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【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 七冊目【SS】

1ルイーダ★:2008/05/03(土) 01:08:47 ID:???0
【重要】以下の項目を読み、しっかり頭に入れておきましょう。
※このスレッドはsage進行です。
※下げ方:E-mail欄に半角英数で「sage」と入れて本文を書き込む。
※上げる際には時間帯等を考慮のこと。むやみに上げるのは荒れの原因となります。
※激しくSな鞭叩きは厳禁!
※煽り・荒らしはもの凄い勢いで放置!
※煽り・荒らしを放置できない人は同類!
※職人さんたちを直接的に急かすような書き込みはなるべく控えること。
※どうしてもageなければならないようなときには、時間帯などを考えてageること。
※sageの方法が分からない初心者の方は↓へ。
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1117795323.html#562


【職人の皆さんへ】
※当スレはあくまで赤石好きの作者・読者が楽しむ場です。
 「自分の下手な文章なんか……」と躊躇している方もどしどし投稿してください。
 ここでは技術よりも「書きたい!」という気持ちを尊重します。
※短編/長編/ジャンルは問いません。改編やRS内で本当に起こったネタ話なども可。
※マジなエロ・グロは自重のこと。そっち系は別スレをご利用ください。(過去ログ参照)


【読者の皆さんへ】
※激しくSな鞭叩きは厳禁です。
※煽りや荒らしは徹底放置のこと。反応した時点で同類と見なされます。
※職人さんたちを直接的に急かすような書き込みはなるべく控えること。


【過去のスレッド】
一冊目 【ノベール】REDSTONE小説うpスレッド【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1117795323.html

二冊目 【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 二冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1127802779.html

三冊目 【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 三冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1139745351.html

四冊目 【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 四冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/19634/1170256068/

五冊目【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 五冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/19634/1182873433/

六冊目【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 六冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/19634/1200393277/

【小説まとめサイト】
RED STONE 小説upスレッド まとめ
ttp://www27.atwiki.jp/rsnovel/

290白猫:2008/07/05(土) 22:36:28 ID:W4Rh7kXM0
 「!」
遠くから届いたその言葉に、ルフィエは咄嗟に頭を下げる。
その僅か数センチ上を何かが通り過ぎるのを感じ、ルフィエは低い体勢のまま横っ飛びに跳ねる。
離れて通り過ぎたものを見やったルフィエは、少しだけ目を細める。
 「……ルヴィ、ラィ」
ルヴィラィが自分が空けた穴から入り、パペットの上半身を鞭で捕えていた。
ギリギリと締め付ける鞭を見やり、パペットは首を傾げて言う。
 【で? これがどうかした?】
 「……パペット、知ってるかしら? 古い武術書の記述なんだけど。[武術家たる者、己が技量を超える力を得たり、使おうとすれば、その肉体は滅びることとなる。決してそのようなものを求むべからず]――ってね」
ルヴィラィの言葉に目を細め、その真意を察せないパペットは首を傾げた。
 【で?】
 「それを逆に返せば――"その肉体を滅ぼせば、己が技量を超える力を扱える"……ってこと、じゃないかしら?」
 【……!! っち、『 トライ―― 』】
その台詞に目を見開いたパペットは鞭を断ち切ろうと自由な左手で槍を振り上げる、
寸前。

   「お前はここで死ぬ運命なのよ――『 デリマ・バインドブレイズ 』」

ルヴィラィが放った獄炎が鞭を伝い、パペットの身体を茜色に彩る。
同時にルヴィラィの体にも獄炎が燃え移り、ルヴィラィは目を閉じる。
目の前の、数メートルもの火柱は轟々と燃え続け、その身を焼き払ってゆく。
グングニルを離しもがくパペットと、目を閉じゆっくりと灰燼へと帰してゆくルヴィラィを見、ルフィエは目を見開く。
いったい、いったい。
 「すまないわね、ルフィエ」
 「!」

身体がゆっくりと黒く崩れてゆくルヴィラィの口から紡がれた言葉に、ルフィエはワンドを握り締める。
今まで自分は、これほど優しい、ルヴィラィの口調を聞いたことがなかった。
彼女の口調はそう――まるで、母が子に語りかけるように優しく、柔らかかった。
 「私は……母親、失格だったわね――本当に、ごめんなさいね」
ルヴィラィの小さな謝罪に、ルフィエは小さく頷く。
結局、彼女と心が通じ合うことはなかった。どうして彼女が世界を滅ぼそうとしたのか、どうしてこの局面でパぺットに捨て身の攻撃を行ったのか。
だが、ひとつだけ言えることがある。
 「…………どんなに酷いことをしても、あなたは私の母さん。母さんの罪は――私の罪だから」
その、小さな小さな言葉。
ルヴィラィはその言葉を聞いていて、聞いていなかった。既に炎は彼女の身を焦がし、消え去ろうとしていた。
灰燼と化しかけたルヴィラィの手が、ボロボロと崩れながらルフィエの頬にそっと触れる。
 「 ――――…… 」
既に声らしい声も出ないらしいルヴィラィに、ルフィエはそっと彼女の手に両手を添えることで応えた。

 【ま、だ……この程度の火力じゃ、崩れない、よ……】
身体全体が爛れ、崩れかけながらも、パペットは存命していた。
ルヴィラィの命そのものを糧とした[デリマ]も、その命そのものが尽きかけていたため威力が十分乗らなかったのか。
空へと散っていく灰を見、ルフィエは頬を伝う液体をそっと拭い、ワンドをパペットへと向ける。
   「――、『 ノヴァ 』」
回復を開始していたパペットに光弾が直撃し、パペットはその爆発をモロに浴び、吹っ飛ぶ。
地面へと突っ伏すパペットへとさらに光弾を連続して打ち込み、ルフィエは目を閉じる。

感じる。

遠くで、ネルが魔力を溜め始めている。

タイミングを計っているのだ。

外部に再起不能の攻撃を加え、核――エリクシルが現れる瞬間を。

 「……『 スーパー、ノヴァ 』」
パペットへと特大の光弾を打ち込み、ルフィエは大きく息を吸う。

紡げ。癒しの唄を。
悪しき者の体を浄化し、魂を黒き穢れから解放せよ。
その口から紡がれる、三つの高さの異なる、ひどく美しい歌声。
[三人唱]――ルヴィラィでも会得し得なかったこの力ならば、弱い自分の力でも、十分に威力を上乗せすることができる。
グングニルを構えた、ほぼ完全に治癒してしまったパペットを見、しかしルフィエは微笑む。

   「行くよ―― 『 ルリマ・ウルトラノヴァ 』」

291白猫:2008/07/05(土) 22:37:06 ID:W4Rh7kXM0


――来た。
ルフィエが特大の[ルリマ]を放つのを見、ネルは腕に全神経を注ぐ。
辺りに尋常ではない量の魔力が渦巻くのを感じ、ネルは目を閉じて精神を集中させる。

少し、手が震える。

この一撃に総てが掛かっている。この一撃をしくじれば、全てが――全てが、終わる。
……"いや"。
終わらせはしない。
例え外したとしても、何年かかろうとも――パペットは、この手で葬り去ってみせる。
自分には仲間がいるではないか。沢山の、信頼に値する仲間が。
 「――ふ、ふ……まさか、この僕が怖気づくとは」
肩を揺らして笑い、ネルはゆっくりとグングニルへと力を込める。
辺りの魔力がゆっくりとグングニルへと集束されていき、その光がゆっくりと強まってゆく。
全てを、終わらせる。
この一撃で、全てを。


   「『 ――神罰ノ(ゲイ)、邪槍(ボルグ)――――ッッ!!!! 』」

ネルの手から放たれた、凄まじい光量を引き連れたグングニル。
[破槍]と形状そのものは似通っていたが、纏っている魔力がそれでこそ桁で違っていた。
まるで磁石に引き寄せるようにパペットへと向かうグングニルを見、ネルは叫んだ。
 「終わらせる……終わらせるッ!!」

ワンドを握り締め、光の怒涛を放ち続けるルフィエは、その気配を感じワンドを払う。
霧散した光を見やり、ルフィエは即座にその場から退避する。"あの技"は、感じただけでも威力が強すぎる……巻き込まれかねない。
パペットがどうなっているかは分からない――が、後はネルのことを、信じるしかない。
 (お願い……お願い!)
と、
振り向いた視線の先、全ての魔力を放出し切ったらしいネルの体が、地面へと真っ逆さまに落ちてゆく。
慌てて地を蹴ってネルの元へと跳び、地面に直撃する寸前にその体を咄嗟に抱き止めた。
ドシャ、と鈍い音と共に地面へと突っ伏したネルとルフィエ。ルフィエなんかモロに地面に顔をこすり付けた。
 「……なにやってんですか、ルフィエ」
その様子に呆れたネルは、ルフィエの体を抱き止めつつも溜息を吐く。
えへへ、と頭を掻くルフィエに笑いかけ、ネルは目を細める。

グングニルが、パペットに直撃したのを感じたのだ。
此処からではその光景は見えず、音も辺りの崩壊音が五月蠅すぎて聞こえない。
だが今確かに、手応えを感じた。
 「…………ルフィエ、行きましょう」
 「……うん」
ネルの言葉に頷いたルフィエは、危ない足取りでゆっくりと立ちあがり髪を払う。
ここからではパペットの気配は感じられない。消滅してしまったのか、或いは――
確かめましょう、と呟きかけたネルに頷き、ルフィエはネルの手を取り歩き出した。

292白猫:2008/07/05(土) 22:37:31 ID:W4Rh7kXM0


パペットは崩壊しかけた体、その核に[神罰ノ邪槍]を喰らい、しかしかろうじて生きていた。
エリクシルには無数の亀裂が入っているが、それでもパペットは意識を保ち、エリクシルも砕けてはいなかった。
 「……まだ、生きていますか」
グングニルを払い、壁に縫い止められたパペットにネルは目を細める。
白きグングニルの能力、[全てのものを破壊する力]の力か。パペットのエリクシルからは、もうほとんど魔力は感じられない。
 【…………まさか、ここまでやるとはね】
掠れた声で笑うパペットは、ゆっくりと自分の足元を見やる。
その足元には、ネルによって打ち砕かれたグングニルの残骸が散らばっていた。あの名匠の一品を、こうも簡単に砕くとは。
パペットにゆっくりとグングニルを突き出したネルは、目を閉じて呟く。
 「終わりです、パペット」
 【…………冥土の土産に、ひとつだけ、教えといてあげるよ】
白銀の刃がエリクシルに押し込まれていくのを感じ、パペットは笑う。
 【ボク如きを倒して、いい気にならないことだね……東の冒険者は大陸内でも最も程度が低い……。
西、北、南の四強はこんなものじゃない……そして、西と南の四強は、確実にこの東を飲み込もうとするだろう――】
その言葉に、ネルの槍が、止まる。
西と南の四強。彼らは武術家でありながら、一国の重役である。東の今の荒れ様を見れば、確実に攻め入ってくる。
――が、そんなことは関係がない。
 「例えそうだとしても……、――例え[古代民]を敵に回すこととなっても、僕は戦い続けます」
その言葉に、ルフィエは息を呑みパペットは笑う。

古代民。
今のフランテルの基盤、それを作った大陸の"創造主"とも言われる者たち。
その魔術は大自然を揺るがすほどの力とされ、ルフィエやルヴィラィの[ルリマ][デリマ][カステア][サルスト]も全て、古代の術なのだ。
そんな古代民と"戦う"――それは、人々の中で口にしてはならないこととして通っていた。

ネルの宣言に面白そうに微笑むパペットは、しかし続ける。
 【今のおまえたちでも、四強を倒すことは難しい……それほど彼らは、強い……東はそれほど恵まれている場所なのさ。
 精々気張ることだね……どうせ、結末は見えているけどね】
 「いいえ」
パペットの言葉を、ネルは遮る。
目を丸くするルフィエを見、微笑んでからパペットへと向き直り、グングニルに力を込めた。

 「決まっている結末などありはしない……何故なら僕らは、今こうして生きているんだから」







エリクシルが鈍色の欠片となって地面に転がるのを見、ネルは小さく溜息を吐く。
終わった。
全て――終わった。
感じる。リレッタの魔力が、他のたくさんの魔力を連れてイグドラシルから退避するのを。
皆、皆無事だ。
 「……良かっ、た……」
地面にへたり込む愛しい人を見、ネルは少しだけ微笑む。
崩壊が進み、あと数分で全てが崩れ去るイグドラシルの中で、ネルはゆっくりと目を閉じ、小さくルフィエに呟きかけた。
 「……ルフィエ、先に脱出していてください」
 「えっ」
慌てて自分の方を見やったルフィエを愛しく想い、しかしネルはグングニルを払う。
 「アネットを……姉さんを、迎えに行きたいんです」
 「私も――」
 「お願いです」
ネルの真意を悟って声を上げたルフィエの言葉を、ネルは無理やり遮る。
これ以上、自分の弱い面を見せたくなかった。
好きな人の前では強く在りたい――子供っぽい、少年の見栄だった。
 「姉さんのところへは、僕一人で」
ネルの言葉に圧され、ルフィエは小さく頷く。
反論する余裕すらない。それほどネルは、真剣に自分を見ていた。
 「…………わか、った」
ネルに小さく頷いたルフィエは、小さく溜息を吐いた。
大丈夫。彼は自分を置いて――どこかに消えることは、ない。
寂しく微笑むネルに背を向け、ルフィエはイグドラシルの壁へと数発のノヴァを撃ち放った。
突入とは対照的に、呆気無く空いた大穴。そこへ立ったルフィエは、一度だけこちらを見――空へと飛んだ。
空の彼方へと消えてゆくルフィエの姿を見、ネルは踵を返して歩き出す。壁に突き刺さったグングニルを無視して、ただ歩く。
 「……すみません、ルフィエ。僕は――」
ネルの小さな、小さな謝罪の言葉。
その言葉は、大崩落の始まったイグドラシル……その巨大な轟音に遮られ、誰の耳にも届かなかった。

293白猫:2008/07/05(土) 22:37:55 ID:W4Rh7kXM0

原型を崩し、消滅してゆく要塞――[イグドラシル]。
皆をヴァリオルド邸へと避難させ、崩壊の様子を遠巻きに見つめていたリレッタは、傍に舞い降りたルフィエに頭を下げてから視線を戻した。
ネルが一体どうなったのか……それを、聞いてはいけない気がした。そして同時に、自分が一番"認めたくなかったこと"を認めつつあった。
 「……終わり、ですね」
崩壊を続ける立方体を見、リレッタは小さく呟く。
朝日に照らされ、空に消えてゆくイグドラシル。そう――戦いは、終わった。19年もの長きに亘る戦いが今、終わった。
 「でも、私達にとって、今日のこの朝が、始まり」
じっとイグドラシルの崩壊を見続けていたルフィエは、小さくリレッタにそう呟いた。
その言葉に頷いたリレッタも、しかし答えずにその光景を見続けていた。




一人の天使と一人の歌姫の見る先で、イグドラシルは朝日の中に崩れ、消滅した。


ゴドムを蹂躙し、大陸を滅ぼそうとしていた一人の呪術師と人形と共に。




二人の少女が待つ一人の少年は、戻らなかった。















ブルン歴、4925年――三月。

まだ日も低い早朝。ヴァリオルド邸の自室で珍しく羽ペンを取っていたルフィエは、傍の鳥籠に入れられた伝書鳩に微笑みながら、ペンを走らせる。
その羊皮紙の横に置かれたカバンには、数少ない自分の私物が押し込まれている。既に部屋は、自分が入る前の状態に戻っていた。

しばらくしてから、できた! と立ち上がったルフィエは羊皮紙に書かれた字にもう一度目を通す。

294白猫:2008/07/05(土) 22:38:18 ID:W4Rh7kXM0



---

この世界のどこかにいる、ネルくんへ。

あのイグドラシルでの戦いから、三年が経ちました。
ネルくんも今年で20歳! 本当に時間が経つのは早いね。
今となっては戦の残り火も消えて、古都の復興も順調に進んでます。
昨日までは私とマイさんで唄を歌って、必死に観光客を引き入れていました。
でも君の20歳の節目でもある今日――私、旅を再開することにしたんだ。


ねぇ、ネルくん?
君は……この世界のどこかでちゃんと、生きてるよね?
あのイグドラシルの崩壊に巻き込まれたり、しちゃってないよね?
リレッタちゃんは今でも、あのときのことを悔やんでるみたいです。
ううん、リレッタちゃんだけじゃない。アーティさんも、カリアスさんも、カリンさんだって悔やんでた。


でもね。私、信じることにしたんだ。
君が生きて、この世界を旅して回ってるんだって。
そしていつの日か、私の前にきっと現れてくれるんだって。
だから、その日まで、どうか元気で。

ルフィエ=ライアット

---





伝書鳩に手紙をくくり付け、ルフィエはゆっくりと鳩を窓へと導く。
窓際へと連れて行かれた鳩は窓が開いた瞬間、その翼で羽ばたき遠い空へと消えてゆく。
 「どうか、見つけて――彼のこと」
空の彼方へと消える鳩の姿に、ルフィエは小さくそう呟く。
そして、自分は机の上に置いていた小さなカバンを持ち、扉へと歩み寄った。
トン、と部屋の隅で立ち止まったルフィエは、部屋を改めて見回し、思う。
 (この部屋とも、今日でお別れね)
いつの間にか長い間暮らしていた、この部屋。
いつの間にか自分の家同然となっていた、ヴァリオルド邸。
此処を今日、自分は出る。
 「元気でね」
誰に言うわけでもなく、ルフィエはそう呟き、扉を開いた。






 「行くのか」
部屋の外で立っていたカリンが、ルフィエに向けてそう呟いた。
まさかこんな時間に起きていたとは思いもしなかったルフィエは、少し驚いて頷く。
その姿に溜息を吐き、立ち上がったカリンはルフィエに向き直った。
 「まさか三年もお前のような娘と暮らすことになるとはな」
 「セバスさんからお金、もらっちゃえばいいのに」
カリンが契約の金を未だにセバスから受け取っていないことを、ルフィエは知っていた。
そしてそれを理由に、未だに此処に留まっていることを、ルフィエは知っていた。
ルフィエの内心を知ってか知らずか、カリンはフンと笑って剣に手をかける。
 「金は依頼主から貰わねば意味がない」
それに、此処であのチビガキどもの面倒を見るのも悪くない。
そこまでカリンは、付け加えなかった。
クスリと笑ったルフィエに背を向け、カリンは一度だけ手を挙げた。
それが彼女なりの別れの挨拶なのだろうと思ったルフィエは、ぺこりと頭を下げる。
 「さよなら、カリンさん」
ルフィエの言葉に、カリンは応えなかった。

295白猫:2008/07/05(土) 22:38:41 ID:W4Rh7kXM0


 「ルフィエ」
厨房を通り過ぎようとしたルフィエに、リンゴを持ったマイが歩み寄った。
朝早くからつまみ食い? と苦笑するルフィエの頭を小突き、マイはリンゴを齧る。
 「お前がこんなに朝早いのは有り得んな。普段なら昼まで寝てる」
 「……昼まで、ねぇ」
そんな生活してる自覚ないんだけどなぁ、と苦笑するルフィエを見、マイは溜息を吐いた。
 「行くんだな、とうとう」
その言葉に込められた小さな感情を感じ、しかしルフィエは力強く頷く。
 「……うん。戦いが終わってからすぐ、決めたことだから」
 「また遊びに来い。しばらく私もこの家にいる」
マイに頷きかけ、ルフィエは胸の十字架を握る。
彼女に唄を教わらなければ、ルヴィラィと対峙することはできなかった。
それに、古都の復旧にも、彼女は彼女なりに尽くしてくれたのだ。
 「ありがとう、マイさん……さよなら」







 (ネルくんと出逢って、もう四年)
早朝にも関わらず騒がしい雑踏の中、ルフィエはフードを被ったまま歩き続ける。
今となっては、自分は大陸を救った英雄扱い。フードを取って歩いたら、違う意味で騒がれてしまうだろう。
それでも、差別扱いされるよりはきっと……マシ、だろう。
 (ネルくんに出逢ってから、色んなことがあった)

星の瞬く聖夜が齎した、偶然の出会い。
瀕死の少年を介抱し、彼の魘される声から、彼の大切なものを知った。
天使の少女を見たとき、何故か沸き出た対抗心。
思えば、あの頃からずっと恋い焦がれていたんだろう。

ビガプールでの戦い。
改めて、少年の強さを目の当たりにした。目の当たりにして、それでも傀儡に傷を負わされた。
彼との一旦の別れ。彼から渡されたタリスマンのお陰か、不思議と不安はなかった。

アリアンでの再会、初めての口付け。
喜びも束の間、ルヴィラィとの遭遇、真実の発覚。
レッドストーンを奪われ、当人には逃げられ、町は壊され――自分たちはまた、敗北した。

そして、ブレンティル。
初めての[神格化]、傀儡との総力戦――そして、またもや敗北した。
勝たねばならない戦いだった。それでも、彼女の力の前に自分たちは、またしても打ち倒されたのだ。

――古都、ブルンネンシュティング。
出来れば思い出したくはない、忌々しい記憶。
護ることができなかった――ただ、護りたかっただけなのに。
あの日、誓った。もう誰も、殺させはしないと。

ブリッジヘッド、初めて知った喜び。
その喜びもやはり、すぐに戦いの中に呑まれた。
ヴァリオルドの本邸は消滅し、自分は初めて――人を、殺めた。



そして、今。
 (私は、ネルくんに出逢ってたくさんのことを教えてもらった。
 人との関わり方、社会のルール、道徳、店での値切り方、
 戦いで最も優先すべきこと、やっちゃいけないこと、――それに、人を愛すること)
いつの間にか古都を出てしまったルフィエは、小さく、ほんの小さく溜息を吐く。
風が自分の体を打ち、フードが取れた。
昼空の元に晒された白い肌と茶色い髪、水色の瞳。
胸に輝くは、白色の淡い光に包まれた十字架と、愛しい人からの贈り物。
 「きっと、見つけるよ……何年かかってでも」
ゆっくりと、ゆっくりと彼女の身体が浮く。
当てはない。急いで探さなければならないことでも――ないだろう。たぶん。
それでもこのときだけは、全力で、そう、全力で飛んだ。一秒でもそこに留まっていると、泣いてしまいそうだったから。
空へと飛び上がった金色の光は、やがて太陽の光の中へ飲み込まれてゆく。
飲み込まれて、その光は二度と戻ってくることはない。
今度戻ってくるときは、紅色の瞬きと共に戻ってくるはずなのだから。

296白猫:2008/07/05(土) 22:39:03 ID:W4Rh7kXM0


 「――!」
空へと打ち上がった金色の光を見、銀色の髪を揺らしながら少年は目を見開いた。
あの光には、興味がある。どこか懐かしい感覚すらあった。だが、あの速さには追いつけない……追うだけ無駄だろう。
それよりも今は――あの懐かしい、懐かしいあの屋敷へと戻るのが先決。
 「……懐かしいですね、ヴァリオルド邸は。主人不在で潰れていると思いましたが」
その青年――ネリエル=ヴァリオルドは、ゆっくりと古都への道を歩く。
空へと打ち上がった光のことはもう思考の隅へ追いやられていた。今彼の頭にあるのは、あの屋敷にいるであろう、一人の少女のことだけ。
 「ルフィエ……君は、僕におかえりと言ってくれるんでしょうか、ね」



ゆるりとした歩調で歩く青年は、知らない。
一人の少女が、西へ西へと飛翔を続けていることを。
その少女が自分のことを探し、自分が探しているということを。



凄まじい速度で空を往く少女は、知らない。
一人の青年が、ついさっきヴァリオルドへ到着したことを。
自分が想い、焦がれている青年が自分のことを知り、慌ててヴァリオルド邸を飛び出したことを。










彼らは知らない。












Puppet-歌姫と絡繰人形-


END

297白猫:2008/07/05(土) 22:39:27 ID:W4Rh7kXM0
あとがき




どうも、白猫です。
本章を持ってPuppet-歌姫と絡繰人形-は完結となります。今までの皆様のご愛読、本当に有難う御座いました。
しかし完結に七か月もかかってしまいました。おうのうorz
何度も言っているようですが、当初この小説は短編小説の予定でした。クリスマスに出逢ったシーフとリトルウィッチの話の予定でした。
そして、やっぱり回収できない伏線がたくさん。誤字脱字もたっくさんorz
現在自HPで修正・加筆を行っている最中です。現在プロローグが完了。
区切りがつけば公開しようかと思っています。

コメ返し

>68hさん
いやもう……半分スランプ状態だったので、展開が急だわ無理やりだわでもう……orz
ネルくんは四代目だからⅢじゃないしスティリアと口論してたのはカナリアだよぅorz
アネットとアーティはよく間違えるし……次回作ではこんな下手はこきません! たぶん!
老師の存在は最後まで誤魔化そうと思ってしまいましたが結局若干のカミングアウト。まぁこれくらいいい……よね?うん。
---
思えば68hさんには全本編、全番外編、全短編に感想をいただいているわけですが……なんというかスゴイです。ホントにスゴイです貴方。
最初の内は設定もガタガタ、最終章でも拾いきれなかった伏線が放置状態になっているというのにいやはや。
きっと68hさんの小説も凄いんだろうなぁ。きっとメチャクチャ上手いんだろうなぁ。と一人でニヨニヨしている白猫です。いつ投稿なさるんでしょうか、楽しみです。楽しみでしょうがないです。
小説スレのレギュラー感想屋である68hさんの小説ともなれば、きっと小説スレ全住民から感想が……ゲフンゲフン。
そのときはバッチリ私も感想書かせてもらいますよー! 期待してまっすー……ハッ。ラストがあるではないか、七冊目ラストが!
兎にも角にも、七か月間お付き合い有難う御座いました。新作の投稿の目途は立っていませんが、また投稿するときは是非。


>黒頭巾さん
はーい!パパでーす!(誰
クレリア。凄いというより狡い……(ちょ)?
嗚呼……最初のアレですね。まぁアレは……そう、そうです。私の実力ですね!(←絶対後付け
じぃちゃんはですねー。まぁなんというか……パワーアップの道具、的な?ごめんじいちゃんorz
このじいちゃんのモデルは私のじいちゃんでした。異様に若い、というか……幼い人でした、はい。
本当はブリッジ編でもめんこい笑リレッタを出す予定でしたが……まぁ、まぁ、まぁ……。
格ゲー[Puppet]ですか……ネルくんの圧勝で終わってしまいそうな――あ、戦闘補正ですね、無敵の笑
隠しキャラ……入手条件はそうですね、「長電話8時間」で(ぇー)
---
ルフィエのデフォルメ、カリアスのコス……ウォッホン! などなど、自分の我侭や思いつきにお付き合いいただきありがとうございました。そして無茶ブリごめんなさいです。
これからもふぁみりあいーえっくすを応援しています。いけめんさんも応援しています。こっそりファンなごしゅじんさまはもっと応援しています。
個人的にはごしゅじん王z……ウォッホン! なんでもありません。お持ち帰りなんてしたくありませんよ、ええ。
天下一ではあのお二人の描写をハズさないよう頑張ります。。変なところがあればバシバシご指摘をば。
そしてハロウィンネタはワクワクしながら待ってます。まだ半分も出来てないんですけどね苦笑


>みやびさん
はい、ばっちり期待してます笑
きっと68hさんはやればできる子。いや、私の方が年下なので……できるお方?できるお方です。
……はい、天下一がんばります。設定自体はほぼ完成しているので、後はあっみだくじ!ですね。
リレー小説はのんびり見させていただきます。ネルくんとルフィエは適当にパーティーから外しておいてください(待って
皆様の期待に添えられるような作品にできるよう頑張ります……はい。




さて。それでは今回はこの辺で。
大量のスレ消費申し訳ありませんでした&ご愛読ありがとうございました。
いつになるかは分かりませんが、次回作もご期待下さい。
それでは、白猫の提供でお送りしました。

298◇68hJrjtY:2008/07/06(日) 02:02:28 ID:rvBV3p4k0
>白猫さん
まずは。まずは言わせて下さい。Puppet完結編、本当にお疲れ様でした。
飽きさせない、息をつかせない怒涛の傀儡、ルヴィラィ、そしてパペットとの戦闘。
白猫さんの小説では戦闘要素を主に堪能させてもらっている私ですが、もちろんそこにはたくさんのドラマがあり…。
ネルとルフィエ。戦いに次ぐ戦いの中でお互いの存在をしっかりと感じ合い、
別の点では「エリクシルを持つ者」として他に比肩できないほどの能力を手に入れた二人。
思えば古都でのあの出会いから長かったようで短かったようで、短期間の成長ぶりは白猫さんの執筆速度と相まって驚かせてもらいました。
なるほど、「エル」という言葉には「神」という意味があるという話を聞いた事がありますが、「名も無き神」とリンクしていますね。
傀儡たちも当初は敵として見ているだけでしたが、それぞれがそれぞれの想いを持って戦っているという点では
ネルたちとなんら変わりない、人間味溢れる奴らだったようにも思いました。できる事なら真っさらに人間として転生して欲しいとか(苦笑)
ヴァリオルド家代々に渡る戦いであり、ルフィエにとっては母ルヴィラィとの戦いでもあったフランデル大陸の存亡をかけた戦い。
なにやら続編の余韻を漂わせながらの堂々完結、ありがとうございました!
---
さて、白猫さん自身は毎回の文章量含めて全く疲れを感じさせないスピードでの執筆でしたね。
もちろん実際には文章構成のチェック等だけでも想像できないほど時間がかかっているとは思います。
そして白猫さんが今まで書かれたPuppet本編だけでもまとめたらそれは長大な物語になりますが
さらにHP公開の予定まで立っているとは…つくづく頭が下がる思いです。完成の折はぜひ訪問させてくださいね♪
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>小説スレのレギュラー感想屋である68hさん
以前いらっしゃった初代感想屋のアラステキさんに敬礼しつつ感想書かせてもらっています(・ω・;A)
絶対全作品に感想をつける!なんて気持ちでやってるわけではないのですが、自然とこうなってしまいました(ノ´∀`*)

>きっと68hさんの小説も凄いんだろうなぁ。きっとメチャクチャ上手いんだろうなぁ。
この想像は早々に脳内から消した方が良いですよ!?
実はみやびさんスタートのリレー小説の続きなどを考えてたりしましたが、できたのは何の関係もない短編orz
しかも尻切れとんぼ。。

>68hさんはやればできる子。
うっ…がんばるよママン(´;ω;`)

チャットで無責任にもリクしてしまった入れ替わりネタ、ちゃんと考えてくれてるようで嬉しいです(*´д`*)
もちろんいつになっても構いませんし天下一とかいろいろUPした最後の最後でOKですよ!
そして長文感想、失礼しましたー!

299憔悴:2008/07/07(月) 08:54:12 ID:Wv5HCA4E0
ここは…どこだろう
嗚呼…あの子と一緒に遊んだ、場所。
そう、3年前、あの子は今みたいに笑顔でお花を摘んでたっけ。
無邪気に笑って。警戒心なんてこと、知らないように。
まるで純粋な天使みたいだった。
「リデル…」
そんな悲しそうな顔をしないで。
涙なんて流さないで。
その顔を苦痛に歪めないで…。
どこかに、いってしまわないで。

「………ッ」
朝。
小さい四角い窓からは梅雨明けの暑い太陽が、燦々と部屋を照らしていた。
バルコニーへ出れば前面光の世界。
「…おはようございます」
大きく深呼吸をすると、全世界への挨拶を交わす。
ローブと同じく、灰色のパジャマには小さな宝石が散りばめられていた。
あの子が大好きだった宝石の数々。
特に誕生石のエメラルドはお気に入りだったっけ。
私と同じ、薄緑色の髪を風に揺らしながら、小さい宝石を眺めていた。
…もう見ることはないだろうけど。
「おそよう!もう10時だよっ総帥様ッ」
桃色の髪をなびかせた少女が、ドアを勢いよく開ける。
「その…総帥っていうの、やめてくださいません?普通にチェルで結構よ」
「わかったー、チェル姉おそようっ」
可愛い妹のようなリーネは髪と同じ、桃色のドレスの裾を両手で持ち、丁寧におじぎをする。
ここは笑顔でおはよう、と返すところなのだろうが。
先程まで見ていた悪夢が頭の中を蝕んでいる…
素直に笑うことなんて、出来なかった。
いつだってそうだ、誰かの機嫌をとるためには作り笑顔を絶やさないようにしていたっけ。
特に、彼女に対しては笑えない、優しい態度なんて、とれっこなかった。
彼女があの子に似ているから。
どこか、すっぽりと空いた穴に彼女が入ってしまうから。
彼女と生活し始めて1週間と、短いが何度涙をこぼしそうになったか。
毎日の悪夢はもちろん、彼女自信に冷たく当たるようにしてきた。
なのに何で、毎日私を迎えに来るの?一緒にいるの???
極度のお人よし、というものはこういう人のことを言うのだろう。
「そういえばね、ロンサムさんが、自分と同じように、髪の色が違う人見つけたって!」
「本当ですの?」
パジャマからいつもの服に着替えつつ、リーネの言ったことに半分耳を向ける。
「むー、全然興味ない様子!」
「そんなこと、ないですわよ」
苦笑しつつ、総帥室を出る。

300憔悴:2008/07/07(月) 08:54:45 ID:Wv5HCA4E0
リンケンから出、総帥に任命されてからはこの組織が共有している館の数個ある内の1つに住んでいた。
特に、この総帥室があるB棟は一番格が上だった。
何故かリーネもここに住んでいた。
「貴方はなぜB棟に住んでるんですの?入ったばかりなら高くてもD棟でしょう?」
聞いた話によると、ロンサムがリーネをたいそう気に入り、その上誰とも接点を持ちたがらないチェルに軽々と話しかけているため、組織のお偉いさんが此処に住まわしたらしい。
(私は話してないのですが…というかロンサムはロリコンだったのですわね…)
そして、B棟中央ホールに来ると、もうロンサムを始めB棟の捜査委員が集まっていた。
「遅いですよ、総帥…今日は8時から話がある、と言っておいたでしょう」
「最近誰か様のせいで寝るのが遅くなって…申し訳ありませんわ」
ぎくり、とリーネが反応し、ロンサムの後ろに隠れる。
「だって、だって、みんな9時消灯だから、怖くて、チェル姉の部屋で遊びたくなるんだもん!」
「じゃあ今度から僕の部屋で遊びます?」
「…それで、話というのは?」
ああ、と思い出したように手を叩くと、
「私の知り合いにボニーという者がいまして。そいつがリーネちゃんから聞いた、職と髪の色が違う者かな、と思いまして」
異種職。
極稀に、2つの職の技術が使用出来る者。
そして、大半は姿の職と髪の色が異なる。
例に、薄緑色の髪をしたテイマー、桃色の髪をしたプリンセス。
「その、ボニーさんの職はなんですの?」
「シーフでして、髪の色は金なのですよ」
シーフにて金髪。
きっと、他の技術も使えるに違いない。
「そして、そのボニーの住んでいるところがバリアートなのですが…」
バリアート。
西方を山に囲まれた、静かな村。
東には誰も奥まで言ったことのない洞窟がある。
中には竜の子孫がいるだとか…
「それで、どうしましたの?」
「その、東にある洞窟から、今までは外へ出てこなかった竜の子孫が、少しずつバリアート方面に出てきているのです」
この報告には吃驚を隠せなかった。
街などにはロマからダメルまで、ウィザードによるモンスターの入れないように、ポーターが置かれているのだ。
そのため、街にモンスターが現れた例は今まで一度も無い。
「それは…洞窟に何か異変か、もしくはポーターが壊れてしまったのかしら」
「分からないです。この間、1度バリアートに竜が入ってきたそうです。そのボニーを中心に退治されたらしいですが…バリアートと洞窟の間にある沼には、もう竜が倒してもきりが無いほど居るらしいのです」
「それの退治依頼なのですの?」
「いえ、沼の色もおかしいですし、きっと何か洞窟にあったに違いないので、組織から数人、調査に来てほしいということです。ボニーに会いたいのなら総帥も一緒にいきましょう」
洞窟からあふれ出す沼の変色。
竜が洞窟から外へ出る異変。
それは…きっと、鬼による何かだと、チェルは確信めいていた。

301憔悴:2008/07/07(月) 08:55:11 ID:Wv5HCA4E0
「きてくださって、ありがとうございます。私がバリアートの警備隊長のボニーともうします」
ロンサムのいうとおり、姿はシーフだが、髪だけは金髪となっていた。
「一つ、お聞きしても宜しいでしょうか?貴方はシーフや武道による技術以外にも何か使えます?」
頭に疑問符を浮かべるボニー。
「それでは、このくらいの…石、いえ宝石のようなものをお持ちですか?」
「いや…もっては居ないが、あの洞窟の奥に、その、魔石があると言い伝えられてきました」
その話が本当なら、洞窟には入らなくてはいけないらしい。
しかし…
「痛た…」
洞窟に入った瞬間、無数の竜の子孫に突かれてしまう。
いくらペットが強く、回復や蘇生などが出来ても本体が死んでは意味がないのだ。
ここを、何も攻撃されずに奥までいけるのは…
「………」
楽しそうにピクニック気分で鞄に飴やお菓子を詰め込むリーネを見る。
…いや、無理だろう。普通に。

しかし、彼女しか頼めなかった。
「いって…くれますか…?」
「合点承知の輔!がんばってきまーす!」
注意などを聞く耳も持たず、鞄を背負い兎が駆けていった。
…大丈夫なのだろうか?

数時間たつ。
洞窟の入り口に仁王立ちするチェル。
そんなに奥深いのだろうか。もしかしたらどこかで息絶えてるかも…
いや、まあ何とかなるだろう。一応異種職だし。
其処へ、小さな兎が行きの半分の量になってる鞄を背負って帰ってきた。
横には何故か傷だらけのボニーがいた。
そして、元の姿に戻ると、鞄からいそいそと満面の笑顔で黄色の魔石をとりだした。
話を聞くと、奥まではそう数十分もかからなかった。
しかし、一番奥には魔石などなく、ただ1つの扉があった。
チェルとはすれ違いでボニーを洞窟の奥まで命がけで連れて行き、彼が扉の真ん中をいじくっていたら空き、目の前の壁には龍の姿を彫った石画があり、そこの真ん中にはめ込まれていたのが、
この黄色い魔石…トパーズらしい。こうくるともうお分かりだろう。
薄緑の髪のチェルが持ち主のエメラルド。
桃色の髪のリーネが持ち主のアクアマリン。
そして、トパーズ、黄色もしくは金色の髪。
「誰かに絶対誰にもいうな、と言われたのでしょうが…教えてください。貴方は複数の技術をもっていますね?」
金色の髪を黒い帽子で隠している、少年に向かう。
「…やっぱり、ばれましたか。まあ貴方達もでしょう?俺の本職、シーフに加え悪魔、ネクロの技もこなせる。といってもあまり使わないが」
最初からチェルは気づいていたのだ。
宝石がありますか?と聞いただけで魔石、と答えたからだ。
きっと自分が持つべき魔石のことを知っていたのだろう。
その時、バリアートの西から巨大な爆発音らしきものが轟いた。
山から流れているはずの滝の水が、バリアートの村へ降り注ぐ。
「何が…!?」
降り注ぐ水と、そして空を覆う黒い雲。
…鬼が来た。

302憔悴:2008/07/07(月) 08:55:41 ID:Wv5HCA4E0
「あ…あれは…」
リーネの顔がみるみる真っ青になる。
リンケンの町長を殺された時を思い出してるのか、はたまた…
考えてる暇なんて無い。
そう、もうバリアートをリンケンの二の舞にしないためには戦うしかないのだ。
「ボニーさん!ロンサム連れてきてくださいッ」
「は、はい」
それまでに、あの数を2人で食い止められるか…
「…ぅ…鬼なんて…私が…ッ」
「あんまり一人で前にでちゃだめですわっ」
飛び出すリーネの左腕を引っ張る。
ぐい、と体が傾き、一刹那前にリーネが居た場所に落雷が落ちる。
「ひっ…」
目に零れない程度の涙をため、硬直する。
これは一人でやるしかない、と感じ取る。
すぐさま真紅に染まった本に閉じ込められた古代竜を開放する。
(…スリープ、ビューティ、任せる)
励まし、誉めるをし、唐辛子を与え攻撃命令を放つ。
すぐさま前方に出てきている鬼の数匹に取り掛かる。
その間、チェルは回復だけを専念し、2匹の支援にかかっていた。
数分経っても鬼の数は経るどころか増え、一人じゃ抑えきれないようになってきた。
(この数は…なんですのっ!)
洞窟の方角からは鬼があふれ、スリープに致命傷を与える。
(ちょっと…まずいですわね…)
その時、後方から数本の矢と、斧が鬼へ飛ぶ。
「うわ、これは酷いですな…総帥、大丈夫でしたか?」
舌をぺろ、と出すと背から矢を取り、鬼に確実に当てていく。
「これは…キリがないな、あの洞窟に何があったんだ?」
ロンサムの隣に居るボニーも、腰から小さな斧を取ると、周辺の鬼に投げつけていく。
「…う…もう、大丈夫。私に任せて」
後ろで硬直していたリーネが動き、ピンクのドレスを赤いコスチュームに変えた。
小さな魔女は自分の中に宿っているもう一つの技術、魔法使いの力を4人に振り掛ける。
彼女は星型のワンドを取り出すと、小さい声で星を集める。
そして。
「メテオノヴァッ」
小さい星たちが集まり、大きな隕石と変わる。
大きな隕石の塊は4つにわかれ、鬼にぶつかり爆発を起こす。
(これが…異種職の技…)
チェルにはこういった、ウィザードのメテオと、リトルウィッチのウルトラノヴァの効果を併せ持った技は持っていなかった。
目の前に輝く隕石は鬼に爆発を起こし、その後は小さな星の砂と変わる。
そして、リーネは高く跳び上がる。
「チリングスペシャルッ」
氷で出来た霧は4人を中心に渦となり、鬼を襲う。
その霧が収まる頃には、鬼も居なくなっていた。
「リーネちゃん…すごいですなー…初めて見ました、こういうの」
「俺にもできんのかな…」
絶賛する2人に対し、チェルは誉めることはできなかった。
すごすぎて、固まっていたからだ。
(…私にももっと力があれば…彼女を救えたのでしょうか…)

303憔悴:2008/07/07(月) 08:56:07 ID:Wv5HCA4E0
結局、洞窟はリーネの霧によって入り口が凍り、二度と竜が出てくることは無くなった。
しかし、もう既に洞窟の外に出ていたリザードキリングは巣を作ったらしく、何匹倒しても居なくなることはない。
「まあ、あいつらくらいなら大丈夫でしょう。今日はお疲れ様でした。先に帰っています」
久しぶりに疲れたのか、ロンサムは頭を抱えてB棟へ戻っていった。
「で…俺の力を借りたいわけか」
異種職についての役割を話すと、ボニーは斧と鞭を出す。
「俺もいつかさっきみたいな技使えるようになるんだよな、まあついてくよ。楽しそうだしな!」
「わーいっ」
喜ぶリーネを、まじまじと見つめるボニー。
「ほんっとさっきのお前嘘みたいだよなー。こんなガキんちょなんて」
人差し指でリーネの額を小突く。
「いたっガキってゆーなっ」
これでもねーと話し始める。
チェルは興味なさげに聞いていたのだが…
「これでも18なんだから!今年で19だよっ」
「はい?」
凍りつくチェル。
笑えない冗談だ。
彼女と同い年だなんて。

゚・*:。.:・*:.'.:☆.+゚*゚+.。+゚,゚.+:。.+:。☆゚+.。+゚,゚.+:。.+:。*:。.:'・*:.':+.*。+゚.゚.+:。.*:。☆

第三の異種職ボニー。
そして、複合技術。
メテオノヴァ、チリングスペシャル…
なんて語源力のないつまらない小説になってしまったことをお詫びいたします。



コメント返し

>◇68hJrjtY様
アレナはこちらの設定ではなく、リンケンに実際いるNPCの名前でした。
そして、魔石はエメラルドのみではなく、他にも登場させる予定です。
誕生石の12個分ですね…長い。
月がエメラルドから始まって5月、というわけではなく、
チェルのエメラルドで5月、
アクアマリンが3月、
トパーズが11月…と。

毎回コメントありがとうございます。

304防災頭巾★:削除
削除

305黒頭巾:2008/07/07(月) 22:05:01 ID:fou9k2gM0
滑り込みセーフc⌒っ゚Д゚)っズサー


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ささのはさらさら、のきまにゆれる――。


【ふぁみりあいーえっくすしりーず、たなばた編 〜そして、未知との遭遇(?)3〜】


僕はふぁみりあいーえっくす。
ちょっと愉快なぎるどの副ますさんなごしゅじんさまのぺっとだ。
僕の素敵なごしゅじんさまや愉快なぎるどめんばーさん達のご様子は、過去ろぐってやつをご参照でどうぞ。
出し渋りのつんでれろまさんからせしめた攻速石を倉庫に詰め詰めしようと、ぎるどほーるにやって来たごしゅじんさまと僕。
海の匂いのしゅとらせらとから木の香りのぎるどほーるへ飛んだ瞬間、僕の目の前は緑一色になった。
何、何、ぎるどほーる緑化運動!?
しかも何かわさわさちくちくするの!
やーん。
じたばたする僕の視界が急に開けたと思ったら、目の前にはわさわさの正体を持ったごしゅじんさまの姿。

「笹なんて持ち込んだのは誰ー?
 ちゃんと固定しとかないと、倒れてて来て危なかったじゃない!」

どうも、わさわさのお名前は笹って言うらしい。
初めて見る植物だ。
うー、お顔をちくちくされたから痒い痒い。
お顔をこしこし。

「おー、すまんすまん。
 固定する紐を捜してる間だけ立て掛けといたんだが……中々見付からなくてな」

怪我しなかったか?
奥から出てきたはんらさんが、そう言って僕の頭を撫でた。
気にしないで、大丈夫。
にひる笑ってに右手をぐってしたら、「よし、偉いぞ。男の子は強くなくちゃな」ってご満足そうな笑顔。
わーい、褒められちゃった!
でもね、笹とやらを立てかけるはんらさんに見えないように、まだお顔をこしこししてるのは内緒内緒なんだから。
そんなぎるどほーるに、ひゅんと現れたのはおじょうさまとごきぶりさん。
そのお手々には、色取り取りの紙の束が握られていて。

「ナイトさーん、飾りと短冊の材料買って来たよー!」

しまーを回してくれるはんらさんは騎士様みたいだって言うおじょうさまは、はんらさんをないとさんって呼んでる。
僕もはんらさんみたいに、ごしゅじんさまのないとさんになりたいなぁ。

「――ちゃん! ファミちゃーん?」

未来に思いを馳せる、そんな僕を呼ぶ声。

「おいでー、一緒に飾り作ろー?」

いつの間にか机の前にいるごしゅじんさまとおじょうさまの呼び声に、僕はわくわくと駆け出した。

306黒頭巾:2008/07/07(月) 22:06:08 ID:fou9k2gM0

――二時間後。
ぎるどめんばーの皆の手によって、笹はくりすます限定のつりーみたいにお綺麗になった。
反対に、おどりこさんのお手々は傷だらけになってたけど。
ただ、紙を切って折って貼るだけなのに……ここまで不器用だったのは驚いたなぁ。
まっするさんに治して貰ってお手々はすっかりお綺麗だけど、笹のお飾りの一部にある生生しい血の染みからは……皆が目を逸らしてる。
勿論ね、その他のお飾りも沢山!
ごきぶりさんお手製のみにちゅあのお飾りは凄い繊細でそのままお店で売れそうなくらいだし、いけめんさんが仕上げに魔法を掛けたお星様はきらきら輝いてる。
皆で作ったわっかのお飾りも、お星様の川みたいで楽しい。
それでね、それでね……作ってる間に七夕さまのお話を教えて貰ったんだよ!
むかしむかーしの、天上界の天使さんのお話。
神様のお洋服を作る天使さんと神様の乗り物の世話をする天使さんが、らぶらぶになってお仕事をさぼるようになったんだって。
それに困った神様が、そんな自堕落な生活はいかーんって、お二人を離れ離れにしたそうなの。
でも、両方とも天使さんだから……ぱーてぃー組んでこるで会えちゃうのにって思うよね?
お二人もそう思ったみたいで、こっそり会ってはお仕事さぼってたらしいんだけど……やっぱり見付かっちゃってさぁ大変。
追放されるされないまでお話が拗れちゃったんだけど、それは流石に可哀想だってんで、喧嘩両成敗で両方が一年毎に交代で牢屋に入れられて強制的に離れ離れにされた状態でお仕事に専念する事になったんだって。
で、一年我慢したご褒美に、一年に一度の交代する前の晩だけご一緒に会えるようにしてくれたらしい。
そしたら、お二人とも頑張ってお仕事するようになってめでたしめでたし。
で、会えて嬉しいお二人が幸せのお裾分けに小さなお願い事を叶えてくれるってんで、その記念日は皆でどさくさに紛れてお願い事してみよーってのが七夕さまの由来らしい。
一年に一度しか会えないのに皆のお願い事を叶えてばっかりじゃ、お二人でゆっくり出来ないんじゃないかなぁ。
そんな疑問が浮かんだけど、ごしゅじんさまは楽しそうだからお口にちゃっくした……言わぬがお花って言うしね!
僕も含めて一人一枚ずつ短冊を持って、皆それぞれお願いを考える。
一番最初に思いついたのは、ごきぶりさんだった。

「飛虎を拾えますように、と」
「お前、即物的すぎるだろ!」
「ずっと欲しがってたもんねー」
「同期は皆、ロト飛虎とか持ってるんだよ……もうNでいいから欲しい」

半泣きのごきぶりさんのお願いは切実すぎた。

「じゃぁ、俺は……バディのエンチャがいい加減成功しますように、で」

はんらさん、現在13連敗中。

「私は……若くて強い下僕が手に入りますように、かしら」

おねーさまの冗談に聞こえない言葉に、男性陣は必死に目を逸らした。

「今年こそ、探し人が見付かりますように」

おどりこさんは何処か遠くを見詰めるように、呟いた。

「うーん、今年のお願いは何にしよーかなー」

そんな中、おじょうさまはぺんをくるくる回しながら楽しそうに呟く。
そんなおじょうさまに、去年の騒動を思い出したらしい皆が思い出し笑いをする。

「去年は、お花とお菓子でお部屋を一杯にしたい……だっけ?」
「そうそう、本当にお部屋一杯に埋まっててビックリしたわー」
「今年のお願いも叶うといいな」

皆はにやにやと笑いながらいけめんさんを眺めて、いけめんさんはその皆の視線から目を逸らした。
貯金をはたいて可愛い妹のめるへんなお願いをこっそりと叶えた兄と、それを知らずにお願いが叶ったと舞い上がった妹。
そのぷれぜんとを上機嫌でもんすたーに投げつけまくったおじょうさまは……一日の狩りで全部使い切っちゃったと、ぷれぜんとの主のいけめんさんを半泣きにさせたんだよね。

「よし、決ーめた!」

さらさらと羽ぺんを走らせるおじょうさまに、皆の(特にいけめんさんの)目線が飛ぶ。

「おにーちゃんに素敵な彼女が出来ますよーに、と!
 うふふ、ずっと素敵なお姉ちゃんが欲しかったんだよねーv」

満面の笑顔で言うおじょうさまから目を逸らしたいけめんさんは、聞こえないと耳を塞いだ。

307黒頭巾:2008/07/07(月) 22:06:40 ID:fou9k2gM0

……時間は流れて、空には大きなお月様と綺麗な天の川。
七夕にかこつけた宴会も終わり、床に広げた敷物やソファーで眠るギルドメンバー達とファミリアの姿。
そんなギルドホールの入口に飾られた穏やかに光る星飾りが、きらりと瞬いた。
――と、光ったまま空中に浮かび、笹に下がった短冊の周りを飛ぶ。

『何だか強い想いを感じたから、来てみたけど・・・』

どれも即物的すぎるわねー、と嘆くように呟いた。

『恋人がーとか、ちょっと面白いけどねー』

こればかりは、いくら最高精霊とは言え一晩で如何こう出来る問題ではない。

『あーあ、がっかり・・・、帰ろうかなー』

そう言いながらも、見難い所に三つ並んだ短冊を最後に見付けて近付く。
内容を読み取ったのか、その星は嬉しそうに瞬いた。

『あ、これとかいいわねっ! うん、感動の友情ってやつだわ!』

如何やら、お気に召すお願いを見付けた模様。
ふわりとギルドメンバー達の上を飛んで、幸せな夢を授ける。
願わくば――遥か未来、本当にそんな願いが叶う日が来れば、と思いながら。
そのまま上空で少し考えた星の精霊は、オマケとばかりに祝福を授けた。
幸運を授けるスターライトを受けたメンバーは、きっと明日はドロップもよければエンチャの成功率もいい事だろう。

『さ、夜が明ける前に帰ろーっと。
 そう言えば・・・皆が七夕をやったら、何をお願いするのかなー?』

一緒に旅をする仲間を思い出して笑った精霊はその気配を消し、後には穏やかに瞬く星飾りだけが残った。
星飾りの光に照らされた三つの短冊はそれぞれ違う筆跡で……特に一枚は、幼い子どもが書いたようなミミズののたくった文字。
その三枚にまるでお揃いのように「皆とずっと仲良く一緒にいれますように」との一文が書かれているのを知っているのは……星の精霊と飾った張本人達だけ。
ソファーで眠るその三人――二人+一匹は、幸せそうな笑顔を浮かべて夢の中。

「おにーちゃん、おねーちゃんとファミちゃんと一緒に寝てるの、ずるーい!!」

二人の真ん中に寝ているファミリアにいけめんさんと呼ばれている青年とごしゅじんさまと呼ばれている少女が、青年の妹の抗議で目を覚ますまで……後、数時間。


******************************************************


未知との遭遇第三弾&七夕編をお送り致しました。
ご本人様の承諾を取れないままに勝手にお借りしてしまいました(自重)
七夕で如何してもあの精霊が浮かんで…申し訳ない/(^o^)\
一応過去ログ全部漁って口調は調べたつもりですが…イメージ壊れてないのを祈ります^p^
書き上げて気力が尽きたので、皆様への感想は次回に回します\(^o^)/

308復讐の女神:2008/07/08(火) 02:29:54 ID:Raw2JgF20
 砂漠の村に、花が咲き乱れた。
 小さく透き通っており、砂漠にそぐわぬほど冷たい花。
 氷だ。
 氷は、雲ひとつない空から振っていた。 
 先は鋭く刃と化し、その威力はレンガであろうとたやすく貫いていく。
「あああああああああ!!!!」
 氷の花園に、赤黒いものが混じった。
 血だ。
 村を歩く者たちが、突然の雹に串刺しにされたのだ。
 家の中にいたものなど、何が起こったかすらわからず死んでいった。
 こんな砂漠の村で雹が突然襲い掛かるなど、誰も思いつくことができるはずがないのだ。
 いや、雹でなくとも、突然死が襲い掛かってくるなどと、誰が想像できるだろう。
「うぁ…」
 幸運にも、雹の槍に刺されながらも生き残った者がいた。
 彼はこの現場を、現実として受け入れることができただろうか。
 太陽の熱が猛威を振るっているはずの場に、大量の氷があるのだ。
 それら氷は太陽光を反射してキラキラと輝き、一部からは白い冷気を放出していた。
 暑いはずの村が、寒かった。
「おおおおお ……おおおおぉぉぉぉ!」
 彼の耳には、ただ女の甲高い泣き声だけがこだましていた。

309復讐の女神:2008/07/08(火) 02:30:53 ID:Raw2JgF20
 古都ブルネンシュティングの街中において、冒険者を手っ取り早く雇う方法がある。
 掲示板への張り紙だ。
 政府直下の掲示板があり、そこにはランク別に冒険者への依頼が張り出されている。
 多くの冒険者は、この掲示板の紙をとって契約し、依頼を果たすことで報酬を稼いでいる。
 そんな掲示板に、新たな紙が張り出された。
 滅多に出ない、賞金首の依頼だ。
 賞金首には2種類あり、政府が危険人物と判断し金をかけるものと、公募によってかかるものがある。
 もっとも、公募の賞金首の多くは人探しであり、普通は賞金首とは言われない。
 政府が出す賞金首は、危険が大きく難度も高いのだが、そのぶん金額が公募より1桁2桁も高い。
 金が無限にあるわけでないため、賞金首は厳選に厳選を極め、よって賞金首の数はあまり出てこないのが普通だ。 
 張り紙がされたときの現場の色めきあいは、非常に高いものとなる。
 ゆえに
「久々の賞金首ね」
「だな」
 ジェシとラディルもまた、周りの雰囲気に飲み込まれるように興奮していた。
 二人はお金に対する欲求が少ない。
 つまり、強敵の出現が、二人を高ぶらせているのだ。
「ジェシは賞金首レース、参加するの?」
 テルは、あまり乗り気でない様子。
 彼女にとっては、人間よりも珍しいモンスターのほうが価値が高いらしい。
 3人は、掲示板のすぐ近くにある店のテーブルについていた。
 ちょうど昼食が終わったところへの、騒ぎだったのだ。
「しないわ。興味はあるし、戦ってみたいけど、お金に困ってるわけでもないしね」
 この世界は広い。
 しかし、政府と協会の力はそれらをほぼ全て包み込んでいる。
 賞金首の張り紙は、あらゆるネットワークを使用して全ての街や村に届けられ、張り出される。
 相手はそれに気づくだろうし、それなりの対策はしているはずだ。
 一人を探し出すだけで、どれだけの時間と費用を必要とするのか、考えるだけでもばかばかしいのだ。
 全ては運。
「そもそも、賞金首っていっても…顔絵がないじゃない、探しようがないわ。今回たまたま生存者が…ううん"元生存者"
が証言したからこそ、小さなヒントが得られたくらいよ」
 そう、今回の賞金首の張り紙には、特徴が書かれているだけで一番重要な"顔"が描かれていないのだ。
 特徴とて「女・弓使い(氷系統魔道使用)・泣き声」の3つだけだ。
 もっとも、ジェシも含めて冒険者のほぼ全員が、それ以上の情報を自分の中で付け加えていた。

”炎系統魔道使用”

 すでに2つの村が炎で焼かたという情報は、冒険者全てに知れ渡っていた。「けちな政府が、やっと重い腰を上げた」というのが
共通認識なのである。

310復讐の女神:2008/07/08(火) 02:31:25 ID:Raw2JgF20
「両系統を完全に使いこなす弓使いの魔道師なんて、この世界に何人いるのかしらね?」
 魔法は、体内に廻る魔力を変換して放たれる奇跡だ。
 もともと性質などないエネルギーである魔力は、回路を通ることで性質を帯びる。
 4大精霊の水、風、土、火に光と闇を足した6系統は、それぞれが別の形をした回路だ。
 特に性質が真っ向から対立するものは、ほとんど逆向きの回路となっている。
「効率も悪いな」
 1系統を極めることですら、難しく長い道のりを必要とする。2系統を操るということは、魔法の威力が落ちることにつながる。
 ウィザードの連中が全ての系統を満遍なく使いこなせているよう見えるのは、外部に魔方陣として回路を生成することで、自身への
影響を極力抑えているからにすぎない。それにしたって、個人個人の得意系統は分かれてしまうのだ。
「弓魔道師の炎や氷って、そんなに残留なかったと記憶してるんですけどー」
 魔力とは、霧散しやすく集まりやすいエネルギーだ。魔力で作られた炎や氷などは、すぐに気化してしまう。そのため、物質に
与える影響力は非常に小さいものなのだ。唯一例外ともとれるのがサマナーの4大精霊召還だが、彼らの魔力の質は特殊で精霊を
物体化させることと、自分の魔力にしか影響を与えることができない。呼び出された精霊が使う魔法は、精霊が使うものとしてやはり
気化が早くなってしまう。
「そうね、影響は与えるけどすぐに魔力に気化してしまって、物理的な殺傷とまではいかないわ」
 属性の与えられた魔力は物に当たると気化してしまうが、その際に与えられた属性を相手に押し付けていく性質がある。水系統の
魔法をうけて寒さや熱さを感じるのは、一時的に体内魔力の方向性を強制されるせいだ。
「魔力を高純度に練る時間さえあれば、できなくはないのかもしれないけど…弓魔道師の雨って、ものすごい魔力を使うのよ。村一つを
焼き払うだけの魔力を練る時間なんて、考えたくもないわ」
 霧散しやすい魔力は、練る事で残存しやすくなる。冒険者などはよく小さな魔力を練って薪に火をつけるが、それは熱で発火させている
だけにすぎない。それにしたって、発火しやすいものに火をつけてからなのだ。
「ま、考えてもしょうがない、それより本題に入ろう。ジェシの分がこれ。そして、これがテルの分だ」
 ラディルは紙切れを取り出し、二人に渡した。
「ありがと、ラディル。いつも面倒言ってごめんね」
「サンキュサンキュ! いやー、ギルドって便利だねぇ」
 ジェシがもらった紙には、人の名前が書かれていた。おそらくそれだけを見ても、周りの人間はなんのリストかわからないだろう。
「まったくだ。何度も言うが、うちのギルドに所属しろよ。そうすれば全て自分でやれるし、効率もいい。ジェシの実力なら誰も反対
しないさ」
 ラディルは、とあるギルドに所属していた。人数はかなりのもので、そのおかげで多くの情報が手に入る。見返りとしてギルドのために
動かなければならないこともあるのだが、それを考えてもメリットは莫大だ。
「わかってるでしょ、私は他のギルドに所属する気はないって」
 ジェシもまた、ギルドに所属していた。
 ラディルの所属しているギルドと違い、所属している人数は少ないが、自分勝手に動けて束縛もまったくないギルドだ。
「残念だなぁ。ラディルの誘いが早ければ、私はそっちに所属してたかもしれないんだけどね」
 テルもまた、この街に来てすぐにギルドへ所属していた。
 ただ、ギルドへの所属には契約条件があり、一度所属したギルドは数日は離れることができないことになっているため、簡単に所属を
変えることができない。

311復讐の女神:2008/07/08(火) 02:31:53 ID:Raw2JgF20
「はは、しょうがないさ。契約期間が過ぎたら自由に移籍できるんだし、そのときに声かけてくれよ」
 話は終わったと、立ち上がるラディル。
 ラディルは所属ギルドの副ギルドマスターをしており、なかなかの人望を集めている。そのため、普段はそれなりに忙しい人なのだった。
「まあいいや。とにかく、また情報が集まったら渡すよ。じゃあな」
 店を出て行くラディルを見送り、ジェシとテルは向き合った。
「まさか、あなたもラディルに情報を集めさせているとは思わなかったわ」
 テルが何かを探しているそぶりを、何度か目撃していた。確かにお金を集めているようすもあるが、それが一番の目的とは思えなかった。
「うん? あぁ、うん。そんなつもりじゃなかったんだけどねー。前に街で会ったときに少し話したら、調べておいてやるよって…」
 落ち着かなさそうに手をもじもじさせて、恥ずかしそうにうつむいているのが卑怯だと思った。
 テルもまた、ラディルに恋しているのだろう。
「さて、もらうものももらったし、依頼主のところへ行きましょうか」
 ジェシが立ち上がるのに続いてテルも立ち上がる。
 もともと今日は、依頼を受けに行くために出たのだった。
 掲示板で依頼を選んだときに偶然ラディルと会わなければ、今日情報をもらうことはなかっただろう。
「護衛や荷物運びの依頼多かったよね。いつもあんななの?」
「そんなことないわよ。むしろ、普段は少ないくらいなんだけど」
 キャラバンを襲う盗賊や山賊のたぐいは、それほど多くはない。上級モンスターを倒したほうが、お金になるからだ。
 そもそも、キャラバンを営む人間の多くが、元冒険者だったりするため、簡単な魔物程度なら自分で追い払うことができる。
 そのため、護衛の仕事は楽なものという認識があり、人気は高い。
「賞金首効果かしらね」
 賞金首が出たということは、それだけ物騒であるということにほかならない。
 それだけで、説明は十分であろう。
「んでもさー、ジェシ。この依頼って…ちゃんと見た?」
 ジェシにはしては珍しく、依頼内容を詳しく見ていない。
 護衛の依頼を避けて探したため、良い条件のものが少なかったのだ。依頼は無限にあるわけではないので、よさそうなものを見つけて、
さっさととっただけであった。
 だから、テルの「いいのかなー」というつぶやきも、ジェシはあまり気にしていなかった。

312復讐の女神:2008/07/08(火) 02:41:43 ID:Raw2JgF20
第二章というかなんというかです。
今回は私の「スキル使用におけるCPの役割」的な妄想を重点に書いてみました。
妄想なので、後々設定を変えるかもしれません。
変えないかもしれません。
なので、そこら辺はテキトーに流してくださると、ありがたかったり。

他作者さまのキャラを登場させたい!とか、なんとなく思っていたのですが、実際にやり始めるとあら大変。
キャラを大切にしたいと思い始め、過去ログ読み直しの修行です。
失礼にもさらっと読み飛ばしてた場所などが発見されると、もうなんというか。
反省の行として、無課金徒歩で手紙クエを実行してきます><

313◇68hJrjtY:2008/07/08(火) 08:46:52 ID:vWCgkkT60
>憔悴さん
合成スキル、つまらないなんてとんでもない。これは妄想が止まりませんぞ(*´д`*)
宝石というのもRSのサーバーを表すものですし、つくづく面白い設定だと思います。
髪の色も実際の話でかなり重要な要素で、金髪の者でなければ王族と認めない…なんて話もあるらしいですよ(笑)
新登場ついでに仲間に加わったボニー。金髪と来たのでアチャランサかな、と思ったらネクロ悪魔とは!
でも毒スキルとか即死系とかシフと悪魔って繋がる部分も多そうですしね。さて、どんな合成スキルが出るか。
続き楽しみにしています。

>黒頭巾さん
久しぶりのダークメルヘン…ですがダークではなく、今回は素敵な七夕物語。
そういえば七夕なんてすっかり忘れてました。うーん、でもこういうイベントこそ忘れてはいけないと思います。
ごしゅじんさま、いけめんさんをはじめみんなのお願い。某精霊さん(笑)に届いたようですね。
ギルメンたちのワイワイっぽさがとっても楽しそうで、ファミたんの可愛さとそれだけでおなかいっぱい(*´д`*)
次回のイベントモノ小説も楽しみにしています。今度はなんだろう(笑)

>復習の女神さん
適当に流せません!(笑) というわけで、魔法学というかスキル学というか、女神さん設定の方に目が釘付け。
と同時に面白いと思ったのが賞金首システムですね。本当にファンタジーっぽくて(・∀・)イイ!!
ギルドというものも本来の意味はこのように特定の人々が情報を流通させるための団体といった意味みたいですし
そこにファンタジー要素を絡めることでワクテカするくらい今後の物語が楽しみになってまいりました。
しかしそれ以上に気になるのが2系統の魔力を操る弓使い…ジェシたちの新たな冒険の始まりですね。
続きお待ちしています。

314ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/07/08(火) 11:19:53 ID:OhTl4zsk0
>>212 からの続きですよ〜

さてさて,シュトラセラトへと異次元の黒箱を届けるために,ミリアとファミィ,サーファイユにミカエル達は森の小道を進んでいく。
道中で木の実を採取していたエルフの民の一人,ジャファイマからたくさんの木の実を分けてもらったところだ。時刻は正午近い。
「ふみゅぅ〜,ミリアお腹空いたのぉ〜・・・お昼ごはん食べよっ?ね〜?」愚図りながらミリアが兄のミカエルにせがむ。
彼はしょうがないなぁ〜と呟くと,背負っていたリュックサックを下ろして,そこからシートや簡易式の調理器具,さらには
チョコレートや乾パンなどの軽めの食材を取り出した。彼曰く,サバイバルには持って来いという品々だとか・・・
サバイバルナイフで乾パンを切り,チョコレートを砕いてボウルに移し,相棒のケルビーを召喚してそれを溶かす。

「ようマスター,今日の昼飯はチョコレートフォンデュなのか?」「あぁ,糖分もちゃんと摂取しておかないとな。」
「ん〜,ミカエルがつくるチョコフォンデュはおいしいから大好きさ〜♪サーファイユ,食べ方わかる?」
「えっと・・・あぁ!!パンをチョコに浸すんだね?へぇ〜,これが人間の食べ物かぁ・・・初めて食べるよ,えへへ」
「うにゅ〜・・・ふみゅっ,モグモグ・・・やぅ,やっぱりお兄ちゃんのチョコフォンデュはおいしくて大好きなの〜♪」
無邪気な笑顔を携えてミカエルに擦り寄るミリア。「こらこら」と苦笑を浮かべながらも,甘えてくる妹を抱きしめる腕は温かい・・・

だが一行を尾行する影が,茂みの中から彼らをマークしている最中でもあった。小柄で太った火鬼と,それとは対照的で大柄なレイス。
火鬼はというと,どこから手に入れてきたのか・・・ピンク色の奇妙な色合いをした木の実を手に,悪どい笑みを浮かべている。
「クヒヒヒヒ・・・あのガキ,ミカエルの妹だけあってタイマンじゃぁ勝てる見込みはねぇが・・・こいつがあれば戦力ダウンだぜぇ〜」
「えっ,ちょっ先輩?そのピンクの実って一体何なんスか?それをミリアたんに食べさせるんスか?」レイスが恐る恐る訊ねる。
「あぁん?てめぇそんなこともわからねぇのか!?この実はなァ,食った奴を若返らせる『ヤングバック・ベリー』って種の実だ。
 つまりこれをあのガキんちょが食べれば・・・そういや実一つで8〜10歳ほど若返るらしいし,5歳児になっちまうだろうよ!!
 クヒヒ〜ヒヒヒヒ!!!あぁ〜オレって頭い・・・ん,アレ?おいダリオ,おめぇヤングバック・ベリーをどこに・・・あぁ!?」

驚嘆する火鬼が見たものは・・・ダリオという名のレイスがヤングバック・ベリーを手に鼻息荒く猛ダッシュしているとこだった!!
「みっ,みっ・・・・ミリアちゃぁああぁああぁああぁぁぁあぁぁあああぁぁんっ!!!幼女幼女幼女ぉぉぉおぉぉぉぉおぉぉぉ!!!」
「あんのクソったれのロリコンレイスっ!!!あいつの幼女フェチのせいで何度窮地に立たされたと思ってやがる!?ちきしょうがっ」
舌打ちをかまして,火鬼もまた暴走気味なレイスの後を追う・・・・・・


―――・・・昼食を終えたミリア一行。地面に座り込んで腹を休めている最中だ。ミリアとファミィは満腹のあまり眠ってしまった。
「うぅ〜っぷ・・・ゲプ,あぁ〜食った食っ・・・お,そうだ。サーファイユ,この辺に何か果物が生ってる場所とか知らないか?」
「あっ,それなら丁度ここから西の方にパッションピーチが生ってる木があるよ!案内してあげるよ,ミカエルさん!!」
「だけどよぉ・・・ミリアとファミィを寝かせたままにしても大丈夫か?それにさっきから誰かに尾けられてる気がするんだが・・・」
「大丈夫だって,きっと森の生き物の気配かもしないし・・・パッションピーチの木はここから歩いて1,2分くらいだし,早く行こうよ!!」
「まぁそれもそうだわな・・・うっし,じゃぁちゃちゃっと行ってデザートにでもすっか!!」「うんっ,急ごう!!」
駆け足でその場を離れるミカエルとエルフ戦士のサーファイユ・・・だが,このわずかな時間に思わぬ事態が起ころうなど
誰が予想できようか。可愛らしい寝息を立てるミリアの元に,巨大な影が忍び寄る・・・!!!

315ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/07/08(火) 11:59:03 ID:OhTl4zsk0
―――・・・ミリアたちが休息中の場所から少し西へ。ミカエルとサーファイユの二人はパッションピーチの木の麓へと到着した。
「ほぉ〜,これが噂に聞く幻の果物『パッションピーチ』か〜・・・夕焼けのような鮮やかなオレンジ色,はじめて現物で見たぜ。」
ミカエルが感嘆の声を漏らす。燦々と輝く夕日のような色をした桃の実が,所狭しと木の上に生っている。誰でも溜息を漏らすだろう。

「すごいでしょ,パッションピーチは20年に一度しか生らないレア中のレアな果物なんだ。食べた人にはこれまでにないくらいの
 至上の幸運が訪れるって言われてて,高値で取引されるんだ。だから密猟者が多くて,僕たちエルフはこの木を守っているんだよ。」
「ほへぇ〜・・・なァ,オレも一個食べてみてもいいかな?ングっ・・・やっべぇ,よだれが止まらねぇよぉ〜///////」
顔をほころばせて,よだれをボタボタとミカエルは垂らす。そんな彼に苦笑を浮かべるも,サーファイユは一個だけ食するのを許した。
早速木によじ登り,パッションピーチの実を採ろうとするミカエル。だが果実のあまりの大きさに彼の興奮は余計に高まる・・・!!
「うっひょぉ〜!!!近くで見るとこんなにもデケぇのかよ!?まるでウチの姉貴のおっぱいだな・・・ん?姉貴のおっぱい!?」
そう自問自答する彼の目の前には・・・肌色をした二つの大きな球体,そしてそれぞれ中心部にはピンク色の突起。まさか・・・

イヤ〜な予感が彼の頭の中を過ぎる。だが確かめてみないことにはわからない,今目の前にしているのが姉貴の乳房なわけがない。
そうだ、これはパッションピーチが突然変異したやつなんだ,きっとそうに違いない。だったら,このピンク色の突起を摘んでも・・・

だが,その憶測は所詮は彼の思い込みに過ぎなかった。ピンクの物体を指先で突付いて擦って・・・そして出てきた反応は・・・

「ふぁ・・・んっ,あぅっ・・・んゃ,いやァ〜ん/////////////////」「・・・・・・・・・・・はぁ?」

異常にエロ可愛い喘ぎ声と乾き切った声が順番にその場に木霊する・・・そしてミカエルから『ブチィっ!!!』何かが切れる音が。

「てぇんめぇええぇぇぇええぇぇぇええええぇえぇぇぇえ!!!!何してやがるあぁあぁぁああぁぁぁああぁ!!?」
怒りのあまり闇雲にジャブやらストレートやらをブン回すミカエル,そして彼と対峙しているのは・・・姉,フィナーア!!!(ドーン)
「あぁ〜んっ,ミカエルちゃん怒っちゃいやァ〜んっ!!!お姉ちゃんの軽いジョークでしょぉ,カルシウム摂ってるぅ?」
「うっせ,空気読めよこのエロ姉貴っ!!!人が嬉しそうにしてるのにブチ壊しやがって,マジKYだなこのバカ姉貴っ!!!」
「まっ,お姉ちゃんに向かって『バカ姉貴』ですってぇ〜!?そんな悪い子はァ・・・あたしのバストでお仕置きよぉ〜んっ!!!」
いきなり弟の顔を掴み,それを自身の胸の谷間へと強引に挟み込む!!!もがくミカエルだが,逆に息苦しさを増してしまう・・・
「んむぐ!!?むごぉぉぉぉおぉぉおぉぉぉ!!?!ぱべぼぽぼばばはぺびぃ〜!!!へくはばはんぱ〜い!!!!!」
「あらあらァ,セクハラ反対だなんてぇ・・・これはお姉ちゃんから弟への愛の印なのよ!?ちゃんと受け取らなきゃダメよぉ〜!?」
「うんごぉぉおぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉおぉぉ!!?!」「(ごめんねミカエルさん,僕にはどうしようもできな・・・ん!?)」
二人を余所に合唱しているサーファイユが,木々の声を感じ取り表情を険しくした!!ミカエルを引っ張って彼を助け出すと
彼の耳元で囁き,急いで戻るように促した。二人はフィナーアのことに気もくれずに走り去っていく・・・・

「まぁっ,いきなりセクシーでキュートなフィナちゃんをシカトだなんて,いい度胸だわっ!!フィナちゃんプンプンよぉ〜!!!」
相変わらず露出度の高い格好,今日はV字型のギリギリ水着を着ている彼女は腰をくねらせプリプリと憤慨する・・・すると
ボトリ。と何かが落下する音が・・・彼女が足元を見ると,そこには黄金に輝く一つの桃の実が・・・
どうやらただのパッションピーチではないのは確かなようだ。しかしそんなことも考えずに,彼女はまじまじと果実を見つめ・・・

一口で平らげてしまった。

「あんっ・・・はふぅ,なかなか情熱的な味だったわァ。それに何かとてつもないパワーが沸いてくるような・・・あぁ〜んっ!!?!」
後に,この実を食べたことにより彼女はとんでもない体質になってしまうのを,彼女自身はまだ知らない。

316ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/07/08(火) 12:10:07 ID:OhTl4zsk0
そして場所はミリアとファミィが休んでいた場所・・・そこへ戻ってきたミカエルとサーファイユが目にしたものは・・・
「ふゃぁ〜んっ,えぅ・・・ふみゅぅ〜,ふぇえぇ〜ん!!?!」ミリアが泣いているのだが・・・何と,5歳児のような体格に
なってしまっているのだ。その傍らではファミィが彼女をあやそうと必死に奮闘している最中だった。

「な・・・おいおいファミィ,一体こりゃ何があったんだよ!?何でミリアが子供に戻ってるんだ!?」
「ん〜・・・オイラが起きたらいきなりこうなってたさ〜,何でなのかオイラもわかんないさ〜!!!!」
「まさか・・・これはあくまで推測だけど,誰かがミリアに『ヤングバック・ベリー』を食べさせたに違いない!!
 気をつけて,ファミィにミカエル・・・近くに敵が潜んでいるかもしれないよ!?ミリアを皆で守るんだ!!!」
「あぁ・・・ちくしょう,オレの妹をこんな目に遭わせやがって!!!ぜってぇ許さねぇっ!!!」
怒りの炎を瞳に燃やすミカエル,だが側で微笑む小さな妹にはキープするのも難しく,優しい笑顔へと戻っていく。
「ふみゅ・・・おにいたんだいちゅきなのよ〜,うみゅ〜♪」「あははは,よしよ〜し。まずは元に戻す手段を考えようぜ。」
「ミカエル,ちょっと村に戻ってエストレーアを呼んでくるよ!!彼なら治し方を知っているはずだから待っててね!!」
サーファイユはというと,エルフの村にいる医者,エストレーアの助けを求めるためにその場から離れた。
木の枝を駆け回る音が森に木霊する・・・

to be continued...

317ドワーフ:2008/07/09(水) 21:26:21 ID:AepyIIHk0
『ゼーレクラン』

ロマ村に住むエマは動物たちとも、精霊たちとも仲が悪かった。
癇癪持ちの彼女は笛を吹いても言う事を聞かない動物達に腹を立てて暴力を振るったり、全く従おうとしない精
霊に向かって悪口ばかり言っていた。
そんなエマの様子を見て長老は言った。
「エマや。動物や精霊は我らの奴隷ではないのだ。対等の立場で語り合わなければならん。まずお前が信頼に足
る人間にならなければ、彼らは絶対にお前の言うことを聞きはしない」
しかし心配する長老の言葉を彼女は聞こうともしなかった。
エマはビーストテイマーにもサモナーにもなれない男の子達を羨ましがり、彼らとよく遊んでいた。しかし、そ
の半面で動物や精霊を楽しそうに侍らせる他の女の子たちに嫉妬していた。
エマの動物達はというと、もう二度と彼女になつこうとはしなかった。すぐに暴力を振るうエマを恐れて彼女の
姿を見るなり逃げ出してしまうのだ。
そうしてついにエマが他の女の子の動物にまで手を出すようになると、長老も説教ばかりではどうにもならぬと
重い腰を上げた。
「エマや。この笛を少しの間だけ貸してやる。これを使えば動物達はお前に心を開いてくれるだろう。ただし、
その間にお前は彼らと仲良くなることに努めねばならない。決して、いたずらに命令してはならん」
エマは長老からその笛を受け取ると、首を傾げながらも動物達の元に行ってみた。
動物達はエマが来ると一斉に逃げ出し、物陰に隠れて怯えて震えだした。
エマはそんな動物達の反応にムスっとしながらも、長老に貰った笛を吹き鳴らした。
それはとても不思議な音色で、吹いているエマ自身も身体の奥で何かが震えているような感覚を受けた。
「こっちにこい!」
エマは隠れている動物達に命令した。
すると不思議な事に、怯えていた動物達がケロっとした顔でエマのそばに集まってきた。
エマは不思議がって試しにまた命令した。
「回れ!」
すると動物達はくるくると自分の尻尾を追いかけているかのようにその場で回りだした。
こうなるといよいよ面白くなってきて、エマはさらに命令した。
「跳ねろ!」
動物達は狂ったように飛び跳ねだした。
エマはあまりに可笑しくて、飛び跳ねている動物達を指差して笑った。
その様子を見つけると、長老は大きな声でエマを叱り付けた。
「命令をするなと言っただろう」
笛を取り上げられ、エマはふてくされた。
「お前には別な方法を考えねばならんようだ。しばらく動物たちに近づいてはならん」
そう言って長老は笛で飛び跳ねている動物達を鎮めると、去っていった。
エマは長老が持ち去ったあの笛をなんとしても欲しいと思った。あれさえあれば他の女の子を見返してやれる。
エマはあの笛を盗む事にした。
長老が外出している間に、長老のテントに忍び込んであの笛を探し出した。
そして勝手に持ち出すと、エマは早速動物達に向かって笛を吹いた。
そうして動物達を散々に動き回らせ、飽きてくると今度はケンカさせたりもした。
そうしていると、遠くに別の女の子が笛を吹きながら動物たちを散歩させているのが見えた。
エマは何か思いついたように笑みを浮かべると、その女の子の傍に寄っていって笛を吹き鳴らした。
「回れ!」
エマがそう命令すると、その女の子の周りにいた動物達が皆一斉に回り始めた。
なんと、女の子も一緒になって回っていた。
エマはポカンとその様子を眺めていたが、笛の力に気づくと手の中の笛を見て自然と笑みがこぼれた。
そのとき、背後からにゅっと伸びてきた腕が笛を彼女の手から取り上げた。
「この愚か者め」
その人物。長老は静かな怒りの表情でエマを見下ろしていた。
「愚かな娘よ。我らロマと言えどもお前のような者は必ず生まれてくる。憐れと思えばこそ何か手はないかと模
索してきた。しかし、またこのような事をせねばならんとはな」
エマは長老の顔を見上げて震えた。今まで見た事もない冷たく怖ろしい顔だった。
長老はエマに向かってその笛を吹いた。

318ドワーフ:2008/07/09(水) 21:30:15 ID:AepyIIHk0
あとがき
タイトル通り、またユニークをネタにしました。
心を支配するというこの笛が一番強そうな気がします。

319◇68hJrjtY:2008/07/10(木) 09:11:17 ID:SaqKH4OA0
>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
ミリア幼児化計画、再びの発動ですね(ノ∀`*)
しかも今回は本編での幼児化…ミリアの役回りがそろそろ固定されてきそうだといったところですか(笑)
一方フィナ姉の方もなんだか怪しい果物を普通に食べちゃった…こちらはいったいどんな効果なのか。。
某海賊漫画の○○の実シリーズを彷彿とさせるこの果物、果たしてミカエルはどう切り抜けるか(笑)
ミカエルのイイお兄ちゃんっぷりも良かったです(*´д`*) 続きお待ちしていますね。

>ドワーフさん
今回のU昔話はなんだか怖い終わり方で、教訓的なものすら感じられました。
ロマの中にも能力が劣っていたり性格的なものがあったりでエマみたいな子も確かに居そうですね。
結局その性癖は最後まで変わらなかったようですが…心を支配する笛、ゼーレクラン。
友好的、協力的に精霊たちと接するロマたちにとっても異色の笛でもありそうですよね。
次回の小説もお待ちしています。

320之神:2008/07/10(木) 17:26:56 ID:iLS/PbZU0
無題
◆-1 >>593 >>595 >>596-597 >>601-602 >>611-612 >>613-614
◆-2 >>620-621 >>622 >>626 >>637 >>648 >>651 >>681
◆-3 >>687 >>688 >>702 >>713-714 >>721 >>787 >>856-858 >>868-869
◆-4 >>925-926 >>937 >>954 >>958-959 >>974-975

◇――――――――――――――――5冊目完―――――――――――――――――◇
   >>25 >>50-54 >>104-106 >>149-150 >>187-189 >>202-204
◆-5 >>277 >>431-432 >>481-482 >>502 >>591-592 >>673-674 >>753-754
   >>804-806 >>864-866 >>937-939 >>971-972 >>997-1000

◇――――――――――――――――6冊目完――キャラ画>>907――――――――――◇
   >>122

◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――番外
>>796-799 クリスマス
>>894-901 年末旅行
  5冊目完
>>226-230 節分
>>358-360 >>365-369 バレンタインデー
>>510-513 雛祭
>>634-637 ホワイトデー@シリウス

321之神:2008/07/10(木) 17:28:21 ID:iLS/PbZU0
α

「うーん、シルヴィーさん…」
「はい?」

「このエレベーター、乗って平気なんですかねぇ?」
「もう、徹さんったら、心配性ですね…」

シルヴィーはスタスタと扉の前へ近づく。
そして、足をエレベーターの中へ踏み入れる。


…。

「ホラ、平気ですよ…、早くこちらへ」


俺は女の子を毒見に使った事を悔いつつ、そのままエレベーターへと乗り込ん…ダーーッ!?


ガガガガガガガガ…と好ましくない轟音と共に、それは急降下した。



                                      [定員 1名]



「うわああああああああああああぁっ!」
「キャアアアアアアアアァァッ!」

開けっ放しの扉からは、高速でスライドしていく壁面が見える…触れたら終わりか。


「どっどど、どうしまっしょぉ…」 声が震えてよく聞き取れない。
「おおおお俺にい言われても困りmmす」 俺も十分震えていた。

気がつくと、俺たち2人は抱き合って身を縮めていた。


「あ、今14階だそうです」
「シルヴィーさん…orz」



「ちょっ、このままじjjゃマジで死にますって…!」
「で、ですnnね」

抱き合ったまま、死体で発見されたらミカにボコられるな…と一瞬考えた。

「あの鳥とか魚で何かできませんkかっ」
「ウィンディとスェルファーです!」 どうでもいいよ…。


「あ、スェルファー!…水を満たして!この中にっ!」

あと6階で激突。

「う、うわっ?」
一瞬で、胸元あたりまで水が満たされた。

「息、止めて潜って!」

「うわわわわ…」

スーっと息を吸って、俺はエレベーターに潜った。

天井まで既に水は満たされた、少し後…。

映画さながらの音響で、、ミュリエ・ジュール本社、本日2度目の爆発が起きた。

322之神:2008/07/10(木) 17:29:44 ID:iLS/PbZU0
γ

「へっ?」

エレベーターを降りてすぐ、爆音が響く。
そして同時に大量の水が滝のように俺に向かって突進してきた。

「ちょっ、そりゃ無いぜ…」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

「うっ、うわあああああああああーっ!」

一瞬で水に飲まれた。

「ちょっ、ストップー!止まれ!あああああああっ!」

水の流れに乗り、どんどん通路を流れて行く。

「掴むもの、掴むもの……」


「…!」

ドアノブを数メートル先に見つけた俺は、掴みにかかる。

「あと少し……」

「今っ!」

がっちりと掴んだドアノブは、ライトの進行を抑え…

「ふう……?」

ボキン!

壊れた。

「マジかよおおおおおお!」

流れるプール、再開。



ψ

ミュリエ・ジュール本社ビル 地下4階
「うー、どこだぁ?」 

周りは草花が生い茂り、まるでビルの中とは思えない。

「偽者の太陽まである…俺草原は好きだけど、ここは嫌いだなぁ…」

地下階に作られた人工的な平原に、ナザルドは珍しく嫌悪した。


中には鳥や、他の動物、そして…

「残酷な人間め…我々が何をしたと言うのだ!」

「お!?」

サッ、と振り返るとそこには

「エンティング…?」

木の精がいた。

323之神:2008/07/10(木) 17:36:10 ID:iLS/PbZU0
こんにちは。
こんばんわかな?

お久しぶりです、生きてました。ごめんなさい。

リア用が多忙すぎて書き込むヒマがありませんでしたorz
天下一がどうなったかとか、リレー小説の進行とか、せっかく書いた七夕も載せられず。

以前の更新率はどこへ行ったのやらって愚痴…ってあれ?

また参加していきます、のんびりですが。

それと小説のタイトルは無題のまんまです、小説完結したらつけようかなと。

では引き続き小説スレをお楽しみ下さい。

之神でした。

324白猫@感想:2008/07/10(木) 22:45:14 ID:DBiBcWKA0
しばらくは感想屋として生きていこうと思う白猫です。

>68hさん
初っ端に「うおなげぇ」と素で言ってしまい、電車で怪訝な視線を感じました。白猫です。
最終章。本当はブレンティルのリベンジを書きたかったのですが、それをやると50を超えてしまいそうなのでやめておきました。
おかげでアネット、リレッタ以外のサブキャラがほぼ空気……特にカリア(ry
---
>全く疲れを感じさせないスピードでの執筆
結構イッパイイッパイでした。チェックもたまに抜けてしまうくらいいっぱいいっぱいでした苦笑
最終章にも2つほど誤字をしてますね……自HPへと上げるときは注意しますorz
フフフ、絶対に68hさん最強職人説は曲げないのです。68hさんは書くとスゴイ人なのです。(意味不
入れ替わりネタは現在製作中です。黒頭巾さんとの悪ふざけで書いたちびネルリレッタの方が先に完成してしまうってorz
まぁ、その……期待はあまりしない方が無難です笑


>憔悴さん
はじめましてでしょうか。初めまして。
ようやく憔悴さんの小説に追いつけたので、徒然なるままに感想を。
まずは異種職。私には想像も付かない設定、ありがとうございます。
複合技術も極悪ひd…コホン。出鱈目な強さであります。本当にありがとうございます。
金髪シーフいいよ金髪シーフ。ボニーいいです。好きなヤツです。
そしてチェルとリーネのやりとりは個人的に大好きです。敬語な人と人懐っこい人のやりとりは近しいものを感じます笑
続きをワクワクしながら待ってます。頑張って下さい〜


>黒頭巾さん
七夕であることを当日まで忘れていました白猫です。
つんでれろまさんいいよつんでれろまさん。あの出し渋みは個人的に大ッ嫌いですが(待って)
早速「ギルドホール緑化運動」に吹きました。これはまさに地球温暖化対策最終防衛ライン……あれ?違う?
はんらさんカッコいいです。ナイトさんかっこいいです。私もはんらさんを目指します。
おどりこさんの不器用かわいいのぅ……ごしゅじんさまには負けますがn(斬
仲良しないけめんさんとごしゅじんさまとファミちゃん。かわええのう、かわええのう(壊
最近タガが外れかかっています。このまま狂ったらどうしましょう。
兎にも角にも、続きを期待して待っています。そしてハロウィンはお任せ下さい。


>復讐の女神さん
�怔睨,寮瀋蠅繁睥論瀋蝓△Ć腓笋蠅Ľ襪福�
まさに目から鱗な設定をありがとうございます。なるほど、こういう考え方もあったのかと改めて納得。
そして化け物アチャの登場。別系統である二種類の魔法を操るアチャ。村一つという馬鹿げたパワーです。
さらにさらに、昨今のギルド事情というか盗賊事情というか。冒険者事情。そう、冒険者事情。
ケチな政府と金に貪欲な(三人は除外)冒険者。まさにいたちごっこ。なんだかその光景が目に浮かんで笑いました(笑うところ違)
次回の更新も楽しみにしています。


>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
ミリア――――――ッ!!!(叫
期待を毎度毎度裏切りません。というか斜め上を行ってくれます。大好きです。
そしてフィナ―――――――――ッ!!!(再叫
もうね、大好きです。青少年は見ちゃダメです。腐った人しか見ちゃダメです(意味不
DIWALIさんは予想の斜め48°くらい先を行ってくれます。次回も大いに期待します。
ハードルは上げるために存在します。なんならMAXまで上げましょう(待


>ドワーフさん
ゼーレクラン。
アイテム説明の通り[相手の心を支配する力]を持つ笛。
黒頭巾さんの「ふぁみりあいーえっくすしりーず」のようなほのぼのなお話も大好きですが、このような雰囲気のお話も大好きな白猫です。
いつもUお話を楽しませていただいています。そしてこれからも楽しみにしていますよー!
是非是非頑張ってくださいです。wktkして待っていますよ〜


>之神さん
こんばんは、お久しぶりです。
いつもながら改行がイカしています。いつもなら携帯から読む私ですが、PCから読んでも読みやすい読みやすい。
そして今回。恐ろしきかなエレベーター。定員は守ろうお二人さん(・ω・`)
開けっ放しで高速スライドする壁を想像し、大根おろしとかすぐにできそうとか思ってしまいました(コラ)
抱き合う二人を想像して吹きました。そして折れるドアノブ。空気の読めるドアノブです。
そしてエンティング登場。これはいい寸止め。
次回も楽しみにしています。

325 ◆21RFz91GTE:2008/07/11(金) 01:51:44 ID:n19Iy/ug0
////********************************************************************************////
  ■◆21RFz91GTE:まとめサイト(だるま落し禁止)
  ■ttp://bokunatu.fc2web.com/trianglelife/sotn/main.html
  ■Act.1 アレン・ケイレンバック 六冊目>>44-45
  ■Act.2 少女 3 六冊目>>65-67
  ■Act.3 少女 4 六冊目>>87-90
  ■Act.4 レスキュー? 六冊目>>173-174
  ■Act.5 蒼の刻印-SevenDaysWar- 六冊目>>206-208
  ■Act.6 緑の刻印-SevenDaysWar- 六冊目>>220-221
  ■Act.7 白の刻印-SevenDaysWar- 六冊目>>222-223
  ■Act.8 紅の刻印-SevenDaysWar- 六冊目>>272-273
  ■Act.9 封印された九つの刻印-SevenDaysWar- 六冊目>>426-427
  ■Act.10 封印された九つの刻印2-SevenDaysWar- 六冊目>>581-582
  ■Act.11 科学と錬金術とその未来と -SevenDaysWar- 六冊目>>710-711
  ■Act.12 Act.12 EDELWEISS -SevenDaysWar- 六冊目>>738-739
////********************************************************************************////

326 ◆21RFz91GTE:2008/07/11(金) 01:53:04 ID:n19Iy/ug0
Act.13 The Beautiful World 1



 一夜が明けて決戦前日、古都に住まう人々は大戦を予想し各々町を出る準備を始めていた。近くの詰め所や炭鉱都市ハノブを目指して東の城門前は長蛇の列が出来ていた。
泣きながら我が家を出る者や友人と抱き会う人々。分かれば馴れになってしまう事の悲しさから来る涙をこらえる者。幾つ物思いがそこには有った。
「いよいよ明日なんですね、こうして見ると何もかも光の速さで事が進んだようにも思えます。」
琥珀の人を手入れしているミトのすぐ脇にアレンの姿が有った。天守閣に集まるギルドの上層部達。その中にガズルの姿も見られた。
「勝ったとしても、この町をどの位現状を維持できるか…それだけが心配です。」
メガネを右手で直しながら広く綺麗なこの街を眺めるガズル。その後ろでタバコに火をつけるクラウス。
「分かりません、思い起こせばいつも犠牲になるのは無力な市民達です。この戦に勝てば大陸の半分は統括する事になるでしょう。そうすれば戦も起らずにすむ。」
「そう…ですね。」
「雑談はそのくらいにしておこうか、昼になる前に人員の配置を決めてすぐ様移動してもらう事になる。」
アレンが会話を止めた、そして天守閣の中央に備え付けてあるテーブルに各自足を運び広げられている地図を見る。
「第一斑は砂漠との境界線、グレートフォレスト近郊にて待機。第二班は中継所の詰め所手前で待機してくれ。ガズルはシーフ達に罠を設置するように伝令、第一般は敵部隊とエンカウント次第中継所まで退避。第三班と第二班は第一斑が目標に降下し次第攻撃を開始。第四班は王城跡にて待機してくれ。第一斑隊長ガズル・E・バーズン。第二班隊長クラウス・アルフォード。第三班隊長ミト・メーベ。第四班は俺が引き受ける。」
地図を開きながらそう説明する、後は各自配下の者に伝達を行い当日決行となる。
「あの…アレンさん。」

327 ◆21RFz91GTE:2008/07/11(金) 01:53:27 ID:n19Iy/ug0
「ん?」
「アデルはどうしたんですか?あの夜から全く姿が見えないのですが。」
今まで真面目な顔をしていたアレンはその言葉を聞くと一度だけ表情が歪んだ、同時にいらつきを表情に出しそれを落ち着かせようと懐からタバコを一本取った。
「用事があって出かけた、明日の朝には戻るそうなんだが…今朝方アデルの使い魔から連絡が来た。」
「何と?」
「「呪いの墓は何処だ?今どこかの浜辺に来ている。お土産に蟹とクラゲを持って帰ろう。」、だとさ。」



 「マスタ。」
会議終了後ガズルがアレンの部屋を訪れていた、ドアをノックして中に入る。
部屋の中にはカーテンを開けた窓のすぐ側にアレンが立っていた、窓から見える古都は静かでまるで早朝の古都を眺めて居るようだった。
「ガズルか、どうした?」
「…双子のランサーの事なのですが。」
被っていた帽子を左手で取り胸の前に添える。アレンは懐からタバコを一つ取り出して咥えた。
「あの子達も戦わせるのですか?」
「…あぁ。」
ガズルの口から出た言葉に咥えたタバコを落しそうになる、火をつける直前での事だった。帰ってきたアレンの言葉にはどこか悲しい意味あいも含まれているような。そんな感じだった。
「本当なら戦わせたくないさ、でもあの子達の意思だ。」
「しかし…。」
「ガズル、君が何を言いたいのかは分かる。」
「では何故。」
「…それ以上、言うな。」
背筋が凍るというのはこう言う事なのだろう。とても冷たい目でアレンはガズルを睨んだ。その目にはどんな意味が込められているのだろう。感じ取れる感情からは蛇の肌より冷たい殺気にも似た目をしている。
「あの子達の生立ちは聞いています、母親に捨てられそこに通りかかった英雄に育てられた。報告書を見ているのでしたら何故…。」
「…。」
冷たい表情のまま暫くガズルを睨んでいたアレンはタバコに火をつけるために右腕を前に持ってきた。そして指をこする摩擦熱を利用してタバコに火をつける。
「アレは最前線には出て来ないだろう、向こうからすれば切り札のようなもんだろうからな。」
「ですが、勝ち進めば必ずぶつかる壁になります。」
「…その時は。」
再び窓の外を眺め咥えているタバコを左手で取った。煙を吐きながら右手で握りこぶしを作りプルプルと振るえていた。
「その時は、俺がケリを付けるさ。」
「マスタ…。」
「それに…俺たちの全滅だって有りえる話だからな。アデルが間に合えばいいんだけど…。」
握りこぶしをほどき、再びガズルに顔を見せた。そこには何時もの笑顔で優しいアレンの表情があった。内心は砕けそうになりそうな感情と戦い、押し潰されそうな重圧に必死で耐えて居るような。そんな表情は一切出さずに居た。
「…お察しします。」
「あぁ、すまない。」
「いえ、マスタの仰せのままに…。」
ガズルは一度深くお辞儀して部屋を後にした。パタンと音を立ててしまったドアを見つめながらアレンは近くの机に向かう。机の上には一枚の報告書が置かれている。それに何度も目を通し、そして右手で握りこぶしを作っては机を殴った。
「なんで…なんでこんな事に…。」



Act.13 The Beautiful World 1
To be continues...

328 ◆21RFz91GTE:2008/07/11(金) 01:57:21 ID:n19Iy/ug0
スレの皆さんこんばんは、代理人の21R(仮)です

事情を説明いたします。
21Rさん(本人)は現在仕事多忙or別MMOで忙しいようなので続きを見たい読みたい渡し
代理人が許可を頂いてUPさせていただいてます。

名前のコテハンをお借りし、投稿させていただいている次第であります。
同時に皆様のご感想は私の方からご本人にお伝えさせていただきたく思います。
先に作品を読んでる私をお許しください(汗)

ではご本人さんから本編のメールが来るまで暫くお待ちくださいませ。

21R代理人 21R(仮)

329◇68hJrjtY:2008/07/11(金) 13:16:20 ID:SaqKH4OA0
>之神さん
お久しぶりです〜♪
定員1名って少なっ!さて、故意というかなんというか、エレベーター一個のせいで3人の命が危険に(笑)
とりあえず徹とシルヴィーは無事に済んだ(?)ようですが…ライト、順調そうだったのに(ノ∀`*)
一方ナザ君は怪しい空間突入ですね。もしかして事件の真相に一番近づいている…?
そろそろ外界の人々にも感づかれそうでハラハラしつつ。続きお待ちしています。
---
七夕ネタで完成されてるのならぜひUPしてくださいよー(笑)
せっかくの小説がデータの肥やしになるのが勿体無い(´・ω・`)

>白猫さん
感想屋増殖☆-ヽ(*´∀`)八(´∀`*)ノイエーイ
カリアス、そういえば(笑) でもあれくらいのレベル同士の戦いになるともはや仕方ない気もしますよ。
あまり種類を読んだ事はありませんが、ファンタジー小説や漫画なども後半はそんな展開が多い気が。
アネットやカリアスたちももちろん大好きですしワルキューレの一員として能力も高いのですが
やはりラストはネルとルフィエでガチッとシメてくれた白猫さんナイスです(笑)
(でもカリアスやアネットたちの単独小説はそれはそれで読みたい。ってまたリクしそうだorz)
リクの方は気が向いたらで結構ですよ〜♪ ちびネルリレッタ…それも読みたい!(こら

>21R(仮)さん
おお、本当に久しぶり…!と思ったらなんと代理人様!?
代わりに小説投稿してくれるファンなんていい話です(´;ω;`) ご本人様によろしくお伝えくださいませ。
さてさて、小説の方も佳境に入って参りましたね。戦争が近づいている雰囲気がプンプン。
思えばRSではGvというものがあるからか、あまり真剣な戦争情景は表現しづらいように感じていましたが
まったくそんな事は無く。まあ、これは単なるギルド同士の戦争ではないわけですが…。
そしてお約束。アデルさーん(苦笑)

330憔悴:2008/07/11(金) 17:50:21 ID:Wv5HCA4E0
熱い…
何年ぶりだろう、こんな熱を出したのは───…
「チェル姉さま…だいじょーぶ?」
自室のベットで丸くなっているチェルの横で、リーネがタオルを絞る。
先日の戦いの時にバリアートで流行っていた感染症を貰ったようで、40度を超えるひどい熱がチェルを襲う。
久しぶりの熱に、組織の大半もはじめてみる総帥の弱っているところを見るのは初めてだった。
「うあー。はよ…」
そこへ、ボニーが起きてくる。
あの日からボニーもまた、B棟に住んでいた。
「リーネー、ロマ村の依頼行くぞー…腹減った…」
「あ、今日なんだっけ…じゃあロンサムさんに任せていくねー」
この間からボニーと仲がいいのか、一緒に組織の依頼を解決しに出かけるため結構役立つ。
ただロンサムは半泣き状態だが。
「大丈夫、ですわ。私の分までお願いしますね」
「はーい、じゃあ行ってきますー」
いつもの五割り増しに輝いてるリーネはばたばたと着替えると、B棟を出て行った。
「と言ったのものの…」
熱い。
寝たらまたうなされるだろう熱に、頭は痛い、体は熱い…
しかし、この痛みに眠りに落ちていってしまう………。

「おねーちゃん、あたしね、ぜったいにおねーちゃんみたいな技使えるようになる!」
「あんたにはまだ無理よ…」
「でもね!おねーちゃん、すごいよ!あんなかいぶつ、いっしゅんでふきとばしちゃうんだよ!」
「きっと、リデルもいつか、出来るよ…私の妹だもの」

「助けて!おねーちゃん!たすけてぇぇえっ!!熱いよ…熱いよおおおぉ…」
「リデル!まってて、いま、いくから…」

「きゃあああああああああああああ!!」
「助けて!ロンサムさッ………」
外から叫び声と、燃え盛る炎の音がする…
ふらつく足で窓を覗くと、そこには…
「鬼………ッ」
炎の中、こちらへ向かってくる鬼を、ロンサムを先頭にB棟の者が戦っていた。
着替えずに、急いで外に出るが、もう大半の者は焼き殺され、数人は鬼に引き裂かれていた。
「フルヒーリング…ッリザレクション……ック…」
まだ熱もあり、体力のない体で仲間を回復していくが、その場で倒れる。
「総帥!まだ無謀です!大丈夫ですから、しっかり寝ていて…」
「だ…めです…鬼が襲ってくるのは…私とリーネを狙っているから…私が戦わなくては…いけませんの…」
自分さえいなければ、ここは襲われなかった。
自らの体が滅びてでも…鬼と…

331憔悴:2008/07/11(金) 17:50:49 ID:Wv5HCA4E0
ぺしっ
左頬が、軽くはたかれる。
「貴方のせいではありません。貴方が居なくなったら、どうするんですか!」
ロンサムは弓矢を置き、槍を取り出す。
「私に任せてください…!」
長く、鋭く尖った大槍は、周りの炎の色を帯びてうす赤い。
それを見、一斉に襲い掛かってくる鬼を、次々と槍でなぎ倒す。
(おかしい…あっけ、なさすぎる…)
前回と比べ、数が少ないのか、鬼はみるみると少なくなっていく。
そのたびに周りの残骸は増え、生きている鬼が居なくなるころにはロンサムは鬼の残骸で囲まれていた。
残骸が脈打っているように見える…
いや、実際に脈打っているのだ!
「その残骸からはなれ………ッ!!」
そう叫ぼうとしたときにはもう遅かった。
一つの残骸がロンサムの足に絡みつくと、それにあわせ別の残骸もそこへくっついていく。
全ての肉片がくっついたときには、巨大な鬼がロンサムの体を取り込んでいた。
それを見、チェルはペットの本を取り出そうとする。
「くふ…殺してくれるなよ、私が斬られる度にこの男も傷つくのだからな…」
その言葉に、歯を食いしばりつつ、チェルは本をしまう。
(どうすれば…いいの…!?)
「ばかな女だな…この男に戦わせたのだ、罪の無い者に…お前の身代わりとなって、な」
鬼は大きく腕を振り上げる。
その時、地に転がっていたロンサムの大槍が、鬼の胸を突き抜けた。
「くはッ!?」
「…その…人をバカ呼ばわりですか…どっちがバカなんですか!」
取り込まれつつあったロンサムが、鬼の肢体を切り裂く。
そして、鬼の後方に転がっていた槍で、心臓を突き刺す。
「ドラゴンツイスター!!」
ロンサムを中心とし、赤い竜と青い竜が鬼の肉片を燃やしていく…
その竜の怒りがおさまった時には、鬼の残骸は一つも無かった。
(戦士のドラゴンツイスターと…ランサーのファイアーアンドアイス…!?)
「もしかして、異種職…なのですか…?」
ぎくり、と動くと、
「そ、そうなんですよ…今まで黙っていて、すみません…」
聞くと、彼は昔からこの髪と技のせいで恐れられていて、やっと最近になって落ち着いたのだという。
そこで、もうこの技は封印しよう…と。
そして、リーネに聞かれたときに嘘をついたのは、もう無駄な争いをしたくなかったためだという。
「貴方を守りたい一心で…使ってしまいましたね…」
ロンサムは頭を抱えるそぶりをするが、すぐに立ち上がると、チェルを抱き上げる。
(…ッ!?)
「部屋に戻りましょうか、しっかりやすんでくださいね!」
真っ赤に紅潮した顔を手で隠しつつ、ロンサムを見上げる。
し、しかしこれで4人そろったわけだ。

332憔悴:2008/07/11(金) 17:51:14 ID:Wv5HCA4E0
「そういえば、魔石は…」
「ああ、ここにありますよ」
腰から青い石を出す。
「私のサファイアです…祖父から貰ったものなんですよね…」
「あーっ!チェル姉さまロンサムさんに抱っこされてる!」
ふと奥を見ると、リーネが両手を拳にして震わせていた。
「え、あ、これはですね…えーと」
「ずるーい!ねーボニーちゃん私も抱っこして!」
「へ!?」
隣に居たボニーにジャンプをして強請るリーネ。
「ていうか、これどーしたの?植物さんこげちゃってる」
「お、鬼がきまして…私が倒れてしまったので、ロンサムさんに…」
そこで、リーネはチェルが持っているサファイアの魔石に気づくと、再び叫んだ。
「あーっ!!!それ、魔石!?やっぱりロンサムさんが異種職だったの?」
ボニーは、興奮しているリーネを抱きかかえ、トントンと、小突く。
「ふぇ…はぁ、なによぅ!」
「まぁまぁ」
子供をあやすように抱っこする。
「まあ、そういうことですわ。そして、4つそろったので地下遺跡へ行きますわよ!」
「貴方の熱が下がったら、ですね」
そこへ、鼻歌を歌いながら組織の数人が帰ってきた。
総帥を抱っこしているロンサムと、少女を抱っこしているボニーを見、
「…!?な、なんですか、誘拐ごっこですか?」
本当に大変な一日だった。

この後したことを少し書こう。
まず、チェルの熱は無事2日後には下がり、大事として1日ゆっくり休み、元気を取り戻した。
そして4人そろったことから遺跡への侵入を急いだ。
しかし。
「…なに、これ…?」
はしゃぎ、先に遺跡をみたリーネは愕然する。
あったはずの遺跡はなくなっていた。
其処はただの平野となっていたのだ───…

此れについての可能性をあげるとすると、
鬼が危険を察知し、遺跡を消したか。
もしくは、別の何者かの手によって、遺跡丸ごとをどこかへ運ばれたか…
それは、正しく神のみ知ることだった。

333憔悴:2008/07/11(金) 17:51:50 ID:Wv5HCA4E0
北のある場所に不思議な洞窟が出来ている事を知らされたのは数日後の事だった。
その場所というのが場所だった。
キングベアーの巣。
世界には簡単に分けて5匹、恐れられているモンスターが居る。
まずはミズナの洞窟の奥に住み着いている毒蜘蛛、ミズナ。
そして、回避率で知られているキングラット。
ある戦いの場所に居る、戦争の王者、デビ・ロン。
地下水路の厳重な檻の中に閉じ込められたヴァンパイア。
そして、このキングベアーの巣にいる、キングベアー。
攻撃力はもちろん、致命打も酷いスグレモノである。
いまならこのキングベアー、タダで退治させてやる。
といいたいくらい危険な熊さんなのだ。
しかし、この熊の話をしている最中、ずっとボニーは自分の武器の爪を磨いていたのだが。
どーにかしてくれよ。
「そこの端末。話を聞きなさい」
「ん?キングベアー倒すんだろ、俺に任せとけ。あんなプーさんに負ける俺じゃないぜ」
「え、なになにぃ、ボニーちゃん熊さん倒したことあるの?」
リーネが目を輝かせて身を乗り出した。
「あたぼーよ。あのプーさんは元々俺が飼いならしてたもんだ」
プーさんは置いといて、この発言には流石のチェルも興味を持った。
「あの凶暴なキングベアーを?ただのブラウンベアーやそこらではなく?」
「おう。プーさんが凶暴になったのはそうだな、俺が一年ばかしとあの巣に行ってなかった時だ」

ボニーはバリアートの、とある豪邸で生まれ育った、まあ多少の我侭なら聞いてもらえるお坊ちゃんだったらしい。
そして、ある日ペットが飼いたくなったボニーは、メイドのビショップに頼み、キングベアーの巣まで連れて行ってもらったそうだ。
その時、前の冒険者によってズタズタに切り裂かれたキングベアーを応急処置をしてやったそうだ。
そうしたらなつき、約半年とキングベアーの巣に通い続けていたのだが、親にばれて、一年ばかし行けなかったらしい。
そしてそのうちに凶暴化し、ボニーの手に負えなくなった、と自慢げに語っていた。
「凶暴化して手に負えなくなったなら倒してはいないのですね」
ロンサムに痛いところを突かれたボニーは、しばし俯くと、リーネのように目を輝かせ、
「あそこで謎が解けるのかー。わーいうれしいなぁ」
と叫んだ。
組織の人の視線が気になった。

334憔悴:2008/07/11(金) 17:52:20 ID:Wv5HCA4E0
「うわー懐かしいな。ここは」
キングベアーの巣の前ではしゃぐボニー。
そしてそれにつられてリーネもわくわくとした表情で巣の中をのぞいていた。
「ロンサムならわかりますわよね、明らかにこの気配…」
「この間の鬼の気配ですね、それに増して殺気や邪気も感じます…」
「…?あれ、熊さんが…」
中を覗き込んでいたリーネが中を指差す。
少し暗くて見えにくいが、数匹の熊が倒れている。
「あれ、プーさんの子分その1とその2じゃないか」
数匹のうちの二匹、色が少し濃い者だ。
キングベアーの連れだという。
「しっかし、プーさんいねーなぁ」
覗き込んでいるうちに、二人は中へ入っていく。
「ちょ、ちょっとまってください、あぶな…」
「チェル姉さま、ちょっと来て!」
「………!」
其処には、キングベアーが居た。
巨大な檻の中に…
ベアーはかなり衰弱し、呼吸をしているのか、少し動く体のみが生死の判別ができた。
「プーさん…だれに…」
「遅かったね」
後方から女性と取れる声が聞こえる。
振り向くと、其処には悪魔のような、いや、しかしもっと邪悪な気配を漂わせたモノが居た。
「貴方は…?」
「私?フン、今から死ぬものにそんな情報はいらないだろう?…まあ、教えといてやろう。私の名前はサリア。鬼の国の姫さ」
「鬼の…頭か」
何かの本で読んだことがあった。
地下界には三つの種族が暮らしている。
一にネクロマンサーを仕えた悪魔。
二に鬼を使えた鬼能。
三に世界が始まった時から代々受け継がれてきた、まあ簡単に言えば地下界の王。
鬼の頭、鬼能は悪魔を敵視し、王の命令なら何でも聞く。
しかし、悪魔達は王の命令に逆らった。
そして、地下界を追放された。
鬼能が何を考えているのかは分からない。
しかし、地下界のとって有利な…天上界や、この世界の征服を企んでいないとも言えない。
実際今、鬼能の姫君が目の前に居、死の予言をしているのだから。
「キングベアーは衰弱している。しかし、それは今だけ。最期の力を与えてやる…」
サリアは、右手に持っていた骸に、小さな闇の結晶を入れる。
それは、骸の中で拡大し…
膨らんだ闇は、キングベアーに入り込む…
「人間が憎いだろう…何もしていないのに殺そうとしてくるものな…さあ、目の前の人間を殺れ…そして、お前のとーさんの仇をうちな!」

335憔悴:2008/07/11(金) 17:52:52 ID:Wv5HCA4E0
檻が消え、それまで震えていた体を持ち直し、怨念の篭った暗黒色の瞳で四人を見る。
「じゃ…じゃあ、あれはプーさんじゃなくて、プーさんの息子…?」
絶望するボニーに狙いを定めたのか、大きく跳ぶ。
「絶望するのは後ですわ!いまは、集中しないと…クッ」
いつの間にか姿を消していたサリアの方角を少しみたが、その瞬間を逃さない。
鋭い爪がチェルの肌に鮮血を流す。
「あ、ああ…でも、俺…こいつを殺したくない!」

コロシテ…

「…?」

アナタヲキズツケルナラ、コロシテ…

「意識が…?」

タシカニ、オトウヲコロシタニンゲンヲニクンデイタ…ケド、アナタハオトウのコトダイジニシテクレタ。ダカラ、アナタヲキズツケルナラ、コロシテ…

「………できねぇ………」
俯くボニーの背に、鋭い牙が食い込む…
「だ、大丈夫…お前を、殺したり……しない、から、泣くな…」
気が付くと、キングベアーの瞳からは大粒の涙が零れていた。
憎しみの気持ちがあっても、きっとボニーには何かを感じたのだろう。
そっと牙を離すと、少し動きが止まる。
「み、見てられないよぉ…ッひどいよ、あのサリアって人…だって、これじゃあ、熊さんが死ぬか私たちが死ぬまで、この戦いは終わらないじゃない…ッ」
キングベアーと同じく、純粋な涙を流すリーネ。
確かにそうだった。
あの、鬼能の姫が仕向けた戦いは、どちらかが死ぬまで終わらなかった。
いや、"私たち四人が死ぬように"仕向けた結果だった。
四人は罪無きキングベアーを傷つけられない。
キングベアーは攻撃を続ける………
そう、仕向けたのだ。

コロシテェッ………

キングベアーの爪が、振りあがる。
「浄化…」
チェルは、痛む足を押さえながら、小さく呟く。
その瞬間、洞窟全体に充満していた邪気が消える。
「複合技術…!」
テイマーののどやかな一日に足して、洞窟全体を回復の場と変えたヒーリングの力───…

336憔悴:2008/07/11(金) 17:53:19 ID:Wv5HCA4E0
「…!私の人形が、消えた…」
どこか遠く。
暗黒に染めた長い髪を揺るがせながら、骸の髪を梳いていたサリアの、膝に乗せていた黒色の人形が消えた。
「…なんなの、噂に聞いてたより手ごわそうじゃない…」
まあ、この骸さえあれば…
「どおってこと、無いけどね…ッ」
というと、櫛を地に突き刺す。
イラッとした雰囲気を漂わせつつ、其処から消えた。
サリアの座っていたところに生えていた草は黒くこげていた。



゚・*:。.:・*:.'.:☆.+゚*゚+.。+゚,゚.+:。.+:。☆゚+.。+゚,゚.+:。.+:。*:。.:'・*:.':+.*。+゚.゚.+:。.*:。☆

鬼能というわけのわからない者をつくってしまった。
意味も無く実家の動物に悪戯描きをしている憔悴です。
猫を豚という、とても素敵な動物が出来ました。
全く、自分は何を言っているのか自分でも分かりません。


>◇68hJrjtY様

何故か文面がつまらないと感じてしまいました…
宝石は、石などが好きなため考えてみました。
はい、アーチャーと剣士でした。
高火力な物理二職で楽しもうと思いましたが、
今回はあえて知識で行きました。
ありがとうございます。


>白猫様

初めましてです。
68hさんに続き、このスレを見始めて存在の濃い、いえ
プロでもいけるのではないか、というような小説を読ませていただいていました。
完結、おめでとうございます。
ネルルフィエコンビに似ているのでしょうか、
この二人、いえ、ロンサム、ボニーを含め四人は身近な自分の知り合いを元に創りました。
たとえばチェルの元となった人物ですが、メインをテイマー、サブをビショップという素敵な組み合わせだったので小説にもそうしました。
リーネの元となった方は明るく、天真爛漫という言葉があう方でした。
でした、と過去形にするのはもう最近は話をしていないからですね。
またどこかであの子とあってみたいです。
そういえば白猫さんの小説は元となった人物などはいるのでしょうか…
話がずれましたね、
他のネタ等、楽しみにしております。

337自称支援BIS:2008/07/12(土) 01:21:47 ID:FF6L/MaE0
えー・・・お久しぶりです&始めまして、自称支援BISです
小説スレ5でWIZ&ネクロカップルを書き逃げした者です

今回は、黒頭巾さんの「いけめんさん」と国道310号線さんの「ブルーノさん」が登場します
いわゆるコラボネタです
ちなみにベースは武道&サマナの物語です(つまり68hさん狙いでもあります(待))

とりあえず、注意事項が一つだけ

※いけめんさんが盛大に壊れています
 黒頭巾さんの「いけめんさん」のイメージを壊したくない方は、「これはいけめんさんじゃないんだ!」
 と思い込んでから読んで下さい
 もしくは、読むのを止めて下さい

では、武道家&サマナーの物語、どうぞ〜

338自称支援BIS:2008/07/12(土) 01:24:27 ID:FF6L/MaE0
私は今藪森の中に居ます
目の前では武道家さん、剣士さんの二人がエルフ達と戦っています
私の隣では、WIZさんが彼ら二人の補助をしています

何故そんな場所に居るのか、ですか
それは・・・


〜依頼〜

「武道家さーん」
「ん、どうしたサマナー?」
「今銀行に行ったら、係の人からクエストを頼まれまして・・・」

ここは港町ブリッジヘッド
港町というだけあって、貿易を主とした町らしいです
シーフ達の本拠地でもある、シーフギルドがあるのもこの町と聞きましたが
本拠地に近づかなければ大丈夫みたいです

私は、数年前に結婚した武道家さんと一緒に露店巡りをしようと思い、
この町にやって来ました
前々から探していた品物が見つかったので、購入して銀行に預けに行ったんですが、
そこで係の人からクエストを頼まれたんです

「あぁ、もしかしてエルフから剣を取ってきてほしい、ってやつか?」
「はい、そうです」
「俺もさっきそれ頼まれたんだよなぁ・・・」
「そうなんですか?」
「あぁ。折角だし、今から二人一緒に終わらせないか?」
「そうですね・・・そうしましょうか」

そこで、私達は藪森に行く事になりました
藪森には、神聖都市アウグスタから行くのが一番近いので
テレポーターの方に向かおうとしました
そうしたら・・・

「突然すみません、私も一緒に行ってもよろしいですか?」

声のした方に振り返ると、そこにはWIZさんが居ました
町で見かける他のWIZさんと比べると、何だか「いけめん」って感じがしたので
私は心の中で勝手に「いけめんさん」と呼ぶ事にしました

「一緒に・・・って、藪森にですか?」
「えぇ、先程話されていたクエスト、私も受けているんです」
「あぁ、そう言うことでしたか」
「どうする、サマナー?」
「私は構わないので、武道家さんが良ければ・・・」
「俺も大丈夫だ。むしろ、あんたが居てくれた方が心強い」
「そう言って頂けるとありがたいです」

こうして、いけめんさんを加えた三人でクエストを行う事になりました


〜藪森〜

いけめんさんが風の加護をかけてくれたお陰で、藪森まではすぐに着くことが出来ました
ですが、実際に藪森を見てみると思わず足が止まりました

「こうして見ると、広いですねぇ・・・」
「そうだな・・・」
「別名迷いの森とも言われていますからね」
「えぇ!?」
「何でも、森の奥に行くには正しいルートを通らないと行けないらしいです」
「・・・もし間違ったルートを通ったら・・・?」
「延々と同じ場所をまわる事になりますね」
「またやっかいな場所だな・・・」
「まぁ、この地図の通りに行けば大丈夫ですよ」

そう言うと、いけめんさんは地図を取り出しました
なにやら迷路みたいな物が書かれていて、その中の一本の道に色が付いていました

「え?地図・・・?」
「えぇ、先程の町で買ってきたんです」
「流石WIZ、準備がいいんだな」
「偶然見つけただけですよ、それより行きましょう?」
「そうですね」

339自称支援BIS:2008/07/12(土) 01:25:26 ID:FF6L/MaE0
〜戦闘〜

藪森に入ると、いきなりエルフ達が襲いかかって来ました

「サマナー、下がってろ!」

武道家さんはそう言うと、跳び蹴りで敵の懐に入り攻撃を始めました
私も急いで召喚獣を呼び出し、エルフ達に攻撃を仕掛けます

「ウインディ、ゲイルパンチ! スウェルファー、バンブーランス!」
「サンキュ! よし、一気に決めるぜっ!!」

武道家さんの攻撃によって、次々とエルフ達が倒れていきました
やっぱり武道家さんカッコイイ・・・

「ふぅ・・・とりあえず片付いたな」
「みたいですね」
「・・・なぁ、あんた何やってんだ?」
「・・・申し訳ない、驚いたはずみで転んでしまったようだ・・・」
「大丈夫ですか?」
「あぁ、ありがとう」
「しっかりしてくれよー」

どうやらいけめんさんの運動神経は、良くは無いみたいです
武道家さんとは大違いです
武道家さんはかっこよくて、運動神経もバツグンで、私の事を一番に考えてくれてて・・・

「おーいサマナー、行くぞー?」
「あ、はーい」

いけない、武道家さんの事を考えるとついそっちに考えが・・・気をつけなきゃ
その後は武道家さんの攻撃、私といけめんさんの補助で順調に進んで行きました
時々私が武道家さんに見とれてしまって、進むのが遅くなったのは気にしない事にしました

〜洞窟〜

「滝の裏の洞窟を通っていくなんて・・・やっぱり地図無かったら辿り着けませんね」
「そうだな・・・WIZ、本当にありがとな!」
「いえいえ、私も一人では辛かったと思いますし」

地図上では、丁度真ん中辺りにある洞窟にさしかかりました
ここまでの敵はエルフと原始人だったのですが、ここでは芋虫が出て来ました
ですが、武道家さんが一匹を蹴り飛ばすと、他の虫達がいそいそと逃げて行きました
どうやら武道家さんとの強さが違うという事が分かったみたいです
やっぱり武道家さんは・・・

「・・・すまないな、サマナーは時々あぁなるんだ」
「なんとなく分かりますから、お気になさらず」

「お話中悪いんだけどさ・・・道空けてくれないかなー?」

武道家さんでもいけめんさんでも無い人の声で、私は我に返りました
後ろを向くと、そこには剣士さんが居ました

「あ、すみません」
「ありがと〜。ところでさ、エルフの持ってる剣ってのを探してるんだけど、何か知らない?」
「ん、それなら俺達もこれから取りに行く所だが・・・」
「本当!?俺も一緒についてっていい?」
「私は構いませんが・・・武道家さんとい・・・WIZさんは?」
「俺もOKかな」
「人が多くなるのは心強いですからね」
「ありがとー!あ、俺ブルーノって言うんだ、よろしく!」
「よろしくお願いします、ブルーノさん」

結局、洞窟の中で出会ったブルーノさんを加えた四人で目的地まで行く事になりました

340自称支援BIS:2008/07/12(土) 01:26:33 ID:FF6L/MaE0
〜守護者〜

洞窟を抜けた先は、前までと変わらない藪森でした
敵が少し強くなったような感じはしましたが、ブルーノさんも一緒に戦ってくれているので、
今まで以上に早く進んで行きました
そして、目的地の場所「ドーナツ」と呼ばれている場所まであと少しの所で、
いけめんさんが僕達を呼び止めた

「あ・・・ちょっと待って下さい・・・」
「ん、何だ?」
「地図上ではこの先に何か居るみたいなんです」
「何かって、何々?」
「少し古い言葉で書いてあって・・・えっと・・・ガー・・・ディア・・・ン?」
「ガーディアン・・・って、守護者って意味だったような・・・」
「そうですね、大体は何かを守るために存在している物に使われる言葉ですね」

もしかして・・・私達が取りに行こうとしてる剣を?
皆を見渡すと、同じ事を考えているみたいでした

「守護者、ってついてる以上強いんだろうなぁ・・・」
「でしょうねぇ・・・どうしましょうか・・・」

私、武道家さん、いけめんさんが悩んでいると、ブルーノさんが不思議そうな顔をしました

「どうする、って倒せばいいんじゃ?」
「倒す・・・って、そりゃそうかもしれないが、どんだけ強いかも分からないんだぞ?」
「えぇ、出来るだけ安全な方法を・・・」
「そうです、いけ・・・WIZさんはあんまり運動が得意じゃないんですから」
「・・・はっきりと言われるとは思って無かったよ、サマナーさん・・・orz」
「あ、えと・・・その・・・すみません」
「否定はしないのな、サマナー」

結局いい案も出なかったので、ブルーノさんと武道家さんが先に進んで、
私と落ち込んでるいけめんさんが後ろからついて行く、という事になりました
つまりは今までと一緒、という事だったりもします


〜突撃〜

「この辺り・・・でしたよね?」
「・・・えぇ・・・そうです・・・」
「元気出しなよー、WIZー」
「大丈夫で・・・うわっ」ドサッ
「・・・言ってるそばから転んでるし」
「フフ・・・私は・・・運動神経が・・・悪いわけじゃない・・・」
「WIZ・・・さん?」
「私はっ・・・!」

いけめんさんはそう言うと、テレポーテーションで一気に進んでいってしまいました
私の言葉、そんなに気にしてたのかな・・・

「ちょ、WIZさん待ったー!」
「ガーディアンが居るんだぞーー!」
「いけめ・・・WIZさ〜ん!」
「・・・サマナー、さっきからWIZさん呼ぶ時に別の名前言おうとしてないか?」
「え・・・そ、そンな事ないデスよ?」
「声が裏返ってるのは気にしないでおくとして・・・早く行かないと!」
「そうだな、行こう!」

いけめんさんを追いかけるために、私と武道家さんはケルビーに乗せてもらって、
ブルーノさんは「俺は走るよ!」と言って走っていきました
ブルーノさん、元気だなぁ・・・いけめんさんとは正反対みたい
でもやっぱり武道家さんの方が・・・
・・・あ、いけないいけない、また自分の世界に入っちゃう所だった・・・


〜石像〜

「WIZさーん?」
「どこまで行ったんでしょう・・・」
「ってか、ガーディアンは?」
「そう言えば居ませんね・・・」
「まさかWIZさんが倒したとか?」
「流石にそれは無い気がするけどなぁ」
「ブルーノさんも何気に酷い事言いますね・・・」
「いやー、だって事実だし」

そんなやり取りをしながら進んでいくと、突然目の前に鎧霊が現れました
・・・ですが、何故か刀を振り上げた形で石化しています

「これ・・・石像とか?」
「こんな場所に石像は無いと思いますが・・・」
「って事は、これガーディアンなんじゃ?」
「もしそうだとしても・・・何で石化してるんだ?」
「もしかして、いけ・・・WIZさんが石化させたんじゃないでしょうか?」
「そういえば、ストーンタッチってスキルあったよなー」
「でも、あのスキル効果時間短くなかったか?」
「「「・・・・・・」」」

・・・悪い予感は良く当たる物、という事を改めて実感しました
って、そんな事言ってる場合じゃないんですよ!

「ウインディ!スウェルファー!ゴメン、お願い!!」

341自称支援BIS:2008/07/12(土) 01:27:38 ID:FF6L/MaE0
〜交渉〜

「はぁ、はぁ・・・」
「な、なぁ・・・召喚獣大丈夫なのか?」
「そ、それは大丈夫です・・・しばらく召喚出来ませんが・・・」

全速力でガーディアンから逃げてきた私達
ふと目の前を見ると、いけめんさんが腰を下ろしていました

「あぁ、君達やっと来たのか」
「WIZさんが突っ走ったんじゃないですか・・・」
「というか、WIZ元に戻ったのか?」
「・・・とにかく、目的の剣はあのエルフが持ってるらしいです」

いけめんさんが指差した先には、いかにも「俺が持ってるぞー!」
といったオーラを出したエルフが居ました
こういう場合は・・・やっぱりお願いしようかな

「じゃ、私に任せて下さい。ケルビー!いつものよろしくね〜」

私はケルビーを召喚すると、エルフの所へと向かわせました

「なぁ、ケルビーだけじゃ危ないんじゃないか?」
「まぁ見てなって サマナーのケルビーはちょっと違うんだよ」


「ほう・・・何か話し合ってるようですね・・・」
「俺、魔物と話し合う召喚獣って初めて見るんだけど」
「私だって初めて見ますよ」


「あ、どうやら話し合いは終わったようですね」
「・・・なぁ、何かエルフがケルビーに手を振ってるように見えるんだが?」
「しかもとびっきりの笑顔っぽいですよね・・・?」


ケルビーが戻ってくると、その口には剣が四本銜えられていました

「ありがと、ケルビー♪」
「よし、じゃ帰ってクエスト終了にしようか」
「そうですね〜」
「「・・・いや、ちょっと待て!」」
「どうしたんだ?二人揃って」
「えーっと・・・まず、何でケルビーはエルフから剣を受け取ってこれたんだ?」
「あぁ、私のケルビーは魔物と会話できるんです。なので、今みたいに話をして物を貰ってきてくれるんですよ」
「・・・どうやったら四本も貰ってこれるんですか?」
「そりゃ、この物語の作者が早く話を終わらs」

話の途中でしたが、武道家さんは間違って帰還の巻物を使ってしまったみたいです
あくまでも「間違って」です
決して「武道家さんを黙らせるために、作者が無理矢理使わせた」わけではありません

「・・・サマナーさん、どこに向かって何話してるんですか?」
「あ、何でもないです」
「とりあえず・・・・・・俺達も戻るか」
「・・・そうですね」


〜別れ〜

こうして、私達四人は無事クエストを終わらせる事ができました
武道家さんが「俺は帰還の巻物なんて使ってねー!」と意味不明な事を叫んでいたのが少し心配です

「武道家さん、サマナーさん、今日は色々とありがとうございました」
「ホント助かったよ、ありがとな!」
「また縁がありましたら、ご一緒しましょう」
「そうだな、それじゃ俺はこれで!」
「私も失礼しますね」

「ふーっ、何か今日は疲れたな・・・」
「それじゃ、早速ご飯の用意しますね」
「あぁ、お願いするよ」
「武道家さん、何が食べたいですか?」
「そうだなー、それじゃあ・・・」


え?ケルビーがエルフに話した内容は何だったのか、ですか?
それは、ゲーム内でケルビーに聞いてみて下さい♪

342黒頭巾:2008/07/12(土) 01:59:29 ID:fou9k2gM0
>国道さん
ちょ、アッシュストーカー自重www
盛大に噴きました…コミュ拒否疑惑に凹むブルーノ可愛いよブルーノ。
そして、マイペース金ちゃん…味方の筈のケルビに特技攻撃とは!笑
喧嘩仲間的な召還獣&P達の仲がとても面白いです…喧嘩する程仲がイイと(*ノノ)(ぇー)
ミモザの過去の出会いと、護れなかったというケルビの言葉…如何繋がっていくのか楽しみにしております!

感想も感謝でする…違和感少なかったようでよかったです(ノ∀`)ペチン
うふふ、きっとあの二匹は仲良くなれると思うのですよ(*´∀`)
てるみつくんファンクラブ会員番号一号としては再登場を願ってやみません(何ソレ)


>68hさん
ふぁみりあいーえっくすシリーズ、ファミたん視点でのお話は久々だったので…うっかり口調とか決まり事忘れかけてましt(ry
出だしを間違えて僕の名前は、にしちゃったり…名前じゃねーっての(´д`)
種族が違うと、個人の判別が難しいと思われます…人間が同じ種類の動物の見分けが付きにくいみたいに!笑
最近はんらさんを育てだして愛着が沸いて来たので、黒はんらさんはいつか出したいです←
ダークメルヘンをお望みの様なのでちょろちょろと別の短編を書いてみたら…ダーク分しか残らずに首を傾げている次第です、隊長殿(`・ω・´)ゝ(駄目じゃん)
七夕は職場で学生達がやっていたので慌ててお昼休みに書いてみた次第です…季節感って大事だね!(そんな)
何かもうイベントしかないのか…イベント担当なのか!笑
初心者クエか誕生日か…あ、ハロウィンはやる予定で打ち合わせしております(遠いよ)

ブランクあるとキツイですよねぇ…いつか、いつかきっとSSスレの神が降りてくるわ!(何)
取り敢えず、感覚を取り戻せるように念を送っておきます、ぴろぴろーって(ぇー)


>ドワーフさん
ドワーフさんのU話、いつも楽しみにしております(*´д`)
一枝梅の刀ってマトモに見た事がなかったので思わずググってしまいました。
今まで義賊って何かシーフなイメージだったのですが、剣士もアリだなって思ってしまいました(*ノノ)
遺されたザトーには哀しい結果となってしまいましたが、ハナは幸せだったんでしょうね(´;ω;`)ウッ
語り部のお相手さんに、ザトー達の意志が受け継がれているようで、嬉しく感じました。
ゼーレクランのお話は、童話みたいで…恐ろしく感じましたガクガク(((((゚д゚;)))))ブルブル
教訓的と言いましょうか…赤い靴みたいな。
今度見かけたら、ガクブルしてしまいそうです…笑
うふふ、いつかU話をコンプリートして下さると期待してみます(無茶振り)


>憔悴さん
初めまして、ROM専さんから作家さんへの転身おめでとうです!(*´∀`*)ノシ
異種職の設定にハァハァです…確かに、リトルもWIZも魔法を使う職ですし、テイマもBISも補助をかける職ですよね!
シフネクロにアチャ戦士もキタ―(・∀・)―ッ!!
特にロンサム…近距離にも遠距離にも強いなんて、最強すぎます((((´д`))))ガクブル
今までの登場人物の中でロンサムが一番のお気に入りです…素敵すぎです(*ノノ)
F&Iドラツイとか鬼すぎて…火と水の多段攻撃なんだから!Σ( ゚д゚)
ついに四人揃いましたが、異種職以外の誕生石の残りの8人も気になるところです!
と言うか、リーネたんTUEEEのに無邪気で可愛いよリーネたん(*´д`*)ハァハァ(自重)
ぷーさんの話は和むと共に切なく…ぷーさん息子(´;ω;`)ウッ
鬼能の姫様という親玉っぽいのが出てきてどんどんお話の謎の部分が見えてくると同時に、更に別の謎が深まってのスパイラルから目が離せません(*ノノ)

343黒頭巾:2008/07/12(土) 02:00:11 ID:fou9k2gM0
>白猫さん
わちょーい、完結編きたーよ!(´∀`)ノ
お会いする度に100KBいっちゃえいっちゃえと唆していた自分ですが、本当にお疲れ様でしたと声を大にして言いたいです←
読み応えたっぷりすぎてハァハァしました…読み込みが足りない部分がありそうなので、何度かじっくり読み込ませて頂きます(ΦωΦ)フフフ
マペットの契約者を護るのがワルキューレかと思いきや、契約者のルフィエ自身もまたワルキューレとは…!
と言うか、セシュアとアネットぉぉぉ!orzorzorz
やっぱりセシュアの現れたり消えたりの不可思議な動きは傀儡だったからなんですね(ノд;)
うぅ、コレから姉弟仲良く暮らせると思ったのに…アネット…orz
そして、一緒にいた筈のカリアスの空気具合がもうたまらんとです…好きだけど、可哀想なカリアスもまたイイy(ry
最近、彼は不幸担当なんじゃないかって思い始めてきました(今更)
しかし、万年病人とはナイスな呼び名です(待って)
そして、潜伏していたリレッタのPTへの帰還…あのドジっ子リレッタがしっかりさんになった!←
詳しく言わなくても相手の望む行動が取れるネルフィエコンビのツーカー振りに萌えるのは私だけでしょうか(死語)
そしてそして…ルヴィラィとルフィエ、最期にお母さんと娘に戻れてよかったです(´;ω;`)ウッ
最期の最期だってのが激しく切ないですが…最期だからこそ、言えた事もあるのかなぁと。
で、三年経ってもタイミングが悪くすれ違いな彼ら…本当にトラブルが絶えない!笑
本当にお疲れ様でした…まとめページで補足されたものを読んで新しい発見が出来る日を楽しみにしております(*´∀`*)ノ
…てか、番外編のリクいいの?(自重)
私的には、ルフィエのパパの“彼”とルヴィライの番外編を期待したいです(待って)

隠しキャラ入手条件に盛大に笑いましたから!笑
例のアレとかアレとかは、コチラもお付き合い頂けて嬉しかったのですよ!(*ノノ)
いつも突飛でアレなコレとかで申し訳ない!(どれ)
無茶振りの件は、未だに如何したモノかと←
はんらさんはお互いにナイトさんを目指しましょう…っても、ウチのはんらさんは突撃勇者になりそうですが(ソレはぶらっくはんらさんだ←)
てか、白猫さんが何故にそげにごしゅじんさまを大プッシュするのか不思議でなりません…普通のコなのに!笑
タガは外す為にあるのです…限界点なんて超えてみせるんだ!(色々駄目だろう)
ハロウィンは(,,゚Д゚)ガンガルます…白い子は取り敢えず不幸にすればイイんですよね?(ちょ)
むしろ、そちらのネタが楽しみで楽しみで仕方がありません(*´д`*)ハァハァ


>復讐の女神さん
Σ確かに車を突き破ったとかそんな話は聞きますが、雹恐い!Σ(゚д゚|||)
そして、魔術の属性のお話…火と水は確かに相反する属性ですよね。
RSではただの難易度としか分類されませんが、この設定は素敵です(*ノノ)
だから浮かぶレビテイトで地属性上がるんですな…風っぽいから!(待って)
そして、ラディルのモテモテ振りに(・∀・)ニヨニヨです。
賞金システム、あれば便利だろうなぁ…クエが世界中に散らばってて、面倒だったらありゃしn(ry
テルがそれだけ確認を促す依頼の内容が…あの変態魔術師絡みじゃないかとwktkしながら続きを待っております(*´∀`)ウフフ


>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
わーい、ちまミリアー!ヽ(´Д`)人(´д`)人(´Д`)人(´д`)ノ〜♪
…よりも、ミカエルおにーちゃんに萌々した私は駄目なのでしょうか(ぇー)
こんなおにーちゃん( ゚д゚)ホスィよ!←
ミリアとの絡みも、保父さんみたい(ぇー)
しっかし、野外でお昼ご飯がチョコフォンデュとか、おにーちゃん素敵すぎますから!爆笑
フィナ姉は相変わらずです…って、更にパワーアップしちゃうんですか!?Σ(゚д゚|||)

344黒頭巾:2008/07/12(土) 02:01:23 ID:fou9k2gM0
>之神さん
定員一名のエレベーターとか小さな遊園地じゃないんだから!_| ̄|○ノシ べしべし
順調だった筈のライトがトバッチリ受けてますが…折れたドアノブにGJと言いたいです←
もしかして、コレで合流出来るのかなとwktk!
木妖精、恐い見た目に反して可愛いと最近思い始めました…この野郎、お前達が!(ちょ)
ラッキーナザくんですから、きっと何かイイ事に結びつくんだろうなぁと楽しみに!
今まで「あなたとどなた」がタイトルだと思ってました…どんなタイトルが付くのか楽しみにしております(ノ∀`)ペチン

七夕で復活されると期待しておりました…SSスレの季節感担当のがたん!(ちょ)
せっかく書かれたのですから、うpして下さいよぅ…気になるなら、8月に旧暦の七夕とか!(ぁ)


>21Rさん
きゃぁぁぁ、続きお待ちしておりましたぁぁぁ!!!。・゚・(ノд`)・゚・。
蟹とクラゲはスバインビーチかな?
期待を裏切らないアデル…そうさ、そんな君が大好きさ!ヽ(´д`)ノ
一人で重圧に耐えるアレンくんが心配ですorz
TOPに立つってそんな事だってのは嫌と言う程わかってはいても切ない(´;ω;`)ウッ
せめて、少しでもイイ方向に向かうのを祈っております。
ご多忙みたいですが、如何かご自愛下さいませ(゚д゚)ノシ


>21R(仮)さん
おぉ、お疲れ様で御座います、スネーク!(`・ω・´)ゝ
先に読んでおいでるのに若干嫉妬するのはお約束(笑)として、橋渡しありがたいです(*´∀`*)
そうか、そんな手があったのかと目から鱗です←
如何ぞ宜しくお伝え下さいませ(*ノノ)


>自称支援BISさん
わーい、いけめんさんがヘタレだー!(喜んだ←)
いけめんさんは時々壊れるので全然おっけーですよ!(*´∀`*)(満面の笑顔/ちょ)
ドタバタ珍道中、とても楽しく拝見させて頂きました(*ノノ)
物理火力が二人に支援とサマナが一人ずつとは…うほっ、イイPT!(自重)
掛け合い漫才が面白かったです…ブルーノ正直!爆笑
今では普通に通れる藪森も、適正当時はかなり苦戦したものです…いけめんさんでガー君に何度殺されたか(嗚呼)
クエ対象MOBとの戦闘よりも辿り着くまでが大変とは、ケルビー最強伝説(?)ですね…何と便利な子d(ry
おっと危ない…帰還の魔石を破壊しようとして使って以下略←
またの投稿をお待ちしておりますにょろ(*´∀`)ウフフ(とか圧力をかけてみるテスト)


嗚呼、めがっさ疲れた…溜め込むんじゃなかった!orz

345◇68hJrjtY:2008/07/12(土) 16:14:34 ID:SaqKH4OA0
>憔悴さん
だんだんとUP量とスピードの増える続き、ありがとうございます!
ロンサム、やはり異種職でしたか…本人に思うところあったのでしょうが、無事に4人揃ったと思いきやまたも事件が。
「あえて知識職で行った」ロンサムのF&Iとドラツイ。恐ろしいながらそのエフェクトを見てみたいとか(ノ∀`*)
突然消えてしまった遺跡も気になりながらもボニーにとっては悲しすぎるプーさんとの戦い。
鬼能という存在設定も面白いと思いました。鬼とは地下界から来ているのが分かってきましたね。
サリアや他の鬼たちとの戦いをさらに予感させつつ、続きお待ちしています。

>自称支援BISさん
お久しぶりです〜!そして武道×サマナキタ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(*´д`*)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!
しかし、今回はそれ以上にいけめんさんとブルーノが大変なことに(笑)
一時的な狩り(クエスト?)PTの奮闘といったノリでコメディ風味にニヤニヤしながら読ませていただきました。
才色兼備ないけめんさん、意外にもギルメン以外の人たちの前ではドジっ子(子!?)だったりして…。
そして逆にギルメンたちの前では天真爛漫なブルーノはしっかり者とか(笑)
サマナたん視点の物語でしたが、折に触れて武道君に見とれる彼女は私の分身ですね!(*´д`*)
またの作品お待ちしています!

346防災頭巾★:削除
削除

347防災頭巾★:削除
削除

348名無しさん:2008/07/13(日) 18:42:28 ID:OnMpHZjE0
クソスレage

              )
             (
         ,,        )      )
         ゙ミ;;;;;,_           (
          ミ;;;;;;;;、;:..,,.,,,,,
          i;i;i;i; '',',;^′..ヽ
          ゙ゞy、、;:..、)  }
           .¨.、,_,,、_,,r_,ノ′
         /;:;":;.:;";i; '',',;;;_~;;;′.ヽ
        ゙{y、、;:...:,:.:.、;:..:,:.:. ._  、}
        ".¨ー=v ''‐ .:v、,,、_,r_,ノ′
       /;i;i; '',',;;;_~⌒¨;;;;;;;;ヾ.ミ゙´゙^′..ヽ 
       ゙{y、、;:...:,:.:.、;、;:.:,:.:. ._  .、)  、}
       ".¨ー=v ''‐ .:v、冫_._ .、,_,,、_,,r_,ノ′
      /i;i; '',',;;;_~υ⌒¨;;;;;;;;ヾ.ミ゙´゙^′.ソ.ヽ
      ゙{y、、;:..ゞ.:,:.:.、;:.ミ.:,:.:. ._υ゚o,,'.、)  、}
      ヾ,,..;::;;;::,;,::;):;:;:; .:v、冫_._ .、,_,,、_,,r_,ノ′

349名無しさん:2008/07/15(火) 00:23:58 ID:ddy6MTJU0
懐かしい夢を見た。
それは私の一番古い記憶。

人通りの多い通りの片隅で、雨に打たれながら座り込み、ただ行き交う人を眺め続けるだけの日々。
私は、気が付いたときにはここに居た。
道行く人は私を生ゴミなどを見るような眼で見ていく。
場合によっては人に罵声を浴びせられ、なじられ、理不尽な暴力に膝をついた。
ここでは子供が生きていくのは非常に過酷で、それは私自身とて例外ではない。
その為、生きていく為には何でもやった。

スリ・強盗

時には、人体実験の実験台にすらなって金を得、生活していた。
当時は、子供に殺しをさせるような暗殺集団があった時代だ、私がやっている程度は子供が一人で生きていく上では、日常茶飯事だった。
そして気が付いたときには同じ身の上の子供が集まり一つの集団を作って
、私はその集団の中心人物になっていた。

だがその時の私にはそんなモノはどうでも良かった。
所詮大人になろうとこの生活に変化はなく何れは誰かに恨まれ殺されるだろうと本気で考えていた。
しかし自分は生きている。
生きていく為に人から物を奪い、生きていく為に食っている。

何故?

答えが出ないまま悶々とした何かを胸に抱え日々を送っていく。
だが、そんな私に生きる意味を与えてくれた人がいた。

雨の日だった。
今日も【仕事】を終えて、自分達のねぐらに戻った時だ。
ねぐらへの出入り口に一人の男が立っている。
暗くてよく見えないが、顔から歳は40代といったところか。
男は背中まで伸びた白髪混じりの髪を後ろで結い、
白く古ぼけた武道家特有の武道着を纏っていた。

突然現れた男は、こう叫んだ。
「君達には一切の私怨はない。だが君達がやっている事は間違いなく悪いことだ。だから今、この場でお前達を成敗しなければならない!今なら俺から何とかしてやれる、だから君たちの頭と話をさせてくれ!」

仲間は私へ視線を送り、仕方なく男の前に顔を出す。
「……オレだ」
「なぁ、今すぐ解散できないか?」
「オレ達に死ねって言うのか?」
「そうは言ってない。ただ他のやり方もあったんじゃないのか?」
「ないね。……話は終わりだ、帰れ」
「そうもいかん。俺はこれでも仕事で来てるんでな」
その一言で周りの仲間が殺気立ち、

「今なら俺が何とかしてやれる!もう止めるんだ!」
この一言で一斉に各々の得物を携えて飛びかかっていった。

が、相手が悪すぎた。
あの人は、拳一つ、しかも右腕一本で仲間達を成敗していった。
当然、私も立ち向かっていったが一太刀浴びせる間もなく呆気なく打ちのめされた。
しかし当の本人は相当手加減したのだろう、まだ痛みを伴いながらだが動くことは出来た。
周りを見やると、そこには自分と同じように打ち倒されて呻き声をあげる仲間が所々に転がっている。
そしてその中心にあの人が立っていた。
その表情は酷く悲しいものだった。

しばらくの沈黙。

そしてあの人が口を開いた。
「すまない、これも仕事なんだ」
すると何処からともなく聞こえてくるかすれた声
「はっ、謝ってどうなるんだよ。
てめぇが、何してくれるって言うんだ?
俺達はただ生きていく為に、仕事してるだけじゃねぇか!
お前ら大人の勝手な都合で、つぶされてたまるか!」
まだ体にダメージが残っているのだろう、声量は無かった。
しかしその紡がれた言葉は、力強く私たちの気持ちを良く伝えていた。
すると周りからも罵声が飛び交う。
その言葉に対してあの人はたった一言。
「本当にすまない……」
と深く頭を下げた。
その行為に私はとても驚いた事は今でも覚えている。

何か間違った事をした訳じゃない。
何か悪い事をした訳でもない。
むしろいくら生きていく為とは言え、悪行を働いているのは私達であり、彼はそれで迷惑をしているその他大勢の為にこうして止めにきたのだ。
それも力づくではなく『説得』と言うカタチで。

それなのに彼は謝る。
今まで会ってきた大人は何奴も口ばかりで、決して心の底から言葉を紡ぐことはなかった。
だが彼の口から紡がれるのは誠心誠意の言葉。

ーこいつはどこまで人の事を考えているんだ?
内容はともかく、そんな疑問がふっと湧いた瞬間、この男に興味を持った。
生きること以外に、何の興味も沸かない自分がだ。
気が付いたときには、私の口から意外な言葉がついて出てきた。
「…分かった、従うよ」
「本当か!?」
当然仲間からは反対する怒号が飛び交うが私はそれを遮り、
「ただし!仲間が食っていける場所を与えてやってくれ」
「それなら任せておけ!」
と、即答に近いカタチで、拳を自分の胸にドンと押し当てながら、自信満々に言い放った。

350スメスメ:2008/07/15(火) 00:24:51 ID:ddy6MTJU0
「……眩しい」
朝日が部屋に差し込み私の顔に当たり、窓からの少し冷気を帯びた風が顔を撫でていく。
ここは古都ブルンネンシュティグのとある社員寮。
ここで自分は寝食を仲間と共にしています。
寝食を共にと申しましても各部屋には調理場がありますので大概の住人は自炊したりしています。


「それにしても懐かしい夢でしたね」
「んー、何が?」
「いえ、久しぶりに子供の頃の夢を視たものですから、少し感慨深くなっていたのですよ」

…ん?
ここは私の部屋。
ですから自分以外の人間が居る事などあり得ない訳でして…。

ふと自室のテーブルに目を向けると、側にある椅子にややもたれながら座りガツガツと忙しなくテーブルの上にある皿の食事をかき込んでいる二人組が…。
一人は白いポニーテールにカッターシャツを着ている少年、もう一人は金髪の綺麗なミニドレスを着ている少女だ。


「……何をしているんですか、アル?」
そう問いかけると少年の方が、事も無げに答える。
「朝飯食ってる」
そう、悪びれもなく答え腕をピッと上げ軽く挨拶すると彼はまた口の中にモノをいれモグモグと動かしだした。

「いや、あのですね。私はどうして私の部屋に勝手に入り込んで食事をしているのかと聞いているのですが?」
「腹が減ったから」

……もういいです。

大体彼はいつもこうだ。
突然ふらりと勝手に部屋へ入ってきて「泊めて」だとか「何か食べさせて」だとか勝手気ままなことを言い出す。
それもまだ許可を求めてくるだけマシで、酷いときは今回のように許可無く居座ってしまう。
しかも必ずと言っていいほど問題事を抱えてくるのですからこっちとしては迷惑千万ですよ。

「分かりました、では朝食を取ったら出ていって下さいね。私は仕事なんですから」
「そんなツレない事言うなよぉ、『お兄ちゃ〜ん』♪」と言う猫なで声が耳に障る。

「都合の良いときだけ弟面しないで下さい」

……申し遅れました。
私の名は、クニヒト=エヴァーソンと申します。
非常に、不本意ではありますが、この愚弟の兄です。

「いや、今日はマジで相談に来たんだよっ」
「ほぅ、勝手に人の部屋にあがり朝食をとっている事が『相談』ですか?」
「こ、これは……。あの子がお腹空いたって言うからさ、今のオレで連れていける所なんてここ位だったんだよ」
少し詰まって出た言葉からはいつもの様なフザケ口調では無く何処か力がなかった。
どうも少し様子がおかしいようですね。
まぁ、変なのは今に始まったことではないですけど。
「朝食の件は今に始まった事ではないにしても、そちらのお嬢さんについても、勿論教えていただけますよね?」とアルの対面の椅子に座り口一杯に食べ物を頬張っている少女の方を見た。
アルは少し黙り、そして珍しく神妙な面もちで先日起こった出来事を話し始めた。
どうやら核心を突いたみたいだ。

フローテック氏の依頼を受け、地下墓地へバインダーの討伐に向かった事。
バインダーの祭壇で襲われそうになっていた少女、キリエを助けた事。
バインダー討伐中に彼の友人であるアイナーと出会い、襲われた事。
キリエが剣に変身できる特殊な力がある事。
何とか助けようとあの『技』まで使ってアイナーを止めようとした事。
結果としてアイナーに太刀打ちできず、殺されると思ったが通りすがりの旅人に助けられた事。




「……大体は理解しましたが一つだけ腑に落ちませんね」
話を聞きながら淹れた紅茶を自分のカップに注ぎ、食い散らかされたテーブルに浅めに腰を下ろしアルを見る。
すると何で?と言わんばかりな顔で首を傾げた。
「その旅人ですよ。恐らくアナタの負っていた傷を治したのは魔術以外には考えられない。よく考えてみて下さい、今のご時世に、魔法を使える人なんて、そうそう居ません。仮に使えたとしても、『自分は魔術師だぞ』と正体を明かす人間は居るはずがない」
「あ……」

351スメスメ:2008/07/15(火) 00:25:30 ID:ddy6MTJU0
今から丁度40年前、それは起きた。
突如スマグ地方を拠点としたウィザード協会が当時スマグ地下道や各施設を占拠していたレッドアイを壊滅・吸収し、フランデル大陸の全都市国家に対してアウグスタを中心としたグリーク教の根絶を訴えたのだ。
突然の事態に各都市は、当然拒否もしくは相手にしなかった。
しかし事態はそれだけで終わるわけもなくウィザードギルドはブルンネンシュティグ、アリアン、ブリッジヘッドなどの主要な大都市で抗議デモを行い、グリーク教が如何に不適切な教団かと言う事を説いていきます。
その中で宗教どころか天使や天上界までも非難した抗議まであったと言う噂も出てくる程、講義内容は過激なものだったそうです。
当然、グリーク教の総本山であるアウグスタが黙っている訳もなく。ウィザードギルドへ3名の名のある僧侶を使者として出し、彼等に講義内容の全面撤廃を求めた。

しかしその後、ウィザードギルドから何の返事もなく、
月日だけが過ぎ第2陣の使者を送ろうかと協議していた頃です。
アウグスタヘ3つのちょうど頭がすっぽり入るサイズの木箱が送られてきました。
その丁寧に装飾されさらに立派な衣に包まれた木箱から出てきたのは……

元高名な僧侶達の姿です。

これに激怒したアウグスタ側は兵を集め、ウィザードギルドに対して宣戦布告する事になります。
これが後の歴史に名を残す『元素戦争』です。
初めはウィザードギルドvsアウグスタ(グリーク教)の大陸東部での争いでした。
しかしブルンネンシュティグ、シュトラセラトなどの中東部の都市国家が武力介入し、
更にそこへアリアンなどの内陸部の都市国家が、その隙を突いて各都市国家へと攻め入るという泥沼化の情勢になっていきました。
また、この戦争では様々な元素を用いた強力な大量殺人兵器や身体に元素を取り込んで戦闘力を増大させる技術などが開発・導入されるなど、益々戦況は混迷へと突き進んでいくことになります。

その泥沼と化した戦況が7年の月日が経ち、小規模な村などは殆どは焼け落ち、田畑は廃れ、人々の心は荒んでいった頃でした。
どこから現れたか今でも不明ですが、7人の傭兵や冒険家が各都市にて人々に停戦を呼びかけ、戦争を収めようと努める人たちが現れました。
彼等は自らを『Tierraーティエラー』と呼び、次々と各都市に停戦する様に呼びかけ実行していったのです。
そして遂にはアウグスタまでも武装放棄させ、ウィザードギルドにも停戦を呼びかけましたが決して応じることは無くやむを得ず僅か7人だけで彼らを追い込み遂には最後の砦であったスウェブタワーにて壊滅させたのです。
この時の戦争がきっかけで、アウグスタを除く殆どの各都市は同盟を組み、現在の様な統一国家としての一歩を踏み出したと言う訳です。
この立役者である『Tierra』の面々は英雄視され今でも語りぐさになっています。
アウグスタはと言うと戦争終了後から途端に大きな壁を都市周辺に建設し、現在に至るまで一切の交流を絶っている状態です。

そしてこの戦争が元素戦争と呼ばれるようになったか、これは判りますね?
そうです。
この戦争の後、徐々にではありますが空気中の元素の濃度が薄くなっていったのです。
初めは微々たるものでしたが、現在では元素を用いた機関はほとんど作動せず、魔術も余程の実力がある者でない限り扱うことが出来なくなってしまいました。
しかも、大体の家庭には、元素魔法を用いた生活必需品が多々あり、生活の面においても少なからずの支障が出てきていた、と言う事です。
しかし、これも未だに原因は分からず、解明が急がれている案件の一つです。

「よって今のご時世で魔法はおろか、それを行使する魔術師なんていうのは、ごく一部を除いて存在するはずがないのですよ。わかりましたか?」

「ぶっちゃけた話、要はウィザードがアウグスタに喧嘩を売ってぼろ負けして何故か魔法が使えなくなったって事だろ?」

……ぶっちゃけすぎです。

「とにかく、魔法使えることも自分が魔術師だと正体を明かすようなことをすると言うのはおかしいですね」
「まぁ、助けて貰ったんだしそれで良いじゃん」
椅子の背もたれに目一杯もたれながらそう答える。

どうして彼は、こうも楽観的と言うかここまで物事を軽く考えられるのでしょうか?

「それよかキリエの事なんだけどさ……」
「あぁ、それでしたら私の方で何とかしましょう」
「ホントか!?」
「知り合いの孤児院に話を付けておきます。話が付くまでの間は私の部屋で預かることにしましょう」
「え……」
アルの顔が予想外と言わんばかりに驚く。
「何か不具合でも?」
「いや、そう言う訳じゃないんだけどさ」

352スメスメ:2008/07/15(火) 00:25:53 ID:ddy6MTJU0
「まさか、一緒に連れて行くなんて言うのではないのでしょうね?」
そう言うと彼は黙り込んでしまった。
まさか本当に考えていたとは。
全く、何を考えているのでしょうか?
「で、でもさ。」
「『でも』も何もありません。仮に連れて行ってアナタはあの子にもしもの事が起きたとしたらどう責任を取ると言うのですか?」
「じゃあ、アンタは初めから見捨てればいいって言うのか!?」
「そうは言ってません。今のアナタでは彼女は守れないと言っているのです」
「守ってみせるさっ!」
そう、彼の眼と同様に強く言い放ちスッと立ち上がった。
「キリエ、行こうか」
そうして、キリエの手を取り入ってきた窓から出ていこうとする。

「何処に行くのですか?」
そう問いかけるとアルは私の方を見ずに
「じっちゃんの所。相談する人間違えたっ!」
まさか……
「今からすぐにブリッジヘッドまで行くつもりですか!?第一、行くとしてもどうやって行くつもりなんですか?」
「鉄の道沿いに歩いていけばそのうちたどり着くだろ」
「アウグスタの関所はどうするのです!?」
「なんとかなるっ!」
馬鹿げてる。
無計画もいいところではないか。

「……アナタの一度言い出したら一歩も譲らないところは、本当に『あの人』と一緒ですね。もう何も言いません。ですが、路上強盗団の動きが最近活発ですから気を付けて下さいね。あと…」
「分かったから、もう良いっ…」
もはやうんざりしている様子の言葉を遮り
「いえ、これだけは言わせて下さい。非常に大切なことですので」
「…何?」
「せめて玄関から出ていってくれませんか?」


すると、軽く舌打ちをして玄関から出て行くアル。
その後ろをトコトコとついていくキリエちゃん。




……ふぅ、やっと出ていきましたよ。
きっと、寮監にまた叱られることでしょうね。


それにしてもあのキリエと言う娘、不思議な雰囲気を持つ方でしたね。
何故でしょうか昔に同じ様な雰囲気を持つ人と会った事あった気が…。
ふぅむ、どなたでしたか?妙に引っかかる。

……おっと、こんな感慨に耽っている場合ではありませんでした。
私もそろそろ支度をしないと仕事に間に合わな…。

不意に時計を見やるのと同時に、私は眉を軽くしかめる。
もう出勤しなければ、遅刻が確定な時間だ。

「これは…、ちょっとマズいですね…」
そう呟くと軽く頭を掻いて、急いで支度を始めた。

353スメスメ:2008/07/15(火) 00:29:54 ID:ddy6MTJU0
小説スレ5 >>750
小説スレ6 >>6-7 >>119-121 >>380-381 >>945-949
小説スレ7 >>30-34

ぎゃー!sageれてない!?


……気を取り直してコメ返しだけでもしたいと思います。

>国道310号線さん
いやっ、そんな勉強になるような箇所があれば、むしろ教えていただきたいくらいでして……。
自分自身、アイナーはもっと掘り下げたかった所ですが、技量が追いつかずあの様なモノになりました。
もっと各キャラクターを生かせるように書きたいです。

>ESCADA a.k.a DIWALIさん
確かに萌えますな〜♪
しかし、自分自身が【萌え】より【燃え】体質なので熱い話が来るとさらに悶えます。
しかも、変に武に関わっていた分、「この格好でこの動きって動きやすいか?」などと考えてしまうのでちょっと楽しさ半減してしまう体質?です。
茶会ではお話があまり聞けなかったのでまたの機会にでもお話しませう。

>黒頭巾さん
スタダじゃなかったのね……orz
サバイバルで生かさず殺さず無限地獄……、えぇのぉ。
自分の趣味が入ってる?それがどうしたっ!
そんな黒頭巾の作品が大好きだっ!!(←こう言うところが【燃え】なんだろうな)

今回から別キャラクター中心の視点になります。
ややこしいかもしれませんがどうか生暖かい目で付き合ってやってください。

354拙作失礼します@初:2008/07/18(金) 06:21:08 ID:JxIMEokA0
 まぶたの裏側に赤い光を感じた。
六時起床、本日も晴天なり。
アルコールに犯された頭を二、三度振り、上半身をゆっくりと起こす。早起きは良い事だけど、褒めてくれる人物など私の周りには一人も居ない。
ベッドの脇にある机へ首を向け、机の上に鎮座する、鈍く青白い光を放つパソコンに視線を移す。最近はまり始めたネットゲームの資金廻りの一つである、「露店」を確認するが、私が出品していた商品は寝る前と変わらず画面の上に浮かんでいた。
ため息を一つ、気だるい意識と一緒に吐き出す。会社もやめ、怠惰で自堕落な生活にまみれたこの私を心配するものは、親兄弟、友人どこに矛先を向けてもどこにも存在しなかった。
立ち上がり、牛乳でも一つ飲もうかと思うが、それでも無気力的な思考に脳を支配され、その計画は直ぐに頓挫する。そのまま私は敷布団に体を預け、気が付けば二度寝の体制に入っていた。

――――――――

「あなた、大丈夫?」
 一人暮らしの私に有るはずの無い声が鼓膜を揺らす。開いた眼球に飛び込んで来たのは、雪のように白い華奢な腕。次に飛び込んできたのは手を伸ばした少女の隣に立つ緑色の生物だった。
「……へ?」 
 自分でも間抜けな声を出してしまったと思う。それでも私の脳は今の状況を解することを。その緑色の生物が振り上げた槍のような物――否、あれは「槍そのもの」だ――が次の六十五の刹那、その腕に突き立てられたその状況を、一体何なのか思考することを拒み続けていた。
 少女は苦痛に顔を歪ませながら、それでも私に笑いかけようと必死に笑顔を繕っていた。彼女の伸ばした指先から垂れた血が私の顔にぽたりと垂れ、視界を赤く染める。そこで初めて、体が動いた。
 声にならない声を上げ、全力で後ずさる。手の平に感じるごつごつとした感触、今まで味わったことの無い極上の恐怖。まるで夢とは思えなかった。
 私が避難したことにより少女は臨戦態勢に入ることが出来たらしい。金色のイヤリングを揺らしながら大きく後ろに跳び距離を取り、その背の丈もある大きな弓に、光り輝く矢をゆっくりと番えた。その光に、緑色の生物のぬめぬめとした鱗が七色に光る。牙とその口角から涎を滴らせ、距離を詰めるために少女に飛び掛った。
 瞬間、少女の細い腕から光の粒が舞った。目を覆わずにはいられないほどの圧倒的な明。二、三秒後、瞼を開いたときには怪物の姿は無く、緑色の血だまりに立つ少女だけが残されていた。
 少女は私のほうへ顔を向け、ゆっくりと微笑む。安堵から全身の筋肉が融解したように弛緩し、私の意識はまたも闇へと落ちていった。

――――――

 ぶぅん、と静かな音を立てる冷蔵庫。そこはいつもの私の部屋だった。夏の暑さのせいだけではない汗が全身を包んでいて、酷く不快だった。夢、にしてはリアルだった。心臓の鼓動が自分にも聞こえるほど高鳴っている。
 とりあえずシャワーを浴びるため、体を起こす。壁に掛けられた時計に目をやると、時刻は正午過ぎを刻んでいた。深く寝入りすぎた、と反省をする。
 熱を帯びた頭と体をぬるめのシャワーで流し、バスタオルに身を包み。そこで、冷静な思考回路をやっと取り戻す。
 一日の大半をネットゲームで費やすという病的な生活のせいで、おかしな夢を見てしまった。壊れているんだろうな、と自分自身の評価を下す。
 パソコンに向かう。変化の無い画面に心の中で悪態を吐きながらも、私は操作のためのマウスを探す。
 クリック、操作、クリック。ゲームへ本格的に熱が入り始めたその時、マウスを動かす私の右手に何かが当たり、床へと滑り落ちた。
 屈み込み、机の下を見ると。錆びたイヤリングが落ちていた。脳裏に少女の穏やかで優しい笑みが浮かび上がる。自分のような人間を身を挺して守ってくれた、あの少女。

 十八時過ぎ、とあるコンビニ店員は目を丸くした。毎日この時間にやってくる一人の客。同じコンビニ弁当とパックに入ったミルクティーを買い続ける客が、今日はアルバイト情報誌を手にレジへ向かってきたのだ。
 何かあったのだろうか。勿論店員には分かることは無い。ただその表情は晴れやかで、それを見るコンビニ店員の心も少しだけ嬉しくなる。もう顔なじみとなった二人に、いつもより少しだけ、明るく取引が交わされる。
一人の少女の笑いかける声が、どこかから聞こえた気がした。

355354:2008/07/18(金) 06:25:59 ID:JxIMEokA0
 勢いだけで書かせてもらったので言葉の重複が多々有ったり、言い回しがおかしかったり
改行がきちんとされていなかっりと、不備だらけで申し訳ないです……。
 スレ汚し失礼しました。

356◇68hJrjtY:2008/07/18(金) 09:10:04 ID:hUbuaNDM0
>スメスメさん
なにやら新展開を予感させつつ登場のアルの兄、クニヒト。理知的な仕事人っぽさが感じられますね(*´д`*)
それよりなにより、この小説の世界観がだんだん浮上してきた事も特筆できますね。
「ウィザードギルドがアウグスタにケンカを売った後なぜか元素が薄くなった」分かりやすい解説までありがとう、アル(笑)
つくづく今のRS世界が戦争状態になったらと思うと…しかし、「ティエラ」という英雄集団もキーワード的に気になります。
アルとキリエが無事にブリッジヘッドまで辿り着けるかどうか、見守らせてもらいますね。

>354さん
初めまして!投稿ありがとうございます!
リアルとネットの境目がつかなくなる…まさかとは思いながらも誰もが恐怖する(?)、千夜一夜物語風小説ですね。
それが夢だったのかまた現実だったのかは分りませんが、彼(彼女?)が前に向かって一歩進めたのが何より。
画面の中のキャラが警告を、そして祝福をしてくれたみたいなように捉えつつ読ませていただきました(*´д`*)
もしまた気が向いた時の投稿などお待ちしています♪

357憔悴:2008/07/20(日) 01:35:01 ID:Wv5HCA4E0
お前は人間じゃないな!
出て行け!この村から!
この村を破滅に導く悪魔だ!!!

…もうやめてください…
どうしたら、この悪夢から逃れられるのでしょうか…
こんな力のために、こんなに辛い奴隷の毎日
救世主なんているのでしょうか
いたら、今すぐ私を助けてください…

「…ロンサムさん?」
チェルがロンサムの顔を覗き込む。
「どうかされましたの、顔色が、悪いようですわ」
「いや…なんでも、ないですよ」
自分が異種職ということが知られてからもう1週間程たった。
彼女たちは自分のことを仲間だと思ってくれている。
…判ってる、判ってるさ。
それは彼女たち自身も異種職であるから…
自分のことを同じ人材だと思っているのだろうな…
「…あんまり無理しないでくださいね、心配になりますから…」
しかし、この心を通る暖かい気持ちは何なんだろう
彼女はやっぱり、私の…
「ぼにいいいいちゃん!!!!!!!!!!」
「ん?」
台所にいたリーネが叫ぶ。
それはボニーに対してだった。
「あ、あたしのはちみつぷりんたべたでしょ…!!」
「嗚呼、うまかったぞ」
「うぐー!今日こそ息の根を止めてやるううううッ」
リーネがスリングを構える。
それにあわせてボニーも拳を握って戦闘態勢になった。
思わず笑みが零れてしまう。
幸せすぎる、こんな、ただ総帥様とリバーシをしたり、ボニーとリーネさんの戦闘を見てるだけのような、平凡な毎日でも。
このまま、この毎日が続けばいいと、誰もが思うだろう。
いままでなかった幸せが、いま降りかかってきている気がする。
それも、長くはないのだろうが。

358憔悴:2008/07/20(日) 01:35:38 ID:Wv5HCA4E0
「あの…」
数時間たち、ボニーとリーネが疲れて一緒に昼寝をしているころ。
B棟に珍しい来客が訪れた。
珍しいのは、2点あった。
まず、依頼ならばA棟にいくか、もしくは手紙で伝えるからだ。
もう1点は、彼女はサマナーのようだったのだが…
「あ、はい。わたくし、サマナーの格好をしていますが、悪魔なのです」
確かに、彼女はサマナーなのに髪が赤色であった。
チェルとは違う意味で、目立つサマナーだった。
「それで、今日頼みたいことなのですが…」
彼女は、鞄から、ルビーともとれる宝石を出した。
それが、魔石と形が同じくらいなのはいうまでもないだろう。
「あなたはいったい…?」
「元々、地下界にいた悪魔の頭でございます」
追放された悪魔のトップ。
つまり、悪魔の姫君ということだった。
「記憶はあるのですね、珍しく」
「はい、それで、この魔石を預かってもらいたいのです」
「ふむ…また、それはどうしてですの?」
「それは…」
地下界は元々、この"ライシュ"さんの父上がまとめていたものらしい。
だが、お人よしだった父上は別の者に王の証を渡してしまった…
悪魔、ネクロマンサーと鬼能、鬼たちは互いにいい関係ではなかったため、
王の証を握った元鬼能の頭は悪魔たちを出て行かせた。
しかし、失敗はここだった。
悪魔たちは魔石を持っていたのだ。
それも、2つも…
「わたくしがもっています、ルビー…それと」
またもや鞄を漁る。
そして、今度は紫色の宝石をとりだす。
「元は鬼能の姫がもっていたものを、わたくしたちのネクロマンサーが拾ったらしく…アメシストです」
「そのネクロさんも色が紫だったり?」
「はい、その通りです。しかし、彼は元々は普通の青いネクロマンサーでしたの。だけど、このアメシストを拾ってきたときに変色し…」
紫色にかわった、ということだろう。
しかし…鬼能の姫、ということはサリアがもっていたのだろうか。
彼女は紫色ではなかったが…
「推測ですが、魔石を手放すと力がなくなる、と考えられています」
「では、ライシュさんも力を…?」
「わたくしは、この魔石をもつ相応しい人物じゃなかったため、力はうまれませんでした。いっておきます。サリアは手ごわいです。本体は何度引き裂いても死にません…それと、戦うなら、この2つの魔石に相応しい人物を探してください。そして、仲間を増やすべきです」
魔石は人物を選ぶ。推測に、ゆっくりと…
相応しい人物が見つかったら、きっとなにか魔石に異変があるはずです。
4人じゃ無理です…鬼能はサリア一人じゃない。
覚えておいてください…

359憔悴:2008/07/20(日) 01:36:06 ID:Wv5HCA4E0
そう言われても、全くと言って検討がつかないわけだが。
「だけど、これであと6個になったね、魔石」
「…魔石は、格それぞれの頭がもってるんじゃないかしら…その人が異種職と限られるわけじゃないみたいだけど」
4人はなんらかで最初に選ばれた異種職。
残りの8個…まず1個目のルビーは悪魔の姫君。2個目のアメシストは鬼能の姫君。
そして、実際、チェルはテイマーの中でも有能な総帥をしている。
こう考えると、残りの6つも、シーフ、武道の頭、ウィザード、ウルフマンの頭…と
持っているのではないか…
「シーフの頭ならしってるぜ」
ルビーを見ていたボニーが地図で、スウェブタワーを指差す。
「ここのいっちばん地下の階にいるといわれてる。俺のにーちゃんだけどな!」
「貴方のお兄さんはシーフの頭ですの?」
「いや、そうじゃねーけど、あいつは強いぞ、とにかく」
まあスウェブの地下にいる時点で強いのはわかるが。
「…まあ、他に当てもないしいってみましょうか」

「おい…お前…」
何とかぼろぼろになりつつ(リーネは無傷)
スウェブの最下階につく。
そこにいた黒い人物にボニーは…
「老けたなあ兄貴い!!」
「おお、ボニーか!おめーかわんねーなぁー!」
ボニーと瓜二つ。
少し違うといえば帽子とマントの色だろうか。
「なー兄貴ぃ、魔石っつーのもってねーか?」
「ませきぃ?しらねーなぁ…だが、このどこかのモンスターが妙な石を持ってる、ということは聞いたことがあるぜ!」
誰にも倒せない、紅色のオーガ。
聞いた話から察すると、魔石を持っていることは明らかだった。
「そいつはどこにいるんですの?」
「おんやぁ…ボニーのこれか!」
小指を立てる。
その瞬間ボニーとロンサムからの拳でノックアウトされたのは言うまでもない。
「なんでロンサムまで?」
「ただむかついただけですよ」
こき、と指を鳴らす。
まあそんなことで死ぬシーフの頭じゃなさそうなんだが。
「あっちの方でみたっていうな。俺はしらねーけど…」
「ありがとうございます」
丁寧にお礼を言い、指がしめした方向へ進む。
「…ッなんか…怖いよ…」
今まで珍しく黙っていたリーネが、ウサギの姿でボニーにすがりつく。
「すごい、邪気と…痛みや、苦しみを感じるの…まるで、あのキングベアーの時みたい…」
紅色のオーガ…一筋縄ではいきそうになかった。

360憔悴:2008/07/20(日) 01:36:37 ID:Wv5HCA4E0
「おっ…よくあうねぇ。もしかして、あたいのストーカーかい?」
サリアがにやにやしながらオーガを尻に引いていた。
そして、手にもっていた骸にあの時と同じ、黒い結晶を入れ込む。
「またあの時みたいに…ッ」
「いんや、そんなヘマするもんか。そんなことしたらあんときみたいに浄化されちまうんだろ?あたいは王に新しい力を授かったんだよ!」
声を張り上げて叫んだ瞬間、黒い結晶はロンサムにむかった。
「そいつが心に闇をもってると思ったんだね…さあ、仲間と死の舞を踊りな!」
地に手を着くと、ビシビシと音を立てて地面が裂けた。
それはチェルを狙ったものだった。
「ッ!?」
がくん、と力が抜け、気を失ってしまう。
「ふふ…さあ、いくんだ!」
心が宿っていない目で、矢を取る。
「ロンサム、やめ…ッ」
確実にボニーの足を狙う。
そして、今度は5本まとめて矢を取る。
今度狙っているのはボニーの横にいるリーネだろうか。
「どーして…なんで、ロンサムさんはそんな…」
操られちゃったの…?
泣き始めるリーネに、さすがのロンサムも手が出せないのか、またボニーの方に弓を向ける。
「…くそ…とりあえず、その弓と矢は没収だな!」
分身を作り、ロンサムへ向かう。
その途中何度か矢を受けたが、分身が消えるだけ。
そして、弓と矢を奪いとるが…
「!!ボニーちゃん、逃げて、それは罠…ッ」
後ろから出した槍で、大きな二つの竜巻を起こす。
「てめー…いいかげんに…」
「やめて!!」
鞭を取り出そうとしたボニーをとめる。
「だめ、だよ。傷つけちゃ!ただ、ただ、操られているだけなのに…仲間なんだよ!?だめ…だよ?」
泣きながらリーネが叫ぶ。
頬から流れた雫は、ぽた、と地に落ちる。
「かはっ…はぁ…はぁ…」
その声を聞き、チェルが立ち上がる。
手足には無数の傷。
しかし、しっかり握った笛を精一杯吹く…
その音は、あの時奏でた浄化の音源だった。
「………ごめ…なさい…」
ロンサムは槍を落とす。
その声を聞き、チェルはそっと傍による。
そして、子供を慰めるように、ぎゅっと、抱きしめる。
「…総帥…」
「大丈夫、貴方が思っているほど、辛い人生じゃない。私たちがいる。だから…」
そっと耳元に顔を寄せ、
苦しまないで…
と囁いた。

361憔悴:2008/07/20(日) 01:38:02 ID:Wv5HCA4E0
その後、オーガからガーネットを貰うと、B棟へ帰還した。
チェルの傷は思ったより深く、1ヶ月は動けないという。
そんな体で歩き、ロンサムを抱きしめたのは…
「やーっぱり愛の力!だよねー!」
「なー!」
リーネとボニーがにやにやしながら笑いあう。
「…うるさいですわ」
ベットで横になっていたチェルは、低くどすの効いた声でつぶやく。
ばたばたと二人は総帥の部屋をでる。
たまには着替えも必要、と服を脱ぐ。
「総帥ー、あの件なのです…がっ!?」
白い肌に、大事なところだけを隠すようにした下着姿のチェルをみたとたん、時が止まる。
「し、失礼…」
ロンサムは鼻を抑えながら、開きかけていた扉を閉める。
「…なん…ですの」
チェルもまた、布団を被ってつぶやいた。
心の中の何かが、動いた気がした。

ドアの向こう、総帥部屋の前でかくん、と体を落とすロンサム。
(み…みてしまった…)
白くて、光る肌。
それに、何時間もかけて合わせた様な純白の下着。
遠くからみたら…まるで、裸のような…。
ぶはっ、と思いっきり血を吹きだす。
(な、なにを考えてるんですか、私は…)
鼻を抑えつつ、その場を後にする。

「チェルちゃんが動けない間に、1人異種職見つけるよぅ!」
「情報は集めてきました。さあ、見てください」
ロンサムが5枚ほど、紙を並べる。
「んー?ロマ娘シュリア…ああ、あの連続暗殺事件を解いた女か」
「スカイアーチャーズのGMライリア…ギルド戦争では勝ち続きのあのGですね」
「…ッ!!ぷ、ぷりんせすのねお…こ、このこにはまだ会いにいきたくないなぁーなんて…あはは」
「後は有名な剣士のホクスと…ネクロマンサーのウリン…ふむ」
何処からいこうか?

(1,チェルがいない間にロマっ子に話を聞いておく
2,格好良いおねーさまとお話をする
3,リーネが嫌がるプリンセスのところへいく
4,おにーさんと遊ぶ。(話す
5,ネクロちゃんに飴をあげる(話す…)

さあ、どれがいいかは小説スレの方が決めてください〜。
ちなみに今回、ひぐらしの鳴く頃に で使われている奈落の花を聞きながら書きました。あの曲は大好きです。
時間がないためコメント省き。

362◇68hJrjtY:2008/07/20(日) 04:17:30 ID:hUbuaNDM0
>憔悴さん
流れるような筆遣いとはまさに。たった5レスでかなーりな話の展開に驚きです。
宝石の残りも気になりますが、まずはやっぱり他の異職種…3人の候補が挙がっているようですね。
仲間を見つけて悪魔を倒す!なんだかオラ、わくわくしてきたぞ!っていうのは置いといて(笑)
さりげなくボニーの兄貴なども登場してますが、チェルの下着姿とそれに鼻血ブーなロンサムの両方に萌え萌え(*´д`)
次回は選択式ですか!(笑) ゲームブック風なノリに吹きました。うーん、では私は5で…旦~

363名無しさん:2008/07/20(日) 13:27:01 ID:XedeNcNE0
m

364ワイト:2008/07/20(日) 19:01:01 ID:bygiWkDM0
完全に自分の存在、皆無になってるかも?それは置いといて本題なんですが、
前スレの小説の続き、まだ完成に至ってないっていうか…難しい状況です。
完成するのも、何時になるやも知れませんが、ご了承くださいますよう…
まったく小説自体とは無関係な無駄レスですので、スルーしてくださいな。

365◇68hJrjtY:2008/07/21(月) 12:36:53 ID:Dh9WYsnM0
>ワイトさん
ワイトさんの小説、ちゃんと覚えてますよ!スルーしろなんて寂しいことは言わずに(´・ω・)
もし続きの構想があるというならばいくら時間がかかっても構いません、お願いします。
ただワイトさんが書ける状態でない等の理由があるならば止むを得ませんが…。
でも文面からは続きを書く方向(?)のようですし、ともあれお待ちしています!

366国道310号線:2008/07/21(月) 20:12:37 ID:Wq6z33060
・小説スレ六冊目
 第一話 〜 ミニペットがやってきた! 〜
 前編 >>487-490 後編 >>563-569

 第二話 〜 狼男と魔女 〜
 1 >>784-787 2 >>817-820 3 >>871-874 4 >>910-913

--------------------
・小説スレ七冊目
 第三話 〜 赤き呼び声(2) 〜
 1 >>228-232 2 >>254-257


前回のあらすじ:ミモザの回想、ストーカーアッシュ、ケルビと金太郎合流の三本でお送りしました


アラクノイドと出会ったあの日、幼い色だった新芽も大きくなり深みを増していた。
あれから程なくして卵を産み母親となった彼女に、私は亡くなった母の面影を求めていたのかもしれない。


アラクノイドが身を潜めているグレートフォレストの洞穴。
ミモザはアラクノイドの体に巻いた古い包帯を新しいものに変えていた。
彼女の全身を覆っていた包帯はほとんど取れ、歩くには支障が無いほど回復していた。
「もうすぐ包帯いらなくなりそうだよ。」

−そうであるか−

治療のために洞穴へ通っているうちに、言葉少なかったアラクノイドも彼女に答えるようになっていた。
包帯を巻き終わるとミモザはアラクノイドに弾ける笑顔を向ける。
「ねぇ、卵見てもいい?」
触ろうとするとアラクノイドが嫌がるためしないが、近くで眺める分には何も言ってこない。
彼女の回復していく姿を見るのも嬉しかったが、ミモザは彼女の子供達の誕生も心待ちにしていた。

アラクノイドの了解を得、白い蜘蛛の糸に覆われたたくさんの卵を見やる。
心なしか、前に見た時より大きくなっているように思えた。
「早くかえるといいね。」
笑顔でそう見上げれば、アラクノイドも顔をほこらばせ穏やかな表情をしている。
だが、ふと真面目な雰囲気でミモザに向き直った。

−ミモザ、おぬしは二度と此処へは来るな−
突き放すような言葉にミモザは驚き瞳を瞬かせる。
小声で「え?」としか聞き返せない彼女にアラクノイドは視線を外すと顔を背けた。

−この子達が孵ったら、わらわはこの洞穴からいなくなる。 会いに来ても無駄ということじゃ−

「そんな…。遠くへ行っちゃうの? もう会えないの? 」
ミモザはアラクノイドの太い脚をぎゅっと握ると揺さぶる。
仲良くなれた彼女から突然告げられた離別の言葉に、ミモザは泣き出しそうな顔をした。
「こいつぁ、元々この森の者じゃねぇだろ。 元気になったら帰るだけでぇ。」
アラクノイドの脚に抱きついたままの彼女にケルビーはぶっきら棒ながらも諭す。
嗚咽に変わりそうな吐息と零れそうな涙を懸命にこらえ、ミモザはごわごわした体毛に身をうずめる。
アラクノイドは何も答えなかった、沈黙した洞穴の中、外の木々のざわめきがやけに耳についた。

−来るよ 人間 人間だ たくさんいる 恐い顔 人間来るよ いっぱい来る 火と鉄持ってる こっち来る
 人間いるよ ほらすぐそこ 来る来る来るよ  ……来た −

バッと顔を上げるとミモザはアラクノイドを通り越して洞穴の外へ走った。
聞こえてきた声は木のものだけではない、風も鳥も騒いでいる。
注意深く耳を澄ましていると、いくつもの足音が近づいてくるのが分かった。
囁かれた単語に嫌なものを感じていたミモザだが、森から現れた群衆に息を呑む。
「何でぇ、これは…!」
彼女の後を追ってきたケルビーも驚きを隠せないでいた。

十数人の男達が手に武器や農具、松明を持ち行進してきたのだ。
それもいずれも見知った顔ばかり、ミモザの村の住人達であった。
「ミモザ! 怪我は無いか?」
ミモザに気付いた村人の先頭を歩いている壮年の男性が彼女に歩み寄る。
「…村長さん。」
ミモザは戸惑い気味に彼を見つめた。

村長の手には無骨な長槍が握られており、なめし皮の鎧を身に着けている。
彼は彼女の無事な姿を見て安堵の表情をしていたが、まるでこれから戦場に赴くような緊張感がうかがえた。

367国道310号線:2008/07/21(月) 20:14:23 ID:Wq6z33060

見つかった…? なんで? だれにも言わなかったのに。

アラクノイドと出合ったあの日以来、ミモザは彼女の事を誰にも他言したことは無かった。
村人達には自然の声は聞こえないというのに、彼等に口止めをしていたほどだ。
お前の様子がおかしい事を心配した村人の一人がお前の後をつけていき、大蜘蛛を見つけたのだと村長は言った。
「絶対中には入るな。」
ミモザが愕然としていると村長は村人を引き連れ洞穴に入ろうとする。
「っ… ダメ!」
ミモザは素早く村人の前に回りこむと両手を広げ立ち塞がった。

アラクノイドが殺される、そう感じた彼女は必死に彼の行く手を阻む。
だが、村人達に押しのけられ、彼女の小さな体は道を開けてしまった。
よろめきながらも再び彼等を止めようとするが、彼女は誰かに腕をつかまれつんのめる。
「お前はここにいなさい。」
腕をつかんだのは隣のおじさんだった。
「やだ! はなして!」
懇願し腕を引っ張るが、繋がれた手は固くビクリともしない。

そうこうしていると、洞穴の奥から布を裂くような動物の鳴き声と人々の喚き声があがった。
大きな奇声に驚いたおじさんの力が緩む。
その隙を逃さずミモザは彼の手を振り払い、一目散に洞窟の中へと駆け出していった。
「あの、バカッ。 戻りやがったっ。」
この場にいればミモザは安全だと思い傍観していたケルビーは舌打ちする。

あの物々しさから見て村人達はアラクノイドを本気で退治するつもりだ。
対するアラクノイドもそう安々と村人にやられるとは思えない。
それに彼女は卵を守るために容赦なく村人を襲うだろう。
激戦となることは想像に容易い、その渦中にミモザは舞い戻ったのだ。

通い慣れた洞穴を息を切らしながらミモザは進む。
「お願い無事でいて!」
祈るような気持ちで彼女はアラクノイドのもとへ急いだ。


アラクノイドは侵入者達に威嚇の声をあげ、前脚を大きく振り上げる。
蜘蛛の中でもとりわけ大きいアラクノイドであるが、今は小屋ほどあろうかと思えるほどだった。
その迫力に気圧されて動けないでいた村人達に村長のゲキが飛ぶ。
「怯むな! 取り囲むぞ!」
彼は長槍を下段に構えるとアラクノイドへ突進した。

槍を頭上で旋回させ蜘蛛を牽制し、一気に距離を詰めた勢いを乗せ顔面を突き刺す。
眉間を狙った攻撃はアラクノイドが避けたため急所を外したが、彼女の前肢に深々と突き刺さった。
耳をつんざくような悲鳴がアラクノイドからあがる。
「お前はあっちに回れ!」
「うっ…、こいつ卵まで産んでるぞ!」
接戦する村長に続き、村人達も各々動き出した。


ミモザとケルビーが洞穴の奥に辿り着いた時には、すでに戦闘は激化していた。
奥にアラクノイドを囲んでいる村人達、手前には彼女にやられたのだろう頭から血を流し倒れている人。
アラクノイドも背中に数本の槍などが刺さり、右前脚は無くなっていた。
その光景を見た瞬間、ミモザの体にも激痛が走り身悶える。
苦痛や恐怖といった感情が彼女の中に流れ込み、その身を切り刻んでいった。
「ミモザ…。」
我が身を抱きしゃがみ込んだ彼女をケルビーは心配そうに見やる。

「なぜ、戻ってきた!?」
すぐ近くで怒鳴られ、ミモザはゆるゆると顔を上げる。
目の前にいたのは村長だった、彼も肩から胸にかけて裂傷を負い荒い息をしている。
「お願い…やめて……。」
涙にかすむ視界の中、痛みを訴える心身を堪えて彼女は叫ぶ。
「どうして、こんなことするの?! アラクノイド、ケガしているのに! ここでじっとしていただけなのに!!
 …もうすぐ、もうすぐここから出て行くって言っているのに! お願い… やめてよ!!」
洞穴中に彼女の声は響いたが、村人と蜘蛛の戦闘は止まることはなかった。

泣き崩れそうになるミモザの両肩を村長は掴むと、彼女にいきり立った顔を向けた。
「直に卵が孵化すると子蜘蛛は母蜘蛛を食い殺し、次は人間も襲う…! 村のこんな近くに巣があるのは危険すぎ
 る!」
彼女の目を見すえながら彼は続ける。
「こんな時まで魔物の声が聞こえるというのか!? いい加減にしろ!!」
ミモザは零す涙さえ忘れ、ただ茫然と彼を見つめた。

368国道310号線:2008/07/21(月) 20:16:38 ID:Wq6z33060
激しい衝撃音がしたかと思うと、二人の足元に人が吹き飛ばされてきた。
村長は彼が吹き飛んできた方向に視線を戻し、厳しい顔をした。
お互い一歩も譲っていなかった戦況は一転、アラクノイドの猛攻に一人また一人と村人は倒れていっている。
−我が子には一遍たりとも触れさせぬ!−
彼女は血に塗れたアゴを大きく広げ雄叫びを上げた。

「ちっ。」
長槍を持ち直すと、村長は再びアラクノイドに攻撃を仕掛ける。
ミモザの瞳は村人とアラクノイドの激戦を映していたが、心ここにあらず只々立ち尽くしていた。


訳が分からなかった。

村長はアラクノイドがいるこの場所を危険だと言う。
アラクノイドは優しい蜘蛛だ、だって人間の自分を襲った事など一度もなかった。
村長はアラクノイドの子供が彼女と人間を襲うと言う。
あの優しいアラクノイドの子供が襲うというのか?
どうして?

思考は堂々巡りを続け、当ても無い出口を求めて意識の深淵を彷徨う。


アラクノイドが受けているダメージは大きく満身創痍ながらも倒れる気配は無い。
最初は数で押していた村人達だが、ほとんどが負傷し重傷者も出始めている。
「火を使う。 可燃剤を撒け!」
このまま手をこまねいていては不利と、一気にかたをつけるべく村長は最終手段に出た。


村人の一人がアラクノイドに火矢を射ると、瞬く間に炎が彼女の全身に燃え広がる。
次に放たれた矢は彼女の足元付近に刺さり、燃料の道をたどって卵にも発火した。
洞穴内を揺るがす凄まじいアラクノイドの叫びに、ミモザはハッと我に返る。
「アラクノイド!」
卵を見守るアラクノイドの優しい顔が頭を過ぎる。
このままでは母子共々焼かれてしまう、そんなことは堪えられなかった。

走り寄ろうとするミモザ、しかし、ケルビーは彼女のスカートを咥え行かせない。
「ケルビー! 放して!」
「バカヤロウ! おめぇまで燃えちまうだろうが!」
水の神獣をミモザが喚び出せれば何とかなったかもしれないが、まだ一番簡単な火の神獣しか彼女は喚べない。
今行っても無駄死にさせるだけだ。
そうなってしまっては、彼女の母親に顔向けできないではないか。

−あぁ、わらわの卵…−
炎に包まれ悶えながら、アラクノイドは卵の火を消そうとその身を覆い被せる。
その時だった、命の危機を感じたのだろう、まだ孵化の時期には早いというのに幼虫が卵から飛び出してきた。
裏返ったような甲高い悲鳴をあげる半透明の白い幼虫は、燃え盛る火を避けるとアラクノイドの腹に取り付き、
生命の行動原理に基づくままその体液を吸った。
だが、すぐに炎にまかれ、子蜘蛛は親に貼り付いたまま絶命してゆく。

辺りにはすえたような嫌な臭いがして、黒煙が立ち込める。
生に対する壮絶な蜘蛛の姿を見た村人達の中には吐き気をもよおす者もいた。
幼虫は次から次へと卵から孵り、村人にも襲い掛かる。
卵の一番近くにいた男性は握り拳大の幼虫に全身にまとわり付かれ、絶叫をあげ転がり回った。
「くそ…!」
彼に取り付いた幼虫を村長は槍で払うが、深く吸い付いているので中々離れない。
矛先を村長に向けてきた幼虫を槍で裂き、村長は猛然と子蜘蛛郡へ立ち向かった。
「村へは行かさん、全てここで潰すっ!」


襲い掛かってくる幼虫達を、ケルビーは体と同じくらいの長さのある尻尾をしならせ叩きつけた。
殻さえ固まっていない幼虫は地面に激突すると、体液を撒き散らしベシャリと潰れた。
「洒落にならねぇって!」
ぼやく暇も無く幼虫は襲い掛かってくる。
彼は体を反転させ、勢いを付けた尻尾でそれを薙ぎ払う。

逃げ出す村人もいたが、ほとんどは村長と幼虫相手に戦っていた。
いつの間に追いついたのか、隣のおじさんも農具を振るっている。
一匹一匹は大した事無い幼虫だが数は何十匹といる。
ケルビーは周囲に目を配らせたまま、背に守っている主に呼びかけた。
「ミモザ! 逃げるぜ!」
「……ゃ…」
震えるかすれた声で何かを言った彼女にケルビーは振り返る。

ミモザの見開かれた瞳からボロボロと大粒の涙が零れ落ちる。
「…い…や……」
後ずさり首を左右に振る彼女は、両手で耳を塞ぐ。
しかし、彼女の心に直接届く声は容赦なく彼女の心を切り刻んでいった。

−痛い 助けて 死にたくない 熱い熱いよ… 守らなければ 死ね 苦しい お母ちゃん…−

苦痛を訴える声、助けを求める声、何かを護ろうとする声、それらはもう誰の言葉かすら分からない。
轟音のごとく響き渡る声は止め処なく、今は自分の鼓動でさえ耳障りだった。

369国道310号線:2008/07/21(月) 20:18:30 ID:Wq6z33060
彼女の様子を見てケルビーは血の気が引いた。
心が重圧に耐え切れず外界との接触を遮断しようとしている?
術者と心が通わなくなれば、神獣は呼び出せなくなるばかりか具現化すら出来ない。
混戦となっている今、自分を召喚解除することは正に自殺行為。

「しっかりしろ! 気をちゃんと持たねぇか!!」
「いや! もうなにも聞きたくない! 聞きたくないよぅ!!」
激しく被りを振り、目をきつく閉じたミモザはその場にうずくまる。
キィィンと耳鳴りがして、一瞬だけ彼女の世界は無音となった。
消えゆく体でケルビーはせめてもと、ミモザに抱きつき身を挺しようとした。
しかし、彼は彼女の体に後一歩のところで姿を消してしまった。


死骸から死骸に火は燃え移っていく、炎に照らされた岩壁に揺らめく影は不気味なダンスを踊っているようだ。
動いている者が少なくなった洞穴に村長は長槍を杖のようにして、酸素の薄くなった空気を貪る。
最初にアラクノイドから受けた傷が響き、目は霞み立つのがやっとの状態だ。
彼は目の前にいる弱った子蜘蛛を突き刺そうと槍を振り下ろす。
だが、上げた右腕に別の幼虫が噛み付き、とっさに腕を振り払うが、その痛みに彼は槍を手放してしまった。
思わぬ方向に飛んでゆく槍の軌道の先には、うずくまっている金髪の少女。

「しまった…。」
青ざめる村長、しかし次の瞬間、黒い巨大な影が槍と少女の間に割り込んだ。

ドスッ と鈍い音が頭上でする。
暗くなった視界に何かの気配を感じ、ミモザは顔を上げた。
「…アラクノイ・・・ド・・・?」
黒く焼き焦げた蜘蛛の横腹が長槍で貫かれているのが、彼女の泣きはらした目に入った。

−…ゎ…らわ……の……こ……−

力尽き、アラクノイドはゆっくりと地に倒れる。
アラクノイドの最期の言葉は、ミモザにはもう伝わらなかった。
「…あ……ああぁ… ぅああぁあああああぁぁ!!!」
言葉にならない声をあげ絶叫するミモザ、彼女は変わり果てた姿の蜘蛛にすがりついた。
「危ない!」
村長の声に彼女は振り返ると、幼虫が自分目がけて牙を剥き飛んでくるのが見えた。
首筋に鋭い痛みを感じたかと思うと、突然視界は真っ赤に染まる。


そこで、私の記憶は途絶えた。


―ハイランド洞窟B2

崩れやすい足場の坂道をケルビーと金太郎は慎重かつ黙々と登っていた。
ケルビーの背中には眠ったままのミモザが乗せられている。
「おい、本当にこっちで合ってるのけぇ?」
のそのそと後ろを歩く金太郎にケルビーは何度目かの同じ問いをかけた。

落下音も無く崖下にやって来た金太郎にどうやって来たのか問いただすと、彼は降りやすい場所があったと言う。
彼の案内でかなり長い間崖を登り続けると、ようやく頂上が見えてきた。
「やっと着いたぜ。」
ケルビーは石造りの通路に足を付くとふぅと一息ついた。
しばらく犬の姿になっていなかったためか、彼女を運ぶのはいつもより大変に感じられた。
金太郎も重い甲羅を引きずり、通路に這い上がってくる。
彼の歩みに合わせていたので歩く速度は遅くなってしまったが、道を切り開いてくれた功績者にケルビーは感謝
した。

「しかし、ここはどこいら辺でぇ?」
石畳の道に魔力の燭台、自分達が落ちたあの通路に違いないようだが、こんな狭い道があっただろうか。
ケルビーは首をかしげながら辺りを見回した、不気味なほど静まり返った通路は生き物の気配を感じさせない。
「…ん…。」
背中にいる人物が身をよじらせたのを感じ、ケルビーは急いで振り返る。
「気がついたのか?」
ずっと意識が無かった主人の目覚めに彼等はホッとする。
ふらつきながらもケルビーの背から彼女は起き上がると、ボンヤリとした表情で呟いた。
「…呼んでる。」
「はぁ?」
意味が分からず召喚獣とペットは顔を見合わせた。

誰かが助けに来てくれたというのか、だが彼等には声らしきものは聞こえない。
やがて彼女は通路の奥へと進んでいった。
「おいっ、下手に動くと危ねぇぜっ。」
努めて小声で注意を促すが彼女は歩みを止めない。
マントを引っ張ってみたが、少女のものとは思えないほど強い力で引きずられる。

明らかにミモザの様子が変だ、一体何に呼ばれているというのか。
昔は自然の声を聞いた彼女が声に引かれてどこかへ行くという事がよくあり、ケルビーもそれに付き添っていた。
(だが、あの日以来、こいつは『声』が聞こえなくなった。)
どのような人や魔物と接していても、それらの感情を読み取っていた様子はなかったはずだ。

370国道310号線:2008/07/21(月) 20:19:11 ID:Wq6z33060
いや、最近一度だけあった。
金太郎の飼い主でもあるギルドメンバーの剣士が連れていた土のミニペットが活性力を失った時。
ミモザは消えゆくミニペットの心と深く共感し、かの者の想いを紡いでみせた。
(まさか、あの時から?!)
ミニペットのギルメンに対する想いは強かった、それは我が身を省みず尽くすほどに。
その姿と彼女の無理をしてまでギルメンのために紋章品を集めようとする姿が重なる。
失った力が戻ったのは必ずしも喜ばしい事ではない、なぜなら、それが原因で彼女は一度命を落したのだから。


暗闇の中、小さな赤い光が弱々しく瞬く。
その光は苦しんでいた、深い闇に飲み込まれそうになりながら足掻いていた。
−ここから出して−
ハッキリとした声が彼女に届いてくる。
助けなきゃ、その一心で彼女は光へ向かって歩いていった。


曲がりくねった通路を迷う事無く進むと小さい部屋に出た。
部屋の奥は祭壇の様になっており、赤い石の欠片がキラリと輝きを放っている。
これまで敵に遭遇しなかったためケルビーは胸を撫で下ろしたが、その石を見た瞬間、彼の全身は粟立った。
一見、何の変哲も無い原石のようだが、とてつもなく邪悪な光を放っていたのだ。
金太郎もそれを感じたのか、大きな体を僅かに震わせている。

「…見つけた。」
ミモザは呼び声に引き寄せられるまま、赤い石へと近づいていく。
「そいつぁ、ヤバすぎる! 行くんじゃねぇ!」
必死に声を張り上げるが、ケルビーの体は金縛りにあったかのように動かない。
虚ろな表情のまま台座の上に置かれた石を手に取る。
妖しく輝く石は彼女が触れたことで、より一層禍々しさを増したように見えた。

動かぬ体と格闘しているケルビーは遠くから足音が響いているのに気付いた。
ドスドスドスという激しい音は自分たちの後方、通路の先から物凄いスピードで近づいてくる。
同時にキツイ腐臭が漂ってきた。
「今度は何でぇ!」
正体不明の存在にケルビーは更なる危機を感じた。

大地を揺らさんばかりの足音の正体が姿を現す。
ピンク色のガッシリとした肉体、大きさは人間をゆうに超え3メートル近くある。
うめき声交じりの荒い呼吸、目は完全に血走っており、口からはおびただしい涎が垂れ落ちていた。
亜人の魔物ハイランダー、だが、完全に正気を失っているようだ。
「おでの…イシ…。 おでのイジだああああーーー!」
空気をビリビリ震わすほどの大音量で叫び、ハイランダーはミモザへと突進した。

「渡さない。」
石を握り締めると、ミモザは普段見たことも無いような形相でハイランダーを睨みつける。
笛を腰のホルスターから取り出し、魔物へと振り上げ指し示す。
「突撃!」
ハイランダーの登場に驚いていたケルビーと金太郎だったが、彼女の命令にはじかれる様に飛び出す。
今まで体が動かなかったのが嘘みたいだった。

ミモザは命令後すぐに召喚獣を第三形態にへパワーアップさせる。
鎧を纏った犬の姿を経て、炎の魔人となったケルビーは弾丸のように向かってくる魔物につかみかかった。
続いて金太郎もハイランダーへ体当たりを食らわす。

(なんて力だ…!)
こちらは二体がかりだというのに、ずるずると魔物に押されている。
「おでのだあああああああぁあ!!!」
「のあああ!」
咆哮と共にハイランダーの筋肉が盛り上がりグンと力が増す。
両手を合わした状態からケルビーは投げ飛ばされた。

金太郎もはね飛ばしたハイランダーは、ケルビー達には目もくれずミモザへと向かう。
テイルスピアーでケルビーはハイランダーに追撃するが、狂戦士の蹴りが彼女を捕らえる方が若干速い。
間に合わないとケルビーが思った瞬間、目が眩むほどの閃光が小部屋中に溢れかえった。
「グオオオオォーー!」
ハイランダーの断絶魔にミモザはつぶっていた瞳を開き目を凝らす。
純白の世界に無数の十字架型の光に貫かれたハイランダーが身を焼かれていたのが見えた。

ふと、彼女の体を柔らかい何かが包み込む。
光に慣れぬ目で見やると、それは鳥のものに似た白い翼だった。
「マスターさん…?」
視線を上へ辿っていくと、馴染みのある彼女のギルドマスターの壮厳な顔があった。


つづく

371国道310号線:2008/07/21(月) 20:20:53 ID:Wq6z33060
やったぜ! 今回はギャグないぜ!
土のミニペットの件は第一話『ミニペットがやってきた!』とリンクさせています。
第三話は次でラストですが、段々と短くまとめられなくなってきましたorz

以下人並み以下な感想しか書けませんが、レス返しです。

>白猫さん
Puppet完結お疲れ様です!!
大人数の目まぐるしい戦闘を飽きさせず回す力量は流石といいましょうか、もう尊敬します。
各人の戦いに始まり、ネリエル兄弟の決着、ルフィエ親子の戦い、
そして、「マペットと友達になる」など怒涛展開ながらもそれぞれ演出がカッコ良かったです。
ラストのルフィエの回想に今までの物語が込められていて感慨深いものがありました。
すれ違いな落し方もイイ!
四人唱や西、北、南の四強など残された伏線にワクワクしていたりしています。
密かにお気に入りキャラだったムームライトの冥福を祈りつつ、次回作いつでもお待ちしています!

>憔悴さん
前回のスレで尊称を付け忘れてしまい、本当に申し訳ありませんでした!
なるほど魔石は誕生石がモチーフでしたか、登場する異種職の組み合わせが楽しみで目が離せません!
ロンサムのキャラが好きですハナヂバンザーイ。

>68hさん
幼女と筋肉は芸術です。(爆
サマナ・テイマの魅力の一つが人間と自然(魔物)の橋渡し的存在だと思うのです。
立場が違えば意見や思いも違うと思うので、その葛藤を描きたかったのですがゴチャゴチャしすぎた感がorz

>黒頭巾さん
あわわ、そんなにてるみつくんを好いて頂けるとは嬉しいやら恐縮やら!!
本文中に書き忘れてしまった余談ですが、金太郎の名付け親はブルーノです。
七夕の精霊は姫々さんのスピカでしょうか?(違っていたらごめんなさい
黒頭巾さんのほのぼの作品は顔のほころびを超えてニヤニヤして読ませていただいています。

>復讐の女神さん
よくよく考えると相反する系統の魔法を扱うなんて難しそうですものね。
霧散しやすく集まりやすい魔力の性質、なるほどと思いました。こういう細々した設定は大好きです。
謎多き賞金首の正体が気になりつつ、次回楽しみにしています!

>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
幼女ミリアキタワーー!
そして、ミカエルがキレたと思ったら、フィナーアに某銀様が降臨したー!(笑
波乱極まる兄弟劇に魔物凸凹コンビはどう絡むのか楽しみにしています!

372国道310号線:2008/07/21(月) 20:21:30 ID:Wq6z33060
>ドワーフさん
本当は恐い良い子のレッドストーン童話。ガクガク(((( ;゚Д゚))))ブルブル
ゼーレクランに最強伝説が! たしかに心を操るなんて凄まじいです…
次の作品もお待ちしています!

>之神さん
季節もの小説は機会があれば是非…!
なんという流れるプール… 素人にはオススメできな(ry
次回エンティングvsナザルドの予感、楽しみにしています!

>21Rさん&代理人の21R(仮)さん
戦い前の緊迫感ただよう空気の描写が素敵です。
アデルさんが居る浜辺が気になったので適当に調べてみました。
現在RED STONE MAP に上がっている海があるマップ数は12ほど、その内蟹とクラゲが一緒にいるのは
スパインビーチと半島の海辺! ほとんどマップの端と端ですね… アデルさん恐るべし!

>自称支援BISさん
おおお! 復活お待ちしておりました!!
そして、コラボ作品にブルーノを参加させていただきありがとうございます。
ノロケ満載妄想爆走のサマナたん可愛いよサマナたん。
暴走いけめんさんやブルーノのツッコミも面白かったです!
リレー小説やコラボ小説やら、皆さんキャラ掴むの上手すぎますよ…

>スメスメさん
最近アイテムどころか、元素すらまともにドロップしなくなった背景はそうだったのか! と
意味不明な納得をしてしまいました。
一人称の心理描写と流れるような戦闘。 つまりは、兄ちゃんカッコイイ!! 所が尊敬いたします!

>354さん
初投稿ありがとうございます! はじめまして、異世界もの大好きな国道と申します。
倦怠感ある日常に訪れた不思議な出会い、そして、主人公の小さくてとても大きい変化。
文章上手くまとまっていると思いました。 またの投稿もお待ちしております!

>ワイトさん
お久しぶりです、もちろん忘れていませんよ。
小説はいつでもお待ちしています!

373黒頭巾:2008/07/25(金) 17:47:42 ID:fou9k2gM0
白猫さんの最終章を読んで、狂気愛に妄想広がりまくりんぐで書き上げましたモノを投下していきます。
ネクロは若葉までしか育てた事が○ございません、なので…若干怪しい部分はお見逃し下さいませ。


**************************************************


……君は、金色の綺麗な鳥。
僕が君をどれだけ汚しても、その心は綺麗なままで。
ねぇ、綺麗な鳥は此処から逃げない様に、綺麗な鳥籠に閉じ込めてしまおうか。
でも、やがてはそれだけでは安心出来なくなって。
蓋が開いても飛び去ってしまわない様に……その羽を、折った。
嗚呼、やはり……輝く君には、瞳と同じ血の紅が、とてもよく似合う。


【トリカゴ】


――安心して、貴方を置いて何処にも行かないわ。

訪れる人も少ない地下墓地に響く声。
父親と恋人の仇だった悪魔の亡骸の前で、僕の目線に合わせて膝をつく君が囁いた言葉。
目標を達成してしまった君が、僕を裏切り、離れていってしまうのでは?
そう怯える僕の目の前で、宥める様に繰り返す君。

――私の帰る場所は、もう貴方の傍しかないの。

ただ、ただ、幼い子どもに言い聞かせる様に囁く君の言葉。
そんな君の言葉への僕の返事は、地下墓地の空気の様に冷たい響きで。

「君まで僕に嘘をつくの?」

その一言だけで、僕は君の言葉も気持ちも一蹴する。
だって、僕は不安で不安で仕方がなかったんだ。
最初の言葉と共に笑った君の笑顔はとても儚く、今にも消えてしまいそうだったのだから。
仇討ちを果たす為に永遠の命をあげると偽り、君が離れていかない様に君の命の燭をそっと消して、君を偽りの永遠に囚われしアンデットにしたのは……他でもない、僕自身だというのに。

――如何したら、信じてくれるのかしら?

哀しそうに苦笑した君。
嗚呼、本当は君にそんな顔をさせたい訳じゃない。
それなのに実際は、君の心を傷つけて、また傷つけて。
その傷を時には舐めて、時には爪を立てる。
願わくば……僕の存在を、君が忘れてしまわない様に。
辛く甘い痛みを伴う消えない傷を……身体に、心に、刻み込む。
不器用な僕は、それ以外の方法なんて知らなかったし、出来なかった。
君は“優しい”から、そんな僕を振り払えない。
甘やかすだけが、本当の優しさではないのに。
僕達の関係は、お互いの傷を嘗め合い、刳り合う関係。
それでも……君と離れたら、他の誰が僕を理解ってくれると言うのだろう?
だから、僕は君を離さない、離せない。

「……おいで」

言葉と共に手を差し延べると、安心した様に微笑んで手を延ばす君。
その手を引き、君を優しく抱きしめる。

「綺麗な君に、僕の永遠の愛を贈ろう……」

でも、その言動とは裏腹に、僕の口から続けて紡がれたのは……“君の心を牢獄に閉じ込める呪文”だった。

「《マリオネット》」

絶望に見開かれた君の瞳から、意思の光が消える。
その頬を伝った一筋の滴は……涙である筈などない。
だって、そうだろう?
アンデットが泣くなんて、僕は聞いた事がない。
そう雑念を振り払おうとする僕の前に傅いた君が、今までと違った無機質な声音で言葉を紡ぐ。

――ご命令を、マスター。

綺麗な綺麗な君は、ずっとずっと僕の傍にいて、僕だけを見続ければいい。
君の頬を撫でながらそう命令した僕は、これで君と永遠に共にいれる安堵感を得た。
それでも……大切な何かが掌から零れ落ちてしまった様な喪失感を、拭い去る事が出来なかったけれど。


そう、これは……とあるネクロマンサーの従える魔物が、朽ち果て骸骨になる前の……昔々の、物語。


トリカゴ.....fin.


**************************************************


うっかりダーク分だけが暴走した黒頭巾による、♂ネクロ×ランサ短編(待って)
マリオネット、本当は時間制限スキルだけど気にしない^p^
あの頭の上のピコピコ棒とちっちゃい骸骨が動くのが可愛くて可愛くて堪らんとです(じゅるり)

374黒頭巾:2008/07/25(金) 17:48:33 ID:fou9k2gM0
↓以下、コメコメ書き書き。


>スメさん
出だしを読んでいる時の脳内BGMはカルマの坂でした!笑
カルマの坂で音楽で以下略をやりたくなってしまいしt(自重)

この間も言いましたが、クニヒトさんカッコいいよクニヒトさん(*´д`)ハァハァ
夢の中の『あの人』が噂の『じぃちゃん』なのかなぁとwktk!
元素戦争の切っ掛けといい、謎の集団といい…設定やキーワードが明かされてきて心が躍ります、うふふ。
支援職がいないって事は、フル支援ブーンの横殴りのない素敵な世界なんだろうなぁ(遠い目)
てか、アルとキリエちゃんの関係が凄く…カルガモの親子みたいで可愛いです(*ノノ)キュン

趣味じゃない文章を書く程、やる気の出ないモノはありません(駄目なコ)
ふふふ、そんなスメさんの燃え萌え作品も熱くて大好きです!(`・ω・´)キリリ


>354のお初さん
辛い現実から逃げて逃避した先の世界からの警告と言うか後押しと言うか。
自分の認識する“世界”が本人の“現実”な以上、夢と現実の境界なんて結構曖昧ですよね。
錆びたイヤリングが、主人公のモノなのか昔の大切な人のモノなのか、はたまた助けてくれた彼女のモノなのか。
何処か自分の中でもこのままじゃいけないと思っていたのだろう、主人公。
夢の彼女のお影で一歩を踏み出せたようでよかったです。
1レスという短い文字数の中で完結にまとめる能力、羨ましいです…笑
読みやすかったですし、考えさせられました…気が向かれましたら、また是非。
このスレで再びお会い出来る日を楽しみにしております(*´∀`)


>憔悴さん
ロンサムさんの辛い過去!(´;ω;)ウッ
確かに奈落の花の切ない歌詞にピッタリですね…今度からロンサムは私の中で花の君と呼b(ry
ひぐらし系は言われてみたら結構RSSSにハマりそうかもとか思いました(*´∀`)
youでアチャランサとか(パラレルワールドかよ←)
この4人組、ダブルデートしてるカップルみたいで可愛いです(*ノノ)
あ、鼻血には盛大に噴きましたよ!笑
私も選択肢は5で…仮面を取って食べるのか如何か気になって!(ソコか)


>ワイトさん
おー、お元気そうで何よりです。
気長にまったり如何ぞですよー(*´∀`)


>国道さん
じゃんけんぽーん、うふふふh(ry
アラクノイド!(´;ω;)ウッ
蜘蛛の一種は確かに親を食べちゃいますからね…動物界恐ろしい(((´д`;))))ガクブル
ミモザを庇ったアラクノイドの最期の言葉、ミモザの事も子どものように愛していたのでしょうか。・゚・(ノД`)・゚・。
そのアラクノイドの子どもに因って、命を落としたミモザ…切なすぎて!orz

ハイランドだったので辿り着く先は、アラクノイドの言う北の地ミズナかなとか思っていたら…違った(ノ∀`)ペチン
そして何やら怪しい赤い石が!
ナイスタイミングなGMさんの登場で、この先如何動くのか楽しみにしております(*ノノ)

て、やっぱりブルーノの命名センスが素敵すぎる件!爆笑
本人さんの了承を取ってないのでぼかしましたが…ご想像通り、イメージは姫々さんのスピカです(´∀`)

375◇68hJrjtY:2008/07/25(金) 19:15:43 ID:Dh9WYsnM0
>国道310号線さん
オールシリアス路線でのミモザの過去。幼い少女には正気では耐えられない事件…。
魔物や動物、自然と会話する能力、心優しいロマたちには大事な特技であり欠く事のできない能力ですが
その能力のためにこのような惨事が起きてしまうというのは悲しいことですね。
どちらが悪いとか善いといった区別ができない人々同士の葛藤ともどかしさ、上手く表現できていたと思います。
一方本筋の方では謎の宝石を手に入れてしまった(?)ミモザ。この石の正体は何なのか…。
続きお待ちしています。

>黒頭巾さん
ネクロ、つまりは生死を題材にした小説の物悲しさは異常です(´;ω;`)
彼の下した決定(スキル)が正しかったのかどうかは神のみぞ知る…そしてその後の彼と彼女の行方も。
ある意味なコラボ小説、堪能させていただきました!黒頭巾さんのコラボ好きです( 。・_・。)人(。・_・。 )
そしてやっぱりネクロは♀より♂設定に一票。仮面の下は幼女っていうのもある意味萌えますけど!
FF9のビ○みたいな奴をイメージしております(*´д`*) しどろもどろで内気な少年イエーイ。

376之神:2008/07/26(土) 14:23:17 ID:pzHHOHEc0
ttp://www1.axfc.net/uploader/Img/view.pl?dr=5197438815&file=Img_16801.jpg 徹

ttp://www1.axfc.net/uploader/Img/view.pl?dr=7976338515&file=Img_16802.jpg ミカ

ttp://www1.axfc.net/uploader/Img/view.pl?dr=584280473&file=Img_16803.jpg ライト

ttp://www1.axfc.net/uploader/Img/view.pl?dr=564229870&file=Img_16807.jpg シリウス

ttp://www1.axfc.net/uploader/Img/view.pl?dr=9180487745&file=Img_16808.jpg シルヴィー

ttp://www1.axfc.net/uploader/Img/view.pl?dr=8063126709&file=Img_16810.jpg ナザルド

ttp://www1.axfc.net/uploader/Img/view.pl?dr=6123705991&file=Img_16811.jpg フィアレス

ttp://www1.axfc.net/uploader/Img/view.pl?dr=9222183278&file=Img_16812.jpg アルシェ

ttp://www1.axfc.net/uploader/Img/view.pl?dr=9635156102&file=Img_16813.jpg エトナ

http://www1.axfc.net/uploader/Img/search.pl?search_str=%E4%B9%8B%E7%A5%9E&id_start=&id_end=&extv=&size_min=&size_min_si=2&size_max=&size_max_si=2&dl_min=&dl_max=&date_start=&date_end=&num=50&sort=id&sort_m=DESC&md5=&sha1= まとめ


絵です。といっても、前回の絵に色つけただけです。
諸事情でうp遅れましたが、載せておきます。

まとめ から、全部の絵へ飛べる…はず。

頭にhをつけて、どうぞ。

377之神:2008/07/26(土) 14:25:16 ID:pzHHOHEc0
あーっ、まとめだけ直になってる…orz

スイマセン;

378◇68hJrjtY:2008/07/27(日) 04:07:40 ID:Dh9WYsnM0
>之神さん
空白の時間を破って之神絵がキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
深夜に騒いで申し訳ない…しかしじっくりしっかり見させてもらいましたよ(*´д`*)
でも過去にUPされた絵は消滅してますね(´・ω・`) まあ、流用されるのを考えたら消えた方がいいかもですね。
さてさて…色がついただけでだいぶイメージ変わってきますね。色鉛筆塗りで全体的にパステル調なのが( ´∀`)bグッ!
徹、ライト、エトナ、アルシェあたりは想像通りでご満悦状態ですが
ナザ君ってかなりのブルーブルーだったのですね!さわやか青年ナイス。フィアレスも真っ白でかわええ。
シリウスもあれで街中メテオとかやらなければ普通にインテリ美形なのにっ…!ρ(´ε`*)
シルヴィーもテイマサマナというよりか子悪魔といったノリで、ちょっとリトルウィッチが入ってるようなのもまたイイ。
いやー深夜にいいもん見せてもらいました。本編の方もお待ちしてますよ!

379ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/07/29(火) 16:14:10 ID:OhTl4zsk0
ESCADA a.ka. DIWALI feat. 黒頭巾

ふぁみりあいーえっくす番外編「未知との遭遇〜Remixed by DIWALI〜」

ある日のこと・・・そこは古都ブルンネンシュティグの住宅街にある、とあるギルドが所有するホール。
リビングでは一人の魔術師がギルドの仲間に囲まれて何かを揉めている様子である・・・

「ファミリアが喋るなんて有り得ないー!」「いや、僕はちゃんとそのファミリアが喋るのを見t・・・」
「真昼間から寝てるんじゃないのー?」「寝ていないっ!!僕は寝てなんかいないぞッ!!!」
「これだからマスタは……立ったまま夢を見るなんて危ないじゃない」「だから僕は本当のことを言ってるだけで・・・!!!」

四方八方から飛び交う仲間達の非難の声、声、声・・・そしてついに、トドメの一言を赤髪の美女が放ってしまう。

「まったく、マスターも妄想が過ぎるわよ?何なら知り合いの精神科医に診断の依頼でもしておくけど・・・」
「ちが・・・僕は、僕はぁ〜・・・・うあぁあぁあぁぁあぁああぁぁぁあんっ!!!皆ひどいッ、お前ら嫌いっ!!
 うわぁああぁぁああぁぁああぁああぁああぁぁあああぁぁぁああぁぁああぁぁあぁぁああぁああぁぁああぁぁんんっ!!!」

最後のリミッターが外れてしまったのか、魔術師の青年は年甲斐もなく大泣きしてギルドホールを飛び出した。
残されたのは後味の悪い気持ちで一杯のギルドの仲間達。ひそひそと耳打ちで会話をすると、彼らもまたマスターの後を追うべく
ギルドホールから足を踏み出すのであった・・・


・・・―――古都の繁華街、昼下がりの今はオープンカフェが軒を連ねる時間帯だ。
雑踏の中、魔術師はトボトボとうつむきながら歩いていた。しかも「ええどうせ僕は鬱ですよ」と言わんばかりの溜息を吐いている。
「うぅ〜・・・何だって皆はああも現実的過ぎるんだ、事実一部のモンスターは言語能力を習得しているのに・・・ブツブツ」
一人文句を垂れながら彼は歩を進める・・・だが、うつむきっ放しということは誰かにぶつかる危険性もある。
ドスン!!!と何か硬いものにぶつかり、魔術師はが間抜けた表情で見上げてみると・・・青筋の浮かんだ怖い顔。
「おぅコラてめぇ、このミカエル様にぶつかるたァいい度胸してんじゃぁねぇか・・・あぁゴルァ!?」「・・・・は、ハァ。」
相手のならず者はというと、青筋ビッシリな見苦しい不細工面に時代遅れ極まりないモヒカンをしていた。そして腕には
髑髏と炎をあしらった刺青。そして『ミカエル』という名前・・・どうもおかしい。魔術師の脳裏をその一言がよぎる。
「んだァ〜?そのやる気のねぇ返事は!?オレぁ大陸4大冒険者の一人のミカエル様だ、気にいらねぇ真似すっと燃やすぜ!?」
「はいはいそうですか〜」「だから何なんだよそのテンションの低さはァ!!?!」「・・・・」「・・・・!!!」
そんなこんなでやりとりをするゴロツキと魔術師、だがその二人を囲む野次馬の中から一人の男が踊り出た・・・!!

その青年は小麦色の肌に銀色のミディアムヘア、タンクトップから覗かせる筋肉質な腕には炎を象るトライバル調の刺青。
ゴロツキの首根っこを掴むと、彼は怒りを含んだ語気で話しかける・・・!!!
「よォてめぇ・・・いま"ミカエル様"が何だって・・・?」「いでぇっ!!?!何だテメェ、一体誰でぇ!?」
「教えてやんよ・・・そのミカエル様ご本人だっつーの!!!!ヴォルカニックアッパあぁぁああぁぁああぁぁああぁぁ!!!」
相手に問答する間も与えず、突如乱入したミカエルという名の青年は拳に炎を纏い、綺麗なアッパーカットで男を殴り飛ばした。
「覚えてろよ〜!!!つーかごめんなさ〜いっ!!!」という断末魔が山彦し、空には星がキラリ☆と輝く・・・

380ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/07/29(火) 16:53:30 ID:OhTl4zsk0
「ったくよォ、オレ様の名を騙ろうなんざ100年早いっつーの。ところで魔術師の兄ちゃん、ケガぁ無いか?」
「えぇ、大丈夫ですよ・・・ところで、あなたもしかしてあの、あの・・・ミカエル・ウォンさんですか!?」
「あったりめぇよ、じゃなきゃあの紛いモンをぶっ飛ばしたりなんかしねぇよ!カハハハハハっ・・・
 まァ、奴さんにオレの名を騙らせちまってすまねぇな、オレの名前のせいで迷惑しちまったようなもんだし
 何か奢らせてくれねぇかな?妹達もすぐそこのカフェでデザート食ってるしさ。」
「え、いいんですか!?では、お言葉に甘えてそうさせてもらいましょうか。」

気さくでフレンドリーなミカエルの人柄に好感を覚える魔術師。ミカエルに誘われるまま、すぐ側のカフェテラスへと移動した。
「(ちょっとちょっと、あれって"炎帝"ミカエルじゃないの!?)」「(マスターってばなんちゅー人と・・・あの人嗾けてこないよね?)」
「(そんな訳ないでしょ、マスターも子供じゃないんだから。でも・・・もうちょっと近づいてみるわよ!?)」
一部始終を見守っていた魔術師のギルド仲間ら3人、テイマ、ランサ、悪魔らはカフェへと入店する・・・

昼下がりのカフェは大勢の客でごった返していた。野外テーブル席の一角から、少女の甘く可愛い声が聞こえてきた。
「ふみゅっ、お兄ちゃ〜ん!!こっちなのよ〜!」「ミカエル〜、こっち来るさ〜!」ビーストテイマーの少女とファミリアが
手を振りながらミカエルを呼んでいた。彼は「こっちだぜ」と手招きし、魔術師を誘導する・・・席に着くと少女が首をかしげた。
「うにゅ〜・・・ねぇねぇお兄ちゃん、この人だぁれ?お友達なの?」「ん〜?まァそんな感じだ、つーか今知り合った!」
「あはは、ミカエルさんてば・・・ん、あれ?ねぇ君、人違いかもしれないけど、さっき道路で僕にぶつかった娘じゃないかい?」
「ふゃ!?あっ、そうなのよ〜!さっきはごめんなさいなのっ!!今度から気を付けるなのぅ〜・・・」「はは、よしよし。」
少しシュンとしょげるミリアを、兄ミカエルがその頭をポンポンと撫でて慰めた。その穏やかな様子に魔術師も微笑を漏らす。
「ふふふ・・・ん、ということは・・・ねぇミリアちゃん、君のファミリアって喋れるんだよね?お話してみてもいいかな?」
「うぃ、ファミィはちゃんとお話できるのよっ!ね、ファミィ?」「うん、オイラちゃんと喋れるよ〜、よろしくさ〜」
「おぉ〜、これは・・・やはりファミリアも話せるんだなァ、よろしくねファミィ君。」「えへへ、今日からにーにーもうちなーさ〜」
「あ、今ね今ね、ファミィは『お兄さんも仲間だよ』って言ったのよ〜」「すごいねミリアちゃん!!」「やぅ、恥ずかしいの〜////」

一方、カフェの店内から窓越しに一行を覗く者たちが・・・
「(ちょっと、マジでファミリアが喋ってるんだけど!?てゆうかあの、ゆるゆるな口調が可愛いっ//////)」
「(いいなァ〜、わたしのファミリアちゃんも頑張ればお話できるかな?)」「(飼い主の女の子もめっちゃ可愛いんだけどっ!?)」
興奮気味なヒソヒソ声で、テイマとランサ、それに悪魔たち女性3人は、クリームソーダを片手に驚愕と歓喜に包まれていた。

381ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/07/29(火) 17:07:47 ID:OhTl4zsk0
・・・その日の晩のこと。
夕食を前に食材の買出しに出かけていた魔術師がホールへ帰ってきた。ニンジンにジャガイモに肉・・・今夜はカレーライスだ。
眼鏡をクイっと上げながら、ホールに足を踏み入れた魔術師は「ただいま〜」と第一声を発する。両手に買い物袋をぶら下げて
ホールのリビングルームへと歩いてゆく・・・大きな広間に出ると、いきなりパァン!!とクラッカーが。

「マスター、おかえり〜!!」ギルドのメンバーたちが笑顔と共に魔術師を迎え入れた。

「え?え?ちょっと皆どうしたんですか!?今日は僕の誕生日でもないのに・・・」
「違うの、お昼の時に好き放題言っちゃって・・・その、ごめんねマスター?」「ごめんなさ〜い」「ごめんねっ?」
「あぁ何だ、そんなことか。いいですよ、気にしていませんから・・・ん、あそこの部屋は何だろう、何で扉を閉めてるんだい?」
魔術師が気付いたその視線の先には、普段は空いているはずの物置の扉が閉じていたから・・・しかもデコレーションを施して。
「えへへ〜、それはね〜・・・ミリアちゃん、ミカエルさんっ、そしてファミィちゃんっ!!!おいでませ〜!!」
ランサーが陽気な声で名前を呼ぶと、勢い良く物置の扉を開いてミカエル、ミリア、そしてファミィが出てきた。
「えぇ!?ミカエルさん、ミリアちゃん・・・それにファミィ君も!?どうしてここに・・・・」
「実はカフェで別れたあとによ、ここにいるあんたの仲間に呼び止められてね。聞くところによると、マスターをファミリアが
 喋るかどうかって話で泣かせちまったもんだから、ちょうどオレたちを見ていたこいつらにGHに来てくれって頼まれて・・・」
「そーゆーことなのっ!!ミリアとっても嬉しいのよ〜!!」「オイラも嬉しいさ〜、皆ありがと〜!!」

「そうゆうことだし、早く晩ご飯つくって食べようよ!!ミカエルさんたちも一緒に食事しよ!!」「おうよ、もりもり食うぜ!?」
「うにゅ〜、ミリアもいっぱい食べるなの〜!!うにゅにゅ〜♪」「ちょっ、ミリアちゃん可愛いんだけど!!萌え〜!!!」
「あははははは・・・ん、じゃァ皆!!今日はカレーですよ!?」「やったァァァァァァァ!!!!マスター大好き!!!」

その夜はとてもとても楽しい時間を過ごしたそうな・・・ゲストの来訪もあり、掛け替えのないほどだったと
このギルドホールの長である魔術師は語っている。

fin.

382ドワーフ:2008/07/29(火) 19:49:07 ID:AepyIIHk0
トラップバイト

狼男のコーザは一度も噛み付いた事がない。
その理由は彼の仲間でさえ知らなかった。
単に得意でないのかもしれないし、
もしかしたら人としての誇りが獣のような振る舞いを許さないのかもしれない。
それ以前に、大抵の相手は彼の鋼鉄のように硬い爪に掛かれば簡単に倒せたというのもあるだろう。
だが彼は顔に凶悪なまでに鋭い牙を被っていた。
使わないのに何故そんなものを着けているのか、彼の仲間はいつも不思議がっていた。
彼はたびたび浴びせられる質問に辟易し、ようやく理由らしいことを口にした。
この牙は必要に迫られる時が来たら使うのだと、彼は言った。
彼の言葉に仲間達は首を傾げ、余計に不思議がっていた。

やがて時は過ぎ、皆がコーザの言葉を忘れた頃にその時はやってきた。
敵はたった一人の剣士。しかし仲間のうち誰一人として敵わなかった。
傷ついた仲間たちを庇うようにコーザは剣士の前に立ちはだかった。
かなわない。逃げろと言う仲間の声を無視してコーザは剣士に飛び掛っていった。
彼の振るう爪を掻い潜り、剣士の突き出した剣が彼の胸を貫いた。
コーザは返り血を浴びて笑みを浮かべている剣士に対して、構わず自ら前に出て刃を自身の中に埋めていった。
そして剣士に抱きつくと、驚愕の表情を浮かべている剣士の肩口に噛み付いた。
鋭い牙を突きたて、彼は剣士の血を啜り飲み始めた。
苦痛の表情を浮かべながら、剣士は凶刃をえぐり上げた。
だがコーザは決して意識を失わなかった。それどころかより強く深く剣士を噛み絞めた。
恐怖に駆られた剣士はコーザに対して提案した。
見逃してやるから離れろ。このままでは互いに死んでしまう、と。
しかしコーザにはもう引き返す事は出来なかった。

トラップバイト――。
一度噛み付けば逃れられない。相手も自分も…。

383ドワーフ:2008/07/29(火) 19:51:20 ID:AepyIIHk0
あとがき
トラップバイトの説明文を自分なりに解釈してみました。

384◇68hJrjtY:2008/07/30(水) 18:25:06 ID:CDoX0rSc0
>ESCADA a.k.a. DIWALIさん
黒頭巾&ESCADA a.k.a. DIWALIプレゼンツ。コラボ小説ありがとうございました!(笑)
ESCADA a.k.a. DIWALIさんが書くとほんとドタバタ調になって面白いです。
いけめんさんの壮絶な欝モードを垣間見てしまいましたが、最後は丸く収まって思わず笑ってしまいました。
フィナ姉が居ないところではミカエルも相当怖い兄ちゃんなんですねえ(*´д`*)
次回はファミィ&ふぁみりあいーえっくすたんの絡みコラボ小説、なるか!?(笑)

>ドワーフさん
トラップバイト。罠という名前とは裏腹に最後の最後の切り札としての牙。
このお話を読んだ時に「狼は死んでも首だけで相手に噛み付く」という言葉を思い出しました。
短編だからこそその後を想像したり思いを馳せる事が楽しいドワーフさんのUアイテム逸話。
次回作もお待ちしています。

385之神:2008/07/30(水) 19:33:49 ID:h5TkBgt20
◆-1 >>593 >>595 >>596-597 >>601-602 >>611-612 >>613-614
◆-2 >>620-621 >>622 >>626 >>637 >>648 >>651 >>681
◆-3 >>687 >>688 >>702 >>713-714 >>721 >>787 >>856-858 >>868-869
◆-4 >>925-926 >>937 >>954 >>958-959 >>974-975
◇――――――――――――――――5冊目完―――――――――――――――――◇
   >>25 >>50-54 >>104-106 >>149-150 >>187-189 >>202-204
◆-5 >>277 >>431-432 >>481-482 >>502 >>591-592 >>673-674 >>753-754
   >>804-806 >>864-866 >>937-939 >>971-972 >>997-1000
◇――――――――――――――――6冊目完―――――――――――――――――◇
   >>122 >>321-322
◆――――――――――――――――――――――――――――――――――――番外
>>796-799 クリスマス   キャラ画>>376(7冊目
>>894-901 年末旅行
   -5冊目完-
>>226-230 節分
>>358-360 >>365-369 バレンタインデー
>>510-513 雛祭
>>634-637 ホワイトデー@シリウス
   -6冊目完-

386之神:2008/07/30(水) 19:35:33 ID:h5TkBgt20
β

「くうっ…」

傷はだいぶ治ったものの、まだ痛む。
ベッドの上で、私はどうするか迷っていた。
その時。
点けっ放しのテレビから、ニュースが流れた。


-------速報です。
-------大手飲料メーカー、ミュリエ・ジュール本社ビルにて…


徹が向かった企業…何があったのしr…


-------大きな爆発が起きました。



…ッ!?

-------既に警察が包囲しており、周囲に避難命令、厳重な警備が――


気がつくと、私は普段着に着替え玄関へと向かっていた。


――やっぱり、ゆっくりしてる場合じゃなかった…。

――私が助けないと。


ψ


「わわわわっ、わーっ!」




謎の平野に、体育会系と精霊。



「装備が、全部外れちゃったじゃん!」

「気のせいだろう…」エンティングというその大きな精霊は、渋みのある声で語らう。

「木の精だけに?ちょっと巧いこと言ったね!」


――――。


「外れたとて…剣と、その服に隠した左手剣だけだろう…?」

だらだらと会話の後、重い拳が飛んでくる。


「これしか武器無いんだよぉ…おおっと!」


ヒョイ、という音が聞こえたかと思うほど、軽くナザルドは攻撃をかわした。

エンティングの攻撃は、腕を振り回す度にブウン、と、バッティングの素振りの様な音がする。

387之神:2008/07/30(水) 19:37:04 ID:h5TkBgt20
ψ

「だいたいさぁ!」

ブウン…ヒョイ

「まだ会ったばかりだよ?人間ってだけで、攻撃」

ブウーン…ヒョイ

「してくるなんて、おかしな話だよ!」

ブウン! ヒョイッ!



…。 ヒョ…

「ちょっとちょっと!攻めと避けのテンポ狂うんだから、止めないでよ!」

黙って腕を振っていたエンティングは、急に攻撃を止めた。


「お前が攻撃してこないのは分かった」 その場にピタリと止まり、エンティングは話す。

「正確には、攻撃したくてもできないんだよっ…で」ブーブーと、ナザルドは文句を垂らす。

「なんか話、あるんでしょ?」

「…。」

「じゃなきゃ、こんな無防備にならないしねっ!」 ナザルドは、一瞬でエンティングの後ろへ回り込んだ。

「…。」首だけを、エンティングはこちらへ向けた。


「しないよ、攻撃は」ナザルドは笑ってその場に座り、武器を放り投げた。

「でーっ、何かあるんでしょ?ここにいる理由とかさぁ、いきなり攻撃してきたワケがさぁ?」

まるで友達に話かけるような雰囲気で、ナザルドはエンティングに言った。


「ここのビルのな」

ゆっくりと、エンティングは話し始めた。

「ガゼットという男がいるのだが、奴に連れてこられたのだ」

「ふんふん」

「奴は今、薬を作っているのだが…そのために、我々のエネルギーが必要らしくてな…」

「我々…?」 そう、ナザルドが聞いた瞬間、今まで風景と同化していた木々達が動き始めた。

「なるほどお…、こんなにいっぱいいたんだねぇー」しみじみと周りを見回す。

「エネルギーとは、これのことだ」

エンティングは立ち上がり、ナザルドの捨てた剣を拾った。
そして…その剣で、人間でいう腕の当たりを浅く切りつけた。


「ああ!それは俺もお世話になってる!」

「お前ら人間がポーションと呼ぶ、治癒能力のある液体だ…。本来、我々のような種族が大地から力を貰い
 さまざまな元素の力を元に…そうして完成するのがこれだ」


「えっ、原料って君たちだったの!?」

「知らずに服用していたとは、やはり愚かな人間よ…」剣をナザルドに放り投げ、エンティングは直立不動となった。

「我々は死んでも蘇る。…いや、正しくは、土に還り、また芽を出し枝を伸ばし…」

「だが、ここでは不可能だ。人工的な光、無いに等しい元素、薬の通った水…」


「ここから出してもらえないか、って?」ナザルドは、核心に迫った。

「…ああ、そういうことだ」少し悔しそうな顔をして、エンティングは答えた。


「ふっ、まったく…」ナザルドは剣と盾を再び拾う。



「任せてもらおうじゃーないのっ!」
ポーズを決め、大声で答えた。

388之神:2008/07/30(水) 19:37:49 ID:h5TkBgt20
α

ザザザザザザザザザザ…


ブクブクブクブク……


『ぶはっ!!』

し、死ぬかと思った…。

「この魚!水出しすぎだっ!」

「スェルファーですって…」

シルヴィーは相変わらず、俺に抱きついたままだった…苦しい。

滝のように、魚の体からは水があふれ続ける。

「とりあえず、助かりましたね…」

「ですね…で、シルヴィーさん」


「はい?」



「そろそろ、水を止めてくれませんか…」


「ああ、そうでしたね!失礼しましt…



<!> うわあああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁァァ…


『!?』

叫び声が、救急車の通り過ぎるような感じで聞こえてきた。今、まさに。


「な、なんか聞いたことあるような声でしたね…」

シルヴィーは俺の首に腕を巻きつけたまま、キョトン顔をしていた。

「ん…そうかなぁ…?」



γ

「うわあああああああああああああああああああああああああああああああアアアアアッ!」


かなりのスピードで流される。服が濡れて思うように動けない。

「あ、ここさっきも見たな…?」

ドアノブの外れた扉が、ライトの目に入った。

「んん…ということはっ…?」


…俺はグルグルと回っているのか。



α


「なんだったんでしょうね…ハハハ」

俺はシルヴィーの腕を首から外しにかかる。

「で、ですねぇ…あっ」

「?」

「も、もうちょっとこのままで…」

プルプルと震え、シルヴィーは離れなかった。

ああ、冷静な感じだったけど、やっぱ女の子だわな…。

389之神:2008/07/30(水) 19:47:08 ID:h5TkBgt20
どうも、こんばんわ。

「よぉ〜しうpするぞー!」とPCのテキストを調べるも

「あれ?どこやったっけなぁ…」となっていて遅れました。


自分は週刊誌のマンガのように小刻みに進めていくのがコンセプトなので、進むのダラダラでもあきらめてください。
珍しくψパートが長いんですね、後からそんなこと思ったり。

ゆっくりしていた彼女も動き出し、ある意味オールスター的になりそうです。

そしてドワーフさん、U品ネタ大好きです。いつもその構成に感動します。
公式設定ではないもののネタは、書いてて楽しいですねー。
自分もポット原料とか勝手に決めてて…売り子ドロシーの笑顔の奥には殺戮g(ry

では、ゆっくりストーリーを進めていくことにします。

引き続き小説スレをお楽しみください。之神でした。


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