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ミニラノベ祭りのようです
191
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 19:45:35 ID:arWQCkK60
以上になります
明日までにもう一本書けるかな〜
192
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 19:49:17 ID:xTrj54dE0
おつ
これからもドクオの受難は続くのか……
193
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 19:49:59 ID:arcjc3/s0
乙乙
腹いてえwwwwww
194
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 19:59:22 ID:U/S4YvTM0
乙www
ちくわ大明神がここまで広がるとは
195
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 20:14:37 ID:HQCmBs2IO
投下しマウス
196
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 20:15:55 ID:JzuOaAKk0
支援
197
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 20:17:00 ID:HQCmBs2IO
街の至るところに工場が偏在する。
ロボットが街を闊歩する。
人造人間も数知れず。
それが、機械に支配された街、ニューソクだ。
( ´_ゝ`)ガラクタの街のようです
http://vippic.mine.nu/up/img/vp102080.jpg
198
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 20:18:32 ID:HQCmBs2IO
ここ数年、機械化が急速に進んだニューソクでは、
大抵のものは機械で賄われるようになったせいか、
次第に人間の居場所が無くなっていった。
ふいに、轟音が鳴り響き、建物の一角が爆発した。
爆風ともに、一人の男が転がってきた。
( ´_ゝ`)「いちち……ったくもー」
おどけた風に、男は呟く。
この男、ぱっと見普通の人間だが、
右手右足が改造され、ところどころ配線がはみ出ている。
この街で改造された人間だ。
( ´_ゝ`)「なーんで俺なのかねぇ」
男は、自分が飛ばされてきた方向を見据えながら、肩を竦めた。
199
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 20:19:18 ID:HQCmBs2IO
瓦礫の中から、ロボットが現れる。
人型で、男よりも少し大きい。
( ´_ゝ`)「どうして俺を狙うんだ」
男はロボットに問い掛ける。
「……」
ロボットは答えない。
( ´_ゝ`)「だんまりか。ま、当たり前だわな」
男はロボットに届くくらいの声で呟き、更にまた、口を開くが、
それが声にならないうちに、ロボットが男に飛び掛かった。
( ;´_ゝ`)「うおっ」
突き出された右手を間一髪でかわす。
ロボットは、男の後ろの壁に右手ごと突っ込んでいった。
( ;´_ゝ`)「あっぶね」
後ろ姿のロボットを見ながら、男は考える。
今の力任せのパンチを見るに、恐らく細かい動きは出来ないだろう。
それならば。
200
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 20:20:26 ID:HQCmBs2IO
ロボットが再び男に向き直り、パンチの構えをとり、駆け出した。
( ´_ゝ`)「人の話は、」
向かってくる右腕を受け流し、強く踏み込む。
( #´_ゝ`)「最後まで聞くもんだ!!」
機械の右手で、鳩尾部分を穿つ。
が、思ったより装甲が固い。
ダメージは通ってないようだ。
( ;´_ゝ`)「うおぉ!?」
引っ込めることを忘れた右腕を掴まれ、振り回される。
( ;´_ゝ`)「おわあああああああああ!?」
そしてそのまま、すぐそばの工場に投げつけられ、
男は壁にたたき付けられた。
外壁は崩れ、男に瓦礫が降り注ぐ。
201
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 20:21:54 ID:HQCmBs2IO
( ;´_ゝ`)「いってぇ……今のは効いたわ……」
数十秒後、瓦礫を押しのけ、男が姿を現した。
右足の部品はところどころ外れており、
右手は配線が切れている部分がある。
男は、右手、右足の順に少し動かした。
ちゃんと動作するか、チェックをする。
( ´_ゝ`)「……ん、まだ大丈夫だな」
男が再び身構える。
( ´_ゝ`)「……お。いいもんあるじゃん」
しかし、すぐに意識が他のものに向けられた。
男は、地面を見る。
そこには、工具と部品が一つずつあり、男は両方拾いあげた。
( ´_ゝ`)「さて、ラウンド2といきますか」
機械の右手には顔くらいの大きさの歯車。
生身の左手にはチェーンソー。
両手に持って、再度構えた。
202
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 20:23:28 ID:HQCmBs2IO
先に動いたのは男だ。
チェーンソーを振りかざし、駆ける。
あまりにあからさまな特効過ぎた故、ロボットは攻撃を避けようと、体を動かした。
ロボットが足を浮かせた瞬間、
( #´_ゝ`)「せやああああああ!」
右手の歯車をフリスビーのように投擲し、同時にロボットに突撃した。
歯車が直撃したロボットは、バランスを崩す。
追い打ちをかけるように男がタックルをかまし、男がロボットに覆いかぶさるように倒れ込んだ。
チェーンソーを右手に持ち替え、電源を入れた。
そして、刃が回転し始めたチェーンソーを、ロボットの首元に押し付ける。
金属が擦れあう、不快な音が響いた。
( ;´_ゝ`)「うぐ……」
ロボットの抵抗も激しいが、男は耐える。
203
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 20:24:18 ID:arWQCkK60
支援といこう
204
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 20:24:46 ID:HQCmBs2IO
しばらく当てつづけると、首元の金属が赤く光り始めた。
摩擦熱により、高熱を持ったのだ。
( ;´_ゝ`)「!!」
今が好機。
そう思った男は、チェーンソーの電源を切り、左手に持ち替える。
そして、赤熱した部分を右手でえぐる。
思ったよりも金属は薄く、すぐに内部の配線が隙間から姿を現した。
( #´_ゝ`)「くたばれっ!!」
作った隙間にチェーンソーを深く突き刺す。
そして再び、電源を入れた。
刃が回りだす。
さっきよりも甲高い音。
ロボットの抵抗も更に激しくなった。
が、男は既にロボットの上にはいなかった。
数メートルほど離れたところで、跳ね回るロボットを見ていた。
205
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 20:25:53 ID:HQCmBs2IO
しばらくロボットはのたうち回っていたが、
やがて、その動きを止めた。
完全に止まったことを確認して、男は近寄り、チェーンソーの電源を切った。
男は、ふと右手を見た。
( ´_ゝ`)「うげ」
指先が溶けてしまっている。
赤熱した金属を長時間触ってしまったせいだろう。
( ´_ゝ`)「修理してもらわないとな。まーたハカセに怒られるな」
そう呟きながら、ロボットに向き直る。
( ´_ゝ`)「言っておくが」
そして、口を開いた。
( ´_ゝ`)「この街では、俺は最弱なんで。本当に。だから――」
206
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 20:26:52 ID:HQCmBs2IO
――俺達が簡単にやられると思うな。
動かなくなったガラクタの塊に向けて、そう啖呵を切った。
男はそのガラクタから背を向け、空気の淀んだ街の中心に歩きだした。
( ´_ゝ`)ガラクタの街のようです
Fin.
207
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 20:28:24 ID:HQCmBs2IO
おわりー
支援ありがとでした
もひとつ書き溜めてくるぜぃ
208
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 20:33:42 ID:arWQCkK60
乙!
209
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 21:07:15 ID:JzuOaAKk0
落ちる兄者の絵を描いたものです
>>56
さん
>>75
さん、ほんとありがとうございました!
>>56
スカートから覗く神秘、のようです
http://i.imgur.com/lhTP4.jpg
>>75
ζ(゚ー゚*ζ傍にいるようです( ´_ゝ`)
一応グロ注意
http://i.imgur.com/fOaqM.jpg
210
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 21:08:36 ID:iyblDBwI0
乙乙 バトルかっこいいぜ
211
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 21:15:04 ID:iyblDBwI0
よし、こっちも投下行きます
212
:
(,,゚Д゚)春をさがすようです
:2012/12/18(火) 21:16:52 ID:iyblDBwI0
むかしむかしというほど、むかしではない時。
あるところに女の子と、猫がいました。
ξ゚⊿゚)ξ「どうしたの? いじめられたの?」
(;д;,,)ニヤー
二人が出会ったのは、まだほんの小さな時。
女の子は泣いていた猫に、名前と、赤い首輪と、暖かいお家をくれました。
ξ゚⊿゚)ξ「ほら、きょうからあんたはうちのこよ」
(・д・*,) …
女の子の名前はツン。猫の名前はギコ。
二人はいつも一緒で、一番の仲良しでした。
.
213
:
(,,゚Д゚)春をさがすようです
:2012/12/18(火) 21:18:08 ID:iyblDBwI0
ξ*゚⊿゚)ξ「ひっさーつ、猫じゃらし!」
(,,゚Д゚)+
それはツンが学校にあがっても。
ギコが人間の言葉を覚えるくらい大きくなっても、ずっと変わりませんでした。
ξ*゚⊿゚)ξ「ほらギコ見て、これ家庭科の授業でつくったの!」
(,,*゚Д゚)「ふくろ! 入っていい? ペシペシしていい?」
ξ;゚⊿゚)ξ「あー! ダメにしちゃった。いいわ、それギコにあげる」
ギコの言葉はツンには通じません。
それでも、ツンとギコはたくさんのおしゃべりをして遊びました。
ξ゚⊿゚)ξ「ギコ、今日はねブーンといっしょに遊んだのよ」
(,,゚Д゚)「よかったな!」
ξ*゚⊿゚)ξ「ギコ、今日はねぇ……」
.
214
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 21:18:12 ID:arWQCkK60
しえ・・・ん?
215
:
(,,゚Д゚)春をさがすようです
:2012/12/18(火) 21:19:31 ID:iyblDBwI0
...(,,゚Д゚)
ξ゚⊿゚)ξ「……パパ、本当に行っちゃうの?」
( ´∀`)「そうモナ」
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
(;´∀`)「ほらほら、そんな顔しちゃだめモナ。
そう、春になれば! 春になれば、ちゃんとパパは帰ってくるモナ」
ξ゚⊿゚)ξ「まだ、秋だよ」
( ´∀`)「だから、それまで頑張れるモナ?」
ξ ⊿ )ξ「……うん」
ξ;⊿;)ξ「ばいばい、パパ」
....(,,゚Д゚) ?
.
216
:
(,,゚Д゚)春をさがすようです
:2012/12/18(火) 21:20:35 ID:iyblDBwI0
だけどもある日から、ツンの元気がなくなってしまいました。
いつものようにギコと遊んだり、お話をしてくれることもなくなりました。
(,,*゚Д゚)「ツン、遊べ!」
ξ ⊿ )ξ「……」
(,,;゚Д゚)「ツン、ツンー」
ギコがいくら話しても、ツンはしょんぼりとしたまま。ずっと悲しそうな顔をしています。
お家のなかもなんだか、いつもよりもしんとしているようです。
ξ゚⊿゚)ξ「……春、か」
(,,゚Д゚) !
ξ゚⊿゚)ξ「春になれば、……か」
(,,*゚Д゚)「ツン! 遊ぶか! 遊ぶのか?!」
毎日のようにツンは「春になれば」と、言います。
それから、窓の外を見るとため息を一つつくのです。
ギコはツンの悲しそうな顔を見るたびに、しょんぼりとしてしまいました。
.
217
:
(,,゚Д゚)春をさがすようです
:2012/12/18(火) 21:21:28 ID:iyblDBwI0
(,,-Д-)
そんな日々が続いたある日、ギコはあることに気づきました。
ツンがしょんぼりしているのはきっと春じゃないからだ、そう思ったのです。
(,,゚Д゚)「――よしっ、春になればいいんだな!」
ギコは、ツンが昔つくってくれた袋を口にくわえました。
そして、お家の扉をカリカリとひっかきました。
ξ゚⊿゚)ξ「ギコ、どうしたの?」
(,,#゚Д゚)「春ー! どこだぁぁぁ!!!」
ξ;゚⊿゚)ξ「え、何? どうしたの?」
(,,゚Д゚)「外、出るぞ!」
ギコは扉をひっかくのをやめません。
ずっと扉をひっかくギコに、ツンは小さくため息をつきました。
ξ゚⊿゚)ξ「ちゃんと、帰ってくるのよ?」
.
218
:
(,,゚Д゚)春をさがすようです
:2012/12/18(火) 21:22:36 ID:iyblDBwI0
(,,*゚Д゚)「行くぞ、ゴルァ」
青色の毛並みをフサフサと揺らして、ギコはツンのあけた扉から外に出ました。
トンっと塀の上に上り、屋根をひょいっと上り、テクテクと歩いていきます。
(,,*゚Д゚)「どこだー、春!」
(゚、゚;トソン「誰っ!?」
ギコがひらひらとした白いカーテンに興奮して飛びつくと、そこには毛皮を脱いだ女の人がいました。
人間には毛皮がありません。だから、本当は服を脱いでいるだけなのですが、ギコにはそんなことはわかりません。
(゚、゚トソン「何だ、猫さんですか」
(,,゚Д゚)「春、知らないか!」
(゚、゚*トソン「おいでー、猫さんー。こんなところで、どうしたのー?」
女の人はいきなり現れたギコにビックリしましたが、にっこりと笑いました。
着替え中の服はそのままで、窓際にあらわれたギコの元へやってきました。
.
219
:
(,,゚Д゚)春をさがすようです
:2012/12/18(火) 21:23:26 ID:iyblDBwI0
(,,゚Д゚)「春にしたいんだ! どうすればいい?」
ギコは女の人にたずねました。
でも、ギコの声は女の人にはニャオニャオとしか聞こえません。
クシュン (>、<トソン
(゚、゚;トソン「……風邪?」
(,,*゚Д゚)「風だな! ありがと!」
窓の向こうからやってくる冷たい風に、女の人はくしゃみを一つ。
風邪かなと思い顔を上げた時には、ギコはひらりと窓の外へと跳んでいました。
(゚、゚;トソン「あーあ、行っちゃいましたか」
白いカーテン、小さな鉢植え、お気に入りの置物。
女の人がどれだけ見渡してもそこにはもう、ギコの姿は見えませんでした。
.
220
:
(,,゚Д゚)春をさがすようです
:2012/12/18(火) 21:24:10 ID:iyblDBwI0
(,,゚Д゚)「風! 風! 風があればいいんだな!」
塀をぴょんぴょんと跳び下りながら、ギコは走ります。
人ではなかなか入れない道を通り、猫にしか見えない道を通り、ギコは春のあるほうへと進みます。
(,,゚Д゚)「どーこーだー」
今にも人が落ちそうな、高いビルを通り。
なんだかよくわからない生き物と、機械の人のそばを通り。
難しい顔をした二人の男がいるテーブルの下を通り。
変なポーズを決めたおじさんの横を通ります。
(,,-Д-) ぐぅ
疲れたら休んで、水を飲みます。
目が覚めたらすぐに出発。ぐうぐうとお腹がすけば、ご飯を探します。
川*゚ 々゚)「ぬこー、ぬこー」
ご飯が落ちていないかなぁと思いながら、道を歩いていたギコは箱に入った女の子を見つけました。
でも、春でもご飯でもツンでもないので、ギコはがっかりしました。
.
221
:
(,,゚Д゚)春をさがすようです
:2012/12/18(火) 21:25:21 ID:iyblDBwI0
o川*゚ 々゚)o「くるうのおうちはいるですか?」
(,,゚Д゚)「やだ」
がっかりしているギコに、箱のなかの女の子は言いました。
そして、ギコの返事を聞くと、女の子は首をかしげて、また言いました。
川 ゚ 々゚)「くるうぬこすきです」
(,,゚Д゚)「オレはメシのほうが好きだ!
でも、ツンのほうがもっと好きだ!」
ギコの返事に女の子はんーとうなると、箱のなかをごそごそと動きました。
それから顔を上げると、女の子の手にはほかほかとしたご飯がありました。
ご飯の上にはニボシさんがのっていて、ギコの大好きなカツブシさんもいっしょにのっています。
川*゚ 々゚)「くるうのごはんなりますか?」
(,,*゚Д゚)「メシ!」
.
222
:
(,,゚Д゚)春をさがすようです
:2012/12/18(火) 21:26:30 ID:iyblDBwI0
ご飯を食べたギコは、箱のなかの女の子と別れました。
お腹がいっぱいで、元気もいっぱい。
ギコはどんどんと先に進んでいきます。
(,,゚Д゚)「春ー、風ー」
泣いている女の子と、男の子のそばを通り。
ギコみたいな耳の生えた男が、小さな男の子を慰めている横を通り。
羽の生えた生き物と、変な二人組の間を通り。
(,,゚Д゚)「春風はどこだー」
ツンそっくりな女の子からは、ちくわをご飯にもらいました。
ちょっと悲しそうな笑顔の女の子は、ギコの袋に枝をつけて尻尾に持たせてくれました。
朝になれば休み。
昼になればご飯を食べ。
夜になれば歩く。
ギコはずっと歩き続けて、小さな魔女のもとにたどり着きました。
ttp://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_424.jpg
.
223
:
(,,゚Д゚)春をさがすようです
:2012/12/18(火) 21:27:39 ID:iyblDBwI0
川 ゚ -゚)「おや、これは随分と変わった世界からのお客様だな。
……ふむ。猫の道を使って、ここまでたどり着いたのか」
とんがりボウシに、ひらひらと伸びたマント。体の大きさはギコより小さいくらい。
だけど、魔女の小さな体にはすごい力があることが、ギコにはわかりました。
すぐそばにいるだけで髭がピクピク動き、毛並みがブワッと逆立つのです。
こいつはすごいやつだと思い、ギコは小さな魔女に言いました。
(,,゚Д゚)「春風が欲しいんだ」
川 ゚ -゚)「どうして、春風がほしいんだ?」
どうしてだっけ、とギコは首をひねって。
ギコは自分の頭のなかに、ぴったりな答えを見つけました。
(,,゚Д゚)「春風をつかまえて、それを持っていけばきっと春になるはずだ」
だから、オレは春風をつかまえてこのふくろに入れるんだとギコは言いました。
ギコは自分の思いつきのすごさにシッポをブンブンとふりました。
しかし、小さな魔女はギコの言葉に首を横に振りました。
川 ゚ -゚)「帰れ。春を探して持って帰っても無駄だ。
お前の願い事はそんなものじゃない」
.
224
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 21:27:49 ID:xTrj54dE0
しえん
225
:
(,,゚Д゚)春をさがすようです
:2012/12/18(火) 21:29:24 ID:iyblDBwI0
――――‐―‐‐‐‐‐‐‐
ギコはとぼとぼと、歩いていました。
どこをどう歩いてきたのか、はっきりと思い出せません。
それくらい、ギコはしょんぼりとしていました。
そんな落ち込んだギコを抱き上げたのは、ひろってくだちぃ。と書かれた箱に入った女の子でした。
ttp://imepic.jp/20121217/033540
o川*゚ 々゚)o「ぬこーくるうといっしょですー」
女の子はぎゅっとギコを抱きしめます。
ギコは逃げようとして、しっぽをふくらませ抵抗しますが、逃げられませんでした。
川 ゚ 々゚)「どうしたですか?」
(,, Д )「春を探して持って帰っても無駄だって。帰れって、言われた」
川*゚ 々゚)「じゃあくるうといっしょしますか?」
(,, Д )「やだ」
ギコの首ががくりとたれ、首輪についた鈴がチリンと音を立てました。
それは、とても大切にされていることがわかる古い首輪でした。
.
226
:
(,,゚Д゚)春をさがすようです
:2012/12/18(火) 21:31:08 ID:iyblDBwI0
川 - 々-)「ぬこ。くるうといっしょちがうです」
女の子は、ギコの首輪をじぃぃっと見つめ、言いました。
ギコの首輪と自分の入っている箱を見比べて、ケタケタと笑います。
川 ゚ 々゚)「ぬこにはおうちあるです。いくです」
(,,;Д;)「でも、オレは春を――」
川 ゚ 々゚)つ=|二フ
川#゚ 々゚)「うそつきしゃみせんさんずのかわ!
うそうそうそ嘘嘘嘘ウソウソわかってないわかってないぃ!!!」
(,,;゚Д゚)「――っ!!!」
箱のなかの女の子が取り出した、ギラギラと光るものにギコは驚いて飛び上がりました。
何が何だかわからないままに、まっすぐに続く道を飛び、駆け上がり、ギコはひたすら逃げます。
箱のなかの女の子が見えなくなっても、ただまっすぐにギコは走り続けました。
.
227
:
(,,゚Д゚)春をさがすようです
:2012/12/18(火) 21:32:03 ID:iyblDBwI0
おじさんはちょとした茶目っ気だと笑い。
難しい顔をしていた二人は笑い合い。
機械の体の人のそばには、そっくりな顔の男の人が。
落ちたかと思った人は、痛くなかったよと笑う。
そんなよくわからない世界をひたすら走り回るうちにギコは――、白いカーテンを見つけました。
(゚、゚#トソン「誰っ!?」
窓と小さな鉢植えと、白いカーテン。
ギコのよく知るツンのお家とよく似た、普通の部屋。
そこにいた女の人は服を着ようとしていた腕を止め、その顔に笑顔を浮かべました。
(゚、゚トソン「あら、久しぶり。この前の猫さんですね。
ちゃんと覚えてますよー、青い毛並みの猫さんは珍しいですからね」
(,,゚Д゚)「……」
(゚、゚;トソン「……、いくら話しかけても反応はなし」
http://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_418.jpg
.
228
:
(,,゚Д゚)春をさがすようです
:2012/12/18(火) 21:33:04 ID:iyblDBwI0
ギコはびっくりしていました。
あわてて走ってついた先は、ツンの家のすぐそばにあるお家。
空は暗く曇り、今にも雪がふりそうです。
(゚、゚トソン「猫さん、猫さん。どうしたんですか?」
(,,゚Д゚)「ここは?」
(゚、゚*トソン「あ、鳴いてくれましたね」
女の人はカラカラと窓を開け、ギコに話しかけます。
ギコは女の人が毛皮を着ていないことに驚き、それからお部屋のなかにあるものにもう一度びっくりしました。
窓のそばにある小さな鉢植え。そこには春のように、白い花が咲いています。
(,,*゚Д゚)「春だ」
(゚、゚トソン「あら、もしかして。このお花がほしいんですか?」
ギコの視線に気づいた女の人は、小さく笑うと白い花を一つ摘みました。
ギコのそばに落ちていた袋に花をそっと入れると、首輪に結びつけました
(゚ー゚トソン「……はい、どうぞ」
.
229
:
(,,゚Д゚)春をさがすようです
:2012/12/18(火) 21:34:20 ID:iyblDBwI0
――――‐―‐‐‐‐‐‐‐
(,,゚Д゚)「春だ。ツンが遊んでくれる!」
ギコはウキウキした気持ちで、歩いていました。
屋根を進み塀を飛び降り、ツンとギコのお家へと向かいます。
空からふわふわと冷たい雪が降って来ましたが、ギコの心はぽかぽかと暖かくなっていました。
(,,*゚Д゚)「ツン! ツン!」
見慣れたお家を見つけ駆け寄りますが、扉はあいていません。
窓はどこも閉まっていますし、お家のなかも暗いままです。
カリカリと扉をひっかいても、誰も開けてくれません。
(,,;゚Д゚)「ツンー! ツンー!!」
誰もない。そのことに暖かかったはずのギコの体が、ぶるりと震えました。
ツンはどこだろう? 春を持ってきたのに、ツンは笑ってくれるはずなのに。
そのツンが、どこにもいない。
(,,;Д;)「……ツン」
.
230
:
(,,゚Д゚)春をさがすようです
:2012/12/18(火) 21:35:14 ID:iyblDBwI0
ギコはカリカリと扉をひっかきました。
爪が痛くなっても、カリカリ、カリカリとひっかき続けます。
(,,;Д;)「ツンーツンー!!! ツン!!」
ご飯にカツブシさんがかかってなくても、ちゃんと食べるから。
遊んでくれなくてもいいから。お話してくれなくてもいいから。
お布団に入れてくれなくても、髪の毛ひっかかないから。
(,,;Д;)「ツンに、あいたい」
ξ# ⊿ )ξ「この馬鹿猫っ!! 一体、いままで何処に行ってたのよ!!」
その時、大きな大きな怒鳴り声が響きました。
ギコが毛を逆立てながら振り返ると、そこにはギコが大好きな女の子がいました。
くるくるに巻いた金の髪。ひっぱると楽しい黒いリボン。
体の上には暖かそうな毛皮に、ついつい毛づくろいしたくなる赤いマフラー。
ξ゚⊿゚)ξ 「…ほんと、馬鹿なんだから…」
ttp://blog-imgs-55-origin.fc2.com/m/z/k/mzkzboon/boonpic2_426.jpg
.
231
:
(,,゚Д゚)春をさがすようです
:2012/12/18(火) 21:36:43 ID:iyblDBwI0
ツンの目からぽろりと涙がこぼれました。
涙は次から次へとあふれて、ツンのかわいらしい表情をぬらしていきます。
(,,;゚Д゚)「ツン! 花だぞ、春だぞ! 何で泣くんだ?!」
ξ ⊿ )ξ「……いままで、どこに行ってたのよ」
ツンはギコの首輪に、昔つくった袋が結び付けられていることに気づきました。
そして、その袋に飾るように入れられた白い花を見つけました。
ξ ⊿ )ξ「……私が、春になればなんて、言っていたから?
だから、ギコはいなくなったの?」
(,,*゚Д゚)「そうだぞ。だから、笑って!」
ギコの言葉はツンにはわかりません。
だけど、ツンにはギコがいなくなった理由がわかりました。
ξ ⊿ )ξ「……私は」
ツンの言葉が途切れました。
ギコの体を抱えると、ぎゅっと抱きしめます。
ξ;⊿;)ξ「ギコがいれば……それでよかったのに」
,
232
:
(,,゚Д゚)春をさがすようです
:2012/12/18(火) 21:37:26 ID:iyblDBwI0
――――‐―‐‐‐‐‐‐‐
(,,-Д-)ゴルァ
ξ゚⊿゚)ξ「ママやめて! それはパパのよ!」
ノハ ⊿ )「でも、もういらない」
ξ;゚⊿゚)ξ「でも、パパは」
ノハ ⊿ )「パパはもういない。
こんなもの置いといても意味ないし、もう見たくない」
ξ#゚⊿゚)ξ「ちがう。パパは帰ってくる!
だって、パパは。パパは言ったもの!!」
ノハ ⊿ )「……ツン。母さんの気持ち、わかって」
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
‐‐
‐
ξ;⊿;)ξ「春になれば……、春になればきっとパパが……」
(,,-Д-).。oO
233
:
(,,゚Д゚)春をさがすようです
:2012/12/18(火) 21:39:42 ID:iyblDBwI0
――――‐―‐‐‐‐‐‐‐
ギコは何もわからなかったけれど、ツンは本当は知っていました。
ツンはまだ大人じゃないけど、ずっと気づいていました。
春が来たらっていうのは、パパがついた嘘で、
本当はパパとママは「りこん」というものをして、とっくの昔におしまいとなってしまったということに……。
(,,;゚Д゚)「ツン。痛いのか?」
ギコを抱きしめるツンの体は、とても冷たくなっていました。
いなくなったギコを、ツンが探していたからです。
ξ;⊿;)ξ「……ギコ、もういなくならないで」
(,,゚Д゚)「……ツン」
ツンはギコがいなくなってからはじめて、自分がしばらくギコとお話をしていなかったことに気がつきました。
そして、ギコがどれだけ大切な友達だったのか、気づいたのです。
パパはもう家にはもどってこないけど、ギコは帰ってくる。
だから、ツンは毎日一生懸命ギコを探したのです。
ξ;⊿;)ξ「ギコ」
.
234
:
(,,゚Д゚)春をさがすようです
:2012/12/18(火) 21:40:27 ID:iyblDBwI0
(,,;Д;)「ツン。ツン泣かないで」
そして、ギコも気づきました。
ギコが欲しかったのは、探していたのは、春でも春風でもなかったことに。
川 ゚ -゚)「帰れ。春を探して持って帰っても無駄だ。
お前の願い事はそんなものじゃない」
小さな魔女がギコに入った言葉。
あの時はわからなかったその言葉の意味が、今のギコにはわかります。
ξ ⊿ )ξ「……なんで、ギコが泣くのよ」
(,,;Д;)「だって」
ξ ― )ξ「……」
そして、そんなギコにツンはじっと目を向け。
涙を拭うと、口元を上へと上げました。
.
235
:
(,,゚Д゚)春をさがすようです
:2012/12/18(火) 21:41:33 ID:iyblDBwI0
ξ*゚ー゚)ξ「……ありがとう、ギコ。
帰ってきてくれて。それから、私とずっと一緒にいてくれて」
(,,゚Д゚)「!」
ギコはニャァと声をあげて、ツンの腕に体を擦り付けました。
ツンの腕の中はとてもあったかくて、ギコはすごく幸せな気持ちになりました。
ξ*^ー^)ξ「ギコはずっと私のお友達よ」
(,,*゚Д゚)「うん!! ツンは俺のいちばんのトモダチだ!」
春風よりも、春よりもずっとずっと大切な――ギコの願い事。
ずっとずっと探していたツンの笑顔に、ギコはようやくたどりつたのでした。
∧∧
ξ*^ー^)ξ(゚Д゚*,,)
.
236
:
(,,゚Д゚)春をさがすようです
:2012/12/18(火) 21:43:19 ID:iyblDBwI0
――――‐―‐‐‐‐‐‐‐
―――‐―‐‐‐‐‐‐‐
―‐―‐‐‐‐‐‐‐
それから、時は流れました。
むかしむかしというほどむかしではない時から時間は流れ、そして今。
ζ(゚ー゚*ζ「ただいまー、もう疲れちゃったよぉー。
あれ、お母さん何してるの?」
動物にひっかかれた跡のある古い扉を、若い娘が開けました。
その娘は雪の日に猫を抱えて泣いていた女の子に、とても良く似ていました。
ξ )ξ「ちょっと、アルバムの整理をね」
ζ(゚ー゚*ζ「あ、お母さんかわいい! すごく若い!
えーと、これはお父さんで。あ、私とお兄ちゃんもいる!!」
母親がテーブルに広げた写真を見て、娘ははしゃいだ声を上げました。
そこに写っているのはどれも、娘にとっては懐かしい写真たちです。
http://blog-imgs-55-origin.fc2.com/m/z/k/mzkzboon/GwB5xhcmso.jpg
娘は大喜びでテーブルに近づくと、乗っていた花瓶をどかして写真を机いっぱいに広げました。
今年の写真。娘が1歳の時の写真。母親と父親の結婚式の写真。母親が学生の時の写真。
そこには家族の幸せな思い出たちが、たくさん並べられています。
.
237
:
(,,゚Д゚)春をさがすようです
:2012/12/18(火) 21:44:14 ID:iyblDBwI0
ζ(゚ー゚*ζ「あれ、この写真は……」
テーブルの上に広げられた、たくさんの思い出の写真。
その写真の一番下。そこに娘は見慣れない写真を見つけました。
ζ(゚、゚*ζ「お母さんと。えっと、青い猫?」
ξ )ξ「ああ、これは……」
青い猫と、それを抱え微笑む小さな女の子。
女の子の名前はツン。猫の名前はギコ。
二人はいつも一緒で、一番の仲良し。
それは、ギコの命が終わってしまっても何も変わりません。
ξ*^ー^)ξ「私の大切なお友達よ」
季節は春。
暖かい家のテーブルに飾られているのは、いつかギコが持ってきた白い花にとても似ていました。
.
238
:
(,,゚Д゚)春をさがすようです
:2012/12/18(火) 21:45:19 ID:iyblDBwI0
ξ゚⊿゚)ξ春をさがすようです 了 (,,゚Д゚)
.
239
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 21:48:00 ID:iyblDBwI0
以上。
使用イラストは、No.8、No.4、No.3、No.11、No.13
それから、URLをつけていないけど他にもたくさんのイラストを使わせていただきました!
支援ありがとう
240
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 21:50:43 ID:xTrj54dE0
おつ!
あの絵だなこの絵だな、って分かってにやにやしたよ
すっごい和んだ話だった
241
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 21:51:01 ID:JzuOaAKk0
乙!
童話調で楽しみました
242
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 21:56:26 ID:OnBiVeio0
乙!!
とってもかわいかった!
243
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 22:12:14 ID:AHOTzCyw0
>>239
乙です!くるぅいい味出してる!
みんな可愛かったー
続いて投下します
244
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 22:12:55 ID:AHOTzCyw0
小学生のころ、幼なじみと遊んでいる時に同級生に冷やかされたことがある。
少しぐらい年が離れているだけで、性別が違うだけで。
悲しくて悔しくて、帰り道の公園で幼なじみを見つけたとき、思わず胸に飛び込んだ。
( ФωФ)「どうしたのであるか」
(*ぅー;)「みんなが、みんなが、休みの日にロマといるのはおかしいって
私とロマじゃ年が違うのに、遊んでるなんておかしいっていうの」
http://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_425.jpg
しぃはロマネスクのコートに顔をうずめて泣いている。しゃくりあげるその頭を大事そうになでて、ロマネスクは笑う。
( ФωФ)「おかしくなんてないのであるよ。しぃと吾輩は、友達なのだから」
(*ぅー゚)「撿撿うん、」
ともだち、と呟いてロマネスクを見上げる。
ロマネスクのピンと立った耳にふわりと、雪が乗っている。街灯に照らされたそれがとても綺麗で、しぃは微笑んだ。
245
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 22:13:49 ID:AHOTzCyw0
( ФωФ)「うんうん、それがいいである」
(*゚ー゚)「?」
( ФωФ)「笑ってる顔が、一番似合うのである」
そう言ってくれたから、しぃはずっとロマネスクが好きだ。友達なのだ。
しぃのピンク色の毛並みを手で梳いて、ロマネスクが行こうかと声をかける。当然のように手をつないで二人は歩き出す。
隣の家に住むロマネスク。生まれてからずっと一緒だ。
しぃはロマネスクが読んでいる本を読み、ロマネスクが行くところには興味を持った。
ロマネスクと遊んでいることはしぃにとっては自然なことで、冷やかされたときにはとても悲しかった。
そんな風にみえるのかと。
ロリコン?ロマネスクはそんなんじゃない。そう言ってやりたかった。
友達なんだ、幼なじみなんだ。その仲を疑うなんて下世話だ。
そう思ったのに。
事実、しぃはロマネスクに惹かれていた。あの時の同級生が言った言葉を否定していたくせに、現に。
しぃは高校生になった。ロマネスクはとうに社会人だ。
246
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 22:16:16 ID:AHOTzCyw0
(*゚ー゚)「8歳かぁ」
ζ(゚ー゚*ζ「どうしたのー、そんな遠く見つめちゃってー」
(*゚ー゚)「デレ...年上ってどう思う?」
ζ(゚ー゚*ζ「デレよくわかんない」
うふ、と笑って同級生のデレが首をかしげる。金髪の巻髪が揺れる。
デレは高校に入ってから出会った友達で、ロマネスクのことは知らない。
ζ(^ー^*ζ「でもぉ、そのくらいで諦めちゃう恋ならやめちゃえば?」
http://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_422.png
ふわりと微笑み、グサリと刺す。
デレの鋭さに、言い返すことも出来ずしぃは胸を抑えて笑った。
ζ(゚ー゚*ζ「あ、移動教室だよー」
(;*゚ー゚)「そ、そうだね」
デレは何もなかったかのように立ち上がって教科書を抱えた。しぃもそのあとに続く。
ざわつく廊下で、唐突にデレがしぃの耳元に口を寄せた。
ζ(゚ー゚*ζ「でも、うまく行ったならデレにも教えてよね」
応援するんだから、と微笑みながら言われて、しぃは思わず吹き出してしまった。
ζ(゚ー゚*ζ「???」
(*゚ー゚)「デレって、そーゆーとこ面白い」
グサリと刺したその口で、応援するという。どちらも本心なんだろう、その友人の言葉にいつも励まされてしまうのだ。
(*゚ー゚)「そうだよねぇ、諦める理由にはならないものね」
しぃは小さくガッツポーズをして、気合を入れる。思い立ったが吉日だ、そう思った。
247
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 22:17:07 ID:AHOTzCyw0
('A`)「先輩、なんなんでしょうね、恋って 」
ドクオが情けない声でつぶやく。ロマネスクは失恋を重ねる後輩に同情してしまう。
( ФωФ)「耐えることである」
パソコンのモニターから目をはなさずにロマネスクが答える。
('A`)「耐える、ねぇ...大人ですよね」
( ФωФ)「まだまだてある。身悶えることも多いのである」
口元だけで笑って、仕事するのである、とドクオを叱る。ふかふかとした毛並みを乱暴にかき混ぜて、ため息をついた。
( ФωФ)「若造なのであるよ」
隣の家の可愛い女の子。幼なじみで、ひよこのようにロマネスクになついている。
ロマネスクも年上とはいえ男。しぃが年を重ねるにつれて、女の子らしく成長する様にいつの間にか心を奪われていた。
しぃに嫌われていない自信はあるが、幼なじみ以上の気持ちがあるか聞かれれば頷ききれない。
( ФωФ)「でも諦めるには、理由が足りないのであるよ」
248
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 22:19:21 ID:AHOTzCyw0
恋に落ちる理由なら、いくつもあるのに。そんなことを思って、苦笑いをした。
その日の夜、しぃを初めて抱きしめた夜のように雪が舞った。
仕事を終えたロマネスクが頭の上に雪を積もらせながら公園を通り抜けようとすると、街灯の下に小さな影があった。
(*゚ー゚)
制服にコートを着て、マフラーを巻いたしぃの姿だった。ロマネスクは小走りにそこへ向かった。
( ФωФ)「こんな、寒い中何してるであるか!こんな遅くに危ないであるよ!」
つい大きな声を出したロマネスクに、少し首をすくめてしぃが笑う。
(*゚ー゚)「ごめんなさい。でも私、どうしても伝えたいことができたの」
私ね、としぃの言葉を最後まで聞いたロマネスクは目を見開く。
そして、すっかり冷えたしぃの体を抱きしめた。
( ФωФ)片思い相互通行のようです(*゚ー゚)
249
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 22:21:07 ID:iyblDBwI0
乙
すごくかわいい。二人とも幸せになれ!
デレもいいキャラしてるなぁ
250
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 22:21:21 ID:AHOTzCyw0
以上です。二枚の絵を使わせていただきました。ありがとうございました!
少女漫画風ラノベ?を目指したんだけど、楽しんでもらえたら嬉しいです
251
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 22:37:32 ID:U/S4YvTM0
うはああああ!ニヤけてしまうわ。乙!
252
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 22:38:10 ID:oktzSy/E0
ジャンルは何でも可とありますがマジキチも可なんでしょうか
253
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 22:40:59 ID:GnsIvqeo0
良いんじゃない
254
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 22:41:37 ID:arWQCkK60
良いかも(*´・ω・)(・ω・`*)ネー
255
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 22:45:06 ID:iyblDBwI0
いいと思うけど、あんまりアレそうなら閲覧注意とかつけてくれるとありがたいんだぜ
256
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 22:58:17 ID:oktzSy/E0
>>253-255
了解です
ありがとうございます
257
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 23:43:09 ID:2qH0v3V20
vipのほうで投下があったお話のお礼ってここでしてもいいんでしょうか?
258
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 23:51:01 ID:iyblDBwI0
どんとこい!
259
:
名も無きAAのようです
:2012/12/18(火) 23:54:09 ID:U/S4YvTM0
またお礼絵とか描くのか……すごいなぁ
260
:
名も無きAAのようです
:2012/12/19(水) 00:05:59 ID:IeoPuTWo0
ブーン系ミニラノベ祭りのようです の
>>278-281
「( ΦωΦ)は出会ったようです」
絵を使っていただきありがとうございました
まさか使っていただけるとは思っていなかったのですごく嬉しいです
切ない終わり方がとても素敵でした 乙です!
http://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_432.jpg
261
:
名も無きAAのようです
:2012/12/19(水) 00:16:49 ID:px2jPo6w0
かなり被っちゃったけど、投下します
262
:
名も無きAAのようです
:2012/12/19(水) 00:18:33 ID:px2jPo6w0
それはまだ神々が地上にいて多くの種族がいた頃のおはなし。
"春風"を探すようです
263
:
名も無きAAのようです
:2012/12/19(水) 00:19:34 ID:px2jPo6w0
一匹の猫が森の中を歩いていました。
その猫は青い毛とすらりとした尻尾を持っており、その尻尾は荷物を結びつけた木の棒を器用に掴み、ゆらゆらと揺らしています。
(,,゚Д゚)「ここいらに小人はいないか」
木々の間を抜けると開けた場所にでました。
猫は誰もいない、その場所で声を張り上げます。
「おや、これは珍しい。こんなところに誰かがやってくるとは」
誰もいなかったはずの場所に、猫以外の声が降ってきました。
川 ゚ -゚)「なにか用か?」
猫から一番近い木の根元に、猫よりも小さな小人がいました。
その小人は頭に被ったとんがり帽子を直しながら猫に近づきます。
(,,゚Д゚)「この世界で一番の物知りな小人族に、聞きたいことがあって来た」
(,,゚Д゚)「"春風"が欲しいんだ。どこに行けば手に入れられる?」
http://blog-imgs-55.fc2.com/m/z/k/mzkzboon/boonpic2_424.jpg
川 ゚ -゚)「まさにわたしは、この世界でもっとも知識を持った小人族だ。
そんなわたしが答えよう。
"春風"はどこにでもあるし、どこにもないことを」
(,,゚Д゚)「矛盾しているじゃないか。はっきりと言ってくれ」
川 ゚ -゚)「はっきりもなにも、今のが答えさ」
(,,゚Д゚)「ふざけたことを抜かすな。貴様の頭を噛み千切るぞ」
川 ゚ -゚)「ふむ、痛いのは好みではないな。
しかたない、"春風"に辿りつく方法を教えてやろう」
川 ゚ -゚)「ここからずっと南へ進むと良い。
そうすれば、お前の求めているものが見つかるだろう」
猫は小人に礼を告げることもなく南へ向かいました。
264
:
名も無きAAのようです
:2012/12/19(水) 00:20:44 ID:px2jPo6w0
猫は小さな町にやってきました。
その町は小さいなりにも、賑わいを見せています。
そんな中、段ボールに入った少女を見つけました。
川 ゚ 々゚)
http://blog-imgs-55.fc2.com/m/z/k/mzkzboon/033540.jpg
少女は道行く人を眺めては、声をかけようとしています。
しかし話すことが出来ないのか、全く声は出ていません。
猫は、少女を嘲笑う目つきで眺めます。
(,,゚Д゚)(馬鹿な子供だ。誰があんな薄汚い子供を拾うものか)
少女はいつからそこにいるのか、髪はボサボサで服は所々擦り切れています。
ろくに食べ物も食べていないのでしょう、頬はこけていました。
それから何時間経ったのでしょうか。
少女はなおも、人に声をかけようとしています。
猫も内心馬鹿にしながら、その様子を飽きもせずに見ていました。
265
:
名も無きAAのようです
:2012/12/19(水) 00:22:46 ID:9tbBprJw0
しえ
266
:
名も無きAAのようです
:2012/12/19(水) 00:23:22 ID:px2jPo6w0
('、`*川「あなた、昨日もここにいたわね」
一人の女性が少女の前で立ち止まりました。
('、`*川「一昨日もその前もいたわね」
('、`*川「親に捨てられたの?」
女性はいくつも言葉を投げかけます。
しかし少女はおろおろとするばかり。
('、`*川「あなた、話せないのかしら?」
('、`*川「わたし、この道を毎日通るのだけれど、正直あなたって目障りなのよ」
川 ;々゚)
少女は言われている言葉の意味は理解できるようで、女性の言葉に目を潤ませてしまいました。
('、`*川「あなた、ここで野垂れ死にたいの?」
川 ;々;)
少女はぶんぶんと首を横に振ります。
267
:
名も無きAAのようです
:2012/12/19(水) 00:24:21 ID:px2jPo6w0
('、`*川「じゃあ、あなたはどうするの?今までみたいにしてたら本当に野垂れ死ぬわよ」
少女は戸惑い、時々手を戻しながらも女性に手を伸ばしました。
その小さな手がしっかりと女性の服を掴みます。
川 ;々;))
声は出ません。
しかし、少女は何かを必死に伝えます。
川 ;々;)) わ た し を ひ ろっ て く だ さ い
('、`*川「あーあ…また変の拾っちゃったなあ」
女性はぼやくと箱の中の少女を抱きかかえました。
('、`*川「うちの孤児院でよければ歓迎するわ」
女性と少女がその場を去った後、猫もその場を後にしました。
268
:
名も無きAAのようです
:2012/12/19(水) 00:25:40 ID:px2jPo6w0
猫はまた南へ進み、海沿いの町に来ていました。
潮風が猫の青い毛を撫でます。
海岸沿いを歩いていると、空から白が落ちてきました。
真っ白な雪でした。
(,,゚Д゚)(これは寒いはずだ、先を急ごう)
猫は歩みを進めていきます。
269
:
名も無きAAのようです
:2012/12/19(水) 00:27:39 ID:FkOfLKIc0
複数枚使いか
支援
270
:
名も無きAAのようです
:2012/12/19(水) 00:28:13 ID:px2jPo6w0
(#゚;;-゚)「待って!おにいちゃん!」
猫の後方から叫ぶ声が聞こえます。
振り返るとマフラーを巻いた女の子が走っていました。
女の子は大きな耳を揺らし、息を切らしています。
( ФωФ)「でぃ!着いてきてはダメなのである」
女の子が一人の男に飛びつきました。
男は抱きついた女の子を離そうとしますが、コートを握りしめているためなかなか上手くいきません。
( ФωФ)「おにいちゃんとの約束を忘れたであるか?」
男の言葉に女の子は首を横に振ります。
(#゚;;-゚)「行っちゃ、やだ」
( ФωФ)「そういうわけにはいかないのである」
(#;;;-;)「いやだいやだ!
行かないでよ…おにいちゃん…」
271
:
名も無きAAのようです
:2012/12/19(水) 00:29:13 ID:px2jPo6w0
( ФωФ)「でぃとまた二人で暮らすためには、仕事を探さないといけないのである」
(#;;;-;)「分かってる…分かってるけど…」
( ФωФ)「この町には吾輩の就ける職がないのだ」
( ФωФ)「仕事を見つけたら必ず迎えに行く。
それまで叔父の家で待っててほしい」
(#;;;-;)「うぅ…ひぐっ」
( ФωФ)「我が輩とてでぃと離れるのは寂しいのである」
( ФωФ)「だからこそ。笑顔で見送ってほしい」
http://blog-imgs-55.fc2.com/m/z/k/mzkzboon/boonpic2_425.jpg
( ФωФ)「そうすれば、我が輩はでぃの笑顔を思い出して頑張れるのである」
(#;;;-;)「約束だよ?絶対、お迎えにきてね?」
( ФωФ)「我が輩は嘘をつかん!絶対に迎えに行く」
(#う;;-;)
(#゚;;-゚)
(#^;;-^)「おにいちゃん、いってらっしゃい!待ってるから!」
( *ФωФ)「行ってきますなのである!」
女の子は目を赤く腫らしながらも、にこりと笑いました。
男は女の子の頭をぐりぐりと撫でると踵を返します。
猫は暫く、その小さくなっていく背中を見ていました。
272
:
名も無きAAのようです
:2012/12/19(水) 00:30:03 ID:px2jPo6w0
猫は雪が降り積もった大きな町に来ていました。
大きな時計台も立派な噴水も、白銀に包まれています。
ξ゚⊿゚)ξ「あら、猫さん。寒そうね」
公園を歩いていると金髪の女の子が話し掛けてきました。
猫は知らんぷりで通り過ぎようとしましたが、目に入った女の子の表情があまりにも寂しかったので立ち止まってしまいました。
ξ゚⊿゚)ξ「猫さん、寒そうだからこれをあげるわ」
金髪の女の子はしゃがみ込み、猫の首に青いマフラーをかけてあげました。
しかしそのマフラーは人間用のため、猫にとって大きすぎます。
ξ゚⊿゚)ξ「本当はね、そのマフラーはわたしの好きな人に贈る予定だったの」
そこで猫は気付きました。
青いマフラーと女の子の赤いマフラーはお揃いになっていることに。
ξ゚⊿゚)ξ「今日はクリスマスだから、その人に会いたくて…」
ξ゚⊿゚)ξ「でも、わたし素直じゃないから…会いたいって直接言えなくて…」
ξ;⊿;)ξ「手の込んだメッセージしか送れなくて…」
ξ;⊿;)ξ「もう五時間待ったけど、彼は来ないの」
ξ;⊿;)ξ「当たり前よね、あんな分かりにくいことしたんだもん」
ξ;⊿;)ξ「わたし…ほんと、馬鹿なんだから…」
http://blog-imgs-55.fc2.com/m/z/k/mzkzboon/boonpic2_426.jpg
女の子は大粒の涙を流します。
その涙は、猫の艶のある毛に落ちました。
273
:
名も無きAAのようです
:2012/12/19(水) 00:31:00 ID:px2jPo6w0
(;^ω^)「ツーン!!!!!!」
大声が公園に響きました。
(;^ω^)「またせてごめんだお!暗号解くのに時間かかちゃったんだお!」
ξ;⊿;)ξ「ブー…ン?」
(;^ω^)「おーん、ツンのお鼻が真っ赤になってるお!」
男の子は女の子に駆け寄ると、女の子の頬を両手で包みます。
(;^ω^)「頬っぺたもこんなに冷たくなって…」
ξ;⊿;)ξ「ブーン…来て…くれたんだ…」
( ^ω^)「当たり前だお!僕がツンの誘いを断るはずがないお」
(;^ω^)「でも今回の暗号は難しくてショボンにも手伝ってもらったんだお」
ξ;⊿;)ξ「う、うえええぇぇぇ」
女の子は更に泣いてしまいました。
男の子は困ったように、女の子の頭を撫でます。
ξ;⊿;)ξ「ブーン…ありがと」
女の子は消え入りそうな声で呟きました。
猫は青いマフラーをそっと雪の上に置き、南へ向かいました。
274
:
名も無きAAのようです
:2012/12/19(水) 00:32:18 ID:px2jPo6w0
猫は原っぱに来ていました。
風がそよそよと吹いています。
小人から南へ行けと言われてからどれだけ歩いてきたのでしょうか。
猫は今までのことを振り返ります。
捨てられた子供とそれを拾った女性
別れを惜しむ妹と旅立つ兄
素直になれない女と彼女を愛する男
どれも猫にとっては理解できないものでした。
利益も無いのに子供を拾う女性も
駄々をこねる子供に笑ってと言った男も
面倒な女を見限ることなく約束の場所に来た男も。
みんなみんな猫には理解出来ませんでした。
275
:
名も無きAAのようです
:2012/12/19(水) 00:33:14 ID:px2jPo6w0
でも、一つだけ。
そう一つだけ分かったことがありました。
どれも温かかったのです。
それぞれ二人が織りなす空間は温かさで満ちていました。
今まで知りもしなかった心の温もりに猫は驚きました。
そして気付いてしまったのです。
"春風"の正体を。
原っぱには一人の男が立っています。
彼は、まるで"春風"のように優しく温かな温もりを確かに心に感じたのでした。
276
:
名も無きAAのようです
:2012/12/19(水) 00:34:23 ID:px2jPo6w0
あるところに傍若無人な男がいました。
彼は強さだけを求め、人との関わりを持ちませんでした。
そんな彼に心を痛めた愛の女神は言いました。
「あなたは愛を知っていますか」
男は答えます。
「そんなものは知らない。そんなものはいらない」
女神は悲しげに尋ねます。
「あなたは誰かを憐れ慈しむことも支えたいと思うこともないのですね」
「俺に必要なものは強さだけだ」
それならば、と女神は言います。
「愛の温もりを知らないあなたに、愛を教えてあげましょう」
「さあ、探しなさい。あなたが"春風"を見つけたとき…愛を知った時、あなたは心を知るはずです」
これはまだ神々が地上にいて、多くの種族がいた頃のおはなし。
そしてある男が愛を知るおはなし。
"春風"を探すようです 終わり
277
:
名も無きAAのようです
:2012/12/19(水) 00:36:21 ID:9tbBprJw0
乙
春風の解釈がとてもいいな
278
:
名も無きAAのようです
:2012/12/19(水) 00:38:11 ID:px2jPo6w0
以上です。四枚の絵を使わせていただきました!
>>209
スカート神秘書いた者ですが、
_
( ゚∀゚)o彡゜デレの黒パン黒パン!!!!
279
:
名も無きAAのようです
:2012/12/19(水) 00:44:45 ID:FkOfLKIc0
>>278
乙!締め括り方が素敵だ
自分も投下しま。軽く残虐表現注意
280
:
名も無きAAのようです
:2012/12/19(水) 00:45:59 ID:FkOfLKIc0
曇天の空のようなくすんだ瞳に、冷たい灰色の街を映して
沈んだ色彩達の中に溶け込む暗色のように、その子はそこにいた。
北に位置するこの国の、今のこの時期、路傍で見るにはあまりに軽装。
ついで、遥か遠くを眺め見るような、あるいは何処も見ていないかのような
儚げな表情と瞳に映る、何処とも知れぬ世界が気になって。
ほんの気まぐれに生じた、感情と好奇心が足を動かす。
吐息は白くわだかまって、紡ぐ言葉と共に空に溶け込んでいった。
( ФωФ) 痕 のようです
.
281
:
名も無きAAのようです
:2012/12/19(水) 00:47:07 ID:FkOfLKIc0
( ФωФ)「寒くないのか?そんな薄着で」
( ´_ゝ`)
くるり。
ゆっくりとこちらを向いたその顔は白く、痩せていて
些か栄養失調気味のようにも見えた。
( ФωФ)「……誰かを待っているのであるか?」
( ´_ゝ`)
( ´_ゝ`)「けもの」
( ФωФ)「うん?」
( ´_ゝ`)「けもの、いなくなるの待ってる」
思いがけない単語に虚を突かれ、次の言葉を見失う。
こちらへ向けられたその顔はひどく儚げで、白昼の幻のようにさえ思えた。
このまま霞んで消えてしまう前にと、じっとその瞳を覗き込む。
冬枯れの景色によく合う、柔らかな灰白色だった。
282
:
名も無きAAのようです
:2012/12/19(水) 00:48:21 ID:FkOfLKIc0
( ´_ゝ`)「寒くなんかないよ」
( ФωФ)
(*´_ゝ`)「おかあさんのくれたマフラーがあるもの」
( ФωФ)「あ……ああ。そうか」
数秒の間を置いて、それが
先程自分の投げかけた、疑問に対する応えなのだと気がつき、曖昧に返事をする。
首に巻かれた暗い色のそれは、マフラーとは名ばかりで、粗末なボロ布にしか見えなかった。
(*´_ゝ`)
言葉とは裏腹に、カチカチと歯を鳴らして震えながら
にへら。と、無垢な笑みを浮かべたその顔は青白く。
僅かに覗いた前歯は欠けていて、どこか間が抜けて見えた。
283
:
名も無きAAのようです
:2012/12/19(水) 00:49:06 ID:FkOfLKIc0
( ФωФ)「……ここに1人か?お母さんはどこにいる?」
( ´_ゝ`)「どこかなぁ。さっきまでパイを作ってたんだけど。いなくなっちゃった」
( ФωФ)「ここで待ってるように言われたのであるか?」
( ´_ゝ`)「ううん。ここが好きなんだよ。けものから逃げられるから」
ぽつり、ぽつりと言葉を交わすものの、先程の不可解な単語同様
いまひとつ、要領を得る言葉はその口から為されない。
どうやら、年端のいかないその子の頭は
すこぅし、他より遅れているようだった。
284
:
名も無きAAのようです
:2012/12/19(水) 00:50:24 ID:FkOfLKIc0
(´<_` )「アニー、もう、家にお入りよ」
しばらくすると、単調な声が聞こえた。
現れたのは、顔も、毛並みも、瞳の色も。
階段脇に座るその子とそっくり同じ、瓜二つの子供。
マフラーこそしていないが、質のしっかりしたコートを身に纏っている。
アニーと呼ばれたその子は、自分と同じ顔を見上げて困ったような表情を浮かべた。
( ´_ゝ`)「でも……でも……、おかあさんがいない」
(´<_` )「……家にいるよ。だから、早く。ほら立って」
( ФωФ)「あ、おい」
(´<_` )
-――なんて冷たい瞳だろう。
同じグレーの瞳でも、こちらは無機質で鋭いナイフの色だった。
二の句を告げる隙を与えぬ、氷の眼差しでこちらを睨みつけると
未だ戸惑いを見せるその子の腕をぐいと掴みあげ、立たせてそそくさと歩み去ってしまった。
遠くなる後姿に、はっきりとは聞こえないが、一方的な言葉の端々が聞こえてくる。
「知らない奴と話するんじゃない」
「また母さんに叱られる」
そんなことを言い聞かせているようだった。
285
:
名も無きAAのようです
:2012/12/19(水) 00:50:37 ID:px2jPo6w0
支援支援
286
:
名も無きAAのようです
:2012/12/19(水) 00:52:25 ID:FkOfLKIc0
次にアニーに会った時。
同じように青い顔をして、暗い路地の階段脇に座る彼は
前とは違って手袋をつけていた。
それも片方、右手にだけに。
( ´_ゝ`)「ロマネスクは兵隊さん」
( ФωФ)「ああ」
( ´_ゝ`)「おとうさんと一緒だねー」
( ФωФ)「……アニーの父さんも、軍人なのであるか」
( ´_ゝ`)「うん。もうすぐ帰ってくる」
( ФωФ)「何故そう思う?」
( ´_ゝ`)「おかあさんが、ごちそう作って待ってるからね」
父の帰還を待ち侘びる風でもなく、ただ淡々と無感情に。
くすんだ瞳に何も映さず呟く、霧のようなその子の隣で
ロマネスクはそっと目を伏せた。
母親がどんなに美味しいご馳走をこさえて、帰りを待ち侘びていたとしても
その男はもう帰ってこないことを知っていたからだ。
287
:
名も無きAAのようです
:2012/12/19(水) 00:56:42 ID:FkOfLKIc0
そのまた次に会った時。
今度は、ロマネスクと同じ、種族特有の大きな耳に
粗末な編み物が当てがわれていた。
そしてそれもまた、片方にだけ。
じっと座り続ける彼と同じように、冷えきった石段に腰を降ろして尋ねる。
( ФωФ)「それも母さんがつけてくれたのか?」
( ´_ゝ`)「ん……これ」
すると、毛糸で覆われた方の耳を ひょい、と器用に動かし、前歯の抜けた白い歯を覗かせて
あのどこか人懐っこい、間の抜けた笑みを浮かべるのだった。
(*´_ゝ`)「そうだよ。外に出る時はこれつけなきゃだめ、て」
( ФωФ)「ふむ。この寒さだから当然だな。
……まぁ、両方揃っていたら、なお良いのだがな」
( ´_ゝ`)「―――嫌」
返ってきた声の思いがけぬ冷たさに、ロマネスクはそちらを見た。
288
:
名も無きAAのようです
:2012/12/19(水) 00:57:43 ID:FkOfLKIc0
( ´_ゝ`)「かたっぽでいい。おれ、かたっぽだけがいい」
( ФωФ)「?どうしてだ?そのままだと、残ったもう片方が冷えるだろうに」
( ´_ゝ`)「嫌。嫌!どっちもは嫌だ」
そう言って、何かを恐れるかのように体を縮こめ
毛糸で覆われていない方の耳を、ぎゅっと押さえてうずくまった。
彼が青冷め震えているのは、寒さのせいだけだったのだろうか。
( ФωФ)「……おかしな子であるな、アニーは」
ぽつりと口に出してみると、確かにおかしい。ちぐはぐな防寒着だけではなく、頭のことでもない。
この寒空の下、いつも外で所在無さげに座り込んで、一体何をしているのだろう?
( ФωФ)「……確かこの前も聞いたが。
アニーは、いつも外で何をしているのだ?誰かを待っているのか?」
( ´_ゝ`)「うん。おかあさん。戻ってくるの待ってる」
( ФωФ)「母さんか。なるほどな。外に働きに出ているのだな」
( ´_ゝ`)「ううん。家にいるよ。だから外で待ってるんだよ」
( ФωФ)「……??」
( ´_ゝ`)「けものくさくて嫌なんだ。早く戻ってこないかな」
柔らかな灰白の瞳にモノトーンの街並みを映しながら、彼は無感情にそう呟くのだった。
289
:
名も無きAAのようです
:2012/12/19(水) 00:58:39 ID:FkOfLKIc0
( ФωФ)「そういえば前も言っていたな。『けもの』ってなんのことなんだ?アニー」
その言葉を口にすると、遠くを眺めていたその顔に、仄かに暗い影が差したような気がした。
( ´_ゝ`)「けものがくるよ。こわい、ロマネスク……」
( ФωФ)「え?」
(;´_ゝ`)「あ」
途端、はっと表情を変え、口を噤む。
ロマネスクも同様、冷たい視線を感じて顔をあげた。
(´<_` )
曲がり角の影で、アニーと瓜二つなあの顔がこちらを睨んでいた。
(;´_ゝ`)
アニーが泣きそうな顔をする。
「知らない奴とは話をするな」と言いつけられたのに
それを破ったのを知られてしまったから、焦っているのだろう。
( ФωФ)「……またな。アニー」
急に低くなった温度と、動揺する彼の様子を見て
短い別れの言葉を告げ、すっとその傍を離れた。
冷たい煉瓦の壁に背を預けながら
この前と同じ、手を引き引かれて、家の方角へと向かう2人の子供の後姿を見送った。
290
:
名も無きAAのようです
:2012/12/19(水) 01:00:51 ID:FkOfLKIc0
数日経って、またアニーに会った時。
今度はもう片方の耳も、あの粗末な耳当てで覆われていた。
―――それなのに、彼は顔を歪めて泣いていた。
( ;_ゝ;)
( ФωФ)「どうした?」
何があったのか尋ねても、幼い子供は泣きじゃくるばかり。
( ФωФ)「……おいで」
その姿がいたたまれなくて。でも、どうしたらいいのか分からなくて。
片腕を伸ばし、少々乱暴に抱き寄せると、自らの胸元にぎゅっと押し付けた。
ロマネスクの羽織る分厚いコートの裾に、白くか細い手が縋りつき、震えた。
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