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从 ゚∀从百合は咲耶、乙女は散り急ぐ徒花のようです

1名も無きAAのようです:2012/04/16(月) 23:10:30 ID:9chxrQSQO
o川*^ー^)o「こんちまたまた。いやあ、この作品を読んで下さる方がいるようで感謝感激雨霰っす」

o川*゚ー゚)o「そこで次のレスから本編が始まる訳なんすけど、ちょいとお先に一つご注意をと」

o川*゚ー゚)o「この作品は百合と申しますか、少女同士の秘め事的な要素を多分に含みます」

o川*゚ー゚)o「更に一応18禁という形にさせて頂いております」

o川*゚ー゚)o「18歳未満の方や、そういうのが苦手な方は、大変申し訳ございませんがご遠慮お願い致します」

o川*^ー^)o「18歳以上でそういうのが気にならない方は、楽しんで頂ければ幸いっす」

o川*゚ー゚)o「では次から本編スタートっすよ!」


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65名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 00:01:09 ID:xaNXjZl.O
あれから十数分間、初めて味わう快感に意識が混濁していたハインは、ベッドに侵入して来たデレと半裸で抱き合いながらまどろんでいた。

首筋に鼻を擦り寄せたり、頬に口付けを繰り返したりと、
それは背後に白百合の花弁が透けて見えても違和感のない光景だっただろう。

そして我に返ると共に怒りのボルテージが頂点へと達し、デレをベッドから叩き出した後、床に正座させて今に至る。

从 ∀从「最後に言い残すことはあるか? 命乞い以外なら聞いてやる」

ζ(^ー^*ζ「あんまり褒めないでくださいよぉ。私は妹として当然の朝の御奉仕をしただけですから」

从#゚∀从「誰が褒めてるかっ!! そもそもお前は妹じゃねえし、ツッコミどころが多すぎて大変だわ!」

ζ(////*ζ「わ、私はお姉様が望まれるのでしたら、前でも後ろでもお口でも構いませんので、その優しく突っ込んでくださいね」

从 ゚∀从「……あー、反吐が出る程めんどくせえー」

ζ(////*ζ「ああ! デレは嘘を吐きました、本当は優しくされなくても大丈夫です。むしろ痛いぐらいにして頂けた方が私としても嬉しく」

ζ(////*ζ「私の大切な場所に、お姉様の所有物(妹)である刻印を、鮮血と共に刻んで頂けたら――」

ζ(゚ー゚*ζ「って、あれ? お姉様?」

一人盛り上がっていたデレは、人の気配がなくなったことを察し部屋をぐるりと見渡す。
すると、既にハインの姿はどこにもありはしなかった。

ζ(>ー<*ζ「もぅ、放置プレイだなんて、お姉様ったら♪」

それでもなぜか恍惚とした表情を浮かべる、嬉しそうなデレであった。


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66名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 00:02:00 ID:xaNXjZl.O
从 ゚∀从「妹かあ、……妹ねえ?」

未だ着せられている感が拭いきれない制服に身を包み、寮から手近にある喫茶店へ入ったハインは、
アイスコーヒーのミルクをストローでかき混ぜながら思案する。

もちろん考えているのは今朝の出来事、そしてそれに付随する妹について。

从 ゚∀从「姉妹だなんて、誰がこんなもん考えたんだよ」

乙女における姉妹とは普通の血縁関係を表す熟語ではなく、もっとむせ返るような花の蜜の香りが溢れる言葉である。

彼女達にとってお姉様という響きには羨望や憧憬、そして少しの背徳さ。
そういったものが昔から込められてきた。

从 ゚∀从「大正浪漫的なとでもいうのかね。女同士で大っぴらに恋人とかいえないから、代替みたいなもんか?」

そして乙女の間では不文律として『姉は妹を助け、妹は姉を支えるもの』という理があり、
それを破った者は唾棄すべき存在として扱われる。

簡単にいえば姉妹は自分を絶対に裏切らない人物といえ、
弱肉強食の世界で生きる者の多い乙女達にとっては、ある意味で恋人以上の存在であった。

67名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 00:03:07 ID:xaNXjZl.O
从 ゚∀从「従姉妹とかもう意味不明だよなあ」

かき混ぜたコップの中で描かれている渦巻き模様のように、ぐるぐると思考が回る。

一人の姉が複数人の妹を持つと妹間の関係は従姉妹となり、間接的に味方として扱われる。
だが妹同士のいさかいを止められるほどの強制力を持ちはしない。

また妹の妹が姉の味方だとも限らない。

真に信頼できるのは直接契りを結んだ姉妹だけであり、それが故に乙女にとって姉妹という関係は神聖視される。

从 ゚∀从「とはいえ、てっぺん目指してる俺に学府で姉なんて以ての外」

从 -∀从「妹なあ。なーんか性に合わねえんだよな」

ハインはフォークで何個も重ねて貫いた、サラダのコーンを口へ運びながら一人ごちる。

ツンにオオカミ、友と呼べる者なら過去にも幾人か存在した。
しかし姉妹ともなれば、もっと深い特別な絆を求められる。

昔から一人で生きるのに慣れていたハインは、自分のパーソナルスペースに誰かが踏み入ってくるのを極端に嫌う。

そして、自分の近くに誰かがいると、またオオカミのときのようになってしまうかもしれない。
そんな恐怖がハインの心底を縛った。

68名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 00:04:04 ID:xaNXjZl.O
从 ゚∀从「うだうだ考える必要もねえか。俺は独り身だろうと乙女学院の頂点へ立つ、そして……」

学府の協力を得て母の仇を探し出し、そいつを討つ。
改めて考えなくてもハインの行く道は一つ、復讐という名の修羅道だ。

从 ゚∀从「俺としたことが、久し振りに学校なんかに通うから少し惚けていたようだな」

気合いを入れ直したハインはハニートーストを平らげ、会計を済ませて向かう。

地獄の花園の本拠地、乙女学院へ。


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69名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 00:05:12 ID:xaNXjZl.O
(*゚∀゚)「つまり乙女の戦闘能力の秘訣は、このオーラ的な力にある。我々はそれを神威と呼んでいるがな」

从 -∀从 コクリコクリ

(*゚∀゚)「神威と呼ばれる所以は、世界の情報を書き換えるからだ。我々の能力は原子の段階から世界を作り直す、正に神の力というわけだな」

从 -∀从 ウンウン

(*゚∀゚)「神威の総量には個人差があるが、身体強化と能力の発動、性質上そのどちらにも神威は必要となる」

(*゚∀゚)「扱いには気をつけろよ。神威が尽きた乙女なんて、頑丈さを除けば一般人とさして変わらんのだからな」

从 -∀从 ナルホドナルホド

(*゚∀゚)「といっても一晩寝れば大抵回復する。まあ己の限界を超える使い方をしたら、この限りではないが」

从 -∀从 ヘーヘー

(*゚∀゚)「使いこなせればこれほど便利なものはないぞ。日常生活においても熱エネルギーの遮断に応用すれば冷房要らずだしな」

从 -∀从 ハーイ

(*゚∀゚)「……さっきから誰のために、こんな初歩の講義をやっていると思っているんだ?」

从 -∀从 ダレダレ?

(*゚∀゚)「貴様に決まっているだろうが! 器用な居眠りの仕方しよって!!」

講師のつーは、手刀の形を作った腕先に神威を集約させ、寝ぼけているハインの首筋へと裂帛の勢いで振り下ろす。

70名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 00:06:03 ID:xaNXjZl.O
从;゚∀从「うおっと!?」

寝込みをデレに襲われるようなハインではあるが、敵意に対しては常に感覚を鋭敏に尖らせている。
この程度の不意打ちが直撃することはなく、容易く躱した。

从 ゚∀从「つー先生よ、今のは俺じゃなきゃ危なかったぜ」

(*゚∀゚)「これぐらいで危ないやつはウチにはいらん。講義を続けるぞ」

从 ゚∀从「へーい」

(*゚∀゚)「神威は生体エネルギーみたいなものだが、手っ取り早く増強する方法が一つある」

(*゚∀゚)「それはなんだと思う、ハインリッヒ?」

从 ゚∀从「そりゃあもちろん身体を鍛えることっしょ。鍛えて鍛えて極限まで身体をいじめ抜けば、自然と神威は強化される」

(*゚∀゚)「学術的な根拠は見つかっていないが、それも間違いとは言えないな。貴様やヒートみたいな実例も存在する」

71名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 00:09:10 ID:xaNXjZl.O
(*゚∀゚)「しかし、もっと手っ取り早い方法がある。それは神威の共振性を利用することだ」

从 ゚∀从「共振性?」

(*゚∀゚)「乙女が二人以上でとあることをすると、互いの神威を高め合うことができる」

从 ゚∀从「そんな便利なことが――」

(*゚∀゚)「その方法っていうのが、乙女同士で粘膜を接触させることだ」

从 ゚∀从「……はっ?」

(*゚∀゚)「粘膜をどう接触させるか、方法は人それぞれだ。まあ眼球と眼球を擦り合うとかでも理論上はOKだしな」

(*゚∀゚)「学府としては粘膜接触を強く推奨している。誰にも見咎められることはないから、場所を気にせず励めよってことさ」

(*゚∀゚)「――なんなら私と今ここで粘膜接触してみるか? ハインリッヒ」

从////从「せ、セクハラっすよ、先生」

(*゚∀゚)「冗談だ。とはいえ相性や感情等、様々な要因に影響されるから、ヤりちらかしたからって簡単に強くなれるわけでもないがな」

(*゚∀゚)「さてハインリッヒの目も覚めたみたいだし、講義を続けるか」


確かに眠気は吹き飛んだが、結局初心なハインの頭には、これ以上授業の内容など入ってこなかった。


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72名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 00:10:06 ID:xaNXjZl.O
从 ゚∀从「さてと、ここからが本番だ!」

人通りもまばらな廊下を歩きながら、ハインは両手で自分の頬を張り、気を引き締め直す。
この放課後が、乙女同士の決闘が認められる唯一の時間である以上、座学の不抜けを引きずるわけにはいかない。

ちなみに一般人は巻き添えを避けるために、この時間帯は外出を控えているのだと、昨日街が無人だった理由をハインは先程知った。

从 ゚∀从「片っ端からってのも悪くはないが、どうするか」

ζ(゚ー゚*ζ「狙うは上ですか、お姉様!」

从;゚∀从「うわあ!? でたっ!」

ζ(゚ー゚*ζ「もぅ、人をお化けみたいにいわないでくださいよ」

从 ゚∀从「俺にとっちゃお前は化け物みたいなもんだ。こんのエロ怪物が」

ζ(^ー^*ζ「あぁんっ、お姉様が蔑んだ目で私を見られてる。ゾクゾクしてしまいます……」

从;゚∀从「もうやだ、俺こいつ苦手」

ζ(゚ー゚*ζ「でも私がいれば、学院や学府の知識についてお役に立てますよ」

从 -∀从「あー、うーん、そうなんだよなー。でもなー」

ハインにとって一番の問題は、学府の知識をなにも持ち合わせていないこと。
実力が上位の生徒と闘おうにも、どこの誰がそうなのかすら分からないのが現状だ。

73名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 00:12:30 ID:xaNXjZl.O
ζ(>ー<*ζ「ああ、悩ましげなお姉様も麗しい。足蹴にして頂けないかなー」

从;゚∀从「ドエロでドMってなんなんだよもう! いいか、俺はお前を妹にはしない」

从 -∀从「それでも俺の力になりたければ勝手にしろ」

ζ(゚ー゚*ζ「それは私の顔を、お姉様の生足で踏みにじって頂けるということですかっ!!」

从;゚∀从「いってなくね!? いつそんな話が出てきた!」

ζ(゚ー゚*ζ「わかりました。今日のところは生脱ぎの靴下を頂くだけで我慢します」

从;゚∀从「ドエロでドMで足フェチってどんな三重苦だよ! ヘレン・ケラーもびっくりだわ!」

ζ(;ー;*ζ「私の前で他の女の名前を出されるなんて……」

从;゚∀从「どこの次元に到達すればヘレン・ケラーに嫉妬できるんだ!?」

74名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 00:13:41 ID:xaNXjZl.O
ζ(^ー^*ζ「ちゃららっちゃらー! デレが仲間に加わりました」

从 -∀从「半ば強引にな! つうかお前、デレって名前なのか。俺の名前は――」

ζ(゚ー゚*ζ「ご心配には及びません。私はお姉様の名前も身長も体重も、血液型も3サイズも生年月日も電話番号も」

ζ(^ー^*ζ「靴のサイズも、よく買う飲料水のメーカーも、シャンプーの好みの銘柄も存じておりますので」

从 ゚∀从】「もしもし、警察ですか?」

ζ(>ー<*ζ「あにゃん、冗談ですよお姉様ー」

从 ゚∀从「今のは冗談とかじゃなくてただの犯罪だろ。心配には及ばないどころか、むしろ物凄い勢いで心配になったわ」

ハインは嘆息を漏らすが、とりあえず貞操の危機以外にはさしたる害はないだろうと、デレを受け入れる。

ζ(^ー^*ζ

よしんばこいつが邪魔になるならば排除するだけだと、ポケットの中で人知れず拳を強く硬く握り締めながら。


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75名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 00:14:56 ID:xaNXjZl.O
从 ゚∀从「本当にこんなところに、強いやつがいんのか?」

ζ(゚ー゚*ζ「はい。彼女が学府内で最強クラスなのは間違いありません」

ハインはデレに手を引かれて、雑木林を奥へ奥へと進んでいく。
日照時間が長い季節とはいえ、こうも樹木が生い茂っていると、辺りは不気味な仄暗さを醸し出していた。

ζ(゚ー゚*ζ「お姉様の頼みとはいえ、本音を申しますとヒートさんに会わせてもいいものか悩んでいます」

ζ(-ー-*ζ「それほどまでに彼女は、ずば抜けて強い」

从;゚∀从「――っ!? こっちへこい!」

無数の鋭い針で肌を突き刺されたような、粟立つ感触。
長年戦場にいることで培った、勘ともいえる危険予測能力が警報を鳴らす。

ハインはとっさの判断でデレを庇うように抱き寄せ、地に足を食い縛る。



ノパ⊿゚)「はああああああああああああ!!」



身に受けたのは突風とも衝撃波とも形容しづらい何かだ。

76名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 00:16:04 ID:xaNXjZl.O
从 ゚∀从 (ただの気当たりっ!? なんなんだよ、このでたらめに強力な神威は!)

ハインが現象の分析を試みていると、

ζ(////*ζ「お姉様ぁん……」

どういうわけか、デレがハインの腰に足をギュッと巻き付け、背中に手を回して抱き付いていた。

ζ(////*ζ「お姉様と繋がってるなんて、頭がフットーしそうだよおっっ」

从 ゚∀从「ていっ!」

ζ(>ー<;ζ「ひゃん!」

从 ゚∀从「油断も隙もなさすぎんだろ、お前は」

ζ(゚ー゚*ζ「えっ、今私のことを好きって」

从;゚∀从「いってねええええええええぇぇぇ!!」

もし過去にさかのぼれるならば、少し前の自分に『お前の判断は間違っている』と忠告しにいきたい程度には、
デレを味方に引き入れたことを、後悔し始めたハインであった。

77名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 00:17:08 ID:xaNXjZl.O
ノパ⊿゚)「ここはアタシの修練場だ。踏み入ったら危険なことぐらいは知っているだろう」

と先の気当たりの主が林の奥から顔を覗かせ、こちらへと近付いてくる。

切れ長の目をした、端整な顔立ちの少女。
彼女が歩く度リズムに合わせて、後頭部の高い位置で結ばれた黒曜と見紛わんばかりの美しい髪が、糸を引くようになびいた。

ノハ-⊿-)「……まったく、騒がしいと思えば姉妹連れか。そういうことは他所でやってくれよ」

ハインは彼女に指摘されて、それがどういう意味で何を指しているのか悟る。

从;゚∀从「ば、馬っ鹿、お前これはそういうんじゃなくてだな」

ζ(゚ー゚*ζ「ええ、御主人様と奴隷というか、飼い主と雌犬というか、そういう感じです!」

ノハ;゚⊿゚)「さすがに他人の嗜好にまで口を出す気はないが、あまり若いうちからそういうのはどうかと思うぞ」

从;゚∀从「だから本当に違えんだって! 俺は新入生で、お前に喧嘩を売りにきたの!」

ノパ⊿゚)「アタシに?」

从 ゚∀从「おうよ! お前、ヒートだろ? 強いんだってな」

本当は確証を取らなくても判断できる、こいつは強い。
ただ立っているだけで他を圧倒する存在感、ハインが今まで出会った中でもこれほどの者はそういなかった。

だからこそ敢えて挑発的な態度を取ることで、相手の出方を探る。

78名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 00:18:58 ID:xaNXjZl.O
ノパ⊿゚)「君、名はなんという?」

从 ゚∀从「俺はハイン、ハインリッヒ。覚えておけ、お前を倒す者の名だ」

ノパ⊿゚)「ハインか。引き締まった良い脚をしている」

ζ(゚ー゚*ζ「お姉様の美脚は、足の裏から太股に至るまで私のものですからね! 譲りませんよ!」

从 ;∀从「もうヤダこの学院、足フェチばっかりなんだもん!」

ノハ;゚⊿゚)「いや、そういう意味ではない! 身体を鍛えているなという意味で、上半身はブレザーで隠れているから脚で判断しただけで!」

学院でトップクラスの実力者とはいえども、その辺りは多感な十代の少女である。
性的な意味ではないと、頬を赤らめ必死に弁解するヒートは元来の意味で乙女といえた。

79名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 00:20:30 ID:xaNXjZl.O
ノパ⊿゚)「こほん、仕切り直すぞ。相当絞り込まれた良い身体だ、確かにハインは強いのだろう」

从 ゚∀从「そいつはどうも」

ノパ⊿゚)「だがそれでも現状でアタシに及ぶとは思えん。急かずに、もっと実力を着けて出直してくるといい」

从 ゚∀从「はっ、笑えねえ冗談だ。本当に及ばないのか試してみようぜっ!!」

ハインが胸の前で握り拳を叩き合わせると、瞬時に周囲の大気が弾けた。

放出された神威により紅の髪はより一層赤みが増し、木漏れ日を浴びて紅蓮の輝きを放つ。

ノパ⊿゚)「愚にして直か。まあ、アタシはそういうやつ好きだがなっ!!」

ハイン、ヒート、二人の乙女が戦闘の構えを取り向かい合った。

一瞬即発、互いの呼息が強まり気迫を纏う。
木々も恐怖に身を縮めたのか、一切の無音が周囲を包み込んだ。

80名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 00:20:55 ID:xaNXjZl.O
|゚ノ ^∀^)「御待ちください!」

するとそこへ二人の間を裂くように、鋭い声が投げ掛けられる。

ノパ⊿゚)「君は……」

|゚ノ ^∀^)「ご無沙汰しておりますわね。ヒートさん」

从 ゚∀从「なんだ、ヒートの知り合いか?」

ノパ⊿゚)「いや、悪いが知らん。アタシは人の顔と名前を覚えるのが苦手でな」

|゚ノ;^∀^)「え、ええっ!?」

ノパ⊿゚)「学院の生徒は、クールとキュートとハインぐらいしか自信がないな」

|゚ノ ^∀^)「ま、まあ、ハインリッヒさんはともかく、そのお二方と比べられれば私の存在など霞むかもしれませんが」

从 ゚∀从「そんで影の薄いの。なんの目的で邪魔をした」

|゚ノ ^∀^)「私の目当ては貴女です、ハインリッヒさん!」

从;-∀从「目当てねえ。なんか違う意味に聞こえるのは、デレに毒されてんのかな」

ζ(^ー^*ζ「きゃっ、お姉様ったら、こんなところで惚気ちゃって」

从 ゚∀从「それで、俺になんの用だ!」

|゚ノ ^∀^)「それはですね――」

ζ(////*ζ「ああんっ、お姉様に無視されちゃったぁ……、はあはあ……」

自分の身体を抱くように両手を交差させて、よだれを垂らしながらビクビクと痙攣を繰り返すデレ。
ハインはそれを極力視界に収めないよう奮励努力した。

81名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 00:27:08 ID:xaNXjZl.O
|゚ノ;^∀^)「えっと、あの、その」

*(‘‘)*「あんた達! ちゃんとお姉様の話を聞きなさいよ!」

⌒*リ´・-・リ「レモ姉は押しが弱いから、結局こういうのは僕達任せなんだよね」

気の毒になるほど押しの弱い少女の後方から、見知った顔が二つ現れた。
昨夕一蹴したヘリカルとリリ、二人の登場にハインはめんどくさそうに顔をしかめる。

从 ゚∀从「そんで、さっさと話を進めようぜ」

*(‘‘)*「端的にいうと、まずはお姉様がデレに謝りたいということが一点」

|゚ノ ^∀^)「デレさん。私の軽はずみな言動のせいで、妹が迷惑をかけることになってしまって申し訳ありませんでした」

ζ(゚ー゚*ζ「いえいえ、その件に関しましては私も運命の人と出会えたので、感謝したいぐらいで」

⌒*リ´・-・リ「そしてもう一つが、ハインリッヒ。貴女に対する妹の仇討ちだね」

从 ゚∀从「いいねえ。仇討ちってのは俺も大好きだぜ! そういうこった、すまないなヒート」

ノパ⊿゚)「別に元々アタシは今のハインと闘るつもりはなかった。構わんぞ」

从 ゚∀从「だからってどっかに行くこともないだろ。見物してけよ」

ノパ⊿゚)「ハインの力を知ると楽しみが減ってしまうだろう? アタシは好物を最後に食べるタイプなのさ」

ノハ-⊿-)「――だから負けてくれるなよ」

期待していると言外に言い残し、ヒートは後ろ姿で手を振りながら更に林の深奥へと消えていった。

82名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 00:29:26 ID:xaNXjZl.O
从 ゚∀从「待たせたな。タイマンか、なんなら三対一でも俺は構わねえぜ」

|゚ノ ^∀^)「私は一人では文字通り無能な女です。ですからお言葉に甘えさせて頂きましょう」

レモナの声と同時に妹二人が動き、トライアングルを描いてハインを囲む。
その動きは洗練されていて、チームプレイに慣れている者のものだと一目で察せられた。

ζ(゚ー゚*ζ「お姉様、レモナさんは本当はかなり強いんです! 私も」

从 ゚∀从「これは俺の喧嘩だ。下がってろ」

昨日の様子から、デレを足手まといですらあると即時判断したハインは、有無をいわせぬ強硬な態度でデレを下がらせ、
身体をレモナへ向け、視線でリリ牽制し、気当たりでヘリカルを威圧する。

⌒*リ´・-・リ「いくよっ!」

まずは射程の長いリリが様子見といったところか、柔らかな土の大地がリリの能力に浸蝕される。
木陰であっても、その影の濃淡がはっきりと見て取れた。

从 ゚∀从「ふっ!」

リリの影に捕まったところで動けなくなるわけでもないが、スピードが鈍るのもまた事実。
もうヘリカルもリリも油断はしないだろう、その上に実力が不確定のレモナもいる。

ハインは躊躇せずに、軽快なステップで飛び下がることを選択する。

83名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 00:30:05 ID:xaNXjZl.O
*(‘‘)*「甘い!」

それを狙い澄ましていたヘリカルが疾走し、レイピア状の宝剣でハインの喉元を突いた。

从 ゚∀从「ちぃっ!!」

風を貫いて襲うのは、神威で生み出された武器だ。
砲弾ですら脅威に感じないハインでも、これはまともには食らえないかと、スカートをはためかせながらムーンサルトの要領で身体を逸して回避する。

|゚ノ ^∀^)「私もおりますよ」

着地点にはレモナが待ち構えていた。
畳みかけるように振るわれた掌打が、ハインの鼻先へと迫る。

从 ゚∀从「攻撃の瞬間防御を忘れる、未熟だな」

その打撃を左腕で強引に払い流すと同時に、ハインは右拳でレモナへ一撃をお見舞いする。
神威が込められた強力な拳打は唸りを上げ、レモナの意識を刈り取るべく顎先へと振るわれた。

|゚ノ ^∀^)「私達はチーム戦。私が防御を考えなくてもよいのです」

――決まる。
ハインがそう確信した瞬間、その場に空間ごと固定されたように、右腕がそれ以上前へと進まなくなる。

从;゚∀从「がはっ!?」

何事かと状況を把握する時間もない。
レモナの黒のオーバーニーに包まれた長い脚が、ハインの胸元を荒々しく蹴り飛ばした。

84名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 00:31:01 ID:xaNXjZl.O
从;-∀从「ぐうぅっ、はあ、はあ、影使いか! だが、昨日はそこまで強力では」

蹴り飛ばされたということは、全身が動かない程強固に緊縛されているわけではないようだ。
だが、それでも昨夕とは段違いの能力といえた。

⌒*リ´・-・リ「本当は僕はそっちの気ないんだけど、今日は特別に神威を高めてきたからね」

神威を高める、つまりは粘膜接触。

そう簡単に強くなれるものではないと講師のつーはいっていたが、
なかなかどうして大したものじゃないかと、ハインは舌を巻く。

*(‘‘)*「私も昨日と同じだとは思わないことね!」

ヘリカルの指の間で、三対の短刀が鈍色に光る。
両手を合わせて六本の刃、それらが手首のスナップをきかせて投擲された。

从;゚∀从「ちぃ!」

躱し、弾き、いなすが、リリの影に縛られた身体では全てをとはいかない。
短刀が頬を掠め皮膚を裂き、太股には浅くだが突き刺さる。

だが、ハインも黙ってダメージを負っていたわけではない。
躱しきれないのはわざと諦めて、距離を詰めるために踏み込んでいた。

⌒*リ;´・-・リ「っ!?」

そう、この戦況を不利へ導いているリリへと。
影を操ることに専心していた彼女は、無防備な存在といえた。

85名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 00:31:44 ID:xaNXjZl.O
从 ゚∀从「まずは一人っ!!」

レモナが妹を助けるべく動き出すが、レモナのリーチでは間一髪で間に合わないだろう。
そう踏んでいたハインは、


――自分の考えが甘かったと思い知る。


从;゚∀从「――っ!? あぐあああぁぁ!!」

焼けるような激痛が脳内を駆け巡った。
痛覚の発生源であるハインの肩口には、吸い込まれそうな闇色を湛えた剣が、強化制服を切り裂いて剣身を深く食い込ませている。

|゚ノ ^∀^)「これが私の【希代の合成賢者】。いかがですか、私達の合作である影の宝剣の切れ味は」

合成賢者、影の宝剣、合作、それらの言葉からハインは彼女の能力を察する。
一人では文字通り無能な女とはよく言ったものだと、胸中で毒づいた。

86名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 00:32:24 ID:xaNXjZl.O
从;-∀从「ぐうぅ! つぅ、はあ、はあ……」

ζ(゚ー゚;ζ「お姉様!」

|゚ノ ^∀^)「確かにハインリッヒさんは強い。仮に一対一ならば、私達三人と連続で闘っても傷一つ負わないかもしれません」

⌒*リ´・-・リ「だけど僕達の真価はチーム戦でこそ発揮されるんだ」

*(‘‘)*「貴女に勝目なんてないのよ」

从;-∀从「くそっ、ちくしょう……! 俺は……!」

強くなったつもりだった。
そのために血反吐を吐いて身体を鍛えた、努力に邁進した。

まめができて、それが潰れて、治りきらないうちに新しいまめができて、それがまた潰れて、爪まで剥れて。
幼い少女が痛みよりも恐れたのは、己の弱さ。

同年代の女子が化粧を覚え化粧水を肌に塗り込むのに代わり、ハインは血と汗を肌に塗り込んだ。

それでも、敵わない。

87名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 00:33:24 ID:xaNXjZl.O
|゚ノ ^∀^)「ハインリッヒさん、なぜ能力を使わないのですか? 貴女が第二階梯に達していないとは思えない」

从;-∀从「…………」

|゚ノ ^∀^)「もし未だに能力を使わずに勝てると思っているのなら、人を舐めるのも大概になさいっ!!」

从;゚∀从「くっ!」

|゚ノ ^∀^)「……私達三人は、同じ乙女といえど名家のお嬢様方とは違います。幼少のみぎりより、文字通り死に物狂いで学府を生きてきました」

|゚ノ ^∀^)「ここにはそんな乙女も掃いて捨てるほどいます。ヒートさんはその乙女達の頂点に立つ人なのです」

|゚ノ ^∀^)「覚えておきなさい! 目の前の闘いに死に物狂いになれない貴女に、彼女と闘う資格なんてないということを!」

从 ゚∀从「そう、だよなあ。……デレ、もっと遠くまで離れてろ。なんなら帰れ」

ζ(゚ー゚*ζ「ですが、お姉様」

从 ゚∀从「邪魔だからいけっつってんだよ!」

そうハインは敵わない。

――相手を傷付けないように加減していては。

88名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 00:34:06 ID:xaNXjZl.O
从 ゚∀从 (まだ大丈夫だ、これぐらいの傷ならまだ制御できる。オオカミの時とは違う!)

この程度で一線を越える事態は引き起こさないと、ハインは自分に言い聞かせるように鼓舞し、心の中で唱える。
曾祖母が目覚め、母が自分に与えてくれた能力を。

从 ゚∀从(【泣いた赤鬼】!!)

ハインの頭髪が炎のように美しい紅蓮から、くすんだ茜色へと変わる。
いつものどこか優しい瞳は暗く濁り、別人の様相を呈していた。

一度発動したが最後、鬼としての破壊衝動がハインの脳内を埋め尽くしていった。

89名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 00:35:07 ID:xaNXjZl.O
*(‘‘)*「本当は第二階梯まで至ってないんでしょ? 降参して詫びを入れるっていうなら許して――」

从#゚∀从「がああああああああ!!」

気を緩めていたヘリカルに迫る、一条の赤い閃光。
赤鬼と化したハインが、慈悲など知らぬという顔で乱暴に腕を伸ばす。

⌒*リ´・-・リ「危ないヘリカル!!」

間髪入れずにリリが体当たりでヘリカルを弾き飛ばした。
だが当然自身が躱す余裕などあるわけもなく、ハインに顔面を鷲掴みにされる。

次の瞬間、大地が爆ぜた。

⌒*リ´ - リ「…………」

土煙の向こうから現れたのは巨大なクレーターと、ゴミ屑のように顔を潰されたリリの姿だった。

*(‘‘)*「っ、よくもリリを!!」

|゚ノ ^∀^)「お待ちなさい!」

レモナの制止を振り切ってヘリカルは突貫をかける。
自分を庇って親友がやられた、その事実がヘリカルをがむしゃらに突き動かす。

*(‘‘)*「はあっ!!」

有りっ丈の神威で生み出した宝剣を水平に構え、一気呵成に突き刺す。
ヘリカルの全身全霊を込めた一撃は、狙い通りハインの横腹へと吸い込まれた。

90名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 00:35:59 ID:xaNXjZl.O
*(‘‘)*「やった……!」

从 ゚∀从「く、くははははは!」

*(;‘‘)*「えっ!?」

从 ゚∀从「いてえいてえいてえいてえ! でもな、いてえ以上には効かねえぞ!!」

ぞわりと嫌な予感がヘリカルの背筋を這う。
慌てて退こうとするがそれは許されなかった。

身体を貫かれたままのハインが、柄を握ったヘリカルの腕を強引に掴んでいたからだ。

掴む、圧倒的な腕力で、乙女の神威の防御を打ち破るような膂力で。

*(;‘‘)*「あがぁぁぁぁ!?」

ごきりと鈍い音が響き、ヘリカルの腕が正常では有り得ない方向へへし曲がる。

脂汗にまみれたヘリカルは、信じられないものを見るように自分の腕を見下ろすが、ゆっくりと眺める時間など与えられない。

91名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 00:44:02 ID:xaNXjZl.O
从 ゚∀从「あはははは!」

ハインの腹部に刺さった宝剣が、光を放ち消え去る。

栓を失い血が垂れ流れ始めるが、ハインがそれを気にすることはない。
むしろ痛覚が、彼女の心の猛りを増幅させた。

動きやすくなったといわんばかりに、薄く笑みを浮かべヘリカルへと詰め寄る。

从 ゚∀从「握手しようぜ」

折れていない方の腕を捕まえると、ハインは無理矢理指を恋人繋ぎするように握り合わせた。

|゚ノ;^∀^)「ヘリカルっ!!」

*(;  )*「あああぁぁぁあ嗚呼あああアアアァァァ!!」

喉の奥から咽び出る野獣のごとき咆哮。
ヘリカルの親指を除いた四本の指は根本から潰れて、浅黒く変色していた。

92名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 00:45:28 ID:xaNXjZl.O
从 ゚∀从「最後はお前だ」

|゚ノ ^∀^)「私の妹達を……、許しませんっ!」

眼前の赤鬼が放つ、狂気を伴う程の威圧感に泣きたくなるが、レモナは弱気な自分を息と共に呑み込む。
そうして覚悟を決めると、気圧される空気を強引に跳ね返した。

妹達の能力を自分の能力で混ぜ合わせた武器、影の宝剣を右手一本で血管が浮く程強く握り締める。

リリが意識を失った今、急速に消耗されていく神威を考えると、影の宝剣を維持できるのは残り数分が限度といったところだ。
しかしレモナは慌てて攻め入ることはせず、右足をわずかに引き、闇色の刃をハインの喉の高さへすっと立てた。

|゚ノ ^∀^)「…………」

高まる緊張感。
だがそれを気にも止めず、無造作にハインが歩み寄る。

レモナは一方的に間合いを詰められるのに任せた。
そして一足飛びの距離まで近付くと共に、鋭く踏み込む。

|゚ノ ^∀^)「くらいなさいっ!!」

黒の一閃が袈裟掛けに走る。
丸腰のハインはそれを避ける素振りも見せず、振りかぶった拳を刀身へ打ちつけにいった。

93名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 00:47:09 ID:xaNXjZl.O
弾き返されたレモナはすかさず左手を柄に添え、軌道を水平の薙ぎ払いへと変化させる。

从 ゚∀从「ちぃ!」

拳には重点的に神威を収束させただけで、さすがのハインも全身どこへ受けても無傷というわけにはいかない。
もっと傷を負えと脳内で鬼が囁くが、残った理性が回避の判断を取る。

飛び退るハインへレモナが疾駆した。
バックステップで回避されるであろうことを読んだレモナは、刃を途中で止め、中空への鋭い突きを放っていた。

从 ゚∀从「俺を舐めるなよ!」

ハインはぎらついた瞳で迫る刃を見定め、剣の腹を蹴り上げて紙一重で窮地を脱する。

スカートを舞わせながら着地、それと同時に駆けた。
しかし、レモナも既に体勢を整え、渾身の力で刃を打ち下ろしている。

|゚ノ ^∀^)「終わりです!」

从 ゚∀从「どっちがだ!」

ハインは一瞬沈み込むようにしゃがむと、膝のバネを使い、伸び上がりの加速を得た拳を黒の刃へ放つ。

神威を纏った煌めく拳と、神威で生み出された漆黒の剣。
その二つが再度ぶつかり合い、耳障りな騒音と激しい火花が上がる。

94名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 00:48:52 ID:xaNXjZl.O
撃ち合いを力で勝るハインが制し、その勢いのままレモナとの距離を詰めた。

|゚ノ ^∀^)(ですが、肝心の体勢がそうも崩れていては、有効打が放てないはず!)

ならばここからはクロスレンジの攻防になると、レモナは限られた時間で勝つ算段に頭を巡らせる。

が、その砂糖細工でできた甘い期待は、お菓子の城を潰すように容易く打ち砕かれる。

从 ゚∀从「オオカミ流神威闘術・鉄!」

鉄の圧倒的な硬度で。

|゚ノ;^∀^)「ぐふっ!?」

鉄(くろがね)とは拳でも肘でも脚でもない、背中による打撃。

ダンプカーが超音速で突っ込んでも、ここまでの重く鋭い衝撃は与えられないだろう。
至近距離で思い切り打ち込まれたレモナは、想像を絶する威力に吹き飛ばされ、背で樹木を突き破る。

|゚ノ;^∀^)「げほっ! げほっ!」

何本かの常緑樹をなぎ倒し、一際太い巨木の幹へ身体を強打することで、ようやく止まることができた。

しかし酸素が失われ、ブラックアウトするように数秒間意識を飛ばしてしまう。
それだけの時間があれば、ハインが詰め寄るには十分だった。

95名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 00:50:07 ID:xaNXjZl.O
从 ゚∀从「弱すぎる」

意識を取り戻す頃には、ハインの腕がレモナを捉えていた。
首を強引に掴むと、足を浮かせるように高く吊り上げて、残忍な笑みを浮かべる。

|゚ノ;^∀^)「うぐ、うぅぅぅ!」

从 ゚∀从「さてと」

*(;‘‘)*「私達の負けだから! だからお願い、お姉様を離して!」

从 ゚∀从「うるさい」

|゚ノ;^∀^)「ぐっ!?」

ヘリカルの声に呼応するように、首に掛けられた腕に力が込められていく。
誰の目から見てもレモナの生殺与奪は、完全にハインに握られていることが明らかだ。

从 ゚∀从「お前に斬られた肩な、あれ痛かったぜ」

|゚ノ;^∀^)「うぅ……あああああぁぁ!?」

ハインの鋭い手刀がレモナの肩をえぐる。
肉が裂かれ、叫声と共にワインレッドの鮮血が勢いよく噴き出した。

从 ゚∀从「それからお前の妹には太股も、横腹もやられたな」

|゚ノ;^∀^)「うがあぁ!? あぐううぅぅぅ!!」

ハインは自分が傷を受けたのと同じ場所へ、指突で似たような傷穴を開ける。
肌を突き破る手応えとレモナの苦悶の叫び声を聞き、悦に溺れたような笑みを深めながら。

96名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 00:57:03 ID:xaNXjZl.O
*(;‘‘)*「もう、やめてよぉ……」

ζ(゚ー゚*ζ「お姉様、もうおやめください!」

从 ゚∀从「ああ? なんだよ、お前は俺の邪魔をするのか」

吸い込まれそうに暗く、よどんだ眼光がデレを射抜く。
だが彼女はそれに一瞬も怯むことなく、気丈に言葉を返した。

ζ(゚ー゚*ζ「はい。お姉様の勝ちです、これ以上する必要はありません」

从 ゚∀从「俺に指図するな」

飽きた玩具はゴミ同然とハインはレモナを投げ捨て、デレへと詰め寄る。
瞳に凶暴な色を宿して。

ζ(゚ー゚*ζ「私は普段の優しいお姉様が好きです。どうか気を静めてください」

从 ゚∀从「普段? 優しい? 昨日今日会ったばかりのお前が俺の何を知っている」

ζ(^ー^*ζ「知っていますよ、お姉様が優しいことは。だって昨日会ったばかりの私を助けてくださいました」

从 ゚∀从「黙れ」

ζ(^ー^*ζ「嫌われても仕方のないようなことをした私を、受け入れてくださいました」

从 ゚∀从「……黙れ」

ζ(^ー^*ζ「ヒートさんからも、私を庇ってくださいました。そんな優しいお姉様が私は大好きです」

从 ゚∀从「黙れええええぇぇぇ!!」

もうこれ以上は聞きたくないと被りを振ったハインが、デレの喉を締め上げ広葉樹へと打ち付ける。

97名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 00:59:14 ID:xaNXjZl.O
ζ(゚ー゚;ζ「かはっ!」

从 ゚∀从「これが本来の俺だ! お前を助けただと、ふざけるなっ!」

ζ(゚ー゚;ζ「うくっ、何に、怯えているの、ですか?」

从 ゚∀从「俺が、怯えているだと?」

ζ(゚ー゚;ζ「今の、お姉様は、くぅ、泣きながら暴れている、子供そのものです。何が怖くて、泣いているのですか?」

从;゚∀从「くっ、俺は、泣いてなんて……」

泣いた赤鬼。
受けたダメージに比例して、身体能力と破壊衝動が加速的に高まる能力。

その名称も能力も知らないにも関わらず、デレにはハインが泣きわめく幼子に見えた。
だから優しい声音で語りかけ続ける。

ζ(゚ー゚*ζ「もう闘いは終わりました。だから怖がらないでください」

緩んだ腕の隙間から抜け出し、デレは今にも崩れそうなハインを胸に抱き寄せた。
その豊満な胸で支えながら、母が子をあやすように何度も優しく頭を撫でる。

98名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 01:00:19 ID:xaNXjZl.O
从 -∀从 (暖かくて優しい匂い、お母さん……)

喚起されるのは泣き虫だった子供の頃の記憶。
髪のことを馬鹿にされて泣いて帰ると、いつも頭を撫でてくれた母の面影が、今も脳裏に焼き付いている。

ハインは心のささくれが、一つ一つほぐれていくのを感じた。

次第にくすんだ茜色の髪が、落陽よりも眩い紅蓮へと変化し始める。

まだハインの奥底からは、壊せ、壊せ、と闇に引きずり込もうとする鬼の声が聞こえたが、

从#゚∀从 (うるせえっ!!)

一喝で静め、彼女は己を取り戻した。

99名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 01:01:04 ID:xaNXjZl.O
从 -∀从「……すまなかったな」

ζ(^ー^*ζ「いえいえ、私は痛くされるのも好きですから。むしろご馳走さまです」

从 ゚∀从「悪いがあいつらに救護を呼んでやってくれ。致命傷はないだろうが、急ぎで頼む」

ζ(゚ー゚*ζ「それで、お姉様はそんなお怪我でどこへいかれるのですか?」

痛々しく裂けた肩に、未だ血を垂れ流す腹部。
いくら乙女が頑丈とはいえ、救護班に見てもらった方がいいのは間違ない。

从 ゚∀从「一人にさせてくれ」

だがハインはそれを拒み、地面に拳を叩き付け粉塵を巻き起こす。

ζ(゚ー゚*ζ「お姉様っ!」

その煙が晴れたとき、既にその場には誰の姿もなかった。


.

100名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 01:01:56 ID:xaNXjZl.O
('、`*川「ふんふふふん〜♪」

救護班でも名うての乙女であるペニサスは、本日の勤務終え、肉感的な身体を弾ませながら機嫌よく帰路へとついていた。

傷付いた生徒を癒すのは本人としても望むところではあるし、彼女は希少な治療系の能力を持つため高待遇を受けている。
仕事には不満どころか充実感すら覚えていた。

それでも家に帰って缶チューハイを一杯引っ掛けながら、少女同士の淡く切ない恋愛を描いた小説の観賞に興ずる姿を思い浮かべると、自然と足が軽くなった。

('、`*川「乙女は可愛く美しくの新刊積んでるのよね〜」

そんな彼女の目に不思議な光景が飛び込む。
蛇口を全開にして、水が跳ねて濡れるのも構わず、一心不乱に手を洗い続ける女生徒の姿だ。

('、`*川「あらあら、そこの貴女。水の無駄遣いは駄目よ」

从 ∀从「洗っても、洗っても、落ちないんだ……血が……」

紅の髪に、自分の血と返り血で全身を朱に染め上げて、弱々しく笑いながら呟く少女。

('、`*川 (んー!)

ペニサスの表情が喜悦満面へと変わる。
どうやら今夜の酒の肴が決まったようだ。



第三話 完

101名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 01:02:42 ID:xaNXjZl.O
番外一話



女三人寄れば姦しいなどという言葉があるが言い得て妙というもので、この女学生だらけの学府で姦しくない場所を探す方が難しい。
取り分け甘味処ともなれば、それが一層顕著になるのは太古からの習わしともいえるだろう。

*(‘‘)*「どうしたのですか、お姉様? あまりスプーンが進んでいらっしゃらないようですけど」

|゚ノ;^∀^)「その、最近少し、ダイエットをその……」

リリは対面に座る姉と慕う女性と、自分の隣りに座っている親友のやり取りを言葉少なに見守る。
その偉容と甘露で学府内でも著名を誇るパフェを前にした二人の表情は、好対象で面白く映った。

102名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 01:03:54 ID:xaNXjZl.O
*(‘‘)*「大丈夫ですよ、ちょっとぐらいふくよかな方が女性は魅力的に見えるものです」

|゚ノ ^∀^)「それはヘリカルが太らない体質だから言える言葉なのです……」

*(‘‘)*「でも、私はお姉様のお身体のこと魅力的に思ってますよ。エッチの時だって――」

|゚ノ /////)「な、何を言っているのですかヘリカル! こんな公共の場で!」

⌒*リ´・-・リ「レモ姉、もう少し静かに」

|゚ノ;^∀^)「は、はい、申し訳ありません……」

頬を染めて気まずそうに縮こまる姉を尻目に、リリは自分の身体を見下ろす。
レモナのように性的な起伏に富んでいる、とはお世辞にも言えないお子さま体型。

だからなんだというわけでもないはずだが、ヘリカルの口からレモナのような体型が好きなのだと聞くと、なぜだか胸がざわめいた。

103名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 01:05:19 ID:xaNXjZl.O
*(‘‘)*「リリ、なんか怒ってる?」

⌒*リ´・-・リ「別に、なんで僕が怒るのさ」

そうさ、僕にそっちの気はない。
これはただの身体的劣等感からもたらされる不快なのだ、とリリは心の中で強く結論付ける。

⌒*リ´・-・リ「レモ姉、食べないんならそれ僕にくれない?」

|゚ノ ^∀^)「えっ? リリは甘いものが苦手なのでは」

⌒*リ´・-・リ「もう少しウエイトを上げようと思って。体重がある方が近接戦闘で有利に働くことも多いし」

レモナから譲り受けたパフェをリリは一心不乱に掻き込んだ。
自分が近接戦闘技術を持っていないだとか、適正体重以上になっても有利になることなど皆無に等しいだとか、そんな理屈を蹴散らして食らいつく。

別にこのパフェを一杯食べたからといって、レモナみたいな体型になれるわけではないと分かっている。
でも、やるだけやってみたいのだ。

リリにとってのレモナは、
尊敬できる女性で、
憧憬を抱く先輩で、
心から愛しい姉で、
この人みたいになりたいと思わせてくれる目標だから。

104名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 01:06:14 ID:xaNXjZl.O
⌒*リ´・-・リ「ご馳走さまでした!」

|゚ノ ^∀^)「ふふ、気持ちのいい食べっぷりですね」

⌒*リ´・-・リ「ん、なにかおかしかった?」

|゚ノ ^∀^)「いえ、そうではなくて。リリ、頬っぺたについていますよ」

テーブルに身を乗り出して近付いて来た姉の、細く冷ややかな指先が頬を撫でる。
くすぐったくて心地いい感触。

|゚ノ ^∀^)「んちゅっ……」

小指の先で拭ったクリームを、赤くぬめった舌でちろちろと舐めとる姉の姿は、妖艶で酷く扇情的に映った。

105名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 01:06:56 ID:xaNXjZl.O
⌒*リ´・-・リ「天然エロ姉」

|゚ノ ^∀^)「ふぇ!?」

*(‘‘)*「ずるーい! 二人だけでイチャイチャして、私だけ仲間外れなんて!」

|゚ノ ^∀^)「いえ、その、私はイチャイチャなどと」

⌒*リ´・-・リ「そういうとこ無自覚だよね、エロ姉は」

|゚ノ;^∀^)「呼称がレモ姉から変わってますよ!?」

*(‘‘)*「お姉様、私も頬っぺにクリームついちゃいました♪」

⌒*リ´・-・リ「僕が取ってあげるよ」

*(;‘‘)*「い、痛っ!? やめ、おしぼりでぐりぐりしないでぇ!」

全く、馬鹿だなぁとリリは含み笑いと共に息を吐く。

レモナが誰彼構わず救いの手を差し伸べるのは知っている、納得できるかは別だが知ってはいる。
だからいずれ新しい妹が増えるのも、そうなのだろうという程度には想像ができる。

でも、この三人の為だけに存在する馬鹿な時間がいつまでも続けばいいのにと、リリはそう願わずにはいられなかった。



番外一話 完

106名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 01:10:11 ID:xaNXjZl.O
番外二話



ζ(////*ζ「おねぇ…………さまぁ……ふぁんっ」

闇夜に包まれたデレの私室に、熱く淫猥な吐息が漏れ響く。

ζ(////*ζ「きもちぃ……いいっ! ……ですぅ、お姉さまぁん……」

デレがお姉様と慕う少女、ハインがこの部屋にいるわけではない。
ただ彼女を想い、火照った身体を自ら慰めているだけであった。

ζ(////*ζ「あぅん、そこぉ……もっと……」

乳房へと這わせた手が敏感な突起をくすぐる。

デレは甘い刺激をもっと味わいたくて、更に強く尖端を揉みしだこうとした。
しかし予期した快感は訪れず、指は焦らすように直前で逸れて周囲の輪を撫でるだけにとどまる。

ζ(////*ζ「あぁん、お姉様ぁ……イジワルです……お願いですからぁ」

当然ながら腕はハインのものではなく、デレ本人のものだ。
しかし彼女の脳内では、愛しいお姉様の愛撫へと置き換えられていた。

ζ(////*ζ「はぃ、デレははしたない淫乱ですぅ。少し触れただけでこんなぁ……ひゃっ!」

張りのある膨らみを掌で包むと、指先がふにゅんと沈み込んだ。

薄桃色の先っぽの部分だけが跳ね返るように強く勃ち上がるが、手はそれを許さず潰すようにして転がす。

107名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 01:10:39 ID:xaNXjZl.O
ζ(////*ζ「んんっ……きもち、いいよぉ……」

ハインに対して積極的な少女であったが、実は自分で慰めたことすらあまりない。
なんとなくだが不潔だという思いすらあった。

だからよしんばこういう行為に耽ったとしても、胸を触る以上のことは未経験だった。

ζ(////*ζ「っ!? お姉様、そこは……」

今日に限ってそれ以上に及んでしまうのは、やはり脳内のお姉様が原因なのだろう。
愛しい人の指だと思えば不思議なことに、なんの嫌悪感もなくそこへ手が伸びてしまう。

ζ(////*ζ「濡れ、てる……?」

初めてそういう目的で触るそこは、胸への愛撫で興奮したデレの分泌液でしとどに濡れそぼっていた。

熱くて柔らかい不思議な感触。
かすかに指を這わすだけで、腰が浮きそうな痺れに息が詰まる。

ζ(゚ー゚*ζ (これはお姉様の指。お姉様のだから怖くない)

自分に暗示をかけて恐怖感を薄れさせ、女の子の大切な部分を押して見る。

――むにゅる。

ζ(////*ζ「ふぁああぁぁんっんっっ!!」

想像を幾重にも飛び越えた衝撃に声を張り上げてしまい、慌てて枕を噛んで堪える。

粘液に塗れたそこはデレの指先を滑らせると、小さな窪みへ第一関節まで招き入れていた。

108名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 01:11:16 ID:xaNXjZl.O
ζ(゚ー゚;ζ「入ってる……? 怖いよぉ、お姉様……」

あまり知識が豊富でないデレでも、初めてが痛いことぐらいは知っている。
本物のハインを前にすれば痛いのだって好きだという軽口を叩けたが、一人では怖さが勝った。

なんとか抜いてみないとと試みるが、そこはデレの指先を逃すまいと固くくわえて、簡単には離しそうにない。

ζ(゚ー゚*ζ「少しだけ、少しだけ刺激して、ほぐしたら抜けるかも……」

絡み付いてくるひらひらした薄い肉を、そっと優しくなぞる。

ζ(////*ζ「――んひっ!?」

二度目でも身を襲う快感の波は過敏だった。
だが入れたときよりは気持ちいいという感覚も強い。

だからというわけでもないが、恐怖を堪えて行為を続けることにした。

109名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 01:11:59 ID:xaNXjZl.O
ζ(////*ζ「はひっ! ……怖いよぅ、でも……気持ちぃ……よぉぉ!」

何度か刺激を繰り返す内に中は指の形を完全に受け入れ、先程までのきつく噛み付く感じではなく、優しく包み込んでくれていた。

もっと奥へと誘うように潤滑液が大量に溢れてくるが、さすがにこれ以上進むことはせず、入口付近で抜き差しする。

愛蜜と指が擦れる度、くちゅくちゅと粘性の音が響き、沸き上がる快楽にデレの頭は支配されていた。

ζ(////*ζ「おねぇ、ふぁま……ひぅっ!! デレ、はあはあ……もぅ……あぅん、だめですぅ……!」

ベッドで横向きになり胎児のように膝を抱えて、大切なところ弄るデレ。

狂おしいまでに昴ぶるが、大切なお姉様を妄想して気をやってしまうなど本当にいいのかと、理性が本能を責め立てる。

ζ(////*ζ「はひぃん! ……この、ままだと……いっちゃう……」

歓楽と罪悪感の狭間で揺れるデレの胸中で理性が打ち勝ち、達する前に指を引き抜くことに決めた。

もう十分、続きはいつかお姉様と。
惚けながらそんなこと考えていた少女はうっかり手を滑らせて、上部にある包皮を被って屹立した核に触れてしまう。

ζ( ー *ζ「あふぅっっっ!?」

予期せぬ快楽の爆発に、熱を帯びた身体は容易く絶頂を迎え、股間を幾度も跳ねさせる。

窪みからはとめどなく蜜が溢れかえり、太腿を伝ってシーツに小さな染みを作った。

110名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 01:12:52 ID:xaNXjZl.O
ζ(////*ζ「はあはあ、はあはあ、いっちゃった。私、いっちゃったんだ……」

心地のいい気怠さに身を任せていると、惚けた頭に浮かんだのはお姉様と慕う少女の顔だった。

ζ(゚ー゚*ζ (私は、なんでお姉様をこんな)

なぜこんなにも惚れ込んでいるのか。

襲われているところを助けてくれた。
それもあるだろう、だが決定的な理由とは感じない。
きっともっと他の理由があるはずだとデレは考えた。

だが、どれだけ考えても分からない、分からないのだ。

何か重要な事が頭から抜け落ちている気がする。

111名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 01:13:43 ID:xaNXjZl.O
世に生を受けてから十の年を数える間、少女は常にベッドの上で生活を営んでいた。

誰が望んでそうなったわけでもない。
もしこの世に神がいるならば、彼女を作り出すときにほんの少しの手違いを起こしたのかもしれない。

人の姿に生まれながら、どれほど渇望しようと人並みのことが叶わぬ身体。
当然少女自身が、疎まないわけがなかった。

そして十歳を迎える誕生日、少女の人生に転機が訪れる。

手に入れたのは思い通りに動く身体と、神威という名の人並みを外れた力。

失ったのは両親と、ただの人間だった過去の自分。

ζ(゚ー゚*ζ「ああ、そうだった。もはや私はデレではなく――」

地獄の中で少女は知った。
あんなに惨めでも、今までの自分は人間だったのだと。

ζ(゚ー゚*ζ「……神様は完璧なものは作らない」

完璧でないこの世界で、全ての人が幸せになどなれるわけがない。

ζ( ー *ζ「それでも救われたいと願うのは罪なのでしょうか。ねえ、お姉様?」



番外二話 完

112名も無きAAのようです:2013/06/04(火) 01:18:39 ID:xaNXjZl.O
ご愛読ありがとうございました
次回こそはさほど時間を空けずにいきたいと思います

113名も無きAAのようです:2013/06/05(水) 00:10:57 ID:AFFeTBhw0
乙ッ!
ずっとずっとずっとずーーーーっと待ってた!

114名も無きAAのようです:2013/06/05(水) 19:16:16 ID:h20Ulhe6O
>>113
お待たせして申し訳ありませんでした
暖かい言葉をかけて頂けて救われます

次の話は八割方書けているので、次回は遠くないうちに投下できると思います


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