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大河×竜児ラブラブ妄想スレ 避難所2

1まとめ人 ◆SRBwYxZ8yY:2009/10/29(木) 01:36:02 ID:???
ここは とらドラ! の主人公、逢坂大河と高須竜児のカップリングについて様々な妄想をするスレの避難所です。
アクセス規制で本スレに書けない、とかスレに書けないような18禁のエロエロ話を投下したい時とかに
お使いください。
    / _         ヽ、
   /二 - ニ=-     ヽ`
  ′           、   ',
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  ∧    〈 ∨ ∨ ヽ冫l∨
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/ ==',∧     ̄ ∧ 、\〉∨|         /.: : :′. : : : : : : : . 「∨ / / ヘ
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      ',∧      |′   ∨ ///> 、  Ⅵ: '仆〉\| '仆リヽ:|\_|: :|
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本スレ
【とらドラ!】大河×竜児【アマアマ妄想】Vol17
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1255435399/

19虎注3/7 ◆wVNPBvxl56:2009/11/05(木) 08:09:21 ID:???
 北村は物悲しげな目で竜児を見て、

「俺のことは……正直今は、少し、話したくないんだ……高須の話が聞きたいな。高須と、逢坂の話を」

 誤魔化すのはやめて、拒絶した。竜児はそこで二の足を踏んだら、また後悔する羽目になるんじゃないかと思った。
けれど踏み込んだらそれはそれで、失敗するかもしれない。やらないで後悔するよりは、断然いいのだけど。
 北村のことは心配だが、本人が話したくないと言った以上、おそらく気が変わるなんてことはしばらくないだろう。
「今は」という期限に期待して、少しばかり待ってみるべきなのかもしれない。

「分かったよ……分かった。っつっても何から話ししたらいい? 大河の失敗談でも聞きたいのか?
 あいつの私生活なんて恥じるところしかねえぞ」
「はは……それは、ちょっと見てみたいもんだ」

 力ない笑いだったが、それでもないよりは、虚ろな顔をされているよりはマシというものだ。
大河の笑えないドジくらいで親友がちょっとでも元気になるのなら、大河のプライバシーなど一顧だに価しない。
あらゆる恥を開陳してしまえばいいと思う。

「いや、何というか、話は戻るが、お前たちがケンカしてるわけでもないのに登校も下校も別々だなんて、
 本当に珍しいと思ってな」
「……確かにな。すげえ違和感だよ」

 懐が寂しいというか足元が落ち着かないというか。いつだって目線の下にあるつむじが見当たらないのは
それだけで徹底的に何かしらの欠落を表しているかのようで、喪失感に近い感覚をさえ竜児に抱かせるに充分だった。
 竜児は、できたらあのちっこいバカには、自分の頭上から両肩に触れて地面まで延びる
円錐形の範囲内で暮らしていてもらいたいものだ、と妙に感慨深く思った。
 見える範囲ではなく、手の届く範囲に居てほしいのだ。
 要するに――

「しばらくお前と一緒に帰ることもなかったからな、実は色々と聞いてみたいところもあったんだ」
「そういや、そうだな。帰りはなんかいつもバタバタ慌しくて……主に大河と特売のせいだけど。
 ああ、でもお前が生徒会に入って以来か」

 話したくない、とは言いつつも北村の目は雄弁だった。生徒会と聞いて微かに細められたその目。
決して不快の色でも、それ自体を厭っているわけでもない、ただそれについてもう考えたくないとでもいうような、
何かしらのジレンマがそこにあった。
 竜児にさえ、文化祭以来北村の元気のなさは生徒会に起因することなのだと推測できた。
それが単に生徒会長になりたくないからなのか、あるいはもっと他に理由があるのか。
それ以上の判断をすることはできなかったが。
 とにかく、竜児の言葉に対して口を歪めることでのみで回答としたのは事実だった。
 端的に言えばスルーした。

「……高須と逢坂はいつの間に親しくなったんだ? 余計な詮索と思って聞かなかったが、
 実は前から結構気になってたんだぞ」

20虎注4/7 ◆wVNPBvxl56:2009/11/05(木) 08:09:42 ID:???
 そうして発した言葉は、微妙に墓穴発言だった。お前のせいだよ、とも言えまい。大河がラブレターを
入れる鞄を間違えたことで全てが始まったのだ。大河がドジで、かつ間違いに気づいたあと理由も言わず
竜児の鞄を奪おうとするほどの強情っぱりだったからこそ、竜児と大河は親しくなった。
 だから、ある意味、大河は大河であるからこそ竜児と親しくなったのだったが。いずれにせよ、
その発端が北村であることは事実だろう。
 お前のせいだよ、と言ってしまうべきだろうか。上手く伝えられなかったとはいえ、大河は一度は北村に
告白しているのだ。トイレの裏に呼び出して。関係ないことばかり喋って。どうしようもなく無様ではあったけど。
その勇気が、自分が中々持てないでいた勇気が、竜児はまたどうしようもなく羨ましかったものだ。
 ならば、別に話してもいいのだろうか。一度告白して振られて、その後逆に告白されたとき、
北村はやんわりと大河を振った。たぶん既に北村の意中に大河は居なかったのだろうけれど、
その気持ちは、きっと分かっている。竜児も内心でも認めようとはしなかったが、それでもこの半年、
大河は叶わぬ恋に身を焦がしていたのだろう。
 だったら、話してもいいのかもしれない。もとより北村は竜児の親友なのだ。
今更隠すようなことでもないことではないだろうか。
 そういう考えに至った自分自身の変化に、竜児は気づかなかったが。

「衝撃的なことを言っていいか?」
「もう二人の間には子が」
「混ぜっ返すなよな」

 ジロ、と貴婦人なら間違いなく気絶する殺人的な視線で睨んでやるが、余人は怯えても北村は慣れたもの、
どころか、ああ、高須は目つきが悪いからな、ときっと好意的な解釈で笑み返す。

「悪い悪い、それで?」

 今度は竜児が遠い目をする番だった。何だかんだと自分から敢えて誰かに教えたことはないのだ。
大河は事故だし、亜美は勝手に感づいた。いざ言おうとすると、本人に告白するわけでもないのに恥ずかしい。

「俺さ……櫛枝が好きなんだ」

 北村は笑顔のままだった。
 時差でも発生しているかのようなタイミングで首をかしげる。

「え? すまん、よく聞こえなかった。もう一度頼む」

 竜児は真顔で繰り返した。

「俺は櫛枝実乃梨が好きなんだ」

 無言の時が流れる。ひんやりした風が通り抜け、秋の訪れを予感させた。
オレンジに変わりゆく高い空に雲が流れてゆく。

「ええっ!?」
「おせえ!」
「いや、だって、ええ!? 櫛枝って、あの櫛枝実乃梨か!?」
「わざわざフルネームで言いなおしたじゃねえか!
 ほかに櫛枝実乃梨が百人いても俺はあの奇人筆頭ナンバーワンの櫛枝しか知らねえ!」

21虎注5/7 ◆wVNPBvxl56:2009/11/05(木) 08:10:04 ID:???
 思わず冴え渡る突っ込み。ビシィッと効果音の入りそうな手首のスナップが北村の肩を捉える。
 北村は気が抜けたようによろめき、ぐるりとトキのごとき流れるような動作で回転して元の位置に戻ってきた。
俯いた姿勢から眼鏡を直しながら顔を上げ、竜児に驚愕の表情を見せる。

「櫛枝が好きと」
「……そうだよ」
「うん、うん、そうか、そうか……ああ、でも、なんだ、櫛枝が変なことはちゃんと分かってるんだな、それは安心した」
「仮にもお前の友達でもあるだろうが」

 確かに竜児の目から見ても実乃梨は変だが。
 変だけど、笑顔が眩いのだ。変だけれど、不良と噂される竜児にこだわりなく接してくれたのだ。

「いや、悪い、びっくりしたんだ。高須、お前人を見る目があるよ。好みに関してはちょっと不安に思うところはあるが、
 俺が保証する。櫛枝はいい奴だぞ」

 何度も頷いて、北村はあることに思い当たって竜児を見た。

「で、それが逢坂とどう関係があるんだ? 櫛枝へアタックする過程でその友達である逢坂と親しくなった。
 ……わけじゃないよな。それじゃなんか順番がおかしいし」
「あー、そうだな、それは逆だ。大河と知り合ったから自然と櫛枝とも話すようになったんだよ」
「ううん、すまないな。俺は一向こういうことには疎いものだから。話の腰を折ってすまん、
 順を追って説明してくれるか?」

 竜児は北村が親友でよかったと思った。これを話す相手が北村で本当によかった。
一を聞いて十を察する相手に話すのは、逆に自分が気づいてすらいないことを思い知らされて、
当面の問題が解決される前に更なる問題が積みあがっていってしまうのだ。北村は女子と話すのは苦手だなどと
言っている割には自然に接することができるが、恋愛方面に関しては決して察しがいいとか
長けているなどということはないのだ。つまり、竜児とほとんど同じ土台に立っていると言ってもいい。
竜児が考えをまとめながら話しても、茶々を入れたり余計な気づかいをせずに素直に聞いてくれる。

「前提が、もうひとつある。お前だって分かってるんだろうが、大河は……ずっとお前のこと、好きだったんだ」

 それはもう、ずっと。竜児が実乃梨に恋するより、ずっと前から。
 北村は分かっているとでも言いたげに、その実曖昧に微笑した。

「告白……されただろ。お前はやんわり流したけど。確かに大河はお前に告白した」
「……なんだ? 見てきたみたいな物言いじゃないか、まるで」
「居合わせちまったんだよ。偶然な。っていうか、大河がお前のことを好きなのを知ってたし、
 その日告白するってことも知ってたけど。居合わせちまったのは偶然だ。
 あいつ間抜けにもトイレの裏に呼び出すんだからな。トイレに行きゃ聞こえちまうんだよ」
「そうか……だったら、俺が言いたいことも分かるんじゃないのか?」

 あの日――実乃梨と北村に誤解され、二人して電柱を蹴った翌日。大河は北村に告白した。
告白したのだけれど、そこで無我夢中の大河の口からぽろぽろと零れ落ちたのは、彼女がずっと好きだった
北村のことではなかった。全然なかったのだ。竜児も居合わせて聞いていたし、北村はもちろん直接聞かされた。
その言葉の意味するところは、本人も気づかない間に大河の最も大切な一部になっていた存在に対する、
謂わば思いの丈は、北村への告白などよりよほど正確に、北村の心に届いていただろう。
 だからこそ北村は、確答を避けるような言葉を返したのだ。聞きようによっては、完全に振られたともいえたが。
はっきりと言葉にしては是とも否とも口にしなかった。たぶんそれは北村の優しさからきた答えだったのだろう。
大河が自分で、自分の力でその気持ちを見つけられるように。

22虎注6/7 ◆wVNPBvxl56:2009/11/05(木) 08:10:34 ID:???
「いや、俺もさ、嬉しかったよ。あれだけ頑なに他人を拒絶していた逢坂が、他ならぬ俺の親友と親しくなって、
 俺のことを好き、とも言ってくれた。あのときは他に言いたいことがあったみたいだけどな」

 北村は一度言葉を切った。余計な口出しではないかと躊躇したのだ。
 でも竜児の方はそこで、すとんと、落ち着いてしまった。大河の言いたかったその先、大河に、
明日からはただのクラスメイトに戻ろうと言われたときに感じた喪失感の理由、大河のいる風景の安心感。
 大河が、一日に百回も竜児の名を呼ぶ理由。

「……分かるよ。今になってようやくって感じだけど。考えねえようにしてたけど、
 普通に考えりゃそうなんだって、今は」
「それは、櫛枝が好きだったから今までは分からなかった……ってことか?」
「ああ。たぶん。大河もお前のことが好きだったしな」

 北村は竜児の言葉には合わせず過去形を使ったが、竜児ははっきりと自分の中で納得した答えにまだ確信を
抱くには至らなかったために、使う時制は単に過去形に似た表現でしかなかった。それだけならまだ、
現在を含めた過去にも聞こえる言い方だった。どちらにしても、明瞭に一方が正しいと談じることはできなかったのだ。
 それでも竜児は、自分の気持ちに関しては、それが過去だと肯定してしまった。

「つうか、なんだ、全然順を追ってねえな」
「いいさ、俺も何だか、薄っすらとだが分かってきたような気がする」
「マジかよ。本人が半年かけて分かりかけてるようなことだぞ」
「マジだ。言われてみればって感じだが、確かに、高須が櫛枝と親しくなったとは思っていたが、
単に逢坂経由だと思っていたからな。言われてみれば、色々なことに説明がつきそうな気がする」

 そうかそうか、なるほど。北村は楽しげに呟いて、何度も頷いた。

「亜美の奴が膨れる理由がよく分かった」
「は? 川嶋が?」
「口には出さなかったけど、分かるんだよ。幼馴染だからな。
 あいつのことだから、何かお前たちにお節介なことでも言ったんじゃないか?」

 察しのいい北村というのも調子が狂うものだった。停止していた思考能力が運転を再開した上、
余事は置いて一つのことに集中しているせいかもしれない。鈍感さにかけては竜児に勝るとも劣らない北村が、
亜美のごとき察知力を発揮している。
 もっとも竜児の調子だったら、昨日の夜から狂いっぱなしではあったが。調子が狂ったせいで、
普段考えないようなことを思い至ったのだ。

「そういう理由だったら、高須のことを水臭いとは攻められんな」
「…………」

 つまり、親友に秘密を持っていたということを。

「それで、何かあったわけだ? その均衡状態みたいなものが、昨日崩れてしまうようなことが起きたんだな。
 あの様子だと櫛枝と逢坂の間でも何かあったみたいだけど」
「それに関しては、さっぱりだ。俺もびっくりしてる。全然分かんねえよ」
「まあ、理由はさておき、あれはどう見ても高須を取り合っていたよなあ」

 竜児は眉をひそめた。最凶の誉れも高い三白眼をすうっと細め、戯けたことを抜かす男だ! 切り刻んでやろうか?
と考えているのではなく、半透膜を通過する液体のように、北村の言葉が脳に認識されるまで時間がかかっているのだ。

23虎注7/7 ◆wVNPBvxl56:2009/11/05(木) 08:11:08 ID:???
「しかもあの示し合わせたような構いっぷり……二人とも腹を括ったということだな」

 一人心得顔の北村に竜児は全然ついていけない。

「え、おい、ちょっと待てよ、勝手に話を進めんな。ななななんだよ取り合ってるって、腹括ってるって、
 それはなんか前提がおかしいぞ」
「ん? 櫛枝も高須のことが好きなんじゃないのか?」

 古典的な表現で言えば、竜児は頭をガーンと殴られたような気分だった。斬新に言い表すなら、凶暴な女子高生に木刀で殴打されたかのような衝撃を伴った発言だった。
 北村はいい奴だ。しかしデリカシーがないのだ。

「あ、これは言っちゃまずいことだったか」
「お前な……」

 竜児の足が止まる。
 それが事実だとしたら、何という皮肉だろう。そして何というバカバカしい話なのだろう。
一年近く片想いしていた相手が自分のことを好きかもしれない驚天動地のこの情況で、自分は何をやっているのか。
竜児は頭を抱えてうずくまりたくなったので、その通りにした。たとえそれが法律で禁じられていたとしても、
今の竜児なら躊躇いなくやった。

「た、高須!? すまん、大丈夫か!?」
「…………」

 北村が周りでおたおたしているのも竜児の目には一向に入らなかった。アスファルト上の落ち葉を
一心に凝視しているようだったが、その実何も目に入っていなかった。
 考えようによっては、北村とも情況は似ている。北村の場合、一度告白し振られた相手にしばらく経ってから
告白されたのであった。絶妙な時間差で両想いになる期間がなかった。竜児の場合は気がつかなかった。

「高須! 気を確かに!」
「ダメだ北村、俺しばらく立ち直れねえかも」

 そこでふと生じる疑問。

「北村」
「なんだ高須!? ……ああ親友をこんなに落ち込ませてしまうなんて……! 何でもしてやる! 言ってみろ!」
「……お前、何で大河を振ったんだ? もう好きじゃなかったのか?」
「ぐ」

 中々のダメージだった。北村は分厚い胸筋の下のセンシティヴなハートに多大な損害を受け、
たとえとかではなく本当に胸を押さえて竜児の隣にうずくまった。

「おう、ど、どうした? 北村?」

 竜児がおたおたする順番だった。鈍感な男たちは意図せず互いに鞭打っていた。

「……い、いいだろう……何でもすると言ったからには、答えよう。男に二言はないぞ」

 北村の眼鏡がきらりと光る。うろんな光景に見えて、よく見ると北村は赤かった。誰よりも男らしく
清々しい眼鏡くんは、ほっぺを赤く染めて恥らっていた。竜児などはいっそ自分が告白されるのではと
一瞬ぎょっとしたくらいだった。

24虎注7/7+1 ◆wVNPBvxl56:2009/11/05(木) 08:12:07 ID:???
「…………す……好き、な、人が……いる」
「おうっ!?」

 竜児はしゃがんだ姿勢のままよろめき、それでも尻餅は死守し、勢いで立ち上がる。背中にぶつかった電柱に
そのまま寄りかかり、身体を支える。
 竜児が衝撃を感じている間に、北村はといえば、

「くくく……」

 泣いていた。

「お、おい、北村!? 大丈夫か!?」
「大丈夫なわけがあるかあっ!」

 泣き顔のまま立ち上がると、鞄を放り捨てスクワットを始める北村。高ぶった感情の対処が体育会系っぽい。
竜児の前で北村の泣き顔がすごい勢いで上下する。
 気持ちが悪かった。

「……大丈夫か?」

 竜児は改めて、頭は大丈夫かという意味で訊ねた。

「ダメだ!」

 北村はあくまで男らしかった。

「脱ぐしかない!」
「脱ぐな」

 学ランのボタンに手をかけた北村の頬を、竜児は力なくぺちゃっと叩いた。

「ダメだダメだダメだ、ダメだーっ!」

 社会的に致命傷を追うことは思いなおしたが、頭をかきむしる北村。狂乱の体である。

「高須竜児!」
「はい!」

 クラス委員は定規のようにまっすぐ親友の凶相に指を突きつけた。端から見れば正義感が不良の非行を
見咎めたかようだった。しかして優等生である竜児はついいい返事を返してしまう。

「逢坂大河が好きか!?」
「はい! ……ってあれ!?」
「よろしい!」

 北村の眼鏡は夕焼けが映りこんでいたが、竜児にはその下の熱く燃える目がありありと見えた。
暑苦しい男である。
 暑苦しい男に戻ったのだ。
 告白してくる――吐き捨てるように宣言すると、北村は元来た道を駆け戻っていった。一路、学校へ。
 竜児はぽかんである。何が起こっているのか理解するまでにしばしの時間が必要だったが、
自分が何か親友に重大な影響を及ぼしたことは分かった。逆に北村は、勢いで竜児から本音を引っ張り出して行ったのだった。

「はい……って」

 やがて一人歩き出した竜児は、スーパーの特売を思い出した。動揺はしていても、衝撃を受けても、
何があろうと安くておいしい晩御飯を作るのが竜児の使命である。
 きっと、大河も食べにくるのだろうし。



*


普通に分母間違えたです。

25 ◆wVNPBvxl56:2009/11/05(木) 08:13:52 ID:???
代理投稿に感謝。まだ寄生虫みたいなのでよかったら8もお願いします。

26 ◆wVNPBvxl56:2009/11/06(金) 00:16:33 ID:???
代理ありがとう!
7/7+1の「社会的に致命傷を追う」は「社会的に致命傷を負う」なんだからね!
勘違いしないでよ!

27とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero:2009/11/06(金) 03:37:30 ID:???
>>17-24
周辺状況も動き出して、これからどうなるのか……激しく期待。


まだまだ規制中。代理投稿感謝してます。

28とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero:2009/11/06(金) 03:38:31 ID:???
お題 「お父さん」「ストーカー」「記憶」



「はあ……」
 卓袱台の前で深々と溜息をつく竜児。
「竜児、どうしたのよ、さっきから落ち込んじゃって。ただでさえ凶悪な顔がどこかのストーカーみたいになってるわよ?」
「いや、ちょっと夢見が悪くてな……」
「……どんな夢?」
「……なんというか、昔の記憶をほぼ忠実に再現した夢でさ」
「昔って?」
「小学の……二年だったか三年だったか、作文を書く授業があってさ……テーマが『ぼくの・わたしの家族』で」
「……で?」
「で、正直に書いちまったわけだよ。『うちにはお父さんがいません。お母さんは夜にお酒を飲む仕事をしています』って。
 もちろん書いたのはそれだけじゃないんだけど、やっぱりその辺が印象に残っちまったんだろうな」
「……イジメとか?」
「いや、そこまで酷くはなかったけどさ。元々目付きのせいで引かれがちだったのが、一層人が寄らなくなったのは確かだな」
「……竜児……ちょっとそこに座りなさい」
「いや、座ってるだろ、さっきからずっと」
「いいから黙って」
 大河は竜児の傍に立つと、その頭をそっと抱き締める。
「た、大河!?」
 そしてそのまま――流れるようにヘッドロックに移行。
「あだだだだだだだ!」
「あ・ん・た・は・そんな昔の事でいつまでもグジグジしてるんじゃないわよ!このグズ犬!いやグジ犬!」
 ぎりぎりぎりぎり。
「大河!ギブ!ギブだって!」
 竜児の必死のタップにようやく腕を離す大河。
「あー……いってえ……。
 まあ、確かにこんなことで家族に心配かけるもんじゃねえよな」
「まったく、わかったならやっちゃんが起きてくる前にそのしょぼくれた顔を治しなさいよ」
「おう、すまなかったな、大河」
 言いながら竜児はポン、と大河の頭に手を。
「だから、私じゃなくてやっちゃんに……」
「いや、だからさ……心配かけたのは大河にだろ」
「え?」
「お前もさ、もう家族……みたいなもんじゃねえか。泰子だって『うちは三人家族』とか言ってたしな」
「ふぇ?……え、あ……うん」
「だから、心配させてすまねえって」
「わ、わかればいいのよ」
「そうだな、お詫びに今日の晩飯はトンカツにするか……って大河、どうしたんだよ?」
「な、何が?」
「えらくニヤけちまって……そんなにトンカツが食べたかったのか?」
「そそ、そーなの!丁度食べたいなーって思ってて!」

29とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero:2009/11/09(月) 05:55:35 ID:???
いつも代理投稿ありがとうございます。

まだまだまだ規制中……
ocnからの返信待ちの段階までは行ってるんで、もう少しで解除……されるといいんだけど……

30とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero:2009/11/09(月) 05:56:35 ID:???
お題 「腹の音」「問題」「笑え」



「あれ〜?竜ちゃん今からお出かけ〜?」
「おう、学校に忘れ物しちまってな。メシは冷蔵庫に入れてあるから、遅くなるようだったら暖めて先に食べててくれ」
 嘘であった。
 そもそも今忘れ物に気づいたのであれば、あらかじめ食事の用意をしてあるはずが無い。
 それでは何の為に出かけるのかというと……


 大橋高校の校門……の近くの物影。
 高須竜児と逢坂大河はそこに身を潜めていた。
「……まだかしら……」
「焦るなって、逢坂。授業終った直後の北村は部活や生徒会で忙しいけど、それが終ってからなら何も問題はねえんだから」
「でも、やっぱりこんな時間に偶然逢うなんて不自然じゃない?」
「そこは課題が終らなかったとか忘れ物取りに来たとかいうことにすればいいじゃねえか」
「そ、そうよね……」
「ほら、言ってるそばから北村が来たぞ。行ってこい、逢坂」
 軽く背を押すと、逢坂は数歩たたらを踏みながら前に出て。
「き、北む――」
 ぐうぅぅぅ〜〜るるる
 鳴り響いた腹の音は、逢坂の動きを止めるのに十分だった。

「……笑えばいいじゃないの」
「……笑わねえよ」
「何でこう、いつもいつも……上手くいかないんだろ……」
「まあ、今回のは不可抗力だろ」
「でも……やっぱり私なんかじゃ……ダメなのかな……」
 肩を落とし、とぼとぼと歩く逢坂は今にも泣き出しそうな表情で。
「……なあ逢坂、今日の晩飯はウチで食わねえか?」
「……何よ急に」
「腹減ってるんだろ?うちならもうメシの準備出来てるし、足りなきゃすぐに作れるしな」
「でも、お母さんとか、いいの?」
「……まあ、うちのおふくろはあんまり細かい事気にしねえからさ」
「……細かい事って……」
「どっちかというと、逢坂が泰子を見て引かねえかの方が心配だ」
「泰子って……なに、ひょっとしてあんた自分の母親のこと名前で呼んでるわけ?」
「おう、なんというか……ちょっと変わった親でな」
「そう言われるとなんか興味が湧くわね……メニューは何?」
「今日のメインはチンジャオロースだ。三人だとご飯が少し足りねえかな……冷凍してあるのを解凍するか、チャーハンにして嵩増しするか……」
「チャーハン!チャーハン食べたい!」
「よし、決まりだ。そうだ、逢坂がよかったらだけど、これからメシはうちで食うことにしねえか?
 前から思ってたんだよ。逢坂は晩飯8時だけどうちは6時半だから、二回作るのが面倒でさ。朝だって纏めて作って一緒に食べた方が効率いいし」
「そうねえ……竜児がどうしてもって言うならまあ、やぶさかではないわ」
「おう、頼む」
「それじゃ、さっさと帰ってご飯にしましょう。その後、明日の作戦を考えるのよ!」
「おう、そうだな。次はきっと上手くいくさ」

31高須家の名無しさん:2009/11/12(木) 01:40:26 ID:ajo9c4vA
本スレ>>402-410

これはひどいwwww
やっちゃんと大河の暴走がとてもステキ。いいぞもっとやれ。

32 ◆Eby4Hm2ero:2009/11/12(木) 05:20:35 ID:???
地方ごとの規制が解除されたかと思ったら、運営暴走でocnまるごと規制とか……orz

代理投稿感謝です。

33とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero:2009/11/12(木) 05:21:19 ID:???
お題 「気配」「ギラギラ」「夜」



 宵闇の迫る大橋高校の校門前で、部活帰りの生徒が息を呑んで足を竦ませる。
 なぜならば、そこに一人の男が立っていたから。
 ギラギラと凶眼を輝かせて。
 不穏なる気配を漂わせて。
 それは犯罪組織のエージェントか。はたまた誰彼時の魔物か。
「あら竜児。そんな所で何してるのよ」
 背後からの声に振り返れば、そこには輝かんばかりの美少女が。
「ひょっとしてみのりんを待ち伏せ?まさか後をつけようとか考えてるんじゃないでしょうね、このキモ犬」
 彼女は男にずかずかと近づいて。男は彼女の言葉に困ったような表情に。
「あのなあ大河……何って、お前を迎えに来たんじゃねえか。ちゃんと課題は終ったのか?」

「子供じゃないんだから、わざわざ迎えにくる必要なんて無かったのに」
「もう随分夜も早くなってきたからな。女子一人で暗い中帰らせるわけにはいかねえだろ」
「あんたねえ……私を誰だと思ってるの。仮に変なヤツが出てきても返り討ちにしてやるわよ」
「そーゆー問題じゃねえって」
「というか、むしろ竜児が不審者よね。さっきも一年生がドン引きしてたし、通報されなかったのが不思議だわー」
「……警察に職務質問ならされたけどな。二回ほど」
「っぷくくく……さ、流石は顔面凶器……よく逮捕されなかったわね?」
「制服だし、学生証見せれば問題ねえんだよ……正直対応に慣れてる自分が少し悲しいけどな」
「ぷぁっはははは!」
「ああ糞、笑いたきゃ笑え……」
「ところで竜児、職務質問二回もって、あんたどれだけ待ってたのよ?」
「おう、まあ一時間ぐらいかな」
「一時間って……ご飯はどうしたの?」
「今日は泰子は用事で早出だし、まだ食ってねえよ」
「先に食べてから来ればよかったのに」
「一人で食べててもいまいち味気ねえだろ」
「ん……それもそうね。あ!それじゃメニューのリクエストしていい?」
「残念ながら不可だ。下拵えはもう済んでるしな」
「ぶー、竜児のけちー。セコ犬ー。居残りしてまで美術の課題を終らせた私を労おうって気持ちは無いわけ?」
「そもそも大河がコケて筆洗いの水をぶちまけたからだろうが、描き直しになったのは」
「……うー」
「ま、安心しろ。今日はポークソテーだから」
「よっしゃー!肉ー!」
「子供かお前は……」

34 ◆Eby4Hm2ero:2009/11/13(金) 07:58:36 ID:???
代理投稿ありがとうございます。

さて、ちょっと前に本スレで『君に届け』の話題が出ていましたが、うちのあたりでは放送していないこともあって、
自分的に『君に届け』と言われると浮かぶのはマクロス7よりFIRE BOMBERの『君に届け→』
ttp://www.jtw.zaq.ne.jp/animesong/ma/macross7/kimi.html

で、規制中だろうがなんだろうが思いついたら書かずにはいられなくなるのは人の業というものか。

35君に届け→ ◆Eby4Hm2ero:2009/11/13(金) 07:59:20 ID:???
 暦の上では春を迎えたといっても、三月の風はまだ冷たくて。

 あの日から2週間。
 あっという間のようでもあり、遥かな時が過ぎたようでもあり。
 お互いに相手を受け入れて歩み寄ろうとしてはいても、長い断絶が作りあげた溝は広く深くて。そのうちに母親は出産の為に入院して。
 病院で目にした弟を素直に可愛いと思えたのは良かったけれど。義父をいい人だと感じられるのは進歩だと思うけれど。
 結局の所自分はこれからの身の振り方も決まらぬまま、こうしてベランダで星空を眺めているだけで。

 あの日の触れ合った感触も熱も、もはやこの体からは消え去って。
 だけど、記憶には、心には、しっかりと刻み付けられていて。
 思考を少し内に向ければ、たちまちに思い出す、溢れ出す。
 恐いようで実は優しい眼差し。手先は器用なくせに生き方は無器用で、でも真っ直ぐに誠実で。
 好きだと、共に生きようと言ってくれたこと。握り合った手の力強さ。触れ合った唇の熱さ。

 だから、大丈夫。寂しいけれど。会いたいけれど。
 まだ時間はかかるかもしれないけれど、いつか辿り着くその日の為に。
 前を向いて歩き続けると決めたから。

 風が吹きつける。まだ冷たい、けれど、あの夜の身を切るような風よりはずっと暖かい。
 この風はどこまで吹くのだろうか。あいつの所まで吹いて行くのだろうか。
 夜空に手を伸ばし、名前を、想いを、囁いて、風に乗せてみる。
 どうか、あいつに届きますように。


 なぜだか急に星が見たくなった。
 勉強の息抜きに丁度いいと思い、マフラーを巻いて外に出る。
 そのままぶらぶらと、天を仰ぎながら歩き続ける。
 と、風が吹いてきて。
「おう、俺もだ」
 気がついたら、何かに返事をしていた。

36 ◆Eby4Hm2ero:2009/11/16(月) 04:54:04 ID:???
代理投稿感謝です。

ocn規制はいつまで続くのやら……

37とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero:2009/11/16(月) 04:57:06 ID:???
※Caution!
 痛い/辛い系の話です。

38とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero:2009/11/16(月) 04:58:04 ID:???
お題 「ドジ」「裸足」「あっちいけ」



 果てしなく広がる闇の中、氷の様に冷たい床の上を、逢坂大河は裸足で走る。
 身に纏うのは黒いドレス。背負うのは小さな白い翼。頭上に戴くは銀のティアラ。首元には赤いマフラー。
 夢なのだと、わかってはいる。だが、走るのを止めることが出来ない。
 なぜなら背後から声が――走っている理由が近づいてくるから。
「――――が!」
 声は少しずつ、確実に近づいてくる。
 このままではすぐに追いつかれてしまう。
 大河が白い翼を投げ捨てると、それはたちまち吹き荒れる暴風の壁へと変わる。
 声の主は恐れることなくその中に飛び込むが、風に阻まれてなかなか前に進むことが出来ない。
 大河はその間に距離をとるべく、再び走り出す。

「はあ、はあ、はあ……」
 一時も休むことなく走り続け、流石に息が苦しい。
 だが少しでも速度を緩めれば、すぐにあの影が近づいてくる。
「―――いが!」
 また声が近くなった。
「うるさいうるさいうるさい!あっちいけ!」
 叫びながら銀のティアラを投げ捨てると、それは聳え立つ氷の山へと変わる。
 躊躇うことなくよじ登り始めたあの影を尻目に、大河は走り続ける。

「――たいが!」
 あいつにはっきりと名前を呼ばれ、心臓が跳ねる。
 このまま止まってしまえばどんなに楽だろうか。だが、そうするわけにはいかない。
 大河は首元に手をやり、一瞬その動きが止まる。
 だが意を決して赤いマフラーを投げ捨てると、それは燃え盛る炎の河へと変わる。 
 流石に脚を止めるあいつに背を向け、大河はまた走り出す。

 どれだけ走っただろうか。既に辺りには茫漠たる闇が広がるばかり。
 と、脚がもつれて転ぶ。
「夢の中でまでドジか、私は……」
 倒れ伏す大河の体を、不意に暖かく柔らかい腕が抱き上げる。
「え?」
 見上げればそこには、サンタの格好をしたクマの着ぐるみが。
「……っ!やだっ!」
 逃れようと身を捩るが、大河をがっちりと抱え込んだ左腕がそれを許さない。
 そして右腕はクマの頭部にかかって。ゆっくりとそれを持ち上げて。
「ダメっ……!」
 今、あいつの顔を見てしまったら、自分は――
 だが、着ぐるみの頭部が取り去られた後にあったのは……
「嘘……」
 『逢坂大河』の顔だった。

39とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero:2009/11/16(月) 04:58:18 ID:???
 気づけば着ぐるみは消えて、向かい合って対峙する大河と『大河』。
 黒いドレスだけの大河。白いコートに赤いマフラーをした『大河』。
「……あんた、誰よ?」
『わかってるくせに』
「……」
『今度は私から聞くわね……なんで逃げるの?』
「……逃げて、なんて……」
『逃げてるじゃない、ずっと。竜児には逃げるなって言ったくせに』
「っ!」
 その名前が突き刺さり、大河は思わず胸を押さえる。
『ほら、そんなにつらいんだから、言っちゃえばいいのに』
「……駄目よ」
『何で?竜児なら受け入れてくれるわよ、きっと』
「絶対に駄目。竜児が好きなのは……みのりんだもの」
『でも、みのりんは竜児をふったじゃない』
「それは……きっと、みのりんは勘違いしてて……」
『だから、勘違いじゃないでしょ?私は竜児が好きなんだから』
「……言うな」
『告白しちゃえばいいのよ。きっとみのりんも祝福してくれるわ』
「言うなぁっ!」
 何時の間にか手の中にあった木刀を『大河』に向けて振う。
『強情ねえ。竜児に告白して、幸せになって、何が悪いっていうのよ』
「幸せに、なんて、なれないっ!竜児を、苦しめて!みのりんを、傷つけて!
 そんなの、絶対、絶対っ!」
 ぶん、ぶん、と振われる木刀を、『大河』はひらりひらりとかわす。
「竜児は、みのりんと、一緒になって! 二人は、本当に、幸せに、なるんだからっ!」
『それで、私はどうなるの?』
 すぐ後から耳元に囁かれる声。大河は振り向きざまに木刀で横一閃。だがそこに『大河』の姿は無く。
 ただどこからともなく声だけが響く。
『竜児もみのりんも居なくなって、私はまた一人ぼっち。それでいいの?』
「うるさあぁぁぁいっっっ!」

 自分の絶叫で目が覚める。
 ベッドから身を起こし、肩をぎゅっと抱き、うつむいて唇を噛み締める。
 だがそれは、ほんの束の間。
 大河は決然と顔を上げる。
「いいのよ……私は、強くなるから。なってみせるから」
 そして、ただ一人で立ち上がる。

40 ◆Eby4Hm2ero:2009/11/16(月) 04:59:10 ID:???
これだけというのはなんなので、もう一本行きます。

41とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero:2009/11/16(月) 04:59:46 ID:???
お題 「腰」「様子」「存分に」



 逢坂大河は目が覚めて、自分が泣いていることに気がついた。
 何か妙な夢でも見たのだろう……全く憶えてないけれど。
 大きくのびをして時計を見ると、10時半。
「えぇ!?」
 今日は日曜だから遅刻の心配は無いけれど、いつもなら遅くとも9時頃までには竜児が起こしに来るはずなのに。
 枕元に置いてある携帯を開くと、数回の着信記録。竜児も寝坊したというわけでないらしい。
 ならば、なぜ来ないのか。
 背筋に微かな寒気を感じながら、発信。
 数回のコールの後、
『……おう』
「おうじゃないわよこのグズ犬!今何時だと思ってるの!」
『おう、すまねえ……って電話したのに寝こけてたのは大河じゃねえか』
「何で起こしにこないのよ馬鹿!役立たず!」
『……すまねえ、今日はちょっと無理だ』
「はあ?何が無理だってのよ。さっさと来いこの駄犬!」
『……悪い、ホント、今日だけは勘弁してくれ……』
「……よしわかった。グズでノロマな上に怠け者のあんたを、今からお仕置しに行ってやるから首洗って待ってなさい」
 返答を待たずに電話を切り、手早く身支度を整えて。木刀を持つのも忘れずに。

「竜児ぃっ!」
 どばぁん!と、怒りに任せてドアを開けば、卓袱台の横に突っ伏している竜児の姿。
「……おう」
 竜児はやたらゆっくりとこちらに顔を向け、片手を上げる。 
「何やってるのよこの無能!さっさと起きて……」
 ぐうぅぅぅ〜〜〜
 鳴り響いた腹の音に竜児は力なく笑い、
「おう、朝飯だな、ちょっと待っててくれ……」
 ぎぎぎぎ、と軋む音が聞こえそうな動きでゆっくりゆっくりと立ち上がる。

「で、どうしたのよそのザマは」
 冷蔵庫に保管されていた朝食を平らげ、お茶を飲みながら大河が聞く。
 竜児はといえばお茶をのむ動きも……それ以前に朝食の用意をしている時も食べている間もずっと、油の切れたロボットのようで。
「いや……さすがに昨日は無茶しすぎたみたいでさ」
 昨日……大橋高校の文化祭。プロレスショーに……福男レース。
「全身筋肉痛なんだよ。特に足腰が酷くて、正直、今日は極力歩きたくねえ……」
「……まったく、あれしきの事で動けなくなるとか……本っ当に情けない男ね」
「……返す言葉もねえ……」
「病院とか行かなくて平気?」
「まあ、まるっきり動けねえってわけでもないし、大丈夫だろ。明日まで様子見て、ずっと酷いようだったら考えるさ」
「……よし!」
「何がよしだよ」
「今日は特別に私が竜児のお世話をしてげる。あんたは存分に休むといいわ!」
「お世話って……何をする気だ?」
「掃除でしょ、洗濯でしょ、ご飯も私が作ってあげる」
「ちょ、待て待て大河、出来るのかよ?」
「何よ、その反応は。ここは優しいご主人様に泣きながら感謝する所じゃないの」
「感謝じゃねえ。大河が家事とか、不安以外の何物でもねえぞ」
「大丈夫よ、やれば出来るって」
「今まで碌にしてこなかった上にいつドジやらかすかわからない奴に言われてもなあ……
 俺もこの状態だからフォローできねえし」
「……わかったわよ。それなら他に何かすることって無い?」
「それじゃ、背中に湿布貼ってくれねえか?自分じゃ届かねえからさ」
「それだけ?」
「そうだな……後はまあ、傍にいてくれると有難いかな」
「余計なことはするなって言いたいわけ?」
「そうじゃねえよ。ほら、弱ってる時ってのはさ、一人で居るより誰かに近くに居て欲しいもんじゃねえか」
「ん……そういうことなら、まあ……わかったわ」
「おう、頼むぜ大河」
「……ほんとにそれだけでいいの?」
「おう……やっぱりさ、大河が居てくれると……落ち着くんだよな……」
「ん?今なんて言ったの?」
「いや、なんでもねえよ」

42まとめ人 ◆SRBwYxZ8yY:2009/11/29(日) 10:26:56 ID:???
まとめサイト更新しました!
勝手にリンクに1件追加しました。

       ____
     /      \
   /  _ノ  ヽ、_  \
  / o゚((●)) ((●))゚o \  ◆QHsKY7H.TY氏の「ドラとら!(仮)」のタイトルが決まらないんだお…
  |     (__人__)'    |
  \     `⌒´     /

       ____
     /      \
   /  _ノ  ヽ、_  \
  /  o゚⌒   ⌒゚o  \  いくら考えても「ドラとら!」より良いタイトルが思い浮かばないお…
  |     (__人__)    |
  \     ` ⌒´     /

       ____
     /⌒  ⌒\
   /( ●)  (●)\
  /::::::⌒(__人__)⌒::::: \   だから画像を使ってアニメのアイキャッチ風にするお!
  |     |r┬-|     |
  \      `ー'´     /


  ./ ̄ ̄\
 /ノ( _ノ  \ 
 |,'⌒ (( ●)(●)   <遊びすぎなんだよ!!!
 |     (__人__)   
 |     ` ⌒´ノ ,rっっ                  ,
/"⌒ヽ   ソ,ノ .i゙)' 'ィ´                `     ,._
      ゙ヾ ,,/ { ) 丿             ,  ゜;,/⌒    ⌒u:::\ 。
 ィ≒    `\ /'ニ7´     スパァァ────/(◯.;); :::::、;(;.◯));:'::::ヽ‐─────‐‐ ン
/^ヾ      \ ./              ゚ ;i`、 ⌒:(__人__) ⌒:::::;;,´:::|
   }      __\___ ___   ____´_;;{   ;` j|r┬-|:;〉::,,゚, 。;;:;;|
   )ンィ⌒ ̄" ̄ ̄ ̄  ̄ ̄  ̄ ̄ ̄  ̄ ̄  ̄ ̄ニ≡┴‐ー-,==ー--ァ人て゜ ゚;:,::|: ゜ .
   ノ/             ≡''        ;;;;(( 三iiii_iiiiiii)))))て,,;;/  。  ;
   ヾ         _____=≒=ー────;‐‐ ̄/      |Y‐-<` `




-----------------
うおお、まだ規制が解除されない…
●を買うか…
狐ぽってなんだろう…

43高須家の名無しさん:2009/11/29(日) 14:52:47 ID:K9WVNwD2
>>42
とりあえず>>11の手順でやってみ
で、書き込めるかどうかのテストはこっちでやってみ

ニダーランでお試し●貰った奴が書き込むスレ
http://gimpo.2ch.net/test/read.cgi/maru/1241028415/

44 ◆wVNPBvxl56:2009/12/02(水) 18:32:46 ID:???
まさかの再規制w
ここでレスさせてください。

18スレ
>>109-112 >>115
サーセンwww
としか言えませんがw
虎注書いたら書きます。

>>113
妄想が広がりますな。

45高須家の名無しさん:2009/12/09(水) 23:18:00 ID:???
44 名前: ◆wVNPBvxl56[sage] 投稿日:2009/12/02(水) 18:32:46 ID:???
まさかの再規制w
ここでレスさせてください。

18スレ
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1258620217/109-112
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1258620217/115
サーセンwww
としか言えませんがw
虎注書いたら書きます。

http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1258620217/113
妄想が広がりますな。

46 ◆x6jzI2BeLw:2009/12/11(金) 09:27:22 ID:???
まずは冒頭、スレをお騒がせしたことをお詫びします。

配慮が足らなかった点など、厳しいご意見を頂きましたが、その通りであると言わざるを得ません。
若干、冷静さを欠いた状況で投下してしまったことを含めまして、今回はスレの善良な読者や他の書き手の方に多大なご迷惑をお掛け致しましたことを深く謝ります。

不愉快な思いをさせてしまった方々にはここで再度、謝罪させて頂きます。
「本当にごめんなさい」

謝るくらいなら、そんなことするなと言われそうですが、そう言った点を含めまして、今回の件につきましては弁解の余地もございません。

以上の点を踏まえまして、しばらくの間、活動を自粛させて頂きます。
スレの関係各位にはご迷惑をお掛けしましたことを深くお詫び申し上げます。

本スレに記載すると荒れる要因になりそうなのでこちらへ投下させて頂きました。

最後に、今まで読んでくれた方々に感謝の意を捧げます。

47高須家の名無しさん:2009/12/11(金) 10:32:21 ID:HOgOsZ26
>46
個人的に全然問題ないと思われ。
考えを押し付けているのではなく、照れ屋さんだったのだと推測します。
凄くキレイに心の交流が描かれていました。
次の作品も楽しみにしていますので、落ち着かれたら、是非お願いします。
真夏シンデレラも、孤独な月ウサギ…も描写が見事で大好きでした。

ガチエロの基準が分からなくなってきた…
前に荒れた時と、今回のは随分違うと思うんだけど、そう思うのは俺だけ?

48高須家の名無しさん:2009/12/11(金) 12:22:43 ID:???
まとめ人へ

VIPで大河×竜司スレ立てたらまとめてくれますか?
というかまとめてくださいお願いします
VIPの方が自由に表現しても文句言って来るやついなさそうなので(エロス的な意味で)

49高須家の名無しさん:2009/12/11(金) 13:05:35 ID:???
いや、今回のは過剰反応だろう。
具体的な描写を避けててガチエロ扱いされたらたまらんよ。

>>48
わざわざVIPまで行かなくてもここでやればいいじゃん。そのための避難所なんだし。

50高須家の名無しさん:2009/12/11(金) 14:47:27 ID:???
今回のは基準も何もあったもんじゃないね
前に荒れた時と比べる必要すら無いくらいに明白
だから作者の人もあまり気にしない方がいいよ

昔に比べて堪え性の無いガキがいて、騒いだってだけだ

ま、スレの流れも快方に向かってるようだしヨカタ

51高須家の名無しさん:2009/12/11(金) 14:53:05 ID:???
>>46
ラブシーンではあってもエロじゃなかったと思うのだけど
ああいうキツいリアクションとられるとショボンてしちゃうだろうけど、
元気出してね

>>47
いったん排除の論理が働くと、やっぱ極端なところまで行き着くものかと
微エロとかももう、おっかなくて本スレにはうp出来ねぇ……

それにしてもやっぱラブシーンもだめとかはどうかと

52まとめ人 ◆SRBwYxZ8yY:2009/12/13(日) 00:59:21 ID:???
ttp://www.geocities.co.jp/AnimeComic-Tone/9772/doujin.html

うおおお、死ぬほど欲しい…

>>48
避難所のスレ立ては特に制限してませんので、VIPスレ立てて思う存分やると良いよ!
つーか、流れ早くてアッシのような無精者にはVIPはついていけない予感。

>>◆x6jzI2BeLw氏
あれくらいのイチャイチャは自分では問題ないと思います。
ただ、くだんの方が問題点にしているのは、多少エロいということを自分でわかっていながら
あえて何も言わなかったことだと思っております。
ですので、ちょっとエロいかなーと自分でも思うときは前置きするとよいと思います。
やべえこれエロ杉!と思いましたらこちらの避難所にどうぞ。

いやまあ、あんまり調子に乗っちゃうと、アグネスさんがアップをし始めますので。
だって、大河はどう見ても児童ポr




やめt

53高須家の名無しさん:2009/12/13(日) 06:30:58 ID:t3E7ZHLE
>>46
あなたに批判的なレスをした者の一人です。
私の意見については>>51で管理人さんが総括してくださったことがすべてです。
出してしまった発言に対しては責任を持つべきだと思うので、言い訳も撤回もしようがありません。
無礼な物言いがあったこと、ご容赦ください。

活動自粛までは私の望むところではありません。
早期に(というかすぐにでも)解除されることを祈ります。

54高須家の名無しさん:2009/12/13(日) 06:32:42 ID:t3E7ZHLE
失礼、アンカーミスです。
>>51ではなくて、>>52です。

55高須家の名無しさん:2009/12/18(金) 22:42:26 ID:FxxK4/1.
なんつうか、すげぇ違和感を感じます。
上手く説明できないけど、書き手側と読み手側に齟齬があることに。

読み手側の意見としては、「こまけぇこたぁいいんだよ!」「全然問題ない」とか擁護する意見が多いです。
でも、◆x6jzI2BeLw氏側には考えるところがあったのだと思います。
思う所があったから、こういった真摯な対応に出たのだと推測することしかできないですが……
書き手側が読み手側と同じ意見なら、「裸で何が悪い!」みたいに開き直れば済むことだもん。

本スレの方では流れを正常化させるためにそういう擁護・応援意見を言った、というのは理解します。
が、なぁなぁで済ませてもいいとは思いません。
>>47氏や>>51氏が言うように、俺自身も今後作品を書く上で少し怖いところがあります。
何より個人的にもエロを含んだ作品も日の目を浴びてほしい。
(もちろん、ガチエロは論外だが)
もっと踏み込んで議論してもらいたいかなと思うのですがいかがでしょうか?

個人的な不安を解消したいためだけに◆x6jzI2BeLw氏をダシに使うような形になってしまったことをお詫びします。
◆x6jzI2BeLw氏は非常に真摯な対応をされたと思いますし、色々思う所もあったのではないかと思います。
そこに追い打ちをかける形になるのかもしれませんが、お許しいただければ幸いです。

今回の問題点を敢えて挙げるとすればこんなところだと俺は思いました。

①注意書きの問題
 →個人的には作品を投下するときに一番気を使う所。
  説明不足にならず、説明しすぎず、ネタバレせず、冗長にならず、というのが非常に苦労する。
②最後まで行っちゃった
 →寸止めあるいは朝チュンくらいの描写ならおk?
  ギシアンはそれ以前のやり取りの面白さがキモってことでおk?
③不要なエロだった
 →エロがなくてもこのお話は成立したし、面白かったのかなと感じる
  ◆x6jzI2BeLw氏の他作品で、エロを上手く使った作品は非常に面白い。
  同じ書き手としてその才能に嫉妬してしまうくらい。

ご意見いただければ幸いです。

56高須家の名無しさん:2009/12/20(日) 08:38:59 ID:QKBpsfKs
書き手として、線引きはしている。が、その線はスレのガイドラインを読んで
自分で決めるものであって、細かい所まで人に決めて貰うものじゃないと
思ってる。当然、ヒステリックに「俺ルール」を叫ぶ奴の意見なんか聞かない。

今回の件については、既に終わっているのでコメントしない。

スポーツじゃないんだから、いちいち細かいことに線引きしても無駄。
表現上の挑戦ってのがあって、男女だからこそセックスが機微にからんで
来る。そこを書きたいと思ったときに、輸出規制関連法令みたいな細かい
こと言われても話にならない。

ところで、あーみんとみのりんがウィンクの曲を踊りながら教室に
入ってくるSSがあったと思うんだけど、どれだっけ > arl

57高須家の名無しさん:2009/12/21(月) 00:57:20 ID:YeDS3yuM
解決した、「リップサービス」だった。
ttp://tigerxdragon.web.fc2.com/index/SS13/683.html

58!omikuji !damaまとめ入 ◆SRBwYxZ8yY:2010/01/01(金) 23:58:15 ID:???
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。



コミケ行ってきました!
とらドラスタッフ本も買えたし大満足でス!

…いやこの本マジですげえや。
原画家さんたちのイラストにアニメ原画集に監督対談とかよう…

おや?手元に何故かスタッフ本が1冊余っているぞ?
手にいれるために色々と手を尽くしたからのう…
ヤフオクも面倒だしどうするかニャー

59まとめ入 ◆SRBwYxZ8yY:2010/01/02(土) 00:44:14 ID:???
おおお…この掲示板はオミクジ機能はついてないのか…
ちくしょうめ…


>>55
基本的な意見は56氏と殆ど変わりません。
ガイドラインをキチンと決めすぎると、そういった問題は未然に防げるかもしれませんが
規則に縛られて書き手が投稿しづらくなってスレが閑散となってしまうのは本末転倒だと思うのです。
というか、ガイドラインを作るのは良いのですが、問題はそれを外れた(無視した&うっかり忘れた)作品があった場合
それに対する意見やその意見に対する反論などでスレが荒れるのが…
いまでもエロパロのゆゆぽスレでその流れがちょくちょくあるのがなんとなく嫌だなぁ…と思ってます。

 自分は2chにある「批判するなら読むな。批判されたくないなら書くな」という意見が好きではありません。
 上記の意見は、被害者的立場から自分を慰めるための意見でしかなく、
 それ以外の立場から言うのは単なる暴言だと思うのです。

まあ俺の個人的感想だからどーでもいいですね!
さあて冬コミで買ったとらドラ同人誌でも読むかぁ!
手乗りセーブルさんや幸福屋神の竜虎本がエロくて最高やで…

60高須家の名無しさん:2010/01/02(土) 21:54:39 ID:???
新スレにいちおつしたかったのに書き込めない
マイナーなとこなのになあ

61高須家の名無しさん:2010/01/05(火) 19:30:48 ID:jnzJ6w0I
コミケ行きたいが1000kmは遠すぎる……
とりあえずまとめ様の感想で悶々としてるとするよw

62高須家の名無しさん:2010/01/07(木) 03:22:42 ID:???
うーん……とらドラ!原作をカレンダー的に検証するとどうしても矛盾が出てくるなあ……
そこまで設定・検証してないか、作劇上の都合であえて無視してるかのどっちかなんだろうけど。

63高須家の名無しさん:2010/01/15(金) 01:37:28 ID:.ZftX4qY
幸福屋さん、更新しているな。4コマであれだけ笑わせてくれるなんて、
敗北感につぶされそうだ。

64 ◆QHsKY7H.TY:2010/01/15(金) 19:26:50 ID:???
遅くなりましたが明けましておめでとうございます。

新スレも乙でございます。
皆様既にたくさんの良作を投下され、寅年まっさかりですね。
私も寅年生まれとして大変嬉しく思っております。

さて、昨年のクリスマスに投下したドラとら!の続きを投下します。
皆様今年も宜しくお願い致します。


と思ったらアク禁でした。
ですのでこちらに投下させて頂きます。
代理投稿歓迎。

65ドラとら! ◆QHsKY7H.TY:2010/01/15(金) 19:31:08 ID:???
クリスマスの晩。
寄り道をしてから暗く冷たい家に帰るとそこには、



──────高熱を出した大河が倒れていた。



***



インフルエンザ。
そう診断された私は新年早々入院していた。
シャレにならない。
何だって大晦日やお正月といった食事イベントに入院なんてしなきゃならないのか。
多分竜児のことだから随分と豪勢なおせちを作ったことだろう。
伊達巻、茶碗蒸し、煮物、数の子……ああ、食べたいものが浮かんでは遠ざかっていく。
あれも食べたい、これも食べたい。
食べ損ねて面白くない。
全く持って面白くない。
そうでも思わないと“やっていられない”

「……はぁ」

吐く息は小さく、しかし重い。
真っ白な病院のベッドで考えるのは、いや気を紛らわせる為に想像するのは、竜児。
溜息の理由も竜児。
今だに熱でぼーっとする頭で考えるのはクリスマスの夜の事。
私は竜児の帰りを待っていた。
きちんと確認しようと泣きながら思っていた。
けどそのうち段々体が重くなって、頭が痛くなって。
気付けば病院だった。
なんでも竜児が救急車を呼んでくれたとか。
なんでも竜児がずっと看病してくれたとか。
なんでも竜児がいろいろやってくれたとか。
けど、その竜児は私が元気になってくると思いのほかそっけなかった。
いや、正しくは“そっけなく感じてしまう”だ。
竜児は今までよりも突っ込んだ話し方や視線を送ってこなくなった。
それは他の周りの人間と分け隔て無いレベルで。
今までが竜児は余程私を特別視してくれていた事が実感できた。
出来てしまった。
だから、悲しい。
それが実感できるということは、竜児にとって私はその辺の知り合いAに成り下がってしまったということだからだ。
ほんと……シャレにならない。



***

66ドラとら! ◆QHsKY7H.TY:2010/01/15(金) 19:32:22 ID:???
大河は新学期前には退院していた。
もうすっかり良いようでおせちを食わせろと言ってくるほどだ。
まぁ気持ちはわかる。
ある意味寝正月だったのだから。
だが、おせちの残りはもう無いし諦めて欲しい。

「やだ」

が、流石は大河。
諦めるということを知らない。
でもここのところ、わがままが酷くなった気がする。
今までは「使えない駄犬ね」で終わったはずなのに、最近は妙に絡んでくる。
まるで構って欲しいように……って何を考えてるんだ俺は。
自分に都合の良い考えを振り払い、大河を宥めつつ餅を焼いてやる。
毎年コレだけは一杯あるからな。
きなこにあんこ、砂糖醤油でも美味しい。
薄く切ったものを揚げて塩を振って掻き揚げにしてもいいし。
結局その日、大河は渋々餅を食べて帰った。
さて、もう少ししたら学校が始まる。



***



「大丈夫、なくならないから、ね?そんなに変わらないわよ、うん」

新年早々、我らが独身ゆり先生はそんな意味のわからないことを言い出した。

「先生!!意味がわかりません!!」

流石はらが学級委員にして生徒会長、北村。
みんなの気持ちを代弁してくれた。
対してゆりちゃんは数拍置いてから、

「えーっと、修学旅行は沖縄のホテルが火事で焼けてしまい雪山スキーに変更になりました、うわぁ良かったねぇ♪」

わざとらしくブリキ人形のように手まで叩いて笑みを顔に貼り付けた、が、

「「「「エエエエエェェェェェェェェェエエエエエーーーーッ!?」」」」

みんながそれで納得する筈もない。
次々と批判の声が上がる。

「マジありえない」
「ナンセンス!!」
「断固拒否だ!!」

2−Cの生徒達に次々罵られていく独身(30)だが、ここでくじける程先生も俺等との付き合いは短く無かった。

『ギュィィィィィィィィン!!』
「「「うわぁぁぁ!?」」」

爪で黒板を引っ掻いたき、その音にみんなが苦悶の表情を浮かべている間に、

『人生なんでも思い通りにはなんねーぞ!!』

先生自身の体験談(現在進行形)が板書されていた。

67ドラとら! ◆QHsKY7H.TY:2010/01/15(金) 19:33:40 ID:???
***



あの担任、何考えてるのかしら?
まだ耳がジンジンするわ、全く。
竜児との会話の無い帰宅途中、私は痛む耳をさすりながらそう思っていると、

『ヴヴヴヴヴヴヴ』

携帯のバイブが鳴る。
誰よ、こんな時に。
竜児との会話も弾まず、修学旅行先も急に変わった事でイライラが募っていた私はむしゃくしゃしながら携帯を取る。



──────得手して、こういう時ってのはろくな事が起きない。



だが今回は輪をかけて悪い。
悪い時には悪いことが重なるというが、けどなにもこんなタイミングで……とも思う。
ケータイにはメールが一通。
内容を見ていくうちに、神様ってのは、世界ってのはどこまでも私に残酷なんだと理解した。

「……大河?どうかしたのか?」
「……別に」

奇しくも、久しぶりにまともに竜児から声をかけてもらう原因にもなったのだから、尚タチが悪い。



***



最近、大河の様子がおかしくなった。
いや、正確にはあの日メールが来てから、だろうか。
ここ最近大河は、朝は自分で起き、食事も昼こそ俺の弁当だが朝は自分で摂りはじめるようになった。
いや、それ自体は悪いことではなく、むしろ良いことなのだが、やっぱり胸にポッカリと穴が開いてしまう。

「はい、じゃあ修学旅行の班は……」

LHR中も上の空で大河はボーッとしている。

「逢坂さんはどこの班がいい?」
「……どこでもいい」

一体どうしたのだろう?
大河を諦めようと決意したのに、こんな大河を見ると余計に気にしてしまう。
そんな資格はもう無いのに。
もうすぐ楽しい修学旅行だというのに、俺の心は晴れない。
そうして憂鬱なまま今日も一日が過ぎ、いつも通り力なく帰宅支度をしていると、

「ねぇ高須君」

櫛枝に話しかけられた。

68ドラとら! ◆QHsKY7H.TY:2010/01/15(金) 19:34:57 ID:???
***



「大河と何かあった?」

櫛枝の第一声はそれだった。
人気の無い所に呼ばれ、不安そうにこちらを見つめるその様は本当に大河が心配なようだ。

「いや」

だから俺も正直に答える。
無論内心までは吐露しないが。

「でも二人とも何か変だよ?」
「俺にもわからねぇんだ、少し前に大河が誰かからのメールを見てからずっとこんな感じで」
「メール?どんな内容だったの?」
「いや、聞いてねぇ」
「高須君本気?」

ギロリと睨まれる。
何だよ、俺何か悪いコトしたか?

「今までの高須君なら大河がこんなになった原因のメールくらい探ろうとする筈だよ、高須君去年の学際からなんかおかしいよ」
「……別におかしくはねぇよ」

一瞬去年の学際からという言葉にドキリとする。

「いいや、絶対おかしい。何があったの?
「だから何も無いって。俺だって大河がどうしてこうなったのか知りたいぐれぇだ」
「じゃあ何でその原因のメールを聞いたり調べたりしないのさ」

櫛枝の目は怒っていた。
そんな目で見られ、ずっと同じ言葉を並べられながら責められるウチに、自分の中で溜まっていた物が、あふれ出しそうになる。

「櫛枝には関係無いだろ!!」
「関係あるよ!!大河は大事な親友だ!!」
「なら俺に聞かずに大河に聞けよ!!」
「っ!!」
「……あ」
「……わかった、もういい」

言い過ぎたと思った時には遅かった。
櫛枝は冷たい雰囲気を纏って背を向ける。

「……大河を独りにしないでって、言ったのに。見損なったよ高須君」

櫛枝はそう言い残すとその場から歩いていってしまった。



修学旅行まで、あと二日。



***

69ドラとら! ◆QHsKY7H.TY:2010/01/15(金) 19:35:56 ID:???
「本当になんでもないってば」

学校帰りに急にみのりんに呼び出され、喫茶店に座って切り出されたのはここ最近の私のことだった。

「嘘、絶対何かあったよ。私にはわかる、何でも言っておくれよ」

昨日竜児も呼び出されていたようだから、恐らく同じ事を聞いたのだろう。
ごめんね、竜児。私を諦めたと決意した竜児にとって、この質問はきっと辛かっただろうね。
私は何でも無いとしつこいくらいに言ってテーブルにあるジュースを飲む。

「もう、何で隠すのさ?って今日はパフェじゃ無いんだね?」
「えっ?あ、うん」

しまった、と思う。
いつもはパフェなんて高価なものを頼んでいたから、いきなりジュースだけっていうのは少し違和感があったかもしれない。

「……やっぱり何か隠している」
「そ、そんなこと無いって」

私は必死に取り繕うが、

「メール、って何?」

ドキン、とする。
竜児、だろうか。まさかあのメールの内用を知っている、とか?

「昨日高須君が大河は誰かからのメールを見てからおかしくなったって言ってた」
「き、気のせいじゃない?」
「そう?じゃあそのメールってなんだったの?」
「た、ただの迷惑メールだよ」
「ふぅん」

ほっと安堵する。竜児はどうやらメールの内容までは知らないらしい。
けど、その安堵がまずかった。

「とう」

みのりんは素早く手を伸ばしてテーブルに置いていた私のケータイを取る。

「あっ!!」

私が取り返そうとした時には遅く、

「止めてみのりん、見ないで!!」

必死にお願いするが、

「な、何これ……!?」

みのりんは例のメールを見てしまったらしい。信じられないものを見たような顔でみのりんは顔を強ばらせる。

「お願い、竜児には、言わないで……」
「大河……」

どうしようもなくなった私は、これだけは譲れないと泣きながらにお願いした。



修学旅行まで、あと一日。

70 ◆QHsKY7H.TY:2010/01/15(金) 19:37:46 ID:???
ここまで。
間が開いてしまったのもあって少し急ぎ足気味になってしまいました。

次回、最終回の予感。

71高須家の名無しさん:2010/01/16(土) 23:03:41 ID:???
面白い内容で原作者に似せた文体なら最高じゃないか

>>102
おしまい、という言葉がないので続くと信じていますが
なぜそこで切るんですか気になるじゃないですか!

という内容を投稿しようとしたらまさかの規制
オノレ俺が何をした…

72高須家の名無しさん:2010/01/17(日) 21:22:42 ID:SdhEBcbo
>>71
俺も規制なんだぜブラザー……

>>まとめ様
神様仏様まとめ様!
更新お疲れ様です!
まとめに自分の書いたものが載るのは大変嬉しいことでございます。
これからもよろしくお願いいたします。

>>70
乙!
二人のギクシャク感が心に辛い……
波乱の予感しかしない次回が気になる!
焦らずに納得いくものを書き上げてくださいませ。

73まとめ人 ◆SRBwYxZ8yY:2010/01/18(月) 01:46:04 ID:???
まとめサイト更新しました。
相変わらず規制中なのでこちらで報告ー


私のプロバイダーで悪さを働いているのは誰だァ!

74 ◆QHsKY7H.TY:2010/01/20(水) 19:00:43 ID:???
大河最後の日……乙です。

まとめ人様もいつも乙でございます。

さて皆様たくさんの感想をありがとうございます。

ドラとら!ラスト10レス行きます。

と思ったらまだ規制中でしたのでこちらに。
代理投稿歓迎。

75ドラとら! ◆QHsKY7H.TY:2010/01/20(水) 19:02:09 ID:???
***



明日から修学旅行というこで、今日は修学旅行で必要になりそうなものの買い物をすることにしていた。
大河はちゃんと準備したのか気になったが、当の本人からは、

「大丈夫」

と太鼓判を押されてしまっているので一人分の買い物だ。
でも本当に大丈夫なのだろうか。
俺の見る限り“全く準備をしている様子”が見られないのだが。
そう不審に思いながら買い物をしていると、

「あれぇ?高須君?」

サングラスをかけた川嶋と鉢合わせた。

「よう、お前も買い物か?」
「まぁ似たような物だけど……ってかなんで高須君ここにいんの?」
「いや、なんでって……明日からの買い物に」
「は?寝てるの?」
「なにがだよ?」

川嶋が俺を睨むようにして見つめ、しかしふっと表情を和らげる。

「ふぅん、まぁいいけど。私は高須君が“針”を折れなくても何の関係も無いし」
「何のことだよ?」
「知らない、か。いよいよ終わりかな、あ〜あ」

川嶋はどこまでも人をくったような言葉を放つ。

「よくわかんねぇ奴だな」
「そう、私はミステリアスな女なの、そんな私のこと気になる?高須君」
「いや」
「……なんかそれはそれでムカツクけど……まぁいいや。タイガ−の決めたことだし」

「大河?」
「んん〜?タイガーのこととなると反応するんだ?反応しちゃうんだ?高須君可っ愛い〜」

「い、いやそんなんじゃ……」
「じゃあ反応しないでよ」
「っ!?」

俺が誤魔化そうとした直後、川嶋は何処までも低い声で俺に怒ったようにそう言う。

「惑星に見捨てられた人工衛星は……ゴミでしかないよ…………なぁ〜んちゃって♪」


川嶋は意味深にそう言うと俺を無視して歩いて行ってしまう。
どこまでが本気で、何処までがジョークなのか、川嶋はそれすら明かさずに俺の視界から消えた。



***

76ドラとら! ◆QHsKY7H.TY:2010/01/20(水) 19:03:12 ID:???
家に帰ってもどうにも川嶋の言葉が頭から離れない。
それを言えば、櫛枝についカッとなった時からずっとそうかもしれない。
はぁと溜息を吐いて、ふとカーテンの奥の大河の部屋をのぞき見る。
窓越しからのそれは、カーテンがかかっている上に電気も点いていないようで、中の様子などわからない。
櫛枝はともかく、川嶋にも大河のことで責められているような気がしてならない俺は、考えないようにしていた大河のことを考え始め、

『ピピピピピピ』

タイミング悪く携帯が鳴る。
相手は……櫛枝?

「もしもし?」
『高須君?今どこ?』
「家だけど……」
『一人?』
「ああ」
『……ごめんよ高須君、ある意味君が正しかったよ』
「……何のことだ?」
『……大河を泣かせちゃった』
「は?」
『高須君が言ってたメールの内容、それを私は無理矢理見たんだ。大河の為を思えば、見るべきじゃなかったかもしれない。でも私は知っちゃったから』
「な、何をだよ?」
『大河は……修学旅行に行かない』
「へ?」

何を言い出すのだ、急に。

『本当は大河に泣いてお願いされてるんだ、絶対高須君には言わないでって。だからこれ以上私は大河を裏切りたくない』
「お、おい?」
『でも!!そんな大河を助けられるのはやっぱり高須君だけなんだよ!!』
「い、一体何があったんだ!?」
『それは……私の口からは言えない。大河との約束だから』
「おい!!」
『だから、大河の部屋に行って。大河は君に手紙を用意している筈だから。それで君が自分でこれからを考えて』
「ちょっと待ってくれ!!櫛枝!!一体何が何だか……」
『ツー……ツー……』
「おい?おい!!……くそ、切れてる……」

何が何だかわからない。
とにかく大河の部屋へ行けというなら行ってみようじゃないか。



***

77ドラとら! ◆QHsKY7H.TY:2010/01/20(水) 19:04:34 ID:???
「で、どうやって入れってんだ」

家には当然のように鍵がかかっていた。
ここの家はオートロック。
ちょっとやそっとじゃ開かない。
鍵はこの前、大河が自分の無くしたからしばらく貸した奴返してと言われ、渡していたので持っていない。
そもそも、インターホン鳴らしても出てこないってことは留守だろうし、手紙ってなんなんだ?
わけがわからねぇ。
明日会って聞けば……でも修学旅行来ないとか行ってたしなぁ。

「しょうがねぇな」

俺はケータイで大河に電話をかける。
こういう時は本人に聞くのが一番……あれ?

『現在、この電話は使われておりません。こちらは……』

「な、何だよこれ!?」

俺は焦ってもう一度確認し、確かに逢坂大河でダイヤルするが、

『現在、この電話は使われておりません。こちらは……』

帰ってくる無機質なアナウンスは同じ。
何だかとってもやばいような気がしてきた。
こうなっては是が非でも中に入らなければならない。
でもどうやって…………そうだ。
俺は一つ思いつき、一度高須家へと帰った。



***



「頼むぞ……」

俺が考えた作戦は至極簡単なものだった。
それはウチのベランダから大河の部屋に侵入する、というもの。
普段とは逆の立場に内心苦笑を漏らしながらデッキブラシで窓が開かないか試してみる。

大河のずぼら、というかミスに期待するのはこれが初めてじゃなかろうか。
どうか閉め忘れててくれよ。
そう思いながら俺はデッキブラシを持って……結構難しいなコレ。
ちなみにこんな顔でこんな真似してるのが見つかったらまず間違いなく警察に掴まる。

俺はビクビクしながらもデッキブラシを操り続け……、

「あ、開いた……!!」

大河の部屋に侵入することに成功した。
成功して、テーブルに置いてある俺の赤いカシミヤのマフラーと手紙を見て、驚愕した。

それは……。



***

78ドラとら! ◆QHsKY7H.TY:2010/01/20(水) 19:05:50 ID:???
竜児へ。
修学旅行楽しかった?
これを見てるってことはきっともう私はそこにいないよね。
ごめんね、何も言わずに行っちゃって。
でも、竜児の為を思ったらこの方がいいかなって思ったんだ。
私さ、前に再婚した父親がいるって言ったよね?
その父親がさ、夜逃げ……しちゃったらしいんだよね。
なんか事業に失敗して一杯借金作っちゃったとかでさ、今もどこにいるかわかんないらしいんだ。
それをママが教えてくれてね、あ、このママってのは本当の母親なんだけど、だから親権を移して自分が私を引き取るって言ってて、そっちに行くことになったの。
それがちょうど修学旅行の日の前の晩だから、私が修学旅行には行かなかったのはそういうワケ。
この前のメールは、そういった話でさ、ママとはそのあとちゃんと電話でも話したし会って話して、まぁこういうことになったの。
あ、ママはさ、再婚してて今お腹に赤ちゃんいるんだよね、男の子だっていうから私お姉ちゃんになるよ。
アンタには世話になったから、一応直筆で理由をこうやって教えといてあげる。
それにさ、一つ謝らないといけないことがあるし。
クリスマスの晩にね、私いつだったかの竜児のポエムノート、最初だけ見ちゃったんだ。

なんていうか、北村君のこと、ごめん。
謝っても許してもらえないかもしれないけど、ごめん。
多分実際に会ったら口じゃ言えないだろうから、こうやって謝罪を文にしたんだ。
それじゃあ元気でね、竜児。

あ、それと、“もう手を冷やしちゃダメ”だよ、きっと竜児の手を掴んでくれる人はいるから。



いい?



神の前に、人は平等なのよ。



***

79ドラとら! ◆QHsKY7H.TY:2010/01/20(水) 19:06:49 ID:???
「な、なんだよこれ」

読み終えて、立ち尽くす。
じゃあね、ってどういうことだ?
母親に引き取られる?
何の話だ?
真っ暗な部屋には、あったはずの家具がほとんど無い。
もう、ここに誰もいないかのように。
何だか寂しくなって、慌ててこの部屋から、大河がいないという現実から逃げて、自分の家に戻る。
戻って、居間に座って、それで終わり。
持ってきた手紙を何度読み返しても、内容は変わらない。

「櫛枝、俺にどうしろっていうんだ」

頭を抱える。
櫛枝は恐らくこの話を既に知っているのだろう。
だから俺に教えた。
だが、俺がこれを知ったから、どうしろというのだ。
どうしようも出来ないじゃないか。
なにもしようが無いじゃないか。
俺は所詮大河の周りを回るだけの人工衛星……見捨てられたゴミでしか無いんだから。

俺は、俺には、何も出来ない。
そう思った時のことだった。



「……イヤダヨゥ」



声が、聞こえた。

80ドラとら! ◆QHsKY7H.TY:2010/01/20(水) 19:08:36 ID:???
それは大河の声じゃないのに、大河の声のようで。
振り向くとそこにはカバーが掛かった鳥籠。
ウチの家族であるインコちゃんがいる場所で。
インコちゃんは何かをリピートするように、



「……ソンナノイヤダヨゥ」



大河の声をリピートするように、



「……ナニガビョウドウヨ」



大河の気持ちを代弁するように、



「……リュウジガイイノニ」



そこに大河がいるように、



「……リュウジガスキ、ナノニ」



俺が最も聞きたかったそれを、



「……セッカクキヅイタノニ」



今も胸に燻っている、



「……リュウジシカイナイ、ノニ」



この想いを、



「りゅうじぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!」



突き動かした。

81ドラとら! ◆QHsKY7H.TY:2010/01/20(水) 19:09:46 ID:???
***



最後の叫びは大河の声そのものを脳内で聞いた。
こうしてはいられない。
俺は学際からずっと大河を好きになる資格は無いと自分に言い聞かせていた。
そんなのは逃げだ。
資格?そんなもの、何処に必要だったんだ!!
俺は携帯を取り出し、

「北村?夜にすまない、頼みがるんだ」

友人に無茶なお願いをした。



***



景色が素早く動いていく。
季節も相まって、このスピードはとんでもなく寒い。
俺は友人に校則違反であるバイクでの送りをお願いした。
歩いていては間に合わない気がしたから。
北村はそんな俺のお願いに、

「高須の頼みだ、いたしかたあるまい」

と行って引き受けてくれた。
駅についた後は北村に礼を言って分かれ、大河を探し始めた。
何となく、直感でこの駅だと感じたのだ。
夏にみんなで旅行に行った駅。
あいつはここを使う、と。
根拠なんて無い。
でも今できるのはこれだけだ



***



『プァーーーン!!』

大きい音が鳴って列車が発車する。
次の列車は、十分後に発射のようだ。
大河がどの列車に乗るのかなんてわからない。
もう乗ってしまったのかもしれないし、別の駅かもしれない。
もしかしたら飛行機ということもある。
それでも俺は探し続けた。

82ドラとら! ◆QHsKY7H.TY:2010/01/20(水) 19:11:00 ID:???
『プァーーーン!!』

また次の列車が出た。
この時間、列車はほとんど分単位で発射する。
次の列車の発射は五分後。
そんな電光掲示板の表示を見ていると、後ろの方でゴトッと音が鳴った。
振り返るとそこには、

「な、なんで……」

真っ白いコートに身を包んだフワフワロングヘアーの小さなエンジェル、大河が居た。




***



「大河!!」

竜児は私に駆け寄ってくる。
私は咄嗟に……逃げた。
ローラー付の旅行鞄を引っ張りながら駆け足で列車に乗る。

「待ってくれ大河!!」

どうしてここがバレたのかわからない。
なんでここにいるのかもわからない。

「俺は……」

ガタンとローラーが大きな音を立てて列車に乗る。
竜児は流石に中までは入ってこない。
発射まであと三分程度だろうか。
そう思って竜児の顔を改めて見た途端、



「大河が好きだ!!」



告白された。



***

83ドラとら! ◆QHsKY7H.TY:2010/01/20(水) 19:12:11 ID:???
『白線よりお下がり下さい』

そんなアナウンスが流れ始めたこの瞬間、俺は思いを偽ることなくストレートに吐き出した。

「え……あぅ……?」

大河は驚いて、顔を真っ赤に染め上げて口を奮わせている。

「俺は、ずっとお前が好きだった、お前ももう思い出してるみたいだけど、あのクリスマスからずっと」
「あ、ああああ……」
「確かにお前の言う通り、いつかは俺を理解してくれる人も現れるかもしれない」
「え、えっと……」
「でも、俺はお前がいい、いや、お前じゃなきゃ嫌なんだ、俺の手を暖めてくれるのはお前がいいんだ!!」
「……!!」
「俺は、お前と一緒じゃないと生きていけない!!」

そうやって全て思いを吐き出した所で、

『プシューーッ』

扉が閉まる。
大河は慌てたように丸い窓に張り付いてこちらを見つめている。
結局、大河は俺に一言も返さぬまま、行ってしまった。



***



トボトボと家に帰る。
仕方がなかったとはいえ、何も言葉を返してもらえなかったのはやっぱり少し辛い。
既に時間は日付を超え、三時を示している。
櫛枝にはメールで俺の取った行動を報告した。
返信に、

『よくがんばったよ、高須君』

と書かれていたのが、少し俺の体の重みを軽くした。
家に帰って、死んだように布団に横になる。
多分今眠ったら明日は起きられない。
確か朝五時に学校集合、だったし大河のいない修学旅行に興味は……無い。
あ、でも積み立ててでずっとお金払って来たんだからMOTTAINAIな。
払い戻してもらえるかなぁ。

「……っ……つ!!」

涙が、止まらない。
結局、俺は大河に言うだけで止められなかった。
仕方のないことかもしれないけど、それがとてつもなく悔しかった。
そう悔し涙を流しているウチに、まどろんだ。



***

84ドラとら! ◆QHsKY7H.TY:2010/01/20(水) 19:13:42 ID:???
朝、日の光と共に目が覚める。
時計は朝七時を示し、まず間違い無く自分は寝過ごしたことを悟る。
こりゃあ後で何か言われるな、と思いつつ起きあがり、伸びを一つ。
体の機能は睡眠を取ったため万全だが、心が空っぽなのがわかる。
これから大河のいない生活が始まるのだ。
それを思うと気が重くなり、ノロノロと襖を開けて居間に顔を出し、朝ご飯は何にしようと考えたところで、

「おっそいのよ、この犬」

オレンジが乗った卓袱台に付いて正座宜しく、こちらを睨み付ける子虎が一匹。

「………………」

いかん、まだ寝ているようだ。大河が好きすぎて幻覚を見るなんていくらなんでもどうかしている。

「大変だったんだから!!あ、あああ、アンタが私がいないと生きていけないとか言うから!!し、死なれちゃ困るし!!」

しかし、幻覚にしてはいやにリアルだ、もしかしたら夢という線かもしれない。

「ママにお願いしてちょっとこっちに行ってくるって許可貰うのだって凄く怒られたし始発に乗って来るのだって……ちょっと聞いてんの!?」

バゴッ!!
強力な蹴りをくらい目が覚めた。

「たい─────が……?」

目が覚めて、それが本当に夢だった事に気付いた。
自分は普通に布団の上で時間は七時。最高で最悪な夢を見たと自己嫌悪。
どうせならあれが予知夢だったらいいのに。そういや泰子が自分はプチ超能力者で一回分だけ超能力を使える力を上げるとか昔言ってたっけ。
どうせなら今がいいのにと思いつつ、起きあがって今度こそ朝ご飯は何にしようと考え居間に入った所で、

「おっそいのよ、この犬」

いかん、まだ起きてなかったらしい。
夢の状況そのままに、目の前にはオレンジが乗った卓袱台に付いて正座している少女がいる。

「私寝てないってのにアンタはグースカ寝てるし、ママにお願いしてちょっとこっちに行ってくるって許可貰うのだって凄く怒られたし始発に乗って来るのだって……ちょっと聞いてんの!?」

バゴッ!!
強力な蹴りをくらった。これで目が覚め……あれ?

「何よ、不思議そうな顔をして?誰の為に戻ってきてやったと思ってるの?」

目の前には相変わらず大河。

「た、大河!?」
「まだ寝ぼけてるの?当たり前でしょうが。だいたい私言ったわよね?昔から、虎と並び立つ者は竜と決まってる、私は逢坂大河、アンタはこれからも私の為に私の傍らに居続けなさいって!!」
「いや、でもお前……」
「グダグダ言わない!!アンタの為に戻って来たんだから……返事、言いに来た、んだから……!!私だって、私も……」

オレンジが乗った卓袱台越しに、大河は感極まったように一粒涙を流し、俺の手を暖めるように掴んで、

─────────好きだよ

少し甘酸っぱい、そんな返事を受けた。
聖なる夜から始まった恋。
これから二人にはたくさんの障害が立ちはだかるだろう。
それでも二人はもう絶望に暮れることは無い。
何故なら、思いを通じ合わせた二人を合わせて、世界は、神の前に平等なのだから。

85 ◆QHsKY7H.TY:2010/01/20(水) 19:18:10 ID:???
ここまで。
これで長々と書いてきたドラとら!は終わりです。
皆さんありがとうございました。
まとめ人様もわざわざ区切り毎のアイキャッチを作ってくださり本当にありがとうございました。

全部書き切れたのは皆さんおかげです。
もう一度、皆さん本当にありがとうございました。


あ、蛇足ですが私はキリシタンやキリスト教信者ではありません(爆)

86高須家の名無しさん:2010/01/20(水) 23:16:36 ID:???
>>85
乙&GJ!

原作的イベントとオリジナル展開の組み合わせ方が上手くて、読んでてどんどん惹き込まれたよ。
この竜虎の未来にも幸あれ。

87高須家の名無しさん:2010/01/20(水) 23:29:40 ID:???
連投規制ひっかかった……

88高須家の名無しさん:2010/01/20(水) 23:53:22 ID:???
携帯で支援一つ入れてもダメ……
誰か 続き 頼む。

89高須家の名無しさん:2010/01/21(木) 00:09:20 ID:???
代理の代理、感謝!

90高須家の名無しさん:2010/01/21(木) 23:12:51 ID:W3W3r8oA
>>85
お疲れ様でした。
悲しいお別れに終わらなくて良かった!
ドキドキしたぜ。
最後も大河らしくてGJ!

代理もその代理も乙!

91 ◆QHsKY7H.TY:2010/01/26(火) 21:33:15 ID:???
規制が解けない(泣)

みんなたくさんの感想ありがとう!

代理の人と代理の代理の人代理ありがとう!

避難所での感想もありがとう!

>>165
三題噺ってあんなに短いのに話が上手く詰まってていつもすごいなぁ。
>>184どれだけキスしてたんだぁぁぁぁ!?
>>191酔った竜児と襲われる大河、何か襲った方が途中で逆になりそうなイメージがあるなw


>>167
ありがとう、設定気に入ってもらえて良かった。
最近出番の少ないインコちゃんには最高の舞台を用意したつもりだよ。

>>169
おお?オレンジわかった?

>>171
ありがとう、竜児最後の日と大河最後の日も原作っぽい感じで良かった。

>>179
匂いフェチキターー!
良ければ慌てずゆっくり読んでみてください。

>>181
ありがとう、そうしますw

>>189
確かに最近無かったギシアンキター!!

さて、>>181の方に言った傍から短編行きます。3レス消費。

と思ったら憎き規制。
くそぅ。
まとめ人様が避難所を用意してくれてるからまだ良いけどこれじゃおちおたお礼も書けないな。
まとめ人様、避難所のご用意ありがとうございます。

というわけで代理投稿歓迎。

92ヤキモチ ◆QHsKY7H.TY:2010/01/26(火) 21:35:26 ID:???
この春、晴れて恋人同士になった二人は、しかしだからとてそう大きく変わることも無く過ごしていた。
今までほとんど同棲そのもののような生活をしてきたのだ。
当然それは無理からぬことではあるのだが、こんな時、決まってほころびを見つけ、それを大きくするのは大河だった。

「ねぇ竜児」
「おぅ、どうした」

土曜の午後。
お休みの日にはこうして大河は竜児の家に遊びに来る。
慣れ親しんだ実家のような高須家は大河にとっても気持ちの良い場所だった。

「私たち、晴れて恋人同士、になったのよね?」
「おぅ?何だ藪から棒に」
「いいから答えて」

マイ座布団だとばかりに毎回同じ座布団を使う大河は、今日もその座布団に座り、しかし真面目くさったように切り出す。
大河がいることで今日は一緒に買い物でもしようかと思いチラシを見ていた竜児は、大河の真面目っぷりに少々驚いた。
ちなみにこの買い物、二人で遊ぶ為では無く今日の晩ご飯の為の買い物である。
大河は夕方には家に帰ってしまうので竜児の食事は食べられないが、それはそれとして二人だと買い物がはかどるのだ。
メニュー決めはもちろん、お一人様○パックなんていう限定商品にも人海戦術は有効となる。
……閑話休題。
そんないつもと変わらぬ竜児に対して、大河は若干の敵意を持ったような眼差しをしている。

「竜児」
「おぅ、なんだ」

これは何か俺がやったか?と竜児は自身の行動を思い起こしつつ大河にいつも通り反応する。
しかし、

「そう、それよ」
「は?」

大河はビシィ!!と竜児に指を指し、不満そうに頬を膨らませる。

「その返事が悪い」
「は?いつも通りじゃねぇか」
「いつも通りだから悪いんじゃない」

大河は段々と怒りのボルテージを上げていく。

「すまん大河、意味がわからねぇ」

大河のことは大概理解出来るようになったと思っていたが、わからないものはわからない。
不満ですという面持ちをしたまま大河は、

「全然照れっていうか、喜びが感じられない」

竜児にとって意味不明な事を言い出す。

93ヤキモチ ◆QHsKY7H.TY:2010/01/26(火) 21:36:40 ID:???
「どういうことだ?」
「あんた最初にみのりんに竜児って下の名前口にされた時有頂天になってたわよね?」

それは二年の時の休み時間。
当時竜児の意中の人、櫛枝実乃梨はデコ職人の内職アルバイトをしていて、クラスの女子達のケータイをデコレーションしていた。
その時に言われたのだ。

『高須君のもやってあげようか?竜児って後ろに』

その日、竜児は家に帰ってから下の名前を呼ばれた事に舞い上がり……閑話休題。
かくして、竜児は確かに以前、下の名前を呼ばれただけで有頂天になった実績がある。

「何か、実は私はみのりんよりも好かれて無いんじゃないかなって思うんだけど」
「いや、それはお前がずっと俺と一緒で違和感が無くなったからだろ?」
「どうかしら?竜児はみのりんの為に結構な詩を作ってたみたいだけど私用には作って無いみたいだし」
「お前、作って欲しいのか?」
「キモイからイヤ」
「なら言うなよ」
「でも、何かこう、何て言うの?ガーッと竜児の思いを表現するような痴態?みたいなものが無いのも自信無くすっていうか」
「痴態って、お前な」
「みのりんの時に散々やっていた変なことを私の時に全くやらないってのは少し自信無くすわけよ、女としては」
「むぅ……」

大河の言い分は無茶苦茶だが、気持ちは少しわかる。
竜児とて、もし自分のことで悶えるような大河を見ればそれこそ通報されかねない凶眼をギラギラさせることだろう。
しかし、それはそれとして、大河だからこそ尚の事そういった姿は見せられないし見せたくない。
だが流石は大橋の虎。
竜児のそんな考えなどお構い無しに無理難題を持ち上げる。

「そうだ竜児、今ここで私に告白してよ。ほら、竜児が一杯作ってた詩風にして」
「えぇ!?」

人には恥というものがあり、羞恥心という心が存在する。

「ほら、今なら私しかいないし誰かに聞かれる心配も無いわ」
「い、いや、でも……」

恥ずかしい。
この上なく恥ずかしい。
ちなみにすぐに詩が頭の中で出来ちゃったのも恥ずかしい。

「いいからさっさと言うのだ愛犬」
「あ、愛犬っ!?」
「ちょ、何喜んでるのよ?」

大河はうわぁ、というように汚いものでも見るかのような目つきで竜児を見る。

「よ、喜んでねぇよ!!ここに来て犬扱いされた事に驚いてんだよ!!」

実は内心ちょっぴり、ほんのちょっぴり料理に使うときの塩ひとつまみ程度には『愛』犬と言われた事にキュンと来たのは内緒だ。
最も大河の態度にそれ以上のダメージを受けたのだが。

94ヤキモチ ◆QHsKY7H.TY:2010/01/26(火) 21:37:23 ID:???
「ふぅん、その割りには嬉しそうに見えたけど。まぁいいわ、さぁどんと来なさい」
「い、言わねぇよ!!」
「いいじゃない別に。減るもんじゃなし」
「精神的な何かが磨り減るんだよ!!」
「根性無しねぇ」
「じゃあお前言ってみろ」
「……私?な、なななななんで私が言わなきゃならないのよ!?」
「俺だけなんて不公平だ、お前が言ったら俺も考えるさ」
「ず、ずるい!!なら私も竜児が言ったら言う!!」
「いや、お前そんなこと言って結局言わないつもりだろ!?」
「酷い竜児!!婚約者を疑うの!?」
「逆だ!!お前の行動パターンを見通してんだよ!!」
「……チッ」

お互い一歩も引かぬ口論の末、大河の舌打ち。
ゼェゼェと息遣いを荒くしながら肩で息をし、見詰め合う事数分。

「……なぁ」
「……何よ」
「そろそろ買い物行かねぇか、時間無くなっちまう」
「……そうね」

時計を見ればもう夕方。
日もオレンジになりつつある。
二人はそそくさと外に出てスーパーへと向かい出した。

「大河、今日は何食べたい?」
「う〜ん、言っても実際に私が食べられるわけじゃ無いからあんまり思いつかないのよね」
「そういうもんか」
「そうよ、あ〜あ、早く毎日竜児のご飯が食べられるようになりたい」
「俺もお前と毎日今のような会話のやり取りがしてぇよ」
「………………」
「………………」

お互い、今の言葉を最後に少し口を噤む。
まだ来ぬ未来、それに思いを馳せて。

「……ねぇ竜児」
「……ん?」
「そういえば竜児って私には晩御飯とか好み聞くけど、みのりんとそういう話したことあったっけ?」
「う〜ん、そういやねぇな。多分だけど」
「……そっか」

竜児の言葉に大河は口端に笑みを乗せて、

「ね、手繋ごっか」

小さい掌を差し出し、竜児が何をする間も無く手をギュッと掴む。

「ちょっ、大河?」
「ほら、さっさと行こう」

竜児の困惑も何処吹く風。
大河ははしゃいだ子供のように竜児を引っ張って歩く。
そんな大河は、小さく、小さく小さく、

「……良かった」

そう呟いた。

95 ◆QHsKY7H.TY:2010/01/26(火) 21:41:18 ID:???
書き忘れてた。
これは最近完結したドラとら!とは一切関係無い三年生の頭くらいの時間軸のお話ですw

96高須家の名無しさん:2010/01/27(水) 02:07:06 ID:???
>>95
乙!

初々しい恋人な感じがいいねえ。

97 ◆x6jzI2BeLw:2010/01/29(金) 01:26:24 ID:???
>>95
いいですねえ、この感じ。
さり気なく幸せな感じが伝わって来ます。
乙でした。
早く規制解除されるといいですね。


などと言っている私が巻き込まれました。
こちらのお世話になります。
代理投稿歓迎です。

本スレ>>111の続きとなります。
コメント&感想などありがとうございます。
まとめ人様にタイトルを付けてもらいました。
いつもいつもありがとうございます。

では、以下行きます。

98しあわせの逢坂タイガー伝説2 ◆x6jzI2BeLw:2010/01/29(金) 01:28:40 ID:???

ただいまと外出から帰って来た泰子を交えて高須家で始まるいつもの晩餐。
居間のちゃぶ台の上で大きな土鍋がぐつぐつと音を立ててたくさんの湯気を産み出している。
「あち・・・はふはふ」
頬を大きく膨らませながら、ハムスターよろしく頬張っているのはもちろん大河だった。
「大河、やけどすんなよ」
竜児の注意など何処吹く風で、大河は鍋から小鉢に移したいい色に出汁の染み込んだお肉を次々にお腹へ収めて行く。
「ほら、肉ばっかりじゃなくて、野菜も食え」
竜児は大皿に用意しておいた追加用の白菜を鍋に補充しながら、しんなりといい食べ頃になったえのきや野菜を大河の小鉢へ送り込む。
「野菜は後回し、今はお肉の時間よ」
そう言いながらも大河は竜児が小鉢へ入れてくれた野菜に箸をつけ、平らげる。
「竜児、おかわり」
空になった茶碗を竜児へ突き出す大河。
「おう」
竜児は大河から茶碗を受け取り、しゃもじで山盛りにご飯をよそってやる。
炊き立てのご飯で満室状態だった高須家の炊飯器に空き室が目立ち始め、竜児が操るしゃもじが炊飯釜の底をこすった。
「ほらよ、何杯目だ?」
茶碗を大河へ渡してやりながら、竜児は感嘆するように言う。
「まだ、四杯目よ」
まだ、まだいけると大河の食の進み具合は絶好調だった。
「ほどほどにしとけよ、また、いつかみたいにお腹が痛くなってもしらねえからな」
大丈夫、もうあんなドジはしないからと大河は涼しい顔。
以前、食べ過ぎで救急病院へ駆け込んでひどい目に大河はあっているのだ。
だから、今日はおやつも間食もしてないし、このくらいぜんぜん平気と咀嚼の合い間にしゃべりまくる。

99しあわせの逢坂タイガー伝説2 ◆x6jzI2BeLw:2010/01/29(金) 01:30:10 ID:???

「飲み込んでから、話せ」
口中にご飯を含みながら大河が話すせいで、大河の口元からご飯粒がひと粒、竜児へ向かって飛び出す。
「たく、もったいない」
竜児は大河から飛んで来て自分の服の袖口に付いたご飯粒を指先でつまむと、そのまま口に含んだ。
「あれ?」
土鍋の中を掻き回していた大河が首を傾げる。
「どうした?」
「竜児、もうお肉無い」
「ねえって・・・あんだけあったんだぞ」
「だって、ほら」
大河は土鍋の中のお肉指定席付近を箸で引っ掻き回す。
大河の箸に掛かったのはしらたきだけだった。
「おまえ、ひとりでどんだけ肉食ってるんだ」
呆れる様な竜児の声。
「いいじゃない・・・好きなんだし」
無いんだもうお肉と・・・名残惜しそうに大河は未練たらしく土鍋の中を探し回る。
そして見つけたわずかな肉の欠片を大事そうに口へ運ぶ大河。
「はい、大河ちゃん」
そんな大河を見ていた泰子が自分用に取って置いた肉を大河へ差し出す。
「や、やっちゃん、いいよ・・・それはやっちゃんが食べて」
受け取れないと大河は遠慮する。
「好きなんでしょ、お肉」
遠慮しなくていいよ、と泰子に微笑まれ、大河ははにかむ様に肉を受け取った。
「ありがと、やっちゃん」
「それでこそ大河ちゃんだよ」
受け取ってもらえて泰子も嬉しそうになる。
その一連の動作を見ていた竜児はやれやれと言う感じで席を立ち、冷蔵庫から追加の肉を持って来る。
「何よ、まだあるんじゃない、けちけちしないで早く出しなさいよ」
泰子へ向けていた笑顔とはうって変わり、竜児にはこのドケチ犬と言わんばかりの顔を見せる大河。
「言っとくがな、これは明日の弁当用だ」
「じゃあ、食べちゃったら・・・」
「当然、弁当は肉抜きだ」
竜児にそう言われ大河は思案顔になる。
眉間にしわを寄せ、重大な決断を下すかの如くおもむろに口を開く。
「耐え難きを耐え・・・ここは引くわ。竜児!」
「おう」
「仕舞って、お肉」
苦渋の決断だと両手をぐっと握り締め、大河は耐え忍ぶ有様を見せる。
「いいのか?」
竜児はこれ見よがしに大河の前にタッパーに入った肉をちらつかせる。
目線がチラチラとお肉を追い駆け、大河は思わず身を乗り出す。
「ほらよ」
竜児は苦笑しつつ、肉を一切れ土鍋に入れた。
「いいの?」
「ああ、弁当の肉が少し減るけどな」
その辺は上手く工夫してやるさと竜児は請け負う。
「・・・やっぱり、おいしい」
ほくほく顔で最後の一切れとなったお肉をおいしそうに頬張る大河を見ながら、竜児は何とも言えない幸福感を味わっていた。

100しあわせの逢坂タイガー伝説2 ◆x6jzI2BeLw:2010/01/29(金) 01:31:58 ID:???

「そうだ、竜ちゃん」
流しで食器を洗い終え、手を拭きながら居間へ戻って来た竜児へ向かって泰子が言い出す。
「何だよ?」
「修理だけど、明後日になるって」
「マジかよ」
困った様な声を出す竜児。
「修理って?」
食後の満腹感に浸り、例の如く寝転がっていた大河が起き上がり、口を挟む。
「ああ、家の風呂釜が壊れちまってさ」
風呂に入れないと竜児は言う。
「じゃあ、私の家に来たら」
我が家のお風呂を開放しましょうと大河は言う。
「いいのかよ?」
「うん、全然平気」
「・・・だってさ、泰子。どうする?」
「う〜ん。大河ちゃんのお家の借りてもいいんだけど・・・そうだ」
あごに指先をあて考えていた泰子はいいアイディアがひらめいたと竜児と大河に告げた。

・・・銭湯、行かない?




古きよき時代の建物と言う言葉がピッタリ来る銭湯。
「しかし、よく残ってたよな」
竜児は建物を見上げ感心する。
「これが、銭湯?」
大河は見慣れぬ建物に興味津々だった。
「そっか銭湯、初めてだっけか?」
「うん」
うなづく大河に当たり前かと竜児は思う。
普段があれだからあんまり気にもしないが、出るところへ出ればいいとこのお嬢様だもんな、大河は・・・。
「竜児は来たことあるの?」
「おう、子供の頃にな」

当然の事ながら竜児は男湯の暖簾を潜り、大河と泰子は女湯の暖簾を潜る。
「あんまり、はしゃいで泰子に迷惑掛けんなよ」
別れ際に竜児は注意を怠らない。
何せ、近所の銭湯へ行くだけだと言うのに一泊旅行かと言う位、大荷物を持って来た大河。
ついさっき、一緒に行くかと誘われて大河はふたつ返事をすると、脱兎の如く自宅のマンションに戻り、支度を整えて帰って来たのだ。
「着替えとタオルがあればいいんだよ・・・なんなんだこの荷物は?」
お風呂に浮かべるひよこのおもちゃでも入ってるんじゃないだろうなと言った竜児は大河に荷物が入ったバッグで叩かれたのだが、大河は上機嫌のままだった。
銭湯なんて初めて・・・と高いテンションのままやって来てしまったと言う次第なのだ。

101しあわせの逢坂タイガー伝説2 ◆x6jzI2BeLw:2010/01/29(金) 01:33:44 ID:???

「大丈夫だって・・・きゃん!」
そう調子よく返事した大河は言い終えるや否や入り口の段差につまずいて派手にこける。
「失敗、失敗」
それでもすぐに立ち上がり、照れくさそうに番台の向こうに消える大河を見送り、ホントに大丈夫かよと竜児は心配になる。
さすがの竜児も女湯までは大河のドジをフォローしてやれないからだ。
なるようになるか・・・と竜児は諦めにも似た境地で脱衣所へ向かった。

中へ入り、大河はもの珍しく周囲を見渡す。
「ねえねえ、やっちゃん、どうするの?」
銭湯の作法を泰子に問う大河。
そんな大河に泰子は微笑むとあれこれ教え始めた。
「この籠に脱いだお洋服を入れるの・・・入れたらあの棚に置いて・・・」
うんうんと大河は頷く。
一通り説明を終えた泰子がブラウスのベルトに手を掛けるのを見て、大河も後に続く。
大河が長めの靴下を脱ぐのに手こずっている内に泰子はさっさと身軽な状態になっていた。
「・・・わっ!」
「どうしたの?大河ちゃん」
大河の視線は泰子の豊かなお胸に注がれていた。
「やん、大河ちゃんのエッチ」
大河の食い入るような視線に、ひょうきんに応じる泰子。
その昔、箸でつんつんしてしまったくらいあこがれる豊年満作な世界を目の当たりにして大河は目が点になる。
そして脱ぎ掛けていた自分のインナーのホックを外す手が止まる。
その下に隠れた飾りの無いありのままの自分があまりにもみすぼらしく感じてしまったからだ。
シュンとしてしまった大河の心の中を優しく包むように泰子が言う。
「きれいだと思うよ。大河ちゃんの」
思い掛けない泰子の言葉に大河のうつむいていた顔が持ち上がる。
「きれい?私のが?」
「そう・・・とっても・・・服を着ててもやっちゃんには何もかもお見通しだよ」
だから、安心してと付け加えられた泰子の声に後押しされて、大河は止めていた手を動かす。
小さな衣擦れの音と共に大河の女の子を象徴する小高い頂が外気にさらされる。
「・・・変じゃない?」
頬を薄いピンク色に染めながら大河が聞く。
「全然・・・思ってた以上にきれい・・・自信持っていいからね」
力強く言う泰子に大河は勇気付けられる。
「でも、ちっちゃい・・・」
自分の手のひらで覆い隠せてしまえそうなカップサイズ。
大河は両手でそれぞれのふくらみを押さえる。
「やっぱり・・・小さいよ」
泰子にきれいと言われて気を良くしたものの、大きさの不足をどうしても大河は感じてしまう。
「そうね・・・今はまだだけど・・・大河ちゃんのこと、本当に大事にしてくれる男の子が現れたら、きっと愛情を込めて育ててくれると思うの」
「・・・愛情込めて?」
「そう」
今、自分が押さえているふたつのふくらみ・・・いつか、自分以外の手が触れる時が来る。
自分はどんな顔でその時を迎えるんだろうと大河は思う。
それは遠い未来なのか、近い将来なのか、そして・・・誰が・・・。
そこまで思い至った大河の脳裏に浮かぶ竜児の顔。
なんでここに竜児がと思ったものの、もう止まらなかった。
あれこれ想像した大河は首から上が熱したニクロム線みたいに赤くなる。

102しあわせの逢坂タイガー伝説2 ◆x6jzI2BeLw:2010/01/29(金) 01:35:47 ID:???

「竜ちゃんにはもったいないくらいかも」
このひと言に大河が激しく反応する。
「な、なんでそこに・・・り、り、竜児があ・・・」
たった今、想像してたとも言えず、あわあわとうろたえる大河。
「あらあ、大河ちゃん、竜ちゃんのこと嫌い?」
悪戯めいて聞く泰子。
「・・・少なくとも、キライじゃない」
少し間を置いて大河は真面目に答えた。
「だったらいいこと教えてあげる」
「いい事?」
「そう・・・竜ちゃんはね・・・あんまりお胸の大きな娘は好みじゃないんだあ」
「何でやっちゃんがそんなこと知ってるの?」
「何でかなあ」
不思議そうな顔をする大河に笑ってはぐらかす泰子。
その昔、竜児が隠し持っていたHな本をこっそり見ちゃったからとは竜児の名誉のため伏せる泰子だった。



一通り髪も体も洗い終えて、カランの前から立ち上がった大河を泰子が呼び止める。
「何?やっちゃん」
「髪、やってあげる」
長いままじゃ、湯船に入れないでしょと泰子は言い、大河を再度座らせると手早く髪留めを使い大河の髪をアップにした。
「ありがとう、やっちゃん」
「どう致しまして。でも、大河ちゃんの髪、きれいね」
ほとんど枝毛も無くてうらやましいと泰子は大河の髪を誉める。
「全然、そんな風に思ってなかった・・・今日、竜児に言われるまで」
ぼさぼさになった髪を竜児が直してくれたと大河は打ち明ける。
「竜ちゃん、なんて言ったの?」
「やっちゃんとおんなじこと言った・・・きれいだって」
ちょっとは女心が理解出来るようになって来たのかしらねえと、泰子は息子の精神的な成長を嬉しく思った。

103しあわせの逢坂タイガー伝説2 ◆x6jzI2BeLw:2010/01/29(金) 01:37:33 ID:???

浴槽へ飛び込もうとした大河の足が止まる。
「どしたの?」
泰子の問いに大河は疑問を口にする。
「お風呂がふたつあるんだけど・・・」
同じ大きさの浴槽が仕切りを隔てただけでふたつ並んでいる。
どう違うのかと大河は言う。
この質問に泰子は右が熱いお風呂で左がぬるいお風呂だと簡潔に答えた。
「ふ〜ん」
そう言われて大河は浴槽の隅っこに温度計があるのに気がついた。
右は43度左は39度を示している。
「やっちゃんはぬるい方がいいかな・・・大河ちゃんもそうする?」
・・・ん、そうすると大河は言い掛けて既に熱めの浴槽に肩までどっぷり浸かったお婆さんと目が合う。
その目は「若いのお、お主」と言っているように大河に見えた。
「熱いのにする」
意地っ張り大河の面目躍如なのだが、泰子が心配そうに言う。
「大丈夫?熱いわよ」
「平気だって」
家でも熱いのに入っていると経験者の余裕をかまし、慣れた素振りで浴槽へ足を入れる大河。
つま先から伝わる想像以上の熱気が大河のこめかみをひくつかせる。
「こ、これくらい・・・全然・・・ぬ、ぬるいくらい」
どうにか両足を浴槽に入れたものの、そこから先は恐る恐ると言った感じで大河は体を湯に沈めて行く。
体と湯が触れる面積が増えるたび、あまりの熱さに大河は身をよじる。
「へ、平気よ・・・何よ、これくらい・・・何だっての・・・えい!!」
最後は掛け声と共に一気に全身をお湯に浸した大河。
「ぬるいわ・・・ふへへ」
・・・と、勝ち誇った様子で余裕のあるところを見せて居られたのは1分に満たなかった。
「・・・釜茹での刑・・・げ、ん、か・・・い・・・」
額に大粒の汗を浮かべ、真っ赤な顔をしてすっかり茹で上がった大河が浴槽を飛び出す。
そしてそのまま片足を浴槽の縁に引っ掛け、見事おでこから床のタイルにダイビング。
「きゃあ、大河ちゃん!!」
泰子の悲鳴を耳に大河は己の浅はかさを呪った。
・・・つまんない意地は張るもんじゃないわ。


天井近くにある男湯と女湯の境の開口部から聞こえて来る喧騒に混じって聞き慣れた声の悲鳴。
湯船で寛いでいた竜児は頭に載せたタオルを取り落としそうになる。
・・・何、やってんだ、あいつら。
続いて聞こえる声に竜児は思わず湯船の中で立ち上がり、大声を出す。
「たいが〜!、大丈夫かあ!!」
・・・りゅうちゃああん・・・たいがちゃああんが・・・ころんだああ・・・
泰子の声が反響して聞こえる。
あれだけ言ったのに・・・ドジめ・・・・。
竜児は湯船の中で頭を抱えた。

104しあわせの逢坂タイガー伝説2 ◆x6jzI2BeLw:2010/01/29(金) 01:39:25 ID:???

「お待たせ」
銭湯の外へ出た大河は待ちくたびれた様子で立っていた竜児に声を掛ける。
「遅いぞ・・・いつまで入ってるんだよ」
「だって・・・仕方ないじゃない。いろいろあったんだから」
言い難そうに大河は竜児に言う。
「まったく・・・怪我とかしなかったよな」
仕方ないと言う口調に心配さをにじませて竜児は大河を気遣う。
「おでこ、ぶつけた」
「どれ、見せてみろ」
そう言うと竜児は大河の前髪をかき分けおでこを顕にする。
少し赤くなった痕が残る大河の白い額。
「もう少し気をつけろ、後に残ったらしゃれにならねえ」
ぶっきらぼうの中にも竜児の真剣な真情が読み取れて大河はただ「うん」とだけ答えた。
少し遅れて泰子が銭湯から出て来たのを確認すると竜児は帰宅を宣言する。


「持ってやるよ」
半分怪我人なんだからと竜児は大河のバッグを奪い取る。
触れた竜児の手の冷たさに大河ははっとする。
「竜児・・・」
「何だよ?」
「ずいぶん・・・待った?」
「ああ、15分くらいな」
「え〜、竜ちゃん、そんなに待ってたの?外じゃなくて中で待ってれば良かったのに」
「中で待ってたら、ふたりとも出て来たのが分からねえだろ」
泰子の声に竜児は大河と泰子を待たせたくなかったと言った。
「・・・ごめんね」
「何で大河が謝るんだ」
「私が・・・ドジしちゃったの・・・お湯に上せて倒れた私をやっちゃんが介抱してくれたから」
だから、出るのが遅くなったと大河は竜児に詫びた。
「いいんだ」
気にすることじゃないと竜児は空いた右手で大河の頭の天辺を軽くポンと叩いた。
「・・・竜児」
大河は竜児を見上げ、申し訳ない気持ちが込み上げて来るのを抑えられない。
「・・・手袋」
そう言うと大河は両手でたった今、頭を叩いた竜児の手を包み込む。
「ちょっとは暖かいでしょ?」
「ああ」
大河がしてくれた人肌の手袋は竜児にとって心地よさ満点だった。
「良かった」
そう微笑んだ大河だったが、ふとさっきのことを思い出し、竜児の手を包む指先に神経が集中してしまう。
・・・もしかしたら、この手が・・・私の・・・。
大河は顔が火照るのを止められなかった。
「・・・何だよ大河。上せたのまだ引いてないのか?」
赤ら顔の大河を見て竜児は言う。
「・・・違うわよ」
大河は竜児から顔を背けるようにして小声で聞こえないように付け加えた。
・・・上せてるのはお風呂じゃなくて、竜児、あんたによ・・・・・・。

105 ◆x6jzI2BeLw:2010/01/29(金) 01:43:35 ID:???
以上です。

106高須家の名無しさん:2010/01/31(日) 00:35:31 ID:Mf.zk6.M
クリームソーダの人のサイトにスレに投下しなかった作品が発表されてるな。

107 ◆x6jzI2BeLw:2010/02/01(月) 00:55:24 ID:???
未だ規制中・・・

代理投稿ありがとうございます。
代理投稿の呼びかけもありがとうございます。
それからコメントなどもありがとうございます。

ひたすら、ありがとうを連呼するのみですが(汗

週明けに解除されてなかったら長くなりそうな悪寒・・・。

しかし、今の銭湯ってどんな感じなんだろう。
近所にはもう一軒も無いしね。

108高須家の名無しさん:2010/02/01(月) 01:19:23 ID:???
番台さんがいるような銭湯は最近ほんと見なくなったよね
ウチの周りもスーパー銭湯ばっかりだ。風情が無いよなー

109高須家の名無しさん:2010/02/02(火) 12:52:13 ID:???
また規制だー

うちの近所にはまだ普通の銭湯が点在してるよ
田舎だから

110喫茶店に入るには微妙な勇気がいる:2010/02/02(火) 19:09:55 ID:3nGOqFd2
ちいさな喫茶店にて
「カランカラン」と入口の鈴が鳴り1人の青年が入店してきた。
 
「いらっしゃいませ」
「今日は冷えるねマスター、もう暦の上じゃ春だってのに」
「ほんとですね、今夜は雪でも降るんじゃないですか」
「全くだよ、俺の懐も冷える一方だ」
「コーヒーでも飲んで暖まってください、レギュラーでよろしいですか?」
「ああ、それとケーキかなにかある?疲れた時には甘い物を摂りたくなるからな」
「そういえば、お客さん、大分疲れてるみたいですね、そんなに険しい眼をして」
「目つきが悪いのは生まれつきだ、でも他人から見ても疲れているのは判るか・・・」
「何か悩み事があるならここで愚痴をこぼしていったらどうですか」
「はっ?」
「男は見栄張ってナンボの生き物、学校でも家庭でも愚痴はこぼせない、赤の他人だからこそ話せることもあるんですよ」
「・・・別に悩みなんてねーけど、・・・大体読者の目があるからな」
「大丈夫です、うちはお客さんのプライバシーは完璧に守られるんで、読者からは誰か判りません」
「ああ、そうなんだ」
「はい、このSSは全編こんな感じです。誰だか全然わからないので何でも喋れますよ、ちなみにここでは顔見知りと出会っても知らないフリをするのがルールです」
 
そこまで言うとマスターはカウンターの中から一枚のボードを取り出し青年に見せる
 
1 好きなだけ愚痴を言ってください
 
2 1人で来店してください
 
3 知り合いに会っても知らないフリをしてください
 
4 ここで聞いた事は他言しないで下さい
 
「このようなルールになっています。何のしがらみにもとらわれず愚痴を吐ける場所、それがこの店なんですよ」
「愚痴ねえ・・・いつも愚痴ってるからな俺、そんなに溜まっては・・・」
 
「カランカラン」とドアの鈴が鳴り別の客が入店してくる
 
「チャオ〜、マスター」
「いらっしゃいませ、いつものカフェオレでよろしいですか?」
そして青年の隣に座るが新たに入店したモデルのような美しい女と青年は目が合うと互いに黙り込んでしまう
 
「どうしましたお2人とも急に黙り込んじゃって、まさか・・・」
そう言ってマスターは再びボードを掲げ2人の客に見せる
 
1 好きなだけ愚痴を言ってください
 
2 1人で来店してください
 
3 知り合いに会っても知らないフリをしてください
 
4 ここで聞いた事は他言しないで下さい

111喫茶店に入るには微妙な勇気がいる:2010/02/02(火) 19:10:37 ID:3nGOqFd2
奇妙な静寂を破り、青年はもう1人の客に話しかける
「あの・・・結構この店には来るんですか?さっきいつものカフェオレって・・・結構愚痴とか溜まってるんですか」
「いやいや、ちょっとね、ほんの2・3回ぐらいかな、ウン」
「50回ぐらい来てますね」
「あ、ちょっとマスター、余計なこと言わないで、お願い」
「え、では今日も愚痴をこぼしに来たんですか?」
「いやいや、今日はただお茶を飲みに・・・」
再び会話に割り込むマスター
「また、クラスの恋愛がらみの揉め事のことですか?」
「マスター!余計なこと言うなって言ってるだろ!やめてエエエエ」
「へっ、へえ〜、クラス内の恋愛での揉め事ですか、大変そうですね、そりゃ愚痴も出ますわ」
引きつった笑みを浮かべる青年
「いやいや、違うのよ!泥沼化が眼に見えてるけど別に悪口とか言ってるわけじゃなくてね・・・」
「そうですね、ネチネチ悪口って言うか、毎回簡潔に「死ね」って言ってるだけですもんね」
「マスター死ね!お前が死ねエエ!」
血相を変えて叫ぶもう一人の客
「いやいや、聞いて下さいよお客さん、このモデルさんのクラスである男子生徒と女子生徒がいつも一緒にいるのに付き合ってないと言い張ってるのがうざくて仕方ないそうなんですよ」
「ゲッ、ゲホ・・・それは本人達の言うとおり付き合ってないんじゃないかな?」
「その割にはモデルさんが男の子にちょっかいだすとすぐにやきもち焼いて手に負えないそうです」
「それの何処が愚痴なんだ?」
「男の子は本命がいるいるのに、いつまでも女の子の父親のように振舞っていて、本命と女の子が親友なのにそんな事続けてたら悲惨な事になるとの忠告を無視してるそうです」
「マスター!例のボード出して、この人にちゃんと読ませて!特に4番目を」
もう1人の客に頼まれ、青年にボードを見せるマスター
 
1 好きなだけ愚痴を言ってください
 
2 1人で来店してください
 
3 知り合いに会っても知らないフリをしてください
 
4 ここで聞いた事は他言しないで下さい
 
「ちょっと!四番目を肝に銘じときなさいよ!」
「おっ、おう・・・、わかったよ」
 
そのとき女性の声が店内に響く
 
「ちょっとマスター!せっかく来たのに何であたしに気づかないのよ!」
 
カウンター席の後ろに立っていたのは小さな体とはアンバランスな美しい顔をした女の子だった。そしてその目は虎のように鋭かった 
「申し訳ありません、カウンター席でよろしいですか?せっかくですからこの二人の愚痴を聞いてあげて下さい」

112喫茶店に入るには微妙な勇気がいる:2010/02/02(火) 19:11:14 ID:3nGOqFd2
「そんなことよりマスター、もっと面白い話は無いの?・・・かっ片思いの相手の攻略法とか・・・」
「すいませんねタイガーちゃん、ここで聞ける話は平凡な愚痴ばっかりなんですよ、ところで、さっきの話を聞いてました?」
「別に何も聞いてないわよ!」
そう言って二人の客を睨みつけるタイガーちゃん、手には木刀が握られている
 
「そうですか、ところでタイガーちゃん、今日も三白眼の男の子の話ですか?」 
テンションの高くなったマスターとは対照的にお互い顔を会わすと黙り込んでしまう3人
 
「・・・あれ、どうしました皆さん、血の気が0で顔色が真っ青ですよ、モデルさん口から泡吹いてますけど・・・」
「どうしたの大丈夫?」
とか言いながらモデルさんをボコボコにするタイガーちゃん
「わっ、私、忘れ物したから帰るわ!マスターお代は今度払うわ!」
そういい残し店からダッシュで逃げ去るモデルさん、
「おい、待てエエエ!俺を怒り狂う狂虎の隣に1人残して逃げるつもりかアアア!」
必死に叫ぶ青年
 
「ああ、タイガーちゃんはこの人がお気に入りですか、いいですね中々お似合いですよ、例の男なんてやめて乗換えたらどうですか?」
顔を真っ赤にして黙りこくるタイガーちゃん
「マスター、このタイガーちゃんは良く店に来るの?」
「そうですね、去年の五月あたりからですから、かれこれ半年以上ですね」
「色々悩みがあるんだな…」
「クラスメートで隣に住んでる男子生徒のことが気になって困ってるって愚痴をいつも聞かされてますよ、」
「マスター!嘘言わないでよ!そいつとは別に好きな人がいるって言ったじゃないの!」
「ですが、いつもこの店で話すのはその男子のことばっかりではないですか」
「どんな話なんだ?」
「結構重い内容でしてね、いつも自分を見守ってくれる男子には好きな人がいて、しかも相手は自分の親友、2人が付き合い出したらもうその人の傍に自分が居てはいけないのが辛いとのことです」
ブホッっと思いっきりコーヒーを噴出す青年
 
急に席を立つタイガーちゃん

113喫茶店に入るには微妙な勇気がいる:2010/02/02(火) 19:11:46 ID:3nGOqFd2
「マスター!あたしちょっと友達に電話してくるわ」
 
そう言って店から出てゆく
 
そして青年も慌てて
 
「マスター!俺ちょっと急用思い出したから帰るわ!代金はここに置いておくぞ」
「ちょっと待って下さいお客さん」
「なんだよ!」
 
「ひとつ、言っておきたいことがありましてね、私は何十年も人の愚痴を聞いてきました何千何万の愚痴を聞き続けてきました
人の悪口、仕事の不満、気の滅入る話ばかりです。ですがそんな愚痴を何故何十年も聞き続ける事ができたのか
 
愚痴の裏には愛情があるからですよ
 
こんなに一生懸命やってるのに思い通りに行かない、こんなに大好きなのにどうしてこの人は思い通りにならない、さっきのモデルさんもそうだったでしょ
愚痴って言うのは全て思い通りにならない愛情からくるただのぼやき
ただのノロケ話とかわらないんですよ」
 
しばしの沈黙の後
 
「・・・ここまで言えばわかりますよね、お客さん、いや、「三白眼」さん。タイガーちゃんの事、ヨロシクお願いしますね、今日はもう閉店します」
 
店が閉まりドアの前で立ちすくむ三白眼の前にタイガーちゃんが現れる
 
「あれ?もう閉店しちゃったの?」
「あ・・・ああ、急用があるとかで」
「・・・そう、残念ね、コーヒー飲みたかったのに」
「飲みにいくか?」
「・・・えっ?」
「コーヒー飲みたいなら、・・・付き合ってやってもいいって言ってんだよ」
「いいの?」
「え?」
「朝まで愚痴に付き合ってもらうかもしれないわよ」
「・・・フッ、構いやしねーさ」
 
三白眼はタイガーちゃんの手を取って2人で走り始める
 
 
「だって俺はもう、愚痴の本当の意味を知っているから・・・」
 
 
 
 
その時喫茶店の向かいにある狩野商店から買い物袋を持った竜児が出てきて手を繋ぎ走って行く三白眼とタイガーちゃんを見て一言
「誰だアレは?」
終わり

114高須家の名無しさん:2010/02/02(火) 23:05:13 ID:qK.86EI6
これ、いいのだろうか。
丸々銀魂のパクリっぽいんだけど。

115高須家の名無しさん:2010/02/02(火) 23:13:03 ID:???
あんまり潔癖な流れはやだな
出典を明らかにすればいいと思うんだけど
書いた人も一言断ればいいのにな

116高須家の名無しさん:2010/02/03(水) 18:06:46 ID:???
規制巻き込まれたorz

『恵方巻』

「う〜ん……」
「竜児、どうしたのよ?」
「いや、恵方巻の具をどうしようかと思ってな……」
「そんなに悩むことなの?」
「おう、なにせ七福神に因んで七種類って話だからな。定番のやつはともかく、オリジナルで考えるとなると味のバランスとかもあるし……」
「それなら私にいいアイデアがあるわ」
「おう、何だ?」
「バラ、ヒレ、もも、かた、ロース、ハラミ、サーロインで七種類」
「全部肉じゃねえか!」

《定番はかんぴょう、キュウリ、シイタケ、卵(だし巻)、うなぎ(あなご)、でんぶとあと一種ということらしい》

117高須家の名無しさん:2010/02/03(水) 21:27:37 ID:???
「ん……竜児……」
「大河……いいか?」
「あ、ちょっと待って」
「え?」
「え〜っと、北がこっちだから……」
「おい大河……こんな時に方位磁石とか持ち出して何やってるんだよ?」
「そりゃもちろん、竜児の恵方巻を食べる用意に決まってるじゃないの。ちゃんと西南西を向かないと」
「……こりゃまたド直球なネタで来やがったな……」
「はい、準備OK。途中で向き変えちゃ駄目だからね」
「よしわかった、それなら大河も終わるまで声出すんじゃねえぞ」

ギシギシンッ!ンッ!

118高須家の名無しさん:2010/02/04(木) 01:23:10 ID:???
潔すぎてフイタwwww


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