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生命ノ在処<イノチノアリカ>
33
:
bitter
◆Uh25qYNDh6
:2012/09/09(日) 10:11:35 HOST:p4239-ipbf2501sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp
【五】
「よう、奇遇だな」
ばちり。
そんな擬音が聞こえそうな程見事に重なった視線と、織が発した音のような声。それが妙に気まずい雰囲気を作り出すが、昌は構わず片手を上げた。
対する織は一旦半端に開いていた口を閉じ、若干の戸惑いを滲ませながら昌との距離を詰める。
「貴様――」
「大丈夫か?」
「……何?」
問おうとした瞬間逆に問われてしまい、織が小首を傾げる。
「いや、お前さっきまであんな騒ぎの中心に居たんだぜ? 一応女子なんだし、心配するだろ普通」
つい先程まで、この場で怒号を響かせていた酔っ払いの男。
あの類の騒ぎを取り締まる事を業務とする特刑の連中だけならともかく、いの一番に介入したのが王(おおきみ)の側近だった上、王その人までが場に現れたのだ。周囲に集まっていた民衆を含め、昌が知る限り今までで最も大きな騒動だった。
真っ直ぐに注がれる、本気で意味が分からないと訴える視線。
薄く苦笑いを浮かべた昌は〝心配したのだ〟と素直に答えるが、織の表情は和らぐどころか険しくなる一方だった。
二歩分空けた立ち位置から昌の顔を見上げ、
「女子扱いなどしなくて良い。いや、するな」
ふい、と首ごと視線を逸らした。
ちょっとした仕草だが、特徴的な銀の髪が光を反射する様は文句なしに綺麗だ。……そういえば、こんな髪色をした奴は弥麗さんを入れて二人目だな。
昌は薄らとそう考えたが、ふと自分を通り抜けた前方に注がれる複数の視線に気付き、改めて織を見た。見られた本人もそれに気付いたのか、むす、と背けていた顔を再び昌へ向ける。
「……何だ」
訝しげな声。
周囲の目線には気付いていないようで、織はかくり、と小さく首を傾けた。
それによってか更に濃くなった気配に、昌の眉間が浅く寄る。
――そう。今この瞬間、大勢の視線を集めているのはいち早く状況を感じ取った少年ではなく、無防備に首を傾げている少女の方なのだ。
不自然なまでに整った小さな顔、宝石を嵌めこんだような碧色の瞳。そして太陽の下、控えめながらも美しく輝く銀糸。
――どれを取っても精巧に作られた人形のような、完璧な美貌。
騒ぎが収まり少しの時間が経過した今。既に見慣れている昌さえ改めて認識した〝それ〟に、民衆の的が移ったらしい。
当人はといえば、未だ状況を把握出来ていない様子で表情に陰を落としている。
(直接見られてない俺でも痛いぐらいだってのに、本気で気付いてないのかよ……)
昌は完全に蚊帳の外状態の織に心中で息を吐き、空いていた距離を埋めると
「ああもう、お前……変なとこで鈍いんだな」
「? 何の事――」
「いいから、身動き取れなくなる前に行くぞ!」
「っ!?」
数秒後。
多くの民衆の目には、揃って仲良く去っていく――実際は片方が一方的に引っ張られている――少年少女の姿が映った。
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