"unii.... la kom xudo..... la jeg guj...."
その白い小猫又は空腹のあまりふらついている。
"nya! la chilak faj e id!"
どうやら飲食店を見つけたらしい。
当然、この街の通貨は持っていない。しかし背に腹は代えられない。
その子猫は店で強盗することを試みた。
店主に向かい、精いっぱいの虚勢を張って言った。
"kev jil id o la!!"
しかし、所詮、小動物が叫んだところで大した脅威にはならない。
ふわふわした髪のスリッドスカートが印象的な女性店員は興奮した様子でその白い子猫を拾い上げ、抱きついた。
"hwa!! hwa!! miiko xa!! ank tinkaa!!"
その腕は、細いようで意外と力強い。重い純銀製の棒を10m単位で投擲できるかのような力強さである。
"uniiiiiiii!!!"
その女性店員に抱かれて子猫は苦しそうにしている。
言葉はどうも語族レベルで別系統である様子で、通じる様子はない。
そこで、作戦を変えた。
"unii, uniuni uniii uni"
まるで猫の鳴き声そのものである。
"mii, uni! uni uni nyaan"
女性店員も猫の鳴き声っぽいものを出し、なぜか通じた。
親切な女性店員は厨房から牛乳瓶を持ってきて、浅い皿に注いで与えてくれた。
心のきれいな者には通じる魔法の言葉である擬人化動物汎用語とでもいうのだろう。
人工言語の国際補助語の存在意義を全否定するかのようなコミュニケーション方法である。
腹が落ち着いたところで、その女性店員の足元を眺めて見ると、肉まんを思わせる体型の白い大猫がいた。
これもまた猫と言うのは正確ではなく、二足歩行の猫型妖怪なのだろう。
"naa!! lein liij haahaa. fue haahaa pe!"
その大猫は嬉々としてその女性店員の足元にすり寄りながら喋っている。
"hap? kakis? la el zi jeb gav"
子猫はその大猫に冷たく言い放った。
"luni liij a rag aa"
二匹の言葉は別系統の言語であるようだが全く問題なく通じている。
これもまた擬人化動物汎用語の力なのだろうか。
面倒だから早くこの場を立ち去ろう。
そう思って歩き始めた矢先、
"aaaaaa!!!"
怪物に吹き飛ばされた戦斧を持った妙にがっしりした髭のおじさんが突然空から降ってきた。
"hgyaaa!!"
押しつぶされて、思わず猫の悲鳴のような声をあげる小猫又。
"naa? nei haar luni?"
大猫は、その悲鳴で流石に異変に気がついたか、髭のおじさんの下敷きになった小猫又を引っ張り出す。
"la el la jeg nyaaa.."
小猫又はかなりの衝撃で押しつぶされたにもかかわらず、よく道で見かける平面化した毛の塊にはならなかった。
一方でそのおじさんは吹き飛ばされた衝撃で内臓破裂を起こし今にも死にそうであった。
"gois!"
大猫は、面白い玩具を眺めるように高い年代物の鎧や斧を観察している。
彼もまた小猫又と同類の妖怪なのだ。
他者の生死にさしたる関心はない。
彼は灰色っぽい光る金属でできた無骨な斧を撫ぜ回した
"op?"
驚いたことに、斧はみるみる小さくなり、太古の学校で使われていたというチョークに酷似した
小さな金属棒に変化した。
今度は、重そうな丸盾にふれてみる。これも小さな金属棒に変化した。
"wei, luni liij, ba' bit mil. vongole boj"
大猫は、小猫又に面白いからやってみろと促した。
小猫又は、小さな短剣に触れて見た。これもまた小さな金属棒に変化した。
"ou, gel, si na dara bo!"
小猫又も面白く思ったようだ。
"ba' bow cum ciunni-bow namluktan pe."
"la mamak si china chojuzal zobi kune china."
"biras! ciunni-bow bit johv gumoso"
"bani. mi bov fu si tsiunibo"
先の金属棒に対する下らぬネーミング談義をしているように見えるが、
その裏では、擬人化動物汎用語で先のおじさんの遺志を遂げる方法を立てていた。
この事件の原因と思われる1mの立方体状の檻の破壊を破壊すれば、
怪物の出現を止められるはずだ。
だが、そこに行くには無数の怪物が行く手を阻んでいる。
中二棒(と、安易に彼らは名付けた)による戦闘力を得たとしても、基本的に彼らはマスコット枠で非力である。
正面から行っても、怪物以前にあの武装集団に踏まれてそこに行くことはできないだろう。
だから、側溝を伝って接近することにした。
"dachas!? altfian sam eeyo!?"
赤白長衣の女魔術師は、謎の青年の登場に驚いた。
"hages ciunni walol"
"zubi malak e... fe sa adovluvol mava bu. lil xemo na jimu pol"
わけのわからない現象の連続で流石に慣れたのか、
主人公補正の高そうな人が来たと冷静に論評する。
白猫妖怪たち。
外壁が吹き飛んであたり一面白い粉塵が降り積もっていても、
元々白い毛だから変わっていないように見える白猫妖怪たち。
白い粉塵で周囲と同化して見えにくくなっていた。
"Vi portu lin al Kuracisto"
鎖帷子の男は赤白長衣の女に何かを指示した。
"alkyuul, rsiila. firvantis!!"
赤白長衣の女は、担架を持った白服の男たちを呼びだした。
衛生兵と思われる彼らは、力尽きて倒れた青年を担架に乗せ、
赤白長衣の魔術師と共に戦線を離脱した。