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【場】『 歓楽街 ―星見横丁― 』

1『星見町案内板』:2016/01/25(月) 00:01:26
星見駅南口に降り立てば、星々よりも眩しいネオンの群れ。
パチンコ店やゲームセンター、紳士の社交場も少なくないが、
裏小路には上品なラウンジや、静かな小料理屋も散見出来る。

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                 ミ三ミz、
        ┌──┐         ミ三ミz、                   【鵺鳴川】
        │    │          ┌─┐ ミ三ミz、                 ││
        │    │    ┌──┘┌┘    ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
        └┐┌┘┌─┘    ┌┘                《          ││
  ┌───┘└┐│      ┌┘                   》     ☆  ││
  └──┐    └┘  ┌─┘┌┐    十         《           ││
        │        ┌┘┌─┘│                 》       ┌┘│
      ┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘     【H城】  .///《////    │┌┘
      └─┐      │┌┘│         △       【商店街】      |│
━━━━┓└┐    └┘┌┘               ////《///.┏━━┿┿━━┓
        ┗┓└┐┌──┘    ┏━━━━━━━【星見駅】┛    ││    ┗
          ┗━┿┿━━━━━┛           .: : : :.》.: : :.   ┌┘│
             [_  _]                   【歓楽街】    │┌┘
───────┘└─────┐            .: : : :.》.: :.:   ││
                      └───┐◇      .《.      ││
                【遠州灘】            └───┐  .》       ││      ┌
                                └────┐││┌──┘
                                          └┘└┘
★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
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691常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』:2020/01/19(日) 00:20:23
>>690

  「同輩…………?」

  「………!!!!!  はい!!!」

『白と黒のフリフリの服装』の男はしばし考え込んだ後、
何か思い当たったようだった。

 「そうですよ!!俺も
  ―――――――――『 家政婦 』 です!!!!!!!」

…何か思い当たったようだった。

 「納得です!その力強さ!!そして正義感!!!」
 「あなた様も『メイド』でしたか!!!」
 「せっ『先輩』とお呼びしてもよろしいでしょうか俺!!!」
 「今日は『制服』は着られていないんですか!!!」
 「あッ いえ すみません!!お休みの日でしたか!!!!!」

男の左目は『レースの眼帯』で覆われていた。
残った右目を子供のようにキラキラ輝かせ興奮している。

692百目鬼小百合『ライトパス』:2020/01/19(日) 00:42:48
>>691

「ああ、ええっと…………」

男の言葉を聞いて、思わず煙草を取り落としそうになった。
『俺も』と言ったのか?
つまり、この男は自らを『家政婦』だと自称している事になる。

「――アンタ、『家政婦』なのかい?
 まぁ、その格好を見れば分かる事か……。
 我ながらバカな質問だったね」

口ではそう言いながら、頭の中では次の言葉を練っていた。
一見した所、この怪しい外見はともかく、
他人に危害を加えようとする人間には見えない。
まともな神経なら、この格好で街を歩かないとは思うが。

「けど、ただの家政婦って訳じゃあないんだろうね?
 例えば、『こんな風』にさ」

           ――――ドギュンッ

『白百合』の紋章を刻んだスタンドが、再び現れた。
先程と同じく、その手には『警棒』が握られている。
さっき見た時とは異なり、その長さは短かった。

「こっちが出して見せたんだ。
 出来れば、アンタのも披露して貰えると嬉しいねえ」

害はなさそうに見えても、『スタンド使いの不審者』だ。
念には念を入れて、一応の確認をしておいてもいいだろう。
今は警官ではない身だが、『街を守る』という意志は変わらない。

693常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』:2020/01/19(日) 01:24:32
>>692

「はい!!!!!現代は多様性の時代!!!!」
「男の家政婦がいたってよいではありませんか!!!」
「『たまに』変な目で見られますが、メゲすにやっております!!」

そういうわけで常原ヤマトは家政婦である。


>  ――――ドギュンッ

「そう!!!それです!!!」
「『先輩』のはお花の模様が入ってるうえ、
 強そうで『カワイイ』ですよ!!!」
「俺は…俺のは」

   モコ  モコ

男の足元から、『三つ編みの女の子を模ったヌイグルミ』
という感じの外見の『ビジョン』が出現する。
大柄な男に反して、スタンドの背丈は小学生くらいだ。

「こんな風で『カワイイ』感じですよ!」
「非力ではありますが、仕事には役立てております!!!」

694百目鬼小百合『ライトパス』:2020/01/19(日) 01:48:22
>>693

「ま…………『そういうもの』かもしれないねえ」

色々と言いたい事はあったが、敢えて口には出さなかった。
女性の社会進出などと言われて久しい時代だ。
『その逆』があっても不思議ではない――のだろうか?

「おや、随分と可愛らしいじゃないか。
 言われてみれば、『家庭の仕事』には似合いの姿だね」

ただ、目の前の男が『家政婦らしい』とは思わないが……。
しかし、スタンドは『精神の象徴』だ。
見てくれはともかく、内面はそうなのかもしれない。

      ライトパス
「コイツは『正 道』――そう呼んでるよ。アンタのは?」

「いや、『アンタ』ってのも何だねえ……。
 良ければ、名前を聞いても構わないかい?」

「アタシは『小百合』だよ。小さい百合と書いて小百合さ。
 ほら、ここに咲いてる『花』と同じだよ」

煙草の先で、傍らに立つスタンドを指し示す。
両肩に刻まれた紋章。
それは、本体である自身と同じ名前の花だ。

695常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』:2020/01/19(日) 02:24:42
>>694
「百合でございますか!それに『警棒』!!なるほどカワイイです!!!」

男はキラキラした目で『小百合』と『ライトパス』を交互に見て、
ときおり『カワイイ!』と発している。
こいつにとっては小百合もカワイイらしい。

 「俺は『常原 大和(ツネハラ ヤマト)』です!!!
  男らしい名前をという事で、父が付けた名ですよ!!!」

 「こっちは……『ドリーム・ウィーバー』。夢を編むもの」
 「そう『名付けてもらった』のですが、気に入っております」

常原は自分のスタンドを見やる。
『女の子の見た目』ではなく『女の子のヌイグルミを模倣した見た目』、
なので、手足や目、口の位置が変ではある…。
まあ、それ込みでも自分らしいな、と常原は内心思った。

 「俺はご主人様、奥様、お坊ちゃまお嬢様、その家庭を」

 「ひいては『夢』を守り、つなぎ留める」

「……と、志すことにしております。
 先輩がたに比べれば、俺なんて若輩者でお恥ずかしい限りですが!!!!!!」

696百目鬼小百合『ライトパス』:2020/01/19(日) 02:55:35
>>695

『名前』を聞いたのは『万一』を考えたからだった。
つまり、『スタンド使いの不審者』によって、
『何か事が起きた時』の手掛かりにするためだ。
勿論、必要でなければ、それに越した事は無い。

「ハハッ、『可愛い』だなんて言われたのは何時ぶりかねえ。
 忘れかけてた娘時代以来のような気がするよ」

正直、褒められて悪い気はしない。
こうして年を食った今、
そんな台詞を言ってくれる相手がいる筈も無い。
昔は昔で、『鬼の小百合』などと陰口を言われていた。
仕事一筋で生きてきた自分にとっては、
それも一つの勲章のようなものだ。
きっと自分は死ぬまで、その生き方を続けていくのだろう。

「『常原大和』、『ドリームウィーバー』――立派な名前じゃないか。
 その志も大したもんだよ。
 胸を張って、自分の目指すものを口に出来るっていうのはね」

「『たまに変な目で見られる』って言ったね。
 自分の意思を貫き続けるってのは大変な事だろうけどさ」

    ポンッ

「でも、ま……頑張りなよ。
 アタシなんかが偉そうに口出しする事じゃないと思うけどね」

「いや、アタシも『似たような経験』はあるもんでねえ。
 ついお節介な事を言いたくなっちまったのさ。
 勘弁しておくれよ」

大和の肩を軽く叩き、砕けた調子で笑いかける。
かつて自分は『警察官』であり、今は『警備員』だ。
そうした『男社会』の中でやっていくのは決して楽な道では無かった。
男でありながら家政婦を名乗るというのも、
逆ではあるが似たようなものではないだろうか?
だからこそ、目の前の奇妙な男――大和に、
何となく『親近感』のようなものを覚えたのかもしれない。

697常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』:2020/01/19(日) 03:42:22
>>694
「ありがとうございます!!!!光栄ですよ俺!!!」
「今後とも、男、常原ヤマト、メイドとして邁進いたします!!!!」

 そうかあ…小百合先輩も苦労してたんですね
 昔のメイド史は詳しく知らないけど、
 現代に比べて大変なことも多かったって『家政婦の師匠』も言ってたからなあ)」
 『メイド』って概念が普及しきってなかった時代とかあるでしょうし…

…などと常原は考えた。
目の前の女性は『同業者』だ、と完全に思い込んでいる。

  「…失礼でなければ、ひとつ伺いたいのですが」

  「『正道』とはいったい何でしょうか?」

「『完璧な家事』『カワイイ』『愛』『正義』」
「など、色々あるでしょうが……あっいえ!!失礼!!!!」
「変なことを聞いてしまいましたよ俺!!!!すみません!!!!」

698百目鬼小百合『ライトパス』:2020/01/19(日) 06:16:28
>>697

「いやいや、それは尤もな質問だよ。
 だけど、なかなか難しい質問でもあるねえ」

『正道』とは何か。
以前、同じような質問をされた事がある。
それは、自分が『刑事』だった時だ。

「単に言葉の意味を答えるなら、
 『人として在るべき姿』って事になるだろうけどね。
 アタシの考えで言うなら、『自分に嘘をつかない事』さ。
 だから、アタシは自分が正しいと思う事を言うし、
 正しいと思う事をする」

「『自分の正しさ』と『他人の正しさ』が食い違うのは珍しくない。
 この世に『絶対』と呼べるものなんて、
 そうそう見つかるものじゃあないからねえ。
 それは仕方ない事さ」

「でも、『自分が考える正しさ』と、
 『自分の中から出る言葉や行動』は、
 一致しているべきだと思ってるよ。
 『自分自身の心と食い違う』っていうのは苦しいもんだからねえ。
 勿論この世の中には、
 『自分が正しいと思う道を進む』のが難しい場合もあるけど、
 『自分で正しいと思えない生き方』をするよりは、
 良いんじゃないかねえ」

「もし、それが出来なくなるようなら――――
 舌を噛んで死んだ方がマシだね」

そう言って、『正道』の名を冠する自身のスタンドを一瞥する。
自らの『精神の象徴』。
『自分自身の正道』を貫く意志の象徴でもある。

「アタシから言えるのはそんな所さ。
 何かの足しにでもなれば幸いだよ
 我ながら、ただの小言になってるだけの事も多くてねえ」

699常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』:2020/01/19(日) 21:42:19
>>698
「自分に嘘をつかない」
「正しいと思う道を進む」

眼帯メイド筋肉男はしばし、その言葉を噛みしめた……


 「――――ありがとうございました!!」
 「俺も!自分がすべきとおもう道を、
  まっすぐ突き進みますよ、俺!」

どこかを見やる。『引力』を感じる。

 「『家事』を!!!!しなければいけません!!!」
 「お宅に行かねばなりませんよ!!!!」
 「俺は俺の『メイド道』を突き進みます!!!!!」

常原ヤマトは『流れの家政婦』である。
己が『なんとなく引力を感じ』ればその家庭に向かい、
なにがなんでも家事をする。そのためには『不法侵入』をも辞さない、
物盗りも殺しもしない、しかし『住居侵入犯』ではある。
だが、それは真っすぐな愛ゆえの行為。悪気はないのだ……

 「『小百合先輩』!!!」
 「貴重なお時間いただき感謝いたします」

 「―――いつか『メイドの引力』が俺たちをふたたび引き寄せたら!!
  またその時はお話を伺いたいです!!」

常原は大きくお辞儀をした後、走り去ろうとする――

700百目鬼小百合『ライトパス』:2020/01/19(日) 22:09:54
>>699

「――――ま、達者でねえ」

煙草を持つ手を軽く振り、謎の男・常原大和を見送る。
やがて、一つの考えが頭に浮かんだ。
つい励ましてしまったが、これで良かったのだろうか?

    ゴソ

    「『ツネハラ ヤマト』……」

           「『ドリーム・ウィーバー』……」

                      サラサラサラサラ

ペンと手帳を取り出し、咥え煙草で名前を書き入れる。
もし――もし万が一『何かやらかす』現場に出くわしたら、
その時は『手』を出さねばならない。

       フゥゥゥゥゥ――――ッ…………

               ライトパス
それが百目鬼小百合の『正 道』だ。

701神谷『デミリタライズド・ゾーン』:2020/02/08(土) 22:22:27
「うおっさむっ……」

冬の寒空の下、ショートパンツに黒タイツという出で立ちの少女がいた。
黒縁の眼鏡をして寒そうに立ち止まっている。

「こっ、今年の冬……暖かいんじゃなかったか……? 寒いもんは寒いぞ……?」

「あれか? 暖冬暖冬言われ過ぎてここに来て本気出しちゃったか? 夏休み終盤かよ……」

寒そうにしながら辺りをキョロキョロ見渡していた。
何かを探しているのだろう。

「や、ヤバすぎ……」

702ディーン『ワン・フォー・ホープ』&ヨシエ『一般人』:2020/02/08(土) 22:53:22
>>701

背中にリュックを背負った小さな少女が、そちらを見た。
辺りを見回す動きが視界に入ったらしい。
少女は小学校一年生くらいで、かなり幼い。
花柄のワンピースを着て、花モチーフの髪飾りを付けている。
そして、両腕で『黒い塊』のようなものを抱いていた。

「?」

少女は不思議そうな顔をして神谷を見つめている。
それから、視線の先を目で追った。
何を探しているのか気になったようだ。

703神谷『デミリタライズド・ゾーン』:2020/02/08(土) 23:55:24
>>702

「ないじゃんもー……ここじゃないのか? マップ死んでる系? ……ありえねー」

ブツブツ言いながらスマホを出してみたり辺りを見てみたり。
なんだか一人で忙しそうだ。

「?」

「!」

そちらを見てから目線をそらす。

(やっべ……子供に見られた。不審者率百パー、いや、千パーセント)

(えー……でもなんでここいるんだ? 迷ったのかな? でも声かけ事案は勘弁だし……)

704ディーン『ワン・フォー・ホープ』&ヨシエ『一般人』:2020/02/09(日) 00:23:33
>>703

迷子かどうかは分からない。
少なくとも近くに保護者らしき人物はいないらしい。
その割には、不安そうにしている感じでもなかった。

    トッ トッ トッ

何やら忙しそうな少女に向かって歩き出す。
目線を逸らされたが、その意図は理解できていなかった。
お互いの距離は徐々に縮まっていく。

          「?」

         キョロ キョロ

神谷と神谷のスマホを交互に見る。
怪しんでいるというような雰囲気はない。
純粋に疑問を感じている様子だ。

           モゾ

その時、少女が抱いている『黒い塊』が、ほんの少しだけ動いた。
黒毛の『チワワ』だ。
毛の色と同じ黒い瞳が、少女と同じように神谷を見上げた。

705神谷『デミリタライズド・ゾーン』:2020/02/09(日) 00:39:25
>>704

(え、なんでこっち来るの?)

(やっべぇ��マジでなんかのフラグ立ててる? 社会的地位喪失エンドとかハード過ぎるだろ……)


そんなことを思いながら視線を投げる。
その時気付いた黒い塊の正体。

(犬、チワワ……)

チワワだ。
こちらを向いているチワワがいる。
途端に、少女の背を冷たい汗がつたい始める。

「……な、なに?」

706ディーン『ワン・フォー・ホープ』&ヨシエ『一般人』:2020/02/09(日) 01:02:45
>>705

「お姉さん、『迷子』ですかー?」

相手の密やかな動揺など知る由もない。
躊躇う様子もなく、ニコニコしながら話しかける。
どうやら人見知りしない性格のようだった。

「どこか行きたいんですかー?」

腕の中のチワワは特に目立った動きを見せない。
吼えたりする事もなく、ただ黙って抱えられている。
体温が伝わっているらしく、犬を抱いている少女は暖かそうだ。

(さっきから妙に落ち着きがない。
 『捨てられた子犬』みたいにビクビクしている。
 こういうのを何て言うんだったか……)

(ああ――――『挙動不審』だ)

ヨシエの腕の中で、俺はそう思っていた。
確かに怪しいと言えば怪しい。
だけど、『それ以上』じゃない。
別に、こちらから何かする必要はないだろう。
だから、しばらく成り行きを見守る事にした。

707神谷『デミリタライズド・ゾーン』:2020/02/09(日) 01:34:14
>>706

「え゛」

「ま、まぁ? 迷ってるっちゃ迷ってるかなぁーみたいな?」

「いや、パソコンのパーツ売ってるとこ探してたんだけど……流石に分かんないか……」

バタフライ遊泳している目はチワワと虚空を行ったり来たりしている。

「て、ていうか、その、犬? お、置いといてくれないかな?」

708ディーン『ワン・フォー・ホープ』&ヨシエ『一般人』:2020/02/09(日) 02:01:12
>>707

「んー?」

「……分かんないですー」

少し考えてから首を傾げる。
神谷の考えた通り、やはり知らなかったようだ。
そして、ポケットを探り始める。
それと同時に、チワワは少女の腕から下りた。
やがて、少女の手には犬の代わりに最新のスマホがあった。

「じゃあー、一緒に探しますよー」

「えっとー」

    ススッ

「『パソコン』、『パーツ』、『星見横丁』……」

神谷の横で検索を始める。
それを見ているチワワの首輪には『DEAN』とある。
犬の名前らしい。

709神谷『デミリタライズド・ゾーン』:2020/02/09(日) 02:32:42
>>708

「分かんないなら、それでいいんだぞ。うん」

「無理に調べなくても……」

好意はありがたいが色々問題もある。
じりじりと犬から離れるようにして動いていた。

「そ、その犬、ディーンっていうのか?」

「別になんでもいいんだけど……」

ジリジリと距離を放す。

710ディーン『ワン・フォー・ホープ』&ヨシエ『一般人』:2020/02/09(日) 21:59:59
>>709

「んー、これは違うしー……」

「これも違うしー……」

まだ検索を続けている。
しかし、なかなか引っかからないようだ。
やり方が悪いのかもしれない。

「そうだよー!ヨシエの一番の友達!」
  
      パァッ

犬の名前を言われ、スマホから顔を上げて明るい表情を見せた。
よほど大事な存在らしい。
一方のチワワは、ヨシエを見てから神谷に視線を移す。

(犬はお気に召さないようだな?
 まぁ、『繋がれてない犬』を警戒するのは自然な反応か……)

(――『挙動不審な人間』に注意するのが自然なのと同じようにな)

神谷の方を見る。
そして気付いた。
神谷の後方の分かりにくい場所に、
『それらしい店』があるらしい事に。
しかし、どうやって伝えるべきか。
この場で『能力』を使うのは憚られる。

(仕方ないな)

          ジリッ……

そう考えて、一歩分だけ神谷に近付く。
ただ店の場所を教えようとしただけで、他意はない。
しかし、相手側にどう受け取られるかは分からなかった。

711神谷『デミリタライズド・ゾーン』:2020/02/09(日) 23:01:02
>>710

「あっ……」

それ以上話さず何かを察したように首を縦に振る。
相変わらず距離をはなそうとしているが。

「うぇ」

ディーンが一歩近づき、少女が一歩下がる。

(やっぱ苦手なんだってチワワ!)

712ディーン『ワン・フォー・ホープ』&ヨシエ『一般人』:2020/02/09(日) 23:20:48
>>711

(そうビビるなよ)

(『ジャーマンシェパード』や『シベリアンハスキー』じゃあないんだぜ)

      トッ トッ トッ

相手の警戒を余所に、さらに歩みを進める。
まもなく、ある一点で足を止めた。
神谷に向けていた視線を、その後ろに移す。

「?」

ヨシエはディーンの行動を見ていた。
彼女の視線も同じように動く。
そして、神谷の後ろにある店に目を留める。

「あのー、お姉さーん」

「『パソコン』」 「『パーツ』」

「――って書いてあるみたいですよー」

店の方向を指差しながら、ヨシエが神谷に呼びかける。
そちらに目を向ければ、店があるのが分かるだろう。
ディーンは動きを止め、その場に座り込んでいた。

713神谷『デミリタライズド・ゾーン』:2020/02/09(日) 23:34:30
>>712

「ちょっちょっちょっ!」

一瞬、少女の体が薄墨色に染まる。
一般人には分からない、スタンドの姿。
本人も気付いたのか慌てて解除した。

「え? パーツ? え、あ、マジか!」

「あ、えーと、ありがとう!」

ディーンが寄った分、下がりながら言葉を返した。
座り込んでいる間は腰が引けた体勢だ。

714ディーン『ワン・フォー・ホープ』&ヨシエ『一般人』:2020/02/09(日) 23:58:26
>>713

「どういたしましてー」

「見つかってよかったですねー!」

    ニコッ

ヨシエは無邪気に笑っていた。
スタンドの発現に気付いた様子は全くない。
彼女には『デミリタライズド・ゾーン』が見えていないようだ。

(今のは……)

(コイツ――『スタンド使い』)

しかし、俺には見えていた。
一瞬しか見えなかったが、何かが全身を覆っていた。
どうやら俺と同じような『身に纏うタイプ』のスタンドらしい。

(今のところ危険な奴じゃあなさそうだが……。
 そういえば『アイツ』も本体を覆うようなタイプだったか……)

以前、『鎖』を使うスタンド使いと遭遇した事がある。
奴からは何か『危険な匂い』を感じた。
アイツと同じような人間に遭遇するのは避けたい。
俺だけなら、まだ良い。
だが、ヨシエを危険な目に遭わせる訳にはいかない。

       ヒョイ

近付いてきたヨシエが、再びディーンを抱え上げた。
神谷を見つめるディーンは、心なしか目を細めているようだった。
『顔』を覚えようとしているのかもしれない。

「ディーン、いこ!」

「お姉さん、バイバーイ!」

ディーンを連れたヨシエは、挨拶して立ち去ろうとしている。
特に呼び止めなければ、そのまま別れる事になるだろう。

715神谷『デミリタライズド・ゾーン』:2020/02/10(月) 00:05:48
>>714

「ば、ばいばーい」

手を振って駆け足気味に店へと早歩き。
早急にこの場を離れるように。

「い、いい子だったな……」

(でもチワワは勘弁な!)

716ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2020/02/23(日) 21:37:47

「皆様――本日はお足を止めて頂き、真に有難う御座います。
 この『ハーピー』のショータイムで、
 しばし『現実からの離陸』をお楽しみ下さいませ」

「 『♪』 『♪』 『♪』 」

       バササササッ
               バササササササッ

『鳥人』を思わせるコスチュームを身に纏った女が、
集まった聴衆を前にして恭しく挨拶した。
女の呼び掛けに応じて、付近から『野鳥達』が集まってくる。
ハト・カラス・スズメなど多種多様だ。

「 『♪』 『♪』 『♪』 『♪』 『♪』 」

鳥のような声を発しながら、女が指揮者のように両手を動かす。
その合図に合わせて、鳥の群れが『編隊飛行』を披露する。
訓練されているかのように規則正しく、一糸乱れぬ動きだ。

(やはり大通り方面と比べると、
 この辺りは『客層』に少々違いがあるようで)

(『研究対象』として興味深いものを感じる所です)

パフォーマンスを進めつつ、それとなくギャラリーに視線を送る。
このショーは食い扶持を得るためだけではない。
そこに集まる人間達を観察し、
人の社会を『研究』するという目的も含まれているのだ。

717ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2020/02/28(金) 01:55:12
>>716
「待ち人は、来ます」
「いえ、傍にいるはずです。……心当たりがございますでしょう?」
「あなたは自分を押し殺し過ぎます 大丈夫です 良い星が出ていますよ」


 どーも。まゆです。
 ラフィーノ石繭(本名:末石まゆ) 占い師(偽)です。
 屋外にて営業中です。寒い。

 「(………アイツも大変ねェ)」

 少し離れた場所でカーニバルみてーな服装の女性が見事な芸をやっている。

 ところで私は『温度が視える』スタンド使いなのですが、
 あいつの服装、『熱い』。
 ほんと。『熱帯動物のケージか何かかよ』ッてくらい、
 彼女の服装が熱を帯びているのが『視える』

 わかる。
 寒いから。この時期、屋外はね。
 私も、上着の下は『ホッカイロ』塗れ。大変よね。

 「ええ、ええ」
 「お話、楽しかったです」
 「いってらっしゃい……応援してますからね」

次の客はまだ来そうにないので、
しばらく『ハーピーのショータイム』とやらを鑑賞する。

718ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2020/02/28(金) 13:25:52
>>717

「お次は少し高く飛んで見せましょう。下から上、上から下へ。
 アクロバットの遊覧飛行で御座います。
 『心のシートベルト』をお締めになられましたか?
 見失わないように、瞬きは今の内にどうぞ」

(あの『ニンゲン』――――)

「 『♪』 『♪』 『♪』 『♪』 『♪』 」

(『観客』ではないようですね)

ギャラリーの向こう側に視線を向け、そのような感想を抱く。
彼女は何をやっているのだろう?
あまり見たことのない場面ゆえに、探究心を刺激された。

     バサバサバサバサバサ
                バサバサバサァァァ――――ッ

編隊を組んだ鳥の群れが、曲線を描くような軌道で宙を舞う。
全ては『事前の打ち合わせ』通りに進行する。
『鳥とコミュニケーションが取れる人間』と見られているが、
実際は『その反対』なのだ。

(『ニンゲン』――現在、地上で最も高度な社会を築く種族)

(その『繁栄の秘密』を解明する事が、
 『我々の世界』を大きく進歩させる『鍵』となる筈です)

「さあ、回ります。最初はゆっくりと。徐々に激しく。
 大空を彩る翼のメリーゴーランドで御座います。
 色取り取りのコントラストをお楽しみ下さいませ」

「 『♪』 『♪』 『♪』 『♪』 『♪』 」

         バサササササッ
                 バサササササササッ

女の合図に合わせて、群れが空中で回り始めた。
メリーゴーランドを思わせる動きで飛び続ける。
指揮者のように立つ女は、一定のリズムで両手を振っている。

719ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2020/02/28(金) 20:54:19
>>718
「(わあ)」
 スゴイわね。カラスとスズメが喧嘩せずに並んで飛んでる。

>「 『♪』 『♪』 『♪』 『♪』 『♪』 」

 スゲーッ  まるで人間九官鳥。声帯どうなってんだ。
 鳴き真似とは思えない凄まじいバリエーション。
 まるでその場で指示を出してるみたい。

……『タネ』がわからない。

ええっと確か、『鳥獣保護法』。野鳥って捕獲禁止でしょ?
だからあのパフォーマーは、
大量の鳩とかカラスとかスズメを、自治体の許可もらって
飼って、躾けて、芸をやる時はそれを一時的に野に離して…
……めっちゃ手間かかるじゃない。


 「……ううむ、それか、タネも仕掛けもなく、
  森にすむ鳥さん達とお話しができて、
  いっしょにショーをしている、…?」

  「それはもはや『オカルト』よ。嘘くせーわね。」

それにしてもあのパフォーマー、
『濃い赤』だ。周囲の人間と比べて異様に『赤い』。
『ミスティカル・ガイド』は『温度差を色で視』る。


 「……いや暑すぎなんじゃない?
  もはや『肉体そのものが電熱ヒーター』って感じ」

 「…………まさか」

720ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2020/02/28(金) 22:32:58
>>719

人間の平熱は、大体『36度』前後だ。
犬や猫だと『38度』前後。
鳥の場合は『40度以上』になる。
これは運動量の違いが影響している。
特に鳥は空を飛ぶために他の動物よりも運動量が多く、
そのために体温も高くなるのだ。

「 『♪』 『♪』 『♪』 『♪』 『♪』 」

                  バサッ バサッ バサッ
  バサッ バサッ バサッ
                   バサッ バサッ バサッ
      バサッ バサッ バサッ

飛んでいた鳥達が地上に降りてくる。
女が両腕を広げると、そこに鳥達が着地していく。
その姿は、まるで『止まり木』のようだ。

「それでは皆様、いよいよ『フィナーレ』に参ります。
 お見逃しのないよう、どうぞ最後まで御覧下さいませ」

    「 『♪』 」

          「 『♪』 」

                 「 『♪』 」

   ブワァァァァァァァァァァ
                ァァァァァァァァァァ――――ッ

次の瞬間、鳥達が一斉に飛び立った。
それぞれが別々の方向に向かって飛んでいく。
最後に、その場に残った女は丁重に頭を下げた。

「――――御観覧に感謝を」

女の脇に置かれた古めかしい鞄に、硬貨が放り込まれていく。
その様子を見ている途中で、ふと視線を移す。
視線の先には、先ほど興味を抱いた『ニンゲン』の姿があった。

721ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2020/02/29(土) 01:08:03
>>720
「きゃあッ スゴかったーッ」

  パチパチパチパチ

やるじゃない。
鳥たちの編隊が一糸乱れることなく飛び交う空間、
そしてそれを統べて見せるあのパフォーマーの女性。
まるでこっちまで空を飛んでいるような気分になる
ステキなショーだったわ。

「…あッ いえ、じゃなくて!」
「…そうよ 絶対そう あの体温」


「――――――――『ひどい風邪』ね! 間違いないッ!!」

む。彼女こっち見たわ。
来るなよ、絶対来るなよ。風邪がうつる。


(『ブリタニカ』の視線の先の女は、
 白髪、他の人間に比べて目がキラキラとしているように見える。
 ウネウネ、カクカクした模様の布とかに身を包んでいる
 人間が『アジアン、エスニック風の服装』とか呼ぶ恰好だ

 女は、路上に机と椅子を置いて座っていた。
 『あなたの運命、視ます』と書いた看板が置いてある。

 『目が水晶になっている岩っぽい人型ビジョン』
 が、女とダブって見えた。    )

722ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2020/02/29(土) 01:43:52
>>721

(『スタンド使い』)

「ふむ」

    ザッ

鞄を手にして歩き出す。
進む先は、看板の置かれた方向。
すなわち『エスニック風の女性』がいる場所だ。

           ザッ

(『研究』の精度を高めるためには『情報の蓄積』が不可欠)

                  ザッ

(手掛かりを得るため、『コンタクト』を試みる事に致しましょう)

           ――――グリンッ

看板の前で立ち止まると、ややオーバーな程に大きく首を傾げる。
『運命』という言葉は理解しているつもりだった。
曖昧かつ広い範囲を指す表現。
しかし、それを『視る』という意味は図りかねていた。
『運命とは視覚的なものではない』と解釈していたからだ。

「失礼ですが――」

「『これ』はどのような意味で御座いますか?」

おそらく、体温は相変わらず高いように見えるだろう。
その割には病気をしている感じでもなかった。
単に分かりにくいだけかもしれないが。

723ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2020/02/29(土) 02:10:02
>>722
「近づくな―ッ!病気がうつるわ――ッ!!
 家に帰って寝ろケダモノーッ!……ん?」

風邪って感じではない…
体温だけ視れば重病人のようなそれだ。
なのに、見た目に変わった様子はなく、
あまつさえ路上パフォーマンスをしてみせた。
どういう事だ?

「あ…いえ 大変失礼いたしました
  エエっと、『これ』は……」


口元を覆う。何か変な風邪移されたらいやよ私。
にしても彼女、鳩、というかトリにそっくりね。
首の動きとか。まんまるな眼とか。カワイイじゃない。

「……貴方は、鳥さんたちのいるあなたの住処に帰って、
 はやくお休みになったが良いです。私は貴方が心配です」

「『非常に、非常に悪い運命』のビジョンです。
 星の位置が、とても良くありません」

「『視える』のです。私には、普通では見えないようなものが、
 『運命』とでも呼ぶべき色彩が、密かなるものごとの流れが…」

うそ。『体温』と『スタンドビジョン』しか見えない。
でもそこを騙しとおすのが偽占い師の仕事よ。

724ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2020/02/29(土) 02:50:26
>>723

「…………なるほど」

        グルンッ

首の角度を戻し、納得した様子で深く頷いて見せる。
彼女には特別な『才能』あるいは『技能』があるのだろう。
それが『繁栄の秘密』を解き明かす手掛かりになるかもしれない。

「あなたには『視えている』のですね。
 私を取り巻く『運命』の流れが……」

神妙な表情で、静かに言葉を返す。
彼女の台詞には、何処か信じられるようなものを感じた。
何よりも、彼女の『目の光』に説得力がある。

「いつの日か、私にも『それ』を視る事が出来れば――」

『大きな飛躍』を掴めるかもしれない。
固体としての関心だけではなく、種族全体の利益に繋がる。
そのために、こうして密かに『人間社会』に紛れ込んでいるのだ。

「ええ、おっしゃる通りに致しましょう。
 焦りは禁物です。『目的』のためにも、英気を養わなければ」

「――お心遣いに感謝を申し上げます」

          ザッ

感謝の言葉を告げて、踵を返す。
思えば、少し気が急いていたのかもしれない。
彼女の言葉で、その事に気付かされた。
そのような感情を胸に、横丁を後にする。
もちろん、相手が何を考えているかなど知る由もないのだった。

725ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2020/02/29(土) 03:30:36
>>724
「はい」

いいえ。視えてなんかねーの。

 「『悪い大きな流れ』に巻き込まれたくなければ、
  焦った行動は控えるように。
  冬の寒い風に耐えれば、芽吹く日も訪れます」

 「お気をつけて――――」

クビの動きが特徴的な彼女を見送る。帰りにマスク買え。
芸人にとって喉は大事なんだから。風邪を治せ。

 「――――或いは」
 「冬の風に乗ってしまうというのも一興かもしれませんわね」
 「大きな流れの上で、喧騒のさなかで、歌う」
 「飛躍は見込めます。大きな目的のための賭けではありますが」

 「でも私を巻き込むのはヤメロよ…
  見えない所で勝手にやってなさいな……」

以上、まゆでした。

726黒羽 灯世『インク』:2020/03/05(木) 23:33:31

「……………………」

教わった『ゲーセン』の張り込みを始めて、しばらく立った。
『触れずに人間を吹き飛ばした学生』の噂・・・
それを確かめ記事にするためだったが、『続報』は未だない。
常習犯ではないのか、それとも本当に『間違い』だったのか。

「…………」

(いけないのだわ、現れないから『ない』だなんて。
 そうね、そろそろ張りこむ店を変えた方がいいかしら……)

            (でも)

   『ダンッ』

            『ダンッ』

 ・ ・ ・ ・                         
(この筐体はこのゲーセンにしかない……負けっぱなしは癪なのだわッ)

通い詰めるのを怪しまれないために始めたはずのゲームは、調査の停滞に何か関係がないだろうか・・・

727百目鬼小百合『ライトパス』:2020/03/06(金) 00:10:55
>>726

白いパンツスーツを着た背の高い中年の女が、
店内の一角に佇んでいた。
煙草を咥えているが、火は付いていない。
天井の照明を反射して、
両耳の『白百合のイヤリング』が小さく光る。

「――――…………」

その話を耳にしたのは何時の事だったか。
『指一本触れる事なく人が吹き飛んだ』というような内容だった。
単なる喧嘩なら口を出すような事でもない。
しかし、喧嘩に『凶器』を持ち出したとなると別だ。
万一それが『犯罪』に関わるようなら見逃す訳にはいかない。

(手掛かりナシか……。ガセネタだったかねえ)

先の一件は、この店で起こったらしいと聞いた。
もっとも、この近辺の学生の話を立ち聞きしただけだから、
大してアテにはならない。
事実、こうして見回っていても何も見つからないのだから。

    チラ

ふと、筐体の前にいる少女に視線を向ける。
そういえば、しばらく前から見かけていた。
考えてみると、『何か探しているような素振り』もあった気もする。

(『手掛かり』か……。いや、まさかねえ。
 そう上手くいくもんじゃあない)

(だけど――――確認ぐらいはしておこうかね)

そのまま、少女の様子を見守っておこう。
こちらが見ている事に気付いたとしても、視線は外さない。
むしろ、それが目的だ。

728黒羽 灯世『インク』:2020/03/06(金) 00:42:02
>>727

(…………………………………………!?)

筐体の液晶に僅かに反射する『背後の光景』に、黒羽は驚愕した。

(…………わ……私に、この私に『ギャラリーがついている』のだわッ!!?)

(…………見たところあんまり、『ゲーマー』風ではないけど。
 見たことのある常連客でもないし……大人は珍しくはないけど……
 とにかく、ようやく私の『センス』が知れ渡り始めたようね……!
 『すでに上手い人たち』の時と違って、私の時は人が来なかったのに!)

全て最初から上手くいくとは思わない。センスがあっても経験がない。
そう……『センスはある』と思っていたのだ。経験が追い付いてきたのだ。

                 …………『そう思っている』!

(これ……! 『魅せプレイ』と言うのをした方が『上等』に見えるかしら!?
 それとも『ストイック』に決める方が『上等』!? 悩ましいところだわ!)

        『ダン』

               『ダン』

(もっと私を見なさい! 見上げなさい! ……初めてすぐにしては高いはずの私のスコアを!!)

はっきり言って、黒羽はこの『音ゲー』……さほどうまくはない。別に下手でもないが。

729百目鬼小百合『ライトパス』:2020/03/06(金) 01:05:48
>>728

正直な所、『ゲーム』の事はよく知らなかった。
あの少女がやっているものも例外ではない。
だから、上手い下手の区別もつかない。
少なくとも、自分よりは上手いだろう。
やった事がないから何とも言えない所なのだが。

(……もうちょっと突っ込んでみるとするかねえ)

    ザッ

少女の後ろから、やや距離を詰める。
あまり近付きすぎない程々の距離だ。
当然、相手が何を考えているかなど知る筈もない。

(分からない。ただ遊んでるだけなのか……。
 勘繰り過ぎたかもしれないねえ)

そのまま背中越しに観察を続ける。
集中しているようだし、邪魔しちゃあ悪い。
干渉せず、大人しくギャラリーに徹する事にした。

       ――――カキンッ

ポケットからライターを取り出し、親指で蓋を跳ね上げる。
別に火をつけるつもりはなかった。
言ってみれば、ただの癖だ。
今は自重しているが、吸ってないと落ち着かない。
だから、こうして抑えていた。

730黒羽 灯世『インク』:2020/03/06(金) 01:20:21
>>729

(!? 近付いてきた……『もっと見たい』という事かしら)

(それに『観戦マナー』が良いのだわ……さすがに大人ね!)

黙って見ているのを都合よく解釈する黒羽。
ライターの音くらいは、気にならない。
それより目立つ騒音もある。
こればかりは黒羽が『下回る』。

    『オオオオオッ』

          『ズドドドドドドド!!!!!!!』

                 ギャハハハハ

  『ドンドコドンドコ』

ゲーセンは、『静か』とは最も遠い空間の一つかもしれない・・・
ライブハウスのようなそれとは違い、どこにも統制や基準がないから。

(…………ふう、こんなところかしら)

              ファサッ

髪を手で払いながら、振り向く。
夕焼け色の瞳を灯す目は、蛇や猛禽のようで『良い目つき』ではない。

「――――――ねえねえ。どうだったかしら、私のプレイングスキル?
 惜しくもランキング上位は逃したけど、この調子だとすぐ『上』に立てるのだわ!」

                       「そう思わない?」

喫煙にも黒羽は特に、なんとも思わない。ゲーセンはそういう場所だと知っているからだ。

731百目鬼小百合『ライトパス』:2020/03/06(金) 01:45:43
>>730

ゲームセンターの客には未成年も多い。
従って、こうした場所で大っぴらにスパスパやるのは、
あまり好ましくないと考えていた。
だったら、煙草を咥えているのも宜しくないかもしれない。
しかし、それを止めると無意識に火をつけてしまう。
要するに、これが我慢出来るギリギリのラインという事だ。

「ああ、上手かったよ。ちょうど感心していた所さ。
 器用なもんだねえ」

自信ありげな態度を見て、そう答える。
実際は分からないのだが、わざわざ口に出す事もない。
それを言ったとして、損はあっても得はないだろう。

「アタシも前に少しだけやったんだけど、
 なかなかああはいかなかったさ。
 アンタは、よくやってるのかい?
 随分と手馴れているように見えたよ」

(ちょいと探りを入れさせてもらおうかね。
 といっても――こりゃ『ハズレ』かもしれないねえ……)

せっかくだし、ちょっとばかり話でも聞いておこう。
もしかすると、会話の中で何か出ないとも限らない。
出なかったとしたら、他を当たればいい。

732黒羽 灯世『インク』:2020/03/06(金) 01:56:25
>>731

「フフッ! お分かりみたいね、嬉しいのだわ。
 まあ〜まだまだ私は初心者みたいなものだけどね。
 つい最近だもの、このゲームを始めたのも!」

           フフフ

「手慣れてるように見えたかしら〜?」

自慢気な態度は崩れない。
真意を知らないのだから当然ではあるが。

(……?)

しかしこのあたりで、黒羽は引っ掛かりを感じ始めた。
特に言動からではなく、本当に『なんとなく』だ。
しいて言えば、『質問の仕方』に『探る意図』を見た。

「この筐体って、このあたりの他のゲーセンにはおいていないのよね。
 前にもやったという事は、貴女……も、ここにはよく来るのかしら?」

(何かしら、まあいいわ。聞きたいことははっきりしてる。
 他の常連客はあまり知らなさそうだったけど、
 この人は普段見かけないし、『違う層』の人な気がするのだわ)

いずれにしても、百目鬼の言葉には別の『ヒント』を見出した。
もっともそれは『探り』の一環からの発展で、少しずれているのだが・・・

733百目鬼小百合『ライトパス』:2020/03/06(金) 02:22:14
>>732

「ま、たまに気晴らしにね。だけど、常連って程じゃあないよ」

この筐体が他の店には無い事は知らなかった。
元より、ゲーム自体には注意していなかったのだ。
だが、その点には敢えて言及しなかった。

(他の店には置いてない、か。
 それで『つい最近始めた』って事は、
 この子も、ここの常連って訳じゃないようだね)

(けど、『この店にしかない事を知ってる』のが、
 引っ掛かると言えば引っ掛かる)

(もう少し掘り下げてみるかねえ……)

「こういうのが上手い人ってのは、
 やっぱり『才能の違い』なのかねえ。
 どんなのをやっても上手にこなしちまう。
 そういう人が羨ましいよ。アタシは不器用でさ」

「さっきのを見てた限り、アンタもゲームは得意そうだね。
 今やってたヤツだけじゃあなくて……。
 たとえば、『ソレ』とか『アレ』なんかはどうだい?」

指で挟んだ煙草の先で、別の筐体を指してみせる。
『シューティングゲーム』と『対戦格闘ゲーム』の筐体だ。
それ自体には、これといって深い意味は無い。
ただ、この少女がゲームの愛好家かどうかを知りたいだけだ。
特別ゲームが好きな人間なら、
やりたいゲームを探して店を回るのも普通かもしれない。

734黒羽 灯世『インク』:2020/03/06(金) 13:59:19
>>733

「ふうん、そうなの…………私と同じね」

(アテが外れたわね……
 でも、たまに来てるなら可能性はある?
 『学生の喧嘩』だったみたいだし、当事者は無いとしても)

「……フフッ! 才能、そうねえ、『才能』もあるのだわ。
 でも、最初からこれだけ出来たわけじゃあないもの。
 あのあたりのゲームも……きっと『得意になれる』でしょうね!」

「まあ、今やっても勝てないけどね……
 シューティングはいつも似たような人が上位だし、 
 格ゲーも『店内ランキング』はほとんど固まってるみたいだわ」

『店の状況』は、調査の中である程度あたりを付けている。
それがくだんの『騒動』につながった可能性も無くもないから。

……格ゲーの筐体の周りには人が多い。
黒羽自身あの中で『上の方』ではないと自覚はある。
客観視は出来ている。今は勝てない。そう、『今は』……

(っと、いけない、ゲームで上り詰めるために来てるんじゃない!)

……思い直した。
とはいえ百目鬼の『探り』には、気付き切れていない。
このゲーセンの『ゲーマー』ではないような発言をしている自覚も薄い。

「ところで……このゲーセン、『治安』が良くないわよね。
 貴女みたいな、オトナの人があまり多くないからかしら……」

視線の先の『格ゲーエリア』は、笑いも多いが喧噪の中に『罵倒』も多い。

735百目鬼小百合『ライトパス』:2020/03/06(金) 16:24:37
>>734

「自分を知ってるのは立派な事だよ。
 『出来る事』と『出来ない事』の区別をつけるって事さ。
 そこが『自信』と『慢心』の違いってヤツなんだろうね。
 その点、アンタは若いのにしっかりしたもんだ」

「ハハハ、こんな話は余計なお世話だったかな?」

(ここの常連じゃあないか。
 それに、しょっちゅうゲームやってるって風でも無い)

(こうなると、『この筐体が他の店に無い』のを知ってるのが、
 なおさら気になってくるねえ)

「ん?言われてみると、そうだねえ。
 若者が集まりやすい立地だから、不思議じゃあないけど……」

画面の中にあるのは、互いの命を削る戦いだ。
もちろん、それは現実じゃあない。
機械の中で行われる『安全な殴り合い』に過ぎない。
しかし、人間は機械とは違って感情がある。
熱が高まった結果、
『罵倒』から『現実の殴り合い』に発展する可能性も有り得る。

「ゲームに限らず、勝負事は熱くなりがちだからね。
 あれぐらいなら、まだマシな方だろうけどさ」

「場合によっちゃあ、
 それが原因で『喧嘩』になるなんて事も有り得る。
 そうなると店側としても迷惑だろうけど、
 あまりうるさく注意し過ぎると、今度は客足に響いてくるしねえ」

「――『そういうの』見た事あるかい?」

向こうから『治安』について言及してくれたのは助かった。
その流れに乗って、さらに尋ねる。
この少女にも、何処か『引っ掛かり』を感じるというのもある。

736黒羽 灯世『インク』:2020/03/06(金) 22:27:08
>>735

「ふふふっ! そう、私ってしっかりしてるの。
 これからさらにしっかりしていくと思うのだわ」

          フフフ…

「褒められるのに余計も何も……
 もっと褒めてちょうだい。
 貴女はよく褒めてくれて嬉しいのだわ」

(気分が良いわ。………………よく褒める?
 ……それって『聴き込み』の基本じゃないの?
 さっきから感じてた、ちょっとした違和感。
 …………もしかして、何か『私に言わせたい』事が?)

何気ないきっかけだった。
だからこそ、百目鬼の次の質問には『納得』した。

(……多分、この人も……『何かを調べている』)

「そうね、勝負だもの。負けたくないのは当然。
 負ければ悔しいのもね……遊びでも、勝負は勝負。
 子供でもオトナでも、そこは大事だと思うのだわ!
 まあ、負けたからって『手を出す』のは『下等』だけど!」

持論を添えた返事から、核心に切り出す。
その時の表情や身振りは努めて『なにげない』ものだ。

「…………そう。『ケンカ』と言えば、貴女もお聞きになったかしら?
 このあたりのゲーセンでも派手なケンカがあった、っていう、『ウワサ』」

(私はこの件の情報をほぼ持っていない……彼女も同じ事を調べてるなら?
 『校内新聞』ならともかく、普通の新聞で扱うような記事とは思えない。
 彼女は『同業者』ではない。……だとしたら何? って話になるけど。
 ともかく、食い合わないなら……『情報共有』でウィンウィンの関係だわ!)

深謀遠慮はあくまで頭の中に留めて、顔色は変えない。
何かを考えている、と思えば口を固くする人間もいる。
記者として、『顔色』の重要性はよく分かっているつもりだ。

もっとも、学生レベルのそれを……『百目鬼』が見破れないかは別の話だが。

737百目鬼小百合『ライトパス』:2020/03/06(金) 23:18:27
>>736

情報を得るためには、相手の口を軽くする必要がある。
そして、そのための方法には大きく分けて二つある。
つまり、『褒める』か『脅す』か。
だから、こうして褒めているのは『常套手段』の一つなのだ。
生憎、それを黒羽が悟っている事には気付いていなかったが。

「全くその通りだよ。
 負けた腹いせに手を出すなんてのは、
 その時点で『負け』を認めたようなもんさ」

(この子――引っ掛かるは引っ掛かるんだけど、
 イマイチ掴み切れないね)

この少女には、何処か『異質』なものを感じる。
そもそも、この店に似つかわしくない雰囲気なのだ。
彼女を気にする理由は、それだけではないのだが。

「ははぁ、『噂』ねえ……。派手な喧嘩っていうと、
 『大勢で乱闘騒ぎになった』とか、そんな話かい?
 もしそうだったら、店員も止めるのが大変だろうね」

(さて、『出てきた』か。何か聞けるといいんだけどねえ)

内心は相手の言葉に意識を集中していたが、表には出さない。
露骨に反応すると、それが重要な事だと思われてしまう。
人間は、『大事な事だ』と思うと口が堅くなるものだ。
それが情報収集の妨げになる可能性は否定出来ない。
あくまで何気ない風を装いながら、次の言葉を待つ。

738黒羽 灯世『インク』:2020/03/06(金) 23:57:27
>>737

「その通り、勝負で決まった上下は『真実』!
 暴力で書き換わるなんてあってはならない」

黒羽は暴力を得意としない。
だから暴力に屈しないための『力』を求めたのだ。

「さあ……私も細かい事は知らないのだわ。
 ウワサを聞いただけ。それも『SNS』でね。
 だから『証拠』なんてどこにもないんだけど」

(……この反応、どっち?
 知らないなら話は早いにしても、
 知ってて誤魔化す理由は……
 『子供が踏み込むべきではないと思ってる』か、
 『知られるのはまずいと思ってる』か……)

思考する。
相手の立場次第では『情報収集』を切り上げる必要もある。
勿論、全てを表情だけで読めるほど極まった技術はないが。

「――――『人が吹っ飛ぶ』ような喧嘩だった、と聞いているのだわ」

(これで反応が『出て来た』ら、もう少し踏み込んでいけるんだけど!)

あえて『半分』ほどの事実を伝えて、より『読みやすい』ように動く。

739百目鬼小百合『ライトパス』:2020/03/07(土) 00:24:27
>>738

「『人が吹っ飛ぶような』――ねえ……」

(いくら『噂』とはいえ、そんな話が幾つもあるとは考えにくい。
 アタシが知ってる話と同じだと見て良さそうだねえ)

同じ話を知っていると仮定すれば、
『他の部分』も知っていたとしてもおかしくは無い。
もちろん、『手も触れずに』という部分だ。
それを言わないのは『知らない』のか、
それとも『知っていて言わないのか』。

「ああ、そういえば思い出した。
 何処だったかで、そんな話を小耳に挟んだ覚えがあるよ。
 学生の立ち話を偶然聞いたんだけどね」

      ――――ドシュンッ

話の途中で、不意に『ライトパス』を発現する。
『白百合』の紋章を持つ人型のスタンドだ。
片手に握る『特殊警棒』を、悠然と肩に乗せている。
この少女から感じる『異質さ』。
スタンドを出したのは、それを確かめるためだ。

「ええと、どんな話だったか……」

「確か、『手も触れずに吹っ飛んだ』とか何とか――」

「まあ、よくある『デマ』なんだろうけどねえ」

(『押して駄目なら引いてみる』……。
 さぁてと、どうなるかね……)

740黒羽 灯世『インク』:2020/03/07(土) 00:39:18
>>739

             ピク
                ッ

(――――『スタンド使い』っ! 『大当たり』だわ!
  ――……いえ、『事情を素直に話す気』は無さそう。
    大という事はないわね、でも『張り込み』の甲斐はあった!)

『ライトパス』には露骨に反応をしてしまう。
スタンドを見て動じないほどの経験値は『まだ』無い。
それも、『人型のスタンド』は今の黒羽の関心の対象。

(……どうすべき? というよりこの人は『スタンドをなぜ出した』の?
 『私への脅迫』? いや、スタンドが見える前提で『脅迫』するのは変だわ。
 『私が意図的に……触れずに、というのを飛ばしたのに気付いている』?
 それならスタンドを見せて『余計な駆け引き』自体を飛ばすのは納得だわ)

            (…………私の『上を行く』相手という事?)

      メラ…

対抗意識が燃えるが……今は返答をすべきだと、思い直した。

「そこまでお分かりだったのね!
 『手も触れず』というのは眉唾だから、気にしなかったけど。
 ああでも、『合気道』の達人は触れずに相手を投げるなんて言うのだわ」

             スゥー ・ ・ ・

「――そういう『技能』とかを持ってる人間は、いるのかもしれないわね」

振袖上の腕を軽く上げ、その袖の中に隠した手を百目鬼に見せる。
いつの間にか、そこには『筆』が握られている。その名は、『インク』。

(スタンド使いだという事を知って、どう動いてくるか……
 『スタンド使いになら教えても良い』なんて流れなら良いのだけど……!)

741百目鬼小百合『ライトパス』:2020/03/07(土) 01:07:39
>>740

「そりゃあ、また凄い。
 アタシも『似たような事』をやってるけど、そんなのは無理だよ」

百目鬼小百合は、警備会社の『主任指導官』だ。
護身術や危険人物を取り押さえる技術を身に付け、
それを教える立場にいる。
もっとも、生身で触れずに投げ飛ばすなんて芸当は不可能だ。

「だけど、やろうと思えば出来なくも無い。
 アンタの言うように、そういう『技能』があればねえ」

「アタシは『それ』を持ってる。アンタと同じようにね」

        ジッ

袖の中に目を向け、『筆』を見下ろす。
自身の『それ』とは全く異なるヴィジョン。
だが、力の本質は同様だ。

「さてと――何から話そうかねえ……」

手の中で煙草を弄びながら思案する。
この少女がスタンド使いなのは分かった。
しかし、目的が分からない。
何処まで話していいものだろうか。
そうはいっても、大した情報を持っている訳でもないのだが。

「アタシは、その噂の出所を探してた。
 別に、『誰かに頼まれた』って訳じゃあないよ。
 ただの『個人的な理由』さ」

「で、それについて『誰か知らないか』と思ってねえ。
 だから、こうして来てみた」

「アタシの事情は、こんな所さ。
 良ければ、アンタの方も教えてくれると有り難いんだけどねえ」

ひとまず、自らの素性を明かす。
この少女については、学生である事ぐらいしか分からない。
相手の事情が分かれば、話も進めやすくなるだろう。

742黒羽 灯世『インク』:2020/03/07(土) 01:58:41
>>741

「本当にあるとしたらそれはきっと、
 『お弟子さんに空気を読ませる技能』なんじゃないかしら。
 もしくは――――フフッ! そうね、私たちと同じ」

         ス・・・

筆先を宙に泳がせる。
そして、何も起こさない。

「まあ、私のは人を吹き飛ばしたりはしないけど……」

『スタンドでは何もしない』事を示す。或いは自分にも。

「私はね、『新聞記者』なの。校内のだけどね。
 この喧嘩騒動を知りたがっている人が、いる。
 だから『記事にしたい』……それで調べてるのだわ」

協力ではないにせよ、協調の意図を感じた。
だから『明かす』事にした……無論すべてではないが。

「……『誰がやったのか』?
 …………『なぜやったのか』?」

           フフ…

「そして、『どうやってやったのか』?ってところは……
 信じてもらえるか、難しい所になるかもしれないわね」

「……ただ、今のところあまり収穫は無いのだわ。目撃者も少ない。
 噂の出所の一つ、SNSへの書き込みも今は消えてしまっているし、ね」

743百目鬼小百合『ライトパス』:2020/03/07(土) 02:28:26
>>742

「なるほどねえ。教えてくれてどうも」

校内という事は『クラブ活動』か何かだろうか。
しかし、この一件はどう見ても『校外』だ。
その点は気になるが、深く追求する事でも無い。

「どうやら、アタシとアンタは大体似たような目的らしいね。
 ま、『全く同じ』って事もなさそうだけど」

こちらの目的は、『抑止』する事だ。
『喧嘩』が『犯罪』になる事を予防する。
スタンドが絡むとなると、警察では処理出来ない。
だから、『力を持つ者』が必要になる。
そうした意思の下で、百目鬼小百合は動いていた。

「アタシも、これといった手掛かりは掴んでない。
 ほとんど何も知らないと言っても良いよ。
 さっき話した『噂』以外はねえ」

「……どうやら、お互いに『空振り』だったようだね」

『ライトパス』を解除し、肩を竦めて見せる。
しかし、全くの無益とも呼べない。
同じように行動する人間と遭遇出来たのだから。

「これも何かの縁だ。
 せっかくだから、コイツを渡しとくよ。
 『情報の共有』ってヤツさ」

    サラサラサラ

手帳を取り出し、ボールペンで何かを書き込む。
それを破いて少女に差し出した。
書かれているのは電話番号だ。

「アタシは『小百合』って者だよ。アンタは何て名だい?」

744黒羽 灯世『インク』:2020/03/07(土) 03:21:23
>>743

なぜ校内新聞の記者に過ぎない少女が、
この事件を『記事にする』謂れがあるのか。
黒羽はあえて語りはしないが――『被害者』は清月生だ。
『この事件を知りたい人間』の存在も、そこに絡んでいる。

「そうね、空振り……でも、『情報共有』は出来た。 
 私にとっては、それは『上等』な結果だわ。
 ゲームに夢中になるくらい、毎日何も起きなかったから」

               ゴソ…

『インク』を持つ手を懐に入れ……

「この空振りは、次への布石。意味があるのだわ!」

     サラサラ

「もし何か分かったら……差し支えなければ教えてちょうだい。
 私の方でも、『記事にする』より早く伝える事があれば連絡するのだわ」

同じように小さなメモ帳を取り出し、
電話番号の書かれた紙を返した。
その時には既に、スタンドの筆は消えている。

「ああ、名前? 『灯世』……『世を灯す』と書いて『トモヨ』よ!」

「さて……今日はそろそろ帰る事にするのだわ。
 朝から張り込んでてさすがに疲れて来たし……小百合さんはまだ残るのかしら?」

745百目鬼小百合『ライトパス』:2020/03/07(土) 03:45:06
>>744

「『名は体を表す』っていうのかねえ。
 『灯世』――立派な名前じゃないか。
 言っとくけど、お世辞じゃあないよ」

そう言って、軽く笑う。
連絡先の交換を済ませ、再び煙草を咥える。
手の中には使い込まれたライターがあった。

「お疲れさん。アタシは……そうさねえ」

「外で『煙草』を吸うよ。これが無いと落ち着かないもんでね。
 そろそろ一服したいと思ってたのさ」

    ザッ

「気を付けて帰るんだよ。
 スタンド絡みじゃなくても、この辺はガラの悪いのも多いからね」

「ま、余計なお節介だとは思うけどねえ」

帰るらしい灯世の姿を見送る。
それから自身も出口に向かって歩いていく。

        ――――シボッ

途中で我慢しきれなくって、外に出る前に火をつけてしまったが。

746黒羽 灯世『インク』:2020/03/07(土) 04:47:22
>>745

「フフッ! ありがとう。
 いずれもっと多くの人にそう言わせてやるのだわ」

世界に、あかりを灯す。そう……記者として。
親達はそういう意味で付けたのではないだろうが、
黒羽灯世は、そのように生きようと思っている。

「あらそう? …………喫煙者も肩身が狭くて大変ね」
 
         ゴソ…

メモ帳をしまい、荷物置きに置いていた鞄を持つ。
この場に長居する必要は今は無い。
そろそろ、外も暗くなる。

「ええ、このあたりは夜は本当に治安が悪いそうだし。
 暗くなる前に、ちゃんと家に帰れるようにするのだわ」

           「それじゃあまた、小百合さん」

(……それにしても、やっぱり『人型スタンド』がメジャーなようだわ。
 事件の真相や、それをどんな記事にするか……同じくらい気にかかるのは、『スタンド』の謎)

スタンド世界の全体像を知ることは、自身の『強者』『上位者』たる上で重要な事。
頭の中には思考を満たしつつも、その日はそれ以上なにもなく、帰路に着いたのだった。

747日下部『アット・セブンティーン』:2020/03/18(水) 22:41:54

          ド

               ン

                      ッッッ


時刻は深夜に差し掛かりつつある頃だった。
一台のバイクが、一人の少女を撥ね飛ばした。
直撃ではなかったが、『事故』と言えるレベルだ。
撥ねたバイクはそのまま走り去っていった。

     ・・・少女だけが残る。


                『ドチャ』

         『ズチャ』

「…………」
 
                    フラ〜  ・ ・ ・


常識に則れば凄惨な事故現場で、例外もまたその少女だけだった。
蝶の孵化のように、ゆっくりと起き上がる。何があるわけでもないが走り去った方角を見ていた。

748斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/03/19(木) 02:49:33
>>747

 「――知るかァァア!」

殴りぬき、蹴り飛ばす
喧嘩に法則も知性もいらぬ、只々殴り倒せばよい
腹に一撃、そこから下がった頭にフック気味の左を入れて吹き飛ばす

 「だいたいなんだよ『俺の女を泣かせた』って 知るか解るか心当たりが多すぎるわ その程度で喧嘩をふっかけてくんな面倒くせぇ」

 「……あ、いや待てよ?もしかしてアレか?この前のバレンタインに告白してきた女がいたな。」
 「タイプじゃねえんでフッたが……あー……そういう。」

聞いた限りの経緯としては恐らくこうだ

振られた女が泣きながら消沈していれば、声をかけるのは別の男
あなたのような美人を泣かせるなんて、なんてひどい奴だと男が言い、それを見た別の男は義憤に駆られて許しておかぬと拳を握る
……かくして俺にいきなり殴りかかってくる男が1人。

 「俺悪くねぇじゃん……!そもそもお前の女でもねぇ……!」

まごう事なき理不尽だった、ある意味では自分の顔の良さが関係しているという考え方も有るが
それを悪いと言うならば、生まれ持った肌や瞳の色で差別する手合いとなんら変わりが無いではないか。

 「女を泣かせた?仕方ねぇだろ美人でもタイプじゃねぇんだもん、泣いたのは向こうの勝手じゃねえか馬鹿々々しい」
 「つーかそれで俺を殴ったところで、お前に女は振り向かねぇよ 精々てめぇで口説き落とせや。」

    グシャ
                『ドチャ』

         『ズチャ』


 「じゃあそういうわけだから……グシャ?」

懐を見ればバレンタインデーの返しとして買った焼き菓子が一つ、焼いた粉と化していた
思い返すは先程の殴りかかられた瞬間の事 咄嗟にスタンドで防いだが、纏うタイプとはいえ元が『鎖』、衝撃を減らせるわけもない。

 「…………」

原因である倒れている男に聞くに堪えない馬騰を浴びせながら何度か蹴りを入れ
バツの悪そうに頭を掻きながらその場を離れた

 「チッ! ……しかし今の音、何かもっと妙な音が混じっていた気が 水を入れた袋が叩きつけられたような?」

大きめの舌打ちをすると路地から歩み出て、音の方につま先を向ける
……ふと、一人の少女が眼に入った 深夜故に衣服の色や細部はよく見えぬが 車道の上でフラフラとしているのはなんとか見える

はて、こんな時間になにをしているのだろう?そう考え何の気なしに近づいてみる。

749日下部『アット・セブンティーン』:2020/03/19(木) 22:45:00
>>748

近付いてみると分かるのは、『白い』少女だった。
三つ編みの髪も、シルエットを膨らませるオーバーサイズの外套も。

そして、それが所々……現在進行形で、赤色に染まりつつあることも。

「う、う、う〜〜〜〜ん」

『事故現場』だった。

                   『ズズ』

         『ズ』

    クルッ

「ねえ……『ひき逃げ』するなんてひどいよねぇ〜」

「死んじゃったらどうしてくれるんだろう」

そして被害者の少女が斑鳩の方を向いたのだった。近付いてきたゆえに。

「いたた……そこのお兄さぁん」
「もし暇なら私を『歩道』まで連れてって〜」

「全部痛いよ〜。歩けそうにないよ〜。二台目が来たら死んじゃうよ〜」

どうも致命傷といった風ではないし、二台目も来そうにはないが……どうする?

750斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/03/20(金) 15:43:09
>>749

――それはどうにも現実感というものが希薄だった

真っ白なキャンパスに、赤い染みがじわじわと広がり
やがては赤から黒に染まるであろう、その姿

喉から漏れ出す台詞は、その姿と対照的に何処か間延びした呑気な物で
どうにもちぐはぐなズレた感覚を与える

『致命傷ではない』だが『動いている』
破壊力という物は空気抵抗や重力加速などを算数に入れなければ至極単純、速度と質量に比例する。

 (――いや、そこは死んどけよ 人として)

理屈は不要、シンプルに考えよう ……車に衝突されて生きている人間がいるか?
俺のストーリーが『コメディ』から『ホラー』に変更された瞬間だった。

 カチ ……パキパキパシピキ

これが足をひねったとか、その辺りなら手を貸すにやぶさかではない
だが『真っ白な装束の』『血だらけの女性が』『場違いな台詞と共に此方に助けを求めてくる』と話が別だ
具体的に言うとジャパニーズホラーの最たる一つ、『貞子』辺りをどうしても連想して怖くて近づきたくなかった。

 ――ヒュッ  キィン  ……ザザザザザザザ

 「……そう言われてもな 『もう歩道にいる』んじゃないのか?」

鎖が伸びる、俺のスタンドが少女の背後に落ち、融合が解除される
内包された大量の鎖の欠片が、潮騒の如き音をたてながら分離し、銀色の波として少女の体躯を歩道まで押し流した。

 「それで?救急車がいるなら呼んでやるが……葬儀屋の方が先か?」

腕を組み、周囲を警戒しながら距離を維持する
目の前の異常相手に、流石にここから猫を被れる気もしないのだ。

751日下部『アット・セブンティーン』:2020/03/20(金) 23:33:38
>>750

 ――ヒュッ  キィン  ……ザザザザザザザ

おびただしい量の鎖が自分を押し流す事なんて信じられない。
が、『歩道にいつの間にか立っている』自分は『そこにある事実』だ。

「あれ、ほんとだ……頭も打っちゃったかな〜」

                ポタ…

                      ポタ…

だからすぐに受け入れる。
袖から垂れ始めた血は、車道に痕跡を残してもいない。

「『死ぬ』予定はないんだよねぇ」
「『救急車』も……うん、いらない。んふ、心配かけちゃうねぇ」

              「いてて」

    ドシャ

「立ってるのはしんどい……お行儀悪いけど、寝ちゃおうかな。ちょっとだけ」

体勢を崩し、地面に伸びながら『斑鳩』を見上げていた。

「んん……『15分』」

                        『ズ』

「や〜、14……『14分48秒』かな。あのねお兄さん。何も呼ばなくていいけど」
「もし何かお願いを聴いてくれるなら、しばらく私の話し相手になってほしいな〜。ダメ?」

                『ズズ』

『14分48秒』――――それが何を意味する言葉なのか。口調に、剣呑さは無いが・・・

752斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/03/21(土) 00:13:58
>>751

――銀の枷が音をたてずに袖に戻る。

役目を終えた『鎖』が掻き消え、後には何も残りはしない
当然だ、それがスタンドである以上 俺が作り出した現実に双方から干渉可能な実体であっても
一切触れずに、朝方の夢の如く消せるくらいは可能な事実だ。

 「――なんだ、暇なのか?それとも底抜けに呑気なのか?」

鼻を鳴らす、目の前で寝転んだ少女はどうにも危機感という物がない
すくなくとも自分が女で、それも血濡れであったなら 男の前で寝転ぼうとは考えない事だ
――普通の人間なら、という但し書きは着くが。

(少しは引いた車やらに怒るなり、自らの負傷に動揺するなり有りそうな物だが、それもない)
(血の粒は車道に残らず、痛いと言いながらその顔はむしろ夢見心地の乙女のようにも見える)

……やれやれ、俺は探偵では無いんだが。
腕を組みながら吐息を吐く、そういえば暦の上では既に春だったか?
桜の下にはなんとやら という話は聞くが、車道の上に女が寝転ぶという話はついぞ聞いた覚えがない
あったとしてもそれは単なる事故現場だ。

(血液、或いは肉体そのものに同化した『スタンド』か?引いた車自体も現実に存在するか怪しい物だな。)

 「構わんぞ?其方が『勝手に歩道に寝転んで勝手に話す』分にはな。」

 「毒にも薬にもならんのだから、勝手に好きにするがいい、俺もそうする ――ただ、それだけでいいのだがなぁ。」
 「解らん奴の多い事、多い事……それで?何を聞きたいのだ?自己紹介からか?」

皮肉気味に端正な顔をゆがめながら、肩を竦める
少なくとも、先程のくだらない逆恨みの男よりは退屈はしないのだから。

753日下部『アット・セブンティーン』:2020/03/21(土) 01:04:36
>>752

「今から、バイクを追いかけられるわけじゃないでしょ〜?」

      『ズ』

           『ズ』

「だったら、動けるようになるまでは……」
「お話でもしてる方が『価値』ある時間じゃなぁい?」

危機感。確かにそれが『無い』。
致命傷ではないにしても、『重傷』ではあるはずなのだ。
おかしな方向に曲がった脚などは意識を飛ばしかねない。

――――『普通ではない』のは斑鳩の見立て通りだろう。

「自分の話が相手にとって毒か、薬か。そんなのわかんないもんねぇ」
「それなら自分の薬になることをするのが良いよね〜。んふふ」

「話す内容はなんでもいいんだ〜」
「そうだねぇ、自己紹介からにしとこっか」

日下部は笑みを浮かべる。
顔立ちは斑鳩同様に端正な部類だが……血に濡れた笑みは、気味の良いものではない。

「日下部(くさかべ)……日下部虹子(くさかべ にじこ)」「趣味はぬいぐるみ集め」
「気安く、クサカベって呼んでね〜」「それで……お兄さんのことは、なんて呼べばいい〜?」

754斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/03/21(土) 01:23:53
>>753

 「……ふむ、名乗られたからには返さねばならんな。」

己の顎を撫でつつしばし佇む
偶然とはいえ、さて この『俺』自身はなんと名乗った物か?思えば考えた事が無かった
同じ名前を名乗るのも良いが、それでは少々つまらない。

 「――よし、俺の事は『ライカ』と呼べ どうせ2度も会わんのだから、その辺りが双方都合よかろう」
 「偽名だからと文句を言うなら、その前に……その端正な顔を拭う也してから言うのだな、美しい顔が台無しだぞ?」

いかに元が美人であろうと、化粧が下手では台無しという物
それに、吸血鬼か歩く死体と見紛うその姿に本名を告げて、老夫婦に災いを持ち込むのははばかられる事でもある
何がトリガーになるのか解らないのがスタンド能力だ、まったく面倒だと思う。

 「思うに、薔薇というのは手がかかるから美しいのだ 虫食いの華など見向きもされまい。」

恐らくクロガネ辺りなら放ってはおかないだろう、それ故に善性なのだから
しかし俺が考えるのは、あと一歩間合いを広げるべきか?と言う事くらいだ。

 「……しかし、俺としては面倒な奴を返り討ちにした後なので、特に貴公には興味が無いな、うむ 薪にもなりそうにない。」
 「何か他に聞きたい事はあるか?」

他の気遣いは目の前の女の言うとおりに、救急車を呼ばない辺りが関の山と言う事だ。

755日下部『アット・セブンティーン』:2020/03/21(土) 02:58:03
>>754

「偽名なんだ? 言わなきゃ気付かないのに〜」「まあ」
「呼んで答えてくれるならなんでもいいよぉ。よろしくライカさ〜ん」

『意味』はどうでもいい・・・重要なのは『そこにあるもの』だ。
ライカでも、ベルカでも、ストレルカでも同じことだ。

「私、きれい? やった〜」「んふふ」
「お世辞でも、なんでも、口に出してくれたのが嬉しい〜」
 
            グイ…

袖で顔を拭う。
誉め言葉は本題ではないとはわかっている。
斑鳩の本心、本音、本当の関心ごとは分からない。
分からないもの、見えないものにこだわるつもりはない。
それが表立って、目につき鼻につく問題にならない限りは。

「でも、まあね、こんな状態だからねぇ」
「せっかくなら無傷で、化粧もばっちりの所を見せたかったな〜」
「きっともっと、綺麗だって驚いてくれたと思うのにぃ」

                      『ズウ』

「んふ……まあいいや、それは」
「轢かれたからお話出来てるんだし、言っても仕方ないよね〜」
「そうだねえ、何のお話をしよっかな。ねえねえ、『面倒なやつ』っていうのは?」

       『ズ』

「話すのも面倒なヤツなら、別の話でもいいよ〜。趣味とか……最近読んだ本とか〜」

756斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/03/21(土) 05:58:04
>>755

(……やはり『幻聴』ではない この引きずるような音は何だ?)
(周囲を見渡しても、音の発生源が解らない 遠距離操作ならこんな音を出す必要が無い)

 「仕方なかろう、本名の方は『俺』の名前では無いんだからな ……正確には奴の名前でもないが。」

(肉の詰まった皮袋を引きずれば、こんな音になるか……?)

 「ああ、そいつか?」

アレが何かと言う事は一旦置いておくとしよう
……腹が立ってきた。

 「……人間は生まれる境遇を自分で設定できると思うか?肌の色、瞳の色、色弱、アレルギー、才能、美醜」
 「例を挙げればキリがない、自分では決定できない生まれついた他者との違いが人にはある」
 「その『わずかな違い』だけで人は争える……その延長線上に戦争まで引き起こせる。」

黒人と白人の争い等はそのいい例だ……未だに後を引いている。
国境、人種の違い、それこそ無数に火種となる。

 「他人と自分は別の人間、そんな事は誰に言われるまでも無く至極当然のこと」
 「だが、時に凡人はそれすら忘れ、己の境遇がまるで他者のせいだとでもいうかのように難癖をつける。」
 「そいつに才能が無いのは誰のせいだと? ……少なくとも他人のせいではあるまい。」

そう、何が俺のせいだというのだ?貴様らに才能が無いのは俺のせいか?
俺に才能が有るのは俺のせいか?ただ持っていただけの事を、何故そこまで責められなければならない?
単に貴様らが凡人共が、『如何なる努力を持ってしても生涯俺には勝てない』というだけではないか。

 「結果、俺はホワイトデーの返しの為の焼き菓子が粉と化したわけだ……気にくわんよ」
 「――なあ、勝てないと解れば足を引っ張るのがそんなに楽しいのか?自分を弱者だと声高に叫んで、それを免罪符に他者に罪を被せるのは?」
 「理解しがたい、不愉快極まる、見るにも聞くにも堪えん糞袋共だ 何故あんなのが生きている?」

許せるか、許せるものか、許しはしない、俺にとっての世界は、両親を通してみる物だった
なのに何故お前たちは生きている?すでに世界は死んでいるのに、なぜのうのうと息をしているのだ?

 「悪なる者が罪を償わず、善なる者がその罪を押し付けられ」
 「正当な報いはいくら待てども来はしない ――何故納得できる、何故許しておけるのだ?」

今日も連中は生きている、普通の人生を送っている、その下に踏みにじられた一つの家族がある事など、とうに忘れて生きている。

 「どうして?何故? いくら聞いても連中の答えは要領を得ない『ずるい』だの『卑怯』だの……」
 「すべて、すべて『理不尽』だ、どいつもこいつも反吐が出る 死んでしまえよ塵屑だろうが、お前らに何の権利が有った!」

――死ねよ貴様ら、先に俺を殺したのだから、俺が殺して何が悪い、理不尽だろうがお前も死ねと

 「他の一切を期待はしない 苦悶の叫びも悲嘆の嘆きも必要ない、ただただ奴らが理不尽と共に死に絶えてくれればいいのだ!俺は!!!」

『鎖』が悲鳴のような軋みをあげる、怒りを燃やすたびに俺のスタンドが狂い悶える
操る事の出来ない筈の鎖が、絡みついた全身から怨嗟のような音をたて続ける。

 「――だが殺せもしない、ああ、故に面倒だ あんな連中でも警察というのは守るんだからな。」
 「本当に、本当に、面倒だよ ……それだけだ。」

それだけ言うと燃え尽きた灰のように体を縮める
怒り続けることは酷く難しい事だから。

 「……それで?俺からも今更聞くが さっきから耳障りなこの何かを引きずるような音は、『くさかべ』に聞いていい事か?」

757日下部『アット・セブンティーン』:2020/03/22(日) 08:57:33
>>756

「? 律儀なんだねライカさんは。まあ、事情は聞かないけど〜」

"『俺』の名前ではない"
"『奴』の名前でもない"

意味はよく分からないが、何かの『線』を踏み越えないようにしているらしい。
殺人は出来ない、『警察に守られているから』……その言葉からもそれは分かる。

大事な線を超えない。彼は怒れる存在だが、狂いきった存在ではない。

「んん、あれだね。『道徳』とか『他人の気持ち』を思いやるより」 
「ずっと、『自分の楽』の方がずーっと『わかりやすい』からね〜」
「わかりやすいことしかわからないんだよ、あんまり頭が良くないとさぁ〜」

        ニコォ…

「でもそれで人を襲ったら、返り討ちにされるのは当然だよねぇ。話してくれてありがとう」

誰のせいでもない『不幸』はいくらでもある。
それが自分の足を捉える事も……いくらでもある。
あるいは、最初から捕われていた、という事も。

理解する事は難しい。理解したとしても、『自分の楽』は大事なことだ。
目に見え、触れられ、己が確実に感じる『それら』が、重要なのだ。

「ん……この音? これはねえ……んふ、お返しに答えるよ。よいしょ」

       ゴロ…

「ホラ、お腹見て〜。別に見せたら減るものじゃないし〜」

大型犬のように、仰向けになった。それほど呑気な状態でもないが。
……白いセーター……だったのかは定かではない。『赤い』からだ。

      『……ズ』

「今ねえ、私は『治ってる』ところなの」
「私は特別、『生きる才能』があるから。だから、早く治るんだよね〜」

その布地が、律動的に蠢いているのは……その下に隠された『肉』の動き。
服を捲ればより分かりやすい。『傷の再生』……人体にはあり得ない速度。

そして、ライカには見える。血に混じる無数の『ベニクラゲ』の幻像が。

「それがコンクリートと擦れちゃってたんだね、うるさくてごめんごめん」

『アット・セブンティーン』と、名付けられた。『スタンド能力』……その発露だった。

758日下部『アット・セブンティーン』:2020/03/22(日) 08:58:48
>>756

「? 律儀なんだねライカさんは。まあ、事情は聞かないけど〜」

"『俺』の名前ではない"
"『奴』の名前でもない"

意味はよく分からないが、何かの『線』を踏み越えないようにしているらしい。
殺人は出来ない、『警察に守られているから』……その言葉からもそれは分かる。

大事な線を超えない。彼は怒れる存在だが、狂いきった存在ではない。

「んん、あれだね。『道徳』とか『他人の気持ち』を思いやるより」 
「ずっと、『自分の楽』の方がずーっと『わかりやすい』からね〜」
「わかりやすいことしかわからないんだよ、あんまり頭が良くないとさぁ〜」

        ニコォ…

「でもそれで人を襲ったら、返り討ちにされるのは当然だよねぇ。話してくれてありがとう」

誰のせいでもない『不幸』はいくらでもある。
それが自分の足を捉える事も……いくらでもある。
あるいは、最初から捕われていた、という事も。

理解する事は難しい。理解したとしても、『自分の楽』は大事なことだ。
目に見え、触れられ、己が確実に感じる『それら』が、重要なのだ。

「ん……この音? これはねえ……んふ、お返しに答えるよ。よいしょ」

       ゴロ…

「ホラ、お腹見て〜。別に見せたら減るものじゃないし〜」

大型犬のように、仰向けになった。それほど呑気な状態でもないが。
……白いセーター……だったのかは定かではない。『赤い』からだ。

      『……ズ』

「今ねえ、私は『治ってる』ところなの」
「私は特別、『生きる才能』があるから。だから、早く治るんだよね〜」

その布地が、律動的に蠢いているのは……その下に隠された『肉』の動き。
服を捲ればより分かりやすい。『傷の再生』……人体にはあり得ない速度。

そして、ライカには見える。血に混じる無数の『ベニクラゲ』の幻像が。

「それがコンクリートと擦れちゃってたんだね、うるさくてごめんごめん」

『アット・セブンティーン』と、名付けられた。『スタンド能力』……その発露だった。

759斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/03/23(月) 00:54:39
>>758

 「…………。」

 (――故に、俺は怒り続けなければならない、過去を過去だと受け入れて、笑い飛ばすのは今は不可能だから。)

息を吐く、もう白む程に寒くはない。

超能力者がいる以上、ある種の幽霊や怪物がいると考えた方が合理的だ
その辺りが俺の想像の限界だが…『スタンドのクラゲ』が体内に存在するとは。

 「そうか、ある種安心した 少なくとも『スタンド使い』である事は事実らしいからな。」

見た事のないタイプである事には興味がある、自己の治療に特化した『群体型』の亜種のような物か?
それ以上ではなさそうだが、スタンドの成長というのは如何伸びるかは解らない物だ。

 「――俺の意味のない話を聞いた礼だ、日下部が治るまでは此処にいるとしよう、律儀にな」
 「次が『車』で『車道に沿ってくる』とは限らんだろう?」

満足に動けないのなら、次は引きずるくらいはしておこう
クサカベが治って去るまでの間に、俺に出来るのは精々そのくらいだ。

760日下部『アット・セブンティーン』:2020/03/23(月) 03:46:21
>>759

「んふふ、『これ』でスタンド使いじゃなかったら『吸血鬼』?」
「そうなるのも悪くないけどね〜」

「でもま〜ね、『危険』なことなんて何もしないんだよ、私は」
「『治るだけ』……それだけの事実」
「それだけで十〜〜〜分って、事実なんだ〜」

              ノソ…
 
「だから好きなだけ安心してね。安心料を取ったりもしないから〜」

服を直し、仰向けのまま頷く。
『アット・セブンティーン』は『治すだけ』ではない。
が、あえてそれを口に出す必要もない。

『事実として危険はない』――――それだけで十分だ。

「だって、私の方はライカさんのおかげで大安心だし〜。ほんとありがとねぇ」

           『ズ…』

「一人で放置されてたら、どうなる事やらって感じだったもんね〜」
「それにお話してたおかげでね……もうそろそろ、動けそう」

「時間が経つのって、たまに早すぎるよね〜〜〜」

                  『ギュ ギュ』

脚、だ。おかしな方向に曲がっていたはずの脚が、戻っていく。
まるで『巻き戻し再生』の映像を見るように、負傷がその体から消えていくのだ。

761斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/03/23(月) 21:57:26
>>760

負傷が一通り治ったのを見て
俺はその場を離れた

スタンドという力から連想できる事は多々有るが
今はそんな事をする必要が無いのだ

そうなると俺のすべき事は殆ど無い
イヤホンを手に取り、スマートフォンのプレイリストから音楽を選ぶ

ショパン:ピアノソナタ 2番第3楽章『葬送行進曲』ホロヴィッツ
雷鳴のように歌い上げる旋律を聞きながら、俺は帰路に就く

次がそうでないと願いながら。

762日下部『アット・セブンティーン』:2020/03/25(水) 02:51:28
>>761

「じゃあね〜。またどこかで会ったら、よろしくね」

                   ニコォ…

「あと『4分』」

             「……いたた」

『ライカ』が去ってしばらくすれば、そこには誰もいなくなる。

事故は確かに『そこにあった』し、被害者もいたが、『いなくなった』。
まるで怪談のような現象を、『スタンド能力』は目に見える現実に変える。

763百目鬼小百合『ライトパス』:2020/04/15(水) 21:20:47

  ザッ ザッ ザッ

白いパンツスーツで、夜の歓楽街を歩く一人の女。
『白百合を象ったイヤリング』が、ネオンの光を受けて煌く。
口に咥えた煙草からは、紫煙が立ち昇っていた。

          ――――ザッ

「何処だかで『轢き逃げ』があったなんて噂を聞いたけど」

街灯に背中を預け、賑やかな通りを観察する。
これといって『問題』が起きている様子は見えない。
少なくとも、今の所は。

「この辺は『異常なし』かねぇ」

独り言のように呟いて、腕を組む。
視線を下ろすと、足元に何かが転がっているのが見えた。
誰かが捨てた空き缶だ。

「ハ、『異常あり』――か」

      スッ

苦笑いして空き缶を拾い上げ、辺りを見渡した。
まもなくゴミ入れが見つかる。
そこに向かって、空き缶を放り投げた。

                         カランッ

ゴミ入れに入った空き缶が、軽い音を立てる。

764名無しは星を見ていたい:2020/04/15(水) 22:25:37
>>763
軽い音を立てたゴミ入れは、喧噪から少し離れた路地の入口にあった。
そこにふと目を向けた百目鬼は、偶然にもゴミ入れの傍に蹲る『人影』に気づいた。
暗がりが災いして、今の距離ではかろうじてシルエットだけが判別できる状態だ。

765百目鬼小百合『ライトパス』:2020/04/15(水) 23:05:15
>>764

「――どうやら、まだ衰えちゃいないようだねえ」

缶が入った事を確認し、視線を移す。
その『影』を見て、頭を掻いた。
野良猫には見えない。
酔っ払いか何かか。
自分の『目的』とは違うが、無視する訳にもいくまい。

「アンタ、気分でも悪いのかい?」

       ザッ ザッ ザッ

口元から紫煙をくゆらしながら、『人影』に近付いていく。

766名無しは星を見ていたい:2020/04/15(水) 23:11:47
>>765
その人影は『男』だった。 路地の壁に寄りかかるようにして地面に座っている。
百目鬼の声に反応することもなかった。
俯いていて、表情は伺えない。

767百目鬼小百合『ライトパス』:2020/04/15(水) 23:28:10
>>766

「さて、どうしてやろうかねぇ」

単に寝てるだけなら放っておいてもいい。
風邪は引くかもしれないが、『自己責任』だ。
だが、違った場合は問題になる。
例えば『病気で死にかけてる』とか、そういった事だ。
無いとは思うが、絶対とは言い切れない。

「――手間掛けさせてくれるじゃないか」

         ザッ

深い溜息をつき、更に足を進める。
膝を曲げて腰を落とし、男の顔を確認する。
それでも見えそうにないんなら、
襟でも髪でも掴んで上を向かせりゃあいい。

768塞川唯『クリスタライズド・ディスペア』:2020/04/15(水) 23:55:11
>>767
確認した男の顔は……『真っ赤』だった。
表情もどこか緩んでおり、少なくとも死に掛けているようには見えず……
更に言うならば『酒臭かった』。

「ああ……悪いなァ。
そいつ、ほっといてイイから」

腰を落とす百目鬼の背後から、女の声が掛かった。
振り向くと、いつのまにか痩身の女が傍に立っている。
高価そうなスーツをだらしなく着崩したような服装をしており……手にはペットボトルを持っている。

「何もかも自業自得で、終いには寝るもんだから、
起きるまで放っとこうと思ってよぉ〜〜〜」

「しかし、あんた……何かカッコイイ割に『良い人』?」

そんな事を言いながら、ぼんぼんと男の頭を叩いている。

769百目鬼小百合『ライトパス』:2020/04/16(木) 00:22:15
>>768

「おやおや、ご機嫌だ」

我ながら気を回し過ぎたか。
そう思って立ち上がる。
視線の先には『もう一人の人物』。

「『お節介』なタチでね。アンタのツレかい?
 ま、人様に迷惑掛けなきゃいいさ」

「寝てたのが道のド真ん中だったら、
 蹴り飛ばしてたかもしれないけどねえ」

男を見下ろしながら、口の端で笑う。
それから女の方を見た。
男のように泥酔してはいないのは分かる。

「アンタは平気みたいだねぇ。
 どれだけ呑んだか知らないけど……」

「結構『イケるクチ』かい?」

特に根拠がある訳でも無い。
単純に『見た目』で判断しただけだ。
実際は下戸で一滴も呑んでないのかもしれない。

770塞川唯『クリスタライズド・ディスペア』:2020/04/16(木) 00:51:35
>>769
「別に、なんなら今蹴ってもいいぜ。
案外起きるかも知れねーし、そうしたら私も帰れるんだがなァ……。
せめてタクシーに放り込みたいが、どっち道動かさなきゃあな」

熟睡している男を見て、諦めたようにため息をつく。
その平然とした様子は、少なくともアルコールが入ってるようには見えない。

「別に……こいつがハシャぎ過ぎなだけだ。
私自身は、まあ、強い……んだろうな。
ただ、別に『酒』なんて、付き合いでもなきゃあ飲みたいとも思わん。
旨いとも、不味いとも思ったことも無いしなァ」

「そもそも『酔う』ってのが……なんかこう、『怖い』。
こいつは、まあただの馬鹿って事でイイんだが………
良く、そんな他人の前で隙を見せるよーな事ができるもんだと、私は思うね」

771百目鬼小百合『ライトパス』:2020/04/16(木) 01:35:27
>>770

「ハハ、大昔からの『常套手段』だからねぇ。
 『気を緩ませるために酒を呑ませる』なんてのは。
 そうじゃなくても、泥酔して恥を晒すなんてゴメンだからね。
 アンタの言う通り、気を付けとくに越した事は無いと思うよ」

「酔っ払ったフリをして、
 『逆に相手を油断させる』って手もあるけどねえ。
 もっとも、アンタのツレは違うようだけど――」

「もし芝居だとしたら拍手してる所さ。
 ハハハ、『出来ない』のが残念だねえ」

冗談めかした口調で続ける。
まず演技ではなかろう。
酒の匂いも酷かったし、あの赤ら顔は化粧では出せない。

「ま、酒なんて生きていくのに必ず必要なもんでもない。
 関わる理由がないなら関わらないのが一番さ。
 『コイツ』と一緒でね」

     スッ

指の間に煙草を挟み、軽く持ち上げてみせる。

「体にとっちゃ毒にしかならない代物なんだが止められない。
 難儀なもんさ」

     フゥゥゥゥゥ――――ッ…………

ゆっくりと、静かに煙を吐き出す。
細く長い紫煙が、夜の闇に溶けて消えた。

「さて……運ぶのに『人手』が必要かい?
 邪魔でなけりゃあ、アタシが手伝ってもいいよ。
 自慢じゃないけど、体力には自信があるからねえ」

772塞川唯『クリスタライズド・ディスペア』:2020/04/16(木) 21:40:00
>>771
「ハン、その点に関しては心配はいらねーよ。
見ての通りだ。見ての通り馬鹿」

ぐい、と男の顔を掴んで笑う。
百目鬼の言葉に、歪めた男の顔を見ながらぼそぼそと呟く。

「………何も必要なものだけが重要ってわけじゃあない。
そんな事を言い出したら、こいつや私なんざ、一体何なんだ? って話になるからなァ。
タデ食う虫もナントカって、あれだよ」

「ああ? 『手伝い』?
そいつはありがたい話だが………あんた、暇人?
あんたの用が、なんかあったんじゃあないのか?
酔っぱらいの介助が趣味ってわけじゃあ、ないだろうし」

773百目鬼小百合『ライトパス』:2020/04/16(木) 23:15:33
>>772

「ハッハッ、そりゃそうだ。一理ある。
 生憎、アンタとツレがどういう人間かは知らないけど――――」

「アンタもアタシの事は知らない。お互い様さ」

「『超能力』でもあれば分かるのかもしれないけどねぇ。ハハハ」

世の中には、そういうスタンド能力もあるのだろう。
もっとも、『ライトパス』にはそんな力はない。
だから、目の前の相手の素性は分からない。

「なぁに、アタシの事は気にしないでいいよ。
 『用事』はあるっちゃあるけど、『寄り道』する時間がない訳でもない。
 これだって、用事に含まれてると言えば含まれてるしねえ」

「『街の美化』に貢献する――十分な理由だよ」

用というのは、『見回り』だ。
街の秩序が保たれているかどうか確認し、そうでなければ『修正』する。
もちろん本来は警察の仕事であり、自分は警察ではない。
だが、市民には警察に協力する義務がある。
そして今の自分は、『市井の協力者』として個人的に動いている。

「で、どうやって運ぶ?ツレの頭と足を、アンタとアタシで持つかい?」

774塞川唯『クリスタライズド・ディスペア』:2020/04/17(金) 00:22:16
>>773
「突拍子もないハナシだな、『超能力』。
他人の心を覗く……『能力』か。
ふん、そんなモンなくったって、訊けばいくらでも教えてやるよ。
その気があるならな」

『超能力』という単語に眉を顰め、
男の許から立ち上がって、はじめて百目鬼に目線を合わせた。

「……ま、そんな事はどうでもいいか。
本当に『運ぶ』のを手伝ってくれる気だったのか?
実際に、こいつにとっちゃあその方がいいんだろうが、絵面がヤバイだろーがよ。
私にとっちゃ、そこまでしてやる義理もないし……こうやって喋って時間を潰してりゃあ、
その内に目覚めてくるだろーよ」

「それより、なんだって……『美化』?
つまり、『パトロール中』って事か?
そういうのって、ボランティアでやんのか?」

775百目鬼小百合『ライトパス』:2020/04/17(金) 01:03:34
>>774

「ま、『仕事』って訳でもないからねぇ。
 誰に頼まれたんでもないけど、
 強いて言うなら『ボランティア』か」

目線を正面から受け止め、言葉を返す。
世間話をするような軽い口調だった。
しかし、その目の奥には、
何か強い『意志』のようなものが秘められていた。

「蓼食う虫も好き好きとは言うけど、
 『街は綺麗な方がいい』ってのは、
 大多数の一致した意見だと思ってるだけさ」

『汚れた街の方がいい』という者もいるかもしれない。
そういう手合いは、大抵そいつ自身が汚れている事が多い。
見つけた時の対応は、『そいつを綺麗にする』か、
『街から叩き出す』かだ。

「ちなみに、アンタのツレとは、どういう間柄なんだい?
 アタシが思うに…………いや、止めとくよ。
 こういうのは苦手でね。せいぜい外すのがオチだからねぇ」

776塞川唯『クリスタライズド・ディスペア』:2020/04/17(金) 22:00:37
>>775
「そりゃあ、ご立派なこったな。
しかし、『綺麗』つーのは、どーいうことだ?
こいつなんか……どっちかつーと『汚れてる』。『汚い』寄りだと思うがなァ。
あと、勿論私も……」

冷ややかに言って目を逸らす。

「どういうって、そりゃオトコだよ。
月曜と、水曜日のな」

777百目鬼小百合『ライトパス』:2020/04/17(金) 22:43:28
>>776

「アンタら、今『犯罪』に手を染めてるかい?
 もしくは片棒を担いでるとかねえ」

目線を逸らす行為に引っ掛かるものを感じた。
何かあるのか、それとも考え過ぎか。
こちらは目線を逸らさない。

「気を悪くしないでおくれよ。要するに『そういう事』さ」

煙草を口に咥え、女と男を交互に見る。
犯罪者の類には見えない。
もちろん根拠はないが、そうだという証拠もない。

「ハハ、やっぱり外れてたね。言わなくて良かったよ」

「しかし、いつもこうだとしたらアンタも大変だ。
 いや、いないよりマシかねぇ」

「アタシなんて、昔から男が寄り付かなかったよ。
 周りは男ばっかりだったってのに」

「――ま、『今更』な話だねえ」

778塞川唯『クリスタライズド・ディスペア』:2020/04/17(金) 23:21:58
>>777
「『はい』って回答が出なそうな質問だなァ、そりゃ。
別に後ろ暗い事はねえよ、私もこいつもな。
ただ、真っ当に生きてるとも言い難いかも知らねーが、なあ」

ドカッと軽く男を蹴ると、相槌とも呻きとも取れるような低い声が、
男の口から洩れた。

「まあ………そこんとこは何だかんだいっても、
持ちつ持たれつってトコだから、仕方ねーってトコだな」

週2だしな、と呟いて、男の前にしゃがみ込む。
腕を乱暴に掴んで、頭を振る男を強引に立ち上がらせた。

「お? 起きたか? オイ……ぼけーとしてんじゃあねえぞ、『ケイタ』。
別に、男なんてあんたの口に咥えてるモンと一緒さ、好きにすりゃあいい。
それじゃ、時間取らしてワルかったな、ありがとよ」

ふらつく男に肩を貸して、ひらひらと手を振って立ち去った。

779百目鬼小百合『ライトパス』:2020/04/17(金) 23:43:58
>>778

「はいよ。ま、気ぃつけて。
 途中でフラついて転ばないようにねぇ。
 ハハハ、そりゃあ『余計なお世話』か」

その場に立って、二人を見送った。
似た者同士。
そんな言葉が頭に浮かぶ。

(案外、ああいうのが良い関係だったりするのかもしれないねえ)

    ザッ

「『異常なし』――結構な事じゃあないか」

               ザッ ザッ ザッ

踵を返し、歩き出す。
進む先には、清濁併せ呑むネオンの海が光り輝いている。
やがて、その後姿は光の中に消えていった。

780斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/04/28(火) 17:31:53

ヒュンヒュンヒュンヒュン……

 「う〜〜〜ん……」

 ――ヒュガッ
         ガコォン!

 「いけるか?い・け・る・か・ァ〜〜〜?多分イケるとは思うんだけど確証ねぇなあコレ。」

 「『鉄球』投げた後に表面の鎖を何枚か『消滅』させて空気抵抗でピッチャーの如くカーブボール。」
 「名付けて手動式誘導弾『レッキング・ボール』。」

 「いやあ投げ物ばかりじゃねえかとは思うんだけどさ、僕のスタンド殴り合いとかバチクソ向いて無いんだよね」
 「鞭みたいに扱えるかなーとは思うし、鞭自体先端の速度は音速を超えるんだけど。」
 「それを差っ引いても近距離パワー型の射程内に入る必要とかあって。」

 「軽く殴って家の壁ぶち壊したり、新幹線並みの速度の手刀相手に使えると思う程楽観的じゃないんだよねぼかぁ。」
 「一手間違えたら死にますとかリスキー過ぎるわ、チェスの駒じゃないんだぞ。」

 「で、さあ、総弾数2発、速度及び精密性Bの多少誘導する鉄の塊投げるだけじゃあ…ほら、『弱すぎるだろ?』」
 「他の手段試しながら考えてるんだけど……どーかなー んー 実戦の中で成長とか漫画の主人公オンリーだからねソレ。」

 「――どう思う?」

 「なあ。」

 「返事くらいしてくれないと困るんだがな。」

 「……まあいいや、次だな。」

 「接近戦とか考えたくないんだけどさ。やっぱり手は必要かなぁ……」
 「とりあえず今は鎖の塊を振り回して、相手に叩きつけると同時に分離・再結合」
 「木の枝が伸びるように相手を絡めとる…悪あがきとしては結構有用かもな。」
 「スタンドって殴る部分は相応に硬化するけど、それ以外は別にそうでもないし。」

 「手首と首が鎖で接続された状態で、下手にパンチ繰り出したりすると、強度差の関係で首がもげるんだよな 多分。」
 「相手がパワー馬鹿であればあるほど有効、広がり方では避けきれず、迎撃しようものならむしろ此方の思うつぼ。」

 「ただ、速度差が有るとむしろ微妙かなコレ。『分解』する能力相手も無理。」
 「掴んで引っ張られたら致命的よ。」

 「――――後は、切り札。」
 「使えない以上は前向きに、超能力である以上、現世の法則は無視される」
 「顕現するは人の夢、その果てにある一つの到達点。」

 「質量を弄れないなら、速度を跳ね上げるしかねえよなぁ アハン。」

 「頑張れがんばれイケルイケル、『第一種永久機関』。摩擦、重力、空気抵抗。その全てから解放された鎖なら造作もない事だ。」
 「重心を決定可能な僕のスタンドだから実行できる、僕以外のスタンドなら実行できず、できても殴った方が早かろう。」

 「――目指せ一点特化型!」

そんな事を呟きながらおひるのゲーセン裏で野良猫を抱え上げる僕だった のびーる。
どうしてこんなに猫は伸びるんだろう ふしぎだなー。

そういやここら辺で誰か殴られたんでしたっけ?こわいね。

781小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/04/28(火) 23:37:07
>>780

春の暖かな風が首筋をそっと擦り 耳筋の裏を擽るならば人はその訪れに
喜びを見出すのだろう

ただ、私にはそれに対しどう想い どう寒々しい胸の中に梢を植え込めば良いのか
未だに分りかねない。歩み続ければ……何時か或いは。

この界隈に来たのは『大多数の不良が一人、もしくは数人に圧倒的に
蹂躙された』といった噂を親友(ヤジ)が持ち込んだからだ。

彼曰く、そのような出来事が起こり得るのは恐ろしい力量の持ち主か
私のような奇特な力を持ち得るからだろうと告げられ、今は二手に分かれて
散策を行っていた。結局、今しがたまでなしの礫であったのだが。

「……こんにちは」

猫と戯れる青年の姿に恐ろしさは感じ得ない。
 ただ、その前に何か投げつける金属が風を切る音と強い衝突音には
平常の音色とは別の色が見えるようだった。

「すみませんが、少しお聞きになりたい事があるのです。
宜しければ、暫しお時間をとってもよろしいでしょうか?」

782斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/04/30(木) 00:17:23
>>781

キジトラ猫をアップダウンクイズの如くぶらぶらさせていると
何やら見慣れない男性が話しかけてきた。

はて?気の弱そうな男子生徒に万引きを強要するいじめグループや
ギャングボーイズを騙って『俺の後ろには○○組がいるんだぜ!てめぇどうなるか解ってんだろうな!』とか
壊れた拡声器ばりにギャーギャー喚いているヤツ以外にこんな所に来るヤツとかいるんだろうか?

あ、格ゲーでリアルファイトになり、ムキムキの店主に〆られてここに投げられるヤツもいたか。
だが、何はともあれ挨拶は大事だ、ニンジャもそう言っている 多分。
僕は声のする方に振り返った、キジトラが唸るような声をあげる。

 「――やあ!」

挨拶は笑顔で元気よく、首に巻いたスカーフが揺れる うーん……やはり知らない顔だ
ところで知らない天井だっていう台詞、余程天井を見なければ出てこないと思うのだが彼は天井マニアだったのだろうか?

 「話がしたいって?うーん、宗教勧誘とつつもたせとモデルの勧誘以外なら大歓迎だよ。」
 「あ、でも男性だから美人局はないか……?ないよね?うん、ないと仮定しよう、お互いの為だ。」

お話は大歓迎、でもこういう人間がここで話しかけてくるシチュエーションはノー歓迎
こういうキチッとした身なりをした人間が、路地裏で猫と戯れているヤベーヤツと話したがる時は、大抵が何かしらの探りってハナシ。

おまけにさっきまで投げていた鉄球――僕はそう呼んでいるけど実際は鎖の塊――は既に『実体化したスタンド』だ。
投げれば音が出るし、壁に当たれば金属音も鳴る 五月蠅いし目立つから罠を貼るのにはホント向いて無いなコレ。

 「でもその前に自己紹介がしたいなぁ〜〜君、何て名前?」
 「僕は斑鳩、斑鳩 翔 鳥のイカルに、翔けるの翔」

 「イイ名前だろ?数少ない僕の自慢だぜ。」

783小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/04/30(木) 00:41:01
>>782(お気になさらず)

小林の身なりは、何時もと同じく学生服のブレザーをバンカラマントのように
身に着けており、その耳には付けピアスが見える。
 華奢だが、平俗の生真面目な学生、とも言い難い恰好とも言える。

>僕は斑鳩、斑鳩 翔 鳥のイカルに、翔けるの翔

「……斑鳩、斑鳩 翔?
それでは、貴方が三枝 千草さんの御友人の斑鳩さんで間違いなく?」

名乗りを聞いて、少しだけ口元に笑みが自然と浮かべられた。
 信おける後輩の方の知り合いだと理解すれば微かにあった懸念や警戒も下がる。

「私は小林 丈です。高等部 三年……此処の界隈で不良の一団が
もしかすれば特殊な能力で一掃された可能性があると聞き及んだのでね。
 それに対し明確に事件としてなってる訳ではないですが、万が一の事も
考えて軽く取っ掛かりとなる情報を得ようと足を運んでた次第でして」

「ですが、斑鳩さんが。その話の核心に及んでいたとかであれば……
 私の気苦労も特に要りはしなかったかも知れませんね」

彼がスタンド使いだとして、その能力を悪事に使うような人間なら
自然と危険を千草さんなら仄めかすだろうし。そのような発言も聞かなかった。

……少し、彼の名前を聞くと。どう言う訳か何処かしらで出会った経緯が
あるような奇妙な錯覚を覚えるが、それは本当に錯覚なのだろう。

784斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/04/30(木) 02:23:50
>>783

――いやサグリじゃないな、何かしら調べているだけだ。

軍人風に短く整えた頭髪を弄る、昨日リンスしてたっけ?間違えてシャンプー2回しちゃったんだっけ?
どうでもいいけど。

>……斑鳩、斑鳩 翔?
それでは、貴方が三枝 千草さんの御友人の斑鳩さんで間違いなく?

 (あれ、いつの間にか友人になってる。)

はて?ガッコーで数回面合わせした程度で僕は友人面していいのだろうか?

 (まあ、どうでもいいか、後で謝ろう。)

 「イエスイエース アイムフレンド そういうあなたはコバヤシパイセンと言う事ですね」
 「よろしくパイセン。」

三枝ちゃんの交友関係結構広いんだなあ。ともの思ふ僕であった
どうでもいいけど。
名前が出てから露骨に頬の筋肉の硬直が減った辺り、信頼されているらしい。
どうでもいいけど。

 「うーん、でもパイセンの期待は無理気味ですなぁ。」
 「だってその件、今初めて聞いたし。そんなことあったんです?こわいなー。」

或いは僕が忘れてるだけかもしれないが。
炉端の小石を蹴り飛ばした事なんて、いちいち日記に書く奴はいないだろ?
要らない物は書き損じの原稿用紙の如く、グシャグシャ纏めてゴミ箱にダンクするのが正解です。

 「――いや、まったく 困るなあ。」
 「でも小林パイセン、そんなこと調べてどうするんです?もしや金欠?」

785小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/04/30(木) 21:52:32
>>784

>そんなこと調べてどうするんです?もしや金欠?

「私の目的の為に調査をしてると言うよりは、親友の手伝いが重心です。
彼は、この町の不安の芽を摘むのを仕事としていますので。
 然しながら、私にも打算あっての協力ですよ。物書きの手習いを
してますから、そう言った事件 出来事に足を踏み込めば作品の幅が
手広がりますので……町の平安にも繋がりますし、一石二鳥と言った所でして」

私の事情は大体話し終えた。彼が千草さんの知り合いであり
学校の生徒であるなら、別にゲームセンターの人知れぬ所で猫とじゃれ合う
事が悪事に繋がるとは思えないし、このまま別れても結構なのだが……。

「……鉄の唸る音、そして……あの、ひしゃげた部分」

彼の能力(ロスト・アイデンティティ)がぶつかったであろう、
恐らく高い確率で陥没してるだろう近くの場所を人差し指で示して
他の者曰く、少し乾いた自身の目を向けた。

「……スタンドの訓練でしょうか?」

786斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/04/30(木) 22:33:37
>>785

 「成程、ここでの話のタネがパイセンの物書きのタネになる、と。」

趣味と実益を兼ねている、趣味を仕事にしている人間の強みだな
ワーカーホリックとも言う。たぶん

 「割と危険だと思うのだけど、アグレッシブなパイセンだなあ……『クロガネ』君と同じタイプと見た。」

誰の言った台詞だったか?『大抵の人間はスーパーパワーを手に入れても、ポップコーンとコーラ片手にテレビの前に座るだけだ』。
それが正しいかは知らないが目の前のパイセンも服の下に全身タイツを着込む手合いかもしれない
いや、むしろ家の地下に蝙蝠を模したコスチュームの方か? どうでもいいけど。

 「まあリアリティ求めるのはいいですけど?危険の先に素晴らしい物があるだなんて保証ありませんよー ……っと。」

ひしゃげた部分はスタンドではないので隠せない
参ったな、パイセンにここでしている事がバレたらしい 困らないけど困ったな。

 「そりゃあ、白昼堂々やっても精々手品扱いで小銭が稼げるくらいでしょ」
 「――食い扶持には困らないかな、駅前のエンペラーバーガーチャレンジとか……いやそうじゃなく。」

さて、さて。  ……ベロを回して何と言おうか
嘘をひねり出すのも、口から出まかせを並べるのも大得意
誰が僕をこうさせたのか?答えは無辜の120人。 どうでもよくない。

 「まあ……考えてみてくださいよパイセン、『超能力』を持った人たちが、トースト咥えて十字路でごっつんこしました」
 「普通ならラブでコメる展開が始まるかもしれませんが、片方が恐怖から、或いは力に溺れて傲慢だったら?」

 「目と目が合って5秒でバトル、お互いの『力』と『立場』は互角」
 「――ただし片方がLv99もう片方はLv1、何方が勝つかと問われて、1だと答える人は余程のあまのじゃくか、質問の意図を理解してない馬鹿です。」

 「彼らは他人より少しだけ運命が強く、何れは出会う運命にあるのなら」
 「全ての出会いが互いに『良きもの』であり得ると思える程、頭ハッピーセットじゃないんですよ 僕。」

ライダーズジャケットの裾から伸びる鎖をブラブラとゆらす
猫がイラついてる時にゆっくり尻尾を振るのと同じだ。

 「僕は食ってすぐ寝る牛じゃあない、出来ることはやっておこう」
 「当人の努力不足でいざという時死んだら馬鹿らしいでしょ? ……まあそんな時無いほうがいいんですけど。」

どうでもいい事だが僕は何時かそれで死にそうな気がする
戯言だけど。

 「ま、こんな能力で出来る事限られてるんですけどね、鎖びよーん。」

何時の間にやら肩に回ってるキジトラの重みを感じながら
ジャケットの裾から伸ばした『鎖』を伸び縮みさせる、かたがいたい 爪が食い込んでる 爪が。
 
 「ア…そういや探してるのスタンド使いって話でしたっけ?もしや疑ってたりします?」

787小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/04/30(木) 23:06:12
>>786

>『クロガネ』君と同じタイプと見た

「その名前も、千草さんから聞きましたね。……もしかすると私達
互いに面識ある人物が全員、千草さんとも知り合いとかいった偶然が
もしかしてあったりしません?」

そんな雑談も交えつつ、彼の口上を黙して聞き入れつつ。
そのジャケットから伸びた『鎖』を見届けた。

「……少なくとも、私の能力は。斑鳩さんと違い、まともに発現するのが
難しいですし、発現したらしたでスタンドで戦えるかと言えば
正直いって難しい部類の力ですよ」

静かに、されど決して卑下してるわけではない事は暗に含めつつ話しかける。

「されど、貴方の仮説の延長としてです。
その十字路で、暴れていたのがレベル99の方で一般の方々に暴力を振るい
自己の愉悦に浸っています。対峙してるのは、私のようにレベル1程度で
スタンドもまともに振るえません。
 ……警察でも呼んで、安全な場所に退避するのも正解でしょう。
けど、自殺行為に等しくても。そのレベル99の方と対峙する事で少なくとも
目の前の方が筆舌し難い顛末となる未来を、少しでも避けれはします。
 斑鳩さんからすれば、自己満足かも知れません。その顛末が身を庇った
私に置き換わっただけで、無意味なのかも知れません。

それでも……足掻かなければ、両手を広げて前に出なくてはいけない時が
無力であろうとも、その運命に対峙しなくてはいけない場面があると」

私は思うのです。と彼に軽く一礼しつつ告げた。

……これも全て、私の持論と言うよりも彼(ヤジ)の持論だ
黄金の意志に沿い進む為の……ジョジョ と呼ばれる、茨の運命に
向かう者の覚悟と言うもの。
 私には、それが正しい道なのか事実、容認してるのかどうかも
答えは今のところ生まれてない。
 けれど、その先にきっと見出せるものがあると思えたのだ。

>探してるのスタンド使いって話でしたっけ?

「あぁ、いえ……そうですね。斑鳩さんが邂逅された方で
危険そうな方など居たのなら、お教えして頂ければ助かります」

御礼などは、出来るとすれば少ない金銭を渡すぐらいですが……と告げ
財布を改める。数枚の野口はあったとは思うが

788斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/04/30(木) 23:58:17
>>787
 「――成程。」

キジトラの顎を撫でる
不気味なゴロゴロ音が喉元から響いて骨伝導で僕の鼓膜へ、けっこう五月蠅い。

 「まあ世間一般から見て立派じゃだとおもいますよ」
 「『勝手に人助けしようとして火事の家に突っ込んで消防士さんの迷惑とか考えないの?』とかそういう意見が有るのは百も承知で。」

 「少なくとも、自己の行動の結果で何が引き起こされるかを想像出来ないよりは、よっぽどマ…いい人だと思いますよ。」

それが僕の傍で引き起こされて、僕と僕の家族を巻き込まない限りは。
後から故意じゃなかったとか言われてもその方がたち悪いぜとかしか言えない。
覚悟と善意の消火活動の結果、隣の火事がマイホームに燃え移るのは誰だっていやだろうよ、たぶん。

 (しかし千草さんは信頼されているなあ、その信頼の結果信頼した先が悪事を引き起こし、例え信頼を裏切られたとしても)
 (その結果の追記として被害を受けるのは『信頼したほう』、こう考えると『信頼』というのは他人を裏切るには素晴らしい道具なんだな。)
 (――どうでもいいけど。)

それにこのパイセン、暗に『発動は難しいが使えない能力ではない』とも言いだした
興味はある…いや…ない…あるかなあ? まあ戦える時点で僕の探しているスタンドからは外れているだろう。
どうでもはよくない。

 「危険そうなやつかあ……んー、パイセンと違ってマニュアル世代の僕には一例がないと何ともかんとも。」
 「ギャングボーイズとヤっちゃんと大陸系マフィアは元からだし、この前のGB崩れはケンイチローが凹したし。」
 「清月館の…メ…イド……は…アレは何時か燃えないゴミに叩き込むからいいとして…なんか例とかありま…?」

スカイフィッシュの如く脳内を飛び交うアイデアが溶ける前に小林パイセン、略してコバセンに問おうとしたら
なんか急に財布出してきた ちょっと???

 「パイセン、パイセンちょっと、やめてくださいパイセン」
 「路地裏で財布出されると僕が絵面的にパイセンにカツアゲかましてる様にしか見えないんで、ちょっと。」
 「いや、デート代とかは必要なんですけどそれするくらいならバイトで稼ぐんでちょっと???」

もしやこのパイセン天然なのでは?
常識的な相方カムバックキャンペーン、今ならボロ雑巾も熨斗付けてお返しします
だれかー、素敵な第三者ぷりーず。できれば胃袋に優しい方向性で。

789小林『リヴィング・イン・モーメント』:2020/05/01(金) 22:32:00
>>788(宜しければ次レスで〆で)

若干慌てた口調を聞き、彼に数枚渡そうとした野口の札が財布から完全に
出すのを止めて、代わりに口を開いた。

「カツアゲ……の発想に向かうのは正直疑問ですが。別に情報料としては
決して逸脱してない行動ではありませんか?
 斑鳩さんが、危険な人物について列挙するだけでも。それが私や
私の親友も通じて、町の注意喚起へと繋がります。
 事細やかであればある程、それが使い手であれば猶更のこと
手広く足を運んでる者であれば巡り会う可能性も少なくないのですから」

スタンド使いは巡り会う……と言いますし、と区切りつつ財布は仕舞う事にした。

「少なくとも……私が邂逅した使い手は、ほぼ善良な方ばかりですし
幸運にも、未だスタンドを悪事に使用しようと言う方は見かけませんが」

「……これからも、それが当たり前であればとは思ってますよ」

790斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/05/02(土) 01:03:35
>>789

室外機の五月蠅い路地裏で気合入ったファッションの野郎二人が金銭のやり取りをしている絵図を想像していただきたい
どうみてもアウトレイジ辺りの一幕です、本当にありがとうございました。

 「うーん、これが『シャドウラン』だとか『ゴルゴ13』辺りなら間違ってないんですけどボクラ=ガクセイ」
 「パイセンあれですな、付き合った女性に初手手製の重箱で昼飯に誘って重いとか言われるタイプ。」

何故かありありと想像できるのは何故だろう
この人の相方とかが苦労していない事を祈ろう、まあ僕の心配とか必要ないだろう たぶん。

 「値段設定は間違ってないけど学生間で金銭はアレなんで学生食堂の食券辺りで良いですよ、Bセットとかで。」
 「パイセンと違ってそこまでガチガチにやるきないですし?片手間で集める程度ですし。」

ネー。とキジトラを肩から降ろして足元へ 小林先輩の希望論に
おもむろに『太陽がいっぱい』とかいう名前誤植したまんま有名になった映画辺りを帰ったら見ようと思い立った
この状況とは一切関係ない筈だ たぶん。

 (――善良ねぇ。『俺』ぁそれだと困るんだがなぁ)

 (第一、『人の幸福』っていうんは殆どが『他人の不幸』で構成されるもんだ)
 (『Aが落とした財布をBが拾いって交番に届け、財布が見つかったAはBと警察に感謝しました。』)
 (素晴らしきかなハッピーエンド、ただしその起点は『Aが財布を落としたという不幸』だ ――いやぁ反吐が出るほど素晴らしい。)

 (ま、どうでもいいが。)

 「――そうですね!」

にっこりと間抜けな印象を与えるように微笑む
僕らにとっては両親が全て、それ以外など興味がない
人物画の腕からの流血を見て、己の腕が等しく痛み、血を流すわけでも無し。

 「僕達、互いに『よきもの』で有りたい事ですねぇ」――俺にとって都合がいい限りは。

 ナーオ


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