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●おまえら男ならヒカルたんハァハァだよな?Part47○

1ヒカルたんハァハァ:2003/10/29(水) 16:04
ヒカルたんがいれば、どんな鯖だって地の果てまでもついてくぜ。 
カレンダーのヒカルたんが舞い降りてくる日が待ちきれない(;´Д`)ハァハァ
オレ達の天使「ヒカルの碁」のヒカルたんに、24時間、問答無用で(;´Д`)ハァハァするスレッド。
おまえらここで、心置きなくヒカルたんに弄ばれよう。
過去ログ、関連サイト、お約束は>>2-10辺り参照。

前スレ【Part46】http://academy2.2ch.net/test/read.cgi/campus/1065031133/l50

107105:2004/04/29(木) 01:12
>106
鯉のぼりの日にこだわるなら俺はおそらく立てられないyo(;´Д`)
その日外出予定でここに繋げられるかどうかもわからんので。
どうしてもその日キボンなヤシは自ら名乗り出てスレ立宣言しる!

108名無しさん:2004/05/02(日) 00:41
>103
たてて来たぞ!
『ヘタレ』を撤回しろ!

109103:2004/05/02(日) 03:14
>108
撤回しる!(゚∀゚)アヒャ!筆おろしオメ!の熱いベーゼを!ハァハァ(;´Д`)

110ルームサービスDON’T DISTURB22:2004/05/27(木) 23:54
目を閉じて、キスに答えるヒカルのスキをつきアキラはベルトを外す。
すすとヒカルはぱちりと目を空け、あわてて押しとどめようとする。
 「ちょっ塔矢!!嫌だって!!」
 「大丈夫だって本当にクスリ塗るだけだから」
 アキラはそう説得したが、嫌だ嫌だと、金色の前髪が異様に激しく振れる。
 めんどくさくなったアキラは、抵抗するヒカルを裏返して、その上に覆い被
さって動きを封じようとした。
 「いやだって」
 それでも往生際悪く、ヒカルは抵抗してきたが、筋肉痛で体にあまり力の入ら
ないヒカルに結局のところたいした抵抗は出来なかった。
 下着だけになっても、小さな体は逃げようとジタバタしたが、アキラはヒカル
を押さえつけたまま、容赦なく下着をはいだ。
 現われた素肌に理性が倒壊しそうになりながら、広げて、クスリを塗ろうとする。
 すると押さえつけられているヒカルの体が、ひくりとわなないた。
 「………………!」
 不思議に思ったアキラが、ヒカルの顔を除きこむと、真っ赤になって涙ぐんでい
る。
 「?」
 普段はあまりはずかしがらないヒカルがこれくらいで涙ぐむとも思えない。
 「どうしたんだよ、進藤」
 いっしょにラーメンを食べに行って…………悪い雰囲気だったんだか、いい雰
囲気だったんだか………アキラにはよくわからなかったが、とりあえずはは自分
の暴走は、ヒカルの意地悪でなんとなく許されたような気がしたのだが、そうで
もなかったのかもしれない………。
 「昨日のこと、思い出すわけ?」
 アキラは聞く?

111ルームサービスDON’T DISTURB23:2004/05/27(木) 23:58
ヒカルは涙ぐんだままの顔ながらどこかふてくされた表情でアキラを見上げ、
低く言う
 「…………そんなんじゃねえよ。」
 「じゃ、なんでないてるの?」
 「ないてねぇ!!!」
 「泣いてるよ?」
 アキラは、大きな瞳の端っこにうかんだ涙を指先で拭う。
 「これは!!」
 「これは、何?」
 「うるせぇっお前なんか嫌いだ!!」
 どうやら本気で照れて怒っているらしいヒカルを前にしてアキラはしばし
考えたのちに訪ねた。
 「何がそんなに恥ずかしいわけ?いつもこういうことしても平気でいるくせに」
 そうなのだ、いつもアキラが後始末をしている最中も、ヒカルは、王女様よ
ろしくアキラに体をまかせっきりにしていてあまり照れたりはしないのだ。
 よくよく考えるとヒカルのそういうところが、アキラをあせらせる原因となっ
ているかと思うのだが、それが天然が計算されたものかがよくわからないところ
が恋人の恐るべきところである、とアキラはなんとなく思う。
だが………。
 「うるせぇな、恥ずかしくねぇって、薬塗れよ」
 ヒカルが開き直ったので、アキラは作業に戻ることにした。
 薬を塗りこむために指を入れたヒカルのそこは、いつもより、少し締まり
が悪かったが そのことにアキラはなんとなく安心した。いつもヒカルの体
には何にも跡が残らない、手足にも痣が残ってしまっているのを見ると、反省
も感じたが、同時に満足感も覚えた。

112ルームサービスDON’T DISTURB24:2004/05/28(金) 00:02
暴走してしまった直後は、反省しきりだったのだが、ラーメン屋に行った後あらためて見ると、やはり自分のつけた跡が所有欲を満足させるのだ。
 他人としゃべるヒカルを見ると嫉妬を覚えるせいだろう。
 ………なんとも複雑な男ごころである。
 ヒカルはアキラの指が位置を変えるたびに軽くうめき声を漏らす。
 アキラがのぞきこむと、その顔は真っ赤で、唇は悔しいことでもあるように閉じられていて、布団をぎゅっと握った指は赤くなっている。
 「進藤………、ホントに恥ずかしいんだ?」
 顔をのぞきこむと、ヒカルは顔をマクラに押し付け、アキラの視線からのがれようとする。
 「どうして?」
 アキラは訪ねる、ヒカルはますます深くマクラに顔を押し付ける。
意地悪心の出てきたアキラは無理やり、ヒカルの顔をマクラから引き剥がした。
 無理やり仰向かされたヒカルは叫ぶように言った。
 「………オレはフィストファックなんか大嫌いだ」
 瞬間にアキラは血の気がひいた。
 「悪かったよ………」
  アキラはしょんぼりと言って、ヒカルを仰向かせていた手の力を抜いた。
 するとヒカルは再び布団に顔を埋め込む。
 アキラはめちゃくちゃに興奮したのだが、常ならぬ行為を強要されたヒカルはたまったものではなかっただろう、そのことは仕方がない。
 しかしそんなふうにアキラが反省しつつ見下ろした小さな黄色と黒の頭は次にコトバを発したのだ。
 「腕よりちいせぇおまえのが一番イイ」
 アキラは瞠目して体の下にいるヒカルを見つめる。
 丸く小さな、黒と黄色の独特な髪型、未だ細い肩、手の中に収まってしまいそうだと感じる(実際はそんなことはないのだが)体。
「進藤………」
 ヒカルの後ろ頭を撫でる。

113ルームサービスDON’T DISTURB25:2004/05/28(金) 00:08
 そのまま動かないヒカルの背中を何度か撫でているとふいに何か緊張がゆるん
だようにヒカルの背中が震え、涙声が聞こえた。。
 「あんなでかいモノ何回も入れたら、お……お前だってよくなくなるだろ!!」
 「…………よくなくなる?どうして?…………」
 アキラはいぶかしく思って訪ねる。
 「……………」
 ヒカルは枕に頭を押し付けたまま答えない。
 アキラが下半身に手をやると、みじろいで逃げようとする。
 「進藤?」
 「………やっいつもとちがっ………そこ」
 「いつもと違う………?」
 アキラは、さっきからのワケのわからないヒカルの行動と発言を必死によりあ
わせる。 ヒカルが照れているのは事実のようだ。
 そして、薬を塗られるのを異様に嫌がったのは”そこ”が普段とは異なるから
のようだ。

 それは………つまり。 
 「…………進藤、ひょっとして」
 アキラは薬を塗ったばかりのヒカルのそこに手を触れた。
 「ここがこうなっちゃったのが、恥ずかしかったわけ?」
 くい、と広げた。
「ひぅっ!」
 枕に押し付けられたままのヒカルの頭が揺れた。
 「なんで…………?」
 ヒカルの首筋がますます染まりながらアキラから身をよじって逃げようとする。
 「恥ずかしいもんは恥ずかしいんだから仕方ねぇだろっ!」
 勢いおく怒鳴ったわいいが、自らの動きでアキラの指が違う場に当たり、ヒカ
ルは体をひくつかせた。

114ルームサービスDON’T DISTURB26:2004/05/28(金) 00:12
そんなにかわいらしく恥らわれてアキラにどうしろと言うのだ。
 今日はお預けと決心していたアキラだが、目の前のあまりにもかわいすぎる
生き物の反応に、理性がどうにもこうにもならなくなってしまった。
 「進藤」
 アキラは逃げようとするヒカルの腰を捕らえ、自らの昂ぶった下半身に押し
当てた。 
「いやぁっ」
いやがるヒカルを押さえつけて、アキラはヒカルの二つの盛り上がりを開き、
露出したそこをみつめる。
 確かにいつもと違うヒカルのそこは緩やかに開いている。
 アキラは興奮した。
 ヒカルの体はこれまで何をしようとほとんど、跡が残らなかったのだ。
 それがどうだ、ヒカルは動けず、体には拘束の跡が残り、アキラ意外には家
族にさえほとんど見せたことがないだろう蕾は、アキラに対して物欲しげに開
かれているのだ。
 真っ白な肌に可憐に開いたすぼまりはヒカルのちょっとぷっくりしたかわい
い唇に似て見えた。
 「ここ、開いてるのすっごくかわいいよ………」
 「………変態!開いてるとか言うなっ!!」
 「だってかわいいもんはかわいいんだよ」
 アキラは強引にヒカルの足を開かせた。
 「あ、あんまり見るな」
 アキラは、じっくりと見つめながら、指でその入り口近くをマッサージする。
 「あぅっ」
 ヒカルがのけぞった。
 震えながらアキラの指儀に耐えるヒカルの首筋はますます桜色に染まり、震え
を放つ。

115名無しさん:2004/05/28(金) 20:46
キタ━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
久しぶりの小説だよ。
可愛いよ。ヒカルタン…
開いちゃったヒカルタン…(;´Д`)ハァハァ

116名無しさん:2004/05/28(金) 23:36
ぬおー!!
ルームサービス来てた━(゚∀゚)━( ゚∀)━( ゚)━( )━(゚ )━(∀゚ )━(゚∀゚)━!!!!!
恥じらうヒカルたんは最強!(;´Д`)ハァハァ
泣いちゃうヒカルたんは神!(;´Д`)ハァハァ

117ルームサービスDON’T DISTURB27:2004/07/07(水) 23:18

 「開いちゃうよ……そしたらお前が………よくなくなる」
 アキラは苦笑した、やはりヒカルはどっか抜けているところがあると思う。
 あんなことをされておいて自分がアキラにとって魅力的でなくなることを心配している。
 アキラがヒカルに魅力を感じなくなくなる日など来ないのに。
 「キミはそんなことにならないよ、昨日あんなに広がっていたのに、今日はもうこんなに閉じてるし」
 アキラは興奮した自分の先端を、ヒカルのそこに押し付けた。
 「やぁっ………!!」
 押さえつけられたままよじれる体を貫く。
 先端はすぐ入ったが、少し進むとやはり抵抗がある。
 「あっあっ」
 ヒカルの内部が収縮する。
「ホラ、苦しいだろ」
 「あぅっん、うーーー!」
少し奥まで入ると、やはり昨日の今日でつらかったのだろう、内壁が苦しげに締まり、ヒカルはもがくように喘いだ。
 「我慢できない。ごめん………」
 いつもと違う内壁の反応にアキラは興奮したが、必死の思いで己をおさえこみ、ゆっくりと腰をすすめる。
 「んっんっ」
 昨日の酷使で粘膜が敏感になっているものか、大きくあえぎ、上下するヒカルのシャツのボタンに手をかける。
 滑らかな胸と、かわいく立ち上がった二つの小さな粒に手を離す。
 両方同時につまむと、ヒカルの体中が収縮するのを感じた。

118ルームサービスDON’T DISTURB28:2004/07/07(水) 23:20
「あぅ………ん」
 感じるところを攻められ、ヒカルの内部も、よじれるようにアキラを締め付け、快楽を探って来る。
 昨日の酷使でどこもかしこも敏感になっているヒカルの体はアキラに向かって花開いているような気がした。
 「ごめんね、我慢しようと思ってたんだけど、キミはきついだろうけど」
アキラのほんの少しの腰の動きに、ヒカルの体は敏感に反応する。
 いつもと違い、苦しげに、だが確実に反応するのがいじらしい進藤の内壁。
「進藤……すっごくいいよ。ぜんぜんよくなくなんかならないよ」
 「ば…か…やろう」
 かわいらしく立ち上がりかけていた、ヒカルの前をさわる。丁寧にこすると、気持ちよさげな鼻息がきこえて、きゅっと輪がしめつけられる。
 「やっぱり、こういう方が好き?手よりこっちの方がいい?」
 「……………」
 答えないのなら答えさせてやろうと、アキラは前をきつく絞りつつ、腰をやや激しく動かした。
 「うっん、うぅっん」
 小さな頭がのけぞるのを見たアキラは、手の中の反応を確かめながら、さらに強めに動いて見た。
 「ひっ」
 強すぎたらしい。ヒカルがシーツをつかんで、体をぎゅっと収縮させた。
 アキラは動きを止めて震えるヒカルに尋ねる。
 「きつい?やっぱり無理?」
 ヒカルは涙に塗れた目ですがるようにして振りかえり、アキラを見上げる。
 やめてほしくはないらしい。
 アキラは注意深く、腰を動かした。

119ルームサービスDON’T DISTURB29:2004/07/07(水) 23:22
 みじかく声をあげて、ヒカルが身をくねらせる。ちいさな唇がため息をはき、繊細にアキラのモノをしめつけてくる。
 ………なんとなく加減がわかってきた。
 アキラは注意深く腰を動かす。
 「あうっん……あぅうっ……ん」
 やはり直接つながって、自分のモノをしめつけながら喘ぐヒカルのかわいさは格別だった。
 その上、今日のヒカルはアキラのちょっとした動作で激しく喘いでくれるし、アキラは慎重に動かざるを得ないので、なんとなく余裕を持ってやることができる感じだった。
 一方のヒカルはというとただ突き入れられて、ゆっくり動かれているだけのことに信じられないほど翻弄されていた。
 昨日は行為は激しかったが、どちらかというと動きは単調だったといえよう。
 それになかなかイかせてもらえなかった。
 しかし、本日はなんだか剥き出しになったような神経を、ヒカルのよいところを探るようにしてアキラが動き、快楽のスイッチをアキラに思いきり絞りこまれているようなのだ。
 「あぁっんっあんっあん!!」
 アキラのシーツにしがみつき、ヒカルはのけぞられるだけのけぞる。
 体中に筋肉痛が残っているためにあまり激しくは動けなくて、快楽を逃がすことができないので、より深く感じるような気がする。。
 アキラはヒカルの息をはかり、さらにそれを乱すように腰を揺らすと、ヒカルの体が甘い震えを放った。
 「あうん、塔矢ぁ、塔矢っぁ」
 ヒカルの白濁が飛び散る。
「……………!!」
アキラは、深い満足感を覚えた。

120ルームサービスDON’T DISTURB30:2004/07/07(水) 23:23
いつもヒカルよりアキラの方が早いことが多いのだ。
 あまりにヒカルがかわいらしいためにがんがん動き捲ってしまい、それに反応を返すヒカルのあまりの魅力ににわけがわからなくなってしまい、アキラの方が早くイってしまうのだ。
 しかし、今日のアキラは主導権を握っている。
 ………昨日、抱きしめてがんがんしたいのをガマンして感じるヒカルをじっくり観察した成果であろうか。
 なんとなくガッツポーズをしたい気分だ。
 …………力だけではなかなか突き崩せないこともある。

 搦め手で攻め込めるだけ攻め込んで、それなりの反発はあったが最後にに力でまさった感じだ。
 (いつもはなんとなく負けた感じだった)
 アキラはヒカルの頬を撫でながら言った。
 「進藤、すっごくかわいかった、こんなかわいい進藤はじめてだ」
 「うそつけ」
 「へっ?」
 アキラは目を丸くする。
 「だってお前イってねぇじゃん」
 ヒカルは不服そうに言った。
 「いやまぁ、そりゃそうだけど、いつもより余裕持ってできたっつーか」
 「余裕ってなんだよ余裕って」
 「ごめん、気に障った?」
 訪ねたアキラに、ヒカルはかわいい顔をむっつりさせながら言った。
 「触った、お前はオレとやってるときはサルのよーに必死でないとダメなんだよ」
 「………進藤、キミはいったいボクのことをどう思ってるんだ?」
 「変態」
 「…………」
 それは事実なのでなんともいいようがない。
 「…………」
 「やっぱり変態だ!!!お前!!!」
 突如ヒカルが怒鳴ったのにはワケがある。
 「だって………」

121ルームサービスDON’T DISTURB31:2004/07/07(水) 23:25
アキラは言葉を濁した つまり、ヒカルが冷たい目でアキラを見、変態と口にした途端。
 アキラの興奮は度合いを増し、ヒカルの中で膨張したのだ。
 変態と言われてもまったく言い訳できない状況であった。
 「変態、チカン、強姦野郎、ホモ!!」
 微妙に貧困なボキャブラリーでののしられると、アキラはますます興奮してくる。
 「変態、へん……たい!!」
 アキラがののしられることにまともに興奮してしまうことにヒカルの方がかえって恥ずかしくなったらしい、ヒカルの声はだんだんと弱弱しくなり、膨張したアキラが動くと、真っ赤になって涙ぐんだ顔を、いやいやをするように振った。
 「ごめんね、進藤?つらい」
 アキラが動くたびにヒカルは嗚咽するように顔をはじけさせ、顔を赤くする。
 快楽はそれでもあるようだが、酷使した粘膜をさらに使われることに相当な衝撃を受けているのは確かなようだった。
 「…………」
 アキラの放出を奥深くに受け、それを味わうかのようにヒカルはまぶたを閉じ。アキラにしがみついて耐える。
 ゆっくり腰をひいたのだが、ヒカルの体に一瞬痙攣が走った。
 ………傷つけたか?
抜き去った跡、アキラは慌ててヒカルのそこを確かめた。
傷というほどの傷はついていない。

122名無しさん:2004/07/08(木) 02:34
敏感ヒカルたんキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!
真っ赤になっていやいやするヒカルたんカワイイ(;´Д`)ハァハァ

123パッチワーク 2016明子 その1:2004/07/31(土) 06:14
 息子のアキラの様子がおかしいと思い始めたのは三年前、夫が韓国で二度目
の発作を起こした後だった。連絡を受け一時帰国していた日本から韓国の病院
に急遽駆けつけたときは、夫は既に安静を取り戻していたが、アキラの方がシ
ョックを受けているようだった。大事をとって夫は一ヶ月ほど現地の病院に入
院し、アキラは先に帰国させた。自分たち夫婦は帰国後は箱根に引きこもって
いた。息子は週に一度のペースで電話を寄越したが、箱根を訪れようとせず、
電話を夫と代わろうとすると電話を切ってしまった。夫はアキラの態度に関心
がないのかいつものようにマイペースで、気にしている様子はなかった。

 アキラが風邪から肺炎になり、救急車で運ばれたと聞いたのは入院から一週
間も経ってからだった。市河さんは連絡が遅くなったことを詫びていたが、病
院に駆けつけアキラを見たときあまりの細さに愕然とした。どうみても肺炎な
どではなかった。主治医の先生からは拒食症の疑いがあると告げられ、アキラ
についていろいろ聞かれた。だが気が付いてみれば、夫が海外に活動の場を移
した当初は毎日のように本人や熊田さん、市河さんにしていた電話が安心が募
るに連れ一日おきに、一週間おきに、一ヶ月おきにと間遠くなり、十年近く経
っていたあの頃は年に一・二度用事のあるときに電話をするくらいだった。本
人や熊田さん芦原さんの手紙で新宿のマンションで進藤君と暮らしているのは
知っていたけれど、分かっているのはそこまでで、何をどう感じどう考えてい
るのか一緒に暮らしていた頃は当たり前のように分かっていたことが何も分か
らなくなっていた。

124パッチワーク 2016明子 その2:2004/07/31(土) 06:16

 退院した後この十年を取り戻そうと箱根へ呼び寄せたけれど、アキラにはす
でに子どもの頃の無防備さはなく、私たち夫婦との間に一線を引き、家族と言
うより礼儀正しい同居人であろうとしているのがその振る舞いから読みとれた。

 中国へ戻るという夫を説得しきれずに森下さんをお呼びした翌日、私はアキ
ラを連れて父や異母姉、夫の両親、叔母の眠る墓を訪ねた。三原山を望む墓に
は私の母は入っていない。そのことを思うと塔矢家いや、父や夫にとって母や
自分は何なのだろうと思う。夫の両親と父の最初の妻は三原山に墜落した飛行
機に乗っていて命を落とした。遺体が戻ってこなかったため、父は三原山が望
める地に慰霊のための墓を求めた。後に残された幼かった夫や姉を育てたのは
父の妹であった。その叔母アキラの交通事故死の後、分家から母が後添えに入
った。だが元々派手好きだったせいか、私が生まれた頃には別居結婚のような
状態になってしまい。仕事に忙しい父もほとんど家に帰ってこず、私は姉に育
てられたようなものだった。私の名前も既に不仲になっていた両親はなかなか
決められず、届けのギリギリになって姉が亡くなった叔母にちなんで付けてく
れた名前だった。生前、父も姉も家の傍にある菩提寺だけでなくこの墓への分
骨を願っていたが、母は父の遺骨も姉の遺骨も全て菩提寺へ納めてしまった。

125パッチワーク 2016明子 その3:2004/07/31(土) 06:17

 塔矢本家の財産を自分の愛人に貢いでいた母を阻止するため私は親の同意が
不要となると同時に夫を説得し入籍した。父に、姉に、森下さんに夫を頼むと
言われたその呪縛から私は逃れることができなかった。母はこのことで愛人と
喧嘩になり、走行中のクルマから突き落とされ、脊椎骨折となり、首から下が
麻痺してしまった。私は母が入院している間に熊田さんと相談し、母を禁治産
者にし、退院後はこのマンションに移した。アキラが生まれる前年、母は私を
恨みながら亡くなった。納骨の際に私は菩提寺にあった姉と父・叔母の遺骨を
実質全てこちらに移してしまった。先日夫婦でここに訪れたとき、夫もまたこ
こに眠ることを望んだ。夫の望みはかなえたいと思うが、私は自分はここに入
るべきではないそう感じている。それは子どもの時から感じている姉と夫に対
する疎外感と同じものだろう。私たちの心情的なことは別として、何かあった
ときに託す相手であるアキラにこのことを頼むために私はあの時はじめて息子
をあの場所に連れていった。

 アキラは手合いの前日に東京のマンションに戻り、手合いの翌日に箱根に戻
ってくるというサイクルで棋院に通うようになったが、一ヶ月もしないうちに
体調を崩した進藤君の世話をすると言って東京へ戻ってしまった。新宿のマン
ションに何度か電話をしたけれどいつも留守番電話で、アキラから電話が来た
のは最初の電話から一週間も経ってからだった。アキラの話によると進藤君の
ご両親はお仕事の関係で仙台にいらして、お母様も体調を崩して東京へ戻って
これないとのことだった。当分進藤君のおうちにいると言うことなので住所と
電話番号を訊いたが連絡は自分の携帯にして欲しいと教えてくれなかった。

126パッチワーク 2016明子 その3:2004/07/31(土) 06:19
 その進藤君が結婚するというのは夫を訪ねてきた森下さんに進藤君への結婚
のお祝いに何をあげるか相談されて知った。しかも来月には子供が産まれると
のことだった。逆算して、では入院したときには既に進藤君の結婚は決まって
いたのかと、森下さんの結婚を知ったときの夫のことが頭をよぎった。食事を
することができなくなり痩せて行く夫に対して小学生だった私は何もできずに
いた。使用人からの連絡で夫のことを知った熊田家の人々が助けてくれなけれ
ば、私は最後に残された唯一の家族である夫を失っていたかもしれない。その
夫の姿と入院中のアキラの姿がだぶった。

 私はお世話になった方々へのお礼の品を用意するのに最近の東京には疎いか
ら手伝って欲しいとアキラを呼びだした。アキラは東京に戻ったときよりも顔
色もよく、体重も増えたようだった。私は幾分かホッとした。
 
 買い物が一段落し遅い昼食を取ることにした。友人に勧められた店は幸い個
室が空いていた。進藤君の結婚のことを訊ねるとあっさりと肯定した。相手の
方は前に流産したことがあるので無理をさせたくないから手伝ってくれと進藤
君に頼まれ、今は進藤君のご両親のお宅で三人で暮らしていて、子供が産まれ
てからも子供の世話で手一杯になってしまうだろうから当分はこの状態が続く
とのことだった。「じゃぁ、進藤君は新宿でアキラさんと暮らしていた頃から
その方とおつきあいしていたの。」「プロになる前からですよ。幼稚園から中
学まで同級生だったそうですよ。」「筒井筒なのね」「なんですか?」「伊勢
物語にあるのよ、幼なじみが恋人になることよ。」「お父さんとお母さんもそ
うですね。」「違うわよ、私が物心ついた頃にはお父さんはもうタイトルを持
っていらしたもの」もし姉が生きていて夫と結婚していたら筒井筒と言われた
だろう。夫とは十五歳、姉とは十歳離れている私はいつもみそっかすで疎外感
を感じていた。

127パッチワーク 2016明子 その4:2004/07/31(土) 06:21
 「アキラと進藤君は私の考えていたのと違う関係らしい」とこの時は安心し
た。だが、あれから二年、息子は未だに進藤君の家にいる。 

 この二年は間隔を開けないように一・二ヶ月に一度は何らかの理由を付けて
直接会う機会を作るようにした。最初の一年はどこかピリピリしたところが残
っていた。話題も進藤君のことばかりで時に少し子どもの話があるくらいだっ
た。だが、いつ頃だったか進藤君が囲碁普及で一ヶ月北欧に行っていると聞い
たときそれまでと違って穏やかな表情をしていたのを憶えている。去年くらい
から話の内容にも子どもや奥さんのことが混じるようになってきた。断片的な
話を統合すると最初アキラと進藤君は離れで、奥さんと子どもは母屋でと分か
れて暮らしていたのが最近は一緒に暮らしていて夜も四人一緒、進藤君が対局
などで留守の時も川の時になって寝ていると聞くと一体、この三人の関係はど
うなっているのか。傍目からはアキラが新婚家庭に居候してそのまま居座って
いるようで相手の女性はどう思っているのか。不安なことばかりだがアキラ本
人は二年前のことが嘘のように落ち着いた日々を送っているようだった。

 「親友のおつれあいですの。ええ家族ぐるみでおつきあいしていると聞いて
おります。」 去年から街で息子と一緒にいた女性は誰かとの問い合わせが頻
繁に入るようになった。

 夕食の準備をしているとアキラから、明日二歳の男の子を預かってもらえな
いかという電話が入った。進藤君の奥さんが急に入院することになり、進藤君
は地方でタイトル戦で帰ってくるのは明後日。自分も明日対局があるので預か
ってもらえるならこれから箱根に連れて行くとのことだった。今のあの子が自
分たちを頼ってくるのは嬉しかったので承知した。
---今日はここまで---

128名無しさん:2004/08/02(月) 21:14
ドキドキするな。
この三人はどうなってしまうんだろう…
明子さんはこの関係をどう考えているのかな?
続きが楽しみだ。

129ルームサービスDON’T DISTURB27:2004/08/02(月) 21:20
キテタ─wwヘ√レvv〜(゚∀゚)─wwヘ√レvv〜─ !!

なんだか情念が見えるぞ、ヒカルたん、どうなってしまうんだ。

130名無しさん:2004/08/02(月) 21:22
スマン、名前欄消し忘れた
ものっそ恥ずかしい……………。

131名無しさん:2004/08/07(土) 01:34
>130
ルームサービスも続き待ってるぞw

132名無しさん:2004/08/07(土) 19:51
チャウダーたん可愛いな(;´Д`)ハァハァ
キミの変態若゛が好きなんだ。また降臨待ってる。
というかパッチたんもチャウダーたんも魔境の方に投下しないのかい?

133名無しさん:2004/08/22(日) 00:07
ここで(;´Д`)ハァハァしようと言ってるわりには、まだ誰も何も書きこんでいないのか。

じゃあ一番乗りで(;´Д`)ハァハァしちゃうぞー!!

(;´Д`)ハァハァ愛してるよ、ヒカルたん!!
こんな大きいの、お口に入るかな?
ああ、こぼれてるよ、ヒカルたん! 舐めてあげるね。
え? もっと欲しい? そんな大きな口を開けて、ヒカルたんは大胆だね(;´Д`)ハァハァ




ヒカルたんと一緒にアイス食ってます。

134名無しさん:2004/08/22(日) 01:25
▼〃ヾ
(*゚ー゚) 
___________
|ヒカルたん(´∀`)|
ーーーーーーーーーーー

135名無しさん:2005/04/09(土) 20:58:31
広告のスレが上にたまって来たのでいったんageます。

136名無しさん:2005/05/26(木) 06:54:49
先日、こちらの存在を知りました。
もんのすごく萌えたので記念パピ碁。

てかこのスレ機能してるんだろうか…塔矢スレは元気そうで羨ましい。
ヒカタン萌えー

137名無しさん:2006/02/03(金) 01:39:06
あげます

138名無しさん:2006/04/12(水) 01:13:55
あげます

139名無しさん:2006/04/27(木) 13:54:24


140名無しさん:2006/05/17(水) 21:43:03
パッチワーク 2006.05.18(アキラ)

 北斗杯の参加資格はその年の五月五日時点で十八歳以下であること。僕らが参加したの
は去年までで今年は初めての北斗杯に参加しないGWだった。今年の北斗杯を見に行きた
がった彼の希望でスケジュールを空けてくれるように棋院に頼んだけれど交換条件のよう
に二人とも翌週に泊まりのイベントを入れられてしまった。東京より肌寒い仙台から日曜
の夜に帰ってきて、今日やっとスケジュールが合って碁会所で待ち合わせている。僕とし
ては昨日の夜からでもよかったのに彼に用事があると断られた。
 今日彼と検討をしたいと思っている母が中国から送ってきてくれた父の先週の棋譜を並
べていると広瀬さんの声が耳に入ってきた。
「そういえば昨日の夕方駅前で進藤君見かけましたよ。かわいらしい女の子と一緒で。
デートですかねぇ、スーツきて。しゃちほこばった顔して。」
「あら、そういえばこの前訊かれたわ、女の子に誕生日プレゼント何あげればいいかって。」
「アキラ、進藤君の彼女ってどんな子なんだ」

 タイミングがいいのか悪いのか彼が入ってきたのはそんなときだった。
「市河さん。言われた通りに指輪にしたんだけど大きすぎちゃって、お店の人がチェーン
くれてペンダントになっちゃった。」
「お前の彼女なんてなるのは浮かれたちゃらちゃらしたミーハー女だろうが」
「清楚な感じのかわいらしい娘でしたよ」
「彼女って?何の話」
「君の彼女の話だよ、進藤君」
「オレ、彼女なんていないよ。芦原さん」

 そのときドアが開いて入ってきたのはあの女だった。一瞬目が合った僕にペンダントを
見せつけながら勝ち誇るように会釈をして
「ヒカル、お財布下駄箱の上に忘れてたよ。」
「これから学校か?今日バイトだろ、この前にみたいに誰かにつけられたら危ないんだか
ら駅ついたら電話しろよ。」


 あの女が出て行ったとたん
「進藤君、彼女の家の下駄箱にお財布忘れたなんてもしかしてお泊まりデートだったの」
「チガウ、あかりは幼なじみで、一緒に住んでんの」
彼の回りにいた人たちが一瞬固まった。
「違う、違う。えーっとあかりは幼なじみで、おじさんが転勤したから高一のときからう
ちに下宿してんの」
「昨日、駅前でデートしてたでしょ。」
「昨日?ああ、あかりの誕生日だから駅前で待ち合わせて家族でご飯食べにいったの。
前、芦原さんに教えてもらったステーキの店。じいちゃんやばあちゃんから柔らかくて
食べやすい。いい店知ってるって褒められた。」

 そう、彼は彼やご両親、おじいさん、おばあさんの誕生日は家族で食事だからと僕の誘
いをいつも断る。家族じゃないのにあの女の誕生日もだ。だから僕はこの日、五月十七日
を覚えてしまった。そして覚えていない振りをして毎年彼を誘い、毎年彼に断られる。あ
と何回繰り返せば僕はこの日を彼とすごせるのだろうか。

141名無しさん:2006/05/21(日) 22:53:17
パッチワークキタ━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
若゛切ないな…
ヒカルたんは家族思いのいい子や

142名無しさん:2006/05/27(土) 22:47:24
久々に覗いたらパッチワークキタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!!!!!!!!!

ギコナビからスレに書き込めねぇよヒカルたん…たすけてくれ

143名無しさん:2006/08/03(木) 01:56:18
パッチワーク 2033年 平太20歳(ヒカルとあかりの長男)

 「ただいま」といいながら母が仕事から帰ってきた。台所へ直行し買ってきたものを冷蔵庫などへしまう。久しぶりにみた変わらない母の習慣が懐かしい。

 「あら、来てたの」「飯は炊けてる。みそ汁も作った。ちびの食べられそうなもの適当に漁った。」娘は大人と同じものが食べられるようになったとはいえ味付けの濃いものは無理なので母が冷蔵庫の中に入れてある常備菜を味付けし直して一足早く食べさせて。風呂にも入れ、あとはさっさと眠らせるだけだったけど、ばあちゃんを見て父似の目をランランとさせてる。もうすこししておねえちゃん三人組がそろったら家中を走り回るだろう。

 「ありがと。礼ちゃんは」と妻のことを聞かれた。「王座戦一次予選 持ち時間五時間。十二時すぎそうなら会館行くからちび預かってほしいんだけど。」「お弁当作るから持って行きなさい。」さすが棋士と同居歴三十年よくわかってらっしゃる。「お義母さん遅くなるって言うから直ちゃんにも来るように言ってある。」「じゃあ雪彦と一緒に帰ってくるわね。金子さんが遅くなるなら直ちゃんこっちに泊まればいいわ。」「居間のモニター二台借りてる」「一番大きいのは父さんがアキラさんみてるでしょ。今日は十二時すぎるかもっていってたし。」「そんな感じ、相手緒方先生だし。お互い探り合ってる。お父さんさっきからああだこうだモニターに向かって話しかけてる。うるさいよ。」「いつものことでしょ。雪彦がいつもみてるのが七時からあるし、私たちは九時からニュースと ドラマみるから残った一台に予約って紙貼っておいて。」母と妹たちはいま香港のドラマに夢中だ。中国・韓国・トルコ・ブラジル・インド出身の歌って踊れる主人公五人組に夢中で誰が一番かっこいいかでいつもかしましい。
「でも何で二台いるの。」
「王座戦挑決も今日」
「そう、今日はゴーヤチャンプルよ。ゴーヤ洗って、綿とって、豆腐を水切りしておいてね。」
そういいながら母は着替えるために自室へ行ってしまった。息子への挑戦者が誰になるかは興味がないらしい。囲碁と将棋の違いはあれど対戦相手を気にしないというのはタイトルフォルダーの家族を二十年やってきた生活の知恵なのかもしれない。

144名無しさん:2006/08/03(木) 01:58:50
パッチワーク 2033年 平太 その2


 父たちが使っている離れにも母の部屋にもモニターはあるけれど子どもが使えるモニターは居間にしかない。宿題の調べ物でも使うから子ども四人でモニターが四台、一人一台に見えるけれど父とあーちゃんは自分たちの部屋で対局中継(含録画)をみることを母に禁止されている。理由は夢中になりすぎて食事を忘れるからだ。昔、離れで見ていて何回も食事だと母が声をかけたにも関わらず気づかなくて怒らせたらしい。母の方針で子ども部屋はあるけど荷物を置くためと眠るためだけの部屋で勉強も遊びも居間でしてた。だから中継されている対局をみながら父とあーちゃんの二人がああだこうだと検討(時々脱線して碁と関係ないことが争点になる。母はいつもの痴話げんかでしょと気にしてない。)しているのも、今日の父のようにモニターに向かって相方の対局についてああだこうだ言うのもいつもの見慣れた光景だ。そのせいかプロになった時に将棋の勉強用の部屋をもらったけれどここ一番というときに使うくらいで騒がしいところで集中力を養う訓練といいながら学校の勉強も将棋の勉強も居間でしてた。妹たちも今年は受験勉強大変と言いながら弟が騒ぎながらアニメをみ、父たちが騒がしく検討しているこの部屋で勉強している。母は子どもが一人でもいれば居間にいる。自分の仕事の勉強もここでしているし、疲れたときには居眠りもしている。そしてこの部屋を最後に出るのはたいてい母だ。

 あーちゃんは本名塔矢アキラ、囲碁の棋士でタイトルフォルダー三冠。表向き母の愛人その2(公表不可)、ちなみに表向き母の愛人その1(公表可)は父だ。この家の四人の子どものうち妹の片方と弟の生物学上の父親はあーちゃんで俺ともう片方の妹の生物学上の父親は父だ。でも四人とも戸籍上は認知されていなくて父親は空欄になっている。母が決めたことらしい。父もあーちゃんも碁バカの世間知らず(妻の母や加賀さん談)なのでこの家の碁以外のことは母が決めることになっている。だから生物学上の父親が誰であろうと俺たち兄弟姉妹は父を「おとうさん」と呼びあーちゃんのことは「あーちゃん」と呼んでいる。

145名無しさん:2006/08/03(木) 02:00:22
パッチワーク 2033年 平太 その3

 あーちゃんは実際は母の愛人その2(公表不可)ではなく。父の神の一手を目指す同道者(公表不可、囲碁・将棋界では口も聞かない犬猿の仲ということになっている。)兼ライバル兼愛人その1(公表不可)だ。母も含めたこの三人の関係はよくわからない。特に母とあーちゃんの関係は父を間に挟んだライバルなのか?じゃあなんで母はあーちゃんの子どもを産んだんだ。大人になればわかるかと思ったこともあったけれど社会人になり(学生兼業だけど)、結婚し、一児の父となり、二十歳になったけれど今でもわからない。妹と弟は父が望んだことなのだということ、誰もがほかの二人を大事に大切に思っているのはわかったけれど。

 父やあーちゃんは相方の対局の時、犬猿の仲のせいで棋院で行われている検討に参加できない。特に終局後の検討が白熱して相方の帰りが遅くなったときは家に残った方は対局相手に嫉妬するのか普段は一緒に六時には起きてラジオ体操と乾布摩擦をして一局打つのにそういった日の翌朝はたいてい昼過ぎまで仲良く布団の中だ。母は気にするだけ無駄とさっさと仕事に行ってしまう。見物(みもの)なのはどちらかがタイトル戦などで三泊だの四泊だの不在になったときだ。残された一人は二日目の昼くらいまでは我慢が効くらしいが母が仕事から帰ってきたあたりから迷子の子犬のように母に引っ付いている。夜も普段の離れではなくて母の部屋で休んでいる。これがもう一人が帰ってくると二人で母に引っ付いてて短くても二晩、長いときは長いときは一週間以上三人で一緒に寝てる。三人とももうなのか、まだなのか四十六歳。姪より年下の叔父さんとか叔母さんができる覚悟は必要なんだろうか。

 子どもの頃は友達の家には親は一人か二人しかいないと言うのが不思議でならなかった。そのせいで幼保園や小学校で家族について絵や作文を書いたとき物議を醸したこともあるけれどこの三人が親でよかったと自分が親になってそうおもっている。が親父さんうるさすぎ。夕飯食べたらさっさと将棋会館に行こう。最近、妻に色目を使っているヤツがいるから心配だ。

146名無しさん:2006/08/03(木) 02:02:15
パッチワーク 2017年7月 加賀

 車を入れるために門扉を開けたとたん中から出てきた進藤と鉢合わせした。「あぶねぇだろ」と思わず声に出したがあいつはすげぇ形相でとっとと出て行った。進藤を見送りにきていたのかチビを抱いた塔矢が「すみません」と当然のようにあいつの代わりに謝ってきた。その光景は今のオレにはちょっとつらいものがあった。
「どうしたんだ進藤のやつ。」
「あかりさんがお酒を飲んでしまったので迎えに来て欲しいって。」
「珍しいな、藤崎が進藤に弱味見せるなんて。」
「いえ、本人は一人で帰れるって言い張ってるらしいんですけど、一緒の人から頼まれて。」
「何で車出さないんだ。」
「進藤も今日、仕事先で飲まされてて、電車で行くって言い張って。僕が行ければよかったんですけど。」
「しかたないな」オレは門の前に止めたままの愛車のエンジンをかけ直した。駅への道の途中で進藤に追いついた。

 助手席に座った進藤に行き先を確認してナビを設定した。去年の一騒動の後、表向き藤崎が二股かけていたことになっている三角関係の解消をしてこいつと塔矢は口もきかない関係になったらしい。本当に二股かけてんのは進藤だなんてことは進藤や藤崎を子供の頃からしってる近所のじいさんやらばあさんならともかく棋院の奴らは気づいていないだろう。表向きの三角関係とこいつらのご面相だけでも世間にはマイナーな囲碁とはいえタイトルフォルダーの妻が夫のライバルと不倫とマスコミネタになりそうなのを戸籍上三人とも独身というのを楯に棋院がどうにか押さえきったらしい。将棋の世界を飯の種にしているオレのところにも仲違いの噂は流れて来たがそれももう当たり前のことのようになっている。

「で、どのあたりだって」
「改札口の前の高架下、売店の脇。いた。柵に寄りかかってる。」
球場そばの駅は試合が終わったのか思ったよりも人が多かった。
「向こう側か、Uターンするから、もうちょい待て。」
動いてる車のドアを開けようとする進藤を止めた。
塔矢や子供のことで熱くなりすぎてるこいつはよく見るが藤崎ってのは初めてじゃないか、ふーん。

147名無しさん:2006/08/03(木) 02:03:25
パッチワーク 2017年7月 加賀 その2


 今度はオレにも藤崎がわかった。藤崎の真横で車を止め
「もういいぞ」と言ったとたん進藤が車から飛び出した。
「あかり、大丈夫か。」
「なんで、ヒカルが来るのよ。大丈夫って言ったでしょ。」
「おまえ、注射の時の消毒でも赤くなるのになんで、酒なんか飲んだんだよ。」
「すみません、お店の人がジンジャーエールとモスコミュール渡し間違えて。」
どうみても二十歳(ガキ)な女が横から口を出して来た。
よくよくみると藤崎の回りにいるのは学生なやつばかりで藤崎が一番年上っぽい。どうすりゃ痴話げんかが止まるのかわからないらしい。
「男が一緒なんて聞いてないぞ。」
「女子大じゃないんだから男の子がいるのは当たり前でしょ。」
「痴話げんかはいい加減にしろ。」
進藤と塔矢の痴話げんか並みに回りが引いてるぞ。進藤お前の本命は塔矢じゃなかったのか。藤崎お前は都合のいい女じゃなかったのか。去年の騒動の後、津田と金子が進藤に藤崎を都合のいい女だと思っているなら別れるように言ったのを藤崎が拒否したらしいのは聞いていたけど、進藤お前本気で二股かけてんだな。

「先生、藤崎さんの家族の人きました。」
おい、そこのガキ日本語がおかしいぞ。
「すまないね、トイレ込んでて」
近づいて来た初老の男の顔を見てオレは驚いた。
「親父さん」
筒井の親父さんだった。
「加賀君」

 結局オレは進藤たちだけでなく親父さんも方向が同じだからと連れ帰ることになった。進藤と藤崎は後ろの席で舟をこいでいた。

 沈黙が怖くて饒舌になる。
「知りませんでしたよ、藤崎の先生が親父さんだなんて。藤崎も進藤も中学の時の後輩ですよ。二人とも囲碁部で、今はアパートの家主でもある。」
「そういえば昔 公宏が後輩がプロになったって」
「それが進藤ですよ。今じゃタイトルフォルダー様ですけどね。」
「進藤ヒカル本因坊。やっぱり須藤病院の」
「須藤病院?進藤ちの親戚らしいですけど。」
「昨日、君は来なかったな。」
「仕事で」
触れられたくない話題になりオレは口を閉じた。

148名無しさん:2006/08/03(木) 02:04:53
パッチワーク 2017年7月 加賀 その3


 昨日オレは七局目までもつれ込んだ名人戦の取材で伊香保にいた。そのころ、オレの実家ではバツイチだった姉貴のところに生まれた姪の命名式をしていた。来月には身内だけで集まって結婚式もある。親たちが絶対に来いと言わないのを見越してオレはその日も仕事を入れた。籍は姪の生まれる前に入れてある。婿養子になったのは筒井だった。

 姉貴で十二代目の実家の家業は江戸料理の料亭。跡継ぎは代々女が婿養子をとることになっていた。姉貴も27歳のとき婿養子をとったがお袋と姉貴の気の強さに一年も経たずに逃げ出された。姉貴が三十を超えたあたりからお袋がオレに見合い話を持ってくるようになった。

 中学時代から俺の家に出入りしていた筒井は板長に気に入られてオレの留守にきた時などよく板場でオレのことを待っていた。だから高校卒業後に調理師学校へ進学し板長の紹介で板長の師匠筋の料亭に就職したのも分かる話だった。そこで下積みをした後、同じ師匠筋の老舗に移り三年経った一昨年オレの実家に移って来た。

 五年前住み込みの修行が終わった筒井と一緒に暮らすための部屋を探し始めたとき壁になったのは家賃と俺たちが男同士ってことだった。上がりが終電の後になることもある筒井が自転車で通える距離でまだぺーぺーのカメラマンのオレと筒井が出せる家賃の上限は低かった。何カ所か回ったがこっちが気に入っても家主から断られることも何回かあった。その日も何軒か回ったけれどうまく行かなかった。最後に行ったのが葉瀬中のそばのアパートだった。目印は庭に蔵のある家といわれてあそこかと土地勘があった。家主は出かけてるかもしれないが声はかけて欲しい、留守にする時は部屋の鍵はあけておくので勝手に見て欲しいと不動産屋に言われて行った先は母屋・離れに蔵とアパートとそれぞれの建物はしょぼかったがこのあたりでも広い敷地だった。母屋の玄関先で声をかけたら出て来たのが腹のでかくなった藤崎で家主は進藤のばあさんだった。あれから5年たった。離れに進藤と塔矢、母屋に藤崎とチビ、アパートの一階に三谷と金子ともうひとりのチビ、二階の隣に夏目と津田となぜか回りは葉瀬中囲碁部の奴らばかりだったがオレたちは幸せだった。去年までは。

 去年の十月、筒井が体調を崩して仕事を一週間休んだ。その後も調子が悪かった。十一月姉貴がオレたちのアパートに来た。子供ができたから責任を取れと筒井に言う為に。それからはオレにとっても筒井にとっても悪夢だった。筒井からようやく聞き出したことの次第は翌朝の仕入れ当番の為に泊まり込んでいた筒井の寝込みを姉貴が襲った。姉貴が筒井を好きなのは知っていた。姉貴だけじゃない、お袋も親父も板長も筒井が気に入っていた。中一で同じクラスになり家へ初めて連れて行ったときみんな驚いた。筒井はオレにカメラと将棋を教え前の冬に山で死んだばかりのお袋の弟にそっくりだった。姿形だけじゃない気性もそっくりだった。違うのは将棋じゃなく囲碁が好きなことくらいだった。
 
 忙しい家の中で叔父貴だけがオレたち姉弟の相手をしてくれた。気の強い親父とお袋はよくぶつかっていた。お袋や親父が愚痴をこぼせるのは叔父貴だけだった。その叔父貴が急にいなくなって家の中の歯車が狂いだしたと皆が思ったとき叔父貴にそっくりの筒井が現れた。皆が筒井を叔父貴の身代わりにした。オレは同級生という特権をフルに活用した。店のある日は相手ができない、筒井に会いたいから店の定休日につれてこいという親のいい分はたいてい無視した。オレの対抗馬は姉貴だった。あのとき姉貴の相手をさせてたらこんな悪夢は見なくてすんだのか。

 親父さんを家の前でおろした。親たちにはオレたちのことは何も言ってないが三十すぎた男同士の同居がどう見られるか分からない訳じゃない。頼むから筒井にそっくりなその目で哀れむようにオレを見ないでくれ。

 おい、進藤なんでお前は塔矢の子を産んだ藤崎を憎まないでいられるんだ。塔矢なぜお前はチビを平太をかわいがれるんだ。

 オレの、オレたちの悪夢はいつまで続くんだ。

149パッチワーク 2036.9.13 あかり:2006/11/06(月) 22:38:55
2036.9.13 あかり

 玄関を開けたとたん私を出迎えてくれたのは昨日までと変わらず甘い香りだった。この香りに出迎えられるようになって一週間、そしてきっとあと一週間はこの甘い香りは続く。買ってきたものを仕舞おうと台所へ向かう途中に娘の、暁子用の台所をのぞいてみると暁子が真剣な顔でオーブンをのぞいている。この台所は暁子が調理師学校に入学した当初に家の台所で授業の復習をしていて夕飯の準備をしたい私とぶつかってしまったの知ったヒカルが作らせたものだ。アキラさんは甘やかしすぎだとヒカルを止めようとしたら逆にヒカルに暁子はプロの調理師目指しているんだから自分用の道具を持ってもいいじゃないか。俺たちが自分用の碁盤を持つようなもんじゃないのか。と言ったら素直に納得してしまった。

 私はちょっと甘やかしすぎとも思ったけれど仕事から帰ってすぐ夕飯の支度に取りかかれるのでたすかった面もある。けれど暁子が目指しているのはプロの調理師じゃなくてヒカルの調理師なのよね。私も研鑽を積まなくては。

 壁のホワイトボードにヒカルそっくりの字で作りながら気がついたらしいことが色々書かれている。見た目は父親のアキラさんそっくなのに小さい頃からすることなすことヒカルそっくりの娘だと思う。

 食卓の上にアキラさんそっくりの綺麗な字で「お兄ちゃんのところへ行きます」と彩子と雪彦の連名でメモがのっていた。こちらの娘は見た目がヒカルで中身がアキラさんだ。連日のこの香りに我慢できず隣のマンションの兄夫婦のところへ避難したのだろう。わたしも着替えてさっさと夕飯を作ってしまいましょう。

 夕飯を作っているとヒカル、続いてアキラさんが帰ってきた。アキラさんの手元には今日もケーキの箱が。これも一週間連続。ヒカルに食べさせて今のお気に入りを探ろうというのがアキラさんの作戦。それは暁子も同じ。この二人、対ヒカルに関しては同じ行動を取る傾向がある。でもアキラさんは多分今日が最後。ヒカルの最近のお気に入りのこのお店、オーダーメードのケーキの注文は五日前まで。つまり9月19日受け取り分の注文は明日が締め切り。暁子は自分で作るメリットを生かして21日の当日まで試行錯誤。

 ヒカルの誕生日の20日はヒカルの一番のお気に入り地元の「風花堂」のバースデーケーキなのは変えられない。風花堂はこれまでイチゴショートヒカルスペシャルを作ってくれたおじさんが今年80歳になったからと引退、これまで銀座のお店にいた私たちが朋お兄ちゃんとよんでいる55歳の息子さんが地元に戻ってきた。銀座のお店は朋お兄ちゃんの息子で去年までヨーロッパで修行していた淳也君が引き継いだ。

 ヒカルの一歳の誕生日におばさんは普通のバースデーケーキを頼んだのに風花堂のおじさんはヒカルのためにと前日お店を休んで銀座の果物店まで最高級のイチゴを買いに行き、普通のスポンジケーキ2段のはずがチョコスポンジをはさんだ4段重ね。クリームも特別に取り寄せた最高級品のヒカルスペシャルを渡されたのに代金は普通のバースデーケーキと同じしか受けとらなくて、そのあとも普通のとたのんでもヒカルスペシャルを用意してあって、申し訳なく思ったおばさんがヒカルの5歳の誕生日に他のお店に頼んだら風花堂のおばさんがヒカルスペシャルを当日代金はいいからと届けに来たそうだ。それ以来ヒカルのバースデーケーキは風花堂のイチゴショートだったけれど今年は普通のに変わるだろうと思っていたら昨日道ですれ違った淳也君がおじさんと朋お兄ちゃんがどちらがイチゴを買いに行くかで親子げんかしてたって笑いながら教えてくれた。

150パッチワーク 2036.9.13 あかり(2):2006/11/06(月) 22:41:27

 私のヒカルへのプレゼントは今年はネクタイピンとカフスのセットにした。宝永堂の先代の江口さんがヒカルのためにデザインしてくれた。去年はアキラさんが宝永堂にお願いしての今の店長の田川さんがデザインしてくれたのだけれど江口さんが自分がしたいと拗ねてしまったのでと田川さんに頼まれたのもある。できあがったセットを見て見覚えがある気がしたら江口さんがヒカルが私の二十歳の誕生日にくれた指輪のデザインをアレンジしたのだと教えてくれた。

 あの指輪の意味は今でもわからない。私の誕生石をあしらって左の薬指にぴったりのサイズだった。あれが他の指のサイズだったら私は素直にはめていたかもしれない。でも左の薬指のサイズでヒカルには怖くてなぜこのサイズなのか訊けなかった。大きすぎると嘘をついてその嘘がばれている気がして。碁会所のお姉さんに二十歳のプレゼントは指輪と勧められてなぜ駅ビルで売っているファッションリングじゃなくて宝永堂に行ったのだろう。誕生日前GWに上京してきた両親が二十歳の記念にと宝永堂で真珠のイヤリングを買ってくれた。そのとき江口さんに全部の指のサイズを測ってもらった。なにかのときその話をしてヒカルが憶えていたのかもしれない。あのサイズを選んだのはヒカルなのそれとも江口さん?

 今私の左の薬指には三人でお揃いの指輪がはまっている。ヒカルと田川さんが相談しながらデザインした。ヒカルとアキラさんは普段ははめていないけれど。

151パッチワーク 2006.09.21 アキラ:2006/11/06(月) 22:44:03
2006.09.21 アキラ
 9月20日、昨日は進藤の二十歳の誕生日だった。
 当日は日付が替わるのと同時にお祝いをメールで送った。返礼のメールはすぐ来た。でも怖くて、聴きたくないことを聴かされたくなくて電話はできなかった。
 二十歳、もう未成年じゃない。成人、大人として扱われる。これまで許されなかったこと、お酒や煙草が解禁になり、選挙権が与えられ。そして親の承諾なしに結婚できる。

 今日は二人とも手合いが入っているから、三日ぶりに進藤に会える。起きて最初にしたことは彼からのメールのチェックだった。彼からのメールは来ていなかった。今日会ったとき直接言われるのかもしれない。二ヶ月前のあの女の誕生日、彼は指輪を贈った。それを知って僕は覚悟を決めたはずだった。でも彼は婚約したとも結婚するとも僕に言わなかった。だから僕はあれはただの誕生日プレゼントだと一縷の望みに縋っている。

 彼はあの女を幼なじみだとしか言わない。でも彼は寝ているときあの女の名前を呼びながら僕にしがみついてくることがある。未だに自分の生理現象をコントロールできない、子どもの頃とあまりかわらない奥手で未経験な僕と違って一緒に風呂に入ったとき盗み見た彼はもう大人だった。今朝も僕は上手くできずにいる。彼がいれば、彼が手伝ってくれればそう思ってしまう。人に手伝ってもらうようなことじゃない。自分で、一人ですることだと頭ではわかっていても、自分の手を彼の手だと思うようにしても上手く行かない。彼に教えてもらってもう四年三ヶ月になるのに。最後に上手くできたのは十日前の朝、温泉地での宿泊セミナーで同室だった彼に手伝ってもらえたからだ。このときはヒゲの手入れもしてくれた。彼は毎朝手入れが必要だというのに僕は一週間に二回程度で十分なのにそり残したり、切り傷をつくったりとこちらも上手くできない。

 生理現象のコントロールもヒゲの手入れもよその家では父親が息子に教えることらしい。彼も父親やおじいさんそれに友だちが教えてくれたと言っていた。でも父は留守がちで碁以外のことではあまり僕のことを気にかけてはいないせいか、僕がいままでそのようなことで心配をかけたことがないせいか父に教わる機会は逸してしまった。芦原さんに頼めばよかったのかもしれないけれど気恥ずかしくて頼めなかった。僕が途惑っていたことに気づいたのは彼だけだった。

 だから僕はいつも勘違いをしてしまうんだ。彼に取って僕は特別だって、いつも気にかけていてくれるんだって。そんなことはないのに、これが僕じゃなくて越智君や社に対してだって同じことをするだろうし、彼の特別はあの女で僕じゃない。それはこの一ヶ月いやと言うほど思い知らされた。

 先月から彼の父親が長期出張になり、夜お母さんとあの女の二人だけでは不用心だからと彼は僕との検討の途中でも泊まらずに家に帰るようになった。最初は彼の家で検討をしようと誘われたけれど彼とあの女が一緒にいるのを見たくなくて「僕らの検討は五月蠅いらしいからきっと家族の方の迷惑になると。」断った。僕の頑なさを見てとったのか彼はそれ以上何も言わずにいつものように僕の部屋での検討に同意したけれど終電に間に合うように帰ってしまう。セミナーの時は父親が帰ってきてるからと泊まりの仕事を承諾したらしいけれど先月から父親が帰ってくる来月まで事務局に頼んで日帰りの仕事しか入れていない。セミナーでは前の日久しぶりに父親と話ができたとうれしそうに言っていた。

 もう、部屋を出なければいけない時間だ。大丈夫だ。彼があの女と結婚しても彼にとって一番大事なのは碁だし、碁のライバルは僕だ。碁盤を挟んでいれば彼と僕の間に誰も、あの女でも入ってくることはできない。碁盤を挟んでいる限り彼は僕のものだ。僕だけのものだ。誰にも渡さない。

152名無しさん:2007/03/15(木) 21:23:07
パッチワーク キテタ━━(゚∀゚)━━!!!

153名無しさん:2008/10/13(月) 10:22:01
今ごろ目覚めてハアハア

154名無しさん:2009/11/07(土) 19:09:12
久しぶりにヒカ碁読んだ
やっぱりヒカルたん(;´Д`)ハァハァ

155名無しさん:2011/03/26(土) 17:40:21
ヒカルタン(;´Д`)ハァハァ

156名無しさん:2011/06/12(日) 02:52:17
川上とも子さんのご冥福をお祈りしたします
ヒカルたん…


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