[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
1-
101-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
从 ゚∀从百合は咲耶、乙女は散り急ぐ徒花のようです
1
:
名も無きAAのようです
:2012/04/16(月) 23:10:30 ID:9chxrQSQO
o川*^ー^)o「こんちまたまた。いやあ、この作品を読んで下さる方がいるようで感謝感激雨霰っす」
o川*゚ー゚)o「そこで次のレスから本編が始まる訳なんすけど、ちょいとお先に一つご注意をと」
o川*゚ー゚)o「この作品は百合と申しますか、少女同士の秘め事的な要素を多分に含みます」
o川*゚ー゚)o「更に一応18禁という形にさせて頂いております」
o川*゚ー゚)o「18歳未満の方や、そういうのが苦手な方は、大変申し訳ございませんがご遠慮お願い致します」
o川*^ー^)o「18歳以上でそういうのが気にならない方は、楽しんで頂ければ幸いっす」
o川*゚ー゚)o「では次から本編スタートっすよ!」
.
2
:
名も無きAAのようです
:2012/04/16(月) 23:13:11 ID:2b77Dt5A0
百合!百合!
3
:
名も無きAAのようです
:2012/04/16(月) 23:13:37 ID:9chxrQSQO
昔あるところに、燃え盛る炎のように赤い髪をした、幼い少女がおりました。
陽光を照り返して尚輝く本当に美しい赤でしたが、当の本人はあまりそれが好きではありませんでした。
なぜなら彼女が暮らしているのは、黒髪の単一民族で形成される極東の島国だったからです。
残酷という言葉の意味すらまだ理解できない周囲の子供達は、からかい混じりに少女の容姿を揶揄します。
――赤鬼、と。
赤鬼少女は母に尋ねずにはいられませんでした。
「なんで私は、お母さんやみんなのように黒い髪の毛じゃないの?」
母は軟らかく微笑みながら答えます。
「この赤い髪はね、お母さんからのプレゼントなの」
「プレゼント?」
「そう。いつかこの髪が、きっと貴女のことを守ってくれるわ」
赤鬼少女は髪を優しく梳いてくれる母へ、きょとんと首をかしげることしかできませんでした。
しかし、程なくしてその言葉の真意を知ることになります。
赤鬼少女は泣きました。
わんわん泣きました。
三日三晩泣き続けて、四日目の朝からはもう泣きませんでした。
失った大切な人は今でも自分の近くにいて、守ってくれていることに気付いたからです。
4
:
名も無きAAのようです
:2012/04/16(月) 23:14:23 ID:9chxrQSQO
从 ゚∀从百合は咲耶、乙女は散り急ぐ徒花のようです
.
5
:
名も無きAAのようです
:2012/04/16(月) 23:15:35 ID:9chxrQSQO
砂混じりの熱風が成長した少女、ハインの緋色に煌めく髪を揺らした。
从 -∀从「白昼夢ってわけでもないだろうに」
生命力の強い草花であっても、わずかな数を残して全て枯れ果ててしまうような、中東の砂漠。
その砂漠のど真ん中で、ハインは悠然と一人佇んでいた。
从 ゚∀从「あれからもう十年か」
中東は湿度が低いから日本の夏よりは快適などとよくいわれるが、それはあくまで日陰に入ればの話だ。
これほどの気温の高さで直射日光を浴び続ければ、間違いなく身体に変調を来たすことになるだろう。
しかし、ハインは汗の一滴すら流さず、平然とした様子で地平の向こうを眺めていた。
6
:
名も無きAAのようです
:2012/04/16(月) 23:16:51 ID:9chxrQSQO
从 ゚∀从「……そろそろか?」
足の細さに対して少々大きめなサイズのベトナムズボン、そのポケットへ無造作に手を突っ込む。
取り出したのは小型の携帯無線機だ。
本来ならば軍で正規採用されている、115式携帯無線機2号を使用するはずだったが、
从 ゚∀从「あんなごちゃごちゃしたもん、分からねえっての」
ハインが使い方を知らないので、仕方なく間に合わせの簡単な通信機が配備された。
从 ゚∀从 「どうせジャミングや傍受に耐性がないなら、携帯電話でいいじゃん」
と提案もしてみたが、さすがにインフラの利用はやめてくれと、部隊から却下された。
そもそもハインはインフラがなにか分からなかったのだが、とりあえず重々しくそうだなと頷いておいた。
7
:
名も無きAAのようです
:2012/04/16(月) 23:18:46 ID:9chxrQSQO
『こちら朝日。赤鬼、送れ』
定例通信の時刻。
周波を指定されていた度数に合わせると、無線機からくぐもった声が響く。
从 ゚∀从「こちら赤鬼。感明良し、送れ」
『敵、想定通り。一時方向より主力戦車が三。繰り返す――』
从 ゚∀从「繰り返さなくていい、問題はない。通信を終了する」
『……了解』
从 -∀从「はあぁぁ」
無線機を切ると、ハインは胸一杯に溜まった苛立ちを、吐息として深く外へ吐き出した。
从 ゚∀从「確かに想定通りなんだろうけどよ、むかつく」
この道を一直線に進むと、行き当たるのは集落と呼べる程の小さな村だ。
从 ゚∀从「戦車だあ? 銃すらろくにないような村を潰すのに、なんで戦車みたいなもんが必要なんだよっ!!」
持場で待機して敵を待ち受けろという指示だったが、ハインはそれを気にも掛けず、北へ向けて歩を踏み出す。
从 ゚∀从「俺は正式な軍属じゃねえ。命令など関係ない」
抑えきれない激情が身体から闘気として溢れ、中近東に吹くシムーンのごとく、周囲の砂を巻き上げて進む。
果たして彼女のその行動は、背後の村を守るためのものなのか。
それとも気に入らない敵を潰すためなのか。
.
8
:
名も無きAAのようです
:2012/04/16(月) 23:20:12 ID:9chxrQSQO
(;^Д^)「白昼夢かこれはっ!?」
革命軍の中でも勇名を馳せる大男、プギャーは目の前の惨劇を現実のものとして認識できなかった。
少し前までは悠々と戦車を前進させていた。
車両は第二次世界大戦後期にドイツ軍が採用していたもので、
現代では骨董品ともいえる代物だが、それでも国内での戦力としては十分だった。
この先にある村を潰して、愚かな国の高官達に革命軍の力を見せつける。
己の更なる武勲に心を踊らせていると、水を差すように先行している部下から通信が入った。
『こちらティーガー03、聞こえますか!』
( ^Д^)「こちらティーガー01。感明良し、どうした?」
『進路上に一人の少女が立ち塞がっています!』
( ^Д^)「少女? そんなもの逐一報告しなくても、邪魔になるなら踏み潰してしまえ」
『そうじゃないんです! 少女は、輝かんばかりの赤髪をした……!? あああああぁぁぁああ!!」
( ^Д^)「どうした! 何があったっ!」
『…………』
通信機からはザーと耳障りな雑音が聞こえるばかりで、答えが返ることはなかった。
9
:
名も無きAAのようです
:2012/04/16(月) 23:21:47 ID:9chxrQSQO
輝かんばかりの赤髪をした少女、そう呼ばれて思い浮かべるものは一つしか存在しない。
( ^Д^)「……レッドオーガ、実在するのか?」
革命軍内でまことしやかに流れている噂話がある。
赤い髪をした少女が武器も持たずに単身で乗り込み、幾つかの友軍基地を壊滅させたと。
その少女を目撃したという、事切れる寸前の同志は、
「やつは人間じゃない。レッドオーガだ……」
といい残したらしい。
噂を耳にしたときは、そんな馬鹿なことがあるかと一笑に付したプギャーだが、それが今現実のものとして眼前に存在する。
部下からの通信が途絶えた地点に到着すると、待っていたのは目を覆いたくなるような光景だった。
天から巨大な剣でも降って来たのか、大地ごと真っ二つに裂かれたティーガー03の残骸。
そして更に信じられないことに、もう一つの友軍車両ティーガー02は、赤い髪をした少女に片手で軽々と掲げ上げられている。
从 ゚∀从「ははは! 地面についてないから意味ないのに、ずっとキャタピラ回してやんの!」
その少女は、まるで新しい玩具を買って貰った子供のように、面白くて仕方がないという純粋な笑みを浮かべていた。
10
:
名も無きAAのようです
:2012/04/16(月) 23:23:22 ID:9chxrQSQO
(;^Д^)「やつがレッドオーガ……!」
从 ゚∀从「飽きた。つまんないの、もう要らねえやっ!」
早くも戦車に興味を失ったのか、それを振りかざすと思い切り地面へ叩き付ける。
どれほどの圧力が加わったのだろう。
大戦中では最高クラスの装甲を誇ったティーガー戦車が、プラモデルのように容易くひしゃげた。
(;^Д^)「あぅっ……!」
言葉が喉の奥に張り付いて、口から出てこようとしない。
今目の前で行われている光景が、どうしようもなく現実なのだと理解すると、プギャーは全身の血が凍るのを感じた。
レッドオーガと呼ばれる少女は、面目躍如といったところだろうか。
それだけで済ませる気は更々ないようで、その戦車を再度持ち上げると即座に叩き付ける。
从 ゚∀从「そらそらそらそら!」
叩き付ける、叩き付ける、叩き付ける、ただただそれを高速で繰り返す。
そしてぼろぼろに崩れた戦車を、正しくゴミを捨てるような気軽さで放り投げた。
ショートした電子機器が、ガソリンエンジンに引火したのだろう。
したたかに叩き付けられたティーガー戦車は、熱砂の上で黒煙をあげて惨たらしく炎上する。
当然ながら脱出者など存在しない。
部下である乗員五名の命が造作もなく摘み取られる瞬間を、プギャーは呆然と眺めることしかできなかった。
11
:
名も無きAAのようです
:2012/04/16(月) 23:24:27 ID:9chxrQSQO
从 ゚∀从「さあて、残るは――」
(;^Д^)「ひっ」
背に纏った爆炎にも劣らず輝く、紅の髪を翻して赤鬼はこちらへ向き直る。
火影の中で爛々とした瞳が、プギャーの心臓を鷲掴みにした。
从 ゚∀从「俺が怖いか?」
(;^Д^)「……な、なにをやっている! 砲手、撃て! あの化物を撃ち殺せ!」
震える声を振り絞って伝令する。
プギャーはもはや虚勢でもいいから大声を張り上げていないと、正気を保っていられなかったのだ。
砲塔がギチギチと金属の擦れ合う音を放ちながら回転し、赤鬼へ狙いを定めた。
从 ゚∀从「怖いだろうなあ。圧倒的な暴力が、目の前で形を伴って存在するんだから」
56口径8、8cmの戦車砲。
もし人間が受けたならば結果を論ずる必要はないだろう、即死だ。
それを向けられても赤鬼は動じず、ただ右腕を逆袈裟にかざすのみである。
12
:
名も無きAAのようです
:2012/04/16(月) 23:25:52 ID:9chxrQSQO
( ^Д^)「ファイア!」
そして、砲身から弾丸が放たれた。
鋭く撃ち出された鉄の塊は、赤鬼との距離を瞬く間に詰める。
( *^Д^)「ははははははははは! やった、レッドオーガを討ち取ったぞ! さすがは英雄プギャーだ!」
从 ゚∀从「はあぁっ!!」
掛け声と共に、赤鬼はかざした手を電光石火で振り下ろし、高速で飛来する砲弾を造作もなく素手ではたき落とした。
( ^Д^)「えっ、あっ、はっ?」
从 ゚∀从「誰だって死ぬのは怖いんだ。お前らはさ、そんな死にたくねえって叫んでる人達を今まで殺してきたんだよ」
(;^Д^)「砲手! 次弾急げ! 機関銃もばらまけ! やつを近付けるな!」
絶え間なく放たれる銃弾が、赤鬼の服に無数の弾痕を作る。
しかしその下の皮膚には一切の傷が見えず、まるで死神が巡遊するように、悠然とこちらへ歩み寄って来た。
从 -∀从「だからさ、精一杯懺悔しろよ。今まで自分がどれだけの人を殺したのかを」
(;^Д^)「ひ、ひぃ!?」
从 ゚∀从「神が許すかどうかは関係ねえ。懺悔した上で、俺が殺してやるからよぉぉぉっ!!」
.
13
:
名も無きAAのようです
:2012/04/16(月) 23:27:10 ID:9chxrQSQO
今日の出来事を部隊長の朝日に報告したハインは、疲れた身体を引きずるようにしてキャンプに入る。
从 -∀从「…………」
結果からいうと任務は遂行した。
多少の命令違反はあったが、軍の上層部からなんらかの力が働いたのだろう、特に咎められることもなかった。
ξ゚⊿゚)ξ「お疲れ様」
从 ゚∀从「……ああ。水くれ、まだ手が汚れてる気がするんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「まったく、精神的に参るぐらいでしたら、直接素手で殺すなんて真似よせばよろしいですのに」
ハインと同じく正規の軍属ではない少女、ツンは呆れ顔を強くして水の入ったペットボトルを投げ渡す。
それをキャッチすると、ハインはテントの外へ腕だけを突き出し、その水で特に汚れてもいない掌を何度何度も洗った。
14
:
名も無きAAのようです
:2012/04/16(月) 23:33:40 ID:9chxrQSQO
从 ゚∀从「サンキュな」
ξ////)ξ「べ、別に貴女のために用意していたわけではありませんからね! 勘違いはなさられないように!」
从 ゚∀从「俺のためじゃないなら、なにか使う予定があったんじゃねえのか?」
ξ゚⊿゚)ξ「えっ!? それは、そのぅ、……そう! 丁度必要ではなくなったところでしたの。つまりあれは私にとってはゴミ同然の代物!」
なぜ素直に用意していたといえないのかハインは疑問に思うが、そこがツンの面白いところなので黙っておく。
ξ*゚⊿゚)ξ「いうなればゴミを施しただけに過ぎませんわ!」
从*゚∀从「ぷっ、くっ、ははは! いくらなんでも砂漠で、水がゴミはねえだろ」
しかも上手く誤魔化せたと、ツンはこれ見よがしな顔をしていた。
そこが更に強くハインの笑いのツボを突く。
ξ゚⊿゚)ξ「な、なにがおかしいんですの。また貴女は私のことを馬鹿にして」
从 ゚∀从「馬鹿になんてしてねえよ。いやいや、癒されるっていうか、ツンは可愛いなあって」
ξ////)ξ「はあ!? まあ、私が可愛いのは、その、当然のことですけど、……一応礼を申しておきますわ」
15
:
名も無きAAのようです
:2012/04/16(月) 23:35:00 ID:9chxrQSQO
从 ゚∀从「しかし、冗談抜きでツンみたく可愛けりゃあ人生得だろうな」
ξ*-⊿-)ξ「もう、褒め殺しですの? 私は、その、ハインも十分に……お、御綺麗だと思いますけど?」
从 ゚∀从「……それは、こんな身体でもか?」
ハインは軍から支給されていた服を乱暴に脱ぎ去り、ランプの灯の元へ白くしなやかな裸体をさらす。
普段の大人びた雰囲気とは逆に、その身体は成長途中の未成熟な少女のものだった。
まだ発育が十分ではない膨らみかけた胸、少しだけくびれた腰回り。
随所から大人になりかけている少女特有の、幼い色香が漂っている。
从 ゚∀从「こんな俺でも綺麗だと本気で思うのか?」
ハインが何を指してこんなというのか、それは一目瞭然だった。
透き通るようなみずみずしい肌の至る所に付いた、大小様々な無数の裂傷の痕。
その一つ一つが強く存在を主張している。
古い傷なのだろう、年頃の少女に刻み込まれた痛ましいそれは、昨日今日のものというわけではなさそうだ。
16
:
名も無きAAのようです
:2012/04/16(月) 23:36:34 ID:9chxrQSQO
ξ゚⊿゚)ξ「私は、それでも綺麗だと思いますわ」
从 -∀从「はっ、冗談だろ?」
ξ゚⊿゚)ξ「冗談などではありません!」
从;゚∀从「わわっ!?」
ツンは自分でも何がこんなにとは思うが、いつも人を食った性格をしている同僚兼友人の、自嘲的な態度が酷く気に入らなかった。
そして気がつけばいつになく真剣な表情で、ハインを強引に押し倒していた。
なぜ自分でもこのようなことをしたのか理解できないが、もう後戻りもできそうにない。
ここから先は本能に従うことにした。
ハインの甘い匂いが感じられる胸元へ唇を寄せて、ツンは朱色にぬめった舌で傷痕をなぞり上げる。
まるで動物が愛しい相手の傷を癒すときのように、丹念に何度も舐める。
从*-∀从「んぅぅっ!?」
鎖骨から胸へ、胸からへそへ、全身を慈しむように這い回る優しい舌の感触が、快感となってハインの背中を駆け巡った。
まだ開花していない青い蕾は、かつて経験したことのない刺激に、瞳を閉じ身を縮こませて悶えることしかできない。
17
:
名も無きAAのようです
:2012/04/16(月) 23:39:44 ID:9chxrQSQO
从;-∀从「馬鹿っ! 汚いだろ、おい、やめ」
ξ*-⊿-)ξ「ぴちゃ、んちゅ……んふふ、汚くなんてありません。綺麗ですわよぉ、ハイン……」
興奮が抑えられなくなったのか、荒くなった吐息混じりの嬌声が、ツンの口から漏れた。
ハインが意を決してまぶたを開けると、西洋人形を想起させる澄ましたツンの美しい顔立ちは、見る影もなくとろけていた。
そして、なまめかしい表情で熱っぽく見つめ返してくる。
そのエロチックな顔に一瞬見惚れていると、不意にゾクッと身体を震わせる電流が走った。
どうやらツンの繊細な指先が、ハインの脇腹を上から下へと撫でるようにくすぐったらしい。
从*゚∀从「ひゃあっ!? だ、め……」
やがて腰まで降りて来た指は、飾り気のないショーツに引っ掛かる。
ツンはためらう様子すら見せずに、それをにわかにずり降ろし、まだ生えそろっていない幼い茂みへと舌を――
从#゚∀从「駄目だっつってんだろうがっ!!」
ξ;゚⊿゚)ξ「あだっ!? なにも叩くことはないではありませんか」
18
:
名も無きAAのようです
:2012/04/16(月) 23:41:21 ID:9chxrQSQO
从 ゚∀从「お前さ、人にこんなことするってことは、自分もやられる覚悟はできてるってことだよな?」
ξ゚⊿゚)ξ「ほえ? えーと、それは」
从 ゚∀从「ははは、お返しに今度は俺がよくしてやるからよ」
ハインは不気味に両手をうねらせながら、ツンににじり寄る。
口元こそ笑っているものの、その顔つきは戦車を潰した時よりも幾分か険しい。
≡ξ゚⊿゚)ξ「……それではごきげんようー!」
≡从 ゚∀从「待て、この野郎!」
≡ξ゚⊿゚)ξ「野郎ではありませんから、断固として待ちませんわ!」
特別待遇で他の兵員達と比較すれば大きいテントを使用しているが、それでも走り回るのに十分な広さとはいえない。
そんな空間で、人間とは思えない身体能力をした二人の少女は、無駄に高次元な争いを繰り広げていた。
从 ゚∀从「捕まえたぜ!」
ξ゚⊿゚)ξ「残念、それは残像ですわよ!」
本当に無駄にレベルの高いこの攻防は、夜が明けるまで続くことになってしまった。
.
19
:
名も無きAAのようです
:2012/04/16(月) 23:42:54 ID:9chxrQSQO
从 -∀从「へへ。なかなかやるな、お前……」
ξ-⊿-)ξ「ふふ、貴女こそ。太陽が黄色いですわ……」
性も根も尽き果てたという様相で、二人は大の字に倒れ込んで、テントの入口から差し込む朝日を拝んでいた。
(-@∀@)「いったい何をやっているんですか……」
从 ゚∀从「いや、朝日ったってお前のことじゃねえよ」
(-@∀@)「はあ? それよりも苦情が出ているんですよ。あそこのテントは夜通し、怪獣大決戦でもやってるのかって」
从 ゚∀从「いや、その、全力でぶつかり合わなければ、真の友にはなれないかと思って」
ξ゚⊿゚)ξ「そう、私達は拳を交えなければ互いを理解し合えないのですわ」
(;-@∀@)「そんな格闘漫画みたいな設定は知りませんよ!」
从 ゚∀从「二の腕と胸って同じ柔らかさなんだってよ」
ξ゚⊿゚)ξ「へー、でもハインは筋肉でそこまで柔らかくないじゃありませんの。ああ、だから胸の方も」
从 ゚∀从「テメェ、もう1ラウンドやるか?」
(;-@∀@)「なんで今そんな話を始めたんですか!?」
20
:
名も無きAAのようです
:2012/04/16(月) 23:44:26 ID:9chxrQSQO
从 ゚∀从「それでなんの用だ、政府の犬が」
(-@∀@)「ええ、それが……って政府の犬は酷くないですか!?」
ξ゚⊿゚)ξ「正直に申し上げますと、私は三十も過ぎたおっさんのツッコミを、気持ち悪いと思っております」
从 ゚∀从「ああ、それが俺達の今の本当の気持ちだ」
(-@∀@)「だったら脱線しないで下さいよ頼みますから! なんなら土下座しますから、いやもうしてますけど!」
部隊長朝日ことアサピーは権力に弱い、名実と共に政府の犬だった。
(-@∀@)「それでですね、実は」
そして本当に土下座しながら語り出す三十過ぎのおっさんを見て、二人はこうはなるまいと深く決意することになる。
(-@∀@)「ハインさんに帰国指示が出たんですよ」
从 ゚∀从「ああん? 誰が手を回したんだよ」
(-@∀@)「私では詳しくは分からないのですが、一応連絡はジョルジュ殿からだと」
从 ゚∀从「……あいつからか」
21
:
名も無きAAのようです
:2012/04/16(月) 23:46:21 ID:9chxrQSQO
ξ゚⊿゚)ξ「何か思い当たる節でもありますの?」
从 ゚∀从「こいつは招待状かも知れねえ。地獄の花園、乙女学府へのな」
ξ゚⊿゚)ξ「乙女学府って!」
从 ゚∀从「わざわざ出払ってる俺に戻れってことは、恐らく国が圧力掛けてきてんだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「……帰国指示ぐらいなら蹴ってもなんとかなりますわよ?」
从 ゚∀从「いいや、帰るよ。ここに俺の求めているものはなかったしな」
(-@∀@)「私はいつまで土下座をしていれば――」
从 ゚∀从「じゃあな、ツン。生きてたらまたどこかで会おうぜ!」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ、次の再会は戦場でなければよろしいですわね」
どちらからともなく差し出した手を掴み、二人は握手を交わした。
これから先、二度と会えないかもしれない友への想いを伝えるように、強く固く。
(-@∀@)
そう土下座したアサピーの上で。
.
22
:
名も無きAAのようです
:2012/04/16(月) 23:49:26 ID:9chxrQSQO
从 -∀从 (日本軍に俺がいることは極秘つってもよ)
他国へ存在が秘匿されているハインは、堂々と日本へ凱旋というわけにはいかない。
まずは旅行者を装って韓国へ飛び、そこを経由して日本へ帰ってこなければならない。
从 ゚∀从「もっといい旅客機はなかったのかよ」
「そうか、ハインはJAL以外は初めてだったな」
隣りに座っている中肉中背の男性がハインに馴々しく声をかけた。
一見では、誰もが親子連れの旅行者として疑わないだろう。
しかし、特別観察力に長けた者が見れば分かる。
男は完全にハインを恐怖の対象として見ていた。
从 ゚∀从「別に気を使わなくていい。長いフライトになるんだからな」
「そ、そうか?」
从 -∀从「少しぼーっとしてるから、何かあったら声かけな」
緊張というのは伝播するもので、相手に気構えられるとハインとしても窮屈になる。
だから眠るように、シートへ深く背を預けまぶたを閉じた。
从 -∀从 (日本、か)
目を瞑っていると、何とはなしに浮かんでくるのは、日本にいる旧友の顔だった。
从 -∀从 (オオカミ、お前は俺を……)
第一話 完
23
:
名も無きAAのようです
:2012/04/16(月) 23:57:39 ID:9chxrQSQO
以上で投下終了です
お付き合いくださりありがとうございました
次回から戦車やら砂漠やらは無くなり女の子が増えていきます
特に三話ぐらいからは18禁シーンも出て来ると思いますので
俺は戦車やオッサンはどうでもいいからイチャラブレ○セッ○スが見たいんじゃボケが!
という方は恐縮ですがもう少々御待ち頂ければと
24
:
名も無きAAのようです
:2012/04/17(火) 04:08:57 ID:67dXDEZMO
タイトルで期待してなかったけど
読んでみたら面白いじゃねえか
百合要素だけじゃないのね
25
:
名も無きAAのようです
:2012/04/17(火) 08:13:35 ID:NPEWLOls0
俺は戦車やおっさんはどうでもいいからハインとツンのエロエロが見たいんじゃ!
26
:
名も無きAAのようです
:2012/04/17(火) 11:25:27 ID:i9hjoWCQ0
面白い。支援
27
:
名も無きAAのようです
:2012/04/18(水) 17:18:25 ID:82KaFbDUO
男は可愛く美しく、の人かな?
28
:
名も無きAAのようです
:2012/04/18(水) 19:27:33 ID:t97BpihsO
>>27
はい
こちらの作品は男は可愛く美しくよりも少々重たい話になっておりますが
お付き合い頂ければ嬉しく思います
29
:
名も無きAAのようです
:2012/04/26(木) 21:38:41 ID:KIHi1AcEO
今から第二話を投下させて頂きます
二話もディープキスが1シーンある程度なので百合色はまだ薄めですが
ようやく少しは女の子が増えて来たかと思います
30
:
名も無きAAのようです
:2012/04/26(木) 21:40:53 ID:KIHi1AcEO
復讐なんてものは毒と同じだ。
いつかは俺の全身を蝕み、死へと追いやるのだろう。
从 ゚∀从「もし、俺の生と引き換えに事を成せるならば、この命を捧げてもいい」
それは嘘偽りのない本音だ。
だけど、その為になりふりを構わないというのは駄目なんだ。
それを知ったのは、かつて友と呼んだ少女の未来を奪ったときだった。
从 -∀从「オオカミ……」
復讐なんて怨嗟に取り憑かれた時点で、俺は狂っているのだろう。
ならばせめて、正しく狂おうと決めた。
自分の心の中に設けた一線、その線より向こうへは行かない。
从 -∀从「でも、そんなのはただの強がりに過ぎないのかもしれないな」
本当に進退が窮まったとき、俺は赤鬼にならずにいられるのだろうか。
この赤く染まった手は何かを掴むことができるのだろうか。
.
31
:
名も無きAAのようです
:2012/04/26(木) 21:41:40 ID:KIHi1AcEO
从 ゚∀从百合は咲耶、乙女は散り急ぐ徒花のようです
.
32
:
名も無きAAのようです
:2012/04/26(木) 21:43:51 ID:KIHi1AcEO
第二次世界大戦。
世界全土を巻き込んだこの争いを知らぬ者など、そうはいないだろう。
その大戦中に一つの強力な兵器が用いられた。
名前を原子爆弾という、つまるところの核兵器だ。
現在では大量虐殺兵器として国際問題にも多々上がるそれは、世界で唯一日本という極東の小さな島国にのみ投下された。
たった一度の爆撃で国内屈指の都市、広島は壊滅した。
その際の死者は十万人を越えたといわれる。
このように凶悪な原子爆弾は、熱や爆発による衝撃以外にも、一つの攻撃性を持っていた。
それが放射能だ。
原子核から放たれる強力な放射線を身体に受けると、人間は細胞のDNAなど重要な生体分子を傷つけられる。
それによって爆撃で直接死に至らなくても、多くの被爆者が苦しむこととなった。
しかし、その生体分子を傷つけられた人間の中で、異様なDNA変化を見せる者達がいた。
それはある種では進化とも呼べる異変。
皆女性である彼女らは、被曝以前より健康であるどころか、人間では有り得ない能力まで得ていた。
まず共通して見られたのが常軌を逸した身体能力。
そこからは個々によって違うが、どれも物理法則を度外視したものが多い。
手から炎を放つ、空を飛ぶ等々、正に超能力と呼んで差し支えない力を彼女達は有していた。
33
:
名も無きAAのようです
:2012/04/26(木) 21:46:09 ID:KIHi1AcEO
それから間もなく、日本政府は乙女と名付けた彼女達の、戦術利用を決定する。
大和乙女作戦と呼ばれるそれは、大成功を収めた。
再度投下される予定だった、原子爆弾を積んだ爆撃機を海上で撃墜。
幾つものアメリカ軍の空母や戦闘機が、人間の手によって太平洋の藻屑と消えた。
攻め込む度に甚大な被害を受けるアメリカ。
国力が尽き自国の防衛に手一杯な日本。
身動きの取れない両国の争いは、休戦という形で終結する。
その際休戦条件として提示されたのは、
・互いに今後両国間の戦争で核兵器を使用しないこと
・アメリカは日本に経済支援を行なうこと
・以降乙女を兵員として採用しないこと
事実上、大和乙女作戦に音を上げたアメリカからの和平交渉だった。
.
34
:
名も無きAAのようです
:2012/04/26(木) 21:47:42 ID:KIHi1AcEO
東京都の一等地に存在するオフィス街。
その中でも一際目に入る高層ビルの最上階の一室で、ジョルジュホールディングス社長ジョルジュは、日本軍からの報告書に目を通していた。
_
( ゚∀゚)「はあ……、果たして喜ぶべきか、悲しむべきか」
報告書とはいっても媒体は紙ではなく、電子メールだ。
複雑に暗号化された文章を読み解き内容を理解すると、彼は思わず溜め息を漏らしてしまった。
_
( ゚∀゚)「これだけの戦果を一人でね」
内容はハインが中東の作戦で、どれだけ革命軍という名のテロリストに被害を与えたかというもの。
まずは彼女の生還を喜びたいところだったが、さすがにこの数字を見せられては複雑な心境になってしまう。
_
( ゚∀゚)「やはり父親としてはなあ」
一通り確認した後、ジョルジュがPCの画面右下に存在する時計に目を移すと、時刻は午後一時を回ろうとしていた。
_
( ゚∀゚)「……そろそろか?」
ジョルジュが美しい木目をした重厚なウッドデスクの陰に隠れると同時に、入口のドアが唸りを上げて飛び掛かってくる。
木製のドアはデスクに打ち当たると、部屋を揺るがす衝撃と、けたたましい破裂音を残して砕け散った。
ジョルジュの頬を嫌な汗が伝う。
後少しでも行動が遅れていたら、砕け散っていたのはドアでは済まなかっただろう。
35
:
名も無きAAのようです
:2012/04/26(木) 21:49:18 ID:KIHi1AcEO
从 ゚∀从「よお親父、久し振り」
_
( ゚∀゚)「蹴破る以外の選択肢はないのか、お前には!」
从 ゚∀从「別にいいじゃねえか。減るもんじゃなし」
_
( ゚∀゚)「扉は減るだろ、なくなるんだよ。お前の胸と同じぐらいなくなる」
从#゚∀从「ああん? いつから自殺志願者になったんだテメェは」
_
(;゚∀゚)「落ち着け、その方法は自殺じゃなくて他殺っていうんだ」
从 ゚∀从「安心しろ、ニュースでは自殺と報道されるからよ」
_
(;゚∀゚)「嫌な権力の使い方を身に着けるな!」
親子仲は良好とは言い難いが、それでも軽口が叩ける程度には悪くないとジョルジュは思っている。
だからこそ、血の繋がった愛娘を止められない自分の無力さが歯痒い。
_
( ゚∀゚)「ハイン、お前さ。今回の一件だけで、自分がどれだけの人間を殺したのか分かっているのか?」
从 ゚∀从「人聞きの悪いことをいうな、俺は人を殺してなんかいねえ。ゴミ掃除をしただけだ」
幼い頃の事件を境に、ハインの価値観は固まってしまった。
それに依ると、テロリストには人間としての最低限の尊厳すら存在しない。
从 ゚∀从「ボランティアみたいなもんだな。ああ、軍から金は貰ってるから清掃の仕事が正しいか」
この台詞が冗談ではなく心からのものなのだから、ジョルジュは頭を抱えたくなる。
36
:
名も無きAAのようです
:2012/04/26(木) 21:50:28 ID:KIHi1AcEO
_
( ゚∀゚)「お前の気持ちは分かる、俺だって憎いのは同じだ。だが、あいつは復讐を望むような人では」
从 ゚∀从「黙れ」
_
( ゚∀゚)「黙らない! 俺はお前の父親だ! 娘が間違っているのなら――」
从 ゚∀从「黙れっ!! 無駄なんだよ。母さんを守れなかったお前の言葉は、決して俺には届かない」
_
( ゚∀゚)「……ハイン」
从 ゚∀从「お前の正論ぶった耳当たりのいい台詞では、俺の心には響かないんだよ」
_
( ゚∀゚)「それでも、俺は」
从 ゚∀从「この話は終わりだ。平行線はどこまでいっても交わりはしねえ」
何度目になるのか当人達にも分からない口論を、いつも通りハインが打ち切って終わらせる。
妻と娘を守れなかった罪悪感も働いて、そこまで深い拒絶の色を見せられると、ジョルジュとしても口をつぐむしかなかった。
37
:
名も無きAAのようです
:2012/04/26(木) 21:51:46 ID:KIHi1AcEO
从 ゚∀从「親父も暇じゃないんだろ、それよりも建設的な話をしようぜ」
_
( ゚∀゚)「そう、だな。色々とお前に伝えなければいけないこともあるしな」
从 ゚∀从「まずは俺からの報告を一点。中東の革命軍とやらに母さんを殺した組織が関与してるってのは、恐らくデマだ」
_
( ゚∀゚)「なぜそう思った?」
从 ゚∀从「基地を幾つか潰して家捜しをした。協力してる組織に日本のものはなさそうだったよ」
十年前ハインの母を殺した組織は、幼いながらも超能力者である乙女を用意していた。
だから日本の組織だろうとハインは目星をつけている。
38
:
名も無きAAのようです
:2012/04/26(木) 21:52:46 ID:KIHi1AcEO
从 ゚∀从「そもそも仮に尊王攘夷派のやつらの仕業だとしたら、海外と手を組むはずがないしな」
尊王攘夷派は、今のところ最も可能性が高い相手だ。
彼等はまず第一に、神の血族である天皇以外の者が、超常の力を使えるのが気に食わないらしい。
从 ゚∀从「この現代で天皇が神の一族なんて、本気で信じてる国民がどれだけいることやら」
_
( ゚∀゚)「奴等は、異国人である俺と結婚した彼女が許せなかった、か」
从 ゚∀从「気にかかるのは嫌っているはずの乙女を使ったことだが、毒を持って毒を征すみたいなやつらだからなあ」
これはあくまで仮定の話なので、犯人が分からない以上ハインは、どんなに小さな可能性にも全力で飛び付いて来た。
39
:
名も無きAAのようです
:2012/04/26(木) 21:54:08 ID:KIHi1AcEO
_
( ゚∀゚)「俺からお前に伝えることはあれだ、お前を呼び戻した理由でもあるのだが」
从 ゚∀从「乙女学府に入れってこったろ?」
_
( ゚∀゚)「お見通しって訳か」
从 ゚∀从「お上からの圧力だろ。それで建前はなんて?」
_
( ゚∀゚)「海外で非人道的な手段を用いて、乙女を作り出す実験がされているのは知っているな」
从 ゚∀从「暗黙の了解ってやつだな。日本人女性以外で乙女になれた例は今んとこねえってのに、なんにせよ胸っ糞の悪い話だ」
_
( ゚∀゚)「そして乙女が産んだ女児は、乙女になることも知っているな」
从 ゚∀从「当然だ、俺は母さんから力を貰ったんだからよ。この髪も母さんのもののままだったら……」
ハインの曾祖母にあたる人物が被曝した際、DNA変化により現れた現象の一つが、黒髪から赤髪への転換だった。
それ以来彼女の力を受け継ぐ者は、女児を出産して力を受け渡すまで、紅蓮の髪を宿すこととなる。
40
:
名も無きAAのようです
:2012/04/26(木) 21:55:31 ID:KIHi1AcEO
_
( ゚∀゚)「だがお前は純粋な日本人じゃない。ハーフだ」
从 ゚∀从「つまり海外は日本人女性じゃない乙女、俺のDNA情報を喉から手が出る程欲しがってる訳だな」
_
( ゚∀゚)「お前を海外から守る、っていうのがその建前になる」
从 ゚∀从「本音は?」
_
( ゚∀゚)「……怖いんだろうさ。俺とお前が日本を裏切るのが」
从 ゚∀从「なるほど(ザ・ワールド)。親父の母国なら、俺も親父も簡単に国籍を取得できるもんな」
_
( ゚∀゚)「今なるほどザワールドとかいわなかったか?」
从 ゚∀从「なにいってんだよ。俺は十五だぜ? 俺が産まれた年に丁度終わった番組を、知っているはずないだろう」
_
( ゚∀゚)「それもそうだな。……あれ、なんでそんな詳しく」
从*゚∀从「トランプマンの衣装がキンキラキンで格好いいことなんて全然知らねえよ、チクショーかっけえなっ!」
_
(;゚∀゚)「そしてまさかのトランプマンファン!?」
ハインが真面目な話を長時間続けられないのは母親譲りだなと、ジョルジュは少し微笑ましくなる。
41
:
名も無きAAのようです
:2012/04/26(木) 21:56:54 ID:KIHi1AcEO
从 ゚∀从「冗談は置くとして、さてどうしたもんかね」
_
( ゚∀゚)「圧力といってもお前が気にする必要はないぞ。娘一人を匿うぐらいの力は、俺だって持っているんだからな!」
从 ゚∀从「やっぱ俺いくわ。乙女学府に」
_
( ゚∀゚)「わーお、あっさり」
从 ゚∀从「冗談でいってんじゃねえぜ。学府でトップクラスの生徒となれば、色々便宜を計ってもらえるらしいからよ」
_
( ゚∀゚)「…………」
結局は、母の仇討ちを果たすのに有効かどうか、それしかハインの眼中には存在しない。
まるで十年前のあの日から時が止まってしまったように、彼女の生き方は少しもぶれない。
42
:
名も無きAAのようです
:2012/04/26(木) 21:58:34 ID:KIHi1AcEO
_
( ゚∀゚)「ハイン、俺は昔お前の母に尋ねたことがあったんだよ。なんでそんな力があるんだろうなって」
从 ゚∀从「なんだよいきなり」
_
( ゚∀゚)「それで彼女はなんて答えたと思う? 在り来たりだけど大切な人を守るため、だとさ」
紅の髪に、自分の血と返り血で全身を朱に染め上げて、弱々しく笑いながら語る女性。
その言葉の返答を貰ったときジョルジュは、彼女が守る誰かの分、自分が彼女を守ってあげたいと思った。
_
( ゚∀゚)「お前の振り上げた拳は簡単に人を殺せる。だが、人を救うことができるのも忘れるな」
从 -∀从「……説法か?」
_
( ゚∀゚)「敵を倒して結果的に誰かを助けたのと、誰かを助けるために敵を倒すのは別物ってことだよ」
从 ゚∀从「分かった、一応心には留めておいてやるよ」
ハインには言葉遊びのようにしか聞こえなかったが、ジョルジュの言葉に母の姿が重なって見えた気がした。
.
43
:
名も無きAAのようです
:2012/04/26(木) 22:00:26 ID:KIHi1AcEO
かつて広島市と呼ばれた地に存在する乙女学府は、日本という国において最も特殊な場所といっても過言ではないだろう。
表向きは乙女が犯罪等を犯さないように教育する養成所として知られ、ここを卒業した者は一般社会でも強い信用を得られる。
だが実際のところは国が厳しく監視し、能力強化を重点として乙女達を競い合わせている戦場。
――通称、地獄の花園と呼ばれる。
从 ゚∀从「ここが乙女学府か」
三等分されたエンブレムが輝く黒塗りの車に護送されて、ハインは自分の背丈の二倍以上もある、アーチ状の校門前へと届けられた。
从 ゚∀从 (それにしてもあの車は乗り心地よかったな。今後はあの車種オンリーにしよう)
などと、セレブリティ爆発なことを考えていると、門が自動で開いた。
从 ゚∀从「こんなだだっ広いのに、案内とかないのか? 不親切なことこの上ないな」
過去の広島市と比べれば数分の一程度の面積しかないとはいえ、小さな村ぐらいには広い。
この中で学府の中枢である、乙女学院を探すのはなかなかくたびれるに違いないだろう。
从 ゚∀从「ぶつくさいっても始まらねえか」
自分の足で適当に探すかと、ハインはのんびり歩を進めることにした。
44
:
名も無きAAのようです
:2012/04/26(木) 22:05:19 ID:KIHi1AcEO
从 ゚∀从「もっと殺風景な場所だと思っていたんだが」
近代化したビル群は学府の入口付近にしか存在せず、石畳の遊歩道をしばらく進むと多くの緑が目に入った。
道端では花が鮮やかに色付き、街路樹は微風に揺れ爽やかな葉擦れの旋律を奏でる。
ふと立ち寄った公園では噴水が虹を描いていた。
――あまりにも平和だ。
ハインは気を張り巡らせている自分が、どうにも浮いた存在であるかのように感じてしまう。
从 ゚∀从「馴染めねえ。俺がこんなん着てるだけでも違和感バリバリだってのによ」
現在ハインが身に着けているのは、特殊な繊維で編み込まれた戦闘用の強化服だ。
という具合に条件だけに焦点を当てれば物々しいが、外見はブレザータイプの可愛らしい学生服になっている。
ここが普通の学校であれば、制服目当てで入学する女生徒も現れそうな程、装飾を凝らした逸品である。
45
:
名も無きAAのようです
:2012/04/26(木) 22:07:25 ID:KIHi1AcEO
ハインはスカートの裾に手を伸ばし、やおらに摘んでみた。
すると膝の辺りを不意にくすぐられたような感触を受ける。
从*>∀从「ひうっ!? なんだってスカートってやつは、こんなにもはき心地が悪いんだ」
制服の表面は高級な布地で作られており、肌触りがとてもよい。
子供の頃以来スカートなどはくことのなかったハインにとっては、むしろそれがくすぐったくて仕方ない。
从 ゚∀从「だいたいペチコートってなんだよ。どこのお嬢様だよ俺ぁ」
大手会社の社長令嬢ともなれば本当にお嬢様なのだが、当の本人には一切そういう自覚がなかった。
長らく戦場を転々としていた影響なのか、それとも元来の気性なのか、むしろ粗野なぐらいが楽でいいとハイン自身は感じている。
从 ゚∀从「つうか、ここが本当に地獄の花園か? イメージとなんか違うんだけど」
想像力豊かな十五歳の少女の妄想では、
公園の噴水に浮かぶ白蓮は血を吸って紅に染まり、そこらには闘いに敗れた乙女が死屍累々と転がっている。
つまりは地獄絵図を思い描いていた。
それはただの妄想というだけではなく、鮮明な現実として、近い光景を戦地で目撃したこともある。
戦死した兵士の身ぐるみを剥ぐ子供を。
地雷を踏んで絶命した幼子の墓穴を掘る老人を。
そして、こんな人っ子一人いないゴーストタウンを。
46
:
名も無きAAのようです
:2012/04/26(木) 22:08:39 ID:KIHi1AcEO
从 ゚∀从「いや待て! なんで俺は誰にも出会ってないんだ?」
学府内には乙女以外にも生活している人はいる。
その多くは学府の関係者だったりするのだが、少なくとも衣食住に関係する建物ぐらいは存在した。
从 ゚∀从「まばらにだが飲食店や住宅は確かにある。なら、なんだ――っ!?」
その疑問に対する答えとでもいわんばかりに、近くで地響きと共に土煙が上がった。
ハインは深く考える間もなく、本能に従って騒ぎの元へと駆け出す。
从 ゚∀从「ったく、なんだってんだよ!」
.
47
:
名も無きAAのようです
:2012/04/26(木) 22:09:46 ID:KIHi1AcEO
ζ(゚ー゚;ζ「うくぅっ!? はあ、はあ……」
*(‘‘)*「弱いくせに調子に乗ってるからそうなるのよ」
⌒*リ´・-・リ「ヘリカル、ちょっとやり過ぎじゃないかな?」
*(‘‘)*「やり過ぎなんてことあるもんですか! こいつは私達のお姉様に色目を使って」
ζ(゚ー゚;ζ「色目なんて、向こうが勝手に――」
*(‘‘)*「色目を使っていないなら、お姉様があんたなんか相手にするものですか!」
ヘリカルと呼ばれた少女は、右手に持った片手剣を掲げる。
装飾過多で実用性より宝剣としての趣が強い剣だが、刀身に纏う威圧感は本物だ。
殺気を向けられた少女、デレは身をよじって逃げようとするが、それすらかなわない。
48
:
名も無きAAのようです
:2012/04/26(木) 22:11:29 ID:KIHi1AcEO
*(‘‘)*「リリ、ちゃんと止めてるんでしょうね」
⌒*リ´・-・リ「まあ、一応やってるよ。本当はこういうの僕の趣味じゃないんだけど」
*(‘‘)*「趣味も何もないわ。こんな弱っちい子にお姉様を盗られてもいいの?」
⌒*リ´・-・リ「盗られるって。僕はそっちの気ないし、ただ従姉妹が増えるだけだよ」
*(‘‘)*「あーもー! 友達甲斐がないわねえ」
⌒*リ´・-・リ「友達だから、私怨に付き合ってやってるんじゃないか」
*(////)*「バカっ! 真顔でそういうこと言わないで頂戴」
ζ(゚ー゚*ζ「では、私はそろそろこの辺で――」
*(‘‘)*「おっと、逃がさないわよ。そうね、貴女には身体に消えない傷を残した後、裸にひん剥いて道端にでも吊してあげるわ」
*(‘‘)*「二度と変な気を起こさないように、ねえっ!」
天高く伸びた宝剣が、無慈悲に振り下ろされる。
身動き一つとれないデレは、目を強く閉じるので精一杯だった。
49
:
名も無きAAのようです
:2012/04/26(木) 22:12:51 ID:KIHi1AcEO
ζ(゚ー゚*ζ「……あ、れ?」
いつまでも襲ってこない衝撃に、デレが恐る恐るまぶたを上げると、目に入ったのは燃えるような紅蓮。
从 ゚∀从「ここの流儀は知らねえけどよ、多対一っていうのはどうも好きじゃねえ」
一人の見知らぬ少女がデレを庇うように立ち塞がり、ブレザーのポケットに両手を突っ込んだまま足先で剣を受け止めていた。
*(‘‘)*「な、なによ、あんた」
从 ゚∀从「ごめんあそばせっと!」
紅蓮の少女ハインは、靴で押しとどめていた宝剣を、ただ力任せに蹴り返す。
*(;‘‘)*「きゃっ!?」
あまりの反発力にヘリカルは尻餅をついてしまい、勢いよく跳ね返った剣は後方の大地へと突き刺さる。
何が起こったのか理解したときには、すでにヘリカルは大股開きの屈辱的な格好をさせられていた。
50
:
名も無きAAのようです
:2012/04/26(木) 22:14:38 ID:KIHi1AcEO
*(;‘‘)*「くっ! リリ、デレはいいからそこの赤いのを止めて!」
⌒*リ´・-・リ「分かってるよ!」
止めるとはどういう意味だと、ハインはリリを注意深く観察する。
相手も超能力者である乙女だ、どんな物理法則を超越した力を持っているか分からない。
すると、リリの足下に存在する影が面積を縦に伸して、大地を浸食し始める。
影という二次元の世界でそれは生を吹き込まれたように動き、ハインの影に纏わりつき羽交締めにした。
从 ゚∀从「おお? なんだこりゃ」
締められているのはあくまでも影だ。
であるにも関わらず、なぜかハインは思うように身体を動かすことができない。
*(‘‘)*「ふふ、かかったわね。どこの誰か知らないけど、私達に喧嘩を売ろうなんていい度胸じゃない」
ヘリカルは嗜虐的な笑みを見せ、罠にかかった獲物を品定めするようにハインに歩み寄る。
いつの間にか地面に突き刺さっていた宝剣は消え失せ、彼女の手には先程とは別の宝剣が握られていた。
51
:
名も無きAAのようです
:2012/04/26(木) 22:15:30 ID:KIHi1AcEO
*(‘‘)*「リリの裏世界の住人と私の宝剣職人、この二つで私達は無敵なの」
从 ゚∀从「あのよ、ベラベラと馬鹿みたいにおしゃべりすんのは勝手だが、そんな無防備に近付いていいのか?」
*(*‘‘)*「無防備? ふふ、あははははは! 無防備なのは貴女の方でしょうが!」
从 ゚∀从「いいならいいけどよ、そこはもう俺のレンジ内だぜ!」
*(;‘‘)*「――うげぇっ!?」
今もなお影で縛られ続けているはずのハインの拳が、ヘリカルの鳩尾に深くめり込んだ。
52
:
名も無きAAのようです
:2012/04/26(木) 22:16:54 ID:KIHi1AcEO
*(;‘‘)*「お、おええええぇぇぇ!!」
⌒*リ;´・-・リ「ヘリカル!? なんで、僕はちゃんと止めているはずなのに!」
从 ゚∀从「知らねえよ。確かにちょっと動き辛いけど、この程度なんでもねえ」
⌒*リ´・-・リ「名も知られていない乙女が、僕の神威を上回るなんて」
从 ゚∀从「見知らぬのは当然だろ。なんつっても俺は今日学府に入学したんだからな」
ハインは紅に輝く、絹のように柔らかい頭髪を翻し、一歩一歩リリとの距離を詰める。
⌒*リ;´・-・リ「くうっ!」
从 ゚∀从「別に鬼じゃあるまいし、取って喰いやしねえよ。……そこの馬鹿を連れて尻尾巻いて逃げるならな」
⌒*リ´・-・リ「選択肢はなし、か。ここは退かせてもらうよ」
怨恨の籠った瞳でヘリカルはこちらをねめつけるが、退き際はわきまえているのか、リリに肩を借りて一も二もなく去っていった。
53
:
名も無きAAのようです
:2012/04/26(木) 22:18:23 ID:KIHi1AcEO
从 ゚∀从「さてと、乙女学院はどっちかねえ」
ζ(゚ー゚*ζ「あ、あの!」
从 ゚∀从「ああ? あー、そういえばなんかお前やられてたんだっけ」
ζ(゚ー゚*ζ「あの、ありがとうございました」
从 ゚∀从「気にすんな。俺は多対一という条件が気に入らなかっただけで、お前を助ける気なんて微塵もなかったんだからよ」
ζ(゚ー゚*ζ「例えそうだとしても、それでも、私は運命を感じたんです!」
デレは瞳を潤ませ頬を紅潮させながら、ハインの側へと寄ってくる。
从 ゚∀从「運命?」
ζ(^ー^*ζ「はい。ついに見つけました……私のお姉様っ!!」
从*-∀从「むぐぅ!?」
眼前一杯にデレの顔が広がったかと思った次の瞬間、ハインの唇に柔らかくて弾力のある、みずみずしい何かが押しつけられていた。
54
:
名も無きAAのようです
:2012/04/26(木) 22:19:34 ID:KIHi1AcEO
从////从「むーむー!!」
ζ(////*ζ「おねぇ、ふぁま……」
正体不明のぬめった生暖かい何かはハインの唇をこじ開け、強引に口内へ侵入してくる。
歯茎をなぞりあげ、軟口蓋をつつき、水音を立てながら舌に絡み付いた。
粘膜と粘膜が擦れ合い、腰の抜けるような快感を生み出しながら、互いの口内を熱い液体が行き来する。
ファーストキスはレモン味などという例え話も世にはあるが、デレは口を切っていたのか、
ハインの初めては鉄の味がした。
.
55
:
名も無きAAのようです
:2012/04/26(木) 22:21:00 ID:KIHi1AcEO
从 -∀从「はあ、入学初日からなんか疲れたな」
ハインは制服を適当に着崩し、ベッドへ仰向けに倒れ込む。
あてがわれたのは六畳一間の何の変哲もない部屋だ。
学府にはいくつかの寮が存在するのだが、特に高い成績を収めておらず、どの勢力にも属していない者はここへ案内されるらしい。
从 ゚∀从「安っぽい部屋だって聞いたけど、なかなかいいベッドじゃん」
从 -∀从「ふあぁ、なんか眠くなってきた……」
長時間のフライトにジョルジュとの会談、更にまた広島空港まで飛行機で飛んで、学府への車移動。
そしてヘリカル達とやり合って、なぜかファーストキスまで奪われて、検査されて、学府の基本的な説明を受けて。
戦場で十分な睡眠を取らず闘うことがざらにあったハインでも、さすがに今日ばかりは疲弊していた。
从 -∀从「もうこのまま寝てもいいよな? おやすみ……」
まぶたが自然と重くなり、意識が暗闇へと落ちていく。
56
:
名も無きAAのようです
:2012/04/26(木) 22:22:20 ID:KIHi1AcEO
正に眠りにつこうとしているその瞬間、無遠慮にもドアをノックする音が響いた。
从 ゚∀从「――開いてるから入ってきて構わんぞ」
ハインは警戒心を強め、急ぎ頭を覚醒させる。
部屋の外へ向けて声をかけると、扉の向こうから現れたのは、
o川*゚ー゚)o「こんちまたまた。いやあ、こちらが新入生さんのお部屋っすかねえ?」
見知らぬ人物だった。
从 ゚∀从「誰だ、お前」
o川*゚ー゚)o「そんな怖い顔なさらずに。自分はここの寮生の代表をやらせてもらってるキュートっていいます、以後よろしくっす!」
从 ゚∀从「無所属、低成績の代表か」
o川*゚ー゚)o「あう、耳が痛いお言葉で。でもうちみたいな低成績寮は数多くあるんすけどねー」
o川*゚ー゚)o「中には高成績でも、長年住んでる寮が気に入ってるからって出ていかない人もいるんすよ?」
从 ゚∀从「それがお前だと」
o川*^ー^)o「にゅふふ、それはどうっすかね。まあ上を目指す気概があるなら、そのうち自分とも闘ることになると思いますけど」
その笑みは暗に答えを物語っていた。
57
:
名も無きAAのようです
:2012/04/26(木) 22:24:55 ID:KIHi1AcEO
从 ゚∀从「そんで、用は挨拶に来ただけか」
o川*゚ー゚)o「そうっすけど、……帰る前に一つご忠告を」
キュートの人懐っこい柔和な顔が引き締まる、まるでここからが本題といわんばかりに。
o川*゚ー゚)o「――制服のまま寝ると皺になって大変っすよ」
从;゚∀从「そんなことかよ!」
o川*゚ー゚)o「いやいや、マジで大変なんすよ? 自分も昔それでくしゃくしゃにしてしまいましてね」
从 ゚∀从「わかったよ、ちゃんと着替えて寝ることにする」
o川*^ー^)o「そいつは何よりで。では今宵はここらでおさらばっす、新入生さん」
来客が去り、静寂が戻った部屋でハインは一人ため息を漏らした。
从 -∀从「寝る気分じゃなくなっちまったな……」
从 ゚∀从「とりあえず日課の筋トレでもするかね」
第二話 完
58
:
名も無きAAのようです
:2012/04/26(木) 22:27:08 ID:AyTtEUWM0
乙です
59
:
名も無きAAのようです
:2012/04/26(木) 22:29:47 ID:KIHi1AcEO
投下終了です
お付き合いくださりありがとうございました
あれ、気が付いたら半分おっさんという第二話でした
次回からはデレが色々やってくれるので百合度も急上昇で本格的にR18指定となります
女性だらけの乙女学府に着けたので
もうそうそうおっさんだらけでタイトル詐欺ということもなくなるかと
60
:
名も無きAAのようです
:2013/06/03(月) 23:58:01 ID:y35JcHCoO
一年以上間が空いてしまったことは、どう謝罪してよいやら言葉が見つかりませぬ
忙しいという文句を拠り所にして逃げていただけでございます
今はただ片隅で細々と続けさせて頂けたら幸いです
61
:
名も無きAAのようです
:2013/06/03(月) 23:59:07 ID:y35JcHCoO
この世界は大きな劇場だ。
ある者は華やかに着飾り。
ある者は鮮やかに踊り。
ある者は高らかに歌う。
でもそれは、自分の意志でやっているわけではない。
ここ、舞台の上では皆が演技を強要され、何かに踊らされている。
ζ(゚ー゚*ζ「だから私は、今日も私という名の仮面を被る」
演技で作られた、本当の顔を覆い隠す仮面。
その下の素顔はどれだけ醜いのだろうか、もう自分でも忘れてしまった。
鏡を見てもそこに映るのは、私という名の仮面を着けた少女だけ。
ζ(゚ー゚*ζ「手を伸ばして触れても、冷たい硝子の感触しか返らない」
鏡の奥の少女も懸命に手を差し延べてくれるが、
互いの指が握り合わさることは決してなかった。
.
62
:
名も無きAAのようです
:2013/06/03(月) 23:59:26 ID:y35JcHCoO
从 ゚∀从百合は咲耶、乙女は散り急ぐ徒花のようです
.
63
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 00:00:04 ID:xaNXjZl.O
朝鳴き鳥の声が耳に楽しい、早朝のハインの部屋。
まだ起きるには時間の余裕があり、部屋の主も案の定寝静まっている。
从 -∀从(なん、だ……?)
霞がかかった意識の中で、ふとハインは不思議な感触を受けた。
不思議なといっても嫌なものではない。
むしろどちらかといえば柔らかくて暖かくて気持ちのいい、いつまで触っていたいものだ。
从 -∀从「ぅん……」
一瞬だけ隙間風が入ったように、冷気が胸元を襲ったが、すぐに先刻訪れた柔らかい何かの温もりで満たされる。
その何かにもっと触れていたくて、ハインは寝ぼけながらそれを抱き寄せた。
从*-∀从「ふぁ……あんっ……」
密着してまず初めに感じたのは、柔らかくて弾力のある物体の中にある、コリッとした硬い芯。
その芯がハインの胸元の、外気に晒された素肌を優しく撫でまわす。
从 -∀从(ああ、さっきなんか寒かったのは、服がはだけて……)
それに感づくと同時に、先程より更に硬化した芯が、ハインの桜色に咲き誇る胸の尖端に触れた。
瞬間、感電したような甘い震えが全身をよぎる。
从*-∀从「ひぁん、やぁ……」
触れるだけならまだしも、その芯は円を描くようにして、くりくりと執拗にハインの乳突起をこね始めた。
浮き立つ快感が絶え間なく襲い、しどけなく惚けた頭を白に染める。
64
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 00:00:36 ID:xaNXjZl.O
从*-∀从「やん、だめぇ……気持ちぃ……」
媚熱に上擦った本能が更なる甘美を求め、上手く擦れ合うようハインは無意識に自分から動き出していた。
敏感な芯と芯が互いを潰し合い、更に強い歓喜を生み出す。
「あふ、あぁん……はひっ……」
向こうも同じ悦楽を味わっているのか、ハインの耳の間近で空気の抜けるような、艶を含んだ音色が響いた。
その間もハインの胸の大事なところは幾度となく刺激され、相手の芯にも負けぬ程つんっと上向きに硬く充血していた。
从////从「ひぅん、やぁ、これぇ……」
まだ成熟していない少女の身体とはいえ、女としての官能に火をつけられたハインは、
もはや胸だけにとどまらず全身から脳に至るまで、淫靡に高ぶっていた。
从////从「いやぁ、やらぁ……ぁんっっっ!!」
ζ(/////ζ「おねぇ……さまぁ……わたひも……あふぅっ……!!」
ハインの上には上半身を全てさらけ出した、半裸の少女が跨がっていた。
.
65
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 00:01:09 ID:xaNXjZl.O
あれから十数分間、初めて味わう快感に意識が混濁していたハインは、ベッドに侵入して来たデレと半裸で抱き合いながらまどろんでいた。
首筋に鼻を擦り寄せたり、頬に口付けを繰り返したりと、
それは背後に白百合の花弁が透けて見えても違和感のない光景だっただろう。
そして我に返ると共に怒りのボルテージが頂点へと達し、デレをベッドから叩き出した後、床に正座させて今に至る。
从 ∀从「最後に言い残すことはあるか? 命乞い以外なら聞いてやる」
ζ(^ー^*ζ「あんまり褒めないでくださいよぉ。私は妹として当然の朝の御奉仕をしただけですから」
从#゚∀从「誰が褒めてるかっ!! そもそもお前は妹じゃねえし、ツッコミどころが多すぎて大変だわ!」
ζ(////*ζ「わ、私はお姉様が望まれるのでしたら、前でも後ろでもお口でも構いませんので、その優しく突っ込んでくださいね」
从 ゚∀从「……あー、反吐が出る程めんどくせえー」
ζ(////*ζ「ああ! デレは嘘を吐きました、本当は優しくされなくても大丈夫です。むしろ痛いぐらいにして頂けた方が私としても嬉しく」
ζ(////*ζ「私の大切な場所に、お姉様の所有物(妹)である刻印を、鮮血と共に刻んで頂けたら――」
ζ(゚ー゚*ζ「って、あれ? お姉様?」
一人盛り上がっていたデレは、人の気配がなくなったことを察し部屋をぐるりと見渡す。
すると、既にハインの姿はどこにもありはしなかった。
ζ(>ー<*ζ「もぅ、放置プレイだなんて、お姉様ったら♪」
それでもなぜか恍惚とした表情を浮かべる、嬉しそうなデレであった。
.
66
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 00:02:00 ID:xaNXjZl.O
从 ゚∀从「妹かあ、……妹ねえ?」
未だ着せられている感が拭いきれない制服に身を包み、寮から手近にある喫茶店へ入ったハインは、
アイスコーヒーのミルクをストローでかき混ぜながら思案する。
もちろん考えているのは今朝の出来事、そしてそれに付随する妹について。
从 ゚∀从「姉妹だなんて、誰がこんなもん考えたんだよ」
乙女における姉妹とは普通の血縁関係を表す熟語ではなく、もっとむせ返るような花の蜜の香りが溢れる言葉である。
彼女達にとってお姉様という響きには羨望や憧憬、そして少しの背徳さ。
そういったものが昔から込められてきた。
从 ゚∀从「大正浪漫的なとでもいうのかね。女同士で大っぴらに恋人とかいえないから、代替みたいなもんか?」
そして乙女の間では不文律として『姉は妹を助け、妹は姉を支えるもの』という理があり、
それを破った者は唾棄すべき存在として扱われる。
簡単にいえば姉妹は自分を絶対に裏切らない人物といえ、
弱肉強食の世界で生きる者の多い乙女達にとっては、ある意味で恋人以上の存在であった。
67
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 00:03:07 ID:xaNXjZl.O
从 ゚∀从「従姉妹とかもう意味不明だよなあ」
かき混ぜたコップの中で描かれている渦巻き模様のように、ぐるぐると思考が回る。
一人の姉が複数人の妹を持つと妹間の関係は従姉妹となり、間接的に味方として扱われる。
だが妹同士のいさかいを止められるほどの強制力を持ちはしない。
また妹の妹が姉の味方だとも限らない。
真に信頼できるのは直接契りを結んだ姉妹だけであり、それが故に乙女にとって姉妹という関係は神聖視される。
从 ゚∀从「とはいえ、てっぺん目指してる俺に学府で姉なんて以ての外」
从 -∀从「妹なあ。なーんか性に合わねえんだよな」
ハインはフォークで何個も重ねて貫いた、サラダのコーンを口へ運びながら一人ごちる。
ツンにオオカミ、友と呼べる者なら過去にも幾人か存在した。
しかし姉妹ともなれば、もっと深い特別な絆を求められる。
昔から一人で生きるのに慣れていたハインは、自分のパーソナルスペースに誰かが踏み入ってくるのを極端に嫌う。
そして、自分の近くに誰かがいると、またオオカミのときのようになってしまうかもしれない。
そんな恐怖がハインの心底を縛った。
68
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 00:04:04 ID:xaNXjZl.O
从 ゚∀从「うだうだ考える必要もねえか。俺は独り身だろうと乙女学院の頂点へ立つ、そして……」
学府の協力を得て母の仇を探し出し、そいつを討つ。
改めて考えなくてもハインの行く道は一つ、復讐という名の修羅道だ。
从 ゚∀从「俺としたことが、久し振りに学校なんかに通うから少し惚けていたようだな」
気合いを入れ直したハインはハニートーストを平らげ、会計を済ませて向かう。
地獄の花園の本拠地、乙女学院へ。
.
69
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 00:05:12 ID:xaNXjZl.O
(*゚∀゚)「つまり乙女の戦闘能力の秘訣は、このオーラ的な力にある。我々はそれを神威と呼んでいるがな」
从 -∀从 コクリコクリ
(*゚∀゚)「神威と呼ばれる所以は、世界の情報を書き換えるからだ。我々の能力は原子の段階から世界を作り直す、正に神の力というわけだな」
从 -∀从 ウンウン
(*゚∀゚)「神威の総量には個人差があるが、身体強化と能力の発動、性質上そのどちらにも神威は必要となる」
(*゚∀゚)「扱いには気をつけろよ。神威が尽きた乙女なんて、頑丈さを除けば一般人とさして変わらんのだからな」
从 -∀从 ナルホドナルホド
(*゚∀゚)「といっても一晩寝れば大抵回復する。まあ己の限界を超える使い方をしたら、この限りではないが」
从 -∀从 ヘーヘー
(*゚∀゚)「使いこなせればこれほど便利なものはないぞ。日常生活においても熱エネルギーの遮断に応用すれば冷房要らずだしな」
从 -∀从 ハーイ
(*゚∀゚)「……さっきから誰のために、こんな初歩の講義をやっていると思っているんだ?」
从 -∀从 ダレダレ?
(*゚∀゚)「貴様に決まっているだろうが! 器用な居眠りの仕方しよって!!」
講師のつーは、手刀の形を作った腕先に神威を集約させ、寝ぼけているハインの首筋へと裂帛の勢いで振り下ろす。
70
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 00:06:03 ID:xaNXjZl.O
从;゚∀从「うおっと!?」
寝込みをデレに襲われるようなハインではあるが、敵意に対しては常に感覚を鋭敏に尖らせている。
この程度の不意打ちが直撃することはなく、容易く躱した。
从 ゚∀从「つー先生よ、今のは俺じゃなきゃ危なかったぜ」
(*゚∀゚)「これぐらいで危ないやつはウチにはいらん。講義を続けるぞ」
从 ゚∀从「へーい」
(*゚∀゚)「神威は生体エネルギーみたいなものだが、手っ取り早く増強する方法が一つある」
(*゚∀゚)「それはなんだと思う、ハインリッヒ?」
从 ゚∀从「そりゃあもちろん身体を鍛えることっしょ。鍛えて鍛えて極限まで身体をいじめ抜けば、自然と神威は強化される」
(*゚∀゚)「学術的な根拠は見つかっていないが、それも間違いとは言えないな。貴様やヒートみたいな実例も存在する」
71
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 00:09:10 ID:xaNXjZl.O
(*゚∀゚)「しかし、もっと手っ取り早い方法がある。それは神威の共振性を利用することだ」
从 ゚∀从「共振性?」
(*゚∀゚)「乙女が二人以上でとあることをすると、互いの神威を高め合うことができる」
从 ゚∀从「そんな便利なことが――」
(*゚∀゚)「その方法っていうのが、乙女同士で粘膜を接触させることだ」
从 ゚∀从「……はっ?」
(*゚∀゚)「粘膜をどう接触させるか、方法は人それぞれだ。まあ眼球と眼球を擦り合うとかでも理論上はOKだしな」
(*゚∀゚)「学府としては粘膜接触を強く推奨している。誰にも見咎められることはないから、場所を気にせず励めよってことさ」
(*゚∀゚)「――なんなら私と今ここで粘膜接触してみるか? ハインリッヒ」
从////从「せ、セクハラっすよ、先生」
(*゚∀゚)「冗談だ。とはいえ相性や感情等、様々な要因に影響されるから、ヤりちらかしたからって簡単に強くなれるわけでもないがな」
(*゚∀゚)「さてハインリッヒの目も覚めたみたいだし、講義を続けるか」
確かに眠気は吹き飛んだが、結局初心なハインの頭には、これ以上授業の内容など入ってこなかった。
.
72
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 00:10:06 ID:xaNXjZl.O
从 ゚∀从「さてと、ここからが本番だ!」
人通りもまばらな廊下を歩きながら、ハインは両手で自分の頬を張り、気を引き締め直す。
この放課後が、乙女同士の決闘が認められる唯一の時間である以上、座学の不抜けを引きずるわけにはいかない。
ちなみに一般人は巻き添えを避けるために、この時間帯は外出を控えているのだと、昨日街が無人だった理由をハインは先程知った。
从 ゚∀从「片っ端からってのも悪くはないが、どうするか」
ζ(゚ー゚*ζ「狙うは上ですか、お姉様!」
从;゚∀从「うわあ!? でたっ!」
ζ(゚ー゚*ζ「もぅ、人をお化けみたいにいわないでくださいよ」
从 ゚∀从「俺にとっちゃお前は化け物みたいなもんだ。こんのエロ怪物が」
ζ(^ー^*ζ「あぁんっ、お姉様が蔑んだ目で私を見られてる。ゾクゾクしてしまいます……」
从;゚∀从「もうやだ、俺こいつ苦手」
ζ(゚ー゚*ζ「でも私がいれば、学院や学府の知識についてお役に立てますよ」
从 -∀从「あー、うーん、そうなんだよなー。でもなー」
ハインにとって一番の問題は、学府の知識をなにも持ち合わせていないこと。
実力が上位の生徒と闘おうにも、どこの誰がそうなのかすら分からないのが現状だ。
73
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 00:12:30 ID:xaNXjZl.O
ζ(>ー<*ζ「ああ、悩ましげなお姉様も麗しい。足蹴にして頂けないかなー」
从;゚∀从「ドエロでドMってなんなんだよもう! いいか、俺はお前を妹にはしない」
从 -∀从「それでも俺の力になりたければ勝手にしろ」
ζ(゚ー゚*ζ「それは私の顔を、お姉様の生足で踏みにじって頂けるということですかっ!!」
从;゚∀从「いってなくね!? いつそんな話が出てきた!」
ζ(゚ー゚*ζ「わかりました。今日のところは生脱ぎの靴下を頂くだけで我慢します」
从;゚∀从「ドエロでドMで足フェチってどんな三重苦だよ! ヘレン・ケラーもびっくりだわ!」
ζ(;ー;*ζ「私の前で他の女の名前を出されるなんて……」
从;゚∀从「どこの次元に到達すればヘレン・ケラーに嫉妬できるんだ!?」
74
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 00:13:41 ID:xaNXjZl.O
ζ(^ー^*ζ「ちゃららっちゃらー! デレが仲間に加わりました」
从 -∀从「半ば強引にな! つうかお前、デレって名前なのか。俺の名前は――」
ζ(゚ー゚*ζ「ご心配には及びません。私はお姉様の名前も身長も体重も、血液型も3サイズも生年月日も電話番号も」
ζ(^ー^*ζ「靴のサイズも、よく買う飲料水のメーカーも、シャンプーの好みの銘柄も存じておりますので」
从 ゚∀从】「もしもし、警察ですか?」
ζ(>ー<*ζ「あにゃん、冗談ですよお姉様ー」
从 ゚∀从「今のは冗談とかじゃなくてただの犯罪だろ。心配には及ばないどころか、むしろ物凄い勢いで心配になったわ」
ハインは嘆息を漏らすが、とりあえず貞操の危機以外にはさしたる害はないだろうと、デレを受け入れる。
ζ(^ー^*ζ
よしんばこいつが邪魔になるならば排除するだけだと、ポケットの中で人知れず拳を強く硬く握り締めながら。
.
75
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 00:14:56 ID:xaNXjZl.O
从 ゚∀从「本当にこんなところに、強いやつがいんのか?」
ζ(゚ー゚*ζ「はい。彼女が学府内で最強クラスなのは間違いありません」
ハインはデレに手を引かれて、雑木林を奥へ奥へと進んでいく。
日照時間が長い季節とはいえ、こうも樹木が生い茂っていると、辺りは不気味な仄暗さを醸し出していた。
ζ(゚ー゚*ζ「お姉様の頼みとはいえ、本音を申しますとヒートさんに会わせてもいいものか悩んでいます」
ζ(-ー-*ζ「それほどまでに彼女は、ずば抜けて強い」
从;゚∀从「――っ!? こっちへこい!」
無数の鋭い針で肌を突き刺されたような、粟立つ感触。
長年戦場にいることで培った、勘ともいえる危険予測能力が警報を鳴らす。
ハインはとっさの判断でデレを庇うように抱き寄せ、地に足を食い縛る。
ノパ⊿゚)「はああああああああああああ!!」
身に受けたのは突風とも衝撃波とも形容しづらい何かだ。
76
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 00:16:04 ID:xaNXjZl.O
从 ゚∀从 (ただの気当たりっ!? なんなんだよ、このでたらめに強力な神威は!)
ハインが現象の分析を試みていると、
ζ(////*ζ「お姉様ぁん……」
どういうわけか、デレがハインの腰に足をギュッと巻き付け、背中に手を回して抱き付いていた。
ζ(////*ζ「お姉様と繋がってるなんて、頭がフットーしそうだよおっっ」
从 ゚∀从「ていっ!」
ζ(>ー<;ζ「ひゃん!」
从 ゚∀从「油断も隙もなさすぎんだろ、お前は」
ζ(゚ー゚*ζ「えっ、今私のことを好きって」
从;゚∀从「いってねええええええええぇぇぇ!!」
もし過去にさかのぼれるならば、少し前の自分に『お前の判断は間違っている』と忠告しにいきたい程度には、
デレを味方に引き入れたことを、後悔し始めたハインであった。
77
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 00:17:08 ID:xaNXjZl.O
ノパ⊿゚)「ここはアタシの修練場だ。踏み入ったら危険なことぐらいは知っているだろう」
と先の気当たりの主が林の奥から顔を覗かせ、こちらへと近付いてくる。
切れ長の目をした、端整な顔立ちの少女。
彼女が歩く度リズムに合わせて、後頭部の高い位置で結ばれた黒曜と見紛わんばかりの美しい髪が、糸を引くようになびいた。
ノハ-⊿-)「……まったく、騒がしいと思えば姉妹連れか。そういうことは他所でやってくれよ」
ハインは彼女に指摘されて、それがどういう意味で何を指しているのか悟る。
从;゚∀从「ば、馬っ鹿、お前これはそういうんじゃなくてだな」
ζ(゚ー゚*ζ「ええ、御主人様と奴隷というか、飼い主と雌犬というか、そういう感じです!」
ノハ;゚⊿゚)「さすがに他人の嗜好にまで口を出す気はないが、あまり若いうちからそういうのはどうかと思うぞ」
从;゚∀从「だから本当に違えんだって! 俺は新入生で、お前に喧嘩を売りにきたの!」
ノパ⊿゚)「アタシに?」
从 ゚∀从「おうよ! お前、ヒートだろ? 強いんだってな」
本当は確証を取らなくても判断できる、こいつは強い。
ただ立っているだけで他を圧倒する存在感、ハインが今まで出会った中でもこれほどの者はそういなかった。
だからこそ敢えて挑発的な態度を取ることで、相手の出方を探る。
78
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 00:18:58 ID:xaNXjZl.O
ノパ⊿゚)「君、名はなんという?」
从 ゚∀从「俺はハイン、ハインリッヒ。覚えておけ、お前を倒す者の名だ」
ノパ⊿゚)「ハインか。引き締まった良い脚をしている」
ζ(゚ー゚*ζ「お姉様の美脚は、足の裏から太股に至るまで私のものですからね! 譲りませんよ!」
从 ;∀从「もうヤダこの学院、足フェチばっかりなんだもん!」
ノハ;゚⊿゚)「いや、そういう意味ではない! 身体を鍛えているなという意味で、上半身はブレザーで隠れているから脚で判断しただけで!」
学院でトップクラスの実力者とはいえども、その辺りは多感な十代の少女である。
性的な意味ではないと、頬を赤らめ必死に弁解するヒートは元来の意味で乙女といえた。
79
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 00:20:30 ID:xaNXjZl.O
ノパ⊿゚)「こほん、仕切り直すぞ。相当絞り込まれた良い身体だ、確かにハインは強いのだろう」
从 ゚∀从「そいつはどうも」
ノパ⊿゚)「だがそれでも現状でアタシに及ぶとは思えん。急かずに、もっと実力を着けて出直してくるといい」
从 ゚∀从「はっ、笑えねえ冗談だ。本当に及ばないのか試してみようぜっ!!」
ハインが胸の前で握り拳を叩き合わせると、瞬時に周囲の大気が弾けた。
放出された神威により紅の髪はより一層赤みが増し、木漏れ日を浴びて紅蓮の輝きを放つ。
ノパ⊿゚)「愚にして直か。まあ、アタシはそういうやつ好きだがなっ!!」
ハイン、ヒート、二人の乙女が戦闘の構えを取り向かい合った。
一瞬即発、互いの呼息が強まり気迫を纏う。
木々も恐怖に身を縮めたのか、一切の無音が周囲を包み込んだ。
80
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 00:20:55 ID:xaNXjZl.O
|゚ノ ^∀^)「御待ちください!」
するとそこへ二人の間を裂くように、鋭い声が投げ掛けられる。
ノパ⊿゚)「君は……」
|゚ノ ^∀^)「ご無沙汰しておりますわね。ヒートさん」
从 ゚∀从「なんだ、ヒートの知り合いか?」
ノパ⊿゚)「いや、悪いが知らん。アタシは人の顔と名前を覚えるのが苦手でな」
|゚ノ;^∀^)「え、ええっ!?」
ノパ⊿゚)「学院の生徒は、クールとキュートとハインぐらいしか自信がないな」
|゚ノ ^∀^)「ま、まあ、ハインリッヒさんはともかく、そのお二方と比べられれば私の存在など霞むかもしれませんが」
从 ゚∀从「そんで影の薄いの。なんの目的で邪魔をした」
|゚ノ ^∀^)「私の目当ては貴女です、ハインリッヒさん!」
从;-∀从「目当てねえ。なんか違う意味に聞こえるのは、デレに毒されてんのかな」
ζ(^ー^*ζ「きゃっ、お姉様ったら、こんなところで惚気ちゃって」
从 ゚∀从「それで、俺になんの用だ!」
|゚ノ ^∀^)「それはですね――」
ζ(////*ζ「ああんっ、お姉様に無視されちゃったぁ……、はあはあ……」
自分の身体を抱くように両手を交差させて、よだれを垂らしながらビクビクと痙攣を繰り返すデレ。
ハインはそれを極力視界に収めないよう奮励努力した。
81
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 00:27:08 ID:xaNXjZl.O
|゚ノ;^∀^)「えっと、あの、その」
*(‘‘)*「あんた達! ちゃんとお姉様の話を聞きなさいよ!」
⌒*リ´・-・リ「レモ姉は押しが弱いから、結局こういうのは僕達任せなんだよね」
気の毒になるほど押しの弱い少女の後方から、見知った顔が二つ現れた。
昨夕一蹴したヘリカルとリリ、二人の登場にハインはめんどくさそうに顔をしかめる。
从 ゚∀从「そんで、さっさと話を進めようぜ」
*(‘‘)*「端的にいうと、まずはお姉様がデレに謝りたいということが一点」
|゚ノ ^∀^)「デレさん。私の軽はずみな言動のせいで、妹が迷惑をかけることになってしまって申し訳ありませんでした」
ζ(゚ー゚*ζ「いえいえ、その件に関しましては私も運命の人と出会えたので、感謝したいぐらいで」
⌒*リ´・-・リ「そしてもう一つが、ハインリッヒ。貴女に対する妹の仇討ちだね」
从 ゚∀从「いいねえ。仇討ちってのは俺も大好きだぜ! そういうこった、すまないなヒート」
ノパ⊿゚)「別に元々アタシは今のハインと闘るつもりはなかった。構わんぞ」
从 ゚∀从「だからってどっかに行くこともないだろ。見物してけよ」
ノパ⊿゚)「ハインの力を知ると楽しみが減ってしまうだろう? アタシは好物を最後に食べるタイプなのさ」
ノハ-⊿-)「――だから負けてくれるなよ」
期待していると言外に言い残し、ヒートは後ろ姿で手を振りながら更に林の深奥へと消えていった。
82
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 00:29:26 ID:xaNXjZl.O
从 ゚∀从「待たせたな。タイマンか、なんなら三対一でも俺は構わねえぜ」
|゚ノ ^∀^)「私は一人では文字通り無能な女です。ですからお言葉に甘えさせて頂きましょう」
レモナの声と同時に妹二人が動き、トライアングルを描いてハインを囲む。
その動きは洗練されていて、チームプレイに慣れている者のものだと一目で察せられた。
ζ(゚ー゚*ζ「お姉様、レモナさんは本当はかなり強いんです! 私も」
从 ゚∀从「これは俺の喧嘩だ。下がってろ」
昨日の様子から、デレを足手まといですらあると即時判断したハインは、有無をいわせぬ強硬な態度でデレを下がらせ、
身体をレモナへ向け、視線でリリ牽制し、気当たりでヘリカルを威圧する。
⌒*リ´・-・リ「いくよっ!」
まずは射程の長いリリが様子見といったところか、柔らかな土の大地がリリの能力に浸蝕される。
木陰であっても、その影の濃淡がはっきりと見て取れた。
从 ゚∀从「ふっ!」
リリの影に捕まったところで動けなくなるわけでもないが、スピードが鈍るのもまた事実。
もうヘリカルもリリも油断はしないだろう、その上に実力が不確定のレモナもいる。
ハインは躊躇せずに、軽快なステップで飛び下がることを選択する。
83
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 00:30:05 ID:xaNXjZl.O
*(‘‘)*「甘い!」
それを狙い澄ましていたヘリカルが疾走し、レイピア状の宝剣でハインの喉元を突いた。
从 ゚∀从「ちぃっ!!」
風を貫いて襲うのは、神威で生み出された武器だ。
砲弾ですら脅威に感じないハインでも、これはまともには食らえないかと、スカートをはためかせながらムーンサルトの要領で身体を逸して回避する。
|゚ノ ^∀^)「私もおりますよ」
着地点にはレモナが待ち構えていた。
畳みかけるように振るわれた掌打が、ハインの鼻先へと迫る。
从 ゚∀从「攻撃の瞬間防御を忘れる、未熟だな」
その打撃を左腕で強引に払い流すと同時に、ハインは右拳でレモナへ一撃をお見舞いする。
神威が込められた強力な拳打は唸りを上げ、レモナの意識を刈り取るべく顎先へと振るわれた。
|゚ノ ^∀^)「私達はチーム戦。私が防御を考えなくてもよいのです」
――決まる。
ハインがそう確信した瞬間、その場に空間ごと固定されたように、右腕がそれ以上前へと進まなくなる。
从;゚∀从「がはっ!?」
何事かと状況を把握する時間もない。
レモナの黒のオーバーニーに包まれた長い脚が、ハインの胸元を荒々しく蹴り飛ばした。
84
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 00:31:01 ID:xaNXjZl.O
从;-∀从「ぐうぅっ、はあ、はあ、影使いか! だが、昨日はそこまで強力では」
蹴り飛ばされたということは、全身が動かない程強固に緊縛されているわけではないようだ。
だが、それでも昨夕とは段違いの能力といえた。
⌒*リ´・-・リ「本当は僕はそっちの気ないんだけど、今日は特別に神威を高めてきたからね」
神威を高める、つまりは粘膜接触。
そう簡単に強くなれるものではないと講師のつーはいっていたが、
なかなかどうして大したものじゃないかと、ハインは舌を巻く。
*(‘‘)*「私も昨日と同じだとは思わないことね!」
ヘリカルの指の間で、三対の短刀が鈍色に光る。
両手を合わせて六本の刃、それらが手首のスナップをきかせて投擲された。
从;゚∀从「ちぃ!」
躱し、弾き、いなすが、リリの影に縛られた身体では全てをとはいかない。
短刀が頬を掠め皮膚を裂き、太股には浅くだが突き刺さる。
だが、ハインも黙ってダメージを負っていたわけではない。
躱しきれないのはわざと諦めて、距離を詰めるために踏み込んでいた。
⌒*リ;´・-・リ「っ!?」
そう、この戦況を不利へ導いているリリへと。
影を操ることに専心していた彼女は、無防備な存在といえた。
85
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 00:31:44 ID:xaNXjZl.O
从 ゚∀从「まずは一人っ!!」
レモナが妹を助けるべく動き出すが、レモナのリーチでは間一髪で間に合わないだろう。
そう踏んでいたハインは、
――自分の考えが甘かったと思い知る。
从;゚∀从「――っ!? あぐあああぁぁ!!」
焼けるような激痛が脳内を駆け巡った。
痛覚の発生源であるハインの肩口には、吸い込まれそうな闇色を湛えた剣が、強化制服を切り裂いて剣身を深く食い込ませている。
|゚ノ ^∀^)「これが私の【希代の合成賢者】。いかがですか、私達の合作である影の宝剣の切れ味は」
合成賢者、影の宝剣、合作、それらの言葉からハインは彼女の能力を察する。
一人では文字通り無能な女とはよく言ったものだと、胸中で毒づいた。
86
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 00:32:24 ID:xaNXjZl.O
从;-∀从「ぐうぅ! つぅ、はあ、はあ……」
ζ(゚ー゚;ζ「お姉様!」
|゚ノ ^∀^)「確かにハインリッヒさんは強い。仮に一対一ならば、私達三人と連続で闘っても傷一つ負わないかもしれません」
⌒*リ´・-・リ「だけど僕達の真価はチーム戦でこそ発揮されるんだ」
*(‘‘)*「貴女に勝目なんてないのよ」
从;-∀从「くそっ、ちくしょう……! 俺は……!」
強くなったつもりだった。
そのために血反吐を吐いて身体を鍛えた、努力に邁進した。
まめができて、それが潰れて、治りきらないうちに新しいまめができて、それがまた潰れて、爪まで剥れて。
幼い少女が痛みよりも恐れたのは、己の弱さ。
同年代の女子が化粧を覚え化粧水を肌に塗り込むのに代わり、ハインは血と汗を肌に塗り込んだ。
それでも、敵わない。
87
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 00:33:24 ID:xaNXjZl.O
|゚ノ ^∀^)「ハインリッヒさん、なぜ能力を使わないのですか? 貴女が第二階梯に達していないとは思えない」
从;-∀从「…………」
|゚ノ ^∀^)「もし未だに能力を使わずに勝てると思っているのなら、人を舐めるのも大概になさいっ!!」
从;゚∀从「くっ!」
|゚ノ ^∀^)「……私達三人は、同じ乙女といえど名家のお嬢様方とは違います。幼少のみぎりより、文字通り死に物狂いで学府を生きてきました」
|゚ノ ^∀^)「ここにはそんな乙女も掃いて捨てるほどいます。ヒートさんはその乙女達の頂点に立つ人なのです」
|゚ノ ^∀^)「覚えておきなさい! 目の前の闘いに死に物狂いになれない貴女に、彼女と闘う資格なんてないということを!」
从 ゚∀从「そう、だよなあ。……デレ、もっと遠くまで離れてろ。なんなら帰れ」
ζ(゚ー゚*ζ「ですが、お姉様」
从 ゚∀从「邪魔だからいけっつってんだよ!」
そうハインは敵わない。
――相手を傷付けないように加減していては。
88
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 00:34:06 ID:xaNXjZl.O
从 ゚∀从 (まだ大丈夫だ、これぐらいの傷ならまだ制御できる。オオカミの時とは違う!)
この程度で一線を越える事態は引き起こさないと、ハインは自分に言い聞かせるように鼓舞し、心の中で唱える。
曾祖母が目覚め、母が自分に与えてくれた能力を。
从 ゚∀从(【泣いた赤鬼】!!)
ハインの頭髪が炎のように美しい紅蓮から、くすんだ茜色へと変わる。
いつものどこか優しい瞳は暗く濁り、別人の様相を呈していた。
一度発動したが最後、鬼としての破壊衝動がハインの脳内を埋め尽くしていった。
89
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 00:35:07 ID:xaNXjZl.O
*(‘‘)*「本当は第二階梯まで至ってないんでしょ? 降参して詫びを入れるっていうなら許して――」
从#゚∀从「がああああああああ!!」
気を緩めていたヘリカルに迫る、一条の赤い閃光。
赤鬼と化したハインが、慈悲など知らぬという顔で乱暴に腕を伸ばす。
⌒*リ´・-・リ「危ないヘリカル!!」
間髪入れずにリリが体当たりでヘリカルを弾き飛ばした。
だが当然自身が躱す余裕などあるわけもなく、ハインに顔面を鷲掴みにされる。
次の瞬間、大地が爆ぜた。
⌒*リ´ - リ「…………」
土煙の向こうから現れたのは巨大なクレーターと、ゴミ屑のように顔を潰されたリリの姿だった。
*(‘‘)*「っ、よくもリリを!!」
|゚ノ ^∀^)「お待ちなさい!」
レモナの制止を振り切ってヘリカルは突貫をかける。
自分を庇って親友がやられた、その事実がヘリカルをがむしゃらに突き動かす。
*(‘‘)*「はあっ!!」
有りっ丈の神威で生み出した宝剣を水平に構え、一気呵成に突き刺す。
ヘリカルの全身全霊を込めた一撃は、狙い通りハインの横腹へと吸い込まれた。
90
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 00:35:59 ID:xaNXjZl.O
*(‘‘)*「やった……!」
从 ゚∀从「く、くははははは!」
*(;‘‘)*「えっ!?」
从 ゚∀从「いてえいてえいてえいてえ! でもな、いてえ以上には効かねえぞ!!」
ぞわりと嫌な予感がヘリカルの背筋を這う。
慌てて退こうとするがそれは許されなかった。
身体を貫かれたままのハインが、柄を握ったヘリカルの腕を強引に掴んでいたからだ。
掴む、圧倒的な腕力で、乙女の神威の防御を打ち破るような膂力で。
*(;‘‘)*「あがぁぁぁぁ!?」
ごきりと鈍い音が響き、ヘリカルの腕が正常では有り得ない方向へへし曲がる。
脂汗にまみれたヘリカルは、信じられないものを見るように自分の腕を見下ろすが、ゆっくりと眺める時間など与えられない。
91
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 00:44:02 ID:xaNXjZl.O
从 ゚∀从「あはははは!」
ハインの腹部に刺さった宝剣が、光を放ち消え去る。
栓を失い血が垂れ流れ始めるが、ハインがそれを気にすることはない。
むしろ痛覚が、彼女の心の猛りを増幅させた。
動きやすくなったといわんばかりに、薄く笑みを浮かべヘリカルへと詰め寄る。
从 ゚∀从「握手しようぜ」
折れていない方の腕を捕まえると、ハインは無理矢理指を恋人繋ぎするように握り合わせた。
|゚ノ;^∀^)「ヘリカルっ!!」
*(; )*「あああぁぁぁあ嗚呼あああアアアァァァ!!」
喉の奥から咽び出る野獣のごとき咆哮。
ヘリカルの親指を除いた四本の指は根本から潰れて、浅黒く変色していた。
92
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 00:45:28 ID:xaNXjZl.O
从 ゚∀从「最後はお前だ」
|゚ノ ^∀^)「私の妹達を……、許しませんっ!」
眼前の赤鬼が放つ、狂気を伴う程の威圧感に泣きたくなるが、レモナは弱気な自分を息と共に呑み込む。
そうして覚悟を決めると、気圧される空気を強引に跳ね返した。
妹達の能力を自分の能力で混ぜ合わせた武器、影の宝剣を右手一本で血管が浮く程強く握り締める。
リリが意識を失った今、急速に消耗されていく神威を考えると、影の宝剣を維持できるのは残り数分が限度といったところだ。
しかしレモナは慌てて攻め入ることはせず、右足をわずかに引き、闇色の刃をハインの喉の高さへすっと立てた。
|゚ノ ^∀^)「…………」
高まる緊張感。
だがそれを気にも止めず、無造作にハインが歩み寄る。
レモナは一方的に間合いを詰められるのに任せた。
そして一足飛びの距離まで近付くと共に、鋭く踏み込む。
|゚ノ ^∀^)「くらいなさいっ!!」
黒の一閃が袈裟掛けに走る。
丸腰のハインはそれを避ける素振りも見せず、振りかぶった拳を刀身へ打ちつけにいった。
93
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 00:47:09 ID:xaNXjZl.O
弾き返されたレモナはすかさず左手を柄に添え、軌道を水平の薙ぎ払いへと変化させる。
从 ゚∀从「ちぃ!」
拳には重点的に神威を収束させただけで、さすがのハインも全身どこへ受けても無傷というわけにはいかない。
もっと傷を負えと脳内で鬼が囁くが、残った理性が回避の判断を取る。
飛び退るハインへレモナが疾駆した。
バックステップで回避されるであろうことを読んだレモナは、刃を途中で止め、中空への鋭い突きを放っていた。
从 ゚∀从「俺を舐めるなよ!」
ハインはぎらついた瞳で迫る刃を見定め、剣の腹を蹴り上げて紙一重で窮地を脱する。
スカートを舞わせながら着地、それと同時に駆けた。
しかし、レモナも既に体勢を整え、渾身の力で刃を打ち下ろしている。
|゚ノ ^∀^)「終わりです!」
从 ゚∀从「どっちがだ!」
ハインは一瞬沈み込むようにしゃがむと、膝のバネを使い、伸び上がりの加速を得た拳を黒の刃へ放つ。
神威を纏った煌めく拳と、神威で生み出された漆黒の剣。
その二つが再度ぶつかり合い、耳障りな騒音と激しい火花が上がる。
94
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 00:48:52 ID:xaNXjZl.O
撃ち合いを力で勝るハインが制し、その勢いのままレモナとの距離を詰めた。
|゚ノ ^∀^)(ですが、肝心の体勢がそうも崩れていては、有効打が放てないはず!)
ならばここからはクロスレンジの攻防になると、レモナは限られた時間で勝つ算段に頭を巡らせる。
が、その砂糖細工でできた甘い期待は、お菓子の城を潰すように容易く打ち砕かれる。
从 ゚∀从「オオカミ流神威闘術・鉄!」
鉄の圧倒的な硬度で。
|゚ノ;^∀^)「ぐふっ!?」
鉄(くろがね)とは拳でも肘でも脚でもない、背中による打撃。
ダンプカーが超音速で突っ込んでも、ここまでの重く鋭い衝撃は与えられないだろう。
至近距離で思い切り打ち込まれたレモナは、想像を絶する威力に吹き飛ばされ、背で樹木を突き破る。
|゚ノ;^∀^)「げほっ! げほっ!」
何本かの常緑樹をなぎ倒し、一際太い巨木の幹へ身体を強打することで、ようやく止まることができた。
しかし酸素が失われ、ブラックアウトするように数秒間意識を飛ばしてしまう。
それだけの時間があれば、ハインが詰め寄るには十分だった。
95
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 00:50:07 ID:xaNXjZl.O
从 ゚∀从「弱すぎる」
意識を取り戻す頃には、ハインの腕がレモナを捉えていた。
首を強引に掴むと、足を浮かせるように高く吊り上げて、残忍な笑みを浮かべる。
|゚ノ;^∀^)「うぐ、うぅぅぅ!」
从 ゚∀从「さてと」
*(;‘‘)*「私達の負けだから! だからお願い、お姉様を離して!」
从 ゚∀从「うるさい」
|゚ノ;^∀^)「ぐっ!?」
ヘリカルの声に呼応するように、首に掛けられた腕に力が込められていく。
誰の目から見てもレモナの生殺与奪は、完全にハインに握られていることが明らかだ。
从 ゚∀从「お前に斬られた肩な、あれ痛かったぜ」
|゚ノ;^∀^)「うぅ……あああああぁぁ!?」
ハインの鋭い手刀がレモナの肩をえぐる。
肉が裂かれ、叫声と共にワインレッドの鮮血が勢いよく噴き出した。
从 ゚∀从「それからお前の妹には太股も、横腹もやられたな」
|゚ノ;^∀^)「うがあぁ!? あぐううぅぅぅ!!」
ハインは自分が傷を受けたのと同じ場所へ、指突で似たような傷穴を開ける。
肌を突き破る手応えとレモナの苦悶の叫び声を聞き、悦に溺れたような笑みを深めながら。
96
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 00:57:03 ID:xaNXjZl.O
*(;‘‘)*「もう、やめてよぉ……」
ζ(゚ー゚*ζ「お姉様、もうおやめください!」
从 ゚∀从「ああ? なんだよ、お前は俺の邪魔をするのか」
吸い込まれそうに暗く、よどんだ眼光がデレを射抜く。
だが彼女はそれに一瞬も怯むことなく、気丈に言葉を返した。
ζ(゚ー゚*ζ「はい。お姉様の勝ちです、これ以上する必要はありません」
从 ゚∀从「俺に指図するな」
飽きた玩具はゴミ同然とハインはレモナを投げ捨て、デレへと詰め寄る。
瞳に凶暴な色を宿して。
ζ(゚ー゚*ζ「私は普段の優しいお姉様が好きです。どうか気を静めてください」
从 ゚∀从「普段? 優しい? 昨日今日会ったばかりのお前が俺の何を知っている」
ζ(^ー^*ζ「知っていますよ、お姉様が優しいことは。だって昨日会ったばかりの私を助けてくださいました」
从 ゚∀从「黙れ」
ζ(^ー^*ζ「嫌われても仕方のないようなことをした私を、受け入れてくださいました」
从 ゚∀从「……黙れ」
ζ(^ー^*ζ「ヒートさんからも、私を庇ってくださいました。そんな優しいお姉様が私は大好きです」
从 ゚∀从「黙れええええぇぇぇ!!」
もうこれ以上は聞きたくないと被りを振ったハインが、デレの喉を締め上げ広葉樹へと打ち付ける。
97
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 00:59:14 ID:xaNXjZl.O
ζ(゚ー゚;ζ「かはっ!」
从 ゚∀从「これが本来の俺だ! お前を助けただと、ふざけるなっ!」
ζ(゚ー゚;ζ「うくっ、何に、怯えているの、ですか?」
从 ゚∀从「俺が、怯えているだと?」
ζ(゚ー゚;ζ「今の、お姉様は、くぅ、泣きながら暴れている、子供そのものです。何が怖くて、泣いているのですか?」
从;゚∀从「くっ、俺は、泣いてなんて……」
泣いた赤鬼。
受けたダメージに比例して、身体能力と破壊衝動が加速的に高まる能力。
その名称も能力も知らないにも関わらず、デレにはハインが泣きわめく幼子に見えた。
だから優しい声音で語りかけ続ける。
ζ(゚ー゚*ζ「もう闘いは終わりました。だから怖がらないでください」
緩んだ腕の隙間から抜け出し、デレは今にも崩れそうなハインを胸に抱き寄せた。
その豊満な胸で支えながら、母が子をあやすように何度も優しく頭を撫でる。
98
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 01:00:19 ID:xaNXjZl.O
从 -∀从 (暖かくて優しい匂い、お母さん……)
喚起されるのは泣き虫だった子供の頃の記憶。
髪のことを馬鹿にされて泣いて帰ると、いつも頭を撫でてくれた母の面影が、今も脳裏に焼き付いている。
ハインは心のささくれが、一つ一つほぐれていくのを感じた。
次第にくすんだ茜色の髪が、落陽よりも眩い紅蓮へと変化し始める。
まだハインの奥底からは、壊せ、壊せ、と闇に引きずり込もうとする鬼の声が聞こえたが、
从#゚∀从 (うるせえっ!!)
一喝で静め、彼女は己を取り戻した。
99
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 01:01:04 ID:xaNXjZl.O
从 -∀从「……すまなかったな」
ζ(^ー^*ζ「いえいえ、私は痛くされるのも好きですから。むしろご馳走さまです」
从 ゚∀从「悪いがあいつらに救護を呼んでやってくれ。致命傷はないだろうが、急ぎで頼む」
ζ(゚ー゚*ζ「それで、お姉様はそんなお怪我でどこへいかれるのですか?」
痛々しく裂けた肩に、未だ血を垂れ流す腹部。
いくら乙女が頑丈とはいえ、救護班に見てもらった方がいいのは間違ない。
从 ゚∀从「一人にさせてくれ」
だがハインはそれを拒み、地面に拳を叩き付け粉塵を巻き起こす。
ζ(゚ー゚*ζ「お姉様っ!」
その煙が晴れたとき、既にその場には誰の姿もなかった。
.
100
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 01:01:56 ID:xaNXjZl.O
('、`*川「ふんふふふん〜♪」
救護班でも名うての乙女であるペニサスは、本日の勤務終え、肉感的な身体を弾ませながら機嫌よく帰路へとついていた。
傷付いた生徒を癒すのは本人としても望むところではあるし、彼女は希少な治療系の能力を持つため高待遇を受けている。
仕事には不満どころか充実感すら覚えていた。
それでも家に帰って缶チューハイを一杯引っ掛けながら、少女同士の淡く切ない恋愛を描いた小説の観賞に興ずる姿を思い浮かべると、自然と足が軽くなった。
('、`*川「乙女は可愛く美しくの新刊積んでるのよね〜」
そんな彼女の目に不思議な光景が飛び込む。
蛇口を全開にして、水が跳ねて濡れるのも構わず、一心不乱に手を洗い続ける女生徒の姿だ。
('、`*川「あらあら、そこの貴女。水の無駄遣いは駄目よ」
从 ∀从「洗っても、洗っても、落ちないんだ……血が……」
紅の髪に、自分の血と返り血で全身を朱に染め上げて、弱々しく笑いながら呟く少女。
('、`*川 (んー!)
ペニサスの表情が喜悦満面へと変わる。
どうやら今夜の酒の肴が決まったようだ。
第三話 完
101
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 01:02:42 ID:xaNXjZl.O
番外一話
女三人寄れば姦しいなどという言葉があるが言い得て妙というもので、この女学生だらけの学府で姦しくない場所を探す方が難しい。
取り分け甘味処ともなれば、それが一層顕著になるのは太古からの習わしともいえるだろう。
*(‘‘)*「どうしたのですか、お姉様? あまりスプーンが進んでいらっしゃらないようですけど」
|゚ノ;^∀^)「その、最近少し、ダイエットをその……」
リリは対面に座る姉と慕う女性と、自分の隣りに座っている親友のやり取りを言葉少なに見守る。
その偉容と甘露で学府内でも著名を誇るパフェを前にした二人の表情は、好対象で面白く映った。
102
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 01:03:54 ID:xaNXjZl.O
*(‘‘)*「大丈夫ですよ、ちょっとぐらいふくよかな方が女性は魅力的に見えるものです」
|゚ノ ^∀^)「それはヘリカルが太らない体質だから言える言葉なのです……」
*(‘‘)*「でも、私はお姉様のお身体のこと魅力的に思ってますよ。エッチの時だって――」
|゚ノ /////)「な、何を言っているのですかヘリカル! こんな公共の場で!」
⌒*リ´・-・リ「レモ姉、もう少し静かに」
|゚ノ;^∀^)「は、はい、申し訳ありません……」
頬を染めて気まずそうに縮こまる姉を尻目に、リリは自分の身体を見下ろす。
レモナのように性的な起伏に富んでいる、とはお世辞にも言えないお子さま体型。
だからなんだというわけでもないはずだが、ヘリカルの口からレモナのような体型が好きなのだと聞くと、なぜだか胸がざわめいた。
103
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 01:05:19 ID:xaNXjZl.O
*(‘‘)*「リリ、なんか怒ってる?」
⌒*リ´・-・リ「別に、なんで僕が怒るのさ」
そうさ、僕にそっちの気はない。
これはただの身体的劣等感からもたらされる不快なのだ、とリリは心の中で強く結論付ける。
⌒*リ´・-・リ「レモ姉、食べないんならそれ僕にくれない?」
|゚ノ ^∀^)「えっ? リリは甘いものが苦手なのでは」
⌒*リ´・-・リ「もう少しウエイトを上げようと思って。体重がある方が近接戦闘で有利に働くことも多いし」
レモナから譲り受けたパフェをリリは一心不乱に掻き込んだ。
自分が近接戦闘技術を持っていないだとか、適正体重以上になっても有利になることなど皆無に等しいだとか、そんな理屈を蹴散らして食らいつく。
別にこのパフェを一杯食べたからといって、レモナみたいな体型になれるわけではないと分かっている。
でも、やるだけやってみたいのだ。
リリにとってのレモナは、
尊敬できる女性で、
憧憬を抱く先輩で、
心から愛しい姉で、
この人みたいになりたいと思わせてくれる目標だから。
104
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 01:06:14 ID:xaNXjZl.O
⌒*リ´・-・リ「ご馳走さまでした!」
|゚ノ ^∀^)「ふふ、気持ちのいい食べっぷりですね」
⌒*リ´・-・リ「ん、なにかおかしかった?」
|゚ノ ^∀^)「いえ、そうではなくて。リリ、頬っぺたについていますよ」
テーブルに身を乗り出して近付いて来た姉の、細く冷ややかな指先が頬を撫でる。
くすぐったくて心地いい感触。
|゚ノ ^∀^)「んちゅっ……」
小指の先で拭ったクリームを、赤くぬめった舌でちろちろと舐めとる姉の姿は、妖艶で酷く扇情的に映った。
105
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 01:06:56 ID:xaNXjZl.O
⌒*リ´・-・リ「天然エロ姉」
|゚ノ ^∀^)「ふぇ!?」
*(‘‘)*「ずるーい! 二人だけでイチャイチャして、私だけ仲間外れなんて!」
|゚ノ ^∀^)「いえ、その、私はイチャイチャなどと」
⌒*リ´・-・リ「そういうとこ無自覚だよね、エロ姉は」
|゚ノ;^∀^)「呼称がレモ姉から変わってますよ!?」
*(‘‘)*「お姉様、私も頬っぺにクリームついちゃいました♪」
⌒*リ´・-・リ「僕が取ってあげるよ」
*(;‘‘)*「い、痛っ!? やめ、おしぼりでぐりぐりしないでぇ!」
全く、馬鹿だなぁとリリは含み笑いと共に息を吐く。
レモナが誰彼構わず救いの手を差し伸べるのは知っている、納得できるかは別だが知ってはいる。
だからいずれ新しい妹が増えるのも、そうなのだろうという程度には想像ができる。
でも、この三人の為だけに存在する馬鹿な時間がいつまでも続けばいいのにと、リリはそう願わずにはいられなかった。
番外一話 完
106
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 01:10:11 ID:xaNXjZl.O
番外二話
ζ(////*ζ「おねぇ…………さまぁ……ふぁんっ」
闇夜に包まれたデレの私室に、熱く淫猥な吐息が漏れ響く。
ζ(////*ζ「きもちぃ……いいっ! ……ですぅ、お姉さまぁん……」
デレがお姉様と慕う少女、ハインがこの部屋にいるわけではない。
ただ彼女を想い、火照った身体を自ら慰めているだけであった。
ζ(////*ζ「あぅん、そこぉ……もっと……」
乳房へと這わせた手が敏感な突起をくすぐる。
デレは甘い刺激をもっと味わいたくて、更に強く尖端を揉みしだこうとした。
しかし予期した快感は訪れず、指は焦らすように直前で逸れて周囲の輪を撫でるだけにとどまる。
ζ(////*ζ「あぁん、お姉様ぁ……イジワルです……お願いですからぁ」
当然ながら腕はハインのものではなく、デレ本人のものだ。
しかし彼女の脳内では、愛しいお姉様の愛撫へと置き換えられていた。
ζ(////*ζ「はぃ、デレははしたない淫乱ですぅ。少し触れただけでこんなぁ……ひゃっ!」
張りのある膨らみを掌で包むと、指先がふにゅんと沈み込んだ。
薄桃色の先っぽの部分だけが跳ね返るように強く勃ち上がるが、手はそれを許さず潰すようにして転がす。
107
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 01:10:39 ID:xaNXjZl.O
ζ(////*ζ「んんっ……きもち、いいよぉ……」
ハインに対して積極的な少女であったが、実は自分で慰めたことすらあまりない。
なんとなくだが不潔だという思いすらあった。
だからよしんばこういう行為に耽ったとしても、胸を触る以上のことは未経験だった。
ζ(////*ζ「っ!? お姉様、そこは……」
今日に限ってそれ以上に及んでしまうのは、やはり脳内のお姉様が原因なのだろう。
愛しい人の指だと思えば不思議なことに、なんの嫌悪感もなくそこへ手が伸びてしまう。
ζ(////*ζ「濡れ、てる……?」
初めてそういう目的で触るそこは、胸への愛撫で興奮したデレの分泌液でしとどに濡れそぼっていた。
熱くて柔らかい不思議な感触。
かすかに指を這わすだけで、腰が浮きそうな痺れに息が詰まる。
ζ(゚ー゚*ζ (これはお姉様の指。お姉様のだから怖くない)
自分に暗示をかけて恐怖感を薄れさせ、女の子の大切な部分を押して見る。
――むにゅる。
ζ(////*ζ「ふぁああぁぁんっんっっ!!」
想像を幾重にも飛び越えた衝撃に声を張り上げてしまい、慌てて枕を噛んで堪える。
粘液に塗れたそこはデレの指先を滑らせると、小さな窪みへ第一関節まで招き入れていた。
108
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 01:11:16 ID:xaNXjZl.O
ζ(゚ー゚;ζ「入ってる……? 怖いよぉ、お姉様……」
あまり知識が豊富でないデレでも、初めてが痛いことぐらいは知っている。
本物のハインを前にすれば痛いのだって好きだという軽口を叩けたが、一人では怖さが勝った。
なんとか抜いてみないとと試みるが、そこはデレの指先を逃すまいと固くくわえて、簡単には離しそうにない。
ζ(゚ー゚*ζ「少しだけ、少しだけ刺激して、ほぐしたら抜けるかも……」
絡み付いてくるひらひらした薄い肉を、そっと優しくなぞる。
ζ(////*ζ「――んひっ!?」
二度目でも身を襲う快感の波は過敏だった。
だが入れたときよりは気持ちいいという感覚も強い。
だからというわけでもないが、恐怖を堪えて行為を続けることにした。
109
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 01:11:59 ID:xaNXjZl.O
ζ(////*ζ「はひっ! ……怖いよぅ、でも……気持ちぃ……よぉぉ!」
何度か刺激を繰り返す内に中は指の形を完全に受け入れ、先程までのきつく噛み付く感じではなく、優しく包み込んでくれていた。
もっと奥へと誘うように潤滑液が大量に溢れてくるが、さすがにこれ以上進むことはせず、入口付近で抜き差しする。
愛蜜と指が擦れる度、くちゅくちゅと粘性の音が響き、沸き上がる快楽にデレの頭は支配されていた。
ζ(////*ζ「おねぇ、ふぁま……ひぅっ!! デレ、はあはあ……もぅ……あぅん、だめですぅ……!」
ベッドで横向きになり胎児のように膝を抱えて、大切なところ弄るデレ。
狂おしいまでに昴ぶるが、大切なお姉様を妄想して気をやってしまうなど本当にいいのかと、理性が本能を責め立てる。
ζ(////*ζ「はひぃん! ……この、ままだと……いっちゃう……」
歓楽と罪悪感の狭間で揺れるデレの胸中で理性が打ち勝ち、達する前に指を引き抜くことに決めた。
もう十分、続きはいつかお姉様と。
惚けながらそんなこと考えていた少女はうっかり手を滑らせて、上部にある包皮を被って屹立した核に触れてしまう。
ζ( ー *ζ「あふぅっっっ!?」
予期せぬ快楽の爆発に、熱を帯びた身体は容易く絶頂を迎え、股間を幾度も跳ねさせる。
窪みからはとめどなく蜜が溢れかえり、太腿を伝ってシーツに小さな染みを作った。
110
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 01:12:52 ID:xaNXjZl.O
ζ(////*ζ「はあはあ、はあはあ、いっちゃった。私、いっちゃったんだ……」
心地のいい気怠さに身を任せていると、惚けた頭に浮かんだのはお姉様と慕う少女の顔だった。
ζ(゚ー゚*ζ (私は、なんでお姉様をこんな)
なぜこんなにも惚れ込んでいるのか。
襲われているところを助けてくれた。
それもあるだろう、だが決定的な理由とは感じない。
きっともっと他の理由があるはずだとデレは考えた。
だが、どれだけ考えても分からない、分からないのだ。
何か重要な事が頭から抜け落ちている気がする。
111
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 01:13:43 ID:xaNXjZl.O
世に生を受けてから十の年を数える間、少女は常にベッドの上で生活を営んでいた。
誰が望んでそうなったわけでもない。
もしこの世に神がいるならば、彼女を作り出すときにほんの少しの手違いを起こしたのかもしれない。
人の姿に生まれながら、どれほど渇望しようと人並みのことが叶わぬ身体。
当然少女自身が、疎まないわけがなかった。
そして十歳を迎える誕生日、少女の人生に転機が訪れる。
手に入れたのは思い通りに動く身体と、神威という名の人並みを外れた力。
失ったのは両親と、ただの人間だった過去の自分。
ζ(゚ー゚*ζ「ああ、そうだった。もはや私はデレではなく――」
地獄の中で少女は知った。
あんなに惨めでも、今までの自分は人間だったのだと。
ζ(゚ー゚*ζ「……神様は完璧なものは作らない」
完璧でないこの世界で、全ての人が幸せになどなれるわけがない。
ζ( ー *ζ「それでも救われたいと願うのは罪なのでしょうか。ねえ、お姉様?」
番外二話 完
112
:
名も無きAAのようです
:2013/06/04(火) 01:18:39 ID:xaNXjZl.O
ご愛読ありがとうございました
次回こそはさほど時間を空けずにいきたいと思います
113
:
名も無きAAのようです
:2013/06/05(水) 00:10:57 ID:AFFeTBhw0
乙ッ!
ずっとずっとずっとずーーーーっと待ってた!
114
:
名も無きAAのようです
:2013/06/05(水) 19:16:16 ID:h20Ulhe6O
>>113
お待たせして申し訳ありませんでした
暖かい言葉をかけて頂けて救われます
次の話は八割方書けているので、次回は遠くないうちに投下できると思います
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板