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( ,,^Д^)ビッグ・トレジャーの大冒険のようです!!!

1名無しさん:2018/03/11(日) 15:48:53 ID:MB1Msye.0
前スレ

http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1495117626/

まとめ

http://cloudcrying.blog.fc2.com/blog-entry-163.html

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2名無しさん:2018/03/11(日) 15:51:30 ID:MB1Msye.0
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アメリカ中央にある大都市、クラウン=シティ!!
この街には、ありとあらゆる常識からかけ離れた、ヴィランという超常の犯罪者が跋扈している!!

ある者は火を吐き!!ある者は電撃を放ち!!ある者は大地を凍らせる!!
そんな超常の能力に人々は怯え、安寧の時を迎えられずにいた!!

しかし、そんな窮地を救うため、この街にはSUPER☆BIG☆HEROが存在する!!


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3名無しさん:2018/03/11(日) 15:52:29 ID:MB1Msye.0
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彼こそが、この街の守護神!!!



            ,∧,,∧
             ( ,,^Д^)
          ,ノ      ヽ、_,,,
       /´`''" '"´``Y'""``'j   ヽ
      { ,ノ' i| ,. ,、 ,,|,,. 、_/´ ,-,,.;;l
      '、 ヾ ,`''-‐‐'''" ̄_{ ,ノi,、;;;ノ
       ヽ、,  ,.- ,.,'/`''`,,_ ,,/
        `''ゞ-‐'" `'ヽ、,,、,、,,r'
          ,ノ  ヾ  ,, ''";l
         ./        ;ヽ
        .l   ヽ,,  ,/   ;;;l
        |    ,ヽ●/    ;;;|
        |   ,' ;;;l l ;;'i,   ;|
        li   /  / l `'ヽ, 、;|
       l jヾノ ,ノ  ヽ  l  ,i|
       l`'''" ヽ    `l: `''"`i
       .l ,. i,'  }     li '、 ;;' |
        l ; j / _, -― ' ̄ ̄`ー‐-、_
 , .--、,,__,,-' ̄;;"`´ ;; __  __, -―- 、;; ̄`l
 ;;  ,__   ;;'    r ' ´;;; ヽ_ゝ_;;|    lヽ, /
;, Y´| l  __  /`'| |   |  l  l;|     l ヽ
  | |.;;l_,-'l | V | |.l .|   .|    l  i i   | ;lヽ
 |.| ''.|/ l  |;;;| | | | ;|  |   | ;l l| i ;;;; l | l
;; i /   .il /| |.| |  |   i  |   | l i  '`i l /


ズウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン…………!!!!!!!!!!!!




( ,,^Д^)「ビィーーーーーーーーーーーッグ!!!!!トレジャーーーーーーーーーーッッッ!!!!!!」




ビッグ・トレジャーその人である!!!


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4名無しさん:2018/03/11(日) 15:53:41 ID:MB1Msye.0
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ここで改めて読者諸兄に説明をしよう!!!
ビッグ・トレジャーとは、豪腕無双健脚無比、快刀乱麻のスーパーヒーローである!!!

その腕力は数多のヴィランたちを退け、その走力はいかなる事件現場にも瞬時に駆けつける!!!

なぜ彼は素っ裸なのか!!!それは彼の全力(フルパワー)に耐えうる衣服が、この世に存在しないから!!!

ゆえに今日も彼は、フルチンで街を激走する!!!優しき巨チン、ビッグ・トレジャー!!!

これは彼の率いるヒーローとヴィランの、熱き攻防の全史である!!!


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5名無しさん:2018/03/11(日) 15:54:30 ID:MB1Msye.0
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6名無しさん:2018/03/11(日) 15:55:25 ID:MB1Msye.0
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ーーー
ーー



(;‘_L’)「あぁ……大丈夫かな……」ソワソワソワソワ

ζ(゚ー゚*ζ「あら、あなた。何をしてらっしゃるの?」

(;‘_L’)「いやぁ……何となく落ち着かなくて……やはり僕たちもついていった方が良くないかな?」

ζ(゚ー゚*ζ「心配性ねぇ。大丈夫、この娘は私たちの娘ですよ?」

ζ(゚ー゚*ζ「それに私たちがお邪魔しても、何の話をしてるかも分からないわよ」

(;‘_L’)「そうかもしれんが……困ったことがあったら、パパたちにすぐ電話するんだぞ?」

ζ(゚ー゚*ζ「私たちは観光してるから、ゆっくりお話して来なさいな」


川 ゚ -゚) チョコーン


川 ゚ -゚)「うん、分かった。そうする」


クォッサ=サリエリ(当時九歳)


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7名無しさん:2018/03/11(日) 15:57:45 ID:MB1Msye.0
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川 ゚ -゚)「じゃあ、行ってくる。お父さん、お母さん」スタスタ


(;‘_L’)「あぁ……行ってしまった……本当に大丈夫だろうか……」

ζ(゚ー゚*ζ「今日はただの挨拶なんだから、何も起こりはしませんよ」

(;‘_L’)「しかしだなぁ、もし幼女趣味のマッドサイエンティストでもいたらどうする?」

ζ(゚ー゚*ζ「そんなことを心配するより、まずは私をどう楽しませてくれるか考えるのが先じゃなくて?」

ζ(゚ー゚*ζ「せっかくの夫婦水入らずのデートなんですから、杞憂は忘れて楽しみましょう?」

(;‘_L’)「あ、あぁ……そうだな。すまない、君のことを考える余裕がなかったみたいだな」

ζ(゚ー゚*ζ「私、経済センタービルに行ってみたいわ。クーに聞いたんだけど、あそこ見晴らしが凄くいいんですって!」

(‘_L’)「うん。それじゃまずはそこから行ってみようか」

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8名無しさん:2018/03/11(日) 15:58:33 ID:MB1Msye.0
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ーーーーー
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ーーー
ーー



【総合科学技術研究所】



川 ゚ -゚)「……」ウィーン



( ‘∀‘)「……あら?」

川 ゚ -゚)「こんにちは」

( ‘∀‘)「こんにちは。どうしたのお嬢ちゃん、迷子かしら?」

川 ゚ -゚)「ロマノフ博士に面会させて頂けますか。アポは取ってあります」

( ‘∀‘)「あら……博士のご家族?」

川 ゚ -゚)「いえ、違います。個人的な面会です」

( ‘∀‘)(妙に大人びた娘ね……博士の隠し子かしら?)

( ‘∀‘)「ちょっと待っててくれるかな?今博士に繋げるから」


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9名無しさん:2018/03/11(日) 15:59:39 ID:MB1Msye.0
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( ‘∀‘)「……」トゥルルル、トゥルルル


『はーい……何であるかー……?』ガチャ


( ‘∀‘)「ロマノフ博士、ご来客がありますが通してもよろしいですか?」


『来客ゥ……?今日は誰と会う予定であったか……』


(;‘∀‘)「ちょっと博士、しっかりしてくださいよ」

( ‘∀‘)「お客さん待たすことになっても、知りませんからね?」


『スケジュール管理は秘書に任せておるでな……それで、来客者はどなたかね?』


( ‘∀‘)「あ、えーと……お嬢ちゃん、お名前は?」

川 ゚ -゚)「クォッサ=サリエリです」

( ‘∀‘)「クォッサ=サリエリさんですって」


『何ィィィィィィィィィィィィィッッッッッッッ!!!???』


(;‘∀‘)「うるさっ……」


『すぐに応接室へお通ししなさいッッッ!!!今すぐ!!!今すぐにだッッッ!!!』


(;‘∀‘)「は、はい……?」


『ワシとしたことがこんな大事な用を忘れるとは……不覚なり!!!』

『ダッシュで行くから待っとるんじゃぞーーーーーーーーい!!!!』


(;‘∀‘)「……」

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10名無しさん:2018/03/11(日) 16:01:31 ID:MB1Msye.0
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( ‘∀‘)「ごめんね。博士なにか興奮してるみたいで」

川 ゚ -゚)「いえ、お気になさらず。歳を召されるとよくあることです」

(;‘∀‘)「そ、そうね……それじゃあ応接室までご案内するわね?」

川 ゚ -゚)「はい。よろしくお願いします」



…ドドドドドド



( ‘∀‘)「……えっ?」

川 ゚ -゚)「ん?」




( ФωФ)「クォッサ博士ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」ドドドドドド!!!


(;‘∀‘)「きゃあ!?」ビクッ

川 ゚ -゚)「おぉ……」

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11名無しさん:2018/03/11(日) 16:02:19 ID:MB1Msye.0
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(;‘∀‘)「な、何してるんですか博士!!ビックリしたじゃないですかぁ!!」

川 ゚ -゚)「初めまして、ロマノフ博士。お歳に似合わぬ健脚、お見事です」

(;ФωФ)「ハァッハァッ……こ、こちらこそ……ゴフッ、お初にお目にかかるである……クォッサ博士……オゥエッ」

(;‘∀‘)「ほらー!変に走るからすごいむせてるじゃないですか!!」

(;ФωФ)「こ、これが走らずにおられるか……!!」

(;ФωФ)「この娘は我が研究所の迎えた新たなる頭脳、クォッサ=サリエリ女史だぞ……!!」

(;‘∀‘)「そ、そうなんですか……?」

川 ゚ -゚)「恐縮です。私も、博士のご高名はかねがね伺っております」

川 ゚ -゚)「稀代の変態……いや変人……いや天才だと」

(;ФωФ)「誉めるならもっとスムーズに誉めてくれんかね?」

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12名無しさん:2018/03/11(日) 16:03:27 ID:MB1Msye.0
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( ФωФ)「さぁさ、クォッサ博士。ここからはワシが応接室まで案内しよう!!」

( ФωФ)「ガーナくん、コーヒーを淹れてくれ。それとも紅茶が良いかな?」

川 ゚ -゚)「では、紅茶を」

( ФωФ)「よしよし。彼女に紅茶と、ワシにはコーヒーをガムシロ増し増しで頼む」

(;‘∀‘)「また激甘コーヒーですか。ほどほどにしないと糖尿で死にますよ?」

( ФωФ)「走ったから糖分消費したんじゃい。それくらい目ぇ瞑らんかい姑じゃあるまいに」

(;‘∀‘)「分かりましたよぅ……他の研究員さんに怒られても知りませんからね!」

川 ゚ -゚)「ロマノフ博士はユニークな方ですね」

( ФωФ)「フハハ。ワシなぞ老いらくの徒花よ」

( ФωФ)「真にユニークなのは、クォッサ博士の発想と柔軟性ですぞ!」

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13名無しさん:2018/03/11(日) 16:06:33 ID:MB1Msye.0
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ーーーーー
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ーー


( ФωФ)「クォッサ博士の循環エネルギー論の論文、読ませていただきましたぞ」バリボリ

( ФωФ)「あれこそまさに斬新にして質実剛健!!新時代の到来と言えましょうな!!」バリボリ

川 ゚ -゚)「ありがとうございます。その道の権威である博士に、そう仰っていただけるのは本望です」

( ФωФ)「しかし悲しいかな、博士の論文を実用化させられるだけの施設は、このアメリカでも数少ない」バリボリ

川 ゚ -゚)「えぇ。大規模なエネルギー発生装置と、相互循環機構の両方が無くては成し得ません」

川 ゚ -゚)「ですがこちらなら、すぐにでも私の理論の実証が可能なのではと思いましたので」

( ФωФ)「その慧眼は正しかったと言わざるをえませんな!!」バリボリ

( ФωФ)「ここならハイレベルな物理演算装置から本物のロケットエンジンまで、心ゆくまで手広く扱えますぞ!!」バリボリ


( ‘∀‘)「失礼いたします……」ウィーン

(;‘∀‘)「あっ!!博士また来客用のお菓子勝手に食べて!!」


( ФωФ)「糖が足りてないんじゃ糖が……クール博士もいかがですかな?」バリボリ

川 ゚ -゚)「いえ、紅茶だけで」

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14名無しさん:2018/03/11(日) 16:07:24 ID:uDn7yIV60
待ってた

15名無しさん:2018/03/11(日) 16:07:24 ID:MB1Msye.0
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川 ゚ -゚)「しかしなぜこんな街中に研究施設を?」

川 ゚ -゚)「郊外に立てた方が、騒音等の苦情もなかったと思うのですが」

( ФωФ)「それなのだよ!!クォッサ博士!!」

( ФωФ)「現在ワシは新たな研究対象を発見しましてなぁ」

川 ゚ -゚)「というと?」

( ФωФ)「ヴィランじゃよ、クール博士」

川 ゚ -゚)「ヴィランですか」

( ФωФ)「きゃつらは人としての常識を逸したパワーを持っている者がほとんどじゃ」

( ФωФ)「そしてその力は時に、覆しようのない物理法則すら容易く越えてしまう」

( ФωФ)「それを解明できれば、人類はまた一歩この宇宙の真理に近づくことが出来る」

( ФωФ)「そのためには、ヴィランの起こす現象をつぶさに観察できる街中がベストなんじゃよ!」

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16名無しさん:2018/03/11(日) 16:08:25 ID:MB1Msye.0
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川 ゚ -゚)「しかし、確か博士の専門分野は機械工学とエネルギー力学だったはず」

川 ゚ -゚)「ヴィラン研究というと、博士の専門分野外なのでは?」

( ФωФ)「なぁに、ここには数多の学術分野の専門家がおりますでの」

( ФωФ)「彼らと協力すれば、いつかヴィランたちの力の謎も解明出来ましょうよ」

川 ゚ -゚)「なるほど。確かにヴィランの生態には、私も興味を惹かれるものがあります」

( ФωФ)「じゃろう?老いた脳細胞には、なおのこと良い刺激じゃよ」

( ФωФ)「おお、そうじゃ!実を言うとこの研究所にも、ヴィランの研究を始めた研究員がおりましての」

( ФωФ)「施設見学がてら、話でもしてやってくれませんかの?」

川 ゚ -゚)「良いのですか?研究の邪魔でなければよいのですが」

( ФωФ)「よいよい。耳の穴かっぽじって聞かせますわい」

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17名無しさん:2018/03/11(日) 16:09:29 ID:MB1Msye.0
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( ФωФ)「おぉーい。アーサーやー」テクテク

(-@∀@)「おや、博士。こんなところに顔を出すなんて珍しいですねぇ?」

( ФωФ)「お主、いま時間はあるか?あるな、あるに決まっとる。よし来い」

(;-@∀@)「相も変わらず強引でらっしゃる……何の用件かくらい仰ってくれても良いのでは?」

( ФωФ)「なに、ちとお主に会わせたい人物が来ておってな」

( ФωФ)「こちら、循環エネルギー論の著者であるクォッサ=サリエリ博士じゃ」

川 ゚ -゚)「どうも、初めまして」ペコリ

(-@∀@)「おぉ、なんと!!貴女があの論文をしたためた、若き才媛でらっしゃいますか!!」

( ФωФ)「こやつはさっき話した、ヴィラン研究家のアーサー=ピーコック博士じゃ」

(-@∀@)「どうもどうも。私、只今紹介に預りました、アーサー=ピーコックと申します」

(-@∀@)「人体力学と人体生理学を専攻しておりますよぉ」

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18名無しさん:2018/03/11(日) 16:10:29 ID:MB1Msye.0
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(-@∀@)「クール博士の論文、私も読ませていただきました!」

(-@∀@)「エネルギーの効率利用化と運用法に関する全く新しいアプローチ!感激しましたとも!」

(-@∀@)「私は産業の歴史の変わる瞬間に、立ち会えたのかもしれませんなぁ!」

川 ゚ -゚)「ありがとうございます」

川 ゚ -゚)「人体生理学に関しては私は門外漢ですが、人体力学の分野ではアーサー博士に教えを請うこともあるかと思います」

(-@∀@)「ははは。あなたのような方に教えることが出来たとなれば、私も一人前ですねぇ!」

( ФωФ)「アーサーよ。彼女はヴィランの肉体構造について興味があるらしいぞ」

川 ゚ -゚)「はい。よろしければお話を伺わせてもらっても?」

(-@∀@)「おぉ、そうでしたか!よろしゅうございますよぉ!」

(-@∀@)「ささ、おかけなさいおかけなさい」

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19名無しさん:2018/03/11(日) 16:11:53 ID:MB1Msye.0
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(-@∀@)「とはいえまだこの分野の研究は、ほとんど進んでいないも同然なのですがね」

川 ゚ -゚)「そうではないかと思っていました」

( ФωФ)「ほう。と言うと?」

川 ゚ -゚)「サンプリングがあまりにも少なすぎる、というのが一点」

川 ゚ -゚)「これは倫理的な観点はもとより、ヴィランに協力を仰ぐことの困難さにも依ると思います」

(-@∀@)「その通り!さすがクォッサ女史は問題点が分かっていらっしゃる」

(-@∀@)「奴らは素手で装甲車をも破壊する、人の形をしたモンスターなのですよ」

( ФωФ)「警察や、時には軍隊の手にも余る者を、一介の科学者がどうすることも出来ん」

川 ゚ -゚)「出来るとすれば死亡したヴィランの検死でしょうか」

(-@∀@)「名のあるヴィランほど、死体の挙がるような死に方はしませんでしょうなぁ」

川 ゚ -゚)「なるほど……問題の根は思ったより深そうですね」

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20名無しさん:2018/03/11(日) 16:12:50 ID:MB1Msye.0
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(-@∀@)「それでも、擬似的な形でのデータ収集はコツコツと積み上げてございますよ!」

川 ゚ -゚)「擬似的……?」

( ФωФ)「クール博士は、ヴィランと対になるヒーローなる者の存在はご存知ですかな?」

川 ゚ -゚)「えぇ。聞き齧った程度ですが、ヴィランと戦い治安を守る者もいるとか」

(-@∀@)「彼らは能力的には、ヴィランと比べても何ら遜色はないのです」

(-@∀@)「ただ違うのは、それを悪用する意志があるか否かだけでございます」

(-@∀@)「ですからまず私とロマノフ博士は、彼らに聞き取り調査をすることから始めたのです」

( ФωФ)「すると、彼らの大半は元は我々と同じ、普通の人間であったということが判明したんじゃよ」

川 ゚ -゚)「ふむ……では、彼らと我々を分ける物とは、一体何だったのでしょうか?」

(-@∀@)「それなのですが……ヒーローとなった人間には、みな一様に共通点がありましてね」

川 ゚ -゚)「興味深い。その共通点とはなんです?」

(-@∀@)「彼らはみな、夢を見ているのでございますよ。クォッサ博士」

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21名無しさん:2018/03/11(日) 16:13:40 ID:MB1Msye.0
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川 ゚ -゚)「ほう……?」

(-@∀@)「なんでも彼らは、あの力を得る以前に、何者かに語りかけられるような夢を見たとか」

(-@∀@)「暗闇の中で、ぼんやりと光る発光体に話しかけられたと」

(-@∀@)「惜しむらくは、会話の内容まで覚えている方がいなかったということでしょうかねぇ」

川 ゚ -゚)「まるでSF映画かおとぎ話のような話ですね……疑う訳ではないですが」

( ФωФ)「だが、統計は恣意的な物でない限りは嘘をつかんよ」

(-@∀@)「なにぶんヒーローの数も乏しいので、今のところ二十名ほどしかデータは取れていませんが」

(-@∀@)「その半数以上が、夢をきっかけに能力に目覚めたと言っているんですねぇ」

川 ゚ -゚)「二十名ですか。まだまだ情報量としては不足していますね」

(-@∀@)「えぇ、えぇ。今後新たにヒーローとなる方の誕生が待たれますねぇ」

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22名無しさん:2018/03/11(日) 16:14:34 ID:MB1Msye.0
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(-@∀@)「ところで、クォッサ女史?」ソワソワ

川 ゚ -゚)「はい?」

(-@∀@)「実を言うと私、博士のお話も聞いてみたいのですが〜……」

( ФωФ)「なんじゃ、お前は。クォッサ博士はこれから施設見学じゃぞ?」

(-@∀@)「あの革新的な論を見せられて、話もしたくならないのはモグりでしょう!」

(-@∀@)「お時間は取らせません、五分……いや三分で結構ですから」

川 ゚ -゚)「そんなかしこまらなくとも、好きなだけ質問なさってください」

( ФωФ)「これでは、どっちが年長者か分からんな……」

(-@∀@)「またまた〜!ロマノフ博士も座談は望むところでございましょう?」

( ФωФ)「う、うむ……まぁ、な……」ソワソワ

川 ゚ -゚)「では、見学は後に」

( ФωФ)「すみませんなぁ、クォッサ博士」

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23名無しさん:2018/03/11(日) 16:15:13 ID:MB1Msye.0
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川 ゚ -゚)「しかし、こういう言い方は僭越ですが」

( ФωФ)「うむ?」

川 ゚ -゚)「二人とも本当に無邪気で、研究に対して熱心であられるのだなと」

(-@∀@)「それだけが取り柄のようなものでございますからねぇ〜」

( ФωФ)「ま、こやつからそれを除いたらメガネしか残りませんからな」

(;-@∀@)「もっと残りますよ!失礼な!」

川 ゚ -゚)「フフ……私もそうありたいものです」



ヴィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!



川 ゚ -゚)「……?」

( ФωФ)「おや?」

(-@∀@)「何でしょう、この音?」

( ФωФ)「これは……市の非常事態警報じゃな?」

川 ゚ -゚)「何かあったんでしょうか?」

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24名無しさん:2018/03/11(日) 16:16:04 ID:MB1Msye.0
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(-@∀@)「ちょっと待ってください。今調べますから」カタカタカタ

川 ゚ -゚)「すみません、お手数をおかけします」

( ФωФ)「して、なんじゃって?」

(-@∀@)「ん〜……どうやら複数のヴィランが、街で暴れているらしいですねぇ」

(-@∀@)「暴動の危険性があるので市民は警察の指示に従って避難するように、と」

( ФωФ)「なに!?本当か?」

川 ゚ -゚)「そんなことがあるんですか?」

(-@∀@)「いえいえ。ヴィランは基本的に単独行動を好みますから、我々も始めての経験ですよ」

( ФωФ)「フム……よし、いっちょ表に出るか!!」

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25名無しさん:2018/03/11(日) 16:17:28 ID:MB1Msye.0
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川 ゚ -゚)「そうですね。我々も早く避難した方が……」

(-@∀@)「え?」

( ФωФ)「え?」

川 ゚ -゚)「……違うのですか?」

(-@∀@)「あぁ〜……いえあのですね、我々としては研究対象であるヴィランを間近で観察できるチャンスでして」

( ФωФ)「詳細な検査は出来なくとも、目で見て初めて分かることも多くありますでな」

川 ゚ -゚)「では、まさか現場まで行くのですか?」

( ФωФ)「えぇ。クォッサ博士は他の職員と避難していてくだされ」

(-@∀@)「貴重なお話の機会を、こんな形で失いたくはなかったですがねぇ」

川 ゚ -゚)「……承知しました」

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26名無しさん:2018/03/11(日) 16:18:32 ID:MB1Msye.0
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(;‘∀‘)「博士ー!!」ウィーン

( ФωФ)「おん?なんじゃ大声出して」

(;‘∀‘)「避難警報聞こえてなかったんですか!?他の皆さんはもう逃げ始めてますよ!!」

(-@∀@)「あ、我々ちょっと出かけますんで、皆さんお先に避難なさってください」

(;‘∀‘)「こんな時にお出かけ!?」

( ФωФ)「これだけの研究対象を目の当たりにして科学者が逃げられるか!!」

(;‘∀‘)「そんなこと言ってる場合じゃないですよ〜……」

(-@∀@)「ガーナさん、避難区域はどこまで指定されてました?」

(;‘∀‘)「市内全域ですけど、経済センタービル周辺の住民は特に危険なので早い避難をと……」

川;゚ -゚)「……!?」

(-@∀@)「なるほど経済センタービルの周辺に行けばヴィランがいると!」

( ФωФ)「ナイス情報じゃ!」

(;‘∀‘)「あぁっ、火に油!!」

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27名無しさん:2018/03/11(日) 16:19:20 ID:MB1Msye.0
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川;゚ -゚)「あの、すみません。経済センタービル周辺はいま危険なんですか?」

(;‘∀‘)「えっ……えぇ。お巡りさんが言ってたから間違いないと思うけど……」

(-@∀@)「どうかしましたか?クォッサ博士」

川;゚ -゚)「両親が、私を待つ間に経済センタービルで観光してゆくと言っていました……」

(-@∀@)「なんと!」

( ФωФ)「電話は、繋がらんのかね?」

(;‘∀‘)「多分ムリですよぉ……私も試したけど、回線が混雑してるみたいで……」

川;゚ -゚)「博士、私もお二人に同行させてください」

(-@∀@)「よろしいのですか?危険極まる行軍となりますが」

川;゚ -゚)「両親の安否が気になります。お手間はかけさせません」

( ФωФ)「……分かりました。くれぐれも気をつけてくだされ」

(;‘∀‘)「勝手に決めないでくださいよぉ!!」

.

28名無しさん:2018/03/11(日) 16:20:45 ID:MB1Msye.0
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(-@∀@)「となれば私、さっそく車を回して参りますよぉ!」

( ФωФ)「いや、車じゃと避難しとる人間とかち合ってろくに動けん。ここはワシのハーレーで行こう」

川;゚ -゚)「ハーレー……?」

( ФωФ)「ワシの自慢の愛車じゃよ。フフフ……」

(-@∀@)「なんとハーレーで三ケツとは!!胸が踊りますねぇ!!」

(;‘∀‘)「ちょっと博士!クォッサ博士にケガでもさせたら責任問題ですよ!」

( ФωФ)「ガーナくん。これは人命に関わる問題じゃ。ここは一つ寛大な心で見逃してはくれんか」ポンッ

(;‘∀‘)「博士……」

(*>ωФ)「他のみんなには黙っててくれたまえよ☆」バチコーン!!

(;‘∀‘)「あぁ……もうダメだこの人……!!」

.

29名無しさん:2018/03/11(日) 16:21:52 ID:MB1Msye.0
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ーーーーー
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ーーー
ーー


(;"ゞ)「署長!!フラバンヌ広場でヴィランの襲撃があったと通報が!!」
  _
(;゚∀゚)「兄貴!!ファイリアストリートでヴィランが道路を封鎖しちまったって!!」

从#゚∀从「チィッ!!こっちは割ける人員なんざ残ってねーっつーの!!」

从#゚∀从「ジョー!!軍の連中はどうしてる!?」
  _
(;゚∀゚)「ダメだ!!奴ら暴徒の鎮圧に手一杯でこっちまで手が回んねー!!」

从#゚∀从「余分に派兵しとけってんだバカヤロー!!ヴィランなめてんじゃねーぞ!!」

从#゚∀从「追加で支援要請出しとけ!!被害次第じゃ大統領のクビが飛ぶぞってな!!」
  _
(;゚∀゚)「わ、分かった!!」



……ブロロロロロロロロロロ



从#゚∀从「……あん?」


.

30名無しさん:2018/03/11(日) 16:23:19 ID:MB1Msye.0
.


( ФωФ)「Fooooooooooo!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」ブロォンッ

(*-@∀@)「yaaaaaahaaaaaa!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

川; - )「……ッ」



ビュンッ!!!



从;゚∀从「どわっ!?」

从;゚∀从「な、なんだ今のは……?」

(;"ゞ)「新手の暴走族ですかね?」

从;゚∀从「祭りと見りゃ特に変なヤツが湧きやがるな……」

从 ゚∀从「あんな死にたがりのバカは後回しだ!!デルタ、オメーはジョーと避難民の誘導に当たれ!!」

( "ゞ)「了解!!」

.

31名無しさん:2018/03/11(日) 16:24:16 ID:MB1Msye.0
.

( ФωФ)「ムッ!!」ブロンッ

(-@∀@)「どうしました?」

( ФωФ)「アーサー、聞こえんか?この先から発砲音がする」

(-@∀@)「本当だ。齢によらず耳がよろしいですね」

( ФωФ)「抜かせアホ。ここからは見つからんように徒歩じゃな」

(-@∀@)「クォッサ博士は大丈夫ですか?」

川;゚ -゚)「えぇ……少々動悸はしますが……」

( ФωФ)「ビルまではもう少しです。頑張りましょう」

川;゚ -゚)「はい……」

.

32名無しさん:2018/03/11(日) 16:26:54 ID:MB1Msye.0
.

(-@∀@)「しかしまぁ何と言いますか……」コソコソ


タタァン!!パンパンパン!!


(-@∀@)「思っていた以上に大事になりつつあるようですねぇ」


キャー!!


( ФωФ)「当たり前じゃ。避難命令出とるんじゃぞ」ヒソヒソ


ウォォォォ!!


(-@∀@)「おぉ。軍も鎮圧に来なすってますねぇ」

(-@∀@)「分かっていたとはいえ、我々の場違い感は拭えませんな」

川;゚ -゚)「……」

( ФωФ)「クォッサ博士。心配せずともご両親はきっと無事じゃよ」

川;゚ -゚)「……はい」

(-@∀@)「どれどれ、今回の収穫は〜……肉体強化型ヴィランと異能型のヴィランが一体ずつですかね」

( ФωФ)「そのようだな」

(-@∀@)「これではさほどの収穫とも言えませんねぇ」

(-@∀@)「とりあえず録画だけでもしときましょうか」ジーーコ

.

33名無しさん:2018/03/11(日) 16:27:50 ID:MB1Msye.0
.

(-@∀@)「軍はどう制圧をかけますかねぇ」

( ФωФ)「銃で包囲して終わりじゃろ。いくら強いと言っても人海戦術にゃ勝てん」

(-@∀@)「まぁそうなりますか」

川;゚ -゚)(お父さん、お母さん……どこ……?)キョロキョロ



ヒュウゥゥゥ……




( ФωФ)「ん?」

(-@∀@)「何でしょう、この音……?」





( #,,^Д^)「ヌオォォォォォォォォオオオオオオ!!!!!」ズドォンッ!!



(# ゚∀゚ )「ヒャアァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」ズドォンッ!!





川;゚ -゚)「……!?」

(;-@∀@)「あっ、あれは!?」

(;ФωФ)「ビッグ・トレジャーと……なんじゃあの男は!?」


.

34名無しさん:2018/03/11(日) 16:28:54 ID:MB1Msye.0
.



(# ゚∀゚ )「シャアァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」


( #,,^Д^)「オオオオォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!」




川;゚ -゚)「す、凄い……弾丸を全て弾いてる……」

川;゚ -゚)「けどなんで全裸……?」

(;-@∀@)「あの男、ビッグ・トレジャーと互角に渡り合っておりますよ!!」

(;ФωФ)「一体何者……」ハッ

(;ФωФ)「……そういえば昔、警察関係者から聞いたことがある」

(;-@∀@)「なんですって?」

(;ФωФ)「数年前、身の丈ほどもある刃物を持って大暴れしたヴィランがおったと」

(;ФωФ)「今は鳴りを潜めているらしいが……それがあの男なのか?」

.

35名無しさん:2018/03/11(日) 16:30:44 ID:MB1Msye.0
.

(;-@∀@)「身の丈ほどもある刃物……」




(# ゚∀゚ )「シャラァッ!!」ザンッザンッ

( #,,^Д^)「ヌゥッ!!」ヒュンッ




(;-@∀@)「確かに、持っておりますね……」

(;-@∀@)「もしやあの方、ビッグ・トレジャー級の怪物なのでは?」

川;゚ -゚)「二人の走った跡がクレーターになっています……」

(;ФωФ)「このような現象は初めて見る……アーサー、録画を!!」

(;-@∀@)「はい、もちろん!!」ジーーコジーーコ

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36名無しさん:2018/03/11(日) 16:31:19 ID:qkPS3g2o0
しえん

37名無しさん:2018/03/11(日) 16:31:43 ID:MB1Msye.0
.

(;ФωФ)「しかし、ヒーローとヴィラン……よもやこれほどのものか」

(;-@∀@)「えぇ。ここまで破壊に特化した生物とは……」

川;゚ -゚)「見て下さい。彼らの衝撃で飛散したアスファルトが、コンクリートの壁に突き刺さってます」

(;ФωФ)「ほとんど隕石のような物ではないか……迂闊に動けんぞこれは」

(;-@∀@)「一体どこから、あのような運動エネルギーが捻出されるやら」

川;゚ -゚)「……ビル、大丈夫でしょうか」

(;ФωФ)「……すまん。これは安易に大丈夫と言えるか分からなくなってきた」

(;ФωФ)「今はご両親が、すでに避難しておることを願おう」

.

38名無しさん:2018/03/11(日) 16:33:05 ID:MB1Msye.0
.

(# ゚∀゚ )「トレジャァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!」

(# ゚∀゚ )「逃げるんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」

(#,,^Д^)「お前こそ、今すぐ破壊活動を止めるんだ!!!!ファニー・フェイス!!!!」

(# ゚∀゚ )「ハッ!!俺を止めたきゃ……」ググンッ

(# ゚∀゚ )「テメェが死になッッッ!!!!!!!」



ファニーフェイスは一瞬刃を引き、腰に強力な『溜め』を作った!!!
その溜めを解き放つや、刃はバネを得たかのように鋭く回転する!!!



( ,,;^Д^)「ヌゥッ……!!!」

( ,,;^Д^)(いかん、これは……避ければビルに直撃する!!!)

( #,,^Д^)「オオオオォォォォォ!!!!!」



百戦錬磨のビッグ・トレジャーは、その攻撃が不可避であることを即座に悟った!!!
故に、襲いかかる刃を拳で迎え撃ち、その軌道を反らそうとしたのである!!!


.

39名無しさん:2018/03/11(日) 16:34:29 ID:MB1Msye.0
.

だがしかし!!!ファニーフェイスの挙動は、その動きをさらに上回った!!!



(  ゚∀゚ )「ヒャハッ……!!」ニタァッ



彼は、ほんの一秒にも満たい瞬く間に!!!
拳から刃が逃げるよう軌道を変え、トレジャーの脚を狙ったのだ!!!



( ,,;^Д^)「何ッ……!!?くぅっ!!!」



さすがのトレジャーといえど、これには緊急回避を取らざるを得なかった!!!
とっさにジャンプしかわした刃は、ピザにピックを立てるがごとく、ビルの壁面へと容易にめり込んだ!!!


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40名無しさん:2018/03/11(日) 16:35:22 ID:MB1Msye.0
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ファニーフェイスの刃は



(;-@∀@)「あっ!?」



激しい衝撃波を迸らせながら



(;ФωФ)「なんじゃと……!?」



質量の差など物ともせずに、ビルを真っ向から分断した!!!!!



川;゚ -゚)「お父さんっ、お母さん!!」



.

41名無しさん:2018/03/11(日) 16:37:20 ID:MB1Msye.0
.

(;ФωФ)「マズイ!!!逃げるぞ!!!」

(;-@∀@)「はいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」


川;゚ -゚)「……!!」タタッ


(;-@∀@)「あっ!!ダメですクォッサ博士!!そちらは危険です!!」

(;ФωФ)「いかん!!走れアーサー!!」

(;ФωФ)「クォッサ博士ーーーーーー!!!!」




川;゚ -゚)(お父さん、お母さん……!!)

川;゚ -゚)(どうか、死なないで!!)タタッ


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42名無しさん:2018/03/11(日) 16:38:20 ID:MB1Msye.0
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轟音と共に崩れ去る、かつてビルだったコンクリートの塊。

それが頭上に降り注いだ瞬間、クォッサ博士は、闇の中に意識が消え去るのを感じた。







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43名無しさん:2018/03/11(日) 16:39:52 ID:MB1Msye.0
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ーーー
ーー








川 - )(……)

川 - )(……あれ……私、まだ……生きて……?)

川 - )(暗い……それに、なんだか、寒い……)

川 - )(お父さん……お母さん……ごめんなさい……)









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44名無しさん:2018/03/11(日) 16:42:02 ID:MB1Msye.0
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『生存者はいないか!!』

『ダメです、応答ありません!!』

『諦めるな!!呼び掛けを絶やすんじゃない!!』





川 - )(……)

川 - )(……声、聞こえる)

川 - )(でも、駄目……動けない……声も、出ない……)

川 - )(……助けて、誰、か)



……prrrr、prrrr!!



川 - )(……?)



『おい。今なにか音がしたぞ!!』

『こっちだ!!』ガラッ

『掘削機を早く……うわっ!?』



ガラッ、ガシャ、ガシャァンッ!!!



川 - )(……あ)


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45名無しさん:2018/03/11(日) 16:43:47 ID:MB1Msye.0
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( ,,;^Д^)「大丈夫か……少女よ……!!」ガシャッ、ガシャッ

( ,,;^Д^)「もう、安心だ……すぐに瓦礫を……撤去する……!!」

( ,,;^Д^) スゥゥゥッ

( ,,;^Д^)「生存者1名発見ーーーーーーーーーー!!!!ただちに担架の用意をーーーーーーーーー!!!!」

(;´・_ゝ・`)「サー・トレジャー!!あなたも重傷なんですから、病院へ直行して下さい!!」

( ,,;^Д^)「駄目だ……私が奴の攻撃を避けたせいで、ビルが……!!!」

( ,,;^Д^)「グッ……!!」グラァッ


ドサァッ……


(;´・_ゝ・`)「サー・トレジャー!!」


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46名無しさん:2018/03/11(日) 16:45:48 ID:MB1Msye.0
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少女と隣り合うように倒れたビッグ・トレジャー。
その手は、瀕死の彼女の手のひらを包むかのように重ねられた。




川 - )(……あれ?)


川 - )(……なんだか、すっごく)


川 - )(……あったかいや)




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47名無しさん:2018/03/11(日) 16:47:34 ID:MB1Msye.0
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ーー



【十五年後、総合科学技術研究所カフェテラス……】



川 ゚ -゚)「……それが、私とトレジャーの初めての出会いだったのさ」

*(;‘‘)*「ひぇぇ……」

川;д川「よく生きてたわねぇ、博士……」

川 ゚ -゚)「自分でも驚愕しきりだよ。何せ、三日間も瓦礫に閉じ込められていたんだからな」

*(;‘‘)*「人間の生命力パないですぅ」

川 ゚ -゚)「その後はまぁ、ご存知の通り。長らえた命をヒーロー活動の一助に使っているよ」

川 ゚ -゚)「ロマノフ博士には悪いことをしたな……あの後、私へ向けて何度も謝罪しにきたよ」

川д川「そりゃするでしょう。責任のほぼ全ては間違いなくその博士にあるんだし」

川 ゚ -゚)「責める謂われはないさ。あれは研究者として至極正しい姿勢だ」

川 ゚ -゚)「両親はなんとか責任を取らせようと、躍起になっていたがね」

.

48名無しさん:2018/03/11(日) 16:48:15 ID:MB1Msye.0
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*(‘‘)*「……あれっ?」

川 ゚ -゚)「なんだ、ヘリ?」

*(‘‘)*「クー博士のご両親、ビルの崩落に巻き込まれたのに生きてたですか?」

川 ゚ -゚)「あぁ、それなんだがな……」

川 ゚ -゚)「二人とも、デートコースを直前になって変えたせいで、経済センタービルには行っていなかったんだ」

*(;‘‘)*「えぇぇぇ……」

川;д川「なんという理不尽な……」

川 ゚ -゚)「おかげで二人とも、私が足を失ったのは自分たちのせいだと嘆く嘆く」

川;д川「そりゃそうでしょうよ」

川 ゚ -゚)「だが、両親がいなければ今の私がなかったのも確かなんだ」

.

49名無しさん:2018/03/11(日) 16:49:09 ID:MB1Msye.0
.

川 ゚ -゚)「あの日、瓦礫の下で私は、声を出すことも出来ないほど衰弱していた」

川 ゚ -゚)「その時、両親は私の身を案じて、何度も電話をかけてくれていたんだ」

川 ゚ -゚)「そして、災害時の混線状態にも関わらず、一度だけ通話が繋がった」

川 ゚ -゚)「その着信音をトレジャーの優れた聴力が拾ったから、私はあの絶望的な状況から救われたんだ」

川д川「へぇー……」

*(‘‘)*「すごい奇跡ですねぇ」

川 ゚ -゚)「あぁ。両親の愛とトレジャーの献身がなければ、今ごろ私はここにこうしていなかったよ」

*(‘‘)*「いい話しですぅ」

川д川(そもそも両親が行き先変えたの伝えてれば、事故にも遭わなかったんじゃ……?)

.

50名無しさん:2018/03/11(日) 16:50:26 ID:MB1Msye.0
.

川 ゚ -゚)「さて、昔話は終わりにしよう」

川 ゚ -゚)「ファニーフェイスも再び動き出した。我々も、備えは欠かないようにしないとな」

*(‘‘)*「ハイです!!」

川д川「当然よね〜」

川 ゚ -゚)「失った脚の落とし前は、必ずつけさせる」

川 ゚ -゚)「それが今の私の、レゾンデートルだ」

川 ゚ -゚)「フ、フフ……フフフフフ……」

*(;‘‘)*「うわぁ……」

川;д川「博士って、アッサリしてるようで意外と執念深いのねぇ……」


.

51名無しさん:2018/03/11(日) 16:51:06 ID:MB1Msye.0
第十五話終わり

52名無しさん:2018/03/11(日) 16:52:13 ID:MB1Msye.0
.

【登場人物紹介】


( ФωФ)

サルバトーレ=ロマノフ

工学博士。クーの恩師であり、総合科学技術研究所を立ち上げた人物。
才能は年齢、性別、人種問わずに相応しく評価されるべきとの持論を持つ。
現在は第一線を退き、研究所の全権をクーに譲渡している。大の甘党。


( ‘∀‘)

ガーネット=コナー

総合科学技術研究所の受付嬢。現在は結婚し寿退職している。
ロマノフを実の祖父のように扱っては周囲から怒られていた。


(-@∀@)

アーサー=ピーコック

人体工学と人体生理学の知識を生かし、ヴィランの研究をする若き学者。
その鋭い見識を買われ、後にヴィラン収容所へヘッドハンティングされた。
引き抜きを受けた理由はもちろん、「研究材料に事欠かないため」である。

.

53名無しさん:2018/03/11(日) 16:52:51 ID:MB1Msye.0
.

ζ(゚ー゚*ζ

ディレッタ=サリエリ

クーの母親。おっとり系美人。
娘を溺愛して止まない。特技は裁縫。



(‘_L’)

フィリップ=サリエリ

クーの父親。高校で教鞭を取っている。
妻と娘が呆れ返るほどの心配性である。


.

54名無しさん:2018/03/11(日) 16:53:27 ID:3BGHHkaU0
新スレ乙
これから読む

55名無しさん:2018/03/11(日) 16:54:24 ID:MB1Msye.0
.

【用語解説】


・肉体強化型能力者

能力のほぼ全てを身体能力の強化に当てている者を指す。
常人を遥かに凌ぐ肉体パフォーマンスを発揮する事が可能。
また肉体の頑強度も上がるため、倒すことが非常に困難でもある。
現在、ビッグトレジャーレベルであれば、ミサイルの衝撃までなら耐えられることが確認されている。

該当例)ビッグ・トレジャー
    ファニー・フェイス
    モララード=マクレガー他


・異能型能力者

本来、人体には付与されていない能力を得た者を指す。
飛行能力、変身能力、分裂能力等その種類は多岐に渡る。
肉体強化型ほどではないが、こちらも常人よりは強い肉体を持つ。
ただし、銃弾等を弾き返すほどの頑強さは持たない。

該当例)ギコラ=サムスン
    サダコ=アヤセガワ
    ペニーナ=カートレン他


・混在型

肉体強化型のボディをベースに異能までも習得している特殊なケース。
これは特殊超常能力保持者となる以前から、優れた肉体的素養を持っていた者がなるとされている。
現在確認されているのは、ハハジャ=サウスガットの一例のみである。


.

56名無しさん:2018/03/11(日) 16:55:22 ID:MB1Msye.0
長らくお待たせしてすみません。
新スレでもまた楽しんでいただければ幸いです。

57名無しさん:2018/03/11(日) 16:57:16 ID:EnywS.Kw0


58名無しさん:2018/03/11(日) 17:05:25 ID:v8ApbRnU0
おつ
クール博士とクォッサ博士が混ざってるけど仕様?

59名無しさん:2018/03/11(日) 17:06:33 ID:MB1Msye.0
あ、すみません。クォッサ博士の間違いです。
十五年後のメンバーは全員クー博士呼びです。

60名無しさん:2018/03/11(日) 18:30:38 ID:ESksPdFE0
新スレ早々楽しませてくれるなあ乙

61名無しさん:2018/03/11(日) 20:35:52 ID:2EovS8820
ファニーフェイスは刃物使いだったのか

62名無しさん:2018/03/11(日) 20:56:00 ID:L83jPXPE0
おつおつ

63名無しさん:2018/03/12(月) 02:12:27 ID:otuBF44E0
待ってたぞ!乙!

64名無しさん:2018/03/16(金) 10:18:57 ID:NFYJikWA0
前スレからまとめて全部読んでしまった
何度も予想を裏切られて面白い

65名無しさん:2018/03/22(木) 00:46:10 ID:y21lOvgw0
乙です

66名無しさん:2018/04/04(水) 20:28:37 ID:V53fHRGY0
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モララー、お前スモーキータウンって街のこと知ってっか?
アメリカの南の方にある、ゴミ山で出来た町の名前さね。


ゴミ拾いの貧民と浮浪者と、売春婦ばっかりが集まってるような町でよぉ。
住人のほとんどが、ゴミ山の周りに立てられたプレハブに住んでやがるのさ。


街のあちこちでゴミを焼く煙が上がってな、そりゃもう臭ぇの何のって。
聞いた話だと、そこで暮らして30まで生きてる奴は、稀だったんだとさ。


そりゃそうだよなぁ。今でこそダイオキシンだ何だとうるせぇが、あそこじゃ全部垂れ流しだもんな。
俺とあいつ……アヒャルドは、親無しのみなしごとして、その街で生を受けたんだ。

.

67名無しさん:2018/04/04(水) 20:29:38 ID:V53fHRGY0
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ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー


俺とアヒャルドは物心ついた時から、鉄クズ拾い夫としてゴミ山の親方に飼われてた。
貧困層じゃあよくある話だが、貧乏人にも元締めみたいなのがいてな。

そいつを介さないと鉄クズなんざ誰も買っちゃくれねぇから、ガキどもは親方の言いなりになるしかない。
そういうグループの一員として、俺もあいつも毎日鉄を拾っちゃ二束三文で売り払ってたのよ。


(  ゚∀゚ )「……」ザクッ、ザクッ



<おーい!アヒャルドー!



(  ゚∀゚ )「……」ピタッ


Σz ゚ー )リ「アヒャルドー!こっちだこっちー!」

(  ゚∀゚ )「……」

Σz ゚ー )リ「昼飯くすねて来たぜ。お前も食えよ」ポーン

ダスティン=スニッパー(当時14歳)


(  ゚∀゚ )「……」パシッ

アヒャルド=マッケンジー(後のファニーフェイス、当時14歳)


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68名無しさん:2018/04/04(水) 20:31:21 ID:V53fHRGY0
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俺とあいつは、さほど仲良しってこともなかったがよ。
たまにメシを分けあっちゃ、あーでもねーこーでもねーってくっちゃべってたよ。
もっとも、俺が一方的に話しかけてただけで、あいつはほとんど喋らなかったがな。



Σz ゚ー )リ「なぁ、聞いたかアヒャルド」

(  ゚∀゚ )「……」ガツガツ

Σz ゚ー )リ「マートンの奴、昨日親方に食われっちまったとさ」

(  ゚∀゚ )「……」ガツガツ

Σz ゚ー )リ「この辺じゃそこそこ器量良しだったからなー。目ぇつけられるのも早かったな」



あの街じゃ、ガキは利用されるだけされて使い捨てにされる。
力のある男は廃物人夫として一生コキ使われて、そうでない奴ぁ
ヤクザに買われてモツ取られるか、よくて鉄砲玉で人生終わりだ。

俺とアヒャルドは、どっちかってぇと力のある方だったから、まだ命拾いしてたんだよな。

.

69名無しさん:2018/04/04(水) 20:32:27 ID:V53fHRGY0
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自分で言うのも何だが、俺ぁガキにしちゃ目端が効くし、聡いガキだったと思うぜ?
要領よく立ち回る方法も知ってるし、他の奴らの半分の仕事で成果を出す方法も編み出した。
大人に媚びへつらって楽するのも、なんてこたぁなかったぜ。

だからって訳じゃねぇが、俺はどんくさくていつも親方に
殴られてるアヒャルドを、哀れに思ってたんだろうな。
鉄クズ拾いのガキの中でも、あいつは特に不気味で浮いてたからよ。


Σz ゚ー )リ「アヒャルド。お前親方に殴られた傷、痛まねぇのか?」

(  ゚∀゚ )「……別に」ペロリ


奴が殴られて痛がってるとこを、俺は見たことがなかった。
だから親方も、見せしめにするみてぇにあいつを殴るんだ。

それでいて奴は、他のガキみたいに怯えて親方に従うでもない。
ただ淡々と、ゴミにまみれて鉄クズを拾ってるだけだったんだ。
まるでそれが、生まれつき決められた運命だとでも言うみてぇにな。

.

70名無しさん:2018/04/04(水) 20:34:01 ID:V53fHRGY0
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Σz ゚ー )リ「なぁ、アヒャルドよぅ。お前、夢はあるか?」

(  ゚∀゚ )「……」

Σz ゚ー )リ「俺はいつかこんな街捨てて、自力で生きてくのが夢だ」

Σz ゚ー )リ「お前にもあんだろ?そういう、明日への希望ってのがさ」


それを俺が語ったのは、アヒャルドと夢を共有したかったからじゃない。
単なる壁打ちの独り言みてぇなもんだった。
それでも、気晴らし程度にゃなるかなぁと思ってたんだがな。


(  ゚∀゚ )「……ねぇよ、そんなもん」


あいつは無口で無気力で、なんとも話し甲斐のねぇ野郎だったよ。
ただその中で、あいつが予言みてぇに呟いてた一言が、今でも忘れられねぇんだ。


(  ゚∀゚ )「俺がここを出てくのは、あいつを殺した時だけだ」


そんなことを、奴は冗談でもねぇ真顔で言ってのけたんだ。

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71名無しさん:2018/04/04(水) 20:35:08 ID:3yM7PeZE0
支援!!!

72名無しさん:2018/04/04(水) 20:35:14 ID:V53fHRGY0
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Σz ゚ー )リ「あいつって、親方のことか?どうやって殺るつもりなんだよ」


昔のあいつは、俺よりチビで貧相なナリしてたからな。
腐っても大人の親方に、勝てるわきゃねーと思ってたよ。


(  ゚∀゚ )「……」ザクッザクッ

Σz ゚ー )リ「ワケ分かんねー奴。そりゃ夢じゃなくて妄想って言うんだぜ?」


当時はそんなこと言ってたが、今の俺にはハッキリ分かる。
奴の異常な殺気と狂気は、あの時に培われたもんだってな。


『アヒャルドッ!!!』


Σz; ゚ー )リ「やべっ、親方だ!!」

Σz; ゚ー )リ「じゃーなアヒャルド、上手く逃げろよ!」

(  ゚∀゚ )「……」

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73名無しさん:2018/04/04(水) 20:36:34 ID:V53fHRGY0
.

|/#゚U゚|「てんめぇ、またサボりくれてやがったのか!!」


こいつが、俺たちの親方だ。
どんな人間かは……見てもらえば分かる。


|/#゚U゚|「てめぇの鉄クズ集めのノルマは他の倍あんだ!!ちんたらやってるヒマなんざねぇんだよ!!」


ハッキリ言って、これは親方のいちゃもんだった。
あいつはサボッてもなけりゃ怠けてもいなかった。
ただこいつが陰気な顔で黙ってるのが腹立たしくて、他のガキよりキツいノルマを課せてただけなんだよ。

この時だって、行きがけにたまたまアヒャルドの顔を見て、勝手に不愉快になったから近づいてきただけだったんだろうぜ。


(  ゚∀゚ )「……」

|/#゚U゚|「なんだそのツラは?俺に言いたいことがあるなら言えや!!」

ゴッ

(  ∀ )「……ッ」

|/#゚U゚|「てめぇの代わりなんざ幾らでもいるんだ。とっとと働くか、死んでゴミに埋もれるか選びくされ!!」

ゴスッ、ゴスッ!!

(  ∀ )「カハッ……」

|/#゚U゚|「ったく……役に立たねぇなら産まれて来るんじゃねーよ!!バカが!!」ペッ

(  ∀ )「……」ビチャッ


まぁ、お察しの通り、親方は貧乏人の中でも大概なクソ野郎だったよ。
俺らガキの中で、やつの死を望まない奴は一人だっていやしなかった。

.

74名無しさん:2018/04/04(水) 20:37:46 ID:V53fHRGY0
.

親方は、少女売春の元締めでもある。
ゴミの街だけあって、身寄りのないガキを集めるのは鼻クソほじるより簡単だもんな。

奴はほうぼうの娼館に顔が効くし、人脈もそれなりに豊富だって噂だった。
どっちかと言えば鉄クズ拾いより、そっちの方が儲けはデカかったらしい。
ま、こんな街の腐った人脈なんざ、無い方が幾らかマシな人生を歩めるだろうがな。

そして身売りさせられる女は、親方に味見されるのが通例になっていた。
そのあと娼館に売られるか、親方の遊び道具にされるかは、あいつの気分次第だったんだろうぜ。
俺が今でも覚えている、あいつのクソみてぇなセリフがある。


|/゚U゚|『食ったガキの数なんざ100から先は覚えてねぇよ』

|/゚U゚|『俺にとっちゃあんなもん、ヤッた内にも入らねぇからな!』

|/゚U゚|『ま、ディックの錆び落としにゃちょうどいいんじゃねぇか?』


奴は顔見知りの娼館の親父に、そんなことを自慢気に話していた。
聞いたこっちの耳がおかしくなりそうな、ゲスも極まる言い回しだったな。

.

75名無しさん:2018/04/04(水) 20:39:23 ID:V53fHRGY0
.

こんな奴に生殺与奪権を与えりゃ、道理なんてモンもねじ曲がるに決まってる。
だが、それがまかり通っちまうのが世間ってもんだ。

弱者に当たる風は冷てぇままで、ろくな風防も分けちゃもえらない。
慈悲なんてもんは富裕層から順に与えられて、俺たちに届くのは腹の足しにもならねぇコーヒーの出し殻みてぇな役割だけだ。

俺はずいぶんと長いことそう思ってたし、覆ることはないと思ってた。
だから親方がとっととくたばるか、さもなくばここから逃げ出す方法を考えなきゃならねぇと思ってたんだ。

だが、チャンスってのは本当に不意に訪れるもんだ。
俺が親方の元を逃げのびるチャンスは、思ったよりも遥かに早くやってきた。

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76名無しさん:2018/04/04(水) 20:40:02 ID:3yM7PeZE0
ドクズだなぁ

77名無しさん:2018/04/04(水) 20:40:54 ID:V53fHRGY0
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ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー


ある日の夜、親方は虫の居どころが無性に悪かったらしい。
俺らガキをプレハブに集めて、容赦なしにぶん殴りだした。


|/#゚U゚|「ダスティン!てめぇ口車で大人だまくらかして、鉄クズチョロまかしてるそうじゃねぇか!」

Σz; ゚ー )リ「ばっバカ言うなよ!俺はそんなこと一度だって……」

|/#゚U゚|「るせぇ!!ケツモチの俺に泥ぶっかける気か親無しが!!誰のおかげで食っていけてると思ってやがる!!」

ゴスッ!!

Σz; ー )リ「ぐっ……!!」グラッ


こんな調子で、俺たちは謂れのない因縁をつけられ、親方の理不尽な暴力に曝された。
親方の機嫌が悪いときはいつもこうだ。俺たちはサンドバッグなんかじゃねぇってのにな?

そして、こういう時にいつも一番割りを食うのはアヒャルドだった。
親方はアヒャルドを必ず一番最後に残して、一番長いこと殴り続ける。
そこに目的や意図はなくて、単にアヒャルドが嫌いだからそうしただけだったんだろう。

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78名無しさん:2018/04/04(水) 20:42:06 ID:V53fHRGY0
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|/#゚U゚|「極めつけはお前だ、アヒャルド!!」

|/#゚U゚|「てめぇ鉄クズ集めのノルマが全然足りてねぇんだよ!!何考えてやがる穀潰しが!!」

(  ゚∀゚ )「……ちゃんと集めたろ、50kg」

|/#゚U゚|「口応えしてんじゃねぇ!!昨日50なら、今日はそれ以上集めるのが当たり前だろうが!!」

ゴキッ!!

(  ∀ )「……ッ!!」


あろうことか親方は、手近にあった鉄パイプで奴の頭を殴りやがったんだ。


|/#゚U゚|「死ねっ!!てめぇなんざ死んで詫びろ!!」


ゴキッ!!ゴキッ!!ゴキッ!!


Σz; ゚ー )リ「……」


アヒャルドには悪いが、俺にそれを止めるだけの力なんざ皆無だった。
ただ親方の腹の虫が収まるのを、黙って見てるしか出来なかったんだ。

.

79名無しさん:2018/04/04(水) 20:42:51 ID:V53fHRGY0
.

|/;゚U゚|「ハァー…ハァー…」

(  ∀ )「……」クタ…

|/゚U゚|「いいかアヒャルド。てめぇは出来損ないの奇形児なんだよ」

|/゚U゚|「親が妊娠中に放射性物質だかに触れて、気色の悪ぃてめぇみてぇなガキが産まれたんだ」

|/゚U゚|「だから親はてめぇを捨てて、さっさとこの街を出ていった。分かるか?」

|/゚U゚|「そんなお前を食わせてやってる俺は、慈悲深い男だよなぁ?」

|/゚U゚|「分かったら明日から俺の足舐めて、感謝しながら仕事すんだよ!!」

(  ∀ )「……」

|/゚U゚|「チッ……気絶してやがらぁ」

|/゚U゚|「おいダスティン!!酒!!」

Σz; ゚ー )リ「お、おう」


(  ∀ )「……」


Σz; ゚ー )リ(……あいつ、死んでんじゃねーだろうな?)

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80名無しさん:2018/04/04(水) 20:43:48 ID:3yM7PeZE0
頑丈さが不幸を呼ぶのか

81名無しさん:2018/04/04(水) 20:43:53 ID:V53fHRGY0
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介抱してやろうにも、親方の目に止まったら今度は俺が殺されちまう。
誰も手が出せないまま、生き延びていてくれてることを祈るしかない。

だが、どこからどう見ても奴は生きてるように見えなかった。
顔の形が変わるまで殴られたあいつを見て、俺ぁ初めて絶望ってやつを味わったよ。

その日はそのまま嫌な気分で寝ついて、また下らない朝を迎えるんだと思ってた。
夢も希望もクソもねぇ、ただ搾取されて捨てられるだけの、お先真っ暗な人生に。
けど違った。アヒャルドと俺の運命が変わったのは、その夜からだったんだ。



(  ∀ )


(  ∀ )


(  ∀ )「………こ、ろ……す……」ボソッ


Σz; ゚ー )リ「……?」



.

82名無しさん:2018/04/04(水) 20:45:59 ID:V53fHRGY0
.

ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー



Σz ーД )リ「ンガァ……ンゴォ……」

Σz ゚Д )リ「……んぁ?」



(  ゚∀゚ )「……」



プレハブの外、ゴミ山の中で立ち尽くすみたいにして、あいつは空を見上げていた。


Σz ゚ー )リ「アヒャルド……?何してんだ、早く寝ろよ……」

Σz; ゚ー )リ「……!?」


そこまで口にして、俺は気づいたんだよ。
なんで鉄パイプでガンガン殴られた奴が、起き上がってられる?
どう少なく見積もっても、完治まで1ヶ月はかかりそうな重傷を負ってたのに。


Σz; ゚ー )リ「お前……ツラの傷どうしたんだ……?」


ほんの数時間前に、親方に殴られてボコボコにされた奴の顔。
それが、傷跡一つ残さずキレイさっぱり治癒しちまってたんだ。


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83名無しさん:2018/04/04(水) 20:48:59 ID:V53fHRGY0
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人は有り得ないもんを見たとき、奇跡ってもんを信じるらしい。
けど俺が見た奇跡は、悪魔の所業としか言えねぇものだった。


(  ゚∀゚ )「……」


奴は俺の質問なんか聞こえねぇみたいに、一直線に隣のプレハブへ歩いていった。
そこは、親方が根城にしてる、ちっとばかり上等なプレハブ小屋だった。


|/ーUー|「グゴォォォォ……」


酒瓶とゴミに埋もれて、親方は眠ってた。
アヒャルドは扉の外から、それをじーっと見つめてやがんだ。


Σz; ゚ー )リ「まさかあいつ……親方を殺るつもりか?」


殺そうと思えばいつでもやれそうなほど無防備だが、そうすりゃまた別のクソがこいつの穴埋めに来るだけだ。
堂々巡りのいたちごっこにしかならないが、俺はそれ以上に、奴がどう親方を殺すのかに興味があった。


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84名無しさん:2018/04/04(水) 20:50:58 ID:V53fHRGY0
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(  ゚∀゚ )「……」

奴はゆっくり親方の側へ近づいて、親方の頭を、素足で踏みつけにした。


|/ーU゚|「……ん?」

|/゚U゚|「……おい、なんだこりゃあ」



(  ゚∀゚ )「……」



|/゚U゚|「てめぇ、アヒャルド。何してやがる?」

|/゚U゚|「ぶっ殺されたくなけりゃ、その汚ぇ足どけやがれ」


(  ゚∀゚ )「……ヒャハッ」ググッ


Σz; ゚ー )リ「……!!」


|/;゚U゚|「なっ……何だ!?おいっ、止めろアヒャルド!!」


親方はもがいたが、奴のその細ぇ足を、どうしても払いのけることが出来なかった。

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85名無しさん:2018/04/04(水) 20:52:25 ID:V53fHRGY0
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(  ゚∀゚ )「……」ググッ

|/;゚U゚|「バカッよせ……ぐおぉぉ!?」


アヒャルドは徐々に、頭に入れる力を強くしてるみてぇだったな。
細い足に血管が浮き出て、そこだけ別人のパーツみたいに見えた。


|/; U |「ガァァァァッ……!!」


親方は酒瓶を取って足を殴りつけたが、それすらもあいつは意に介してないように見えた。
メキメキ音を立てて頭蓋骨は軋み、親方は苦悶の呻き声を上げて身を捩らせた。


(  ゚∀゚ )「……あばよ」

|/; U |「あっ……?」


グチャッ……


そして、スイカみてぇな中身ぶちまけて、奴の脳天は砕けたんだ。

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86名無しさん:2018/04/04(水) 20:54:15 ID:V53fHRGY0
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(  ゚∀゚ )「……」

Σz; ゚ー )リ「……」


俺は声も出せなかったよ。人死にを見るのは初めてじゃないが、こうまで酷い殺しには、さすがにお目にかかれなかったからな。


(  ゚∀゚ ) ニタァ…


そして奴は、不気味に口角を歪ませて笑ったんだ。
殺しの快楽に走る時、奴は同じように薄気味悪く笑う。
それが後に警察の名付けた、ファニーフェイスって通名の由来らしいぜ?


(  ゚∀゚ ) スタスタ


アヒャルドはすぐに笑いを引っ込めると、一番近くのゴミ山まで歩いていった。
俺は居ても立ってもいられなくなって、思わず物陰から飛び出してた。

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87名無しさん:2018/04/04(水) 20:54:51 ID:3yM7PeZE0
危ないから出ていくなよ…

88名無しさん:2018/04/04(水) 20:55:50 ID:V53fHRGY0
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だが、俺の姿なんざ奴の目にはカケラも入ってなかったんだよな。


(  ゚∀゚ )「……」グッ

Σz; ゚ー )リ「お、おい!アヒャルド!」


奴は無造作に拳を振り上げて、それをゴミ山の根本に叩きつけた。
一発、二発、三発……何度も、何度も、同じ場所を執拗に殴り続けた。


Σz; ゚ー )リ「……な、なんだ?」


最初は目的が分からなかったが、じきに俺はアヒャルドが何をしようとしてるのか理解した。
殴る回数が増えるごとに、ゴミ山が震えてるのが分かったからだ。


Σz; ゚ー )リ「アヒャルド!止めろっ……」


そして拳を叩きつけること十発目。


(  ゚∀゚ )「……オァァァァアアァァァアアアッ!!!!!」


ドンッ…


Σz; ゚ー )リ「わぁぁぁぁっ!!?」


ゴミの山は大きく鳴動して、ぐらりと傾いた。
そしてプレハブ小屋を飲み込むみてぇに、崩れやがったんだ。

.

89名無しさん:2018/04/04(水) 20:59:33 ID:V53fHRGY0
.

俺は逃げた。今まで誰に追われてもそこまでしなかったってくらい全力で逃げた。
命懸けなんて言葉、人生でそうそう使うもんじゃないが、その時はまさにそうだった。
雪崩に遭ったアルピニストも、こうまで逃げはしなかっただろうぜ。

ゴミは見る間に地鳴りを起こして、プレハブ小屋を潰していった。
親方の死体も、他に寝てたガキどもも全員巻き添えだったろうな。

恐ろしいことに、アヒャルドのパンチは他のゴミ山にも振動を伝えたみてぇでよ。
ゴミの雪崩が連鎖を呼んで、街中あちこちで崩落事故が多発したらしいぜ。
それをやらかした張本人は、どこ吹く風で余裕のツラだったけどな。


Σz; ゚ー )リ「アヒャルド……」

(  ゚∀゚ )「……なんだお前。まだ生きてたのか」


そしてあいつは俺を見て、ゴキリと指を鳴らした。
あれ以上に背筋が寒くなることなんざ、もうねぇだろうな。

.

90名無しさん:2018/04/04(水) 21:01:08 ID:V53fHRGY0
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俺はすぐに声をかけたことを後悔した。
ちっと頭使えば分かることだったんだ。アヒャルドがゴミ山を崩した理由なんてな。


(  ゚∀゚ )「お前……ぜんぶ見てたよな……?」

Σz; ゚ー )リ「……!!」

(  ゚∀゚ )「安心しろ。ゴミに潰されるよりは楽に殺してやるよ……」

Σz; ゚ー )リ(こいつまさか、証拠隠滅のために……!?)


アヒャルドに何があったのか、当時の俺には分からなかった。
恐らくは絶命寸前まで追い込まれて、奴のヴィランとしての能力が開花したんだろーな。

だがそこまで推測しなくても、俺の命が風前の灯ってことは理解出来た。
奴を止めるには、崩落から逃げのびる以上の『何か』が必要だったんだ。


.

91名無しさん:2018/04/04(水) 21:02:16 ID:V53fHRGY0
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Σz; ゚ー )リ(考えろ、考えろ、考えろ!!)

(  ゚∀゚ )「……」ユラ…


俺よりタッパのねぇガキから、尋常でない殺気が溢れ出てくる。
固められた拳には筋が浮いて、無表情の顔面がどうしようもなく恐ろしかった。
それを前にして俺は、どうやったらこのピンチを抜け出せるのか必死で考えた。


Σz; ゚ー )リ(奴に恩を売る?ダメだ、あいつは飯を分けた程度で恩に切る奴じゃねぇ)

Σz; ゚ー )リ(同郷の情に訴えるか……だが、ボコされた直後じゃ効果は期待薄だ)

Σz; ゚ー )リ(ならいっそ奴の下に着くか……?いや、これもあいつにはメリットがない)

Σz; ゚ー )リ(……メリット!!そうか、メリットだ!!)

Σz; ゚ー )リ「お、おいアヒャルド!!」

(  ゚∀゚ )「……」スゥ

Σz; ゚ー )リ「拳を止めろ!!お前、俺の話を聞かねぇと一生後悔すんぞ!!」

(  ゚∀゚ )「聞く気はねぇよ」

Σz; ゚ー )リ「あぁそうかい!じゃあ聞くが、お前これからどうするつもりだ?」

.

92名無しさん:2018/04/04(水) 21:02:55 ID:V53fHRGY0
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(  ゚∀゚ )「どうもしない。この街を出る、それだけだ」

Σz; ゚ー )リ「おーそうかい。だが世間はお前が思ってるよか甘くはねーぞ!?」

(  ゚∀゚ )「敵は全員殴り殺す」

Σz; ゚ー )リ「分かってねぇな!そんなことすりゃ、警察はすぐお前をマークしてイチコロだぜ?」

Σz; ゚ー )リ「この街と違って他の警察は有能だ!ただ殴って殺せばお前に一方的に不利なだけだ!」

Σz; ゚ー )リ「だから!俺をお前と一緒に連れてけよ!」

Σz; ゚ー )リ「俺はお前より交渉事もできるし、世間のこともちっとは知ってる!」

Σz; ゚ー )リ「貧民窟の世間知らずが腕力だけで生き残れるほど、外の世界は楽じゃねぇんだ!」

.

93名無しさん:2018/04/04(水) 21:03:58 ID:V53fHRGY0
.

(  ゚∀゚ )「……」

Σz; ゚ー )リ(よしっ!顔に迷いが出てる!もう一押しだ!)

Σz; ゚ー )リ「こんな腐った街出ていきたかったのは俺も同じだ、アヒャルド」

Σz; ゚ー )リ「だが俺には力がなかった。あのクソッタレな親方を殺せるだけの力がな」

Σz; ゚ー )リ「お前にはそれが出来る力がある。だがこの世の面倒な仕組みについて、知らないことが多すぎる」

Σz; ゚ー )リ「お前がそれを学ぶ必要はねぇ。代わりに俺を連れてくんだ」

Σz; ゚ー )リ「そうすりゃお前が好きなだけその力を使えるフィールドを、俺が用意してやる」

Σz; ゚ー )リ「お前に泥は被せねぇ!いらんと思ったらいつでも殺せ!」

Σz; ゚ー )リ「その代わり俺らは対等だ!それに文句は言わせねぇぞ!」

Σz; ゚ー )リ「さぁ、どうだ!?アヒャルド!!」

.

94名無しさん:2018/04/04(水) 21:05:49 ID:V53fHRGY0
.

(  ゚∀゚ )「……チッ。勝手にしろ」

Σz; ゚ー )リ「……!!」


俺は全身全霊のハッタリで、賭けに勝った。
ギブアンドテイクを演出して、奴に利があると思い込ませた。
そしてどうにか口八丁で丸め込んで、あいつを説得することに成功したんだ。

本当のことを言うなら、奴は外に出ても一人でやっていけただろう。
だが、俺の言うことにも幾らかの真実は含まれてた。

奴の力は明らかに人間の常軌を逸したものだった。
そんな力をホイホイ使っちゃあ、奴の末路は射殺か獄死、どっちかひとつだ。

警察だってバカじゃない。危険人物が街に現れたとなれば、指名手配されて身動き取れなくなるのも時間の問題だろう。
そういう意味じゃ、俺のやったことも奴のためになったと言えなくもない。
そこで状況を見極めて、奴の暴走を未然に防げていたら、だがな。

その時は頭が回らなかったが、後に俺は奴を自制させて、俺のために利用できるんじゃないかと思い始めたんだ。
それがどれだけ身の程知らずな思い上がりだったかも気づかずにな。

これが、俺とアヒャルドの話の第一幕ってとこだ。

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95名無しさん:2018/04/04(水) 21:05:54 ID:3yM7PeZE0
勇気あるな

96名無しさん:2018/04/04(水) 21:08:15 ID:V53fHRGY0
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ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー


それからしばらく、俺たちは街から街へ放浪して、やりたい放題何でもやってたな。
スリ置き引きから始まって、追い剥ぎ強盗車上荒し……やらなかった犯罪の方が少ないくらいだ。

悪事に糸目はつけなかったが、何やるにしても鉄クズ拾いより効率悪いってこたぁなかったぜ。
何しろこっちには、無敵のアヒャルドがいたからな。


Σz ゚ー )リ「アヒャルド。次の街は人が多いらしいから稼ぎどころだぜ!」

(  ゚∀゚ )「あぁ、分かった」


あいつは思った以上に、俺の言うこと聞いてくれたよ。
よくよく考えりゃ一度も街の外に出たことねぇんだから、奴にゃ土地勘すらないんだよな。

最初はどこへ行くかの水先案内人程度の関係だったが、しばらくすると
奴の口数も増えて、なんとなく多少の信用は勝ち得たみてぇに見えたな。

そして俺たちは巷のワルの間で、二人きりの少年強盗団なんて呼ばれだしたんだ。
そこからだったかなぁ。俺がアヒャルドを利用して、もっとデカい稼ぎを出せないかって思いだしたのは。

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97名無しさん:2018/04/04(水) 21:09:44 ID:V53fHRGY0
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そこで俺が目をつけたのが、アメリカ1の大都市クラウン・シティだった。
人口密集地帯のあそこなら、物もカネもしこたま集まってくる。

それを全てかっさらって、俺はアヒャルドを頭目にした犯罪組織を作ろうと企んでたのさ。
だがそれには、コネもカネもまだ足りない。
まずはその下地を作るために、まとまったカネを得るための金策を練らにゃならなかった。


Σz ゚ー )リ「アヒャルド」

(  ゚∀゚ )「あ?」

Σz ゚ー )リ「次の仕事は車の盗難だ。出来るな?」

(  ゚∀゚ )「誰に向かってクチ聞いてんだ。俺にできねぇことなんかねぇよ」


たかだか140cm程度のドチビが、バカに自信満々にそう答えやがる。
奴のこれまでの戦歴を知らなきゃ、俺も鼻で笑うような光景だったろうな。

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98名無しさん:2018/04/04(水) 21:10:48 ID:V53fHRGY0
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クラウン・シティまでの道中で、俺は盗んだ車を使って運転技術を必死に覚えた。
どんな車種でも運転出来るようにならにゃあ、車ドロボーなんて夢のまた夢だからな。
そうして行き着くまでに五台の車を乗り捨てにして、俺たちはクラウン・シティにたどり着いたんだ。

ドギツいネオンと夜景が、眼窩にこびりつくような凄まじい夜だったな。
俺らのいた街とは、発展の度合いからして段違いだった。


Σz; ゚ー )リ「……すげぇな」

(  ゚∀゚ )「……」


二人ともしばらくの間、車から降りて呆然としてたなぁ。


Σz ゚ー )リ「なぁ、アヒャルド」

(  ゚∀゚ )「……なんだ?」

Σz ゚ー )リ「どうせやるならこの街の全部、俺たちでかっぱらってやろうぜ」

Σz ゚ー )リ「この夜景もいずれは俺たちのもんになるんだ。そう思うとワクワクして来ねぇか?」

(  ゚∀゚ )「……バーカ。一人で盛り上がってろ」


冷めた口調と裏腹に、俺は初めてアヒャルドが、普通の笑顔を見せたような気がしたんだ。

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99名無しさん:2018/04/04(水) 21:12:03 ID:V53fHRGY0
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俺がまずやったことは、盗難車だろうと引き取ってくれる車屋を探すことだった。
拠点となる住み処は、盗んだ車を停めて寝起きすりゃあなんとかなる。

それよりも、早く車をさばけずに、足がつくことの方が問題だと思ったからだ。
デカい街ならあるだろうと踏んでいたが、案の定そっちは一週間足らずで見つかった。


/▽▽「車の買い取り?」


それがこいつ、エレクのおっさんだった。


Σz ゚ー )リ「あぁ。車種問わずどんな車でも買ってくれんだろ?」


おっさんは怪訝な顔をして、俺のことをじろじろ見回してやがった。
まぁ、俺が車屋でも同じようにしただろうがな。

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100名無しさん:2018/04/04(水) 21:13:02 ID:V53fHRGY0
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俺はためしに、クラウン・シティまで乗ってきた車を売ることにした。
俺らみてーなガキを相手にして、どういう態度に出るか見てみたワケだ。


/▽▽「帰れ帰れ、お前らどう見ても未成年だろうが。頭沸いてんのか?」

Σz ゚ー )リ「何でだよ。あんたんとこなら誰のどんな車でも買ってくれんだろ?」

/▽▽「この街にゃ盗っ人のガキなんざわんさといるんだ。いちいち相手してられるか」


まぁ、こういうことになるのも当たり前だわな。


Σz ゚ー )リ「まぁまぁ。そういうのはモノを見てからでも遅くないだろ?」

Σz ゚ー )リ「おっさんに損はさせねぇから査定だけでもしてくれよ、な?」

/▽▽「チッ……見ても買うとは限らねぇぞ?」

Σz ゚ー )リ「いいぜ。どうせ最後は取引することになるだろうからな」

.


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