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( ,,^Д^)ビッグ・トレジャーの大冒険のようです!!!
53
:
名無しさん
:2018/03/11(日) 16:52:51 ID:MB1Msye.0
.
ζ(゚ー゚*ζ
ディレッタ=サリエリ
クーの母親。おっとり系美人。
娘を溺愛して止まない。特技は裁縫。
(‘_L’)
フィリップ=サリエリ
クーの父親。高校で教鞭を取っている。
妻と娘が呆れ返るほどの心配性である。
.
54
:
名無しさん
:2018/03/11(日) 16:53:27 ID:3BGHHkaU0
新スレ乙
これから読む
55
:
名無しさん
:2018/03/11(日) 16:54:24 ID:MB1Msye.0
.
【用語解説】
・肉体強化型能力者
能力のほぼ全てを身体能力の強化に当てている者を指す。
常人を遥かに凌ぐ肉体パフォーマンスを発揮する事が可能。
また肉体の頑強度も上がるため、倒すことが非常に困難でもある。
現在、ビッグトレジャーレベルであれば、ミサイルの衝撃までなら耐えられることが確認されている。
該当例)ビッグ・トレジャー
ファニー・フェイス
モララード=マクレガー他
・異能型能力者
本来、人体には付与されていない能力を得た者を指す。
飛行能力、変身能力、分裂能力等その種類は多岐に渡る。
肉体強化型ほどではないが、こちらも常人よりは強い肉体を持つ。
ただし、銃弾等を弾き返すほどの頑強さは持たない。
該当例)ギコラ=サムスン
サダコ=アヤセガワ
ペニーナ=カートレン他
・混在型
肉体強化型のボディをベースに異能までも習得している特殊なケース。
これは特殊超常能力保持者となる以前から、優れた肉体的素養を持っていた者がなるとされている。
現在確認されているのは、ハハジャ=サウスガットの一例のみである。
.
56
:
名無しさん
:2018/03/11(日) 16:55:22 ID:MB1Msye.0
長らくお待たせしてすみません。
新スレでもまた楽しんでいただければ幸いです。
57
:
名無しさん
:2018/03/11(日) 16:57:16 ID:EnywS.Kw0
乙
58
:
名無しさん
:2018/03/11(日) 17:05:25 ID:v8ApbRnU0
おつ
クール博士とクォッサ博士が混ざってるけど仕様?
59
:
名無しさん
:2018/03/11(日) 17:06:33 ID:MB1Msye.0
あ、すみません。クォッサ博士の間違いです。
十五年後のメンバーは全員クー博士呼びです。
60
:
名無しさん
:2018/03/11(日) 18:30:38 ID:ESksPdFE0
新スレ早々楽しませてくれるなあ乙
61
:
名無しさん
:2018/03/11(日) 20:35:52 ID:2EovS8820
ファニーフェイスは刃物使いだったのか
62
:
名無しさん
:2018/03/11(日) 20:56:00 ID:L83jPXPE0
おつおつ
63
:
名無しさん
:2018/03/12(月) 02:12:27 ID:otuBF44E0
待ってたぞ!乙!
64
:
名無しさん
:2018/03/16(金) 10:18:57 ID:NFYJikWA0
前スレからまとめて全部読んでしまった
何度も予想を裏切られて面白い
65
:
名無しさん
:2018/03/22(木) 00:46:10 ID:y21lOvgw0
乙です
66
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 20:28:37 ID:V53fHRGY0
.
モララー、お前スモーキータウンって街のこと知ってっか?
アメリカの南の方にある、ゴミ山で出来た町の名前さね。
ゴミ拾いの貧民と浮浪者と、売春婦ばっかりが集まってるような町でよぉ。
住人のほとんどが、ゴミ山の周りに立てられたプレハブに住んでやがるのさ。
街のあちこちでゴミを焼く煙が上がってな、そりゃもう臭ぇの何のって。
聞いた話だと、そこで暮らして30まで生きてる奴は、稀だったんだとさ。
そりゃそうだよなぁ。今でこそダイオキシンだ何だとうるせぇが、あそこじゃ全部垂れ流しだもんな。
俺とあいつ……アヒャルドは、親無しのみなしごとして、その街で生を受けたんだ。
.
67
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 20:29:38 ID:V53fHRGY0
.
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
俺とアヒャルドは物心ついた時から、鉄クズ拾い夫としてゴミ山の親方に飼われてた。
貧困層じゃあよくある話だが、貧乏人にも元締めみたいなのがいてな。
そいつを介さないと鉄クズなんざ誰も買っちゃくれねぇから、ガキどもは親方の言いなりになるしかない。
そういうグループの一員として、俺もあいつも毎日鉄を拾っちゃ二束三文で売り払ってたのよ。
( ゚∀゚ )「……」ザクッ、ザクッ
<おーい!アヒャルドー!
( ゚∀゚ )「……」ピタッ
Σz ゚ー )リ「アヒャルドー!こっちだこっちー!」
( ゚∀゚ )「……」
Σz ゚ー )リ「昼飯くすねて来たぜ。お前も食えよ」ポーン
ダスティン=スニッパー(当時14歳)
( ゚∀゚ )「……」パシッ
アヒャルド=マッケンジー(後のファニーフェイス、当時14歳)
.
68
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 20:31:21 ID:V53fHRGY0
.
俺とあいつは、さほど仲良しってこともなかったがよ。
たまにメシを分けあっちゃ、あーでもねーこーでもねーってくっちゃべってたよ。
もっとも、俺が一方的に話しかけてただけで、あいつはほとんど喋らなかったがな。
Σz ゚ー )リ「なぁ、聞いたかアヒャルド」
( ゚∀゚ )「……」ガツガツ
Σz ゚ー )リ「マートンの奴、昨日親方に食われっちまったとさ」
( ゚∀゚ )「……」ガツガツ
Σz ゚ー )リ「この辺じゃそこそこ器量良しだったからなー。目ぇつけられるのも早かったな」
あの街じゃ、ガキは利用されるだけされて使い捨てにされる。
力のある男は廃物人夫として一生コキ使われて、そうでない奴ぁ
ヤクザに買われてモツ取られるか、よくて鉄砲玉で人生終わりだ。
俺とアヒャルドは、どっちかってぇと力のある方だったから、まだ命拾いしてたんだよな。
.
69
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 20:32:27 ID:V53fHRGY0
.
自分で言うのも何だが、俺ぁガキにしちゃ目端が効くし、聡いガキだったと思うぜ?
要領よく立ち回る方法も知ってるし、他の奴らの半分の仕事で成果を出す方法も編み出した。
大人に媚びへつらって楽するのも、なんてこたぁなかったぜ。
だからって訳じゃねぇが、俺はどんくさくていつも親方に
殴られてるアヒャルドを、哀れに思ってたんだろうな。
鉄クズ拾いのガキの中でも、あいつは特に不気味で浮いてたからよ。
Σz ゚ー )リ「アヒャルド。お前親方に殴られた傷、痛まねぇのか?」
( ゚∀゚ )「……別に」ペロリ
奴が殴られて痛がってるとこを、俺は見たことがなかった。
だから親方も、見せしめにするみてぇにあいつを殴るんだ。
それでいて奴は、他のガキみたいに怯えて親方に従うでもない。
ただ淡々と、ゴミにまみれて鉄クズを拾ってるだけだったんだ。
まるでそれが、生まれつき決められた運命だとでも言うみてぇにな。
.
70
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 20:34:01 ID:V53fHRGY0
.
Σz ゚ー )リ「なぁ、アヒャルドよぅ。お前、夢はあるか?」
( ゚∀゚ )「……」
Σz ゚ー )リ「俺はいつかこんな街捨てて、自力で生きてくのが夢だ」
Σz ゚ー )リ「お前にもあんだろ?そういう、明日への希望ってのがさ」
それを俺が語ったのは、アヒャルドと夢を共有したかったからじゃない。
単なる壁打ちの独り言みてぇなもんだった。
それでも、気晴らし程度にゃなるかなぁと思ってたんだがな。
( ゚∀゚ )「……ねぇよ、そんなもん」
あいつは無口で無気力で、なんとも話し甲斐のねぇ野郎だったよ。
ただその中で、あいつが予言みてぇに呟いてた一言が、今でも忘れられねぇんだ。
( ゚∀゚ )「俺がここを出てくのは、あいつを殺した時だけだ」
そんなことを、奴は冗談でもねぇ真顔で言ってのけたんだ。
.
71
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 20:35:08 ID:3yM7PeZE0
支援!!!
72
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 20:35:14 ID:V53fHRGY0
.
Σz ゚ー )リ「あいつって、親方のことか?どうやって殺るつもりなんだよ」
昔のあいつは、俺よりチビで貧相なナリしてたからな。
腐っても大人の親方に、勝てるわきゃねーと思ってたよ。
( ゚∀゚ )「……」ザクッザクッ
Σz ゚ー )リ「ワケ分かんねー奴。そりゃ夢じゃなくて妄想って言うんだぜ?」
当時はそんなこと言ってたが、今の俺にはハッキリ分かる。
奴の異常な殺気と狂気は、あの時に培われたもんだってな。
『アヒャルドッ!!!』
Σz; ゚ー )リ「やべっ、親方だ!!」
Σz; ゚ー )リ「じゃーなアヒャルド、上手く逃げろよ!」
( ゚∀゚ )「……」
.
73
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 20:36:34 ID:V53fHRGY0
.
|/#゚U゚|「てんめぇ、またサボりくれてやがったのか!!」
こいつが、俺たちの親方だ。
どんな人間かは……見てもらえば分かる。
|/#゚U゚|「てめぇの鉄クズ集めのノルマは他の倍あんだ!!ちんたらやってるヒマなんざねぇんだよ!!」
ハッキリ言って、これは親方のいちゃもんだった。
あいつはサボッてもなけりゃ怠けてもいなかった。
ただこいつが陰気な顔で黙ってるのが腹立たしくて、他のガキよりキツいノルマを課せてただけなんだよ。
この時だって、行きがけにたまたまアヒャルドの顔を見て、勝手に不愉快になったから近づいてきただけだったんだろうぜ。
( ゚∀゚ )「……」
|/#゚U゚|「なんだそのツラは?俺に言いたいことがあるなら言えや!!」
ゴッ
( ∀ )「……ッ」
|/#゚U゚|「てめぇの代わりなんざ幾らでもいるんだ。とっとと働くか、死んでゴミに埋もれるか選びくされ!!」
ゴスッ、ゴスッ!!
( ∀ )「カハッ……」
|/#゚U゚|「ったく……役に立たねぇなら産まれて来るんじゃねーよ!!バカが!!」ペッ
( ∀ )「……」ビチャッ
まぁ、お察しの通り、親方は貧乏人の中でも大概なクソ野郎だったよ。
俺らガキの中で、やつの死を望まない奴は一人だっていやしなかった。
.
74
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 20:37:46 ID:V53fHRGY0
.
親方は、少女売春の元締めでもある。
ゴミの街だけあって、身寄りのないガキを集めるのは鼻クソほじるより簡単だもんな。
奴はほうぼうの娼館に顔が効くし、人脈もそれなりに豊富だって噂だった。
どっちかと言えば鉄クズ拾いより、そっちの方が儲けはデカかったらしい。
ま、こんな街の腐った人脈なんざ、無い方が幾らかマシな人生を歩めるだろうがな。
そして身売りさせられる女は、親方に味見されるのが通例になっていた。
そのあと娼館に売られるか、親方の遊び道具にされるかは、あいつの気分次第だったんだろうぜ。
俺が今でも覚えている、あいつのクソみてぇなセリフがある。
|/゚U゚|『食ったガキの数なんざ100から先は覚えてねぇよ』
|/゚U゚|『俺にとっちゃあんなもん、ヤッた内にも入らねぇからな!』
|/゚U゚|『ま、ディックの錆び落としにゃちょうどいいんじゃねぇか?』
奴は顔見知りの娼館の親父に、そんなことを自慢気に話していた。
聞いたこっちの耳がおかしくなりそうな、ゲスも極まる言い回しだったな。
.
75
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 20:39:23 ID:V53fHRGY0
.
こんな奴に生殺与奪権を与えりゃ、道理なんてモンもねじ曲がるに決まってる。
だが、それがまかり通っちまうのが世間ってもんだ。
弱者に当たる風は冷てぇままで、ろくな風防も分けちゃもえらない。
慈悲なんてもんは富裕層から順に与えられて、俺たちに届くのは腹の足しにもならねぇコーヒーの出し殻みてぇな役割だけだ。
俺はずいぶんと長いことそう思ってたし、覆ることはないと思ってた。
だから親方がとっととくたばるか、さもなくばここから逃げ出す方法を考えなきゃならねぇと思ってたんだ。
だが、チャンスってのは本当に不意に訪れるもんだ。
俺が親方の元を逃げのびるチャンスは、思ったよりも遥かに早くやってきた。
.
76
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 20:40:02 ID:3yM7PeZE0
ドクズだなぁ
77
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 20:40:54 ID:V53fHRGY0
.
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
ある日の夜、親方は虫の居どころが無性に悪かったらしい。
俺らガキをプレハブに集めて、容赦なしにぶん殴りだした。
|/#゚U゚|「ダスティン!てめぇ口車で大人だまくらかして、鉄クズチョロまかしてるそうじゃねぇか!」
Σz; ゚ー )リ「ばっバカ言うなよ!俺はそんなこと一度だって……」
|/#゚U゚|「るせぇ!!ケツモチの俺に泥ぶっかける気か親無しが!!誰のおかげで食っていけてると思ってやがる!!」
ゴスッ!!
Σz; ー )リ「ぐっ……!!」グラッ
こんな調子で、俺たちは謂れのない因縁をつけられ、親方の理不尽な暴力に曝された。
親方の機嫌が悪いときはいつもこうだ。俺たちはサンドバッグなんかじゃねぇってのにな?
そして、こういう時にいつも一番割りを食うのはアヒャルドだった。
親方はアヒャルドを必ず一番最後に残して、一番長いこと殴り続ける。
そこに目的や意図はなくて、単にアヒャルドが嫌いだからそうしただけだったんだろう。
.
78
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 20:42:06 ID:V53fHRGY0
.
|/#゚U゚|「極めつけはお前だ、アヒャルド!!」
|/#゚U゚|「てめぇ鉄クズ集めのノルマが全然足りてねぇんだよ!!何考えてやがる穀潰しが!!」
( ゚∀゚ )「……ちゃんと集めたろ、50kg」
|/#゚U゚|「口応えしてんじゃねぇ!!昨日50なら、今日はそれ以上集めるのが当たり前だろうが!!」
ゴキッ!!
( ∀ )「……ッ!!」
あろうことか親方は、手近にあった鉄パイプで奴の頭を殴りやがったんだ。
|/#゚U゚|「死ねっ!!てめぇなんざ死んで詫びろ!!」
ゴキッ!!ゴキッ!!ゴキッ!!
Σz; ゚ー )リ「……」
アヒャルドには悪いが、俺にそれを止めるだけの力なんざ皆無だった。
ただ親方の腹の虫が収まるのを、黙って見てるしか出来なかったんだ。
.
79
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 20:42:51 ID:V53fHRGY0
.
|/;゚U゚|「ハァー…ハァー…」
( ∀ )「……」クタ…
|/゚U゚|「いいかアヒャルド。てめぇは出来損ないの奇形児なんだよ」
|/゚U゚|「親が妊娠中に放射性物質だかに触れて、気色の悪ぃてめぇみてぇなガキが産まれたんだ」
|/゚U゚|「だから親はてめぇを捨てて、さっさとこの街を出ていった。分かるか?」
|/゚U゚|「そんなお前を食わせてやってる俺は、慈悲深い男だよなぁ?」
|/゚U゚|「分かったら明日から俺の足舐めて、感謝しながら仕事すんだよ!!」
( ∀ )「……」
|/゚U゚|「チッ……気絶してやがらぁ」
|/゚U゚|「おいダスティン!!酒!!」
Σz; ゚ー )リ「お、おう」
( ∀ )「……」
Σz; ゚ー )リ(……あいつ、死んでんじゃねーだろうな?)
.
80
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 20:43:48 ID:3yM7PeZE0
頑丈さが不幸を呼ぶのか
81
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 20:43:53 ID:V53fHRGY0
.
介抱してやろうにも、親方の目に止まったら今度は俺が殺されちまう。
誰も手が出せないまま、生き延びていてくれてることを祈るしかない。
だが、どこからどう見ても奴は生きてるように見えなかった。
顔の形が変わるまで殴られたあいつを見て、俺ぁ初めて絶望ってやつを味わったよ。
その日はそのまま嫌な気分で寝ついて、また下らない朝を迎えるんだと思ってた。
夢も希望もクソもねぇ、ただ搾取されて捨てられるだけの、お先真っ暗な人生に。
けど違った。アヒャルドと俺の運命が変わったのは、その夜からだったんだ。
( ∀ )
( ∀ )
( ∀ )「………こ、ろ……す……」ボソッ
Σz; ゚ー )リ「……?」
.
82
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 20:45:59 ID:V53fHRGY0
.
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
Σz ーД )リ「ンガァ……ンゴォ……」
Σz ゚Д )リ「……んぁ?」
( ゚∀゚ )「……」
プレハブの外、ゴミ山の中で立ち尽くすみたいにして、あいつは空を見上げていた。
Σz ゚ー )リ「アヒャルド……?何してんだ、早く寝ろよ……」
Σz; ゚ー )リ「……!?」
そこまで口にして、俺は気づいたんだよ。
なんで鉄パイプでガンガン殴られた奴が、起き上がってられる?
どう少なく見積もっても、完治まで1ヶ月はかかりそうな重傷を負ってたのに。
Σz; ゚ー )リ「お前……ツラの傷どうしたんだ……?」
ほんの数時間前に、親方に殴られてボコボコにされた奴の顔。
それが、傷跡一つ残さずキレイさっぱり治癒しちまってたんだ。
.
83
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 20:48:59 ID:V53fHRGY0
.
人は有り得ないもんを見たとき、奇跡ってもんを信じるらしい。
けど俺が見た奇跡は、悪魔の所業としか言えねぇものだった。
( ゚∀゚ )「……」
奴は俺の質問なんか聞こえねぇみたいに、一直線に隣のプレハブへ歩いていった。
そこは、親方が根城にしてる、ちっとばかり上等なプレハブ小屋だった。
|/ーUー|「グゴォォォォ……」
酒瓶とゴミに埋もれて、親方は眠ってた。
アヒャルドは扉の外から、それをじーっと見つめてやがんだ。
Σz; ゚ー )リ「まさかあいつ……親方を殺るつもりか?」
殺そうと思えばいつでもやれそうなほど無防備だが、そうすりゃまた別のクソがこいつの穴埋めに来るだけだ。
堂々巡りのいたちごっこにしかならないが、俺はそれ以上に、奴がどう親方を殺すのかに興味があった。
.
84
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 20:50:58 ID:V53fHRGY0
.
( ゚∀゚ )「……」
奴はゆっくり親方の側へ近づいて、親方の頭を、素足で踏みつけにした。
|/ーU゚|「……ん?」
|/゚U゚|「……おい、なんだこりゃあ」
( ゚∀゚ )「……」
|/゚U゚|「てめぇ、アヒャルド。何してやがる?」
|/゚U゚|「ぶっ殺されたくなけりゃ、その汚ぇ足どけやがれ」
( ゚∀゚ )「……ヒャハッ」ググッ
Σz; ゚ー )リ「……!!」
|/;゚U゚|「なっ……何だ!?おいっ、止めろアヒャルド!!」
親方はもがいたが、奴のその細ぇ足を、どうしても払いのけることが出来なかった。
.
85
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 20:52:25 ID:V53fHRGY0
.
( ゚∀゚ )「……」ググッ
|/;゚U゚|「バカッよせ……ぐおぉぉ!?」
アヒャルドは徐々に、頭に入れる力を強くしてるみてぇだったな。
細い足に血管が浮き出て、そこだけ別人のパーツみたいに見えた。
|/; U |「ガァァァァッ……!!」
親方は酒瓶を取って足を殴りつけたが、それすらもあいつは意に介してないように見えた。
メキメキ音を立てて頭蓋骨は軋み、親方は苦悶の呻き声を上げて身を捩らせた。
( ゚∀゚ )「……あばよ」
|/; U |「あっ……?」
グチャッ……
そして、スイカみてぇな中身ぶちまけて、奴の脳天は砕けたんだ。
.
86
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 20:54:15 ID:V53fHRGY0
.
( ゚∀゚ )「……」
Σz; ゚ー )リ「……」
俺は声も出せなかったよ。人死にを見るのは初めてじゃないが、こうまで酷い殺しには、さすがにお目にかかれなかったからな。
( ゚∀゚ ) ニタァ…
そして奴は、不気味に口角を歪ませて笑ったんだ。
殺しの快楽に走る時、奴は同じように薄気味悪く笑う。
それが後に警察の名付けた、ファニーフェイスって通名の由来らしいぜ?
( ゚∀゚ ) スタスタ
アヒャルドはすぐに笑いを引っ込めると、一番近くのゴミ山まで歩いていった。
俺は居ても立ってもいられなくなって、思わず物陰から飛び出してた。
.
87
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 20:54:51 ID:3yM7PeZE0
危ないから出ていくなよ…
88
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 20:55:50 ID:V53fHRGY0
.
だが、俺の姿なんざ奴の目にはカケラも入ってなかったんだよな。
( ゚∀゚ )「……」グッ
Σz; ゚ー )リ「お、おい!アヒャルド!」
奴は無造作に拳を振り上げて、それをゴミ山の根本に叩きつけた。
一発、二発、三発……何度も、何度も、同じ場所を執拗に殴り続けた。
Σz; ゚ー )リ「……な、なんだ?」
最初は目的が分からなかったが、じきに俺はアヒャルドが何をしようとしてるのか理解した。
殴る回数が増えるごとに、ゴミ山が震えてるのが分かったからだ。
Σz; ゚ー )リ「アヒャルド!止めろっ……」
そして拳を叩きつけること十発目。
( ゚∀゚ )「……オァァァァアアァァァアアアッ!!!!!」
ドンッ…
Σz; ゚ー )リ「わぁぁぁぁっ!!?」
ゴミの山は大きく鳴動して、ぐらりと傾いた。
そしてプレハブ小屋を飲み込むみてぇに、崩れやがったんだ。
.
89
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 20:59:33 ID:V53fHRGY0
.
俺は逃げた。今まで誰に追われてもそこまでしなかったってくらい全力で逃げた。
命懸けなんて言葉、人生でそうそう使うもんじゃないが、その時はまさにそうだった。
雪崩に遭ったアルピニストも、こうまで逃げはしなかっただろうぜ。
ゴミは見る間に地鳴りを起こして、プレハブ小屋を潰していった。
親方の死体も、他に寝てたガキどもも全員巻き添えだったろうな。
恐ろしいことに、アヒャルドのパンチは他のゴミ山にも振動を伝えたみてぇでよ。
ゴミの雪崩が連鎖を呼んで、街中あちこちで崩落事故が多発したらしいぜ。
それをやらかした張本人は、どこ吹く風で余裕のツラだったけどな。
Σz; ゚ー )リ「アヒャルド……」
( ゚∀゚ )「……なんだお前。まだ生きてたのか」
そしてあいつは俺を見て、ゴキリと指を鳴らした。
あれ以上に背筋が寒くなることなんざ、もうねぇだろうな。
.
90
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:01:08 ID:V53fHRGY0
.
俺はすぐに声をかけたことを後悔した。
ちっと頭使えば分かることだったんだ。アヒャルドがゴミ山を崩した理由なんてな。
( ゚∀゚ )「お前……ぜんぶ見てたよな……?」
Σz; ゚ー )リ「……!!」
( ゚∀゚ )「安心しろ。ゴミに潰されるよりは楽に殺してやるよ……」
Σz; ゚ー )リ(こいつまさか、証拠隠滅のために……!?)
アヒャルドに何があったのか、当時の俺には分からなかった。
恐らくは絶命寸前まで追い込まれて、奴のヴィランとしての能力が開花したんだろーな。
だがそこまで推測しなくても、俺の命が風前の灯ってことは理解出来た。
奴を止めるには、崩落から逃げのびる以上の『何か』が必要だったんだ。
.
91
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:02:16 ID:V53fHRGY0
.
Σz; ゚ー )リ(考えろ、考えろ、考えろ!!)
( ゚∀゚ )「……」ユラ…
俺よりタッパのねぇガキから、尋常でない殺気が溢れ出てくる。
固められた拳には筋が浮いて、無表情の顔面がどうしようもなく恐ろしかった。
それを前にして俺は、どうやったらこのピンチを抜け出せるのか必死で考えた。
Σz; ゚ー )リ(奴に恩を売る?ダメだ、あいつは飯を分けた程度で恩に切る奴じゃねぇ)
Σz; ゚ー )リ(同郷の情に訴えるか……だが、ボコされた直後じゃ効果は期待薄だ)
Σz; ゚ー )リ(ならいっそ奴の下に着くか……?いや、これもあいつにはメリットがない)
Σz; ゚ー )リ(……メリット!!そうか、メリットだ!!)
Σz; ゚ー )リ「お、おいアヒャルド!!」
( ゚∀゚ )「……」スゥ
Σz; ゚ー )リ「拳を止めろ!!お前、俺の話を聞かねぇと一生後悔すんぞ!!」
( ゚∀゚ )「聞く気はねぇよ」
Σz; ゚ー )リ「あぁそうかい!じゃあ聞くが、お前これからどうするつもりだ?」
.
92
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:02:55 ID:V53fHRGY0
.
( ゚∀゚ )「どうもしない。この街を出る、それだけだ」
Σz; ゚ー )リ「おーそうかい。だが世間はお前が思ってるよか甘くはねーぞ!?」
( ゚∀゚ )「敵は全員殴り殺す」
Σz; ゚ー )リ「分かってねぇな!そんなことすりゃ、警察はすぐお前をマークしてイチコロだぜ?」
Σz; ゚ー )リ「この街と違って他の警察は有能だ!ただ殴って殺せばお前に一方的に不利なだけだ!」
Σz; ゚ー )リ「だから!俺をお前と一緒に連れてけよ!」
Σz; ゚ー )リ「俺はお前より交渉事もできるし、世間のこともちっとは知ってる!」
Σz; ゚ー )リ「貧民窟の世間知らずが腕力だけで生き残れるほど、外の世界は楽じゃねぇんだ!」
.
93
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:03:58 ID:V53fHRGY0
.
( ゚∀゚ )「……」
Σz; ゚ー )リ(よしっ!顔に迷いが出てる!もう一押しだ!)
Σz; ゚ー )リ「こんな腐った街出ていきたかったのは俺も同じだ、アヒャルド」
Σz; ゚ー )リ「だが俺には力がなかった。あのクソッタレな親方を殺せるだけの力がな」
Σz; ゚ー )リ「お前にはそれが出来る力がある。だがこの世の面倒な仕組みについて、知らないことが多すぎる」
Σz; ゚ー )リ「お前がそれを学ぶ必要はねぇ。代わりに俺を連れてくんだ」
Σz; ゚ー )リ「そうすりゃお前が好きなだけその力を使えるフィールドを、俺が用意してやる」
Σz; ゚ー )リ「お前に泥は被せねぇ!いらんと思ったらいつでも殺せ!」
Σz; ゚ー )リ「その代わり俺らは対等だ!それに文句は言わせねぇぞ!」
Σz; ゚ー )リ「さぁ、どうだ!?アヒャルド!!」
.
94
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:05:49 ID:V53fHRGY0
.
( ゚∀゚ )「……チッ。勝手にしろ」
Σz; ゚ー )リ「……!!」
俺は全身全霊のハッタリで、賭けに勝った。
ギブアンドテイクを演出して、奴に利があると思い込ませた。
そしてどうにか口八丁で丸め込んで、あいつを説得することに成功したんだ。
本当のことを言うなら、奴は外に出ても一人でやっていけただろう。
だが、俺の言うことにも幾らかの真実は含まれてた。
奴の力は明らかに人間の常軌を逸したものだった。
そんな力をホイホイ使っちゃあ、奴の末路は射殺か獄死、どっちかひとつだ。
警察だってバカじゃない。危険人物が街に現れたとなれば、指名手配されて身動き取れなくなるのも時間の問題だろう。
そういう意味じゃ、俺のやったことも奴のためになったと言えなくもない。
そこで状況を見極めて、奴の暴走を未然に防げていたら、だがな。
その時は頭が回らなかったが、後に俺は奴を自制させて、俺のために利用できるんじゃないかと思い始めたんだ。
それがどれだけ身の程知らずな思い上がりだったかも気づかずにな。
これが、俺とアヒャルドの話の第一幕ってとこだ。
.
95
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:05:54 ID:3yM7PeZE0
勇気あるな
96
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:08:15 ID:V53fHRGY0
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ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
それからしばらく、俺たちは街から街へ放浪して、やりたい放題何でもやってたな。
スリ置き引きから始まって、追い剥ぎ強盗車上荒し……やらなかった犯罪の方が少ないくらいだ。
悪事に糸目はつけなかったが、何やるにしても鉄クズ拾いより効率悪いってこたぁなかったぜ。
何しろこっちには、無敵のアヒャルドがいたからな。
Σz ゚ー )リ「アヒャルド。次の街は人が多いらしいから稼ぎどころだぜ!」
( ゚∀゚ )「あぁ、分かった」
あいつは思った以上に、俺の言うこと聞いてくれたよ。
よくよく考えりゃ一度も街の外に出たことねぇんだから、奴にゃ土地勘すらないんだよな。
最初はどこへ行くかの水先案内人程度の関係だったが、しばらくすると
奴の口数も増えて、なんとなく多少の信用は勝ち得たみてぇに見えたな。
そして俺たちは巷のワルの間で、二人きりの少年強盗団なんて呼ばれだしたんだ。
そこからだったかなぁ。俺がアヒャルドを利用して、もっとデカい稼ぎを出せないかって思いだしたのは。
.
97
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:09:44 ID:V53fHRGY0
.
そこで俺が目をつけたのが、アメリカ1の大都市クラウン・シティだった。
人口密集地帯のあそこなら、物もカネもしこたま集まってくる。
それを全てかっさらって、俺はアヒャルドを頭目にした犯罪組織を作ろうと企んでたのさ。
だがそれには、コネもカネもまだ足りない。
まずはその下地を作るために、まとまったカネを得るための金策を練らにゃならなかった。
Σz ゚ー )リ「アヒャルド」
( ゚∀゚ )「あ?」
Σz ゚ー )リ「次の仕事は車の盗難だ。出来るな?」
( ゚∀゚ )「誰に向かってクチ聞いてんだ。俺にできねぇことなんかねぇよ」
たかだか140cm程度のドチビが、バカに自信満々にそう答えやがる。
奴のこれまでの戦歴を知らなきゃ、俺も鼻で笑うような光景だったろうな。
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98
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:10:48 ID:V53fHRGY0
.
クラウン・シティまでの道中で、俺は盗んだ車を使って運転技術を必死に覚えた。
どんな車種でも運転出来るようにならにゃあ、車ドロボーなんて夢のまた夢だからな。
そうして行き着くまでに五台の車を乗り捨てにして、俺たちはクラウン・シティにたどり着いたんだ。
ドギツいネオンと夜景が、眼窩にこびりつくような凄まじい夜だったな。
俺らのいた街とは、発展の度合いからして段違いだった。
Σz; ゚ー )リ「……すげぇな」
( ゚∀゚ )「……」
二人ともしばらくの間、車から降りて呆然としてたなぁ。
Σz ゚ー )リ「なぁ、アヒャルド」
( ゚∀゚ )「……なんだ?」
Σz ゚ー )リ「どうせやるならこの街の全部、俺たちでかっぱらってやろうぜ」
Σz ゚ー )リ「この夜景もいずれは俺たちのもんになるんだ。そう思うとワクワクして来ねぇか?」
( ゚∀゚ )「……バーカ。一人で盛り上がってろ」
冷めた口調と裏腹に、俺は初めてアヒャルドが、普通の笑顔を見せたような気がしたんだ。
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99
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:12:03 ID:V53fHRGY0
.
俺がまずやったことは、盗難車だろうと引き取ってくれる車屋を探すことだった。
拠点となる住み処は、盗んだ車を停めて寝起きすりゃあなんとかなる。
それよりも、早く車をさばけずに、足がつくことの方が問題だと思ったからだ。
デカい街ならあるだろうと踏んでいたが、案の定そっちは一週間足らずで見つかった。
/▽▽「車の買い取り?」
それがこいつ、エレクのおっさんだった。
Σz ゚ー )リ「あぁ。車種問わずどんな車でも買ってくれんだろ?」
おっさんは怪訝な顔をして、俺のことをじろじろ見回してやがった。
まぁ、俺が車屋でも同じようにしただろうがな。
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100
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:13:02 ID:V53fHRGY0
.
俺はためしに、クラウン・シティまで乗ってきた車を売ることにした。
俺らみてーなガキを相手にして、どういう態度に出るか見てみたワケだ。
/▽▽「帰れ帰れ、お前らどう見ても未成年だろうが。頭沸いてんのか?」
Σz ゚ー )リ「何でだよ。あんたんとこなら誰のどんな車でも買ってくれんだろ?」
/▽▽「この街にゃ盗っ人のガキなんざわんさといるんだ。いちいち相手してられるか」
まぁ、こういうことになるのも当たり前だわな。
Σz ゚ー )リ「まぁまぁ。そういうのはモノを見てからでも遅くないだろ?」
Σz ゚ー )リ「おっさんに損はさせねぇから査定だけでもしてくれよ、な?」
/▽▽「チッ……見ても買うとは限らねぇぞ?」
Σz ゚ー )リ「いいぜ。どうせ最後は取引することになるだろうからな」
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101
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:14:01 ID:V53fHRGY0
.
/▽▽「……」ガチャガチャ
Σz ゚ー )リ「どうよ、悪くない車だろ?」
/▽▽「ダメだな。こいつぁ出せて500だ。それ以上はやれん」
Σz ゚ー )リ「はぁ?目ん玉腐ってんのか?」
Σz ゚ー )リ「走行距離五万キロ以下、傷も傷みもほぼなし。新古車としちゃ申し分ねぇだろ?」
/▽▽「車はな。問題はお前らに信用がねぇってことだ」
/▽▽「こんな出所の分からん車掴まされて、お縄になっちゃたまらんからな」
大方の予想通り、おっさんはガキの相手と思ってこっちの足元を見てきやがった。
Σz ゚ー )リ「そりゃ初対面だし、信用なんざこれから作ってもらうしかねぇな?」
/▽▽「出入りの業者も山ほどいるんだ。お前らからわざわざ車を買う理由はねぇんだよ」
Σz ゚ー )リ「こんなボロい店のどこに業者がつくんだよ。ヤー公の下請けって素直に言えばいいだろ?」
/#▽▽「るせぇ!!こっちはてめぇなんぞポリに突き出しても構わねぇんだ!!」
/#▽▽「四の五の言わずとっとと消えな!!」
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102
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:14:50 ID:V53fHRGY0
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Σz ゚ー )リ「おぉそうかい。そんな態度取るならこっちにも考えはあるぜ?」
/▽▽「生意気言いやがって。お前に何の後ろ楯があろうと、んなもんはこの街じゃ何の役にも立たねぇんだよ」
Σz ゚ー )リ「おい、アヒャルド」
( ゚∀゚ )「……」ヌッ
/▽▽「なんだぁ?ガキの仲間か?」
Σz ゚ー )リ「プランBだ。派手にやろうぜ」
( ゚∀゚ )「……おう」
/▽▽「ハッ。クソガキが何のつもり……」
( ゚∀゚ )「……ッシャアッ!!!」ググッ
ドガァンッ!!!
/;▽▽「は……?」
何の変哲もない普通乗用車が、アヒャルドの怪力で虫ケラみたいに軽くひっくり返された。
その時のおっさんのマヌケ顔ったら、ケッサクだったぜ。
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103
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:15:33 ID:V53fHRGY0
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Σz ゚ー )リ「ようおっさん。この車が何か分かるか?」
Σz ゚ー )リ「俺らと取引しなかった場合の、あんたの末路さ」
( ゚∀゚ )/;▽▽ ガシッ!!
/;▽▽「ぐっ……!?」
Σz ゚ー )リ「アヒャルド。ゆっくり時間をかけて首を絞めろ」
/;▽▽「ぐふっ……!?」ググッ
Σz ゚ー )リ「なぁ、俺ら今すぐまとまったカネが必要なんだ。車、買ってくれるよな?」
/;▽▽「かっ、買う……買うよ……!!」
Σz ゚ー )リ「幾らで?」
/;▽▽「1000ドルだッ……1000ドル出す……!!」
Σz ゚ー )リ「1000じゃ割に合わねぇな。分かってて言ってんだろ、おっさん?」
/;▽▽「くっ……2000……」
Σz ゚ー )リ「ハァー……安い命だったな。殺れ、アヒャルド」
/;▽▽「分かった4000だ!!4000出す!!」
.
104
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:16:35 ID:V53fHRGY0
.
Σz ゚ー )リ「オーケー!!4000で交渉成立だ!!」
Σz ゚ー )リ「俺ら口座持ってねぇから現金で頼むわ」
( ゚∀゚ )「……」シュタッ
/;▽▽「はぁぁぁ……こんのクソガキどもが……」ヘタッ
Σz ゚ー )リ「だから言ったろ?最後は俺たちと取引することになるってよ」
こうして俺たちは、エレクのおっさんに『快く』協力してもらえるようになったのさ。
そこからは比較的、順風満帆な悪党生活だったな。
アヒャルドがキーを壊して、俺が車を持ち去る。
その単純な繰り返しで、金は見る間に膨れ上がっていった。
昔、俺の地元のゴミ山で、ヒッピー崩れの浮浪者のジジィからエンジンと配線の繋ぎ方は聞いていた。
それさえ分かれば、あとは素人でもやれる簡単な作業だ。
安いモーテルを渡り歩いて獲物を探して、気づけばボストンバッグいっぱいのカネが手に入ってた。
あの頃はまさに、アメリカンドリーム真っ只中って感じだった。
俺がヘタ打たなきゃ、今頃アヒャルドを頭にした組織も出来上がってただろうぜ。
.
105
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:18:26 ID:V53fHRGY0
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ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
俺の犯した最大のポカ。それはこの街のルールを知らなかったことだ。
クラウン・シティに着いてから半年ほど経ったある日。
俺とアヒャルドは、手頃な車を物色するために街中を歩き回ってた。
本当なら事件の発覚を逃れるために深夜の駐車場を狙うんだが、その頃には俺らが
派手に荒らし回っていたせいで、駐車場も警備が厳重になってたんだ。
高く売るには新しい車の方がいい。それも高級な車を、だ。
だが、そんな車がそこらにホイホイ置いてあることなんてない。
アヒャルドを使えば警備を掻い潜ることも可能だろうが、
追われる危険性を考えるとやはり警備は手薄なところがいいと思ってた。
だが俺は失念してたんだ。
警備が手薄ってことは、治安が悪いってことでもあるってな。
.
106
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:19:32 ID:V53fHRGY0
.
俺らがいたのはクラウン・シティの中でもごろつきが集まる、北側の通りだった。
普段とは違う河岸で獲物を物色すれば、いいもん見つかるんじゃねぇかっていう浅はかな考えさ。
ゴミは散乱して人通りも少なく、閑散としたとこだったな。
物騒なとこらしいとは聞いてたが、それでもいきなり発砲されない限りは大丈夫だろうと、たかをくくってた。
曲がりくねった路地を、アヒャルドと二人で歩いてよ。
その先で俺らはとんでもないお宝を見つけたんだ。
Σz ゚ー )リ「おっ?」
Σz ゚ー )リ「おいおいマジかよ!」
そこにあったのは、こんな場所に似つかわしくない、やけにゴツい黒塗りのセダンだった。
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107
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:20:12 ID:V53fHRGY0
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Σz ゚ー )リ「やったな、アヒャルド。遠出してきた甲斐があったってもんだ!」
Σz ゚ー )リ「いつもの通り頼むぜ!!」
( ゚∀゚ )「あぁ」
その時にはもう、俺の頭はこの車を売りさばいてからのことしか浮かんじゃいなかった。
後んなって考えりゃ、ヤバいって判断する材料はそこらに転がってたのにな?
( ゚∀゚ )「……?」ピタ
Σz ゚ー )リ「どーした?人の来ないうちにさっさとやってくれよ」
( ゚∀゚ )「ダスティ。この車、鍵かかってねぇぞ」
Σz ゚ー )リ「はぁ?ウソだろ?」
( ゚∀゚ )「本当だ」ガチャッ
アヒャルドの言うとおり、車は何の抵抗もなしにその扉を開けた。
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108
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:21:32 ID:V53fHRGY0
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Σz ゚ー )リ「ヒュー!こんなラッキーなことあっていいのかよ!!」
Σz ゚ー )リ「こりゃもう俺たちに盗んでくれって言ってるようなもんだな!」
Σz ゚ー )リ「持ち主のマヌケが帰ってくるまえに、とっととずらかろうぜ!!」
俺は運転席に、アヒャルドは後部座席に乗った。
驚いたことにその車、キーも差しっぱで放置されてやがった。
壊す手間が省けるし、キズモノにしないことでより高く買い取ってもらうことも出来る。
そんなことしか考えてなかったから、俺は大事なこと見落としてたんだよなぁ。
けどその時はそんなことにも気づかずに、浮かれ気分で車を発車させた。
その足で向かったのはもちろん、エレクのおっさんの工場だった。
.
109
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:22:17 ID:V53fHRGY0
.
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
/▽▽「……」カァンッ、カァンッ
Σz ゚ー )リ「よう、おっさん」
/▽▽「あぁ?なんだ、また来たのか」
Σz ゚ー )リ「おう、どうせヒマしてるだろうと思ってな」
/▽▽「オメーらよりは忙しく働いてらぁ。それで?また車の買い取りか?」
Σz ゚ー )リ「あぁ、よろしく頼むぜ」
/▽▽「車の売りにも周期があんの知ってるだろ?そう頻繁に持ってこられてもこっちが損こくわ」
Σz ゚ー )リ「いいじゃねぇかよ。どうせいい車は高値になるまで寝かせとくんだろ?」
/▽▽「よほどヤバい車じゃなけりゃな。今日は何の車だ?」
Σz ゚ー )リ「セダンだよ。状態はめちゃくちゃいい。内装はいじってあるが、あんたならさばけるだろ?」
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110
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:23:11 ID:V53fHRGY0
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/▽▽「ほう……どれ、見せてみ」
Σz ゚ー )リ「表に停めてあるから好きに見てくれ。高く買い取ってくれよ?」
/;▽▽「……!!」
/;▽▽「お前、この車どこでパクってきた!?」
Σz ゚ー )リ「北の小汚ぇ大通りだよ。どこのバカか知らねぇが、鍵つけっぱで乗り捨ててあったからよ……」
/#▽▽「バカ野郎ォッ!!」
おっさん、いきなり俺の顔面をぶん殴りやがった。
Σz; ー )リ「ぐっ……!?」
/#▽▽「大バカなのはてめぇの方だ、ダスティ!!」
/#▽▽「こいつはな、うちのバックにいるマフィアの親玉の車だ!!」
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111
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:23:44 ID:3yM7PeZE0
鍵かける必要がないだけなんだよなぁ
112
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:24:43 ID:V53fHRGY0
.
/#▽▽「鍵かけてねぇのは、んなことしなくてもマフィアの車盗むバカなんざいねぇからだ!!」
/#▽▽「そんなことも知らずにこの商売やってたのか?マヌケが!!」
Σz; ゚ー )リ「お、おい……そんな演技に騙されやしねーぞ……?」
/#▽▽「これが演技に見えるってのか?だとしたらテメェの目玉はとんだ節穴だぜ!!」
/#▽▽「この車は、俺が奴らのために用意して、頭からケツまでチューンナップした車なんだよ!!」
/#▽▽「見間違えるとでも思ってやがんのかクソガキ!!」
Σz; ゚ー )リ「そんな……」
/#▽▽「ったくよぉ……少しゃ役に立つガキだと思ってたが、買い被りが過ぎたみてぇだな!!」
/#▽▽「これでテメェは死ぬまでマフィアと追っかけっこだ!!」
/#▽▽「さっさとここから出てかねぇと、まずは俺がテメェを蜂の巣にすんぞ!!」
Σz; ゚ー )リ「……!!」
俺は黙って車に逃げ込むと、人生で二度目の敗走ってやつに挑む羽目になった。
全く、自分で自分が嫌になるくらいバカなガキだったぜ、俺って奴はよ。
/▽▽「逃げんなら北の大通りから逃げな!!1%くらいは確率が上がるだろうぜ!!」
最後に聞こえてきたのは、おっさんのそんな助言の台詞だった。
だがそれもすぐに、猛然と吹かすエンジン音に紛れて聞こえなくなった。
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113
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:26:03 ID:V53fHRGY0
.
/▽▽「……」
/▽▽「……」 ピッ、ピッ、ピッ
Prrr、Prrr……
/▽▽「あー、もしもし。俺だ、クルマ屋のダンだ」
/▽▽「今、あんたらの親分の車を盗んだガキが、うちに車を売りに来やがった」
/▽▽「……いや、捕まえてはいねぇ、勘づいて逃げられちまってな。だがガキは北から逃げると言っていた」
/▽▽「追い込みかけるなら北からやりな。奴ら大通りから街の外まで逃げる腹だろうぜ」
/▽▽「じゃーな。今後ともうちの店をご贔屓に」
ピッ
/▽▽「長いものには巻かれろってな……」
/▽▽「これでガキどもの命運も尽きただろうよ」
.
114
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:27:49 ID:V53fHRGY0
.
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
車を走らせながら俺は、あまりにもノータリンな自分に歯噛みして、絞め殺したくなった。
Σz; ゚ー )リ(マフィアの車だとぉ……んなこと知ってたら手ぇ出してねーよ!!)
Σz; ゚ー )リ(いや……考えてみりゃ、駐車場でもねぇあんなとこに車が置いてあるのが不自然だったんだ)
Σz; ゚ー )リ(それにこの趣味悪い内装、スモークガラス……読み取れるヒントは山ほどあった)
Σz; ゚ー )リ(俺がうかつに手ぇ出して、自分でケガしただけだ……クソッ!!)
そこまで頭が回らなかったのは、アヒャルドがいれば何も問題ないと調子に乗っていたからだ。
後部座席で眠るあいつにも、この事情を説明しなきゃならない。
( ∀ )「ンゴゴ……」
Σz; ゚ー )リ「おい!アヒャルド起きろ!」
だが、どうしようもない現実ってのはすぐそこまで近づいていた。
.
115
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:27:52 ID:3yM7PeZE0
おっさんいいやつ
116
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:29:37 ID:V53fHRGY0
.
ドォォンッ!!
Σz; ゚ー )リ「ッ!?」
( ゚∀゚ )「ん……」パチ
車が跳ねたかと思うほど、強い衝撃が走った。
バックミラーには、いかつい顔の男たちを乗せた車が追跡してくるのが写っていた。
Σz; ゚ー )リ「もう追いつかれたのか?……クソッ、エレクの野郎チクりやがったな!!」
( ゚∀゚ )「おい、なんだ。何が起きてる?」
Σz; ゚ー )リ「すまん、アヒャルド!俺がしくじって今マフィアに追われてる!」
( ゚∀゚ )「……そうか。ならあいつら全部ぶっ殺せばいいってことか」
Σz; ゚ー )リ「バカ!短気起こすな!いくらお前でもマフィアに囲まれりゃ終わりだぞ!」
そのうち二度、三度と後ろから追突され、車のスピードは徐々に落ちていった。
このままじゃ終わる。そう思った俺は、近くにあった廃工場に逃げ込んだのさ。
.
117
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:31:48 ID:V53fHRGY0
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工場は閉めきられて開いてたが、アヒャルドに扉をぶち壊してもらって中に入ることは出来た。
背後からはマフィアどもの怒号が聞こえて、とっととしないと命がないのだけはイヤってほど伝わった。
Σz; ゚ー )リ「アヒャルド!このまま裏口通って奴らを巻くぞ!」
( ゚∀゚ )「迎え撃って殺した方が早いだろ」
Σz; ゚ー )リ「バカ!奴らが手ぶらで追ってきてるとでも思ってるのか?」
Σz; ゚ー )リ「いくらお前でも、素手と銃撃じゃオトナと子供だっての!」
なんでこいつはこうも好戦的なのか。
そう考えて俺は、こいつの性格を利用し続けた自分のせいだと気づいた。
あのゴミ山での一件以来、俺は人を襲ったりなんかの荒事は、アヒャルドに全て任せきっていた。
もちろんこいつにその適性があったのもあるが、それを助長したのは間違いなく俺だ。
策士気取りの自分のせいでアヒャルドは思慮が身に付かず、銃器にも臆さねぇただの暴力バカに成り下がっちまった。
そしてその結果が、結局は俺自身の首まで絞めてやがる。
Σz; ゚ー )リ(笑い話にもならねぇぜ……)
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118
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:33:08 ID:V53fHRGY0
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そうこうしてる間にも、追っ手の足音は着々と近づいてきた。
アヒャルドは相変わらず、逃げずに戦うと呟くばかりだ。
工場の中にはコンテナが散乱しており、それに隠れるようにして俺たちは逃げ続けた。
時おりマフィアの無鉄砲な銃弾がコンテナを掠めて、肝が冷えたりもしたな。
( ゚∀゚ )「……おい」
Σz; ゚ー )リ「あんだよ!?迎撃なら隠れるもんがなくなってからにしろ!!」
( ゚∀゚ )「違う。奴らの足音が消えた」
Σz; ゚ー )リ「……!?」
慌てて逃げてたせいで気づかなかったが、確かにさっきまでの足音も、怒号も銃声も聞こえて来なかった。
Σz; ゚ー )リ(諦めた……?いやまさか……)
( ゚∀゚ )「……」スンスン
( ゚∀゚ )「ダスティ、ガソリンだ。ガソリンの臭いがする」
Σz; ゚ー )リ「何ィッ!?」
( ゚∀゚ )「奴ら、ここに火ィ着けるつもりだ」
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119
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:34:48 ID:3yM7PeZE0
鼻がきくな
120
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:35:38 ID:V53fHRGY0
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アヒャルドの嗅覚は間違っていなかった。
ほどなくして、マフィアどもが入ってきた入り口側から火の手が上がり、俺たちは炎からも逃げにゃならなくなった。
Σz; ゚ー )リ「クソ……人を追い詰める方法を知りすぎだろ!!」
( ゚∀゚ )「どうする?裏口まで走れば間に合わんこたないがよ」
Σz; ゚ー )リ「いや、ダメだ……火を放ったってこたぁ裏口ももう張られてる」
( ゚∀゚ )「んなことがなんで分かる?」
Σz; ゚ー )リ「炎にビビって逃げてきたところをまとめて撃ち殺すつもりだ……火計の基本だよ」
逃げ回る相手には、あえて追い込んでから逃げ道を与えればいい。
そんな簡単な計略にハマった自分が、どうしても許せない。
けどアヒャルドは、この期に及んでまたもあっけらかんと、同じことを言い出した。
( ゚∀゚ )「そうか。てこたぁお前の出番はもう終わりだな」
( ゚∀゚ )「こっからは戦争だ。俺に任せとけ」
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121
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:37:38 ID:V53fHRGY0
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Σz; ゚ー )リ「何言ってんだよ……俺たちはもうおしまいなんだよ」
絶望におののいて諦めちまった俺と違って、奴の眼は生き生きと輝いてるように見えた。
( ゚∀゚ )「お前、今さら死ぬのが怖いのか?」
( ゚∀゚ )「あの街でクソの親方に殺されるのも、ここでヤクザに殺されるのも同じことだろ」
Σz; ゚ー )リ「……!!」
( ゚∀゚ )「俺はあの街で一度死んでる。だから今さら怖いもんはねぇ」
( ゚∀゚ )「ビビって逃げるなら火が回る前に早く逃げろってだけだ」
その時に俺は気づいたんだ。
こいつは思慮を放棄してる訳じゃない。
自分がマジで戦えば、武装したヤクザにも勝てると本気で思ってるんだ。
Σz; ゚ー )リ「むちゃくちゃだ……自分の言ってることの意味が分かってるのか?」
( ゚∀゚ )「そうだな……さすがにお前の言うとおり、素手で戦うのは無理があるか」
180度ズレた論点で、奴は手近な武器になりそうなものを探していた。
.
122
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:39:12 ID:3yM7PeZE0
やだ、ファにーフェイスかっこいい
123
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:39:39 ID:V53fHRGY0
.
( ゚∀゚ )「よっと……これでいいかぁ?」
奴が引きずってきたのは、ベルトコンベアの先にしつらえられた、鉄鋼裁断用の巨大なチタンブレードだった。
固い鉄鋼を加工するためのものだけあって、そのブレードは分厚く、重たい。
全長は2メートル前後、厚みに至っちゃゆうに5センチはありそうだった。
Σz; ゚ー )リ「そんなもん、武器になるわけないだろ!?」
車をひっくり返したアヒャルドの筋力からして、重さはどれだけあろうと問題じゃない。
けどそのブレードは明らかに奴のタッパよりデカく、人がぶん回して扱えるような代物じゃなかった。
(; ゚∀゚ )「おっと……重くはないが、バランスが悪ぃな」
当たり前だが、それは人が振るうことを前提として作られちゃいない。
取っ手も握る猶予もなく、奴は人外のパワーでむしるようにブレードの端を掴んでいるだけだ。
片手で使おうとするとどうしても引きずって歩かなきゃならない。
両手で引きずらないように持つと、視界がふさがって前が見えなくなっちまう。
だが、よろけながらも奴は、その不釣り合いなブレードを武器として扱おうと必死になっていた。
(; ゚∀゚ )「こいつを上手く扱えるようになるまでは、それなりに時間がかかる」
(; ゚∀゚ )「それまでに、俺もお前もおっ死んでなきゃいいがな」
Σz; ゚ー )リ「本気かよ……どうかしてるぜ」
(; ゚∀゚ )「へっ。俺がまともだったことが今まで一度でもあったかよ」
(; ゚∀゚ )「いいからお前は、自分のための逃げ道を探してな」
そうして奴は、コンテナの陰から躍り出て、マフィアどものいる方向へ走っていったんだ。
.
124
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:41:56 ID:V53fHRGY0
.
俺は逃げながら、アヒャルドの行方を目で追っていた。
しばらくは奴がブレードを引きずる音しか聞こえなかったが、少しするとマフィアがアヒャルドを見つけた声がした。
『なんだこのガキ!?』
『そんなもんで俺たちに勝てると思ってんのか!!』
そして、銃声。コンテナからコンテナへ移る途中、ちらりとアヒャルドの姿が見える。
(; ゚∀゚ )「くっ……」
奴は自分の背丈よりデカいブレードを盾にして、上手いこと銃弾を弾き返していた。
だが、いくらブレードに隠れても、それを握った手や足の先は覆いきれない。
たちまち手足は被弾し、血塗れになってゆく。
Σz; ゚ー )リ(アヒャルド……!!)
奴の身は心配だったが、俺も逃げなきゃ命はない。
火は今も燃え盛って、工場を飲み込もうとしている。
俺たちに残されたタイムリミットは、そう長くないように思えた。
.
125
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:43:59 ID:V53fHRGY0
.
その時だった。
(# ゚∀゚ )「ウラァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!」
アヒャルドは激しく咆哮して、ヤクザへ突進していった。
銃弾は今までよりさらに酷く奴の肉を抉って、遠目でも肉と血が弾け飛んでるのが見えた。
俺は一瞬、あいつが自棄になって突っ込んだのかと思ったが、そうじゃあなかった。
アヒャルドの肉眼でもヤクザが捉えられるほど、近い距離まで詰め寄った時。
あいつはクソ重てぇブレードを持ったまま、コンテナの上まで跳躍したんだ。
Σz; ゚ー )リ「ウソだろ……!?」
それはもはや、人間に許された運動能力じゃあなかった。
ましてや銃撃を受けて、傷ついた足で出来ることでもない。
ヤクザもそのアヒャルドの挙動には驚いたみてぇで、焦りの表情を繕うことも出来てなかった。
確かに跳躍すれば、バランスの悪さという問題は解決できたろうさ。
跳んでる間、ブレードを手離さないだけのバカげた腕力と握力があれば、だがな。
アヒャルドはそのまま三角飛びの要領でコンテナの天井を蹴ると、ヤクザの死角から襲いかかった。
ブレードの重量を利用して、上空からヤクザを縦割りに両断する。
(# ゚∀゚ )「まずは一匹……!!」
聞こえるはずのねぇ奴の声が、その時の俺にはハッキリと聞こえた気がした。
.
126
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:45:51 ID:V53fHRGY0
.
アヒャルドはブレードに張り付いたマフィアの死骸を、遠心力で別のマフィアに向かって投げつけた。
『うぉっ!?』
怯んだマフィアなんぞ、あいつの敵じゃない。
アヒャルドは自分の体ごと刃を回転させ、今度は横薙ぎにマフィアを真っ二つにしていた。
(# ゚∀゚ )「これで二匹だ!!次ィ!!」
俺がアヒャルドの動向を確認できたのは、そこまでだったな。
思わず足を止めて見入っちまってる間、炎は工場に捨てられた廃油に燃え移って、大爆発を引き起こしたんだ。
Σz; ゚ー )リ「ヤベェ……早く逃げねぇと!!」
幸い……と言っていいかは分からねぇが、裏口に回ってたマフィアもアヒャルドの大暴れに駆けつけて来やがった。
今なら裏から逃げられる。けど、このまま逃げちまって本当にいいのか?
一瞬考えたが、俺にはアヒャルドの暴力を止める術はない。
後ろ髪引かれながら、俺は工場の火の手から、何とか逃げきった。
.
127
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:47:51 ID:V53fHRGY0
.
俺を追ってくるマフィアは一人もいなかった。
全員が、工場のアヒャルドに釘付けにされていた。
アヒャルドがブレードの使い方に手こずったのは、ほんの数分に見えた。
一人殺してからは、困惑なんぞほとんどなくなってたんじゃねぇかな。
それほど、奴とあのブレードは相性が良かったんだろう。
工場の裏手からは、距離が空きすぎてアヒャルドの動きは見えなかった。
だが、あいつの雄叫びとマフィアの死に際の断末魔は、よぉ〜く聞こえてきた。
だから俺はせめて、あいつに逃がされた身として、ここで全てが終わるのを待ってようと思った。
義理も人情も、ましてや友情なんてもんもなかったが、そうしなきゃ俺自身が納得出来なかったからな。
そして火があらかた収まったあとに俺が見たものは、死体の山よりも恐ろしいもんだったよ。
.
128
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:49:29 ID:V53fHRGY0
.
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
俺がエレクの親父に車を見せてから、四時間が経過していた。
辺りはすっかり暗くなり、工場の火も落ち着きを取り戻し始めた。
今改めて思うと、警察も消防もこの事件に動きもしなかったんだから、あそこは
クラウン・シティでも折り紙つきの治安の悪さだったんだろうな。
ま、そんなことはどうでもいいか。
マフィアの声が止み、俺は恐る恐る工場の外周を歩いて回った。
奴らの車が五台、入り口に停めてあったが、当然持ち主はそこに帰って来ちゃいなかった。
マフィアの末路はどうなったのか?
そしてアヒャルドは生きてるのか、死んでるのか?
答えはそこから数メートル進んだ先にあった。
そこにあったものは、信じられないほどめちゃくちゃな肉塊となったマフィアたちと。
Σz; ゚ー )リ「う、ウソだろ……?」
Σz; ゚ー )リ「お前、アヒャルド……なのか……?」
信じられないほどの変貌を遂げた、アヒャルドの姿だった。
.
129
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:50:48 ID:V53fHRGY0
.
( ゚∀゚ )「……」
アヒャルドは、一人のヤクザの胸ぐらを掴んで立ち尽くしていた。
いや、そんなことはどうってことない問題だった。
問題なのは、奴の容姿だ。
ここを訪れた時、奴の身長は俺にも劣る、140㎝程度しかなかったはずだった。
それがこのたった数時間の間で、見てすぐそうと分かるほどに成長してたんだ。
今の奴は、胸ぐら掴んだヤクザと比べても見劣りしていない。
どう少なく見積もっても、170㎝はありそうな背丈に見えた。
それだけじゃない。腕は太く、脚はしなやかに、胴回りの肉付きも申し分なくなっていた。
もはや貧弱なガキのアヒャルドはいやしなかった。けど、なんで?
その答えは、奴のすることを見ていたらすぐに分かった。
.
130
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:51:58 ID:V53fHRGY0
.
( ゚∀゚ )「……お前らのアジトはどこだ。言え」
『く……クラウンストリートの403番地……』
アヒャルドは柄にもなく、敵を生かして尋問してたみてぇだった。
だがそれ以上に、俺には気になったことがあった。
奴の体についてる返り血の位置が、おかしかったんだ。
( ゚∀゚ )「そうか。クラウンストリートか……」
『は、話したんだから生かしてくれ!!頼む!!』
何かが、おかしい。だが俺はその違和感の答えにたどり着かないよう、必死に自分の考えを否定していた。
( ゚∀゚ )「そりゃ出来ねぇな……」
『ヒッ……』
奴の浴びた血糊の痕跡。
上半身と下半身にまんべんなく、そして……。
口の周りに、べったりと。
.
131
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:52:25 ID:V53fHRGY0
.
ガリッ……
.
132
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:54:10 ID:3yM7PeZE0
おえっ
133
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:54:31 ID:V53fHRGY0
.
奴は、殺した人間を食っていた。
食って、そしてあの背丈になるまで成長していたんだ。
Σz; ー )リ「ウッ……オェェッ!!」
たまらず、俺は嘔吐しちまってた。
あの光景を見たら、誰でもそうなると思うぜ?
( ゚∀゚ )「……ダスティか」
そこで奴はようやく、俺がいるのに気がついたみたいだった。
( ゚∀゚ )「お前よぉ、どうしてこんな楽しいこと、俺に黙ってやがったんだ?」
ニタリと不気味に笑って、アヒャルドは問いかける。
その笑みは、奴が親方を殺した時の笑顔と、そっくり同じもんだった。
Σz; ゚ー )リ「く……来るんじゃねぇ!!化け物!!」
俺は恐れを成して、自分の吐瀉物の上に尻餅ついてやがった。
みっともねぇとは思わねぇよ。小便チビらなかっただけマシってくらいさ。
( ゚∀゚ )「クク……そんなにビビるなよ、ダスティ」
奴のその余裕ぶりは、俺たちの立場が逆転したことを物語っていた。
.
134
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:55:48 ID:V53fHRGY0
.
( ゚∀゚ )「俺はこれから奴らの事務所にカチコミかける」
( ゚∀゚ )「これでもう追われるこたぁ無くなるが、お前も来るか?」
Σz; ゚ー )リ「……」
俺はその問いに、イエスと答えることがどうしても出来なかった。
( ゚∀゚ )「そうか。ならお前との仲はここまでだな」
( ゚∀゚ )「あばよ、相棒。楽しかったぜ」
そして奴は、巨大なブレードを軽々と抱えて街へ消えていった。
それは、後にクラウン・シティで名を轟かせる、ファニーフェイス伝説の始まりでもあったんだ。
.
135
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:56:55 ID:V53fHRGY0
.
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
今となっちゃ、俺はなんであの時、奴についていかなかったのかと後悔してばかりだよ。
俺がいれば、奴がその後に起こす犯罪の何割かは防げたかもしれねーのにな。
……いや、やっぱりこれも俺の思い上がりなんだろうな。
奴は誰も止めることが出来ない。むしろ止めちゃいけねぇんだ。
奴の末路が銃殺であれ獄死であれ、もはやあいつは俺が関知出来ない領域にまでのし上がっちまった。
過酷な幼少期を経て、俺という相棒と巡りあい、そしてヤツは今、完全に解放された。
一体誰がその邪魔を出来ると思う?
もう誰にも奴は止められない。
奴は死ぬまで、前のめりに走りつづけるだけなんだろう。
だから俺はせめて、俺に出来ることを一つでも多くやり遂げようと思ったのさ。
.
136
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 21:58:32 ID:V53fHRGY0
.
俺にはもう何かする力は残っちゃいなかった。
寂れたモーテルにでもしけこんで、すぐにでも倒れちまいたかった。
だがふと思い立って俺は、盗んだ車の置いてある場所まで戻ってきた。
事件のどさくさに紛れて忘れてた、ボストンバッグの金の使い道を思いついたからだ。
もうアヒャルドは、俺の言うことに耳を貸したりしないだろう。
つまりこの金で、奴を頭にした組織を作るって俺の野望は、完全に途絶えたわけだ。
だから俺は俺で、独立の道を探らなきゃならなかった。
金だけはあるのに何かデカいものを失ったような喪失感の中、俺はある場所へ向けて歩いていった。
.
137
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 22:00:22 ID:V53fHRGY0
.
その場所に着いたのは、真夜中をだいぶ過ぎたころだ。
車を使えば良かったんだろうが、しばらく運転するのはこりごりって感じだったからな。
ふくらはぎは突っ張って、関節は熱を帯び立ってるのもキツかった。
だが、俺は最後の力を振り絞って目の前の扉を叩いた。
Σz ゚ー )リ「エレクのおっさん!いるんだろ、開けてくれ!」ガンガンガンッ
俺が遠路はるばるやってきたのは、エレクのおっさんの車屋だった。
おっさんは戸の隙間をわずかに開けて、深夜の来訪者に応対した。
/▽▽「……てめぇ、クソガキ。生きてやがったのか」
Σz ゚ー )リ「勝手に殺すなよ。俺はあんたに頼みがあってここまで来たんだ」
/▽▽「帰れ。お前なんぞ匿ってると知れたら、俺まで殺されちまうわ」
Σz ゚ー )リ「その心配はねぇよ」
/▽▽「あ?」
.
138
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 22:01:02 ID:V53fHRGY0
.
Σz ゚ー )リ「あんたの後ろ楯のマフィアなら、アヒャルドが……俺の相棒が全部殺っちまった」
/▽▽「なに寝ぼけてやがる。気でも触れたか?」
Σz ゚ー )リ「ウソだと思うなら電話でもしてみろよ。繋がらねぇから」
おっさんはわずかに逡巡したあと、いったん奥に引っ込んで電話をかけてるみてぇだった。
/▽▽「……確かに繋がらねぇな。夜中でも事務所にゃ誰か詰めてるはずだが」
Σz ゚ー )リ「明日になりゃハッキリするよ。あの組はもうおしまいだ」
/▽▽「……それで?てめぇは何の用事でこの無害な俺を叩き起こした?」
/▽▽「返事次第じゃ頭から上が消えてなくなると思え」
Σz ゚ー )リ「……おっさん。俺をここで雇ってくれ。頼む」
/▽▽「はぁ?」
.
139
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 22:01:53 ID:V53fHRGY0
.
/▽▽「バカ言ってんじゃねぇ。寝ぼけてんのかクソガキ」
Σz ゚ー )リ「ジョークでも何でもねぇよ。俺はマジだぜ」
/▽▽「お前がマジかどうかなんざどうでもいいんだよ。あいにく人手は足りてんだ」
Σz ゚ー )リ「ただで雇えとは言わねぇよ。勉強料と思ってこいつを受け取ってくれ」
ドサッ
/▽▽「……これは?」
Σz ゚ー )リ「俺たちが車を売って得た金、つまりあんたの金だ。生活費以外はほとんど手付かずだぜ?」
/▽▽「ハッ、よくまぁ貯め込んでたもんだ。遊んで使っちまや良かったのによ」
Σz ゚ー )リ「もう意味はなくなった金だ。あんたに返すよ」
Σz ゚ー )リ「その代わり、俺をここで雇ってくれ。どんな仕事でもするからよ」
.
140
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 22:02:55 ID:V53fHRGY0
.
俺がエレクのおっさんに目をつけたのはいくつか理由がある。
ひとつは、マフィアをバックに出来るだけのコネクションがあるってこと。
そして、アヒャルドを失った俺が、この街で頼れる人間が他にいなかったこと。
そしてもうひとつ。どれだけ性根が腐ってても、職工としての腕は確かだったってことだ。
Σz ゚ー )リ「おっさんだって俺らの売った車で儲けたんだろ?絶対に損はさせねぇ、俺は役に立つ」
Σz ゚ー )リ「だから頼む、この通りだ!!」
/▽▽「あー……分かった、分かった。だが俺としちゃ、マフィア壊滅の裏が取れんうちはお前を上げる訳にいかん」
/▽▽「明日また出直して来て、情報の真偽を確認出来たら考えてやらぁ」
そう言いつつ、おっさんは俺のボストンバッグを何度かチラチラ見ていた。
たぶん中身がいくら入ってるか推測してたんだろう。セコいヤツだぜ、全くよ。
そしてこの件から二日後、ようやくおっさんは重い腰を上げて、俺を雇い入れてくれた。
.
141
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 22:04:20 ID:V53fHRGY0
.
これはただのカンだが、おっさんも最初は金だけ奪って俺のことをほっぽり出すつもりだったろうぜ。
なんでって、俺がおっさんの立場なら間違いなくそうするからな。
だから俺は金を自分にしか分からないところへ隠し、わりと真面目に立ち働いた。
おっさんは約束が違うとぶーたれてたが、俺が思った以上に使えると分かるや、今度は露骨にコキ使って来やがった。
まぁ、ゴミ山の鉄屑拾いよりキツい作業なんてのはなかったがな。
そうして俺は、車の修理や改装、パソコンの使い方なんかを学んでいった。
今なら分かるが、俺はアヒャルドとは違う形で、頭角を現したかったんだろうな。
我ながらいじましいこったぜ。
.
142
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 22:05:32 ID:3yM7PeZE0
おっさんいいやつ
金目当てだとしても
143
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 22:05:41 ID:V53fHRGY0
.
まぁ、こっから先はなんてことない、ただのオマケだ。
俺はアヒャルドと決別して、別の裏道を歩くことになった。ただそれだけの話だよ。
あの時、俺がマフィアの車なんぞ盗んでなけりゃ。
マフィアに追い立てられて逃げたのが、チタンブレードの無い別の工場だったら。
いやそもそも、俺が故郷のゴミ山の街で、生き残ってなかったら。
たぶんアヒャルドは、怪人ファニーフェイスになることはなかったと思う。
全てはもう終わっちまった後の話だがな。
だから俺は、奴のやることには少しばかり責任を感じてるんだよ。
.
144
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 22:06:42 ID:V53fHRGY0
.
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
Σz ゚ー )リ「……これが、俺の話すことの出来るファニーフェイス誕生秘話ってやつだ」
Σz ゚ー )リ「こっからしばらく、俺は奴の噂を聞くだけで接触することはなかった」
Σz ゚ー )リ「あいつと再び会うようになったのは、あいつが初めての敗北を知った時」
Σz ゚ー )リ「つまりお前らのボスと対峙してからだ」
Σz ゚ー )リ「その先は、トレジャー本人から聞きな。俺よりよっぽど詳しいはずだからよ」
(;・∀・)「……」
(;-_-)「……」
Σz ゚ー )リ「なんだぁ?黙りこくって。なんとか言えよ」
(;・∀・)「お前、すごい人生歩んでんなぁ……」
(;-_-)「僕なんか足元にも及ばないくらいだ……」
.
145
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 22:07:44 ID:V53fHRGY0
.
Σz ゚ー )リ「カカッ、俺としちゃ昔のイキりバカ晒すみてぇで恥ずかしいんだがな」
Σz ゚ー )リ「やっちまったことはやっちまったこととして、取り消せねーからよ」
(;・∀・)「はぁ〜……」
(;-_-)「ちょっと尊敬しちゃいますよ……」
Σz ゚ー )リ「止めとけ止めとけ。俺ぁ環境に負けただけのただの敗残者だよ」
Σz ゚ー )リ「俺がいなけりゃあいつは……って思いは、未だに消えてないしな」
( ・∀・)「心配すんなよ。ファニーフェイスだって、トレジャーのおっさんがきっと倒してくれるさ」
(-_-)「そうですよ。僕らだって協力しますし」
.
146
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 22:08:38 ID:V53fHRGY0
.
Σz ゚ー )リ「ククッ。頼もしいこった」
( ・∀・)「ッシャア!!気合い入ったぜ!!」
( ・∀・)「研究所に帰ったらまた特訓だ!!」
(;-_-)「えぇ〜また特訓ですか……精神汚染レベル5で死にかけないで下さいよ?」
(;・∀・)「お前さぁ!人のやる気に水差すようなこと言うなよなぁ〜……」
(;-_-)「介抱するの僕なんですからね!徐々に慣らしてからにしてください!」
Σz ゚ー )リ「フフッ……まぁせいぜい頑張ってくれや」
Σz ゚ー )リ(それにしても、アヒャルドの奴……なんで今回に限ってマンホールから出てきやがったんだ?)
.
147
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 22:09:15 ID:V53fHRGY0
第十六話終わり
148
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 22:10:34 ID:V53fHRGY0
【登場人物紹介】
|/゚U゚|
シド=ビハード
ゴミ山の元締め。人間のクズ。
Σz ゚ー )リ
ダスティン=スニッパー
お調子者でキレモノ。子供の割には機転が効く。
後に焼失した工場跡地を買い取り、キャノンボールを主催する。
/▽▽
ダン=エレク
クラウン・シティで自動車密売を行う車屋。
表向きは修理工として働き、ヤクザを通じて海外に車をさばいていた。
ダスティが独立した数年後、脳卒中により死亡。享年54歳。
.
149
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 22:11:12 ID:V53fHRGY0
【登場人物紹介】
( ゚∀゚ ) FUNNY FACE
本名:アヒャルド=マッケンジー
身長:十四歳当時141cm(現在は200cm)
体重:十四歳当時44.6kg(現在は120kg)
クラウン・シティ史上最悪のヴィランとして名高い悪名を誇る。
かつて自分の育ての親を殺してから、弱きを虐げることに快楽を見出だした。
その怪力から繰り出されるチタンブレードは、かつて戦車を両断し、ビルを薙ぎ倒した経歴がある。
ヴィラン災害を引き起こしてからは、彼が街に出現すると避難命令が出され、軍隊が出動する手筈となっている。
.
150
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 22:12:17 ID:3yM7PeZE0
乙
アヒャがかっこよく見えてしまった
やったことには同情の余地はないけど、彼も環境の被害者なんだなと
151
:
名無しさん
:2018/04/04(水) 23:39:16 ID:V53fHRGY0
あ、マフィア呼びとヤクザ呼びが混ざってる。
紛らわしくてすみません。
152
:
名無しさん
:2018/04/05(木) 11:41:41 ID:c7dc7eAU0
乙
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