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( ´_ゝ`)デザート×キャラバンのようです(´<_` )

1名も無きAAのようです:2012/11/23(金) 19:46:34 ID:tFLjG.4M0
ラノベ祭り参加作品

825名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 22:21:41 ID:yZraviHw0


(´<_`;)「た、頼むな。ピンク……たん」

(Σ*Οw)


弟者が恐る恐る声を上げると、竜は喉を鳴らして返事をした。
案外いいやつなのかもしれない……と、弟者は一瞬思いかけてすぐに気を引き締める。
何しろ竜に乗って飛ぶのなんて初めてだ。これから何が起こるのか、わからない。


(´<_`;)「おい、兄者。気をつけろ」

(*´_ゝ`)「大丈夫だって! ピンクたん、飛べ!!」


(\(Σ*Οw)
 ^^

夕焼け色の竜の翼が広げられ、二度三度と上下に動かされる。
羽の動きは力強さを増していき、やがては完全な羽ばたきとなった。


(゚<_゚ ; )「時に待てぇ!!! 心の準備が」


弟者の叫びも虚しく、竜の足が地を離れる。
竜の翼は大きな風を起こし、その体躯を空へと浮かび上がらせる。


.

826名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 22:23:50 ID:yZraviHw0


(;゚A゚)「ちょ、オレを置いていくなぁぁぁ!!!」


兄弟をその背に乗せて、竜の背は高く高く舞い上がっていく。
地面は遠のき、飛び降りたら命がないような高度まで舞い上がる。


(*^ω^)ノシ「ブーンもいっしょにいくおー!!」

(\(Σ*Οw)
 ^^

そして、竜の体は街へと向けて飛び立つ。
風は兄者の頭の飾り布や、弟者のマントを飛ばさんとばかりに吹き荒れる。


(゚<_゚ ; )「と、と、と、飛んでる!!!」

(*´_ゝ`)「あったりまえだろ、ピンクたんは飛んでいるのだ!!」


兄者は竜の首にしがみついて笑い、弟者は表情を凍りつかせる。
ドクオはなんとか竜にしがみつき、ブーンは風を捉え気持よさそうに飛ぶ。


ttp://buntsundo.web.fc2.com/ranobe_2012/illust/11.jpg


.

827名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 22:25:56 ID:yZraviHw0


( ^ω^)「お? 雨のにおいがするお」

(´<_`;)「なん、だと……」


空を覆う雲は、暗く厚い。
確かに兄者も雨が降ると言っていたが、まさかそれが今とは……。
こいつは雨でも大丈夫なのだろうか?――と、弟者は竜の顔をそっと伺う。


(Σ;Οw)


弟者の視線を受けてか。それとも、本能的に天候の変化を感じたのか。
竜は小さく唸ると、背の翼を大きく羽ばたかせる。
いつの間にか、肌を撫でる風は、空気がじとりと水気を含んでいる。


(*'A`)「影が出てきた。これはオレにも勝機が」

( ´_ゝ`)「――きた!」


雲から滴り落ちた雨粒が、兄者や弟者の体へと落ちる。
しかし、その毛並みを湿らせる程度でそう勢いは強くない。
雨粒は細かく、視界を白にゆっくりと染めていく霧のような雨だった。


.

828名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 22:28:33 ID:yZraviHw0


弟者は何気なく視線を地面に向け、そして息を呑んだ。
その動きにつられたのかドクオも地上を――、一面に広がる砂の丘を眺め声を上げた。


(;'A`)「へっ?」


見下ろした地面は、雨に濡れていなかった。

降りしきる雨は、大地に届かずに消える。
熱を吸った大気があまりにも暑すぎて、雨は降るそばから乾き地面には届かない。


(´<_` )「……」


飛ぶことの出来ない弟者にとって、それははじめて見る光景だった。
伸ばした片手ははっきりと雨に濡れている。それなのに、砂丘はこの雨など知らないように横たわっている。
その不思議な光景を、弟者はただ見つめていた。


( ^ω^)「アニジャの天気よほーがあたったお! すごいお!」

d(*´_ゝ`)「晴天。砂嵐なし。風、気温ともに良好。夕暮れに雨が降るけど、霧雨。地面には届かず。
       バッチリだろ! なんと言ったって、外したことはないからな!」


.

829名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 22:30:17 ID:yZraviHw0


やがて、しとしとと竜や兄者たちの体を濡らしていた雨も止む。
雲の間からは強い日差しが再び現れ、砂丘を明るく染める。
そして、弟者は見た。


(´<_` )「……っ!!」


空に、虹がかかっている。


赤や青に色づく光が、光の橋を地上へと向けて投げかけている
こんなものめったに見れないとか、すごいとか言いたいことはいくらでもあるはずなのに言葉にならない。
兄者は気づいていない。きっと、ブーンやドクオもだ。
早く伝えなければと思いながらも、弟者は虹から目を離すことが出来ない。


(´<_` )「……」


美しかった。

空の上を飛んでいるという怖さも、もしこの竜が暴れたらという不安も頭のなかから消え去っていた。
弟者の体から緊張が解け、体の震えも止まる。


.

830名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 22:32:27 ID:yZraviHw0


(;´_ゝ`)「おい、弟者大変だ! 見ろって!! にじ、虹だって!!!
      あっ、消え――」


兄者が虹の存在に気づいた時には、その形は空に溶けて消えようとしていた。
それでも、なんとか弟にその存在を知らせようと手を伸ばして、虹を指し示す。


(;゚A゚)ノ「もう限界! 兄者、影かせ影っ!」

( ;`、ゝ´)「今は影より見るものがだなぁ!!」


しかし、それを邪魔するように、竜をしがみつくのも限界になったドクオが兄者に飛びかかる。
兄者はドクオを振り払いながらも、皆の視線を虹へと向けようとするが、その時にはもう遅かった。
虹は半ば以上薄れ、はっきりとした形を失っている。


( ;_ゝ;)「そ、そんな……」

(; A ) ツカレター

( ^ω^)「……オトジャ? オトジャはにじ見れたかお?」


落胆する兄者から目を話し、ブーンは弟者へ問いかける。
その質問に、弟者は大きく頷く。
瞬く間に薄れ、もう消え失せて見えない虹の残像を弟者はひたすら追い続けていた。


.

831名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 22:34:56 ID:yZraviHw0




嘘のように、空の旅は快適だった。


(´<_` )「……」


一度、風にのってしまえば大きく揺れることもなかったし、風に吹き飛ばされるようなこともなかった。
落ちればひとたまりもないだろうが、広くしっかりした背は安定感があり、よほど馬鹿なことをしない限りは落ちる心配もなさそうだ。


⊂二( ^ω^)⊃「おっおー、楽しいお」


気づけば、弟者の体から余計な緊張は解けていた。

そもそも、冷静になって考えてみたら、ここにはブーンがいるのだ。
風を操ることが出来るブーンの力があれば、万が一落ちたとしても命の心配はない。


(´<_` )「……そうか」


……そんな風に考えられるほどに、いつの間にかブーンを信用している自分に、弟者は小さく苦笑いをする。
精霊なんて見るのも嫌だった自分は、一体何処へ行ってしまったというのか。


怖がりすぎてるだけという言葉が、ふいに脳裏に浮かんだ。

それはいつか、でぃが言っていた言葉だった。今日の事なのに随分前の出来事に感じる。
怖がりすぎているだけ……か。と弟者は息をつく。
何事も踏み込んでみたら、意外と大したことではないのかもしれない。


.

832名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 22:36:40 ID:yZraviHw0


遺跡を見て回り、ゴーレムと戦い、竜に乗る。
今日はなんという一日なのだろう。朝、目覚めたときは、こんな未来が待っているなんて思ってもいなかった。


(´<_` )「とんでもない一日だったな」


視線を下向けると、どこまでも広がる砂地が見える。
これなら予想よりも早く帰れそうだと考えながら、弟者はふと思い出した。

――そうだ。今日が終わる前、帰る途中に寄ろうと思った場所があったのではなかったのか?


(´<_` )「……そうだった。途中で下ろしてもらいたい所があるのだが」


弟者は前に座る兄に向けて、声を上げる。
兄者は弟の言葉にビクリと体を大きく震わせると、声だけで返事を返した。


(;´_ゝ`)「ま、まさか気持ち悪くなったのか?! それとも大自然が呼んでる的な」

(´<_` )「違う」


( ^ω^)ダイシゼン?

('A`)ベンジョ ダ ベンジョ

( ^ω^)ニンゲンッポイオー


(´<_` )「違うといっているだろうが……」


.

833名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 22:39:20 ID:yZraviHw0


兄者や精霊たちの掛け合いに、弟者が気を悪くした様子はなかった。
竜の上で動くのを嫌がったのか、それとも単に精霊たちに慣れたのかはわからない。
弟者は視線を地上に投げかけたまま、淡々と声を上げる。


(<_`  )「花が見たいんだ」

( ^ω^)「花だったら、オトジャの家にあるんじゃないかお?」

(´<_` )「そうじゃなくて、明日は妹者の……」


後ろから聞こえた弟者の声に、兄者は肩を震わせ始める。
気分が悪いのは兄者ではないかと、弟者が声を上げようとする。
が、兄者の震えはそのまま笑い声へと変化する。


(*´_ゝ`)「ふっふっふー」

(;'A`)「兄者、気持ち悪っ!」

( ;´_ゝ`)「流石に失礼だぞ、ドクオ者よ!」


兄者はドクオに言葉を返しながらも、懐を探る。
そして、そこから何かを取り出すと、それを弟者に向けて差し出した。


.

834名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 22:41:16 ID:yZraviHw0


(; ゚_ゝ゚)つ「うわぁぁぁっと」

(#゚ω゚)「あぶないお!」


その拍子に、兄者の体がぐらりと揺れる。
空の上にいるということをすっかり忘れたのだろう、兄者の体は大きく傾き、そのまま倒れ込みそうになり、

――その体を弟者の手がぐいと掴んだ。
弟者は慌てることなく、服の背を掴むと兄者の体をピンクたんの背へと引っ張り上げる。


(´<_`#)「兄者は学習というものをしないのか!」

(;´_ゝ`)「正直すまんかった。――って、今はそうじゃなくて!」


兄者は手にしたものを弟者に向けて差し出す。
弟者は目の前に差し出されたそれに、怒鳴るのを忘れて息をのむ。


.

835名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 22:43:05 ID:yZraviHw0


兄者の手にしたそれは、花に見えた。
六枚の花弁を持つ、決して派手ではないけれども可憐な形をした花。
しかし、それはただの花とは違っていた。


(´<_` )「……これ、は?」


兄者の手にしたその花は、淡く色づきながらも透き通っていた。
まるで繊細なガラス細工だ。
触れた感触はガラスのように硬質でありながら、淡く透き通るその色は水のように移り変わっていた。


( ´_ゝ`)「なんでも、西方に咲く花らしい。
      こっちでも育てることは出来るらしいのだが、暑すぎてどうしても花が咲かないらしい」

(´<_` )「そんなものが、どうして……」

( ´_ゝ`)「ソーサク遺跡の最後の広間。あそこ、涼しかっただろ」


弟者はその言葉に、兄者が今日一日の間何を企んでいたのかようやく察した。
ソーサク遺跡の奥にこの花が咲くことを、兄者はギコから聞いていたのだろう。
そして、兄者はギコの言葉から思いついたに違いない。


( ´_ゝ`)b「ソーサク遺跡のあの場所はどういうわけか、西方に近い環境らしいんだ。
       だからなのか、あの部屋ではこの花がよく咲くらしいのだよ!」


.

836名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 22:46:00 ID:yZraviHw0


明日は、妹者の誕生日だ。

大商隊を迎える準備のために、ひたすら空や星を読んで働かされていた兄者は、妹者への贈り物を用意できていなかったに違いない。
残り短い準備期間の中で、兄者は妹者へ何を贈ろうと考えただろうか。


l从・∀・ノ!リ人


まだ十にも満たない妹者に贈るのに、装飾品はまだ早すぎる。
自然と妹者に贈るものといえば、少女の好むかわいらしいものになる。
異国の鳥、猫。リボン。装飾の施された綺麗な布――候補になりそうなものはいくつかあるが、兄者はきっとこう思ったのだろう。



               そうだ。花はどうだろうか。



(-<_-  ).。oO(俺だけあって、考えることは同じなのだな)


ソーサク遺跡には、珍しい花がある。
父者の育てる中庭では見ることのできない、きれいな花だ。
これを贈り物にしよう。妹者はきれいなものが好きだから、きっと喜ぶ――そう、思ったのだろう。


.

837名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 22:48:04 ID:yZraviHw0


                (*´_ゝ`)「旅に出るぞ!」



今日一日の兄者の唐突な言葉と行動の意味が、今ならわかる。
兄者は妹者の誕生日に間に合わせるために、今日中にソーサク遺跡に行って帰ってくる必要があったのだ。


                 (´<_`#)「兄者は、もう少し根性をみせようか」

                 (;´_ゝ`)σ「根性を見せろって言われてもな……お前さんが加減さえしてくれれば、俺ももうちょっと」

                 (´<_` )「ふむ。そういえばそうだったな」


日頃から弟者に力や体力を回している兄者一人では、この遺跡まで来ることが出来ない。
体力の問題もあるし、万が一のことを考えれば護衛だって必要になる。
それで兄者は、休みで家にいて、なおかつ護衛も出来て、自分と同じく妹者への贈り物を用意できていないであろう弟に目をつけた。


                 ( ´_ゝ`)「弟者ぁあ、いるかぁぁぁぁあ!!!」



つまりはじめから、弟者は妹者への贈り物を手に入れるための相方として選ばれていたということだ。


.

838名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 22:50:16 ID:yZraviHw0


               (´<_` )「ふむ、なるほど。それで、その遺跡には何をしに?」

               (;´_ゝ`)「――えっ?」

               (´<_`;)「――えっ?」


               l从・∀・;ノ!リ人「――えっ?」


目的を問われた兄者がすぐに答えられなかったのも当然のこと。
あの時、兄者のすぐそばには妹者がいた。
大方兄者は、本人を目の前にして、これから誕生日の贈り物を取りに行くのだと言うのをためらったのだろう。

魔法石板用の石板を取りに行くというのは口からの出任せだ。
妹者がいなくなってからも、石板と言い続けたのはきっと引込みがつかなくなったからなのだろう。
だから、石板を拾ったから帰ると主張する弟者に対してボロを出した。


               η(#´_ゝ`)η「大体、目的のブツはこれじゃな」


兄者の目的は、はじめからこの花だった。
だから、石板を拾ったあの段階では帰るわけには行かなかったのだ。

そして、兄者は花を探して最奥の間に辿り着き、ゴーレムに襲われ部屋に閉じ込められるはめになった。
それでも兄者は戦いの後のごたごたの間に、探していたのだろう。


.

839名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 22:52:44 ID:yZraviHw0


――そして、旅の終わり。
兄者は無事にこの珍しい花を手にしている。
要するに、今日一日の出来事は全て兄者の計画通りだったというわけだ。


(´<_`;)「……よくもまあ、ここまで俺を騙してくれたものだな」

(;^ω^)「だました? アニジャだましてたのかお?!」


やっと呟いた弟者の言葉に、兄者はにんまりと笑う。
顔を見なくても弟者にはその声の調子でわかる。今の兄者は絶対に調子にのっている。


(*´_ゝ`)「ふっふっふー。
       ギコ者やしぃ者からこの花のことは聞いていてな。これが今日、遺跡へ行った真の目的だったのさ」

(´<_`; )「――今日、最大にやられた気分だ」


弟者は息をつく。
兄者のことだから何も考えていないと思っていたのに、実際のところは大違いだった。
それにまんまと乗せられていたのだから、弟者としてはもう苦笑いをするしか無い。


(*>_ゝ<)「ほめてもいいのだよ、弟者くん」

(´<_` )「あー、はいはい。流石流石」


.

840名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 22:54:43 ID:yZraviHw0


(*^ω^)「あー、みんな見るお!」

('A`)「えー」


そんな兄弟たちの会話を遮るように、ブーンは手を翼のように広げながら声をあげる。
その声にドクオが面倒そうに声を上げ、溜息をついていた弟者も顔を上げる。


(;´_ゝ`)「ねぇ、ちょっと俺への褒め方ゾンザイじゃない?」

(´<_` )「お前のような嘘吐き、知るか」


兄者の言葉に返事をしながら、弟者はブーンが言った先を眺める。
弟者は下を見下ろし。そして、息を呑んだ。


(´<_` )「――あ、」


砂の丘のまっただ中に見えるのは、湖の姿がくっきりと見える。
慣れ親しんだ、“流石”の街。
それを取り囲むように、どこまでも続いていく砂の丘が見える。黄金の大地は、風が作り出す模様に彩られていた。
日は大きく傾き、砂の地平に落ちかかる太陽は火のように赤い。


.

841名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 22:57:52 ID:yZraviHw0


('A`)「もうこんなとこまで来てたのか」

(*^ω^)「あとちょっとで、街だおねー」


世界が少しずつ、赤へと染まり、闇へと沈んでいく。
それは、決して恐ろしいものではなかった。


(*´_ゝ`)>「おお!!」


自分が生まれる前から、魔王の時代から、それよりもずっと前の時代から。
ずっと続いてきた一日の終り。夜へと続く、夕暮れのほんの一瞬。
落ちゆく空の色は、竜の鱗のきらめきと同じ色をしている。
それを見ながら、弟者は思う。


(´<_` )「……こういうのも、悪くないな」


空は橙に、赤に、紫に、青にかわり、やがて漆黒の夜が訪れようとしている。
星がその数を増し、柔らかい月の光が太陽に変わり空を明るく照らしはじめる。

そこにはもう、昼の名残はどこにもない。


.

842名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 22:59:48 ID:yZraviHw0


(;´_ゝ`)「うう、さぶぃー。
      こりゃあ、早く帰らんと凍死しちまうわ」

(*^ω^)「お? これくらいで寒いんですかお?」

( ´_ゝ`)b「俺は人間の中でもそうとう貧弱な部類に入るぞ!」


太陽が落ちるのと同時に訪れる風の冷たさに、前に座る兄者の体が大きく震えた。
灼熱で満たされる昼が嘘のように、この地の夜は寒い。

そうか。今日も、もう終わるのか。

弟者は不思議と名残惜しい気持ちになり、ふと口を開く。
どうせ今日はとんでもない一日なのだ。
もうーつや二つくらい、普段ならば絶対にあり得ないことが増えたって、別に悪くはないだろう。


(´<_` )「……ドクオ」


そして、弟者はドクオに話しかけた。
今日一日を共に過ごしながらも、決して話そうとはしなかった相手。
それどころか、死んでいなくなればいいとさえ思っていた、憎い敵のような存在。

そのドクオに向けて、弟者は言葉を発した。


.

843名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 23:01:23 ID:yZraviHw0


(;'A`)「ん?」


ドクオは小さく声を上げた後に、その声の主が弟者であることにその表情を固くした。
兄者の姿を見て、それから辺りを見回す。が、声の主は弟者という事実に変わりはない。


( ;A;)「ごごごごごめんなさい」

(´<_` )「いや、今はまだ怒ってはいない」

(#'A`)ノ「まだって、やっぱ怒るんじゃねーかよこのおにちく!!」


ドクオの反応に、弟者はふむと息をつく。
実際に声をかけて話してみれば、ドクオとの会話もまた、それほど不快ではなかった。
ドクオの方も、弟者によって散々な目に合わされているというのに、その言葉はこれまでとそう変わりはない。
良くも悪くも、精霊という生き物は単純なのかもしれない。
――と、弟者は考えて、これも今日までは決して考えようとはしなかったことだな。と、小さく苦笑する。


(´<_` )「いろいろと悪かった」

(;゚A゚)「は? お前、ついに頭おかしくなったんじゃねーか?」


弟者が苦笑いを浮かべたまま、今日一日のあまりにも遅い謝罪をすると、ドクオは途端に妙な顔になった。
その顔があまりにも変なので、弟者はつい笑ってしまう。
――何が精霊は楽しいぐらいしか感情が残っていない、だ。人間と変わりはしないじゃないか。


.

844名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 23:03:10 ID:yZraviHw0


なんだか、何もかもが愉快でおかしかった。
今日一日は本当に散々だったが、最後にこんなにおかしいことが待っているとは思わなかった。


(´<_` )「そうかもな。長年の苦労がたった一日でダメになって、ヤケを起こしてるんだ」

(;´_ゝ`)「え? なんで、俺の頭を叩くの?
      てか、なんでお前は爆笑してるの? そもそも、何で急にそんなに素直になっちゃってるのさ?!」


これまでの十年間が間違っていたとは思わない。
兄者は危なっかしいし、危険だという自覚もないまま、これからも妙な出来事に突進するだろう。
だから、これからも自分は兄者を止めたり、諌めたりしなければならないだろう。


(-<_- *)「さてな」


――けれども、それも必死になって抱え込む必要は無いかもしれない。
馬鹿でヘラヘラとしているけれども、俺の半分はそれなりにすごいやつだった。
だから、一人で背負い込まなくても、きっと二人ならなんとかなる。

それに自分が気付けていなかっただけで、助けてくれる奇特なやつもちゃんといる。
かつてのツンや、先生のように。
そして、今日のブーンや、ドクオのように。


――だから、俺はきっとこれからも大丈夫だ。
ちゃんと、弟者として。普通の一人のように、やっていくことが出来る。


.

845名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 23:05:55 ID:yZraviHw0


(;´_ゝ`)「ちょ、おま。このお兄ちゃんに嘘つくって言うのか?
      考えてることがだだ漏れの、あの弟者くんは一体何処へっ!?」

(;'A`)「あれでだだ漏れだというのか、お前は!!!」

(´<_` )「人をなんだと思っているのだ、失礼な」

( ^ω^)「……」


(*^ω^)「ブーンもまざりたいおー!!」


弟者の口元が、自然とゆるむ。
たまには、こんなのも悪くはない。と、弟者は思う。



(\(Σ*Οw)
 ^^



竜の背から見る世界は、なんだかとっても広く見えた。
それこそ、



.

846名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 23:06:41 ID:yZraviHw0






――彼が、ずっと嫌っていた、魔法のように。





.

847名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 23:07:22 ID:yZraviHw0




( ´_ゝ`)デザート×キャラバンのようです(´<_` )



   おわり



.

848名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 23:18:35 ID:mwwkQGYAO
面白かったー!乙!!

伏線回収も心境変化もすごく綺麗にまとまってて、読んでて爽快だった!

風景や天候と心理の合わせ方がすごく上手い。情景がすんなり目に浮かんだ。

完結ありがとう、後日談も楽しみにしてる!おまけも!

849名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 23:22:16 ID:PA7Y3QRs0
ついに終わってしまったー・゚・(つД`)・゚・
楽しかった!面白かった!

850名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 23:32:27 ID:yZraviHw0
休憩おわり。オマケ投下します

851名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 23:33:06 ID:kbZ3Xh2M0
おわ、来てたか!
なんか勝手に明日夜=日曜夜と思ってて不意打ち食らった
これから読んでくる!!

852名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 23:33:23 ID:yZraviHw0


 @@@
@#_、_@ 
 (  ノ`) 「今、帰ったよ」



::l从・д・illノ!リ人:: ガタガタガタ


∬´_ゝ`)「おかえり、母者。時に母者に報告したいことがあるんだけど……」

 @@@
@#_、_@ 
 (  ノ`) 「ただいま。妹者、挨拶は?」


::l从・∀・illノ!リ人::「おおおおかえりなのじゃ!」


 @@@
@#_、_@ 
 (  ノ`) 「ただいま、妹者。
       で、姉者。報告したいって言うのは何だい?」


.

853名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 23:34:47 ID:yZraviHw0

        .@@@
        @ _、_@
       /(#  ノ`)\ 
     _/__〃` ^ 〈_ \
   γ´⌒  |i、___/|ヽ⌒ヽ
  /    ィ ┘ `i´   L )  `ヽ,
  /〜〜〜ノ~~~~~~~~~~人〜〜〜
  !  ,,,ノ |\.=┬─┬=く ^ >  )
 (   <_ .|    |   |  | /  /
  ヽ_  \   |   |  | 〃 /
    ヽ、__」  .|   |  〈__ソ、
      〈J .〉、|   |   |ヽ-´
     /""   |   |   .|
     /     |   |  ヽ
    /      |   |    ヽ
   /       |   |    ヽ
   <_,、_,、_,、_,、_,.|   |,、_,、_,、_,>
     y `レl |   |  リ
     /   ノ |__|  |
     l  /     l;;  |
     〉___〈      〉_|
    /ヽ__ノ|    (_ヽー\
   (_^__ノ      `ヽ__>



おまけ劇場   l从・∀・ノ!リ人 でざーと×しすたーのようです


.

854名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 23:36:58 ID:yZraviHw0

      て
 @@@ そ
@#_、_@ 
 (  ノ`) 「一体、どういう事なんだい!!!」


::l从 д illノ!リ人:: アワワワ

∬´_ゝ`)「どういう事なんだいも何も、話した通りよ。
      他ならない父者本人がそう言ったんだし、私だって確認してる。母者も見てきたら?」

 @@@
@#_、_@ 
 (  ノ`) 「あの中庭をダーリンがどれだけ大事にしてたか」

∬ ゚_ゝ゚)゛「……ブッ」

 @@@
@ _、_@ 
 (   ノ`) 「どうしたんだい、姉者。風邪ならさっさと治しな」


∬;´_ゝ`)「いえ、何でもありません……」


.

855名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 23:38:15 ID:yZraviHw0

 @@@
@ _、_@ 
 (  ノ`) 「まぁ、いい。それで続きだけど」


∬´_ゝ`).。oO(今、ダーリンって呼んだ。ダーリンって……)


 @@@
@ _、_@ 
 (  ノ`) 「原因は何かわかっているのかい?」

∬´_ゝ`)「それがさっぱり、父者は侵入者を疑っていたけどその線は無いわね」


 @@@
@ _、_@ 
 (; ノ`) 「ダーリンかわいそうに……」

プルプル::.∬; _ゝ )::.。oO(だから、ダーリンって……)


l从・∀・;ノ!リ人 アワワ


.

856名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 23:40:17 ID:yZraviHw0


∬;´_ゝ`)q コホン


∬´_ゝ`)「――で、最後に中庭に入ったのは、妹者というわけなの。
      中庭の立ち入りの件についてはさっき話した通りだから、怒らないであげて」

 @@@
@#_、_@ 
 (  ノ`) 「花を踏んだのは妹者かい?」

l从・∀・;ノ!リ人「ちがうのじゃ! ちゃんと気をつけてお水くんだのじゃ!」

∬#´_ゝ`)「妹者、嘘は」

 @@@
@ _、_@ 
 (   ノ`) 「姉者は黙ってな」


∬;´_ゝ`)「……、はい」


.

857名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 23:41:45 ID:yZraviHw0


 @@@
@ _、_@ 
 (   ノ`) 「妹者。花を踏んだのがアンタじゃないってことは、他に犯人なり原因なりがあるはずだ。
       アンタは何か心当たりがあるかい? 気づいたことは?」

l从・−・;ノ!リ人「……」


 @@@
@ _、_@ 
 (   ノ`) 「妹者、返事は」


Σl从・ 0・;ノ!リ人 ビクッ


:: @@@ :::::
:::@#_、_@ ::::
::: (  ノ`) 「妹者?」

l从・−・;ノ!リ人「……」



.

858名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 23:42:32 ID:yZraviHw0


l从・〜・;ノ!リ人「それは……、のじゃ」


 @@@
@#_、_@ 
 (  ノ`) 「返事は大きな声で」

l从>д<;ノ!リ人「……し、し、知らないっ、の じゃっ!」

 @@@
@ _、_@ 
 (   ノ`) 「知らない? 本当に?」


l从・∀・;ノ!リ人「ほ、ほんとなのじゃ!! 妹者はなんにも知らない、のじゃ!」


 @@@
@#_、_@ 
 (  ノ`) 「今の言葉は、本当だね」

l从・−・iiiノ!リ人.。oO(ほんとじゃないのじゃ)


.

859名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 23:43:27 ID:yZraviHw0


l从・д・iiiノ!リ人.。oO(ウソっこはいけないのじゃ。母者はウソは怒るのじゃ)

 @@@
@#_、_@ 
 (  ノ`) 「妹者、ちゃんと返事をしな。
      妹者が返事をしないのなら、こちらも妹者が犯人と思うよ」

l从・−・iiiノ!リ人「……」


l从- -;ノ!リ人「……ぃ」


 @@@
@#_、_@ 
 (  ノ`)m グッ


l从・д・iiiノ!リ人「言わないのじゃっ!! ゲンコツしてもムダなのじゃ!!」


.

860名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 23:44:20 ID:yZraviHw0

 @@@
@#_、_@ 
 (  ノ`)m 「分かった。そう言うならゲンコツだね」


l从;д;ノ!リ人 グスッ


l从>д<;ノ!リ人「いもじゃは、お花さんをふんだのはダレかなんて、
          ぜったいのぜったいに、しらないのじゃ!!」


l从;∀;ノ!リ人「いもじゃはっ、やくそくしたからっ!
         ぜったい、ぜったいに言わないのじゃ!!!」


 @@@
@#_、_@ 
 (  ノ`)m 「……妹者っ!!!」


l从;∀∩ノ!リ人 グシッ


l从・−∩ノ!リ人「いもじゃは、ぼーりょくには、くっしないのじゃ!」


.

861名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 23:45:23 ID:yZraviHw0


∬;´_ゝ`)「……約束したって、それほとんど話したも同然じゃない」


l从・дqノ!リ人「……?」


∬´_ゝ`)「約束って自分で言ってる。
      ……妹者のことだから、そんなことだろうとは思ってたけど」


l从・д・;ノ!リ人「なななんで約束したって知ってるのじゃ!?」


∬;´_ゝ`)「何でって、ねぇ……」


 @@@
@  、_@ 
 (   ノ ) 「……」

∬´_ゝ`)「母者?」


.

862名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 23:47:01 ID:yZraviHw0


::l从・−・;ノ!リ人:: ビクッ


 @@@
@ _、_@ 
 (   ノ`) 「妹者、嘘っていうのは必ずしも悪いとは限らない。
      生きているならどうしたって、嘘が必要になることだってある」

l从・∀・;ノ!リ人「……?」

 @@@
@ _、_@ 
 (   ノ`) 「だけど嘘っていうのはね、使うのがとても難しいもんだ」


l从・〜・;ノ!リ人「……よく、わかんないのじゃ」

 @@@
@ _、_@ 
 (   ノ`) 「今はそれでいいんだよ。アンタはまだ小さいからね。
       でも、母さんはいつも言ってるはずだよ。嘘の重みがわかる大人になるまでは、絶対に嘘をつくなって」

l从・д・;ノ!リ人「う、うん」



.

863名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 23:47:58 ID:yZraviHw0


 @@@
@ _、_@ 
 (   ノ`) 「妹者、アンタは嘘をついたね。
       約束したってことは、妹者はちゃんと知っているんだろ?」


l从・−・;ノ!リ人「……」


l从-д-;ノ!リ人「ごめんなさいなのじゃ」


 @@@
@ _、_@ 
 (   ノ`) 「妹者は嘘をついた。
       アタシは妹者を叱らなければいけない。わかるね?」


(( l从・−・ノ!リ人 コクン


 @@@
@#_、_@ 
 (  ノ`) 「じゃあ、これがおしおきだ」


.

864名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 23:49:58 ID:yZraviHw0


 @@@
@#_、_@ ペチン
 (  ノ`)σl从>д<;ノ!リ人 イタッ

ヒリヒリ
  l从;∀;ノ!リ人「いたいのじゃー」


∬´_ゝ`)「このくらいで済んでよかったじゃない。
      母者のことだから、鉄拳の1つや2つくらい来るかと」

 @@@
@#_、_@
 (  ノ`) 「姉者、アンタも一言多い!」


 @@@
@#_、_@ ペチン
 (  ノ`)σ(´く_`;∬


( く_ ;∬「――痛っ」


.

865名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 23:51:00 ID:yZraviHw0


 @@@
@ _、_@ 
 (   ノ`) 「まぁ、こうして妹者を叱ったわけだけど」

∬;´_ゝ`).。oO(私は完全にとばっちりだったわ)


 @@@
@ _、_@ 
 (   ノ`) 「アタシがあれだけ怒ったのに、妹者は約束の内容を話さなかった。
       何事にも信頼は大切だ。ちゃんと約束を守ったのは、褒めてやろう」


l从・∀・;ノ!リ人


 @@@
@ _、_@ 
 (* ノ`) 「よくやったよ、妹者。流石はアタシの娘!」

∬´_ゝ`)「確かに、あの状態の母者に立ち向かったのはすごい度胸よね」ワタシハムリ


l从・∀・*ノ!リ人 !


l从>∀<*ノ!リ人「ほめられたのじゃ!母者、だいすきなのじゃー!!」


.

866名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 23:51:42 ID:yZraviHw0


 @@@
@#_、_@ 
 (  ノ`) 「ただし、今度からは、していい約束なのかどうか、はじめにちゃんと考えるんだよ。
       悪い約束は、はじめっからしない事。いいね」

(( l从・∀・*ノ!リ人「わかったのじゃ!!」


∬´_ゝ`)「よかったわね、妹者」


 @@@
@# 、_@ 
 (  ノ ) 「……だけど、元凶には拳でちゃんとお話しないとねぇ」



l从・∀・*ノ!リ人「え?」


.

867名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 23:52:41 ID:yZraviHw0


「ついたぞぉぉぉ!!!」

                     ヤッタオー

「なんとか、帰れたな」

                      オレモカエル…



l从・∀・*ノ!リ人"「あ、兄者たちの声なのじゃ!!」


∬´_ゝ`)「さて、噂をすれば、お帰り見たいね」


 @@@
@ _、_@ 
 (  ノ`) 「そうだねぇ、二人にはちょっと話を聞かなきゃいけないね」

∬´_ゝ`)「遺跡とか、精霊がどうとか……すごく聞きたいことが、いっぱいあるのよね」



.

868名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 23:53:43 ID:yZraviHw0


 @@@
@ _、_@ 
 (; ノ`) 「そりゃどういうことだい?」


 カクカク @@@
      @ _、_@
∬ノ´_ゝ`)(  ノ`)  シカジカ


 @@@
@#_、_@ 
 (  ノ`) 「…事情は、よーくわかった。
       あの馬鹿息子共は……!!!」


.

869名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 23:54:31 ID:yZraviHw0


l从・∀・;ノ!リ人「母者? 姉者もどうしたのじゃ?」

∬*´_ゝ`)「妹者ちゃんは、お部屋でちょっと遊んでようね。
      お姉ちゃん、ちょっと兄者達にお話があるから」


l从・∀・;ノ!リ人「え? え?」


 @@@
@# 、_@ 
 (  ノ ) ゴゴゴ


l从・∀・;ノ!リ人「な、な、なんかこわいのじゃぁ!!!」


∬*´_ゝ`)「ほら、部屋行くわよー」


∬*´_ゝ`)つl从・∀・;ノ!リ人 三 ズルズル



.

870名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 23:55:47 ID:yZraviHw0


タダイマーカエッタゾー イモジャターン!


               アニジャ エラソウダゾ



エッ ハハジャ


                    ナニヲ



       モンドウムヨウ アンタタチー




.

871名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 23:56:37 ID:yZraviHw0




                    ギャー




.

872名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 23:58:23 ID:yZraviHw0


l从・∀・ノ!リ人「兄者たちどうしたのじゃー?」


(ノ<_`  )「別に」

(♯ノ_ゝ`)「ちょっとラスボス戦をな」


l从・∀・*ノ!リ人 ?



今日も、流石邸は平和です






でざーと×しすたー            おしまい

.

873名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 23:59:21 ID:VPyeQ90g0
おつかれっした!

874名も無きAAのようです:2013/12/07(土) 23:59:52 ID:yZraviHw0
本日の投下ここまで
後日談は、9日(月)に投下の予定

875名も無きAAのようです:2013/12/08(日) 00:01:02 ID:zeDgnt.AO
乙!
面白かった!!

876名も無きAAのようです:2013/12/08(日) 00:18:48 ID:raGJlf9k0
乙!月曜も楽しみだ

877名も無きAAのようです:2013/12/08(日) 09:11:53 ID:c1Wy3Osc0
乙乙!
ブーンがかわいかったな

878名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 01:21:24 ID:bgEwTgMU0
作者も4人も長旅乙!
http://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_1421.jpg
後は後日談で終わりか…読みたいけど寂しいな

879名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 12:41:45 ID:nnePnEts0
>>878
ありがとうございます!!!
弟者の表情がすごくよくて、うれしい。書いててよかった

880名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 20:03:33 ID:nnePnEts0


兄者と弟者の旅は終わった。
――かといえば、そうではなかった。

大市へと赴き、砂漠を進み、盗賊と戦う。
100年に一度とも言われる神秘と出会ったかと思えば、遺跡を探索し、命をとしてゴーレムと戦いを繰り広げる。
そして、竜の背に乗り、屋敷へと帰りつく。

思えば長い一日だが、話はそれで終わらなかった。
家へと帰った彼らを待ち構えていたのは、母者と姉者による説教という名の暴力と、大商隊出立の知らせだった。

彼ら兄弟は“流石”の街の住民だ。
街を束ねる母者の息子としての、義務もある。
だから、街にとって大きな出来事があれば、どれだけ疲れていても動かなければならない。

大商隊は年に三度、東方から西方、西方から東方へと大陸を横断する。
商人や護衛の数はかなり多く。それに加えて、大量の荷物と荷馬車。それに、ラクダや、安全を求めて多くの旅人が同行する。
膨れ上がったその規模は、下手な集落よりずっと大きい。
そんな彼らの出立となれば、街中総出の大騒ぎとなる。

流石の兄弟が一日のうちに体験した出来事は、本人たちにとっては人生観を変えるほどの大事件だった。
しかし、母者をはじめとする街の人々にとってもそうだったかと問われれば、否である。
結局、彼ら兄弟は休む暇もないまま、仕事へと駆り出された。


.

881名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 20:04:56 ID:nnePnEts0




そして、慌ただしい夜は明ける。



――これはいわゆる、後日談。
砂漠へと向けて大商隊は旅立ち、そして、穏やかで何でもない一日が始まる。




.

882名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 20:05:48 ID:nnePnEts0





( ´_ゝ`)デザート×キャラバンのようです(´<_` )





.

883名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 20:06:28 ID:nnePnEts0





おしまいのあと。 いわゆる、後日談




.

884名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 20:07:39 ID:nnePnEts0

市場のすぐ横にある大きな建物は、自警団の本部だ。

今そこには、黒い揃いの服を着た者達が勢ぞろいしていた。
晴れやかな顔をした者、床に倒れこみ惰眠をむさぼる者、疲れきった顔をした者などがあふれ、部屋は一種の混沌と化していた。
至るところから喜びの声や、雄叫びと、いびきの混じった音が響き渡る。


从*゚∀从「いやほぉぉ、飲むぜぇぇぇぇ!!!」

( ^Д^)「まだまだあるけど、とりあえずはこれで一段落ぅぅぅ!!!」


        イェーイ!

  ヾ从*゚∀从人(^Д^*)ノシ



大商隊を送り出した自警団員たちは、ひたすら浮かれ、舞い上がっていた。
お互いに肩を抱き、飛び回り、まだ昼前だというのに、机にはなみなみと注がれた酒や、沸かしたての茶がいたるところに並べられた。
普段は書類やら武器やらが並べられたその部屋は、今は飯屋や宿屋のような体をなしている。


(;´∀`)「おーい、まだ仕事は終わってないモナよー」


大商隊到来時における、治安の維持は彼ら自警団員にとって最大の仕事だ。
それに加えて、大商隊の到着時や、出立時の手伝い。役場や商人組合の手助けなど、普段はない仕事が押し寄せる。
彼ら自警団員は数日用意された休み以外は、ほとんど寝る間もなくこき使われていた。


.

885名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 20:09:20 ID:nnePnEts0


(;´∀`)「あー、こりゃあ誰も聞いてないモナ」

爪'ー`)「ここんとこ、ろくに休む暇もなかったからな」


休みの団員まで駆りだされた夜通しの作業がようやく終わりを迎えた頃には、倒れこむ団員と叫びだす団員で阿鼻叫喚の地獄と化していた。
まだ辛うじてやる気のある団員が、本部へ団員をなんとか押しこみ、そして今の惨状がここにある。


(;Д; )「長かった。忙しすぎて死ぬかと思った」

从 ;∀从「荷運びにも、盗っ人や酔っぱらいにも、人とか物の整理や、母者様にも姉者様にも、天候にも負けなかったもんな。
      城門警備とか、ほんと一瞬の幻だったし。役場の連中とはケンカだし、酔っぱらいが盗賊化するし。
      がんばったよ、今期も本当にがんばったよ!!」

(;Д; )「ハインさん。オレ、一生ハインさんについていきます!!」

从*;∀从「よせやい、照れるじゃねぇかよ」


先輩も後輩も、老いも若きも、男も数は少ないが女も、果ては普段は仲が悪いもの同志までもが、楽しそうにはしゃぎ合っていた。
寝ているものは不幸にも踏まれ、何処から持ってきたのか次々と料理が運び込まれる。
誰もかもがこんな状態なものだから、何か騒ぎが起こったらどうするつもりかというモナーの心配は誰にも届かなかった。


.

886名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 20:11:10 ID:nnePnEts0


( ; ゚¥゚)「あー、これは完全に、大仕事をやり終えておかしくなってますね。
       どうせ見るなら、麗しい女性同士の戯れの方がよかったものです」

爪;'ー`)「お前さんも、そうとう趣味が悪いねぇ」


(-、-*川.。oO


乱痴気騒ぎに参加しない面々も、昨夜から続く夜通しの作業で力が尽き気味だ。
そんな彼らを誘惑するように、食べ物の匂いが辺りに漂う。


从*-∀从「弟者の野郎には逃げられたが、こっちはこっちで楽しくやろうぜ!」

(-Д- )「弟者さん、ひと仕事終えたら今日は用事があるからですもんねぇ。冷たいですよ」

从*゚∀从ノ「まあいい、今日は飲むぜぇェェェ!!!」


(*^Д^)9m「いよっ、ハインさぁぁぁん!!!」


はしゃぐ団員の姿を眺めながら、モナーが一つ大きな息をついた。
やれやれと言わんばかりの表情は、それでも不快そうではなかった。


.

887名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 20:13:22 ID:nnePnEts0


爪'ー`)「さてと、私も羽目を外してみようかね。
     モナーの旦那。旦那も、たまには飲んでみるかい?」

( ´∀`)「モナは酒はやらないから……」

(  ゚¥゚)「ああ、モナー氏は信仰の徒ですものね」


同僚の声にモナーは不敵な笑みを返すと、何やら大きなものの入った袋をひっぱりだす。
一体何かと年かさの男が見守れば、そこから出てきたのは水煙草のための器具だった。


爪*'ー`)「やるじゃないか、旦那も」

( ´∀`)「やっぱり、モナにはこれモナ」

爪'ー`)「ご相伴させてもらってもいいかな?」

(*´∀`)「いいモナよ。フォックスの旦那もイケる口モナ?」


(  ゚¥゚)「さてと、私は向こうでつまみ食いでもしてきましょうかね」


年長の男たちは顔を見合わせると、いそいそと準備にとりかかる。
そこに浮かぶ表情は完全に少年のそれだ。


.

888名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 20:15:17 ID:nnePnEts0


( ´∀`)y‐~~ フゥ

爪'ー`)y‐「やはり、この瞬間こそが至高だな」

(*´∀`)y‐「モナモナ」


火を灯し、水で冷ました煙を吸う。
満足そうな顔で紫煙をくゆらせる二人の男のそばに、派手な足音を立てて人が押し寄せた。
何人かの顔が赤いのは、既に酒が回っているからだろう。


从*゚∀从「うぉ、いいな! ちぃとばかし、よこせよ!」

(*´∀`)「だめモナ。ハインは向こうで酒でも飲んでるモナ」

从*゚3从「ちぇー、しゃーねーな。
      オラッ、起きろやペニサス!!!」

(-、q;川「なぁにぃー、少しくらい寝させてよ。
      昨日は渡ちゃんと遊んでて、ぜんぜん寝てないのよー」


ヤーメーテー('、`;川⊂从*゚∀从 ヨッシャイクゾー


宴は続く。
――時は昼前。太陽は高く、酒宴はまだまだ始まったばかりだ。


.

889名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 20:18:05 ID:nnePnEts0

広場からは少し離れた、職人街。
建物が密集したその一角に、ある工房があった。
細工物を扱うその小さな工房は、独立したばかりの若き職人モララーのものだった。

その工房に、少年の大きな声が響いた。


(#゚∀゚)「いいかげんにしろよ、このバカ! アホ! マヌケ!」

( ・∀・)「あーあー、聞こえないんだからなー。
      それ終わったら、井戸に水汲み行って来いよ!」


声を上げる少年の手には、拭き掃除に使ったらしいボロ布が一枚。
小さな工房の中は片付けられ、彼の間近にある机の上は綺麗に磨き上げられていた。
それは、少年が昨日から今日にかけて行った仕事の成果だった。


(#゚∀゚)「なんでお前のためなんかに働かなきゃなんないんだよ!」

  ∧_∧  ゴツン
 ( ・∀・)o彡゜  て
     (;>∀<)> そ アデッ


( -∀・)「なんでって、僕の丹精込めた大切な商品を盗んだからに決まってるだろ。
      あれを一つ作るまでに、僕が何日かけたのか知ってるのかい?」


.

890名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 20:20:18 ID:nnePnEts0


(;>д<)「だからって、コキ使いすぎだろ!」

(σ・∀・)「そんなに不満なら、今から懲罰に切り替えてもらう?
       きっとムチ打ちか、死なない程度の日干しで済むと思うからな」

('(ii゚∀゚∩て「水くみだいすき!! ろーどーほーしサイコー!!!」


少年は壺を手に取ると、一目散へと出口に向けて走りだす。
この街にほとんど馴染みのない少年には、井戸の場所はわからない。
しかし、少年にとってはモララーの手から逃れることが最優先だった。


(*-∀-).。oO(くそう。水くみ行くふりして、逃げてやる。ばーか、ばーか!!)

( ・∀・)「坊主、それが終わったら。
      ちょっと道具をさわってみるか?」


内心で考えを巡らせる少年に向けて投げかけられたのは、彼にとって予想もしなかった言葉だった。
水汲みにかこつけて逃げようとしていた少年の足が、ふと止まる。
その顔には信じられないという驚きの色が浮かんでいた。


(;゚∀゚)「え゛?」


.

891名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 20:22:27 ID:nnePnEts0


( ・∀・)「どうせ、商隊にくっついて来た宿なしだろう?
      その商隊も行っちゃって住むところもない、と」

(#゚∀゚)「な、それはお前が!」

( -∀・)σ「捕まったお前が悪い。盗っ人なんて、殺されたって文句は言えないんだからな。
       そもそも、この母者様のお膝元で盗みなんてしようとする方が馬鹿なんだよ」


モララーの言葉に、少年は悔しそうに顔を朱に染める。
そんな少年とは対照的に、モララーの表情は落ち着いていた。


( ・∀・)「まあ、細工でも何でもいいけど技さえ身につけりゃあ、少なくとも食うには困らないよ。
      こそ泥なんかよりも、そっちの方がよっぽど飯の種になるんだからな」


真っ黒い瞳で少年を見つめながら、モララーは淡々と話す。
モララーの常に笑顔を浮かべた口元は、その心情を容易に他人に読み取らせない。
それは人の女に手を出すのが好きという彼の悪癖によるものだったが、それを知らない少年にとっては恐怖そのものだった。


(;゚∀゚)「そ、そんなこと言ったってだまされねーぞ!」

( -∀・)「泥棒は嫌いだけど、この僕の細工に目をつけたのだけは褒めてやる。
      なんて言ったって僕の細工は、一流品だからな!」


.

892名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 20:25:33 ID:nnePnEts0


(#゚∀゚)「な、なんだよ変なやつ!」


少年は必死に反抗するが、それは怯えた犬が吠えているのとそう変わらなかった。
それでも少年はなんとかモララーよりも優位に立とうと必死で声を上げ、続くモララーの言葉に息を呑んだ。


( ・∀・)「この僕が何を言いたいかというと。
      ……働きによっては弟子にしてやってもいいってこと」

(;゚∀゚)「え?」

( ・∀・)「まぁ、どうするかは坊主の自由。
      いっとくけど、僕は男には厳しいから、覚悟するといいからな!」

( ゚∀゚)「……」


モララーの真意は、少年にはわからなかった。
しかし、それは少年にとっては何年かぶりに人から向けられた、正真正銘の好意だった。
甘い言葉は、大抵ろくでもない結果にしかならない。そもそも、モララーは何を考えているのかわからない男だ。

それでも、彼の言葉は少年にとって純粋に嬉しかった。


.

893名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 20:27:12 ID:nnePnEts0


(*゚∀゚)


少年の顔が赤く染まり、その顔に笑顔が浮かぶ。
どこか刺のあった顔つきは緩み、年相応の子供らしい顔つきとなる。
騙されるならそれでもいいやという思いで、少年は声を上げた。


(*゚∀゚)「師匠」

( ・∀・)「え?」



シショー ナニスレバイイー


                    チョ、オマエキガハヤインダカラナ


オマエジャナクテ、ツーダゾ!


                    ハイハイ



――それはまさしく、一人の職人の誕生の瞬間だった。


.

894名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 20:29:10 ID:nnePnEts0

広場の一番奥にあるツン=デレ商会では、金の髪の娘が所在無さげにうろついていた。
彼女は同じ場所で行ったり来たりを繰り返し、苛立ったように両手をばたばたと動かした。


ξ#゚⊿゚)ξ「あー、もう気になる!!!」

ζ(゚ー゚;ζ「もー、お姉ちゃん少しは落ち着いてよ〜」


そう声を上げたのは、彼女と面差しがよく似た娘だ。
彼女――デレは、先程から所在無さ気にしている娘――ツンの妹である。


ξ#゚⊿゚)ξ「何であの二人は、連絡の一つも寄越さないのよ!」

ζ(゚、゚;ζ「荒れるなぁ、もぅ……」


ツンは昨夜からずっとこんな調子だった。
一応、仕事には出ているものの、ずっと上の空。
昨日、兄者と弟者を街から送り出した時はよかったのだが、それからいくらたっても帰宅の報がないと知ったとたん、ツンの様子はおかしくなってしまった。
兄弟とはそれほど縁のないデレからすれば、姉がどうしてこれだけ取り乱すのかわからない。


ξ;゚⊿゚)ξ「兄者も弟者も、大丈夫だったのかしら。
       ……ねぇ、デレ。食料は足りたかしら? 水はちゃんと多めにしたわよね!!」

ζ(´、`;ζ「落ち着こうよぉ、お姉ちゃんー」


.

895名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 20:31:31 ID:nnePnEts0


ツンはひとしきり声をあげると、眉根を寄せ不安そうな表情になった。
いつもは毅然とした声は震え、今にも泣き出さんばかりだ。
そんな態度も、やっぱり姉らしくなくて。デレはこっそりと息をつく。


ζ(゚、゚;ζ.。oO(お姉ちゃん、私がいない時もこんな感じなのかな。
          ……遅くなる時は、気をつけよう)

ξ;゚⊿゚)ξ「本当に大丈夫かしら……」


そんな妹の内心には気づかずに、ツンは所在なさげに声を上げ続けている。
お客に対してはいつも愛想よく、しっかりしている姉だけに、その姿はデレにとってなかなか新鮮だ。


ξ;゚ぺ)ξ「……あいつら昔からよく厄介事に巻き込まれてたし。まさか」

ξ;゚⊿゚)ξ「何か事故とか、バケモノとか出てたらたらどうしよう。怪我とかしてないわよね?
       薬……薬を入れておけばよかった」


ξ; ⊿ )ξ オロオロ


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896名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 20:33:18 ID:nnePnEts0


ツンは再び、その場をうろうろと歩き始める。
歩きながらも時折あげる「どうしよう」という声は、普段の彼女とは打って変わって弱気だ。


ζ(゚ー゚;ζ「お姉ちゃんって、意外と心配性だよねー。
       大丈夫だって。兄者さんはアレだったけど、弟者さんしっかりしてたし」

ξ#゚⊿゚)ξ「あの二人だから、心配なの!!
       兄者は気を抜くと変なものを追いかけてどこか行っちゃうし、弟者は昔っからすぐ泣くし」

ζ(゚、゚;ζ「……お姉ちゃんの考え過ぎじゃない?
       兄者さんならともかく、弟者さんが泣くなんて、ありえないよー。冷静でかっこいいもん。
       それに二人とも一応、大人の男の人だよね?」

ξ-⊿-)ξ「……」


デレのとりなしに、ツンは足を止めた。
見れば、顔に浮かんだ焦りの表情はいつの間にか消えている。


ζ(゚ー゚*ζ「お姉ちゃん、少しは落ち着いた?」


ツンはデレの言葉にしばらく黙り込んだ後に、ようやく口を開いた。
しかし、ツンの眉はひそめられ、顔にはいぶかしむような表情が浮かんでいる。


.

897名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 20:35:23 ID:nnePnEts0

  _,
ξ;゚⊿゚)ξ「……デレ、まさかあの二人に惚れた?」

Σζ(゚、゚;ζ「お、お、お、お姉ちゃんしっかり!!!」


ξ;-⊿-)ξ「まさか、デレが。私のかわいいデレが、あんなのに惚れるなんて。
        でも、姉としては祝福しないわけには……。いやいやここは、止めるべきか」


ζ(゚、゚;ζ「お姉ちゃんがぜんぜん冷静じゃないってことはわかった。
       しっかりしてよ、お姉ちゃんー」

ξ;゚⊿゚)ξ「も、ものすごく冷静だし!」

ζ(-、-;ζ「えぇー」


ツンは冷静どころか、まともに頭が回っていない。こんな様子ではとてもじゃないが、仕事なんて任せられない。
デレは至極冷静に姉の今の状態を悟った。
もうこうなったら姉の心配事を解決しないことには、今後の仕事すべてに支障が出る。
そう理解したデレは、何とかして姉を普段の状態に戻せないかと計算を始めた。


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898名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 20:37:06 ID:nnePnEts0


ζ(゚、゚*ζ「……そんなに気になるなら、行ってみたら?」


――そして、計算の末に出されたのは、こんな言葉だった。


ξ;゚⊿゚)ξ「で、できるわけないじゃない。仕事中なのよ」

ζ(^ー^*ζ「ところがー、ここに流石邸へのお仕事があるんですー!
       流石邸の妹者お嬢様に、特別製のお菓子を手配!です」

ξ゚⊿゚)ξ「……あ」


デレの言葉に、ツンは不意をつかれたように声を上げた。
彼女の表情に驚きの色が浮かぶ。しかし、それはすぐに喜びの表情へと変わる。
それを好機とみたデレは、ツンの背中を押すように言葉を続ける。


ζ(゚ー゚*ζ「お姉ちゃんも、妹者お嬢様に何か用意してたよねー。
       それに、妹者お嬢様なら、兄者さんや弟者さんについてきっと知ってるんじゃないかなー?」

ξ*゚⊿゚)ξ「そっか、そうよね!!」


そう言うが早いが、ツンは棚から伝票を取り出すと凄まじい速さでめくりはじめる。
そして、お目当ての項目をみつけると、店の奥へと向かって駆け込んでいく。
出かけるための準備をしているのだろう。デレはそんなツンに向けて、イタズラっぽい笑顔を浮かべた。


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899名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 20:39:46 ID:nnePnEts0


ζ(゚ー゚*ζ「そうだ、お姉ちゃん!
       行くなら兄者さんに、今度一緒にお食事でもって伝えておいて」

ξ;゚⊿゚)ξて「まさか、デレ。本当に、バカ兄者に惚れ」

ζ(^ー^*ζ「ちがうってー、私と兄者さんと、弟者さんと。それからお姉ちゃんで行くの。
        うちのお姉ちゃんにこんなに心配かけたんだもの、兄者さんにはこれくらい奢ってもらわないと」

ξ゚⊿゚)ξ「……」


ツンはデレの言葉に、考えこむように足を止めた。
デレの位置からはツンの表情は見えない。
だけど、ツンが笑顔を浮かべたということが、デレにはなんとなくわかった。


ξ*゚⊿゚)ξ「そうね」


ツンの頬が、赤く色づく。
この砂漠には珍しい白い肌と相まって、彼女は何よりも魅力的だった。


ζ(゚、゚*ζ.。oO(お姉ちゃんって、けっこう面倒な性格だよね。やれやれ)


ツン=デレ商会から荷台を抱えたツンが外へと飛び出していったのは、それからほんの少ししてからだった。


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900名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 20:41:47 ID:nnePnEts0

  _
( ゚∀゚)「よう、ツンちゃん。今日はこれから遊びに行くの?」

ξ゚⊿゚)ξ「仕事よ、仕事!」


知り合いへの挨拶もそこそこに、彼女は歩き始める。
ツンの歩みは、はじめはゆっくりと。しかし、その足は徐々に早まり、とうとう走り始める。


( `ハ´)「おじょーちゃん、ウチの香辛料買うよろし!」

( ゚∋゚)「ヤキトリ クエ」

J(*'ー`)し「カーチャン特製、手作りパンもあるからねー」

从;'ー'从「ふぇぇー」


朝最後の稼ぎどきとばかりに盛り上がる露天の数々を抜け。
職人街の脇を駆け抜け、湖のすぐそばを通り過ぎるが、彼女の足はその速さを緩めない。


ξ*゚⊿゚)ξ「今度あったら、とっちめてやるんだから」


――目指すは流石邸。
腐れ縁の兄弟と、その妹の元へと彼女は急ぐ。


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901名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 20:43:37 ID:nnePnEts0
――――――――――――――――


“流石”の街から少し離れた、小さな町。
湖はない代わりに、大きな井戸がいくつかあるその町で一人の男が声を上げた。


<#ヽ`∀´>「アイゴー!!
       何でウリがかくも艱難辛苦をぉぉ――!!!」


そこは、東方の料理を出す食堂だった。
男とその連れの少女は、路銀を稼ぐべく昨夜からここでお世話になっていた。
叫び声を上げる男――ニダーの手には、湯気を立てる竹製の蒸籠が握られている。


(゚A゚# )「ニダやんうっさい!!」

ΣΓ<`Д´*;>Γ 「アイヤー!!」


少女の頭につけられた、真新しい花の飾りがきらりと輝く。
よく似合っている、とニダーが思ったその瞬間。少女の体から、ニダーめがけて蹴りが放たれていた。
宙を浮いた彼女の体は、見事にニダーの尻に強烈な一撃を加える。


ttp://buntsundo.web.fc2.com/ranobe_2012/illust/30.png


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902名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 20:45:33 ID:nnePnEts0


(゚A゚* )「そないしゃべらはったら、お客さんたちに迷惑やろ!」

<`Д´*;>「のののののーちゃん!!」

(゚A゚# )「ウチらはろくな荷物もお金もないんよ。ここクビになったら、どないしはる気?
     大事なお金で、こないな花飾りなんて買うなんて、ニダやんはほんまにアホやなぁ」


昨日、襲いかかったはずの弟者に返り討ちにあった彼らは、この小さな町にたどり着いた。
大きな井戸のあるその町は小さかったが、それでもしっかりと施設がそろっている。
そこでニダーが真っ先にしたのは、髪飾りをのーへと買い与えることだった。
弟者によって壊されたのーの髪飾り。それによく似た花の飾りをニダーは選んだ。


<;ヽ`∀´>「アホってウリをそんな、無為無能、無芸無能の無知蒙昧みたいに」

(゚A゚* )「そんなむつかしいこと言わはっても、ウチはごまかされんよ」


それは、のーを守り切れなかったことに対する、彼なりの謝罪の気持ちだった。
のーも、それに気づいていたのかもしれない。
ニダーの無計画さを叱りながらも、贈り物の髪飾りを大切そうに身につけ続けている。


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903名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 20:47:54 ID:nnePnEts0


(゚A゚# )「はよ、お客さんにこれ運ぶ!」

<ヽ`∀´>「ううっ……なんでウリがこんな薪水之労を……」

(゚A゚* )「ニダやんがアコギなことばっかしとるからや。
     これにこりたら、まっとうな仕事をせんとあかんよ」


東方の民は同胞には、寛容だ。
しかし、いつまでろくに働こうとしない者をいつまでも養ってくれるほどは甘くない。
ここから先の生活は、自分たちの力で成り立たせなければならないのだ。


(゚A゚* )「……あれが外れたら、まだいいお金になったんやけど」

<ヽ`∀´>「のーちゃん……」

( A  )「堪忍な、ニダやん」


少女の裾の下では、水晶がはめ込まれた腕輪が輝いている。
魔力を封じるこの銀の腕輪は、彼らが何を試しても外れなかった。
これがあるかぎり、のーは普通の少女と変わらない。魔法の使えない彼女は、単に口が達者なだけの足手まといだ。


<ヽ`―´>「……」

( A  )「ウチがいなければ、ニダやんはもっと楽に」


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904名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 20:50:07 ID:nnePnEts0


<ヽ`∀´>「……ウリを見くびるのはのーちゃんでも、許さんニダ。
      ウリは才気煥発、全知全能の天才ニダ! ウリ一人でものーちゃんくらい、養えるニダ!!」

( A゚*)「……」


ニダーの手が、のーの頭に置かれる。
そのままぐりぐりと撫で回すと、あちちと声を上げながら蒸籠を抱え直す。


<ヽ`∀´>「ウリはウリのしたいことしかしないニダ!
      のーちゃんがなんと言ったって、絶対についてきてもらうニダ!!」

(゚A゚* )「ニダやん……」

<*ヽ`∀´>∩「まず手始めに、伝説の料理人としてのし上がるニダ!
        そうと決まったら、誠心誠意働くニダ!!」


のーが笑顔を浮かべるのを、ニダーは満足そうな顔で見た。


( ;曲;)「いい話じゃねぇか」

(;TДT)「……饅頭冷めてる」


小さな町の昼下がり。
元盗賊の男と、魔法使いだった少女の話は、まだまだ続きそうだ。


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905名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 20:52:12 ID:nnePnEts0
――――――――――――――――


ソーサク遺跡の最奥部。
草がなびく草原に、幾人もの人影が集まっていた。
人影の中にはギコの他に、しぃやでぃの姉妹の姿もある。


(*゚ー゚)「ギコくん、こっちをお願い」

(,,゚Д゚)「わかった。ちょっと待ってろ!」


ギコは掛け声を上げると、岩を持ち上げる。
その岩の固まりは、ゴーレムの欠片だ。
見た目はただの岩と変わりないが、それが動き出したらどうなるかは考えるまでもなく明らかだ。


<_フ;゚ー゚)フ「重い」

(;=゚ω゚)ノ「しっかりだよぅ!」

('(;゚∀゚∩「……つかれたよ! たよ!」


ギコと同時に岩を持ち上げた男たちが、呻き声をあげる。
それを見て、しぃは少しだけ苦笑いを浮かべた。


(#゚;;-゚)「これが……動いた……の?」

(*゚−゚)「ええ、そうみたい」


.

906名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 20:54:53 ID:nnePnEts0


彼らは今、ソーサク遺跡にそびえ立つ神殿の再調査に来ていた。

ソーサク遺跡の中でも神殿と呼ばれる第一史跡は、真っ先に調査対象となった遺跡だ。
この最奥の間にもこれまで何度も調査の手が入り、大体調査し尽くしたと思われていた。
しかし、その考えは、昨日の兄者と弟者の一件で大きく崩れた。


(# ;;- )「……こんな、……こわいこと、……あったなんて」

(;=゚ω゚)ノ「で、でぃさんのせいじゃないよぅ」

('(;゚∀゚∩「でぃちゃん、元気だすよ! だすよ!」


そして、本日改めて調査した最奥の間は、かなり荒れ果てていた。
部屋の中にはゴーレムの欠片が散乱し、土や草は踏み荒らされ、血が染み込んでいる。
焼け焦げた最奥の壁、祭壇の周辺は割れた壺や燭台が散乱し、床に描かれた図式が刃物でめちゃめちゃにされている。

……神殿に据えられた鏡も壊されていたが、こちらについては弟者がやったと事前に聞いていたため、ギコもしぃも特に口にはしなかった。


<_フ;゚Д゚)フ「巻き込まれたの、母者様の息子だろ?
          すげぇ。母者様だけじゃなくて、息子も腕が立つんだな」

(# ;;- )「……」



.

907名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 20:56:47 ID:nnePnEts0


<_プー゚)フ「大丈夫だって、でぃちゃん。
        笑いながら帰ってったんだろう? しかも、竜に乗ってとか。大した野郎どもだぜ」

(# ;;- )「……でも、……私、……弟者さんにここは怖くない……って。
     それに、……ギコさん連れて行ったの……私っ」


沈み込んだでぃをなぐさめるように、調査隊の仲間たちが声を上げる。
だけど、でぃの言葉は弱々しく今にも泣き出さんばかりだ。


(,,゚Д゚)「元気を出せよ、でぃ。あんなことが起こるなんてだれも予想できん。
     大体悪いのはお前じゃなくて、どっちかって言うとあのクソ女の方で」

(*^ー^)「ギコくん?」

(,,;゚Д゚)「だってそうだろ? あの女のワガママさえなきゃ、俺だっていっしょに遺跡へ……」


(=゚ω゚)ノ「ギコはこーんな岩のかたまりと戦えるのかよぅ」

(,,; Д )「ぐ」


ギコはごにょごにょと言葉を返そうとしたが、思わぬ所から飛んできた声に声を失う。
悔しそうな表情を浮かべ、言葉を投げかけてきた相手――ぃょぅを睨むが、笑い声で返されてしまった。


.

908名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 20:59:04 ID:nnePnEts0


(,,;゚Д゚)「でもだな、オレがいるといないじゃ」

(*゚ー゚)「――ところで、ギコくん。
     でぃから聞いたんだけど、姉者に言われた『例のこと』って何かしら?」

(,,;゚Д゚)「え、あ?」


なおも何かを言おうとしたギコの言葉は、しぃの声によって遮られた。
しぃは普段と同じ穏やかな表情で話しかけている。口調だって普段と変わらない。
しかし、その声だけは刺々しかった。


(*^ー^)「ギコくん。何か隠していることがあるなら、私に教えてほしいなぁ。
     それとも、私たちには言えないことなのかしら?」


しぃは笑顔を浮かべた。
元から柔らかい印象のある彼女だが、笑みを浮かべると表情が幼くなり、柔らかい印象がさらに強くなる。
が、彼女がたった今浮かべている表情は、なぜかその柔らかさが見えない。
一体何故だろうと考え……、


(*^ワ^)「ねぇ、ギコくん」


ギコは悟る。……これは、怒っているときの顔だ。
しぃは確実に怒っている。そして、怒りだした女は大抵、手に負えない。


.

909名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 21:01:13 ID:nnePnEts0


(#;゚;;-゚)「……お姉……ちゃん……?」


姉の異変に気づいたのか、でぃは恐る恐る声を上げる。
しかし、しぃは妹に対して何の答えを返さなかった。
しぃの足元で、じゃりりと地面が音を立てる。



(,,;゚Д゚)「……」

(*^ワ^)「……」


('(゚∀゚∩「どうしたのかな? かな?」

<_フ;゚ー゚)フ「ちょ、なおるよは黙ってろって」


しぃとギコは無言で黙りこむ。
なぜだか知らないがしぃは怒っている。しかし、だからといって自分の秘密を暴露するほどギコは思い切りが良いわけではない。
そもそも話すにしても、これだけ人がいるとなると話せるものも話せない。

どうする、どうする俺!!――ギコはそう悩んだ末、


(,,;゚Д゚)「そ、そ、そういえばラクダの具合はどうだったかなー」


戦略的撤退を選択した。


.

910名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 21:03:13 ID:nnePnEts0

(#;゚;;-゚)「あ、……アラマキさんと、ナカジマさんなら……」


突然、ラクダと言い出したギコに、でぃは小さく声を上げる。
家畜の世話はみなで交代をしてやっているが、その中でも一番頻度が高いのが動物好きのでぃだった。
特に荒巻と、中嶋の二匹は昨日でぃが預かったばかりだ。彼らの様子ならば、でぃが一番詳しかった。


(,,;^Д^)「いやー、ちょっと様子でもみてこようかなぁ。
      あのがめついクソ女のことだから、ウチのラクダ返せって言いかねんからゴルァなー」

('(゚∀゚∩「わざとらしいよ! らしいよ!」

<_フ;゚ー゚)フ「あんにゃろ、逃げる気だぞ!」

(;=゚ω゚)ノ「つかまえるんだょう!」


ギコは言うが早いが、岩を放り投げ走りだした。
しぃや、仲間の男たちがギコを止めようと声を上げるが、ギコはそれを振り切り扉へ向かって駆け出す。
彼の足元で草が揺れ、涼しい風がギコの青い毛並みを揺らしていく。


(*゚ 、゚)「もう。逃げても、また後で顔を合わせるのに……。
     良くも悪くも正直なのよね、ギコくんって」


ギコの姿はもう扉の向こうへと消えていた。
ギコを追いかけて何人かが仕事を放り投げて出て行ったが、きっとギコには追いつけないだろう。


.

911名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 21:05:29 ID:nnePnEts0


(#;゚;;-゚)「……あのね、……お姉ちゃん」

(*゚ー゚)「ん? どうしたの、でぃ?」


扉に向けて軽く溜息をつくしぃに、でぃは恐る恐る声を上げた。
でぃにとって姉は、誰よりも綺麗で優しくて、そして引け目を感じる存在だ。
だから、でぃはしぃに話しかけようとすると、なかなか上手く声が出せない。
しぃだけではない。でぃはいつだって、人とうまく話すことが出来ないのだ。


(#゚;;-゚)「……ギコさん……ゆるしてあげて……」

(*゚ー゚)「どうして?」

(# ;;- )「……ギコさんは、……私を、……かばって……くれただけ……」

(*゚ー゚)「……そう?」

(#; ;;- )「そう。……それに、……お姉ちゃんも」


しぃはでぃの途切れ途切れの言葉を、聞いていた。
相槌をはさみながら、それでも急かすこと無く、彼女はただ妹の言葉が続くのを待った。
何度も言葉をつまらせながら、でぃは懸命にしぃへと訴えかける。


(#; ;;- )「……私が元気ないから……話、変えてくれた……ん、だよね…」


.

912名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 21:07:04 ID:nnePnEts0


でぃの言葉に、しぃは笑顔を浮かべる。
その表情はギコに向けていた時よりもずっと柔らかく、優しい瞳をしていた。


(*^ー^)「さあ、どうかしら?」

(#゚;;-゚)「……ありがとう、お姉ちゃん」

     
(*^ー^)ノ( ー;; #)


しぃは返事をする代わりに、妹の頭を撫でた。
でぃの口元がかすかに緩み、ぎこちない笑みを浮かべる。それを見て、しぃはさらに微笑んだ。


(#゚;;-゚)「あのね……私も、……アラマキさんのとこ、……行っていい?」

(;゚ー゚)「うーん。ギコくんも、エクストくんたちも行っちゃったから、しばらくは休憩のつもりだけど。
    ……でも、急にどうしたの?」

(#*゚;;-゚)「……みんなにね……庇われるだけじゃなくて……自分もがんばりたい、の。
     それに……兄者さんと弟者さんに、……アラマキさんたち頼まれたの……私、だから」


たどたどしいけれど、真剣にでぃは告げる。
緊張と興奮で顔を赤らめた彼女は、姉によく似ていた。


.

913名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 21:09:16 ID:nnePnEts0




神殿と呼ばれる建物から外に出た先。
調査隊が本部として利用する天幕から少し歩いた場所で、ラクダやロバは飼育されていた。
しぃの追求や、追いかけてきたエクストから見事に逃げ切ったギコは、一息つくとターバンを整えた。


( "ゞ)「よう、ギコ。どうした?」

(,,;゚Д゚)「どうしたもこうしたもあるか。いろいろ言われるから逃げてきた。交代だ交代!」
  _,
( "ゞ)「サボりの片棒は勘弁なんだが」


調査隊の一員でもある男はギコに悪態を付きながらも、大して不機嫌そうな様子ではなかった。
それどころか上機嫌な様子で、「後は任せた」と声を上げると、ギコが来た神殿の方に歩き始めた。


(,,゚Д゚)「俺はどっからやればいい?」

( "ゞ)「餌やっといて」

(,,;-Д-)「わかった。お前があっさり、交代するはずだ」


ソーサク遺跡には家畜の数が多い。
調査隊の面々の移動手段や運搬役として連れてきたものもいるが、大半は遺跡を調査するための条件として飼育しているものだ。
本部のそばに植えている植物同様、環境調査の一環らしいが、その数は増えに増え世話も大変になってきている。


.

914名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 21:11:40 ID:nnePnEts0


( "ゞ)「あとは任せた」

(,,-Д-)「へいへーい」


男――デルタを送り出すと、ギコは並ぶラクダやロバの群れを眺めた。
威嚇しあったり、座り込んで眠っていたり、繋がれた紐から逃れようと動きまわったりと、家畜たちは思い思いの行動をとっている。
こいつら全部に餌をやるのかと、ギコは内心うんざりする。が、交代するといった以上は、サボるわけにも行かない。


(,,゚Д゚)「えっと、あらまきと、なかじま?……だったか?」


ここにいる家畜には識別表が付いている。
しかし、兄弟から預かった二頭のラクダにはそれが無いはずだ。
ギコはラクダたちに視線を走らせ、そして見つける。

荒巻と、中嶋。

二頭のラクダは、ラクダの中でも一際温厚そうな顔つきして、地べたに座り込んでいた。
そして、何をしているのかといえば、のんびりと眠りこけている。


(,,゚Д゚)「おーい、お前ら元気かー? 死んでないかー?」

/ ,' 3


ギコの声に、荒巻のほうが軽く目を開ける。
彼もしくは彼女は、しばらくギコの姿を眺めていたが、すぐに興味をなくしたかのように再び瞳を閉じる。



.

915名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 21:13:36 ID:nnePnEts0


(,,゚Д゚)「ま、死んではないみたいだな」


荒巻と中嶋は死んでないどころか、大いに暇を楽しんでいるようだ。
ざっと見た限りでは、おとなしい気性のようだし、他のラクダたちとも上手くやっていけるだろう。


(,,゚Д゚)「まぁ、気楽にやれや」


ギコはそう呟くと、空を見上げる。
最奥の間の柔らかい日差しと違って、外の日差しは暴力的なまで強い。
そんな日差しに焼かれながら、ギコはどうやってしぃをごまかそうと考え始める。


(,,;-Д-)「しぃのヤツ何が、『何か隠していることがあるなら、教えてほしいなぁ』だよ。
      言えるわけねぇだろうが、……」


(,,* Д)「しぃが好きだなんて……」


ボソリと呟いた、ギコの顔は赤い。
他人から見れば大したことのないことだが、ギコにとっては一世一代の問題だった。
できればしぃと所帯を持ちたいギコにとって、彼女への愛の告白はその後の人生を左右するものだ。


.

916名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 21:15:32 ID:nnePnEts0

なのに、だ。

姉者はよりにもよって、ギコの一生の問題を、からかいのネタとして事あるごとに持ち出すのだ。
むしろ、この話をチラつかせれば、ギコが何でもいうことを聞くと思っているフシすらある。
それはギコにとって、どうしても我慢ならない事だった。


(,,;Д;)「畜生、俺のこの思いを散々弄びやがって」


姉者=流石。
あの女は悪魔だと、ギコは思う。
どれだけ乳がでかかろうが、腰は細いのに肉付きのいい尻と、むっちりとした太ももをしていようが、そんなのギコには関係ない。

そりゃあ、あの女の本性を知らないガキだった頃は、たしかに騙されかけたこともある。
しかし、そんなことは知ったことか。


( ,'3 )


荒巻が、そして中嶋が迷惑そうに鳴き声を上げたが、ギコの言葉は止まらない。


(,,#゚Д゚)「あのクソ女ぁぁぁぁぁっ!!!!!」


ソーサク遺跡の只中、砂埃によってくすみながらも、なお青い空にギコの声が響いた。


.

917名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 21:18:16 ID:nnePnEts0
――――――――――――――――


∬´_ゝ`)「――何か今、妙な声が聞こえたような気がする」


“流石”の街で一際目を引く建物、流石邸の一角で女は呟いた。
波打つ豊かな髪に豊満な体つきをした彼女は、街を切り開いた女傑・母者=流石の最初の子供である。
名は、姉者=流石。兄者と弟者。そして、妹者の姉である彼女は、兄弟によく似た面差しの顔を少しだけ曇らせた。


|゚ノ ^∀^)「どうかしましたか〜、姉者様?」

∬´_ゝ`)「なんでもない。どうせ大したことじゃないわ」


彼女に声をかけたのは、金の髪に赤い髪留めをした女性だった。
レモナという彼女は、兄弟の妹である妹者の家庭教師を勤めている。
明るい顔をした彼女の頭の上で、白い猫の耳がピクリと揺れる。そんな彼女に向けて、姉者は声を上げた。


∬´_ゝ`)「そうだ。今日の午後からの、家庭教師はお休みね」

|゚ノ ^∀^)「あら、そうですか。いかがいたしました?」

∬´_ゝ`)「ああ、別に何か起こったわけでも、貴女の仕事ぶりに不満があるわけではないの」



.

918名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 21:21:46 ID:nnePnEts0


姉者の刺のある口ぶりに、レモナの表情が心なしかこわばる。
ともすると鋭い言葉を放つのは、姉者の悪い癖だった。
その傾向は、彼女と親しくなればなるほど強くなっていっている気がする。


|゚ノ;^∀^)「……そうでしたら、よいのですが」

∬´_ゝ`)「あら、ごめんね。本当に他意はないの」


姉者の真意を読み取ろうと、レモナは表情を引き締める。
しかし、彼女の顔は平然とした表情のままで、何の感情も読み取れない。


|゚ノ;^へ^)「ほんとですか?」

∬´_ゝ`)「ええ、本当よ」


レモナが恐る恐る口にした言葉は、姉者にある変化をもたらした。
姉者の口元が緩み、その顔に柔らかな笑顔が浮かんだのだ。
その笑顔に、レモナは今度こそ本当に息を呑んだ。

……姉者は普段、母者の後継者としての勤めからなのか、あまり感情を表情に出そうとはしない。
しかし、その時の彼女は本当に嬉しそうに、無邪気な子供のように笑って告げた。


∬*´_ゝ`)「だって今日は、妹者の――」


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919名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 21:23:22 ID:nnePnEts0
――――――――――――――――


“流石”の街を取り仕切る役場は、火でも出たかのような大騒ぎだった。
大商隊こそ出立したものの盗賊への警戒や、天候悪化の場合の対処は絶やせない。
商隊が持ち込んだ物資の流通や、周辺の町への分配、通常業務への切り替えと、考えなければならないことも多い。

仕事はいくらでもあった。
しかし、それ以上に忙しさに拍車をかけているのは、ひとえに母者側の事情によるものだった。


 @@@
@#_、_@ 
 (  ノ`) 「今日は誰がなんと言おうとも、さっさと帰るよ!」


母者はこともあろうに、この状況の中で帰ると言い放ったのだ。
普段ならば、この役場には流石夫妻か姉者のうち誰かが滞在するようになっている。
しかし、今日に限っては流石家の者は誰も役場には残さないと言い放ったのだ。


(;´・ω・`)「これを夜までに片付けろなんて無理ですよぉぉ!!!」


母者の言葉が嘘ではないと示すように、共に朝まで働いていた姉者はすでに流石邸へと戻ってしまっている。
その中でもなんとか役場は動いていたが、とうとう忙しさに精根尽き果てたように、青年が嘆きの声を上げた。
困ったように下がった眉をしたこの青年は、若くして母者の仕事を支える補佐官の一人である。


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920名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 21:26:13 ID:nnePnEts0


 @@@
@#_、_@ 
 (  ノ`) 「いいから手を動かしな!! 何のために、昨日休みをくれてやったんだい!!」

(;´・ω・`)「わかってますけど、無理なものは無理です!!」

(`-ω-´)「諦めろショボン。そんなことで、母者様が止まるはずがないだろう。
       儂らはおとなしく、街のために働くのみだ」

(;´-ω-`)「……父上」


なおも無理だと言い募る青年の肩を、よく似た面差しの年かさの男が叩く。
青年の父親でもある彼は、街の成立当初から母者を支える重鎮だった。
父親に諭されて、青年は半ば泣きながら仕事へと舞い戻っていく。


(;´-ω-`)「昨日はせっかく精霊様を見たっていうのに、ついてない」

(`・ω・´)「ショボン、次はこっちの書類だ!」

(´;ω;`)「はーい」


泣きながらも書類仕事をこなす青年や、他の役人たちの姿を見て、母者は大きく溜息をついた。
ここで働く者達は仕事ぶりは悪くはないのだが、根性のない者が多い。
これが文官のさがというものだろうかと考えてみるが、母者にはいまいち理解の及ばない領分だった。


.

921名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 21:28:45 ID:nnePnEts0

 @@@
@#_、_@ 
 (  ノ`) 「まったく。あたしらがいないと仕事の一つや二つ片付けられないっていうのかい」

 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「母者さん、落ち着いて。
      みんな疲れちゃってるだけなんだよ」


そう漏らした母者をなだめたのは、彼女の夫である父者だった。
母者はその声に、じっと父者を睨みつけはじめた。
母者はこの街を作り上げた立役者であり、並みの兵士じゃ太刀打ちできないほどの腕の持ち主だ。
父者もそれは身にしみている。だから、彼女に睨みつけられるとわけもなく緊張するのが、彼の長年の習性だった。


 @@@
@ _、_@ 
 (   ノ`) 「……」

.彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「ど、どうしたのかな。母者さん……」


夫を睨みつけたまま何も言おうとしない母者に向けて、父者は恐る恐る声を上げた。
父者の顔色は悪く、その声はみっともないまでに震えていたが、それを笑うような輩はこの場にはいなかった。
彼らにとっても母者は頼りになる主であると同時に、恐ろしい存在なのであった。


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922名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 21:30:28 ID:nnePnEts0


 @@@
@ _、_@ 
 (* ノ`) 「ダーリン。あんたって人は、本当にやさしいね」


そして、母者は沈黙の末にそう言った。
彼女の声は甘く、瞳も熱く潤んでいる。どうやら彼女は夫を睨みつけていたのではなくて、単に見惚れていたようだ。
母者のその言葉に、懸命に仕事をこなしていた何人かが、ぎょっとしたように目をむいた。


.彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「母者さん。ダーリンっていうのは、せめて二人っきりの時くらいに…… ヒトガミテルシ」


(´゚ω゚`).。oO(ダーリン!? ダーリンって)

(;`-ω-´)「息子よ。何が言いたいかはわかるが、決して口にはするな」

ハハ;ロ -ロ)ハ「……父者様スゴイ方、思マス」


彼らの驚きは、母者の「ダーリン」という言葉を父者自身が否定しなかったことによって、頂点に達した。
もはや仕事の手はとうの昔に止まっている。
黙り込んだ一同の心に浮かぶのはみな同じような言葉だったが、幸いな事に母者は気づかなかった。


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923名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 21:32:05 ID:nnePnEts0


 @@@
@ _、_@ 
 (* ノ`) 「やだよぅ、恥ずかしいじゃないかい!」

.彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「は、はは……」


父者は妻の言葉に乾いた笑いを上げるが、助け舟を出すものは誰もいない。
誰もが流石の街を支配する女傑の、意外な姿に言葉を失っている。


 @@@
@#_、_@ 
 (  ノ`) 「にしても、いつになったら一段落つくのかねぇ。
       あたしゃさっさと帰りたいよ」


母者はひとしきり父者の背をバシバシと叩くと、ため息をついた。
もうそこには、少女のように顔を赤らめていた先ほどまでの面影はない。
母者は戦場に立つ武人のように毅然とした面持ちで、そこに立っている。


 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「大丈夫。みんなで力を合わせれば絶対にできるよ、母者さん」

 @@@
@ _、_@ 
 (   ノ`) 「そうだといいんだがね」


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924名も無きAAのようです:2013/12/09(月) 21:34:10 ID:nnePnEts0
※44


母者は腕を組んで唸り声をあげる。
言葉だけ聞くと諦めているようにも見えるが、彼女の立ち姿は誰よりも自信に満ちていて、諦めなど微塵も感じられなかった。


 @@@
@#_、_@ 
 (  ノ`) 「まあ、無理だと言われたって帰るんだがな」

.彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「それはもうちょっと頑張ってからにしよう、母者さん」


父者が恐る恐る上げた声に、母者が「がはは」と笑い声をあげた。
ひとしきり笑うと、母者は「わかってるよ」と声を上げ、書類に印章を押した。


 @@@
@#_、_@ 
 (  ノ`) 「アタシが仕事放り投げたとあっちゃ、大騒ぎだからね。
       こうなったら意地でも終わらせて、晩までには帰るよ」

 彡⌒ミ
(*´_ゝ`)「そうだね、母者さん。だって、今日は――」


父者の嬉しそうな声が、部屋に響く。
その言葉は慌ただしい役場の中に一時の癒やしをもたらしたそうだが、真偽は明らかではない。



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