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男「モテる代わりに難聴で鈍感なキミたちへ告ぐ 〆!」

1以下、名無しが深夜にお送りします:2016/10/18(火) 23:24:07 ID:KppNpej6
ここが墓場だ



1、男「モテる代わりに難聴で鈍感になるんですか?」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1379798915/

2、男「モテる代わりに難聴で鈍感になりましたが」
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1380372236/

3、男「モテる代わりに難聴で鈍感になった結果」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1385750291/

4、男「モテる代わりに難聴で鈍感になったけど質問ある?」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1397082375/

5、男「モテる代わりに難聴で鈍感になるのも悪くない」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1406541846/

6、男「モテる代わりに難聴で鈍感になるならどうする?」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1420921537

7、男「モテる代わりに難聴で鈍感だった日々より」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1446919295/l50

125以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/14(水) 22:32:52 ID:k0GmrxSY
完治するまで待っちょる

126以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/15(木) 01:29:36 ID:R1ODjbzc
テンプラと接触したのか

127以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/17(土) 22:42:20 ID:i2SEc8YM
生徒会長「おい! 二人とも待ってくれ!! 我々が別行動で動く利点は万に一つも」

不良女「道案内バッチリなんだろ? 行こう 転校生」

転校生「わ、わかったから、急に手引っ張らないで……! ……生徒会長さん ご、ごめんなさいっ」

男の娘「……あぁ、行っちゃいました……けど」

生徒会長「……あの二人はオカルト研の相手をする際、必要不可欠なメンツだったと単純に考えられるのは私だけなのか?」

生徒会長「別に男の娘くんだけで上手く事が運べないとまでは思わない。だけれど、だな」

先輩「まー、決定打とかに欠けちゃった気はしなくもない?」

男の娘「……僕 転校生さんが心配です。あっ、僕まで追いかけるとかはありませんよ!?」

先輩「おっしゃ! そんならみんなで転校生ちゃん組に寝返っちゃえば〜!!」

生徒会長「全員仲良く一体何を裏切ろうというんだね? しかし心配なのは確かに同意しよう」

男の娘「よ、様子少し変だなってずっと感じてました。どこかそわそわしてて落ち着きなかったし、最初は怖がりからかなって思ったんだけど」

男の娘「まさか、あんな急に……どうしちゃったんだろう?」

先輩「どうもこうも本人がさっき全部説明してたくないかなぁ。ほれ、『邪魔が入る』とか」

男の娘「邪魔、邪魔って何ですか? ここにいるみんな、黒い人も含めて僕たちの目的って一緒なんですよ?」

生徒会長「胸騒ぎか……取り越し苦労に終わればいいが…………そろそろだ。私たちだけでも“部屋”まで誘導するぞ」

128以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/17(土) 23:27:35 ID:i2SEc8YM
不良女「で、ここから先はどう進んだらいいの? あ〜……この階段昇ったりする?」

不良女「灯りとか持ってなきゃマトモに歩ける気しないなぁ。実はあたし持ってるけどサ」カチッ

転校生「ねぇ、その前に一つ訊いていいかしら?」

不良女「良いけど一回につき缶コーヒー一本奢ってもらうからな〜、なんちゃって! へへっ!」

転校生「……どうして私の言うことを信じてくれたの?」

不良女「ええっ、そこ? 騙しましたってオチとかあたし絶対聞きたくねーよ!?」

転校生「ううん、そうじゃない! 騙したりなんかしてないわよ。でもあんな簡単に私の味方したりして、わ、わからないわ」

不良女「いや、わかんないのはお前の方だっつーの! 何が言いたいのかハッキリしろよ」

転校生「あっ……ご、ごめん。正直自分でも混乱してて……ただ あのままだと良くないって思ったから……」

転校生(何て伝えたらいいだろう……順を追って説明する? 私が何なのかまでも? 無理よ、というか無駄だ)

不良女「良くないって思ったんだろ? じゃああたし納得させるならそれだけで十分だってば」

転校生「うそ! わ、私の言ったこと覚えてるでしょ? おかしくなったって思わないの? 幽霊に取り憑かれちゃったとか!」

不良女「あっははははは!! え、なにそれ!? 廃墟の中だと幽霊に憑かれるのかよぉ〜!!」

転校生「そ、そうじゃなくたって 怖さのあまり変になったとか、もっと色々あるでしょ!?///」

不良女「あたしには あんたのあの『信じて』が変になった奴の言葉とは思えなかったね、転校生」

129以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/18(日) 00:34:07 ID:fW5vPrwQ
転校生「……それが、根拠?」

不良女「こういうのカンジョー論?とかになるんだろうけど、あたしは転校生のこと気に入ってるしさ……」

不良女「真面目にオカルト研を心配してるのも分かってるし、優しいのも知ってる。こんな時に自分優先しないこともだ。そうでしょ?」

転校生「そうでしょって言われても、こ、困るん、だけど……っ!?」

不良女「つべこべ言って立ち止まったままいないで、先進もうぜー。正直あたしも暗いの苦手だからお前とお相子だなぁ〜、へへへ♪」

転校生「な、なんか……ありがとう。足が軽くなった気がするかも」

不良女「げぇ、マジでおかしいのに憑かれてたんじゃないのそれ!?」

転校生「いやぁ! もうっ! 本当にそういう類の話 嫌なのにっ! ……フロアもう一つあがるわね」

不良女「上がるのは構わないけど、あたしたちどこに向かうんだよ? 今更肝試しの再チャレンジとかは」

転校生「元々何の為にこんな所にまた来たか思い出して。彼女、オカルト研さんを今度こそ話を聞き出して説得する為だったでしょ?」

転校生(説得……率直に言わせてもらうと、今の彼女に対して上手くいくとは思えない。オカルト研さんには名無しの息が掛かってしまっているのだから)

転校生(だからこそ、メンバーへ今回私から提案した方法は強引と無茶を要するやり方。それですら打ち砕かれそうな予感もあった)

不良女「だったら尚更別行動の意味だよ。もしかして、アイツが予定通りに掴まらなかったこと考えてるのかよっ?」

不良女「なぁ……転校生から言い出したんだからさすがに覚えてるよな? その……“オカルト研を密室に閉じ込める”って……」

転校生(その問い掛けには小さく頷いてみせた。閉じ込める。彼女と誰かをと、よくある二人きりというシチュエーションを作ろうとしたいのではなく、作為的にオカルト研さん一人を脱出不可能な状況へ陥れる)

130以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/18(日) 20:21:39 ID:fW5vPrwQ
転校生(当然だけど反対の声が多かったわ。彼女を振り回す側になるとしても方法は褒められもしないし、乱暴じゃないかって)

不良女「あたしもドン引きだったけどな。普段活発でドストレートな転校生さまがとんでもない思い付きしたんだから」

不良女「もっと平和に解決するやり方があるんじゃねーかなって。そしたらズバッと言い切るんだから、驚いた……」

転校生「生易しいことやって止まる様な子が他の人を平気で巻き込むの?」

不良女「……そう、それ。かなり面食らった」

転校生「私だって出来るなら普通の話し合いで全部元通りになって欲しいわよ。だけど、彼女はやり過ぎなの」

転校生「いくら何か悩みがあったとしても悪事は許しちゃダメよ。男は今その辺りの判断が正常にできてない……」

転校生「アイツなりに考えて考え抜いたんだろうけど、お陰でボロボロじゃない……だから私たちがやる。不良女ちゃん」

転校生「作戦は打ち合わせ通り決行するわ!! そして、どうして私たちが別ルートからオカルト研さんを追っているのか」

不良女「追ってる!? おい、追ってるわけないだろ。だってあたしら二つも上の階まで昇って来ちゃってんだぞ? 追い越してんぞ!?」

転校生「違うの。最初からオカルト研さんを追いかけるつもりで道を変えたかったのよ、っていうよりは」

転校生「ここまで先回りしておきたかったから…………不良女ちゃん、ここで罠張るわ。手伝って」

不良女「わ、罠ってあんたっ……つーか何でオカルト研がここまで来るんだよ? 上手く行けばもう三人が掴まえてる頃だし!」

不良女「あのオッサンもいて失敗したとして、あの運動音痴の塊が巻いて逃げてこれるとは……」

転校生(……微かにだけれど、この辺り あの“神”ってヤツと会った時と同じ重さがある気がするわ)

131以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/18(日) 21:04:19 ID:fW5vPrwQ
転校生(暗い廃病院の中には変わりないのに)チラ

転校生「……埃があまり立ってない? 置物なんかはボロボロだけど変な感じ」

転校生「ねぇ、不良女ちゃん懐中電灯の灯りもう付けてなくても平気なんじゃないかしら?」

不良女「え? バカ言うなよな、いくら日差し込んでるからって……あっ、日の光入って来てるじゃん」

不良女「ふーん……パッと見あれが病院のナースステーションで、ここが休憩スポットみたいな……」

不良女「って、入院棟じゃねーか! 大丈夫かよこんなとこで待ってたりしてさぁ〜! 死んだ患者化けて出ないか!?」

転校生「だから!! はぁ…………きゃああぁ!? なな、今度は何! いきなり跳び付いたりして!?」

不良女「ああああ……あれっ…………あれぇ……!」ギュゥ

転校生(突然抱き付いて来たと思えば、小刻みに体を震わせた不良女ちゃんが遠くを指差していた。ゆっくりと従ってその先を確認すると)

転校生「……なーんだ。もう、怖がり過ぎ! ゴミが風で転がっただけよ」

不良女「な、生首に見えたぁ! あたしには生首だった!!」

転校生「病院で生首は中々ないんじゃない? 現実的に考えたら――――!!」

・・・ピンポーン、ピンポーン

転校生「…………ね、ねぇ、不良女ちゃんにも聞こえる?」

不良女「あぁ、南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏 ぎゃーてい ぎゃーていっっ……!!」

132以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/18(日) 21:29:52 ID:fW5vPrwQ
転校生(音は元ナースステーションの方向から断続的に鳴ってる。ナースコールって判断には困りはしなかったけど、そういう問題じゃないわ!)

不良女「ヤバいってヤバいよマジ!! 前来た時も変なことあったしさ、絶対呪われてんぞこの病院っ!!」

転校生「同感よ!! だ、だけど……待って……」

不良女「おぉい転校生ぇ!? 止せって、今度こそ化けて出てくる! 逃げようよ!?」

転校生(そうしたいのは山々よ。脅すにしても最高のタイミングで鳴ってくれた事だし。でも、でも、この“呼び出し”が嫌に気になる)

転校生(私は背中に不良女ちゃんを引っ付けたまま 恐る恐る中に入ったわ。入ってすぐ 音を鳴らしていた原因らしい電話の親機があった。201号室からの呼び出し)

転校生「(とっくに電気なんて届いてないだろうに、それは誰かが応答するまでとコールを鳴らし続けてる) …………っ!」

不良女「おいおいおいおい、おいっ! まさか出るつもりじゃないよな! 転校生キャラ忘れてんじゃないの!?」

転校生「私だって死ぬほど怖いわよ!! 怖いけど、出なきゃダメって気がする……」

転校生(頬を二、三回も叩いたら気合いも十分、なわけじゃないけれど。そこはもう勢いに任せて受話器を取ってた)

転校生「……はい」

?『…………その声 転校生、ちゃん?』

転校生「……だ、誰なの? いま何処に、あっ……201号室から……?」

?『わたしだよ……ねぇ、外に出れなくて困ってるんだ! 助けて! ヘルプミー!!』

転校生「えっ、部長さん!?」

133以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/18(日) 22:01:32 ID:fW5vPrwQ
黒服「――――お嬢様もうお気が済まれたのでは?」

オカルト研「飽きたのなら外で待っているといい。私には果たさなくてはならない役目があるわ」

黒服「この様な薄汚れた場所でお嬢様が為すべきことなどございません!! ……む」

黒服「お、おやー? これは、お嬢様ぁ……奇妙な封筒が落ちていましたが」

オカルト研「封筒?」

生徒会長「…………上手く気が付いてくれたようだな、黒の人が」

男の娘「うぅ、オカルト研さんが興味示しそうな感じで作ったけど、だいじょうぶかな」

黒服「ええ、封筒です。宛名の部分には『深淵を覗かれし君へ』とだけ……これは怪文書ですな」

黒服「お嬢様の御用と何か関係おありで? だとしても悪趣味ですぞ、お嬢様!」

オカルト研「……知らないわ。中身はあるの? できれば私が読みたい」

黒服「あるにはあったのですが、あぁっ!! 力付くだなんて!」バッ

オカルト研「…………」

『 この先 真なる闇在リ。理から外れし力を渇望せし君 孤独になりて進まれよ 』

オカルト研「……こんなの……行くしかないじゃない……!!」

黒服「お、お嬢様?」

134以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/18(日) 22:26:49 ID:fW5vPrwQ
黒服「お嬢様聞いておられるのですか? お――――むぐっ!?」

先輩「し〜っですヨ♪ おにーさん」

黒服「お前たちっ……するとアレが合図となっていたのか。よくも純粋可憐なオカルト研お嬢様に妙な物を!」

男の娘「えっと、僕たちは始めからオカルト研さんが好きそうな物で釣っただけなんですけど……」

生徒会長「グッジョブ。ご協力感謝する、黒の人。ここから先は私たちの後ろで控えていてください」グッ

黒服「黒の人……? まぁいい。ともかく一体何を始める気だ? あの小僧の到着は遅れるそうだが、策に問題ないのか?」

生徒会長「小僧? っまさか男くんのことを話しているんですか!? 彼が来る!? 何故!」

黒服「フン、私が念には念を入れて奴に連絡を入れたまでだ。この大事な時に寝坊でもかまされては面倒なんでな!」

生徒会長「なっ!?」

先輩「あちゃー……台無しだよぉ……」

黒服「おい待て、その反応は何だ? 素直に感謝を――――それどころではない! お前たちはお嬢様に集中してくれ!」

生徒会長「あ、あぁ、過ぎたことを嘆いても仕方がない。次の封筒を彼女が拾ったら勝負に出るぞ、二人とも!」

男の娘「は、はい! ……黒服さん、これから少し強引なこと 僕たちやると思います。だけどお願いです。静かに見守っててくれませんか……?」

黒服「事と次第で見る。私は常にお嬢様の味方だ、依然揺らがずにだ」

先輩「盲信しまくりだけどカッコいいじゃん、お兄さんも。まぁ 黙ってもらうけどネ……」

135以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/18(日) 23:00:17 ID:fW5vPrwQ
オカルト研「……また封筒ね。私の中の血が騒ぐわ、次を欲していたのよ」

『 向かって右に≪ 308号室 ≫深き始まりの闇の床。臆するな、前へ 』

オカルト研「っ〜〜〜〜!」ぞくぞくっ

オカルト研「こ、この中に……私が追い求め続けた力……闇を越えた凄まじき力があるというの……!?」

ふら……

生徒会長「――――今だっ!! ドアを閉めてカンヌキを!!」

男の娘「はい!!」

オカルト研「えっ?」

黒服「何だとガキど、もが!?」  先輩「だから静かにしててってお願いしましたよねー。お兄さん?」ガシッ

生徒会長「……彼女には申し訳ないが第一段階は成功した。あまりドアに近寄るなよ、会話が聞かれてしまう」

黒服「んーっ!! ん〜〜っっ!? んううぅ〜〜〜〜ん゛ッ!? ………」

男の娘「やっておいて今更なんだけど、僕たち凄い酷いことしちゃった」

生徒会長「ああ、覚悟は決まっていても実際にではな……おいどうした? 何故黒の人が伸びているんだ?」

生徒会長「まさか君が……な、何をしようとしている、君はそんな所に立って。……どうしたっ?」

先輩「はい? 決まってるじゃん。このつっかえ棒外しちゃうんですよー」

136以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/20(火) 20:11:29 ID:Wof0etZ2
男の娘「は、外しちゃうってそんな事して何か意味あるんですか!?」

先輩「意味は特にないけど二人が困るんじゃないかな。オカルト研ちゃんは無事に外に出られる」

先輩「みんなで考えた更生大作戦はとりあえず台無しになりそうだよねぇ〜〜!」

生徒会長「冗談も休み休みにしてもらいたい! 君がその場のテンションで生きる奴とは知っているが、悪戯が過ぎるぞ!!」

先輩「ま、どう思われようと勝手だけど……これもお仕事なんで」

生徒会長「何が仕事だっ、トチ狂いでもしたか!?」

生徒会長「ダメだ、男の娘くん! あの子を抑えよう! このままでは出て来たオカルト研によって我々が不利に追い込まれてしまう!」

男の娘「わ、わかりました……! 部長さん、ごめんなさいっ!!」

先輩「謝らなくて良いよ。生徒会長ちゃんも」ガラッ

生徒会長「くっ!! 一歩遅かったか、既にカンヌキを落としてドアを――――――!」

男の娘「あ、あれ? 部長さんどこに消えちゃ………うわっ!?」ドンッ

生徒会長「あうっ!? ま、待て! まさか君は私たちをオカルト研ごと、くっ!? 閉めるな! 待てと言うんだっ!」

先輩「一人ぼっちより三人で仲良くしてる方が心細くなくていいんじゃないかな〜、オカルト研ちゃんも。よいしょ、と」

生徒会長『おい!! バカな真似はやめてここを開けろ!! おいっ!!』ガン、ガンガンッ

先輩「…………ふぅ、本当に肩こっちゃって嫌になるよコレ」

137以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/20(火) 20:47:49 ID:Wof0etZ2
黒服「なにを、しているのだ……これがお前たちの立てた、策だとでも……」

先輩「ただの引き立て役のサブキャラが無駄に出しゃばらないでくれませんか。面倒なんですよね、あなたみたいな人は」

黒服「……? お前、本当に昨日会ったあの時のラーメン少女か?」

黒服「そ、その目は何だ。まるで虫を見る様な、その蔑む目は何だと……訊いてい、る……!?」

後輩「――――安心してください。あなたが今見た事、関わったこと全て綺麗さっぱり起きた時に忘れてますから」

黒服「化けた!? い、いや、ラーメン少女が、まったく別の少女に……何だこれは! 私は一体何を見ているんだ!?」

後輩「あなたが見ているのは“天使”です。天使に実体なんてありません」

後輩「この姿だって偽物でしかない。人を惑わす為に、誘惑する為にだけ存在する仮初めの女の子の姿……私には私なんて無いんです」

黒服「私なんて無い……? ぐぬうっ!?」グギィ

後輩「主 “名無し”はあなたを認めていません。本当に住み良い世界の中にとって、あなたの様な人がしゃしゃり出て来られても不要にしかならない」

黒服「わ、私が不要!? 貴様、ガキが何様のつもりで立てついているッ!! そこに直れ! 修正してやるぞーッ!!」

後輩「どんなに屈強な男の人でも、私程度にすら敵わない。そういう世界なんですよ、ここは。……大人しく眠っていてくれませんか?」

黒服「がふっ!! っうぅ……おじょう、さま……わたしは おじょうさま を………………」

後輩「…………やっぱりおかしい、神使いの力が私の中に戻っている。元主、神さまから奪われた力が」

後輩「一人の無力な美少女として彼を見守るしかできなくなった筈だったのに……なんて皮肉でしょうかね、先輩」

138以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/20(火) 21:17:37 ID:Wof0etZ2
男(俺たちを乗せた先生の真っ赤な愛車がスピードを乗せたままこれたま黒光りした一台の車の隣に駐車。ナイスドライブテクも、気に留めず俺は外へ飛び出していた)

男(あとを追って運転席から出て来た先生が隣並んで俺と共に穏やかと呼べぬ状況を目の当たりにし、困惑した)

モブ黒服たち「…………」

先生「この人たちって、オカルト研さんの付き人さん一行だよね? 何よ、これ」

男「何と聞かれても俺にだってよく分かりません、先生……」

男(彼らはそれぞれが自由な格好で気を失っていた。油断しているところに閃光手榴弾でも転がってきたように。外傷は無いが、明らかな異常である)

先生「……こんな薄気味悪い廃墟だし、化け物と交戦してたって言われても信じちゃうかも」

先生「あー、さっきから現実離れしすぎよ! 私を平和な世界に帰して!? 一体全体どうなっちゃってるの!」

男「(ご尤もである) 黒服さんとも連絡が通じない。愛好会のみんなともだ……すごく嫌な予感がする」

男「先生、行きずりで巻き込んじゃって申し訳ないですけど 着いてきてもらえますか? 俺一人で解決できそうにありません」

先生「そういう事じゃないでしょ今!! だけど……こんなの見せられておいて見す見す帰るなんて、ちょっと難しいわ」

先生「行くわよ、男くん! ゲームで鍛えた謎感覚があれば化け物とかお化け相手でも通じそうだわ! たぶんっ!」

男(ある意味頼もしいな。というよりただ傍にいて貰えるだけ格別に心強さを得る事ができていた。やれやれ、また戻って来たぞ、廃病院)

男(すっかり因縁深い場所へと変わってしまったが、すべての謎が凝縮されし重要な背景だ。何より“死”を強く連想させてくるのが肝だろうか)

男「……ええ、行きましょうとも」

139以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/20(火) 21:39:35 ID:Wof0etZ2
先輩「――――うわあぁ〜ん!! 心細かった暗かった寂しかったぁー!!」ギュッ

不良女「そんな一気に言わなくたって大体察するってーの……でも何でブチョーが?」

先輩「わたしが説明欲しいくらいだよ! 朝起きてここに向かってたら急にこんな所に閉じ込められてるし、周り誰もいないし〜!」

先輩「携帯通じなくなってるし、もう大変!! 助け呼ぶために必死で手探ったねっ、そりゃもう死ぬ気だったと自負する勢いがわたしに宿ってーの」

不良女「わ、分かったから喚くな! あたしらだってチンプンカンプンなの! なぁ、転校生!?」

転校生「……」

不良女「聞いてんのかよ!」

転校生「ここに向かう途中で部長さんがさらわれたのなら、私たちがさっきまで一緒にいた部長って何……?」

不良女「わぁああっ、自分から怖い話振ってくスタイルいい加減やめろって!!」

転校生「だっておかしいわ!? いくらいわくつきの廃病院だからってこんな、ドッペルゲンガーみたいな話ありえない!」

転校生「とすると、向こうの生徒会長さんたちが危ないと思う!! 急いで合流しましょ!!」

不良女「お、おい待ち伏せはどうするつもりなんだよ!?」

転校生「そんな事やってる場合じゃないわよっ、わ、私のせいよ……私のせいでみんなを危険な目に!」

先輩「何だかよくわかんないけど緊急クエスト発生したのは把握だよ! で、他の二人はどこにいる!?」

「やー、生き急ぐと碌な目にあわんぞ? あんたたち」

140以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/20(火) 22:10:46 ID:Wof0etZ2
先輩「男くっ……違う、だれ?」

不良女「いや、あたしだって知らねーよ。見た事ない面っつーか、よく分かんないけど」

不良女「誰だよあんた!! いきなり出て来て何様だ……?」

名無し「そういえば自己紹介がまだだったか。オレは名無し。そこで突っ立ってる転校生のクラスメイトさ」

転校生「……性懲りもなくまた私の前に現れるのね、名無し」

名無し「性懲りもないのはそっちじゃないか? 散々余計な手は回さないように口酸っぱく言ってたつもりなんだが」

名無し「……それにしてもアレの影響も随分薄まったなぁ。オレでさえここに自由に立っていられる。男の悪霊とやらも消える一歩手前か」

転校生「どっちが悪霊なのよ。アイツの足を引っ張ってるのは他でもないあんただわ」

転校生「あんたが存在する限りアイツは苦しむしかないわ! まだそれが分からないの? このだだっ子!!」

名無し「駄々をこねているのはそっちだって。男には導き手が必要なのさ。どうしてそれが分からない?」

名無し「お前も早く本来の自分の役目に戻ってくれよ。重箱の隅を突く暇はないぞ。もっと男を満足させるべきじゃないか……?」

不良女「おい、意味分かんないこと喋ってんじゃねーよ!! 男の何だってんだ、あんたは!!」

名無し「親切な友人だよ、不良女。お前たちからも言ってやってくれないか? 自分たちも男が真の幸福を掴むことこそが幸せなんだ、と」

不良女「あ……?」

転校生「そいつの言う事に耳を貸さないで!!」

141以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/20(火) 22:33:12 ID:Wof0etZ2
転校生「名無しは男を、私たちを騙そうとしているわ! そいつの話は出鱈目ばかりで碌でもない! 信じちゃダメなんだからっ!」

先輩「そ、そこまで言っちゃう? 転校生ちゃんのクラスメイトなんでしょ?」

名無し「転校生からは相変わらず信用がないんだな。お手柔らかにできないか? 誤解は衝突しか生まないぞ?」

転校生「黙ってよ!!」

名無し「嫌うなよなぁ……悲しいじゃないか。オレとお前はもっと上手くやれるはずさ、え?」

転校生「黙ってって言ったのよ……そこを退いて。あんたの時間稼ぎに付き合うつもりなんてないわ、名無し」

転校生「不良女ちゃんと部長さんはみんなのところに行って! 私がコイツの相手をするから!」

先輩「えっ、で、でも別にそこまで凄むような子じゃ……」

不良女「いや、どっちみちあたしら変な事に巻き込まれてるから! 部長先行くぞ!」

先輩「ああっ、待ってってばー!?」

名無し「……正気になろう? お前も男の幸福を望むものであるのなら、BADENDを奴に際限なく突き付けてやるべきだ」

名無し「絶望を繰り返した末に 男は無用な知識を捨て去って、己を省みない完璧な主人公になれるんだから」

転校生「その繰り返しに巻き込まれる私の立場ってある? 冗談じゃないわ……アイツにも、私にとっても」

名無し「お前は観察するのが仕事なんだ、仕方がないじゃないか。オレは裁き、選別しなくちゃあならない。役割分担はしっかりして欲しいな。観察は重要だぞ?」

名無し「見る事をお前が“やめた”その時、世界は……形を保てなくなるのだから」

142以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/25(日) 20:57:20 ID:bzqcn80M
転校生(名無し、コイツは正気じゃないわ。何処で嗅ぎつけて来たのか知らないけど故意に現れたっていうなら、男を陥れる罠を用意しているに決まってる)

転校生(あの自称神さまに“倒し方”みたいな、物騒でも何でも聞いておけば良かったって後悔してる……)

名無し「やー、怖い顔をしないでくれよ。そう凄まれてちゃフェアな話ができんぞ?」

転校生「これのどこに対等な要素があるって言うの!! あんたは嫌いだわ! もう……大人しく消えて、名無し。みんなに近づかないで」

名無し「酷いな。オレだけ除け者扱いか? お前までオレが輪の中に入るのは相応しくないって否定するのか?」

名無し「悲しいなぁ……お前らばかり男と楽しくやれて、オレにはその権利はない? 見ているだけで触れる事も許されない?」

転校生「あんたがアイツにしてきた事を思い出しなさいよ!! 憐れんであげる余地もないわ!!」

名無し「外堀を埋めようとして何が悪い!? ただ親友であろうとしたオレを何故責めるんだ? オレは努力したっ……努力したのにっ……!」

名無し「お前たちが憎い!! オレが欲しかったもの全部最初から持っていて、アイツの傍にいられるお前らが全員憎い!! 憎いよぉ!!」

転校生「!」

名無し「妬ましいんだよぉ……オレにも、くれよ? 楽しい日常……オレが生まれた意味を改めさせてくれよ……」

転校生「……あんたって――――えっ!?」

転校生(干渉に浸りかけた私を現実に戻す悲鳴が、部屋の外で突然響き渡った。二人、部長さんと不良女ちゃんの声だわ!!)

転校生「な、名無し!!」バッ

名無し「やり直すにはもう遅すぎたんだよな。わかるだろ、転校生?」

143以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/25(日) 21:31:02 ID:bzqcn80M
転校生「あんたとわかり合える気なんてしない! あの二人に何をしたのよ、言ってっ!」

転校生(胸倉を掴んで怒鳴っても平然と名無しは笑っているばかり。一瞬でも同情を掛けようとした自分がバカらしくなる嘲笑だった)

名無し「その顔が最高に良いwwwwwwww」

転校生「っー! お、男は何があってもここに来ないわよ、あんたの企みなんてお見通しだわ!!」

名無し「やー、ウソは汚いな。オレの目は何処にでもあって、常にアイツを見張れるんだ……そら、もう建物の中に入って来たぞ」

転校生(出鱈目と思えないそいつの目線は、恐らく本当に来てしまった見えない男の姿を追っていた。手の力が抜けて、軽々振り払われると)

名無し「お前には何もするつもりはないよ。大切な観察者なんだから」

転校生「もうやめて……お願いよ」

名無し「お前が“監視”し、オレが“監督”することで全て達成される。何が過程だ? 結果さえ残ればオレたちは解放される……」

名無し「男という一匹の人間が作った呪いから……本望だろう? オレもお前も、煩わしい死神にとっても」

転校生「…… (言い返す気力が沸いてこない。名無しは自らが背負った役目をただ果たそうとしている。その点だけ見れば誰よりも正しいわ)」

転校生(私は、アイツと一緒に横道を逸れて行きすぎた。永遠に続きそうな、ぬるま湯に浸かったままの今に甘えていたいと思った。終わるのが怖くて)

転校生(これは男と私たちの幸せな日常を満喫する物語じゃない。初めから非日常だった。終止符を打たなきゃいけない、“死”って、重い終わりを。男に――)

名無し「…………転校生、何のつもりだ? この手を離してくれよ」

転校生「……自分がこの世界の神さまにでもなった気でいるの、あんた?」

144以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/25(日) 22:00:41 ID:bzqcn80M
名無し「あー……理解、できないな。どいつもこいつも欠陥ばかりだ。バグってる!!」

名無し「馬鹿馬鹿しい!! 邪魔をするなよ、転校生! お前も死神も手を出すな! このオレが主に代わって使命を全うするんだぞ!?」

転校生「あんたの主って人が何を想って、どんなに苦しんできたか知らないわ。でも、それでも」

転校生「どんなに正しくても、あんたは間違ってる……!」ググッ

名無し「間違いはお前の方だぁぁーーッ!! この世界に不要だ! 消えて無くなれよ無能!!」

転校生「えっ……」

転校生(頭の中が真っ白になるって日本語、アイツに教わったことあったんだけど)

『人って生き物はだな、パニックが頂点まで達すると考えるごとも覚束なくなる。いわゆる思考が追い付かないって状態だろう』

『やっと気が付いた時 自分に降りかかった現象を再確認して、ウソだと思い込む。そして事実と叩きつけられる、数秒あとに』

『お前に関して教える良い例は、パンツを見られた胸を揉まれた!! 等など……ちなみに目の前が真っ白になったという』

転校生「……な、なによこれは」

転校生(名無しの腕が、私の体を貫いていた)

名無し「オレの……オレの忠告を破ったお前が悪い! いつだかにも同じ真似をして見せてやったな、転校生」

転校生(肉体を貫かれた、というよりも 名無しの手が通過したこの体が空間に浮かぶ蜃気楼みたいに、3Dホログラムみたいに虚ろだった)

転校生(名無しの手を中心に私の体は、冗談みたいに 薄くなっていったの)

145以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/25(日) 22:30:25 ID:bzqcn80M
名無し「もうどうだっていい!! 邪魔は消す、崇高なる主の使命を阻むバグは消去して、排除しなくちゃダメなんだ!!」

転校生「あ、あ……っ?」

名無し「オカルト研たちのようにしてやった様な生易しいものだと思うなよ!? 存在すら許可しないッ! 記憶も体も必要ない!」

名無し「転校生!! お前なんて奴は男の前に“初めからいなかった”!!」

転校生(薄れていく体、透明の浸食を止めることもできずに、ぼんやりと浮かぶアイツやみんなの顔。思い出。あれ、これが噂で聞く走馬灯っていう……!)

転校生(て、抵抗できない……自分が世界そのものから否定されてる気分……)

名無し「安心してくれ、お前の抜けた穴はオレたちが埋める! 先に逝って待ってて欲しい! どうせオレたちも終わりを迎えてすぐに消える!」

名無し「儚いなぁ、オレたちって……なぁ、転校生!! ねぇねぇ!?」

転校生「いやぁ……!!」

「――――――嫌がる美少女に乱暴する輩がいる気がして」

名無し「バカ違うだろ!? 粛清と乱暴じゃ大違いだ。まぁ、清廉とは程遠い男くんには言ってもわから――――――ぶぅっっっ!!」

男「一言でまとめろ! 便所のゲス豚野郎!!」

転校生「…………あ、あんた……なんで、来ちゃったのよ」

男「何で来ちゃったじゃないだろうが。止めてくれないか、ちゃっかり俺の知らん所で危ない目に合ってるとか」

男「迷惑極まりないぞ、お前ら」

146以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/25(日) 23:10:33 ID:bzqcn80M
名無し「痛ってぇぇ……痛てぇな……痛いよ、酷いじゃないか? どこの世界にクラスメイトを鉄パイプで殴る奴がいるんだよ?」

男「どうせ何で殴っても死なないだろ、お前」

男「(手がまだ震えている。やれやれだ、先生に見られる前に得物を捨てておかねば) それよりも俺がいない間にコイツらへ色々酷い事してくれたみたいだな。黙ってると思うなよ、至上最悪のド屑」

名無し「遅れて登場しておいて何気取りなんだよ」

男「真ヒーロー見参だっ!! 美少女の守り神……別に覚えておかなくていい、恥ずかしいから」

転校生「どうだって、いいわよっ! それより何でここがわかったの? た、助かったけど……」

男「誰だってあんな分かり易いデカい悲鳴聴こえたら、真っ先に走って来るだろ。悲鳴の当人たちは見当たらなかったが」

男「が、どんなゲスが繰り広げられるかぐらいは大体予想ついた。……おい、容赦するつもりないぞ」

名無し「え? オレに言ってるのか、男。気合い入ってるのは構わないけどお前が大切に想っている子たちをまずは第一に考えて欲しいな」

男「何だって?」

名無し「みんなは今どうなっていると思う? オレのさじ加減次第でヤバい事にならんでもないケド……」

男「適当な脅しに屈する俺だと思ってるなら、甘いんじゃないか。最初にヤバい事になるのはまずお前の方なんだぜ、名無し」

男(……先生が言われた通りに他の全員を見つけて介護してくれているなら万々歳である。またオカルト研を使って面倒を起こしてこない限りの話だが)

名無し「お前、オレを追い詰めたとか 思っちゃってたりしないか? えへへへっ!」

男「……おい テンプラ、あんたの出番だろう!」

147以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/26(月) 17:58:02 ID:t56NeRAU
男さんぱねぇっす

148以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/30(金) 05:21:30 ID:VtwiaGdY
男さん格好いいっす
乙!

149以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/30(金) 22:28:02 ID:.1uBVkc2
続き自分の中で今日予定してたけど断念して年明け3日〜4日中にで

ここまでやったら満足できる終わりに持って行きたいのです
グダグダやってて情けないけど、その分惜しみなく全力注ぐのだ

良いお年を!

150以下、名無しが深夜にお送りします:2016/12/31(土) 10:01:33 ID:LQGPiroQ
良いお年を〜
いつも楽しく見てるよ

151以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/04(水) 20:58:30 ID:/ls8eY5Q
「…………」

「…………コホン」

転校生「は、はぁっ? あ、あんた」

名無し「……こりゃあ何の真似だい。空回りして呼ぶ相手の名前を間違えたか? 重要な助っ人なんだろ、男?」

男「残念ながら間違えたつもりは一切ないぞ、名無し。俺としてはお前が聴き覚えあるネーミングかと期待していたんだが」

男「どうやら姿を見てもらう必要があるようだ。テンプラの」

名無し「あ〜あ、そしたらソイツは何処にいる? オレの後ろに? 天上突き破って第二ヒーロー見参でも見られるのか?」

名無し「笑わせるのも大概にしてくれないか」

男「お前に対して笑わせるジョークはない。精々 青冷めてくれよ!」

テンプラ「雹ッ霓崎ケ$シaa霎ュ髀冶ケゥ驢yア2霓碑ス比=」ズゥン

転校生「ひっ!?」

転校生(『テンプラ』、男が自信満々に呼び上げたその名前と流れには唖然としていた。それでも、初めからそこにいたかのように、瞬間的に現れたソレ)

転校生(情緒が狂って、デリケートな理性に触れさせた姿が、そこにいたの)

転校生「し、正気じゃ……ないわよ、こんなのって…………!!」

転校生(化け物!!)

152以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/04(水) 21:34:59 ID:/ls8eY5Q
男(纏わりつく嫌悪の空気は辺りを支配し尽くした。人が考えて忌み嫌う要素を体現せし、もう一対の神)

男(神は死んだ。この神を死なせたのは? 他でも無い俺自身だったという。焦点定まらぬ瞳を落ち着きなく動き続けて、テンプラはこの肩に手を置いてくれた)

男「(上出来ではないか、と) 連れはショッキングな奴と忠告し忘れてた」  テンプレ「$B$"$gqCf$$KhsoQg=&$(B_??」

男「名無し、お前が主と慕った神から止めてやってくれと頼まれた。残念な暴挙だったな」

名無し「……なにを」

男「所詮 お前が企てたより良い世界作りは主様の意にそぐわなかったと言ってるんだ!」

転校生「ちょっと、ウソでしょ……そいつが、わ、私を……」

名無し「真実を、まだ受け止められないか? あの方がオレたちを生んだ張本人……父であり母である」

名無し「“親”なんだ、姉さん……オレたちの……主人だ……」

転校生「っ! そんな気持ち悪い呼び方やめてよ!?」

名無し「主、オレに不満があるとでも? だからその様な男に縋ってしまったというのか」

男「ああ、大有りだぜ 親不幸! 俺がコイツに代わってお前にありがたいお言葉を送ってやる。賜れ!」

男「……よく一人ぼっちで頑張ったな。苦しかっただろう。だが もう不安がらなくていい」

男「安心して舞台から降りるんだ。よくやった。この腕の中でゆっくりお休みなさい、我が子よ」

名無し「……えっ?」

153以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/04(水) 22:20:14 ID:/ls8eY5Q
男「このテンプラ、いや、お前の親は言葉を失ったが 想いだけは変わらなかったぞ」

男「名無しには悪い事をした。本当にすまなかったと思っている、だが謝まる術を無くしたテンプラはこの俺を頼りにしてくれた」

男「名無し……もう良いんだよ。どうか無念を抱かず綺麗なお前で去ってくれ (即興にしてはお涙頂戴しているのではなかろうか)」

男(特にテンプラの意思には反ることもなく、無難にトラブルを収める説得である。感動は押し付けるものだと現代っ子は把握している)

名無し「あぁ……あぁ! ずっと、ずっと報われたかった……」

男(ネックとしては よほど拗らせていなければの話だ。コイツの執念深さが文字通り闇のソレでさえいなければ、言霊は通ずる)

男(大人しく佇むテンプラを見た。心なしか涙ぐんでいるように感じるぞ、ドキュメンタリー)

名無し「認めて欲しかった、オレの存在を……オレがオレである意味を……受け止めて欲しかった」

男「確かに。お前は正しい。何も悪くない」

名無し「オレ、もう一人じゃないんだ……あなたは、オレを認めてくれた。それだけでどれほど救いだったか……」

男「おめでとう、おめでとう。めでたい!」パチパチ

154以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/04(水) 22:22:39 ID:/ls8eY5Q
男「最高だ、転校生。お前もそう思わな――――――冗談だろ、何なんだよ」



転ヨ#生「……し、知#ない@よ。すっごく今 体がフ%るいンdけど、私pう&ゥンヤ諫メ」




男「転校生!! しっかりしろ、おい、反応あるのか!? 聞いてんのか!?」




B \レ せサ{uる悚ィ%hle・・…耳元でわ!ーwa↓叫ス^のや、め、てくれな 叢ヘ?」

155以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/04(水) 22:59:18 ID:/ls8eY5Q
名無し「……姉さんは優しいなぁ。オレを寂しく思ってくれているんだね」

男「ふざけろッ!! なぁ、転校生、転校生、なん、だろ? だ、黙ってないで何か罵倒の一つやってくれよ!?」

#@・イチ・・[              》

男「面白くないんだよこんなの! 頼むからっ……マジかよ」

男(彼女を抱きかかえようとしたするこの手が、手触りを得ることなく、体を通過した。何度差し伸ばせど 奇跡が起こらない。何故だ?)

男「テンプラ! テンプラ、この女を助けろ! 消えて無くなったら承知しないぞ!」

名無し「その顔が見たかったんだよ、お前の……気分が晴々する」

名無し「気にするなよ、男。お前は何度だってやり直すことが出来る。時と運命の牢獄に捉われたお前だからこそ救いがある」

名無し「何もかも綺麗さっぱり忘れてしまえ、全部投げ出すんだ。その為のセーブポイントじゃないか……」

男「……ちっとも反省していないみたいだな、えぇ?」

名無し「待ってくれよ、こんなのオレも予想外なんだ。こんな形でリセットが起こるなんて」

名無し「むしろ、こう呼ぶべきかもしれない。再誕と。これから新しい男の誕生だ……気にするな、生まれ変わったお前は上手くやってくれる」

名無し「そうしてようやく幕を降ろしてくれるんだ……主のお言葉は賜った。だけどさ、仕事はやり切らないと」

男(転校生が、もはや転校生であったかも不明なモノが消失を辿っている。コレの名前は既に思い出せなくなっていた)

男(食い止めなくては。あってはならないのだ、こんな終わり方を認めてしまうワケには――――)

156以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/04(水) 23:45:43 ID:/ls8eY5Q
『 諦 め な い で 』

男「――――こんな時に幻聴とは、ラノベか漫画だ。現実なんだぞ」

『 まだ終わりじゃない。まだ男くんの物語は続けられる。悲観しないで、終わってないよ 』

男「終わらせるつもりは毛頭ないさ……   が消えていいなんてストーリーは無い。何より念願のハーレムにヒビが入る」

男「悲劇を背負うヒーローは御免だろ、幸せは自分の手で掴み取らなくちゃ意味がない。平坦な道より、いばらの道を選んだのは自分だけれど」

男「最後ぐらいは笑ってハッピーを迎えられるトゥルーエンドを迎えなくちゃ…………」

後輩「それでこそ私の知ってる先輩だと思います!!」

男「えっ!? あれ、こんな所で何してるのお前!! 手光らせて、ゴッドハンドしちゃって! ……はぁ!?」

後輩「驚いていないで先輩も手を貸して! この人を延命させるには私だけの力じゃ足りませんよ!」

男(謎の声に激を送られたと思えば、目の前は輝きまばゆい光であった。黄金色に光るその手を俺の手と重ね、危うい彼女の胸へ押しつける後輩)

後輩「手抜きは絶対許しませんからね! あなたのガムシャラな本能を貸してっ、そして彼女へ届けてください!」

男「うおおおおおおぉぉぉぉ!?」

後輩「まだ俺の傍にいて欲しいんだって!! 先輩!!」

男「…………どうもこうも状況はサッパリだ。それでも」スッ

男(神は言っている、ここで死ぬ運命ではないと)

157以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/04(水) 23:52:31 ID:/ls8eY5Q
あけましておめでとうございましゅううう
明日も更新するの

158以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/05(木) 11:01:33 ID:MWQelatw
あけおめ乙

159以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/05(木) 20:40:38 ID:MWFo9qYA
名無し「主、あなたに否定される事がオレにとってこの世の何よりも恐ろしかった。この憎悪を加速させてくれました」

テンプラ「…………縺ョ繝」

名無し「オレの名を呼んでくれたのですか? わからない……言葉も気持ちも読み取れません」

名無し「アイツにわかって、子であるオレが理解に苦しむ。あんまりにも理不尽だ。失望を覚える」

テンプラ「……8熙ヒハリ、タ、テ、ソ、ホ、ヌ、゙、タクォ、ォ、ア、゙、ケ。」

名無し「だから、オレはオレの思うがまま あなたを壊すことに決めました」

テンプラ「薙l縺ァ縺吶_?」

名無し「みんな、消える時は平等だ……男の最後になんて拘らなくていい。アイツもオレも、あなたも、姉さんも」

名無し「一緒に消えましょう? このクソッたれのあなたの世界と共に」

テンプラ「#!」

名無し「ほら、ご覧になって。遂に賽は投げられました、主。世界の“観察者”、主軸である姉さんです」

名無し「姉さんが消えると同時、世界は何者にも観測されることはなくなる。あの人によって紡がれていた時間の流れは断たれる……」

名無し「……姉さんはもう助からない。どんなにもがいても、決して…………束の間の一時だな」

後輩「先輩見てください! 転校生の体に色が戻りましたよっ! 助かったんですよ!」

男「あ、あぁ! そ、そうなのかっ? ハハ、はははっ!! 転校生!」

160以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/05(木) 21:26:10 ID:MWFo9qYA
男(転校生、転校生、うむ 喉から出たがっていた名を今はいくらでも呼ぶ事が出来る。透明がかっていた身体にも色が付き、この手に彼女の感触が)

男「ん?」むにゅ

転校生「……喜び合ってるの良いことに、どこ触ったままでいる気なのよ…………っ」

男「転校生、違う。俺はお前の命を救った張本人であって一切やましい気分で体に触っていたわけじゃない」

男「つまり! これはwin-winの、ぶっっっ!!」

転校生「しねっ!! まずあんたが脳震盪起こしてくたばれ ド変態スケベぇ!!」

男「ぉぉぉおお、いきなりブラックジョーク過ぎんだろっ……!」

後輩「元気になった証拠なんじゃないですか? ふふっ。立てますか、転校生さん」ス

転校生「ありが、とう? ……どうしてあなたが私を助けてくれるの? 意味不明だわ」

男(それに関しては俺も同感である。非行に走ったように様変わりし果てた後輩が、かつての美少女っぷりを取り戻したかのようにここにいるのだ)

男(俺たちが眺める中、口元を緩ませて見せると身を翻して後輩は 名無しと対面する。小さくか細いながらも、頼りになる背中。アイツが、帰ってきた)

名無し「どうしてみんなオレから離れて行くんだ?」

後輩「別に始めからあなたの思想に染まってもなければ、哀れに思ってもいませんでしたけれど」

名無し「だからこそ 従うよう弄ったんだ、神の使い。ここにいる限りお前がオレの支配を免れるなんてあり得ない」

転校生「ふん、その言い草! 自分が神さまにでもなったつもりかしら!?」  男「そーだそーだっ!」

161以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/05(木) 22:09:45 ID:MWFo9qYA
男(背中に隠れていた俺を無言で振り返られては、立つ瀬もなかろう。後輩の更に前に出て名無しを視界に捉え続けた。気分は火曜サスペンスドラマ終盤の刑事だ)

後輩「あり得ないを覆す奇跡があっても罰は当たりませんよね、せーんぱい」

男「お前、それって……」

男(懐から後輩が取り出した写真たち、昨晩俺の部屋から持ち去ったブツだと考えて確かであった。バカな、愛は窮地に勝つ? いやいや)

男「(愛は俺を救った) 最後になる前に名無しには散々迷惑かけてきた謝罪をしてもらいたい。せめてもの報いだろ」

転校生「……頭ぐらい最後に下げなさい。それであんたが仕出かした罰が帳消しされるワケもないし、したくもないけど」

転校生「あんたの生まれの境遇に、せめて免じてあげたい……辛いも哀れも絶対の免罪符じゃないわ」

名無し「わー、いっちょ前に説教垂れんのかよ?」

後輩「あはっ! 拗ねるなんて、まだ可愛いところもあるじゃないですか」

名無し「…………お前、実は裏切ってるとかじゃあないだろ」

男・転校生「え?」

名無し「男ならわかるだろ、この世界そのものの性質ってヤツを。どれだけ時間を分岐させても物質的証拠はかならず残る」

名無し「でも人と人との過去は無しになる。嗅ぐわせる程度のフラッシュバックはリセットの影響をビミョーに掻き消しきれなかった残りカス……」

男「今更なんじゃないかねぇ? 仕組みのネタ明かしなんてどうだっていい、そういう事じゃない! なぁ、名無しっ!」

名無し「オレがこの女にしたのも オカルト研にしてやったのも例外だ、男。お前 お得意のバッドエンドリセットに付き合わされた結果じゃない」

162以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/05(木) 22:51:52 ID:MWFo9qYA
男「……一体何の話だ? ついて行ける人いたら手上げるように、さんはいっ! ほれ、どうした!」

男(少なくとも心の友・俺は両手で挙手した。名無しが後輩やオカルト研にした事? おかしくなった原因はコイツにあると確信はあったが、方法は何も知らない)

男(バッドエンドからのリセットならば軽く心当たりはある。今の俺は過去の俺のバトンタッチによってここに立っている。多くの我が犠牲のなれの果てだという事を)

名無し「今日までの後輩はお前のよく知った彼女だったか? オカルト研は?」

名無し「残念ながら跡形もなく消えた筈だよ、お前と過ごした二人の人格っていうのは……変わりないのは容姿ぐらいじゃないか」

転校生「ハッタリだわ。事実この子は男の為にこっちにいてくれてる、あんたの妄想よ」

名無し「妄想? その単語が相応しいのはオレじゃなくて男の方さ。いつまでも自分の理想に縋り付く死に損ないがぁ」

転校生「あんたは、ねぇ……いい加減にしてよ! まだやり足りないっていうの!? バカげてる!」

名無し「男、お前を楽しませたアイツらは死んでる。そこの女は本当にお前を信じてくれたあの時の一人か? よく見ろよ、鈍いな……そこの人形に面影は、あるか?」

男「変わらない価値は見い出せる!!」

後輩「…………プッ」

転校生「……何よそれ?」

男「もしお前が言う様に過去の記憶を失った彼女だとしても、思い出なんぞいくらでも埋められる。むしろ新鮮な気持ちをまた彼女と一緒に味わえる」

男「本当に面白いゲームをやり込んだ時、ふとこう思うことは? 記憶を消して一からプレイしてみたいなぁ、と……そういえば」

男「0から好感度を上げる苦楽の楽しみを、俺はまだ知らねーんだ。名無しよ」

163以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/05(木) 23:24:54 ID:MWFo9qYA
名無し「……やー、ズレすぎじゃないの? 論点っていうか、もう語るも疲れるわ」

男「難聴スキルが始めから解除された状態からの攻略だともう物足りない体になってる。飢えた獣に縛りをくれ」

名無し「バカかよ。まだその辺の女子とラブコメ楽しめる気でいるのか? おめでたい通り越してイカれてるぞ、お前」

男「ちょっぴり頭おかしいヤツに『イカれてる』じゃ褒め言葉にしかならないぞ、ほら ニヤけてるだろう?」

名無し「……ヤバいんじゃないの コイツ? 話も聞かないし、終始自分勝手だぞ。悦に浸って帰ってくる気配もねーよ」

名無し「とりあえず同意する奴 素直に手上げてー」

転校生・後輩「……!」ビッ

男(一体お前たちはどちらの味方だと小一時間問いただしてみたいと言ってみたいじゃないか。だけれど、名無しくんってばさ)

男(無駄にイキイキしてるじゃありませんか、男くんは神と担ぎ上げていた時よりも顔ツヤッツヤテカテカしてるぞ)

名無し「はい、多数決の結果 男くん生理的に無理でけってーい。みんなでパチパチパチ」

男「爽やかイケメンの親友装うよりはそっちのダウナー系の方が似合ってるんじゃないか?」

名無し「は? うぜぇ、とっとこ死ね」   男「そう、その辛辣な感じのやつっ……!」

名無し「……はぁ〜あ、鬱陶しい。ウザったくて堪らないよな お前」

名無し「マジで死ねよ。リア充気取ってオレとの距離詰めようとしてきて? ウンコとキスしろよ、ド変態」

男「ようやくお前に近寄れそうな気がしてきた、ウンコ 却下する」

164以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/11(水) 20:42:25 ID:j/iWmggo
名無し「ていうかさ、お前らのありがたい説教聞かされてオレが改心するとか 思っちゃってんの?」

名無し「ウケる、それウケる。面白くて涙零れちゃう。腹がよじれて吐血しちゃいそう。おえーっ!」

男「自棄っぱちで大きな子ども演出してる名無しくんは、この後どうするのかな?」

転校生「ちょ! 何であんたまでケンカ腰になってるのよ、どっちも一旦落ち着いて!」

男「あいにく、こっちは至って冷静のつもりだぞ。転校生」

男(煽り合いなら上等である、昔は俺も売られたケンカはよく買っていた。ネットという大海で)

男(だがしかし、転校生や後輩にこれ以上彼のヘイトが飛び火しては困る。正確には、刺激して現在の暴走を上回られると、だった)

男「なぁ、さっきコイツのことを人形とか言ったのを覚えてるか」

名無し「え? どうだったかな……直接その言われた本人に訊いてみた方がてっとり早いんじゃない」

後輩「まぁ、そうですね。仰る通りかと」   名無し「すごい淡々としてるなwwwwww」

男「俺はそんなくだらない確認を取りたかったワケじゃない……名無し」

男「立派な人の意思が宿った人形を、人形扱いするのは間違ってるだろ」

名無し「ヒューッ、カッコイイ〜! さすが男さんだ……っ!!」

名無し「でも、根本的な解釈間違ってるのはそっちだわ。オレの好きに踊らされていたからこその“人形”扱いだろ?」

男「なるほど」   転校生「何やりたかったのよ!?」

165以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/11(水) 21:17:02 ID:j/iWmggo
名無し「だけど……意味合い的にはお前の考えも通じるかも。コイツらはオレの言いなりの、駒だから」

転校生「このクズ、ド屑よ! うちの変態以上のゲスって見た事なかったけど、冗談抜きで使うべき相手が現れるなんて!」

男「お前も大概だわ」

名無し「駒に人権はあるのか? 将棋やチェスみたいに戦略の為の使い捨てが基本だろ。お前の精神論は正義か、男?」

後輩「人権、なんて私も当たり前のように持ってると思ったことありません。所詮 元・神の使いでしたので」

後輩「気遣いも必要ないですね。役目を果たすことが私の生き甲斐というか、生まれた意味ですか? そんな風に納得していました」

男(先程から度々出てくるワード『神の使い』 ……過去の後輩関連の記憶が、不意に思い出される事はなかった。謎めいたミステリアスの正体も)

男(彼女は一体何者なのか? さて、ここは今大事な所じゃない。重要になるのは)

転校生「……バカよ、どいつもこいつも」

男「後輩のヒミツの告白に共感でもしたか? 顔に出てるぞ」

転校生「うるさいわよ……そんな事よりいつまでもあんな奴との会話引き伸ばすことないわ、テンプラって人を交えてさっさと名無しを――えっ?」

男(目の前に気を取られすぎていたせいか 転校生はテンプラの不在に短く声をあげた。何処へと尋ねられるが、その前に)

男「ところで名無し、お前はまだ疑ってるんだよな。後輩がお前の命令に背くお人形になったワケじゃない、と」

男「そこで良い提案がある! 試しにそいつへ好きに指示を出してみたらハッキリするんじゃないか?」

名無し「……」

166以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/11(水) 21:50:30 ID:j/iWmggo
転校生「ど、どんな提案よ、あんた自分がどれだけアホなこと言ってるかちゃんと分かってる!?」

転校生「その子がアイツに縛られたままだったら、またとんでもない真似されるかもしれないの! わかる!?」

男「この期に及んで諭されたって遅いんじゃないか、転校生。そうだよな、名無し」

名無し「……自分が追い込まれた状況って理解してるんだよな」

男「逆だってば、俺がお前に追い込まれているんじゃない。お前が俺たちにようやく追い込まれたんだ」

男「勘違いするな! やれるものならさっさと動かしてみろ! お前に忠実な人形 兼 駒ってヤツを!!」

後輩「……どうぞ、ご自由に?」

名無し「お前は、男……男くんってさ……ほんと、気が触れてるとしか思えない時あるんだけどさ」

名無し「――――オカルト研に指示するんだよッ!! 今すぐ窓を破って地面に叩き」

男「後輩助けてくれっっ!!」

後輩「イエッサー」

男(まるで始めから決めていたかの様に、合図を受け取った後輩が手を横へ払えば、名無しの体が横へ大きく吹っ飛び ボロボロの壁へ叩きつけられた)

転校生「…………うそ……今の、どういうトリックの……」

後輩「……ごめんなさい。えっと、どうしましょうか? 私としては先輩たちがお灸を据えてあげるべきかな、と」

男「お、おい、名無し完全に伸びてるぞ……」

167以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/11(水) 22:21:55 ID:j/iWmggo
男(異次元の力にか、倒れた名無しにか、怖々と転校生が近寄って体を突いてみせる。ならば、俺はといえば)

男「……正直驚くしかない」

後輩「やり過ぎだったですかね、でも念には念をという気持ちで……先輩、私が怖いですか?」

男(不安を露わに謙遜した足取りで半歩下がろうとする後輩。そんな彼女へどうこうしようと抑え切れない者など、ここにあらず)

後輩「えっ、わ!! せ、先輩……?」

男(皆まで言うな、様々な気持ちが沸き上がったまま俺は思うがまま彼女を抱きしめていたのだ。この至近距離、角度ならば、顔を見られずに済むのだろう)

男「しばらくこのままでいさせてくれ、後輩」

後輩「あ、あの、それは……すごく困るというか……」

男「頼む。一生一度のお願いだと思って、黙ってこうされていてくれないか」

後輩「いえ、だ、だから! ……あっ」

男「おかえり、後輩ッ……っ、うぅ、あー!! さっきからしつこいなっ、何度肩叩けば気が済むよ!? この感動の対面を」

転校生「空気読めなくて悪いけど話があるのよ。ちょっと顔貸してもらえる?」ニコニコ

男「……ありゃあ」

男(美少女スマイルも場を選ぶ、本日の教訓なのであった)

転校生「よし、野暮用も済んだし話を戻しましょ!」   男「前が見えねェ」

168以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/12(木) 13:57:08 ID:8DwwzRJM
イエッサー後輩かっこいい

169以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/15(日) 20:38:13 ID:uJiBYvbU
男(気になる事、というか気にしなくてはいけない話ばかり積もりそうな予感は、俺たちの問いへ答えた彼女によって座礁する)

後輩「この私どうしてまた自由を取り戻せたか? 神の使いとしての力を振るうことができたのか?」

後輩「わからない、としか今は答えようがありません……」

転校生「えっと……何だか、あっさりだわ。色々常識越えたことの連続からそう来ちゃう?」

後輩「きっと何度もお二人を、いえ、皆さんを困らせてしまっていたと思っています。まずは……気が済むまで謝らせてくれませんか?」

男(口惜しそうに小さく作った握り拳を震わせて、目を伏せる後輩の姿は 逆にこちらが申し訳なさを感じてしまう程である)

男「(いつもの軽口で笑い飛ばしてやれば、むしろ薄情を印象付けてしまうだろう。沈黙のまま、彼女の肩を抱いた転校生に俺は任せた) 不思議パワーうんぬんは置いておくとして、さっきコイツが自分で“元・神の使い”とやらを自覚していたのが気になった」

転校生「え? どういう意味よ?」

男「名無しは、俺から余計な知識とやらを取り上げたがっていただろ。実際俺自身、後輩のあの説明のつかない力や正体について何も知らない。いや、覚えてない、のが正しいのか?」

男「俺が忘れていて、後輩当人の記憶を放置してしまえば まったく意味がなくなってしまう。だからこそ 思い出させる機会を潰す為にした、リセットだ」

後輩「……はい。彼は先輩を遠ざけたかったんだと思います、異常から」

転校生「異常ってあなたが隠していたこととかの話よね? じゃあ、コイツは知らなくていいことを、今までずっと」

男(シンプルなやり方だったと無理に納得はしてみるが、その遠ざけたかった異常を 自ら俺へ晒していた名無し。何のドジアピールだ)

男「おい、話戻していいか。ていうか戻すけどな!」   転校生「あっ、はいはい、どーぞ?」

男「さて、リセットが上手くいっていたなら、なぜ後輩が失った過去を俺たちへ嗅ぐわせてきた?」

170以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/15(日) 21:16:28 ID:uJiBYvbU
男(普通に考えても不自然に値するではないか。名無し先生がベラベラ丁寧に説明してくれた話が、それだけで覆されてしまうのだから)

男「少しでも可能性があればと良かれ、ああしてみたら……」

男(ビンゴ。されど、に至る)

転校生「ねぇ、今はとりあえず他のみんなと合流しない? 難しいことをややこしくさせても、拗れるだけでしょ。変態」

男(転校生の提案に喉を唸らせはしたが、大人しく頷いてみた。確かに、答えを急いだところで得る物は きっとまたよく分からないものだと思う)

男(完全にしがらみを断ち切れたわけでなくても、名無しへ制裁を加えた後輩を見れば ひとまず肩を撫で下ろしても……良い、だろう)

男(……俺は、どれほど踏み込み過ぎて、深淵を覗きこんでしまったのか。罰が当たったのだな)チラ

名無し「      」

男(――――さぁ、欲が深すぎた男の末路は、といった感じから一転。俺含む一同は 廃病院の外に出たワケだが)

男の娘「ど、どうしてお前がこんなところにいるの!?」

後輩「一々驚き過ぎですよ、兄さん。それより 向こうで黒い恰好した人たちがバタバタしているのは?」

男の娘「それよりって! はぁ〜……ほんとにどうなっちゃってるの?」

黒服「貴様ら お嬢様は気を失われている! 普段よりも丁重に扱って車まで運べよッ! お屋敷までお送りを……む」

先生「無事だって、本当にそう思って良いのかしら……」

黒服「安心してくれ、先生。というより まずは礼を言わせて欲しい。貴女が駆け付けてくれなければ こうも簡単に収まらなかったでしょう……」

171以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/15(日) 21:48:08 ID:uJiBYvbU
生徒会長「先生が休日に、しかも男くん同伴でっ、何故こんな場所まで……ふっ!?」

先輩「ダメだって! 今はそっとしておいてあげようよ。とりまお疲れ様の会ってことでラーメンで打ち上げをー……どったの? とりまって古かった?」

生徒会長「……生憎だが、今日はここで解散としよう。私事で悪いが気分も乗らなくてな」

先輩「そ、そっかぁ……うん、そうだね……」

不良女「無理もねーよ。偽ブチョーとかいうのが現れて、おまけに閉じ込められて混乱してんでしょ、あんたの気遣いは伝わってるって」

黒服「…………見た所、互いにお抱えが疲れ切っているようだ。今日の事は一度忘れて休ませてやらねば、な」

先生「ええ、私の方でも一人倒れた生徒がいますし、家まで送ってあげないと――あんたたちこの車最大4人乗りっ!! 全員一回降りろ!!」

男「降りておいた方が身の為だぞ、マジで」

男「先生、名無しはお願いします。というか アイツの自宅を知らないとか前に喋ってましたよね?」

先生「建前だよ。少し休めそうな所まで運んで起きるの待ってるわ、放って置くわけにもいかないし」

転校生「……ねぇ、見張ってなくって平気なの?」

男(そう耳打ちしてきた転校生へ、返事をするまでもなく 俺は先生の愛車の助手席へ入った。危険な車の旅 その道連れは一人で良いのだ)

男「でしたら俺の家で休ませてやりたいと考えてるんですが、問題ありませんか?」

先生「えっ?」

転校生「ぜったいダメに決まってるでしょ!?」

172以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/15(日) 22:14:10 ID:uJiBYvbU
男「じゃ、そういう事で。お疲れ!!」

転校生「だから、ダメに決まってるって言ってるでしょぉぉ〜〜〜!!?」

男(制止を振り切り、助手席の窓を閉めて地獄のジェットコースターは俺と先生、そして今も尚 気を失ったままの王子様を乗せ出発するのであった)

男(そういえば雨、いつのまにか上がっていたのだな。曇り気味だが現在の登場人物たちの心情を表現するにはピッタリの空模様じゃないか)

先生「男くんフリスク食べる? ……あのさ? こういう事、二度とないと嬉しいかもね」

男「すみませんでした」

先生「今回は君のせいばかりじゃないんじゃない? ただの愚痴よ、グチ。言ってみたかっただけ」

男「先生の助けがなかったら、俺 多分発狂してたと思います。閉じ込められた男の娘たちを助けてくださってありがとうございました」

先生「助けたも何も、棒をどけただけでしょ……中開けてビックリしたよ? 一人倒れてるし、二人は泣きっ面で」

先生「で、教えて欲しいんだけれど あんた達は上で何やってたの。後ろで寝てる名無しくんは何?」

男「わかりません」

先生「わかりませんって……そうよねぇ、私も何がなんだかサッパリわかんない。困ったもんだわ」

男(そう答えるしかないだろう。一から十を説明と命令されても俺でさえ理解が追い付いていない。巻き込まれて、あるいは、巻き込んでこのザマよ)

男「あ、そこの角右に曲がったらすぐです」

先生「知ってるよ? 前に送ったことあったでしょ」

173以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/15(日) 22:44:46 ID:uJiBYvbU
男「先生って実はローテンションの方が運転上手になるんじゃないですか?」

先生「バカ言ってないで名無しくん降ろすの手伝いなさいよ。この歳の、男の子ってっ、重い……っ!」

男(というよりは気を失った脱力効果+が大きいと思われ。先生と共に名無しを肩で担いで家まで入れれば、我が家のアイドルマミタスのお迎えである)

マミタス「シャーッ!!」

先生「げっ! 招かれてないっぽいんだけど、いいの? 本当にこのまま彼預かっちゃって」

男「構いません。友人です」

男(両親の寝室まで案内したところでベッドへ投げるように名無しを置くと、ようやく俺たちは揃って息をつく事ができた。張り詰めた緊張なんかも解れて、いけば)

男「ご苦労さまです。お茶淹れるんで休んで行ってください、親もいないし家庭訪問みたいな気分もないでしょう?」

先生「ていうか高校は家庭訪問ないから、君……帰るよ。先生も家でくつろぎたい気分だし」

男「ゲームできない時間が惜しいって言えばいいのに」   先生「黙ってろ」

先生「そうじゃなくって……職場、あっ、学校にも連絡しなきゃいけないし……大人だから色々事情があるの。察してくれる?」

男「俺もいつかは先生みたいに責任に追われなきゃいけない立場になるって思うと、反吐出ますよ」

先生「ふふふっ、違いない! 誰だってそうよ。君の将来がどうなるか分からないけれど、自分が関わった事には終わるまで付き合ってあげなさい?」

先生「因縁っていうの? まぁ、いっか……明日また学校で元気な顔見せてね、男くん」

男「そりゃあもうご心配なく、先生! へへっ!」

174以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/16(月) 15:08:45 ID:zfy2DOJc
後輩かわいいんぢゃー

175以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/17(火) 20:46:13 ID:haKRowx2
男(客人は最大限持て成し、綺麗な別れをと祖父がよく語っていたものだ。親の教えを守り、玄関の外まで先生を見送るのが仮家主の務めである)

男(不意な疑問が頭を過る。美人へ出した呑みかけの茶を、訂正、不意ではなく不埒だった。送り届けた後 再度名無しを寝かせた部屋へ戻ると)

男「ふむ、よほど効いたみたいだな。テンプラの片割れだとしても 耐久性は人並みとな」

男(眠る横顔を見下ろし、廃病院で起こった出来事の余韻に浸ってみる。テンプラや後輩といい、彼への対抗が味方に付いたならば前述した通り、しばらくは騒ぎの心配は要らないだろうか)

男(歪んだこの友人を更生するつもりも、してやれる気もしないが 眺めていると己が罪が沸々と湧いてきて)

男(憂鬱じゃないか)

男「ふぅー、やれやれだよ、妹はともかく天使ちゃんを預けて来たのは正解だったかもしれん」

男「アイツも余計なことに首突っ込みたがりだしなぁ。誰に似たのやら……なんちゃって」

名無し「独り言なら一人でやってくれよ。うるさい」

男「そいつは悪かった――――はあ!? いつから目覚ましてたんだよ! お前っ!?」

名無し「しばらく狸寝入りしてた方が都合良かったんだろ? ……あーあ、まだ体痛てぇ」

男(むくりと起き上がった名無しは俺が親切心から貼ってやった冷えピタを鬱陶しげに剥がして、壁に投げつけやがった。風邪でもあるまいし、と。ええ、まぁ)

男「おい、待てって! どこ行くつもりだ、体が痛むんだろ? 無理しなくても」

名無し「は? 気持ち悪い」

男(そんな率直ドストレートな感想を美少女以外から頂いてもご褒美じゃないのです、お兄さん)

176以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/17(火) 21:13:02 ID:haKRowx2
名無し「親切にされたら誰でも恩に着ると思ってるのか? 大間違いだねぇ、偽善者どの」

男「野郎なんかに気を掛けてる奴が、第一に美少女の園なんぞ望むと思うのか?」

名無し「知らんね、お前のグルグルした頭の中なんてオレ程度が分かってやれる気はしない。精々楽しくやってりゃあ良いんじゃね!?」

男(刹那よ、さらば、と別れを告げようとする名無しの前に立っている俺がいた。……これから俺は最も自分が納得し得ない言動を発する羽目となる)

男「泊まって行けよ。友だちだろ?」

名無し「…………どうかしてるってレベルじゃないんだよ、お前!!」

名無し「誰が、どいつの家に、世話になれって!? 頭おかしすぎんだろッ!? 自覚あるかな!?」

男「なんと、まさか! ただいま我が家は現在来るもの拒まずキャンペーン実施中とご存じないと!?」

男「気にするなよ、名無し。人外かどうかよく知らんが ここに居れば美味い飯にも困らないし、人恋しさを解消できる」

男「世界中探し回ったってこんな天国見つからないと思うんだが、絶対に」

名無し「…………」

男(わかる。わかるぞ、その表情。警戒していて、疑っていて、呆れ果てていて、情けなくて、どうしようもなくお手上げを意味しているのだろう。名無し)

男「どうせ帰る家なんてないんだろ。だったら、一晩ぐらい温かい屋根の下も悪くないんじゃないか?」

名無し「……オイ、この部屋じゃ生活感が気に食わない。もっと落ち着けそうなとこ用意しろ」

男「案外潔癖症なんだな、俺と真逆だ お前って」

177以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/17(火) 21:48:06 ID:haKRowx2
男(それにしてもこの捻くれ者へ使わせる部屋とな。客間を案内した所で満足してくれそうにもないだろう? 定石狙いで押入れか)

名無し「止まれ。ここでいいよ、十分だ」

男「え?」

男(そう言って名無しが立ち止まった部屋は、最近ご無沙汰である暗室だ。悲しきかな、埃やカビと同居するのが お好みらしい)

名無し「用事があるなら自分から出て来る。お前らは基本 ここに立ち入るな、オレの城だ」

男「どこの家庭にも引き篭もりは一人って世間の流行りなのか?」

名無し「死ね。とにかく、オレは他の奴らと連むつもりはない。終焉の時をこの隔離された牢獄の中で待つだけだし……」

男「カッコつけた言われ方されても実質物置だからな、ここ」

名無し「二度死ね。いいかよ? 忠告はしたからな、間違っても家族とかガキとか寄越すな。出来損ないの脳味噌で記憶したかな?」

男(もう何だコイツ……)

名無し「うっわ! お客さまにお持て成しも出来ないんスかねぇ、この家ェーッ!?」バタバタ

男「悪かった、しけた柿の種がお前に相応しい」

男(うるさいチンパンジーを檻に閉じ込め、ありがたい静けさに感謝しつつここで午後のティータイム。休日だからな)

男「……幼馴染に会いに行くか」

男(言うが先か、体は既に行動へ移していたのである)

178以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/17(火) 22:29:09 ID:haKRowx2
ママ「男くんおかえりなさ〜い! ていうか随分早めのお帰りになっちゃったけど、ん?」ギュッ

男「(この妻に毎晩迎えられる旦那様の羨ましいこと) まぁ、色々ありまして……それよりウチの問題児を預かっていただいて」

ママ「ううんっ、全然気にしてないんだから! 良かったらウチに上がってく? 男くんの為に用意しておいたクッキーがあるの♪」

男「嬉しいです。お邪魔しても差し支えなければ、是非」

ママ「きゃ〜、どうぞ ぜひっ♪」ウキウキ

男(この奥様、豊満なバストの活かし方を理解していらっしゃる。ハグや包容といった優しい表現すら生易しい、抜きん出た歓迎は疲労を消し去ってくれる)

男(ママさんからふわっふわなスリッパを用意され、リビングまで連れ添われる中 天使ちゃんはお昼寝中との情報を得た。これは嬉しい)

ママ「えっと。こほん! ……時々でいいけど、たまにはあの子と遊んであげてほしいなぁ。相手にされてないって思われるって良くないよ、男くん?」

男「アイツそんな風に考えてるんですか!?」

ママ「あっ! もう鈍感さん! 男くんは天使ちゃんにどれだけ好かれてるか知らないの? あの子ってば子犬だよ、こ・い・ぬ 」

男「あっ……わ、わかりません」

ママ「わかんない? 男くんすごく信頼されてるんだよ。私がどれだけ優しくしたって、敵わないもん。あの子にとって一番は男くんなんだから、うふふ」

ママ「ナンバーワンは、やっぱり格別なんだと主婦は思いますっ! 忘れないでね!」

男「は、はぁ……肝に銘じます……」

男(ママさん、クッキーの用意というのは手作りということでしたか。恐れ多い)

179以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/18(水) 20:59:08 ID:uHNBNvZA
ママんは無条件で茅野愛衣ボイスで再生されちゃう…

180以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/22(日) 22:38:44 ID:bY35QNTs
ママ「コレね、ふふふっ! 天使ちゃんと一緒に作ってみたの。急に料理教わりたいって言うから」

男「そういえば朝に話してましたね? でも、料理というかお菓子作りじゃ」

ママ「女性を磨くより先に女の子を磨かなきゃ始まらないでしょ? 遠慮しないで座っててねぇ〜」

ママ「では、気合いの入ったお紅茶、淹れてまいります!」

男(可愛い奥さんの敬礼ポーズは卑怯ではなかろうか。痛さすら武器にするプリテーには精一杯の愛想笑いで応戦すべし)

男(幼馴染は、自室で大人しくしているのだろうか。今朝テンプラから見せられていたであろう あの時の彼女が頭の中で酷く気掛かりであった)

男(神の憑依といい、幼馴染はイタコの素質を持っているとでも? 嫌々、俺はこう考える。幼馴染というキャラへ重要な役割を担わせていたと)

男(立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は百合の花 を地で行くパーフェクト美少女ちゃん、愛が深すぎる点に目を瞑れば)

男(だが、少々言い方が悪くなるが 彼女には『一押し』が足りなかった。確かに二人になればベタベタむふふを体験させてくれるが、どこか一歩引いたところで)

男(“見”られている気が 時々ついて回って――――)

幼馴染「おかあ〜さぁ〜ん……三時まわる前に起こしてって言ったじゃ――――」

男・幼馴染「あっ」

男「……よ、よう、ずいぶん休日満喫してたって、感じ?」

幼馴染「えっ……うそ、いや、なんで! なんで!? 待ってまってまってまって、待って〜〜〜〜!!///」

男(気の抜けた炭酸ジュースの如し、そこに現れた噂のあの子は 寝巻姿で髪もハネまくり、油断の権化なのだった)

181以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/22(日) 23:13:18 ID:bY35QNTs
幼馴染「だめっ! ほんっとにこっち見ないでぇ男くん!! お願いしますっ、一生のお願いだよぉー!!///」

男(ラッキー、スケベからは遠のくが、ラッキーに違いない。本人的にはかなり恐怖に近かろうが、礼儀を欠こうが、凝視してしまった)

男「まぁ 落ち着いてくれ、俺たちいつぞやに裸の付き合いがあっただろ」

幼馴染「今はそういう問題じゃないから!! とにかくっ、痛!」

男「お、おいっ!?」

男(元気に騒いでいた幼馴染がいきなり足を抱え、苦痛に顔を歪ませたのだ。すぐさま駆け寄って肩を貸してやれば、恥じらって暴れる元気は失われていた)

男「わ、悪かった。つい調子に乗って……座れるか? 体 横にしてた方が楽か?」

幼馴染「えへへ、ひとまず着替えたいかな。もう大丈夫だと思う。一人で立てるから」

ママ「あらあらまたこの子ってば! あれだけ勝手に動き回っちゃダメって言ったのに!」

幼馴染「だ、だって……ていうか男くん来てたなら一声かけてよ……」

ママ「怪我人なんだから大人しくしてなさい! ごめんねぇ、男くん。余計なお世話かけさせちゃって」

男「そんなっ! 元はと言えば俺が原い――――……あ、あぁ、すまん」

男(目配せした幼馴染に諭されるように、その先は閉口してしまった。自分が情けないじゃないか、どこまでも気を利かされてしまうなんて)

ママ「もう、服はとびっきりかわいいの取って来てあげるから、大人しく別の部屋で待ってなさい。ね?」なでなで

幼馴染「……フツーのでいい。あと、男くんいるんだから頭撫でるとかしないで……」

182以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/22(日) 23:51:08 ID:bY35QNTs
男「(ママさんが階段を上がって行く音を聞き届けると、幼馴染も続いてリビングを後にしようと動いた。が、気にする様に俺を見ているではないか) 思春期の娘か?」

幼馴染「現在進行形で思春期なんですけど……ごめんね、本当に」

男「バカ、謝る立場が逆転してるだろ。頭下げて、いや、地面に頭擦りつけてでも謝罪しなくちゃいけないのは俺の方だ。迷惑じゃなけりゃ」

幼馴染「迷惑だよ、えへへ」

男「だよな、もっと別の良い形考えとかにゃ…………なぁ、幼馴染 聞いてくれ。あと少しでゴタゴタが片付きそうなんだ」

男「きっと終わったら前みたいにみんなが楽しく思える高校生活に戻れるぞ! 文化祭、楽しみにしてただろ?」

男「あんまり乗り気じゃないが、クラス発表も部の出し物とかも張り切ってみる事にした! だ、だから一緒にっ!」

幼馴染「……うん、楽しみ」クスッ

男(心からの笑顔が見たいと思ったのだ。必死感丸出しであろうと、悲壮感を払いのけるぐらい不相応にカラ元気な俺を作ってみた)

男(償いを果たそうとするスタイルを幼馴染は良しとするだろうか。ワガママな失礼を包みこんでくれた女神の背中を見送れば、溜息が漏れる)

男「これってただの自暴自棄じゃねーの?」

男(鼻に付いて嫌われるよりも、皆に好かれるハーレム主人公を目指す立場として 一人反省会を開催する予定が立った瞬間である)

男「正に負の連鎖……疲れてるのかね、俺。更に睡眠時間増やした方が落ち着くかしら」

「たぶんこんな事されといた方が安らぐんじゃないかって思うんですがー?」

男「おふ!?」

183以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/23(月) 00:30:38 ID:3rcM/ydU
男(この貧相な肩に優しく手が置かれれば、艶めかしい所作を含めた摩擦を味わった。その手が実に幼いロリロリしい手をしていなければ、もっと)

天使「うおー! 小遣いもっと増やせぇー!!」ゴリゴリゴリ

男「まったく力が足りてない、肩を揉む相手への労いを感じさせない、あと殴るの止めろ。天使の肩叩きレビュー 10点」

天使「何点満点中のですかねッ!」  男「気が遠くなる道のりを辿りたいのですか?」

天使「ったはぁ〜……絞りカスの残骸みてーな男くんがこんな美少女のスキンシップを語るとは」

男「酷評ありがとう、天使ちゃん。昼寝しているとママさんから伺ったんだが」

天使「あんなバカでかい声出されて呑気に寝てられるヤツは異常ですよ。けっ!!」

男「そう腹を立てるなって、誰だって安眠の妨害を好きこのまないのは知ってる。やれやれ もういっぺん寝ろ」

天使「何ですかっ、その適当にあしらう感じは! 大体寝過ぎは夜が大変って男くんよく言ってるじゃねーですか!!」

男「このクッキーめちゃくちゃ美味くね?」もぐもぐ   天使「はっはー! でしょう!? そうでしょうとも、えっへん!」

男「(屈しないロリっ娘。この様子ならば、自作という話を俺がママさんから聞かされていない体でいこうとしているとみた) 天使ちゃんがママさんと一緒に選んで買ってきたのか? センスあるな」

天使「むっふぅ〜〜〜〜〜〜……!」ブンブンッ

天使「と、ところがドッコイなのですよっ!? な、なんとなんとなんとぉ! 実はですねぇ、そのクッキーは――――」

ママ「はーい、男くんおまたせ〜!」  幼馴染「や、やっぱりこの服気合い入り過ぎだってば!」

天使「…………むぅ」

184以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/23(月) 20:08:11 ID:3rcM/ydU
ママ「本当に夜ご飯食べて行かなくてよかったの? ぶー、せっかくエンジン掛かってたのにー!」

幼馴染「お母さん」

男「すみません。妹もまだ帰って来てないですし、作り置きしてた冷蔵庫の残り物も気になったもんで」

ママ「そっかぁ、残念……でも、男くんたちなら我が家いつでも大歓迎なんだからね!? この子がわざわざ作りに行かなくても私が〜!」

幼馴染「もうお母さんっ!?」

幼馴染「あの、良かったらなんだけどウチで漬けてた大根 持って行って? お米炊いてお味噌汁の付け合わせぐらいには」

男「親子揃って、俺たち死地に向かう兵隊か何かじゃないんだぞ……」

幼馴染「だ、だって男くん あたしが見てないとすぐ不摂生に走るから!」

ママ「あらー、うん! お邪魔だったかも? おほほほほ」ニヤニヤ

幼馴染「お〜かぁ〜あさ〜んっ……!!」

男「へへへ、じゃあ そろそろお暇します。ほれ、お前もありがとうございますを言わんか」

天使「……やだ」

男「はぁ?」

天使「べーっ!! 先に帰ってるですよぉ〜!! バーカ、バーカ! くたばれアホ!」

ママ「あらまぁ」

185以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/23(月) 20:46:20 ID:3rcM/ydU
男「おうコラロリ天ゴラァー! 靴はきっちり揃えて中に入れと……は?」

男(だらしない妹に居候の教育はこの俺の務め。散らかし放題が許可されるのは一部のみ、といったところで目の前にあった光景を説明したい)

男(妹と名無しが、数年前の懐かしの家庭用ゲーム機に勤しんでいたのだ)

妹「下手くそだなぁ〜。その腕で本気でこのゲームやり込んでたとか言えちゃうの?」

名無し「一々人を煽らないと楽しめないのか、性悪チビ」

妹「はいアウトぉー! それアウトー!! 殺す! 次もギッタンギッタンにぃ――――ありゃ、お兄ちゃんじゃん」

男「……た、ただいま」

名無し「あぁ、鬱陶しいからオレの視界に入るなよ。わかる? 忙しいんだから邪魔するなって意味だぜ」

妹「お兄ちゃんお腹減ったから何か用意できなーい? わ〜っ、またコースアウトですなぁ〜ぷーっ! くすくす!」

名無し「死ね。所詮ガキのお遊びだぞ、夢中になってるとか脳味噌チンパンジー乙、あっ」カチカチ

妹「やーい 雑魚ぉー! ……ん? どうしたの、ぼーっと突っ立ったまんまで?」

男「少しばかりそっちの奴に話があってな!!」グイッ

男(愕然とした。怒りとも言い切れない勢いに任せ、名無しを持ち去り、問い質したとも。何のつもりなのだと)

名無し「さぁね? そもそもオレを招いたのは誰だったか、よーく思い出してくれたまえ」

男「俺だよ、文句あるか!? ……だが、お前からは“関わるつもりはない”と聞いた筈だぞ」

186以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/23(月) 21:14:01 ID:3rcM/ydU
名無し「さっそく誤解するなよな、用があれば自ずと外に出るって言っただろ?」

男「じゃあ、アレは何のつもりだ……善意を仇にして返すのか」

名無し「おっと善意! それ最っ高に偽善の表れだなぁ! キヒヒッ」

男「だ、大体俺の妹は極度の人見知りだぞ! ついさっき会った人間と仲良く遊べるほど器用なヤツじゃないっ!!」

名無し「やー、お前やその他諸々から収拾した知識をひけらかしたらすぐ食い付いてくれたよー♪」

男(収拾、というよりは 掌握なのだろう。この男のポジションを改めて思い返してみれば 主人公の親友ポジ。すなわち)

名無し「情報通の強味っていうかサ、お前以上にお上品な立ち回りが出来るワケ。……危ういよねぇ、ご自分の立場?」

男「……」

名無し「まぁ、お前がイケないよ。こんなオレをわざわざテリトリーにまで招き入れたのは大間違いだったな」

名無し「なるべくオレを自由にさせるなよ、男くん? ……やー、悪い。お呼ばれされちゃった」

男(扉向こうから名無しを催促する妹の声が、無理矢理意識させてくるのだ。自らの過ちを)

名無し「あっ、そうだ。汗臭いから早く風呂に入ったらどうだ?」

男「……何だと」

名無し「善意だろう? 清潔感は大事だって。モテ男を目指すなら第一じゃないか」

名無し「こうやって、つまんねーお遊びに付き合うのも大事だな。あー、ハイハイ! 今行くから面白い顔して待ってろ、チビ助!」

187以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/23(月) 21:40:49 ID:3rcM/ydU
男(妹と名無しの間に介入し、侵略を阻止する。言葉にすれば楽なものだが気分は上手く体を働かせてくれなかった)

男(明るい笑い声をバックに負け犬の行進は続き、洗面所へ入る。……灯りが? それにシャワーの水音だと?)

男「天使ちゃん?」

天使『っう……!!』

男(足元へ視線を落とせば、脱ぎ散らかした彼女の服や下着が床に落ちたままである。あれほど一人での入浴はまだ早いと念押しされていたというに)

男「聞こえてるのか? まだ上手く頭洗えないだろ、お前。いつものカッパのやつ置き忘れてるぞ」

天使『……』ザー

男(こちらの声が聞こえていないというより、無視を決め込んだ調子だ。浴室ドアのガラスの先に写し出されている小さな姿が、どうにも気になる)

男「……さっきはどうしてママさんたちにあんな暴言吐いたんだ?」

天使『……』ザー

男「それとも俺に当てたのか。あのクッキーお世辞抜きで美味かったよ、初めて作ったとは思えん」

男「ママさんも褒めてたんだからな、あの子は真面目にやってて 呑み込みも早いし、上達も早いって」

天使『…………て……』

男「え? 何だって?」

天使『入って……きて、ください…………』

188以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/23(月) 22:03:33 ID:3rcM/ydU
男(正直 倫理を侵す真似だけはと、もう遅くとも、誓った人生だったが パンツを脱いだあとでは説得力の欠片も無い)

男(せめてもの腰タオルを巻いて、いざ入浴。間髪を入れず光景に目を背けた)

天使「……何で見ねーんですか」

男「見たらみたで罵詈雑言のオンパレードだろうと思いまして!! ていうかヤバい、流石に禁忌に触れちゃいそうで!!」

天使「別に、悲鳴あげて男くんを犯罪者に仕立て上げる気とかないですよ。誘ったのは自分ですし」

男「おれチャンハ、ドしたらいいノ? コれ」

天使「ん」

男「えっ、え?」

天使「とりあえず頭洗えって言ってるんですっ! さっさと顔隠した手どけて、やれ!」

男(何という、なんという背徳感だろうか、幼い美少女とのマッパなお付き合い。実のところ天使ちゃんとのこのシチュエーションは今回が初ではない)

男(だが、あの時はお互い水着を着用していたからであって、とにかく “危険な香り”を回避できていたのだ)

男「……て、天使ちゃん 痒いところはないですかー」

天使「もうちょい気合い入れてゴシゴシできねぇーんですか? チンタラと、つまんねぇ洗い方を!!」

男「ふ、ふざけんじゃねーよ!? こっちはロリの裸必死に目に収めないようにと!! ――――――」

天使「実の娘の裸が、なに!?」

189以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/23(月) 22:32:09 ID:3rcM/ydU
男「!!」

天使「わたしの裸を見たらどうかなるの!? こっちは気持ち悪いの承知で男くん呼んだんですよっ、あぁ!?」

男「く、口調が変わってるぞ、天使ちゃん……!」

天使「鬱陶しい!! 天使なんて呼び方もウゼーじゃないですか、いつまで自分を特別扱いするんですか!?」

天使「いつになったら、自分の中の自分を見てくれるんですか! ねぇ!? わたしはもう天使じゃないよ!!」

男「天使ちゃん……」

天使「だからその呼び名が気に食わないのに!! いいっ? 天でも神の使いでも、もう無いよ! わたしを見てっ、男くん!」

天使「男くんには、どんな姿で わたし が 見えてる!?」

男(       )

天使「――――――なんて。ねぇ、どうして何も答えてくれないんですか? ビックリして頭の中 真っ白になっちゃった?」

天使「……じゃ、ねーんですかぁ? ――――うっ」

男(加減なんてどうでも良かった、小さな身体が悲鳴をあげようと独り善がりに この直に伝わってくる温もりを 確認したかったのだ)

男「卑怯なら卑怯だって……罵倒でも何でもしてくれ……」

天使「…………あったかいな」

天使「男くんは、あったかいなぁ……」

190以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/27(金) 00:51:25 ID:aFPQ8jy.
いいな

191以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/29(日) 22:55:34 ID:Aupa9Jck
男(普段 どれだけこの子を軽視していたのだろうか。気心の知れた仲と思い込み、いつの日かぞんざいに扱ってしまっていた)

男(天使自身は俺との関係性をゆっくりと呑み込んで受け入れようとしてくれていた)

男(ただ、俺だけが折り合いをつけられないままで)

男(なし崩し式にと、事を後ろへ流して優先順位から遅らせていったとして、きっと恐らくそれは、自明だ、拒絶感を拭い切れなかった)

男(生死の境を彷徨う盲人が『今を生きる』など戯言に等しいが、子 とは執着した今からかけ離れ過ぎている。怖い、震える)

男(全部を投げ出してしまえ、と面白がった男には 何よりも重い。あれだけ可愛がって、喜びを分かち合えた子へ、成る程無様)

男(自分可愛さに 目も当てられなくなっていた)

天使「……好きでいてくれる?」

天使「ゼータクは望まないから、いっしょがいい。変化もいらないよ。当たり前みたいな幸せがほしいよ」

男「寂しい思い、二度とさせたくないもんな……本当の俺やお前を知ってるのは この世界で お前と俺だけなんだからな……」

男「傷の舐め合いになんか絶対させないから、約束だ。覚えておいてくれ」

男「俺は、きみだけの俺であり続けると決心する。今後も、好きだが……というよりも 無償の愛を捧げるが」

男「家族として送る愛情でしかない。間違っても、意識させる異性 と見る事はあり得ないと、あらかじめそう言わせて欲しい」

天使「ありゃ、キッパリすぎじゃねーですか!? つーか」

天使「何 感極まって泣いてんですかね、男くんてば もぅ」

192以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/29(日) 23:33:17 ID:Aupa9Jck
妹「あー! 牛乳ラッパ飲みやめろって言ってるでしょ、絶対次の日お腹下すじゃんか! つーか汚い!」

男「自分だってやるくせに何を……風呂上がりの楽しみは存分に湯船の余韻と、くつろぎを味わうことにあるのだ」

天使「お? お、おっ? アイス? アイス来る? 牛乳アイス解禁待ったなしとな!?」

男「承認!」  天使「バンザーイ男くんかっくいー!」  妹「不承認だよ!!」

名無し「つまんねぇ、近所迷惑だから早く各自部屋に篭もれよ。自分の時間を第一に考える事をオススメするね。オレは」

男「それは親愛なる隣人からのアドバイスか」

名無し「嫌味聞いて顔ホッコリさせてんじゃねーよ、冬の海で死ね」

男(部屋には一歩たりとも近寄るなと言い残した名無しは、苦虫を潰したような表情を俺に突き付け 歩み去って行く。どうなっているのだ、奴のキャラ)

妹「お兄ちゃんの男友達って、あのちっこカワイイ人だけって思ってたよ〜。他にいるんだね!?」

男「惚れたか?」

妹「ほっ……惚れるワケないでしょ、昨日今日で会ったばったの男子なんかに! ていうか……でしょ」

男「よく分からんが、お兄ちゃんは安心した」

妹「はぁ!? 何なのさ! すっっっっごくウザいんですけどっ!?///」ブンブンッ

天使「ていうか、あの如何にも感じ悪い糞ガキなんですか? どこで拾って来たんですかぁ?」

男(エサやりと散歩は忘れないから、なんて ホームドラマを懸ける価値は果たして)

193以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/30(月) 00:14:25 ID:1O6xl2qs
男(――――起床。久々に枕を抱えて部屋の片隅まで転がったロリ天を見下ろし、朝日を見上げて頬を張る。気合いチャージ ご利用は計画的に)

男「名無し、起きてるか。お日さま拝めないだろうから実感ないと思うが」

名無し『……朝だ、ですネ。何かオレに用かよ。10カウント始まる前に失せろ』

男「お客さまは持て成される立場なんだろうが? 朝食用意してやったから食べに来い」

男「ガラにもなくスクランブルエッグにベーコンとか焼いてみたぞ。ホテルのバイキングみたいで高まらない?」

名無し『適当に皿によそって部屋の前に置いておけばあとで食べてやらなくもないけど、庭の虫が』

男「俺の手料理は人間に味わってもらう前提の調理でしたが」

名無し『失せろって言ってるだろ、鬱陶しい! そうやって気を掛けられること自体が迷惑だって痛いぐらいわかってんだろ』

男「学校は? 文化祭も目前だぞ、だからこんな日曜日潰してでも準備に向かう義務がある。不服だが!」

名無し『ウソつけや』   男(そこはどうして中々察しの良い)

名無し『むしろ、理解に困る。お前やあの雌人形どもとしたら オレなんか居合わせない方が安心するだろ』

名無し『それとも何か? 目の届くところに置いて監視しておきたいとか……次はどんな楽しいことやって、笑わせてもらおうかな』

男「乗り気でないなら、無理に誘うつもりはないんだ。悪かった」

名無し『やー! 目の上のタンコブからランクアップして、今度は腫れ物扱いか! 居心地いいねぇ〜!!』

男「朝飯と昼の分は 冷蔵庫にしまっておくぞ。六時ぐらいには家に帰るからな」

194以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/30(月) 00:53:03 ID:1O6xl2qs
男(ラフなシャツを装着した妹をお供に通学路を行く俺。聞けば、テンションに身を任せクラスで共同購入したものだという。青いぞ、というか)

男「ライブのコンサートスタッフみたいな感じ。更に落とせば」

妹「ミーハーなファンでしょ? お兄ちゃんの言いたそうなことって大体わかっちゃうよね!」

妹「それより途中で後輩ちゃんと一緒になる予定なんだけど、絶っ対!! 本気で口説いたりしないでね!!」

男「え?」

妹「わ、私の前でって意味だから。本当にやめてよ、嫌なんだもん……」

男「すまん。鳥のさえずりに耳傾けすぎてよく聞いてなかった」

妹「あっそ!! お兄ちゃんの耳って基本 飾りでしかないよねぇ――――あっ」

男(チョコチョコと小走りで追い抜いた小動物が向かう先へ視線を移せば、後輩だ。はしゃぐ妹を笑いつつ挨拶を交す最中、目が合い 微笑まれてしまった)

後輩「おはようございます、先輩。仲睦まじくしていたところを お邪魔してしまって、ふふっ」

男「その含みのある言い様は何なんだろうな、概ね察知しちゃうけど」

妹「とりあえず合流できたし、ここでお兄ちゃんは解散だね。ダメお兄ちゃんは道中おかしな事やらかさないように!」

男「ダメお兄ちゃんと目的地一緒だったろうが、お前」

後輩「……」つんつん

男(適当な体の部位を突かれるだけで勘違いするニッポン男児の多い中、何の御用でしょう)

195以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/30(月) 20:50:54 ID:1O6xl2qs
後輩「先日はどうしてあの人を連れて帰ったんですか?」

男(唆されるまま腰を低くした俺へ後輩がそっと囁く。彼女にとっても彼は頭痛の種という認識なのであろうか)

後輩「今は大人しいとしても、いつまたおかしな真似をしでかすかわかりませんよ」

男「褒められた振舞いじゃないと否定されるのも承知の上でじゃないか、俺も」

後輩「……えっと、私が聞きたいのはカッコイイ言い訳とかじゃなくて 先輩の持つ真意です」

後輩「誤魔化さないで教えてくれたらと思ってます。哀れみを掛けて救えそうな相手じゃないから」

後輩「というより、あなたが配慮してあげるべき相手じゃないでしょう? 私が間違っていますか?」

男(強気に、直ちに止めるべきだと彼女が腕を引いてくれるのは素直に嬉しい。俺を心配してくれる後輩が帰って来たのだから)

男(ところで『昨日の敵は今日の友』という少年漫画の王道を支えることわざがある。この捻くれ者が、疑念を感じるどころかロマンを得た響きだ)

男(残虐の限りを尽くした凶悪なライバルを撃破し、のちの展開で仲間に加わる……いくら「あれ? 仲間なった途端弱くね?」と思おうが、憧れた)

男(可能性を話そう。昨晩、名無しは俺を浴室へ誘導してくれたのではなかろうか。口振りは最悪だったが)

妹「後輩ちゃーん……おにいちゃーん……」

後輩「えっ、あ! ご、ごめんねっ! 別に無視してたとかじゃなくて! あの、お兄さん!」グイッ

男「おおおぉ、急に何だお前!?」

後輩「じ、実は、妹ちゃんのお兄さんから相談されてたの!」

196以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/30(月) 21:17:56 ID:1O6xl2qs
妹「相談?」  男(えぇ〜……)

妹「ねぇ、お兄ちゃん 相談って何のこと? 私の目の前で堂々明かされたってのはよくぞ聞いてくれた的なだよねぇ」

男「そ、相談は相談だろうが。気軽に他の人に話していちゃ裏でコソコソしてた理由にならん、かと……」

男(無茶振りにも程があるというレベルではないだろう、後輩。誤魔化し方が急転直下の下の下である)

妹「コソコソぉ〜? じゃあ妹の私には黙ってなくちゃいけないこと 後輩ちゃんに、ねぇ?」

男(青筋を立てる妹から隣の後輩へ視点移動、首が明後日の方向であった。どこまでヘタクソか)

男「(止むを得まい) ……実はだな、幼馴染をどうにか元気にしてやりたくて 色々考えていたんだ」

妹「えっ、幼馴染ちゃん?」

男(散々思考内でこき下ろしておいて 情を使うのはゲスの所業か? 実に笑えない凌ぎ文句であったが、事実に越した事はなかった)

男「そうだ、色々あってアイツも疲れてると思ってな。家族のお前や天使ちゃんに相談しても良かったが」

男「今回は身近な人間以外にも訊いてみて、色々な意見を集めておきたくてさ。方法が偏ってばかりじゃ退屈だろ?」

妹「へー よくわかんないけど、お兄ちゃんなりに考えてるんだね!?」

男(幸いしておバカな美少女の妹で良かった)

後輩「ふふっ! だからまず私が率先して」  男「アメ舐めてようか、後輩は」サッ

197以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/30(月) 21:52:36 ID:1O6xl2qs
男(以後、妹の誤解を解く華麗な話術が続くが 惜しからずカット)

妹「お兄ちゃ〜ん、ぐすっ、たまにはカッコイイじゃんか……!」うるうる

男「止せよ、選択肢少なすぎて照れるしかない (詐欺だ、紛うことなきお涙頂戴の詐欺。主よ、我にどこまで十字架を背負わせるのか)」

男の娘「おぅーい、おーいってば〜! 男ー!」

男(罪悪感に苛まれる、あるいは蝕まれる汚物へ差す一筋の光が。気が付き、挨拶代わりに 掲げられた手へタッチしてやれば、満面の笑みが ぱぁっ と咲く)

後輩「あ、兄さん おはようございます」

男の娘「なああーっ! だから、どうして男いる所 ウチの妹ありきなの!?」

男「やれやれ、お前ら兄妹は家で顔も合わさずに学校に行くのか」

後輩「いいえ、今日は私の方が早出するつもりだったので……普段は仲良しなんですよ? ふふっ」

男(あわよくば どちらかを刺せたらみたいな淀んだ空気を表に出さないで頂きたいのだが)

男「ところで、お前は何自然に腕組んでる」

妹「……とーぜんじゃん?///」

男「ああ、もう……休日出勤はただでさえ老体に響くっていうのに、見てみろ。どいつもコイツもウキウキさせやがって」

男の娘「そりゃウキウキしちゃうよ〜♪ でも部活発表の方は僕たち全然何にも手付いてなか、わっ!?」

不良女「おいっスー、お前ら おはよ」

198以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/30(月) 22:19:33 ID:1O6xl2qs
男(気抜けした声とともに現れた不良女は、男の娘の肩に頭を乗せて 一直線に妹へ)

不良女「へぇ〜 お兄ちゃんっ子か。好かれてるねぇ〜、お兄さん」ギロリ

妹「! ……じゃ、じゃあ この辺で。後輩ちゃん行こうっ!」グッ

後輩「ちょっと待って! あっ、せ、先輩 またお昼休みにでも話を! ――――――」

男の娘「あはっ! 追っ払い方 参考になったよぉ!」  不良女「はぁ!? 今のそんなんじゃねーだろっ!」

男「どうでもいいだろ、別に校門が目の前にあるわけだし。俺たちもさっさと教室まで行くぞ」

男(欠伸を交えて無関心を装うのはある意味この手の主役の嗜みではなかろうか。眠い手を擦りつつ、不良女と別れ、男の娘とトイレへ入ると)

男の娘「どうかしたの? 男、ま、まさか大きい方がしたかった……!?///」

男「バカ、思っても声デカくして言う事じゃないだろうが!」

男「そうじゃないが、何となく目のやり場を求めて後ろの個室とか気にしてみたくなる時もあるだろ」

男の娘「えっ、ごめん。僕はそういうの全然ないかも……文化祭さ、準備もあと一押しって感じだよね」

男の娘「僕がんばってお姫様役やり切ってみせるよ!! だ、だから、男はそんな僕を陰で[ピーーーーーーーーーーー]」

男「え? 何か言ったか?」

男の娘「う、ううんっ!! さ、先 教室入ってるから、どうぞごゆっくりね!?///」タタタ…

男(……オカルト研は、後輩のように元通りになっているだろうか)

199以下、名無しが深夜にお送りします:2017/01/30(月) 22:47:29 ID:1O6xl2qs
先生「――さてさて、みんな この期に及んでとやかく言われたくない気持ちで一杯だと先生も思います」

先生「優秀賞目指してクラス全員が一致団結、とても素敵なことだと思います……でーもっ!」

先生「羽目を外しすぎないようにっ! はい、散れ!」パンッ

クラスメイトたち「わっっっっ……!!」

男(お決まりである朝のありがたいスピーチも短めに、合図とともに蜘蛛の子は如く散らばる。そんな中、俺は先生の後ろ姿を追い掛けて)

男「先生、転校生がまだ来てないみたいなんですが どうかしたんですか?」

先生「ん、さぁ? 親御さんからは何も連絡受け取ってなかったから遅刻ぐらいとしか認識してなかったけど」

男「でも珍しくありませんか? アイツはそれなりに模範に沿う生徒です。登校途中で何かあったなら、連絡の一つぐらい……」

先生「……転校生の心配は良しとして、君の方はどうなの? 名無しくんもいないわよ?」

男「名無しは――――おぐ」

男(突然ドンっとぶつかる何かによろけ、俺は先生の前で尻もちをつく。ぶつかった、だと?)

男(視界には急ぎ歩くも駆けている人間は一人たりとも存在しない。浮かれた生徒もだ。だが、確かに俺は 何か と衝突したのに)

男「……ん? 何だ、この手に感じるやわらかい感触は」ムニュ

?「ひゃあ!?」

男・先生「えっ!?」

200以下、名無しが深夜にお送りします:2017/02/05(日) 21:09:15 ID:BafRgheY
転校生「あ、あっ、あんたって変態はいつでもどこでも〜〜……!!///」プルプル

男「転校生!?」

転校生「問答無用よ!! このケダモノスケベ職人っ、ド変態!!」

男(目覚めの 『鉄 拳 制 裁』 毎度美味しく頂いています、ノルマですから、ではなく)

男(このお決まりのお色気シーンよろしくラッキースケベ発生は別段珍しくもなく、ここに来て驚きなど俺もしない)

男(驚愕の理由、それは何もない曲がり角でもなく、前方不注意だったわけでもなく、転校生との急激な衝突にあった)

転校生「もう、朝っぱらから冗談じゃないわよ、こんなのって……うっ、人の顔ジロジロ見ないでくれない? ……何よ?///」

男「理不尽に殴られれもすれば誰でもこうなるとか思わないのかよ」

男「転校生、お前いまどこから出て来た? ていうか遅刻なんて珍しいんじゃないか?」

転校生「わ、私だって遅刻の一つや二つある時ぐらいあるわよ。ていうか質問攻めにする気じゃっ」

先生「はいはい! その一つや二つ、教育者の立場からは許容できないから。理由ぐらいは先生に聞かせてくれる?」

男(俺の尋問ターンは早々取り上げられてしまったか。だが、先生も今ほど、転校生の登場に同様の反応を見せていたではないか)

男(アレはまるで透明人間に当たったようだった。触れて、初めて体が実体化したのではないかと疑うぐらい、いや、そうとしか考えられない)

転校生「えっ、と、実は寝惚けて私服で登校しちゃったんです! それで家まで着替えに戻っていたら……ん」チラ

男(俺を見た? 何だ、助けを求めているというのか?)

201以下、名無しが深夜にお送りします:2017/02/05(日) 21:53:18 ID:BafRgheY
男「まぁまぁ、コイツのネジが飛んでる乱暴癖はともかく、デマカセをする奴じゃありませんよ 先生。アホだし」

転校生「ちょっ!!」

先生「そうだねぇ、今回は見なかった事にしておくから次は気をつけてよ。男くん」

男「先生、さりげなく責任を押し付けていくの止めてください」

男(ナンセンスなやり取りを交し、去って行く先生を見送ると 傍にいた転校生が俺の腕を掴んできた。というか、引っ張られているじゃないか)

転校生「悪いけどついて来て。ここだとちょっぴり話しづらいのよ。お願い」

男「藪から棒に何だ? 昨日みたいな嫌な出来事ほじくり返したいのか、転校生」

男(得意の嫌味芸だって勿論 時と場合を選ぶだろう。だが、今のは本心である。俺にとっても、彼女にとっても、一息吐く時間が必要だった)

男(俺たちが現在深く共有してしまっているのは、無理矢理にでも遠ざける話題。歪んだ非日常から順風満帆なラブコメへ修正していかなくてはならない)

男(だからこそ、強くこの腕を掴んでいる手へ 苦労知らずの手を添えてみた。しかし、転校生の反応は)

転校生「あ、あんたにだからこそ言っておかなきゃいけないことがあるの! どうしてもよ!」

男(美少女の頼みとあらば、たとえ火の中水の中は然り当然……それに気になることをまだ残したままであった)

男「ふむ、そういえば最近また一つオススメのスポットを発見した。俺のサボりに付き合ってくれるか、転校生」

転校生「行く……ありがとう、変態」

男「(感謝されても変態の呼び名を定着させたがるか、ならば返事は) え? 何だって?」

202以下、名無しが深夜にお送りします:2017/02/05(日) 22:38:57 ID:BafRgheY
男(ショートヘアーの毛先を撫ぜ、愁う彼女の横顔は暴力染みた魅力があった。ギャップ萌えというか味のあるキャラブレの良さの真髄をリアルで目の当たりにす)

転校生「……埃っぽくて長居したくないんだけど」

男「やれやれ 何を贅沢な。サボるっていうのは背徳の行為だ、つまりはだな!」

男(場所も相応に低ランクを、と熱弁を語りたがった俺を制止させるそのジト目である。OK、実は俺もこの部屋が何なのか知らないのだ、転校生)

男(適当に『あ、それっぽい』場所を徘徊して探し当てれば、このザマ。至って人の手も行き届いていない珍しいステージを引き当てたまでは良いが)

男「宿直室ってやつだな。昔は警備員を雇って夜間の巡回をしてもらっていたと友人のお兄さんの友人から聞いた」

転校生「えぇっ、あんた友だちって呼べるの私たちの他にいなかったわよね!?」

男「お前日本語ばかりで気遣いの精神は学んでないの? しかし、あながちウソじゃないな (通常なら錠をされるか、別の用途にされていた部屋が偶然使い放題……お楽しみが、いっぱい)」

転校生「悪いけどカビ臭い所で話す気になれって難しいわ、ていうか無理! この空間が無理!」

男「どこのお嬢様だお前は。どうでもいいから、話の続きを聞かせてくれないか?」

男「いや……そうじゃなくても、俺の方から転校生に尋ねたいことがある」

転校生「あっ…………たぶん、あんたが聞きたいことと私が今から話すこと、同じになると思うわ」

男「何? よく分からん、どういう意味――――オッ」

男(どうした、どうかしたのか 美少女よ。その健康的なおみ足を飾るニーソックスへ手を伸ばして、あ、すごいなぁ)

転校生「凝視しないでド変態!!///」  男「だって!!」

203以下、名無しが深夜にお送りします:2017/02/05(日) 23:15:04 ID:BafRgheY
男(女子の絶対領域、すなわち禁忌とされたパンドラの箱が今開かれてしまうような物。目を背けていられる方が狂気の沙汰ではないか)

男(何を思って彼女がこんなアメイジングを発起したかは他所に、膝小僧? 膝裏? 脛? 足の指? 指股? 気持ち悪い? 構わん、二の次だ)

男「まさか誰もいない場所を選ばせたのは、俺の前で痴女になり切ろうと……」

転校生「ちがうっ!!」

転校生「あんたに、あんただけには見てもらっておきたかったのよ。怖いけれど、証拠になるんじゃないかと思って」

男「は?」

転校生「引かないでよ。いきなり見せようとしておいて今更だけど、きっと男なら」

転校生「わかってくれると思って、こうしようって決めたんだから――――――」

男「…………転校生?」

男(つい先程まで興奮を露わに荒くさせていた鼻息が、静かに冷めていった。併せて 息が詰まる。あれだけ胸躍った禁忌の先へ、俺は目を伏せていた)

男(だって、彼女の右足が無かったのだから)

転校生「変でしょ? 触っても感触とかないのに上から靴下は履けちゃうんだもん」

転校生「丁度太もものこの辺りまで無くって、上手く隠せてるから……男?」

男「アイツか、名無しのバカがやらかしたんだな、大体想像ついてる。許すなんて生易しい真似止めだな、もう我慢できない」

男(神よ、罪深い小心者へ殺めの許可証を与えたまえ)

204以下、名無しが深夜にお送りします:2017/02/06(月) 00:01:21 ID:SlBRxEuY
転校生「        」

男(頭に血がのぼっていく意味を初めて刻み込まれた気がする。儚げな美少女の声はまったく耳に届かず、だが台詞は綺麗に読み取れていた)

男(明日、また少し身体の一部が消え、明後日、また消え、いつの日か 彼女そのものが世界から失われる。判然としていた)

男(転校生が現象に蝕まれる自らを明かしたのは、決して俺に悔恨を抱き続けろと言いたかったのではない。これで良かったのだと伝えようとしているのだと)

転校生「あんたには何もしないで欲しいの。その上でこんな物見せるなんて残酷かもしれないけど」

転校生「元々無かったものが、こうなるんだもの。全然おかしいことなんかじゃないわ」

男「俺にお前がいなくなった世界で生きろって言うのか!?」

男「じょ、冗談じゃない!! お前や、お前以外の誰かが一人でも欠けたらここでも頑張る意味を失うだけだ! 俺は次に何に縋ったらいい!?」

男「残る選択なんて“死ぬ”以外ないじゃねーかよぉ!?」

転校生「……驚いた。あんた結構 色々思い出して来たんじゃない? それともあの神さまの手回し?」

男「もう過去の記憶なんてどうだっていいだろアホ! 俺は今が欲しいっ、お前らと一緒に過ごせる時間だけが欲しい!!」

男「こんな、こんな安直なバッドエンドルート直行なんて見え透いた罠、辿るなんていやだ……やめてくれよ……」

転校生「良い悪いは考えるあんた次第じゃないのよ。それに」

?μk?生「最モ翫實ノыェn択肢ね、mう一つ娯#いあっても罰はあたrないと思うw@よ。男」

男(透けた手が、俺へ差し伸ばされた)

205以下、名無しが深夜にお送りします:2017/02/06(月) 00:49:21 ID:SlBRxEuY
男(名無しの想定した『終末』を辿る一歩は残酷で堪らない一歩であった。マイナスへマイナスの掛け合わせは僅かもプラスへ変わりはしなかった、現実も虚構でさえも)

男(笑って受け止めきれる甲斐性のなさは、自分の未熟からか? 潔く最後を迎えることが正しいのか? まだ青い感性には尊いイベントである)

男(自分へ降りかかった話とはいえ、随分上から目線じゃないかだって? それもその筈 この未熟な一人語りは――――略)

男「――――完璧じゃないか。ほぼ人前で晒しても恥ずかしくない」

委員長「だってよ、みんな!」

クラスメイトたち「「「優秀賞取ったも同然よね! 俺らの努力が世間を動かす、時は来た! 衣装も完璧だもんねー!」」」

男の娘「はぁはぁ、ど、どう? 男、僕の演技とか……だ、大丈夫だったよね!? そうだと言って! お願いしますから!!」

男「ああ、毒を飲まされて倒れるシーンは迫真すぎて危機迫る感覚になったぞ。立派な役者だな、男の娘」

男の娘「え、えへへっ、男から太鼓判押されちゃった〜! みんなみんなぁ〜!」

先生「うふふ、無関心な君が言うなら間違いないって思うけど 本番前のお世辞かな?」

男「俺 椅子に縛り付けられてまで見せつけられてたんですよ? 冗長なら気分関係なしに寝てましたから早く縄ほどいて」

先生「そっかぁ〜、うん、良いじゃない! コレはこれで……あ、ところであんたたちの部活の出し物は?」

男「気にするの遅過ぎじゃありませんか、顧問の先生」

男「ご心配なら夕方 部室に遊びに来てみたら良いじゃないですか! 来てビックリ 持て成し不十分ですよ!」

先生「ほ、報告ご苦労さま……っ」

206以下、名無しが深夜にお送りします:2017/02/06(月) 20:57:13 ID:SlBRxEuY
男(いつのまにやら皆クラス最優秀賞の座を狙う姿勢なのは文化祭効果というヤツだろう、現実でもカップル誕生のタイミングとして絶好と耳にする。陰の者には関係ないが)

男(俺とて、疎ましかったお祭り騒ぎが楽しくなってくる。その後も何度かの予行練習を経て 仕上げへ近づけて行くワクワク感と来たら……)

男の娘「ねぇ、男。僕たちなんか今を生きてるって感じがするよね!」

男「あんなに戸惑ってたお姫様役をここまでこなすぐらいだからな、お前」

男の娘「んー、そうじゃなくってさ、よく分かんないけど楽しい♪ 色んな辛いこともあったけど」

男の娘「みんなとの気持ちが一体化してるみたいな、こういうのって気持ちいいよねぇ〜」

男「そろそろ日陰者同盟解散の危機か?」

男の娘「えっ、あ、あれ? 男はあんまり楽しめてなかったりする!?」

男「違うって、そうじゃないんだが、こんな俺が真っ当に学生生活謳歌して良いのかなぁーと」

転校生「何言ってるのよ?バカ変態が謙虚になってると雨の代わりに隕石落ちて来そうじゃない」

男「そんなに普段ふてぶてしいかよ、俺は」

男の娘「え〜っと、とりあえずお昼にしよっか! ごはーんっ!!」

男(というか元よりそのつもりで三人は動いていたと忘れていないか、男の娘よ。今日は珍しく教室を離れ 校内の食堂へ訪れてみた)

男(残念ながら世間は日曜日ということであり、学食のお姉さま方は不在であるが、広々としたスペースを活用することができるのが大きい)

\ガヤガヤガヤ/ 転校生「これのどこが広々なのよ!?」 \ガヤガヤガヤ/ 男「ワチャワチャしてるな」

207以下、名無しが深夜にお送りします:2017/02/06(月) 21:26:00 ID:SlBRxEuY
男の娘「あちゃー、完全に誤算だったよぉ……漫研とアニ研のTCG大会やってるとか」

男「まぁ、席はいくつか残ってるみたいだが」

男(常日頃教室で昼食ばかりだったからと男の娘が提案しての食堂であったが、これでは落ち着いて食事どころの話ではなかろう)

転校生「ここのかき揚げおソバ安くてチープだけど美味しいって聞いてたんだけど、断念か……」

男「だから食堂牛耳るお姉さま方が留守なんだってば。話聞いてんのかお前」

男の娘「うーん、このまま教室に戻ってっていうのも味気ないし……あっ、そうだよ!」

転校生「何なに? まだ気になってたところがあったりするの?」

男の娘「へへ〜っ! あるんです、これが! 三人が満足できて落ち着く事ができる場所が!」

男「当ててやろうか? ラーメン愛好会の部室だろ」

男の娘「男ぉ! 空気読まなきゃ[ピーーー]だよぉ!?」

男(俺たちの行く当てなど始めから決まり切っているだろうに。それにしても、難聴スキル。この期に及んでまだ頑張るというのか)

男(一時は放っておいてみたものの、残すは男の娘・不良女・オカルト研、か。やり残しは性分に合わないじゃないか)

男の娘「えへへー、部室のカギ簡単に借りてこられちゃった〜♪ フフん!」チャリン

男「やったな、さすが転校生の色仕掛けは一味違う」

転校生「勝手に変なねつ造しないでくれない!?」

208以下、名無しが深夜にお送りします:2017/02/06(月) 21:57:40 ID:SlBRxEuY
男の娘「ん〜、たまには静かな部室でお昼ってのも悪くないよね。静かな」

転校生「約一名が聞いてもわかって貰えそうにないわね、それ、ふふっ!」

男(ママさんがこしらえてくれた弁当を広げつつ、両手に花。悪くないじゃないか。さて、肝心の弁当の中身は、顔面が蒼白になるほど愛情たっぷりである)

男の娘「どうしたの、男? 汗なんて掻いちゃって。具合悪い?」

男「時に、便所飯なる行為を俺は未だに味わった事がない。これはチャンスだ。孤独の悲しみを味わいつつ」

転校生「トイレで食べるとか作ってくれた人の気持ちも考えて非常識よ、マジ変態。……ていうか!」

男(途端に声を荒げ、窓際のハンガーへ掛けられたコスプレ衣装なる物を指差す転校生。バニーガールはお気に召さない?)

転校生「どう見たって際どすぎよー!! こんなのを私に着せようっていうんでしょ!?///」

男「良い客寄せパンダになるんじゃないか」  男の娘「女装より良心あると思うんだけど」

転校生「無理無理むりっ!! 特にこことかヤバいじゃない! Vラインとか、更に網タイツ!? いやぁぁ〜!///」ブンブンッ

男・男の娘「……」

転校生「無視してお昼食べないでってば!?」

男の娘「えぇ、何も本当に転校生さんが着なくちゃいけないってワケじゃないんだからそこまで……」

転校生「オーダーメイド仕立てたとかメール来ちゃったのっ、ここに! ほら、ほらぁーっ!!」

男「(笑)」  転校生「あ゛?」

209以下、名無しが深夜にお送りします:2017/02/07(火) 21:39:20 ID:0l8H470c
一行に別のキャラの台詞連続させると漫画らしいテンポに近くなるな

210以下、名無しが深夜にお送りします:2017/02/11(土) 19:19:42 ID:UGBstVwg
たまに読んでるが、さすがに細かい伏線とか忘れてるな。いつの間にか大長編になってたわ。

211以下、名無しが深夜にお送りします:2017/02/11(土) 21:26:45 ID:WSAk1RMo
かれこれ3年?4年は続いてるのか

212以下、名無しが深夜にお送りします:2017/02/12(日) 01:43:23 ID:ktkflY1k
多少延びてもかまわないので伏線とかキャラ紹介をまとめた振り返り編みたいなのがあってくれてもよいような気はする

213以下、名無しが深夜にお送りします:2017/02/12(日) 17:26:55 ID:M9wOEU9U
そんな事したらまた延びるから、終わったら誰かがまとまればいい

214以下、名無しが深夜にお送りします:2017/02/12(日) 21:29:40 ID:Z2qDD8LQ
男(転校生から肘やら膝で小突き回される俺を見て困り顔で笑う男の娘。この三人だからこそ叶う究極のバランスが昼食の一時を飾る、至高なのだ)

男(そんな中だろうとお構いなく、転校生はきっとアレを着られないのだ、と邪険に愁う自分が心の内に存在する。美少女は騙せても……本当の敵は挙句ホニャララさんである)

男(彼女、転校生は俺に約束させた。「何もしないで」、「黙って時が過ぎるのを待つの」、「”今“を楽しもう」。終末へ備える為の、そうでなければ、供える為の三原則を)

男(やれやれ、参ったじゃないか。この強欲者が抱いた淡い夢と心中し≪不適切な表現が含まれているため 表示できません。≫)

男(≪不適切な表現が含まれているため 表示できません。≫)

不良女「ち〜ッス……って、この挨拶なんかデジャヴ感じんな。時間通りだしょ?」

男の娘「あっ、来たきた。待ってたよ〜!」

転校生「どういうこと?」

男(前触れなく開いた部室の戸から覗かせたのは、辛うじて素行悪そうに魅せる棒付きアメを口に頬張る不良女。転校生と顔を見合わせ、男の娘へ尋ねれば)

生徒会長「失礼する。おや、既に全員が揃っていたとは感心だな」

先輩「やっほー! ラーメン愛好会放課後部活動の延長みたいなの始めちゃいますんで、各自お座りください。おすわりっ!」

男の娘「実は二人には内緒で部室に連れて来るように頼まれたんだ。ご、ごめんね! 騙す様なことしちゃって!」

転校生「だ、騙すって、そもそも私たちに秘密にする意味ある?」

先輩「ウッフッフーン、騙し打ち的なぁ〜?」  生徒会長「抜き打ちと言いたいそうだ」

男「いや、実際何のですか……」

215以下、名無しが深夜にお送りします:2017/02/12(日) 22:07:03 ID:Z2qDD8LQ
男(呆れた素振りでドッキリ成功をアピールさせるメンバーへ目で訊くも、皆 同じ様に含み笑いであった。一体何の企みだと)

不良女「ま、玉には驚かせる側にあたしらが回っても罰は当たらないんじゃないの?」

男「やれやれ、気味悪いな。ここに全員が集まったってことは文化祭の出し物の相談でしょうか」

先輩「ソダネー。わたしたち何にも準備してないからネー」

生徒会長「コスプレ喫茶まがいの詐欺ラーメン屋……これで金銭を巻き上げようと言うのだから其処らの俗な処より悪質」

生徒会長「というか この私が見逃すとでも思ったのか?」

先輩「な、仲間じゃないですかっ、お上!!」

転校生「変な事やらかす巻き添いなんてマトモなら誰だってごめんよ!」

男の娘「だけど構想段階から仕切り直すにも時間足らないよぉ。我慢してこの路線を上手く利用してあげなきゃ、もう まずくない?」

男「そりゃ十中八九不味いに決まってるだろ。やるって言い出して承認貰った上での話なんだしな」

不良女「ん……要はブラックなのに触れなけりゃ問題ないんだろ?」

男(何故そこで俺を見たのか理解しかねるが、努力してみよう)

男「……ならば、提供するのはカップ麺で誤魔化すとしましょう。しかし無銭飲食にしてはお話にならない。ならば」

男「ここは可愛いコスプレに全て委ねてみるべきではないだろうか!?」バッ

男の娘「[ピッ]、[ピーーー]男のコスプレにっ///」  男「客の目が腐り落ちるわ」

216以下、名無しが深夜にお送りします:2017/02/12(日) 22:44:02 ID:Z2qDD8LQ
男「ライブハウスのシステムは知ってますか? チケットを購入していてもハコの中へ入るには謎のドリンク代が発生しますよね」

不良女「あ〜、飲食店と同じ扱いになってるからとかバイトのオーナーから聞いた事あるかも。つーか まさか」

男「喫茶店、不純の無い響きですが カップ麺提供に重点を置きましょう。入店時に500円でワンカップを」

転校生「どう見ても詐欺の他ないじゃないのよ!?」

男「詐欺? いやいや、断じて違います。我々はお客様へ飲食物を提供しその対価としてお金を得る必要があるのです」

生徒会長「し、しかし 客が500円を支払ってまでコンビニやスーパーで売っている物を欲しがるか?」

男「そこで“コスプレ喫茶”の名前が生きるんじゃありませんか、生徒会長」

男「……客は15分間、好みの店員とのチェキを楽しめるサービスを手に入れられる」

男(はっちゃけた一名を除き、猫も杓子も机に項垂れる。俺とて最悪な策である。誰が好きこのんで半所有物を変態へ接近させたいか)

不良女「まずラーメンへの侮辱じゃん……」

生徒会長「そういう問題ではないと思うのだが……どうしたい、部長」

先輩「そうだね、500円なら切りもいいからレジもスムーズに済みそうだよ! ナイスアイディア!」

転校生「だめ……黙ってたらクズの舞台にしかならないわ……」

先輩「えぇ!? 待ってって、そうでもないよ! これなら準備も大分省けるし、最悪カップ麺に拘る必要もないよ?」

先輩「身体張るのは何のため? ザッツ \マネ〜!」  男の娘「ノーノーっ!!」ブンブンッ

217以下、名無しが深夜にお送りします:2017/02/12(日) 23:23:30 ID:Z2qDD8LQ
後輩「……で、私たちにサクラをお願いする先輩の立場は何なんですか」

男「女子すら虜にする美少女たちが働くコスプレ喫茶に興味を持って頂こうと思ってな」

男「まぁ、俺も如何にもな展開をしてやれば都合良くモブどもが飛び付いて満員御礼も目じゃないと睨んでいるワケだが」

後輩「でしたら最初から無駄な頼みとかする意味ないじゃないですか。私も妹ちゃんも暇じゃありませんので」

男「部活動での出し物は二日目なんだからお手暇じゃないですかー?」

男(説明しよう、我が校の文化祭スケジュールは二日間に渡るのだ。俺たちのクラスが張り切って準備しているクラス発表は一日目に披露される)

後輩「先輩と違ってそこそこ付き合いがありますから! それに誰が喜んで恋敵の巣に突入したが」

後輩「っ〜〜!!///」ブンブンッ  男「全身で否定しないでくれないか」

男「ところでウチの呑気な妹はどこにいる? 一緒にお化け屋敷の準備じゃなかったのか」

後輩「い、妹ちゃんはお化け役として演技指導を叩きこまれてる最中です……」

男「ちなみにどんな役を」

後輩「聞いてないんですか? 途中お客さんに『疑似コックリさん』をやらせるんですけど、その最中に机ひっくり返す怒り狂ったお狐様ですよ」

男「(そして現れた瞬間を狙って捕獲した後ハグしたくなるのか)お前は?」

後輩「受付ですよ。あとは兼ねて、写真撮影係ですかね」

男(写真だと?)

218以下、名無しが深夜にお送りします:2017/02/13(月) 20:04:56 ID:nL8RpUos
後輩「どうかしましたか、先輩?」

男「いや、お前が写真なんか撮るんだなと何となく思って」

男(特別変な話でもなかろう。希望した入場者の驚きの一場面を陰から収めて渡す為だとか、何を意外に感じたのだ俺は)

後輩「せーんぱい」パシャ

男「……あのな、お前被写体に許可なく勝手に撮るのはマナー違反だろ」

後輩「えへへ、ごめんなさい。クラスの子から借りたポラロイドカメラなんですけど 案外使い勝手良くってつい」

男「やれやれ、準備が出来てたらもっと決め顔でポーズしてやれたのに」

後輩「ん? 写りは結構悪くないと思いますよ。自然体の先輩が一番なんですから」クスッ

男(狙っていると言わんばかりのあざとさを振り撒く小悪魔っぷり、逆に照れるな。嫌味を感じないのは彼女の涼しげな雰囲気がそうさせるのだろう)

後輩「はい、記念に一枚どうぞ。先輩も良ければ当日私たちのクラスに遊びに来てくださいね?」

後輩「次は ビクビクしてる先輩のことを撮らせて欲しいんですから、ふふっ」

男「(身も心もその悪戯へ委ねてみたい) アホか、性悪めが。それじゃあ妹にサクラバイトの話伝えておいてくれ」

男(というか帰宅してから直接俺が頼み込めば良いだけである。気恥ずかしに負けて早々撤退を余儀されたものか、負け犬の遠吠え的な)

男「……写真か」

男(あの夜、正気に戻る以前と仮定した、後輩が俺の部屋から持ち去った写真たち。彼女が例のアレに関し頑なに話題に出そうとしないというのは、実に気になる)

219以下、名無しが深夜にお送りします:2017/02/13(月) 20:48:40 ID:nL8RpUos
男(失った記憶が再び降りてくる奇跡、様変わりした後輩の姿を見て切に願った。この世界で成し遂げた過去が何の拍子かで戻りはしないのかと)

男(もはや何を忘れ、何を覚えているのか曖昧な自分が酷く不完全な存在に思えて仕方ない。今を全力で楽しみたくても、過去を辿りたい、贅沢だろうか?)

テンプラ「あ葡キ飼負oイTァ0」

男「う゛、わおおおぉぉ!? あんたっ!! な、何平然と廊下で突っ立って……」

男(惜しかったじゃないか後輩よ、後を漬けていれば難なくシャッターチャンスを、なんて)

男(俺があげた絶叫に周囲のモブが振り向き立ち止まっている。例外を除けば、この怪神を認識する事は不可能なわけだ)

男(とにかく、この様な平凡な背景に佇まれていても心臓に悪いだけである。外へ連れ出すべきだろう。大方コイツもそれを望んでいる)

男「ここじゃ返って息が詰まる……来てくれ」

テンプラ「縺ェ繧薙〒譁・ュ怜喧」

男(了承したのか俺の背中を重たい体を引き摺るようにしてテンプラは追ってくる。どんなホラーだと肝を冷やしつつ、改めて俺の前に現れた理由を予想範囲内で模索してみた)

男(一つ、礼を言いに来た。二つ、名無しを手放しにするなと忠告に。三つ、次の厄介事を運んできた。止そう、胃がキリキリしてくる)

男「この辺なら校舎からも離れているし、誰かに見られる事ないだろう。何の用だ?」

テンプラ「……(喋れない)」パクパク

男「不便だなっ、筆談は!?」

テンプラ「……!」ガッ  男「ミミズ這った後より最悪じゃねーか」

220以下、名無しが深夜にお送りします:2017/02/13(月) 21:34:50 ID:nL8RpUos
男(携帯電話を手渡しても碌に字も打てず、神々の形骸化に挫けそうになる。これでは日が沈むぞ。埒が明かん)

テンプラ「……」

男「いや、俺だってあんたが伝えたがってる気持ちとか読み取れればと思ってるよ。だけど人間相手と同じにはいかなくて」

男「表情もなければ仕草からも何もわからん、侮辱じゃなくてな。手っ取り早く用事を済ませられないか?」

テンプラ「……」

男「いつぞやに幼馴染へ代弁させたことがあったろう。アレが現実だったのか夢なのか見当つかな――――」

『復旧までもうしばらくお待ちください。繰り返します、大変申し訳ございません。お客様には……』

男「――――い…………この精神世界みたいなヤツ、ありきたりじゃないだろうか」

テンプラ「二度もお招きしてしまい申し訳ありマセン。迅速な対応を求められてしまったものデスカラ」

男(線路の上で立ち往生する電車の中、向かいの席に腰掛けるは瞳からハイライトの失せた幼馴染と思わしき美少女である。やはり)

男「本題へ移る前に訊きたかったんだが、どうして幼馴染なんだ。ここが現実でないなら、直接憑依してるわけじゃないだろ」

テンプラ「イイエ、この子であるからこそワタシを体現させられるのデス。男」

男「は?」

テンプラ「器、いえ、それ以上にコレはワタシの意思を継ぐ者である。深く、深く貴方を愛する隣人としテ」

男(手の中に包んでいた紫色のエゾキクの花を嗅いで、彼女はこちらへ綺麗に微笑んでみせた。ゾッとするぐらいに)

221以下、名無しが深夜にお送りします:2017/02/13(月) 22:11:46 ID:nL8RpUos
テンプラ「マズは、名無しの件につきまして改めてお礼を言いたく思いマシテ」

男「お、おぉ……だがあんた目線じゃ根本的な解決にまだ結び付いていない筈じゃないか? あんたはあの男を」

テンプラ「その根本を覆さんとする事象がアナタへ降りかかってしまッタ。ワタシの望みは男の真なる幸福デス」

テンプラ「ぶっちゃけ歯痒い思いをされているのでございマショウ!? ネェ!?」ガバッ

男「何だよ何だっ!? いきなり跳び付くんじゃねーよ!!」

テンプラ「アナタ内心穏やかではない筈! 大切な幸福を一つ手放す、ノット! そんな物全然ハッピーじゃないデースッ!」

男(このエセ外国人の様な突然変異した言動は何ぞや、と一歩引いて待てば、テンプラは腰に手を当て世迷言を連ね、俺へ提言してきた)

テンプラ「アナタが、この世界の”神“となれば良いのデス。男!」

男「……何だって?」

テンプラ「ご自身が望む世界の在り方を求めるのでアレバ、それは自身が管理し 時の流れを牛耳るべきではありませんカ!」

テンプラ「ワタシは男の水鏡でアリタイ。どんなに隠し通したいという想いすら、このワタシには留まりなく流れ込んできマス……悲哀デス」

テンプラ「男はコレマデにどれだけの逆境を跳ね返してきましタカ? ピンチこそが強味、背水の陣を味方につける悪運の持ち主ではありませんカ?」

男「……もう、冗談は休みやすみで……頼めないか テンプラ。意味不明なんだが……」

テンプラ「聡明なアナタならば理解し終えているに違いありまセン。かの庭を統べる主となるのデス、男」

テンプラ「ココに生ずる現象を凌駕シ、システムを掌握する万能の存在ヘ。――――あの娘を救う奇跡は、アナタが起こすのデス」

222以下、名無しが深夜にお送りします:2017/02/13(月) 22:47:54 ID:nL8RpUos
天使「――――じゃん、けん!」

天使・名無し「ぽんっ!! ……あいこでしょ、あいこでしょ! あいこでしょ!!」

天使「お、大人しく自分に譲らねーってんなら酷い目見るだけです。この学生ニートめが」

名無し「縦に裂けて死ね。こっちは昼飯後のデザートが掛かってる、死活問題だ。お子さまの別腹事情と一緒にすんな」

天使「ぐぅぅぅぅわぁ〜!! この不浄な巻きグソを楽園に招き入れたのはどこのバカ野郎ですか!? チ○カスがぁ!」

ママ「もうケンカしないの! プリンならもう一つ別のがあるから、ここは年上の君が我慢してほしいなぁ〜、ね?」

天使「やーい! やーい、ぶぁあぁあぁか!!」  名無し「脳漿ぶちまけて派手に死ね、糞ガキ」

幼馴染「……ていうか、名無しくんはどうしてウチにご飯食べに来てるの?」

名無し「昼食も用意してあると冷蔵庫開けたらラップに包まれた冷や飯とのりたまが添えられてあった。あんたならどうする?」

幼馴染「厚かましいよ……あたしはよく知らないけど、君って思ってた感じと全然違うかも」

名無し「へぇ、気に食わないと真っ先に否定に走るのか? 貴重なお利口枠かと思いきや、まんまと騙されたよ」

天使「べーっ、だ! お前なんかに誰が優しくしてやるもんですか、早くどっかに消え失せやがれですよ!!」

ママ「こら天使ちゃん! ごめんねぇ、私は名無しくんもい〜っぱいお持て成ししたかったんだけれど……名無しくぅーん?」

名無し「…………邪魔した。腹ごしらえに着いて来いよ、ガキんちょ」グイッ

天使「はぁ!? ちょ、何ですか! 今度は自分を誘拐して身代金をっ! お、男くんヘルプミ〜!?」

223以下、名無しが深夜にお送りします:2017/02/19(日) 21:00:17 ID:r5/KfTsw
男(間近まで迫られていた顔が離れた。こちらを見下ろす表情は恍惚としており、先程まで鼻息荒くさせていたテンプラは何処へ行ってしまったのかと)

テンプラ「男、アナタには素質がありマス。コレでも控え目にお話させて頂いたつもりデスが」

男「……神? 奇跡だと? ある意味新世界に召喚された俺が神さまか?」

男(聞こえは良いが、非常に臭い。理由はわからないが簡単に首を縦に振ってしまえば 代償に何かを失ってしまいそうな)

男「(危険なオファーが身に降り掛かったと直感が告げている) すまん、そういうのウチ間に合ってるんで」

テンプラ「怪しい宗教か新聞勧誘と同等にされては困りマス!」

テンプラ「アナタを長く見守ってきた者としテ、至高の提案であるとワタシ自負していマス。一から十、百をもコントロール可能となるのデスから」

男「この俺はクリエイター志望じゃなく、常にプレイヤー側でありたい。大前提から勘違いしてるぞ」

男「そんな仰々しいのじゃ、まずお門違いだろうよ。テンプラ?」

テンプラ「はぁ、勉強にナル…」  男「メモんな」

男「胡散臭いネーミングの奴からされる妙ちくりんな話に乗りたがる物好きに俺が見えるかよ。一昨日忘れた頃に聞かせてくれ」

テンプラ「……デスガ、男。実は惹かれてマスよね? ビ少女を救う手立てとシテ」

男(神か天使の名を冠する色者には思考読取能力がデフォで備わっているとでもいうのか?)

男(プライバシーの侵害を他所に背中から浴びせられた甘言である。実際転校生の為にも助言を仰ぎたくあって、テンプラを誘ってみたが)

テンプラ「ただただ起こる悲劇を見送るのが男デスカ? 心を苦痛に蝕まれながラ」

224以下、名無しが深夜にお送りします:2017/02/19(日) 21:42:11 ID:r5/KfTsw
男「て、転校生は、俺から助けられたいだなんて望んでいない……放っておいてくれないか……」

テンプラ「彼女が滅びを受け入れたがっていると思えないノでショウ?」

テンプラ「そして大人しく誤りへ辿る道を歩みたがるアナタではありマセン。お人好しは主人公の専売特許ではありませんカ?」

男「放っておけって言ってるだろっ!!」

テンプラ「失礼しまシタ」

男「俺がそうするって決めたんだ、ぽっと出のモドキに喧しくされる筋合いなんてこっちにはないんだよ!!」

男「テンプラなんてふざけた名前名乗りやがって気が狂ってるとしか思えないな、あんた! 面白い自虐ネタだ!」

『復旧までもうしばらくお待ちください。繰り返します、大変申し訳ございません。お客様には……』

男「うるさい! もう十分だ、帰らせろ! 畜生……俺の中を土足で踏み込んで来たのが間違いだったんだよ、テンプラ」

テンプラ「ほらマタ迷っていマス、男」

男「何!?」

テンプラ「葛藤を胸の奥に隠すことが愚かと一度はあの子ラから気付かされたのデショう。過ちを繰り返してはなりマセン」

テンプラ「ワタシはアナタの良き理解者であり、良き隣人デス。ならば 破滅を回避したく考える男に味方するのが道理であれ、ト……」

テンプラ「覚悟が決まり次第、ワタシへその身を委ねるのデス 男」

テンプラ「我が存在を賭けテ、かの力を託しマス。授けましョウ。アナタの理想たる世界ヲ――――」


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