛び込む。
ξ;゚⊿゚)ξ「……あれ、」
だが、リビングには誰も居なかった。
部屋の電気とテレビは点けっぱなしで、そこに人の気配は残っていない。
まさかお父さんとミセリさんが一緒にお風呂に入っているはずもないし、そんな音も聞こえない。
喧騒はテレビのみ。それがなぜか、ひどく不気味に思えてしまった。
ξ;゚⊿゚)ξ「……ちょっとー! お父さんテレビー! 点けっぱなしー!」
私は無理をして、家中に響く大声でお父さんを呼びつけた。
というか、私はリビングにまで何をしに来たんだっけ?
早く寝たいと思ってた筈なのに……。
.
863
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:23:29 ID:BRHqwzuo0
「……ああ、悪い悪い」
ξ;゚⊿゚)ξ
廊下の方から返事がして、私はドアの方に目を遣った。
一人ぼっちの感覚が薄れて安心を覚える。
この声はお父さんだ、きっと書斎に居たのだろう。
ξ;゚⊿゚)ξ「ちょっとお父さん! テレビ点けっぱなしはダメよ!」
(;´・_ゝ・`)「……ああ、悪いね。どうも……」
しかし、リビングにやってきたお父さんはとても酷い顔色をしていた。
今にも死にそうなくらい顔が青ざめていて、来ている黒スーツはボロボロで。
片足を引きずっていて、血だらけ、傷だらけで。
ξ;゚⊿゚)ξ「――ッ」
その姿を簡単に言い表すとしたら、お父さんは『死にかけていた』。
.
864
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:24:55 ID:BRHqwzuo0
ξ;゚⊿゚)ξ「待って、何があったの!? 敵!?」
(;´・_ゝ・`)「察しがよくてありがたいな。特に今は……」
お父さんはそんな軽口を吐きながら、呆気なく床に倒れ込んでしまった。
私が二階に居た時間はそう長くない。
ましてやその間、一階からの物音なんて一つも聞こえてこなかった。
ξ;゚⊿゚)ξ「なんなのよ……どうしてこんな……!」
私が目を離したのはほんの一瞬、たった一瞬なのだ。
なのに、いったい何が起これば、あの魔神ロマネスクがここまで――
(;´・_ゝ・`)「……魔王城ツン、ゼノグラシアを出せるか?」
ξ;゚⊿゚)ξ「ゼノッ……なによそれ!?
とにかく救急車呼ぶから動かないで!」
(#´・_ゝ・`)「――俺の話を聞け!!」
Σξ;゚⊿゚)ξ ビクッ
今まで聞いたこともない張り裂けるような怒声。
私は思わずよろけてしまって、その場に腰を落とした。
(;´・_ゝ・`)「……って、怒鳴るのはガラじゃねえんだ。
頼む、俺の話を聞いてくれ」
ξ;゚⊿゚)ξ「ご、ごめんなさい、お父さん……」
(;´・_ゝ・`)「……運がいい。その誤認は、利用しやすい」
お父さんは不敵に笑って居直り、近くのソファに寄りかかって大きく深呼吸をした。
.
865
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:25:57 ID:BRHqwzuo0
(;´・_ゝ・`)「もう一度言うぞ、ゼノグラシアを出せ。今すぐにだ」
ξ;゚⊿゚)ξ
ξ;゚⊿゚)ξ「……あの、ごめんなさい、分からない……」
ゼノグラシア――という『モノ』は、一体なんだろう。
お父さんの言うことは聞きたいのに、言ってることがまるで分からない。
そういえば、私は『なんなんだ?』
今までどこで何をしたんだっけか。
(;´・_ゝ・`)「……分かった。なら『伊藤』は覚えてるか?」
ξ;゚⊿゚)ξ「あ、それなら……」
(;´・_ゝ・`)「……ならいい。あとは向こうが分かってくれるはずだ」
ξ;゚⊿゚)ξ ?
(;´・_ゝ・`)「ほんとはこんな手筈じゃなかったんだが、唐揚げ持って帰って正解だったな……」
ξ;゚⊿゚)ξ「昨日のやつ、本当に持ってったの?」
(;´・_ゝ・`)「好評だったぜ。あの女、料理の腕はピカイチだな……」
あの女、というは誰のことだろう。
朽ちた客席のイメージが脳を埋め尽くした。
.
866
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:29:35 ID:BRHqwzuo0
(;´・_ゝ・`)「……いいか、魔王城ツン」
(;´・_ゝ・`)「お前は次に行くんだ。俺達はここに残る」
ξ;゚⊿゚)ξ「……なんの話?」
(;´・_ゝ・`)「『2周目の俺達』だけじゃ守りきれなかった。
バッドエンドの世界だろうが、一応ちゃんと機能してたんだがな……」
ξ; ⊿ )ξ「――分かる、ように、」
(;´・_ゝ・`)「分からなくていい。ゼノグラシアって確かそういう感じだろ」
* * *
ゼノグラシア(英語 xenoglossia)
真性異言 - 学んでいない外国語や意味不明な言語を操る超自然的な言語知識および現象を指す、超心理学の用語。
アイドルマスター XENOGLOSSIA - 2007年に放送されたテレビアニメ。 -wikipedia
* * *
(;´・_ゝ・`)「……この世界はもう終わりだ。
あとはせめて、時間稼ぎに使わせてもらう」
(;´・_ゝ・`)「本当はゼノグラシアも残したかったが、まぁ、そこは妥協だ……」
.
867
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:30:16 ID:BRHqwzuo0
━━━*━━━━━━━━━*━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
大小なりに事件はあるが、とにかく世界は平和である。
知らない所でなにかは起こっているけれど、私の周りはすごく平和。
私は今日も学校に行く。
市立VIP高校で、すごく平和な日常を送るために――
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━*━━━━━━*━━━━
.
868
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:35:55 ID:BRHqwzuo0
(;´ _ゝ `)「――……クソッ」
(;´・_ゝ・`)「……時間が無い、ここで強制終了だ」
ξ; ⊿ )ξ「……だからっ……!」
ξ;゚⊿゚)ξ「――分かるように言ってってば! 私が誰だか分かってるでしょ!?
私がどれだけ強いか、私達がどれだけ強いか!
どんな敵が来たって大丈夫よ! お父さんだって覚えてるでしょ!?」
(;´・_ゝ・`)「誰も覚えていないよ」
ξ゚⊿゚)ξ
━━━━━━━━━━━**━━━━━━━━━━━━━━*━━━━━━━━━━━
( ^ω^)「正義の味方とか悪者の人って、すごいパワーがあるお?」
('A`)「まあ、色々あるな」
(; ^ω^)「じつはそれ、誰にでもありうる話らしいんだお」
('A`)「……ありうるって、誰でもスーパーパワーに目覚めるってことか?」
ブーンは私とドクオにだけ、ひそひそと続きを話した。
覚えていますか?
━*━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━**━━━━━━━━
(;´・_ゝ・`)「……いいか、これは俺達の戦いなんだ。
お前はただ、お前が望むものを大切にすればいい。それだけが真実だ」
ξ;゚⊿゚)ξ「なによ、それ……」
(;´・_ゝ・`)「……綺麗事だよ」
.
869
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:37:05 ID:BRHqwzuo0
━━━━━━━━━━━━X━━━━━━━━━━X━━━━━━━━━X━━━━━━
从 ゚∀从「引き込まれる、って感覚は恐らく正しい。
人は人にこそ恐怖するが、人外に対してはそういうことを思うんだよ」
从 ゚∀从「その感覚の正体は好奇心、怖いもの見たさ。
人間ってのは理解できないものには恐怖と同時に興味を持つ。
いや、近付かなくて正解だったぞ。お前は利口だ」
━━━━X━━━━━━━X━━━━━━━━━━━XXX━━━━━━━━━━━━━━
この世界――というとまるで別世界があるような言い方だが、
とにかく私が生きてるこの世界における、大体の歴史をおさらいする。
端的に言うと、この世界には超能力があった。
文字どおり過去形で、今はリストアップされた極少数の人しか超能力は使えない。
そして五十年くらい前に超能力を用いたすごい戦争があり、色々あった。
それ以降、超能力の発生は減ってって今はすごい少ない。そして今に至る。
覚えていますか?
━━━━━━━━━━━━━V━━━━━━━━━━━━━━v━━━━━━━━━━*
,、,,..._
ノ ・ ヽ 『ここは市立ハトサブレ学園。俺の名前は鳩サブロウ』
/ ::::: i
/ ::::: ゙、
━***━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
870
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:38:30 ID:BRHqwzuo0
━━━━━━━━━*━━━━━━━━━━━━W━━━━━━━━━━━━━━━━
<<業務連絡:進捗は良好です。>>
━X━━━━━━━━━━━X━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
.
871
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:39:22 ID:BRHqwzuo0
<<パーフェクト・ワールドを作成中。パーフェクト・ワールドを作成中。。。。。。。>>
.
872
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:40:04 ID:BRHqwzuo0
――で、
>>15
の現実に戻る。
ξ゚⊿゚)ξ
全部に飽き飽きした人のためにAAも出す。
ξ゚⊿゚)ξ(……ちょっくら出掛けるかい)
迷ったが、私はトラウマ払拭を兼ねて決心した。
日本中が秋になろうとしているこの季節、私は渾身の赤マフラーを巻いて外に出た。
目的はコンビニの肉まんである。あれは値段以上に青春の味がするから不思議だ。
あんなものでしか青春を感じられない不感症で本当に親に申し訳ないと思う。
.
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板