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ミセ*゚ー゚)リ 怪異の由々しき問題集のようです

1名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 20:57:11 ID:WM1TjCNg0


 たとえば『人外』と聞いて人はどういうものを想像するのだろうか。
 細かな辞書的あるいは専門的定義を抜きにするのなら『怪異』や『妖怪』や『魑魅魍魎』でも構わない。
 だがにべどころか取り付く島すらなさそうな言い方である『化物』だけは私個人的には止めて欲しいものである。
 兎にも角にも今から綴られる文章はそういった世の理を外れた……
 いや存在している以上は物理法則ではなくとも何かしらの法則には基づいている。
 基づいているのだが、そんなことは健全なる読者諸君には関知し得ないことであろうことである故指摘しないでおく。
 だからつまりこれは――夜の理に生きる人以外の者々の物語。
 より正しくは人と人以外のモノの関係によって引き起こされる問題を集めたもの、ということになる。

 問題を集めた、問題集。
 フィクションではなくノンフィクション。
 フェイクではなくファクトな物語だ。



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2名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 20:58:06 ID:WM1TjCNg0


 あなた達は人外のように何百年も生きるわけではない。
 また生きたわけでもないだろう。
 しかしそれでもある程度の人生経験を積んだ賢明なる読者諸君ならば理解しているだろうが、あなたは世界の中心ではない。
 当然私が世界の中心というわけでもない。
 かといって何処かの誰かが世界の中心にいるわけでもない。
 私が伝えたいことは端的に言えば「あなたの知らない世界は存在する」ということだ。
 『世界』は『物語』に置き換えて貰っても構わない。
 むしろその方が分かりやすいかもしれない。

 あなたが信じようと信じまいと人ならざるモノはこの世界に存在し、あなたの知らない場所で物語を紡いでいる。
 きっとこの拙い文を記している私があなたのことを知らずともあなたはそこに生きているように―――。



 自己紹介が遅くなってしまった。
 私の名前は朝比奈でぃ。半分はあなた達と同じ『人間』で、もう半分はあなた達とは違う『妖怪』である『半妖』だ。



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3名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 20:59:06 ID:WM1TjCNg0




ミセ*゚ー゚)リ 怪異の由々しき問題集のようです



※この作品には性的な描写が(たまに)出てきます。
※この作品は『天使と悪魔と人間と、』他幾つかの作品と世界観を共有しています。
※この作品は推理小説っぽいですが、単なる娯楽作品です。





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4名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:00:06 ID:WM1TjCNg0



 第一問。
 穴埋め問題編。

 「あなたのお名前なんですか?」





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5名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:01:07 ID:WM1TjCNg0




 嘆くとも 痛むものから くゆまじな



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6名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:02:06 ID:WM1TjCNg0
【―― 0 ――】


「―――『名前』っていうのはさ。結局、存在の弱点なんだよね」


 散々勉強を見てあげたのにあろうことかテスト本番で名前を書き忘れるという小学生みたいなミスをし赤点になった後輩――つまり私を視界の端に収めながら、会長は言う。
 その視線が窓の外に固定されたままのことから察するに課題を手伝ってくれる気はないようだ。


「ほらなんだっけ? 『名は体を表す』とかさ。そういう言葉、あるよね?」


 ありますね、と口だけで応じて手は休めない。
 馬鹿みたいな量出された課題をどうにか処理しないと私は近々留年が決定してしまう身だ、会長のどうでもいい話に付き合っている暇はなかった。
 試験勉強を付き合ってもらった身なのに……我ながら我が儘だ。 

 まあ会長の方も私がそうだと知って付き合っているところがあるから、これでいいのかもしれない。
 良くないかもしれないけれど少なくとも私に良くする気はなかった。

 とりあえず今のところは。


「僕からすれば記号でしかない名前が存在の本質を表すなんておかしいと思うんだけど……結局ね、だからこそ名前は大事なんだと思うよ?」

7名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:03:07 ID:WM1TjCNg0

 薄々気づいてはいたが、どうやらこの見目麗しい会長様は私に説教をしているらしい。
 「テストで名前書き忘れるとかありえねぇだろボケ!」……というのを、遠回し遠回しに、オブラートに包んで言っている。
 あるいは単に思いつきで喋っているだけか。その可能性も無きにしも非ずだ。

 ……うん、そうだな。
 どっちかって言えばそっちの可能性の方が高い気がする。


「人間は本質がないうちに名前をつけられちゃうから、必然的に存在の根幹に名前がきちゃう」


 そして。


「その本質に準じて名前をつけられる『人外』は……当然のことながらそれが弱点になっちゃうってわけだね」


 先に付けられよう、後に付けられようと。
 どっちにしろ『名前』というものは弱点になってしまうんだよ、と会長は微笑み言った。


ミセ*-3-)リ「じゃー、弱点にしかならない名前なんていらないんじゃないですかぁ?」

8名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:04:10 ID:WM1TjCNg0

 ぐでーと机に突っ伏しながら訊いた適当そのものな言葉にも、その人は大真面目な顔でこう返した。


「そんなことはないと思うよ?」

ミセ*゚ー゚)リ「ぇえ? どうしてですかぁ?」

「それはそうだよ」


 だってね、と前置いて結論を述べる。



「強くなければ生きていけない以上に――――弱くなければ生きている意味がないのが人間だから」



 あるいは人外かもね、と。
 また会長は知った風に笑った。

9名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:05:08 ID:WM1TjCNg0
【―― 1 ――】


 学校にはいじめというものがある。 

 品のない人間が能力のない人間を詰ったり無視したり、場合によってはそれ以上の馬鹿馬鹿しい嫌がらせをするような、アレだ。
 私もこれまでと何回か目にしてきていて、高校に入れば流石にそんな幼稚なことする奴はいないでしょーと思ってたら中学より多い人数がより酷い形でいじめに関わっていて辟易したのを覚えている。

 「女子高生」という幻想を抱いていられたのはこの学校に入学して一ヶ月くらいのものだった。
 一ヶ月も経てばグループができ、即ちいじめができる。
 もう本当に嫌になる。あんな人達とは話したくもないけど、それでもニコニコ話さないと私もいじめられるので話すしかない。

 私が所属するグループは率先してやっていないことが唯一の救いだった。


 なんでこんなことをいきなり話し出したかと言えば、彼女――「朝比奈でぃ」というクラスメイトのことを語ろうとする際、まず最初の思い出として連なっている事柄がいじめに関するものだからだ。

 高校二年生になって、同じクラスになって、席替えで隣の席にもなっちゃって。
 その時に何かしらのこと(「これからよろしくねー」とか「部活何やってるのー?」とか)は話したと思うんだけど、申し訳ないが全く覚えていない。
 多分、向こうも覚えていないと思うのでおあいこだが。

 友達未満のクラスメイト、話さないわけではないが決して仲が良いわけではない。
 私と彼女はそういう関係だった。

 とりあえずは――――その時までは。

10名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:06:07 ID:WM1TjCNg0
【―― 2 ――】


 どうやらまた、いじめとやらに遭遇してしまったらしい。


ミセ;゚ -゚)リ「……おぅふ」


 ベッタベタなことに体育館裏。
 最後の授業が終わってお気にのヘアピンがなくなっていることに気づき、体育の時に落としたんだそうに違いないと半ば祈るような思いで体育館裏まで来て、いじめを目撃してしまった。
 (ちなみにどうしてまず体育館裏に来たかと言えば一つ前の授業がダルかったのでそこでサボっていたからである)。

 人間サンドバック、とでも言えばいいのだろうか。
 いかにもな感じの男子生徒が五人くらいに殴ったり蹴られたりしている。


ミセ;-ー-)リ「(ギリギリで気づけて良かったぁ……)」


 危うく出て行ってしまうところだった。
 そうなればこっちの身だって危ない。

11名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:07:07 ID:WM1TjCNg0

 今もそうだし今までもそうだったのだが、私はいじめられている人をわざわざ助ける勇敢な人間ではない。
 ヘアピンは諦めて大人しく帰ることにした。
 人生初彼氏に買って貰った割と大事なやつだったんだけど……仕方がない。

 と。


ミセ*゚ー゚)リ「あ。」

(#゚;;-゚)「どうも」


 踵を返したその先に清純な美少女がいた。

 美少女、もとい朝比奈でぃ。
 顔に往年のジャ●プの某漫画ヒロインみたいな大きな傷があるにも関わらず、その清楚そのものな可愛らしさは全く損なわれることがない。
 肩より少し長いくらいの髪を一纏めにしたポニーテールがとてもよく似合っている。

 真面目で、丁寧で、可愛くて。
 非の打ち所がないクラスメイトがそこにいた。

12名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:08:08 ID:WM1TjCNg0

ミセ;*゚ -゚)リ「……あ、ああ。でぃちゃん」

(#゚;;-゚)「そういうあなたはミセリさん」


 割とノリが良い方なのかそんな風に返してくる彼女。
 大きな傷があってもでぃちゃんは優等生なので、本来ならば授業サボりのメッカである体育館裏になんか来る必要はないはずだ。
 だから私は、


ミセ*゚ー゚)リ「どうしたの、でぃちゃん。こんなトコで」


 と、少しだけ声を抑えて訊いた。
 無論現在進行形で背後、角を曲がった先では哀れな男子生徒がボコられている。

 いじめとかもうウンザリだよなぁ、"I've had enough of..."。


(#゚;;-゚)「ずっと夢だったことが叶いそうな気がしたので」

ミセ*゚ー゚)リ「へ?」

(;#゚;;-゚)「あ、間違えました。帰ろうと校門へ向かっていたら声を聞きました。偶然なのです」

13名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:09:09 ID:WM1TjCNg0

 何をどう間違えたのかは分からないけど、とりあえず彼女の言葉が嘘ということだけは分かった。
 この無意味にだだっ広い中高一貫校で校舎からフツーに校門へ向かえば、体育館裏の声なんて聞こえるわけがないのだから。
 何十メートル離れてると思ってるんだろう。

 そんなことをしたはずがない。
 "cannot have+過去分詞"。


ミセ*-ー-)リ「なんだか知らないけど、この先には行かない方がいいよ。ちょっち大変なことになっちゃってるから」

(#゚;;-゚)「そうですか」


 なんでもないように彼女は頷き、そして。
 またなんでもないようにこう続けた。


(#゚;;-゚)「でも私はこの先に行くつもりです。用があるのです」

ミセ;゚ー゚)リ「ちょっ……」


 思わずブレザーを掴んで引き止めようとした私の脇を彼女は猫のようなしなやかさでスルリと抜け、さっさと角を曲がって騒乱の中心へと入っていた。

14名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:10:10 ID:WM1TjCNg0

ミセ;゚ -゚)リ「(うわちょっとヤバいって! 何してんのあの子!?)」


 馬鹿かよ!
 破滅系の中二病か!?

 とか思いつつも物影からこっそり窺うと、ちょうど主犯格らしい男の手がでぃちゃんに伸びるところだった。
 彼女は動かない。
 傷ついた誰かを庇うように当たり前のように立っている。

 直後だった。



 その男子が――――引っくり返った。 



ミセ;゚ー゚)リ「…………は、はあ?」


 でぃちゃんより頭一つ分以上高い男子生徒がいきなり地面に倒れ伏していた。
 服を掴もうとした瞬間、私がまばたきを一度した後にはもう、その人は動かなくなっていた。

15名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:11:10 ID:WM1TjCNg0

 何が起こったのか全く分からない。
 当事者だってそれは同じで、残りの奴等も訳が分からないままにいっせいに飛び掛った。
 が、それも無駄に終わる。


(# ;;-)「―――割と簡単ですね。がっかりなのです」


 全員が全員、まるで彼女が纏う結界にでも吹き飛ばされたかのように倒れ伏す。
 意味が分からない。

 魔法――そうとしか思えない光景が目の前で展開されたのだ。


 でぃちゃんはいじめられていた可哀想な少年A君に手を差し伸べ立たせ、
 「お礼は結構です。当たり前なのです」
 なんて、テンプレ過ぎて反対でカッコ悪く更に逆につまり一周してカッコいい台詞を言ってその場を後にした。

 後にした、というか、こっちに戻ってきた。
 もう自分の役目は終わった。そう言わんばかりの表情で。

 ええと……。
 "Let me see"。

16名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:12:05 ID:WM1TjCNg0

ミセ;゚ー゚)リ「ね、ねぇ……今の、」


 会釈をして私の隣を通り過ぎようとした彼女の背中に声をかけた。


ミセ;゚ー゚)リ「ま――『魔法』……」

(#゚;;-゚)「魔法なんて、そんなものこの世界にはありませんよ」


 零れた言葉を拾い上げて優しげな冷笑という器用な真似をしてみせる彼女。
 それはたとえば、出来の悪い生徒に講義をする先生のような、そんな微笑みだった。


(#゚;;-゚)「魔法がないのですから魔法使いがいないのも道理です。それに」


 最後に彼女はこう漏らした。
 独り言のような、伝わることを期待していない小さな声で。


(# ;;-)「……私はどちらかと言えばスタンドなので」

17名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:13:05 ID:WM1TjCNg0

 色々訊きたいことはあったけど、それを声に出せる状態までの疑問文にした時にはもう彼女は私の視界から姿を消していた。
 当たり前のように。
 最初からそこにいなかったかのように。



 ……一つ、分かったことがある。
 『朝比奈でぃ』というクラスメイトは容姿だけではなく中身もかなり変わっている、ということ。

 そう。


 まるで、人間じゃないみたいに―――。


.

18名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:14:04 ID:WM1TjCNg0
【―― 3 ――】


 「それを期に仲良くなった」――なんて、お約束な展開はなく、私達はクラスメイトのままだった。
 現実はギャルゲーのようにはいかない。

 始業ギリギリに登校する私と少なくとも余裕をもって来ているらしい彼女。
 彼女の意外な一面(いじめなんて私と同じく見て見ぬ振りをするタイプだと思っていたのだ)を見た後も別に私はわざわざ彼女に話しかけようとはしなかったし、それは彼女の方も同じだった。
 あの出来事の後も私達の関係性はなんら変化しなかった。

 別にどうでも良いことだったしね。
 "It doesn't matter to me + wh-節"。


 しなかったんだけど、直後に私にはとてつもない問題が降りかかった。
 そしてそれを期に私達の関係は変化していく。


 偶然のような必然。
 必然のような偶然。
 どちらでも構わないしどちらとも言えると思うけど、一つだけ言うとすれば「事実は小説より奇なり」である。

19名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:15:07 ID:WM1TjCNg0
【―― 4 ――】


ミセ;-3-)リ「うぅぅぅ〜……」


 口をアヒルにしながら生徒会室から続く廊下を進む。
 私の通う淳高には生徒会室が二つあり先ほどまでいたのは旧生徒会室と呼ばれる古い方の部屋だ。

 数年前にこの学校が近隣の学校と統合し淳中高一貫教育校になった時のこと。
 校舎の最も高い地点、五階六階に相当する場所にポツリと存在する生徒会室はあまりにも不便でかつ危ない。
 ということで玄関近くに新しく部屋を作り旧生徒会室は物置になった。

 ……のだが、先代の生徒会長の意向で先代の生徒会はあえて旧生徒会室を使っていた。

 現在の生徒会長も特に変える理由はなかったのでその生徒会室を使用することにしている
 そして新生徒会室は「生徒会室もどき」と呼ばれる今があるというわけだった。
 なんとかは高い所が好きなのだ。

 そんなやたら教室から遠く便が悪い旧生徒会室、もとい生徒会室に役員でもなんでもない私がどうしてわざわざ出向いていたかと言えば――それは、相談の為だった。


ミセ;゚ー゚)リ「まったくもぉ……」

20名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:16:05 ID:WM1TjCNg0

 私は訳あって「地域環境研究会」などという名の無茶苦茶胡散臭い(事実活動も胡散臭い)部に所属しているのだが、その部が廃部になりそうなのだ。
 顧問の教師が語るに、なんでも「明確な活動があり成果がなければ承認を得ることができない」らしい。
 承認を得ることができないなら何故今まで当たり前のように存在してたんだよ、とは思ったけど……。
 そこはどうやら先代の生徒会長が理解のある(言い換えれば物好きな)人だったので黙認されていただけらしく今期のあの会長はそこら辺には甘くなかった。

 生徒会長直々の視察だ。
 クリアしなければ部は即刻廃部になる。
 (ただし会長が承認した場合には風紀委員や教師側にも掛け合って研究会から部へ昇格させ、部室も用意してくれるという破格の条件なんだけど)。

 兎にも角にも、あの『一人生徒会』の視察の為に私達は準備を進めていたのだが……。


ミセ*;-ー-)リ「まさか、先輩達が全員寝込むことになるとは、なぁ……」


 あろうことか。
 視察の三日前のこの段階で、私以外の研究会の部員三人が全て病でダウンという洒落にならない事態になってしまったのだ。
 詰まる所、私が今回生徒会室を訪れたのは視察の延期の交渉だった。

 改善の余地があるはずだってことだ。
 "...leave much to be desired"。

21名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:17:05 ID:WM1TjCNg0

 ちなみにその回答は、


『どうして僕がソッチの都合で日程を合わせないいけないのかな? この視察は試験なら追試に相当するものなんだけど』


 という、血の涙もない、しかしこれ以上ないほどにご尤もなものだった。
 そりゃあそうである。
 何やってんのかよく分からない部活が部費をせしめてるだけでも問題なのに、存続の最後のチャンスをこっちの都合に合わせてくれなんてふざけた言い分が通るはずもない。

 しかし「そこをなんとか」とか「優しい会長お願いしますよ」とか「なんでもしますから」とか三十分ほど拝み続けた結果、会長は一枚の紙をくれた。
 綺麗な文字で住所が書かれた名刺程度の大きさの紙だ。

 「なんですかこれ?」と私が訊くと、会長は「紹介状みたいなものだよ」と面倒そうに言う。
 裏面を見てみれば会長のフルネームやアドレスが書いてある。
 なるほど、どうやら自分の名刺の後ろに走り書きをしたものらしい。


『部員三人が明明後日までに回復してればいいんだよね?』


 頷くと会長は続けて言った。

22名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:18:07 ID:WM1TjCNg0

『じゃあそこに行ってみればいいんじゃないかな? もしかしたら全部上手くいくかもしれないよ』


 “全部上手くいく”という意味が分からず、怪訝そうな顔をした私。
 そして。



ミセ;-ー-)リ「『どうせ地元の心霊スポットにでも行って体調を崩したんでしょ?』かぁ……好き勝手言ってくれるよ」


 ……まあその通りなんだけどね。
 「心霊現象だって地域のことだ!」と元気良く言い放った先輩は翌日には高熱でぶっ倒れていた。
 私の周りは馬鹿だらけだ。

 しかし……。


ミセ*゚ー゚)リ「会長がオカルト好きだったとはなぁ」


 専門家への紹介状ということなので多分霊媒師とかが住んでいる住所なのだろう。
 私は幽霊を否定することはできないけど、除霊は信じている。

23名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:19:08 ID:WM1TjCNg0

 どうせ大抵の心霊現象なんて思い込みなんだから要するに「除霊した」と信じ込ませれば良いのだ。
 それならば職業にしている人だっているはずだ。

 臨床心理士か精神医学系の医師か……よくは分からないが、そこら辺の人間か。
 流石に詐欺師ではないと思うけど。
 マジでイッちゃってるだったらどうしよう、逃げれば良いのかな……?


ミセ*-3-)リ「まっ、なんでもいっかぁ」


 使えるものは最大限使えば良いのだ。
 "make the most of..."。

 会長の視察まで、あと三日。
 それまでの間に事態を解決してくれる人なら誰でもいいし、もし先輩達の体調不良がただの偶然で何も進展しなくとも、部活がなくなるだけだ。
 良い暇つぶしというなるだけで十分、正直に言えばどっちでも良かった。

 実態のない部活に愛着なんてなかったから。

24名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:20:06 ID:WM1TjCNg0
【―― 5 ――】


 また出会った。


ミセ*゚ー゚)リ「あ。」

(#゚;;-゚)「……どうも」


 二年生の自転車置き場。
 丁寧な会釈をしたのは折り目正しい少女。

 つい先日いじめられっ子を助けた私のクラスメイト、でぃちゃんだった。


(#゚;;-゚)「最近はよく会いますね。縁があるのです」

ミセ*^ー^)リ「そうだねぇ……っていうかでぃちゃんも自転車通学だったんだ」

(#゚;;-゚)「はい。ここは少し、遠いので」

25名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:21:08 ID:WM1TjCNg0

 その艶やかな髪と同じシックな黒色の自転車を動かしながら彼女は言う。
 肩口より少し長く、一纏めにされた髪が尻尾のように揺れた。


ミセ*゚ー゚)リ「遠いって言うと……どの辺?」

(#゚;;-゚)「西側なのです。一駅か二駅か……電車を使うか迷う距離ですね」


 この淳中高一貫学校は近隣の中学校と高校が統合してできたものなので、中にはでぃちゃんよりも遠い場所から通学してくる人もいる。
 一学年に十三ものクラスがあるマンモス校なので生徒の事情にも色々あるというわけだった。
 ちなみに私とでぃちゃんは文系進学科の十一組、生徒会長は四つある進学科の特権階級、特別進学科十三組の生徒である。

 普通科、進学科、特別進学科はそれぞれ授業の終了時刻が違い、私もそれを待って会長に会いに行ったので眼の前の彼女も何か用事があったのかもしれない。
 前に訊いた時は帰宅部と答えていたからおおよそ図書室で本でも読んでいたのだろう。

 そういう静謐な雰囲気が、よく似合う子だ。


ミセ*-3-)リ「西側っていうとぉ……あの観覧車がある辺り?」

(#゚;;-゚)「そうですね。そこら辺なのです」

26名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:22:06 ID:WM1TjCNg0

 ちょうどいいや、と私は手を打つ。
 名刺に記された住所はその辺りだったはずだ。


ミセ*゚ー゚)リ「じゃあお願いなんだけどさ、そこまで案内してくれない?」


 彼女は不思議そうに首を傾げ、こう訊ねてきた。


(#゚;;-゚)「ミセリさんは私とは逆方向の新都側だったはずですが、商店街に何かご用事ですか?」

ミセ*-3-)リ「まーねー」


 まさか除霊の依頼に行くとも言えず、適当に返す。
 私の返答にも奥床しい少女は「そうですか」とだけ答えて追及はしなかった。
 察してくれたのか興味がないのか、どっちだろうか。

 どうでも良い、かな?
 "be + indifferent to ..."。

27名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:23:08 ID:WM1TjCNg0

 それとも、もしかするとそれが彼女のスタンスなのかもしれない。
 いじめられているわけではないもののクラスに仲の良い友達は一人もいない彼女。

 孤立――は、流石に言い過ぎか。


ミセ*-ー-)リ「(『孤高』くらいかなぁ……)」


 英国などの社交界では一人で佇んでいる人間には無理に話しかけないと聞いたことがあった。
 喧騒を離れ、孤独を楽しむ。
 そういう生き方と距離の取り方を肯定する。

 彼女も。
 その類の人間なのかもしれない、とふと思った。

 一人で生きる……わけではないけれど、気を許す数人とだけ過ごす。
 無理に友達を作ろうとしない。
 他人と違うことに悩んだり戸惑ったりしない類の人間。

28名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:24:05 ID:WM1TjCNg0

 だとするならば私の申し出もひょっとすれば心の中では迷惑に感じているのかもしれないが、そこはクラスメイトのよしみということで、我慢してもらうことにしよう。
 三百六十五日ある日の一日、その夕方の一時間にも満たない時間くらいなら、どれほどの人嫌いでも許容範囲のはずだから。

 控えめに言ってもさ。
 "...to say the least of it"。


(#゚;;-゚)「では、行きましょうか」

ミセ*^ー^)リ「はいはーい」


 彼女に続き、私も自転車を出して跨る。
 校門に立っていた研修で来ている大学生(そこそこイケメン)に挨拶をして私達は走り出す。

 気まずくなるかもしれない道中、何を話そうかなあなんて考えながら。

29名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:25:04 ID:WM1TjCNg0
【―― 6 ――】



ミセ*^ー^)リ「ここでいいよ」


 ですが、と目的地まで案内をすると主張したクラスメイトの頬は、少し赤い。
 道中は結局女子高生の鉄板である恋の話をすることにし、私は今付き合っている相手はいないこと、
 そしていかにも奥手っぽいでぃちゃんには好きな人がいることなどをきゃいきゃい言いながら話していた。
 (正しくは盛り上がっていたのは私だけで彼女は終始恥ずかしがっていた)。
 照れたようなバツの悪そうな顔はその結果だ。

 可愛いなあ。


ミセ*゚ー゚)リ「ここまで来たら分かるし。分からなかったら近所の人に訊くから」

(#゚;;-゚)「……そうですか」


 少し申し訳なさそうな表情をした彼女に、私は精一杯の笑顔で別れを告げた。

30名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:26:07 ID:WM1TjCNg0

ミセ*^ー^)リ「んじゃっ、また明日! 今日はありがとねー!!」

(#^;;-^)「はい。楽しかったです、また明日」


 ブンブンと手を振る私と最後にもう一度丁寧なお辞儀をしたでぃちゃん。
 物静かで人見知りと思っていたんだけど、ひょっとすればひょっとすると……誰かとわいわい話すのも嫌いではないのかもしれない。
 私は商店街の入口、私の進行方向とは別の道を歩む彼女の背中を見送りながら、


ミセ*゚ー゚)リ「……ひょっとしたら仲良くなれるかも」


 なんて、一人で思っていた。


 ……ここまでの道のりが楽しくて忘れていたけど、私にはこれからもやらなければならないことがある。
 クラスメイトと恋の話をするのは本題ではなかった。

 仲良くするのは楽しかったけど、"get along with+人"。

31名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:27:29 ID:WM1TjCNg0

ミセ*゚ー゚)リ「ええっと、確か商店街の先の……白い建物……」


 商店街の端には大きな観覧車が鎮座している。
 場違いにも程があるそれを見上げながら、意外と活気に溢れている町を行く。


 ここ、VIP州西部の西地区はおよそ三つに分けられている。
 最も東側の新都、西側州境に近いこの商店街のある地域、二つの間に挟まれている住宅地という風に。
 この地域を更に西へ行けば山脈と樹海があり、そこは古い家柄の人々が住んでいる(らしい)。

 淳高は住宅地エリアにあり私は新都の出身なので、西側ではメジャーなここの商店街も初めてだ。
 思っていた以上に人も多く、明るい場所という印象を受ける。 

 目的地は商店街の先。
 小高い丘にほど近い白い建物――と。


ミセ*゚ー゚)リ「あれかな……?」

32名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:28:11 ID:WM1TjCNg0

 住所を見ながら進んでいって、条件に合うものを探し、辿り着いたのは診療所だった。

 周囲にはもう店はなく、ポツポツと住宅があるのみのその場所。
 型の古い自販機と妙に新しい電柱に向かい合うように白く大きな建物が建っている。

 何の変哲もない二階建ての診療所で、出ている看板には「高岡診療所」と営業時間が書かれていて、その右下に「現在はやっておりません」との但し書きがあった。
 プラスチックのプレートを打ち付けての訂正であることから察するに休業中というわけではなく廃業になったのだろう。
 もうやっていないのなら看板は下げてしまえばいいと思うけど、それすら面倒な億劫な人が家主なのか……それとも愛着があるのかな。

 塀の内、庭に停めてある軽自動車(スバル360、いわゆる「てんとう虫」)とポップなデザインの黒の原付(ヤマハ・ビーノだ)を見るに、中々可愛い物好きな人が住人らしい。


ミセ*-ー-)リ「さて」


 玄関先、後から付けられたらしき真新しいインターホンを押す。

 ピンポーンという間の抜けた音。
 鬼が出るか、蛇が出るかと考えていたら、返ってきたのは若い女性の舌足らずな感じのする可愛らしい声だった。

33名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:29:29 ID:WM1TjCNg0

 会長の紹介でやってきたということを伝えると「少々お待ち下さい」なんて丁寧な言葉で対応される。
 紹介はどうやら本物だったらしい。
 ぶっちゃけると騙されているんじゃないかと内心ビクビクしていたので何事も無く済んで良かった。

 ……まあ。
 この先も何事も無く、事情を話して最終的にその専門家さんとやらに「気のせいじゃない?」とあしらわれる気がするんだけど。


 そんな風に考えているとドアが開いた。
 外開きだったようで危うく頭をぶつけそうになり、一歩下がりながら顔を上げると―――。



ミセ*゚ー゚)リ「……あ。」

(;#゚;;-゚)「…………ど、どうも」



 ―――またまた会った。

 そこには、先程別れたばかりのクラスメイトがブレザーを脱いだブラウス姿、信じられないことに頭から猫耳を生やし立っていた。
 更に一歩下がって表札を見れば、書かれていたのは彼女の苗字である「朝比奈」だった。

34名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:30:19 ID:WM1TjCNg0
【―― 7 ――】


 旧高岡診療所――現、朝比奈家。

 通された応接間は元は診察室だったのか、変則的なリビングダイニングのような作りである。 
 廊下に続く入り口とは反対側、その左右は壁がなく通れるようになっている。縦棒の部分が太いT字路のような感じだ。
 私をこの部屋に案内したでぃちゃんは真っ赤な顔で右側の通路を通って何処かに走り去ってしまった。

 ……なんだったんだろう、あれ。
 可愛かったけど(それはもう思わず襲いたくなるほどに)。


 部屋の中央にテーブル、その両側にソファー。そして小さな椅子。
 それ以外には観葉植物くらいしかない。
 私が「居間」ではなく「応接間」と表現したのはその為で、お客さんを一時的にもてなすスペースでしかないことが如実に理解できる空間だ。

 二分後くらいだっただろうか。
 することもなく、黙ってソファーに腰掛けて手持ち無沙汰に待っていると扉が開いた。

35名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:31:06 ID:WM1TjCNg0

 入ってきたのは少し背の低い男性だった。


(,,^Д^)「こんにちは。んで……はじめまして」

ミセ*゚ー゚)リ「あ、はい。はじめまして」

(,,-Д-)「ごめんね、レポートの資料を探してたら手間取っちゃって」


 童顔の男の人の挨拶に同じくだけの笑顔で返す。
 私服の上からとりあえず白衣を羽織った、みたいな妙な格好のその人は「朝比奈擬古と言います」と自己紹介をし、私の正面に座った。


ミセ*゚ー゚)リ「“ギコ”って変わったお名前ですね。どんな字を書くんですか?」

(,,^Д^)「ふつーの字だよ。古いやり方を真似るっていう意味の擬古。君の名前は?」

ミセ*-ー-)リ「水無月ミセリと言います」


 軽く頭を下げるとその人、ギコさんは少しだけ驚いたような顔をした。
 そしてなんだか懐かしむように「良い名前だね」なんて呟いて、小さく笑った。

36名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:32:16 ID:WM1TjCNg0

 年で言うと私の少し上くらいだろうか。
 男の人には珍しい幼く可愛らしい顔立ちで、笑顔がとてもよく似合っている。
 親しみやすさもここまで至るかというレベルで見るからに優しそうだ。

 おそらくはでぃちゃんのお兄さんなのだろう。
 "Perhaps"あるいは"maybe"。

(,,゚Д゚)「あれ」


 と、自己紹介を終えたところでギコさんが言った。


(,,゚Д゚)「もしかしてでぃちゃん、お茶出してなかったりする?」

ミセ;゚ -゚)リ「あー……そうですねぇ。ネコミミ見られて恥ずかしかったみたいで、どっか行っちゃいました」


 それなら外してくればいいのに、とは尤もだけど、外すことを忘れるほど馴染んでいたんだろう。
 いつも通り、というか。
 多分、あの物静かな子は家ではいつもあんな感じなのだ(コスプレが趣味、とか)。

37名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:33:15 ID:WM1TjCNg0

 ギコさんは「そっか」とだけ言うと、一度部屋を出ていき急須とコップを持って戻ってきた。
 家の雰囲気は洋風だが住人の好みは和風らしい。

 お茶を注ぎながら、猫耳娘のお兄さんは言う。


(,,^Д^)「アレは僕の趣味みたいなものでさ。あんま気にしないでくれると嬉しいな」


 …………やべぇ。
 お兄さんの趣味だったんだ……。

 うわー……。
 妹に家の中で猫耳つけてもらってるお兄ちゃんとか……想像を絶する。
 可愛らしい顔してなんてプレイを強要してんだ、この人!

 なんて残念な人なんだろう、"What a shame that ...!"。


ミセ;゚ー゚)リ「……でもまた、どうしてネコミミ?」

(,,゚Д゚)「え、だって可愛いでしょ?」

 ……いや、可愛いけど。
 可愛いけども!

38名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:34:11 ID:WM1TjCNg0

 それは……そうじゃないでしょ!!

 叫びたい衝動を抑え、「そうですね」とにこやかに返事をする。
 頬が引き攣ってるがどうにか誤魔化せたようで、「だよねー」と間延びした同意を頂く。

 ま、まあ。
 単に可愛い物に目がない乙女な人なのかもしれないし。
 車も原付も可愛かったしね、うん。


(,,-Д-)「そろそろでぃちゃんも戻ってくるだろうし……じゃあ、世間話はここまでにして」


 少しだけ気を引き締めた風にギコさんは言った。
 自然と私も背筋を伸ばす。


(,,゚Д゚)「あの子――君の言うところの生徒会長さんから事情は聞いてるから話してくれるかな? 君の先輩達が遭遇したっていう心霊現象の話をさ」


 あるいは怪異のね、と彼は笑った。

 それは何処か先ほどまでの朗らかな笑いとは違う。
 いや、明らかに何か壮絶な経験を積んできた、専門家らしい笑みだった。

39名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:35:06 ID:WM1TjCNg0
【―― 8 ――】


 物凄く簡単に言うと、「よくある話」なのだ。

 高校生三人がその場のノリで心霊スポットに行くことにしました。
 懐中電灯とカメラをもって出発し、結局何も出会えず適当に写真撮って帰ってきて……次の日には全員高熱でダウンしていた、と。
 もう、これ以上ないくらいにお約束でよくある話だ。


(,,-Д-)「……よくある話だね」

ミセ*-3-)リ「馬鹿なんです、あの人達は」


 一通り話を終え、お茶を飲もうと手を伸ばす。
 熱いお茶は何故だかガラス製のコップに注がれている。
 ……熱くて持てない。

 私は諦めて手を引っ込めソファーに深く腰掛けた。


ミセ*゚ー゚)リ「それで……どうですかねぇ。やっぱりただの偶然ですか?」

40名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:36:06 ID:WM1TjCNg0

 探りを入れるような私の発言にもギコさんは笑って応じる。


(,,^Д^)「偶然ってことはありえないよ。あの子が僕に連絡してきた時点でね」

ミセ;゚ -゚)リ「え、じゃあ―――」

(,,゚Д゚)「うん。今回の件は確実に怪異の仕業だよ」


 『怪異』……って。
 妖怪とか化物とか魑魅魍魎とか、そういう?


ミセ;゚ー゚)リ「そんな……。眼鏡で巨乳な委員長が化け猫になって暴れ回ったりとか、そういう?」

(,,-Д-)「またえらく限定的なイメージだねそれ。何の影響?」

ミセ;-3-)リ「い、いえ?」


 今見てるアニメの影響です、とは流石に言えなかった。

41名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:37:06 ID:WM1TjCNg0

ミセ*゚ー゚)リ「でも、そんな非現実的なものがこの世に実在するんですね。超能力とか魔法とかと同じで……ほとんどは空想のことだと思ってたのに」

(,,^Д^)「そうだね」


 ほんの少しだけ寂しそうな笑みを浮かべて、彼は言った。
 「でも人外も魔術も実在する」と。

 しかし専門家を前にしても未だ半信半疑な様子の私(当たり前だ)を見かねたのか、


(,,゚Д゚)「君が良いなら僕の仕事を見せてあげてもいいよ」

ミセ*゚ー゚)リ「え?」

(,,-Д-)「君が話半分でしか聞いていない、面白半分でしか信じていない『怪異』ってモノを……実際に見せてあげようって言ったんだ」


 その言葉に、私は絶句した。

 そういったことを言う――幽霊とかお化けとかをのたまう――詐欺師は「見せてあげよう」なんて言わない。
 だって、騙しているだけなんだから。
 存在しないものを「存在する」と言って騙しているだけで、だからはなから存在しないものを誰かに見せることなんてできやしない。


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