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カオスロワ避難所スレ3

619創造と帰滅の蒼:2020/05/06(水) 22:12:33 ID:3k2I6frk0
――同刻、日本海ASO-3


「ココさんとメフィラスさんはそろそろ目的地についたかな?」
「おそらくは。我らは、我らの仕事をこなそう」

そこには、数人のストームトルーパーが慌ただしく動いていた。
彼らは主催者陣営の所謂モブ兵士の中でも、特にココ達から信頼されている者達だ。
カオスロワ後の人員の護衛、放送の継続を任されたといえば、その度合いもわかるだろう。

「次の放送、俺がやるよ。うわ、わかっちゃいたけどまだこんなに死人が……」
「震えているが大丈夫か? やはり私が代わりに……」
「いや、大丈夫。放送までに慣れて、ちゃんと動じない主催者らしい放送をしてみせるよ」

誰にも知られることはないが、彼らも自分達にできることをして戦っていた。
現在も日本で戦い生き延びている猛者たちに比べたら、遥かに弱い彼ら。
それがたった50人。どこかの勢力に目をつけられたら、一貫の終わりだ。
それでも彼らは職務をこなす。たとえ自分達がどうなろうと、未来の大災害だけは防がなければならないのだから。


「九州ロボへの連絡パスコード、これであってます?」
「ああ、大丈夫だ。あの獣に動きがあれば、すぐに伝えねば……」


そんな彼らの業務の中には、沖縄の黒き獣の監視もあった。
撒き散らす蒼の影響で至近距離までは近寄れないが、そこは科学班が遺した優れた産物がある。
対象との距離があっても、拡大鮮明化できる小型カメラその他機能を積んだ小型ドローン。
これを用いて、身のすくむような怪物である黒き獣の様子を逐一チェックしているのだ。
九州ロボも人員が減り、魔女との戦いに赴くとなるとそちらに集中する必要がある。
その為、彼らは命令されずとも進んでこの怪物の監視をしているわけである。


「対象、テラカオス・リリカルから受けた傷を再生中の模様」
「くそ、なんて速度だ。これでは彼女達の犠牲が無駄になってしまう!」
「フロワロ、海を渡り既に大阪があった地域まで浸食中!」


兵士達は、誰もが黒き獣を恐れた。
ディーヴァにリリカル、二体のテラカオスを返り討ちにしたばかりか、動かずに日本の生命を刈り取りにくる極悪さ。
果たして、あと何時間でこの獣は本州に向かってしまうのか。それがただただ不安だった。
そんな時だ。
黒き獣を観測している計器の一つが鳴り響く。

「な、なんだ!?」
「た、対象の上空に超エネルギー反応! これは――宇宙、いや、成層圏から猛スピードで迫っています!?」
「エネルギー体捕捉! こ、これはそんな、馬鹿な!?」






「「だ、第三真竜ニアラ!?!?」」






--

620創造と帰滅の蒼:2020/05/06(水) 22:13:23 ID:3k2I6frk0
「むっ!?」


休息していた黒き獣シャドウは、すぐにその異変を察知した。
遥か上空から、自分を狙った『何か』が迫ってきている。
シャドウがその場から大きく飛びのいた、次の瞬間。



竜の嘶きと眩い閃光、そして大爆発。沖縄の大地はフロワロと共にさらに酷く消し飛ぶこととなった。



「こ、これはまさか、真竜メテオ……!? 馬鹿な、ディーヴァの中に既に多すぎるくらいに存在するというのに!?」



『クァハ……』

『キサマか。我らを喰らい、力を奪い、食物連鎖の頂点に達したと自惚れている痴れ者は……』



それをやってみせたのは、左右非対称の翼を持つ金色の巨竜。
既にディーヴァに敗れ、そして今やシャドウに取り込まれている筈の真竜ニアラその人であった。

「9体目だと……どうなっているんだ一体。だがしかし、所詮は第三真竜……今の私の敵ではない!」

少しだけ驚愕の表情を浮かべるシャドウではあるが、ディーヴァ越しに取り込んだニアラ達の醜態は知っている。
この真竜は力はあるが、傲慢中の傲慢。感情を持たぬ者を忌み嫌い、感情豊かな人間に執着し続けた結果が悲惨な末路。
メテオの奇襲も回避できた以上、ここから10体目以降が現れてもなんら問題ない。

「行け、我が尖兵よ!」

適当な死者が、シャドウの傀儡として蘇る。
ニアラ程度なら、これで十分だ。

「や、やった! よし、今度こそ活躍してイチロー選手と『去ネィ!』

しかしシャドウの尖兵は、喋りきる前にニアラの左翼から放たれた威光に貫かれ、爆発四散した。


【斎藤佑樹@現実?】 消滅確認
※シャドウの尖兵の為、放送で呼ばれませんしキルスコアにもなりません


「馬鹿な!? いくら適当とはいえ、私の力を授かった死者がこうも容易く……ならば、私自ら、第七真竜の力で葬ってくれる!」
『……マガイモノの力、試してみるか?』


「――プリズマティックストリームッ!」
『――真竜ブレスッ!』


シャドウの口から、VFDの力である虹色のブレスが吐き出される。最強の真竜の放つ、開幕の全体攻撃。第三のブレスなどとはものが違う。


――直後、ニアラの口からも放たれた虹色のブレスが、VFDの虹を貫いた。


--

621創造と帰滅の蒼:2020/05/06(水) 22:14:09 ID:3k2I6frk0
「な、なんだ!? 何が起きているんだ!?」
「わからない! わからないが、一つだけ確かなことはある! 第三真竜ニアラが、黒き獣を押しているんだ!」


映像で見ていた兵士達は皆が混乱状態。
無理もないだろう。
突然、黒き獣めがけて降ってきた謎のエネルギー。
何かと思えば、まさかの9体目の真竜ニアラ。
一瞬感じた希望は絶望に早変わり、頼むからこれ以上黒き獣に力を与えないでくれと願わずにはいられない。
かと思えば、ニアラは黒い尖兵を一撃で爆砕し、さらには黒き獣のブレスすら打ち破って見せたのだ。
明らかに、優勢。あのニアラが。
これで混乱しない者がいるなら見てみたい。

「し、信じられん。蒼を纏う黒き獣が測定できないのはわかるが、ニアラの能力まで測定不可能域だ!」
「しかし一体どうやって? テラカオスでなければ、ダークザギクラスでも戦場に立てるのは十数秒が限界の筈なのに」

測定不可能。人智を超えた域、まさしく神の如き領域の戦闘能力。
何体ものニアラが降臨しているこの世界だが、この9体目はその全てを遥かに凌駕していた。
とはいえ兵士の言う通り、超理不尽……それこそこの世界の上位存在でさえ、蒼には抗えない。
彼らは知らないが、第二真竜が耐えきれないものを格下の第三が耐えきれるわけがないのである。


そんな兵士達の疑問に答えたのは……



『……なるほど、そういうことか』


「っ! 黒き獣、ブレスを返されましたが無傷です!」
「ニアラのブレスも黒き獣のブレスで削られている。纏う蒼の壁までは貫けなかったということか」
「しかしこの口ぶり、黒き獣は異様なニアラの強さの理由がわかったのか?」


『クァハ……流石に、この一撃で頭を吹き飛ばさせてはくれぬか。だが、我の力がこの程度だと……』
『茶番に付き合うつもりはない』
『なに?』
『今のブレスの威力、到底本来のニアラには真似できまい。姿を現せ、マガイモノ』
『……ふん』




『――思ったより、早くばれたね。ウォークライから聞いただけじゃ、真似しきれなかったかな?
 風鳴翼に姿は似ているけどその禍々しさ、お前が黒き獣だな……!』
『ただの獣ではない。我が名は黒き獣シャドウ!
 今の姿はお前達の禁術、エーテルリンクか。都庁で死んだニアラの一部を取り込んで化け奇襲を仕掛けてくるとはな……』


ニアラの姿が光に包まれたかと思えば、次の瞬間には真竜の姿は消えていた。
代わりに黒き獣と対峙しているのは女装男――都庁のレストであった。

622創造と帰滅の蒼:2020/05/06(水) 22:14:47 ID:3k2I6frk0
「なっ……ニアラでは無く、ニアラに化けていた都庁軍の!?」
「成程、中身が奴ならばさっきの測定器の振り切りも納得できるが……なんでまたニアラなんかに?」
「皆、馬鹿にしがちではあるがニアラもまた宇宙を駆ける真竜の一員だ。
 奴は宇宙空間まで瞬間的に飛翔し、そこから正確に敵対象目がけての超急降下爆撃が可能。彼はそれを利用し、沖縄の黒き獣を狙ったのだろう」

兵士達はなんとか戦況を理解しようと、必死に頭を回転させる。
そして黒き獣の言葉もあり、おおよその見当はついた。
レストが用いるエーテルリンクは身体の一部を誰かに模したものであったが、それはテラカオス化進行に際して手に入れた能力。
人型を維持し身体の部位をそれぞれ違った魔物に変化させる……より応用の効く万能性を得る前、本来の術はどうであったかと言えば答えは簡単。
取り込んだパーツの持ち主と、全身全く同じ姿になる。つまり今回は、ニアラそのものに変化したのだ。
そして兵士の言う通り、宇宙空間からでも獲物を捕捉しピンポイント爆撃できるニアラの能力を使用した。
しかし汚染された宇宙までは飛び立てず成層圏止まり、メテオが不完全な威力であり黒き獣への打撃にはならなかった。
ここまでは推理できたが、それでも兵士達の疑念は尽きない。
むしろ正体がわかったからこそ、余計に混乱してしまう。

「しかし、結局最大の謎がわからんぞ! どうして彼は、蒼の空間を耐えきれている!?」
「奴はわざわざ黒き獣を……そもそも、どうして黒き獣という名称を知っているのだ!?」
「黒き獣は先程、自らをシャドウと名乗っていました。状況整理の為、このままシャドウの観測を続けます!」

兵士達は、理解が追いつかない戦いの観測を続ける。
それが、きっと後の世の為になると信じて。


--


「ふむ、何故お前がここにいるのか、何故まだ無事でいられるのかはわからんが……お前が馬鹿なことだけはわかるぞ?」
「なんだって?」
「全ての根源たる蒼、TCの前には完全な属性耐性、バステ耐性、防御無視耐性、即死耐性を持つお前であってもまるで意味をなさない。
 もしお前がテラカオスとなった状態で我が前に立ち塞がっていれば、私を倒す可能性は数パーセントはあっただろうがな」
「……僕の耐性、エーテルリンクの知識、テラカオスになりかけたこと、全部知っているんだね」
「ああ。……お前のその格好、未練がましくしがみついているサクヤの魂を取り込ませてもらったからな」
「っ……!!!」
「あれも実に愚かな娘だ。お前をテラカオスにさせていれば、私を倒せたかもしれないというのに。
 挙句、取るに足らない魂を庇いこうして私に取り込まれるのだからな」


にたりと黒い笑みを浮かべるシャドウに対して、レストは奥歯を噛みしめる。
確かにテラカオス化できていれば、シャドウも倒せたのかもしれない。
だがあの状態の自分がテラカオスとなっていれば、確実に世界樹の仲間達も襲い殺めていただろう。
既に血に塗れた道を歩んできた自分を正してくれた少女の行動を愚かとされるのは、我慢ができなかった。


「悔しいか? だがお前には何もできんさ。お前は何も出来ぬまま、自らの力を過信して、ここで朽ち果てる。
 いや、むしろ喜ぶべきだろう。お前達の祖先のグンマ―の民は、蒼によって滅ぶことを望んでいたのだから」
「悪いけど僕は、この災害が起きる前から生命の理を捻じ曲げることを街ぐるみでやったこともある異端者だよ?
 過去のグンマ―なんて知るか。僕は僕の意思で抗う!
 小町さんにほむら、サウザーさん、みんなはきっと乗り越えてくれる。だから予言完成最後の障害のお前は……」



「――死者を狙い、フロワロを撒くお前は! この場で僕が倒すっ!」


「あはははははははは! 自惚れが過ぎるぞ、グンマ―の盾風情が!」

623創造と帰滅の蒼:2020/05/06(水) 22:15:20 ID:3k2I6frk0
高笑いをしつつ、しかしシャドウは恐ろしいまでの殺気を放つ。

レストは知る由も無いが、シャドウは少し前にテラカオス・リリカルに痛手を負わされている。
そしてダークザギの献身により、リリカルを取り込むことにも失敗した。
表面上の傷は回復しているが、完治はしておらず能力も吸収できていない。
目の前の自惚れた男を消すことは容易いが、新たなテラカオスに襲撃されては危ないという認識もシャドウの中にはある。
面に出さない苛立ちと焦燥。
蒼の前では無意味だが、逆に蒼以外にはリリカル以上の耐性と能力を持つこの男の魂を、絶対に取り込んでやろうという強い意志があった。


そんなシャドウが身構えるより先に、レストが動く。
鞄に手を入れた彼は、4つの竜の一部を取り出す。
それは大災害前からずっと持ち続けた、今となっては大切な友達の形見。
そして万が一ダオスに何かあった時の為にとずっと隠しておいた、切り札でもあった。


「――エーテルリンク・地幻竜プロテグリードッ!」


叫びと閃光、今度は金色のニアラではなく、四幻竜の一角たる巨大な紫竜にその姿を変えるレスト。
嘶き、天を仰げば辺り一帯に無数の雷撃が降り注ぎ、宙からは隕石までもが次々に襲い来る。


「――エーテルリンク・火幻竜フレクザィードッ!」


天からの暴力が止まぬ中、素早く変身を解除しすぐさま次の鱗を取りこむ。
今度はカヲルも知る、この殺し合いの中で命を落とした紅蓮の竜へと変化する。
羽ばたき一つで辺りは焦熱地獄と化し、その口からはシャドウの体躯の十数倍はあろう大火球が連続して放たれる。


「――エーテルリンク・水幻竜アクナビートッ!」


三度目。ニアラも含め、使用された四幻竜の鱗はレストの身体から排出されると同時に粉々に崩れ去っていく。
たった一部分だけで、その全身を元の竜以上に変化させ人の身に余る攻撃をしているのだ。素材にも術者にも多大な負担がかかる。
長大な尾を持つ水竜はその場で一度回転すると同時に、全てを呑みこむ濁流と4機のビットを同時にシャドウ目がけて叩きつけた。


「っ……エーテルリンク! 風幻竜セルザウィードォッ!!!」


最後は、かつての一番の友。竜と結婚できる世界であれば、もしかしたかもしれない大切な存在。
彼女から貰った、その身の一部を使った大切なお守り。今となってはまさしく形見そのものであるそれも、取り込まれてやがて消える。
あの時と同じように。守りたいものを守る為、意を決しての最後のエーテルリンク。


『神の力、思い知れっ!』


風幻竜そのものの声と共に、周囲に暴風が吹き荒れる。
これまでの三幻竜の攻撃も止み切っていない状態で、もはやシャドウの姿はどこにも見えない。
そして駄目押しと言わんばかりに、竜の口から神の息吹が吐き出される。


--

624創造と帰滅の蒼:2020/05/06(水) 22:15:56 ID:3k2I6frk0
「うおぉぉぉ……」


戦況を見ていた兵士の一人は感嘆の声をあげた。
撮影された映像には、まさしく天変地異と呼ぶに相応しい光景が広がっている。
圧倒的な戦闘力を持つが、多数の敵や広範囲攻撃を苦手としていた男の奥の手。
素体の戦闘力に、竜の殲滅力が加わった超理不尽な怒涛の天災。

「さっきのニアラのブレスでシャドウを上回れたんだ。これならもしかして……!?」

理由はわからないが、ニアラのブレスはシャドウのブレスを打ち破っている。
明らかにそれを遥かに上回るこの天変地異ならば、シャドウとてただでは済まないだろう。
兵士達もにわかに活気づく。

「恐ろしく、そして頼もしい攻撃だが、さっきのやりとりは……」
「ん、どうしたんすか先輩?」
「先程彼は、こう言った。予言の最後の障害と。まさか、都庁の者達は……」



『――この程度が切り札とは、笑えるぞグンマ―の遺物よ?』


沸き立つ兵士達の耳に、拾われたシャドウの冷たい声が届く。


次の瞬間、災害の波の中から黄金の一閃が放たれる。
シャドウの持つ聖約・運命の神槍の一撃は、的確に風幻竜の頭部を狙っていた。


『くっ!?』


ぎりぎりのところで解除される結合。
レストは元の人間サイズになり、黄金の光は対象を失って虚空を貫く。
一手遅れていれば、レストは致命傷を負っていただろう。
テラカオス化によらない通常のエーテルリンクは全身変化の代償もとてつもない。
莫大な魔力の消耗、強化変化されてなお多大なダメージを負えば、身体は灰になって崩れさってしまうのだ。



「嘘だろ……」


映し出された光景に、兵士達は誰もが絶望する。
文句なく完璧な攻撃だった。
それだというのに、未だ荒れ狂う天災の中からはゆったりと無傷のシャドウが歩み出てきたのだ。



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625創造と帰滅の蒼:2020/05/06(水) 22:16:26 ID:3k2I6frk0
「くそ、やっぱり……」

息を荒げつつも、レストはシャドウを睨む。
手の中で砕け散る風幻竜のお守り。もう同じ攻撃は二度と使えない。
それでなくとも、無茶苦茶な短時間での5連続エーテルリンクによる攻撃はレストの体内魔力を半分以上持っていった。
仮に素材が無事であったとしても使えず、そもそもシャドウの様子からして何度今の天変地異を引き起こしても無駄なのは明らかだ。


「私はテラカオス・ディーヴァ……お前も知っている風鳴翼の各属性耐性を奪っている。加えて、この蒼の力もある。
 故に、私を倒せる者はテラカオス、かつ私を上回れる接近戦技能を持ち、このフロワロの猛毒に耐えきれる者のみ。
 もっとも、私にはジョン・フレミングが遺した格闘術もあるがな?」


言葉通り、一切の傷を負っていないシャドウは口の端を僅かに吊り上げる。
テラカオス・リリカルはまさに類稀なる戦闘技能、そして防御力を誇っていた。
しかし彼女はフロワロの猛毒への耐性を持たなかった為に敗れてしまった。
レストも属性攻撃だけでなく接近戦は得意とするところであり、猛毒を含むあらゆるバステを受け付けない。
だがテラカオスでない以上、蒼をその身に纏うシャドウを攻撃することはできない。

テラカオス以外を殺す蒼に、テラカオスすら殺せる猛毒。
この反則とも言える能力の組み合わせにより、シャドウはまさしく不滅の存在であった。
第三のテラカオス・サーシェスならば可能性はあったかもしれないが、
彼の能力は周囲の情報を取り込んでの環境適応。ホルスの黒炎に間に合わなかった点からして猛毒へ間に合ったかは怪しい。
勝算があったのは安倍総理かもしれないが、彼は既にその魂を砕かれている。

「やはり警戒すべきは、あの者のみだが……お前が我が尖兵となれば、魂を破壊できる確率は飛躍的に上昇する」

過去のテラカオスでは、シャドウを倒せない。
しかしディーヴァが抵抗し、遠方で勇者として覚醒した『ツバサ』であれば、どうなるかわからない。
彼女もまだ道半ばの存在。今はシャドウの勝ちでも今後どうなるかはわからない。
だから、抹殺する。唯一の不穏因子は、絶対に排除しなくてはならない。
ディケイド達は敗れたが、目の前のこの男を尖兵にできたならば、たとえ護衛がいようと、葬れる可能性が非常に高い。

死者スレはカルナ達の抵抗により、まだ上質な死者の入手が困難な状況。
そんな時にまさか、垂涎物の尖兵素材が向こうからやって来ようとは、まさに嬉しい誤算だ。


「お前は私に敗れはしたが、その力が酔ってしまう程強いことも認めよう。その力、私が存分に活用してくれる」



「――誰が、敗れただって……!?」

「む、まだ立ち上がれるか? だが、お前のつまらぬ災害程度では――」



「ルーンアビリティ、鋼身之構・瞬迅! エーテルリンク火竜の猛攻! 飲食無敵の秘薬ゥ!」


しかしシャドウにとっての極上の得物は、まだ諦めずに抵抗を続ける。

626創造と帰滅の蒼:2020/05/06(水) 22:17:31 ID:3k2I6frk0
鋼身之構、マーラやハクメンにも使用した鋼体付与。
瞬迅、攻撃に限らずあらゆる行動速度を倍増させる。
火竜の猛攻、亡き偉大なる赤竜の力。攻撃力を倍増させる。
無敵の秘薬。誇張した名前だが、体力攻守全てのステータスを倍増させる最終調合薬。

「無駄だ。いくら私に全ての攻撃が通用しないから、自己強化ならどうにかなるとでも?」

「まだだっ! 右手にグングニル、アビリティ、アクセルディザスター! 武器種とアビリティの適合!」

シャドウの言葉を意に介さず、レストは己が持ちうる全ての手段を講じて自己強化を続ける。

「瞬迅の速度増加で2倍! 火竜の猛攻で2倍! 秘薬で2倍! アクセルディザスターの回転で3倍! 適合ボーナスで1.5倍っ!」
「愚かな! まさかお前、強引に倍率の暴力で私の蒼を破ろうというのかっ!?」

身体を捻り、パワーを36倍まで引き上げたレストの姿を見てシャドウの顔が若干引きつる。
超理論、そして攻撃動作。間違いなく、命知らずなこの男は自爆特攻をしかけてくるつもりなのだ。
絶対の蒼が破られるわけがないと思っていても、それでもこの気迫には恐れ入る。


「『四幻』は無駄じゃない!――彗光『四源』の舞っ! サクヤの力でさらに40倍だっ!」
「き、貴様っ!?」


そしてその言葉を聞いた瞬間、初めてシャドウは焦りの色を浮かべる。
先程の四幻竜の攻撃は、これの補助。サクヤの能力を発動させる為に使われた布石。
効かないからと、蒼で直接打ち払うことをしなかった。結果、四幻の力はまだ周囲に残ったまま。
ダークザギの例があるように、強大な力は蒼の中でもしばらく残り続ける。
普通の魔法の乱射では使えなかったであろう四源の力を四幻が可能とした。
グングニルに宿るは、かつてハクメンが危険を感じ取った光の遥か上を行く破壊力。

2×2×2×3×1.5×40= 1 4 4 0 倍 ! ! !


「つ・ら・ぬ・けえええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
「だが、四源の力が使えるのは私も同じこと! 迎えうて、聖約・運命の神槍よっ!!!」


回転しながら自らを槍としたレストの神槍の一撃に、シャドウも四源の力を神槍に宿して迎撃する。
リリカルにも見せた、シャドウの最高火力状態。
互いの右腕が握る神槍に、より一層の力が籠る。


そして……


互いの槍は激しくぶつかり合い、やがて粉々に砕け散った。


シャドウはリリカル戦での経験もあり、押し負けることを理解している。
だから、神槍と頭部、心臓部。武器と致命傷を負わされる可能性のある場所に特に重点的な蒼の壁を張っていた。
グングニルは聖約・運命の神槍を瞬間的に破壊するも、突き進んだシャドウの心臓を守る蒼に触れて砕け散ったのだ。

627創造と帰滅の蒼:2020/05/06(水) 22:18:03 ID:3k2I6frk0
(馬鹿な、蒼で覆ったラインハルトの槍が……!?)

決死の特攻を受けてもシャドウは無傷。
しかし、自分にまでは届かずとも蒼の力を得た神槍は破壊されたという事実。
絶対の蒼が確かに『貫かれた』という受け入れ難い事実。


それは、一瞬の隙だった。


「――そしていつもの正拳突きで、4倍だああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


見落としていた。何故、この男の左腕に装備されていた筈の盾が無くなっているのか。
装備を槍に持ち替えた時にしまった。一体何故か?決まっている。左手でも攻撃をしかけるためだ。

繰り出されるは、レストの必殺の一撃。
対象の防御を貫通する破壊の拳。
生み出される衝撃波と拳、二段階の一点集中突破攻撃の威力は1440のさらに4倍


 5 7 6 0 倍


「っ、ここだああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「がっ!?」


咄嗟に弱点部分を更に蒼で守るシャドウ。
しかしレストが狙ったのは、意外な場所。
他に回したが故に守りが薄くなった、シャドウの右肩の付け根であった。









――絶対の存在の右腕が、ばらばらに千切れ飛んだ。

628創造と帰滅の蒼:2020/05/06(水) 22:18:36 ID:3k2I6frk0
「――――――――ッッッ!!!!!!」



絶叫が双方の口からあがる。
まさか自分が『破壊』されるとは夢にも思っていなかったシャドウの叫びは当然のこと。
そして、いくら蒼を力づくで破る程の常軌を逸した強化を施したとはいえ、その拳は蒼の塊を殴り抜けたのだ。
さしものフォレスト・セルの蒼抗体もこれは許容限界。
全身に蒼の汚染が広がることこそ防いでいるが、直接シャドウの体内に触れたレストの左肘から先は砕け散ってしまう。

(蒼に、僕の腕という存在を歪められたか……! 僕の腕は、今も昔も『最初から存在しない』から、再生のしようもない……!)

かつて右腕を吹き飛ばされたが、今度は左腕。同じように治療できるかと言えばそうもいかない。
蒼に直接触れる暴挙を犯した左腕は存在そのもの抹消された。いわば部分的な魂の抹消ともいえる。
どんな回復魔法を使おうが、どんな宝具を使おうが、二度と蘇ることはないのだ。

とはいえ、お互いが片腕を吹き飛ばしあった。
激しい痛み分け……いや、テラカオスでないものが黒き獣にこれだけの打撃を与えたのだ。むしろ勝利したとも言えるだろう。
もはや言葉も発せずにただ遠方から見守っていた兵士達は、そう考えていた。




「――やって、くれる……! グンマ―の遺物如きが、滅びに抗うなど、許されない!」



観測していたストームトルーパーも。
腕を永久に失う痛みを食いしばっていたレストも。
確かにその声と姿を捉えた。


「我が名は黒き獣シャドウ! テラカオス以外に、私は、蒼は、自然の摂理は倒せない……!」


そこには、憤怒の形相のシャドウがいた。
神槍こそ持っていないが、砕かれた筈の右腕は確かにそこにあった。

真竜ニアラと同じように、混沌のエネルギー……凝縮された蒼そのもので形作られた新たな右腕が。

(く、そ……真竜7匹分の、外見を犠牲にした超速再生……竜殺剣が、あれば……)

実はレストも、この光景は可能性の一つとして考慮していた。自分自身、ニアラの力を借りたのだから。
歪に、しかし通常使用には影響がでない右腕の再生。まさしくニアラと、真竜と同じ。
背にも真竜の翼を生やしている以上、作り上げた竜殺剣・天羽々斬ならばシャドウを倒せたかもしれない。
だが、ニアラの力を使わなければ沖縄のシャドウに奇襲はできなかった。天羽々斬を持っていてはニアラの力が使えない。
両方の力を持って挑むことは、不可能。決死の覚悟で臨んだが、一手届かなかった。

(だけど、これでいい……僕の目的は達せられた。あとは、みんなが……)

自分はシャドウに負けた。自分の持つ全ての技能を使って勝てなかった。
エスケープで撤退し、シャドウの情報くらいは持ち帰りたい。
だが通常の破壊では無く、蒼による抹消はレストも初めて経験する激痛と虚無感。
意識が混濁し、魔力消費をしないエスケープの発動さえ時間を要しそうだ。
だがその僅かな時間の間に、自分は今度こそ本当の蒼を受けて死ぬ。


(……みんな、ごめん)

629樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:19:58 ID:3k2I6frk0

「あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」





突如、少女の絶叫が二人の耳に届く。
あらん限りに絞り出されたその声は、注意を引きつけるには十分であった。


「この、声は……!?」
「っ!!?」


そしてシャドウは既にその翼で空へと退避行動を取っていた。
災害の、理の化身が再びその身に危機を感じる異常な事態。


それは間違っておらず、絶叫を掻き消す光の波動がシャドウの直前まで立っていた場所を呑みこんだ。


「ぬぅ、この威力は……!?」


「レストさん、大丈夫っ!?」
「標的確認……あれが、かつてのテラカオス・ゼロも打ち倒したという黒き獣!」


「まどか、それに榛名……どうしてここにっ!?」
「グンマ―、それにミヤザキの巫女だとっ……!?」


海上から破壊光線を放ったのは、榛名に担がれた状態で弓を構えるまどか。
榛名は艤装を外した身軽な状態で、海を駆け抜けている。
まさしく高速。二人が姿を確認した次の瞬間には既にレストの元まで辿りついていた。


「っ、その腕は……!」
「こんなの、掠り傷さ……それより、どうして……」



「――どうしてお前達まで、この場所に来れるっ!?」



死にかけた獲物に対する救援。
リリカルとダークザギに近い状態だが、大きく異なる点がある。
獲物はテラカオスではなく、救援はダークザギ程圧倒的な存在ではない。
ちっぽけな災害に呑まれて潰える筈の存在が、こうして三人もまだ目の前に立っている。
不覚にも片腕を一度飛ばされた怒りもあり、シャドウは獣のごとく吠えた。

630樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:21:44 ID:3k2I6frk0
「この男は、元来の膨大な体力で耐え真竜の力で奇襲したのだと、まだ理解できる。
 だが何故だ! お前達がこのタイミングでここを訪れ、耐えきれるわけがない!」

レストにとってもシャドウにとっても、それは最大の謎だった。
九州ロボに乗る主催者以外は、沖縄というある種の安全地帯に接近するだけでも相当な時間を要する。
その謎に対する回答をしたのは、まどかを担いだ榛名だ。


「たとえどれだけの年月が流れ、街並みが変わり、そしてミヤザキの大地が器となろうとも。
 この海だけは、無くなることはありません。この星からも、榛名達の記憶からも……
 サーフが一部狂信者に持たせていた帰還用の道具を、榛名が使わせていただきました」


キッとシャドウを強く見据える榛名。
彼女は本来であればビッグサイトに帰還する道具を、かつての故郷近海を対象に使用していた。
本来の砲を外し、代わりに背負ったまどかの重さなど微々たるもの。
深海棲艦時からして都庁前線部隊の誰も寄せ付けず、ダオスと神樹の攻撃すら軽々かわしていた彼女の本来の速度が本領発揮。
瞬く間に沖縄に到着し、砕かれる寸前であったグンマ―の盾を救って見せたのだ。

「旧時代のミヤザキの巫女が、今になってグンマ―と手を取り合うだと?
 愚かな。お前達人間のエゴ、手を取り合わなかったからこそ私は生まれたのだ。今更間に合うものか!」
「いいえ。今度こそ、必ず。その為に、榛名とまどかさんはここにいるのです」

シャドウの言葉に臆することなく、榛名も凛とした声でシャドウを否定する。
小さく舌打つシャドウだが、それは榛名の言葉に対しての苛立ちからだけではなかった。
海上に転移し持ち前の高速移動で駆けつけた、これだけではまだシャドウの疑問に対する完全な答えにはなっていないのだから。

「どうして僕が、黒き獣を攻撃しに行ったってわかったんだい……?」
「レストさん、私が世界樹と繋がっている時は誰がどこにいるか把握できるの忘れてた? お風呂から急にいなくなったら慌てるよ?」
「その後は、提督が推察なさいました。急に飛び出しながら、浴場前に突き立てられた剣。それを使えない理由。
 考えられたのは、真竜の力の行使。千葉方面に向かうなら、神樹の投擲で事足りた筈。残された向かう可能性のある場所は、ここしかないと。
 提督はかなりご立腹でしたよ? どんな手段でもいいから、あの馬鹿者を連れ戻せと叫ばれていました」
「勿論、私達も怒っているからね?」
「勝手は榛名が許しません!」
「はは、流石ダオスさんだ。まいったね……おかげで、君達にまでこんな……」
「ううん、いいんだよ……」

慈愛の表情で、レストの癒えぬ傷痕を撫でるまどか。
蒼による傷は癒えないが、その他の部位は世界樹の癒しが包み込む。


(この力……やっぱりまどかと、それに榛名も……)


腕の喪失感は残るものの、随分と楽になると同時にレストは全てを察した。
まどかの使ったこの力こそ、まさに彼女と榛名がこの場にいる理由なのだから。


「それだけでは、まだ説明がつかぬ! 何故お前達は……!」


唯一、未だに理由がわからないシャドウ。
それはどこかで認めたくないという思いもあったのかもしれない。
古代のグンマ―とミヤザキの対立。人のエゴ。
それが巡りに巡って生まれたのが自分であり、この世界は一度滅んで然るべきだと確信しているからこそ。

631樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:22:27 ID:3k2I6frk0
「……私は、弱い。巫女としても、人としても。沢山の人に支えられて守られて、ようやく今この場所にいるの。
 いつも人と人がわかりあうことは難しいかもしれないけど、それでも話し合って、一緒にいてくれる人達もいるんだよ?」

「戯言を。一個人の友人程度ならば、そうであろう。しかし、人と言う種で見た場合は、そうはいかないのだ」

「人だけじゃない。動物、魔物、機械……この世界には色々な人がいて、わかりあえないことも多くて、でもみんな必死に生きている。
 この予言の聖別は……辛いけど、その垣根も超えて、手を取り合うこともできた」

「己の利、生き延びたいという欲からであろう。滅びを逃れれば、同じことを繰り返す」

「クラウザーさんの歌は、殺し合いの前から色々な人を惹きつけていたよ。それに、生きたいって思うことの何がいけないの?」

「滅びを是としたグンマ―の末裔とは思えぬ言葉だな。思想がミヤザキに偏ったか?」

「私は私。それに、グンマ―の人が本当に全員揃って滅びたいって思っていたと思うの?
 ミヤザキの人もそうだよ。本当に全員がグンマ―の人を滅ぼしてまで、テラカオスの制御だけを考えていたと思うの?」

「何?」

「……ノーデンスさんは言ってた。グンマ―は、テラカオスの研究を途中で放棄したって。
 途中まで研究を続けていた人もちゃんとグンマ―にいたの。そしてそれの集大成になる筈だったのがセルちゃん――フォレスト・セル。
 世界を浄化する世界樹を生み出す核にして、テラカオスを強化する器の役割も持った子……」

「そしてエゴの果てに、機能を歪められ偽りの救済神と成り下がった。テラカオスを封殺する奴は、お前達には破滅をもたらす魔神だろう」

「――私ね、ずっとそれが腑に落ちなかったんだ」

「……は?」

「セルちゃんは可愛い子で魔神なんかじゃないし、器としての能力もなんかおかしいなって。
 確かにセルちゃんの口の中で舐められると、身体に蒼の抗体を滲みこませてくれる。
 そのおかげで私達はここにいられる、大きな恩恵を受けているっていうのはわかるんだけど……」

「グンマ―が器の中に隠していた抗体……なるほど、手を取り合っていた頃に生み出された産物というわけか。
 だが所詮は抗体。たとえ私が周囲に放つ蒼には耐えられたとして、私に直接触れればその男と同じ末路を辿る。
 そして私を相手に耐えられぬ程度では、来るべき時には微塵も耐えきれないぞ?」


巫女とのやりとりの中で、ようやくシャドウは彼女達が何故この場所で生きていられるかを理解する。
グンマ―がまだ自然死派に傾く前に生み出された蒼への対抗策。
元々蒼による災害は自然現象。自然に対する知識と理解のあるグンマ―の民に、際限の無い進化を続けるセルが組み合わされば、不可能ではない。
もし研究が続いていれば、全人類を舐めまわして抗体を得るつもりだったのか。
だがそれも一時しのぎ、肝心の災害に耐えきれないのであれば、まるで無意味な研究成果だろう。


「グンマ―の人も、ミヤザキの人も、最初は同じ想いだった筈なんだ。今度こそ、もっと犠牲を減らして大災害を乗り切ろうって。
 その為の予言、頼らざるを得ないテラカオスを殺し合い以外の方法で強化する計画。
 でもセルちゃんの抗体は、守りを固めるだけ。それも完成したテラカオスは全部吸収できるんだから、最後には必要無くなっちゃうよね?」

「む……?」


まどかの言葉に、シャドウは眉を顰める。
気にも留めていなかったが、確かにミヤザキの器・九州ロボと比較すればグンマ―の器による強化は見劣る。
フォレスト・セル自身の戦闘力に力を割いているのかもしれないが、セルも抗体を持つがテラカオスではない以上蒼の直撃は耐えきれない。
こうしてテラカオス以外の存在に攻撃される対黒き獣用の能力なのかもしれないが、それはテラカオス以外の強化。
元々なりかけのテラカオスすら蒼には強い耐性を持つ。念の為なのかもしれないが、他の予言の強化に比べれば恩恵は薄い。


「――その理由は、舐めまわし抗体は器のセルちゃんの本当の力じゃないから」

632樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:23:31 ID:3k2I6frk0
「なんだと……!?」

「きっと、研究を続けていたグンマ―の人は気付いちゃったんだと思う。
 研究を中断させられる。自分達の命も危なくなるくらい、自然死派の勢いが強くなることに……
 だから、副産物の舐めまわし抗体を研究成果として表に出した。神様達にも、それが本当なんだって思いこませるくらいに」
「この抗体が、副産物だって……?」


流石のシャドウも混乱する。そればかりかグンマ―陣営のレストすらも。
蒼の空間で耐えきれる抗体。たとえ大災害は耐えられないにしろこうしてシャドウと対峙する余裕は出てくる代物だ。
ノーデンスすら蒼に耐えきれなかった以上、神々から見てもこれはとてつもない研究成果なのではないだろうか?
それが、表向きのもの。それでは神々にさえ知られることの無かった、最初期のグンマ―が遺した研究成果とは一体何なのか。


「もし本当の能力も教えちゃってたら、いずれ自然死派に対策を取られるか消されちゃう。
 だから舐めまわしだけを公表して、自然死派の人はその流れで自然にお尻からテラカオス因子を吸い取るように後からセルちゃんを改造した。
 本当の力は神様も知らない。予言に書かれることもない。だけどいつか、本当のセルちゃんを察せられる人が現れる。
 研究を続けてきた人は、それを祈り願って最期の時まで頑張っていたんだと思う。そして今……その祈りは、届いたんだよ」
「ヒントも無しに本当のセルの能力を察しろだなんて、なんて無謀なんだ。でもまどか、もしかして君が……?」


「違うよ。私はまだまだセルちゃんを知れていなかった。でも、レストさんももう聞いている筈だよ?」
「え?」







「――サウザーさんに、祈りは届いていた」







「セ、セルちゃんと前の穴で繋がって、世界樹の力を注がれると凄く気持ちよくて、力が満ち溢れるの……!
 念の為にお尻も弄ってもらって、本当にもう……♪」
「は、榛名はかつての提督に身を捧げていますので、お尻だけ……」




顔を真っ赤に染め上げ、もじもじとするグンマ―とミヤザキの巫女二人。
しかし羞恥の感情こそ見えるがそこに嫌悪の感情は見えず、まどかの方に至っては少し艶めいているようにすら見える。

「ま……まどか……その、何と言えばいいのかわからないんだけど……」
「あ、安心してレストさん。ちゃんと小鳥さんが一からちゃんと教えてくれたから、これが大事なことだっていうのはわかっているよ?」
「しかし、本当に恐ろしい器でした。提督のことを考え続けなければ、榛名は違った意味でまた堕ちていたかも
 それに前も後ろも捧げて身を捩るまどかさんと一緒にいたら、なんだかいけない扉も開いてしまいそうで……」
「榛名さんもぬちゃぬちゃだったけど、とっても綺麗だったよ?」

(ぼ、僕が一人で飛び出したせいで、あちこちにとんでもない飛び火が……)

まさかの事実とまどか達の行動に、全身から汗を噴き出させながらレストは眩暈を覚えて全身を震わせる。
この場を生き延びたとして、自分は小鳥かほむらに殺されるのではなかろうか?
そして神々さえ気がつかなかったフォレスト・セルの本来予定されていた使い方に感づいたサウザーの洞察力にも震えていた。

633樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:24:07 ID:3k2I6frk0
「ふ、ふざけるな! そんな下らない、人間の色欲から生まれたような力で――」

シャドウも明かされた真なるグンマ―の器の使い方に吠える。
これは公に出来る筈もないし、したところでテラカオスや巫女も流石に渋るに決まっている。
誰が好き好んで、得体の知れない醜悪な化物に開発されることを望むだろうか。
まどかは最初期のグンマ―の計画をあえて隠したと言っていたが、実際のところは黒歴史過ぎて無かったことにしたかったのではないか。
シャドウはそう考えるが……

「ふっ!」

まどかの弓から放たれる光を目にし、その考えは吹き飛ばされた。
あまりの内容、そして抗体を得た連中程度の攻撃ならば余程過剰な倍率をかけられない限り耐えられると、油断していた。

「がっ!? な、なんだ、その力は……!?」

堪らず呻くシャドウ。
放たれた光の矢は、歪に蘇ったシャドウの右腕に、小さな風穴を開けていた。
先程受けたダメージよりは弱いが、それでも再び蒼を貫かれたのだ。
何より問題なのは、今度は直接攻撃ではない。光を用いた遠距離攻撃――何発も攻撃可能だということだ。


「蒼の抗体。抗う力は世界樹の核が生み出す。
 セルちゃんの本当の能力は、この世界樹の核……セルちゃんの遺伝子を直接体内で受け取ることで、勇者に蒼に抗う力を宿すこと。
 舐めただけじゃ、足りない。もっと深く世界樹の力を受け入れ、人の力と交わった時……」


引き絞られる光の弓矢。
淡い翠緑の光は自然の柔らかさを感じさせる。
しかしそこに宿る力は、明らかに従来の巫女のそれを上回っていた。


「――蒼を貫く力になるっ!」


解き放たれる光を前に、シャドウは緊急回避。
転がりかわす無様なものだが、直弾するわけにはいかない。
光が通りすぎた後は、一瞬とはいえ周囲の蒼が霧散していたのだから。


「くっ……! 勇者に対しての蒼を破る矛に守りを固める盾……本当のグンマ―の矛と盾だとでも言うのか!?」


シャドウは歯噛みする。
最初期のグンマ―とミヤザキは、確かに手を取り合っていた。
自然死を考える前に、制御を考える前。やがて対立した両陣営が協力していた時は、何を考えていたのか。
おそらく、行動的で何事にも挑んでいく気質のミヤザキの者はこう言ったのだろう。

『テラカオスをずっと強化できる、そしていつかテラカオスにすら頼らずに済むような、蒼を破れるような力を作ろう!
 蒼だって結局はエネルギーの一つ。少量なら問題ないんだし、打ち破ることもできる筈だ!』

無謀だ。自然の摂理に人が敵うわけもない。しかしその後のミヤザキの者も制御を考える以上、結局は大多数が無謀な挑戦者という意味では同じだ。
そしてそれを受けて、自然や災害の力に詳しいグンマ―の民は同調した。
世界を浄化しつつ、役目から滅びるわけにはいかないと進化を続ける世界樹の核に目をつけ、世界樹に蒼を記憶させその抗体を構築させ始めた。
どれだけの年月がかかるかわからないが、大災害も当分先。猶予はあるのだと、これからも研究を続ければいいと考えていたのだろう。
結局は、その者達の数が少なすぎたのだろう。少数は異端とされ、やがて埋もれて消える。
人間のエゴには勝てなかった、日の目を見ることのなかった、確かに存在していた両陣営の協力の証。
それが今、蒼の化身であるシャドウを追い詰めていた。

634樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:25:11 ID:3k2I6frk0
「――だがっ! それは研究段階で秘匿された、未完成のもの! それだけで自然の摂理を破れるなどと思いあがるなっ!」
「うっ!?」


しかしシャドウもただ黙っているわけではない。
蒼に抗い貫く力。それは信じがたい脅威ではあるが、完成したわけではない。
単純な威力だけでみれば、先程の拳の方が遥かに上。とても大災害をテラカオスに頼らず貫くには力不足。

「それにいくらお前の力が増そうと、お前は巫女でありテラカオスではない。テラカオス程の脅威はない!」
「あ、当たらない……!?」

そしてその力を現在行使しているのは、争いの淀みから生まれた化身ではなく巫女。
それもほやほや、新米巫女。レベルが上がり莫大な魔力を宿そうと、戦闘技術はあまりに未熟。
蒼を貫く力を光に変え放つにしても、それは直線的な攻撃ばかり。命中精度に問題があった。

「そんなプロトタイプ、まさしく古代の遺物などに大災害は勿論私を破ることもできはしない!」
「!!」
「貫けぬ程の、濃密な蒼を受けて消え去るがいいっ!」

そして光の矢をかわしたシャドウは、その手に蒼の力を集中させて放出する。
撒き散らされる蒼程度は耐えられても、これだけの濃度の蒼を直弾すれば魂諸共に砕け散るしか道は無い。
惜しい力の持ち主だが、この姿の原型……基準としたディーヴァの気質がシャドウにも影響を出しているのだろう。
油断はせず、危険な相手は全力で叩き潰さねばならないと。


「っ、させません!」
「な、貴様ぁ!?」


しかしシャドウが放った蒼の塊は空振りする。
まどかを担いでいた榛名が、急旋回しかわしてみせたのだ。
目標を失った蒼は海へと命中し、海水を歪めてこの世から抹消するに留まった。

「馬鹿な、艦むすがその力を発揮できるのは水上だけの筈……はっ!?」

遅れてシャドウは気がついた。
先程の戦闘、レストは水幻竜の能力で沖縄全体に対して濁流を放っている。
未だ残るその水が、榛名の高速移動を可能としていた。
陸地に残る水を全て吹き飛ばそうにも、そうすれば今度は海が残るだけだ。結果は変わらない。

「おのれ、小賢しいっ!」
「海はどこまでも広く、大きい。いかに蒼といえど、化身のあなたの力では海を全て消し去ることはできません!
 そして榛名達、金剛型高速戦艦は実戦を重視して造られた巫女! 海上であれば、そう易々と捉えさせはしませんよ!」

続け様に蒼を放つシャドウだが、発射速度に対して榛名の反応速度は明らかに上。
そして榛名自身は攻撃を行わない、敵の動きを読み切り回避に専念しているために余計に手強い。
元々戦艦の砲撃程度では傷も負わないだろうが、今の榛名の装備品は担いだまどか。
そしてそのまどかは蒼を貫く矢を放つ。
海上を高速で動き回り、細かく削ろうとしてくる巫女の連携の前に、シャドウは防御に回るしか手が無かった。

635樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:25:44 ID:3k2I6frk0
「私には再生能力もある! かわしつつ合間で射る命中精度の悪い矢の傷など、すぐに癒える!」

身体を翻し、矢をかわしてみせるシャドウ。
お互いが強力な一撃を持つが、当たらなければ意味が無い。
しかしシャドウの蒼は無限に湧き出るものであり、数時間も経てば大気中の蒼でも抗体は摩耗し無くなるだろう。
少し面倒だが、持久戦に持ち込むべきか。


「なら、威力があればいいのかなっ!?」
「ぬおっ!?」


そう思ったシャドウの背後から、かわした筈の矢が威力を跳ね上げて投げつけられた。
完全にはかわし切れず左腕を掠めるが、そこは大きく抉れることとなった。

「おのれ、貴様まで……っ!」
「まどかが時間を稼いでくれたおかげで、僕も動けるようになったよ」

そこには、片腕を落としても尚戦う気のレストが立っていた。
彼は彼で榛名やサウザー程では無いが、常人離れした移動速度を持つ。
榛名達の動きから外れた矢の数本をすぐに回収し、それをシャドウ目がけて投げることで挟撃の態勢に持ち込んだのだ。

「確かにまどかは戦闘技術に関してはまだまだ未熟だ。だけどそれは君にも言えることじゃないかな?」
「どういう意味だ……!」
「蒼という絶対的な存在に守られて、攻撃もできる。だからそれに頼り切り、動きにも時々無駄が見える。
 僕がここに来た時から傷を負っていたし、蒼をなんらかの手段で対処できれば君はそこまでの強さじゃない」
「貴様ぁ!」

先にこの男を消すべきか。こちらも惜しい能力ではあるがあまりに危険。
しかしそう考えれば、巫女達の攻撃が背後から飛んできて回避を余儀なくされてしまう。

「鬱陶しい、何故抗う巫女共……!?」
「おっと、背中を見せてくれてありがとう。僕にはまだ右腕と両脚があるからね。
 あと三回くらいは、君のどこかを吹き飛ばすことができるんじゃないかなぁ!」
「おのれぇ……!」

かといって巫女の方ばかりを警戒すれば、こちらの男は再び拳に力を込めてくる。
まさか、ありえないとは思うが先程と同じ攻撃を今度は腕以外に受けたら?
その威力は身を持って知っている。


「まどか! 榛名! こいつは軽い攻撃じゃ倒せない! 君達はそこでゆっくりとしていてくれ!
 今度こそ、僕がこいつを止めて見せるから!」
「貴様など、力を溜めさせなければ取るに足らん相手! 巫女にも劣る者が大層な口を!」


そして本気なのか、レストは移動しつつ、残された部位のいずれかに力を込めるような動きを見せ始める。
巫女達も彼を信頼しているのか、射撃の雨が止んだ。
これは好機と、シャドウは今度こそ自惚れた盾を完膚なきまでに砕かんと襲い掛かる。
やはりどう取り繕っても片腕を失い、攻撃能力は激減している。
力を溜めきる前に回避行動を取らざるを得ず、シャドウに一切の有効打は与えられない。

636樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:27:00 ID:3k2I6frk0
「やはり口だけのようだな!」
「……聡い彼女なら、きっとわかってくれる筈さ」

紙一重でシャドウの攻撃をかわしていくレスト。
殴りつけた腕は砕けたが、シャドウからの直接攻撃を受けても砕け散る。
力を溜め切る前の拳や武器ではシャドウの纏うだけの蒼も貫通できないため、ひたすらに回避するしかないのだ。

「ふん、そちらの浅知恵など通じぬよ。お前に他の手があるのかと思ったが、その様子も無い。
 ならば無駄と分かっていながら私に挑む理由は一つ……時間稼ぎであろう?」
「!!」

突如、シャドウが反転し蒼の右腕を構える。
レストに別の打つ手は無く、唯一の手段も溜めが必要。
それならば問題ないと、背中を向けたのだ。
屈辱の行動だが、シャドウの読み通りレストにはもう打つ手は残されていない。さっきのような真似も一発限りだ。


「ならば、巫女に攻撃させるしかない。――命中精度など関係ない、溜めた広範囲攻撃をな!」


振り向いたシャドウの視線の先には、魔力を溜めて身構えているまどかと榛名の姿があった。
気付くのが遅れ、レストを葬ることを優先していれば自分にあの攻撃が飛んできていたことだろう。
しかし敵の策をシャドウも読み切り、攻撃の最中で同じく蒼の力を凝縮し解き放てるようにしてあった。
同じ力を溜めた攻撃。しかし戦闘技術の差から、まどかはまだ高速移動しながら力を溜めることはできない。
また急に動けば、溜めた魔力が暴発する可能性もあるため、榛名の機動力も若干低下する。


「今度は回避などさせん! グンマ―とミヤザキがわかりあえるなどと抜かすならば、望み通り二人仲良く消えるがいい!」


シャドウの右腕から、特大の蒼が放たれんとする。
対するまどかはまだ溜めの段階。構えを解くにしても僅かな時間を要する。
その時間で、蒼は巫女二人を容赦なく呑み込めてしまうだろう。








「――今だっ!!!」





その時、レストの絶叫が響く。
巫女への攻撃指示。しかし彼なら間に合う攻撃も未熟な巫女では間に合わない。
読み違えたことが、彼の稚拙な策の敗因。
背後からあの大きな力も感じられない。やはり彼の方はは既に万策尽きていた。
ニヤリと笑い、シャドウは巫女に蒼の洗礼を浴びせさせる。








「っ――――――!?」

637樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:28:15 ID:3k2I6frk0
その瞬間であった。
溜めていた蒼が霧散した……いや、それ以上の大事が起きた。

叫び声をあげることもできない程の、予期せぬ激痛。

また殴られた? いや違う。さらに強烈な痛みにして不可視の攻撃。

巫女の攻撃? これも違う。のんきにまだ溜めている。

では一体、誰が……?

……外傷ではない。内側から受けた痛み?


「まさ、か……」


ようやく絞り出した声と共に、シャドウは膝をつく。

シャドウの敵は、目の前の三人だけではなかった。

攻撃の正体、それは……








--



「レスト様……私などの為に腕を犠牲にされたあなたの想い、無駄にはいたしません!」



慌ただしい戦場のど真ん中で、角を生やした金髪の少女が涙を零しながらも舞っていた。
彼女はかつて、シャドウにその魂を取り込まれていた存在。
その能力は四源の力。『味方全体の攻撃力を5倍にする』というもの。
有用故に破壊されることなく取り込まれ、その力はシャドウに振るわれていた。

しかしあの時、レストはシャドウにその力をあえて使わせることで、その力の発生源を見極めていた。
そして人間以外なら、その魂をあるべき場所に帰せる自身の魔法タミタヤの力を込めてシャドウを殴り抜いていたのだ。
元からシャドウを倒す気など皆無。全ては、その魂を取り戻すと誓いを立てていた少女の為。

そしてそれは、単なる自己満足だけではない。

シャドウから解放された魂が帰る場所は死者スレ。シャドウの影から吹き飛ぶように吐き出された彼女は、主人のこの行動の本当の意味を察した。
彼が何を想い、無謀極まりない行動をしたのか。それは属性さえ揃えば彼女は『誰であっても攻撃力を5倍にできる』からだ。

638樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:30:01 ID:3k2I6frk0
それが何を意味するかといえば、この光景が全て。



「ええい、時間がないのだ! 罪人共はそこに横一列に並んで尻を向けろ!」


贖罪の女騎士は、声を張り上げながら罪人達を綺麗に並べていく。


「これが決まれば、もうこれ以上罪人を捕える必要もない。ここで我々全ての力を解き放つのだ!」
「総員、構えよ!」


覆面の戦士は冷静で的確な判断で戦況を把握する。
類稀な統率力を持つ悪魔の将は死者の戦士達を従えて指示を出す。


彼らは全て死者。戦いで敗れ散った者達。
死者には安らかな眠りを……そうはいかないのが、大災害を前にした聖別の定め。
生前も、そして死後も彼らは戦い続けた。
この世界に、休める場所などはない。
迫りくる蒼の脅威のため、魂だけとなっても尚も戦わなければならない。


「……君の力、闇の力以外が必要らしいけど、別に闇の力を強化することもできるんだろう?」
「あ、あなたは……?」
「ふん、我以外がもたらす破滅など認めない。この世界を破滅させるかどうかは、我が決める。
 ほら、お前達も悔しくは無いのか? 英霊に頼り切り、世界を滅ぼせる力を持つ我らがただ指を咥えて眺めるだけでいいのか?」


軍師の姿をした邪竜の言葉に、大罪人にまでは選ばれずとも邪悪とされた存在達も奮い立つ。
このまま何もせず蒼の好きにさせるのは、悪の名折れ。
邪竜の敷く布陣に従い、彼らも力を溜めつつ眼前の敵を睨んだ。

死者達は、様々な理由で命を落としてきた。
不運な者。止むをえなかった者。どう考えても自業自得な者。
聖も邪もいる。そしてそんな死者達は、今この時確かに一人の男の後ろに勢揃いしていた。
彼らの想いは、垣根を越えて一致した。

――死者を、舐めるな――

「さぁ、カルナ! 思いっきりこの罪人の尻に槍を!」

「……わかった」


罪人の尻が穿たれる。吸収されるエネルギー還元された魂。
続け様に何人もの尻に槍がささり、魔力は限界を超えて満ちていく。
そしてその場に、多くの死者が思い思いに解き放った力を吸い寄せ生み出された四源の力も。




「――梵天よ、我を呪え(ブラフマーストラ・クンダーラ)」



やがて、使用者自身も経験したことが無い程の超熱の劫火が放たれる。
続けと言う悪魔の将の号令に、集まった死者達の蒼への叛逆がやがて影の全てを呑みこんだ。

639樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:30:35 ID:3k2I6frk0
--


「か……!」


「小町さんは言っていた。この戦いは死者もひっくるめた総力戦だってね。
 だから、君の力を削ぐと同時に死者の力になれる彼女を早く救うべきだと思ったのさ。僕個人の肩入れもあったけどね」


死者からの威力を跳ね上げた一斉攻撃の前に、影を伸ばしていたシャドウの力はついに押し戻され、そのダメージは本体にまで及んだ。
再生は十分可能と言いたいが、いわば体内を思いっきり掻き乱されたのだ。動くことはできない。


「愚か、な……たとえお前達が、私を消そうと……私は、お前達がいる限り……っ!?」


そして立ち上がろうとしたシャドウは、そのまま崩れ落ちて力が入らなくなる。
完全に予期していない、威力の限界を超えたカルナ達からの一斉砲撃。
それだけでなく、巫女が集める光の質が変わったのも大きな原因だった。


「りゅ、竜殺剣……っ」


矢の代わりに、蒼を貫く力を纏った竜殺剣・天羽々斬が弓につがえられている。
リリカルを殺す役に立った真竜の力が、ここにきて大きな枷となった。
真竜の力を切り離そうにも、取り込みすぎた上に死者からの攻撃のせいでそれもできない。




「私達は、滅びの未来をみんなと一緒に変えてみせる。
 あなたが、生まれる必要のない世界をきっと……だから、今はどうか眠って……!」





「……憶えておくがいい……私は所詮、摂理の意思の一つに過ぎない。まだ、お前達の勝ちでは――」








撃ちだされた『青』く輝く剣は滅びることがない筈の『蒼』を貫き、消滅させた。





【黒き獣シャドウ@テラカオスバトルロワイアル十周目】 消滅確認

※囚われていた死者の魂の行方がどうなるかはわかりません



--

640樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:31:32 ID:3k2I6frk0
「やった……の……?」


極限まで魔力を高めた一射を放ったまどかは、不安げにその言葉を口にする。


「はい、大丈夫です。まどかさん達の……みんなの勝利です!」


それを聞いた榛名は、頷くと同時に彼女に勝利を告げる。


大地は崩壊していくが、異常気象は収まった沖縄。
そして砕け散っていくフロワロの花が、何よりの証拠であった。


「や、やった! やったんだね!」
「あぁ……まさか、力を削ぐどころかあれを倒してしまうなんて、本当に驚きだよ……」


シャドウが完全に脱力したのを見計らってから飛び退いたレストは、爆風に焙られこそすれ、無事であった。
右腕で、蒼に打ち勝ったという確かな証拠の傷一つない天羽々斬を拾い上げて、まどか達の功績を讃える。


「レストさん、その腕は……」
「魂全部砕かれるのに比べたら軽傷だよ。まどか達のおかげで、まだみんなの手伝いはできそうだ。本当にありがとう」
「信じられません、いくら当時のグンマ―の盾以上に頑丈だからと、黒き獣の本拠地に単身で乗り込むなど……」
「いや、僕も少しは考えたんだよ? ただ、全てを呑みこみ消滅させる蒼とはいえ……
 蒼は絶対的で、シャドウの破滅を望む禍々しさは時間と共に増していたけど、荒れ果てた大地とフロワロは健在で全てを壊してはいない。
 それはあいつが意図的に弱めているか元からなのかはわからないけど、とにかく沖縄の蒼の嵐は抗体があれば耐えきれるんじゃないかって踏んだんだ。
 戦闘空間でしばらく耐えられるなら、あとは賭けさ。サクヤを救いだして、彼女がすぐに死者の力を底上げして反撃してくれればってね」

詰め寄られたレストは、正直に自分の計画を口にする。
死者が抵抗力を上げることで予言完成までの時間稼ぎができればと思っていたが、まさか二人の巫女が救援に駆けつけるとは夢にも思っていなかった。
予定外、しかし予想以上の成果を得ることができた。……ある意味での、彼女達の犠牲の上に。


「そうだったんだ……よし! 無事、じゃないけど、レストさんを連れ戻すダオスさんとの目的も達成できたし急いで戻ろう?」
「……まどかさん、流石にこのまま担いで帰ると榛名でも時間がかかりますよ?」
「というよりまどか、君が榛名に担がれているのってもしかして、まだ甘い機動力を榛名に助けてもらうだけじゃなくて……」
「う、うん。セルちゃんが凄すぎて、まだ足腰に力が入らないの。お尻も前も気持ち「それじゃあ帰りは僕の魔法を使おうか!」あ、そうだね!」


聞きたくない言葉を言わせないようにしながら、レストはまどかと榛名に触れてエスケープを使って世界樹に帰還する。
正直戻るのはダオスに何を言われるかわからなかったし、殺されるかもしれないという恐怖もあったのだが。

巫女の力により、黒き獣は討たれた。
しかし獣の言う通りそれは大災害の脅威の一片に過ぎないし、他の問題はまだ残っている。
予言を完成させ、大災害を防いで初めて勝利したと言えるのだ。

三人はこの後世界樹に戻り、仲間達と残りの問題について再び話し合うことになる。
戦いは、まだ終わらない。


--

641樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:32:11 ID:3k2I6frk0
「……」


転移魔法で三人が帰還したところまでを、多くの兵士達がモニター越しに凝視していた。
誰もいなくなった沖縄。
これまでの蒼の嵐に加えて戦闘の余波で、とても普通の人間が住める場所ではなくなってしまったものの……

そこは、ようやく静寂を取り戻していた。


「――黒き獣の、消滅を確認。同時に異常気象とフロワロも消滅……」



「――黒き獣が、シャドウが討伐されました!!!」



一人の兵士の震える声を皮切りに、全ての兵士が歓声をあげた。
もはや見守ることしかできなかった彼らではあるが、黒き獣の討伐は悲願の一つであったのだから無理もない。
誰もが口々に喜びの言葉を口にし、巫女の奮戦にそしてシャドウの動きを大きく鈍らせたリリカルの功績を讃える。
これまでの多くの犠牲は、決して無駄では無かった。
一部では戦意を喪失した兵士もいたが、今回の一連の映像はそんな彼らも勇気づけるものとなった。



しかし、同時に彼らは冷や汗も流すこととなる。



「さっきの様子を見てれば明らかだ。都庁の面々は予言を解き、かつフォレスト・セルの能力も完璧に把握していた!」
「それに、ミヤザキの巫女まで一緒ってどういうことだ!?」
「わからんが、これだけは言える! 彼らも、世界の滅びを回避しようという一点においては我々と同じ気持ちだ!」


狼狽える兵士達。本来であればありがたい情報も、少しばかり遅かった。


「おい、急げ! はやく九州ロボに! ココさんとメフィラスさんにも連絡を取るんだ!」
「くそ、目が離せなくて連絡が……!?」
「間に合ってくれ……!」


ASO3の兵士達はひたすらに慌てふためく。
まさか自分達のような存在が、こんな大事件の目撃者になろうとは。
連絡も、放送も、何もかもが遅れても誰も咎めることはできないだろう。
彼らは祈る。勘違いして飛び出してしまった上司にあたる二人が無事であることを……



【三日目・0時15分】

642目指せ完結:2020/05/06(水) 22:33:10 ID:3k2I6frk0
仮投下終了。問題点などがあれば適宜修正します

643 ◆jSXGNRSMwM:2020/05/07(木) 23:18:40 ID:7kEX4nLE0
【三日目・0時15分】

【東京都・新宿都庁世界樹入口】
【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
【状態】健康、魔力消費(中・回復中)真・世界樹の巫女、首輪解除、蒼への叛逆(中)、テラカオス化耐性(完全)、性知識入手
【装備】世界樹の衣、竜殺剣『天羽々斬』、榛名(蒼小耐性+テラカオス化完全耐性)
【道具】支給品一式 その他不明、サクヤのスマホ、セルのモンスターボール
【思考】基本:自分も戦い、みんなで生き残る
0:他の問題も、ダオスさん達と話し合わないと!
1:クラウザーさんのためにも、DMC狂信者の暴走を止める
2:ほむらちゃん、前もお尻も甲乙つけがたいんだね!
※巫女の祈りにより、魔法少女に近い存在へとなりました
※ソウルジェムなどはないので、肉体が致命傷を負えば普通に死亡します
※衣装はアルティメットまどかのものを2Pカラーにした感じです。戦闘力もそれの劣化版
※世界樹の王@世界樹の迷宮に加えてフォレスト・セルと同じスキルが使用可能です
※ダオス直伝のハイパーまどかビームを習得しました
※竜殺剣は所持しているだけでも竜やそれに近い種族に特効性能を持ち、結界や再生などの特殊能力も無効化することができます
 テラカオス・ディーヴァや真竜などには特に高い効果を発揮します
 また巨大な外見に反してとても軽いため、小柄な少女でも振り回したり投擲することができます
※器のセルの能力を手に入れ、蒼への叛逆能力を手に入れ能力値が上昇しました
 蒼に対する通常よりも高い耐性及び蒼に有効な貫通攻撃が可能ですが、本来はテラカオス用のため完璧な力ではありません

【レスト@ルーンファクトリー4】
【状態】ダメージ(大)、魔力消費(大)各種超耐性、ソウルアーマー・サクヤ、首輪解除
    ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)蒼による左腕喪失
【装備】最大錬成世界樹ノ剣、最大錬成防具、草原のペンダント
【道具】支給品一式、封じられた闇核、三竜の逆鱗、ファガンの卵 、小鳥印の青汁×沢山、減った材料
【思考】
基本:サクヤのためにも、人間としてこの殺し合いを終わらせる
0:正直帰るのは怖い……
1:同盟軍の味方と共に大災害回避のために動く
2:あわよくば竜と結婚できる世界を作りたい
3:DMC狂信者、拳王連合軍は絶対に許さない
4:ありがとう、サクヤ……
※ブリーフ博士の技を覚え、首輪解除が可能となりました
※現時点で、フォレスト・セルとの長時間のリンクは不可能です
※ゲートリジェクト(異空間移動)使用不可
※ネット上に『変態オーバーロード』の一人として動画を晒されました
※所持していた道具の内、切り札クラスの素材を全て使用しました
※左腕は蒼による消滅のため、どのような手段でも再生は不可能です

【静岡県・富士樹海・死者スレ内部】
【カルナ@Fate/Apocrypha】
【状態】宝具ぶっぱしていないけど、存在するだけで魔力消費
【装備】自身の槍、黄金の鎧、多くの死者達
【道具】不明
【思考】
基本:使命に従い、死者スレを守る
1:シャドウは消えたが、死者スレの警戒は怠らない
2:……いつから、尻に槍を刺すことになったんだろう?
※死者スレからは相変わらず動けません
※シャドウの脅威が去った死者スレがこの後どうなるかはわかりません

【日本海のどこか・ASO-3内部】
【主催モブ兵士(ストームトルーパー)@テラカオスロワ10期】
【思考】
基本:ココとメフィラスに代わり、放送や脅威の監視を行う
0:九州ロボ及びココ達に事の顛末を報告する

644決戦へのプロローグ:2020/06/01(月) 08:30:24 ID:L8Ca.emg0
ここは異界の横浜スタジアム。
両軍2-2で第五回裏。異界横浜スタジアム消滅まであと30分――


拳王軍はMEIKOが抜けたピッチャー枠を補うため、チェンジ前に誰が代わりの投手になるか協議をしていた。

「本来ならレーザービームを投げられる僕がMEIKOさんの代役が務まるんだけど、MEIKOさんと違って戦闘は苦手なんだですよね……」

メジャーリーガーであるムネリンは一見するとピッチャーには最も適役に思えるが、カオスロワ式野球においては野球の上手さだけが勝利に繋がるとは限らない。
カオスロワ式野球では打者から投手への妨害・攻撃もルール的にはOKなので、MEIKOはそれで打撃を受けて退場する羽目になった。
MEIKO自体もアルティメットアーマーに守られていたがために致命傷を回避したようなものなのに、サウザーの雷霆が飛んでこようものならムネリンではひとたまりもない。
打者も投手も捕手もできるムネリンがいなくなれば拳王軍の野球における戦力はもちろん激減する。

「だったら、私がいくわ」
「え? 瑞鶴さん?」

ムネリンの代わりに立候補したのは瑞鶴だった。

「瑞鶴、あなた投手なんてできるの?」
「提督さんから仕込まれていてね、MEIKOさんほどじゃないけど自信はあるわ」

サーフは、野球選手不足という事態も考慮して、いざという時のために瑞鶴に野球を教えていた。
一通りのポジションはこなすこともできる。

『だが、聖帝軍も疲弊しているとはいえ一筋縄ではいかないよ』
「ええ、でも私には秘策がある」
『秘策?』
「お願い、私と“最凶の野球ボール”を信じてみて」

瑞鶴もまた適当に言ったわけではなく、何か勝利への策があって物を言っているのが目から見て取れる。
その眼差しを見て、ラオウは言った。「うぬに任せるぞ」と。


そしてバッターボックスに立ったのはスタービルドストライクことガンダム。
ビームサーベルを構えている。
マウンドに立ったのは瑞鶴、しかしその手にはちょっと変わったボールが握られ……

「なんだありゃ?! ってセンターにいたサボテンの怪物じゃねえか!?」
『インドラ』

訂正。
かなり変わった巨大な球を瑞鶴は持ち上げていた。
ぶっちゃけ球の正体は夜叉鬼・メーガナーダである。
明らかに投手より大きい球、しかも意思持ち支給品とはいえさっきまで選手として出てきた者がボールの代わりとして出てきたことにレイジは面食らう。

余談だが瑞鶴が涼しい顔で巨大なこの悪魔を片手で持ちあげているのはメーガナーダが軽いのではない。
瑞鶴の膂力がそれだけ凄まじいのである。

「いったい何のつもりなのだ拳王軍?
布陣的にもレフトはおろかセンターまでいなくなって外側ががら空きじゃないか……」
「捕手が2人分いらないくらい自信があるんだと思う。
レイジ! 見た目のシュールさに騙されないで!」
「おう、全力で挑むぜ」


「あなたたちに打てる? 私と提督さん、最高のペットを!
いきなさい! メーガナーダ!!」
『インドラ!!』

瑞鶴は巨大なメーガナーダをボールとして投げた。
だが、その球速はMEIKOに比べれば明らかに遅い。
しかも大きいため、ビームサーベル(バット)を振れば確実に命中する。

(遅え! だがヒットしても殺された亜久里のケースもあるし、警戒はしとくべきか?
とにかく最初は様子見も兼ねて振るだけ振って見よう)

メーガナーダは人間から見ると大きいが、平均18mはあるMSから見るとさほどでもない。
むしろ打つにはちょうどいいくらいの大きさだ。
レイジは警戒はしつつも、ビームサーベルを振った。


――雷変のモクシャ――
――マハザンダイン――


「なに!?」

レイジがビームサーベルを振った瞬間、飛んできたメーガナーダの殻が開いた。
複数のエイリアンでも入っているかのようなおぞましい姿を晒すと同時に、風の魔界魔法を使用。
当たりかけたビームサーベルは風の刃の衝突で弾かれ、それだけでなくガンダム自身にも襲い掛かる。
レイジは咄嗟にアブソーブシールドで防御するが、物理的な要素が強い風は吸収できないためか、盾は切り刻まれて破壊された。
その間にメーガナーダというボールはラオウが両手でキャッチをした。

645決戦へのプロローグ:2020/06/01(月) 08:30:58 ID:L8Ca.emg0

「レイジ!?」
「慌てんなイオリ、俺もガンダムもまだ大丈夫だ。
……クソッ、攻撃能力を持ったボールか!」

レイジがガンプラバトルで、そしてこのカオスロワで実戦経験を積んでいなかったら、今の一投だけでガンダムは撃墜されていただろう。
ラオウから悪魔を返された瑞鶴はすかさず、2投目を投げる。
レイジは今度は悪魔が届く前に、機銃による先制攻撃を仕掛けることにした。

「バルカンを喰らえ!」

――雷変のモクシャ――

「ぜ、全然効いてねえ!」

――狩る――

「ぐゥ!!」

しかしメーガナーダは今度は殻を閉じ、命中した弾丸は全てBLOCKという文字と共に金属屑と化した。
殻を閉じた状態のメーガナーダは物理攻撃を一切無効化するのだ。
おまけに体格が非常に大きいため、ピッチャーである瑞鶴の防壁として後ろの彼女を守ってもいる。
レイジは再びビームサーベルを振ろうとするが、攻勢はメーガナーダ側にあり、拳をガンダムが握っていたビームサーベルに向けて放たれ破壊された。

「このサボテンエイリアン、良いパンチをしやがるぜ……見た目よりずっと機敏だ」

再び、ストライク。
そしてあまり間を置かずに三投目が投げられる。
レイジはここで壊れたビームサーベルの柄を投棄した。

「こいつでやるしかねえ! ビルドナックル!!」

ガンダムの右腕が光り輝く。
直撃であればハクメンをも気絶に追い込むスタービルド最大の技、ビルドナックルで立ち向かうつもりなのだ。




「ブオオオオオオオ!!」



だが、ここでメーガナーダは咆哮共に空中で高速回転する。
発動した技の名前はパワーチャージ、そしてマッスルボンバー。
前者は次の攻撃の威力を二倍にし、後者は自身の質量を使って暴れまくる物理技だ。
それがガンダムの右拳ごとビルドナックルを砕いてからラオウの両腕に収まった。
ガンダムおよびレイジのアウトである。

「クッソおおおおおおおおお!!!」
(無駄よ、あなたたちも今までの戦闘や、ドラゴンハートで強化されているのは知っている。
でも、私とメーガナーダは提督に極限まで強化されているし、特にメーガナーダはスーパーサイヤ人になれるベジータの肉も喰らってきた。
内包するパワーはそこらのガンダム以上よ)

右腕が破損したガンダムに代わり、次にチルノがバッターボックスに立つ。

しかし……

「こいつ……氷属性攻撃が効かない!」

お得意の氷を使った技でメーガナーダを氷漬けにしようと試みるが、メーガナーダは凍らない。
それもそのはず、メーガナーダは殻を開けた状態では火炎・氷結・衝撃・地変攻撃が無効になるのだ。
ちなみに閉じた状態では物理攻撃が無効である。
そして三投目にてメーガナーダから容赦ない攻撃が放たれた。

――次の魔法攻撃を強化するマインドチャージ
――からの高等火炎魔法マハラギダイン

「うわああああああああ!!」
「チルノ……!!」

氷の妖精にとって弱点とも言える火炎魔法が容赦なくチルノに直撃する。
当然、氷柱で作られた弾幕やスペカ攻撃も諸共溶かされてしまい、聖帝軍はチルノの死を覚悟した。

646決戦へのプロローグ:2020/06/01(月) 08:31:32 ID:L8Ca.emg0

「……あたいはまだ生きてるよ」
「チルノ!」
「だが、その体は……」

チルノは妖精の力を使って、メーガナーダの莫大な威力をもつ火炎魔法を防いでいた。
だが、その代償として大人の体を持っていたチルノの体は熱で溶け、または魔力を使いすぎたがために、子供の姿に戻っていた。
そのような代償を払いながらもチルノは生還はしたが、聖帝軍はこれでツーアウトである。

「アイツとたたかったときに、何かをつかみかけてたのに、あたいってば、さいきょーしっかくだ!」
「気負うな、チルノ、俺がヒットやホームランを取ってやる」

余談だが、大人化が解除された影響なのか、チルノの知力が元の⑨に戻っていた。
最後にバッターボックスに立ったのは鎧武。
刀をバットの代わりにして挑む。

――BLOCK  ――BLOCK

「クッ!」

しかし……チートライダーの一人である鎧武・極アームズのあらゆる召喚武器をもってしても、メーガナーダの硬い殻を突破することは叶わず。さらに。


――黒きバクティ
――ヴィラージュの剣

「うおおおおおおおおお!!!」

メーガナーダの必殺技の一つである、某草加似の男をも葬ったワラスボ状の食らいつき攻撃が放たれる。
鎧武は嵐のような攻撃の前に刀を全力で振って対抗。
甲冑の何ヵ所かをかじられてボロボロにはなったもの、攻撃を凌いだ。
ただメーガナーダを打つことは叶わず、スリーアウトとなってしまう。

「轟沈させる気で投げたんだけど、流石にやるわね……」
「ぐふッ……伊達に死線を生き延びちゃいないぜ」

瑞鶴はあわよくば三人を抹殺するつもりでメーガナーダを投げたのだが、三者ともメーガナーダを打てないなりに生き延びた。
ここまで生き延びたのは決して運だけではないという証左であろう。
少なくとも舐めプしたり、ゴリ押しして勝てる敵では確かであると、瑞鶴は警戒を強めた。

「ものの五分でチェンジ……まさか、誰も打つことができなかったとは」
「サウザー……」
「闇よ、俺は仲間たちを責めてるわけじゃない。ただ、あの瑞鶴とメーガナーダという奴らは侮れんということだ」
「幸いなのは僕らは後半裏の攻撃権があと一回だけ残されていること、三人の奮闘のおかげでメーガナーダに関するいくつかのデータを手に入れたこと、六回表が終わるまでになんとか対抗策を考えてみるよ」
「任せたぞ、犬牟田」

瑞鶴・メーガナーダへの対抗策はベンチの犬牟田に任せ、聖帝軍は守備に入る。
拳王・聖帝・両軍にとっても最終回になるであろう第六回が始まる。





               拳 2-2 聖

『拳王連合軍 布陣』

川崎宗則         1番ショート
クロえもん        2番サード
ラオウ          3番キャッチャー
瑞鶴           4番ピッチャー
        5番レフト
メーガナーダ       6番野球ボール
翔鶴(+ロックマン)   7番ファースト
             8番セカンド
             9番ライト


『聖帝軍 布陣』

             1番ショート
葛葉紘太         2番ファースト
金色の闇         3番ピッチャー
サウザー         4番キャッチャー
             5番ライト
             6番セカンド
             7番レフト
レイジ(+ガンダム)   8番センター
チルノ          9番サード

647決戦へのプロローグ:2020/06/01(月) 08:32:33 ID:L8Ca.emg0


【二日目・23時35分/神奈川県・異界横浜スタジアム】

【聖帝軍】

【サウザー@北斗の拳】
【ターバンのボイン(金色の闇)@ToLOVEるダークネス】
【ターバンのガキ(アリーア・フォン・レイジ・アスナ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのないガキ(葛葉紘太)@仮面ライダー鎧武】
【ターバンのレディ(チルノ)@東方project】
※メーガナーダの火炎攻撃により、元の姿に退化しました

【ターバンのガキ(犬牟田宝火)@キルラキル】
【ターバンのガキ(イオリ・セイ)@ガンダムビルドファイターズ】
※負傷により退場



【拳王連合軍】

【ロックマン(光彩斗)@ロックマンエグゼ】
【翔鶴(光翔鶴)@艦これ】
【ラオウ@北斗の拳】
【川崎宗則@現実?】
【クロえもん@ドラベース ドラえもん超野球外伝】
【瑞鶴@艦隊これくしょん】
※メーガナーダを野球ボールとして使っています


【ハクメン@BLAZBLUE】
※負傷により退場
 また鎧に罅が入り、瑞鶴が持つ違法改造スマホで起動するリモコン式の爆弾を罅から入れこまれました

【MEIKO@VOCALOID】
【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
【ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険】
【デューオ@ロックマンエグゼ4】
※負傷・気絶等により退場

648目指せ完結:2020/06/01(月) 08:35:43 ID:L8Ca.emg0
短いですが以上です
本当は決着まで書きたかったのですが、リアルで体調を崩し気味なのでやむを得ずできあがってた五回裏までを投下

投下や予約がなかった場合は出来上がり次第、決着となるSSを投下しようと思います

649 ◆FEwgCJ5Pw.:2020/06/22(月) 22:28:29 ID:Y1vKgW0.0
投下します

650死兆星の瞬きはどちらに ◆FEwgCJ5Pw.:2020/06/22(月) 22:30:23 ID:Y1vKgW0.0
聖帝軍と拳王連合軍の試合も最後の回を迎えました。
2-2、両陣営負傷者・死傷者多数。
泣いても笑ってもこれが最後です。

〜 〜 〜



(倒れたMEIちゃんや、平等院のためにも……)

万感の想いを胸に最初にバッターボックスに立ったのはラオウ。
高津を仕留め、プニキ以外でホームランをたたき出した存在。
この横浜スタジアムにおいて気絶したハクメンを除くと、間違いなく最強の強打者である。

ラオウは見極めのために二球まではあえて見逃し、相手の投球の癖を覚えた。
高津のそれと比べると流石にお粗末な闇の技術――次で確実に打ち取ることができるとラオウは核心。
そして次の三球目を打とうとし。

「今だ! 雷霆!!」
「ぬう!?」

突如、キャッチャーのサウザーがMEIKOにも放った雷霆を放つ。
しかし雷が向かう先はラオウではない……キャッチャーがバッターがヒットを出すまで直接攻撃することは(流石に野球にならないから)反則だ。
だから雷を浴びたのは――野球ボールの方だ。
野球ボール自体は絶縁体なので雷を浴びても焦げるだけ……だが聖帝軍には氷の妖精であるチルノがおり、ボールを氷で覆えばコーティングされた部分が帯電するようになる。
すなわち、闇の投げた球は雷球となったのだ。
これを打ってしまったラオウはバットを通して感電することになる。
それも巨大なロボットの装甲すら溶かす電撃をその身に受けた。

「ぐおおおおおおおおおおおお!!!」
「ラ、ラオウ!!」
『ラおじさん!!』

拳王軍ベンチの方から思わず悲鳴が飛び出す。
しかしラオウは負けじと吠える。

「ぬおおおおおおお!
 聖帝軍、媚びぬ退かぬ省みるはおまえたちだけだと思うなよ!
 我ら拳王軍にも負けられぬわけがあるのだーー!!」
「なに!? この雷球を強引に打つつもりか!?」
「総員警戒態勢! 身構えて!」

ラオウは電撃で痺れ、肉体が一部焦げても打つことを決行。
まさかダメージを無視してでも打とうとするラオウにサウザーも虚を突かれ、闇は急いで仲間たちに警戒態勢を敷かせる。

そしてラオウは人並み外れた根性と筋力で、聖帝軍が生み出した雷の球を打った。
向かう先はど真ん中ホームランコース。
初速が早すぎてサウザーがクロえもんの時に見せた、打った直後にキャッチする芸当は使えない。
感電ダメージのせいで高津殺害時ほどの球速は出ていないが、それでもかなりの速度が出ており、ギュンと闇が反応できない速さで彼女の
頭上を通り抜ける。


「俺に任せろ!!」

センターには聖帝軍の守護機神であるスタービルドストライクが待ち構えていた。
ラオウの打球がホームランを勝ち取るにはこのガンダムを突破しなければならない。

「ビルドナックルを失ったてめえに何ができんだ!」

ラオウの打球の威力はガンダムをも凌ぐ。
おそらくガンダリウム、PS装甲、ナノラミネートだろうが耐えられる代物ではない。
ビルドナックルくらいしか対抗できる手段がないというのが、クロえもんの発言の意図であった。

「ああ……ビルドナックルが一つしかなければな!」

ガンダムの左拳が光り輝く。

「まさか……」
「もう一つの――ビルドナックルだ!!」

スタービルドストライクは両腕ともビルドナックルが打てるのだ。
レイジはラオウが打った球に対し、光り輝く拳を叩き込み、ホームランを阻止せんとする。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!」

ぶつかり合う出力全開のビルドナックルと破壊の野球ボール。
一瞬にして行われた攻防――その結末は……

「ビルドナックルが……負けた!?」

イオリや聖帝軍の顔が一瞬、曇る。
ラオウの打球がビルドナックル及びガンダムの左腕を削り、パーツを壊しながら抉っていく。
威力で勝ったのはラオウの打球であった。
このままでは打球はガンダムを貫通して観客席へと入り、ホームランとなってしまうだろう。

651死兆星の瞬きはどちらに ◆FEwgCJ5Pw.:2020/06/22(月) 22:30:57 ID:Y1vKgW0.0

「だが……威力は減っただろう!!」

それでもレイジは、反撃の証たるガンダムのパイロットは諦めない。
操縦桿を力いっぱい動かし、ガンダムの姿勢を即座にボールを背にするような形に変える。

「これならどうだ!!!」

ボールが観客席に入る寸前、ガンダムが吹かしたバーニアの火がボールに直撃する。
これがビルドナックルとぶつかり合う前なら、噴射した炎など意味なく観客席に入るだけだったが、今のボールは全力のナックルとかち合ったため、勢いが落ちている。
結果、炎に煽られ、ボールは観客席にギリギリで入ることなく、ガンダムの足元に落ちた。
一方、ヒットはともかくホームランは失敗すると事前に感じ取ったラオウは既に走り出していた。

「紘太!!受け取ってくれ!!」

レイジは急いで一塁方面に、ボールを一塁方面に蹴って渡す。
紘太はボールをキャッチしようとする。
そんな紘太にラオウは奥義である天将奔烈を放たんとする。

「させんぞ、天将奔……」
「俺の仲間に手を出すな!!」
「なに!?」
「紘太! こいつは俺が止める! おまえはボールを手に入れることに集中しろ」

だがその前に、後ろからキャッチャーであるサウザーが追跡してきていた。
サウザーからの攻撃にラオウは寸前で回避行動を取り、喉元を割かれるような致命傷は回避してものの、天将奔烈は不発に終わった。
そしてサウザーの援護を受けた鎧武は一塁ベース上で球をキャッチしようとする……が。

「一塁はなんとしても奪わせてもらう!!」
「うお!?」
「なッ!?」

鎧武のグローブにボールが収まりかけた寸前、ラオウは地面を蹴って大地を揺るがした。
奥義でも何でもないただの力技だが、その振動はベンチにいた味方やマウンドに出ている敵を跳ねさせるには十分であり、最も近くにいたサウザーや鎧武は一瞬、足を取られてしまう。

「しまった!!」

特にボールをキャッチする寸前であった鎧武は想定外の振動により照準がズレて、ボールはグローブに当たっただけで手中に入らず、ポトリと足元に落ちた。
鎧武は急いでそのボールを拾おうとし、ラオウはその前にスライディングをする。
サウザーはラオウの背後から手刀を叩き込もうとし――


「残念だが、セーフだ…!」
「くッ……」

先ほどディオにやられた傷もあってサウザーの手刀はラオウの分厚い筋肉で覆われた背中を心臓まで貫くこと叶わず、ラオウは鎧武がボールを拾うより先に一塁ベースを踏んだ。
幸いと言えるのは、ラオウがこれ以上進軍できないことだろう。

防衛は完全な失敗ではなかったと聖帝軍は思うようにし、それぞれ元の持ち場に戻る。

652死兆星の瞬きはどちらに ◆FEwgCJ5Pw.:2020/06/22(月) 22:31:35 ID:Y1vKgW0.0


『すまねえ、俺がキャッチできてれば』
「レイジのせいじゃないよ、いや、僕がもっとビルドナックルを強化できていれば……」
「気に病むな、ホームランを打たせなかっただけで戦果だぞ、よくやったぞレイジ、そしてイオリ」

サウザーは両腕がなくなるほどボロボロになったガンダムを見上げつつ、少年二人をほめたたえた。
少年二人はにこりと笑う。

『よーし、このまま戦うぞ』
「え? レイジはボロボロのガンダムのままで戦うの? 修理ぐらいは……」
『イオリの腕を信じてないわけじゃないが、もう試合終了まで時間がねえ。
 バルカンと足は無事だから壁や砲台ぐらいにはなる』
「大丈夫かな……?」
「無理はしないで、レイジ」
『おう』


イオリや闇らの心配を他所にレイジは半壊状態のガンダムのまま、試合を続行。
次の打順は瑞鶴であったが、瑞鶴は闇の投げた球を全て見逃し三振した。

「勝負を挑んでこない……!?」
「悪いけど、今の私はピッチャーよ、肩を壊すわけにはいかないの」
「なるほど……六回裏を見越した温存戦略ね」

闇は瑞鶴の目的を理解する。
瑞鶴の今のポジションはピッチャーであり、無敵の野球ボールであるメーガナーダを投げられる唯一の投手だ。
先に聖帝軍を完封させた存在がいなくなるのは拳王軍にとって痛手であろう。
まだ六回裏が残っている以上は、メーガナーダは必要不可欠な防衛装置である。
故に瑞鶴および拳王軍はワンアウトも必要経費と見て、瑞鶴は防御と温存に徹させるようにしたのだ。
そして目論見通りに瑞鶴は下がるが、彼女は自信満々に次の打者を喧伝する。

「次は私のご自慢のペット、メーガナーダよ!
 あなたたちにこの子の進軍を止められるかしら!」
「GURARARARAARA……」

鉄壁の防御と暴力と暴食の悪魔、メーガナーダ。
瑞鶴の後ろで四本の腕を器用に使ってバットを高速で振るメーガナーダに闇の投球は通用しない……かに思われた。

「インドラ〜♪」
「え?」

いざ、闇が投げた後にメーガナーダは何を思ったのかボールを打たずに、闇がボールと一緒に投げた「何か」を食べだしたではないか!

「ベイダーら主催から、配布された基本支給品……その中にあった携帯食料よ」
「俺、戦極ドライバーとロックシードのおかげで腹減らないから取っておいたんだけど、まさか役に立つなんてな」
「ひ、卑怯な……!」

食欲に負けて携帯食料に気を取られるメーガナーダ。
もちろん、ボールはそのままキャッチャーの手の中に納まり、ワンアウト。

「メーガナーダ。めッ! 食べちゃダメ!」
「インドラ……」
「ひんやりしたかきごおりはいかが〜♪」
「インドラー!」
「コラコラコラッー!!」

瑞鶴はペットを躾けようとするが、三塁ではチルノが能力で作った即席のかき氷で、メーガナーダを挑発。
口からすっかり涎を垂らし、集中力を失ったメーガナーダの攻略は大して苦ではなく、メーガナーダはボールを打てないまま見逃し三振、ツーアウトとなる。

このあと瑞鶴とメーガナーダは激おこぷんぷん丸な仲間たちにメチャクチャ土下座した(二回目)。

653死兆星の瞬きはどちらに ◆FEwgCJ5Pw.:2020/06/22(月) 22:32:15 ID:Y1vKgW0.0


そしてツーアウトの中、時間的にも後がない拳王連合軍のバッターボックスに立ったのは、ロックマンとクロスフュージョンした光翔鶴である。

「ッ……!」
『翔鶴さん、かならず打とう。
平等院さんたちの犠牲を無駄にしないためにも』
「ええ必ず聖帝軍を殲滅します!」

(気張れ、闇、みんな。必ずここで奴らの攻撃を食い止める!)
(ええ)

翔鶴のバッターとしての実力は高津なら完封できるレベルであったが、それは昔の話。
ダークチップを解禁した翔鶴の攻撃性は、ドラゴンハートで強化された聖帝軍でさえ危険なレベルだ。
何より聖帝軍はダークチップのことをよく知らないので全く攻撃を予測できない点もある。
サウザーは闇や仲間たちにここを最後の正念場にしようと、視線を送った。

「ダークサンダーを!」
「無駄だ、雷霆が闇への攻撃を防ぐ!」

先の時のように翔鶴はダークサンダーで闇への先制攻撃を図ろうとしたが、サウザーの呼び出した雷がそれを防ぐ防壁となり、闇の投球を許した。

「喰らいなさい!」
「アタイたちのがったいこうげき!」
「聖帝サンダーボールだ!」

闇は全力のボールを投げる、チルノは投げられた球に霜を張り、サウザーはそれを雷霆による電撃でコーティングした。
打とうとすればダメージ必至の魔球。
ラオウはこれを根性と鬼耐久力で突破したが、翔鶴にはこの電撃を耐えきれるほどの防御力は恐らくない。
PETが感電でもすれば彼女の力を大きく後押しするロックマンが機能停止するという作戦でもあった。

「翔鶴!迷わずに打て!」
「『ラおじさん!!』」
「ようやっと、策を思いついたわ! 剛掌波ッ!!」
「ラオウ!? おのれぇ!」

ラオウはこれに対し、一塁から剛掌波を放ち、翔鶴を援護する。
だがこの気の波は決して聖帝軍を狙ったものではなく、飛んでいく野球ボールの方を狙ったもの。

否、正確には野球ボールの近くを横切っただけ。
ボール自身の軌道などは変わったりしていない。

ただし、打ちだした気はボールの表面に付着し帯電していた氷を溶かして剥がす程度の威力はあった。
付随されていた感電効果がなくなったのである。

「……見切った!」

翔鶴は早いだけになった闇の投球を打つ。

「させるか!」

そこへ今度はサウザーがクロえもんの時にも見せた、打たれた直後の球を速さにものを言わせて取る荒業で対応しようとする。
だが、翔鶴は打ったと同時にチップをスロットイン。
彼女の足元にラッパのような物体が現れた。
それはサウザーが前面に回り込むより早く音を鳴らすと。

「なに!? 動けん!?」
「私たちまで!?」

突如としてサウザーや全ての聖帝軍の動きが止まってしまった。
ヒットした打球はゴロで大きい当たりではなく、ピッチャーである闇の足元に転がったが拾うことさえできない。

「ラッパ型ウィルス――ダークサウンド」
『その音色は聞く者の動きを封じてしまう代物さ』
「ぐッ……貴様らは動けるのか……!」

彼女が使用したものは音が鳴っている間は敵の攻撃や移動を強制的にできなくするダークチップだ。
一方、翔鶴とロックマンが味方と判定した存在には効かない反則的代物だ。
その気になれば目の前の動けないサウザーを簡単に殺すこともできる。
が、翔鶴はそれをせずに一塁側へ向かう。

「なに? 殺さないつもりか?!」
「運が良かったですね、このチップはバグのせいで強制移動させられる仕様のようです」

ダークサウンドは副作用として端のパネル(地形)に強制移動させられてしまう。
また、先にサウザーを殺してしまうとそれ自体が隙となって音が鳴りやんだ直後に闇が一塁に送球をしてアウトを取られてしまう。
既にツーアウトである拳王軍は、あと最低一点を取るまではアウトになるわけにはいかないのである。
そして誰もいない二塁へ走るラオウと、一塁へ飛ぶ翔鶴。

654死兆星の瞬きはどちらに ◆FEwgCJ5Pw.:2020/06/22(月) 22:32:53 ID:Y1vKgW0.0


「まずい!」

一塁へ向かう寸前に翔鶴はダークソードを召喚する。
ダークサウンドの音色はもうすぐ終わるが、その前に鎧武を仕留めようとする。
鎧武の防御や回避行動は間に合わない。

「平等院さんの……」
『――仇だ!』

憎悪による鬼気迫る表情で翔鶴とロックマンは仲間を殺した男を殺さんとする。



そして非情なる闇の剣が、仮面ライダーを唐竹割にした。

「みんな、すまね――」

鎧武もとい紘太は、翔鶴相手に何もできなかった自分を許せぬまま、ターバンごと左右に真っ二つになった躯を晒した。
そして翔鶴はその死骸ごと踏みつけるように、一塁を走破した。
その後、近くの壁に当たることで漸く移動に関するバグも止まる。
同時に漸く、ダークサウンドの音色は止まり、聖帝軍はやっと迎撃行動に映れたのだ。

「紘太……クッソがあ!」

仲間の死にレイジは激昂する。
もはや両腕を失ったガンダムではトーチカぐらいにしかならないのはわかってるが、それでも仲間の死を弔うために、僅かな効果しかないとしてもバルカンをラオウや翔鶴に向けて放った。
二塁へ向かう翔鶴はこれを冷静にアクロバット飛行で回避。
一方、ラオウは――

「北斗神拳奥義 二指真空把!」
「な、バルカンの弾を指で受け止めやがった!?」

二指真空把とは敵側から放たれた飛び道具を二本指で受け留め、かつ相手に投げ返して反撃する技。
ケンシロウは矢などを受け止めるために使ったが、野球選手として成長したラオウは片手でガンダムのバルカンの弾を受け止めた。
サイズが色々おかしいが、実際に二本指で受け止めたのだから仕方ない。
更にラオウはお返しと言わんばかりにレイジに向けてバルカンを投げ返した。

その弾丸は、ラオウの超剛腕も相まってガンダムが撃った時よりも格段に速く、威力を増して元の持ち主であるガンダムのコクピットをぶち抜いた。

「がッ――」

弾丸が装甲を貫徹し、内部のレイジに直撃。
そしてレイジの上半身は弾けた水風船のようにバラバラになって血と肉片をコクピット中に飛散させた。

「レ、レイジィィィーーーーッ!!」
「よせ、イオリ! 飛び出すんじゃない!」
「嫌だ、君が死ぬなんて……ラリー・フォルクみたいな死に方をするなんて……!」

沈黙したガンダムのコクピットに空いた穴から夥しい血が流れたことからして、相棒の死を悟ったイオリは泣き叫びながらベンチから飛び出そうとする。
犬牟田が止めなくては、試合中であることを無視してガンダムに駆け寄っただろう。

「紘汰、レイジ……」
「どうすれば!」

戦場でまだ生きているチルノ・闇は仲間の死に涙する暇も許されない。
三塁に迫るラオウ、二塁には既に翔鶴が迫っている。
拾ったボールは闇の手の中だが、闇の見立てでは三塁のチルノがキャッチするより、ラオウの方が早い。
おそらく無暗に三塁に投げれば、キャッチしようとした隙にチルノがラオウに殺されるだろう。
誰もいなくなった二塁に投げるなど論外だ。
チルノに至っては闘気だけで氷を溶かしてくるラオウへの打開策が浮かばなかった。

655死兆星の瞬きはどちらに ◆FEwgCJ5Pw.:2020/06/22(月) 22:33:35 ID:Y1vKgW0.0

「チルノ! 上へ飛べ! 闇! ボールはまだ投げるな!」
「「サウザー!?」」
「ラオウは……北斗神拳の使い手は南斗鳳凰拳伝承者である俺が倒す!!」

迷う妖精と暗殺者にサウザーは指示を飛ばす。
知能が減退したチルノは「サウザーの力を信じる」程度に思って、ラオウとの交戦を回避。
三塁を拳王に明け渡した。
一方で闇はサウザーが何を思っているのか理解する。

カオスロワ式野球では捕球した選手がタッチする以外に、走者が死亡してもアウト扱いになる。
ここでサウザーに送球すれば、ラオウと翔鶴はそれぞれ三塁と二塁に踏みとどまることになり、ホームインによる点の獲得は防げる。
ところがこれはほんの一時しのぎにしかならない。

翔鶴の次の打者は一番バッタームネリン。
プニキやラオウほどでないにしろ、強打者であり、闇程度の腕では確実に打たれホームランでもされれば目も当てられない。
さっきは球にイチローの顔を描く奇策で凌いだが、次は通じる保証はない。

ならばと、サウザーはあえて防御を切り捨て、ここで決着をつけることにしたのだ。
ラオウさえ殺せれば、拳王軍はスリーアウトチェンジ扱いとなり、向こうの士気も間違いなく削ぎ落とすことができる。
勝つための制圧前進なのだ。
もっとも問題として、この策はラオウが三塁に留まったら意味はなくなること、だが。

「南斗と北斗、どちらが上か決着をつけるために俺と戦えラオウ!」
「ふん、そんな安い挑発など……」
「ほう、そこで三塁に留まるなどと安全策を取るならば拳王は南斗聖拳の者の決闘の申し出から逃げた腰抜けとして未来永劫、恥の歴史として残ることになるが?」
「ぬう」

サウザーはここで舌を使ってラオウの高いプライドを刺激し、戦わせるように仕向けたのだ。
拳士である以上、戦いを逃げることは許されない。
それが北斗神拳と因縁のある南斗聖拳の長から叩きつけられたものならば、猶更だ。
故にラオウもまた、確実な安全策を捨てて三塁を蹴った後にホームベースに向けて走り出した。

三塁とホームを繋ぐ一本の細い白線。
その上で聖帝と拳王の最後の戦いが始まった。

「ぬおおおおおおおおおお!!!」
「はああああああああああ!!!」

ラオウとサウザーはぶつかり合う前にまず互いに闘気を高める。
これだけで周辺の地面抉れていく……それだけで、2人が人類の領域を突破せんとしている証左だ。
次にサウザーは背筋を伸ばして脚を閉じ、手を猛禽類の爪のような形にし両腕を水平に広げた十字のような構えをとった。

「南斗鳳凰拳奥義 天翔十字鳳!! 」
「鳳凰拳に構えだと?」
「フフ 帝王の拳 南斗鳳凰拳に構えはない!! 敵はすべて下郎!!
 だが対等の敵が現れた時 帝王自らが虚を捨てて立ち向かわねばならぬ!!」

本来は「防御の型」である構えをとらない南斗鳳凰拳だが、己と対等な敵が現れた時に立ち向かう為に必殺不敗の意を込めてこの構えが使われる。

「すなわち天翔十字鳳 帝王の誇りをかけた不敗の拳!!」
「早ッ……――」

サウザーはそのまま跳躍し空中から相手に襲いかかる。
これまでの強化と死闘によって機動力が圧倒的に強化されていたこともあり、ラオウは拳で抵抗するもその身体に触れることが出来ず、いつの間にか首に鳳凰の斬撃を見舞われていた。
ブシュウとラオウから鮮血が飛び出すが、 致命傷である動脈を切るには分厚い筋肉が邪魔でまだまだ浅い。

「もう一撃だ!」
「ぐぬう!!」
「ラオウ君!」「ラオウ!」「拳王さん!」「インドラ!」

656死兆星の瞬きはどちらに ◆FEwgCJ5Pw.:2020/06/22(月) 22:34:08 ID:Y1vKgW0.0

再び、ラオウの首筋、先ほどと同じ場所にまた一閃が入る。
今度はより多くの出血を出すことができた。

(くッ、これまでのダメージのせいもあるのか、思ったような力が出ない。
 だがおそらく、あと一発叩き込めば動脈を絶ち、ラオウを落とすことができる!
 あの世で見ていてくれ、先に逝った者たちよ……手向けは拳王の首級だ!)

先に亡くなった者たちへの想いを胸に、サウザーは拳を振るう。
どれだけ拳を振るっても圧倒的速さを誇るサウザーに拳が届かないラオウ。
しかしてラオウの速さではサウザーの攻撃から逃れることもできない。

(この拳王がここで倒れるというのか……? 天の道を行くこの俺が……)

本能で確信していた。
奥の手たる天翔十字鳳を出したサウザーにこのままでは負けると。
あと一撃首にもらえば命を断たれると。


そんなラオウの頭によぎったのはこれまでの試合や戦いで散った者たちの顔……



(思い出すのだ、ラオウ。
 おまえの弱さのせいで、どれだけ涙を流したかを。
 ムギちゃんや平等院たちの犠牲を、おまえは無駄にするのか?)

                        ――否

(拳王連合軍に勝利の栄光を与えぬまま、消えるつもりか?)

                        ――否

(主催やヘルヘイム、ギムレーやナッパをこのままのさばらせておくつもりか?)

                        ――否

(おまえの野球はこんなものか?)

                        ――否

(ならば、悲しみと怒りを力に変えるのだ)










                        ――応

657死兆星の瞬きはどちらに ◆FEwgCJ5Pw.:2020/06/22(月) 22:34:45 ID:Y1vKgW0.0





サウザーの手刀がラオウを捉えかけたその瞬間。
ラオウは脳内で『何かがカッチリと噛み合った』感覚を覚えた。
そして、ラオウはサウザーの、聖帝軍や拳王軍の視界からもフッと消えたのだ。

「なにィ! ラオウが消えた!?」

まるで透明人間のように、どこぞの影薄組のように相対していたラオウが消えた。
同時にサウザーの手刀も空振り、空を切る。

「奴はどこへ……」

サウザーは間髪入れず、殺気を辿ってラオウを探す。
だが、痕跡を辿ることもできず――




「――がはっ!!」
「サ、サウザー!!」

ラオウが消えたと思われた数瞬後に、サウザーの胸は背後からの一本の剛腕に貫かれた。
今度は右胸…すなわち、心臓をも穿った致命の一撃。耳に響くは闇の悲鳴。
サウザーは口と腕を引き抜かれた穴から大量の血を吐き出した。
それを成し遂げのは消えたと思われた、ラオウである。

「い、いったいなにを……」
「北斗神拳究極奥義“無想転生”を俺はたったいま会得した、おまえはそれに敗れただけのことよ」



無想転生とは深い哀しみを知った者のみが体得できる北斗神拳の究極奥義。

「無から転じて生を拾う」という意味合いを持ち、実体を空に消し去りあらゆる攻撃と回避を無効にする技。
平たく言えば「無敵状態」になり、そこから放たれる一撃を相手は防ぐことが出来ない。
あらゆる攻めを無想のまま回避し、無想ゆえに誰にも読めず防げないカウンターを放つ。

ラオウは人間の限界以上にまで鍛え上げた上で北斗神拳を極限まで極めてつつ、深い哀しみを仲間の死を知ったことで体得したのだ。
そしてサウザーの奥義である天翔十字鳳と速さを打ち破ったのである。

「……さらばだ! 聖帝」

ラオウはサウザーを打ち破った後、トドメの一撃を喰らわさんとする。

「させません!」

サウザーへのトドメを阻止すげく、闇がボールを片手に無数の髪を鎌のように変化させてからラオウへの特攻をしかける。
手数にものを言わせた面制圧に近い範囲攻撃。
せめてかすりでもすればラオウはアウトになって攻撃権を失い、サウザーは助かるかもしれないと思ったゆえの行動であった。

「待て、闇!」
「全ての攻撃を避けられて…」
「無駄だ、無想転生に死角はない」
「もう後ろに……!?」

だがラオウは再び無想転生ですべての攻撃を躱し、かつ敵に見えないことを利用してほぼ一瞬で背後に回り込む。
それから闇が防御や回避の態勢を取るよりも早く、ディスコードフェイザーでさえ打ち破った超・剛掌波を放った。



「闇……なぜ……俺を助けようとした……?」

心臓を破られた以上はどう足掻いても死ぬ。
ラオウの一点は許してでも安全策として闇とチルノさえ生き延びれば、ほんの僅かでも勝てる可能性はあったのかもしれない。
だが、闇は安全策を選ばず、サウザーを助けようとしてしまった。
故に今、拳王に諸共殺されようとしている。

「……私も退かぬ、媚びぬ、省みぬをやってみたんですよ。
 好きになってしまった人を見殺しに、したくなかったのですから」


「ははは、やはり愛などいらぬな」

サウザーの最後の笑顔は、自嘲とも微笑みともつかないものであった。
そして超・剛掌波の、凄まじい闘気の奔流により、2人の肉体は粉々の肉片へと変わった。
さらに勢いの止まらない奔流はちょうど後ろ側にあった聖帝軍ベンチにも直撃する。

「認められない、こんなシュラク隊や鉄華団並に悲惨な結末なんて!」
「ごめんなさい高津さん、僕らはここまでのようです」

ベンチに残っていたイオリや犬牟田は逃げる事もできぬまま、肉体がベンチごと爆発四散した。

658死兆星の瞬きはどちらに ◆FEwgCJ5Pw.:2020/06/22(月) 22:35:14 ID:Y1vKgW0.0



「そんな……」

最後に生き残ったチルノは翔鶴の艦載機に撃ち落され、翔鶴に身体を踏みつけられていた。
サウザーや闇への援護ができなかったのは、拳王と聖帝が戦っている裏で翔鶴に撃たれたからである。

「あなたで最後、これで終わりよ」
「まだアタイは死んじゃ……がふッ」

倒れたチルノを冷酷に見下す翔鶴に、チルノは悪あがき的に弾幕を放とうとするが、その前に頭をソードで貫かれた。
妖精ゆえに即死ではないとはいえ致命傷には違いない。

「と……とちょうのみんな、ふな…っしー、アタイたち聖帝軍のかたきを取って」
「心配しないでください」
『全員皆殺しにして一匹残らず地獄に送ってあげるからね』

チルノの氷の肉体は、ガラス細工のようにピチューンと砕け散った。

そしてラオウ、翔鶴がホームベースを踏み、二点獲得。

さらに聖帝軍選手全滅により、六回裏を待たずして、この試合は終焉を迎えた。



               拳 4-2 聖

               ゲームセット



〜 〜 〜


眩い光に包まれると、拳王連合軍生き残りの9人とネットナビ2体、それから悪魔一匹は元の横浜スタジアムに戻っていた。
大半が気絶していたため、瑞鶴はすぐさまメーガナーダに命じて気を失った選手を近くの施設に運び宝玉輪を使用して傷と意識を回復させた。
MEIKOなどの気絶していた面子は、自分たちが眠っている間に試合を勝ち越したことをあるものは喜び、あるものは嘆いた。
あと、ハクメンは思いのほか、頭にダメージが言っていたのか、鎧や肉体の傷は修復されるも、未だに気絶していた。

ただ一人、ラオウは窓から横浜スタジアムを眺める。

どうやら異界で全滅した聖帝軍の血がどういう原理か注がれるらしく、大量の血が横浜スタジアムに流れこんだ。
そして花火のような魔法陣が空に浮かび上がるが、ラオウと瑞鶴以外はそれに気づかず、ラオウもまた深くは考えなかった。

ただ、闇夜に輝くあの光こそ聖帝軍の魂の輝きなのだろうと。
敵ではあったが、野球の試合に関しては、まさに強敵とも言うべき集団であったとラオウは認識している。


「聖帝軍……おまえたちは強敵だった」


ラオウはそう言いながら疲れた体を癒すべく炭酸水を飲み干した。
余談だが、この「強敵」は「とも」は読まない。そのまんま「きょうてき」のままである。




【サウザー@北斗の拳】
【金色の闇@ToLOVEるダークネス】
【アリーア・フォン・レイジ・アスナ@ガンダムビルドファイターズ】
【葛葉紘太@仮面ライダー鎧武】
【犬牟田宝火@キルラキル】
【イオリ・セイ@ガンダムビルドファイターズ】
【チルノ@東方project】

全員 死亡   聖帝軍――敗滅

659死兆星の瞬きはどちらに ◆FEwgCJ5Pw.:2020/06/22(月) 22:35:44 ID:Y1vKgW0.0





【三日目・0時00分/神奈川県・横浜スタジアム近く】

【拳王連合軍】

【ラオウ@北斗の拳】
【状態】超強化、首輪解除、決意
【装備】なし
【道具】支給品一式、その他不明、ムギのスタメンメモ
【思考】基本:ダース・ベイダ―たちを倒す
0:少し休んだらヘルヘイム討伐に向かうぞ!
1:その次はイチローチームとドラゴンズだぞ!
2:それからビッグサイトも攻略して東京を平定するぞ!
3:東京を平定したら最後は主催(九州ロボ、死者スレ、沖縄のシャドウ)だぞ!
  それまで待っていろ!
4:平等院たちの死は悲しいが拳王たる我が立ち止まるわけにはいかんぞ!
5:聖帝軍はまさしく強敵(とも)だった……
※ダイジョーブ博士の装置でメジャーリーガー級の強さを得ました
※都庁をヘルヘイムであると誤解しています
※哀しみを背負ったことで無想転生を習得しました。


【MEIKO@VOCALOID】
【状態】超強化、修羅化、首輪解除、強烈な悲しみと殺意
【装備】なし
【道具】支給品一式、ノートパソコン@現実
【思考】 基本:『真の黒幕』及び主催者共の皆殺し
0:次はヘルヘイムの奴らを皆殺し
1:ラオウへの特別な感情 どこまでもついていく
2:ハゲ(ナッパ)を見かけたら嬲り殺す、仲間がいたら皆殺し
3:恐ろしい敵だった……聖帝軍
※『無限の回転』を習得しました
※ダイジョーブ博士の装置でメジャーリーガー級の強さを得ました
※アルティメットアーマーは破損したため、破棄しました


【ロックマン(光彩斗)@ロックマンエグゼ】
【状態】超強化、悪の心(中)、深い悲しみと憎悪
【装備】ロックバスター、サイトパッチ&試製甲板カタパルトのデータ
【道具】なし
【思考】基本:殺し合いを終わらせる、翔鶴を傷つける存在を殺す
0:次はヘルヘイムだ!
1:熱斗が死ぬ原因を作ったナッパとギムレーは絶対にこの手で殺す
2:翔鶴さんは絶対に失いたくない
3:僕に従姉妹(?)ができたぞーーー!
4:まだ顔を合わせていないサーフ博士を信頼
5:勝ててよかった……ダークチップ様様だね
※PETの中にいます
※ダイジョーブ博士の残した装置で強化されました。全ステータスが格段に上昇しています
※ダークチップ使用により悪の心に大きく汚染されました


【翔鶴(光翔鶴)@艦これ】
【状態】超強化、悪の心(中)、深い悲しみと決意
【装備】彩雲、紫電改二、流星改、 零式艦戦62型、熱斗のPET(ロックマン入り)、シンクロチップ、チップ各種(プリズム・フォレストボムは確定)、熱斗のバンダナ
【道具】ダークチップ一式
【思考】基本:殺し合いを終わらせる、彩斗を傷つける存在を許さない
0:次はヘルヘイム攻略を目指す
1:熱斗を殺す原因を作ったナッパとギムレーは絶対にこの手で殺したい
2:ダークチップを使ってでも彩斗と仲間を守る
3:瑞鶴に謎の親近感。私に血の繋がらない妹ができた?
※熱斗とロックマンより、二人の過去についての話を聞き、自身を光翔鶴と名乗るようになりました
※超強化の影響によりステータスが大幅上昇しました
※クロスフュージョン状態でのダークチップ使用により悪の心に大きく汚染されました


【川崎宗則@現実?】
【状態】健康、首輪解除、ドラゴンズへのヤンデレ的怒り
【装備】バット、ボール、グラブ
【道具】支給品一式
【思考】基本:イチローを倒してでも、マリナーズに連れ戻す
0:ヘルヘイムを倒して早くイチローさんに会いたい
1:イチローさんをNTRするドラゴンズを許さない!!
2:どんなことをしてでも(最悪殺してでも)イチローさんを取り戻す!
3:イチローさんイチローさんイチローさんイチローさんイチローさんイチローさん
  イチローさんイチローさんイチローさんイチローさんイチローさんイチローさん
  イチローさんイチローさんイチローさんイチローさんイチローさん………………
※強化しなくとも腕前と戦闘力はメジャーリーガーです


【クロえもん@ドラベース ドラえもん超野球外伝】
【状態】超強化、首輪解除、非常に強い悲しみと黒い殺意
【装備】バット、ボール、グラブ
【道具】支給品一式 電車ごっこロープ
【思考】基本:主催者たちに野球で挑んでぶっ殺す!
0:なんとか勝てたな……次は頑張る
1:敵は全員倒す、俺たちは絶対正しいはずだ!
2:イチロー選手をドラゴンズの魔の手から助け出したい
3:みんなには隠してるが、仲間を殺したホワイトベース組が全滅したことには超メシウマ状態w
4:てゆーか風評被害に踊らされるクズは死ね、氏ねじゃなくて死ね
※ダイジョーブ博士の装置でメジャーリーガー級の強さを得ました

660死兆星の瞬きはどちらに ◆FEwgCJ5Pw.:2020/06/22(月) 22:36:06 ID:Y1vKgW0.0


【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
【状態】超強化、首輪解除、本気モード、 悲しみとショック
【道具】他人のデッキ(「ぬばたま」デッキ)
【思考】基本:あのAA
0:シャドーマン……
1:ネットバトラーの一員として主催やマーダーと戦う
2:恐ろしい敵だった聖帝軍……
※ダイジョーブ博士の装置でメジャーリーガー級の強さを得ました


【ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険】
【状態】健康、超強化、首輪解除
【装備】PSVITA(デューオ入り)、十徳ナイフ
【道具】支給品一式×3、シンクロチップ、治療道具、その他不明
【思考】基本:ネットバトルとベースボールを極める
0:ヘルヘイムだ!
1:殺し合いを終わらせた栄光を手に入れる
2:ジョジョより優越感を得る
3:熱斗やシャドーマンが死ぬ前にネットバトルを挑みたかった……
※ダイジョーブ博士の装置でメジャーリーガー級の強さを得て、デューオとクロスフュージョン可能になりました
 新技として一分時間を止められるデューオーバーヘブンを習得しましたが、一度の使用によって強烈な疲労を伴います


【デューオ@ロックマンエグゼ4】
【状態】超強化、HP満タン
【装備】ジャスティスワン、ザ・ワールド
【道具】なし
【思考】基本;とりあえず、ディオたちを見守る
0:ヘルヘイムに向かうぞ
1:九州ロボ及び主催者を殺す
2:ダークチップに汚染されてしまったロックマンと翔鶴が気がかり
3:シャドーマンたちの犠牲は無駄にしない
※ベジータの持っていたパソコンから情報を抜き出し、ヘルヘイムの情報を得ました
※ダイジョーブ博士の装置でメジャーリーガー級の強さとPSVITAの筐体を得ました


【瑞鶴@艦隊これくしょん】
【状態】健康、最終決戦仕様
【装備】彩雲、紫電改二、流星改、 零式艦戦62型、違法改造スマホ、結婚指輪
【道具】モンスターボール(メーガナーダ@アバタールチューナー2入り)、宝玉輪@女神転生シリーズ
    石ころ帽子、妨害電波発生装置、裏世界転送マシン
【思考】
基本:提督さん(サーフ)に従い、彼の理想である艦むすの楽園を築く
0:作戦に従い、拳王連合軍についていく
1:拳王連合軍にヘルヘイムを倒した後にイチリュウチームへ試合をするように仕向ける
2:拳王連合軍が優勝したらサーフと合流し、翔鶴姉も連れて行く
3:提督の目的の邪魔をする奴は容赦なく殺す
4:翔鶴姉を光の呪縛から解放したいが、ロックマンを殺すのは全ての野球の試合が終わってからにする
5:ハクメンは要警戒、必要ならば鎧の裏に仕込んだ爆弾を起爆する
6:提督さんは大丈夫、よね?
※サーフが生みだした艦むすで、ケッコンカッコカリ済みです
※『器』であるメーガナーダはミヤザキの『巫女』である瑞鶴か翔鶴にしか操れません
※裏世界転送マシンは二チームを野球ができる裏世界へ飛ばし、他参加者の妨害や乱入を防いで野球ができます
 裏世界が崩壊するタイムリミットは最大三時間。使用もあと一回だけ。
 負けたチームは崩壊する裏世界に取り残され、死亡します。(移籍などのケースはどのように扱われるか不明)
※改造により少し前の翔鶴と同じくらいの戦闘力を有しています


【ハクメン@BLAZBLUE】
【状態】気絶中、unlimitedモード、鎧にひび割れ、テルミ限定で現実逃避
【装備】斬魔・鳴神
【道具】支給品一式
【思考】基本:『悪』を全て滅する
0:(気絶中)
1:全ての『凶』への対処のためにも拳王連合軍と手を組む
2:世界の平和のためなら力による東京をやむを得ない
3:主催及び世界に災いをもたらす者を『刈り取る』
4:風鳴翼は滅する
5:東京の『凶』、千葉の『凶』は警戒を続けるが後回し
6:悪魔将軍を殺した窒にいる何者かを警戒
7:テルミ? まだ死んでないさ
※unlimitedモードに入りました
※沖縄の『凶』(シャドウ)の気配を察知しました。能力から他の参加者よりも具体的な位置がわかります
 また、具体的な倒し方を知らないため、日本の生き残った戦力を全て集めれば勝てると思っています
※鎧に罅が入り、気絶中に瑞鶴が持つ違法改造スマホで起動するリモコン式の爆弾を罅から入れこまれました



※全員、宝玉輪により試合の負傷が全回復しました

661カオスロワ10期 最終話:2022/07/17(日) 20:39:25 ID:5mMrN5JU0
「カオスロワ10期目を終わらしちゃいかんのか?」
 巨人小笠原の一言がきっかけだった。
「構わないだろう、もう2年以上止まってるしな」
 それにアンドリューW.K.が答えた。
「……そうだ、俺達7人は止まったカオスロワ終わらせた英雄だ!」
 シンが主人公らしい台詞を叫ぶ。
「『僕らは人気キャラだから、何をしても許されるからな』」
 球磨川がカッコつけて言う。
「やはり、彼らを復活させたのは正解だったな」
 彼らを復活させ、いつの間にか寝返ったサーフ博士がほくそ笑む。
「そう、そして私達が……」


「「「「「「「『大正義だ!!!』」」」」」」」



 こうして、カオスロワ10期目は終焉を迎えた。
 もう誰も彼らの凶行を止める手段を持っていなかったのだから。

 後に
 根岸崇一。
 巨人小笠原。
 アンドリューW.K.。
 シン・アスカ。
 田井中律。
 球磨川禊。
 そして、サーフ・シェフィールドの7人はカオスロワの英雄としていつまでも語り継がれるのであった。

【テラカオスバトルロワイアル 第10期 未完】

662カオスロワ11期OP:2022/07/17(日) 20:39:55 ID:5mMrN5JU0
「カオスロワ11期を始めちゃいかんのか?」
 巨人小笠原の一言がきっかけだった。
「構わないだろう」
 それにアンドリューW.K.が答えた。
「……そうだ、俺達はカオスロワを初期から支えた英雄だ!」
 シンが主人公らしい台詞を叫ぶ。
「そう、そして私達が……」

「「「「11期の主催者だ!!!」」」」

まず見せしめとして根岸崇一とサーフ・シェフィールドが殺された。

こうして、カオスロワ11期が始まった。

【巨人小笠原@なんJ】
【アンドリューW.K.@現実】
【シン・アスカ@機動戦士ガンダムSEED DESTINY】
【田井中律@けいおん!!】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】なし
【思考】
1:ロワを主催する。


【根岸崇一@デトロイト・メタル・シティ 死亡】
【サーフ・シェフィールド@アバタールチューナー2 死亡】


【テラカオスバトルロワイアル 11期開幕】

663なにっ11期の投下がまるでない:2022/08/26(金) 22:45:52 ID:XPbhAFRo0
「待てよ、物語はこれから面白くなるんだぜ」

話は停滞している間にカオス・ロワ10期の主催の座を奪い取った宮沢鬼龍が不敵な笑みを浮かべて呟く。
そしてカオス・ロワの停滞を防ぐべくとある手段を取った――


「コモドドラゴンを放てっ」

こうして全会場にコモドドラゴンの軍勢が投下された。

【三日目・0時00分/成層圏 九州・ロボ】

【宮沢鬼龍@TOUGH】
【状態】健康
【装備】不明
【道具】不明
【思考】
基本:しゃあっロワ・運営!
※他の主催陣は猿空間送りにされたと考えられる

664「東の牧場のマグニスだ…」(リマスター版):2022/09/18(日) 22:25:00 ID:YnY3VC.o0

そう呟いた青年の首に丸太のような太い右腕が伸びる。
右腕を伸ばしたのは赤いドレッドヘアにいかにも凶暴そうな顔つきの男。

50㎏以上はあるであろう青年の身体が地面から浮きあがる。
男の右腕の親指と人差し指の二本だけで持ち上げられたのだ。
人間以上の筋力はあるであろう男。

そして、男は小枝を折るように……。

「マグニスさま、だ」

青年の首をへし折った。

コキャ……という小気味良いが周囲に響き渡った。

「豚が…」

マグニスさまと名乗った男は直後に青年のデイパックから支給品を物色した。
中には核ミサイルしか入っていなかったが、マグニスさまは特に気にすることはなく装備した。

マグニスさまの行動原理は簡単。
『カオスロワで優勝する、そして、人間という劣悪種の殲滅』。

ただ、それだけである。

【一日目0時・北海道】
【マグニスさま@テイルズオブシンフォニア】
【状態】健康
【装備】核ミサイル
【道具】支給品一式 不明支給品
【思考】基本:優勝する
1:マグニスさま、だ。豚が…

【パルマコスタの市民A@テイルズオブシンフォニア 死亡確認】
死因:首コキャ

665主催陣の友情物語:2022/11/20(日) 00:26:40 ID:.lfPauC.0
「コモドドラゴンをロワ会場に放っちゃいかんのか?」
巨人小笠原の一言がきっかけだった。
「いや、駄目だろ」
それにアンドリューW.K.が珍しく反論した。
「……そうだ、俺達にはコモドドラゴンなんて必要ないんだ!!」
シンがとても主人公らしい台詞を叫ぶ。
「でも、このコモドドラゴン達どうすんの?」
田井中が女子高生らしい疑問を投げかける。
「サーフと一緒にTOUGH世界に放っちゃいかんのか?」
「「「それだ!!!!」」」

こうして大量のコモドドラゴンは復活しようと画策していたサーフと共にTOUGH世界に放たれた。
何故彼らがサーフの目論見に気付いたのかは、彼らの不滅の友情がサーフの裏切り・不義を許さなかったからである。

【一日目/0時10分・主催本部】
【巨人小笠原@なんJ】
【アンドリューW.K.@現実】
【シン・アスカ@機動戦士ガンダムSEED DESTINY】
【田井中律@けいおん!!】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】なし
【思考】
1:ロワを主催する。


【宮沢鬼龍@TOUGH 死亡】
【サーフ・シェフィールド@アバタールチューナー2 死亡】
死因・大量のコモドドラゴンに捕食
※TOUGH世界に大量のコモドドラゴンが放たれましたが、カオスロワには影響ありません。


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