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( ^ω^)百物語のようです2012 in創作板( ω )
90
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:03:25 ID:Q7ucvMh6O
その車内は、透き通った水と鮮やかな色をした、たくさんの魚がいた
(*'A`) (いいなぁ、ブーンの車)
( ^ω^)「ドクオ、どうかしたかお?」
('A`)「あ、いやなんでもない」
('∀`)「それより早く乗ろうぜ、飯はどこでもいいからさ」
( ^ω^)「わかったおー」
中から見たアクアリウムは、素晴らしかった
視界いっぱいに広がる透明みたいな碧
その中を悠然と泳ぐ魚
魚の大きさや色、見た目は様々だ
夕焼け色の尾ひれを持つもの
ピンク色の目を複数持つもの
朝靄のような白いもの(これはしばらくするとすぅ、と溶け消えてしまった)
陶器のようにつるつるした輝きを持つ手足の生えたもの
どれも現実にはない
不思議で、素敵なアクアリウム
俺はすっかりそれに見とれてしまっていた
( ^ω^)「ドクオ、どうかしたんかお?」
('A`)「あ、ああ…なんでもない」
( ^ω^)「ならよかったお!車酔いしてないか心配だったんだお」
('A`)「あー考え事してただけなんだ、悪かったな」
( ^ω^)「大丈夫だおー」
( ^ω^)「そういえばドクオはお盆に田舎帰ったりしないのかお?」
91
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:05:19 ID:Q7ucvMh6O
(;'A`)「……今年はバイト入ってるからなぁ」
嘘だ
本当は同い年の親戚が大学生ばかりで、フリーターの俺は絶対浮くから行きたくないだけだ
ありがたいことにブーンはそれを信じてくれたらしい
( ^ω^)「それは残念だお」
('A`)「ブーンは帰るのか?」
(*^ω^)「久々に帰るおー」
(*^ω^)「免許取り立てだけどがんばって行ってくるお!」
('A`)「おう、事故しないようにな」
( ^ω^)「もちろんだお!」
笑いながらブーンはそう言った
……まさか、死ぬなんて俺は思っていなかったのだ
スピードの出し過ぎで、カーブを曲がり切れなかったそうだ
それで、崖を落ちていって
海の中に
( A )「…………」
あのアクアリウムは……
92
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:06:19 ID:Q7ucvMh6O
(
)
i フッ
|_|
九十一話はこれにてお終い
93
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:07:32 ID:qLLQhYOA0
乙!
九十二本目いっていいかな?
.,、
(i,)
|_|
94
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:08:33 ID:qLLQhYOA0
さっきのミスが痛い…<バ○プ
気をつけます
最初地の文多いですごめんね!
「パパ、おにいちゃん まって」
95
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:08:51 ID:FbC6w4w60
乙。
91話“は”?w
まだあるのかw楽しみだ
96
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:09:08 ID:DFXEkxXoO
乙、そして支援
スレ立てて投下してきます
.,、
(i,)
|_|
('A`)実体験のようです
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/13029/1345388849/
97
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:09:24 ID:.vz/DdAUO
乙!
つまり知らず知らず予知していたってことか…?
98
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:09:59 ID:qLLQhYOA0
これは去年の夏、夏休みを利用して実家に帰省した。
その際バイトとして一ヶ月だけお世話になった、地元ホテル内にある遊泳施設での話。
川;д川「ふぃー」
このホテルのプールは、お盆になると本当に人が多い。
この施設担当のお偉いお兄さん方からは
爪;'ー`)「まじでお盆は忙しいから!みんな気抜かんで頑張ってな!」
と言われていたので覚悟はしていたが、まさかここまでとは予想していなかった。
川д川(お盆くらい田舎に帰れよ…そしてじじばばに顔見せに行け…)
と心の中で毒づきながらも、比較的楽なポジションに居たため、忙しい人たちの手助け(主にお客の誘導、整列)をしながら
キラキラ光る水面を見たり、巨大扇風機の風に当たってみたりしていた。
私の今のポジションはボートスライダーA。
この施設にはプール、流れるプール、子ども用プール、外にジャグジー、そしてスライダーが四本ある。
スライダーは基本的にボートと呼ばれる浮輪に乗って流れる、という形式のもので、一人用と二人用がある。
四本の内、A、B、Cはこれに該当する。
Aは初心者向けの短いコース、BはAより長い、CはBと長さは然程変わらないが、チューブが真黒なので臨場感があってBよりも楽しめる。
といった具合だ。
そしてスライダーD。これはボディースライダーで、まぁ慣れ親しんだ単身乗り込みその身一つで滑っていくという、例のあれである。
Aは最初こそ混雑するが、お客さんは慣れると皆B、Cの方へ行ってしまうので、あとは楽になる。
99
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:10:39 ID:qLLQhYOA0
川д川(Aにはくるな〜Aにはくるな〜)
私は念を送る。
なるべく、今は平穏を送りたい。
お昼ご飯を食べたばかりの身体に休息を!御慈悲を!
表情には出さないが、そうしてB、C、Dへと向かうお客さんににこやかに手を振った。
無邪気な子どもが何度も手を振り返してくるのが可愛い。
もう一つ、説明しておかねばならないことがある。
まずスライダーはある程度の高さから滑りおりるものだ。
そのためには、一旦高いところに上らねばならない、というのは皆さんもお分かり頂けるだろう。
スライダーの構造を説明させていただきたい。
階段あがってまず二階、ここがスライダーA、私の現在地である。
次に三階、ここにスライダーB。
そして三階から枝分かれして更に上にあるのが、スライダーC。そしてボディースライダーである。
そして各窓口から流されたお客様方々は一階着水プールへ……
つまりBCDのお客様を、私はにこやかに見送る義務があるのだ。
なのでサボっている訳ではない。
断じてない。
100
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:11:11 ID:Q7ucvMh6O
>>97
水難事故が起きる車の予知ですかね
ちょっとオチが弱かったので次は気をつけよう…
101
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:11:23 ID:qLLQhYOA0
そうして義務を果たしている時に、ふと私の目に留まったのは
(`・ω・´)(´・ω・`)*(‘‘)*
この親子の姿だった。
(`・ω・´) しっかりしたお父さんと
(´・ω・`) よく似た息子
*(‘‘)* そして赤い水着の、小さな女の子
102
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:12:19 ID:SodIsl22O
スレ立て系は、
投下が終了した時に2桁代の蝋燭が残ってるか心配になるな
103
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:12:23 ID:qLLQhYOA0
川д川「あれぇ〜」
ボートを持っていないからスライダーD(ボディー)のお客さんであることが分かる。
けれど女の子は、…まずスライダーの身長制限さえクリアしてないんじゃないだろうか。
川д川「いちお、無線で連絡するか」
川д川「A、山村です チェック聞こえますか?」
<チェックです、なにー?
川д川「何か、今ボディー行こうとしてる赤い水着の女の子、身長明らかに足りてないんですよー」
<マジで?
川д川「めっちゃ小っちゃいです」
<分かったチェックしとく
川д川「はーい」
川д川「よし、これでいいじゃろ」
連絡し終えた頃には、お客さんがスライダーAに流れ込んできた。
川д川(5、6組くらいかな…)
さて、不安そうな親子をどう楽しませようか……
104
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:13:22 ID:qLLQhYOA0
川д川「うおーーーーい」
先ほどのお客さんたちは一旦滑ってみるとやはり何てことなかったみたいで、BCコースに行きながら
「おねーさんの言う通り、一回いっちゃうと全然怖くなかった!ありがとねー!」
なーんて言いながらにこにこ上に登っていく。
つまりまた暇になった。
川д川「…そろそろおしゃべりの相手が欲しい」
せめてお客さんの列の整頓くらい、と思い三階にあがるが、上もそんなにお客はいなかった。
一人寂しく二階に居るしかない。
そうして拗ねていると、再びあの親子の姿が目に入った。
(`・ω・´)(´・ω・`)*(‘‘)*
上までこっそり追いかけていくとボディースライダーで順番待ちをしていた。
川д川(さっきの子、身長足りてた…のかな?それとも親がそっちのミスだって言って特別に…ってやつ?)
川;д川(やっべ、身長足りてたんなら、あとで怒られるかな…?)
そう思うと落ち込んだので、着水プールを眺めながら、お客さんの様子をうかがう事にした。
105
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:13:56 ID:.vz/DdAUO
>>94
伏せ字すまぬ…
突っ込んでしまった
そして支援!
106
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:14:06 ID:qLLQhYOA0
まず、息子の(´・ω・`)がおりてくる。
間隔を置いてお父さん(`・ω・´)
そして…
バシャーン!( ><)
川д川「……え?」
いやいや、ちゃうねん、次はこの子やろ*(‘‘)*
赤い水着の可愛い女の子やろ。
しかし、次も、その次も女の子は流れてこない。
川;д川「おっかしいな〜」
そう思いつつも、いい加減着水プール側から離れないとサボりになりそうだと思い持ち場に戻る。
そして階段を見るとまたあの親子が立っていた。
107
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:16:12 ID:qLLQhYOA0
>>105
違うんです初っ端でモララーに思いっきり伏せナシで喋らせてたからww つっこんでもらってよかったですありがとう!ww
108
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:17:01 ID:qLLQhYOA0
(*`・ω・´*)(*´・ω・`*)*(*‘‘*)*
親子は楽しそうに会話をしていた。
(*`・ω・´*)「ショボン、どうだ!少しは慣れたか?」
(*´・ω・`*)「楽しいね、父さん。すっかり慣れたよ」
しかし女の子は会話に入らずニコニコしている。
それだけなら、まだあまり会話の出来ない、幼い少女なのだから、で終われたかも知れない。
先ほどは滑らずに、上で父たちを待っていたと思えたかもしれない・
私も見なければいいものを。
109
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:18:32 ID:qLLQhYOA0
川;д川「…………」
その後、何度も上がってくる親子を注意深く見て見たのだが
何度確認しても、女の子にだけ「影」がなかった。
110
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:20:09 ID:TvCVidH60
わーお
111
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:20:11 ID:qLLQhYOA0
その後も、半月の間はバイトを続けたのだが、その女の子を見たのはその日だけだった。
九十二本目終わり
(
)
i フッ
|_|
自分の話は全て実話なので、ちょっと家の中確認してきます
塩は場合によっては撒くそうです
前スレでコメント下さった方々ありがとう
Tさん的家系なので、まぁ大丈夫と思います
スレ汚しすみません
次も期待
112
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:20:59 ID:5Hzcst0A0
蝋燭少なくなってきたな…
113
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:21:46 ID:qLLQhYOA0
>>109
見て見た× 見てみた○
何度もすみません
114
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:22:37 ID:.vz/DdAUO
乙!
実話こぇぇw
寺生まれの
>>111
さんw
115
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:24:44 ID:FbC6w4w60
.,、
(i,)
|_|
93本目いきます。
( ´_ゝ`)アトリエの弟、のようです
116
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:24:51 ID:HGntewWI0
実話なのか…!こええ
117
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:26:03 ID:FbC6w4w60
薄暗い小部屋にカチコチと時計が響く。
時にシャッシャと鉛筆が動く音や机に置いてカラカラと転がったりする音がする。
一人の男がモゾモゾと小部屋のソファーで毛布を被りながら話し出す。
( ´_ゝ`)「おはよう弟者」
おはようと弟者は答える。
次に弟者は具合が悪くないか尋ねる。男は数ヶ月前にバイクの事故で頭を打ち脳出血で手術するまで至ったのだ。
( ´_ゝ`)「平気だよ」
本当かと弟者は聞き返す。不安な顔を浮かべた弟者を心配して兄である男はキャンバスの前に座る弟者に近づき、手で弟者の口角を無理矢理上げさせて答える。
118
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:27:21 ID:FbC6w4w60
( *´_ゝ`)「そんな顔したらせっかくの俺似の男前が廃るぞ。俺は大丈夫だからさ、笑っとけ、笑っとけ」
弟者はそうか、と満足そうに微笑を浮かべた。
( ´_ゝ`)「本当に弟者は絵が上手いなぁ。弟者の絵柄俺は好きだなぁ」
弟者はありがとうと照れ臭く笑いながら言う。
絵筆を水につける時にチャプチャプと音を立てる。
( ´_ゝ`)「趣味なのが惜しいなぁ」
周りにある真っ二つのキャンバスを見ながら男は答えた。
真っ二つのキャンバスはすべて出来が気に食わなかった弟者が左右に力を込め苛立ちを発散するために折られたものだ。
休日は二人で薄暗いアトリエで弟者は絵を描き男はその様子をぼんやり見ている。時々男はその途中で寝てしまい弟者がソファーに寝せる。
119
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:28:20 ID:FbC6w4w60
弟者が完成。と溜息をつきながら筆を置いた。男はソファーから飛び起きてその絵を見に行く。
( ´_ゝ`)「綺麗な人」
流れるような黒髪、豊満な胸、キリッとしたつり目、そして、紅い唇。
( ´_ゝ`)「モデルはいるの?」
彼女。とだけ弟者は言う。
(* ´_ゝ`)「彼女に見せてあげなよ、喜ぶよ、きっと」
明日会うし、見せようかな。弟者は言う。
( ´_ゝ`)「綺麗な人だねぇ」
いつか、本物に会わせてあげるから。弟者は言う。
( ´_ゝ`)「楽しみ」
とだけ男は返す。
120
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:28:44 ID:.vz/DdAUO
支援!
121
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:28:47 ID:Q7ucvMh6O
まさかの実話…
122
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:29:35 ID:FbC6w4w60
日曜日が終わり月曜日。アトリエに居たはずの男は自身のベッドで目覚める。
( ´_ゝ`)「またアトリエで寝ちゃったのか」
起き上がって洗面所に行く。
おはよう。と歯を磨く弟者は言う。
( ´_ゝ`)「おはよう」
と髪を梳かしながら男は答える。
123
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:30:35 ID:FbC6w4w60
( ´_ゝ`)「昨日ベッドまで運んでくれて、ありがとう」
どういたしまして。と弟者は答える。
髪のセットを終えて立ち去る男に弟者は待つよう言った。
不審がる男の髪に櫛を当てながら弟者は寝癖。と言う。
( ´_ゝ`)「あー、ゴメン。寝ぼけてるのかな、俺」
弟者は笑いながら洗顔、落としきれてない。とタオルを男の左頬に当てる。
124
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:30:50 ID:HGntewWI0
不思議なふんいき
支援
125
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:31:24 ID:FbC6w4w60
入院明け最初の出勤、頑張ってと弟者は見送る。
( ´_ゝ`)「お前ももうすぐで出勤時間だろう」
仕事場がより遠い男は弟者より先に出勤した。
126
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:32:20 ID:qLLQhYOA0
しえん
127
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:33:04 ID:FbC6w4w60
( ・∀・)「無理すんなよ」
( ´_ゝ`)「頑張ります」
男は上司に挨拶を終えて席に座る。さて、一仕事…と思ったところで上司に呼ばれる。
( ・∀・)「早速で悪いが新しいプロジェクトに関しての会議だ」
( ;´_ゝ`)「はーい…」
面倒くさそうに歩いた男はゴミ箱に躓く。
(;´_ゝ`)「おっとっと…」
倒れかけた体を自身の右足でなんとか支える。
(; ・∀・)「本当に大丈夫かー?」
(; ´_ゝ`)「あははー…」
乾いた笑いをする他無かった。
128
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:35:31 ID:.vz/DdAUO
気になる…支援
129
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:36:13 ID:FbC6w4w60
会議室左端の席に座る男の隣りには上司が座った。
( ・∀・)「久しぶりで感覚鈍ってる?しっかりね」
( ´_ゝ`)「はい!」
眠気覚ましに男はコーヒーを一口飲んだ。
( ;・∀・)「ちょっ、君のはあっち!」
男は左を向く。
確かにコップ並々のコーヒーがあった。
男はついうっかり右側にいる上司のコーヒーを飲んでしまったようだ。
(; ´_ゝ`)「…お取り替えします」
( ;・∀・)「んー、まあ、気にしないけどさ、どうしたの?上の空な感じ?後遺症とか?」
( ´_ゝ`)「寝ぼけてるだけかと思うんですけどねぇ」
( ・∀・)「恋の病。とか?」
上司はニヤリと笑った時にプロジェクトメンバーが集まり、会議が始まった。
( ´_ゝ`)o0(恋ね…)
ふと弟者の彼女が頭に浮かんだ。
130
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:38:24 ID:FbC6w4w60
ーーー
時計がAM2時を指す。
( ´_ゝ`)「弟者が帰って来ないなぁ」
男はダイニングでボンヤリと待つ。冷めた料理にラップをする。
二人で過ごすには広過ぎる家だが両親は姉夫婦と同居。妹も県外の大学で離れ離れ。
( ´_ゝ`)「今日は俺が料理係なのになぁ」
お腹いっぱいで男はウトウトする。
131
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:40:09 ID:FbC6w4w60
( ´_ゝ`)「あっ…」
男がちょっと目を瞑るはずが3時間。時計はAM5時を指す。
目の前にあるラップが捲られた皿々、男の肩に掛けられた毛布が弟者の帰りを知らせていた。
( ´_ゝ`)「弟者…?」
しかし、弟者はいつもなら男をベッドまで運んでくれる。なのに今日は無い。男は不審になり階段へ向かう。
上への階段は暗いが地下への階段は豆電球が光ってた。
( ´_ゝ`)「アトリエ?」
アトリエは地下にある。そこが光っているなら弟者はそこにいることになる。
132
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:40:58 ID:FbC6w4w60
ギシギシと階段を降りる。
扉を開けると見慣れた薄暗い空間に弟者は、いた。
扉に背を向け、弟者は絵を描く。男は弟者の背中に尋ねた。
( ´_ゝ`)「珍しいね、深夜の平日にここ来るの」
弟者は答えない。筆を乱暴に扱う音だけ響く。
男は筆の乱暴さがキャンバスを割る弟者を思い出させて嫌になる。
男は弟者の背中に近づく。
133
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:43:38 ID:FbC6w4w60
( ´_ゝ`)「なーに描いてるの?」
男が弟者のキャンバスを覗き込む。
それでも弟者は
昨夜の彼女の絵をぐしゃぐしゃに赤い絵の具で塗り潰す。
( ;´_ゝ`)「?!なにやってんだよ!勿体無いじゃん!」
咄嗟に弟者の筆を持つ右腕を男は右手で止める。
男はハネた絵の具が弟者の身体中にまで付いていたことに気付き、その荒々しさに息を飲む。
「なあ、兄者」
134
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:45:07 ID:FbC6w4w60
弟者は男を呼ぶ。
「俺は兄者に似てかっこいいよな?」
(; ´_ゝ`)「は…?」
「そう言ってくれたよな?な?!」
( ´_ゝ`)「うん。言った」
「今も…変わらないよな?俺は兄者に似て男前だよな?」
椅子から弟者は立ち上がる。男の、兄者の肩を掴み揺さぶりながら問う。
( ´_ゝ`)「……ああ、お前は俺に似て男前だ。今も、昔も、これからもだ」
兄は弟の右の頬を右手で優しく包む。
「そっか…」
135
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:46:08 ID:FbC6w4w60
( ´_ゝ`)「うん」
涙をつぅっと流す弟を見てられなくてやっぱり兄は右手の人差し指で弟の右頬の涙をすくう。
「ねぇ、兄者、逃げちゃおうよ」
( ´_ゝ`)「逃げる?」
「彼女、最低なんだ。兄者が褒めてくれた絵を気持ち悪いなんて言うんだ」
( ´_ゝ`)「まあ、感性は一人一人違うけど言い方がキツイかもな」
「だからさ」
「一緒に逃げちゃおうよ」
....
136
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:46:29 ID:5Hzcst0A0
なにこれ不穏
支援
137
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:47:32 ID:Q7ucvMh6O
なんだろう、緩やかにこわい
138
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:48:13 ID:FbC6w4w60
ーーー
(,,゚Д゚) 「こりゃ酷いな」
ベテラン刑事が呟く。
(-@∀@;)「うぷっ」
メガネの刑事は余りの悲惨さに吐き気を催す。
高層マンションの一部屋で女の変死体が見つかった。
(,,゚Д゚) 「ホトケさんの身元洗ったか?」
(-@∀@)「はい!えっと、素直クールさん27歳、
死亡推定時刻は昨夜3時頃、
死因は失血死。
被害は体の左側に大量の刺し傷…右側は全くの無傷…職業は薬品関係のようです」
(,,゚Д゚) 「あー、
だからこの部屋の厳重な鍵付きの棚には厳重な耐震補強。
そして中身は危なそうな薬品…か。
死亡時に手にしてた空の酸のボトルの使い道は?
犯人像の特定は?」
139
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:49:30 ID:FbC6w4w60
(-@∀@)「室内の荒れ方からみるとリビングで攻撃を受け、
必死で薬品室に逃げ…
犯人撃退のために酸を犯人に掛けた。
って感じですね。
状況から見ると犯人の顔にかけたと思われ、
飛散状態から犯人は170cm以上…
おそらく男性でしょうか、
該当する交際相手も見つかりました」
(,,゚Д゚) 「じゃあなんだ、
ホシは酸が顔にかかったあと帰ったのか。
爛れたまぶたで前が見えるのか?」
(-@∀@;)「あ、言い忘れてました!
飛散状況から酸は犯人の顔の左側にかかったと推測されます!」
(,,゚Д゚) 「右目だけは見えてたのか…しかし、そんな顔でこの短時間で追えないほど逃げられるのか?
…共犯か…?」
140
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:50:30 ID:FbC6w4w60
(-@∀@;)「しかし、彼女の交遊関係は狭く、部屋に入れるような間柄は交際相手のみと…」
(,,゚Д゚) 「深夜に友達を紹介するってのもおかしいよな」
(-@∀@;)「近隣もマンションの防音効果と時間が仇となり参考になる情報は…」
ミセ*゚ー゚)リ「ギコさん、こんな情報が…」
141
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:53:01 ID:FbC6w4w60
(,,゚Д゚) 「ミセリ、なんだ」
ミセ*゚ー゚;)リ「共犯かは不明ですが、
容疑者の双子の兄が…
数ヶ月前のバイク事故で半側空間無視…
正確には左側空間無視により左側の視覚を失認しています!」
(,,゚Д゚) 「?」
(-@∀@;)「……!」
(,,゚Д゚) 「何か知っているのか!」
142
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:54:39 ID:FbC6w4w60
(-@∀@)「半側空間無視、英語でならHemispatial neglectとも言われ大脳半球の障害によって、障害された大脳半球の対側からの刺激が認識できなくなってしまう症状です」
(,,゚Д゚;) 「??」
(-@∀@;)「おそらく容疑者の双子の兄は数ヶ月前のバイク事故による右脳の障害で左側の視覚を失認しています!」
(,,゚Д゚;) 「は?普通、左側だけ見えてなかったらおかしいと思わないのか?」
(-@∀@)「この場合、人は見えない部分を記憶や経験で補うのでおかしいとは思わないんです。無意識。だからneglectなんです」
143
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:55:33 ID:FbC6w4w60
(,, д ) 「おい…待て、じゃあその双子の兄貴は…」
(-@∀@;)「何も知らないで殺人犯と共に逃走中の可能性が…?!」
ミセ*゚ー゚;)リ「い、急いで手配を取ります!」
...
144
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:56:30 ID:FbC6w4w60
ーーー
(,,゚Д゚) 「ここが容疑者のアトリエか…」
(-@∀@)「この絵…」
二人の刑事はキャンバスの絵を見る。
キャンバスの絵は赤い絵の具で塗り潰された、綺麗な女性の右半身のみが描かれた胸像だった。
145
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:57:35 ID:Q7ucvMh6O
これは面白くなってきた
146
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:57:50 ID:FbC6w4w60
93本目終わり
(
)
i フッ
|_|
実話じゃないですが
147
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:58:45 ID:pgr6fz760
代理
.,、
(i,)
|_| 九十四本目 お盆に海に行くようです
※擬人化注意
http://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_491.jpg
(
)
i フッ
|_|
148
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 00:58:52 ID:VUmcF81s0
右半身のみなのは弟者の性癖か兄者に感化されたのか……
不穏なまま乙
149
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:01:27 ID:iRUeS2nI0
九十五本目貰うぜ
150
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:01:37 ID:VUmcF81s0
>>147
水彩絵の具かな?綺麗だ乙乙
151
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:01:49 ID:qLLQhYOA0
>>146
乙!弟者が怖いやつおおいなぁ…
>>147
すげー水がきれいだ
152
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:02:15 ID:Q7ucvMh6O
なんて怖い終わりなんだ
>>147
すごい綺麗だ
そして怖い…
153
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:02:54 ID:iRUeS2nI0
最もポピュラーな心霊現象のひとつ。それが心霊写真である。
心霊写真の歴史は驚くほど古い。
実用的な写真技術の発明は1839年。七月王政時代のフランスでの、画家ルイ・ジャック・マンデ・ダゲールの『銀板写真法』の発明によるものだ。
そして1884年に写真フィルムが発明され『写真』というものが大衆化する以前、19世紀の中ごろには既に「幽霊の写り込んだ写真」が話題となった記録が残っている。
20世紀になり写真機の普及がさらに加速し、撮影される写真の数が増えると、当然ながら『心霊写真』の数も増大した。
もっともそれらのほとんどはインチキやイタズラ目的のトリック写真か、20世紀当時の未熟な写真技術・現像技術による偶発的な『ミス』が原因の写真であったのだが。
そして21世紀に入った現在――。
.,、
(i,)
|_|
从 ゚∀从『暗い部屋』のようです
154
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:03:15 ID:qLLQhYOA0
>>149
支援!!
見回ったけど最初以外何もなかった…
ただいま
>>114
.116.121 実話です 貞子が自分
あとの人間関係も全て現実にいらっしゃる方々です
お話にするのに1割だけフィクションになった…くらいです
155
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:03:29 ID:HGntewWI0
彼女を殺したのは兄者なんかな?
乙
156
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:03:58 ID:iRUeS2nI0
深夜1時。
都市部の狭っ苦しい6畳の学生用ワンルーム。
無駄に良い日当たりのお陰で昼間は(少なくとも体感的には)サウナ顔負けの温度と湿度を誇るこの部屋も、この時間帯ともなれば流石に昼間ほどの暑さはない。
とはいえ。
从;゚∀从「なーんでこの時期にエアコンが壊れっかなー……」
根っからの現代っ子であるところのこの部屋の主、ハインリッヒ高岡にはヒートアイランド現象真っ盛りの熱帯夜を冷房ナシで乗り切るというのは無理な相談だった。
窓を全開にしてみたところで入ってくる風は生暖かく、じっとりと肌にまとわり付く汗が不快感を倍増させる。
从;゚∀从「あー……駄目だこりゃ。全ッ然眠れねぇ」
このままベッドに転がっていても徒にシーツを濡らすだけだろう。潔く眠ることをすっぱりと諦めた彼女が採った戦略は、
从;゚∀从「うおっ、すげー。これなんかもうモロじゃねーか」
昔ながらの夏の納涼術。すなわち怪談である。
157
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:05:41 ID:iRUeS2nI0
ふいんきを盛り上げる為に部屋の灯りを消し、ノートパソコンを開いて、適当な怪談系のサイトを探す。
表示された検索結果の中から適当に、心霊写真をメインとしたサイトを開いた。
上下にずらりと並ぶ『心霊写真』。赤文字を基調にしたなかなかに凝ったサイト装丁がまた、真っ暗な部屋と相まって恐怖感を煽るのに一役買っている。
画面をスクロールして、順番に写真と説明文を読んでいく。
从 ゚∀从「それにしても面白いもんだ。この科学万能のご時世でも、この手の心霊写真ってもんは無くならないんだからな」
21世紀に入り、フィルムを使った従来の写真機に替わってCCDなどの映像素子を使用したデジタル式のものが広く普及するに当たり、いわゆる『心霊写真』は消えてゆくかに思われた。
フィルム送りのミスによる多重露出がなくなったこと、受光部がフィルムカメラよりコンパクトなためレンズフレアやゴースト(レンズフレアの一種で光の輪や玉のように見えるもの)等の暗室内面反射が減ったこと、レンズがコンピュータ設計され精度が格段に向上していること、オートフォーカスによりピンぼけなど発生しにくくなったこと、自動露出の高度なプログラム化により光量不足がなくなったこと。
これらの写真技術のハイテク化が、前述の「偶発的な『ミス』が原因の心霊写真」を駆逐していったのだ。
しかし逆に、高性能なパソコンの普及とPhotoshopやGIMPといったフォトレタッチソフトの高性能化によって一般個人でも比較的簡単に写真を加工できるようになった。
そのため、もう一方の「トリック心霊写真」の量は増えているようだ。
結局世に出回る『心霊写真』の総量に、そう変わりはないように見える。
从 ゚∀从「需要と供給、って奴かね。案外、科学技術とオカルトは相性が良いのかも知んねーな」
宗教と同じように、いくら科学が発達して技術が進歩しても人間がスピリチュアルな物を心の何処かで信じ、求め続ける限りは、こういったオカルティックな物もまた無くならないのかも知れない。
適当なことを呟き、再び意識をサイト上の写真に集中させる。
158
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:07:37 ID:iRUeS2nI0
从 ゚∀从「ん……ああ、もうこんな時間か」
サイトに並んだ心霊写真に一通り目を通し終えると、かつて「丑三つ時」などと呼ばれた時刻になっていた。
その時刻を確認するのがコンピュータの画面であるあたり、やや風情に欠けるが。
从 ゚∀从「ちったぁ暑さもマシな気分になったし、そろそろ寝直しますかね」
パソコンをシャットダウンさせようと、マウスを滑らせてカーソルを移動させる。
从 ゚∀从(結構怖いのもあったな。夢にでも出てこなきゃいいけど)
そんな事を考えていたその時、
从 ゚∀从「……ん? 何だこりゃ」
動かしていたマウスカーソルが一瞬、普段の矢印から手のマークに変わった。
カーソルを戻してみると、どうやらサイトの片隅に小さく隠しリンクが貼ってあるようだ。
从 ゚∀从「隠しページか? 何でわざわざこんな……」
リンクをクリックする。
やや間を置いて表示されたページは、先程までの凝った装丁とは違って簡素なものだった。
黒地に白の文字で、中央にただ一文のみが書いてある。
「世界で最初の『心霊写真』」
.
159
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:09:38 ID:iRUeS2nI0
从 ゚∀从「世界で最初の『心霊写真』……?」
なかなかに興味をそそられる内容だ。
白文字にカーソルを合わせると、アンダーラインが表示された。
この文がその「心霊写真」とやらの入り口で間違いなさそうだ。
从 ゚∀从「はてさて、どんな写真なのかね〜?」
ここまで手の込んだことをするのだから、さぞかし興味深い一枚なのだろう。
期待に胸膨らませ、文字列をクリックする。
从 ゚∀从「…………んん? 何だこりゃ」
切り替わった画面に表示されたのは、ただ真っ黒な画像。
ちょうど真ん中あたりにコイン程度のサイズの白みがかった丸い円があるだけの、黒い画面だった。
从 ゚∀从「何だこりゃ。これが『世界で最初の心霊写真』?」
期待を裏切られ、ハインは軽く落胆した。
あれだけもったいぶっておいて、出してきたのはこんな意味不明の画像か?
160
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:11:16 ID:iRUeS2nI0
从 ゚∀从「……ま、ネットなんざ所詮こんなもんだよな。さーとっとと寝よ寝よ……」
そう言って改めてパソコンの電源を落とそうとして、気付く。
終了させるためのメニューボタンが無くなっていることに。
いや、それだけではない。下部のバーそのものや、マウスカーソルすら画面上から消えていた。
真っ黒な画面にあるのは、小さな白い円だけだ。
从;゚∀从「え? あたし全画面表示とかにしたっけ……」
マウスを動かしたりキーボードのキーを叩いてみたりしたが、なんら反応は無い。
強制終了さえも受け付けず、画面にはずっと意味不明の画像が表示されたまま。
从;゚∀从「フリーズか? これブラクラかよ、ちく――」
ブツブツと言いつつ、何とはなしに体ごと後ろに向き直り、そして目を疑った。
161
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:11:33 ID:SodIsl22O
嫌な予感しかしない
162
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:12:48 ID:iRUeS2nI0
振り返ったそこは、自分の部屋ではなかった。
ベッドやスチールラック、本棚などの家具が全て消えていた。
いや、それだけではない。
入り口や窓すら無くなっている。
あるのは、壁。
部屋にあった物、部屋を構成していた物。全てが消失して、床天井を含めた6枚の壁面だけが空間を覆っていた。
从;゚∀从「どう、なってんだよ、これ……」
真っ暗な部屋。あるのは今座っている椅子と、簡素な机と、その上に乗っているパソコンだけ。
壁のうち、さっきまで背を向けていた、真後ろの壁だけがパソコンの光を受けてぼんやりと浮かんでいる。
163
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:13:48 ID:iRUeS2nI0
从;゚∀从「どう、なってんだよ、これ……」
真っ暗な部屋。あるのは今座っている椅子と、簡素な机と、その上に乗っているパソコンだけ。
壁のうち、さっきまで背を向けていた、真後ろの壁だけがパソコンの光を受けてぼんやりと浮かんでいる。
从;゚∀从「ドアも、窓も、何も無い……? 閉じ込め、られた?」
椅子から跳ねるように立ち上がり、手近な右側の壁に取り付く。
ドンドンと壁を叩いてみるが、手に返ってくるのは冷たく硬い無機的な感触だけ。
蹴ってもみたが、とても蹴破れるようには思えなかった。
从;゚∀从「おい……出せよ! 何なんだよ! どうなってんだよこれは!!」
怒鳴ってみるも、答える者はいない。出した大声さえも響きもせずに虚しく消えてゆく。
徒労と絶望に肩を落とし、ふらふらと力無く椅子に腰を落とす。
ギシリと椅子が軋んだ音を出したその時だった。ハインは変化に気付く。
164
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:14:54 ID:iRUeS2nI0
从;゚∀从「ありゃあ……『廊下』、か?」
パソコンの灯りを受けてぼんやりと光っていた後ろの壁に、古びた白黒写真のような景色が浮かび上がっていた。
壁面をスクリーンにした幻燈機のように投写された風景は、どこかの廊下だった。
ただ、映しだされた廊下らしき光景は天地が逆になった、逆さ写の状態だ。
慌ててパソコンに目をやる。画面に表示されているのは、相変わらず丸い円だけ。
いや、よく見ると、小さな円の中に廊下が映っている。さっきまではこんな風じゃなかったはずだ。
という事は、あの映像はこのパソコンから映しだされているのか?
从;゚∀从「バカな、どうなってるんだよ……プロジェクターじゃねえんだぞ」
まるでわけがわからない事の連続だ。
何度目かも分からない疑問を口にしながら、再び後ろの壁に向き直る。
すると、ハインの眼が何かを捉える。
165
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:15:56 ID:CIdRmbio0
なるほど
166
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:16:33 ID:iRUeS2nI0
从;゚∀从「何か……『動いてる』?」
倒立した映像の真ん中あたり、廊下の向こうで動くものがある。
いや、違う。少しずつ大きくなって……。
『近づいてきてる』?
从; ∀从「う、うわああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
167
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:17:42 ID:iRUeS2nI0
ガタン、と椅子が倒れる。
床から立ち上がれず、ずりずりと机に寄り添うように壁と距離を取る。
白黒写真の背景の中、「それ」はゆっくりと近づいてくる。
だんだんと輪郭が明確になってくる。
从 ;∀从「嫌だ、嫌だ、来るな……来るなぁあああああああっ!!」
その時。ガクンと衝撃が襲った。
視界に占める壁の割合が大きくなっていく。急に、壁自体が近づいてきていた。
いや、違う。そうじゃない。
彼女の体の方が、壁に吸い寄せられているのだ。
168
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:19:34 ID:iRUeS2nI0
从 ;∀从「え? そんな、嘘……!」
床になんとか這いつくばって耐えようとするが、大した抵抗にもならなかった。
だからと言って周りに掴めるようなものは何も無く、為す術なく体は壁に吸われていく。
その姿は、必死にもがきながら蟻地獄に落ちてゆく小さな蟻のようにも見えた。
从 ;∀从「嫌……! 助け、」
そして、その言葉を最後まで言い切ることも叶わず、ハインは壁の中に消えていった。
誰もいなくなった暗い部屋。その壁にぼんやりと映る廊下に、彼女はいた。
逆さまの白黒写真の中、近づく「それ」から必死に逃げようとする彼女。
しばらく後、追いついた「それ」が彼女を呑み込むと、パソコンの画面はフッと消え、唯一の光源を失った部屋はすぐに完全な闇に沈んだ。
169
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:20:41 ID:iRUeS2nI0
翌朝。
いつもと変わらない部屋。差し込む朝日。
いつもと変わらないベッド。スチールラック。本棚。ドア。窓。パソコン。
いつもと変わったところなど何もなかった。
ただ一点。
部屋の主が消えたことを除いて。
.
170
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:22:56 ID:Q7ucvMh6O
怖い怖い怖い…
171
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:23:01 ID:iRUeS2nI0
かつて、幕末から明治の中期くらいの日本では、写真に撮られることを忌避する風潮があった。
「写真に撮られると魂を取り込まれる」という迷信によるものだ。
だがその時代、写真を撮られることで不可思議な現象が起こった、という話もいくつも残っている。「魂を取られる」というのは、本当にただの俗信だったのだろうか。
はるか昔のカメラには、今の物にはない『何か』があったのかも知れない。
172
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:24:03 ID:iRUeS2nI0
では、世界で最も古い『カメラ』とは何だったのだろうか。
19世紀前半にヨーロッパで銀板写真法が発明される以前、ルネサンス期の画家達がより正確な絵を描く為に用いた光学器械があった。
後世、写真撮影用の機械を「カメラ」と呼ぶ由来ともなったその器械の名は、『camerae obscurae』――カメラ・オブスキュラ。
ラテン語のその名の意味は。
『暗い部屋』。
(
)
i フッ
|_|
173
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:25:21 ID:qLLQhYOA0
すげー興奮した 乙です
174
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:26:10 ID:VUmcF81s0
上手いな乙
175
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:26:22 ID:iRUeS2nI0
以上、九十五本目終了です
これで今回の百物語用に貯めてたのは全部使いきったわ
あとは読者に戻って楽しむとするぜ!
176
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:26:59 ID:CIdRmbio0
おもしれぇ
177
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:27:20 ID:HGntewWI0
乙!雰囲気良いな
では九十六本目頂く
厨二魂 全 開 !!
※若干流血表現注意
.,、
(i,)
|_|
http://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_492.png
一応流石のつもり
(
)
i フッ
|_|
178
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:28:25 ID:VUmcF81s0
>>177
すげえええ!かっけえええええ!
179
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:28:47 ID:qLLQhYOA0
>>177
うおおおおおおおおうめええええええええ!乙!
180
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:29:21 ID:FbC6w4w60
>>177
こええ
うめええ
ぱねえええ
待ち受けにしてえ
181
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:30:23 ID:Q7ucvMh6O
>>175
すごかった
こんな文章と発想ができるようになりたい
>>177
かっこいい!
流石だな二人とも
182
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:31:21 ID:CIdRmbio0
じゃあ次いくよー
.,、
(i,)
|_|
九十七本目
たすけるようです
183
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:31:52 ID:CDEVEESYO
鬼の凄む山のようですのひとの代理
42:名も無きAAのようです
12/08/20(月) 00:52:31 ID:ros50W1Q0
どなたか百物語本スレに蝋燭代理書き込みをお願いします
もう来れないので
1スレ目>61様
夏の幻のようです
http://i.imgur.com/CPqrk.jpg
心優しい方よろしくお願いします
97本目になるのかな、蝋燭は出来ないのでゴメンね
184
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:32:30 ID:CIdRmbio0
/ ,' 3 「何?!ブーンとデレが帰えってこない?!」
J(;'ー`)し 「そうなのよ、二人で蝉を取るって言って出て行ったっきり…」
/ ,' 3 「ぬう…」
J(;'ー`)し 「お父さん…」
/ ,' 3 「…自治会の皆にも探すのを手伝ってもらおう。ワシはプギャーのところに行ってくる」
J(;'ー`)し 「じゃあ、私はもう一度裏の山を…」
/ ,' 3 「ああ、お前まで居なくならん用に気をつけろ」
日が沈みかけ、辺りは夜の気配を漂わせ始めていた。
道沿いの民家から漏れたカレーの匂いが食欲を刺激するその時間に、村のまとめ役、荒巻スカルチノフは額から汗を垂らす。
目どころか心臓を鷲掴みにされても痛くないほど溺愛する孫が、行方不明になったのだ。
すぐさま村の全ての家に電話が走り、捜索が開始される。
土地は広く、人は少ないこの村で子供を探すには、力を合わせるのが一番なのだ。
/ ,' 3 「ブーン…デレ……」
荒巻をより不安にさせるのは村に伝わる神隠しの言い伝えだった。
言い伝えは悪いものだけではないが危険なことには変わりなく。
どこにでもある眉唾の伝承と言えばそれまでだが、実際記録では過去に十数人が失踪しているため、気が気では無い。
今は自身も走り回りながら、孫の無事を祈る他なかった。
* * *
185
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:33:38 ID:Q7ucvMh6O
えー…
>>182
が97
>>183
が98でよいかな
186
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:33:51 ID:CIdRmbio0
村で大規模な捜索が始まったその頃。
行方不明の兄妹、ブーンとデレは何処とも知れぬ場所を彷徨っていた。
周囲は既にまっくら。
星明かりはあるようだが、背の高い木々が光を阻んでいる。
頼りになるのは、母が持たせてくれた携帯電話の明かりだけ。
既に何度か電話をしようと試みたが、圏外と表示されてつながらなかった。
ζ(゚、゚ ζ 「おにいちゃん……」
妹のデレは兄の手を強く握る。
その顔は不安でいっぱいで、直ぐにでも泣き出しそうだった。
( ^ω^)「おっおー、平気だお!きっともうすぐ知ってるところに出るお!」
本当のところを言えば、ブーンも泣き出してしまいそうだった。
しかし、泣くわけにはいかない。
ブーンは9歳で、6歳のデレより年上で、なによりお兄ちゃんなのだ。
妹を守る責任って奴があるのだ。
だったら、早く家に帰るため、少しでも歩かなければいけないのだ。
そんな少年の勇気は、虚しくも悪い方向に働いてしまう。
幼い兄弟は方角も分からない森の中を、村とは逆に進んでいった。
187
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:34:48 ID:CIdRmbio0
どれ程歩いたろうか。
デレの息は既に絶え絶えとしていて、苦しそうだ。
汗が冷えて体温も下がっているようで、それが余計に彼女の体力をうばっていた。
ブーンは自分の腰に巻いていたシャツをデレに着せてやる。
ほんのりと温もりを帯びていたため、デレはちょっとだけ安心することが出来た。
携帯電話の時刻は八時過ぎ。
電池も半分をとうに切っている。
疲労もそうだが、お腹も空いた。
遊ぶ時ならば無尽の体力を誇るとしても、この先に安心の無い状況では、子供は大人よりもはるかに消耗が早い。
大きな木の根に腰を降ろし、デレを抱きしめて休憩を取る。
デレを安心させるためではあったが、互いの体温を感じることでブーンも落ち着くことが出来た。
時計で十分。
二人は再び歩き出す。
小学校でサッカークラブに入っているブーンは、あまり休み過ぎると筋肉が固まって動けなくなることを直感的に理解していたのだ。
道の無い森を必死に歩く。
木が作る陰で周囲は真っ暗だが、そのおかげで草が伸びておらず足元が歩きやすいのが幸か不幸か。
二人はどんどんと森の深みへと入ってゆく。
もう一度休憩を取ろうかとブーンが思い始めた頃、突然デレが立ち止まった。
振り返って顔を伺うと、青ざめ硬直した表情で前を凝視している。
( ^ω^)「どうしたんだおデレ?疲れたのかお?」
ζ(゚、゚;ζ 「お、おにいちゃんは、みえないの?」
( ^ω^)「え?」
188
:
名も無きAAのようです
:2012/08/20(月) 01:36:10 ID:CIdRmbio0
デレが、繋いでいるのとは逆の手で前を指さした。
ブーンは恐る恐るそちらへ目を向ける。
暗がりの中、他には何も見えないというのに、ぼんやりと浮かび上がるように見える物があった。
ブーンが目を凝らすと、人の形をしているようにもとれた。
「もしもし、道に迷ったのかい?」
兄妹の身体がびくりと震えた。
人影らしきものがゆらりと近づき、続けて声をかけて来た。
老人のようにも、若いようにも聞こえるしゃがれた声だった。
「おいで。帰り道を教えてあげるから」
デレの雰囲気が変わったことにブーンは気付いた。
探しにきた大人の誰かだと思い安心したのだろう。
ブーンも、少しだけそう思った。
でも、違うと確信していた。
( ^ω^)「一つ聞いていいですかお?」
「なんだい?」
( ^ω^)「明かりも持たないで、なにしてるんですかお?」
189
:
183
:2012/08/20(月) 01:36:22 ID:CDEVEESYO
>>182
ゴメンね、さっきのやつ98本目にカウントしてもらおう
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