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( ^ω^)ヴィップワースのようです
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タイトル変更しました(過去ログ元:( ^ω^)達は冒険者のようです)
http://jbbs.livedoor.jp/sports/37256/storage/1297974150.html
無駄に壮大っぽくてよく分からない内に消えていきそうな作品だよ!
最新話の投下の目処は立ったけど、0話(2)〜(5)手直しがまだまだ。
すいこー的ななにがしかが終わり次第順次投下しやす
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たとえばの話をしよう。
たとえば君という人物が、たった一人で絶望を覗く深淵の淵に立たされたとする。
仮にそれを一人で乗り越える事が出来たとして、天恵に恵まれていたに他ならない。
たった一人で困難に打ち勝ち続ける事が出来るほど、人は強い生き物ではないからだ。
だが、仲間という存在があるのならばどうか?
同じ過程を辿るにせよ、結果は違ったものになる可能性も無いとは言い切れない。
互いが互いを助け合い欠点を補い合う事で、人は、普段以上の力を発揮する事が出来る。
目には見えず、言葉で言っても陳腐になるだけの───不確かなもの。
それは───”絆”というものなのかも知れない。
誰にも断ち切る事の出来ない、真に強き”絆”の力があるとするならば、
恐らく人は、きっとどんな困難にも挫ける事なく立ち向かっていけるはずだ。
その人と人との結びつきが生み出す”光”は、きっと暗闇の中でこそ一層光り輝く事だろう。
大陸暦893年「ショボン=ストレートバーボン」の手記より
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( ^ω^)ヴィップワースのようです
「序 幕」
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─────
夜の帳も降りた頃、とある森の奥深くに5人の若者の姿があった。
虫たちの声だけがしんしんとあたりに響く中、
彼らの周りを包むのは、薄ぼんやりとした暗闇ばかり。
星も見えない程の木々に覆われ、唯一光を灯しているものと言えば、小さな焚き火だけだ。
時折、ぱちぱちと音を立てるその薪の音も、すぐに森の静寂へ吸い上げられる。
5人の男女は火を囲みながら談笑しあったり、薪火をぼうっと眺めては、
旅の疲れを癒している所だ。
そこで、突然一人その場を立った長髪の女性の一人が仲間へと語り掛けた。
「歩哨が一人居れば十分だろう、お前達は休むといい」
その言葉に、全員が黙り込んだ。
これまでの道程で、確かに全員に疲労は溜まっている。
だが、一同は頷きもせずただそれに返す言葉を探し当てていた。
何も一人で歩哨の苦労を負担する必要はないからだ。
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その中で、一番早く思い立った銀髪の男は立ち上がると、彼女に言った。
「無理しなさんな、この人数なら二人のローテーションで十分さ」
ローブのフードを深く被り、膝を抱えてぼうっと薪の火を見つめていた
金髪の女性も、はっと気づいたように飛び起きると、彼の言葉に続く。
「そうよ、あなただけじゃなく、皆長旅で疲れてるんだから……なんなら、私が引き受けるわ」
最初に歩哨を請け負おうとした女性が、彼女のその言葉になんとも言えぬ表情を
浮かべたのを確認すると、地べたで地図を開いていたローブの男は割って入った。
「止した方がいい。僕たちと彼らとじゃ元々身体のできが違うからね」
─────ぐおぉぉ……ぐおぉぉ……─────
そんなやり取りの中で、既に豪快ないびきをかいて眠りに落ちている者がいた。
仲間たちが傍に居るためか、完全に安心しきったような安らかな寝顔を浮かべている。
大の字に寝そべりながら、そしていびきはますます大きさを増していった。
彼以外の全員が「やれやれ」とばかりにそのあられもない姿に白い目を向けていたが、
ローブの女性はそれに怒り心頭と言った様子で、つかつかとその枕元に歩み寄った。
「ふぅ……あんたってばッ……!」
一度大きくため息をついてから、枕代わりに頭の下に敷いていたその薪を、思い切り蹴飛ばす。
「……あqwせdrftgyふじこlpッ!?」
夢うつつの中、突然現実に引き戻されると、硬い地面に後頭部を打ち付けた。
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「なぁ、いい考えがあるんだけどさ……」
「……聞こうか」
「俺らの内誰か一人ずつをニ交代にして、もう一人はこいつに全部やってもらうってのはどうだ?」
頭を押さえてうずくまる男を尻目に、銀髪の男はそんな冗談めかした事を言った。
「……フッ、それもいいな」
長髪の女性が含み笑いを漏らした後、その場に小さな笑いが巻き起こった。
だが、そんな和やかな仲間内での談笑も束の間。
─────「”ウオォォォォォンッ”」─────
「!?」
直後、全員の身に戦慄が走った。
全員がすぐさまそれぞれの武器を手に取り、その場から飛び跳ねるようにして立ち上がる。
そう遠くない場所から確かに聞こえたのだ。
声からして獰猛極まり無い事を連想させる”獣”の、尋常ならざる咆哮が。
ローブの男は、すぐに声の聞こえた暗闇の方を注視する。
「今のは……近い───ここから、4半里も無いだろう」
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先ほどまでいびきをかいていた男も、すでに背の剣をいつでも抜ける体勢だった。
「ただの狼……って訳でもなさそうだおね?」
銀髪の男は、かったるそうにしながら女性達に声をかける。
「悪いなお二人さん。どうやら、今晩の野営はお預けみたいだぜ」
長髪の女性は、それに腰元の小剣を取り出しながら答えた。
「なら、とっとと終わらせよう。正直に言って、私は眠い」
最後尾で身構えるローブの女性は、恐怖心を跳ね除けるようとしているのか。
その様子から、あえて気丈な態度で振舞っているのが少しだけ見て取れる。
「ま、後方支援は私にお任せってとこね」
─────「……”グルオォォォォォァッ”……」─────
今度は、更に近くでその声は聞こえた。
敵意を剥き出しにしたような、その吼え声は、明らかにこちらへ向けられている。
どうやら、戦闘は避けられない事態になりそうだ。
そう思っていた矢先────
気づけば暗闇の向こうからは、既に赤々と輝く眼光が5人の若者達を射抜いていた。
茂みの向こうからこちらへ近づくにつれて、その獣の威圧感は更に強まってゆく。
並の妖魔ではないだろう──────だが、この状況では立ち向かう他ない。
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「────行くお、みんな!」
臆することなく、先頭に立つ剣士は走り出した。
それに続くようにして、他の面々も側面から彼を支援する。
真っ向から巨大な獣とやりあおうと長剣を振り下ろした彼の眼前に、
打ち込みの合間を縫って飛んできた、獣の鋭爪が迫っていた。
だが、銀髪の男は瞬き一瞬ほどの間に胸元からナイフを取り出すと、
獣の眼を目掛けて指先から投擲し、見事狙った場所へと突き立てた。
「ったく、ヒヤヒヤさせんなよ」
獣が大声を上げて怯んだ一瞬の隙を突いて、ローブを纏った男の手から巨大な炎が発現している。
それは意思を持ったかのように彼の指先どおりの軌道を描いて宙を飛ぶと、獣の身体に直撃した。
「……どうやら、火力が足りなかった」
片目を潰され、身体に燃え移った炎の苦痛。
不気味な声を上げながら、それを紛らわそうとしているのか、獣は狂ったように暴れ始める。
「チッ……あぶねぇぞ、離れろ!」
「やはり、手負いの獣は危険極まるね……!」
後退してゆく彼らと前線を入れ替わるように、淡い黒髪の女性が躍り出た。
ゆっくりと背後を振り向くと、そこに居たローブの女性へ目で合図を送った。
「任せろ」
その一瞬だけで、通じ合えたようだ。
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(………うん)
互いに無言の中、ローブの女性はこくりと小さく頷くと、
【 聖ラウンジの名において 】
口にした────救いの力をもたらす、その聖なる御名を。
【 ヤルオ=ダパートの名において 】
彼女の身体の周囲からは、純白に包まれた粒状の光が漂い始め───やがて、
【 神の庇護の元 彼の者の身を あらゆる外敵から護り賜わん!】
ローブの女性がそう唱えて手を組んだその瞬間、やがてそこから閃光が生まれた。
舞い降りるようにして瞬く粒状の光は、苦戦を強いられる剣士に助太刀する機を
今か今かと待ち望む、小剣を携えた女性の身へと降りかかると、纏わりつく。
まるで、力を付与するようにして。
「はぁッ!」
それを受けて、依然として暴れ続けていた獣の懐へと彼女は飛び出した。
辛うじて見えるのは片目だけ、その憎悪に身を任せ、まるで目の前にある
全てをなぎ払おうとするかのように鋭い爪を尚も振るい続ける。
だが、俊敏な身のこなしの彼女には、そのどれもが当たらない。
「……助かったお!」
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獣の攻撃の直後を狙い澄まし、ほんのわずかな隙を小剣が一度、また一度と突く。
一合ごとに、獣の身には刺し傷が増えている。
が、その身から血を流す度、更に獰猛に力強く、牙や爪は襲い掛かる。
剣士は、得手とする己の剣を力強く握り締めていた。
自分のものよりも遥か小ぶりな小剣で、果敢に剣技を繰り出し続ける彼女を前に。
自らの持つ速力を大きく上回るであろうその攻防に、自らが枷となるのを拒んでいたのだ。
だが、さしもの獣も深傷をいくつも負わされ、そこいらの猛獣を凌駕するであろう
その敏捷性にも、徐々にではあるが陰りが見えつつあった。
────剣士は、その隙を見逃さなかった。
「────お」
大きく、大地が揺らぐ程の一歩を踏みしめた。
「────おおおおおッ」
次いで、天高く跳躍する自分を想像しながら、跳んだ。
瞬きするほどの一瞬の内に全力を込め、両の足は既に地面を離れていた。
獣の背後へと、回り込んでいるのだ。
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その頭上、天を突くような威容で構えていた剣。
「────おおらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁァッ!!」
自らの全体重を乗せた落下の勢いに任せて、裂帛の気合と共に振り下ろす───
やがて、鉄塊のような剣を比類なき速度で打ち込まれたその巨体は、ゆっくりと崩れ落ちた。
再びその場に訪れる静寂─────その静けさこそが、戦闘の終わりを告げる、合図だった。
────
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────────────
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その後、傷ついた体を一晩の間だけ休ませて、すぐに次の旅の目的地へと向かった彼ら。
自分達が倒したあの巨大な獣が何であったのかなど、知る余地もないだろう。
ここ10年ばかりも山の頂上付近に出没し、近隣の村人達に恐れられていたという、
恐るべき”山の主”であったという事実など───あるいは、知ろうとも思わなかったのか。
その権利を持ちながら名声を得る事もなく、彼らは人知れず山を降りていった。
彼らは”冒険者”達。
身に余る名声など良しとせず、時には地位や富すらもを自らの誇りや、
その信念の為にはかなぐり捨てると言われる者達だ。
違う人生を歩みながらも、同じ宿で出会って、今では共に冒険をする仲間同士。
その彼らに共通する事は、皆が自由の風に吹かれて生きる事を選んだという事だ。
今日も────彼らはどこかの大地を歩いている。
芽吹き始めたばかりの5人の絆は、今はまだ限りなく心細い一本の線だ。
だが、冒険を共にする仲間の存在が、いつしか彼ら一人一人を今以上に強くするだろう。
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