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【場】『 歓楽街 ―星見横丁― 』

752斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/03/21(土) 00:13:58
>>751

――銀の枷が音をたてずに袖に戻る。

役目を終えた『鎖』が掻き消え、後には何も残りはしない
当然だ、それがスタンドである以上 俺が作り出した現実に双方から干渉可能な実体であっても
一切触れずに、朝方の夢の如く消せるくらいは可能な事実だ。

 「――なんだ、暇なのか?それとも底抜けに呑気なのか?」

鼻を鳴らす、目の前で寝転んだ少女はどうにも危機感という物がない
すくなくとも自分が女で、それも血濡れであったなら 男の前で寝転ぼうとは考えない事だ
――普通の人間なら、という但し書きは着くが。

(少しは引いた車やらに怒るなり、自らの負傷に動揺するなり有りそうな物だが、それもない)
(血の粒は車道に残らず、痛いと言いながらその顔はむしろ夢見心地の乙女のようにも見える)

……やれやれ、俺は探偵では無いんだが。
腕を組みながら吐息を吐く、そういえば暦の上では既に春だったか?
桜の下にはなんとやら という話は聞くが、車道の上に女が寝転ぶという話はついぞ聞いた覚えがない
あったとしてもそれは単なる事故現場だ。

(血液、或いは肉体そのものに同化した『スタンド』か?引いた車自体も現実に存在するか怪しい物だな。)

 「構わんぞ?其方が『勝手に歩道に寝転んで勝手に話す』分にはな。」

 「毒にも薬にもならんのだから、勝手に好きにするがいい、俺もそうする ――ただ、それだけでいいのだがなぁ。」
 「解らん奴の多い事、多い事……それで?何を聞きたいのだ?自己紹介からか?」

皮肉気味に端正な顔をゆがめながら、肩を竦める
少なくとも、先程のくだらない逆恨みの男よりは退屈はしないのだから。


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