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ξ゚⊿゚)ξツンちゃん夜を往くようです
1
:
名も無きAAのようです
:2015/10/10(土) 05:03:05 ID:cQB6.m2k0
,、,,..._
ノ ・ ヽ
/ ::::: i
/ ::::: ゙、
,i :::::: `ー-、
| :::: i
! :::::.. ノ
`ー――――― '"
812
:
名も無きAAのようです
:2017/02/16(木) 22:59:17 ID:il.O2mBo0
撃鉄終わるまで待てよ
813
:
名も無きAAのようです
:2017/07/20(木) 16:52:32 ID:AT2G.iuc0
撃鉄終わってから音沙汰ないな
814
:
名も無きAAのようです
:2017/12/10(日) 02:13:25 ID:x6tLqRJo0
これどうなったん?
815
:
名も無きAAのようです
:2018/07/10(火) 01:18:35 ID:ALgkWxhI0
待ってる
816
:
名も無きAAのようです
:2018/07/14(土) 00:02:27 ID:WN1Yo6LI0
もう二年近く休止してたのか
そろそろ続き読みたいな
817
:
名も無きAAのようです
:2018/08/05(日) 05:50:48 ID:6IZ1vrHY0
待ったよ
818
:
◆gFPbblEHlQ
:2020/09/29(火) 22:48:06 ID:45y81Xzo0
投下します
819
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 22:49:11 ID:45y81Xzo0
――VIP高校 屋上
保健室から貞子さんを連れ出し、屋上に戻って転校生二人の死を説明する。
始末屋に関する情報もすべて話した。
この一件の原因は、彼らを甘く見ていた私の落ち度でもあるのだ。
( ^ω^)「……蘇生は無理なのかお?
死体も五体満足だし、アンタなら何とかできそうだお」
川д川 「……死体、やっぱりそう見えるのよね」
転校生達の傍らに膝をつき、血も気にせずに彼らの体を調べる貞子さん。
彼女はブーンに訝しげな視線を送り、少し逡巡してから立ち上がった。
川д川 「お嬢様にも同じように見えていますか?」
ξ;゚⊿゚)ξ「……ごめんなさい。質問の意図が分からないわ」
川д川 「……だったらますます奇妙だ。こんなものは初めて見た……」
後から来たにも関わらず、貞子さんは早くもなにかを察知したらしい。
こういう時に頼れる大人が居てくれるのは本当に助かる。
ほんの少し、肩の力が抜けてくれた。
ξ゚⊿゚)ξ「何か気付いた事があるの?」
川д川 「ええ。気付いたというか、いや、どう言ったものか……」
.
820
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 22:50:53 ID:45y81Xzo0
彼女はしばし口ごもってから、慎重に選び抜いた言葉で質問に答えた。
川д川 「……催眠、の一種とでも言いましょうか」
( ^ω^)
ξ゚⊿゚)ξ「……?」
川д川 「“我々の状態”を一言で表すなら、やはり催眠だと思います。
内藤も、お嬢様も、そして私自身も。
今まさに、私達は催眠にかけられている状態なのです」
川д川 「しかも更に異常がありまして……ひとまず、お嬢様も彼らに触れてみて下さい」
ξ;゚⊿゚)ξ「……死体に触るのね。まぁ、貞子さんが言うなら……」スッ
私は死体の傍で膝を折り、男の死体にそっと手を触れた。
ヌルい血が手に張り付く。恐怖を帯びた冷たさが、私の体に染み込んでくる。
ξ;゚⊿゚)ξ
ξ;゚⊿゚)ξ「……え」
ところが、私の手先は小さな動きを感じ取っていた。
死んでいる人間には無いはずのもの――脈動。
そうとしか呼べない鳴動が、この『死体』にはまだ残っていたのだ。
.
821
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 22:52:37 ID:45y81Xzo0
川д川「……お分かりでしょう。彼らはまだ死んでいないんです。
口に手を当てれば呼吸があるのもハッキリ分かります」
ξ;゚⊿゚)ξ「……ならすぐにでも治療を!」
川д川「それが出来ないんです。
彼らは我々の見地外の方法で、『死んでいるという事にされている』 のです」
ξ;゚⊿゚)ξ
よく分からない。
川д川「事実として生きている。鼓動も呼吸もある。
しかし、私は今でも彼らの死を確信したままです。
お嬢様達もそうではありませんか?」
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
貞子さんの言った通り、私はまだ彼らの死を確信していた。
種族の別あれど、全ての生き物は生死を見分ける本能的な力がある。
生存を確認した今でもそれが機能していないのは、明らかな異常だった。
川д川「死体からの蘇生ならともかく、私には『生者を蘇生する方法』が分からない」
川д川「損傷を直すだけなら最初に済ませています。
それこそ、死体が動き出してもおかしくないくらいの措置を」
.
822
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 22:54:03 ID:45y81Xzo0
ξ;゚⊿゚)ξ「……それは、つまり?」
いまいち言葉を呑み込めなかった私は貞子さんに弱々しく問い返す。
二人は生きている、致命傷への処置もした、なのに『死んでいる』。
結果だけを突きつけるような理解させる気のない押し付けに、私は冷静な思考力を失いつつあった。
川д川 「方法は分かりませんが、現実と認識が明らかに噛み合っていません。
『現実が認識を作る』という絶対的な順序が覆されている、ような……」
貞子さんは言葉を選びながら、濁しながら私達に説明する。
それはきっと正解ではないだろうけど、今この瞬間の寄る辺としては十分すぎる推測だった。
( ^ω^)「それじゃあまるで、夢の中にでも居るみたいだお」
ξ;゚⊿゚)ξ(……夢、)
夢の中。
その言葉で、私はなにかを思い出せそうだった。
ξ;-⊿-)ξ(誰かが、そんなことを言ってた気が……)
記憶の再生にノイズが奔る。
顔も名前も曖昧になってしまった何かの記録が、私の脳裏に言葉を捏造する。
【 ツンちゃん先輩はもしかして、今まさにXXXXを脱出中なのではありませんか? 】
……必要のない想起だった。
私は胸をなでおろし、やけに重たく感じる頭を両手で揉みほぐした。
ξ;゚⊿゚)ξ「……でも、それでも生きてるなら見殺しには出来ない。
二人がこうなった原因には私も絡んでる。助けるべきよ」
川д川 「……では二人を預かります。
生死不明のままでも意思をもって動けるよう、やってみます」
我ながらワンパクなお願いをしたものだが、貞子さんは無茶を承知で引き受けてくれた。
ひとまず安心――なんて、マヌケなことを言っている余裕はない。
問題は山積みなのだ。たとえば――
ξ゚⊿゚)ξ
――あれ、そういえば、私は何をしていたんだっけ。
記憶が無い。思い出せなかった。
.
823
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 22:55:03 ID:45y81Xzo0
('A`)「……どういうこったよ、おい」
ξ;゚⊿゚)ξ「あ、ドクオ」
途端、その声に気付いて振り返る。
私の背後に現れたドクオは、すごく敵意のある感じでブーンを睨んでいた。
貞子さんの気配に気付いて授業を抜けてきたのだろう、彼は早くも怒りを露わにしていた。
('A`)「ほんの一瞬でこの有様か。役に立たねぇな、お前……」
ドクオが私を無視してブーンに詰め寄っていく。
彼は乱暴にブーンの胸ぐらを掴み上げ、この失態を咎めるように重苦しく沈黙した。
しかしこの程度の暴力はまったくの無意味。しばしの間、二人はまったく顔色を変えなかった。
( ^ω^)「……僕は魔王城より先に、一人でここに来てたお。
あいつは勝手に来ただけだし、最悪ここで」
('A`)「自分が殺されてた、だから俺に責任はねえって話か。
保身が上手いなァおい。デブが」
( ^ω^)
(^ω^)
ξ゚⊿゚)ξ
デブと言われて黙るブーン。
およそ事実なので何も言い返せない。
.
824
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 22:56:10 ID:45y81Xzo0
( ^ω^)「……そんなの言いがかりだお。
僕は雇われだし、知ったこっちゃない」
話を戻し、ブーンはドクオの手を払い除けた。
( ^ω^)「そもそも、こっち側の人間には傷一つ無いのが分からないお?
主人を置いて授業受けてたマヌケが後出しでほざくなお」
('A`)「じゃあお前の仕事は何なんだよ。護衛役の俺や、貞子さん達のサポートだろうが。
なのにだ、たった数分ツンを守る事も出来ないお前の存在意義は一体なんなんだ?
無責任な仕事で一丁前を気取るなよ。ツンが許してるからって――」
ξ゚⊿゚)ξ「……そこまでにして」
私は息を呑み、感情を消して言った。
ξ゚⊿゚)ξ「二人共、今の発言を全て撤回しておいて。今じゃなくていい」
ξ゚⊿゚)ξ「この一件の原因は『始末屋』に関する情報共有を怠った私にもある。
反省するべきなのよ、私達は全員ね」
ξ゚⊿゚)ξ「それでも批判があるなら私に言いなさい。
私だけ棚上げされるのは不愉快よ」
('A`)
( ^ω^)
二人が私に言い返せないのを分かった上で、私は力技で二人を仲裁した。
こういう喧嘩はよくある事で、あまりに度が過ぎた時は『魔王の娘』という立場を利用するしかないのだ。
立場を利用して友人達の言葉を握り潰す。やり方は不誠実だが、今はこれでいい。
ξ゚⊿゚)ξ「……何もないなら始末屋の話をさせて。
たぶん、私達はもう巻き込まれてる気がするから……」
('A`)「……分かりました」
( ^ω^)
.
825
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 22:56:57 ID:45y81Xzo0
「おお〜い、ドクオ〜〜」
ξ゚⊿゚)ξ ?
――かくして話を進めようとした直後、扉の方からマヌケな呼び声が聞こえてきた。
そうだ、そういえばもうとっくに授業が始まっているのだ。
勇者だ魔王だとはいえ、今の私達は学生という身分に収まっている。
( ^ω^)「これ、見られたらヤバいんじゃないかお」
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
ブーンはそう言いながら屋上を一望し、現状を再確認するよう私達に促した。
血肉がブチ撒けられた校舎屋上、そのド真ん中に横たわる転校生二人。
しかも私と貞子さんは手に血がべっとりとついていて、つまり犯罪臭がヤバい。
これはまさしく学生の身分にあるまじき状況――
('A`)
ξ゚⊿゚)ξ
つまり事案である。
川; д川 「――急いで散開ッ! 転校生は私が運びますので!」 バッ!
貞子さんは転校生達を担ぎ上げ、颯爽と屋上のフェンスを飛び越えていった。
(;'A`)「いやでも血の跡どうすんだよ!?」
ξ;゚⊿゚)ξ「ブーン! どうにかしなさい!」
(; ^ω^)「人使い荒いお……」 パクッ
ブーンは小言を漏らしつつ、激化薬を飲み下した。
.
826
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 22:57:38 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「おお〜い……、って」
ξ;゚⊿゚)ξ
('A`;)
( ^ω^)
――ブーンの激化能力は『復元』。
激化能力って覚えてる? 私は今さっき思い出した。
本物に及ばない偽物を作る能力だが、今この瞬間において真偽は二の次である。
(´・_ゝ・`)「……何やってんの? お前ら」
(;'A`)「……何って、見ての通りランチだよ、ランチタイムだ」
ξ;゚⊿゚)ξ「そうそう。私が呼び出したのよ」
私達はブーンが復元したレジャーシートに腰を下ろし、さも昼食中で〜すb(^_^)dという体でこの場を乗り切ろうとしていた。
弁当箱は一つも無いが、これなら辛うじて誤魔化しきれるはず。
ぶっちゃけ大きさが足りなくて血肉がちょっと漏れているが気にしないだろう。
.
827
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 22:59:26 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`)「まぁいいけどさ。いきなり教室出てかれるとビックリするんだよね」
(´・_ゝ・`)「分かる? 物事には理路が必要なんだ」
(´・_ゝ・`)「急にさあ、投げ出しちゃあ駄目だよね。4年もさぁ……」
嫌味ったらしく注意するのは私達のクラスの、……委員長の、盛ナントカ君だったと思う。
上手く思い出せないけど私と彼は喋った事もないし仕方ない。
向こうは根暗、こっちは魔王だ。そりゃあ会話もない。
(;'A`)「あーはいはい悪かったよ。ツン、戻ろうぜ」
ξ;゚⊿゚)ξ「そ、そうよね! そうしましょ」
私とドクオは腰を上げて屋上を去ろうとする。
かなり際どい隠蔽工作だったが十分に事なきを得たようである。
ξ;゚⊿゚)ξ チラッ
( ^ω^)” コクン
そしてアイコンタクトでブーンに後始末をお願いする。
後でちゃんとお礼を言っておかねば……。
.
828
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:00:06 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「……あれ。魔王城さん、手に血が……」
ξ;゚⊿゚)ξ「ギクゥ!!」
('A`)「これはケチャップだよ。ツンは昼飯にケチャップを一本飲み干すんだ」
(´・_ゝ・`)「ははは、クソ英文みたいな趣味だな」
とんでもない誤解と納得と哀れみを受けた気がするが、誤魔化せたっぽいのでよかった。
ξ゚⊿゚)ξ「よし」
(´・_ゝ・`)「なにが?」
ξ゚⊿゚)ξ
(´・_ゝ・`)「おっと、同じ描写をしてしまった」
ξ゚⊿゚)ξ「……なにが?」
(´・_ゝ・`)「なんで〜もないや、やっぱりなんでもないや。
このやり取りを忘れてても仕方ない。時間が経ちすぎてる」
ξ゚⊿゚)ξ ?
(´・_ゝ・`)「ほら、早く教室に戻ろう。この話が続くよう頑張ってきたんだから」
ξ゚⊿゚)ξ「……?」
……なんだろう。どこかに違和感があるぞ。
思い出すのが難しいので諦める。私は足早に教室に戻った。
.
829
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:00:58 ID:45y81Xzo0
〜賞味期限から四年経ったパンによる場面転換〜
_
(⌒⌒⌒).) カビダラケダオ
|^ω^ |:|
──| :::|:|‐─―─('A`)―──
 ̄ ̄ ̄~ ノ(ヘヘ タベキルゾ
.
830
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:01:58 ID:45y81Xzo0
〜放課後〜
ξ゚⊿゚)ξ「いやー色々あった」
夕焼けとか部活とかそれっぽい下校風景を眺めながらテクテクと帰る、そんな私は魔王城ツン。
こっちはドクオとブーン。昼間のこともあってギスギスした空気で辛い。
こいつら一体私をなんだと心得ているのか。魔王城ツンだぞ。もっと接待をしろドリクラのように。
('A`)「……途中でコンビニ寄りませんか。
今日の事を話し合うなら菓子のひとつでもあった方が……」
( ^ω^)「呑気にお茶を飲むような場にはならないお」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね、じゃがりこの一つでも買っていきましょうか」
じゃがりこを一本あげれば二人の機嫌も治るだろう。
.
831
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:03:08 ID:45y81Xzo0
〜ツンちゃんの家〜
ξ゚⊿゚)ξ「ただいま〜」
ミセ*゚ー゚)リ「おかえりなさい!」トテトテトテ
ξ゚⊿゚)ξ
家に帰ると、お父さんではなくミセリさんが出迎えてくれた。
それ自体にはさして疑問を抱かない。だが、どういう訳か彼女は全裸であった。
一行上を読み飛ばしてしまった人に向けてもう一度書いておくと、ミセリさんは全裸だった。
ミセ*゚ー゚)リ「疲れたでしょう。さぁまずは服を脱ぎます」
ξ゚⊿゚)ξ「服を着て」
.
832
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:04:08 ID:45y81Xzo0
ξ゚⊿゚)ξ「お父さんは?」 トコトコ
ミセ*゚ー゚)リ「ハインリッヒが王座の九人を掴まえたらしいから、それを引き取りに。
あ、後ろの二人もおかえりなさい。貞子に聞いたけど大変だったわね」
('A`)「そうなんすよ……また悩みの種が増えて……」 トコトコ
(^ω^)
('A`)
('A`)「……おい、なにミセリさん見てんだよ」
ミセリさんとドクオは同じ魔族。
今更、同族の全裸くらいで大した反応はしない。
(^ω^)「…………」
しかしブーンは違った。彼はムッツリどスケベ少年ボーイだった。
ミセリさんの全裸が人体のものであるならば、それをガン見しない道理はなかった。
やはり人間は度し難い。これからはもっと気を遣おう。
.
833
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:05:34 ID:45y81Xzo0
ξ゚⊿゚)ξ「ミセリさん、私はしばらく部屋に居るから。
お父さんが帰ってきたら教えて」
ミセ*゚ー゚)リ「はーい。夕飯のリクエストとかあります?」
ξ゚⊿゚)ξ「多種多様な揚げ物」
ミセ*゚ー゚)リ「オッケー! この姿で揚げ物ってことは、油跳ねで死ねということね!」
ミセリさんはパワフルな変態だった。
('A`)「おい、いつまで見てんだ。俺らも行くぞ」
(^ω^)「あ? あ、おお……おっほ……」
ξ;゚⊿゚)ξ「……え、いや男が私の部屋に入れる訳ないでしょ。二人はリビングで待機よ。
許可なく入ったら誰だろうが半殺しだからね」
私はそう言い、ついて来ようとする二人を制止した。
ミセ;゚ー゚)リ「べ、別にちょっとくらいよくないですか……」
ξ゚⊿゚)ξ
制止したのだが、とっくに私の部屋に侵入してた者が居るらしく、手遅れだった。
.
834
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:06:55 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「なんだ、今日は帰りが早いな」
ξ゚⊿゚)ξ「――あ、兄さん」
こっちの会話に聞き耳を立てていたのか、デミタス兄さんが玄関の方にやってきた。
全裸の現役教師が自宅で兄さんと二人きりだった事実から目を逸らし、私は小さな溜息を吐く。
ξ;゚⊿゚)ξ「そうなのよ、今日は色々あったのよ。あとで兄さんも聞かされると思うけど」
(´・_ゝ・`)「そりゃあ大変だったな。俺も今まで目のやり場に困り続けてたけど」
ほがらかに言い、デミタス兄さんはドクオ達に視線を向けた。
そういえばデミタス兄さんが二人と顔を合わすのは初めて、初めてだった気が
(´・_ゝ・`)「やあどうも。今日も三人とも仲良し小好しマツモトキヨシだね。
えっ違う? てめーらさてはドンキ派か」
(´・_ゝ・`)「内藤君は初めまして。兄の魔王城デミタスだよ、よろしく」
兄さんがブーンに片手を差し出す。
しかし、ブーンはこの友好の合図をすぐには受け取らなかった。
( ^ω^)「……」
ブーンは兄さんを凝視している。
まさか初見で嫌悪したのか、ブーンは兄さんに対してあまり良い印象を持たなかったようだ。
まぁ、それも仕方ないなと私は思った(私もあまり兄が好きではないので)。
.
835
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:07:53 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「やっぱりお前がバグか」
( ^ω^)「……は? なんの話だお?」
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`)「さて、どう転がしたもんか」
兄さんは困り顔で握手を諦め、行き場を失った手を腰に当てた。
その意味ありげな仕草は、……しかしまったく意味が分からない。
兄さんは時々こうして意味不明な態度を取る。メタ視点系の中二病なのかもしれない。
ξ゚⊿゚)ξ「……じゃあ、まぁ二人はミセリさんに服を着せといて」
(^ω^)「フヒヒ分かったお!」
('A`)「ほらもうミセリさん、全裸だとモラルを疑われますよ」
ミセ*゚ー゚)リ「あ、私の服はお嬢様のお部屋にあるので……」
ξ゚⊿゚)ξ「なんで?」
ミセ*゚ー゚)リ「お嬢様の古着でコスプレしてたんですよ。胸がキッツイのなんの!」
ξ゚⊿゚)ξ「あなたの服は窓から捨てておきます」トコトコ
私は一人階段を上がっていき、心落ち着くマイルームに入った。
これでやっとこさ一息つける。今日はちょっと疲れてしまった。
今日一日で4年分くらい疲れてしまった。4年なんて経ってないのに不思議だ……。
ξ;´⊿`)ξ「ふー…………」
大きな溜息、大きな背伸び。
束の間の自由と開放感に、私はデカすぎる欠伸を我慢できなかった。
.
836
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:08:34 ID:45y81Xzo0
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「よし、脱ぐか」グッ
〜ここで脱衣シーンのCGが入る〜
ξ゚⊿゚)ξ「よし」
制服から部屋着に着替えた私は魔王城ツン。
強いて言うならば部屋着の魔王城ツンである。強いる必要は特にない。
(´・_ゝ・`)「おお〜い」 ガチャッ
ξ#゚⊿゚)ξ「あ! ちょっとノックくらいしてよ」
と、いきなり部屋に入ってきたのは三十路のおじさんだった。
この人は盛岡デミタスおね、……いや、お兄ちゃん、兄さん?
まぁ血縁者の誰かだろう。ともかくこの人はデミタス、私にとって何らかの関係者だ。
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`)「ここまで壊れてると会話も成り立たないな」
ξ゚⊿゚)ξ「?」
彼は一人で何か呟いている。声は聞こえたが意味は分からない。
そうだ、デミタスは隣の家に住んでる幼馴染だった。
しばらく会っていなかったので、すっかり存在を忘れていた。
.
837
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:09:36 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「――まどろっこしいから端的にいくぞ」
(´・_ゝ・`)「俺は盛岡デミタス。お前とは完全に他人で、昨日会ってるぞ」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ;゚⊿゚)ξ「……えっ?」
私は首を傾げてデミ君を見返す。
だって私達は将来を誓い合った幼馴染みで、昨日だって一緒にピクニックに……
(´・_ゝ・`)「よく見ろよ俺を。ただのおじさんだぞ。
なんだよクラスメイトって、なんだよ兄さんって」
ξ゚⊿゚)ξ
(´・_ゝ・`)「思い出せ」
ξ;゚⊿゚)ξ「……ああ?」
(´・_ゝ・`)「ほら出かかった! いいぞ!」
ξ;゚⊿゚)ξ「昨日、って、……いつ?」
(´・_ゝ・`)「2016/09/06(火) 10:45:25」
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
(´・_ゝ・`)「おも、思いだ、思い出し〜〜〜〜」
ξ゚⊿゚)ξ
(´・_ゝ・`)「〜〜〜いや早く思い出せよ」
.
838
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:10:48 ID:45y81Xzo0
ξ;゚⊿゚)ξ「……あ、ああ〜?」
何言ってんだコイツと断言したい手前、私の脳裏には変な違和感が引っ掛かっていた。
それを解こうと、私は想起できる全ての記憶を反芻していく。
――盛岡デミタス。
なんとなく、私はこの名前をどこかで聞いたことが……。
(´・_ゝ・`)「……思い出した?」
ξ;゚⊿゚)ξ「あの……もッ、盛、モリモリ、モリモリクソ野郎……」
(´・_ゝ・`)「名前は今言っただろ。藤森だよ」
ξ゚⊿゚)ξ「盛岡じゃないの?」
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`)「盛岡で大正解だよ。やっと思い出せたか」
ξ;゚⊿゚)ξ「……色々思い出せそうなのに思い出せないのよ。
あなたが変質者や不審者の類語なのは確かなのに……」
(´・_ゝ・`)「その類語辞典は焚書対象だな」
.
839
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:11:56 ID:45y81Xzo0
Σξ;゚⊿゚)ξ ハッ
ξ;゚⊿゚)ξ「盛タス!! そうだ、いつかの不審者!!」
(´・_ゝ・`)「山盛りのレタスみたいな略称をありがとう。
俺は盛岡デミタス41歳バツイチ」
(´・_ゝ・`)「今日は俺の能力、……というか性質を説明しに来た。その他質問も受け付けます。
ちょっと話がもつれてな。4年間の空白踏まえ、お前らを『4周目』に送れってさ」
ξ;゚⊿゚)ξ「……? ??」
(´・_ゝ・`)「……おいおいもう思い出していいだろ。
あのな、やろうと思えば設定変えて相思相愛カップルにもなれちゃうんだぞ?」
(´・_ゝ・`)「ま、その場合は『ウニ抜き』の相思相愛だけど」
ξ;゚⊿゚)ξ「いやもう思い出したわよ。ただ理解が追いついてないだけ。
これ以上キモいこと言ったら警察呼ぶからね」
(´・_ゝ・`)「ウを二つ抜いて粗思粗愛。これどう?
上手いこと言えてる? お前の年代こういうの好きだろ」
ξ;-⊿-)ξ「……用があるなら下に行きましょう。みんなに紹介するから」
(´・_ゝ・`)「ああよろしく頼む。俺もやっと本題に入れて嬉しいよ」
(´・_ゝ・`)「世界平和が揺らいでるんだ。こうしちゃいられねえ」
こいつら始末屋は本当に、前置きというものを一切用意してこない。
第三者が私の世界を掻き回している現状にも、これで少しは説明がつけばいいのだが……。
.
840
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:13:06 ID:45y81Xzo0
_人人人人人人人人人人人人人人_
> それからどしたの <
 ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^^Y^ ̄
ヘ(^o^)ヘ
|∧
/
(???)
ノ(ヘヘ
.
841
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:14:15 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「――初めまして。盛岡デミタスです」
という前置きを理解させるのに三十分くらい掛かった。
まったく意味不明だが、彼には『自身を異様に曲解させる』といった性質があるようだった。
(;'A`)「――嘘だろ、俺のオヤジじゃねえのか!?」
(´・_ゝ・`)「違います」
ミセ*゚ー゚)リ「じゃあ私は未だに独り身なんだ」
(´・_ゝ・`)「元カレ設定も勝手に湧いただけで……」
( ´ω`)「ハムエッグ(※1)が帰ってきたかと思ったお……」
(´・_ゝ・`)「ハムエッグは実家に帰ったよ」
ξ;゚⊿゚)ξ(……これは一体、どういう物語なの……?)
各々が何かしらの形で盛岡デミタスを誤認している状況に、なんとか区切りをつけて一息。
それからようやく、私達は盛岡デミタスの話を聞き始めた。
※1 ブーンが昔飼っていたハムスター
.
842
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:15:37 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「――という事で、改めましてこんばんは」
(´・_ゝ・`)「俺の名前は盛岡デミタス。
知っての通り、インフィニティ・モンキーズの一員だ」
('A`)
( ^ω^)
(;'A`)「……知ってるか?」
(; ^ω^)「知らないお……」
(´・_ゝ・`)
ξ゚⊿゚)ξ
(´・_ゝ・`)「……そういやここではなんて名乗ってたっけ。
101号室の猿? 延命財団? 悪魔の代行者? ポンキッキーズか?」
ξ;゚⊿゚)ξ「ほらあれよ、始末屋。……だったと思うけど」
朧気な記憶からそう答えてやると、デミタスはポンと手を叩いた。
(´・_ゝ・`)「ああ〜それだ! いや名前が多くて困ったもんだよ。
そうそう始末屋、完璧思い出した。いや時の流れは残酷だ」
(´・_ゝ・`)「よし、俺は始末屋のデミタスだ。俺もいよいよ危ないな」
.
843
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:16:19 ID:45y81Xzo0
ξ;゚⊿゚)ξ「――はい! 前途多難はここまで!!」 バンバン!
私はテーブルを叩き、これ以上の困惑が起こる前に彼に問い掛けた。
ξ;゚⊿゚)ξ「いい加減さっさと状況を理解したいの!
さっさと5H1Wで答えなさいよ!」
(´・_ゝ・`)「――いや待て」
ξ;゚⊿゚)ξ「なによ!?」
(´・_ゝ・`)「5H1Wって、それ逆じゃねえか?」
ξ゚⊿゚)ξ「えっ」
('A`)「5W、1Hだな」
ξ゚⊿゚)ξ
.
844
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:17:17 ID:45y81Xzo0
ξ;゚⊿゚)ξ「――うおおおお!! 前途多難はここまで!!」 バンバン!
( ^ω^)(無かった事にされたお)
ミセ;*゚ー゚)リ(お嬢様……素で言ったのですか……)
ξ;゚⊿゚)ξ「盛岡デミタス! まずは貴方の能力を晒しなさい!
私達の誤認も大体貴方のせいなんでしょう!? いい加減にしてよ!」
(´・_ゝ・`)「……ま、察しの通りでそのとおり」
私の怒りを受け流すように、盛岡はさらっと答えてくれた。
(´・_ゝ・`)「お前達の誤認は確かに俺が原因だ。ごめん。
でも昼間の惨劇をやったのは『彼女』の方だ。より正確には※パーフェクト・検閲※だが」
(´・_ゝ・`)「まぁその展開はいつか来るとして、俺の能力――便宜上“能力”と呼称するが、」
(´・_ゝ・`)「俺に今適応されてる能力は、“無駄な因果を結ぶ能力”だ」
ξ゚⊿゚)ξ …?
(´・_ゝ・`)「特に意味のない何かを、特に意味もなく発生させたり引き寄せる能力、性質。
そういうものが今の俺にはある。形容しがたい話だけどな」
(´・_ゝ・`)「例えばそうだな、……俺達が最初に会った時、なんか俺の近くに居ただろ」
ξ゚⊿゚)ξ「いつの話よ」
(´・_ゝ・`)「
>>733
」
ξ゚⊿゚)ξ「なるほど」
.
845
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:17:58 ID:45y81Xzo0
何か居ただろ、ってそんな藪から棒に――
.r=====b
[]υ_σ[]
ξ゚⊿゚)ξ「――あっ」
いや、そういえばなんか居た。
(´・_ゝ・`)「そうそう、それそれそれ」
(´・_ゝ・`)「……でもな、あのヘッドホン付けてたアレな?
俺にもあいつが何だったのか、サッパリ意味が分からないんだよ」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ;゚⊿゚)ξ「ちょっと待って、あんたも意味が分かんないって……。
あんた、どれだけ私達に疑問符を使わせる気なのよ」
(´・_ゝ・`)「どう説明してもこうなるし、4年も経てば当然だ。頑張ってくれ」
.
846
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:18:45 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「あいつは俺とは一切無関係で、アレはただあの場所に居ただけの何か」
(´・_ゝ・`)「俺への誤認も似たような感じでさ、とにかくそういう性質ってことで理解してくれ。
俺自身に変な力は無いが、なんか意味ありげなものが俺の近くに湧いて出るんだ」
(´・_ゝ・`)「擦れ違っただけで俺に一目惚れするヤツが居たり、
適当なリゾートバイトに行っただけでヤバい目に遭った事もある」
(´・_ゝ・`)「エッチな洗脳アプリがスマホに入ってた事もある」
Σ(; ^ω^)「エッチな洗脳アプリ!?」 ガタッ
(´・_ゝ・`)
(^ω^) ヘヘッ
.
847
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:19:34 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「あとなんだろ……分かりやすい仕事となると呪物の処理とかだな。
勝手に色々縁ができるもんだから、まぁとにかく色々やってるんだよ」
ξ;゚⊿゚)ξ「……それってめんどくさそう」
私の感想は、ただひたすらシンプルに『面倒そう』で終わってしまった。
つまりは自分を中心に何かが起こる能力。
確かにそれなら能力と呼ぶより、体質とか、性質と呼んだ方が適切だろう。
――世界の中心を揺るがす能力、なんて形容を思いつく。
魔王城ツンの記憶からその形容は即時抹消されました。
(´・_ゝ・`)「ああ面倒だ。いちいち構ってたら身が持たねえくらい面倒だ。
だから俺はこういう面倒事を、すべて『仕事』って事にして処理してる」
(´・_ゝ・`)「仕事と報酬、需要と供給。いわゆる等価交換だな。
それらを円滑に循環させて、辛うじて正気を保ってるんだ」
盛岡は気だるげにジェスチャーしながら持論を語る。
これが彼なりの人生哲学なのだろう。すごいなぁと私は思った。
ξ゚⊿゚)ξ(すごいなぁ)
.
848
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:20:23 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「……って感じ。要するに『人生はクソ』って話だよ。
運命への接客はもう命懸けだよ大変だよ」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「なんかめちゃくちゃ面倒な人生を送ってきたのね」
(´・_ゝ・`)「分かってくれるか、犬も歩けば棒に当たるマンと呼ばれた俺の気持ちを」
――結論。
盛岡デミタスは『運命の被害者』であり、それを自覚している人物だった。
必然的に超安定志向。
プラスを大きくするのではなく、マイナスを排除するという考え方、生き残り方。
勝つためではなく、負けないための戦い方をデミタスは徹底している。
戦士ではないが策士。勝ちはないが負けもしない。
彼は一時的な勝利より大局の勝利を優先し、そして結果的に生き残るような男だ。
なるほど、あの面倒臭さの塊みたいな『彼女』が傍に置くわけだ。
盛岡デミタス。きっと彼でなければ始末屋の仕事は務まらないのだ。
始末屋については未だによく分からないが、ひとまず彼のことは信用してもよさそうだ。
ξ゚ー゚)ξ(ふふ、なーんだ。いいトコあんじゃん……)
やっぱりデミタスは凄い、そう思っ――――
.
849
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:21:04 ID:45y81Xzo0
ξ゚⊿゚)ξ「…………ん?」
と、なんか思考があらぬ方向に走っている気がして、私はピタリと思考を止めた。
なんかおかしい。絶対なんかおかしい……。
ξ゚⊿゚)ξ
Σξ;゚⊿゚)ξ「――ちょっと待った! またなんか認識がおかしかった!」
('A`)「やっぱすげえなデミタスさんは」
( ^ω^)「すごいお!」
(´・_ゝ・`)「へへっよせやい」
ヘ('∀`)ノ 「おいおい謙遜してんぜ伊達男がよ!」
( ^ω^)「なに言ってんだお! デミタスさんは本当に凄い人なんだお!」
ξ;゚⊿゚)ξ「この過大評価は絶対おかしい! 二人とも目を覚ましなさい!」
(´・_ゝ・`)「これもう勝手にこうなるんだよ。耐性つくまで頑張ってくれ」
('A`)「そうだぞ! デミタス王に無礼を働くバカツンめ!」
ξ;゚⊿゚)ξ「王!?」
(´・_ゝ・`)「こりゃ魔王扱いも近いな」
( ^ω^)「すごいお!」
(´・_ゝ・`)「いやぁ」
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「ミセリさん、二人の股間を蹴り潰して」
ミセ*゚ー゚)リ「了解しました」
.
850
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:22:22 ID:45y81Xzo0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
(´・_ゝ・`)「――ってな感じで、俺のアレは説明終わり」
(´・_ゝ・`)「彼女いわく 『超因果体質』 とかなんとか。世界との無関係を許されねーのね。
とにかく俺自身まったく求めてないそういうアレが俺にはあるのでした。了」
ミセ*゚-゚)リ「……それで、ようやく話が進むのだけれど」
(; A )(; ゚ω゚) オァァ....
股間を押さえて悶絶する二人をさておき、ミセリさんは声色を落として話し始めた。
ミセ*゚-゚)リ「昼間、『彼女』と呼ばれる何者かは堂々と殺人、……に近い何かをした。
にも関わらず、貴方が何の見返りもなく我々の味方になるというのはありえない」
ξ゚⊿゚)ξ「……ミセリさん、真面目になるなら服を着て。というかなんでまだ着てないの」
ミセ*゚-゚)リ「今はそれどころではないのです。お嬢様、口を挟まないでいただけますか」
ξ゚⊿゚)ξ
服を着てほしいだけなのに。
せめて地の文の中だけでも服を着てもらおう。ミセリさんは服を着ました。
.
851
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:23:02 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「……彼女か、とりあえず彼女は盤面を下りたよ。
もう彼女は現れない。その辺の心配は無用だ」
(´・_ゝ・`)「昼間の二人については……まあ保留だな。
その内、適当な時に何とかしとくから安心してくれ」
(´・_ゝ・`)「あれは緊急措置として別ルートに放り投げた。
敵にあいつらを利用されると本当に厄介になる。まぁ大丈夫だから、ほっとけ」
ξ;゚⊿゚)ξ「……はぁ」
それっぽい事を言いつつ、しかし死ぬほど曖昧な物言い。
最早この物語に呆れつつある私は溜め息をつき、デミタスの言い分を仕方なく呑んだ。
この適当な納得ですら、彼の性質による根拠の無い判断なのだろうけど……。
ξ;-⊿-)ξ「……とりあえず、とりあえずとしか言いようがないけど……」
ξ;゚⊿゚)ξ「私達は昼間の事は忘れないし、貴方達への信用も半疑のままよ。
だから引き続き王座の九人はもちろん、私達は勇者軍との敵対を続ける」
(´・_ゝ・`)「……それで?」
ξ;゚⊿゚)ξ「……貴方のことは情報源として見逃してあげる。
だけど、少しでも余計なことしたらその時点で敵だから」
(´・_ゝ・`)「いいね。それぐらいが楽でいい」
.
852
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:24:05 ID:45y81Xzo0
ミセ*゚ー゚)リ「――で、ここまでの情報の対価として、あなたは我々に何を要求するのかしら。
ここまでの言い振りを顧みるに、……お金?」
ミセリさんが全裸で言う。
全裸でなければ心強いのにな、つらいな。
(´・_ゝ・`)「俺個人が相手ならそれで正解。まぁ大したことも言ってないし、金も取らんが」
盛岡は気だるそうに天井を見上げる。
行間を埋める為だけに喋るのは飽きてるんだ、と俺は世界に介入する。
(´・_ゝ・`)「俺はただの仲介役だよ。点と点を結ぶだけの仲介役。
『彼女』とあんたらの縁を結んだように、今度もまた別人を紹介するだけだ」
ミセ*゚-゚)リ「……その、『今度』というのはどういう意味ですか?」
ミセリさんは『彼女』の存在を強く警戒しているようで、より一層語気を冷たくして言った。
それでもデミタスは意に介さず、自分のペースで話を続ける。
(´・_ゝ・`)「安心しろよ今度のは話が通じる善人だ。『彼女』みたいなゲテモノじゃない」
ミセ*゚ー゚)リ「……」
ξ;゚⊿゚)ξ(信用できねえ……)
.
853
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:24:45 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「まぁ今のあんたらには何も要求しないさ。
どうせもう詰んでるルートだし、聞き流してくれればいい」
ξ゚⊿゚)ξ「一言一句すべて聞き流してるから安心して」
(´・_ゝ・`)「そこまでされると困る。せめて『伊藤』って名前は覚えといてくれ」
ξ゚⊿゚)ξ「わかった」
(´・_ゝ・`)「よし」
.
854
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:25:41 ID:45y81Xzo0
(´・_ゝ・`)「……ま、重ねて言うけど言葉は通じる。だから安心してくれ
あと手土産は美味いものにしておけよ。酒があるともっといい」
美味いもの、と聞いて今日の夕飯を思い出す。
そういえばミセリさんには揚げ物を注文していたのだ。手土産にも丁度いいだろう。
ξ゚⊿゚)ξ「なら夕飯の揚げ物とかよくない?
ミセリさん、今日どんぐらい作るつもりだった?」
ミセ*゚ー゚)リ「今日はドクオ達も居るので大量に準備してますよ。
よければ盛岡さん持って帰ります? 伊藤さんとこ」
(´・_ゝ・`)「嬉しいけど対応が家庭的すぎる」
ミセ*゚ー゚)リ「とりあえず時間も時間ですし作り始めますね。
30分もあれば山盛りできますから待っててください」
ξ゚⊿゚)ξ「あーい」 ピッ
つ[]
ミセリさんは席を立ってキッチンの方へ歩いていった。
私も手隙になったので、テレビを点けて暇を潰すことにした。
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`)「……魔王城ツンは、面倒臭くなるとマジで露骨に態度変えてくるよな」
ξ゚⊿゚)ξ「だってもう話は終わったでしょ?
今日は疲れたしさっさと思考停止したいのよ」
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`)「話が終わった、っていうのは面白い冗談だな」
(´・_ゝ・`)「これから※パーフェクト・検閲※が始まるってのに」
.
855
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:26:22 ID:45y81Xzo0
ミセ*゚ー゚)リ「盛岡さんビール出しますかー?」
(´^_ゝ^`)「あ、飲みますぅー!」
ξ゚⊿゚)ξ「私にも一本ちょうだーい!」
ミセリさんが持ってきてくれたビールを開け、私達はささやかに乾杯した。
なお魔界に未成年飲酒を禁じる法はない。合法飲酒である。
.
856
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:27:46 ID:45y81Xzo0
* * * * *
そんなこんなで数十分後、誰かがうちに帰ってきた。
「ただいま〜」と言いながらリビングに入ってきた人は、間違いなく私の父・ロマネスクだった。
( ФωФ)「おお〜やっているな。今夜は大所帯であるか」
ξ゚⊿゚)ξ「おかえり。こちら盛岡デミタスさん、要約すると誤解製造機よ」
(´・_ゝ・`)「座ったままで失礼、お構いなく」
( ФωФ)「……うむ。久し振りであるな」
(´・_ゝ・`)「……おやおや何を仰る。我々、初対面ですが」
ξ;゚⊿゚)ξ「……ああそっか。お父さん、あのね……」
『久し振り』という誤認を解こうと、私はまた最初から盛岡の性質を説明しようとした。
しかしお父さんは聞く耳を持たず、当然のように盛岡と握手をしてみせる。
( ФωФ)「安心しろ。こいつの力は知っている。
ツンちゃんは知らんだろうが、こいつは元魔王軍で顔馴染みだ」
(´・_ゝ・`)「そんな覚えはございませんがね」
盛岡はビールを煽って目を逸らす。
嘘八百を背負ったこの男にも、どうやら弱点と呼べる過去は存在するようだった。
ξ;゚⊿゚)ξ「貴方、どれだけの組織を股にかけてるのよ……」
(´・_ゝ・`)「必要最低限」
( ФωФ)「何十代にも渡って魔王の側近をやっている男だ。
上手く付き合うコツは直視しないこと、真に受けないこと」
ξ゚⊿゚)ξ(盛岡デミタスの年齢計算が大変なことになった)
(´・_ゝ・`)「やめろやめろ、この展開はもう無いんだよ」
それ以上追求するなと言わんばかりに、彼は小さく呟いた。
.
857
:
名も無きAAのようです
:2020/09/29(火) 23:29:52 ID:45y81Xzo0
突然続きを投下してごめんね。でも本当です
次回は終末くらいに投下します。それで3周目は終わりです
以降はファイナル板でやります
1周目
>>2-26
>>39-61
>>74-87
>>101-135
>>176-213
>>223-229
>>280-295
>>368-374
2周目
>>389-414
>>519-553
>>559-592
>>622-648
>>651-654
>>669-681
>>718
3周目
>>728-733
>>742-761
>>768-803
>>819-856
(今回)
858
:
◆gFPbblEHlQ
:2020/10/04(日) 22:15:23 ID:BRHqwzuo0
【IntervEnd:終末解除(オープンワールド)】
.
859
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:16:30 ID:BRHqwzuo0
ξ゚⊿゚)ξ「お父さん、ミセリさん、おやすみ」
( ФωФ)「うむ。今日はよく眠るのだぞ」
ミセ*゚ー゚)リ「お嬢様、おやすみなさい」
ブーンとドクオ、それから幼馴染みのデミタス君も帰っていった夜遅く。
私はお父さん達におやすみを言ってから自室に戻り、この長い長い一日の最後を過ごし始めた。
.
860
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:18:00 ID:BRHqwzuo0
――魔王軍と勇者軍の戦いは、これからもっと熾烈になるのだろう。
そこに介入してきた始末屋だって、未だに目的が分からない。
今は本当に分からない事だらけだ。胸がざわついて、私はどうしようもなく無力を感じる。
ξ;-⊿-)ξ(……自問自答でもしようかな)
不安に駆られた私はちょっとだけ魔力を使い、私自身の力であるゼノ――
ξ゚⊿゚)ξ「……あれ」
――おかしい。魔力が上手く巡らない。
というか、そもそも私は何をしようとしてたっけな。
ξ゚⊿゚)ξ
ξ;゚⊿゚)ξ「……ゼノ、ゼノグラシアだ。そうだ」
私はハッキリと、確かにその名前を口にした。
ゼノグラシア。ウサギさんのような見た目をしていて、とても頼りになる私の相棒。
能力は、確か、……可能性がどうこう、みたいな……。
.
861
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:19:16 ID:BRHqwzuo0
『――――何者かが、この世界の筋道を壊そうとしている』
不意に、言葉を思い出す。
学校の屋上で『彼女』が最後に放ったセリフ。
それを今、この瞬間に思い出したのはなんでだろう。思考が上手く噛み合わない。
ξ;-⊿-)ξ(ダメだ、始末屋のせいで支離滅裂になってるのね……)
自分を説き伏せながら布団に身体を埋める。
おかしい、まるで世界に一人ぼっちになったような気分だ。
メンヘラか? 思春期とはいえ魔王の娘だぞ。
こんなに不安が募るのは、とても気味が悪い……。
.
862
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:21:57 ID:BRHqwzuo0
――ダメだ、やっぱり起きよう。
ξ;゚⊿゚)ξ(たまには夜更ししていいわよね。
今日はちょっとグロいのも見ちゃったし、いいわよね……)
私は布団を脱いでベッドを降り、足早に部屋を出ていった。
階段の電気も点けずに一階へと駆け降り、リビングの明かりに急いで飛び込む。
ξ;゚⊿゚)ξ「……あれ、」
だが、リビングには誰も居なかった。
部屋の電気とテレビは点けっぱなしで、そこに人の気配は残っていない。
まさかお父さんとミセリさんが一緒にお風呂に入っているはずもないし、そんな音も聞こえない。
喧騒はテレビのみ。それがなぜか、ひどく不気味に思えてしまった。
ξ;゚⊿゚)ξ「……ちょっとー! お父さんテレビー! 点けっぱなしー!」
私は無理をして、家中に響く大声でお父さんを呼びつけた。
というか、私はリビングにまで何をしに来たんだっけ?
早く寝たいと思ってた筈なのに……。
.
863
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:23:29 ID:BRHqwzuo0
「……ああ、悪い悪い」
ξ;゚⊿゚)ξ
廊下の方から返事がして、私はドアの方に目を遣った。
一人ぼっちの感覚が薄れて安心を覚える。
この声はお父さんだ、きっと書斎に居たのだろう。
ξ;゚⊿゚)ξ「ちょっとお父さん! テレビ点けっぱなしはダメよ!」
(;´・_ゝ・`)「……ああ、悪いね。どうも……」
しかし、リビングにやってきたお父さんはとても酷い顔色をしていた。
今にも死にそうなくらい顔が青ざめていて、来ている黒スーツはボロボロで。
片足を引きずっていて、血だらけ、傷だらけで。
ξ;゚⊿゚)ξ「――ッ」
その姿を簡単に言い表すとしたら、お父さんは『死にかけていた』。
.
864
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:24:55 ID:BRHqwzuo0
ξ;゚⊿゚)ξ「待って、何があったの!? 敵!?」
(;´・_ゝ・`)「察しがよくてありがたいな。特に今は……」
お父さんはそんな軽口を吐きながら、呆気なく床に倒れ込んでしまった。
私が二階に居た時間はそう長くない。
ましてやその間、一階からの物音なんて一つも聞こえてこなかった。
ξ;゚⊿゚)ξ「なんなのよ……どうしてこんな……!」
私が目を離したのはほんの一瞬、たった一瞬なのだ。
なのに、いったい何が起これば、あの魔神ロマネスクがここまで――
(;´・_ゝ・`)「……魔王城ツン、ゼノグラシアを出せるか?」
ξ;゚⊿゚)ξ「ゼノッ……なによそれ!?
とにかく救急車呼ぶから動かないで!」
(#´・_ゝ・`)「――俺の話を聞け!!」
Σξ;゚⊿゚)ξ ビクッ
今まで聞いたこともない張り裂けるような怒声。
私は思わずよろけてしまって、その場に腰を落とした。
(;´・_ゝ・`)「……って、怒鳴るのはガラじゃねえんだ。
頼む、俺の話を聞いてくれ」
ξ;゚⊿゚)ξ「ご、ごめんなさい、お父さん……」
(;´・_ゝ・`)「……運がいい。その誤認は、利用しやすい」
お父さんは不敵に笑って居直り、近くのソファに寄りかかって大きく深呼吸をした。
.
865
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:25:57 ID:BRHqwzuo0
(;´・_ゝ・`)「もう一度言うぞ、ゼノグラシアを出せ。今すぐにだ」
ξ;゚⊿゚)ξ
ξ;゚⊿゚)ξ「……あの、ごめんなさい、分からない……」
ゼノグラシア――という『モノ』は、一体なんだろう。
お父さんの言うことは聞きたいのに、言ってることがまるで分からない。
そういえば、私は『なんなんだ?』
今までどこで何をしたんだっけか。
(;´・_ゝ・`)「……分かった。なら『伊藤』は覚えてるか?」
ξ;゚⊿゚)ξ「あ、それなら……」
(;´・_ゝ・`)「……ならいい。あとは向こうが分かってくれるはずだ」
ξ;゚⊿゚)ξ ?
(;´・_ゝ・`)「ほんとはこんな手筈じゃなかったんだが、唐揚げ持って帰って正解だったな……」
ξ;゚⊿゚)ξ「昨日のやつ、本当に持ってったの?」
(;´・_ゝ・`)「好評だったぜ。あの女、料理の腕はピカイチだな……」
あの女、というは誰のことだろう。
朽ちた客席のイメージが脳を埋め尽くした。
.
866
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:29:35 ID:BRHqwzuo0
(;´・_ゝ・`)「……いいか、魔王城ツン」
(;´・_ゝ・`)「お前は次に行くんだ。俺達はここに残る」
ξ;゚⊿゚)ξ「……なんの話?」
(;´・_ゝ・`)「『2周目の俺達』だけじゃ守りきれなかった。
バッドエンドの世界だろうが、一応ちゃんと機能してたんだがな……」
ξ; ⊿ )ξ「――分かる、ように、」
(;´・_ゝ・`)「分からなくていい。ゼノグラシアって確かそういう感じだろ」
* * *
ゼノグラシア(英語 xenoglossia)
真性異言 - 学んでいない外国語や意味不明な言語を操る超自然的な言語知識および現象を指す、超心理学の用語。
アイドルマスター XENOGLOSSIA - 2007年に放送されたテレビアニメ。 -wikipedia
* * *
(;´・_ゝ・`)「……この世界はもう終わりだ。
あとはせめて、時間稼ぎに使わせてもらう」
(;´・_ゝ・`)「本当はゼノグラシアも残したかったが、まぁ、そこは妥協だ……」
.
867
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:30:16 ID:BRHqwzuo0
━━━*━━━━━━━━━*━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
大小なりに事件はあるが、とにかく世界は平和である。
知らない所でなにかは起こっているけれど、私の周りはすごく平和。
私は今日も学校に行く。
市立VIP高校で、すごく平和な日常を送るために――
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━*━━━━━━*━━━━
.
868
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:35:55 ID:BRHqwzuo0
(;´ _ゝ `)「――……クソッ」
(;´・_ゝ・`)「……時間が無い、ここで強制終了だ」
ξ; ⊿ )ξ「……だからっ……!」
ξ;゚⊿゚)ξ「――分かるように言ってってば! 私が誰だか分かってるでしょ!?
私がどれだけ強いか、私達がどれだけ強いか!
どんな敵が来たって大丈夫よ! お父さんだって覚えてるでしょ!?」
(;´・_ゝ・`)「誰も覚えていないよ」
ξ゚⊿゚)ξ
━━━━━━━━━━━**━━━━━━━━━━━━━━*━━━━━━━━━━━
( ^ω^)「正義の味方とか悪者の人って、すごいパワーがあるお?」
('A`)「まあ、色々あるな」
(; ^ω^)「じつはそれ、誰にでもありうる話らしいんだお」
('A`)「……ありうるって、誰でもスーパーパワーに目覚めるってことか?」
ブーンは私とドクオにだけ、ひそひそと続きを話した。
覚えていますか?
━*━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━**━━━━━━━━
(;´・_ゝ・`)「……いいか、これは俺達の戦いなんだ。
お前はただ、お前が望むものを大切にすればいい。それだけが真実だ」
ξ;゚⊿゚)ξ「なによ、それ……」
(;´・_ゝ・`)「……綺麗事だよ」
.
869
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:37:05 ID:BRHqwzuo0
━━━━━━━━━━━━X━━━━━━━━━━X━━━━━━━━━X━━━━━━
从 ゚∀从「引き込まれる、って感覚は恐らく正しい。
人は人にこそ恐怖するが、人外に対してはそういうことを思うんだよ」
从 ゚∀从「その感覚の正体は好奇心、怖いもの見たさ。
人間ってのは理解できないものには恐怖と同時に興味を持つ。
いや、近付かなくて正解だったぞ。お前は利口だ」
━━━━X━━━━━━━X━━━━━━━━━━━XXX━━━━━━━━━━━━━━
この世界――というとまるで別世界があるような言い方だが、
とにかく私が生きてるこの世界における、大体の歴史をおさらいする。
端的に言うと、この世界には超能力があった。
文字どおり過去形で、今はリストアップされた極少数の人しか超能力は使えない。
そして五十年くらい前に超能力を用いたすごい戦争があり、色々あった。
それ以降、超能力の発生は減ってって今はすごい少ない。そして今に至る。
覚えていますか?
━━━━━━━━━━━━━V━━━━━━━━━━━━━━v━━━━━━━━━━*
,、,,..._
ノ ・ ヽ 『ここは市立ハトサブレ学園。俺の名前は鳩サブロウ』
/ ::::: i
/ ::::: ゙、
━***━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
870
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:38:30 ID:BRHqwzuo0
━━━━━━━━━*━━━━━━━━━━━━W━━━━━━━━━━━━━━━━
<<業務連絡:進捗は良好です。>>
━X━━━━━━━━━━━X━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
.
871
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:39:22 ID:BRHqwzuo0
<<パーフェクト・ワールドを作成中。パーフェクト・ワールドを作成中。。。。。。。>>
.
872
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:40:04 ID:BRHqwzuo0
――で、
>>15
の現実に戻る。
ξ゚⊿゚)ξ
全部に飽き飽きした人のためにAAも出す。
ξ゚⊿゚)ξ(……ちょっくら出掛けるかい)
迷ったが、私はトラウマ払拭を兼ねて決心した。
日本中が秋になろうとしているこの季節、私は渾身の赤マフラーを巻いて外に出た。
目的はコンビニの肉まんである。あれは値段以上に青春の味がするから不思議だ。
あんなものでしか青春を感じられない不感症で本当に親に申し訳ないと思う。
.
873
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:40:50 ID:BRHqwzuo0
さりとて私は歩き出した。
夜風が生脚をなぞり、体温をごっそり奪っていく。(ツンはスカートをはいているぞ)
しかし私は寒さに負けず勇猛に歩いた。
テクテクよりザッザッという擬音が合う歩き方をした。
顔付きは自然と険しくなっていった。
そう、この時点で私はなんとなく分かっていたのだ。
同じことをすれば、同じ場所で同じことが起きると。
……そして、現実は私の思ったとおりに、
ξ::⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ(……もう一人の、私?)
――思ったとおりには、ならなかった。
.
874
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:43:09 ID:BRHqwzuo0
ξ:::⊿゚)ξ
いくつか先の街路灯の下に、私とまったく同じ見た目の誰かが立っていた。
しかし『あれ』と私は根本的に違う。そういう確信が私の胸を貫いていた。
生きている世界が違う、力の差がありすぎる、お話にならない。
視界に入れてしまった時点でおしまいだった。
もう、なにかを考えることすら無意味な気がしてしまう。
ξ;゚⊿゚)ξ(……ヤバい) ジリッ
……全身に魔力を通し、ゼノグラシアを十割の力で即時呼び出す。
私の魔力、赤いオーラが夜に迸る。
(;メ._⊿)「……なんなのだ、あれは」
程なく兎めいた実体を得たゼノグラシアが私の傍らに立ち、私と同じ動揺を見せる。
なにせ相手は自分自身。更には正体不明で自分より強そうときている。
そんな意味不明な存在、全力を出したところで対処に困るのは必然だった。
――詰んだ、詰んだ、詰んだ、詰んだ。
ただその一言だけが思考を埋め尽くす。
……だとしても、『戦わない』だけはありえない。
それだけは魔王城ツンの意思が許さなかった。
ξ;゚⊿゚)ξ「何がなんだか分からないから呼んだのよ。
とにかくやるわよ。あとは生きて逃げ延びて、みんなと合流……!」
(;メ._⊿)「……心得た」
ξ;゚⊿゚)ξ「戦わない。逃げる、逃げ切る……!」
私達は一歩ずつ、確実に『あれ』から遠ざかっていった。
全力ゼノグラシアの能力は『可能性の同時実行』。
万全の状態で発動したこの能力が真正面から破られる事は絶対に、無い、はずだ。
ゲームで言えば『逃げる』と『戦う』を同時選択できるようなブッ壊れ能力。
たとえ無限の選択肢があろうと、その全てを同時選択できる『全選択』の能力。
だから、私のゼノグラシアは絶対に無敵なのだ。
たとえ相手が自分だろうと、なんだろうと、絶対に大丈夫だから――
.
875
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:47:13 ID:BRHqwzuo0
「――笑わせる。まったくもって『ノン・パーフェクト』だ」
ξ;゚⊿゚)ξ「――誰ッ!?」 バッ!!
どこかから声だけが聞こえた。
私の狼狽を嘲笑うような口振りに気を取られ、思わず私は『あれ』から目を離してしまった。
ξ:::⊿゚)ξ「『Xenoglossia』」
瞬間、『あれ』は私と同じ能力名を口にした。
しかしやっぱり何かが違う。
気配は僅かに似ているけれど、『あれ』には何かが混ざって――
ξ;゚⊿゚)ξ「――ゼノグラシア!!」
(;メ._⊿)「分かっている!!」 ダッ
急げ、思考を巡らせている余裕は無い。
ゼノグラシアは私の言葉を待たずに動き出しており、『あれ』が動く前に決着をつけにいった。
『可能性の同時実行』とは『無限』そのものを相手に押し付けるような行為。
私達が行動に移った時点で発生する無限の分岐――その全てを一瞬に凝縮して攻撃する規格外。
それは同時に私の逃走経路すらも試行し、『絶対に生き残るためのルート選択』を完璧な形で実行する。
この能力を破る方法なんてありはしない。
もしそんなものがあるとすれば、それは――
.
876
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:48:34 ID:BRHqwzuo0
――――カクン、と力が抜けた。
ξ゚⊿゚)ξ
私は抗う間もなく膝から崩れ落ちる。
私は咄嗟に眼下を一瞥する。
視線の先には血飛沫にまみれた地面。
しかし、なにか、おかしい。
.
877
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:49:36 ID:BRHqwzuo0
ξ゚⊿゚)ξ
ξ゚⊿゚)ξ「……ここ、は……?」
私は周囲を見渡し、言葉を失った。
今、なぜか私は立体駐車場に居た。
たぶん
>>573
辺りのイオンだと思う。
ξ;゚⊿゚)ξ「なに、何が起こって……!」
空の模様は夕方頃。
さっきまで夜だったはずだ。
住宅街に居たはずだ。
なのに、時間と場所が噛み合わない。
それはもう、私の世界そのものを取っ替えられたような――
.
878
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:51:01 ID:BRHqwzuo0
ξ;゚⊿゚)ξ「……これは……」
さっき、私の膝をなにかが貫いた。
激痛はそれを自覚した直後にやってきた。
ξ; ⊿<)ξ「――い゙ッ!!」
すっかり気が抜けていた、甘かった。
本気で私を仕留めるつもりなら、敵が一人で来る訳がないのに――
ξ; ⊿゚)ξ(……完全に油断した……ッ!)
――違う、これは私の思考ではない。
少なくとも『今の私』はこんな事を考えていない。
ξ; ⊿ )ξ
なにかされている。私は『あれ』の攻撃を受けている。
さっきまでギコと戦っていた気がするけど絶対に違う。
そこまでは分かる。なのに、なのに――
ξ; ⊿ )ξ(この『攻撃』がなんなのか、少しも理解できない……!)
理解を遠ざけられている。
私を置いて世界が展開する。
白紙が広がり続けている。
(´・_ゝ・`)「お前が思ってる以上にこの世はオープンワールドなのよ」
誰だ今の。
.
879
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:51:44 ID:BRHqwzuo0
ξ; ⊿゚)ξ「……」
(メ._⊿)「……大丈夫か?」
咄嗟にゼノグラシア・ウサたんモードを召喚し、私はぺたんと座り込んで体勢を維持した。
もはや傷を見返す必要もない。私は三月兎の背後に隠れ、彼に命令を下した。
ξ;゚⊿゚)ξ「……私達は今、どこで何と戦ってる?」
(メ._⊿)「……王座の九人、ギコとの戦いを終えた。
そして今は闇討ちを仕掛けられ、キミは足を撃ち抜かれた」
この一瞬、どの判断が遅れても私は確実に命を落としていた。
最悪の敵――そうだ、これが敵なのだ。
これに比べればギコとの戦いはまさに王道だった。
ξ;゚⊿゚)ξ(……いや、そんな奴だから囮にされたのね……)
ξ; ⊿゚)ξ
――という、私ではない私の思考が脳を埋める。
気持ち悪い感覚だった。乖離している、私自身のなにかが乖離している。
私は今、私自身がどこで何をしているのか理解できなかった。
これはどこのシーンで、どこの描写で、どこのルートの物語なのか?
私は思い出せなかった。それこそが物語の終末だった。
.
880
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:52:33 ID:BRHqwzuo0
「確か、こんな名前だったな」
またしても、声が聞こえた。余裕をブッこいている男の声。
間違いなくこの声が敵だ。
ξ;゚⊿゚)ξ「……来る」
今度は声だけではない、足音も聞こえてくる。
私はその足音の方を見て、そして――
( ^ω^)
ξ;゚⊿゚)ξ「えっ、……?」
――そこに、内藤ホライゾンの姿を見つけてしまった。
.
881
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:54:45 ID:BRHqwzuo0
( ^ω^)「シン、ゼノグラシア、ガルシオンレクイエム」
( ^ω^)「いつかのバッドエンドに偶発した力。
そして、お前がいつか至る筈だった極致の断片」
( ^ω^)「攻略には随分と手こずったが……」
敵は、内藤ホライゾンの顔をひどく歪めて笑顔を作った。
( ^ω^)「……『補完』すればこのとおり、『パーフェクト』だ」
ξ;゚⊿゚)ξ(……違う。ブーンと同じ見た目だけど、あれは絶対に中身が違う……!)
もう頭がグチャグチャになりそうだった。
ブーンみたいなヤツの隣には私と同じ姿の『あれ』も居る。
シンゼノグラシア、ガル…ガルなんとか。
とにかく私のゼノなんとかの色違いっぽいのも後ろに控えている。
ξ; ⊿゚)ξ「……ぁ……」
胸が締めつけられる感覚、自分の詰みを読み切ってしまった感覚。
手遅れ、手遅れ、手遅れ……『これ』とは戦いようがない。
絶望的な言葉が私を埋め尽くしていく。また、なにかされたようだ。
.
882
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:55:44 ID:BRHqwzuo0
ξ;゚⊿゚)ξ
ξ; ⊿゚)ξ
ξ: ⊿ )ξ「…………」
.
883
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 22:58:59 ID:BRHqwzuo0
ξ; ⊿ )ξ「……もう、いい」
(;メ._⊿)「なッ――」
……私は、魔力を絶ってゼノグラシアを消した。
私にはもう『可能性』が無い。戦ったとして勝てるわけがない。
永遠に放置された物語のように、私にはもう、前進する為の力が湧いてこなかった。
もう続けることができない。
ただそれだけの絶対的な、そして無責任な感覚が、私をちょっと楽にする。
( ^ω^)「……これも、真実には到達していないか」
( ^ω^)「あとはパーフェクトにやっておけ、パーフェクト・魔王城ツン」
ξ:::⊿゚)ξ
音も、衝撃も、なにもなく。
私はただ無に還るように、次の瞬間、すべてを失っていた。
【IntervEnd:out】
.
884
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 23:02:41 ID:BRHqwzuo0
× × × ◯ - - - -
.
885
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 23:03:21 ID:BRHqwzuo0
【リザルト:?周目】
.
886
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 23:04:32 ID:BRHqwzuo0
<<業務連絡:完璧な世界が創造されています。>>
.
887
:
名も無きAAのようです
:2020/10/04(日) 23:10:34 ID:BRHqwzuo0
以上です
続きはファイナル板でやります
1周目
>>2-26
>>39-61
>>74-87
>>101-135
>>176-213
>>223-229
>>280-295
>>368-374
2周目
>>389-414
>>519-553
>>559-592
>>622-648
>>651-654
>>669-681
>>718
3周目
>>728-733
>>742-761
>>768-803
>>819-856
>>857-886
(今回)
関連スレ:ξ゚⊿゚)ξパーフェクトAAが生まれるようです
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read_archive.cgi/internet/21864/1503381514/l50
888
:
名も無きAAのようです
:2020/10/05(月) 20:51:40 ID:KlwUPZUs0
乙
889
:
名も無きAAのようです
:2020/10/06(火) 00:29:44 ID:rbW//64Y0
今゛気゛付゛い゛た゛乙゛
890
:
名も無きAAのようです
:2020/10/06(火) 09:25:42 ID:9DkRP7vI0
来てたあああああああ
891
:
名も無きAAのようです
:2020/10/06(火) 22:11:46 ID:1XatfL1k0
なんかもうよくわからんけどがんば
892
:
名も無きAAのようです
:2020/10/14(水) 20:16:20 ID:x8gwT5/c0
次スレ
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1602664126/
893
:
名も無きAAのようです
:2020/10/28(水) 11:37:31 ID:lZxRXz/.0
き、きてただと...
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