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男「モテる代わりに難聴で鈍感なキミたちへ告ぐ 〆!」

1以下、名無しが深夜にお送りします:2016/10/18(火) 23:24:07 ID:KppNpej6
ここが墓場だ



1、男「モテる代わりに難聴で鈍感になるんですか?」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1379798915/

2、男「モテる代わりに難聴で鈍感になりましたが」
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1380372236/

3、男「モテる代わりに難聴で鈍感になった結果」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1385750291/

4、男「モテる代わりに難聴で鈍感になったけど質問ある?」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1397082375/

5、男「モテる代わりに難聴で鈍感になるのも悪くない」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1406541846/

6、男「モテる代わりに難聴で鈍感になるならどうする?」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1420921537

7、男「モテる代わりに難聴で鈍感だった日々より」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1446919295/l50

43以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/06(日) 23:15:55 ID:d41A26Nw
火曜日につづくのよ

44以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/08(火) 19:55:52 ID:ODTNGdBI
男(事故の規模は辛うじて小さく収まったらしいが、そういう問題ではない。当然ながら学校側もこの対処に追われる羽目になる)

男(午後の準備活動も足早に引き上げられ、全校生徒は下校を強制させられてしまったワケだった)

男の娘「男、妹さんの様子どうだったの?」

男「え? まぁ、一応気にするなって声掛けてはおいたけれど、なぁ」

男の娘「う、うーん。あのさ、最近やっぱりおかしいよ……ここのところ嫌な事立て続けだし」

男の娘「いくら皆浮かれてるからって、絶対ヘン! 男と転校生さんも僕と同じこと考えてるよね!?」

男「穏やかじゃないのは、同意」

男の娘「そうだよ! し、しかも今回はボヤ騒ぎだなんて、なんか 不安になってくる……」

転校生「心配しなくても私たちだって同じ気持ちだわ。だけど……ん?」

男(同時に三人の携帯電話が音を鳴らした。送り人も内容も完全一致である、我らが愛好会・部長さま。というか、愛好会で“部長”とはこれ如何に?)

先輩『メール本文:召集っす♪ めっちゃ緊急部内会議どぇーーーーす☆☆☆(≧ω・) 今からウチに集合だよ! いじょ!』

男の娘「うわ、なんか古臭っ!!」  男「こういう迷惑メールまだ届くけどナ」

転校生「ま、部長さんらしさはともかく、せっかくだし何かお菓子でも買って行ってあげましょ。丁度そこにコンビニもあるし」

男「おー、太っ腹だな、転校生」  男の娘「ごちそうさま、転校生さん♪」

転校生「あんたたちもお金出すに決まってるでしょっ!!」

45以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/08(火) 20:28:50 ID:ODTNGdBI
男「――――荷物持ち役、やっぱり俺なのかよ」

転校生「ふふん、ジャンケンで決めたんだから文句言わないでよね〜。ていうか、そんなに大荷物でもないんだからしっかりしなさいよ、モヤシ体系」

男「モヤシに労働させる人間様の考えが理解できませんわー……」

男の娘「ふふふっ、良かったぁ。いつもの[ピーーー]」

男「ん? 何嬉しそうにしてるんだよ、お前。敗者を笑うのは勝者の特権だって?」

男の娘「ち、違うちがうよ! 僕はただ、あんな事があっても男が[ピーーー]通りでいてくれてるから、ほっとしちゃったっていうか、[ピーー]い男、すごく[ピーーーー]なって……///」

男(止せやい、惚れ直すなよ。なんて癒しの下校トークも一旦の中断、目的地である中華料理屋へ俺たちは辿り着く)

男(午後の営業前でもあり、客の姿もなく、入口から入るのも躊躇っていたが、ドアガラスの向こうから粋なオヤジが招いている。丸太を軽々担げそうな逞しい腕を振って)

転校生「えへへっ、店長さんていつ見てもカッコイイわよね。誰かさんもあれぐらい鍛えた方が良いんじゃない? ねぇ〜?」ニヤニヤ

男「想像してくれ、俺が筋肉モリモリのマッチョマンの変態になっている姿を」

先輩「おーっ! 三人揃って来ちゃったねっ、待ってたよー! 早く早く!」

男の娘「あれ、生徒会長さんと不良女さんもう来てたんですか?」

生徒会長「やぁ、お疲れさま。不良女と共にお先させて貰っていた所だよ」

不良女「っくう〜!! オジさんっ! この中華丼かなり美味いねぇ! 気に入った!」

男「約一名は何フツーに飯食ってんだよ」

46以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/08(火) 21:00:41 ID:ODTNGdBI
不良女「いや、マジで冗談抜きの美味だぜ、美味! 早くお前らもあたしと一緒に虜になっちゃおう!?」

先輩「ウチの飯はそんじょそこらの危ないクスリより危険なのだよ〜!!」

転校生「売り文句が地上最悪レベルじゃないのよ……」

男(ともかく、営業時間までは自由に使って構わないとお許しを頂いた俺たちは各々自由に席へ着席し、緊急部内会議は始まるのであった)

生徒会長「部室外の活動という事で、店主のご厚意にまずは感謝すべきだな」

先輩「はっはっはー! まぁ、わたしが生徒会長ちゃんたちに色々迷惑掛けちゃったし、お父さんがお詫びにって」

不良女「つーかさ、ここで今話し合うったってそんなにすぐ気分切り替えられるかな? ……ていうか、だからこそ、みたいなヤツ?」

先輩「そうだよ〜。だからこそだよ、不良女ちゃん! グダグダ過ごしてたけど、文化祭まで時間ヤバいですしねっ!」

男の娘「その辺りの心配は最もなんだけれど、ほんとに大丈夫かな……?」

不良女「えぇ? 何の心配だよ、暗い顔させんなって。せっかくの中華丼 不味くなっちゃうだろー」

生徒会長「うむ、予定のまま開催されるかどうか気掛かりなんだな。実際 今日のような好ましくない案件が続いている」

男の娘「僕、こんな状態で文化祭なんてあって良いのかよく分かんなくなっちゃって……」

不良女「あー、気分になれない、とかはあたしも同感かもな。それに、片す問題が残ってる……っ!!」

生徒会長「由々しき事態、皆がそう考えているのは当たり前、か」

生徒会長「特に……君は、男くん。男くんはいま非常に危うい立場に追いやられ様としているぞ」

47以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/08(火) 21:39:44 ID:ODTNGdBI
男(この場全員が、心配そうな、あるいは哀れみの視線をこちらへ募らせていた。店主のオヤジ、貴方もか)

男(やれやれ、それもその筈だ。現場にはこの俺と妹の二人のみしか残っていなかった。怪しい音声レコーダーも転がっていたが)

男(妹か俺、犯人の疑いが掛かってくるのは当然である。現実から帰って来ても事件のど真ん中とは、忙しない人生を送らせてくれるではないか)

転校生「変態、あんたが無実だって事は私たち信じてるからそこは心配しないでよね」

先輩「なーんかツンデレ成分が台詞から感じられないんだよなぁ、今のじゃ……」

転校生「ツンデレ? つん、んー……あぁ〜!! よく分かんないけどっ、心配いらないの! 良いわね!?」

男「心配なんて、初めから疎まれてるんならココに呼ばれちゃいないだろう? でも、ありがとうな、転校生」

転校生「! う、うんー……///」

男の娘「転校生さんの言う通り大丈夫だよ、男。先生だって男が悪くないってきっと証明してくれる筈だもんね」

男(優しい世界が無限に広がるのだ、いくらトラブルが俺を揺らがせようと味方が付いていてくれる。しかも可愛い。それだけで十分じゃないか)

不良女「部内会議っていうか、これじゃあ男を励ます会じゃんかよ。切り替えてお菓子開けちゃおう」

先輩「――――――んじゃ オカルト研って子のことなんだけど、切り替えよっか」

不良女「は、はぁ!? 部内の、問題を相談する場じゃないのかよ。ブチョー!」

先輩「部員の悩みは部内の問題じゃんよう! つまり、わたしたち三年でも介入する余地があるわけですなっ、ね!」

生徒会長「だいぶナイーブな問題へ首を突っ込みそうではあるがね……その為に設けた場だ、君たち」

48以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/08(火) 22:30:54 ID:ODTNGdBI
男(俺も含め、二年生組が目を丸くさせているのを先輩さんが笑い、生徒会長が腕組で仕切り始める。不良女といえば、いても立ってもられず、というか文字通り椅子から立ち上がった)

不良女「何考えてんだよぉ、あんたら……」

生徒会長「おや? 珍しく君にしては察しが悪いな、たまには先輩風吹かさせてくれたって悪くないだろう」

不良女「悪いよ! 関係無いあんたたちまで変なことに巻き込んじゃったら、もう言い訳も思いつかねーじゃん!!」

男「俺もコイツと同意見です。あなたたち二人まで関わる意味がない、そもそも綺麗に処理できるかも分からないんです」

先輩「だからって後輩の悩みを放っておけるほどわたしたち神経図太くないないよ〜? わたし的には、恩返しでもあるんだよねぇ」

先輩「ここにいるみんながいてくれなかったら、部の相続なんて無理だったんだもん……困った時はお互いさま、じゃない?」パチッ

男(お世辞にも上手いと呼べないぎこちないウィンクを俺へ向けた先輩の表情は、有無を言わさせなかった。巡る、めぐるだろうか、こういうのは)

男(巡りめぐって帰って来たのだ、大きな何かが。始まりこそ邪な想いが生んだというに、どうして中々 温かい)

店主「繋がりだよ、アンちゃん。人は人と繋がってこそ恩恵を受けられるのさ」

男「店主!!」

店主「綺麗事語らせてもらうが、絆は手前を裏切らないさ。料理と同じだよ。しっかりした下ごしらえあってこそ奇跡の一品は一丁上がり……」

店主「人も料理も城みてぇなモンよ。土台作りが一番の肝心、手前の道は手前が作るんだぜ」

男「店主、いや、マスター……」

店主「ヒートアップの下準備だ。自慢のオレ炒飯、たんと食べろや」トン

49以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/08(火) 23:08:14 ID:ODTNGdBI
生徒会長「――――――バックグラウンドが読めないな」

男(優雅に口元をハンカチで拭った生徒会長が一言。今朝の事から、果ては俺が受けた仕打ちまで詳細に伝えての簡潔な感想である)

生徒会長「まず、間違いないのが君へ対する恋愛感情だけが彼女を突き動かしたとは考え難いかな」

不良女「だから手っ取り早く会って直接聞き出すしかない、ってのは通用しなかった……」

不良女「何考えてんのか抜きで、アイツらしくないことやってんのはマジ。元々口は汚ないし、人当たり最悪だったけど」

男の娘「ふ、不良女さんが口汚いってどの口が、あっ」

男(しばかれるのはご褒美だ、男の娘。ご褒美なのだ。そんな騒ぎを他所に、先輩が懐からメモ帳を机の上へ乗せる。コイツは?)

先輩「わたし、ちょーっくら聞き込みみたいな事してみたんだよねぇー。そもそもオカルト研ちゃんがどんな子なのか知りたくて」

男(彼女のメモ帳には、何も記されていなかった。多くのモブたちへ尋ねた成果が、オカルト研本来の人となりを痛く訴えて来るのだ)

転校生「ぶ、部活の、研究会の人たちからは何も聞けなかったんですか……?」

先輩「意味わかんないこと教えられたって参考にならないじゃん?」

男「何気なく酷いこと答えてますからね、先輩さん」

生徒会長「私も伝手を当たってはみたものの、詳細を知るには至らなかった。彼女の交友は極めて狭い。他に情報を知り得る人物がいるだろうか?」

男「……いる事には、多分いますけれどね。それもストーカーみたいなのが」

男の娘「あわわわ…」   不良女「よし、ダメ元でぶっつけ行くぞ! 男ぉー!」

50以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/08(火) 23:10:20 ID:ODTNGdBI
こ・こ・ま・で

51以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/11(金) 20:22:08 ID:e8lHl28o
黒服「――――――フゥ、ぬ…………」

生徒会長「打ち合わせ時間丁度に来たな。この期に及んでだが、男くんあの人物で間違いなかったか?」

男「ええ、まさか素直に俺たちの頼みを承諾してくれるとは思ってませんでしたが」

先輩「わたしも如何にもMIBってふいんきの怪しいのが来るとは思ってませんでした!」

転校生「部長さんってば雰囲気、正しくして雰囲気よ。ていうかあの人今朝の?」

不良女「あ〜、見間違えたりしねーよ、あんなオッサンじゃ……なぁ、マジで平気なのかよ男」

男「どうだろう? しかし、複数で会うのは避けた方が好ましいかもしれん。相手側にも失礼だし」

男(あんな嫌な奴でもと、本音付け足してやりたいものだ。日も完全に沈み、街灯に照らされた美少女たちと共に陰からオカルト研信者 もとい黒服を俺は追った)

男の娘「でも、どうして落ち合う場所がラーメン屋なの……? この疑問、変かな」

先輩「そりゃわたしたちラーメン愛好会と言えばラーメンに始まり、ラーメンで締めるから♪」

男の娘「こ、答えになってないようなぁ〜」

不良女「あたしは行かない組に分かれとく。あたしじゃあのオッサンから第一印象最悪に持たれてるだろーし」

生徒会長「そうか。ならば初見メンバーで行くか? と言っても最終的に約束を取り付けた張本人を抜きにできないが」

男(俺を筆頭にするという事らしい。それもそうだろう、このイベントまで場面を進めたのはこの俺だ)

男(そう、先程の部内会議で放った思いつきが採用されて現在達していたのである)

52以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/11(金) 20:49:11 ID:e8lHl28o
男(勝負へ挑む前の回想シーンは不吉な旗を立てると偉人はかく語りき、なんて――――)

転校生『――――結局このお屋敷に逆戻りするだけじゃない! もう!』

生徒会長『成程な、流石は男くんだな。事件の当事者の身辺を洗わずとも、当人に訊けば早いだなんて』

男『んなワケないっスよ……っ!』

男『大体まだ帰って来てるのかも、会ってくれるかも分からないんですよ? 生徒会長』

先輩『ナンデみんな大ゴーテイ前にして驚カナイ? ナンデ?』

生徒会長『ならば、彼女をよく知る人物というのは家族に? 気安く会って貰えるのなら助かる物だが、事件後の昨日今日では中々厳しくも』

男『いいえ。ご覧の通りオカルト研という奴は金持ちのお嬢様です、財閥がとか耳に挟んでますよ』

先輩『ケッコン!! 不肖わたし結婚申し込んで来ちゃいますので!!///』

男の娘『この人自分で不肖言っちゃってるよぉ……』

不良女『アホは放っておくとして、お嬢様は今更なんじゃねーの?』

男『身辺警護のスーツの大人たちにいつも守られてるのも今更だよな』

先輩『そっか、小市民に知らない世界はやっぱりあるんだね、ネ、皆さん』

生徒会長『……にっ、認識を改めさせられたのは良いとして、それが何か?』

男『実は、その中の一人と俺は面識があるんです。親しいとは呼べませんけれどね』

53以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/11(金) 21:09:09 ID:e8lHl28o
男の娘『えぇ!! そんな人がいたのにどうして早く頼らなかったの、男!?』

男『それなりのワケがあるからに決まってるだろ……』

生徒会長『ともかくその人物を当たってみれば何か掴める可能性があるのか。警護人ならば、彼女の周りを常に見張っているのだからね』

男『はい、ただ……その人一つ、二つ……数え切れない問題が、あって……』

転校生『あのねぇ、正直に自分に合わないって告白しなさいよ? 苦手だから出来れば頼りたくなかったんでしょ?』

男『好き嫌いで済むなら早くに動いてたんですけどねぇ』

不良女『じゃあさっさと会って協力してもらおうぜ。一応あんたの知り合いなんだから、会っては貰えるだろ』

男『いや、連絡先だけ教えてもらって引き返そう。そうしよう』

不良女『バカ肝心なとこで縮こまってんじゃねーよっ! 男だろお前!』

男『男だよ!! ……正直言うと成功する自信がない。確率も0%寄りだと思ってる』

先輩『すみませ〜ん、わたしたちオカルト研ちゃんの友達なんスよー、えへへへっ!』

『はぁ……』

男『あー!! なぁ、アレっ、あ゛ーーーー!!』

転校生『ずーっと渋ってたって何も始まらないわよ、変態。丁度良いじゃない! ほら、あんたも来て!』

男『……言い出さなきゃ良かったよな、俺よ』

54以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/11(金) 21:09:57 ID:e8lHl28o
男の娘『えぇ!! そんな人がいたのにどうして早く頼らなかったの、男!?』

男『それなりのワケがあるからに決まってるだろ……』

生徒会長『ともかくその人物を当たってみれば何か掴める可能性があるのか。警護人ならば、彼女の周りを常に見張っているのだからね』

男『はい、ただ……その人一つ、二つ……数え切れない問題が、あって……』

転校生『あのねぇ、正直に自分に合わないって告白しなさいよ? 苦手だから出来れば頼りたくなかったんでしょ?』

男『好き嫌いで済むなら早くに動いてたんですけどねぇ』

不良女『じゃあさっさと会って協力してもらおうぜ。一応あんたの知り合いなんだから、会っては貰えるだろ』

男『いや、連絡先だけ教えてもらって引き返そう。そうしよう』

不良女『バカ肝心なとこで縮こまってんじゃねーよっ! 男だろお前!』

男『男だよ!! ……正直言うと成功する自信がない。確率も0%寄りだと思ってる』

先輩『すみませ〜ん、わたしたちオカルト研ちゃんの友達なんスよー、えへへへっ!』

『はぁ……』

男『あー!! なぁ、アレっ、あ゛ーーーー!!』

転校生『ずーっと渋ってたって何も始まらないわよ、変態。丁度良いじゃない! ほら、あんたも来て!』

男『……言い出さなきゃ良かったよな、俺よ』

55以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/11(金) 21:41:35 ID:e8lHl28o
先輩『名探偵わたしが聞き込み調査したところ、今外に出てるんだって』

不良女『そもそも誰がコイツの知り合いなのか聞いてないだろ……』

先輩『じゃあじゃあ男くんこちらの素敵メイドさんに一言お願いちょーだいっ、さんはい!』

男『……く、黒服さんに折り入ってご相談がありまして、ご迷惑にならなければ連絡先をお尋ねして構わないでしょうか?』

『大変申し訳ございません。急を要していましても私の判断でお伝えするのは決めかねます』

不良女『えぇー! 減るモンじゃないんだし!』  生徒会長『無理で元々の話だったろう、我儘は止さないか』

『そういう事ですので――――ところで、皆様が着られている制服 お嬢様が通われている学校の……』

男の娘『そ、そうなんです。僕たちオカルト研さんの友だちで、えっと、心配が爆発しちゃって!!』

転校生『お願いします! あの子に何か出来ないか考えているんです、少しでも力になれたら良いなと思って!』

『ご友人! あぁ、でも最近はあのお嬢様がご友人をこちらに招いたとか……』

生徒会長『残念ながらオカルト研さん本人とは連絡がつかないもので。ですが、彼が警護で一人思い当たる方がいると言って聞かないのです。だった、ね?』

男『!! は、はい、そんなんですよ! 俺も子どもの揉め事で頼るのはどうかと思ったんですけど、事態が事態だったものでして……つい』

『いえいえっ! あのお嬢様がご家族以外の方へ心開くなんて、余程では無いのですね。あぁ……少々お待ちになって頂けますか?』

男『チョロ、んむうっ!!』バッ

男の娘『男?』  男『い、いや? 何でもないぞ? 別に?』

56以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/11(金) 22:10:49 ID:e8lHl28o
『……はぁはぁ、ふー。お、お待たせしましたっ、すみません、ご友人様方へお見苦しいところを……』

不良女『まさかの全力疾走だったもんな。で、例のヤツはお願いできる感じスか?』

『こ、これを……はぁはぁ……どうぞ!』

男(息も絶え絶え突き出されたのが恋文であればと惜しむ前に、メモ用紙に走り書きされた電話番号を確認し、安堵か憂鬱かの溜め息が俺から漏れた)

『お嬢様を、オカルト研お嬢様をよろしくお願いします!』

転校生「なんか託されちゃったけど、本当に大丈夫なの?』

男『無理矢理背中押した奴がかける言葉じゃないよな、それ』

先輩『まぁ、結果オーライ祈って無事完了をあとは祈るだけだよ! どうする? 願掛け行ってから電話しよっか?』

男『神頼みが一番頼りにならないと心の底から思うんですよ、俺。構いません。すぐに連絡を』

生徒会長『待ってくれ、男くん』

不良女『待てないから! 考え事の披露なら全部上手く行ってからにしてくれよな、カイチョー』

生徒会長『そうじゃないんだ。男くん 君と例の人は、いや、あの躊躇い方ではよほど関わり合いになりたくはないと思っていたんじゃないかな?』

男『……予言しましょう、俺が電話掛けて数秒で虚しい沈黙が起こります』

男の娘『……ひょっとして嫌われてたりするの?』

男『すまん、ゴキブリと新聞紙の関係だ』

57以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/11(金) 22:35:55 ID:e8lHl28o
不良女『……じ、じゃあ早い話男除いたあたしたちの内の誰かが連絡したら良いだけだろ?』

男の娘『こ、こういうの始めの一歩が肝心じゃないの!? 下手なこと言って相手にされなかったら終わりじゃないかなぁ』

生徒会長『かと言って、ここまで来て尻込んでいるワケにもいかないだろう。……私が掛けるで意義はないか?』

男『脅す様で申し訳ないんですけれど、“お嬢様”の話題に触れた途端に豹変しますからね』

転校生『空気読みなさいよ、ばかっ!!』

男『だから俺はあれだけ必死になって止めようと言っただろ!?』

転校生『どのタイミングでよ!?』

先輩『もしもしー、お忙しいところすみません。あっ、わたくし怪しい者ではありませんよ〜!』Prrrr!

『っ〜〜〜〜!?』

不良女『だ、誰だよ このド変人にケータイ持たせたの!! 詰む、マジで詰むから!!』

生徒会長『……いや、こうなれば信じよう。この子の意外性には昔から私も目を見張るものがあってね』

男の娘「そ、そんな。でも、だけどですよ!?』

生徒会長『ずば抜けた感性が齎すおよそ予想の付かない行動力の持ち主だ。彼女は時に天才と称され、あるいは天災と……」

不良女『ただの台風に変わりないだろ それ!!』

男『……先輩さん、切りの良い所で電話代わってもらえますか』

58以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/11(金) 23:09:01 ID:e8lHl28o
先輩『……ほいサ!』

男『ありがとうございます。もしもし、この声聴き覚えありませんか?』

黒服『聴き覚えだと……脳にまで刻まれた忌むべき憎たらしい小僧の声だ。畑の肥料の足しにもならないカスを彷彿とさせてくれる』

男『いまは車内ですか? あれから随分時間が経っているのに、まだオカルト研は』

黒服『貴様の腐乱漂う目的などたかが知れている! ネズミの分際が、まだウロチョロと気高きお嬢様の周りを……!』

男『そこにオカルト研はいますか。出来れば彼女には聞かれたくない話をあなたとしたくて、たまりません』

黒服『…………何だ?』

男『すぐに通話を切らないというのは、正直驚いています。ですが確信しました』

男『あなたも 今の“オカルト研”に対して何か思うところがあるんじゃないか、と……』

黒服『薄汚いガキの暇潰しに付き合ってやれる懐の広い大人じゃないか。用件は?』

男『可能なら実際に会って話ができたら嬉しいと思っているんですけれど、今夜じゃ忙しいですか? おニイさん』

黒服『……好きな時間を指定するがいい。で、場所は? さっき話した少女は?』

男『頼もしい限りです。でしたら場所と時間は――――――――』

男「(――――――――こうして現在だ) こんばんは、同伴に一人いますけれど構いませんかね?」

黒服「まずは座れ。……さ、今日はにんにくを多めに入れるとしよう」

59以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/11(金) 23:10:50 ID:e8lHl28o
日曜日につづく

60以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/13(日) 20:19:47 ID:yRuT1UbA
男(時間帯もマッチして店内は学生や仕事帰りのサラリーマンで溢れていた。賑やかな空気が俺へ場違いを突き付けてくる)

黒服「座れと言っているんだ。それとも私の横では不満か?」

男(黒服は見透かした様に憎たらしい態度を取り、お前の横かよと怯む俺を笑う。そんな険悪なムードを破ってくれることを見越して、彼女を選んだのだ)

先輩「どうもこんばんは! わたしなんかがお隣しちゃってもお兄さん良かったですかね〜、えへへ!」

黒服「……ふん、構わない。学生ならばこの店の暖簾をくぐる機会も多かろう。配慮に感謝してもらいたいなぁ、少年」

男「やれやれ、驚きました。あなたの口からラーメンでも食べに行くかなんて聞ける日が来るなんて」

先輩「ラーメンを前にして気難しいお喋りはナンセンスぅ〜、お二人〜。ラー欲を満たすっ! これ一番大事だから!」

男(先輩が間に入ってくれたことで話のし易さも抜群に変わったのは気のせいではないだろう。彼女持ち前の明るさと気軽さが、俺たちの緊張を適度に解している)

男(見越してなどと偉そうに語ってはみたが、実のところ ラーメン=先輩の計算式から得た短絡的に選択を得たのもあったりしちゃったり、なんて……)

先輩「ていうか男くんがこの店選んだんじゃなかったんだね。お兄さんはここの常連さんだったりするんですか?」

男(質問に、さっと財布からプラチナに輝くポイントカードを指に挟んでチラつかせる黒服。こいつがガチ勢だ)

黒服「ハッ、自慢する程でもないが! ……早く品を決めてしまえ。ロット乱しなど極刑だぞ」

男「は? (食券制だぞ、このお店。もう俺か彼 どちらが動揺しているのか分からん)」

男(しかし、どう話を切り出して良いか悩むな。黒服とは正に犬猿の仲でもあるし、だが意外にも向こうが歩み寄って来てくれた。意味不明に地雷原を歩いている気分である)

「お待たせしましたぁー、あじ玉らーめんカタのギトギト一丁!」 ト ンッ

61以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/13(日) 20:54:19 ID:yRuT1UbA
黒服「私が先か、まぁ当然だろう……君たちはここのラーメンを極上に仕立てあげる味わい方を知っているか?」

男(サングラスの向こうからも分かる怪しく光った瞳を前に先輩さんと顔を合わせていれば、この黒服卓上のおろしニンニク缶を掴み、勢い任せて逆さにしやがった)

黒服「コレが職務を全うする者だけに与えられるご褒美だ!」ボドォ・・・

男「うっわ、やりやがった!!」

先輩「この外道ッ!!」

先輩「いくら常連とはいえ、やって良い事と悪い事があるよニンニクリミットブレイクなんて卑怯技中の卑怯技だ!!」

黒服「何だ? 黙れ! ニンニクは食の楽しみへライブ感を与える優れた調味料の一つ、人の食い方にケチをつけて悦に浸るか!?」

先輩「確かにお兄さんの言う事には一理あるよ。でも、一缶分をラーメン一杯にぶち込むなんて本来の味を損なうし、ニンニク食べに来たのと一緒じゃん!」

黒服「なにを!?」

先輩「ここのラーメンはとんこつベースにマー油を混ぜた動物臭さを加速させた味を楽しめる……美味さとは舌を痺れさせること? 違うね、お兄さん!」

先輩「お兄さんの食べ方じゃ、牛脂にいっぱいのニンニクまぶして食べる方が現実的だよ。もうそれはラーメンじゃない。『ニンニクシチュー 〜冷蔵庫の余り物を添えて〜』だよ」

黒服「……ニンニク、シチューだと? ……あ、あぁ」

先輩「あなたは何を食べに来たかったのかなっ、麺、よく煮込まれたチャーシュー? 煮卵!? そう、ニンニクはメインじゃない! ニンニクこそ添え物!」

男「すみません。熱い説教遮りますけれど、明日はお仕事休みなんですよね、黒服さん」

黒服「はっ! 何故それを貴様が!!」   男「ニンニク臭漂わせて護衛するのが一流の警護ですかね」

62以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/13(日) 21:35:09 ID:yRuT1UbA
「ら、らーめん二つになります。他のお客様にご迷惑掛からないようお願いします」

男「まずは食べましょうか、先輩さん。俺のチャーシューいりません?」

先輩「ダイエットとかでいらないの!? 是非とも有り難くいただくっす〜!!」

黒服「ふー、ふー、ハムッ、ハフハフッ、ハム!! ズビズバッ! ズズーッ! ……お嬢様と一度この店を訪れたことがあってな」

黒服「お嬢様へこんな低俗極まる食事をさせるワケにもと必死に止めてはみたが、最後には熱意に負けてしまった。今では私が週一で通う醜態だ」

黒服「あの時のオカルト研お嬢様の表情の面白さたるや……フフッ、いかん。主に代わるお嬢様を思い返し笑うなど……」

先輩「ラーメンをバカにしちゃいけませんよ〜? どれだけ歴史重ねても大衆に好かれるお食事なんですからぁー、だよね男くん?」

男「カップ麺こそ人類が生み出した最高です。黒服さん、今日はオカルト研と一緒にどこを回っていたんですか」

黒服「代表、お嬢様のお父上へ謁見をしてきた。その後の挨拶回りはいわゆる顔見せだろう。財閥令嬢は苦労も耐えないな」

男「挨拶回り……俺、疎いからイマイチなんですがよくある事なんですか?」

黒服「お嬢様の場合ならば、非常に稀だと答えておく。今日の突然の日程もあの人ご自身によるご意向からだ」

男「何ですって?」

男(箸を止め、お冷を飲み干した黒服が俺を真っ直ぐ見つめて止まっていた。彼が上着を脱ぎ、椅子へ掛けると)

黒服「貴様から見ていまのお嬢様は普段とかけ離れてしまった。だからこそ、私へ声をかけてきた、か」

黒服「やはり、お嬢様は変わられてしまったのだな……」

63以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/13(日) 22:14:01 ID:yRuT1UbA
黒服「私が異を唱えようと部下はおろか、周りの人間は聞く耳を持たん……皆、お嬢様の変貌に気付いていないとでもいうのか」

男(名有りキャラクターこそが対応できる異変、この黒服もサブでありながら例外ではなかったのか。今朝のイベント内で兆候は見せていたが)

黒服「貴様に頼るのも不服だが、あの方は、あの子は学校でどんな表情を見せてくれていただろうか」

男「俺の知っているアイツは決まった人間にだけ愛嬌を見せる可愛い女の子です」

男(少しばかり変わっていたが、純情可憐、撤回、良き美少女であると強く主張しよう。その奇行も、決して人を陥れる事も傷つける事もなかった)

男「人に向かって毒も吐くが、それは大金持ちの自分を狙って近寄る不埒な輩を遠ざける為に身につけた術だった」

黒服「心の奥底では誰かへ歩み寄りたいと強く願っているに反し、常に態度が裏目に出てしまう不器用な子だ……」

黒服「難儀な少女だと私は思っていたよ。しかし、ある時下賤なガキを連れていたではないか。あの子の傍に立ってやれるのは私だけだった筈なのに!」

黒服「貴様だ、貴様ァー!! 貴様が私から平穏を奪い去って……このザマだ」

先輩「ち、違いますよ〜! 男くんは別にお兄さんに恨まれたかったんじゃなくって、もっと別の」

黒服「恨む? ほう、私の奢りが少年へ牙を剥いた。気に食わないが事実なのだろう……」

黒服「……お嬢様を中心にと一点を見定めることしか出来なかった瞳だ、君らの方が私よりもあの子に詳しかろう」

黒服「フン、謝礼のつもりで受け取ってくれ。学生には寄り道に掛かる金は安くないだろう」

先輩「あー、ちょい待ち願いますか!! おにいさん」

64以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/13(日) 22:50:23 ID:yRuT1UbA
先輩「っあ〜〜……う〜〜〜〜……」

先輩「店員さん、黒いお兄さんに替え玉ひとつっ!!」

黒服「替え玉!?」

先輩「男くん、あともうひと踏ん張りだよ! お兄さんあとちょっぴり押したら味方になってくれそうかも!」

男「先輩さん……黒服さん、俺たち今のオカルト研に手を差し伸ばしてやりたいんです」

男「その為に少しでもアイツの情報を集めたいと思っているんです。あなたでしか気づいてやれない事なんかも全て、貪欲に」

男「お願いします!!」

先輩「え、あっ、え〜っと、わたしからもお願いします!!」

男(先輩に捕まった黒服へ斜め45度も大袈裟ではない礼をした俺が気がつけばいた。安売りした覚えのないプライドは震えて握った拳に伝わり、抑えるのがやっとである)

黒服「……気楽だな」

黒服「面を上げろ、こんな所を見られて妙な噂が立っても私が困る! 食事を楽しむ場で無作法だとは思わないのか貴様らは!?」

男・先輩「お願いします!!」

黒服「知るか!! ……そういえば明日の話だ、お嬢様は○×にあるという廃病院に向かわれたいそうだが」

黒服「廃墟となれば、私がお傍に付かぬワケにもいかんな……おぉー、せっかくの麺が伸びてはいかん」

男(恩に着る、美少女へ忠誠を誓う変態騎士)

65以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/13(日) 22:51:19 ID:yRuT1UbA
ここまで

66以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/14(月) 11:59:26 ID:Digl9dQs
ほんと良キャラ多いな
乙!

67以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/14(月) 19:18:18 ID:tapN5Tx.

意外な組み合わせを見られたと思う

68以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/14(月) 20:11:39 ID:c/6RMa8A
何か笑った

69以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/14(月) 23:10:56 ID:A8RAfyB2
ニンニクリミットブレイクは文面から卑怯だろwwwww

70以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/18(金) 20:41:49 ID:Itku9HE6
天使「ありゃ、おかえりなさい男くん。自分が思ってたより随分お早い帰宅ですねえ」

男「そうか? まぁ道草もほどほどにするよう念押しされた事もあったし、叱られずに済むからな」

男(玄関に幼馴染の靴はなかった故に今晩の通い妻はお休みなのだろう。また無理に動かれるよりは安心だったが、顔を拝めないのは残念である)

天使「えー そうじゃなくって、サツの世話になってたんじゃなかったんですか?」

男「……はぁ? どうして人畜無害が取り柄の俺が警察にだよ、天使ちゃん」

天使「だってボスが。ただならぬ様相で帰って来たと思いきや、ヤバいとか、お兄ちゃんも巻き込まれた〜とか!」

天使「んもー、マジお騒がせ家族ですよねぇ。自分という清涼剤がいなかったらガタガタ崩壊ですよ! 男くん」

男(妹、アイツか。部室棟放火事件のショックはまだ響いていそうな予感はしていたが。本人の自覚なしに発生し、疑われたのだ。気持ち良くはなかろう)

男(天使ちゃん曰く、帰宅後は自室に篭もったまま出て来ようとしないそうだ。畜生ロリ天は心配を他所に、先程までは幼馴染宅で夕飯を頂いていたらしい)

天使「自分そんな冷たくねーんですがっ! 心配してますけど、そっとしておくべきかと思ったのですよ」

男「賢いじゃないか! 天使ちゃんが無理に絡んでいったら逆撫でしかねないしな」

天使「自分が無神経だって言いたいんですか! ケンカ上等ー!」ブンブンブンッ

男「怒るなって。風呂はあっちで入らせてもらったんだろ、歯磨きして寝なさい」

天使「やだっ! 録画したドラマの再放送消化するんです、ヒューヒューだよ!!」

男「強引に詰め込んできたな、お前」

71以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/18(金) 21:29:39 ID:Itku9HE6
男「……やれやれ、面倒だからシャワーで済ませるかしら」

男(空の湯船の中を覗くだけで幼馴染のありがたみを再確認させられる。不自由なかった生活に揺らぎが生じると、怠惰にいられたのも陰の支えあってこそだったのだな、と)

男(ふと、鏡越しにシャンプーの泡まみれになった自分と目があってしまった。酷い目付きだ。無意識に眉間へ皺を寄せて悪人面を作っている)

男「全っ然気楽なんかじゃねーよ。まったく……」

男(週末の夜を迎える気分は昔から高揚としたものだが、明日は明日でシリアスなイベントがきっと約束されているのだろう。憂鬱とは違った心労が肩にクる)

男「あの頃はもっと明日を楽しみに出来てたはずなんだがな。あの子と会って、別の子が待っていて、トキメキ連発よ……」

男「今の俺は、アレだ……」

男「物語を回す為にある歯車の一つみたいな……」

男(または駒とも呼べる。型に嵌まらない、妥協を許さなかったラブコメ主人公の日々が懐かしい)

男(この俺がいる“創造の世界”は形容しがたい脅威にじわじわ浸食されていき、ゆっくり内側から崩壊を進めているに違いない。神は死んだ、そして――――)

生徒会長『――――廃病院とはまた変わっているな。大体、放棄された建物は立ち入り禁止じゃないか?』

男の娘『じ、じつはちょっと前にみんなで肝試し目的で中に入っちゃってたりするん、ですけど……』

先輩『えー! なにそれ面白そうっ、どうしてわたしも誘ってくれなかったかな〜!?』

男「話、早速脱線しそうになってますよ。明日のことをみんなで考えるんじゃなかったんですか」

男(その為のスカイプに備わったグループ通話を活用した作戦会議なのである。PCちゃん、キリキリ唸る)

72以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/18(金) 22:11:21 ID:Itku9HE6
転校生『あんたは随分真面目なのね?』

男「いつも真面目で、更に真面目だ。黒服さんも悪戯に俺たちに時間を割いてくれたんじゃない。気合い入れて挑まなきゃウソじゃねーか、転校生」

不良女『いきなり熱血キャラかよ、つーか オカルト研がまたあそこに行きたがった理由とか何なのよ?』

先輩『聞けなかったんだよねぇ〜、男くん』

男「というか黒服さん自身も何故なのか知らなかったと思いますね。今日だってオカルト研が突然立てた日程に振り回されてたんですから」

不良女『うあぁ〜!! ほんと意味分かんないヤツだなっ、アイツ! 何したいのかさっぱりだよ……』

生徒会長『それを本人の口から聞き出すのが当面の目的だったろう。明日の予定時刻も把握していることだ。待ち伏せてやろう』

男の娘『あっ、僕は大人数だと返って話も聞けそうにないって思うけど……あの性格だし』

転校生『私も男の娘くんと同意見かも。問い質すのを目的に近づけば、オカルト研さん、きっとすぐ引っ込んじゃう』

先輩『いっしょに遊びに行こうって誘ってみたら違うんじゃない?』

不良女『それ、男か転校生ぐらいにしかできねーっての……やっぱりアイツ相手はタイマンが一番だと思うな、あたし』

男(オカルト研というキャラを考えればこその結論だろう。多勢で迫るなど以ての外、かといって 俺や転校生が詰め寄ることで上手く事を運べるかも疑問だ)

生徒会長『難しい問題だな……厄介ではあるが、ここは私や先輩ちゃんが出しゃばるより男くんたちに』

不良女『それじゃあ振り出しに戻っただけっしょ、カイチョー。あー、こんなのどうしようもないんじゃ……』

男の娘『えっと、振り回されるぐらいなら、僕たちが振り回す方になれば良いんじゃないかな?』

73以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/18(金) 22:49:49 ID:Itku9HE6
男(皆が頭を捻らせた中、沈黙を破ったのは意外な人物。モニターの前でどんなキョトン顔をさせているのだろうと胸弾ませたのは、まぁ俺だけだ、恐らく)

先輩『ほー逆転の発想じゃん。具体的には何か案とかあっちゃうのかな、男の娘くんや?』

男の娘『えっ、あ、ありません……だけど、オカルト研さんの興味を引くのが一番なんですよね。そしたらと思って!』

不良女『簡単に言ってくれてるけど方法が思い付かないんじゃ意味ねーの。興味っていうか、その……何つーの?』

転校生『それで合ってる、男の娘くん間違ってないわよ。まずはオカルト研さんの気を引かせてあげないと始まらないのよね』

転校生『だって面と向かって私たち言われちゃったんだから。顔も合わせたくない、関わるつもりなんてないって』

不良女『……へぇ、そうだっけ? あぁ 胸糞悪いナー胸糞悪いナー!』

男の娘『ねぇ、男ならこんな時どうしてみようって思う?』

『…………』

先輩『…………寝落ちかも?』

不良女『便所に行ってるとかのオチもあるから三分ぐらい待っててやろうぜ。別にアイツ抜きじゃ何も話合えないあたしらでもないんだし』

生徒会長『そうだな。彼が懸命に背負う負担を軽減できれば良いと考えた私たち自身の行動でもあるのだから』

先輩『うん! わたしも頑張って知恵絞っちゃうからねっ! おー!』

男(……黙って見守るだけ、無駄に男くん上げされて小っ恥ずかしいだけだとよく分かった美少女連合会話をお送りしている)

男(興味本位にマイクをミュートにしてみればご覧の有様よ)

74以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/20(日) 19:56:37 ID:sjz2XKQI
男(あと少しぐらい。もう少しこの俺抜きの会話を聞いてみたい。美少女たちだって人間同様生きているリアルだ。虚構ではない)

男(どうか当たり前の実感を与えてくれ、俺に――――――)


――――――――

――――――

―――


男「――――――あぁう…………おいマジか」

男(体が急が冷え込みを訴え、寝惚け眼を擦りながら数秒にして悟った。口元が涎で気持ちが悪いし、PCのキーボードを濡らしている)

男(首をパキポキ鳴らしながら前を見ると、画面に残されたままのグループ通話画面は全員のログアウトを報せており、時刻は半端に深夜まで進んでいた。これには苦笑い)

男「シャワー先に浴びてて正解だったかもしれないな。本気で眠りこけてたとか、ネタだぞ」

男(さぁ、愛する布団に潜って夢の続きを。と、洒落込む前に喉の渇きには勝てなかった。部屋を出て台所まで降りてくれば、照明とテレビの電源を付けっぱなしでソファーに沈む天使ちゃんである)

天使「ねむーい……ねーむーいー……」スヤァ

男「いや、既に行動移しちゃってるから」

男「無理に起こすのも可哀想か。おぉ、伊達にロリってないな。ていうか体重リンゴ5個分ぐらいしかないんじゃないか、コイツ?」

マミタス「なーん」

75以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/20(日) 20:24:26 ID:sjz2XKQI
男「出たな猫畜生、さては妹に部屋に入れてもらえなかったんだろ?」

マミタス「にゃん」

男(マミ公が、いくら雌といえど動物と意思疎通を取れる気はしないな。リンと首輪に付いた鈴を鳴らして現れた彼女は、何かウロウロ俺を中心に回っている)

男「落ち着け。お前の主だって一人になりたい時ぐらいあるんだろ」

マミタス「ふーーん」

男(時たまに人恋しさを感じたマミタスは嫌っている分類の俺へも脛を擦って甘えてきた事があった。抱きかかえようとした瞬間痛いしっぺを受けるまでがテンプレだ)

男(とりあえず、そんな一時の不安をここで紛らわせようとしているのかもしれない。着いて歩く彼女を特に相手もせず、天使ちゃんを両親の部屋へ寝かせて自室へ帰ろうとした、が)

マミタス「ふーーーーん」

男「何だよエサ貰ってないのか? いつものカリカリなら皿にまだ残ってたぞ、マミタス……」

マミタス「なーん!」

男「そうかい、猫じゃあ付き合い切れん」

マミタス「なーん!!」

男(すまんな、マミタス。可愛がってやりたい気持ちはあるが気分が乗らない。まずは体に残った疲労を回復するのが最優先なのだよ)

男「散歩なら明日の朝からにしてくれ。いつまでも玄関で待ってたって開けないんだぜ、俺って」

マミタス「んにゃあ〜〜〜〜〜〜……」

76以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/20(日) 20:58:21 ID:sjz2XKQI
男(部屋に入ってしまえば絶えず騒いでいたマミタスも黙りこんでしまった。助かる、これからという時に五月蠅く鳴かれても迷惑だろう、ご近所にも)

男(布団の上に転がりながら吊るされた紐を一、二回ほど引っ張ってしまえば最高のステージが完成してしまう。死ぬほど疲れているんだ……起こさないでくれよ……)


…………ガチャガチャ、ガチャ


男(………………何の音?)

男(静まり返ったあとは嫌に物音へ過敏となってしまいがちだ。聴覚が数倍も冴え渡った気にすらなる。俺は野生動物かよ)

男(されども蓄積した疲労は案ずるなと穏やかな眠りへ誘ってくる。きっと妹か天使ちゃんがトイレへ立ったのだろうと適当な安心を自分の中で納得させて)


ギィ……ギシ、ギシ、ギシッ、ギシ……


男(ほら、心配しなくともトイレだったじゃないか。恐らく妹だったな。誰よりも怖がりのアイツの事だ、恐る恐る脅えながら階段を上っている真っ最中であろう)

男(突然出て行って驚かせてやろうか? なんて、不安を抱えた兄妹へ対する仕打ちではない。近い内時間を作って彼女のケアもしてあげるべきだな。ところで)

男(用足し後に水も流せないほど恐怖なのか? 家の中が)


シ……ギシ……ギシ、ぃ…………ギシギシ、ギシ…………ギシ


男(俺の部屋の前で、音はぴたり止まってしまっていた)

77以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/20(日) 21:34:01 ID:sjz2XKQI
男(音という物は無作為に人の想像を掻き立ててくる。それが見えない正体不明であるとすれば尚更だった)

男(布団を被りながら、戸一つ向こうの気配の行方を俺は見守っている。動けと命じられようが、テコでも動くつもりは無いぞ。何故か? 警戒心からに決まっている)

男(不規則ではあるが音が絶えた、ここで。俺に用があるなら率直にノックから始めてみたらどうなので、ございましょうか)

男「っー…………」

男(この間が嫌だ、酷く嫌だ、不愉快が充満してくる。しっとりとした汗がじんわり額へ吹き、忌々しさの加速に正気度が削れていく)

男(そんな焦りを分かりやすく例えるならばもうコレしかあるまい)


ド ドド ド ドドド ドド ド ド ドド ド ド ド ド ド ド


┣¨┣¨┣¨┣¨・・・


男「誰かそこにいるのかっ!!」


…………ギシ、ギィ


男「フー…………やれやれ面白くない悪ふざけだったんじゃ――――――あっ」

男「部屋の戸が……何でだ…………開いて、る……?」

78以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/20(日) 22:16:30 ID:sjz2XKQI
男「…………」

男(意を決して布団から体を這わせて立ち上がり、おもむろに不可解へ近寄ってみれば 確かに見間違っていない。戸が数cmほど開いている)

男(拳大ぐらいと言うべきか。この時ほど鍵を掛けられない門に苛立ちを覚えたこともなかっただろう、満更でもなさそうに隙間から見える闇はこちらを怪しく誘っていた)

男(……覗いてみなければ真の安心は得られない。好奇心は文字通り俺を危険へ晒す羽目になると考えた上で、気持ちが逸ってしまうのである)

男「何だゴラあぁーん!?」

男(空き巣、幽霊、エトセトラ……本心が求めていた奇怪は何処にも立っておらず、勢い余って空振りな気分のみ留まった)

男(顔だけ覗かせて廊下を警戒したところで静寂が漂うのみ。脳内アドレナリン的な分泌も次第に収まり、安堵の息が自然と漏れた)

男「……ダメだな、きっと疲れてるんだ俺。早く寝ないと」

後輩「夜分遅くですけれどお邪魔してますよ、先輩」

男「うわああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーぁぁぁあああああ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」

後輩「おっと……」

男(頭を掴まれたと思いきや、俺の顔面は枕に埋められていた。じたばた手足を動かせば背中に体重が掛かり、上から年端も行かない子をあやすような声で)

後輩「ナイス悲鳴ですが時間帯も悪いのであまり騒がないでもらって構いません?」

男「んー!! んー!?」

後輩「構いませんよね。ねぇ、ちゃんと聞こえてるでしょう? せーんぱい」

79以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/20(日) 22:54:53 ID:sjz2XKQI
男「――――お前分かってるのかよ。まず不法侵入だ」

後輩「大丈夫ですよ。これは夢です。先輩はいま夢の中で私と話しているだけなんですよ、ふふっ!」

男(超高速のリズムを刻む鼓動が聞こえていないかとあくまで平然を装った体で叱責しようにも、彼女は俺の上を行った。斜め気味で)

男「夢、夢ねェ……俺も昔はスポーツ選手に憧れたよ。趣味の延長戦で飯が食えて美人の女子アナと結婚も」

後輩「別に大声あげて助けを呼んでも気にしません。でも、夢ですから先輩が一人でうなされて叫んだ所を誰かが駆け付けて来るだけでしょうね?」

男「……何なんだよ、お前」

後輩「へぇ、人の部屋って兄ぐらいのしか知らなかったんですけど存外小奇麗にしてるんですね……」

男「話題を逸らすな! ていうかそれ、俺にしては清潔を保った部屋だって皮肉かよ?」

後輩「写真」

男「は?」

後輩「写真、まだ持ってますよね。出して?」

男(ぐんと距離を縮ませた後輩の顔は、どう足掻いても美少女と評するしかない出来栄えである。真っ直ぐ向いた大きな瞳はさしずめ欲望を吸い込まんとするブラックホールだろう)

男「…………お、お前キャラ変わってるよな?」

後輩「さっさと出してくれませんか。慌ててください、私は気が短い方なので」

男(でなければ、こうも常識外れした再会を果たすまい)

80以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/21(月) 12:11:12 ID:ytyl51fY
小悪魔から悪魔に進化した…

81以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/22(火) 20:10:31 ID:PQPqT1Tk
男「わ、わかったから降りてくれ、背中に乗られたままじゃ渡せないだろ!」

後輩「勿論、逃げないと約束してくれますよね。掴まえるのは簡単だけど荒っぽくなりたくないので」

男「冗談っ……言ってる顔じゃねーよな、それは」

男(代名詞でもあるような定番の冗談笑いもなく、後輩は俺の動作一つ一つを見張った。感情の込もられていない人形の様な瞳で)

男(それはそうとして“写真”だ。俺が所持する数ある中の内のどれを頂戴しに来たかは大体見当つくが、目的が謎である)

男「渡す前に訊いておきたいんだが、何でお前がコイツを欲しがるんだ?」

後輩「あなたもどうして自分が持っているのかわからないんでしょう? 身に覚えがないのに持っていたって気味悪いだけじゃないですか」

後輩「どうせ要らないなら、私にくれてしまった方が後腐れないです……」

男「どこのコミュ症だっ、質問の答えに全然なってないだろ!!」

後輩「……早くして?」

男「っ〜〜〜〜! ……お前、自分が有利な立場みたいな振舞いしてるけどな」

男「理由はもう問わん。写真は、くれてやらんでもない。だが交換条件を提示させてもらう! 悪くない取引をしようか、後輩!」

後輩「取引?」

男(ようやく表情を作った後輩。不可解な面持ちで制服のポケットから取り出した物を握った俺の拳から、視線をゆっくりこちらへ合わせてきた)

男「ああ、取引だ。乗ってくれるだろ?」

82以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/22(火) 20:42:30 ID:PQPqT1Tk
男(唐突な提案をされて即座に頷いて貰えるとは考えてはいない。だが、せっかくのチャンスを手放すなんて出来るものか)

男(後輩は何らかの形を取って名無しと唯一コネクションを握っている。オカルト研の奇行にしても、ここ最近の崩壊の起因は名無しにあるとしか思えない)

男「(ならば、彼女を頼るのも至極当然) 気兼ねなくいこうぜ、お互い失う物あってこそ得られる物は大きい」

後輩「……しょうがないですね。気は進みませんけど」

男「良いぞ! 話が早い、それでこそ美少女後輩ちゃ――――――」

後輩「…………」するっ

男「はえ…………?」

後輩「下着はご自分で外した方が好みですか? 面倒でしたら全部脱いじゃいますけど」

男(……何がどうして着てる服脱いでますの この子。というか淡々としすぎじゃありませんか。えっ、こわい)

後輩「あの、じろじろ見ていないで早く終わらせてくれると助かります。何分 私も気分じゃないので」

男「ふ、服を着ろっ……ばか!!」

男(思わず見惚れていたのは内緒だが、咄嗟に布団のシーツを剥いで後輩に被せてやった。もごもご蠢く淫乱モンスターに唖然とする。溜め息が止まらん)

男「アホすぎんだろ……どんな頭してたらこういう事やろうって考えに行き着く!? 恥を知れっ!」

後輩「恥とか、そういった人間らしいことは……」

男「はぁ? 何だって?」

83以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/22(火) 21:19:59 ID:PQPqT1Tk
後輩「……いえ」

男(着替えるから後ろを向いて欲しいと頼まれて言われるがままにしてみたが、脱ぐ瞬間は特に構わなかったのかコイツ。肩に置かれた手を合図に、背後を振り向き交渉は再開される)

男「コホン、俺が見返りに体を求めるタイプと思われたのは心外だが、取引には応じてくれるんだな?」

後輩「私に何をして欲しいんですか。事と次第にも寄りますよ」

男「頓着してるのかしてないのか分からない奴だな。別に、断られたら他の方法を探すし構わん」

男「いいか? 俺がお前に求めてるのは情報だ。尋ねられたことに一切ウソ偽り交えず正直に答えてくれ、後輩……何だこの手は?」

後輩「前払いをお願いできませんか? 言われた事に答えるだけなら、後でも難しくないでしょう」ス

男(塩対応に渋い顔を見せてやれども、変わりはなかった。やれやれ、人が良いのも美少女相手だからと無理に納得させてみたものの……)

男「……おい、こんな物使って何企んでるのか知らんが、周りの人を困らせないでやってくれよ。くれぐれもだからな?」

後輩「すみませんが、約束しろとまではあなたの出した条件に入ってなかった気がしますけど」

男「関係あると思うか? お前が俺の知ってる後輩なら四の五の言わず聞き届けろ、これは信頼だ」

後輩「えっ? いまいち納得できませ――――――それでは先輩 夜分遅くに失礼しました」

男「ん、え? あっ! ちょ、おいッ!! 何畏まった挨拶して終わらせようとしてるんだよ!?」

男(まだ取引が、と続く言葉を遮り、腹に激痛が走った。な、殴りやがった……平然と、蹲る俺を無視して、帰ろうとしている……!)

後輩「私が迂闊でした。ごめんなさい、続きはまた今度……」

84以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/22(火) 22:06:53 ID:PQPqT1Tk
男「ま、待て……」

男(踵を返して部屋を出て行った彼女を芋虫のように床を張って追うも、既に姿を眩ましていた。何事もなかったと広がる闇と静寂が嵐のあとを思わせてくるだけ、無駄であった)

男(遅からず痛みも引いていき、呼吸も楽になってきたが腹の虫は収まりを知らなかった。“信頼”を口にしてすぐに裏切りを味あわされたのだ、当然じゃないか)

男「くそ!! 思い通りに進まない!!」

男「……なんて 苛立つだけじゃ拗れるだけなのがもっと気に食わない。……アイツ、何で話の途中で急に切り上げたんだろうか」

男(腹パンだって考え方を変えてみれば、制止を振り切るよりも自身への追跡を良しとしない事からだったのでは?)

男(何より初めから写真の入手を目的としていたのであれば、話を聞かずに強行し続けていた方が楽だ。別れの台詞といい、振り返るとどうも引っ掛かる部分が多い)

男「あの時、一瞬だけ窓の外気にしてなかったか?」

男(窓の外、肝心の窓はカーテンが閉められ外の様子を確認することなど不可能だ。というか気にしたかどうかすら、俺の視点からなる都合の良い発想)

男(道理に反しようと美少女の敵にはなりたくない心理だろう。無意識に後輩の無実を祈ってしまっているのだ。恐らくこのカーテンの向こうには何も……)

幼馴染『        』

男(カーテンを数センチ開けた先に、彼女が佇んでいた。別段宙に浮いていたとか、窓に張り付いていたとかじゃないにしろ、心臓がキュッと縮まっていた)

男(向こうも覗く俺に気が付いたのか、はっと口元に手をあてその部屋をあとにした。……何だ?)

男(彼女は一体いまの何が面白かったのだ?)

男(咄嗟に隠した口元は、明らかに笑って見えた)

85以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/22(火) 22:35:19 ID:PQPqT1Tk
天使「男くん、ボスがお目覚めになったのです……」

男「そりゃあ朝日が昇れば誰でも起きるだろ、不健康な生活送ってなけりゃ」

天使「昨日の今日で間抜けですか、間抜けでしたね!! 部屋から出てきちゃってんですよぉ〜!!」

男(休日の朝だろうがお構いなしに我が家を騒々しくさせるのは決まって彼女の役目となった。マミタスと共に朝飯を強請りに来たとでも思いきや)

男「親切なストリッパーが部屋の前で踊ってくれたんだろ、良かったじゃないか」

天使「スリッパじゃねーです! ……何となく、自分だと話しかけづらくて」

男「心配するのも悪い事じゃないけど、余計な親切が大きなお世話になる場合もあるぞ」

天使「はて? と言いますと?」

男「今は放っておいてやればいい。時間が解決してくれるだろ」

天使「な、なんつー無責任な!? それでよく兄貴が務まってましたね! ただの薄情じゃないですか!」

妹「……何の話?」

天使「そんなの決まり切ってましょーがよっ! うちのボスが……ぼ、ボスぅー……」

男「よぉ、おはよう。腹減ったから出て来たんだろう? 何か作ってやるから代わりに子守りしててくれ」

天使「えっ、男くん料理できたんですか……?」

男「うむ、幼馴染にちょっぴり習ってみた事がある。腕の試しどころでしょう? 天使ちゃん」

86以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/22(火) 23:32:12 ID:PQPqT1Tk
天使「カリカリ焼きおにぎりって?」

男「元々前日に炊いて余った米をどう美味く仕上げるかから考案されたメニューだ。沢庵が冷蔵庫で眠ってるなら叩き起こせ、合うぞ!」

男「まずは簡単、ご飯を使って大きめのおにぎりを握ります。ポイントは大きく。コンビニで売られてる物の1.5倍ぐらいを想像して欲しい」

男「そして小皿に醤油を垂らす! ……などの作業前に魚焼き用のグリルを温めておくとスムーズに進む。コップ一杯水を入れてから起動。温度はやや高め」ピッ

男「ここでさっき握っておいたおにぎりの表面に醤油を浸そう。今はあまり長く浸けるな! あくまで表面を意識する」

男「醤油が両面に染みたらすかさず加熱されたグリルの中へイン。……目安30秒で開き、おにぎりを返す」ジュー

男「もう片面も焼けたタイミングで一旦取り出すぞ。素手で触るとまぁ熱いが細かいことは気にするな」

男「アツアツになったおにぎり、この時点ではまだカリカリには程遠い……皿にまだ醤油が残っているだろう?」

男「浸せ! 両面に染み渡らせるように浸せ! 押し込むぞ! 親の敵みたいに醤油攻めにしてやれ!」グッグッ

男「余談だが、ここで好みに合わせて七味をかけてやるのも良い。鰹節も相性抜群だけど握る前に入れとけ」

男「コイツはもう醤油の味を知ってしまったおにぎり……焼きましょう。手で触って程良い硬さを感じたら引っくり返し、焼きます」

男「取り出します。海苔は好みで巻くといいんじゃないか? 実際コイツの食感と風味に合うかどうかはその人次第だ」

男「完成。一人あたり二つ作ってみたが、もう一つはお茶漬けにしてワサビを入れても美味しくいただけます……オーブンとかフライパンだと引っ付いて難しいんだぞ」ジュ〜

妹「かった!?」ガリッ

男「失敗もご愛嬌」

87以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/27(日) 20:42:52 ID:robm.lTs
天使「軟弱なモヤシ体系では程遠く、空腹を満たすだけを目的とされた料理……げぷっ」

男「左様。これこそ男の料理である。……マズかったかな?」

男(一応礼を尽くされて朝食は残さず食べてくれていた。空になった皿は嬉しくもあるが、沈鬱な表情で項垂れる妹を手放しにしては出来ない)

男「すまん、今度はもっと上手に作れるよう努力しよう。幼馴染に頼り切っても情けないしな、へへへ!」

妹「おにいちゃん……いつだったかお兄ちゃん部屋に閉じ籠ったまま学校行かなかった時あったじゃんか」

男「(過去の、一周目時の俺か。弱者にはどんな優しい世界ですら刺激が強すぎたと甘えていた頃。そう、若さゆえの過ちが) うん?」

妹「私もあのお兄ちゃんと同じ気持ち……休み明けに登校してから何言われるかわかんなくてね、おっかないよ……」

男「バカを言うんじゃない。自分が一人だと思っているなら間違いだな」

妹「こんな気分で偉そうな説教とか聞きたくないもん……」

男「杞憂だなぁ、妹? 何たってカッコイイ兄貴がいつだってお前の味方になってやるんだからな、心配ない!」

妹「フツー言い切るか!?」

天使「ぷーっ!! くすくすくすくすくすくす」

男(恥ずかしい台詞は禁止されていない。ならば際限なく補正を発揮しない手はないのだ、気休めでも受け取ってくれたらそれで良い)

妹「あ〜あ! お兄ちゃんの方がバカじゃん、一気にアホ臭くなったんですけど!」

妹「…………私のことずっと守ってくれる? 守るって、約束しちゃうんだ?///」ボソ

88以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/27(日) 21:16:53 ID:robm.lTs
男(優雅の欠片も見当たらない朝食を終え、食器洗いに徹するお兄さまとはこの俺の事である。妹の回復も早い段階で行えて助かった、応急処置に等しいけれど)

男(ところでアレから部員の皆の連絡は来ていない。話合いの末、俺を除け者に動くともなれば冗談ではないぞ――――ひょん、と現れたロリ天ヘッドが思考を止めさせた)

天使「男くんが物思いにふけるのって別段珍しくもないんですよねぇ」

男「どうした? 構って欲しいなら洗い物の片付け手伝ってくれよ。猫の手も借りたい気分だ」

天使「ねぇねぇ、前と比べて男くんてばまったく自分を頼りにしてくれねーんですが?」

男「だから今必要だと言ってるだろう、聞いてなかったのか? スポンジもう一つあるから洗剤垂らして……」

天使「自分 毎日何不自由なく暮らせるようになって楽しいです。新しい発見もいっぱいだし、男くん以外の人間とも関われるようにもなって……」

天使「でも、でもですよ! ……うーん」

男(ウンウンと唸る天使ちゃんの頭に、水を拭った手を乗せてみた。一時停止した彼女は上目でこれを確認し、まだ何か言いたげに全身で訴えている)

男「今度時間作って思い切り遊んでやろうじゃないか。我慢、できるだろ?」

天使「えぇっ……」

男(申し訳ないが、今は問題が山積みなのだ。些細な悩みもすかさず拾って即解決、なんて呑気なスタイルを気取っている時間すら惜しい)

男「留守番任せたぞ。家の中が暇なら、俺も今から幼馴染の家に顔出すつもりでいたんだ。ついて来るか?」

天使「……まぁ、はい」

男(自分の行いを上手に客観視できれば、どれだけ救われる場面があったのだろう? きっとこの“些細”ですら、爆弾に変わったと気がつけたに違いない)

89以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/27(日) 21:42:52 ID:robm.lTs
ママ「やーん♪ 男くんその服どこで買ったの? バッチリ決まってるねっ、グーよ! グー!」グー

男「ふる、奮い立ちます。毎度のことで申し訳ないんですがコイツを遊ばせてもらいたくて」

ママ「ううん、全然気にしなくていいんだからね! 私もあの子の妹ができたみたいで天使ちゃんと会うの楽しみにしてるの。ふふ〜」

天使「きょ、今日は! 今日はぁー……ご飯の作り方教えてほしい、です。自分でも簡単に作れそうなヤツがいいです」

ママ「ご飯? ん〜、まだあんまり包丁握らせたくないから ほんとに簡単な、あっ!! でもすっごく美味しいの教えてあげるね? よーしよしよしよし♪」ナデナデナデナデ

天使「むぅ……」

男「それじゃあ本当にすみません、ママさん。夕方には迎えに来ますので。お願いしますね」

天使「お、男くんは、今日はどこに行きやがる予定なんですか!?」

男「文化祭が近いのは教えただろ。まだ準備が万全じゃないから休日出勤だよ、無給の」

天使「そうなんですか……」

ママ「天使ちゃんどうしたの? 男くんも忙しそうだし、あんまり無理言ってあげても大変だよ? はい、おウチに入ってー」

天使「はーい。……男くん」

男「まだ何かあるのか?」

天使「別に……[ピーーーーーーーーー]」

男「お、おいっ? 今何て――――何だアイツ? (無情に閉められてしまったドアの向こうで最後にあの子が浮かべた表情は怒りか不満であろうか。構って欲しい年頃であることは重々理解はしているつもりだが、難聴 発動していたか?)」

90以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/27(日) 22:38:11 ID:robm.lTs
男(携帯電話を取り出してみても、通知は一件も無し。昨夜の結論をメンバーに尋ねようとしないのは俺のプライドが邪魔したと思ってくれ)

男(つべこべ文句を垂らすより、黒服が零してくれた話を頼りに廃病院へ一足先に移動すべきだ。最悪俺一人でも美少女ならば説得できなくもない)

男「電車を使えば一時間で到着するしな……考え事をまとめるなら、最適じゃないか」

男(考え事といえど、ゴチャゴチャした頭の中の整理である。あまりにも常識はずれした奇奇怪怪な情報、身近な人間の行動に振り回された結果、自分が何かを失いつつある危惧を覚えてしまった)

男(何が起きても前に進むと誓った強い気持ちと精神を削るトラブルを堪える鋼の心は、信じられないほど負担だ。平和な休日の朝すら俺を嘲笑っているかのように錯覚してしまっている)

男(形振り構っていられるものか。俺はただ、内に秘めた折れてはならない一本を折られないよう、呆くほど深淵を覗き続けるしかない)

男(・・k…おれ&8った#何※して≦る\だ????)

?『――――――――かわいそうに』

男「!? ゆ、夢……」

男(ガタガタ揺れる車内だが案外寝心地は悪くないのが罠だと思わないか、電車って。寝過して目的駅を通過していないことだけを祈った)

男(祈った、矢先に 奇妙な光景が広がっていることに一目で気が付く。乗客が見当たらない)

男「……最終痴漢電車か!?」

男(木霊も虚しく、俺だけが取り残された車内を歩き回った。いない。いない。誰一人もいない。不気味)

男「マジで誰もいないのか? ……電車はどこに向かってるんだ? これってまだ夢の中だったりするんだろう?」

男「どこのどいつのスタンド攻撃受けてるんだ、俺は!?」

91以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/27(日) 23:10:26 ID:robm.lTs
『ご利用頂き有難うございます。なお、車内では……他のご利用のお客様の……』

男「何だよ!? 次の停車駅は! 停車する駅を言ってくれっていうんだよ、こっちは!!」

『次は“あの世”。あの世でございます』

男「!!」

『……大変申し訳ございません。お客様にはご迷惑をお掛けしておりますが、現在線路の不具合により緊急の復旧作業を余儀なくされている状態であります』

『復旧までもうしばらくお待ちください。繰り返します、大変申し訳ございません。お客様には……』

男(アナウンスは狂ったオーディオの様に同じ言葉を繰り返し、俺へ喚起し続けた。“あの世”。他人事ではないワードに身が竦む)

男(バケツをひっくり返したみたいに突然の雨を背景とした登校の日、頭上から鉢植えが落ちて来た。……事故があった後だったのをよく覚えている)

男(一歩間違えれば、鉢植えより先に 車の犠牲になっていた。あの速度で撥ね飛ばされていたら即死も免れなかった事だろう)

男(俺は、今曖昧な状態にある。三途の川、生死の境を彷徨う悲劇の人だ。脳天を叩いた鉢植えの一撃がよく効いている)


[ピッ]   [ピッ]   [ピッ]  

[ピッ]   [ピッ]   [ピッ]        [ピッ]


男(無機質な電子音が一定のリズムを刻んだ。いつかそれが間延びして聴こえてくるのを脅えるのだ)

「かわいそうに」

92以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/28(月) 12:40:46 ID:Ct5ra.qw
まさか…

93以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/29(火) 16:18:39 ID:7p/ej2d.
「生きてるのか、もう死んでるのやら。この子ぐらい若い頃なら遊び盛りでしょうね」

「そう、だから事故って怖いものなの。自分と関係無いと思っていても いつ巻き込まれるかわからないところが」

「シーツ取り替えたら次の病室に移るよ。もうすぐいつものお見舞いとか来る時間だし、急ぎね?」

「はーい」


[ピッ]   [ピッ]   [ピッ] 

[ピッ]   [ピッ]   [ピッ] 


「……あら、来てたの? 遠慮せずに声掛けてくれても良かったのに」

妹「あぁ、いえ、仕事の邪魔しちゃマズいと思って。いつもお世話になっています看護師さん」

「お兄さんも優しい兄妹を持てて幸せでしょうね。ほら、男くん! 君の妹さんが会いに来てくれたよー。どうぞ近くに座って?」

妹「すみません、親切にしてもらって……兄は寝たきりですか?」

「ちゃんと起きてるよ。話しかけてあげたらしっかり喜んでくれるからね。あっ、悪口はあまりオススメしないかしら〜」

「ところでお父さんとお母さん今日は来ないんだ? あなただけ?」

妹「聞いてません。母は午前に来てたと思いますけど」

「そうねぇ、体も拭いてあったし。お姉さんの方は来るの?」

94以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/29(火) 16:55:49 ID:7p/ej2d.
妹「あとでやって来るんじゃないですかね。お兄ちゃんも一番会いたがってると思います」

「そうなの。じゃあお姉さんがお見舞いに来るまでの間は独占できるね、うふふ」

「じゃあ、お姉さんにもよろしくね。私たちは次の病室あるから」

妹「はい、お疲れ様です。……あんた起きてんの?」

妹「…………ただでさえキモいくせに、もっとキモい顔してるの分かってる?」

妹「わたし別にあんたと話したいとか思ってもないよ。お土産とか要らないよね、寝てるだけなんだもん。無駄じゃん」

妹「あんた見てるとさ、イライラしてくる……ねぇ、殴らせてよ……」

妹「何もかも滅茶苦茶にしておいて自分はずっとベッドで休んでるだけとか……人間の屑でしょ」

妹「……生きろ。生きろ屑、生きろ、生きろ、生きろ、生きろ、絶対生きろ」

妹「早く生き返ってわたしたちにしてきた事 全部償え。生きろよ 最低の――――」

委員長「――――またそんな事言ってるんだ……?」

妹「!! き、来たんだ。よく懲りずに通えるね、意味不明なんですけど」

委員長「いくらでもここに来るよ。意味なんて分かって貰えなくても良い。私がしたいってだけなの」

委員長「それに……最近また来れるようになってから、この人の顔を見るのがすごく新鮮に感じちゃって」クスッ

委員長「……もうすぐあの日から一年近く経つんだね」

95以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/29(火) 17:19:08 ID:7p/ej2d.
委員長「男くん起きた時ビックリしちゃうかもしれないね。浦島太郎みたいな気分になって、きっと騒ぐよ?」

委員長「……痩せちゃったね、男くん」

妹「足なんて木の棒だよ。仮に起きても立って歩くことなんてすぐじゃあ無理だろうね」

妹「よくお見舞いに来てたあのデブいのに肉分けて貰えたら丁度いいんじゃない? ちょーウケる」

委員長「あぁ なるほど、同感。ふふふっ!」

妹「なんかお姉さんさ、最初会った頃より余裕みたいなのあるよね。やっぱり痛い思いした後だと違うの?」

委員長「さぁ、どうなんだろうね……私としては痛いとか辛さよりも、自分の希望が叶ったことでほっとした、みたいな感じかもしれない」

妹「……実はさ、今日お姉さんより先にここに来て待ち伏せしてたの、話がしたかったからなんだよね」

委員長「なに?」

妹「ぶっちゃけ辛いだけでしょ、こうしてこんな奴待ってるだけなんて。責任感じることないと思うよ」

委員長「せ、責任なんて! 違うの。私は本当に」

妹「色々あったけどお姉さんだってまだ若いんだからってお父さんたちもよく言ってるじゃん。コイツに縛られることがお姉さんの」

妹「ほんとうの幸せなの?」

委員長「……それは」

妹「あの子、まだコイツにだけ見せてないのも何か思うところがあるからじゃない? お姉さん」

96以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/29(火) 17:40:06 ID:7p/ej2d.
委員長「…………えっと」


[ピッ]   [ピッ]   [ピッ] 

[ピッ]   [ピッ]   [ピッ] 


委員長「帰り、何か食べて行こっか?何食べたい? あんまり高い物だと苦しいかもだけど、あはは」

妹「私、最初はお姉さんのこと認めたくなかったけど 嫌いじゃなくなったんだよ。だから出来るだけ優しくしたい」

妹「別にさっきの話だってね、コイツやお姉さんを困らせてやろうと思って言ったんじゃないんだ。ごめんね」

委員長「…………やっぱり家に真っ直ぐ帰ろっか。あの子も泣いてるかもしれない」

妹「うん、そうだよ。お姉さんはそっちにキチンと責任持たなくちゃね」

妹「お姉さんは、もう“あの子のママ”なんだから――――――」


[ピッ]   [ピッ]   [ピッ] 

[ピッ]   [ピッ]   [ピッ] 


男(俺にとっての現実は一体どちらなのか? 放心したように呑み込めず、ただ電車に揺られていた)

97以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/29(火) 20:28:32 ID:7p/ej2d.
「死してなお、自らの周囲の運命に影響を与える。忠告はやはり正しかった事のみ証明されました」

男(……誰か立っている?)

「この、湾曲されし未来の形こそ貴方が望んだ救いなのデスカ。定められた生き死にを捻じ曲げた行く末ハ」

「如何でしたカ? 夢見と勘違いなされる前ニ、アナタのリアルを受け入れて欲シカッタ」

「ワタシの想いはアナタへ届いてイマスカ、男?」

男「だれ、だ………………お前……?」

幼馴染?「こんにちハ、男。アナタとこうして対話できる日ヲ待っていマシタ」

男(また幼馴染が幼馴染ではない! というか例の“神”とも雰囲気が異なっている。霊媒体質でも秘めていたのか、彼女は)

男(完璧に冷静になれというのは酷な注文であるが、虚ろな瞳をした彼女が俺に語りかけている。重要イベントを意識せざるを得なかった)

幼馴染?「紹介が遅れてしまいスミマセン。ワタシ、名乗る名など持ち合わせておりませんガ」

幼馴染?「“テンプラ”と気軽にお呼びクダサイ。美味しそうなネーミングで非常ニ申し訳ナイ……」

男「実はふざけてたりするんだろ?」

テンプラ「滅相もナイ。男、ワタシの存在ニついては既に認識しているのデハ?」

男(思い当たりを確認されずとも、幼馴染の背後で陽炎のように虚ろに浮かぶあのバケモノを見れば問う必要もなかった。奴が、幼馴染の体を通して接触してきてしまった、その事実だけだ)

テンプラ「ビ少女を気にされているのデスね? 不安がらずとも危害はけして加えマセンのでご安心ヲ」

98以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/29(火) 21:07:01 ID:7p/ej2d.
テンプラ「ゴ想像の通りワタシこそアナタ方が“機械仕掛けの神”と呼ぶ者デス。この様ニ何かヲ通さなければ、言葉は愚か意志疎通すら図れマセン」

テンプラ「彼女はワタシに適応してくれマシタ。流石ハ主が保険とした子……男、アナタに会いたかっタ」

男「天ぷらは天ぷららしく油に揚げられててくれないか」

テンプラ「誤解しないデ! ワタシはアナタを惑わすつもりはないのデス」

男「幼馴染を使ってるだけで十分俺には怪しい扱いしてくれってお願いしているのと同じだ、どんぶら粉!!」

テンプラ「ひ、酷イ。拒絶しないデ…………ワタシはアナタが大好きなのデスよ……」

男「人の姿を借りてしかまともに会えない奴を誰がすぐ信用できる? それより」

男「昨日の騒動といい、この電車の中の異常と……まずはお前が犯人と認めてくれるのか?」

テンプラ「もちのロン!!」

男「さっさとこんな所から俺を降ろせェ!! 天ぷらと話してる場合じゃねー!!」

テンプラ「ヒァァァア暴れないで! どうか、どうかワタシの話ヲ聞いてクダサイ!」

男「ふざけるな! あんたなんかと悠長に遊んでる暇ないんだよ、こっちは。何だよ。逆に協力もしてくれるのか!?」

テンプラ「協力? イイエ、既にワタシの望みとアナタの願いは合致してマスよ……男……」

男「……何だって?」

テンプラ「トラブルは芽のうちに摘んでしまうべきなのデス、彼、名無しハ」

99以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/29(火) 21:45:04 ID:7p/ej2d.
男「――――名無しの抹消って言ったのか、あんた……?」

テンプラ「元はワタシの感情の昂りによって生み出されてしまったモノ。彼の者は不必要なバグとなってしまいマシタ」

テンプラ「この世界はアナタ、男によって操作されるベキなのデス! 余計な要因あれど幸福へノ道を閉ざしてしまうばかり」

テンプラ「我が子同然の存在、しかし心苦しくありますが排除されなケレバ真なる救いは齎されないとワタシは判断シマシタ……!」

男「とりあえず納得しておくが、随分と自分勝手な奴だな? 作った矢先に消されるキャラの気持ちも無視とは」

テンプラ「心苦しいと話しマシタ……名無しにはもうワタシの声は届かナイ。暴走を繰り返されるのであれば、いっその事を願いマス……」

テンプラ「どうか、どうか名無しを止めてあげてクダサイ、男」

男(止めろと頼まれようと、難聴鈍感しかない無能にどう動けというのだ、この天ぷらは。遂に俺にも超常の力を与えられてしまうのか?)

男「なぁ、あんたはこれまで穏便に収めようとしてきたんだろう? だが、その心は通じなかった。すると最終手段はどうなる?」

男(抹消などと物騒な発言があった限り、穏やかな方法を提供されるとは考えもしない。ラスボスたる名無しへ対抗しうる勇者のアイテム、それは)

テンプラ「アナタにお任せシマス」

男「考え無しにもほどがあるんじゃないか?」

男「馬鹿馬鹿しい! 頭下げておきながら文字通り人任せって、偽ってても神の字が泣くじゃねーか! アホかお前!?」

テンプラ「し、失礼ナ!! コレでもワタシなりに知恵を絞った末の結論! 間違いではナイのデス! 良いデスカ、男! 名無しハ」

テンプラ「承認欲求の塊と言って過言ではないデショウ……」

100以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/29(火) 22:25:36 ID:7p/ej2d.
男(承認欲求、人間誰しもが持つ人に認められたいと感じる気持ちである。特技、あるいは得意なスポーツ、容姿、幅広い分野を用いて誰かに「YES」と応えられる快感は言い知れず)

テンプラ「彼は非常ニ孤独なのデス。異質なまでにも思える目的を遂行しようとする振舞いは、全てワタシへ褒められたいというキモチが起因デス」

男「だったら今すぐあんたがアイツをヨシヨシ頭撫でてやれば良い事だろ。違うのか?」

テンプラ「エエ、名無しが欲する褒美とは 存在意義にありマス」

テンプラ「何らかの形で彼の欲望を満たさせる事が達成できれバ、納得シ、舞台から自ずと降りるデショウ……確証ハありマス」

男「だからなっ、それをあんたがやってやれば!!」

テンプラ「……ナニかの形を借りねバ、意志疎通も取れないこのワタシが成し遂げられることデ?」

男「……やれやれ、可哀想な奴だな。あんたも名無しも」

テンプラ「くれぐれも名無しの動向に注意してクダサイ、男。名無しはアナタの記憶ヲを奪い、この世界の完全なる住人ヘ染め上げようとしてイマス」

テンプラ「現実へノ懐かしみも何もかもを消し去り、男という名のNPCヲ作り上げようト……」

男(過去の、中身まで美少女化しかけた委員長の再現を狙っているというわけだ。オリジナルとなる俺の人格を消されるとして、その俺は何処へ行くというのか?)

男(テンプラ曰く、未知であると回答を得た。尚更対抗する理由ができたじゃ――――――)

先生「――――あ、起きた! ねぇ、男くん大丈夫!? 返事しなさいっ!!」

男「あ……せ、先生? おかしいな……俺さっきまで電車のな、かに、い…………」

先生「何寝ぼけてるの! 君 道端で倒れてたの! わかる!? しっかりしてよ、もう〜!!」

101以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/30(水) 04:05:42 ID:7k1oZOg2
相変わらず面白いんだけど流石に連載が長期にわたり、振り返り総集編みたいなのがあるといいんだが……

102以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/30(水) 13:12:21 ID:pzFz52hg
妹が委員長をお姉さん呼びしてて嬉しくなった
子どもに天使とか名前つけてないよね?

103以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/30(水) 21:01:55 ID:V7M26LtI
>>101
長すぎワロタ
栞辿れば振り返りやすいんじゃないか?
http://nanabatu.sakura.ne.jp/new_genre/otoko_moteru_kawarini_nancyoude_donkannni_narundesuka.html

104以下、名無しが深夜にお送りします:2016/11/30(水) 23:23:55 ID:7k1oZOg2
>>103
このページは知ってたが、章立てもしてたとは知らなかったわ
thx

105以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/04(日) 20:32:09 ID:oph.NBCI
男「テンプラは……?」

先生「えっ、天ぷら食べたい気分なの? まだ午前中……あなた随分朦朧としてるけど」

先生「寝惚けたまま外徘徊しちゃうほど気苦労溜まってたりしないわよね。家まで責任持って先生が送るよ、ほらしっかり!」

男(重大な意識レベルの低下と見受けられているようだ。自分としても、心配いらずと振る舞う気分は起きない。肩を担いでいる人が、先生である事だけ、かろうじて、あぁ 嫌な意味でフワフワする)

男(車の後部座席に寝かされた。ドアが閉まる音がした。何か声をかけられている。そういえば家まで送るとか聴こえたか?)

先生「はぁ〜あ、もう私の車って救急車よ……男くん聞こえる? ウチに着くまで目閉じて大人しくしてなさいよ」

男「……先生……。車、うごかさないで……」

先生「ん……どうした? 動くと気持ち悪い? 吐きそうなの?」

男「病院……びょういんに……」

先生「……無理そう? 我慢できないぐらい具合酷いの、男くん?」

男(そうじゃない。伝えたいのに上手く舌が回らない、もどかしさでおかしくなりそうだ。あのテンプラと会った影響だろうか?)

男(神から忠告を、意図したわけではないが、遂に破ってしまったのだ。現在のテンプラは異常である。あの時の説明からじゃ見当違いなイメージだったが)

先生「男くん――――電話、鳴ってるみたいだけど」

男「え、あぁ、黒服……何でまたアイツから…………電話に出なきゃ」

先生「後にしたら良いでしょ? 今は自分の体調を心配しなさいよ……」

106以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/04(日) 21:02:12 ID:oph.NBCI
男(やっとこさポケットから取り出した携帯電話が手元から滑り落ちる。いや、これが良いんじゃないか。通話ボタンは既に押した)

先生「ちょ……!」

男(スピーカーモード。音量MAXだ)

黒服『小僧聞こえているか!? お嬢様が予定を変更なされて急遽例の建物へ向かう羽目になった!!』キィーン

男「…………ふっ」

黒服『聞こえているのかと言っている! 貴様は返事も碌に学んでこなかったのか!? ウンコか! ウンコ、call me!』

先生「し、しょうがないわねぇ……あの、申し訳ないですけど彼はいま話を出来る状態じゃないんです。あとで掛け直してもらっていいですか!」

黒服『グムッ お、女の声だとぉぉ〜〜〜!! 貴様ッ、お嬢様という方がありながら他所で現を抜かしていたのか! クソガキィ!』

先生「違うわよ!! ていうか 一々叫ばないで! 私はこの子の担任の教師! あなたと彼の関係は知らないけど、今は男くん体調を崩していて」

先生「とにかく変な事に巻き込まないで欲しい、ですっ!! お分かり!?」

黒服『知るか! こっちこそそいつの体調に付き合っている余裕は…………すまないがあなたの名をお聞かせ願いたい』

先生「わ、私の名前? ちょっと男くん変な人と外で関わらないでよねっ!」

黒服『お願いだ。あなたの声に酷く聞き覚えがあってならない。私たちは何処かで会った事はないか?』

先生「ありませんから!! 電話切りますよ。男くんを休ませてあげたいので、ごめんなさい」

黒服『…………もしや 貴女でしょうか?』

107以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/04(日) 21:35:59 ID:oph.NBCI
先生「……はい?」

黒服『やはりだ。この声聞き間違いなどではない筈、やはり私と貴女は出会っているのです。覚えはありませんか?』

先生「悪いけど人に汚い言葉を吐きまくる怖い人とは知り合った覚えはありません。人違いでしょ? おかしな言いがかりは止めて」

黒服『名前! 貴女の名前は確か……そう、アレだ…………貴女は――――』

男(ズバリ正しく先生の名を黒服は言い当てた。彼と彼女が知り合い? 待て、俺はこうなる事を予期して電話を取ったわけでは、そんな、嘘だろう)

男(元彼の可能性ッ!!!!????)

男「先生、俺目が覚めました! 最高の気分です! 電話代わりますよ!」ガバッ

先生「男くん待って……この人って、まさか」

黒服『私です。“黒服”めをご存じないでしょうか? 一度限りですが貴女の見合いの相手でしたもので……!』

先生「ぐうっ!?」

黒服『教師と聞き、その透き通る可憐な声から過去を思い出したのです。あの日私を振った気丈なお姿、ふつくしさ……脳裏に焼き付いたままでした』

男「振った、って……ああっ、お見合い!!」

男(一周目での重要イベントの一つだったと思われ、『美人先生憂いの悩み』。彼女は両親の判断で自分の意思を無視したお見合いを設定され、困り果てていた過去があったのである)

男(お見合い相手は優良企業社長の息子。次期社長の座を約束された玉の輿もってこい……社長の息子だ? どいつが?)

黒服『私も父からいつまでも跡を継ごうとせず、身勝手に生きるなと言われた故 反発していましたが……あぁ」

108以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/04(日) 22:06:53 ID:oph.NBCI
先生「私直接あなたを振った記憶なんてありませんけれど!?」

黒服『あれ、そうでしたっけ? いやー、あははははっ、些細な事です。昔のお話なのですから!』

先生「あ、会ったには会いましたよ? 会ったけど、後日父からお断りの連絡受けたはずでしょ……!!」

男「せ、先生?」

先生「……前に相談したことあったわよね、私のお見合いの話。偶然にもこの人が――――したっけ? 相談なんて君に」

先生「あーどうだっていい!! それより私の生徒がいる所で個人的な話やめてもらえますっ!?///」

黒服『教師、ご立派に続けられていたのですね』    先生「えっ……?」

黒服『お父上の力説には屈服させられる想いでした。そして貴女の人柄を感じられた。立派な夢追い人であったのだな、と』

黒服『私も貴女の生き様を見習って今の仕事を継続しています。守るべき方の傍を離れるのはやはり惜しかったのです……お嬢様、彼女を守らねば私は無い』

黒服『貴女との出会いは私が私を貫く選択へ導いてくれたのです! 一言お礼が言いたかった! 良かったッ、ほんとうに、ほんとうに』

先生「ちょ、ちょっと……」

黒服『ありがとう、美しい人。――――――小僧、生意気に大人の会話へ聞き耳立てているな!?』

男「へぇえ!? い、いや、別にそんなつもりとか、こんな展開になるとは……っ!」

黒服『いま何処にいる? 先生、あなたとしても聞き捨てならない問題へそこのガキは首を突っ込もうとしている。興味はないか?』

先生「…………何なのよ、もぅ」

109以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/04(日) 22:38:56 ID:oph.NBCI
不良女「ン〜ン〜♪…………って おぉい! マジかよ、もうそれっぽい車一台停まったぞ!」

先輩「うひょー早いねぇ!? ていうか何時に到着とか聞けなかったし、いつ来てもだったんですケドっ!」

不良女「まぁ……とりあえずアイツが中に入って来るまでこっちは下手に出て行かねぇ。良いんだよな、カイチョー?」

生徒会長「無論だ。彼女に無理矢理迫って警戒心を高められてはチャンスをみすみす逃すようなものだろう」

男の娘「でも、ほんとに良かったのかな……?」

先輩「何だね男の娘ちゃん? 男くんにこれ以上負担をかけさせたくないの方針に賛成したっしょーに」

男の娘「だからってこんな男だけ除け者みたいな。きっと男だって心配してここに来ちゃいます……わかり切ってても」

先輩「男くん本気で倒れちゃうでしょ。これ以上踏ん張らせちゃったら」

先輩「本当に壊れちゃう……男の娘くんだってずーっとあんな顔した男くんに無理させてたらヤバいってわかるよね?」

男の娘「うっ……は、はい。こんな時にワガママ言ってごめんなさい……!」

生徒会長「ここにいる皆が彼を頼りにしてしまう気持ちはよく理解しているさ。その上で私たちがやり遂げなければならないんじゃないか」

生徒会長「よし、黒の人の協力を期待して各自待機に務めよう。合図は向こうの動きですぐに判断できる。いいな?」

男の娘「……転校生さん、転校生さん。転校生さんってば」グイッ

転校生「きゃっ! な、何? 男の娘くんどうかしたの……?」

男の娘「そっちこそだよぉ。大丈夫? 顔色あんまり良くなさそうだけど」

110以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/04(日) 23:14:26 ID:oph.NBCI
転校生「そ、そうかしら!? 多分昨日よく寝れなかったから、寝不足とか? あと朝ご飯抜きで出掛けたから、とかっ?」

男の娘「そうだったの? じゃあ、はい。これ食べてよ。作っておいたんだ、おにぎり……形悪いかもしれないけど」

転校生「ありがとう……男の娘くん、前より料理の腕上達したわよね。とっても美味しそうだもん」

男の娘「ほんと!? じ、実はこれでもちょ〜っぴりだけ自信あったりなんかしちゃって、えへへっ……」

転校生「胸張っていいわ、私があとで保証してあげる。アイツにも美味しかったって自慢してやるんだから! 楽しみにしててねっ!」

不良女「車から降りた!!」

「!!」

不良女「あのオッサンと他に二人……いた。オカルト研も出て来たよ、制服かよアイツ。散々身軽な恰好で入らなきゃ死ぬとか脅したくせに……」

男の娘「何しに来たんだろうね、オカルト研さんは。一目見るだけって感じじゃないことはまず確かだろうけど」

不良女「わかんないよ……何考えてるかサッパリ読めない奴のことなんて。カイチョー、動かないのか?」

生徒会長「だから、私たちがいま動いてどうなる? 特に君たちは急く気持ちはあるだろうが、堪えて待つんだ」

先輩「名案ですな。これからわたしたちがやる事、今更後悔する子っているー? いたらお姉さんが力付くで押さえつけとくよ〜! ガチで」

転校生(不安が私の胸を強く締め付けて離さない)

転校生(だって、だって私にはわかるの。嫌でもわかってしまう。同じ模造の人形だからなのかしら?)

転校生(この場に絶対いちゃいけない“紛い物”が近くに潜んでいる。何かを企んで)

111以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/06(火) 19:36:47 ID:J9CYksQk
オカルト研「……到着ね。いつ訪れても穢れた空気に包まれている、宵闇の如しよ」

黒服「お、お嬢様この様な危なっかしい建物にどれほど足を運んだというのですか」

オカルト研「一度しかないと思う」

黒服「そんなっ、不明瞭な! あなた様の身にもしもがあっては、お父上に何とご説明して良いのですか!」

オカルト研「よく覚えてないわ。だいぶ前の話だもの、この廃病院に入ったのは」

黒服「は! 入った、です、とっ……お嬢様、申し訳ありませんがお嬢様がどの様なご用件でこちらに足を運びたがったのかは関係ありません」

黒服「どうか建物へ近寄らぬとこの私にお約束してください。この様な廃墟で怪我でもされて大事に至られては、困るのです……!」

オカルト研「何故? 私がしたいとお願いしたら、あなたたちは望み通りにしてくれるのが正しい役目」

黒服「オカルト研お嬢様!! 私どもの第一の使命はあなた様の身の安全を保障すること! 故に是が非でもッ!」

「「「「お嬢さまが大事!! ナンバーワン!!」」」    オカルト研「……」

黒服「ご理解頂けましたか? 危険ですので遠くから眺める程度でどうかご満足を…………えぇい、奴はまだ来ないか」

オカルト研「お前たちにはここでの待機を命じるわ。黒服、すぐに戻るから心配しなくていい。了解?」クルッ

黒服「くあーッ!! そ、その頑固たるご意思と負けん気の強さ! それでこそ我らがオカルト研お嬢様ァーーーー――――わかりました」

黒服「ですが条件がございます。この黒服め一人をボディガードにお付け下さい。ならば了解致しましょう……!」チラッ

黒服「…………クソはよ来いズボラが」

112以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/06(火) 20:16:48 ID:J9CYksQk
生徒会長「……よし、黒の人が横に立って彼女を連れて来てくれた。合図だ」

不良女「あの堅物っぽいオッサンがよくあたしらみたいなガキの相手してくれたもんだって思うよ。てか、やる事伝えてなくない?」

先輩「だいじょーぶ! 大人はアドリブに強くてこそ大人だよ! まぁ、荒っぽくなったらどうなるかわかんないけど」

生徒会長「そろそろこの中に入って来るぞ。皆 事前の打ち合わせ通りに動こう。あとはなる様になるだ!!」

不良女「け、結局ぶっつけ本番なのが、あたしたちらしいっつーか……ん? ビビってんのお前」

男の娘「うっ……違うって言ったらウソになっちゃう。けど、覚悟決まってるよ。僕も」

不良女「OK、それでこそ辛うじて性別男だぜ、あんた。やる時はやるって決めてやろうよっ!」ドンッ

男の娘「い、痛いよぉ〜!? 転校生さん、ほらみんなに続いて下の階に降りないと」

転校生(みんなが張り切ってる中じゃ言い出したくても、ううん、言い出したところでまともに取り合ってもらえる話題じゃない)

転校生(アイツ、名無しは何処に隠れているの? どうせ私たちの邪魔をしたくてしょうがないんでしょ。だったら、正々堂々と姿を……)

男の娘「転校生さん!」   転校生「わかってる!! 聞いてるから平気! 心配しないで!」

転校生(みんな味方なのに、同じ志で集まった仲間なのにどうして疎外感なんて感じているのよ、私。男に釣られて私までマイナス思考? もう)

転校生(違うわ。私はアイツより先に名無しに一泡吹かせてやりたい……オカルト研さんも救えば、男にも安心してもらえる……)

先輩「んふー! 転校生ちゃ〜ん、手繋ごっか」スッ

転校生「は……はい?」

113以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/06(火) 20:43:22 ID:J9CYksQk
転校生「手を繋ぐって、そんな子どもじゃないのにいきなり……ひっ!」

先輩「まぁまぁ〜♪ 遠慮するこたぁないのだよ、女の子はいつだって心細いものでサ」ギュ

転校生(いつも無理矢理なのよね、この人って。それで元気づけられる事もあったけれど。手、思っていたより冷たいんだ)

先輩「だからこーしたらわたしも転校生ちゃんも安心慢心ですよ! はっはっはー」

転校生「慢心は、この状況で選んでいい言葉かしら……あ、あはは」

先輩「気にしなくていいんだよ、転校生ちゃん」

転校生「えっ?」

先輩「えっとね、みんなにはナイショだよ? わたし男くんと約束してんの。約束っていうか契約?」

先輩「だから安心していいのさ。マジ大船に乗った気分で、訂正、泥船に乗り掛かった気持ちでいちゃってよぅ!!」

転校生「……部長さん?」

先輩「おっ? 何かねっ、プリチーJKたるこのわたしのスリーサイズを知りたがるとはお主も中々のオヤジ思考よの――――」

転校生「部長さん随分だるそうに体動かしてるけど、どうかしたの?」

先輩「ありゃあ、スキップして移動した方がいつものわたしな感じ? ほれルンルン〜♪」ぴょん

転校生「わ、わっ! そ、そうじゃなくてもしかしたら気分悪いのかなって! ちょっ!? 危ないですっ!」

不良女「…十分平常運転じゃね?」   生徒会長「…ふむ」

114以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/06(火) 21:12:39 ID:J9CYksQk
生徒会長「どれ、長年君に付き合わされた仲だ。転校生 部長殿を貸してみなさい」

転校生(飛んで跳ねる先輩さんの肩を掴んだ生徒会長は、その肩をがっしり鷲掴んで私たちに強く揉んでみせる。途端に間抜けな声をあげて先輩さんが手足をばたばた動かして)

先輩「いだいいだいいだいいだいぃぃ〜〜〜〜!!? あー加減知らなすぎっ!!」

生徒会長「ん? 肩でも凝っていたとばかり考えていたのだが、何だ柔いじゃないか。私の気のせいだったか?」

男の娘「肩が凝るって? ……あっ///」

不良女「うっわ……うわ…………死ね……」

生徒会長「どこの物とは言わないが君が激しく運動すると靱帯に響くぞ。形を悪くしたくないなら気をつけるんだな」

先輩「っ〜! も、もう! ばかぁー! ばかばかばか!! エッチ!」

不良女「なぁ、いいからもう行こうぜ……」

男の娘「そういえば生徒会長さん、部長さんと付き合い長かったんですもんね。だからって今のは僕からじゃ何とも言えないけど」

生徒会長「うん、彼女の癖ならば当たり前のように刷り込まれ済みさ。それにお互い持つ物が大きいと苦労が分かり合えるしな」

不良女「もう行こうよ……」

先輩「ほんとですヨ! 作戦はどしたの? のんびりやってる場合? ノンッ、オカルト研ちゃん攻略のタイミングは時間が待ってくれないよ!」

生徒会長「こら走って音を立てるな! ……あの子の手、温かかっただろう? フフ、私もよく励まされた手だよ」

転校生「そうなんですか……?」

115以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/06(火) 21:50:56 ID:J9CYksQk
男(カーブのたびに左右に強く揺られるこの体、俺が乗っているのはジェットコースターか? 否、荒ぶるペーパードライバーの車の中だ)

先生「道わかんない! 男くん次どっち曲がればいいっ!?」

男「か、カーナビの案内に素直にしたがえば……」

先生「カーナビ!? 前に間違って墓地に案内されてから全く信用してないよ! こんな出来損ないに安心して道案内任せられる人いる!?」

男「先生はナビに親でも殺されたんですか?」

男(世の中には車を運転してはならない人間がいる。判断疎かな者とヨボヨボの老人、そして猪突猛進タイプだ。言わずもがな彼女はアウト)

男(さしずめ戦乱の世を駆け巡る軍馬の如く ニュービートルが唸りを上げる。というかまた道を外れているのだが)

男「だから公道まで出ないって何度も言ったじゃないですか!? ルート間違ってますよホラホラほら!!」

先生「えっ!! やだ、何でインターに向かってんの私……あー 車嫌ぁい!! やだーっ!!」

男「心中相手としちゃあ悪くなかったかもしれません。どうか楽に死なせてください、先生」

先生「冗談でも今はそういうのやめてよねぇっ!?」

黒服『…………と、到着は、だいぶ遅れると想定しておいて間違いなさそうだな』

男「……安全運転心掛けて向かいます。彼女が」

黒服『私の方でも出来る限り引き伸ばしてみるが、何分お嬢様の考えられていることが読めん。急げよ!』

男「頼むからこれ以上先生混乱させないでくれます!?」   先生「あ、煽られてるよぉ…」

116以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/06(火) 22:31:29 ID:J9CYksQk
男「先生、とにかく広い場所を見つけたらUターンして…… (ポツポツとフロントガラスを小雨が打ち始めた。天気予報を信じるならば、今日は夜まで晴天を貫いた筈だが)」

男(雨粒は次第に大きくなり、勢いを増していく。急く俺たちに立ちはだかるかの様に空は一気に曇天模様である)

先生「土砂降りかっての……こういう時だけなんだよね、車のありがたみに気づくのって」

男「通り雨か何かでしょう。それよりくれぐれも運転気をつけてくださいよ? あ、そこ右に……行けよっ! 何でだよ!?」

先生「な、何でって! わからないわよ! ハンドルが急に」

男「あんた事故車でも買ったのかよ!! 落ち着いてくださいよ、まだ次で曲がる場所があるので今度こそ!」

男「それと、この雨ですしワイパーもう少し上げておいた方が…………えっ」

先生「ど、どうしよう男くん!? 本当にハンドル効かなくなっちゃった!! どうしよう!?」

先生「ほら! 見てっ、私何も触ってないのに右に左に!! あ、あしも上手く動かせないんだけど……!!」

男「……せ、先生。気づいてないんですか?」

先生「もう何がぁ〜〜〜〜!!」

男「周りにですよっ!! だってすれ違う車……いずれも停まって動いてません…… (俺たちが乗った車だけが道を進んでいるのだ。そして気が付いた。散々打ち鳴らしていた雨音が止んでいたことに)」

男「――――雨粒が、空中で止まっているだと?」

テンプラ『8%bエf%91%Ik1oe7‰%95%bf%』

男「っ!?」

117以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/11(日) 09:15:21 ID:QiR0n9Ps
先生より安全運転かな?

118以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/11(日) 14:59:58 ID:OxtHTY6I
ロリ天と天ぷら…

119以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/11(日) 21:15:39 ID:T2C3Uxb.
男(思わず声を上げそうになった。ヤツが後部座席でドッシリ構えているのだ。テンプラの風体は初見の人間にはあまりにも衝撃が強すぎる)

男(神聖さを感受させるより先に嫌悪感を与えてしまうだけだろう。車の運転で半ばパニックを起こした先生に今紹介するべき相手ではないと判断した……)

男「前、前だけ見ていてください 先生。一旦深呼吸してハンドルをしっかり握って」

先生「だけどこんな異常なの……えっ、男くん! 手ぇ!?」

男「何も心配することはありませんよ。俺が傍についています、生憎疫病神ですが」トン

男(ハンドルを掴む強張った彼女の手を優しく包めば俺が齎す相乗効果が、だが待たれよ、実は逆効果になったり? ……OK、杞憂であった)

先生「あ、ありがとう。少しリラックスしたかも……少年はこういうのがズルいって気づかないかな」

男「え? ていうか暖房効かせすぎなんじゃないですか、顔赤いですよ。先生」

先生「……一々うるさいわよね、きみ///」

男(恥じらう教師の可愛らしさに色々放り出したくもあるが、後方のグロ注意よ。テンプラは限りなく存在感を消していた)

男(それどころかバックミラーを覗けば嫌でも目に入るであろうに、先生はあまりにも無反応だ。前にしか集中していないのか? ならば彼女は金輪際車を使うべきではない。あるいは)

男(テンプラの姿を目視できていないか?)

先生「あー、さっきから後ろ気にしてるみたいだけど何かある?」

男「何も。また後方車からぴったりくっ付かれてないかなぁ〜と。ところで順調に道進んでますね、軌道修正されてるというか」

男(空中で運動を止めたまま群を作る雨粒が、フロントガラスに当たっては弾けた。ぶつりの ほうそくが みだれていますかね?)

120以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/11(日) 22:00:54 ID:T2C3Uxb.
転校生(ちょっと前まで遠足ではしゃぐ子どもみたいに騒ぎ立てていた私たちはもういなかった。オカルト研さんの姿を確認してからは)

転校生(全員が無駄を殺して、彼女の行く先を陰から見張っている。脇のボディガードの人にはこっちの作戦とか何も伝えていなかったけれど、笑っちゃうぐらい察しは良い方だった。職業柄もあるのかしら?)

黒服「お嬢様……どちらへ向かわれようというのです?」  オカルト研「こっち。ついて来て」

黒服「……で、では何故私どもに目的を告げたがらないのでしょうか。お嬢様も気に掛けられている例の馬の糞はここにいませんぞ……」

黒服「差し出がましく申し訳ありませんが、お嬢様の興味はあのイケメン(暗黒微笑)に搔っ攫われてしまっているのでしょう? 彼奴もあなたに危険を冒して貰おうなど願っておりません、お嬢様」

オカルト研「男くんが?」ピタ

黒服「! ……え、ええ。気に食わん奴ではありますが 懸命にお嬢様の救いになろうと足掻くガキですッ!」

黒服「ここは彼の顔を立てると思い、私めに無茶のご理由をお聞かせ願いませんでしょうか!?」

黒服「………………あの……お、お嬢様ァ〜?」

オカルト研「誰かいるの?」

「!?」

黒服「おおおお、お嬢様っ!! この様な薄気味悪い場所でご冗談は過ぎていますぞ!!」

オカルト研「行かなきゃ」

黒服「あ、あぁ!? 待って! お待ちくださいお嬢様! どうか正気に戻って!!」

黒服「どうして……何故なのですかオカルト研お嬢様っ……!」

121以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/11(日) 22:37:59 ID:T2C3Uxb.
不良女「おいおい……いけ好かない大人だと思ってたけどオッサンも本気で」

生徒会長「藁をも縋るとはよく言ったものだ。黒の人の協力を無碍には扱えんぞ。プランを正確に実行して改心させなければな」

生徒会長「オカルト研は階を上がった。君たち三人は以前ここへ潜った試しがあるのだろう? 何がある?」

男の娘「あ、実は僕たち 色々あってあんまり奥には入ってなかったんです……だから男とオカルト研さんしか」

先輩「そうなの? 転校生ちゃん」

転校生「いきなりどうして私に振るのよ!? わ、私だって男の娘が言った通り…………なんだけ、ど」

転校生(無意識に足が動いた。ううん、動いていた。暗いのは怖い、廃墟だなんて死ぬほど嫌! 怖いって人が危険に感じる本能よ。私はそこに関しては狂ってないわ)

転校生(なのに、何が壊れて前に進めてるのかしら。オカルト研さんの為の勇気? アイツに褒められたいが為? どれもしっくりこなかった)

転校生「こっち……」

不良女「お、おい 転校生。あの変人女が行った方向と真逆だよ、そっち! 逆行ってどうすんだよ?」

生徒会長「不良女の言う通りだ。事前に立てた作戦を遂行するならば、このまま彼女のあとを追わなくては――」

転校生「私について来て。こっちよ」

男の娘「…………やっぱり様子おかしいよ、転校生さん」

男の娘「どうしちゃったの!? いつもの転校生さんっぽくないよ、今だって目がこんなに虚ろじゃない!!」ガシッ

転校生「……道……私知ってるから…………来たこと……あるから…………」

122以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/11(日) 23:30:51 ID:T2C3Uxb.
先輩「先回りしようって言いたいんだよね、うんうん! わたしは転校生ちゃんについて行きますよー宇宙の果てまでもっ!」

生徒会長「おい……君らしくも、あるが冷静になってくれ。転校生はここで休んでいなさい。男の娘くん頼めるか?」

男の娘「は、はい!!」

転校生(嘘じゃないわ。私は本当に道を知っている。ううん、知り尽くしている。だって歩き回ったのよ)

転校生(思い出してもみんなにこんな事信じてもらえるとは思わないけれど、私はこの廃病院にたった一人でアイツを探しに来た。自分の意思を無視した衝動に駆られて)

転校生(――まるで幽霊に取り憑かれたみたいにおぼつかな気だった感覚がここに帰って来た。あれは自分が“特別”を疑ったすぐの頃だったかもしれない)

転校生(……気味悪い化け物が私の前にいきなり現れてから先の記憶は不鮮明になって、気がつくと私は“日常”の中に違和感なく戻っていた)

≪ _“正が必ヨう&=ッた ≫

転校生「名無しよ……アイツが元凶なんだから。アイツの裏を掻かなきゃどうにもならない」

転校生「みんな聞いて!! このまま考えたことやり遂げようとしてもきっと邪魔が入っちゃうと思う! だから出し抜かなきゃいけないの!」

生徒会長「君も落ち着いてくれ転校生……気合いが十分なのは承知したがね、空回りでは」

転校生「そ、そうじゃないのよっ! 悪い予感がする! お願いっ、信じて!」

不良女「……二手に別れとこう? 二組で動いたら最悪アドリブ利かせられるじゃない。そうだよな?」

生徒会長「一理あるが、しかしだな……」

不良女「いーよ、あたしがこの子について行くケド。とりあえず文句出てないよな?」

123以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/13(火) 19:22:16 ID:DAR8Xz3w
インフルっちゃったので今日はお休み。無念

124以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/14(水) 18:08:21 ID:6Svy6nkw
お大事に〜
続き気長に待ってるからゆっくり療養してくれい

125以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/14(水) 22:32:52 ID:k0GmrxSY
完治するまで待っちょる

126以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/15(木) 01:29:36 ID:R1ODjbzc
テンプラと接触したのか

127以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/17(土) 22:42:20 ID:i2SEc8YM
生徒会長「おい! 二人とも待ってくれ!! 我々が別行動で動く利点は万に一つも」

不良女「道案内バッチリなんだろ? 行こう 転校生」

転校生「わ、わかったから、急に手引っ張らないで……! ……生徒会長さん ご、ごめんなさいっ」

男の娘「……あぁ、行っちゃいました……けど」

生徒会長「……あの二人はオカルト研の相手をする際、必要不可欠なメンツだったと単純に考えられるのは私だけなのか?」

生徒会長「別に男の娘くんだけで上手く事が運べないとまでは思わない。だけれど、だな」

先輩「まー、決定打とかに欠けちゃった気はしなくもない?」

男の娘「……僕 転校生さんが心配です。あっ、僕まで追いかけるとかはありませんよ!?」

先輩「おっしゃ! そんならみんなで転校生ちゃん組に寝返っちゃえば〜!!」

生徒会長「全員仲良く一体何を裏切ろうというんだね? しかし心配なのは確かに同意しよう」

男の娘「よ、様子少し変だなってずっと感じてました。どこかそわそわしてて落ち着きなかったし、最初は怖がりからかなって思ったんだけど」

男の娘「まさか、あんな急に……どうしちゃったんだろう?」

先輩「どうもこうも本人がさっき全部説明してたくないかなぁ。ほれ、『邪魔が入る』とか」

男の娘「邪魔、邪魔って何ですか? ここにいるみんな、黒い人も含めて僕たちの目的って一緒なんですよ?」

生徒会長「胸騒ぎか……取り越し苦労に終わればいいが…………そろそろだ。私たちだけでも“部屋”まで誘導するぞ」

128以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/17(土) 23:27:35 ID:i2SEc8YM
不良女「で、ここから先はどう進んだらいいの? あ〜……この階段昇ったりする?」

不良女「灯りとか持ってなきゃマトモに歩ける気しないなぁ。実はあたし持ってるけどサ」カチッ

転校生「ねぇ、その前に一つ訊いていいかしら?」

不良女「良いけど一回につき缶コーヒー一本奢ってもらうからな〜、なんちゃって! へへっ!」

転校生「……どうして私の言うことを信じてくれたの?」

不良女「ええっ、そこ? 騙しましたってオチとかあたし絶対聞きたくねーよ!?」

転校生「ううん、そうじゃない! 騙したりなんかしてないわよ。でもあんな簡単に私の味方したりして、わ、わからないわ」

不良女「いや、わかんないのはお前の方だっつーの! 何が言いたいのかハッキリしろよ」

転校生「あっ……ご、ごめん。正直自分でも混乱してて……ただ あのままだと良くないって思ったから……」

転校生(何て伝えたらいいだろう……順を追って説明する? 私が何なのかまでも? 無理よ、というか無駄だ)

不良女「良くないって思ったんだろ? じゃああたし納得させるならそれだけで十分だってば」

転校生「うそ! わ、私の言ったこと覚えてるでしょ? おかしくなったって思わないの? 幽霊に取り憑かれちゃったとか!」

不良女「あっははははは!! え、なにそれ!? 廃墟の中だと幽霊に憑かれるのかよぉ〜!!」

転校生「そ、そうじゃなくたって 怖さのあまり変になったとか、もっと色々あるでしょ!?///」

不良女「あたしには あんたのあの『信じて』が変になった奴の言葉とは思えなかったね、転校生」

129以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/18(日) 00:34:07 ID:fW5vPrwQ
転校生「……それが、根拠?」

不良女「こういうのカンジョー論?とかになるんだろうけど、あたしは転校生のこと気に入ってるしさ……」

不良女「真面目にオカルト研を心配してるのも分かってるし、優しいのも知ってる。こんな時に自分優先しないこともだ。そうでしょ?」

転校生「そうでしょって言われても、こ、困るん、だけど……っ!?」

不良女「つべこべ言って立ち止まったままいないで、先進もうぜー。正直あたしも暗いの苦手だからお前とお相子だなぁ〜、へへへ♪」

転校生「な、なんか……ありがとう。足が軽くなった気がするかも」

不良女「げぇ、マジでおかしいのに憑かれてたんじゃないのそれ!?」

転校生「いやぁ! もうっ! 本当にそういう類の話 嫌なのにっ! ……フロアもう一つあがるわね」

不良女「上がるのは構わないけど、あたしたちどこに向かうんだよ? 今更肝試しの再チャレンジとかは」

転校生「元々何の為にこんな所にまた来たか思い出して。彼女、オカルト研さんを今度こそ話を聞き出して説得する為だったでしょ?」

転校生(説得……率直に言わせてもらうと、今の彼女に対して上手くいくとは思えない。オカルト研さんには名無しの息が掛かってしまっているのだから)

転校生(だからこそ、メンバーへ今回私から提案した方法は強引と無茶を要するやり方。それですら打ち砕かれそうな予感もあった)

不良女「だったら尚更別行動の意味だよ。もしかして、アイツが予定通りに掴まらなかったこと考えてるのかよっ?」

不良女「なぁ……転校生から言い出したんだからさすがに覚えてるよな? その……“オカルト研を密室に閉じ込める”って……」

転校生(その問い掛けには小さく頷いてみせた。閉じ込める。彼女と誰かをと、よくある二人きりというシチュエーションを作ろうとしたいのではなく、作為的にオカルト研さん一人を脱出不可能な状況へ陥れる)

130以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/18(日) 20:21:39 ID:fW5vPrwQ
転校生(当然だけど反対の声が多かったわ。彼女を振り回す側になるとしても方法は褒められもしないし、乱暴じゃないかって)

不良女「あたしもドン引きだったけどな。普段活発でドストレートな転校生さまがとんでもない思い付きしたんだから」

不良女「もっと平和に解決するやり方があるんじゃねーかなって。そしたらズバッと言い切るんだから、驚いた……」

転校生「生易しいことやって止まる様な子が他の人を平気で巻き込むの?」

不良女「……そう、それ。かなり面食らった」

転校生「私だって出来るなら普通の話し合いで全部元通りになって欲しいわよ。だけど、彼女はやり過ぎなの」

転校生「いくら何か悩みがあったとしても悪事は許しちゃダメよ。男は今その辺りの判断が正常にできてない……」

転校生「アイツなりに考えて考え抜いたんだろうけど、お陰でボロボロじゃない……だから私たちがやる。不良女ちゃん」

転校生「作戦は打ち合わせ通り決行するわ!! そして、どうして私たちが別ルートからオカルト研さんを追っているのか」

不良女「追ってる!? おい、追ってるわけないだろ。だってあたしら二つも上の階まで昇って来ちゃってんだぞ? 追い越してんぞ!?」

転校生「違うの。最初からオカルト研さんを追いかけるつもりで道を変えたかったのよ、っていうよりは」

転校生「ここまで先回りしておきたかったから…………不良女ちゃん、ここで罠張るわ。手伝って」

不良女「わ、罠ってあんたっ……つーか何でオカルト研がここまで来るんだよ? 上手く行けばもう三人が掴まえてる頃だし!」

不良女「あのオッサンもいて失敗したとして、あの運動音痴の塊が巻いて逃げてこれるとは……」

転校生(……微かにだけれど、この辺り あの“神”ってヤツと会った時と同じ重さがある気がするわ)

131以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/18(日) 21:04:19 ID:fW5vPrwQ
転校生(暗い廃病院の中には変わりないのに)チラ

転校生「……埃があまり立ってない? 置物なんかはボロボロだけど変な感じ」

転校生「ねぇ、不良女ちゃん懐中電灯の灯りもう付けてなくても平気なんじゃないかしら?」

不良女「え? バカ言うなよな、いくら日差し込んでるからって……あっ、日の光入って来てるじゃん」

不良女「ふーん……パッと見あれが病院のナースステーションで、ここが休憩スポットみたいな……」

不良女「って、入院棟じゃねーか! 大丈夫かよこんなとこで待ってたりしてさぁ〜! 死んだ患者化けて出ないか!?」

転校生「だから!! はぁ…………きゃああぁ!? なな、今度は何! いきなり跳び付いたりして!?」

不良女「ああああ……あれっ…………あれぇ……!」ギュゥ

転校生(突然抱き付いて来たと思えば、小刻みに体を震わせた不良女ちゃんが遠くを指差していた。ゆっくりと従ってその先を確認すると)

転校生「……なーんだ。もう、怖がり過ぎ! ゴミが風で転がっただけよ」

不良女「な、生首に見えたぁ! あたしには生首だった!!」

転校生「病院で生首は中々ないんじゃない? 現実的に考えたら――――!!」

・・・ピンポーン、ピンポーン

転校生「…………ね、ねぇ、不良女ちゃんにも聞こえる?」

不良女「あぁ、南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏 ぎゃーてい ぎゃーていっっ……!!」

132以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/18(日) 21:29:52 ID:fW5vPrwQ
転校生(音は元ナースステーションの方向から断続的に鳴ってる。ナースコールって判断には困りはしなかったけど、そういう問題じゃないわ!)

不良女「ヤバいってヤバいよマジ!! 前来た時も変なことあったしさ、絶対呪われてんぞこの病院っ!!」

転校生「同感よ!! だ、だけど……待って……」

不良女「おぉい転校生ぇ!? 止せって、今度こそ化けて出てくる! 逃げようよ!?」

転校生(そうしたいのは山々よ。脅すにしても最高のタイミングで鳴ってくれた事だし。でも、でも、この“呼び出し”が嫌に気になる)

転校生(私は背中に不良女ちゃんを引っ付けたまま 恐る恐る中に入ったわ。入ってすぐ 音を鳴らしていた原因らしい電話の親機があった。201号室からの呼び出し)

転校生「(とっくに電気なんて届いてないだろうに、それは誰かが応答するまでとコールを鳴らし続けてる) …………っ!」

不良女「おいおいおいおい、おいっ! まさか出るつもりじゃないよな! 転校生キャラ忘れてんじゃないの!?」

転校生「私だって死ぬほど怖いわよ!! 怖いけど、出なきゃダメって気がする……」

転校生(頬を二、三回も叩いたら気合いも十分、なわけじゃないけれど。そこはもう勢いに任せて受話器を取ってた)

転校生「……はい」

?『…………その声 転校生、ちゃん?』

転校生「……だ、誰なの? いま何処に、あっ……201号室から……?」

?『わたしだよ……ねぇ、外に出れなくて困ってるんだ! 助けて! ヘルプミー!!』

転校生「えっ、部長さん!?」

133以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/18(日) 22:01:32 ID:fW5vPrwQ
黒服「――――お嬢様もうお気が済まれたのでは?」

オカルト研「飽きたのなら外で待っているといい。私には果たさなくてはならない役目があるわ」

黒服「この様な薄汚れた場所でお嬢様が為すべきことなどございません!! ……む」

黒服「お、おやー? これは、お嬢様ぁ……奇妙な封筒が落ちていましたが」

オカルト研「封筒?」

生徒会長「…………上手く気が付いてくれたようだな、黒の人が」

男の娘「うぅ、オカルト研さんが興味示しそうな感じで作ったけど、だいじょうぶかな」

黒服「ええ、封筒です。宛名の部分には『深淵を覗かれし君へ』とだけ……これは怪文書ですな」

黒服「お嬢様の御用と何か関係おありで? だとしても悪趣味ですぞ、お嬢様!」

オカルト研「……知らないわ。中身はあるの? できれば私が読みたい」

黒服「あるにはあったのですが、あぁっ!! 力付くだなんて!」バッ

オカルト研「…………」

『 この先 真なる闇在リ。理から外れし力を渇望せし君 孤独になりて進まれよ 』

オカルト研「……こんなの……行くしかないじゃない……!!」

黒服「お、お嬢様?」

134以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/18(日) 22:26:49 ID:fW5vPrwQ
黒服「お嬢様聞いておられるのですか? お――――むぐっ!?」

先輩「し〜っですヨ♪ おにーさん」

黒服「お前たちっ……するとアレが合図となっていたのか。よくも純粋可憐なオカルト研お嬢様に妙な物を!」

男の娘「えっと、僕たちは始めからオカルト研さんが好きそうな物で釣っただけなんですけど……」

生徒会長「グッジョブ。ご協力感謝する、黒の人。ここから先は私たちの後ろで控えていてください」グッ

黒服「黒の人……? まぁいい。ともかく一体何を始める気だ? あの小僧の到着は遅れるそうだが、策に問題ないのか?」

生徒会長「小僧? っまさか男くんのことを話しているんですか!? 彼が来る!? 何故!」

黒服「フン、私が念には念を入れて奴に連絡を入れたまでだ。この大事な時に寝坊でもかまされては面倒なんでな!」

生徒会長「なっ!?」

先輩「あちゃー……台無しだよぉ……」

黒服「おい待て、その反応は何だ? 素直に感謝を――――それどころではない! お前たちはお嬢様に集中してくれ!」

生徒会長「あ、あぁ、過ぎたことを嘆いても仕方がない。次の封筒を彼女が拾ったら勝負に出るぞ、二人とも!」

男の娘「は、はい! ……黒服さん、これから少し強引なこと 僕たちやると思います。だけどお願いです。静かに見守っててくれませんか……?」

黒服「事と次第で見る。私は常にお嬢様の味方だ、依然揺らがずにだ」

先輩「盲信しまくりだけどカッコいいじゃん、お兄さんも。まぁ 黙ってもらうけどネ……」

135以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/18(日) 23:00:17 ID:fW5vPrwQ
オカルト研「……また封筒ね。私の中の血が騒ぐわ、次を欲していたのよ」

『 向かって右に≪ 308号室 ≫深き始まりの闇の床。臆するな、前へ 』

オカルト研「っ〜〜〜〜!」ぞくぞくっ

オカルト研「こ、この中に……私が追い求め続けた力……闇を越えた凄まじき力があるというの……!?」

ふら……

生徒会長「――――今だっ!! ドアを閉めてカンヌキを!!」

男の娘「はい!!」

オカルト研「えっ?」

黒服「何だとガキど、もが!?」  先輩「だから静かにしててってお願いしましたよねー。お兄さん?」ガシッ

生徒会長「……彼女には申し訳ないが第一段階は成功した。あまりドアに近寄るなよ、会話が聞かれてしまう」

黒服「んーっ!! ん〜〜っっ!? んううぅ〜〜〜〜ん゛ッ!? ………」

男の娘「やっておいて今更なんだけど、僕たち凄い酷いことしちゃった」

生徒会長「ああ、覚悟は決まっていても実際にではな……おいどうした? 何故黒の人が伸びているんだ?」

生徒会長「まさか君が……な、何をしようとしている、君はそんな所に立って。……どうしたっ?」

先輩「はい? 決まってるじゃん。このつっかえ棒外しちゃうんですよー」

136以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/20(火) 20:11:29 ID:Wof0etZ2
男の娘「は、外しちゃうってそんな事して何か意味あるんですか!?」

先輩「意味は特にないけど二人が困るんじゃないかな。オカルト研ちゃんは無事に外に出られる」

先輩「みんなで考えた更生大作戦はとりあえず台無しになりそうだよねぇ〜〜!」

生徒会長「冗談も休み休みにしてもらいたい! 君がその場のテンションで生きる奴とは知っているが、悪戯が過ぎるぞ!!」

先輩「ま、どう思われようと勝手だけど……これもお仕事なんで」

生徒会長「何が仕事だっ、トチ狂いでもしたか!?」

生徒会長「ダメだ、男の娘くん! あの子を抑えよう! このままでは出て来たオカルト研によって我々が不利に追い込まれてしまう!」

男の娘「わ、わかりました……! 部長さん、ごめんなさいっ!!」

先輩「謝らなくて良いよ。生徒会長ちゃんも」ガラッ

生徒会長「くっ!! 一歩遅かったか、既にカンヌキを落としてドアを――――――!」

男の娘「あ、あれ? 部長さんどこに消えちゃ………うわっ!?」ドンッ

生徒会長「あうっ!? ま、待て! まさか君は私たちをオカルト研ごと、くっ!? 閉めるな! 待てと言うんだっ!」

先輩「一人ぼっちより三人で仲良くしてる方が心細くなくていいんじゃないかな〜、オカルト研ちゃんも。よいしょ、と」

生徒会長『おい!! バカな真似はやめてここを開けろ!! おいっ!!』ガン、ガンガンッ

先輩「…………ふぅ、本当に肩こっちゃって嫌になるよコレ」

137以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/20(火) 20:47:49 ID:Wof0etZ2
黒服「なにを、しているのだ……これがお前たちの立てた、策だとでも……」

先輩「ただの引き立て役のサブキャラが無駄に出しゃばらないでくれませんか。面倒なんですよね、あなたみたいな人は」

黒服「……? お前、本当に昨日会ったあの時のラーメン少女か?」

黒服「そ、その目は何だ。まるで虫を見る様な、その蔑む目は何だと……訊いてい、る……!?」

後輩「――――安心してください。あなたが今見た事、関わったこと全て綺麗さっぱり起きた時に忘れてますから」

黒服「化けた!? い、いや、ラーメン少女が、まったく別の少女に……何だこれは! 私は一体何を見ているんだ!?」

後輩「あなたが見ているのは“天使”です。天使に実体なんてありません」

後輩「この姿だって偽物でしかない。人を惑わす為に、誘惑する為にだけ存在する仮初めの女の子の姿……私には私なんて無いんです」

黒服「私なんて無い……? ぐぬうっ!?」グギィ

後輩「主 “名無し”はあなたを認めていません。本当に住み良い世界の中にとって、あなたの様な人がしゃしゃり出て来られても不要にしかならない」

黒服「わ、私が不要!? 貴様、ガキが何様のつもりで立てついているッ!! そこに直れ! 修正してやるぞーッ!!」

後輩「どんなに屈強な男の人でも、私程度にすら敵わない。そういう世界なんですよ、ここは。……大人しく眠っていてくれませんか?」

黒服「がふっ!! っうぅ……おじょう、さま……わたしは おじょうさま を………………」

後輩「…………やっぱりおかしい、神使いの力が私の中に戻っている。元主、神さまから奪われた力が」

後輩「一人の無力な美少女として彼を見守るしかできなくなった筈だったのに……なんて皮肉でしょうかね、先輩」

138以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/20(火) 21:17:37 ID:Wof0etZ2
男(俺たちを乗せた先生の真っ赤な愛車がスピードを乗せたままこれたま黒光りした一台の車の隣に駐車。ナイスドライブテクも、気に留めず俺は外へ飛び出していた)

男(あとを追って運転席から出て来た先生が隣並んで俺と共に穏やかと呼べぬ状況を目の当たりにし、困惑した)

モブ黒服たち「…………」

先生「この人たちって、オカルト研さんの付き人さん一行だよね? 何よ、これ」

男「何と聞かれても俺にだってよく分かりません、先生……」

男(彼らはそれぞれが自由な格好で気を失っていた。油断しているところに閃光手榴弾でも転がってきたように。外傷は無いが、明らかな異常である)

先生「……こんな薄気味悪い廃墟だし、化け物と交戦してたって言われても信じちゃうかも」

先生「あー、さっきから現実離れしすぎよ! 私を平和な世界に帰して!? 一体全体どうなっちゃってるの!」

男「(ご尤もである) 黒服さんとも連絡が通じない。愛好会のみんなともだ……すごく嫌な予感がする」

男「先生、行きずりで巻き込んじゃって申し訳ないですけど 着いてきてもらえますか? 俺一人で解決できそうにありません」

先生「そういう事じゃないでしょ今!! だけど……こんなの見せられておいて見す見す帰るなんて、ちょっと難しいわ」

先生「行くわよ、男くん! ゲームで鍛えた謎感覚があれば化け物とかお化け相手でも通じそうだわ! たぶんっ!」

男(ある意味頼もしいな。というよりただ傍にいて貰えるだけ格別に心強さを得る事ができていた。やれやれ、また戻って来たぞ、廃病院)

男(すっかり因縁深い場所へと変わってしまったが、すべての謎が凝縮されし重要な背景だ。何より“死”を強く連想させてくるのが肝だろうか)

男「……ええ、行きましょうとも」

139以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/20(火) 21:39:35 ID:Wof0etZ2
先輩「――――うわあぁ〜ん!! 心細かった暗かった寂しかったぁー!!」ギュッ

不良女「そんな一気に言わなくたって大体察するってーの……でも何でブチョーが?」

先輩「わたしが説明欲しいくらいだよ! 朝起きてここに向かってたら急にこんな所に閉じ込められてるし、周り誰もいないし〜!」

先輩「携帯通じなくなってるし、もう大変!! 助け呼ぶために必死で手探ったねっ、そりゃもう死ぬ気だったと自負する勢いがわたしに宿ってーの」

不良女「わ、分かったから喚くな! あたしらだってチンプンカンプンなの! なぁ、転校生!?」

転校生「……」

不良女「聞いてんのかよ!」

転校生「ここに向かう途中で部長さんがさらわれたのなら、私たちがさっきまで一緒にいた部長って何……?」

不良女「わぁああっ、自分から怖い話振ってくスタイルいい加減やめろって!!」

転校生「だっておかしいわ!? いくらいわくつきの廃病院だからってこんな、ドッペルゲンガーみたいな話ありえない!」

転校生「とすると、向こうの生徒会長さんたちが危ないと思う!! 急いで合流しましょ!!」

不良女「お、おい待ち伏せはどうするつもりなんだよ!?」

転校生「そんな事やってる場合じゃないわよっ、わ、私のせいよ……私のせいでみんなを危険な目に!」

先輩「何だかよくわかんないけど緊急クエスト発生したのは把握だよ! で、他の二人はどこにいる!?」

「やー、生き急ぐと碌な目にあわんぞ? あんたたち」

140以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/20(火) 22:10:46 ID:Wof0etZ2
先輩「男くっ……違う、だれ?」

不良女「いや、あたしだって知らねーよ。見た事ない面っつーか、よく分かんないけど」

不良女「誰だよあんた!! いきなり出て来て何様だ……?」

名無し「そういえば自己紹介がまだだったか。オレは名無し。そこで突っ立ってる転校生のクラスメイトさ」

転校生「……性懲りもなくまた私の前に現れるのね、名無し」

名無し「性懲りもないのはそっちじゃないか? 散々余計な手は回さないように口酸っぱく言ってたつもりなんだが」

名無し「……それにしてもアレの影響も随分薄まったなぁ。オレでさえここに自由に立っていられる。男の悪霊とやらも消える一歩手前か」

転校生「どっちが悪霊なのよ。アイツの足を引っ張ってるのは他でもないあんただわ」

転校生「あんたが存在する限りアイツは苦しむしかないわ! まだそれが分からないの? このだだっ子!!」

名無し「駄々をこねているのはそっちだって。男には導き手が必要なのさ。どうしてそれが分からない?」

名無し「お前も早く本来の自分の役目に戻ってくれよ。重箱の隅を突く暇はないぞ。もっと男を満足させるべきじゃないか……?」

不良女「おい、意味分かんないこと喋ってんじゃねーよ!! 男の何だってんだ、あんたは!!」

名無し「親切な友人だよ、不良女。お前たちからも言ってやってくれないか? 自分たちも男が真の幸福を掴むことこそが幸せなんだ、と」

不良女「あ……?」

転校生「そいつの言う事に耳を貸さないで!!」

141以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/20(火) 22:33:12 ID:Wof0etZ2
転校生「名無しは男を、私たちを騙そうとしているわ! そいつの話は出鱈目ばかりで碌でもない! 信じちゃダメなんだからっ!」

先輩「そ、そこまで言っちゃう? 転校生ちゃんのクラスメイトなんでしょ?」

名無し「転校生からは相変わらず信用がないんだな。お手柔らかにできないか? 誤解は衝突しか生まないぞ?」

転校生「黙ってよ!!」

名無し「嫌うなよなぁ……悲しいじゃないか。オレとお前はもっと上手くやれるはずさ、え?」

転校生「黙ってって言ったのよ……そこを退いて。あんたの時間稼ぎに付き合うつもりなんてないわ、名無し」

転校生「不良女ちゃんと部長さんはみんなのところに行って! 私がコイツの相手をするから!」

先輩「えっ、で、でも別にそこまで凄むような子じゃ……」

不良女「いや、どっちみちあたしら変な事に巻き込まれてるから! 部長先行くぞ!」

先輩「ああっ、待ってってばー!?」

名無し「……正気になろう? お前も男の幸福を望むものであるのなら、BADENDを奴に際限なく突き付けてやるべきだ」

名無し「絶望を繰り返した末に 男は無用な知識を捨て去って、己を省みない完璧な主人公になれるんだから」

転校生「その繰り返しに巻き込まれる私の立場ってある? 冗談じゃないわ……アイツにも、私にとっても」

名無し「お前は観察するのが仕事なんだ、仕方がないじゃないか。オレは裁き、選別しなくちゃあならない。役割分担はしっかりして欲しいな。観察は重要だぞ?」

名無し「見る事をお前が“やめた”その時、世界は……形を保てなくなるのだから」

142以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/25(日) 20:57:20 ID:bzqcn80M
転校生(名無し、コイツは正気じゃないわ。何処で嗅ぎつけて来たのか知らないけど故意に現れたっていうなら、男を陥れる罠を用意しているに決まってる)

転校生(あの自称神さまに“倒し方”みたいな、物騒でも何でも聞いておけば良かったって後悔してる……)

名無し「やー、怖い顔をしないでくれよ。そう凄まれてちゃフェアな話ができんぞ?」

転校生「これのどこに対等な要素があるって言うの!! あんたは嫌いだわ! もう……大人しく消えて、名無し。みんなに近づかないで」

名無し「酷いな。オレだけ除け者扱いか? お前までオレが輪の中に入るのは相応しくないって否定するのか?」

名無し「悲しいなぁ……お前らばかり男と楽しくやれて、オレにはその権利はない? 見ているだけで触れる事も許されない?」

転校生「あんたがアイツにしてきた事を思い出しなさいよ!! 憐れんであげる余地もないわ!!」

名無し「外堀を埋めようとして何が悪い!? ただ親友であろうとしたオレを何故責めるんだ? オレは努力したっ……努力したのにっ……!」

名無し「お前たちが憎い!! オレが欲しかったもの全部最初から持っていて、アイツの傍にいられるお前らが全員憎い!! 憎いよぉ!!」

転校生「!」

名無し「妬ましいんだよぉ……オレにも、くれよ? 楽しい日常……オレが生まれた意味を改めさせてくれよ……」

転校生「……あんたって――――えっ!?」

転校生(干渉に浸りかけた私を現実に戻す悲鳴が、部屋の外で突然響き渡った。二人、部長さんと不良女ちゃんの声だわ!!)

転校生「な、名無し!!」バッ

名無し「やり直すにはもう遅すぎたんだよな。わかるだろ、転校生?」


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