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房州軌道物語

1東海:2003/12/17(水) 23:58
ここで語られてゆくのは、国鉄房州本線の大里駅と房州海岸沿いの町、房州貝塚を結んで
砂丘と松原をぬって走るローカル軽便鉄道『房州軌道』にまつわる物語です。

※房州その他地名は九十九里にインスパイアされてますが、
 あくまでもフィクションであり実在の地名とは関係ありません。
※オープンソース架鉄と考えてもらって差し支えありません。
 いじっていじっていじりたおしてください。

2兎の集会@虚妄の宴:2003/12/17(水) 23:59
その尻馬、乗った!

3兎の集会@虚妄の宴:2003/12/18(木) 21:39
一晩考えた結果、「乗った」は良いけど、「想い出の…」なんでしょうか。それとも「今まさにここにある…」なんでしょうか。
それによって「語らせる」言葉も選ばなければならない。

4東海:2003/12/18(木) 22:54
とりあえず今もある、ってことにしときましょうか。
とりあえず今俺には、昭和20年から昭和55年頃までのストーリーが頭の中にあります。

5東海:2003/12/20(土) 23:32
「あいつ」と「うさぎ」の物語 −1


昭和二十年の盛夏。

「あいつ」は瓶底眼鏡の痩せっぽちインテリ学生。
毎日手榴弾を抱いて上陸してきた戦車に特攻かけるべく
砂浜に掘ったタコツボで訓練を受けている。

6東海:2003/12/20(土) 23:37

書き損じ(泣

あらためて書き直してスタート


7東海:2003/12/20(土) 23:48
「あいつ」と「うさぎ」の物語 −1

昭和二十年の盛夏。
房州貝塚駅に程近い海岸の砂浜。

「あいつ」は瓶底眼鏡の痩せっぽちインテリ学生。
毎日を爆雷を抱いて上陸してきた戦車に特攻かけるべく
砂浜に掘ったタコツボで訓練を受けている。

出征の日、父親は日露戦争のくたびれた拳銃を渡して
「お国のために死ね」と言って送り出してくれたが、
「あいつ」はいったい何のために死んだらいいのかイマイチ理解できず、
腹を減らして「牛の反すう」を体得したり、
素裸で突撃訓練させられ同僚から「デッカイな」と尊敬されたりしていた。

8東海:2003/12/21(日) 00:15
「あいつ」と「うさぎ」の物語 −2

いよいよ敵軍上陸と思われる前日、一日だけの外出を許され、
この世の名残りに、大里の女郎屋に女を抱きに行く。

「あいつ」は爆撃で両手を失った房州貝塚駅で老駅長から
「美しい、観音様みたいな女房との出会い」を聞いて感激したり、
草に覆われている、貨車を停めておく駅の側線で
遊んでいた小さな兄弟と知り合ったりした。

9東海:2003/12/21(日) 00:29
「あいつ」と「うさぎ」の物語 −3

「あいつ」は大里へ行く軽便軌道で、車掌をしていた
美しい少女「うさぎ」と出会う。

終点に着き、乗客が皆降りても「あいつ」は
降りなかった。

何往復も何往復も、大里と貝塚を行ったり来たりした。

その夜、軽便軌道の中で、「あいつ」は「うさぎ」と結ばれた。

10東海:2003/12/21(日) 04:43
「あいつ」と「うさぎ」の物語 −4

翌日、「あいつ」は、爆雷を抱えて砂浜にいた。
貝塚駅の老夫婦、
駅で知りあった小さな兄弟
そして「うさぎ」。

あいつが死を賭けて守る祖国ができた。


その夜、大里の町に空襲があり、
「うさぎ」は焼けて死んでしまった。

それから、作戦は変更され「あいつ」は
魚雷にくくりつけられたドラム缶に入って沖に出た。

「うさぎ」を殺した敵を、
いつ来るかわからない敵を、じっと待った。
ある朝、敵艦を発見した。
「あいつ」は執念をこめて魚雷を発射したが、
魚雷は泡をたてて沈んでしまった。

それから間もなく「あいつ」は
敵艦と間違えた糞尿処理船に助けられ、
終戦を聞かされた。
糞尿処理船に陸まで曳航されている途中、
ロープが切れてしまう。

「あいつ」は叫ぶ。
「ばかやろー、うさぎのばかやろー、
 戦争が終わった?ばかやろー」


現代。
海水浴客で賑わう海岸に、ドラム岳が浮いていた。
その中に「あいつ」はいた。
白骨化した「あいつ」は、まだ叫び続けていた。

11東海:2003/12/21(日) 04:46
わかる人はわかると思いますが、
『「あいつ」と「うさぎ」の物語』は、
場面設定を房州軌道に置き換えた以外は、
映画『肉弾』のストーリーそのままです。

12東海:2003/12/22(月) 00:48
一発勝負! −1


昭和30年代初頭。
房州海岸は鰯漁で栄え、
房州軌道も貨客に賑わっていた。

房州軌道の社長、二宮忠は房州貝塚町の町議も務める名士だったが、
その息子孝吉は、名前に反した親不孝者で、町で知られた不良。
家の金を持ち出し、学生の時分で女を囲い、
そのことで父と大げんかをして家を飛び出してしまう。

1年後、水商売風の女が二宮家へやってきて、
孝吉の娘だというまり子という女の子を置いていく。
まり子は忠の子として、二宮家で育てられることとなった。

13東海:2003/12/22(月) 03:23
一発勝負! −2

それから10数年後。
房州海岸には「波乗り道路」ができ、
大里の会社の乗合バスが貝塚に乗り入れ、
房州軌道にかつての勢いはなかった。

孝吉の母が亡くなり、一周忌の法要が行なわれている日に、孝吉が家に帰ってきた。
派手な身なりの孝吉に父や妹が驚き、戸惑っているのをしり目に、
孝吉は家に居座り、一緒に連れてきたちんぴらの舎弟とともに、
会社にしきりに顔を出しては、ちょっかいを出したり、からかったりという毎日。

やがて、孝吉はちんぴら舎弟と一緒に温泉を掘ると言い出し、
怪しげな地質学者を連れてきて“観光開発部”をたちあげる。
「会社が傾いてるんだろ、オラにまかしておけ。
 これからは観光だ。温泉掘って当ててやる。」
孝吉の言葉に、父は戸惑いつつも、止められない。

孝吉は、会社の金をつぎこみ、屋敷や、線路敷、車庫、とあちこちを
勝手にボーリングして、会社や町の人間にさんざん迷惑をかけた挙げ句、
再び勘当されるのであった。

14兎の集会@虚妄の宴:2003/12/22(月) 22:33
タール塗りの真っ黒な家々。煙突からは昼餉を煮炊きする薄い煙と炭の匂い。
板塀のほんの少しの隙間から顔を出す「けーべん」の軌道。
木枯しの駅構内には黒くて長い貨車を繋いだ午後一番の列車。
荷の積み込みが済んでいるのか今は人足達も詰所の中で火に当たっている。
棒に差した彼等の昼食−それは馬鈴薯と何かの干物に過ぎなかったが−は、勢い良く燃え盛る粗朶の傍らで良い匂いを立て始めている。
彼等の言うよう「今年は荷が少なくて助かるっぺい」「何、荷が軽いっちゅう事は俺らの給金も軽いって事だっぺよ」
会話はそれぎりで止む。
詰所の裏は、やはり黒い民家が数軒。そして松林、そして今年に限っては不漁の灰色の海。
松籟を静かに耳にしながら、彼等の慎ましやかな午餐は進行する。

やがて−

駅長の吹き鳴らす大仰な笛。ややあって甲高い汽笛が、ポッ…、そしてせわしない排気の音が遠ざかる。
後に残るのは相変わらずの松籟と、人夫達の寝息ばかりである。昭和11年師走。

http://www6.plala.or.jp/takatsukasa/boshu-r1.jpg
戦前期にはこんな列車が走っていた事でしょう。

15兎の集会@虚妄の宴:2003/12/23(火) 10:56
強風が板戸を叩き続ける。
彼の苫屋を薄暗く照らし出すのは鯨油のランプ計りで、家具と言っては柳行李が二つ、部屋の隅に重ねてあるだけのがらんとした家の中を揺れながら照らし出している。
すると誰かが板戸を叩く音がする。「政一、おい、政一、いるか。恭介だ」
政一と呼ばれた少年は、心張り棒を外す。ランプの薄明かりに、蓑を着込んだ友人が息を弾ませながら立っている。後には更に数人。

「何を言ったってダメだ。何を言ったって無駄だったよ」
「政一、落ち着け」「そうだよ、お前一人の問題じゃないだろう」
「出て行くよ。俺にはこの村に棲み続ける事が出来ない」
「お母さんの事は気の毒だった。確かに本村の連中は冷たかったが、俺達はずっと…」
「そうだ。恭介にしても誠吾にしても、満州からずっと一緒だったじゃないか。これから内地に戻って、一からやり直せるって、一緒に喜んだじゃないか」
「お前等良く聞けよ。開拓の子供は高校へ行く事は認められないと」
「源爺のヤツそんな事言ったのか」「どうなんだ、政一。ヤツはそんな事を」
「俺等はここで死ぬまで土に縛り付けられる。学問してる暇があれば、働いて土地を提供してもらった恩を返せとよ」

強風は暫し止む。彼等の声高な話が一瞬途切れると、夜の海から潮騒が微かに届く。
時計が9時を打つ。苫屋の脇を走る線路が鳴り出し、海岸段丘を登り詰めて来る「けーべん」の列車の細かい息遣いが潮騒に混じり出す。
−以下次号−

16兎の集会@虚妄の宴:2003/12/23(火) 11:10
「皆。俺はここを離れて、誰にも頼らずに生きて行く積もりだ」
「馬鹿言うな。何処へ行く気だ。東京か? 今の東京がどんなに食糧難だか知らない訳ではないだろう」
「カツギ屋でも何でもやって食って行くさ。病気のお袋を見殺しにした姑息なヤツらの棲む、こんな痩せ地なんか大嫌いさ。都賀県には二度と戻って来ない」
「政一よう、落ち着け。本村の皆だって内実は食って行くのがやっとなんだ」

上りの最終列車の音は少しづつ近付いて来る。

「教育の機会均等だなんて先生は偉そうに言っていたけど、言うのはタダだからな。連中の言う機会ってのは、外地生まれは含まれていないのさ」
「姉ちゃんはどうする?置いて行くのか?」
「…」

政一は一瞬詰まる。造り酒屋に年季奉公に行っている姉は、僅かに藪入りに帰って来るばかりだ。
「戦争が終わっても、ここじゃ何も変わってない。俺は全てに絶望したんだ。恭介、誠吾、興石、世話になったな。お別れだ」
「おい、待て、政一」
政一は板戸を開けると、黒松の林から影絵のように姿を顕わした軽便の列車に向かって一散に走って行く。それを追う友人達。
最後に繋がった貨車に飛び乗る政一。線路端で立ち尽くす友人。
海岸段丘の下り坂に差し掛かったせいか急に速度を増す最終列車。
今や彼等の間に会話は無い。政一と友人達の間隙を埋めるのは、急にその流量を増した生暖かい雨気を含んだ山風計りである。

17兎の集会@虚妄の宴:2003/12/24(水) 00:21
読捨新聞1973年9月11日夕刊ラジオ・テレビ欄「今夜の見どころ」より抜粋
「走れ!ヶ100(OBSよる7時30分)”兄弟涙の再開−都賀”」
北海道・夕張のおじいさんに会うために旅を続ける紋次郎(夏村敦夫)は、房州貝
塚の宿でかつて命を救ってもらった老渡世人、筧の源次郎と再開する。どうやら中
にはヶ100の兄弟機関車、ヶ99が眠っていると言う。紋太とヶ100は苦労してヶ99と
の涙の対面を果たすのだが…。

「北風紋次郎(ニ本TVよる8時)”夕霧の影に消えた”」
関八州取締出役に追われる身となった紋太(大野しげふさ)とヶ100。都賀県の海岸
沿いにある軽便鉄道の車庫の前で、急にヶ100は動かなくなってしまう。困った紋太
は車庫の中に何があるのかと年老いた駅員に聞くと、源次郎には仇と付け狙う相手
が居る事を知った紋次郎は手を貸す事になったが…。

18兎の集会@虚妄の宴:2003/12/24(水) 00:23
読捨新聞1973年9月12日夕刊ラジオ・テレビ欄告知記事より抜粋
9月11日のラジオ・テレビ欄「今夜の見どころ」の記事の中で、
「走れ!ヶ100」と「北風紋次郎」の紹介文が一部入れ替わって
おりました。お詫びして訂正します。

19まいど@丈夫:2003/12/25(木) 21:49
房州貝塚・・・・・・
紀州鉄道の(廃止された)日高川駅の風景を重ねつつ、勝手ながら妄想しております。

20兎の集会@虚妄の宴:2003/12/26(金) 00:15
ではもう一丁。(以下続)

21兎の集会@虚妄の宴:2003/12/26(金) 00:20
五月。水田にようやく水が引き込まれ、それはまるで湖の上に敷かれた堤道を走っているように見える。
銀灰色の新型電車。それは一年中空調が効いている為窓は開けられない。五月の爽やかな風も車内にいては感じ取る事は出来ない。

途中の大須賀で大勢の学生が降りると、車内はいっぺんに静かになる。日は傾きそうで未だ傾いてはいない。

22兎の集会@虚妄の宴:2003/12/26(金) 00:27
(続く)
老夫婦が座席に座っている。上品な身ごなし。病院の帰りか。
「おじいさん…おじいさん」
「…ん、あぁ…」
「…梅の木ですけどね、玄関の脇の」
「…あぁ、梅の木か」
「この際思い切って、切ってしまおうと思うんですよ。もう花が咲かなくなって五年にもなるし、葉が茂ると居間が暗くなるじゃないですか」
「切る?…何を切るんだ?」
「梅の木ですよ」
「…そうか、梅の木か。何処の?」
「ウチの玄関の脇に植わってるじゃないですか」
「…あぁ…あぁ、梅の木か。梅の木がどうした?」
「切るんですよ」
「…梅の木を切るのか。そうか」
「で、高橋さんにお願いしたらどうだろうってね、思うんですよ」
「高橋…何処の高橋だ?」
「いやですよ。斜向かいの高橋植木屋じゃありませんか」
(以下続)

23兎の集会@虚妄の宴:2003/12/26(金) 00:42
「…おばあさん、そんな事人に頼む位なら…隆にやらせれば良いじゃないか」
「だって…おじいさん、隆はもう三年も前に…いえ、そうですね。隆にやらせましょうね」
「この頃隆は姿を見せないけど、また仕事が忙しいのかな?」
「…」
「無理して何日も会社に泊まり込んででもいるんだろう。風邪でも引かなきゃ良いがな。おばあさん、気をつけてやらなきゃいけないよ」
「…えぇ、えぇ、そうですね…」

電車は薄暗い林を一瞬で抜け、再びカラリと明るい日本晴れの空の許に踊り出る。
車内案内放送の妙に冷たいテープの女性の声。「次は長船新田、長船新田です。お出口は右側です。お降りの方は運賃表に表示された運賃を、運賃箱に…」
「おばあさん、蝶が飛んできた。ご覧」
「…蝶?どこにも飛んでいないじゃないですか」
「ホラ、網棚の下を飛んでいるだろう。見えないのか。じれったいな。さっき開いた窓から飛んで入って来たんだ」
「窓って…窓は開かないじゃないですか」
「あぁ、蝶は良いなぁ。蝶を見ると昔を思い出すよ」
電車はゆっくりと速度を落とす。
「ほら、おじいさん、着きましたよ。降りますよ。…帰ったら頂き物の柚餅子がありますから…」
「塩羊羹があっただろう」
「あれは一昨日おじいさんが食べちゃいましたよ」
「…そうだったかな。あれは美味かった。隆が買って来たのか?」
「…違いますよ…」
駅に着いてドアが開く。二人はゆっくりと降りて行く。声はまだ聞こえて来る。
「いや、隆が買って来たんだろう…隆は親孝行な息子だから…」
「…ホラホラおじいさん、よそ見していると転びますよ」

おばあさんの心情が切な過ぎて、早くドアが閉まって欲しいと願うが、生憎中々閉まらない。
五月晴天の日。

24兎の集会@虚妄の宴:2003/12/30(火) 22:46
http://www6.plala.or.jp/takatsukasa/boushuu-r2.jpg

車両画像のみです。昭和13年日車製流線型ガソリンカー。単端式ですがキャブオーバー。勿論一両でも走ります。但し方向転換には相当大きな転車台が要た事でしょうなぁ。
総括制御の事は考えていませんでしたから、連結運転の際は電鈴等でやりとりしていたかも知れません。

25CHAZ:2003/12/31(水) 13:05
たぶん今年最後の書き込みです。

http://member.nifty.ne.jp/chaz/tantan20.gif

>>24と違って大馬鹿な絵ですので笑って下さい。
なんと19m級の単端!!見るからにゲテモノでございます。
前ドアの後ろの固定軸を駆動します。
ボンネット下の台車は回転軸を後ろにオフセット、蒸機の先台車みたいなもん
5年もしたら腹こするな、きっと(w
方向転換?なんですかそれ(w

てなわけで、皆様良いお年を。

26兎の集会@虚妄の宴:2003/12/31(水) 22:22
>>26
聞いた話では、上のムカデ単端の方向転換は、デルタ線で行っていたようです。

では皆さん、お迎え下さい。

27サマンサ:2004/01/11(日) 13:40
チャットで「俺はこーゆー房州を考えているんだけどさ、
なんか>>1に反する思想みたいでお蔵入りにしたのよ」と
言ったときのネタです。「こんなの房州じゃない」と
思ったらスルー推奨。しかもプロットだけだし。

 1953年、房州軌道の列車が国鉄線に直通し、千葉まで走ることになった。
大里から千葉まで国鉄線を房州の乗務員が運転するということで、国鉄に
研修へ出向いた二人の乗務員。
 国鉄の様式美とも言える規律や規則に感銘を受け、房州軌道もシステマ
チックにならなければと決意をする。
 千葉駅の乗務員詰所では、国鉄の乗務員と話が弾む。態度は尊大だが、
そこには鉄道員としての誇りを垣間見ることが出来た。
 房州軌道はこれから十年、国鉄という異文化を貪欲に吸収して近代的に
発展していく。

<続く>

28サマンサ:2004/01/11(日) 13:45
1971年、国鉄房州本線電化。
 房州軌道は気動車なので、あいかわらずディーゼル2連で乗り入れる。
 連続上り勾配を冷却水沸騰ギリギリのところで踏ん張って、あえぐように
走る房州車も、電車の速度の前に邪魔者扱いとなってきた。
 千葉駅の雰囲気も、どんどん変わっていった。
 組合、派閥の抗争が激しくなり、情報・指令の伝達がままならなくなる。
助役は中立の房州乗務員に愚痴をこぼし、国鉄乗務員は房州乗務員と距離を
置くようになる。
 あれほど素晴らしかった保線や車輌整備も日に日に悪くなり、房州乗務員は
事故を起こさぬよう、そして事故に巻き込まれぬよう他山の石としてより一層の
安全運行を誓う。
 しかし1978年、電車ダイヤの間に気動車をはさむことがままならなくなり、
そして千葉の整備担当が房州車の受け入れを労働争議の種にして拒否。
 乗入れは打ち切られた。
<続く>

29サマンサ:2004/01/11(日) 13:57
2003年 JR東日本房州線
 E217系が大里駅から房州鉄道に入る。
 房州鉄道は1985年に電化。JRから電気を購入しており、
自前の変電所は持っていない。
 現在は房州線内を2連の電車が走るほか、夏季を中心に海水浴列車が
東京から乗り入れてくる。

 JRの乗務員は、貧弱な軌道の房州線内に入り、そろりそろりとノッチ制限
を行ないながら道を歩んでいく。
 小さな私鉄だが、係員の動作はキビキビしており、そして信号・通信の情報も
的確かつ論理的に行なわれている。
 電車は松原に到着した。ここで列車交換が行われる予定だが、対向列車は
まだ来ない。

 「交換相手の対向車が乗降遅延で遅れています。次の片貝まで走って下さい。
片貝は無通告着線変更がききますので、場内2番に入ってください」
 松原駅長はE217系の運転士にそう指示した。

 ダイヤの乱れを最小限に抑えるべく、次々に指令が飛ぶ。
 一致協力して遅れを戻そうと、必死になっている様子が無線の声からもわかる。

 終点の貝塚で、JR運転手は年老いた助役に話しかけた。
 「房州さんはすごいですね」
 助役は笑って答えた。
 「みんな国鉄さんから、教えてもらったんですよ」

 帰り道、E217系は満員の海水浴客を乗せて、平坦な房州線を
引き返していく。
 足どりは軽かった。

30サマンサ:2004/01/11(日) 14:07
 で、このプロットから、昭和30年代のディーゼルカー運転術や、
保線の基礎知識、信号方式とそれにまつわる乗務員の苦悩みたいな
はなしをまとめようと思ったんだけど、ほとんど国鉄房州線の話に
なって、房州軌道はほとんどでないんだよね(w
 ダメじゃん、と。

ていうかそれ以前に「軽便鉄道」じゃないってところで終わっているんだが……。

31雄山鉄道:2004/01/11(日) 14:25
>>30
サブロク規格だけれど、軽便鉄道法準拠で作られた鉄道なら無問題よとあえて流れを無視して言ってみる。
自分も三フィーターのSLRTとか、5分ヘッドで運行するニブロク路面電車とか妄想してみたりとかなんか軌道からだいぶとっぱずれたこと考えてみたりしている。

32CHAZ:2004/01/11(日) 22:25
>>27-29
いや〜、ええ話じゃござんせんか。ホロっときちまいます。
>>30
カブるけど
軽便=特殊狭軌ってわけでもなし。
改軌されてからの話にしたってよし。
>いじっていじっていじりたおしてください。
だから問題ないじゃないですか。

33兎の集会@虚妄の宴:2004/03/28(日) 00:12
「男はきついよ・寅次郎夢の中だけ(197×松竹)」より

―房州線気動車の車中。博と喜美雄は向かい合って座っている。

博「君の生まれた家は、何の仕事をしていたんだい」
喜美雄「…ボクの家は…漁師です」
博「ほぉう、じゃぁ小さい頃から手伝わされたりしてたの」
喜美雄「…いえ、オヤジは余りボクを仕事に関わらせたくないって」
博「何故なんだろうね。折角の勉強の機会なのに」

―喜美雄黙る。窓の外は広大な海。手前には菜の花畑。

―乗換駅。国鉄のホームの端から小さな気動車に乗りかえる二人。

―車内。窮屈そうに身を翻して車窓を眺める博。

―「とらや」店内。

竜造「そう言えば社長、博さん出掛けてるんだって」
梅太郎「そうなんだよ。今朝立ってさ、都賀の貝塚って所まで足を延ばしてるんだよ。」
竜造「何だい、都賀ったらすぐそこじゃねぇか」
さくら「どうもそうでもないらしいのよ、都賀駅で国電から乗り換えて、急行で二時間行って、また乗り換えて行くんだって。着いたら電話するって言ってたけど、博さん」

34兎の集会@虚妄の宴:2004/03/28(日) 00:13
つね「博さん、都賀まで何しに行ってるんだい」
梅太郎「ほらね、こないだっからウチで預かってる喜美雄君って子、知らないかい」
つね「あぁ、あの子だろ、何だか陰の薄い」
梅太郎「そうなんだよ。真面目だけどロクに口を聞かない子でさ」
竜造「で、その喜美雄君がどうしたんだって」
梅太郎「こないだお袋さんが亡くなったんだって電報が来てね、帰りたいのは山々だけど、あの子オヤジさんに勘当されて出てきたそうなんだよ」
つね「その子がそう言ったのかい」
梅太郎「そうじゃぁないんだよ、喜美雄君のお姉さんって人がいてさ、一度ウチに挨拶に見えたんだけどね、これがまた奮い付きたくなる美人でさ」
竜造思わず身を乗り出す。
梅太郎「その姉さんから一通りの事は耳にしたんだよ。随分複雑な事情があるらしくてね」

―客が店を出る。

さくら「ありがとうございました」
つね「そんで博さんが付き添いで行ってるってのかい。社長が行ってやれば良いじゃないか」
竜造「そうだよ。現にこうやって油売ってんだから」
つね「まぁ社長より博さんが一緒に行ってやった方が心強いかもね」
梅太郎「そりゃないよ。何たて今日は手形の〆切日だから、涙を呑んで博さんに行ってもらったって訳じゃないか」
竜造「…で、社長、その姉さんってのは」
梅太郎「そうそう、この界隈じゃちょっと見ないような美人でさ、竜造さんなんかまともに拝んだら罰があたる」
竜造「そうかぁ、俺ぁ罰が当ってもいいから拝んで見たいな」
梅太郎「竜造さんで罰が当たるんだったら、寅さんなんぞは地獄行きだ」
竜造「オイ、止しとくれよ、縁起でもねぇ」
つね「何馬鹿な事言ってんだよ。仕事しとくれ仕事」

―貝塚の駅前。駅舎の前には二本の棕櫚の木。埃っぽい広場。白っぽい小さな駅舎から出て来る博と喜美雄。

博「で、ここから君の家まではどうやって…」
喜美雄「…あの、車が迎えに来ます。あの、姉ちゃんからの手紙には…そう書いてありましたけど…」
博「そう、じゃぁ待ってみようか」

―間も無く二人の前に黒塗りの高級乗用車が止まる。ギョッとする博。

35兎の集会@虚妄の宴:2004/03/28(日) 00:13
―「とらや」店内。

梅太郎「もしかしたら博さん、喜美雄君の実家で寅さんに会ってるかも知れないな」
竜造「オイオイ、止めてくれよ。心臓に悪い」
梅太郎「旅の途中でふと目にした美女。仔細構わずその家に厄介にでもなっていたら」

―電話鳴る。

さくら「うん、おばちゃん、いい、私取る。ハイ『とらや』でござ…お兄ちゃん? お兄ちゃんなの? 今何処にいるのよ。え? 博さんがそこにいるの? ちょっとどう言う事なのよ?」

―梅太郎、ギョッとなって立ち上がり、裏から出て行く。

梅太郎「あぁあぁ、いけねぇ、もうこんな時間だ。銀行に行かなくちゃぁ。はぁあぁ、忙しい忙しい…」

―志水家玄関。広い式台の脇に紫檀の電話台があり、その前に寅があぐらを掻いて話している。博、横から受話器をもぎ取ろうとするが、その度に寅に追い払われる。
寅「…だからよ、俺がな、仔細あってこの家にご厄介になっているとだよ、な、当家の主から、客人を駅まで迎えに行ってやってくれってさ、俺ぁ頼まれちまったんだよ。…うるせぇな。…そしたらその客人てぇのが誰あろうお前の亭主じゃねぇか。え? え? 
何だよ。お前ね冷たいよ。久方振りで兄弟がよ、例え電話線を通してであってもだな、この世にたった二人の兄弟が…おう、博うるせぇよ、だまっ…え? 替われってのか。しょうがねぇなぁ。ほら博、お前の可愛い恋女房がお前の声が聴きてぇとよ」

―博、受話器をむしり取る。

博「もしもし、さくら? 僕だ…」

―「とらや」店内。

さくら「博さん、一体どうなってるの? 何でお兄ちゃんがそこにいるの? え? え? 判らないわよ。じゃぁ二人とも無事に着いたのね。うん、判った。判った。うん、おばちゃんには伝えておくから。うん。じゃぁ頑張ってね」

―さくら、受話器を置く。幾分肩を落として、

さくら「お兄ちゃん、やっぱり喜美雄君の実家にご厄介になってるんだって」

―竜造、つね、呆然とする。

竜造「あぁあぁ、厄介な事になっちまったなぁ。もう。あぁ寒気がして来た。オイまくら、さくら出してくれ、あぁ、そうじゃねぇ、あぁもう」

36兎の集会@虚妄の宴:2004/03/28(日) 00:21
配役
久留米寅次郎:屋美清
さくら:賠償智恵子
仁美(喜美雄の姉):三津屋詩子
喜美雄:宍道晴久
竜造:下城正巳
つね:岬千枝子
梅太郎:太宰房夫
博:前田銀
喜美雄の父:西村洸
貝塚駅長:圭六輔
御前様:劉智衆

37兎の集会@虚妄の宴:2004/03/28(日) 00:25
考えて見たら、ヒロインが「三ツ矢歌子」じゃぁ行きすぎているかなと暫し反省の弁。
本人としては「壇ふみ」あたりを推したい所だが、もう出てるしなぁ。

38雄山鉄道:2004/03/28(日) 21:12
波良世津子なんていったらもっと行き過ぎているか。

39兎の集会@虚妄の宴:2004/03/28(日) 23:52
>>38
あ、それは「トコリの橋(古!)」。
あとは岡田良子とかも行きすぎかもですね(ワ。

山本瑶子(藤子じゃなくて)あたりかなぁ、でも出ていそうだなぁ。


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