したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | メール | |

Il record dell’incubo〜悪夢の記憶〜

55霧月 蓮_〆 ◆REN/KP3zUk:2011/08/11(木) 16:31:14 HOST:i125-202-253-87.s04.a001.ap.plala.or.jp
『ああ、もちろんだよ。我が主』

 蓮の言葉にフェニックスが笑って答える。蓮の表情がいよいよ明るくなる。その様をフェニックスは満足げに眺めた後『で、我が主、君は誰を復活させたいのかな?』と問いかける。蓮がフェニックスに突きつけたのは、蓮に良く似た少女、桜梨の写真。フェニックスは小さく唸った後、ハッとしたような表情をして蓮の周りを飛ぶ。その様子を不思議そうに蓮は見あげた。蓮の横に人の形をした光が一つ生まれる。蓮がそれに気づいて視線を落とした頃にはその光は、一人の少女の姿へと変わっていた。蓮と同じ濃紺の髪。長さは肩につく程度のものだ。その顔は勝気そうで、絆創膏が似合いそうなやんちゃっ子のよう。
 蓮の真っ白な肌とは違い、やや日に焼けた健康的な肌の色。……この少女は桜梨。間違いなく霧月 桜梨(ムヅキ オウリ)そのものだった。フェニックスはふむ、と言うと信じられないと言うような表情をして固まる蓮を見つめる。何だ人間らしいところもあるではないか、そういって安心でもしたかのように蓮の肩にとまる。蓮の何倍もあったその体は一瞬にして蓮のインコのような小さなサイズに変わっていた。それでも燃え盛る鳥なのは変わらないのだが、不思議と蓮の髪や服は燃えることはなかった。フラリと蓮の体がゆらる。静かに目を閉じてその場に倒れこんだ。……肩にとまったフェニックス諸共である。

 「ん……あれ? 俺死んだよな? 何で学園が?」

 入れ替わるように桜梨が目を覚ました。透き通った青の瞳は横に倒れる蓮よりも先に学園の方を目に留めたようだった。その後自分の足元に目をやって蓮が倒れていることに気づく。誰だかがわからなくて首をかしげていると、その胸に輝く生徒会役員の証であるバッチに目が行った。刻まれていた名前を見て、目を見開いた後に、近くに転がっていたフェニックスの首を絞めるかのようにもって、凄い勢いで言葉を投げかけ始めた。桜梨もまた不思議なことに燃え盛るフェニックスを持っても燃えることはおろか、火傷さえもしないようだ。ギューっとフェニックスを締め上げて早く真実を言えと脅す始末。……コイツ人間じゃない。フェニックスはそう思う。

 「ほぅ……で、そいつが力でお前を召還して俺を生き返らせた、と。この馬鹿が」

 フェニックスの説明を聞いて桜梨は不愉快そうに蓮の体を蹴飛ばす。小さく呻き声を上げたから生きてるのか、そんな風に考えてため息をつく。ついにコイツは禁忌にまで触れやがったかと呆れたような表情をして、締め上げていたフェニックスを放り投げた。能力で他者を生き返らせたりするのは禁忌とされているのだ。蓮の場合は能力と言えるのかも怪しいところがあるが、おそらくは禁忌だけは当てはまっているのだろう。そもそも禁忌については能力だけではなく、魔法にも当てはまることの方が多い。たとえば他者の命を能力でどうこうすることは禁忌だ。まぁ、単純に人を生き返らせてはいけませんなんていう感じのものだと捉えてくれればいい。
 直接的に命を剥奪してはいけないと言うものもあるが、これは桜梨のような剥奪能力などの一部の能力と魔法に限られてくるので関係ない。たとえを出すと、桜梨の剥奪能力で相手の命を盗むのは駄目だが、氷や炎、風、具現化とそんな能力で何か武器となるものを作り上げて、相手を仕留めるのは大丈夫、と言うものだ。もっとも桜梨の場合心臓などの臓器も一部盗めてしまうので殆ど曖昧なものに近いもの否めなのではあるが。臓器は命と言うよりもパーツなので関係ないんじゃないか、確かにないと死ぬ場合もあるけど、なんていう風に桜梨は気楽に考えるようにしている。

 「禁忌に触れてまで俺を生き返らせるとは、とんだ馬鹿だな」

 吐き捨てるかのように、それでも桜梨は嬉しそうに笑ってそう呟いた。フェニックスが『禁忌云々を言うならば、過去の奴らは少々特殊だったようだな』と言って笑う。そんなフェニックスに対し「うるせぇ」なんて言葉を投げつけて、桜梨は蓮を抱えて寮の中へと足を進めていくのだった。……この後、学園が大きな火種に包まれると言うことも知らずに

NEXT Story〜第五章 体育祭と言う名の小規模戦争〜


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板