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人間の証明をするようです
11
:
名も無きAAのようです
:2012/10/27(土) 20:00:58 ID:mmEe6jmg0
教授が駄目人間な大学って一体どうなんだろう、大学に行かなくて正解だったかもしれない。
等と思いながら杉浦は滔々とその教授の珍行動について語る青年ことフさんことフサギコを眺め、もふもふと人形焼を口に押し込む。
牛乳ほっしっ、とか思った。
暫くそうして二人で座っていると、不意に杉浦はぽんと膝を叩いた。
( ФωФ)「今日は新しい入居人がやってくる日でした。忘れとった」
ミ,,゚Д゚彡「え? まじで? 女の子? 女の子?」
( ФωФ)「そんなの知らんです。とりあえず大家として迎えねばならんので、失敬ですが席を外すのである」
ミ,,゚Д゚彡「あ、俺もついてくよ」
うざってぇなぁこのひと、等々思いながら、杉浦はフサギコを従えてアパートへと続く家路に着く。
事在るごとにフサギコがもみじ饅頭を強請るので、人形焼を与えてみると投げ捨てよった。
人からもらったものを粗末にするなという話しである。
ミ,,゚Д゚彡「俺が欲しいのはもみじ饅頭だぁあああああああ!!」
( ФωФ)「死ねやである」
ミ,,゚Д゚彡「へぶらすか!!」
殴っておいた。
12
:
名も無きAAのようです
:2012/10/27(土) 20:04:20 ID:mmEe6jmg0
ミ,,゚Д(#彡「いががががが……え、何これ、後からじわりじわりと痛い……」
( ФωФ)「俺的必殺、問答無用拳なのである」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ、とか描き文字を背負っている。
もう一度言おう、人から貰った、否与えていただいた物を粗末にするなという話である。
ミ,,゚Д(#彡「……御免なさい」
( ФωФ)「宜しい。三日以内にどら焼きと人形焼と今川焼きと滞納してる家賃を払えば許す、です」
ミ,,゚Д゚彡「宜しいんだかよろしくないんだか!」
滞納している時点でよろしくないのだが、はいはいと受け流す辺り、杉浦も人の子。
この無礼で頭の悪い年上の青年が中々に気に入っているのだった。
学生時代、あまり宜しくない目つきとガタイのお陰で友達の出来なかったかわいそうな男なのである。
その点、フサギコはそんな杉浦にも臆さない馬鹿さを発揮してくれる貴重な人材でもあった。
13
:
名も無きAAのようです
:2012/10/27(土) 20:05:16 ID:mmEe6jmg0
そんなどうでも良い話はさておき。
新しい入居者は、結論から言って、女の子ではなかった。
杉浦やフサギコよりいくらか年上であろう青年がにこにこと人好きしそうな笑みを浮かべて、挨拶の品を手渡してくる。
( ^ω^)「内藤ホライゾンと申しますお。大よそ宜しくお願いします」
( ФωФ)「いえいえ此方こそ概ね宜しくお願うのである。わたしは大家の杉浦ロマネスクです。若輩ものですがこれからも頑張って生きたいと思います」
( ^ω^)「頑張って下さいお」
深深、深深と礼をしあって、取り合えずと杉浦の部屋に通す。炬燵では既にフサギコがテレビを見てみかんを喰らっていた。
うぜぇと杉浦は思った。
四角い炬燵の一辺を内藤に薦めて、自分も残った一辺を占拠する。
14
:
名も無きAAのようです
:2012/10/27(土) 20:06:33 ID:mmEe6jmg0
入居にあたって、義務的に行わなければならない諸々を終えて、改めて新しい入居者を観察する。
遠慮がちに炬燵で正座している内藤は、中々好青年のように見えるし、年のころも遠くない。
年下の杉浦を馬鹿にしたような態度も、おびえるような態度も見受けられないし、上手くやっていけそうだ、と杉浦は内心で一息ついた。
杉浦は頭こそ悪いが、人を見る目だけはそれなりにあると自負している。
( ФωФ)「こらミセリ、その蜜柑幾つ目であるか。一日五個以上食べると手まっきっきになるぞ」
ミセ*゚ -゚)リ「三つ目だもん」
( ФωФ)「嘘吐け。さっきまでに三つ食べて朝二つ食べてたくせに」
ミセ*゚ -゚)リ「……ちぇ」
( ФωФ)「おかきでも食べてなさい。後フさん、この黄粉棒は全て我輩のである」
ミ,,゚Д゚彡「あうち」
部屋のすまっこで蜜柑を剥こうとしていたミセリを嗜め、炬燵の上のお菓子にのばされたフサの手を払う。
其れらを不可解そうな目で見ている内藤を見て、ああ、紹介遅れました、と杉浦は居住まいを正した。
( ФωФ)「すっかり忘れてたですよ」
( ^ω^)「おっ、すみませんお」
( ФωФ)「いえいえ。こっちの何かふさふさしてるのは、住民その一のフさんなのである」
15
:
名も無きAAのようです
:2012/10/27(土) 20:07:47 ID:mmEe6jmg0
ほらフさん、挨拶せぇ、と促す。
ミ,,゚Д゚彡「そぉいうのいいよぉ、苦手なんだよぉ」
うぜぇ、とまた思った。
( ФωФ)「こらっ、そんなんでどうするのっである。ちゃんとご挨拶しなさいっ」
ミ,,゚Д゚彡「うっせぇなぁ、分かってるよぉ。今やろうと思ったのに。もーやる気なくなった。もーやる気なくなった」
( ФωФ)「このばかっ」
取り合えず殴ってみた。
適当な拳は正確に、そして静かにフサの右頬骨辺りを貫く。フサは自分の陥った状況を把握出来ないまま、畳に側頭部を打ち付けた。
言葉で無理なら暴力に訴えるのも厭わないのが杉浦という男だった。
ちょっとどうかと思う方向もある。どうでも良い。
ミ,,゚Д゚彡「痛っ!」
( ФωФ)「挨拶しないなら追い出すだけですが?」
描き文字こそ背負っていないが、殺気十分である。
16
:
名も無きAAのようです
:2012/10/27(土) 20:08:58 ID:mmEe6jmg0
(;^ω^)「おっお、大家さん、そんな挨拶くらいで殴らなくても、僕はいいですお?」
( ФωФ)「良くないです。そういった甘やかしでこのふさんが最終的に辛い思いをする羽目になるやも知れんですよ。それを考えるならば今強制すべきなのである」
(;^ω^)「そ、そうですかお」
めらめらと瞳に炎を燃やす杉浦に、内藤はちょっと引いていた。
そう、この目は一介の大家をしている未成年の目ではない。
修羅にも通ずる、冷ややかかつ刃物のような重みを持った目には青い静かな、然し高温度の炎が宿っている。触れては、火傷どころではすまない。
猛々しく、かつしなやかに、そして慈愛と気高さを含んだそれは、どんな人間も下に下る他無い、壮大でいて強大でいて、そして暖かな、
母の怒りである。
杉浦の愛の鉄拳がフサギコに下り、殆どヒットポイントが赤に成り果てたフサギコが内藤に挨拶を済ませると、杉浦はようやく腰を落ち着けた。
17
:
名も無きAAのようです
:2012/10/27(土) 20:10:07 ID:mmEe6jmg0
( ФωФ)「三階の一号室に住んでるのがシューさんという女性の方で、ちょっと変わってるが我慢すれば慣れるであろう」
( ^ω^)「おっ、分かったお」
( ФωФ)「で、その下に住んでるのは兄者さんと言って、内藤さんのお隣であるが……まぁゴキブリ退治の時なんかに呼ぶと良いです」
( ^ω^)「ふむふむ。お? 三階は一人しか住んでないのかお?」
( ФωФ)「そうですね。空き部屋なんである」
( ^ω^)「おっおー」
( ФωФ)「で、このふさんが一階の二号室、一号室には朝日さんっていう人が住んでいるのである……まぁ、顔は追々覚えていけばいいでしょう。
我輩は大体この離れにいますから、なんぞあったら何なり言って欲しいである」
( ^ω^)「おっおっ、じゃあ、」
ざぁあ、と窓の外から雨音が響く。平屋建ての離れにその音は良く通った。
何となく天井を見上げながら、杉浦は洗濯物を取り込んでおいて良かったとか思った。
首をかしげた内藤が、炬燵に入らずに部屋の隅で縮こまるミセリを指差す。
( ^ω^)「その、女の子は」
( ФωФ)「ミセリである」
( ^ω^)「お……?」
( ФωФ)「先週? くらいから家に住むことになった……なんていえばいいのか」
18
:
名も無きAAのようです
:2012/10/27(土) 20:11:50 ID:mmEe6jmg0
( ^ω^)?
( ФωФ)「我輩もなんか良くわからんですが、取り合えず、我輩の妹かなんかだと思っておくと良いですよ」
( ^ω^)「お、ん。分かったお。宜しく、ミセリちゃん」
ミセ*゚ -゚)リ「どうも宜しくお願いします」
( ^ω^)「おーん」
わざわざに炬燵から出て、ミセリに向かって手を差し伸べる。
小さな手で其れに応えたミセリは、おずおずと内藤の顔を見上げた。
ミセ*゚ -゚)リ「あの、私のお家、知りませんか?」
( ^ω^)「……おー?」
かくん、と首を傾げて内藤は杉浦を見遣る。
その視線に軽く答えながら、杉浦は自分とミセリの出会いについて思いを馳せていた。
( ФωФ)「……」
回想に入る。
19
:
名も無きAAのようです
:2012/10/27(土) 20:13:58 ID:mmEe6jmg0
〃∩ ∧_∧
⊂⌒( ・ω・) ←回想に入るよのAAを勤める佐々木カラマロス大佐
`ヽ_っ⌒/⌒c (自給830円)
lw´‐ _‐ノv「杉浦くん杉浦くん」
素直シュールが訪ねてきた時、杉浦は溜まりに溜まった一週間分の洗濯物を取り込んでいた。
ハンガーを外す手を止め、杉浦がシュールの方を見ると、シュールはにらにらと笑いながら傍らに立った少女の肩を引き寄せる。
シュールの脇腹に肩を押し付けた少女は、少しだけ怪訝そうな顔をしてシュールを見上げた。
lw´‐ _‐ノv「杉浦くん杉浦くん」
( ФωФ)「何ですか」
lw´‐ _‐ノv「拾ったんだけど、如何しよう」
( ФωФ)「何をであるか?」
にらにらと笑っていたシュールは、引き寄せていた少女を指さす。
20
:
名も無きAAのようです
:2012/10/27(土) 20:15:14 ID:mmEe6jmg0
lw´‐ _‐ノv「おんなのこ、だ!」
( ФωФ)「だ」
lw´‐ _‐ノv「だー」
沈黙の精が横切った。
( ФωФ)「……だから、何ですか?」
lw´‐ _‐ノv「いや特に何も。どうしようか」
( ФωФ)「知らんですよ」
又して沈黙の精が場を横切った。少女は何とも言い難い切迫した表情で杉浦を見上げた。
ほのかに赤い頬に、何処かざっくばらんとしたショートカットが映える。
怯えているのか、杉浦が注視するとぎこちない動きでシュールの服にひっついた。
子供に好かれない青年である。
21
:
名も無きAAのようです
:2012/10/27(土) 20:16:51 ID:mmEe6jmg0
軽くショックを受けながら、しゃがみこんで視線を合わせる。確かポケットにお菓子が、と服を探った。
目つきも悪いし体もでかいしで子供におびえられるのにはなれている。お菓子で釣る作戦だ。
( ФωФ)「お菓子、食べるか?」
ミセ*゚ -゚)リ「……うん」
( ФωФ)「ほれ、磯部麻紀だ」
lw´‐ _‐ノv「磯部巻き」
ミセ*゚ -゚)リ「……」
少女はなんとも微妙な顔をした。
lw´‐ _‐ノv「私にもくれ、磯部巻き。かつ上がらせてくれ。此処めっさ寒い。そしてお茶も淹れてくれ。この際ほうじ茶でも構わない」
( ФωФ)「おおおう、どんだけ横暴やねんあんた……。まぁいいです、どぞ」
lw´‐ _‐ノv「きゃっほーうい」
ミセ*゚ -゚)リ「……、おじゃまします」
杉浦が廊下の先を指し示すと、シュールはさっさかと少女を引き連れて居間の方まで行ってしまう。
完全に間取りを把握されていることに嘆くべきか数瞬迷ってから、杉浦はお茶を用意しに台所へ向かった。
22
:
名も無きAAのようです
:2012/10/27(土) 20:20:10 ID:mmEe6jmg0
四人分の湯呑みを用意し、急須とともに盆に乗せる。
今晩は寒くなりそうだし、湯たんぽでも引っ張り出してくるかとか考えつつ居間に向かった。
がらー、と硝子障子を開くと、ストーブの熱が杉浦の顔を煽る。
シュールと先客がカバディの構えを取っていた。少女は非常に胡散臭いものを見る目でそんな二人を見ている。
あ、ちょっと仲良くなれそう、と少女と自分の価値観の重なりが嬉しくなった杉浦である。
( ФωФ)「お茶ですよー」
(-@∀@)「おっ、お茶かい? ありがたいね」
野暮ったい眼鏡をかけている男性がカバディの構えを解き、持っていたペンを放り投げる。
一階一号室の住人、小説家という胡散臭い商売で生計を立てている朝日だった。
そういや何でこの人俺の家でさも当然のように仕事してんだと杉浦は思う。
因みに投げたペンはシュールに直撃した。
が、少女が「あ゛」と悲鳴をあげただけで誰もそれについては触れない。
( ФωФ)「いえいえ、執筆ははかどってますか?」
(-@∀@)「いや、何か初っぱなから挫けそうだね! もうやだ!」
男性は爽やか爽快な笑みを浮かべ、びったんと床に寝そべった。
凄い挫けっぷりだった。
だめだこいつ。
23
:
名も無きAAのようです
:2012/10/27(土) 20:21:28 ID:mmEe6jmg0
( ФωФ)「まぁ、ふるってくださいである……お茶此処置いときますよ」
(-@∀@)「うんー」
シュールはこたつに広げられた原稿用紙をちらりと見やり、髪に引っかかったペンを朝日の眼鏡と顔の隙間に差し込む。
なにやら小難しい内容の広がるそれは、杉浦には理解が出来ない。
本屋で朝日の本を見つけても全力でスルーすることしか杉浦には出来ないのだった。
lw´‐ _‐ノv「所で文壇界の明日を担う大型作家、通称『筆者の正義』こと朝日さんよ」
(-@∀@)「なんだねー」
lw´‐ _‐ノv「ちいさい女の子は好きですか」
ごろん、と朝日の隣に寝転がりながらシュールが口の端を釣り上げる。
端正な顔が完全にセクハラ親父の表情になっているのはとてもあれだった。
(-@∀@)「僕は綺麗なお姉さんが好きだね。年下は可愛らしいが、好みじゃない」
lw´‐ _‐ノv「すんすんすーん、いぇすんすんすーん」
(-@∀@)「聞いちゃいねぇなこの娘」
lw´‐ _‐ノv「いや聞いてるけっどー」
うわーもーニートになりたいなぁああ、と床をごろごろしだす朝日。
その隣でひきこもりになりたいなぁああ、と床に寝転ぶシュール。
24
:
名も無きAAのようです
:2012/10/27(土) 20:22:12 ID:mmEe6jmg0
どうでもいいけど人の家でなんでこんなにくつろいでんだこいつら、と杉浦は思いながらストーブの前に腰を下ろす。
少女が部屋の端でこじんまりとしていたので寒かろうと炬燵を進めてみた。
ミセ*゚ -゚)リ「いいっ」
( ФωФ)「あ、そうですか……」
全力で断られ、ちょっとしょんぼりする杉浦だった。
lw´‐ _‐ノv「それでさ」
( ФωФ)そ「にゃっ」
気がつくとシュールの顔が目の前にあった。
(-@∀@)「なんだか可愛い悲鳴だったけど突っ込みは不可かな……」
杉浦は悲鳴をあげて後退りしかけるが、背後がストーブなのを思い出し、踏みとどまる。
シュールは何時もの朴訥とした笑みで杉浦の目を覗き込んだ。
後ろで朝日が少女にお茶を手渡しているのが見える。
25
:
名も無きAAのようです
:2012/10/27(土) 20:23:09 ID:mmEe6jmg0
lw´‐ _‐ノv「真剣なお話、あの娘を預かる事にしました」
( ФωФ)「は……いやいやいやいや、預かることに『しました』って何ですか。そんな犬猫じゃ――」
(-@∀@)「あっはっはっは、ミセリちゃんって言うんだ? 僕は朝日って言います、宜しくね」
ミセ*゚ -゚)リ「うん」
(-@∀@)「ミセリちゃんは幾つなんだい?」
ミセ*゚ -゚)リ「七歳」
(-@∀@)「七歳か、僕で言ったら厨二病真っ盛りだった時期だなぁ。懐かしい懐かしい。
正義の為にっていじめっ子ぶち殺したりしたなぁ」
何か主人公置いてサブが幼女と親密度を上げている。
( ФωФ)「ねぇんですから」
lw´‐ _‐ノv「それに着いては回想する権利をくれたまへ」
回想の中で回想をするという荒業が此処に始まる!
26
:
名も無きAAのようです
:2012/10/27(土) 20:24:29 ID:mmEe6jmg0
〃∩ ∧_∧
⊂⌒( ・ω・) ←また回想が始まりますよというAAも務める佐々木カラマロス大佐
`ヽ_っ⌒/⌒c (自給830円)
私が仕事、あいや夜じゃない方な、仕事帰りに商店街でふらふらしていたらだね、幼女が!
よ、う、じょ、が! ふらふらっと歩いて! そして転んだんだ!
(なんでこいつこんなテンション高いの……)
(さぁ……)
ミセ*゚ -゚)リ「にぎゃっ」
lw´‐ _‐ノv「あら、大丈夫?」
私はもちろん賺さず声をかけたね!
勿論ファーストインプレッションは大事だ! 優雅な! かつ優美な女性の声音で!
ミセ*゚ -゚)リ「だ、大丈夫」
lw´‐ _‐ノv「あらあらお洋服も汚れちゃって……」
しかし私はその時気づいた!
少女の半ズボンから覗く細く華奢な膝小僧から、じんわりと血が滲んでいる事に!
27
:
名も無きAAのようです
:2012/10/27(土) 20:25:16 ID:mmEe6jmg0
lw´‐ _‐ノv「うわ、血っ! 血だぁああああああ!!」
ミセ*゚Д゚)リ「血?! えっ?! うわほんとだ、血だぁあああああ!!」
(’e’)「あれ、佐々木さん所のミセリちゃんじゃないか、引っ越したんじゃ無かったのかうわっ血だぁああああああ!!」
(何こいつら)
(知らんがな)
lw´‐ _‐ノv「血だぁぁああああ!!」
ミセ*゚Д゚)リ「血だぁぁああああ!!」
(’e’)「血だぁぁああああ!!」
lw´‐ _‐ノv「血だぁあああああああっあああああああぁぁぁああっ!!」
ミセ*゚Д゚)リ「血だぁあああぁぁぁああああぁあっ! 死んじゃうぅうううううっ!!」
(’e’)「幼女の血だぁあああああああぁぁぁっあああ舐めてえぇえええええ!!」
偶然通りかかった男性も交え、約一分間シャウトし続けた結果、私たち三人の間には確かな結束が芽生えていた!
28
:
名も無きAAのようです
:2012/10/27(土) 20:26:05 ID:mmEe6jmg0
lw´‐ _‐ノv「……ぜぇぜぇ」
ミセ*゚Д゚)リ「ぜ、ぜ、はっ、ごふっ」
(’e’)「ごえぇぇぇ……」
ような気がする。
疲れてきたからその内止めた。
荒くほのかに顔を上気させちゃったりしてうっかりその辺のおっさんに劣情を向けられてはたまらないので私が息を整えていると、
隣で幼女とおっさんが会話を始めていた。どうやら知り合い同士だったらしい。
(’e’)「なぁ、ミセリちゃんだろう? 引っ越したんじゃなかったのか?」
ミセ* - )リ「それが、あの、ちょっと……」
(’e’)「うん?」
ミセ* - )リ「気がついたら、皆居なくて、……置いていかれ、ちゃっ、……」
話を聞くにどうやら引越しのどさくさで幼女は置いていかれてしまったらしいね。
まぁ洋画なんかでもよくある話だ。
ぐす、と鼻水を啜り上げる声に、きゅぴーん、と私は気づいた! フラグだ! ってね!
何のフラグかって?! 知らん!!
とりあえず賺さず声をかけようとしたが駄菓子菓子!
(だ、だがしかし?)
29
:
名も無きAAのようです
:2012/10/27(土) 20:27:07 ID:mmEe6jmg0
lw´‐ _‐ノv「なn」
(’e’)「なんだって?! じゃあ君、家へこないか?」
lw´‐ _‐ノv「な、ナンダッテー」
私は驚愕し、そして畏怖の目で男性を見た。こいつ……目がロリコンだッ!
(しかし親が娘を置いていくと言うのには突っ込みが入らないのか)
(世の中変わったな……)
ミセ*;゚ -゚)リ「え? でも」
(*’e’)「いいんだよ、帰るお家が無くなったんだろう? おじちゃんのお家へおいでよ」
ミセ*;゚ -゚)リ「で、で、でも、」
明らかに鼻息の荒い男性に怯えたのか、少女はちらりと私に助けを求めるような視線を送った! ような気がする。
lw´‐ _‐ノv「ちょっーと待ってー、プレイバック!」
( e[#)「「げらっふぁ!」
30
:
名も無きAAのようです
:2012/10/27(土) 20:28:20 ID:mmEe6jmg0
私の飛び足刀が男性の顔面、詰りはテンプルにめり込んだ!
こういう時の為に兄者から一通り護身の術を習って置いて良かったよ。
あいつ終始寝てたけど!
lw´‐ _‐ノv「よしお嬢ちゃん、私のお家へおいで! 家へ帰る手だてを一緒に考えてあげよう!」
ミセ*;゚ -゚)リ「ええっ?! えっ、えっ?!」
(’e’)「ああっ幼女ぉぉぉおおオオ!!」
そして手に手をとって愛の逃避行! ランデブー!
まぁ取りあえず家に帰った私は、そういえば仕事で家をあける時はどうすればいいのかと悩み、杉浦君の離れの戸をたたいたと言う訳だ。
〃∩ ∧_∧
⊂⌒( ・ω・) ←回想が終わりましたよというAAでさえも務める佐々木カラマロス大佐
`ヽ_っ⌒/⌒c (自給730円)
31
:
名も無きAAのようです
:2012/10/27(土) 20:29:32 ID:mmEe6jmg0
( ФωФ)「ランデブーじゃねぇよ!」
lw´‐ _‐ノv「だって身寄りの無い幼女だぜ!? 『お家に帰りたい』とか言ってんだぜ?!
もう引き取るしか無いじゃん! フラグ! フラグ! おねぇさんといっしょ!」
( ФωФ)「だめな人が此処におる……」
lw´‐ _‐ノv「んでまぁ、私が仕事してる夜とか日中とか預かってて貰おうかなと思って、訪ねたんだけど、何かノリにのってしまったよ」
( ФωФ)「とは言われましても、身元のはっきりしない子を置くのは、大家としては同意しかねるんですが」
lw´‐ _‐ノv「えー、いいじゃん、新しい家の場所が分かるまで置いといてあげてよ」
(; ФωФ)「んな事言われましても……」
(-@∀@)「ミセリちゃんはお家に帰りたいんだよね」
ミセ*゚ -゚)リ「うん」
(-@∀@)「でも新しい家を知らないんだよね」
ミセ*゚ -゚)リ「……うん」
(-@∀@)「じゃあ、神様に頼んだら帰れるかもしれないな」
ゆるぅり、と杉浦を一瞥する。
瓶底眼鏡がゆっくりと電灯を反射した。
32
:
名も無きAAのようです
:2012/10/27(土) 20:31:18 ID:mmEe6jmg0
(-@∀@)「よし、杉浦君、神様探そうか」
酷く電波だった。
二ヶ月前、この国には神様が舞い降りたらしい。
その神様を見つければ、願いを何でもかなえてくれるらしいというのだ。
が、まぁそんなことはともかく。
シューは仕事に行ってしまい、朝日は自室へと舞い戻り、少女が杉浦の部屋でぽつねんとテレビを見ていた。
何か暇つぶしになるような物でも無いかと適当に思惟を巡らせていると、何処からともなくフサギコが現れた。相も変わらず神出鬼没キャラである。
っていうか場面飛ばし過ぎだろ。ナレーションが追い付かねぇよ。
33
:
名も無きAAのようです
:2012/10/27(土) 20:32:15 ID:mmEe6jmg0
ミセリに関して、結局、明日から神様探ししようと言うことで落ち着いた。
諸々の言い合い等は、描写がだるいので割愛。
ミ,,゚Д゚彡「神様探し? あー、最近テレビでやってるねぇ。『キーワードは変わった人』だとか特集やってたなぁ」
( ФωФ)「そうなんですか……変わった人」
色んな意味で怒られそうなワードである。
ミ,,゚Д゚彡「ん? 杉浦君神様探しするん? いいなぁ、俺も入れてよ。俺もお願い叶えて貰いたいよ」
フサギコがにらにら笑いながら肩を叩いてくるのを払いのけ、杉浦は辟易したような顔でフサギコから距離を取る。
( ФωФ)「フさんに願い事なんかあるんですか」
ミ,,゚Д゚彡「あるよ、そりゃまぁ、一杯。ああでも一つ、物凄い個人的に絶対叶えて貰えるって言うなら、」
杉浦の後ろで少女がすっ転んだ。
慌てて振り返り、杉浦が手を差し伸べる。少女は数瞬躊躇してからその手を取った。
34
:
名も無きAAのようです
:2012/10/27(土) 20:33:43 ID:mmEe6jmg0
ミ,,゚Д゚彡「勇敢になりたいかなぁ、俺は」
ミセ*゚ -゚)リ「……ゆ、うかん?」
少女、否ミセリが呟く。かくり、と糸が切れたような動作をした。
( ФωФ)「ふさん……流石の神様も、人間を新聞紙にするのは無理かと思うですが……」
ミ;,゚Д゚彡「えええぇそんな勘違い普通するかなお前! 夕刊違うよ、勇敢! 勇気の方!」
( ФωФ)「え……? あ、ああ……? 分かった、有機栽培の会とかの……会誌的な……」
ミ;,゚Д゚彡「わかんないならわかんないと言える勇気を持とうぜ杉浦君! ね!」
杉浦は、頭が悪かった。
35
:
名も無きAAのようです
:2012/10/27(土) 20:34:48 ID:mmEe6jmg0
〃∩ ∧_∧
⊂⌒( ・ω・) ←また回想が終わりましたよというAAでさえも務める佐々木カラマロス大佐
`ヽ_っ⌒/⌒c (自給730円)
回想、終りである。
( ФωФ)「……」
そんな風にしていると、内藤が首を傾けて杉浦を伺っているのに気付いた。
いかん放置していた、と慌てて居住まいを正す。
正すは良いが、別段もう話すことも無かった。
( ^ω^)「……テレビ見させて下さいお」
( ФωФ)「ああ、はいどうぞ」
36
:
名も無きAAのようです
:2012/10/27(土) 20:37:07 ID:mmEe6jmg0
間が持たないので、リモコンのスイッチを押す。イィ、と電波の音を吐き出してブラウン管が色づく。
不意に内藤と杉浦が申し訳程度に足を寄せていた炬燵がもそもそと揺らぎ、その側面から
ミ,,゚Д゚彡「杉浦くーん、お茶くれー」
フサギコの頭を生やした。
( ФωФ)「金出せー」
炬燵に潜っていたからか、頬が赤くなっている。
内藤が駄目だこのひと……みたいな目で見ていた。
確かに、成人男子が炬燵から首だけ出していると言う状態は、得も言えず駄目だこいつ……って気分にさせる魔力があると思う、何か。
テレビは午後のニュースを吐き出している。
( ФωФ)「……」
とりあえず、杉浦は黙って卓上の蜜柑に手を伸ばした。
('、`*川『では次のニュースです』
37
:
名も無きAAのようです
:2012/10/27(土) 20:38:41 ID:mmEe6jmg0
( ФωФ)「あ、内藤さん、蜜柑どうですか」
( ^ω^)「あ、いただきますお」
('、`*川『非常に残酷な事件で、専門家は……』
詰まらない女性キャスターが映っていた画面が反転して、ある顔を映し出した。
猟奇殺人の被害者だというその男性の顔から目をそむけて、杉浦は内藤を見る。
( ФωФ)「……」
( ^ω^)「……」
( ФωФ)「……内藤さん」
( ^ω^)「はい、ですお」
内藤は何と言うこと無い面持ちで頷いた。
フサギコがのそのそと炬燵から這い出る。
( ФωФ)「お茶飲みますか」
( ^ω^)「頂きますお」
[( ^ω^)]
('、`*川『被害者は、歯の治療痕からN大学に通う大学三年生の内藤ホライズンさんと見られており、』
38
:
名も無きAAのようです
:2012/10/27(土) 20:42:06 ID:mmEe6jmg0
これにてその1終わり。
前に一回VIPに投下したのの書き直しだから見たことあるよって奴いたらドンマイ
ぶっちゃけブーン系書くのも投下するのも数年ぶりだし創作板に至っては初めてで動悸がムネムネして止まない
続きは近いうちに
39
:
名も無きAAのようです
:2012/10/27(土) 20:42:46 ID:nCfIuWK.0
おつおつ
40
:
名も無きAAのようです
:2012/10/27(土) 20:53:21 ID:f893GU0Y0
続き期待
41
:
名も無きAAのようです
:2012/10/27(土) 20:56:52 ID:tphb00Ts0
乙
42
:
名も無きAAのようです
:2012/10/27(土) 21:00:53 ID:eQ9v9vDo0
乙
面白そう期待
43
:
名も無きAAのようです
:2012/10/27(土) 21:10:41 ID:lA3MHi.QO
今から読む乙
44
:
名も無きAAのようです
:2012/10/27(土) 22:09:08 ID:gN.Fe71IO
おつー!
地の文味があっていいなあ面白いなあと読んでいったら、ラストでびっくりした
すげえ続きが気になりますワクテカ!
タイトルの意味も明らかになってくのかなー楽しみー
45
:
名も無きAAのようです
:2012/10/27(土) 22:41:27 ID:VnzZ/IWQ0
乙
これあれだろあのドクオが※※※して※※※になるやつだろ
ネタバレになるから言わないけど
46
:
名も無きAAのようです
:2012/10/27(土) 22:47:45 ID:iEyii7hc0
おつ
47
:
名も無きAAのようです
:2012/10/27(土) 23:48:01 ID:a4hROKOk0
なにこれ面白そう!
続きwktkしてる
48
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 12:22:24 ID:hfkY5bpY0
おつおつ
49
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 19:26:21 ID:h3k2mf7Y0
おつとか期待とか有難う。ますますムドがキネキネでどうしようもない。
今回は普通にその2から投下しようと思ってたんだが
>>45
がまさかの既読者で喜びが止まらん
というわけで
『創作板って規制とかあるのか全然わかんない』
『あと空白の形式ってどうなってんの』
『
>>45
のためにもやっぱその2は一旦割愛』
他三本の心持ちを携えてその3を投稿したいと思います
50
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 19:27:29 ID:h3k2mf7Y0
その三
『電波を受信しました』
創世記
天地の創造
1
51
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 19:28:37 ID:h3k2mf7Y0
始めに、神は天地を創造された。地は混沌であって、闇が深淵の面にあり、神の霊が水の面を動いていた。神は言われた。
( ^ω^)「光あれ」
こうして、光があった。神は光を見て、良しとされた。神は光と闇を分け、光を昼と呼び、闇を夜と呼ばれた。第一の日である。
神は言われた。
( ^ω^)「水の中に大空あれ。水と水を分けよ」
神は大空を造り、大空の下と大空の下に水を分けさせられた。そのようになった。神は大空を天と呼ばれた。夕べがあり、朝があった。第二の日であ
る。
神は言われた
た。
( ^ω^)「腹減ったお」
52
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 19:29:30 ID:h3k2mf7Y0
神様は変な人らしい。そして嘘を吐かないらしい。
だから、その人に『神様ですか?』と問い、『そうですよ』と言って貰えればそれで万事解決なのだ。
そんな感じで、杉浦の部屋に集まった方々はうだうだと悩んでいた。
手当たり次第に声をかけるにはこの国には人が多すぎる。
世間一般で言う『変な人』に的を絞らなくてはならないのだ。
lw´‐ _‐ノv「変な人かー、変な人ね。変な人変な人変な人」
シューが変な人を連呼している。
変な人だ、と杉浦は思った。
lw´‐ _‐ノv「フくん、居るかい? 変な人て」
ミ,,゚Д゚彡「そっすねー、変な人変な人変な人」
lw´‐ _‐ノv「変な人ねー」
53
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 19:30:32 ID:h3k2mf7Y0
お前等が変な人だと言いたい。
というかフサギコのふさからとってフさんなのに其れを君にしたらお前。
変な人達が部屋に集まっているという状況に杉浦は泣きたくなった。
ちらと傍らに立っているミセリに目をやる。
ミセ*゚ -゚)o「……ふぁいと」
( ФωФ)「うん……」
この少女がアパートに来て早一週間。毎日一つ屋根の下をしていれば、流石に親密度も上がるというものだ。
ついでに時を同じくして入居した内藤青年とも殆ど同年代ということもあってか、中々に打ち解けていた。
そういう過程とかは描写するのが面倒なので地の文の権力を行使して省かせていただく。
ミ,,゚Д゚彡「変な人ぉおおおお」
!
ミ,,゚Д゚彡
変な人が唸り、唐突にぱふっと柏手を打った。
ぴっこーんとばかりに頭上で電球が光った、気がする。
そして、
54
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 19:31:16 ID:h3k2mf7Y0
ミ,,゚Д゚彡「そうだ! 大学行こう!」
lw´‐ _‐ノv「逃げる気か貴様」
どぐしゃ、と吹っ飛んできたテレビに潰された。
フサギコは悲鳴もあげずに床に倒れ込み、代わりと言わんばかりにテレビがけたたましい音を吐き出して床に落ちる。
ああ我輩ん家のテレビ……、と少しだけ杉浦は眉をしかめる。
一応心優しいミセリはテレビの下を覗き込んでいた。床が凹んでいないか気になったらしい。
心優しいという形容詞は破棄しよう。
ブラウン管テレビアタックをもろに食らったフサギコは、数瞬死んだゴ○ブリの如く痙攣していたが、おもむろに口を開き、
ミ,,゚Д;彡「……ごふ」
血を吐いた。
どうやら口の中を切ったようだ。
ミ,,゚Д゚彡「違うもん……大学に……大学に居る教授が変な人だから……その人がもしかしたらって……」
二十歳を超えた男が「もん」とかうぜぇと杉浦は思った。
55
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 19:32:58 ID:h3k2mf7Y0
( ФωФ)「はいはい泣かないである」
ミ,,゚Д゚彡「いだい……」
ふさふさの頭をわさわさと撫でてやる。
「気持ち悪いから止めて」と振り払われた。
ブラウン管テレビアタックの直撃した部分をもう一度殴った。フサギコが再度沈む。
(-@∀@)「良く投げれるねぇこんな重いブラウン管テレビ」
lw´‐ _‐ノv「そりゃあまぁ淑女の嗜みっすよ」
(-@∀@)「嫌な淑女だなぁ……」
向こうではシュールと朝日がテレビ台にテレビを直している。ふざけすぎの後の後片付けだった。
ミセリは体育座りで部屋の端っこに居る。
しかし一応ヒロインのこの幼女、やる気がないにも程があった。
(-@∀@)「しかしあれだね……大学教授が変人とは、世も末だね」
はたはた、と埃のついた手を払うと、日の光に照らされてきらきらと光った。
朝日はそう言うが、世間一般では割と変な教授って結構居る。
が、大学に行かずそれを知らない杉浦はそうですねと相槌を打った。
56
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 19:33:30 ID:gJr/zL3c0
支援!
57
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 19:34:09 ID:h3k2mf7Y0
向こうではシュールがミセリに蜜柑の皮を押し付けられてショックを受けている。
(-@∀@)「さて、で、大学に行くのかい、杉浦くん」
( ФωФ)「ん? ああ、はい。まぁ」
折角フサギコが提案してくれたのだから、と杉浦は頷く。
其処には母の日の子供が作ってくれたあまり良い出来ではないカレーライスを笑顔で頬張る母の愛があった。
うんうん、と朝日は頷く。
(-@∀@)「よし、じゃあ僕は家で寝てるから」
( ФωФ)「はい?」
ミ,,゚Д゚彡「……しかし展開早いな」
ミセ*゚ -゚)リ「……あきしょう?」
lw´‐ _‐ノv「早くフルメンバー揃えないと話が進まないんだぜ」
ミ,,゚Д゚彡「まじすか」
58
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 19:36:40 ID:h3k2mf7Y0
何だかあれな会話をしている方々を後目に、朝日は一旦野暮ったい眼鏡を外してしぱしぱと瞬きをした。
ふう、とアンニュイな溜息を吐いて、肩を竦める。
その視線の先には、あいも変わらず炬燵に広がる真っ白な原稿用紙ズ。
(-@∀@)「杉浦君……締め切りって言葉、知ってるかい?」
( ФωФ)「え? ああ、はい、確か朝日さんを殺しに来る諸悪の根源であろう?」
ミ,,゚Д゚彡「え?」
(-@∀@)「うん、それ、うちに来るから」
ミ,,゚Д゚彡「えぇ?! だ、騙されてる! 騙されてるぞ杉浦くん!」
(; ФωФ)「な、なんと」
(-@∀@)「僕はそいつを迎撃せねばならない! 家は必ずや僕が守る! だから君たちは行け!!」
ミ,,゚Д゚彡「駄目だこの人!!」
(; ФωФ)「ひ、一人で大丈夫なんであるか?! なんなら我輩も手伝いますよ?!」
(-@∀@)+「いや、良いんだ……奴と戦い、傷つくのは僕一人で十分なんだ……!!」
ミ,,゚Д゚彡「駄目だ! 両方とも駄目だ!!」
シュールは朝日の原稿用紙を一枚取り上げ、無駄な手際のよさでティラノサウルスを折り始めている。
角が上手く合わさらないらしく「うーんうーん」と唸る声が聞こえてくる。
駄目な大人たちを見るミセリ(幼女)の目は冷ややかであった。
59
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 19:37:54 ID:h3k2mf7Y0
ゆとり大学、通称ゆ大は広い敷地と歴史ある建造物を保有する、国内でも有数の大学である。
フサギコに連れられて入った教室も、広々としていて年季が篭っており、それでいて清潔な印象を持つ。
分野によっては虚勢でも無く本当に国内でもトップクラスの成績を上げていて、一応一流校で通っている。
とするとそこに通うフサギコも、実は頭が良かったりするのかなぁなどと思いながら杉浦は、
川 ゚ -゚)「死にたい」
ミ*゚Д゚彡「鬱田教授ぅぅぅううううう!!!」
川 ゚ -゚)「うざい」
ミ*゚Д゚彡「今日もお綺麗ですねああん髪の毛さらさらー! お目目ぱっちりー!」
川 ゚ -゚)「死ねばいいのに」
( ФωФ)「……」
ミセ*゚ -゚)リ「……」
めっちゃ引いていた。
60
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 19:40:56 ID:h3k2mf7Y0
どれくらい引いていたかというと、大人のする国際規格での綱引きくらいの勢いで引いていた。
姿勢こそ棒立ちだったが、心は斜め12度の傾斜をなぞっていた。
そりでも滑れるか怪しい角度だった。
ミ*゚Д゚彡「いいじゃないですかどうせ中身は男同士なんですからぁああ」
川 ゚ -゚)「中身も外見も女だ愚か者め。死ね。爆発して死ね。四散しろ」
大学まで三十分ほど歩き、杉浦をとある教室に招き入れたフサギコは、中に居た人間を見るなり目にも止まらぬ早さで彼女に抱きついた。
因みにミセリは歩き出して二十分ほどでへたったため杉浦におぶられている。
コエロフィシスと同程度くらいしかなさそうな体重がなんとも幼女感溢れる。
ミ*゚Д(#彡「ぎゃふんっ」
( ФωФ)「うわっ」
ミ*゚Д(#彡「げぶう!」
ところで抱きつかれた女性は物凄い勢いでカウンターパンチを放った。
その反動で飛んできたフサギコをミセリを背負った杉浦は避けるわけにも行かず、突き飛ばすようにして迎撃した。
ミ* Д(#彡「ぅげふぅうっ!」
61
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 19:42:16 ID:h3k2mf7Y0
据え置きの机にぶつかり、ワンバウンドを経て狭い床に転がるフサギコ。
杉浦におぶられたミセリだけが病気になった野良犬を見るような目で見下ろしていた。
哀れな男である。
川 ゚ -゚)「……こいつ本当死ねばいいのに」
忌々しげにフサギコを蹴り飛ばす女性は性別の割に身長が高く、すらりとしたシルエットをしていた。
追い討ちをかけられたフサギコはもう悲鳴すら上げるHPが残っていないらしい。
死体蹴りはゲームセンターなどでも嫌がられる行為です。みなさんやめましょうね。
川 ゚ -゚)「……で、お前らは何だ?」
パーカーにジャージという、一歩間違えずとも学生にしか見えない格好の見目麗しい女性になんとも言えない気分になりながら、
杉浦は背負ったミセリが落ちないように頭を下げた。
ああ、ご丁寧にどうも、とちょっとハスキーな声が脳天にぽてんと飛んでくる。
( ФωФ)「杉浦と言うのである。こっちはミセリ。こいつの家を探す為、神様を探しているのである」
ミセ*゚ -゚)リ「……」
( ФωФ)「それで、そこのフさんがあなたを神様かもしれないと言ったから、来て見たんであるよ」
川 ゚ -゚)「ふーん」
( ФωФ)「あなた、神様か? ミセリを家に帰してやってほしいんだけど」
62
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 19:43:01 ID:h3k2mf7Y0
言われて、女性はぱちくりと瞬いて頬を掻き、
川 ゚ -゚)「私は神様じゃない。魔法使いだ」
尊大なまでの態度でそう言った。
( ФωФ)「まほ」
ミセ*゚ -゚)リ「う?」
63
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 19:45:36 ID:h3k2mf7Y0
魔法使い。
随分昔に絶滅したとされる種族だった。
神様だっているこの世界だが、魔法使いというのは中々お目にかかれない。
ミセ*゚ -゚)リ「……でんぱ? ですか」
( ФωФ)「違うぞミセリ、そういう事は言っちゃ駄目だ。こういう方々はそっとしておくのが一番いいのである」
ミ*゚Д(#彡「電波でも美人なら良いですよ鬱田教授ぅううう!! 俺は厨二病でも女装でも構いませんんんん!! 俺は鬱田教授(女)のみを愛しますぅ
うう!!」
川#゚ -゚)「もうフサギコお前ちょっと黙れよ話しが進まないだろうが。というか女装癖じゃない。女だ!! おっぱいもある! Eカップだ!」
ミ*゚Д(#彡「おっぱーい!!」
ルパンダイブをしてくるフサギコと、それを見事なジャンピングニーで迎撃した女性の会話を聞いた杉浦は、
( ФωФ)「……」
ミセ* - )リ「ふぎゃっ」
とりあえず、手近にあったマフラーでミセリの頭部をぐるぐる巻きにした。
64
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 19:46:47 ID:h3k2mf7Y0
ミセ* - )リ「なっ、な何!?」
( ФωФ)「……」
ミセ* - )リ「もふーっ! もふもふーっ!」
( ФωФ)「……ミセリ、許せ」
幼女に爛れた会話を聞かせまいと言うギリティーンの苦肉の策だった。
杉浦のそんな頑張りを知ってか知らずか、フサギコと女性は何か嫌な会話を続ける。
川#゚ -゚)「って言うかドクオと私は別人だと何度言えば気が済むんだ! 女装じゃない!
あいつにちんこがついていても、私にはついてない!」
ミ#゚Д゚彡「むしろ女装ですよ! 逆にち○こついて無かったら俺ショックですよ!」
川#゚ -゚)「なんでやねん!!」
( ФωФ)「……」
ミセ* - )リ「もがーっ!」
主人公ズ、置いて行きぼり。
何だこの状態。
杉浦は「子供が居る前でちんこついてる女装とかついてないとかそういう話はやめてほしいなぁ」と思っていた。
65
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 19:48:03 ID:h3k2mf7Y0
川#゚ -゚)「えぇい埒が開かないっ! 要は私だからお前は五月蠅いんだな?! わかった今ドクオになってやるよ!」
意味の分からないファイティングスピリッツを発揮してゾンビのように追いすがるフサギコに痺れを切らしたらしい。
女性が叫び、ばっとパーカーの裾を掴んで脱ぎ捨てた。
ばさっと生地の軟い上着を翻したにしては大仰な音が講堂に響く。
はたして、
('A`)「……爆発しろや」
ミ#゚Д゚彡「ぁああぁぁあぁぁああ……!」
パーカーの下からまず覗いたのは白いティシャツ。
其れから長いみどりの黒髪、ではなく、黒いぼさぼさの短髪だった。
('A`)「ほんと爆発しろ。弾け飛べ」
その主は、心底からだるそうに呟き、失意のフサギコにバックハンドブローを打ち込んだ。
ワンヒット、KO
66
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 19:48:51 ID:h3k2mf7Y0
( ФωФ)「……」
ミセ* - )リ「もがぁあ!」
爛れた会話がフサギコの場外ホームラン(物理)によって終了したと判断し、いい加減可哀想なのでマフラーを外してやる杉浦だった。
其れをそのまま自分の首に巻き付け、ミセリに謝る。
( ФωФ)「すまんかった」
ミセ;゚ -゚)リ「な、な、なにごと……」
( ФωФ)「ミセリのためだったんである。許せ」
ミセ;゚ -゚)リ「い、いみがわからないです」
羽の生えたコモドオオトカゲでも見るかのような目で見てくるミセリに、しかし幼女の清らかな心は守られたと満足げな杉浦。
それを尻目にザ・イリュージョン・登場を果たした男性は自分の手の甲をさすさすとさすりながらその辺の椅子に腰掛ける。
('A`)「あー疲れたー……」
( ФωФ)「其れはどういう仕組みになっているであるか?」
67
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 19:49:52 ID:h3k2mf7Y0
杉浦は、床に脱ぎ散らされたパーカーを指さしながら言った。
目の前の人間は、パーカーを脱いだ瞬間に顔が、体つきが一辺した。
服と一緒に着ていた皮も脱ぎました! とでも言うように。
床におちたそれを摘み上げながら、ドクオと名乗った青年は左上を睨んだ。
それから、へらっと口の端を歪める。
('A`)「……魔法魔法」
( ФωФ)「魔法であるかー」
ミセ*゚ -゚)リ「はじめて見た」
('A`)「あっはっはっはっは」
杉浦は頭が悪かった。
小さな頃に読んだ絵本に魔法が実在したから、
今目の前に居る男性が不思議なことをして、其れを魔法というのだから、きっと本当に在るんだと思ってしまうほどには。
ミ,,゚Д゚彡「杉浦君騙しちゃ駄目っすよぉ教授ー」
68
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 19:50:36 ID:h3k2mf7Y0
が、その
「そうかそうか魔法って本当にあったんだへーはじめてあった。お布施とかした方がいいんだろうか。ご利益とか効能とかあんのかな」
という杉浦の納得は、フサギコによって一瞬で崩された。
ミ,,゚Д゚彡「魔法使いなんてとっくの昔に滅んだじゃないすかー。聖書の中のまして現象みたいなもんですよ?
そりゃ教授の女装……もとい女体化は魔法みたいですけど」
('A`)「お前ほんとに俺の授業聞いてる?」
ミ,,゚Д゚彡「(女)の時は聞いてます。寧ろ男性バージョンでは聞いちゃいません」
('A`)「本当爆発してくれないかなこいつ。なんで本人の前でそういうこと言えちゃうのかな」
ミ,,゚Д゚彡「だって聖書の中の人物を自分だなんて言い出す人の授業だなんて、ねぇ」
('A`)「だって本当だもん。っていうか何でそんなら俺の授業取ってるのお前」
聖書とはこの世界における創世を記した書のことである。本屋とかで売ってるのだ。
因みに某大工の息子とかはあまり関係してこないタイプの聖書である。
69
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 19:54:03 ID:h3k2mf7Y0
( ФωФ)「……フさん」
ミ,,゚Д゚彡「ん? どうした杉浦くん」
( ФωФ)「せーしょってなんであるか」
('A`)
ミ,,゚Д゚彡
ミセ*゚ -゚)リ
沈黙が流れた。
おしゃれに言うと天使が通過した。
もっとおしゃれに言うと、天使が通過し杉浦を指差して从 ゚∀从「ダッセェー」と笑っていった。
おしゃれを追求したらおしゃれじゃなくなった感じである。
重ね重ね言おう、杉浦ロマネスクは頭が悪い。
思考回路が悪い訳では無いが、決定的に知識が足りていないのだ。
ついでに物覚えも悪い。
ちゅんちゅんと外で朗らかに鳴く小鳥の声と天使の从 ゚∀从「ダッセェー」が杉浦の心に刺さった。
70
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 19:55:02 ID:h3k2mf7Y0
(; ФωФ)
白ける場の中心で、ミセリの残念な視線を浴びながら杉浦は神様に会ったら賢しさを貰おうと心に誓ったのだった。
('A`)「神様ねぇ……俺達も探してるけど、最近はとんと会ってないな」
沈黙を破ったのは、ドクオだった。
杉浦の発言は無視することにしたらしい。
ミセ*゚ -゚)リ「過去に会った事があるんですかと小一時間」
('A`)「……難しい言葉知ってるなぁ嬢ちゃん。そっちの兄ちゃんの妹?」
( ФωФ)「預かりっ子である」
ミセ*゚ -゚)リ「お母さんとお父さんに、置いていかれて、……家、探してる、ます」
71
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 19:56:00 ID:h3k2mf7Y0
斯く斯く然々とばかりにミセリの状況を説明すると、ドクオは軽く頷き
('A`)「幼女の為なら人肌脱ぐぞ。おもしろそうだから俺達も混ぜろ」
( ФωФ)「おもしろそうってあんた……」
('A`)「フサギコが勇気、そこの兄ちゃんが賢しい脳味噌、この少女が家と言うならば、魔法使いがいなきゃ話しが締まらねぇよ」
その言葉を聞いて、ああと杉浦は相槌を打った。オズの魔法使い、だ。
フサギコが勇無きライオン。自分が脳無し案山子。ミセリが故郷を求める少女。
しかし、と思案する。
ならば、
( ФωФ)「ロボットは誰なのだ?」
72
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 19:57:22 ID:h3k2mf7Y0
(-@∀@)「そりゃあ確かに、どうしてなかなか」
(-@∀@)「面白い人だねぇ」
野暮ったい眼鏡を光らせて朝日は笑った。
その手の中には懐かしの曲がるタイプのえんぴつが握られている。どうやらそれで原稿を書いていたらしい。
お前にはかなわないと思う。
(-@∀@)「そうか……となると僕がロボットかな? 心ないロボット。やだ格好良い」
( ФωФ)「どっちかってと朝日さんはハートフルって感じですが」
(-@∀@)「そりゃ嬉しいね。……しかしオズの魔法使いか。あのぬるい話ね」
73
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 19:58:53 ID:h3k2mf7Y0
そんな形容をする奴は初めて見たわ。天の声も吃驚である。
あんまりにも容赦の無い発言だった。オズが泣いている。
炬燵に足を突っ込んだ杉浦は、半目になりながら朝日を一瞥した。
(-@∀@)「なんだよその目は。だってそうだろ? 悪もなけりゃ正義も無い。ただの人探しの話しじゃないか。
蔓延る悪がなけりゃ勧善懲悪は成立しないよ?」
( ФωФ)「物語はかんぜんちょうあくだけじゃないのくらい、俺でも知ってるのである」
(-@∀@)「それでも至高は其れだって僕は何時でも信じてるよ」
( ФωФ)「しこ……しこ……?」
(-@∀@)「やめなさい杉浦君、そこだけ取り上げて繰り返すのはやめなさい杉浦君」
ミセリは早くも定位置となりつつある部屋の片隅でシューの部屋から持ってきた漫画本を読んでいる。
杉浦は至高の意味が分からなかったが、何となく知ったかぶりをすることにした。
満足気に語る朝日にそんな事を聞くにならなかっただけの話である。
74
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 19:59:37 ID:h3k2mf7Y0
( ФωФ)「……そうであるか」
(-@∀@)「基本だね、基本」
( ФωФ)「基本であるか」
朝日は徹底的な正義主義者で、杉浦には其れを否定する主義主張も受け流す知識も無いので、今一会話が噛み合わない。
っていうかこの人何時までこの部屋に居る気だろうとか杉浦が考えていると、
朝日はやっとこと立ち上がり、盛大な欠伸をしつつ両手を振り上げた。
(-@∀@)「よし……締め切り明日だし……散歩ついでに変な人でも探してくるか!」
ミセ*゚ -゚)リ「仕事、しなきゃだめだと思う」
幼女に仕事を促される変な人だった。
75
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 20:03:08 ID:h3k2mf7Y0
( ^ω^)「変な人……」
( ФωФ)「そうである。心当たり無いですか?」
( ^ω^)「変な人かおー。取り合えずお隣さんは変な人だと思うお」
( ФωФ)「あー……あの人はもう、人知を越えているので気にしたら負けである」
( ^ω^)「けど普通にベランダの窓を玄関として使う人間に対して気にするとか気にしないとかの問題じゃないと思うお」
( ФωФ)「それでも気にしたら負けである」
( ^ω^)「まじかお……」
玄関先の掃き掃除をしつつ、何処からともなく現れた内藤と話す。
空は高く、白い月がぼんやりと浮かんでいた。
この前までクーラーが欲しいクーラーが欲しいとフサギコが喚いていたというのに、もう空気はすっかりと冬の色を帯びている。
自分はきっとこのまま進めない、と杉浦はどこか思った。
悪い頭では将来のことなど考えることも出来ないのだ。来年はまだ分かる。きっと同じようにこの玄関を掃き掃除しているのだろう。
しかしその五年後は? 十年後は? 百年後には、きっと死んでしまっているのだろうが、それより手前が分からない。
76
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 20:04:49 ID:h3k2mf7Y0
漠然とした不安。
頭が良くなりたい、と杉浦はため息をつく。
働けど働けど楽にならず、てのひらをぢっと見つめる、でもなく。
少なくとも、もう少し展望というものが分かるようになれば。
馬鹿はぼんやりとそんなことを考えていた。
( ^ω^)「何でも叶えて貰える、ねぇ。誇大広告もいいところだお」
内藤は空を仰ぎながらぼそりと呟く。
その表情は、何処か達観したものがあった。
ん? と杉浦が首を傾けると、にっこりと笑う。アルカイックスマイルさながらだった。
( ^ω^)「杉浦君は何叶えてほしいんだお?」
( ФωФ)「俺はもとい、我輩は……賢しさが欲しいの、である。学が無いから、日々結構困るですよ」
( ^ω^)「そうかおー。向上心があるのは素晴らしいお」
( ФωФ)「工場心……? いえ、工場に関する心情は特には……」
( ^ω^)「……まぁ、妥当な願いだお」
77
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 20:09:06 ID:h3k2mf7Y0
この数週間の付き合いで杉浦の頭の悪さを何処と無く理解しだしたらしい内藤が顔を背けつつ頷いた。
ざりざりと杉浦は箒を振るう。
二人の足元を土埃が撫でていく。
( ФωФ)「あ、でも最近ほら、工場の夜景とかが話題になってるであろう。あれはちょっと興味あるですよ」
( ^ω^)「いやいいお、その話題広げなくていいお杉浦くん」
( ФωФ)「あとこの前パンの工場でアルバイトをしましたが、あれは中々心が折れて世を儚みそうになりますね」
( ^ω^)「そうなの」
( ФωФ)「立ちっぱで焼き鏝をぽんぽん押していくだけなのにあそこまで思い悩むとは思いませんでした」
( ^ω^)「例えばどんなことを思い悩んだんだお?」
( ФωФ)「北海道の位置……ですかね……」
( ^ω^)「ああ……あのパンか……」
( ФωФ)「冷凍してもあんまりチーズケーキっぽくはならんですよ、あれ……」
( ^ω^)「おいしいはおいしいけどもね、あの冷凍チーズケーキもどき……」
謎のやり取りだった。
78
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 20:11:06 ID:h3k2mf7Y0
あ、これ駄目な感じのやりとりだ、と瞬時に感じ取る杉浦。
ざりざりと地面の木の葉はすっかり集まりきっているが、手を止めるとますます沈黙に支配されそうでやめることが出来ない。
( ^ω^)「……」
( ФωФ)「……」
( ^ω^)「……」
( ФωФ)「……じゃあ、逆に聞くであるが、内藤さんには何か願い事は無いのであるか?」
そう杉浦が問うと、内藤はまた数秒固まってから「んんん」と唸る。
デフォルトの表情が笑みなのか、目を細め微笑んだまま眉を攣かめる図はなんとも珍妙だった。
( ^ω^)「……特に、無いお」
( ФωФ)「無い、であるか」
( ^ω^)「おっお、幸いな事に僕は恵まれているからお。特筆して叶えてもらいたい事なんて、無いお」
( ФωФ)「それはそれは」
79
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 20:13:35 ID:h3k2mf7Y0
とても幸せな事だ。そして羨ましい事だ。頭の悪い杉浦でも、それくらいは分かる。
望むことがないのは、要するに全部もう満たされているから。
幸せは飽和するのだ。
まぁ少し仕事は大変だけれど、と内藤は微笑んだ。
ああ、この人の笑みはとてもいいなぁ、と杉浦はぼんやり思う。
なんだか見ているこっちまでもが満たされていくような、日常の微笑だ。
普段奇天烈な住人たちとやりとりしているとこういう普通なあれと接触しなくて疲弊するのである。
( ^ω^)「まぁそれもそれで、いろんな人に出会えて楽しいお」
( ФωФ)「……内藤さんにも手伝って貰おうかと思ってましたが、止めておくである」
( ^ω^)「お?」
幸せが飽和している人に、さらに願いを言えなどと言っても、きっと「願いを下さい」というしかないのだ。
それはきっと、残酷なことだろう。
首を傾ける内藤の傍ら、うんうん、と頷きながら、杉浦は集めた枯葉を踏みつけた。
80
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 20:17:09 ID:h3k2mf7Y0
これにてその3は終わり
ところでこいつ(窓の外)を見てくれ、どう思う? ものすごい雷鳴っててめっちゃこええ
続きは近いうちにの予定だけど書き溜めは次で尽きるからその次からは近くなくなるよ
81
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 20:20:40 ID:gJr/zL3c0
乙乙
82
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 20:47:26 ID:Mdxg1Z/60
乙!
83
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 21:31:08 ID:4bVy5EnUO
乙!ブーン気になるううう
84
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 21:33:17 ID:WvqSxt/Y0
乙!
なんだろう、このほのぼのなんだか殺伐なんだかよくわからん雰囲気が好き
85
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 21:48:05 ID:XIUce9MM0
おつ
86
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 22:16:39 ID:L7cB76eo0
乙乙
ドクオが性転換してクーになる条件覚えてなかったが、まさかパーカーの着脱だったとは
やっぱこのロマネスクいいキャラしてるな
87
:
名も無きAAのようです
:2012/10/28(日) 22:33:14 ID:umNtx/2w0
過去作知りてえ乙
88
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 01:46:17 ID:HxMP0asE0
読んだ乙
続き楽しみだ
89
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 02:24:54 ID:wRUygVoI0
乙乙!
もうずーっと待ってたんだからね!
ほんとにほんとに待ってたんだからね!
90
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 22:07:30 ID:eu/PwRq.0
乙とかありがとう。既読者が複数居るという包囲網状態気分にキムがムキムキです
書き溜めがあるうちが華らしいのでその2を投下するけどもうこのペースは維持できないから期待は溝にレッツゴー
そんな訳で
『やっぱり行数規制がよくわからん』
『創作板って支援制度無いのちょっと寂しいね』
『でもVIPは忍法帖とか益々意味分からん』
その他三本の心持を携えて風呂に入ったりしつつその2を投下します
91
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 22:08:31 ID:eu/PwRq.0
昔々の神話の時代。
世界を正常に近づけるにあたって邪魔だった魔法は、そのすべてをとある二人の魔法使いに押しつけられて、絶滅しました。
そして後に遺ったのは使われた魔法の残り滓と、それを扱うことしか出来ない、ばった物の『まほうつかい』だけでした。
彼らは完璧な魔法を使うことのできない出来損ないで、魔法のことをよく知らない人々をだますようなことをして細々と生きておりました。
何故神様そんな中途半端なものをのこしたのかと言うと、
( ^ω^)「……うーん」
( ^ω^)「まぁいいかおー」
神様は大変おおらかだったので、残り滓くらいなら別に良いだろうと思ったのでした。
( ^ω^)「腹減ったし面倒だお」
相当適当でした。
残り滓と『まほうつかい』はその余りに適当な扱いに憤慨し、我々は危険だとでも示すように徒党を組むようになったのです。
92
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 22:08:49 ID:Vg8xASLo0
ならば俺が支援してやんよ
93
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 22:09:39 ID:eu/PwRq.0
その二
『わんわんにゃーにゃー』
所で、
94
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 22:10:47 ID:eu/PwRq.0
「ぐっ、えぁ、が、ぎぃ、いいいいいっ」
ネオンの光る街の元、そのきらびやかな光の届かない場所で男は苦しんでいた。
体中の細胞が残らず捻り潰されていくような苦痛。痛みに耐えきれずに吐き出した自らの吐寫物の上をのたうつ。
先ほどまで感覚を上塗りしていた酔いはとうに抜け落ち、痛みと苦しみだけが針のように体中に突き刺さっていた。
抉り込むような理不尽な痛みの根源を、息も絶え絶えな怒りを込めて睨み付ける。
その目を刺すのは、鮮やかな赤い髪。
「あ゛ぁ、げ、……て、めぇ」
「ははぁ、何だよ」
「んだ、じゃねぇよ……っ、てめ、何しやがっ」
「何て事ぁ無いよ。お前のお望み通りにしてやってるだけだ。ああ、お前の望んだ事だろ!」
そうして高らかに笑うのは、軽やかな女の声だった。
澄んだそれは薄暗い路地裏に不釣り合いな程明るく、威風堂々としている。
男はそれを酷く不快に感じた。
95
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 22:11:26 ID:UFkd0lZI0
しえーん
96
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 22:11:45 ID:rF/Piw3s0
支援?それくらい俺がしてやんよ!
97
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 22:13:11 ID:eu/PwRq.0
アスファルトを引っかくその手は、見慣れない形に変質していく。
胸に恐怖が駆け上った。痛み。喪失感。吐き気。喉をひっくり返していく悲鳴を意地だけで飲み下す。
作り変えられていく。生まれてこの方貼り付き続けていた自らの皮膚が、内臓が、肉が、血が、骨が、総じて取替えられていく。
その様子すらも女はけらけらと笑い、楽しそうに指を差した。
冗談じゃない、と声を張り上げようとするが、急速に視界が暗転していく。
糞、という呟きさえも乾いた息になって口から吐き出された。
最後の力を振り絞り、その声の主の履いたハイヒールを一睨みし、ぎりぎりと歯噛みしながら痙攣する瞼を閉じる。
「おぼえ、とけよ……ブチ殺してやる……!!」
恐怖も痛みも全てをねじ伏せ男がはいた言葉は、呪詛。
それを見て声の主は益々愉快そうに喉を晒して呵々大笑してみせた。
「私は猫より犬の方が好きなんだよ!」
後悔を痛みに塗り潰されながら、男の意識は、途切れる。
闇に引かれるまま、そうして彼は死んだ。
ああ、酔っぱらいの犬派か猫派かの論争になんて付き合わなきゃ良かったのに!
98
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 22:14:17 ID:eu/PwRq.0
しぃは大変驚いていた。
友人の隣の部屋の住人が殺人犯の手にかかったと噂を聞いて、野次馬根性を剥き出し、
何かはなしを聞いてやろうとそのマンションに向かったのが、運の尽き。
オートロックを開いてもらい、エントランスから曲がって右。一階の片隅から一つこちらの部屋。
その扉の前で、しぃは大変驚いていた。
大事なことなので二度言いました。
99
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 22:15:16 ID:O8/aZ8GU0
しえしえ
100
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 22:15:27 ID:eu/PwRq.0
( *゚ O゚)
それはもう、大変分かりやすい形の感情表現だった。
ぽかりと口を開いて一度開いた扉を閉め、また開いてから口を閉じる。その間、
驚かれた対象は不機嫌そうにゆらりゆらりと尻尾を振っていた。
尻尾である。
しぃは大きく深呼吸をしてから、真一文字に口を引き締め、デフォルトの笑みを浮かべた。
彼女の母は所謂悪女で、笑顔は女の武器だと幼いしぃに叩き込んでそして死んでいった。
あんのクソババアと居酒屋での人生語り(笑)に於いて母への恨み節を欠かさないしぃではあるが、
死の淵ですら笑顔とつくろった美しさを失わなかった母をそれなりに尊敬している。
そのため彼女の立ち絵は基本笑顔です。ノベルゲーム化の際はその辺宜しくお願いしますね。
そんな来る日の野望はともかく目の前の対象である。
(*゚ー゚)「ギコ?」
(,,゚Д゚)「うん」
101
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 22:16:16 ID:eu/PwRq.0
それはこっくりと頷いた。
ひくり、としぃの口の端がひきつる。しぃは確かにギコという友人を訪ねたつもりだったのだ。
実際、しぃが開いたマンションの部屋の表札にはきちんと彼の名字が書かれている。
前回訪ねた記憶も確かだ。道を間違って同じ苗字の別人をたずねたとかではない。
間違ってはいない。
しぃは、間違っていないのだ。
(*゚ー゚)「ペンキ食べたの?」
(,,゚Д゚)「食べてない」
(*゚ー゚)「あっそう」
だから間違っているのは友人なのだろうと思い、彼女はとりあえず渾身の力で目の前の友人(仮)にローキックを叩き込んだ。
(;,゚Д゚)「えっおがぁあ?!」
しぃは理不尽を感じると真っ先に足や手がでる性質であった。
理不尽なのはお前である。
102
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 22:17:02 ID:eu/PwRq.0
しかし友人がこんなんになったら理不尽にもなろうという気持ちもくんでくれとしぃは主張する。
主張はともかくジャージの生地でふぁふっとスニーカーの靴底がいい具合に滑った。
唐突な攻撃を受けたそれの目が白黒するのがしっかり見える。
(#*゚Д゚)「誰だ! お前は誰だ! なんだその青さ! 夏の空か!」
(;,゚Д゚)「顔面崩か、痛っ! いたぁあぁああ?!」
ローキック。ローキック。そのまま踏み込んでジャンピングニー。
掴んだ頭をそのまま引っ張りみぞおちめがけて大きく振りかぶって(膝を)。
良い子は真似をしないで下さいの喧嘩殺法が炸裂しているので、描写は省かせていただきます。
(#*゚Д゚)「お前なんて知らない! 知らない! 誰だ!
ギコを何処へやった、美味しかったかぁああ! どうやって食ったんだ! 寸胴鍋か!
じっくりコトコト煮込んで食ったのか! 味付けは醤油か! この化けものォオオ!」
(;,゚Д゚)「食われた一択?! うお死ヌッ?!」
鬼神のようなしぃから逃れようと、友人のようなそれ、人型猫もどきは比喩でなく真っ青になった手を揺らして玄関へと這い上がる。
それにしても友人のような人型猫もどきという言葉の曖昧さと言ったら画期的だった。
ところで同じようなAAが並んでいて非常に画面構成が鬱陶しい。
103
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 22:19:16 ID:PJymTJxw0
この淡々と地の文がボケる感じが好きだ
104
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 22:19:22 ID:UEVPYJ0Q0
支援しえーん!!
105
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 22:20:14 ID:eu/PwRq.0
(;*゚ー゚)「……ハァハァ」
(;,゚Д゚)「とても痛い」
一旦休憩。
幾らしぃが学生時代に美しき虎(自称)として名をはせていたとしても、今は人畜無害な図書館司書である。
体力の衰えは否めない。
休憩ついでに友人のような人型猫もどきを観察することにした。
前会った時の正常な人間の形は大して変化していない。
頭からラムダ型の耳が生え、全身が短く密な、真っ青の毛で覆われていた。
ジャージからこぼれ出た尻尾が逆立っている。ところで警戒している猫の尻尾とはなんであんなにもふさふさで可愛いのか、筆者は不思議でしょうがない。
分かりにくい説明に、八頭身AAという言葉をそっと残そう。
休憩おわり。息を吸って再度シャウト。
(#*゚Д゚)「ギコはそんな猫みたいな奴じゃ無かったもんねぇえ!
もっとふつうに人間だったもんねぇえだッ! だまそうったって無駄なんだからなぁぁあ! のどの下撫でても良いですか!」
(,,゚Д゚)「あ、止めてください」
(#*゚Д゚)「なんでだよぉおお!!!!」
ぐしゃりと地べたに崩れ落ちる。
とりあえず、しぃは無類の猫好きだった。
106
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 22:21:20 ID:eu/PwRq.0
(,,゚Д゚)「とりあえず、コーヒーで良いか?」
(*゚ー゚)「あ、うん」
(,,゚Д゚)「テレビのリモコン机の上だから」
(*゚ー゚)「はいはい」
(,,゚Д゚)「あ、昼だけど何か食う?」
(*゚ー゚)「んー、あ、モララ呼ぼうか」
(,,゚Д゚)「モララー? ……まぁ、良いけど、なんでだよ」
(*゚ー゚)「うん、ほら、尋問にはあれね、良く知る証人が居るから」
(,,゚Д゚)「じ、え、あ……はぁ……」
曖昧に頷き、白い湯気の立つカップを机に置く。
それを受け取り、しぃは携帯電話を取り出す。ぱたぱたと操作して、どうやら誰かを呼んでいるらしい。
その向かいに座りながら、友人のような人型猫もどきはテレビのリモコンを握った。
107
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 22:24:19 ID:eu/PwRq.0
テレビでは今最もセンセーショナルな話題、眉唾ものの「神様」についての特番が流れていた。
あちこちで「神」が起こした奇跡が残される中、その「神」を見た人は一人としていないのだそうだ。
曰く、治らないといわれていた難病が回復した。
曰く、逃げ遅れた者達の居た家屋の火災が一瞬にして鎮火、元通りになった。
曰く、痛んでいたはずのチーズ蒸しパンがすべてほっかほかのカレーまんになっていた。
眉唾物の話題の羅列に、しぃの友人のような人型猫もどきはもふもふの顔をちょっとゆがめる。
今現在彼に眉毛は無いですが、眉毛のようなぴょいんと出たあの毛につばでも塗りたい気分だった。
ぱたん、と携帯を閉じる音がする。
(*゚ー゚)「ん! じゃあ、行こう」
(,,゚Д゚)「は?」
(*゚ー゚)「何かモララー、近く居るらしいから、そっちに向かおう」
(,,゚Д゚)「え、え」
友人のような人猫型人もど、面倒くさいのでギコと呼ぼう。ギコの腕を引き、しぃは玄関へと向かう。
まだ残った自分の分のコーヒーを名残惜しげに振り返りながら、ギコは慌ててリモコンを放り投げた。
床に落ちてがっしゃんと盛大な音がするが二人は気にしない。
精密機器がどうたらというのに気をやらない人種のようだった。天の声ムカつき千万である。
108
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 22:25:24 ID:eu/PwRq.0
(,,゚Д゚)「なぁ俺こんなんなってからなんていうかひきこもりだったから出たくないんだけど」
(*゚ー゚)「え、何で?」
(,,゚Д゚)「な、いや何でって、ご近所の目とか、こんなんじゃ、なぁ」
ドアノブに手をかけたままで立ち止まったしぃが「あー」と頷く。
分かってくれたか、とギコが顔を綻ばせた。リモコンが壊れることは気にしないくせに、近隣住民との関係が壊れることは気にするらしい。
(*゚ー゚)「まぁいいじゃん、お隣さんも居ないんだし」
(,,゚Д゚)「えぇえ……マンションから出た後とかどうなんの……」
(*゚ー゚)「誰も彼もが自分を見てるなんてとんだ自意識過剰だよ」
(,,゚Д゚)「身も蓋もねぇな」
言い合いながら、エントランスを抜けて行く。
(*゚∀゚)「……」
109
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 22:26:29 ID:eu/PwRq.0
ふとギコの青い体毛を逆撫でるように、視線が刺さった。
ロビーに並んだ自販機の喫煙コーナーで立ちすくむ少女が此方を見ている。
それに気づいたギコは顔をひきつらせた。
(,,゚Д゚)そ「ああっ早速ひとに見られたっ」
(*゚ー゚)「自意識過剰自意識過剰」
どうでもいいが自意識過剰というのは二回続けるともの凄い字面だった。
(# ・∀・)「……ギコは美味しかったか、化け物めぇぇええ!」
(*゚ー゚)「あ、もうそういうのはやったから」
( ・∀・)「え? そうなの?」
110
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 22:27:42 ID:eu/PwRq.0
しぃが向かった先は、休日の午後とは思えないほど閑散とした公園。
いくつか並んだベンチの一つを占領し、缶コーヒーをすする男性がいた。
二人に気づくと手を振り、そして三秒後にギコに向かって走りより、飛び足刀蹴りを叩き込もうとした。
それをまた間一髪避けたギコを見て男性が叫び、
>>109
だった。
リアクションを奪われ、勢いを殺された男性は暫くうずうずとしていたが、そのうちにもう一度腰を落ち着けた。
所在なさげにベンチの前に立つギコを上から下まで、その向こうを透視したいように眺める。
( ・∀・)「……ギコ、ペンキって美味かった?」
(*゚ー゚)「いやそれもやったから」
( ・∀・)「えぇえ……僕の分もリアクション残しといてよ、きっついなぁ」
(*゚ー゚)「ごめん、気が回らなくて」
( ・∀・)「んんんー、まぁいいけど」
モララーは苦笑して、しぃとギコに自分の隣を薦める。
二人もそれに従い、真新しい金属のベンチに腰掛けた。
赤黒く錆びたような汚れがこびりついていたが気にもしない。
(,,゚Д゚)「お前呼び出そうとするといっつも近くにいるよな。結局どこに住んでんだよ」
( ・∀・)「いやーそればっかりは家族以外には教えられないなぁ」
(*゚ー゚)「胡散臭さマックスだね!」
111
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 22:27:44 ID:FO59Pw1c0
支援だ!
112
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 22:29:16 ID:eu/PwRq.0
( ・∀・)「……所で」
足を組み、その上に肘を着いてモララーは自分の右隣に座るギコをみた。
( ・∀・)「……とりあえずペンキは美味しかった?」
(,,゚Д゚)「待てそれ二回目だって」
(*゚ー゚)「むしろ三回目だって」
(# ・∀・)「うるせぇな久しぶりに友達に呼び出されたと思ったら何かこんな状況の俺の混乱を汲んでくれよ何この耳ーっ!
俺の知ってるギコはもっとふつうに人間だったろうがよぉおお!」
(,,゚Д゚)「おおおおおう」
がくんがくんと揺らされるままに首をふる。それにつられてしぃも首を振る。
襟首を捕まれ揺れに揺れる人型猫もどきと襟首を掴み揺らしに揺らす男とそれらを眺めて首を振る女という珍妙な光景が出来ていた。
気が狂っている。
(# ・∀・)「もっふもふですやん! もっふもふですやん!!」
(,,゚Д゚)「もももももっふもふですうううう」
(*゚ー゚)「もふもふー」
113
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 22:30:42 ID:FO59Pw1c0
もっふもふ支援
114
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 22:31:05 ID:eu/PwRq.0
揺さぶるモララー。揺さぶられるギコ。頭を振るしぃ。
シュールだった。
そんな超・現・実をしていた為、三人はすぐそこに近寄る陰に気づかなかった。
(*゚∀゚)「それ、まほうつかいにやられたんだろ?」
(,,゚Д゚)「……?」
言葉からしてにやにやと笑っているのが聞いてとれるような声に揺らす手を首を止め、三人は向かいのベンチを振り返る。
そこに居たのは、先ほどギコとしぃがマンションのエントランスでちらりと遭遇した少女。
しぃよりも幼く、小柄で、中性的な雰囲気をまとっている。その服装はやたらめったらとパンキッシュだ。
ニヤニヤと笑いながら三人を見つめている。
115
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 22:31:46 ID:eu/PwRq.0
風呂沸いたので一旦休憩
116
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 22:37:14 ID:AI9PKbZM0
ハインかと思ったがつーだったか
支援
117
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 23:02:38 ID:Y6VdpEXw0
なんか目に浮かぶなこの超・現・実www
118
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 23:10:18 ID:eu/PwRq.0
(*゚∀゚)「哀れダナぁ、『実験動物』は」
(,,゚Д゚)「……は?」
(*゚∀゚)「そんな風に変えられて、それでもまだ正気なんて、悲劇だぜ」
(,,゚Д゚)「……なぁしぃ、黄色い救急車って119で来てくれるのか?」
(*゚ー゚)「あれ、都市伝説だよ」
(,,゚Д゚)「まじかよ」
(*゚∀゚)「あはははハハハハっ! 可笑しいのはジブンじゃなくておれか! はは、やっぱ正気だ。変なの」
( ・∀・)「……何、これ。知り合い?」
(,,゚Д゚)「いんや? 知らない」
(*゚ー゚)「私も、知り合いでは無いねぇ」
からからと響く少女の笑いを、友人(仮)への侮辱と取ったのか、モララーとしぃの表情が渋いものとなる。
罵倒されたのかもしれない当の本人は、なにがなんだかとした様子で少女を伺っていた。
一頻り乾いた笑い声を上げ満足したらしい少女は、天を仰いでいた顔を戻し、にっこりと申し分無い笑顔を浮かべる。
端正な顔立ちは笑みに緩んでそれが正しい形のように愛らしい。
しかしその表情はどこか歪に歪んでいるような空気をかもし出していた。
119
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 23:11:17 ID:86h3o1to0
お帰り支援
120
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 23:11:29 ID:eu/PwRq.0
(*゚∀゚)「誰にやられたのか知らないけど、そんなのってあんまりにもカワイソーだからさ、優しいおれが処分してあげるよ」
右手を宙にかざすようにして、笑みを深めた。
びぎ、とどこからかプラスチックを無理矢理に歪めたような音がする。
(*゚∀゚)「――召還まほう、」
不愉快な音色があたりに響く。発光などの修飾は一切無い。
ただ少女の手を中心とした空間が屈折し、たわみ、ゆわむ。
ぎちぎちと鳴っていた音が止むと、ずるりと何かが抜け落ちた。
それは少女の細い足にからみつくようにして形成される。
(*゚∀゚)「――『ギルミルキル』」
ぎりぎりアウトラインだった。
121
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 23:13:11 ID:eu/PwRq.0
(,,゚Д゚)「……それは、やばくないか」
(*゚ー゚)「アウトだよね」
( ・∀・)「……アウアウ!」
(#*゚∀゚)「うっ、る、せーっ!」
空間を蹴る音、敷かれていたアスファルトのはぜる音が響く。
少女の姿は、音を置き去りにするようにして消えていた。
最初から居なかったかのように土ぼこりが舞い上がっている。
(;,゚Д゚)「――っな」
(*゚∀゚)「「それじゃあ、天国行けよ、被害者くん」
そして三人が少女が居なくなったという状況を認識するよりもっと早く、ギコの目の前、斜め四十五度上空に現れる。
大きく振り被った白い手に握られているのは、小振りなナイフ。
ギコが気づき、息を呑むよりなおも速い。
122
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 23:13:47 ID:UEVPYJ0Q0
三人のリアクションwwww
123
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 23:14:25 ID:eu/PwRq.0
白刃が青い毛並みに突き刺さる。
(,,゚Д゚)そ「うわーいてぇ!」
肉を裂く音。
骨の間を抜けるように巧い具合に果物ナイフの刃がギコの手から生えていた。
真っ青な毛に赤い血が滲んでいく。ふさふさとした毛の撥水は良いらしく、端からぼたぼたと流れていった。
(*゚∀゚)「へ、」
(,,;Д゚)「いてぇえっよ馬鹿やろぉおうぅっあいって!」
涙目になりながらも、ギコはそのまま小さな少女の手を握り込む。
それは意外な行動だったのか、少女は素っ頓狂な声をあげた。
何これ手取れるんじゃね、とギコは内心悲鳴をあげるが、耐えきったのは何も不思議な事ではない。
過去にそれ以上痛い思いをしていると、なんだかんだと耐えられるものなのだ。
そして何より今回の場合、
124
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 23:14:36 ID:O8/aZ8GU0
ちょww ウェポンwww
125
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 23:16:36 ID:eu/PwRq.0
(# ・∀・)「っの、不審者がっぁああああ!」
すぐ近くに助けてくれる友人がいるという、精神的な余裕もあった。
あのときとは違うのだ。
(# ・∀・)「よっくもギコに怪我させたなぁああ!」
(*゚∀゚)「うおお?!」
めこっというような、間抜けな音が閑静な公園に響く。
青筋を浮かべたモララーが振り上げているのは、ベンチ。
金属で出来た据え置きのそれを、素手にボルトをねじ切り、軋ませゆがませ持ち上げ振り上げ、――
126
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 23:17:56 ID:eu/PwRq.0
(# ・∀・)「うぎぎぎぎぎぎぎぎ」
(*゚ー゚)「頑張れ頑張れー。二人とも頑張れー応援してるよーすっごい応援してるよー」
(,,;Д゚)そ「他人事だ?!」
(# ・∀・)「そいつ押さえとけよおおおおおギコぉおお」
(,,;Д゚)「おっ、おおぉおお?」
(;*゚∀゚)「え?」
嘘だろ、と少女が口に笑みを浮かべたままつぶやく。
小さな手はギコの青い手のひらに握り込まれ、微動さえしない。ぼたぼたと真っ赤な血が滴り落ちる。
ざり、と少女の足が地面を踏みしめ、しかしそれもギコの足に押さえつけられ動きを止めた。
蹴るという動作を増幅させる赤い贋作は、それでもう封じられた。
ひくっと少女の口の端が引きつる。
(;*゚∀゚)「おれってそんな殴られたりするようなキャラじゃな――」
(# ・∀・)「うるせぇ!」
(;*゚∀(#「ィぎゃんっ!!」
ごいん、と鈍い音。
127
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 23:18:27 ID:HxMP0asE0
全体的に人間離れしてんなwww
128
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 23:19:24 ID:86h3o1to0
まともな人間がいない!
129
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 23:23:07 ID:eu/PwRq.0
ごいん、と鈍い音。
巨大な質量をぶつけられた少女の体が叩き飛ばされる。軽い体重は重力を振り切り、おもちゃのようにぽーんととんだ。
遮蔽物の少ない場が手伝っての人間ホームランを見送ったギコとしぃは「おお」と声をそろえる。
モララーはベンチを地面に落として額に浮かんだ脂汗を拭った。
( ・∀・)「フっ……また詰まらぬ物を切ってしまった」
(,,゚Д゚)「切ってない切ってない」
(*゚ー゚)「記録、約14メートル」
( ・∀・)「いやー俺も衰えたなぁ」
(,,゚Д゚)「で、あれどうすんだ」
(*゚ー゚)「放置?」
( ・∀・)「放置は不味くない?」
(,,゚Д゚)「不味いかなぁ……」
芝生にごろんごろんと転がったパンキッシュ人間野球ボールを眺めつつ途方にくれる三人(約一名人もどき)であった。
130
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 23:24:51 ID:eu/PwRq.0
少女は夢を見ていた。
まだ少女がふつうの、つまらないただの子供だったころ。
兄と呼び慕う青年にまとわりついて、日溜まりの中で目を細める。
(*゚∀゚)「なーアニキー」
( ゚∀゚ )「なんだー?」
(*゚∀゚)「私にも魔法おしえてくれよー」
( ゚∀゚ )「あー? おまえにはまだ早ぇっつってんだろォ?」
(*゚∀゚)「聞いたんだからな。スナオに魔法教えたんだって? なんで私には教えてくんないんだよ!」
( ;゚∀゚ )「あァあ? だ、誰に聞いたんだよ、そんな事……」
(*゚∀゚)「ねーちゃんにだよ! なぁ、何でスナオには教えたのに、ずるいだろー!」
( ;゚∀゚ )「あいつに教えたのは、魔法じゃなくてまほ、」
(#*゚∀゚)「魔法じゃねぇかよー!」
131
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 23:27:38 ID:eu/PwRq.0
( ;゚∀゚ )「……だからァ、おまえにはまだ早いんだって」
(#*゚∀゚)「なーんーでーだーよー!!」
ばしんばしんと青年の背中を叩きながら少女は眉を釣り上げる。相対して青年の眉は垂れていった。
それは青年と少女お決まりのやり取りのようなもので、少女もそこまで本気で言っている訳ではない。
ちぇ、と唇を尖らせ、青年の背中にもたれ掛かる。
( ゚∀゚ )「おまえがもっと大きくなったら、おれがとびっきりの魔法教えてやっからさァ」
(*゚∀゚)「……アニキずーっと前からそれ言ってんだろー」
(*゚∀゚)「もっともっとって、おれそのうち山にでもなっちまうぞ」
( ゚∀゚ )「はっ、山になる前には教えてやるよォ」
(*゚∀゚)「だーからそれいつだってー」
青年の衣服から舞う埃のようなものが光を反射して、きらりきらりと光る。
魔法の残骸だ、と少女は幸せな気分でそれを見ていた。瞼の裏でそれがきらきらとちかちかと瞬くのだ。
きらきらと、ちかちかと
ちかちかきらきらと、
ちきちきと、からからと
132
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 23:28:49 ID:eu/PwRq.0
(*-∀゚)「あれ?」
(;,゚Д゚)「手に風穴がぁああ!」
(;*゚ー゚)「グロい! グロい!」
(; ・∀・)「やべ、何コレ、どうなってんの?!」
(;*゚ー゚)「傷口に毛が! 何コレすごい訳わかんない状態!」
(; ・∀・)「消毒とかしてみる?」
(;*゚ー゚)「傷跡残るのかなぁ……」
(,,゚Д゚)「っていうか……毛並み? うん? 訳わかんねぇ!」
(*゚∀゚)「……ん、あ、あ……?」
( ・∀・)「あ、起きた」
133
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 23:29:33 ID:HxMP0asE0
猫だし舐めよう
134
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 23:32:06 ID:eu/PwRq.0
瞳をあけると、見たこともない青い青い空が少女の意識を迎えた。張り付くまつ毛を擦り、頭をもたげる。
途端、鈍い痛みが走った。
「うっ」と悲鳴を上げていると、三つの顔がこちらをのぞき込む。
自分がナイフを突き立てようとした顔と、自分をぶん殴った顔。
それから特に何もしなかった顔に、少女はひきつった笑みを浮かべる。
慌てて立ち上がり飛びのこうとするが、体の痛みがそれを許さない。否、どうやら誰かが自分の足を跨ぐように座り込んでいる。
(;*゚∀゚)「ぅあ、」
(*゚ー゚)「うわくすぐったい」
身じろぐと、足の上に座り込んでいる何もしなかった顔がくすぐったそうに笑った。
柔らかいはずの女性の笑みに、しかし何故か背筋が凍った。
(,,゚Д゚)「あ、やっと起きたかー」
( ・∀・)「よしギコちょっと家から、千枚通し持ってこい」
(,,゚Д゚)「えっ、良いけど何すんだ」
( ・∀・)「拷問」
(,,゚Д゚)「なにそれ怖い!!」
135
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 23:32:34 ID:8NP95IoI0
なんか3人楽しそうだなw
136
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 23:34:32 ID:eu/PwRq.0
( ・∀・)「ばっかオメェ何言ってんだ、殺傷沙汰だぞ殺傷沙汰。これで犯人捕まえて拷問せずに何をするってんだよ」
(*゚ー゚)「通報とかじゃない?」
(,,゚Д゚)「少なくとも拷問は選択肢にはいらねぇよ」
(# ・∀・)「警察で済んだら謝罪はいらねぇんだよ!!」
(,,゚Д゚)「謝罪で済んだら警察いらねぇだろ……」
(*゚ー゚)「で、」
くる、と改めて女の顔がこちらを見る。
そこに浮かんでいる表情はやはり柔らかい。整った顔立ちは、まるで慈母の如く温かに緩んでいる。
それなのにこの背筋を這う寒気は何だ。少女は息を呑んだ。
(*゚ー゚)「まぁ拷問はしないにせよ、いきなり襲い掛かってきたことの説明くらいはしてくれてもいいんじゃないかな?」
137
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 23:36:22 ID:.JJC/0o60
いやんモララーさんったら物騒
138
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 23:36:46 ID:eu/PwRq.0
これにてその2終わり
次の書き溜めは7KBしか出来ていないということだけ伝えておこうと思います。期待はドブにレッツゴー
あと支援有難うやっぱ支援あった方が何か心持穏やかだね
139
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 23:41:03 ID:zaR6qq7k0
乙乙
このつっこみが間に合わない感じ好きだよ
続き気長に待ってる
140
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 23:41:20 ID:UEVPYJ0Q0
乙乙
モララー物騒だなWWWWW
141
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 23:43:00 ID:5OzNAn620
乙
142
:
名も無きAAのようです
:2012/10/29(月) 23:44:50 ID:HxMP0asE0
おつー
143
:
名も無きAAのようです
:2012/10/30(火) 10:52:55 ID:7qRN3.W2C
乙
144
:
名も無きAAのようです
:2012/10/30(火) 12:23:09 ID:WocIjN3Q0
おつ
145
:
名も無きAAのようです
:2012/10/30(火) 12:32:28 ID:Yf9BET8s0
調子乗ったつーがちゃんと制裁受ける話少ないからこの展開すげー爽快だわ
乙乙
146
:
名も無きAAのようです
:2012/10/30(火) 20:38:57 ID:0.OC/mAw0
なんかみんなおかしいぞww
待ってる乙!
147
:
名も無きAAのようです
:2012/10/30(火) 20:53:55 ID:u03y3LBgO
おつおつです
もふりてーネコギコもふもふしてー
148
:
名も無きAAのようです
:2012/11/05(月) 00:20:42 ID:McyM5Bys0
たのしみー
149
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 20:43:08 ID:VlxC339M0
期待とか乙とか楽しみにしてるとかありがとう。積もり積もるほどテンションが上がってあれはキムですかいいえペンですみたいな心境
どうせなら二話分とかかけてから投下しようと思ってたけど面倒くさくなったからその5投下する
そんなわけで
『夕飯の焼き蕎麦食いすぎて胃が若干痛い』
『猫がモフモフ』
『ところで創作板ってdat落ちとかあんのかよく分からん』
他二本の心持でその5を投下していきたいと思います
150
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 20:44:51 ID:VlxC339M0
(-@∀@)「……」
( ФωФ)「朝日さん、お茶飲むであるか」
(-@∀@)「ああ、頼むよ」
ミセ*゚ -゚)リ「……」
朝日はカーペットにうつ伏せになりながら、ゆらゆらと首を揺らした。がきんがきんと関節が鳴り響く。
丸で我が家というようにくつろぐ人を見ながら、あれぇ俺こいつの助手かなんかだったっけ、と真剣に悩む顔をしながら杉浦は腰を上げた。
硝子障子が丁寧に開かれて閉まる音を聞きながら、朝日はふぅとアンニュイなため息を吐く。
ブラウン管テレビは詰まらない教育番組を流している。一心に見つめているミセリも詰まらなそうだ。
差し込む光に照らされ、埃が光っている。
その五
『どかんと一発枯山水』
151
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 20:46:00 ID:VlxC339M0
( ФωФ)「お茶でありますよー」
(-@∀@)「うっへい、ありがとう」
暫くに帰ってきた杉浦からお茶を受け取り、啜る。
もそもそと炬燵から手を出し、持っていた携帯電話をなにやら操作し出す。
( ФωФ)「どうしました?」
(-@∀@)「あ、いや、ちょっと用事が出来たから、これ飲んだら俺ちょっと出てくるね」
( ФωФ)「そうすか」
(-@∀@)「帰りにスーパー寄るけど何か買って欲しいものとかあるかい?」
( ФωФ)「そうであるなぁ……、ああ、そろそろシャンプーが無いので、適当に安い詰め替えのを頼んでいいであるか?」
ミセ*゚ -゚)リ「ハッピーターン!」
( ФωФ)「こらミセリ」
(-@∀@)「はいはい、じゃあシャンプーとハッピーターンね」
( ФωФ)「あ、ハッピーターンも頼んでいいんですか。すみません」
(-@∀@)「いやいやいいよ、気にすんな」
そういって朝日は再度茶を呷る。その斜向いに腰を下ろした杉浦も湯のみを掴んで、ほうと息をついた。
平和な午後だった。
あれ俺この人の後妻かなんかだっけ、という杉浦の脳内の疑問は、暖かい緑茶に溶けて消えた気がする。それでいいのか。
152
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 20:47:20 ID:VlxC339M0
lw´‐ _‐ノv「杉浦くん杉浦くん」
( ФωФ)「うお」
ぬるっと炬燵から生えるシュールの顔に、びくっと杉浦は身を固める。
我が家のこたつは四次元か! とめくって確認するものの、遠赤外線な赤い光と朝日の足と微妙な饐えた香りが出迎えただけだった。
何時からもぐりこんでいたのか、シュールの顔はほこほこと上気している。
成人女性がこたつにもぐりこんで顔を赤くしている図というのはこれまた言いようもない「ああもうだめだ」感が漂っていた。
lw´‐ _‐ノv「で、その後どんな感じなんだい、神様探しは」
( ФωФ)「……今日の午前中は街の外れまで見に行ってみたであるよ。ミセリは?」
ミセ*゚ -゚)リ「庭」
( ФωФ)「庭を探したそうである」
lw´‐ _‐ノv「へー」
lw´‐ _‐ノv「……宝探しか!」
どぅっ、とシュールの人差し指が杉浦の眉間に突き刺さる。痛い。
シュールに突っ込みをされたという事実に杉浦の自尊心がガリリと削られた。
メンタルの弱い現代っこはしかしそれを顔に出さずに、そっとたおやかなシュールの腕を掴んで額から外す。
シュールは黙って外される。
153
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 20:48:21 ID:VlxC339M0
そっとお互いに正座をして向かい合った。かこん、とどこかでししおどしの鳴るのが聞こえた。テレビからだった。
「日本のジャポニズム」国民放送きってのどうでもいいプログラムとして名をはせ、あまりのどうでも良さに打ち切られることも無い長寿番組だ。
本日は日本庭園と枯山水の違いについてを放送している。ナレーションはどうやら身内起用らしくたどたどしい。
lw´‐ _‐ノv「それあれだろ杉浦くん、バイトだろ」
( ФωФ)「はい。今日は運送業をば従事してきました」
(-@∀@)「で、ミセリちゃんは遊んでたんだよね、僕と」
ミセ*゚ -゚)リ「うん」
昼間も暇をもてあましている朝日はミセリの良い遊び相手なのである。
仕事をしてくれと思わないでもないが、家賃を払ってくれるならまぁなんでもいい杉浦は口にはしない。
朝日はこれで中々売れっ子作家だったりするらしいが、杉浦は頭が悪いので読んだことがありません。
lw´‐ _‐ノv「……いいなー、私もミセリちゃんと遊びたいなー」
( ФωФ)「シュールさんは仕事であろー」
lw´‐ _‐ノv「うおおニートになりてぇええええええ」
ごろんごろんと畳の上を転がる駄目人間を虫けらでも見るような目で見るミセリ。
精神衛生に悪そうなのでこたつの上にあったみかんを渡して意識を逸らさせる汚い大人の杉浦だった。
(-@∀@)「前言ってたフサくんの大学の先生はどうなの? その後コンタクトとか取ってるの?」
( ФωФ)「……俺目はいいであるよ?」
(-@∀@)「あ、うんごめんね難しい言葉使ったね。何か連絡取り合ったりしてる? って聞きたかったんだけど」
( ФωФ)「ああ、せんせーさんであるな」
ミセ*゚ -゚)リ「せんせー」
154
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 20:50:58 ID:VlxC339M0
〃∩ ∧_∧
⊂⌒( ・ω・) ここから回想ですよ、というAAを勤める佐々木カラマロス大佐
`ヽ_っ⌒/⌒c (時給はオフレコ)
('A`)「この世界は神様によって作られた」
陰鬱な顔をしたドクオがぽつりと呟いた。
( ФωФ)「……」
ミセ*゚ -゚)リ「……」
フサギコはちょっと色々あって地面に伏してます。
ゆとり大学略してゆ大、その講義室の一角にて、幼女と阿呆を生徒にしたミニ講義が行われていた。
歴史ある大講堂のどでかい黒板をチョークが叩くかくかくという音が高らかに響く。
杉浦は「何か俺ちょっと頭良い人みたい」とちょっぴりテンションが上がっていた。
彼は世にはばかる馬鹿なのだ。
155
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 20:53:16 ID:VlxC339M0
('A`)「お前らも聖書くらいは読んだことあるだろ?」
('A`)「世界の起源を記したあれだ。……ああ、兄ちゃんは良い。黙っといてくれ」
( ФωФ)えー
('A`)「まぁともかく、この世界は神によって作られた」
('A`)「普通に作っときゃよかったんだ。あの馬鹿、この世界に魔法なんてもんを残しやがった」
('A`)「お陰でこの世界の最初期は剣と魔法のファンタジーだ。ドラゴンをクエストしたりファイナルなファンタジーだったりテイルズがデスティニーだ」
ドラゴンはクエストしてない。
('A`)「それを見た神は、それがどうも気に入らなかったらしい。勝手なことで」
('A`)「世の中にあった魔法を掻き集めてより集めて、とある二人の魔法使いに全部押し付けた」
('A`)「その二人はこの世で最後の、最大の魔法使いに召し上げられた」
('A`)「その一人が、この俺だ」
かつん、と幾多も引かれた線が一つの丸に収束されていく図が出来上がる。
どうやらミセリはそれを一心に見つめているようだったが、杉浦にはなんのこっちゃ分からなかった。
因みにいつの間にか復活したフサギコが杉浦の隣に腰掛けて真面目にプチ講義を受けていたかと思いきや速攻で眠りの国に落ちるという
謎行動を行っていたので、三人はきれいに無視した。
ところでこのレス同じAAばかりが並んでいて非常に構成が悪い。
156
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 20:55:59 ID:VlxC339M0
ゆっくりとドクオの瞳が杉浦とミセリを見つめる。フサギコはスルーされていた。
窓の外ではさらさらと風で木の葉のこすれあう音がしている。射し込む光は緑色だ。
遠く、誰かの笑い声が聞こえた。
言葉を待たれているのだ、と杉浦は唇を舐めた。
ミセリか自分か、何か言わなければドクオはこのまま口を閉ざし、立ち去りさえするだろう。
正直彼にガン見されているのは物凄く嫌だった。彼はあまり直視したくないタイプの顔なのである。
( ФωФ)「そ、」
('A`)「そ?」
( ФωФ)「そんなことはどうでも宜しいです」
どうでも宜しいらしかった。
('A`)「宜しいですか」
杉浦の言葉を、首を傾けたドクオが繰り返す。
よろしいです、とミセリもそれに続く。三つ分の宜しいですがふんわりと空間に漂って消えた。
シュールだった。人名じゃないほうの。
157
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 20:57:35 ID:VlxC339M0
( ФωФ)「我輩たちは神様を探しておるのです」
('A`)「おるのですか」
( ФωФ)「ええと、せんせーさんは、神様、何処にいるか、知ってらっしゃるのですか?」
('A`)「いや、知らん」
さっきも言ったがな、とドクオが教卓に座る。
('A`)「俺らが今こうやってこんな凡百の大学の一講師をしてんのもあいつが俺らをここに落っことしやがったからだ。
('A`)「早急にとっちめて俺らは元の場所に帰りたい」
( ФωФ)「落っことされた?」
('A`)「ちょっと因縁があってな」
ニヒルな表情がむかつく、とミセリが思ったかどうかはともかく、子供には長い話は辛いものがあったらしい。
杉浦の隣でミセリがごそりと服の裾を引いた。
ミセ*゚ -゚)リ「ねむい」
( ФωФ)「寝て良いであるよ」
158
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 20:59:20 ID:.Tc/zqxs0
来てたか、支援
159
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 21:00:17 ID:VlxC339M0
こてんと小さな頭が杉浦の方に寄りかかる。そういうご趣味の方にはたまらん状態だが、杉浦は生憎年上が好きだった。
ふと見るとドクオがこの世のすべての悪を見るが如く杉浦を睨んでいる。
ぎしっとその手の下の教卓が大きく音を立てた。細身のように見えるが、フサギコを伸したのといいそれなりに力はあるらしい。
ところでそのフサギコは見事な鼻ちょうちんを製作している。
ミ,,-Д-彡ぐーぐー
('A`)「……」
ミセ*゚ -゚)リ「……」
( ФωФ)「……どうぞ、お話しを続けてくださいである」
('A`)「……ともかく、俺たちもあの馬鹿野郎を探してる真っ最中だ。何か進展があったら知らせてやるよ」
( ФωФ)「え、でも、そんなに何人もお願い、叶えてくれるであるか神様」
('A`)「いや、俺らはお願いするわけじゃないからな。まぁそこまで心狭くもないだろ」
('A`)「一応あれでも神様なんだし」
( ФωФ)「はー、そうなんであるか」
しっかしこの人はまるで神様と知り合いかのように話すなぁ変な人だなぁと杉浦は思った。
ひとまず協力はしてくれる気らしいと馬鹿の頭でも理解できた。
座ったままの状態でぺこりと頭を下げる。
160
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 21:03:26 ID:VlxC339M0
( ФωФ)「ありがとうございます」
('A`)「いや、いいよ。あー、携帯持ってる?」
( ФωФ)「あ、一応」
('A`)「じゃあ赤外線でアドレス送るから、……いいか?」
( ФωФ)「ちょ、ちょっと待って、えーっと」
最後はぎこちない4月の中学生みたいになっていた。
〃∩ ∧_∧
⊂⌒( ・ω・) ここで回想は終わりですよ、というAAを勤める佐々木カラマロス大佐
`ヽ_っ⌒/⌒c (時給はオフレコだから前のは忘れてね!)
161
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 21:04:49 ID:P2y54YJ20
追い付いた、創作板はdat落ち無いよ支援
162
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 21:05:55 ID:VlxC339M0
(-@∀@)「で、アドレス交換しましたよと」
( ФωФ)「である」
携帯電話をポケットから取り出し、かこかこと操作して朝日に指し示すと、隣でミセリが「ててーん」と効果音を口に出した。
慣れてくると割合ノリの良い幼女である。
そこには「鬱田」とそっけなく登録されたアドレス。
登録番号が13なのが涙を誘う。
何度も言うが杉浦は馬鹿と柄の悪いのが手伝って非常に人受けが宜しくないのである。
学生時代から一応の連絡手段として持っている携帯電話であるが、友人のナンバーの登録など、皆無に等しい。
ちなみにシュールは回想の始め七行目くらいで仕事のために部屋を出て行きました。
お土産には辛子明太子を買ってくるそうです。
(-@∀@)「じゃあ進展の連絡はきてるわけだ」
( ФωФ)「そうですねー……」
言いつつ、かちかちと操作する。
携帯に記録されているやりとりを再現すると以下の感じである。
川 ゚ -゚)『今日の晩御飯♪ 上手に出来たぞ!』
( ФωФ)『おいしそうですね。我輩は今日はミセリに手伝ってもらっておでんでした』
163
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 21:06:35 ID:VlxC339M0
( ФωФ)「……」
( ФωФ)「主に今日食べたご飯のことなどが送られてくるので、俺もそれに返してるかんじですね」
(-@∀@)「彼氏彼女なのかい?」
( ФωФ)「ハートマークは頑なに送られてこないので違うと思いますよ」
(-@∀@)「いや知ってるよ!」
(-@∀@)「っていうか杉浦くんの中ではハートマークを送りあったら彼氏彼女の仲なの? ハードル低いなオイ!」
( ФωФ)「でもハートマークなんて来た事ないであるよ?」
(-@∀@)「うんそれはさっきも聞いたね」
( ФωФ)「主にせんせーさんが女のときにしかやりとりはせんのですが」
( ФωФ)「昨日はミートスパゲッティを食べたようである」
(-@∀@)「そ、そうなの」
( ФωФ)「おとついはカルボナーラであった」
(-@∀@)「スパゲッティ好きだなその人」
( ФωФ)「あとせんせーさんが男の時は絵文字がなくなるので分かり易いであるね」
(-@∀@)「ど、どうでもいい!!」
ぐだぐだの会話を切り裂く朝日の心のシャウト。
それとともに轟音が響き渡る。
164
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 21:08:33 ID:VlxC339M0
(;-@∀@)「俺のシャウトが天に届いた?!」
そんなわけは無いので一瞬にして我に返る朝日。
( ФωФ)「地震ですかね?」
(-@∀@)「最近多いよね」
地響きを伴い、電気の紐を揺らし、老朽化の進んだ離れをもみしりと揺るがせた。
む、と杉浦がミセリを炬燵の中に押しやり、出口を確保するために立ち上がって硝子戸を開ける。
(-@∀@)「こら杉浦くん、揺れてるときに硝子に近づくんじゃないよ」
と言いつつ朝日も重たい和箪笥が倒れないようにと立ち上がり手を添える。
ミセ*゚ -゚)リ「デコうった……」
( ФωФ)「すまんである」
165
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 21:09:32 ID:VlxC339M0
事態を把握するより早く炬燵に押し込まれたミセリがもそもそと顔を出した頃には、揺れはすっかり止んでいた。
硝子戸を開けたさき、縁側の窓の向こうの庭先がもうもうと土煙で煙っている。
ついでになにやらわーわーと喧騒も聞こえてきた。
(-@∀@)「地震じゃなかったみたいだね」
( ФωФ)「ですね。しかし騒がしいのが気になりますので、ちょっと外見てきます」
(-@∀@)「気をつけてね」
もしも大きな事故などがあったのならば人手も要るだろうし、それよりも大きな事故ならば避難も念頭に入れなければならない。
付いてこようとするミセリを部屋の中に押し留め、庭に出してあったサンダルを引っ掛ける。
通りの方を伺うと、どうやらいくらか向こうの方に轟音の原因があるらしい。
野次馬根性丸出しのご近所の方々に習い、杉浦もそちらの方へと足を運ぶ。
( ФωФ)「おお、これは」
杉浦が大家を務めるアパートの三軒隣。すこしばかり開けたところにとんと建つ小ぢんまりとした小さな家。
どうやらそこが煙と音の根源だったらしい。
ざわざわと集る人々をゆるりと掻き分けて杉浦はそれを見上げる。
166
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 21:10:16 ID:VlxC339M0
家屋に真っ青な――これは飛行機、だろうか。それにしては杉浦の知る物よりも小型で、どうやら座席は二つしかない。
しかしいくら小さいと言えどその辺りの家屋など簡単に押しつぶしてしまえる大きさの鉄の塊が、突き刺さっていた。
墜落の衝撃でも尚形を変えない機体はしかして黒い煙を上げ、潰された家屋からも不穏な音が立ち上っている。
何処か焦げつくような臭いも辺りに漂い始めていた。
とりあえず飛行機の出展は
http://vipmain.sakura.ne.jp/end/335-top.html
これです。
その辺大事なので宜しくお願いします。
墜落させちゃってすんません。
( ФωФ)「すっげー。でけー」
始めて間近で見る飛行機に男の子心をくすぐられつつ、杉浦は勝手に他人の家の庭に侵入する。
小学生と同程度につんつるてんのその頭はもう飛行機格好良いでいっぱいである。
ちなみに他の野次馬は上がり出した火の手を取り囲んでマイムマイムを踊るか否かの相談を始めていた。
避難したらしい家主がラジカセの無いことを嘆いている。今年のベストオブお前他に嘆くことがあるだろう賞だ。
( ФωФ)「いやー飛行機ってこんなでかいであるかー」
はみ出した翼を下から見上げ歓声を上げる。
でけぇでけぇと顔をほころばせていると、唐突に何かに蹴躓いた。
( ФωФ)「ってぇ……ん?」
あれなんかちょっと前にもこんなのやったな、と杉浦は思った。
167
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 21:10:38 ID:HjMKpPss0
何事だ
168
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 21:12:10 ID:VlxC339M0
(* ∀ )
( ФωФ)
( ФωФ)「あの、えっと、」
(* ∀ )
( ФωФ)「だ、大丈夫であるか?」
169
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 21:13:04 ID:Q9kFwW3.0
支援しえーん
170
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 21:13:41 ID:VlxC339M0
( ФωФ)「朝日さーん、ちょっといいであるかー」
( ФωФ)「ドア開けてくーだーさーいー」
(* ∀ )
肩に乗っかった少女が落ちないように身をよじりつつ離れの戸を叩く。
先日背負ったミセリより幾分重たい。幼女の称号を離れた人間の重量であった。
じわりじわりと背中の辺りの布地に生暖かい何かが染み込むのも不快でしょうがない。
( ФωФ)「あーさーひーさー」
( ФωФ)「ん?」
ミセ*゚ -゚)リ「……」
がんがんがんががんと自分の家なのを良いことに連打しまくっていた杉浦を出迎えたのは、見慣れた無表情系幼女ミセリだった。
背負われた少女ごとゆっくりと杉浦を上から下まで眺めて、フライハイ飛行に挑戦しようと試みるピグミーボルジョアを見るような顔をする。
流れる沈黙。
杉浦の後ろの通りを消防車がサイレンとともに通り過ぎていった。
171
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 21:14:31 ID:lXiDAu/w0
つーちゃんどうした
172
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 21:14:51 ID:VlxC339M0
( ФωФ)「朝日さんはどうしたであるか?」
ミセ*゚ -゚)リ「たんとうさん? が、つれてった。……かんづめ?」
( ФωФ)「ああ、モナーさんであるか」
そういやあの人用事が出来たって言ってたな、と杉浦は空いた手で頭を掻く。
見ると玄関に朝日の靴は転がったままである。乱闘の痕が見て取れた。
未だに締め切りを悪の秘密結社だと信じ込んでいる杉浦は、言ってくれれば俺も手伝ったのにと朝日の笑顔を今は見えない青空に浮かべた。
とりあえず、と思考を切り替える。馬鹿が故の切り替えの早さだった。
尚もバックで綱渡りをしながら一輪車を漕ぎ砲丸投げをするムジナを見ているような顔をしているミセリに背中の少女を指し示す。
ショックか何なのか意識の無い彼女は、指し示され傾けられるままにぐてんと杉浦の背中から顔を出した。
( ФωФ)「手当てをしたいから、手伝ってくれるか?」
ミセ*゚ -゚)リ「……」
杉浦は沈黙は肯定と取るタイプの人種だった。
一歩退いたミセリの横を通り、適当にサンダルを脱いで部屋に上がる。
絨毯が汚れると嫌なので少女は廊下に横たえることにした。ごろんとまだ幼い肢体が転がる。その服装はパンキッシュだ。
173
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 21:16:12 ID:VlxC339M0
ミセ*゚ -゚)リ「……どしたの、これ」
( ФωФ)「拾ったである」
ミセ*゚ -゚)リ「……」
拾ったのです。
ぱたぱたと奥へ行ったミセリが速攻で舞い戻って持ってきたビニールシートを廊下に広げる。
( ФωФ)「おお、気が利くであるなミセリ」
ミセ*゚ -゚)リ「とーぜん」
ぴっと薄っぺらい胸を張る幼女。
よしよしと撫でる杉浦だが、その手は少女の血やらで汚れていたので物凄い勢いで拒否された。
ブロークンハートなギリギリ青少年杉浦である。
改めて見ると少女の体のあちらこちらはひしゃげ小さな火傷を幾つも作っていた。
切り傷もあるのか、だくだくとパンキッシュな服が血で汚れていく。廊下も汚れていく。板張りに塩っぽいそれはあまり宜しくない。
すまんが、と杉浦が言うより早くミセリはまたぱたぱたと走って、どうやら裏の洗濯場に雑巾を取りに行ったようだった。
一旦転がした少女を再度持ち上げビニールシート(大きめ)にごろんと転がし、ふうむと杉浦は一息を吐く。
とりあえず何となく拾ってみたはいいが、果たしてこの程度の怪我を我が家で処置できるのだろうか。
むき出しの白い腕は妙な方向へ捻じ曲がっているし、ルーズなボトムスに包まれていたはずであろう足には半ば炭化したような火傷がある。
見る人が見なくても家庭での処置は無理だろうから救急車を呼ぶだろうが、こと杉浦は何かいけんじゃねぇかなと思っていた。馬鹿なのである。
174
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 21:17:59 ID:VlxC339M0
( ФωФ)「オロナインとか塗ったら治るであろうか……」
治る訳が無い。
ミセ*゚ -゚)リ「ぞうきん」
( ФωФ)「お、ミセリ、ありがとうである」
ミセ*゚ -゚)リ「バケツ」
( ФωФ)「ああ、水拭きした方がいいもんな。重くなかったか?」
ミセ*゚ -゚)リ「へーき」
再度よしよしを敢行しようとする。ばしっと腕をつかまれ拒否の構え。懲りない杉浦はリターンザブロークンハート。
とりあえず雑巾を水につけ、絞る。ミセリもそれに習った。
パンキッシュ血まみれガールを尻目に廊下掃除を開始する二人。
( ФωФ)「むう、乾いてしまったのは中々落ちにくいであるな」
ミセ*゚ -゚)リ「せんざいいる?」
(* ∀ )「……」
( ФωФ)「うーん、余り木に良くないから洗剤は使いたくないであるが……」
ミセ*゚ -゚)リ「じゃ、がんばる」
(* ∀ )「……」
175
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 21:19:26 ID:Q9kFwW3.0
ピグミーボルジョアってなんだと思って調べたらトビネズミなのか
176
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 21:20:10 ID:VlxC339M0
(* ∀ )「……」
( ФωФ)「がんばるである」
(* ∀ )「……」
( ФωФ)「……落ちん」
ミセ*゚ -゚)リ「むう」
(* ∀ )「……」
ミセ*゚ -゚)リ「やっぱせんざい?」
( ФωФ)「んー、布とかだと大根でこう、やると結構きれいに落ちるであるが、あれ木っていけんのかな……」
ミセ*゚ -゚)リ「だいこん」
(* ∀ )
(#* ∀ )
( ФωФ)「……うーん」
ミセ*゚ -゚)リ「……うーん」
(#*゚∀゚)「……手当てするなら早くしろよォッ!!!!」
177
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 21:21:30 ID:CkW3vZeQ0
救急車呼ぶとかしろよww
178
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 21:21:50 ID:VlxC339M0
( ФωФ)びくーん
ミセ*゚ -゚)リびくーん
がばりと少女が起き上がり叫ぶ。
完全にお正月掃除をしている気分になっていた杉浦とミセリは、びくーんと肩を震わせた。
そこには元気に立ち上がるパンキッシュ少女(グロッキー)の姿が!!
(#*゚∀゚)「どうして怪我人ほっといて廊下掃除始めちゃってんだよお前ら!!」
( ФωФ)「え、いやだって廊下傷んだら大変であるし……」
(#*゚∀゚)「こちとら痛んだらッつーかそろそろ悼まれちゃう感じになってるッつーの!」
ミセ*゚ -゚)リ「だれうま」
( ФωФ)「馬?」
(#*゚∀゚)「頼むよこちとら色々考えて色々頑張って寝たフリしてたんだよ結構辛かったんだよ!! 廊下なんて普通後だろ!!」
実は杉浦に背負われ歩き出した十三秒後にはひっそり目ざめ、どうにか隙を突いて逃げようとしていた少女なのだが、杉浦はそんなこと知りません。
汚れた雑巾を一旦バケツに戻してすすいでから、ぎゅうと絞る。
すっかり濁ってしまった水を替えようとミセリが立ち上がった。
179
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 21:22:15 ID:9.uJEtVM0
あれつーちゃん起きてた
180
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 21:23:00 ID:VlxC339M0
( ФωФ)「でも、この離れとあのアパートは、父さんと母さんが遺してくれた唯一のものであるから……」
(*゚∀゚)「あっ、……」
沈痛な空気が流れる。
廊下に膝を着いたまま項垂れる杉浦に、空気を読んだミセリも持ち上げたバケツをそっと下ろした。
柱時計の秒針がしきしきと沈黙を刻む。
( ФωФ)「やはり、大切に使いたいなって、思うであるよ」
(*゚∀゚)「……そ、か……。ごめん、良く知らないのに、オレ……」
これまた空気を読んだ少女が振り上げていた腕(ねじくれなう)をゆっくりと降ろし、端の切れた唇を噛む。
杉浦は随分ときれいになった廊下を優しく撫でる。何よりも大切な家族をいたわるような手付きをミセリの視線が追った。
目を伏せていた少女を、形容しがたい燐光がふわふわと包む。それとともにアニメっぽいSEも無く、少女の満身創痍な体が癒されていった。
( ФωФ)「……まぁ、それはそれでいいとして、」
(*゚∀゚)「…」
( ФωФ)「……」
( ФωФ)「……えっなんで治ってるであるか。そういうのはやりなの? 我輩も出来る?」
出来ません。
やっぱり洗剤を取ってこよう、と一大決心を終えた杉浦は立ち上がり、少女を見やり、目を逸らし、もっかい見て首を傾けた。
その隣に寄ったミセリが少女の血で汚れた杉浦の服を引く。
181
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 21:23:11 ID:Q9kFwW3.0
どこまでもマイペースだなおいwww
182
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 21:24:03 ID:VlxC339M0
(*゚∀゚)「えっ」
( ФωФ)「えっ?」
(*゚∀゚)「……」
(*゚∀゚)「……イッツァイリュージョン」
( ФωФ)「すげぇ!」
両手を広げる少女に向かって感動のままに惜しみない拍手を贈る。
隣ではミセリが物凄くとても胡散臭いものを見る目で少女を見つめていた。
少女は「あっこいつばかだ!」という顔をしていた。「やっべばかに関わっちまった!」という顔だった。
常なら杉浦が大層悲しむ表情だが、今の彼は目の前で起きた奇跡のごときイシュージョンに胸一杯でそんなことには気づかない。
少女の表情が「やっべばかに関わっちまった!」から「いや、逆にこりゃ好都合だな」に変わった事にも気づかない。
おおブラボー、おおブラボーとスタンディングオーベーションである。ところでスタンディングオーベーションとマスターベーション、いや止めておこう。
(*゚∀゚)「オレは流れの手品師でね、ちょうど住まいを探してるところだったんだ」
( ФωФ)「へーそうなんであるか! すごいである!」
(*゚∀゚)「ああ、今お前アパートっつったろ?」
( ФωФ)「はい、我輩大家王になると心に決めた男でありますよ」
どうでもいいが大家王って「お」多すぎて非常に意味が取り辛い。
183
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 21:25:08 ID:.Tc/zqxs0
どうしようツッコミが圧倒的に足りない
184
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 21:25:32 ID:VlxC339M0
(*゚∀゚)「そりゃあいいや!」
ミセ*゚ -゚)リ「……」
少女に注がれるミセリの視線は絶対零度の如きだったが、少女は目の前のばかを丸め込むことで一杯一杯だった。
(*゚∀゚)「なぁ、これも何かの縁だ、オレをそこに住まわしてもらえねぇかな?」
( ФωФ)「あ、ウチはちょっとそういう手品師とか、収入が安定してない方の入居はお断りしているので」
(*゚∀゚)「……えっ」
( ФωФ)「えっ?」
(*゚∀゚)「えっ?」
185
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 21:27:23 ID:VlxC339M0
これにてその5終わり
支援とかありがとうございました心穏やか。
風呂に入って出てくる間まで質問とか受け付けたりしますんで一旦ありがとうございました
186
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 21:27:53 ID:x0z9VzV20
小説家の朝日は……売れっ子だからいいのか…?
187
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 21:29:36 ID:Q9kFwW3.0
乙乙
この話が横にずれ続けていく感じ大好き
188
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 21:31:42 ID:APrl29N60
おつおー
189
:
名も無きAAのようです
:2012/11/08(木) 22:12:43 ID:VlxC339M0
乙とかありがとうございました。
正直質問とか無いならこのまま放置で行こうかとおもってたんだけどそういえば
>>161
にお礼言ってなかったからありがとうございます
dat落ち無いと聞いて心置きなくゆっくり書けるね!やったねたえちゃん!
そんなわけで次回の投下分の書き溜めは4kbです 期待は投げ捨てるもの
190
:
名も無きAAのようです
:2012/11/11(日) 21:19:13 ID:4IKrel2k0
( )人間の証明をするようです
http://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/evidence/evidence.htm
やっと思い出した
俺が前読んだのこれだよ
191
:
名も無きAAのようです
:2012/11/12(月) 21:25:46 ID:158tExrU0
来とった乙!
何か好きだこれ
192
:
名も無きAAのようです
:2012/11/18(日) 13:57:34 ID:lTi9GWMM0
ロマの馬鹿さが好きだ!
次も楽しみ!
193
:
名も無きAAのようです
:2012/12/13(木) 20:20:19 ID:f/WO2KG.0
期待をキャッチだ とう
194
:
<^ω^;削除>
:<^ω^;削除>
<^ω^;削除>
195
:
名も無きAAのようです
:2013/02/07(木) 22:52:05 ID:.cv7evh60
京極シリーズを全巻大人買いとかしていたらめっきり書くの忘れてました。
そんなわけで何ヶ月ぶりか知りませんがお久しぶりです投下していきたいと思います
196
:
名も無きAAのようです
:2013/02/07(木) 22:52:54 ID:.cv7evh60
清潔感のあるクリーム色の壁。天井にはやわらかい光を放つ電灯。
壁には予防接種や健康管理を呼びかけるポスターが貼られ、受付のお姉さんはにこやかに対応する。
傍から見ても開放感のある造りのそこは、初めてでも気後れしないようにと細心の注意の払われた造りをしていた。
ギコとしぃが居るのは、
(´<_` )「えーじゃあギコくんね。本日はどうされましたかー」
(*゚ー゚)「えっとですねぇ、ちょっと喧嘩したみたいで。手に怪我しちゃってるんですけどー」
動物病院だった。
その四
『流石弟者は流石アニマルクリニックの院長を勤めてるらしいです』
197
:
名も無きAAのようです
:2013/02/07(木) 22:54:19 ID:.cv7evh60
(´<_` )「ほーほーあーこりゃ酷いね。ナイフかなんかでざっくりやられちゃってるぞ」
(*゚ー゚)「わーやっぱり刃物ですか? 怖いなぁ」
(´<_` )「警察に届けた方がいいかもね。うーむ、血は止まってるしとりあえず骨の調子見たほうがいいかな」
(´<_` )「レントゲン撮るけど、補ていしてもらっていいですか?」
(*゚ー゚)「あ、押さえてればいいんですか?」
(´<_` )「うん。ギコくん大人しいみたいだけど知らない人に押さえられると動揺しちゃう子もいるからね」
(´<_` )「じゃあレントゲンあっちだから、連れて行ってもらえる?」
(*゚ー゚)「はーい、分かりました」
(*゚ー゚)「ほらギコ、行くよ」
(,,゚Д゚)「……えええ……」
しぃにジャージの腹のところを掴まれ引っ張られるままに歩く。
看護士さんに誘導されるままにレントゲン室に入り、指定の通りに台に手(もふもふ)を置いた。
色々な思いをどうやって発散したものかと考えつつされるがままに座っているギコを、看護士さんがにっこりと微笑んで見る。
从'ー'从「賢い子ですねー」
(*゚ー゚)「いやー、ちょっと知らない人が一杯で緊張しちゃってるのかなー」
从'ー'从「あらら。大丈夫だよー怖いことしないよー」
从'ー'从「それにしても酷いですねぇこんな傷。最近物騒だし、可愛そうに……」
気が狂ってやがる。
198
:
名も無きAAのようです
:2013/02/07(木) 22:56:14 ID:.cv7evh60
(,,゚Д゚)「……」
そんなことをギコが考えたかどうかについては言及を控えよう。
ぱしゃーと撮られたレントゲンの現像を待つために別室に移される。
筆者はペットを動物病院でレントゲンさせたことがないので描写が曖昧なことに謝罪しよう。
並んでベンチに座ると、「あ」としぃがか細く声を上げた。
(*゚ー゚)「大きい動物連れてくるときは首輪つけないのやっぱり非常識だったかな」
(,,゚Д゚)「つけようとしたら俺もう死ぬわ」
ギコにはそういう趣味は無い。
彼は割に健全なる性的嗜好しか所持していないのである。
死ぬんじゃしょうがないな、としぃは天井の模様を数えることに専念しだした。
(*゚ー゚)「……」
(,,゚Д゚)「……」
(*゚ー゚)「そういやさぁギコ、あの子帰しちゃって良かったの?」
(,,゚Д゚)「あの子?」
(*゚ー゚)「それ忘れられる辺りギコ凄いよね。ほらこの前のあの子」
199
:
名も無きAAのようです
:2013/02/07(木) 22:57:49 ID:.cv7evh60
(,,゚Д゚)?
(,,゚Д゚)「あー……」
ひらひらと風穴の開いている自分の手を電灯に透かしつつギコは首を傾ける。
二人が動物病院に足を向けた原因であるギコの傷。それを作った張本人のパンキッシュガールの顔がぼんやり浮かぶ。
無茶しやがって……と忙しげに通りすがった看護士が何故か呟いた。
(,,゚Д゚)「良かったのっつーか、あんなダイナミックに逃げられたら追いようなくね」
〃∩ ∧_∧
⊂⌒( ・ω・) ←回想に入るよのAAを勤める佐々木カラマロス大佐
`ヽ_っ⌒/⌒c (時給不明)
細い体に乗り上げたしぃが微笑んだ瞬間、ぎりっと少女の奥歯が噛み締められた。
俯き、小刻みに震えだす。
何処か可笑しいその様子にしぃが首をかしげると、――その宣言は唐突に上がった。
200
:
名も無きAAのようです
:2013/02/07(木) 22:59:37 ID:.cv7evh60
(* ∀ )「覚えてろよ」
(*゚ー゚)「うん?」
(* ∀ )「覚えてろ、覚えてろ、覚えてろ覚えてろ覚えてろよ! お前らなんかに! お前らなんかにっ!」
(#*゚∀゚)「まほうつかいはまけないんだっ!!」
(*゚ー゚)「魔法使い?」
しぃはかくんと首をもうワンランク傾けた。
モララーはやっべぇ厨二病だ、という顔をした後、ブーメランしてきた何かを感じて崩れ落ちた。
ギコは手(貫通ダメージ)が痛かった。
201
:
名も無きAAのようです
:2013/02/07(木) 23:01:42 ID:.cv7evh60
(#*゚∀゚)「召喚っまほう!!!!」
その声に、轟、と風が巻き上がる。
少女を中心とするように、空気が渦を巻く。前髪が翻り、装飾過多な衣服のひらひらが翻り、思わず飛びのいたしぃのスカートの裾が翻る。
「残念だったな!」とプリントされたスパッツを惜しげもなく晒したしぃは、「うわあ」と間抜けな声を上げた。
モララーとギコは友人の成人女性にあるまじき様相から全力で目を逸らしていた。
(#*゚∀゚)「『青い215キロ』っ!!」
搾り出すように叫ばれたハスキーな声に呼ばれるようにして、空間が撓む。
軋みを上げるように、本来ならばありえない「何か」を拒絶するようにぎちぎちと、ぎりぎりと耳障りな音が辺りに響いた。
それは少女がギコたちに襲い掛かった時のものと同じ音だったが、今のそれは――更に鋭く。
( ・∀・)「しかしどこまで行ってもギリギリアウトだな」
(*゚ー゚)「そうだそうだーアウトだアウトだー」
(,,゚Д゚)「ところで手がすごい痛い」
(#* ∀ )「黙れよぉおおおおおおおおォッ!!!」
202
:
名も無きAAのようです
:2013/02/07(木) 23:04:27 ID:.cv7evh60
現れたのは、青い青い小型飛行機。
小型とは言え、有り触れた公園ではもてあますほどに大きなそれが空間からずるりと抜け落ちるようにして少女の後ろに降り立つ。
喉をはちきれさせんばかりのシャウトをした少女は、後ろ手に飛行機の翼に繋がるなんかパイプ的なものを引っつかみ、
軽業師もかくやという身のこなしで飛び上がった。がしゃん、とコックピットを覆っていた硝子カバーを厚底ブーツが蹴り砕く音。
プロペラが回る。何処か懐かしさを感じる輪郭の金属ボディが軋みを上げる。
先ほど少女が叫んだときよりもはるかに現実味のある危険に、
何とか心の中で暴れる中学二年生の彼と折り合いをつけたモララーがしぃとギコの二人の襟首を掴むようにして走り出した。
(; ・∀・)「ダッシュダッシュ! 逃げる逃げる! 流石の俺も飛行機は多分投げらんない!」
(,,゚Д゚)「誰が投げろっつったよ」
(*゚ー゚)「首絞まる首絞まる首絞まる」
五十メートルほど四つの踵によるラインを引いたところで、青い機体が物理法則を無視して空へ飛び立った。
助走も加速もつけずに、重力に逆らうように持ち上がる機械の塊。
プロペラ回ってたりしたのはなんやってんと問いたい。
ヘリコプターのように数瞬滞空していたそれは、ほんの少しかたぶくと、猛烈な勢いで飛び去っていった。
呆然とそれを見送った三人は、暫くして顔を見合わせる。
( ・∀・)「……逃げられたな」
(*゚ー゚)「逃げられたねぇ」
(,,゚Д゚)「めっちゃ手が痛い」
203
:
名も無きAAのようです
:2013/02/07(木) 23:05:42 ID:.cv7evh60
〃∩ ∧_∧
⊂⌒( ・ω・) ←回想が終わりましたよというAAでさえも務める佐々木カラマロス大佐
`ヽ_っ⌒/⌒c (時給はシークレット)
(,,゚Д゚)「まぁあのあとモララーが石投げてたから、無事では済んでないだろ」
(# ・∀・)『そらっしょぉおおおおおおおおおおいっ!!』
(*゚ー゚)「えー、でも石だよ?」
(,,゚Д゚)「あいつが投げたのが届かないとかんな訳ねぇじゃん」
(*゚ー゚)「……石なのにね」
(,,゚Д゚)「石だけどな……」
(*゚ー゚)「モララーくんそろそろちょっと人じゃないよね」
(,,゚Д゚)「なんなんだろうなあいつ」
(*゚ー゚)「ギコも大概なんなのか私わかんないけどね」
(,,゚Д゚)もふもふ
204
:
名も無きAAのようです
:2013/02/07(木) 23:06:52 ID:.cv7evh60
从'ー'从「ギコくーん、診察室にお入りくださーい」
再び診察室に入ると、先ほどの医者がトレース台を壁に貼り付けたような機材にレントゲン写真を張り付けるところだった。
ぼんやりとふさふさした手のフォルムに囲まれ人間の骨っぽい形が映り込んでいる。
部屋の中央に置かれた診察台を指し示されるが、ギコは華麗にスルーしてその近くの椅子に座った。しぃも隣に座る。
空の診察台を挟み、医者は二人に向き直った。
(´<_` )「ん、骨に異常はありませんね。傷もキレイなもんですし、安静にしておけば塞がるでしょう」
(´<_` )「元気そうなところみると感染症もしてないようです」
(*゚ー゚)「はい」
(´<_` )「塗り薬と、一応抵抗力上げる薬お出ししときますんで、毎日のご飯の時に食べさせてあげてください」
(´<_` )「無理に口に突っ込んだりすると嫌がっちゃうかもしれないから、そうだな、粉末にするんで、ウェットタイプのご飯に混ぜてあげて」
(´<_` )「ああ、あと汚れたりしたら不味いんで暫くお散歩はお預けかな」
(*゚ー゚)「だってさギコ」
(,,゚Д゚)「……」
ギコは話しかけないで欲しかった。
今更他人のフリをしようというのも無茶な話である。
205
:
名も無きAAのようです
:2013/02/07(木) 23:07:04 ID:7qh2bnAg0
来てた!支援するぜー!
206
:
名も無きAAのようです
:2013/02/07(木) 23:09:39 ID:.cv7evh60
(´<_` )「まぁ暫くは大人しくさせておいて、薬と、あと包帯とだけマメに替えてあげてください」
(*゚ー゚)「はーい」
(´<_` )「何か質問とかありますか? 何でもいいですよ?」
(*゚ー゚)「あー、そうですねぇ。とりあえずは無い、かな?」
(´<_` )「はい。じゃあまぁまた何か、容態が急に変わったとかあったら病院の方に電話していただければ」
(´<_` )「初診でしたよね。受付で診察券貰っといてください。電話は一応一日繋がるようにしてあるからね」
(*゚ー゚)「あ、はい分かりました」
(´<_` )「……ふーむ、こんなところかな」
(´<_` )「また来週辺り、経過を見せに来て下さい」
(*゚ー゚)「はーい、有難うございます」
(´<_` )「いえいえ」
では、としぃが立ち上がり、それに続いて立ち上がろうとするギコを「あ、ちょっとごめん」と医者が呼び止める。
完全に帰宅の心持になっていたしぃが慌てて座り直し、ギコはそのまま立って医者を見下ろした。
207
:
名も無きAAのようです
:2013/02/07(木) 23:10:49 ID:.cv7evh60
(´<_` )「これは個人的な質問なんですが」
(*゚ー゚)「はい?」
(´<_` )「ギコくん、ほんとに猫なんですか?」
(,,゚Д゚)「猫だと思いますかこれ」
(´<_` )「いえあんまり」
(´<_` )「……」
(´<_` )「うわ喋ったねこじゃねぇ」
(,,゚Д゚)(*゚ー゚)「「ですよねー」」
しぃが数年前から飼い出した猫が、家から帰ったら成人男子大になっていた。
とりあえずこの状態で全裸で置いておくのはなんか目の毒だったので服を着せていつものように外に散歩をさせたら、手に怪我をして帰ってきた。
よどみなくしぃが舌先三寸を翻して語ったのは大体そんな感じの嘘八百だった。
この高校からの友人を信用するということを今後一切やめようとギコは心に誓った。
(´<_` )「つまり、ふと気がついたらギコくんはこんな姿になってしまっていたと」
(,,゚Д゚)「……」
208
:
名も無きAAのようです
:2013/02/07(木) 23:12:10 ID:.cv7evh60
次いでふむふむと興味深そうに頷く白衣を見て、医者というものを信頼するのもやめよう、と更にもう一つ誓いを立てた。
どんどん信頼できるものが減っていく。
世知辛い世の中である。
(*゚ー゚)「そうです、先々月まではあんなにちっちゃくてころころしててもふもふでふわっふわでにゃーにゃー言っていたのに!!」
(,,゚Д゚)「にゃーにゃー」
(´<_` )「でっかくてごりごりしててもふもふでふわっふわでにゃーにゃー言ってますね」
(*゚ー゚)「でっかくてごりごりしててもふもふでふわっふわでにゃーにゃー言うようになったんですよ……」
ヨヨヨ、と昭和のかほりを漂わせて涙を拭うしぃを心底から信頼できない者を見る目で見つめるギコ。
逆に白衣に聴診器を引っ掛けた絵に描いたような(どうぶつの)お医者さんはほうほうと細い目ででっかくてごりごりしてると評判の彼を見る。
しぃはハンケチーフの下からこっそりとその医者を盗み見る。三竦みの様相となっていた。
ええととギコは弁解を挟もうとするが、しぃにぎりりと握られた手(貫通ダメージつき)に言葉を飲み込む。
あくまでこの青い成人男子大のもふもふ生物は猫というスタンスでゴリ押しする気らしい。何でそんなに頑張るのかさっぱり分からない。
大きく取られた窓にかかったブラインドの隙間からさんさんと太陽の日差しが差し込んでいる。
それを額に浴びた医者は、顎に手をやりぽつりと呟く。
(´<_` )「それは、『かみさまの奇跡』なのかもしれないね」
209
:
名も無きAAのようです
:2013/02/07(木) 23:13:55 ID:.cv7evh60
何言ってんだこいつ、とギコの冷たい視線は今度は医者へと注がれた。
尤もらしい顔をした医者――流石、とプリントされたネームプレートを首から提げている。「りゅうせき」か「さすが」かのどちらだろうか――が、
いつのまにやら診察台に座らされたギコの尻尾をもふもふしつつ言う。
どうでも良いが成人男子大の彼が動物用の診察台に載せられている様は非常に滑稽である。
ローラーの付いた椅子をがらがらと鳴らして流石医師がデスクに向かう。金属の引き出しを開け、神経質そうな手付きで一枚の紙を引っ張り出した。
図書館司書と在宅ワーカーの目には馴染みの無い、英文だか独文だかが連なった幾枚かの上質紙。
クリップで留められた写真は、やたらと鮮烈な元・生物のものだ。浅黄色の布の上にドスい黒い赤い液体が飛び散っている。
(´<_` )「有名だし話くらいは聞いた事があるだろう、『神の君臨』」
きしりとしぃの座る椅子が軋みをあげた。
『神の君臨』のニュースを、しぃとギコはモララーも加えた三人でオールナイトで
いつまで経ってもファイナルが来ないと専ら噂のファイナルなファンタジープレイをしているときに知った。
概ね「この国頭可笑しいな」というモララーの一言で切って捨てられたそれを、二人はそこまで本気にしていなかったのだ。
(*゚ー゚)「ええ、まぁ」
210
:
名も無きAAのようです
:2013/02/07(木) 23:15:29 ID:.cv7evh60
眉を顰めてフレッシュミートな写真から目を逸らしたしぃがぎこちなく頷く。
その不快そうな顔を見て初めて気づいたか、流石医師はああ、と顎を引いてそっとクリップごと写真を取り去った。
すると、その下からは至って目に優しい狸の写真の印刷が現れる。
男性だろうか、逞しい腕に大人しい様子で抱えられている。
そう日常生活でなじみのある動物ではないが、何処か犬に似た様相と、それよりも表情の読めない黒い瞳は愛らしい。
そのもっふもふでふわっふわな茶色の毛並みが、
先ほどの百グラム九十八円写真の端に映り込んでいたものと同色なのに気づき、ギコはもっふもふわっふわの顔をゆがめた。
(´<_` )「私も話半分なんだけどね、半月ほど前、こんな『奇跡の御技』が報告されたんだ」
ぱらりと紙を捲ると、小さな子供と戯れる猫の画像が現れる。
流石医師はそれを並べて診察台に広げる。
青いもふもふの隣に二つの茶色のもふもふの画像。もっふもふやで。
(´<_` )「この猫」
猫の画像を指差す。ブラウンタビーに華奢な尻尾。
戯れる少女の顔はモザイクで隠されているが、にっかりと笑った口元だけでも満面の笑みが伺える。
どうやら写真の舞台はどこかの家の中らしい。
211
:
名も無きAAのようです
:2013/02/07(木) 23:15:31 ID:dx5lzWmE0
よし追い付いた
ギコしぃモララーの微妙に噛み合ってない会話が笑える
212
:
名も無きAAのようです
:2013/02/07(木) 23:17:58 ID:.cv7evh60
その切り取られた瞬間には、子供と猫の心温まる絆が伺えた。
信頼できるものの少ないこの世間で、きっと少女にとって猫は心から身を預けることの出来る存在の一つだったに違いない。
その茶色い毛の塊が鋭い爪を持つことも知らないように、目線に隠されたあどけない笑顔は輝いている。
(´<_` )「死んだんだけど」
(*゚ー゚)「はぁ」
可愛らしい猫の突然の訃報にしぃが思わず軽くつんのめった。無類の猫好きなのである。
ギコは何か喋れない空気でとても暇だなぁと自分の尻尾をもふもふ動かしていた。
それに構わず流石医師は何ということも無い、明日の天気でも言うような様子で今度は狸の写真を指差した。
(´<_` )「生き返って、狸になったんだ」
(*゚ー゚)「……」
(,,゚Д゚)「……」
流石医師の言葉に、かくん、と糸の切れたようにしぃの首が傾く。
それに続いてギコの首もかくんと傾いた。
釣られたのか流石医師も向かって同じ方向に首を傾ける。
213
:
名も無きAAのようです
:2013/02/07(木) 23:19:27 ID:OeBxNJfk0
作者がもっふもふでふわっふわの生き物が好きらしいのはわかった
214
:
名も無きAAのようです
:2013/02/07(木) 23:19:46 ID:.cv7evh60
窓の外で鳴く鳥の声に乗って流れる沈黙に、ギコがもふもふの手指を握りこんで一本突き出した。
全世界共通ワンモアチャンスプリーズのジェスチャーは高性能で、見た目異種族でもしっかり通じる。
流石医師がゆっくりと頷き、几帳面な手付きで二枚の紙を二人に差し出した。
今度は分かり易いように、しっかりはっきり、言葉を区切って明瞭に。
(´<_` )「猫が、死んで、狸になって、リボーン」
頭がチョイ悪親父な要素が混ざっていた。
(*゚ー゚)「……」
(,,゚Д゚)「……」
Σ(*゚Д゚)「変態だ!」
Σ(,,゚Д゚)「変態だ!」
同じネコ目だからといって奇跡の大変態だった。
この変態というのは「変態性欲の持ち主」という意味ではない。
決して猫(現職狸)が物凄い特殊な性癖を持っているということを主張したいのではなく、
この場合二人が叫んでいるのは動物が幼体から成体へと至るまでの経緯において大きな変成を経る様の方である。
芋虫が蝶へと変わるあれです。生命の神秘ですね。
215
:
名も無きAAのようです
:2013/02/07(木) 23:22:46 ID:.cv7evh60
(´<_` )「……」
(,,゚Д゚)「これあれだろ、理科で習った奴だろ!」
(*゚ー゚)「プルテウス幼生の奴だね!」
(,,゚Д゚)「変態だ……!」
(*゚ー゚)「変態だぁ……!」
(´<_` )「……」
社会人の埃を被った乏しい理科知識たちを生暖かく見守っていた流石医師がさすがにこほんと一つ咳をする。
りかとかせいぶつとかと離れて久しい文系たちははっとなって口をつぐんだ。
(´<_` )「確かに飼い主の目の前で車に轢かれて死んだ筈の猫が、その場で狸へと変わった」
(´<_` )「見た目が狸に変わった以外、それは確かにその猫だったんだと」
(´<_` )「いつもそうしていたように飼い主にじゃれつきさえしたらしい」
(´<_` )「しかし、解剖しても、何をしても、学術的にはそれは完璧な狸だった」
(´<_` )「変態、なんていうのじゃもう生易しい」
(´<_` )「それは、変身っていう風に学会じゃ言われた」
216
:
名も無きAAのようです
:2013/02/07(木) 23:24:43 ID:JXmhXSUk0
この場合蛹にならないから不完全変態なのだろうか
217
:
名も無きAAのようです
:2013/02/07(木) 23:25:21 ID:.cv7evh60
きしりと流石医師の座る椅子が軋んだ。
すっと長い指が伸ばされ、診察台に腰掛けるギコを指差す。
どうでも良いがレス内に糸目が並んであまり目に宜しくない。
(´<_` )「ギコくんも、それと同じような『御業』を身に受けたんじゃないか?」
切りそろえられた爪の先を見据え、ギコのもふもふの顎がぐっと引かれた。
(*゚ー゚)「……つまり、ギコは一度死んでいる、って」
(*゚ー゚)「そういう意味ですか?」
真剣な顔をしたしぃが言葉を噛み締めるように言う。沈黙が診察室に横たわった。
ギコはプルテウス幼生が先だったか、プリズム形幼生が先だったかと尻尾を揺らしながら考えていた。
ちなみにウニの幼生はプリズム形幼生からプルテウス幼生へと成長します。
(´<_` )「まぁ、言ってしまうと言葉があまり良くないがね」
流石医師は大きく息を吐いて、事務椅子の背もたれにもたれかかった。
218
:
名も無きAAのようです
:2013/02/07(木) 23:26:46 ID:.cv7evh60
例えばギコくんはいつものように散歩に出かけていたとする。
その先で、車にはねられたでもいい。心無い犯罪者に殺されたでもいい。何ならそれまで保有していた未知のウイルスが発病したというのでもいい。
この際の死因は何だって良いんだ。
とにかく彼は一度死んでしまった。なすすべもなく、道端で、小さな体のまま。
そこに神が現れる。慈悲深い神はそんなギコくんを哀れんだ。
もし彼がそんな小さなひ弱い体躯でなかったなら。
車にきちんと目視されるような大きさなら。心無い犯罪者に対抗できるような強さがあれば。ウイルスなど跳ね除ける抵抗力があれば。
そうして『御業』をなされた。
強く、大きく。人間というのはこれで実は非常に効率のいい体をしているんだ。
その結果が、今のギコくんだと、したら。
訥々と空気に並ぶ流石医師の言葉をなぞるようにしぃの目線が動く。
ちょっと内容が把握しきれていない顔だった。
(´<_` )「可能性としては、無くは無い。むしろ、それくらいしか原因がこじつけられないんじゃないかな」
もふもふと揺れるギコの尻尾を流石医師が掴む。
たとえるならば毛の滑らかなキャッチダストといった具合にもふもふの尻尾をもふもふと掴んでは離しを繰り返す。
しぃが無言でそれを奪い取るようにしてもふもふする。流石医師は大人なのでそれで諦めたらしい。もふもふ争奪戦はそれにて一端の終了を得た。
もふもふされていた尻尾の持ち主は、頭に唐突に思い浮かんだ謎のワード「バソプレシン」の意味を思い出そうと必死だった。
219
:
名も無きAAのようです
:2013/02/07(木) 23:27:37 ID:dx5lzWmE0
せっかく生き返ったのに解剖されちゃったんだな……
220
:
名も無きAAのようです
:2013/02/07(木) 23:28:04 ID:.cv7evh60
(*゚ー゚)「……無いのですか」
(´<_` )「はい」
(*゚ー゚)「そうですか……」
話が続かなかった。
流石医師はもふもふを奪われて若干手持ち無沙汰っぽく右手を揺らしている。
そもそもギコが元々猫だったというのはしぃによるエクストリーム嘘八百である。
(*゚ー゚)「えっと」
(´<_` )「はい」
(*゚ー゚)「……それでですね。ええっと、すみません、ちょっと言葉が汚いかもしれないんですが、」
(*゚ー゚)「だから何なんだよはっきり起承転結つけて話せよオチ何処だよ」
(*゚ー゚)「……だなんて、」
(´<_` )「……」
(´<_` )「ああ、まぁまだ神の『御業』については研究が進んでいない、というか。そもそも研究なんてしていいのかって感じでね」
(´<_` )「各方面では絶賛検体募集中なんだけど、」
(,,゚Д゚)「遠慮します」
221
:
名も無きAAのようです
:2013/02/07(木) 23:29:57 ID:.cv7evh60
ひらひらとフレッシュミートな方の写真と、
更に幾つかの瓶の映った写真――ホルマリンだろう――をを取り出しつつ流石医師が言うのを全力でさえぎる。
流石にギコもフレッシュミートになるのは嫌だったし、勿論ホルマリンのマリネになるのも嫌だった。
(´<_` )「って言ってるけど」
(*゚ー゚)「あ、じゃあギコが言うなら」
(´<_` )「一応報酬……っていうかお礼金とかも出るよ? 暫く遊んで暮らせる位は」
ごにょ、としぃの耳元に寄せて流石医師が呟く。
(;*゚ー゚)「えっ」
(,,゚Д゚)「おいなんで立った」
(;*゚ー゚)「………………………………………………………………………………………………」
(;*゚ー゚)「………………………………………………………………………………………………」
(;*゚ー゚)「………………………………………………いやっ、でも、と、友達は、う、う、売れない、……ですっ」
(,,゚Д゚)「めっちゃ悩んだなおい。おい」
(´<_` )「友達か」
(´<_` )「うん、そうだな。友達は売ったら駄目だよな」
(,,゚Д゚)「なぁ今の長考なんなんだよ。おい、どういうことなんだよ」
222
:
名も無きAAのようです
:2013/02/07(木) 23:30:46 ID:.cv7evh60
うんうんと頷く流石医師。もにょっとした啖呵を切ったしぃは、しかし微妙に目線が泳いでいる。
きゅうけた……きゅうけた……という幽鬼のような呟きが聞こえてきた。
社会にもまれる人、略して社会人は往々にしてマネーというものを弱点として生きている。世知辛いのだ。
しかし幾ら「まほうのことば:きゅうけた」を発動されたからといって
しぃの懐のためにフレッシュミートからのホルムアルデヒド水溶液のプールへどぽんのコンボフィニッシュをされては堪らない。
ギコはしぃのシャツを掴みゆする。しぃは尚も顎に手をやりぶつぶつと何事か呟いている。
(;*゚ー゚)「モララーにばれたら面倒くさいし、……いや、待てよ、モララーにはばれないように……」
(,,゚Д゚)そ「お前なんてもう友達じゃねぇ!!!!」
もふもふ争奪戦の決着の直後、数年間の友情にもまた一旦の決着が見られた瞬間だった。
(;*゚ー゚)「うううううううううう嘘だってやだなぁギコったら。ジョーダンジョーダンマイケルマイケル」
(,,゚Д゚)「誰だマイケル」
223
:
名も無きAAのようです
:2013/02/07(木) 23:32:55 ID:.cv7evh60
/j
/__/ ‘,
// ヽ ', 、
// ‘ ! ヽ ヘイパス!パスパス!
/イ ', l ’
iヘヘ, l | ’
| nヘヘ _ | | l パッ……ナイッシュー!!
| l_| | | ゝ ̄`ヽ | |〈 ̄ノ
ゝソノノ `ー‐' l ! ¨/
n/7./7 ∧ j/ / iヽiヽn
|! |///7/:::ゝ r===オ | ! | |/~7
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| '" ̄ ̄iノ .l::::::::::::::::::::::∧ | ゝ ',
, 一 r‐‐l γ /、::::::::::::::::::::::::〉ー= ___ ヘ ヽ }
/ o |!:::::} / o` ー 、::::::::::::i o ,':::::::{`ヽ ヘ ノ
/ o ノ:::::∧ /ヽ o ヽ::::::::| o i::::::::ヽ、 / /
/ ノ::::::/ /::::::::ヽ o ヽ:::| o {::::::::::::::Υ /
(AAはマイケルジョーダンではありません)
マイケル・ジェフリー・ジョーダン(Michael Jeffrey Jordan, 1963年2月17日 - )は、アメリカ合衆国の元バスケットボール選手、実業家。
NBAのシカゴ・ブルズ、ワシントン・ウィザーズでプレーした。その実績からバスケットボールの神様とも評される。
15年間に渡る選手生活で得点王10回、年間最多得点11回、平均得点は30.12点でNBA歴代1位、通算得点は32,292点で歴代3位。
1990年代にシカゴ・ブルズを6度の優勝に導き、5度の年間MVP、6度のNBAファイナルMVP受賞。
また、1984年のロサンゼルス・オリンピックと、1992年のバルセロナ・オリンピックにおいてアメリカ代表の一員として二度にわたり金メダルを獲得した。
現役時代の背番号23はシカゴ・ブルズ、マイアミ・ヒート、ノースカロライナ大学の永久欠番。
1996年、NBA50周年を記念した50人の偉大な選手の一人に選出。2009年にはバスケットボール殿堂入りした。
2010年にシャーロット・ボブキャッツを買収し、現在は同チームの筆頭オーナーである。
以上、wikipediaより引用である。
ところでマイケルジョーダンのAAを探したが見つからずに断念したので見つけた方がいらっしゃいましたら貼っておいていただけましたら幸甚です。
224
:
名も無きAAのようです
:2013/02/07(木) 23:33:43 ID:.cv7evh60
笑うしぃの視線はふらっふらっとギコと流石医師の間を泳いでいる。ギコは考えるのをやめた。
もしやばそうになったら全力で逃げよう。あとモララーに言いつけよう。
小学生の頃からの友人のアドレスが入ったポケットの携帯端末をそっと握り締めた。
そんなギコとしぃのやり取りを見つめていた流石医師が、にっこりと微笑む。
(´<_` )「いや、良かった。しぃさんがギコくんを売るって言ってたらどうしようかと思った」
(*゚ー゚)「へ?」
(´<_` )「研究機関の強引な検体提供要請にはほとほと呆れててね。こちとら一介の動物医だ」
その細い瞳が、一瞬だけ影を落とした、気がした。
(´<_` )「動物を守るためにこの仕事を始めたのに、むざむざ解剖させるために動物を引き渡すなんて、したくない」
(*゚ー゚)「はぁ」
(´<_` )「全力でサポートさせてもらうよ。ギコくんの身に危険が及ばないように」
(,,゚Д゚)「……はぁ」
本日二度目の指差し確認の瞬間、ギコの脳内にバソプレシンの効果が飛来した。
225
:
名も無きAAのようです
:2013/02/07(木) 23:35:22 ID:7qh2bnAg0
なぜそこまでマイケル・ジョーダンにこだわるんだよwww
226
:
名も無きAAのようです
:2013/02/07(木) 23:35:24 ID:.cv7evh60
これにてその4終わり
なぜもっふもふが好きだと分かった。もっふもふやで
支援やレス有難う御座いました 次の話の書き溜めは現時点で7kbです
キャッチだ とう したのはもう一度投げ捨てろ 有難う御座いました
227
:
名も無きAAのようです
:2013/02/07(木) 23:40:19 ID:hKjzh5HQ0
乙乙!待ってたよ。
このどこか話がずれ続けていく雰囲気大好き。
ギコもっふもふしたい。
支援沢山あった方が心穏やかになるならこのスレなり予告スレなりで投下予告してみたらどうだい?
228
:
名も無きAAのようです
:2013/02/08(金) 02:57:16 ID:GUjRavpg0
乙!
モララーがなんか謎めいてるなー
229
:
名も無きAAのようです
:2013/02/09(土) 20:07:06 ID:H.xhFL1UO
おつおつ
霧中進行面白いよね
230
:
名も無きAAのようです
:2013/02/10(日) 14:50:05 ID:gn0ER8WAO
ところで俺は
>>1
なんですが元々この話の杉浦パートは好きなサイトのweb漫画が完全に更新止まってて
続きが気になってしょうがないから自分で書こうみたいなかんじで書き始めたらなんか盛大にずれてったというものなんですが
改めて
>>229
に言われてぐぐってみたらめっちゃ続き更新されててまぁなんていうか
>>229
超有り難うございますこの作者面白いよね大好き抱いて欲しい
皆さんも読んでみて下さい俺はくっそ大好きです
あと予告スレとかこっちで予告をしてみたらどうかという提案を頂きましたので、
もしもそういう余裕ができたら予告してみようかなとも思います
が、正直支援を貰う心穏やかさとセルフ締め切り設定で削られる心穏やかじゃないさがどっこいどっこいな気がするので本当にするかどうかの期待は投げといて下さい 以上です
231
:
名も無きAAのようです
:2013/02/10(日) 16:31:34 ID:SpIU/koQ0
書き溜め終わってから投下日予告すればいいんじゃない?
霧中進行ぐぐってみたらよくわかんないけど面白かった
作者と
>>229
ありがとう
232
:
名も無きAAのようです
:2013/02/10(日) 17:12:39 ID:CQIcTaq.0
うお、霧中進行まじだ。ありがてぇありがてぇ・・・!!!!
乙です。
233
:
名も無きAAのようです
:2013/02/22(金) 22:26:02 ID:TkzMhAP20
続きまだかなー
234
:
名も無きAAのようです
:2013/06/27(木) 01:35:38 ID:/1ZprHOc0
4ヶ月経ってるとは思わなかった
235
:
名も無きAAのようです
:2013/09/17(火) 01:12:17 ID:Ltvp3dRs0
そして更に3ヶ月…
236
:
名も無きAAのようです
:2013/09/17(火) 08:49:38 ID:iMzPzZvA0
半年以上も来ないとなると色々と絶望的ですよね
ところで実は俺は
>>1
なんですがベルセルク大人買いとかしてたら書き溜めするのが面倒臭くなりました
今書いてる続きが10kbなのと、スレを乗っ取ったら落とされたアレを同時進行してるという事実から空気を読んでいただくと、
あっちょっと逃亡っぽいと皆さんの心が輝き叫ぶと思うんで期待は投げ捨てろ 以上です
237
:
名も無きAAのようです
:2013/09/17(火) 12:16:22 ID:wrBkONTY0
投げ捨てるなんてそんなバカな
238
:
名も無きAAのようです
:2013/09/17(火) 13:35:58 ID:NK2TI0Pk0
創作板でこのスレを見た時どれだけ嬉しかったと思ってるんだこの野郎
241
:
名も無きAAのようです
:2013/10/30(水) 04:04:30 ID:5cjo/vXAO
age
242
:
名も無きAAのようです
:2015/04/29(水) 04:14:09 ID:icSsG3Ek0
面白かった。
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