したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が900を超えています。1000を超えると投稿できなくなるよ。

【場】『 歓楽街 ―星見横丁― 』

1『星見町案内板』:2016/01/25(月) 00:01:26
星見駅南口に降り立てば、星々よりも眩しいネオンの群れ。
パチンコ店やゲームセンター、紳士の社交場も少なくないが、
裏小路には上品なラウンジや、静かな小料理屋も散見出来る。

---------------------------------------------------------------------------
                 ミ三ミz、
        ┌──┐         ミ三ミz、                   【鵺鳴川】
        │    │          ┌─┐ ミ三ミz、                 ││
        │    │    ┌──┘┌┘    ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
        └┐┌┘┌─┘    ┌┘                《          ││
  ┌───┘└┐│      ┌┘                   》     ☆  ││
  └──┐    └┘  ┌─┘┌┐    十         《           ││
        │        ┌┘┌─┘│                 》       ┌┘│
      ┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘     【H城】  .///《////    │┌┘
      └─┐      │┌┘│         △       【商店街】      |│
━━━━┓└┐    └┘┌┘               ////《///.┏━━┿┿━━┓
        ┗┓└┐┌──┘    ┏━━━━━━━【星見駅】┛    ││    ┗
          ┗━┿┿━━━━━┛           .: : : :.》.: : :.   ┌┘│
             [_  _]                   【歓楽街】    │┌┘
───────┘└─────┐            .: : : :.》.: :.:   ││
                      └───┐◇      .《.      ││
                【遠州灘】            └───┐  .》       ││      ┌
                                └────┐││┌──┘
                                          └┘└┘
★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
---------------------------------------------------------------------------

661鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/12/22(日) 00:44:33
>>660


>「そっかそっか。
> でも、ここでみたっていうんなら『またくる』カモ。
> ハンニンはゲンバにもどってくるっていうし」

「…かもしれないな」「この『ゲーセン』には時々訪れさせてもらおう」
「しかし、『証拠』か」
「さっきは『女性』を狙おうとしていたかと思えば、『自販機』を切りつけようとしていた」
「生憎とオレの『超能力』で無効化させてしまったから、切り傷のようなものは残していないか」

もし自販機に傷が残っていたなら、警察から『切江』の受けた傷の写真を見せてもらい、
その切り口の称号なども出来たかもしれないが。他に切り傷のようなものがないか、辺りを探してみよう。

「…言おうとした、ではなく実際に言わせてもらおう」「『危ないから、止めておくんだ』」
「目に見えない力に抗う術を、普通の人は持たないんだ。狙われてしまえば、抵抗できない」
「『超能力』を使う人間は、普通の人と見分けがつかないんだからな」

好奇心旺盛で、色々なことに首を突っ込むアリスは、成る程情報通かもしれない。
だが、あまりに危な過ぎる。仮に彼女が何度か危険な目に遭ったとしても、スタンドのそれとは違う。

「…キミにも『超能力』があるなら話は別だが」

もし興味があるなら、『音仙』さんの事を話すべきだろうか。

662夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/12/22(日) 01:10:06
>>661

「わかりました。『あぶないからやめます』。
 ナニがあってもゼッタイにクビをつっこんだりしません。
 イマここで『チカイ』をたてます」

特に食い下がることもなく、呆気なく引き下がる。
言葉通りなら、『通り魔』の件に関わろうとはしないだろう。
しかし、『それだけ』では終わらなかった。

「でも、アリスは『ジゴクミミ』だからなぁ〜〜〜。
 もしかしたら、
 マチでグーゼン『ウワサ』とかきくコトもあるかもなぁ〜〜〜」

「そういうのをきくコトがあったら、
 クロガネくんにレンラクしたほうがイイのかなぁ〜〜〜??
 だけど、『あぶないからダメだ』っていわれたからなぁ〜〜〜。
 もしきいても、いわずにずぅ〜〜〜っとだまっとこうかなぁ〜〜〜。
 それが『ジューヨーなてがかり』かもしれなくても、
 ヒミツにしとこうかなぁ〜〜〜」

「だって、『ダメだ』っていわれたしなぁ〜〜〜」

      チラ

『大きな独り言』を言いながら、横目で鉄の顔を見る。
『情報通』という部分には、かなりの『自信』があるようだ。
それが『超能力』かどうかは定かではないが。

663鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/12/22(日) 01:22:40
>>662

>「でも、アリスは『ジゴクミミ』だからなぁ〜〜〜。
> もしかしたら、
> マチでグーゼン『ウワサ』とかきくコトもあるかもなぁ〜〜〜」

「・・・・・・・・」

大きく深く、溜め息をつく。
言って聞くような性格ではない、という事だ。それなら『情報』は得ておいた方がいい。
もしかしたら、彼女が危険な目に遭っても助けられるかもしれない。…手遅れになる可能性の方が高いが。
壁に背中を預け、腕を組む。

「首を突っ込むのはダメだが、手に入れた『情報』は共有したい」
「そういった危険な出来事でなければ、こちらもキミの興味のある事は伝えよう」

どちらにせよ突っ込むんだろうなと思いつつ、アリスにあの事件を話したのを若干後悔した。
とはいえ、現在『停滞』しつつあるこの事件。新たな手掛かりが得られるかもしれないなら、ワラでも掴みたいところだ。
それに彼女はワラのように見えて、意外と鋼鉄製のワイヤーかもしれない。

段々と落ち着いてきた事で、少し彼女と距離を置きながら、視線を外す。
ついでに『シヴァルリー』も解除しておこう。

664夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/12/22(日) 03:14:28
>>663

「あっ、そう??
 まぁクロガネくんがそういうんだったら、ソレでイイかなぁ〜〜〜」

    ニヤッ

「――――じゃ、『コーショーセイリツ』ってコトで」

ほくそ笑んでいる表情は、まさしく『言っても聞かない』顔だ。
制止されてもされなくても、気が向けば勝手に動いてしまうだろう。
目の届く範囲に置いておく方が、却って安全かもしれない。

「てはじめに『トオリマ』のハナシをくわしくきかしてくれ。
 『イモウトがきられた』っていうハナシ。
 ソレをしっとかないと、
 もしナニかきいてもカンケイあるかどうかわかんないから」

早速、『情報共有』を要求する。
こういうのは一日でも早い方がいい。
『シチューはアツイうちにくえ』ってコトワザもあるコトだし。
イマつくった。
でも、シチューは1ニチねかせたほうがアジがしみてウマくなるぞ。

665鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/12/22(日) 21:22:06
>>664

「妹、朝陽(あさひ)の事件に関しては、あまり分からない」
「『夕方』『人混み』『不可視の刃』ぐらいだ」
「…事件が起きてから、もうそろそろ一年になるな」

腕を切られた妹の『通り魔事件』を簡潔に話しておく。もっとも、他には特に伝えられるものもない。
その場にいなかった自分が知るのは、妹のかすれた声による説明だけだ。
警察内部なら、もう少し情報があるのかもしれないが。流石に関係者でも、捜査情報は渡してくれないだろうな。
…警察と言えば。

「顛末は省くが、以前とある『漫画家』が作った物語の中に
 そのオレの妹が出ていた。実際に切られた箇所と、同じ腕を傷付けられた状態でな」
「とはいえ、その『漫画家』は既に意識不明だ。全身を切られている」
「その場に居合わせた『警察官』も犠牲になっている…そこからは辿れないだろうな」

暗に、国家権力であり、腕の立つ警察官でも『超能力』の前には立ち向かえない、とも示している。
やはり、これで彼女が引くとは思えないが、少しでも冷静な判断の助けになればいい。
短時間の間に結構喋った。またペットボトルの蓋を開け、茶を飲む。

666夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/12/22(日) 21:51:58
>>665

「『ユウガタ』、『ひとごみ』、『ふかしのヤイバ』…………」

スタンド能力なのは間違いないだろう。
これで彼が『刃物』に拘る理由も分かった。
そんなスタンド使いがいるとすれば、確かに危険だ。

「なるほど!!わかった!!
 ソイツはゆるせんヤツだな!!
 なんかつかんだらおしえよう!!」

「ダイジョーブだ。ムリはしない。
 それに、こうみえても、それなりにイロイロやってきてるし!!」

    フフン

鼻を鳴らして、得意気に胸を張る。
その『根拠』は不明だ。
しかし、どことなく自信の色が窺える。

「そういえばさぁ――――」

      ジィッ……
              バッ!

言いながら、カラフルなネイルアートの施された爪を眺める。
その直後、不意に両手が勢い良く伸ばされた。
指先が鉄の頬に触れたかと思うと、
そのまま顔を掴んで動かないように固定する。

「『オンナがニガテ』なのコクフクした??
 さっき、ちゃんとワタシのカオみれてたじゃん」

サングラス越しの瞳が、鉄を見つめる。
口元には笑いがある。
悪戯っぽい笑みだ。

667鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/12/22(日) 22:27:38
>>666

アリスの自信満々な言葉に、僅かに口元が緩む。
彼女の元気に溢れる立ち振る舞いは、聞いているだけでも面白いものだ。
地面を見つめながら、呟く。

「くれぐれも、『ハートの女王』に縛り首にされないようにな」
「でないと、オレも犯罪者になってしまうかもしれない」


>「そういえばさぁ――――」

彼女の言葉に、そちらの方を向く。その視線は手元に向けられていた。
綺麗な付け爪だ。いや、『ネイルアート』と言うらしい。妹が言っていた。
最近のは頑丈で、そう簡単に剥がれることはないんだとか。それにしても、女性の美に対しての努力には恐れ入る。
なにかと『手作業』がやり辛そうなイメージがあるが─────。

「ッ?!」

視界が急に固定された。アリスの顔が、至近距離にある。その綺麗な顔立ちを思わず直視してしまいそうになり、目を瞑る。

「いや、あれは、そのっ…」
「急なことで余裕がないと、忘れてしまうが…落ち着いてしまうと、逆に…ッ!?」

後ろに下がろうとする。でもそう言えば壁だったかもしれない。

668夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/12/22(日) 22:57:15
>>667

「あぁ〜〜〜!!あるよねぇ〜〜〜そーいうコトって。
 『かじだ!!』っていわれたから『マクラもってにげた』とかさ。
 あわててると、ニンゲンかわったコウドウをとったりするモンだし」

    ジッ…………

正面から見つめる。
目を瞑られたが、こちらの行動は変わらない。
そのまま視線を注ぎ続ける。

「じゃあさ――――いま、ドキドキしてる??」

距離を取られてしまった。
しかし、背中に何かが当たる感触があった。
どうやら、すぐ後ろは『壁』だったようだ。

「クロガネくんってさぁ、カッコいいよねぇ。
 ちかくでみると、けっこうキュートだし」

「なんか、ワタシもドキドキしてきたかも」

         ――――パッ

「おっとぉッ!!これいじょうちかづいてるとキケンだな!!
 ドキドキしすぎてシンゾーとまるかもしれない!!」

「あぶねーあぶねー」

          クスクスクス

ふと、気配が離れる感覚があった。
同時に、微かな忍び笑いが聞こえる。
目を開ければ、そこには笑顔の『アリス』がいる。

「じゃ、またねクロガネくん!!
 『ハートのじょおう』につかまらないようにきをつけて!!」

「――――バイバイ!!」

              タタッ

元気よく手を振り、軽やかな足取りで立ち去っていく。
『不思議の国』は続いていく。
今日も、明日も、明後日も――――。

669鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/12/23(月) 00:25:28
>>668

竜胆さんの特訓で少しは慣れたつもりだったが、全くだった。いや、気持ち的には少し成長しているはずだ。
だが、この距離は近過ぎる。剣道での『鍔迫り合い』に等しい。
いや、女性と剣を交えたことはないが。

「してるしているッ!」「キミが近付いてきた時からしているさッ!」

だから離してくれ、までは流石に情けなくて言えないが。
いや、既にこれは醜態と言っても過言ではないかもしれない。妹に見られたらなんと言われてしまうのだろう。

「・・・・・?!」

褒められているのは嬉しいが、彼女の事だからほぼ間違いなく揶揄われているのだろう。
それでも、こうして面と言われるとより鼓動が早くなるのを感じる。
いや、自分は目を伏せているのだが。

「いや、それを言うなら…」

どう考えてもこの少女の方が美人であると思うのだが。
しかし、それを口にする前に彼女が手を離し、身を引く気配を感じた。
目を開ければ、やはりからかうような彼女の笑顔だ。
全く、ここまで年下に遊ばれてしまうとは。
また視線を落とし、肩をすくめながら床を見る。

「こんな所で二人の少年少女が『不審死』だなんて、笑えないな」
「ああ、またなアリス。最後には、現実に帰って来られるように」

軽やかな足取りで帰っていくアリスを見送る。
肉体的には分からないが、少なくとも精神的に彼女は強い。好奇心に負けない程の、強い意志がある。
彼女が本気で手を組んでくれるなら、心強い仲間になるだろう。
ただ、それでも相手は『スタンド使い』だ。彼女もスタンド使いだったなら、もはや言うこともないが。

「まぁ、それは望み過ぎだな」

一人呟き、自分もペットボトルをゴミ箱に捨て、帰途につく。
『通り魔』に対しての収穫はなかったが、今夜は得難いものを手に入れた時間だった。

670鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/12/23(月) 00:26:02
>>669

671日下部『アット・セブンティーン』:2019/12/27(金) 22:41:08

年の瀬だ。
師走なんて言うけど私はゆっくり歩いている。
というか走れない。走りたくない。

         ノロ…

      ノロ…

だって、ケーキの箱が両手合わせて4つもあるから。
いくら私が器用でも、走ったらグチャグチャになるから。
グチャグチャでもお腹に入ったら変わらないけど。
でも、ケーキって見た目も込みの値段だと思うし。

ちなみに、これでもケーキバイキングより安上がりだ。
…………もちろん安かったら何でも買うわけじゃない。
ケーキだけでお腹いっぱいになるやつがやりたかっただけだ。
それにしても買い過ぎたかもしれない。ちょっと座るために、ベンチを探す。

672ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2019/12/27(金) 23:18:39
>>671

    バサバサバサッ

『鳥』が飛んでいた。
それ自体は特に珍しくもない。
しかし、その鳥は珍しかった。
羽毛の色は白と青と紫のトリコロール。
背中に生えた羽毛の一部が『天使の羽』のように広がり、
頭も『パーマ』を掛けたようにキレイな巻き毛だ。

           ――――ポスッ

「ックシュン!」

「ウフフ、ヒエマスワネ」

「モウホント サイキンハ スッカリ フユデ」

『ケーキの箱の上』に留まった鳥が喋っている。
鳥は多いが、『喋る鳥』は多くない。
この『ハゴロモセキセイインコ』も、その一種だ。

673日下部『アット・セブンティーン』:2019/12/28(土) 00:10:39
>>672

      ジロッ

「わ〜何何」

日下部は箱に乗った鳥を見る。
ますます走れなくなってしまった・・・

「喋る鳥……『インコ』だ」
「『ユニコーンカラー』みたいでかわい〜」

野生の鳥じゃない気がする。
ペット? 足輪とか付けてないだろうか?
『懸賞金』とか懸かってないだろうか?

              キョロ…

「んふ、インコさんは羽毛だから寒くないと思ってたよ」

     キョロ…

「でもね〜、私『タダ乗り』は良くないと思うなあ」
「料金代わりに、私のこと『ベンチ』まで案内してくれないかな〜〜〜」

「ほらぁっ、空から探してさ……」

そこまで頭いいかは分からないが・・・頭いい猫もいたし。鳥は頭いいらしい。

674ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2019/12/28(土) 00:40:31
>>673

色も形も野生の鳥には見えない。
かといって足輪などもなく、ペットでもないようだ。
懸賞金が出ているかは分からないが、
どこかから逃げ出したというのは外れでもないかもしれない。

   「ベンチ」 「アンナイ」 「ソラ」

拾い出された言葉を繰り返す。
それから首を大きく傾げ、鳥の目が少女を見つめた。
このような動きをするのは、そうした方が見やすいからだ。

   「ソレジャア アンナイ シヨウカナ」

        バササッ

インコが飛び立った。
ある方向を目指して飛んでいる。
その先には『ベンチ』が設置されていた。
『偶然』だろうか。
もし偶然だとしたら、『すごい偶然』だろう。

675日下部『アット・セブンティーン』:2019/12/28(土) 01:18:25
>>674

懸賞金に期待したのは、『見覚え』があるから。
どこかで見たような気がするんだ、この鳥。
何処で見たのかはまったく覚えてないんだけどね。

「わ〜、飛んだ」
「案内してくれるの? インコさん頭いいんだ〜」

           ノロ…

              ノロ…

「・・・あれ」

これは、驚いた。
なんとなく追いかけてみただけなんだけど。

「すご〜い。ほんとに頭いいんだ〜〜〜」

『鳥語』が喋れる人間がいる。
『人間語』を喋れる鳥もいるってことかな?      

もしかしたら全部偶然かもしれないけど、偶然でこんなことある?
目の前で起きたことを信じる。とりあえずは、ベンチに座りに行こう。

676ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2019/12/28(土) 01:43:31
>>675

    バサッ

偶然かもしれないし、あるいは『何か』あるのかもしれない。
とにかく、目的地には到着した。
舞い降りたインコは、ベンチの背もたれを止まり木にして着地する。

   「アタマ イイ?」 「アタマ イイ」

   「ソッカア ソウダヨネエ」

   「ノーミソ ノ オーキサ ミタコト ナイケド」

インコは、また喋っている。
何処かで聞いたような言葉かもしれない。
そうでもないかもしれない。

   「コンサルタント ノ ヨウナコトナドハ シテイマスガ」

   「ワリト ケーキガイイッテ ヨクキキマスヨ」

   「フフ ワタシッタラ オシャベリ スミマセンネ」

そうかと思うと、何処で覚えたか分からないような言葉を喋りだした。
どこまで賢いのかは分からない。
しかし、実際に目的地に着いたのは『事実』としてある。

677日下部『アット・セブンティーン』:2019/12/28(土) 02:24:13
>>676

「頭いいよ〜。もう人間と変わんないんじゃない?」
「脳みそは私より小さいだろうけど」

           クルッ

「『使い方』が良いのかな〜〜〜?」

座ってから、振り向いて『インコ』を見る。

既視感。既知感。
『見たことない』はずなのにどこかで知っている。
『聞いたことのある』ような言葉を使っている。

「えー。今『ケーキ』が気になるって言った?」
「『ケーキ』」「もしかして『景気』?」「『ケーキ』でしょ」

どこかで聞いた言葉を『使っている』
ただ発してるだけじゃあないんだ。

         ガサ…

「や〜、まいっちゃうなあ」

袋を一つ、少しだけ開く。
このインコは頭が良い。
価値が無い事を言ってるとは思えない。

「んふ……インコってケーキ食べるの? 太りすぎて死なない?」
「私ね、動物ってあんまり飼ったことないから、心配しちゃうな〜」

678ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2019/12/28(土) 02:55:59
>>677

『ケーキ』と『景気』。
口に出すと似ている言葉だ。
言葉の前後から判断すると、
インコが口にしたのは後者の意味だろう。
しかし、
このタイミングで言うというのは何か意味があったのかもしれない。
あるいは、やはり単なる『偶然』なのだろうか。

        チラ
             ――――チラッ

インコが袋の中を覗き、また覗いた。
いわゆる『二度見』というやつだ。
用心深く警戒しているのかもしれない。
その辺りは野生の動物らしさがある。
だが外見は野生らしくなく、どこか『文明的』な雰囲気が漂っていた。

      「ニンゲン」 「ケーキ」 「タベル」

      「ルナ ソレ ワカンナクハナイカモ」

    「ギャクニ ワカンナイコトモ ダイジナ キガスル」

     「ナンカ ソレコソ オカシナハナシ ダケド!」

          「ププ ウケル!」

成立しているのかいないのか、微妙な答えが返ってくる。
そう、『答え』が返ってきた。
客観的には、そのように見えなくもない。
内容は別として。
『どこで聞いたか』は不明だが、
やや『軽いノリ』のイントネーションのような気もする。

679日下部『アット・セブンティーン』:2019/12/28(土) 03:54:40
>>678

「??」

ルナ、という人間のことは一応覚えはある。
喋り方も似ている……『言葉を覚えている』
それを『使う』……この言葉にも価値があるはず。

「人間はケーキも食べる」
「インコさんも食べられるかは分かんない?」
「分かんないことが大事」「んん……」
「食べたことないけど食べてみたいってこと〜?」

      ジ…

「それって不安〜。食べて急に倒れたりしそうだよお」

もう会話をすることに躊躇はない。
このインコは絶対に会話ができている。
それこそ、鳥語と人語の間で翻訳をするレベルで。

「どうしよっかな、私責任とか取るの嫌い〜」
「はっきりしないのに重たいし……」
「ちょっとだけなら大丈夫かなあ?」

      カパ

ケーキのふたを開ける。
この箱は売れ残りのフルーツタルト。

「フルーツなら野生にもあるし大丈夫かな〜」
「インコさぁん、ちゃんと食べられそうなの選んでね」

こんな珍しそうな鳥の責任とかは取れない。
なので、あくまでも鳥の方に選んでもらうことにした。

680ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2019/12/28(土) 17:27:16
>>679

普通、動物と人間は会話が出来ない。
それは当たり前のことだ。
しかし、世の中には何事にも『例外』はある。
このインコが、その一つかは定かではない。
ただ、そう思われてもおかしくない程度の『賢さ』はありそうだ。

      「カンガエゴトカイ オジョーサン」

         「ソレハ タイヘンダネ」

 「アナタノヨーナ ヒトガ キズヲオウナンテ カナシイコトダ」

口調と声色が変わった。
今度は先程よりも落ち着いた色合いだ。
『言葉の主』は『ルナ』よりも幾つか年上の女性らしい。

     クリンッ
             ジッ

首を大きく傾げながら、箱の中身を見つめる。
タルトは自然界に存在しないが、フルーツは存在する。
インコの視線が、フルーツタルトの天辺に注がれる。

           ヒョイッ

やがて、インコが『ブラックベリー』を持ち上げた。
嘴を器用に使い、『柄』の部分を銜えている。
こうして見ると、なかなか絵になる図かもしれない。

681日下部『アット・セブンティーン』:2019/12/28(土) 23:26:00
>>680

「あ〜食べた」
「インコさんが勝手に食べたんだし、いっか〜」
「考えごとはなくなったよ」

         シュッ

ポケットからスマホを出す。
絵になる光景は『記憶』にしか残らない。
写真にすればいつまでも残るものになる。

「『モデル料』はタダでいいよねえ?」
「『案内』は『箱』に乗った運賃〜」
「『ケーキ』が『モデル料』って考えよう」

「インコさんにそこまでは分かんないかな? どうかな?」

「撮るよ〜」

――――絵になる光景を、画にする。

682ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2019/12/29(日) 00:02:49
>>681

写真を撮られた。
しっかりカメラ目線で写っている。
なかなか良い画だ。

    バササッ

チェリーを銜えたまま、背もたれから座面に舞い降りる。
そこで一旦チェリーを置いた。
さすがに、背もたれでは食べづらかったらしい。

      ブンッ
          ブンブンッ

チェリーを前にしたインコが首を上下に振る。
『ヘッドバンギング』のような動作。
今の感情を表現しているようだ。
犬や猫ほど分かりやすくはない。
ただ、少なくとも、マイナスの感情ではなさそうに見える。

     「ソッカソッカ ソレハソウダヨネ」

   「オシゴトダカラ アイマイナノハ ヨクナイシネ」

      「アトデ モメタリシタラ イヤダモン」

         ツンッ ツンッ

どこかで聞いたかもしれない言葉。
それを口に出すと、チェリーを啄ばみ始めた。
急に倒れたりもしそうになく、大丈夫そうだ。

683日下部『アット・セブンティーン』:2019/12/29(日) 00:38:08
>>682

「インコさんは私みたいなことを言うんだねえ」
「というか、それ、私がどっかで言ったことだ」
「どこだっけな〜」

カメラに映ったインコを見つめる。
それから、本物のインコを見つめる。
既視感。既視感。……色。

色合いがどこかで見たんだ。

「あっ、あ〜。わかった」
「インコさんさあ……『ハーピーさん』だ〜」

      ニタァ…

記憶の中にある名前だ。
インコを見ていたら頭の中に浮かんできた名前。

「んふふ」「ハーピーさんの『仕事仲間』なんでしょ〜?」

鳥語と人語の通訳が出来る人の、鳥側の仲間。
野鳥だけじゃなく、こういう固有の鳥もいるんだろう。

「『色』似てるしねえ。というかハーピーさんが似せてるのかな」
「そこんとこ、どうなのかな〜。んふ、別にどっちでもいいけど」

684ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2019/12/29(日) 01:10:52
>>683

チェリーを啄ばむインコと、『ハーピー』と名乗った女。
確かに色合いが似ている。
それも『当然』だろう。

    ジッ…………

食べるのを中断し、少女を見上げる。
『ハーピー』は人間社会に紛れ込むための名前と姿。
そして、ここにいる『インコ』こそが、その『正体』なのだ。

      「インコサン」
             「ハーピー」
                    「シゴトナカマ」

少女の言葉を部分的に抽出し、繰り返す。
『ハーピー』の下には、多くの鳥が集う。
今の自分は『その一羽』――そういうことにしておこう。

         ツンツン

そして、またチェリーに集中し始める。
そうする内に、あらかた食べ終えていた。

        「♪♪♪」

食事を終えたインコは、『鳥本来の声』を発した。
『満足』したようだ。

685日下部『アット・セブンティーン』:2019/12/29(日) 01:44:09
>>684

「やっぱり? んふふ、私ね、最近冴えてるんだ〜」
「調子がいいんだよ、すごく」

         パタン

「頭の中も、体の中も〜」
「『数字』でもわかるくらい調子がいいんだよ」

ケーキの蓋を閉じる。
タルトのフルーツがずいぶん減ってしまった。
その分は『恩』とか『他人の喜び』とか・・・
目に見えなくて、分からないものになってしまった。

まあ、たまには、そういうこともある。
私の喜びだってある・・・それは分かるものだ。

「よいしょっと〜。行こうかな」
「インコさん、私そろそろ帰るね」

「ハーピーさんにね、『日下部さんにケーキ貰った』って伝えといて〜」

そういうわけで、ケーキを持ってベンチから立ち上がり、その場を去った。

686ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2019/12/29(日) 02:04:28
>>685

       「アッ ア〜 ワカッタ」

    「『クサカベサンニ ケーキ モラッタ』」

          「ンフフ」

インコが、少女の言葉を繰り返す。
おそらくは『伝わる』だろう。
明確な根拠こそないが、そう思わせる『雰囲気』があった。
『恩』は目に見えないが、
『恩返し』は目に見える形で戻ってくるかもしれない。
そうだとするなら、きっと意味のないものではない……はずだ。

          「ヨイショット」

     バサァッ

少女が立ち去ったベンチで、おもむろに翼を広げる。
人間のように――あるいは『ハーピー』のように、
物を持つことは出来ない。
その代わりに、空を自由に飛ぶことが出来る。

       「ワタシ ソロソロ カエルネ」

                     バササササッ

『別れの挨拶』を残し――――冬の空に飛び立つ。

687百目鬼小百合『ライトパス』:2020/01/14(火) 22:33:22

    フゥゥゥ…………

歓楽街の片隅で、中年の女が煙草を吹かしている。
外見から窺える年齢は四十の半ば程。
短く切り揃えたベリーショートの黒髪、白いパンツスーツ。
長身で、口元にはホクロがあった。
特に何かするでもなく、静かに煙を吐き出している。

        バッ!

不意に、一台の自転車が飛び出した。
乗っている男の手には、女性物のハンドバッグがある。
一人の女性が、何事か叫びながら自転車を追いかけていた。

        ドギュンッ
                 シュバッ

自転車が女の近くを通り過ぎる瞬間、『それ』は現れた。
両肩に『白百合』の紋章を持つ『人型のスタンド』だ。
その手に携えた『警棒』が、目にも留まらぬ速さで、
男の背に叩き付けられる。

                  ――――ガッシャァン!

男は体勢を崩し、自転車が倒れる。
あれよあれよという間に、『引ったくりの男』は取り押さえられた。
ちょっとした騒ぎが起きたが、警察が男を連行した後は、
それも落ち着いてきた。
いつの間にか、女の傍らから『スタンド』は消えてる。
煙草を指の間に挟み、女は煙を吐き出していた。

    フゥゥゥ…………

688常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』:2020/01/18(土) 23:17:55
>>687
「うおおおおおおおおッ!!」
「すごかったです!!!!今の!!!!!」

 『男』の声。

「スゴイ正義感です!!!!尊敬いたしますよ俺!!」

『筋骨隆々な、フリルでフリフリの服装、スカートを履いた男』
…が『白百合』に話しかける。

689常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』:2020/01/18(土) 23:25:54
>>688
訂正
『白百合』→『小百合』

お名前を間違えてしまいました。大変申し訳ありません

690百目鬼小百合『ライトパス』:2020/01/18(土) 23:59:14
>>688

チラ……

(『見えていた』――――ようだね)

『奇怪な男』の方に視線を向け、少し考える。
『同じ力を持つ人間』か。
それは良いとしよう。
しかし、この『格好』は、どういう事だ?
常識って尺度に当てはめると、
まず『不審者』なのは間違いないだろう。

(まぁ……『通報』する必要は無いとは思うがねえ)

確かに怪しい身なりだが、『それだけ』だ。
少なくとも、今の時点では。
もっとも、これから何かある可能性は否定出来ないが……。

「それはどうも。大した事はしてないよ」

「たまたま目に付いたから手を出しただけさ。
 どうも口より先に手が出るタイプでね」

『スタンドを持っている人間』ってだけなら、別に問題じゃあない。
『ただの不審者』も……まぁ、大きな問題にはならないとしよう。
しかし、『スタンドを持っている不審者』となると、
何かしらの問題になりかねない。

「ところで――――アンタも『御同輩』って事で良いのかい?」

だから、ちょっとばかり探りを入れてみようという気になった。
この男が危険な人間かどうか。
『昔の癖』という奴かもしれない。

691常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』:2020/01/19(日) 00:20:23
>>690

  「同輩…………?」

  「………!!!!!  はい!!!」

『白と黒のフリフリの服装』の男はしばし考え込んだ後、
何か思い当たったようだった。

 「そうですよ!!俺も
  ―――――――――『 家政婦 』 です!!!!!!!」

…何か思い当たったようだった。

 「納得です!その力強さ!!そして正義感!!!」
 「あなた様も『メイド』でしたか!!!」
 「せっ『先輩』とお呼びしてもよろしいでしょうか俺!!!」
 「今日は『制服』は着られていないんですか!!!」
 「あッ いえ すみません!!お休みの日でしたか!!!!!」

男の左目は『レースの眼帯』で覆われていた。
残った右目を子供のようにキラキラ輝かせ興奮している。

692百目鬼小百合『ライトパス』:2020/01/19(日) 00:42:48
>>691

「ああ、ええっと…………」

男の言葉を聞いて、思わず煙草を取り落としそうになった。
『俺も』と言ったのか?
つまり、この男は自らを『家政婦』だと自称している事になる。

「――アンタ、『家政婦』なのかい?
 まぁ、その格好を見れば分かる事か……。
 我ながらバカな質問だったね」

口ではそう言いながら、頭の中では次の言葉を練っていた。
一見した所、この怪しい外見はともかく、
他人に危害を加えようとする人間には見えない。
まともな神経なら、この格好で街を歩かないとは思うが。

「けど、ただの家政婦って訳じゃあないんだろうね?
 例えば、『こんな風』にさ」

           ――――ドギュンッ

『白百合』の紋章を刻んだスタンドが、再び現れた。
先程と同じく、その手には『警棒』が握られている。
さっき見た時とは異なり、その長さは短かった。

「こっちが出して見せたんだ。
 出来れば、アンタのも披露して貰えると嬉しいねえ」

害はなさそうに見えても、『スタンド使いの不審者』だ。
念には念を入れて、一応の確認をしておいてもいいだろう。
今は警官ではない身だが、『街を守る』という意志は変わらない。

693常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』:2020/01/19(日) 01:24:32
>>692

「はい!!!!!現代は多様性の時代!!!!」
「男の家政婦がいたってよいではありませんか!!!」
「『たまに』変な目で見られますが、メゲすにやっております!!」

そういうわけで常原ヤマトは家政婦である。


>  ――――ドギュンッ

「そう!!!それです!!!」
「『先輩』のはお花の模様が入ってるうえ、
 強そうで『カワイイ』ですよ!!!」
「俺は…俺のは」

   モコ  モコ

男の足元から、『三つ編みの女の子を模ったヌイグルミ』
という感じの外見の『ビジョン』が出現する。
大柄な男に反して、スタンドの背丈は小学生くらいだ。

「こんな風で『カワイイ』感じですよ!」
「非力ではありますが、仕事には役立てております!!!」

694百目鬼小百合『ライトパス』:2020/01/19(日) 01:48:22
>>693

「ま…………『そういうもの』かもしれないねえ」

色々と言いたい事はあったが、敢えて口には出さなかった。
女性の社会進出などと言われて久しい時代だ。
『その逆』があっても不思議ではない――のだろうか?

「おや、随分と可愛らしいじゃないか。
 言われてみれば、『家庭の仕事』には似合いの姿だね」

ただ、目の前の男が『家政婦らしい』とは思わないが……。
しかし、スタンドは『精神の象徴』だ。
見てくれはともかく、内面はそうなのかもしれない。

      ライトパス
「コイツは『正 道』――そう呼んでるよ。アンタのは?」

「いや、『アンタ』ってのも何だねえ……。
 良ければ、名前を聞いても構わないかい?」

「アタシは『小百合』だよ。小さい百合と書いて小百合さ。
 ほら、ここに咲いてる『花』と同じだよ」

煙草の先で、傍らに立つスタンドを指し示す。
両肩に刻まれた紋章。
それは、本体である自身と同じ名前の花だ。

695常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』:2020/01/19(日) 02:24:42
>>694
「百合でございますか!それに『警棒』!!なるほどカワイイです!!!」

男はキラキラした目で『小百合』と『ライトパス』を交互に見て、
ときおり『カワイイ!』と発している。
こいつにとっては小百合もカワイイらしい。

 「俺は『常原 大和(ツネハラ ヤマト)』です!!!
  男らしい名前をという事で、父が付けた名ですよ!!!」

 「こっちは……『ドリーム・ウィーバー』。夢を編むもの」
 「そう『名付けてもらった』のですが、気に入っております」

常原は自分のスタンドを見やる。
『女の子の見た目』ではなく『女の子のヌイグルミを模倣した見た目』、
なので、手足や目、口の位置が変ではある…。
まあ、それ込みでも自分らしいな、と常原は内心思った。

 「俺はご主人様、奥様、お坊ちゃまお嬢様、その家庭を」

 「ひいては『夢』を守り、つなぎ留める」

「……と、志すことにしております。
 先輩がたに比べれば、俺なんて若輩者でお恥ずかしい限りですが!!!!!!」

696百目鬼小百合『ライトパス』:2020/01/19(日) 02:55:35
>>695

『名前』を聞いたのは『万一』を考えたからだった。
つまり、『スタンド使いの不審者』によって、
『何か事が起きた時』の手掛かりにするためだ。
勿論、必要でなければ、それに越した事は無い。

「ハハッ、『可愛い』だなんて言われたのは何時ぶりかねえ。
 忘れかけてた娘時代以来のような気がするよ」

正直、褒められて悪い気はしない。
こうして年を食った今、
そんな台詞を言ってくれる相手がいる筈も無い。
昔は昔で、『鬼の小百合』などと陰口を言われていた。
仕事一筋で生きてきた自分にとっては、
それも一つの勲章のようなものだ。
きっと自分は死ぬまで、その生き方を続けていくのだろう。

「『常原大和』、『ドリームウィーバー』――立派な名前じゃないか。
 その志も大したもんだよ。
 胸を張って、自分の目指すものを口に出来るっていうのはね」

「『たまに変な目で見られる』って言ったね。
 自分の意思を貫き続けるってのは大変な事だろうけどさ」

    ポンッ

「でも、ま……頑張りなよ。
 アタシなんかが偉そうに口出しする事じゃないと思うけどね」

「いや、アタシも『似たような経験』はあるもんでねえ。
 ついお節介な事を言いたくなっちまったのさ。
 勘弁しておくれよ」

大和の肩を軽く叩き、砕けた調子で笑いかける。
かつて自分は『警察官』であり、今は『警備員』だ。
そうした『男社会』の中でやっていくのは決して楽な道では無かった。
男でありながら家政婦を名乗るというのも、
逆ではあるが似たようなものではないだろうか?
だからこそ、目の前の奇妙な男――大和に、
何となく『親近感』のようなものを覚えたのかもしれない。

697常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』:2020/01/19(日) 03:42:22
>>694
「ありがとうございます!!!!光栄ですよ俺!!!」
「今後とも、男、常原ヤマト、メイドとして邁進いたします!!!!」

 そうかあ…小百合先輩も苦労してたんですね
 昔のメイド史は詳しく知らないけど、
 現代に比べて大変なことも多かったって『家政婦の師匠』も言ってたからなあ)」
 『メイド』って概念が普及しきってなかった時代とかあるでしょうし…

…などと常原は考えた。
目の前の女性は『同業者』だ、と完全に思い込んでいる。

  「…失礼でなければ、ひとつ伺いたいのですが」

  「『正道』とはいったい何でしょうか?」

「『完璧な家事』『カワイイ』『愛』『正義』」
「など、色々あるでしょうが……あっいえ!!失礼!!!!」
「変なことを聞いてしまいましたよ俺!!!!すみません!!!!」

698百目鬼小百合『ライトパス』:2020/01/19(日) 06:16:28
>>697

「いやいや、それは尤もな質問だよ。
 だけど、なかなか難しい質問でもあるねえ」

『正道』とは何か。
以前、同じような質問をされた事がある。
それは、自分が『刑事』だった時だ。

「単に言葉の意味を答えるなら、
 『人として在るべき姿』って事になるだろうけどね。
 アタシの考えで言うなら、『自分に嘘をつかない事』さ。
 だから、アタシは自分が正しいと思う事を言うし、
 正しいと思う事をする」

「『自分の正しさ』と『他人の正しさ』が食い違うのは珍しくない。
 この世に『絶対』と呼べるものなんて、
 そうそう見つかるものじゃあないからねえ。
 それは仕方ない事さ」

「でも、『自分が考える正しさ』と、
 『自分の中から出る言葉や行動』は、
 一致しているべきだと思ってるよ。
 『自分自身の心と食い違う』っていうのは苦しいもんだからねえ。
 勿論この世の中には、
 『自分が正しいと思う道を進む』のが難しい場合もあるけど、
 『自分で正しいと思えない生き方』をするよりは、
 良いんじゃないかねえ」

「もし、それが出来なくなるようなら――――
 舌を噛んで死んだ方がマシだね」

そう言って、『正道』の名を冠する自身のスタンドを一瞥する。
自らの『精神の象徴』。
『自分自身の正道』を貫く意志の象徴でもある。

「アタシから言えるのはそんな所さ。
 何かの足しにでもなれば幸いだよ
 我ながら、ただの小言になってるだけの事も多くてねえ」

699常原ヤマト『ドリーム・ウィーバー』:2020/01/19(日) 21:42:19
>>698
「自分に嘘をつかない」
「正しいと思う道を進む」

眼帯メイド筋肉男はしばし、その言葉を噛みしめた……


 「――――ありがとうございました!!」
 「俺も!自分がすべきとおもう道を、
  まっすぐ突き進みますよ、俺!」

どこかを見やる。『引力』を感じる。

 「『家事』を!!!!しなければいけません!!!」
 「お宅に行かねばなりませんよ!!!!」
 「俺は俺の『メイド道』を突き進みます!!!!!」

常原ヤマトは『流れの家政婦』である。
己が『なんとなく引力を感じ』ればその家庭に向かい、
なにがなんでも家事をする。そのためには『不法侵入』をも辞さない、
物盗りも殺しもしない、しかし『住居侵入犯』ではある。
だが、それは真っすぐな愛ゆえの行為。悪気はないのだ……

 「『小百合先輩』!!!」
 「貴重なお時間いただき感謝いたします」

 「―――いつか『メイドの引力』が俺たちをふたたび引き寄せたら!!
  またその時はお話を伺いたいです!!」

常原は大きくお辞儀をした後、走り去ろうとする――

700百目鬼小百合『ライトパス』:2020/01/19(日) 22:09:54
>>699

「――――ま、達者でねえ」

煙草を持つ手を軽く振り、謎の男・常原大和を見送る。
やがて、一つの考えが頭に浮かんだ。
つい励ましてしまったが、これで良かったのだろうか?

    ゴソ

    「『ツネハラ ヤマト』……」

           「『ドリーム・ウィーバー』……」

                      サラサラサラサラ

ペンと手帳を取り出し、咥え煙草で名前を書き入れる。
もし――もし万が一『何かやらかす』現場に出くわしたら、
その時は『手』を出さねばならない。

       フゥゥゥゥゥ――――ッ…………

               ライトパス
それが百目鬼小百合の『正 道』だ。

701神谷『デミリタライズド・ゾーン』:2020/02/08(土) 22:22:27
「うおっさむっ……」

冬の寒空の下、ショートパンツに黒タイツという出で立ちの少女がいた。
黒縁の眼鏡をして寒そうに立ち止まっている。

「こっ、今年の冬……暖かいんじゃなかったか……? 寒いもんは寒いぞ……?」

「あれか? 暖冬暖冬言われ過ぎてここに来て本気出しちゃったか? 夏休み終盤かよ……」

寒そうにしながら辺りをキョロキョロ見渡していた。
何かを探しているのだろう。

「や、ヤバすぎ……」

702ディーン『ワン・フォー・ホープ』&ヨシエ『一般人』:2020/02/08(土) 22:53:22
>>701

背中にリュックを背負った小さな少女が、そちらを見た。
辺りを見回す動きが視界に入ったらしい。
少女は小学校一年生くらいで、かなり幼い。
花柄のワンピースを着て、花モチーフの髪飾りを付けている。
そして、両腕で『黒い塊』のようなものを抱いていた。

「?」

少女は不思議そうな顔をして神谷を見つめている。
それから、視線の先を目で追った。
何を探しているのか気になったようだ。

703神谷『デミリタライズド・ゾーン』:2020/02/08(土) 23:55:24
>>702

「ないじゃんもー……ここじゃないのか? マップ死んでる系? ……ありえねー」

ブツブツ言いながらスマホを出してみたり辺りを見てみたり。
なんだか一人で忙しそうだ。

「?」

「!」

そちらを見てから目線をそらす。

(やっべ……子供に見られた。不審者率百パー、いや、千パーセント)

(えー……でもなんでここいるんだ? 迷ったのかな? でも声かけ事案は勘弁だし……)

704ディーン『ワン・フォー・ホープ』&ヨシエ『一般人』:2020/02/09(日) 00:23:33
>>703

迷子かどうかは分からない。
少なくとも近くに保護者らしき人物はいないらしい。
その割には、不安そうにしている感じでもなかった。

    トッ トッ トッ

何やら忙しそうな少女に向かって歩き出す。
目線を逸らされたが、その意図は理解できていなかった。
お互いの距離は徐々に縮まっていく。

          「?」

         キョロ キョロ

神谷と神谷のスマホを交互に見る。
怪しんでいるというような雰囲気はない。
純粋に疑問を感じている様子だ。

           モゾ

その時、少女が抱いている『黒い塊』が、ほんの少しだけ動いた。
黒毛の『チワワ』だ。
毛の色と同じ黒い瞳が、少女と同じように神谷を見上げた。

705神谷『デミリタライズド・ゾーン』:2020/02/09(日) 00:39:25
>>704

(え、なんでこっち来るの?)

(やっべぇ��マジでなんかのフラグ立ててる? 社会的地位喪失エンドとかハード過ぎるだろ……)


そんなことを思いながら視線を投げる。
その時気付いた黒い塊の正体。

(犬、チワワ……)

チワワだ。
こちらを向いているチワワがいる。
途端に、少女の背を冷たい汗がつたい始める。

「……な、なに?」

706ディーン『ワン・フォー・ホープ』&ヨシエ『一般人』:2020/02/09(日) 01:02:45
>>705

「お姉さん、『迷子』ですかー?」

相手の密やかな動揺など知る由もない。
躊躇う様子もなく、ニコニコしながら話しかける。
どうやら人見知りしない性格のようだった。

「どこか行きたいんですかー?」

腕の中のチワワは特に目立った動きを見せない。
吼えたりする事もなく、ただ黙って抱えられている。
体温が伝わっているらしく、犬を抱いている少女は暖かそうだ。

(さっきから妙に落ち着きがない。
 『捨てられた子犬』みたいにビクビクしている。
 こういうのを何て言うんだったか……)

(ああ――――『挙動不審』だ)

ヨシエの腕の中で、俺はそう思っていた。
確かに怪しいと言えば怪しい。
だけど、『それ以上』じゃない。
別に、こちらから何かする必要はないだろう。
だから、しばらく成り行きを見守る事にした。

707神谷『デミリタライズド・ゾーン』:2020/02/09(日) 01:34:14
>>706

「え゛」

「ま、まぁ? 迷ってるっちゃ迷ってるかなぁーみたいな?」

「いや、パソコンのパーツ売ってるとこ探してたんだけど……流石に分かんないか……」

バタフライ遊泳している目はチワワと虚空を行ったり来たりしている。

「て、ていうか、その、犬? お、置いといてくれないかな?」

708ディーン『ワン・フォー・ホープ』&ヨシエ『一般人』:2020/02/09(日) 02:01:12
>>707

「んー?」

「……分かんないですー」

少し考えてから首を傾げる。
神谷の考えた通り、やはり知らなかったようだ。
そして、ポケットを探り始める。
それと同時に、チワワは少女の腕から下りた。
やがて、少女の手には犬の代わりに最新のスマホがあった。

「じゃあー、一緒に探しますよー」

「えっとー」

    ススッ

「『パソコン』、『パーツ』、『星見横丁』……」

神谷の横で検索を始める。
それを見ているチワワの首輪には『DEAN』とある。
犬の名前らしい。

709神谷『デミリタライズド・ゾーン』:2020/02/09(日) 02:32:42
>>708

「分かんないなら、それでいいんだぞ。うん」

「無理に調べなくても……」

好意はありがたいが色々問題もある。
じりじりと犬から離れるようにして動いていた。

「そ、その犬、ディーンっていうのか?」

「別になんでもいいんだけど……」

ジリジリと距離を放す。

710ディーン『ワン・フォー・ホープ』&ヨシエ『一般人』:2020/02/09(日) 21:59:59
>>709

「んー、これは違うしー……」

「これも違うしー……」

まだ検索を続けている。
しかし、なかなか引っかからないようだ。
やり方が悪いのかもしれない。

「そうだよー!ヨシエの一番の友達!」
  
      パァッ

犬の名前を言われ、スマホから顔を上げて明るい表情を見せた。
よほど大事な存在らしい。
一方のチワワは、ヨシエを見てから神谷に視線を移す。

(犬はお気に召さないようだな?
 まぁ、『繋がれてない犬』を警戒するのは自然な反応か……)

(――『挙動不審な人間』に注意するのが自然なのと同じようにな)

神谷の方を見る。
そして気付いた。
神谷の後方の分かりにくい場所に、
『それらしい店』があるらしい事に。
しかし、どうやって伝えるべきか。
この場で『能力』を使うのは憚られる。

(仕方ないな)

          ジリッ……

そう考えて、一歩分だけ神谷に近付く。
ただ店の場所を教えようとしただけで、他意はない。
しかし、相手側にどう受け取られるかは分からなかった。

711神谷『デミリタライズド・ゾーン』:2020/02/09(日) 23:01:02
>>710

「あっ……」

それ以上話さず何かを察したように首を縦に振る。
相変わらず距離をはなそうとしているが。

「うぇ」

ディーンが一歩近づき、少女が一歩下がる。

(やっぱ苦手なんだってチワワ!)

712ディーン『ワン・フォー・ホープ』&ヨシエ『一般人』:2020/02/09(日) 23:20:48
>>711

(そうビビるなよ)

(『ジャーマンシェパード』や『シベリアンハスキー』じゃあないんだぜ)

      トッ トッ トッ

相手の警戒を余所に、さらに歩みを進める。
まもなく、ある一点で足を止めた。
神谷に向けていた視線を、その後ろに移す。

「?」

ヨシエはディーンの行動を見ていた。
彼女の視線も同じように動く。
そして、神谷の後ろにある店に目を留める。

「あのー、お姉さーん」

「『パソコン』」 「『パーツ』」

「――って書いてあるみたいですよー」

店の方向を指差しながら、ヨシエが神谷に呼びかける。
そちらに目を向ければ、店があるのが分かるだろう。
ディーンは動きを止め、その場に座り込んでいた。

713神谷『デミリタライズド・ゾーン』:2020/02/09(日) 23:34:30
>>712

「ちょっちょっちょっ!」

一瞬、少女の体が薄墨色に染まる。
一般人には分からない、スタンドの姿。
本人も気付いたのか慌てて解除した。

「え? パーツ? え、あ、マジか!」

「あ、えーと、ありがとう!」

ディーンが寄った分、下がりながら言葉を返した。
座り込んでいる間は腰が引けた体勢だ。

714ディーン『ワン・フォー・ホープ』&ヨシエ『一般人』:2020/02/09(日) 23:58:26
>>713

「どういたしましてー」

「見つかってよかったですねー!」

    ニコッ

ヨシエは無邪気に笑っていた。
スタンドの発現に気付いた様子は全くない。
彼女には『デミリタライズド・ゾーン』が見えていないようだ。

(今のは……)

(コイツ――『スタンド使い』)

しかし、俺には見えていた。
一瞬しか見えなかったが、何かが全身を覆っていた。
どうやら俺と同じような『身に纏うタイプ』のスタンドらしい。

(今のところ危険な奴じゃあなさそうだが……。
 そういえば『アイツ』も本体を覆うようなタイプだったか……)

以前、『鎖』を使うスタンド使いと遭遇した事がある。
奴からは何か『危険な匂い』を感じた。
アイツと同じような人間に遭遇するのは避けたい。
俺だけなら、まだ良い。
だが、ヨシエを危険な目に遭わせる訳にはいかない。

       ヒョイ

近付いてきたヨシエが、再びディーンを抱え上げた。
神谷を見つめるディーンは、心なしか目を細めているようだった。
『顔』を覚えようとしているのかもしれない。

「ディーン、いこ!」

「お姉さん、バイバーイ!」

ディーンを連れたヨシエは、挨拶して立ち去ろうとしている。
特に呼び止めなければ、そのまま別れる事になるだろう。

715神谷『デミリタライズド・ゾーン』:2020/02/10(月) 00:05:48
>>714

「ば、ばいばーい」

手を振って駆け足気味に店へと早歩き。
早急にこの場を離れるように。

「い、いい子だったな……」

(でもチワワは勘弁な!)

716ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2020/02/23(日) 21:37:47

「皆様――本日はお足を止めて頂き、真に有難う御座います。
 この『ハーピー』のショータイムで、
 しばし『現実からの離陸』をお楽しみ下さいませ」

「 『♪』 『♪』 『♪』 」

       バササササッ
               バササササササッ

『鳥人』を思わせるコスチュームを身に纏った女が、
集まった聴衆を前にして恭しく挨拶した。
女の呼び掛けに応じて、付近から『野鳥達』が集まってくる。
ハト・カラス・スズメなど多種多様だ。

「 『♪』 『♪』 『♪』 『♪』 『♪』 」

鳥のような声を発しながら、女が指揮者のように両手を動かす。
その合図に合わせて、鳥の群れが『編隊飛行』を披露する。
訓練されているかのように規則正しく、一糸乱れぬ動きだ。

(やはり大通り方面と比べると、
 この辺りは『客層』に少々違いがあるようで)

(『研究対象』として興味深いものを感じる所です)

パフォーマンスを進めつつ、それとなくギャラリーに視線を送る。
このショーは食い扶持を得るためだけではない。
そこに集まる人間達を観察し、
人の社会を『研究』するという目的も含まれているのだ。

717ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2020/02/28(金) 01:55:12
>>716
「待ち人は、来ます」
「いえ、傍にいるはずです。……心当たりがございますでしょう?」
「あなたは自分を押し殺し過ぎます 大丈夫です 良い星が出ていますよ」


 どーも。まゆです。
 ラフィーノ石繭(本名:末石まゆ) 占い師(偽)です。
 屋外にて営業中です。寒い。

 「(………アイツも大変ねェ)」

 少し離れた場所でカーニバルみてーな服装の女性が見事な芸をやっている。

 ところで私は『温度が視える』スタンド使いなのですが、
 あいつの服装、『熱い』。
 ほんと。『熱帯動物のケージか何かかよ』ッてくらい、
 彼女の服装が熱を帯びているのが『視える』

 わかる。
 寒いから。この時期、屋外はね。
 私も、上着の下は『ホッカイロ』塗れ。大変よね。

 「ええ、ええ」
 「お話、楽しかったです」
 「いってらっしゃい……応援してますからね」

次の客はまだ来そうにないので、
しばらく『ハーピーのショータイム』とやらを鑑賞する。

718ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2020/02/28(金) 13:25:52
>>717

「お次は少し高く飛んで見せましょう。下から上、上から下へ。
 アクロバットの遊覧飛行で御座います。
 『心のシートベルト』をお締めになられましたか?
 見失わないように、瞬きは今の内にどうぞ」

(あの『ニンゲン』――――)

「 『♪』 『♪』 『♪』 『♪』 『♪』 」

(『観客』ではないようですね)

ギャラリーの向こう側に視線を向け、そのような感想を抱く。
彼女は何をやっているのだろう?
あまり見たことのない場面ゆえに、探究心を刺激された。

     バサバサバサバサバサ
                バサバサバサァァァ――――ッ

編隊を組んだ鳥の群れが、曲線を描くような軌道で宙を舞う。
全ては『事前の打ち合わせ』通りに進行する。
『鳥とコミュニケーションが取れる人間』と見られているが、
実際は『その反対』なのだ。

(『ニンゲン』――現在、地上で最も高度な社会を築く種族)

(その『繁栄の秘密』を解明する事が、
 『我々の世界』を大きく進歩させる『鍵』となる筈です)

「さあ、回ります。最初はゆっくりと。徐々に激しく。
 大空を彩る翼のメリーゴーランドで御座います。
 色取り取りのコントラストをお楽しみ下さいませ」

「 『♪』 『♪』 『♪』 『♪』 『♪』 」

         バサササササッ
                 バサササササササッ

女の合図に合わせて、群れが空中で回り始めた。
メリーゴーランドを思わせる動きで飛び続ける。
指揮者のように立つ女は、一定のリズムで両手を振っている。

719ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2020/02/28(金) 20:54:19
>>718
「(わあ)」
 スゴイわね。カラスとスズメが喧嘩せずに並んで飛んでる。

>「 『♪』 『♪』 『♪』 『♪』 『♪』 」

 スゲーッ  まるで人間九官鳥。声帯どうなってんだ。
 鳴き真似とは思えない凄まじいバリエーション。
 まるでその場で指示を出してるみたい。

……『タネ』がわからない。

ええっと確か、『鳥獣保護法』。野鳥って捕獲禁止でしょ?
だからあのパフォーマーは、
大量の鳩とかカラスとかスズメを、自治体の許可もらって
飼って、躾けて、芸をやる時はそれを一時的に野に離して…
……めっちゃ手間かかるじゃない。


 「……ううむ、それか、タネも仕掛けもなく、
  森にすむ鳥さん達とお話しができて、
  いっしょにショーをしている、…?」

  「それはもはや『オカルト』よ。嘘くせーわね。」

それにしてもあのパフォーマー、
『濃い赤』だ。周囲の人間と比べて異様に『赤い』。
『ミスティカル・ガイド』は『温度差を色で視』る。


 「……いや暑すぎなんじゃない?
  もはや『肉体そのものが電熱ヒーター』って感じ」

 「…………まさか」

720ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2020/02/28(金) 22:32:58
>>719

人間の平熱は、大体『36度』前後だ。
犬や猫だと『38度』前後。
鳥の場合は『40度以上』になる。
これは運動量の違いが影響している。
特に鳥は空を飛ぶために他の動物よりも運動量が多く、
そのために体温も高くなるのだ。

「 『♪』 『♪』 『♪』 『♪』 『♪』 」

                  バサッ バサッ バサッ
  バサッ バサッ バサッ
                   バサッ バサッ バサッ
      バサッ バサッ バサッ

飛んでいた鳥達が地上に降りてくる。
女が両腕を広げると、そこに鳥達が着地していく。
その姿は、まるで『止まり木』のようだ。

「それでは皆様、いよいよ『フィナーレ』に参ります。
 お見逃しのないよう、どうぞ最後まで御覧下さいませ」

    「 『♪』 」

          「 『♪』 」

                 「 『♪』 」

   ブワァァァァァァァァァァ
                ァァァァァァァァァァ――――ッ

次の瞬間、鳥達が一斉に飛び立った。
それぞれが別々の方向に向かって飛んでいく。
最後に、その場に残った女は丁重に頭を下げた。

「――――御観覧に感謝を」

女の脇に置かれた古めかしい鞄に、硬貨が放り込まれていく。
その様子を見ている途中で、ふと視線を移す。
視線の先には、先ほど興味を抱いた『ニンゲン』の姿があった。

721ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2020/02/29(土) 01:08:03
>>720
「きゃあッ スゴかったーッ」

  パチパチパチパチ

やるじゃない。
鳥たちの編隊が一糸乱れることなく飛び交う空間、
そしてそれを統べて見せるあのパフォーマーの女性。
まるでこっちまで空を飛んでいるような気分になる
ステキなショーだったわ。

「…あッ いえ、じゃなくて!」
「…そうよ 絶対そう あの体温」


「――――――――『ひどい風邪』ね! 間違いないッ!!」

む。彼女こっち見たわ。
来るなよ、絶対来るなよ。風邪がうつる。


(『ブリタニカ』の視線の先の女は、
 白髪、他の人間に比べて目がキラキラとしているように見える。
 ウネウネ、カクカクした模様の布とかに身を包んでいる
 人間が『アジアン、エスニック風の服装』とか呼ぶ恰好だ

 女は、路上に机と椅子を置いて座っていた。
 『あなたの運命、視ます』と書いた看板が置いてある。

 『目が水晶になっている岩っぽい人型ビジョン』
 が、女とダブって見えた。    )

722ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2020/02/29(土) 01:43:52
>>721

(『スタンド使い』)

「ふむ」

    ザッ

鞄を手にして歩き出す。
進む先は、看板の置かれた方向。
すなわち『エスニック風の女性』がいる場所だ。

           ザッ

(『研究』の精度を高めるためには『情報の蓄積』が不可欠)

                  ザッ

(手掛かりを得るため、『コンタクト』を試みる事に致しましょう)

           ――――グリンッ

看板の前で立ち止まると、ややオーバーな程に大きく首を傾げる。
『運命』という言葉は理解しているつもりだった。
曖昧かつ広い範囲を指す表現。
しかし、それを『視る』という意味は図りかねていた。
『運命とは視覚的なものではない』と解釈していたからだ。

「失礼ですが――」

「『これ』はどのような意味で御座いますか?」

おそらく、体温は相変わらず高いように見えるだろう。
その割には病気をしている感じでもなかった。
単に分かりにくいだけかもしれないが。

723ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2020/02/29(土) 02:10:02
>>722
「近づくな―ッ!病気がうつるわ――ッ!!
 家に帰って寝ろケダモノーッ!……ん?」

風邪って感じではない…
体温だけ視れば重病人のようなそれだ。
なのに、見た目に変わった様子はなく、
あまつさえ路上パフォーマンスをしてみせた。
どういう事だ?

「あ…いえ 大変失礼いたしました
  エエっと、『これ』は……」


口元を覆う。何か変な風邪移されたらいやよ私。
にしても彼女、鳩、というかトリにそっくりね。
首の動きとか。まんまるな眼とか。カワイイじゃない。

「……貴方は、鳥さんたちのいるあなたの住処に帰って、
 はやくお休みになったが良いです。私は貴方が心配です」

「『非常に、非常に悪い運命』のビジョンです。
 星の位置が、とても良くありません」

「『視える』のです。私には、普通では見えないようなものが、
 『運命』とでも呼ぶべき色彩が、密かなるものごとの流れが…」

うそ。『体温』と『スタンドビジョン』しか見えない。
でもそこを騙しとおすのが偽占い師の仕事よ。

724ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2020/02/29(土) 02:50:26
>>723

「…………なるほど」

        グルンッ

首の角度を戻し、納得した様子で深く頷いて見せる。
彼女には特別な『才能』あるいは『技能』があるのだろう。
それが『繁栄の秘密』を解き明かす手掛かりになるかもしれない。

「あなたには『視えている』のですね。
 私を取り巻く『運命』の流れが……」

神妙な表情で、静かに言葉を返す。
彼女の台詞には、何処か信じられるようなものを感じた。
何よりも、彼女の『目の光』に説得力がある。

「いつの日か、私にも『それ』を視る事が出来れば――」

『大きな飛躍』を掴めるかもしれない。
固体としての関心だけではなく、種族全体の利益に繋がる。
そのために、こうして密かに『人間社会』に紛れ込んでいるのだ。

「ええ、おっしゃる通りに致しましょう。
 焦りは禁物です。『目的』のためにも、英気を養わなければ」

「――お心遣いに感謝を申し上げます」

          ザッ

感謝の言葉を告げて、踵を返す。
思えば、少し気が急いていたのかもしれない。
彼女の言葉で、その事に気付かされた。
そのような感情を胸に、横丁を後にする。
もちろん、相手が何を考えているかなど知る由もないのだった。

725ラフィーノ石繭『ミスティカル・ガイド』:2020/02/29(土) 03:30:36
>>724
「はい」

いいえ。視えてなんかねーの。

 「『悪い大きな流れ』に巻き込まれたくなければ、
  焦った行動は控えるように。
  冬の寒い風に耐えれば、芽吹く日も訪れます」

 「お気をつけて――――」

クビの動きが特徴的な彼女を見送る。帰りにマスク買え。
芸人にとって喉は大事なんだから。風邪を治せ。

 「――――或いは」
 「冬の風に乗ってしまうというのも一興かもしれませんわね」
 「大きな流れの上で、喧騒のさなかで、歌う」
 「飛躍は見込めます。大きな目的のための賭けではありますが」

 「でも私を巻き込むのはヤメロよ…
  見えない所で勝手にやってなさいな……」

以上、まゆでした。

726黒羽 灯世『インク』:2020/03/05(木) 23:33:31

「……………………」

教わった『ゲーセン』の張り込みを始めて、しばらく立った。
『触れずに人間を吹き飛ばした学生』の噂・・・
それを確かめ記事にするためだったが、『続報』は未だない。
常習犯ではないのか、それとも本当に『間違い』だったのか。

「…………」

(いけないのだわ、現れないから『ない』だなんて。
 そうね、そろそろ張りこむ店を変えた方がいいかしら……)

            (でも)

   『ダンッ』

            『ダンッ』

 ・ ・ ・ ・                         
(この筐体はこのゲーセンにしかない……負けっぱなしは癪なのだわッ)

通い詰めるのを怪しまれないために始めたはずのゲームは、調査の停滞に何か関係がないだろうか・・・

727百目鬼小百合『ライトパス』:2020/03/06(金) 00:10:55
>>726

白いパンツスーツを着た背の高い中年の女が、
店内の一角に佇んでいた。
煙草を咥えているが、火は付いていない。
天井の照明を反射して、
両耳の『白百合のイヤリング』が小さく光る。

「――――…………」

その話を耳にしたのは何時の事だったか。
『指一本触れる事なく人が吹き飛んだ』というような内容だった。
単なる喧嘩なら口を出すような事でもない。
しかし、喧嘩に『凶器』を持ち出したとなると別だ。
万一それが『犯罪』に関わるようなら見逃す訳にはいかない。

(手掛かりナシか……。ガセネタだったかねえ)

先の一件は、この店で起こったらしいと聞いた。
もっとも、この近辺の学生の話を立ち聞きしただけだから、
大してアテにはならない。
事実、こうして見回っていても何も見つからないのだから。

    チラ

ふと、筐体の前にいる少女に視線を向ける。
そういえば、しばらく前から見かけていた。
考えてみると、『何か探しているような素振り』もあった気もする。

(『手掛かり』か……。いや、まさかねえ。
 そう上手くいくもんじゃあない)

(だけど――――確認ぐらいはしておこうかね)

そのまま、少女の様子を見守っておこう。
こちらが見ている事に気付いたとしても、視線は外さない。
むしろ、それが目的だ。

728黒羽 灯世『インク』:2020/03/06(金) 00:42:02
>>727

(…………………………………………!?)

筐体の液晶に僅かに反射する『背後の光景』に、黒羽は驚愕した。

(…………わ……私に、この私に『ギャラリーがついている』のだわッ!!?)

(…………見たところあんまり、『ゲーマー』風ではないけど。
 見たことのある常連客でもないし……大人は珍しくはないけど……
 とにかく、ようやく私の『センス』が知れ渡り始めたようね……!
 『すでに上手い人たち』の時と違って、私の時は人が来なかったのに!)

全て最初から上手くいくとは思わない。センスがあっても経験がない。
そう……『センスはある』と思っていたのだ。経験が追い付いてきたのだ。

                 …………『そう思っている』!

(これ……! 『魅せプレイ』と言うのをした方が『上等』に見えるかしら!?
 それとも『ストイック』に決める方が『上等』!? 悩ましいところだわ!)

        『ダン』

               『ダン』

(もっと私を見なさい! 見上げなさい! ……初めてすぐにしては高いはずの私のスコアを!!)

はっきり言って、黒羽はこの『音ゲー』……さほどうまくはない。別に下手でもないが。

729百目鬼小百合『ライトパス』:2020/03/06(金) 01:05:48
>>728

正直な所、『ゲーム』の事はよく知らなかった。
あの少女がやっているものも例外ではない。
だから、上手い下手の区別もつかない。
少なくとも、自分よりは上手いだろう。
やった事がないから何とも言えない所なのだが。

(……もうちょっと突っ込んでみるとするかねえ)

    ザッ

少女の後ろから、やや距離を詰める。
あまり近付きすぎない程々の距離だ。
当然、相手が何を考えているかなど知る筈もない。

(分からない。ただ遊んでるだけなのか……。
 勘繰り過ぎたかもしれないねえ)

そのまま背中越しに観察を続ける。
集中しているようだし、邪魔しちゃあ悪い。
干渉せず、大人しくギャラリーに徹する事にした。

       ――――カキンッ

ポケットからライターを取り出し、親指で蓋を跳ね上げる。
別に火をつけるつもりはなかった。
言ってみれば、ただの癖だ。
今は自重しているが、吸ってないと落ち着かない。
だから、こうして抑えていた。

730黒羽 灯世『インク』:2020/03/06(金) 01:20:21
>>729

(!? 近付いてきた……『もっと見たい』という事かしら)

(それに『観戦マナー』が良いのだわ……さすがに大人ね!)

黙って見ているのを都合よく解釈する黒羽。
ライターの音くらいは、気にならない。
それより目立つ騒音もある。
こればかりは黒羽が『下回る』。

    『オオオオオッ』

          『ズドドドドドドド!!!!!!!』

                 ギャハハハハ

  『ドンドコドンドコ』

ゲーセンは、『静か』とは最も遠い空間の一つかもしれない・・・
ライブハウスのようなそれとは違い、どこにも統制や基準がないから。

(…………ふう、こんなところかしら)

              ファサッ

髪を手で払いながら、振り向く。
夕焼け色の瞳を灯す目は、蛇や猛禽のようで『良い目つき』ではない。

「――――――ねえねえ。どうだったかしら、私のプレイングスキル?
 惜しくもランキング上位は逃したけど、この調子だとすぐ『上』に立てるのだわ!」

                       「そう思わない?」

喫煙にも黒羽は特に、なんとも思わない。ゲーセンはそういう場所だと知っているからだ。

731百目鬼小百合『ライトパス』:2020/03/06(金) 01:45:43
>>730

ゲームセンターの客には未成年も多い。
従って、こうした場所で大っぴらにスパスパやるのは、
あまり好ましくないと考えていた。
だったら、煙草を咥えているのも宜しくないかもしれない。
しかし、それを止めると無意識に火をつけてしまう。
要するに、これが我慢出来るギリギリのラインという事だ。

「ああ、上手かったよ。ちょうど感心していた所さ。
 器用なもんだねえ」

自信ありげな態度を見て、そう答える。
実際は分からないのだが、わざわざ口に出す事もない。
それを言ったとして、損はあっても得はないだろう。

「アタシも前に少しだけやったんだけど、
 なかなかああはいかなかったさ。
 アンタは、よくやってるのかい?
 随分と手馴れているように見えたよ」

(ちょいと探りを入れさせてもらおうかね。
 といっても――こりゃ『ハズレ』かもしれないねえ……)

せっかくだし、ちょっとばかり話でも聞いておこう。
もしかすると、会話の中で何か出ないとも限らない。
出なかったとしたら、他を当たればいい。

732黒羽 灯世『インク』:2020/03/06(金) 01:56:25
>>731

「フフッ! お分かりみたいね、嬉しいのだわ。
 まあ〜まだまだ私は初心者みたいなものだけどね。
 つい最近だもの、このゲームを始めたのも!」

           フフフ

「手慣れてるように見えたかしら〜?」

自慢気な態度は崩れない。
真意を知らないのだから当然ではあるが。

(……?)

しかしこのあたりで、黒羽は引っ掛かりを感じ始めた。
特に言動からではなく、本当に『なんとなく』だ。
しいて言えば、『質問の仕方』に『探る意図』を見た。

「この筐体って、このあたりの他のゲーセンにはおいていないのよね。
 前にもやったという事は、貴女……も、ここにはよく来るのかしら?」

(何かしら、まあいいわ。聞きたいことははっきりしてる。
 他の常連客はあまり知らなさそうだったけど、
 この人は普段見かけないし、『違う層』の人な気がするのだわ)

いずれにしても、百目鬼の言葉には別の『ヒント』を見出した。
もっともそれは『探り』の一環からの発展で、少しずれているのだが・・・

733百目鬼小百合『ライトパス』:2020/03/06(金) 02:22:14
>>732

「ま、たまに気晴らしにね。だけど、常連って程じゃあないよ」

この筐体が他の店には無い事は知らなかった。
元より、ゲーム自体には注意していなかったのだ。
だが、その点には敢えて言及しなかった。

(他の店には置いてない、か。
 それで『つい最近始めた』って事は、
 この子も、ここの常連って訳じゃないようだね)

(けど、『この店にしかない事を知ってる』のが、
 引っ掛かると言えば引っ掛かる)

(もう少し掘り下げてみるかねえ……)

「こういうのが上手い人ってのは、
 やっぱり『才能の違い』なのかねえ。
 どんなのをやっても上手にこなしちまう。
 そういう人が羨ましいよ。アタシは不器用でさ」

「さっきのを見てた限り、アンタもゲームは得意そうだね。
 今やってたヤツだけじゃあなくて……。
 たとえば、『ソレ』とか『アレ』なんかはどうだい?」

指で挟んだ煙草の先で、別の筐体を指してみせる。
『シューティングゲーム』と『対戦格闘ゲーム』の筐体だ。
それ自体には、これといって深い意味は無い。
ただ、この少女がゲームの愛好家かどうかを知りたいだけだ。
特別ゲームが好きな人間なら、
やりたいゲームを探して店を回るのも普通かもしれない。

734黒羽 灯世『インク』:2020/03/06(金) 13:59:19
>>733

「ふうん、そうなの…………私と同じね」

(アテが外れたわね……
 でも、たまに来てるなら可能性はある?
 『学生の喧嘩』だったみたいだし、当事者は無いとしても)

「……フフッ! 才能、そうねえ、『才能』もあるのだわ。
 でも、最初からこれだけ出来たわけじゃあないもの。
 あのあたりのゲームも……きっと『得意になれる』でしょうね!」

「まあ、今やっても勝てないけどね……
 シューティングはいつも似たような人が上位だし、 
 格ゲーも『店内ランキング』はほとんど固まってるみたいだわ」

『店の状況』は、調査の中である程度あたりを付けている。
それがくだんの『騒動』につながった可能性も無くもないから。

……格ゲーの筐体の周りには人が多い。
黒羽自身あの中で『上の方』ではないと自覚はある。
客観視は出来ている。今は勝てない。そう、『今は』……

(っと、いけない、ゲームで上り詰めるために来てるんじゃない!)

……思い直した。
とはいえ百目鬼の『探り』には、気付き切れていない。
このゲーセンの『ゲーマー』ではないような発言をしている自覚も薄い。

「ところで……このゲーセン、『治安』が良くないわよね。
 貴女みたいな、オトナの人があまり多くないからかしら……」

視線の先の『格ゲーエリア』は、笑いも多いが喧噪の中に『罵倒』も多い。

735百目鬼小百合『ライトパス』:2020/03/06(金) 16:24:37
>>734

「自分を知ってるのは立派な事だよ。
 『出来る事』と『出来ない事』の区別をつけるって事さ。
 そこが『自信』と『慢心』の違いってヤツなんだろうね。
 その点、アンタは若いのにしっかりしたもんだ」

「ハハハ、こんな話は余計なお世話だったかな?」

(ここの常連じゃあないか。
 それに、しょっちゅうゲームやってるって風でも無い)

(こうなると、『この筐体が他の店に無い』のを知ってるのが、
 なおさら気になってくるねえ)

「ん?言われてみると、そうだねえ。
 若者が集まりやすい立地だから、不思議じゃあないけど……」

画面の中にあるのは、互いの命を削る戦いだ。
もちろん、それは現実じゃあない。
機械の中で行われる『安全な殴り合い』に過ぎない。
しかし、人間は機械とは違って感情がある。
熱が高まった結果、
『罵倒』から『現実の殴り合い』に発展する可能性も有り得る。

「ゲームに限らず、勝負事は熱くなりがちだからね。
 あれぐらいなら、まだマシな方だろうけどさ」

「場合によっちゃあ、
 それが原因で『喧嘩』になるなんて事も有り得る。
 そうなると店側としても迷惑だろうけど、
 あまりうるさく注意し過ぎると、今度は客足に響いてくるしねえ」

「――『そういうの』見た事あるかい?」

向こうから『治安』について言及してくれたのは助かった。
その流れに乗って、さらに尋ねる。
この少女にも、何処か『引っ掛かり』を感じるというのもある。

736黒羽 灯世『インク』:2020/03/06(金) 22:27:08
>>735

「ふふふっ! そう、私ってしっかりしてるの。
 これからさらにしっかりしていくと思うのだわ」

          フフフ…

「褒められるのに余計も何も……
 もっと褒めてちょうだい。
 貴女はよく褒めてくれて嬉しいのだわ」

(気分が良いわ。………………よく褒める?
 ……それって『聴き込み』の基本じゃないの?
 さっきから感じてた、ちょっとした違和感。
 …………もしかして、何か『私に言わせたい』事が?)

何気ないきっかけだった。
だからこそ、百目鬼の次の質問には『納得』した。

(……多分、この人も……『何かを調べている』)

「そうね、勝負だもの。負けたくないのは当然。
 負ければ悔しいのもね……遊びでも、勝負は勝負。
 子供でもオトナでも、そこは大事だと思うのだわ!
 まあ、負けたからって『手を出す』のは『下等』だけど!」

持論を添えた返事から、核心に切り出す。
その時の表情や身振りは努めて『なにげない』ものだ。

「…………そう。『ケンカ』と言えば、貴女もお聞きになったかしら?
 このあたりのゲーセンでも派手なケンカがあった、っていう、『ウワサ』」

(私はこの件の情報をほぼ持っていない……彼女も同じ事を調べてるなら?
 『校内新聞』ならともかく、普通の新聞で扱うような記事とは思えない。
 彼女は『同業者』ではない。……だとしたら何? って話になるけど。
 ともかく、食い合わないなら……『情報共有』でウィンウィンの関係だわ!)

深謀遠慮はあくまで頭の中に留めて、顔色は変えない。
何かを考えている、と思えば口を固くする人間もいる。
記者として、『顔色』の重要性はよく分かっているつもりだ。

もっとも、学生レベルのそれを……『百目鬼』が見破れないかは別の話だが。

737百目鬼小百合『ライトパス』:2020/03/06(金) 23:18:27
>>736

情報を得るためには、相手の口を軽くする必要がある。
そして、そのための方法には大きく分けて二つある。
つまり、『褒める』か『脅す』か。
だから、こうして褒めているのは『常套手段』の一つなのだ。
生憎、それを黒羽が悟っている事には気付いていなかったが。

「全くその通りだよ。
 負けた腹いせに手を出すなんてのは、
 その時点で『負け』を認めたようなもんさ」

(この子――引っ掛かるは引っ掛かるんだけど、
 イマイチ掴み切れないね)

この少女には、何処か『異質』なものを感じる。
そもそも、この店に似つかわしくない雰囲気なのだ。
彼女を気にする理由は、それだけではないのだが。

「ははぁ、『噂』ねえ……。派手な喧嘩っていうと、
 『大勢で乱闘騒ぎになった』とか、そんな話かい?
 もしそうだったら、店員も止めるのが大変だろうね」

(さて、『出てきた』か。何か聞けるといいんだけどねえ)

内心は相手の言葉に意識を集中していたが、表には出さない。
露骨に反応すると、それが重要な事だと思われてしまう。
人間は、『大事な事だ』と思うと口が堅くなるものだ。
それが情報収集の妨げになる可能性は否定出来ない。
あくまで何気ない風を装いながら、次の言葉を待つ。

738黒羽 灯世『インク』:2020/03/06(金) 23:57:27
>>737

「その通り、勝負で決まった上下は『真実』!
 暴力で書き換わるなんてあってはならない」

黒羽は暴力を得意としない。
だから暴力に屈しないための『力』を求めたのだ。

「さあ……私も細かい事は知らないのだわ。
 ウワサを聞いただけ。それも『SNS』でね。
 だから『証拠』なんてどこにもないんだけど」

(……この反応、どっち?
 知らないなら話は早いにしても、
 知ってて誤魔化す理由は……
 『子供が踏み込むべきではないと思ってる』か、
 『知られるのはまずいと思ってる』か……)

思考する。
相手の立場次第では『情報収集』を切り上げる必要もある。
勿論、全てを表情だけで読めるほど極まった技術はないが。

「――――『人が吹っ飛ぶ』ような喧嘩だった、と聞いているのだわ」

(これで反応が『出て来た』ら、もう少し踏み込んでいけるんだけど!)

あえて『半分』ほどの事実を伝えて、より『読みやすい』ように動く。

739百目鬼小百合『ライトパス』:2020/03/07(土) 00:24:27
>>738

「『人が吹っ飛ぶような』――ねえ……」

(いくら『噂』とはいえ、そんな話が幾つもあるとは考えにくい。
 アタシが知ってる話と同じだと見て良さそうだねえ)

同じ話を知っていると仮定すれば、
『他の部分』も知っていたとしてもおかしくは無い。
もちろん、『手も触れずに』という部分だ。
それを言わないのは『知らない』のか、
それとも『知っていて言わないのか』。

「ああ、そういえば思い出した。
 何処だったかで、そんな話を小耳に挟んだ覚えがあるよ。
 学生の立ち話を偶然聞いたんだけどね」

      ――――ドシュンッ

話の途中で、不意に『ライトパス』を発現する。
『白百合』の紋章を持つ人型のスタンドだ。
片手に握る『特殊警棒』を、悠然と肩に乗せている。
この少女から感じる『異質さ』。
スタンドを出したのは、それを確かめるためだ。

「ええと、どんな話だったか……」

「確か、『手も触れずに吹っ飛んだ』とか何とか――」

「まあ、よくある『デマ』なんだろうけどねえ」

(『押して駄目なら引いてみる』……。
 さぁてと、どうなるかね……)

740黒羽 灯世『インク』:2020/03/07(土) 00:39:18
>>739

             ピク
                ッ

(――――『スタンド使い』っ! 『大当たり』だわ!
  ――……いえ、『事情を素直に話す気』は無さそう。
    大という事はないわね、でも『張り込み』の甲斐はあった!)

『ライトパス』には露骨に反応をしてしまう。
スタンドを見て動じないほどの経験値は『まだ』無い。
それも、『人型のスタンド』は今の黒羽の関心の対象。

(……どうすべき? というよりこの人は『スタンドをなぜ出した』の?
 『私への脅迫』? いや、スタンドが見える前提で『脅迫』するのは変だわ。
 『私が意図的に……触れずに、というのを飛ばしたのに気付いている』?
 それならスタンドを見せて『余計な駆け引き』自体を飛ばすのは納得だわ)

            (…………私の『上を行く』相手という事?)

      メラ…

対抗意識が燃えるが……今は返答をすべきだと、思い直した。

「そこまでお分かりだったのね!
 『手も触れず』というのは眉唾だから、気にしなかったけど。
 ああでも、『合気道』の達人は触れずに相手を投げるなんて言うのだわ」

             スゥー ・ ・ ・

「――そういう『技能』とかを持ってる人間は、いるのかもしれないわね」

振袖上の腕を軽く上げ、その袖の中に隠した手を百目鬼に見せる。
いつの間にか、そこには『筆』が握られている。その名は、『インク』。

(スタンド使いだという事を知って、どう動いてくるか……
 『スタンド使いになら教えても良い』なんて流れなら良いのだけど……!)

741百目鬼小百合『ライトパス』:2020/03/07(土) 01:07:39
>>740

「そりゃあ、また凄い。
 アタシも『似たような事』をやってるけど、そんなのは無理だよ」

百目鬼小百合は、警備会社の『主任指導官』だ。
護身術や危険人物を取り押さえる技術を身に付け、
それを教える立場にいる。
もっとも、生身で触れずに投げ飛ばすなんて芸当は不可能だ。

「だけど、やろうと思えば出来なくも無い。
 アンタの言うように、そういう『技能』があればねえ」

「アタシは『それ』を持ってる。アンタと同じようにね」

        ジッ

袖の中に目を向け、『筆』を見下ろす。
自身の『それ』とは全く異なるヴィジョン。
だが、力の本質は同様だ。

「さてと――何から話そうかねえ……」

手の中で煙草を弄びながら思案する。
この少女がスタンド使いなのは分かった。
しかし、目的が分からない。
何処まで話していいものだろうか。
そうはいっても、大した情報を持っている訳でもないのだが。

「アタシは、その噂の出所を探してた。
 別に、『誰かに頼まれた』って訳じゃあないよ。
 ただの『個人的な理由』さ」

「で、それについて『誰か知らないか』と思ってねえ。
 だから、こうして来てみた」

「アタシの事情は、こんな所さ。
 良ければ、アンタの方も教えてくれると有り難いんだけどねえ」

ひとまず、自らの素性を明かす。
この少女については、学生である事ぐらいしか分からない。
相手の事情が分かれば、話も進めやすくなるだろう。

742黒羽 灯世『インク』:2020/03/07(土) 01:58:41
>>741

「本当にあるとしたらそれはきっと、
 『お弟子さんに空気を読ませる技能』なんじゃないかしら。
 もしくは――――フフッ! そうね、私たちと同じ」

         ス・・・

筆先を宙に泳がせる。
そして、何も起こさない。

「まあ、私のは人を吹き飛ばしたりはしないけど……」

『スタンドでは何もしない』事を示す。或いは自分にも。

「私はね、『新聞記者』なの。校内のだけどね。
 この喧嘩騒動を知りたがっている人が、いる。
 だから『記事にしたい』……それで調べてるのだわ」

協力ではないにせよ、協調の意図を感じた。
だから『明かす』事にした……無論すべてではないが。

「……『誰がやったのか』?
 …………『なぜやったのか』?」

           フフ…

「そして、『どうやってやったのか』?ってところは……
 信じてもらえるか、難しい所になるかもしれないわね」

「……ただ、今のところあまり収穫は無いのだわ。目撃者も少ない。
 噂の出所の一つ、SNSへの書き込みも今は消えてしまっているし、ね」

743百目鬼小百合『ライトパス』:2020/03/07(土) 02:28:26
>>742

「なるほどねえ。教えてくれてどうも」

校内という事は『クラブ活動』か何かだろうか。
しかし、この一件はどう見ても『校外』だ。
その点は気になるが、深く追求する事でも無い。

「どうやら、アタシとアンタは大体似たような目的らしいね。
 ま、『全く同じ』って事もなさそうだけど」

こちらの目的は、『抑止』する事だ。
『喧嘩』が『犯罪』になる事を予防する。
スタンドが絡むとなると、警察では処理出来ない。
だから、『力を持つ者』が必要になる。
そうした意思の下で、百目鬼小百合は動いていた。

「アタシも、これといった手掛かりは掴んでない。
 ほとんど何も知らないと言っても良いよ。
 さっき話した『噂』以外はねえ」

「……どうやら、お互いに『空振り』だったようだね」

『ライトパス』を解除し、肩を竦めて見せる。
しかし、全くの無益とも呼べない。
同じように行動する人間と遭遇出来たのだから。

「これも何かの縁だ。
 せっかくだから、コイツを渡しとくよ。
 『情報の共有』ってヤツさ」

    サラサラサラ

手帳を取り出し、ボールペンで何かを書き込む。
それを破いて少女に差し出した。
書かれているのは電話番号だ。

「アタシは『小百合』って者だよ。アンタは何て名だい?」

744黒羽 灯世『インク』:2020/03/07(土) 03:21:23
>>743

なぜ校内新聞の記者に過ぎない少女が、
この事件を『記事にする』謂れがあるのか。
黒羽はあえて語りはしないが――『被害者』は清月生だ。
『この事件を知りたい人間』の存在も、そこに絡んでいる。

「そうね、空振り……でも、『情報共有』は出来た。 
 私にとっては、それは『上等』な結果だわ。
 ゲームに夢中になるくらい、毎日何も起きなかったから」

               ゴソ…

『インク』を持つ手を懐に入れ……

「この空振りは、次への布石。意味があるのだわ!」

     サラサラ

「もし何か分かったら……差し支えなければ教えてちょうだい。
 私の方でも、『記事にする』より早く伝える事があれば連絡するのだわ」

同じように小さなメモ帳を取り出し、
電話番号の書かれた紙を返した。
その時には既に、スタンドの筆は消えている。

「ああ、名前? 『灯世』……『世を灯す』と書いて『トモヨ』よ!」

「さて……今日はそろそろ帰る事にするのだわ。
 朝から張り込んでてさすがに疲れて来たし……小百合さんはまだ残るのかしら?」

745百目鬼小百合『ライトパス』:2020/03/07(土) 03:45:06
>>744

「『名は体を表す』っていうのかねえ。
 『灯世』――立派な名前じゃないか。
 言っとくけど、お世辞じゃあないよ」

そう言って、軽く笑う。
連絡先の交換を済ませ、再び煙草を咥える。
手の中には使い込まれたライターがあった。

「お疲れさん。アタシは……そうさねえ」

「外で『煙草』を吸うよ。これが無いと落ち着かないもんでね。
 そろそろ一服したいと思ってたのさ」

    ザッ

「気を付けて帰るんだよ。
 スタンド絡みじゃなくても、この辺はガラの悪いのも多いからね」

「ま、余計なお節介だとは思うけどねえ」

帰るらしい灯世の姿を見送る。
それから自身も出口に向かって歩いていく。

        ――――シボッ

途中で我慢しきれなくって、外に出る前に火をつけてしまったが。

746黒羽 灯世『インク』:2020/03/07(土) 04:47:22
>>745

「フフッ! ありがとう。
 いずれもっと多くの人にそう言わせてやるのだわ」

世界に、あかりを灯す。そう……記者として。
親達はそういう意味で付けたのではないだろうが、
黒羽灯世は、そのように生きようと思っている。

「あらそう? …………喫煙者も肩身が狭くて大変ね」
 
         ゴソ…

メモ帳をしまい、荷物置きに置いていた鞄を持つ。
この場に長居する必要は今は無い。
そろそろ、外も暗くなる。

「ええ、このあたりは夜は本当に治安が悪いそうだし。
 暗くなる前に、ちゃんと家に帰れるようにするのだわ」

           「それじゃあまた、小百合さん」

(……それにしても、やっぱり『人型スタンド』がメジャーなようだわ。
 事件の真相や、それをどんな記事にするか……同じくらい気にかかるのは、『スタンド』の謎)

スタンド世界の全体像を知ることは、自身の『強者』『上位者』たる上で重要な事。
頭の中には思考を満たしつつも、その日はそれ以上なにもなく、帰路に着いたのだった。

747日下部『アット・セブンティーン』:2020/03/18(水) 22:41:54

          ド

               ン

                      ッッッ


時刻は深夜に差し掛かりつつある頃だった。
一台のバイクが、一人の少女を撥ね飛ばした。
直撃ではなかったが、『事故』と言えるレベルだ。
撥ねたバイクはそのまま走り去っていった。

     ・・・少女だけが残る。


                『ドチャ』

         『ズチャ』

「…………」
 
                    フラ〜  ・ ・ ・


常識に則れば凄惨な事故現場で、例外もまたその少女だけだった。
蝶の孵化のように、ゆっくりと起き上がる。何があるわけでもないが走り去った方角を見ていた。

748斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/03/19(木) 02:49:33
>>747

 「――知るかァァア!」

殴りぬき、蹴り飛ばす
喧嘩に法則も知性もいらぬ、只々殴り倒せばよい
腹に一撃、そこから下がった頭にフック気味の左を入れて吹き飛ばす

 「だいたいなんだよ『俺の女を泣かせた』って 知るか解るか心当たりが多すぎるわ その程度で喧嘩をふっかけてくんな面倒くせぇ」

 「……あ、いや待てよ?もしかしてアレか?この前のバレンタインに告白してきた女がいたな。」
 「タイプじゃねえんでフッたが……あー……そういう。」

聞いた限りの経緯としては恐らくこうだ

振られた女が泣きながら消沈していれば、声をかけるのは別の男
あなたのような美人を泣かせるなんて、なんてひどい奴だと男が言い、それを見た別の男は義憤に駆られて許しておかぬと拳を握る
……かくして俺にいきなり殴りかかってくる男が1人。

 「俺悪くねぇじゃん……!そもそもお前の女でもねぇ……!」

まごう事なき理不尽だった、ある意味では自分の顔の良さが関係しているという考え方も有るが
それを悪いと言うならば、生まれ持った肌や瞳の色で差別する手合いとなんら変わりが無いではないか。

 「女を泣かせた?仕方ねぇだろ美人でもタイプじゃねぇんだもん、泣いたのは向こうの勝手じゃねえか馬鹿々々しい」
 「つーかそれで俺を殴ったところで、お前に女は振り向かねぇよ 精々てめぇで口説き落とせや。」

    グシャ
                『ドチャ』

         『ズチャ』


 「じゃあそういうわけだから……グシャ?」

懐を見ればバレンタインデーの返しとして買った焼き菓子が一つ、焼いた粉と化していた
思い返すは先程の殴りかかられた瞬間の事 咄嗟にスタンドで防いだが、纏うタイプとはいえ元が『鎖』、衝撃を減らせるわけもない。

 「…………」

原因である倒れている男に聞くに堪えない馬騰を浴びせながら何度か蹴りを入れ
バツの悪そうに頭を掻きながらその場を離れた

 「チッ! ……しかし今の音、何かもっと妙な音が混じっていた気が 水を入れた袋が叩きつけられたような?」

大きめの舌打ちをすると路地から歩み出て、音の方につま先を向ける
……ふと、一人の少女が眼に入った 深夜故に衣服の色や細部はよく見えぬが 車道の上でフラフラとしているのはなんとか見える

はて、こんな時間になにをしているのだろう?そう考え何の気なしに近づいてみる。

749日下部『アット・セブンティーン』:2020/03/19(木) 22:45:00
>>748

近付いてみると分かるのは、『白い』少女だった。
三つ編みの髪も、シルエットを膨らませるオーバーサイズの外套も。

そして、それが所々……現在進行形で、赤色に染まりつつあることも。

「う、う、う〜〜〜〜ん」

『事故現場』だった。

                   『ズズ』

         『ズ』

    クルッ

「ねえ……『ひき逃げ』するなんてひどいよねぇ〜」

「死んじゃったらどうしてくれるんだろう」

そして被害者の少女が斑鳩の方を向いたのだった。近付いてきたゆえに。

「いたた……そこのお兄さぁん」
「もし暇なら私を『歩道』まで連れてって〜」

「全部痛いよ〜。歩けそうにないよ〜。二台目が来たら死んじゃうよ〜」

どうも致命傷といった風ではないし、二台目も来そうにはないが……どうする?

750斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/03/20(金) 15:43:09
>>749

――それはどうにも現実感というものが希薄だった

真っ白なキャンパスに、赤い染みがじわじわと広がり
やがては赤から黒に染まるであろう、その姿

喉から漏れ出す台詞は、その姿と対照的に何処か間延びした呑気な物で
どうにもちぐはぐなズレた感覚を与える

『致命傷ではない』だが『動いている』
破壊力という物は空気抵抗や重力加速などを算数に入れなければ至極単純、速度と質量に比例する。

 (――いや、そこは死んどけよ 人として)

理屈は不要、シンプルに考えよう ……車に衝突されて生きている人間がいるか?
俺のストーリーが『コメディ』から『ホラー』に変更された瞬間だった。

 カチ ……パキパキパシピキ

これが足をひねったとか、その辺りなら手を貸すにやぶさかではない
だが『真っ白な装束の』『血だらけの女性が』『場違いな台詞と共に此方に助けを求めてくる』と話が別だ
具体的に言うとジャパニーズホラーの最たる一つ、『貞子』辺りをどうしても連想して怖くて近づきたくなかった。

 ――ヒュッ  キィン  ……ザザザザザザザ

 「……そう言われてもな 『もう歩道にいる』んじゃないのか?」

鎖が伸びる、俺のスタンドが少女の背後に落ち、融合が解除される
内包された大量の鎖の欠片が、潮騒の如き音をたてながら分離し、銀色の波として少女の体躯を歩道まで押し流した。

 「それで?救急車がいるなら呼んでやるが……葬儀屋の方が先か?」

腕を組み、周囲を警戒しながら距離を維持する
目の前の異常相手に、流石にここから猫を被れる気もしないのだ。

751日下部『アット・セブンティーン』:2020/03/20(金) 23:33:38
>>750

 ――ヒュッ  キィン  ……ザザザザザザザ

おびただしい量の鎖が自分を押し流す事なんて信じられない。
が、『歩道にいつの間にか立っている』自分は『そこにある事実』だ。

「あれ、ほんとだ……頭も打っちゃったかな〜」

                ポタ…

                      ポタ…

だからすぐに受け入れる。
袖から垂れ始めた血は、車道に痕跡を残してもいない。

「『死ぬ』予定はないんだよねぇ」
「『救急車』も……うん、いらない。んふ、心配かけちゃうねぇ」

              「いてて」

    ドシャ

「立ってるのはしんどい……お行儀悪いけど、寝ちゃおうかな。ちょっとだけ」

体勢を崩し、地面に伸びながら『斑鳩』を見上げていた。

「んん……『15分』」

                        『ズ』

「や〜、14……『14分48秒』かな。あのねお兄さん。何も呼ばなくていいけど」
「もし何かお願いを聴いてくれるなら、しばらく私の話し相手になってほしいな〜。ダメ?」

                『ズズ』

『14分48秒』――――それが何を意味する言葉なのか。口調に、剣呑さは無いが・・・

752斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/03/21(土) 00:13:58
>>751

――銀の枷が音をたてずに袖に戻る。

役目を終えた『鎖』が掻き消え、後には何も残りはしない
当然だ、それがスタンドである以上 俺が作り出した現実に双方から干渉可能な実体であっても
一切触れずに、朝方の夢の如く消せるくらいは可能な事実だ。

 「――なんだ、暇なのか?それとも底抜けに呑気なのか?」

鼻を鳴らす、目の前で寝転んだ少女はどうにも危機感という物がない
すくなくとも自分が女で、それも血濡れであったなら 男の前で寝転ぼうとは考えない事だ
――普通の人間なら、という但し書きは着くが。

(少しは引いた車やらに怒るなり、自らの負傷に動揺するなり有りそうな物だが、それもない)
(血の粒は車道に残らず、痛いと言いながらその顔はむしろ夢見心地の乙女のようにも見える)

……やれやれ、俺は探偵では無いんだが。
腕を組みながら吐息を吐く、そういえば暦の上では既に春だったか?
桜の下にはなんとやら という話は聞くが、車道の上に女が寝転ぶという話はついぞ聞いた覚えがない
あったとしてもそれは単なる事故現場だ。

(血液、或いは肉体そのものに同化した『スタンド』か?引いた車自体も現実に存在するか怪しい物だな。)

 「構わんぞ?其方が『勝手に歩道に寝転んで勝手に話す』分にはな。」

 「毒にも薬にもならんのだから、勝手に好きにするがいい、俺もそうする ――ただ、それだけでいいのだがなぁ。」
 「解らん奴の多い事、多い事……それで?何を聞きたいのだ?自己紹介からか?」

皮肉気味に端正な顔をゆがめながら、肩を竦める
少なくとも、先程のくだらない逆恨みの男よりは退屈はしないのだから。

753日下部『アット・セブンティーン』:2020/03/21(土) 01:04:36
>>752

「今から、バイクを追いかけられるわけじゃないでしょ〜?」

      『ズ』

           『ズ』

「だったら、動けるようになるまでは……」
「お話でもしてる方が『価値』ある時間じゃなぁい?」

危機感。確かにそれが『無い』。
致命傷ではないにしても、『重傷』ではあるはずなのだ。
おかしな方向に曲がった脚などは意識を飛ばしかねない。

――――『普通ではない』のは斑鳩の見立て通りだろう。

「自分の話が相手にとって毒か、薬か。そんなのわかんないもんねぇ」
「それなら自分の薬になることをするのが良いよね〜。んふふ」

「話す内容はなんでもいいんだ〜」
「そうだねぇ、自己紹介からにしとこっか」

日下部は笑みを浮かべる。
顔立ちは斑鳩同様に端正な部類だが……血に濡れた笑みは、気味の良いものではない。

「日下部(くさかべ)……日下部虹子(くさかべ にじこ)」「趣味はぬいぐるみ集め」
「気安く、クサカベって呼んでね〜」「それで……お兄さんのことは、なんて呼べばいい〜?」

754斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/03/21(土) 01:23:53
>>753

 「……ふむ、名乗られたからには返さねばならんな。」

己の顎を撫でつつしばし佇む
偶然とはいえ、さて この『俺』自身はなんと名乗った物か?思えば考えた事が無かった
同じ名前を名乗るのも良いが、それでは少々つまらない。

 「――よし、俺の事は『ライカ』と呼べ どうせ2度も会わんのだから、その辺りが双方都合よかろう」
 「偽名だからと文句を言うなら、その前に……その端正な顔を拭う也してから言うのだな、美しい顔が台無しだぞ?」

いかに元が美人であろうと、化粧が下手では台無しという物
それに、吸血鬼か歩く死体と見紛うその姿に本名を告げて、老夫婦に災いを持ち込むのははばかられる事でもある
何がトリガーになるのか解らないのがスタンド能力だ、まったく面倒だと思う。

 「思うに、薔薇というのは手がかかるから美しいのだ 虫食いの華など見向きもされまい。」

恐らくクロガネ辺りなら放ってはおかないだろう、それ故に善性なのだから
しかし俺が考えるのは、あと一歩間合いを広げるべきか?と言う事くらいだ。

 「……しかし、俺としては面倒な奴を返り討ちにした後なので、特に貴公には興味が無いな、うむ 薪にもなりそうにない。」
 「何か他に聞きたい事はあるか?」

他の気遣いは目の前の女の言うとおりに、救急車を呼ばない辺りが関の山と言う事だ。

755日下部『アット・セブンティーン』:2020/03/21(土) 02:58:03
>>754

「偽名なんだ? 言わなきゃ気付かないのに〜」「まあ」
「呼んで答えてくれるならなんでもいいよぉ。よろしくライカさ〜ん」

『意味』はどうでもいい・・・重要なのは『そこにあるもの』だ。
ライカでも、ベルカでも、ストレルカでも同じことだ。

「私、きれい? やった〜」「んふふ」
「お世辞でも、なんでも、口に出してくれたのが嬉しい〜」
 
            グイ…

袖で顔を拭う。
誉め言葉は本題ではないとはわかっている。
斑鳩の本心、本音、本当の関心ごとは分からない。
分からないもの、見えないものにこだわるつもりはない。
それが表立って、目につき鼻につく問題にならない限りは。

「でも、まあね、こんな状態だからねぇ」
「せっかくなら無傷で、化粧もばっちりの所を見せたかったな〜」
「きっともっと、綺麗だって驚いてくれたと思うのにぃ」

                      『ズウ』

「んふ……まあいいや、それは」
「轢かれたからお話出来てるんだし、言っても仕方ないよね〜」
「そうだねえ、何のお話をしよっかな。ねえねえ、『面倒なやつ』っていうのは?」

       『ズ』

「話すのも面倒なヤツなら、別の話でもいいよ〜。趣味とか……最近読んだ本とか〜」

756斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/03/21(土) 05:58:04
>>755

(……やはり『幻聴』ではない この引きずるような音は何だ?)
(周囲を見渡しても、音の発生源が解らない 遠距離操作ならこんな音を出す必要が無い)

 「仕方なかろう、本名の方は『俺』の名前では無いんだからな ……正確には奴の名前でもないが。」

(肉の詰まった皮袋を引きずれば、こんな音になるか……?)

 「ああ、そいつか?」

アレが何かと言う事は一旦置いておくとしよう
……腹が立ってきた。

 「……人間は生まれる境遇を自分で設定できると思うか?肌の色、瞳の色、色弱、アレルギー、才能、美醜」
 「例を挙げればキリがない、自分では決定できない生まれついた他者との違いが人にはある」
 「その『わずかな違い』だけで人は争える……その延長線上に戦争まで引き起こせる。」

黒人と白人の争い等はそのいい例だ……未だに後を引いている。
国境、人種の違い、それこそ無数に火種となる。

 「他人と自分は別の人間、そんな事は誰に言われるまでも無く至極当然のこと」
 「だが、時に凡人はそれすら忘れ、己の境遇がまるで他者のせいだとでもいうかのように難癖をつける。」
 「そいつに才能が無いのは誰のせいだと? ……少なくとも他人のせいではあるまい。」

そう、何が俺のせいだというのだ?貴様らに才能が無いのは俺のせいか?
俺に才能が有るのは俺のせいか?ただ持っていただけの事を、何故そこまで責められなければならない?
単に貴様らが凡人共が、『如何なる努力を持ってしても生涯俺には勝てない』というだけではないか。

 「結果、俺はホワイトデーの返しの為の焼き菓子が粉と化したわけだ……気にくわんよ」
 「――なあ、勝てないと解れば足を引っ張るのがそんなに楽しいのか?自分を弱者だと声高に叫んで、それを免罪符に他者に罪を被せるのは?」
 「理解しがたい、不愉快極まる、見るにも聞くにも堪えん糞袋共だ 何故あんなのが生きている?」

許せるか、許せるものか、許しはしない、俺にとっての世界は、両親を通してみる物だった
なのに何故お前たちは生きている?すでに世界は死んでいるのに、なぜのうのうと息をしているのだ?

 「悪なる者が罪を償わず、善なる者がその罪を押し付けられ」
 「正当な報いはいくら待てども来はしない ――何故納得できる、何故許しておけるのだ?」

今日も連中は生きている、普通の人生を送っている、その下に踏みにじられた一つの家族がある事など、とうに忘れて生きている。

 「どうして?何故? いくら聞いても連中の答えは要領を得ない『ずるい』だの『卑怯』だの……」
 「すべて、すべて『理不尽』だ、どいつもこいつも反吐が出る 死んでしまえよ塵屑だろうが、お前らに何の権利が有った!」

――死ねよ貴様ら、先に俺を殺したのだから、俺が殺して何が悪い、理不尽だろうがお前も死ねと

 「他の一切を期待はしない 苦悶の叫びも悲嘆の嘆きも必要ない、ただただ奴らが理不尽と共に死に絶えてくれればいいのだ!俺は!!!」

『鎖』が悲鳴のような軋みをあげる、怒りを燃やすたびに俺のスタンドが狂い悶える
操る事の出来ない筈の鎖が、絡みついた全身から怨嗟のような音をたて続ける。

 「――だが殺せもしない、ああ、故に面倒だ あんな連中でも警察というのは守るんだからな。」
 「本当に、本当に、面倒だよ ……それだけだ。」

それだけ言うと燃え尽きた灰のように体を縮める
怒り続けることは酷く難しい事だから。

 「……それで?俺からも今更聞くが さっきから耳障りなこの何かを引きずるような音は、『くさかべ』に聞いていい事か?」

757日下部『アット・セブンティーン』:2020/03/22(日) 08:57:33
>>756

「? 律儀なんだねライカさんは。まあ、事情は聞かないけど〜」

"『俺』の名前ではない"
"『奴』の名前でもない"

意味はよく分からないが、何かの『線』を踏み越えないようにしているらしい。
殺人は出来ない、『警察に守られているから』……その言葉からもそれは分かる。

大事な線を超えない。彼は怒れる存在だが、狂いきった存在ではない。

「んん、あれだね。『道徳』とか『他人の気持ち』を思いやるより」 
「ずっと、『自分の楽』の方がずーっと『わかりやすい』からね〜」
「わかりやすいことしかわからないんだよ、あんまり頭が良くないとさぁ〜」

        ニコォ…

「でもそれで人を襲ったら、返り討ちにされるのは当然だよねぇ。話してくれてありがとう」

誰のせいでもない『不幸』はいくらでもある。
それが自分の足を捉える事も……いくらでもある。
あるいは、最初から捕われていた、という事も。

理解する事は難しい。理解したとしても、『自分の楽』は大事なことだ。
目に見え、触れられ、己が確実に感じる『それら』が、重要なのだ。

「ん……この音? これはねえ……んふ、お返しに答えるよ。よいしょ」

       ゴロ…

「ホラ、お腹見て〜。別に見せたら減るものじゃないし〜」

大型犬のように、仰向けになった。それほど呑気な状態でもないが。
……白いセーター……だったのかは定かではない。『赤い』からだ。

      『……ズ』

「今ねえ、私は『治ってる』ところなの」
「私は特別、『生きる才能』があるから。だから、早く治るんだよね〜」

その布地が、律動的に蠢いているのは……その下に隠された『肉』の動き。
服を捲ればより分かりやすい。『傷の再生』……人体にはあり得ない速度。

そして、ライカには見える。血に混じる無数の『ベニクラゲ』の幻像が。

「それがコンクリートと擦れちゃってたんだね、うるさくてごめんごめん」

『アット・セブンティーン』と、名付けられた。『スタンド能力』……その発露だった。

758日下部『アット・セブンティーン』:2020/03/22(日) 08:58:48
>>756

「? 律儀なんだねライカさんは。まあ、事情は聞かないけど〜」

"『俺』の名前ではない"
"『奴』の名前でもない"

意味はよく分からないが、何かの『線』を踏み越えないようにしているらしい。
殺人は出来ない、『警察に守られているから』……その言葉からもそれは分かる。

大事な線を超えない。彼は怒れる存在だが、狂いきった存在ではない。

「んん、あれだね。『道徳』とか『他人の気持ち』を思いやるより」 
「ずっと、『自分の楽』の方がずーっと『わかりやすい』からね〜」
「わかりやすいことしかわからないんだよ、あんまり頭が良くないとさぁ〜」

        ニコォ…

「でもそれで人を襲ったら、返り討ちにされるのは当然だよねぇ。話してくれてありがとう」

誰のせいでもない『不幸』はいくらでもある。
それが自分の足を捉える事も……いくらでもある。
あるいは、最初から捕われていた、という事も。

理解する事は難しい。理解したとしても、『自分の楽』は大事なことだ。
目に見え、触れられ、己が確実に感じる『それら』が、重要なのだ。

「ん……この音? これはねえ……んふ、お返しに答えるよ。よいしょ」

       ゴロ…

「ホラ、お腹見て〜。別に見せたら減るものじゃないし〜」

大型犬のように、仰向けになった。それほど呑気な状態でもないが。
……白いセーター……だったのかは定かではない。『赤い』からだ。

      『……ズ』

「今ねえ、私は『治ってる』ところなの」
「私は特別、『生きる才能』があるから。だから、早く治るんだよね〜」

その布地が、律動的に蠢いているのは……その下に隠された『肉』の動き。
服を捲ればより分かりやすい。『傷の再生』……人体にはあり得ない速度。

そして、ライカには見える。血に混じる無数の『ベニクラゲ』の幻像が。

「それがコンクリートと擦れちゃってたんだね、うるさくてごめんごめん」

『アット・セブンティーン』と、名付けられた。『スタンド能力』……その発露だった。

759斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2020/03/23(月) 00:54:39
>>758

 「…………。」

 (――故に、俺は怒り続けなければならない、過去を過去だと受け入れて、笑い飛ばすのは今は不可能だから。)

息を吐く、もう白む程に寒くはない。

超能力者がいる以上、ある種の幽霊や怪物がいると考えた方が合理的だ
その辺りが俺の想像の限界だが…『スタンドのクラゲ』が体内に存在するとは。

 「そうか、ある種安心した 少なくとも『スタンド使い』である事は事実らしいからな。」

見た事のないタイプである事には興味がある、自己の治療に特化した『群体型』の亜種のような物か?
それ以上ではなさそうだが、スタンドの成長というのは如何伸びるかは解らない物だ。

 「――俺の意味のない話を聞いた礼だ、日下部が治るまでは此処にいるとしよう、律儀にな」
 「次が『車』で『車道に沿ってくる』とは限らんだろう?」

満足に動けないのなら、次は引きずるくらいはしておこう
クサカベが治って去るまでの間に、俺に出来るのは精々そのくらいだ。

760日下部『アット・セブンティーン』:2020/03/23(月) 03:46:21
>>759

「んふふ、『これ』でスタンド使いじゃなかったら『吸血鬼』?」
「そうなるのも悪くないけどね〜」

「でもま〜ね、『危険』なことなんて何もしないんだよ、私は」
「『治るだけ』……それだけの事実」
「それだけで十〜〜〜分って、事実なんだ〜」

              ノソ…
 
「だから好きなだけ安心してね。安心料を取ったりもしないから〜」

服を直し、仰向けのまま頷く。
『アット・セブンティーン』は『治すだけ』ではない。
が、あえてそれを口に出す必要もない。

『事実として危険はない』――――それだけで十分だ。

「だって、私の方はライカさんのおかげで大安心だし〜。ほんとありがとねぇ」

           『ズ…』

「一人で放置されてたら、どうなる事やらって感じだったもんね〜」
「それにお話してたおかげでね……もうそろそろ、動けそう」

「時間が経つのって、たまに早すぎるよね〜〜〜」

                  『ギュ ギュ』

脚、だ。おかしな方向に曲がっていたはずの脚が、戻っていく。
まるで『巻き戻し再生』の映像を見るように、負傷がその体から消えていくのだ。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板