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Il record dell’incubo〜悪夢の記憶〜
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:
霧月 蓮_〆
◆REN/KP3zUk
:2011/07/30(土) 02:45:54 HOST:i114-180-251-220.s04.a001.ap.plala.or.jp
「どうして逃げるんでしょう? 怖いんですか? 過去を思い出すのが。この人殺し」
やめろ、小さく蓮の口が動いた。それを見た悠斗はクツクツと口元を歪めて笑う。そして何度も何度も桜梨の名前を出してはお前が殺しただの、お前がいなければ……なんていう風に繰り返す。蓮の顔がどんどん青ざめていくのを見て悠斗は楽しそうに言葉を続けた。グッと手で耳を塞いでただただ、うわ言のように蓮はやめろと繰り返している。がたがたと震える足はこの場を離れることを許してはくれないようだ。駄目じゃないか自分。故意にじゃ無かったって言えよ、自分の意思じゃ無かったって言えよそう考えても言葉が突っかかってうまく出てこない。……結局は言い訳だけどそう考えて蓮は今にも壊れてしまいそうな、ぐちゃぐちゃな笑みを浮かべる。
しばらくして悠斗は飽きてしまったとでも言うかのように小さく息を吐いた。それでもすぐにいいことを思いついたとでも言うかのように、手を打ってくるりと一回転。蓮の方に再び顔を向ける頃には蓮に良く似た少女の姿に変わっていた。活発そうな顔、短く切った濃紺の髪、透き通った赤と青の瞳……それを見て蓮はひっと声を漏らして後ろへと下がった。その少女自体が怖いのではない。少女のあちこちにある滲んだ紅と、焼け焦げたようなそんな痕が妙に生々しくて怖かった。それが無ければ蓮は迷わず、変身した悠斗だと分かっていても目の前の人物に抱きついて声を上げて泣いていただろう。
「能力の定義は操ることの出来るもの、出来ることが常に特定されていること、そして大きかれ小さかれ絶対に能力を使えなくなる枷や制限があること。誰にでも発現可能なものであること……」
悠斗は僅かに低い女の声で言う。すがるようにそれを見つめる蓮はカタカタと震えながら、耳を塞いでいる。……そんなことをしたところで音を完全に遮断することは出来ないだろうに。そう考えて悠斗はより一層歪んだ笑みを浮かべた。ただ蓮には目の前の少女が歪んだ笑みを浮かべたように見えるわけで……気づけば悠斗が変身していると言うことも忘れてしまっていたのかもしれない。酷く怯えたような、そんな表情でただひたすら悠斗のことを見つめ続ける。そんなすがるような目を無視して悠斗は言葉を紡いでいく。次々と詰まらずに言葉を並べて、それが蓮に突き刺さる様を見て笑う。
「それに比べお前の力は基本的に制限が無い。あるとしても安全に使うためのもので、力を使えなくなるようなものじゃない。だってお前一度、精霊を三体召喚して一時間以上維持してたよなぁ? 二体で四十分以内なら使えると言うことじゃなくて、なら安全ってことだろう? そんなの制限でも、枷でもない。それに召喚は能力としては本来発現しないしなぁ? じゃあ魔法か? 違うよなぁ、お前は魔力の生成できない人間だ。どちらでもない半端もの、ってことだな」
そこで悠斗は一度言葉を切った。すっかり床に座り込んで自分を見上げる蓮を見下ろすのが心地よかった。普段上から目線の蓮を屈服させたような、そんな錯覚を得ることが出来て、笑いがこみ上げてくる。静かに蓮の体を抱き寄せて耳元に顔を寄せた。大きく震えて逃げようとする蓮の体を押さえつけて動けないようにして、笑ってやる。明らかな嘲笑の意味をこめた意地の悪い笑いだった。蓮はただただ呆然と視界に入る自分のものではない濃紺の髪を見つめて、抵抗すら出来なくなっていた。それが余計に気持ちよくて悠斗は笑みを堪えることさえやめた。
ハッと蓮は悠斗の笑い声で我に返る。自分の今の体制を見て心底不服そうなそんな表情をした。悠斗の笑い声がなければ相手が悠斗だという事も忘れていただろうに、相手が自分の大切な双子の片割れの格好をして自分に抱きついているという状況が酷く不愉快だった。振り払おうとしたときに悠斗は平坦な声で「半端ものに殺されて桜梨さんは悲しいでしょうねぇ? 貴方なら生き返らせることが出来るんでしょうから、生き返らせてあげたらどうです? 貴方の命と引き換えなら良いですよね」と告げた。ギリッと今までやめろとだけ呟いていたあ蓮は、ありったけの力で悠斗を突き飛ばしていた。
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