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企画もの【バトル・ロワイアル】新・総合検討会議
雑談、キャラクターの情報交換、
今後の展開などについての総合検討を主目的とします。
今後、物語の筋に関係のない質問等はこちらでお願いします。
規約はこちら
>>2
以上です。本スレ投下は暫く待ちます。
また、図々しいお願いなのですが、以前「タッチ・ユア〜」について
申し出ました破棄を取り下げさせていただけないでしょうか。
次回予定は「夜に目覚める」。
まひる・恭也・魔窟堂を中心に、小屋組とレプリカ智機が登場予定。
「タッチ・ユア〜」の続きとなります。
とりあえずこちらに仮投下致しまして……
上記取り下げの承認、もしくは長期に渡りレスが付かない場合
↓
本編として扱う
却下、または「タッチ・ユア〜」と同時系列の作品が予約された場合
↓
アナザーとして扱う
と考えております。
新作乙です。
私の方こそ長らく連絡を途絶えさせてしまってすみません。
破棄取下げについては私は構いません。
それらの件を含めて了解しました。
今土曜日曜と何とか暇ができましたので、こちらも活動を再開したいと思います。
改めてメール欄関連の予約を3月1日AM6:00を期限に延長なしで予約します。
完成の目処が立ちましたら、ここに報告。
完成後ここに仮投下します。
コンテンツ作成も作品と同時進行で進めます。
なおトリップは連絡用です。
新作できました。
今日の夕方にここに仮投下します。
島に召喚されて初日の事だった。
智機の面前には見覚えのある機材が無数に並べられていた。
前報酬ではなかった。
ゲーム運営に必要な人員を作り出すのに必要な材料。
プランナーは言った、お前をモデルにしたロボットを量産しろと。
智機にとってそう困難な事ではなかった。
数カ月の猶予とこれだけの機材と場所があればこそ。
智機の能力なら量産・運営はそう困難ではない。
以前の智機なら任務に躊躇しただろう。
だがこの時の智機には関係ない事だった。
彼女は迷わず製造・運営を受託した。
次に量産機の運営規則について説明を受けた。
智機はここに来て初めて迷った。
彼女自身の能力が制限からだ。
だが任務内容を考慮すれば量産機は不可欠。
そう判断し彼女はそれも受託した。
殺人ゲームの遂行依頼の時点で少々は躊躇したかも知れない。
しかし今の『彼女』はそれに迷いや苦痛を感じる事はない。
自らのAIで心を操作するまでもない。
仮にゲーム運営を引き受けた結果、周囲に害が及ぼされようとも。
創造主に害が及ばないのであれば何も感じる事はもうない。
知人達は互いの存在を知っているのみに過ぎない。
前の『彼女』が持ってた誇りさえも。
今の智機には関係ないと自ら断定できるのなのだから。
□ ■ □ ■
>>103-118
(飢えているか……)
ケイブリスの賞賛を受け、智機は表情を変えずに心中で呟いた。
参加者には注意を向けていた積りではあった。
だが運営者に対してはさほど注意してなかったと彼女は認める。
参加者と運営者を同等に見、対応するべく智機は次の計画を立てる。
カタパルトのデータに思考を移した。
(燃料と強度の関係上、使用回数は少なくともあと一回が限度だな。
投入可能な最大戦力は分機2体と装備多数か、ケイブリスのみ。
更にもし仮に……あのフェリスが島内にいた場合、奴の能力次第では手詰まり
になる)
智機はカタパルトの分析を終え、ケイブリスに言った。
「ケイブリス。君はランスに従っているフェリスという名の悪魔の事を知ってい
るか?」
「あん? …………あいつ、従えてやがったけか?
知らねぇな……それがどうかしたか?」
「昨日、この島にランスが呼び出したんだが所在が掴めないのだよ。
スポンサーからも通達がないしな」
「レベル神じゃあねぇのか? それで?」
「(レベル神……)
参加者や運営者以外の者が島にいる場合な……フェリスに限った事ではないが
邪魔者が確認された場合、可能であれば私が始末するように言われている」
「………………俺様に手伝えって言いたいのか?」
「それには及ばんさ。君に限らず、私にもその命令は絶対ではない。
戦力に余裕があればしろと言う程度だ、今は余裕がない」
「……面倒だな」
苛立たしげに、少々の緊張さえ孕んだ声でケイブリスは言った。
「?」
『俺様もあまり見かけたこたぁねえが、奴等強いぜ。
無敵結界も効かねえしな」
「どれ程の……しおりと比べてどうだ?」
ケイブリスは一瞬しおりを誰だと考えたが、思い出し断言する。
「あのガキより強えのがいてもおかしくねえな」
「……情報提供感謝する」
智機はやや強張った声色でケイブリスに礼を言った。
マザーコンピューターにアクセスしながら智機は対策を練り始めた。
ルドラサウムがフェリスの介入を容認してしまう可能性も考えたからだ。
フェリスが六人組と合流、共闘されてはたまったものではない。
プランナーとの接見をしてなければ直ぐに問いただしただろう。
関与しない、好きにしろと言われた以上は問い正す気にはなれなかったが。
智機は知っている。
島外の侵入者排除及び、情報収集は二神らが行っているのを。
知ってはいるが、既に二神のいずれかが独自にフェリスを排除していたとしても
彼らの意地の悪さから、あえてその事を通達していない可能性を疑っていた。
智機には確認をできるだけ早急に確認を取る必要があった。
ただし問いただす相手は二神ではない。
(ゲーム開始から42時間経過……管制室も健在。
連絡は既に来てもおかしくない。まだか)
プランナーとの接見を別にすれば、智機からの外部への連絡手段はない。
ザドゥと智機が知っている事のひとつ。
ゲーム開始から42時間が経過し、管制室が機能していた場合。
50分以内にプランナーから連絡員が派遣されることになっている。
ゲーム進行に関わる外部の状況通達。
智機が収集した殺人ゲームのデータのバックアップの提供。
量産機の指揮権の放棄が可能になるスイッチの提供などだ。
神の戯れなのか、それとも別の理由からなのか。
何故、CPUのみで情報交換をしないのかは智機には見当がつかないでいる。
理由は尋ねてたが、趣向と一言返って来ただけだった。
智機はそれ以上、その事について何も言わなかった。
ゲーム遂行にほとんど支障はないと判断してたからだ。
ただ指定された時間内で連絡員が来なかった時の説明は聞かされていた。
その場合、最低でも外部の者への対処は運営者以外の手で行われる事が確定する
と。
それでも尚、智機は警戒を緩めない。
フェリスの対処も運営陣がするはめになった場合に備えて。
彼女はその手段を考えつく。
(臨時放送を実行し、全参加者に警告を発信する)
そう決めた。
双葉の式神と違い、フェリスはランス自身の力で生み出したものではない。
プランナーにとってフェリスのような存在は不快ではあるはず。
外部からの人員は認められるものではない筈だ。
願いの権利の消失の可能性を参加者全員に提示するのを選択肢に入れた。
もっとも今のランスにフェリスを召喚する気は毛頭ないのだが。
その事を智機らは知るはずもなかった。
「フェリスに頼れば、願いを叶える権利を失う。
そう参加者に告げる。もっとも島内で奴の所在が確認できた場合だがな」
「ほー」
「それと先に言っておこう。
いきなりか、もしくは本拠地内から参加者とも我々運営者とも違う
誰かが……もうすぐ来ると思う。
向こうが仕掛けてこない限り、そいつには何もしないで欲しい」
「誰だ、プランナーの奴か?」
「恐らくは部下だ。私が収集した情報を確認する為にここに来る予定だ。
我々の事情が事情だけに、伝言のみのやり取りになるかも知れないがな」
智機は苦笑した。
コンピューターのみで処理できたなら楽だったのにと思いながら。
「直に来て欲しいものだがな」
「そいつにも手伝わせるのか?」
「侵入者の対処以外は手伝わないだろうがな」
直に来て欲しい大きな理由はある。
もし分機が全滅した場合には、指揮権は無用となる
単独で全力を出すには、端末機能を解除する必要がある。
今は解除する必要は全くない。
だが極限まで追い込まれる可能性が零ではなくなった。
念の為に連絡員からスイッチを受け取る必要が今の智機にはある。
「ケイブリス……さっき君はレベル神と言っていたな。
ランスの事も含めて君がいた世界について色々と聞かせてくれないか?
必要なら私の方からも情報を話そうじゃないか」
「あー……俺様には馴染みが無くなっちまったが……いいぜ」
返事を聞くと、智機は管制室にいるN−27に指令を出した。
ランスの会話記録を収録したテープと全参加者・主催者の顔写真の準備を。
ケイブリスは口を開く。
それとほぼ同時に智機に情報が伝えられる。
西の森で散策を行っていたP−3がランス達と遭遇した事を。
↓
【主催者:椎名智機】
【現在位置:本拠地・ケイブリスの部屋(茶室)】
【所持品:素敵医師から回収した薬物。その他?】
【スタンス:願いの成就優先。
①ザドゥ達と他参加者への対処(P-3に注目)
②しおりの確保
③ケイブリスと情報交換
④来訪者と交渉し、端末解除スイッチ+αを入手する】
【主催者:ケイブリス(刺客4)】
【スタンス:ザドゥ戦まで待機、反逆者の始末・ランス優先
智機と情報交換、智機と同盟】
【所持品:なし】
【能力:魔法(威力弱)、触手など】
【備考:左右真中の腕骨折(補強具装着済み) 鎧(修復)】
【現在位置:本拠地・ケイブリスの部屋(茶室)】
【カタパルトの使用回数は後m、一、二回です
智機2体分(人でも2人分)と道具多数か、ケイブリスの打ち上げが可能です】
【オペレーターN-27が録音テープと顔写真を持って茶室に向かってます。
すぐ終わります】
【智機とザドゥは定期連絡者がPM6:00から6:50分の間に
来る事を知っています。
両者とも戦力としては数えていません。
ザドゥは智機の異能力と素性についてはほとんど知りません】
【二日目 PM6:30頃 茶室】
仮投下終了です。
問題がない、もしくは長期にレスが付かなかった時に本投下をします。
連絡員は一応>>850 と851のメール欄で考えてます。
今話は242話『Management persons』と274話『ねがい』の伏線回収を兼ねた話でした。
それではHP素材の作成を再開します(`・ω・´)
報告です。
意見などのレスが付かない、もしくは問題がなければ『Regular report』を
3月4日の夜に本投下する予定です。(本スレが復旧していればの話ですが)
ただし>>844 の部分は今回省きます。
加筆がありましたら、本投下の一日前にここに報告します。
現在、素材を製作中ですが時間がかかりそうなのと
長らく上げてなかった事もあるので、275話『悪夢』までを収録した素材をアップします。
パスワードはnegiです。
ttp://upload.jpn.ph/10/bin/bin1523.zip.html
>> 284 ◆ZXoe83g/Kw 氏
ご無沙汰しております。
『Regular report』、当方としては問題ありませんので、>>852 了解です。
また、当該作品の締めにて
> それとほぼ同時に智機に情報が伝えられる。
> 西の森で散策を行っていたP−3がランス達と遭遇した事を。
とありますので、当方の『タッチ・ユア〜』は、『Regular report』の投下を待って3/5に、
『生きてこそ』は3/6に、それぞれ投下したく思います。
了解しました。
修正完了しました。
明日午後8時に本投下をする予定です。
全部で7レス。
>>844 の部分は今回は使いません。
その際、>>852 のまとめも本スレでUPします。
大きな変更箇所は>>846-847 の文章の
智機が収集した殺人ゲームのデータのバックアップの提供。
量産機の指揮権の放棄が可能になるスイッチの提供などだ。
神の戯れなのか、それとも別の理由からなのか。
何故、CPUのみで情報交換をしないのかは智機には見当がつかないでいる。
↓
智機が収集した殺人ゲームのデータ提供。
智機量産機の指揮権放棄が可能になるスイッチの提供などが連絡員の任務だ。
コンピューターなら半分以上は容易に、極めて短時間でできる作業。
なのに何故、こう遠回しな事をするのか智機には見当がつかなかった。
です。
また明日に。
30分後に本スレに投下します。
投下終了しました。
次作完成の目処が立てばまた予約します。
こちらにご意見等がありましたらなるべく早くレスします。
来週月曜日に投下された分のまとめをアップする予定です
連日の支援、ありがとうございました。
最後でさるさんにひっかかってしまいましたので
このレスに気付かれた方がいらっしゃいましたら、
お手数ですが>>840 の状態表の本スレ投下をお願いいたします。
代理投下しました
連日の投下乙でした
以下14レス「夜に目覚める」を仮投下いたします。
問題なければ来週土曜晩に本スレに投下します。
次回予約は「彼女の望み」「おやすみぃ…」。
ザドゥ、芹沢、透子、レプリカ智機数機が登場予定。
二タイトルありますが前半三人称、後半一人称(芹沢)なだけで、
実質は一話です。
>>xxx
(2日目 PM6:46 D−6 西の森外れ)
その姿に、走っている、といった必死さは無かった。
スキップにも似た軽やかさで以って、中距離走ほどの速度。
多少の不自然は感じなくも無いが、ありえぬ話ではない。
それが平地であるならば。
昼日中であるならば。
だが、ここは入り組んだ西の森の中。
光差さぬ闇の中。
此れを加味して再考すれば、人の範疇にはありえぬ体捌きといえよう。
広場まひる。
それが、この絶技を見せるシルエットの名。
東へ。まひるは、ただ一人で駆けていた。
踏みしめる枯葉の鳴らす音は、限りなく軽い。
(気持ちいいな……)
風を切る感覚と木漏れる月明かりの青さに、まひるは身を浸す。
それで意識が散漫になったのだろう。
根腐れた倒木がすぐ足元に迫っていたことに気付くのが遅れてしまった。
「あ、危な……」
後一歩で衝突する。認識と同時に、まひるは跳んだ。
まひるとしての彼女が体験したことの無い反射速度で。
「……あてっ!」
まひるは、結局転倒した。
倒木は軽く跳び越えたのだ。
だが、跳び過ぎた。
頭上の生い茂る枝葉に突っ込んでしまったのだ。
まひるは腫れた頭頂部を撫でさすりながら愚痴を零す。
「いやいやいやいや。跳び過ぎだってばさ、このカラダ!」
だが、彼は知っている。
この程度の運動能力、ケモノとしてのポテンシャルには達していない。
だから、彼は探っている。
どの程度の運動能力までなら、人としての自分のまま引き出せるのか。
細胞が、ざわめく。
私たちをもっともっと使ってと。
その声に流されそうになる。
誘惑の蜜は強く甘い芳香を放っている。
それは、罠。
肉体が導くままに能力を解放すれば、まひるの精神はケモノに堕すだろう。
それをまひるは本能で知っていた。
人であると強く意識し続けること。衝動に支配されぬこと。
まひるは己に任じた制約を強く胸に刻み、また駆けだした。
=-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=
>>235
(2日目 PM6:40 D−6 西の森外れ)
東の森の火災による熱波が、ここ西の森にも届いていた。
それを加味しても肌寒さを感じるらしい。
小屋の壁面に背を預けて、湯気の立つマグカップを啜る大小4つの影があった。
高町恭也。魔窟堂野武彦。
広場まひる。ユリーシャ。
今、小屋の中は交渉と猥褻行為を同時進行させるという混沌の坩堝と化している。
その邪魔をされたくないのだと、月夜御名紗霧は彼らを小屋から追い出していた。
「聞こえる?」
「だめじゃのぅ……」
額を寄せ、小声で溜息を重ねたのは魔窟堂とまひる。
盗聴器代わりに小屋内部に置いてきた集音マイクの一つ。
その音声が拾えないことが判明し2人は落胆したのだ。
彼らは与り知らぬことだが、理由はレプリカ智機P−3のジャミング機能による。
その目的は盗聴阻止。
但し、魔窟堂たちのマイクを阻害する意図は無かった。
オリジナル智機が管制室の代行機たちにP−3を補足されぬよう施した細工が、
意図せぬ副作用を与える結果になったに過ぎぬ。
しかし、彼らにとってこのとばっちりは大きかった。
紗霧と智機の会談を拾いながら自分たちなりに考察を為す。
魔窟堂たちのプランが木っ端微塵に砕け散ったのだから。
魔窟堂とまひるは落胆を引きずりつつも、額を寄せて意見交換を始める。
「でも、仲間を殺せなんて提案おかしくないかな?」
「奴らも一枚岩ではないということかの」
「裏だよ。絶対裏があるよ」
「まあ、何かしらの事情はあるじゃろて。
問題はその事情があの椎名智機の個体によるものか、
他にもいるじゃろう多くの智機たち全体の意志によるものか……」
「そうかなあ?あたしは仲間割れなんてしてないと思うけどなぁ。
何かあいつらが困っちゃうことが起きたから、
それを誤魔化すために適当言ってるとか、どうでしょ?」
「例えば?」
「実はあいつらの基地が東の森にあって、それが今燃えちゃってるとか」
「あるいはアイン殿や双葉殿に攻め込まれたやもしれぬな」
予測、推論は幾らでも重ねることが出来るが、結論が出る気配は皆無。
会議は踊る、されど進まず。
情報量少なき、整理も論理も曖昧な2人の考察は井戸端会議に等しい。
対する、沈黙を保つ2人の胸中はどうか。
(ランス様……)
ユリーシャの胸は張り裂けそうだった。
ランスが自分ひとりの愛情と肉体では満足しない男であることは宣言されているし、
実際にアリスメンディと関係を持ったらしきことも理解している。
しかし、実際に他者との性行為を見せられるとは思ってもみなかった。
ましてやランスが行為に没頭する余り、ユリーシャが小屋から出る際に一言も、
一瞥すら与えなかったことも、また。
相当に、堪えた。
「……んぁっ……」
唐突に、耳に届いた。
ユリーシャに追い討ちをかける、智機の抑え切れぬ快楽の喘ぎが。
壁一枚隔てた向こう側から。
(ランス様の指はまだあの機械の胸で踊っているの……?
それとももう、ほかのもっと敏感なところまで旅している……?)
一度は胸の奥に沈めたヘドロの如き薄ら汚れた感情。
ユリーシャの沈む心が再びそのヘドロを攪拌しつつあった。
嫉妬。焦燥。そして、その果てにある……
もう一人、高町恭也は、味方について考察していた。
(なぜ、月夜御名さんは俺たちを外に出したのか?)
智機は、得物を持っていないようではあった。
しかし、たとえ素手であろうとも鋼鉄の肉体や高圧の蓄電などの危険はある。
性的な悪戯に夢中になっているランスのみでは、護衛として心許ないはずだ。
それでもあえて、自分たちを屋外に出した。
外を見張れという意図もあろう。
だが、それならば自分一人を見張りに立たせればよいはずだ。
ユリーシャやまひるに気を遣ったということも考えられるが、こと紗霧に関しては、
人の心の機微を理解した上で踏みにじる傾向が見受けられる。
故に、それも理由としては不十分だ。
(なぜ、月夜御名さんは通信機を作らせているのか?)
重ねる問いに、恭也は解等の手ごたえを感ずる。
夕刻の魔窟堂の単独行時、紗霧を始めとする数人は落ち着かない心持ちだった。
包囲作戦の布石は打てたのか。
アインや双葉と接触したのか。
イレギュラーは発生していないか。
通信機とはその折の魔窟堂に同じく、遠くの誰かが収集した情報を、
素早く入手することを欲した故の発想ではなかったか。
であれば―――
「俺たちは俺たちで、出来ることから始めましょう」
恭也が、ようやく沈黙を破った。
魔窟堂とまひるは言葉を切り、恭也を見つめる。
恭也の瞳は不動だった。
力強く頼りがいのある、年齢不相応の大人の目をしていた。
「できること、とは?」
魔窟堂の問いに、恭也は答える。
「会談の後に月夜御名さんが必要とする情報が素早く提供できるよう、
下準備をしておくことです」
「つまりは偵察かの」
「然り。大河は両岸から見よといいます。
あの機械がもたらす情報を、真偽を確かめずに飛びつくわけにはいかない。
月夜御名さんであればそう考えるはずです」
もたらされた情報の信憑性を確かめる。
もたらされぬ情報の隠匿を発見する。
紗霧がこの交渉から何を引き出し、何を思いついたとしても、
その折に最速で要求に対応できる体制を作っておく。
それが自分たちに打てる最善手であろうとの答えに、恭也は達したのだ。
「魔窟堂さん。通信機は?」
「メカ娘の残骸から摘出したインカムは、ほぼ手を加えんでも使える状態じゃ。
あとは集音マイクが拾った音を、如何にインカムに伝えるか……
その帯域調整くらいじゃな」
「では魔窟堂さんを出するわけにはいきませんね。俺が、行きます」
通信機を作成する。
それはハム通信や鉱石ラジオに精通する筋金入りのオタク・魔窟堂にしか出来ぬこと。
「俺がインカムを持って、東の森周辺を調べてきます。
魔窟堂さんはその間、そちらの調整をお願いします」
恭也が腰を上げ、尻を払う。
その恭也の逞しい腕に飛びつくように、まひるが立ち上がった。
「あ、あのさっ!
あのさ、あたしが行くっていうのは、どうかな?」
まひるの言葉尻は上がり調子の疑問形だったが、その意志は強いらしい。
愛らしい頬が赤く染まっているのは興奮と決意の表れだった。
「まあ、たしかにまひる殿が最も適してはおるか……」
魔窟堂の言葉はまひるの異形に由来する。
ケモノに戻るを拒絶し、その進行を己の意思で止めているまひるではあるが、
既に変容した一部機能については、無かったことにはならなかったのだ。
蠢く左手の爪がある。
片翼がある。
そして今ひとつの異形―――アメジストの如き白紫光を放つ瞳がある。
夜に生き、夜に目覚める五芒星の、妖精の瞳が。
光を必要としない瞳が。
客観的に見ても、夜間の偵察に最も適した人材といえる。
だがしかし。
「―――良いのですか?」
恭也が声を一段落とし、まひるの意志を問うた。
今まで恭也がまひるに対して見せたことのない、厳しい眼差しで。
魔窟堂も無言で頷き、恭也に同調する。
まひるは主催者に立ち向かうことに対して消極的だ。
自分たちに比して一歩引いた位置に立っている。
恭也も魔窟堂も、そのことを察している。
故に、問い質した。
その覚悟を。
まひるは、まっすぐに答えた。
その覚悟を。
「だいじょぶ!」
まひるにとって己の消極性は、恭也たちに対する負い目だった。
(戦いたくない―――)
主催を打倒する。
之を旨とする集団の中にあって、この思いは我儘なことだとまひるは思っていた。
覚悟を持たぬ自分が、果たしてこの前向きに戦おうとしている集団に所属していても
良いものかどうか、煩悶していた。
(恭也さんも魔窟堂さんも一生懸命がんばってるんだもん、
あたしだって、できること、しないと)
慣れぬ家事の真似事をし、紗霧のひみつ道具の作成を手伝った。
時折緊迫する空気を和らげる為に明るく振舞ったりもした。
彼は彼なりに貢献を果たしている。
それでも―――己の足りぬ思いを払拭するには至らなかった。
その燻る思いを、重い借りを返上する機が、訪れたのだ。
そして何より。
(戦わなくてもいい)
走り回り、情報を集め、それを伝える。
この任務はまひるが最も忌避する行為なしに皆の役に立てる任務でもあった。
万一、何者かの攻撃を受けることがあろうとも、今の自分であれば
逃げることに専念して逃げ切れぬ相手などいない。
無意識下に、そのように分析もしていた。
恭也はまひるの瞳を射抜いている。
まひるは恭也の瞳を受け止めている。
否、受け入れている。
恐れも迷いも無い、母性的な包容力すら感じさせる瞳で。
それに、恭也は膝を折った。
「ではまひるさん、頼みます」
恭也の折り目正しき辞儀に、まひるは含羞のはにかみで以って応えた。
「でへへぇ…… 来ちゃいましたか?あたしの時代?」
=-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=
それで、今―――まひるは走っている。
『あーあー、どうじゃなまひる殿。わしの声は届いておるかな?』
「だいじょぶです」
『そちらの音声も、ま、ノイズは酷いが聞こえてはおる』
通信機が完成したのだろう。
インカムから、ノイズ交じりの魔窟堂の声が聞こえてきた。
『広場さん、今、どのあたりです?』
「森を出たとこです」
『もうですか!?』
恭也の驚愕がイヤホン越しに伝わった。
まひるはいつも顰め面の彼の素の表情を垣間見たようで、少し嬉しく感じた。
『辺りの様子は?』
「東の森はやっぱり燃えてる。すんごい燃えっぷりで。
それと……なんだろ、地震でもないんだけど、地面が小刻みに振動してるような……
……なんですとー!?」
通信をしながらも東進していたまひるは、ついに東の森の端に達した。
そして感じた。
圧倒的な、恐ろしいほどの、熱量。静寂の夜を侵し、奔放に踊る不躾な炎。
さらに―――
『どうしました広場さん!』
「地面の振動はショベルカーで……
そんでもって椎名ロボがてんこ盛りで、火消し作業してます。
繰り返します。
椎名ロボ、てんこ盛り」
↓
【グループ:紗霧・ランス・まひる・恭也・ユリーシャ・野武彦】
【スタンス:主催者打倒、アイテム・仲間集め、包囲作戦】
【備考:全員、首輪解除済み】
【現在位置:東の森 南西部 重点鎮火ポイント付近】
【広場まひる(元№38)】
【スタンス:偵察、ついでに身体能力の調整】
【所持品:せんべい袋、救急セット、竹篭、スコップ(大)、簡易通信機(New)】
※ 服3着の内一つは最高品質(防具にあらず)の体操着でした。
※ 現在まひるは体操着に着替えています。
※ 軽量化を考慮し、アイテムの一部を仲間に渡しています。
【現在位置:西の小屋外】
【ユリ―シャ(元№01)】
【所持品:生活用品、香辛料、使い捨てカメラ、メイド服(←まひる)、
?服(←まひる)、干し肉(←まひる)、斧(←まひる)】
【高町恭也(元№08)】
【所持品:小太刀、鋼糸、アイスピック、銃(50口径・残4)、保存食、
釘セット】
【魔窟堂野武彦(元№12)】
【所持品:軍用オイルライター、銃(45口径・残7×2+2)、
白チョーク数本、スコップ(小)、鍵×4、謎のペン×7、
ヘッドフォンステレオ、まじかるピュアソング、
簡易通信機(New)、携帯用バズーカ:残弾1(←まひる)、工具】
【現在位置:西の小屋内】
【月夜御名紗霧(元№36)】
【スタンス:智機よりの情報引き出し
反抗者を増やし主催者へぶつける、計画の完遂、モノの確保、
状況次第でステルスマーダー化も視野に】
【所持品:スペツナズナイフ、金属バット、レーザーガン、ボウガン、
スコップ(小)、メス1本、指輪型爆弾×2、小麦粉、
文房具とノート、白チョーク1箱、謎のペン×8、
薬品数種類、医療器具(メス・ピンセット)、対人レーダー、解除装置】
【ランス(元№02)】
【スタンス:智機を俺様の指テクであへあへ言わせる
女の子優先でグループに協力、プランナーの事は隠し通す
男の運営者は殺す、運営者からアリス・秋穂殺しの犯人を訊き出す】
【所持品:なし 】
【能力:武器がないのでランスアタック使用不可】
【備考:肋骨2〜3本にヒビ(処置済み)・鎧破損】
【レプリカ智機(P−3)】
【スタンス:ザドゥにぶつけるための交渉】
【所持品:?】
すみません。
状態表の体操服のくだりを削除し忘れていました。
本スレ投下時は削除します。
こちらも色々と遅れたりしてすみません。
メインのデスク死亡。
サブのノートの電源死亡(しかもつい最近)
仕方なく、サブサブの古いノートで現在動かしてる状況です。
以下は、サルベージができなかったので書きかけていたものを新たに書き起こしたものになります、
「交渉……今更なにをですか?」
一瞬の思考の停止から回復した狭霧は紅い色で映えた目の前の存在に言葉の意味を投げ返す。
紅蓮の炎が彩るオレンジ色の光が空を綺麗に照らし、後ろから刺すその光は機体を綺麗に、そして雄大に見せていた。
「警戒は当然か……」
臨戦態勢。
一触即発。
三人と一機の状態はまさにそれであった。
「それも想定の内、そのままでもいい。こちらからの提案を聞いてほしい」
「「「………」」」
「単刀直入に言おう
―――ザドゥを始末してもらいたい」
赤い光を飲み込んだ智機の瞳がギラリと輝いたように、三人の目に映った。
静寂。
智機からの『交渉』の提案は、三人の思考を再び停止させるだけのものであった。
火災から始まるこの時点、このタイミングでの智機からの提案。
全てが出来すぎている。
「つまり、それは貴方はゲームの崩壊を望んでいると言うことですか?」
平静を装いながら発した言葉の裏でも狭霧は、状況に戸惑っているとも言える。
「ふむ、嘘を言っても仕方ない。生憎と残念だが私はゲームを崩壊させるつもりなどないよ」
「なんじゃと……?」
「まぁ、簡単に言うとだね」
「ゲームの崩壊にはザドゥが邪魔だということか?」
智機の言葉を遮り、その先の言葉を恭也は答える。
「頭の回転が速くて助かる」
一呼吸おいて智機は再び話し出す。
「……さて少し長くなるが現状を話そうか。
我々の達成条件は、『ゲームの完遂』だ。
それ以外は我々にとっては、くたびれ損の骨折り儲けというやつになる。
ところがこのザドゥのやつは、『ゲームの進行』には積極的ではない。
いや、むしろ反対と言うべきだろう」
智機の言葉を聞きながら三人は、理解する。
この『ゲームの進行』に積極的というのは、素敵医師や目の前の存在のように何が何でも参加者に殺し合いをさせるというスタンスのことだろう。
そして三人は理解し、確信する。
ザドゥという漢が、このまま自分たちによる反乱が成功すれば最後に戦う存在だということを。
そして、それは智機……いや、ゲームを完遂させたい存在としては困ることを。
その様子に満足したかのように智機はニヤリと微笑む。
ならば話は早い、と。
「我々『委任』された運営陣のTOPはザドゥのやつなのは君達も知ってはいるだろう。
だからこそ私のようなスタンスの存在にとっては非常に目障りなのだ。
邪魔と言って差し支えない。
君達も確信してるようにもはやゲームは終盤、残る人数は極僅か、それも我々に反抗し一丸となっているものたちばかり。
しかもザドゥのやつは、君たちが来るなら受けて立つ姿勢という状態だ。
これでは『ゲームの完遂』など望めやしない」
「お話の途中、申し訳ないのですが……それで私たちのメリットはあるんですか?」
これ以上の高説は不要とばかりに狭霧は、本題を切り出す。
「では予想して貰いたい。このまま君達が我々と決戦を行った場合、勝てる目算はどれだけあるか?」
三人は黙る。
なぜなら、それは先ほど小屋の中で全員で頭を悩ませたこと。
ザドゥを始めとする強大な敵たちを一度に相手にせねばならぬ最悪の可能性。
「限りなく低いと言っていいだろう。だがここにザドゥを個別に葬れる絶好の機会があるとするなら?
もし、これが私の提案でなければ間違いなく君たちは乗るとするのではないだろうか?」
理想は各個撃破。
それは確かに正論。
「もし君達がこの話に乗らないと言うのなら、我々の本拠で君達と我々の全面衝突しかない。
しかし、私にはそれが困る。かといって私ではザドゥを倒す術はない」
「つまり……」
「君たちには万全ではないザドゥを倒せる機会を……」
「お前さんにはゲームの完遂をできる機会を……」
「グッド。そういうことだ」
遠くでぼうぼうと燃える火の粉がまるで自分たちを包み込むように三人の体温は上昇する。
ザドゥの始末に成功したのなら、智機の手によるゲーム完遂のための姦計で済まされぬような魔の手が待ち構えているのは確かだ。
もしくは……あるのだろう。
ザドゥさえいなければ、智機にはゲームを完遂させるめどが。
三人の考えは一致している。
乗るか、反るか。
智機が嘘を言っているのであれば、後の障害が智機を残した方が大きいならば。
それならばこのまま目の前の個体を破壊すればいいだけ。
しかし、自分達を始末しに来たというのなら、こんなことなどせず不意打ちでも何でもすればいいだけである。
それだけの機体を誇るのが彼女『達』なのだから。
だが、敢えてこうして話を持ちかけてきたと言うことは、少なくとも戦いを望んできたわけではないことは明白。
彼女の考えが嘘か真かにしろ、判断はせねばならぬだろう。
「……悪いですがこの場ですぐには決めれませんね」
「そうじゃな。小屋の中の面子とも相談して決めねばならん」
「ふむ、まぁそれも当然。しかし敵に背を見せていいのかね」
「なら、俺が残る」
ぐいっと恭也が前に出る。
その様子を智機は見透かしていたかのように満足げに微笑む。
「俺よりも魔窟堂さんや狭霧さんの方がこういったことに向いてるからね。判断は二人に任せるよ」
「しかし、あまり時間はない。でないとザドゥを葬れるチャンスがなくなってしまう。待てるのは10分だ」
両手を広げて10の指を三人の前に智機は見せる。
でなければ、機会は失うと暗に煽りならが。
「この場は、請け負いました。後ろは二人に頼みます」
「すまんな、恭也殿。気をつけてな」
「まぁ、相手の素振りからしても不意打ちの危険性はないと思いますが……」
監視役として智機に応対することを望んだ恭也の身の安全はほぼ保障されていることを狭霧は述べる。
もし一人だけ始末したい機会を作りたいなら、こんな手の込んだことをせずとも機会はいくらでもあったはずである。
では、この一人を誘拐し、ゲームを完遂させてくれる駒とすべく洗脳でもしたいというのだろうか。
もしあるとしたのならこの可能性。
ジョーカーとも言えるべき存在にするために、戦闘力の高いプレイヤーを確保したいという策略。
しかし、今回でそれを行おうとするのはあまりにも偶然の要素が高い。
誰が表に出てくるかなど100%わかりきってるはずのない博打の要素が高いからだ。
じっとこっちを見据える智機を背にして魔窟堂と狭霧は、小屋への足を伸ばす。
数歩歩んだところで。
ふいに狭霧が首を後ろに傾け、智機に向けて言葉を放った。
「最後になった私達を始末できる参加者……その目処があなたにはあるのでしょうね」
「……さぁな」
狭霧の言葉に動じず、智機は答えた。
ここまで。
タイトル未定・話数としては生きてこその後。
続きは来週予定。
遅れ遅れしてる身分で非常に申し訳ない。
しかし、その上で更に非常に申し訳ないことを。
これより先は、私は私でルートを突っ走りたくあります。
その理由の一つとしてでゴールまで一度到達させたいと言う思いが溢れてきたからです。
あの頃はまだ三人がコンスタントに投下しあっていた時なので新キャラや思念や新フラグがあっても
回せ切れるだろうと言う思いもあったのですが、今現在は、先ほども述べたように
新要素なしで既存のものだけ一度ゴールへの道を作り上げたいという考えがどうしても抑えきれなくなってきました。
その過程で考えると島は別に神々の力で作り上げたものなら生活感があっても住民などの存在は考えなくても良いし
新フラグを呼び起こしそうな新キャラもゴールへの到達に必要な材料としては必要ないなど、
不必要じゃないかなと思えるものが多いからです。
それらがあることで話に深みが増すことも事実です。
終盤で私なんかと比べてこれだけのクオリティを誇る二人が投下してるのは心強いことで
実力も確かな方々です。
面白くないわけがないと思います。
何年かけて大作を作るのを否定はしません。
私もそんな物語を楽しみにしています。
しかし、この間のラジオをやってから、PCのトラブルのせいとか仕事の忙しさとか入院したとかを理由にして
クオリティやフラグまとめに悩まず、まず書ききってみたいと自分を奮い立たせてみました。
以降、基本はBルートの作成と投下をメインに私はしていきたいと思います。
終盤で一人輪から抜けるようで非常に申し訳ない。
ttp://d1s.sakura.ne.jp/ergr/
>>852 の最新のものをアップデートが完了しました。
webサイト用のリンクやファイル名はちまちまやっていきます。
お互い頑張っていきましょう。
追伸。
ファイル名に「〜」を使ってしまうとwebに上げたときにリンクができなくなってしまう模様。
000-049のように半角ハイフンなどにすればOKのようです。
新作・編集お疲れ様です。
明日ここに素材をUPしますので、また。
それと追伸ありがとうございました^^。
>>887
独自ルートの件、了解しました。
大変な中、負担をかけてしまいすみませんでした。
こちらも完結できるよう諦めずに進めて行きたいと思います。
今回は収録しませんでしたが、今回書かれた分はどうしましょうか?
別ページ作成もOKです。
レスお待ちしております。
この度、278話までをまとめた素材をUPしました。
SSログ関係はこれで概ね解決できると思います。
アドバイスありがとうございました。
あと書き手さんの参考用に、夜叉姫のライターによる小説のまとめもUPしました。
既に所持してましたら余計なお世話かも知れませんが^^;
本編のネタバレ要素はあまりないので、未プレイの方でもお読みいただいても大丈夫とは思います。
まとめ共々、楽しめていただければ幸いです。
葱バトロワ1.04
ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org710366.zip.html
パスはnegiです。
yashahime NOVEL
ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org710385.zip.html
パスはyassです。
次回は遅くても来週の月曜日にはここでまとめをUPします。
よく考えたら既に所持なさってる可能性もあるので、一旦yashahime NOVELは削除します。
要望がありましたら再UPします。
文章間違えたorz
>>886 a154siyed ◆7xxvfugumA さん
独自ルートの件、了解しました。
そしてまた私も、独自ルートに進みたく思います。
尻馬乗りの格好で済みませんが、この状況になって決心がつきました。
リレーという形式に於いては持つべきでない我欲ですが、
自分なりの展開で自分なりの結末を書きたいのです。
誠に申し訳ございませんが、何卒ご了承を。
「夜に目覚める」よりCルートと考えております。
>>893
了解しました。
>>886 の方と合わせて、「夜に目覚める」引継なしで進めていきたいと思います。
ないは思いますが、もし新規参入希望者が現れる事がありましたら
こっちの方はリレーしていきたいと考えてます。
これから本スレ投下や編集などで決めなければいけない事はありますが
諸事情でこちらは木曜日の晩までレスできません。
こちらも独自にしたいことができましたので、それも含めて詳細は木曜日に。
時系列順のSS目次を次のアップ時に入れようと思います。
それぞれのルートは作品が増えるまでは同ページ内に納めようと考えてます。
増えましたらそれぞれ別ページにまとめようと考えてます。
あと本スレのみ見る人のために、複数のルートの事を本スレで説明する必要があると思います。
それと作品投下の際は>>レス番だけではなく、状態欄にどの作品と関係あるかの説明文も必要になると思います。
分岐後の初投下が自分となりますので、その前にご確認を。
>>895 にてのご意見も鑑み下記の対応を致したく思いますが、よろしいでしょうか。
・トリップを付ける
・本文、状態表の第一レスにルート番号を記載する
>>896 分岐の告知
>>897 本文第一レス
>>898 状態表第一レス
なお、今晩投下予定の「夜に目覚める」ですが、この件に関しましてのご返答が
284 ◆ZXoe83g/Kw さん
a154siyed ◆7xxvfugumA さん
の両氏からご返答いただけるまで、保留とさせていただきます。
「バトル・ロワイアル」の今後についてご連絡します。
上記「生きてこそ」以降、3ルートに分岐することとなりました。
ルートAは従来通りのリレー形式に、
ルートB、Cは其々の書き手個人による独自ルートになります。
経緯につきましては、下記サイト(総合検討会議)の886以降をご参照ください。
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/computer/15097/1091460475/
>>xxx
(ルートC:2日目 PM6:46 D−6 西の森外れ)
その姿に、走っている、といった必死さは無かった。
スキップにも似た軽やかさで以って、中距離走ほどの速度。
多少の不自然は感じなくも無いが、ありえぬ話ではない。
それが平地であるならば。
昼日中であるならば。
・
・
・
(ルートC)
【グループ:紗霧・ランス・まひる・恭也・ユリーシャ・野武彦】
【スタンス:主催者打倒、アイテム・仲間集め、包囲作戦】
【備考:全員、首輪解除済み】
・
・
・
>>896 のアンカーが間違ってました。
正しくは下記です。
>>897 分岐の告知
>>898 本文第一レス
>>899 状態表第一レス
こちらの意見を参考にして頂きありがとうございます。
それでいいと思います。
まとめについては次の次(再来週月曜日)までに考えていこうと思います。
独自ルートとなった今、仮投下の必要があるかわかりませんが……
以下11レス「彼女の望み」、11レス「おやすみぃ…」を投下いたします。
本スレ投下は来週土曜深夜を予定しております。
次回予定は「フロイトだったらこう言うね。」または「少女タナトス/悪霊エロス」。
透子と紳一をメインに、隠し部屋1の面々が少々登場予定です。
>>xxx
(Cルート:2日目 PM7:03 H−3地点 東の森北東部)
カオスを振ること40余回目。
切り裂いた大気の隙間から、ザドゥとカオスは確かに感じた。
秋の涼やかな風を。
開いた視野の遠くに、ザドゥとカオスは確かに見た。
森の果てを。
そして、椎名智機と思しきシルエットを。
《ザッちゃん!もう少しでゴールじゃぞ!》
カオスの思念波が興奮に震えた。
若干の上り勾配の先、距離にしておおよそ30メートル。
障害になるほどの木々は無い。
即ち。
カオスを振り回す必要の喪失を意味する。
《ははっ、この男、やり遂げおった!!》
カオスの胸中が喜悦に満ちたとき、その刀身がザドゥの掌から滑り落ちた。
ザドゥも崩れ落ちた。背負われた芹沢も、また。
《立て、立つんじゃザッちゃん!》
カオスの魂の籠った激励に、ザドゥは辛うじて意識を繋いだ。
しかし、本来熱く感ずるべき熱風に晒された地面が、頬に心地よく感じられた。
体が融解し、地面に染み込むような感覚に支配されている。
もう、動けない。
《立てぬなら叫べ! 向こうの機械の嬢ちゃんに届くよう、
燃焼音も破裂音も劈いて叫べ!》
ザドゥは運命の囁きに対して聞き分けの良い性分ではない。
それでも、分かってしまう。分からざるを得ない。
最後に点った蝋燭が遂に燃え尽きてしまったのだと。
気力。体力。意地。潜在能力。
全てを惜しみなく出し切って、それでもなお届かなかったのだと。
限界とは突然訪れ、完璧な説得力を以って、胃の腑に落ち着くものなのだ。
(気を、失うわけには……)
己を全うできない。
このままでは笑って死ぬことなど不可能だ。
草葉の陰から覗き見ているであろうあの狂人に、嘲笑われて死ぬことになる。
(恥辱に奥歯を噛み締めろ!怒りに体を震わせろ!)
だが、ザドゥにはその程度の余力も残されてはいなかった。
ゴムマリのように弛緩した四肢に、既に感覚は失われていた。
その彼の耳に。
「ともきーーーーん!! ねーともきんってばーー!!
あたしたちはここだよーーー!!」
意識を失っていたはずの芹沢の叫び声が、至近距離から浴びせられた。
《そうじゃカモちゃん!こんどはおまえさんが役に立つ手番じゃ!》
「おーけーい! ……あ、ザッちゃんは耳ふさいでてねー!」
=-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=
そうして芹沢が声を張り上げること、一分、二分。
結局、救いの主は現れなかった。
幽霊の正体見たり枯れ尾花。
或いは彼らが捕らえたシルエットは、希望が生じさせた幻影であったやも知れぬ。
芹沢は力なく溜息をつき、ザドゥに顔を寄せる。
ザドゥは虚ろな目で瞬きもせず、芹沢を見返した。
「だから捨ててけって言ったのになー。
女の子のお願い聞いてくれないなんてひどい男だなー。
ぶーぶー!」
拗ねるような甘えるような。
あからさまな構って欲しさを振りまいて、芹沢はザドゥにじゃれ付いた。
「ごめんなさいは?」
「……は?」
「だから〜。あたしを捨てらんなくってごめんなさいは?」
「ふざけた…… 女だ……」
「な〜んてね♪ ホントは嬉しかったんだけどさ。
そんなにボロボロになるまであたしを助けようとしてくれてさぁ。
ねね、正直に言ってみ?
実はザッちゃんあたしのこと、愛しちゃってる?」
「寝言は…… 寝て…… 言え……」
そんなやり取りを、カオスは微笑ましく見ていた。
微笑ましくも心の涙を流しながら。
見ていることしか出来なかった。
確定された死を前にして甘える女に、最後まで素直になれぬ男。
その最後の刻を覚えていてやろうと思った。
限界に挑み、限界を突破し、それでもなお限界に届かなかった挑戦者たちのことを。
だが、カモミール芹沢は、カオスのそんな傍観者気取りを許さなかった。
「さて、と」
胡坐をかくように座っていた彼女は、場を仕切りなおす為にそう呟くと、
カオスに手を伸ばし、柄を握ったのだ。
カオスが意外に思うほどの力強さで。
「よいしょ、よいしょ」
続けて芹沢は立ち上がる。
カオスを地面に突き立て、そこに体重を乗せ、背中を樹木に擦り付けながら。
生まれたての小鹿のように震える足で。
「動けるのか…… 芹沢……?」
「ザッちゃんがおんぶしてくれてた分、ちょっとは回復できたみたい。
ほんっっと〜に、ちょっとだけ、だけどね」
「ならばゆけ、芹沢…… 方角と距離は…… カオスに聞くといい……」
自己犠牲など唾棄すべき。
その不遜な思いは今以て変わらずザドゥの胸に存在する。
しかし、この時ザドゥの覚えた感情は、安堵だった。
『大将も自己満でカモミールを殺さないよーに、気をつけるがとしか言えんきね』
(芹沢が助かるならば、あいつにだけは負けずに済むわけか……)
ひび割れては接ぎを繰り返し、剥がれては貼りを繰り返し。
もはや見る影もない彼の矜持だが、芯鉄の輝きだけは失わずに終われる。
最後の一線は破られずに済む。
その安堵だった。
(到底満足はできないが、最低納得はできる死に様だ)
だが芹沢はそんなザドゥの自己完結をも許さなかった。
「あははー、無理。倒れた時に足、痛めたみたいだから」
「な……!」
芹沢は明るくあっけらかんと言い放ち、自らの左足首を指差した。
それは骨格の成り立ちからして、ありえない角度で外に大きく曲がっている。
ザドゥの膝の下、固い根こぶの上。
芹沢の右足首は転倒時に挟み込まれたのだ。
余談だが、彼女が気絶から覚醒したのもまた、その激痛に拠るものだった。
「無理なんだけど……
こうして木に背中を預ければ、立つことくらいならできるかな?」
だからどうした、と、ザドゥは責めなかった。
一度感じた安堵からの急転、絶望。
気力が底をついている今の彼にこのショックからの回復の術は無い。
故に芹沢の対話相手はカオスが担うことになった。
「それと、ザッちゃんを助けることまでくらいなら、どうにか。
最後はともきん任せの、ちょ〜っと博打なことになるけどね」
《何を企んでおるのじゃ、カモちゃん》
「またまたイくよ〜、必・殺・技っ!」
《……おまえさん、まだ薬が切れとらんのか?》
「ぷぅううう。カオっさんがイジワル言う〜。あたしだって一生懸命考えてるのにさ〜」
ザドゥの瞼は今まさに閉ざされようとしていた。
意識もまた朦朧。
芹沢とカオスの作戦会議が、聞きなれぬ異国語の子守唄の如く
その意味を解さず耳に入ってくるのみだ。
《……一発…… 関の……》
「だーいじょ……、……には定…………?」
《……じゃが…… …………るまいの》
「………ね…………」
やがて子守唄すら緩やかにフェードアウトしてゆき……
「!!」
その意識が落ちる前に再び覚醒したのは、見事に洗練された【気】の収斂。
研ぎ澄まされた日本刀の切っ先のごときそれが、己に向けられた。
次いで、芹沢の呼びかけ。
それでザドゥは意識を完全に取り戻した。
「おっきろー、ザッちゃんーっ!」
松の木を背に、伏したザドゥを正面に。
カモミール芹沢が立っていた。
構えていた。
「あたしが、橋を架けてあげるね♪」
カオスは、構えし芹沢の腕にしかと握られていた。
ザドゥが感じた【気】は、カオスに凝縮されていた。
淀みのない、真っ直ぐな【気】で満ち満ちていた。
《生きろよ、ザッちゃん》
ザドゥには分からなかった。
今、この状況でカモちゃん★すらっしゅを発し道を作ったところで、
立ち上がることすらままならぬ自分に何ができるのか。
「芹沢…… 技を放つ気力があるならば……
這え…… 歩けぬなら…… 這って森を抜けろ……」
ザドゥには分からなかった。
派手に花火をぶち上げて結局共倒れになるくらいなら、
どれほど絶望的でも可能性のある方法を採るべきだ。
「やー、これがねー。
自分の為にって思うとしおしおー、なんだけど。
ザッちゃんの為って思えば、むんむんってクる感じ?
だから、ね。
これしかないから、こうしよう!」
ザドゥは分かり始めた。
芹沢とはそういう女で、この言葉に偽りはない。
だが、だからこそ、響く言葉があるはずだ。
「叶えたい夢が…… あるのだろう……?
新選組…… 生存……
だから…… 俺などにかまうな…… 行け……」
ザドゥは知っていた。寝物語に聞いていた。
新選組の失われぬ明日。
それが彼女の渇望であることを。
「そりゃ〜ちょびっとだけ違うな、ザッちゃん」
ザドゥは恐れた。
芹沢の自分に対する想いと、続く言葉を。
さらなる己の敗北を。
「あたしの願いはね……」
カモミール芹沢。
彼女の宿願をより正確に述べるのであれば、
それは新選組の生存ではなく、
理想でも理念でも組織でも制度でもなく―――
「『お友達を』助けることなんだぁ♪」
沖田鈴音よりも気分屋で、
永倉新よりも身勝手で、
土方歳江よりも疎まれて、
近藤勇子よりも繊細で、
原田沙乃よりも素直ではなくて。
新選組の誰よりも仲間想い。
それが、新選組局長・カモミール、芹沢。
「俺は……!」
(お前のように純粋な思いでお前を救おうとしたわけではない!
ただ―――)
芹沢の構えは件のスラッシュに同じ。抜きも同じ。振りも同じ。
相違点は2つ。
松に体の支えを求めていること。
刃が寝ていること。
それゆえ衝撃派の顕れは断ち切る『線』ではなく……
「そりゃ〜〜っ! か〜もドラコ〜〜ンッ♪」
弾き飛ばす、『面』。
ばちこーーーーん☆ミ、とコミカルな効果音に乗って、
ゴルフボールが飛ばし屋のドライバーにグリーンの彼方へと弾き飛ばされるが如く、
ザドゥはカオスに森の外へ向けて吹き飛ばされた。
(ただ…… 己の矜持の為に、お前を手放せなかっただけなのだ……)
懺悔の言葉を、最後まで述べることの出来ぬままに。
「ちゃんと受身取ってね〜♪」
にぱっと。
芹沢は大輪のひまわりのような笑顔をザドゥに向けて、ピースサインを決める。
可愛らしい表情だった。
年齢や性別を超えた人懐っこさがあった。
現在置かれている境遇と、己が成し遂げたを理解していれば、
到底できない表情だった。
直後、衝撃波の揺り戻しか、彼女に吸い寄せられるかのように煙が群がった。
その一瞬に、芹沢の膝が崩れた。
もう見えない。
その勇姿も、あの笑顔も。
タイガージョーの気高さに敗北し、
アインの覚悟に敗北し、
素敵医師の予言に敗北したザドゥは―――
「せり……ざわ……」
そしてまた、芹沢の献身に敗北した。
=-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=
(2日目 PM7:09 H−3地点 東の森北東部・外れ)
「飛来物分析完了。99.78%の確率でザドゥ様だね」
学校待機のレプリカ智機。
本拠地との連絡が途絶えたのは、ザドゥ所持の通信機と同じく、
火災の熱と煙にて彼女らの通信回路のみが機能不全となったに過ぎず、
彼女らは、未だ忠実にザドゥ救出タスクを実行していた。
その数は3/4機。
失われた1機は救助前準備の「耐熱能力の実地検証」役を見事やり遂げた果てに、
有用なデータの多くを残して炎上している。
オリジナル智機にザドゥ回収と彼らの地上への足止めを任ぜられた機体もまた、
一群に合流していた。
他の3機はこの1機の通信回線を通じて、オリジナルの指揮下に組み込まれた。
自らに課されたタスクが現在、タスクリストから削除されていることを知らぬままに。
4機の智機はザドゥたちの移動経路をカタパルトの投下位置から予測し、推論し、
そして、今、ザドゥの落下を目視で確認できるほどの位置まで移動していた。
それは、ザドゥの命にとっての僥倖だった。
ザドゥの精神にとっての如何は、推して知るべし。
「落下ポイントは?」
「Yes。北に2m、東に1.5m。誤差±15cmと言ったところか」
「救助方法は?」
「No。火災に対する救助用具は若干用意したが、落下に対する用意は無いね」
「この体を張って受け止めるしかないということだね」
「……Yes」
↓
>>xxx
(Cルート:2日目 PM7:08 H−3地点 東の森北東部)
「ねーねーカオっさん……
ザッちゃん無事に向こうへ行けたかなぁ……?
もう真っ暗であたし見えないや……」
喋ると口の中に土の味がする。
そこであたしは気付いた。
ああ、あたしって今、倒れてるんだ。
《おうおう、ワシがこの目でしっかり見届けたぞい。
あやつは煙の壁を抜けよった!》
ずずっ、ずずっ、ってカオっさんは鼻でも啜ってるみたいな涙声を出す。
あははー、へんなのー。
カオっさんには鼻なんて無いのにねぇ。
そうそう。
カオっさんにもお世話になったよねぇ……
カオっさんがいなきゃかーもドラコンは撃てなかったし。
死んじゃう前にお礼だけは言っとかないと。
ん?
あ、そーだ。
いいこと思いついちゃった♪
「カオっさん、ありがとーねー。おっぱいぎゅー!」
あたしはカオっさんを両手で抱いて、おっぱいの谷間に埋めてあげた。
女豹のポーズすら取れないあたしに出来るお礼って、このくらいだしー。
《カモちゃん……》
カオっさんはまだ涙声。
あれれ?
嬉しくないのかなー?
それともあたしが死んじゃうのが、そんなに悲しいのかなー?
ぶぅう。それって嬉しいけど、でも、なんかヤだー。
「ね。笑ってよカオっさん? 折角のお礼なんだもん、楽しんで欲しいな」
《……げへへへへ。(;´Д`)o彡゚ おっぱい…… おっぱい……》
剣士が剣を抱いて死ぬ、か。
ちょっと絵になる風景じゃない?
でもよかったー。
カオっさんが居てくれて。
ザッちゃんを脱出させる為に命を張ったのは後悔してないけど、
やっぱり一人って淋しいし、怖いし。
看取ってくれる人がいてくれるって、それだけで救われる。
だから大丈夫。
きっと笑ったまま逝ける。
でも……
「あの…… ひとつだけお願い、いいかな……?」
《おうなんじゃ? 今ならなんだってきいてやるぞ》
死んだ後のことなんて気にしても仕方ないのかも知れないけど。
きっと意味の無いお願いなんだけど。
「あたしがいたってこと…… 忘れないで…… ね……」
あのね、あたし、死ぬのはそんなに怖くないんだぁ。
やっぱり武士だし。
いっぱい殺したし。
そのうち自分の順番が来るっていうのは、ずっと覚悟してたし。
でも、あたし、淋しがりやだから。
怖がりだから。
あたしをお友達って思ってくれる誰かさんの心の中に、
ほんの少しでいい。
あたしの記憶を住まわして欲しいのね?
ぱつきんのばいんばいんを見たらあたしを思い出すとか、
先祖供養のついでにあたしにもなんまいだーしてくれるとか、
そんなんでじゅーぶんだから。
《そんなの、頼まれても忘れられんわ!
おまえさんほどのぱっつんぱっつんのむっちんむっちんはの!》
うれしーな。
カオっさんの心の中に、あたしがいるんだ。
うん、これでもう大丈夫。
あたしがこの世界から消えても、あたしはこの世界に残る。
出来ればザッちゃんの心にもちょっとは残ってて欲しいな……
なんて、未練未練。
カモちゃんさんはモノノフなんだから、潔く逝………
《カモちゃん?》
……かないと。
あれ?
今、何かがちょっと飛んだ?
なんか、
あたまのなか
白くなってきた?
《 お モ ?》
と、いうより、
時間?
考え、途切れ
途切れに
なってきてる?
ああ、そろそろなのかなぁ。
もう、
終るのかなぁ……
じゃあ、
さいごのあいさつ
くらいは
しておかないと、
……ね。
みんな
おや、す……
……
=-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=
(2日目 PM7:28 J−5地点 隠し部屋1)
「いやぁ、死ぬかと思っちゃった☆」
目覚めたときは天国か地獄かって思ったけど。
実際は灯台の地下にある隠し部屋のベッドの上だったんだぁ。
えへへー。
「Yes。死んだかと思ったよ」
「あ、りんご剥けた?」
「Yes」
「ねぇねぇ、すりおろしてくれると嬉しいなぁ」
「ねぇねぇではない、このバカ女が!」
ザッちゃんが本気で怒ってるー。
いいもんいいもーん。
どーせザッちゃんはあたしのことなんとも思ってないんだー。
なんで助かっちゃってんのコイツ、とか呆れてるんだー。
いじけてやるー。
「いじいじいじいじ……」
「いじけるな鬱陶しい。そんな演技をする余裕があるなら回復に専念しろ」
ザッちゃんはき捨てるようにそういうと、すぐにいびきをかき始めた。
やー、ほんとよかったよねー。
2人とも助かってさー。
ザッちゃんは包帯でぐるぐる。あたしも包帯でぐるぐる。
お注射いっぱい、お薬いっぱい。
とても無事とはいえない状況だけど、命を拾ったのはめっけもんだよね?
「Yes。死亡の危機は乗り切ったとはいえ、君は未だ重篤な状態だからね。
栄養補給は点滴に任せて、さっさと眠ることを推奨するよ」
橙色のともきんがあたしの腕に刺さっている点滴を取り替える。
ともきんたちが倒れてたあたしを救助に来たんだと、カオっさんが教えてくれた。
そのとき4機いたともきんのうち2機が、熱暴走して壊れちゃったって。
ごめんねー。そんで、ありがとー♪
そーやってお礼を言ったらともきんは、私は私のタスクに従ったのみだとかなんとか、
らしいんだけどつまんない返事を返してきた。ぶぅう。
あ、そうそう。
お礼といえばトーコちんにもお礼を言わなきゃ。
あたしたちが入ったこの隠し部屋にたまたまトーコちんがいて、
さらにたまたま素っちゃんの秘密のお部屋からお薬を持ってきていたから
あたしは命を繋ぐことができたんだから。
「トーコち〜〜ん、助けてくれてありがとぉ〜♪」
「……ん」
こっちはもっとつまんなかった。ぶう。
でも、なんかトーコちん、変わった気がする。
いつでもぼーっとしてて何考えてるかわかんない子だったけど、
今は何か悩んでるな、ってことがわかる程度には暗い表情をしてる。
ま、いーや。
今度は睡眠薬で頭がぼーっとしてるし。
難しいことは起きてから考えよーっと。
「それじゃあみんな、おやすみぃ……」
↓
(Cルート)
【グループ:ザドゥ・芹沢・透子】
【現在位置:J−5地点 隠し部屋1】
【スタンス:待機潜伏、回復専念】
【主催者:ザドゥ】
【所持品:通信機】
【能力:我流の格闘術と気を操る】
【備考:重態、右手火傷(中)、睡眠中】
【刺客:カモミール・芹沢】
【所持品:虎徹刀身(魔力発動で威力↑、ただし発動中は重量↑体力↓)
鉄扇、トカレフ、魔剣カオス】
【能力:左腕異形化(武器にもなる)、徐々に異形化進行中(能力上昇はない)】
【備考:重態、腹部損傷、睡眠中】
【監察官:御陵透子】
【現在位置:H−6・学校跡付近→Ⅰ-5・灯台跡付近】
【スタンス: ① ザドゥの回復を待ってプランナーと接触
② 紳一ら一部参加者の記録検索を再開する。】
【所持品:契約のロケット(破損)】
【能力:記録/記憶を読む、『世界の読み替え』(現状:自身の転移のみ)】
【備考:疲労(小)】
※ザドゥと芹沢は強力な睡眠薬を服用したため、12時間は目覚めません
※『読み替え』実験は完了した模様だが、現状では成果不明です
※レプリカ智機2機のうち1機は、オリジナル智機にクラッキングされた機体です
乙でした
穏健派が一つに集まったか
芹沢いい女だなあ
>>902
新作二本お疲れ様でした。
仮投下はもう任意でいいと思いますよ。
あるには越したことはないですが、予約しておけば大体回避できますし。
明日UPするまとめの内容は先週とほぼ変化なしです。
その代わり今週中には時系列順のまとめなどが入ったのをUPできそうです。
序列どうしようかな?
まとめをUPしました。
変更は50話までのリンクの修正を少々。
パスはnegiです。
ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org727058.zip.html
もうダメだと思いつつもたまに覗きにきてたんだ
完結は無理だとしてもせめてザドゥとカモちゃんの逃避行編だけは決着つけてくれないかと
淡い期待を抱きながらさ。そしたらさ……
良い決着だった!
なんか主人公サイドの話かと勘違いするくらい!
とにかくカモちゃんが助かってよかった!
タイトルとモノローグに騙されたけど悔しくないぞ!
ズタボロのザドゥがどう覚醒するのか楽しみでならん!
再び腰を上げてくれた書き手さんたちと黙々と保守レスしてた人、ありがとう!!!!!
今週の土曜日に時系列順SSを追加したまとめをUPします。
ルート分岐対応の試作ページを入れます。
それと予約します。
タイトル未定で登場キャラはメール欄。
期限は来週の月曜日の午後六時までで。
仮投下後、問題がなければ一、二日後に本投下で。
時系列順SS目次などを追加したまとめをUPしました。
ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org741364.zip.html
パスはnegibatoです。
時系列は作中終了推定時刻の順で並べました。
ルート分岐対応です。
78話や130話など幾らか並びに例外はありますがネタバレを考慮してのものです。
これからUPしていく度に間違いの発見などで、順番が前後していくかもしれません。
個々の作品にも時系列のリンクを追加しておきました。
キャラ別SS目次の方は次回更新辺りに、話数と登場話を線で区別していきたいと考えてます。
避難所投下の作品は本スレでの正式投下が確認されれば、追加していきます。
投下がなかった分は次回更新の時には含めません。
目次の空白部分も消します。
ご意見等がありましたらお受け付けいたします。
B、Cルートの作者さんの了解を頂けるか、もしくは3日間レスなしのままでしたら、この仕様でまとめて行きたいと思います。
次回の更新は再UPの要望等がなければ、今月の29日の予定です。
a154siyedさんのレスまだかな……。
>>930
いつも纏めをありがとうございます。
拝見させていただきましたところ、全く問題ないと思います。
時系列順で改めて各々の作品に目を通しますと、
時間の流れを意識した表現に気付いたり、意外なつながりが発見できたりで、
新鮮な気持ちで楽しめました。
以下15レス、「少女タナトス」を仮投下いたします。
過去作を含めまして、本スレ投下はもう暫く待機としたく思います。
次回予定は「それは些細な違い」。
本拠地組+連絡員が登場予定で、短編です。
>>xxx
(Cルート・2日目 PM7:45 J−5地点 隠し部屋1)
室内は静寂に満たされていた。
10畳ほどの空間に、3人。
うち2人は寝息も立てず泥の様に眠っていた。
起きているあと1人も身じろぎ一つせぬまま茫と佇んでいる。
長い睫毛を伏せた憂い顔のこの少女、名を御陵透子と言う。
沈黙は彼女の常態ではある。
しかし眉根に寄る皺が、常の彼女から逸脱していた。
(わたしは―――)
(わたしたちは、堕とされた)
彼女の苦悩は、主催者としての資格を剥奪されたとの思いから生まれていた。
それは即ち。
彼女の幾百万年の願いが叶わぬを意味しているが故。
最初に違和感を抱いたのは、記憶/記録の検索範囲が狭められたこと。
違和感が疑念となったのは、【世界の読み替え】能力が制限された為。
疑念が確信となったのは、本拠地への瞬間移動が出来なくなった為。
しばし前。
ザドゥと芹沢が峠を越え、眠りについた頃。
本拠地との通信機能の生きている方のレプリカ智機が、その機能の異常を訴えた。
通信不能。
これを受けた透子は此方の現状の報告と其方の現状の確認を行うべく、
瞬間移動を試みたのだが―――
「……?」
願いが止められているなどという生ぬるい制限ではなかった。
本拠地へ向かおうと考えることすら拒絶されるかのような感覚。
重々しく、息苦しい、重圧。
透子は額に脂汗を浮かべ、乱れた息でレプリカ智機に告げた。
「本拠地に行けない」
それでレプリカの1機は本拠地に向かった。
もう1機のレプリカは、学校に備え付けられている通信機を試しに向かった。
眠る2人と、自失する透子を隠し部屋に残して。
透子は、もう1つの状況証拠を反芻する。
それは、首魁ザドゥが眠りに落ちる前。
彼女は彼に問うたのだ。
鯨神と連絡を取ることは出来ないのかと。
自分が願いを叶える資格を失ってはいないのかと。
ザドゥは2つの問いにただ一言で答えた。
「知るか」
ザドゥは透子を睨めつけ、吐き捨てるように。
そのシンプルで残酷な返答を口にしたのだった。
眠る2人の顔を、透子は何気なしに眺めた。
芹沢は嬉しげな表情をしていた。
ザドゥは苦しげな表情をしていた。
(ここは、流刑場……)
透子は現状を、そう連想した。
この砕けた灯台にいる透子たちが敗者で、あの強固な拠点にいる智機たちが勝者。
だとすれば、智機のやり方が正しかったのか。
ゲームに介入し、殺し合わせるのではなく、直接殺す。
それだけであの鯨神が満足するのであれば。
ただ、血を見れば喜ぶというのであれば。
監察官の役割などに徹さずに―――
(考えてもしょうがない)
透子は後悔を放棄した。
案じても詮無いことは、どこまで案じても詮無い。
覆水は決して盆に返らぬ。
それを覆す【世界の読み替え】が成らぬ今、思い煩うことに建設的な意味は無い。
無駄なのだ。
駄目なのだ。
透子の眉根から苦悩の皺が消えてゆく。
捨てた透子の瞳から憂いが抜け落ちてゆく。
後に残ったのは透明感を伴った無表情。
「もう……」
「いい」
透子は呟きと共に全てを諦めた。
大きな変化ではない。
監察官に就任するまでの透子に戻ったに過ぎぬ。
もともと、諦めと惰性で生きてきただけだ。
この島での透子が、特殊な透子だったのだ。
鯨神の見せた奇跡に、何百万年ぶりかの期待を持ってしまったから。
既に忘れて悠久の希望を抱いてしまったから。
我を忘れていたから。
その期待と希望が無残に剥ぎ取られたならば。
(この感じ……)
それは透子にとって馴染んだ感覚だった。
彼女が内包する消失願望が表面化してきたのだ。
その願望が完全に前面に出たのなら、透子は、音もなく消滅する。
彼女が今までそこにいた、という履歴を伴って。
透子は、初めからいなかったことになる。
(ほどける)
透子が存在する信憑性が薄れてゆく。
全と個の境界が曖昧になる。
あとは、この世から消えるのみだ。
いつかのどこかで、また現れるまで。
透子は目を閉じ眠るように、その瞬間を待つ。
だが、透子は消えなかった。
御陵透子の個を保ったまま、部屋の中に人として在り続けている。
(通らない……?)
喪失願望が、止められていた。
常夜灯の薄橙色の光を鈍く反射させる、ひび割れたロケットに。
そして、透子は知った。
自己の消失すらも、【世界の読み替え】が行っていたのだと。
(じゃあ、これはもういらない)
透子は、契約のロケットをあっけなく放り投げた。
既に望みが叶えられぬ身に堕とされたのだ。
先に契約を破棄したのは鯨神の方だ。
守られぬ約束の印など、後生大事に抱える義理など無い。
(こんどこそ)
しかして数分後。
契約のロケットは飾りでしかなく、制限は無制限に効果を発揮しているのだと、
透子は思い知る事となった。
透子は放心していた。
考えることを自ら止めていた。
涙など出ない。
何百万年も昔に枯れ果てたから。
(探そう、彼の記録を)
(ずっと探そう)
(いつまでも探そう……)
あらゆる希望を失った透子に出来ることは、
何百万年も繰り返してきたことを、また繰り返すだけだ。
消えたところで、また蘇る。
蘇っても、やることは変わらぬ。
であれば。
消えようとも消えまいとも、なんら変わることはないのだから。
透子は死んだ魚の如き虚ろな目で、緩慢に周囲を見回す。
屍鬼の如き不確かな足取りで、部屋の出口へと向かう。
そんな人ならざる生命体・透子の背に、生き物ならざる剣が、声をかけた。
《嬢ちゃん、どこへ行くんかの?》
魔剣カオス。
その暗紫色の刀身は、剥き身のまま芹沢の脇に立てかけられていた。
《暇潰しなら儂をお供にどうですか?》
軽口を叩くカオスに、透子は答えない。
しかしその目線は、確かに魔剣を捉えていた。
しかしその目線は、透子らしからぬ熱が籠っていた。
(刃……)
透子は禍々しい刃先を意識し、唾液を嚥下する。
幾百の人間の、幾千の魔物の命を両断してきた、凶器を。
(あれで、死ねる……?)
何度も何度も、透子は消失してきた。
繰り返すが、その願望が顕在化さえすれば、彼女は自動的に消滅する。
翻って、死にたい、消えたいと願っても存在を続けているこの状況。
それは彼女にとって在り得ざる状況であり、
彼女はその先の選択肢を見つけることが出来ないでいたのだが。
今、透子の眼前に。
新たなる選択肢が、実体を伴って存在していた。
(あれで、死ねる)
彼女は気付いたのだ。
自分は、能動的に死を選ぶことが出来るのだと。
カオスを手に取り、この身を刺し貫く。
ただそれだけのことで、自分を失うことができるのだと。
透子は甘い蜜を見つけた蛾の如く、ゆらゆらと、カオスに近づく。
《おお、話がわかる嬢ちゃんじゃの!》
透子の頭に、再び能力制限が霞める。
自己消失は【世界の読み替え】が行っていた。
だとすれば。
消失からの再臨もまた、同じだろう。
この刃で己を貫けば、この命は、永遠に失われるだろう。
(しあわせ)
永遠の輪廻のくびきから解き放たれる。
果てぬ苦しみから解放される。
それは今まで透子が常に願っていたことだった。
むしろ彼女の消失願望は、この思いを根本としていた。
透子は遂にカオスを手に取った。
それは透子にとっては以外なほど重いもので、片手で持ち上げることは出来なかった。
両手で、腰を入れて、ようやく持ち上げることが出来た。
《いいのう♪ 女の子らしい非力さが、何かこう、いいのう♪》
透子の彫像の如く整った顔に喜悦が満ちる。
透子の白磁の如き真白な頬に紅が差す。
今まで透子が見せたことの無い表情が、ぬめりと浮かびあがっていた。
透子はその表情のままま、カオスの刀身を自らの喉元に近づける。
《お、おいィ!? 何の真似じゃそれは!?
儂をそんな風に使わんでくれ!!》
カオスが己の使用用途を理解し、焦りの念波を発する。
透子は無視。
泥土の如き燐光を放つ刃紋が、白魚の如き透子の喉へと益々近づけられる。
あと5秒と待たず、刃は透子の命を奪うだろう。
その5秒が、経過しなかった。
《扉や壁を抜けられるという点だけは、この体も便利なものだ》
透子が動きを止めた故に。
透子の記録/記憶の検索用感覚器官が、闖入者の記録を捉えた故に。
その記録の主は、透子にとって覚えがあるものだった。
少し前まで、履歴を追いかけていた男の記録だった。
(紳一……)
かつての勝沼財閥総帥。
かつての聖エクセレント女学園バスジャック事件主犯。
勝沼紳一の怨霊が、この部屋にいる。
《む? 女がいるな!》
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