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Il record dell’incubo〜悪夢の記憶〜
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霧月 蓮_〆
◆REN/KP3zUk
:2011/07/30(土) 02:03:01 HOST:i114-180-251-220.s04.a001.ap.plala.or.jp
そんな事お構いなく悠斗は蓮の真正面に座って食事を取り始めた。特に会話をするわけでもなく淡々と食事を取る蓮と、その様子を眺めて意地悪く笑いながら食事を取る悠斗。何処からどう見てもおかしな組み合わせだった。周りにいた生徒たちは戦々恐々と言った感じでさっさと食事を済ませては食堂から出て行った。そんな中気にしないで食事を取っているのは当の本人達と月華位であろう。黒須は気にしていないように見えて蓮が箸をおく小さな音だけで反応して蓮の方を見てしまっているので、実際のところは不安で仕方が無いらしい。と言うよりここで悠斗と蓮がぶつかったら間違いなく自分、死にますけどなんてことを考えている。
カタンと小さな音を立てて蓮が席を立つ。おや? なんて声を漏らして悠斗は顔を上げる。なぜそんなに不愉快そうな表情なのだろうか、そう考えているようでしばらく首をかしげていた。そして、扉をノックするかのように机を叩いて、顎で席に座れと合図を出す。蓮はそれを見ることさえせずに食器の乗ったトレーを運んで行こうとした。それを見て僅かに顔をしかめた悠斗は、平坦な声で告げる。
「なーに不機嫌になってるんですかー? 福バ会長さん、まだ半分も食べてないじゃないですか。ボクと“お話”しながらゆっくり食べましょうよー」
そう言って悠斗は笑った。笑ったと言っても目だけは鋭く、蓮を捉えて動かない。蓮の方も蓮でゆっくりと振り返ったかと思えば鼻で笑って、歩き始めていた。冗談じゃねぇぞ、そう考えながら黒須は何でも無いかのように振舞う。それでも震える手を抑えることも出来ずにいた。黒須は蓮の能力を詳しくは知らない。それでも蓮が召還能力を使って四大精霊なんていう危険なものを召還するは知っているし、そのほかにも色々と危ないものを召還するのも知っている。それだけあれば蓮の能力を恐れるのには十分だった。ただでさえ分類不明で魔法にさえ近いと言われている能力だ。きっと自分の知らない危険なところが沢山あるのだろう、そう考えると自然と頬を冷たい汗が伝い落ちた。
しばらく黙って様子を見ていた月華が静かに立ち上がって食器を下げたいつの間にか食べ終わっていたようで、横目で蓮の様子を見た。静かに黒須の元に戻ってくると「さっさと行くよ? 蓮と悠斗を引き剥がしても良いけど、それをするとなるとちょっとボクの身が持たない。あいつらに能力で干渉するのは難しいからね。だから生徒達を退避させるよぅ」と耳元で囁いた。黒須が小さく頷いたのを確認すれば静かに目を閉じて何かを呟き始める。その間に黒須は食器を下げて自分の能力の一つのテレパシーで食堂にいる蓮と悠斗以外に状況を伝えた。能力等のランクをはじめとして様々な面でトップクラスに立っている月華でさえ、能力での干渉が難しい蓮と悠斗の力……。小さな声で黒須は化け物だなと呟いた。
瞬間、月華や黒須、その場にいた生徒達が姿を消した。蓮はしばらく驚いたように辺りを見渡していたが、状況を理解すると不服そうに息を吐いて、食器の乗ったトレーを少々乱暴に指定された台に置く。悠斗は分かっていたとでも言うかのように驚くことさえせずにクスクスと笑って蓮に向かって言葉を投げかける。楽しそうな、歌うような声で「さぁ、邪魔者もいなくなりましたし、お話しましょう?」と言った。どこか有無を言わせないようなそんな響きがあった。一般の生徒なら、黙って頷いてしまっていただろう。しかし蓮は違った。返事さえしなかった。
「あれー? せっかく桜梨さんの素敵なお話をしようと思ったんだけどなぁ?」
ピタリと蓮が動きを止めた。それを見た悠斗は満足げに笑ってさらに言葉を投げかける。不気味な程に明るい声色で「貴方が殺した大好きなお姉さんの話を、ね?」と。蓮の体が小さく揺れる。俯いて髪で隠された顔に浮かんでいたのは……恐ろしいほどの無。それは完璧な無だった。怒りは感じたし、五月蝿いとも思った。それなのに表情だけは無表情のまま固まっていた。静かな足音が自分の背後に迫ったことで蓮はやっと我に帰る。何をしているんだ、さっさと戻ってしまえ。そうすれば話は聞かないですむんだ、そう考えてくるりと体の向きを変える。そこで蓮は再び動きを止めることになる。
歪んだ、そう表現するのが生易しいように感じる悠斗の笑みがそこにはあった。
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