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男「モテる代わりに難聴で鈍感なキミたちへ告ぐ 〆!」
1
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/10/18(火) 23:24:07 ID:KppNpej6
ここが墓場だ
1、男「モテる代わりに難聴で鈍感になるんですか?」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1379798915/
2、男「モテる代わりに難聴で鈍感になりましたが」
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1380372236/
3、男「モテる代わりに難聴で鈍感になった結果」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1385750291/
4、男「モテる代わりに難聴で鈍感になったけど質問ある?」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1397082375/
5、男「モテる代わりに難聴で鈍感になるのも悪くない」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1406541846/
6、男「モテる代わりに難聴で鈍感になるならどうする?」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1420921537
7、男「モテる代わりに難聴で鈍感だった日々より」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1446919295/l50
159
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/05(木) 20:40:38 ID:MWFo9qYA
名無し「主、あなたに否定される事がオレにとってこの世の何よりも恐ろしかった。この憎悪を加速させてくれました」
テンプラ「…………縺ョ繝」
名無し「オレの名を呼んでくれたのですか? わからない……言葉も気持ちも読み取れません」
名無し「アイツにわかって、子であるオレが理解に苦しむ。あんまりにも理不尽だ。失望を覚える」
テンプラ「……8熙ヒハリ、タ、テ、ソ、ホ、ヌ、゙、タクォ、ォ、ア、゙、ケ。」
名無し「だから、オレはオレの思うがまま あなたを壊すことに決めました」
テンプラ「薙l縺ァ縺吶_?」
名無し「みんな、消える時は平等だ……男の最後になんて拘らなくていい。アイツもオレも、あなたも、姉さんも」
名無し「一緒に消えましょう? このクソッたれのあなたの世界と共に」
テンプラ「#!」
名無し「ほら、ご覧になって。遂に賽は投げられました、主。世界の“観察者”、主軸である姉さんです」
名無し「姉さんが消えると同時、世界は何者にも観測されることはなくなる。あの人によって紡がれていた時間の流れは断たれる……」
名無し「……姉さんはもう助からない。どんなにもがいても、決して…………束の間の一時だな」
後輩「先輩見てください! 転校生の体に色が戻りましたよっ! 助かったんですよ!」
男「あ、あぁ! そ、そうなのかっ? ハハ、はははっ!! 転校生!」
160
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/05(木) 21:26:10 ID:MWFo9qYA
男(転校生、転校生、うむ 喉から出たがっていた名を今はいくらでも呼ぶ事が出来る。透明がかっていた身体にも色が付き、この手に彼女の感触が)
男「ん?」むにゅ
転校生「……喜び合ってるの良いことに、どこ触ったままでいる気なのよ…………っ」
男「転校生、違う。俺はお前の命を救った張本人であって一切やましい気分で体に触っていたわけじゃない」
男「つまり! これはwin-winの、ぶっっっ!!」
転校生「しねっ!! まずあんたが脳震盪起こしてくたばれ ド変態スケベぇ!!」
男「ぉぉぉおお、いきなりブラックジョーク過ぎんだろっ……!」
後輩「元気になった証拠なんじゃないですか? ふふっ。立てますか、転校生さん」ス
転校生「ありが、とう? ……どうしてあなたが私を助けてくれるの? 意味不明だわ」
男(それに関しては俺も同感である。非行に走ったように様変わりし果てた後輩が、かつての美少女っぷりを取り戻したかのようにここにいるのだ)
男(俺たちが眺める中、口元を緩ませて見せると身を翻して後輩は 名無しと対面する。小さくか細いながらも、頼りになる背中。アイツが、帰ってきた)
名無し「どうしてみんなオレから離れて行くんだ?」
後輩「別に始めからあなたの思想に染まってもなければ、哀れに思ってもいませんでしたけれど」
名無し「だからこそ 従うよう弄ったんだ、神の使い。ここにいる限りお前がオレの支配を免れるなんてあり得ない」
転校生「ふん、その言い草! 自分が神さまにでもなったつもりかしら!?」 男「そーだそーだっ!」
161
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/05(木) 22:09:45 ID:MWFo9qYA
男(背中に隠れていた俺を無言で振り返られては、立つ瀬もなかろう。後輩の更に前に出て名無しを視界に捉え続けた。気分は火曜サスペンスドラマ終盤の刑事だ)
後輩「あり得ないを覆す奇跡があっても罰は当たりませんよね、せーんぱい」
男「お前、それって……」
男(懐から後輩が取り出した写真たち、昨晩俺の部屋から持ち去ったブツだと考えて確かであった。バカな、愛は窮地に勝つ? いやいや)
男「(愛は俺を救った) 最後になる前に名無しには散々迷惑かけてきた謝罪をしてもらいたい。せめてもの報いだろ」
転校生「……頭ぐらい最後に下げなさい。それであんたが仕出かした罰が帳消しされるワケもないし、したくもないけど」
転校生「あんたの生まれの境遇に、せめて免じてあげたい……辛いも哀れも絶対の免罪符じゃないわ」
名無し「わー、いっちょ前に説教垂れんのかよ?」
後輩「あはっ! 拗ねるなんて、まだ可愛いところもあるじゃないですか」
名無し「…………お前、実は裏切ってるとかじゃあないだろ」
男・転校生「え?」
名無し「男ならわかるだろ、この世界そのものの性質ってヤツを。どれだけ時間を分岐させても物質的証拠はかならず残る」
名無し「でも人と人との過去は無しになる。嗅ぐわせる程度のフラッシュバックはリセットの影響をビミョーに掻き消しきれなかった残りカス……」
男「今更なんじゃないかねぇ? 仕組みのネタ明かしなんてどうだっていい、そういう事じゃない! なぁ、名無しっ!」
名無し「オレがこの女にしたのも オカルト研にしてやったのも例外だ、男。お前 お得意のバッドエンドリセットに付き合わされた結果じゃない」
162
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/05(木) 22:51:52 ID:MWFo9qYA
男「……一体何の話だ? ついて行ける人いたら手上げるように、さんはいっ! ほれ、どうした!」
男(少なくとも心の友・俺は両手で挙手した。名無しが後輩やオカルト研にした事? おかしくなった原因はコイツにあると確信はあったが、方法は何も知らない)
男(バッドエンドからのリセットならば軽く心当たりはある。今の俺は過去の俺のバトンタッチによってここに立っている。多くの我が犠牲のなれの果てだという事を)
名無し「今日までの後輩はお前のよく知った彼女だったか? オカルト研は?」
名無し「残念ながら跡形もなく消えた筈だよ、お前と過ごした二人の人格っていうのは……変わりないのは容姿ぐらいじゃないか」
転校生「ハッタリだわ。事実この子は男の為にこっちにいてくれてる、あんたの妄想よ」
名無し「妄想? その単語が相応しいのはオレじゃなくて男の方さ。いつまでも自分の理想に縋り付く死に損ないがぁ」
転校生「あんたは、ねぇ……いい加減にしてよ! まだやり足りないっていうの!? バカげてる!」
名無し「男、お前を楽しませたアイツらは死んでる。そこの女は本当にお前を信じてくれたあの時の一人か? よく見ろよ、鈍いな……そこの人形に面影は、あるか?」
男「変わらない価値は見い出せる!!」
後輩「…………プッ」
転校生「……何よそれ?」
男「もしお前が言う様に過去の記憶を失った彼女だとしても、思い出なんぞいくらでも埋められる。むしろ新鮮な気持ちをまた彼女と一緒に味わえる」
男「本当に面白いゲームをやり込んだ時、ふとこう思うことは? 記憶を消して一からプレイしてみたいなぁ、と……そういえば」
男「0から好感度を上げる苦楽の楽しみを、俺はまだ知らねーんだ。名無しよ」
163
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/05(木) 23:24:54 ID:MWFo9qYA
名無し「……やー、ズレすぎじゃないの? 論点っていうか、もう語るも疲れるわ」
男「難聴スキルが始めから解除された状態からの攻略だともう物足りない体になってる。飢えた獣に縛りをくれ」
名無し「バカかよ。まだその辺の女子とラブコメ楽しめる気でいるのか? おめでたい通り越してイカれてるぞ、お前」
男「ちょっぴり頭おかしいヤツに『イカれてる』じゃ褒め言葉にしかならないぞ、ほら ニヤけてるだろう?」
名無し「……ヤバいんじゃないの コイツ? 話も聞かないし、終始自分勝手だぞ。悦に浸って帰ってくる気配もねーよ」
名無し「とりあえず同意する奴 素直に手上げてー」
転校生・後輩「……!」ビッ
男(一体お前たちはどちらの味方だと小一時間問いただしてみたいと言ってみたいじゃないか。だけれど、名無しくんってばさ)
男(無駄にイキイキしてるじゃありませんか、男くんは神と担ぎ上げていた時よりも顔ツヤッツヤテカテカしてるぞ)
名無し「はい、多数決の結果 男くん生理的に無理でけってーい。みんなでパチパチパチ」
男「爽やかイケメンの親友装うよりはそっちのダウナー系の方が似合ってるんじゃないか?」
名無し「は? うぜぇ、とっとこ死ね」 男「そう、その辛辣な感じのやつっ……!」
名無し「……はぁ〜あ、鬱陶しい。ウザったくて堪らないよな お前」
名無し「マジで死ねよ。リア充気取ってオレとの距離詰めようとしてきて? ウンコとキスしろよ、ド変態」
男「ようやくお前に近寄れそうな気がしてきた、ウンコ 却下する」
164
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/11(水) 20:42:25 ID:j/iWmggo
名無し「ていうかさ、お前らのありがたい説教聞かされてオレが改心するとか 思っちゃってんの?」
名無し「ウケる、それウケる。面白くて涙零れちゃう。腹がよじれて吐血しちゃいそう。おえーっ!」
男「自棄っぱちで大きな子ども演出してる名無しくんは、この後どうするのかな?」
転校生「ちょ! 何であんたまでケンカ腰になってるのよ、どっちも一旦落ち着いて!」
男「あいにく、こっちは至って冷静のつもりだぞ。転校生」
男(煽り合いなら上等である、昔は俺も売られたケンカはよく買っていた。ネットという大海で)
男(だがしかし、転校生や後輩にこれ以上彼のヘイトが飛び火しては困る。正確には、刺激して現在の暴走を上回られると、だった)
男「なぁ、さっきコイツのことを人形とか言ったのを覚えてるか」
名無し「え? どうだったかな……直接その言われた本人に訊いてみた方がてっとり早いんじゃない」
後輩「まぁ、そうですね。仰る通りかと」 名無し「すごい淡々としてるなwwwwww」
男「俺はそんなくだらない確認を取りたかったワケじゃない……名無し」
男「立派な人の意思が宿った人形を、人形扱いするのは間違ってるだろ」
名無し「ヒューッ、カッコイイ〜! さすが男さんだ……っ!!」
名無し「でも、根本的な解釈間違ってるのはそっちだわ。オレの好きに踊らされていたからこその“人形”扱いだろ?」
男「なるほど」 転校生「何やりたかったのよ!?」
165
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/11(水) 21:17:02 ID:j/iWmggo
名無し「だけど……意味合い的にはお前の考えも通じるかも。コイツらはオレの言いなりの、駒だから」
転校生「このクズ、ド屑よ! うちの変態以上のゲスって見た事なかったけど、冗談抜きで使うべき相手が現れるなんて!」
男「お前も大概だわ」
名無し「駒に人権はあるのか? 将棋やチェスみたいに戦略の為の使い捨てが基本だろ。お前の精神論は正義か、男?」
後輩「人権、なんて私も当たり前のように持ってると思ったことありません。所詮 元・神の使いでしたので」
後輩「気遣いも必要ないですね。役目を果たすことが私の生き甲斐というか、生まれた意味ですか? そんな風に納得していました」
男(先程から度々出てくるワード『神の使い』 ……過去の後輩関連の記憶が、不意に思い出される事はなかった。謎めいたミステリアスの正体も)
男(彼女は一体何者なのか? さて、ここは今大事な所じゃない。重要になるのは)
転校生「……バカよ、どいつもこいつも」
男「後輩のヒミツの告白に共感でもしたか? 顔に出てるぞ」
転校生「うるさいわよ……そんな事よりいつまでもあんな奴との会話引き伸ばすことないわ、テンプラって人を交えてさっさと名無しを――えっ?」
男(目の前に気を取られすぎていたせいか 転校生はテンプラの不在に短く声をあげた。何処へと尋ねられるが、その前に)
男「ところで名無し、お前はまだ疑ってるんだよな。後輩がお前の命令に背くお人形になったワケじゃない、と」
男「そこで良い提案がある! 試しにそいつへ好きに指示を出してみたらハッキリするんじゃないか?」
名無し「……」
166
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/11(水) 21:50:30 ID:j/iWmggo
転校生「ど、どんな提案よ、あんた自分がどれだけアホなこと言ってるかちゃんと分かってる!?」
転校生「その子がアイツに縛られたままだったら、またとんでもない真似されるかもしれないの! わかる!?」
男「この期に及んで諭されたって遅いんじゃないか、転校生。そうだよな、名無し」
名無し「……自分が追い込まれた状況って理解してるんだよな」
男「逆だってば、俺がお前に追い込まれているんじゃない。お前が俺たちにようやく追い込まれたんだ」
男「勘違いするな! やれるものならさっさと動かしてみろ! お前に忠実な人形 兼 駒ってヤツを!!」
後輩「……どうぞ、ご自由に?」
名無し「お前は、男……男くんってさ……ほんと、気が触れてるとしか思えない時あるんだけどさ」
名無し「――――オカルト研に指示するんだよッ!! 今すぐ窓を破って地面に叩き」
男「後輩助けてくれっっ!!」
後輩「イエッサー」
男(まるで始めから決めていたかの様に、合図を受け取った後輩が手を横へ払えば、名無しの体が横へ大きく吹っ飛び ボロボロの壁へ叩きつけられた)
転校生「…………うそ……今の、どういうトリックの……」
後輩「……ごめんなさい。えっと、どうしましょうか? 私としては先輩たちがお灸を据えてあげるべきかな、と」
男「お、おい、名無し完全に伸びてるぞ……」
167
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/11(水) 22:21:55 ID:j/iWmggo
男(異次元の力にか、倒れた名無しにか、怖々と転校生が近寄って体を突いてみせる。ならば、俺はといえば)
男「……正直驚くしかない」
後輩「やり過ぎだったですかね、でも念には念をという気持ちで……先輩、私が怖いですか?」
男(不安を露わに謙遜した足取りで半歩下がろうとする後輩。そんな彼女へどうこうしようと抑え切れない者など、ここにあらず)
後輩「えっ、わ!! せ、先輩……?」
男(皆まで言うな、様々な気持ちが沸き上がったまま俺は思うがまま彼女を抱きしめていたのだ。この至近距離、角度ならば、顔を見られずに済むのだろう)
男「しばらくこのままでいさせてくれ、後輩」
後輩「あ、あの、それは……すごく困るというか……」
男「頼む。一生一度のお願いだと思って、黙ってこうされていてくれないか」
後輩「いえ、だ、だから! ……あっ」
男「おかえり、後輩ッ……っ、うぅ、あー!! さっきからしつこいなっ、何度肩叩けば気が済むよ!? この感動の対面を」
転校生「空気読めなくて悪いけど話があるのよ。ちょっと顔貸してもらえる?」ニコニコ
男「……ありゃあ」
男(美少女スマイルも場を選ぶ、本日の教訓なのであった)
転校生「よし、野暮用も済んだし話を戻しましょ!」 男「前が見えねェ」
168
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/12(木) 13:57:08 ID:8DwwzRJM
イエッサー後輩かっこいい
169
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/15(日) 20:38:13 ID:uJiBYvbU
男(気になる事、というか気にしなくてはいけない話ばかり積もりそうな予感は、俺たちの問いへ答えた彼女によって座礁する)
後輩「この私どうしてまた自由を取り戻せたか? 神の使いとしての力を振るうことができたのか?」
後輩「わからない、としか今は答えようがありません……」
転校生「えっと……何だか、あっさりだわ。色々常識越えたことの連続からそう来ちゃう?」
後輩「きっと何度もお二人を、いえ、皆さんを困らせてしまっていたと思っています。まずは……気が済むまで謝らせてくれませんか?」
男(口惜しそうに小さく作った握り拳を震わせて、目を伏せる後輩の姿は 逆にこちらが申し訳なさを感じてしまう程である)
男「(いつもの軽口で笑い飛ばしてやれば、むしろ薄情を印象付けてしまうだろう。沈黙のまま、彼女の肩を抱いた転校生に俺は任せた) 不思議パワーうんぬんは置いておくとして、さっきコイツが自分で“元・神の使い”とやらを自覚していたのが気になった」
転校生「え? どういう意味よ?」
男「名無しは、俺から余計な知識とやらを取り上げたがっていただろ。実際俺自身、後輩のあの説明のつかない力や正体について何も知らない。いや、覚えてない、のが正しいのか?」
男「俺が忘れていて、後輩当人の記憶を放置してしまえば まったく意味がなくなってしまう。だからこそ 思い出させる機会を潰す為にした、リセットだ」
後輩「……はい。彼は先輩を遠ざけたかったんだと思います、異常から」
転校生「異常ってあなたが隠していたこととかの話よね? じゃあ、コイツは知らなくていいことを、今までずっと」
男(シンプルなやり方だったと無理に納得はしてみるが、その遠ざけたかった異常を 自ら俺へ晒していた名無し。何のドジアピールだ)
男「おい、話戻していいか。ていうか戻すけどな!」 転校生「あっ、はいはい、どーぞ?」
男「さて、リセットが上手くいっていたなら、なぜ後輩が失った過去を俺たちへ嗅ぐわせてきた?」
170
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/15(日) 21:16:28 ID:uJiBYvbU
男(普通に考えても不自然に値するではないか。名無し先生がベラベラ丁寧に説明してくれた話が、それだけで覆されてしまうのだから)
男「少しでも可能性があればと良かれ、ああしてみたら……」
男(ビンゴ。されど、に至る)
転校生「ねぇ、今はとりあえず他のみんなと合流しない? 難しいことをややこしくさせても、拗れるだけでしょ。変態」
男(転校生の提案に喉を唸らせはしたが、大人しく頷いてみた。確かに、答えを急いだところで得る物は きっとまたよく分からないものだと思う)
男(完全にしがらみを断ち切れたわけでなくても、名無しへ制裁を加えた後輩を見れば ひとまず肩を撫で下ろしても……良い、だろう)
男(……俺は、どれほど踏み込み過ぎて、深淵を覗きこんでしまったのか。罰が当たったのだな)チラ
名無し「 」
男(――――さぁ、欲が深すぎた男の末路は、といった感じから一転。俺含む一同は 廃病院の外に出たワケだが)
男の娘「ど、どうしてお前がこんなところにいるの!?」
後輩「一々驚き過ぎですよ、兄さん。それより 向こうで黒い恰好した人たちがバタバタしているのは?」
男の娘「それよりって! はぁ〜……ほんとにどうなっちゃってるの?」
黒服「貴様ら お嬢様は気を失われている! 普段よりも丁重に扱って車まで運べよッ! お屋敷までお送りを……む」
先生「無事だって、本当にそう思って良いのかしら……」
黒服「安心してくれ、先生。というより まずは礼を言わせて欲しい。貴女が駆け付けてくれなければ こうも簡単に収まらなかったでしょう……」
171
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/15(日) 21:48:08 ID:uJiBYvbU
生徒会長「先生が休日に、しかも男くん同伴でっ、何故こんな場所まで……ふっ!?」
先輩「ダメだって! 今はそっとしておいてあげようよ。とりまお疲れ様の会ってことでラーメンで打ち上げをー……どったの? とりまって古かった?」
生徒会長「……生憎だが、今日はここで解散としよう。私事で悪いが気分も乗らなくてな」
先輩「そ、そっかぁ……うん、そうだね……」
不良女「無理もねーよ。偽ブチョーとかいうのが現れて、おまけに閉じ込められて混乱してんでしょ、あんたの気遣いは伝わってるって」
黒服「…………見た所、互いにお抱えが疲れ切っているようだ。今日の事は一度忘れて休ませてやらねば、な」
先生「ええ、私の方でも一人倒れた生徒がいますし、家まで送ってあげないと――あんたたちこの車最大4人乗りっ!! 全員一回降りろ!!」
男「降りておいた方が身の為だぞ、マジで」
男「先生、名無しはお願いします。というか アイツの自宅を知らないとか前に喋ってましたよね?」
先生「建前だよ。少し休めそうな所まで運んで起きるの待ってるわ、放って置くわけにもいかないし」
転校生「……ねぇ、見張ってなくって平気なの?」
男(そう耳打ちしてきた転校生へ、返事をするまでもなく 俺は先生の愛車の助手席へ入った。危険な車の旅 その道連れは一人で良いのだ)
男「でしたら俺の家で休ませてやりたいと考えてるんですが、問題ありませんか?」
先生「えっ?」
転校生「ぜったいダメに決まってるでしょ!?」
172
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/15(日) 22:14:10 ID:uJiBYvbU
男「じゃ、そういう事で。お疲れ!!」
転校生「だから、ダメに決まってるって言ってるでしょぉぉ〜〜〜!!?」
男(制止を振り切り、助手席の窓を閉めて地獄のジェットコースターは俺と先生、そして今も尚 気を失ったままの王子様を乗せ出発するのであった)
男(そういえば雨、いつのまにか上がっていたのだな。曇り気味だが現在の登場人物たちの心情を表現するにはピッタリの空模様じゃないか)
先生「男くんフリスク食べる? ……あのさ? こういう事、二度とないと嬉しいかもね」
男「すみませんでした」
先生「今回は君のせいばかりじゃないんじゃない? ただの愚痴よ、グチ。言ってみたかっただけ」
男「先生の助けがなかったら、俺 多分発狂してたと思います。閉じ込められた男の娘たちを助けてくださってありがとうございました」
先生「助けたも何も、棒をどけただけでしょ……中開けてビックリしたよ? 一人倒れてるし、二人は泣きっ面で」
先生「で、教えて欲しいんだけれど あんた達は上で何やってたの。後ろで寝てる名無しくんは何?」
男「わかりません」
先生「わかりませんって……そうよねぇ、私も何がなんだかサッパリわかんない。困ったもんだわ」
男(そう答えるしかないだろう。一から十を説明と命令されても俺でさえ理解が追い付いていない。巻き込まれて、あるいは、巻き込んでこのザマよ)
男「あ、そこの角右に曲がったらすぐです」
先生「知ってるよ? 前に送ったことあったでしょ」
173
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/15(日) 22:44:46 ID:uJiBYvbU
男「先生って実はローテンションの方が運転上手になるんじゃないですか?」
先生「バカ言ってないで名無しくん降ろすの手伝いなさいよ。この歳の、男の子ってっ、重い……っ!」
男(というよりは気を失った脱力効果+が大きいと思われ。先生と共に名無しを肩で担いで家まで入れれば、我が家のアイドルマミタスのお迎えである)
マミタス「シャーッ!!」
先生「げっ! 招かれてないっぽいんだけど、いいの? 本当にこのまま彼預かっちゃって」
男「構いません。友人です」
男(両親の寝室まで案内したところでベッドへ投げるように名無しを置くと、ようやく俺たちは揃って息をつく事ができた。張り詰めた緊張なんかも解れて、いけば)
男「ご苦労さまです。お茶淹れるんで休んで行ってください、親もいないし家庭訪問みたいな気分もないでしょう?」
先生「ていうか高校は家庭訪問ないから、君……帰るよ。先生も家でくつろぎたい気分だし」
男「ゲームできない時間が惜しいって言えばいいのに」 先生「黙ってろ」
先生「そうじゃなくって……職場、あっ、学校にも連絡しなきゃいけないし……大人だから色々事情があるの。察してくれる?」
男「俺もいつかは先生みたいに責任に追われなきゃいけない立場になるって思うと、反吐出ますよ」
先生「ふふふっ、違いない! 誰だってそうよ。君の将来がどうなるか分からないけれど、自分が関わった事には終わるまで付き合ってあげなさい?」
先生「因縁っていうの? まぁ、いっか……明日また学校で元気な顔見せてね、男くん」
男「そりゃあもうご心配なく、先生! へへっ!」
174
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/16(月) 15:08:45 ID:zfy2DOJc
後輩かわいいんぢゃー
175
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/17(火) 20:46:13 ID:haKRowx2
男(客人は最大限持て成し、綺麗な別れをと祖父がよく語っていたものだ。親の教えを守り、玄関の外まで先生を見送るのが仮家主の務めである)
男(不意な疑問が頭を過る。美人へ出した呑みかけの茶を、訂正、不意ではなく不埒だった。送り届けた後 再度名無しを寝かせた部屋へ戻ると)
男「ふむ、よほど効いたみたいだな。テンプラの片割れだとしても 耐久性は人並みとな」
男(眠る横顔を見下ろし、廃病院で起こった出来事の余韻に浸ってみる。テンプラや後輩といい、彼への対抗が味方に付いたならば前述した通り、しばらくは騒ぎの心配は要らないだろうか)
男(歪んだこの友人を更生するつもりも、してやれる気もしないが 眺めていると己が罪が沸々と湧いてきて)
男(憂鬱じゃないか)
男「ふぅー、やれやれだよ、妹はともかく天使ちゃんを預けて来たのは正解だったかもしれん」
男「アイツも余計なことに首突っ込みたがりだしなぁ。誰に似たのやら……なんちゃって」
名無し「独り言なら一人でやってくれよ。うるさい」
男「そいつは悪かった――――はあ!? いつから目覚ましてたんだよ! お前っ!?」
名無し「しばらく狸寝入りしてた方が都合良かったんだろ? ……あーあ、まだ体痛てぇ」
男(むくりと起き上がった名無しは俺が親切心から貼ってやった冷えピタを鬱陶しげに剥がして、壁に投げつけやがった。風邪でもあるまいし、と。ええ、まぁ)
男「おい、待てって! どこ行くつもりだ、体が痛むんだろ? 無理しなくても」
名無し「は? 気持ち悪い」
男(そんな率直ドストレートな感想を美少女以外から頂いてもご褒美じゃないのです、お兄さん)
176
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/17(火) 21:13:02 ID:haKRowx2
名無し「親切にされたら誰でも恩に着ると思ってるのか? 大間違いだねぇ、偽善者どの」
男「野郎なんかに気を掛けてる奴が、第一に美少女の園なんぞ望むと思うのか?」
名無し「知らんね、お前のグルグルした頭の中なんてオレ程度が分かってやれる気はしない。精々楽しくやってりゃあ良いんじゃね!?」
男(刹那よ、さらば、と別れを告げようとする名無しの前に立っている俺がいた。……これから俺は最も自分が納得し得ない言動を発する羽目となる)
男「泊まって行けよ。友だちだろ?」
名無し「…………どうかしてるってレベルじゃないんだよ、お前!!」
名無し「誰が、どいつの家に、世話になれって!? 頭おかしすぎんだろッ!? 自覚あるかな!?」
男「なんと、まさか! ただいま我が家は現在来るもの拒まずキャンペーン実施中とご存じないと!?」
男「気にするなよ、名無し。人外かどうかよく知らんが ここに居れば美味い飯にも困らないし、人恋しさを解消できる」
男「世界中探し回ったってこんな天国見つからないと思うんだが、絶対に」
名無し「…………」
男(わかる。わかるぞ、その表情。警戒していて、疑っていて、呆れ果てていて、情けなくて、どうしようもなくお手上げを意味しているのだろう。名無し)
男「どうせ帰る家なんてないんだろ。だったら、一晩ぐらい温かい屋根の下も悪くないんじゃないか?」
名無し「……オイ、この部屋じゃ生活感が気に食わない。もっと落ち着けそうなとこ用意しろ」
男「案外潔癖症なんだな、俺と真逆だ お前って」
177
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/17(火) 21:48:06 ID:haKRowx2
男(それにしてもこの捻くれ者へ使わせる部屋とな。客間を案内した所で満足してくれそうにもないだろう? 定石狙いで押入れか)
名無し「止まれ。ここでいいよ、十分だ」
男「え?」
男(そう言って名無しが立ち止まった部屋は、最近ご無沙汰である暗室だ。悲しきかな、埃やカビと同居するのが お好みらしい)
名無し「用事があるなら自分から出て来る。お前らは基本 ここに立ち入るな、オレの城だ」
男「どこの家庭にも引き篭もりは一人って世間の流行りなのか?」
名無し「死ね。とにかく、オレは他の奴らと連むつもりはない。終焉の時をこの隔離された牢獄の中で待つだけだし……」
男「カッコつけた言われ方されても実質物置だからな、ここ」
名無し「二度死ね。いいかよ? 忠告はしたからな、間違っても家族とかガキとか寄越すな。出来損ないの脳味噌で記憶したかな?」
男(もう何だコイツ……)
名無し「うっわ! お客さまにお持て成しも出来ないんスかねぇ、この家ェーッ!?」バタバタ
男「悪かった、しけた柿の種がお前に相応しい」
男(うるさいチンパンジーを檻に閉じ込め、ありがたい静けさに感謝しつつここで午後のティータイム。休日だからな)
男「……幼馴染に会いに行くか」
男(言うが先か、体は既に行動へ移していたのである)
178
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/17(火) 22:29:09 ID:haKRowx2
ママ「男くんおかえりなさ〜い! ていうか随分早めのお帰りになっちゃったけど、ん?」ギュッ
男「(この妻に毎晩迎えられる旦那様の羨ましいこと) まぁ、色々ありまして……それよりウチの問題児を預かっていただいて」
ママ「ううんっ、全然気にしてないんだから! 良かったらウチに上がってく? 男くんの為に用意しておいたクッキーがあるの♪」
男「嬉しいです。お邪魔しても差し支えなければ、是非」
ママ「きゃ〜、どうぞ ぜひっ♪」ウキウキ
男(この奥様、豊満なバストの活かし方を理解していらっしゃる。ハグや包容といった優しい表現すら生易しい、抜きん出た歓迎は疲労を消し去ってくれる)
男(ママさんからふわっふわなスリッパを用意され、リビングまで連れ添われる中 天使ちゃんはお昼寝中との情報を得た。これは嬉しい)
ママ「えっと。こほん! ……時々でいいけど、たまにはあの子と遊んであげてほしいなぁ。相手にされてないって思われるって良くないよ、男くん?」
男「アイツそんな風に考えてるんですか!?」
ママ「あっ! もう鈍感さん! 男くんは天使ちゃんにどれだけ好かれてるか知らないの? あの子ってば子犬だよ、こ・い・ぬ 」
男「あっ……わ、わかりません」
ママ「わかんない? 男くんすごく信頼されてるんだよ。私がどれだけ優しくしたって、敵わないもん。あの子にとって一番は男くんなんだから、うふふ」
ママ「ナンバーワンは、やっぱり格別なんだと主婦は思いますっ! 忘れないでね!」
男「は、はぁ……肝に銘じます……」
男(ママさん、クッキーの用意というのは手作りということでしたか。恐れ多い)
179
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/18(水) 20:59:08 ID:uHNBNvZA
ママんは無条件で茅野愛衣ボイスで再生されちゃう…
180
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/22(日) 22:38:44 ID:bY35QNTs
ママ「コレね、ふふふっ! 天使ちゃんと一緒に作ってみたの。急に料理教わりたいって言うから」
男「そういえば朝に話してましたね? でも、料理というかお菓子作りじゃ」
ママ「女性を磨くより先に女の子を磨かなきゃ始まらないでしょ? 遠慮しないで座っててねぇ〜」
ママ「では、気合いの入ったお紅茶、淹れてまいります!」
男(可愛い奥さんの敬礼ポーズは卑怯ではなかろうか。痛さすら武器にするプリテーには精一杯の愛想笑いで応戦すべし)
男(幼馴染は、自室で大人しくしているのだろうか。今朝テンプラから見せられていたであろう あの時の彼女が頭の中で酷く気掛かりであった)
男(神の憑依といい、幼馴染はイタコの素質を持っているとでも? 嫌々、俺はこう考える。幼馴染というキャラへ重要な役割を担わせていたと)
男(立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は百合の花 を地で行くパーフェクト美少女ちゃん、愛が深すぎる点に目を瞑れば)
男(だが、少々言い方が悪くなるが 彼女には『一押し』が足りなかった。確かに二人になればベタベタむふふを体験させてくれるが、どこか一歩引いたところで)
男(“見”られている気が 時々ついて回って――――)
幼馴染「おかあ〜さぁ〜ん……三時まわる前に起こしてって言ったじゃ――――」
男・幼馴染「あっ」
男「……よ、よう、ずいぶん休日満喫してたって、感じ?」
幼馴染「えっ……うそ、いや、なんで! なんで!? 待ってまってまってまって、待って〜〜〜〜!!///」
男(気の抜けた炭酸ジュースの如し、そこに現れた噂のあの子は 寝巻姿で髪もハネまくり、油断の権化なのだった)
181
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/22(日) 23:13:18 ID:bY35QNTs
幼馴染「だめっ! ほんっとにこっち見ないでぇ男くん!! お願いしますっ、一生のお願いだよぉー!!///」
男(ラッキー、スケベからは遠のくが、ラッキーに違いない。本人的にはかなり恐怖に近かろうが、礼儀を欠こうが、凝視してしまった)
男「まぁ 落ち着いてくれ、俺たちいつぞやに裸の付き合いがあっただろ」
幼馴染「今はそういう問題じゃないから!! とにかくっ、痛!」
男「お、おいっ!?」
男(元気に騒いでいた幼馴染がいきなり足を抱え、苦痛に顔を歪ませたのだ。すぐさま駆け寄って肩を貸してやれば、恥じらって暴れる元気は失われていた)
男「わ、悪かった。つい調子に乗って……座れるか? 体 横にしてた方が楽か?」
幼馴染「えへへ、ひとまず着替えたいかな。もう大丈夫だと思う。一人で立てるから」
ママ「あらあらまたこの子ってば! あれだけ勝手に動き回っちゃダメって言ったのに!」
幼馴染「だ、だって……ていうか男くん来てたなら一声かけてよ……」
ママ「怪我人なんだから大人しくしてなさい! ごめんねぇ、男くん。余計なお世話かけさせちゃって」
男「そんなっ! 元はと言えば俺が原い――――……あ、あぁ、すまん」
男(目配せした幼馴染に諭されるように、その先は閉口してしまった。自分が情けないじゃないか、どこまでも気を利かされてしまうなんて)
ママ「もう、服はとびっきりかわいいの取って来てあげるから、大人しく別の部屋で待ってなさい。ね?」なでなで
幼馴染「……フツーのでいい。あと、男くんいるんだから頭撫でるとかしないで……」
182
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/22(日) 23:51:08 ID:bY35QNTs
男「(ママさんが階段を上がって行く音を聞き届けると、幼馴染も続いてリビングを後にしようと動いた。が、気にする様に俺を見ているではないか) 思春期の娘か?」
幼馴染「現在進行形で思春期なんですけど……ごめんね、本当に」
男「バカ、謝る立場が逆転してるだろ。頭下げて、いや、地面に頭擦りつけてでも謝罪しなくちゃいけないのは俺の方だ。迷惑じゃなけりゃ」
幼馴染「迷惑だよ、えへへ」
男「だよな、もっと別の良い形考えとかにゃ…………なぁ、幼馴染 聞いてくれ。あと少しでゴタゴタが片付きそうなんだ」
男「きっと終わったら前みたいにみんなが楽しく思える高校生活に戻れるぞ! 文化祭、楽しみにしてただろ?」
男「あんまり乗り気じゃないが、クラス発表も部の出し物とかも張り切ってみる事にした! だ、だから一緒にっ!」
幼馴染「……うん、楽しみ」クスッ
男(心からの笑顔が見たいと思ったのだ。必死感丸出しであろうと、悲壮感を払いのけるぐらい不相応にカラ元気な俺を作ってみた)
男(償いを果たそうとするスタイルを幼馴染は良しとするだろうか。ワガママな失礼を包みこんでくれた女神の背中を見送れば、溜息が漏れる)
男「これってただの自暴自棄じゃねーの?」
男(鼻に付いて嫌われるよりも、皆に好かれるハーレム主人公を目指す立場として 一人反省会を開催する予定が立った瞬間である)
男「正に負の連鎖……疲れてるのかね、俺。更に睡眠時間増やした方が落ち着くかしら」
「たぶんこんな事されといた方が安らぐんじゃないかって思うんですがー?」
男「おふ!?」
183
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/23(月) 00:30:38 ID:3rcM/ydU
男(この貧相な肩に優しく手が置かれれば、艶めかしい所作を含めた摩擦を味わった。その手が実に幼いロリロリしい手をしていなければ、もっと)
天使「うおー! 小遣いもっと増やせぇー!!」ゴリゴリゴリ
男「まったく力が足りてない、肩を揉む相手への労いを感じさせない、あと殴るの止めろ。天使の肩叩きレビュー 10点」
天使「何点満点中のですかねッ!」 男「気が遠くなる道のりを辿りたいのですか?」
天使「ったはぁ〜……絞りカスの残骸みてーな男くんがこんな美少女のスキンシップを語るとは」
男「酷評ありがとう、天使ちゃん。昼寝しているとママさんから伺ったんだが」
天使「あんなバカでかい声出されて呑気に寝てられるヤツは異常ですよ。けっ!!」
男「そう腹を立てるなって、誰だって安眠の妨害を好きこのまないのは知ってる。やれやれ もういっぺん寝ろ」
天使「何ですかっ、その適当にあしらう感じは! 大体寝過ぎは夜が大変って男くんよく言ってるじゃねーですか!!」
男「このクッキーめちゃくちゃ美味くね?」もぐもぐ 天使「はっはー! でしょう!? そうでしょうとも、えっへん!」
男「(屈しないロリっ娘。この様子ならば、自作という話を俺がママさんから聞かされていない体でいこうとしているとみた) 天使ちゃんがママさんと一緒に選んで買ってきたのか? センスあるな」
天使「むっふぅ〜〜〜〜〜〜……!」ブンブンッ
天使「と、ところがドッコイなのですよっ!? な、なんとなんとなんとぉ! 実はですねぇ、そのクッキーは――――」
ママ「はーい、男くんおまたせ〜!」 幼馴染「や、やっぱりこの服気合い入り過ぎだってば!」
天使「…………むぅ」
184
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/23(月) 20:08:11 ID:3rcM/ydU
ママ「本当に夜ご飯食べて行かなくてよかったの? ぶー、せっかくエンジン掛かってたのにー!」
幼馴染「お母さん」
男「すみません。妹もまだ帰って来てないですし、作り置きしてた冷蔵庫の残り物も気になったもんで」
ママ「そっかぁ、残念……でも、男くんたちなら我が家いつでも大歓迎なんだからね!? この子がわざわざ作りに行かなくても私が〜!」
幼馴染「もうお母さんっ!?」
幼馴染「あの、良かったらなんだけどウチで漬けてた大根 持って行って? お米炊いてお味噌汁の付け合わせぐらいには」
男「親子揃って、俺たち死地に向かう兵隊か何かじゃないんだぞ……」
幼馴染「だ、だって男くん あたしが見てないとすぐ不摂生に走るから!」
ママ「あらー、うん! お邪魔だったかも? おほほほほ」ニヤニヤ
幼馴染「お〜かぁ〜あさ〜んっ……!!」
男「へへへ、じゃあ そろそろお暇します。ほれ、お前もありがとうございますを言わんか」
天使「……やだ」
男「はぁ?」
天使「べーっ!! 先に帰ってるですよぉ〜!! バーカ、バーカ! くたばれアホ!」
ママ「あらまぁ」
185
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/23(月) 20:46:20 ID:3rcM/ydU
男「おうコラロリ天ゴラァー! 靴はきっちり揃えて中に入れと……は?」
男(だらしない妹に居候の教育はこの俺の務め。散らかし放題が許可されるのは一部のみ、といったところで目の前にあった光景を説明したい)
男(妹と名無しが、数年前の懐かしの家庭用ゲーム機に勤しんでいたのだ)
妹「下手くそだなぁ〜。その腕で本気でこのゲームやり込んでたとか言えちゃうの?」
名無し「一々人を煽らないと楽しめないのか、性悪チビ」
妹「はいアウトぉー! それアウトー!! 殺す! 次もギッタンギッタンにぃ――――ありゃ、お兄ちゃんじゃん」
男「……た、ただいま」
名無し「あぁ、鬱陶しいからオレの視界に入るなよ。わかる? 忙しいんだから邪魔するなって意味だぜ」
妹「お兄ちゃんお腹減ったから何か用意できなーい? わ〜っ、またコースアウトですなぁ〜ぷーっ! くすくす!」
名無し「死ね。所詮ガキのお遊びだぞ、夢中になってるとか脳味噌チンパンジー乙、あっ」カチカチ
妹「やーい 雑魚ぉー! ……ん? どうしたの、ぼーっと突っ立ったまんまで?」
男「少しばかりそっちの奴に話があってな!!」グイッ
男(愕然とした。怒りとも言い切れない勢いに任せ、名無しを持ち去り、問い質したとも。何のつもりなのだと)
名無し「さぁね? そもそもオレを招いたのは誰だったか、よーく思い出してくれたまえ」
男「俺だよ、文句あるか!? ……だが、お前からは“関わるつもりはない”と聞いた筈だぞ」
186
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/23(月) 21:14:01 ID:3rcM/ydU
名無し「さっそく誤解するなよな、用があれば自ずと外に出るって言っただろ?」
男「じゃあ、アレは何のつもりだ……善意を仇にして返すのか」
名無し「おっと善意! それ最っ高に偽善の表れだなぁ! キヒヒッ」
男「だ、大体俺の妹は極度の人見知りだぞ! ついさっき会った人間と仲良く遊べるほど器用なヤツじゃないっ!!」
名無し「やー、お前やその他諸々から収拾した知識をひけらかしたらすぐ食い付いてくれたよー♪」
男(収拾、というよりは 掌握なのだろう。この男のポジションを改めて思い返してみれば 主人公の親友ポジ。すなわち)
名無し「情報通の強味っていうかサ、お前以上にお上品な立ち回りが出来るワケ。……危ういよねぇ、ご自分の立場?」
男「……」
名無し「まぁ、お前がイケないよ。こんなオレをわざわざテリトリーにまで招き入れたのは大間違いだったな」
名無し「なるべくオレを自由にさせるなよ、男くん? ……やー、悪い。お呼ばれされちゃった」
男(扉向こうから名無しを催促する妹の声が、無理矢理意識させてくるのだ。自らの過ちを)
名無し「あっ、そうだ。汗臭いから早く風呂に入ったらどうだ?」
男「……何だと」
名無し「善意だろう? 清潔感は大事だって。モテ男を目指すなら第一じゃないか」
名無し「こうやって、つまんねーお遊びに付き合うのも大事だな。あー、ハイハイ! 今行くから面白い顔して待ってろ、チビ助!」
187
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以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/23(月) 21:40:49 ID:3rcM/ydU
男(妹と名無しの間に介入し、侵略を阻止する。言葉にすれば楽なものだが気分は上手く体を働かせてくれなかった)
男(明るい笑い声をバックに負け犬の行進は続き、洗面所へ入る。……灯りが? それにシャワーの水音だと?)
男「天使ちゃん?」
天使『っう……!!』
男(足元へ視線を落とせば、脱ぎ散らかした彼女の服や下着が床に落ちたままである。あれほど一人での入浴はまだ早いと念押しされていたというに)
男「聞こえてるのか? まだ上手く頭洗えないだろ、お前。いつものカッパのやつ置き忘れてるぞ」
天使『……』ザー
男(こちらの声が聞こえていないというより、無視を決め込んだ調子だ。浴室ドアのガラスの先に写し出されている小さな姿が、どうにも気になる)
男「……さっきはどうしてママさんたちにあんな暴言吐いたんだ?」
天使『……』ザー
男「それとも俺に当てたのか。あのクッキーお世辞抜きで美味かったよ、初めて作ったとは思えん」
男「ママさんも褒めてたんだからな、あの子は真面目にやってて 呑み込みも早いし、上達も早いって」
天使『…………て……』
男「え? 何だって?」
天使『入って……きて、ください…………』
188
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/23(月) 22:03:33 ID:3rcM/ydU
男(正直 倫理を侵す真似だけはと、もう遅くとも、誓った人生だったが パンツを脱いだあとでは説得力の欠片も無い)
男(せめてもの腰タオルを巻いて、いざ入浴。間髪を入れず光景に目を背けた)
天使「……何で見ねーんですか」
男「見たらみたで罵詈雑言のオンパレードだろうと思いまして!! ていうかヤバい、流石に禁忌に触れちゃいそうで!!」
天使「別に、悲鳴あげて男くんを犯罪者に仕立て上げる気とかないですよ。誘ったのは自分ですし」
男「おれチャンハ、ドしたらいいノ? コれ」
天使「ん」
男「えっ、え?」
天使「とりあえず頭洗えって言ってるんですっ! さっさと顔隠した手どけて、やれ!」
男(何という、なんという背徳感だろうか、幼い美少女とのマッパなお付き合い。実のところ天使ちゃんとのこのシチュエーションは今回が初ではない)
男(だが、あの時はお互い水着を着用していたからであって、とにかく “危険な香り”を回避できていたのだ)
男「……て、天使ちゃん 痒いところはないですかー」
天使「もうちょい気合い入れてゴシゴシできねぇーんですか? チンタラと、つまんねぇ洗い方を!!」
男「ふ、ふざけんじゃねーよ!? こっちはロリの裸必死に目に収めないようにと!! ――――――」
天使「実の娘の裸が、なに!?」
189
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/23(月) 22:32:09 ID:3rcM/ydU
男「!!」
天使「わたしの裸を見たらどうかなるの!? こっちは気持ち悪いの承知で男くん呼んだんですよっ、あぁ!?」
男「く、口調が変わってるぞ、天使ちゃん……!」
天使「鬱陶しい!! 天使なんて呼び方もウゼーじゃないですか、いつまで自分を特別扱いするんですか!?」
天使「いつになったら、自分の中の自分を見てくれるんですか! ねぇ!? わたしはもう天使じゃないよ!!」
男「天使ちゃん……」
天使「だからその呼び名が気に食わないのに!! いいっ? 天でも神の使いでも、もう無いよ! わたしを見てっ、男くん!」
天使「男くんには、どんな姿で わたし が 見えてる!?」
男( )
天使「――――――なんて。ねぇ、どうして何も答えてくれないんですか? ビックリして頭の中 真っ白になっちゃった?」
天使「……じゃ、ねーんですかぁ? ――――うっ」
男(加減なんてどうでも良かった、小さな身体が悲鳴をあげようと独り善がりに この直に伝わってくる温もりを 確認したかったのだ)
男「卑怯なら卑怯だって……罵倒でも何でもしてくれ……」
天使「…………あったかいな」
天使「男くんは、あったかいなぁ……」
190
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/27(金) 00:51:25 ID:aFPQ8jy.
いいな
191
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/29(日) 22:55:34 ID:Aupa9Jck
男(普段 どれだけこの子を軽視していたのだろうか。気心の知れた仲と思い込み、いつの日かぞんざいに扱ってしまっていた)
男(天使自身は俺との関係性をゆっくりと呑み込んで受け入れようとしてくれていた)
男(ただ、俺だけが折り合いをつけられないままで)
男(なし崩し式にと、事を後ろへ流して優先順位から遅らせていったとして、きっと恐らくそれは、自明だ、拒絶感を拭い切れなかった)
男(生死の境を彷徨う盲人が『今を生きる』など戯言に等しいが、子 とは執着した今からかけ離れ過ぎている。怖い、震える)
男(全部を投げ出してしまえ、と面白がった男には 何よりも重い。あれだけ可愛がって、喜びを分かち合えた子へ、成る程無様)
男(自分可愛さに 目も当てられなくなっていた)
天使「……好きでいてくれる?」
天使「ゼータクは望まないから、いっしょがいい。変化もいらないよ。当たり前みたいな幸せがほしいよ」
男「寂しい思い、二度とさせたくないもんな……本当の俺やお前を知ってるのは この世界で お前と俺だけなんだからな……」
男「傷の舐め合いになんか絶対させないから、約束だ。覚えておいてくれ」
男「俺は、きみだけの俺であり続けると決心する。今後も、好きだが……というよりも 無償の愛を捧げるが」
男「家族として送る愛情でしかない。間違っても、意識させる異性 と見る事はあり得ないと、あらかじめそう言わせて欲しい」
天使「ありゃ、キッパリすぎじゃねーですか!? つーか」
天使「何 感極まって泣いてんですかね、男くんてば もぅ」
192
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/29(日) 23:33:17 ID:Aupa9Jck
妹「あー! 牛乳ラッパ飲みやめろって言ってるでしょ、絶対次の日お腹下すじゃんか! つーか汚い!」
男「自分だってやるくせに何を……風呂上がりの楽しみは存分に湯船の余韻と、くつろぎを味わうことにあるのだ」
天使「お? お、おっ? アイス? アイス来る? 牛乳アイス解禁待ったなしとな!?」
男「承認!」 天使「バンザーイ男くんかっくいー!」 妹「不承認だよ!!」
名無し「つまんねぇ、近所迷惑だから早く各自部屋に篭もれよ。自分の時間を第一に考える事をオススメするね。オレは」
男「それは親愛なる隣人からのアドバイスか」
名無し「嫌味聞いて顔ホッコリさせてんじゃねーよ、冬の海で死ね」
男(部屋には一歩たりとも近寄るなと言い残した名無しは、苦虫を潰したような表情を俺に突き付け 歩み去って行く。どうなっているのだ、奴のキャラ)
妹「お兄ちゃんの男友達って、あのちっこカワイイ人だけって思ってたよ〜。他にいるんだね!?」
男「惚れたか?」
妹「ほっ……惚れるワケないでしょ、昨日今日で会ったばったの男子なんかに! ていうか……でしょ」
男「よく分からんが、お兄ちゃんは安心した」
妹「はぁ!? 何なのさ! すっっっっごくウザいんですけどっ!?///」ブンブンッ
天使「ていうか、あの如何にも感じ悪い糞ガキなんですか? どこで拾って来たんですかぁ?」
男(エサやりと散歩は忘れないから、なんて ホームドラマを懸ける価値は果たして)
193
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/30(月) 00:14:25 ID:1O6xl2qs
男(――――起床。久々に枕を抱えて部屋の片隅まで転がったロリ天を見下ろし、朝日を見上げて頬を張る。気合いチャージ ご利用は計画的に)
男「名無し、起きてるか。お日さま拝めないだろうから実感ないと思うが」
名無し『……朝だ、ですネ。何かオレに用かよ。10カウント始まる前に失せろ』
男「お客さまは持て成される立場なんだろうが? 朝食用意してやったから食べに来い」
男「ガラにもなくスクランブルエッグにベーコンとか焼いてみたぞ。ホテルのバイキングみたいで高まらない?」
名無し『適当に皿によそって部屋の前に置いておけばあとで食べてやらなくもないけど、庭の虫が』
男「俺の手料理は人間に味わってもらう前提の調理でしたが」
名無し『失せろって言ってるだろ、鬱陶しい! そうやって気を掛けられること自体が迷惑だって痛いぐらいわかってんだろ』
男「学校は? 文化祭も目前だぞ、だからこんな日曜日潰してでも準備に向かう義務がある。不服だが!」
名無し『ウソつけや』 男(そこはどうして中々察しの良い)
名無し『むしろ、理解に困る。お前やあの雌人形どもとしたら オレなんか居合わせない方が安心するだろ』
名無し『それとも何か? 目の届くところに置いて監視しておきたいとか……次はどんな楽しいことやって、笑わせてもらおうかな』
男「乗り気でないなら、無理に誘うつもりはないんだ。悪かった」
名無し『やー! 目の上のタンコブからランクアップして、今度は腫れ物扱いか! 居心地いいねぇ〜!!』
男「朝飯と昼の分は 冷蔵庫にしまっておくぞ。六時ぐらいには家に帰るからな」
194
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/30(月) 00:53:03 ID:1O6xl2qs
男(ラフなシャツを装着した妹をお供に通学路を行く俺。聞けば、テンションに身を任せクラスで共同購入したものだという。青いぞ、というか)
男「ライブのコンサートスタッフみたいな感じ。更に落とせば」
妹「ミーハーなファンでしょ? お兄ちゃんの言いたそうなことって大体わかっちゃうよね!」
妹「それより途中で後輩ちゃんと一緒になる予定なんだけど、絶っ対!! 本気で口説いたりしないでね!!」
男「え?」
妹「わ、私の前でって意味だから。本当にやめてよ、嫌なんだもん……」
男「すまん。鳥のさえずりに耳傾けすぎてよく聞いてなかった」
妹「あっそ!! お兄ちゃんの耳って基本 飾りでしかないよねぇ――――あっ」
男(チョコチョコと小走りで追い抜いた小動物が向かう先へ視線を移せば、後輩だ。はしゃぐ妹を笑いつつ挨拶を交す最中、目が合い 微笑まれてしまった)
後輩「おはようございます、先輩。仲睦まじくしていたところを お邪魔してしまって、ふふっ」
男「その含みのある言い様は何なんだろうな、概ね察知しちゃうけど」
妹「とりあえず合流できたし、ここでお兄ちゃんは解散だね。ダメお兄ちゃんは道中おかしな事やらかさないように!」
男「ダメお兄ちゃんと目的地一緒だったろうが、お前」
後輩「……」つんつん
男(適当な体の部位を突かれるだけで勘違いするニッポン男児の多い中、何の御用でしょう)
195
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/30(月) 20:50:54 ID:1O6xl2qs
後輩「先日はどうしてあの人を連れて帰ったんですか?」
男(唆されるまま腰を低くした俺へ後輩がそっと囁く。彼女にとっても彼は頭痛の種という認識なのであろうか)
後輩「今は大人しいとしても、いつまたおかしな真似をしでかすかわかりませんよ」
男「褒められた振舞いじゃないと否定されるのも承知の上でじゃないか、俺も」
後輩「……えっと、私が聞きたいのはカッコイイ言い訳とかじゃなくて 先輩の持つ真意です」
後輩「誤魔化さないで教えてくれたらと思ってます。哀れみを掛けて救えそうな相手じゃないから」
後輩「というより、あなたが配慮してあげるべき相手じゃないでしょう? 私が間違っていますか?」
男(強気に、直ちに止めるべきだと彼女が腕を引いてくれるのは素直に嬉しい。俺を心配してくれる後輩が帰って来たのだから)
男(ところで『昨日の敵は今日の友』という少年漫画の王道を支えることわざがある。この捻くれ者が、疑念を感じるどころかロマンを得た響きだ)
男(残虐の限りを尽くした凶悪なライバルを撃破し、のちの展開で仲間に加わる……いくら「あれ? 仲間なった途端弱くね?」と思おうが、憧れた)
男(可能性を話そう。昨晩、名無しは俺を浴室へ誘導してくれたのではなかろうか。口振りは最悪だったが)
妹「後輩ちゃーん……おにいちゃーん……」
後輩「えっ、あ! ご、ごめんねっ! 別に無視してたとかじゃなくて! あの、お兄さん!」グイッ
男「おおおぉ、急に何だお前!?」
後輩「じ、実は、妹ちゃんのお兄さんから相談されてたの!」
196
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以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/30(月) 21:17:56 ID:1O6xl2qs
妹「相談?」 男(えぇ〜……)
妹「ねぇ、お兄ちゃん 相談って何のこと? 私の目の前で堂々明かされたってのはよくぞ聞いてくれた的なだよねぇ」
男「そ、相談は相談だろうが。気軽に他の人に話していちゃ裏でコソコソしてた理由にならん、かと……」
男(無茶振りにも程があるというレベルではないだろう、後輩。誤魔化し方が急転直下の下の下である)
妹「コソコソぉ〜? じゃあ妹の私には黙ってなくちゃいけないこと 後輩ちゃんに、ねぇ?」
男(青筋を立てる妹から隣の後輩へ視点移動、首が明後日の方向であった。どこまでヘタクソか)
男「(止むを得まい) ……実はだな、幼馴染をどうにか元気にしてやりたくて 色々考えていたんだ」
妹「えっ、幼馴染ちゃん?」
男(散々思考内でこき下ろしておいて 情を使うのはゲスの所業か? 実に笑えない凌ぎ文句であったが、事実に越した事はなかった)
男「そうだ、色々あってアイツも疲れてると思ってな。家族のお前や天使ちゃんに相談しても良かったが」
男「今回は身近な人間以外にも訊いてみて、色々な意見を集めておきたくてさ。方法が偏ってばかりじゃ退屈だろ?」
妹「へー よくわかんないけど、お兄ちゃんなりに考えてるんだね!?」
男(幸いしておバカな美少女の妹で良かった)
後輩「ふふっ! だからまず私が率先して」 男「アメ舐めてようか、後輩は」サッ
197
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/30(月) 21:52:36 ID:1O6xl2qs
男(以後、妹の誤解を解く華麗な話術が続くが 惜しからずカット)
妹「お兄ちゃ〜ん、ぐすっ、たまにはカッコイイじゃんか……!」うるうる
男「止せよ、選択肢少なすぎて照れるしかない (詐欺だ、紛うことなきお涙頂戴の詐欺。主よ、我にどこまで十字架を背負わせるのか)」
男の娘「おぅーい、おーいってば〜! 男ー!」
男(罪悪感に苛まれる、あるいは蝕まれる汚物へ差す一筋の光が。気が付き、挨拶代わりに 掲げられた手へタッチしてやれば、満面の笑みが ぱぁっ と咲く)
後輩「あ、兄さん おはようございます」
男の娘「なああーっ! だから、どうして男いる所 ウチの妹ありきなの!?」
男「やれやれ、お前ら兄妹は家で顔も合わさずに学校に行くのか」
後輩「いいえ、今日は私の方が早出するつもりだったので……普段は仲良しなんですよ? ふふっ」
男(あわよくば どちらかを刺せたらみたいな淀んだ空気を表に出さないで頂きたいのだが)
男「ところで、お前は何自然に腕組んでる」
妹「……とーぜんじゃん?///」
男「ああ、もう……休日出勤はただでさえ老体に響くっていうのに、見てみろ。どいつもコイツもウキウキさせやがって」
男の娘「そりゃウキウキしちゃうよ〜♪ でも部活発表の方は僕たち全然何にも手付いてなか、わっ!?」
不良女「おいっスー、お前ら おはよ」
198
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/30(月) 22:19:33 ID:1O6xl2qs
男(気抜けした声とともに現れた不良女は、男の娘の肩に頭を乗せて 一直線に妹へ)
不良女「へぇ〜 お兄ちゃんっ子か。好かれてるねぇ〜、お兄さん」ギロリ
妹「! ……じゃ、じゃあ この辺で。後輩ちゃん行こうっ!」グッ
後輩「ちょっと待って! あっ、せ、先輩 またお昼休みにでも話を! ――――――」
男の娘「あはっ! 追っ払い方 参考になったよぉ!」 不良女「はぁ!? 今のそんなんじゃねーだろっ!」
男「どうでもいいだろ、別に校門が目の前にあるわけだし。俺たちもさっさと教室まで行くぞ」
男(欠伸を交えて無関心を装うのはある意味この手の主役の嗜みではなかろうか。眠い手を擦りつつ、不良女と別れ、男の娘とトイレへ入ると)
男の娘「どうかしたの? 男、ま、まさか大きい方がしたかった……!?///」
男「バカ、思っても声デカくして言う事じゃないだろうが!」
男「そうじゃないが、何となく目のやり場を求めて後ろの個室とか気にしてみたくなる時もあるだろ」
男の娘「えっ、ごめん。僕はそういうの全然ないかも……文化祭さ、準備もあと一押しって感じだよね」
男の娘「僕がんばってお姫様役やり切ってみせるよ!! だ、だから、男はそんな僕を陰で[ピーーーーーーーーーーー]」
男「え? 何か言ったか?」
男の娘「う、ううんっ!! さ、先 教室入ってるから、どうぞごゆっくりね!?///」タタタ…
男(……オカルト研は、後輩のように元通りになっているだろうか)
199
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/30(月) 22:47:29 ID:1O6xl2qs
先生「――さてさて、みんな この期に及んでとやかく言われたくない気持ちで一杯だと先生も思います」
先生「優秀賞目指してクラス全員が一致団結、とても素敵なことだと思います……でーもっ!」
先生「羽目を外しすぎないようにっ! はい、散れ!」パンッ
クラスメイトたち「わっっっっ……!!」
男(お決まりである朝のありがたいスピーチも短めに、合図とともに蜘蛛の子は如く散らばる。そんな中、俺は先生の後ろ姿を追い掛けて)
男「先生、転校生がまだ来てないみたいなんですが どうかしたんですか?」
先生「ん、さぁ? 親御さんからは何も連絡受け取ってなかったから遅刻ぐらいとしか認識してなかったけど」
男「でも珍しくありませんか? アイツはそれなりに模範に沿う生徒です。登校途中で何かあったなら、連絡の一つぐらい……」
先生「……転校生の心配は良しとして、君の方はどうなの? 名無しくんもいないわよ?」
男「名無しは――――おぐ」
男(突然ドンっとぶつかる何かによろけ、俺は先生の前で尻もちをつく。ぶつかった、だと?)
男(視界には急ぎ歩くも駆けている人間は一人たりとも存在しない。浮かれた生徒もだ。だが、確かに俺は 何か と衝突したのに)
男「……ん? 何だ、この手に感じるやわらかい感触は」ムニュ
?「ひゃあ!?」
男・先生「えっ!?」
200
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/05(日) 21:09:15 ID:BafRgheY
転校生「あ、あっ、あんたって変態はいつでもどこでも〜〜……!!///」プルプル
男「転校生!?」
転校生「問答無用よ!! このケダモノスケベ職人っ、ド変態!!」
男(目覚めの 『鉄 拳 制 裁』 毎度美味しく頂いています、ノルマですから、ではなく)
男(このお決まりのお色気シーンよろしくラッキースケベ発生は別段珍しくもなく、ここに来て驚きなど俺もしない)
男(驚愕の理由、それは何もない曲がり角でもなく、前方不注意だったわけでもなく、転校生との急激な衝突にあった)
転校生「もう、朝っぱらから冗談じゃないわよ、こんなのって……うっ、人の顔ジロジロ見ないでくれない? ……何よ?///」
男「理不尽に殴られれもすれば誰でもこうなるとか思わないのかよ」
男「転校生、お前いまどこから出て来た? ていうか遅刻なんて珍しいんじゃないか?」
転校生「わ、私だって遅刻の一つや二つある時ぐらいあるわよ。ていうか質問攻めにする気じゃっ」
先生「はいはい! その一つや二つ、教育者の立場からは許容できないから。理由ぐらいは先生に聞かせてくれる?」
男(俺の尋問ターンは早々取り上げられてしまったか。だが、先生も今ほど、転校生の登場に同様の反応を見せていたではないか)
男(アレはまるで透明人間に当たったようだった。触れて、初めて体が実体化したのではないかと疑うぐらい、いや、そうとしか考えられない)
転校生「えっ、と、実は寝惚けて私服で登校しちゃったんです! それで家まで着替えに戻っていたら……ん」チラ
男(俺を見た? 何だ、助けを求めているというのか?)
201
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/05(日) 21:53:18 ID:BafRgheY
男「まぁまぁ、コイツのネジが飛んでる乱暴癖はともかく、デマカセをする奴じゃありませんよ 先生。アホだし」
転校生「ちょっ!!」
先生「そうだねぇ、今回は見なかった事にしておくから次は気をつけてよ。男くん」
男「先生、さりげなく責任を押し付けていくの止めてください」
男(ナンセンスなやり取りを交し、去って行く先生を見送ると 傍にいた転校生が俺の腕を掴んできた。というか、引っ張られているじゃないか)
転校生「悪いけどついて来て。ここだとちょっぴり話しづらいのよ。お願い」
男「藪から棒に何だ? 昨日みたいな嫌な出来事ほじくり返したいのか、転校生」
男(得意の嫌味芸だって勿論 時と場合を選ぶだろう。だが、今のは本心である。俺にとっても、彼女にとっても、一息吐く時間が必要だった)
男(俺たちが現在深く共有してしまっているのは、無理矢理にでも遠ざける話題。歪んだ非日常から順風満帆なラブコメへ修正していかなくてはならない)
男(だからこそ、強くこの腕を掴んでいる手へ 苦労知らずの手を添えてみた。しかし、転校生の反応は)
転校生「あ、あんたにだからこそ言っておかなきゃいけないことがあるの! どうしてもよ!」
男(美少女の頼みとあらば、たとえ火の中水の中は然り当然……それに気になることをまだ残したままであった)
男「ふむ、そういえば最近また一つオススメのスポットを発見した。俺のサボりに付き合ってくれるか、転校生」
転校生「行く……ありがとう、変態」
男「(感謝されても変態の呼び名を定着させたがるか、ならば返事は) え? 何だって?」
202
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/05(日) 22:38:57 ID:BafRgheY
男(ショートヘアーの毛先を撫ぜ、愁う彼女の横顔は暴力染みた魅力があった。ギャップ萌えというか味のあるキャラブレの良さの真髄をリアルで目の当たりにす)
転校生「……埃っぽくて長居したくないんだけど」
男「やれやれ 何を贅沢な。サボるっていうのは背徳の行為だ、つまりはだな!」
男(場所も相応に低ランクを、と熱弁を語りたがった俺を制止させるそのジト目である。OK、実は俺もこの部屋が何なのか知らないのだ、転校生)
男(適当に『あ、それっぽい』場所を徘徊して探し当てれば、このザマ。至って人の手も行き届いていない珍しいステージを引き当てたまでは良いが)
男「宿直室ってやつだな。昔は警備員を雇って夜間の巡回をしてもらっていたと友人のお兄さんの友人から聞いた」
転校生「えぇっ、あんた友だちって呼べるの私たちの他にいなかったわよね!?」
男「お前日本語ばかりで気遣いの精神は学んでないの? しかし、あながちウソじゃないな (通常なら錠をされるか、別の用途にされていた部屋が偶然使い放題……お楽しみが、いっぱい)」
転校生「悪いけどカビ臭い所で話す気になれって難しいわ、ていうか無理! この空間が無理!」
男「どこのお嬢様だお前は。どうでもいいから、話の続きを聞かせてくれないか?」
男「いや……そうじゃなくても、俺の方から転校生に尋ねたいことがある」
転校生「あっ…………たぶん、あんたが聞きたいことと私が今から話すこと、同じになると思うわ」
男「何? よく分からん、どういう意味――――オッ」
男(どうした、どうかしたのか 美少女よ。その健康的なおみ足を飾るニーソックスへ手を伸ばして、あ、すごいなぁ)
転校生「凝視しないでド変態!!///」 男「だって!!」
203
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/05(日) 23:15:04 ID:BafRgheY
男(女子の絶対領域、すなわち禁忌とされたパンドラの箱が今開かれてしまうような物。目を背けていられる方が狂気の沙汰ではないか)
男(何を思って彼女がこんなアメイジングを発起したかは他所に、膝小僧? 膝裏? 脛? 足の指? 指股? 気持ち悪い? 構わん、二の次だ)
男「まさか誰もいない場所を選ばせたのは、俺の前で痴女になり切ろうと……」
転校生「ちがうっ!!」
転校生「あんたに、あんただけには見てもらっておきたかったのよ。怖いけれど、証拠になるんじゃないかと思って」
男「は?」
転校生「引かないでよ。いきなり見せようとしておいて今更だけど、きっと男なら」
転校生「わかってくれると思って、こうしようって決めたんだから――――――」
男「…………転校生?」
男(つい先程まで興奮を露わに荒くさせていた鼻息が、静かに冷めていった。併せて 息が詰まる。あれだけ胸躍った禁忌の先へ、俺は目を伏せていた)
男(だって、彼女の右足が無かったのだから)
転校生「変でしょ? 触っても感触とかないのに上から靴下は履けちゃうんだもん」
転校生「丁度太もものこの辺りまで無くって、上手く隠せてるから……男?」
男「アイツか、名無しのバカがやらかしたんだな、大体想像ついてる。許すなんて生易しい真似止めだな、もう我慢できない」
男(神よ、罪深い小心者へ殺めの許可証を与えたまえ)
204
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/06(月) 00:01:21 ID:SlBRxEuY
転校生「 」
男(頭に血がのぼっていく意味を初めて刻み込まれた気がする。儚げな美少女の声はまったく耳に届かず、だが台詞は綺麗に読み取れていた)
男(明日、また少し身体の一部が消え、明後日、また消え、いつの日か 彼女そのものが世界から失われる。判然としていた)
男(転校生が現象に蝕まれる自らを明かしたのは、決して俺に悔恨を抱き続けろと言いたかったのではない。これで良かったのだと伝えようとしているのだと)
転校生「あんたには何もしないで欲しいの。その上でこんな物見せるなんて残酷かもしれないけど」
転校生「元々無かったものが、こうなるんだもの。全然おかしいことなんかじゃないわ」
男「俺にお前がいなくなった世界で生きろって言うのか!?」
男「じょ、冗談じゃない!! お前や、お前以外の誰かが一人でも欠けたらここでも頑張る意味を失うだけだ! 俺は次に何に縋ったらいい!?」
男「残る選択なんて“死ぬ”以外ないじゃねーかよぉ!?」
転校生「……驚いた。あんた結構 色々思い出して来たんじゃない? それともあの神さまの手回し?」
男「もう過去の記憶なんてどうだっていいだろアホ! 俺は今が欲しいっ、お前らと一緒に過ごせる時間だけが欲しい!!」
男「こんな、こんな安直なバッドエンドルート直行なんて見え透いた罠、辿るなんていやだ……やめてくれよ……」
転校生「良い悪いは考えるあんた次第じゃないのよ。それに」
?μk?生「最モ翫實ノыェn択肢ね、mう一つ娯#いあっても罰はあたrないと思うw@よ。男」
男(透けた手が、俺へ差し伸ばされた)
205
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/06(月) 00:49:21 ID:SlBRxEuY
男(名無しの想定した『終末』を辿る一歩は残酷で堪らない一歩であった。マイナスへマイナスの掛け合わせは僅かもプラスへ変わりはしなかった、現実も虚構でさえも)
男(笑って受け止めきれる甲斐性のなさは、自分の未熟からか? 潔く最後を迎えることが正しいのか? まだ青い感性には尊いイベントである)
男(自分へ降りかかった話とはいえ、随分上から目線じゃないかだって? それもその筈 この未熟な一人語りは――――略)
男「――――完璧じゃないか。ほぼ人前で晒しても恥ずかしくない」
委員長「だってよ、みんな!」
クラスメイトたち「「「優秀賞取ったも同然よね! 俺らの努力が世間を動かす、時は来た! 衣装も完璧だもんねー!」」」
男の娘「はぁはぁ、ど、どう? 男、僕の演技とか……だ、大丈夫だったよね!? そうだと言って! お願いしますから!!」
男「ああ、毒を飲まされて倒れるシーンは迫真すぎて危機迫る感覚になったぞ。立派な役者だな、男の娘」
男の娘「え、えへへっ、男から太鼓判押されちゃった〜! みんなみんなぁ〜!」
先生「うふふ、無関心な君が言うなら間違いないって思うけど 本番前のお世辞かな?」
男「俺 椅子に縛り付けられてまで見せつけられてたんですよ? 冗長なら気分関係なしに寝てましたから早く縄ほどいて」
先生「そっかぁ〜、うん、良いじゃない! コレはこれで……あ、ところであんたたちの部活の出し物は?」
男「気にするの遅過ぎじゃありませんか、顧問の先生」
男「ご心配なら夕方 部室に遊びに来てみたら良いじゃないですか! 来てビックリ 持て成し不十分ですよ!」
先生「ほ、報告ご苦労さま……っ」
206
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/06(月) 20:57:13 ID:SlBRxEuY
男(いつのまにやら皆クラス最優秀賞の座を狙う姿勢なのは文化祭効果というヤツだろう、現実でもカップル誕生のタイミングとして絶好と耳にする。陰の者には関係ないが)
男(俺とて、疎ましかったお祭り騒ぎが楽しくなってくる。その後も何度かの予行練習を経て 仕上げへ近づけて行くワクワク感と来たら……)
男の娘「ねぇ、男。僕たちなんか今を生きてるって感じがするよね!」
男「あんなに戸惑ってたお姫様役をここまでこなすぐらいだからな、お前」
男の娘「んー、そうじゃなくってさ、よく分かんないけど楽しい♪ 色んな辛いこともあったけど」
男の娘「みんなとの気持ちが一体化してるみたいな、こういうのって気持ちいいよねぇ〜」
男「そろそろ日陰者同盟解散の危機か?」
男の娘「えっ、あ、あれ? 男はあんまり楽しめてなかったりする!?」
男「違うって、そうじゃないんだが、こんな俺が真っ当に学生生活謳歌して良いのかなぁーと」
転校生「何言ってるのよ?バカ変態が謙虚になってると雨の代わりに隕石落ちて来そうじゃない」
男「そんなに普段ふてぶてしいかよ、俺は」
男の娘「え〜っと、とりあえずお昼にしよっか! ごはーんっ!!」
男(というか元よりそのつもりで三人は動いていたと忘れていないか、男の娘よ。今日は珍しく教室を離れ 校内の食堂へ訪れてみた)
男(残念ながら世間は日曜日ということであり、学食のお姉さま方は不在であるが、広々としたスペースを活用することができるのが大きい)
\ガヤガヤガヤ/ 転校生「これのどこが広々なのよ!?」 \ガヤガヤガヤ/ 男「ワチャワチャしてるな」
207
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/06(月) 21:26:00 ID:SlBRxEuY
男の娘「あちゃー、完全に誤算だったよぉ……漫研とアニ研のTCG大会やってるとか」
男「まぁ、席はいくつか残ってるみたいだが」
男(常日頃教室で昼食ばかりだったからと男の娘が提案しての食堂であったが、これでは落ち着いて食事どころの話ではなかろう)
転校生「ここのかき揚げおソバ安くてチープだけど美味しいって聞いてたんだけど、断念か……」
男「だから食堂牛耳るお姉さま方が留守なんだってば。話聞いてんのかお前」
男の娘「うーん、このまま教室に戻ってっていうのも味気ないし……あっ、そうだよ!」
転校生「何なに? まだ気になってたところがあったりするの?」
男の娘「へへ〜っ! あるんです、これが! 三人が満足できて落ち着く事ができる場所が!」
男「当ててやろうか? ラーメン愛好会の部室だろ」
男の娘「男ぉ! 空気読まなきゃ[ピーーー]だよぉ!?」
男(俺たちの行く当てなど始めから決まり切っているだろうに。それにしても、難聴スキル。この期に及んでまだ頑張るというのか)
男(一時は放っておいてみたものの、残すは男の娘・不良女・オカルト研、か。やり残しは性分に合わないじゃないか)
男の娘「えへへー、部室のカギ簡単に借りてこられちゃった〜♪ フフん!」チャリン
男「やったな、さすが転校生の色仕掛けは一味違う」
転校生「勝手に変なねつ造しないでくれない!?」
208
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/06(月) 21:57:40 ID:SlBRxEuY
男の娘「ん〜、たまには静かな部室でお昼ってのも悪くないよね。静かな」
転校生「約一名が聞いてもわかって貰えそうにないわね、それ、ふふっ!」
男(ママさんがこしらえてくれた弁当を広げつつ、両手に花。悪くないじゃないか。さて、肝心の弁当の中身は、顔面が蒼白になるほど愛情たっぷりである)
男の娘「どうしたの、男? 汗なんて掻いちゃって。具合悪い?」
男「時に、便所飯なる行為を俺は未だに味わった事がない。これはチャンスだ。孤独の悲しみを味わいつつ」
転校生「トイレで食べるとか作ってくれた人の気持ちも考えて非常識よ、マジ変態。……ていうか!」
男(途端に声を荒げ、窓際のハンガーへ掛けられたコスプレ衣装なる物を指差す転校生。バニーガールはお気に召さない?)
転校生「どう見たって際どすぎよー!! こんなのを私に着せようっていうんでしょ!?///」
男「良い客寄せパンダになるんじゃないか」 男の娘「女装より良心あると思うんだけど」
転校生「無理無理むりっ!! 特にこことかヤバいじゃない! Vラインとか、更に網タイツ!? いやぁぁ〜!///」ブンブンッ
男・男の娘「……」
転校生「無視してお昼食べないでってば!?」
男の娘「えぇ、何も本当に転校生さんが着なくちゃいけないってワケじゃないんだからそこまで……」
転校生「オーダーメイド仕立てたとかメール来ちゃったのっ、ここに! ほら、ほらぁーっ!!」
男「(笑)」 転校生「あ゛?」
209
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/07(火) 21:39:20 ID:0l8H470c
一行に別のキャラの台詞連続させると漫画らしいテンポに近くなるな
210
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/11(土) 19:19:42 ID:UGBstVwg
たまに読んでるが、さすがに細かい伏線とか忘れてるな。いつの間にか大長編になってたわ。
211
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/11(土) 21:26:45 ID:WSAk1RMo
かれこれ3年?4年は続いてるのか
212
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/12(日) 01:43:23 ID:ktkflY1k
多少延びてもかまわないので伏線とかキャラ紹介をまとめた振り返り編みたいなのがあってくれてもよいような気はする
213
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/12(日) 17:26:55 ID:M9wOEU9U
そんな事したらまた延びるから、終わったら誰かがまとまればいい
214
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/12(日) 21:29:40 ID:Z2qDD8LQ
男(転校生から肘やら膝で小突き回される俺を見て困り顔で笑う男の娘。この三人だからこそ叶う究極のバランスが昼食の一時を飾る、至高なのだ)
男(そんな中だろうとお構いなく、転校生はきっとアレを着られないのだ、と邪険に愁う自分が心の内に存在する。美少女は騙せても……本当の敵は挙句ホニャララさんである)
男(彼女、転校生は俺に約束させた。「何もしないで」、「黙って時が過ぎるのを待つの」、「”今“を楽しもう」。終末へ備える為の、そうでなければ、供える為の三原則を)
男(やれやれ、参ったじゃないか。この強欲者が抱いた淡い夢と心中し≪不適切な表現が含まれているため 表示できません。≫)
男(≪不適切な表現が含まれているため 表示できません。≫)
不良女「ち〜ッス……って、この挨拶なんかデジャヴ感じんな。時間通りだしょ?」
男の娘「あっ、来たきた。待ってたよ〜!」
転校生「どういうこと?」
男(前触れなく開いた部室の戸から覗かせたのは、辛うじて素行悪そうに魅せる棒付きアメを口に頬張る不良女。転校生と顔を見合わせ、男の娘へ尋ねれば)
生徒会長「失礼する。おや、既に全員が揃っていたとは感心だな」
先輩「やっほー! ラーメン愛好会放課後部活動の延長みたいなの始めちゃいますんで、各自お座りください。おすわりっ!」
男の娘「実は二人には内緒で部室に連れて来るように頼まれたんだ。ご、ごめんね! 騙す様なことしちゃって!」
転校生「だ、騙すって、そもそも私たちに秘密にする意味ある?」
先輩「ウッフッフーン、騙し打ち的なぁ〜?」 生徒会長「抜き打ちと言いたいそうだ」
男「いや、実際何のですか……」
215
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/12(日) 22:07:03 ID:Z2qDD8LQ
男(呆れた素振りでドッキリ成功をアピールさせるメンバーへ目で訊くも、皆 同じ様に含み笑いであった。一体何の企みだと)
不良女「ま、玉には驚かせる側にあたしらが回っても罰は当たらないんじゃないの?」
男「やれやれ、気味悪いな。ここに全員が集まったってことは文化祭の出し物の相談でしょうか」
先輩「ソダネー。わたしたち何にも準備してないからネー」
生徒会長「コスプレ喫茶まがいの詐欺ラーメン屋……これで金銭を巻き上げようと言うのだから其処らの俗な処より悪質」
生徒会長「というか この私が見逃すとでも思ったのか?」
先輩「な、仲間じゃないですかっ、お上!!」
転校生「変な事やらかす巻き添いなんてマトモなら誰だってごめんよ!」
男の娘「だけど構想段階から仕切り直すにも時間足らないよぉ。我慢してこの路線を上手く利用してあげなきゃ、もう まずくない?」
男「そりゃ十中八九不味いに決まってるだろ。やるって言い出して承認貰った上での話なんだしな」
不良女「ん……要はブラックなのに触れなけりゃ問題ないんだろ?」
男(何故そこで俺を見たのか理解しかねるが、努力してみよう)
男「……ならば、提供するのはカップ麺で誤魔化すとしましょう。しかし無銭飲食にしてはお話にならない。ならば」
男「ここは可愛いコスプレに全て委ねてみるべきではないだろうか!?」バッ
男の娘「[ピッ]、[ピーーー]男のコスプレにっ///」 男「客の目が腐り落ちるわ」
216
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/12(日) 22:44:02 ID:Z2qDD8LQ
男「ライブハウスのシステムは知ってますか? チケットを購入していてもハコの中へ入るには謎のドリンク代が発生しますよね」
不良女「あ〜、飲食店と同じ扱いになってるからとかバイトのオーナーから聞いた事あるかも。つーか まさか」
男「喫茶店、不純の無い響きですが カップ麺提供に重点を置きましょう。入店時に500円でワンカップを」
転校生「どう見ても詐欺の他ないじゃないのよ!?」
男「詐欺? いやいや、断じて違います。我々はお客様へ飲食物を提供しその対価としてお金を得る必要があるのです」
生徒会長「し、しかし 客が500円を支払ってまでコンビニやスーパーで売っている物を欲しがるか?」
男「そこで“コスプレ喫茶”の名前が生きるんじゃありませんか、生徒会長」
男「……客は15分間、好みの店員とのチェキを楽しめるサービスを手に入れられる」
男(はっちゃけた一名を除き、猫も杓子も机に項垂れる。俺とて最悪な策である。誰が好きこのんで半所有物を変態へ接近させたいか)
不良女「まずラーメンへの侮辱じゃん……」
生徒会長「そういう問題ではないと思うのだが……どうしたい、部長」
先輩「そうだね、500円なら切りもいいからレジもスムーズに済みそうだよ! ナイスアイディア!」
転校生「だめ……黙ってたらクズの舞台にしかならないわ……」
先輩「えぇ!? 待ってって、そうでもないよ! これなら準備も大分省けるし、最悪カップ麺に拘る必要もないよ?」
先輩「身体張るのは何のため? ザッツ \マネ〜!」 男の娘「ノーノーっ!!」ブンブンッ
217
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/12(日) 23:23:30 ID:Z2qDD8LQ
後輩「……で、私たちにサクラをお願いする先輩の立場は何なんですか」
男「女子すら虜にする美少女たちが働くコスプレ喫茶に興味を持って頂こうと思ってな」
男「まぁ、俺も如何にもな展開をしてやれば都合良くモブどもが飛び付いて満員御礼も目じゃないと睨んでいるワケだが」
後輩「でしたら最初から無駄な頼みとかする意味ないじゃないですか。私も妹ちゃんも暇じゃありませんので」
男「部活動での出し物は二日目なんだからお手暇じゃないですかー?」
男(説明しよう、我が校の文化祭スケジュールは二日間に渡るのだ。俺たちのクラスが張り切って準備しているクラス発表は一日目に披露される)
後輩「先輩と違ってそこそこ付き合いがありますから! それに誰が喜んで恋敵の巣に突入したが」
後輩「っ〜〜!!///」ブンブンッ 男「全身で否定しないでくれないか」
男「ところでウチの呑気な妹はどこにいる? 一緒にお化け屋敷の準備じゃなかったのか」
後輩「い、妹ちゃんはお化け役として演技指導を叩きこまれてる最中です……」
男「ちなみにどんな役を」
後輩「聞いてないんですか? 途中お客さんに『疑似コックリさん』をやらせるんですけど、その最中に机ひっくり返す怒り狂ったお狐様ですよ」
男「(そして現れた瞬間を狙って捕獲した後ハグしたくなるのか)お前は?」
後輩「受付ですよ。あとは兼ねて、写真撮影係ですかね」
男(写真だと?)
218
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/13(月) 20:04:56 ID:nL8RpUos
後輩「どうかしましたか、先輩?」
男「いや、お前が写真なんか撮るんだなと何となく思って」
男(特別変な話でもなかろう。希望した入場者の驚きの一場面を陰から収めて渡す為だとか、何を意外に感じたのだ俺は)
後輩「せーんぱい」パシャ
男「……あのな、お前被写体に許可なく勝手に撮るのはマナー違反だろ」
後輩「えへへ、ごめんなさい。クラスの子から借りたポラロイドカメラなんですけど 案外使い勝手良くってつい」
男「やれやれ、準備が出来てたらもっと決め顔でポーズしてやれたのに」
後輩「ん? 写りは結構悪くないと思いますよ。自然体の先輩が一番なんですから」クスッ
男(狙っていると言わんばかりのあざとさを振り撒く小悪魔っぷり、逆に照れるな。嫌味を感じないのは彼女の涼しげな雰囲気がそうさせるのだろう)
後輩「はい、記念に一枚どうぞ。先輩も良ければ当日私たちのクラスに遊びに来てくださいね?」
後輩「次は ビクビクしてる先輩のことを撮らせて欲しいんですから、ふふっ」
男「(身も心もその悪戯へ委ねてみたい) アホか、性悪めが。それじゃあ妹にサクラバイトの話伝えておいてくれ」
男(というか帰宅してから直接俺が頼み込めば良いだけである。気恥ずかしに負けて早々撤退を余儀されたものか、負け犬の遠吠え的な)
男「……写真か」
男(あの夜、正気に戻る以前と仮定した、後輩が俺の部屋から持ち去った写真たち。彼女が例のアレに関し頑なに話題に出そうとしないというのは、実に気になる)
219
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/13(月) 20:48:40 ID:nL8RpUos
男(失った記憶が再び降りてくる奇跡、様変わりした後輩の姿を見て切に願った。この世界で成し遂げた過去が何の拍子かで戻りはしないのかと)
男(もはや何を忘れ、何を覚えているのか曖昧な自分が酷く不完全な存在に思えて仕方ない。今を全力で楽しみたくても、過去を辿りたい、贅沢だろうか?)
テンプラ「あ葡キ飼負oイTァ0」
男「う゛、わおおおぉぉ!? あんたっ!! な、何平然と廊下で突っ立って……」
男(惜しかったじゃないか後輩よ、後を漬けていれば難なくシャッターチャンスを、なんて)
男(俺があげた絶叫に周囲のモブが振り向き立ち止まっている。例外を除けば、この怪神を認識する事は不可能なわけだ)
男(とにかく、この様な平凡な背景に佇まれていても心臓に悪いだけである。外へ連れ出すべきだろう。大方コイツもそれを望んでいる)
男「ここじゃ返って息が詰まる……来てくれ」
テンプラ「縺ェ繧薙〒譁・ュ怜喧」
男(了承したのか俺の背中を重たい体を引き摺るようにしてテンプラは追ってくる。どんなホラーだと肝を冷やしつつ、改めて俺の前に現れた理由を予想範囲内で模索してみた)
男(一つ、礼を言いに来た。二つ、名無しを手放しにするなと忠告に。三つ、次の厄介事を運んできた。止そう、胃がキリキリしてくる)
男「この辺なら校舎からも離れているし、誰かに見られる事ないだろう。何の用だ?」
テンプラ「……(喋れない)」パクパク
男「不便だなっ、筆談は!?」
テンプラ「……!」ガッ 男「ミミズ這った後より最悪じゃねーか」
220
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/13(月) 21:34:50 ID:nL8RpUos
男(携帯電話を手渡しても碌に字も打てず、神々の形骸化に挫けそうになる。これでは日が沈むぞ。埒が明かん)
テンプラ「……」
男「いや、俺だってあんたが伝えたがってる気持ちとか読み取れればと思ってるよ。だけど人間相手と同じにはいかなくて」
男「表情もなければ仕草からも何もわからん、侮辱じゃなくてな。手っ取り早く用事を済ませられないか?」
テンプラ「……」
男「いつぞやに幼馴染へ代弁させたことがあったろう。アレが現実だったのか夢なのか見当つかな――――」
『復旧までもうしばらくお待ちください。繰り返します、大変申し訳ございません。お客様には……』
男「――――い…………この精神世界みたいなヤツ、ありきたりじゃないだろうか」
テンプラ「二度もお招きしてしまい申し訳ありマセン。迅速な対応を求められてしまったものデスカラ」
男(線路の上で立ち往生する電車の中、向かいの席に腰掛けるは瞳からハイライトの失せた幼馴染と思わしき美少女である。やはり)
男「本題へ移る前に訊きたかったんだが、どうして幼馴染なんだ。ここが現実でないなら、直接憑依してるわけじゃないだろ」
テンプラ「イイエ、この子であるからこそワタシを体現させられるのデス。男」
男「は?」
テンプラ「器、いえ、それ以上にコレはワタシの意思を継ぐ者である。深く、深く貴方を愛する隣人としテ」
男(手の中に包んでいた紫色のエゾキクの花を嗅いで、彼女はこちらへ綺麗に微笑んでみせた。ゾッとするぐらいに)
221
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/13(月) 22:11:46 ID:nL8RpUos
テンプラ「マズは、名無しの件につきまして改めてお礼を言いたく思いマシテ」
男「お、おぉ……だがあんた目線じゃ根本的な解決にまだ結び付いていない筈じゃないか? あんたはあの男を」
テンプラ「その根本を覆さんとする事象がアナタへ降りかかってしまッタ。ワタシの望みは男の真なる幸福デス」
テンプラ「ぶっちゃけ歯痒い思いをされているのでございマショウ!? ネェ!?」ガバッ
男「何だよ何だっ!? いきなり跳び付くんじゃねーよ!!」
テンプラ「アナタ内心穏やかではない筈! 大切な幸福を一つ手放す、ノット! そんな物全然ハッピーじゃないデースッ!」
男(このエセ外国人の様な突然変異した言動は何ぞや、と一歩引いて待てば、テンプラは腰に手を当て世迷言を連ね、俺へ提言してきた)
テンプラ「アナタが、この世界の”神“となれば良いのデス。男!」
男「……何だって?」
テンプラ「ご自身が望む世界の在り方を求めるのでアレバ、それは自身が管理し 時の流れを牛耳るべきではありませんカ!」
テンプラ「ワタシは男の水鏡でアリタイ。どんなに隠し通したいという想いすら、このワタシには留まりなく流れ込んできマス……悲哀デス」
テンプラ「男はコレマデにどれだけの逆境を跳ね返してきましタカ? ピンチこそが強味、背水の陣を味方につける悪運の持ち主ではありませんカ?」
男「……もう、冗談は休みやすみで……頼めないか テンプラ。意味不明なんだが……」
テンプラ「聡明なアナタならば理解し終えているに違いありまセン。かの庭を統べる主となるのデス、男」
テンプラ「ココに生ずる現象を凌駕シ、システムを掌握する万能の存在ヘ。――――あの娘を救う奇跡は、アナタが起こすのデス」
222
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/13(月) 22:47:54 ID:nL8RpUos
天使「――――じゃん、けん!」
天使・名無し「ぽんっ!! ……あいこでしょ、あいこでしょ! あいこでしょ!!」
天使「お、大人しく自分に譲らねーってんなら酷い目見るだけです。この学生ニートめが」
名無し「縦に裂けて死ね。こっちは昼飯後のデザートが掛かってる、死活問題だ。お子さまの別腹事情と一緒にすんな」
天使「ぐぅぅぅぅわぁ〜!! この不浄な巻きグソを楽園に招き入れたのはどこのバカ野郎ですか!? チ○カスがぁ!」
ママ「もうケンカしないの! プリンならもう一つ別のがあるから、ここは年上の君が我慢してほしいなぁ〜、ね?」
天使「やーい! やーい、ぶぁあぁあぁか!!」 名無し「脳漿ぶちまけて派手に死ね、糞ガキ」
幼馴染「……ていうか、名無しくんはどうしてウチにご飯食べに来てるの?」
名無し「昼食も用意してあると冷蔵庫開けたらラップに包まれた冷や飯とのりたまが添えられてあった。あんたならどうする?」
幼馴染「厚かましいよ……あたしはよく知らないけど、君って思ってた感じと全然違うかも」
名無し「へぇ、気に食わないと真っ先に否定に走るのか? 貴重なお利口枠かと思いきや、まんまと騙されたよ」
天使「べーっ、だ! お前なんかに誰が優しくしてやるもんですか、早くどっかに消え失せやがれですよ!!」
ママ「こら天使ちゃん! ごめんねぇ、私は名無しくんもい〜っぱいお持て成ししたかったんだけれど……名無しくぅーん?」
名無し「…………邪魔した。腹ごしらえに着いて来いよ、ガキんちょ」グイッ
天使「はぁ!? ちょ、何ですか! 今度は自分を誘拐して身代金をっ! お、男くんヘルプミ〜!?」
223
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/19(日) 21:00:17 ID:r5/KfTsw
男(間近まで迫られていた顔が離れた。こちらを見下ろす表情は恍惚としており、先程まで鼻息荒くさせていたテンプラは何処へ行ってしまったのかと)
テンプラ「男、アナタには素質がありマス。コレでも控え目にお話させて頂いたつもりデスが」
男「……神? 奇跡だと? ある意味新世界に召喚された俺が神さまか?」
男(聞こえは良いが、非常に臭い。理由はわからないが簡単に首を縦に振ってしまえば 代償に何かを失ってしまいそうな)
男「(危険なオファーが身に降り掛かったと直感が告げている) すまん、そういうのウチ間に合ってるんで」
テンプラ「怪しい宗教か新聞勧誘と同等にされては困りマス!」
テンプラ「アナタを長く見守ってきた者としテ、至高の提案であるとワタシ自負していマス。一から十、百をもコントロール可能となるのデスから」
男「この俺はクリエイター志望じゃなく、常にプレイヤー側でありたい。大前提から勘違いしてるぞ」
男「そんな仰々しいのじゃ、まずお門違いだろうよ。テンプラ?」
テンプラ「はぁ、勉強にナル…」 男「メモんな」
男「胡散臭いネーミングの奴からされる妙ちくりんな話に乗りたがる物好きに俺が見えるかよ。一昨日忘れた頃に聞かせてくれ」
テンプラ「……デスガ、男。実は惹かれてマスよね? ビ少女を救う手立てとシテ」
男(神か天使の名を冠する色者には思考読取能力がデフォで備わっているとでもいうのか?)
男(プライバシーの侵害を他所に背中から浴びせられた甘言である。実際転校生の為にも助言を仰ぎたくあって、テンプラを誘ってみたが)
テンプラ「ただただ起こる悲劇を見送るのが男デスカ? 心を苦痛に蝕まれながラ」
224
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/19(日) 21:42:11 ID:r5/KfTsw
男「て、転校生は、俺から助けられたいだなんて望んでいない……放っておいてくれないか……」
テンプラ「彼女が滅びを受け入れたがっていると思えないノでショウ?」
テンプラ「そして大人しく誤りへ辿る道を歩みたがるアナタではありマセン。お人好しは主人公の専売特許ではありませんカ?」
男「放っておけって言ってるだろっ!!」
テンプラ「失礼しまシタ」
男「俺がそうするって決めたんだ、ぽっと出のモドキに喧しくされる筋合いなんてこっちにはないんだよ!!」
男「テンプラなんてふざけた名前名乗りやがって気が狂ってるとしか思えないな、あんた! 面白い自虐ネタだ!」
『復旧までもうしばらくお待ちください。繰り返します、大変申し訳ございません。お客様には……』
男「うるさい! もう十分だ、帰らせろ! 畜生……俺の中を土足で踏み込んで来たのが間違いだったんだよ、テンプラ」
テンプラ「ほらマタ迷っていマス、男」
男「何!?」
テンプラ「葛藤を胸の奥に隠すことが愚かと一度はあの子ラから気付かされたのデショう。過ちを繰り返してはなりマセン」
テンプラ「ワタシはアナタの良き理解者であり、良き隣人デス。ならば 破滅を回避したく考える男に味方するのが道理であれ、ト……」
テンプラ「覚悟が決まり次第、ワタシへその身を委ねるのデス 男」
テンプラ「我が存在を賭けテ、かの力を託しマス。授けましョウ。アナタの理想たる世界ヲ――――」
225
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/19(日) 22:35:20 ID:r5/KfTsw
男「――――――自己犠牲が美徳とでも語りたいのか、やれやれ」
男(ストレートに受け取って反応すれば、テンプラはこの俺に人間をやめろと言うのだろう? 苦肉の策か最後の手段かも馬鹿らしい方法だ)
男(奴の言う事が正しければ 念願であった美少女ハーレム酒池肉林パーティも難なく叶うやもしれない。煩わしいだけの難聴スキルに振り回される事もなくなる)
男「(望めば、更なる美少女の追加だって) 待てよ、割と良い事尽くめにならんでもないのか?」
男(いやいや、あんな啖呵を切っておいて脛擦りでお願いしますでは恰好がつかない所ではなかろう。ドラマがない。凌駕したカスが誕生するだけである)
男(そういえば テンプラはまた何処かに消えたのか。あの奇妙な電車の中から一転し、小さな公園のベンチに置き去りされた様にして俺は座っていた)
男「何が気に食わなかったんだ、俺」
男(立ち上がって学校へ戻ろうとしたにも関わらず、再び制止した俺が放った独り言である。何って、テンプラの神提案じゃないか)
男(まずどんな異常をきたすかに対する恐怖がないとは勿論言い切れない。だが、神となったところでこうして主人公となり、自身が楽しむスタイルを保つ事も可能ではないかとテンプラの口振りから想像できる)
男(どうせ現実では捨てた生活を送っていた。このまま気持ちの良い毎日を美少女と面白楽しく過ごせるのであれば、多少の変化あれど、悪くないのでは?)
男「……ていうか俺死にかけの状態だった、でいいんだっけ? 確か……うん、そうだったはず」
男「未練も、特になければ……そうだ。俺って死ぬんだぞ。思い出せたじゃないか! つまりあの世みたいなものだ!」
男「死ぬ!?」
先輩「は、早まるなーっ!」ドンッ
男「ぐえ!?」
226
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/20(月) 19:58:09 ID:3j6RFTDk
男「先輩さ、んぐぐぐ……ぐへへ……! (顔面を圧迫するヘビーな武器、質量を持ったたわわの果実も時として凶器である。覚えのある感触から名前を言い当てれば)」
先輩「へ? あ、あぁー! ごめん! 男くん苦しかったよね!?」
男「く、苦しい以前にとりあえず上から退いて貰えたら助かる、か、と」
先輩「えぇ? 何って言ってるの?」 男「ロープ! ロープ!」バンバンッ
男(ラッキースケベに変わりないがこの桃園を堪能すればするほど窒息から逃れられないのだ。幸せ固めここに極まれ)
男「……つまり偶然通りかかったら死に急いだ男子生徒を見掛け、衝動に駆られてしまったと」
先輩「そうなんだよ! ていうかそれが男くんだったなんて思いもしなかったんだから!」
先輩「で、でも男くん。死ぬなんて簡単に考えちゃダメだよ? わたしはまだまだ男くんに生きて貰わないと、こ、困るんだもん……!」
男「だから別に死にたがってたんじゃないと言ってるでしょう。先輩さんの早とちりですよ、まったく」
先輩「そう? 何だぁ〜だったら早く言ってよ、もう! ……ムネ///」
男(今 何と仰られたのか尋ねてもよろしいだろうか)
男「はい?」 先輩「わーわー!! 何でもないよ、全っ然!?」
男「何でもない人の誤魔化し方じゃないでしょう? 俺で良ければ勘違いさせた罪滅ぼしに」
先輩「はぁ!? セクハラするつもりなの!?///」バッ
男「そんなの濡れ衣すぎるじゃないですか」
227
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/20(月) 20:31:53 ID:3j6RFTDk
男(何故見計らったタイミングで彼女とのイベントが発生したかを説明すれば、部の出し物に使う備品の買い出しに外へ出ていたらしい)
男(イベントと呼べるほど濃厚な会話をする事なく、荷物持ちとして校内へ戻ってきたわけであるが)
先輩「男くんに会えて助かっちゃったよ。わたし、こう見えて非力な女子なものでして! えへへっ!」
男「箸より重いぐらいで音を上げる先輩さんとは思えませんけどね。この程度ならお安い御用なぐらいです」
男「そんな事より……本当にコレ全部必要になる物ですかね」
先輩「当たり前〜♪ 部室の中も適当に華やかに飾りたかったし、備えあれば憂い無し! だしょ?」
男「明らかに不要じゃないかってアイテムが混ざってるのは触れない方が良いんですか。よっこらせ」
先輩「いまのオッサンみたいだネ」 男「真顔で指摘しないでくれません?」
男(授業も無いのに放課後とすれば違和感たっぷりであるが、各々のクラスの準備を終え次第集合を掛けると先輩は言う。余所余所しいぐらい)
男「あれ、もう行っちゃうんですか?」
先輩「わ、わたしも忙しいんだよ〜! 男くんだっていつも忙しそうにしてるじゃーん、ここはお互い様ってことで!」
男(何かを隠す素振りであるのは一目瞭然。欺くにしても早々俺から逃れたがるのは常日頃の先輩を知る俺として、矛盾を感じざるを得なかった)
男(先程のラッキースケベの恥じらいの延長であれば可愛らしいものだが、どうにも不穏を秘めた作り笑顔を取り落とせというのは、性分じゃない)
男「待ってください、先輩さん。どうしたんですか?」
先輩「えっ……い、いやぁ〜 そ、そこで止めちゃうかなフツー……」
228
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/20(月) 21:05:42 ID:3j6RFTDk
男(捉えた、と言うべきだろう。戸惑う彼女へ接近しながら言葉を投げる。混乱させないよう、掻き乱さないようゆっくりと慎重に)
男「悩みがあるなら伝えて欲しいと言ってくれたのは先輩さんたちじゃありませんか。俺では不十分ですか?」
先輩「よ、世の中には触れないでおいた方がいい事もあると思う、ような……昨日みたいな」
男(確かに不条理から離れた位置にある彼女たちにしては、先日合わせてしまったような目から遠ざけるべきである。非日常とは理不尽に位置する)
男(これ以上振り回したくないと思う気持ちが彼女の心のケアに俺を走らせているのだろうか。残念ながらコレでは真逆の行動じゃないか)
男「……昨日見たものは全部ウソだったんですよ。廃墟に侵入してテンションが振り切れたせいもあったと思えませんか?」
先輩「そうじゃないよ!! そうじゃなくって、男くんまだわたしたちに何か隠してるんでしょ!?」
男(成る程、アレで真髄を目撃した気でいる。クラスメイトは宇宙人的なファンタジーに胸踊らせる気分は誰しも胸弾ませる設定だろう)
男(だが、このまま先輩や他の美少女たちまで引き返せない場所まで引き摺りこむのは得策ではない。巻き込んでしまったとはいえ、どうにか――――)
先輩「――――転校生ちゃんのあの足、何なの!?」
男「え?」
男(ではなかろう、が、頭が一瞬にして真っ白と化す。転校生の足だと。どう考えても例の事象に関する訴えだ)
男(転校生が、俺以外の人間に晒した? バカな、彼女はそこまで軽率な行動を取るタイプではない。な、ならば、何故 先輩が!)
先輩「……わたし 見ちゃった。転校生ちゃんが、男くんに見せてるとこ」
先輩「ご、ごめんなさいっ!! ごめんなさい!!」
229
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/20(月) 21:50:47 ID:3j6RFTDk
男(幾度となく反覆される「ごめんなさい」だけが部室の中を木霊していた、のだろうか。……見られていた?)
先輩「あ、あそこはわたしもよく使ったりする隠れスポットの一つで、今日もコーヒー飲みに入ろうとしたら」
先輩「み……見ちゃった……怖くなって二人の前にも出て行けなくなって、あとで部室に呼んで色々聞き出そうと思ったんだけど……こ、こわくて」
男(俺の、平穏が乱される。グルグルと不穏と共に掻き混ぜられて、そうして世界に、ヒビが)
先輩「さっき男くんが『死ぬ』なんて言ってたのも、本当に怖かった! だ、だからわたし、わたしね……っ!?」
男「うわあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!?」
先輩「ひっ!?」
男(緩やかに悲鳴を上げていた精神がポッキリと折れた音がした。善も悪の区別がつかず、自己を確立できず、揺らぎにただ身を任せて、絶叫していた俺)
男(引き金なんて何であろうと関係なかった。端から脆弱な精神を強靭に見せつけるべく保った易い自己暗示も、大袈裟な自信でも、勝ち目なんてなかったのだ。器が悪かった)
男(気が気ではない。床に崩れて頭を押さえ込んだまま我を失う自分を客観視してみた感想を述べよう。ここに美少女も好感度もありません。ガラスのハートが壊れました)
男(常人でいられる境界線を越えた……鋼の意思は? 妥協を知らないと豪語した過去の自分は何処へ。……未熟すぎる、ついに壊れた)
先輩「 」
男「やめろ! やめろやめろやめろ、もう止めてくれ! 嫌だ! 俺が何したっていうんだ!? 俺は何も悪くないのに!!」
男「どうして、どうして悪い方向ばかりに進むんだ!? お、俺がこんなの望んでるか!? 楽しく生きられたらそれで良いのに! 何で!?」
男(失敬、醜態を晒してしまった。悪いがこっちは建前だ)
230
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/27(月) 18:01:29 ID:.JZxIexQ
お酒の場に呼ばれたのでちょっとお休み。来週日曜日再開
231
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/03/03(金) 03:26:31 ID:IsXw2vGs
やっと現行に追い付いた。
乙!
232
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/03/05(日) 17:00:13 ID:ZA81pPsA
神になればハーレム作り放題だな
233
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/03/05(日) 21:00:41 ID:xvh/q99o
男(完璧に怯え切った先輩を放って取り乱していた。無我夢中に声を荒げ、吠えて、周りの物に当たり散らす、これぞ獣の有り様だろうか)
男(通常なら美少女へ即取り繕おうと『男くん』の仮面を被ろうものが、冷静ではいられなかった。いきり立つでは済まされない)
男(ただ一言で表せられるならば、崩壊に等しい)
先輩「あっ! お、男くん待って!! どこ行くの!?」
男(制止を求めた声に応える余裕も無しに、パニックから視界が真っ白に染まりつつある恐怖から部室を逃げる様に飛び出した俺)
男(彼女が伸ばした、差し出した手が救いに見えたらどれほど良かったものか。正気を失った自身の状態に気付きながら、彼は絶望を加速させた)
男「――――――がっ!?」
男(ぶち当たったのは大きな壁でもなければ……床である)
「男くん、急に飛び出してくるなんて危ないわ。怪我はない?」
男(怪我、怪我らしいと言えば鼻の奥から熱い液が垂れて来る感覚があるぐらいだ。転んだ? 足元を確認すれば見覚えある特徴的な杖が、いや、それよりも)
オカルト研「そんなに私の顔を覗こうとされても、困る、わ……」
男「お前……」
オカルト研「大変、鼻血が出ている。そこの一般人 すぐに救急箱を用意して」
先輩「い、一般人ってまさかわたしの事言ってる?」
オカルト研「早くしなさい。男くんの命に関わる一大事よ」
234
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/03/05(日) 21:44:05 ID:xvh/q99o
先輩「鼻血止まったかな? ごめんね、わたしが変なこと口走ったりしちゃったから」
男(介抱、というか 渡されたポケットティッシュを使って自分で止血しているだけであったが、血が流れたお陰か幾分頭がスッと黒い靄を払っていた)
男「……オカルト研はしばらく自宅謹慎だったんじゃなかったのか?」
オカルト研「そのつもりだったけれど、眠っている間に揉み消されていたわ。よくあるの」
男(突っ込む元気は、あと少し失せたままでいようか)
オカルト研「冗談よ、安心して欲しい」
先輩「うーん、冗談なら尚更どうしてここにいるのか気になるというか〜……これ野暮っぽい?」
男「(野暮ったいだ) とにかく事情はどうあれ教師たちに見つかったら問題だぞ。俺たちは見なかった事にするから、すぐに」
オカルト研「その前にお詫びさせてくれないかしら。男くん、そこのあなたや、他の人にも」
男(反応を待つより先に深々と頭を下げてみせたオカルト研に、虚を突かれる。すぐに先輩が近寄り肩を支えるが、一体何が起きた?)
オカルト研「この程度で許されるとは到底思えないし、私自身も許せない。それだけの迷惑を掛けてしまったわ」
先輩「も、もういいよっ! 事情はよく知らないけど反省してるって気持ちはすごく伝わったから頭あげてさ、ほらっ!」
オカルト研「男くん……ごめんなさい、何と謝っていいか。謝罪がこんな形になるなんてあなたも納得してくれないと思っている」
先輩「男くんもとりあえずいいよね!?」
男「……判らない、もう」
235
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/03/05(日) 22:22:38 ID:xvh/q99o
先輩「そうそうっ、全然意味わかんないって――――何でさ!?」
男「……」
オカルト研「ええ、当然の回答だわ。私としても偽られて励まされるよりずっと嬉しい」
先輩「か、換気しよう! そうだ、換気しましょう! 悪い空気を外へ逃がせば二人も落ち着くと思うなぁ〜っ!!」
オカルト研「悪いけれど一般人さん、少しばかり男くんと話がしたい。お願い」
先輩「っー! ……いいけど、難しい話はなるべく避けてあげて欲しいかな」
オカルト研「心配要らないわ。シンプルすぎて逆に突拍子もないぐらいだもの」
オカルト研「ありがとう、素敵な部長さん」
男(有り有りと不満を浮かべながらも退出してくれた先輩と目が合うも、俺の方から視線を落とす。最適解なんて最早存在しないのだ)
男「……何だ、その何でも分かった気でいるみたいな雰囲気」
オカルト研「不満かしら?」
男「不満? 気に食わないなら突っ掛からないだろう。このタイミングで都合良く現れたことに関してもだ」
男「名無しのお人形になり下がった自覚はあるかと尋ねたらウケるかね? まぁ、解放されていようがいまいが、俺には元のお前の記憶がない……」
男「まだこんな哀れになった俺を追い込むのか? ……修正が必要だな」
オカルト研「悪霊の仕業ね、男くん」
236
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/03/05(日) 23:13:49 ID:xvh/q99o
男(悪い事をすべて悪霊のせいだと責任転嫁してしまえば楽になれるのかと、その不思議言動に唆されてしまいたくもある)
オカルト研「覚醒に伴い男くんの精神が弱まっている。悪霊はそのままあなたの身体を自由に奪うつもりよ」
オカルト研「器として最適という認識が深まってしまったのね、男くんは男くんが思う以上に強大な力の持ち主なのだから」
男「このままじゃダメだ、このまま進んだところで結末なんて知れてる……望まない終わりだ」
男「だから、修正するしかない……やり直すことは罪じゃない。1が0に戻るだけじゃないか」
男「こんな辛い思いと心中するぐらいなら、俺は――――」
男(神を名乗り、完全なる支配をこの手にする道が示された。限りなく立場も現状も大きく変化し、終わりすらも永遠に訪れないルートが)
男(“救い”を縋った先にあったのは、やれやれ、最終的に自己犠牲ではないか。テンプレよ)
『 覚悟が決まり次第、ワタシへその身を委ねるのデス 男 』
男(…………)
オカルト研「抵抗しているのはあなたの本心だわ、男くん」
男「え?」
オカルト研「悪霊の囁きは正に甘い汁。それでも受け入れられないのは、あなたがその先に答えを見出す事ができていないから」
オカルト研「男くんは真の選択に迫られている。それこそ、やり直しが利かない、これが正真正銘の最後よ」
⇒ これより先の選択に よって セーブデータを 失う場合があります。
237
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/03/05(日) 23:21:24 ID:xvh/q99o
⇒ 記憶を リセットして カミになりますか ?
⇒ 現状を 維持しますか ?
238
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/03/05(日) 23:40:26 ID:xvh/q99o
⇒ 記憶を リセットして カミになりますか ?
快楽を追求するあなたに相応しいENDになるでしょう。
嫌悪という感情から遠い視点から見られる天にも昇る心地良さを獲得し、爽快間違いなし。
ヤキモキとした思いを味わうことなく、快適な カミライフ を お送りできること必至!
深刻な悩みや問題に振り回される心配はもうありません! あなたこそが この世の カミ !
Yes or No
239
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/03/05(日) 23:53:10 ID:xvh/q99o
⇒ 現状を 維持しますか ?
警告:実に愚かしい選択項目だと思われます。非常に推奨できません。
どう足掻いても絶望の未来を免れません。あなたは 極度のマゾヒスティックの持ち主でしょうか?
ガソリンの味を知りたい気持ち悪いぐらい変態でどうしようもないあなたに捧げる唯一の選択肢であることに違いありません。
< memento mori >
Yes or No
240
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/03/06(月) 08:23:48 ID:IHPFj6J2
memento moriか…
カミENDならおそらくリセットがセーブ消去だろうし、男さんはどちらを選ぶのだろうか
241
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/03/06(月) 09:48:01 ID:QAa3022.
ゾクゾクする
242
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/03/06(月) 19:11:10 ID:EzUQHzok
memento moriって死を忘れるなという意味のほかに、今を楽しめという意味もある
243
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/03/06(月) 20:01:45 ID:c/tiJbOQ
⇒ 本当に これで よろしいですか ?
『 Yes 』
⇒ 二度と 繰り返されません。あなたの 選択は これで よろしいですか?
『 Yes 』
⇒ 受諾されました。
244
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/03/06(月) 20:38:37 ID:c/tiJbOQ
天使(――――ゴゴ、ゴゴゴゴ、地鳴りにも似た音が全身を震わせました。一度や二度じゃ収まらず、音は唸り続けて、それは まるで悲鳴のような)
名無し「そら、直に限界がくるぞ」
天使「はぁ?」
名無し「分からないのか、と言っても お子様には関係無いかもしれないな。無限は創造できる物じゃない」
名無し「この世界の管理者である主が耐えられなくなったのさ。飽きるぐらい時の流れに逆らい続けてもみろ、神すら狂う」
天使「サッパリ何言いてーのかなんですが! そのカッコつけた言い回し疲れねーんですか、おえっ!」
名無し「無意識だろうが神殺しに近い行いに奴は手を染めていたわけだ。……その神は大層お前のオヤジをお気に召しているぞ」
天使(男くんの事を? コイツの言う『神』とは、元主を? いや、そうじゃないんだとすぐに思い知る)
名無し「やー、お子様を散歩に連れて来た意味 見せてやろうか?」
天使(ここは男くんたちが毎日通っているガッコーなる場所。名無しは自分の頭を鷲掴むと 無理矢理壁から その光景を見せつけた)
天使「……男くんは、どーしてあんなに苦しんでるんですか!?」
名無し「そりゃあ苦しみもするだろう。アイツはここへは何の為に存在する? ただ自分が良い思いをしたかったからだぞ」
名無し「理想が叶う筈であろう場所で、地べた這いずって苦汁を啜るのが望みだと思えるか?」
天使「し、知りませんよ!! 大体悪いのはお前が男くんに変な事をしたのが原因じゃねーですか!!」
名無し「勿論。でも オレは最後まで主の意思に基づいた行動しか取っちゃいないんだぜ、恨むなよ」
245
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/03/06(月) 21:19:18 ID:c/tiJbOQ
天使(この男を恨むのがお門違い? 戯言に頭が割れる程 怒りを覚えた。ならばあの人の痛みは誰が齎したのか)
名無し「簡単だろう。全部アイツが自分で勘違いした道を走り続けたからこその始末じゃないか」
天使「あぁん!?」
名無し「自業自得とでも言えば、納得してもらえるか? そもそもお前と出会った時点で奴は裏側に片足を突っ込んだんだぞ」
名無し「覗く必要もなかった月の裏側だ。常人が知る余地もないブラックボックスを抉じ開けたからこそ……矛盾が生じた」
天使(その意味とは、幸福を追求せざるを得ない状況を蹴ってまで未知を追ったあの人が証明となるのだろう)
天使(男くんは終始色惚けているべきだったのだ。己を取り巻く環境に疑問を感じず、祭り上げられ、理想を胸に死ぬべきであった)
名無し「何の為に施した『難聴』なんて仕掛けだ? アレの過去を反映した産物なんて神の苦しい言い訳に過ぎない」
名無し「あえて 遠ざける為に用いた処置だろうが。……それを、あの女が壊したことで 神を揺らがせてしまった」
天使「違う……そんなの……」
名無し「理想は理想であるからこそ尊くて、夢見がちになれるな。いいか? もう後戻りできないぞ」
名無し「オレも お前も、他の連中だって同じだ。みんな巻き込まれた。……姉さんは奴を排除することで維持を狙ったが」
名無し「どう足掻いても遅すぎる……よく見ろよ、ガキ。お前のオヤジが世界の行く末を決める選択者であることを」
天使「う、あ……」
天使(世界がもう持たない。その限界が訪れた。私の小さな掌に ノイズが走る。世界共々に消去されるのだ、と)
246
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/03/06(月) 22:07:52 ID:c/tiJbOQ
名無し「……オレたちが存在できるのはこの場所だけらしい。奴が次に否定すれば、二度と修復される事なく全員仲良く無になる」
天使「……」
名無し「オレはそれを心から望んでいた、主の意思から男の記憶を際限なく削って復旧を願っていなかったワケでもないが」
名無し「あの時 姉さんがこれ以上奴に余計な事をして、何かしでかしてしまう前に消してやれたら……あんなに感情的になったのは初めてだ……」
名無し「主と決別できた事で、怖いと思えた……感情だ、オレが憎悪の次に覚えた感情は恐怖だった……」
名無し「……なぁ、オレは破滅願望なんてくだらないと考えている。消えたくない」
天使(震える体を自らさすって恐怖を静めようとした名無し。飄々とした態度の化けの皮が剥げれば、やはり人間を模倣した何か)
天使「――――自分は、私は、破滅とか難しいことわかりません。だけど 男くんがこのまま苦しいよ、苦しいよ、と悶え続けるのなら」
天使「二度と、全部無かったことにできないのなら……」
天使「ここから あの人を 追放してやりたいと思うのです!!」
名無し「……ダメだ、話にならない。自分が言った意味を理解しているのか? 糞ガキめ」
名無し「アイツがいない世界に存在意義なんて一片も無くなるぞ。つまり オレたちは用無し、消えるんだ」
天使「消えねーです。ううん、たぶん生き続けられると思うのですよ」
天使「男くんの中で……こんな不確かな箱庭で一日一日を送るより、ずっと有意義に代わるんじゃないかな」
天使(儚いよりも意味のある足跡を残す方法、お父さんを生かして帰すのです)
247
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/03/13(月) 19:55:21 ID:1pJLe.cw
報告、PCちゃん死亡PCちゃん死亡
しばらくお休みなさいします……うぅ
248
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/03/13(月) 22:33:00 ID:8UglLi5Q
こんな良いところで殺生な…
でも何年も追っかけて来た身としては今更数十日開いたところで誤差の範疇なので復帰楽しみに待ってます!
249
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/03/13(月) 23:00:46 ID:Doy8CNzI
データ削除されたのは他でもない作者だった
250
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/03/16(木) 22:30:17 ID:N6QWSS8k
ちゃんと完結するなら俺がパソコン買って送るけど?
251
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/03/17(金) 01:37:32 ID:N6CqXxFc
PC南無……
完結に向かっていること自体は明らかだな
252
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/03/19(日) 20:17:25 ID:lltc2Qzo
男(ーーーー閉じた瞼をおもむろに開き、急かす事もしなければ 沈黙を保ったままの彼女へ眼差しを向けた。実直に)
オカルト研「心が決まったみたいね」
オカルト研「こんなに綺麗な瞳をしている。きっと後悔も生まないわ、私が保証する」
男「・・・・・・なぁ、お前は何者なんだ? とか尋ねるのは野暮かもしれないな。それに俺もせっかく決めた覚悟を揺らがせたくないし」
男「チッポケだとからかわれても、アホだと罵倒されようと、この気持ちに嘘はない。俺のやり方は最初からいつだって」
男「妥協しない、なんて」
オカルト研「そう・・・・・・じゃあ諦めない不屈の精神の持ち主くんは、これから何をしてくれる?」
男「文化祭の準備に戻るんだよ。あー、ダルいダルい。どうせまたクラスの奴らか文句言われるんだろうな・・・・・・」
オカルト研「[ピーーーーーー]」
男「おい、何やってるんだ? オカルト研もさっさと後ろ着いてこい」
オカルト研「えっ? ・・・・・・この私を連れて一体どうしようと、まさかエロスをたっぷり醸し出すサバトの儀式的な行為を」
男「相変わらず妄想振り切ってるな、お前」
男「違うだろ。アイツらに謝りたいと申し出たのは誰だった? みんな心配してたんだ、お土産代わりに良い面見せて来い」
オカルト研「男くん、私は・・・・・・」
男「俺の前に無防備で現れたのが運の尽きだったな、大人しく観念してもらおうかね?」
253
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/03/19(日) 21:06:57 ID:lltc2Qzo
男(待ちに待った文化祭を目前にと浮き足だったモブたち、目に悪い色した手作り感満載の装飾が校内を延々と飾る。そんな中を堂々歩ける)
男(個人が想像する至高の幸せとは何か。今更テーマを立てて悩んでみるのは煩わしいが、俺はいま胸を張って歩いている。『気持ちが良い』じゃないか)
男(楽しいが渦巻く世界の中、こんな小さな喜びを見出だせたことに余裕を感じさせた。最近はノイズでしかなかったモブ生徒が起こす騒音も軽快に思え、ここにいるリアリティを無償で与えてくれている)
男「恵まれてまだ求めるのって貪欲な自分カッケーの演出気取りだったが、所詮 甘えだな」
オカルト研「それ、私に言ったの?」
男「バカめ、俺がいきなり失礼を吹っ掛ける奴か? そうじゃない。自分自身に言い聞かせたくなっただけだ、気分で」
男「・・・・・・なぁ、オカルト研。俺色々悩んだよ。悩んで悩んで、悩みきって、答えも見つけられないまま空気みたいに流されっぱなしだった」
男「どうせ上手く決着つけられるって無理矢理自分に言い聞かせてな、トラブルを先延ばしさせて・・・・・・とりあえずこの場所に執着できていれば、それで良かったんだって」
男「終わりさえ迎えなければ、十分なんじゃないかって」
オカルト研「・・・・・・終わり。生を全うする者 誰しも自らの終わりなんて想像したくないわ」
オカルト研「死って人生のゴールだもの。自分が上手くいってる時には敬遠したくもなる。無に帰るのだから」
男「俺・・・・・・実はまだまだやりたい事あるかもな、って・・・・・・!!」
男「ここでも、ここじゃない別の場所でも、心残りみたいな・・・・・・・・・・・・すまん。もう行こう」
オカルト研「気にしないで欲しい。私はやっと男くんの本音を聞けて嬉しいのだから」
オカルト研「気にすること、全然ないわ」
254
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/03/19(日) 21:42:49 ID:lltc2Qzo
男「散歩してたら偶然拾ったから連れて来てみた。俺たちが作った芝居に興味あるらしい」
男の娘「ぞ、って何他人事みたいに言っちゃってるのさ 男!?」
男(当然と言えば当然の反応である。男の娘と転校生は俺の背中に隠れるオカルト研を見て目を丸くさせまくりんぐ)
男の娘「オカルト研さんなんだよっ!? どど、どうして・・・・・・!!」
転校生「説明して。適当にはぐらかそうとしたって私たち納得できないわ、男」
男(俺とて、偶然、は間違った事を言ったワケではないというに。あーだ こーだと言い訳を模索していた所、オカルト研が)
オカルト研「退学する前に一目かつてのお供たちを見ておきたかったと何故察しない?」
男「は」
男(思考停止へ追い込みを掛けてくる発言であった。俺が頭を抱える中、他の二人は受け止めきれないと 背後の彼女へ飛び付くのである)
転校生「ま、前々からどうかしてるって思ってたけど、どうかしてる!! バカじゃないの!?」
男の娘「そうだよぉ! 嵐どころのレベルじゃないっ、荒らしだよ オカルト研さん!? どうしたの!」
男「お、おい・・・・・・今のは俺も初耳なんだが」
オカルト研「ごめんなさい。だけれど他に償いの仕方が思い付かなかった」
男「償いだ!? ふざけるな! そもそもの原因はーーーーーー・・・・・・あっ」
男(この場の転校生はともかく、すべて名無しに責任があると謳ったとして 誰が 信じる材料と汲み取れるだろうか)
255
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/03/19(日) 22:23:02 ID:lltc2Qzo
オカルト研「別に、引き留められたいと考えてわざわざ忌まわしい地に再び訪れたんじゃない」
オカルト研「私はここへ今日決別をしに来ただけ。二度と会う事はないわ、その他大勢さん」
転校生「待ちなさいよ・・・・・・あんた、あんなに大好きだった部活も捨てるの? 逃げるの!? 自分がやらかした事から!?」
男「転校生! 違うよな、オカルト研。照れ隠しのつもりでつい余計に口滑らせちまっただけだよなっ?」
オカルト研「元々、父から財閥の後継に指名されていた。この学舎では学べる範囲が狭すぎる」
オカルト研「色々あなたたちには迷惑をかけたわ。何もかも父への反発心が起こした私の迷い、どうかしていた」
男「どうかしてるのはお前の方だぞ、オカルト研!! (これで良い。不意に交わった彼女の瞳は訴えていた。まるで俺の動揺すら計算尽くで、読み通りなのだと)」
男(・・・・・・オカルト研、彼女が再復帰するには状況が悪化を辿る一方であった。故に身を引く選択)
男の娘「こんなの絶対おかしいよ。変だよ。僕たち分かり合う前にお別れしなくちゃいけないの? 何でだよ・・・・・・」
オカルト研「愚問だわ。なるべくしてなった、勝手に私を友情ごっこの駒の一つにしないで」
転校生「うそよ、寂しいだけじゃない・・・・・・そんなの」
オカルト研「・・・・・・・・・・・・わ、私、は」
オカルト研「これ以上、耐え切れそうにないから」
男の娘「え? ご、ごめん、いま何て言ったの? よく聞こえ」
オカルト研「ーーーーーー男くん あとは任せるわ」
256
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/03/19(日) 22:26:46 ID:lltc2Qzo
ここまで
ヤケクソでPS4使って書いてみたがどうだろう?何か問題あれば教えてくんさい
257
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/03/22(水) 20:56:16 ID:nzo79Trk
男(捨て台詞を最後、オカルト研は走り去るでもなく、二人から隠れるようにこの情けない背中の裏ですっかり小さくなり、額を当て俯くのだ)
男(そうか、ならば『任せる』の意味は。男の仕事の八割は決断であり、残りはおまけみたいな物だと誰かが言っていたのは記憶に新しい・・・・・・一本筋、通させて頂く)
男「少なくとも俺は反対派だからな、オカルト研」
男「俺だけじゃないぜ。他の奴らだってお前がここから去って行くのを黙って見送ったりしない。そうだろ?」
転校生「当たり前よ・・・・・・いつでも人を強引に振り回しておきながら、こんなのってズルいんだから」
転校生「しっかり私たちと向き合ってよ、オカルト研さん。じゃなきゃ一生恨んでやるわ!」
男の娘「うわっ、さ、サラッと怖いこと言わないで! でも僕も男や転校生と同じ意見。僕ら、まったく知らない仲ってわけじゃないんだもん」
男の娘「うーー、あぁ〜〜じ、実は正直苦手なタイプだと感じてたけどさ!! それでも僕 オカルト研さんとの付き合い方、段々わかってきた気がするんだ! え、えへへ」
転校生「ねぇ、私たちと友達でいるのは不満? オカルト研さん」
男「・・・・・・この質問ばかりは、俺任せにも無理があるんじゃないか?」
オカルト研「・・・・・・怖いわ」
男(震えた息とともに吐き出された短い言葉、どれほどの感情が凝縮されていたのだろう。俺という盾を通し、彼女は囁くように続けるのだ)
オカルト研「昔話よ、つまらないけれど。私に友人と呼べる人は少なかった。少なかったけれど、それでも満足はしていたの」
オカルト研「でも、結局アイツら。愚かしいわね、気づいた時にはもう遅い。私は体良く扱われる便利なATM代わりでしかなくなっていた」
男の娘「そんな・・・・・・」
258
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/03/22(水) 22:21:30 ID:nzo79Trk
オカルト研「家が何? お金持ちの生まれだから? 違う、人から肯定されたいと願った私の弱さが唯一の原因」
オカルト研「自分が生まれ持った特別を利用して勝手に孤独に成り果てたのは、この私」
男(タカられた過去があると話には聞いていたが、彼女は他人よりも自己の否定に基づいた思想感に囚われていた。俺が見る美少女の中ではトップクラスの危うさを誇っているだろうか)
オカルト研「寄り添おうとする事こそが、悪。肩を寄せ合おうとすればするほどに、私の中にある穢れは増していってしまう」
転校生「それじゃあ部活にわざわざいる理由がわからないわ。現に交流深めてたじゃない・・・・・・矛盾してる」
オカルト研「ふフ、彼らが持ってる趣味へ対する熱意は純粋で本物よ。利害の一致がもたらしてくれた関係は、こんな私にとって居心地が良い」
オカルト研「・・・・・・だけれど、あなたに。男くんに出会ったわ。男くんは好き、何よりも私自身を見ていてくれる」
男(いつのまにか腰に回された彼女の手が、強く俺を抱きしめていた。何が彼女を惹かせたというのか?ロマン抜きで 主人公補正である)
オカルト研「こんな気持ちは初めてだった。こんなに誰かを[ピーー]おしいと感じたこともなかったもの、夢中に追いかけてた」
オカルト研「追いかければ、追いかけるほど邪魔な小バエが次々沸いて出て・・・・・・あなたたち 私にとって鬱陶しいだけでしかない筈なのに、それなのに」
オカルト研「・・・・・・お、お願い。私にもう優しくしないで」
男の娘「な、何さそれ!?」
オカルト研「っー・・・・・・!」ガタガタ
転校生「・・・・・・怖いのは、私たちとの距離が狭まっていくあなた自身? それとも」
転校生「今を またいつか失ってしまわないか、不安?」
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