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( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。
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どーも作者です。
新しく作らせてもらいました。
設定だけ作っておいて最初の二話で終わる予定だったこの話がこれだけ続くことになろうとは。
半分くらいは終わっている予定なので、もう少しお付き合いいただければ幸いです。
話の投下の前に、各人の見た目データと大まかな設定を載せておきます。
この話は
川原礫著
『ソードアート・オンライン』シリーズのアインクラッド編を基に書かせていただいています。
基本的に設定を順守しているつもりですが、拡大解釈とまだ書かれていない設定に関しては想像で書いているので、その旨ご容赦の上、お楽しみいただけますようお願い申し上げます。
まとめ
ブーン芸VIP様
http://boonsoldier.web.fc2.com/
大変お世話になっております。
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その横にジョルジュが立つ。
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( ゚∀゚)「参加しないのか?」
( <●><●>)「今は二人で話したほうが良いのはワカッテマス」
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( ゚∀゚)「そうかねぇ」
( <●><●>)「……私の戦いぶりはどうでしたか?」
_
( ゚∀゚)「今のレベルなら問題ないだろ。今回はイレギュラーなポップも無かったしな」
( <●><●>)「……」
_
( ゚∀゚)「けど、なんでお前だけレベルが飛び出たかは分かった」
( <●><●>)「!?どういうことですか?」
突然声をかけられても表情一つ変えなかったワカッテマスだったが、
ジョルジュの一言で大きな目をさらに見開いて横を見た。
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( ゚∀゚)「お前もあの子と一緒だよ。
二人がちょっとでも危なくなったら割って入ってお前が敵を倒してきたんだろ」
( <●><●>)!
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( ゚∀゚)「図星みたいだな」
黙り込んで再び前を見たワカッテマスをみて、困ったように笑うジョルジュ。
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( ゚∀゚)「おまえはあの二人が本当に好きなんだな。それこそ、自分の身の安全を忘れるくらいに」
( <●><●>)「……私の行動が間違っているのはワカッテマス…」
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( ゚∀゚)「間違っちゃいないさ」
目を伏せつつ呟いたワカッテマスに、ジョルジュは軽く返す。
その軽さに思わず顔を上げて横を見るワカッテマス。
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( ゚∀゚)「間違っちゃいない。誰かを助けたいって気持ちは。その誰かが好きな相手ならなおさら」
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( <●><●>)「……」
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( ゚∀゚)「ただ、その方法は色々あるってだけで」
( <●><●>)「?…色々?」
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( ゚∀゚)「戦いの場でその身を盾にする守り方もあれば、
自分の後ろを預けて相手の後ろを守るってのもある。
更に言えば、戦いはすべて任せて、それ以外のすべてを引き受けるってのもある」
( <●><●>)「????」
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( ゚∀゚)「なんてな、おれも、本当に分かってきたのは最近だから、ちゃんと説明なんてできねぇ」
自嘲気味に笑い、自分を見るワカッテマスを見るジョルジュ。
その強い視線に思わず目を逸らそうとしてしまったワカッテマスだったが、
なんとか踏みとどまってじっと見つめ返した。
_
( ゚∀゚)「けどこれは言えるぞ。今の戦い方だと、万が一お前がいなくなったときあの二人はダメになる。
そしておまえが倒せない敵が出た時は、三人ともダメになる」
( <●><●>)「!」
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( ゚∀゚)「極論だけど、そういうこった。けど、お前だってそれくらいわかってただろ?」
( <●><●>)「……ハイ……ワカッテマス……」
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( ゚∀゚)「なら、大丈夫だ。あとは勇気だな。そして、その勇気を持つためにおれ達を利用すればいい」
にやっと笑ったジョルジュ。
ワカッテマスはその顔と発言に、顔全体で大きく驚きを見せた。
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−護衛班−
森を進む9人。
中央にロマネスク。
その前にヒッキーとマタンキ。
その前を兄者と弟者が先頭で歩いている。
ツンとブーンは地形に対して位置取りを変え、しんがりを務めるモララーとショボンと
声を掛け合いながら進んでいた。
( ФωФ)「みなさんはさすがの強さであるな」
(-_-)「うん。まったく危なげないよ」
(・∀ ・)「すげえっすよ!」
(´・ω・`)「そんなことはありませんよ」
開いたままのウインドウを操作しながらショボンがロマネスクたちと会話する。
状況と前方・後方の視界確認をモララーに任せ、通常歩行時は情報統制に専念していた。
ロマネスク達三人に対してはルートとポップする敵の予備知識の確認としての名目で。
実際はそれはもちろんのこと、哨戒班・教育班・調査班等との情報共有をしていた。
そして事前情報と哨戒班から入る情報により優位な状況で戦闘に入れるようコントロールしているが、
その戦いは決して楽ではなかった。
実際のところ、レベルだけをみればそれほど強敵は出てきていない。
だが高層の敵は強いソードスキルに加えてモンスター同士の連携も行われているように感じ、
各個撃破をするための位置取りやソードスキルによるモンスターの列の分断、
戦闘の振り分けなどを瞬時に行うショボンへの負担は小さくはなかった。
もちろん全員ギルドのメンバーだけで戦っているのならばある程度の余裕を持つことが出来るのだが、
今回は『護衛』という依頼で動いている以上中央の三人に被害が出ない様に戦闘を行っていたため、
普段よりも何十倍も神経を使っていた。
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(・∀ ・)「でももうちょっとこっちに回してくれてもいいすっよ」
(-_-)「マタンキもたまには良いこと言うね。ショボンさん、そうしてください」
(・∀ ・)「たまにとかひどいっすよ」
( ФωФ)「そうである、そうである。一匹ずつなら吾輩達でも対処できるであるからな」
(´・ω・`)「そうですね…。
情報によると、この先のエリアで細かい敵が多く出るところがある様なんです。
迂回ルートを考えていたんですが結構な遠回りになるので突っ込んでみましょうか」
ξ゚⊿゚)ξ「ちょっ。ショボン、大丈夫なの」
( ^ω^)「遠回りの方が良くないかお?」
( ФωФ)「分かったのである。釣りをする時間は多いほうが良いであるしな」
(;-_-)「ロマネスクさん…」
(・∀ ・)「正直すぎてさすがっす」
(´・ω・`)「実は先ほどから何回かお三人に戦ってもらったのは、
戦闘を見させていただく意味もあったんです。
あの戦いぶりなら大丈夫ではないかと判断もしました」
( ФωФ)「なるほどである……。『稀代の戦術師』殿にそう言われると照れるであるな」
(;´・ω・`)「な!なんですかそれ!」
( ФωФ)「また風のうわさで聞いたのである」
ロマネスクが漏らした二つ名にまた慌てるショボン。
聞いていたギルメンの五人がくすくすと笑う。
(´・ω・`)「……五人とも、帰ったら個別ミーティングね」
五人の口から洩れるブーイング。
それを見て笑みをこぼす三人。
その笑いはいつしか周りに伝播し、一人憮然とした表情のショボンを気にせず、
笑顔で次のエリアに続く道を進んだ。
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−調査班−
( ゚∋゚)「しぃ右!ギコは続いてフォロー!」
狼男に向かってまっすぐに走るしぃ。
(*゚ー゚)「はい!」
(,,゚Д゚)「おう!」
自分に向かってくる敵に唸りながら曲刀を振り下ろす狼男。
しかしタイミングをずらした走法で近付いたしぃは危なげなくその刀をかわし、
狼男の武器を持たない半身側に駆け寄り、落ち着いてソードスキルを放った。
(*゚ー゚)「はぁ!」
高速の三連撃。
もともと短剣は一撃一撃のつながりが短く瞬時に複数回当てることが出来るのだが、
しぃの放つ連撃はもともと短剣を使っていたモララーが息をのむほどに成長していた。
狼男「ぎゃりゅあ!」
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目に見えて減少する狼男のHPバー。
それを確認することも無く、そのまま前に跳ぶしぃ。
硬直した状態ではあったが最後の一撃を放ちながらの跳躍であったため、
勢いを殺さずに狼男の後ろに着地する。
狼男「ぐりゅうぅぅ」
奇妙なうめき声を上げながらしぃを追おうとする狼男。
(,,゚Д゚)「ゴルァ!」
狼男よりは聞き取れる雄叫びをあげながらギコの片手剣が狼男の背中を裂く。
のけ反った狼男の腰を分断するように、腰をひねりながら更に横に一閃する。
(,,゚Д゚)「今度はこっちだゴルァ!」
ギコの放った一撃はソードスキルではない。
だが、上げたレベルの分と兄者が作った片手剣の性能により、
その一撃一撃は低レベル時代の単発重攻撃技ほどの威力を持っていた。
そして無理な態勢での追撃は行わずバックステップで距離を取るギコ。
改めてギコを敵を認めて曲刀を向ける狼男。
その背中を切り刻むしぃの短刀。
迷いの無い六連撃は狼男のHPバーを黄色に変え、赤くなる手前まで減少させた。
(*゚ー゚)「ギコ君!」
(,,゚Д゚)「ゴルァ!!」
動きの止まった狼男に真横に振りぬかれるギコの片手剣。
片手剣水平四連撃
その技は狼男の身体に水色に光る四本の斬撃を刻み、その体をポリゴンへと変えた。
( ´∀`)「お見事もなね」
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クックルのサポートとビーグルの放ったスキルによる攪乱はあったものの、
ほぼ一人で狼男を二体片付けたモナーがクックルに近寄る。
( ゚∋゚)「ああ。あの二人は強くなったな」
( ´∀`)「それももなけど、クックルの指示ももなよ」
( ゚∋゚)「……やめてくれ」
( ´∀`)「嘘や冗談じゃないもなよ。しぃも言ってたもなけど、クックルにはクックルの指揮があるもな」
( ゚∋゚)「……」
モナーとクックルが見守る中ギコとしぃはハイタッチをして勝利を喜び、
そして二人に向かって駆け寄ってきた。
( ´∀`)「ここで一度漏れが無いか確認するもな」
安全エリアまでたどり着いた四人は、中央付近の芝生の上に集まった。
今回四人がやっているクエストはいくつかの素材アイテムを集める必要があったため、
今までの行程での採取し忘れが無いかを確認するためだった。
もちろん、休憩の意味はあるが。
(*゚ー゚)「はい」
ウインドウを開いて自分が採取した素材を確認するしぃ。
ギコは採取は行っていないため、そばに立って周囲を警戒している。
( ゚∋゚)「クエストに必要な個数は俺が持つから、一回出して渡してくれ」
(*゚ー゚)「分かりました」
クックルとしぃがクエストに絡んだ確認をしている間に、
モナーはタイムスケジュールの確認とショボンから送られてくる情報の確認をする。
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( ´∀`)「(今までならしぃの隣でウインドウを覗き込んでいたギコが、
今は誰に何かを言われたわけではなく自発的に周囲の警戒をしているもな。
モンスターが出ない安全エリアと言われているとはいえ何があるか分からないもなからね。
……本当に成長したもな)」
皆が座って打ち合わせをする中、一人立って周囲を伺っているギコを見てモナーは微笑んだ。
(,,゚Д゚)「この辺りは食べられる木の実とかは生って無いんだなゴルァ」
( ´∀`)「……感心して損したもな」
(,,゚Д゚)「?なんか言ったか?モナー」
( ´∀`)「何でもないもなよ」
つまらなそうに呟いたギコの言葉に、思わずため息を漏らしつつ呟いたモナー。
ギコの問いかけに首を振ってから、自分が開いたウインドウに目を向ける。
( ゚∋゚)「どうだ?モナー」
( ´∀`)「今のところ予定より良いペースもな。
戦闘回数・ポップ数は事前情報よりも多くなってるもなけど、時間は短縮できているもなからね」
(*゚ー゚)「事前情報との食い違いはどれくらいなんですか?」
( ´∀`)「ちょっとまつもな……。ギリギリ誤差範囲内もなね。でもこの先次第では分からないもな」
(,,゚Д゚)「前より増えてるってことか!?」
( ´∀`)「……そうもな。敵のレベルは変わってないもなけど、一度のポップ数と出現エリアの増加、
あとポップする時間が短くなっているかもしれないもな」
( ゚∋゚)「それは……」
( ´∀`)「とは言っても、今のモナ達には特に問題になる増加ではないもなよ。
まずは今日の調査を出来るだけ正確に行うことが重要もな。
難しいことはショボン達に任せておけば良いもなから」
(,,゚Д゚)「そうだなゴルァ」
(*゚ー゚)「ですね」
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(;゚∋゚)「そういうもんでもないと思うがな。とにかく、一応今の時点でショボンに連絡しておいてくれ」
( ´∀`)「分かったもな。そういえばショボンからもメッセージが来ていたもなよ」
( ゚∋゚)「何かあったのか?」
( ´∀`)「まだ全文しっかり読んでないもなけど、各班の現状をまとめたみたいもな。
さっき一度こちらの状況を送っておいたもなから、そのまとめもなね。
特に問題は無いと思うもなけど、一応全部読んでおくもな」
( ゚∋゚)「頼む。こちらはクエストの確認をしておく」
( ´∀`)「宜しくもな」
(,,゚Д゚)「警戒は任せろだゴルァ」
( ´∀`)( ゚∋゚)(*゚ー゚)「(なんだ。食べ物探してただけじゃなかったんだ)」
(,,゚Д゚)??
自分が意気揚々と宣言すると、三人が何とも言えない瞳でこちらを見た。
不思議に思って三人の顔を見返すと、三人が三人とも慌てて視線を逸らした。
(*゚ー゚)「お、お願いねギコ君」
( ゚∋゚)「頼んだ」
( ´∀`)「よろしくもな」
(,,゚Д゚)「お、おうだゴルァ」
釈然としないがとりあえず警戒を続けるギコ。
クックルとしぃは芝生の上にマットを広げ、
その上に素材アイテムを並べてクエストのデータと照らし合わせていく。
( ´∀`)「(『……以上』もな…っと…。さて、ショボンからのメッセージを確認するもな)」
ショボンへの報告メッセージを送ったモナーは、届いていたショボンからのメッセージを開く。
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( ´∀`)「(緊急メッセージ扱いにはされてなかったから確認しなかったもなけど、
やっぱり大丈夫そうもなね。モナ達の事と、クー達、ドクオ達のこと。みんな問題無いみたいもなね。
で、最後に護衛班の事もなけど…。護衛は結局三人になったもなか。………!!!!!)」
ショボンからのメッセージを読んでいたモナーが小さく音が出るように息をした。
( ゚∋゚)!?
(*゚ー゚)!?
(,,゚Д゚)!?
疑似呼吸しかしていないこの電子の世界において、そのような呼吸はかなり珍しく、
思わずモナーを見る三人。
三人の視界の先には、自分が見られていることにまったく気付いていないモナー。
彼は目を大きく見開いてウインドウを凝視している。
ページ移動をしていたのだろうか、人差し指を立てた手がかすかに震えているようにさえ見えた。
(,,゚Д゚)「も、モナー?何かあったのかゴルァ?」
クックルとしぃがその様子に驚いて何も言えないでいたが、ギコは率直に問いかけをした。
(; )!
固まった表情のままギコを見るモナー。
( ´∀`)「な、何でもないもなよ。
ショボンからのメッセージに新しい家畜の情報があったから、思わず驚いてしまっただけもな」
しかしすぐにいつものモナーに戻り、にこやかにギコと話しはじめる。
(,,゚Д゚)「お、また新しい肉が食べられるのか?」
( ´∀`)「ギコはお肉が好きもなね。うまくいけばそうなるもなけど、まだ分からないもな」
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(,,゚Д゚)「なんだ」
( ´∀`)「でも、新しい家畜が増えたら嬉しいもなね」
(,,゚Д゚)「この前の夕食に出た肉もうまかったぞゴルァ」
( ´∀`)「あれはどこにでもいるガルベカウもな。
ただ育成方法を変えてみたら、肉のレベルが高確率で高くなるようになったもなよ」
(,,゚Д゚)「そうなのか!」
( ´∀`)「育成も奥が深いもな」
(,,゚Д゚)「楽しみだぞゴルァ」
楽しげに会話をする二人を見て安心してアイテムに視線を戻すしぃ。
( ゚∋゚)「(……今は言えないこと……か。緊急でないなら、あとで聞けばいいか)」
(*゚ー゚)「クックルさん?」
( ゚∋゚)「ああ、すまん」
鋭い視線でモナーを見ていたクックルだったが、しぃの声に我に返りアイテムに視線を戻す。
( ´∀`)「(……今頃になってこの名前を目にするなんて……。
黒鉄宮の碑の名前は消されていなかったから、まだ生きていることは知っていたけれど……。
とりあえず、ショボンに連絡しないと。でも、なんて書けば……。
早く話しておくべきだった……。これは、おれのミスだ)」
ギコとの雑談を切り上げて、再びショボンへのメッセージを打ちはじめるモナー。
( ´∀`)「(あの日の事を、もっと詳しく話しておくべきだったんだ!)」
震えそうになる指を笑顔で抑え、メッセージを打つ。
( ´∀`)「(今のショボン達は、あの時のおれ達とは違う。だから、大丈夫だとは思うが…。
念のため、ドクオにも送った方が……。いや、でも……いたずらに……)」
打ち終えた頃、ようやく指の震えは完全に収まり、もう一度その短いメッセージを読む。
そして一呼吸した後に、しっかりと送信ボタンを押した。
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( ゚∋゚)「モナー。こちらの確認は終わった。そっちはどうだ?」
( ´∀`)「こっちも大丈夫もなよ。時間はまだ大丈夫もなけど、余裕をもって出発するもな?」
( ゚∋゚)「そうだな。余裕はあったほうが良い」
(*゚ー゚)「はい」
(,,゚Д゚)「そうだなゴルァ」
立ち上がるクックルとしぃ。
ギコも含めて三人で装備とフォーメーションの確認をし始める。
( ´∀`)「(そう。余裕が大事…。
……今のモナ達には、余裕を持つだけの底力はあるもな……だから大丈夫もな!)」
立ち上がるモナー。
先程のメッセージが送信されたのを確認してから、ゆっくりとした動作でウインドウを閉じる。
( ´∀`)「準備はいいもなか?」
(*゚ー゚)「はい!」
(,,゚Д゚)「ゴルァ!」
( ゚∋゚)「よし、出発だ!」
手を上げて雄叫びをあげる四人。
モナーのメッセージをショボンとドクオが開くのは、その少し先だった。
第十話 終
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しえええん
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第十一話 疾走 に続く
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と思ったら終わりだった。乙
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以上、短めですが本日の投下終了です。
何とか2月中に投下できました。
といっても、続き物ですが。
この続きも半分くらいは上がっているので3月中にはなんとか。
バレンタイン…。
そんなものもありました…。
節分ネタならあったんですが、乗り遅れました。
機会があれば季節外れネタで。
ではではまた。
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支援ありがとうございます(*^_^*)
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おつ、次回も楽しみに待ってる
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乙!
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乙
リア充爆発イベント待ってる
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乙
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乙 続きはよはよ
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3月ももう残り少ないけど
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もう3月ないよぅ
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そう急かすなよ
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作者応援してるよおお楽しみにしてるよおおおがんばれえええ
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ブーンがこれからどうなるのか楽しみ。
>>1は最近更新してないのかな?
待ち続ける☆ZE
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第十一話 疾走
1.作戦(午後)
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-哨戒班-
木々の中を走る五人。
ドクオはいつもと同じ黒いコートだが、残りの四人は揃いの暗い迷彩柄のマントを羽織っていた。
五人が走るのは、エリアの中心を貫く人が三人並んでも余裕を持って歩ける開かれた道の両側。
左右に分かれ、木々に隠れるように走る五人だったが、トソンの指揮でその行動は統制されていた。
進行方向を見て道の右を走るのは前からドクオ、ハイン、フサギコ。
左側をトソンとデミタスが走るが、前を走るトソンよりも右側のドクオは前を走っている。
時折左後方に視線を走らせるドクオ。
トソンが右手を斜め下に振るとドクオが走りを緩め、太めの木の陰に立つ。
それを見てハインとフサギコも同じように近場の木の陰に隠れた。
その時には、トソンとデミタスもそれぞれに木の陰に隠れている。
徐々に影に溶け込む五人。
それぞれが持つ隠蔽のスキルと身に着けた武具や衣服・アイテムの効果により、
その姿は木々に紛れ、背景に溶け込んでその姿を隠した。
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しばらくすると道の奥から狼男が三匹現れた。
持った曲刀や刀を陽光でぎらつかせ、周囲を睨みながらゆっくりと進んでいく。
狼男が五人の存在に反応して現れたのは明らかだが、
総合的に高いスキルレベルで隠れている彼らを見付けることが出来ないでいた。
周囲を伺いながらもドクオ達五人の隠れる木々のそばまでやってくる狼男。
緊迫した空気の中、狼男達が五人に囲まれるような位置まで来た瞬間、
中央の狼男の後頭部に一本の針が突き刺さる。
狼男2「ぐrぁyぅあうううあああ!!」
雄叫びをあげて針の投げられてきた方向を向く狼男2。
それに釣られて先頭を歩いていた狼男1と一番後ろにいた狼男3もその方向を見た瞬間、
木々の陰から飛び出す二つの影。
一つはフサギコ。
背後から狼男1の胴を一閃。
ソードスキルではないがクリティカルヒットとなったその一撃は狼男1のHPを三分の一ほど削った。
狼男1「ぐりゃぁぅらやぁああぅrぁああ!」
のけ反りながら雄叫びをあげて更に振り返ろうとするが、
その視界の死角に位置を移動したフサギコはすかさず狼男1の右腕の付け根を切り裂く。
ポリゴンと化した狼男1の右腕。
右手に武器を持っていたため狼男1は攻撃手段をなくしてしまった。
左手で無くなった右手を押さえるようなしぐさをしながら絶叫する狼男1。
そしてフサギコは満を持してソードスキルを放った。
居合の構えから放たれた剣技は狼男1の身体を宙に浮かす。
そして浮いたその身体を切り刻む剣技は狼男1の身体をポリゴンへと変えた。
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もう一つの影はドクオ。
狼男3の背中にまず二連撃を浴びせる。
('A`)「遅いな」
一つ一つのあたりは浅いが動きの遅い狼男3の隙をついてもう一撃を与え、
最終的にはHPを三分の一以上削った。
狼男3「ぎゃりゅるぐあぁああぁああ!!!」
闇雲に剣を振り回しながら振り返った狼男3。
しかし既にドクオは距離を取っており、冷静に観察する。
('A`)「なるほど」
ドクオが静かに体を動かす。
その動きは一見緩やかに見えるが、空気の隙間を縫うように、音を立てず、
風も起こさず、ギルド内でも三本の指に入る素早さで狼男3の真横に立ち、
武器を持つ手の肘を切り裂いた。
狼男3「ぎゃるyたあああるらあああ!!!」
('A`)「五月蝿いよ、おまえ」
同じく攻撃手段をなくした狼男3の身体を切り刻んでいくドクオの片手剣。
('A`)「これで終わり」
赤い光を纏った片手剣が、狼男3をポリゴンへと変えた。
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後頭部に針による攻撃を受けた狼男2は、針が飛び出した木に向かって走り出そうとした。
そしてその背中を襲うのはハインの大鎌。
フサギコやドクオに遅れること数瞬。
木の陰から飛び出したハインは左手に持った長柄の大鎌をバトンのように振り回し、
狼男2の背中に四本の傷をつける。
狼男2「ぐりゅあありゃああrっりゃあああ!!!」
大型の曲刀を両手で構えながら振り返った狼男2の背中に、今度はデミタスが襲い掛かる。
(´・_ゝ・`)「曲刀を振り回す簡単な仕事です」
水色に輝かせた曲刀を持ったデミタス。
多重六連撃
上下左右から舞うように振り下ろされ振り上げられた曲刀が狼男2の身体を切り刻む。
从 ゚∀从「ほーらこっちもまたくるぜ!」
背中からの攻撃にのけ反りながら硬直した狼男2の身体を前面からハインの鎌が襲う。
前後からのソードスキルの応酬に、狼男2の身体はポリゴンへと変わった。
戦闘の口火を切り囮役を担ったトソンも既に木の陰から出てきており、
狼男三匹がポリゴンに変わるのを視界の隅で見ながら、
次のエリアとタイムスケジュールの確認を行っていた。
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(゚、゚トソン「お疲れ様です。ここで13分休憩です」
狼男を3匹ポリゴンに変えた後三つのエリアを通り過ぎ、
うち二つのエリアで戦闘を行ったドクオ達五人は、
安全エリアでしばしの休息を取っていた。
(´・_ゝ・`)「トソンの指揮も板についてきたな」
(゚、゚;トソン「やめてください。それに私がやっているのは指揮とかではなく、
ただのタイムキーパー的な役割です」
(´・_ゝ・`)「謙遜するな」
('A`)
从 ゚∀从「頑張ってると思うぜ。戦いやすいしな」
(゚、゚トソン「もう止めてくださいよ…」
苦笑いをしながらため息を吐くトソン。
(´・_ゝ・`)「?どうした?」
(゚、゚トソン「いえ……。
実際に指揮下について戦っただけでもショボンさんのすごさは感じたつもりでしたが、
本当にあの人はすごい方だと思いまして。
劣化版も劣化版、足元にも及びませんが同じような『指揮』をする立場に立ってみて、
その凄さを改めて実感しました」
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('A`)「ああ…」
从 ゚∀从
ミ,,゚Д゚彡「ショボンはすごいから」
(゚、゚トソン「おっしゃる通りです。本当に」
(´・_ゝ・`)「ま、あいつは特殊だよ。特殊」
('A`)「否定はしない」
从 ゚∀从「しないんだ」
('A`)「つーかできない」
从 ゚∀从「そりゃそうだ」
(´・_ゝ・`)「特殊っていうか、異常だな」
デミタスの言葉に頷く三人。
ミ,,゚Д゚彡「……みんなひどいから」
フサギコの少しだけ非難するような、けれど消極的な言い方に笑みをこぼす四人だった。
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('A`)「ん?メッセージだ」
从 ゚∀从?
ドクオがウインドウを出すと、引っ付いていたハインが離れてトソンに近寄った。
从 ゚∀从「そういえばトソン、投擲スキル上げてたのか?」
(゚、゚トソン「いえ、スキルレベルは中の下くらいですよ。意識して鍛えてませんし」
从 ゚∀从「それにしては百発百中じゃないか?」
(゚、゚トソン「的がゆっくり動いているのもありますが……ほとんどは、これのおかげです」
色白で理知的なトソンの顔によく似合う、細長い長方形の眼鏡。
アンティークシルバーのような光沢をもった細い蔓を人差し指で少しだけ動かすトソン。
从 ゚∀从「いつもかけてるのと違うけど、特殊なやつなのか?」
(゚、゚トソン「フサギコさんからショボンさんの指示書と一緒に渡されたのですが、
命中率と正確性がおそろしく大きく上がりました」
从 ゚∀从「へーーーーー」
(゚、゚トソン「すごいですよね。おいくら位するんでしょう」
ミ,,゚Д゚彡「!ごめんだから!」
(゚、゚;トソン「え、あ?いえ、欲しいとかそういことではなく」
ミ,,゚Д゚彡「伝えるの忘れてたから。
その眼鏡は今回のお礼にあげるって言ってたから」
(゚、゚;トソン「え、あ?いえ、そんな!報酬はちゃんといただくわけですし、こんな高価そうなものまで」
ミ,,゚Д゚彡「『形も色も趣味が別れるし、似合うやつも少なそうだけど、トソンなら似合うんじゃねーか?』
って言ってたから」
(゚、゚トソン!
.
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ミ,,゚Д゚彡「『すっとした細みの顔立ちだし、頭良さそうな雰囲気だから、似合いそうじゃね』
とも言ってたから」
(゚、゚*トソン「そ、それを言ったのは…作った方…ですよね」
ミ,,゚Д゚彡「だから!」
(゚、゚*トソン「じゃ、じゃあ遠慮なくいただきます。
お礼を言いに行かないとですね。
………もうそんな……私がきれいだなんて。モララーさんたら」
ミ,,゚Д゚彡「…え?」
(´・_ゝ・`)「誰も言ってないな。そんなこと」
从 ゚∀从「二人とも、野暮ってもんだぞ」
ミ,,゚Д゚彡?
(´・_ゝ・`)?
从 ゚∀从「ダメだこいつら。
そういえば二人ともホモだったな」
ミ;,,゚Д゚彡「ふさはショボンを尊敬しているだけだから!」
(´・_ゝ・`)「おれは二次とNPCのショタだけだ!」
(゚、゚トソン「デミタスさんはアウトですね」
从 ゚∀从「アウトだな」
ミ,,゚Д゚彡「アウトだから」
(´・_ゝ・`)「この高尚な趣味が分からないとは…」
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('A`)「何をまたわけのわからないことを」
四人で騒いでいるところに寄ってくるドクオ。
('A`)
从 ゚∀从「メッセージは読み終わったのか?」
('A`)「あーそのことなんだけどトソ…」
从 ゚∀从?
(´・_ゝ・`)「あ、ドクオ、このマントのことなんだが…」
自分が羽織っているマントを摘まんでひらひらとさせるデミタス。
('A`)「ん?どうかしたのか?」
从 ゚∀从
そのマントは遠目で見ると一見ただの黒色だが、
そばで見ると闇よりも深いような漆黒の地に、深い緑と濃い青が迷彩の様な柄を織成している。
今は動きやすいように前を開いているが、木の陰に隠れるときは
体のサイズより大きめなそれで身体を包むように前を閉じ、
更に顔まで覆えるようなサイズのケープもついているため、
少しかがめば本当に体全部を包むことが出来た。
(´・_ゝ・`)「売ってないのか?かなり欲しいんだが」
ミ,,゚Д゚彡「それはダメって言ってたから
(´・_ゝ・`)「そうなのか?」
('A`)「まだ量産できてはないみたいだな。
ツンとモラが弟者と一緒に試行錯誤して作ってたけど、ダメみたいだ。
これよりランクの落ちる奴はある程度量産出来そうらしいけど」
从 ゚∀从
(´・_ゝ・`)「そっか。残念だ」
('A`)「ま、使ってなきゃレンタルはするだろうし、
作れるようになりゃブーンの店に並べるだろ」
从 ゚∀从
.
-
(´・_ゝ・`)「それまで待つか。ちなみにこれ、隠蔽だけならドクオのコートクラスの能力だろ?」
('A`)「いや、まだおれのコートの方が上」
从 ゚∀从
(;´・_ゝ・`)「まじか!それも弟者作だったよな!?」
('A`)「ああ。弟者が言うには、確かに全部レアレベルの素材で作ったけれど、
なぜこんなレベルのこんな防具が出来たのかわからんって事みたいだ。
実際、いまだに作ったコートの中ではこれが一番レアらしい」
从 ゚∀从
(;´・_ゝ・`)「はーーー」
('A`)「まずはこのコートクラスの防具や衣服を作るのが目標らしい。
一回は『ちょっとだけ!ちょっとだけ!』とか言って素材に戻されそうになった」
从 ゚∀从「ツンだな」
(´・_ゝ・`)「ひでえ。さすがツン」
ミ,,゚Д゚彡「……」
(゚、゚トソン「フサギコさん、ツンさんのフォローはしないんですね」
ミ,,゚Д゚彡「今のは出来ないから」
(゚、゚トソン「それでドクオさん、何かご用ですか。そろそろ出発する時間なのでお早めにお願いします」
('A`)「ああ、悪い、この後の戦闘スケジュールはどうなっているか知りたいんだが。
多分もうすぐ目的の湖だよな?」
从 ゚∀从
(゚、゚トソン「はい。あと5エリア、うち3エリアで戦闘を予定しています。」
('A`)「戦闘の規模は?」
从 ゚∀从
(゚、゚トソン「二回は先ほどの狼男三匹、一回は狼男一匹に巨大蜂3匹です」
.
-
('A`)「蜂がいるか…」
从 ゚∀从?
(゚、゚トソン「どうかしましたか?」
('A`)「その戦闘、おれが抜けても大丈夫か?」
(゚、゚;トソン「え?」
('A`)「ちょっと野暮用で、ショボンの所に合流したいんだよ。無理なら諦めるが」
从 ゚∀从「えー」
(゚、゚トソン「正直厳しいと思います。
現状ドクオさん一人で一匹は倒していただいていますから」
(´・_ゝ・`)「フサが一匹、おれとハインとトソンで二匹にすれば良いだろ」
('A`)
从 ゚∀从「そうだな」
(゚、゚;トソン「で、でも蜂の方はどうしますか?」
ミ,,゚Д゚彡「トソンがこれを使えば良いから!」
いつ取り出したのか、十数本の細いナイフを手に持つフサギコ。
(゚、゚トソン「それは?」
ミ,,゚Д゚彡「もし飛ぶ敵に苦戦するようならトソンに渡す様にショボンから言われてたから」
自分に差し出されたそのナイフを受け取るトソン。
革のようなベルトに一本ずつ差し込まれている銀色のナイフ。
幅は指一本分ほどで厚さも厚くはない。というか薄い部類に入るだろう。
そして長さも手のひらにすっぽりと収まるサイズだが、重さはそれなりにあった。
(゚、゚トソン「これ…」
左手の手のひらに乗せたナイフをタップして情報を見ると、トソンの目が大きく見開いた。
.
-
(´・_ゝ・`)「?どうしたトソン」
(゚、゚;トソン「けっこうなレア品です。しかも麻痺効果付」
ミ,,゚Д゚彡「兄者とショボンとクーが頑張ったから!
ショボンがその眼鏡をかけたトソンなら使いこなせるはずだって言ってたから!」
(゚、゚トソン「これ、本当に使ってよろしいんですか?」
ミ,,゚Д゚彡「余ったら返してほしいから」
(゚、゚トソン「…………分かりました」
ウインドウを開き、自分の記憶とショボンから渡された行程を再チェックするトソン。
そして装備ウインドウも操作して、自分の腰に渡されたナイフを装備する。
(゚、゚トソン「ドクオさん、離脱は可能です。
ただし、それによりこちらの負荷が大きくなるため状況によってはクリスタルの離脱を行います。
予定より危険だった場合の戦闘域からの退避はショボンさんに指示されていますので、
ご了承ください」
('A`)「わかった」
.
-
(゚、゚トソン「みなさん、よろしいですね」
(´・_ゝ・`)「もちろん」
从 ゚∀从「ホントは一緒に行きたいけど、こっちは任せておけ」
ミ,,゚Д゚彡「大丈夫だから!頑張るから!」
(゚、゚トソン「では私たちは出発します。ドクオさんは?」
('A`)「あいつらのところに向かう。……ふさ、」
ミ,,゚Д゚彡「?」
('A`)「あと、…頼んだ」
ミ,,゚Д゚彡「!分かったから」
フサギコに向かって一回無言でうなずくと、
ハインが離した腕をほんの少しだけいとおしそうに撫でながら近くの木陰に進むドクオ。
するとその姿は他の四人の視界から完全に消えた。
从 ゚∀从「どっくん…」
ミ,,゚Д゚彡「相変わらずすごいから」
(゚、゚トソン「時間です」
ウインドウを閉じ、前を向くトソン。
他の三人も会話をしながらも準備は済ませており、万全の態勢でトソンの後ろに立つ。
(゚、゚トソン「進行は右にハインさん、フサギコさんで。左は先ほどと同じ私とデミタスさん。
共通順序は私、ハインさん、デミタスさん、フサギコさん。
ハインさんは私の指揮を見逃さない様にお願いします」
フードをかぶる四人。
そして少しだけ前傾姿勢で走り始めた。
.
-
−護衛班−
(´・ω・`)「おや」
通常進行時もウインドウを開いたままにしているショボン。
前のエリアでは戦闘を行っていたため閉じていたが、
次のエリアに移動してモンスターがいないのを確認した後は開いて移動していた。
前をちゃんと見ていないにも関わらずその足取りには危なげはない。
それは並んで歩くモララーが足元や前方の注意を世間話のように話しかけているからで、
与えられる過不足の無い情報によって、ショボンは普通に歩いていた。
今ショボンが見るのは自分たちが進んでいるエリアのマップ。
さらにそこにはモンスターの出現ポイントが情報として追加してある。
現状はほぼ収集した情報通りに進んでいるが、それでも細かい差異はあるため、
ショボンは通り過ぎたエリアに詳細なデータを出来るだけリアルタイムで追加していた。
本当のところ、この程度の長さと情報量ならば、ショボンは全てを記憶しておく自信はあった。
だがその場で感じたことはやはりその瞬間に記載した方が情報として確かなものであると考え、
特に今回は安全エリアでの追記ではなくリアルタイムの情報を入れるようにした。
実はその行動にはそれ以外にもいくつかの理由があるのだが、
彼自身それは杞憂で終わってほしいと思っていたため、彼の心だけが知っていた。
( ・∀・)「どうした?」
ショボンが漏らした一言に、モララーが反応する。
(´・ω・`)「いや、……調査班からメッセージが届いたからさ」
( ・∀・)「?調査班?……作戦中に?」
(´・ω・`)「うん。時間的にまだ調査は終わってないはずだし、
ついさっき状況確認の連絡ももらってるから何かなと思って」
.
-
( ・∀・)「で?なんだって?」
(´・ω・`)「今から見るところ」
画面から目を離さずに軽く相手をするショボン。
( ・∀・)「……まだ見てないのかよ」
(´・ω・`)「見てないよ。さっきまで前の戦闘メモも書いてたし」
呆れたようなモララーの言葉をさらっと流すショボン。
全く気にせずにウインドウを操作している。
(・∀ ・)「お!なんすかなんすか!」
するとすぐ前を歩いていたマタンキがやってきた。
( ・∀・)「……」
(´・ω・`)「仲間からメッセージが届いたので確認をしようって話していたんですよ」
(・∀ ・)「いいっすね良いっすね。で、なんて書いてあったんすか?」
(´・ω・`)「いや、まだ見てないので」
( ・∀・)「(こいつのキャラあわねぇ)」
なれなれしくショボンの隣に並び、ウインドウを覗き込もうとするマタンキ。
しかし当然のことながら不可視モードになっており、マタンキには画面が見えない。
(・∀ ・)「ありゃ、見えない」
( ・∀・)「(当たり前だボケ)」
(´・ω・`)「マタンキさんは、このANGLERに入って長いんですか?」
自分の肩に顎を乗せるように覗いてきたマタンキ。
ショボンはそれをさりげなく避けつつウインドウを閉じた。
(・∀ ・)「俺っすか!俺は最近すっよ!」
.
-
( ФωФ)「マタンキは前から釣り場でよく会っていたのであるが、
なかなかギルドには入ってくれなかったのである」
二人の会話を聞いていたロマネスクが歩調を緩め、ショボンとマタンキの横にきた。
それを見て更に後方に下がるモララー。
( ・∀・)「(やばい、なんかちょっとムカついてる。
なんだろ、これ。感覚が落ちたのか、鋭敏になったのか…。
落ち着け……おれ。冷静に観察しろ。ショボンの行動も計算に加えるんだ)」
(´・ω・`)「おや、そうなんですか?マタンキさん」
(・∀ ・)「昔パーティー組んでた時にちょっと気まずくなったことがあって、
それ以来出来るだけソロで動いてたんっすけどね。
ロマネスクさんとはうまが合ったっていうか」
( ФωФ)「釣りの腕もさることながら、ソロで動いているだけあって強さもすごいのである」
(´・ω・`)「それは先ほどまでの戦闘をみて感じていました」
(・∀ ・)「俺なんかダメダメっすよ。ただ闇雲に切りまくるだけっすから」
(´・ω・`)「またまたご謙遜を。斬撃は全て的確でしたよ」
(・∀ ・)「……すごいっすね」
(´・ω・`)?
( ФωФ)「流石ショボン殿である。あれだけの戦闘で我々の力量が分かるのであるな」
(´・ω・`)「それほどの事ではないですよ」
( ФωФ)「いやいや、『稀代の戦術師』の名はだてではないのである」
(;´-ω-`)「本気でそういった名前で呼ぶの止めてください」
笑うロマネスクとマタンキ。
苦笑いを浮かべるショボンを見ながら、モララーは今自分が抱いている負の感情を分析していた。
.
-
(´・ω・`)「ここから先のエリアでは、戦闘があります」
ショボンの指示で街道の隅に集まる八人。
(´・ω・`)「お願いしていた通り、そこではロマネスクさん達三人にも戦闘に参加してもらいます」
( ФωФ)「うむ」
(・∀ ・)「任せてくれっすよ」
(-_-)「はい」
ショボンの言葉を受け、表情を引き締める三人。
(´・ω・`)「情報では、この先に出るのは狼男タイプの剣士が三匹、槍使いが一匹。
更に狼と蜂のポップが複数報告されています」
(´<_` )「結構多いな」
( ^ω^)「狼男の槍持ちは珍しいおね」
( ´_ゝ`)「二つ前の層でもでたよな。確か」
ξ゚⊿゚)ξ「居たわね。結構槍捌きがうまくて面倒だった覚えがある」
( ・∀・)「ああ出た出た。懐に入るのが面倒くさかった」
(´・ω・`)「情報によると、槍持ちが先頭に一匹、そのすぐ後ろに剣士が一匹。
少し距離を開けて剣士が一匹、その更に後方に一匹の順で出るらしい」
(´<_` )「その順序は変わらないのか?」
(´・ω・`)「今のところはね。
ただこの道は湖への道でその先の街へは別ルートで行けるから、
それほど情報は積まれてない。だから…」
.
-
( ´_ゝ`)「臨機応変」
(´・ω・`)「そういうこと。一応担当は決めるけど、その都度指示を出すからよろしく」
( ^ω^)「いつもと一緒だお」
ξ゚⊿゚)ξ「よね」
(´<_` )「また身もふたもないことを」
( ФωФ)「吾輩達はどうしたらよいのであるか?」
(´・ω・`)「槍持ちはこちらで対処します。
剣士の内の一匹と、狼及び蜂が出てきた際の遊撃をお願いしたいのですが」
( ФωФ)「分かったのである。二人もよいであるな」
(・∀ ・)「腕がなるっすよ!」
(-_-)「大丈夫。問題ない」
(´・ω・`)「ただ、今話していた通り情報が少ない為変更の可能性もあります。
実際ここまでの道のりでも情報との相違点がいくつかありましたので」
( ФωФ)「!全て調査済みなのであるか?」
(´・ω・`)「はい」
驚いたロマネスクに驚きつつ頷くショボン。
今回のように戦闘をしながらのほぼリアルタイムでの情報整理は今まで行ったことが無かったが、
毎回自身やギルドのメンバーが行った戦闘は記録し、流通している情報との差異を確認していた。
今回も作戦のギリギリまで情報屋から情報を買いあさり、基本的な情報は完全と言ってもいいだろう。
整理した情報は情報屋にフィードバックを行い共有化を図っているが、
基本的にはギルドのメンバーの命を守るための行為であり、
ショボンにとっては当たり前で基本的な行為だった。
そのため、同じギルドマスターであるロマネスクが驚いたことに彼は驚いてしまった。
.
-
(;ФωФ)「そ、それは全てのギルマスがやっているのであるか?」
(´・ω・`)「ギルマスがやっているかどうかは分かりませんが、
ある程度の大きさのギルドならこういった情報統制をする担当者がいるのではないかと思いますよ」
(;ФωФ)「マジであるか…」
(ФωФ)
(ФωФ )
(-_-)「僕は無理だよ」
(ФωФ;)
( ФωФ )
(・∀ ・)「ロマネスクさん頑張るっす!」
( ФωФ;)
( ФωФ)
(;´・ω・`)「え、いや、僕を見られても」
(;ФωФ)「……マジであるか…」
(;´・ω・`)「…とりあえず先に進みましょうか」
(;ФωФ)「そ、そうであるな」
あからさまに動揺したロマネスクを気遣いながら更に注意点をいくつか告げ、
戦闘エリアに足を踏み入れた。
.
-
戦闘は、予定よりも長引いていた。
(;^ω^)「ツン!」
ξ゚⊿゚)ξ「こっちは大丈夫!そっちを片付けて!」
ブーンの剣が風となって狼男を切り裂き、ツンの細剣は光線のように光り輝いて狼男を突き刺す。
その攻撃は一つ一つが充分な攻撃力を持ちモンスターのHPを削るのだが、
倒すことが出来ないでいた。
▼#・w・▼「ギャウ!」
狼男の足元にいる狼。
姿はビーグルに似ているがその毛色は焦げ茶色で、一般的なモンスターである。
しかしビーグルと同じ特技を持ち、傍らに居る狼男のHPを回復することがあった。
▼#・w・▼「ギュワ!」
もちろんブーン達に対して爪や体当たりなどのの攻撃もしてくる。
その攻撃力も動きも脅威ではないため簡単にかわせるし、
たとえその攻撃が直撃してもVIPの六人にはほとんどダメージはない。
しかし動きは阻害されるため、狼男に体勢の立て直しや回復行動を取られてしまい、
戦闘は長引いてしまっていた。
(#ФωФ)「こりゃ!こりゃ!」
(-_-)「ふっ!はっ!」
ロマネスク達三人は更に苦戦していた。
三人に対してはショボン達の位置取りにより他の敵とは独立させて狼男一匹と戦ってもらっていた。
しかし狼男のHPが黄色になりかけた頃にその足元に狼が現れ、
狼男のサポートを始めた。
順調に狼男のHPを削っていた三人であったが、
お供の狼が現れた途端、一転してその戦いぶりは混乱していた。
.
-
(・∀ ・)「うおりゃ!!」
マタンキの両手剣が狼男に向けて振り下ろされる。
しかしその体に狼が体当たりをくらわせ、軌道がずれた両手剣は空振りして大地に突き刺さる。
この場合、本当ならばロマネスクとヒッキーが狼の気をひいて相手をしていなければいけないのだが、
連携が取れておらず位置取りが出来ていない三人は互いが互いの動きを邪魔してしまい、
互いのフォローもモンスターへの攻撃も中途半端なものとなってしまっているように見えた。
それでもロマネスクとヒッキーは付き合いの長さからかアイコンタクトがかろうじてとれているのだが、
全く取れていないマタンキとはうまく連携が取れないでいる。
いっそのこと全員が声を上げて戦えばいいのだが、
もともとソロプレイヤーであるマタンキはそれが苦手で、
残る二人は互いとは声を出さなくても出来てしまっていたため声を出すのが逆に遅れてしまい、
思うように倒せずにいた。
(´<_` )「おい!ショボン!」
( ´_ゝ`)「どうする!」
事前情報よりも狼男は一匹多く現れ、兄者と弟者はそれぞれ狼男を一匹ずつ対応している。
そしてその足元にはそれぞれお供の狼がおり、ブーンやツンと同じ様に膠着状態と化していた。
( ・∀・)「あとはお前に任せる!」
兄者と弟者の攻撃は強力だが、連発には向かない。
つまり狼男に攻撃を仕掛け相手に大ダメージを与えることが出来るが、
その隙を狙って狼に襲われてしまい、追撃が出来なくなる。
かといって狼を狙えば狼男に隙を見せることになるためそれは出来ないでいた。
そこで活躍するのがモララーである。
モララーは主に兄者と弟者が戦っている『狼』と時折現れる蜂の相手をしていた。
空を飛ぶ敵に対して爪での攻撃は不利な様に見え、
実際短剣などリーチの短い武器を持つ者の中には苦手とする者も多い。
だがモララーの戦闘センスと経験の前では空を飛ぶというアドバンテージは無いに等しかった。
さらに言うならば、地を駆ける狼の素早さもとくに意味を持たない。
.
-
モララーの持つ戦闘センス。
それは『読み』である。
戦闘経験と瞬時の観察により相手の動きを読み次の行動を予測する。
飛び道具を持たない敵ならば、自分に攻撃を仕掛ける動きさえ読めれば攻撃は当たらないし、
逆にこちらの攻撃を当てることが出来る。
どんなに素早くても移動する先が分かれば避けることも追うことも出来る。
ショボンのように味方の動きも考え、更に指示を出すのは苦手だが、
視界に入った敵の数が片手の指の数ほどなら、敵の動きを読むのはショボン以上、
ギルド一と言われている。
( ・∀・)「ほい!ほい!ほい!」
そして今その能力は如何なく発揮され、兄者と弟者のサポートをしていた。
(´・ω・`)「キープ!」
( ^ω^)「了解だお!」
ξ゚⊿゚)ξ「ん!」
( ´_ゝ`)「早くな!」
(´<_` )「分かった!」
( ・∀・)「りょーかい!」
ショボンの声に反応してそれぞれにこたえる五人。
ショボンから出された指示は『キープ』
それは現状の維持。
今の状況で言うならば、本気は出さないで目の前の敵と対峙するということだった。
.
-
そしてそのショボンは何をしているのかというと、位置取りをしていた。
この戦闘エリアは、鬱蒼と茂った木々の中を長い道が半円のように大きく弧を描く形をしていた。
木々によって視界は邪魔され、入り口から入ってある程度歩かないと出口が見えない長い道。
そして敵は反対側から進んでくるため、道の半ばごろで敵と遭遇するのがほとんどだった。
今回はブーンが先頭でツンが続いて走って早めにエンカウントを行ったため、
半ばよりは出口寄りで戦闘が始まった。
そしてその中の一匹をショボンとモララーが誘導して道の入り口近くまで移動させ、
その一匹をロマネスク達三人に引き渡しつつ戦況を確認していた。
(´・ω・`)「ロマネスクさん!さらに入口の方へ誘導してください!
入口近辺は蜂もポップしないはずなので落ち着いて戦えます!
残りの敵はこちらで抑えるのでそちらには行かせません!」
( ФωФ)「分かったのである!二人とも!分かったであるな!」
(-_-)「うん!行くよマタンキ!」
(・∀ ・)「おいっす!」
攻撃を重ねる三人。
そして狼男と狼を入口の方へ追いつめた。
(´・ω・`)「そちらは頼みます!」
( ФωФ)「任せるのである!」
ロマネスク達の位置を確認した後に逆側、VIPの面々が戦う場所に走り出すショボン。
.
-
(´・ω・`)「兄者!5!重単範囲!弟者!3!単ノックバック!兄者と合流殲滅!
モラ!4!弟者の代わり!僕も入る!ブーンとツンは制限有りのキープアウト!」
腰に付けた円盤型の武器を手に取り、構えながら叫ぶ。
( ´_ゝ`)「おう!」
(´<_` )「よし!」
( ・∀・)「OK!」
( ^ω^)「わかったお!」
ξ゚⊿゚)ξ「遅い!」
ショボンの指示を受けて動きを加速させたブーン。
そしてそれを横目に見つつ、細剣の先を的確に相手に突き刺していくツン。
(´・ω・`)「1」
ショボンのもつ円盤が緑色に輝く。
(´・ω・`)「2」
簡単なモーションで円盤を投げるショボン。
(´・ω・`)「3!」
(´<_` )「うをりゃ!!!」
弟者が斜め右下から左上に大斧で狼男を切り上げると、一緒に衝撃波のような風が生まれた。
狼男はHPを減らされ硬直しつつ後退し、
足元の狼は旋風の様に吹き荒れた風によってその場に硬直する。
(´・ω・`)「4!」
(´<_` )「任せた!」
( ・∀・)「よいしゃ!」
.
-
兄者に向かって走り出す弟者。
弟者がいた場所に移動するため走り出すモララー。
その背中に向かって攻撃を繰り出そうとした蜂のHPは既にモララーによって赤に変えられており、
背後から襲うショボンの投げた円盤によって胴体を切り裂かれると、その身体をポリゴンに変えた。
(´・ω・`)「5!」
( ´_ゝ`)「こんちくしょ!」
大金鎚を頭上に掲げ、勢いよく振り下ろす兄者。
モーション的にかなりの大振りな為狼男に逃げる隙を与えてしまったが、
掠る様にその身体に当てることが出来た。
攻撃判定としては肩先のほんの少しに当たるに終わったが、
狼男のHPが目に見えて減る。
そして地面に穴を開けるような勢いで振り下ろされた大金鎚は、
その場所を中心に半径数メートルの衝撃波を生んだ。
その威力で硬直する狼男とお供の狼。
更に兄者も剣技後の硬直をしてしまうが、狼男を背中から巨大斧が袈裟懸けに切り裂いた。
( ´_ゝ`)
それを見てにやりと笑う兄者。
弟者が振る巨大斧は更に縦横無尽に狼男を切り裂き、十数秒後にその場から狼男を消した。
後方から兄者のもとに駆け寄ったショボンの右手には、手元に戻ってきた円盤が持たれている。
そしていち早く硬直が解けそうになった狼を、手に持った円盤で切り裂いた。
更にそのまま走り抜け、武器を片手剣に持ち直すとモララーの横に立って狼男と対峙した。
ショボンに切り裂かれた狼は、攻撃を受けたことにより戦闘目標の変更を起こし、
走り抜けたショボンを追おうと向きを変える。
しかしその間に兄者の硬直が解け、狼のその体に、大金鎚が振り下ろされた。
.
-
本気を出したブーンのスピードは、狼男はもちろん狼の動きすらも軽く凌駕する。
しかしスピードと引き換えに重さは捨てているため、
武器の能力と各種ステータスアップアイテムによって攻撃力を上げてあるとはいえ、
掠る程度の一撃を与えたところでは狼男のHPを大きく削ることは出来ない。
しかし一撃で減らすことの出来るHPが少量だとしても、
二撃、三撃と回数を重ねることによって与えたダメージの総量は増え、
二匹の狼男と二匹の狼のHPを着実に削っていた。
数を重ねて敵を倒すブーンに対し、ツンは正確で的確な攻撃を敵に与えることによって、
敵を倒すことが多い。
今回は風の様に舞うブーンとそれに翻弄される四体のモンスターに対し、
ツンは隙間を縫うような一撃を与えていた。
普通ならばブーンの動きを邪魔することを恐れて攻撃の手を休めいてしまいそうだが、
ツンは気にすることなくモンスターを攻撃する。
信頼。
ブーンは自分に当たる様なミスはしない。
そして自分の戦闘指向や動きをブーンは分かっているはずだから、
躊躇して動きを鈍らせてしまう方がブーンの動きを阻害するだけでなく、
自分もしくはブーンを攻撃してしまう可能性が出てしまう。
だから自分は自分の出来る精一杯をする。
そして懸念。
今のブーンの動きが100%の本気ではないのは分かっているが、
それでもこの速さは精神を消耗する。
脳が、神経が焼切れるような痛み、終わった後の疲労感や倦怠感。
出来るだけ早くモンスターを倒すことによって、ブーンの負担を減らしたい。
そんなことを漠然と思いながら、ツンは攻撃を重ねた。
.
-
片手剣をメイン武器として持ったショボンは、戦闘自体はそれほど強くはない。
しかし敵の動きを読むことによってその動きを阻害しつつダメージを与えた。
そしてその横にはモララーが一緒に戦っている。
彼が使う爪は武器スキルも順調に上げてあることもあり、
更に敵の動きを読むことによって的確にダメージを与えている。
ショボンはそのモララーの動きすらも読みながら、先にいるブーンとツンの戦闘を注意しつつ、
後方にいる兄者と弟者がこちらに向かっているのを感じていた。
兄者と弟者が最初の一組の狼男と狼を倒した後は、決着は早かった。
四匹の狼男と四匹の狼、そして追加ポップした蜂三匹の計十一匹を倒した後、
一息つく間もなくロマネスク達が戦っているはずである道の入り口方面に向かう。
そこには、HPを赤くした狼男とタイミングよく攻撃を加える三人がいた。
狼男の足元に狼がいないところを見ると、首尾よく先に倒すことが出来たのであろう。
(・∀ ・)「すいっち!」
(-_-)「ん!」
マタンキの呼び声でヒッキーが踊り出る。
狼男は新たな敵に対応できず、その身体に刃を受けた。
( ФωФ)「ヒッキー!」
(-_-)「はい!」
ヒッキーが三連撃の最後を狼男に当てると同時に後ろからロマネスクが叫ぶ。
返事をしつつヒッキーが左に身体を寄せると、右側をロマネスクが走り抜けた。
( ФωФ)「決めるである!」
狼男の前に進んだロマネスクがまずは袈裟切りで一閃。
そして四連撃の剣技を繰り出すと、狼男はポリゴンとなった。
.
-
(*ФωФ)「やったのである!」
(・∀ ・*)「やったっすね!」
(*-_-)「…よし!」
大きくガッツポーズをするロマネスク。
マタンキは飛び跳ねて喜んでいる。
普段は大人しくあまり感情を表に出さないヒッキーも小さくガッツポーズをし、
更には後ろからマタンキに抱きつかれて一緒になってジャンプをした。
それを少し離れて見守っているショボン達。
( ´_ゝ`)「大丈夫じゃないのか?」
( ^ω^)「だおね」
ξ゚⊿゚)ξ「油断は厳禁よ」
(´<_` )「そうだな。注意は必要だ」
( ・∀・)「ショボン、どうみる?」
(´・ω・`)「とりあえず、続行で」
ショボンの指示を受けてそれぞれに返事をしてから、
ロマネスク達三人のもとに近寄るVIPのメンバー達。
(*ФωФ)「ショボン殿!やったであるよ!」
(´・ω・`)「お見事でした。最後の方はコンビメーションも決まっていましたね」
(・∀ ・)「最初はまごついたっスけど、慣れたらこんなもんっすよ!」
(-_-)「マタンキが最後まで戸惑ってたくせして」
(・∀ ・)「……それは言ったらダメっす」
ヒッキーのツッコミに、苦笑いを浮かべながら頭を掻くマタンキ。
それを見たロマネスクが笑い、ヒッキーとマタンキも笑い出すと、
いつしか六人も笑顔を見せていた。
.
-
−調査班−
一つ目のクエストの調査を終え、主街区の公園の芝生の上でシートとお弁当を広げる四人と一匹。
時間は正午から一つ分針を進めようとしていた。
(*゚ー゚)「お弁当は私とフサギコさんで作ったんですよ」
(,,゚Д゚)「うまそうだぞゴルァ!」
(*゚ー゚)「いっぱい作ってきたので、お二人もしっかり食べてくださいね」
▼・ェ・▼「きゃん!」
(*゚ー゚)「もちろんビーグルちゃんもだよ」
▼*・ェ・▼「キャンキャン!」
重箱の様な入れ物にぎっしりと詰まった美味しそうな食べ物は周囲の目を引き、
羨望の眼差しを感じながらも華麗に受け流しつつ、
四人と一匹は午前中のクエストの反省会をしながら完食をした。
(,,゚Д゚)( ゚∋゚)( ´∀`)「ごちそうさまでした(もな)!」
(*゚ー゚)「お粗末さまでした」
反省会を兼ねた食事は思ったよりも長引き、時計の針は正午から二つ目をさそうとしている。
(,,゚Д゚)「この後はどうするんだゴルァ?」
( ゚∋゚)「少し休憩したら、午前中の反省点を踏まえつつ少し上の階層を調査しようと思う」
( ´∀`)「そうもなね。
ショボンからも時間があったら見てほしい場所をいくつか出されているもなから、
その中から良さそうな所に行くもな」
これからのことを話しつつも、お茶を片手にのんびりと座っている三人。
しぃは広げられていたお弁当箱をしまった後、三人の湯飲みにお茶を注ぎ、
自分の分も用意してから座りなおした。
(*゚ー゚)「でも、足を引っ張らなくてよかったです」
.
-
(,,゚Д゚)「そうだなゴルァ」
( ´∀`)「二人とも充分強いもなよ」
( ゚∋゚)「ああ。ギルドに入った頃とは雲泥の差だろう」
(*゚ー゚)「そうですか?」
褒められて、疑問の言葉で返しつつも嬉しそうにするしぃ。
ギコもまんざらではなさそうだ。
しかし、しぃの顔にすっと影が落ちる。
( ゚∋゚)「どうした?しぃ」
(*゚ー゚)「いえ…。実は、最近ちょっと思うことがあって…」
( ´∀`)「なにもな?」
(*゚ー゚)「……なんで、私たち二人はこのギルドに入れたのかなって」
(,,゚Д゚)「?」
モナーの問い掛けに、少しだけ躊躇した後口を開くしぃ。
そしてその言葉に、ギコが不思議そうな顔をし、
モナーがほんの少しだけ困ったような顔をしてから先を促した
( ´∀`)「どういうこともな?」
(*゚ー゚)「ギコ君を探してほしくてアルゴさんの紹介でVIPの皆さんに依頼して、
助けてもらえて…。ショボンさんからお話をいただいて…ギルドに入れていただいて」
( ´∀`)「そうらしいもなね」
( ゚∋゚)「おれ達はその場にいなかったが、後でショボンに聞いた」
(*゚ー゚)「はい。このギルドに誘ってもらえたのは、本当に感謝しています。
でも、それと同じくらい、不思議で…。
何故、私たちを入れてくれたのか」
( ´∀`)「どういう事もな?」
.
-
(*゚ー゚)「…あの時の私たちは、浅慮で、無鉄砲で、力もなく、知識もなく……」
( ゚∋゚)「しぃ」
(*゚ー゚)「私たちをギルドに入れるメリットなんて、何一つありませんでした」
(,,゚Д゚)「…そうだな…」
( ´∀`)「ギコ」
(*゚ー゚)「そのうえ、私たちはそのことに気付いてもいなかった。
どこかで、攻略組じゃなくても、それほど強くなくても、
この世界を軽く生きていけるような気がしていたんです」
( ゚∋゚)「……」
(*゚ー゚)「ね、ギコ君。そうだったよね。私達」
(,,゚Д゚)「…そうだな。
俺は特に中層くらいなら戦っていける気持ちだった気がする。
今考えると、恥ずかしいぃぞゴラァ」
(*゚ー゚)「私も恥ずかしい。
私たちに足りないのはレベルだけだと思ってた。
スキルレベルの低さだけだと思ってた。
でも、違った。この世界で生きていくのに大事なことは、そんな事じゃないって気付いていなかった」
顔を見合わせ、自嘲するように言葉を紡ぐしぃとギコ。
( ゚∋゚)「今分かっているのなら、それで良いと思う。
おれ達は、死んでいない。ちゃんと生きている」
(*゚ー゚)「……はい。でもそれをわかったのはこのギルドに入って、
皆さんと一緒に戦ったり騒いだり、笑ったりするようになったからです。
言葉じゃなく、身をもって感じることが出来たからです」
( ´∀`)「…それで、何が不思議もな?」
モナーとの問いかけに熱く語っていたしぃの熱が一気に冷め、少し躊躇した後に口を開いた。
.
-
(*゚ー゚)「だから、何故ショボンさんは私たちをギルドに誘ってくれたのかです。
今だってそれほど戦力じゃありません。
私たちが気にせず入れるように嘘までついて」
( ゚∋゚)「ショボンが?嘘を?」
(*゚ー゚)「はい。あの時ショボンさんは
『(´・ω・`)「攻略組とは違うので、戦闘はしなくても構いません。
今ここには来ていませんが、ほとんど戦闘に参加しないギルドメンバーもいます」』
と言いました。でも実際は職業スキルを鍛えていても全員戦闘に出ていました」
( ´∀`)「ふさは、ギルドに入った頃は戦闘はしていなかったもなよ」
(*゚ー゚)「でも私たちが入った頃はされていましたよ。
私たちがショボンさんに助けてもらった時に、
このギルドには戦闘に参加しないメンバーはいませんでした」
再び熱く語るしぃ。
普段の出来るだけ自制しようとする姿勢からはあまり想像できない熱の入り方で、
その様子からも真剣に考えていることを伺えた。
(;゚∋゚)「そうか…、うん、そうだな…」
そんなしぃの勢いに押されるように口ごもるクックル。
しかしその横のモナーは優しいほほえみを浮かべた。
( ´∀`)「ショボンは、嘘はつかないもなよ」
(*゚ー゚)「?」
(,,゚Д゚)「?」
( ´∀`)「つくときは何か理由がある時もなけど、
その時はギルドのメンバーには嘘とわかるように嘘をつくもな。
誘った時、二人は登録されたメンバーじゃなかったけど、
ショボンの中では既にメンバー扱いだったと思うもな。
だから、ショボンは嘘はついていないもな」
(*゚ー゚)「?ど、どういうことですか?」
.
-
( ´∀`)「ショボンが考える『ギルド』と、しぃやギコが今考えている『ギルド』は、違うもなよ」
(*゚ー゚)!
(,,゚Д゚)!
(;゚∋゚)「お、おいモナー」
(*゚ー゚)「そ、それはどういう」
( ´∀`)「そこから先はモナーの口からは言えないもな。
でも、今しぃが言っていた不安や苦しみをちゃんとショボンにぶつければ、
ショボンはちゃんと答えてくれるはずもなよ」
(*゚ー゚)「……答えを教えてもらう……。それで、良いんでしょうか」
( ´∀`)「それは自分で考えるもなよ」
(*゚ー゚)「…はい」
( ´∀`)「でも、これは分かってほしいもな」
(*゚ー゚)「ギコ君も私も、このギルドのメンバーで、
このギルドが大好きで、みんなが大好きで、守っていきたいです。
そしてそれは、ショボンさんはもちろん、モナーさんもクックルさんも、他の皆さんも同じ……。
ですよね?」
( ´∀`)「そうもな、そうもな。それを分かっているなら何も問題ないもな」
(*゚ー゚)「はい!」
(,,゚Д゚)???
(*゚ー゚)「ほら、ギコ君も。帰ったらちゃんと説明するから!」
(,,゚Д゚)「お、おう!とにかく頑張るぞゴルァ!
おれんもしぃはもちろん、みんなが大好きだゴラァ!」
(*゚ー゚)「うん!頑張ろう!」
.
-
立ち上がり、大きく伸びをするしぃ。
それにつられてギコも立ち上がり、両手を天に突くように身体をのばす。
そのまま出発の準備を始めたギコとしぃを見ながら、クックルがモナーに耳打ちした。
( ゚∋゚)「おいモナー。大丈夫なのか?いろいろ言ってしまって」
( ´∀`)「大丈夫もなよ。クックル。
ショボンに口止めはされていないもなし、ショボンがしぃに言ったことが間違ってないのなら、
最初から隠すつもりはないもなよ。きっと。それに……」
( ゚∋゚)「それに?」
( ´∀`)「そろそろ今の状態も変わっていく気がするもな」
( ゚∋゚)「?」
いつもと同じ柔和な笑顔を浮かべながらクックルに返すモナー。
クックルはその答えにほんの少しだけ違和感を感じたが、
打ち消す様に表情を引き締めた。
( ゚∋゚)「!そういえばモナー。
ショボンから来た連絡はなんだったんだ?
動揺していたようだが」
( ´∀`)「…クックルにはばれちゃってたもなね。
大丈夫もな。ちょっと気になったことがあったけど、ショボン達なら大丈夫もな」
( ゚∋゚)「それなら良いが」
( ´∀`)「……今日の夜、またみんなで話すもなよ」
( ゚∋゚)「ああ、分かった」
(,,゚Д゚)「二人とも!こっちは準備できたぞゴルァ!」
(*゚ー゚)「次はどこに行きますか?」
今にも飛び出しそうな勢いの二人にこれからの予定を話しつつ、クックルとモナーも準備を始めた。
.
-
−教育班−
フィールドエリアの戦闘訓練を終えた後、五人は主街区外れの芝生の上で円になって座っていた。
緑色の柔らかい芝が広がっているのだが、念のため下には大き目のシートが拡げられている。
すぐそばは大きな樹があり日陰を作り、彼らを挟んで反対側には外に向かう小道があった。
時間的には外に出ていく者も街に戻ってくる者もいるが、
層自体がそれほど人気のある層ではないため人通りは少ない。
川 ゚ -゚)「反省はこれ位かな」
( ><)「…はい、ありがとうございましたなんです」
(*‘ω‘ *)「…以後気を付けるっぽ…」
( <●><●>)「私たちがまだまだなのはわかってます」
_
( ゚∀゚)「おいおいおまえら、大丈夫か?この後も訓練するんだろ」
クーから突きつけられた注意点にあからさまに気落ちする三人。
しかしその後のクーの言葉で空気が一変する。
川 ゚ -゚)「さて、お待ちかねのランチタイムだ」
( ><)「やったです!」
(*‘ω‘ *)「ビロードはお子様っぽね」
( <●><●>)「お昼くらいで」
( ><)「!二人ともずるいです!」
身体全体で喜びをあらわしたビロードを見て、冷たくあしらう二人。
けれど先ほどまでの意気消沈ぶりから比べると、二人もテンションが上がったのは明らかだ。
( ><)「バーボンハウスの食事が外で食べられるって、昨日楽しそう話してたんです!」
(*‘ω‘ *)「何のことっぽ?」
( <●><●>)「そんな夢を見たのはわかってます」
.
-
( ><)!!!!!
_
( ゚∀゚)「おもしろいな、おまえら」
三人の漫才…というかビロードがからかわれているのを見て思わず言ってしまうジョルジュ。
それを聞いて三者三様の視線でジョルジュを見るが、クーが目の前に紙の袋を置いてくれたので、
一気に意識はそちらに向かった。
川 ゚ -゚)「とりあえずそれをひと袋ずつ。サンドイッチだ。で、これが…」
五人の中央に置かれる大き目の三段重ねの重箱。
もちろん漆塗りではないはずだが、木目の箱に深い味わいの色と光沢を放つその箱は、
日本の伝統工芸を思い起こさせた。
川 ゚ -゚)「本当は段ごとに何を入れるのか決まっているんだがな、今回は気にせずに詰めたそうだ」
クーの説明を聞きながらよだれを飲み込む四人。
クーはそれをまったく気にせずに、重箱を持ち上げた。
四人の目の前に広がる華やかな惣菜。
青野菜のサラダ。その中には赤いトマトの様な野菜が彩りを添える。
その横には茶色いからあげの様な肉料理。
別の場所には焼いた肉と白い野菜、そして緑色のキノコを串で刺して焼いてある物もある。
もちろん魚料理もあり、素揚げした小さな魚を細切りの色とりどりの野菜と共にタレに絡めた料理などが分かる。
( ><)「美味しそうなんです!」
_
( ゚∀゚)「ショボン、気合入ってるな」
先程よりも更に分かりやすく喜びをあらわすビロード。
ぽっぽとワカッテマスは先に興味ないふりをしてしまった手前あまり気にしていないふりをしているが、
思わず呟いたジョルジュの言葉を聞き、ビロードと共に目をキラキラとさせた。
川 ゚ -゚)「こちらの段にはおにぎりも入っているが、さすがに多かった」
( ><)「食べます!」
(*‘ω‘ *)「食べるっぽ!」
( <●><●>)「食べられるのはわかってます!」
川 ゚ -゚)「…ら、別に包んで持って帰ってくれると嬉しいと言われていたんだが、大丈夫のようだな」
_
( ゚∀゚)「こんだけ喜んでもらえるならショボンも本望だろ」
.
-
ちょっと引き気味に三人を見るクーとジョルジュをキラキラとした目で見る三人」
川;゚ -゚)「それじゃあ食べようか」
( ><)「いただきます!」
(*‘ω‘ *)「いただきます!」
( <●><●>)「いただきます!」
ちゃんと両手を合わせて軽くお辞儀をした後、
それぞれに紙袋を開いたり重箱に箸をつける三人。
( ><)「サンドイッチも美味しそうなんです!」
(*‘ω‘ *)「このお肉!すごくジューシーだっぽ!味加減もほんのり塩味で最高だっぽ!」
( <●><●>)「この小魚の和え物はマリネに似ていますね。
ほんのり柑橘系の果実の様な香りと酸味が合わさって食が進むのはわかってます」
川 ゚ -゚)「のど詰まらせるなよ」
大き目のカップに飲み物を注いで三人の前に置くクー。
それぞれに「ありがとうございます」と言いつつも箸と口を動かすのを辞めない三人を見て、
クーもジョルジュも楽しそうな笑顔を見せた。
川 ゚ -゚)「デザートもあるからな、余裕を残しておけよ」
( ><)「はいなんです!」
(*‘ω‘ *)「わかったっぽ!」
( <●><●>)「それも完食するのはわかってます!」
川 ゚ -゚)「ほら、ジョルジュもちゃんと食べろよ」
三人の声を聴きつつジョルジュの前にカップを置くクー。
_
( ゚∀゚)「クーは食べないのか?」
川 ゚ -゚)「私は…」
立ち上がり、小道を挟んだ反対側にある木を睨むクー。
川 ゚ -゚)「客が来たんでな。彼らを頼む」
.
-
_
( ゚∀゚)?
表情を引き締め、木を睨みながら一直線に歩き始めるクー。
川 ゚ -゚)「デザートは共通タブに入れておいた。
それまでには戻るつもりだが、戻らなかったら先に食べていてくれ」
_
( ゚∀゚)「あ、ああ」
顔を見ないで呟いたクーの言葉は食事に夢中になっている三人にも聞こえ、
思わず口を止めて歩いているクーを見た。
その緊迫した雰囲気に、クーの背中をただ見つめる三人。
彼女の向う木の幹に、うっすらと人影が浮かんだのはそのすぐ後だった。
_
( ゚∀゚)「…鼠のアルゴ」
短めの金褐色の巻き毛を持った、頬に髭の様な三本の線をペイントしている女性プレイヤー。
情報屋のアルゴである。
ジョルジュが呟いた『鼠のアルゴ』とは通り名であり、それは頬のペイントに由来した。
(アルゴ)「よ。久しぶりだナ。クー」
川 ゚ -゚)「何の用だ?」
(アルゴ)「ん?ご機嫌斜めカナ?」
川 ゚ -゚)「仕事中なんでね。…私のところに来るなんて、珍しいな」
(アルゴ)「VIPの誰かを探していたんだヨ。…会えたのが君でよかった」
川 ゚ -゚)「?どういうことだ?」
.
-
(アルゴ)「ショボンは作戦中かな」
川 ゚ -゚)「ああ。私達とは一緒ではないが」
(アルゴ)「もしかして、もう57層に行っているのか!?」
川 ゚ -゚)「……ギルドの作戦内容をそうやすやすと喋るわけにはいかないが…」
いつも飄々としていてつかみどころ無いイメージであるアルゴが慌てているようにも見え、
違和感を感じつつもギルドとしての常識を伝えるクー。
(アルゴ)「そんなことを言っている場合じゃないかもしれないゾ」
川 ゚ -゚)「どういう事だ」
何かしらの危機を感じさせるアルゴの表情に、更に警戒するクー。
『この女は情報を手に入れる為なら演技をすることぐらい当たり前だ』
といった思いが頭をよぎり、心の警戒を更に深め、アルゴの動きを観察した。
(アルゴ)「まあでもこれはアフターフォローみたいなもんか。
……ショボンはお得意様だしナ」
川 ゚ -゚)?
アルゴが右手を振ってウインドウを操作すると、クーの目の前にもウインドウが浮かぶ。
川 ゚ -゚)「57層の地図?」
(アルゴ)「広げてみナ」
促され、警戒しつつも広げると、今まさにショボン達が進んでいるであろう場所を含む地図が現れた。
川 ゚ -゚)「これは」
(アルゴ)「ここ数日、ショボンからこの付近のモンスターや宝箱、
採取ポイント等の情報を求められてかなりの量を売った。
で、さっきになってこの情報が入ってきたんダヨ」
ショボン達の目的地である湖のそば、上から見ると90度近い角度で曲がる道のエリアと、
その次の小さな広場のような場所が赤く染められている。
.
-
川 ゚ -゚)「この色の違う場所がどうかしたのか?」
(アルゴ)「どうも、トラップがあるらしいネ」
川 ゚ -゚)「トラップ?」
クーは警戒を忘れたようにアルゴの話を真剣に聞き始めた。
それを感じたのか、逆にアルゴの方は余裕を持ち始めている。
(アルゴ)「まだ確定情報じゃないから本来なら売らないけどさ、
お得意さんにいなくなられるのは辛いからサービスでメッセージ送ったんだけど、
どうもショボンに繋がらないんだヨ。あと、ドクオもネ」
川 ゚ -゚)「そのトラップはどんなものなんだ?」
クーもウインドウを操作し始める。
ショボン宛にメッセージを送るが、届いた形跡がない。
(アルゴ)「クリスタル使用不可領域の形成。モンスターの大量ポップ。
迷宮の中でなら今までもあったトラップだけど、ここにきてフィールドエリアにも…」
川 ゚ -゚)!!
(アルゴ)「その中では外部との連絡は取れない。もしかしたら……」
川 )「……そんな……」
(アルゴ)「もう、行っているんだネ」
表情をなくしたクーを見て、すべてを理解するアルゴ。
川 ゚ -゚)「協力を、感謝する。情報料は」
しかしクーはすぐに表情を引き締め、唇と共に心をきつく律した。
心の中で感嘆の声を上げるアルゴ。
(アルゴ)「これはまだ売れるネタじゃないんでネ。
さっきも言ったけど、アフターサービスでいいサ」
川 ゚ -゚)「分かった。何か分かったら、こちらからも連絡する」
(アルゴ)「……ああ。期待しているよ」
.
-
片手を上げて数回手を握るようなしぐさを見せて会話を終わらせるアルゴ。
しかしその場を動こうとはしない。
川 ゚ -゚)「?どうした?」
(アルゴ)「いや、やはりただってのは不味いな…。
よければ情報料の代わりに一つ、教えてくれないかナ?」
先程とはまた種類の違う真剣な表情を見せるアルゴ。
その顔はクーにとっては初めて見る顔で、
警戒しつつも得体のしれない情報屋の素の一面を見たような気がしていた。
川 ゚ -゚)「なんだ?」
(アルゴ)「ショボンは、何を企んでいる?」
川 ゚ -゚)「は?」
思わずすっとんきょな声を上げてしまう。
(アルゴ)「……サブマスターにも話していないのか」
その反応から、自分の求める答えをクーは知っていないとアルゴは判断したようだ。
川 ゚ -゚)「確かに腹黒だが、ギルド外にまで影響があるようなことはしていないと思うぞ」
クーはそれに気付いていないのか、呆れたように返答する。
(アルゴ)「いや、いい、すまないネ。変なことを聞いて。忘れてくれ」
川 ゚ -゚)「ああ」
再び片手を上げてから踵を返すアルゴ。
しかし三歩程進んでから立ち止まった。
(アルゴ)「……ギルマスが一人でどこかに行くのと、道具屋の動向は注意したほうが良い」
川 ゚ -゚)「は?道具屋って、ブーンの事か?」
(アルゴ)「じゃあナ」
答えずに走り去るアルゴ。
クーはその背中を見送った後一瞬だけ笑い、すぐに表情を引き締め、
彼女と同じように踵を返した後、ゆっくりと仲間のもとに戻った
_
( ゚∀゚)「おい、クー」
.
-
川 ゚ -゚)「ショボン達と連絡が取れない」
_
( ゚∀゚)「!?」
川 ゚ -゚)「おそらくはトラップに引っかかったと思われる。
内容はクリスタル使用不可領域の展開とモンスターの多量ポップ。
アルゴはショボン達の進むルートにそのトラップがある可能性を教えに来てくれた」
_
( ゚∀゚)「…どうする」
ジョルジュに対し、簡潔に状況を伝えたクー。
ジョルジュは一瞬言葉をなくしたがすぐに状況を理解し、
ギルマス不在時のギルドの決定権を持つサブマスターに次の行動の許可を求めた。
『どうする』
彼の言ったその言葉は、すぐにショボンのもとに向かってくれという言葉を期待して出た言葉だった。
そしてクーはその期待を裏切る。
川 ゚ -゚)「『どうする』?私達の今日の仕事は彼らを鍛えることだ。
午後からの予定は40層のフィールドダンジョンでの練習だ」
_
( ゚∀゚)「な!」
想像していなかった言葉に思わず言葉をなくすジョルジュ。
しかしすぐに我に返り、勢いよくクーに詰め寄った。
_
(#゚∀゚)「クー!おまえ本気で言っているのか!?」
川 ゚ -゚)「私達に与えられた仕事は、ショボン達のサポートじゃない。
ここにいる三人に、私達の戦闘を教えて更に強くなってもらうことだ」
_
(#゚∀゚)「ショボン達が死んでも良いって」
川#゚ -゚)「ショボン達が死ぬわけないだろうが!!!!」
_
(;゚∀゚)!
.
-
クーの剣幕に身をすくませるジョルジュ。
どちらかと言えば沈着冷静。
一緒にバカ騒ぎはしてもどこか落ち着いていて100%の感情というよりは
選んだ感情を外に見せているような雰囲気を持つ仲間の初めて見る姿に、
ジョルジュは驚きと共にその強さを再確認した。
そして落ち着いた彼の視界の隅に映る、震える手。
それが自分に対する怒りからくる震えではないことぐらいは、ジョルジュにも分かった。
川#゚ -゚)「おまえはショボン達が死ぬとでもいうのか!!!」
_
( ゚∀゚)「…すまん」
素直に頭を下げるジョルジュ。
納得はしていない。
今すぐにでも仲間のもとに駆け付けたい。
けれど自分よりも仲間の事を『知っている』仲間が止める以上、動くことは出来ない。
_
( ゚∀゚)「……」
それが如実に顔に出ていたのであろう。
クーが口を開いた。
川 ゚ -゚)「…ショボンは保険はかけておくと言っていた。
それならば、これくらいのトラップはもちろん、
考えられるうちの最悪の事態の斜め上のことが起きても対処できる保険のはずだ。
あいつは、そういう男だからな。
おまえも、あいつのそういうところを見てきただろ?
そしてその『保険』の中に『私達が駆けつける』ことは入っていない。
さらいに言うならこの『私達』にはモナーやクックル達も含まれる。
例えおまえやギコが駆けつけようとしても、
私やモナー、クックルが止めることも計算しているはずだ。
逆に私達が行ってしまうことであいつの計算が狂う可能性もある」
_
( ゚∀゚)「そう…だな。ショボンなら、それくらいの計算はしていそうだ」
川 ゚ -゚)「だから私達は、信じて待つしかないんだ……」
お互いの顔を見ながら沈黙してしまう二人。
そしてそんな二人を見ていた三人が、おずおずと声をかけた。
.
-
( <●><●>)「あ、あの…」
川 ゚ -゚)「おお、すまん。ちょっとこちらの話だ。
どれ、デザートも食べ終わったようだな。
それでは出発するか」
(*‘ω‘ *)「今日の訓練はこれで終わりでもいいっぽよ」
( ><)「充分訓練したんです!」
川 ゚ -゚)「それは出来ない相談だ」
( <●><●>)「本当は今すぐ行きたいのはわかってます」
川 ゚ -゚)「そりゃそうだ。仲間の危機かもしれないからな。
だが、私達はその大事な仲間に君たちの訓練を任された。
だから、まずはそれを実行する」
(*‘ω‘ *)「でもっぽ」
_
( ゚∀゚)「大丈夫だ。あいつらは多少の事で倒される奴らじゃねえから」
( ><)「し、心配じゃ…」
川 ゚ -゚)「もちろん」
_
( ゚∀゚)「心配だ」
( <●><●>)「な、なら」
川 ゚ -゚)「だが、それ以上にあいつらを信じているということだ」
(*‘ω‘ *)「信じてるっぽ…?」
川 ゚ -゚)「ああ、もちろん根拠のない信頼じゃない。
今までの経験、彼らの強さ、その知恵を知っているからこそだ」
( ><)「…知っているからこその信頼……」
_
( ゚∀゚)「心配だし、本当ならすぐにでも駆けつけたいぜ。
でも、俺らがいなくってもあいつらなら、切り抜けられると信じることが出来るってことだ」
クーとジョルジュを見る三人。
.
-
先程の二人の話を聞いていて、彼らの仲間に危機が迫っていることは分かった。
どんな危機なのかは想像でしかないが、おそらくは命の危険にかかわること。
けれど、目の前の二人は助けに行かないばかりか笑顔すら見せている。
けれど、クーの右手は震えており、それを隠す様に左手で抑えている。
先程までは無かった眉間のしわが、ジョルジュの顔に浮かんでいる。
自分ならば、すぐにでも駆け出す。
横にいる自分の友も、おそらくはそうする。
けれど、目の前にいる自分達とはレベルの違う強さと経験をもった者達は、ここにとどまっている。
それが自分たちにはない強さだとするのなら、そんなものはいらないと思った。
同時に、その強さがなんなのか知りたいと思った。
( <●><●>)「……強がりなのはワカッテマス」
(*‘ω‘ *)「でも、きっとそれが私たちに欠けているものっぽ」
( ><)「わからないんです。でも、わかりたいんです」
( <●><●>)「だから、早く次の訓練にいきましょう」
川 ゚ -゚)「そうだな」
_
( ゚∀゚)「おし!行くぜ!!」
ジョルジュの掛け声ののち、素早く準備を整え始める五人。
そして数分後には、次の目的地、40層の主街区転移門広場に移動していた。
.
-
-護衛班-
戦闘を終わらせた九人はその場でまずヒットポイントを回復させた。
次のエリアや前のエリアに移動することも考えたが、
エリア移動による新たなモンスターとの戦闘は避けたかったためである。
もちろん自分達の戦闘終了後移動しながら回復薬を飲んでいたVIPの六人は完全回復していたが、
ロマネスク達三人は戦闘後にすぐ飲み始めなかったため、
六人が周囲を警戒する中じっと回復するのを待っていた。
(・∀ ・)「このポーションも、飲んだらすぐ回復すればいいっすよね」
( ФωФ)「そうであるな。飲みながらじわじわ回復するのを待つのはいらいらするのである」
ξ゚⊿゚)ξ「クリスタル使ったら良いじゃない」
(-_-)「……それはちょっと……」
( ^ω^)「クリスタルは高価だからなかなか使えないおね」
( ФωФ)「そうであるな」
( ´_ゝ`)「だが、命には代えられないだろ」
( ФωФ)「どうしてもの時用に一応買って持っているであるが、
幸いなことにそれを使わなければいけないような状態になったことはないのである」
(´<_` )「本当に使わなければいけない時に躊躇しなければいいが」
(・∀ ・)「やっぱ思い切りが必要っすよね」
( ^ω^)「だおだお」
( ФωФ)「だがしかし、物が手に入らないことには…」
( ^ω^)「物自体は定期的に入荷してるから、頑張ってお金を稼ぐと良いお」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね。強いんだし、ギルドマスターならギルドのために釣り以外の事もしないとね」
( ФωФ)「…………」
(-_-)「ロマ、固まっちゃった」
ほのぼのとした笑いがいつしか湧き上がり、笑顔が浮かぶ。
そんな和気藹々とした雰囲気の中、三人のヒットポイントも全回復した。
.
-
(´・ω・`)「さて、それでは出発しましょうか。
再ポップまでまだまだ余裕はある計算ですが、
先程のモンスターの数の様にイレギュラーなことが起きないとも限らないですしね」
ショボンの言葉に、それぞれに声を出して答える八人。
ヒットポイントが完全回復した時点で出発の準備は終わったため、隊列を整えながら歩き始めた。
そしてそれは、中央の大きなカーブを通り過ぎたところで起きた。
(・∀ ・)「宝箱発見!」
(´・ω・`)「え!?」
いきなり走り出したマタンキ。
隊列を外れ、カーブの内側の森の中に突っ込んでいった。
(´・ω・`)「マタンキさん!」
(・∀ ・)「宝箱は空けたもん勝ちって言ってたっすよね!」
(´・ω・`)「ダメです!このエリアに宝箱の情報は!!」
駆け出そうとしたショボンと既にマタンキのすぐ後ろに駆け寄ったブーン。
しかしマタンキは宝箱を開けていた。
(・∀ ・)「とりゃ!」
開けた瞬間、鳴り響く警報音。
赤く染まる空。
【CAUTION】
血の様な深い赤と闇の様に暗い黒に彩られた文字が空と周辺を飛ぶ。
それは時として今自分のいる世界がデジタルの世界だと忘れてしまうほど精巧に出来ている中で、
作り物の世界にいるということを瞬時に実感させ、そして恐怖が心を襲う。
.
-
周囲の森からポップする緑色のゴブリン。
一メートル少しの体躯に緑色の肌。
頭や額には角を持ち、手にはこん棒や剣を構えている。
空には巨大蜂。
先程まで戦っていた蜂よりは小さいが、その羽音は耳障りで、警報音と共に心をざわめかせる。
森の奥からは体長二メートルを超えたゴーレム。
横幅もその身体を支えるにふさわしい大きさで、緑色のゴーレムはこん棒を、
茶色いゴーレムは体長より長い棍を、青いゴーレムは剣を持っていた。
鳴り響く警報に反応するかのようにポップし続けるモンスター達。
その中心にあるのは宝箱であり、
開けたマタンキはまるで呆けたように周囲を見つつ動かずにいる。
その影に気付いたのは三人。
警報が鳴った瞬間にエリアの出口付近から走り始めた黒い影。
その影が進みたい道を瞬時に判断し、まず動いたのがその三人だった。
( ・∀・)「とりゃ!!」
モララーの爪がゴブリンを切り裂き、数度の攻撃でポリゴンに変える。
( ´_ゝ`)「ふん!!」
兄者の鎚は数体のゴーレムを後退させる。
更に放たれた剣技による衝撃波はゴブリン達を巻き込んで吹き飛ばし、道を作った。
(´・ω・`)「解除を頼むドクオ!ブーン!出口の確認を!」
唯一その影の正体を正確に理解していたショボンの投げたナイフと針は蜂の動きを止める。
一撃で倒すほどの力はないものの、麻痺属性のナイフと毒属性の針の二重攻撃により、
ヒットポイントを減らしつつ動きを封じていった。
そうしてできた道を通り抜けた黒い影。
そして逆方向に青い風が吹き抜けた。
.
-
黒い影はショボンが呼んだその名を持つギルドVIP一のソロプレイヤー属性を持つ男。
ドクオが宝箱のそばに駆け寄った。
('A`)「罠レベルが高い。…おれでもぎりぎりか」
マタンキを押しのけて宝箱の正面に立ち、ウインドウを出して操作すると警報が鳴り止む。
('A`)「解除完了!全部倒すぞ!」
地面に座り込んでいたマタンキの首根っこを掴んだドクオが仲間のもとに走り出す。
自分より体の大きい男を半分引きずる様に連れて移動したドクオ。
その頃には既に陣形を整えており、ロマネスク達三人を中心に置いて、
周囲から押し寄せるモンスターに対抗していた。
ξ゚⊿゚)ξ「一匹一匹がそれほど強くはないのが救いね」
( ・∀・)「油断は禁物だぞ、おい」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたに言われなくても分かってるわよ」
( ^ω^)「ダメだったお。やっぱり出られない」
出口を偵察してきたブーンが戻ってきた。
ドクオがトラップを解除したことにより警報は鳴り止んだものの空は赤いままであり、
どうやらこのエリアは周囲から隔離されてしまったようである。
(´・ω・`)「トラップの発動による空間の閉鎖。
おそらくポップした敵を全部倒すか、僕達が全員死なない限り解除はされない」
('A`)「さらっと不吉なことを言うよな」
(´・ω・`)「現実は現実として認識しておかないとね」
(´<_` )「相変わらず冷静だなおい」
( ´_ゝ`)「おれ達も人の事は言えないだろ」
( ´_ゝ`)「おれ達は流石だからな!」(´<_` )
.
-
軽口を叩きながらも敵を倒していく七人。
(´・ω・`)「とりあえず出口側に向かおう」
ショボンの一声で、ロマネスク達三人を守って戦っていた七人が隊形を変える。
出口に向かって先頭にブーンとツン。
進むべき道の正面にいる敵に攻撃を加える。
ブーンの機動性を生かしてはいないが、
二人のコンビネーションによる隙のない連続戦闘は確実に敵を倒しポリゴンに変えていく。
その後ろにドクオとモララー。
前の二人の視界から外れた敵を外側に排除し、
斜め前を含めた横からの攻撃を流し反撃しつつ前に進む。
倒しつつも深追いはせず、こじ開けられた道を広げることに意識を向け、
まずは移動することを優先していた。
その後ろに守るべき三人を連れ、しんがりを務めるのは兄者と弟者。
この二人の役割は倒すことではなく、近寄らせないこと。
広範囲の強い攻撃を放つことで敵を寄せ付けず、
更に互いの攻撃を的確に繋げることにより空白の時間をなくした。
コンビネーションということで言えば先頭の二人に劣らないのだが、
今回は敵の種類と仲間の特性を考えて一番後ろにいる。
そしてショボンは全方位に目を配っている。
全員の視界の死角。
放った攻撃の間隙。
その空白を狙ったモンスターの攻撃、いや動きに牽制の針を飛ばしている。
その攻撃は敵の攻撃を瞬間止めるだけだが、今仲間を守るにはそれで充分であった。
動きを止めたモンスターを追撃し、倒し、止め、
退けるのはそのモンスターの一番そばにいる仲間の役目なのだから。
全員が持てる力を存分に使い、出口の位置まで移動をした。
(´・ω・`)「よし!殲滅しよう!」
移動を終わらせ、ツン、ブーン、モララー、ドクオが振り向いた瞬間に飛ぶショボンの指示。
.
-
走り出すブーンとツン。
ドクオが続き、モララーがショボンに駆け寄る。
( ´_ゝ`)「景気づけの!」
(´<_` )「一発!」
放たれる二つの大技。
兄者の鎚は上下の衝撃。
ジャンプして放たれたそれはゴーレムの脳天を叩きながら大地を叩きつける。
その衝撃波は、下から上に向かう波動となって放射線状に広がって敵の動きを止めた。
弟者の持つ斧の攻撃は右から左。
横に並んだ二匹のゴーレムを切り裂き、そのまま後方にも斬撃が飛んだ。
そしてそのまま左から右への一撃。
少しだけ斜めに、空に向かって放たれた斬撃は二匹のゴーレムをポリゴンに変え、
後ろにいたゴブリンと蜂を後方にノックバックさせる。
兄弟の作った敵のいない空間に躍り出るブーン達三人。
二人の攻撃で動きを止めヒットポイントも減らした敵を追撃するブーンの剣。
風のように縦横無尽に敵陣の中を舞い、切り裂き、ポリゴンに変えていく。
ツンの動きは閃。
細剣を構え、隙を見逃さずに鋭い攻撃を与える。
正確性を上げた武器と己の能力値は、敵のヒットポイントを確実に減らした。
そしてドクオの動きは陰。
敵の死角と懐に忍び込み、武器を振るう。
必ず二回以上剣を振り、ソードスキルを使わずとも敵のヒットポイントを大きく削る。
そしてツンとドクオの攻撃によりヒットポイントを減らした敵は、ブーンという名の風の攻撃により、
ポリゴンへと変わっていった。
大技を放って三人の動くスペースを作った流石兄弟も、その後ろから敵を倒している。
特にゴーレムは動きは緩慢だが攻撃能力が高く、ヒットポイントもゴブリンや蜂よりは多い。
そのため三人の攻撃を潜り抜けてやってくる敵も多い。
というよりは、そこに二人がいることを分かっている三人が、あえて流していた。
.
-
(´<_` )「信頼してくれるのは嬉しいがな」
( ´_ゝ`)「もっとそっちで倒していいぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「遠慮しなくていいわよ!」
('A`)「働け」
( ^ω^)「おっおっ。そいつらは頼んだお!」
ここにきて無駄口をきく余裕も出てきたのか、会話も増えていた。
( ・∀・)「まったくこいつらは」
モララーは自分の背中側にいるロマネスク達三人に意識を向けつつも、
五人の攻撃を潜り抜けてやってくる蜂とゴブリンを退治していた。
その動きは無駄が無く、敵の動きに合わせて身体を動かし、
躱しながら反撃し、交わしつつ抑え、敵を倒していった。
ショボンは武器を持ち替え、円盤型の武器を縦横無尽に飛ばしている。
周囲の敵は仲間に任せ、道の広さと位置取りの関係で近寄れないでいる敵に攻撃をしていた。
それはすぐには結果の見えない行動だったが、徐々に効果を見せ始めた。
( ^ω^)「おっおっ。最初からヒットポイントが減ってるから楽だお」
ξ゚⊿゚)ξ「ゴーレム以外はこっちにも回しなさいよ」
(´<_` )「いや、だからゴーレムもそっちで片付けてくれよ」
戦闘が長時間にも及ぶと、どうしても集中力が切れてミスが生まれる。
十回攻撃を当てれば倒せる敵に対して二回ミスをすれば、
その分相手に攻撃をするタイミングを与えてしまい、それだけ自分や仲間が死ぬ確率が高くなる。
ならば、十回で倒せる敵を九回で倒せるようにしてしまえばよい。
更に八回、七回にしてしまえばよい。
それを可能にしたのがショボンの攻撃であり、
前線で戦うメンバーはそれを分かっているからできる戦い方を行っていた。
.
-
敵のヒットポイント総量と現在のバーのカラーと幅から現時点でのヒットポイント量を推測し、
自分の攻撃によって削ることの出来る量を考えながら戦う。
敵との一対一での戦闘では誰もが行うことだが、その精度には個人によって雲泥の差がある。
更に周囲の敵と仲間の位置も確認して技を放つ。
集団戦、特にこういった乱戦状態では難しいことなのだが、
VIPの面子はそれを一見、事も無げに行っていた。
罠が発動してから今まで守られることしかできなかったロマネスク達三人も我を取り戻し、
武器を構えなんとか戦おうとするが彼らの戦い方を目の当たりにして二の足を踏んでいる。
(´・ω・`)「我々で何とかしますので後ろにいてください。
万が一そちらに流れた場合は声を駆けますのでよろしくお願いします」
ショボンの指示は口調は穏やかだが有無を言わさない力強さがあり、
三人はただ見守ることだけしかできなかった。
(´・ω・`)「右前前方のゴーレムの後ろに蜂二匹!」
六人が先頭に関係ない『会話』をしているのに対し、
ショボンは戦闘に関わる『指示』のみを口にする。
一体の強敵と相対した時やある程度統制のとれた敵集団を撃破する時の指示とは違うが、
それは要所要所で注意点や方向性の指示を出していた。
それはまるでショボンという司令塔のもとに他のメンバーが動くだけの様にさえ見える。
( ・∀・)「(……なるほどね)」
('A`)「(ハァ…マッタクアイツハ)」
普段と同じであり普段と全く違うその指示に、とりあえず前の敵を倒すことに集中するメンバー。
その戦いは30分を超えようとしているが、まだ終わりは見えていなかった。
.
-
-調査班-
モナーにメッセージが届いたとき、彼らはフィールドダンジョンの最深部で採取をしていた。
( ゚∋゚)「ショボンから渡されたデータよりも、収穫数が少ないな」
(*゚ー゚)「そうですね。代わりに載っていないアイテムが取れたりしてますけど」
(,,゚Д゚)「これ、おれのレベルじゃ判別できないから頼むぞゴルァ」
小ボスレベルの敵を危なげなく粉砕した後の広場。
円形に広がる芝生の周囲、大きな樹の根元にうすぼんやりと光る場所があり、
探索をするとアイテムがポップした。
( ゚∋゚)「敵の強さは変更が無かったが、獲得アイテムには変更があるな」
( ´∀`)「敵の強さも上がってたもなよ」
後ろから屈むように覗き込んできたモナーが声をかける。
足元ではビーグルがマントの裾と戯れていた。
(,,゚Д゚)「そうなのか!」
( ´∀`)「今確認したもなけど、リストに載ってる倒した敵の最大レベルが上がってたもな。
といっても1レベルもなけど、情報屋さんのリストに載っているレベルよりも大きいもなからね」
( ゚∋゚)「そうだったか」
(*゚ー゚)「でも、それほど強敵ではなかったですよね」
( ´∀`)「みんなが強くなったからそう感じただけもなよ」
(,,゚Д゚)「まだまだだぞゴルァ」
( ´∀`)「油断しないことは良いこともなけど、自分の今の強さを過不足なく判断するのも大事もなよ。
自分でするのが難しいなら、周りの意見を聞くのが大事もな」
(,,゚Д゚)「そうか。じゃあしぃ、おれの強さを教えてくれ」
.
-
(*゚ー゚)「…………ダメ出しになっちゃうから帰ってからね」
(,,゚Д゚)「…………お手柔らかに頼むぞゴルァ」
張り詰めた中にも穏やかな空気を纏って採取を続ける二人。
モナーは周囲の警戒に戻り、クックルがその横に立った。
( ゚∋゚)「モナー。このあとなんだが……」
( ´∀`)「今日はこれくらいで一度ホームに戻るのを提案するもな」
( ゚∋゚)「?まだ午後も早いし、このレベルならもう一つくらいクエストを」
( ´∀`)「今さっきクーからメッセージが届いたもな。
ショボン達がクリスタル無効及びモンスターポップの罠にかかったと思われるもな」
( ゚∋゚)「なんだと!」
あくまでも穏やかなモナー。
しかしその内容に思わず声を荒げたクックル。
しぃとギコも採取を終了していたため後ろに立っており、その会話を聞いていた。
(*゚ー゚)「も、モナーさん」
(,,゚Д゚)「どういう事だゴルァ!」
( ´∀`)「どうもこうもそのままもなよ。
さっき情報屋のアルゴさんからクーに連絡が入ったそうもな。
それによればショボン達が進んでいる予定のルートに詳細不明のトラップがある可能性があるらしいもな。
クーがショボンにメッセージを送ったけど届いた形跡もなく、
位置情報もロスとしているそうもな。
モナも確認してみたもなけど、同じく位置を確認できなかったもな」
(,,゚Д゚)「す、すぐに」
( ゚∋゚)「ああ。ホームへ戻ろう」
(*゚ー゚)「え?行かないんですか」
.
-
( ´∀`)「今モナ達が行っても、何の役にも立たないもなよ。
罠が発動したと思われる場所にたどり着くときにはすべてが終わってるもな。
もしくは、モナ達も罠にかかって……。終わりかもしれないもなね」
表情を強張らせたギコとしぃ。
しぃの顔色は青ざめている。
対してモナーとクックルは落ち着いており、クックルはさすがにいつもよりも厳しい表情をしているが、
モナーはあくまでも穏やかだった。
しかしその言葉は辛辣であり、ギコとしぃに自分の無力さを確認させたものだった。
(*゚ー゚)「で、でも…」
( ゚∋゚)「いつでも動けるようにホームで待機するのが一番だ。
ギコ、ブーンの店の手伝いをした時に道具屋の倉庫のマスター設定を貰っているだろ?」
(,,゚Д゚)「!あ、ああ。貰ってるぞゴルァ」
( ゚∋゚)「しぃ、ツンとショボンの」
(*゚ー゚)「はい!貰ってます!お店の食材庫と衣服の倉庫ですよね。
ふささんのお店の方も大丈夫です。
あと、兄者さんと弟者さんに武器・防具庫のマスターも。ギコ君は」
(,,゚Д゚)「!モララーの店も手伝った時に倉庫使ったぞゴルァ!」
( ゚∋゚)「ギコには牧場と農場のマスターも使えるようにしてある。
二人がいれば、ギルドの倉庫の中の物は全部出し入れ自由だ。
これは重要な役目だからな」
(*゚ー゚)「はい!」
(,,゚Д゚)「ゴルァ!」
( ´∀`)「それじゃあ戻るもな」
腰に付けた革のポーチから転移結晶を出すモナー。
それを見てギコとしぃも結晶を手にした。
.
-
( ゚∋゚)「よし、帰るぞ」
(*゚ー゚)「はい!」
(,,゚Д゚)「ゴラァ!」
クックル、ギコ、しぃの順に転移結晶を使ってその場から消えていく。
▼・ェ・▼「くぅん…」
( ´∀`)「心配もな?モナも心配もな」
不安げに自分の足にすり寄るビーグルを抱きかかえるモナー。
少しだけ強く抱きしめてしまいビーグルが体を震わせる。
( ´∀`)「あいつのこともあるもなから、何事も無ければ良いもなけど……。
でも、ショボン達なら大丈夫もな。ドクオとフサもそばにいるもなしね」
ビーグルのわきを両手で支えて空に掲げるモナー。
▼*・ェ・▼「きゃん!」
嬉しそうにビーグルが鳴く。
( ´∀`)「ビーグルもそう思うもなね!
よし!モナー達も帰るもな!」
クリスタルが壊れ、モナー達も自分たちのホームのある街へと飛んだ。
.
-
-護衛班-
戦闘が一時間を超えた頃、やっと終わりが見え始めた。
(´・ω・`)「よし、残りゴブ5!蜂7!ゴレ4!ブーンと僕は蜂に専念するよ!他は継続で!」
( ^ω^)ξ゚⊿゚)ξ( ´_ゝ`)( ・∀・)
「了解!」
('A`)(´<_` )
ゴーレムや木々の後ろに隠れながら攻撃を始めた蜂に対してはショボンとブーンが担当し、
それ以外の向ってくる敵を他のメンバーで抑える。
その流れは今までと同じで、兄者と弟者が大技で敵のヒットポイントを削りつつ動きを封じ、
ドクオとツンが速攻をかけての撃破が基本の形だった。
モララーもそのラインから外れてやってくる敵に対応していた。
七人の顔には疲れが浮かんでいるが、それでも見えた終わりを感じて精一杯の戦闘を行っていた。
そして十数分後。
('A`)「ラスト!」
数が少なくなり、周囲の空間が空いて動きの良くなった敵に苦戦したものの、
最後のゴブリンの胴体をドクオの片手剣が切り裂いた。
そして耳障りな叫び声を上げながらポリゴンへと変わると、ブザーが鳴る。
.
-
(´・ω・`)「……トラップクリア……かな」
周囲に敵がいなくなってもそれぞれに武器を構えていたメンバー達。
しかし空が元の青空に戻り、ショボンの呟きを聞いて構えを解いた。
(;^ω^)「終わったのかお」
ξ;゚⊿゚)ξ「空も元に戻ったしね」
(´<_`;)「流石に疲れたな」
(;´_ゝ`)「流石なおれたちも流石にな」
('A`;)「…まだそんなことを言う余裕があるじゃねぇか」
一番先に飛び出して蜂を倒し続けていた剣を杖の様にしながらブーンが膝をつき、
そこにツンが駆け寄る。
そこに集まる様に動き出すメンバー達。
満身創痍でヒットポイントも全員イエロー、それももうすぐレッドになろうとする位置まで減っていた。
前の五人が動き出したのを見てから、同じように回復ポーションを口にしたショボンも歩き始める。
その背中に、剣技によって赤く光り輝いた剣が振り下ろされた。
第十一話 終
第十二話 錯走 に続く
.
-
乙
すげー躍動感だった
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ですよねー!続きが気になる終わり方しやがって!乙!!
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キタ━(゚∀゚)━!
支援です
-
以上、本日の投下終了です。
少し短くなりましたが、何とか三月中に投下となりました。
いつも乙とか応援とか、本当にありがとうございます。
次回は今回の連続話を一区切りさせる話になる予定です。
4月中にできればと思っておりますが、10日にSAOの新刊がでるのでもしかすると少し遅れるかもです。
それではまたよろしくお願いします。
ではではまた。
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乙
-
乙
ドクオの側にずっといるハイン可愛い
つまりドクオ爆散しろ
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ナーブギア
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おつ
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ω・)乙。モララーのイラつきはマタンキにたいしてだったのかな…。あるいは?
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ショボンを切りつけたのはマタンキなんじゃなかろうかと予測している
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ショボンかわすよな?な?
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4人が注視してる前でハイド出来るって相当じゃないですか?
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コンビメーション
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