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企画もの【バトル・ロワイアル】新・総合検討会議
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雑談、キャラクターの情報交換、
今後の展開などについての総合検討を主目的とします。
今後、物語の筋に関係のない質問等はこちらでお願いします。
規約はこちら
>>2
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>>741
代理投下ありがとうございました。
次の交渉話は日曜夜か休日開けの月曜を予定です。
>>742
了解です。
頑張ってください〜
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>>#6 585
(二日目 PM6:28 E−8・漁協付近)
透子は輝きを失ったひび割れたロケットを見つめていた。
口だけで呼吸をしながら、ただ呆然と。
『つまり、今のあなたには救助活動は無理だと解釈してもいいのですね?』
「…………」
頷くのがやっとだった。
通信の向こうのN-22にとっては、なんの意味の無い行動になってるのにも関わらず。
彼女らしくも無い動揺だった。
『御陵透子、応答願います』
「…………ええ、その通り。火災の対処も、できないと思う」
『……了解しました。何かあれば通信機で連絡を。
こちらから連絡を入れるケースもあるので紛失されないよう』
「……ええ」
透子の力ない返事を合図に通信は切れた。
破損したロケットを透子は再度握り締め、願う。
『読み替え』をするのではなく、プランナーと連絡を取る為に。
契約のロケットが前触れも無く破損した事の意味を問いただす為に。
(プランナーと連絡を)
だが先程のように思惟/情報がロケットに流れる感覚は無かった。
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もう一度、透子は連絡を願ったが変化はなかった。
(どういう、こと?)
契約のロケットはゲーム開始前に、これ以上の前報酬は要らないと言っていた透子に対して
ルドラサウムからゲーム報酬の誓約の証として半ば強引に与えられた物だ。
これがもし、二神のいずれかによって破壊されたとするなら、其れは監察官を解任されたと解釈できる。
「……」
このタイミングで解任させられる程、これまで運営から逸脱する行動を取った覚えは透子にはなかった。
確かにゲーム前に提示された禁則事項に触れてなかったとはいえ
参加者に支給される品を意図的に低レベルのものにしたり、ゲームに乗る者を増やす為に暗躍するなど、運営陣がゲーム運営のみならず
参加者との力関係も更に有利なものにしようとしたのは間違いない。
だからこそプランナーの宣言を、少なくとも透子は運営者全員に対する一種のペナルティとして、素直に受け止める事が出来た。
しかし、そんな彼女でもいきなりの契約破棄と、『読み替え』禁止は予想と覚悟を超えたものだった。
(タイミング……椎名智機の分機の排除が原因? だけど、それはゲーム運営の障害にはなりえない)
警告をした理由が、朽木双葉の邪魔をさせたくないからと言うのは間違ってはいない。
だが破壊した事に関してはまた別の理由がいくつかあった。
(椎名智機の存在をアインと朽木双葉に知られてはいけない)
両者ともD-1を目撃していたがすぐに爆散したため、その正体について深く考える事はなかった。
『赤い変なの』程度の認識だっただろう。
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だがN−13を見つけていればどうなっていたか。
オリジナルとほぼ同じ外見をしているだけに、レプリカが存在しているのを知らないだけに
N-13を目撃すれば、両者ともそれなりに警戒したに違いない。
下手すれば、ルドラサウムが楽しんでいるだろう戦闘を水入りされる可能性があった。
そしてD-1が行おうとした、素敵医師が存命している時点でのザドゥに対する捕獲行動。
それはザドゥが禁止行為と位置づけた運営者同士の傷害、致死行為に繋がる。
(……そう)
筋弛緩剤を投与され無力となったザドゥに対して、素敵医師が何もしない、できないという保証は何処にもない。
残されたアインが素敵医師を即座に殺せる保証も何処にもない。
もし素敵医師の手によってザドゥが洗脳・強化されるような事があれば、これまで以上に彼の手によってゲームをかき回されることになってしまう。
更に分機がザドゥに手際よく投薬する様を、アインが目撃してしまおうものなら、運営陣にとってもっと都合の悪い事になっていた。
透子は知っている。
アインが素敵医師に大きく執着しているのは、何も個人的な恨みだけが原因ではないことを。
素敵医師がザドゥ以上に参加者にとって危険な障害であると、アインが思ってるからこそ
素敵医師がアインを縛り付けていた、サイスという男と同じタイプの人間であったからこそ
彼の抹殺こそがゲーム転覆の近道になると心のどこかで信じ、その過程で犠牲を出してしまっても目を背けられて進むことができたのだ。
そんな彼女がもし素敵医師のように洗脳・強化を行える敵が、他にもいる事に気づいてしまえば、高確率で『素敵医師を何が何でも自分で殺す』というこれまでのスタンスから、
『運営陣の薬物使い全員を何が何でも殺す』というスタンスに変えてしまっていただろう。
そうなれば素敵医師を直接殺すことは諦め、目的達成の為にあえて森からの脱出を選択していたのかも知れない。
そして脱出に成功し、運営陣の内情が魔窟堂らに伝えられれば、ゲーム運営が困難から至難なものになっていた。
運営者としても、双葉の絶望を知る者としても、その展開だけは透子としても回避する必要があったのだ。
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分機破壊時に智機は救助妨害と非難していたが、透子にして見ればザドゥへの捕獲行為こそが妨害行為に他ならない。
あの時、反論しなかったのは面倒だから黙っていた。
透子は次に双葉の方を考えた。
(それとも……朽木双葉への支援が原因? 支援の積もりはなかったけど)
プランナーの宣言前に優勝報酬があることを双葉に告げたが、それも禁止行為ではない。
素敵医師と違って道具提供は愚か、強化も参加者の情報提供さえしていない。
ルドラサウムの気分を害する行為をしたつもりはない。
透子は答えを見つけられずにいた。
(そういえば、あの警告もプランナーが告げたにしては不自然だった。
本当に彼だったの?……それも含めて確認を取らないと)
夕方にロケットを通じて透子にされてきた『これからは参加者への支援・薬物投与の禁止』という警告。
内容自体は透子から見れば不自然ではないが、するのなら素敵医師が解雇された直後にするのが自然だった。
何で解雇から数時間経過した後にされたのかが不可解だった。
(ますます判らない……。それにロケットが破損しているのに不安定になっていない)
自同律が崩れ自らの存在が消失しそうな兆候は、今のところない。
喪われた『彼』の存在も、これまで通り微弱だが空から感知することが出来る。
解任されたという判断材料は壊れたロケットのみ。
(何をすればいいの)
願いを叶えさせたい身である以上、不確かな事でこれ以上放心している場合ではない。
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先に進むにはロケット破損の理由を、契約の事を知る必要がある。
ロケットを通じて連絡が取れないのなら、ザドゥにプランナーへの取次ぎを頼まなければいけない。
仮にも運営のリーダーを任されているのだ、非常時に何の連絡も取れない訳がない。
透子は徒歩で学校に行こうと一歩踏み出し、足を止めた。
(……面倒)
眼前には廃村が見える。
学校跡までの距離はさほどあるわけではない。
それでも透子から見れば辿りつくまで困難な道のりに思えた。
透子は歩くのを止め、転移できないかと諦め半分でロケットを握り、念じた。
変化は無かった。
透子は諦めずに、今度は通信機を手に取った。
(……)
移動手段にDシリーズに自分を運ばせてもらうか、ジンジャー持ってきてもらおうかと透子は考える。
だが流石にそれはやってはいけない事だと、気づいて即座に思い直した。
ふと森の方を見ると、火災は遠目からもますます広がっているように思えた。
(救助と消火は智機のレプリカ達がしてくれる。でもこのままいけば、ますます天秤は対主催の方へ傾く)
透子としてはそのまま徒歩で、本拠地や東の森に向かうのはリスクが大きかった。
参加者と遭遇してもまずい。
透子はロケットを放し、ポケットに入れてため息をついた。
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(やはり、クビになったかも)
無力感と共に脱力感と倦怠感が透子を包み始めた。
範囲が狭まった意志感知と読心だけで、どうやって単独で監察役と自衛ができるのだろう。
個人個人の良心の呵責を別にすれば、今の自分はさぞかし弱い駒だろうと透子は漠然と思った。
武器も所持していないし、仮に持っていたとしても銃や刀剣類なんか扱えない。
それに本拠地に戻ったところで智機とケイブリスいるのみ。
透子の現状を二人が知れば、これまでの関係がよくないだけに仕返しされてしまう可能性は高い。
仮に無事に済んだところで、智機が透子の為に取次ぎをしてくれる可能性はかなり低い。
こうなって来ると、ますますザドゥに頼むしか方法がない。
だが『読み替え』が出来ない状態で、森の中に入っても煙に巻かれてすぐ死ぬだけだ。
このまま留まっても、参加者と遭遇する可能性はある。
徒手空拳で太刀打ちできそうな相手は今の参加者の中にはいない。
というか透子自身、攻撃力・生命力・防御力などは常人と同等かそれ以下。
つまり……
(今のわたしはユリーシャより弱い)
契約のロケットを所持してからは、自己防衛の為の常時『読み替え』が発動するようになっていた。
自身の反射速度を超えた攻撃が来ても、ロケットそのものに当たらない限りは、自動的に無効化できる防御能力を常時保持していた。
そのロケットが使えなくなった今、取れる防御手段は非常に少なく、弱かった。
透子の肉体はあくまでただの人間なのだ。
手詰まりだと透子は思った。
(疲れた。どこかにベンチはないかしら?)
ゲーム運営の完遂が成功の条件だが、もうザドゥらの力になれそうもなかった。
監察役が逃げ続けろとでもいうのだろうか?
そう思えば思うほど、解任させられたとしか思えなかった。
(仁村知佳……今ならあなたの気持ちが判る)
読心しか使えない疲労した状態で、恭也と共にグレンとランスという脅威を切り抜けた彼女を、透子は素直に褒めた。
少し、羨ましいとも思った。
そして、相変わらず自分は孤独と強く思った。
透子は深くため息をついた。
(ここは思惟生命体の一種と言える、天津神の『大宮能売神』さえ存在を維持できなかった世界。
仮に転生する力が残っていても、この島から脱出できない限りそれも叶わない )
透子は建物の壁に背を預け、夜空を見上げた。
火災の煙が雲のように空に広がっているが、まだ綺麗な星空が見えている。
透子は瞬きをしないままそれぞれの星を見つめ、どういう最期を迎えるのだろうと思った。
(あの人を感じながら、消えるのなら……)
同時に出来れば、自分の最期は自分で選びたいとも願う。
死後、自分の精神体がこの世界に留まるような事があれば、いずれ紳一に襲われてしまうだろうから。
人間の女性の肉体を持つゆえか、流石の透子もそれを想像すると気分が悪かった。
願いが果たせず、死ぬのなら意思そのものもこのままこの世界から消失したかった。
「でも……広場まひるは記憶を磨耗させた後も朽ち果てずに、望みの一部をここで叶えた」
だが昼に読んだ広場まひるの記憶を思い出した事により、消失願望の加速はここで終えた。
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(終わったと思い込んでるだけで、まだ望みはあるかも知れない。
そう……アズライト)
消滅願望はアズライトも持っていたのを透子は知っていた。
彼はこの島に来て鬼作らと干渉した結果、レティシアとの再会を諦め、しおりを助ける為に死を選んだ。
罪悪感と無力感との違いはあれど、自らを嘆き死を望むという点と
喪われた最愛の人との再会を望んで長い時を生きてきた点では同じだ。
以上の点で彼に多少の興味があった透子は機会があるならアズライトと一度話をしたかったのだ。
だが、その機会は訪れなかった。
智機から止められたり、先に芹沢が鬼作に警告した事などがあったから、。
彼らの死も事後報告で初めて知ったので、どういう風に死んだのかさえ透子は知らずにいた。
ならせめて、アズライトの最後の記憶を検索しようと、しおり退出後に再建された学校内に透子は入ったのは午後2時ごろの事だった。
そこで先に拾ったのはアズライトのではなく、鬼作の記憶だった。
だが、それは予想に反し、透子の興味を引くだけものだった。
その結果、アズライトの記録を読むまでもないと判断させるくらい、透子にとって貴重な情報と教訓を得ることが出来た。
「まだ早い」
諦めるのは早すぎると透子は自分に強く言い聞かせた。
そしてアズライトに対し思うところがある透子は心中で、智機のやり方を非難した。
(あなたのやり方は、雑)
同行者への介入が終わるまで、スタンガンで動きを止め続けていれば良かったにと思った。
アズライトが変心または死亡さえすれば、彼一人が放置されたところで、主催にとってまず脅威にはならない。
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生存してたらしおりと協力関係を築こうとするかも知れないが、反主催として活動しようとしても、
しおりの精神状態を考えるに、その関係は長続きできなかっただろう。
共同で殺戮に勤しむ展開になるなら、運営にとってむしろ好都合だった。
それに鬼作自身、これまで生存者との接触は少なく、所持品も戦闘力も大したことはなく、
容貌の悪さや情報の少なさからして反主催として、他参加者との協力関係を築けるだけの材料は乏しかった。
つまり対主催として動こうとしても動けないはずなのだ。
無力で孤独ゆえに自殺でもしない限り、ゲームに流されるしか存在。
絶対ではないがアズライトとの関係が破綻すれば、こうなってただろうと透子には想像できた。
透子は智機の非情さを非難しているのではない、考え無しに鬼作を殺したのが問題としていた。
(アズライトもわたしが動きを止めた上で
優勝報酬を伝えて置けばどう転ぶか判らなかったのに)
アズライトの望みが、二神に叶えられるかものかどうかまでは現在は判らない。
だがもし仮に鬼作の記録を読んで気づいた事を告げていたら、高い確率でスタンス変更をしていたはずだと透子は思った
そして、その事を確実に知っている智機が、何故その事を直接告げずにいたのかと、透子は其れを不審に思っていた。
これまで読心で智機から情報を探ろうとした事は、何度かあった。
しかし椎名智機を対象とした読心は効果が薄く、本体に至っては更に読み取りにくく、
肝心な情報はほとんど得られてなかった。
何故か記録もほとんど残さない。
心の声が聞ける透子が智機に質問したのは、彼女の心を表面上しか読めなかった事もあったのだ。
気づけば透子の掌には汗がじっとりと滲んでいた。
-
(こういうものなのね……)
今ではプランナーへの意思確認や、紳一のを初めとする記録の検索を、継続したいと強く望んでいる。
ここに来て強い好奇心が自分に芽生え、突き動かすとは思わなかった透子自身想像だにしなかった。
(そう……彼と同じ轍を踏む訳には行かない)
アズライトよりも長い年月、彼女は願い続けてきたのだから。
彼と同じ様に何が真実か判らないまま、自滅だけはしたくはなかった。
「……」
透子から見て学校跡までは距離があった。
彼女は失敗を承知の上で『読み替え』を実行しようと、ロケットを取り出そうとした。
「……」
ロケットは取り出さなかった。
駄目元に過ぎない、転移できないのなら今度こそ徒歩でと覚悟を決めて、
目を瞑りながら本拠地のある廊下を強くイメージした。
「……!」
身体が軽くなったような気がした。
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□ ■ □ ■
鬼作
(二日目 AM10:00 校舎裏)
ありゃあ……主催者の一員じゃねえか。
それも白衣とぱっつんぱっつんの水着姿で外を歩いてやがる……!。
俺はここに来て漸く見つけた獲物に息を弾ませる。
行水かあ?
ゆっくり堪能する時間がないのは残念だけどよぉ、、背に腹は変えられねえ!
ここで不満を解消させてもらうぜ。
……アズライトとガキは気づいてなかったようだな。
好都合だぜ。
俺様はあの女に気づかれないように距離を置いて尾行をする。
物腰からしてどうも素人のようだ。
へっへへ……間違いなく獲物だ!
いいケツしてやがるぜえ……あまり顔はよくねえけど、いい肉壷を味わえそうだ。
俺は奴に気づかれないように、獲物との距離は確実に縮める。
しっかし、あいつら大丈夫かよ。
まさか部屋を見つけられなくてここに戻ってくるんじゃねえだろうなあ……。
女がこちらを振り向いた、俺はとっさに身を隠した。
女はおびえた表情を見せていやがったが、安堵の表情を浮かべると散歩を再開した。
-
やべえな……あの表情……
こちらまでいい香りがにおってきそうだぜ。
「………………」
糞っ……不安だぜ、あいつら本当に主催と満足に戦えるのかよ。
アズライトは度が過ぎる甘ちゃんの上にズタボロだ、あのガキも頭がおかしいまんまだ。
まともな判断が出来るとは思えねえ。
現に俺が最初に兄貴達と襲撃かけたのを覚えてないしよ……。
……何でこうなっちまったんだ?
! くそ、俺は何を考えてやがる!?
んなもん悪趣味な遺兄ィの所為に決まってるじゃねえか。
肉壷にもならねえガキ相手に何をセンチになってんだよ。
………………。
俺は何とか声を出さずにすんだ。
まてよ……あのガキがくたばれば、多分アズライトは使い物にならなくなるな……。
……! くそっくそっくそっ、手詰まりじゃねえか。
もっと戦力を増やさねえと話にならねえ。
折角の獲物を前にして引き返すのかよ!?
ん。なんだこりゃあ。
足元にビニール線がある。
電気コードか?
-
「!」
女が立ち止まりやがった。
俺は下らない考えを頭から消し去り、いよいよかと期待と性欲を膨らませ、
どうやってあいつを犯そうかと考える。
……………………待て。
これは罠なんじゃねえか。
女がこっちを向きやがった!
な、なんだ……この笑いは。
こっちから求めに来てんのか。
「!!」
な、何ィ……もうすぐ死ぬんだからここで楽しめよ、だと。
そんな度胸もないのか、だとぉ!
ふざけるなっ!犯しまくってやるぜ!
う、うううっ、うおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!
◇ ◆ ◇ ◆
なんだあの数は……。
けっ……俺達にゃ、ハナっから勝ち目は無かったって事かよ……。
にしても…………あのガキ、凄えな。
弾丸切ってやがる……。
……なんだあ……あのテレビは?
……あれが、アズライトが、言っていた……レティシアか?
「……」
お嬢ちゃんも長続きしそうにないな……。
けどよ……そうなる前に意地見せてやるぜ
俺に気づかないガラクタどもに目にもの、みせてやるぜぇ……
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◇ ◆ ◇ ◆
へ、へへへへへへ、えへへへ…………
あのガラクタども、今に見てやがれっ……
俺は最後のガスボンベを運びながら、奴等に気づかれない様に小さく笑った。
……俺様って案外すげえんじゃねえか?
溜まってたからその所為かもな……。
アズライトの野郎、まだモニターを前に固まってやがるんだろうなあ……。
ちったあ、ガキを見習えよ……。
………………アズライト、おめえは思いもつかねえだろうし、知らない方がいいかも知れねえし、
もう手遅れかも知れねえから伝えねえがよ……。
おめえの探していたレティシアはきっと……主催者どもの所にいたんだぜ。
でなきゃ……なんでブラウン管の向こうに写ってやがるんだよ……。
見間違えるほど、呆けたのかよ。
そうじゃねえんだろ?
俺は流血で悟られねえ様に、手ぬぐいで血を吸い取る。
…………………………!
頭が上手くはたらかねえ……俺のはいぱーこんぴゅーたーもめんてなんすが必要かあ?
くだらねえことを思いついたぜ……。
俺の……俺達の血を引いてるのが、あのガキみてえに美人に生まれる筈がねえだろ……。
あのガキどもとブルマー女の顔を思い出しちまった、情けねえ……。
…………本格的にヤキが入っちまったか。
俺はナイフを強く握り締めた。
第一、何十年前の話だよ。
それもすぐに死んじまったじゃねえか、夢見すぎてんだよ。
やべえ……!
あいつ……まだ……!
いい加減にしやがれぇ!!
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□ ■ □ ■
(二日目 PM6: 管制室)
「救助は無理ですか」
「ええ。ザドゥ達は無事?」
「救援物資を持ったレプリカを向かわせました」
「火災は?」
「我々が対応いたします」
「そう」
透子はN-22にそう返答した。
管制室の前の廊下に透子が現れたのはつい先ほどの事。
自分を対象とした『読み替え』が発動したのだ。
次に透子は言う。
「オリジナルはどうしたの」
「基地にいますが、戻ってくるのに時間が掛かりそうです」
「……そう」
N−22から数歩後退し、透子は天井を見上げ想った。
(朽木双葉……)
素敵医師と朽木双葉とアインの生死をN-22から確認したのも、つい先ほどの事だった。
透子が唆かしていた朽木双葉と他2名は死んだのだ。
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双葉が死を迎えたことは透子にしても残念なことだった。
予期せぬ形で想い人を喪った双葉には、透子も同情する部分があった。
だから優勝できずに死んでしまうなら、せめて苦しまずにいてほしいと心の片隅で思っていたが、
最後に検索した記録と、さっきの報告を総合すると、安らかは程遠い最期を迎えたと透子には判断できた。
「……」
小さな喪失感なのか、言い知れないもやもやが透子の胸を叩いたような気がした。
(……次は)
だがこれ以上、透子が惑うことは無かった。
これからザドゥを通じてプランナーから確認を取らなければならないから。
わたしはこれからどうすればいいのか、わたしは脱落したのかと、問う為に。
その前に智機本体らがここに来る前に、管制室でやることがある。
透子は管制室から記録を読み取ろうとした。
智機本体の記録を探る為に。
(…………ない)
不自然なまでの記録の少なさに、透子は智機に対策を取られていると思った。
レプリカ達の記録はあったが、それはさっき透子が予測していたのが当たっただけに留まり、一番知りたい情報はなかった。
それに加えて透子は知る由も無いのだが、ケイブリスと智機の密談などの記録も何故か拾えなかった。
「何をしているのです?」
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「別に」
N−22からの追求をそっけなく返す。
(諦め……)
『……にぁ……も……ぃ……』
「!」
聞いた事の無い声の記録を透子は拾った。
もう一度検索する。
『……にぁ……も……ぃ……』
(誰?)
はっきりしていた。
二神と運営陣と参加者の誰の声でもなかった。
「誰か、来た?」
「誰も来ていませんが?」
「でも……」
男か女かよく判らない、高い声だった。
紳一の時とは別種の存在がいると透子は思った。
他の記録を注意深く吟味するが、さっきと変化は無く『声』もそのままだった。
N-22は透子をしばし見つめ続けてから言った。
「御陵透子、お疲れのようです。自室での休憩を薦めます」
「……」
N-22に言うとおり、疲れているのは確かだった。
だが透子はあることに気づいてN−22に言った。
「しばらくここには戻ってこない」
透子は学校付近のある場所をイメージし、とっさにそこに行くのを強く願った。
N-22の制止の声が上がったが、それを無視して管制室から透子は消えた。
智機達がザドゥ達の救助に専念していると誤解したままに。
-
□ ■ □ ■
(二日目 PM6: H−6・学校跡付近)
透子は『読み替え』で望んだ場所――学校付近への転移に成功していた。
すぐさま通信機のスイッチを入れてN-22に向けて言う。
「またわたしの方から連絡する」
透子は電源を切って、通信機を草むらに隠して、その場から100メートル以上離れた。
それから安堵の息を吐いた。
(本拠地……わたしの部屋に行くのも危険。
椎名智機との接触は、これからはなるべく避けた方が無難)
智機がアズライト達に取った手段を再確認したからこその行動だった。
転移くらいしか『読み替え』の使い道がないのでは、ちょっとした不意打ちでも倒されてしまう恐れがある。
ロケットなしでどれだけ『読み替え』が通じるのか早急に知る必要があった。
(色々、試してみないと……。それより前に道具が必要)
自衛の為にも扱える道具はあるに越したことは無い。
本拠地に行けば銃器や電子機器はたくさんあるが、救助に必要なものは既に智機が使用・管理している。
と、なれば島から調達するしかないのだが、銃などの強力な武器はなく、紗霧が使えそうなのをあらかた持って言った後だ。
望みの品は手に入りそうに無かった。
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(……灯台付近には隠し部屋1がある。
砲撃で灯台は破壊されたけど、わたしが知る限りまだ手は付けられていない。
もしかしたら解放されているかも)
解放されてなお、未使用のまま放置されていれば、運営者も手を付けて構わないことになっている。
破壊されてたり、素敵医師がすでに利用してたりするかも知れないが、その場所を透子は知っているので
収穫は無くても時間はそれほどロスしない。
(長谷川の隠れ家にも使えるものが残ってるかも)
記録からして森の西の端辺りH-3に彼の隠れ家がある可能性は高い。
(彼は参加者の支給品もいくつか持っていったはず。説明書付きで残っていればいいけど)
ゲーム開始より何時間か前、素敵医師はランダム支給品のいくつかを別のガラクタに交換していた。
まだ参加側に有利だからというのが、素敵医師の言い分だった。
智機は止めなかったし、芹沢も止めなかった、ザドゥはやや渋い顔をしていたがそのまま通した。
透子は元より追求する気さえなかった。
余談だが、参加者が全員が出発した後に死んだタイガージョーの支給品や、デイパックを持っていかずに行った広田寛の支給品を比較的見つけやすい場所に
配置するようにザドゥは透子に命令を出している。
ザドゥが流石にまずいと判断したからだ。
透子はそれに従い、使えそうな日用品数点を含めて、第一放送前に廃村を中心にそれらを配置していた。
(残っていれば、いいけど)
透子は灯台跡付近に向かうべく、自らを対象に『読み替え』を行い、この場から姿を消した。
-
□ ■ □ ■
(管制室)
N-22の双眸から横に光の線が流れた。
それから一分くらいあとにN−27はN-22に問いかける。
「予定時間を過ぎた」
「ああ、もうそんな時間か。だが問題無い」
「優先順位は低いからな」
「絶対必要ではないからな」
「それに仕方ない」
「そうだ仕方ない」
「我々に余裕は無いからな」
「だが向こうにとっては想定の範囲内」
「だからこそ我々は作業に専念できる」
「そう、この場合……」
交互に声を出していた二機が今度は揃って結論を口にする。
「「向こうが我々の代わりに行う手はずだからな」」
↓
-
【監察官:御陵透子】
【現在位置:H−6・学校跡付近→Ⅰ-5・灯台跡付近】
【スタンス:① 隠し部屋1と素敵医師の隠れ家を探し、そこでアイテムを回収する
② ①の後、『読み替え』でどれだけの事が出来るか実験する。
ザドゥ達の救出が単独で不可能でないと判断したならそれを試みる。
ザドゥに会えたらプランナーとの交渉を頼んでみる。
智機との接触は極力避ける。
③ ①と②の後、紳一(亡霊)とアズライトの記憶検索を始める。
ルール違反者に対する警告・束縛、偵察は一旦、中止
【所持品:契約のロケット(破損)】
【能力:記録/記憶を読む、『世界の読み替え』 (現状:自身の転移のみ)】
【備考:疲労(小)、通信機は学校跡付近に放置。】
【レプリカ智機・代行(N−22)】
【現在位置:C−4 本拠地・管制室】
【スタンス:管制管理の代行】
【所持品:内蔵型スタン・ナックル】
【レプリカ智機・オペレータ(N−27)】
【現在位置:C−4 本拠地・管制室】
【スタンス:火災対策タスクのオペレーティング】
【所持品:内蔵型スタン・ナックル】
※透子は智機達がザドゥ達を見捨てる判断をしたことに気づいていません。
※透子の管制室での行動は智機本体に伝えられました。
※透子に伝えられた『警告』はプランナーのものであるとは限りません
※管制室での『謎の声』の主は現在不明です。
※鬼作と交わったレプリカ智機は外見は人間とほとんど同じでした。
-
修正稿、投下完了です。
本投下の際は他作品にあわせて時間表記を調整します。
問題が無ければ明日の深夜12時以降に本投下します。
新作の感想は今夜に。
-
> 歪な盤上の駒-道
ザドゥの外出が今になって大きな意味を持ち始めてるなぁ。
本体がレプリカをハッキングするとはこれは意外。
まさか智機がザドゥを6人組にぶつけさせようと考えるとは……。
芹沢とタッグを組んで戦えば、6人組の勝算が低くなるだけに
戦闘に至るまでの過程がどうなるか楽しみ。
遂に来るのか魔窟堂の初戦闘。
ケイブリスとしおりの存在が対主催へのトドメになりそうな感じで緊張感がある。
良い繋ぎGJでした。
本投下の際、何行か描写の追加があります。
最後のレプリカの会話はメール欄のつもりで書きました。
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>>764
仮投下お疲れ様です。
特に問題はないと思います。
段々とラストに加速して行ってるのがわかって楽しみになってまいりました。
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遅れてしまいましたが、これから新作『ねがい』の本投下を始めます。
全部で21レスです。
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本投下完了しました。
次は素材の更新・作成作業に入ります。
今週中のUPを目指します。
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>>743
ごめんなさい。
書き終われなかったので、明後日以降に伸びますorz
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少々長くなりつつあるので明晩に交渉話の半分を仮投下します。
全文が間に合わなく、半分に問題がなければ日曜夜にそのまま前半部として投下します。
重ね重ね遅筆で申し訳ない。
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すみません、素材UPは今週の火曜日になりそうです。
その前にSS分だけまとめたものを今深夜にUPします。
火曜日のUPは以下の通りに仕様変更する予定です。
※キャラ追跡表の【椎名智機】と【レプリカ(全機を1つのキャラとして)】を別々のキャラとして扱う。
※死亡後のキャラ登場話で新規の台詞や動作が無い場合は(亡霊クレアとかは別)登場話としてカウントしない。
※各話にあるキャラ追跡欄で次の登場話が被るキャラ達は次登場話のリンクをひとつにまとめる。
※キャラクター紹介(ネタバレなし)は説明書や紹介サイトを元にして作成。
※キャラクター紹介(ネタバレあり)は作中の動向を中心に作成。
これらの仕様変更で不都合がありましたら、変更または取りやめも視野に入れてます。
ご意見がありましたらどうぞっす。
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274話までのSSと地図とリンクを更新した素材をUPしました。
ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org9749.zip.html
パスは rowa です。
特に異論が無ければ、次回更新時に『そらをみあげて想うこと』は『Why?』の前の話にしたいと思います。
その際に『Why?』の本スレ投下時に削除した部分も追記したいと思います。
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>>771-772
了解しました。
此方は問題ありません。
必死こいて今かいてます。
明日休みなので仕上げるんじゃぁぁぁぁ。
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えー……すいません。
再UPが今週末くらいにまで遅れそうです。
加えて『Why?』を確認してみたところ恭也が登場するのは変なので、再UP時に修正版を加えます。
それと同時に本スレにて修正報告をします。
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時間がないこともあって、今ようやくSS分を纏めたところです。
すみません。
近日中に新コンテンツ分をUPできそうですが、その前に『Why?』修正版をここに投下します。
その後、本スレで修正報告を行い、それからSSまとめ最新版をここにUPします。
追加分の文章を向こうに投下すると1レス超えるので、ここでのレスのリンクを貼り付けます。
それから新コンテンツ分のUPの有無に関わらず、明日の晩に作品の予約をする予定です。
話の内容は現状不定ですが、アナザー化は覚悟の上です。
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#6 662-665
(二日目 PM1:55 病院内)
――見つけたそれはその場に似つかわしくないものだった。
使える衣服がないかとロッカーを物色してた時、それを見つけた。
ここどこだっけ?と疑念がまひるの脳裏をよぎった。
まさかと思いたち、それを手にとって恐る恐る臭いを嗅いで見た。
服の臭いしかしなかった事に安堵する。
あたしって下品だなあと、心の中で呟きながら、鼻歌を歌いながら選んだ服をデイバックに詰めた。
部屋から出ようとした時、もう一度『それ』を見つめた。
不自然さにまた眉をひそめた。
まひるは十秒近く凝視した後、それを手に取って折りたたみ、ビニールに入れてデイパックに入れ、
すぐさま部屋を出たのだった。
□ ■ □ ■
(二日目 PM6:12 西の小屋)
「駄目です」
地図に載っている小屋に行きたいというまひるの提案は、紗霧によってあっさり却下された。
何でと、言いたげな一行を目の前にして、紗霧は両目をつむりながら疑問に答える。
「此処に行った所で良くて誰もいないか、悪ければあのロボットが待機してる可能性があります。
もし主催が私達の居場所を把握していない場合は、向こうに好機を与えることになってしまうんですよ?」
-
「うーん……」
予想してた通りの返答ではあったが、叱られてるようで何か居心地が悪かった。
少々ではあるがまひるの表情には落胆の混ざった困惑が浮かんでいる。
「何か在るとしても参加者の死体でしょうね。彼らの支給品も使い物にならないものになっているか、
持ち去られてるかの何れかでしょうし」
と紗霧は言う、心の中で迂闊な参加者のと付け加えて。
狭い建物かつ森の中にある最初から所在の知れた小屋など、殺人鬼にとって格好の狩場になりかねない。
「死体があるなら、弔ってやりたいんだけど」
「……首輪の事を忘れてませんか?」
言うや紗霧は自らの首を親指で指す。
「あの首輪は解除されても、向こう側に色々と解るものなのですか?」
「其処までは解りません。ですが用心に越した事はありません」
ユリーシャの質問に受け応えをしながら紗霧は考える。
対人レーダーと首輪を魔窟堂に調べて貰えば、その辺の事が解る可能性は充分にあるだろう。
だが、これくらいのことで機能停止のリスクを背負ってまで、レーダーと時間を無駄使いしたくは無かった。
実際は解除後の首輪の探知機能等は機能してないのだが、彼女らがそれを知る由はない。
その事を知っていたら、紗霧は解除後の首輪を罠の材料等に活用していたことだろう。
「う〜ん……」
死体を見つけたら見つけたらで、身元を見極めれば生き残りの参加者の情報も、
解りそうなのにな思ったが、数も多い上に堂島薫のようにバラバラになって、
身元の割り出しが困難な死体があった事も思い出し引き下がることにした。
-
「……じゃ諦める」
渋々まひるが返答したのを受けて紗霧は視線を外そうとした。
が、がさごそと物音がまひるの方から聞こえたので再びそちらの方に目を向ける。
「………………何ですかそれは?」
「あたしもこれ見つけた時はそう思った」
「それって……」
まひるはそれの両端を掴んで全体像をみんなに見せていた。
ユリーシャとランスはそれを――それと同じものをよく目にしていた。
「まひる殿……何を……」
魔窟堂も職業柄?それは結構目にしていた。
その為か心なしか声色は弾んでいた。
紗霧は半眼でしばし考え込み、彼女なりにややドスを利かせたつもりで言う。
「本題はこれですか? で、貴女はこれを何処から手に入れたんですか?」
「病院」
表情だけはにこやかに、内心では機嫌悪い時にやばかったかなと後悔しながらまひるは明るく答えた。
「……何で病院にこれがあるんですか? 変な趣味をお持ちの方が使ってたとでも言うつもりですか?」
「まったくの新品みたい」
言って、調達した本人はまたもや臭いを嗅ぐジェスチャーをする。
「支給品?」
-
ユリーシャが言った。これまでに一行は死んだ参加者のデイパック――支給品一式を2つ回収している。
その一つだと彼女は考えたのだ。
「ロッカーに入ってたよ。なぜか」
「そんな得体の知れないものは捨てて下さい」
「紗霧殿、捨てなくても良いのではないか?」
魔窟堂が優しく諭すように紗霧に言った。
まるでおイタをした子供をやんわりと叱り付ける親の様に。
紗霧は魔窟堂のこれまで以上の不審な反応にしばし返答に詰まった。
(意図は一体なんですか?
まひるさんは既に違う服に着替えている。
あの子には小さすぎる。となれば目的は……)
紗霧がその発言の意味に気づくのにさほど時間は掛からなかった。
困惑が怒りに変わったのもさほど時間は掛からなかった。
まひるは紗霧から怒気が膨れたのをを感じ、音も無く思わず後ずさった。
魔窟堂は熱いまなざしで紗霧の目を見つめ続けている。
そして、さっきまで悶絶していたランスは力ない声で、だがはっきりと言った。
「まひるちゃん……その服のサイズはいくらだ……」
「え、え、えと、あたしでもちょっと大きいくらいかな、かな?」
動転しながらまひるは何とか答える。
「そうか……」
-
ランスはゆっくり息を吐き出すと、ユリーシャの一瞥してから『アレ』を視線を移して言った。
「残念だ」
「お、そんな趣味?」
「特にこだわってねーが、中々いいデザインしてるし、いい素材使ってそうだし着てくれると嬉しいけどなー」
ユリーシャはランスの妙に自信溢れる台詞を聞いて苦笑いした。
いつか私はこういう服を着せられてしまうんでしょうか?と思いながら。
ランスに請われたら多分承諾してしまうだろうが、だからといって彼女の出自が出自だけに着るのは抵抗があった。
実家にいる芋好きの褐色肌の侍女の事を思い出しつつも、あの紗霧と魔窟堂を見続けた。
「着ませんよ」
紗霧は不機嫌そうに言った。
それを訊いた魔窟堂の表情が落胆に沈むが、熱いまなざしはそのままだ。
紗霧の眉間にしわが刻まれた。
「……まさかと思いますが……ジジイ……その服、アインさんにも薦めるのではないでしょうね」
「……………………」
魔窟堂は返答に詰まり、押し黙る。
目が見開かれ、口は半開きになり、彼の心中に閃光のような独白が轟いた。
(その手もあったか!)
紗霧は沈黙を肯定と受け取り、笑顔で魔窟堂に言った。
「見限られたいんですか、魔窟堂さん」
-
「さ、紗霧殿!何故わかった!?」
「雰囲気で解りますよ……ふふ」
「おぬし、何でそこまで殺気立っておるんじゃ!」
自らの右手を背中に回した紗霧に対し、身の危険をますます感じた魔窟堂が叫んだ。
メイド服とデイパックをユリーシャに預けたまひるは、すかさず2人の間に入って紗霧を制止した。
事態は何とか収拾しそうだった。
↓
【広場まひる(元№38)】の所持品、服3着の内一つは最高品質(防具にあらず)のメイド服でした。
-
最新274話までのまとめをUPしました。
『Why?』修正済みです。
各話追跡表の仕様も少々変更しています。
ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org30602.zip.html
パスは rowa です。
また今夜。
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予約します。
登場キャラはメール欄の予定です。
黒幕サイドの異世界との関わりに少し触れた内容になります。
仮投下は早ければ明日、遅くても火曜日の予定です。
それを過ぎたら破棄します。
ごく短い話になると思います。
仮投下から1、2日経って、問題が無ければ本投下します。
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祭典進行に筆をとられ年始で時間が取れず……駄目人間。
三が日開けたので近いうちに前編を上げれるよう努力します。
ごめんなさい。
>>783
了解です。
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すいませんが、本日投下できそうにないので一旦予約を破棄します。
今週の木曜日に何か通知します。
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今週の土曜日に>>783とは違うキャラで予約します。
その際、素材もUPします。
今度こそ更新できるといいな……。
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前のとほとんど変わりませんが……素材をUPしました。
ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1764.zip.html
パスは negiです。
時間軸は交渉後か交渉中になりますが
紗霧、魔窟堂、恭也(場合によってはレプリカ智機)を予約します。
内容自体は交渉とは関係なく、紗霧がある事に気づいた程度です。
回想話みたいなものです。
投下前後に交渉話が仮投下されれば、本投下時に内容をそれにあわせて修正します。
期限は来週の月曜日までにします。
それを過ぎれば破棄します。
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読み返してかなり展開に無理が出てきたのでNGにします。
アナザーになると思いますが今週中にここに作品を投下します。
すいませんでした。
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どうも、こんばんは。遅れて申し訳ございません。
「バトルロワイアルパロディ企画スレ交流雑談所(以下交流所)」の方でラジオをしているR-0109と申します。
現在、交流所のほうで「第二回パロロワ企画巡回ラジオツアー」というのをやっていまして。
そこで来る5/4(月)の21:00から、ここを題材にラジオをさせて頂きたいのですが宜しいでしょうか?
ラジオのアドレスと実況スレッドのアドレスは当日にこのスレに貼らせて頂きます。
交流所を知らない人のために交流所のアドレスも張っておきます。
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8882/1229832704/ (したらば)
ttp://www11.atwiki.jp/row/pages/49.html (日程表等)
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お、日程決まったんですね。お疲れ様です。
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ttp://r-0109.ddo.jp:8000/ (ラジオアドレス)
ttp://cgi33.plala.or.jp/~kroko_ff/mailf/radio.htm (聞き方)
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/5008/1241438450/ (実況スレ)
です
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乙です。
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ご無沙汰しております。
次回予定は水曜の晩、「タッチ・ユア・ハート/キャッチ・マイ・ビート」。
小屋組とレプリカ智機P−3が登場予定です。
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楽しみにしてます
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以下9レス、「タッチ・ユア・ハート/キャッチ・マイ・ビート」です。
指摘等なければ土曜晩に本スレに投下します。
次回予定は「悪夢」。
知佳と亡霊紳一、回想でタカさんファミリー等が登場予定、
来週水曜までを目処に、書きあがり次第このスレに投下します。
遅まきながら「はたらくくるま」は破棄とさせていただきます。
-
>>33
(二日目 PM6:30 C−6 西の森・小屋3)
「やあ生存者諸君、失礼するよ」
雪兎のように白い肌と赤い瞳の少女が、挨拶しながら小屋へと入ってきた。
その姿を見たユリーシャがランスの腕にしがみついた。
まひるはぎょっとした表情のまま固まっている。
少女を挟むようにして歩く恭也と魔窟堂は警戒心を漲らせ、
数歩遅れて入ってきた紗霧は怪訝な表情で少女を見つめている。
それも仕方の無いことだろう。
この少女は主催者・椎名智機のレプリカント・P−3。
病院にて彼らを亡き者にせんと襲い掛かった機械歩兵の姉妹機故に。
「おお、君が噂のロボ子ちゃんか。
想像してたよりずっと可愛いぞ、グッドだ!」
唯一、智機の恐ろしさを味わっていない男・ランスが能天気に声を掛ける。
いや、この男のことだ。
仮に病院で襲撃されていたとしても同じように声を掛けるやも知れぬ。
「お褒めに預かり光栄だね。私はレプリカ智機汎用型哨戒機P−3。
宜しく頼むよ、№02・ランス」
「で、なんだ。智機ちゃんは投降したのか?」
「No、交渉に来たのさ。
武器も害意も持ち合わせていないから、安心したまえ」
P−3は自分の肩に馴れ馴れしく置かれたランスの手を軽く払うと、
彼を一顧だにせずにダイニングテーブルへと向かう。
-
「さあ、№36・月夜御名紗霧。交渉のテーブルに着こうではないか」
P−3は舞台演者の如く両手を広げ、己が主役であるかの如く着席を促す。
主客の入れ替わった無礼かつ不遜な態度だ。
しかし紗霧は、嫌味も皮肉も口にすることなく沈黙を保っている。
かといって、様子見や策略で大人しく振舞っているとき特有の、
井戸の底の如き仄暗い眼差しも宿っていない。
彼女の心は、乱れていた。
沈黙はその乱れをP−3に悟られぬ為の手段だ。
(いけません紗霧。早く乱れたペースを整えなければ……)
乱れは、予想外の敵が予想外の行動に出たが為。
そして、敵よりもたらされた情報の衝撃が大きすぎたが為。
さらに、提案の旨みに一瞬目が眩んでしまったが為。
紗霧は一言半句違えず、レプリカ智機が切り出した提案を反芻する。
『東の森が燃えていることには気づいているね?
その渦中にある我らが首魁・ザドゥ様が脱出を図っているのだが、
火災にやられて手ひどいダメージを負っているようでね。
そこで提案だ。
彼が拠点に戻るまでの間に、殺してみてはどうだろう?』
P−3は小屋の外で紗霧たちに、この背信の交渉を持ちかけた。
弱っている仲間を殺せと唆した。
表情一つ変えることなく、淡々と。
-
「招かれざる……と思われているだろうが、一応私は客人だからね。
上座に着かせて貰うとしよう。
月夜御名紗霧はそちらの席でよろしいかな?」
P−3は仕切っている。急かしている。嘲っている。
紗霧は焦りで鈍りだした頭脳を必死に押し留める。
(良くない流れですね……)
交渉、舌戦、化かし合い。
それは紗霧の処世術であるし、特技であるとも言える。
十重二十重の策を巡らせて絡め取り、言葉巧みに思考を誘導し、
相手に踊らされていることを自覚させぬまま躍らせる。
その紗霧が、己の分野である交渉に対し何を躊躇うことがあるのか?
『想像して想定して検討した上で、想像して想定して検討してください』
以前、恭也に示したこの言葉こそ紗霧の本質。
不安の理由。
整理と準備、そこから導かれる予測。
紗霧はそれらを無しに能力を十全に発揮することは出来ない。
閃きの宿らぬ性質。臨機不応変。
紗霧は己のそうした特性を理解しているが故、分の悪さを感ずるのだ。
(今、テーブルにつくのは宜しくありません。
認めたくはありませんが完全にイニシアチブを握られています。
乱れたペースを早急に回復させなければ、
精神的に押し切られる形で決着してしまうでしょう……)
-
一方のレプリカ智機P−3も、己の有利な状況を理解していた。
否、事は彼女の背後にいるオリジナル智機の思惑通り運んでいる。
(ボクシングで言えば、ゴング直後の一発が相手の顎に綺麗に入った状態か。
紗霧の脳は今、揺れに揺れているだろう)
智機は有利な交渉になるよう、戦術に2本の柱を立てていた。
1つ、常に先手を打ち、イニシアチブを握り続けること。
2つ、時間制限があることを意識させ、焦りを誘うこと。
月夜御名紗霧にはそうした速攻戦術が有効である。
データと確率から成るこの機械の読みはズバリ的中している。
「№08・高町恭也、椅子を引いてくれ給え。
敵とはいえ、レディに対する心遣いくらい持ち合わせているだろう?」
P−3が、また一つ状況を推し進めた。
役割を振られた恭也が、紗霧の意志を確認すべく目線を彼女に送る。
その真っ直ぐな瞳が更なる重圧となり、紗霧の心の乱れに拍車を掛ける。
(マズい――― 明らかにマズい流れです。
しかし、拒否や遅滞行動をする理由もすぐには思いつきません。
ああ、益々相手のペースに嵌っていくばかりではないですか!
ならば先ずはテーブルについてから……)
紗霧がしかたなしにテーブルへと足を向ける。
敵の思惑通りに流されていることを自覚しつつ。
そこに、絶妙なタイミングで第三者が割り込んだ。
「うーん…… ど〜も怪しいなぁ?」
-
発言の主はランス。
紗霧の軽快とは言えぬ歩みが止まり、智機の鋭角な眉根が不快げに歪む。
「怪しい、とは?」
「武器が無い?敵意が無い?口では何とでも言えるよなぁ、智機ちゃん?」
「ふむ、ならば一体どうしたら信頼してもらえるのかな?」
「ボディチェックだな!」
自身満面に返答するランスの両手は前方に向けてワキワキしていた。
しん…………………………………………………… と。
室内に冷凍庫の霜が如き沈黙が降りる。
「俺様の素晴らしすぎるアイデアに反対意見は無いということだな?
まずはこの小ぶりなおっぱいからモミモミ…… げふんげふん。
チェック開始といくか!」
言うが早いか鷲づかみ。
恥も外聞も躊躇いも逡巡もなく、真正面から真っ直ぐに。
「バカな!」
「あんたってお人は、ほんとにもぅ、ほんとにもぅ」
「そんな……」
「異議あり! じゃ!」
我に返った小屋組の面々が同時に己のスタイルでツッコミを入れる。
一拍置いた紗霧もまたバットを振りかぶる。
「ランス、貴方少しは場の空気というものを……」
-
―――読むべきです。
そこまで発音することはなく、紗霧の叱責は尻つぼんだ。
(今、私は言いましたね。場の空気、と)
めったに宿ることの無い閃きの匂いを、己の言葉に感じたが為。
紗霧は思考を尖らせる。
(場の空気……
それに支配されたから私のペースが乱れたと言えます。
ならばこの悪いムードを払拭する為には、
むしろ読めない行動こそが―――)
紗霧の思案を他所に、ランスの手は智機の薄い胸に到達していた。
イタズラの矛先を向けられたP−3が吐き出すのは演技掛った大仰なため息。
「それで納得するならさっさとまさぐりたまえ。
早く交渉の続きに戻りたいのでね、時間をかけず…… んっ!」
ビクン、と。
P−3の表情や態度に反して、その体が震えた。
ニヤリ。
ランスは鼻の下を大いに伸ばして、高らかに宣言する。
「乳首みーっけ!」
-
「ランスさん、悪ふざけが過ぎます!」
「俺様の楽しいお触りタイムを邪魔しやがって、むかむか。
だがな、今回は俺様に理があるのだ」
「理も何も!」
「童貞のお前は知らんだろうが、女の子には隠す場所がいっぱいあるのだ。
おっぱいの谷間とか、お尻の割れ目とか、もちろんアソコとかな。
俺様はみんなの安全のために、危険を省みずこうして調べてやっているのだ。
感謝されこそすれ、責められる謂れなどどこにも無いぞ!」
見かねて止めに入った恭也がバサリと返り討ちに遭った。
彼が真っ赤になって黙り込んだのは童貞だからではない。
仁村知佳の肉の感触が生々しく蘇ってしまったからだ。
無論、ランスを始めとする面々にそれを知る由も無いが。
「そこで黙り込むとはお前やっぱり童貞だったか!
女の子の柔らかさも知らんとはかわいそうな奴だな、がはははは!」
恭也を振り切ったランスはますます絶好調。
その指がP−3の胸元で蜘蛛が如く複雑に蠢いている。
「神様仏様紗霧様っ!もうあのオトコを止められるのはあなたしかっ!」
「このままでは交渉が始まらぬうちに決裂してしまうやも……」
「バットは…… やめて頂きたいのですが……」
残る三者が口々に紗霧を頼る。
暴走するあの男をどうにかできるのは紗霧を措いて他に無し。
既にそれは小屋組の共通認識となっていた。
-
「確かに、足の速い情報のようですしね……
ランスさんの程度の低いイタズラに時を割くのは愚の骨頂。
でしたらこんな妥協案はどうでしょう?」
P−3に向き直った紗霧の目許には冷笑。口許には歪み。
頼れる神鬼軍師の常の表情が、そこに蘇っていた。
「妥協案?どのような?」
P−3が見下した態度で問う。
紗霧が底意地の悪い表情で答える。
「私と椎名さんが交渉している間、ランスが好きなだけお触りする。
―――合理的ですよね?」
「「「「「えええええ???」」」」」
↓
-
【現在位置:D−6 西の森・小屋3】
【グループ:紗霧・ランス・まひる・恭也・ユリーシャ・野武彦】
【スタンス:主催者打倒、アイテム・仲間集め、包囲作戦】
【備考:全員、首輪解除済み】
【レプリカ智機(P−3)】
【スタンス:ザドゥにぶつけるための交渉】
【所持品:?】
-
ご無沙汰してます。
トリの方は出先で既存の物のパスが解らなかった為に緊急でつけたものです。
帰宅時に再度このトリと既存の物で証明しようかと思います。
ラジオの方を聴いていた方は知っているかもしれませんが、
ただいま懇意にしている従兄弟の結婚式のことで式が二日前のために田舎の方にいます。
それ以前に関しても再度この場を借りて遅れていること申しわけありませんでした。
(ラジオを聴いてた方は知っていると思いますが、あれ(メル欄)のせいで実生活自身が大変だったこととか……)
来週、ないし再来週くらいから例の交渉話から投下を再開するとラジオ等で宣言していましたが
>>793さん、此方、構いませんので投下してください。
そこから続けても問題のない範囲に修正の効く話ですのでお気にせず。
最後に、重ね重ね申しわけありませんでした。
-
構いませんので投下してくださいとお気遣いは頂きましたが、
「タッチ・ユア・ハート/キャッチ・マイ・ビート」の
本スレ投下は取り下げさせて頂きます。
知らぬこととはいえ場を掻き乱してしまったようです。
済みませんでした。
-
以下12レス、「悪夢」です。
指摘等なければ土曜晩に本スレに投下します。
あと2〜3レス分ほど、紳一パートを増やすかもしれません。
次回予定は「生きてこそ」。ザドゥと芹沢が登場予定。
来週水曜までを目処に、書きあがり次第このスレに投下します。
-
>>41
(二日目 PM6:34 F−6 東の森・小屋2付近)
炎が宵闇を侵食している。
太陽光など比較にならぬ明るさと温度が周囲に満ちている。
東の森南部、浅いところに位置する小屋付近。
そこから南に程よく距離を置いた潅木の陰に身を潜める少女が一人。
濁ったフィンの乙女、№40・仁村知佳。
知佳が偵察するは数十機の智機たち。
忙しなく、されど整然と、消火活動に勤しんでいる。
音声は皆無。
諧謔や言葉遊び好む智機達ではあるが、音声による情報伝達より
数十倍効率的なデータ通信にての指揮命令を採択していた。
(前、勝てなかったのが二機、か……
でも、今なら…… 今しか……)
知佳が着目していたのは、赤い智機ことDシリーズ。
この小屋周辺に2機、存在している。
うち1機は井戸のポンプと融合し水の汲み上げに余念なく、
もう1機はショベルカーと融合し木々と土砂の運搬に専念している。
故に。
不意を衝けば―――
先手を取れば―――
あの2機さえ壊してしまえれば、眼前の智機を鏖殺することは難しくない。
一心不乱の作業は、隙なのだ。
しかしその隙こそが、知佳の攻撃の手を躊躇わせていた。
-
(今この場で機械たちを放置することと、火災を放置することの
どっちが恭也さんたちにとってのマイナスなんだろう……)
指標がない。無き故に迷う。
火災に気付いて10数分、ここに身を潜めて5分。
知佳は結論を出せずにいた。
身動きがとれずにいた。
その知佳の止まった時間を動かしたのは、背後から近づく何かだった。
《この少女は流石にまだだろう。そのはずだ。そう信じたい!》
知佳の鋭敏な聴覚が、後方の不穏な呟きを捕らえたのだ。
「誰!?」
反射的に振り返る知佳の目に人影は無い。
凝らしても探っても特別なものは見当たらない。
炎に照らされた木々と茂みと揺らめく煙のほかには、何も、誰も。
《羽が生えているのか。この娘もまた『人でないもの』なのか?》
しかし、誰もいないはずの空間から聞こえる声は、知佳の心を鋭く抉った。
人でなし。
それは知佳の禁句。癒えぬ傷。幼き日々の孤独の要因。
そこを突かれては知佳も黙ってはいられなかった。
「私は人間だよっ!!」
-
数刻の沈黙。
知佳の大声に気付かなかったのか、気付いた上で無視を決め込んだのか
分からぬが、智機たちは動揺を走らせることなく作業を継続している。
《お前も俺の声が聞こえるのか?》
煙に紛れてゆらゆらと。煙の如く茫々と。
知佳のすぐ近くに声の主はいた。
最初から姿を現していた。気付かなかっただけで。
その体の輪郭が背景に対して曖昧で、透けていただけで。
故に知佳はその存在をはっきりと言い当てた。
「幽霊……なのね」
幽霊―――
監察官・御陵透子は驚愕したその存在のあり方ではあるが、
知佳は怯えた様子を見せなかった。
その差は、慣れだ。
彼女の世界においての幽霊はさほどレアリティの高いものではないのだ。
知佳の住まうさざなみ荘には、十六夜なる霊が住人として名を連ねているほどだ。
しかし、その存在自体には驚きを感じなかった知佳も、
次いでこの亡霊から発せられた質問には度肝を抜かれてしまう。
《では俺の質問に答えろ。処女か?》
「えっ……」
炎に負けぬ勢いで赤く染まり、照れと怒りと後悔がない交ぜとなった
表情を見せた知佳を見て、この不躾な亡霊・勝沼紳一は敏感に悟った。
《おまえも中古か!!!!!》
-
知佳には中古の意味するところはわからなかったし、
あえて知りたいとも思わなかった。
この下劣で無礼な亡霊に声を掛けてしまったことを後悔していた。
これ以上関わらないようにしよう。
そう、心に誓うことにした。
関わりを持ちたくないという点では、紳一も同じだった。
紳一の女を見る基準は2つしかない。
処女か非処女か。
美女が醜女か。
処女かつ美女でなければ、彼の興味の対象外となる。
《破瓜の血の匂いまでするぞ!?くそくそくそ!!
又しても俺は間に合わなかったのか……》
紳一はショックに項垂れ、とぼとぼと歩き出す。
知佳との邂逅がなかったかのように、彼女の存在をまるで無視して。
知佳と重なり、通り抜けて。
「……あ」
その瞬間、知佳の心に瀑布の勢いで紳一の心が流れ込んできた―――
-
=-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=
(1日目 17:26 F−8 漁協詰所)
透明人間にあこがれる諸兄は多いことだろう。
では、僥倖にも透明になれたとしたら真っ先にすることは何か?
俺ならこう回答する。
女湯に潜入。
この回答、数多の同意を得られるものと確信している。
覗き―――
そこにはレイプとは趣の違った背徳の興奮が存在するからだ。
漁協詰所に到着したとき、風呂場からまひるの声が聞こえた。
それに気付いたときの胸のトキメキは筆舌に尽くし難い。
まひるは犯す。
いずれ必ず犯す。
それはそれとして、覗けと言わんばかりのこのシチュエーション。
前菜としてうってつけではないか!
亡霊になってしまったのなら、その特性を上手く欲望に生かさなくてな。
だというのに……
俺が見たものときたら……
ち○こだ。
-
もう一度言う。ち○こだ。
「い〜い湯だな、ハハハン、とくらぁ」
俺が受けたとてつもない衝撃などどこ吹く風で、
イノシシ女の能天気な歌声が風呂に反響している。
その隣で身を縮めているのがまひる。
全身ピンクにそまったまひるの柔い肌。
なんと肌理細やかな、なんとすべらかなことか!
それなのに。
目を擦る。もう一度見る。ち○こだ。
頭を振る。もう一度見る。ち○こだ。
頬を抓る。もう一度見る。ち○こだ。
何度見ても何度見ても、そこにあるのは処女穴ではなく、ち○こ。
俺は…… 俺たちは、あろうことか男に目をつけ男に欲情し、
男を浚って男を脅した挙句、犯されまくったというのか!!?
なんという…… なんという悪夢!!
-
《ははは……》
何度目になるかわからない自嘲の笑みを携え、俺は漁協詰所を後にした。
裏目だ。
この島に来てからの俺ときたら何をやっても裏目に出る。
処女を犯すという目的にブレはない。
しかし、ターゲットを失った。
次のターゲットの心当たりはない。
歩き回って、探さなくてはいけない。
そう、歩き回って、だ。
幽霊になったからといって都合よく瞬間移動できるものでもない。
徒歩だ。
疲労感は無くても徒労感は重い。
都合よく近場で見つかるといいのだが―――
―――いたよ。
進路を東に取った俺の前方数メートル。
猫のように身を丸めて岩陰に身を潜める少女と、目が合った。
いや、俺の姿は見えないのだ。目が合う道理が無い。
あの少女は単に漁協詰所を見張っているだけだろう。
《こんどこそ処女であってくれよ―――》
期待は持てそうだ。
ネコミミフードのついたパーカーという幼児性を残したいでたちが、
いやがおうにも俺の期待感を高めてゆく。
俺は小走りで少女との距離を詰める。
-
《たすけ て》
声が聞こえた。微かな声が。
視界に収まっている少女の口は動いていないのに。
《ケモノ を》
又しても。少女の口は動いていない。
それなのに明らかに少女からこの声が……
《おい はらっ て》
違和感と、予兆。
俺は足を止めて少女をじっくり観察する。
そして気付く。
陽炎のようにゆらゆらと。
少女の肉体に重なる様に、縛り付けられているかの様に。
輪郭があやふやで、亡霊よりも存在感の薄い何かが、そこに在った。
「……ついてないょ。気付かないフリでやり過ごそうと思ったのに」
ため息と共に、少女が遂に口を開いた。
少女は明らかに俺を見つめて、明らかに俺に対して。
《俺の姿が見えるのか?》
「残念だけど見えるし聞こえるょ」
-
少女は続ける。
「でも、これ以上関わりを持つ気は無いょ。
わたしとここで逢った事は忘れて、どっか行ってょ」
それは会話ではなかった。
一方的かつ上から目線の命令だった。
《俺様に向かって大きな態度を―――》
怒りと威圧感を込めて反撃開始。その宣言を言い終える前に―――
俺の首筋の産毛がぞわりと逆立つ。刹那。
少女の気配が爆発的に膨れ上がりその長い腕を俺に向けて伸ばしてきた。
「邪魔するならここで消すょ?」
亡霊で無ければ腰を抜かし、失禁していただろう。
密度の濃い圧倒的な闇が、少女の形のままに、そこに顕現していた。
これか!
これがあの忌々しい神楽が言っていた『人でないもの』か!
なんという…… なんという悪夢!!
《了解した……》
「ならいいょ。それじゃあバイバイだょ」
俺はくるりと背を向けて、元来た道を逆戻りする。
その背中に、少女の形をした何者かのさらなる要求が述べられた。
《ああ、それと。あの建物の入り口で見張りをしてる堂島って男は
わたしの標的だから、ちょっかいだしちゃだめだょ?》
-
俺は無言で頷く。
そこでようやく、俺に伸びていた闇の気配が引いていった。
《お にい さん いかない で》
少女の声でない悲痛な声が俺を引きとめようとしている。
「呼んでも無駄だょ。あの亡霊にはわたしに逆らうガッツはないし、
そもそも憑依をどうにかする力は無いょ。藍はいいかげん諦めなょ」
《この からだ は あい の なの に……
おまえ が かって に はいって きた の に……》
背後では声と声にならない声が言い争い続けている。
だが、それはもうどうでもいい。
それよりも、なによりも、俺にとって重要な事がこの会話に内包されていたから。
憑依―――
人に取り付き、その体を意のままに操る術。
この少女の怖いほうの何かは、それをして本来の少女の体を支配しているらしい。
根拠はない。
しかし、確信がある。既視感がある。
俺も、憑依できるはずだ。
=-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=
-
紳一が知佳をすり抜ける一瞬に、それらが知佳の頭脳にダイレクトに伝わった。
処女を犯す。
それだけの為に、この亡霊―――いや悪霊は、島内を彷徨っている。
憑依、という具体的な手段を持って。
《どこかに処女の人間はいないものか…… いれば男に憑依して犯すのに。
どこかに処女の亡霊はいないものか…… いればそのまま犯すのに》
紳一はうわごとのように呟きながら知佳から遠ざかってゆく。
知佳は距離を置いてかの悪霊を尾行する。
(あれを野放しには出来ないよ。でも……どうやって止めるの?)
知佳が放つ念動力も衝撃波も、広い視点では物理攻撃に位置づけられる。
物体ではない霊にそれら一切は通用しない。
(十六夜さん……)
知佳は友人の退魔師・神咲薫の得物である霊刀を思い浮かべる。
この世ならざるものを滅するを可能とするインテリジェンスソード。
あれに匹敵する何かがあれば、あるいは……
-
【仁村知佳(№40)】
【現在位置:F−6 小屋2付近 → 紳一追跡】
【スタンス:①亡霊紳一を止める
②読心による情報収集
③手帳の内容をいくつか写しながら、独自に推理を進める
④恭也たちと合流】
【所持品:???、まりなの手帳、筆記用具とメモ数枚】
【能力:超能力、飛行、光合成、読心】
【状態:疲労(小)、精神的疲労(小)】
【備考:定時放送のズレにはまだ気づいていません。
手帳の内容はまだ半分程度しか確認していません】
※ まひるの性別を知りました。
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遅れてしまいましたが新作お疲れ様です
矛盾もなく本投下しても問題ないと思います
色々と意味有りげな箇所がちらほらありますね^^
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一段落つきました。
報告遅くなりました。
今週末に此方に仮投下予定です。
>>806
ラジオの件での報告がてらだったのですが、気遣いをさせてしまったようですみませんでした。
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今日を目処に投下を予定していた『生きてこそ』ですが、
現在苦戦中で、今晩中には書きあがりそうにありません。
申し訳ありませんです。
後日完成次第、投下させていただきます。
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今しがた書き終わりました。
見直しが入るのと眠気で死にそうなので明日ないし明後日の夜に此方に仮投下します。
>>822
いえいえ、自分も時間の関係で遅筆ですのでお気になさらず。
のんびりと頑張っていきましょう。
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楽しみにしてます
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うあー、ごめんなさい。
やっぱり平日は二時間のまとまった時間が取りにくくて中々……。
推敲(修正)の時間取れ次第、遅くなったら土日になってしまうかもしれません。
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俺は今でも期待してる……だけど無理せずに頑張れ
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すんません。
ルーター壊れて買いなおしてました。
本日復帰しましたが、設定に追われてるので数日お待ちくださいorz
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新しいルーター不調→メーカーに送る→新しく送られてきたのがまた不調→やり取り後送る→機種変えてもらう→不具合なし。
もう牛は買わない。
というわけでお待たせしました。
近日中に一気に投下予定。
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8ヶ月に渡る予約放置、誠に申し訳ございませんでした。
以下11レス、「生きてこそ」です。
ですが、>>204 にてa154siyedさんの
> 一気に投下予定。
のコメントがありますので、これに障りがあるようでしたらアナザー行きと致します。
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>>101
(2日目 PM6:49 G−3地点 東の森北東部)
彼らは未だ、生きていた。
首魁、ザドゥ。
魔剣カオスを杖代わりに両膝を支え、牛歩の歩みを見せている。
刺客、カモミール芹沢。
ザドゥの肩を借り、引きずられるように歩いている。
先刻、感情の昂ぶるに任せて芹沢へ拳を見舞ったザドゥではあったが、
そこで芹沢を切り捨てたわけではなかったのだ。
ただし、同胞意識や思いやりなどは露と消えていた。
ザドゥの腹の底には芹沢に対する憎しみがとぐろを巻く蛇の如く鎮座している。
だのに何故、ザドゥは芹沢を捨てぬのか?
それは、意地だ。
意地のみが彼の両の足を支え、芹沢を放棄するを許さぬのだ。
『大将も自己満でカモミールを殺さないよーに、気をつけるがとしか言えんきね』
今、ザドゥの脳裏の大部分を占めるのは、黄色く変色した包帯を全身に巻きつけ、
腐敗臭とケミカル臭を撒き散らす、仲間と呼ぶのも憚られる男の言葉だった。
ザドゥは嫌悪感に眉を顰めつつ、己の思いを反芻する。
(あの狂人医師の【呪い】にまで負けるわけにはゆかぬ)
-
ザドゥは死そのものをさほど恐れてはいない。
拳に賭けるを選び、悪事を為すを自覚し、欲望の赴くまま生きてきた自分が、
まっとうな最期を飾れるとは思っていない。
それでも、笑って死ねるという確信があった。
好き勝手に生きてきた己の生涯に、一片の悔いもないのだから。
ザドゥの自負心は不動のものだった。
完成し完結しているものだった。
この島に来るまでの彼はそう信じていた。
それが、今、粉微塵に砕けようとしている。
軋みを与えたのは、タイガージョーの熱き拳となお熱き言霊だった。
亀裂を走らせたのは、アインの冷徹な覚悟と研ぎ澄まされた執念だった。
しかしザドゥは、彼らを好敵手であると認めている。
ある種の敬意を抱いていると言ってよいだろう。
故に、どちらも深刻な敗北感をザドゥの胸に刻みはしたが、背骨を折るには至っていない。
ぽろぽろと零れ落ちる破片を必死で拾い集めては、接ぐことくらいは出来ている。
しかし。
『大将も自己満でカモミールを殺さないよーに、気をつけるがとしか言えんきね』
口に出すも憚られるほどの外道にして、仲間であったことを恥じたくなるほどの下種。
ここで芹沢を捨ててしまっては、あの素敵医師にすら敗北したことになる。
そしてこの一敗地に塗れてしまえば―――
ザドゥの矜持は、二度と陽光の下を歩けぬほどに打ち砕かれてしまうだろう。
-
ザドゥは沈黙を保っている。芹沢も口を開かない。
あの口の減らないカオスですら、今は器物としての役割に徹している。
黙々と、ただ黙々と。
二人と一刀は森を抜けるべく歩みを進めている。
煙に巻かれ、炎を迂回し、ルートの断念に迷走を重ね、方向感覚など既に失って
久しくはあるが、それでも彼らは炎の渦中からは脱していた。
しかしそれは、生命の危機から脱したを意味しない。
煙は容赦なく視界を塞ぎ、不足する酸素は彼らの肉体から回復機能を奪い、
炎もその手を緩めることなく背後から迫ってきている。
絶命の機会は、そこかしこで廉売されている。
故に、一行のうち最も冷静な同行者・カオスは、状況をこう分析していた。
《これは、もうダメかもわからんね》
カオスは心中で嘆息し、ザドゥが初めて自分を振るったときのことを思い出す。
『俺の心はとうに漆黒だ』
それは己の為す悪を自覚し肯定しての発言であったのだろう。しかし。
《闇と黒は違うんじゃよ……
理性を感情が、意志を欲望が駆逐することを闇と言うんじゃ》
ザドゥが芹沢を捨てぬ理由が己のプライドに起因することまでは、
読心能力を持たぬカオスには見通せぬ。
だが、ザドゥの生へ欲望が、より強い欲望に駆逐されている。
故にこの惨状。
そのことは理解できたいた。
-
《生きてこそなのじゃがのう……》
カオスはそれを口に出さない。
訴えたとて聞き入れられる状態にないことを誰よりも知るが故に。
《じゃがもし―――
一縷の望みとして、ザッちゃんだけでも救える機会があるとするならば。
カモちゃんが自ら、置いていかれることを懇願した場合かのう……》
カオス自身に、ザドゥや芹沢に対する思い入れはさほど無い。
芹沢のダイナマイツぶりにうほほーいではあるが、それだけの事だ。
出会って一時間程度の間に、精神的な絆が結ばれることのほうが異常であろう。
それでもなお、カオスがこの2人に入れ込んでいるかの如く感ずるのは、
彼の過去とこの2人の現状が、多分に重なるところがあるが為だ。
かつて彼がまだ人間―――救世の大英雄(エターナルヒーロー)であった頃。
足手まといとなったリーダーでもあり親友でもあった男を置き去りにして、
神の座にたどり着いた経歴を持つ。
その際に剣となったカオスの力が、当代の魔王封印を果たしたのだから、
彼らの判断は歴史的に見て正しかったと言えるだろう。
《あの時あいつは、必死で助けようとするわしらに、
自分を置いてゆけと主張して譲らなかったのぅ……》
意志の篭ったそれでいて穏やかな眼差しと、自己犠牲を偽善と感じたらしい含羞の声色。
カオスの脳裏に置き去りにした友の顔がフラッシュバックされる。と、同時に。
それはいかなる共時性か。
この元盗賊の記憶をなぞるかの如く、芹沢もまた嗄れた声でこう囁いたのだ。
「ザッちゃんさぁ、もうあたしのこと置いていきなよ……?」
-
言葉とともに、芹沢の四肢から力が抜けた。
ザドゥの肩に思わぬ重量がかかり、彼は芹沢もろとも無様に尻餅をつく。
「何をいう、芹沢。薬中のお前にはわからんのだろうが、
ここに置き去りになぞしたら、お前は―――」
「すぐに焼け死んじゃうよねぇ……」
その返答にザドゥは息を呑む。
芹沢がいつの間にか現状を把握しうるだけの思考力を回復していたことに気付いて。
そして、自らが辿る運命を理解しつつ、置いてゆけと提案したことに気付いて。
言葉を失うザドゥに向けて、芹沢は力なく言葉を重ねる。
「あははー。足手まといは捨て置くのが戦場の倣いってやつだし。
何人、何百人死んだって、最後まで旗が立ってた方が勝ちなんだから、ね」
破天荒で磊落な逸話ばかりが面白おかしく、或いは悪役然として後世に伝わっているが、
彼女もまた、幕末動乱の時代を一介の武士の覚悟を持って駆け抜けた女丈夫の一人だ。
奉仕の対象は違えど、その精神性は高町恭也の御神流に相通ずるものがある。
即ち、自らは仕えるものの為の捨石に他ならぬ、と。
故に、ザドゥの決して見捨てぬという意地が本気ならば、
芹沢の自分を置いてゆけという覚悟もまた本気だ。
主催という【お家】のザドゥという【頭領】を生かすことこそ、彼女の本分なのだから。
「やー、ごめんねーザッちゃん。
あたしが正気ならこんなに苦労しなくて済んだし、ともきんも壊れなかったしぃ。
戻ったらさ、ともきんにもごめんねーって言っといて」
「戻ってから自分で言え」
芹沢はザドゥの命令に困ったような笑みとウィンクを発し―――
そこまでで精一杯だったのだろう。意識を闇に落とした。
-
《……覚悟、汲んでやらんか?》
カオスもまた、ザドゥの背を押した。
自らも同じ選択を踏み越えてきたこの剣の言葉は、重い。
「お前まで……」
《正直に言うぞ。このままでは共倒れじゃ。苦渋を飲め、辛酸を舐めろ。
そうして生きてここから出ることで、カモちゃんの尊厳を守ってやれい》
「っっ……」
それは奇麗事だ。おためごかしだ。
そんなことはザドゥにも分かっている。
わかっているが、しかし。
ザドゥの芯に触れる奇麗事であり、おためごかしでもあった。
尊厳。
芹沢の心の中の、自分が最も大切にしているそれを、守る。
ぐらり、と。
ザドゥの芯が揺れる。
ここぞとばかりに彼の生存本能が、甘く囁いた。
―――生きてこそ。
部下を踏み台にし、組織を、トップを守ること。
それは闇の格闘暗殺者集団を束ねていた自分にとっては至極当然な判断であり、
実際に何度も部下を使い捨てても来た。
(今、芹沢を置き去りにすることもそれと同じことなのではないか?
それは決して恥じることではなく、寧ろ首魁としての責任の取り方ではないか?)
-
ザドゥの胸中で、芹沢を捨て置く事が、現実感を伴ってどんどん膨らんでゆく。
その気を好機と目敏く捉えてか、生存本能の囁きに、彼の一億万の細胞が唱和した。
―――生きてこそ。
(チャームを…… 蘇らせねば)
彼が何故このような悪趣味なゲームを管理しているか。
それは愛妾を再びこの手に抱く為だ。
(その初志を貫徹することと、局所の一勝一敗に拘泥すること。
どちらが大事で、どちらが小事だ?)
ザドゥの煤に塗れた顔に表れているのは苦悶。
カオスは彼の隠し切れぬ葛藤を見つめ、結論づけた。
《これで決まりか、の》
芹沢を捨て置くを推し、それが採択されようとしているにも関わらず、
カオスの胸中も複雑だ。
安堵もしている。
落胆もしている。
結局、彼自身もかつての選択に釈然としない思いを抱いていたのだ。
理性でこの選択を支持しつつも、感情で違う選択を期待していたのだ。
考えても、悩んでも、決して答えの出ない問いに対して。
-
ザドゥが芹沢の顔を見つめる。脳裏にその存在を焼き付けるために。
思い返す。カモミール芹沢という女が、いかなる女であったかを。
短い付き合いではあったが、濃い付き合いでもあった。
弱さも強さも垣間見た。
情も交わした。
このまま何事も無くゲームが終わり、この女が望むのであれば愛人として
傍に置いてやってもいい。そうも思っていた。
薬物に侵されてからの奇矯な振る舞いには辟易もしたし、
今、この様な生死の狭間に身を置いているのは彼女のせいに他ならない。
だが、こうして顔を見ていても憎しみは湧いてこない。
言葉にして表すなら……
(戦友)
まさに、その一言に尽きる。
同じ主催者として、唯一同胞意識を抱ける存在だった。
鼻持ちならぬ椎名智機。
何を考えているのか分からぬ御陵透子。
野卑で愚鈍なケイブリス。
そして―――長谷川均。
その名を脳裏に浮かべた途端、ザドゥの脳内に忌々しき嘲笑が響き渡った。
『へき、へけけけ』
憎々しき呪詛を伴って。
『大将も自己満でカモミールを殺さないよーに、気をつけるがとしか言えんきね』
(長谷川、均…… 長谷川っ、均っっ!!!)
-
点った。
ザドゥの心の最奥にある、未だ点したことの無い蝋燭が。
映った。
ザドゥの両の瞳に、揺らめくことなく直ぐに立ち上る炎が。
(―――逃げるな、ザドゥ!)
ザドゥは心中で生存本能の胸倉を掴み上げ、本気の拳を鼻っ面にぶち込んだ。
一億万の細胞たちの足を払い、マウントポジションからタコ殴りにした。
(その初志を貫徹することと、局所の一勝一敗に拘泥すること。
どちらが大事で、どちらが小事だ?
そんなもの……どちらも大事に決まっているだろう!
俺の望む全ては、手に入れるべき全てだ。
取りこぼしなどあってたまるか!)
声に出して、叫ぶ。
彼は、全ての思いをワンセンテンスで過不足無く表現しきった。
「俺はザドゥだ!」
それで、生存本能も細胞たちも沈黙した。
ザドゥは起き上がりざまに芹沢を担ぎあげる。
《無茶をするでない!》
-
カオスの焦りは正しく、ザドゥは芹沢の重量に2、3歩よろめいた。
だが、ザドゥは転倒することなく耐え切った。
膝は震えている。
息は乱れている。
であるにも関わらず、頬には不敵な笑みすら浮かんでいた。
カオスはザドゥの横顔を見て大きく頷く。
《……ならば見せてくれよ、ザッちゃん。
わしが見ることの出来なんだもう一つの可能性のその先を、の》
「お前の思いなど知るか。黙って見ていろ」
ザドゥは、まだ意地を張る。
ただ、意地の為に意地を張る。
↓
-
【グループ:ザドゥ・芹沢】
【現在位置:G−3地点 東の森北東部】
【スタンス:森林火災からの自力脱出】
【主催者:ザドゥ】
【所持品:魔剣カオス、通信機】
【能力:我流の格闘術と気を操る】
【備考:右手火傷(中)、疲労(大)、ダメージ(小)、カオスの影響(大)】
【主催者:カモミール・芹沢】
【所持品:虎徹刀身(魔力発動で威力↑、ただし発動中は重量↑体力↓)
鉄扇、トカレフ】
【能力:左腕異形化(武器にもなる)、徐々に異形化進行中(能力上昇はない)、死光掌4HIT】
【備考:脱水症(中)、疲労(大)、腹部損傷、気絶中】
-
以上です。本スレ投下は暫く待ちます。
また、図々しいお願いなのですが、以前「タッチ・ユア〜」について
申し出ました破棄を取り下げさせていただけないでしょうか。
次回予定は「夜に目覚める」。
まひる・恭也・魔窟堂を中心に、小屋組とレプリカ智機が登場予定。
「タッチ・ユア〜」の続きとなります。
とりあえずこちらに仮投下致しまして……
上記取り下げの承認、もしくは長期に渡りレスが付かない場合
↓
本編として扱う
却下、または「タッチ・ユア〜」と同時系列の作品が予約された場合
↓
アナザーとして扱う
と考えております。
-
新作乙です。
私の方こそ長らく連絡を途絶えさせてしまってすみません。
破棄取下げについては私は構いません。
それらの件を含めて了解しました。
今土曜日曜と何とか暇ができましたので、こちらも活動を再開したいと思います。
改めてメール欄関連の予約を3月1日AM6:00を期限に延長なしで予約します。
完成の目処が立ちましたら、ここに報告。
完成後ここに仮投下します。
コンテンツ作成も作品と同時進行で進めます。
なおトリップは連絡用です。
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