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大河×竜児ラブラブ妄想スレ 避難所2

184ms07b3:2010/04/25(日) 01:03:30 ID:09K.B1dQ
「 幸せのかたち 」

施主への引き渡しを明日に控え、竜児は引き渡し前の最終的なチェックをしていた。
専門業者による引き渡し清掃は終わったが、シンクを舐められるほど拭き上げてこそ、真の完成と考える竜児にとっては、この程度の清掃では我慢出来なかった。夕方から既に3時間、手には高須棒、腰には雑巾を装着して、死体安置所に置かれたの死者の屍肉を漁る悪鬼の様な表情で、厨房の隅々まで、一片の汚れもないよう確認していた。
「竜児君、いい加減になさい。」
厨房に響く凛とした声に振り返ると、竜児の師匠であり、大切な妻の実母である、女性が立っていた。
「あなた、昨日から全然眠ってないでしょう? 明日の引き渡しは13時。すぐに帰って身体を休めなさい。」
苛立ちが含まれた声には、地獄の獄卒さえも従うであろう響きがあった。
「先生、ですが後もう少しだけ・・・・。」
「黙れ。早くしろ。」
「はい。」
竜児はおとなしく従い、厨房の照明を落として店を出た。

1年前から進めてきたレストランの設計・施工は明日の引き渡しを持って完了する。
発注者である有名シェフも、実際に腕を振るう厨房スタッフも、先日下見に来て、料理人の導線や調味料置き場、冷蔵庫の使いやすさ等を褒めていた。
実際に使う立場の人達に賞賛されるのは、建築雑誌のデザイン賞を貰うより嬉しい。竜児には一仕事やり終えた充実感があった。

水平対向エンジンの独特の響き、身体を固定するシート。先生の車に乗る時は、未だに緊張してしまう。大河をつれて逃げた2月の寒空。まさか、あの時、自分から大河を奪おうとした人の設計事務所のスタッフとして、働くことになるとは思いもしなかった。
あれから12年か・・・。ふと時の流れを感じてしまう。

「竜児君。あの話の結論はでたかしら?」
寝不足の頭に問いかける声。
「いえ、まだ迷っています。」
「そう。確かに、この業界で30歳と言ったら、ひよっこだけど、大学の頃から手伝ってくれている事を考えると、キャリアとしては充分だと思うの。人気の料理研究家の台所。カリスマと呼ばれるフランス人シェフの店の厨房。独立するには充分なキャリアだわ。」
「・・・・・。」
「うちの事務所には、どんどん貴方を指名した仕事も来ている。独立しても、仕事上のパートナーで有ることは変わりません。いい加減に覚悟を決めなさい。」
あなたも疲れている。明日の引き渡しが終わったら有給休暇を取りなさい。母虎は、そう言って命令を下した。

竜児が、大河の母親の建築設計事務所に入社したのは、大学を卒業した年だった。
元々、インテリア雑誌を買って、セレブな暮らしを想像して楽しむような男だ。大河が母親と暮らす家に遊びに行く度、リビングに置かれた建築設計の専門雑誌を借りて帰り、読んでいるうちに、建築士の仕事に進む決意を固めたのだ。
大学受験は、大河の母に勧められた美大系の建築学科で学んだ。奨学金と祖父からの援助はあったものの、課題制作や専門書などの購入に金がかかる。
困っていた竜児に手をさしのべたのが、大河の父だった。


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