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機動戦士ガンダム ブラックアウト
1
:
スコール
:2008/11/12(水) 00:49:16
念願の宇宙へ域を広げた人類。
しかし、その直後に起こった戦争。
幾度もの戦争。
人間は血に飢えていた。
苦しみを乗り越えて、人間に残ったものは戦争をするための技術だけだった。
そして、過ちにまた手を染める。
西暦.2309
第3次大戦が終わった後50年。
各地の復興もままならないというのに死の商人たちの暗躍で戦火が燃え上がろうとしていた。
大戦後に大国の合意によって作られた地球連邦。
しかし、そのやり方は発展途上国を自国の支配下に置き圧政をしくというものだった。
広がる反発意識。
50年という月日で蓄積された怨恨が、そして爆発した。
大国内で同時期に多発するテロ。
そして、人型白兵戦用兵器モビルスーツ(MS)がテロリスト勢力の中に現れたとき、人々は確信した「新たな戦争が始まった」と
2
:
スコール
:2008/11/12(水) 01:34:17
夢から覚めたような気分だった。いや、今まで見てきたのが悪夢の反対、いい夢だったのだ。
俺は数学の授業を受けていた。
ぼんやりと窓から外を眺め、いつこの退屈な時間は終わるのかと片手間で板書を書いていた時だった。
光が広がった。
閃光で視界からすべての景色が消える。
次に真ん中から色が変わる。赤と黒が中間の地点で混ざったちょうどいい色。爆炎だった。
そして、音と振動がやってくる。
天を焦がすかのように燃え上がった爆炎と耳栓をしたって聞こえそうな爆音。そして、振動とその衝撃で椅子から転げ落ち、夢から覚めた。
動揺が広がる。女子たちの悲鳴。
先生まで窓の外を見て硬直していた。
クラスメイトの一人が、自分と休憩時間中よく話をしていた友人「ネビル=セラブロ」が席を立ち、教室を出て行った。
俺はそれを追いかけた。
無我夢中だった。
校舎を出て、郊外へ足を向けるネビル。
彼の足取りは恐怖なんかじゃない。最初から気づいていた。だから追いかけたのだ。
そして、彼は足を止めた。
そこは人間の生活圏すべてでその影を見ることができるといわれるほどの大企業「アナハイム」の倉庫。
ネビルが振り返り、こちらを見る。
責めるような目つきだった。
俺から視線を外し空を見上げるネビル。
いや、正確には空を見上げたのではない。
彼の視線の先には物体が二つ、浮かんでいた。逆光で黒く見えるそれ。
目が慣れてきた。それは人型だった。
直感するMSだ。それも地球連邦側じゃない。
視線を戻すとネビルがいなくなっていた。必死で彼を探す。
……居た。
倉庫の敷地内に入っていた。
俺も急いで塀をよじ登りネビルを追う。
倉庫の中に姿を消すネビル。
追って入ると中は真っ暗だった。
「なんでついてきたんだ」
暗がりから声が聞こえる。聞きなれたネビルの声だ。
「……」
理由なんて無い。お前が教室を出たから、と言いそうになったがのど元で止めた。
明かりがつく。
一瞬、爆発の時のように何も見えなくなった。
そして、また赤だった。
しかし、今度の赤は違う。動いてなかった。
「MS、ガンダムだ」
聞いたことがある。連邦が開発した新主戦力だと。
「これは連邦が開発したものじゃない。それに、広告塔じゃガンダムが主戦力になるとか言っていたけど、連邦は統率が取れないから作れて5機だろうな」
ネビルは左斜め後ろの電気パネルの前になっていた。
「驚くのも無理は無い。でもソール、君は冷静でいたいんだろう?じゃあ、その口をあけた間抜けな顔はよしたほうがいい」
自分の手で自分の顔を触って確かめた。確かに口が開いていた。
また足元がゆれた。
「連邦の基地は破壊された。戦力が残っていたとしても制圧されるだろう。じきにね」
歩み寄ってくるネビル。
「だけど、これはチャンスなんだ。僕は自由になりたいんだ。力を貸してくれ。頼む」
ネビルは深く頭を下げた。
「き、急になんだよ。どうなってるんだよ。くそっ、いまさらパニックになってきやがった」
ネビルが手に持っていた分厚い本を投げてきた。
表紙にはG・U・N・D・A・Mの文字とよくわからない英数字の羅列。そしてゼフェロキアの文字。
「マニュアルか……つまり……」
ネビルの頬が緩む。
「冷静になってきたようだね。その通りだ、こいつを動かす」
ネビルは俺に背を向けると動いてない赤の方へ駆け出す。階段を駆け上がり、向こうへ走っていく。
俺はそれについていく。ここまできたんだ、と自分に言い聞かせて。
時々足元を襲う振動で階段から落ちそうになった。手すりにすがり、時々マニュアルに目を通しながら進んだ。
ゼフェロキアはガンダムについた名前のようだった。
ガンダムゼフェロキア。アナハイム・エレクトロニクス、つまりアナハイムグループの会社が開発、製造したガンダム1号機。
複座と書いてあった。
ネビルが振動に耐えるため姿勢を低くして俺を待っていた。
「さあ、行こう」
「……いつか、戻れるのか?」
ネビルの頬がまた緩んだ。しかし、目は冷たい感情を帯びていた。
「僕はもどらない。君は僕に力を貸してくれ」
それが答えだった。
後戻りはできない。
だけど、それなら簡単に踏ん切りがつく。
思考の時間なんていらなかった。
「わかった」
それは過ち。
しかし、自分で選んだ選択。
俺の戦乱が始まった。
3
:
スコール
:2008/11/12(水) 02:34:32
複座とは一人以上で機体を動かすときに使う言葉だった。
二人乗りの1号機。なんだかよくわからない機体だ。
二人乗りのためコックピットは中々、広かった。
キャノピーが閉じられる。
ネビルはこの機体の扱い方を心得ているようだけど、俺は違う。
マニュアルを何度も読み返しているけど、単語の羅列にしか感じられない。
頭に内容がさっぱり入ってこない。
わかったことはこのゼフィロキアがどんな領域でも稼動できるような汎用性を意識して作られたものだということだ。
それに電子戦用の機器まで取り付けられているそうだ。
欲張りすぎて他の機体に比べ、少し大きくなったとも書かれている。だけど、それを補う以上の機動性、耐久性を保持しているようだ。
開発者たちは現行最強のMSを目指して作ったのだと思われる。
そんなものが若干17歳二人の手の中にあってよいのだろうか。
いや、自分で決めた選択だ。迷わない。
「カメラは動いているのに外はまっくら。シートか」
爆発の振動に比べれば、ほんの些細な振動でゼフィロキアは動き始めた。
「ソールは自分のやるべきことがわかっているかい?」
「いや、全然」
ふふっと笑う声が前の席から聞こえた。少し、癪に障ったが仕方が無いものだと決め付け、耐えた。
じゃあ、とネビルが切り出した。
「ソールが砲撃担当にしようか、僕が機体の操縦を担当しよう」
しかし、それはつまり俺に人を殺せと言っているのだ。
俺はそれを無言で返事をしてやった。常人なら許可とも、拒否とも取れずに悩むところだろうが、最早目の前のおもちゃに耐え切れなくなったような顔つきのネビルは許可と即決したようだ。
シートが取り外され光を見た。
ネビルがパネルに手をやり、倉庫の屋根が中央から開いた。
空にいた二つのMSは地球連邦基地上空で戦闘しているようだ。
「僕の自由が……始まる」
ネビルの上ずった声は不気味だった。
今にも狂い、笑い出しそうなネビルの後ろで俺は砲撃担当としての仕事をこなそうと思った。
何かに専念しなきゃ無駄な思考が始まる。俺は凡人だ。凡人なら凡人らしく、だ。
「行くよ、ソール。さぁ、冒険だ」
バーニアに火が付き、機体が空へと舞い上がる。
ゼフィロキアには何も装備されていなかった。
あるのは主兵装のビームサーベル2本と左肩のビームキャノン。
「撃つぞ」
ネビルに告げる。いや、本当は自分に言い聞かせたんだ。
射撃用のモニターが現れる。スティックを動かせばニュートラルの位置からターゲットサイトが動いた。
ゲームじゃないか。
いや、不謹慎だ。
「当てる理論は簡単だ。敵の行動を予測し、距離を計算に入れ、当たる位置に放つ。それだけだ」
わかっている。しかし、当たらないだろう。
ゼフィロキアの装甲は硬い。現行の実弾兵器、特に100mm口径のマシンガン程度では近距離でピンポイントに当て続けなければ傷もつかないだろう。
だから、相手を近づかせネビルに近距離戦をやってもらうほうがいいのだ。
トリガーをゆっくりと引いた。
振動。一筋の光が伸びる。それは一直線に伸びるとテロリストの機体に穴を開けた。
スパーク、電光が走り、爆発。ほとんど一瞬だった。
「すごいよ!よく当てたね。君がついてきてくれてよかった」
ネビルは本当にうれしそうに言った。
4
:
スコール
:2008/11/12(水) 02:35:50
しかし、俺の頭に賞賛の言葉は入ってこない。
どうやら、穴が開いてしまったようだ。
敵に穴を開けたように、ぽっかりと。
この穴を俺はどうやって埋めればいいのだろう。
「じゃあ、次は僕の番だ」
体に負荷が掛かる。Gだ。
テロリストは俺たちに気づいたらしい。
銃を乱射して、撤退する気だ。
「当たらない、僕の方が速いみたいだ」
言葉の通り、ネビルはすいすいと弾の間をすり抜ける。
俺のはまぐれで済むが、ネビルのこれはまぐれという言葉じゃすまない。
このためだけに生まれ、生きているのだろうか。こいつは。
だとしたら、こいつと一緒にいることが俺の最大の過ちになるだろう。
そうこうしている間に、ネビルはあれだけあった距離をもう後コンマ何秒かで手が届く距離に縮めていた。
「サーベル」
電子音が鳴り、機械が「ビームサーベル」と復唱する。
ゼフィロキアの右手が腰に伸び、白い円筒状のビームサーベルをつかみ、抜き取る。
しかし、ビームの刃は伸びない。
アイドリングストップ、の様なものだ。必要なときにだけ刃を出す。
テロリストの機体も近接武器に手をのばした。
斧のようなものを抜き、構えた。
敵の直前で、ネビルはさらに加速した。
敵はそれに気づき早く斧を振り下ろした。しかし、ネビルはそこで逆にバーニアを吹かし勢いを殺した。
見事な空振りを見せる敵。ネビルは冷静に、敵の胸部装甲にサーベルを当てると俺がやったようにトリガーを引いた。
装甲を貫通し、反対側までビームの刃が飛び出た。
ゼフィロキアと同じように、そこにコックピットがあるならパイロットは消え去っただろう。
そして、敵は動きを止めた。
晴れて俺たち二人は人殺しの仲間入りをした。
輝かしい一歩だ。
5
:
スコール
:2008/11/16(日) 12:53:00
無我夢中だった。なんて言葉で片付けたら俺は何人の人に殺意を向けられるだろう。
テロリストのMSは自重で落下。ビームサーベルは展開してあったので、MSの胸から頭にかけてが裂かれ、熱で発光している。
止める暇なんて無かった。俺はGに耐えるだけで精一杯だった。
ネビルは突如、機体を右下へふると、一番近くにいた地球連邦のMSを斬ってすてた。
「……!!何やってんだよ!」
ネビルは不敵に笑うと「いつ仲間になったんだ?」と言った。
ネビルの言っていることは確かに正しい。しかし……
「大丈夫、お仲間は最初から用意してある。外で待ってるそうだ」
じゃあ、最初から外に行けば、いや、それよりも俺の代わりにそのお仲間を用意すれば……
「考えてる暇があるなら、手を動かしなよ」
いつのまにか、ゼフィロキアは地球連邦のMSと間をあけMS全てが視界に入る場所に移動していた。
俺はまた手を動かし、ビームを発射していく。
ミス、ミス、命中、ミス……
全部で三機のMSを破壊した。
手を止めようとしたとき「まだ残ってるよ」
ネビルが奥を指差しながら言う。
ネビルの指先には基地があった。
テロリストの攻撃を何発ももらっていたので、主要なところは破壊され、基地としての機能を果たせてない。
6
:
スコール
:2008/11/25(火) 19:25:15
通常の感覚は全て麻痺している。
スティックを動かす。が止める。
疑問が沸いた。これ以上破壊する必要があるのか?
「何モタモタしてるんだよ。厄介なことになっってしまったけど……」
レーダーに目を移すと新しく敵の信号が増えていた。
連邦軍所有の量産機、MSジェインが4機、そして。
それに気づいた瞬間、ネビルは機体の向きをそれに直した。
俺はそれを今度はなんだ……、と心のうちで悪態をつきながら敵機を確認していく。
ジェインと編隊を組み、接近してくるその姿はまるで、
「ガンダム!?」
ネビルも驚いた顔をしている。
どうやら色々と隠し事をしていそうなこいつにも、このことは知らなかったらしい。
「なぜここに?こんな辺境のコロニーに?」
常人離れしたパネルタッチで左手を動かすネビル。
即座にマルチモニターが浮かび、音声だけの通信が始まった。
「どういうこと?知らされてないよ」
ネビルは危機を感じているのか、声が若干上ずっている。
「こっちも今知ったばかりだよ。足がつかないように、巧妙に撤退するんだね」
通信からは気丈そうな女の声が聞こえてくる。
「ネビルの後ろに座ってる君」
俺のことか。
「そうだよ、君のことだよ。初めまして。ジャネット=ムェルダーだ」
ソール=バリントン。と返事を返す。
「うちの馬鹿が迷惑をかけるねぇ、迷惑をかけるついでで力を貸してほしいんだ。未知数の危険が近づいてるみたいだ。頑張って切り抜けてほしい。以上」
っとだけ言って通信は切れた。ネビルが「っだ、そうだよ」っとつけくわえる。
「ガンダムが出てきた。本来ならゼフィロキアの方が性能は高いのだけど、ちょっと事情があってね」
機体はまだ静止している。その間に、射撃戦をするにはちょうどいい距離まで敵は近づいていた。
「ジェインは全機落とせるだろう?ガンダムは僕に任せて」
「わかった」
狙い打つ。
ターゲットサイトが俺の意思で動く。
まずは右下のだ。
狙いをつけ、敵の行動を読もうと集中し始めたとき、連邦のガンダムが撃ってきた。
バーニアを吹かし、緊急回避する。しかし、そのせいでジェインから狙いが外れた。
「ごめん、相手が持ってきてるのはビーム兵器だから」
律儀に反応するネビル。
この機体はおかしい。
二人乗りで、射撃戦に特化するならもっとシステムをかえるべきだ。なのに、こいつは接近戦もできるように。いや、どちらかというと逆だ。接近戦が主体のものに遠距離武器をとりつけたような、ちぐはぐな機体だ。
そう思考する間も俺は手を動かし、それと連動して左肩の剣のような姿をしたビームキャノンが動く。
当たれ。
そう念じ、トリガーを引く。
しかし、当たらない。
「さっきとは違う。錬度が高い」
ネビルのその言葉で俺は現実に引き戻された。
相手も人だ。でも、
「やらなきゃ、やられるんだ。この状況を作ったのが俺だとしても……!」
自分に言い聞かせ、トリガーを引く。
「当たれ!」
放たれた一筋の光は、殺意が乗り移り凶悪な死神の鎌と化した。
脇には目も振らず、ジェインの機体に突き刺さる。
当たったものも致命傷ではなかった。ジェインの右腕、ビームライフルを持つ手が吹き飛び、爆発する。
「そろそろ危ない、動くよ!」
7
:
スコール
:2008/11/30(日) 01:20:43
今まで溜めてきたフラストレーションを発散するかのように、左右に機体を振るネビル。もちろん、まったく狙いがつけられない。
敵のガンダムは、傷ついた自分の肉親を守るような、とても人間らしい挙動でジェインの前で盾を構えている。
「お肌の触れ合い会話、ってやつさ」
無線では会話できない何か、ということか。とネビルは続けて一人、合点がいったようだ。
ガンダムから離れ、後退するジェイン。
残りジェン3機、ガンダム1機。いわゆる、死亡フラグというやつなのだろうか。
「下がってろって、無駄に死ぬことは無いだろ?」
お肌の触れ合い会話で右腕を破壊されたジェインのパイロットに後退を呼びかける。
「しかし・・・」
「しかしもクソもない。後退しろ。めーれーだ」
わざとふざけた口調で話す連邦軍所属、ガンダムのテストパイロットであるハルバート=E=マイン。
真面目な奴にはふざけた口調が一番と、自分で謳ったことがあるのがこれの理由だった。
「早く行けよ」
これはジェインのパイロットには聞こえてない。ハルバートがビームライフルを持つガンダムの左手でジェインを押しやり、機体と機体の接触が解かれたからだ。
「さて、贋物なのか。本物なのか……」
自分の乗っている最新鋭機と同じようなフォルムを持つ、所属不明機。好奇心をくすぐるには十分な理由だった。
性能的には相手の方が上のようだ。外見に合わない俊敏さで3機の連携を巧みに避けている。
しかし、射撃に先ほどのような切れが無い。結果、パイロットになって日が浅く機体の性能を引き出せてない。そういう印象を持つ。
「にしても、どこの所属かはっきりしてないのによくもこんな撃ちまくれるよな」
どうやら基地の3機は相手を敵と決め付けたらしい。本来なら降伏勧告を出すのがセオリーだ。
まぁ、確かにこちらはコロニー第1基地に配備されていた5機の内、2機を破壊されさらに同じ基地に所属する仲間を撃たれているわけだし、彼らの気持ちをわからないでもない。
「しかし……」
ここはお友達の馴れ合いの場じゃない。軍だ。規律は守るべきだ。
ハルバートは素早く自分の意思を行動に移す。それはまずジェインを止め、所属不明機に降伏勧告を出す。という明瞭なものだ。
相手の機体にも通信が聞こえたら幸いなのでわざと無線を使う。
「しかし、敵はこちらに撃ってきたのですよ」
「敵じゃねぇ、所属不明機だ」
短く返すと、ハルバートの意思が伝わりやすくなりジェイン3機は行動を止めホバリングを始めた。
それにつられてガンダムタイプも動きを止めた。
「聞こえてるか?聞こえているのなら、返事をしてくれ」
テロリスト、連邦、当てずっぽうで何個かの、違う周波数で同時に呼びかける。
ノイズ−−
「聞こえている」
若い声が聞こえてきた。
「なんというか、勧告無しで攻撃してしまってすまない」
謝る必要は無いのに謝ってしまったのは、ハルバートがなんと言おうか決めてなかったからだ。
ネビルたちもそれをわかっているので、沈黙で返事を返す。
「見ての通り、我々は地球連邦軍だ。所属不明機パイロット、今すぐ武装解除して機体から降りて来い。君はテロリストの機体2機を撃破した功がある。我が軍に攻撃し2機を撃破したことは帳消しにはできないが、罰を少なくすることはできる。まだ遅くない、早く投稿しろ」
通信が切れた。一方的に切られたのだ。
やれやれ、とかぶりを振るハルバート。味方に「やっていいぞ」と告げた。
8
:
スコール
:2008/11/30(日) 15:56:50
静止したネビルたちを含めて5機の中で一番最初に動いたのはハルバートだった。ついで、ネビルたち。
ハルバートは優秀なパイロットとしてガンダムのテストパイロットを任されている。また本人もエースということを自負している。
自分に確固たる自信を持ったエースパイロットは、例え卑怯と言われようが目標を撃破してみせるという矜持があった。
先ほどからハルバートは敵となったガンダムタイプの戦い方を観察していた。
そこでわかったのは、癖があまりないということ。
それは厄介なことだ。能力が発展途上であるか、または熟練のつわものか。
「だが、落としてみせる」
ハルバートは冷静だった。
対照的にソールとネビルは焦っていた。
どちらもうまく敵が倒せないことに苛立っていた。
ビギナーズラックなのか、才能なのか、本人たちはわかっていないが序盤で圧倒的な力を見せ付けながらMSを2機落とせたという事実は2人を増長させた。
長期戦はだめだ。
このまま行けば、練度や経験の少ない自分たちは不利になることは確実。
それにネビルの頭にはジャネットたちのこともあった。
どこに潜伏しているかは方角しか知らないので具体的にはわからないが、自分たちは行動を起こすために少し無茶をしているのだ。
コロニー内のほかの基地から応援が来るかもしれない。いや、長期戦になったら確実に来るだろう。
ジャネットたちの所在が、自分たちが倒されるより前にばれてしまうかもしれない。
ネビルの背中は冷や汗で湿っていた。
ソールの手前でなければ、服を脱ぎ捨て背中を掻き毟っていただろう。
ソールの頭に考えが浮かぶ。
接近戦。
リスクは高い。All Or Nothingだ。
「しかし、一撃で倒せるということは……」
無意識に言葉に出していた。
「接近戦か?」
声に出している気はなかったため、ソールに声をかけられネビルはどもった。
「……あ、あぁ。サポート、牽制頼む」
「わかった……!」
ソールが太ももの上に開いて置いてあったマニュアルを閉じる。
「やってみたいことがある」
それはネビルに声をかけたのではない。ネビルはソールに射撃を任せるといっていた。ネビルはだからソールの射撃に関しては何も言わない。
長い付き合いになりそうだ。二人の心の中だ。
長い付き合いになる相手を信頼できなくて、どうする?
開き直りのようなことを2人して思っていた。
ソールは先ほどからなれない手つきでパネルをタッチしている。
それはビームキャノンの収束率にかかわる設定を見直していた。
今までは収束率85%。一撃必殺の光を放つ状態だ。
今設定しなおしたのは収束率40%。
収束率が悪いと、遠くまで届かない、当たったところで威力が弱くなる。などの短所が見られるが、反対に当たりやすくなるというものだ。
「間合いをもうすこし知覚してくれ」
ソールの言葉に反応してネビルはスティックを倒す。
「狙いを絞ろう。まずはこいつからだ」
ソールがディスプレイ上で動くジェインの一機にマーキングする。
「俺は均等で相手を牽制する、ネビルは自分のタイミングでやってくれてかまわない」
「いや、ソールにはガンダムに注意を持ってほしい。他の機体は二の次でいい」
わかった、ソールは短く返す。
ゼフィロキアの動きが変わった。
チグハグな動きをしていたのが、まとまりが出た。
意思が表れた。とでも表現しようか。
ハルバートにはそれが伝わった。
しかし、それが何故今になって起こったのかまではわからない。
ハルバートの口元が歪む。
無意識下でハルバートは喜びを感じていた。
辺境のコロニーで、毎日テスト。
それが今、こんなエキサイティングしている。
それは冷静を売りにしているハルバートの認めたくない感情。しかし、闘争本能むき出しの人間の姿だ。
9
:
スコール
:2008/11/30(日) 20:04:27
「その首、もらった……!」
ジェイン1機をサーベルで撃破したゼフィロキアの硬直した隙をついて肉薄するハルバート。
「来た、殺意!」
ハルバートの機動を見ていたソールが敏感に反応する。
ハルバートに向けてほとばしる光。ビームの出力をわざと落としているため、光は連射され、さながら雨のようにハルバートに迫る。
「当たるのか!うおっ」
ガンダムの右肩の装甲に光が当たり、爆発とともにハルバートの勢いが殺がれる。
負けじとビームライフルを放ち、ハルバートは機体の体勢を立て直す。
そのときにはゼフィロキアのロックオンはハルバートから外れ、ジェインに移っていた。
光が放たれ、その光に姿を隠すように、巧みにジェインに接近する。
もう1機のジェインが味方を援護しビームを放つがそれは機体のそばを空しく通り過ぎ、霧散した。
また1機、破壊された。
2対1。最初は5機いた。
圧倒的?いや、そうではない。
たしかに5対1という状況を今の状況へ持ち込める。結果を聞けば確かにとても真似できない。
しかしやはり機体の性能が高い。ハルバートはそう分析した。
その機体を操るものの能力はまだ稚拙。取るに足らないものだ。
中途半端な距離で打ち合いをしていたら性能で圧倒される。しかし、実力のでる接近戦なら。
「おれが援護する……行け!」
大気中の塵などを燃やしながらゼフィロキアへ迫るビーム。
ハルバートは最後のジェインを援護する振りをしながらチャンスをうかがっていた。
光の交差が中空を彩る。
偶然ジェインの放ったビームとゼフィロキアが放った光がぶつかった。
ビーム同士の干渉で波動ともいえる強い力が炸裂する。
しかし、それはハルバートのチャンスには成りえなかった。
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