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( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。
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立ったら投下がある。
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おつおつ
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おつ!
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>>494
だからこそのシャキンの存在なんだろうな
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乙乙
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人の子だけど真ん中に刺さったダーツに当ててるんだよな…
おつ
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今思ったんだけど>>398の2023年って一年ズレてないすか
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おむつー
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こんばんは。
それでは投下を始めます。
今日もよろしくお願いします。
と思ったら。
あーーーーーーー。orz
>>501 様
ご指摘ありがとうございます。
間違えてますね。
はぁ……orz
脳内修正をお願いします。
それでは、はじめます。
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4.スキル
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アインクラッドに囚われてから三日目の昼、
始まりの街の入り口で五人は合流した。
ξ゚⊿゚)ξ「ブーン、ドクオ、無事でよかった」
( ^ω^)「おっお。強くなって帰ってきたお」
('A`)「こいつ頑張ったぞ。もう一人でも往復できる」
川 ゚ -゚)「頑張ったのはドクオも同じだろ。
お疲れさま」
外から手を振ってやってきた二人に駆け寄ろうとするツンとクー。
しかし門の外に出る前にドクオとブーンが慌てて走り始め、
門の中で落ち合うことができていた。
(´・ω・`)「メッセージはもらっていたから無事なのは分かっていたけれど、
顔を見られてやっと安心できたよ。
二人ともお疲れさま」
( ^ω^)「おっお。ショボンもお疲れさまだお」
('A`)「村で飯食べてるときにレベルが急に上がってびっくりしたぞおい」
ξ゚⊿゚)ξ「ふふん。
私たちがこっちで何もしないと思ったら大間違いよ。
ショボンのよみ通り、あの人の指定したクエストは経験値が得られるのが多かったようよ」
(´・ω・`)「パーティー設定してあれば離れていても加算してくれたからね。
最初のクエストでそれが確認できたから、やれるクエストは全部消化したよ」
( ^ω^)「危ない真似はしなかったんだおね」
川 ゚ -゚)「外に出るクエストはショボンがストップさせたからな」
('A`)「それでここで待ち合わせだったのか」
(´・ω・`)「そういうこと。
フラグは立てまくったから、
いまから六つ消化して、できれば今日中、
遅くとも明日の朝には旅立ちたい」
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( ^ω^)「おっお!戦闘は任せてだお!」
ξ゚⊿゚)ξ「私たちの戦闘訓練でもあるんだから、
あんたたち二人だけ戦っても仕方ないんだからね」
('A`)「ん。了解」
川 ゚ -゚)「だが、ブーンの戦いぶりを見られるのは楽しみではあるな」
( ^ω^)「おっおっお。
見て驚くなだお!」
ξ゚⊿゚)ξ「……すぐに追いつくからね」
(´・ω・`)「それじゃあ行こうか。
まずは青猪ニ体と、緑猪一体を倒したい」
('A`)「わかった」
それぞれに武器を握り待ちの外に出た五人。
街に残った三人は久し振りの戦闘に少し緊張気味だったが、
帰ってきた二人の落ち着いた身のこなしと指示により、
順調に戦闘を重ねていった。
アイネ=ハウンゼンの宿
消化予定のクエストを消化することはできたが日が落ちてしまったため、
この日もこの宿に泊まることにした。
川 ゚ -゚)「もともとその予定ではあったのだがな」
('A`)「どうした?クー」
川 ゚ -゚)「いや、もっと早くクエストを消化できたら、
今日中に次の町に行きたいとショボンは言っていたなと思ってな」
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('A`)「?ああ。そんなことも言っていたな。
最後にはあいつも戦闘に入れ込んでいたけど」
ξ゚⊿゚)ξ「ほんとよね。
最初は私とクーが戦うのを後ろでむすっとした顔で見ていたくせして」
リビングでくつろいでいる三人。
ドクオはまだソファーの快適さに慣れていないが、
ツンとクーはゆったりと腰かけている。
('A`)「まあそういうなって。
最初のうち、二人の戦闘はやっぱり危ういところがあったから。
おれとブーンがついてちょうど良い感じだった」
ξ゚⊿゚)ξ「とはいってもねぇ」
ツンに至っては半分横になっているような姿勢で、
ふかふかのひじ掛けに手をのせて、その上に顎をつけて会話していた。
川 ゚ -゚)「うむ。
長刀と槍はやはり勝手が違うし、
剣技も槍としての技だからまだ慣れていないな。
その点でいえば、ツンの方が武器の使い方はうまいんじゃないか?」
あまりの行儀の悪さに隣に座っていたクーがお尻を軽くたたいた。
ξ゚⊿゚)ξ「そう?」
クーの言葉に疑問符を投げかけてから「良いのよドクオは」と言いながらも起き上がり、
テーブルの上のカップに手を伸ばすツン。
('A`)「こいつの行儀の悪さは知ってるから大丈夫」
川 ゚ -゚)「そういう問題じゃない」
ξ゚⊿゚)ξ「変なところで真面目なんだから」
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川 ゚ -゚)「ブーンに嫌われるぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「な、なんでそこでブーンの名前が出てくるのよ」
('A`)「ブーンも知っているから大丈夫だ」
川 ゚ -゚)「さすがは幼馴染ということか」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーンといえば、あの二人も遅いわね」
('A`)「そうか?
どうせブーンが寄り道してるんだろ」
視界の左上を気にしながらドクオが答える。
そこにはパーティーメンバーの名前とそのHPバーが表示されていた。
川 ゚ -゚)「最初は少しなれなかったが、
便利なものだな」
ξ゚⊿゚)ξ「でも視界が塞がれるわよね」
同じように表示を見る二人。
一番上に自分の名前とHPバー。
その下に友達四人の名前と対応するHPバーがあり、
今近くにいない二人のHPが満タンのまま動いていないことを確認した。
('A`)「非表示にもできたはずだけどな。
あと透過率を上げて薄くしたり。
でも出来れば慣れておいてほしい」
ξ゚⊿゚)ξ「やっぱり?」
('A`)「仲間の命綱になるかもしれないからな」
川 ゚ -゚)「だが、五人分でもそれなりに視界を塞がれているから、
これが十人、二十人と増えたら」
('A`)「パーティーは最大六人だから、
増えてあと一人分だよ」
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ξ゚⊿゚)ξ「六人?」
('A`)「そ。
行動を一緒にしたりすることはできるけど、
互いのHPを確認しあえたり戦闘時の効果を分け合えるパーティーを組めるのは、
最大で六人なんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「そうなんだ」
('A`)「クエストやイベントで参加人数が固定されたりしたら
増減する時もあるかもしれないけど、
滅多にないだろうな」
川 ゚ -゚)「それではやはりあの時のショボンは嘘をついたんだな」
ξ゚⊿゚)ξ「そういえばそうね」
('A`)「何かあったのか?」
ξ゚⊿゚)ξ「昨日お使いクエストをやってるときに、
変な男に声をかけられたのよ。
ちょうどショボンが一人で買い物してて、
私とクーが少し離れたところで待ってた時だったから
ナンパだと思ったんだけどさ」
川 ゚ -゚)「どうせ私たちの容姿に対して
美辞麗句を並べているだけだと思って
全く話しは聞いていなかったんだが、
ショボンが戻ってきたら
『俺も仲間に加えてくれ!』
と言い出したからびっくりした」
ξ゚⊿゚)ξ「そうそう。
朝から後ろを付いてきてたみたいで、
ストーカーかと思った」
川 ゚ -゚)「なんとなく後ろにいるなと思ってはいたが、
どうせまたツンがつけられているんだと思ったんだがな」
.
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ξ゚⊿゚)ξ「はいはい。
ストーカーもどきのナンパはあんたの方が多いでしょ。
一見清楚系だから」
川 ゚ -゚)「ツンは見た目が派手だから、
とりあえず声をかけてくるようなバカが多いだろ」
ξ゚⊿゚)ξ「そうそう。
だから昨日の奴みたいに付きまとう系はクー相手よ。
あーでも、昨日の奴はあの時の奴に似てた感じがする。
ほら覚えてる?駅で待ち合わせした時に声をかけてきたバカ」
川 ゚ -゚)「数が多くて覚えきれない」
ξ゚⊿゚)ξ「ほら、あの時よ。
あんたがなんだかってお寺にお参りに行きたいとか言って
駅で待ち合わせした時に声かけてきたオールデニムでリュック背負った」
川 ゚ -゚)「ああ。あの時のバカか」
ξ゚⊿゚)ξ「似てない?」
川 ゚ -゚)「雰囲気は似ていたかもな」
ξ゚⊿゚)ξ「えー。似てたってー」
川 ゚ -゚)「高岡美咲と結城かなえの区別がつかない者に似ているといわれてもな」
ξ゚⊿゚)ξ「ドクモの顔なんてみんな一緒よ。
っていうか、ちゃんと見てないし。
着こなし方を参考にしているだけなんだから」
川 ゚ -゚)「たかみーの方は芸能界デビューしたみたいだぞ。
ドラマの出演が決まったとかなんとか書いてあった」
ξ゚⊿゚)ξ「へー。やっぱあの雑誌のドクモはそっちに行くんだ。
そういえば水樹リンダも出身だったよね」
.
-
川 ゚ -゚)「ああ。
芸能界への道になってるな。
ツンも原宿辺り歩いてればスカウトされるんじゃないか?」
ξ゚⊿゚)ξ「興味ないからなー」
('A`)「えっと……いいか?」
二人の脱線した会話に割って入るドクオ。
ξ゚⊿゚)ξ「なに?」
川 ゚ -゚)「なんだ?」
('A`)「色々と突っ込みたいところはあるんだけどさ、
とりあえずその男とショボンの会話を覚えてる?」
会話を途切れさせられたことは気にせずにドクオを見る二人。
そのドクオの顔はかなり疲れたように見えたが、
二人ともそれに関しても気にしなかった。
川 ゚ -゚)「一言一句覚えているかけではないが、
流れくらいなら」
('A`)「どんなだった?」
川 ゚ -゚)「私たちがクエストを消化しているのを見て、
今のここで既にそんなことをしている人を初めて見た。
仲間に入れてほしい。
そんなことを言っていた」
ξ゚⊿゚)ξ「そしたらショボンが無理って答えて、
でも引き下がらなくて、
結局リアルからの友達で作ったパーティーで
もう入れることはできなとか言って、
何とか諦めさせてたわよ」
('A`)「……ふむ。
そっか……。
ショボンは、驚いてたか?
話しかけられたとき」
-
ξ゚⊿゚)ξ「え?ああ、そうね。
急にだったし。
驚いてたみたいだったけど?」
('A`)「でも、朝から後ろを付いてきてたんだよな?」
川 ゚ -゚)「ああ。ツンの後ろをな」
ξ゚⊿゚)ξ「クーの後ろをね」
('A`)「それはどっちでもいい。
……そっか。
ショボンも落ち着いてるように見せてただけなんだな。
……そりゃ、そうだよな」
川 ゚ -゚)「どういうことだ?ドクオ」
('A`)「……ほら、ショボンっていいところの坊ちゃんだろ。
だから小さい頃からまぁそれなりに色んなことがあったらしいんだよ。
だから結構視線とか後ろを付いてくるやつとかに敏感なんだけど、
昨日は気付いていなかったんだなと思って」
川 ゚ -゚)「それもそうだな。
マシログループの中枢の関係者の子供。
ショボンの小さい頃は親が医者程度しか周囲には広まっていなかったはずだが、
調べればすぐにわかることだ」
ξ゚⊿゚)ξ「そりゃ、そうよね。
しかも私達のことばかり考えているわけだし」
('A`)「ん?いや、そうか。違うな」
自分の考えに一人納得し、
更に二人に説明して考えをまとめたドクオだったが、
ツンの言葉で今までとは違う答えにたどり着いた。
ξ゚⊿゚)ξ「何がよ」
('A`)「そう、ショボンはおれたちのことを一番に考えている。
だから昨日は二人に対する付きまといや監視なら、気付いただろう」
.
-
川 ゚ -゚)!
ξ゚⊿゚)ξ!
眉間にしわを寄せて新たな考えを話し始めるドクオ。
クーとツンはその言葉にはっとした。
川 ゚ -゚)「そうか」
ξ゚⊿゚)ξ「私たち狙いじゃなかった」
('A`)「そう、おそらくそいつは…」
ξ゚⊿゚)ξ「狙いはショボンだった!
('A`)「ああ」
ξ゚⊿゚)ξ「ショボンをナンパしたかったのね!」
('A`;)「違うわボケ!」
たどり着いた答えは違っていた。
川 ゚ -゚)「違うのか?
ショボンは違うと思うが、そういうのを否定はしないぞ?」
('A`)「ナンパから離れろ」
ξ゚⊿゚)ξ「なんだつまらない」
('A`)「はぁ……」
川 ゚ -゚)「では本当にクエストをしている私たちの仲間になりたかったのか?」
('A`)「本当に『仲間』になりたかったのかはわからねーけどよ。
『今、この状況下でクエストをやっているおれ達』に
いや、『今、この状況下で冷静にクエストを消化しているショボン』に対して、
興味があったのは事実だろうな」
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ξ゚⊿゚)ξ「でも、この街のクエストって初歩の初歩ばかりなんでしょ?
付いてくる必要なんてないし、
クエストのやり方を覚える練習レベルってショボンは言ってたわよ?」
川 ゚ -゚)「うむ。付いてくる必要があるとは思えないが」
('A`)「どんなに簡単なクエストでも、
つまずく奴は躓く。
だから自分がやろうと思っているクエストを先にやっている奴がいたら、
参考にして付いてくる奴だっているよ。
でも多分、今回はそんな話じゃない」
ξ゚⊿゚)ξ「もったいぶらずに言いなさいよ」
('A`)「もったいぶっているわけじゃないって。
っていうか、二人だって本当はわかってるんだろ?」
川 ゚ -゚)
ξ゚⊿゚)ξ
ドクオの問いかけに口を閉ざす二人。
その行動こそがドクオの言葉が正しいということを示していた。
('A`)「二日経って、一見平穏だけど、
やっぱり小さな騒ぎは起こってる。
平穏といっても、おそらく大体の連中は、
何も行動を起こせずにこの街で宿屋とかに籠ってるんだろう。
ログイン時にもらえる金額が残ってれば、
一番安い宿屋なら一週間くらいなら泊まれるからな。
教会の奥の部屋なら雑魚寝だけどただのところもあったはずだし、
ベッドはないけど出入り自由の建物だってある。
おれ達がいた村にも昨日になってちらほらやってくる奴がいたけど、
あの行動を見る限りおそらくみんなβテスターだ。
で、何が言いたいかっていうと、今この街で冷静にクエストをやる奴なんて、
ほとんどいないってことだ」
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苦しそうに話すドクオ。
それは話すことが苦しいのではなく、
自分が言葉にして出した内容が、
今のこの世界を、自分たちを取り巻く環境が
悲惨なものであるということを改めて明確にしてしまうだからだった。
しかし彼は続ける。
('A`)「おれ達は、幸運なことにこの宿に居られるし、
自分でいうのもなんだけど仲間内にβテスターがいて、
更にショボンが居てくれたからこんなバカ話ができているけど、
ほとんどはまだ絶望していて、活動できていないだろう。
今もう前向きになれてる人なんて、きっとほんの一握りだ。
そんな中でショボンが冷静にクエストをこなしている姿は、
仲間と一緒に行動している姿は、どう見えたか。」
口を閉ざすドクオ。
二人も何も言えず、沈黙が部屋を支配する。
三人の頭には、『羨望』という言葉と、
『嫉妬』という言葉が浮かんでいた。
( ^ω^)「ただいまだおー!」
突然開かれた扉。
重苦しい空気を吹き飛ばす元気な声。
ブーンの登場に、
あからさまにほっとした顔をする三人。
('A`)「おう、お帰り」
ξ゚⊿゚)ξ「おかえり。
遅かったわね。
どこで道草食ってたのよ」
川 ゚ -゚)「ショボンもお帰り。
買い物はどうだった?」
( ^ω^)「おっおっお。
街のはじからはじまでいったら流石に時間がかかったんだお」
.
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(´・ω・`)「ただいま。
遅くなってごめんね。
ご飯も買ってきたよ」
ブーンの後ろからショボンが続いて入ってくる。
ショボンは手には何も持っておらず、
テーブルの前まで来るとウインドウを開いた。
( ^ω^)「手に持たなくて良いってのは楽ちんだおね」
同じようにブーンもウインドウを開き、
目の前に浮かんだ操作パネルをタッチしていく。
あっという間にテーブルの上はアイテムで埋め尽くされた。
(´・ω・`)「回復、解毒、麻痺解除といったPOT類。
ドクオに教えてもらった店で買いそろえたよ」
('A`)「安かっただろ?
このフロアだと、多分教えた店が一番安い」
(´・ω・`)「そうなんだ。
じゃあちゃんと場所を覚えないとだね」
出したアイテムからいくつかをいそいそと袋に入れ、
部屋の片隅に移動するショボン。
川 ゚ -゚)「POTを自分で作ったりもできるんだろ?
その方が安くならないか?」
テーブルの上のアイテムを仕分け始めるドクオ。
反対側のソファーに座っているクーがピンク色の瓶を手に取った。
('A`)「できるけど、スキルを鍛えないといけないし、
材料も買ったら街売りより高くなる」
川 ゚ -゚)「採取すればよいだろう」
.
-
('A`)「クー、スキルを鍛えるつもりか?」
川 ゚ -゚)「ああ、折角だからな」
ドクオに向かってにやりと笑うクー。
('A`)「まあ、パーティーって考え方なら、それもありだな。
ソロなら戦闘に役立つスキルを先に覚えてほしいけど」
川 ゚ -゚)「今日手に入れたアレを使えば問題ないだろ?
それに私達はスキルスロットが現時点では余裕があるわけだし」
('A`)「言っておくが『余裕』があるわけじゃないぞ。
戦闘に限っても覚えておいた方がよいスキルはまだたくさんある」
ξ゚⊿゚)ξ「『裁縫』は外さないわよ」
( ^ω^)「『鑑定』も大事だと思うお」
クーの隣でツンが、
ドクオの隣に座ったブーンが既にスキルスロットに入れたスキルを口にした。
('A`)「…『調剤』なら『裁縫』よりはましか」
ξ゚⊿゚)ξ「女には大事なスキルよ」
('A`)「家庭科の成績底辺だったくせして」
ξ#゚⊿゚)ξ「ちょ!何で知ってるのよ!」
('A`)「母ちゃん経由でおばさんから聞いた」
ξ#゚⊿゚)ξ「母さんったらもう……」
川 ゚ -゚)「ツンは設計図は描けるが細かい作業が苦手だからな。
料理も中華はうまかったぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「ふふん」
('A`)「女子中学生が中華鍋を振る姿を想像できない」
.
-
ξ゚⊿゚)ξ「うるさい」
川 ゚ -゚)「ブーン?
顔がこわばっているがどうした?」
(; ^ω^)「お?なんでもないお」
('A`)「2月14日は決死の覚悟でアレを食べなきゃいけなかったから、
それを思い出したんだろ」
川 ゚ -゚)「なるほど」
ξ゚⊿゚)ξ「なんでクーは納得してるのよ!」
(; ^ω^)「お、おいしかったお。ツン」
ξ゚⊿゚)ξ「ほら」
('A`)
川 ゚ -゚)
ξ゚⊿゚)ξ「何か言いなさいよ二人とも」
('A`)「よし、仕分け完了。
各自、自分のアイテム欄に入れておけ」
川 ゚ -゚)「分かった」
( ^ω^)「了解だおー」
ξ゚⊿゚)ξ「ちょっと三人とも?話は終わってないのよ?」
しゃべりながらもテーブルの上のアイテムを仕分けしていたドクオが、
三人の前にそれぞれアイテムを置いた。
クーとブーンはウインドウを開き、
アイテムを一つずつ確かめながら閉まっていく。
.
-
ξ゚⊿゚)ξ「終わったらゆっくり話しましょう」
ツンも諦めて二人に倣って作業を始めた。
そして四人がアイテムをすべて収納すると、
待っていたかのようにショボンが声をかけた。
(´・ω・`)「お待たせ」
両手で持ったトレイの上には、
五つ皿が乗っていた。
そして皿の上には、
焼けた肉の塊が乗っている。
( ^ω^)「おっおっお!
お肉だお!」
ξ゚⊿゚)ξ「はしゃがないの!」
川 ゚ -゚)「ショボン、ショボンの分のアイテムはあちらの台の上に置いておくぞ」
テーブルの上を片付けるクー。
ブーンは立ち上がってトレイをのぞき込んでいる。
(´・ω・`)「ありがと、クー。
仕分けありがとうね。ドクオ。
ブーン、ちゃんと全員分あるから落ち着いて。
ツン、あそこにおいてあるパンの入った籠を持ってきてもらえるかな」
( ^ω^)「いい匂いだお!」
ξ゚⊿゚)ξ「了解。
三つともいいのよね?」
川 ゚ -゚)「では私はもう一つの皿をもって来よう。
このサラダも良いんだな?」
立ち上がり、ショボンに頼まれた籠の置いてる部屋の隅に向かうツン。
壁際のローテーブルにショボンの分のアイテムを移動出せたクーも、
ツンの後ろに続いた。
.
-
(´・ω・`)「うん。三つとも。
ありがと、クー」
トレイのまま一度テーブルの上に置くショボン。
( ^ω^)「おいしそうだお!
向こうではパンくらいしか食べなかったから、
お肉うれしいお」
こぶし大の肉はこんがりと焼けており、
その上から褐色のソースがかかっていた。
(´・ω・`)「喜んでもらえてうれしいよ」
にっこりとほほ笑むショボン。
ブーンも笑顔で皿をトレイからテーブルに移す手伝いをする。
( ^ω^)「ドクオも手伝うお」
('A`)「で、ショボンが『料理』か……」
(´・ω・`)「相談せずにスキル決めてごめんね」
('A`)「謝るようなことじゃないけどよ」
ブーンに促され、食事の準備を手伝い始める。
('A`)「いつのまにそんなにレベルを上げたんだ?」
(´・ω・`)「焼くのはタイミングの問題だけだったよ。
もっとレベルが上がるか専用の道具があれば自動になりそうな気がするけどね」
('A`)「かかってるソースは?」
(´・ω・`)「焼く機械の上の棚にいろいろあったんだ。
一回戻った来た時にブーンに詳しく調べてもらったら、
細かい注釈があって、
それに逆らわないでできる限り色々混ぜてみた。
ちゃんと味見もしたからそれほどまずくはないと思うよ」
('A`)「うん……」
.
-
( ^ω^)「おいしそうだお!」
ξ゚⊿゚)ξ「はい、パン」
川 ゚ -゚)「サラダ……。
この野菜は食べて大丈夫なのか?」
(´・ω・`)「ちゃんと食用って書いてあったよ。
ドレッシングは肉に使った物の流用だから味が似通っちゃうけど」
('A`)「パンも焼いたのか?」
( ^ω^)「それはさっき一緒に買ってきたやつだお。
ちょっと硬いけど、味はまあまあだおね」
('A`)「向こうで食べた奴と一緒か」
ξ゚⊿゚)ξ「どうしたのよさっきから」
('A`)「いや、……うん。なんでもない」
ξ゚⊿゚)ξ「変な奴」
( ^ω^)「準備完了!
さあ食べるお!」
全員の前に肉の皿と野菜の皿が一つずつ置かれ、
中央にはパンの入った籠がある。
(´・ω・`)「口に合えばいいけど」
水の注がれたグラスをショボンが配るときには全員が座っていた。
( ^ω^)「大丈夫だお!
いい匂いがするおね!」
ξ゚⊿゚)ξ「うん。おいしそう」
川 ゚ -゚)「あれから取れた肉とは思えないな」
ξ゚⊿゚)ξ「言うな」
.
-
( ^ω^)「牡丹肉はおいしいお」
(´・ω・`)「処理さえちゃんとすれば、
臭みも抑えられるからね。
今回はソースも濃い味にしたし」
川 ゚ -゚)「ふむ。楽しみだ」
( ^ω^)「それじゃあみんな手を合わせて」
ブーンの合図で手を合わせる五人。
( ^ω^)ξ゚⊿゚)ξ川 ゚ -゚)
「いただきまーす」
('A`)(´・ω・`)
この世界に来てから初めての、
五人でする食事だった。
( ^ω^)「おいしかったおー。
おなかいっぱいだおー」
両手を広げてソファーの背にもたれかかりながら
天井を見上げているブーン。
ξ゚⊿゚)ξ「お行儀悪いわよ」
川 ゚ -゚)「ツンは言える立場にいないな」
流石にブーンほどではないが、
正面に座るツンも体をソファーに沈ませてひじ掛けにもたれている。
ξ゚⊿゚)ξ「そういうあんたもでしょ」
川 ゚ -゚)「私は自分の事がわかっているからな。
人に言うような真似はしていない」
.
-
隣に座るクーもゆったりとソファーに腰を掛けている。
ツン程ではないが、だいぶリラックスしているように見えた。
そしてさらに二人に共通しているのは、目が既に閉じかけているということだろう。
ξ゚⊿゚)ξ「なによそれー」
川 ゚ -゚)「はっはっはー」
力のない声で会話をする二人。
('A`)「……三人ともだらけすぎだ」
ドクオはブーンの隣でソファーに浅く腰かけていた。
そして少し前のめりで、
開いたウインドウを操作していた。
(´・ω・`)「今日も疲れたしね。
早く休みたいけど、まずは明日からの予定を打ち合わせよっか」
片付けを終わらせたショボンが戻ってくる。
先ほどと同じトレイをもっており、
その上にはマグカップと大きめのティーポットが乗っていた。
川 ゚ -゚)「手伝おう」
(´・ω・`)「ありがと」
クーとショボンがカップを配り終わると、
四人は浅く腰かけて話をする体制になった。
ξ゚⊿゚)ξ「ブーン、起きなさい」
( ´ω`)「おー。もう朝かお?」
ξ゚⊿゚)ξ「バカ言ってないの」
('A`)「まったく」
目をこすりながら体を起こすブーン。
大きくあくびをしたのを見てから、
座ったショボンが口を開いた。
.
-
(´・ω・`)「さて、まずは明日からのスケジュールの確認かな」
('A`)「予定通り『ホルンカ』に向かう」
(´・ω・`)「うん。まずは『ホルンカ』へ。
そこでモンスターと戦うことに慣れるのと、
レベル上げ、クエストの消化をしたい」
川 ゚ -゚)「目標とかあるのか?」
(´・ω・`)「実際にはやるつもりはないけど、
この『はじまりの街』と『ホルンカ』を、
一人で一日で往復できるような強さと経験を積みたい。
ただ、状況を見て『ホルンカ』の次の町への移動も考えてはいる」
ξ゚⊿゚)ξ「街を転々とするってことね」
(´・ω・`)「落ち着けるところがあれば拠点を作るのもありだとは思うけどね。
まずは自分たちのレベルアップ、経験値では表せない経験を身に付けたいと思う」
('A`)「賛成だ。
こればっかりは実践あるのみだからな。
クエストで得られる経験値でのレベル上げなんて、たかが知れてるし。
遭遇する敵によってはすぐに逃げられない場合もあるから、
戦いの経験を積みたい」
ξ゚⊿゚)ξ「逃げたりなんてしないわよ」
川 ゚ -゚)「ちゃんと戦うぞ」
('A`)「……戦略的撤退も覚えてくれよ」
ξ゚⊿゚)ξ「むーーーー」
川 ゚ -゚)「仕方ない。善処してやろう」
('A`)「なぜ上から目線かな」
(´・ω・`)「戦闘やレベル上げに関してはドクオに頼ってしまうけど、
よろしく頼むね」
('A`)「ああ。きっちりやろう」
.
-
ξ゚⊿゚)ξ「ホルンカってどんなところなの?」
( ^ω^)「良いところだったお。
こことは違って道とかも舗装されてなかったけど、
家とか木や藁でできてて暖かい雰囲気だったお」
ξ゚⊿゚)ξ「土の道か……」
('A`)「土で汚れたりはしないだろ」
ξ゚⊿゚)ξ「ならいっか」
('A`)「まったくもうこいつは……」
ξ゚⊿゚)ξ「女子には大問題よ」
('A`)「はいはい」
(´・ω・`)「それじゃあ、次は武器とスキルの件だね」
('A`)「それだよそれ!」
ξ゚⊿゚)ξ「なによいきなり大声出して」
('A`)「スキルだよスキル!
とりあえず最初のうちはちゃんとどれを選ぶか相談してだな」
ξ゚⊿゚)ξ「はいはい」
('A`)「おまえなー」
ξ゚⊿゚)ξ「とはいってもさ。
基本よくわからないし」
川 ゚ -゚)「そうだな。
とりあえず何が必要とか説明してもらってないわけだし」
('A`)「……」
( ^ω^)「一応聞いたけど、
もう一度ちゃんと聞いておきたいお」
.
-
('A`)「はぁ……」
(´・ω・`)「まずはスキルの基本知識が必要だね」
ため息をついたドクオを見て苦笑いを浮かべながらショボンがウインドウを開く。
ξ゚⊿゚)ξ「基本知識ならわかるわよ。
それくらい。
スキルってのを設定しておかないと、
そのスキルにかかわる作業ができないってことでしょ」
川 ゚ -゚)「片手剣で戦いたかったら『片手剣』、
槍で戦いたかったら『槍』。
服を作りたかったら『裁縫』
料理をしたかったら『料理』」
ξ゚⊿゚)ξ「それくらいわかるわよね」
川 ゚ -゚)「全くだ」
ショボンの言葉に心外だとばかりに知識を披露する二人。
心なしか二人とも胸を張っている。
('A`)「『索敵』、『隠蔽』なんかはわかるのか?」
川 ゚ -゚)「知らん」
ξ゚⊿゚)ξ「知らない」
そして同じテンションでドクオの問いに答えた。
('A`)「はぁ……」
(´・ω・`)「スキルは、本当に大まかに分けると二つに分類できる。
一つは戦闘に直接かかわるスキル。
一つは戦闘に直接かかわらないスキル」
うなだれたドクオに代わってショボンが説明を始めた。
.
-
(´・ω・`)「さっき二人が言っていた『片手剣』や『槍』、
ツンの使ってる『細剣』、『曲刀』、『投擲』なんかが《直接かかわるスキル》になるね。
で、『裁縫』や『料理』、ブーンが鍛え始めてる『解析』なんかが、
《直接かかわらないスキル》になる」
ξ゚⊿゚)ξ「うん」
川 ゚ -゚)「ふむ」
( ^ω^)「おー」
(´・ω・`)「そして、
《直接かかわらないスキル》の中には、
今言ったような生活を豊かにしたり便利にしたりするスキルのほかに、
戦闘を有利に進めるためのスキルも存在するんだ。
さっきドクオの言った『索敵』は自分の近くにいる敵を見つけやすくなったりできるし、
『隠蔽』なんかは周囲の木や草に隠れたりすることで、
敵をやり過ごすことができるようになったりする」
ξ゚⊿゚)ξ「へー」
川 ゚ -゚)「ふむふむ」
( ^ω^)「おー」
(´・ω・`)「そんな感じでスキルはいろいろ用意されているらしい。
だから色々なものを鍛えて戦闘を有利に、
生活を楽しくしたいところなんだけど、
スキルをセットする設定画面には枠が、
スキルスロットが初期では二つしかない。
しかも基本的にスキルはスロットから外すと経験値がゼロに戻るから、
一度鍛え始めたら外すのがもったいなくなる」
ξ゚⊿゚)ξ「あら」
川 ゚ -゚)「なるほど」
( ^ω^)「おー」
.
-
(´・ω・`)「というわけで、スキルを決めるときは、
慎重に自分の戦闘スタイルや生活スタイルをよく考えて、
決めなければいけないってことなんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「はーい」
川 ゚ -゚)「わかった」
( ^ω^)「おー!」
('A`)「三人ともほんとにわかってる?ねぇ」
ショボンの説明をまともに聞いているのかどうかわからないような受け答えしかしない三人に、
思わずため息混じりの突っ込みを入れてしまうドクオ。
川 ゚ -゚)「聞いてるぞ」
( ^ω^)「聞いてるお」
ξ゚⊿゚)ξ「聞いてるわよ?
でも、……さ。ねぇ」
川 ゚ -゚)「うむ」
(; ^ω^)「おー」
(´・ω・`)「まあしょうがないよね。
既に僕たちのスキルスロットは五つあるわけだし」
一瞬の空白。
仲間以外誰もいないのに、
何故か周囲の目を気にしてしまう五人。
そしてドクオが大きく息を吐いた。
('A`)「だよなー。
おれも言いながら説得力とかなかったし」
.
-
ξ*゚⊿゚)ξ「そうよね」
川*゚ -゚)「もう五つもあるし」
('A`)「今日クリアしたクエストのうち三つがスキルスロット増加とか、
どんなチートだよ」
( ^ω^)「ショボンはもらえるのがわかってたのかお?」
(´・ω・`)「昨日のうちに消化した二つのクエストの報酬がレアアイテムみたいだったから、
残りのクエストもそうかなって思ったのと、
もしかしたら人数分くれるイベントとかもあるのかなって思ったから、
怪しいやつはできるところまでフラグを立てて、
二人が帰ってくるのを待ったんだ」
('A`)「そうしたらこうなったと」
(´・ω・`)「うん。さすがにこれはバグレベルだよね」
('A`)「だよな……」
自分のウインドウのスキルスロットを見てため息を吐くドクオ。
スロットが増えたことはかなり喜ばしいことなのだが、
今まで公正・公平なプレイヤーとして
多量課金プレイヤーや初心者狩りをするようなプレイヤーを忌避していた身としては、
いくら偶然とはいえ自分の今置かれている状況になんとなく納得がいっていなかった。
( ^ω^)「多分あの三つって、本当は一つしか受けられなかったんだおね」
('A`)「多分そうなんだろうな」
ξ゚⊿゚)ξ「でも出来た」
川 ゚ -゚)「ショボンがやらかしたと」
(;´・ω・`)「人聞きが悪いよ。
たまたま時間的タイムラグと同時進行するための穴を見つけただけだよ。
それに僕もアイテムがいっぱいもらえたら良いなとは思っていたけど、
スキルのスロットが増えるとは思ってなかった」
.
-
('A`)「でも、道具の方は狙っただろ?」
(;´・ω・`)「もらっておけるものはいっぱいもらっておこうって思ったけど、
その瓶が更に手に入るとは思わなかったよ?」
川 ゚ -゚)「本当か?」
(;´・ω・`)「ちょっと、クーまでやめてよ」
ドクオがウインドウを操作すると、テーブルの上に小瓶が何個も現れた。
('A`)「《カレス・オーの水晶瓶》
スキルの熟練度を保存することができる……か。
まさかこんなアイテムがあるなんて。
そしてしかもこんなにいっぱい手に入るなんて」
(´・ω・`)「初日のクエスト報酬で一つ手に入れて、
昨日僕が試してみたけどちゃんと使えたよ」
('A`)「メッセージで教えられたときはびっくりした」
( ^ω^)「今日は五人で四回成功したんだおね」
ξ゚⊿゚)ξ「あれ?四回だった?」
川 ゚ -゚)「五回だな。
多分ブーンは最初の一回を数に入れていないんだろ。
あれはチャレンジの説明だと思ったら本番だったという、
一種の騙しだから」
('A`)「二十五個。最初の一個を加えたら二十六個か……」
(´・ω・`)「最初のクエストはおそらくあの手帳を持っている人専用だけど、
今日のクエストはほかの人も受けられそうだったよね。
そして説明という名の一回と、泣きの一回で、
誰でもニ個は手に入れられる確率があるってことだよね」
.
-
支援
-
('A`)「そんな簡単なことじゃない気もするけどな。
あのクエストを受けるには、まず手元にこの小瓶が必要なわけだし。
そしてどちらにせよ、システムの穴というかほぼバグを突いて
これだけの量を手入れることができたわけだけど、
あれをやるにはよほどの記憶力が必要だろ?」
(´・ω・`)「それに関しては否定しないけど」
('A`)「通常はレベルを上げないと手に入らないスキルスロットを、
最初からこれだけ持てているのはかなりのアドバンテージだ。
そしてこのアイテムもかなりありがたいアイテムなのは間違いない。
正直こんな能力を持ったアイテムがあるなんて知らなかったし、
かなりのレアアイテムだと思う。
システムの穴をついたとはいえ、
一応正規のルートで手に入れた品だから、
使うことに問題はないとも思う。
…………でもなー。やっぱなー」
頭を抱えてもんどりをうち始めるドクオ。
四人はそれを生暖かい視線で見ていたが、
三分を過ぎたところでツンが切れた。
ξ゚⊿゚)ξ「ドクオ、いい加減にしなさい」
ソファーの横に置かれた銀のトレイでドクオの頭をたたくツン。
トレイの形が変形などはしていないが、
大きな音が部屋に響いた。
(;A;)「いてぇ!お前何しやがんだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「嫌なら使わなければいいじゃない。
小瓶もスロットも。
スロットは二つだけ使ってればいいだけなんだから」
('A`)「え、いや、それはなんか違うっていうか。
折角あるものは使わないとだし」
ξ゚⊿゚)ξ「ならもうグズグズ言わないの!」
('A`)「うえーい」
ξ゚⊿゚)ξ「まったく」
.
-
薄い胸を持ち上げるように腕を組んでソファーに座るツン。
二人の掛け合いを笑顔で見ていた三人だったが、
ツンが座ると同時に目の前のカップに手を伸ばした。
そのタイミングがあまりに合致したため、
思わず笑ってしまった。
( ^ω^)「おっおっお」
川 ゚ -゚)「ふふ」
(´・ω・`)「 」
ξ#゚⊿゚)ξ「三人は何笑ってるの?」
(;^ω^)「おっ。ツンを笑ってたわけじゃないお」
川 ゚ -゚)「それは誤解だからな」
ξ゚⊿゚)ξ「まったく」
(´・ω・`)「さて、じゃあスキルについての相談だけど、
まずは僕の考えを言ってもいいかな」
ツンに睨まれて慌ててフォローを入れた二人。
ショボンは話を変えるように、
というよりは戻すために姿勢を正して四人を見た。
自然とソファーに座りなおしてショボンを見る四人。
(´・ω・`)「まずはスキルスロット。
五つのうち、一つはメイン武器。
これは今使っている部から変えない方向で。
二つ目がサブの武器。
使用している武器に問題が発生した時用に、
一応別ジャンルの武器も練習しておいた方がいいと思うんだけど、
どうだろう?」
.
-
ショボンがドクオを見る。
その視線を追って三人もドクオを見た。
('A`)「おれは反対だな。
武器によって敵との相性ってのは確かに存在するけど、
低層ではそれほど気にしなくてもいいと思う。
あと、同時に二つの武器を練習するってのは無理があると思う」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね。
とりあえずは一つで良いかな」
川 ゚ -゚)「ああ。
私も長刀ならともかく、
槍はもう少し練習しないとだめだと思う」
( ^ω^)「ショボンはなにかやりたい武器があるのかお?」
ドクオの意見に賛成をする二人。
ブーンもとりあえずは片手剣だけのつもりだったが、
口から出たのはショボンへの問いかけだった。
その言葉に反応してショボンを見る三人。
(´・ω・`)「あ、うん。
メインには槍として、
サブ武器として《投擲》を入れたい」
('A`)「《投擲》?
あの趣味スキルを?」
( ^ω^)「趣味スキル?」
('A`)「いや、武器や物を投げるスキルだけどよ、
一回投げたら終わりだし、攻撃力の高いものを投げるのっていうのは、
金額の高い武器やレアなアイテムを投げるってことだから、
なかなかハードルが高いというかなんというか……」
川 ゚ -゚)「金持ちじゃないと成り立たないスキルってことか」
('A`)「もしくは自分が武器製造スキルを持つとかかな。
それにそれだけやっても与えるダメージはたかが知れてるだろうし」
.
-
ξ゚⊿゚)ξ「ショボンは何でそんなのを?」
(´・ω・`)「僕の目、敵の出現を素早く感知できる力を有効に使うためには、
このスキルが最適かなって思ったんだけどね」
ξ゚⊿゚)ξ「ああ、出現の時の空間の歪みが見えるっていうあれね」
(´・ω・`)「うん」
('A`)「あー。
それはそうかもしれないが、
実戦で意味のある使い方ができるにはかなりの練習が必要だろうな」
(´・ω・`)「そうだね。
じゃあ……」
( ^ω^)「武器にブーメランとかないのかお?」
(´・ω・`)!
('A`)「!
あ、ああ。そうだな。
ブーメランは聞いたことないけど、
そういえばなんか戻ってくる投擲武器あるとか。
いや、ドロップする敵がいるとかだったかな。
βの時にそんな噂を聞いたことがある」
川 ゚ -゚)「『戻ってくる投擲武器』?」
('A`)「ああ。
おれも実物は見てないし、
名前も聞いてないけど」
( ^ω^)「じゃああるかもなんだおね。
その武器が手に入ったらそのスキルも使えるんじゃないかお?
しかも武器が手に入ってから覚えるんじゃなくて最初から鍛えておいたら、
かなり使えるんじゃないかお?」
('A`)「あ、ああ。そうだな」
.
-
ニコニコと話すブーン。
眉間にしわを寄せて色々と考えつつ言葉を選ぶドクオ。
('A`)「……ああ。うん。
そんな武器を使えることができれば、
戦闘を優位に進められるかもしれない。
ただ、そのためにスキルスロットを……」
( ^ω^)「五つもあるし、小瓶もあるお。
ある程度使えるまでは個人練習にして、
戦闘に使えるレベルになったらレギュラーでスロットに入れておけばいいんじゃないかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「どうしたのよブーン。
すごくブーンらしくない」
( ^ω^)「おー。ひどいお」
川 ゚ -゚)「だが、ブーンの言う通りだな。
これがスロットが二つのままだったり、
アイテムがなかったら諦めないといけないかもしれないが、
今の私達ならそれくらいの余裕を持ってもいいんじゃないか?」
('A`)「でも自主練とかいっても」
( ^ω^)「というか、
ショボンならそれくらい全部考えているように思うけど、
どうかお?」
(´・ω・`)「実は、すでに自主練はしてたんだ」
壁にかかったダーツ用の的を見るショボン。
その視線から、四人も壁の的を見た。
('A`)「ダーツ?」
(´・ω・`)「うん」
立ち上がり、同じく壁に掛けてあった矢を一本手に取り、
少し離れて構える。
四人はじっとそれを見つめている。
.
-
(´・ω・`)「いくよ」
ショボンが気合を入れると矢がオレンジ色に輝いた。
('A`)「おっ」
( ^ω^)「剣技(ソードスキル)だおね」
ξ゚⊿゚)ξ「オレンジだ」
川 ゚ -゚)「オレンジだな」
('A`;)「気にするのそこかよ」
ξ゚⊿゚)ξ「えー。だって。ねぇ。クーさん」
川 ゚ -゚)「うむ。オレンジは良い色だ」
('A`)「なんだそりゃ」
会話をしながらも視線はショボンに向けたまま。
そしてショボンは外野の声を気にすることなく矢を投げる。
( ^ω^)「おお!」
('A`)「おっ」
ξ゚⊿゚)ξ「あら」
川 ゚ -゚)「きれいだ」
弧を描いて的の中央に刺さる矢。
矢の動きを目で追うのは困難であったが、
そのオレンジの光は部屋の中に、
自然界ではありえない鮮やかな軌跡を残して消えた。
(´・ω・`)「趣味スキル扱いは運営もなのかな。
一つ目は直線だったけど、
二つ目はこんな風に弧を描く軌道を持った技を使えるようになったよ」
.
-
( ^ω^)「それだけ鍛えたのなら外したくないおね」
(´・ω・`)「スロットが二つだったら槍と投擲になっちゃうから諦めたけど、
今の状況なら良いかなって思って」
('A`)「そのダーツセットは持っていけるのか?」
(´・ω・`)「いや、無理だった。
隣の部屋には移動できたけど、
下の階には持っていけなかったよ。
持っていこうとしたら、自動的にこの部屋のこの場所に移動していた」
('A`)「なら、これから先の自主練はどうやってするんだ?」
(´・ω・`)「ここに泊まるときはダーツセットで。
無理な時は部屋で小石を投げたりすることでできないかなって思ってる」
('A`)「……それよりは、投擲用のナイフを数本買って、
部屋で丸太や非破壊オブジェクトに投げた方がいいだろ」
( ^ω^)「おっ!」
('A`)「回収可能投擲武器がある可能性が少しでもある以上、
そこまで鍛えたスキルを完全に捨ててしまうのはもったいないからな」
(´・ω・`)「ありがと」
('A`)「ただ、メイン武器になるかどうかは不明だから、
まずは槍の練習をしてくれ。
あと、戦闘時スロットには《武器防御》を入れること」
川 ゚ -゚)「《武器防御》?
うむ。あるな」
ξ゚⊿゚)ξ「なにそれ」
ウインドウを開いてスキルを確認するクー。
('A`)「言葉通り。武器で防御をするためのスキルだ。
それを入れておけば、使っている武器で相手の攻撃を防御することができる」
.
-
川 ゚ -゚)「これをつけておかないとできないのか?」
('A`)「剣の腹で相手の剣を受けたりすることはできるはずだけど、
スキルをつけておかないとまったく補正が働かないから、
ダメージを剣すべてで受けてしまう可能性がある。
滅多にないはずだけど武器破壊が起きてしまったり、
そこまでいかなくても武器の疲弊・摩耗には多大な影響があるだろうな。
それに防御技のスキルも使えるようになるはずだ」
( ^ω^)「おっ!そんなのがあるのかお?」
('A`)「ああ。火を吐いたりするモンスターも出てくるから、
それを避けるため、受けるための特殊技がスキルとして存在しているはずなんだ。
今のところパーティーに盾使いがいないから、
各人で自分の身を守る技をちゃんと持っておいた方がいい」
川 ゚ -゚)「なるほどな」
('A`)「あとは《軽業》とか《疾走》とか……。
あ、あと《容量拡張》関係も取っておきたいし、
うーむ……どうしよう。選べるけどどれを選ぶか……」
先ほどとは打って変わってニヤニヤと笑みを浮かべながらウインドウを操作し始めるドクオ。
残りの四人がイラッとするような笑みだったが、
そんなことは誰も言わず、
けれど呆れてドクオを見ていた。
川 ゚ -゚)「さっき言っていた《索敵》とか《隠蔽》とかは良いのか?」
('A`)「あー。
おれは取るつもりだけど、
基本ソロ向きのスキルだから、
四人には必要ないだろ」
ξ゚⊿゚)ξ「ソロ向き?って、あんた」
.
-
('A`)「あ、いや、別にパーティーを抜けるってわけじゃないぞ。
ただ、先行して次のエリアを見に行ったりすることもあるだろうし、
おれは一人で動くこともあるだろうから、
それ用に鍛えておいた方がよいスキルってことだ。
おれは四人みたいに職業スキルを入れない分、
戦闘に特化した、できれば一人でもフラフラできるスキル構成にするつもりなんだ」
(´・ω・`)「ドクオ……」
('A`)「悪いショボン。
このセッティングは譲れない。
その分、それを考慮した戦闘を組み立ててほしい。
(´・ω・`)「……わかったよ」
( ^ω^)「で、スキル構成はどうするんだお?」
('A`)「とりあえず、こんな感じっていう自分の方向性を考えてみて、
それに沿ったスキルを構築してみるか。
どうする?今からやるか?
それか一晩考えて、明日出発の前にやるか」
(´・ω・`)「できれば……」
ξ゚⊿゚)ξ「今からやりましょう。
めんどくさい」
川 ゚ -゚)「そうだな。さっさと済ませてしまおう」
( ^ω^)「おっおっお。それがいいお!」
('A`)「よし!やるか!」
満面の笑みを見せるドクオに、
ブーンを除く三人は少しだけなぜこんなに笑顔なのか不思議に思った。
.
-
そして二時間かかって全員の初期スキルを決定するころには、
全員がその理由をわかっていた。
川 ゚ -゚)「(そっか。ドクオは……)」
(´・ω・`)「(RPGとかの技設定とかを決めるのが好きなんだね)」
ξ゚⊿゚)ξ「(そういえば、
桃太郎の持つ武器とかお供三匹の装備とかを
ずいぶん気にしていたわね)」
( ^ω^)「昔からドクオはこういうの好きだおね」
('A`)「楽しいよな!
自分のやる技とか設定とか決めるの!」
川 ゚ -゚)
(´・ω・`)
ξ゚⊿゚)ξ
三人が心の中でため息をついたのを、
二人は知らない。
(´・ω・`)「さて、とりあえずはこれでやってみて、
あとは状況や装備に合わせて変更ってことで」
('A`)「そうだな。
やっていくうちに変更も出てくるだろうし」
( ^ω^)「おっおっお」
ξ゚⊿゚)ξ「もう夜も遅くなったわね」
川 ゚ -゚)「ああそうだな。
明日も早いし、そろそろ寝る時間だな」
.
-
(´・ω・`)「そうだね。
あ、でもちょっと話があるんだけどいいかな」
( ^ω^)「お?なんだお?」
(´・ω・`)「うん。
ドクオの事と、この部屋のこと、レアアイテムの事なんだけどさ」
('A`)「おれの事?」
(´・ω・`)「ドクオがβテスターだってこと、
この宿のこと、隣の書斎や宿代が無料だってこと、
あと手帳を含めたレアアイテム、特にスキルを保存する瓶の事は、
他言無用、僕達だけの秘密にしよう」
川 ゚ -゚)「……宿とアイテムに関してはその方がいいだろうな。
まわりからいろいろ言われそうだ」
('A`)「言われるだけならいいけどな。
ま、うん。そっちに関しては賛成。
でも、おれのβテスターってのは?
この前も言われたけど」
(´・ω・`)「ドクオが自分でも言っていたけど、
ドクオの持つβテスターの知識ってのは、
かなり僕たちの戦いを楽にしてくれると思う。
けれど、ほとんどの人はそれを持っていない。
一つの選択、決断が命にかかわるこの世界で、
その知識を持っている人やその仲間っていうのは、
羨望を通り越して妬み、恨みを持たれる可能性がある」
ξ゚⊿゚)ξ「それは……怖いわね」
(´・ω・`)「うん」
( ^ω^)「ドクオの知識を世に広めることはできないのかお?」
(´・ω・`)「どうやって?」
.
-
(;^ω^)「おー。それは…その……」
(´・ω・`)「口コミ、書類や本にして頒布。
色々考えたけど、やっぱり一つの事にぶち当たる。
もし、ドクオの知識が間違っていた時。
あるいは、本サービスへの移行による変更があった時。
そしてその記憶違いや変更によって死人が出てしまった時」
('A`)!
(;^ω^)!
ξ゚⊿゚)ξ!
川 ゚ -゚)!
(´・ω・`)「その時ドクオは恨まれるだろうし、
迫害されるかもしれない。
それどころか、命を狙われるかもしれない」
つらそうに話すショボン。
四人は黙って、沈痛な面持ちで次の言葉を待っている。
(´・ω・`)「だから、βテスターだってことは、
このメンバーだけの秘密にしたい」
('A`)「……わかった」
(´・ω・`)「ほかにドクオの事をβテスターだって知ってる人はいないよね?」
('A`)「……いる」
(;´・ω・`)「だれ!?」
焦ったように声を荒げるショボン。
('A`)「あいつらのこと覚えてないか?
初日にあった奇妙な三人組」
.
-
(´・ω・`)「あ、ああ。
あの姫とか忍者とか言ってた。
でもアバターの姿しか知らないわけだし」
('A`)「それが、ホルンカで会っちまったんだよ。
あいつらも移動してきていて。
おれとブーンがやったクエストの件でメッセージが来て、
会うつもりはなかったんだけど偶然がいろいろ重なってさ。
ばれた。
まあ名前も知ってフレンド登録もしていたから、
時間の問題ではあっただろうけど」
(´・ω・`)「そっか……。
じゃあ念のためメッセージは入れておいて。
僕の意見と、そちらも気を付けるようにってことと、
ドクオの事を広めないように」
('A`)「分かった。
で、実はあいつらがショボンに会いたいって言ってるんだ」
(´・ω・`)「僕に?」
('A`)「ああ。
宿の事なんかは話してないけど、
おれ達だけいまホルンカにいることや、
この後迎えに行くことなんかは話したら、
一度ゆっくり話したいって。
出来ればパーティーを組みたいようなことを言ってた」
(´・ω・`)「……ドクオ?」
('A`;)「ほんとに話してないぞ。
ただ最初五人でいたのにホルンカではブーンと二人だってことに食いつかれて、
根掘り葉掘り聞かれて、宿の事や手帳のことを黙ってるので精一杯だったんだよ」
( ^ω^)「横で聞いてたけど、
ほんとに喋ってなかったお。
ただ、女の子はちょっと焦ってるように見えたおね」
.
-
('A`;)「あ、ああ。
なんか切羽詰まっているような……。
まぁこんな状況だからと思ってあんまり気にしなかったけど」
(´・ω・`)「そう……。
パーティーは無理だとしても、
協力したり情報の共有をするにはいいかもね。
なんといっても向こうは三人共βテスターなわけだし」
('A`;)「そ、そ、そ、そうだろ」
(´・ω・`)
川 ゚ -゚)
ξ゚⊿゚)ξ「なんかあやしい」
挙動不審なドクオを見て、
怪訝な顔をする三人。
ツンは口にしたが、
ドクオは顔を横に向けてその視線から逃れようとする。
(´・ω・`)「あからさまに怪しすぎて突っ込む気にもなれないよ」
('A`;)「聞かないでくれ」
( ^ω^)「かわいい子だったから、ちょっとドキドキしたんだおね」
('A`;)「ちょ、ブーンおまえ!」
( ^ω^)「おっおっお。
かわいかったから仕方ないお。
アバターの時も可愛かったけど、
素顔も可愛かったおね」
ξ゚⊿゚)ξ「へーはーふーん。
可愛かったんだ」
( ^ω^)「おっ?
おっお。
可愛かったお」
.
-
ξ#゚⊿゚)ξ「へーはーふーん。
かわいかったんだ」
( ^ω^)「……お?」
ξ#゚⊿゚)ξ「へーはーふーん。
か、わ、い、か、っ、た、ん、だ」
(;^ω^)「そ、そうだお。
ツンのきれいさにはかなわないけど、
なかなか可愛い部類にはいる女の子だったから、
ドクオがドキドキしちゃったんだお」
ξ゚⊿゚)ξ「やだなにきれいだなんて。
お世辞言ってんじゃないわよ」
(;^ω^)「身近にきれいな人がいると審美眼が鍛えられるから大変なんだおね」
ξ゚⊿゚)ξ「はいはい。
でもその審美眼を持っていながらも可愛いっていうんだから、
なかなかの子ね。
で、その子がどうしたって?
ドクオ」
川;゚ -゚)「付き人みたいなのも一緒だったんだろ?」
(;´・ω・`)「そうそう。
姫を守る忍者とかなんとか」
('A`;)「お、おお。
後ろで見守ってたけど、
相も変わらず
『俺たちが姫を守る!』
とか言って盛り上がってた」
(;´・ω・`)「そ、そうなんだ。
と、とりあえずそれじゃあホルンカで会うってことで、
それでいいのかな」
.
-
('A`;)「お、おう。
それもメッセージしておく」
ツンを除く四人がひきつった笑顔を浮かべる中、
一人ツンは壁を見ながらニヤニヤと笑っていた。
(´・ω・`)「さて、それじゃあこれで打ち合わせは終わりかな」
(;^ω^)「おっ」
ニヤニヤと笑うツンを意識しないように場を締めようとしたショボンだったが、
ブーンが声を漏らし、ドクオを見た。
(´・ω・`)「?ブーン?ドクオ?
他にも何かあるの?」
ショボンの問いかけにブーンがドクオを見て、
ドクオはブーンに向かって静かにうなずき、
そしてショボンを見た。
('A`)「実は、もう一人おれがβテスターだって知ってる人がいる」
(´・ω・`)「……誰?」
先ほどとは違うもったいぶったような喋りを怪訝に思いつつ、
ショボンは次の言葉を待つ。
('A`)「シャキンさんだよ」
(´・ω・`)!
ドクオの言葉に言葉をなくすショボン
大きく目を開き、口も半開きで、取り繕うことも忘れ驚きを身で表している。
ξ゚⊿゚)ξ「え?だれ?」
.
-
そんなショボンを見て驚くツンとクー。
( ^ω^)「ショボンのお兄さんだお」
川 ゚ -゚)「一人っ子じゃなかったのか?」
( ^ω^)「正確には親戚のお兄さんだけど、
兄弟のように仲良くて、
顔もよく似てるんだお」
ξ゚⊿゚)ξ「その人も、こっちに来てたんだ……」
川 ゚ -゚)「!そういえば、ナーヴギアを1台親戚が使うとかなんとか言っていたな」
( ^ω^)「その人だお。
シャキンさんって言って、
すごくいい人だお」
(´ ω `)「え、ほ、本当に?」
('A`)「ああ。ホルンカで会った」
( ^ω^)「びっくりしたお。
ショボンに聞いてはいたけど、
村でぱったり会ったから」
(´ ω `)「な、なんか言って……」
('A`)「……気にしてた。
ただ、……まずはこっちはこっちでやるから、
そっちはそっちで頑張れって」
(´ ω `)!
( ^ω^)「もう三人組のパーティーを組んでたお」
.
-
(´ ω `)「パーティー?」
('A`)「シャキンさんは片手剣。
あと曲刀と斧を持った人の三人パーティーだった。
このタイミングでホルンカにいるってことはどちらかがβテスターなのかと思ったけど、
そういうわけではなく、ただなんとなく強そうな人の後ろを付いてきたって言ってたな」
(´ ω `)「……そう……」
('A`)「だから俺たちのやった片手剣の為のクエストを教えたから、
今頃まだやってると思う」
(´ ω `)!
一瞬腰を浮かせかけたショボン。
しかしすぐに我に返って座りなおす。
その姿を見た四人のうち二人はさらに驚き、
二人は少しだけ悲しそうな顔をした。
(´ ω `)「なんで……」
('A`)「道は同じだから、時期が来たら会えるだろうって言ってた。
……シャキンさんに会ったことを話すかどうかも、
おれ達の判断に任せるって」
(´ ω `)「……そう」
( ^ω^)「すぐに言わなかったのは、
それもシャキンさんに頼まれたんだお。
もし言うのなら、ホルンカに向かう準備が全部整ってからにしてくれって」
ブーンの言葉に体を震わせたショボン。
そしてゆっくりとその顔を見た。
( ^ω^)「シャキンさんから伝言があるお。
『まわりをよくみてがんばってみろ』だ、そうだお」
(´ ω `)「…………志也兄さん……」
.
-
顔を隠すように俯くショボン。
膝の上で握れれている手は、
強く握られ震えている。
一分ほどそのまま動かないでいたショボンが、
すっと顔を上げた。
(´・ω・`)「うん。わかった。ありがとう。二人とも」
普段通りの柔らかい笑顔を二人に見せる。
(´・ω・`)「兄さんなら元気で過ごせるでしょ。
こちらに来てしまっていたのは残念だけど、
元気そうなら安心だよ。
ドクオはフレンド登録とかした?」
('A`)「え。あ、ああ。一応」
(´・ω・`)「そう。なら良かった。
兄さんにいろいろ教えてあげて。
クエストの事とかさ」
そういいながら立ち上がる。
川 ゚ -゚)!
ξ゚⊿゚)ξ?
( ^ω^)!
('A`)!
(´・ω・`)「さて、それじゃあこれで打ち合わせは終了だね。
僕は出発前にもう一度書庫の本の内容を確認しておくから、
みんなは休んでくれていいよ。
ブーン、ドクオ、ベッドは一つずつ使ってくれていいからね。
僕はこっちのソファーで寝るから」
( ^ω^)「いいおっ!
僕がこっちで寝るお!」
-
既に廊下に出るドアの前まで移動したショボンが、
ノブに手をかけて振り返る。
(´・ω・`)「ちょっと遅くなると思うから、
先に寝てて。
ブーン、ここのベットは寝心地良いから今日は使ってみて。
それじゃ、おやすみ。
明日は朝7時起床の8時半前には出発でよろしく」
誰に何も言わさないでそれだけ告げると、
ドアを開けて部屋を出た。
川 ゚ -゚)「ショボン……」
腰を上げて立ち上がりかけていたクーだったが、
後を追わないでもう一度座った。
ξ゚⊿゚)ξ「いいの?」
川 ゚ -゚)「……ああ」
俯いたクーにささやくツン。
クーはツンにさみしげにほほ笑んだ後、
小さく首を横に振った。
川 ゚ -゚)「今私が行っても、
ショボンは私に気を使うだけだろうからな」
ξ゚⊿゚)ξ「そう……ね」
先ほどのショボンと同じような姿でこぶしを握る親友の姿をみて、
ツンは彼女に寄り添うように座りなおした。
ξ゚⊿゚)ξ「で、これからどうするの?」
('A`)「……今日は寝て、明日ホルンカに……」
ξ゚⊿゚)ξ「そういうことじゃなくて、
今部屋を出たバカの事と、
そのシャキンって人の事よ」
.
-
('A`)「あ、ああ……。
まあ、なるようにしかならないだろうし」
ξ゚⊿゚)ξ「で、あんたたち二人は何を隠しているわけ?」
('A`;)「何も隠してねーよ!
なあ、ブーン」
(;^ω^)「お、おお。
そうだお。隠してなんかないお」
('A`;)「なあ」
(;^ω^)「そ、そうだお」
ツンの言葉にあからさまに取り乱す二人。
それを見て大きくため息をつくツン。
ξ゚⊿゚)ξ「そこまであからさまだと引くし、
突っ込みを入れるのも気が引け始めるけど、
さっさと話しなさい」
(;^ω^)「おっおっ。
な、何も話すことなんてないお」
('A`;)「な、なにを言ってるんだよツン」
ξ#゚⊿゚)ξ「あんたたちねぇ」
ツンがこめかみに青筋を立てようとしたその時、
隣のクーが口を開いた。
川 ゚ -゚)「教えて、くれないか?」
ゆっくりと顔を上げる。
そしてドクオとブーンの顔を交互に見た。
.
-
川 ゚ -゚)「今の私ではショボンの助けにはなれないが、
もし何かあるのなら、教えてほしい」
ξ゚⊿゚)ξ「クー」
('A`)「クー」
( ^ω^)「クー」
川 ゚ -゚)「頼む」
三人に見られながら、
そのまま頭を下げようとするクー。
(;^ω^)「は、話すお!
だから頭とか下げないでほしいお!」
川 ゚ -゚)!
(;^ω^)「友達にそういう真似をされるのは、苦手だお」
泣き出す前のように表情を曇らせたブーン。
ドクオは腹を決めたのか、
ソファーに座りなおしてお茶をすすった。
('A`)「シャキンさんに、頼まれたんだ。
ショボンがシャキンさんの事を聞いて取り乱したら、
すぐにシャキンさん達ははじまりの街に戻るって」
川 ゚ -゚)「いま、十分に取り乱していたように見えるが?」
( ^ω^)「……まだまだだお。
ショボンは本当はもっと感情表現が豊かなんだお」
ξ゚⊿゚)ξ「あいつが?」
('A`)「ああ。
笑うし、泣くし、はしゃぐし。
おれから見たらブーンにならぶ」
(;^ω^)「おっおっお。
三人でいるときは、
ドクオがストッパーだおね」
.
-
('A`)「まあおれのテンションがおかしくなる時は、
ショボンは冷静なことが多いから、
三人のうち一人は冷静って感じだけどな」
川 ゚ -゚)「それで、なぜそのシャキンさんはそんなことを。
気にしているのなら、すぐに会いに来てくれれば……」
('A`)「シャキンさんの真意はわからない」
( ^ω^)「……だお」
川 ゚ -゚)「そんな……」
首を横に振ったドクオ。
ブーンも悲しげに視線を下に向けた。
クーはそんな二人を見て表情を曇らせたが、
一人ツンは二人に意見を聞く。
ξ゚⊿゚)ξ「でも、思い当たるところはあるんじゃない?」
('A`)「……なぜそう思う?」
ξ゚⊿゚)ξ「幼馴染をバカにするなってことよ。
って、まあ勘だけどね。
でもあんたがそういう返しをするってことは、
あるんでしょ?」
( ^ω^)「ツンにはかなわないおね」
ξ゚⊿゚)ξ「で、予想でいいから聞かせなさい」
川 ゚ -゚)「頼む」
互いの顔を見るドクオとブーン。
そして頷きあうと、先に前を向いたドクオが口を開いた。
('A`)「多分だぞ?
予想だからな?
それこそ勘だぞ?」
ξ゚⊿゚)ξ「さっさと言いなさい」
.
-
('A`)「ん〜。
今のあいつはさ、やっぱり責任を感じていて、緊迫状態なんだと思う。
おれ達がいるから、おれたちの前では冷静な顔をしているけど、
多分今向こうの部屋ではシャキンさんが生きていた喜びと、
シャキンさんがこっちの世界に来てしまっていたという絶望と、
シャキンさんがショボンと会おうとしないことに対する悲しみで、
ものすごいことになってるんじゃないかな」
川 ゚ -゚)!
立ち上がるクー。
しかし今度はツンがその手を掴んで引き留めた。
川 ゚ -゚)「ツン?」
ξ゚⊿゚)ξ「目の前のバカ二人はそれをわかっていて後を追ってない。
今はあいつにとって一人にさせた方が良いってことだと思う」
川 ゚ -゚)!
自分を見上げる親友の悲しげな瞳。
テーブルをはさんだ友人二人も少しだけ悲しそうに頷いた。
川 ゚ -゚)「でも……」
ξ゚⊿゚)ξ「まだ続きがあるみたいだから、
とりあえず座って聞きましょ。
ほらドクオ、続きを言いなさい」
('A`)「なんでおれには命令なんだよ」
ぶつぶつと文句を言う友人を見ながら再び腰を下ろすクー。
隣のツンと手をつなぎ、先ほどよりもさらに寄り添うように座った。。
( ^ω^)「僕やドクオの前では感情を表に出すし、
シャキンさんの前でも出してる。
多分僕たちに対するよりも、泣き言とかは言ってると思うお」
川 ゚ -゚)「……今は、私達がいるから……」
(;^ω^)「ち、違うと思うお!」
.
-
('A`)「多分ここに二人が居なくても、
今はおれたちの前でも、
弱音を吐いたり取り乱したりはしないと思う」
ξ゚⊿゚)ξ「それだけ思い詰めてるってこと?」
( ^ω^)「そう思うお」
ξ゚⊿゚)ξ「……ばっかみたい」
三人が悲しげな表情をする中、
一人怒りに似た感情を表に出すツン。
川 ゚ -゚)「ツン……」
ξ゚⊿゚)ξ「一人で全部背負ってるんじゃないわよ……。
私が言ったこと、何にもわかってないじゃない」
川 ゚ -゚)「……ツン」
吐き捨てるようにつぶやいた親友の言葉に、
最初の夜にその苦しみを聞いていたクーは言葉が出ず、
ただ握った手を強く握りしめることしかできなかった。
ξ゚⊿゚)ξ「で、結局そのシャキンってのはショボンと会うわけ?
時期とかなんとか言ってたbたいだけど」
( ^ω^)「シャキンさんもきっと会いたいと思ってると思うお。
ショボンの事が心配だろうし、
自分の元気な姿を見せてやりたいって思ってるんじゃないかお」
ξ゚⊿゚)ξ「ならさっさと来ればいいのに」
('A`)「いまシャキンさんに会ったら、
ショボンはシャキンさんに心のよりどころを求める。
おれ達を守ることにすべてをささげ、
自分の心はシャキンさんに頼ると思う」
ξ゚⊿゚)ξ
川 ゚ -゚)
ドクオの言葉に息をのむ二人。
.
-
( ^ω^)「でも、シャキンさんはそれじゃだめだと思ったんだと思うお。
そして、僕もそんなのは嫌だお」
--例えそれでもショボンの心が楽になるのなら--
そんなことを考えて口にしようとしたツンとクーだったが、
ブーンの言葉に何も言えなくなった。
( ^ω^)「だからシャキンさんの言う通り、
シャキンさんの事を伝えるのは今にしたんだお」
川 ゚ -゚)「まだ私達はショボンに頼ってしまっている……」
('A`)「ああ。けれど正直、
さっきのスキル設定なんかは自分達でやれるけど、
これからの事を一番考えていてくれるのはショボンなんだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「……そうね。
それは私も反省しなきゃね。
いくらなんでもあいつに任せっぱなしだし」
川 ゚ -゚)「今の私たちが考えつくようなことは既にショボンは考え尽してくれているから、
どうしてもそうなってしまう。
それではいけないのは分かっているつもりなんだが……」
('A`)「……ああ。
βテスターとしての知識も、
あいつがいるから最大限に生かせてる気がする」
自分たちを省みて、気を引き締めつつも首を垂れる三人。
( ^ω^)「僕たちも、ショボンが安心して頼ってくれるように、
頑張らないとだお」
しかしブーンは笑顔でそう言い放った。
('A`)!
ξ゚⊿゚)ξ!
川 ゚ -゚)!
.
-
( ^ω^)「ショボンが一人で背負っちゃうのはそういう性格だし、
今の状況から考えたらそうなっちゃうのは仕方ないと思うお。
でも、それじゃだめだから、何か一つでも僕たちに頼ってもらえたら、
きっと変わるような気がするお」
('A`)「ブーン」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーン」
川 ゚ -゚)「ブーン」
( ^ω^)「それに、今のショボンは必死に色々考えて、
それで僕たちが笑顔になることが一番の喜びなんだ思うお。
だから今は甘えて、でも着実に力をつけて、
出来るだけ早く頼ってもらえるように頑張るのが一番いいと思うお」
('A`)
ξ゚⊿゚)ξ
川 ゚ -゚)
満面の笑みを浮かべて三人に話すブーン。
その笑顔を眩しそうに見るドクオとツン。
クーは一人驚いたようにその笑顔を見つめていた。
( ^ω^)「そう思わないかお?」
('A`)「ああ、そうだな」
ξ゚⊿゚)ξ「悩んでも仕方ないわね。
ああいうやつなんだし」
( ^ω^)「おっおっお」
('A`)「ま、おれは戦闘とかで頼ってもらえると思うから、
三人はがんばれ」
ξ゚⊿゚)ξ「今それほど頼ってもらってないのに、
この先あいつも戦闘のコツを掴んだらさらに頼ってもらえないんじゃないの?」
.
-
すみません。
後少しなんですが、
PCとつながりが悪くて
投下できなくなってしまったので、
残りはまた後日投下します。
乙や支援ありがとうございます。
またよろしくお願いします。
-
今更新来てたのか、乙です
-
乙
スキルスロット3個追加とかチートすぎるwww
-
カーディナル先生激怒不可避
-
おつおつ
-
おむつー
-
乙乙
-
失礼しました。
それでは続きを投下します。
.
-
('A`)「……まだβの知識がある」
ξ゚⊿゚)ξ「はやっ!
切り替えはやっ!」
('A`)「良いんだよ別に!
そういうお前はなんかあるのかよ」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたにお前とか呼ばれたくありませんー」
('A`)「うっわ。マジむかつく」
( ^ω^)「ちょ、二人ともやめるお」
('A`)「でもそうやって話を逸らすってことは、
まだ何にも浮かんでないってことだな」
ξ゚⊿゚)ξ「うっ」
('A`)「へっへっへ」
ξ゚⊿゚)ξ「うるさい!
あんたにはない私の女子力で目にもの見せてやるわよ」
('A`)「女子力?
誰に?
え?ツンに?
え?女子力って意味わかってるか?」
ξ゚⊿゚)ξ「こいつ素で聞きやがった」
( ^ω^)「おっおっお」
ξ゚⊿゚)ξ「見てろよこの野郎」
('A`)「ま、おれが一番最初だな」
ξ゚⊿゚)ξ「あーら。
こっちにはクーがいるのをお忘れかしら?
生徒会での片腕!
事務処理の鬼!
和服のお嬢様!」
.
-
('A`)「結局他力本願かよ!
つーかお嬢様とか関係ねー!」
ξ゚⊿゚)ξ「どちらのチームが先に頼られるか勝負よ!」
('A`)「主旨が変わってるぞおい!」
ξ゚⊿゚)ξ「結果が一緒ならいいのよ」
('A`)「よかねえよ!」
( ^ω^)「おっおっお」
ξ゚⊿゚)ξ「クー!頑張るわよ!」
川 ゚ -゚)「え?あ、ああ。
うん。そうだな。頑張ろう。
ショボンの片腕になれるように。
倒れる前の杖となれるように」
ξ゚⊿゚)ξ「いや、そこまでは」
('A`)「とりあえず目指せよ!」
( ^ω^)「おっおっおっ」
和気あいあいと話す四人。
それはまるで数日前まで過ごしていたお昼の生徒会室のようで、
四人の心を温かくした。
そして今ここにもう一人が欠けていることを全員が悲しく思い、
それぞれに決意を胸に秘めた。
.
-
以上、『4.スキル』でした。
二十話はまだまだ続きます。
次回、『5.彼等』
よろしくお願いします。
いつも支援と乙とおむつ、ありがとうございます。
またいただけると嬉しいです。
ではではまたー。
.
-
乙乙
-
おつ!
スキル決め楽しいのスゲー分かるw
-
乙
本当に少しだったなwww
-
乙!
期待してる
-
おむつー
-
おつおつ
-
追いついたー
面白くて読み始めたら止まらないな
出来ることなら全員がリアルに帰るまで、いや帰った後の話まで読んでみたいな
-
やっと追いついた
-
こんばんは。
それでは投下を始めます。
よろしくお願いします。
.
-
5.彼等
.
-
時は少し遡る。
茅場晶彦のアバターが空から消えてから数時間後。
今なお中央広場は悲鳴と怒声に彩られていた。
それは当然のことで、
瞬間的に『先』を考えることができた十数名を除けば、
広場で泣き叫ぶか運営を呼ぶか、
あるいは現実を直視できず街をさまようものが大半だった。
そして一部には強制的にログアウトすれば戻れると思う者もいた。
彼らは崖から飛び降りてその身をポリゴンに変え、
あるいは街の外にいる魔獣にその身を差し出す者もいた。
その混乱の中、彼はまず冷静に自分の置かれた状況を理解し、
次の一手を考えつつ、
目の前の喧嘩を面白そうに見ていた。
(`・ω・´)「やばいぞ。
面白い奴らを見つけてしまった」
彼の名はシャキン。
(`・ω・´)「この状況で……。
スゲー面白い奴らだ」
今の状況下でそんな他人の喧嘩を『面白い』とみている時点で、
彼も充分『面白い』部類に入ると思うのだが、
彼はそんなことは全く考えていなかった。
とはいえ、シャキンも最初から目の前の喧嘩を見ていたわけではない。
とりあえず重要施設を確認しようと《黒鉄宮》と呼ばれる施設に入ると、
そこには漆黒の、黒曜石のような輝きを放つ大きな石の壁、
碑が存在していた。
そしてそこに書かれたアルファベットを見て、
それがプレイヤーの名前だと知った彼はまず自分の名前を探し、
そしてこの世界に来ているはずの弟同然の親類の名を探した。
.
-
(`・ω・´)「……『Shobon』。ま、これが祥大だろうな。
ってことは……『DOKUO』と……『Boon』これがあの二人か。
名前に取り消し線が入ってないってことは、
生きてるってことだよな」
既に取り消し線が上に引かれた名前が目に付く。
シャキンが名前を探している間にも、
いくつかの名前に線が引かれていた。
(`・ω・´)「命を粗末にするなバカ野郎」
ボソッと呟くと、踵を返し黒鉄宮を出るために出口へと足を進めた。
(`・ω・´)「さて、多分この三人であってると思うけど、
連絡はどうするか……。
おれが『Shakin』で来ているのは教えてないし、
多分、いま祥大はおれの事を考えている状態じゃないだろうからな。
ドクオかブーンに連絡するのが良いかもしれないな……」
そして黒鉄宮を出たシャキンはいろいろと考えながらプレイヤーの少なそうな路地に入った。
そこで、彼は見付けてしまった。
.
-
( ゚д゚ )「だから熟女の方が良いに決まっているだろう!」
(´・_ゝ・`)「二次の少年こそ至高だ!」
.
-
リアルの世界で叫んでいたら、
いやこの世界でも通常の状態なら通報されそうなことを叫んでいる二人の男。
どうやら最初は肩がぶつかった程度であったらしいが、
そのぶつかった理由が片方は店先にいた店員(熟女)に目を奪われていたからで、
もう片方がその店に買い物に来ていた少年に目を奪われていたから、
このような怒鳴りあいに発展したようだった。
(`・ω・´)「アホだ」
思わず近寄り、少しだけ隠れて二人を観察するシャキン。
最初は面白がっていただけだったが、
途中で気付いてしまった。
二人は、どうでもいいことで争うことで自我を保っているということに。
出来るだけ『普段の自分』を装うことで、
何とかして『自分』を繋ぎ止めているということを。
(`・ω・´)「……そりゃ、そうだよな。
おれとか祥大の方が特殊だろう」
自分が状況を冷静に観察していることを更に客観的に判断するシャキン。
そして自分と同じような環境下で育った弟のように思っている身内も、
この状況下でも冷静でいることを確信していた。
(`・ω・´)「ま、これも何かの縁か。
祥大達にはあとで連絡しよう」
街の中では通常の戦闘は出来ないよう設定されている。
しかし一歩街の外、圏外に出れば命のやり取りができる。
そして決闘システムを使えば街の中でも、
圏内でも命のやり取りができることを知っていたシャキンは、
軽い足取りで二人に近づいた。
シャキンが近づいてくることにも気付かずに言い争いを続ける二人。
.
-
(# ゚д゚ )「よし!外に出ろ!」
(#´・_ゝ・`)「決着をつけてやる!」
(`・ω・´)「おいおい、いい加減にしろよ二人とも」
(# ゚д゚ )「ああ!?」
(#´・_ゝ・`)「だれだてめぇ!?」
.
-
(`・ω・´)「おれの初一人エッチのおかずは20歳離れた(親類の)お姉ちゃんで、
更に(昔は)人目もはばからないブラコンだ!おれはあいつを愛してる!」
.
-
( ゚д゚ )
(´・_ゝ・`)
.
-
( ゚д゚ )
(´・_ゝ・`)
.
-
( ゚д゚ )「(お姉ちゃん?20歳離れた?
近親相姦的な熟女好き変態?)」
(´・_ゝ・`)「(人目をはばからないブラコン?
実の弟を愛でる系?え?マジの人?)」
( ゚д゚ )
(´・_ゝ・`)
( ゚д゚ )
(´・_ゝ・`)
(`・ω・´)
( ゚д゚ )「あ、そうなんだ」
(´・_ゝ・`)「へ、へー」
(`・ω・´)「いろいろ話そうぜ二人とも!」
『がしっ』というような擬音が聞こえそうな勢いで二人の肩を抱くシャキン。
( ゚д゚ )「え、あ、いや、おれはそろそろ」
(´・_ゝ・`)「あ、うん。おれもそろそろ」
.
-
(`・ω・´)「なんだよ、二人とならいい酒が飲めそうなのに!
どうせウロウロしてただけなんだろ?
バーでも探して一杯やろうぜ!なっ!」
力が強いわけではないがうまく首元に手を回され、
更に体勢を崩された二人はシャキンの動きに合わせて歩き出した。
(`・ω・´)「仲良くしようぜ!兄弟!」
( ゚д゚ )「いや……」
(´・_ゝ・`)「その……」
(`・ω・´)「おれはシャキン!お前ら名前は!?」
( ゚д゚ )「み、ミルナ……」
(´・_ゝ・`)「……デミタス」
これが、後にギルドN-Sを結成した三人の出会いであった。
更に言うと、ギルド名はこの時『バー』を探して東に西に歩いたことに由来する。
そして後に彼の言う『ブラコン』の対象であるショボンに、
シャキンとの出会いを聞かれ二人はこう言った。
「自分を上回る変態に出会うと、一瞬で正気に戻るもんだぞ」
ショボンが頭を抱えてうずくまったのを見たシャキンは、
豪快に笑っていた。
.
-
支援
-
次の日の朝。
同じ宿に泊まった三人は宿の隣の店で朝食をとっていた。
(`・ω・´)「二人はこれからどうするんだ?」
朝食といっても硬いパンを二つと、
謎の飲み物である。
( ゚д゚ )
(´・_ゝ・`)
シャキンの問いかけに答えられず、
顔を見合わせる二人。
(`・ω・´)「?二人はこれからどうするんだ?」
( ゚д゚ )「あ〜。まだ決めてない」
(´・_ゝ・`)「おれもだ」
(`・ω・´)「そっか。
おれは昨日話した弟と合流しようかと思う。
そっちはそっちで友達四人と一緒だから、
良ければ一緒に動いてみないか?」
( ゚д゚ )「え?」
(´・_ゝ・`)「で、でも」
(`・ω・´)「向こうは既に五人だからパーティーは組まないだろうけど、
何かしら一緒に行動するのはいいだろ」
(´・_ゝ・`)「五人なら、シャキンを入れればちょうど六人だろ?
それでパーティー組めばいいんじゃないか?」
(`・ω・´)「ずっと一緒だとあいつを甘やかしちまうからな」
( ゚д゚ )「(ブラコンだった)」
(´・_ゝ・`)「(ブラコンだった)」
.
-
追い付いた
支援
-
にやりと笑ったシャキンを見て、
同じことを考えた二人。
(`・ω・´)「どうだ?」
( ゚д゚ )「おれは……正直ありがたい」
(´・_ゝ・`)「おれもだ。ありがとう」
(`・ω・´)「何言ってんだ。
誘ったのはおれだぞ。
じゃあパーティーに誘うな。
えっと、こうしてこれで……。
お、ミルナの名前が出た。
どうだこれで!」
シャキンが独り言ちながら自分のウインドウを操作すると、
ミルナの目の前にシャキンからパーティーに誘われたウインドウが現れた。
( ゚д゚ )「よろしく頼む」
(`・ω・´)「よしよし。
じゃあこうしてこうすれば……。
よし、デミタス出た」
続いてデミタスの前に現れたウインドウ。
(´・_ゝ・`)「よろしく」
こうして三人は行動を共にすることとなった。
.
-
(´・_ゝ・`)「シャキン、聞いていいか?」
(`・ω・´)「ん?なにをだ?」
路地を歩く三人。
先頭を進むシャキンの後ろを、ミルナとデミタスが並んで歩く。
(´・_ゝ・`)「道、覚えてるのか?」
(`・ω・´)「ああ。はじまりの街は説明書にマップも載ってたしな」
( ゚д゚ )「え?あれを覚えてるのか?」
(`・ω・´)「?あれだけじゃないぞ?
こっちに来て中央広場に詳細な地図があったし、
通った場所は自動でマッピングされてるし」
(´・_ゝ・`)「でも今それを見てないよな?」
(`・ω・´)「黒鉄宮は昨日も行ったしな。
まぁ中央広場のそばだし、わかりやすいだろ」
(´・_ゝ・`)「はぁ……」
( ゚д゚ )「あの分厚い説明書も読んだのか?」
(`・ω・´)「さすがに二回は読まないとちゃんと覚えられなかったな」
(;゚д゚ )「覚えた!?」
(;´・_ゝ・`)「あれを!?」
(`・ω・´)「ん?ああ。
お、着いたぞ」
目の前には大きな広場。
茅場晶彦とその言葉を思い出し、顔をしかめるミルナとデミタス。
昨日の事であるはずなのに、なぜか遠い過去のような、
それでいてつきさっきの事のように脳裏に浮かぶ。
.
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来てるー!!
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