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SSスレ「マーサー王物語-ベリーズと拳士たち」第二部

470名無し募集中。。。:2016/07/15(金) 13:57:10
あの眼は怖いからな〜

471名無し募集中。。。:2016/07/15(金) 16:36:53
いまだにキッカはアイカの呪いから抜け出せてないのか?

472 ◆V9ncA8v9YI:2016/07/16(土) 12:49:36
アカネチンが倒れたことにショックを受けたノナカとマリアは、僅かな時間ながらも気を抜いてしまった。
そんな状態ではキッカの猛攻を受けきれないことは明らか。
場合によってはキャベツの千切りのように全身を切り刻まれることだって有りえるだろう。
それを瞬時に察知したキッカは、今まで使用していたものと比べてやや小さめなチャクラムを投げつけた。
この小型版は他のチャクラムを制御する目的で作られており、触れた円盤が即座に旋回を停止するような動きになっている。
キッカの腕前が熟練の域に達しているからこそ出来る神業と言えるだろう。
おかげでノナカとマリア、ついでに未だに倒れこんでいたハーチンは無傷で済むことができた。
もっとも、死が寸前まで迫っていたおかげで一人残らず腰を抜かしてしまっているようではあるが。

「umm……死ぬかと思った……」
「そう、私が攻撃を止めなかったら間違いなく死んでたよ。
 じゃあ全員生き残ることができなかったってことで、今日の特訓は終わりにしよっか!
 ぶっちゃけもう疲れたし、また明日よろしく!」
「「「え!?」」」

一秒でも早く他の帝国剣士たちと合流しなくてはならないというのに、
ここで更にもう一日足止めされるなんてたまったもんじゃない。
ハーチン、ノナカ、マリアの3人は反発したくもなったが、それより先にハルナンが釘を刺した。

「あなた達、これから挑むべき相手がトドメの一撃を親切に止めてくれるとでも思ってるの?」
「それは……」
「お優しいキッカ様の特訓もまともにこなせないのに、どうやってベリーズと善戦出来るというのかしら?」
「「「……」」」
「キッカ様は無理難題を課してはいないでしょ?ただ生き残るだけでいいの。
 逆に言えばそれすら出来ないようじゃ戦地に行っても足手まといになるだけ。」

容赦なく捲し立てるハルナンを前にして、新人剣士たちは何も言うことができなくなっていた。
やはり彼女らも己の不甲斐なさを十二分に感じているのだろう。
この光景を遠隔から監視している二人も、不憫に感じているようだった。

「あの子たちもよくやってる方だと思うけどな〜……"ガール"もそう思わない?」
「あ、意外にちゃんと特訓を見てたんですね。てっきりキッカ様ばかり見てたと思ってました。」
「え〜〜?なんでそんなこと言うのさ」
「だって双眼鏡を覗くなりすぐにキッカ様のサンバ衣装を見てたじゃないですか、"ロッカー"はいつもそう。」
「そ、それは、下心とかじゃなくてね、あの衣装を着た時の戦い方について考えてただけ!」
「着ますかね?私たちがあんな派手な衣装を……」
「着るかもしれないじゃん!もしもの話!」

473名無し募集中。。。:2016/07/16(土) 21:29:51
ロッカーの助平顔はヤバイからなw

と言ってる間にもアンジュ国にまたしても新番長が!

474名無し募集中。。。:2016/07/17(日) 06:29:15
キャベツの千切り懐かしいw

475名無し募集中。。。:2016/07/17(日) 09:43:21
確かにサンバの衣装着ることになったなw

新番長はまたCMでの御披露目だけかな?

476 ◆V9ncA8v9YI:2016/07/18(月) 02:48:58
キッカとの特訓で結果を出せず、その上ハルナンにこってり絞られた新人剣士達は
アカネチンが意識を取り戻すのを待って、元気なくその場を離れていった。
その意気消沈っぷりが遠くから見ている"ロッカー"には気になったようだ。

「ねぇ、"ガール"、ちょっとくらいなら声かけても良いと思う?」
「駄目って言いたいけど……"タイサ"が既にやっちゃったみたいですからね……」
「はは、そういや帝国剣士に友達がいるって言ってたね。」
「だから1回だけ大目に見ます。ちなみに、誰と話すつもりなんですか?」
「マリア・ハムス・アルトイネ。ここで助言してあげないと、あの子はずっと抜け出せられない気がするんだ。」
「抜け出せないって……この特訓からですか?」
「いや、彼女を縛る呪縛から」

呪縛という言葉を聞いたガールは少し浮かない顔をした。
そして自分の胸に手を当てたかと思えば、泣きそうな声で一言呟く。

「私たちの呪縛もアドバイスを貰うだけで解ければいいんですけどね……」
「……そっちの方はさ、時間をかけて解決していこうよ。みんなで力を合わせて、ね。」

ロッカーとガールがこんな話をしている一方で、
キッカとハルナンの2人は本日宿泊するコテージの中に入っていっていた。
これから今回の特訓の講評を始めるようだ。

「キッカ様の目から見て、あの子たちの戦いっぷりはいかがだったでしょうか?」
「90点かなー」
「あれ!?意外に高評価なんですね……」
「200点満点中ね」
「あ、はい……」

正直言ってハルナンはキッカのことが苦手だった。
真面目に考えているのか、それとも適当にしか物事を判断していないのか、まったくもって掴めない。
同じ癖がある人物とは言え、まだ直情的に行動するアヤチョの方がよっぽど付き合いやすいだろう。
しかし現状キッカ以外に頼れる人物が居ないのも事実。
一刻も早く新人たちを一人前にするためにハルナンは打ち合わせを進めていく。

「90点の内訳、聞いてもいいですか?」
「んー、実力そのものは褒めても良いと思うよ。みんな一芸に秀でてていいじゃんいいじゃん。
 ハーチンちゃんの回転力、ノナカちゃんのサポート、マリアちゃんのバッティング、そしてアカネチンちゃんの眼……
 どれも一線級だよ。さすが帝国剣士に受かる子は違うね。」
「ということは、実力以外に問題があると……」
「メンタル弱いね。みんな」
「はい……」
「あと、なんとしてでも勝ってやろう、って思いが弱いかなー」
「はい……」

元々思うところのあったハルナンは、キッカの指摘を受けて痛いところを突かれたような顔をした。
お披露目会のように、相手が一般兵であれば帝国剣士らしい強さを見せる新人4人ではあるが、
ちょっと相手が強くなるとすぐに動揺し、ハーチンやノナカのように消極的になったり、
はたまたマリアやアカネチンのように無鉄砲かつ無謀に突っ込んだりしがちなのである。
中でも、ハーチンのとった行動はひどいものだとハルナンは考えていた。

「特にハーチンの戦い方は失礼に値するものでしたね……お恥ずかしい限りです。」
「ん?何が?」
「えっ、気づきませんでしたか?……彼女はまだ戦えたんですよ。だと言うのにずっと倒れたフリをしていたのです。」
「気づいていたけど」
「でしたら、何故?」

不慣れな特訓に四苦八苦しながらも、ノナカとマリアとアカネチンの3人は少なくとも頑張ろうとはしていた。
だが、ハーチンはその土俵にも上がろうとしていなかったのだ。
ただの一回チャクラムを防げなかっただけで勝負を放棄……ハルナンにはそう見えていたのである。
ところがキッカはまるで異なる感想を抱いていたようだった。

「あのハーチンって子、ハルナンちゃんに似てるかもよ?」
「はっ!?いったいどこが……体形の話ですか?」
「いやいや体形の話はしてない。
 じゃあ聞くけどさ、ハルナンちゃんが同じ特訓をするとしたら、どう切り抜ける?」

不意に問われたのでハルナンは少し驚いたが、しっかりと頭をブレインストーミングさせて考えた。
そして確実に達成できると思われる答えを口にしていく。

「偶然そこを通りかかったアヤチョがキッカ様に斬りかかります。
 その間、私にチャクラムは飛んできません。無事生き残ることができるのでミッション達成です。」
「えー?アヤチョ王は通りがからないでしょ」
「通りがかるんですよ。不思議なことに。」

確固たる自信を持つハルナンを見て、キッカはつい吹き出してしまった。
そしてやはり自分の考えが正しかったことを理解する。

「あはは、やっぱり似てるよ。ハルナンちゃんとハーチンちゃんは。」
「???」

477 ◆V9ncA8v9YI:2016/07/18(月) 02:51:39
毎度のことですが、笠原桃奈の加入はびっくりでしたねw
以前にも書きましたが私は研修生の診断テストを見に行っていたので(>>296
加入の納得度自体はとても高いです。

本作への登場は第3部か、あるいはおっしゃる通りCMですかねw

478名無し募集中。。。:2016/07/19(火) 00:07:05
出来たら本編に出て欲しいなぁ〜3部始まる頃にはカミコと共にモモニャ(カッサー?)もキャラ出来てるだろうし
てかそうこう言ってる間に帝国剣士にも13期が加入…収集つくのか?w

479 ◆V9ncA8v9YI:2016/07/19(火) 13:00:25
新人剣士たちは苦悩していた。
キッカの課した特訓をクリアーする方法が、どんなに頭を捻っても思いつかないのだ。
ハーチン、ノナカ、マリア、アカネチンら新人剣士には、
Q期団や天気組団のように明確なリーダーが定まっていない。
そのせいもあってか、彼女らは集まって知恵を交換するわけでもなく、個人行動をとっていた。
そんな彼女らの中でも特に思考するのが苦手なマリアは、
行き場のないモヤモヤを身体を動かすことで発散しているようだ。

「早く!サユ様を!助けなきゃ!」

マリアは両手剣の素振りを何百回も、何千回も繰り返す。
このパワフルなスイングをもってすれば、大抵の敵は簡単に打ちのめすことが出来るだろう。
しかし、キッカ相手には通用しなかった。
バッティング技術だけでは、相手が遠距離攻撃の使い手である場合に有効打を与えることが困難なのである。
となると、ミッションをこなすためにマリアがすべきことは……

「マリアさ、投げナイフの方は練習しないの?」
「!?」

急に名前を呼ばれたのでマリアはびっくりしちゃいまりあ。
しかもその声の主にまったく見覚えが無いので困惑してしまう。

「だ、だれ?……」

対面しているのは、男かも女かも分からない人物だった。
かなりの低身長なので、自分より年下だろうとマリアは推測する。
こんな子供、マリアは今まで見たことも話したことも無い。

「あぁ、心配しないで、マリアと俺は初対面なんだから知らなくて当然だよ。
 俺のことは"ロッカー"って呼んで欲しいな。よろしく。」
「ろっかー?……どうしてマリアのことを知ってるの?……」
「どうしてだろうね?でも、そんなことはどうでもいいじゃん。」
「?」
「今はさ、マリアがナイフを投げるか投げないかが重要なんだから。」
「!?」

顔に出やすいマリアは、嫌悪感を全面的に表情に出していた。
心のデリケートな部分に土足で入り込まれたような気がして、嫌で嫌で仕方ないのである。

「はは、そんな怖い顔しなくていいじゃんか」
「あなた誰なの!?あっちいって!」
「やだよ。マリアを近くで見てたいんだもん。」
「ヒッ……変態さんなの!?」

この時マリアは、ロッカーを完全に敵として認識していた。
敵を追っ払いためなら武力も辞さない。

「変態さんは痛い目にあわせてあげる!」
「へぇ、どうやって?」
「この両手剣で叩きのめしちゃいまりあ!!!」

480 ◆V9ncA8v9YI:2016/07/20(水) 01:10:13
マリアの両手剣「翔」による一振りは、空気をも震えさせる。
幼少期からの英才教育を経て、弛まぬ努力が実を結んだ結果、エリポンに次ぐほどのパワーを発揮できているのだ。
この力をもってすれば、迂闊に近寄ってきた"ロッカー"とやらも一撃でKO。
マリアはそう確信していた。

「ひゃあ怖い怖い、まともに喰らってたら御陀仏だったなぁ……」
「えっ!?」

マリアの視界には誰の姿も入っていない。
相手を見えなくなるくらいに遠くまで吹っ飛ばすなんてしょっちゅうだったので、今回もそうだと思っていた。
ところが、ホームランしたはずの"ロッカー"の声が何故か近くから聞こえてくる。
それもかなり下の方からだ。

「どう?驚いた? これがスウェーっていう技術だよ。
 ちょっとばかし大袈裟にやりすぎちゃってるけどね。」
「なっ……!!」

スウェーくらいマリアも知っている。
上半身を後ろに反らすことで敵の攻撃を回避する、格闘技の技術だ。
同じ帝国剣士で言えば、身のこなしの軽いサヤシやアユミンが多用するイメージがある。
だがロッカーのそれは通常のものと比較して群を抜いていた。
なんと、リンボーダンスでもするかのような低い位置まで上体を下げていたのだ。
地面から頭部までの高さはせいぜい50cmと言ったところだろうか。
名付けるならばこの回避法は「低空姿勢やりすぎたversion」。
これではマリアの攻撃も当たらなくて当然だ。

「で、でもでも! こうすれば当たるから!」

マリアは構えを変えて、マサカリを振り下ろすように両手剣を地へと叩きつけようとした。
上から下への攻撃ならどんな低空スウェーでも意味がない。
むしろ無理な姿勢がたたって、堪えきれなくなるのがオチだ。
もっとも、ロッカーだってその弱点に気づいていないワケではなかった。
剣が降ろされるよりも先に立ち上がり、そのままの勢いでマリアに飛びかかっていく。

「へへ、ちょっと抱き着かせてもらうぜ」
「ひゃあ!やっぱり変態さんだった!!離れてよ!!」
「ちょっ、誤解しないでよ、これはクリンチっていう立派な戦法で……」

ロッカーも下心だけでマリアをハグしているのではない。
密着することで両手剣のリーチを無効化する、という理由が全体の6割ほどを占めている。
このままくっつかれたら自慢のバッティングを魅せることが出来なくなるので、
マリアはまとわりつくロッカーを必死で振りほどいた。

「もうっ!!」

ロッカーは運動神経が良くて厄介な相手ではあるが、体格差ではマリアの方に分がある。
そのおかげで、ちょっと叩くだけで突き放すことが出来た。
距離にして約2m。ちょうど両手剣の射程範囲内だ。
もうスウェーだのクリンチだのに惑わされたりしない。帝国剣士としての誇りをもって叩き潰すのみ。

「マリアが絶対勝つよ!武器も持ってないような人には絶対絶対絶対に負けられないんだから!!」

当たれば骨ごと粉砕されそうな斬撃が威圧感たっぷりでロッカーに迫ってきた。
今更スウェーで避けようにも、マサカリ打法にスイッチされて打ちのめされることだろう。
だからロッカーは回避術に頼るのをやめにした。
ここでとったのは防御姿勢の逆。 闘志たっぷりのファイティングポーズだった。

「武器を持ってない、か……俺たちの武器は常にココに有るんだけどね。」

481 ◆V9ncA8v9YI:2016/07/20(水) 12:57:42
ロッカーが繰り出したのは、強烈な右ストレートだった。
己の肉体のみで勝負する超接近型戦闘スタイルはキュートのマイミを彷彿とさせるが、
ナックルダスターのような武具を装着していない点に差分がある。
帝国剣士が剣を武器とするのと同様に、彼女ら"拳士"は自らの拳(こぶし)を武器としているのだ。
ロッカーは小さな拳をでっかく突き上げる。

「ハァッ!!!」

攻撃の矛先はマリアの腹か?それとも頭か?
いやいや、それではデッドボールになってしまう。
ストレートの当たる場所はミットかバットだと相場が決まっているのだ。
ロッカーの渾身の一撃はマリアの両手剣に強く衝突し、そしてぶち破って行く。

「……!!」

綺麗に真っ二つになった両手剣を見たマリアは、一瞬言葉を失ってしまった。
この両手剣はマーチャン製で、とても頑丈に出来ているはず。
それを素手でぶった切るなんて、信じられないにも程がある。

「そんな……"翔"が折れちゃったら、マリアはもう……」
「もう、戦えないってか?」
「……」

今のマリアの心は、両手剣と連動して折れてしまいそうになっている。
下手すれば自信を完全に喪失して、戦士として復帰することが困難になるかもしれない。
それだけはさせない、とロッカーは強く思っていた。

「違うだろ、マリアはまだ戦えるじゃないか。」
「!!」
「俺はマリアの刀を一本しか折ってないよ。でも、マリアは二刀流って呼ばれてるんだろ?
 見せてくれよ! バッターではなく、ピッチャーとしてのマリアを!!」

482 ◆V9ncA8v9YI:2016/07/21(木) 14:12:18
今のマリアは、イップスに近い状態に陥っていた。
イップスとは精神的重圧によって当たり前に出来るはずのことが出来なくなることを言い、
マリアの場合はそれが「ナイフ投げ」という行為にあたっている。
初めにそのナイフ投げに失敗したのは新人お披露目会の時だった。
その時は単に緊張しすぎてナイフが手からすっぽ抜けた程度にすぎなかったが、
その数日後、サユを連れ去ろうとするモモコを狙った投球が大外れしたことで、事態は深刻化する。
世界中の誰よりも大事に思っているサユを、他でもない己のミスのせいで救えなかったことで、
マリアの心の奥深いところを蝕ばまれてしまったのだ。
これまでも嫌な気分を押し殺してナイフを投げてきたが、
それらが例外なく外れる度に心臓を締め付けられる思いになってしまう。
結果として、ここにきてマリアはナイフを握ることすら恐れるようになってしまったのだ。
元より両手剣だけでも一線級の実力を備えていたため、そちらに方針を傾けようという逃げ道も有るにはあったが、
それもたった今、ロッカーのこぶしによって絶たれてしまった。
手元に残されているのは、握るだけで恐ろしい投げナイフ「有」のみ。
となれば、自ずと敵を倒す手段も絞られてくる。

「バッチ来いマリア!今やらんでどーすんの!?」
「……!!」

マリア・ハムス・アルトイネは決断した。
全身が締め付けられそうになろうが、汗が滝のように流れようが、
脚がガタガタと震えようが、吐き気で胃がひっくり返りそうになろうが、
背筋が氷点下ほどに冷たくなろうが、重圧に潰されそうになろうが、
マリアはここで投げなくてはならないのだ。
二刀流という二つ名は、打っても投げても一流だからこそ付けられている。
どちらの戦闘スタイルを採っても、自分はサユを救える。絶対絶対絶対に救える。
そう信じてマリアは第1球を振りかぶった。

「やぁ!!!」

覚悟の末に放たれた豪速球は、真にストレートと言えるものだった。
時速160kmを超える「真っ直ぐ」は、ロッカーの胴体目掛けて脇目も振らずに突っ走る。

483 ◆V9ncA8v9YI:2016/07/25(月) 12:59:54
(うおっ!?は、速い!)

マリアがプレッシャーを跳ね除けて直球を放つことが出来たのは、ロッカーにとっても喜ばしい進歩だ。
しかし、そのストレートの球速がここまでというのは流石に想定外だった。
今のロッカーの実力では到底反応出来るものではなく、腹に突き刺さるのは決定事項と言えるかもしれない。
マリアの成長を促進するという使命を果たしたとしても、ロッカー自身が死んでしまっては意味がないので、
いつもは忌み嫌っている力に渋々頼ることにした。

(聞いてるか?ファクトリー。
 今まで騙してて悪いけど、俺の本名は"フジー・ドン"って言うんだ。
 このままだと俺たちはナイフの一突きで死んじゃうかもしれない。
 嘘じゃないよ。マリアはそれだけの力を持っている。
 だからさ、右腕を作り変えさせてやるよ……ほんの数秒だけな。)

今まさに突き刺さるといったところで、ロッカーは投げナイフを掴み取った。
豪速球をキャッチした超反応も凄いが、刃を強く握っても血の一つも流れない頑丈さが人間離れしすぎている。
本来ならばそれを見た誰もが驚愕するのだろうが、
今のマリアは投てきが上手く行ったことに歓喜しすぎて、それどころでは無いようだった。

「やった!やったぁ!マリアのナイフが真っ直ぐ飛んだ!」
「はは……それは良かったね……ウッ!!」

マリアに労いの言葉を掛けようとしたところで、ロッカーは背後から蹴りを貰う。
その蹴りは意識を強制的に吹っ飛ばすような、とても強烈なものだった。

「流石にやりすぎです。」
「ごめんね……"ガール"……」

484名無し募集中。。。:2016/07/25(月) 17:05:05
共生型かな

485名無し募集中。。。:2016/07/25(月) 19:13:54
尾獣を飼ってるのか

486 ◆V9ncA8v9YI:2016/07/26(火) 12:58:54
「あれ?……あなた誰?」

歓喜のあまり舞い上がっていたマリアも、"ガール"が不意に現れたことには疑問を感じたようだった。
ガールは鎖付きの鉄球を足首に巻きつけているため、否が応でも目立ってしまうのである。
気を失った"ロッカー"を早く人目のつかない場所に運びたいと考えていたガールは
適当にあしらって、この場を立ち去ろうとしていた。

「この人の仲間です。 迷惑をかけたみたいですね。ご麺ね。 それではこの辺で……」
「あ!!!マリアの投球が凄すぎて気絶しちゃったんですか!?」
「そうです。(違うけど)」
「う〜〜〜ん、ロッカーが起きたらごめんなさいって伝えてくれませんか?」
「分かりました。伝えます。 じゃあそろそろ帰りますね……」
「あと!もう一個伝えて欲しいんです!」
「まだ有るんですか?」
「ロッカーのおかげでマリアは真っ直ぐ投げれるようになりました! 有難う御座います!……って伝えてください!
 おかげでキッカ様のミッションをクリアー出来そうなんです!」
「……」

マリアの視点からは不審な人物が襲いかかってきたようにしか見えなかったはず。
だというのに今回の成長はロッカーのおかげであることに気づいていたのが、ガールには意外に思えた。
仲間を褒められて嬉しかったのか、ガールは少し喋りすぎてしまう。
複雑な境遇に置かれているとはいえ、彼女もまだ幼い少女なのだ。

「アドバイス、あげます。」
「え?」
「ロッカーを倒した程度じゃ、まだまだキッカ様を満足させることなんて出来ないと思いますよ。」
「えー?そうなのかなぁ……」
「もっと訓練に訓練を重ねなくてはなりません。 それこそ血が滲むまでに。」
「でも、マリア達には時間が無くて……」
「だったら、手段を選ばなければ良いんですよ。」
「手段?……」
「マリアさん、貴方は貴方自身が一番伸びる方法に気づいているんじゃ無いですか?
 でも、変なプライドや恥とかが邪魔して実行に移せていないんでしょう?」
「えっ?えっ?」
「私たちなら平気で泥をかぶります。 白い粉の中にだって自ら飛び込むでしょう。
 それだけの覚悟が有るからこそ私たちは強くなれたんです。
 ……だからマリアさん、貴方も一切の手段を選ばないでください。
 本当にすべき事に向かって、ナイフのように一直線に飛んで行ってください!」
「マリアが……本当にすべき事……」

487 ◆V9ncA8v9YI:2016/07/26(火) 12:59:38
確かに尾獣に近い存在かもしれませんが、現時点では言いにくいですねw

488 ◆V9ncA8v9YI:2016/07/27(水) 13:02:13
ガールと別れてから数分後。
マリアはコテージの扉を勢いよく開いては、唖然とするキッカとハルナンの前まで歩いて行った。
そして深くまで頭を下げ、大きな声で嘆願する。

「キッカ様お願いします! キッカ様を倒すための投てき技術を教えてください!!」

マリアの依頼はとてもヘンテコなものだった。
自分を倒すための技術なんて、誰が教えるというのだろうか。
1000人居れば999人が断るに決まっている。
こんなのを引き受けるのは、余程の変わり者だけだ。

「フフッ……おかしい……」
「わ、笑わないでください……マリアは本気なんです!」
「あはは、ごめんごめん。馬鹿にして笑ったワケじゃないの。
 想像していたよりずっとストレートに頼んできたからおかしくって。」
「想像?……」
「マリアちゃんがそう来るのをキッカは待ってたよ。 稽古つけてあげる。」
「えーーー!本当ですか!?」

キッカがその変わり者に該当することは言うまでもないだろう。
その優れた投てき技術を教われば、マリアは確実にパワーアップするはず。
だが、無理矢理教え込んでも意味はないとキッカは考えていた。
自らが劣ることを自覚し、強き者に教えを請う姿勢こそが大事なのだ。
そして、ハルナンはマリアのそれ以外の成長についても喜んでいた。

「マリア、貴方も手段を選ばなくなったのね。」
「わ、ハルナンさん、ごめんなさい……」
「なんで謝るの?勝利のためになんでもするのはとても良いことよ。
 ただ、手段を選ばなくなったのはマリアだけじゃないようだけどね。」
「え?」

ハルナンが指差す先を見て、マリアは初めて気がついた。
この部屋にはキッカとハルナンだけでなく、マリアと同期のハーチン、ノナカ、アカネチンも居たのだ。
この3人もマリア同様に、現状を切り抜けるために手段を選ばなかったのである。

「ハーチンはキッカ様がお手洗いに行っている隙に、全員で逃げ出す案を提案してきたのよ。ほれもかなり具体的な、ね。」
「ハルナンさん!言わんといてくださいよ〜」
「ノナカは『せめてハルナンさんだけでもベリーズを倒しに行ってください!』って泣きながら叫んでたっけ。」
「お恥ずかしい……」
「そして、アカネチンは……キッカ様を暗殺しようとしてたわね。」
「!?」

暗殺と聞いたマリアは天地がひっくり返るくらいに驚いた。
成功率は極めて低いが、確かに成功すればミッションを免れることができる。
究極に「手段を選ばなかった」と言えるだろう。

「みんな……いろいろ考えてたんだ……」

489名無し募集中。。。:2016/07/27(水) 13:04:59
アカネチンは1部の時からキャラ変わったなw
正式に帝国剣士になったからか

490名無し募集中。。。:2016/07/28(木) 00:05:44
マリアはゾロかよww

491 ◆V9ncA8v9YI:2016/07/29(金) 13:03:35
いつの間にか夜になっていたが、休んでいる暇は無い。
課せられたミッションを明日こそ達成するために、
マリアはこれからキッカの猛トレーニングを受けなくてはならないのだ。
ロッカーとの戦いで少し疲労しているのも事実ではあるが、
ここで頑張らなくてはいつまで経っても成長することが出来ない。

「じゃあそろそろ始めよっか。サクッと終わらせるよ。」
「あ!キッカ様待ってください。 ちょっとだけみんなと話してもいいですか?」
「ん、いいけど。」

マリアの言う「みんな」とは同期のこと。
ハーチン、ノナカ、アカネチンにお願いするために近づいていく。

「ねぇみんな!マリアね、キッカ様を倒すにはみんなで協力しないといけないと思ってるの。」

この言葉を聞いたアカネチンは少しムッとした。
今日のキッカ戦で独断専行を決めたのはマリアの方だったからだ。
どの口でそんなことが言えるのかもと思ったが、
これも「手段を選ばなくなった」ことによる変化なのかもしれない。

「マリアちゃんねぇ……まぁ、いいけど。」
「何が?」
「いや、なんでもない。」
「そっか!でね!マリアが訓練している間に3人で作戦を考えて欲しいんだ!
 マリアは絶対絶対絶対にナイフを華麗に投げられるようになるから!
 それを踏まえた作戦を立ててね! で、後でマリアに教えてね!!」
「はいはい、私がメモに記録しておくよ。」
「ほんと!?アカネチンのメモは読みやすいからマリアは好きだよ!」
「そ、そう? えへへへ……」

普段から小さなことでケンカしがちなマリアとアカネチンではあるが、
今現在の会話からはそのような感じは薄れていた。
共通の目的が明確になったことで、真の意味で同志になりつつあるのだろう。
そんなマリアを見て、ハーチンが小声で囁き始める。

「マリアちゃん、ちょっとナイショ話や。」
「ナイショ話?ひみつのマリアちゃんなの?」
「その言い回しはよく分からんけどまぁええわ。
 マリアちゃん、せっかくキッカ様に教わるんやから気合い入れなあかんで。」
「うん!もちろん!」
「こんな機会はそうそうない。せやからな、3時間でも4時間でも、いや、もっともっと食らいつくんや。
 技がマリアちゃんの身体に染み込むまで頑張るんやで。」
「え!?たいへん。休憩いっぱいとらなきゃ。」
「アカンアカン。 休憩時間ですらもったいないと思わな成長できへんで。
 どうしても体力的に辛いならキッカ様の動きを見学する時間でも作ったらええ。
 見るのも修行って言うしな。」
「なるほど!」

自分の成長のためにハーチンがアドバイスをくれることが、マリアには嬉しかった。
絶対に言う通りにしようとマリアは誓う。

「いいか?マリアちゃん、"明日を作るのは君"なんやで。」
「?……うん。」
「明日、キッカ様を倒す時のことを思うと、今から楽しみやなぁ。」
「そうだね!」

492 ◆V9ncA8v9YI:2016/07/29(金) 13:07:30
アカネチンのキャラ変の理由は
帝国剣士昇格以外にも、同期が出来たことも関係するかもしれませんね。
第一部では周り全員先輩だったので。

マリア=ゾロと言うのは、倒すべき人物に弟子入りってところが共通しているということですかねw

493名無し募集中。。。:2016/07/29(金) 13:29:19
正攻法を使わない連中だなぁw

494名無し募集中。。。:2016/07/29(金) 15:26:54
むしろこの物語における「正攻法」ってどんなのだろう?って思ったりもするw

495 ◆V9ncA8v9YI:2016/07/30(土) 13:11:05
「ここをガーッとやってシューッていくの。分かる?」
「分かりました!ビューンってなってドーンですね!」
「そうそう、そういうこと。」

超のつくほど感覚的なキッカはコーチとして不向きと思われたが、
生徒マリアも常人離れした感性の持ち主だったため、奇跡的に歯車が噛み合っていた。
修行の基本的な流れはまずキッカがお手本を見せて、その後にマリアが模倣するというもの。
キッカの投げるチャクラムの枚数が1枚や2枚の時はマリアもなんとかついていけたが、
5枚、6枚、7枚となってくると習得速度も鈍りだしてきていた。
それでも初日にしては十分な成果だと考えていたので、キッカは修行の中断を提案する。

「あぁ疲れた、もう遅いし続きは明日やろっか。」
「駄目です!」
「えっ?」
「マリアはまだやれます!キッカ様の投げるところ、もっともっと見せてください!」
「う〜ん、ま、ちょっとくらいなら良いけど。」

渋々ながらも、キッカは7つの刃を構えてはそれぞれ異なる軌道で同時に投げていった。
右に曲がる刃、左に曲がる刃、落ちる刃、螺旋に回る刃、止まるように見える刃、消える刃、そして真っすぐ飛ぶ刃
これだけの変化をいっぺんにかけることはもちろん容易ではない。
どれだけの力を入れればよいのか、フォームはどうなのか、握り方の複雑さはどうか
それらは決して1回や2回見ただけで習得できるものでは無いため、
マリアは何度も、何度も、何度でも繰り返してもらうようキッカに依頼した。

「あと1回だけ見せてください!」
「……同じことをもう100回は言ってない?」
「お願いします!何か掴めそうなんです!」
「はぁ、コーチなんか引き受けなきゃ良かったよ……これが最後だからね!!」

いくらキッカが食卓の騎士に次ぐ程の実力を持っているとは言っても、疲労には勝てない。
7枚を100回以上、のべ回数にして700球も投げればどうしても精度は落ちるのだ。
つまりはこの最後の投球こそが、指導者としての質をギリギリ保つことの出来るレベルだと言える。
それでも見事に決めるあたりが流石ではあるが。

「キッカ様凄いです!」
「もうやらないよ!今日はおしまい!続きは明日!」
「あ、じゃあ最後にマリアが投げるところを見てください。」
「はいはい、それ見たら帰ろうね。」

本日の成果を見せようとマリアが振りかぶったところで、途端にギャラリーが増え始める。
そこには同期のハーチン、ノナカ、アカネチン、そして帝国剣士団長ハルナンがいた。

「あ、みんな〜マリアの練習を見学しにきてくれたの?」
「マリアちゃん、このメモを見て。」
「アカネチン?……えーーー!?」

一瞬で内容が頭に入るほどに読みやすいメモを見て、マリアは驚いた。
そこには作戦がまとめられており、その方針がマリアには信じられないものだったのだ。
マリアの驚きも止まぬうちに、ハーチンがキッカに話しかけていく。

「キッカ様お疲れさまです。ところで、今何時か知ってますか?」
「知らないけど……結構遅い時間だよね。」
「そうです。日付変わっちゃったんですよ。」
「うわ、そんなに練習してたのか……疲れるわけだ。」
「それでですねキッカ様、今日はもう"明日"なんですよ。」
「……!!ま、まさか!!」

496 ◆V9ncA8v9YI:2016/07/30(土) 13:14:57
仮面ライダーイクタでもそうでしたが、純粋なガチンコバトルはあまり書いてないですねw
特に飯窪さん絡みになると・・・

497名無し募集中。。。:2016/07/30(土) 23:59:15
黒ハーチンは鬼かw

純粋なガチンコバトルも好きだけど心理戦や裏技的な戦いも好きですよ

498名無し募集中。。。:2016/07/31(日) 14:15:52
オダは帝王とガチタイマンを繰り広げたってのに新番長も新人剣士もなんか姑息すぎる

499 ◆V9ncA8v9YI:2016/08/01(月) 12:56:59
キッカはミッションの日時を具体的に指定してはいなかった。
情報としてあるのは「明日」ということだけ。
となれば、日付が変わった瞬間に再戦を望まれたとしてもルール上なんら問題は無いのだ。

「ちょ、ちょっと待って、ハルナンちゃん……こういうの認めちゃう?」
「キッカ様のお好きなようにすれば良いのでは?」
「ホッ、そうだよね。じゃあ……」
「ただ、キッカ様ほどのお方であれば、いつ何時に勝負を挑まれても快諾してくださると思ってましたけどね。
 ましてやその相手が新人であれば、先延ばしにするなんてことは有り得ないと……」
「ぐぐ……やるよ!やればいいんでしょ!」

今のキッカは背中から矢を受けたような思いだった。
長時間に及ぶコーチングのせいで身体はかなり疲労しているが、逃げることは許されない。

(軽〜く捻ってすぐにベッドで寝る!それしか道は無い!)

キッカが目指すのは短期決戦だった。
そしてその狙いは新人剣士らも同じ。
キッカのスタミナが回復するのを待たずに、ハーチンとノナカの2人が飛びかかってくる。

(わっ、こっちの2人が来るの!?)

先の戦いでは消極的だったハーチンとノナカがリスクを冒して真っ先に飛んできたので、キッカは面食らった。
投てき使いを相手に接近戦に持ち込むのはもちろん正解の一つであるのだが、
キッカはチャクラムのみでなく、腕っぷしの方も一流だということを忘れてはならない。
これだけ近ければ2人同時にラリアットの餌食になることだろう。
だがその時、遠くからアカネチンの声が聞こえてくる。

「しゃがんで!」

アカネチンの合図と同時にハーチンとノナカは体勢を低くした。
そうすることでキッカの攻撃を回避したのだ。
これはアカネチンが自身の眼によって、キッカの次の行動を予測したのに過ぎない。
本来のキッカならば「声を聞いてから避ける」ような暇も与えず攻撃を終えてしまうのだが、
いかんせん疲労のせいで若干動きがスローになっていたのである。

(くっ……ちょっとまずいな……)

500 ◆V9ncA8v9YI:2016/08/01(月) 12:58:57
確かにオダは不意打ちを使用したとは言え、ガチでやってましたね。
他のメンバーも勝ちたい一心でやっているということで、ご理解ください。

501名無し募集中。。。:2016/08/05(金) 00:04:08
マナカン卒業・・・連載始まってから何人卒業していったんだろ

502 ◆V9ncA8v9YI:2016/08/05(金) 12:27:01
卒業確定はショックですね……
事務所に残るのは幸いですが、関東住みの私が会える機会はもう無さそうです。

次の更新は今夜の遅くになる見込みですが、
どんどん続きを書いてカントリー達の活躍まで持っていきたいですね。

503名無し募集中。。。:2016/08/06(土) 01:12:39
これは仮面ライダーイクタ書けとの私信では?w

[9期 Blog] 平成ライダーなのに。生田衣梨奈

504 ◆V9ncA8v9YI:2016/08/06(土) 04:56:45
ミッションを実施するにあたって、キッカには1つの制限が課されていた。
それは新人剣士に大怪我を負わせないということ。
あくまで最終目的はハーチン、ノナカ、マリア、アカネチンの4名の強化であるために
負傷させてしまってベリーズ達の居る場へ送り出せないようでは元も子もなくなるのだ。
もっとも、その狙いがバレないようにキッカは全力で戦うように振る舞ったつもりではあったが、
アカネチンの眼の前ではそれすらも見透かされていた。
マリアと合流する前に、残りの新人3名はこのような会話をしていたのである。

「キッカ様は致命傷を与えるような攻撃は絶対にしないよ。
 私たちにギリギリ弾けるような強さでチャクラムを投げている。」
「なんでそう言い切れるん?」
「筋肉と、視線がそういう動きをしてたから。」
「……ほんま凄いな、アカネチンの眼は」

アカネチン・クールトーンの黒い"眼"は全ての情報を余すことなく取り入れる。光のように反射せず吸収するのだ。
かつてクマイチャンとモモコの戦いをこれ以上ない特等席で観戦したりしたこともあったので、
キッカの取りうるアクションくらいは100%に近い精度で理解出来るのである。
(それに対して身体がついていけるか、というのはまた別問題ではあるが。)

「でもね、大怪我なんか負わせなくても私たちを負かす方法はいくらでもあると思うんだ。
 例えば鳩尾を思いっきり殴って気を失わせるとか……」

アカネチンの考えに、ノナカもウンウンと頷いていく。
己の肉体を用いた攻撃であればチャクラムのように人体切断……といったことはないので心置きなく実行に移せる。
それにキッカの屈強な体を前に、新人剣士らが攻撃を止めることが出来るとも思えない。
4人の中では一番ガッシリしているアカネチンがキッカのパンチ一発で落ちたことからも、それは明らかだろう。
となれば肉弾戦に持ち込まれた時点でほぼ詰んでしまうと言えるのかもしれない。
ところが、ハーチンはこの件に関しては楽観視しているようだった。

「それならもう手を打っとるで。」
「「え!?」」
「どんな人間でも疲れたら攻撃力もスピードも弱まるやろ。しかもそれが眠い時間だったりしたら最悪や。
 せやからウチはマリアちゃんに「しつこく食らいつけ」って言ったんやで。
 あのマリアちゃんにガンガン来られたら流石のキッカ様でもしんどくなるやろ〜」

やっぱりハーチンは凄い、とアカネチンは思った。
自分たちに出来ることはせいぜい「自分たちの立ち回り」を変えることくらいだと思っていたが、
ハーチンは敵の状態すらも変えようとしていたのだ。発想が根本から違っている。
これで上手くいきそうだと思いかけたところで、もう一人の新人剣士ノナカの表情が暗くなっていく。

「いいのかな……」
「何が?」「どうしたん?」
「今回のmissionってノナカたち4人をpower upさせるためのものなんだよね?
 それをこんな裏口みたいなやり方で通り抜けちゃって、本当にいいのかな……」

505 ◆V9ncA8v9YI:2016/08/06(土) 04:58:04
そういやアメトークの仮面ライダー芸人をまだ見てませんでしたw
生田も見たようですし、録画を近いうちに見るようにします。
仮面ライダーイクタが再開するころには平成20周年とかになってそうですねw

506 ◆V9ncA8v9YI:2016/08/08(月) 13:00:08
サユを救うためには1秒でも早くこの場を発たなくてはならない事はノナカも分かっている。
だが、正攻法を使わずに騙し騙し切り抜けたところで何の意味が有ると言うのだろうか?
実力が身につかず、結果的に打倒ベリーズの頭数として勘定されないのであれば無意味ではないのか。
そのような懸念をノナカは抱いていた。

「うん……言いたいことは分かるで。」
「じゃあ明日にまた出直した方が……」
「いいやそれはアカン。 作戦は今日決行せな意味がない。」
「それだと本当のSKILLが身につかない!」
「不意打ちしながら、且つウチらの実力もパワーアップしたら文句ないんやろ?」
「What's?……」
「見せてやろうやないか。 この夜に強くなるのはマリアちゃんだけやないってことを!」

身体能力は一朝一夕で改善されるものではない。
では短期間で変えることが可能なものは何か?……それは心構えだ。
今まで口に出してはいなかったが、新人剣士4名は戦いの姿勢に問題があることにハーチンは気づいていた。

「以前、フク王様に言われたことがあるんや……ウチの弱点は"攻め手"ってな。
 今にも泣きそうな顔で"攻め手いっぱい話そう"って頼まれた事もあんねん。
 きっとウチの戦い方がどこか消極的に見えてたんやろな……」

続いてアカネチンも、ノナカの戦い方について率直な感想を述べていく。

「ノナカちゃんも、殻を破くべきだと思ってる。」
「カラを……?」
「ノナカちゃんはバラバラな私たちを調和してくれて、本当に助かってるけど。
 そのエネルギーを攻撃に回したら凄い事になると思うんだ。
 現にキッカ様はハーチンとノナカちゃんはガンガン攻めない子だと思ってる。
 だったら逆に2人が攻撃の要になったら……成長も出来るし、意表もつくことが出来るよね。」

507名無し募集中。。。:2016/08/08(月) 23:19:22
純粋にスキルをあげるのではなく本来持つ力を最大限に発揮するという事か

508名無し募集中。。。:2016/08/09(火) 23:06:41
これみて作者さんはどんな物語を想像するのか・・・気になるw
https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/h/hiroseyonaka/20160531/20160531223411.png

509名無し募集中。。。:2016/08/10(水) 07:44:03
イミフ

510 ◆V9ncA8v9YI:2016/08/10(水) 12:02:13
それぞれがメモリを持ってるように見えますねw

511名無し募集中。。。:2016/08/10(水) 14:15:35
紫と黄緑のメモリーですねW

512名無し募集中。。。:2016/08/10(水) 23:15:51
>>510
職人さんが画像加工してくれましたw
https://pbs.twimg.com/media/CpgG5jSVIAEelkb.jpg

513 ◆V9ncA8v9YI:2016/08/12(金) 12:33:46
凄い!やっぱり思うことは一緒なんですね。

続きの更新ですが、明日になります。
明日からは休暇を取れるので頻度も上がる……はず

514 ◆V9ncA8v9YI:2016/08/13(土) 13:02:05
そして現在、作戦通りにハーチンとノナカは積極性を見せつけていた。
キッカを恐れずベッタリ貼りつくことで意外性を見せるとともに、
遠距離対応武器の優位性を殺すことにも成功している。
そして、キッカはそれ以外の要因でもやり辛さを感じていた。

(しんどいなぁ……これじゃあ4人分警戒しなきゃならないじゃない……)

正直言うと、昼のミッションではキッカはマリアとアカネチンにしか注意を払っていなかった。
ハーチンは早々に倒れていたし、ノナカも味方を守るばかりで全然前に攻めて来なかったので
投げナイフによる「まさか」が有るかもしれないマリアと、
何をしてくるのか全く予想のつかないアカネチンだけマークしておけば良いと考えていたのである。
ところか、今は状況が大きく変わっていた。
すぐ近くにいるハーチンとノナカがそれぞれの武器(スケート靴、忍刀)で本気で斬りかかってきている上に、
残りのマリアとアカネチンがいつ第二陣として突撃してくるか分からない。
身体と頭がひどく疲労しているというのに、4人に対応しなくてはならないのは非常に堪える。
一刻も早く負担を減らさねばならない、そうキッカは考えた。

(しょうがない、一人寝てもらうか。)

キッカは両方の人差し指にチャクラムを複数枚通し、ギュンギュンと高速回転させた。
この回転は遠くに投げるためのものではない、
近くの人間を削り取るためのドリルなのである。

(ハーチンちゃんの肉、エグらせてもらうよ……
 まぁ、胸は脂肪がついてるから大事には至らないでしょ……)

515名無し募集中。。。:2016/08/14(日) 09:24:11
その娘の胸に脂肪は…

516名無し募集中。。。:2016/08/14(日) 12:30:34
竜ノ炎参式、焔群

517 ◆V9ncA8v9YI:2016/08/14(日) 18:15:32
キッカはハーチンの胸部に狙いを定めて、ドリルと化した右腕を振り下ろした。
本調子ではないので本来の鋭さは損なわれているが、
人間の肉を掘削するだけの力は残っているので十分だ。
この一撃がまともに当たればハーチンは怯むはずなのだが……

(あれ!?外した……)

ハーチンの胸への攻撃をスカしたので、キッカは少し動揺した。
確実に当てる自信があったのに外してしまったということは、
キッカ自身が想像以上に疲れているのか、それともハーチンの回避判断が優れていたのか、のどっちかだ。
相手が女性である以上、胸の膨らみを考慮するとそうだとしか考えられない。
だがその原因を探る猶予もキッカには与えられていなかった。
紐付きの忍刀の切っ先が、自身の後頭部を狙っていることに気づいたのだ。

「くっ……これくらい!」

いくら満身創痍と言えどもキッカの圧倒的な強さは揺るがない。
不意を打った後方からの攻撃くらいは難なく対処出来るのである。
もちろん正面からの攻撃だって両手のチャクラムで完全にガードしている。
ゆえに、新人相手にキッカが致命傷を受けてリタイアする……という可能性はゼロに近いと言っていいだろう。
だが、それも相手を視認できている場合の話。
ハーチンに避けられて動揺したり、ノナカの攻撃を防いでいるうちにキッカはターゲットの一人を見失っていた。

(あーもう……アカネチンどこ行ったの……)

518名無し募集中。。。:2016/08/16(火) 18:43:39
無い脂肪はえぐれない

悲しいなぁ〜ハーチン

519 ◆V9ncA8v9YI:2016/08/17(水) 04:46:13
キッカがアカネチンを見失ったので、ハーチンは心の中でほくそ笑んだ。
少しでも誤れば殴り飛ばされるような状況であるため表情に出すほどの余裕は無いが、
全てが目論見通りに行っているので嬉しくなってくる。

(行ったれ!勝利の鍵はアカネチンに有るんやからな!)

今まさに脇腹を刺されんと言ったところで、キッカはアカネチンの居場所を認識する。
しかし今更気づいたところでもう遅い。印刀による凶撃はもう止められないところまで来ていた。
すぐにアカネチンの腕を掴もうとしても完全に防ぎきることは不可能だろうし、
その隙にハーチンの蹴りやノナカの刀を貰ってしまうだろう。
様々な可能性を考慮した結果、キッカはアカネチンを放っとくことにした。
その結果として、印刀はキッカの横っ腹に無抵抗で突き刺さっていく。

「……で?」
「!?」

刃を体内に入れられても平気な顔をしているキッカに、アカネチンは戦慄する。
驚くべきはそれだけではない。
ハーチンのスケート靴を左手で、ノナカの忍刀を右手で……要するに素手でキャッチしてしまっていたのだ。
高速回転するチャクラムで弾くのではなく、血を流しながらもあえて自らの手で止めることによって、
ハーチン、ノナカ、アカネチンをビビらせることが目的なのである。
そして、それは想像以上に効いていた。

「ここまでの作戦はなかなか良かった。みんなで力を合わせればそこそこの強敵も倒せるかもね。
 ……でもさ、君たちが今相手にしているのは"三銃士"が一人、キッカなんだよ。
 キャリアどうこうじゃなく、人間としての性能が違うんだ。残念だけど。」

このキッカの発言にはハッタリが大きく含まれている。
どれだけ刃で刺されてもへっちゃらな風に言ってはいるが、人間である以上そんなことはない。
このままの勢いで斬られ続けたら流石のキッカだろうと失血で倒れてしまうだろう。
だが、このように言い放ったおかげで新人剣士3名の刃を持つ力は確かに弱まった。
腹部と両手に怪我を負いはしたが、今後の攻撃がヘナチョコならば負けようがないのである。

「私たちじゃ……キッカ様に勝てない……」
「そうだよアカネチンちゃん、これに懲りたら今後は"勝つ"じゃなく"生き残る"策を考えるんだね。」
「でも……私たち以外ならキッカ様に勝てる……」
「は?」

キッカがアカネチンの言葉の意図に気づくまでに、ほんの少しの時間を要した。
その「ほんの少しの時間」さえ稼げれば十分。
それだけでもうピッチングは完了するのだから。

「マリアちゃんか!!」

常に4人に意識を配ることを心掛けていたキッカは、いつの間にかマリアを見失っていた。
何故そうなったのか?それはアカネチンの仕業に他ならない。
キッカの挙動も視線もすべてを把握する眼を持つアカネチンだからこそ、
マリアへの視線を妨害する位置に陣取ることが出来たのだ。

(ここでナイフを貰うのはまずい……でも、一本くらいなら耐えられる。
 アカネチンの刃を受けたように、ここはあえて食らってあげるよ。
 ……反撃はそれからでも遅くない。)

520 ◆V9ncA8v9YI:2016/08/17(水) 05:02:32
●三銃士について
構成員のすべてが過去にマーサー王国、モーニング帝国を脅かした犯罪者です。
今は改心して裏の仕事を生業にする者の中で、特に強い三名をこう呼びます。
それと、みんな負けん気が強いです。

1人目
→キッカです。

2人目
→過去の大事件で敵側についたロビンという人物です。
 「可能性を秘めたきれいなお嬢さん5人組」というチームのリーダーを務めていますが
 現在はその名に反して4名で行動しているみたいです。

3人目
→悪の博士によって製造されたSAMURAI GIRL型兵器「1059号」。
 マーサー王国に攻め入りましたが、元の性格が良い子なのですぐに改心。
 今は氷柱割りを得意とする空手家や、金髪のヤンキーら6名のリーダー(仮)をやってます。

521名無し募集中。。。:2016/08/17(水) 11:41:50
きたか…!

522 ◆V9ncA8v9YI:2016/08/17(水) 23:03:50
投げるのは一本だけ、そこにキッカの勘違いがあった。
確かにマリアは相当不器用ではあるが、教わったことはキッチリやるタイプだ。
そんな彼女が受けた最新のコーチング内容はいかなるものだったか?
100回以上繰り返し見続けたお手本は、どのように投げていたのか?

「7本……!!」

右に曲がる刃、左に曲がる刃、落ちる刃、螺旋に回る刃、止まるように見える刃、消える刃、そして真っすぐ飛ぶ刃
キッカが何度も何度も何度も何度も投げてくれたのを忠実に再現するため、
マリアは7本のナイフを同時に投げつけていた。
もちろん手本であるキッカのキレやスピードには遠く及ばないが、
全てが確かなパワーをもって前へと突き進んでいる。
いくらキッカでもこれらをすべて受けとめたら身体がもたないだろう。

(悪いけど付き合ってらんない、ここは逃げさせてもらうよ!)

掴んでいたスケート靴と忍刀から手を放し、腹にブッ刺さる印刀もすぐに引っこ抜いた。
ナイフ群はもうすぐそこまで迫っているが、このペースなら疲れた身体でも安全地帯に退避可能だとキッカは考えていた。
だがここで余計なことが気にかかってしまう。
ハーチン、ノナカ、アカネチンの3人は何故この場に留まっているのか……それが気になるのだ。

(いやいやいやいや君たちも逃げなよ!?ナイフのコントロールが狂ったら刺さっちゃうでしょ?)

マリアの制球力が悪いのは、投球訓練での上達を見ていない3人の方がよく知っているはず。
普通の頭を持っていれば誤射を恐れて真っ先に逃げるはず。というかそうするべきなのだ。
だと言うのに彼女らは頑なにこの場を動こうとしない。
まるで、マリアが正確に投げるのを信じているかのように……

(信じてる?……そうなの?信じているの?……そういうことなの?)

ほんの僅かな時間であるが、キッカは震えてしまった。
ハーチンが、ノナカが、そしてアカネチンが逃げないのはマリアを信じているからに他ならないことを理解したのだ。
7本の刃がすべて例外なくキッカに命中することを前提に置いているからこそ、そのような行動がとれるのである。
だとすると、キッカはもう逃げられなくなる。
キッカは新人剣士の「敵」ではなく「コーチ」であるために、諦めない生徒に対してはその役割を全うする必要があるのだ。
本当に頭が痛くなるような話ではあるが、キッカは全てのナイフを受け止めなくてはならない。

(あ〜〜〜〜〜!!!もうっっっ!!分かったよ!一本残らずもらってあげる!!
 コーチとして、マリアちゃんに"失敗体験"を植えつけちゃならないってことでしょ!?
 痛いんだろうなぁ……苦しいんだろうなぁ…………まぁ、若い子の"成功体験"に比べたら些細な犠牲ってところか……
 この年代の挫折がキツいってことは、よく理解ってるから……ね。)

キッカは一歩前に出て、両手を広げて待ち構えた。歯をくいしばって、待ち構えた。
シュート、カーブ、フォーク、ジャイロ、ナックル、消える魔球、そしてストレート
その全てが一球残らずキッカのわがままボディに突き刺さる。

523 ◆V9ncA8v9YI:2016/08/17(水) 23:05:22
まだまだ全然途中ですが過去ログ置き場を復活させました。
http://hellomatome.html.xdomain.jp/

524名無し募集中。。。:2016/08/18(木) 00:28:23
キッカが言葉通り体を呈して4人に道を示そうとしているのか泣ける…よくぞアイカへの憎しみを乗り越え立ち直ったよなぁ

過去ログ感謝ですまた読み返そうかなぁ

525 ◆V9ncA8v9YI:2016/08/18(木) 20:22:22
マリアの渾身の一撃をもらったキッカは、そのまま仰向けに倒れていった。
体力、気力がともに限界に達していたのか、
それとも教え子の出した結果に満足したからなのか、
キッカは少しも動こうとはしなかった。
そんな様子を見て、アカネチンがポツリと呟く。

「私たち……勝ったの?……」

ハーチンも、ノナカも、いまいち状況を掴めてないような顔をしている。
これ以上無い好条件だったとは言え、あのキッカに自分たちが勝てたことが信じられないのだ。
勝利を確信しているのはただ一人。
さっきから万歳して喜んでいるマリア・ハムス・アルトイネだけだった。

「やったーーー!!マリアたち、ミッションを達成したんだよ!!」
「そ、そうやな、ウチら勝ったんやな!」
「Unbelievable!! 信じられない!」
「これで私たち、サユ様を助けに行けるんだ!!」

新人剣士たちは浮かれに浮かれきっていた。
ミッションとして課された「生き残る」を超えて、キッカを倒してしまったのだから
それはもう嬉しいだろう。
そんな中、ハルナンだけは深刻な顔をしていた。

「キッカ様!ご無事ですか!?」
「「「「あ……」」」」

ハルナンが大急ぎでキッカに駆け寄るのを見て、新人4名はハッとした。
今のキッカは体中のあらゆる箇所から出血をしている、言わば重体の状態なのだ。
喜ぶよりも救護を優先すべきなのは明らか。
なので4人も慌ててキッカの近くに向かったが、その重体人本人に拒否されてしまう。

「あー、いい、いい。自分でなんとかするから構わないで。」
「ヒャ!!まだ息がある!」
「勝手に殺さないでよ……正直メチャクチャしんどいけど、死にはしないよ。」

普通は死んでもおかしく無い、むしろ生きてることの方が異常な程の大怪我だが、
あの時代を生きてきたキッカにとっては「しんどい」で済むらしい。

「ですがキッカ様、せめて治療はさせてください。」
「ハルナンちゃん。あの子たちの合格を取り消してもいいの?」
「えっ!?」

合格取り消しと聞いて、ハルナンならびに新人剣士はドキリたした。
正規の条件を満たしてはいるものの、キッカにダメと言われたら従うしか無い。

「今、2つの条件を新しく決めたの。それを守れなかったらベリーズのところに行かせないよ。」
「そ、それだと話が違ってきますが……」
「いいから聞いて!」
「ハイ!」

ハルナンがキッカの言いなりになったので、新人たちはもう何も言えなくなってしまった。
果たしてどんなルールが課されるのか。
その内容をキッカが告げていく。

「1つ目。 新人4人とハルナンちゃんは今すぐ身体を休めること。 明日の朝8時までゆっくりしたらどこでも好きなところに行っていいよ。」
「休み……ですか?」
「人間が十分に休みを取らなかったらどうなるのか……ってのはハーチンちゃん達の方がよくわかってるんじゃない?」
「ひぇ〜……は、はい……なんか、すいません。」
「だったら一刻も早く寝なさい。 私を治療しようとしたり、馬に乗って移動しようとしたら怒るよ。」

戦いには休養も必要。そのことをキッカは伝えたかった。
いろいろとやりたい事はあるかもしれないが、とにかく休む。
ベリーズ戦に向けて今から出来る最良の対策はそれだけなのである。

「それと2つ目……ベリーズの"眼"を持った人には一切近づかないこと。それさえ守れれば後は何も言わないよ。」
「"眼"?…」
「アカネチンちゃんだって持ってるでしょ?不思議な"眼"。」

ハーチンやノナカ、そしてマリアはうんうんと頷いた。
アカネチンの観察力は人並み外れているところがある事に気づいていたのだ。
そしてアカネチンも己の力を自覚している。
過去にサユに教わった"眼"が自分に備わっていることを理解している。

「私と同じ眼を持った人が……ベリーズにも……」
「ぶっちゃけさ、アカネチンちゃんの戦闘能力は中の下くらいでしょ」
「う……」
「ベリーズのその人の強さを同じ物差しで測るなら特上の特上。 しかもオーラだって他のベリーズに匹敵してる。」
「うわ……」
「そんなに強いのに"眼"まで持ってるの。 勝てるワケないでしょ?」
「はい……でも戦わなくならない時はどうすれぼ……」
「逃げるの。とにかく逃げる。 それだけは絶対に約束して。」

いつになく真剣に言うキッカに、一同は強く頷いた。
あれだけ強いキッカがそう言うのだから、よほど規格外の強さなのだろう。

「あの……その人、どんな人なんですか?……」
「一言で言うなら……"人魚姫(マーメイド)"、かな。」

526名無し募集中。。。:2016/08/18(木) 23:11:05
あの時代・・・確かにw普通死んでるっての多かったもんなぁ

ベリーズの"眼"はあの子か…人魚姫かぁどんなオーラなんだろ?でも個人的に魔法使いってイメージが強いんだよなぁ

527名無し募集中。。。:2016/08/19(金) 09:34:47
いや・・・ここのあの人にはマーメイドはぴったりだよ
敵の倒し方もアレだし
てかこの曲までもぴったり当てはめてしまうなんて!すげぇw

528 ◆V9ncA8v9YI:2016/08/19(金) 19:47:14
各所で行われたイベントも終わり、翌日の朝が来た。
この日はプリンスホテルでの決戦が行われる当日。
実際に戦いが始まるのは正午ではあるが、
カントリーの4名は朝早い時間からモモコにとある任務を命じられていた。

「マナカちゃん、あれじゃない?マーサー王国の船って。」
「そうねリサちゃん。じゃあさっそく接触しましょ。」

リサ、マナカ、チサキ、マイは大胆にも港に着いたばかりの船へと接近していった。
この船にはキュート戦士団にモーニング帝国剣士、アンジュの番長やKASTが乗っている。
上陸するや否や敵の使いが現れたので、連合軍はピリッとした。

「何よアンタ達!ここで戦いをおっ始めようっての!?」

アユミンはエリポンの後ろに隠れながら怒声をあげた。
強い敵対心を持ちつつも、カエル軍団が怖いのである。
そんなアユミンならびに数名の警戒心を解くために、マナカ・ビッグハッピーが優しい口調で説明を始める。

「私たち4人は皆さんを戦場にご案内するためにココに来たのです。決して今すぐに戦おうなんて思ってませんよ。」
「戦場?プリンスホテルでやるんじゃないの?」

マナカに問いを投げかけたのはハル・チェ・ドゥーだ。
プリンスホテルが決戦の地であることは、確かにそこにいるリサ・ロードリソースが教えてくれたはず。

「まぁ、ドゥーさん。イケメンなだけじゃなくて記憶力まで優れているんですね!」
「えへへ、そ、そうかな?」
「はい。当初はプリンスホテルで行うつもりでした……ですが、どうしても入りきらなかったのです。」
「入りきらなかった?……」

一同はまずベリーズの巨人、クマイチャンを連想した。
あの長身が入りきらなかったから開催場所の変更も止むなしと考えたのかもしれない。
しかし、いくらクマイチャンがデカいとは言っても人間が入れないようなホテルが有るだろうか?
ましてやプリンスホテルは高級ホテル。 高さと広さは保証されているはずだ。
ではクマイチャンではなく、いったい何が入りきらなかったのか?
その疑問が解消されぬうちにマナカは説明を続けていく。

「場所が変わったと言っても大きく移動するわけではありません。
 真の開催地は"シバ公園"……ホテルから歩いてすぐのところに有ります。
 とても広いので、のびのびとした気持ちでベリーズ様たちと戦えると思いますよ。
 それではご案内しまーす!!皆さんついてきてくださーい!!」

529 ◆V9ncA8v9YI:2016/08/19(金) 19:48:24
人魚姫の正体はわざわざ言うまでも無さそうですねw
オーラはアイリの雷同様に、前作の設定が反映されてます。

530名無し募集中。。。:2016/08/19(金) 22:07:07
アババのオーラ?・・・アババ状態のアレがスタンドのように見えるのを想像して戦慄したwまぁ違うだろうけど

531名無し募集中。。。:2016/08/20(土) 05:08:58
ちょ℃-uteが

532 ◆V9ncA8v9YI:2016/08/20(土) 14:39:53
活動休止じゃなくて解散なんですね……
この話を書き始めてからいろいろありましたが、一番の大事件のような気がします。

533 ◆V9ncA8v9YI:2016/08/20(土) 20:43:58
カントリーに案内されなくても、ベリーズ達のおおよその居場所に目星はついていた。
シミハムの「無」のオーラでも隠しきれない程の禍々しい威圧感がそこから発せられているため、
己の身体が震える方へ歩けば自ずと辿り着けるというワケである。
ベリーズのところへ近づけば近づくほど、マイミの怒りに連動してえ嵐が激化するのも目安になるだろう。
そうして、いくらか歩いているうちに、目的地であるシバ公園に辿り着いた。

「おはよー。早かったのね?まだ約束の時間まで結構あるのに。」

そこにはモモコがいた。 シミハムも、ミヤビも、クマイチャンも近くに立っている。
橋の上で戦った面々が揃っているので連合軍はピリッとした。

「4人……カントリーも含めて8人か……残りの2人はどうした?」

今すぐに飛びかかりたくなる気持ちを押し殺して、マイミはモモコに質問した。
ベリーズは総勢6人のグループであり、ここに居ない2人も例外なく強者。
その2人に不意でも打たれたら大打撃だ。
だからこそしっかりと情報を収集する必要が有るのである。

「あぁ、そのことなんだけどね……1人はさぼり。1人は後で来る。
 ほら、あの2人は朝弱いから。」
「本当か?嘘じゃないだろうな。」
「えぇ〜?モモが嘘ついたこと、今まであった?」

「有るだろ。」とモモコの味方であるはずのミヤビがツッコミを入れた。
そしてモモコの代わりに説明を補足し始める。

「騙し討ちも有効な戦略だと考えるけど、この点については嘘はないと思って欲しい。
 なんなら今回の戦いの"ルール"の1つとして数えても良いよ。」
「ルールか。なら詳しく教えてもらおうか。 2人のうちどちらがさぼりで、どちらが遅刻なんだ?」
「遅れて合流するのはチナミだよ。 まぁ、約束の時間である正午までには到着するから"遅刻"では無いんだけどね。
 で、どうする? チナミを待ってから正午に戦闘を始めるか、それとも今から戦うか。」

ミヤビの問いかけへの答えは決まっていた。
チナミがいない分、戦力数的に有利だという理由もあるが、
それ以上に倒すべき相手を前にして待っていられないことの方が大きいのだ。

「もちろん!今すぐだ!!」

534名無し募集中。。。:2016/08/20(土) 23:13:23
> ベリーズは総勢6人のグループであり

え?何故7人じゃないんだ?

535 ◆V9ncA8v9YI:2016/08/21(日) 12:39:18
マーサー王はベリーズ戦士団ではないので、それを抜いた6人ということになりますね。

536名無し募集中。。。:2016/08/21(日) 15:32:31
あ・・・根本的な事忘れていたw


マーサー王大変失礼しました

537 ◆V9ncA8v9YI:2016/08/23(火) 12:56:37
連合軍は、今回の戦いのフォーメーションを事前に取り決めている。
その中でも特に重要な役割を担っているトモ・フェアリークォーツの心臓は、
今にも破裂しそうなくらいにバクバクと鳴り響いていた。
そんなトモの弱っている部分を見抜いたアイリは、優しく手を取り、こう言うのだった。

「貴女なら大丈夫。 だから一緒に行きましょう。」

その一言で少し冷静を取り戻したトモは、アイリと共にベリーズの目の前まで歩いていく。
ここまでやってきたのはアイリとトモだけではない。マイミ、ナカサキ、オカールもだ。
キュートが最も得意とする5人組の陣形で、シミハム、モモコ、ミヤビ、クマイチャンの前に立ちはだかったのである。

「へぇ、その子がマイマイの代わりってこと?」
「そうだ。5人揃った私たちが強いことは、お前たちもよく知っているはずだ。」

モモコの問いにマイミが答えた。
いくらトモが果実の国では優秀な戦士だとしても、食卓の騎士マイマイには及ばないはずなのだが
マイミも、他のキュートのメンバーもトモを信じていた。

「まぁ、モモたちは4人だし、そっちもキュート4人にオマケが1人……
 確かに丁度いいっちゃ丁度いいのかもしれないわね。」
「いや、違うぞ。」
「ん?」
「この陣形は元々5人のベリーズを撃破することを想定したものなんだ。
 オマケだと決めつけちゃってたら時代に蹴られるぞ?」

当初の連合軍の想定は、キュート+トモの5人でベリーズ5人を抑えて、
残りのメンバー全員でベリーズ1人とカントリー4人を倒すというものだった。
強大な存在であるベリーズも1人だけなら、帝国剣士と番長、そしてKASTの力を総動員すれば勝てると考えたのである。
だが実際はキュートとトモが相手する予定の戦士が「さぼり」で欠席している。
これによって余裕が生じるのは連合軍にとってとても大きいアドバンテージになるだろう。
そして、アドバンテージは更に大きくなる。

「ちょっと待ってください!私たちカントリーは今日は戦いませんよ?」

帝国剣士、番長、KASTに囲まれそうになったので、マナカは焦って弁明した。
それにチサキやマイも続いていく。

「わ、わ、私たちは今日は案内役だけ任されたんです!」
「本当は今すぐ蹴っ飛ばしたいけど……モモち先輩の命令だから大人しくしてあげる。」

嘘をついているようにも見えないので、カントリーらが戦わないのは真実なのだろう。
だがそれはそれで、これからどうすれば良いのか分からなくなってくる。
アユミンも混乱しているようだ。

「え?じゃ、じゃあキュート様に加勢しにいく? でもそれじゃ邪魔になっちゃうか……
 だったら遅刻してるベリーズが来るまで待機?」

せっかく上げた士気が待ちぼうけになることで下がるのだけは避けたかったが、
どうやらそれも杞憂に終わるようだった。
件の対戦相手がすぐにやってきたのである。

「いやーごめんなサイ! こいつら運ぶのに手間取っちゃってさー。」

538名無し募集中。。。:2016/08/23(火) 16:50:50
まさかマイマイいないのを逆手にカウントダウンのネタを持ってくるとは!それとも最初から計算ずみかな?

てかチナミは何もってきたんだ?w

539名無し募集中。。。:2016/08/24(水) 00:12:55
まさか流しオードンという名の大砲連射機?とかじゃ・・・

540 ◆V9ncA8v9YI:2016/08/24(水) 13:33:32
カウントダウンネタをやろうと決めたのは相当前になりますが、
マイマイ不在が先に決まっていたかどうかは記憶にないですね……
真実は闇の中です。

本編の更新は夜遅くになります。
今はオマケ更新だけしますね。


『パワーアップイベント』

オカマリ「魚操れるんだ!凄いね!」
チサキ「えへへ」
オカマリ「で、魚捌けるの?」
チサキ「え?」
オカマリ「出来ないんだね。じゃあ捌き方教えてあげる。」
チサキ「ええええええええ!?」

541 ◆V9ncA8v9YI:2016/08/25(木) 03:05:10
やっぱり書けそうにないので少し延期します・・・

542 ◆V9ncA8v9YI:2016/08/25(木) 14:31:49
遅れてきたチナミだったが、悪びれる様子がまるで無いことは謝罪が軽いことからも分かるだろう。
そして失礼に失礼を重ねるように、連合軍一同に殺気を振りまいていく。

「暑い!!いや、熱い!?」
「なんて熱さなの!?……身体が……焼けちゃいそう……」

メンバーの中では色白な方のカナナンやカリンも、あっという間に真っ黒コゲになってしまいそうなこの熱さ。
まさに太陽そのものを具現化するのがチナミのオーラなのである。
太陽光線の灼けるような熱さの前では誰も活動することなど出来やしない。
もはやチナミはただ突っ立っているだけで勝利が約束されたようなものだった。
ところが、それだけ強大な太陽が一瞬にしてフッと消え去ってしまう。

「ありゃ!?消えちゃった……あ〜団長がやったのか……」

チナミのすぐそばでは既にベリーズとキュート、そしてトモの戦いが開幕していた。
互いに睨み合っているだけだというのに、天候は「超発達した大型台風9号10号」と「轟音と共に何百発も落ちる雷」、そして「すべて凍り尽くす吹雪」がゴチャ混ぜになっている。
「切れ味鋭い無数の刃」と「牙で全方位を嚙み殺す狼の群れ」の喧嘩も始まったと思いきや、
「凶暴凶悪な巨大怪獣」を「天から伸びる仏の掌」が必死で押さえつけてもいる。
まさに天変地異。世界の終末。
そんな光景が目の前では繰り広げられているので、トモは今にも気絶してしまいそうだし
ベリーズの団長シミハムもどこか鬱陶しく思っていた。
これでは戦いどころでは無いと考え、シミハムは自身のオーラである「無」で全ての異常現象を消し去ってしまう。
相も変わらず簡単にやってのけるシミハムに、相手のマイミだけでなく味方のモモコまで驚きを隠せないようだ。

「ムッ……嵐を消されたか。 敵ながら流石だなシミハム。」
「結構本気で放ったんだけどなぁ……まぁ、オーラなんか無くても勝てるからいーけど。」

これだけ大規模の現象を消し去ったのだから、シミハムの無が及ぼす範囲は自ずと大きくなっている。
そしてその影響が、直接的に接していないはずのチナミにまで降りかかっだと言うわけだ。
ゆえに燃えるような太陽はもう存在しない。

「やっぱりまともに戦うしか無いのか……まぁ、だからこそ製造(つく)った甲斐が有るってもんだよね。」

シミハムの無を利用する……と言ったところまでは連合軍らの作戦の通りだった。
これで食卓の騎士であるチナミとも対等に戦える。
そう思っていた。そう信じていた。
だが、現実はあまりにも非情だ。

「ねぇカナナン……ウチらの作戦って上手くいったんだよね?」
「リナプー……うん、そのはず……なんやけどな。」
「じゃあ教えてよ……アレ、どう倒せばいいの?」

チナミの通り名は「DIYの申し子」。
ひょんなことで友達になった1059号から教わったハイテクノロジーと、
大工の棟梁集団を従えることで実現したマンパワーさえあれば、
彼女に作れないものなど何も無い。

「壱奈美から九九九奈美まで総勢999体!!突撃ーーー!!」

例えば自律走行可能な機械兵を1000体近く製造することくらい、朝飯前なのだ。

543名無し募集中。。。:2016/08/25(木) 23:12:38
なんじゃそりゃー!ww
とんでもないの連れてきたな…タイムボカンシリーズのミニメカ思い出す自分はじっちゃんか?

544名無し募集中。。。:2016/08/26(金) 03:55:57
ここにきていきなりの超ハイテク化?!
予想の遥か斜め上をいく展開に良い意味で笑いが止まらないww
今後の戦いがますます楽しみだ!w

545 ◆V9ncA8v9YI:2016/08/29(月) 20:03:44
漆黒の鎧で覆われた機械兵らは、そのどれもがチナミと同じ体型をしている。
つまりは長身のチナミと同じ身長。 そして手足の長さまで再現されているということ。
そんなものが1000体もやってきているのだから、恐怖を感じないわけが無い。
さすがに技術モチーフとなった1059号のように「意志」や「思考」、そして「感情」を持ち合わせるほどハイテクではないが、
近くの敵に向かって直進し、殴りかかることくらいは出来る。
つまりは機械兵一体一体が人間の兵と同じか、それ以上の実力を備えていると言えるだろう。
14対1と思いきや、その実は14対1001だったという訳だ。
人に非ざるものがあたかも本物の人のように襲ってくる光景を見て、連合軍のほとんどは混乱したが、
その中でもエリポン、サヤシ、カノンの3人だけは凛とした姿勢を崩さないでいた。

「相手は1000人……まるでお披露目の時のようじゃのう。」
「まぁ、今日はフクがおらんっちゃけどね。」

Q期の3人は、自分たちが帝国剣士としてデビューした時のお披露目会を思い出していた。
あの時は現フク王を加えた4名で1000の帝国兵を倒したのだ。

「あの黒い戦士がどういう理屈で動いているのかは分からないけど……兵が兵であることには変わりはないよね。」

顔面までフェイスガードで完全に覆った、フルアーマー状態のカノンはそのように分析する。
相手が機械であることに惑わされてはいけない。
やる事は変わらないのだ、と信じている。
ならばここはサヤシの独壇場だ。

「ウチが必殺技で攻め込む。 エリポンとカノンちゃんはカバーをお願い。」
「「分かった!!」」

サヤシは機械兵の密集する地帯に飛び込んでは、同時に居合刀「赤鯉」を鞘から解き放った。
機械もすぐに反応してパンチや蹴りを繰り出すものの、もう遅かった。
ただの一瞬にして細腕や細脚がスッパリと斬られてしまっていたのだ。
チナミをモデルにしたこの兵隊たちは、リーチこそ優れているものの耐久性には乏しい。
サヤシは形状から瞬時にその弱点を見抜き、刀でぶった切ったのである。
そして、サヤシの攻撃はそれでは終わらない。

(みんなの負担を減らすために……まだまだ斬って斬って斬りまくる!!)

この時のサヤシはいつものポンコツっぷりが嘘のようにキレッキレだった。
いや、これがサヤシの本来の姿なのかもしれない。
彼女の真骨頂は超スピードからなる容赦ない居合斬り。
相手が人間ではない「機械」だからこそ少しも力を緩めることなく全力で斬り捨てることが出来るのである。
もはや鬼神と化したサヤシはもう止まらない。誰にも止めることなど出来やしない。
超スピードで敵の元に走り込んでは、手足をスパスパと斬りまくる。
そして一仕事終えたと息をつく間も無く次の敵のところへとダッシュする。
この高速剣技こそサヤシ・カレサスがモーニング帝国最速の剣士であることの所以。
帝国で王を決める時の戦いでは模擬刀を用いていたため披露することが出来なかったが、
サヤシはこの真剣専用の必殺技「斬り注意」をずっと前からモノにしていたのだ。
近づくのも危険となったサヤシと共闘できるのは、気心の知れた戦友くらいしかいないだろう。

546名無し募集中。。。:2016/08/30(火) 06:17:40
サヤシかっこいい…やっと思い描いていたサヤシを見ることが出来たw
「キリ・ド・フォン・ルキアノス・・・」の曲が脳内で流れてくる

547 ◆V9ncA8v9YI:2016/08/31(水) 00:35:52
未知の敵に対して切り込んだのはサヤシだけではなかった。
機械兵が「斬れない敵」ではないことを証明したように、
カノン・トイ・レマーネも「受けられない敵」では無いことを確かめる。

「さぁ来い!!」

両手を広げて立ち止まったカノンは、攻撃を当ててくださいと言っているようなもの。
黒い兵隊たちは長い手脚を強く振っては、カノンの鎧にブチ当てた。

(うっ!思ったより効く……)

長鞭のようにしなる攻撃は遠心力も相まってなかなかの威力だった。
生身の身体であれば一発もらうだけで腫れあがってしまうことだろう。
だが、今のカノンは完全武装をしている。
分厚く重い甲冑を身につけるだけでなく、顔面まで覆っているのだ。
今の彼女は言わば動く鎧。 中身が本当にカノンなのか疑うほどに全身を鋼鉄で塞いでしまっている。
昨日から風呂の時以外は鎧を脱がないという徹底ぶりで、フルアーマーでの行動を可能にしているのである。

(よし!痛いは痛いけど、芯には届いていない!!)

カノンに攻撃を仕掛けた機械兵には一瞬の隙が生まれていた。
その隙を見逃すことなく打刀「一瞬」で斬りかかるのがQ期団団長のエリポン・ノーリーダーの役目だ。
この刀は、空気との摩擦で熱を発するほどに速く振るうことの可能な名刀と言われている。
それを帝国剣士随一の怪力を誇るエリポンが握るのだから、弱いワケがない。
兵は肩から腰にかけて、派手に袈裟斬りされてしまう。

「うん。エリ達の力なら倒せる!」

チナミの自信作である壱奈美から九九九奈美は決して弱くはない。
それでも、国を背負った戦いを続けてきた連合軍の面々に勝てない相手では無いのだ。
自分たちの力を見事に発揮すれば打ち勝つことが出来る。
言うならば乗り越えられる壁なのである。
だとすれば怖いのは総勢1000体という頭数だけだ。
もっとも、それは相手が機械であることを忘れなかった場合の話ではあるが……

「よーし!サヤシさんに続いてやるぜ!こっちだって必殺技は有るんだからさ!!」

先輩たちの活躍を見て気を大きくしたのはハル・チェ・ドゥーだ。
愛用する竹刀「タケゴロシ」をしっかりと握って機械兵に喧嘩を売っていく。
狙いはかつてアヤチョ王に教わった必殺技「再殺歌劇」。
一撃目で相手の注意を引きつけたところで、予想外の二撃目を放つという恐ろしい攻撃を繰り出そうとしているのである。

「この技はカノンさんを気絶させたことも有るんだぜ! 喰らえ!!」

ハルの動きのキレは申し分無かった。
一撃目は見事に敵の胴に命中していたし、
そこから間髪入れずの後頭部への二撃目だってよく打ち込めている。
大抵の人間は一撃目に意識を集中するあまり、再殺を意味する二撃目に対応しきれずクリーンヒットを受けてしまうことだろう。
だが忘れてはならない、今の相手は機械なのだ。
前にも述べたがこの機械兵には意志が無い。
ゆえに一撃目から身を守ろうだとか、二撃目への注意が疎かになったとか、そういうのが全く無いのである。
全ての攻撃がコイツにとっては均等。
その結果として、竹刀による合計二発の打撃を受けたとしてもピンピンとしていた。

「あれ?……ひょっとして効いてない?」

548 ◆V9ncA8v9YI:2016/08/31(水) 00:38:24
>>546
その曲は私の頭の中にも流れていましたw
ハルがサヤシに対抗するように走り出したのも、トライアングルを意識してます。
(必殺技名はステーシーズではありますが。)

549名無し募集中。。。:2016/08/31(水) 06:40:37
やはりあの曲は高ぶりますね〜

そして香音ちゃんはフルアーマーが似合う…某作品でもフルアーマーカノンだからイメージするのは皆一緒何だろうねw

550 ◆V9ncA8v9YI:2016/09/01(木) 12:55:20
慌てて逃げるハルのように、他のメンバーにも機械と相性の悪いものは存在する。
例えば番長のリナプー・コワオールド。
彼女の透明化は相手の脳に「見るな」という信号をサブリミナル的に送り込むことで実現しているので、
暗示の類の通用しない機械兵の前から姿を消すことは出来なかった。

「あ、無理だこれ。」

犬のように噛み付いてみたものの、文字通り歯が立たない。
愛犬のププとクランだってどうすれば良いのか分からず困惑しているようだった。
打つ手がなく呆然と立ち尽くすリナプーに黒い兵隊が殴りかかったが、
"サイボーグ"の異名を持つカリンがチクタク急いで駆け寄り、攻撃を肩代わりすることで事なきをえる。

「リナプー危ない!!」
「わっ!……カリン、ありがとう。」

興奮状態にある今のカリンの痛覚はかなり鈍っている。
ゆえに強烈な攻撃を生身で受けても、影響はほとんど無いのだ。
サイボーグと言うだけあって、カリンのスピードと耐久力はまさに機械並み。
機械VS機械の戦いになるのだから、そう簡単にへこたれてはいられないのだろう。

「ここは私が引き受けるから、リナプーは安全な場所に逃げて!!」
「はーい、後はよろしく〜」
「えっ、本当に行っちゃうの?……」

全く悪びれる事なく帰って行ったリナプーを見て、カリンは少し寂しく思った。
「私も一緒に戦うよ!!」といった言葉を期待していたようだが、
そうだとしたら大きな人選ミスだろう。
そうして落ち込んでいるうちに、カリンの周りを複数台の機械が集まってきていた。
いくらカリンが機械同然とは言っても、こうも相手が多ければ苦戦は必至だ。
最悪、命を落とす事になるかもしれない。

「大丈夫、私ならやれる。」

カリンは両頬をパシンと叩いて、気合を入れ直した。
無痛状態なのにそんなやり方で本当に気が引き締まるのか疑問ではあるが、
これはある種の儀式のようなものなのだ。
弱気な自分を変えて、とある地方で「男勝り」を意味する「はちきん」な女子にならないければ生き残れないと考えたのである。

「もっと加速しよう。もう1人の私が見えるくらい速く動いて対抗しよう……それが私の必殺技。」

551名無し募集中。。。:2016/09/01(木) 14:12:30
もうブッ込んできたかw

552名無し募集中。。。:2016/09/01(木) 16:51:07
はちきんってwむしろ最近帝国の見習い剣士に入隊した子ですね

553名無し募集中。。。:2016/09/01(木) 16:52:03
×むしろ
○ちなみに

554 ◆V9ncA8v9YI:2016/09/03(土) 13:11:53
この世の戦士は「技名を叫ぶ者」と「叫ばない者」に大別される。
声に出したからと言って威力や性能が特別変化するわけでは無いのだが、
人によっては言葉にすることで己のモチベーションをコントロールすることが出来るらしい。
一種の暗示のようなものだろうか。
そして、カリン・ダンソラブ・シャーミンは必殺技名を思いっきり叫ぶ側の人間だった。

「"早送りスタート"!!!」

技名を発した途端に、カリンの身体が小刻みにブレ始めた。
ただでさえチクタク時計が進むように素早いカリンの動きが、もう一段階加速したのだ。
まるでヘアアレンジ中の女子を見ていたら急に映像が早回しになったような、
発する音や声がキュラキュラ聞こえてくるような、そんな印象を受ける。
そう、カリンは己の意思でスピードを自在に操作ることが出来るのである。
通常の人間では実現不可能な超速度で機械兵の背後に回り込んでは、
両手に持った二本の釵(さい)「美頑針」で刺して刺して刺しまくる。
剣に比べると小さな針なんて機械相手には通用しないかもしれないと思われたが
装甲に叩きつけられるスピードが速すぎるあまりにショートして、火花まで起こしていた。
この行為はもはや「攻撃」よりは「溶接作業」。
ショートを利用してその熱で切断するので、「ショートカット」と呼ぶのが適切かもしれない。
武器にかかる負担が大きいため高リスクではあるが、機械相手にはこれがよく効くのだ。
まさに「何気に初めてのショートカット全然後悔してない(ちょっぴり嘘)」といった感じだろうか。
一体のボディーをあっという間に焼き切ったかと思えば、同様に他の兵隊たちも処理してしまった。
終盤にはカリンの影武者?にも思える残像が見える程のスピードだったので、真に恐ろしい。

「"早送りストップ"!……ふぅ、疲れたぁ……」

555 ◆V9ncA8v9YI:2016/09/03(土) 13:13:38
カリンの必殺技をスピード系にしようとは前から決めていましたが、
はちきんネタはせっかくなので入れましたw

556 ◆V9ncA8v9YI:2016/09/06(火) 12:44:13
すいません、多忙で書けていません……
明日の夜には時間を作れると思います。

557 ◆V9ncA8v9YI:2016/09/08(木) 01:50:16
申し訳御座いません。忙しい日々が続くため少しだけ更新を休ませてください。
来週の月曜に復活したいと思っています。

558名無し募集中。。。:2016/09/08(木) 06:32:11
ご無理をせずに…のんびりお待ちしてますよ

559 ◆V9ncA8v9YI:2016/09/12(月) 23:45:20
ギリギリでは有りますが復帰できました。 今夜中には必ず書きます。

アンジュルムの新曲PRコメント動画(と見せかけた別の動画)を見てのですが、
タケちゃんと相川さんが遠距離の的を狙うのが上手で、なんだか嬉しくなりました。

560名無し募集中。。。:2016/09/13(火) 00:15:25
俺にはこれしか言えねぇ…
頑張れ!

561 ◆V9ncA8v9YI:2016/09/13(火) 03:07:47
必殺技を解除したカリンは地面にぺたんと座り込んでしまった。
超高速での移動は身体に多大な負担がかかるため、
使用後はしっかりとした休息をとらなくてはならないのである。
カリンとしてはまだまだ戦いたいとは思っているが、どうしても身動きが取れない。
そんな風にして無防備状態に陥ったカリンは機械兵たちの格好の餌食だった。

「う、うごいて……!」

速度を前借りした代償として機能停止寸前になったカリンは逃げることすらままならない。
このまま無抵抗で殴られ続けるのだろうと思われた時、
自己流カンフーガールが黒い兵の顔面に飛び蹴りをかましてきた。

「ほぁちゃー!!」」

ピンチのカリンを助けに駆け付けたのは、同じKASTの一員であるサユキ・サルベだ。
常日頃のランニングによって鍛えられた、強靭な脚力からなる飛び蹴りはとても強力。
たったの一撃で機械の頭部を破壊してみせた。
そして自身の身体が地に落ちるよりも早く、ヌンチャク「シュガースポット」を振るうことで、
近くにいたもう一体の機械兵の胸部をも破壊する。

「なるほどねぇ、確かに倒せないほどの強さじゃないな」
「サユキありがとう!助けに来てくれたんだね!」
「カリン……あんたはジュースを飲んでも飲まなくても、結局ボロボロになっちゃうのね。」
「えへへ、面目ない……」
「まぁいいよ、今は身体を休めておきな。 ここは私とアーリーでなんとかするからさっ!」

左脚でしっかりと地面を踏みしめたままで、サユキは右足の連続蹴りを次々と敵にぶちこんでいく。
ジュースを飲んでフワフワしていた時と違って、地に足をつけた時のサユキの破壊力はなかなかのもの。
チナミと同サイズの兵隊が容易に吹っ飛ぶことからもそれが分かるだろう。
もっとも、サユキの真の狙いはただ吹き飛ばすだけのものではなかった。

「アーリー!私がこうしてたくさん送り込むから、全部絞っちゃって!」
「おっけー!」

サユキが機械兵を蹴った先には、アーリー・ザマシランが立っていた。
そんなところに立ったままだと鉄の塊と衝突する恐れがあるため非常に危険なのだが、
アーリーはむしろ自分から好き好んでこの場を陣取っていた。

「遠慮なしでいくよ!そりゃあ!」

562 ◆V9ncA8v9YI:2016/09/16(金) 06:54:15
サユキとカリン、そしてアーリーには奮起せねばならぬ理由があった。
その要因が、同じKASTに属するトモ・フェアリークォーツの存在だ。
彼女は今現在、キュートと共にベリーズらと直接対決をしている。
つまりは非常に過酷な戦いの真っ只中にいるということ。
ならば自分たちが気張らぬ訳にはいかないのだ。

「アーリー受け取って!!」

既にサユキは10数体もの敵を蹴っ飛ばしていた。
それらは全てがアーリーの方へと向かっている。
アーリーはこの状況を全く恐れることなく、両手を広げて、全身で受け止めていく。

「たああああああ!!!」

KASTの面々は、ジュースに頼らないと決めた日から自分自身を強化する特訓を続けてきていた。
これまでの期間にこなしてきた実戦式訓練の総数はなんと220回。
それだけの場数を踏んだからこそ、アーリーは自身の得意技を必殺技に昇華することが出来た。
やることはいつもと同じ。
相手を抱きしめて拘束するだけのこと。
では何が違うのかと言うと、"圧"が違う。
これまでのように表面だけ圧迫して搾るようなFirst Squeezeではない。
全ての力をもって、一滴も残さぬほどに搾り切るのである。

「"Full Squeeze"!!!」

束になった機械兵は超のつくほどの高圧に耐えきれず、胴から真っ二つに切断される。
一体を破壊するだけでも大変だというのに、
アーリーは複数体を同時に搾り切ってしまったのだ。
相当気合いが入った時にしか使えないという制限付きの技ではあるが、
この必殺技「Full Swueeze」を生身の人間に使用したらいったいどうなってしまうのだろうか。

563名無し募集中。。。:2016/09/16(金) 08:32:34
アーリーブリーカー!!w
いいネーミングだね

564 ◆V9ncA8v9YI:2016/09/17(土) 21:06:56
Q期団やKAST以外にも、機械兵相手に活路を見出したものが現れ始めていた。
例えばアユミンは、地面を滑りやすくする戦法が今回も有効であることに気づいたようだ。
転倒したままジタバタして起き上がらない敵を見て、逆に目を丸くしている。

「おぉ……一度転んだら起き上がれないんだ……
 さすがにそこまでは人間様を真似できなかったってことね。
 だったらこの辺り一帯を均しちゃえば勝利確定じゃん!」

いつもの得意技を活かしているのはオダ・プロジドリも同様。
太陽光を剣に反射させて機械兵の目元に送り込むことで、
視覚情報を取り入れる感知器をダメにしていた。

「機械さんも目を焼かれたら何も見えなくなっちゃうのね。
 だったら、壊し方はヒトとおんなじ。」

活躍しているのはアユミンやオダのような中堅どころだけではない。
連合軍の中では最も若いリカコ・シッツレイだって良いところを見せている。
はじめはシャボン玉にかまわず突っ走る敵兵に恐れをなしていたが、
シャボンの駅を頭からぶっかければ故障することに気づいてからは撃破数をグングン伸ばしている。

「\(^o^)/た!\(^o^)/」
「\(^o^)/お!\(^o^)/」
「\(^o^)/し!\(^o^)/」
「\(^o^)/た!\(^o^)/」
「\(^o^)/ぞーーーーっ!\(^o^)/」

周りが順調な中、リナプーはつまらなさそうな顔をしている。
彼女の特性は「機械には通用しない透明化」と「堅い装甲を破れない噛みつき」なので、
いまいち本領を発揮しきれていないのである。
そんなリナプーに対して、足裏に着けたソロバンで移動速度を上げたカナナンが迫ってきた。

「なにやっとんねんリナプー、いくで!」
「いくってどこに?」
「決まってるやろ……人形なんかじゃなく、本体を直接叩きに行くんや。」

565 ◆V9ncA8v9YI:2016/09/17(土) 21:10:40
>>563
ありがとうございます。
ただ、肝心なところで誤字っちゃいましたけどね。

アーリーの必殺技の正式な名前は「Full Squeeze」
由来はLast Codeのタイトルです。

566 ◆V9ncA8v9YI:2016/09/20(火) 12:24:33
すいません、リアルの忙しさが解消しないので更新頻度がかなり減ります。
少なくとも9月いっぱいはほとんど更新できなさそうです……
チャンスがあれば書きますが、あまり期待しないでください。

567名無し募集中。。。:2016/09/20(火) 12:56:36
無理しないで大丈夫ですよ〜気長にお待ちしております

568 ◆V9ncA8v9YI:2016/10/09(日) 13:17:21
機械仕掛けの兵隊の対処法が割れた今、全てを倒しきるのは時間の問題だった。
やはりそこは各国を代表する戦士たち。血の通っていない攻撃など簡単に跳ねのけられるという訳だ。
このまま順調にいけば小一時間もかからずとも制圧できることだろう。

「ま、順調には行かないんだけどね。」

ドォンと言った轟音が突如鳴り響いた。
それも単発ではない。耳をつんざくような爆音が同時に4回も発せられたのだ。
その大きな音の発信源ではなんと鉄壁の防御力を誇るカノンが地に倒れてしまっていた。
フルアーマーの胴体部分に砲丸ほどの大きさの凹みが4か所見受けられている。
ひょっとしなくても、これらの箇所に強烈な打撃をもらったためにカノンは倒れたに違いない。

「カノンちゃん!?……え?……ついさっきまでピンピンしてたのに……」

突然の出来事に、同期のサヤシも戸惑いを隠せないようだった。
必殺技「斬り注意」の影響で修羅と化していたのに、集中力が切れてしまったのがその証拠だ。
それほどにカノンが一瞬のうちに倒されてしまったことがショックだったのだろう。
しかし黒い機械兵の攻撃がカノンの鎧の前では無力だったことは実証済みだったはず。
ではいったい誰がカノンを倒したというのか?
……いや、そんなことをわざわざ考える必要は無いだろう。
この場にいる脅威は機械兵だけではない。それは最初からわかっていたのだから。

「みんなここまで良くやったと思うよ。だけどさ、私を忘れてもらっちゃ困るな〜」

サヤシより一回りも二回りも大きい高身長。
常人では届かぬ距離にも簡単に伸ばせてしまえそうな長い手足。
そしてその両腕に装着された2機の筒状バズーカ型兵器。
敵の存在を知覚したサヤシの手足は、たちまち痺れてしまった。

「食卓の騎士っ!……ベリーズ戦士団の、チナミっ……!!」
「はいはーい。呼んだ?」

太陽のオーラこそシミハムに消されたものの、その圧倒的なまでの威圧感は健在。
過去に食卓の騎士と直接戦ったことのあるサヤシだからこそ分かる。カノンはチナミにやられたのだ。
両腕に着けられたバズーカはおそらく高速高威力の弾を発射可能なものに違いない。
通常の砲弾程度ならカノンは受け止めることが出来るが、
DIYの申し子と呼ばれるチナミの強化バズーカには流石に耐えられなかったのだろうと推測できる。
では、そんなカノンが受けきれなかった弾を、カノンより防御力が劣るサヤシがもらったらどうなるのか?
考えたくはないが、クマイチャンにぶった切られたり、マイミに殴り倒されるのと同等のダメージを負うことになるだろう。
つまりは、死だ。
ほんのちょっとでもチナミに隙を見せたら良くても重症。
それを想像するだけで息が苦しくなってくる。足取りが重くなってくる。
だが、それでは以前の何もできなかった自分と同じではないか。
サヤシ・カレサスは変わったのだ。
どんなに苦しかろうとも、辛かろうとも、歩みを前へと進めていく!

「サヤシ!!それはちゃうで!!」
「!?」

ソロバンをローラースケートのように足に着けていたカナナンが、サヤシとチナミの間へと滑り込んだ。
よく見るとカナナンだけではない。
メイにリナプー、そして新人のリカコまでこの場へと到達している。

「え?……カナナン?……みんなも……」
「適材適所ってやつや。サヤシの剣は複数相手に向いてる。せやからな、まだたくさん残ってる機械兵を始末して欲しいんや。
 生憎、メイの演技もリナプーの透明化もアイツらには通用しなくてな……」
「じゃあ……」
「うん、チナミはカナ達アンジュの番長が仕留める……それが今の最善手やからな。」

569 ◆V9ncA8v9YI:2016/10/09(日) 13:17:55
久しぶりになっちゃいましたね……
まずは1日1回更新ペースに戻せるように努力します。


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