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( ´_ゝ`)デザート×キャラバンのようです(´<_` )
1
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 19:46:34 ID:tFLjG.4M0
ラノベ祭り参加作品
400
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:41:14 ID:2tZd1sd.0
その一方で、ブーンは黙り込んだままの弟者の姿を見ていた。
ブーンは「んー」と小首をかしげていたが、意を決したように声を上げた。
( ^ω^)「オトジャ、大丈夫かお?」
(´<_`; )「……ああ」
ブーンの声に弟者は顔を上げ、それからしまったと言うように顔をしかめた。
一方のブーンは、弟者が言葉を返してくれたことに。そして、それ以上に、その顔に感情らしきものを浮かべたことにほっとしていた。
これはなんだろう、とブーンは心のなかで首を捻り、それが『嬉しい』という感情であることに思い至る。
(´<_` )「お前ら羽虫に感情なんてないくせに」
(*^ω^)「それはブーンが忘れてるだけで、本当はあるんだって思うお」
(´<_` )「知るか」
(*^ω^)「オトジャがお話してくれたおー。
なかよくなれたみたいで、楽しいおー」
素っ気ない辛辣な言葉だけを残して、弟者は再び沈黙する。
しかし、それにもかかわらずブーンは笑顔を浮かべたままだった。
弟者が普通に返事をしてくれて、それにお話してくれた。
たったそれだけなのに、ブーンの胸はほわっとしてとても暖かくなった。
.
401
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:43:13 ID:2tZd1sd.0
( ´_ゝ`)ゝ「まあ、鏡の件はあとで全力で謝るとして、今はとりあえず戻るか!」
('A`)「……いいのか、それで」
(*´_ゝ`)「流石だよな、俺」
(;'A`)「どこがだ!!!」
ブーンと弟者が話している傍らで、兄者とドクオの話は一応の決着を迎えたようだった。
兄者は振り返ると、弟者とブーンに向かって大きく手を振る。
( ´_ゝ`)ノシ「というわけで、弟者もブーンも行くぞ」
(*^ω^)「おー!」
( ´_ゝ`)「弟者。まあ……言いたいことはあると思うが、行こう」
(´<_` )「……」
( ´_ゝ`)「……正直、不注意だったからな。何も言わんさ」
兄者のらしくない言葉に、弟者の口が何かを言いたげに動く。
が、そこからは何の言葉も発せられなかった。
兄者もそんな弟者の様子に気づいたようだったが、それ以上は何も言おうとしなかった。
.
402
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:45:03 ID:2tZd1sd.0
……その後は誰も口を開かないまま、彼らは分かれ道があった広間に帰り着いた。
橙の光に照らされた、白い広間。
その柔らかな色の光に照らされた瞬間、緊張が緩んだのか兄者とブーンに笑顔が浮かぶ。
(*´_ゝ`)「というわけで、分かれ道だ!」
(*^ω^)b「分かれ道だお!」
一同が広間の中心につくと同時に、兄者とブーンは楽しそうに声を上げた。
最初に入ってきた入り口を覗きこみ、それからまだ進んでいない二つの出入り口を見てから、兄者は考えこむ素振りを見せる。
(*´_ゝ`)σ「よし、じゃあ今度はこっちの道に……」
( <_ )「待て」
( ´_ゝ`)「どうした弟者ぁー」
(;^ω^)「お?」
兄者は向かって正面――最初にこの広間に入ったときは、左側にあった通路を指さす。
そして、そのまま正面の出入り口へと進もうとする兄者に、弟者の制止がかかった。
(´<_` )「もう帰るぞ、兄者」
.
403
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:47:04 ID:2tZd1sd.0
(;´_ゝ`)て「――え?! 何で何で?
まだ来たばっかりだぞ。それに目的のブツだって……」
(´<_`#)「いいから!!!」
弟者の顔に、はっきりと怒りの表情が浮かぶ。
その手は固く握りしめられ。恐れではなく怒りに震えていた。
(;'A`)「おいおい、弟者……」
(;゚ω゚)「あうあう」
(´<_`#)「もう充分だろう。こんな何があるかわからないような場所なんかにいられるか」
(;´_ゝ`)「あー、時にもちつけ弟者」
('A`)「……もち?」
(;´_ゝ`)「あ、落ち着けだったわ。スマン」
そう言うと、兄者は小さく咳払いをする。
兄者はしばし唸り声をあげたあとに、弟者の顔を見据えて言った。
.
404
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:49:20 ID:2tZd1sd.0
( ´_ゝ`)「弟者よ。ここまで来て、目的を放り投げるというのはどうかと思うぞ。
母者も言っているではないか、『人間、信頼というものが大事だ』と」
(´<_` )「母者はこうも言っている。『退く勇気も、時に大切だ』と」
(;´_ゝ`)て「お兄ちゃんせっかくカッコイイこと言ったのに、即否定とかひどいっ!」
弟の答えに、兄者は再び、無意味な声を上げる。
そのまましばし、考え込んだ後に兄者は再び口を開いた。
(;´_ゝ-)σ「えーと、弟者っ! 弟者たん、こういうのはどうだろうか?
弟者が先に行って様子を見る。で、俺がここで待機する――どうだ、今度こそ完璧だろ!」
('A`)「必 死 だ な 兄 者」
∩(;´_ゝ`)∩「そりゃあ、ここで帰ったりなんかした日には、これからの予定が全部ダメになるからな」
∩(;^ω^)∩「たいへんだおー」
(´<_`#)「……」
∩(;´_ゝ`)∩「お兄ちゃん譲歩とかしませんからっ!
睨んでも俺は泣かないからな! 涙目とか言うなよホント」
(-<_-#)「……今回だけだぞ」
弟者はしばしの沈黙の後に、やっとそれだけを口にした。
.
405
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:51:17 ID:2tZd1sd.0
(´<_` )「じゃあ行ってくるが……兄者、くれぐれも勝手に動き回るなよ」
(*´_ゝ`)>「把握した。俺に任せろ弟よ!」
(;'A`)て「うわっ。これぜってー、信用できねぇ」
( ^ω^)「え? 何でだお、ドクオ?」
( ´_ゝ`)「……ブーンよ。お前はほんとぉーにいいやつだよな。
俺は今、もーれつに感動している!!!」
(´<_` )「……」
(;´_ゝ`)「ごめんなちゃい、弟者」
兄者の言葉に、弟者は不機嫌そのものといった表情となる。
それを見てとった兄者はただちに謝罪するが、それに弟者は何も返さなかった。
(´<_` )ノ「じゃあ、行ってくる」
その言葉とともに、弟者は部屋の外の暗がりへと出て行く。
暗かった廊下には明かりが灯り、壁の浮き彫りが照らし出される。
しかし、それもほんの僅かな時間のことで、すぐにまた暗闇へと戻った。
.
406
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:53:24 ID:2tZd1sd.0
⊂二(*^ω^)二⊃「ブーンもオトジャと一緒に行くおー」
(*´_ゝ`)∩「……じゃあ、俺も」
('A`)「やめれ」
( ´、ゝ`) チェー
ブーンが硝子のような羽をきらめかせながら、弟者の消えた暗がりへと向かう。
それを羨ましそうに見つめながら、兄者は口元を曲げる。
そして、そのまま口を開き、
(#´_ゝ`)「弟者ばっかりずるいぞー」
そう口にした瞬間。弟者からの大声が響いた。
( <_ )「兄者っ!」
( ;゚_ゝ゚)「はぃぃぃ。俺、行こうとなんてしてないから。してないデスヨー」
ヽ('A`)「オレはちゃんと止めたからな」
o( ;`_ゝ´)o「この裏切り者ー」
.
407
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:55:20 ID:2tZd1sd.0
( <_ )「兄者、どうした?」
あわてて弁解を図った兄者だが、そもそも彼の声は弟者には届いていなかったらしい。
弟者の声は相変わらず大きいものの、困惑が浮かんでいた。
兄者は両手を口元へと持って行くと、できる限りの大きな声で返事をする。
(∩´_ゝ`)∩「弟者こそどうした?
まだ、全然時間がたってないのだが……」
( <_ )「こっちはハズレだ。何もないぞ」
(∩;´_ゝ`)∩て「え? ちょ、そっち行くから時に待て、弟者よ」
( ω )ノ「はいはーい。ブーンがお迎えにいくお!」
弟者の回答に、兄者は慌てて駆け出す。
その肩にしがみついたドクオが、「急に走るな」と抗議の声を上げるが、兄者は足を止めなかった。
('A`;)「おい、兄者。何もないなら行く必要なくね?」
( ´_ゝ`)b「いいや、ハズレでも俺は行くぞ!
何しろせっかくの遺跡観光だからな」
足音を鳴らしながら浮き彫りの間を、兄者は進む。
それほど進まないうちに廊下は終わり、部屋らしき場所へと到達する。
.
408
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:57:26 ID:2tZd1sd.0
白の石材で作られた天井と壁には、装飾らしきものは見えなかった。
閑散とした部屋には、半ば崩れかかった机と椅子が並べられている。
かろうじて残っている棚には本らしきものがいくつか残され、壁の近くには武器置き場だったらしい形跡が見える。
( ´_ゝ`)「なんと」
( ´ω`)「お出迎えより、アニジャのほうが早かったお」
('A`)ドンマイ
照明もないのに、白い光で照らされた部屋。
部屋自体は年月の経過を感じられないのに、そこに置かれたものは古びている。
時間がずれているような、妙な印象を感じる部屋だった。
(´<_` )「石板らしきものは何もなし。
ざっと見て回して触ってみたが、罠らしきものもなしだ。
これはハズレだな……」
(;´_ゝ`)「いや、いろいろと気になることはあるのだが……
うむ。やたらとチグハグではあるが、とりあえずは普通の部屋のようだな」
弟者はその部屋の中で、本らしきものをめくっていた。
しかし、そこに書かれている文字は弟者には読み取れないものばかりだ。
古い時代の文字なのか。それとも、魔王たちが使った文字なのか。
しぃやギコならわかっただろうが、彼らは今ここにはいない。
.
409
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:59:22 ID:2tZd1sd.0
( ´_ゝ`)>「あー、怪しいのに何もないな」
( ^ω^)「んー、不思議だおー」
部屋をひと通り見て回った兄者は、肩を落とした。
その動作に、肩にいたドクオはずり落ちそうになりあわてて兄者の肩に指をかけた。
ヽ(#'A`)ノ「ちょ、ま、やめろ! 急に動くなって!!」
( ´_ゝ`)「お、スマンな」
(#´_ゝ`)「――って、お前は自分で飛べよ」
(#'A`)「いーやーでーすぅー」
ヾ(#`_ゝ´)ノシムキー (^ω^; )アウアウ
.
410
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:01:07 ID:2tZd1sd.0
( ´_ゝ`)「仕方ない。弟者、引き返すぞー」
( ^ω^)ノシ「ひきかえすおー」
(´<_` ).。oO(本にも魔力は感じられない。
魔導書のたぐいでも、魔物が憑いていることもなさそうだな)
ひとしきりはしゃぎ終えた後、兄者は本を読みふけったままの弟者に声をかけた。
騒ぎの原因となったドクオはといえば、兄者の肩に未だに居座り続けている。
変わったことといえば、兄者の反対の肩にブーンが笑顔で座っていることくらいか。
(´<_`; )「あ――ああ、把握した。」
( ´_ゝ`)「どうした、弟者ー。さては、その本おもしろいのか?」
(´<_` )「……いや。何が書いてあるかは、さっぱりわからん」
考えに気を取られ返事が遅れた弟者に、兄者は不思議そうな顔を見せる。
弟者はといえば、そんな兄者の様子にしまったという表情を浮かべる。
しかし、すぐに表情をとりつくろうと、手にとった本を兄者へと開いてみせた。
差し出された本を覗きこんだ兄者は、「ふむ」と興味深そうな表情を浮かべたが、すぐにその眉根を寄せた。
_,
( ´_ゝ`)「たしかに、さっぱりわからんな」
.
411
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:03:03 ID:2tZd1sd.0
( ^ω^)「ブーンもさっぱりだお」
('A`)「人間ってやたらと作ったり、書いたりするの好きだよな。何が楽しいやら」
兄者の肩から、ブーンとドクオが声を上げる。
どうやら二人にも本の内容は読めなかったらしく、すぐに会話は別の話題に移る。
('A`)「あー。やっぱ、何かに乗るのは楽だ。
おまえもそうだろ、ブーン」
_,
( ^ω^)「アニジャの肩に乗るのも楽しいけど、ブーンはやっぱり飛ぶほうが好きだおー」
(´<_`#).。oO(こいつら、いつか叩き切ろう。特に紫の方)
( ;´_ゝ`)「弟者。ドクオやブーンをすんごい表情で睨みつけるのはいい加減やめて」
弟者は何も答えない。
これは何を言っても無駄だなぁと思うと、兄者は小さくため息を付いた。
( ´_ゝ`)σ「まあ、いいや。ここは引き返して、さっさと進もう。
俺らの冒険は始まったばかりだ。まだまだ、先があるぞ」
(´<_` )「……ふむ。そうだな」
.
412
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:05:10 ID:2tZd1sd.0
――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――
(;´_ゝ`)「……」
('A`)「どうした、兄者?」
( ;-_ゝ-)「また俺だけ置いてけぼりになっている件について」
橙の光が落ちる、白い広間。
四方へ続く分かれ道となっているその広場に、兄者は再び取り残されていた。
広間に残っているのは兄者と、彼の肩に座り込んだままのドクオだけ。
⊂二(*^ω^)二⊃「ブーンは、オトジャについてくおー」
ブーンは弟者とともに先に進んでおり、この場所からは姿が見えない。
ドクオは「絶対に羽を毟られたりするからやめろ」と主張したのだが、ブーン本人はいかにも楽しそうな様子であった。
弟者と一緒に行っても無視されるだけだろうに、一体何が楽しいのだろうか――と、ドクオは納得できないでいた。
('A`)「弟者が先に様子を見に行って、自分は待機する――って、自分で言い出したんだろうが」
(;´_ゝ`)「いやぁ、だってああでも言わないと弟者たん絶対に引き下がらなかったんだもん。
あいつ一度決めたことは絶対に譲らないからな」
.
413
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:07:06 ID:2tZd1sd.0
弟者もブーンも、戻って来ない。
彼らが部屋を出てからそれなりの時間が立ったはずだが、帰ってくる様子もない。
('A`)「……なぁ、兄者」
( ´_ゝ`)「ん、どうした?」
('A`)「……お前さ、本当は弟者と仲が悪いのか?」
そんな手持ち無沙汰な時間の中、ドクオがふと口にした言葉に兄者の動きが止まる。
しばしの沈黙が流れた後に、兄者は何度か口を開いては閉じ、それからようやく声を上げた。
……その時にはもう、兄者の顔にはいつも通りのやや大げさな表情が浮かんでいた。
ヽ(#´_ゝ`)ノ「何を言う、俺と弟者たんはどっからどうみても仲良しさんだろ!」
(;'A-)「そういう意味で言ってるんじゃない。
あれ、オレ今、人間とは違う考え方で話しているのか? えっと、オレが言いたいのはな」
ヽ( ´_ゝ`)ノ「どうせ弟者と仲良しな俺が、なんだかんだ言って羨ましいんだろ」
('A`)「話を聞け。……俺が言いたいのは、ええと、……お前ら兄弟の関係はおかしいんじゃないか、ってことだ」
( ´_ゝ`)「……はへ?」
( -A-)「お前らさ――根っこの所で致命的に食い違っている気がする」
.
.
414
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:09:19 ID:2tZd1sd.0
白い部屋には、兄者とドクオの声以外に響くものはない。
少し前までは弟者の足音がかすかに届いていたが、それももう聞こえない。
(;´_ゝ`)「ええ、そうか〜?」
('A`)「……兄者。お前さ、いつも何を隠してんの?」
その言葉に、兄者はすぐには答えなかった。
弟者が去っていった通路の先をじっと見やり、そしてようやく声を上げた。
<(;´_ゝ`)v「え、えろい絵巻とか……」
('A`)「そうじゃなくて、さ。お前……言葉を選んでるっていうか、わりと本当のこと言ってないんじゃないか?」
(;´、ゝ`)「うむむ。わりと本気で、ドクオの言ってることがわからんぞ。
この兄者たん、顔を合わせる人ほとんどに、お前考えてること丸わかりって言われる件について」
('A`)「……オレさ。ブーンと違って、楽しいって感情はそれほどよくわからないんだ」
ドクオは兄者の肩から降りると、その羽を動かしはじめる。
その動きは危なっかしいものだったが、それでも落ちることはなかった。
ドクオは兄者の顔がよく見える位置でとどまると、その顔をじっと見つめた。
.
415
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:11:53 ID:2tZd1sd.0
('A`)「でも、俺はさ、影から生まれたせいか人の後ろ暗いところとか、後ろ向きの感情ってやつには敏感なんだ。
相手の嫌がっている部分ってのに触れるのがとにかく、上手いらしい」
(;´_ゝ`)「流石な俺でも、ひくわー」
(#'A`)「じゃあかしい!」
ドクオは紫の顔を赤に染めるが、すぐにその表情を元に戻した。
小さな顔の中心にある細い目が、兄者をじっと見据える。
('A`)「……とまあ、今みたいな感じでさ、お前いろいろと話をそらしたり、誤魔化してるよな。
一体、何を隠してるんだ? お前さんたちの仲がこじれてるのもそれが原因なんじゃないのか?」
(;∩_ゝ`)「うへぇ。お前さんの中では俺達の間に何かがあるのは確定なわけね。
俺は別に何を隠しているというわけではないのだが……」
('A`)「嘘だな」
兄者は、ドクオの言葉に何も言葉を返そうとしない。
かわりに目元に置いた手に力がこもるのを、ドクオは見て取った。
.
416
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:13:18 ID:2tZd1sd.0
('A- )「弟者は魔法も、オレやブーンみたいな精霊も嫌いな、とんだ根性悪だ」
::(;∩_ゝ`)∩::「……ドクオ。お前さんは本当に怖いものなしだな」
d('∀`)「まあ、今は本人がいないからな。
また羽を毟られるなんて失敗は犯さないぜ!」
そう言って、ドクオは気持ちの悪い笑みを引っ込めると目を細めた。
その視線の先は兄者。
口には出さないが、ドクオの表情は「下手なごまかしはきかないぞ」と雄弁に語っている。
('A`)「あの弟が不機嫌になるのは、オレみたいな“こちら側”の生き物か、魔法が絡んだときだ。
羽をむしられ、投げられ、刀をつきつけられたオレにはわかる!」
( ´_ゝ`)「――ふむ。散々ひどい目にあったドクオが言うと説得力が違うな。
でも、ドクオは俺が今日めっちゃ殴られたのを忘れている件」
┐('A`)┌「それは兄者が馬鹿やったからだろ」
┌(;´_ゝ`)┐「なんと」
∩('A`)∩ ヘンナ ポーズ ヤメロヨー
( ´_ゝ`)σ オマエ モナー
.
417
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:15:16 ID:2tZd1sd.0
ドクオはわざとらしく咳払いをすると、上げていた両手を下ろす。
そして、「話がそれた」と呟くと、表情をひきしめた。
('A`)「……と、まあ、弟者のやつは乱暴なようでいて、怒るのにはそれなりの理由がある」
( ´_ゝ`)b「ふむ。流石だな、ドクオ者。
知ってる奴も多少はいるが、お前さんが気づくとは思わなかった件」
(‐A‐)「俺を見くびるなよ、兄者。
と、言いたいところだけど、本題はまだそこじゃない」
ドクオは、「弟者が怒るのには、はっきりとした基準がある」と断言すると、兄者の顔を見据えた。
一方の兄者はドクオと視線を合わさないようにするためか、視線を横に向ける。
それを見たドクオは、兄者がそらした視線のちょうど先へと飛んだ。
('A`)「だけどな、兄者。
その基準にはあわないのに、弟者の様子がおかしくなった時があったよな」
( ´_ゝ`)「気のせいじゃないか?」
('A`)「……二回だ」
その言葉に、兄者は返事をしなかった。
言葉の続きを待っているのか、それとも沈黙でもって肯定したのか……。
ドクオはしばし沈黙すると、再び口を開いた。
.
418
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:17:09 ID:2tZd1sd.0
('A`)「しぃさんと一緒にいた男が、双子の話を出したよな。
あれが一度目。弟者がブーンの頭を撫でるなんて正気の沙汰とは思えん」
(;´_ゝ`)「全力で把握した。
仲良き事は美しき哉だが、さすがのお兄ちゃんもあれにはびっくりしたわ〜」
('A`)「……お前も、びっくりしたって反応じゃなかったけどな」
兄者は小さく笑い声を立てる。
しかし、ドクオの言葉をそれ以上追求する気配はなかった。
('A`)「それから二回目は……言わなくてもわかるよな」
┐( ´_ゝ`)┌「……さてな、俺にはさっぱりわからんちんだ」
('A`)「最初の行き止まり。そこであいつ鏡割っただろ。
それも、いきなり駆け出して問答無用」
( ´_ゝ`)「弟者たんは心配症だからな。罠だと思ったんじゃないのか?」
('A`)「罠かどうかの確認もせずに?
しぃさんと一緒にいた男――ギコに遺跡にあるものは壊すなと、念押しされたのにか?」
( ∩_ゝ`)「……」
.
419
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:19:42 ID:2tZd1sd.0
兄者の沈黙を好機と取ったのか、それとも今を逃すと永久に機会は訪れないと踏んだのか。ドクオは追及の手を緩めなかった。
相手の嫌がっている部分に踏み込むのが上手い――というドクオ自身の発言は、あながち嘘ではないらしい。
('A`)「それに。兄者、あの時はお前も変だった」
( ´_ゝ`)「……なんと。毎度毎度、変とよばれる俺がついに普通の人に!」
('A`)「兄者、お前さ。弟者が何かやらかそうすると、大体止めて、なんのかんの言うだろ。
弟者が俺の羽をむしった時とか、魔法石板売りやのーちゃんの時みたいに」
( ´、ゝ`)「むー、そうだったか?
弟者に、美人のおねーさんとしゃべっててズルいぞって、言った記憶ならあるんだが」
沈黙から脱した兄者の言葉にも、ドクオの追求の言葉は止まらない。
今のドクオは事件が起こったあの場で、「しぃさん!」と嬉しそうに叫んでいた精霊と同じだとはとても思えない。
(-A-)「そんなに長い付き合いじゃないが、それでもオレはお前さんとはそれなりにやってきたと思う」
ヾ(;´_ゝ`)ノ「うむむ、情で訴える気か! お兄ちゃんにはきかないんだからねっ!
俺は弟者さんとは違うんだから、プンプンっ」
.
420
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:21:13 ID:2tZd1sd.0
('A`)「なあ、答えろ兄者。
お前……いや、お前たちの間には何があるんだ?」
ふざけたところなど一欠片もない表情で、ドクオが告げる。
その言葉に振り回されていた兄者の腕が、降ろされる。
( -_ゝ-)「……」
(;´_ゝ`)「……ドクオはしつこいなぁ。
俺はどうやら、こういうのが嫌いだったみたいだ。驚くことに」
('A`;)「正直、オレもここまで食い下がるとは思ってなかった。
……あー、なんでなんだろうなぁ。面倒くさいことだけは絶対しなかったはずなのに」
(*´_ゝ`)ρ「そりゃあ、間違いなくブーンの影響だ」
(*'∀`)「ああ、なるほど」
( ´_ゝ`)「ブーンは自分で言うほど、感情がないわけじゃない。
……いいやつだよ。俺なんかよりも、よほどな」
兄者は天井を見上げると、再び瞳を閉じた。
沈黙し言葉を切った兄者の姿は、表情が少ないのも相まって、ほんの少し幼い弟者そのものだった。
( -_ゝ-)「……頑張ったドクオ者には、特別に手がかりをやろうかな」
.
421
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:23:04 ID:2tZd1sd.0
――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――
幾何学模様の床と、星を模した天井。
そして、亀のような巨大な生物や貝や海辺の生き物と、豪奢な服装の男を模した浮き彫りの壁。
装飾がほどこされた廊下を長いこと歩き続けた末、弟者は足を止めた。
⊂二(;^ω^)二⊃「オトジャー、待つおー」
その後を少し、遅れてブーンが追いかける。
ブーンの羽は光の粒をまき散らしながら輝き、ほんの少しだけあたりに風を巻き起こした。
⊂二(*^ω^)二⊃「ひょっとして、ブーンを待ってくれたのかお?
おっおっ、なんだかとっても楽しい感じだおー」
(´<_`;)「……」
弟者のちょうど傍らまで飛ぶと、ブーンは動きを止めて声をかける。
そのまま弟者の答えを待つが、彼は相変わらずブーンには何も口にしなかった。
弟者はブーンを無視したまま、廊下の先をじっと見据えている。
( ^ω^)「オトジャ?」
.
422
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:26:00 ID:2tZd1sd.0
(´<_`;)「……これを一つずつ見て回るのは、骨が折れそうだ」
弟者の視線の先には、脇へと入る出入り口。それが6つ、廊下の左右に並んでいる。
正面に続く廊下と脇道、計7つの分かれ道が弟者とブーン目の前に広がっていた。
(-<_-; )「仕方がない。しらみつぶしにするか……」
( ^ω^)「おー、大変そうだお」
弟者はそう呟くと、一番近い入り口をくぐる。
そこに広がるのは、小部屋だった。
広さは先程、兄者たちと入った本棚がある部屋よりも狭いくらい。
その部屋や、分かれ道のあった広間と同じように、壁や天井は白い石材で作られている。
窓の一つもない空間は薄暗い闇が横たわっている。が、それでも文字が読める程度の明るさは保たれていた。
(´<_` )「……何もない、か」
部屋に置かれているのは、古びた机だけ。
魔力の気配は感じないし、他にこれといったものも置かれていない。
弟者はため息を一つつくと、廊下へと引き返した。
.
423
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:27:05 ID:2tZd1sd.0
(*^ω^)ノ「じゃあ、今度はこっちへ行くおー」
(´<_` )「……」
弟者が廊下に出ると、ブーンは先程までいた部屋の向かいを指さし、にこりと笑った。
弟者は指さされた方向を無言のまま見やると、ブーンの指さした入り口をくぐる。
(*^ω^*)「お? ……おおおおお」
(´<_` )「……」
それをみたブーンの頬が、興奮で赤く染まる。
しかし、弟者は相変わらず無言のままだった。
( ´ω`)ヘンジ ナイオー
(´<_` )「……」
.
424
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:29:23 ID:2tZd1sd.0
・
・
・
(;^ω^)「何もないおー」
向かいの部屋は、広さも作りも先ほどの小部屋とさほど差がなかった。
白い部屋は薄暗く、先ほどの部屋の机の代わりに、茶色く退色した絨毯が敷かれている。
しかし、それ以外には何もない部屋だった。
(´<_` )「……ここもハズレか」
( ^ω^)「だおねー」
危険そうなものや、兄者が探す魔法石板の姿はどこにも見えない。
小部屋から引き返して、少し先の小部屋に入ってみるが、それも部屋もこれまでの二部屋と大差なかった。
(;^ω^)「なんか、さっきと同じ部屋みたいだおー」
.
425
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:31:06 ID:2tZd1sd.0
(´<_` )「……」
( ^ω^)「このあたりは、こういう部屋ばっかりみたいだおね」
(´<_` )「……」
( ^ω^)「昔は何があったのかおねー?
ブーンはここには来たことないから、わからんですおー」
(´<_` )「……」
( ^ω^)「それにしても、ここはすっごく広いお」
(´<_` )「……」
(;^ω^)「オトジャー、やっぱり返事してくれないのかおー?」
(´<_` )「……」
( ´ω`)ショブーン
(´<_`;)「……」
弟者は一瞬表情を崩すが、それでも無言のまま、隣の小部屋に入る。
それから、さらに隣とその向かいの部屋にも足を踏み入れるが、そのどれもが同じような作りの小部屋だった。
.
426
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:33:26 ID:2tZd1sd.0
( ^ω^)「……いっぱい部屋があったけど、何もなかったおね」
(´<_` )「……」
(;^ω^)「あうあうー、オトジャは楽しくなかったお?
ブーンは結構楽しかったけど、どうかお?」
(-<_- )「……」
元気をとりもどしたらしいブーンと、弟者は再び廊下へと舞い戻る。
廊下の左右から伸びていた6つの脇道は、全て同じような小部屋があるのみ。
罠や魔力の気配も、兄者の探す魔法石板の影も見えない。
( ^ω^)ノ「んー、オトジャは先に進むのかお? だったら、ブーンもついていくおー」
(´<_` )「……」
弟者は相変わらず、ブーンの言葉に返事も反応も示さない。
その代わりに、自身の前や後ろを飛び回るブーンに暴力を振るうことも、追い払うこともしなかった。
(*^ω^)「早く見て回って、アニジャたちのところにもどるおー」
(´<_` )「……」
.
427
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:35:16 ID:2tZd1sd.0
(*^ω^)「おっおー、楽しみだおー」
_,
(´<_` )「……」
( ^ω^)「んー? どうしたお、オトジャー」
_,
(´<_` )「……」
ブーンの言葉に、弟者は答えない。
――ただ、この時だけは少し違った。
弟者の眉がわずかに寄り、ブーンの顔をじっと見据える。
(;^ω^)「……大丈夫なのかお? 不安なのかお?」
_,
(´<_` )「お前は……」
(;^ω^)「はい」
_,
(´<_` )「何で俺に話しかけるんだ?
話したければ、兄者と一緒にいればいいだろう。不愉快なことだが、兄者ならいくらでも話すぞ」
弟者は表情を歪めたまま、ブーンへと問いかける。
それは弟者が、自分の意志ではじめてブーンに向けて放った言葉だった。
.
428
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:37:16 ID:2tZd1sd.0
(*^ω^)「お?」
(´<_`#)「何故だ? 答えろ。返答によっては、今ここで叩き切る」
弟者の手が、腰の刀にかかる。
柄をしっかりと握りいつでも鞘から抜ける状態にしたままで、ブーンの姿を睨みつける。
弟者は実力行使をいとわない。
制止役である兄者がいないこの状態では、ブーンはいつ切られてもおかしくはない。
……それでも、ブーンの顔はいつもと同じ笑みを浮かべていた。
(*^ω^)「それはオトジャが好きだからだおー
アニジャも好きだけど、ブーンはオトジャともお話したいからだお」
(´<_`#)「俺はだまされない。
お前らみたいな“あちら側”の連中は、人間のことなんかなんとも思っていない」
(;^ω^)「おー、ブーンもドクオもニンゲンが好きだお」
( <_ #)「それでも、俺は……俺が……」
刀にかかった、弟者の手が大きく震える。
眉は寄り、目は鋭く細められ、奥歯をぎりりと噛み締められた。
.
429
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:39:18 ID:2tZd1sd.0
――しかし、それでも弟者は刀を抜かなかった。
(;^ω^)「オトジャ……」
( <_ )「――これ以上話しかけるな」
弟者はそうとだけ告げると、完全に黙り込んだ。
それっきり視線すらブーンへと向けない。
( ^ω^)「……ブーンは、悪いことしちゃったのかお?」
( <_ )「……」
( ´ω`)「……ごめんなさいだお」
弟者は残された道である、廊下をまっすぐと進んでいく。
ひとりでにつく明かりにも、本物と見紛うごとく精巧な星空の細工にも目も止めない。
ただひたすら、前へ前へと進んでいく。
(´<_` )「……俺は……」
そしてたどり着いた、廊下の果て。
遺跡の入り口にあったのとよく似た黒の両開きの扉を、弟者は開いた。
.
430
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:41:39 ID:2tZd1sd.0
――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――
(;'A`)「はへ?」
兄者の言葉に、ドクオの動きは完全に止まった。
これまでさんざん話を逸らし続けた兄者の言葉とは、とても思えない。
ドクオの戸惑いを感じたのか、兄者は目を開くと指をぴんと立てて、薄水色の耳を大きく上下に動かした。
( ´_ゝ`)σ「そこまで言うならドクオさんには特別に手がかりをやろうかなと、俺は言ったわけだ」
(;゚A゚)「いいのか、それ」
_,
( ´_ゝ`)「散々聞いておきながら、ひどい反応な件」
兄者は顔をしかめていうが、次の瞬間にはその表情をあっさりと変えた。
そこに浮かぶのはどこか飄々とした顔。
そして、「まあいいや」と呟くと、兄者は再び口を開いた。
( ´_ゝ`)「たとえ、人間でもさ。引きずり込まれれば、鏡に落ちるんだよ」
.
431
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:43:05 ID:2tZd1sd.0
――それは、この状況になんら関係のない言葉だった。
しかし、兄者は飄々とした表情のまま、言葉を紡いでいく。
( ´_ゝ`)「精霊はどうかはわからんが、人間にとってそれは、――死ぬってこととそう変わらない件」
(;゚A゚)「――は? だって、お前」
ドクオは息を呑む。
('A`)「なあ、そこの。鏡に落ちた人間がいるって噂、知ってるか?」
羽が奇妙に震え上手く飛べない。
( ´_ゝ`)「……ほう。精霊が話しかけてくるとは珍しいな」
何を言っているのか、理解できない。
('A`)「人間なら知ってるだろ。鏡に落ちた人間なんて、本当にいるのか?」
だって、兄者は……
( ´_ゝ`)「ああ、それは俺だ」
その昔、なんでもないことのように。
(;'A`)「……は?」
言ったのではなかったか?
.
432
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:45:21 ID:2tZd1sd.0
( ´_ゝ`)「――俺は昔、鏡に落ちたんだよ」
――と、
.
433
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:47:51 ID:2tZd1sd.0
( ´_ゝ`)「まあ、そういうことだ」
(;゚A゚)「……」
(*´_ゝ`)「いやぁ〜、運が良かった。流石だよな、俺!」
何も言えれなくなったドクオに向けて、兄者は笑いかける。
そこに浮かぶのはいつもとまったく同じ調子の、ヘラヘラとした顔だ。
(゚A゚)「……」
人間にとって死とは、かならず訪れる終焉である。
だから、人は死に怯え忌避するのだと――ドクオはかつて、聞いたことがある。
(*'∀`)「鏡に落ちやんのぉぉお!!!
ほんとに人かよぉwwwwwwwww」
ドクオの脳裏に、今朝、自分が口にした言葉が浮かぶ。
――思えば、弟者が激怒したのはその直後だった。
.
434
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:49:06 ID:2tZd1sd.0
殺してやると弟者は言った。
怒りと憎悪を隠そうともせずに、弟者はドクオから羽を引きちぎった。
あの時、制止の声がなかったら……ドクオの存在は、きっと消滅していた。
(;'A`)「……ぁ、」
そして、同じように殺気立った弟者の姿を、ドクオは今日何度も見ている。
石板売りの店主……盗賊の少女のー。そして、つい先ほどの鏡。
その時の弟者の姿と、彼が嫌うものが脳裏で結びつき――ドクオは、自分が嫌われている理由に思い至った。
( <_ )「……兄者はいつもそうだ」
……人間の些細な感情の動きなんてわからなくてもわかるくらいに、その答えは単純だった。
('A`)「――そういうことか」
弟者が魔法や精霊のような生き物が嫌いな理由。その原因。
ドクオは行き着いた回答に二三度頷き……それから、ふと眉根を寄せた。
.
435
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:51:15 ID:2tZd1sd.0
('A`)「……でも、それは変だ」
兄者は鏡に落ちて、死にそうになった。
だから、その身内である弟者は魔法や、精霊なような生き物や、鏡を嫌がっている。
――ドクオにもわかる、馬鹿みたいに単純な理由。
('A`)「……逆なんだよ。
鏡に落ちたのは兄者、お前だ。弟者じゃない」
( ´_ゝ`)「そうだな」
だが、それにしては――弟者の反応は行き過ぎている。
死に直面したのは兄者ではなく、弟者の方だと言ったほうが、むしろ納得できるくらいなのだ。
('A`)「……でも、今のお前らは、逆だ。
鏡に落ちたのは弟者で、兄者はそうじゃないみたいだ」
死という絶対的な恐怖に直面したから。
その原因である、人間ではない精霊のような生き物を憎悪する。
人間の領域ではない魔法を拒絶し、原因となった鏡を見れば破壊する。
( ´_ゝ`)「……ああ、たしかにそうだな。でも、」
.
436
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:53:26 ID:2tZd1sd.0
( ´_ゝ`)「同じだよ。弟者にとっては、な」
ドクオの考えを止めるように、兄者はぽつりと言った。
出入り口の方へと向けられていた視線が、ドクオへと向けて合わせられる。
( ´_ゝ`)「鏡に落ちたのがどっちでも、弟者にとっては同じなんだよ。
――ああ、これが手がかりな」
(;'A`)「はへ?」
( ´_ゝ`)「お前さんが聞きたいのは、俺と弟者の間に何があるのかだろ」
ドクオを再び混乱させる言葉を投げかけながら、兄者はまたへらりと笑った。
わかっているよと言いたいのか、それともわからないなと言いたいのか。ドクオにはわからない。
σ( ´_ゝ`)「あー、ドクオには言っておくが、俺と弟者は別に仲が悪いわけじゃないんだぞ。
でも、まぁ ……食い違ってるよな、やっぱ。イタイトコロ ヲ ツキオッテ カラ ニ」
そう言って、兄者は再び笑ってみせる。
眉を寄せたその表情は、困っているようにも見えた。
( ´_ゝ`)「距離を測りかねているだけなんだよ、俺も弟者も。なにせ双子だから」
.
437
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:55:35 ID:2tZd1sd.0
,_
('A`)「双子……ねぇ……」
やはり、そこに行き着くのか。
ドクオは眉をしかめて、兄者に向かって再び問いを投げかけようとする。
( ^ω^)「おっおー、ドクオー! アニジャー!!!」
が、ドクオと兄者のもとに、おっとりとした声が割り込んだ。
兄者が顔を見あげれば、硝子のような羽を輝かせたブーンの姿がそこにあった。
( ´_ゝ`)「よーし、内緒話はここまでだな。ドクオー、さっきまでの話は秘密だぞー。
お兄ちゃんとは、弟にあまり心配をかけてはいけないものだからな」
(;'A`)「どの口がそれを言うか」
続きを追求したい気持ちはあるが、ドクオはそれ以上は問いかけなかった。
どのみち兄者は、もうこれ以上は話さないだろう。
ドクオには、その確信があった。
( `ω´)「あー! ドクオばっかりアニジャとないしょの話をしてズルいおー!
ブーンだってまざりたいおー」
.
438
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:57:11 ID:2tZd1sd.0
( ´_ゝ`)b「よしよし。ブーンには今度、世界のメシの話をしてやろう」
(*^ω^)「ほんとうかお。わーい! 楽しいおー!」
兄者の軽口に、ブーンが楽しそうに応じている。
それを聞き流しながら、ドクオは視線を周囲に向ける。
(´<_` )「……」
('A`)「弟のお帰りか」
部屋へと入ってくる弟者の姿が、ドクオの視界に入ったのはちょうどその時。
先程まで話題の中心だった弟者は、口を真一文字に結んで、兄者とブーンの方を睨みつけている。
よく見れば、弟者はその手に見慣れない何かを掴んでいた。
(´<_` )「兄者」
( ´_ゝ`)ノシ「お疲れさん、弟者。
じゃあさっそく、進もうじゃないか――」
,_
('A`).。oO(あれは……)
.
439
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:59:26 ID:2tZd1sd.0
一体、何なのかとドクオが思った瞬間。
弟者が手にした黒いナニカを、兄者の顔に向かっておもいっきり投げつけた。
(;゚A゚)「ちょ、ま!!!!」
三[])´_ゝ`)<あべし
( ;゚ω゚)「アニジャ―――!!!」
……弟者が投げつけたのは、黒い光沢のある石だった。
四角い皿ほどの大きさの薄い石板。
兄者はその石板をしげしげと眺めるが、そこには刻印らしきものも術式らしきものも刻まれていない。
ヒリヒリ(:::)´_ゝ`)つ[]「ふむ。弟者、これは?」
(´<_` )「これなら魔法石板に使えるだろ。
拾ってきてやったから、帰るぞ、兄者」
( ´_ゝ`)つ[]
(#`_ゝ´)「弟者ァァァ!!! お前というやつは何もわかってない!!!!」
.
440
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:01:38 ID:2tZd1sd.0
石板を真顔で眺めた末に、兄者はやだやだーと騒ぎ始める。
腕をバタバタと振り回す兄者の顔は、先程まで真剣な話をしていた人物と同じだとはとても思えない。
o(#`_ゝ´)o「俺達は大冒険に来てるんだぞ!
それが、いきなりアイテム渡されて終了って――あんまりじゃないか、我が弟よ!」
(´<_` )「あー、はいはい。わかったから帰るぞ、兄者」
o( ;*`、ゝ´)o「帰るぞって――これじゃあ、俺ここでドクオと話してただけじゃないか!!!」
(;'A`)て「その顔キメェな、おい」
そして、対する弟者の顔は段々と険しくなっていく。
眉は寄り、それほど饒舌じゃない口はどんどんと達者になっていく。
_,
(´<_` )「大市に行った、ラクダに乗った、盗賊に会った、ギコさんたちに会ったし、遺跡にも入った。
もう十分だろ。まだまだ帰りもあるんだから、さっさとここから出て帰ろう。
明日は妹者と遊ぶんだろうが」
( ^ω^)「おー、いろいろいっぱいあったおねー」
(#´_ゝ`)σ「異議あり! メインダンジョンの攻略なくして、何が冒険か!!
楽して重要アイテムゲットとは、俺の方針に大きく反する!」
( ;*`、ゝ´)「っていうか、弟者ばっかり遺跡探索してズルいやズルいや!!!」
(;'A`)て「だから、その顔やめろっての!!!」
.
441
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:03:31 ID:2tZd1sd.0
(#´_ゝ`)σ「そもそもこれは約束違反じゃないかね、弟者くん」
(´<_` )「さて、何のことやら」
τ( ´_ゝ`)η「弟者くんは先に様子を見に行った。それで、俺がここで待機した。
――うん。ここまではいい。だって、そういう約束だからな」
_,
(´<_` )「なら、問題無いだろう? 帰るぞ」
η(#´_ゝ`)η「違うっての! 弟者が先行したのは、安全を確認するためだろうが!
みつけました。はい、帰りましょうじゃ。意味ないっつーの!」
兄者と、弟者の表情はどんどん険しくなっていく。
これはまた殴り合いが始まるんじゃないかと、ドクオは内心危惧を抱く。
(;^ω^)「アニジャ、オトジャ……」
,
(-<_- #)「もう話しかけるなと言っただろう! この羽虫!」
η(#´_ゝ`)η「大体、目的のブツはこれじゃな」
( ;´_ゝ`)「……あ」(´<_`; )
激しく言葉を放っていた兄者と弟者は、同時にそっくり同じ表情をして間の抜けた声を上げた。
二人の顔に浮かぶのは、しまったという表情。
.
442
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:05:52 ID:2tZd1sd.0
(*^ω^)「お?」
(;'A`)「たった今、兄と弟から、ものすごく気になる発言が飛び出したような……」
( ;´_ゝ`)「……」(´<_`; )
( ;´_ゝ`)「……もう話しかけるなと『言った』? ブーンに?」
(´<_`;)「……これじゃな……いのか?」
兄者と、弟者は同じ表情を浮かべたまま沈黙する。
お互いの言葉は気になるものの、追求すれば自分も不利になる――そう思っているのだろうと、ドクオは推測する。
(;´_ゝ`)「……行きませんか、弟者さん」
(´<_`;)「ああ、これじゃないのなら仕方がないな……」
('A`)ノ[]「おい、お前らこれはどうするんだ?」
ぎこちなく話し始めた二人に向けて、ドクオは先程投げられた石板を指さしてみせる。
が、二人は心ここにあらずといった表情のままで、ぎくしゃくと会話を交わす。
.
443
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:07:24 ID:2tZd1sd.0
(;´_ゝ`)「……あ、弟者さん持っていってください」
(´<_`;)「……あ、ああ。今のところただの石だしな」
('A`)「……二人揃って、不自然なことこの上ないな」
互いに深入りしないやりとりに、ドクオは小さくため息をつく。
そして、兄弟から目を離すと、今度はブーンが両手を振り回しながら飛び回っているのが目に入った。
(*^ω^) ニコニコ
('A`)「……お前も、やけに嬉しそうだな」
(*^ω^)「そうかお? ブーンは今、うれしいのかお?」
(;'A`) シルカ
(*^ω^)「おっおっ。うれしいっていいものだおー」
( ´_ゝ`)ノシ「おーい、お前ら行くぞー」
(-<_- ;)「……」
呼びかける声にドクオが振り向くと、既に兄者と弟者は最期の出入り口へと向かっている。
ドクオとブーンは互いに顔を見合わせると、兄弟たちの元へと向かってあわてて羽を動かしはじめた。
.
444
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:09:44 ID:2tZd1sd.0
――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――
出入り口から廊下に出た瞬間、兄者はほぅと息をついた。
( ´_ゝ`)「冬の星だ」
これまで通ったのと、ほぼ同じつくりの廊下。
その星空を模した天井をじっと見上げて、兄者は言う。
( ^ω^)「わかるのかお?」
( ´_ゝ`)ゝ「これだけは得意だからな。
作り物にしては本当によくできている……ほらあれが、天上輝星」
(*^ω^)「おー」
(´<_` )「さっさと行くぞ」
( ´_ゝ`)ノ ハーイ (^ω^ )ノ
.
445
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:11:22 ID:2tZd1sd.0
廊下の中を、兄者と弟者のたてる足音だけが響く。
ドクオは延々と続く、壁の浮き彫りを眺めながら大きく息をはいた。
(;'A`)「この廊下長くないか?」
( ^ω^)「もっと、ずぅーっと続いてるおー」
(;'A`)「……つかれた」
プンプン∩(#`_ゝ´)∩「人の肩に座って楽をしているくせに、何を言うか」
どこまでも続く似たような見た目の廊下は、そこを通る者を知らず知らずのうちに疲れされる。
変化のない光景は、それだけで人間の気力を消費させるものだ。
どれだけ進んだのか。時間の感覚すらも無くなりそうな廊下を、兄者達一行は進んでいく。
(´<_` )「もうしばらく進めば、小部屋への分かれ道にたどりつく」
(*゚_ゝ゚)+
(;^ω^)「でも、中はそんなに楽しくなかったお……」
( ´・_ゝ・`)ショボーン
('A`).。oO(兄者が百面相してる)
.
446
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:13:17 ID:2tZd1sd.0
それからも歩き続け、兄者が再び不満の声をあげようとした頃。
ようやく弟者が口にした分かれ道へとたどり着いた。
(*´_ゝ`)「おお、すごいではないか」
(´<_` )「しかし、俺らはまっすぐに進むからな」
゜ミo(#`_ゝ´)o彡゜「なんで、そんなこと言うし!
俺は一人でも行くからな!!!」
(´<_` ;)「時に待て、兄者よ」
兄者は肩に乗ったドクオともども、廊下に作られた出入り口の一つへと入っていく。
が、それから幾ばくもしないうちに、すぐに戻ってくる。
_,
(;´_ゝ`)「あるぇー、おっかしいなぁー」
(´<_` )「……」
そう言いながらも、兄者はその隣に並んだ出入り口へと入っていく。
が、やはりそれほどたたないうちに、兄者は再び廊下へと帰ってくる。
(;´_ゝ`)「……なにもないな」
(´<_` )「そう言っただろう。まったく、兄者は人の話をきかない大王様だな」
.
447
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:15:21 ID:2tZd1sd.0
('A`)「うん、ただの部屋だったわ」
(;^ω^)「ブーンとオトジャは、ここにある部屋ぜんぶ見たお。
でも、他もみんなそんな感じだったお」
τ(;´_ゝ`)「うーん、全部こんな感じだったのなら、弟者たんは一体どこから石板を拾ってきたのだ?」
兄者は頭をかきながら、首をひねる。
その動きにドクオは、「オレの方に頭を傾けんな!」と不満の声を上げるが、誰も取り合おうとはしなかった。
(´<_` )「もっと先だ。ちなみにだが、他の部屋も見ていくか?」
('A`)「オレは遠慮するぜ」
(;´_ゝ`)「……正直、弟者の話を聞いておけばよかったと思っている」
⊂二(*^ω^)二⊃「じゃあ、張り切って進むお!」
廊下の左右に広がる出入り口を無視して、一同は進んでいく。
兄者が振り返ると、これまで歩いてきた道は照明が消え闇に沈んでいた。
( ´_ゝ`)「おお、こわいこわい」
('A`)「……まあ、大丈夫だろ」
.
448
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:17:34 ID:2tZd1sd.0
(´<_` )「どうした、兄者?」
γ( ´_ゝ`)>「俺のかっこよさにおにゃのこが殺到して、大乱闘になる気がしてな」
_,
(´<_`; )「そんなの一生無いから安心しろ」
(;'A`).。oO(それで、納得するのか弟!)
そんなやり取りを交わしながら、一同は進んでいく。
廊下の装飾も明かりも、これまでとほぼ変わらない。聞こえるものといえば、足音のみ。
さきほどのような脇道もないから、まっすぐと進む廊下をひとしきり歩くだけとなる。
⊂二(* ω )二⊃「アニジャー、オトジャー、ドクオーあとちょっとだおー」
(*´_ゝ`)「なんと! やったな、ドクオ者!」
(*'A`)「ついに、くるのか」
(´<_` )「……」
そして、ブーンの言葉通りしばらく進んだ先。
そこに黒い両開きの扉があった。
装飾の殆ど無いその扉は、弟者が先行していた時に開いたのと同じものだった。
.
449
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:19:24 ID:2tZd1sd.0
(*´_ゝ`)「弟者ぁ、俺が開いてもいいか!」
(´<_` )「大丈夫だ、問題ない」
兄者は、扉へと手を掛ける。
ひんやりとした廊下の空気と同様に、扉から伝わる熱はしんと冷えている。
それに心地よさと、ほんの少しの恐れを抱きながら兄者は、扉を押した。
ギッ
蝶番が、鈍い音を立てる。
はじめは重く、徐々に軽くなめらかにと扉は動き始める。
そして、それとともに差しこむのは強烈な日差し。
(#>_ゝ<)「まぶしっ」
(´<_-; )「……っ」
(*^ω^)「ついたおー!」
日差しは扉の動きと共に強くなり、辺りを白へと染めていく。
思わず閉じた目を、兄者がふたたび開く頃には周囲の光景は完全に別物と化していた。
.
450
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:21:12 ID:2tZd1sd.0
理路整然と続いていた床の幾何学模様は、崩れかけた石畳と、石が転がる硬い大地に。
星空を模した天井は、白くけぶりながらも青い空に。
そして、浮き彫りを施された壁は一気に開け、広場のような空間が広がっていた。
(;´_ゝ`)「これは……」
(´<_-; )「おそらく庭園だろうな。
俺達は奥へと向かって進んだ結果、外へと出てしまったというわけだ」
弟者の言うとおり扉の向こうに広がっていたのは、庭園だった。
正確には、かつて庭園だったというべきであろうか。
大地にはかつての名残とみられる、巨木の跡や、背の低い木々や草たちがまばらに生えている。
(;'∀`)「……なんというかここは、ボロボロだな」
( ^ω^)「そうかお? 木とかいっぱいだお!」
ブーンは否定したが、ドクオの主張する通り、ここは荒れ果てていた。
外観や内部が今でも使えそうなほど整っていたのとは、まるで正反対。
壁の至る所にヒビが入り、場所によっては崩れている所すらある。
∩( ´_ゝ`)∩「お兄ちゃん、これにはちょっと驚きましたわ」
('A`)「オレは拍子抜けだ」
.
451
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:24:02 ID:2tZd1sd.0
(´<_` )「まあ、ざっとこんな感じだ」
白かったはずの外壁の色は鈍くかすみ、弟者が触れたとたん表面がパラパラと剥がれ落ちた。
それをぎょっとした表情で見つめた後、兄者は再び周囲へと目を巡らせる。
遺跡の暗闇に慣れた目には外のまぶしさは、まだつらい。
(;´_ゝ`)「……しかし、一気に熱くなったな」
(´<_`; )「仕方がない。外だからな」
被り布を深くかぶり直しながら、兄者は目を凝らす。
まぶしさと目への刺激は少しずつ引いていき、次第に周囲の様子がはっきりと目につくようになる。
兄者はそれを見て取ると、かつての庭園へと一歩踏み出した。
( ´_ゝ`)「――ここはそんなに砂がつもってないのな」
(´<_` )「木があるからじゃないか。
荒れてはいるが、まだ水は枯れていないようだ」
そのまま、兄者たちは足を進めていく。
そして、木に紛れて据えられている、かつては噴水か美術品だったものの前にたどり着いた。
今はもはや原型をとどめていないそれは、崩れかけた黒い石や岩の固まりと化している。
.
452
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:25:30 ID:2tZd1sd.0
(*^ω^)「石板さんはオトジャがここから見つけたんだお!」
ヽ(*´_ゝ`)ノ「ほう。なるほど、でかしたじゃないか弟者!」
ブーンの言葉を聞いて、兄者は目の前の黒い石や岩達に目を凝らす。
よく見てみれば、その黒い石はつややかで厚みも薄いものがほとんどだ。
確かにこれなら魔力の通りも悪くなさそうだし、しかるべき所で売ればそれなりの金額になるように見えた。
(´<_` )「まあ。先ほどの件を考えると、見つける必要はなかったんだがな。
そもそも、兄者の目的とは何だったのだ?」
( ;´_ゝ`)「そういう、弟者たんこそ。
俺とドクオがいない間に、ブーンとなんか話でもしてたのか?」
( ;´_ゝ`)「……」(´<_`; )
兄者と弟者が、同じ表情を浮かべたまま同時に沈黙する。
そのまましばらく顔を合わせた後、二人はようやく声を上げた。
(;´_ゝ`)「……探索、続けるか」
(´<_`;)「……把握した」
('A`).。oO(こいつら、腹を割って話せんのか)
.
453
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:27:14 ID:2tZd1sd.0
黒い石や岩の固まりを越え、兄者は辺りを歩いてみるが他にはめぼしいものは何も見えない。
木と草と石と崩れかけた壁が、彼の視界に入る全てだ。
(´<_` )「俺が見た限りでは、ここが終点だ。
兄者の目的が何かはわからないが、そろそろ満足したか?」
(;´_ゝ`)「いや、まだ目的のものが見つからない。
ギコ者も言っていたし、そんなことはないはずなんだが……うーむ」
兄者は辺りを見回しながら、手を顎に置き考え込み始める。
ギコは目的のブツは一番奥の間だと言っていた。それにわかりにくいとも。
では一体どこなんだと、兄者は考えこむ。
( ´_ゝ`)「ギコ者たちがわざわざ神殿って呼んでいるからには、祀られている何かがあると思うわけで……」
('A`)「は?」
( ´_ゝ`)b +「……つまり、もっと奥があるに違いない!」
兄者がぶつぶつとつぶやいた言葉に、ドクオと弟者は眉をひそめる。
ただ、ブーンだけが兄者の言葉を聞き顔をぱっと輝かせた。
.
454
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:29:15 ID:2tZd1sd.0
d(^ω^ )「さすがだお、アニジャ!」
(*´_ゝ`)b「おお、流石だよなブーン者!
お前もとうとう『流石だよな』の精神を習得したか!」
∩(^ω^ )∩「おっお! やったおー!」
兄者はそう言いながら、再び歩き始める。
行く手を阻むように立つ背の低い木々に近づき、どうにか通る場所はないかと目を凝らす。
( ´_ゝ`)「お、ここか?」
(´<_`;)「まだ、先があると……」
木々のとある一角に、かき分けられたかのように枝が不自然に折れた形跡がある。
弟者の野郎、めんどくさくなって調べるのサボりやがったな。
――そう考えながら、兄者はそこに向けてぐいと体を滑り込ませる。
(;^ω^)「アニジャっ!」
(*´_ゝ`)ノ「大丈夫だ。こっからまだ先へと、進めるようだ」
Σ(´<_` )「なんと! 兄者、今すぐそちらに行くから時に待て!!」
.
455
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:31:07 ID:2tZd1sd.0
木々のそのまた向こうには、石造りのアーチがあった。
よく見れば、その先は再び建物らしき影へとつながっている。
ギコが言っていたわかりにくいとはこのことだろうと、兄者は一人納得する。
('A`)「これはまた……」
(*´_ゝ`)o彡゜「よし、行くか!」
(;'A`)「お前、弟者をまた怒らすつもりか」
ドクオの声に「いいのいいの」と返すと、兄者はアーチを越え屋内へと入っていく。
廊下と思われる場所はこれまでと違い、星空を模した天井や浮き彫りの細工がない。
床と壁は古ぼけた白い石材を積み上げてつくられている。
入り口から差し込む光と、壁の上方に取り付けられた明かり取りの小窓から差し込む光だけが、中をかろうじて照らしていた。
(´<_`#)「兄者っ!」
(;´_ゝ`)て「うおっ、弟者っ。ゴメンナチャイ!」
('A`)「だから、怒られるとあれほど」
( ;ω;)「おいてくなんてひどいおー」
追いかけてきた弟者とブーンの声に、兄者は慌てて足を止めた。
弟者は怒りの表情を浮べ体を震わせ、ブーンはというとその目に涙を溜めている。
兄者にとって弟の反応は予想通りだったが、ブーンの泣き顔にはさすがにその良心が痛んだ。
.
456
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:33:11 ID:2tZd1sd.0
(;´_ゝ`)>「えーと、スマン。
でも、時に皆。すぐ目の前を見てもらいたい」
彼らが足を止めたすぐ目の前。兄者が顎を向けたその先は……廊下の果て。
その突き当りに、両開きの扉があった。
( ´ω`)「なんかここは、さっきまでとは違うおね。
昔の空気が残ってるような感じがするおー」
涙を止めたブーンが周囲を見回す傍らで、兄者は扉を見上げる。
石造りの壁に据えられた扉の周囲の壁は、花や植物で細かい浮き彫りがされている。
扉そのものは重厚な金属で造られており、ほどこされた花や鳥の装飾は緑青の錆にくすんでいた。
(´<_` )「随分と立派な扉だな。これまでで一番でかいんじゃないか?」
(;'A`)「……もしかして、この向こうが最奥か?」
( ´_ゝ`)「せっかくここまで来たんだ、弟者。お前も見ていくだろ、この先」
弟者が止めるまもなく、兄者が扉へ手を掛ける。
そのまま力を込めて押すが、扉はなかなか動こうとはしない。
(´<_`#)「罠があるかもしれないのに、不用意に触るな」
.
457
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:35:40 ID:2tZd1sd.0
(;´_ゝ`)b「ギコ者だって入ってるだろうし、大丈夫だいじょーぶ。
……てか、重い。弟者よ、早く助けてくれ」
(´<_` ;)「は? ……鍵がかかってるんじゃないのか?」
扉を押す兄者の顔は、今や真っ赤に染まっている。
が、兄者の力が弱いのか。それとも扉がよほど重いのか、まったく開く気配がなかった。
(;^ω^)「開かないのかお?」
(;´_ゝ`)「おとじゃー、はやくー。
早くしないと、非常に不本意だが緊急手段を使うぞ!!」
(-<_- ;)「あー、把握した。……こんなところで日干しにされたらかなわんからな」
('A`)「……日干し?」
ドクオには意味のわかならない謎の言葉を残して、弟者は扉へと手を掛ける。
彼が力を込めた途端、ギ……と金属の軋む耳障りな音を立てて、扉が少し動く。
(´<_`;)「む、これは重いな」
(;>_ゝ<)「力仕事は任せた、弟者!」
.
458
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:37:04 ID:2tZd1sd.0
(´<_`#)「兄者は、もう少し根性をみせようか」
(;´_ゝ`)σ「根性を見せろって言われてもな……お前さんが加減さえしてくれれば、俺ももうちょっと」
(´<_` )「ふむ。そういえばそうだったな」
(;'A`)「お前らは何の話をしてるんだよ、一体……」
そんな会話を交わしながらも、弟者は徐々に力を込める。
兄者一人では無理だった扉は、二人がかりでようやく開きはじめる。
重い音を立てながら、その向こう側が少しずつ見え……
(;^ω^)「あと、もうちょっとだおー」
(*´_ゝ`)「弟者がんばれー」
(´<_` )「はいはい」
扉の向こうからは光が差し込み、徐々に明るさを増していく。
弟者が更に力を込めると、ようやくその全貌が見えた。
(;'A`)「なんじゃこりゃ」
(*^ω^)「すっごいおー」
.
459
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:39:15 ID:2tZd1sd.0
一同の目に最初に入ったのは、崩れ落ちた天井と、その向こうに広がる青い空。
砂漠の眩すぎて影のようにも見える強烈な青ではなく、高く穏やかな色。
その空の下をそよぐ草の色は、流石邸の中庭でもなかなか見ることの出来ない薄緑――弟者の毛並みの色だ。
扉の向こうに広がる世界――、それは別天地のようだった。
(´<_`;)「なんだ……これは……」
(*´_ゝ`)「すごいな弟者!! ここが最奥だ!!!」
庭園跡の暑さや眩しさが嘘のように、穏やかな光景。
兄者の被り布が風に翻り、そこに取り付けられた金具が涼やかな音を立てた。
マントのフードを外して、弟者は辺りを見回すが。直接日光を浴びてもいつものように目が眩まない。
(;'A`)「季節が……いや、場所自体がズレてるのか?」
(*^ω^)つ「ドクオ見るお、あっちに何か変なものがあるお」
(*´_ゝ`)「……これが神殿か」
そよぐ草のそのまっただ中に、白い石材で造られた祭壇があった。
高さは兄弟の腰位だろうか。これまで見かけたどの石材よりも白い岩には、幾つもの浮き彫りが施されている。
その装飾も、これまで遺跡で見たどの細工よりも繊細で美しい。
しかし、燭台や壺らしきものに囲まれた、祭壇の上には何も祀られてはいなかった。
.
460
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:42:13 ID:2tZd1sd.0
( ´_ゝ`)「なんだろうなぁ、あの祭壇っぽいやつは」
( ^ω^)「なんだろうだおー」
(´<_` )「兄者は待っていろ。様子を見てくる」
弟者の回答に、兄者はわかってるよとばかりにため息を付いた。
祭壇の方角を名残惜しげに見つめると、それからさらに奥を眺めた。
(;´_ゝ`)「はいはい、わかりましたよ。
俺はおとなしく、あっちのほうで草でも見てるよ」
(´<_`;)「……よりにもよってなぜ、草なのだ」
ε三┌(*´_ゝ`)┘「いいのいいの」
(´<_`;)「――おい、あまり先行するな!」
兄者はその肩にドクオを乗せたまま、奥のより草の茂っている方へと走っていく。
部屋の一番奥には白い壁が、行く手を阻むようにそびえ立っている。
兄者が向かう先の壁だけではない、この最奥の部屋の四方を取り囲む壁は一枚岩で作られたかのようにつややかだ。
扉や祭壇とは違い、浮き彫りなどの細工が一切見えない。
(´<_` )「……廊下もだったが、かなり雰囲気が違うのだな」
.
461
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:43:45 ID:2tZd1sd.0
弟者は祭壇へと向けて歩き始める。
この部屋は何から何まで様子がおかしいが、その中でも一番怪しいのがこの祭壇だ。
祭壇へと向かう弟者を、穏やかな日差しと優しくそよぐ風が包む。
彼らが生まれてはじめて感じる、厳しさを感じない日差しと、風。そして、なによりもこの草原。
(´<_` )「……父者や妹者が見れば喜んだのだろうな」
流石邸の中庭にあるどの植物とも違う、やわらかな草の色。
風に草同士がこすれあい、聞いたことのない楽器のような音を立てる。
この光景を持って帰ったのならば、妹者におくる最高の贈り物になったのにな、と柄にも無いことを弟者は考えた。
( ^ω^)「お父さんと妹さんは、こういうのが好きなのかお?」
(´<_` )「……」
(*^ω^)「ここの風は気持ちいいおね。ブーンにとってはとっても心地いいお」
相も変わらず語りかけてくるブーンを無視し、弟者は祭壇へと向かう。
特定の信仰を持たない弟者には、その祭壇が何のためにあるものかわからない。
かろうじてこういう場所には神の像なり、信仰の象徴となる器物が置かれるという知識が有るだけだ。
(´<_` )「……しかし、何もないな」
つぶやき、祭壇に手をかけようとした所で、
草の音に紛れて響く――奇妙な音の存在に気づいた。
.
462
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:45:09 ID:2tZd1sd.0
___―===―_― ==  ̄ ̄ ̄ ――_―― ̄ ̄―‐―― ___
―――― ==  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ―― __――_━ ̄ ̄ ――_―― ̄___ ̄―=
低く、唸るような音。
注意深く耳をそばだてて、ようやく聞き取れるくらいの低い音が弟者の耳朶を震わせる。
_,
( ^ω^)「……お?」
ブーンが怪訝そうに声を上げる。
弟者はざっと視線を巡らせるが、音の源はどこかわからない。
_,
( ^ω^)「なんだお、すっごくうるさいお」
(´<_`; )「――っ」
そして、ブーンが再び呟いた声に。弟者は凍りついた。
いつの間にか喉がからからに乾き、心臓がいやに早く動きだしている。
動き出す鼓動の音がうるさすぎて、弟者の腕は知らず知らずのうちに握りしめられていた。
(´<_`;)「今、何て言った」
_,
( ;^ω^)「うるさくてあんまりよく聞こえないお! どうしたんだお、オトジャ?!」
.
463
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:47:19 ID:2tZd1sd.0
低い音が、聞こえる。
ほんのかすかな、弟者が集中してようやく聞こえる音。
(´<_`; )「――兄者っ!!! 耳をふさげぇぇっ!!!」
_,
(; A )「……弟者?」
(´<_`; )「耳をふさげっ! ここから出るぞ!!!!」
嫌な予感が止まらない。
さっきから、心臓の動きが止まらない。
兄者はどうしている。どうして、俺は兄者と一緒にいなかった?
――弟者は力いっぱいに叫ぶと、兄者を探して視線を巡らせる。
( <_ ; )「兄者っ、答えろっ!! 返事をいや、耳をふさげっ!!!」
_,
(; A )「おい、兄者っ。弟が何か……」
ドクオの声は聞こえる。
あの精霊は兄者の肩に乗っていたはず。だから、あいつの声が聞こえるなら兄者はそこにいる。
だけど、いつもならすぐに返ってくるはずの返事がない。
_,
( ^ω^)「なんだお? どうしちゃったんだお?!」
.
464
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:49:21 ID:2tZd1sd.0
祭壇から兄者の向かった方角へと、弟者は駆ける。
その後を、ブーンがふらつきながらも飛ぶが、弟者はそれに目もくれない。
(´<_`; )「兄者っ!!」
( _ゝ )
そして、駆け出した弟者はようやく兄の姿を見つける。
ゆったりとした服。被り布と腰帯は風にひらめき、腰に幾重にも巻かれた飾り帯がシャラシャラと音を立てる。
薄水色の体の色だけを除けば、――それは二年前の自分そのままの姿だ。
( _ゝ )「……そうか……そうだな」
(;'A`)「おい、兄者。何を言ってるんだ?!」
そして、立ち尽くす兄者の瞳には何の表情も浮かんではいなかった。
兄者の焦点を失った瞳が、弟者ではなくてどこか遠くを見据える。
( _ゝ )「……そこに、」
(゚<_゚ ; )「――ドクオォォォ、兄者をとめろぉぉぉ!!!!」
.
465
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:51:19 ID:2tZd1sd.0
兄者が視線を向けた先、――そこには何もない。
しかし、兄者の目は確かに、何かを捉えていた。
兄者の視線が上へ下へ、右へ左へと動き、弟者には見えない何かをたどる。
_,
(;'A`)「聞こえない! 兄者、弟者! これは一体何だ?!」
(´<_`#)「――兄者っ、ブーンっ!!」
_,
(;^ω^)「よ、呼んだのかお?」
まるで、星を読むかのようなその動き。
でも、そこには星なんて、無い。
( _ゝ )「 …… ……」
兄者の口が、何かをつぶやくのが見えた。
しかし、弟者の位置からでは何を言っているか聞くことが出来ない。
視線は遠くにむけられたまま、その足が壁へと向かう。
――なにかに操られている。
あの音が原因に違いないと、弟者はもはや確信していた。
_,
(;'A`)「おい、兄者止まれっ! そっちには何もない!!」
( _ゝ )「…… 、 ……」
.
466
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:53:04 ID:2tZd1sd.0
――――――‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
‐‐‐‐‐‐‐‐‐
――それは、いつかの焼き直しのようだ。
忘れられない記憶が、断片のように浮かぶ。
「なあ、おれ。誰かに、呼ばれてないか」
あの日も、そうだった。
あの日も、兄者は俺にはよく聞こえない“何か”の声を聞いたのだ。
そして、鏡の表面に触れた手が、水面に 溶けて――。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐
――――――‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
467
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:55:02 ID:2tZd1sd.0
( _ゝ )「 ……」
白い壁に、兄者の指が伸ばされる――。
(´<_`#)「ブーン、兄者を止めろぉ!!!!」
その瞬間、弟者はさらに速度を上げて駆けだしていた。
腰から青竜刀を外すと、獣の速さで兄の元へと駆ける。
_,
(;^ω^)「はえ? でも、ブーンには頼らないんじゃ」
(´<_`#)「いいから!
お前が一番早い! 死んでも止めろ!!」
しかし、それでも兄者の元へたどり着くには遠い。
ブーンの耳に響く音に負けぬように、弟者は声を張り上げブーンを怒鳴りつける。
(;゚ω゚)「はぃいいいい!!!」
耳を震わせる大音量に顔をしかめながらも、ブーンは弟者に言葉を返す。
ブーンの体が周囲の風を巻き込みながら、一直線に飛ぶ。
.
468
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:57:47 ID:2tZd1sd.0
兄者の口が、再び何かをつぶやくように動く。
しかし、その口から出たのは言葉ではなく――
( _ゝ ) 《
⊂二(^ω^#)二二⊃「やめるおぉおおおおおお!!!!」
(;'A`)「ブーンっ!!」
弟者の薄緑の毛並みが一斉に逆立つ。
肌が粟立ち、耳が言葉ともつかない音をとらえる。
弟者は知っている――この肌の感触は、耳を打つ音は兄者の魔力そのものだ。
(´<_`#)「――間に合えっ!!!」
白い壁の兄者の手が触れた部分を中心に、光が広がる。
上へ下へ、右へ左へ――先ほどまで見えなかった何かをたどるように、光は走る。
光の一筋は円を描き。
その円の内側には三つの円が。
その中心を貫くかのようにして多角形がいくつも組合わされていく。
外周にあたる円の外や内には、弟者には読み取れない文字や記号がいくつも浮かび上がる。
(#'A`)「兄者っ、しっかりしろっ!!」
.
469
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:59:08 ID:2tZd1sd.0
光によって描かれた何かは、魔法陣に似ていた。
兄者の魔力を使って描かれた、兄者だって知らないであろう術式。
――音で絡めとった獲物の魔力を使って放つ、罠。
あれが発動したらおそらく、ろくなことにはならない。
(#^ω^)「やめるお、アニジャ!」
(; _ゝ )「 …っ」
(#'A`)「口塞ぐぞ、ブーン!」
ブーンとドクオが兄者の顔に殺到し、その動きを何とか止めようと動く。
彼ら精霊は何が起こっているのかわからないなりに、必死だ。
二人の懸命の努力により、兄者の体の動きが少しだけ鈍り、その口も動きを止める。
(゚<_゚ ♯)「こんのぉ、クソ兄者ぁっ!!!」
それだけの間があれば、弟者には充分だった。
盗賊から取り上げた青竜刀が鞘に入ったまま唸り、兄者の腹へと打ちこまれる。
兄者はその動きを全く避けようとはせず、その打撃をもろに食らった。
(;^ω^)「オトジャっ!」
(;゚A゚)「ちょ、ま、え?」
.
470
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 23:01:02 ID:2tZd1sd.0
予想だにしていなかった弟者の動きに、ドクオとブーンが動きを止める。
その、ほんの一瞬。
( _ゝ )《 》
Σ(´<_`; )「――しまっ」
一際大きな魔力の奔流が、周囲を蹂躙する。
それは魔法陣を震わせて、金属質の鐘のような音を周囲に響かせる。
(;^ω^)「アニジャっ、大丈夫かお!」
( ;-_ゝ-)「――っ、ぅ」
鐘のような音と、強い光を放って魔法陣は輝き続ける。
兄者の体が力を失って、崩れ落ちる。
それを慌ててブーンとドクオが支えようと動く。
(;´_ゝ`)「――俺、は……」
(;'A`)「しっかりしろ、今は無理してしゃべらなくていい」
――そして、鞘から青竜刀を抜き放った弟者が壁へと走る。
.
471
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 23:03:09 ID:2tZd1sd.0
その標的は、光を放つ魔法陣そのもの。
抜き身の剣は鈍く輝き、新たな主の命を果たそうと動く。
しかし、そんな弟者をあざ笑うかのように……
(゚<_゚ ♯)「――止まれぇぇぇぇっ!!!」
(#゚A゚)「弟者退けぇぇっぇ!! 危ないっ!!」
魔法陣は一際強く輝くと、飛びかかった弟者の姿を弾き飛ばす。
見えない風のような魔力の奔流に打ち据えられ、飛ばされながらも弟者は体勢を強引に整える。
そして、そのまま猫のように着地すると、再び走りだそうと足に力を込める。
(;^ω^)「オトジャっ!」
(;´_ゝ`)「――ぅ、」
兄者は正気に返ったようだが、まだまともに動ける様子ではない。
自分でやったことではあるが、手負いの兄者を連れて出口まで走ることは不可能。
ならば、魔法陣が本格的に発動する前に止めるしか手段はない。
だが、
そうやって頭を巡らせる弟者の前で。
無常にも魔法陣は一際大きな音を立て――ついに、発動した。
.
472
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 23:03:55 ID:2tZd1sd.0
そのろく。 俺らの冒険は始まったばかりだ。
おしまい
.
473
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 23:05:27 ID:C4jNBwmI0
おつ!
すごく気になるところでおわったな…
474
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 23:08:08 ID:3Ian1DMs0
乙
475
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 23:35:40 ID:2tZd1sd.0
ここからはオマケ劇場 全8レス
476
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 23:37:50 ID:2tZd1sd.0
__ ('A`)ノシ_
,r''" ∠ノ( ヘヘゝ ゙`'丶、
r'´ ` 、
.i 'ー──―‐' !
`=ー-、....,,,,,_____,... --‐=''´
``" '' 'ー──―‐' ''' "´
おまけ劇場 l从・∀・ノ!リ人 でざーと×しすたーのようです
.
477
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 23:40:43 ID:2tZd1sd.0
ドバドバ∬´_ゝ`)つ∪「見るからに胡散臭い魔道具。ここに妹者がもってきてくれた水を注ぎます」
フムフム l从・∀・ノ!リ人
∬´_ゝ`)「でもって水底に刻まれた文字を指でなぞります。
すると――あら、不思議!」
l从・∀・ノ!リ人「?」
(#゚;;-゚)『……こちらソーサク遺跡先遣調査部隊』
Σl从・∀・;ノ!リ人
∬*´_ゝ`)「あら、でぃちゃんじゃない! 元気だった? 大丈夫? 困ってない?
しぃは元気? 馬鹿ギコの野郎が貴女やしぃを困らせてない?」
(#;゚;;-゚)『……あねじゃ……さま……』
.
478
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 23:43:39 ID:2tZd1sd.0
l从・д・;ノ!リ人「お水に人がいてお話しててお水とお皿が」
アババババ ゜ミol从・д・;ノ!リ人o彡゜
∬´_ゝ`)「普通は魔道具だって言えば大抵納得するものだけど、流石よね妹者」
l从-д・;ノ!リ人「……こわくないのじゃ、これ?」
∬*´_ゝ`)「怖くないわ、使い方さえ間違えなきゃね」
チラッ l从・〜・;ノ!リ人
(#;゚;;-゚)『……はじめ……まして?』
l从>д<;ノ!リ人「しゃしゃしゃ、しゃべったのじゃー!!」
∬;´_ゝ`)「ええ、しゃべるわよ。そのための道具だもの」
(#゚;;-゚).。oO(……どうしよう)
∬´_ゝ`)「馬鹿ギコいる? 嫌だって言っても、無理やり連れてきて」
(#;゚;;-゚)「でも、ギコさんは今……」
.
479
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 23:46:18 ID:2tZd1sd.0
∬*´_ゝ`)「いいー? 私一回しか言わないわよ。
どうしても 、 絶対 、 今すぐに ギコ=ハニャーンを出せ」
::(# ;;- ):: ビクッ Σl从・∀・;ノ!リ人
∬´_ゝ`)「嫌だって言ったらそうね……うん。クソギコが出ないなら、引っこ抜くわよ。
それに、ギコが隠しているあのことを、しぃにバラして……
調査隊に回す資金を、打ち切っちゃおうかしら?」
(#; ;;- )『……だめ……お姉ちゃんが……困る』
∬*´_ゝ`)「じゃあ、早くギコを連れてきてくれるかしら?」
(#; ;;- ) コクコク
l从・−・;ノ!リ人.。oO(姉者がものすごくこわいのじゃぁぁぁ!!!)
∬´_ゝ`)「あ、妹者。そろそろ、勉強の時間じゃない? 先生来るわよ」
Σl从・Д・;ノ!リ人「のじゃ?!」
.
480
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 23:49:28 ID:2tZd1sd.0
スッ|゚ノ ^∀l从・Д・;ノ!リ人て ビクッ
|゚ノ ^∀^)「あらあら、妹者様ー。今日も、ご機嫌麗しゅう。
それでは、先生と一緒にお勉強しましょうねー」
l从>д<;ノ!リ人「妹者は、姉者といっしょにいるのじゃー
姉者がこれから何をやるのか見るのじゃぁぁぁ! 勉強しないのじゃ!」
ガシッ |゚ノ ^∀^)つl从;∀;ノ!リ人「さあ、お勉強しましょう! レモナ先生張り切っちゃう!」
グイグイ |゚ノ ^∀^)つl从;∀;ノ!リ人 三 イヤ ナノジャー
;ノ!リ人 三 ノジャー
∬*´_ゝ`)ノシ「愚弟どもの様子はちゃんと聞いておくから、安心しなさい」
イヤナノジャー!! アラアラ イモジャサマッタラー
∬´_ゝ`)「……さてと」
.
481
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 23:52:40 ID:2tZd1sd.0
(,,゚Д゚)『――何の用だ、クソアマ。死ね』
∬´_ゝ`)「愚弟たちがちゃんとそっちについているか気になってね、クソギコ死ね」
(,,;゚Д゚)て『そんだけの理由で、でぃを困らせたのか?! あいつが人見知り君なの、お前も知ってるだろ。
本当、魔神並にタチ悪いな!! 』
∬*´_ゝ`)「ほら、私だってかわいい弟のことは心配なのよ。
妹者だってすごーく心配しているみたいだったし、久しぶりにアンタの顔も見たかったしね」
(,,-Д゚)『よくもまあ、いけしゃあしゃあと嘘を並び立てたものだ。
坊主どもがどうしてるか知りたいなら、直接本人たちを呼び出して聞けばいいだろうが?」
∬´_ゝ`)「そうしたいのは、やまやまなんだけどね。
ちゃんと着いてるかわからないし、魔道具と鏡の取り合わせじゃ弟者は絶対出ないでしょ」
(,,;゚Д゚)『確かにあいつら逃げてったが、ありゃあお前が怖』
(,, ゚Д) ……
(,,-Д-)『……怖いだけじゃないか。
わざわざオレを呼び出したのは、それでか』
.
482
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 23:54:01 ID:2tZd1sd.0
∬´_ゝ`)「そ。こんな話、アンタくらいにしかできないからね。
他のやつに知られるのはマズイし、しぃだと心配かけちゃうもの」
(,,゚Д゚)『……弟者の奴は、まだダメなんだな。
今日ちょっと話しただけでも、そんな感じだった』
∬-_ゝ-)「甘ったれな弟で本当に困ったもんだわ。
頼りの兄者も年々ちゃらんぽらんになっていくし……どうしてこうなった」
(,,゚Д゚)『いいじゃねえか。オレは好きだぜ、今の兄者』
(,,-Д-)『……まあ、』
(,,-Д゚)『……お前のそういうまっとうな姉ちゃんっぽいところは、ちゃんと弟どもにも見せてやれ』
∬´_ゝ`)「嫌よ。私、そんな柄じゃないもの」
(,,゚Д゚)『まあとにかく、兄者も弟者も元気だ。
今はのんびり遺跡探索にくり出してるよ』
(,,-Д-).。oO(盗賊に襲われた件については黙っておこう)
∬´_ゝ`)「あの子たち二人で?」
(,,゚Д゚)『いや、精霊と一緒らしいぞ』
_,
∬;´_ゝ`)て !?
.
483
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 23:56:12 ID:2tZd1sd.0
・
・
・
・
|゚ノ;^∀^)「妹者さまー、ちゃんとお勉強してぇー!!!」
ムニャム l从-∀-ノ!リ人.。oO
l从-〜-ノ!リ人「……おっきい兄者 ……ちっちゃい兄者……」
l从-∀-ノ!リ人.。oO エヘヘー
|゚ノ#^∀^)「妹者様っ!!!」
つぎのはなしに つづく
484
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 23:58:17 ID:2tZd1sd.0
今日の投下ここまで
乙くれた方々ありがとうございました
今回投下分で書き溜めストックが切れたので、次回の投下はいつになるのか未定です
書けたら6月の中旬〜下旬に投下予定。無理だとしても、報告にはきます
485
:
名も無きAAのようです
:2013/05/20(月) 00:00:59 ID:ckcwxeYI0
おつ
山場がきてるな
486
:
名も無きAAのようです
:2013/05/20(月) 00:01:03 ID:FNWH6xZY0
おつ
ゆっくりでいいよ生存報告だけでもうれしいからさ
逃亡しないのが大事なんだ
487
:
名も無きAAのようです
:2013/05/20(月) 11:57:12 ID:BCwgwJGkO
ふうっ、読み終えたさすがに文字数多くて100レス超えは読みがいがあるな
.
488
:
名も無きAAのようです
:2013/05/20(月) 18:54:59 ID:VAFHrtKoO
盛り上がってきたなあ
続き楽しみにしてる!
489
:
名も無きAAのようです
:2013/06/22(土) 00:30:16 ID:n.w7RJKg0
なんとか完成したのでこの土日のうちに投下します
490
:
名も無きAAのようです
:2013/06/22(土) 00:45:26 ID:n.w7RJKg0
訂正:投下は後日になるかも
491
:
名も無きAAのようです
:2013/06/22(土) 12:22:01 ID:hZVRUeQQ0
どちらにしろ舞ってる
492
:
名も無きAAのようです
:2013/06/23(日) 20:00:44 ID:OeiHTfo.0
高らかに鳴る鐘のような音と共に、魔法陣は強くまばゆい白い光を放つ。
――そして、その光が引いた時。
..
祭壇の傍らに、突如としてそれは現れた。
岩と石で作られた。人と馬車の荷台の中間のような形をした、巨大な何か。
足があるべき場所には、音を上げる無限軌道。
手に当たる部分は、男一人ほどの大きさはあろうかという複雑な形をした岩の固まり。
それを支える腕はその体躯に比べ、心細くなるほどに細い。
人や獣ならば顔に当たるべき場所には、細長い穴が数筋平行にあけられている。
――まるで、できそこないの仮面だと思ったのは兄者か弟者か。
(;'A`)「ゴーレム! 何であんなもんがここに」
(; _ゝ )「――ゴーレム……あれが?」
“流石”の街の兄弟よりも、ラクダよりも、竜よりもなお大きな巨体。
身の丈は砂クジラや、天井には届かないが、それは何の救いにもならない。
重要なのは、それが動き出せば彼ら兄弟の命などたやすく奪い取ってしまいそうだという、その一点のみ。
――そして、それは言葉の代わりに、空気を勢いよく噴き上げた。
493
:
名も無きAAのようです
:2013/06/23(日) 20:01:35 ID:OeiHTfo.0
( ´_ゝ`)デザート×キャラバンのようです(´<_` )
.
494
:
名も無きAAのようです
:2013/06/23(日) 20:02:16 ID:OeiHTfo.0
そのなな。 戦え、その命尽きようとも
.
495
:
名も無きAAのようです
:2013/06/23(日) 20:03:48 ID:OeiHTfo.0
辺りに響いていた音は止み、魔法陣は光を失い消えていく。
しかし、祭壇の傍らに現れた巨体が消える気配は、微塵もなかった。
( ;´_ゝ`)「何やらゴーレムさんというらしき御仁がそびえ立っているが……俺、何かやらかした?
っていうか、めっちゃ腹が痛いんですけど……これなんで?」
巨体を呆然と眺めながら、腹を抑えた兄者がポツリと声をあげた。
彼の目は先程までの虚ろな様子から一転し、普段通りのお気楽な調子を取り戻している。
その声は、武器を手に壁へと駆け出そうとしていた弟者へと向けられていた。
(´<_` )「……荒療治を少々。
まあ、我にかえれただけ上等な方だ。兄者にしてはな」
( ;´_ゝ`)「ぅぇー。今日は楽しい遠出ーくらいのつもりだったんだけどなー」
(´<_` )「よかったじゃないか、兄者。念願の大冒険ってやつだ」
(;'A`)て「大冒険って、何のん気なこと言って」
ドクオの言葉が終わるよりも早く、弟者の体は走り出していた。
その標的は突如現れた、巨体。弟者は岩の巨人の背後に潜り込むと、引きぬいた曲刀でその背を切りつけた。
(;'A`)「ちょ、いきなり攻撃するとか!!」
.
496
:
名も無きAAのようです
:2013/06/23(日) 20:05:29 ID:OeiHTfo.0
耳障りな、金属音。
曲刀と岩の接触面から、一際鮮やかな火花があがる。
(´<_` )「見た目通り、固いか」
(;^ω^)「お、お、オトジャ、あんまり荒っぽいのは……」
その硬さは、昼に出会った盗賊の比ではない。
切り込んだ時の感触からして、既にあの男とは違う。
それもそうだ。目の前の巨人の体は岩。よほど鍛えられた金属でもない限り、刃は通らない。
(´<_` ;)「――これは、厄介な」
弟者はゴーレムというらしき巨体を見上げる。
岩で出来た巨人は空気を噴き上げながら何事もなかったかのようにそびえ立ち、
/◎ ) =| ) gi
ギリリと上半身だけを動かし、
弟者を、
見た――。
.
497
:
名も無きAAのようです
:2013/06/23(日) 20:07:07 ID:OeiHTfo.0
ゴーレムに目などない。あるのは顔に当たる部分にあけられた穴だけ。
しかし、弟者は確かに見られたと感じた。
(;^ω^)「動いたお!」
(;´_ゝ`)「なんと、と言いたいところだがやっぱりか」
耳障りな音を上げながら、ゴーレムの腕が動く。
腕を持ち上げ地に叩きつける、それだけの動き。
しかし、それが当たればどうなるかは、考えるまでもなかった。
(#'A`)「馬鹿弟者! 余計なことするから敵と思われたぞ!!」
(´<_`; )「――っ、本気か」
弟者は地を蹴り、その場から離脱を図る。
ゴーレムの腕が唸りを上げて振り降ろされたのは、それと同時。
轟音を立てて地が大きく震え、巨大な腕が地面にめり込んだ。
(´<_`; )「……デカブツめ」
( ;゚ω゚)「オトジャーっ!!」
ざっと、足を踏みしだき弟者は着地する。
.
498
:
名も無きAAのようです
:2013/06/23(日) 20:09:07 ID:OeiHTfo.0
巨人の腕が振り下ろされたのは、ちょうど先程まで弟者がいた場所。
回避に出るのが遅ければ、ひとたまりもなかった――と、弟者は内心で冷や汗をかく。
( ;´_ゝ`)「弟者、ここは逃げるぞ!」
(´<_` )「しかし、兄者は……」
まだ動けないだろうと言いかけ、弟者は止めた。考えを変えたからではない。
青竜刀を握った弟者の肩を、ブーンの小さな手が叩いていたからだ。
弟者はブーンの姿を見やり、そのおっとりとした顔がはっきりとした意志をたたえていることに息を呑む。
( ^ω^)「ブーンが、アイツの目をひきつけるお」
(´<_` )「……ブーン」
(;^ω^)「アイツはオトジャだけじゃなくて、ブーンのことも見てたお
だから、ブーンならきっとオトリになれると思うんだお」
ブーンの声は小さく震えている。
しかし、真剣な光を湛える瞳は、その言葉は嘘ではないと、はっきりと伝えていた。
楽しいか楽しくないかしか感情がわからない――かつての言葉とは別人のようなブーンの姿に弟者の胸がかすかに痛む。
(´<_` )「……いいのか」
.
499
:
名も無きAAのようです
:2013/06/23(日) 20:11:03 ID:OeiHTfo.0
( ^ω^)b「ニンゲンは長生きしているやつの言うとおりにするんだお?
だったら、ブーンの言う言葉はゼッタイってやつなんだお。きっと」
最後の言葉だけを震えずに言い切ると、ブーンは弟者の返事を待たずゴーレムへむけて飛び立っていく。
弟者は呆然とそれを見送ると、輝くブーンの羽の軌跡から目を外し、扉へと視線を走らせた。
(´<_`#)「扉へと向かう! 兄者も根性で走れっ!!!」
(;´_ゝ`)「……把握」
('A`)「兄者は任せろ!」
体勢を整え弟者は駆ける。向かうのは、扉。
今は一刻の時間も無駄にするわけにはいかなかった。
ゴーレムの姿は見ない。もし、そうすれば今の自分は動けなくなるだろうと、弟者はどこか冷静に悟っていた。
( <_ )「すまない、ブーン」
振り返ることなく、小さく呟く。
その歩みごとに足元に生えた草が潰れ、嗅ぎ慣れない青臭いにおいが周囲に立ち込める。
本当にここはソーサク遺跡の中なのかという雑念を振り払って、弟者はようやく扉の前へとたどり着く。
花や鳥の装飾が施された、緑青の金属の扉。
この部屋と、外とをつなぐ唯一の接点。
.
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