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ゴストゥルーパー・ドールズ臨時レス置き場

1あべさん ◆uMJFatUpYM:2014/03/28(金) 23:56:16
スレタイの通り

2阿部 真里亜 ◆uMJFatUpYM:2014/03/29(土) 06:49:19
>「は…はぁ…、あ、では、お車はこちらです。」

迎えの青年は背景で繰り広げられるどつき漫才?に圧倒されながらも、車に案内してくれる。
どのような役職に就いている人だろうか。
ただの事務員にしては妙に体形ががっちりしている。
発進する車。両親が玄関から飛び出てきて、相変わらず騒いでいる。
手を振って笑いかける。

「大丈夫、死んだりするものか」

――妖怪どもを一匹残らず駆逐するまではなあ!

そう、そのために私は歌姫になったのだ。
人間はあまりにも衝撃的な記憶は思い出せなくなるという。
襲撃のその瞬間の事は、よく覚えていない。
あの日、昏睡状態から目覚めた私に告げられたのは、結婚相手が死亡したという事実。
そして悲嘆に暮れながら検査を受けている最中、もう一つの事実が告げられたのだ。
福音の歌い手としての適性が発現している、と。
それを聞いた私は哀しみの涙から一転、箍が外れたように哄笑をあげ、医者が大慌てしたものだ。
この時私は正気と狂気の紙一重を突き破り、正常ではない側に行ってしまったのだろう。
それでも構わない、この巡り合わせを神の思し召しと言わずに何と言おうか。
特に神を信じているわけではないが、奇しくも妖怪に対抗できる唯一の力は”福音”と呼ばれている。
その力を齎すものがたとえ邪神だとしても構わない、喜んで受けて立ってやる。

>「…嬉しそうですね?阿部さん」

迎えの青年に声をかけられ、暫しの回想から現在に引き戻される。
やる気十分を通り越してノリノリと言っていい状態の私が奇異に映っているのかもしれない。
これから命懸けの戦いに赴くのだ、普通は不安がるものなのだろう。
ここで「フゥーハハハ! 妖怪どもめ、駆逐してやるゥ!」なんて言ったらドン引きである。
入隊早々危険人物認定必至である。
私は仮にプッツンいっているにしても味方には友好的なタイプだ。自分で言うのも何だが。
愛想よく笑って返す。

「ちょっとはしゃぎすぎちゃったかな? 期待の新設部隊に抜擢されたからね、一緒に頑張ろうね。
ところであなたは何の役職? 見た感じ事務系……ではないよね。肉体労働系?」

会話のネタ程度に、何の気なしに聞いてみる。

3【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/03/31(月) 15:26:51
>「ちょっとはしゃぎすぎちゃったかな? 期待の新設部隊に抜擢されたからね、一緒に頑張ろうね。
ところであなたは何の役職? 見た感じ事務系……ではないよね。肉体労働系?」

(!?観察眼のある人だな。)

一目で単なる運転手でない事を見破って見せた阿部の観察眼に、鉄は素直に驚いた。
更に自分の身の安全を不安がるよりも、新設の部隊に配置されてより活躍できるとはりきるその姿勢は、
不安を押し隠すために強がっているという事も考えられるが、彼女の態度は平然としていて、何か覚悟や決意のような物を感じられる。

実戦経験者の上に、能力があるから入れさせられたのではなくて、何らかの自分なりの明確な目標をもって戦ってきた人間なのであれば、目標に向かって努力もするし、考えもするだろう。
変な漫才もどきには面食らったが、この女性はきちんと戦力になりそうだなと、鉄は思った。

「あぁ、自分らは万一の時にあなた方をお守りしなければなりませんので、日々鍛錬はかかしておりませんよ」

とりあえずまだ自分の真の役職については隠しておこうと思うので、嘘の無いように、阿部の質問に答えておく。
これだけ聞く運転手兼とボディーガードの類のように聞こえるだろうが、あなた方が全人類を指していて、万一の時とやらが割かし短期間に続々とあって、巨大ロボットで応戦するわけなのだが、嘘ではない。
もう少し会話をしてみようと、鉄は口を開いた。

「もう知ってるかも存じませんが、第5小隊は新設されたばかりであなたを含めて、前線に立って戦う人間は3人しかいません。
歌姫とパイロットが一人づつなのですが…」

何となく第5小隊の話を話し始めて、彼女についてふと、気になることができる。

「そういえば阿部さんはどんな歌を歌われるんでしょうか?えっと第5小隊の今の歌姫の笹倉さんは「未来」って曲を歌われてるんですよ、えーと、昔Kalafinaって方が歌ってた」

歌姫は、大体みんなコンピューターに声帯や声の調子などから過去のあらゆる曲を検索してもっとも福音を発生させやすくかつ歌いやすい曲を選抜させて、その曲を歌っている。
中には自ら作詞作曲して歌っている物もいるが、大体はコンピューターによる選抜方法を使うのだが、なぜか20世紀後半から21世紀序盤の曲が妙に多い。
だから笹倉桜自身も「未来」という曲はコンピューターに選ばれるまで知らなかったし、何に使われていた曲かもわからなかった。
しかしコンピューターの適性判断は正しく、桜はすぐに未来を歌いこなせるようになっている。

4【ゴストゥルーパー・ドールズ】 ◆UPKxgWFDVs:2014/04/03(木) 01:51:53
>「あぁ、自分らは万一の時にあなた方をお守りしなければなりませんので、日々鍛錬はかかしておりませんよ」

なるほど、歌姫の護衛役か。そう思って納得する。
一応妖怪に対抗できるのは歌姫の福音だけなので、護衛も付くのかもしれない。

>「もう知ってるかも存じませんが、第5小隊は新設されたばかりであなたを含めて、前線に立って戦う人間は3人しかいません。
歌姫とパイロットが一人づつなのですが…」

「そう、まだ少ないとは聞いていたけどそこまでなのね。少数精鋭……なんちゃって」

もちろんそういう意図があるわけではなく、結果的にまだ人が集まっていないだけの話である。
既存の部隊は各国から派遣された軍人が多いが、新設の第五小隊に人材を出す余裕は残っておらず打ち止めの模様。
必然、民間から新たに志願した者中心になるだろうか。

>「そういえば阿部さんはどんな歌を歌われるんでしょうか?えっと第5小隊の今の歌姫の笹倉さんは「未来」って曲を歌われてるんですよ、えーと、昔Kalafinaって方が歌ってた」

「ああ、それ曲を選定する時に聞いたよ。いい曲よね」

それはまさしく全き光のような曲だ――
未来への希望を高らかに歌い上げる、愛とか勇気とか、前向きなものだけをたくさん詰め込んだ歌。
きっと笹倉さんという歌姫は、私とは違って、純粋に世界の平和を願って戦う真っ直ぐな人なのだろう。

「私は「紅蓮の弓矢」。昔紅白歌合戦で歌われたこともあるそうよ。
元々男声ボーカルの曲なんだけどね、そんなに声高い方でもないし丁度良かったのかも」

その曲を聞いた時、現在の世界情勢や自分の心境とのあまりのシンクロ率に戦慄したものだ。
歌われているのは、人類を脅かす強大な敵に立ち向かう不退転の意思。
と言えば聞こえがいいが、それから感じられるのは勇気や希望といった小奇麗なものではない。
ドロドロした敵意や、やけっぱちの危うさすらも内包した上での勝利への決意。

「でも前に一瞬いた部隊ではあんまり評判よくなかったのよね〜。
玉砕覚悟で突っ込めって追い立てられてるような気分になるんだって。
でも攻撃は最大の防御って言うじゃない。
ここのパイロットさんは気に入ってくれるといいんだけど」

この時の私は、今話している相手がパイロットだということをまだ知らない。

5【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/04/07(月) 13:35:23
「あぁ、あの…。 何かのCMに使われてたの覚えてます、捕らわれた〜屈辱は〜っていう、あれですよね?
勢いのある曲ですよね」

阿部の言った曲名を、鉄は幼少期に聞いたCMで知っていた。
確か何かの車のCMだった記憶がある。(2014年現在、現実の世界ではこのCMは存在しておりません)
疾走感のある格好いい曲だったので、ネットで何度か聞くうちに名前が頭の中に残っていたのだ。

>「でも前に一瞬いた部隊ではあんまり評判よくなかったのよね〜。
玉砕覚悟で突っ込めって追い立てられてるような気分になるんだって。
でも攻撃は最大の防御って言うじゃない。
ここのパイロットさんは気に入ってくれるといいんだけど」

「確かに、終末感のある曲ですものねぇ。
うん…、でもピンチの時に流れたら逆にやってやろう!って気持ちになってきそうですがね」

阿部の心配に、鉄は素直な感想を述べた。
恐らく阿部の元いた隊の連中は、阿部と長く接するうちに彼女の持つ独特の妖怪への恨みや憎しみを感じる機会が多くあり。
戦闘中にそういった思いの詰まったそういった歌詞の曲を聞かされたので彼女の気持ちに押されて追い込まれた気持ちになったのだろうが、
阿部と出会って間もなく、まだ彼女の性格を把握し切れていない鉄には、その考えは浮かばなかった。

「あ、見えてきました、第5小隊の使用する飛行空母ですよ」

そんな話をしている間に、車は基地に近づき、その滑走路に鎮座するジャンボ機の数倍はある超巨大な鉄の塊が見えてきた。
全体は黒で塗装された巨大なクジラのようなフォルムで、側面には大きなGDⅤの文字が書かれている。

「ニュースとかでⅠからⅣ小隊のを見てると思うのでもう知ってると思いますが、あれが、我々第5小隊の運用する飛行空母です。
長期間の運用に伴う乗組員の快適な生活と、目的地までの高速移動能力、そして60m級巨大ロボットを6機まで運用でき、輸送ヘリや装甲車も搭載する人類が誇る空中要塞です。
これからはあれに乗って世界中を飛び回る事になります。」

基地の建造物よりも巨大なそれを前に、自分の事のように嬉々としながら鉄は空中空母について語った。

6【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/04/07(月) 13:36:11
程なく二人を乗せた車は基地の敷地内に入り、鉄は車をそのまま滑走路に入れて、飛行空母へと向かっていった。
すると、空母の前面にある巨大な横開きのシャッターが大きな音を立てて開き、そこから通路が伸びてきて、鉄たちの乗る車を中へと導いていく。
空母の中、巨大なシャッターの向こうは広大な整備スペースになっていて、大勢の整備士が忙しく動き回り、正面左右には巨大な人型兵器の拘束具と整備用の足場が6っつあって、そのうちの一つ、正面左の拘束具には整備中の50m級人型兵器が鎮座している。

「あれが現在第5小隊に配備されている人型兵器、零九式対妖怪人型兵器、ゼロキューです。」

車を空母の隅のジープやトラックが数台止まっている駐車スペースに停めて、車から降りた鉄は、阿部に視界いっぱいに広がる巨大ロボットを指さしながら言った。
自分の乗るロボットのため、その声は多少、弾んでいる。

「ゼロキュー自体はもう自衛隊が配備してて、何匹か妖怪を葬ってますが、こいつは4番目に作られた新品で、まだ実戦は経験してません。
最も、調整は済んでますし、パイロットも一世代前の機体で実戦を経験してますから特に問題はありませんけどね。
ではこちらです、この後機密事項に関する守秘義務を守るための契約書や、各種の書類に目を通して、いただきます。
それが終わりましたら、自室へご案内いたしますので、その後は艦内で自由に行動していてください」

嬉々としてゼロキューに関する説明を終えると、鉄は彼女を作戦室へ案内した。
重々しい扉と、衛兵に守られたそのテニスコートより広い部屋の中では、ホログラム投影機能のある巨大な机と、それを背にして囲み、通信装置やモニター、レーダーなどに向かっている大勢のオペレーター達が座っている。

「ここは作戦室です。
有事の際は、まずここに集合する事になります。
書類はあそこのテーブルの上にまとめておきました、書き終わりましたらその書類を事務局に提出しますので、お声をおかけください」

鉄の言葉に彼の指さす先を見れば、ホログラム投影機能のある巨大な机の一角に、艦内マップや、契約書類など、阿部がこれから書かねばならない書類と、筆記用具がまとめられていた。


−−−−−−−−−−


一方その頃、阿部の自宅がある街にほど近い山中。
突如として白い燐光のようなものが山に降り注ぎ、それが一か所に集まって、巨大な塊になり。
そうして出来上がった白い塊は、激しく何度か光ったかと思うと、次の瞬間、赤黒い巨大なエビの怪物へと姿を変えた。
巨大なエビの妖怪は、木々を押し倒しながら、街へと進撃していく。
しかし、自衛隊も、われらがゴストゥルーパー・ドールズも、その異常事態を察知することはできない。
妖怪はあらゆるレーダー波、電磁波を素通りさせるため、光学観測以外に発見の手段が無いからだ。

7【ゴストゥルーパー・ドールズ】阿部 真里亜 ◆uMJFatUpYM:2014/04/09(水) 23:41:42
>「確かに、終末感のある曲ですものねぇ。
うん…、でもピンチの時に流れたら逆にやってやろう!って気持ちになってきそうですがね」

「ありがとう、あなたパイロットに向いてるんじゃない?」

なかなか嬉しい事を言ってくれる青年である。
そんな事を話しているうちに基地が近づいてきたようで、まず見えてきたのは巨大な鉄の塊だ。

>「あ、見えてきました、第5小隊の使用する飛行空母ですよ」
>「ニュースとかでⅠからⅣ小隊のを見てると思うのでもう知ってると思いますが、あれが、我々第5小隊の運用する飛行空母です。
長期間の運用に伴う乗組員の快適な生活と、目的地までの高速移動能力、そして60m級巨大ロボットを6機まで運用でき、輸送ヘリや装甲車も搭載する人類が誇る空中要塞です。
これからはあれに乗って世界中を飛び回る事になります。」

青年は、飛行空母について嬉々として語り始めた。見ていてこちらまで楽しくなってしまう。
防衛省にはヲタクが多い、という噂はよく聞くが、この青年もこのような物が少なくとも嫌いではないのだろう。
先程言われた言葉をそのまま返す。

「ふふっ、嬉しそうね。あなたも」

前いた隊の連中ときたら鉄仮面みたいな糞真面目な顔をして軍隊みたいなんだもの。
まあ軍隊出身者が多かったから当然っちゃ当然なんだけど……。
この青年一人だけで判断するのは早計だが、やはり第5小隊というのは異色の部隊なのかもしれない。

8【ゴストゥルーパー・ドールズ】阿部 真里亜 ◆uMJFatUpYM:2014/04/09(水) 23:42:22
>「あれが現在第5小隊に配備されている人型兵器、零九式対妖怪人型兵器、ゼロキューです。」

「あら、最新型? 格好いいね!」

このロボットが私の歌で暴れてくれるのか。そう思ったらワクワクする。
ゴストゥルーパー・ドールズの戦いにおいて、ロボットのビジュアルも重要な要素である。
冗談みたいだが、ダサいロボットだと歌姫の気分が萎えて出力が下がるという事も実際に起こり得るのだ。
ゼロキューの説明が終わると、作戦室へ案内される。

>「ここは作戦室です。
有事の際は、まずここに集合する事になります。
書類はあそこのテーブルの上にまとめておきました、書き終わりましたらその書類を事務局に提出しますので、お声をおかけください」

「分かった、色々ありがとうね」

なるほど、書類はまた一式書くのね。
つーか異動というより一度除隊されて他の隊に入隊した扱いに近いのかな?
ま、いっか。細かい事を考えてもしゃーない、というわけで書類を書きはじめる。
私より前に一人ずついるというパイロットと歌姫はどんな人なんだろう。
最新型のロボットが真っ先に配備されているぐらいなのだ、きっと物凄い逸材に違いない!
書類を書き終わり、青年に声をかける。

「はい、これ書類。ところで先輩の歌姫さんとパイロットさんはどこにいるの?
お土産持ってきたのよ」

取り出したるは、“面白い変人”と書かれた箱。
色々改変されすぎて何が元ネタだかもはや分からない。

「うちの町内だけの超ローカル発売なの。あ、みんなに配る用のもあるから後であなたにもあげるね」

その時、つるっと手がすべって箱が床に落ちた。

「はっ、不吉な予感……!」

9【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/04/11(金) 22:28:02
>「はい、これ書類。ところで先輩の歌姫さんとパイロットさんはどこにいるの?
お土産持ってきたのよ」

彼女が即時に書きあげた書類をご苦労様ですと受けとり、確認しながらあべの話を聞く鉄。
そろそろ顔合わせだから正体を明かしてもいいかなぁなどと思っていると、彼女がまんじゅうを取り出した。

>「うちの町内だけの超ローカル発売なの。あ、みんなに配る用のもあるから後であなたにもあげるね」
「ありがとうございます、あ。」

そう言って彼女は饅頭を取り出したが、誤って手から落としてしまう。

>「はっ、不吉な予感……!」

言いながらまんじゅうを拾う彼女に続いて、自分もまんじゅうを拾って、もらった一つキープして、残りを彼女に渡す。
饅頭をすべて拾ったところで、鉄は先ほどの彼女の問いに答えることにした。

「えっと、先ほどの件ですが、笹倉さんは今自室にいます、それから、GDには明確な指揮系統は無いのですが、滞在国の軍隊から戦術アドバイザーという形で軍人の方が来られ、作戦立案を行うんですが、自衛隊の代表のヒガキ一等陸佐は今基地の方にいて会えません。
顔合わせ準備が整ったら、放送で呼び出しがあると思います。あとパイロットは…」

そこまで言って、もう正体を明かそうかと考えた、その時だった。

「市街地上空のパトロールヘリが妖怪確認!本艦より20km北北東の位置、歩通山森林地帯を市街地へ向け進行中!非常警報、鳴らします!」
「緊急事態発生!緊急事態発生!妖怪出現!繰り返す、妖怪出現!総員戦闘態勢、繰り返す、総員戦闘態勢!」

作戦室の壁の計器に取り付いていた通信隊員達がはっきりした声で妖怪の出現を告げ、続いて緊急警報を鳴らし、館内放送に向かって非常事態を呼びかける。
サイレンの響く中、あちこちでバタバタと人の走りかう音が聞こえだし、モニターに地図が表示され、そこに妖怪の現在地と進行方向、速度を示すマーカー、そして市街地までの予想到達時間が表示される。
それは、時速20キロ程で森林地帯を阿部の住む街へと進行していて、到達まであと20分と表示されていた。

「出やがったか…。すぐ必要なメンバーが揃いますので!」

周りの喧騒にかき消されないように、大きな声で鉄が阿部にいう。
妖怪が出現しても、即時迎撃する事はできない。
まずは日本政府からの出撃要請が必要だし、妖怪に対する作戦を立案する事も必要だ。
鉄としても即座に迎撃にあたりたいのだが、何の策もなくぶち当たって倒せるほど、妖怪は甘くないことを鉄はよく知っている。

「自衛隊、無人誘導機出撃しました、5分で接敵し、妖怪の足止めおよび、進路変更作戦を行います」

オペレーターの報告が、机の前で待機する二人の間に響く。

10【ゴストゥルーパー・ドールズ】阿部 真里亜 ◆uMJFatUpYM:2014/04/14(月) 20:22:37
>「えっと、先ほどの件ですが、笹倉さんは今自室にいます、それから、GDには明確な指揮系統は無いのですが、滞在国の軍隊から戦術アドバイザーという形で軍人の方が来られ、作戦立案を行うんですが、自衛隊の代表のヒガキ一等陸佐は今基地の方にいて会えません。
顔合わせ準備が整ったら、放送で呼び出しがあると思います。あとパイロットは…」

パイロットについて語られるのはこれが初めてなのもあり、身を乗り出す。
その時だった。

>「市街地上空のパトロールヘリが妖怪確認!本艦より20km北北東の位置、歩通山森林地帯を市街地へ向け進行中!非常警報、鳴らします!」
「緊急事態発生!緊急事態発生!妖怪出現!繰り返す、妖怪出現!総員戦闘態勢、繰り返す、総員戦闘態勢!」

告げられたのは妖怪の出現。今や日常と化してしまった非常事態。
しかし、モニターに表示された地図を見てみると、妖怪が今しがた出発した街に向かって侵攻している事が示されていた。
しかも、このままいけば後20分ほどで市街地に到達するという。

「なっ……!?」

>「出やがったか…。すぐ必要なメンバーが揃いますので!」

>「自衛隊、無人誘導機出撃しました、5分で接敵し、妖怪の足止めおよび、進路変更作戦を行います」

先駆けて自衛隊が出撃したようだ。
しかし妖怪は福音以外のあらゆる攻撃手段が無効――果たして通常兵器で足止め進路変更など出来るのだろうか。
おそらく気休め程度にしかならないだろう。
――これ以上、奪われてたまるものか。
作戦室の誰にともなく叫ぶ。

「20分……悠長に作戦立ててる時間は無い! もう一人の歌姫とパイロットを早く!」

11鳥居 呪音 ◆h3gKOJ1Y72:2014/04/16(水) 00:00:05
「ほう、これは…、シソのおにぎりの味がする」
あべの背後。饅頭を頬張る長身の男がいた。
年齢は二十代中盤くらいか。
金髪ロングヘアでサングラス。
白い肌をしていたが体格は鉄にひけをとらずそれでいて長く美しい見事な小顔の八頭身。

しかしご当地名物を他の食べ物の味で表現するなどなんと不謹慎なのだろう。
それも舌バカのようだ。
男は饅頭を少しむしって子猿に与えていた。
その整った長い指は優雅で誰もがみとれるほどだ。

>「自衛隊、無人誘導機出撃しました、5分で接敵し、妖怪の足止めおよび、進路変更作戦を行います」

>「20分……悠長に作戦立ててる時間は無い! もう一人の歌姫とパイロットを早く!」

「落ち着くのだアベマリア。20分もあれば充分だ」
どこか優雅で威圧感のある口調。
彼の名はオスカー・ファン・ハルベルト。
涼しげな双ぼうの男は落ち着きを払っている。

12オスカー ◆z4KXiuQxT6:2014/04/16(水) 00:01:50
まちがっちゃったっ

13【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/04/17(木) 15:34:23
>「20分……悠長に作戦立ててる時間は無い! もう一人の歌姫とパイロットを早く!」

突然の妖怪出現の報に、阿部が動揺して出撃を急かすが、そういうわけにはいかない。
まず第一に、自衛隊との連携について確認を取り、次に、無人機による誘導と挑発で、妖怪の攻撃手段を少しでも理解しておかねばならないからだ。
そうしなければ、わずか10分弱の時間の間に自衛隊と役割分担ができていなかったせいでもめ、さらには妖怪の攻撃に対抗手段を見いだせないまま時間切れまで何もできないかもしれない。
妖怪との戦闘中に考える暇がない以上、始める前に十分に備える他ないのだ。

>「落ち着くのだアベマリア。20分もあれば充分だ」

鉄がその旨を伝えるより早く、いつの間にか鉄の後ろにいた金髪の、肩にサルを乗せた男が阿部を落ち着かせる。
鉄にはその男に見覚えがあった。

「オスカー、 オスカー・ファン・ハルベルト、何故ここに?」

彼の名は、 オスカー・ファン・ハルベルト。
優秀なロボット乗りで、自衛隊在籍時に鉄も一緒に戦ったことがある。
だが、彼は、ほかの隊のパイロットだったはずだ。

オスカーの登場に驚く鉄の前で、オスカーの後ろの分厚い自動ドアが開き、髪の長い女性が入ってきた。
第5小隊のもう一人の歌姫、笹倉桜だ。

「新しい歌姫の子は?」

入ってくるなり、桜が鉄に尋ねる。
挨拶はしている場合ではないため省くが、少なくとも顔は知っておかねばならないという事だろう。
しかし聞いた瞬間、彼の横に花嫁衣装に似たコスチュームを着てすでにスタンバっている女性を見つけ、彼女なのだと納得し、うなづいた。

「私がこの小隊の歌姫です、よろしく」

彼女の方を向いた桜は、短く、それだけ述べた。
次いで、オスカーにいぶかしげな視線を送る。
あなたはだあれ?と。

14【ゴストゥルーパー・ドールズ】長篠 鉄 ◆fr8igvtEPg:2014/04/17(木) 15:41:24
山中を闊歩するエビ型の妖怪に、彼方から数機の小型無人戦闘ヘリが飛来してきた。
ヘリ群は妖怪に必要以上に接近し、至近距離からスモーク弾を撃ち込んでいく。
妖怪は白いスモークに呑まれて視界を奪われ、周囲をきょろきょろと見回し始めた。
と、煙の中で何かが赤い光を放っているのを見つけ、妖怪はそちらに進路を変える。
もちろん、赤い光は自衛隊の無人戦闘ヘリである。

妖怪は確かに、通常兵器も物理防壁も受け付けない。
しかし、外部の状況を判断するために、視覚を用いているらしい個体が多い事がこれまでの研究で明らかになっており、煙で視界をゼロにすれば、攻撃目標を見失う妖怪も存在するのである。
他にも聴覚や超音波などで外界の情報を得るタイプの妖怪も存在し、そういうものに対しては人類の通常兵器も、目くらまし程度には役立つのである。
もちろん、中には第六感としか思えない超感覚を持つ輩も存在するのだが…。

15オスカー ◆z4KXiuQxT6:2014/04/18(金) 02:14:04
>「オスカー、 オスカー・ファン・ハルベルト、 何故ここに?」

「欠員の補充とでも言うべきか。本来なら私の兄が、この第五小隊に配属される予定だったのだがね……」
そこまで言い、オスカーは次の言葉を飲み込んだ。
――オスカーの兄は、新設された部隊の「教育係」として転属される予定だった。
だが自分は彼等と同等な兵隊として…。
そんなことなど口が裂けても言えなかった。
死んだ兄のかわりなどとは。

そこへ入ってくるのは笹倉桜。

>「私がこの小隊の歌姫です、よろしく」

「オスカーだ。パイロットをしている。よろしく頼む」

笹倉桜。資料を読んで知っている。
幽霊のような見た目と違い優しい歌をうたう。
そしてアベマリア。彼女は勇ましい歌をうたうらしい。
前の部隊ではその歌の特性からか疎まれていたらしいが
オスカーは能力さえ高ければ問題なしと思っていた。
べつに妖怪とお友達になるために歌をうたってもらってるわけでもないのだ。

しかし長篠鉄。
彼とここで一緒になるとは奇縁としか考えられない。
一世代前の旧式で何度か敵と交戦した間柄。
自分と同じ、言い方は悪いが普通の腕前のパイロット。
ゆえに堅実。そして生き残った。
生き残って同じ小隊に配属されていた。
彼は天才ではないがゆえに経験を積み重ね、妖怪との戦いかたを知っている。

(だからか……)
狙撃の天才。格闘戦闘の天才。
数多くの才能の溢れる軍隊なかで、
オスカーは長篠鉄の存在を忘れることができなかったのである。
無論死ぬのは怖くないが、長篠鉄の存在に安心感を覚えるオスカーの姿がそこにあった。

16阿部 真里亜 ◆uMJFatUpYM:2014/04/18(金) 18:53:29
>「ほう、これは…、シソのおにぎりの味がする」

「シソのおにぎりの味ィ!?」

非常事態なのも一瞬忘れて素っ頓狂な声をあげながら振り向く。
そこには、見事な美形の外国人がいた。
子猿に饅頭を与える姿さえも何故か優雅である。

>「落ち着くのだアベマリア。20分もあれば充分だ」

滲み出る堂々たる威厳。歴戦の強者なのかもしれない。
もしや私に平常心を取り戻させるためにわざとシソのおにぎりの味というボケを繰り出したのだろうか。

「え……ええ。そうね。あなたがこの隊のパイロット?」

>「オスカー、 オスカー・ファン・ハルベルト、何故ここに?」

>「欠員の補充とでも言うべきか。本来なら私の兄が、この第五小隊に配属される予定だったのだがね……」

どうやらこの人は私と同じくたった今配属されてきたようだ。
続いて現れる髪の長い女性。

>「私がこの小隊の歌姫です、よろしく」

「阿部真里亜です。よろしくお願いします」

>「オスカーだ。パイロットをしている。よろしく頼む」

その猿はペット?とか色々聞いてみたい事はあるが、今は悠長に自己紹介している場合ではない。
そうしている間に自衛隊の進路変更作戦が功を奏し、妖怪が進路を変えつつあるのがモニターに示される。
ひとまず妖怪が街に直行するのだけは回避できたようだ。

「どんな妖怪なのかしら。自衛隊からの情報はまだなの?」


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