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鬼和尚の仏教勉強会 講読ゼミ 6 - したらば
983
:
鬼和尚
◆Yj52hBkdLM
:2023/05/05(金) 23:26:55 ID:neMrB5TA0
また仁義の批判じゃな。
仁義などは天性のものではないから憂いの原因になるというのじゃ。
大儀として戦争の原因にもなるというのじゃ。
984
:
避難民のマジレスさん
:2023/05/07(日) 22:42:47 ID:ymd.0iNA0
荘子 86.
駢拇第八(3)
且夫待鉤繩規矩正者。是削其性者也。待繩約膠漆而
固者。是浸其徳者也。屈折禮樂。鉤兪仁義。以慰天
下之心者。此失其常然也。天下有常然。常然者。曲
者不以鉤。直者不以繩。圓者不以規。方者不以矩。
附離不以膠漆。約束不以繩約。故天下誘然皆生。而
不知其所以生。同焉皆得。而不知其所以得。故古今
不二。不可虧也。則仁義又奚連連如膠漆纆索。而遊
乎道徳之間爲哉。使天下惑也。
且夫れ鉤繩規矩(こうじょうきく)を持ちて正す者
は、是れ其の性を削る者なり。繩約膠漆(じゃうやく
かうしつ)を持ちて固むる者は、是れ其の徳を浸す者
なり。礼楽に屈折し、仁義に呴兪(くゆ)して、以て天
下の心を慰むる者は、此れ其の常然を失するなり。
天下に常然あり。常然とは、曲る者鉤(かぎ)を以て
せず、直き者繩を以てせず。円き者規(き)を以てせ
ず、方なる者矩(く)を以てせず、附離するに膠漆を以
てせず、約束するに纆索(じょうさく)を以てせず。故
に天下誘然として皆な生じて、而して其の生ずる所
以を知らず。同焉(どうえん)として皆な得て、而して
其の得る所以を知らず。故に古今は二ならず、虧(か)
くべからざるなり。則ち仁義又た奚んぞ連連として
膠漆纆索の如くにして、而して道徳の間に遊ぶこと
を為さんや。天下をして惑わしむ。
注;
鉤縄規矩;物事や行為の標準・基準になるも
ののこと。 物事の手本。 きまり
鉤:先の曲がった金属製の道具である「か
ぎ」。曲線を描くための道具。
縄:直線を引くための墨縄(すみなわ)。
規:コンパス・ぶんまわし。円を描く道具。
矩:四角を描く差し金
鉤や墨繩やコンパスや曲尺(かねじゃく)
の力を借りて規格通りの形になるのは、
削其性者;素質を削ることになる。
繩約膠漆而固者;縄で締めたり、にかわやう
るしで固めたりすること
是浸其徳者也;生来の性格を損なうことになる
鉤兪仁義;仁義により穏やかに安らげて、
失其常然也;本質的な姿(道)を失ふことになる
纆索;縄:細いなわ、索:太いなわ
故天下誘然皆生;全て自然に具合良く出来ていて、
同焉皆得;天下の者皆自得満足して
故古今不二;古今を通じて異なることなく、
不可虧也; (徳性は)何処に於いても、備わ
らざるはない、掛け替えのないものである
(´・(ェ)・`)つ
985
:
鬼和尚
◆Yj52hBkdLM
:2023/05/08(月) 23:48:07 ID:2vVrLGNM0
かぎ縄とかで正すものはその本性を削るのじゃ。
漆とかで固めるものはその徳を侵すものじゃ。
それらが仁義なのじゃ。
礼楽とか仁義に溺れる者は常然のありのままの本性を失うのじゃ。
天下に常然はあるのじゃ。
常然とは鉤で曲がるのではなく、墨縄で真っ直ぐになるのではなく、コンパスで丸になるのでもなく、漆膠でくっつくものではないのじゃ。
生じる所も得るところも知らないありのままの姿なのじゃ。
二ではなく一であり欠けるところもないのじゃ。
仁義はそのような漆膠のようなものとして天下を惑わすものなのじゃ。
さらにま仁義の批判じゃな。
仁義などは大工が用いる道具のように、本性を損なって常然のありのままの姿を失うものというのじゃ。
それは道徳とは反するものなのじゃ。
天下の人民を惑わすだけのものというのじゃ。
986
:
避難民のマジレスさん
:2023/05/11(木) 17:46:37 ID:tDyZoguo0
荘子 87.
駢拇第八(4)
夫小惑易方。大惑易性。何以知其然邪。自虞
氏招仁義以撓天下也。天下莫不奔命於仁義。
是非以仁義易其性與。故嘗試論之。
自三代以下者。天下莫不以物易其性矣。小人
則以身殉利。士則以身殉名。大夫則以身殉
家。聖人則以身殉天下。
故此數子者。事業不同。名聲異號。其於傷性
以身爲殉一也。
臧與穀。二人相與牧羊。而倶亡其羊。問臧奚事。則挾筴讀書。問穀奚事。則博塞以遊。二人者。事業不同。其於亡羊均也。
伯夷死名於首陽之下。盗跖之利於東陵之上。
二人者。所死不同。其於殘生傷性均也。奚必
伯夷之是。而盗跖之非乎。
天下盡殉也。彼其所殉仁義也。則俗謂之君
子。其所殉貨財也。則俗謂之小人。其殉一
也。則有君子焉。
有小人焉。若其殘生損性。則盗跖亦伯夷已。
又惡取君子小人於其間哉。
夫れ小惑は方を易(か)え。大惑は性を易う。
何を以て其の然ることを知るや。虞(ぐ)氏、
仁義を招(かか)げて以て天下を撓(みた)せし
より、天下仁義に奔命せざるは莫し。是れ仁
義を以て其の性を易ふるに非ずや。故に嘗試
(こころ)みにこれを論ぜん。
三代より以下の者、天下物を以て其の性を易
へざること莫し。小人は則ち身を以て利に殉
じ、士は則ち身を以て名に殉じ、聖人は則ち
身を以て天下に殉ず。
故に此の数子(すうし)の者は、事業は同じか
らず、名声号を異にすれども、其の性を傷(や
ぶ)り身を以て殉と為すに於ては、一なり。
臧(ざう)と穀(こく)と、二人相い与に羊を牧
(やしな)うて、而して倶に其の羊を亡ふ。臧
に奚をか事とせしと問へば、則ち筴(さく)を
挟みて書を読みしといふ。穀に奚をか事とせ
しと問へば、則ち博塞(はくさい)して以て遊
べりといふ。二人の者、事業は同じからざれ
ども、其の羊を亡ふに於ては均しきなり。
伯夷は名に首陽(しゅやう)の下に死し、盗跖
(たうせき)は利に東陵の上に死す。二人の
者、死する所は同じからざれども、其の生を
残(そこな)ひ、性を傷(やぶ)るに於ては均し
きなり。奚んぞ必ずしも伯夷の是にして、而
して盗跖の非ならんや。
天下は尽(ことごと)く殉なり。彼れ其の殉ず
る所、仁義なれば、則ち俗にこれを君子と謂
ふ。その殉ずる所、貨財なれば、則ち俗にこ
れを小人と謂ふ。その殉は一なり。則ち君子
あり、小人あり、其の生を残ひ性を損ずるが
若きは、則ち盗跖も亦た伯夷のみ。又た惡く
んぞ君子と小人を其の間に取らんや。
注;
小惑易方;惑ひの小なる者は(知識の確実を失
ひ)方角を取り違へる位で済むが
大惑易性;惑ひの大なる者になると、其の天
性を失ってしまふ
自虞氏招仁義以撓天下也;昔舜が仁義を標榜
して天下を紊乱してから 有虞氏;古代
の伝説上の聖天子、舜
天下莫不奔命於仁義;萬人挙(こぞ)ってその
わざとらしい仁義に奔走しない者はいない
といふあり様で、
是非以仁義易其性與;それが為に天性を移し
てしまったということではないか
自三代以下者;夏、殷、周の三代から後では
天下莫不以物易其性矣;天下萬人すべ外にあ
る事物のために天性を変えざるはないとい
ふ始末。
其於傷性以身爲殉一也;外物の為に其の天性
を滅却して奪い一身を犠牲に供してゐる点
に於ては全く同一である。
挾筴讀書;竹簡を手にして書を読んでいた
博塞以遊;賭博に興じていた
伯夷;殷代末期の高名な隠者で、儒教では聖
人とされる。
盗跖;春秋時代(又は黄帝時代)の盗賊団の親
分。九千人の配下を従えて各地を横行
殘生傷性;生命をそこない、本然の性を傷付
けた
天下盡殉也;天下の人は外物の為にその身を
殉じて顧みない
若其殘生損性。則盗跖亦伯夷已;身を殉し、
天性を損ふ上からいへば、盗跖も伯夷と均
しいので、
又惡取君子小人於其間哉;君子と小人の別を
設けることはできない
(´・(ェ)・`)b
987
:
鬼和尚
◆Yj52hBkdLM
:2023/05/11(木) 23:23:11 ID:dxUEMAP20
小さな惑いは方角を間違うぐらいですむが、大きな惑いは性情さえも変えてしまうというのじゃ。
舜が仁義というもので天下を惑わしてから、万民の性情がかわってしまったというのじゃ。
みんな仁義のために奔走するようになったのじゃ。
そのために天から与えられた性情さえも失ったのじゃ。
小人は利益のため、武士は名誉のため、聖人は天下のためという違いはあるが、皆天からあたえられた性情を破り、外物のため身をすてるようになったのじゃ。
羊飼いは書を読んだり、博打のために羊を失ったりするがどちらも同じなのじゃ。
聖人も泥棒も同じなのじゃ。
皆仁義のために身を失ったのじゃ。
それを君子と呼ぶのじゃ。
金のためならば小人と呼ぶのじゃ。
それらもまた同じなのじゃ。
さらに仁義が天下万人の性情を破り、身を滅ぼす事になったというのじゃ。
それは金のために身を滅ぼすのと同じというのじゃ。
988
:
避難民のマジレスさん
:2023/05/17(水) 07:03:15 ID:M1D.9BBY0
荘子 88.
駢拇第八(5)
且夫屬其性乎仁義者。雖通如曾史。非吾所謂
臧也。屬其性於五味。雖通如兪兒。非吾所謂
臧也、屬其性乎五聲、雖通如師曠、非吾所謂
聰也、屬其性乎五色、雖通如離朱、非吾所謂
明也、吾所謂臧、非仁義之謂也、藏於其徳而
已矣、吾所謂臧者、非所謂仁義之謂也、任其
性命之情而已矣、吾所謂聰者、非謂其聞彼
也、自聞而已矣、吾所謂明者、非謂其見彼
也、自見而已矣、夫不自見而見彼、不自得而
得彼者、是得人之得、而不自得其得者也、適
人之適、而不自適其適者也、夫適人之適、而
不自適其適、雖盗跖與伯夷、是同爲淫僻也、
余愧乎道徳、是以上不敢爲仁義之操、而下不
敢淫僻之行也、
且夫れ其の性を仁義に属する者は、通ずるこ
と曾史の如しと雖も、吾が謂はゆる臧(ざう)
に非ざるなり。其の性を五味に属すれば、通
ずること兪児(ゆじ)の如しと雖も、吾が謂は
ゆる臧に非ざるなり。其の性を五色に属すれ
ば、通ずること離朱の如しと雖も、吾が謂は
ゆる明には非らざるなり。吾が謂はゆる臧と
は、仁義の謂に非ざるなり。其の徳を臧する
のみ。吾が謂はゆる臧なる者は、謂はゆる仁
義の謂に非ざるなり。其の性命の情に任ずる
のみ。吾が謂はゆる聰(そう)なる者は、其の
彼を聞くを謂ふに非ざるなり。自ら聞くの
み。吾が謂はゆる明なる者は、其の彼を見る
を謂に非ざるなり。自ら見るのみ。夫(か)の
自ら見ずして而して彼れを見、自ら得ずして
而して彼れを得る者は、是れ人の得を得とし
て、而して自ら其の得を得とせざる者なり。
人の適を適として、自ら其の適を適とせざる
者なり。夫れ人の適を適として、而して自ら
其の適を適とせざれば、盗跖と伯夷と雖も、
是れ同じく淫僻を為(た)るなり。余は道徳に
愧(は)づ。是を以て上は敢えて仁義の操を為
さず、而して下は敢えて淫僻の行を為さざる
なり。
(´・(ェ)・`)
(つづく)
989
:
避難民のマジレスさん
:2023/05/17(水) 07:03:57 ID:M1D.9BBY0
注;
且夫屬其性乎仁義者。;そこで、仁義などと
いふやうなものに天性を繋属する者は、つ
まり仁義に殉ずる者であって、
雖通如曾史。非吾所謂臧也;その仁義に達す
ることかの曾参は史鰌ほどであっても、決
して予の善とする所(優れたもの)ではな
い。 曾参(そうしん)、史鰌(ししゅ
う);仁の心が過剰で、自然の徳や性を妨
げ、名声を我がものにしようとする道徳家
臧;善、善(よし)とする所
屬其性於五味。雖通如兪兒。非吾所謂臧也;
五味に捕らわれる者は、五味に殉ずる者で
あって、之に通ずることかの兪兒ほどであ
っても、予の善とする所ではない。
兪児;登山の神様。天下に覇王があらわれ
ると姿を見せると言われる。
人間の本性を失わせるもの
①五色;目の本性を乱し、視力を失わせる。
②五声;耳の本性を乱し、聴力を失わせる。
③五臭;鼻を刺激し、鼻すじをつまらせて額
を痛くさせる。
④五味であり、口を濁し、口の感覚をゆがめ
て味をわからなくさせる。
⑤取捨選択の行為であり、心を乱し、自然の
性をとんでもない方向に逸脱させる。
師曠;春秋時代の晋の平公に仕えた楽人。盲
であったが琴の名手であり、酒色に耽溺す
る平公にたびたび箴言を述べた。
聰;理解することが早い。 判断が的確ですば
やい。 理性がある。 かしこい。
離朱;黄帝時代、古伝説上の人。視力にすぐ
れ、百歩離れた所からでも毛の先まで見る
ことができた。
明;物事を見分け、見通す力がある
藏於其徳而已矣;其の天然の徳を善くし、全
うすることであって、
任其性命之情而已矣;天眞の性能に順適して
ゆくことである。 天眞;自然のままで飾
り気のないこと。性能;性質、能力。順
適;逆らわずに順応すること
非謂其聞彼也、自聞而已矣;其の彼(師曠など
の正した標準に)従って音を聞き分けること
ではなく、我自ら自然に従って聞くことで
ある(自分の内なる声を聞きとることだ
夫不自見而見彼、不自得而得彼者。是得人之
得。而不自得其得者也;元来自然そのまま
を見ないで、人の決めた標準に依って見よ
うとしたり、自然そのまゝの眞を得ない
で、人の善とする所を得ようとするから、
(人の得た外的なものに支配されて、)自得
することのできぬものである。
適人之適、而不自適其適者也、夫適人之適、
而不自適其適;徒に心を外に馳せて、自己
の境遇に満足できない。他人の満足してい
る所に満足して、本当に自己の本心に満足
しなければ、
雖盗跖與伯夷、是同爲淫僻也;(心が常に外的
の誘惑にひかされるのであって、)(利の為
にする) 盗跖の悪も、(名の為にする) 伯夷
の善も等しく淫僻の行為である。 淫僻;
道徳や風潮が度を越えてかたよっている
余愧乎道徳;(かく、自然を没却しているか
ら、)予は所謂道徳なる者はを愧に思ふ。
是以上不敢爲仁義之操、而下不敢淫僻之行也
;上は敢て仁義を操守せず、下は敢て淫僻
の行為を為さず。 操守;信念を貫き、心
変わりがしないこと
駢拇第八
(´・(ェ)・`)
(おわり)
次回より、外篇 馬蹄第九
990
:
鬼和尚
◆Yj52hBkdLM
:2023/05/17(水) 23:15:11 ID:KiDqHaFU0
本性を仁義とか、五味とか、五色などに通じる者はわしはよいとは思わないというのじゃ。
わしの蔵とは仁義ではなく、徳を蔵する者と言うのじゃ。
姓命の情に任じるものというのじゃ。
わしの聡明とは他人の聞ではなく、自らに聞くもの、自らを見る者なのじゃ。
そうすれば他人のことより、自分のことが知れるのじゃ。
人がよいとするところをよいとしていれば、自らわよしとすることができないのじゃ。
人のよいとするところを求めず、自らよしとするところを求めるべきなのじゃ。
そうでなければ利益を求める泥棒も、名誉を求める聖人も同じになるのじゃ。
そのように名を求める世間の道徳家は恥かしいものじゃ。
政府は仁義を守らず、民は貪欲でなく心変わりしなければよいだけなのじゃ。
仁義は道徳より劣るものというのじゃな。
自らの本性に従うべきだというのじゃ。
利益を求めるのも、名誉を求めるのも同じと言うのじゃ。
991
:
避難民のマジレスさん
:2023/05/19(金) 18:05:35 ID:L4550tNs0
荘子 89.
馬蹄第九(1)
馬、蹄可以踐霜雪、毛可以禦風寒、齕草飮
水、𧄍足而陸、此馬之真性也、雖有義臺路
寝、无所用之、及至伯樂曰、我善治馬、焼之
剔之、刻之雒之、連之以羈馽、編之皁棧、馬
之死者、十二三矣、飢之渇之、馳之驟之、整
氏齊之、前有橛飾之患、而後有鞭筴之威、而
馬之死者、已過半矣、陶者曰、我善治埴、圓
者中規、方者中矩、匠人曰、我善治木、曲者
中鉤、直者應繩、夫埴木之性、豈欲中規矩鉤
繩哉。
然且世世稱之曰、伯楽善治馬、而陶匠善治埴
木、此亦治天下者之過也。
馬は、蹄(てい)以て霜雪を踐むべく、毛以て
風寒を禦ぐべし。草を齕(か)み水を飲み、足
を𧄍(あ)げて陸(おど)る。此れ馬の真性な
り。義台路寝ありと雖も、これを用う所な
し。伯楽の我れは善く馬を治むと曰ひて。こ
れを焼きこれを剔(そ)り、これを連ぬるに羈
馽(きてう)を以てし、これを編むに皁桟(そう
さん、うまや)を以てするに至るに及んで。馬
の死する者、十に二三あり。これを飢(き)し
これを渇し、これを馳せこれを驟(はし)ら
せ、これを整えこれを斉う、前に橛飾(けっし
ょく)の患ひありて、而して後に鞭筴(べんさ
く)の威(ゐ)あり。而して馬の死する者、已に
半ばに過ぐ。
陶者の曰く、我れ善く埴(はに)を治む。円な
る者は規(黄)に中(あ)たり、方なる者は矩
(く)に中たると。匠人(しゃうにん)の曰く、
我れ善く木を治む。曲れる者は鉤(こう)に中
たり、直き者は繩(じょう)に応ずと。夫れ埴
木(しょくぼく)の性は、豈に規矩鉤繩(きくこ
うじょう)に中たるを欲せんや。
然れども且お世世これを称して曰く、伯楽は
善く馬を治め、而して陶匠は善く埴木を治む
と。此れ亦た天下を治むる者の過ちなり。
注;
義臺路寝;高層な建物やりっぱな座敷
羈馽;羈(おもがい) :轡(くつわ)を固定するた
めに、馬の頭にかける緒。馽(ちゅう):馬を
つなぎとめる綱。
橛飾;くつわの飾り
鞭筴;むち
埴;きめの細かい、黄赤色の粘土。かわら・
陶器の原料にした。
陶者;焼物職人
鉤;先の曲がった金属製の器具
鉤縄規矩;物事や行為の標準、基準、手本。
(´・(ェ)・`)つ
992
:
鬼和尚
◆Yj52hBkdLM
:2023/05/20(土) 00:02:26 ID:.bl4Vdew0
馬はひずめで霜雪を踏み、毛で風寒をふせぎ、草をたべ水を飲み、大地を走るのじゃ。
それが馬の真の性質なのじゃ。
立派な屋敷があっても使わないのじゃ。
馬の調教師として名高い伯楽は焼き鏝を使ったり、邪魔な毛をそったり過酷な調教で半分は死なしてしまうのじゃ。
陶器を作るものは丸いものや四角なものを適所に使うのじゃ。
木工の人も同じなのじゃ。
世間ではこれらを同じような名人と思っているのじゃ。
それは天下を治める者の過ちだというのじゃ。
伯楽は馬の本性を歪めて半分は死なしてしまうが、陶器や木材の名人は適材適所に使うのじゃ。
同じ名人でもやり方は違うのじゃ。
993
:
避難民のマジレスさん
:2023/06/04(日) 12:22:55 ID:TRrxuEIk0
荘子 90.
馬蹄第九(2-1)
吾意、善治天下者、不然、彼民有常性、織而食、是謂同徳、一而不黨、命曰天放、故至徳之世、其行塡塡、其視顚顚、
當是時也、山无蹊隧、澤无舟梁、萬物群生、連屬其郷。禽獸成群、草木遂長、是故禽獸可係羈而遊、鳥鵲之集、可攀援而闚、
夫至徳之世、同與禽獸居、族與萬物並、惡乎知君子小人哉、同乎无知、其徳不離、同乎无欲、是謂素樸、素樸而民性得矣、
及至聖人、蹩躠爲仁、踶跂爲義、而天下始疑矣、澶漫爲樂、摘僻爲禮、而天下始分矣、
故純樸不殘、孰爲犠樽、白玉不毀、孰爲珪璋、道徳不廢、安取仁義、性情不離、安用禮樂、
吾れ意(おも)ふに、善く天下を治むる者は、然らず。彼の民には常性(じゃうせい)あり。織りて衣(き)、耕して食(くら)ふ。是れを同徳と謂ふ。一にして而して党せず。命じて天放と曰ふ。故に至徳の世は、其の行ふや塡塡(てんてん)たり、其の視るや顚顚(てんてん)たり。
是の時に当たりてや、山には蹊隧(けいすゐ)なく、沢には舟梁(しうりゃう)なし。万物群生して其の郷(きゃう)に連属す。禽獸は群を成し、草木は遂長す。是故に禽獸は係羈(けいき)して遊ぶべく、鳥鵲(てうじゃく)の巣も攀援(はんえん)して闚(うかが)ふべし。
夫れ至徳の世は、同じく禽獸と居り、族(あつ)まりて万物と並ぶ。惡くんぞ君子と小人とを知らんや。同乎として無知、其の徳離れず。同乎として無欲、是れを素樸(そぼく)と謂う。素樸にして民の性得たり。
聖人、蹩躠(べつせつ)して仁を為し、踶跂(ていか、ちき)して義を為すに至るに及びて、而して天下始めて疑ふ。澶漫して楽を為し、摘僻して礼を為し、而して天下始めて分かる。
故に純樸残(そこな)はずんば、孰(た)れか犠樽(ぎそん)を爲(つく)らん。白玉毀(こぼた)ざれば、孰れか珪璋を爲らん。道徳廃(すた)れずんば、安ぞ仁義を取らん。性情離れずんば、安ぞ礼楽を用いん。
注;
塡塡;響く音 塡:ふさぐ・うずめる・みた
す・ひさしい。
是非を忘れて自得満足し
顚顚; 顚: いただき。てっぺん。はじめ。は
じまり。たおれる。ころぶ。くつがえる
物事に対する考え方は直感的であった
蹊隧;径路
舟梁;舟橋
連属;一団を為して安住し
遂長;勝手に繁茂した
係羈;つらなって よく馴れて一所に集ま
って
鳥鵲;かささぎ
攀援;よじのぼる
闚(うかが);のぞく、示す
同乎;一様に
素樸而民性得矣;素樸にして民各々その性を
得て、(天下おのづから治った)
蹩躠(へつさつ):めぐり歩く様
踶跂(ちき)」は、苦心して力を尽くす様
疑;惑う
澶漫;淫蕩して
摘僻;腰を曲げて礼する
而天下始分矣;天下の人心は分離していよい
よ本然の性と遠ざかるようになった。
犠樽;鳥獣形の酒樽
毀;壊す
珪璋;礼式に用いる飾り玉
道徳不廢、安取仁義;道徳が廃れなければ、
どうして仁義が必要になろう。
性情不離、安用禮樂;本来の生まれつきや真
情が失われなければ、どうして礼儀や音楽
が必要になろう。
(´・(ェ)・`)つ
994
:
鬼和尚
◆Yj52hBkdLM
:2023/06/05(月) 00:21:53 ID:esS4gL9M0
荘子は前節のような天下の治めかたはいかんというのじゃ。
民には日常的な本性があるというのじゃ。
服を作り、田畑を耕して食べるのじゃ。
徳と同じなのじゃ。
一つであり集まりではないのじゃ。
天の放任するところなのじゃ。
至徳の世は全てが満たされ、還帰するのじゃ。
そうなれば山に道なく、川に船なく、獣も喜び草木も健やかに成長するのじゃ。
君子も小人もなく、民は無知であり、無欲であり、素僕なのが民の本性なのじゃ。
聖人は苦労して仁義を行うから天下の人々から疑われるのじゃ。
礼楽に溺れて天下は乱れるのじゃ。
道徳が廃れたから仁義がおこり、性情を離れたから礼楽を用いるのじゃ。
老子も説いている道徳が廃れたから、仁義がおこったというのじゃな。
本来の性情がなくなって礼楽もあるというのじゃ。
そのようなにせものでは天下は乱れるばかりというのじゃ。
995
:
避難民のマジレスさん
:2023/07/13(木) 12:26:36 ID:CDGu72g20
荘子 91.
馬蹄第九(2-2)
五色不亂、孰爲文采、五聲不亂、孰應六律、夫残樸以爲器、工匠之罪也、毀道徳以爲仁義、聖人之過也、
夫馬、陸居則食草飮水、喜則交頸相靡、怒則分背相踶、馬知已姿矣、夫加之以衡扼、齊之以月題、而馬知兀倪、 闉扼鷲曼、詭銜竊轡、
故馬之知而態至盗者、伯樂之罪也、夫赫胥氏之時、民居不知所爲、行不知所之、含哺而熙、鼓腹而遊、民態以此矣、
及至聖人、屈折禮樂、以匡天下之形、縣跂仁義、以慰天下之心、而民乃始踶跂好知、争歸於利、不可止也、此亦聖人之過也、
五色乱れずんば、孰れか文采を為(つく)らん。五声乱れずんば、孰れか六律に応ぜん。夫れ樸を残(そこな)ひて以て器を為るは、工匠の罪なり。道徳を毀(こぼ)ちて以て仁義を為るは、聖人の過ちなり。
夫れ馬は、陸居すれば草を食み水を飲み、喜べば則ち頸(くび)を交えて相い靡(したが なびか)ひ、怒れば則ち背を分かちて相い踶(け)る。馬の知は此に已(や)むのみ。夫れこれに加うるに衡扼(かうやく)を以てし、これを斉(ととの)ふるに月題を以てして、而して馬の知は兀(こつ)を倪(かぎ)り、扼(やく)をくだき曼を鷲(わし)り、銜(くつばみ)に詭(さか)らひ轡(くつわ)を竊(ぬす)む。
故に馬の知にして能く盗に至る者は、伯楽の罪なり。
夫れ赫胥(かくしょ)氏の時、民は居るも為す所を知らず、行くも之く所を知らず、含哺(がんほ)して熙(たの)しみ、腹を鼓ちて遊ぶ。民能く此に止む。
聖人に至に及びて、礼楽に屈折して、以て天下の形を匡し、仁義に県跂して、以て天下の心を慰む。而して民乃ち始めて踶跂して知を好み、争いて利に帰し、止むべからざるなり。此れ亦聖人の過ちなり。
注;
樸;あらき、切り出したままの木材。ありの
まま。飾り気がない。
靡;なびく 寄り添う
衡軛(こうやく);牛車の軛(ながえ)の先端に
ある牛の首につける横木。くびき
月題;首木どめ(?)
兀倪;横木を折り(介倪;束縛を逃れようと横目でにらみ)
曼;馬車の幌(御者?)
鷲;突き破る(突く)
詭銜;銜(くつばみ。手綱)に詭(そむ)いて
(銜を吐き出したり)
竊轡;轡(くつわ、手綱)を竊(ぬす)無。手綱
を奪い取る。(手綱を噛んだり)
闉;くだく、ふさぐ、ふさがる
扼;横木どめ、おさえる しめる
赫胥氏之時;太古赫胥氏の時代は、
民居不知所爲、行不知所之;民に機を狙う心
がないから、別に何を為そうとも考えず、何
処へ行こうとも考えない
含哺而熙、鼓腹而遊、民態以此矣;食べもの
をたらふく食べてたのしみ、腹つづみをう
って遊んでいた。民衆のできることはこれ
ぐらいのものであった。
屈折禮樂;儀礼や音楽に従って体を折りかが
めて、
以匡天下之形、縣跂仁義、以慰天下之心;そ
れで世界の人々の心を[むりに]やわらげ
ようとしたり、仁や義によってつなぎとめ
て、それで世界の人々の心を[むり]とと
のえようとすることになった
而民乃始踶跂好知、争歸於利、不可止也、此
亦聖人之過也;そこで、民衆ははじめてあ
くせくと努めて知識を求め、争って利益を
追求して、とてもひき止めようもないほど
になったのである。これはやはり聖人のあ
やまちである。
(´・(ェ)・`)つ
996
:
鬼和尚
◆Yj52hBkdLM
:2023/07/15(土) 00:07:18 ID:stp/RCz.0
五色が乱れたら、誰も色彩の模様を作れないのじゃ。
5音が乱れなければ歌も歌えるのじゃ。
原木を傷つけて器にするのは工匠の罪なのじゃ。
仁義によって人を誤導して道徳を失わせるのは聖人の罪なのじゃ。
自然の馬は草を食べ、水を飲み仲良く暮らしているのじゃ。
人が頚木をつけたり調教しようとするから、人をうらんでにらんだり馬具を壊したりするのじゃ。
それゆえに馬が悪くなるのは調教する者の罪なのじゃ。
古の王の時代には民は何も知らず、日々を楽しく暮らしていたのじゃ。
聖人が礼とか楽とか仁義を教えるから、人々は知識を求め、金を争って奪い合うようになったのじゃ。
これは聖人の罪なのじゃ。
これもまた仁義の批判じゃな。
馬が自然に暮らして何も不満がないように、民も自然に暮らせば満足だったのじゃ。
聖人が仁義とかを教えるから知識とか利益を求めて争うようになった、というのじゃ。
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