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生命ノ在処<イノチノアリカ>
20
:
ピーチ
:2012/06/28(木) 22:56:03 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
bitterさん>>
コメントするのは初めてだよねー、今一気読みしたよー!!
ビターさんの小説ってミステリアスって感じで面白い!
それに、登場人物の性格とかはっきりしてて分かりやすいよ!
更新待ってるね〜!
21
:
bitter
◆Uh25qYNDh6
:2012/07/03(火) 21:38:50 HOST:p4239-ipbf2501sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp
>>ピーチさん
反応が遅くなってしまいすみません;コメント有難う御座います^^
面白い、と感じて頂けて嬉しい限りです+
大分スローペースですが頑張って更新していきますねノ
22
:
bitter
◆Uh25qYNDh6
:2012/07/03(火) 21:45:14 HOST:p4239-ipbf2501sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp
二章 散らない花
【一】
明らかに身を固くしている織を見て、昌は首を傾げた。
どうかしたのかと問いかけようとした時、
――ぽつり。
小さな雫がひとつ、鼻先に触れた。
見上げると既に月は無く、暗い中でもはっきりと分かる、厚い雨雲に覆われた空。
ひとつ、また一つと、雨粒の勢いは増していく。
雨か、と呟いた昌の前方で、織が我に返ったように瞳を瞬かせた。
「降り出したか。……もう行け、道が分からなくなるぞ」
再び平静を取り戻した双眸が昌を見据え、逸らされる。
そのまま立ち去ってしまいそうな背を引き止めようと、昌は咄嗟に伸ばした腕で――黒い鞘(さや)を掴んだ。
先の行動の理由を問い質(ただ)そうという訳ではない。
ただ単純に、もう少し話していたいと思ったのだ。
去ろうとした矢先後ろへ引かれ、振り向いた織が眉を寄せる。
「っ、おい何だ。私は行けと言った筈だが」
「待てって。なんだってそう、いっつもさっさと戻るんだよ。急ぎの用でもあるのか?」
「それを訊いたところで何になる」
いいから離せ、と握ったままの刀を引き戻す。
しかし、昌も負けじと力を込めた。
勢いで織の身体が傾き、上目に昌を見上げる形になる。
訝しげに細められた碧色と、視線がかち合った。
「俺が知りたいんだよ。別に深い意味はねぇけど」
たった数分。一言二言会話を交わせば、それで終わり。
それがここ数日間の、織との日常だった。
お陰で毎日のように顔を合わせていても、進展するどころか一定の話題すら見付からない。
決して長くはないとはいえ、共に過ごしていれば相手を知りたいと思うのは当然の事だろう。
それが未解決の謎で満ちている者ならば、尚更。
「――馬鹿者」
ぽつりと、雨音に混じって織の声が響いた。
「そんな事で一々呼び止めるな。私には社(やしろ)を護るという役目がある。少しでも離れれば、早々に戻るのは当然だ」
それに、と更に続ける。
「わざわざ危険な状況下で長話をする必要はない。……どうせ朝になれば、また顔を合わせるだろう」
だから今は、私を追うな。
そう言って織はもう一度刀を引き、無言で放すよう促した。
どうやら、これ以上問答する気はないらしい。
一切の反論を許さない言葉に息を吐き、昌は数秒を要して鞘を解放した。
「はぁ……分かった。明日また会えるんだな?」
「? ああ。何を今更――」
「じゃあ明日な」
今度はちゃんと明るい内に来るから、と口角を上げる昌。
瞬間、織の瞳が面食らったように見開かれる。
軽く手を振りながら去っていく昌を、織は何も言わずに見送った。
――何も言えずに、というのが妥当な表現かもしれない。
……これではまるで、〝友〟のようではないか。
小さく呟き、まだ温もりが残る鞘に指を滑らせた時――
「友では不満か?」
織の銀の睫毛が、ぴくりと揺れた。
23
:
森間 登助
◆t5lrTPDT2E
:2012/07/04(水) 18:47:41 HOST:180-042-153-134.jp.fiberbit.net
コメント失礼致します、森間です。
織と昌の関係がそろそろ明らかになってきそうですね。
いや、まだか……?
にしても言葉ですれ違いをしているようで、何だか見ている方が少し微笑ましいですね^^
さて、アドバイスとまいりますが、前回のアドバイスをちゃんと理解してくれたのでしょうか……?
行が何連にもなっていないとは言え、改行後の字下げがされていないように見受けられます。
また、改行については多様化しすぎに思えます。こうしてみると少し文章を水増しした印象が見受けられますのでご注意を^^;
例えば
>>22
の本文の六から九行目ですが、
小さな雫がひとつ、鼻先に触れた。
見上げると既に月は無く、暗い中でもはっきりと分かる、厚い雨雲に覆われた空。ひとつ、また一つと、雨粒の勢いは増していく。
雨か、と呟いた昌の前方で、織が我に返ったように瞳を瞬かせた。
と、したほうが良いでしょう。意味が同列している物は見づらい以外の何物でもありません。段落を見きり、改行できるようにしておきましょう。
また、これで改行後の字下げも分かったと思います^^
さて、ここまでは基本です。次はストーリーについて書いていきたいと思います。
まずは主人公についてですが、織が怪我をしている状態で引き留めていますよね? ただ話しをしたいという理由で引き留めるには矛盾しているかなと思いました。
また、引き留めるところでは前文の主人公の性格と矛盾しているかなと思いました。最初の方は常識人な印象でしたが、去ろうとする人物を話したいという理由のみで無理矢理引き留めるとう非常識なことをしているのが性格の不統一を感じました。
さらに世界観設定がないので、狼がいる理由が分かりませんでした。この世界が現代日本ベースなら、現在日本に野生の狼はいないという矛盾が起こります。また、そうでないのなら世界観設定を物語に記述しましょう。
世界観設定の描写のタイミングは、作品の固有名詞、用語が出てきたときに説明すれば良いと思いますのでご参考までに。電撃文庫の「魔法科高校の劣等生」ですが、ライトノベルと言えどその部分の記述がとても参考になるので、もし良ければ本屋で立ち読みしてみて下さい((殴
全体を通して簡単に言いますと、やはり作者の都合で動いている感じが否めないです。
何度も文章を他人の気持ちになって読み返し、矛盾を見つけてあげると良いと思いますよ。
それと、本を読んでみてその作者がどのように自然に関係性を持たせているか見てみると理解が深まると思います。世界観がまるっきり違うなら理由だけ真似しても良いかも入れませんね。
今回もメチャクチャ長くなって申し訳ないですが、分からないところがあれば聞いて下さい^^;
それでは続き、楽しみにしております^^
24
:
bitter
◆Uh25qYNDh6
:2012/07/04(水) 22:24:27 HOST:p4239-ipbf2501sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp
>>森間 登助さん
またまた時間を割いて下さり有難う御座います。
言葉ですれ違い……確かにそんな感じですね^^
まずは少しずつ歩み寄ってくれたらな、と思っています。
上手くいくかどうかは別問題ですが((
うーん……努力します、としか言いようがないです^^;
世界観については、ある程度しっかりと説明を入れていきたいと思います。
まだまだ未熟な文章で申し訳ないのですが、それでも楽しみにして頂けて嬉しいです^^
それでは、短文ですがこの辺で。
今回も丁寧なアドバイスを有難う御座いました^^
「魔法科高校の劣等生」の方も、機会があれば目を通したいと思いますノ
25
:
bitter
◆Uh25qYNDh6
:2012/07/07(土) 18:59:22 HOST:p4239-ipbf2501sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp
【二】
響いた声を追い、上方を仰ぎ見る。
その先では青年が一人、木の枝に立ち此方を見下ろしていた。器用にも、一枚下駄でその場に留まっている。
夜の目にも鮮やかに映る濃緋(こきひ)の羽織と、銀糸で刺繍された下弦の月。
――そして、目元を覆う黒い包帯。
覚えのある特徴を確認し、織は声の主をしっかりと見据えた。
「どういう意味だ、風月(ふづき)」
言いながら、そもそも何故此処に居るのだ、と目で問う織を前に風月と呼ばれた男はくつくつと笑みを零した。同時に肩までの銀髪が揺れる。
「そのままの意味よ。言いたい事があるなら残らず吐けばよかろう、そなたらしくもない」
「全く以って答えになっていない。納得出来るものを返せ」
見上げる織の双眸が僅かに鋭くなる。
風月は形の良い唇を更に歪ませ、とん、と体重を感じさせない動きで地へ降り立った。
「そう急(せ)くな。ほれ、折角の美しい顔(かんばせ)が歪んでおるぞ」
視線は交わらないが、先の声色から織の表情は簡単に推測出来る。
感覚のみで寄せられた眉間を突いてやると、戯(ざ)れるな、と身を捩る気配。
「……もういい、用件を話せ。まさかそんな戯言を言う為に来た訳ではあるまい」
まだ何か言いたげな表情を残しながらも、織はそう紡いで風月を見た。
身長差ゆえに、やはり見上げる形になるのが微妙に悔しいが、今はそれを言う時ではないと心の底に押し込める。
風月はあぁ、と手を打ち、
「忘れるところであったわ。何を聞いても驚かぬか?」
「何が言いたい」
早く言えと言わんばかりに、織の双眸が据わる。
風月は落ち着いた様子で一呼吸置き、口を開いた。
「……王(おおきみ)が動いたらしい。それも、〝月詠(つくよ)族〟の名を出して城下を出歩いているという話だ」
「…………は?」
光と影、表と裏。それが〝天照(アマテラス)の国民〟と〝月詠族〟の関係を表す、最も簡易な言葉だった。
常に影となり、裏で息を潜めるように生きてきた月の民。
当然の事ながら、今までその存在が表立って注目される機会は無かった。――なのに今、目の前の男は何と言った?
告げられた言葉を理解するのに数秒掛かり、織の口から短い声(おと)が零れる。
直後、
「――ふっ、何だその顔は。驚かぬのではなかったのか?」
風月がからかうように笑った。
言い返す織の表情に苛立ちと羞恥が混ざる。
「う、五月蝿いッ、そういう事は真っ先に言え! それと、別に驚いた訳では……、……目的は分かっているのか」
「まだ詳しくは知らぬが、恐らくは我ら〝月の民〟を捜しておるのだろう」
少なくとも無関係ではないと、淡々と言い切られた言葉に織が眉を顰(ひそ)める。
同時に、とうに塞がっている傷口が疼いた。微かな痕すら残さぬそれは異常な治癒力の表れ――嫌な感覚だ、と心中で吐き捨てる。
「何故そのような事になっている。私達の存在は、単なる〝伝説〟として片付けられている筈だ」
「我がこの山のふもとで、実際に耳にした話だ。それなりの危険は伴うが……真(まこと)か否か見極めるには、直接見(まみ)えるのが最も手っ取り早いであろうな」
目的は推測でしかないが、王(おおきみ)が城下に姿を現した、という国民の囁きはこの耳がしっかり捉えている。
赤黒く滲んだ白袖。そこから漂う微かな血臭を鼻先に、風月は単調に告げた。
「……確かなのだな?」
「ああ。――おい、何処へ行く」
返事を聞くや否や、歩き出した織の背に風月の声が掛かる。
「社(やしろ)に戻る。準備を整えねばならん、貴様も来い」
織の声色に揺らぎは無い。
その意図を察した風月は小さく息を吐き、遠ざかりつつある足音に続いた。
26
:
森間 登助
◆t5lrTPDT2E
:2012/07/08(日) 18:26:43 HOST:180-042-153-148.jp.fiberbit.net
森間です。突然済みません、念のため訊かせていただきますが、改行後の字下げの意味を分かっておいででしょうか……?
改行後の字下げというのは、文を書く前にスペースを一つ空けておくと言うことでして、物語には全く関係ないのですぐに反映できるというと思っていたのですが……それとも僕が書きにくく書いていてちゃんと目を通していただけなかったのなら謝ります。済みません。
まあ、何はともあれコメントの方もしておきますね^^
新キャラ登場ですか…… これからどうストーリーが展開するのか楽しみですね。
王と月詠族の関係性にも注目と言ったところですね。
では、今回はスッキリ纏まりましたので、今回はこの辺りで。
続きも楽しみにしております^^
27
:
bitter
◆Uh25qYNDh6
:2012/07/16(月) 09:46:34 HOST:p4239-ipbf2501sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp
【三】
「毎度ありー」
翌日。青く晴れ渡った空の下、昌は一人、甘味屋の店番に駆り出されていた。
普段なら店主である弥麗なり、同じ働き手である清吾なりが側に居るのだが、清吾は大幅な遅刻。弥麗に至ってはもう数時間、店の奥へ行ったきり戻って来ない。
特別文句を言う気はないのだが、酷く退屈なのも事実で、本日三度目の大欠伸を噛み殺した。
王(おおきみ)が城下へ下りた日から町の賑わいは増し、その姿を一目見んと、今日も大通りは多くの国民で埋め尽くされている。
――そんなに見たいもんかね。
此方をちらりとも見ずに去っていく人々を眺めながら、昌はぽつりと呟いた。
正直王室(うえ)の人間にこれといった興味は無いし、すすんで会いたいとも思わない。精々遠目に確認出来れば良いか、程度だ。
こうしている間にも眼前の人の波は濃くなる一方で、その動きを目で追おうものなら数秒で酔ってしまいそうだった。そうなる前に視線を外し、息を吐く。
「…………暇だ」
零した言葉に嘘は無い。
こんなにも人で溢れかえった場所に身を置いているのに、今から一時間程前の来店を最後に客足は途絶えていた。
弥麗が戻る気配も無い。
――もういっそのこと寝てしまおうか。そう考え始めた時、
「何だとコラァ!!」
場に満ちる空気を裂くように、男の怒号が響いた。
――――喧嘩か?
「ちょっと通してくれ」
壁のように立ち尽くす人々を掻き分け、前へ進み出る。
そうして昌の視界に入ったのは、此方に背を向けて立つ小柄な人物――恐らくは少女――と、それを睨むように見据える男の姿だった。
男の顔は赤らんでおり、ふらふらと今にも倒れそうな様子から、泥酔している事が見て取れる。それにしてもやけに赤く感じるのは、怒鳴り声を上げるまでに感情が高ぶった所為(せい)だろう。
その後ろでは、老夫婦がなにやらおろおろと首を動かしている。
男は肩で息をし、少女は薄群青の着物を纏う背をぴんと伸ばしたまま……一向に揺らがない。
「おい、そっちから呼び止めておいてだんまりかぁ? どういう教育されてやがる」
暫くして、男が苛立たしげに口を開いた。
――少女は答えない。
直後。怒りが頂点に達した男の拳(こぶし)が、小さな身体を殴らんと振り上げられた。
「っ、危ねえ……!!」
思わず身を乗り出した昌の双眸が、周囲の民衆と同時に見開かれる。
――が、
「酒に酔わされ無銭飲食、気に入らなければ暴力か。本当に、どうしようもない大馬鹿がいたものだな」
響いたのは鈍い騒音でも、悲痛な叫びでもない。
少女は涼しげな声色で言い並べ、驚愕に固まっている男の手首を力一杯捻った。すぐさま上がったのは、痛みにもがく悲鳴。
「…………あいつ」
覚えのある声に、昌が小首を傾げたのとほぼ同時。
「何事です」
幾重もの人混みを左右に裂き、赤髪の人物が顔を出した。
28
:
bitter
◆Uh25qYNDh6
:2012/07/16(月) 10:20:43 HOST:p4239-ipbf2501sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp
>>森間 登助さん
理解力が乏しく申し訳ありません!;
一応↑ではやってみた……つもりなんですが、何だか此方に書き込むと中途半端な感じになってしまっていて……。
下書きの時点では問題ないのですが、何か他に原因があるのでしょうか?
コメントの方も、有難う御座います^^
新キャラですねー。風月は結構特殊なのでこれから表現に苦労しそうですが、頑張って出して行こうと思いますノシ
29
:
森間 登助
◆t5lrTPDT2E
:2012/07/17(火) 16:32:41 HOST:180-042-153-135.jp.fiberbit.net
とりあえず、ヘルプ入りましたので緊急回答。
中途半端、というのはつまり、字下げが所々出来ていないというところでしょうか?
僕が見る限りではそうなのですが、改行しているのに字下げがしてない部分があって、正直今までよりも見づらいです。
もしその部分が一文なら、前文の句点に繋げましょう。もしそれが見づらいと感じても、改行してしまっては意味が違う文になってしまうので、一文にした文章を見直して改善することをお薦めします。改行は決して、文が多くなったから次に回すと言う簡単な物ではありませんので。
ちなみに、補足説明として書き加えて差し上げますと、結構このレスで説明を入れる余地があったのにご存じでしょうか?
王がチラホラと出回っている(?)描写があるところから、何故集まろうとするのか、何故にそれ程関心を集めているのかを含めて説明が入れられたと思います。
まあ、まだアドバイスを反映させている途中だと思いますので、これ以上言わない方が良いと思いますが、読者が理解していることと、作者が理解していることは違います。ですので、それを共有するためにも説明は必須です。見逃さないよう下書きの時点でよく目を通しておきましょう。
それでは、頑張って下さい。また質問がありましたら何なりと。時間が出来ればすぐさま答えに行きますので(笑)
30
:
bitter
◆Uh25qYNDh6
:2012/07/17(火) 17:39:43 HOST:p4239-ipbf2501sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp
>>森間 登助さん
お忙しい中申し訳ないです;
そうですねー……正直私としても、
>>27
は凄く見辛いと思いました。
次の更新までになんとか改善したいと思いますが、結果まだ変な箇所がありましたら、その時は御指摘願います;;
必要な情報提供の方も、苦手なりに努力して文章を組み立てていこうと思います。
至らない点ばかりで頭が上がりませんが、少しでもアドバイスを反映出来るよう頑張りますね^^
答えて下さり、有難う御座いましたノ
31
:
bitter
◆Uh25qYNDh6
:2012/08/01(水) 00:29:51 HOST:p4239-ipbf2501sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp
【四】
場に居る全員の視線が、一気にその人物へと集中する。
――直後、
「……、ぐっ!?」
薄群青の袖がはためき、少女が男を引き倒した。
軽やかな動きを見せた細腕とは対照的に、低い呻きが地へ吸収される。
「……この者は」
「酔いに任せ、立ち寄った茶屋で無銭飲食……挙句、暴力行為に及ぼうとした愚か者です。然るべき方法で裁いて頂きたい」
感情の一切を感じさせない機械的な問いに、すかさず少女の返答が響く。
直後。伏していた男が懲りずに立ち上がったが、標的とされた少女の素早い対応により振り上げられた豪腕は見事な空振りを見せ、数秒と経たない内に再び地へ沈んだ。
間近で見ていた老夫婦――臙脂(えんじ)の前掛けを身に付けた茶屋の主人とその妻をはじめ、多くの人々はまだ歳若い少女の振る舞い、技量に目を見張ったが、昌だけは冷静な瞳で赤髪……正確には赤の色素が強い茶髪の人物を眺めていた。
自分はあの人を知っている……否、今は外見に不相応な少女の行動に気を取られているだけで、この場の全員が知る人物だ。
平民とは明らかに異なる、上質の羽織袴。黒地に銀糸の蝶が舞うそれは、ささやかな美しさを演出すると同時に、纏う人物の身分の高さを示していた。
―― 王の、側近。
その双眸が男を、少女を、老夫婦を確認するように見渡し、
「成程、よく分かりました。この男を連れて行きなさい」
「はっ」
低い一声を合図とするように、総じて紺の装束に身を包んだ数人が進み出た。王(おおきみ)に次ぐ第二の権力者……側近直属の部下であり、国内の治安維持を任された〝特警(とっけい)〟と呼ばれる者達だ。
今回対応が遅れたのは、恐らくその殆どが王の脇を固める為に借り出されてしまったからだろう。
その推測が正しいと示すように、更に数十を従えた人物が小走りで此方へ近付いてくるのが見えた。
「灼羅(しゃくら)! 一体何があったのですか、怪我人は……」
灼羅。そう呼ばれた側近よりも幾らか高く、澄んだ声が空気に伝わる。騒ぎを聞き急いで来たのだろう、上下する肩が目に入った。
やはり上等な衣を身に纏い、顔を黒布で覆った姿。ここ数日町に現れ、注目を集めている張本人……王(おおきみ)だ。
衣服が多少分かり難くしているが、目にした者の殆どが〝女性〟と判断するだろう華奢な線。声や口調で判断する事も可能だが、それを踏まえなくとも……王が女人であると断言出来る根本的な理由があった。
それは、この国が代々の〝女王国〟である事。
天照大国は――かつて小国と呼ばれていた事が嘘のように発展を遂げ、広大な領土を誇る一方。唯一〝女人君主制〟を掲げる国としても、その名を広めていた。
ここまでの話は大抵幼少時に親から聞かされる為、子供から大人まで……ついさっき産声を上げた、なんて状況でもない限り、〝全く知らない〟という者は居ない。
「そう……怪我を負った方は居ないのですね。良かった……」
側近から一部始終を聞いた王の声に、心からの安堵が滲む。
へぇ、と昌の口から息が漏れた。
仕草だけでも充分に伝わってくる、柔らかく優しげな物腰。直接目にしたのは今日、この時が初めてだが、ここまで噂通りとは思っていなかった。
「……天子(てんし)様、そろそろお時間が」
この国の長を表すもう一つの呼び名が、側近の口から紡がれる。老夫婦の元へ歩み寄っていた王は、灼羅にもう少しだけ――と返しすぐ側に佇む少女へ向き直った。
「これ以上の被害が出なかったのは貴女のお陰です、有難う。勇敢な子」
きっと布の下では、にこりと柔らかく微笑んでいるのだろう。
それだけ告げると、王は側近と特警を引き連れ元来た道を去っていた。後に残された民衆は徐々にばらつきを見せ、普段通りの賑やかさを取り戻し始める。
――よし、今だ。
人混みの切れ間を抜け、昌が向かった先は未だ動こうとしない少女の元。
薄群青の背中へ歩み寄る途中、声を掛けるより早く振り返った碧眼と目が合った。
「……な、……」
32
:
あんみつ
◆TJ9qoWuqvA
:2012/08/03(金) 11:54:10 HOST:p141213.doubleroute.jp
こんにちは
私もいれて下さい。
ルーナのファンタジー小説と楽しい仲間たち
っていうブログ来てね
33
:
bitter
◆Uh25qYNDh6
:2012/09/09(日) 10:11:35 HOST:p4239-ipbf2501sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp
【五】
「よう、奇遇だな」
ばちり。
そんな擬音が聞こえそうな程見事に重なった視線と、織が発した音のような声。それが妙に気まずい雰囲気を作り出すが、昌は構わず片手を上げた。
対する織は一旦半端に開いていた口を閉じ、若干の戸惑いを滲ませながら昌との距離を詰める。
「貴様――」
「大丈夫か?」
「……何?」
問おうとした瞬間逆に問われてしまい、織が小首を傾げる。
「いや、お前さっきまであんな騒ぎの中心に居たんだぜ? 一応女子なんだし、心配するだろ普通」
つい先程まで、この場で怒号を響かせていた酔っ払いの男。
あの類の騒ぎを取り締まる事を業務とする特刑の連中だけならともかく、いの一番に介入したのが王(おおきみ)の側近だった上、王その人までが場に現れたのだ。周囲に集まっていた民衆を含め、昌が知る限り今までで最も大きな騒動だった。
真っ直ぐに注がれる、本気で意味が分からないと訴える視線。
薄く苦笑いを浮かべた昌は〝心配したのだ〟と素直に答えるが、織の表情は和らぐどころか険しくなる一方だった。
二歩分空けた立ち位置から昌の顔を見上げ、
「女子扱いなどしなくて良い。いや、するな」
ふい、と首ごと視線を逸らした。
ちょっとした仕草だが、特徴的な銀の髪が光を反射する様は文句なしに綺麗だ。……そういえば、こんな髪色をした奴は弥麗さんを入れて二人目だな。
昌は薄らとそう考えたが、ふと自分を通り抜けた前方に注がれる複数の視線に気付き、改めて織を見た。見られた本人もそれに気付いたのか、むす、と背けていた顔を再び昌へ向ける。
「……何だ」
訝しげな声。
周囲の目線には気付いていないようで、織はかくり、と小さく首を傾けた。
それによってか更に濃くなった気配に、昌の眉間が浅く寄る。
――そう。今この瞬間、大勢の視線を集めているのはいち早く状況を感じ取った少年ではなく、無防備に首を傾げている少女の方なのだ。
不自然なまでに整った小さな顔、宝石を嵌めこんだような碧色の瞳。そして太陽の下、控えめながらも美しく輝く銀糸。
――どれを取っても精巧に作られた人形のような、完璧な美貌。
騒ぎが収まり少しの時間が経過した今。既に見慣れている昌さえ改めて認識した〝それ〟に、民衆の的が移ったらしい。
当人はといえば、未だ状況を把握出来ていない様子で表情に陰を落としている。
(直接見られてない俺でも痛いぐらいだってのに、本気で気付いてないのかよ……)
昌は完全に蚊帳の外状態の織に心中で息を吐き、空いていた距離を埋めると
「ああもう、お前……変なとこで鈍いんだな」
「? 何の事――」
「いいから、身動き取れなくなる前に行くぞ!」
「っ!?」
数秒後。
多くの民衆の目には、揃って仲良く去っていく――実際は片方が一方的に引っ張られている――少年少女の姿が映った。
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