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Il record dell’incubo〜悪夢の記憶〜
1
:
霧月 蓮_〆
◆REN/KP3zUk
:2011/03/06(日) 23:06:24 HOST:i114-180-240-196.s04.a001.ap.plala.or.jp
初めまして、霧月 蓮(ムヅキ レン)と申します。ここでは始めて小説を書かせていただきます。
更新は非常に亀で、誤字脱字も非常に多いですが、生暖かい目で見てくださると助かります。
出来るだけ遠まわしに表現するように致しますが、グロイ表現が多々あります。それでも大丈夫、と言う方はどうぞよろしくお願いいたしますね。
アドバイス、感想等があれば喜んで。
一応、学園、ファンタジー、歪み、と言った感じの者が中心となっています。特殊能力が出てきたり、魔法使い吸血鬼が出てきたりと、多分滅茶苦茶です
非常に駄文で、まとまりのない文章ではありますが……。
49
:
霧月 蓮_〆
◆REN/KP3zUk
:2011/07/23(土) 16:16:49 HOST:i114-180-250-205.s04.a001.ap.plala.or.jp
「にしても、刹のときの演技は流石だな」
黒須から顔を逸らして真っ黒なコートを羽織りながら、褒めているようなそんな感じはしない言葉を蓮は投げかける。黒須は苦笑いを浮かべて頭を軽くかけば「慣れてるしな。半分お前のせいだぜ?」なんていう風に笑った。いかにも不愉快そうに蓮はフンッと鼻で笑えばどけろとでも言うように黒須を手で払うような動作をする。時計が指す時間は午前七時。朝食の時間である。まるで話は朝食中に聞くと言っているようで、黒須はさも可笑しそうに笑った。全く、口で言えば良いのにそんなことを考えながら、部屋の鍵を閉めてさっさと歩き始めた蓮の後ろを追う。
食堂で蓮を待っていたのはやたらと上機嫌な月華だった。蓮と黒須を見れば満面の笑みで近づいてきて「やーやー、クロちゃんと蓮ちゃんが一緒なんて何時振りだろうねぇ」なんていう風に言った。面倒な奴に捕まった、蓮はそう考えて黒須に何とかしろ、とアイコンタクト。しかし黒須は露骨に顔を逸らして黙り込んでいる。どうやら俺の手には負えませんとでも言っているようであった。そんな二人の様子を不思議そうに眺めた後に、月華はグイグイと蓮と黒須の手を引いて歩き出した。蓮も黒須も逆らうと後が怖いから、とりあえず大人しく手を引かれたまま歩く。ふと蓮がこの子なんでこんなに上機嫌なのかしらと呟くと、黒須はさぁ? とでも言うかのように掴まれていない方の手を手を僅かにあげた。
「今日の朝食見てよ!! デザートにケーキだよ!?」
どうやらデザートに歓喜しているようだ。小さな声で蓮が太るぞと呟けば、月華は思いっきり蓮の足を踏みつけた。黒須はぼんやりとその様子を眺めて、余計なことを言うから、なんていう風に考えて苦笑いを浮かべる。案外この辺は蓮よりも黒須の方が賢いのかもしれない。……それが成績に反映されているかは別として。蓮が足を踏まれてもがくのをしばらく見つめた後に、月華を止める。蓮がとめるのが遅いだの何だのと喚いていたがそこは無視。と言うより自業自得だろうなんて、黒須は考えている。蓮は月華とは対照的に最早不貞腐れているようだ。こりゃぁ報告が出来ないぞ、なんて考えて黒須は深くため息をついた。
フイッと蓮は顔を逸らしてさっさと端っこの角の席に座ってしまう。ガキめ黒須は小さくそう呟きながら仕方が無く月華と朝食をとることにした。生徒会長に逆らったとあれば後々面倒だ、主に制裁的な意味で。蓮が裁かれないのは単純に生徒会副会長だからと言う理由だけで、黒須はそのような特殊な地位についているわけでもない。そのためか生徒会メンバーに逆らえば即制裁、なんていう厳しい現実も待っているのである。全てが全てのことにそうなるとは限らないのだが、機嫌を損ねるのは得策ではない、黒須はそう考えて、深く深くため息をついた。それでも月華の話は面白いしまだマシであろうか、そう考えて諦めることにする。
そんな黒須を尻目に蓮は淡々と食事を取っていた。その周りだけ妙に近づいてはいけないようなそんな雰囲気が漂っているため、周りにいた闇の生徒がすっかり怯えてしまっている。感情を出そうとしないようにしている割にはずいぶんイラつきが辺りに伝わってしまっているようである。自分もまだまだだな、そんなことを考えながらも食事を取る手を止めない。さっさと食べ終えて部屋に戻ろうそう考える。そもそも本当のことを言っただけで足を踏まれるなんて不服だった。気にしているのなら食べなければいいじゃないか、そんなことを一人で永遠と考え続ける。どうせ俺は気なんか使えませんよ、なんて仕舞いにはには開き直る始末。
「お疲れ様、ですねぇー」
クスリと嫌味な笑みを浮かべながらあらわれたのは悠斗だ。何で今日はこんなにも集まりがいいのだろうかそう考えて蓮は眉間に皺を寄せる。不愉快なものだと小さく蓮は呟く。ここまで不愉快になるのは珍しい。悠斗はそんな様子を眺めてより一層笑みを浮かべる。どうやら蓮がイライラしているのは、悠斗にとって面白い笑い話のようなもののようだ。そんなこと蓮に知られれば間違いなく混信の力で殴られるが、生憎蓮は普段の状態だと人の心を読むことなんて出来ない。まぁそれ専門の精霊や神、生物の力を借りれば別なのだがそれは明らかに例外であろう。無視だ無視、ほかのこと考えろなんて蓮はどうしても目の前の悠斗の姿を認めたくないようである。
50
:
霧月 蓮_〆
◆REN/KP3zUk
:2011/07/30(土) 02:03:01 HOST:i114-180-251-220.s04.a001.ap.plala.or.jp
そんな事お構いなく悠斗は蓮の真正面に座って食事を取り始めた。特に会話をするわけでもなく淡々と食事を取る蓮と、その様子を眺めて意地悪く笑いながら食事を取る悠斗。何処からどう見てもおかしな組み合わせだった。周りにいた生徒たちは戦々恐々と言った感じでさっさと食事を済ませては食堂から出て行った。そんな中気にしないで食事を取っているのは当の本人達と月華位であろう。黒須は気にしていないように見えて蓮が箸をおく小さな音だけで反応して蓮の方を見てしまっているので、実際のところは不安で仕方が無いらしい。と言うよりここで悠斗と蓮がぶつかったら間違いなく自分、死にますけどなんてことを考えている。
カタンと小さな音を立てて蓮が席を立つ。おや? なんて声を漏らして悠斗は顔を上げる。なぜそんなに不愉快そうな表情なのだろうか、そう考えているようでしばらく首をかしげていた。そして、扉をノックするかのように机を叩いて、顎で席に座れと合図を出す。蓮はそれを見ることさえせずに食器の乗ったトレーを運んで行こうとした。それを見て僅かに顔をしかめた悠斗は、平坦な声で告げる。
「なーに不機嫌になってるんですかー? 福バ会長さん、まだ半分も食べてないじゃないですか。ボクと“お話”しながらゆっくり食べましょうよー」
そう言って悠斗は笑った。笑ったと言っても目だけは鋭く、蓮を捉えて動かない。蓮の方も蓮でゆっくりと振り返ったかと思えば鼻で笑って、歩き始めていた。冗談じゃねぇぞ、そう考えながら黒須は何でも無いかのように振舞う。それでも震える手を抑えることも出来ずにいた。黒須は蓮の能力を詳しくは知らない。それでも蓮が召還能力を使って四大精霊なんていう危険なものを召還するは知っているし、そのほかにも色々と危ないものを召還するのも知っている。それだけあれば蓮の能力を恐れるのには十分だった。ただでさえ分類不明で魔法にさえ近いと言われている能力だ。きっと自分の知らない危険なところが沢山あるのだろう、そう考えると自然と頬を冷たい汗が伝い落ちた。
しばらく黙って様子を見ていた月華が静かに立ち上がって食器を下げたいつの間にか食べ終わっていたようで、横目で蓮の様子を見た。静かに黒須の元に戻ってくると「さっさと行くよ? 蓮と悠斗を引き剥がしても良いけど、それをするとなるとちょっとボクの身が持たない。あいつらに能力で干渉するのは難しいからね。だから生徒達を退避させるよぅ」と耳元で囁いた。黒須が小さく頷いたのを確認すれば静かに目を閉じて何かを呟き始める。その間に黒須は食器を下げて自分の能力の一つのテレパシーで食堂にいる蓮と悠斗以外に状況を伝えた。能力等のランクをはじめとして様々な面でトップクラスに立っている月華でさえ、能力での干渉が難しい蓮と悠斗の力……。小さな声で黒須は化け物だなと呟いた。
瞬間、月華や黒須、その場にいた生徒達が姿を消した。蓮はしばらく驚いたように辺りを見渡していたが、状況を理解すると不服そうに息を吐いて、食器の乗ったトレーを少々乱暴に指定された台に置く。悠斗は分かっていたとでも言うかのように驚くことさえせずにクスクスと笑って蓮に向かって言葉を投げかける。楽しそうな、歌うような声で「さぁ、邪魔者もいなくなりましたし、お話しましょう?」と言った。どこか有無を言わせないようなそんな響きがあった。一般の生徒なら、黙って頷いてしまっていただろう。しかし蓮は違った。返事さえしなかった。
「あれー? せっかく桜梨さんの素敵なお話をしようと思ったんだけどなぁ?」
ピタリと蓮が動きを止めた。それを見た悠斗は満足げに笑ってさらに言葉を投げかける。不気味な程に明るい声色で「貴方が殺した大好きなお姉さんの話を、ね?」と。蓮の体が小さく揺れる。俯いて髪で隠された顔に浮かんでいたのは……恐ろしいほどの無。それは完璧な無だった。怒りは感じたし、五月蝿いとも思った。それなのに表情だけは無表情のまま固まっていた。静かな足音が自分の背後に迫ったことで蓮はやっと我に帰る。何をしているんだ、さっさと戻ってしまえ。そうすれば話は聞かないですむんだ、そう考えてくるりと体の向きを変える。そこで蓮は再び動きを止めることになる。
歪んだ、そう表現するのが生易しいように感じる悠斗の笑みがそこにはあった。
51
:
霧月 蓮_〆
◆REN/KP3zUk
:2011/07/30(土) 02:45:54 HOST:i114-180-251-220.s04.a001.ap.plala.or.jp
「どうして逃げるんでしょう? 怖いんですか? 過去を思い出すのが。この人殺し」
やめろ、小さく蓮の口が動いた。それを見た悠斗はクツクツと口元を歪めて笑う。そして何度も何度も桜梨の名前を出してはお前が殺しただの、お前がいなければ……なんていう風に繰り返す。蓮の顔がどんどん青ざめていくのを見て悠斗は楽しそうに言葉を続けた。グッと手で耳を塞いでただただ、うわ言のように蓮はやめろと繰り返している。がたがたと震える足はこの場を離れることを許してはくれないようだ。駄目じゃないか自分。故意にじゃ無かったって言えよ、自分の意思じゃ無かったって言えよそう考えても言葉が突っかかってうまく出てこない。……結局は言い訳だけどそう考えて蓮は今にも壊れてしまいそうな、ぐちゃぐちゃな笑みを浮かべる。
しばらくして悠斗は飽きてしまったとでも言うかのように小さく息を吐いた。それでもすぐにいいことを思いついたとでも言うかのように、手を打ってくるりと一回転。蓮の方に再び顔を向ける頃には蓮に良く似た少女の姿に変わっていた。活発そうな顔、短く切った濃紺の髪、透き通った赤と青の瞳……それを見て蓮はひっと声を漏らして後ろへと下がった。その少女自体が怖いのではない。少女のあちこちにある滲んだ紅と、焼け焦げたようなそんな痕が妙に生々しくて怖かった。それが無ければ蓮は迷わず、変身した悠斗だと分かっていても目の前の人物に抱きついて声を上げて泣いていただろう。
「能力の定義は操ることの出来るもの、出来ることが常に特定されていること、そして大きかれ小さかれ絶対に能力を使えなくなる枷や制限があること。誰にでも発現可能なものであること……」
悠斗は僅かに低い女の声で言う。すがるようにそれを見つめる蓮はカタカタと震えながら、耳を塞いでいる。……そんなことをしたところで音を完全に遮断することは出来ないだろうに。そう考えて悠斗はより一層歪んだ笑みを浮かべた。ただ蓮には目の前の少女が歪んだ笑みを浮かべたように見えるわけで……気づけば悠斗が変身していると言うことも忘れてしまっていたのかもしれない。酷く怯えたような、そんな表情でただひたすら悠斗のことを見つめ続ける。そんなすがるような目を無視して悠斗は言葉を紡いでいく。次々と詰まらずに言葉を並べて、それが蓮に突き刺さる様を見て笑う。
「それに比べお前の力は基本的に制限が無い。あるとしても安全に使うためのもので、力を使えなくなるようなものじゃない。だってお前一度、精霊を三体召喚して一時間以上維持してたよなぁ? 二体で四十分以内なら使えると言うことじゃなくて、なら安全ってことだろう? そんなの制限でも、枷でもない。それに召喚は能力としては本来発現しないしなぁ? じゃあ魔法か? 違うよなぁ、お前は魔力の生成できない人間だ。どちらでもない半端もの、ってことだな」
そこで悠斗は一度言葉を切った。すっかり床に座り込んで自分を見上げる蓮を見下ろすのが心地よかった。普段上から目線の蓮を屈服させたような、そんな錯覚を得ることが出来て、笑いがこみ上げてくる。静かに蓮の体を抱き寄せて耳元に顔を寄せた。大きく震えて逃げようとする蓮の体を押さえつけて動けないようにして、笑ってやる。明らかな嘲笑の意味をこめた意地の悪い笑いだった。蓮はただただ呆然と視界に入る自分のものではない濃紺の髪を見つめて、抵抗すら出来なくなっていた。それが余計に気持ちよくて悠斗は笑みを堪えることさえやめた。
ハッと蓮は悠斗の笑い声で我に返る。自分の今の体制を見て心底不服そうなそんな表情をした。悠斗の笑い声がなければ相手が悠斗だという事も忘れていただろうに、相手が自分の大切な双子の片割れの格好をして自分に抱きついているという状況が酷く不愉快だった。振り払おうとしたときに悠斗は平坦な声で「半端ものに殺されて桜梨さんは悲しいでしょうねぇ? 貴方なら生き返らせることが出来るんでしょうから、生き返らせてあげたらどうです? 貴方の命と引き換えなら良いですよね」と告げた。ギリッと今までやめろとだけ呟いていたあ蓮は、ありったけの力で悠斗を突き飛ばしていた。
52
:
霧月 蓮_〆
◆REN/KP3zUk
:2011/07/31(日) 01:01:55 HOST:i114-180-251-220.s04.a001.ap.plala.or.jp
さっきは押さえ込まれてしまったが、あれは正気じゃなかっただけ。本来身長百三十四センチメートルで小柄な悠斗に力で負けるわけがなかった。確かに蓮も平均から比べれば小柄だが、悠斗ほどではない。そうでもないと思っていたが体格によって力は変わってくるようだ、蓮はそう考えて吐き捨てるかのように笑う。もっとも鍛えていない人間同士だからの話であろうが、そんな事はどうでもいい、そう考えて蓮はゆっくりと立ち上がる。立ち上がるのに手をついた台にはまだ湯気の立っている味噌汁の乗った台。俺こんなに残してたっけ? そんな風に考えながらも蓮はまっすぐ悠斗に目を向ける。
「あーあ。むかつくなぁ、人殺しの半端ものの癖に」
その言葉を聞いて蓮は無言で、味噌汁を手にとって悠斗に向かって投げつけていた。人殺しだと言うのならお前も同じだろうが、そう考えながら悠斗を睨みつけてやった。すっきりしたと言うわけでもないが、あまり暴れても月華に報告書を書かされるだけだ。もうさっさとこの場を離れよう。そうすれば聞きたくない言葉も聞かなくてすむ。そう考えて蓮はさっさと食堂から立ち去る。しばらく突然の味噌汁攻撃で悶えていた悠斗は「失敗かよ」とだけ呟いた。それは普段の間延びした物でも、誰かの口調を真似たものでもない低く、響きのないものだった。心底不愉快そうな表情をした後、さっさと立ち上がって食堂から姿を消す。まるで空気に溶けるように、音もなく……。
「能力定義、か」
寮に向かって歩きながら蓮は小さな声で呟いた。能力でも魔法でもない自分の力は何なのだろうか、そんな風に考えては思考が堂々巡りを繰り返して、小さく肩をすくめて笑った。どちらにせよランクは出ているのだし、能力か魔法かなんて知らなくても力を使うのに支障はない。能力は出来ることが限られているし、必ず能力を使えなくなる条件や状況がある。蓮にはそれがないがむしろそれは好都合だった。安全に使うために極力時間や召還数を一定に保とうとはするのだが、暴走覚悟ならそれを守る必要もない。出来ることは召還して、召還した物を自在に操ることと召還するものの種類から考えると範囲が広めだ。……そう考えるとやはり異質なのかもしれない。
面倒なもんだな、吐き捨てるかのようにそう呟いて、蓮は寮の自室のドアを開いた。閉めたはずの鍵はなぜか開いていて、蓮は僅かに首をかしげる。コートの中から拳銃を取り出して、一気に部屋の中に踏み込む。そこにいたのは刹だった。床に正座して優雅にお茶を啜っていた。何で今日はこうも朝から疲れてばかりなのだろうかそう考えてもう、ツッコムことすらやめた。一度、刹にツッコムとそのまま刹のペースに飲まれてしまいそうで嫌だった。これ以上体力使ったら身が持たないなんて考えている。唯一の救いは今日は休みで授業がないことだけだろう。……生徒会の仕事は山積みだから休みかと言われれば違うのだが。
「お疲れ様です。よく我慢しましたね」
フッと顔を上げた刹はにこりと笑って言った。何で上から目線なんだよこいつ、そう思うも何も言わないでおく。もう言葉を発するのすら面倒だった。刹を無視し、拳銃をテーブルの上に投げ捨てて、ばたりとベッドに倒れこんだ。それを見た刹は怒りを見せるような様子もなくクスクスと笑っていた。笑われている、そう思うとなんだか妙に不愉快だが声を出してまで怒るような気さえ起きなかった。相当ダメージを受けてるんだな俺、そんな風に考えて蓮は息を一気に吐き出した。
_____________________________________________________
何なんだろう、この蓮の一人舞台……
53
:
霧月 蓮_〆
◆REN/KP3zUk
:2011/07/31(日) 19:17:23 HOST:i114-180-251-220.s04.a001.ap.plala.or.jp
「蓮、今日は仕事休んで良いですよ。お姉様が一人で全てを終わらせましたし」
刹が笑いながらそういえば、蓮は無言で顔を上げて無言で刹の顔を見つめた。不思議そうに首をかしげる蓮を見てため息をつけば「まぁ、休ませる代わりに僕が監視に入ることになりますけどね」なんて言って、横においてあった日本刀に触れる。ああ、食堂での一件で警戒でもされたのだろうか、そう考えて苦笑いを浮かべた後、力なく顔を伏せた。不満は特にないし休めるのなら蓮にとっては万々歳である。そんな蓮の様子を見て小さく、同情のこもった笑みを浮かべた後、刹は黙って本を読み始めるのだった。
*
そんな頃、湊と優希は屋上にいた。こちらは会計、生徒会長選抜情報処理がいない闇の高等部生徒会のように掛けているものはないし、優希と羽音、楓なんていう具合に仕事を片付けてしまうのが早い奴も多い。それ故に特別な行事がない限り、授業がない日は休日になることが多かった。目の見えないはずの楓の仕事が速いのは少々謎だったが、能力かなんかで何とかしているのだろう、湊はそう考えている。優希の仕事が速いのは中等部でも生徒会に入っていたから、効率のいいやり方を分かっているのだろう。その点、同じく中等部から生徒会をやっている湊の仕事スピードが人並み以下なのが気になるが。そんなことをほかの生徒会メンバーに尋ねれば、決まってあの人の仕事は丁寧すぎるからと返ってくるのだった。
ぼんやりと屋上から見える町並みを見つめる優希と、黙って空を眺めている湊。お互いに特に言うこともないらいしくそれぞれがぼんやりとすごしている。傍から見れば少々おかしな光景だがほんたちは微塵も気にしていないようである。喋りもしないのになぜ同じ場所にいるのかと言われれば、始めは会話をしながらゲームをしていて、話題がなくなってしまったからだ。ゲームにも飽きたし、話すこともない。帰ってもやることがないから帰りたくもない、そういう訳があってお互いが無言でいるわけだ。偶然会ったのなら気にしないだろうが、元々遊んでいたのだから気まずくて仕方がない。
「あ、えっと、そういえば三宮さんの能力って特殊ですよね、蓮さんのもそうですが……能力定義に当てはまらないと言うか……」
沈黙を破ったのは湊だった。少し遠慮気味にそういえば優希に貴方もそうでしょなんて返されて黙り込んでしまう。それを見た優希は少し困ったような表情をした後、前髪を掻き揚げて「そもそも能力の定義がここでは曖昧だろうに。色々な制限があって、誰にでも発現する可能性あり魔力を使わなければ能力なんて」と言葉を紡ぎ始める。それを聞いた湊は僅かに首をかしげてもうちょっと色んな言葉がついていたような気もするがなんていう風に考える。それを見て優希は苦笑いを浮かべながらも次々と言葉を紡いでいく。特についていけなくなることもないらしく湊は黙って聞いたり、質問を投げかけたりして会話をつなげていく。
「んで俺や貴方、蓮の能力が特殊なのはおそらく魔法から劣化したものだから、だと思いますよ。ああ、植物を操る奴と幻覚を見せる奴は普通の能力でしょうけど」
はい? なんていう風に間抜けな声を出して湊が首をかしげた。いきなり話が飛躍しすぎな気がすると考えながら必死に理解しようとする。面白そうに笑いながらも優希は話を続けていく。何でも始めは魔法使いの系統の一族、もしくは魔法使いだったのがいつの間にか魔力の生成が出来なくなって、魔法を能力として組み上げ直した結果だとのこと。それを聞いて湊は苦笑いを浮かべて「だから、能力定義にも当てはまらない、と……だとしたら僕たちの能力が出来るまで相当時間かかってますよね」なんていう風に笑っていた。優希の方も軽く笑って小さく頷く。笑いながらも付け足すように言葉を続けていく。
「と言っても憶測でしかないですけどね。つか俺らの能力能力定義に当てはまらないところが多いと言っても、出来ることは一応限られてるし、禁忌もあるだろ」
ご尤もです、そう小さく呟いて、湊は頷いた。
54
:
霧月 蓮_〆
◆REN/KP3zUk
:2011/08/11(木) 15:23:23 HOST:i125-202-253-87.s04.a001.ap.plala.or.jp
ゆっくりと蓮が体を起こす。どうやらもう夜になってしまっているようだった。刹のいた位置に目をやれば壁に寄りかかって座ったまま眠ってしまっている。小さくため息をついて少々乱暴に布団を掛けてやると力なく、コテンと倒れた。そんな刹の寝顔を見て、寝ているときは年相応って感じなんだけどなぁと小さく呟く。本人に聞かれると少々後が面倒ではあるが、当のご本人は気持ちよさ気に眠っているのだから関係のない話である。あまりジロジロと見ても刹が起きたときに色々面倒なので、そのまま黙ってベッドの上に寝転がって天井を見つめる。こんなときに頭をめぐるのは双子の片割れの桜梨のことばかりで正直嫌になる。依存しすぎだ、そう呟いても意味がない。
不死鳥、フェニックス。復活の象徴とされる偉大な力だ。そいつの力を借りれば、死んだ人間でも復活させることが出来ると言う噂がある。正直言って蓮もそんなうまい話があるわけがないと思いながらも、その魅力に惹かれる一人だった。その力で桜梨を生き返らせることが出来たら、そう考えては無理だと繰り返し否定し続けている。そんな中でフェニックスの情報を集め続けているのは出来ないと諦めるためであった。しかし調べれば調べるほどに詳しい召還方法が分かってしまったりして、どんどん泥沼にはまっていく。最後の最後では時間があるときに実際に召還できるか確かめてしまえばいいという結論を出させてしまうようなものであった。
「刹、ちょっと出かけてくるからな」
結論を出した蓮は動くのが早かった。ベッドから起き上がってコートのフードを被ったかと思えば資料を片手にさっさと部屋を出て行ってしまう。さっさと歩いて向かうのは寮の屋上。寮の屋上は、学園の屋上とは違い殆ど人が来ることがない。目立つ召還をするに関しては取って置きの場所である。学園の屋上からは丸見えなのだが距離があるから、召還している人間が誰だかは分からないであろう。魔法じゃない方法で召還出来るのは蓮だけであるが、魔法使いでなら多くはないとはいえ召還魔法を扱うやつもいる。そしてその殆どが蓮のように黒いコートを身に纏っている。髪の色さえ見られなければ特定されることはほぼないだろう。
書類の中から召還手順について書かれたものを取り出す。蓮の場合は初回の召還のときだけに面倒な手順を踏まないといけないだけであって、二回目以降は言葉を言うだけで簡単に召還できる。大して魔法で召還する者達は一回一回面倒くさい手順を踏んだり、複雑な魔法陣を書いたりしなくてはならないので面倒だ。その点については蓮は感謝している。一々大きな隙を作らなくてもすむのだから。
「……数量の血……召還者の髪……何か妙な気分だな」
召還の準備を終わらせた後に蓮はそう呟く。殆どが簡単に用意できるものだったが気味の悪いものばかりだった。流れ落ちたばかりの血液、召還者の髪に面倒な模様。その辺に落ちていた得体の知れない白い羽に火をつけて空へと放る。その羽根が宙に留まったのを確認してから、蓮は言葉を紡ぎ始める。
「大いなる炎の不死鳥、フェニックスよ。汝が望みしものは用意した。今我の元に姿を現して力を与えよ」
ゴウっと炎が大きくなって蓮を飲み込もうとする。それでも蓮は顔色一つ変えずに炎の中心の羽を見つめる。広がる炎を見れば僅かに失敗しただろうか? と首をかしげる。しかし明らかに召還は出来る手ごたえを感じる。何度も出来ないと諦めたことが出来る。そんな小さな希望が蓮の中に生まれた。必死に放出する力が一定になるように調節を続ける。次第に炎は落ち着いて大きな燃え盛る鳥へと姿を変えていく。普通のものならば驚いたであろうその光景も蓮はただただ無言で見つめる。
『我が姿を見ても表情一つ変えぬとは見あげた人の子よ。我を呼び出したのは汝か?』
落ち着いた流れるような透き通った声。蓮が黙って頷くとその炎の鳥、フェニックスはさも楽しげに笑う。そして右の翼を広げたかと思えば『汝は面白そうな奴だ。我、汝の力となろう』と告げる。口元を歪めて笑う蓮を見てフェニックスはこれほどの人間がまだいたのか、と笑みを浮かべる。ジュウッと蓮の首筋に赤い紋様が浮き出る。それは鳥の翼のような不思議なもの。契約の証だろう蓮はそう考えて気にも留めずに、フェニックスへと言葉を投げかける。
「フェニックス、お前には死人を生き返らせることは出来るのか?」
55
:
霧月 蓮_〆
◆REN/KP3zUk
:2011/08/11(木) 16:31:14 HOST:i125-202-253-87.s04.a001.ap.plala.or.jp
『ああ、もちろんだよ。我が主』
蓮の言葉にフェニックスが笑って答える。蓮の表情がいよいよ明るくなる。その様をフェニックスは満足げに眺めた後『で、我が主、君は誰を復活させたいのかな?』と問いかける。蓮がフェニックスに突きつけたのは、蓮に良く似た少女、桜梨の写真。フェニックスは小さく唸った後、ハッとしたような表情をして蓮の周りを飛ぶ。その様子を不思議そうに蓮は見あげた。蓮の横に人の形をした光が一つ生まれる。蓮がそれに気づいて視線を落とした頃にはその光は、一人の少女の姿へと変わっていた。蓮と同じ濃紺の髪。長さは肩につく程度のものだ。その顔は勝気そうで、絆創膏が似合いそうなやんちゃっ子のよう。
蓮の真っ白な肌とは違い、やや日に焼けた健康的な肌の色。……この少女は桜梨。間違いなく霧月 桜梨(ムヅキ オウリ)そのものだった。フェニックスはふむ、と言うと信じられないと言うような表情をして固まる蓮を見つめる。何だ人間らしいところもあるではないか、そういって安心でもしたかのように蓮の肩にとまる。蓮の何倍もあったその体は一瞬にして蓮のインコのような小さなサイズに変わっていた。それでも燃え盛る鳥なのは変わらないのだが、不思議と蓮の髪や服は燃えることはなかった。フラリと蓮の体がゆらる。静かに目を閉じてその場に倒れこんだ。……肩にとまったフェニックス諸共である。
「ん……あれ? 俺死んだよな? 何で学園が?」
入れ替わるように桜梨が目を覚ました。透き通った青の瞳は横に倒れる蓮よりも先に学園の方を目に留めたようだった。その後自分の足元に目をやって蓮が倒れていることに気づく。誰だかがわからなくて首をかしげていると、その胸に輝く生徒会役員の証であるバッチに目が行った。刻まれていた名前を見て、目を見開いた後に、近くに転がっていたフェニックスの首を絞めるかのようにもって、凄い勢いで言葉を投げかけ始めた。桜梨もまた不思議なことに燃え盛るフェニックスを持っても燃えることはおろか、火傷さえもしないようだ。ギューっとフェニックスを締め上げて早く真実を言えと脅す始末。……コイツ人間じゃない。フェニックスはそう思う。
「ほぅ……で、そいつが力でお前を召還して俺を生き返らせた、と。この馬鹿が」
フェニックスの説明を聞いて桜梨は不愉快そうに蓮の体を蹴飛ばす。小さく呻き声を上げたから生きてるのか、そんな風に考えてため息をつく。ついにコイツは禁忌にまで触れやがったかと呆れたような表情をして、締め上げていたフェニックスを放り投げた。能力で他者を生き返らせたりするのは禁忌とされているのだ。蓮の場合は能力と言えるのかも怪しいところがあるが、おそらくは禁忌だけは当てはまっているのだろう。そもそも禁忌については能力だけではなく、魔法にも当てはまることの方が多い。たとえば他者の命を能力でどうこうすることは禁忌だ。まぁ、単純に人を生き返らせてはいけませんなんていう感じのものだと捉えてくれればいい。
直接的に命を剥奪してはいけないと言うものもあるが、これは桜梨のような剥奪能力などの一部の能力と魔法に限られてくるので関係ない。たとえを出すと、桜梨の剥奪能力で相手の命を盗むのは駄目だが、氷や炎、風、具現化とそんな能力で何か武器となるものを作り上げて、相手を仕留めるのは大丈夫、と言うものだ。もっとも桜梨の場合心臓などの臓器も一部盗めてしまうので殆ど曖昧なものに近いもの否めなのではあるが。臓器は命と言うよりもパーツなので関係ないんじゃないか、確かにないと死ぬ場合もあるけど、なんていう風に桜梨は気楽に考えるようにしている。
「禁忌に触れてまで俺を生き返らせるとは、とんだ馬鹿だな」
吐き捨てるかのように、それでも桜梨は嬉しそうに笑ってそう呟いた。フェニックスが『禁忌云々を言うならば、過去の奴らは少々特殊だったようだな』と言って笑う。そんなフェニックスに対し「うるせぇ」なんて言葉を投げつけて、桜梨は蓮を抱えて寮の中へと足を進めていくのだった。……この後、学園が大きな火種に包まれると言うことも知らずに
NEXT Story〜第五章 体育祭と言う名の小規模戦争〜
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