[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
1-
101-
201-
301-
401-
501-
601-
701-
801-
901-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
レス数が900を超えています。1000を超えると投稿できなくなるよ。
( ´_ゝ`)デザート×キャラバンのようです(´<_` )
1
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 19:46:34 ID:tFLjG.4M0
ラノベ祭り参加作品
356
:
名も無きAAのようです
:2013/04/21(日) 21:50:36 ID:M.Sc.APo0
(*^ワ^)「ちゃんと見つかるといいわね」
( ´_ゝ`)b「任せておけ!」
兄者が親指を立てて、しぃに笑いかける。
そのやりとりをずっと無言で眺めていた弟者は、会話が終わりと見るとようやく声を上げた。
(´<_` )「……よくわからないが、どうやら話がまとまったようだな」
( ^ω^)b「そうみたいだお」
('A`*)「しぃさんの笑顔……すばらしぃ」
ギコは槍斧の柄を肩で支えると、そのまま出入り口へ向かい歩き出す。
「もう行くの?」というしぃの問いかけに、「ああ」と短く答えると、ギコは敷物の上で座り込んでいる兄弟を見やった。
ギコの動きに兄者は慌てて残っていた茶を飲み干し、弟者は出されていた茶菓子の残りをたくしへと放り込む。
(,,゚Д゚)∩「よし、行くぞ坊主ども……と、精霊だったか?」
( ^ω^)∩「そうだお! ブーンは精霊だお!」
('A`)「こうやって数に入れてもらえるのはいいもんだな……」
(,,^Д^)「とっておきの場所に案内してやる!」
.
357
:
名も無きAAのようです
:2013/04/21(日) 21:52:45 ID:M.Sc.APo0
――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――
(;´_ゝ`)「とっておきとは聞いてはいたが……」
(´<_`;)「まさか、この中だと言うのではないだろうな」
(,,゚Д゚)「いいや、これがそのとっておきの場所だ。
しぃも言っていただろ、神殿の探索許可を出すってな」
しぃと別れ、ギコの後について進んだ先。
目の前にそびえ立つ白い建物の姿に、兄弟たちは言葉を失った。
“流石”の街からも見ることのできるそれは、ソーサク遺跡においてもっとも大きく、象徴的な建物であった。
(*^ω^)「あ、さっき近くを通ったとこだお!」
('A`)「一体なんなんだろうなぁ、これは……」
太陽の日差しをうけてまばゆく輝く白い外壁は、“流石”の街を取り囲む城壁よりもはるかに高い。
東方とも西方とも、もちろん“流石”の街で見かけるどの建物とも違う独特の造り。
建物の正面と思しき場所からは、大階段がまっすぐ地上へ向けて伸びている。
.
358
:
名も無きAAのようです
:2013/04/21(日) 21:54:26 ID:M.Sc.APo0
(,,゚Д゚)「ソーサク遺跡郡、第一史跡。オレたちは単純に神殿と呼んでいる」
ギコはその大階段を慣れた調子で上がっていく。
古く見えるもののしっかりとした造りらしく、ギコの体重がかかっても、びくともしない。
ギコの後ろをドクオを肩にのせた兄者と、ブーンが続く。
(´<_` )「ここが神殿?」
(,,゚Д‐)「そう呼んでるってだけで、実際のところはわからねぇ。
しぃが言うには魔王時代よりもずっと前の宗教施設か何かじゃないかって話だが、詳しいことはまだこれからだな」
( ´_ゝ`)「ふむ。魔王時代よりも前となぁ……」
白い石造りの建物は古くはあるものの、兄者の目にはそれほど昔の建物に見えない。
柱も階段も壁面も、崩れ落ちているところは殆ど無い。
目を凝らしてみると、白いばかりに見えた壁には蔦と動物の浮き彫りが施されているのが見えた。
( ^ω^)「その頃ならたぶん、ブーンはいたお……」
('A`)「魔王時代って魔王のやつがいた時代か?
……それより前だと、オレはまだ存在もしないぜ」
(;´_ゝ`)「おお、ブーン者。お前はなんと長生きなのだ……」
.
359
:
名も無きAAのようです
:2013/04/21(日) 21:55:50 ID:M.Sc.APo0
(,,-Д-)「何だか話し中のようだが、言い忘れてたから改めていうぜ」
階段を登り切った先。
柱と柱にはさまれた入り口らしき空間で、一足先を進んでいたギコが振り返る。
( ´_ゝ`)「ん、どうしたギコ者?」
(´<_` )「何か問題でも?」
(,,゚Д‐)「いいや、別にそう大したことじゃねぇから安心しろ」
強い日差しと石材の作り出す影に阻まれて、その内部は上手く見通せない。
しかし、その内部には彼らが見たことのない光景が広がっているのだろう。
それは兄者にとって。いや、弟者やブーンたちにとっても心躍らせるものに間違いなかった。
(,,゚Д゚)「――ようこそ、ソーサク遺跡へ」
青い尻尾を器用に動かしながら、白い歯を見せてギコは笑う。
兄弟はそれに一瞬、顔を見合わせると大きく吹き出した。
(´<_` )「ああ、それを言い忘れていては大変だ」
(*´_ゝ`)b「改めて頼むぞ、ギコ者」
旅に出ようと兄者が言い出してから、二刻と半分ほど。
――ついに彼らはソーサク遺跡の中心部へと足を踏み入れたのだった。
.
360
:
名も無きAAのようです
:2013/04/21(日) 21:56:49 ID:M.Sc.APo0
そのご。 ようこそ、ソーサク遺跡へ
おしまい
.
361
:
名も無きAAのようです
:2013/04/21(日) 21:59:31 ID:M.Sc.APo0
今日の投下ここまで!
あと、オマケは明日に延期しますスマン
362
:
名も無きAAのようです
:2013/04/22(月) 03:33:55 ID:9AighLFs0
投下乙ですー!
ついうっかり、にやにやしながら
読んじゃったじゃないか!もう!!
オマケも楽しみにしてますね!!
363
:
名も無きAAのようです
:2013/04/22(月) 16:16:15 ID:SZAsvJmkO
おつおつ!
兄者無邪気だなあ
364
:
名も無きAAのようです
:2013/04/22(月) 16:16:47 ID:zjkA5JFk0
おつ面白い
365
:
名も無きAAのようです
:2013/04/22(月) 18:29:24 ID:JZoTeZAU0
乙ですん
兄者は好奇心に殺されそうな
366
:
名も無きAAのようです
:2013/04/22(月) 21:19:02 ID:PZ9eifmM0
オマケ投下するよー
367
:
名も無きAAのようです
:2013/04/22(月) 21:19:55 ID:PZ9eifmM0
.⊆二二⊇
/ \
。 * 。  ̄| ̄ ̄ ̄| ̄
:: /⌒ヽ * | 从 |
:: ( ^ω^) :: * | (.ィ, ).|
*゚ :: ⊂二 二⊃ ::。 [ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄]
゚ :: /,| |、\, ::: } ・ ・{
::゚ |/:Lノ^Lノ \| ::: * [_____]
おまけ劇場 l从・∀・ノ!リ人 でざーと×しすたーのようです
.
368
:
名も無きAAのようです
:2013/04/22(月) 21:21:04 ID:PZ9eifmM0
l从・∀・*ノ!リ人「お腹いっぱいなのじゃー」
∬*´_ゝ`)「うん。たまには作るのもいいかもね」
l从-∀-ノ!リ人 うとっ
∬´_ゝ`)「そういえば、妹者。愚弟どもはどうしたの?
兄者はいつも休みみたいなもんだけど、今日は弟者も休みのはずでしょ」
ハッ Σl从・∀-;ノ!リ人
l从・∀・;ノ!リ人「え、えーと」
l从-∀-;ノ!リ人.。oO(えっと、おっきい兄者たちは……)
.
369
:
名も無きAAのようです
:2013/04/22(月) 21:23:17 ID:PZ9eifmM0
;'⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ 、_ノ⌒ 、_ノ⌒ 、_ノ⌒ 、_ノ⌒ 、_ノ⌒ 、_
/ )
( (;´_ゝ`)「よーし、妹者。俺たちが中庭の花を踏んだことは内緒だぞ」 (
) )
( (´<_` )「おい待て、兄者。俺や妹者は中庭に入ってな」 (
) )
( (;´_ゝ`)「このままじゃ母者や父者に怒られてしまう。頼んだぞ、妹者」 (
) )
( l从・∀・ノ!リ人「ないしょ? 姉者には話していいのじゃ?」 (
) )
( ::/( ;_ゝ;)\::「内緒でおねがいしますぅぅぅ」 (
) )
( (´<_`;).。oO(どうせすぐにバレるだろうに) (
) )
( dl从・∀・*ノ!リ人「わかったのじゃ! 妹者やくそくするのじゃ! (
) やくそくはぜったいに守るのじゃ!」 )
ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ヽ_ノ⌒ヽ、_ノ⌒~、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒~ヽ_ノ~
O
O
l从-∀-;ノ!リ人 .。o
! l从・∀・ノ!リ人.。oO(お花のことじゃなきゃ、言ってもだいじょーぶなのじゃ!)
l从・∀・*ノ!リ人「おっきい兄者たちは旅にでたのじゃー!」
∬;゚_ゝ゚)「なん……です……って?」
.
370
:
名も無きAAのようです
:2013/04/22(月) 21:25:23 ID:PZ9eifmM0
∬;´_ゝ`)「ちょ、ちょっと待って妹者。
旅?! このクソ忙しい中に旅?! 正気、馬鹿なの何言ってるの?!」
∩l从・〜・ノ!リ人∩「妹者ウソはついてないのじゃー。
おっきい兄者が空をとんで、せいれーさんとちっちゃい兄者がケンカして、ピンクたんが来たのじゃー。
でも、おっきい兄者たちはピンクたんじゃなくて、歩いてお外にいったのじゃー」
∬´_ゝ`).。oO(どうしよう。妹が何を言っているのかわからない)
∬;´_ゝ`)∂「……時に、妹者。
兄者たちはどこに行くって言ったの?」
l从-∀-;ノ!リ人.。oO(えっと、これはこたえてもだいじょーぶ……)
l从・∀・ノ!リ人「ソーサクいせき?に行くっていってたのじゃ!」
∬´_ゝ`)「ふむ。ソーサク遺跡……ね。あそこならせいぜい日帰りか
……それにしても随分と急ねぇ。一体、何があったのかしら」
l从・∀・;ノ!リ人.。oO(バレてないかハラハラするのじゃ…)
∬´_ゝ`)b+「よしっ。考えてても仕方ないし、問い詰めてみるか」
.
371
:
名も無きAAのようです
:2013/04/22(月) 21:27:36 ID:PZ9eifmM0
ドサッ
l从・∀・ノ!リ人「これはなんなのじゃー?」
∬´_ゝ`)「ちょっとした魔道具ってやつね。
妹者、ちょっと中庭に水を汲みに行ってくるから、ここでこれ見てて」
Σl从・∀・´;ノ!リ人.。oO(中庭!? ダメなのじゃっ!)
l从・∀・;ノ!リ人「な、なんでなのじゃー」
∬´_ゝ`)「そりゃぁ、弟者が万が一にでも途中で帰ってこないか見張るのよ。
あいつに見つかったら、こんな魔道具なんて一発で壊されるわ」
? l从・∀・ノ!リ人「ちっちゃい兄者が? なんでなのじゃ?」
∬´_ゝ`)「だって、これ鏡だし」
l从・∀・;ノ!リ人「かがみ? お皿じゃないのじゃ?」
∬´_ゝ`)「これはお皿じゃなくて特殊な魔法のかかった、水鏡……」
_,
l从・〜・ノ!リ人「?」
∬;´_ゝ`)「……難しかった? さっきから、様子が変だし」
_,
l从・∀・ノ!リ人「えっと、みずかがみってなんなのじゃ?」
.
372
:
名も無きAAのようです
:2013/04/22(月) 21:29:18 ID:PZ9eifmM0
∬;´_ゝ`)「あー」
l从・〜・ノ!リ人「妹者はかがみさんも、みずかがみさんもよく見たことないから、よくわかんないのじゃー
なんで、かがみだとダメなのじゃ?」
∬;∩_ゝ)「……そういえばそうよね、鏡なんてうちにはないわよね。
そもそもあのクソ弟、鏡と見るとすぐ叩き壊すんだから……」
l从・ o ・ノ!リ人「どうしたのじゃ、姉者?」
∬;∩_ゝ)「ちょっと弟の教育方針について頭を悩ませてるとこ。
……兄者に任せっぱなしにした私がアホだった」
∬;∩_ゝ)「……」l从・∀・ノ!リ人
l从・〜・ノ!リ人「んー、なんかよくわかんないけど、お水は妹者がくんできていいのじゃ?」
∬;´_ゝ`)「……あ、任せた。水はちゃんと中庭ので頼むわよー。
父者には私が庭に入っていいって言ったって伝えとくわ」
l从・∀・*ノ!リ人 ハーイ
l从・∀・ノ!リ人 タッタッタッ
l从>∀<*ノ!リ人.。oO(よくわかんないけど、妹者やったのじゃ!
お花バレなかったのじゃー。兄者たちにほめてもらえるのじゃ!)
.
373
:
名も無きAAのようです
:2013/04/22(月) 21:31:13 ID:PZ9eifmM0
l从・∀・ノ!リ人「お水くむのじゃー」
l从・−・´ノ!リ人.。oO(妹者はお花ふまないように気をつけるのじゃ)
+ l从・∀・ノ!リ人 ヨシッ
┏━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃ 妹者 は お水 を 手に入れた ! ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━┛
l从・〜・ノ!リ人.。oO(でも、姉者はお水さんでなにするのじゃ?)
l从・∀・*ノ!リ人 マア イッカ
でざーと×しすたー つぎのおはなしにつづく
.
374
:
名も無きAAのようです
:2013/04/22(月) 21:34:19 ID:PZ9eifmM0
今月の投下ここまで。乙とかコメントとかありがとうございました
何事もなければ、次の話は5月の中旬〜下旬あたりに投下予定
そろそろ後半〜終盤戦に突入です
375
:
名も無きAAのようです
:2013/04/22(月) 22:58:04 ID:qVYr3M1w0
妹者かわいい
376
:
名も無きAAのようです
:2013/04/23(火) 00:22:20 ID:/bf5fl/wO
双子の話といい弟者不穏だなぁ
次の投下も楽しみにしてますっ
377
:
名も無きAAのようです
:2013/05/14(火) 22:38:52 ID:NbWBYs7c0
5月19日の夕〜夜から投下するかも
本編90レス前後+おまけ8レスの長丁場になるので途中で日を改めるかもしれないです
378
:
名も無きAAのようです
:2013/05/15(水) 14:18:41 ID:DkaHUxFk0
うひょー
379
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:02:51 ID:2tZd1sd.0
足を踏み入れた瞬間、兄者と弟者は同時にその目を細めた。
目を焼くばかりに強い外の日差しとは、真逆の影の世界。
しかし、そう見えたのはほんの一瞬で、二人の目はすぐに暗闇に慣れる。
外観と同じく白い柱と、白い壁に覆われた内装。
同じ材質で作られたであろう天井は強い日差しを遮り、屋内に闇をもたらしている。
外から吹き込んだのであろう砂が、ところどころに山を作っていた。
(,,゚Д゚)「よし。じゃあ、ちゃんとオレについてこいよ」
( ´_ゝ`)b「任せろ、ギコ者」
('A`)「あー、はあく」
(*^ω^)「わかったおー」
ギコの言葉に兄者は笑みをみせ、一方の弟者は片手を軽く上げるだけの返事を返す。
そんな兄弟たちの反応を見ると、ギコは一番奥に有る扉へと手をかけた。
金属でできた両開きの扉は、壁や天井とは対照的な黒。
ギコは扉を開けようと力を込め――、
(#゚;;-゚)「……ギコさん……戻って下さい」
背後から投げかけられた、か細い声にその動きを止めた。
.
380
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:03:33 ID:2tZd1sd.0
( ´_ゝ`)デザート×キャラバンのようです(´<_` )
.
381
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:04:44 ID:2tZd1sd.0
そのろく。 俺らの冒険は始まったばかりだ。
.
382
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:05:25 ID:2tZd1sd.0
(#゚;;-゚)「……ギコさん」
(*´_ゝ`)ノシ「でぃ者じゃないか! さっきは、荒巻と中嶋をありがとう!」
声をかけてきたのは、でぃだった。
神殿の入口に手をかけた彼女は、兄者の言葉に頷いた後に、ギコの姿を見やる。
差し込む強い日差しと、空の眩さで、その表情は見えない。しかし、彼女のドレスの白い色だけはやけに鮮やかだった。
(#゚;;-゚)「……水鏡で連絡が入って」
(,,゚Д゚)「あー。わざわざ来てくれたのはありがてぇが、また後で連絡しなおす。
これから弟連中のお目付け役をしなきゃならねぇからな」
(#゚;;-゚)「その……どうしても、絶対、今すぐにギコ=ハニャーンを出せ……って言われて」
(,,-Д-)「あー。なら、お前かしぃで用件を聞いといてくれ」
(#;゚;;-゚)「相手は、姉者様なんです……けど……」
でぃの言葉に、その場の空気が一瞬固まった。
しばらくの沈黙が流れた後、ギコの尻尾は大きく膨らみ、二人の会話を見守っていた兄者と弟者は体を震わせ始めた。
(,,;゚Д゚)て「げぇぇぇ、姉者だと!」
.
383
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:07:10 ID:2tZd1sd.0
(´<_`;)「……なんと」
( ;゚_ゝ゚)「姉者だと……」
('A`)「姉者って行ったらアレか? 確かお前ら兄弟の……」
( ^ω^)「お姉さんかお?」
ドクオとブーンは、兄弟やギコの反応がよくわからず首をひねっていた。
姉者という名前は何度か聞いたことがあるが、実際には目にしたことがない。
(´<_`;)「兄者」
(;´_ゝ`)「弟者」
その一方で、そっくり同じ表情を浮かべた双子の脳裏に浮かぶのは、姉の姿。
彼ら兄弟と面差しのよく似た、波打つ豊かな髪と豊満な体の持ち主。
頭も悪くなければ、それなりに腕も立つ。そして、何より肝が座っている。
姉者=流石。彼ら双子と妹者の姉にして、流石の街を取り仕切る母者の後継者。
( ´_ゝ`)「行こう。これから先は俺らだけで大丈夫だから、今すぐ行ってきてくれ」(´<_` )
――その性格は一言で言えば、暴君である。
.
384
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:09:17 ID:2tZd1sd.0
(,,;゚Д゚)「この裏切り者めっ! お前らアレの弟だろ、とっとと行ってやられてこい!!」
(;´_ゝ`)「俺らだって、ゴメンだ」(´<_`;)
兄者=流石と、弟者=流石にとって姉は、理不尽な恐怖の対象である。
そして、姉者と馴染みであるギコにとっても、彼女は因縁深い相手であるようだった。
(,,;゚Д゚)「こんな時だけ息を合わせるんじゃねぇ! 行ってこい弟ども!!」
(#;゚;;-゚)「その……姉者様は……、ギコさんが出ないと、引っこ抜く……と」
(,,;゚Д゚)て「何をだ!!!」
(# ;;- )「ええと……あのことお姉ちゃんにバラして……調査に回す資金を打ち切るかも……って」
(,,#゚Д゚)「あの糞アマぁぁぁぁ!!! 今度という今度こそは決着つけてやる!!!」
長柄の槍斧を振り回してひとしきり叫ぶと、ギコは兄弟の姿を見やる。
耳と髭を垂れバツの悪そうな顔をしてみせると、すまねぇと声を上げた。
(,,゚Д゚)「俺はあの女と決着つけてくるから、お前さんたちは勝手に見て回ってくれや。
ひとしきり調査は済んでるが、下手なもんには触れるなよ」
(;´_ゝ`)「ギコ者、死ぬなよ」
(´<_`;)「辛いだろうが、耐えてくれ」
.
385
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:11:57 ID:2tZd1sd.0
(;'A`)「どんだけ怖いんだよ、お前らの姉ちゃんは」
( ^ω^)「今度、会いに行くかお?」
(;´_ゝ`)「やめて」('A`;)
ブーンの言葉に兄者とその肩に乗ったドクオが、悲痛な声を上げる。
ブーンやドクオの声が聴こえないギコは、突然の兄者の声に一瞬眉をひそめるが、何事もなかったように心構えを語っていく。
(,,゚Д-)「まだオレたちが見つけられてない、仕掛けやカラクリがあるかもしれん。
まぁ、心配はいらんと思うが、気をつけろよ」
(´<_` )「了解した」
(,,-Д-)「あとは神殿にあるものは、壊すなよー。なんて言ったって貴重な遺跡だからな!」
( ´_ゝ`)b「任せておけ!」
(,,゚Д゚)「それと、兄者。お前さんの目的のブツは一番奥の間だ。
ちいとばかりわかりにくいところにあるが、お前さんなら大丈夫だろう」
ギコはそう言うと扉から離れ、でぃの元へと歩いて行く。
その表情がしかめられているのは、姉者と連絡を取るのが嫌だからだろう。
ギコは神殿から立ち去ろうとし、最後にふと振り返ると、ニヤリと笑った。
(,,゚Д^)b「扉の向こうはすごいぞ。驚くからな」
.
386
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:13:30 ID:2tZd1sd.0
(#゚;;-゚)「じゃあ……楽しんできてね……」
(,,゚Д゚)ノシ「見終わったら本部に顔を出せよー。しぃが寂しがるからな」
(#゚;;-゚)「アラマキさんと、ナカジマさんは……責任持って……預かるから」
(*´_ゝ`)ノシ「ありがとなー、ギコ者ー、でぃ者ー!」
ヾ( ^ω^)ノシ「ありがとだおー」
別れを惜しむ一同の姿をひとしきり眺めてから、弟者は扉に手をかけた。
金属のひやりとした感触が手に伝わるが、それもすぐに体温と同じ暖かさへと変わる。
両手に力を加えて押すと、黒の扉は鈍い音を立てながら開いていく。
(´<_`;)「……なんと」
('A`)「へぇ。中はたいぶ様子が違うんだな」
(#´_ゝ`)「ああああー、弟者! なんで俺を無視して扉開け……」
兄者の言葉が、途中で止まる。
弟者が開いた扉の先、そこに見えるのはまっすぐと伸びる廊下だ。
.
387
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:15:21 ID:2tZd1sd.0
(;´_ゝ`)「……なんと」
(*^ω^)「おお、なんかすっごいおー」
精巧な細工が施された浮き彫りと、彩色された絵が続く、両側の壁。
床には、幾何学的な模様がタイルで描かれている。
そして、黒い石で作られた天井には……本物と見紛うばかりの星空が配置されている。
(,,^Д^)「ギコハハ。じゃ、せいぜい楽しんでこいよ」
(#゚;;-゚)「……ギコさん……姉者様が待ってる……」
(,,;-Д-)「へーい」
「じゃあ、ごゆっくり」と告げると、ギコとでぃはその場から立ち去っていく。
兄者はその言葉にはっとし、慌てて「じゃあなー」と手を振り答えた。
ギコの姿が見えなくなるのを見送ってから、よしと兄者は小さく声を上げると言った。
( ´_ゝ`)「さて、俺らも行くか」
(*^ω^)「行くおー。きっと楽しいお!」
(´<_` )「把握した」
('A`)「……しぃさんに会いたい」
.
388
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:17:44 ID:2tZd1sd.0
足を踏み入れると、内部はひんやりとした空気が漂っていた。
兄者は体を一瞬震わせると、すぐに笑顔を浮かべる。
( *´_ゝ`)「おお、これはこれは」
( ^ω^)「なんか変わった建物だおねー」
ブーンはあちらこちらを飛びながら、キョロキョロと辺りを見回す。
高く飛び上がっては天井を眺め、壁を触り、床の細工を眺め、首らしき箇所をひねった。
( ^ω^)「ドクオはどう思うおー?」
('A`)「あー、外から見たのと同じじゃね?」
(;^ω^)「せっかく連れてきてもらったんだから、ドクオももっと楽しそうにするおー」
(;'A`)「楽しそうって言っても、お前なぁ……」
兄者の肩に止まったままの状態で、ドクオは気のない返事を返す。
(´<_` )「……」
そして、最後の一人である弟者は先行し周囲を見回していた。
.
389
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:19:17 ID:2tZd1sd.0
壁面に施されている浮き彫りは、黒い翼を生やした四足の獣や、豪華なマントを纏った男の姿。
東方のものにも西方のものにも見える浮き彫りは、途切れること無く続いている。
窓らしきものはどこにも見えない。
が、弟者の歩みに合わせるようにして、足元と壁面に備え付けられた明かりが音もなく灯る。
(∩!!゚_ゝ゚)∩て「うひゃぁぁぁ!!」
('A`)「あー、明かりだ」
(´<_` )「……どういう仕組なんだこれは」
弟者は照明を睨みつける。
白い艶やかな石材で作られた外枠に、透明な鉱石が設えられている。
火らしきものはおろか、光を生み出すための術式らしきものも見えない。
(´<_` )「人の動きに応じて、光るのか?」
( ^ω^)「うーん。不思議だお。
魔力は感じなかったから、何か別の力で動いてるのかもしれんおね」
(∩;´_ゝ`)∩「……なんでお前らそんなに冷静なん?」
.
390
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:21:14 ID:2tZd1sd.0
ひんやりとした屋内に、兄者と弟者のブーツの音だけが響く。
兄者は体を少し震わせながら、先を進む弟者とあちらこちらを飛び回るブーンの後ろをついていく。
ドクオはといえば、相も変わらず兄者の肩の上。自力で動くという気はもはやない様だった。
(*´_ゝ`)σ「見ろ、弟者! 通り過ぎたところの明かりは消えるみたいだぞ」
(´<_`;)「何を言いだす――」
兄者の言葉を聞いて、弟者の表情が固まる。
振り向いて見た少し先の照明は消え、その先は闇に沈んでいる。
開け放ったままの出入り口から、外の光がかろうじて見えるのだけが救いだった。
(´<_` )「兄者。この遺跡、露骨に怪しいのだが……」
( ´_ゝ`)v「まあ、落ち着け弟者よ。ギコ者がいいと言うからには、それなりに安全だと思われ」
_,
(´<_` )「だがしかし、」
弟者の眉が寄り、不満の表情を浮かべる。
しかし、まぁこの程度ならばまだ弟者の機嫌がいいものと判断し、兄者は笑う。
ヽ(*´_ゝ`)ノ「大丈夫、大丈夫。我らが恐ろしき姉上と一戦終えたら、ギコ者も帰ってくるさ。
好き勝手探索できるのも今のうちだけだし、とっとと行こうぜ!」
ヽ( ^ω^)ノ「ブーンも行きたいおー。もっと先が見たいおっお!」
.
391
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:23:17 ID:2tZd1sd.0
渋る弟者をどうにかなだめ、一同は先に進む。
彩色された浮き彫りに「こういうの父者が好きそうだよなぁ」とか、天井を見上げ「妹者に見せたい」などと言いながら兄者は歩く。
弟者も兄者に言葉を返しながら、明かりに照らされた廊下の終わりへと足を踏み入れる。
( <_ )「――っ」
光の強さの違いに、弟者の目は一瞬眩む。
が、彼が手元の刀に手をかけるまでもなくすぐに視界は回復する。
( ^ω^)「おお。ひろいおーこの部屋ー」
('A`)「影が少ないな、この部屋」
(;^ω^)「……そんなこといったら、風だってほとんどないお。
空気の流れはちゃんとあるから、いいんだけど」
(;´_ゝ`)「そんなことより、ドクオよ。人の被り布の下に潜るのは止めて欲しいのだが」
('∀`)b「オレ、影とかがないと生きてけないんで」
廊下を抜けた先は、広い部屋だった。
照明らしき器具も、明かり取りの窓もないにもかかわらず部屋は橙の光で満たされている。
つややかに光る白い壁面と、浮き彫りの施された天井。
向かって正面と左右の壁それぞれに、次の部屋へと続く出入り口が設けられていた。
.
392
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:25:13 ID:2tZd1sd.0
(´<_` )「ふむ。分かれ道だな」
3つの方向にある出入り口を眺めながら、弟者は困ったように声を上げた。
出入り口の向こう側は暗く、何も見通せない。
ギコの言った通り一番奥の間を目指すというのならば、向かって正面の道へと進むのが一番良いのだろうが……。
弟者がそこまで考えた所で、頭に被った飾り布を振ってドクオと遊んでいた兄者が声を上げる。
(*´_ゝ`)「弟者、弟者ー、どうせなら右から行こうぜ!」
(´<_` )「して、その心は?」
弟者の返答に、兄者は一瞬沈黙する。
その様子に、兄者の飾り布にしがみついていたドクオが声を上げる。
('A`)「なんとなくって言うな……多分」
(*´_ゝ`)b「なんとなくだ!」
(*^ω^)「おお、ドクオスゴイお! どうしてわかったんだお!」
( ´_ゝ`)て「読まれていた……だと……」
相変わらずのやり取りに弟者は、小さくため息をつく。
「まったく」と、小さく呟くと、右手にある入口へ視線を向ける。
.
393
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:27:44 ID:2tZd1sd.0
(´<_` )「まあ、悩んでいても仕方がない。行くか」
ヽ(*^ω^)ノ「おっおー、行くおー!!」
(;´_ゝ`)て「あ、お前ら俺を置いて行くなし!」
右手の入り口を、弟者はくぐる。
暗い通路に弟者が足を踏み入れた瞬間。先程まで暗かったのが嘘のように、瞬く間に照明がついた。
明かりにともされた廊下は、先程までの廊下とほぼ同じ作りをしている。
( ´_ゝ`)「あ、星の並びが違う。さっきは夏だったのに、今は春の並びだわ」
('A`)「そんなもん、普通気づかねぇよ……」
(*^ω^)「あー、みんなみるおー! 壁の模様もちがうお」
天井を見上げて言葉を交わす兄者とドクオの会話を聞き流し、ブーンの言葉に反応しないように心がけながら弟者は壁を盗み見る。
彩色がされた浮き彫りが連なる左右の壁。
そこに描かれているのは、角や、羽が生えた魚の群れと。やはり、豪奢な衣装を纏った男の姿。
どうやら海をイメージしているらしく、ところどころ波らしき図案も見える。
(´<_` )「……ふむ」
美術品の価値は分からないが、このような細工を見るのは嫌いではない。
よくわからない仕組みの明かりだけは気に食わないが、こういうのも悪くない――と、弟者は頷いた。
.
394
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:29:42 ID:2tZd1sd.0
・
・
・
( ^ω^)「お、行き止まりじゃないかお?」
('A`)「残念だったな」
それから更に進んだ、通路のはて。
そこにあるのは行き止まりだった。
壁画も装飾もない白の壁面には大きな古い鏡だけが、意味ありげに飾られている。
( <_ )「……」
( ´_ゝ`)「時にブーンにドクオよ、待て。
あの曲がり角からここまで、他に道も部屋もなかった。と、いうことはだな」
('A`)「と、いうことは?」
.
395
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:31:12 ID:2tZd1sd.0
兄者は行き止まりへと向かう。
そして、壁へと手をやりコンコンと叩き、顎に手をやり首をひねる。
( ´_ゝ`)「ふむ。壁には何もなし」
兄者の視線が壁から、鏡へと移る。
しばし、鏡を見つめ。それからふむと頷く。
( ´_ゝ`)「ということは鏡、か?」
そうつぶやき、兄者は鏡へと手を伸ばし……
.
396
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:33:51 ID:2tZd1sd.0
――――――‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
‐‐‐‐‐‐‐‐‐
「なあ、おれ。探検にいかないか」
「それはよくない。母者におこられる」
「でも、気になるだろう。おれはそうじゃないのか?」
「……」
「なあ、おれ。おれはどうなんだ?」
「……そうだな、おれ。おれもそうだ」
‐‐‐‐‐‐‐‐‐
――――――‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
397
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:35:27 ID:2tZd1sd.0
( ´_ゝ`)「ん?」
……兄者は鏡の中に、曲刀を抜き放った弟の姿を見た。
鏡に写った弟者は、刀をまっすぐ突き出さんとする姿。
タイルを踏む高らかな音は背後からか、それとも鏡の中からか。
――とまどったのは、ほんの少し。
しかし、兄者はすぐさま弟者の意図を察する。
(; ゚_ゝ゚)「弟者らめぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
( ^ω^)て「え」
(´<_` )つ==|ニニニ二フ
そう声をあげ兄者が振り向いた瞬間には、弟者は兄者を追い抜いていた。
そして、そのまま手にした曲刀を、なぎ払った。
――標的は、今まさに兄者が手を伸ばそうとしていた鏡。
.
398
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:37:05 ID:2tZd1sd.0
悲鳴をあげるような高い音とともに、鏡面が砕け散る。
支えを失った欠片たちが一つ、また一つと床に落ち、砕けて割れた。
(; ゚_ゝ゚)「……おとじゃ」
兄者は引きつった表情のまま、再び壁へと視線を戻す。
そこにあるのは、もはや用をなさなくなった鏡と――
( <_ )「……」
――弟の姿。
(;'A`)「あー、あはははは。び、びっくりした。
……それにしても、弟者の野郎。やっちまったな」
( ^ω^)「やっちまったんだぜ!」
('A`)オマエ オ ハ? ナントナク ダオ(^ω^ )
.
399
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:39:01 ID:2tZd1sd.0
何一つ浮かばない顔で、弟者は鏡の欠片を眺めている。
その手がかすかに震えているのを見て取って、兄者は顔を歪め、それから「あーあ」とつぶやいた。
( ´_ゝ`)「……これはしぃ者に怒られるな」
(*'A`)「しぃさんっ!
そうだぞ弟v(´く_` )>「残念だが、お兄ちゃんこのへんで話を止めちゃうぞ☆彡」
('A`)エー エーッ テイッテモ ダメ(´く_` )
('A`)「なんだよ、ケチ」
ヽ( ´_ゝ`)ノ「ケチで結構!」
何事もなかったかのような調子で、兄者はドクオと話しはじめる。
しかし、弟の様子が気になるのか話しながらも時折、兄者はその視線を弟者に向ける。
( ´_ゝ`)「……」
( <_ )「……」
(#'A`)「おい、兄者。聞いてるのか?!」
(;´_ゝ`)「あー、はいはい。いくら言われても、しぃ者のことは話さんぞ」
.
400
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:41:14 ID:2tZd1sd.0
その一方で、ブーンは黙り込んだままの弟者の姿を見ていた。
ブーンは「んー」と小首をかしげていたが、意を決したように声を上げた。
( ^ω^)「オトジャ、大丈夫かお?」
(´<_`; )「……ああ」
ブーンの声に弟者は顔を上げ、それからしまったと言うように顔をしかめた。
一方のブーンは、弟者が言葉を返してくれたことに。そして、それ以上に、その顔に感情らしきものを浮かべたことにほっとしていた。
これはなんだろう、とブーンは心のなかで首を捻り、それが『嬉しい』という感情であることに思い至る。
(´<_` )「お前ら羽虫に感情なんてないくせに」
(*^ω^)「それはブーンが忘れてるだけで、本当はあるんだって思うお」
(´<_` )「知るか」
(*^ω^)「オトジャがお話してくれたおー。
なかよくなれたみたいで、楽しいおー」
素っ気ない辛辣な言葉だけを残して、弟者は再び沈黙する。
しかし、それにもかかわらずブーンは笑顔を浮かべたままだった。
弟者が普通に返事をしてくれて、それにお話してくれた。
たったそれだけなのに、ブーンの胸はほわっとしてとても暖かくなった。
.
401
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:43:13 ID:2tZd1sd.0
( ´_ゝ`)ゝ「まあ、鏡の件はあとで全力で謝るとして、今はとりあえず戻るか!」
('A`)「……いいのか、それで」
(*´_ゝ`)「流石だよな、俺」
(;'A`)「どこがだ!!!」
ブーンと弟者が話している傍らで、兄者とドクオの話は一応の決着を迎えたようだった。
兄者は振り返ると、弟者とブーンに向かって大きく手を振る。
( ´_ゝ`)ノシ「というわけで、弟者もブーンも行くぞ」
(*^ω^)「おー!」
( ´_ゝ`)「弟者。まあ……言いたいことはあると思うが、行こう」
(´<_` )「……」
( ´_ゝ`)「……正直、不注意だったからな。何も言わんさ」
兄者のらしくない言葉に、弟者の口が何かを言いたげに動く。
が、そこからは何の言葉も発せられなかった。
兄者もそんな弟者の様子に気づいたようだったが、それ以上は何も言おうとしなかった。
.
402
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:45:03 ID:2tZd1sd.0
……その後は誰も口を開かないまま、彼らは分かれ道があった広間に帰り着いた。
橙の光に照らされた、白い広間。
その柔らかな色の光に照らされた瞬間、緊張が緩んだのか兄者とブーンに笑顔が浮かぶ。
(*´_ゝ`)「というわけで、分かれ道だ!」
(*^ω^)b「分かれ道だお!」
一同が広間の中心につくと同時に、兄者とブーンは楽しそうに声を上げた。
最初に入ってきた入り口を覗きこみ、それからまだ進んでいない二つの出入り口を見てから、兄者は考えこむ素振りを見せる。
(*´_ゝ`)σ「よし、じゃあ今度はこっちの道に……」
( <_ )「待て」
( ´_ゝ`)「どうした弟者ぁー」
(;^ω^)「お?」
兄者は向かって正面――最初にこの広間に入ったときは、左側にあった通路を指さす。
そして、そのまま正面の出入り口へと進もうとする兄者に、弟者の制止がかかった。
(´<_` )「もう帰るぞ、兄者」
.
403
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:47:04 ID:2tZd1sd.0
(;´_ゝ`)て「――え?! 何で何で?
まだ来たばっかりだぞ。それに目的のブツだって……」
(´<_`#)「いいから!!!」
弟者の顔に、はっきりと怒りの表情が浮かぶ。
その手は固く握りしめられ。恐れではなく怒りに震えていた。
(;'A`)「おいおい、弟者……」
(;゚ω゚)「あうあう」
(´<_`#)「もう充分だろう。こんな何があるかわからないような場所なんかにいられるか」
(;´_ゝ`)「あー、時にもちつけ弟者」
('A`)「……もち?」
(;´_ゝ`)「あ、落ち着けだったわ。スマン」
そう言うと、兄者は小さく咳払いをする。
兄者はしばし唸り声をあげたあとに、弟者の顔を見据えて言った。
.
404
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:49:20 ID:2tZd1sd.0
( ´_ゝ`)「弟者よ。ここまで来て、目的を放り投げるというのはどうかと思うぞ。
母者も言っているではないか、『人間、信頼というものが大事だ』と」
(´<_` )「母者はこうも言っている。『退く勇気も、時に大切だ』と」
(;´_ゝ`)て「お兄ちゃんせっかくカッコイイこと言ったのに、即否定とかひどいっ!」
弟の答えに、兄者は再び、無意味な声を上げる。
そのまましばし、考え込んだ後に兄者は再び口を開いた。
(;´_ゝ-)σ「えーと、弟者っ! 弟者たん、こういうのはどうだろうか?
弟者が先に行って様子を見る。で、俺がここで待機する――どうだ、今度こそ完璧だろ!」
('A`)「必 死 だ な 兄 者」
∩(;´_ゝ`)∩「そりゃあ、ここで帰ったりなんかした日には、これからの予定が全部ダメになるからな」
∩(;^ω^)∩「たいへんだおー」
(´<_`#)「……」
∩(;´_ゝ`)∩「お兄ちゃん譲歩とかしませんからっ!
睨んでも俺は泣かないからな! 涙目とか言うなよホント」
(-<_-#)「……今回だけだぞ」
弟者はしばしの沈黙の後に、やっとそれだけを口にした。
.
405
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:51:17 ID:2tZd1sd.0
(´<_` )「じゃあ行ってくるが……兄者、くれぐれも勝手に動き回るなよ」
(*´_ゝ`)>「把握した。俺に任せろ弟よ!」
(;'A`)て「うわっ。これぜってー、信用できねぇ」
( ^ω^)「え? 何でだお、ドクオ?」
( ´_ゝ`)「……ブーンよ。お前はほんとぉーにいいやつだよな。
俺は今、もーれつに感動している!!!」
(´<_` )「……」
(;´_ゝ`)「ごめんなちゃい、弟者」
兄者の言葉に、弟者は不機嫌そのものといった表情となる。
それを見てとった兄者はただちに謝罪するが、それに弟者は何も返さなかった。
(´<_` )ノ「じゃあ、行ってくる」
その言葉とともに、弟者は部屋の外の暗がりへと出て行く。
暗かった廊下には明かりが灯り、壁の浮き彫りが照らし出される。
しかし、それもほんの僅かな時間のことで、すぐにまた暗闇へと戻った。
.
406
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:53:24 ID:2tZd1sd.0
⊂二(*^ω^)二⊃「ブーンもオトジャと一緒に行くおー」
(*´_ゝ`)∩「……じゃあ、俺も」
('A`)「やめれ」
( ´、ゝ`) チェー
ブーンが硝子のような羽をきらめかせながら、弟者の消えた暗がりへと向かう。
それを羨ましそうに見つめながら、兄者は口元を曲げる。
そして、そのまま口を開き、
(#´_ゝ`)「弟者ばっかりずるいぞー」
そう口にした瞬間。弟者からの大声が響いた。
( <_ )「兄者っ!」
( ;゚_ゝ゚)「はぃぃぃ。俺、行こうとなんてしてないから。してないデスヨー」
ヽ('A`)「オレはちゃんと止めたからな」
o( ;`_ゝ´)o「この裏切り者ー」
.
407
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:55:20 ID:2tZd1sd.0
( <_ )「兄者、どうした?」
あわてて弁解を図った兄者だが、そもそも彼の声は弟者には届いていなかったらしい。
弟者の声は相変わらず大きいものの、困惑が浮かんでいた。
兄者は両手を口元へと持って行くと、できる限りの大きな声で返事をする。
(∩´_ゝ`)∩「弟者こそどうした?
まだ、全然時間がたってないのだが……」
( <_ )「こっちはハズレだ。何もないぞ」
(∩;´_ゝ`)∩て「え? ちょ、そっち行くから時に待て、弟者よ」
( ω )ノ「はいはーい。ブーンがお迎えにいくお!」
弟者の回答に、兄者は慌てて駆け出す。
その肩にしがみついたドクオが、「急に走るな」と抗議の声を上げるが、兄者は足を止めなかった。
('A`;)「おい、兄者。何もないなら行く必要なくね?」
( ´_ゝ`)b「いいや、ハズレでも俺は行くぞ!
何しろせっかくの遺跡観光だからな」
足音を鳴らしながら浮き彫りの間を、兄者は進む。
それほど進まないうちに廊下は終わり、部屋らしき場所へと到達する。
.
408
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:57:26 ID:2tZd1sd.0
白の石材で作られた天井と壁には、装飾らしきものは見えなかった。
閑散とした部屋には、半ば崩れかかった机と椅子が並べられている。
かろうじて残っている棚には本らしきものがいくつか残され、壁の近くには武器置き場だったらしい形跡が見える。
( ´_ゝ`)「なんと」
( ´ω`)「お出迎えより、アニジャのほうが早かったお」
('A`)ドンマイ
照明もないのに、白い光で照らされた部屋。
部屋自体は年月の経過を感じられないのに、そこに置かれたものは古びている。
時間がずれているような、妙な印象を感じる部屋だった。
(´<_` )「石板らしきものは何もなし。
ざっと見て回して触ってみたが、罠らしきものもなしだ。
これはハズレだな……」
(;´_ゝ`)「いや、いろいろと気になることはあるのだが……
うむ。やたらとチグハグではあるが、とりあえずは普通の部屋のようだな」
弟者はその部屋の中で、本らしきものをめくっていた。
しかし、そこに書かれている文字は弟者には読み取れないものばかりだ。
古い時代の文字なのか。それとも、魔王たちが使った文字なのか。
しぃやギコならわかっただろうが、彼らは今ここにはいない。
.
409
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 20:59:22 ID:2tZd1sd.0
( ´_ゝ`)>「あー、怪しいのに何もないな」
( ^ω^)「んー、不思議だおー」
部屋をひと通り見て回った兄者は、肩を落とした。
その動作に、肩にいたドクオはずり落ちそうになりあわてて兄者の肩に指をかけた。
ヽ(#'A`)ノ「ちょ、ま、やめろ! 急に動くなって!!」
( ´_ゝ`)「お、スマンな」
(#´_ゝ`)「――って、お前は自分で飛べよ」
(#'A`)「いーやーでーすぅー」
ヾ(#`_ゝ´)ノシムキー (^ω^; )アウアウ
.
410
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:01:07 ID:2tZd1sd.0
( ´_ゝ`)「仕方ない。弟者、引き返すぞー」
( ^ω^)ノシ「ひきかえすおー」
(´<_` ).。oO(本にも魔力は感じられない。
魔導書のたぐいでも、魔物が憑いていることもなさそうだな)
ひとしきりはしゃぎ終えた後、兄者は本を読みふけったままの弟者に声をかけた。
騒ぎの原因となったドクオはといえば、兄者の肩に未だに居座り続けている。
変わったことといえば、兄者の反対の肩にブーンが笑顔で座っていることくらいか。
(´<_`; )「あ――ああ、把握した。」
( ´_ゝ`)「どうした、弟者ー。さては、その本おもしろいのか?」
(´<_` )「……いや。何が書いてあるかは、さっぱりわからん」
考えに気を取られ返事が遅れた弟者に、兄者は不思議そうな顔を見せる。
弟者はといえば、そんな兄者の様子にしまったという表情を浮かべる。
しかし、すぐに表情をとりつくろうと、手にとった本を兄者へと開いてみせた。
差し出された本を覗きこんだ兄者は、「ふむ」と興味深そうな表情を浮かべたが、すぐにその眉根を寄せた。
_,
( ´_ゝ`)「たしかに、さっぱりわからんな」
.
411
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:03:03 ID:2tZd1sd.0
( ^ω^)「ブーンもさっぱりだお」
('A`)「人間ってやたらと作ったり、書いたりするの好きだよな。何が楽しいやら」
兄者の肩から、ブーンとドクオが声を上げる。
どうやら二人にも本の内容は読めなかったらしく、すぐに会話は別の話題に移る。
('A`)「あー。やっぱ、何かに乗るのは楽だ。
おまえもそうだろ、ブーン」
_,
( ^ω^)「アニジャの肩に乗るのも楽しいけど、ブーンはやっぱり飛ぶほうが好きだおー」
(´<_`#).。oO(こいつら、いつか叩き切ろう。特に紫の方)
( ;´_ゝ`)「弟者。ドクオやブーンをすんごい表情で睨みつけるのはいい加減やめて」
弟者は何も答えない。
これは何を言っても無駄だなぁと思うと、兄者は小さくため息を付いた。
( ´_ゝ`)σ「まあ、いいや。ここは引き返して、さっさと進もう。
俺らの冒険は始まったばかりだ。まだまだ、先があるぞ」
(´<_` )「……ふむ。そうだな」
.
412
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:05:10 ID:2tZd1sd.0
――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――
(;´_ゝ`)「……」
('A`)「どうした、兄者?」
( ;-_ゝ-)「また俺だけ置いてけぼりになっている件について」
橙の光が落ちる、白い広間。
四方へ続く分かれ道となっているその広場に、兄者は再び取り残されていた。
広間に残っているのは兄者と、彼の肩に座り込んだままのドクオだけ。
⊂二(*^ω^)二⊃「ブーンは、オトジャについてくおー」
ブーンは弟者とともに先に進んでおり、この場所からは姿が見えない。
ドクオは「絶対に羽を毟られたりするからやめろ」と主張したのだが、ブーン本人はいかにも楽しそうな様子であった。
弟者と一緒に行っても無視されるだけだろうに、一体何が楽しいのだろうか――と、ドクオは納得できないでいた。
('A`)「弟者が先に様子を見に行って、自分は待機する――って、自分で言い出したんだろうが」
(;´_ゝ`)「いやぁ、だってああでも言わないと弟者たん絶対に引き下がらなかったんだもん。
あいつ一度決めたことは絶対に譲らないからな」
.
413
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:07:06 ID:2tZd1sd.0
弟者もブーンも、戻って来ない。
彼らが部屋を出てからそれなりの時間が立ったはずだが、帰ってくる様子もない。
('A`)「……なぁ、兄者」
( ´_ゝ`)「ん、どうした?」
('A`)「……お前さ、本当は弟者と仲が悪いのか?」
そんな手持ち無沙汰な時間の中、ドクオがふと口にした言葉に兄者の動きが止まる。
しばしの沈黙が流れた後に、兄者は何度か口を開いては閉じ、それからようやく声を上げた。
……その時にはもう、兄者の顔にはいつも通りのやや大げさな表情が浮かんでいた。
ヽ(#´_ゝ`)ノ「何を言う、俺と弟者たんはどっからどうみても仲良しさんだろ!」
(;'A-)「そういう意味で言ってるんじゃない。
あれ、オレ今、人間とは違う考え方で話しているのか? えっと、オレが言いたいのはな」
ヽ( ´_ゝ`)ノ「どうせ弟者と仲良しな俺が、なんだかんだ言って羨ましいんだろ」
('A`)「話を聞け。……俺が言いたいのは、ええと、……お前ら兄弟の関係はおかしいんじゃないか、ってことだ」
( ´_ゝ`)「……はへ?」
( -A-)「お前らさ――根っこの所で致命的に食い違っている気がする」
.
.
414
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:09:19 ID:2tZd1sd.0
白い部屋には、兄者とドクオの声以外に響くものはない。
少し前までは弟者の足音がかすかに届いていたが、それももう聞こえない。
(;´_ゝ`)「ええ、そうか〜?」
('A`)「……兄者。お前さ、いつも何を隠してんの?」
その言葉に、兄者はすぐには答えなかった。
弟者が去っていった通路の先をじっと見やり、そしてようやく声を上げた。
<(;´_ゝ`)v「え、えろい絵巻とか……」
('A`)「そうじゃなくて、さ。お前……言葉を選んでるっていうか、わりと本当のこと言ってないんじゃないか?」
(;´、ゝ`)「うむむ。わりと本気で、ドクオの言ってることがわからんぞ。
この兄者たん、顔を合わせる人ほとんどに、お前考えてること丸わかりって言われる件について」
('A`)「……オレさ。ブーンと違って、楽しいって感情はそれほどよくわからないんだ」
ドクオは兄者の肩から降りると、その羽を動かしはじめる。
その動きは危なっかしいものだったが、それでも落ちることはなかった。
ドクオは兄者の顔がよく見える位置でとどまると、その顔をじっと見つめた。
.
415
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:11:53 ID:2tZd1sd.0
('A`)「でも、俺はさ、影から生まれたせいか人の後ろ暗いところとか、後ろ向きの感情ってやつには敏感なんだ。
相手の嫌がっている部分ってのに触れるのがとにかく、上手いらしい」
(;´_ゝ`)「流石な俺でも、ひくわー」
(#'A`)「じゃあかしい!」
ドクオは紫の顔を赤に染めるが、すぐにその表情を元に戻した。
小さな顔の中心にある細い目が、兄者をじっと見据える。
('A`)「……とまあ、今みたいな感じでさ、お前いろいろと話をそらしたり、誤魔化してるよな。
一体、何を隠してるんだ? お前さんたちの仲がこじれてるのもそれが原因なんじゃないのか?」
(;∩_ゝ`)「うへぇ。お前さんの中では俺達の間に何かがあるのは確定なわけね。
俺は別に何を隠しているというわけではないのだが……」
('A`)「嘘だな」
兄者は、ドクオの言葉に何も言葉を返そうとしない。
かわりに目元に置いた手に力がこもるのを、ドクオは見て取った。
.
416
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:13:18 ID:2tZd1sd.0
('A- )「弟者は魔法も、オレやブーンみたいな精霊も嫌いな、とんだ根性悪だ」
::(;∩_ゝ`)∩::「……ドクオ。お前さんは本当に怖いものなしだな」
d('∀`)「まあ、今は本人がいないからな。
また羽を毟られるなんて失敗は犯さないぜ!」
そう言って、ドクオは気持ちの悪い笑みを引っ込めると目を細めた。
その視線の先は兄者。
口には出さないが、ドクオの表情は「下手なごまかしはきかないぞ」と雄弁に語っている。
('A`)「あの弟が不機嫌になるのは、オレみたいな“こちら側”の生き物か、魔法が絡んだときだ。
羽をむしられ、投げられ、刀をつきつけられたオレにはわかる!」
( ´_ゝ`)「――ふむ。散々ひどい目にあったドクオが言うと説得力が違うな。
でも、ドクオは俺が今日めっちゃ殴られたのを忘れている件」
┐('A`)┌「それは兄者が馬鹿やったからだろ」
┌(;´_ゝ`)┐「なんと」
∩('A`)∩ ヘンナ ポーズ ヤメロヨー
( ´_ゝ`)σ オマエ モナー
.
417
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:15:16 ID:2tZd1sd.0
ドクオはわざとらしく咳払いをすると、上げていた両手を下ろす。
そして、「話がそれた」と呟くと、表情をひきしめた。
('A`)「……と、まあ、弟者のやつは乱暴なようでいて、怒るのにはそれなりの理由がある」
( ´_ゝ`)b「ふむ。流石だな、ドクオ者。
知ってる奴も多少はいるが、お前さんが気づくとは思わなかった件」
(‐A‐)「俺を見くびるなよ、兄者。
と、言いたいところだけど、本題はまだそこじゃない」
ドクオは、「弟者が怒るのには、はっきりとした基準がある」と断言すると、兄者の顔を見据えた。
一方の兄者はドクオと視線を合わさないようにするためか、視線を横に向ける。
それを見たドクオは、兄者がそらした視線のちょうど先へと飛んだ。
('A`)「だけどな、兄者。
その基準にはあわないのに、弟者の様子がおかしくなった時があったよな」
( ´_ゝ`)「気のせいじゃないか?」
('A`)「……二回だ」
その言葉に、兄者は返事をしなかった。
言葉の続きを待っているのか、それとも沈黙でもって肯定したのか……。
ドクオはしばし沈黙すると、再び口を開いた。
.
418
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:17:09 ID:2tZd1sd.0
('A`)「しぃさんと一緒にいた男が、双子の話を出したよな。
あれが一度目。弟者がブーンの頭を撫でるなんて正気の沙汰とは思えん」
(;´_ゝ`)「全力で把握した。
仲良き事は美しき哉だが、さすがのお兄ちゃんもあれにはびっくりしたわ〜」
('A`)「……お前も、びっくりしたって反応じゃなかったけどな」
兄者は小さく笑い声を立てる。
しかし、ドクオの言葉をそれ以上追求する気配はなかった。
('A`)「それから二回目は……言わなくてもわかるよな」
┐( ´_ゝ`)┌「……さてな、俺にはさっぱりわからんちんだ」
('A`)「最初の行き止まり。そこであいつ鏡割っただろ。
それも、いきなり駆け出して問答無用」
( ´_ゝ`)「弟者たんは心配症だからな。罠だと思ったんじゃないのか?」
('A`)「罠かどうかの確認もせずに?
しぃさんと一緒にいた男――ギコに遺跡にあるものは壊すなと、念押しされたのにか?」
( ∩_ゝ`)「……」
.
419
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:19:42 ID:2tZd1sd.0
兄者の沈黙を好機と取ったのか、それとも今を逃すと永久に機会は訪れないと踏んだのか。ドクオは追及の手を緩めなかった。
相手の嫌がっている部分に踏み込むのが上手い――というドクオ自身の発言は、あながち嘘ではないらしい。
('A`)「それに。兄者、あの時はお前も変だった」
( ´_ゝ`)「……なんと。毎度毎度、変とよばれる俺がついに普通の人に!」
('A`)「兄者、お前さ。弟者が何かやらかそうすると、大体止めて、なんのかんの言うだろ。
弟者が俺の羽をむしった時とか、魔法石板売りやのーちゃんの時みたいに」
( ´、ゝ`)「むー、そうだったか?
弟者に、美人のおねーさんとしゃべっててズルいぞって、言った記憶ならあるんだが」
沈黙から脱した兄者の言葉にも、ドクオの追求の言葉は止まらない。
今のドクオは事件が起こったあの場で、「しぃさん!」と嬉しそうに叫んでいた精霊と同じだとはとても思えない。
(-A-)「そんなに長い付き合いじゃないが、それでもオレはお前さんとはそれなりにやってきたと思う」
ヾ(;´_ゝ`)ノ「うむむ、情で訴える気か! お兄ちゃんにはきかないんだからねっ!
俺は弟者さんとは違うんだから、プンプンっ」
.
420
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:21:13 ID:2tZd1sd.0
('A`)「なあ、答えろ兄者。
お前……いや、お前たちの間には何があるんだ?」
ふざけたところなど一欠片もない表情で、ドクオが告げる。
その言葉に振り回されていた兄者の腕が、降ろされる。
( -_ゝ-)「……」
(;´_ゝ`)「……ドクオはしつこいなぁ。
俺はどうやら、こういうのが嫌いだったみたいだ。驚くことに」
('A`;)「正直、オレもここまで食い下がるとは思ってなかった。
……あー、なんでなんだろうなぁ。面倒くさいことだけは絶対しなかったはずなのに」
(*´_ゝ`)ρ「そりゃあ、間違いなくブーンの影響だ」
(*'∀`)「ああ、なるほど」
( ´_ゝ`)「ブーンは自分で言うほど、感情がないわけじゃない。
……いいやつだよ。俺なんかよりも、よほどな」
兄者は天井を見上げると、再び瞳を閉じた。
沈黙し言葉を切った兄者の姿は、表情が少ないのも相まって、ほんの少し幼い弟者そのものだった。
( -_ゝ-)「……頑張ったドクオ者には、特別に手がかりをやろうかな」
.
421
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:23:04 ID:2tZd1sd.0
――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――
幾何学模様の床と、星を模した天井。
そして、亀のような巨大な生物や貝や海辺の生き物と、豪奢な服装の男を模した浮き彫りの壁。
装飾がほどこされた廊下を長いこと歩き続けた末、弟者は足を止めた。
⊂二(;^ω^)二⊃「オトジャー、待つおー」
その後を少し、遅れてブーンが追いかける。
ブーンの羽は光の粒をまき散らしながら輝き、ほんの少しだけあたりに風を巻き起こした。
⊂二(*^ω^)二⊃「ひょっとして、ブーンを待ってくれたのかお?
おっおっ、なんだかとっても楽しい感じだおー」
(´<_`;)「……」
弟者のちょうど傍らまで飛ぶと、ブーンは動きを止めて声をかける。
そのまま弟者の答えを待つが、彼は相変わらずブーンには何も口にしなかった。
弟者はブーンを無視したまま、廊下の先をじっと見据えている。
( ^ω^)「オトジャ?」
.
422
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:26:00 ID:2tZd1sd.0
(´<_`;)「……これを一つずつ見て回るのは、骨が折れそうだ」
弟者の視線の先には、脇へと入る出入り口。それが6つ、廊下の左右に並んでいる。
正面に続く廊下と脇道、計7つの分かれ道が弟者とブーン目の前に広がっていた。
(-<_-; )「仕方がない。しらみつぶしにするか……」
( ^ω^)「おー、大変そうだお」
弟者はそう呟くと、一番近い入り口をくぐる。
そこに広がるのは、小部屋だった。
広さは先程、兄者たちと入った本棚がある部屋よりも狭いくらい。
その部屋や、分かれ道のあった広間と同じように、壁や天井は白い石材で作られている。
窓の一つもない空間は薄暗い闇が横たわっている。が、それでも文字が読める程度の明るさは保たれていた。
(´<_` )「……何もない、か」
部屋に置かれているのは、古びた机だけ。
魔力の気配は感じないし、他にこれといったものも置かれていない。
弟者はため息を一つつくと、廊下へと引き返した。
.
423
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:27:05 ID:2tZd1sd.0
(*^ω^)ノ「じゃあ、今度はこっちへ行くおー」
(´<_` )「……」
弟者が廊下に出ると、ブーンは先程までいた部屋の向かいを指さし、にこりと笑った。
弟者は指さされた方向を無言のまま見やると、ブーンの指さした入り口をくぐる。
(*^ω^*)「お? ……おおおおお」
(´<_` )「……」
それをみたブーンの頬が、興奮で赤く染まる。
しかし、弟者は相変わらず無言のままだった。
( ´ω`)ヘンジ ナイオー
(´<_` )「……」
.
424
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:29:23 ID:2tZd1sd.0
・
・
・
(;^ω^)「何もないおー」
向かいの部屋は、広さも作りも先ほどの小部屋とさほど差がなかった。
白い部屋は薄暗く、先ほどの部屋の机の代わりに、茶色く退色した絨毯が敷かれている。
しかし、それ以外には何もない部屋だった。
(´<_` )「……ここもハズレか」
( ^ω^)「だおねー」
危険そうなものや、兄者が探す魔法石板の姿はどこにも見えない。
小部屋から引き返して、少し先の小部屋に入ってみるが、それも部屋もこれまでの二部屋と大差なかった。
(;^ω^)「なんか、さっきと同じ部屋みたいだおー」
.
425
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:31:06 ID:2tZd1sd.0
(´<_` )「……」
( ^ω^)「このあたりは、こういう部屋ばっかりみたいだおね」
(´<_` )「……」
( ^ω^)「昔は何があったのかおねー?
ブーンはここには来たことないから、わからんですおー」
(´<_` )「……」
( ^ω^)「それにしても、ここはすっごく広いお」
(´<_` )「……」
(;^ω^)「オトジャー、やっぱり返事してくれないのかおー?」
(´<_` )「……」
( ´ω`)ショブーン
(´<_`;)「……」
弟者は一瞬表情を崩すが、それでも無言のまま、隣の小部屋に入る。
それから、さらに隣とその向かいの部屋にも足を踏み入れるが、そのどれもが同じような作りの小部屋だった。
.
426
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:33:26 ID:2tZd1sd.0
( ^ω^)「……いっぱい部屋があったけど、何もなかったおね」
(´<_` )「……」
(;^ω^)「あうあうー、オトジャは楽しくなかったお?
ブーンは結構楽しかったけど、どうかお?」
(-<_- )「……」
元気をとりもどしたらしいブーンと、弟者は再び廊下へと舞い戻る。
廊下の左右から伸びていた6つの脇道は、全て同じような小部屋があるのみ。
罠や魔力の気配も、兄者の探す魔法石板の影も見えない。
( ^ω^)ノ「んー、オトジャは先に進むのかお? だったら、ブーンもついていくおー」
(´<_` )「……」
弟者は相変わらず、ブーンの言葉に返事も反応も示さない。
その代わりに、自身の前や後ろを飛び回るブーンに暴力を振るうことも、追い払うこともしなかった。
(*^ω^)「早く見て回って、アニジャたちのところにもどるおー」
(´<_` )「……」
.
427
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:35:16 ID:2tZd1sd.0
(*^ω^)「おっおー、楽しみだおー」
_,
(´<_` )「……」
( ^ω^)「んー? どうしたお、オトジャー」
_,
(´<_` )「……」
ブーンの言葉に、弟者は答えない。
――ただ、この時だけは少し違った。
弟者の眉がわずかに寄り、ブーンの顔をじっと見据える。
(;^ω^)「……大丈夫なのかお? 不安なのかお?」
_,
(´<_` )「お前は……」
(;^ω^)「はい」
_,
(´<_` )「何で俺に話しかけるんだ?
話したければ、兄者と一緒にいればいいだろう。不愉快なことだが、兄者ならいくらでも話すぞ」
弟者は表情を歪めたまま、ブーンへと問いかける。
それは弟者が、自分の意志ではじめてブーンに向けて放った言葉だった。
.
428
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:37:16 ID:2tZd1sd.0
(*^ω^)「お?」
(´<_`#)「何故だ? 答えろ。返答によっては、今ここで叩き切る」
弟者の手が、腰の刀にかかる。
柄をしっかりと握りいつでも鞘から抜ける状態にしたままで、ブーンの姿を睨みつける。
弟者は実力行使をいとわない。
制止役である兄者がいないこの状態では、ブーンはいつ切られてもおかしくはない。
……それでも、ブーンの顔はいつもと同じ笑みを浮かべていた。
(*^ω^)「それはオトジャが好きだからだおー
アニジャも好きだけど、ブーンはオトジャともお話したいからだお」
(´<_`#)「俺はだまされない。
お前らみたいな“あちら側”の連中は、人間のことなんかなんとも思っていない」
(;^ω^)「おー、ブーンもドクオもニンゲンが好きだお」
( <_ #)「それでも、俺は……俺が……」
刀にかかった、弟者の手が大きく震える。
眉は寄り、目は鋭く細められ、奥歯をぎりりと噛み締められた。
.
429
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:39:18 ID:2tZd1sd.0
――しかし、それでも弟者は刀を抜かなかった。
(;^ω^)「オトジャ……」
( <_ )「――これ以上話しかけるな」
弟者はそうとだけ告げると、完全に黙り込んだ。
それっきり視線すらブーンへと向けない。
( ^ω^)「……ブーンは、悪いことしちゃったのかお?」
( <_ )「……」
( ´ω`)「……ごめんなさいだお」
弟者は残された道である、廊下をまっすぐと進んでいく。
ひとりでにつく明かりにも、本物と見紛うごとく精巧な星空の細工にも目も止めない。
ただひたすら、前へ前へと進んでいく。
(´<_` )「……俺は……」
そしてたどり着いた、廊下の果て。
遺跡の入り口にあったのとよく似た黒の両開きの扉を、弟者は開いた。
.
430
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:41:39 ID:2tZd1sd.0
――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――
(;'A`)「はへ?」
兄者の言葉に、ドクオの動きは完全に止まった。
これまでさんざん話を逸らし続けた兄者の言葉とは、とても思えない。
ドクオの戸惑いを感じたのか、兄者は目を開くと指をぴんと立てて、薄水色の耳を大きく上下に動かした。
( ´_ゝ`)σ「そこまで言うならドクオさんには特別に手がかりをやろうかなと、俺は言ったわけだ」
(;゚A゚)「いいのか、それ」
_,
( ´_ゝ`)「散々聞いておきながら、ひどい反応な件」
兄者は顔をしかめていうが、次の瞬間にはその表情をあっさりと変えた。
そこに浮かぶのはどこか飄々とした顔。
そして、「まあいいや」と呟くと、兄者は再び口を開いた。
( ´_ゝ`)「たとえ、人間でもさ。引きずり込まれれば、鏡に落ちるんだよ」
.
431
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:43:05 ID:2tZd1sd.0
――それは、この状況になんら関係のない言葉だった。
しかし、兄者は飄々とした表情のまま、言葉を紡いでいく。
( ´_ゝ`)「精霊はどうかはわからんが、人間にとってそれは、――死ぬってこととそう変わらない件」
(;゚A゚)「――は? だって、お前」
ドクオは息を呑む。
('A`)「なあ、そこの。鏡に落ちた人間がいるって噂、知ってるか?」
羽が奇妙に震え上手く飛べない。
( ´_ゝ`)「……ほう。精霊が話しかけてくるとは珍しいな」
何を言っているのか、理解できない。
('A`)「人間なら知ってるだろ。鏡に落ちた人間なんて、本当にいるのか?」
だって、兄者は……
( ´_ゝ`)「ああ、それは俺だ」
その昔、なんでもないことのように。
(;'A`)「……は?」
言ったのではなかったか?
.
432
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:45:21 ID:2tZd1sd.0
( ´_ゝ`)「――俺は昔、鏡に落ちたんだよ」
――と、
.
433
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:47:51 ID:2tZd1sd.0
( ´_ゝ`)「まあ、そういうことだ」
(;゚A゚)「……」
(*´_ゝ`)「いやぁ〜、運が良かった。流石だよな、俺!」
何も言えれなくなったドクオに向けて、兄者は笑いかける。
そこに浮かぶのはいつもとまったく同じ調子の、ヘラヘラとした顔だ。
(゚A゚)「……」
人間にとって死とは、かならず訪れる終焉である。
だから、人は死に怯え忌避するのだと――ドクオはかつて、聞いたことがある。
(*'∀`)「鏡に落ちやんのぉぉお!!!
ほんとに人かよぉwwwwwwwww」
ドクオの脳裏に、今朝、自分が口にした言葉が浮かぶ。
――思えば、弟者が激怒したのはその直後だった。
.
434
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:49:06 ID:2tZd1sd.0
殺してやると弟者は言った。
怒りと憎悪を隠そうともせずに、弟者はドクオから羽を引きちぎった。
あの時、制止の声がなかったら……ドクオの存在は、きっと消滅していた。
(;'A`)「……ぁ、」
そして、同じように殺気立った弟者の姿を、ドクオは今日何度も見ている。
石板売りの店主……盗賊の少女のー。そして、つい先ほどの鏡。
その時の弟者の姿と、彼が嫌うものが脳裏で結びつき――ドクオは、自分が嫌われている理由に思い至った。
( <_ )「……兄者はいつもそうだ」
……人間の些細な感情の動きなんてわからなくてもわかるくらいに、その答えは単純だった。
('A`)「――そういうことか」
弟者が魔法や精霊のような生き物が嫌いな理由。その原因。
ドクオは行き着いた回答に二三度頷き……それから、ふと眉根を寄せた。
.
435
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:51:15 ID:2tZd1sd.0
('A`)「……でも、それは変だ」
兄者は鏡に落ちて、死にそうになった。
だから、その身内である弟者は魔法や、精霊なような生き物や、鏡を嫌がっている。
――ドクオにもわかる、馬鹿みたいに単純な理由。
('A`)「……逆なんだよ。
鏡に落ちたのは兄者、お前だ。弟者じゃない」
( ´_ゝ`)「そうだな」
だが、それにしては――弟者の反応は行き過ぎている。
死に直面したのは兄者ではなく、弟者の方だと言ったほうが、むしろ納得できるくらいなのだ。
('A`)「……でも、今のお前らは、逆だ。
鏡に落ちたのは弟者で、兄者はそうじゃないみたいだ」
死という絶対的な恐怖に直面したから。
その原因である、人間ではない精霊のような生き物を憎悪する。
人間の領域ではない魔法を拒絶し、原因となった鏡を見れば破壊する。
( ´_ゝ`)「……ああ、たしかにそうだな。でも、」
.
436
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:53:26 ID:2tZd1sd.0
( ´_ゝ`)「同じだよ。弟者にとっては、な」
ドクオの考えを止めるように、兄者はぽつりと言った。
出入り口の方へと向けられていた視線が、ドクオへと向けて合わせられる。
( ´_ゝ`)「鏡に落ちたのがどっちでも、弟者にとっては同じなんだよ。
――ああ、これが手がかりな」
(;'A`)「はへ?」
( ´_ゝ`)「お前さんが聞きたいのは、俺と弟者の間に何があるのかだろ」
ドクオを再び混乱させる言葉を投げかけながら、兄者はまたへらりと笑った。
わかっているよと言いたいのか、それともわからないなと言いたいのか。ドクオにはわからない。
σ( ´_ゝ`)「あー、ドクオには言っておくが、俺と弟者は別に仲が悪いわけじゃないんだぞ。
でも、まぁ ……食い違ってるよな、やっぱ。イタイトコロ ヲ ツキオッテ カラ ニ」
そう言って、兄者は再び笑ってみせる。
眉を寄せたその表情は、困っているようにも見えた。
( ´_ゝ`)「距離を測りかねているだけなんだよ、俺も弟者も。なにせ双子だから」
.
437
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:55:35 ID:2tZd1sd.0
,_
('A`)「双子……ねぇ……」
やはり、そこに行き着くのか。
ドクオは眉をしかめて、兄者に向かって再び問いを投げかけようとする。
( ^ω^)「おっおー、ドクオー! アニジャー!!!」
が、ドクオと兄者のもとに、おっとりとした声が割り込んだ。
兄者が顔を見あげれば、硝子のような羽を輝かせたブーンの姿がそこにあった。
( ´_ゝ`)「よーし、内緒話はここまでだな。ドクオー、さっきまでの話は秘密だぞー。
お兄ちゃんとは、弟にあまり心配をかけてはいけないものだからな」
(;'A`)「どの口がそれを言うか」
続きを追求したい気持ちはあるが、ドクオはそれ以上は問いかけなかった。
どのみち兄者は、もうこれ以上は話さないだろう。
ドクオには、その確信があった。
( `ω´)「あー! ドクオばっかりアニジャとないしょの話をしてズルいおー!
ブーンだってまざりたいおー」
.
438
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:57:11 ID:2tZd1sd.0
( ´_ゝ`)b「よしよし。ブーンには今度、世界のメシの話をしてやろう」
(*^ω^)「ほんとうかお。わーい! 楽しいおー!」
兄者の軽口に、ブーンが楽しそうに応じている。
それを聞き流しながら、ドクオは視線を周囲に向ける。
(´<_` )「……」
('A`)「弟のお帰りか」
部屋へと入ってくる弟者の姿が、ドクオの視界に入ったのはちょうどその時。
先程まで話題の中心だった弟者は、口を真一文字に結んで、兄者とブーンの方を睨みつけている。
よく見れば、弟者はその手に見慣れない何かを掴んでいた。
(´<_` )「兄者」
( ´_ゝ`)ノシ「お疲れさん、弟者。
じゃあさっそく、進もうじゃないか――」
,_
('A`).。oO(あれは……)
.
439
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 21:59:26 ID:2tZd1sd.0
一体、何なのかとドクオが思った瞬間。
弟者が手にした黒いナニカを、兄者の顔に向かっておもいっきり投げつけた。
(;゚A゚)「ちょ、ま!!!!」
三[])´_ゝ`)<あべし
( ;゚ω゚)「アニジャ―――!!!」
……弟者が投げつけたのは、黒い光沢のある石だった。
四角い皿ほどの大きさの薄い石板。
兄者はその石板をしげしげと眺めるが、そこには刻印らしきものも術式らしきものも刻まれていない。
ヒリヒリ(:::)´_ゝ`)つ[]「ふむ。弟者、これは?」
(´<_` )「これなら魔法石板に使えるだろ。
拾ってきてやったから、帰るぞ、兄者」
( ´_ゝ`)つ[]
(#`_ゝ´)「弟者ァァァ!!! お前というやつは何もわかってない!!!!」
.
440
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:01:38 ID:2tZd1sd.0
石板を真顔で眺めた末に、兄者はやだやだーと騒ぎ始める。
腕をバタバタと振り回す兄者の顔は、先程まで真剣な話をしていた人物と同じだとはとても思えない。
o(#`_ゝ´)o「俺達は大冒険に来てるんだぞ!
それが、いきなりアイテム渡されて終了って――あんまりじゃないか、我が弟よ!」
(´<_` )「あー、はいはい。わかったから帰るぞ、兄者」
o( ;*`、ゝ´)o「帰るぞって――これじゃあ、俺ここでドクオと話してただけじゃないか!!!」
(;'A`)て「その顔キメェな、おい」
そして、対する弟者の顔は段々と険しくなっていく。
眉は寄り、それほど饒舌じゃない口はどんどんと達者になっていく。
_,
(´<_` )「大市に行った、ラクダに乗った、盗賊に会った、ギコさんたちに会ったし、遺跡にも入った。
もう十分だろ。まだまだ帰りもあるんだから、さっさとここから出て帰ろう。
明日は妹者と遊ぶんだろうが」
( ^ω^)「おー、いろいろいっぱいあったおねー」
(#´_ゝ`)σ「異議あり! メインダンジョンの攻略なくして、何が冒険か!!
楽して重要アイテムゲットとは、俺の方針に大きく反する!」
( ;*`、ゝ´)「っていうか、弟者ばっかり遺跡探索してズルいやズルいや!!!」
(;'A`)て「だから、その顔やめろっての!!!」
.
441
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:03:31 ID:2tZd1sd.0
(#´_ゝ`)σ「そもそもこれは約束違反じゃないかね、弟者くん」
(´<_` )「さて、何のことやら」
τ( ´_ゝ`)η「弟者くんは先に様子を見に行った。それで、俺がここで待機した。
――うん。ここまではいい。だって、そういう約束だからな」
_,
(´<_` )「なら、問題無いだろう? 帰るぞ」
η(#´_ゝ`)η「違うっての! 弟者が先行したのは、安全を確認するためだろうが!
みつけました。はい、帰りましょうじゃ。意味ないっつーの!」
兄者と、弟者の表情はどんどん険しくなっていく。
これはまた殴り合いが始まるんじゃないかと、ドクオは内心危惧を抱く。
(;^ω^)「アニジャ、オトジャ……」
,
(-<_- #)「もう話しかけるなと言っただろう! この羽虫!」
η(#´_ゝ`)η「大体、目的のブツはこれじゃな」
( ;´_ゝ`)「……あ」(´<_`; )
激しく言葉を放っていた兄者と弟者は、同時にそっくり同じ表情をして間の抜けた声を上げた。
二人の顔に浮かぶのは、しまったという表情。
.
442
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:05:52 ID:2tZd1sd.0
(*^ω^)「お?」
(;'A`)「たった今、兄と弟から、ものすごく気になる発言が飛び出したような……」
( ;´_ゝ`)「……」(´<_`; )
( ;´_ゝ`)「……もう話しかけるなと『言った』? ブーンに?」
(´<_`;)「……これじゃな……いのか?」
兄者と、弟者は同じ表情を浮かべたまま沈黙する。
お互いの言葉は気になるものの、追求すれば自分も不利になる――そう思っているのだろうと、ドクオは推測する。
(;´_ゝ`)「……行きませんか、弟者さん」
(´<_`;)「ああ、これじゃないのなら仕方がないな……」
('A`)ノ[]「おい、お前らこれはどうするんだ?」
ぎこちなく話し始めた二人に向けて、ドクオは先程投げられた石板を指さしてみせる。
が、二人は心ここにあらずといった表情のままで、ぎくしゃくと会話を交わす。
.
443
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:07:24 ID:2tZd1sd.0
(;´_ゝ`)「……あ、弟者さん持っていってください」
(´<_`;)「……あ、ああ。今のところただの石だしな」
('A`)「……二人揃って、不自然なことこの上ないな」
互いに深入りしないやりとりに、ドクオは小さくため息をつく。
そして、兄弟から目を離すと、今度はブーンが両手を振り回しながら飛び回っているのが目に入った。
(*^ω^) ニコニコ
('A`)「……お前も、やけに嬉しそうだな」
(*^ω^)「そうかお? ブーンは今、うれしいのかお?」
(;'A`) シルカ
(*^ω^)「おっおっ。うれしいっていいものだおー」
( ´_ゝ`)ノシ「おーい、お前ら行くぞー」
(-<_- ;)「……」
呼びかける声にドクオが振り向くと、既に兄者と弟者は最期の出入り口へと向かっている。
ドクオとブーンは互いに顔を見合わせると、兄弟たちの元へと向かってあわてて羽を動かしはじめた。
.
444
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:09:44 ID:2tZd1sd.0
――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――
出入り口から廊下に出た瞬間、兄者はほぅと息をついた。
( ´_ゝ`)「冬の星だ」
これまで通ったのと、ほぼ同じつくりの廊下。
その星空を模した天井をじっと見上げて、兄者は言う。
( ^ω^)「わかるのかお?」
( ´_ゝ`)ゝ「これだけは得意だからな。
作り物にしては本当によくできている……ほらあれが、天上輝星」
(*^ω^)「おー」
(´<_` )「さっさと行くぞ」
( ´_ゝ`)ノ ハーイ (^ω^ )ノ
.
445
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:11:22 ID:2tZd1sd.0
廊下の中を、兄者と弟者のたてる足音だけが響く。
ドクオは延々と続く、壁の浮き彫りを眺めながら大きく息をはいた。
(;'A`)「この廊下長くないか?」
( ^ω^)「もっと、ずぅーっと続いてるおー」
(;'A`)「……つかれた」
プンプン∩(#`_ゝ´)∩「人の肩に座って楽をしているくせに、何を言うか」
どこまでも続く似たような見た目の廊下は、そこを通る者を知らず知らずのうちに疲れされる。
変化のない光景は、それだけで人間の気力を消費させるものだ。
どれだけ進んだのか。時間の感覚すらも無くなりそうな廊下を、兄者達一行は進んでいく。
(´<_` )「もうしばらく進めば、小部屋への分かれ道にたどりつく」
(*゚_ゝ゚)+
(;^ω^)「でも、中はそんなに楽しくなかったお……」
( ´・_ゝ・`)ショボーン
('A`).。oO(兄者が百面相してる)
.
446
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:13:17 ID:2tZd1sd.0
それからも歩き続け、兄者が再び不満の声をあげようとした頃。
ようやく弟者が口にした分かれ道へとたどり着いた。
(*´_ゝ`)「おお、すごいではないか」
(´<_` )「しかし、俺らはまっすぐに進むからな」
゜ミo(#`_ゝ´)o彡゜「なんで、そんなこと言うし!
俺は一人でも行くからな!!!」
(´<_` ;)「時に待て、兄者よ」
兄者は肩に乗ったドクオともども、廊下に作られた出入り口の一つへと入っていく。
が、それから幾ばくもしないうちに、すぐに戻ってくる。
_,
(;´_ゝ`)「あるぇー、おっかしいなぁー」
(´<_` )「……」
そう言いながらも、兄者はその隣に並んだ出入り口へと入っていく。
が、やはりそれほどたたないうちに、兄者は再び廊下へと帰ってくる。
(;´_ゝ`)「……なにもないな」
(´<_` )「そう言っただろう。まったく、兄者は人の話をきかない大王様だな」
.
447
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:15:21 ID:2tZd1sd.0
('A`)「うん、ただの部屋だったわ」
(;^ω^)「ブーンとオトジャは、ここにある部屋ぜんぶ見たお。
でも、他もみんなそんな感じだったお」
τ(;´_ゝ`)「うーん、全部こんな感じだったのなら、弟者たんは一体どこから石板を拾ってきたのだ?」
兄者は頭をかきながら、首をひねる。
その動きにドクオは、「オレの方に頭を傾けんな!」と不満の声を上げるが、誰も取り合おうとはしなかった。
(´<_` )「もっと先だ。ちなみにだが、他の部屋も見ていくか?」
('A`)「オレは遠慮するぜ」
(;´_ゝ`)「……正直、弟者の話を聞いておけばよかったと思っている」
⊂二(*^ω^)二⊃「じゃあ、張り切って進むお!」
廊下の左右に広がる出入り口を無視して、一同は進んでいく。
兄者が振り返ると、これまで歩いてきた道は照明が消え闇に沈んでいた。
( ´_ゝ`)「おお、こわいこわい」
('A`)「……まあ、大丈夫だろ」
.
448
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:17:34 ID:2tZd1sd.0
(´<_` )「どうした、兄者?」
γ( ´_ゝ`)>「俺のかっこよさにおにゃのこが殺到して、大乱闘になる気がしてな」
_,
(´<_`; )「そんなの一生無いから安心しろ」
(;'A`).。oO(それで、納得するのか弟!)
そんなやり取りを交わしながら、一同は進んでいく。
廊下の装飾も明かりも、これまでとほぼ変わらない。聞こえるものといえば、足音のみ。
さきほどのような脇道もないから、まっすぐと進む廊下をひとしきり歩くだけとなる。
⊂二(* ω )二⊃「アニジャー、オトジャー、ドクオーあとちょっとだおー」
(*´_ゝ`)「なんと! やったな、ドクオ者!」
(*'A`)「ついに、くるのか」
(´<_` )「……」
そして、ブーンの言葉通りしばらく進んだ先。
そこに黒い両開きの扉があった。
装飾の殆ど無いその扉は、弟者が先行していた時に開いたのと同じものだった。
.
449
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:19:24 ID:2tZd1sd.0
(*´_ゝ`)「弟者ぁ、俺が開いてもいいか!」
(´<_` )「大丈夫だ、問題ない」
兄者は、扉へと手を掛ける。
ひんやりとした廊下の空気と同様に、扉から伝わる熱はしんと冷えている。
それに心地よさと、ほんの少しの恐れを抱きながら兄者は、扉を押した。
ギッ
蝶番が、鈍い音を立てる。
はじめは重く、徐々に軽くなめらかにと扉は動き始める。
そして、それとともに差しこむのは強烈な日差し。
(#>_ゝ<)「まぶしっ」
(´<_-; )「……っ」
(*^ω^)「ついたおー!」
日差しは扉の動きと共に強くなり、辺りを白へと染めていく。
思わず閉じた目を、兄者がふたたび開く頃には周囲の光景は完全に別物と化していた。
.
450
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:21:12 ID:2tZd1sd.0
理路整然と続いていた床の幾何学模様は、崩れかけた石畳と、石が転がる硬い大地に。
星空を模した天井は、白くけぶりながらも青い空に。
そして、浮き彫りを施された壁は一気に開け、広場のような空間が広がっていた。
(;´_ゝ`)「これは……」
(´<_-; )「おそらく庭園だろうな。
俺達は奥へと向かって進んだ結果、外へと出てしまったというわけだ」
弟者の言うとおり扉の向こうに広がっていたのは、庭園だった。
正確には、かつて庭園だったというべきであろうか。
大地にはかつての名残とみられる、巨木の跡や、背の低い木々や草たちがまばらに生えている。
(;'∀`)「……なんというかここは、ボロボロだな」
( ^ω^)「そうかお? 木とかいっぱいだお!」
ブーンは否定したが、ドクオの主張する通り、ここは荒れ果てていた。
外観や内部が今でも使えそうなほど整っていたのとは、まるで正反対。
壁の至る所にヒビが入り、場所によっては崩れている所すらある。
∩( ´_ゝ`)∩「お兄ちゃん、これにはちょっと驚きましたわ」
('A`)「オレは拍子抜けだ」
.
451
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:24:02 ID:2tZd1sd.0
(´<_` )「まあ、ざっとこんな感じだ」
白かったはずの外壁の色は鈍くかすみ、弟者が触れたとたん表面がパラパラと剥がれ落ちた。
それをぎょっとした表情で見つめた後、兄者は再び周囲へと目を巡らせる。
遺跡の暗闇に慣れた目には外のまぶしさは、まだつらい。
(;´_ゝ`)「……しかし、一気に熱くなったな」
(´<_`; )「仕方がない。外だからな」
被り布を深くかぶり直しながら、兄者は目を凝らす。
まぶしさと目への刺激は少しずつ引いていき、次第に周囲の様子がはっきりと目につくようになる。
兄者はそれを見て取ると、かつての庭園へと一歩踏み出した。
( ´_ゝ`)「――ここはそんなに砂がつもってないのな」
(´<_` )「木があるからじゃないか。
荒れてはいるが、まだ水は枯れていないようだ」
そのまま、兄者たちは足を進めていく。
そして、木に紛れて据えられている、かつては噴水か美術品だったものの前にたどり着いた。
今はもはや原型をとどめていないそれは、崩れかけた黒い石や岩の固まりと化している。
.
452
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:25:30 ID:2tZd1sd.0
(*^ω^)「石板さんはオトジャがここから見つけたんだお!」
ヽ(*´_ゝ`)ノ「ほう。なるほど、でかしたじゃないか弟者!」
ブーンの言葉を聞いて、兄者は目の前の黒い石や岩達に目を凝らす。
よく見てみれば、その黒い石はつややかで厚みも薄いものがほとんどだ。
確かにこれなら魔力の通りも悪くなさそうだし、しかるべき所で売ればそれなりの金額になるように見えた。
(´<_` )「まあ。先ほどの件を考えると、見つける必要はなかったんだがな。
そもそも、兄者の目的とは何だったのだ?」
( ;´_ゝ`)「そういう、弟者たんこそ。
俺とドクオがいない間に、ブーンとなんか話でもしてたのか?」
( ;´_ゝ`)「……」(´<_`; )
兄者と弟者が、同じ表情を浮かべたまま同時に沈黙する。
そのまましばらく顔を合わせた後、二人はようやく声を上げた。
(;´_ゝ`)「……探索、続けるか」
(´<_`;)「……把握した」
('A`).。oO(こいつら、腹を割って話せんのか)
.
453
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:27:14 ID:2tZd1sd.0
黒い石や岩の固まりを越え、兄者は辺りを歩いてみるが他にはめぼしいものは何も見えない。
木と草と石と崩れかけた壁が、彼の視界に入る全てだ。
(´<_` )「俺が見た限りでは、ここが終点だ。
兄者の目的が何かはわからないが、そろそろ満足したか?」
(;´_ゝ`)「いや、まだ目的のものが見つからない。
ギコ者も言っていたし、そんなことはないはずなんだが……うーむ」
兄者は辺りを見回しながら、手を顎に置き考え込み始める。
ギコは目的のブツは一番奥の間だと言っていた。それにわかりにくいとも。
では一体どこなんだと、兄者は考えこむ。
( ´_ゝ`)「ギコ者たちがわざわざ神殿って呼んでいるからには、祀られている何かがあると思うわけで……」
('A`)「は?」
( ´_ゝ`)b +「……つまり、もっと奥があるに違いない!」
兄者がぶつぶつとつぶやいた言葉に、ドクオと弟者は眉をひそめる。
ただ、ブーンだけが兄者の言葉を聞き顔をぱっと輝かせた。
.
454
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:29:15 ID:2tZd1sd.0
d(^ω^ )「さすがだお、アニジャ!」
(*´_ゝ`)b「おお、流石だよなブーン者!
お前もとうとう『流石だよな』の精神を習得したか!」
∩(^ω^ )∩「おっお! やったおー!」
兄者はそう言いながら、再び歩き始める。
行く手を阻むように立つ背の低い木々に近づき、どうにか通る場所はないかと目を凝らす。
( ´_ゝ`)「お、ここか?」
(´<_`;)「まだ、先があると……」
木々のとある一角に、かき分けられたかのように枝が不自然に折れた形跡がある。
弟者の野郎、めんどくさくなって調べるのサボりやがったな。
――そう考えながら、兄者はそこに向けてぐいと体を滑り込ませる。
(;^ω^)「アニジャっ!」
(*´_ゝ`)ノ「大丈夫だ。こっからまだ先へと、進めるようだ」
Σ(´<_` )「なんと! 兄者、今すぐそちらに行くから時に待て!!」
.
455
:
名も無きAAのようです
:2013/05/19(日) 22:31:07 ID:2tZd1sd.0
木々のそのまた向こうには、石造りのアーチがあった。
よく見れば、その先は再び建物らしき影へとつながっている。
ギコが言っていたわかりにくいとはこのことだろうと、兄者は一人納得する。
('A`)「これはまた……」
(*´_ゝ`)o彡゜「よし、行くか!」
(;'A`)「お前、弟者をまた怒らすつもりか」
ドクオの声に「いいのいいの」と返すと、兄者はアーチを越え屋内へと入っていく。
廊下と思われる場所はこれまでと違い、星空を模した天井や浮き彫りの細工がない。
床と壁は古ぼけた白い石材を積み上げてつくられている。
入り口から差し込む光と、壁の上方に取り付けられた明かり取りの小窓から差し込む光だけが、中をかろうじて照らしていた。
(´<_`#)「兄者っ!」
(;´_ゝ`)て「うおっ、弟者っ。ゴメンナチャイ!」
('A`)「だから、怒られるとあれほど」
( ;ω;)「おいてくなんてひどいおー」
追いかけてきた弟者とブーンの声に、兄者は慌てて足を止めた。
弟者は怒りの表情を浮べ体を震わせ、ブーンはというとその目に涙を溜めている。
兄者にとって弟の反応は予想通りだったが、ブーンの泣き顔にはさすがにその良心が痛んだ。
.
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板